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1951-03-13 第10回国会 参議院 労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十三日(火曜日)    午前十時五十四分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○労働者災害補償保險法の一部を改正  する法律案内閣送付) ○職業安定所指定看護婦寮看護婦の職  業安定に関する請願(第一〇〇号)   —————————————
  2. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 大変お待たせいたしました。只今より労働委員会を開会いたしますが、本日は労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案より審議を進めたいと思います。前回法案審議に関連のある実情調査等都合もありまして、労働大臣から提案理由説明だけを伺つてつたのでありますが、派遣議員かたがたも皆お帰りになりましたので、更に審議を続行いたしたい、かように考えているわけであります。そこで審議の順序でございますが、本日は先ず政府委員より法案の内容並びに提案に至るまでの経過審議会経営者等におきまして問題となりました論点等に関しまして、一応御説明を願うこととし、そのあとで質疑に移ることといたしたいと思います。この点につきまして何か御意見ございませんでしようか……。別に御意見もございませんようですから、さよう取計らうことにいたします。  それでは法案説明提案に至るまでの経過等に関し、政府委員説明を求めます。
  3. 中西實

    政府委員中西實君) 前回労働大臣より提案理由説明がありましたが、更に細部の点につき労働者災害補償保険法第二十七條改正点改正理由について御説明申上げます。  御承知の通り現行労働者災害補償保険法第二十七條規定は、常時三百人以上の労働者を使用する個々の事業についての過去五カ年間災害率が同種の事業についての災害率に比し、著しく高率又は低率であるときは、政府はその事業について定められている保険料率と異なる保険料率を定めることができることになつているのでありまして、現行法の下でも本法施行後五年になりますれば、いわゆるメリツト制を採用することができる規定になつておるのであります。併し産業災害発生状況は近年増加の傾向にありまするし、これが本法の運営に少なからぬ影響を与えておりますので、いわゆるメリツト制を早期に採用することによつて事業主負担の公平と産業災害減少を図らんとしたのでありまして、改正の第一点は、現行の過去五年の実績により発動し得るよう規定されているメリツト制を、過去三年の実績によつても行い得るよう改めた点にあるのであります。その理由につきましては、第一に、労災保険におきましては、各産業における災害発生程度に応じ、現在保険料率を二十五等級に細分し、能う限り各産業間の負担の公平を図つているのでありますが、なを同じ等級、同じ種類の産業に属する事業であつても、過去におけるその災害発生については相当の懸隔がありまして、保険料負担の権衡を失する向が見受けられるのであります。そこで災害発生の少なかつた事業については、その属する産業に適用される保険料率より一定割合軽減した率を以て保険料を徴收することとすると同時に、災害を多発せしめた事業については、逆に一定割合加重した率を課することし、或る程度災害発生多寡に応じた成績主義により、各事業相互における保険料負担の公平を期したことになるのであります。その理屈の二は、産業災害は年々上昇傾向にありますが、このことは再建途上にある日本産業にとつて厖大負担となつていると共に、本保険経済を不安定ならしめる原因ともなつているのであります。従つてこの産業災害を防止するためには、單に従来の安全行政による労使えの働きかけでは、その効果が十分期待できないので、この際メリツト制を採用することにより、各業者災害防止に対する関心を持つてもらい、業者積極的努力により産業災害減少せしめることを期したのであります。  改正の第二点は、現行法の「常時三〇〇人以上の労働者」となつていますのを「百人以上の労働者」とした点でありますが、その理由は、メリツト制によつて保険料率を決定すれば、これによつて保険料負担の公平を期することができると共に、災害防止関心を深めることができるのでありますから、メリツト制は、できるだけこれを広範囲事業場に適用することが望ましいのでありますが、併し法施行後日の浅い本保険にとつて、その適用範囲余り拡張することは、却つて全般事務の不円滑を来たす結果となる慮れがありますので、一応事務能力実情とを勘案して「百人」としたのであります。なお御参考までに労災保険加入事業場数を申上げますと、昨年十一月末現在、約三〇万でありますが、このうちメリツト制実施しようとする百人以上の労働者を使用する事業場数は、最近調査したところによると約五千三百であります。  改正の第三点は、メリツト引上げ又は引下げの率を百分の三十の範囲内に限定した点でございますが、その理由は、本メリツト制目的事業主をして災害防止関心を深めしめ、災害発生減少を図ると同時に保険料負担の公平を図らんとするものでありますから、これにより何らか増收を図り、又は制裁的意味を含ませたものでは勿論なく、飽くまでも保険的色彩を存しつ、而も同時にメリツト制目的を達成し得るよう配慮し、各事業災害多寡による負担の加減を極端にせず、上下三〇%の限度にとどめることを適当と認めたのであります。  第四点は、保険金保険料割合が百分の七十五を超え、百分の八十五までのものについては保険料率引上げ又は引下げをしなかつた点でございますが、これは現行資料によりますと、百分の七十五となり、我々といたしましては、百分の七十乃至八十の基準を一応考えたのでありますが、将来の見越し、その他労災補償審議会における審議経緯等もありまして、この際保険金保険料割合が百分の七十五を超え、百分の八十五までのところを基準に置いたのであります。  以上要点について申上げた次第であります。
  4. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 次に、労災補償課長説明を求めます。
  5. 池邊道隆

    説明員池邊道隆君) メリツト制実施のため、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案が当国会に提出されるに至りましたこれまでの経緯について御説明いたします。  事務当局におきましては、逐年産業災害上昇傾向にあることを憂慮いたしまして、昨年春、災害の撲滅乃至減少について種々対策を練り、検討を加えました結果、労災保険の立場においては、早急に法第二十七條趣旨に基くメリツト制実施すべきであるとの結論に到達したのであります。それは過去の災害実績により、保険料を徴收することによつて事業主間の保険料負担の公平を期することができると共に、他面安全に対する事業主関心を深めしめ、延いては産業災害減少せしめることともなるからであります。そこでこのメリツト制を如何に実施するかにつき、種々案を練り、関係方面とも折衝を重ねたのでありますが、労災保険実施後来だ日浅く、その実績が十分でないため、メリツト制実施には時期尚早であるとの理由了解を得るに至らなかつたのであります。而も他方労働者災害補償保険審議会においても、昨年春第二十五回会議において早急にメリツト制実施すべきである旨が決議せられ、関係委員がその実施について再三関係方面了解を得るべく努力したのでありますが、遂にその了解を得るに至らなかつたのであります。然るに昨年秋、米国国防省より安全関係専門家デーヴイツト・イ・ウオルター氏が総司令部特別顧問として派遣せられ、日本各地事業施設をつぶさに視察した結果、産業災害減少を図るには、事業主の安全に対する積極的努力が必要であり、それがためには労災保険についてメリツト制実施することが望ましいとの意見が述べられ、その意見がたまたま我々の意図するところと一致したのであります。そこで関係方面からは、メリツト制についての種々の示唆が与えられると共に、外国文献についてその貸与の便宜が図られ、我々としてはメリツト制について更に一層の研究を重ねた次第であります。メリツト制方式については、完全なメリツト制平均値によるメリツト制分割償還によるメリツト制、調整したメリツト制等いろいろの方式があるのであのますが、今労災保険において採用しようとするのは、第四番目の方式によるメリツト制でありまして、この方式保険趣旨にふさわしいと考えられるのであります。この方式米国オレゴン州においても採用せられておるところであつて、短い年月の統計資料によつてメリツト制実施するには最も簡便であり、わかりやすいと考えられます。勿論本法案については、事業主に及ぼす影響が大きいと考えられるので、日経連その他経営者団体意見も十分これを参酌して慎重研究し、成案を得たものであつて、この法案実施については経営者側も賛意を表している次第であります。右の様な次第でありまして、事務当局においてメリツト制実施を企画してから一年を経て、漸く本法案が当国会に提出されたような次第であります。
  6. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では政府よりの説明は一応これで終りましたので、これより質疑に入りたいと存じますが、ちよつとこの際皆様にお諮りいたします。それは本法案審議に当り、災害率の高い中小企業経営者かたがた参考人としてお呼びし、御意見を伺つたらどうかとのお話委員かたがたの間にあつたのでございますが、議員派遣などにより直接各方面意見も承わつたのでありますし、只今政府委員説明により問題点も大体明らかになりましたので、参考人をお呼びすることなしに審議を進めたいと思いますが、如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では御異議がなければ、さよう取計らいまして、直ちに質疑に入ることにいたします。どうぞ御発言をお願いいたします。
  8. 原虎一

    原虎一君 災害の多い中小炭鉱ですね、中小炭鉱で今度メリツト制を採用しますと、大体上に三割かけなければならないという炭鉱の数はどのくらいありますか。
  9. 中西實

    政府委員中西實君) 約八十、この私のほうで調べましたところじや八十余りでございます。三割以上ということになりますのは……。
  10. 原虎一

    原虎一君 問題はですね、そういう中小炭鉱経営状態等も我々は見てこの三割も料率引上げなければならん、引上げた結果ですね、それが炭鉱経営能力が貧弱のために労働賃金影響するというようなことがあるかないか、この問題は非常に大事なんであります。こういう点について当局考え、又観察している点を御報告願いたいと思います。
  11. 中西實

    政府委員中西實君) 只今八十と申しましたのは、大も中も小もちよつと規模別にわからないと思うのですが、つまり三〇%以上殖えるというのがそういう数であります。それから今のお話でございますが、基準法によりまして、労働者業務災害を受けた場合には、事業主労働者に対して補償しなければならないということになつておりまして、現にこういつた炭鉱は納めております保険料よりも相当余計の保険金労働者が受取つておりますので、この点は事業主としての当然の義務といたしまして是非払つてもらわなければならん。そのために炭鉱の坑夫の賃金影響が及ぶかどうか、これは経営全般の問題でありますけれども、今の料率は一応五銭七厘、或いは若干の今後の変化はあるかも知れませんが、その点はこれは経営合理化ということでカバーしてもらわなければなりませんので、それだからと言いまして、この関係においてこれを実施しないということは、却つて災害の撲減等から考えまして妥当じやないのじやなかろうかと、かように存じております。
  12. 原虎一

    原虎一君 その合理化が行われて行くこと、或いは安全、衛生に十分に注意が払われるということは勿論必要なことでありますが、問題は中小炭鉱並びに中小企業経営上困難な場合においては安全、衛生考えているいとまがない。従つて三割も掛金引上げられるということになりますと、自然労働者賃金引上げる、労働者賃金影響を与えずには置かない。従つて災害率の多い炭鉱であるというものに対して、場合によつては特殊の扱いをしなければならない。先日近県の工場を視察したのでありますが、某化学会社で今まで平均から行きますと、非常に災害率が少くて、給付を受けるパーセンテージは二七%程度であつた。昨年不慮の爆発のために十七名が死亡し、四十数名が重傷を負つた。そのために今度は五〇〇%ぐらいの給付で、今回過去三カ年の平均で行きますというと、どうしても三〇%を今後改訂されるまではかけなければならん。特殊の事情で、保険ですから、考えかたによればそれだけ自分のところは災難が助かつたのであるから、この際引上げられて、将来二年、三年納めることは当然だと言えば言えますが、これは掛金に対する経済的能力があるからできる。それでも済みますが、先ほど申しました中小炭鉱或いは弱小企業の、それだけの経営能力がないところはどうしても賃金影響して来る、こういう点をお考えなしに今局長の言われるように、そういうものは合理化でやつてもらわなければならんという言葉の上での解決が事実は付かないという点が、我々としては一番考えられておることです。で、不幸にいたしまして我々は工場と港湾、こういう方面の視察は或る程度して自信を得て来たのですけれども中小炭鉱の場合一番問題じやないかという気がするのです。それで強いて、あえてこう伺つておるわけです。必らずそういう弱小炭鉱労働賃金影響して来るであろうということは想像できる、これについて、ただ合理化で適当にやつて行くよりほかに方法がないとすれば、それで適当な手を当局が打たないといかないということであります。それからいま一つは、この改正説明にもありまするが、これによつて安全、衛生に対する、殊に資本家企業家注意を喚起して少くして行く、安全、衛生設備強化によつてメリツト制がそういう設備強化のために役立つ、そうして災害を防止するために役立つという考えかたは、これは余り過大評価してはならんじやないか。当局はその点から改正されるのであつて保険経済面から言えば、これは上下三〇%のプラスマイナス、大体これによつて保険経済を云々する意思はないのですが、狙いメリツト制によつて災害を防止しようということが最大の狙いだし、我々現場を視察して来ると、それはそう効果を過大評価すべきものじやない。やはりこれは適切な方法労使間に災害防止宣伝教育、同時に基準監督署災害防止設備に対して絶えず使用者側注意を与え、精神的な部面においては労働者にも教育をするということを怠たつたらば、この狙い効果がないということは、現場の諸君が皆言つておるのですね。この二つですね。要約すれば弱小企業上におけるところの労働賃金影響して来ることのないようにするということ、それからメリツト制によつて災害が防止される大きな力になると考えたら間違いである。この点は非常に大事なことである。当局のお考えを伺いたいのですね。
  13. 中西實

    政府委員中西實君) 非常に我々としましても、核心を突かれた御意見だと思います。で、弱小企業についてでありますが、大体百人以下は勿論メリツト制はないのでありますが、百人以上となりますと、まあ炭鉱あたりは百人以下というのは非常に少い、大体はメリツトに引つかかるのが多いのですが、一般産業で百人程度のものは平均料率で言いますと、年額にしますと七万数千円になる。それで平均しまして、大体料率が現在の料率で一銭三厘から四厘くらいの間になつております。百人くらいの所では大体七万数千円だろう、こう思います。炭鉱は五銭七厘、百人くらいの所で年額四十八万円から五十万円ということになる。これが三割ということになりますと、十四、五万円殖える。勿論企業の実態によつて相当な負担の所もあるかとも思いますけれども、先ずまあそうこのために企業が非常に成立つて行かないとか、或いは賃金にまで影響が及ぶということは考えられない。いずれにしましても、業務上怪我しました者に対して基準法が要求しております補償をしないで済ますということは、これは勿論できないので、何としてもこれはやつてもらわなければならないというふうに考えます。第二のメリツト制を過大評価してはいけない、これは私どももよく存じておりまして、実はアメリカあたりメリツト制を布きました例を見ましても、効果が出て参りますのが二年、三年の後だという統計上の結果が出ております。併し確かにやはりメリツト制をやりますというと、業者もピンと実際の利害が響いて来ますので、関心を持つて、相当効果のあることもこれ又確かであります。現にメリツト制を布くぞという声だけで急に施設の改善に熱心になつたという工場事業場を相当聞いております。そこで我々としましては過大評価いたしませんが、相当な期待はいたしておりまするのと、それから同時にやはりメリツト制と並びまして、災害防止についての努力を併せてやるということにつきましては、お説の通り十分にやつて参りたい、かように思います。
  14. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ほかに御質問……。
  15. 原虎一

    原虎一君 あとやるのですか
  16. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 今日は陳情や請願が来ておりまするので、それを少し御審議願いたいと思つておりますか……。
  17. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私一つお聞きして見たいことは、何と言いますか、今までの三百人がこの前百人になつたのですね。それからこういうメリツト制ということについて一々よく見なくちやならない。今までは二十七條は五年経過で以てほつたらかしておつた。今基準監督局やその系統の機関で労災保険の実際の支払事務その他が非常にこんでるのですね。まあ労働者から見て実際の支給が非常に遅れる、これは手続規定関係もありますが、仕事が非常に多くなつたというふうな点から事務が進捗しない、こういうふうな点もあるのですが、今度は範囲を拡げられると、それに対する事務的な行政的な配慮ですね。そういうものがどの程度に二十六年度の予算で行われておるのか、その点を中西さんに一つ教えてもらいたいと思います。
  18. 中西實

    政府委員中西實君) 確かに第一線人員は非常に今不足勝ちでございますが、来年度特に定員を殖やすということになりますと、いろいろと問題がありますので、予算人員増三百三十人実は計上してございます。これは定員改正じやございません、実際上人を殖やす。これはまあ仕事に真接とは言えませんが、労災関係で医者を四十六人、これは又定員じやなくて増員するという予算を計上いたしました。それで今まで実は若干一般監督のほうにこの労災定員食つてつてつたという傾向があつたのですが、今度第一線責任態勢を確立いたしまして、労災関係定員はすべてこのほうに使い、更に足りなければ一般の者を使うということで補なつて行きたいと思います。支払が非常に遅れ勝ちだというのは、若干人手不足ということもございましようけれども、それよりも主たる原因は、実は金がないので遅れるというのが大きな原因でございましよう。金さえあれば大体今の請求に対して支払いする能力は一応持つておるというふうに考えております。
  19. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 保際関係赤字のために現金に因るというふうな点から支払いが遅れるというふうな分は、どういうところから来ておるのですか。
  20. 中西實

    政府委員中西實君) 結局保険料よりは保険金のほうが多くなつておるので、それで当初は一応收支償う予算を組んで年度初めに出発するのですけれども、その後の要求の数の増大、それから医療費の値上りとかいろいろなことで、実は今年度におきましては、当初は月平均六億一千万円か二千万円ということで、年間七十四億で足りるということで出発したのですが、実際は月平均しまして六億八、九千万円、月に七千万円以上の齟齬を来たしまして、そのために年間八十一億ということで、そこにつまり七億余りの違いが出て来た。これに対しましては国庫余裕金借入等によりまして、凌ぎを付けて、更に不適正な料率改正するとか、いろいろな方途によりまして赤字を解消して行きたい、かように存じております。
  21. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それで更に重ねてお聞きするのですが、この労災保険法関係赤字を生じた場合には、一体保険会計赤字だから払えない、労働者自身は実はこうして法律上の保護を受けておるが現金がない、それで払えないという姿では労働者は何ら補償されないことになつてしまう。今ちよつとお洩らしになつたように、国庫余裕金を借入れて、本会計でそうしてまあ払うような措置をおとりになる、これが準則になつている、そういう点について何らか御改正になつて、少くとも法律制定趣旨及び政府の管掌しておる組合でしよう。これはだからそういうものについては、そういうふうな会計上の赤字によつて労働者の権利が擁護されないというふうな点について何らかの御考慮がないのか、こういうことを頻りに考えられると思うのですが、それでもう一つ突込んで言いますと、何というか、こういうものは何でも保険だ、総合的な保険契約的なものだという考えかたが基底になつておるのだと思う。社会保障制度まで発展して来たこの際に、そういうものについてやはり違つた考えかたがとらるべきだ、少くとも実際的に支障が起つておる部分については、普通の金の貸借のような形でものを交渉されておると、そういう結果になる、こういうふうに考えるのですが、そういう点について何らかお考えですか。
  22. 中西實

    政府委員中西實君) 国庫余裕金借入等につきましては割合簡単でございまして、別にそう実は面倒ではございません。この保険自体が実は使用者の無過失賠償責任の理論で行つておりまして、当然使用者全額負担でやるべきだ、各国の例を見ましても、イギリスのごとく非常に広範囲社会保障制度をやつておりますところは、これは例外でございますが、大体の国々はこの労災補償につきましては、金額使用者負担ということになつておるようでございます。それでこれは結局その使用者負担するところを、負担危険分散という意味で、国家が管掌して或る程度行政的な保険制度をとつておる。こういう関係なんで、まあ足らないときにはそういつた借入金をいたしますけれども、できればこの保険の中で收支をとんとんにするように我々として努力して行きたいと、かように存じております。
  23. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 無論何と言いますか、企業主自身の無過失損害的な、こういう危険作業をする場合には、そういう思想から発展して来たものではある。これはまあ当然だと思いますが、要するに会計赤字か黒字になるかというようなことで、実際の保護が適切に迅速に時に間に合つてできないということは、非常に私遺憾な点があると思うのです。そういう点についてやはりただ会計上やむを得ない、まあ中央に行つて来れば国庫余裕金から借入れてやると、こうおつしやるんだが、現場の手許になければどうにも仕方がないでしようね、そうして中央へ行つて来れば、相当の期間的な、中西さんのところでは簡單にお借りになるそうだが、現場では簡單に金を借りるのは相当なもんですよ、事実は……。私ども現場へ行つて見ると、そういうことを考えられない。やはりそういう点について現場から報告があるわけでしよう。だから大体どこの何はどの程度の何があるんだということを睨んでおられるはずだ、だから現金が出せないからということで、あなたのほうの行政としては機宜を失しないように御注意願いたいと思います。それからこの保険の建前については、実は私素人でよくわからないのです。令日は決して何しませんがね、いつものようなことは言えませんが、教えてもらいたのだが、ただどうも今聞いていて、メリツト制というものについて、オレゴンステート事例をお挙げになつたんですが、もう少し各国事例でどういうふうな制度が使われておるか、その利害得失というようなものについて簡單に何かお調べになつたものがありますれば、私勉強してもいいし、又ここで簡單におつしやつて頂いても結構だということなんです。こう思うのですがね。尤もこの委員会の時間の都合による、こう考えているのです。つまりこれは審議して行く上において、もう少しいろいろな制度がある、これについての各国の例というふうなもの、それの利害得失というふうなものを参考にしてくれなければ、この一條だといつても簡単にそう審議できないですよ。
  24. 池邊道隆

    説明員池邊道隆君) お答え申上げます。メリツト制をとつておりますのは原案だけでございます。アメリカでは失業保険労災保険につきましてとつております。その失業保険につきましては、まあ使用者労働者を雇い入れるときには、相当やはり失業者を出すと、結局それだけ保険料負担が増加する、こういうようなことで、雇い入れする場合に非常に條件をやかましく言うようになつたという弊害が一つあるというようなことが書かれております。それから労災保険のようなものにつきましては、先ほどもちよつとおつしやつたように、どうしてもやはり保険という制度で、ややもすると無責任な形になりがちなんです。相当各自の負担にそれが影響するというようなことがあつて災害防止なんかについて相当の関心を払つて来た。メリツト制災害保険のような形においてこれを採用することのほうが有利である。但し失業保険関係については、今言つたような逆の面も現れて来るので、利害得失が相殺されるようなことはなかろうかといつたようなことが書かれておる、かようなことでございます。で、深くそれ以上のものを我々としてはまあ今のところ知らないような事情であります。
  25. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 いや、無論私は率直に申しますと、経営者から見ても、労働者から見ても、こういう災害を起すことは希望すべき問題じやない、單純に経済的に見ても非常に負担なんですね、両方から見て……。要するに合理化しようというところに問題があるのだ、ですから先ほどのお話のように、何と申しますか、要するに一つメリツト制自身も確かに効果はあると思いますが、これに対すること自体はもつと根本的に両者間の何といいますか、経営者から見ても、労働者から見ても、保険があるからどうかというようなところに根底があるから、そう過大評価することはできない、こう思います。ですから、この案自身に初めから一つも反対ではないのですが、ただ合理的にどつちがいいかということに、この方向において発見したい。こういうことだけであります。殊に余り各国に例がないようならば、よほどその点は我々も例のあるところはよく見せて頂かなければならん、教えてもらわなければ困る、なかなか技術的に言つたつて非常にむずかしい問題ですから、そう簡単に政治的に考えるだけではどうか、そういう気がするのです。今アメリカじやオレゴン州以外にも各州でやつているわけでございますか。
  26. 池邊道隆

    説明員池邊道隆君) 州でやつておりますのはオレゴンとミシシツピー、オレゴンとあと二カ所とかいうようなことでございました。最初からGHQの担当官に教わつて我々やつたわけでございます。あとはアメリカでは大体事業者が損害保険に入つて危険分散を図つているというような事情でございます。州立でやつておりますのはオレゴンと、ちよつと忘れましたが、その他二、三カ所、そのうちオレゴンは最も優れているということで、向うからパンフレツトを頂きまして、それを飜訳いたしまして、研究いたしたというような事情でございます。
  27. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ほかに御発言ございませんでしようか……。それでは労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に関する質疑は本日はこの程度として、次回に讓ることにいたします。   —————————————
  28. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ちよつと皆様にお諮りいたしますが、請願陳情が参つておりますので、お手許に配付してございます用紙に書いてもございますが、今日それに従つて審議いたすことにいたしましようか、如何いたしましようか。今所管局長も駈けつけて来られておりますし、一、二でも如何でございましよう。
  29. 一松政二

    ○一松政二君 何件あるのですか。
  30. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 今日は七件ございます。
  31. 一松政二

    ○一松政二君 できるだけやつたらいいでしよう。
  32. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では専門員より説明をいたさせます。どうぞ。
  33. 磯部巖

    ○專門員(磯部巖君) それでは只今議題になつております請願について御説明申上げます。  第一の請願は、請願文書表第一〇〇号となつております。職業安定所指定看護婦寮看護婦の職業安定に関する請願でございます。紹介議員は赤松委員長ほかでございまして、請願者は東京都の小林よしゑさんほか八百三十三名でございます。その要旨は、職業安定法が施行されまして以来、旧看護婦会体制は全国的に自然消滅となりまして、そのために看護婦の職業紹介が不円滑となり、免許を持つておりながら働く機会に恵まれていないものが多いのでございますから、次のような措置を講ぜられたい、第一は、看護婦寮の代表者をして安定所の無給嘱託とする制度実施すること、或いは安定所の補助機関として看護婦の職業紹介の制度を全国的に統一すること、第二は、有料営利看護婦紹介業の制度は戰前の封建的機構よりもつと更にボス化され、安定法の趣旨に逆行するものであるから撤廃してもらいたいというのが要旨でございます。
  34. 赤松常子

    委員長赤松常子君) これについて御質疑はございませんか。
  35. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 もう少し要旨を説明してもらつたらどうですか。この文章は誰だつて読めるのですから、委員長もう少し詳しく……。
  36. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ちよつと私代つて申上げましようか……。今まで職業紹介法がございましたのが改正になりまして、中間搾取を排除いたします制度なつたのでございます。それで今までの派出婦のかた或いは派出看護婦のかたがたの職業紹介は、そういう中間者によつて一応やられておりましたものですから、非常に中間搾取で頭をはねられていたわけなんです。それが今度改正になりまして、有料でこの職業紹介ができるようになつて、五万円を積立てて、そうして労働大臣の認可を得てできるようになつたのが一つと、それから今まで通り職業安定所を通じて入る、そういう道が一つつたのでございますが、職業安定のほうに急にこの看護婦を頼みましても、すぐに来てくれないというような不便がございますので、どうしても有料職業のほうに頼むわけになつて、結局頭をはねられてしまつて、元と変りないという実情なんですね。そういうことから、この有料を廃止してもらいたいという請願なんでございます。
  37. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それに対しましての問題が起つて来るわけですか。看護婦寮の看護婦の代表者を安定所の無給嘱託とする制度、或いは安定所の補助機関として看護婦の紹介業務……。
  38. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 一、二も引つくるめてでございますが。
  39. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 いや、私のお聞きしたいのは、私無論この要旨のところはよくわかるのであります。今御説明なつたようなことはよくわかるのでございますが、どういう制度がいいかということですね。撤廃しただけで果していいのか悪いのか、どういうふうなことを考えなければならんか。
  40. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ちよつとお答えいたします。いろいろ問題もございまして、結局派出婦さんたちが自分で組合を作りまして、そうして自分たちの中で事務をする人を選んで自主的にやつて行くという制度が一番望ましいのでございますが、それをやつている所もございますけども、そういうところまで行つていない実情でもございまして、利用者のほうから申しますと、まあちよつと不便な点もあるわけであります。こういう点について職安局長が来ておられますので、どういうように御指導しておいでになるか、一応伺つて見たいと思つております。
  41. 齋藤邦吉

    政府委員(齋藤邦吉君) 只今のお尋ねの点にお答え申上げますが、看護婦の職業紹介でございますが、このやりかたは先ほど来からお話のありましたように、先ず公共職業安定所が職業の斡旋をする、これが一つ方法、その次には社会事業団体或いは又財政基礎の強固な財団その他のかたがたが無料の職業紹介事業を行うというのも一つ方法でございます。それと同時に看護婦、これは看護婦と申しますのは、いわゆる国家試験を受けた看護婦でありますので特殊技能者、こうした特殊技能者につきましては、有料職業紹介事業というもの道は開かれておる。三つの段階が職業紹介としてはあるわけでございます。そのほかにもう一つの問題がありますのは、一つの労務供給事業強化すみという問題でございます。これが看護婦さんのかたがたが労働組合を組織いたしまして、それが組合法上の労働組合を組織いたしまして、労働大臣の許可を受けますれば、それで労働者供給事業を行うことができる、まあ大体労務斡旋の方式といたしましては、大体以上の四つの方式があるわけでございます。私どものほうといたしましては、安定所機関を指導監督する建前上、職業安定所も看護婦の職業紹介ができるように施設設備を充実してやるようにという指導をいたしております。それと同時に民間のやりかた、即ち無料の職業紹介事業のやりかた、それから有料の職業紹介事業のやりかた、それから労働組合の労働者供給事業、これは民間の仕事でありますので、これは抑えるという考えはさらさら持つておりませんので、おのおのその地方々々の実情に応じ、或いは又その地方々々の看護婦さんがたの御希望によつて、どちらなりとも正当なる職業紹介をおやりになる分であるならば差支えない、適正なる指導をして行く、こういうやりかたをいたしておるわけでございます。大体のところ、現在のところの様子を申上げますと、安定所が看護婦の職業紹介をやつている県は、全国大半いたしておりまするけれども、非常にいい成績を挙げておるところと余り成績の芳しくない県とがあるのであります。広島県のようなところなどは非常によくやつておりますけれども、東京などは余り安定所の職業紹介はうまく行つていない実情でございます。結局うまく行つている例とまずい例とを考えて見ますと、安定所と看護婦の組合との連絡、協力のない府県はうまく行つていない。看護婦の協力を得ながら十分に密接に連絡をとりながらやつている県に成績は良好である。大体こういうふうな結論が出ておるのであります。大体現状を申上げますと、そういうやりかたになつております。なお民間の有料職業紹介事業につきましては、今日まで件数は記憶いたしておりませんけれども、全国で相当の件数を許可をいたしております。又無料の職業紹介事業につきましても、相当許可もいたしております。更に看護婦の労働組合につきましては、多少まだ問題がありますので、実験的に一つ許可して見ようというので、愛知県の名古屋で看護婦の労働組合に実験的に労働供給事業を許可いたしておりますが、愛知県の例は極めて良好に進んでおるという報告を受けておる次第でございます。従つて民間の三つの方式につきましては、私どものほうとして、どちらが最も正しいといつたようなことでなしに、地方々々の実情に応じ、看護婦のかたがたの希望に応じて善処いたしておる次第でございます。
  42. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 御質問ございませんでしようか……。この請願は如何取計らうことにいたしましようか。
  43. 一松政二

    ○一松政二君 この請願の第一に、全国的に統一して欲しいということが書いてありますが、今現にいい所と悪い所があつたり、試みに許している所もあるのであれば、何もこういうものを全国的に統一せなければならんことはないと思いますが、その点はどうでしようか。
  44. 齋藤邦吉

    政府委員(齋藤邦吉君) 只今請願の中にありまする安定所の無給嘱託のような制度、安定所の補助機関のような看護婦の職業紹介の制度を全国的に統一する、制度的にこういうものを作るかどうかという問題につきましては、安定所の職員が国家公務員であるといつたふうな建前もありますので、こういう制度そのものを今直ちに作るということにつきましては、相当考慮しなければならない問題があるのではないかと思います。ただ先ほどもちよつと申上げましたように、安定所が看護婦の職業紹介をやつております際に、非常によい結果を挙げておりまする県は、この看護婦との連絡、協力というものが、非常にいい所ではうまく行つているという意味合いにおいてこういう制度とは別に、そういう連絡、協力の仕組を運営して行くというのでありまするならば、うまく行くのではなかろうか、こういうふうに考えております。即ち制度的なものでなくして、実際の運用において、こういう精神は私は必要ではないだろうか、かように存じておる次第でございます。
  45. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ほかに御質疑ございませんか。
  46. 一松政二

    ○一松政二君 それから何か有料営利看護婦の職業紹介の制度が非常な封建的となつているように書いてあるが、そういう事実はありますか。
  47. 齋藤邦吉

    政府委員(齋藤邦吉君) 有料営利職業紹介制度が直ちに封建的であり、ボス化されておるとは私ども考えておりません。御承知のように有料職業紹介事業は看護婦のみならず、特殊の技術者についてはガラス張りの中で職業紹介をやつたほうが、むしろ民間の創意工夫を生かして結構じやないかというのが実は国際條約の趣旨でありますので、この制度そのものが直ちに封建的であり、ボス化であるとは、私どもはそこまでは考えておりません。
  48. 一松政二

    ○一松政二君 そうすると、政府委員説明を聞くと、請願趣旨と、請願趣旨にある事実が必ずしもそうでないような説明でありますから、ほかに御意見がなければ、私はこの請願は保留して頂きたいと思います。
  49. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 只今の御意見如何でございましようか。
  50. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 紹介議員のうち委員長御自身がお入りになつているわけなんですが、結局私どもこの要旨のようなことが不円滑になつて、看護婦の職業紹介が不円滑になつて免許を持ちながら働く機会に恵まれない者があるという点はよくわかるのであります。ですから今の安定法が布かれて、看護婦が何らかもう少し積極的に働く人のためにも、又事実これの適用を受けるほうの人のためにも、こういうことが円滑に行くことが必要であると、こういうことはこれはもう十分考えられるのでして、必らずしも今のままの状態が理想的に行つているとは考えられない。ただこの一、二にある具体的な問題、請願としてのその問題がどうもはつきりしないのでございますが、どういうふうにこれを、この状態に対して建設的な手を打つべきか。看護婦寮の代表者をして安定所の無給嘱託とする制度実施するか、安定所の補助機関として看護婦の職業紹介の制度を全国的に統一するかということが一つの建設的な考えかた一つなんですね。と同時に、有料の営利看護婦紹介制度というものは逆に戰前より悪くなつたからやめろ、こういうような御請願趣旨なんですね。こういうように解釈されるのです。そうなつて来ると、具体的に一、二の問題を取上げて考えて行かなければならんのではないかと、こういうように考えるのですが、それらの点についてどういうふうに考えたらよいのか。紹介されましたのは委員長、原、山花とありますが、その点についてどういうふうにお考えになつておりますか、もつと具体的にお聞きしたいのです。確かに方向的なものとしては我々も何とかしなければならないということは考えます。
  51. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 私は委員長でなく、委員としてちよつと申上げたいのでございますけれども、これは労働省側にもお聞きしたい点もございますのですが、本当に今看護婦のかたがたが実際どういうふうに置かれているかというと、今局長さんの言われたように、そう中間搾取はされていないとおつしやつておりますけれども、事実はかなりの高額のものを頭から引かれていらつしやるわけでございます。そういう一つの有料職業紹介所がやはり昔と同じような独占的なと申しましようか、非常にボス的な形でこういう紹介業を行なつておるということは、私は事実だと、こう考えております。では、それではどうしたらよいかということは、先ほど申しましたように、お互いが組合を作つて、自主的にやつて行くのがいいのですけれども、一足飛びにそれまでになかなか成長いたしませんでございますから、やはり各婦人団体であるとか、或いはそういう婦人の啓蒙運動をしているというような団体が、やはりこれに力を添えて、そうして一つの組合を作つて行くような機運を釀成して行くのも又大きなやりかただと思うのでございますが、そういう方向に私も努めて行きたいと思つておりますけれども、何しろ全国的なものでございますから、そうどこの各県までも行き届いてお世話できるということではございませんけれども、要は私やはり職業安定所あたりでどういう方向で行つたらいいか、一つの御指示と申しましようか、そういう方向をはつきりお示し頂くことも、全国に網を張つていらつしやいます安定所としては、一番やりやすいし、私どももそこでもつと進歩的な方向を示してもらうこともいいことだと思うのでございますが、今いろいろ姿をお挙げ下さいまして、その中でまあ局長といたしましては、どういう方向にこれを向けて行つたらいいかという一つの御確信と申しましようか、それをお持ちでいらつしやいますか。
  52. 齋藤邦吉

    政府委員(齋藤邦吉君) 私は先ほど、実は有料職業紹介制度そのものが直ちにボス化されておるということでありますので、制度そのものとしては必ずしもそうでないということを申上げたのでありまして、こういう有料職業紹介をやつておる具体的なものの中には、私はボスになつておるものも或いはあるのではないか、その点は私もそう考えております。問題は制度としてでありますので、制度そのものがボス的である、封建的であるというならば、ちよつと違うのではないかということを申上げた次第でございましてその点は御了承を願いたいと思います。問題は先ほどもちよつと申上げましたように、安定所を中心として看護婦の職業紹介をやるというこの線は、私も是非遂げて行きたい、こういう考えを持つております。ただその場合に看護婦の代表者のかたがたを、制度として無給嘱託とするということにすると、今の国家公務員の関係がありまして、うまく行かない、即ち精神としては、こういう精神の下にやりかたを考えて行くということは私は結構なことじやないかと考えております。そこでいい点の例を一、二申上げますと、看護婦の免状を持つておるかたの一人を、実は安定所の無給嘱託ではなくて、これは安定所の本当の有給の国家公務員になつて頂いて、その人には專ら看護婦の職業紹介を専門にやつて頂く、そのかたに看護婦の何と申しますか、求人の開拓、就職の斡旋をするといつたような例をいたしておるところの県もあるのでございます。更に又着護婦の労働組合と常時連絡をとりながら、何と申しますか、一つのこういう制度的なものとは申せないと思いますが、何と申しますか、一つの求人、求職の連絡の打合会といつたようなものを安定所に設けながら、よく成績を挙げて行くという例も実はあるのでございます。私の最初の言葉が多少強かつたと思いますが、制度として出ておりましたので、多少強かつたと思いますけれども、精神としては飽くまでも安定所と看護婦との協力態勢を作つて行くと、こういう下に看護婦の職業紹介というものを進めて行きたいと、私ども考えております。看護婦の安定所の協力態勢の下に、看護婦の職業紹介を円滑に進めて行く、こういう大体方針の下にいろんな問題を考えておるような次第でございます。先ほど多少言葉が足りませんので、誤解を受けたかと存じますので、一つその点を御了承をお願いいたします。
  53. 一松政二

    ○一松政二君 先ほど堀木委員からも申されましたように、大体その職業の紹介を円滑にして、そうして両方とも求人のほうも、或いは雇われるほうも、雇うほうも、そういうが円滑にやつて行かれるように考えるということは、これは当然考えなければならんことなんですが、先ほども堀木さんが触れられたように、私は一、二具体的に項目を挙げて、そうしてその制度の問題は具体的に挙げられておりますから、請願趣旨がそこにあるとするならば、そういう具体的な問題を取上げて、これをどうしろということであるならば、これは請願でありますから、否決するわけに行きませんから、私は留保して置いたらよかろうと申上げたわけです。私の考えかたは大体皆さん一致しておるように思うのであつて特に反対するわけじやないわけなんだが、具体的な事例余りに明瞭になつておるから、一応留保の形をとつて置いたらどうでしようかと申上げた次第であります。
  54. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 ちよつとあれなんですね。一、二の問題については率直に言うと、安定所によつて看護婦の求人開拓というようなものについて積極的なところもあり、或いはそれほどでもないところがある。一方においては看護婦さんを非常に要求しておるにかかわらず、他方では看護婦さんは遊んでおる、こういうような現象が起り得るのですね。そういう点については、今一つの例として挙げられたように、安定所にそういうカード・システムで、何と言いますか、病院その他常時必要のあるところ、及び臨時に必要のあるようなところの求人との連絡を密接にして、そうしてやつて行かれるという方法一つ方法なんですね。これは行政運用上御努力の余地があるわけなんです。それから第二の問題は、これは一体どこが監督するんですか。労働省の系統の御監督だと、こう思うのですがね。その末端のそういう点について、ともかくも何と申すか、民主化されようとする日本で、戰前よりも封建的な状態があるという社会的現象に対しては、局長もすなおに言われておるんだし、我々もそういうところもないのではないかと思われるのですが、そういう点を徹底的に行政的に取締をするということが差当りやはり必要なんじやないか、赤松委員長の言われたように、組合自身でそこまで十分機能的なものができるような状態にすでに発達しておるならば、これはもう問題は解決の方向に行き得るのじやないか、現状としてはまだそこまで組合自身成長しないところもある、そういうような状態から、制度的にそこまで発展できないというのが現状だとするならば、差当りそういうところに方向を是非向けて頂かなければならないものだということさえ了解の下におきますれば、その線については私は意見はないのですが。
  55. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ではどういたしましようか、採択の御意見と保留の御意見がございますが、私個人としてちよつと局長にお伺いしたいのでございますが、今有料の職業紹介の申出でというものが全国的に多うございましようか。如何でございましようか。私の聞くところでは非常に多いということを聞いておるのでございますが、多いということは儲けがあるからでございますね。その儲けというものがどこから出るかというと、看護婦さんの頭をはねるという結果になりますので……、この有料職業紹介自体の願いが出ておるのはどういう数でございましよう。大体でよろしうございます。
  56. 齋藤邦吉

    政府委員(齋藤邦吉君) 最近の傾向と申しますと、この法律は三年ほど前から施行されておりますが、昨年の八月頃までは、大体非常に申請が出ておりました。最近におきましては、大体もう全国的に出盡したというのでございましようか、最近は余り出ておりません。大体昨年の八月頃までに出盡したような感じを私は受けております。全国的には有料職業紹介は百件以上は許可を恐らくいたしておると存じております。
  57. 赤松常子

    委員長赤松常子君) では如何いたしましようか。大分時間も経過いたしておりますし……。
  58. 一松政二

    ○一松政二君 これは堀木さんにちよつとお尋ねいたしますが、こういうこと、具体的な事実を採択して取上げるとですね、結局この委員会が、それを委員会の意思表示をして、そうして院議を以て政府当局にそういうことを迫ることになる、まあ一応そういう形になるわけであります。私はさつきから言つておる通り趣旨はお互いにわかるけれども、こういう具体的なことをここで私は採択して、院議を以て内閣にこれを送付するのは如何かと思います。その点は堀木さん如何ですか。
  59. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私は率直に申しますと、今請願の趣意が余り具体的で、有料職業紹介所を全部撤廃しろと、それから看護婦会の看護婦寮のかたを職業安定所の無給嘱託にするとか、或いは看護婦の代表者の人を全国的に何しろというふうな、非常に具体的になり過ぎておるとは思いますけれども、それ自身今申上げたようなことで、事情がわかつて、大体現実から見て、今私どもが申上げたような事柄で行政方向を進めてくれと、行政方針を進めてくれとおつしやるようなことならば、十分採択するに値いするような問題じやないかと思う。確かに一松さんの言われるように、非常に具体的なものを右から左にきめろというふうな御請願だと、相当考慮する必要があるんじやないかと思います。併しその具体的な問題も、今私ども了解した程度行政方針を進めてもらいたいという意思表示の一つの手段として、そういう問題を挙げられておるということならば、御採択になつてもいいじやないか、こういうことなんです。速記に載つておりますことですから……。併しいずれにしましても、山花委員も原委員も御紹介に連なつていられるんでして、やはり本来言えば御両者がお出でになつて、更に我々と話合いの上で、取扱いをきめてもいい問題である、こういうふうに私は考えます。いずれとも私は委員長にお任せします。
  60. 一松政二

    ○一松政二君 今の堀木さんの意見通りに、結局具体的な事実を挙げて右か左かというから、それはもう少し考慮してもらいたいと、こういうので、殊に今の請願者の代表者があなた一人お出ましになつて、あとのお二方はいらつしやらないわけですから、この次まで延ばしましよう。
  61. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ではこれの結末は他の二人のかたの御出席を願つて、よく御意見を聞き、決定することにいたします。  では大分時間も経過いたしましたから、本日はこれで散会いたします。どうも御苦労様でございました。    午後零時二十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     赤松 常子君    理事            一松 政二君            原  虎一君    委員            宮田 重文君            片岡 文重君            中村 正雄君            堀木 鎌三君            早川 愼一君   政府委員    特別調達庁労務    管財部長    中村 文彦君    労働省労働基準    局長      中西  實君    労働省職業安定    局長      齋藤 邦吉君   事務局側    常任委員会專門    員       磯部  巖君    常任委員会專門    員       高戸義太郎君   説明員    労働省労働基準   局労災補償課長  池邊 道隆君