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1951-03-27 第10回国会 参議院 予算委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十七日(火曜日)    午後一時二十七分開会   —————————————   委員の異動 本日委員和田博雄君及び原虎一君辞任 につき、その補欠として下條恭兵君及 び松浦清一君を議長において指名し た。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) これより予算委員会を開きます。農林大臣が出席いたしております。
  3. 竹下豐次

    竹下豐次君 先日林業政策につきまして、農林大臣質問いたしたのでありますが、丁度御病気でお引籠りのようでございましたから、あとで速記を呼んで頂きまして御返事を願うように取計らつてもらいたいということを委員長にお頼みいたして置いたのであります。質問項目については十分御存じだと思いますから、繰返して申上げることを避けたいと思います。
  4. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 竹下さんの質問のときに留守をいたしまして恐縮ですが、要旨に対しましてお答え申上げます。政府森林法を改正して計画生産をし、伐採量を抑制しようとしている由であるが、その不足に対してはどう考えるか、こういうお話でありまするが、これはこのようにいたしたい考えではおりまするが、急激にこれを直ちにやつて消費者を圧迫させるというようなことでないように、そこにはおのずと緩急徐を得てやりたいと考えております。それから次の木材消費節約に関してでございますが、この木材消費は御承知のように年々増して来ておるのであります。この消費節約させることは何といたしましても、今大事なことであるのでありまして、このことにつきましては、いろいろな部門を設けて、これを合理化するように考えておるのであります。即ち建築部門或いは日用品部門産業用木製器具部門包装木箱部門坑木部門というふうに分けてこれを合理化するようにいたしまして消費を成るべく少くするように努力いたしておるようなわけであります。それから未利用材開発につきましては、これもやはり大事なことでありますので、この利用の推進につきましては、特にパルプ用材等においては鋸屑までこれを利用いたそうといたしておるのであります。この機械苫小牧製紙だと思つておりますが、すでに名古屋の工場の敷地を決定いたしまして、機械も近々入るようになつておるようであります。さようにいたしまして、これを利用し、或いは又ぶな材等もこれを用材として、今まで非常に建築材その他について使用が危ぶまれておつたのでありますが、これも利用いたしましてやるようにいたしておるのであります。それから料燃消費につきましても、これは私たちといたしましては、大事な木を成るべく燃料に廻さないで、今までどうしても他の用途に向かないようなものを燃料に廻すように、これは我々のほうで指導いたしたいと、こう考えておるようなわけであります。それから未立木地早急造林についてでございまするが、これも国有林或いは公有林或いは民間林等で、大分まだ未立木地がありまするので、これに対しましては前々から予算を以ちまして、これを促進いたしておるようなわけであるのであります。細かい数字は又あとからお話を申上げたいと思いまするが、そういう方向で進んでおるのであります。それから農家の自家用燃料節約につきましては、これは政府といたしましては、生活改善の一面からも取上げまして、即ち酷寒、寒冷地の住宅の改良或いは生活改善等と睨み合せまして、この自家用燃料を何とか少くしたいということで、これは指導員を現在置いておるようなわけであります。又製炭法製法等につきましても改良を加える考えでやつておるようなわけであります。又薪炭外燃料をこの家庭燃料の中に取入れようと考えまして、長い間ドイツ研究いたしておりました学者がありますので、この問題につきましては、特に亜炭を簡単なる化学操作によりまして、非常に高度のカロリーを発散するような、大体七千カロリーぐらいまで出るのでありますが これも持運びも非常に楽にいたし、或いは又これを小さな固型体にいたしまして、丁度羊かんの身のような恰好のものを作りまして、これを実際に家庭燃料に当てて行くように、今着々推進いたしておりますが、この生産費も現在の木炭の大体三分の一ぐらいの価格でできるようであります。こは実際もう工場家庭に入つておるようなわけであります。それからパルプ材需要急増に対する対策でございまするが、これも先ほど木材消費その他と関連して重大な問題でありまするので、これを今までのような木のみでなく広葉樹材利用を奨励いたしておりまして、機械の改造、その他について我々のほうでは相当にこはは勧奨をいたしておるようなわけであります。それから又歩留りの向上は勿論のことでありますが、今までも、これを高度に利用してもらいたいということで奨励いたし、現在の木材の非常に逼迫いたしておる関係上、会社等におきましては、自発的にすでにこれを取入れてやつておるようなわけであります。それからその他農林関係の未利用資源の活用におきましては、特に竹を土台といたしまして、これをパルプにするというようなことも考え、その他あらゆるものを高度に利用するように努力いたしたいと思つておるようなわけであります。
  5. 竹下豐次

    竹下豐次君 政府において今研究中でありまする改正森林法案によりますると、伐採制限の規定がある。併しそれが法律ができても急にたくさん伐採制限をして、そして森林所有者にそう困らせるようなことはしない、緩和な方法でやつて行くという大臣の御説明でございますが、余りに御答弁が漠然としておりましてですね、そのお気持はわかりますが、それだけの御説明では山林所有者といたしましては、まだ安心感を持つわけには行かないと思います。何となれば、法律でそういうふうの気持を現わしたところは一つもありませんし、どう言われようと、法律ができた以上はそれによく服従するよりほかに仕方がないというのが森林所有者立場になりますので、安心感を持つことはできないだろうと思つておりますが、もう少し具体的に御説明ができたら結構だと思つております、
  6. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 実はその点が、只今森林法改正の問題で一番重大な問題になつておるのであります。我我といたしましては法律を作りまして、それの裏付けをする金が必要でありまするので、大体我々の計算によりますると、二十億程度のものが用意されなければならんと思つております。で、これは今大蔵省折衝中でありますが、近日中に了解を得たいと考えております。
  7. 竹下豐次

    竹下豐次君 実は緩急度をよく図るということでございますが、それはなかなかむずかしい問題であろうと想像しておりましたところ、只今の御説明融資の問題について御配慮なつておるように承わりまして、これは誠に結構だと思つております。農林大臣はよく御存じのはずでありますが、実際この伐採制限をされるということがどういう結果になるかと申しますると、小さい山林所有者はもとよりでありまするが、相当に大きな山林所有者でありましても制限されるがために、それが生活にまで影響して行くという大きな問題なのであります。併し法案を見ますと、或る程度のやはり伐採制限をしなければならない必要ということも私どももよくわかりますが、制限する一方においては生活に少くとも困るようなものは十分助けてやるということを、政府のほうとしてもはつきりお示しになることが非常に大事だと思います。ところが実は農林大臣おいでになりませんでしたけれども大蔵大臣がこの前おいでなつておりましたので、この融資の問題を私お伺いしましたところが、大蔵大臣はさつぱりそんなことは御存じないというわけでありまして、どうもそれじや甚だ困るので、この問題は農林大臣一人でおきめになるわけに行かない問題で、どうしても大蔵大臣のほうが、まあ半ばの役割を努めなければならないということになりますので、甚だ心細く私は感じた。私などは林業議員懇談会におきまして、政府当局からもたびたび詳しい御説明を承わりまして、できるだけ正しい方面に協力したいという考えで熱心に協議しておるのでありますが、然るにもかかわらず、大事な大蔵大臣が何にも御存じないということを今になつてこの席でお答えになるようなことじや、一体農林大臣大蔵大臣がどれほどの連絡が保たれておるのか、閣議ではどうなつておるかということを考えまして、実は遺憾に存じた次第であります。昨日も大蔵大臣林業議員懇話会おいで願いまして、そして重ねてその席でもお話したのでありまするが、まあまださつぱり、お忙しいぜいであるかも知れませんが、御存じありません。どのくらいの程度農林大臣のほうは熱意を以て大蔵省に交渉しておられますのか、その点をもう一点お伺いまいたしたいと思います。
  8. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 昨日の午後三時まではあなたのおつしやる通りお話でありましたが、前にもここで知らんという答弁も私は聞かされております。それから又昨日の懇話会の席上でもそういつたことを承知しております。これは事務の折衝中でありましたので、まだ大蔵大臣の耳には入つていなかつたようであります。昨日短兵急に私から話をいたしております。で、私のほうの林野庁も一生懸命努力いたしまして、本年度内においては大体二十億見当の金が余るようになつております。これをそつくりそのまま頂戴する考えでおるのでありますが、とにかく一遍納めてくれというような話でありまして、これを納めて又その身代りをもらうというようにしたらどうかという点まで只今参つておるようなわけでありまして、今日からは池田君は多分もつと親切な御答弁ができるだろうと思います。
  9. 竹下豐次

    竹下豐次君 融資の問題につきまして、農林大臣のお立場としては、私などがかれこれ申上げるまでもなく、大蔵大臣に極力交渉されることであろうとまあ信ずる次第でありまするが、大蔵省は又大蔵省立場で、成るべく少くというようなことを考えやすいことであるということを心配いたしております。この際特に申上げて置きたいのでありまするが、若しこの問題が我々の希望するように融資ができないということになりましたならば、実は昨日の林業議員懇話会の空気から見ましても、折角この会期中に通過させようと努力しておられます森林法改正案の運命がどうなるかということは、これは大抵お察しも付くことであろうと存じます。この二つの問題はどうしても別々に切離して考えることのできない大事な問題と思いまするので、特に農林大臣の御努力を煩わさなければならないと、かうに考えておる次第であります。それから次に消費節約の問題につきましても、御答弁を承わりまして、いろいろ細かい点まで御配慮なつておることがわかつたのでありまするが、如何せん、この消費節約の問題について折角御配慮なつておるにもかかわらず、その結果が現われていないというのが今日の実情だろうと思つております。その点もこうやつておる、こういう方針であるからという御答弁だけでは何だか心細い。もう少し消費節約をするならば、する本当の努力を払うならば、或る部面には何か必要があるならば法律でも作るというような拘束の途も講じない限り、これは木が足りないのだから何とか君節約してくれ、箱を作るのでも無駄しないようにしてくれという慫慂では、結局今までの状態を繰返すということで私は節約できないのじやないか。そう無駄をしようと思つて無駄をしておる商人というものはないのでありまして、そこに折角の御配慮が成功を得るということは困難だと思つておりますが、何かもう少し具体的に、或る意味においてはその使用者を拘束する。一方においては又勧奨もするというようなふうの方法を講ずることが必要じやないかと思いますが、もう少し具体的なことを承われませんでしようか。
  10. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 実は余り細かいことを私承知いたしていないのですが、庁内におきましては、あなたの御趣旨のような点で十分それぞれ検討いたしておるのであります。林野庁の持つております研究所等におきましても、それ相当努力を現在続けております。先ほど申上げました家庭燃料その他についても、先ほど申上げたような一つ部面をとりましても検討をいたし、実際にこれを工業化いたそうといたしておるのであります。それから又パルプ用材にいたしましても、これも極力勧奨いたしておるのでありまして、端的に私はパルプ工場で山を持たないような工場は将来必らず滅亡するであろうというくらいにまで極力言つておるようなわけでありまして、それから又梱包材等につきましても、これを紙の箱に替えるとかいうようなことで、その方面研究もいたさせておりますし、あらゆる面において大事な、森林かち出る木材を大事に使いたいということで十分検討いたしておるわけであります。
  11. 竹下豐次

    竹下豐次君 なお具体的に一つ申上げますが、お尋ねしたいのですが、消費節約のほうは、農林大臣としては山を扱つておられまする関係上本気にお考えなつておるはずだと思います。併し消費するほうの立場から申しますれば、農林大臣ほど関心が深いとは考えられない。役所別に申しまするならば、消費者のほうに特に関係のある或いは通産省とかそのほかの各省というようなところの人たちがどのくらいの、木材消費節約考えておられるかということは、これは大きな疑問だと思つております。例えば建築資材で申しましても、これは木材消費する最も大きなものなんでありますが、こういう方面につきましても、よほど農林大臣のほうから働きかけを強くなさらないというと、通産省その他の部面におきましては、まあ厄介なことになるわけなんでございます。なかなか御註文通りに行かないだろうと思つておりますが、この問題も実は林業議員懇話会でも大分論議されましたが、どうしても農林省が先に立つてほかの省に働きかけてもらわなければならないということを、林野庁の長官もおいでなつた席であつたと思つておりまするが、いろいろ御註文を申上げておるのでありますが、そういう方面における各省とのお話合いはどうなつておりますか、その点もお伺いしたいと思います。
  12. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 特に通産省お話が出ましたから、その例をとつて申上げますが、坑木を一例にとりますと、坑木も非常に近頃足りなくなつているのでありまして、特に九州地区等におきましては、非常に足りないのであります。これを通産省から我々のほうにお話がありまするので、我々は坑木に雑木を混用してもらいたい。それでパーセンテージも我々のほうから技術的にこれを示して、そうしてそういうものまで使つてもらいたいということを我々のほうから勧奨いたしております。又輸出用梱包材でありますが、これらにつきましても、成るべく木を節約するようにということを、これも具体的に我々のほうからお話申上げているようなわけでありまして、又鉄道省の用地或いは又建設省の河川敷等には何か木を植えて、そうして我々のほうを少し手伝つてくれんかというまでに力を入れているようなわけでございます。
  13. 竹下豐次

    竹下豐次君 それからパルプお話先ほど承わりましたですが、お考え誠に結構だと思つております。又私の知つている範囲におきましても、パルプ会社におきましても、近頃小さい幼齢林などを買立てまして、自分の山として育てようという気分がほうぼうにあるようであります。これに御勧奨の結果でもあるだろうと思つております。併しそれは急の間に合うことではありません。まあ一例を申しますと、私は宮崎県の南のほうでありますが、パルプ工場がございます。これができますときには、杉の多いところでありまするから、杉の間伐材を材料にしてパルプを作ろうというつもりで工場ができたのであります。ところが今日どうかというと、幾らか使つているかも知れませんが、大部分、殆んど全部といつていいくらいは、やはり松を使つております。而も県外から相当に来ているということであるのでありましてそれはなぜかというと、松のほうがパルプを作るに楽で、経費が安く上るから、杉は中に蕊があつたりいたしまして、色素の関係どもあり、固いとかいうようなことで勘定が合わないというようなことがあるらしいのでありまして、そういうことでなかなかその業者立場としては、儲けなければなりませんから、そういういふうにやはり進むのが当然のことだろうと思つております。なかなか国家的の立場を先に考えるような業者というのはまあ薬にしたくてもないくらいなことだと言つても過言ではないと思つております。近頃は闊葉樹でもできる。できることはわかつているけれども、やはり勘定が合わないとか、できたものの質がどうかということがあるだろうと思います。先ほど闊葉樹の問題につきましてもお話がありましたが、方向はそういうふうに行かなければならないと私どもは思いますけれども、今のままで置きましては、ただ農林省で成るべく君木は足りないから松は使わないで、ほかの木を使つてくれとおつしやいましたところで、業者のほうではなかなかそういうふうに動くはずはないと、こういうふうにしか考えられません。そうすると闊葉樹なりその他の木を使わせる、そうしなければ困るのだというお考えでありましたならば、やはり使用する松の量を制限するとか何とかいうようなことを、はつきり或いは法律に謳うなり、何らかの方法で押えて行くということでなけれ、私は効果が上らないのじやないか、かように考えておる次第でありますが、その点どうお考えでございましよか。
  14. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 私もあなたのお考えと全く同様であります。現在パルプ業者は非常に儲かつておりますので、この機械の改造なり、或いは又新機械を入れるなりすることが大事であるということを我々は折に触れて申上げております。これはこの苫小牧工場へ行つたときに見たことでありますが、藤原さんはあの工場を作るのに、山を非常に大事にして育てるように作つておるのであります。私もその工場が困らないように、いわゆるこれが普通工場過程における一貫作業というのでしようか、非常に大事にいたしておるのであります。そういつたようなことも、自分で山を育てると、結局乱暴に私はしなくなると思いますので、そういう方面も解消し、或いは又只今あなたの言われておる闊葉樹を混用するなり、或いは闊葉樹のみでできるところの研究も十分これはできているのでありまして、そういうような仕組を工場で使つて行くように、又いろいろな方途を講じて他の木も使うというようなことを折に触れてやつております。又立法する、しないということは将来の問題でありますが、当然私はそこまで行くのじやないか、日本の現在の山に蓄積されている木を見、又幼齢樹林の現在の様子或いは又木のない山等を見て、私は当然そこに行くのじやないかと思つておりまして、その点については十分検討いたしたい。
  15. 竹下豐次

    竹下豐次君 方向としてはいつになるかわからないが、立法化する必要があるという御答弁であります。まあ私などの見まするところ、この問題は非常に迫つておる問題であります。丁度、私はこの山林の問題に対する政府態度等に対しまして、これを見ておりますというと、例えば戰争後ほうぼうの資産家が貧乏になりつつある。別にいい金儲けもない。このままにしておつたらだんだん食い潰してしまうのじやないかということはわかりながらも、どうもせずにやはり食い潰して何年かあとに潰れるのを待つておるというのが今日の資産家状態であります。ちよつと山林の問題については私は悪口を申上げるようでありますけれども政府もこれじや困るということはよく御存じでありながら、これを早く何とか一つ始末して行こうという熱意がどうも足りないようで、年々これが延びて行く。丁度資産家だんだん最後の幕に近寄りつつあるのと同じような状態じやないかと思つております。この点も一つよくお考えを願いたいと思うのであります。で、一日も早は立法化することをこの際は要望いたく私しまして、これに対する御答弁は今要求するわけじやございません。それから御存じ通り用材は年々約八千万石消費しております。聞きますというと、その筋の示唆もあつたかのようでありますが、農林当局におきましても、伐採量大かた六千万石ぐらいに減らす、この方向で行きたい。これも山を維持する上から申しますというと必要なことであります。この点はよくわかりますが、二千万石余りが足りなくなる。で、先ほどからいろいろ消費節約のことについて御努力の点を承わりましたので、そういう方面で幾らか浮いて来るのがあるということは考えられますけれども、二千万石余りのものが浮こうとはちよつと考えられないのであります。併し需要の八千万石を減らすことができるかと言えば、これは又できないのであります。それを無理に減らそうとするというと、建築方面復興にしても、その他の復興にしても非常に遅れる。そうするとどうすればよいかということになりますが、結局誰しも考えられますことは輸入材の問題であります。この点をどういうふうにお考えになりますか。もとより輸入の希望は持つていらつしやることであろうと思いますが、この数年聞の見通しについて御説明をお願いいたしたいと思います。
  16. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 現在八千万石必要なものを六千万石に減らす方針でおるようだが、その差の二千万石をどうするかというお尋ねでございますが、この二千万石につきましては、先ほどから申上げておる通り消費の面において極力これを節約いたし、又高度に、今まで使わなかつたものを利用いたしましてでき得る限りカバーすることが本筋であります。又輸入についてのだんだんのお尋ねございますが、こんは現在のところ非常に向うの価格が上つております。これは世界的に木材が足りないわけでありまして先ず今の場合すぐ直ちにこのものを他に優先して入れるということにまでは行つていないと私は考えております。それから又入れるにいたしましても、なかなか現在の基礎産業資材を入れたり、食糧を入れたりするので、そう簡単には行かないのじやないか、こう私は思つておるのであります。それからついでですから、先ほどお話を申上げますが、この木材使用制限の立法をするというようなことを端的に言いますというと、保護するのが、却つて逆に保護されなくなるようなわけでありますので、それは慎重に検討いたしたいということで御了承願いたいと思います
  17. 竹下豐次

    竹下豐次君 なお先日私がお尋ねいたしました項目の中で、大臣から今お答えがなかつたものが残つておりますが、それは農地開発のために幼齢樹林などが大分伐られました。それからその際に開墾適地適地であるという名目でそのほうに編入され、その後開墾したかというと開墾しないでほつたらかしておるというのが相当まだ残つております。これは元の所有者に返すとか、或いはどうするとかというなうな仕事をしておられるというようにも承わつておりますけれども、どうも成績が挙らない、つまり返還のほうの成績が挙らないように思うのであります。この点少し細かくなりますので、まあ御存じでありませんでしたら、ほかの人から御説明願つてもよういうございますが、こういうことがやはり森林所有者生産意欲を妨げる大きな原因にもなつておるようでありますので、その点御答弁願いたいと思います
  18. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) これはあなたの只今お話通り開墾適地で買上げたものは、これを元の所有者に返すことで、そのようにいたしております細かいどういうふうになつておるかということは、後で又書面を以てお答えをいたしますが、そのように現在はなつておるのであります。
  19. 竹下豐次

    竹下豐次君 それでは予算委員会あと残すところ時間も少くなつておりますから、細かい点はこの席でお答えを頂きませんでもあとで何か書面で以てお調べ願えばそれで結構と思います。  それからなおこの官有林の払下げの問題について、この間実はお尋ねいたしたのでありますが、これは国有林野整備臨時措置法案というものが、今お手許で進められておるようであります。それにもそのことが謳つてありまして払下げ、民有林の交換もされるようなお気持のようであります。この点も実は民間においては非常に多年要望しておるところでありましてそれが今日まで余り実行されていなかつたのであります。今度それを実行されるお気持が強くなつたと察しておるのでありますが、法案を見ただけではどのくらいのお気持かどうも計られませんので、従来と比べてどのくらい大仕掛けにおやりになる御意向でありますか、その点も別に数字でもつて御説明を求めるのは御無理かと思いますが、一応承わりたい。
  20. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) それは特に私たちは今までこの問題は非常に不合理な問題であるということに気が付いておつたのでありますが、ただこの国有林編入の場合にあの明治維新の官軍であつたか賊軍であつたかというような簡単なことから、その土地の立地條件その他のことを全然考えずに、国有林に編入されたものがたくさんあるのであります。特に宮崎県辺りはそういうものが顕著な例でございますが、我我今度の法律を対象として考えておるのは大略四十万町歩ぐらいになつておるのであります。これも飽くまで水源林或いはどうしてもこれは保安上必要なものであるというものは、これは民間から買上げます。或いは又軒下まで官有林が行つておるというようなものは、これを直接個人にも払下げし或いは又公共団体にも払下げまして、そうして共にこの日本の森林行政を完全に発達させたい、こう考えておるのであります
  21. 竹下豐次

    竹下豐次君 もう一、二お伺いします。それから営林署で民間の業者がやると同じような事業を経営しておる、これは役所のほうには役所の言い分があるのだろうと思いますけれども、まあ民間で噂しておるところを聞きますと、どうもやはり民業でやるほど役人の仕事は能率が上らないようだという定評があるようであります。私ども専門家ではありませんからよくは存じませんけれども、どうもそうじやないかと思います。ほかの業でも大体そうなのでございますが、山林でもやはり同じようないわゆるお役人仕事という嫌いがあるというふうに思われます。できるだけ成るべくならばそういうことを役人のほうでおやりになることはおやめになりまして、或いはうんと縮小されまして民営にされるということが山のためにいろいろな方面から見まして、国家的に有益じやないかと考えられるのであります。その点大臣はどうお考えですか。
  22. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) その点も我我十分注意しておるのでありますが、世間でいつでも指摘されることは、皇室の財産を引継いだいわゆる林野庁の元の財産でありますが、これが殆んど皇室の御内帯金その他を賄う上に重大な財源となつておつたように聞いておるのでありますが、ところが林野庁に入りまして、どうもそれが収入がないような恰好に出て来ておりますので、その方面は十分検討をさせまして、そうして成るべくこれはあなたの言われるような方向に我々は持つていきたいと思います。検討中でございます。
  23. 竹下豐次

    竹下豐次君 なお先日お尋ねいたしました一つに、部分林所有者の栽植の問題についてお尋ねいたしたのであります。併しその当時私はまだ今案が出ております国有林法案ですか、それを見ておりませんでしたのであの質問をいたしたのでありますが、その後拝見しましたところ部分林の問題については相当の考慮をしておられるようであります。これも多年の我々の要望であつてうやむやにされておつたものが、この新らしい法案で大分慎重にお考え下さつたようでよくわかりました。これは御答弁を煩わさなくてもいいと思つております。  最後に申上げたいのは山林関係の租税の問題であります。これはもう私から申上げるまでもなく相続税が非常に山林の性質と合わなく過重なものになつております。それから所得税との重複というようなものも考えられます。とてもこれでは全部投げ出してもまだ税金よりも少いという計算に数字がはつきり示すのであります。大蔵大臣にこの席でお尋ねいたしましたときには、その問題は考慮するということでありましたけれども、考慮するという言葉は大変役所からいえば都合のいい言葉でありますけれども、私などからいうと大変都合の悪い言葉なんでありますが、この点も農林大臣としてももとよりこの減免、そうして山林を保護するということに御異存のあることではないと思つておりますが、どの程度にお考えなつておりますか。その点も最後にお伺いしたいと思います。
  24. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 非常に骨を折つて山に木を植えさせておるのでありますが、相続税その他の税の関係からいたしまして、どうしても山を伐らなければならんことになつておるのが現在の相続税でありますために、大蔵省のほうに強く我々のほうとしては申入れておるのであります。池田君の考究しておるというのはこれは空念仏でなく本当に考究しておるようであります。それと同様なものが特に農地の相続税のようなものは、山林或いは田畑等の相続税については零細化することを非常に我々恐れておるのでありまして、この点については両方とも我々としては重大関心を持つて交渉中でございます。
  25. 竹下豐次

    竹下豐次君 私の質問はこれで打切ります。
  26. 東隆

    ○東隆君 私は農業協同組合再建整備法案についてお尋ねをしたいのですが、これは大分長い間まさに官民一致で以てこれの成立に努力をして来たのでありますが、予算も明日限りで以てどちらかにきまるわけでありますが、どうしてもこの際はつきりしておかなければいかんとこう考えます。殊に政府予算の補正等に対しては非常に反対でありますので、若しこの法案が不成立になり、又それに対する予算措置が講ぜられないといたしますと、法律ができたといたしましても二十七年度になる。このような問題がありますので、私はこの機会に農林大臣に農業協同組合再建整備法案の経過とそれから農林大臣の決意、これをお伺いいたしたいと思います
  27. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) これはあなたがよく御承知の通りの経過を辿つて来ておるのでありまして、これくらい官民一体になつたものは今までにないと私は思います。そのくらい真劍に取上げまして、政府部内における案は一人の反対もなく満場一致できまつたのであります。きまりましてその筋と只今折衝中でありますが、折衝の内容はお話いたしませんが、私も池田君もこれは重大決意を持つて当つておることだけ御了解願いたいと思います。
  28. 東隆

    ○東隆君 先ほども申上げましたように予算の審議が明日に迫つておりますので、それに間に合うようにおやりになるかどうか、それもお伺いいたしたいと思います。
  29. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) このときこの時間只今折衝中であるのでありまして、できる限り早く私はやりたいと思つております。
  30. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) それでは、これを以て昭和二十六年度予算に関する全部の質疑を打切りまして、休憩後討論採決に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  31. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 御異議ないと認めます。それでは三時まで休憩いたします。    午後二時十二分休憩   —————————————    午後三時四十三分開会
  32. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 休憩前に引続き予算委員会を開きます。岡崎官房長官より発言を求められております。
  33. 岡崎勝男

    政府委員(岡崎勝男君) 去る二十四日本委員会の質問におきまして吉田総理大臣が出席されたのでありますが、時間が非常に差迫りました関係上途中で退席をいたさざるを得なくなつたのであります。その間の事情につきましては先般本委員会の理事会におきましていろいろ御説明をいたした通りでありまするが、ただその当時はつきりした理由を委員長に申述べることを怠りまして、そのため委員長も十分御了解に至らなかつたというような事情もありましていろいろ手続きその他連絡において十分でないところがありましたため、結果において甚だ面白からざる形となつております。でその手続等の不満な点につきましては甚だ遺憾に存じております。今後とも十分この点は意を盡すつもりでございますから何とぞ御了承を願いたいと考えております。
  34. 波多野鼎

    政府委員波多野鼎君) これより討論に入ります。御意見のおありのかたは順次賛否を明かにしてお述べを願います。
  35. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ここに提案されておりまする昭和二十六年度一般会計予算特別会計予算、府政関係機関予算に対しまして、私は日本社会党を代表して反対を表明いたします。その反対の理由を少しく詳しく申述べます。  反対の第一点は、予算編成の基礎的諸條件に関する政府の認織についてであります。この委員会の予算審査によりまして先ず第一に明らかになりましたことは、政府が今後の国際情勢特に朝鮮動乱の見通しと、日本の対外関係の推移につきまして、確たる認識を何ら持たないことであります。吉田総理も勿論周東経済安定本部長官も、大蔵大臣もその点について我には明確な説明を与えなかつただけでなく、政府自身が具体的た認識を欠くことがはつきりと暴露されました。これらの問題を国民に知らすまいとする吉田内閣の秘密主義の故に、政府自身がこれらの問題を明確に認識しようとする意思を失つたものであつて、この点に関する吉田総理大臣の責任は誠に大なりと言わざるを得ません。更にこの予算の大綱を決定いたしました後に、朝鮮動乱は中共の介入によりまして全く変貌をいたしましたが、日本は加うるにダレス氏の来朝によりまして対米関係が急激に変転しつつありますが、これらの事情の変化はこの予算には何ら取入れられておりません。この認識不足が例えば対日援助の推算に現われております。政府説明によりますと昭和二十六年度の対日援助は一億四千八百万ドルでありますが、この基礎にしたアメリカの一九五一、五二会計年度の対日援助額一億ドルは過少見積りであることが明白であります。更に政府が若し経済自立三ヵ年計画に謳つているような、治山治水を含む総合的な電源開発や、大規模な航洋商船隊の拡充を本気に具体的に実現することを期しているとしますならば、それに関連する対日援助額の相当なものが算入されなければなりません。少くともその要望が具体的に進捗していなければならないのでありますのに、吉田総理その他の答弁に明らかなようにそれが何ら具体的に捗らずに空念仏に終つております。日本の国際関係に対する認識の不足は、又貿易計画や国際収支計画にも明らかに現われております。政府説明によりますと昭和二十六年の輸出は十一億ドル、輸入は援助を含んで十四億七千五百万ドルであります。この輸出入を元にして国際収支は外貨援助受取が十四億六千万ドルに対して外貨支仏は十三億八千二百万ドルとなり、差引七千八百万ドルの受取超過となる見込となつております。ところが最近の情勢によりますと、殊に政府が全く見落しております国際的物価の上昇を見込みますならば、輸出は十一億ドルを相当殖やし得るし、特需の一億八千万ドルのごときは、遙かに超過することが確実に見通されます。又政府が自立経済計画を真剣に而も積極的に考え輸入の促進を精力的に努力しますならば、政府の見込む十三億二千七百万ドル程度ではなかなか済みません。国際収支はむしろ十七、八億ドル台で収支バラソスさせるか、或いは若干の支払超過になるくらいに計画すべきでありますし、それが又可能であるはずなのに、政府はその努力を放棄して徒らに貿易インフレに怯えてその糊塗策に終始しているに過ぎません。  この委員会の予算審議によつて第二に明らかになりましたことは、政府は国内の経済事情についてさえ正確な推測をしていないことであります。そもそも政府の自立経済計画なるものは国民がその総力を結集して積極的に達成すべき努力目標であつて、単なる消極的た見通し作業に堕してはならないのであります。最も現実性のある実現可能な目標でなければならないことは勿論であります。然るに日本経済の再建、国民の生活水準の向上に対する積極的な気魄を失つた現政府の計画は誠に消極的な保守退嬰的なもので超保守党政府のものとして極めてふさわしいものであります。即ち自立経済計画の基本となるべき鉱工業生産指数を政府昭和二十六年度に一一四に達せしめようと計画をしております。ところがすでに昨年夫に一一六・七に達しておりますし、今年の二月ですら一一二・八という数字を示しております。あまねく知られておりますように、我が国では例年二月が一番生産の落ちる月であります。その二月ですらすでにほぼ昭和二十六年度目標に達しておるのでありますから、政府が日本経済実勢を如何に過小評価しているかが余りにも明白であると言わなければなりません。又政府は国民経済予算を推算するに当りまして昭和二十六年度の物価上昇を何ら見込んでないために、国民所得とその配分の推算を全く非現実的なものにしております。そのために昭和二十六年度の経済力や財政力についての誤つた判断が生れて来、国力配分が混乱に満ちたものになつております。更に悪いことには、池田大蔵大臣はこの国民経済予算には何らの顧慮を与えないで、周東経済安定本部長官も又国民経済予算と財政との調整に何らの努力を払つていないことが明らかになりました。昭和二十六年度の経済計画と財政計画とがばらばらになつて、何ら語調しておらないゆえんがここにあります。最もこの点に自由放任主義の自由党政府の本領が如実に示されておるというべきでありましよう。  この委員会の予算審議によりまして第三に明らかになりましたことは、内外の物価に対する政府の無定見、無政策であります。この点こそ昭和二十六年度予算を致命的なものにしているといつても過言ではありますまい。この物価問題につきましては、各委員から或いは池田大蔵大臣に、或いは周東安定本部長官に、又各省政府委員に、繰返し、むし返し、質疑がなされましたにかかわらず何ら得るところがなく、全く唖然たらざるを得ませんでした。池田大蔵大臣河野主計局長の言によりますと、この予算は昨年の秋頃の物価事情を斟酌して編成したものであるが、その後に多少物価は上つていても全般的に見て現在程度であるならば予算の基礎を動かす必要はないということでありました。物価庁の政府委員も何ら懸念するに及ばないと言明をいたしております。ところが物価当局の別な答弁によりますと、卸売物価指数は朝鮮動乱前の昨年六月に比べまして、今年の一月にすでに二九%上昇をいたし生産財のごきは四三・八%上つております。消費財ですら一三・九%の上りを示しております。これが更に昭和二十六年度中にどう推移するのか、幾ら上るのかの見通しが予算審議において決定的であるのにもかわらず、これには政府は何ら答えようといたしませんし、何らの見通しも持つておりません。否これまでの物価騰貴の原因についてすら的確な分析判断がなく、従つて今後の物価政策につきましては何ら具体的政策を持合せておりません。今後の物価騰貴について、一体物価を下げるのかどうか、ストップさせるのかどうか、若干の騰貴は止むを得ないとするのかどうか、それらの目標すら定まらず、従つてその実現の方策が具体的に出て来ておりません。刻下の最も重要な問題についてさえも政府はこの体たらくであります。政府予算の歳出見積りにつきましては、物価をストップ状態に置いて考えております。国民経済予算の編成や、産業資金調達計画についても同様なストップの態度を取つております。ところが租税収入の見積りにおきましては、相当な物価上昇を見込んでおります。政府が出すときには物価騰貴に眼をつむつて出し澁ります。取るときには物価騰貴を相当に見積つてたんまり取る、これが政府予算編成の態度というべきでありましよう。更に又総合予算の均衡、通貨の不増発の態度をとつている限りにおきましては、後に述べますように物価引下政策と言わざるを得ません。これらの点について政府の政策の混乱がはつきりと看取されます。このために公務員の給与や、物価調整費や、公共事業費を初め、多くの費目が全く現実離れのしたものとなり、その犠牲がすべて勤労者や地方農漁民にしわ寄せられております  反対の第二点は、昭和二十六年度予算の性格に対する政府説明についてであります。池田大蔵大臣が繰返し述べたところによりますと、この予算の特色の第一は、一般会計はもとより各特別会計及び政府関係機関を通ずる総合収支の均衡であります。昭和二十五年度は政府の貿易為替政策の失敗の故に、外為会計で三千億近くの支払超過を生じ、そのために財政の総合収支におきまして七百億ほどの超過となりそうであります。政府がそれに懲りまして、総合収支の均衡を強調する動機はわからないこともありません。併し政策の決定にはもう少し正確な科学的判断を必要といたします。政府のいう総合収支の均衡は、昭和二十六年度に通貨を増発しない態度を堅持したいためでありましよう。併しそれを固執することが過ちであり、ここに問題があると思います。すでに指摘いたしましたように、政府の過少な見積りによりましても、鉱工業生産指数は昭和二十五年度の一〇一に対しまして、二十六年度は一一四に、農材水産業生産指数は九七が九九に上昇いたします。又政府の計画によりますと、輸出の十億ドルが十二億ドルに、輸入の十一億ドルが十五億ドルに増加することになつております。日本の経済の規模はそれだけ大きくなる予測であります。実績は恐らくもつと大きくなるでありましよう。加うるに国内の原因でない国外から持ち込まれる物価騰貴もありまして、経済力の貨幣的見積額、即ち金額は更に殖えます。昭和二十六年度の物価騰貴を見込まない推算ですら、国民所得は昭和二十五年度の三兆三千億から三兆八千億に殖えることになつております。これを考慮に入れますならば、通貨がそれに相応するだけ増発されることは何らかまわないだけでなく、むしろ経済をスムースに運行するためには必要ですらあるのであります。その通貨増発を予定しますならば、総合収支の均衡を無理に強行することはむしろ誤りであり、デフレ政策の強行というべきでありましよう。政府の計画によりますと、一般会計で八百億近くの引揚超過をやり、外為会計の赤字五百億を一般会計から繰入れ、これで外為の撒布超過を揉み消し、見返資金に一千億以上の留保を保有し、資金運用部に六百六十六億を残し、翌年度に繰越すがごときはデフレ政策の最たるものであります。このためにこそ電力にも海運にもその他の緊要産業にも必要な産業資金が供給されなくなつております。予算審議の過程を通じまして、これらの産業への資金調達が殆んど申分計画をされていないことが明白となりました。一歩を譲りまして、財政総合収支を均衡させることが必要であるといたしましても、外為会計に出て来る赤字を一般会計から繰入れるべきでありません。先ず外為に赤字が出ないように輸入を積極的にやり、国際収支をバランスさせ、若干支払超過とするくらいが現在の段階では必要であります。殊に国内の円資金の不足は、更に外為管理の方式、ユーザンス制度などに根本的改革を加えて外為会計の赤字克服対策を講ずべきであります。それでもなお外為会計から円資金の不足が生ずる場合には、外為から過大に円資金を受取つている部面自身の資金を積極的に吸収することを講ずべきであつて、一般大衆の血税に負担さすべきでは絶対にないと思います。即ち外為会計の赤字はその会計自身で処置する政策を政府はとるべきであります。一般会計からの繰入によるインベントリー・ファイナンスに我々が極力反対するゆえんがここにあります。  この予算の特色の第二は、政府の言うところによりますと、財政規模の縮小であります。これ又政府の脆弁に過ぎません。成るほど一般会計の予算額を国民所得と対比いたしますと、昭和二十五年度が二〇%で、二十穴年度は七・六%に下つております。これは予算額が減つたのではなくして、国民所得が殖えたための結果に過ぎません。予算額は相対的に減つただけであります。昭和二十六年度の一般会計予算は六千五百七十四億で、前年の六千六百四十五億に比べて僅かに七十一億の減に過ぎません。昭和二十五年度は前年に比べて七百六十九億減少しました。二十六年度予算も昨年九月二十日の大綱決定のときは前年度に比べて六百六十五億の減少となつておりました。このような事情であるならば、財政規模の縮小と言うべきでありましようが、僅か七十一億では声を大切にして縮小と言うべきでは絶対にありますまい。殊に財政消費支出と財政の資本形成を中央地方の総合したものは昭和二十五年度七千七百二十二億に対しまして、二十六年度は八千四百九十一億となり、七百六十九億の増額、即ち約一〇%の増加になつております。財政規模は縮小どころかむしろ増大をいたしております。  この予算の特色の第三は、政府の言うところによりますと、国民負担の調整、軽減及び資本蓄積の促進を目的とした大幅な減税であります。この予算が一般には見せかけだけの減税であり、成るほど資本家や大所得階級にはいろいろな減税の配慮がなされているにかかわらず、労働省、農漁民、中小企業者など、庶民大衆にとつては税負担を軽くし、生活を楽にするものでないことは、先に租税法案に対する本会議の討論に際しまして、私が詳しく述べたところでありますから、ここには繰返しません。  反対の第三点は、昭和二十六年度予算において、政府の掲げる個々の予算政策についてであります。これについては各費目に亘つて意見がありますが、それを省略いたしまして、重要なもの二、三についてだけ、意見を申述べます。  第一には生活安定の問題であります。府府は社会政策的経費を三〇%増加をいたして、民生の安定を図つたと言つております。成るほど一応増額はしております。併し物価騰貴を考える場合、実質的にはそのほど増加しておるとは言えません。殊に住宅関係経費のごときは、この建築資材騰貴のときはむしろ前年の百八十八億から二十六年度は百五十四億に三十四億も減少をいたしております。併し一番大事なことは、百五十万を超える国家公務員は勿論、更に多数の地方公務員に至るまでその給与はすべてストップされたままに放置されていることであります。政府は物価の騰貴はさしたることはなく、殊に消費材の、従つて生計費の上りは極めて少いと言つてすましております。ところがこの消費材でも、先に述べましたように、すでに今年の一月には昨年の六月に対比して一三・七%上つております。我々の毎日の生活関係のある品物がどんな上り方をしているかを総理庁の調べによりますと、去年の六月から今年の一月までに被服類で六〇%、高熱費、住宅費で二〇%、食糧で八%、その他雑費が五%、引つくるめて二一%の値上りとなつております。尤も家計費から考えますと、その八〇%を占める食糧と雑費が余り上つておりませんために、家計への圧迫は一月まではそれほどでもなかつたと言えないこともありません。併し二月以降は物価の値上りは生産財から消費財へ、而も食糧費や雑費へ重点が移つて参りました。今後の家計への圧迫が思いやられます。人事院の答弁によりますと、すでに昨年十一月に人事院ペース八千五十八円よりも一〇・五%上昇すべきだし、季節変動を除くとしましても、三・五%アップとなり、今年の一、二月頃には恐らく五%を超えるだろうとのことであります。予算昭和二十六年四月以降のものであることを考えますと、給与のストップが如何に不都合であるかは説明の要もありません。それを池田大蔵大臣は平然と、だから一月から一千円上げたじやないかとうそぶいておられます。一千円上げた給与が何と政府の声明によりますと、七千九百八十一円に過ぎないことを思いますときに、現政府の民生圧迫も極まれりと言わざるを得ません。我々が断乎としてこの予算に反対する理由の一つがここにあります。  第二に、予算における農漁民対策の問題でありますが、この点は我々の同志永井君が本会議で詳しく触れる予定でありますから、私はそれに譲ります。  第三には、第一と第二にも関連するのですが、地方財政の問題であります。昨今の地方財政が如何に窮迫しているかは我々が地方を巡視して身を以つて体験をいたしておるところであります。さればこそ全国知事会議や市町村長会は勿論、当院の文部委員会や地方行政委員会まで口を揃えて地方財政の救助を訴えております。この予算委員会でも、地方財政に関しましては特別に小委員会が設けられ、詳細に審議をいたしました結果、次の結論に到達したことは諸君の御承知の通りであります。  即ち一、昭和二十六年度地方財政平衡交付金の総額については、地方財政委員会の勧告額千二百九億円を妥当と認める。二、これはもとより最善のものではないが、差当り必要な最小限度の額であつて、内閣決定額に対しては百九億を増額することが必要である。三、なかんずく年末手当支給に要する経費、給与ベース改訂による増及び教職員給与の級別格付基準改訂による増等については、特に地方財政委員会の勧告額を下らない増額が必要で、大蔵省の査定は不当である。四、地方債の増額は、地方財政委員会の勧告通り二百七十五億とすべきである。この報告は小委員会においては自由党をも含む全会一致で採択されたにもかかわらず、予算委員会においては、自由党が態度を豹変してこれに反対したことは誠に遺憾の極みであります。併し自由党を除く各党各派、即ち社会党、緑風会、民主党、第一クラブ、労農党、共産党が挙げてこの採択に賛成したことは申すまでもありません。かかる国民多数の要望に対してすら、吉田内閣はこれを受入れずに拒み続けております。政府は口を開けば財源がないと申します。併し地方財政平衡交付金の増額百九億は法人税の自然増収で簡単に賄えると思います。法人税は昭和二十五年度収入見込五百七十二億がすでに一月末にこれを突破いたしております。年度末収入実績は六百八十億以上と推計できるでありましよう。昭和二十五年度にすでに百八億の自然増収が得られております。昭和二十六年度法人税収入は六百三十六億と見込まれて、二十五年度収入実績より低く見積られておりますが、これに百九億程度の自然増収を見込むことは、むしろ非常に控え目な推計と言えるでありましよう。地方債増加額百八十五億の財源も容易に発見できます。政府は資金運用部の資金計画において郵便貯金の増加額を昭和二十六年度も前年度と同様四百億と見ておりますが、これは余りにも過小見積りでありましよう。これを昨年より一〇%増し四十億増すことは少しも無理でありません。なお不足分百四十五億は、資金運用部が翌二十七年度に繰越す予定の三百二十五億から差引けば足ります。これも資金運用部資金の大部分が地方の庶民大衆の預貯金であることを思えばむしろ当然と言うべきであります。これをしも政府は拒否するのでありますから、我々はもはや、やんぬるかなと匙を投げざるを得ません。  以上詳しく申述べました理由によりまして、我々は昭和二十六年度予算に対して根本的な組替えを要求いたします。若しこれが容れられないとするならば、我々は断固反対するだけであります。
  36. 一松政二

    ○一松政二君 私は参議院の自由党を代表いたしまして、本年度のこの予算案に賛成するもでございます。  只今社会党の組替え上要求、或いはそれが入れられなければ返上という議論を大体伺つておりましたが、これは社会党の抱くいわゆる計画経済に基く考え方と、自由党の考え方との根本的な相違があることも一つの理由でありましようが、自由党を自由放任主義の経済か或いは政策を行うがごときものと言うのは、これは誣うるも甚だしい。又今社会党の代表者の申されましたいろいろの反対理由を承わつておりましたけれども政府は口を極めて懇切丁寧に私は説明をしておると思う。殊にこの平衡交付金、或いは地方の起債の枠の問題にいたしましても十分考慮すると、殊に先ほど委員会において或いは本委員会において、自由党のみが反対したようなことを申されておりますが、速記録を御覧なさい、私はその勧告の意味であるならば、或いは強く要望するというのならば、我々も賛成である、但しそういう採決をしながら予算では返上をするのでは何のことかわけがわからん、我々は良心的に考えて、これをはつきり委員長に迫つたことは速記録を見ればおわかりであります。全会一致と申されますけれども、緑風会におかれましても、多大の留保をせられております。全額及び実施の時期等については遺憾ながら所見を異にしておることを二言附加えたい。殊に私は、今の説明を聞いておりましたが、一方には政府予算が過少見積りであつたり、非常に窮屈過ぎるようなことを言うが、一方においては公務員の給与、その他の問題に触れるというと、これを非常にもつとやり方が少い、そうして私は聞いておれば、昔の或いは片山内閣、芦田内閣時代のあの補正予算に次ぐ補正予算を以てしたあの時の感じをそのまま受けるのであります。我々はかような予算を今日審議するわけに参りません。財政は健全にして、そうしてできるだけゆとりをとつて、そうして将来の変化に備えるだけの余裕をとつて置く必要がある、殊に変転極まりなき国際情勢に処し、且つ吉田内閣が朝鮮事変或いは国際情勢の見通しについて、頗る見通しを欠いておると言うけれども、これも私はその余りに大さ膽に驚かざるを得ません。この朝鮮事変においても、或いは今日の国際情勢をいずこの何人が予言をするか、これは占者でない限り予言はできない。(「脱線心々」と呼ぶ者あり)ですから、そういう見通しに立つて反対をされていることは、それは当らざるも甚だしいと思うのであります。又物価の上昇を非常に気にされております。成るほど去年の秋と今日とでは違つておりますが、物価は上昇するばかりが物価の迫るべき問題ではございません。今日世界的に二月まで上つた物価が、三月においては反落しておる、日本においてもその通りであります。アメリカにおいては或いは一九四九年を思わせるようなリセッシヨンではないかということを今日心配しておる、そういう状態でありますから、その物価の問題につきましても、これをよく将来を見て徐ろにこれの対策を立つべきである。政府も又そういうことを言つておるのであります。でありますから、政府の申すことは何もかも誠意を欠いたり、或いは見通しを欠くという今の議論には絶対に承服するわけには参りません。更に国際経済のことをいろいろ申されまた。国際経済には計画性はございません。国内の経済を如何に計画しましても、変転極まりなき国際情勢から起つて来る諸々の現象に対しては、我々は一定の見通しの下にみずからを固めつつ、そのよつて来たる影響に処するだけの心構えを持つて、本年度の予算を私は拵えてあることを政府当局説明によつて明らかにされておると思うのであります。  で、以上、私はくどくどしく申上げませんが、今申されました社会党の反対理由には、私は全面的に誣うるも甚だしいという言を以つて本年度の予算案の賛成演説の討論といたしたいと考える次第であります。
  37. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 私は民主党を代表いたしまして、昭和二十六年度総予算案に対し反対いたすものでございます。以下その理由を御説明申上げます。  基本的態度といたしましては、今回提出を見ました昭和二十六年度総予算案は、昨年八月中頃その編成を終つたものでございまして、その後十一月にドツジ氏が来られましたとき、若干の修正が行われましたけれども、その後重大なる国際情勢の変化に対処いたしておりません。即ち中国共産党軍隊の介入後の朝鮮動乱の影響と、世界の軍拡的経済動向による影響を無視いたしているので、補正予算の必至の状況にありながら、すでに形骸化した予算案を国会に提出されるがごときことは、政府の常識を疑うものでございまして、国会の権威にかけても、即時組替えを要求いたすものでございます。予算の内容につき主なる反対事項を申上げます。  先ず反対理由の第一は、政府のとられているインフレ対策が誤つているということであります。二年前日本にドツジ氏が来られました当時は、必ずしも消費インフレではございませんが、ともかくも一時鰻上りのインフレを克服するためには、或る程度の浮動購買力を吸収することも必要であつたかも存じませんが、そのときのインフレは一応克服されました。その後世界情勢は一変いたし、日本も朝鮮動乱以來、特需景気に潤うようになりました。而して再び物価は騰貴いたしました。この物価騰貴の原因は二年前のそれとは違つて、世界臨戰経済の物資獲得競争より来る原料高と輸入難、並びに生産増強よりする輸出超過及び中共貿易の変更による運賃増と、輸出市場の商品高が国内物価に反映いたしての物価騰貴でございます。即ち要するに貿易インフレでございますから、原料の輸入確保と貿易の一部をポンド地域に移すこと、場合によりましては、民需品の一部輸出制限と割当等の対策を講ずべきもので、かりそめにも二年前のごとく必要以上に重税金をかけることによつて、強制的に国民購買力を吸い上げる必要はないのみか、却つてこの時期に際しましては、或る程度企業家に潤沢なる資金を持たせて思う存分生産に努力させたり、民間輸入貿易によつて、早期に原料の獲得をせしむることが却つて日本経済復興を早める原因になると存じますのに、政府は相変らず二年前と同じデイス・インフレ政策で、多くの政府事業の資金まで一々重税によつて徴収されますので、企業家、特に中小商業者はますます資金難に陥りまして、折角日本に経済復興の絶好のチャンスが廻り来ておるにもかかわらず、このチャンスをつかむことができないというのが、今日の政府の大きい失策であると考えます。又国民一般大衆も別に贅沢いたしておるのでもないにもかかわらず、重過ぎる税金で購買力を吸上げられますので、ますます生活水準を下げなければならないという羽目に陥つております。大幅に減税することによりまして企業家を助け、一般国民をして自発的に喜んで資本蓄積をなし得る途を開かなければならないと存じます。  反対理由の第二番目は、予算基礎條件がすでに崩壊しているという致命的欠陥を有しておるということでございます。従いまして本予算に盛られております各種類の計画は、人件費、物件費の増額によりまして、事業分量を確保することができず、又民主の安定を図ることもできないいうことでございます。先ず食糧についてみましても、政府は三百二十万トン輸入することを予定しておりますが、これが確保につきましては、今日の国際情勢上なかなか困難が予想されております。即ち去る一月三十日、ロイター電報は濠州に対する英国の小麦買付に関する新契約が成立したことを伝えておりますし、又インドとカナダとの話合いもできておると聞いております。ビルマ、タイ、インドなどに対するフランスや英国の食糧買付競争はかなり深刻なる規模で進んでおり、又一時食糧過剰が懸念されました米国でさえも、非常事態宣言をきつかけといたしまして、生産制限の方向をにわかに変更いたしまして、今や増産政策に転ずる一方、盛んに備蓄に乗り出している有様で、二月三日の外電によりますれば、中国は小麦の輸出を停止するということを伝えております。このことはやがて日本の食糧輸入を一層困難ならしめる原因になると存じます。更に昭和二十六年度分といたしましては三百三十万トン食糧輸入の計画がされておりますけれども政府輸入を楽観されましたのか七月一日から麦の統制撤廃をされるやに聞いておりますが、各国が食糧買付に奔狂いたしていることと輸入価格のうなぎ上りに高騰いたしつつある事実、更に加えて船舶が極度に不足をいたしておるという事情を勘案いたしますならば、三百一十万トンの輸入は不可能に近く、従いまして麦の統制撤廃は思惑を刺戟いたし、国民生活を圧迫する結果となりますので、時期尚早かと考えております。又政府は三百二十万トン輸入のために補給金を二百二十五億円計上いたしておるそうでございますが、現在平均いたして食糧は一割の値上りとなつておりまして、これが二割にも騰貴いたすことになりますならば、補給金は二百二十五億では納まりませず、二倍の四百五十億円になることは必至でございます。この補給金を増額いたさないならば、食糧の値上りによりまして予算の執行は不可能になり、且つ国民生活を破綻せしめる危険性を生じております。たとへ政府の言われるごとく小麦協定に参加いたしましても、今年度はその利益を得ることはなかなかむずかしかろうと存じております。工業原料の機械、金属等は平均二倍程度騰貴いたしておりますし、鉄鉱石は十ドル五十セントが二十ドルに、更に強粘結炭は十一ドル乃至十二ドル程度というものが二十七ドルになつておりますし、従つてこの原料を使用する製品の値上りは必然的に二倍以上になります。荷うしてこれ又補給金を必要といたしますので、この一角からでも予算案は修正いたさなければならなくなつております。運賃の値上りは更に著るしいものがございまして、三倍に近い騰貴を示しております。燐鉱石、ソーダ、カリ等の確保のためにも七、八十億の追加支出が目前に事実となつて現われて参つております。  反対理由の第三は、自立経済計画に対する経済的裏付のないことでございます。食糧一割増産のごときも劣悪なる條件の下に置かれております原始産業である日本の農業、而も耕地を抵当といたして金を借ることが封ぜられております今日といたしましては、土地改良開墾、災害予防等は国家資金を投入するのでなければなかなか困難があろうと存じております。失業者の七割を背負い、人口の半分を占める農業者の国民総所得における比率が僅か四分の一にも充たないことは重大なる問題で、再生産を可能ならしむる農民対策はゆるぎなき日本の自立経済計画の基礎でなくてはなりません。    〔委員長退席、理事平岡市三君委員長席に着く〕  なお、この際食糧自給につきまして附言いたしたいことがございます。区区たる対策もさることながら、最近聞いておりますビルマの米は内地産の三倍も五倍も収穫があるようであります丁度苗代前でもございますので、至急に政府はできるだけ多くの「もみ」を飛行機で購入いたしまして播付けることこそ、明日の日本の食糧確保のよき一方法であろうと考えます。若しそれ毎年種を取替えなければならないといたしましても、なお且つ食糧その他を輸入いたす困難に比べますれば、物の数でもございません。なお食糧に関係いたして狭い国土に溢れる過剰人口のさばけ口は、過日中村嘉壽前代議士がもたらした朗報でありますアマゾン流域への移民を歓迎するブラジル大統領の言葉を忘れるようなことでは、政治的センスを持つているとは言えないのであります。具体的に計画を立てて申込めというのだから、これほど旱天の慈雨はないはずであります。講和会議前でありましても実現できますよう政府の熱心なる努力を切に願うものであります。  更に経済自立に必要なる電力の開発、それから造船設備の合理化等々のために政府は多額の手持資金を持つているのでありますので、速かにこれを放出されることが即ち能力ある政治家のなすべき道であろうと考えております。重化学工業原料たる鉄、塩、ニツケルなどはそれぞれ数量と輸入先の計画あるも、価格は上る一方の今日、未だに輸入契約も輸送船腹の準備もないということは無責任なる官製ペーパープランでございまして、これらの国内ストックは鉄でも、銅でも原料は三カ月分しかございません。更に工業塩は一カ月分しかございません。ニッケルは二、三カ月分に過ぎず、そのために一年前の価格に比しまして、実に十倍以上に騰貴している物さえあるに至つては、至急に国際的にこれら原料確保に手を打つことこそ今日日本経済の不可欠の要諦でございまして、過日政府はそのために経済使節を派遣されたのでございましようが、この方面に多少経費が要りましても、できるだけ有能な使節を殖やしまして、なすべきことが必要であると存じます。今は世界インフレの初期でございまして、今後世界の軍拡予算によりましてインフレの激化されることは火を見るよりも朗らかであります、原料の入手が一遅れましたならば、それだけ国家に大きい損失を与えることと存じます。なお日本経済自立のためには中共との平和と貿易が絶対必要なることを考え、近く結ばれる予定の講和後におきましても、あらゆる機会に中共との平和回復への努力を憎んではならないと考えるものでございます。  なお、大蔵当局は当分経済的援助を受けたい御意向のようでございますが、経済的独立もないところに真の自主性は保持できません。国民精神に及ぼす萎微沈滞の空気こそ永久に民族を蝕むものでございまして、他国の憐憫の袖の下に生きるよりも、日本人自身の額に汗して、うんと働いて生きる態勢を早く整えることこそ必要で、そのためには講和を待たずとも民族の労働意欲に適合する一切の経済的制限を即時撤廃してもらうことを政府に強く要望いたすものでございます。国民すべてが正しく働いて生きる職業を持つということが一切の政治の基礎傑作で、自立経済の根幹をなすものと言えましよう。今日のごとく、財政に余裕があれば失業救済をなすというがごときは、政治の本来を顛倒するものと言うべきでございましよう。戰後五年間、職業なく身売りしたり、犯罪のかげに露命をつなぐ多くの人々は、たとえ日本人を国民として減しはせず、民族として奴隷にはせんというポツダム宣言の條項によつて保障されてはおりましても、事実におきましては、民族として奴隷になり下りつつある事実でございます。  第四番目の反対理由は、地方財政の方面より乗るものであります。シヤウプ氏が来朝されましてから、地方には十分なる財源を与えて、地方でなし得ることは、地方でしてもらう、どうしても地方でできないものだけ国家でするようにという示唆が与えられておりますのに、近頃は仕事は中央で作つて地方に押付けて、而も財源を与えない、地方財政の困窮化に拍車をかけております。今日といえども六三制の後始末は相変らず地方民に寄附の重圧をかけております。自治警察や労働基準局は財政不如意の結果は地方ボスの援助に頼りまして、取締官庁の威信と職能を阻害いたしつつあるごときは、その一事を以て、我が党は率先いたしまして、今回の予算に百九億の地方交付金を法人税の自然増より計上いたしますことを動議いたしましたところ、御賛成を頂きましたことをこの上なく嬉しく存じておりますが、これこそは地方自治体の熱心なる要望に応えたものだと考えております。  反対理由の第五番目は、本予算案は資本主義の欠陥を最も露骨に表明いたしておると存ずるわけであります。今日日本の資本主義に修正を要する問題は、計画性を導入するということと、個人経済に偏しないで社会連帯性を加味して、貧困者に対する社会政策の充実を期することでございましよう。失業の救済と恐慌への予防も忘れてはなりません。先ずその計画性の点でございますが、経済が平常時におきましては自由放任でも大して問題は起りませんが、今日のごとく世界の資源が逼迫を告げる臨戰態勢におきましては、外は諸外国の協調の下に、原料割当協定に参加するのでなければ、貧弱なる日本経済を維持することは困難でございますと共に、世界道義の上からも、或る時期に達すれば国内原料資源の割当とか、或いは価格の統制も必要になるかも存じません。これこそ正に弱肉強食を未然に防ぐものにもなるでありましよう。次に自由党政府におかれましては、国際経済の影響を防止するのでなく、却つて国際物価にさや寄せせんとする一般原則に従つておりますので、物価の騰貴は免れないでございまでしよう。失業の問題でございますが、今日完全失業者は五十万人、不完全失業者は四百万人のうち、僅かに職にあり付いたものは十三万八千人でございます。朝鮮動乱の影響は、政府施策の欠陷のために中小企業の閉鎖、休業するものがいよいよ増加いたしまして、失業は来年度におきまして最も重大なる問題となりましよう。恐慌の問題でございますいまするが、今日米国においてさえも、この失業が、平和に帰りました曉の恐慌を恐れまして、特需産業の工場を海外に設けるというような方針を選びつつございます。今日日本の経済の活況は、日本経済の実力ではなぐ、従いまして今より品質の改善と労働生産性の向上のために設備を合理化し、国際経済との他日の競争に敗北のうき目を見ぬよう今から心がけておくことが大切であると存じます。社会連帯性に対しましては、もともと資本主義の長所は、個人の自由を尊敬いたし、而も創意工夫をこらして能力の十分なる発揮の途を開くが、その半面努力しても、努力しても、不可能なる者に対しましては、能力ある者の労働の余剰と国家企業による利益によりましてこれを保護するということでなければなりません。若しそれこの社会政策が不備なるときは、資本主義も又共産主義に次ぐ悪制度と言うべきでございましよう。(笑声)戰争未亡人、傷演者、寄るべなき老人、貧しき病人への給与に更に一段の努力を希うということであります。殊に同じ敗戰国でありながら、西ドイツの傷演者、戰争未亡人の生活が国家で保障されておるのに、我が国ではいつまでも顧みられないというのは何としたことでございましよう。国民の愛国心の低下を憂する前に、過去の戰争被害者の救済こそ先決問題でございましよう  反対理由の第六は、中小商工業者に対する金融の不足でございます。このことは我が党の最も熱心に主張いたして参つたところでございまして、日本産業の九割と輸出産業の六割を占める中小商工業者に対する善政なくば、日本の経済復興と民生の安定はない。この際多額の政府手持資金の放出を望むものであります。更に国民金融公庫は、目下全国二十五カ所でございますが、各府県に増設することと、地方の金融機関は中央への吸上げ超過の影響をこのうむることを考慮しまして、この方面への融資につきまして、更に一段御配慮を賜わりたいと考えます。  反対理由の第七は、科学奨励費の不足でございます。平和維持のためにも、国民生活の充実にも、貿易の振興にも、今こそ科学の発達を痛切に望むもので、有能なる人材に対しましては経済的に後顧の憂いたなく研究ができますよう特別なる保護が必要であると考えます。  最後に、この会計年度におきましては、いよいよ講和が締結さることになつております。而もその講和は一切の恨みを忘れ、許す対等の立場で経済復興もさせてくれるという趣きでございますので、いずれその曉は産業計画その他につきましては、新たなる補正予算の必要があろうかと思います。殊に終戰処理費が余剩を生じました曉は、これを自衛の強化に充てることを附言いたしまして、以上を以ちまして昭和二十六年度の総予算に対しまする民主党の態度を表明いたすわけでございます。
  38. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 私は緑風会を代表して、本予算案に対し次のごとき要望を附して賛成いたします。  緑風会は、昭和二十六年度予算案についてその編成の根本方針並びにその施行上の支障等に鑑みて重大な危具の念を抱くものでありますが、予算案が年度内に成立を要する事情を考えてこれに賛成いたします。本予算案に対して我々の最も危惧するところは、第一に、国際情勢の緊迫化によるところの政治的要請並びに講和受入態勢等に果してよく適合し得るか否かという点であります。第二は、国際政局の激変による国外物価の騰貴、及びこれに基く国内物価の上昇等が、この予算案編成成当時の予算単価との間に相当大幅な開きを生じ、それがために施行上重大な支障を来さないかといろ点であります。かかる観点から政府は率直に予算案補正の必要を認めて、その補正方針を明らかにすることが当然の責任と考えるのであります。併し政府がこの点に関して明確な見解を示さないことは甚だ遺憾であります。政府か速かに全予算に対して検討を加え、実情に即し、而もインフレ促進の虞れのない予算補正を実行することを強く要望するもものであります。なお審議の過程において最も論議の焦点となりました平衡交付金、食糧増産費、農業協同組合再建整備費その他農業関係費、社会保障関係費及び文教関係費等の増額、特に平衡交付金の増額と地方起債の枠の拡大等については、次の補正予算案において本委員会の要望を十分に考慮せられることを強力に期待するものであります。  我々は以上のような要望を附して、本予算案に賛成をいたします。
  39. 東隆

    ○東隆君 私は只今提案されております昭和二十六年度の一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算案に対しまして、第一クラブを代表して、反対の意思を表明するものであります。  我々は二カ月以上提案されておる予算案と取組んで来たのでありますが、時がたつにつれ、審議を重ねるに従い、本予算案に対し、大蔵大臣が自信満々我々に提案理由を説明されたことがいよいよわからなくなつて来たのであります。それは猫の目のごとく変転するところの国際情勢を考えないで、昨年の十月頃の物価やその他を基準として作られておるこの予算案、それを通そうとするところに私は常織を欠いたところが非常にある、こう言わざるを得ないのであります。今度の予算案は今まで自分が手がけた五回の予算の中で一番満足すべき予算だと思つている、減税は七百億円確保し、価格調整費も二百五十億円に圧縮し、文教、社会保障費も充実した、これは大蔵大臣昭和二十六年度の予算案の閣議決定後に大蔵省で新聞記者諸君と会見をしたときの言葉であります。我々はこれに類した、これと同じようなことを本会場においてもたびたび質疑応答において聞かされたのでございます。私は大蔵大臣が特色として誇示されているところの事項を中心といたしまして意見を開陳し、以て反対の理由といたしたいのであります。  第一に誇示されておるところのものは何かと申しますと、それは総合予算の均衡、財政規模の縮小、これが第一に誇示されておるところのものであります。政府は一般会計から外為会計に五百億入れて総合予算の均衡を図り、価格調整費を大口に減少して財政規模の縮小をやつたと説明をいたしておりますが、政府の本当の考え方はドツチ氏に煩わせられないときの、あの二十六年度の原案とも言うべき昨年九月の廿日閣議決定のものを中心に考えれば、この間の事情が私はよくわかると思うのであります。即ち一般会計について見ますと、二十五年度は六千六百四十六億円、二十六年度の原案、これは先ほど申上げました九月廿日閣議決定でありますが、これは五千九百八十一億円、二十六年度の今度のものは六千五百七十四億円、これを二十五年度と比較をいたしましますと、原案においては六百六十五億円の減少であります。本年度の、二十六年度の予算と比較をいたしますと七十二億円の減であります。この六百六十五億円の減少ならば成るほどと考える人もあるかも知れませんが、その一割とちよつとにしかならんところの七十二億円の減少では、補正必至と見られておるところの今日のこの二十六年度の予算から考えますと、私は当然縮小ではなくしてオーバーをしてしまう、こういうふうに考えるのであります。これこそ常織のある国民がすべて考えるところであると私は申したいのであります。政府が如何に国民所得の比率において述べましても、国税と地方税と物価高による代金を同じ財布の中から出すところの国民は、政府考えておるようには恐らくは考えないであろう。これは余りお得意にならないほうがいいと思うのであります。  第二番目に特色として挙げられておる点は、国民負担の調整、軽減、及び資本蓄積の促進を目的とした大幅な減税、これが第二の特色なんであります。これも歳入の眼目であるところの租税を中心にして見ますと、どういうことになるかと申しますと、二十五年度は四千三百六十億円、二十六年度の先ほどの原案によりますと、三千七百九十一億円、二十六年度は四千三百六十億円、二十六年度の原案は二十五年度に比べますと五百六十九億円の減であります。二十六年度の今度のものは差引き零なんであります。減少が五百六十九億円、こういうことになりまするならば、成るほど減税をしたなとはつきり考えることができるのでありますが、併し二十五年度の税額と二十六年度の税額の差引き零では大幅の減税をしたとは誰も考えないのであります。二十六年度を二十五年度と同じくして置くことが減税であるという理論もあつたのでありますが、国民負担の調整、減税とは考えられないのであります。併し資本蓄積の促進を目的としたところの大幅な減税ということになりますると、いよいよ政府の露骨な性格を私は発揮しておると言わなければならんのであります。いよいよ政府の露骨な性格を発揮しておる、こう私はあえて言うのであります。政府は、殊に池田蔵相は、法人は個人の延長であると考え、法人に課税をすることは二重課税になると考えておられるのであります。これはいろいろな質問をいたしましたときに、このようなお答えをされておるのであります。併し営利を目的としないところの法人に減税をするならば、これは二重課税にはならんと思いますけれども、営利を目的としたところの法人に課税をいたしましても、それは決して二重課税にはならんと、こう考えるのであります。営利法人に減税し、償却の年次を短縮をいたしまして、そうして内部蓄積をするんだと、これは資本蓄積の一番大きな一つ方法であるのでありますが、そうして政府が非常にこれを強力に主張をいたしておるのでありますが、併しこのことによつてどういうような影響を受けるかと申しますと、蓄積されたところのものは、これは当然資本になり、又償却を切上げることによつて生産されるもののコストは当然上つて来るのであります。従つてこれを購うところの国民大衆は、高いものを買わされるのであります。この意味から言つても、営利を目的としたところの法人に課税をしないということは、これは非常に蓄積には役に立ちますけれども、平面において大きく国民の生活方面に脅威を与えることになり、二重、三重の負担になつて来るということを私は考えるのであります。よろしく政府は、法人、殊に営利を目的としたところの法人に対しては、金のある所、利潤のある所、そこには当然税をかけてそうしてその平面において個人の控除額を増すとかその他をして個人の負担を減少すべきであると私は考えるのであります。そのことによつて初めて国民の資本蓄積が完成をされて行くと、このように私は考えるのであります。この意味において私は、この国民負担の調整、軽減及び資本の蓄積の促進を目的とした大幅の減税、これは私は反対なのであります。第三の特色は何かと申しますと、これは民生の安定、文教及び科学の振興、これが政府のお得意とするところなのであります。これも二十五年度の予算と二十六年度の原案と二十六年度とを比較いたしますと、社会政策的経費について考えますと、二十五年度は三百八十六億円、二十六年度の原案は五百四十四億円、二十六年度は五百六億円、二十五年度よりも原案は百六十八億円の増になつております。二十六年度は百二十億円の増になるのであります。この増額に対して説明をされて、生活困窮者の保護、健康保険その他の社会保険、結核対策を初めとする保険及び衛生、失業対策、同胞引揚援護等に関する経費は、二十五年度に比較して約三割、百二十億の増額を見ていると、こう説明されて、非常に大きく我が政府は社会政策面に金を出そうとしておるんだと、こういうふうに言われておるのであります。併し現実の生活考えて見たときに、それは生活ではなくて、辛うじて生存をしておる者が次第に増加をしておるところのこれが現実だと私は考えます。この経費が大きくなるのは、逆説的に言えば、これは好ましくないところの社会状態を如実に示しておるものと言わなければならんと思うのであります。従つて余り得意になつお話になるような、説明をされるような代物では私はないと思うのであります。文教費一つとつて考えて見ましても、その中で以て国民の多数が要望しておるところのものを満足させるようなものがあるかといつたら、一つもないのであります。その小さなことについては申しませんけれども、私は憲法が日本国民の最低生活を保障し、そうして義務教育を受ける権利を与えておる、そういうふうなときに、この金額では決して満足なものができるとは考えないのであります。これでは足りないのである。為政者として、甚だ申訳がないと国民に向つて謝るべきが私は当然ではないかと思うのであります七第四番目の特徴は、政府資金の活用による資源開発、産業の育成、合理化等のための資金供給の確保、これが第四番目の特徴であります。自由主義経済のウルシュプルングの考え方は、御承知のように、成るべく国家は個人の経済活動には関係をしない、従つて国家というものはただ最小の経費で国を維持すればよいのであると、こう考えますが、それが次第に社会が進んで参りますると、国家の力を利用して一部の産業資本家がその資本の蓄積をやるようになつて来るのであります。このことは、高度の資本主義国家を形成した日本といたしましてはこれは当然のことであるかも知れませんが、政府資金が長期産業資金として供給されることは、その投資される産業が公的独占の形体であれば、国民の福祉を増大することになりますけれども、私的独占を強化するものであれば、国民の福祉を増大せざるのみか、却つて国民大衆を苦しめるものになると、こういうふうに私は考えざるを得ないのであります。戰後幾多の法律が出ております。独禁法或いは過度経済力集中排除法、或いは事業者団体法等が出ておるのでありますが、これは経済の民主化をやろうとしておるのであります。日本の経済の民主化をやるためにこのような法律が出ておるのでありますが、この法律の精神からこの種の長期金融を考えて見ましたときに、私は肌に粟を生ずるような思いがするのであります。決して国民大衆のための資金ではなくして、国民の首を締めるような資金になりはしないかと、こういうふうに私は考えざるを得ないのであります。以上が、政府が得意になつてそうして本予算の特色であると、こういうふうに述べたところの点に対して私の意見を述べたのでありますが、国家に集められた資金は、国家みずからの仕事か、国民大衆の福祉を増加する方途に使われなければならないと私は考えておるものであります。従つて今日のように農業が国がやつているような様相を呈しているときには、農業の基本的な條件を整備するために国の資本を投入し、国費を以て助成をすると、こういうようなことは私いよいよこの国の生産を上げ、日本の自立態勢を確立する上にこれは非常に大きな役割をいたしますが、特定の産業資本家を助長させるような形で行われるところの資本の投入は、表面は理由があるようではありますけれども、国民全般の福祉を増進することにはならないと思うのであります。従つて国の資本を受ける場合にも、今後において外資の導入等がある場合も、私的なた利法人等がその事業は公益事業だと申しましても、心して私は金融をしなければならんものであると、このように考えるものであります。我には本予算を通して見ると、以上の考えとは誠に相反したものが多いので、本予算には根本的に反対の意思を表明せざるを得ないのであります。併しこのままに放置できないので、本予算のうち地方平衡交付金、地方公共団体に対する起債の枠の拡大、これらを考え、以て修正を試みようとしたのでありますけれども、GHQからのOKをとることができたかつたのでありまして、甚だ遺憾なことでありますが、若し政府にして、地方公共団体の実情を真に理解するところがあるならば、私は必ずや我々のこの要請に対して犬馬の労をとつたであろうと、こういうふうに考え、又そのことによつてのGHQほうのOKもとれたものであると、このように考えるものであります。地方公共団体に対する平衡交付金も、起債の枠の拡大もやるよとを得なかつたとよろの我々は、併し将来を考えたときに、あのガリレオが言つたように、だが地球は動くと、あのガリレオが言つたのでありますが、それと同じように、私は近々に政府は必ず補正予算を議会に提出をするときが来るであろうと、こういうことをあえて附加えて、私の反対の討論を終ることといたします。
  40. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は労働者農民党を代表いたしまして政府提出昭和二十六年度予算案に反対いたします。  反対理由を要約いたしますと三点であります。その第一、我々参議院の予算案員は、実質的に参議院の意思を政府提出予算案に反映できないという状態の下において、予算案を審議せざるを得なかつたという点であります。    〔理事平岡市三君退席、委員長着席〕 言い換えれば、我々は政府提出昭和二十六年度予算案に対しまして、実際上修正もできなければ、否決もできなければ、そうかといつて審議未了にもできないという、誠に不合理な状態の下で審議を余儀なくされたのであります。これは明らかに憲法第六十條の不備、欠陥を現わしたものと思うのであります。これまで憲法第六十條のこの不備、欠陥が現実に現われなかつたのは、衆議院を通過した予算案が参議院に廻付されてからその年度末までに、その期間が三十日以間であつたからであります。今回の昭和二十六年度予算案は、初めて年度末までの期間三十日以前に参議院に廻付されて来たのでありましてこの三月二十八日、即ち、明日を経過してしまえば、参議院が衆議院と違つた議決をしようが、否決をしようが、審議未了にしようが、衆議院議決の通り予算案が成立してしまうのであります。このために二十六年度予算の審議に関しまして、著しい不合理と弊害が現われたのであります。その第一は、自由党が絶対多数を占めておる衆議院におきましては、年度末までの期間三十日以前に強引に予算案を通過せしめようとしましたために、野党の審議が十分盡されていないのに、衆議院の自由党は絶対多数の数を以て質疑を打切つてしまいました。国民生活に最も重大な影響のある予算案に対しまして、国民の代表者をして十分に審議せしめなかつたという弊害が生じたのであります。この第二の弊害は、参議院に予算案が回付される以前に、すでに実質的に予算案が成立してしまつたと同様でありましたために、政府は現実と全く遊離してしまつておる予算案を涼しい顔で参議院に審議さしておいて、少しも責任を感じていないということであります。特に政府の態度は、総理を初めといたしまして関係大臣の出席が悪く、又答弁は簡明に過ぎまして、或いは総理のごときは、先ほど官房長官から陳謝の意思がありましたように、議員の質問中に無断退席をしてしまう、こういうような参議院の審議を無視すみような状態を呈しました。極めて遺憾な点が非常に多かつたのであります。このような実情の下にありまして、我々は国民に対して、昭和二十六年度予算案を真剣に、十分に納得の行くように審議することができたと言えるでありましようか。今回現われましたような予算審議上の悪例は、今後の予算審議の上にも重大な暗影を投ずるものであると思うのであります。我々はすでに占領下にありますために、予算編成乃至予算審議の上に制約を受けておることは周知の通りであります。予算審議に自主性がないことは周知の通りであります。その上に更に憲法第六十條の不備、欠陥から制約をこうむるということになりますれば、参議院における予算審議の自主性は殆んど地を払つて空しくなると思うのであります。速かにこの憲法の不備は是正されなくてはならないと信じます。このような不合理な状態の下で審議を余儀なくされましたこの二十六年度予算案には、原則として賛成できないのであります。  反対理由の第二は、この二十六年度予算の裏付けとなつております日本経済自立三カ年計画が実質的に崩れてし、まつているということなのです。周東安本長官に対しまして我々予算委員は、この会議場を通じまして経済三カ年計画につきまして質問いたしたのであります。形式的には、数字的には平仄は合つているようでありますが、更に我々検討いたしましたところによりますれば、価格の面からと輸送の面からこの三カ年計画はもう崩れておるのです。そういう実情を十分に国民に知らしておらない。例えば輸送の面におきましては、二十六年度の輸入計画、パルキー・カーゴー、嵩ばつた荷物において千四百万トンの計画であります。これに対して船舶は三百三十六万四千重量トンを必要とするのでありますが、すでに船舶においては百九万六千重量トン不足しております。従つて積荷においては三百大十七万四千トンを超えるものが不足するのであります。三三%の不足であります。千四百万トンの輸入計画に対しまして三三%、船舶カーゴーを通じて、荷物を通じて不足している。これでどうして自立三ヵ年計画ができると思いますか。もう二十六年度のしよつばなにおいてこれは崩れているのであります。このことを国民に明らかにしておらない。あたかもあのペーパー・プランが二十年度予算裏付になつているがごとく政府言つておりますが、実際は崩れておる。そういたしますと重大な影響が現われて来ます。政府は三ヵ年計画におきまして、国民生活水準を昭和二十五年度におきましては昭和九—十一年の八〇%、二十六年度は八三%、二十七年度は八六%、二十八年は八九%、約九〇%にまで達成する。こういうことを政府は公約しております。国民はここに一縷の光明を認めておるのであります。現在生活は苦しいけれども、徐々に三ヵ年計画に基いて我々の生活水準が上つて行くということに一縷の光明を認めておる。にもかかわらず、もうしよつぱなの昭和二十六年度におきまして、すでに船腹の不足から三ヵ年計画がもう崩れておる。従いまして政府の言うところの国民生活水準の確保は困難になつておる。本年、二十五年度において昭和九——十一年を一〇〇として八〇%の生活水準を維持すると言つておりますけれども、それさえすでに崩れております。最近の物価騰貴、CPIの騰貴によつて崩れていることは周知の事実であります。このように昭和二十六年度予算の重大な裏付となつている自立経済計画がここに崩れている。従つて私はこの予算案に反対せざるを得ないのであります。  更に反対の第三は、この予算案が現実と全く遊離してしまつておるということであり、更に今後ますます遊離の度合が深まる公算が大きいと、こういう点でございます。この予算案の現実遊離は、先に申上げましたように、自立経済計画がすでに崩れておることも一つでありますが、その次には、政府が二十六年度予算の特色として、先ほど委員が指摘いたました総合収支の均衡を保ちつ財政規模の縮小に努めるということ、或いは国民負担の調整、軽減及び資本の蓄積の促進を図るために大幅な減税を織り込んだこと、こういう特色を政府は挙げておりますけれども、これが現実と違つておるのであります。即ち総合予算の均衡といいますが、実際は均衡はとれておりません。対民間収支におきましては、一千億以上の支払超過であります。この点につきまして政府は財政法二十八條に基きまして、国会に、昭和二十五年度及び昭和二十六年度の国庫収入見込というものを我々に配付しております。ところが我々に配付されたこれを見ますと、実際には違つておるのです。その数字は実際違つておるのです。従いまして私はその数字の訂正を要求したのであります。政府の総合収支の均衡を保つておるというその一番基礎の数字であります、基礎数字はこれは訂正を要求したのですが、未だに我々に提出しておらないのです。これは政府にその確信がない証拠であります。あつたら提出して頂きたいと思う。恐らく政府はこれはできないと思います。実際においては、本当は収支珍衡ではなく、支払超過になるために、昭和二十五年度も二十六年度もなるために、我々に本当の数字をここに示すことができないのであります。未だに提出しておりません。これは全く確信のない証拠であると思います。更に財政規模の縮小につきましては、先ほど委員会からも指摘がございましたが、中央、地方を通じました財政規模におきましてはこれは殖えておる、一般会計だけでなく、財政規模という場合には、地方財政も含まなければならない、中央、地方を総合いたしますれば縮小になつていないのであります。又一般会計の予算規模の縮小につきましても、先ほど社会党の佐多委員も指摘されましたが、当初の公約と反しておるのであります。この矛盾を隠すために政府は財政規模の縮小という意味を、国民所得に対する一般会計の割合であるということに意味をすり変えたのです。財政規模の縮小とは、常識から言つて予算額の絶対的縮小を意味するのであります。事実が違つて来ましたから、政府は最初は予算額の絶対額の縮小と言つておきながら、しまいには国民所得に対する比率が減ることが財改規模の縮小であると、こういうふうに説明して、すり変えて来てあおる、これは一般常識でありまして、誰に聞かしても財政規模の縮小という場合には、予算の絶対額が縮小することである、国民所得に対する比率が縮小する場合には、註釈をつけなければならないはずであります。このように政府は財政規模の縮小に対してこれをすり変えて、ごま化しておると我々は見ざるを得ないのであります。  次に国民負担の軽減と言つておりますが、これを更に政府言つております資本蓄積のための大幅な減税とは矛盾撞著しておるのであります。資本蓄積を名目とし、これに便乗する法人、高額所得者に対する大幅減税及び大規模の合法的脱税の容認は、国民負担の軽減のための減税を犠牲に供しておるのでありまして国民の税負担の不小平をますます深めるのであります。特に国民負担の公平を期するために設けられました富裕税の申告成績が著しく悪いということは、国民の納税思想に重大な悪影響を及ぼすと思うのであります。富裕税二十五年度におきまして二十億、申告されたのが未だに三分の一である四万五千人の人数、これに値しても申告した人は極めて少数であります。このようにすでに予算編成当時におきましても、二十六年度予算は実際と遊離してしまつておるのであります。更に二十六年度予算が現実と遊離しておる点は、具体的には支出面にはつきりと現われております。昭和二十五年十二月十六日に米国が非常事態宣言を発表しました以後における国際物価の急騰に基く著しい国内物価高を織込んでいないのであります。政府は朝鮮動乱による物価騰貴は職込んだと言つておりますが、或るほど昨年十二月までにおける物価騰貴は織込んでいると思うのであります。併し、今日までにおける日本の物価騰貴は二段階を経ておりまして朝鮮動乱が起つてから昨年末までと、アメトカが非常事態を宣言した後における物価騰貴と、特にアメリカが非常事態を宣言した後における国際物価の騰貴は著しいのでありまして、我が国の最近の物価の騰貴はこの影響を受けているのであります。ところが、この二十六年度予算にはその著しい物価騰貴を織込んでおらないのであります。安本の総合市場物価指数によりますれば、昭和二十五年六月二十四日、即ち朝鮮動乱直前を一〇〇といたしまして、本年三月十日現在では一六六、即ち六割六分も騰貴しております。このために、予算編成の前提となるべき米価の算定の基礎であるところのパリティ指数は、二十六年度産米につきましては二二一五から二三〇ぐらいになる見込でありまして、この二十六年度予算に織込んだパリテイ指数一九五・五との間に一%以上もズレができてしまつているのであります。更に食糧輸入価格は、政府当局説明におきましても、現在においてすでに予算単価よりもトン当り平均十ドルも高くなつているのであります。現在すでに十ドルも高くつなている。このような状態のために食糧輸入補給金、公共事業者費、地方財政平衡交付金に著しい不足を生じまして、当初計画が実行できなくなつているのであります。従つて予算の根本的組替えを行わなければならない状態にもうなつているのであります。特に地方財政平衡交付金、或いは地方債の起債については、当初予算においてさえ地方財政委員会の勧告との間に大きな、約九億の開きがあるにかかわらず、更に最近の物価騰貴を考慮に入れますれば地方財政の不足は更に大きくなりまして、そのしわは地方の教職員、或いは農民に大きく寄せられることになるのであります。このように二十六年予算はいよいよますます現実から遊離するようになつて来るのであります。  更に、二十六年度予算案が現実と遊離しておりまする具体的な面、歳入の面にも現われております。つまり税制改革が、国民所得の著しい変化に対しまて、ますます適合しなくなつているということであります。要するに減税による国民負担の軽減は、先ほど委員の指摘いたしました通りにいよいよますます名目的となりまして、実質的にはむしろ増税となつてしまつているあります。例えば政府は七百億円の税法上の減税によりまして米価の消費者価格の引上げを考慮に入れましても二、三%の家計負担の軽減となるという資料を我々に提出いたしましたが、東京都の消費者物価指数CPIは今年一月当時において予算編成当時よりもすでに一割以上も上昇しておるのでありまして、基礎控除、扶養控除が物価騰貴に応じて引上げられない以上、明らかに家計負担は増加するのであります。而も、時局的に最も多くの所得増加をもたらしておる法人、高額所得に対しまして、むしろ大幅減税をするという矛盾がなすなす現われるに至つておるのです。法人税の軽減につきましては各委員がこれまで指摘いたしましたが、すでに政府は二十五年度予算におきましても至れり盡せりの保護をいたしております。例えば地方税におきましては、これまで所得割の課しておつたのを、所得割をやめてしまいまして、例えば百万円も地方税を納めておつた法人は、今度は東京都ならば千八百円でいいと、こういうような著しい軽減を行うようになつておるのであります。而も法人に対しては累進課税を二十五年度はやめてしまいまして、三割五分の比例税だけであります。その上に今度の税制改革におきまして政府はいわゆる資本蓄積ということに名を借りて便乗をいたしまして、法人の通常の積立金課税を廃止する。再評価積立金の資本繰入を今年度中に実行する。これなどは前のシヤウプ勧告において三年間資本に繰入れてはいけないとなつておつたのを繰入れてしまつて、而もこれに対して配当をする。こういうことをやろうとしておる。又先に再評価を行わなかつた者、或いは再評価が不十分であつた企業に対して更に再々評価の途を開く。そうして資本の減価償却をうんとたくさんやらしてやる。固定資産の償却年限を一般的に短縮する。こういうふうに資本に対しては、至れり盡せりの保護をしようとしておる。ところが時局的に見て最も所得が増加しておるのは、この法人であります。更に又時局的に見て最も多くの所得増加をしておるのは高額所得者、配当を受けておるような人たちであります。そういう人たちに大幅な減税をするのであります。而もシヤウプ博士が合法的な脱税であるとしてこれを取締らなければいけないと言つておる預金利子に対する課税、いわゆる預金の源泉選択課税を認めようとしておる。これは一種の合法的脱税を認めることである。貯蓄増強上必要であるからこれは止むを得ないと言いますけれども、若し貯蓄増強上この源泉選択課税が必要であるならば、合法的脱税はどうして押えるかいうことを政府は具体的に示すべきである。富裕税の課税につきましても、銀行預金についても政府はこれを調べようとしたのであります。その法律まで作つておきながらこれをやめてしまつた。そうして申告税にしましたから、先ほど申上げましたように、富裕税の申告は実に成績が悪い。こういうように法人とか、或いは高額所得者に至れり盡せりの保護をしておる。而もこれを資本蓄積の名によつて行なつておる。成るほど資本蓄積は大切であります。そんなに資本蓄積が大切ならば、資本に対してそういう積立金の課税を廃止したり、再評価を認めたりして社内にたくさん蓄積させた場合、これをどんどん社外に配当増加によつてこれを分配してしまうことを禁ずべきであります。最近の事業会社の配当増額は著しいものであります。配当は御承知の通り不労所得である。その不労所得の配当に対しては二割五分、税金からこれを軽減しておるのであります。こういうふうにして勤労所得、額に汗して働く所得に対しては課税を重くして、いわゆる不労所得、寝ころんでいても懐に入つて来る、そういう人たちに対して二割五分を配当から軽減する。而もその配当の元になるところの資本の蓄積、社内保留、再評価、こういうものに対しては非常な減税をするというような著しい矛盾を犯しておるのであります。これは政府がいうところの租税負担の公平化、或いは国民に対する税負担の軽減というものと全く矛盾しておる、この点においてもますます二十六年度予算の現実との釣合いをぼかしておるのであります。而も今後の国際的、国内的なインフレ要因を考慮に入れますれば、蔵入蔵出両面の現実遊離の姿がいよいよ激しくなる公算が大なのであります。これに対して二十六年度予算は一応認めて、不足分に対しては次に補正予算を組めばいいという意見が一部にございますが、こういう考え方が私は財政法の精神に反しておると思います。なぜならば、第一に、二十六年度予算案は、もう実行へ移す前にすでに情勢の著しい変化が生じて参つておるのでありますから、この予算を実行する年度初めにおいて根本的に組替えるべきである。言うまでもなく予算は年度初めにおいて一カ年の予算を組むのであります。予算案は予算の一部を暫定的に組むというものではないのでありまして、本予算は年度初めにおいて一ヵ年の予算を組む。この組むに当つてすでに現実の情勢が全く変化しておる、こういう場合にこの三十六年度予算を、これを一時的な、部分的な暫定予算として審議するわけには行かないのでありまして、これは根本的に政府が組替えて国会に出すのが常道であります。財政法の精神から言つて常道であります。それを政府が怠つたということは、地方選挙を控えて、或いは今後のいわゆる講和待ちというような情勢から、極端に言えばいいからかんな、情勢の変化にもかかわらず全く現実から遊離をした部分的な、而も暫定的な姿の予算を我々に審議せしめた。従いまして補正予算を組めばいいというような性質のものではないと思います。それから第二に、情勢の変化によつて予算案は量的にも質的にも変化を余儀なくされた、即ち量的とは予算の規模、金額の面でありますが、それならばただ補正予算予算金額を殖やしたならば辻棲が合うかも知れませんが、そうでなく、質的にも変化を生じたのである。即ち国民の所得の配分関係は、この時局的な、或いは物価騰貴を通じて根本的に変つている。時局的に潤おう人にうんと所得が偏在して、そうして時局的に潤おわない人に所得が非常に減少しておる。総体的に国民所得の偏頗が生じておるのであります。こういうことを基盤として予算考えて、ただ予算を部分的に継ぎ足したらいいという性質のものではないのであります。本質的にこれを組替えなければならない。これを政府がやらないのは怠慢である。我々は飽くまでも組替えの要求をするのが当然であると思うのであります。このように政府の二十六年度予算案は、現実と遊離してしまうのであります。  反対の第三点は、予算と密接な関係にある金融の面であります。即ち特に政府資金の使用について政府は非常な矛盾を犯しておるのであります。大体見返資金特別会計におきまして七百何十億の使途不明の予算を我々に示している。それでこれを承認せよということは、これは国会議員を愚弄したものであります。国民を愚弄したものであります。何に使うのだかわからない予算七百何十億を予算に計上しているということは、そうしてこれを審議し、これを承認してくれということは、政府に対して財政資金の使用の独裁権を与えたようなものでありまして、民主国家においてこういうことを容認するということは誤りであると思います。この一点からも私は政府はその責任を糾弾されなければならない、こういう非民主的な財政の組み方、予算の組み方というものはないと思います。而も最近明らかになりましたことは、開発銀行に百億円、第七次造船に対する資金七十億円、こういう資金を見返資金から賄う。而も見返資金で賄つてその尻を百二十五億預金部資金のほうに持つて行こうとしている。言い換えれば零細な貯蓄による預金部資金を以て開発銀行或いは第七次造船のほうに転用するということなのである。そういうことによつて非常に地方財政が困つている、地方債の起債に困つている。そつちのほうには放つておいて、そうして開発銀行或いは第七次造船のしわが地方財政のほうに寄つて来ているのです。開発銀行の資金或いは第七次造船資金が不必要であるとは言いませんが、そういうやり方によつて財政資金を使うべきものではないと思います。預金部資金の、これは資金運用部資金の運用に対する違反であります。いわゆるマーカツト書簡におきましては、預金部資金は先ず第一に国債とか地方債とかそういう方面に使つて、残りがあつたなら、余裕があつたならばほかの産業のほうに使つていいということになつているのです。而も地方におきましては地方債の起債が少いので非常に困難をしている。そういう場合に地方債の枠を拡げないで、その資金を開発銀行や第七次造船のほうにこれを移してしまう、具体的には形としては見返資金から出るような恰好になつておりますが、見返資金で持つておりますところの短期資金を、食糧証券その他を預金部のほうに持たして、そうして結局預金部のほうからそういう資金を賄うというような実情になつておる。政府の金融政策、或いは政府資金の使用の姿はこういう形で地方財政にしわ寄せしておる。更に又いわゆる日米経済協力の体制の具体化によりまして或いは日立とかその他いろいろな会社が注文すをるために相当の資金需要が起つております。こういう資金を調達するために日銀の貸出が中小業者に対し、或いは農漁民に対する金融の枠が制限されて来る。政府の金融政策は日米経済協力体制というものを実行することによつて中小業者とか農民とか、そういうほうが犠牲になつて来る丁寧戰争中のように重点産業のほうに優先金融をする犠牲がすでに現われて来ておる。こういうような金融政策はこれは改めなければならないと思う。二十六年度予算と密接不可分のこの金融政策におきましても、政府は著しい非民主的な政策を行なつておるのであります。こういう点からも我々はこの予算にどうしても賛成することができないのであります。  私のほうの党といたしましては、二十六年度予算の編成の基本方針として、先ず第一に何よりも総合的なインフレ防止対策を立てなければならないということを主張しております。この総合的なインフレ防止対策が立たなければ、仮にここで二十六年度予算をこれで編成して見ても、又これは現実と遊離してしまうのです。ですから二十六年度予算を編成するためには、先ず第一に何よりも必要なことは、総合的なインフレ防止対策を講ずる。そのインフレ防止対策というのは、その一つとしては海外のインフレを防止する措置を講ずること、先ほど深川委員からも主張がありましたが、海外物価騰貴を日本で防がなければならない、この措置は一つもとられていない。更に第二のインフレ対策といたしましては、財政、金融経済全面に亘りまして我々が年来から主張しているところの社会主義的な統制を全面的に実行しなければならない、今こそそういうことをすべき段階にあると思うのです。そういう形においてインフレを防がなければならない。第三に輸出と民需と、それから特需と、これから現われようとしておりますところのいわゆる日米経済協力に基く新特需との調整を図りまして、国民生活水準を、政府の自立計画において示している通り二十六年度において昭和九—十一年に対して八三%をどうしても確保するという措置を講じなければならん。こういう総合的インフレ防止対策を基盤にいたしまして、歳出面におきましては新らしい物価情勢に対応しました予算の全面的な組替えを行う。地方財政平衡交付金の増額を行う。民生安定のために給与ベースの引上げを行う。而もこれによつてインフレの悪循環を来たさないように政府はこの歳出増加の財源といたしまして、歳入対策面におきまして超過所得税の増加を行うべきである。更に又資本蓄積に便乗するところの法人税の軽減や高額所得者に対する減税、これに反対するものであります。而も物価騰貴を通じまして国民所得が変化したのに応じて、低額所得者に対する税金の実質的な軽減を図らなければならない。こういう基本方針に基いて二十六年度予算は編成されなければならないと思うのです。詳細な具体策につきましては、時間がございませんので、又各位に御迷惑と思いますので、ここで述べません。省略いたしますが、我が党といたしましては以上の予算編成方針によりまして二十六年度予算を編成しなければ、経済自立の達成もできませんし、国民生活の安定は期し得られません。こういう意味から我我の予算編成方針と基本的に違うところのこの政府提出の二十六年度予算案に対して私たちは賛成することができない。私は断乎これに反対いたすものであります。
  41. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表しまして、只今上程された昭和二十六年度予算三案に反対するものであります。敗戰以来すでに五ヵ年余を経過しまして、日本人民はその完全な主権の回復と平和の確立のために一日も早く 講和が結ばれることを熱烈に要望しているのであります。ところでこの講和には二つの途があります。そのいずれを選ぶかということは、日本民族の将来と運命を決する重大な問題であります。二つの途というその一つは、日本の自衛と安全保障の名の下に国際協定を破り、ソ同盟や中華人民共和国を敵として単独講和を結び、日本に外国軍隊の駐屯を認め、更に日本みずからを再武装に駆り立てようとする途であります。これはダレス・吉田会談以後次第に具体化されつありまして、吉田自由党の内閣の根本政策となつているのであります。だが、これは講和ではないのである。日本をアジア侵略の前進基地として、日本の政治、経済、文化を挙げて外国に隷属せしめ、その結果は戰争に導き、日本民族を破滅させるところの途であります。他の一つの途はポツダム宣言の基本方針に沿いまして、ソ同盟、中華人民共和国を含むところの四大国と会議協調による全面講和を結び、日本から全占領軍の撤退を求め、日本の民主主義を非武装化を飽くまで守り抜かんとする途であります。これは日本共産党の根本政策であり、日本の人民は勿論、平和を愛好する世界の圧倒的多数人民の要求であります。今、国内におきましては再軍備に反対し、全面講和を望む人民の要求はますます熾烈となつております。そうして全国津々浦々にこれが拡がつております。これこそは一切の信條や利害を超越して、日本の将来を憂え、民族の独立を熱望する愛国者の声であります。然るに吉田内閣は秘密外交を固守しまして、人民を欺き、ソ同盟中華人民共和国を仮想敵国親しまして、国際帝国主義者に媚び、単独講和を推し進めようとしているのであります。それ故にこそ、吉田総理は、国では全面講和が望ましいとしばしばこの委員会においても述べたのでありますが、事実は何らそのために努力するところがなくて、却つて言論、出版、集会の自由を剥奪し、全面講和運動を弾圧しているのであります。  ところで、本予算はこのような吉田政府の集中的現われであります。これは日本人民のための予算というよりも、外国のための予算の性格が強いのである。先ず第一に、私がこの予算につきまして指摘したいことは、日本が外国の作戰基地とされ、日本人民は外国の傭兵とされるということであります。その第一点としまして終戰処理費一千二十七億を挙げることができます。日本人民は終戰後すでに四十億ドルの終戰処理費を支払つて、その額はアメリカの対日援助費二十三億ドルを遥かに上廻つているのであります。今まではこの重い負担も、日本民主化のために必要な経費と思えばこそ、歯を食いしばつて人民は堪えて来たのであります。併し終戰後すでに六カ年、講和がますます近付きつつある今日、一体一千二十七億一般会計の一五、六%を占めますところのこの莫大な占領費がなぜ必要であるのでありますか。政府予算委員会において私の質問に対しまして、終戰処理費は、日本政府の責任と自立性において組んでおるということをしばしば答えておりますが、その細目でついては何ら明らかにすることがないのであります。そうして二十五年度と殆んど同様だということを繰返しておるのみであります。  併し二十五年度を見ますと、朝鮮事変後終戰処理の支払は増加し、兵器物資として戰車の費用その他に百十五億、運輸物資としまして船舶の費用その他に百二十五億等が支出されておるのであります。朝鮮事変後、終戰処理費で建設され、或いは補強されました基地から爆撃機が飛び出し、又軍艦が出動しておることは周知の事実であります。日本人民が終戰処理費は占領費のみでなく、作戰費にも使われておるのではないかというような疑問を起すのは当然と言わなければなりません。若しそうでないと言うならば、政府はその内容をつまびらかに国民の前に明らかにすべきだと私は思うのであります。又これに対する国民の要求が起つておるのでありますから、本当に政府の言うように、自立性を持つてこの終戰処理費は組んでおるのならば、もつともつとこれは関係方面にも折衝して、これに対するところの削減を図るべきじやないかと私は考えるのであります。  現に西ドイツの例でございますが、西ドイツにおきましては、この終戰処理費の使用に対しまして、国会に調査委員会なるものが設けられ、つまびらかにこの内容を検討した結果、大幅の削減がされたという事実が伝えられているのであります。  更に終戰処理費の問題と関係しまして、ここで申上げなければならないのは、最近米国の州兵ニヵ師団が日本に新たに派遣されることが日程に上つておるという事実であります。これは一体何のための、どのような性格を持つた軍隊であるか。これらについて外人記者ロバートマーチンの伝えるところによりますと、州兵派遣は過日のダレス、吉田会談の結果であつて、その目的としましては大略次の四点を挙げております。  即ち、一、新兵の訓練には日本が最も好適地であるということ。第二としましては、緊急の事態が起つた場合、日本を満州、中国本土、若しくはソ連の原爆施設地帯の爆撃基地として確保せねばならないということ。第三としましては、第三次大戰が起り、米軍が若し朝鮮から撤退しなければならんような場合に、戰術上日本の基地を飽くまで確保するという必要があるということ。第四に、中共が台湾を政略する場合、必要があれば州兵をその防衛のため移動させることなどであります。ロバートマーチンのこの指摘が正しければ、これは明らかに占領軍ではなくして戰略軍であることはいうまでもないことであります。目下日本はポツダム宣言による占領下にあります。日本に駐屯する外国軍隊は、日本を民主化し、非武装化するための占領軍のみであつて、断じて防衛軍や戰略軍などであつてはならないのであります。而もこの州兵駐在の費用がどこから支出れさるものであるか。これらの問題につきまして、私は吉田総理に質したのでありましたが、総理は、終始答えられないの一点張りであつたのであります。これは日本人民のために甚だ不忠実な態度と言わなければなりません。吉田秘密外交の正体がまさにこれである。総理は二言目には侵略とか防衛とかと言つていますが、そもそも日本は今どこから侵略の脅威を受けているでありましようか。ソ同盟でしようか、それとも中国でしようか、何よりも明らかなように、これらの国は日本に軍事基地を持つていないのであります。それどころか、人民の生活の無限の向上と平和政策を一九一七年の革命以来一貫して堅持しているのがソ同盟であります。然るに外国の侵略に名をかり、自衛確保の名分を以て、兵を大陸に推し進め遂に野蛮な侵略戰争に人民をかり立てたのが日本の帝国主義者どもであつたのであります。現にこれにつきまして第九十帝国議会の新憲法論議におきまして、時の総理、吉田総理は、近年の戰争は多くは国家防衛権の名において行われたことは顯著な事実であります。故に正当防衛権を認むることが、たまたま戦争を誘発するゆえんであると思うのでありますと答えまして、帝国主義侵略戰争のよつて来るところを明らかにし、みずから進んで戰争放棄の確信を語つたのであります。然るに今同じその総理が、外国の侵略を説き、自衛のための外国軍隊の駐屯を、人民と我々国会には何な諮らず、独断的な秘密外交によつて暗々裡に推し進められているとは何たる矛盾でありましようか。この道はいつか来た道という歌があります。果して然らば、吉田総理とその内閣は、曾て日本の帝国主義者どもが歩んだ破滅の道を再び歩もうとするのであるか。而もこのことは、国際帝国主義者の手先として行われることによつて、事態は一層深刻であると言わなければならないのであります。こうして終戰処理費を以て建設された基地に外国軍隊がそのまま居坐り、治外法権を認めようというのが吉田内閣の単独講和の実体であります。而も問題は終戰処理費だけではない。公共事業費の名の下に、軍事目的を持つと思われる道路や港湾、レーダー基地などが建設されるのであります。  更に又警察予備隊及び海上保安庁があります。今日これが日本陸海軍の復活であることを疑う者はもはや誰もいないと思うのであります。街を歩いている彼らの姿を見れば、どこの国の兵隊かと疑わざるを得ないのであります。ただ違うことは、その給与がアメリカの兵隊の十二分の一に過ぎないということだけであります。吉田内閣は国際帝国主義者のための人的資源として、この安上りの、この安上りという言葉は、アメリカの国会において国会議員が話された言葉でありますが、この安上りの軍隊を更に増強しようとしつつ、その費用がすでに予算の中に隠されているのであります。即ち使途不明の見返資金、経済再建費七百五十四億円、資金運用部の余裕金四百三十億円、又いつでも流用できる外国為替資金、いわゆるインベントリー・ファイナンスの五百億がこれに……更にこれに加えまして講和後当然なくなる終戰処理費を加えますならば、その全額は実に三千億近くにも達するのであります。これは単に我々が指摘するだけではなくて、衆議院の公聴会におきましても、公述人がすでに明らかにしたところであります。  本予算案の特徴的な性格として第二に我々の指摘したい点は、日本の産業が西欧の軍拡経済の一環として編入され、アメリカ経済の下請となるということであります。現在日本の軍需工場や旧軍工廠が、ポツダム宣言や極東委員会の諸決定に違反して続々復活され、朝鮮作戰のための兵器廠化しようとしていることは明らかであります。すでに一億四千万ドルに達する特需の多くは戰争のための資材であり、とりわけ純軍需品であつて、鉄條網は一千五百万ドル、ロケット弾の部分品が百三十八万ドル、兵舎が七百六十万ドル、軍用自動車が千七百万ドルに達し、その他兵器の修理加工料は二千五百二十五万ドルに上つているのであります。最近の報道によりますと、この軍需生産は更に拡大され、いわゆる日米経済協力の名の下に、アメリカ軍拡経済の下請にしようとする動きが進められているようであります。ダレス氏が帰国の後、アメリカ国務省に宛てた報告書の中で、砲の照準器、双眼鏡、パラシュートなどを製造するために、日本の労働力と生産設備を利用することは、西欧にとつても重要であり、このような日本の、軍事的寄与の基礎となる日本の経済力は、できるだけ速かに復活さるべきであると言い、又三月十日のワシントン発のUP通信の伝えるところによりますと、日本は極東反共陣営の工場として、極東地域における米国の同盟国への物資供給に寄与する用意があることを疑わないと述べ、更にインドシナに戰つているフランス軍に供給するため、日本に貨物自動車その他の軍需資材を製造させることになるであろうと言つているのであります。最近総司令部では日本産業の生産能力調査を政府に命じ、日本政府のほうも緊急経済政策なるものを立案しているということが伝えられています。これによりますと、日本の生産計画は、安本の自立経済三カ年計画の最終目標を遙かにオーバーするのみか、太平洋戰争中の生産水準にも匹敵するものがあるのであります。その中でもアルミニウムのごときは二十五年度の二方五千トン、自立計画の三万五千トンに対しまして安本の操業見込は五万六千トン、総司令部の指示額は十一万四千トンといわれています。そうしてこれは昭和十六年の七万二千トンを遥かに凌いでいます。その他重要戰略物資についてもほぼ同じようなことが言われるのであります。政府予算委員会におきまして私の質問に対しまして、この事実を頭から否定しているのでありますが、安本の資料によりますと、戰時中爆撃によつて大量に破壊されたのは、むしろ大衆の住宅であつて軍事潜勢力となる産業設備は、その一部分を除き、大部分がまだ温存されているのであります。更に又終戰後、歴代内閣の反人民的政策の結果、労働者、農民、中小企業を犠牲にして生産は上昇し、生活水準はまだ戰前の七〇%にも達していないのに、生産指数はすでに一一五%を突破しているのであります。而も本予算にはこのような日本産業の軍事的復活を大幅に助長するような支出が大量に計上されているのであります。即ち見返資金の私企業投資三百五十億は、主として電力、造船、鉄鋼等その他重要産業に投ぜられ、資金運用部資金のうち金融債引受四百億、特別会計貸付二百七十億等は緊急時局産業等に振向けられようとしているのであります。政府は更に見返資金百億を投資しまして開発銀行を創設し、これによつて軍拡産業の受入体制を強化しようとしているのであります。又緊急物資職人基金二十五億、輸出銀行出資百億等はいずれもこれらの目的のために振向けられことは明らかであります。一方電力開発その他重点産業のために外資導入が伝えられ、政府はその体制を整えるため、目下外資導入法その他関係法案の改正を急いでおります。又労働力の受入を強化するために、青少年の技術養成を目的とすると思われるような教育法案が着々準備されているのであります。これは約二百億に達する経費を予定するといわれておりますが、戰時中の学徒動員の地均し工作であると言わなければなりません。これらの一連の計画を総合して考えますときに、いわゆる日米経済協力の国内体制は刻々進められつあるものと断ぜざるを得ないのであります。而してその狙いはどこにあるのであるか。吉田総理はダレス氏が帰国されてからしばしば、今は再軍備をやる時ではない、日本の経済状態がそれを許さないということを述べております。だが問題は、再軍備よりも日本の産業構造にかかつているのであります。すでにアメリカ経済の一環として日本の産業がますますその軍隊的下請工業の形態をつて、戰時中にも匹敵する規模に突入するとすれば、当然そこに起ることは、民需へのものすごい圧迫であります。この際民需が昭和二十五年度の線で押えられると言われておりますが、恐らくこれは不可能になることは明らかであります。従つてそこには生活必需品の欠乏により物価は物凄く高騰し、いわゆる戰時インフレの様相を呈することは明らかであります。当然実質労働賃金はこれと共に低下し、これが苛酷な税負担、労働強化等ともからんで著しく労働者、農民、中小企業者生活を窮乏のどん底に追い追むことは必至であります。曾てあの馬鹿げた太平洋戰争によりまして、多大の犠牲に曝された日本国民が、こうした戰時的な経済体制に対しましてはもう懲り懲りであります。ところが今又このような経済体制が秘密のうちに推し進められ、大衆がそれと気が付いたときはすでにもう遅く、のつぴきならない既成事実によりまして、国民の生活ががんじがらめにされ、そのとき再軍備云々を論じても、もはや意味がないのであります。事ここに至つては、もはや再軍備は必至であります。単独講和を控えた今は、刺激の多い軍備論はやめて、経済協力で行こう、これが吉田内閣の真の狙いでないと、どうして言うことができるか。だからこそ政府は、日本がアメリカの下請工場となり、兵器廠のアジア支部と化すことによつて多額の援助を受け、あたかも日本経済が隆々と栄えるかのような宣伝に憂身をやつしておるのであります。だが事実はむしろ反対であります。朝鮮事変後帝国主義者は恐慌を回避するために、戰後未曾有の大軍備拡張に乗り出したのでありますが、世界最大の資本主義国であるアメリカにおきましても、すでに一部の生産が頭打ちとなり、原材料も又逼迫しているのであります。而もソ同盟を先頭とする世界民主勢力の平和攻勢によりましてウォール街の株もしばしば大暴落を来し、錫、ゴム等の重要戰略物資等も暴落している有様であります。インフレーシヨンの進行と共に、その状態は極めて不安定であり、矛盾に満ちていると言わなければなりません。日米経済協力とはその矛盾を日本に転嫁し、日本人民と産業の犠牲においてこれを解決せんとするものでつあります。これは日本の賢明な業者の間にもすでに気付かれているところであります。例えば関西の資本家団体では、これに対してインフレーシヨンと跛行景気が激化し、漸次統制が強行されることを憂えております。又アメリカは大量の肉を調理させてくれるが、果して腹の空いた調理人にどれほどの肉を食わせてくれるかと嘆いているのであります。最近では経団連の石川会長すら、余り有頂天になつて生産設備の拡張に狂奔しないほうがよいという警告を発しているのであります。そうしてこれらの不安の底には、絶えず日本の工業が朝鮮のそれと同じ運命を迫るのではないかという危惧の念がつきまとつているのであります。従つていわゆる日米経済協力とは如何なる美名に飾られようとも、それは日本にとつて植民地的略奪経済を意味し、その前途には地獄の劫火が燃えさかつていると言わなければならないのであります。  第三に私の指摘したいことは、地方財政の破綻の問題であります。  以上述べましたように、国家財政の軍事的、大衆収奪的予算の性格は、一方物凄く地方財政に皺寄せされておるのであります。地方財政の問題につきましては、他党の諸君もしばしば触れられたのでありますから、私はそのよつて来た原因を簡単に指摘して見たいと思いますが、先ず第一に行政事務の再配分によりまして、地方自治体の事業が非常に増加し、又軍事と港湾施設、警察消防、徴税費等の増大によつて、その財政支出を著しく膨脹させた結果であります。これを例えて言いますと東京横田の航空基地近くの福生町では、町の予算の九〇%以上が、警察消防費であり、神奈川県では軍事輸送によつて破損した道路の修繕費に莫大なる経費を要し、それが県財政赤字の一原因となつておることは、衆議院における公述人の述べておるところであります。  第二には、シヤウプ勧告による地方税制改革で、徴税は却つて困難になつたことであります。例えば昭和二十五年十二月末における国税徴収成績を見ますと、これは六四%でありまするのに、府県税では僅かに四三%に過ぎない有様であります。  第三には、国庫から当然支出さるべき費用が削減されていることであります。
  42. 吉田茂

    ○吉田内閣 地財委の控え目に過ぎる要求をさえ、これを無視し、平衡交付金、地方債を大幅に削減し、税外収入という架空の数字を十倍にもでつち上げて辻棲を合わしておるのであります。本国会における自由党を除く参議院全野党は、一致しましてこの要求を掲げたのでありますが、最少限度、それは最小限度これらの財政欠陥を埋めようとする手段であつたのでありますが、この当然過ぎる要求も遂に頑冥な政府の容れるところとならず、ますます地方財政の破綻をあらわにしておるのであります。このように今日地方財政の無視は、吉田自由党内閣の大罪悪の一つとして国民の間にすでに常識化されておるところであります。この平衡交付金、地方起債の大削減の結果何が起つておるか。  先ず第一に挙げなければならないのは、地方税は百七十八億も増徴され、取り分け住民税は三倍から四倍に増加し、保険料までが新たに国民健康保険税として強制されておるのであります。而もこのような住民の生活をはだかにする大増税によつても、地方公務員や教職員の生活は保障されず、大概はそのままに放置され、生活保護、失業対策等、人民の文化、福利厚生事業は全く放置されておるのであります。  そのうち特に甚しいのは地方財政の四二%を占める教育財政の破綻であります。先ず教職員のべース改訂、年末手当、級別推定表による格付等が行われないのみか、六三制の校舎建築費の大幅削減によりましては、二十六年度の自然増加兒童数さえ完全に吸収することができないという事態が生じているのであります。その結果は二部、三部教授などの強化によつて、一層一学級の兒童数を増加し、これは戰争にも勝る大量生産的な、個性沒却の教育に逆転せざるを得ない実情にあるのであります。これこそは人間を物量化し、肉弾化したところの曾ての戰時教育の復活であり、日本をしてアジア反共軍の人的資源の供給源にしようとする政策の現れであると言わなければなりません。この点につきまして私は予算委員会で天野文相の意見を質したいのでありますが天野文相は、この欠陥は教員の精神力の高揚によつて埋めたいということを答えられているのであります。これこそは大東亜戰争華やかなりし頃の流行語と何ら選ぶところはない。こういう事態が起つているのであります。  以上で明らかなように、昭和二十六年度予算は徹頭徹尾軍事的予算であり、反人民的な予算であります。このような予算に心ある人間が反対し、この予算の底を流れる単独講和と戰争への途を阻止し、民族の独立と平和のために全面講和を求めて起ち上ることは当然であります。然るに吉田内閣はこれら民族的目覚めによる人民の行動を、間接侵略なりと誹謗し、治安撹乱と喚いて、警察予備隊、特審局、刑務所、税務署等を拡充強化しているのであります。これらの費用は実に全国家予算の約一〇%に及んでおる有様であります。最近は又、警察では人民断圧のために催涙ガスさえ使用させようとしておる事実があります。これはなぜこういうことをしなければならないか、これは言うまでもなく吉田自由党内閣が、みずからの売国的政策が人民の手によつて暴露され、攻撃されることを恐れてこれをごまかさんとする手段であることは余りにも明らかであります。殊にこれら戰いの先頭に立つ日本共産党を敵視し、最近は非合法化の企みを推し進みでいるのくであります。併しこれこそはあらゆるデマや事件を捏造して、人民の手から共産党を切離さんとする陰謀にほかならないのであります。若し我々の言動に対して非なりと考えるならば、堂々と国会の論議を通じて人民大衆の前に明らかにすればいいのである。然るに本予算の審議に当りましては、首相を初め関係閣僚の出席が非常に悪かつたことは、先ほども木村委員によつて指摘されたところでありますが、問題が人民の代表として、当然我々の聞かんとする要点に触れて来ますと、或いは黙秘権を行使して語らない、或いは中途にして退場するなどという非礼をあえてしておるのであります。これこそは、まさに憲法並びに民主主義の否定であると言わなければならない。共産党非合法化の陰謀が、このようなみずからの不合理を棚上げにし、それを隠蔽するために、明らかなこの煙々然としたところでは何ら論議を盡されることなく、蔭からのこのようなことが行われるとするならば、これは明らかに吉田内閣の暴力的自殺行為であると、我々は断ぜざるを得ないのであります。我々は権力の暴圧の前に断じて卑屈であつてはならない。これこそは大東亜戰争を無謀にも許した曾ての日本人のありかたであり、又再びこれを繰返してはならないのであります。道義は飽くまでもこれを尊重されなければならない。然るに本年度の予算の中にも予算を審議しながら、実に我々の不快に堪えない幾つかの問題があるのであります。例えば鉱公団の補填十六億、こういうものは曾て新聞で問題になりましたあの早船のつまみ食い事件、或いはめくら貿易によつてできました欠陷の補填でありますが、こういうものが一方におきまして放置されておる。而もそれにもかかわらず、こういうものには相当な、莫大な補億がなされており がら、一方では公務員のベース改訂とか年末手当とか、こういうような問題に対しましては、殆んど顧みられない。これはこの公聴会におきましても婦人の代表が切々として述べられたところであります。又競馬や競輪、オートレース、或いは宝くじ、いわゆる賭博行為に類するもの、こういうものに対しましては約五十億の税収を見ておるのでありますが、一方におきましては民族の道義の高揚、愛国心の高揚を説いておるのであります。この二つの矛盾、こういうものにつきましては我々は了承することができないのであります。  更にこれに類似した問題は、最近の吉田内閣の倫理観というか、或いは政治道徳というか、こういう点について明らかにされなければ、この予算の審議とも連関しまして非常に重要な問題であると思うのであります。その一例としまして、例えば歯舞の、ヤルタ協定によつて、国際協定によつて決定されておりますところの領土に対しましては、返還要求をしておる吉田内閣が、一方当然国際協定には何らの規約もない東京都の小笠原諸島であるとか鹿児島県の奄美大島であるとか、或いは沖縄に対しまして返還要求をしない。こういうような不合理性につきましては、我々はこれを国会の審議を通じまして国民の前に明らかにして頂きたいと思いまして、吉田総理に質したところでございますが、こういう問題につきましても何ら御答弁がなかつたのであります。(「もういいもういい」と呼ぶ者あり)  最後に本予算につきまして私の指摘したいことは、国際帝国主義者の御意のままに編成されたこの予算でさえすでにその基礎が崩れ、補正予算が必至になつておることであります。即ち朝鮮における帝国主義者の失敗により、日本の軍事的利用はますます必要とかり、予備隊並びに警察の増強、又軍需生産のための財政金融資金等を新たに大幅に計上しなければならなくなつておるのであります。そうしてこの補正予算により、租税自然増という名目を付けようが付けまいが、人民からの税収奪は更に増大し、インフレーシヨンが進行することは明らかであります。吉田内閣はこれを地方選挙前に出すことを恐れ、選挙後に出そうとしています。これは現内閣の不安と動揺をさながらに示しておりまして、自由党内閣の信望が地に墜ちておる何よりの証拠であります。我が日本共産党はこれら反人民的な予算に断固反対し、次のことを要求するものであります。即ち終戰処理費の大幅削減、警察予備隊、海上保安庁、その他人民弾圧機関の廃止、インベントリーファイナンス五百億の繰入れ中止、再軍備のための予備費全廃、これらによりまして浮いた財源を地方財政、公務員のベース改訂、教育、文化、厚生、社会保障、失業対策及び大衆課税の撤廃と、人民生活の向上と平和産業の拡大に振り向けることであります。かかる予算を編成してこそ、国民の生活は豊かになり、日本の進路は切り開かれるのであります。我が党はかかる軍事的反人民的予算を、人民のための予算に組替えることを強く要求いたしまして、本予算に対し断乎反対するものであります。
  43. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 討論の通告者の発言は以上で終了いたしました。  他に御発言もなければ、これを以て討論は終結いたし、省ちに採決に入りたいと思います。御異議ございませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 御異議ないと認めます。  これより昭和二十六年度一般会計予算昭和二十六年度特別会計予算及び昭和二十六年度政府関係機関予算を一括して採決いたします。右の三案に御賛成のかたの起立を求めます。    〔起立者多数〕    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  45. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 賛成者二十四名であります。(拍手)  念のために反対のかたの起立を求めます。    〔起立者少数〕
  46. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 二十名であります。  出席総員は、委員長を除いて四十四名であります。右三案に対する賛成者は二十四名でありますから、過半数と認めます。  よつて三案は可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條により多数意見者の承認を経なければならんことになつておりますが、これは委員長において三案の内容、本委員会における質疑応答の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 御異議ないと認めます。  次に本院規則第七十二條によりまして委員長が議院に提出する告報告書に多数意見者の署名を附することになつておりますから、三案を可とせられたかたは順次御署名を願います。  多数意見者署名    石坂 豊一   平岡 市三   池田宇右衞門   泉山 三六    岡崎 真一   小野 義夫    石原幹市郎   古池 信三    白波瀬米吉   野田 卯一    一松 政二   安井  謙    山本 米治   山縣 勝見    伊達源一郎   藤野 繁雄    飯島連次郎   竹下 豐次    高良 とみ   西郷吉之助    新谷寅三郎   高瀬荘太郎    高橋龍太郎   前田  穰
  48. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 御署名漏れはありませんか……。なしと認めます。  これを以て散会いたします。    午後六時五十四分散会  出席者は左の通り    委員長     波多野 鼎君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            佐多 忠隆君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            泉山 三六君            岡崎 真一君            小野 義夫君            古池 信三君            白波瀬米吉君            野田 卯一君            一松 政二君            安井  謙君            山本 米治君            山縣 勝見君            内村 清次君            加藤シヅエ君            菊川 孝夫君            下條 恭兵君            永井純一郎君            松浦 清一君            森崎  隆君            山田 節男君            吉川末次郎君            飯島連次郎君            高良 とみ君            西郷吉之助君            新谷寅三郎君            高瀬荘太郎君            高橋龍太郎君            竹下 豐次君            前田  穰君            菊田 七平君            駒井 藤平君            竹中 七郎君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 天野 貞祐君    厚 生 大 臣 黒川 武雄君    農 林 大 臣 廣川 弘禪君    通商産業大臣  横尾  龍君    運 輸 大 臣 山崎  猛君    労 働 大 臣 保利  茂君    建 設 大 臣 増田甲子七君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    内閣官房副長官 井上 清一君    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵大臣官房長 森永貞一郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    農林政務次官  島村 軍次君    通商産業政務次    官       首藤 新八君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君