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1951-03-15 第10回国会 参議院 予算委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十五日(木曜日)    午前十時六分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○本委員会の運営に関する件 ○小委員会設置の件   —————————————
  2. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) それではこれより予算委員会を開きます。  総理大臣に対する質疑を行います。理事会申合せによりまして、自由党の一松君を除きましては、各持時間十五分になつております。十五分ずつにきつかりお願いいたします。木村禧八郎君。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は先ず第一に総理に対しまして、我が国にとつて非常に重要な性質を持つニュースが最近報道されましたので、そのニュースにつきまして、総理の御所見を承わりたいと思うのであります。即ちこれは東京の各有力紙に皆報道されましたが、アメリカ国家安全保障会議におきまして、日本補助的軍需物資製造させるため、この製造に使う戦略原料日本に輸出する計画を決定したと、こういう報道でございます。この報道は、若しこれが実現するようになりますと、我が国財政金融産業構造国民生活に非常に重大な影響を及ぼすようになると思われます。而も又この報道によりますと、対日戦略原料積出計画の全容は情勢が不確定のためまだ明らかでないけれども、併し日本製造工業家が現在生産できる物資についての註文は直ちに増加するだろう。恐らく国家安全保障会議は対日講和條約が調印されるや否や、日本米国の必要とす軍需物資製造を許可するよう勧告すると思われる。こういう報道でございますので、これは非常に重要性を持つと思われます。従いまして、この報道に対しての総理の御所見をお伺いいたしたいのでございます。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。お尋ねのことは、問題は新聞で私も見ましたけれども政府としては現在何らの公然の交渉は受けておりません。併し日本経済復興のため、産業復興のために、アメリカとしてはできるだけ援助をしたいという考えがありますから、日本産業復興のためにアメリカは相当な援助を與えるであろうということを私は期待する。併しながら、どの方面にどういう註文を出すか、或いはどういうふうに援助をするかということの具体案については、まだ承知しておりません。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この前の予算委員会におきまして、総理日米経済提携の必要であり、好ましいことであるということをお述べになりましたが、その総理日米経済提携という意味は、このニュース報道されているような意味のものでございますかどうか。即ちアメリカ補助的軍需物資日本製造すると、こういう意味合経済提携内容とするものであるかどうか。即ちアメリカ国防計画一環日本が担当すると、こういう意味での経済提携意味されたものであるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話のような意味をしつかり申したわけではない、日本アメリカとの間の外交関係なり、国際関係を密接にさせるのには、軍に政治上の関係のみならず、経済上においても、又その政治的関係を裏付けされることによつて、初めて政治的国交が真に親善になるのであつて経済的裏付けのない外交関係なんというものは永続しないのであるから、政治においても、外交においても、日米親善と共に、経済的にも日米の間に緊密な関係を持つて互いで助け合う、互いに復興なり、経済的協力をするということがなければ、仮に外交及び政治において、日米関係親善なつたところが、それは永続もしない。或いは又安定した関係に入らないということを我々は考えるので、経済的にも日米の間の関係が親密になり、互いに助け合い、援助し合うという関係に入ることを私は希望しております。そういう意味です。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その総理の御趣旨はよくわかるのであります。又我々としてもアメリカは勿論のこと、イギリスともその他中国等日本経済復興に役立つ諸国とは緊密な提携を行なつて行く必要があることは、もう総理もよく御存じの通りなんでございますが、ただその経済提携性格です。形が新聞報道によりますと、軍事的協力とか、軍事的提携のような性格を持ちますので……持つように観測されますので、そういう場合の影響は、果して総理がお考えになつているような日米経済提携によつて日本経済薔薇色復興して行くと、そういうような甘いものではないのではないか、そういう意味で我々としてはその影響を非常に心配するのであります。こういう意味でお伺いいたしておりますので、総理日米提携に関する先ほどの御意見は、これはもう何人も反対するものはありませんし、それは議論の余地がないと思うのです。ただ現実に、実際問題としての最近のこの差迫りました日米経済提携の姿が、軍事協力的な形を、姿を呈しておりますので、更に又外国電報報道によりますと、講和会議が終りますと、直ちに対日講和條約が調印されるや否や、日本米国の必要とする軍需物資製造に利用されると思われます。こういうふうになりますと、これはいろんな方面日本安全保障の問題或いは又日本経済におきましても、例えば軍需工場下請のような、アメリカ軍需生産下請のようなことを日本工業がやりますと、若し経済反動が起つたような場合、それを一生懸令やつていた日本工業はどういうふうなことになるか、非常に又不安でもありましようし、又国民生活の面ではその結果は資材、資金の面からインフレが起つて国民生活が或いは低下するのではないか、こういうようないろいろな心配が起ると思うのであります。総理が今御答弁になりましたような内容ですと、我々は薔薇色復興を夢見てよろしいと思うのでありますけれども、若し新聞に伝えられているような軍事協力的な経済提携性格が非常に強いものでありますと、なかなかそうその影響を楽観できない、非常に塩辛いものではないか、こういうふうに思われますので、この性格につきまして、どういうふうにお考えでございますか。又そういう場合に総理としては国民生活の確保とか、日本産業反動に見舞われるだろう、経済反動に見舞われた場合にどういうことをしなければならないか、そういうところまで総理はお考えになつていられるか、この点についてお伺いしたいのでございます。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の考えが甘いか辛いか、具体的の註文なり、提議を受けた後でなければ、私としては意見を申しにくい。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 我々新聞によつて判定するよういたしかたないのでありますが、総理ダレス氏とお会いになつて意見を交換された際に、こういう形の、新聞で伝えられるような形の経済提携の問題がデイスカッシヨンの対象になつたのではないかと思われますので、その点は如何でございましようか。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 常に申しておる通りダレス氏との会話の内容についてはお話できないのでありますが、少くともそういう考えは持つておりません。只今私が申しましたような趣意で話をしておる。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は内容についてはお尋ねしてないのであります。この前の本委員会におきまして、総理に、ダレス氏が日本を訪問して、日本政府及び日本指導者と会談いたしたい一番重要なトピック日本を自主的にいたすということ、その他占領下日本管理の第三段階に入るのである、これに対しては日本国民は非常な決意が必要であり、この問題について討議いたしたい、それが使命であると言われているのであります。そういう声明を発せられたのであります。これはこの前私よは総理に我々は第三段階という意味がくわからないのだ、この意味総理にどういう意味であるかということをお尋ねしましたら、ダレス氏に聞け、こういう非常に簡明すぎる御答弁でありましたが、辛いダレス氏が外国においてこれを説明しておられるのであります。アメリカ政府に帰られまして報告されました第七項目におきまして、やはり日本経済力アメリカ軍事に動員する必要がある、そういうことについてマッカーサー元帥意見が一致したとか、或いは又APの東京支局長ラッセル・ブラインズ氏の報道によりますと、ダレス日特使は、最近日本が果すべき防衛上の役割について述べたが、それによれば日本が現在提供できるものは、その地理的位置工業力人的資源三つだけである、ダレス氏は日本の再軍備は終局的には必要となろうが、当面の問題ではないと述べた、こういうように言われておりまて、ダレス氏が日本に参られまして、そうして吉田総理及び各指導者と話されました重要なトピックは、日本が現在提供できる地理的位置工業力人的資源三つについてのお話であつたろうと思われるのです。この点が一番重要である。このことが具体的に先ほど総理に御質問申上げました補助的軍需物資日本製造させる、こういう方向に具体化して参つたと思うのであります。従いまして私はこの日本占領管理下の第三段階意味総理にお伺いしたいのです。これが一番重要なダレス氏の訪日の意味であつたことが、外国の人から我々は知らされておる。而もこれがこういう具体的な姿をとつて現われている。総理国民に対して何らこういうことについて報告になつておらない。その内容は勿論総理の言われる通り、我々穿鑿する筋合でございませんが、こういう重要な段階になつて来ている。なぜそういうことについて総理国民にこれを御報告なさらないのか、その義務があると思います。又本委員会におきまして、各大臣にいろいろお伺いいたしましても、皆知らぬ存ぜぬ、皆頬かぶりで行つている。国民は知らないうちに日本経済はどんどんとそういう国民の知らない方向に行きまして、その影響日本財政金融国民生活日本産業構造等々に非常に重大な影響を及ぼすと思うのであります。総理はこういう点につきまして、これまで実に誠意のない御答弁をなすつておりますが、私は国民に対してこれは非常に怠慢である、そういうふうに考えるのでございますが、これに対して総理の御見解をお伺いいたしたいのであります。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の意見は従来申した通りであります。話合がないから話合がないと申すだけの話で、殊更にダレス氏が何と言われようが、これは私において説明の限りではない。又第三段階意味合について、私は知らないから知らないと申すのであります。
  13. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 一松君。
  14. 一松政二

    一松政二君 私は総理大臣に、講和條約のでき上る場合の国民の大よその見当なり、考えかたの間違わないようにお願いしたいために、一、二の点につきまして、首相見解をお伺いしたいと思うのであります。と申上げるのは、私は一々講和條約の、ダレス氏とどうであつたとか、或いは司令部とどうであつたとか、首相お話なつ内容について、何ら私は触れようとは存じません。ただ巷間、かなりな通信関係におる者が無責任な演説をしておるのを私は一回耳にいたしました。そうして政府考え或いは私ども考えとはまるきり違つた意味講和條約後における日本の立場について、堂々と演説しておるのを聞いて私は驚いたのであります。具体的に申しますると、今回でき上る講和條約は、あたかも満洲国日本との関係におけるがごとく、日本は当時の満洲国と同様であるというような意味を言うのみか、或いはマツカーサー司令部が軍にデイプロマティック・セクシヨンに変るだけに過ぎないというようなことを、司令部に非常に出入りをしており、各外国通信と直接関係を持つておる者が演説しておりまするので、それを聞いておる者は大体において知識階級でありますが、やはりああそうかなあというような気分が、私は聴衆の間にしておると思うのであります。それは何からそういうことが一体原因しておるかと私が考えて見ますると、これは五カ年半に亘る占領の結果、我々は非常に卑屈になつており、自分の思うことも完全には述べられない、そうしてポツダム宣言従つて我々が無條件降伏をしておるから、来たるべき平和條約に対しても、我々は何を押付けられるかわからんというような考えかたから起つて来ておるのであろうと私は想像するわけであります。降伏に対する宣言と、今後の世界平和に貢献せんとする平和條約とが同じ性質のものであるわけはないはずであります。敵国が、降伏するための條件と、今後国際間に伍して日本世界の平和に寄與し、大いに日本存在価値日本国民として日本民族世界の各民族と共に平和に発展して行くことを規定せんとする千和條約が、同一のカテゴリーに属すべからざることは理の当然でありますが、五カ年半に亘る占領の結果は、日本国民は甚だ卑屈になり、且ついわゆる自主性の乏しい占領治下におきまして、そういう気分が醸成されたと思うのであります。私は平和條約と共に予想されるいわゆる防衛協定と称しますか、何かそういうものは当然起つて来るものでありましようが、それとの関係が、二千年の歴史を有し、曽つては金甌無欠の独立を維持して来た日本国民が、條約のできた暁に、日本国民みずから満洲国の地位に落ちるのである、或いはそれに甘んじなければならんというような卑屈な考えかたがあつてはならないと私は思うのであります。この点につきまして、私は総理の御所見を、若しお差支えがある部分がありますならば、問題が機微に触れて、そうしてお差支があります部分がありますならば、それは私はあえて求めようとするのではございません。ただ国民をして余りにも荒唐無稽なそういう一部の人の流布されるものに惑うことのないように、総理から国会を通じて御所見をお述べ願いたいのであります。
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、五カ年の占領によつて国民が卑屈になつたというお考えもあるかも。れませんが、又逆に五カ年間の日本知なした行動と言いますか、或いは対外関係等においてとつた態度については、五カ年後の今日においては、日本に対する列国了解は非常に進んだのであります。これは争うべからざる事実であります。これはダレス自身も言つておられることであつて、二、三年前に講和條約ができるとしたならば、今日よりはもつと悪い條件であつたろうと思うが、その後日本に対する了解日本に対する友好関係と言いますか、感情はよほど善化しておるので、今日講和條約を結ぶという機会としては最もいい機会であるということを率直に述べておられるが、ダレス氏の声明によつて見ても、日本に対し七は曽つて敵国という気持ではなくて、友邦として、対等の国として講和條約に臨む考えであるということを明らかに言つておられます。この言葉悪意に解され、若しくは卑屈に解されることは、日本国民としてないところと思います。少くとも終戦直後においては、連合国日本に対する考えかたはどうであるか、今日と雲泥の違いがあるということは、私自身がその衝に当つて体験しておるところであります。終戦直後においては日本という国は軍国主義の国である、世界の平和を脅やかす国柄であると、こう深く感じて敵国と、連合国政府の多くはそう考え、殊に濠洲、フイリツピンその他の戦争の惨禍を受けた国々においては、そう考えて確信しておつたことは事実であります。従つて連合軍司令部として日本に臨む場合においても、日本を旧来の組織を破壊して、軍国主義破壊というよりは、むしろ日本国破壊とまで極端な考えかたを以て臨んだ人もあるかも知れないとも思われるくらいに、極端な改正改革考えかたを以て日本に臨んだということは事実であろうと思う。そのときの気分と今日は全く違つております。日本をむしろ守り立てて行く、日本を守り立てて自由主義国家一環になしたいという考えを以て日本に現在臨み、講和條約もその精神で以て締結したいという希望は、少くともアメリカに関する限り、ダレス氏に関する限りにおいては明瞭であります。これは一に米国のみならず、イギリスその他においても日本に対する考えかた、或いは濠洲その他においてもよほど変化をして、成るべく早く講和を結びたい、早期講和という考えは、英国の諸連邦においてもやはり同じような考えを持つておることは、これは確かでありますから、これは国民が誤解しないように、今度はこちらが誤解しないようにすべきであると思います。外交はとかく悪意に解すべきものじやなくて善意に解してこそ相手がた日本に対して善意を持つのでありますが、悪意に解するその結果は甚だよろしくない。少くとも太平洋戦争のごときは、日本に対して列国悪意を持つておるという考えから起つたとも言われるのでありますから、外交は常に善意を持つて考えるべきものであつて悪意を持つて外国との外交を解しないように、これは私の主義方針であります。
  16. 一松政二

    一松政二君 私も総理大臣のお気持なり、お考えなりは、そこにあつて、又そうであるべきであると、私も又連合国、殊にアメリカ日本に対してそういう態度で、或いは占領政策がかなり今日の場合変つて来たという点については、全く所見一つにしておるものでございます。そこで日本がただその問題に対する場合に、総理曽つておつしやられましたように、いわゆる完全なる主権を持つ独立国なつた場合に、ただ自衛権と申しますか、いわゆる完全に、或いはもう一つ進めて言いますならば、外国から侵入の起つたような場合に、これを敢然と自分の独力、まあ独力だけで今後国の防衛をやり切れない国家世界にたくさんありまするし、アメリカといえども協同してやるというお考えになつておることは、曽つて総理が申された通りでありまするから、いわゆるその軍備を持たない完全なる独立国というのは、私はまあ昔の意味独立国から考えると、まあそこに多少欠けた点があるから、国民がかような考えを持つかと思うのでありますが、その問題に対しましては、今総理大臣の御所見を伺いましたから、それを以て私大変結構だと思いまして、その問題はこれで打切つて置きます。次に、私は今総理が申されましたように、敵国として日本に上陸して来た連合軍日本を再び起つ能わざる、或いは日本を四等国以下、当時私ども日本戦争中に占領しておつた如何なる国よりも生活水準は高かるべからずというよろないろいろな制約を受けた報道を耳にしておりまして、これも無條件降伏をした日本であれば、堪えがたきを堪え、忍びがたきを忍んで、それに堪える覚悟で降伏をまあして来たわけでありますが、今日は当時とは殆んど世界情勢も、又連合国考えかたも百八十度と言いますか、大転換をされていることは、今総理が申された通りであります。そこで私終戦日本国事に引続き殆んど……、僅かの期間だけ在野でおられましたが、あとは殆んど日本国事を背負つて来られた総理大臣でございますから、先ほど或いは日本を潰滅するように考えた人があつたかも知れないという片鱗がありましたが、私もさように考える。ところが我々が戦後に日本国をいわゆる民主主義国家にする、これは誠に結構でありますが、その民主主義という言葉が私はこれを解する人によつて非常に違う、殊に幅の広い言葉でありまするから、これを私どもが或る意味から言いますと、実は耳にたこができるほど聞いたと申しても差支えないほど、何々の民主化、何の民主化という言葉に馴らされて来たわけであります。そこで日本における占領後の諸改革、或いは諸制度、或いは法律民主主義一つの概念に基いて設けられたのもありましようが、或いは占領当時は日本を再び復興のできない無力な、ばらばらにするというような考えかたから起つたかも知れないような制度なり、或いは改革が多少あつたかも知れません。それは私もよく存じませんが、かなり日本制度法律について日本人考えかたと必ずしも一致しない。私どもが新国会が許されて、大よそまる四年近いわけでありまするが、この短かい期間の間にも我々は幾多の経験を舐めて、そうでないほうがいいと考え国会側意見も遂に通らないまま、原案が施行されている例がしばしばあるわけであります。そこで中央政府と言わず、或いは地方政府と言わず、かなりいろいろな制度法律によつて無駄な経費がかかる、人が非常に多い、それから役所の数が非常に多い、常々総理が申されまする日本のこの国民の負担の過重から免れんとすれば、大なる私は行政整理が必要である。役所の数が、人の数が多い。この貧弱な日本国に殖えたものは人口と役所の数と役人の数であります。それが戦後著るしくそういうことが多くなつて来ておるのでありまするから、條約が独立を回復したあとにおいては、これをことごとく私は検討をして、そうして取るべきを取り、捨つべきは捨て、改むべきは改むるが当然の成り行きでなければならんと思うのでありますが、一たびそれを改正しようとか、或いは改めようとかいう場合に、直ちにそれを封建的に又戻るとか或いは反動とかいうような言葉が、私は当委員会の中においてもそういう議論があつたように考えるのであります。で私ども日本人に合つたものがあり、アメリカにはアメリカ民主主義があろうし、英国には英国民主主義があろう、イタリー、フランスおのおのその国情を異にしておれば制度も風習もその国民にぴつたり合うものでなければならんと考えるわけであります。でありまするからそういうものに当然私は改正が行わるべきであると考えるのであります。その点について総理は今後国事を担当されるのでありまするから、講和後においてはそれを勇敢に私はおやりを願いたいと思うのでありまするが、これらの点につきまして講和前及び講和後のこういう諸制度についてどういうふうにお考えになつておるかを承わりたいのであります。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。講和條約において日本の将来を束縛するような何らの條件が若しついておるならば、これに対等国の間の條約でなくなるわけであつて、今お話のように、満洲国日本国とどういう関係にあつたか、どういう法律があつたか具体的に今ここでは申述べませんが、その間に何か占領国と、それから戦敗国戦勝国との間のような観念からして規正せられた、又占領に必要な法律制度というようなものがあれば、これは無論講和條約後においては存続することはないということを確信いたします。更に占領中といえども、今お話のように、日本に対して国会というか、官僚というのもおかしな話でありますけれど、日本は平和を破る国なりというような感情からして或る法律ができた、或いは制度をおいたということがあれば、かくのごときことは誤解に基いたものでもあり、又当時とは事情は今日は違つておりますから、総司令部自身においても改廃するということについて異存がないと思います。即ち法律制度のごときは時の必要に応じて常に改廃いたすべきものであつて、必要がないにもかかわらず或る法律が残るとすれば、これは自然に死法とはなりますが、同時に存続しておくべきものではないのでありますから、これを改廃するのは当然でありますが、占領という、或いは終戦直後の特殊の事情からおかれた法律制度で今日すでに不要に期し、若しくは有害になつておるという法律のごときは占領軍司令部、現在の司令部においても相当考慮しておるように聞いております。従つて当然かくのごとき法律の改廃のあることは勿論期待いたしますが、同時に自由になつた、或いは何らの束縛を受けない独立国家なつた場合においては、従来の法律にして占領中は必要であつたが、併しながらその後において不必要になつたもの、若しくはあることが日本国情に適しないものは無論日本として改廃すべきであると思います。又御指摘のような官吏の数、その他経戦後において相当無用と言わないまでも多数の役人の数が殖えたということも事実であります。これは政府としては今後ますますその整理に努めるのみならず、行政簡素化をすることをこの政府方針主義といたしておりまするから、行政簡素化と共に成るべく冗員を省く、そうして国費の支出を倹約する、そうして減税に持つて行く、この方針は今後といえどもますますその実行に努めるつもりであります
  18. 内村清次

    ○内村清次君 対日講和の見通しにつきまして本委員会におきまして総理はその結論におきまして、講和の時期は延びても早くはならないであろうと、かようにお答えになつております。その理由といたしまして、自由主義国家の中でも日本の通商、産業、貿易などの点においては、殊に英国は船舶、紡績などの点で独自の考えを持ち複雑である。これを超えて講和を達成することは容易ではない。各国では政治的な問題で妥協しても、将来の利益を自国のために保全しようとする問題で相当難関があろうと申されております。この御答弁マッカーサー元帥の年頭の声明及びダレス特使の来訪によりまして期待を持ちました国民も、総理のこの答弁によりましてその期待に少からん動揺を感じておることであろうと思うのであります。勿論総理の言われまするように、講和の問題は国際情勢によりまして変転するということはこれは我々も予想いたしております。併しながら今回ダレス特使が来訪せられました前後におきまして、国内におきましてもその指導層のうちにおいて、或いは又旧軍人のうちにおきましても暗躍があつて軍備論という問題が大きく論議されております。又このようなことを特に希望しており、同時に又これはダレス特使が構想をせられました対日講和條件を迎えるためか、或いは又これを予想する関係か知りませんが、こういう論議が非常に今高調せられておることは総理もお認めであろうと思います。この再軍備論というものがいわゆる隣邦諸国即ち又極く近接したところのフイリッピンやオーストラリア、こういうような国民感情を特に刺戟をいたしておると思うのでありまするが、こういうような再軍備論がいわゆる今回の構想の中に入つておるということにいたしたといたしましたならば、総理が言われますような講和の見通しというものの一番支障を来たしておるものは一体何であるか、この再軍備論と同時に講和の遅れておると、総理が言われる遅れておるという問題と総理のこの関連性におきまして御答弁をお願いいたしたいのであります。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。私の言う講和條約の見通しとしてなかなか難関があるということは、これは余力に楽観に過ぎる国論に警告したいと思うから申したのであつて、然らばいつできるか、どうなるかということはこれは全く客観情勢によることでありますからして、いつということは絶えず申しますが、日を切るわけには参りませんが、併しこの講和條約は決して楽々できるものではない、幾多の難関があるのである。早く締結せられることは最も希望することであるけれども国民として余り楽観し過ぎてはいけないということを警告いたしたいという趣旨であります。併しながらダレス氏その他の米国政府は熱心に早期講和考えておられるようでありますから、その希望は早々達成されると私は確信いたします。併し我々が余りに甘く考えることはいけない。お話の再軍備というようなことが国民指導者、若しくは議会等においてかろがろしく言われるのは、お話のように外国を刺激すると思います。これは大東亜戦争において随分隣国を苦しめておる事実から考えて見ると、その害を受けた、ひどい目にあつた国から言えば、又日本が再軍備をしてそうして攻めて来るのではないかというような過去の記憶を喚び起す懸念がありますから、これをかろがろしく政府以外の政党においても論議をするということは、結局外国をして徒らに刺激を與え、若しくは講和條約を早く締結せしめるゆえんではなく非常な障害を起すのじやないかと思います。政府としては、絶えず申しますが、再軍備考えておりません。従つて、又、ダレス氏の新聞発表にも、日本においては再軍備政府は勿論のことであるけれども主なる者は余り考えてないようである、熱心でないということははつきりダレス氏の声明にも書いてあります。かくのごとき声明をせられることは講和を早くせしめることであり、又、それと反対な現象が日本国民の間から出るということは、然らざるも決して容易でない講和條約をますます遅らしめるものとして、私は甚だ懸念に考えるのであります。
  20. 内村清次

    ○内村清次君 外電の伝えるところによりますと、ダレス特使がお帰りになりまして、講和問題に対する草案を起草中で、この起草も本月末にはでき上るというようなことになつておるそうでありまするが、その第一項目に、日本は自由な貿易を許される、又その他の諸国との正常な外交関係を結び得る、軍隊の創設も許される、但し、軍隊は国家防衛上必要な範囲内に厳重に制限せられるというような第一項目があるのでありますが、総理は、旧来再軍備論に対しましての総理考えは、只今の御答弁によりましても、これはあとで御答弁をお願いしたいのでありますが、又、しばしば御声明になりましたこのお考え方、即ち心境は変化いたしておらないのであるかどうか。而も又今回の草案は各相手国に対して、日本と直接相互的な條約を結ばせるというようなことも含まれておるのでありまするが、こういうような、この第一項目によりまして、先ほど申しましたフイリツピン及びオーストラリヤというような、或いは又、中・ソというような国に対しましてこの講和が円滑に結ばれて行くであろうかどうかということにつきましての御所信を承りたい。
  21. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ダレス氏が日本から帰られて、どういう構想を以て現在政府当局に勧告をせられましたか、意見を述べておるかということは全然知りません。然らば、ソヴィエト、中国、その他に対する見通しを含めるかどうかというお話のようでありますが、これはダレス氏の声明の中にもあつたと思いますが、私の承知しておりますところでは、ソヴィエト、中国その他には無論講和條約締結を勧誘せられることと思います。そしてその結果どうであるか、これはソヴィエトが入るか中共が入るかということでありますが、これは私として入るとか入らないとかということは全然客観情勢によることでありますからこれは申上げられません。
  22. 内村清次

    ○内村清次君 総理は国内治安の確保に対しては、警察予備隊又は現在の警察を以てこれに当らしむる、こういうようなお考えのことを発表せられておりまするが、この警察予備隊が、将来におきまして国内治安ばかりでなくして国外までも行く性質を持つのであるかどうかということが第一点と、次に巷間聞いておりますると、この予備隊の増強、現在の七万五千人を二十万程度に増強する。而もその費用というものは見返資金の経済再建費のうちから七百五十四億円ぐらいを出してこれを増強して行こうというようなことが伝えられているのでありまするが、政府はこの点につきましてどういう御関心、又どういう御計画があるのでありますか、その三点をお伺いいたします。
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほどの答弁の中に落しておりましたことは、再軍備に対する私の心境は如何と、これは全然変つておりません。常に再軍備は全然考えておりません。  又警察予備隊を増強するか、増強しないか、二十万に増強するというようなことは現在考えておりません。政府としては何らこういう点について考えたことも何もないのであります。増すことは、つまり七万五千を増加することについては全然考えておりません。七万五千の予備隊を以て国内治安に当らしめる、この七万五千の予備隊は外国の、敵国と言いますか、外国軍の侵入した場合にこれに対する防衛に当るかというような御質問と思いますが、そういうことは全然考えておりません。これは国内治安のために設けられたので、創設の初めにおいてこの趣意は明白にいたしております。その趣意は今後といえどもこの警察予備隊については厳守するつもりであります。
  24. 内村清次

    ○内村清次君 私たちが本予算を審議するに当りまして、今大きく展開いたされようとしておりますることが、毎日の新聞で発表されております。これは先ほど木村君も心配して質問したのでありまするが、いわゆる日米経済援助の問題でございまするが、この援助計画のことが次々と新聞では発表せられておりまするが、総理は公式にまだ何も受けておらない。各閣僚は知らぬ存ぜぬ、こういうようなことであります。これは丁度私たちが心配いたしますことは、やはりこの戦争前におきまして、いわゆる日本がこの泥沼に突き当りました。即ち気のついたときには軍閥の泥沼の中に入つてつたというような時代というものが、我々は来るような考え方も、このことは現在の総理の御答弁その他を聞いておりますと、どうしてもそういうような感じがするのであります。これはまだ独立しないところの日本といたしまして、而もこの通信の中にもはつきりと西欧の軍事援助軍需物資製造するのだと、こういうような構想であるといたしましたならば、日本は特定の国の下請工場みたいなことで産業構造が変つて行く。そうしたら日本は新憲法ではつきりと世界戦争を放棄して、而もポツダム宣言におきましては御承知のごとく軍需工業的なものは禁止されております現段階におきまして、こういうようなことをやるということは総理が言われておりますように、これは日本経済的な復興一環であるというような、ただそれだけのお考え、そういうようなこととは大分ことが離れておりはしないか。即ちこれは我々は又大きな罪を犯すようなこと、同時に又この対日講和の問題に非常に影響するような問題ではなかろうかと、国民も共に心配いたしておるわけでありまするが、これを何故総理は率直にこういう構想だと、而も昨日の新聞あたりにおきましては、すでに政府の使節団として派遣になるという、政府の使節団が派遣になるとしたならば、これは公式的にやはり総理のほうは十分御存じのはずであろうと思うのであります、又民間の特使も、経済特使も派遣になるような人選がきまつておるというようなことさえも伝えてあるとしたならば、如何に国民に耳を覆うといたしましても、総理といたしましては、これはあの戦争中の総理態度ということを睨み合せましたならば、ここで国民に明らかにして、そうして日本の今後の産業のあり方、経済復興のあり方を率直に御報告になつてはどうであろうか。この点を私は総理の再度の御答弁を明確に要求する次第であります。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の答弁は先ほど最も率直に申しておるのであつて、現在何らの注文を受けておりませんから、又どういう提案をしようということは承知いたしておりません。新聞にいろいろ書くことは書いておりましようが、政府としてはあずかり知らざるところであります。それからして政府は若し今のような具体的注文、軍需物資の具体的注文が出た場合には考えますけれども、今日は何らの注文は出ておらないのであります。  今日政府考えておることは原料の確保であり、原料を確保するために、この間も申したが、今日原料を最もたくさん保有しておる国はアメリカであつて、このアメリカから原料の確保を得ようとして、ワシントンに今日集つておる外国の代表者は、この原料確保の、獲得のために競争をしておる状態であります。又日本の将来の経済発展なり、或いは又工業の水準維持のためにも原料は如何にしても獲得しなければならないのでありますから、原料獲得のために政府役人を近く出したらよかろうという話がありますから、これは出します。米国政府の希望なり、要望があれば出します。併しそれは原料を確保するための目的で以て行くのでありまして、軍の下請のために派遣するのではないことをはつきりと申します。
  26. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 私は先刻一松君が総理にお尋ねをした問題、講和條約ができた後における占領政治下でできた諸制度、諸法律をどうするかという問題について私の考えで別なお尋ねをしたいと思うのであります。1占領政治下でできましたいろいろな制度は、講和会議によつて完全なる独立、自主、自由を認められ、日本に不適当なものがたくさんあるであろうと思います。併しながらその中には民主主義の根底をなすに必要な諸制度もありますし、連合国の非常な厚意によつてできているものもたくさんありますし、存続、存置して置くことの必要なものも多々あると思いますが、講和條約というものは細かくそれらのことを区別して書くこともできますまいし、ただ日本独立自由によつて日本国情に、或いは古い日本国情に適せないものはどんどん打ち壊してしまうというような自由をも與えられるということは、これは止むを得んでありましようが、民主主義の基礎をなすべき大事な諸制度、そういうものを存続して置くような約束というものはできないものであるか。或いは講和條約の前文においてその方針を書くとか、或いは別な條約によつて規定するとか、この五年間の占領政治は普通の占領政治とは違いまして、総理大臣が前に先刻お話なつたように非常に友誼的にできておる。敵国をめちやめちやにしようという考えでなしに、友邦として他日大いにその力を振うべき日本を建設しようという考えでできたものをことごとく打ち壊すような工合になつて来ては非常に困りますので、    〔委員長退席、理事佐多忠隆君委員長席に着く〕 そこに一つの方法がなんとか考えられることはできないかということが私の一つの問題でありまして、総理のお考えを承わりたいのであります。それからこの占領治下においてできました諸法律、諸制度を自由にすべて改変するということになりますと、これが政府の提案によつてなされるとしましても、議員提案によつてなされるとしましても、これが政党政治に、政党の党利党略に利用されますと国会は大混乱に陷る危険が非常にあるのであります。そしてそのために折角講和條約によつて日本の健全なる発展、発達が期待せられたにかかわらず、それが非常な大きな混乱によつて阻止され、国際的信用を失うというようなことになつて来る虞れが多分にあるように思いますが、そういう点について総理はどういうふうにお考えになつておるか伺いたいのであります。この二点について伺います。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えしますが、自由に改変すると申したところが、憲法も改正する、何も改正するという意味合で私は申したのではないのであります。マッカーサー声明にもある通り日本民主主義は確立された、その事業はすでに成立した、その前提の下に日本は早く自由国家の中に入れて早期講和ということを申しているのであつて民主主義国家であるということを前提にいたしておるのであります。又憲法もその通りであつて、憲法の改正せられない限り、日本民主主義国家郡を離れて、そして再び元の軍国主義に返るというようなことが万一あつたならば、それは大変なことでありますが、その危険すでになしと考えて、マッカーサー声明日本早期講和独立ということを提議しておるのでありまして、改変し得るとしたところが民主主義まで打ち壊すと、そういうふうに考えて私は申したのではないのでありまして、現在の憲法の下において、法律その他で占領その他のために必要な法律というようなものですでに占領後において不要になつた、若しくは存続することが有害であるというような法律については、改廃することが自由であるのみならず、占領軍司令部においてもその改廃は考慮しておると私は考えるのであります。遡つて民主主義まで改廃する、で再び昔に戻るというようなことは、我々は無論考えておりませんし、又多くの人もこういうことは考えておらんであろうと思います。若しそういうことの考えがあるならば、これは由々しき大事と言わなければならないと思います。もう一つは、かくのごときことを党利党略に供する政党がありましたならば、政党自身破壊自滅を意味することになろうと思いますが、併し或いは講和條約内において長く民主主義を維持しようというような規定が若しあつたとすれば、これは国家として余り大変によろしくない條約になるだろうと思います。こういう條文を入れることは連合国日本国民の自負心に考えてみて、あえて要求はいたさないと思いますが、日本国民自身としてはなおこの民主主義を遵守するという精神で飽くまでも進んで行くことは、列国も要請し又我々も希望せざるを得ないのであります。
  28. 佐多忠隆

    ○理事(佐多忠隆君) 次に岩間正男君。
  29. 岩間正男

    ○岩間正男君 この前のこの委員会答弁におきまして、総理日本経済アメリカ経済一環考え日米提携をやつて行きたい、こういうことを言われたのでありますが、併しすでに報知されるようにアメリカ産業の状態はもう軍拡経済にはつきり移行しておるのであります。そうしますと、その一環として日本経済が今後運営されるということになりますと、当然日本経済軍事化というような形がはつきり出て来るということは免れがたいと思うのでありますが、これにつきまして総理はそういうようなことから起る、つまり当然そうなりますと民需が非常に圧迫されるという形が出て来るのでありますが、これをどのようにして確保する覚悟を持つておられるか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私が経済協力、或いはアメリカ経済一環をなすという希望を申述べた点については先ほど説明した通りであります。而して現在こういう、かくのごとき件について、協力いたしてもらいたいという具体的提議がないのでありますから、具体的提議があつたときに考えます。
  31. 岩間正男

    ○岩間正男君 只今のような、具体的な提示があつてからというお話でありますけれども、それでは間に合わないことが起ると思うからお聞きしておるわけでありまして、アメリカが先ほど申しましたように国を挙げて軍拡経済のほうに移行しており、その影響日本に対してないなどということは到底言いきれないと思うのであります。当然これに対しましては、この前もほかの閣僚に質問がほかの委員からも展開されたのでありますが、その際に民需をどのようにして確保するかという問題に対しまして、周東安本長官は飽くまでも国民の生活安定ということを第一として考える、そういうことをまあ言われておるのであります。併しここでどうしても軍需生産との関連が出て参りますから、そういう場合におきましては飽くまでも、その軍需生産を犠牲としても国民の生活安定を第一義として考えるという強い意向がここで表現される必要があると思うのでありますが、この安本長官と同じような考えを以て総理は飽くまでもこの民需を確保するという線においてはつきりした態度をとられるかどうか承わりたいと思います。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 民需の確保の大切なることは、安本長官の説明の通りであります。要は先ほど申した通りアメリカ註文を見た上で以て考えます。
  33. 岩間正男

    ○岩間正男君 軍需を犠牲にしてでも飽くまでも国民生活の安定のために努力される考えであるか、この点もう一回伺います。
  34. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 前言の通り
  35. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも前言からは私のお聞きしておることに対する御答弁は得られないと思うのでありますが、これは非常に残念に思うものであります。  次にお伺いしますが、日米提携のことが問題になつて参りますと外資導入ということが当然日本の大きな課題になつて来ると思います。すでに電力などに対しましては白洲次郎氏が又再ぴ使節として遣わされるというような新聞報道も出ておるのでありますが、この際問題になつて来るのは、この外資導入の形であります。その形、方式、これについて政府は一体どのように考えておられるのであるか。我々はこの前の質問戦におきましてこの経済協力の問題について種々お伺いをして、これは政府機関を通じて、或いは又アメリカ国際開発銀行から日本の開発銀行を通ずるような、そういうふうな政府機関を通じての外資導入の方法であるかどうか、そういう点を考えておつたのでありますが、併し最近我々の又聞くところによりますというと、そういうようなやり方は非常にこれは問題を胎むので、こういう方法じやない、日本政府を通じないで個々の会社とか工場に外資を入れて来る、こういう方式がとられるのだ、こういうことが言われておるのでありますが、こういう問題はどうなるのであるか。又白洲氏が電力の融資のために行かれるという事実はあるのであるかどうか、この点伺いたいと思います。
  36. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外資が来なければ日本の今日の産業の新らしい発展はできないのでありますから、水力電気その他についても外資導入は政府は極力図りたいと考えておりますが、併しこれは相手のあることでありまして、今日具体的にこういう形であるという、まだ具体的提議は何らないのであります。又白洲氏の米国派遣等は今日まだ問題になつておりません。
  37. 岩間正男

    ○岩間正男君 すでにこれは大きな課題でありますから、これについては政府もやはり方式が当然この国会の予算審議の間に提示されることが我々は必要であると考えてお伺いしておるのであります。  外資の導入の場合にもう一つお聞きするのでありますが、外資が投資される場合に、工場施設がその担保になる、そうしてそれによつて増発されたところの新株はアメリカ側にこれは引渡すことになる、こういうような形につきましても報じられて我々は聞いておるのであります。こういう事態はどういうふうになりますか、お伺いたします。
  38. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り、外資導入について具体的な話は進んでおらない。
  39. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもこれは日米経済協力の問題が非常に大きな今輿論を起しておるのに、当然これはこういう問題が具体的な裏付のある内容として、我々はここで政府態度を明らかにして頂きたい、こういうふうに思うのでありますけれども、何らお答えがない点甚だ残念であります。  これと又連関しまして、独占禁止法、或いは又外資導入法、こういうような法案の制限緩和、こういうようなものはすでに今一部は提出されており、又立案中のものが非常にあると聞くのでありますが、    〔理事佐多忠隆君退席、委員長着席〕  外資を有利に導入するためにそういうような制限緩和がなされておる、事実又そういうことが国会でも提案されておるものもあるのでありますが、これに対しまして飽くまでそういうような政策を押し進められるのであるかどうか、この点総理の御意見を承わりたいと思います。
  40. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外資導入に障害をなすごとき法律については改変いたしたいと思いますが、只今のところ具体的に政府考えておりません。研究はいたしております。
  41. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは障害といつても、飽くまでも日本の自立経済を守るという立場においての障害でなくて、これは外資だけを有利にし、これによつて日本経済を全く握らせる、こういうような方向に改悪される点については、我々非常に大きな問題があると思うのであります。又当然新らしく起ろうとする段階に即応しまして、労務の提供の問題が出て来ると思うのでありますが、現在産業教育法案というようなものが準備されておる、そうしてこれは厖大な一つ計画を以ちまして、予算においても二百億というようなことが言われております。こういうことになりますというと、当然これは曽つて戦争中に取られました学徒動員というような形、それによつて安い賃金、この賃金を挺子として日本の低賃金政策というものが持つて行かれる、そういう形が非常に大きいと思うのでありますが、而もこれが非常に猛烈に現在推し進められておることを聞くのでありますが、すでに学校の生徒から五十円、三十円というような運動資金まで集められて、先生から百円くらい集められて、こういうことを進められておる話を聞くのでありますが、これに対して総理はどうお考えになりますか。
  42. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 我が国の自立経済……、
  43. 岩間正男

    ○岩間正男君 首相からお聞きしたい。
  44. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 今後の経済発展におきまする最大の問題は何と申しましても技術の向上でございますから、産業教育の面を考慮して参りますことは極めて大事なことだと存じます。只今お話産業教育法案は国会の内部において論議を進められておるようでございます。政府としては、まだ公式に考えてはおりません。
  45. 岩間正男

    ○岩間正男君 の問題につきましては、これは一つの新らしい態勢の中で非常に大きく出て来た問題としまして、我々は注意しなければならない。而も六三制におきましても、日本の基礎的な学校の問題を解決する六・三制の工事費のごときは二十五年度僅かに四十三億しか出されていない。併しこの産業教育案を推し進められるためには二百億というような厖大な予算が予想されておるということになりますと、これは全く教育の逆立ちだと思うのであります。そこで私はもう一点総理にお聞きしたいのでありますが、総理は箱根から山を下られるときに、これは昨年の夏でありますが、今後においては吉田内閣の政策としては、経済政策、教育政策、この二つが二大政策であるというようなことを言われたのであります。そうして愛国と独立の問題を説かれたのでありますが併し果してこのような教育体制ができておるかどうか、現在教育界を見ますと、一番大きな問題になつておるのは、果して信念のある教育ができるかどうかという問題です。憲法におきまし七は御承知のように戦争放棄の建前から平和主義、これが日本の教育の大きな課題となつて、恐らくこれに従うところの全国の五、六十万の教員諸君は、信念を以てこれを教えて来たのです。然るに今日におきましては、この平和を説くことができない。再軍備の問題が起つて参りまして、これに対して飽くまで憲法を守り平和を維持するという論議はいろいろな点から圧迫されておるところの事実が出て来ておるのであります。こういうことになりますと、憲法を守るものは弾圧され、憲法に違反して再軍備の論議をするものが却つて保護されておるというような馬鹿げた逆立ちの形がおるのであります。こういうことは到底日本の現在の憲法下においては許される問題ではない、ポツダム宣言下においては許される問題ではないと我々は考えるのであります。こういうような問題は日本だけに起つておるのでなくて、これは西独においても起つておる。再軍備の問題に対しましては、西独においても非常に反対運動が展開されておるのでありまして、例えばこれに対して西独の神学教授のカールバルト氏はこういうことを挙げております。再軍備は新たなドイツを戦場にするだけでなく、同胞相食む悲運に陥れる。特に戦後平和主義を教育し、子供のおもちやからまで武器を取上げておいて、今日再び武装に駆りたてるのは明らかにこれは精神的自殺である。こういうことを述べておりますが、まさにこれと同じような情勢下に置かれておるのが日本の教育者の立場ではないかと思う。然らば吉田内閣の政策は、当然これは日本の五十万の教育者をしてこの精神的自殺を強いる、こういう結果に降ることになることは明らかなのであります。こういうようなことは当然これは重大な問題と言わなければならないのでありますが、時局便乗^権力におもねり、そうして全く自主性を失つたのが過去の日本の教育者であり、その結果今日のようた敗残を招いたことから考えますときに、毅然として我々に明示された憲法を飽くまでも守り抜き、そうして平和主義に徹し、飽くまでも日本を安泰の上に置くというこの憲法下の信念を抂げない教育こそが当然貫かれ、そうしてそれを貫くような対策を当然吉田内閣はとられなければならないと思うのであります。然るに事実はそうでないことが行われておりながら、口で愛国独立を説いてもこれは何にもならない。教育政策を二大政策の一つ考えたとしても、これは一つの欺瞞に過ぎない。先ほどの産業教育法案というようなものによつて日本の青少年の労働力を全くこれは軍拡産業の犠牲に供しようとしている、餌食に供しようとする、人的資源を全く提供する具体的な現われと思うのでありますがこういう一連の政策から考えまして、総理大臣は果して日本の教育者が今当面しておるところの最大矛盾、精神的自殺のこの苦悶、これに対しまして一体どのような見解を持たれ、どのようにこの問題を解決される御意見があるか、その点はつきり私はお伺いして置きたいと思うのであります。
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 教育者は毅然たる態度を以て忠実に職務を行なつておると私は考えます。お答えはいたしません。
  47. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 二月十三日の覚書によりまして、今日である三月十五日よりいわゆる制限付外交と申しますか、在日代表との直接折衝のことが出たのでございます。これにつきまして外務省の発表によりますと、通商事項はこれを通産省で取扱う、この他は外務省で扱うということになつておるのでございますが、この通商事項は全然もう通産省任かせなのかどうか、この事務の取扱について先ずお聞きしたいのであります。  それから次にお尋ねしたいことは、こうやつた事務が再開され或いは今後次々と講和前でも先般の捕鯨條約の参加のような、條約締結のような問題も起きて来る。そういたしますと、外務省の事務は非常に繁忙になり、又極めて重要になつて参ります。その場合におきまして、総理大臣は従来専任外務大臣は置かない方針であられましたが、引続きそういう御方針で行かれるのか、若しそういう御方針でありますならば一層のこと、外務省の機構拡充ということについて私どもは大きな関心を持つものでございます。外務省の設置法、或いは定員法の改正をせられるのか、或いは予算の増額を必要とするのではないか、こういう点についてお尋ねをいたしたいのでございます。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お尋ねの司令部の何と申しますか外交の通牒はこれは事務的の委譲を、日本政府に事務的な委譲を図つただけの話で、そのために人を要するという程度のものではないのであります。又通産省との間に事務的にどういうことをするかということは事務当局からお答えいたします。それから外務省の機構が将来においてどうなるかはこれは別といたしまして、只今のところは講和條約締結以前においては、講和條約後の情勢考えて見て実態に応じて、必要に応じて拡充いたすこともあり、又予算の要求をすることもあるでありましようが、今日のところは講和條約後の状態を予想してこういうふうに機構を直すとか、或いは予算をどうするとかいうようなことについては多少研究はいたしておりますけれども、直ちにかくのごとき改正をなすとか、機構の拡充をなすとかいうような申出をなす考えはありません。又従つて外務大臣設置のこともこれは将来に属することで、只今のところは考えておりません。
  49. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 次にお尋ねいたしたいのは、先般幣原議長が急逝せられまして、その後任に林副総理が御就任になつたのでございますが、内閣法の第九條に「その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う。」と規定せられておるのでございます。あらかじめ指定するということでございますから、当然その御用意をなさるべきではないかと思うのでありますが、新聞報道によりますれば、副総理の席次は据えられないということでございます。併しながら地方選挙も迫つて総理がお留守になるようなことも多いことであろうし、又こういう重要な時期におきまして、副総理の必要性は我々としては痛感せられるのでありますが、この点についての総理のお考え方を承わりたい。なお、現在林副総理の後任を含めまして四つの国務大臣の空席がございます。私は今まで、国務大臣の空席が三つつてそれが補充せられなかつたということについては、いろいろ政府としてのお考えがあつたのでありましようが、むしろこういうものは補充せられないほうがいいのだ、特に総理が年来主張せられている行政機構の整備と申しますか、そういう上から申しますならば国務大臣の補充はしてもらいたくない。この国務大臣の必要性というものは申上げるまでもないが、特にこれは総理大臣の直轄である総理府の関係にあると思うのであります。特別調達庁、賠償庁、行政管理庁、地方自治庁、こういうところの無任所大臣と申しますかそういうものの必要性から起きて来ていると思うのでありまして、できるだけこれは補充してもらいたくない。それから若し仮に補充せられるとするならば、例えば総理府の中にあります全国選挙管理委員会国家公安委員会、地方財政委員会、首都建設委員会のようなこういうものを総括して、そうして以前の内務省のようなものを新らたに作られて、この総理府の中の事務の非常に総記と言つては言過ぎかも知れませんが、何が何でもかんでもここへ、総理府の中に溜めておいてやるというこの形を何とか整理して頂くのが必要ではないかと思うのでございますが、これらの点についてお考えを承わりたい。
  50. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 副総理の後任は暫らく置かないことにいたしております。又必要に応じて国務大臣その他が私に代つて事務を執行するということは将来あるで翻りましようけれども、只今のところは副総理の任命は暫らく見合せたいと思つております。それから閣僚の補充については只今考えておりません。建議いたしておりません。御指摘の総理府のいろいろな事務の分配は、それぞれ国務大臣に所管をきめてそうして分担させております。
  51. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 次にお尋ねしたいのは、アメリカ教育使節団の第二次の報告がマツカーサー元帥に昨年の九月二十二日に提出されております。団長はウイラード・イー・ギブンズであつたと思うのでありますが、との報告書の最後に、教育上の重要な問題として道徳及び精神教育のことについて触れられておつたのであります。只今岩間委員からこの文教政策についていろいろ質問されておりましたが、私は違つた角度におきまして、特に総理が年来この文教振興について御主張になつておるということから特にお尋ねしたいのでありますが、この報告書に待つまでもなく、現在の学生生徒の徳性に欠けておるという点は認めざるを得ない、誠に残念な情況にあると思うのであります。そこでこの徳性を完成すべきためにはどういう方途を講じたらよいのか。この報告書の中には、教員も又親も機会あるごとにこの徳性の完成を指導すべきであるというふうに指定いたしております。そうして現在の日本のこの教育制度の中におきましては、これらの問題は御承知の通りに社会科において取上げられておると思うのでありますが、この社会科を以てしては無意味であるというその報告書の指定であります。現状を眺めますにつけて我成もそういう考えを持つておるわけでございます。この報告書においては特にこの道徳の向上のためには、家庭や宗教団体や或いは社会団体、そういうものが常日頃に訓練をして、そうして高揚せしめなければならないというように説かれておるのでございますが、現在の状況からいたしますと、社会科では不十分である、いけない、然らばそれじやそういうような団体によつて徳性の酒毒ができるかというとこれにも欠ける。又違つた意味におきまして、現在の教員の方々が戦後における教育の基本理念において欠けておると私も考えるのでありますが、そういうことから考えて行きますならば、先般来非常に論議せられております修身科の復活ということが非常にクローズ・アツプされて来ると思うのであります。これは過去におけるところのようなああいう形でなくして、やはり新らしい形において只今指摘しましたような道徳及び精神教育のための一つの課程としてこういうものの必要があるのじやないか、かように考えるのでございますが、総理は常に文教振興に鋭意努められておりますので、特にこの点をお聞きしたいのでございます。
  52. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 徳性の涵養という問題は、国として重大な問題であり、又これに対しての政策、施設につきましては政府としても十分研究いたしたいと思つております。一つ考えを願いたいことは、かくのごとき事態に陥つたのは社会情勢によることであろうかと思います。例えば敗戦後の事情であるとか、或いはインフレーシヨンというような社会の情勢がこれにいたしたこともあるでありましよう。そこで單なる教育問題だけではないと思いますが、併しながら文部省として、或いは教育を掌つておる役所としてこれをどうするか、これは大きな問題であり、又久しきに亘つて考えて行われなければならん問題である。その方針については文部大臣も頻りに研究いたしておるようであります。暫らく政府に時をかして頂いて十分に研究いたしたいと思います。又現に研究をいたしております。
  53. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 もう一つ、これは最近の総司令部の許可事項にございましたが、百%の日本の資本による国内事業会社の設立許可がせられたのでありますが、この場合における国内航空路や運航回数や、或いは運賃や、そういうような取りきめについては、日本政府の監督下において自由なのであるかどうかという点が一つと、それからこの許可の際に航空機の研究、製造、組立はいけないということになつておりますが、そうして航空機は司令部のほうから提供されるのだと思うのでありますが、併しこれを使用して行く上においては、当然修理の必要、或いは整備の必要が起きて来ると思うのです。そういたしますと、この航空機に対する修理工場、整備工場というようなものは、これは日本政府なり日本として独自にやれるものではないかと、かように考えさせられるのでありますが、この民間航空路の開設に伴うこれらの点についての政府のお考え方を伺いたいと思います。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府委員からお答えいたします。
  55. 松尾靜磨

    政府委員(松尾靜磨君) お答えいたします。日本国内の航空事業は、経営面は日本の資本でやつてよろしいという覚書の変更がありましたので、その会社がやるわけでありますけれども、運航、飛行機を持つこと、飛行機を操縦すること、こういう面は外国の会社契約をやる、こういうことになつております。従いまして路線、或いは運賃そういうものは一応日本政府のほうで決定をいたしまして、関係方面了解を得る、こういうことになつております。なお次に修理の問題でありますけれども、御存じの通り飛行機の製造、その他部品の製造あたりも現在のところ禁止されておりますけれども、この修理の面に関しましては覚書の中には何ら今のところ書いてありませんので、そういう面ができるかどうかはもう少しはつきりいたしたいと考えております。
  56. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はこの際吉田総理に二点についてお伺いを申上げたいのであります。先ず第一番目に先ほども一松委員、並びに伊達委員から触れられた問題でありますが、現在我が国の動向を決定する重大段階に来ていると思うのです。講和を如何なる形で、如何なる内容において結ぶかということと、それから終戦以来我が国の諸制度改革したわけでありますが、それが重大であつたと同様に、今後講和後において我が国制度を如何に改変して行くかと、この二つの問題が極めて私は重大だと考えます。先ほども意見がございましたが、若しも我が国をばらばらにするような考えを以つて我が国に布かれたところの法律、法令というようなものも、自主権を回復したのちは当然改むべきであり、又国情に副わない有害なものは廃止されなければなりませんし、占領後必要でないところの法律というようなものも廃止することは当然でありますが、問題は私は国情に適しないという名目の下に改革する、国情に適しないというのを如何なるところに定義を置くかということは私は極めてこれは重大だと思うのであります。終戦後僅かに六年であります。日本民主化のために布かれたところの諸政策が、長い目から果して我が国国情に即しないかどうかということは、私は愼重に検討しなくてはならない、あのポツダム宣言を受諾したときの我々の気持と、それから今後の日本の動向について考えたあのときの気持を我々は再び思い出す必要があると思うのであります。貴重な犠牲の下に我々は終戦以来平和を愛好する民主主義、文化国家の再建に血のにじむような努力を続けて参りました。今後といえども我々は祖国の独立再建、民族復興のために努力しなければならんと思いますが、併しその基本というものは飽くまでも平和を愛好し、そうして民主主義、文化国家の建設であるというこの基本方針を忘れてはならない、そういう立場から私はどうも経済民主化、或いは行政民主化教育の民主化、その民主化は人によつていろいろ考え方があると思いますけれども、私はその逆転の慮れを感ずるものであります。再軍備等の論にからんで、フイリツピンとか、濠洲において日本を警戒しておるやに聞くのでありますけれども、よほど我々は注意をしなければ、占領下に頬被りの民主主義であるといつて国際信義上面白くないような事態が或いは起り得るのじやないかということを私は懸念しておるものなんであります。そこで私は総理に御質問申上げるのでありますが、この際我が国民主化のためにとられたところの基本施策というものは、今後も遂行して行くんだという固い決意を我々は表明するだけでなくして、私は今後の日本民主主義の確立のためにも私は平和條約の一項に挿入することが、国際信義の上から言つて我が国の将来の民主化のためにも適当ではないかと考えるのでありますが、これに対する総理の御所見を承わりたいと思うのであります。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御趣旨は御尤もであります。政府としては勿論民主政治が、民主主義が逆転するようなことは避けて進めて参りたい、国民も一致してその逆転を防ぐことに協力してもらいたいと希望いたします。而してそのために條約の條項内に書き入れることがいいか悪いかということは一つの問題であります。又このことがみずから国民が自己の力を信じないというようなふうにも考えられて、日本国民の名誉のためにもそのことがいいか悪いか、私は疑わざるを得ないのであります。もう一つはこれは講和條約は相手国があるのでありますから、相手国が何と考えるかということも考えなければならんと思うのでありますが、逆転せしめざることについては政府は極力力を挙げてその逆転を防ぐことについては、私は最も明瞭にここに断言いたしまして憚らないのであります。
  58. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 常に総理がその置かれる信念には私平素から敬意を表しておるのでありますが、併し好むと好まざるとにかかわらず、私はそういう動向を認めて心配しておるものでありますが、ここに私は具体的な一つの問題についてお尋ねいたしたいと思うのであります。それは追放解除の問題であります。公職追放除解除について将来の見通しに関する問題については総理は再三発表されておりますし、私も承知しておりますのでお伺い申上げません。併し私はこの公職の追放の解除、この問題についてお互い喉元過ぎれば熱さを忘る、過去を美化する欠点があると思うのであります。公職追放解除が、当時あの侵略戦争に全国民を指導して行つた、指導的役割に立たれたところの上のほうが先に解除になり、非常にそれに又政府当局も努力されておる。然るに末端においてただ名義のままに、当時の法律下、制度下において名義のままにただ動いたところの行政機構でいえば町村長、特にこの公職追放解除、更に上廻つて教職員の除去、就職禁止の政令に基いて、この二重の枠の中の当時単なる洗濯とか或いは炊事程度をやりておつたところの軍人、そういう人が教職から追われてなお解除しておりません。こういう点について私は末端においてただ名義のままに動いた人は先に解除さるべきであつて、そうして当時の日本の指導層に立たれておつたかたはこれは解除さるべきではない。たとえ解除されても私は遠慮すべきではないか、こういう見解を持つておるのでありますが、現実の動向というものはその逆に行つております。こういう事実から私は国民大衆というものは或る時期にはあの戦争はよかつたのだといつて正当付けて、再び我が国国民考え方というものが平和とか民主化とかいうものからはずれて、曽つて軍国主義に再転する慮れはないかということを考えるのでありますが、私はここで総理にお伺い申上げたい点は、末端でただ名義のままに働いた町村長、又先ほど私が申上げました教職員、この教職員の追放解除については、曽つて文部大臣は努力されるということを第九臨時国会のときに私の質問に答えられたが、自分だけではできんから閣内で努力されるということを文相は答えられておるのでありますが、これに対して総理はどういうふうにお考えになつておられますか、一言承わりたいのであります。
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 追放の解除については政府は従来極力努力し来たつたのであります。又相当多数の解除をいたしたことも御承知の通りであります。但しここに附加えたいのは、追放解除の申請を怠つた人も随分たくさんあるのであります。二十万余りの追放者で追放解除の申請をしたものは三万余りであります。その他のものは申請をしなかつた、或いは申請を怠つたといいますか、とにかく申請がなかつたということのために追放解除の審査はできなかつたということもあります、けれどもそれは手続上の話であつて主義としては政府は成るべく多く解除したいということの気持については終始変つておりません、今後なお盡力いたします。
  60. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理に私が承わりたいのは、大物と小物の追放の順序でございますね。これについてはどういうふうにお考えになつておるかということを、簡單でよろしうございますから承わりたいと思います。
  61. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは大物たると否とを問わず、追放されたものは解除いたしたいとこう考えております。
  62. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がありませんし、討論になりますので、その点はこれで打切ります。  先ほどから岩間委員並びに櫻内委員から、総理が文教に非常に熱心であると申され、文教を重視するということの御発言がありました。私文部委員をやつておるのでありますが、天野文相は文部委員会においでになつて、常に吉田総理は文教に非常に御熱心だという発言をされておるのであります。併し教育の現実というものは決して安心すべき実情にない。私時間がございませんので簡單に申上げますが、我が国の教育というものが日本の自立経済の確立に寄與して、そして自由な独立国家として世界の平和に日本国民を寄與させるだけの日本教育は責任を持つている。そうしてこの教育が直接的に国民の各階各層に影響するところは極めて大であり且つ広いのであります。ところが経済自立に寄與するわけでありますが総理新聞を見て御承知かと思いますが、日本学術会議の生活擁護委員会では、学者の生活実態を調査して、結論として今のままでは我が国の科学研究者は後継者が絶えるであろう、なくなるであろう、こういう結論を出されているのであります。義務教育についても、私はここで数字も挙げませんが、とにかく不安な状況にあるということは争えません。この新学制というものは、第一次吉田内閣において出されたのであります。いわば総理は産みの親であります。その制度はできましたが、まだ形は十分できておりません。例えば新制中学の校舎ができていないごときは形ができていない証拠であります。内容は勿論のことであります。これについてはいろいろ問題があると思いますが、先ほど櫻内委員がら徳性のことが論ぜられ、修身科のことが言われました。曽つては君が代の問題とか、或いは道徳高揚とか、近くは総理の建国記念日制定とかいうような言葉がありますけれども、そういうことも私はまあ考えることは大事だと思いますが、併し私は日本経済が安定し、そうして民生の安定を図ることによつてそういう点は相当に私は解決できると思うのであります。第一次吉田内閣の発足した日本の教育改革、教育刷新というものが中途半端なものになつている。そうして将来非常に危惧されているということはこれはどなたも認められているように、日本の教育体制というものが科学的資料によつて打出されて確立していない。科学的資料に基いたものでない、科学性に乏しい。こういうことが指摘されているわけであります。講和も近ずきました。自由党のほうから総理に出された終戦後の諸制度改革の案の中には、新制大学六三制等を日本国情に副うように改革する、こういうような一項目も入つているわけでありますが、新学制を産み出され、文化国家の再建ということを標榜した我が国総理として、私は文教立国のために、国家百年の大計のために、画龍点睛とも言うべき教育体制に関する根本的な法制化を私は総理に期待したいのでありますが、これについてどういうお考えを持つているか承わりたいのであります。もう少しこれについて具体的に申上げますが、我が国の教育について総理へ建議する権限を持ち、なお総理の諮問機関として最も高い地位にあるところの教育刷新審議会が、一年有余に亘る研究の結論というものを二月十日附で吉田総理に建議しているわけであります。その要点を申上げますと、教育財政というものを確立するために財政的措置の基本要領を取りまとめてここに建議するから、この要綱に基いて速かに教育刷新に関する必要な財政的措置を講ぜられるように要望すると、こういうことを書かれ、なお教育財政審議会というようなものを政府内に設けられ、必要な予算を定め、有能な事務局をこれに配置して本問題の徹底的審査を進められることを要望すると、こういうように最も権威ある教育刷新審議会が総理に建議されているわけであります。総理は先ほど私が申上げましたように、日本の教育改革刷新の画龍点睛とも言うべきこの教育財政の確立に対してどういうふうにお考えになつているか。その具体的な一つの問題としてこの刷新審議会から建議されたこの問題を総理はどういうふうにお受取りになつているか。今後これを吉田内閣においてどういうふうに具体化されるという構想を持つておるか、承わりたいのであります。
  63. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 審議会の答申については只今研究中であります。又財政問題についてはこれは財政全般から考えてみて教育費も考えなければならないのでありまして、今日財政の許す限り教育費には相当の費額を出してあります。できる限りの費用を弁ずるために予算において工夫をいたしておるのが今の二十六年度の予算であります。この予算について御覧になつても相当の費用を計上いたしております。今後においては財政の全般から考えてみて教育費を勘案せざるを得ないのであります。重ねて申しますが財政の許す限り教育費に対しては十分考慮いたしたいと思います。
  64. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 暫らく休憩いたします。    午後零時三分休憩    —————・—————    午後一時三十九分開会
  65. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 休憩前に引続いて予算委員会を開きます。  最初に一、二御報告申上げて御了承得たい点がございます。お手許に配付してありますこの予算審議の日程表について多少の変更を加えなければならん事態が起きましたので、先ほど理事会で相談しました結果、次のように修正いたしたいと思います。即ち先ず第一は、明日十六日金曜日でありますが、一般質疑を続行する予定でありましたが、御承知の幣原衆議院議長の衆議院葬が明日午後行われることになつております。それで参議院としましては、別に何らの取りきめもございませんが、予算委員会政府側の出席が不可能であるという事態ははつきり見通されますので明日の午後の予算委員会は休みということにいたしたいのであります。そこで十七日の土曜日に、通告順の質疑者がまだ相当ございます がこの土曜日一日で切上げたいと思いまして、午前、午後引続いて土曜日は予算委員会を開きます。それから十九日の月曜日、二十日の火曜日、この二日を分科会に当てます。即ち分科会が一日削除になるわけなのでありますか、分科会は二日ということに直します。それから昨日の当委員会の席上で若木委員から提案がありました件でありますが、地方財政平衡交付金の問題について、小委員会を設けて徹底的に審議したらどうかという提案がございまして、今日の理事会ではこの提案を取上げまして、地方財政平衡交付金に関する小委員会というものを設けることに決定いたしました。そうしてこの小委員会は、三月二十二日午前、午後を通じまして開くことにいたします。それから二十三日に分科会主査の報告と今申上げた小委員長の報告を受け、それから総括質疑に入ることにいたします。二十四日は予定通り、二十六日、これは各党が予算案に対する態度を決定する日としてブランクにして置きましたが、午前中総括質疑を続行することにいたします。午後だけ各党の態度を決定するために休むというふうに変更いたしたいと思うのであります。それから先ほど申上げました地方財政平衡交付金に関する小委員会の構成でありますが、大体委員を委員長を加えて十一名くらいがよかろうということで、社会党、自由党、緑風会はそれぞれ二者、民主党、第一クラブ、労農党、共産党はそれぞれ一名、それに委員長を加えて合計十一名を以てこの小委員会を構成するということに理事会で取り決めました。右の点御了承をお願いいたしたいと思います。如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  66. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) それでは御了承を得たことといたしまして、さよう取計らいます。質疑を続行いたします。只今外務省から政府委員が出ておりますだけでありますが、伊達君。
  67. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 最初にお尋ねしたいのは、講和会議の方式についてでありますが、新聞の伝えるところによりますと、講和会議というような形式でなしに、各個別に條約ができるように運んでおるそうでありますが、各個別にと言いますと、アメリカの仲介によつて各国と日本との間に條約を締結する段取りになるのでないかと思われますが、その場合その相手国は日本戦敗国として、無條件降服をしたものに対して條件を示して、それに同意をさせる、いわゆるデイクテートして押付けるような形をとるかどうか、過日総理に質問しましたときには、そういう態度をとらないということでありましたけれども、そのときはまだ各国別に條約を締結するということがはつきりしていなかつたのでありますが、最近そういう段取りになつたようでありますが、その場合どういう方式で各国別に條約ができるのであるか、先ずこの点から伺いたいと思います。
  68. 島津久大

    政府委員(島津久大君) 講和條約の方式につきましては、従来大臣からお答え申上げました範囲以上にはつきりした見通しが只今のところまだ付かないような状況でございます。御承知のように方式につきまして、割合に拠りどころとして見当の付きまするのは、例の七原則になるわけでありますが、これでも対日戦に参加した各国と日本との間の條約であつて、これについて拒否権を認めないというようなことがございますだけで、果して講和会議を催してそれで調印をするものか、只今御指摘のように、最近ニュースにございますような個別的に講和條約を結ぶものか、現在のところはどの方式になりますか、一向確たるところはわからないような状況でございます。いずれにいたしましてもアメリカ政府関係政府との下話がこれから進展して参ると存ずるのでありますが、その際にそういうような点も自然判明いたすことと存ずるのでありますが、何分これ又御指摘のように、今回の講和條約は従来の講和條約と違いまして、デイクテートされる形でないという方針で来ておりますので、従いまして方式につきましても、先例かないようなわけでありますし、遺憾ながら只今のところ確たる見通しが付かないというのが実情であります。
  69. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 まだはつきりしないことと思いますけれども、各個講和條約を締結するとなりますと、その場合アメリカが仲介ぜんでも、ソ連は日本に対してソ連との各個別の條約締結を申込むことがないとも限らぬが、若しそうであつた場合日本は拒絶し得るか、そううい場合は全然ないと考えるべきであるか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  70. 島津久大

    政府委員(島津久大君) 只今の御質問の点につきにましても、実は御承知の通り、ソヴィエト、中国も加えた講和條約を作るという努力がなされておる現状でございまして、先ほど申しましたように、方式そのものについても見通しが付かないような、状態でございますので、仮にソヴィエトがほかの国と別の立場で個別的に日本講和條約を結ぼういとう申出でをするかしないか、その場合に拒絶ができるかできないかというような点も、実は只今のところ何とも申しかねるのであります。
  71. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 講和條約のことがだレス氏の盡力によつて順調に進んで行くとしますと、中国と日本の條約はかなり大事だと思いますが、今考えられることは、中共は日本と條約締結を好まないような状態にあるようでありますが、この場合日本としては中国をどう考えるか、共産党の中国を相手にするか、台湾におる蒋介石の国民党の中国を相手にするか、日本アメリカの間にはその点について話が進んでおるかどうか、先ずこの点を伺いたい。
  72. 島津久大

    政府委員(島津久大君) 只今の御質問の点につきましては、講和條約参加国乃至はその方式につきましては、御承知のようにこれは連合国間の問題、只今講和條約の下きますまでの間は、そういうような形をとる次第でございます。従いまして日本のほうから判を押す国はどこであるという立場にはないわけでございます。ただ御承知の通りダレス顧問が従来関係国と極く下話をされまして、その際中国に関しましては、国民政府側に下話をされたと承知いたしております。
  73. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 講和の問題はたくさんありますけれども、ほかに時間の関係がありますから、これだけにして置きまして、次に外務省というものについて少しお尋ねをしたいのであります。一体今まで日本戦争前におきましても、戦争中におまましても、外務省というものは非常な貧弱なものであつて、あのときの一等国であるとみずから任じておつた日本国民を代表するには甚だもの足りない外務省であつたのでありますそして終戦後は全く、殆んど消えたような状態にありまして、総理大臣もしばしば言われるように、日本は何ら情報を知り得る機関を持たないから、何にもわからんというようなことが言われておつたのでありますが、それは終戦後やむを得ないことでありまし、たけれども終戦前、戦争中、戦前からが外務省の機能というものは非常に貧弱なものでありましたので、この参議院が始まりましてから、外務委会員において、私は常に講和会議あとで外務省を直ちに活動させることができるように、そしてこのみじめな日本世界の舞台に立派に出すように十分準備を、今講和前においてなされる必要があるということを極言しておつたのでありますが、それがなされておるとはよく考えられない状態ではないかと思います。そこでこの見地からお尋ねするのでありますが、講和会議が開かれて日本が再び世界の舞台に立つて行くようになりますときに、直ちに必要なのは世界のたくさんの国国に大使、公使、有能なる若手外交官を非常にたくさん出さなければならんことは極めて明らかでありますが、今の外務省にその準備があるか、そういうことについての予算はどういうふうにしておられるか、特に人についての準備、これは非常に大事なことでありますが、ただあの研修所で学校のようなことをやつて若手の人の教育はできておるようでありますけれども、いわゆる外交官なるものが日本を背負つて立てるように世界各国を目当てにして準備ができておるか、準備というほどではなくても、その考えで常に計画しておられるかどうか、その点について先ず伺いたいと思います。
  74. 島津久大

    政府委員(島津久大君) 講和條約ができまして、直ちに在外公館を作るときに、主として人的の準備があるかどうかという御質問と拝承いたしましたのですが、終戦後外務省が正常な外交的な活動ができません状態にありまして、将来の外交再開に備えまして十分なる人員を保持して、これを訓練して置くということは非常に困難な仕事でございまして、併しながら先ほど御指摘のような趣旨によりまして、極力将来のためにあらゆる準備を進めて来ておる次第でございます。仮り数から申しまして、必ずしも数だけでなくて、質の問題も勿論同様に重要性があると考えるわけでありますが、昭和十年頃の外務省の在外と本省との人員というものと只今の本省の人員というものは、総数から申しまして、大体同じ程度の数になつております。その内訳につきましては、やや問題があるのでございまして、在外勤務の経験のあるいわゆる直ちに外交官たり得る者ということから申しますと、その当時よりは多少人数が少いのじやないかという感じがいたします。併しながら現在におきましても、本省で始終準備的な仕事、又正式の外交ではございませんが、各種の外交に関連するような仕事に従事しておりますし、又関係の省に相当数出張しておりまして、その省の渉外的な仕事にも携わつて、あらゆる経験も積んでおるわけでございます。これが外交が再開になりまして、大体現在の人員で全世界の主要な国に配置をするということになりますと、数から申して、又質から申しても勿論十分とは申せないような状況でございますが、これにつきましては、最近各種の国際的な機構もできておりますし、本來の外務省員だけで在外公館を全部持ち切るということは困難と思うのであります。その点につきましては、関係省の援助も得まして、できるだけ本来の外務省員を活用して一元的な円滑な運用ができはしないか、こういうふうに考えております。
  75. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 各国とも外交機関には非常な力を入れておるように思われます。殊にソ連のごときは、外務大臣の下に次官が四人のときもあり、六人のときもある。それが非常な有力な人ばかり集めております。アメリカでも次官のほかにたくさんの有力な次官補を置いて大きな活躍をしておりますが、日本は大体の心構え、機構からして昔ながらのもののように思われます。講和後においては今までの大臣、事務次官、政務次官、その古い型をやはりとつてやるつもりであるか。もう少し新しみのある活躍をする備えができておるか、御計画があるか、その点をもう一つ伺いたいと思います。
  76. 島津久大

    政府委員(島津久大君) 只今の御質問の点につきましては、事務当局といたしましては、只今のところはまだはつきりした具体的な案を御報告申上げる段階にまで来ておらないのでございます。勿論御趣旨のような新らしい考えかたで有効な運営を期さなければならないことは当然でございます。この点は大臣以下事務当局ともそのつもりで準備、研究を進めておるようなわけでございます。
  77. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 外務省で一番今後大事と思われることは経済外交、これは申すまでもないことでありますが、それと共に情報機関が非常に大事だろうと思います。今まで日本がほかの国に対して遅れておつたこと、有力なる情報機関がないために非常に誤まりをしたこと、あの不幸なる戦さをせなければならんようなことに国民を導いて五つたのも、しつかりした情報機関がなく、国民をだますことが容易にできたということも一つの原因になつておると思います。この民主主義国民的活躍をするには情報機関がしつかりしていないといけないのでありますが、無論今はやむを得ないのでありますけれども、外務省はしつかりした情報機関というよりも、殆んど情報機関は持つていないが、講和後直ちに世界中に情報の網を張つて日本国民をして立派に世界的に民主主義的活躍をなし得るような情報網を持つ計画が何かできておるかどうか、その点を一つ伺いたいと思います。
  78. 島津久大

    政府委員(島津久大君) 情報関係の機能が非常に重大なことは誠に只今の御意見御尤もでございまして、在外公館が開かれましたならば、直ちに情報活動ができるように勿論準備、研究を進めておるわけでございます。併し何分にも戦争が始まりまして以来、又戦争後ずつと海外における情報機関がなくなつております。外交再開と共にすぐに情報活動を始めたいのはやまやまでございますけれども、すぐに有効な活動ができるかどうかというような点につきましては、多少の心配を持つておるようなわけでございます。まあ併しこの情報網と申しますか、組織につきましては、これは特殊の情報の組織と申しますよりは、在外公館並びにその在外公館員が挙げてそういう心組みでその方面に重点を集中してやるべきであるということを考えておる次第であります。なかなか所期のように有効にすぐ活動できますかどうか、これは危惧の念を禁じ得ませんけれども、全力を挙げてこの点は遺憾のないようにいたしたいと計画を進めておる次第であります。
  79. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 私の質問は今日はこれで結構であります。
  80. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 竹下君、法務総裁が出席されております。
  81. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 法務総裁にお伺いいたします  現行警察制度の最も大きな欠陥は、国家警察と自治体警察とをあたかも真二つに割つてしまつた形で、それぞれ対立の様相さえ呈しておる。犯罪捜査の上にも保安警備の上にも、又人事の関係におきましても、両者の間に連絡提携の甚だ全からざるものがあるのであります。今日各種重要犯罪が頻発いたしまして、特に反民主主義の分子の治安擾乱の動きが各地に見えておる実情におきまして、かかる欠陥のために警察が全体として極めて非能率的であり、弱体でありますることは、誠に遺憾至極に存ずるのであります。治安の情勢が極めて注意を要するものがあり、而も講和によつて我が国が真に自立する日も近いというときにおきまして、最も速かに確立しなければならない問題は、まさに国内治安の態勢の完備であろうと存ずるのであります。政府は国警、自治警分離による弊害の是正について検討中であると伝えられております。このことは誠に緊急を要する問題であると考えられますが、果して本国会に警察法の改正案を提出さるる御意向があるのでありましようか。その点を先ずお伺いしたいと思うのであります。
  82. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 只今竹下委員から、国警、自治警の対立ということがあり、そうしてこのことが現在におきまする我が国警察の能率を阻害するやの傾向がある、こういう御意向があつたのでございます。確かに御指摘の通り、新警察法ができましてから、国警と自治警とに警察が二分いたしまして、而もこの新らしい制度の運用につきましては、未だ十分に習熟いたしておりません関係上、いろいろな面におきまして弊害があつたということも事実でございます。ただ政府といたしましては、新警察法によりまする自治警察の創設ということは、これは警察民主化の要請から来ました非常に大事な点でございまして、治安の確保のために警察の能率を増進するということはもとより必要でございまするが、併しこれは飽くまでも自治警察を拡充 し、強化して、そうしてややともすれば弱体ではないかという心配をこうむつておりまするこの自治警察を、真に国家治安の要請に適応し得るような有力なものに育て上げるということが必要であろうと考えておるのでございます。この線に沿いまして、現在の国家地方警察並びに自治体警察との関係をでき得を限り調整をいたしまして、そうしてこの自治体警察と国家地方警察が対立分離するにあらずして、双方相寄り相助けて国の治安を確保することのできまするようにいたしたい、かような線に沿いまして、目下警察法の改正案を検討中でございます。この案につきましては、お聞き及びかと存じまするが、国家警察の担当者の側と、又自治体警察の担当者の側におきまして、根本の精神においては一致いたしておりまするが、これが具体化いたしまする方法につきまして、多少意見の相違があつたように思われるのでございまするが、約一カ月の間に両当事者で数回話合をせられまして、最近におきまして、大体双方の研究の結果が一致をいたしまして、こういうふうな線で改正をされることが望ましい、こういうような案が私の手許にまで提出されておるような次第でございます。政府といたしましては、この案を十分に検討いたしましたる上、でき得る限り今国会の会期中に提案をいたしまして、御審議をお願いいたしたいと、かように存じておる次第でございます。
  83. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 只今総裁の御答弁がございましたが、まだ新らしい法律ができて間もないから、不慣れの点があると思うということでありましたが、その点もあるだろうと思つておりますが、私はただこの問題は不慣れのためであるからという問題として簡単に片付けるわけには行かない。組織の問題がむしろ重大であると、かように考えておる次第であります。なお検討中であるというお話でありましたが、そうだろうとお察しはしておりましたが、この問題は非常に急いで解決することが大事だと存じますが、この国会にはもう是非出すのだというお心構えはございませんでしようか、ただ検討中ということだけでございましようか、その点を御説明願います。
  84. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 私といたしましては、是非この国会に提案いたしたいと存じております。併しながら、御承知のごとくこの警察制度改正の結果といたしまして、国家地方警察の人員の増加その他の面がございまして、これを実施いたしまするといたしまするならば、当然財政上の措置を並行的にしなければならんのでございまするが、只今まだその面につきまして確たる見通しを得るに至つておりませんので、確定的な御返事を申上げることはできませんが、その問題さえ解決いたしますならば、是非とも今国会に提案をいたしたい、かように存じておる次第であります。
  85. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 それでは次に多少問題を具体的に掘下げまして、お尋ねいたしたいと思います。特殊の重要犯罪、特に全国の治安に関係のあるような広範な犯罪に対する捜査については、国警、自治警両者が一体となつてこれに当る必要があることは当然であるのであります。犯罪のほうが全国的に繋がり、組織的なものでありまするならば、これを取締り又捜査する警察機関も当然全国的な組織と連絡を持つものでなければ、到底その力を発揮することは困難と思われるのであります。又このことは騒擾事件等の治安擾乱の事態に対する警備警察についても同様のことが言えるのでありまして、国警、自治警両者の区別なく一体となつた活動が必要と存じます。伝えられるところによりますれば、政府改正案の中には、特定の重要犯罪事件の捜査については、国警をして自治警の管内にも立入つて、その権限を行使せしむることのできるようにしたいという点が見えておるようでありまするが、この点に関する御所見をお伺いいたしたいと思います。
  86. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 自治警といたしましても、自治警の区域内におきまして、一切の犯罪について当然警察としての責任を負つておるのでございまして、今日大都市におきまする大きな自治体警察は如何なる事態に対しましても、これを処理し得るだけの十分の力を持つておると、かように存するのでございまするが、併し多数の自治体警察の中には、その力が極めて不十分でありまして、国家的な規模を持ちましたる犯罪に対しまして、十分なる活動を期待いたすことが困難ではないかと思われるものもなきにしもあらずと存ずるのでございます。従いまして、かようなる自治体警察の、こういう場合におきます国の治安の維持の上に特に重大なる案件につきましては、国家警察がその区域に立入つて権限を行使するということも当然必要と相成る事態もございまするので、政府といたしましては、改正を行います機会においては是非さような規定を設けまして、特殊な事案については国家警察というものが、活撥な活動を期待できないところの自治体に対しまして、例外的に立入つて行動するという規定を設けたいと、かように存じております。
  87. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 次に、治安に関する情報収集の問題についてお尋ねいたします。  特定の政治的意図の下に治安の撹乱を企図する者に対しては、常にその画策の状況を探索いたしまして、その状況に応じて事前に警備上の手を打たなければ治安の全きを期することはできないのであります。情報を持たず、事件の発生してしまつたあとになつて、慌てて警備対策を講ずるというようなやりかたでは、後手々々となつてしまいまして甚だ検挙に困難を来たすということになりまするし、情勢が更に悪化した場合には、限りある数の警察官を以てしては従らに奔命に疲れしめるということになりまして、由々しい結果を来たさないとも限らないと思われるのであります。このために治安に関する情報の収集を強化する必要があると思いますが、この点に関する政府の御所見を伺いたいのであります。  私は部外者でありますのでその事実は余り多くを知つていないのでありますが、現在特審局が設けられまして、地方にその出先官憲もおかれてある。そうして情報収集を担当しておられるのではないかと思いますが、何分にもその規模が小さ過ぎまして十分の活動ができていないということは、今日までの実績に徴して明らかなことであると思われるのであります。元来、情報収集というものは広く組織を持つたものの上に基礎におかないと決して効果を挙げることはできないものであります。全国津々浦々に配置のあります一般警察官をしてこれに関與せしめるに、元の特高警察のよき面を生かして活動させるというお考えはありませんでしようか。まあ特高警察と言えば、ただ恐ろしいものだ、悪いことばかりしておつたものだというような誤解を持つておられる向きが相当にあるようでありますが、立派な働きをした部面も決してこれを見逃してはならないことであると私は存じておる次第であります。特に最近の状態では、以上繰返して申上げました通り、治安の維持が頗る複雑微妙な関係にありますので、これを少数の特審局員に一任しておくがごとき今日の制度は、余りにも冒険であると存ぜられるのであります。政府はどうお考えになりますか御所見を承わりたいと思います。
  88. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 特に治安関係の情報は今日特審局におきましても収集をいたしております。而してこの特審局が集めます情報の収集ということにつきましては、ひとり国家地方警察ばかりでなく、自治体警察にも又協力をお願いいたしているのでございまして、このやりかたは引続きそういう式で以つて行きたいと、こう考えている次第であります。勿論警察におきまして情報を收集するということは警察自体のために必要な事柄でございますので、警察が情報を収集されることはとれは当然でございまするが、特審局といたしましては又特審局の目的のためにその警察の集めた情報を利用さして頂いているわけでございますが、この警察等におきまして情報の收集におきまして従来の特高警察というもののやりかたのいい面を働かしてはどうか、こういう御質問でございましたが、特高警察のいい面と申しますると、結局情報収集につきましてのいろいろな知識、経験、技術、こういつたような点であろうと存じます。御承知の通り従来の特高警察の関係者は今日多く公職追放に相成つておりまして、これに対しまして、政府の必要といたしまする情報收集の仕事をお願いするということは、これは今日の考えかたとして適当ではないと、かように思うのでありまするが、併しそういつた面の技術が今日の警察におきまして十分に残つておりまするならば、それを利用するということはこれは一向差支えないことであるし、又それが能率の上に適切でありまするならばむしろ望ましいことである、こう考えている次第であります。ただこれがために従来の特高警察の関係者をその方面に現実に使う、人を使うということはこれは政府といたしましては必ずしも適当ではないと、かように考えている次第でございます。
  89. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 特高警察の問題につきましては、私は現在どういう技術を持つている者があるからそれをどうして使うとかいうような意味ではないのでありまして、特高警察のありました時代におきましても確かに行き過ぎがあつて非難すべき点がたくさんあつたことも承知しておりますが、一方素直に働きました警察官としましては悪いことは少しもなかつたという部面もあるのであります。制度そのものが悪かつたとは私ども考えていないのであります。そういう意味においてよい部面を活かして参りたいという意味で申上げる次第であります。決して人のことを具体的にどうとかいうようなことを申したのじやありません。  それから情報の収集の問題については、自治警あたりもこれに協力しているというお話でございます。もとよりそうであろうと思いますが、併し私どもなどがよそから見ておりまするところによりまするというと、協力にも程度がございます。本気になつて協力しているのか、ひとの仕事と思つて幾らか暇のあるときに加勢してやる協力であるかということによつて問題が分れるのでありまして、遺憾ながら私は現在の協力の程度は余り高度の協力ではないのじやないかということを心配している次第であります。この点は改正案をお作りになる最中でありまするのでなお御一考を煩わしたいと存ずるのであります。  以上私が申述べました警察制度改正方向に対しましては、恐らくこれは警察民主化方向に逆行するという反対論が相当にたくさん出ることと思います。民主化のための地方分権も又必要であつただろうとも思うのでありまするが、現在の制度は、地方分権を強調いたしまして、中央集権的な過去の警察制度の弊害のみを恐れた余り、警察の本質を忘れてしまつて警察機能の発揮を犠牲に供した嫌いが甚だたくさんあり、行き過ぎた点が多々あると存ずるのであります。我が国の現行制度のような警察を国警と自治警と截然と二分して、そうしてその間の連絡、提携が今日のごとく欠如しているような制度世界の外の文明国の制度にあるのでありましようか。ありましたらそれをお教え願いたいと思うのであります。私寡聞でありまするが、米国におきましてもF・B・Iとか称する強力な中央警察機関があつて非米活動など国家の治安に関するような問題については、地方警察の区域にまで立入つて活動する機構になつているやに承わつております。私はこれによつて米国のような国でさえ治安の確保ということが、地方分権の建前を急いで貫くことよりも、急ぎ過ぎるよりも、一層重要に取扱われていることを思いまするときに、不安に満ちた我が国の現状においては、特に慎重な考慮を要する問題であると思う次第であります。余りに弊害の面のみを恐れて強力な治安体制の確立を遷延するようなことになりましたならば、悔を後日に残すこととなると信ずる次第であります。この考え方につきまして、総裁のお考えを承わりたいと思います。
  90. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 改正につきまして適切なる御意見を頂きまして、改正の際におきまして十分に参考にして案を立てさして頂きたいと存じておりまするが、最後に御質問になりましたる自治体警察の区域内におきまして、すべての事件一切を自治体警察だけで処理さしておる例が外国の警察制度の中にあるかないか、こういうような点でございまするが、この点は私共のほうで取調べました範囲におきましては、さような例はないようでございまして、只今御指摘にもなりましたごとく、合衆国におきましても、自治体警察に対して州警察、或いは連邦警察が特定の治安については権限を行使する、こういう建前になつておるようでございます。これらの点に照らしまして、現在の警察制度というものは、運用上幾多の難点があるわけでございまして、この点を是正いたしたいというのも、このたびの改正案の眼目の一つと相成つておることを申上げて置きます。
  91. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 なお警察の問題につきましては、自治警察、組合警察の問題であるとか、人事交流の問題であるとか、それから国警と自治警との間の費用の負担援助の問題というようなこと、定員の配置の問題、或いは首都警察の問題であるとかいうようないろいろな点がお尋ねしたいのでありまするが、幸い私は予算委員会の第二分科会の委員になつておりまするので、こういう問題はその席で承わりたいと思います。今日はまだ外に農林関係のことをお尋ねしたいと思いますので、法務総裁に対する質問はこれで一応打切りたいと思います。  次に林業政策についてお尋ねいたしたいのでありまするが……。
  92. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 竹下君農林大臣は来ておりません。
  93. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 いやそれでよろしうございます。農林大臣と大蔵大臣と御一緒にお願いしたのであります。それは関係が非常に密接であるからでありますが、承わりますると農林大臣は御病気で御出席ができないということでありまするので、これはもう止むを得ない事情と思います。併し一応私はこの席で私の質問を速記にとめて貰いまして、後日なるべく早き適当な機会において農林大臣から私の質問に対する御答弁を承わることのできるように委員長からお取計らいをお願いしたいと存じます。今申しまする質問の中には大蔵大臣と直接関係のないこともたくさんあるのでありまするが、併し概念的に申しまするならば、結局大蔵省の金の問題で、農林大臣に対する質問はすべて大蔵大臣には直接間接の関係があるのでありまするから、一応大蔵大臣も御迷惑でありましようがお聞きとり願いまして、特に又本日お尋ねいたします次の大蔵大臣中の分についてだけでも御答弁を願えたら幸せだと存ずる次第であります。  戦争中から引続いての山林の濫材にとりまして、林野の荒廃は甚だしいと叶いうことは、今更私から申上げるまでもなく、十分御承知のことであります。この際、遡つてそれではどうしてそういうことになつたのかということを検討してみる必要があると存ずるのであります。かようになりました原因の第一は、戦争の要請に応ずるために、山林の伐採が非常に多かつたということであるのでありますが、その原因は戦争終了によつて自然消滅したのであります。第二の原因は農地改革が余りにも無悪に行われましたために、この次には、山林の没收が始まるだろうという心配を森林所有者が挙つていたしたのでありまして、山林造成の意欲を失つたのであります。今のうちに伐つてしまえというので濫伐が甚だしくなり、跡地の造林が行われなかつたのでありますが、これもその後政府におかれまして、たびたび声明せられましたことによつて、まあその心配はないのだということがおぼろげながらわかつて参りまして、漸く平静に帰する傾向にあつたのであります。然るに間もなく農産物増産計画による、里山、特に幼齢林の強制伐採が行われたため、またまた森林所有者の不安を招くように相成りまして、更に税法の改正によりまして、    〔委員長退席、理事藤野繁雄君委員長席に着く〕  山林関係の税負担が加重されたために、いよいよ林業経営の意欲を失うように相成つたのであります。そこで我我国会議員及び政府の協力、合作によりまするところの臨時緊急造林法の成立をみることに相成りまして、昨年から森林業者も幾らか元気付いて来たというのが昨年の夏頃の状況でありました。然るに今又近く国会提出の噂に上つておりまするところの改正森林法案によりますれば、伐採制限の規定そのほか、官僚主義と思われるような條項がたくさんありますので、この法律は森林国家管理に入る前提の法律であるというような不安を抱く者が又相当に殖えて参りました。かような不安に不安を重ぬる林業政策が繰返されまするならば、二十年か三十年の間には全国がみんな禿山になつてしまうということは、これは火を見るような明らかであると思わるるのであります。従来の林業政策を通じて現われておりまする点は、山林事業は公共性を有するものであるから、公共の必要のある場合には森林所有者に犠牲を払わしむることは止むを得ないことであるという政府考えかたであります。これは一面相当の理由のあることでありまするが、この理由でもつて犠牲を強要しまするならば、反面において公共性を有する事業で、而も極めて低金利に相当する事業であるから、これに適当の保護助長を加えて、国土の保全を期すべきものであるという考えが当然起つて来なければないならのであります。然るに遺憾ながらこの考え方は至つて少い。これが山林荒廃の最も大きな原因に相成つておると信じて疑わないのであります。政府はこの際認識を新たにして、完全な助長政策を行う考えはないか、その点をお伺いしたいのであります。  元来森林法案は山林の伐採を制限するほか、山林所有者に種々の義務を負担せしめ、農林大臣及び知事の権限を拡大する條項がたくさんありますので、先ほど申上げましたように、本案は山林の国家管理の前提法であるとの非難があります。このため又濫伐の兆があるのでありまするが、政府はこれをどう見ておいでになりまするか、お伺いしたいと思います。政府は十分に森林の損害を補填する意味を以てこれを法文化する考えがありますかどうか、それをお伺いしたいのであります。私は今日の木材の需給関係と山林の保有量と睨み合わせまして、或る程度の伐採制限もその他の義務負担も必ずしも不当であるとは思つていないのでありまするが、これを実施いたしまする場合におきましては、それと同時に適当の補償をなす方策を講ずることが当然だと思うのであります。政府は十分に森林の損害を補填する意味を以て、これを法文化する考えがありますかどうか、それをお伺いしたいのであります。  いま少し具体的に申しまするならば、森林所有者の造林意欲を失わしめないで済む程度の相当多額の融資を行う等のことを考えておられますかどうか、それが承わりたいのであります。尤も山林事業に対しまする融資は、現在におきましても農林中央金庫でなされておりまするが、その総額も少く、更に山林方面に割当てられておりまする金額は甚だ僅少であつて、林業者は極めて不満であるのであります。改正森林法の施行と併行して、是非とも山林事業のための融資の制度を急速に創設されまして十分の融資をする必要があると存じます。政府は果してその準備をしておられますか。あるといたしまするならば、来年度の予算面にどう現われておりますか、お示しを願いたいと思います。  この際附加えて申しまするが、伐採制限の問題は、山林所有者の生計にも重大なる関係のあることを特に御考慮をお願いしたいと存ずるのであります。  次に木材需給の調整策をお伺いいたしますが、特に三つの点につきましてお答えを願いたいと思います。即ち第一には政府におかれましては、森林法を改正して計画生産を行い、伐採量の抑制をしようとしておらるるようでありまするが、これによつて生ずる約二千万石の木材の不足に対して、如何なる措置を考えておられますか。第二に木材の消費節約に関して施策がありますか、施策がありますならばそれを承わりたいのであります。第三に木材の輸入計画はどうなつておりますか、輸入の見込が相当にあるのであるかどうかこれもお伺いしたいのであります。  次に自作農創設及び農地拡充等に関し森林、原野、牧野の農耕地になつたものが相当にたくさんあります。未墾地開放に便乘して開墾不適地を相当抱き込んでおる向もあるのであります。これは森林所有者に迷惑をかけたいというばかりでなく、木材生産量にも大きな影響を與えていると思うのでありまするが、政府はこれに対して適当な修正案をお持ち合せになつておりますか。或いはすでに実行しておらるる向きもあるのでありますか、それは予算にどう現われておりますか、その点をお伺いしたいのであります。  次に森林に関しまする租税についてお尋ねいたします。民有林でその成績がよく、その目的を達しているのは比較的大面積を所有しておる人たちであります。これは林業の特徴でありまして、細分化した山林は概して成績が悪いようであります。然るに相続税、富裕税等において生産手段である森林財産を分割するような結果を来すところの現行の税制は、国土保安の上に大なる障害となつておると思うのであります。政府はこれを改正して森林所有者の税負担を軽減するお考えはありませんが、承わりたいと存じます。  なおこれは地方税でありまするが、木材引取税は木材を買つた者が支払う建前でありまするけれども、市場価格から諸経費を差引かれて立木価を算定いたしまするので、自然引取税は生産者即ち森林所有者に転嫁されることとなつております。結局この税金は山林所得税と重複する性質のものであると思うのでありますが、政府はこれをどうお考えになつておりますか承わりたいと存じます。  次に官有林払下げはどの程度に行うお考えでありますか。年度計画があるならばそれをお示しを願いたい。これは地方民の非常な希望するところでありまするので、できるだけたくさんの払下げをして頂きたいというのは当然のことであります。従来たびたび払下げ、払下げという言葉が使われておりまするが、思い切つた払下げというものをなされたことは余り聞かないのであります。この際は大々的の払下げをされるのであるかどうか、それを承わりたいのであります。  なお官有林につきまして、その採伐、販売など官みずからおやりになつておる部分が相当に多いのでありまするが、世評によりまするというと、その能率は余りよくないという噂が專らであります。成るべく民間の事業に移され、民営として能率の上る経営をなさしめるということは、ただ單に業者が喜ぶとかいうような問題でなくして、森林全体の問題からも見ましても結構なことであろうと思いまするが、政府はどういうふうにお考えになつておりますか、その点についてもお伺いしたいのであります。  最後にこれは或る地方にのみ行われておる制度でありまするが、国有林の部分林の制度であります。この部分林を伐採いたしました跡は、現在のところ元の部分林所有者である民間人には再植を許さないということになつておるようであります。長い間数十年に亘つて官有地に植林いたしまして、そうして相当の成績を挙げることに努めましたその山林所有者は、その土地につきまして非常な執着を持つておるのであります。又伐採跡地に十分に植林をするだけの余力のあるものがたくさんあることを存じておるのであります。余り窮屈になされないでできるだけそういうものを利用して造林を奨励するということをお考えになることが大事であろうと思うのでありますが、この点政府はどういうふうにお考えになりますか承わりたいと思うのであります。以上が私の質問の要点でありまするが、大蔵大臣は特に金額の問題と租税の問題につきまして御答弁をお願いいたしたいと存じます。
  94. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 我が国におきましては、古来より政治の要諦は山を治むることにありと、こう言われておるのでございます。このことは台風その他災害の多い我が国におきましては昔も今も同じことでございます。我我は治山治水には十分の力を入れておるのであります。而して初めの御質問の森林法改正ということにつきましては私はまだ詳しくは存じておりません。併しお話の点は誠に御尤もな点があるのでございまして、森林法改正をいたしますにつきましてもお話のような点は十分考慮しなければならんと思つておるのであります。森林を保護育成することに急にして、山林所有者が山を治める、山をかわいがるという気持がなくなるというふうなことであつては、これは角を矯めて牛を殺すのそしりを免れません。従いまして改正いたすことにつきましても、とにかく山を治めるという根本方針に反しないような改正でなければならんと考えておるのであります。  次に林業に対しまするところの政府の補助金融の問題でございまするが、御承知の通り公共事業費から造林補助費として今年度二十三億円、来年度二十六億円程度を見込んでおります。而して植林の場合のこういう補助以外に林業者に対して金融の途はつけられないか、こういうお話でございまするが今回の農林漁業に対しまする六十億の出資はおおむね設備資金でございまして、林業に関係するものとしては、やはり林道その他が考えられるんじやないか、山を持つておられるかたに金融ということは今のところ考えていないのではないかと思います。ただ山の木を担保に金を借りるということにつきましては農林中金も考えないことはないと思います。  次に税の問題でございまするが、御承知の通り山林所得の課税はなかなか厄介な問題でございまして、昔から議論のあるところであります。御承知の通りに山林所得は累進税率の適用を緩和するために五分いたしまして、それを所得の上積みにして弾き出した税額の五倍ということを長くやつてつたのであります。その後一時所得というような意味からいろいろに課税方法を変えて参りましたが、今は五分しまして税率を彈き、そうしてそれを積算して納めるということで非常に厄介なことになつております。山林所有者の、何と言いますか、不平の声を聞いておるのでありまするが、これは山林所得のみならず、この一時所得につきまして私は相当今後考えて行かなければならんと思います。殊に問題の山林所得につきましては、山林所得並びに相続税につきましても相当研究をしなければならんという気持を持つて只今検討いたしておりまするが、何と申しましても山を治めることが先ほど申上げましたように非常に大きい仕事でありますので、それに副うように税制のほうも考えて行きたいと思つておるのであります。  なお木材引取税は山林所有者に転嫁されるようになる、従つて二重課税ではないかというお話でございますが、木材引取税はこれは所得税ではないのでありまして、私は所得税と二重課税になるという議論は成り立たんと思いまするが、山林所有者の負担になるということにつきましてはお説御尤もの点が具体的事例としてはあると思うのであります。従いまして木材引取税はやめるかやめんかという問題につきましては、これは私の所管ではございませんが、所得税と重複課税になるということにはならな。ただ木材引取税が適当であるかどうかということにつきましては、これは地方税になつておりますので、各府県におきまして適当にお考え頂くよりほかありますまい。ただ転嫁の問題はやはりそのときの経済情勢によることでありますので、山林業者に転嫁される場合も、又製材業者或いは材木使用者に転嫁される場合もあると思います。その観点から検討すべき問題だと思います。  次に国有林の払下げの問題でございまするが、これは多分農林省のほうで委員会が何かこしらえておやりになつておるんじやないかと思います。やはり地元の関係等を考えておやりになつておると思いますが一御承知の通りにあの国有林を伐りましても財政的に黒字が出ない、これは或いは山を伐つてつて赤字が出るということは如何にも経済的に見てどうかと思うのでありますが、これは実際問題としましては木を売りましてもその売つた金で植林をやつたり、何と言いますか、資本投下をいたしておりますので、そういう赤字が出ておりまするが、やはり国有林の売払いにつきましてもお話しの通りこれは今後検討して行かなければならん問題があると思います。木を伐つたあとの問題につきましては所管が違いますので余り詳しく存じませんので農林大臣からお答え願いたいと思います。
  95. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 融資の問題につきましていろいろ御説明がございましたが、お話のような筋も私も一応それは存じております。それで足りないから特に御考慮をお願いしたいという意味で質問いたした次第であります。御存じの通り山持ちが銀行に借りに行きましてもなかなか貸してくれません。これはなかなか調査も困難でありますし、直ぐ金にならない性質のものでありますから、これは銀行が貸し澁るのも止むを得ないと思います。農林中央金庫においてもほかの方面のようには取扱つてくれないのが今日の状態であろうと思います。特にそういう状態では困るので、この際何とかしてもらわなければならないと思つておる矢先に、又伐採するがそれによつて又損害が加わるそのときには金が借りられないというようなことになつてはいよいよ生活にも困る者が出て来るというような、これは差迫つた問題でありますので、特にこの点を御考慮願いたい、こういうわけであります。  相続税等につきましてはなお考慮するというお答えでございますので、もうこの上私が具体的にそれをどの程度ということを申上げることは御遠慮申上げたいと思つておりますが、できるだけ皆の苦しんでおる点を御考慮下さいまして軽減になるように改正して頂きたいと思います。  木材の引取税の問題は御説明の通り所得税でないことはもう明らかであります。そういう形の上において重複しておるということを私は申したつもりじやなかつたのであります。結局自分が売つた山について一方は所得税という形で、又一方は引取税という形で、これは転嫁ではありまするけれども来ますので結局二重課税の実質であるというふうに森林所有者側としては考えざるを得ない、こういう意味で申上げた次第であります。これは地方税でもありまするので、たつてどうということは申しかねますが、なおこの上ともよく御研究を煩わしたいと存じます。
  96. 藤野繁雄

    ○理事(藤野繁雄君) 農林次官が見えておりますが、大臣から答弁されることま……。
  97. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 後で結構ですから後日答弁して頂きますように委員長にお願いいたして置きます。そう取計らうからという御返事を頂いております、それで結構でございます。
  98. 山本米治

    ○山本米治君 大蔵大臣に資本蓄積問題について二、三の点をお伺いしたいと思うのであります。  旧臘、アメリカのドツジさんが帰られるに当り、資本蓄積の必要を強調して去られたわけであります。ドツジさんを待つまでもなく、疲弊し切つた日本に資本蓄積の必要なことは申すまでもないのでありますが、世間ではやはりドツジさんのような人が言うと改めてこの問題に注意を向けるわけでありまして、政府も今般大童でこの問題に乗り出しておられる。そうして一般的減税を初めいろいろな施策を講じておられることは誠に結構なことだと思うのでありますが、今日の国際情勢から見まして、輸入が非常に困難になつておるということは申上げるまでもないのであります。又国内資源も少い、そういう場合にこの観点から見まして、設備の増設ということが無秩序に総花式にやつては困るのじやないかと思います。つまり原料があらゆる設備の増設に行き渡るほど十分にないからでありますが、而も或る種の設備は是非増設しなければならない、ところが或る種の設備は余り増設することは好ましくない、こういうような関係にあると思うのでありますが、そこで政府の資本蓄積策を見ますと、やや一般的に過ぐるのじやないか、その結果資本の効率を害するようなことはないか、資本の無駄が生ずることはないかというようなことを多少懸念するのでありますが、この点に関する御所見をお伺いしたいと思います。
  99. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 資本の蓄積に大童になる、このこと自体は結構なことでありまするが、蓄積された資本をどういうふうに使つて行くか、無駄な方面に持つてつてはいけないという点は誠にお説の通りであります。無駄なほうに向かないようにするという場合におきまして二通りあると思うのであります。会社が利益を蓄積いたしまして、そうしてそれを自分の工場の拡張、機械の近代化というふうなこともございます。これは私は会社のほうに任じていいのじやないか、而して又自分の利益を蓄積したのでなしに、国民の利益が金融機関等を通じて集まつて来た場合に銀行の貸出しをどうするかという問題になつて来ると思うのでありますが、そういう場合につきましては、資金融通準則のあの線に副つて私は各金融機関の首脳部が善処されるように機会あるごとに提唱いたしておるのでございます。只今のところ私はそう蓄積された資本が、不必要な所とか或いはそう効果がないような所に貸出しが行われておるようにも考えられませんが、併しそういうことのないようには常に努めておる次第でございます。
  100. 山本米治

    ○山本米治君 次に預金の問題でありますが、預金者というものがその預金の秘密の保持について非常に敏感であるということは、昨年の秋でありましたか、富裕税の問題に関連しまして金融機関から預金調書を出すということであつて、それが発表されますや非常に預金者の間には動揺が起りまして、或いは預金の引出し或いは預替えというようなものが殺到したのでありますが、そこで大蔵省では朝令暮改の見本のごとく直ちにこれを改められたのでありますが、なかなか取消の効果というものは少いのでありまして、そこで昨年の年末に至りましてもまだこの不安が解消されず、従つて年末において相当預金が引出されたように聞いておるのでありますが、そういうわけで預金の秘密性という問題は従来随分議論されておる問題であります。そこで従来は例の預金利子に対する総合課税と関連しまして、金融機関から預金利子の調書を税務署に出されておる年額千円を越える部分金融機関からその資料を提出することになつておりますが、更に税務署は銀行に立ち入つて検査とか質問とかをしばしば行なつておられたのでありますが、この点に関しましては、今度政府が預金利子に対する源泉選択課税の制度を実施せられることになりまして、これ又我々全面的に賛成しておるのであります。この際更に竿頭一歩を進められて、一つ無記名預金というものを復活させる意思はないか、こういうことをお伺いしたいのであります。或いは若し無記名預金というものがむずかしいならば、貯蓄債券というようなものを発行する、金額は例えば千円單位、そうして期間は半年乃至二年ぐらいな割引式の貯蓄備券を発行する、そういう制度を設けられる意思はないかどうか、従来この種の問題は課税理論と多少撞着するところがありますので、非常にこの議論はなかなか実行されなかつたのでありますけれども、私は現に数万円とか数十万円の現金を持つて、ただただ税務署を恐れるがためにいわゆる箪笥預金をしたり、或いは瓶の中に入れて地下に埋めておるという例をしばしば聞くのでありますが、これなども皆この問題に関連しておるのであります。そこで課税理論の問題はありましようけれども、私はそこは政治だと思うのでありまして、この際資本蓄積は非常に重要だというならば、多少その理論は一時、例えば期限を二年とか三年とかに切つても、むしろこの貯蓄増強という点からこういうような制度をとられたらどうかと考えておるのでありますが、只今申しました無記名預金の復活、或いはこれに実質上代るところの貯蓄債券の発行の制度をとられる意思はないかどうか、これをお伺いしたい。
  101. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) だんだんの御質問でございまするが、昨年暮に富裕税の資料といたしまして十万円以上のものの銀行からの報告というのはこれは手違いでございまして、早速取消させました。報告はなさらなくてもいいようにいたしたのであります。併しこういう問題はいわゆる預金者の心理に非常な影響がありますので、当時十二月の四、五日でしたか、五、六日でございましたか、かなりの金が出たようでございます。その後におきましても又やるのではないかというふうな不安もあつたようでございますが、今では落着いたと考えております。理論的に申しますと、何でも彼でも報告をとつて課税の対象にするということは、これは実際理論から言つたらいいかもわかりませんが、併し何といつても生きものの経済を殺てしまつては税の理論もないのであります。その点を考えまして、最近におきましても富裕税のために一々同族会社としては非上場株式を資産按分で評価するというようなことはやらさないように、とにかく余り金融経済界に影響を及ぼさないようなことで苦労をいたしておるのであります。お話の無記名定期預金というものは一時やつてつたのでありまするが、これはやはり租税理論が勝ちまして、なかなか今のところ実行困難でございまして、従いまして私は零細な預金者のためにもと思つて、今税務署への報告も、三万円までは無税にいたしておるのでございますが、これを引上げることを検討いたしております。又無記名定期預金がいけないという場合におきましては、これは今までありました割引債券というふうな方法も考えられるんじやないか、これは割引でありますと税がかからんのではございません。総合のときには申告に加味するのであります。ただそれが調べようがないということだけであいまいになつて来るのでありますが、こういうあいまいのこともあつていいんじやないかというような気がいたして今の東銀債の問題なんかも起つたわけであります。なかなかこの点は非常にむずかしい問題でございます。ただ銀行利子の報告につきましても只今千円でありますが、大体二千円くらいな程度にまで引上げようかというので検討いたしております。とにかく税の理論も無論大事でございまするが、とにかく経済復興再建という大きい目的のためには或る程度の犠牲は止むを得ないじやないかという考えの下に、ここで議論になりました、徒らに租税の公平理論に捉われずという言葉を私は用いたのでございますが、御賛成頂きました源泉選択課税にいたしましても、やはりこの資本の蓄積、預金者の心理を考えてからの措置でございます。今後金融界の情勢、その他一般から考えまして、資本の蓄積に役立つようで、而もひどく公平理論を阻害しない問題につきましては検討して行きたいと考えております。
  102. 山本米治

    ○山本米治君 只今と同列の問題でありまして、又今大蔵大臣の御答弁にも一言触れられた点でありますが、十万円以下の預貯金に対する利子課税を全部廃止したらどうか、こういう問題であります。現在郵便貯金につきましては御承知の通り三万円までは無税ということになつております。又国民貯蓄組合の預貯金というものに対しましても、同じく三万円までは利子が免税となつております。ところがこの制度を作られた昭和二十年末でありましたか、それと現在との国民所得が、或いは処分可能な国民所得という比較からみますと、現在六、七倍になつております。又消費財の物価、又は銀行券の発行指数などを見ましても、三倍乃至六倍になつております。そうしますと、昭和二十年末の利子免税限度三万円というものは、今日から見ますと十五万円に引上げても、二十万円くらいまで引上げてもいいということになるのであります。これは一歩譲りましても十万円までの預貯金については、その利子所得に対して免税とする措置をとつたらどうか、こういうふうに考えるのでありますが、御所見は如何でありましようか。
  103. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 結構な御議論でございまして、十分検討いたしたのでありまするが、今国会に出す程度にまで至らなかつたのであります。自分といたしましても、三万円を相当程度引上げたいという気持は持つておるのであります。これを実際問題として引上げませんでも、三万円を口をたくさんにしてやつておる、これは手数ばかりでございまして、私はそういう実情から考えましても、相当上げていいのじやないかというので、今検討いたしております。
  104. 山本米治

    ○山本米治君 政府でそういう御意思がおありでありながら、今度の国会に実現できなかつたのはどういう事情なんでしようか。非常にこの点を銀行、特に地方銀行なども熱望しておるのでありますが、私が申しますのは、その郵便貯金と国民貯蓄組合預貯金だけでなく、十万円以下の預貯金については一切利子免税ということにされたらどうかと考えておるのでありますが、どういう点が難点で実現できなかつたか。
  105. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 租税収入の点、その他いろいろな点があるのであります。これは厳格に申しまして、例えば郵便貯金なんか三万円となつておる。これを引上げる場合におきましては、例えば五万円なら五万円に引上げる場合におきまして、税のほうから申しますと全部を名寄せする制度をやつたらどうか、それから又銀行預金にしましても八万円なら八万円とか、五万円にした場合に、全部名寄せするか、こういう税の理論的な点が起つて参りますので、なかなか手が付けられなくて結論が出なかつたのであります。預金のほうから申しますると、私は今のあなたのお話のように、上げることが適当だということも考えておりますが、上げる場合にこれも又やはり今までのように郵便貯金通帳のようなものを幾つも持つたり、銀行にいろいろな口を設けてやるということがチェックできるかどうかという点を、今少しく検討してみたいというので結論を得なかつたのであります。
  106. 山本米治

    ○山本米治君 同じく資本蓄積問題でありますが、株式担保金融をもう少し拡充したらどうか、こういう点に関する御質問であります。目下日本では金融上の問題はいろいろありますが、長期資金の点が最もウイーク・ポイントになつておるのであります。その一環の問題としまして、政府はかねて証券市場対策をいろいろやつておるのでありますが、効果が挙らない、余りぱつとしないのでありますが、御承知のように司令部もかねがね日本の会社企業というものは自己資本というものが非常に小さい、そうして借入金が大きい、これは企業経営として非常に不健全であるから、これを直すようにということを希望しておるのであります。ところが株式市場がずつと冴えませんので、なかなか増資をしようと思つても困難なのであります。一体との有価証券というものは融通性といいますか、換金性といいますか、それがもう生命でありまして、それなくしては有価証券というものは非常に意味が少くなるのでありますが、今日では株式担保で金を借りようという途は殆んど閉されておると言つて差支えないぐらいでありまして、現に銀行の貸出中、証券担保の分を見ますと、戦前の十分の一くらいな割合になつておるのであります。要するに証券担保では金が借りられないということを意味しておるのであります。そこで日本銀行は、元来株式担保の金融を認めておりませんのでありまして、創立の当初から直接の株式担保の貸出というものは條例とか、定款で禁止しておるのでありますけれども、それにもかかわらず明治十八年からは実際上証券担保つきの手形割引というようなこと、又はいわゆる見返りの制度を実施しておるのでありまして、実質の意味におきましては株式担保金融をやつておるのであります。そうして戦時中の昭和十七年に日本銀行法を改正したのでありますが、この改正によりまして株式は正式の担保として認められるようになつたのであります。ところが終戦後の実際問題としてこの措置が停止せられておるのであります。このために株式の担保力というものが殆んどないようになつております。そこで政府は現行の日本銀行制度としてはできるところのこの株式担保金融というものを復活される御意思はないか、復活されたらどうか。延いてはこれが市中金融機関においても一般の証券担保金融に対する途を開くことになると思いますが、この点一つ所見を承わりたい。
  107. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 証券金融が十分に行かないのはお話通りでございます。昨年の一月から六月くらいの間に七百億円ばかりの増資がございまして、株もたれをしたというので、昨年頃から非常に株が下つて来たのであります。下つて参りますとますます金融がむずかしくなる、こういう状態であるのでありまするが、各地に、例えば東京で言えば日本証券金融会社というものを置きましてこれが貸株の制度を始めまして、この頃ようやく保ち合つて来たのであります。昨年の低いときに比べますと、上場のありました平均株価が七十円程度であつたのが、昨今では九十五円程度までに上つて参りました。余ほど株式のほうに対する認識もよくなつて来たと思うのでありまして、併し今の日本の実情といたしましては、お話通りに戦前の一割にも株式担保金融というのは行つておりません。一割じやない、私は五%、或いは二%くらいじやないかというくらいに思つておるのであります。殆んど行われていない。これは先ほど申上げましたように、株価の状況が悪かつたということと、單にいわゆる株式金融よりも、設備資金その他のほうが安全だという金融家の気持が然らしめたと思うのであります。一昨年来私は可なり各金融機関に株式担保金融をやるようにということを勧奨して参りましたが、なかなか行きません。そこでお話のように、日本銀行が制度上できるのであるから、そうしたらどうかという御質問でありまするが、私は結構だと思います。ただ私のほうでどんどんやりましても、これはもう馬に水を飲ますわけにはいかない。どうしても銀行家がその気持にならなければいかない。その気持になるのにはやはりコンマーシャル・ベース、自分の計算になるものでございますから、それには株式が健全な株価を持ち、実際に合つたようなところまで回復しなければならんと思います。だから金融家ばかりも責められませんのでありますが、いわゆる証券界の健全な発達を促すことが一番早道だと思いまして只今申上げました貸株制度をやつております。日本証券金融会社、或いは大阪証券金融会社、それから中部証券金融会社につきまして、日本銀行よりも今までも別枠の融資をしております。十五億、或いは二十億、できれば三十五億ぐらいの別枠融資を殖やしましてそうして貸株制度、その他の方法によりまして健全な証券事業の育成に役立たしたいと考えておる次第であります。
  108. 山本米治

    ○山本米治君 証券市場の問題に対してもう一回だけお伺いしたいのでありますが、今日証券投資に対する非常に大きな障碍の一つとなつておる株式の譲渡所得税の問題でありまして、この株式の譲渡所得には実際には相当脱税が多いと思うのであります。脱税が多いという税金は余り立派な税金ではないのでありましてこのために実際に払つておる者だけが損をする、不公平という結果が生れておるのであります。又税収としても脱税が多いために見るべきものはないのであります。而もこの証券会社、証券投資家にとつてはこれが少くとも非常に大きな心理的な障碍要素になつておりますので、この際株式の譲渡所得税を全廃するか、少くとも当分の間これを中止するという御意向はないかどうか。これが一点でありまして、更にこの税制の問題といたしましては、今まで証券業者の手持資産、手持証券の評価に関しましていわゆる認容限度ということがあつたのでありますが、これが昭和二十四年からでありましたか、撤廃されたのでありますが、証券業者の資産内容をよくする意味において、この認容限度を復活させたらどうか、こういうふうに思うのですが、この点がどうか。又同じような理由によりまして、証券業者に対しても、税法上の貸倒準備金を実施されたらどうかと思うのでありますが、これらの点についてお伺いしたい。私の質問はこれだけにしますが……。
  109. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 証券の譲渡所得税について全廃、或いは中止したらどうかというお話でございますが、この一時所得の問題につきましては、先ほども山林所得で問題を提供せられました。又今退職資金で非常にやかましい問題が起つておると同様に、証券の譲渡所得につきましてもお話のような議論が強いのであります。で今の日本の税制は全部個人中心でありまして、而も譲渡所得まで全部入れ込むという建前で行つておるのであります。理論としてはなかなかいいのであります。シヤウプ勧告の第二次理論には一応承服いたしましたが、これは実際には副わない点があるのであります。アメリカにおいても勿論譲渡所得はやつております。日本のように厳格にはやつておりませんが、所得の四分の一、二五%を課税するようにしておつたかと思います。それは私が向うにおりますときに、二五%を一七%に下げたと思いますが、日本は一〇〇%課税しておる。二五%課税しておるアメリカにおきまして実際どういうふうに行われておるかと言えば、日本と同じように厄介な問題であります。統計のはつきりしておるアメリカでも、証券の譲渡所得に対する統計は私は見せてもらえなかつた。なかなか厄介な問題でございましてシヤウプ博士の理論一点ばりの税制につきましては、私は退職所得のに問題、或いは山林所得の問題、或いは証券の譲渡所得の問題につきまして検討を加えたいと思うのであります。これは税制の根本に触れる問題でございますので、今直ちにどうするとかこうするとか申上げられませんが、これは大きい課題として今後研究して行きたいと考えております。
  110. 山本米治

    ○山本米治君 それから認容限度の問題……。
  111. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この証券業者の手持有価証券の認容限度でございます。これは昔からも厄介な問題がございます。証券業者が持つておる証券は商品なりや商品ではないか、商品の場合には認容限度、自分の資産であるものの認容限度が厄介な問題がございますが、貸倒準備金と同じように計算方法を多分改めたと思います。で認容限度を置く方がいいか、或いは取得原価、或いは時価、いずれか低き方によりまして、そうしてはつきりさしておいて所得を計算する、これがいろいろな問題があつたと思います。これは例えば自分の商品にいたしましても、最近始めました後入れ先出しの方法、いわゆるインフレのときには後入れ先出しの方法をやらないと如何に認容限度を認めてもなかなかやれない。併しデフレのときは後入れ先出しということはなかなかむずかしい問題になります。これはやはり個々の事態に副つて考えなければならん問題だと思います。而して又貸倒準備金の問題につきましても、銀行につきましては相当程度認めておりますが、証券業者の貸倒準備金と申しますると、やはり問題は所有有価証券の問題である。何も証券業者が特に貸出しておるわけでもございません。貸倒準備金ということになりますと、証券業者以外に一般の商業者において相当の問題があると思うのでありまするが、これは私貸倒れなりや否やと言うことはなかなか困難であります。だから貸倒れになつたときの計算でいいじやないかという考えを持つております。併し税務の取扱につきましての重要な問題でございますから、今後も検討を進めて行きたいという気持でおります。
  112. 山本米治

    ○山本米治君 有難うございました。これで私は終ります。
  113. 藤野繁雄

    ○理事(藤野繁雄君) 岩間さん、どうぞ。
  114. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は最初に大橋法務総裁に御質問いたしたいと思うのであります。その第一点の問題は、これは八日の当委員会においてだと思いますが、吉田総理に対しまして、私は日本の現在の情勢、つまり現在の現行の憲法下、更にポツダム宣言こういうような下におきましては、平和運動、それから全面講和、こういうような講和に対するところの論議が日本国民の間から起つて来ておる、盛んに起つて来ておる。それに対する意見はいろいろ違つておるだろうけれども、こういうことを論議するのは当然の権利であり、又それをさせなければならんと思うが、こういう点をどういうふうに総理考えておられるかということを質したのでありますが、これに対しまして吉田総理は、平和論議、講和論議、こういうものは絶対弾圧する考えはない、これは飽くまで尊重して自由にやらせる、こういうような御答弁があつたわけなんであります。この点につきまして大橋法務総裁はどうお考えになるか。只今の吉田総理のようにお考えになるのであるか。又はこれと違つたような御意見を持つておられるのでありますか。この点から先ず先に伺いたいと思います。
  115. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 平和問題について論議せられるということは当然認むべきものと考えております。
  116. 岩間正男

    ○岩間正男君 論議をして例えば集会をやるとか、それからいろいろそういうようなみんなの意向をまとめるとか、こういうようなことが起つて来ておるわけであります。つまりこれはどこでもやるだろうと思います。一方におきましては例えば再軍備をしなければならんというので、やはり国民のそういう運動を起さなきやならないという立場からも非常に大きくそのような運動がされておるようであります。こういう点から考えて、全面講和を飽くまで達成ずる、そうしてこれは少くともポツダム宣言によつて規定されている面を飽くまでも守り抜く、こういうような運動に対しまして、これは法務総裁も十分御承知だと思うのでありますけれども、全国至る所でこういう運動が実は国民の要求として起つておる。これに対して併し実情はどうかと言いますと、必ずしも吉田総理答弁されたようなことになつていない。吉田総理は弾圧する考えはないし、又弾圧した事実もないというような多分御答弁つたと思うのでありますが、然るに平和のこういうような運動に対しましては、相当これは広汎にいろいろな面で抑圧されている事例を我々は不幸ながらはつきり知つているのであります。そうしますと、非常にそこに食い違いが出て来るのでありますけれども、そうしますと、総理の一国の最高責任者の意思が下において非常に曲げられておる、曲解されて行使されておるのであるが、その辺が非常におかしいことになるのでありますが、法務総裁としてはこのような、つまり総理の言に違反するような事例が、挙げろとおつしやれば私はたくさん挙げることができるのでありますが、こういう事例が起つておることにつきましてはどのように処置されるお考でありますか、承わりたい。
  117. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 平和運動自体を弾圧いたしておるという事実はないということを確信いたしておりまするし、又政府といたしましてはもとよりさようなる意図は全く持つておらんということを申上げます。ただこの運動の具体的な内容が現存の諸法令に違反をいたすという場合におきまして、その見地より取締をなしておるという事実はあるのでございまするが、併しこれは先にも申上げましたるごとく、平和運動自体を弾圧するという意図を持つてなされたものでもなければ、又平和運動を弾圧いたしておるということでもないわけでございます。
  118. 岩間正男

    ○岩間正男君 法務総裁はそうおつしやられますが、しばしばそうでない事例が出て来ておると思います。東京でもそういう例があります。例えば北区における最近の事例でございますが、そういうところで平和の集会を持つた。これに対しまして警官が多数乗込んで行つてこういうような集会を禁止する、そうしてそれに対して飽くまで平和を守るという我々の要求があるんだというようなことで集会者がそういう一つの禁止に対して承服することができない、そうしますと、それに対して検束までするというような事例が起つております。これは北区の例でありますが、そのほかに全国でそういう例を我々は聞いておるのであります。又最近の例なんかでは、やはり平和を目指したところの練馬におきまして区民大会が持たれる。これは三月三日のことでありますが、豊島第二小学校で各党の人たちが出席しておる。民主党、社会党、共産党及び労農党、この四党の主催で、代議士としても石田一松、それから前代議士の加藤勘十、我が党の風早八十二、農民党の堀眞琴、こういう人たちが出席予定になつていたところが、前夜突然練馬署のほうから許可しない、こういうようなことを言つて来た。それでこれを知らないで加藤氏や風早氏が出席したところが、警官が六十名ばかり学校の内外におつて入場させなかつた。主催者がどうして一体これを止めるのかということについて理由を聞いたけれども、署長は知らないと言つて逃げる。こういうことは公安委員に聞けと言つて逃げる。更に交渉を重ねたけれども結局理由を言わなかつた。こういうような形でこれは来ております。そのほかにも例を挙げますと、学校におけるところの生徒とか教員の、飽くまで憲法に規定されておる問題ですから、これを守ろうとする運動があるわけであります。なにせい学校では終戦以来憲法が制定されてからもう四、五年の年月は経ていますから、これこそ再びあの敗残の愚かさを繰返さない、而も世界に稀なところの戦争放棄の憲法である、こういうことは至る所で説かれたわけであります。現に去年なんか、私も金沢に参りまして、金沢の教員の講習会に行きますと、金沢大学の先生がその席に講師として出て参りまして、日本憲法の優れているところはここにある、前文について縷々と説いておる、諸君は信念を持つてこの平和愛護というものを、憲法を守り通すところの決心をしなくちやならん、これこそが敗戦を迎えたところろ日本の教育者、敗戦によつて再びあの愚かさを繰返さないという覚悟の下に立上つた教育者の信念じやないか、こういうようなことが、説かれておる。ですからこれは憲法を守るというのが当然の日本人殊に教育者や何かの立場である、こういうふうに考える。そこでそういう平和運動、平和を守れということが憲法からしまして当然来ることである。こういうようなことに対してやりますると、これに対するいろいろな故障が出て来る。これは必要でしたら具体的に挙げてもいいのですが、そういう例があるのであります。そうしますと、法務総裁は只今平和運動の理由で以て弾圧されない、こういうことを言われておりますが、事実は逆であつて、平和運動の理由を以て弾圧されておる事態が余りにも多いでありますが、これについては非常に今の御答弁と食違いがあるように思うのでありますが、如何ですか。
  119. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、平和運動に対しまして弾圧する意図もなければ、又いたした事実もないと確信をいたしております。
  120. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうしますと、そのような政府の意図に反して下のほうで行過ぎですか、今までの一つの何といいますか、上の者の意を迎えてやり過ぎるということが日本の官僚機構なんかには、殊に警察機構なんかには残つておる、権力に対して非常に盲従的だ、こういう精神から意を迎えて非常にやり過ぎるという事態が起ると思う。そういう事態が起つた場合に対しましては、法務総裁としてはどう処置されますか、又これに対しましてはつきりこれは国民の立場からしまして、こういうような基本的な人権の侵害に対しましては当然抗議して差支えないものだ、こういうふうに考えられますが、その抗議は当然と認められるですか。
  121. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 平和運動のためにいたしまする集会についての取締ということでございまするが、この集会につきましては、今日各自治体におきまして公安委員会の権限といたしまして、集会條例その他の條例によつて取締をいたしておるわけであります。もとよりこれらの公安委員会におきましても、平和運動そのものを弾圧する、或いは平和運動という理由によつてこれらの集会を禁止するというようなことは、断じてないということを確信いたすのでありまするが、実際上禁止その他の措置がとられましたる場合におきましては、それぞれ具体的な事情に応じまして、さような措置が必要であると考えられるような事情があつたものと存ずるのであります。
  122. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはやはり人民の意思を本当に信じないし、又人民の善意を信じないということを前提にされておると思う。大体集会を持つというと、それに対して何か一体不穏なことが起る、なぜそう考える必要があるかという問題、つまり権力的な考え方に戻つて来ておる面が非常に最近露骨に出ておると思うのでありまして、むしろ人民の意思を尊重して、このような意向というものを大きく民主的に取上げるという考えであつたならば、これはそういうような手段に出るべきじやない。それをむしろ弾圧しておるというところは、平和運動そのものが非常にやはりいろいろな点で微妙な影響を與えるとか、或いは或る国に対しましてそういうやり方が非常に工合が悪い、こういうようなこと、そういうような観点からこれは日本政府が特に便乗的にやつている政策の一面も出ているのではないかと、こういうふうに思われるのであります。例えばダレス氏の来朝のときに同時に行われました「平和の声」の問題なんかも、この「平和の声」そのものはやはり平和運動の一つの面、日本国民として大きく守らなければならない重要な問題として、そういう運動を取上げて記事にしていると思います。そういうものをなぜああいう形で弾圧しなければならないか、こういう点が非常に問題があるのであります。これはアカハタ紙類似だというふうに言われるのですが、アカハタ紙類似などということでありますと、何も書けなくなる、何も書けなくなるという事態が起きるのじやないか、こういうふうに思います。それから又今の平和運動そのものによつては弾圧されたことはないが、例えば集会がいけない、條例に違反する、こういうような面でそういう解釈をどんどんどんどん拡張して来て、そして実は平和運動そのものを弾圧して来ている、そのけじめがわからない、実際集合を持たれるときにそのけじめがわからない。何でもそれは平和運動を弾圧するのではないと言つて、実際には平和運動を弾圧している。こういう事態が大きく出ておるのでありますが、そういう点について行過ぎそのものについてはこれは認めておられないようですが、そういう事態が起きておるし、それからそういう事態に対してどのように政府としては処理されるか、総裁としてはどういうふうに処置されるか、この点を先ず決心のほどを承わつておきたいのであります。
  123. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 公安委員会におきましては、公安委員会制度そのものが国民の意思によりまして民主的に警察権を運用いたすようにいたしたい、かような趣旨を以て設けられましたる公安委員会であり、又さような趣旨において警察権を運用いたしておるということを確信いたすのでありまして、これは決して国民の意思を弾圧する或いは又国民を信じないというような意味において、これらの條例による警察権の運用が行われておるということは私はないと、かように考える次第であります。
  124. 岩間正男

    ○岩間正男君 法務総裁はやはり吉田総理の意思としてもこれは公式にこの委員会で表明されたのでありますから、当然平和運動、講和論議、そういうものは絶対に弾圧すべきではない、こういうような政府の意思をもつと徹底させるために、下に対して指示でも與えるような御意思はございますか、これはなされるほうが至当じやないか、非常に下部では困難しておりますから、そういうことについて伺います。
  125. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、その権限に基きまして自治体公安委員会に対しまして指揮をするということは、法律上できないことに相成つております。併しこの問題は国家として極めて重要な問題であり、殊に基本的人権に関連いたしまする重要な問題でございまするから、いろいろな機会を利用いたしまして政府の意のあるところはそれぞれの機関にまで通じ得るような方法はできるだけ考えて見たいと存ずるのであります。
  126. 岩間正男

    ○岩間正男君 さつきの講和問題と連関して承わりたいのでありますが、どうも最近国民感情の中で一つの倒錯現象が起つておるのじやないか。といいますのは全面講和が何か悪いことで、罪悪的なことで、そうしてむしろ再軍備の論議でもすると時代に非常に合つていいのだ、むしろそのほうが奨励される、実情を見ると全くそういう現象が起つています。これは憲法と非常に食い違うところの実に由々しい現象だと私は思うのでありますが、例えば憲法にははつきり規定されておるところの平和を守るという運動のほうが彈圧され、そうして再軍備を謳歌するような国民運動が非常にむしろ奬励されておるような実情があると思うのでありますが、私はそこでお聞きしたいのですが、再軍備を強調するような運動は憲法違反であると考えるのでありますが、法務総裁においてはどういうような法的解釈をとられますか、お聞きしたい。
  127. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 憲法につきまして国民に許されたる方法によりましてその改正について論議をいたすということは、これは何ら憲法違反の問題を生ずるところではないと存じます。
  128. 岩間正男

    ○岩間正男君 実際併しそういう運動が非常に起つておるのですが憲法の條項と大分抵触するところがあるように思うのでありますが如何ですか。意見長官もあられるようでありますが、意見長官の御意見はどういうことになりますか。
  129. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) お名指しでございますけれども、只今法務総裁からお答えいたしましたところに蛇足を附加えるだけの、何と申しますか申上げる言葉を持ち合しておりませんから御了承願います。
  130. 岩間正男

    ○岩間正男君 少くとも再軍備論なんか大手を振つて闊歩すべきものじやないというふうに我々は考えますけれども、平和擁護の運動のほうが非常に弾圧されるというのはおかしいように思うのでありまして、総裁はどういうふうにお考えになりますか。これは軍に意見じやない、論議じやない、一つの大きな運動になつて、それがいわゆる反共政策なんというものと非常に密接な動きで、憂国の志士気どりで今日やられておる。どうも現憲法下ではおかしいと言わざるを得ない。こういう倒錯した心理の中に陥つて、そうしてそれが正しいなどと考えておるところに日本人の今日頭の正常さが問題になる理由があるのだと私は考えるのですが、どうです。
  131. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在の憲法並びにその範囲内において制定せられておりまする法令といたしましては、団体等規正令の第二條におきまして、「日本国内において、軍事的若しくは準軍事的訓練を実施し、陸海軍軍人であつた者に対して民間人に與えられる以上の恩典を供與し、若しくは特殊の発言権を附與し、又は軍国主義若しくは軍人的精神を存続すること。」こういうことを目的といたしました団体の結成並びに指導が禁止せられており、又かようなる行為が禁止をせられておる、こういうことになつております。    〔理事藤野繁雄君退席、委員長着席〕
  132. 岩間正男

    ○岩間正男君 論議は一向差支えないというふうに見られるわけですな。併し憲法の條項から言えば少くとも平和擁護運動とそれから再軍備論というものは、中等にどつちもそういうような比重で許す、こういうふうな考えなんですか。
  133. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 集会の取締という点から申しますると、その集会において論議せられる目的が公共の安寧秩序に重大なる障碍を與えるものでない限りは、その内容によつて取締を異にするという筋合いのものではないと、こう私は考えておるわけであります。
  134. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は憲証に対するこれは解釈の問題であり、信念の問題だと思うのでありますけれども、今回憲法解釈が、この改正が軽々に論ぜられていやしないかと思うのです。前文を読めば、憲法の前文を読めばこの精神というものは軽々に……、殊に根幹であるところの再軍備戦争放棄の規定、こういうものは変更はできないというふうに思うのです。然るにどうも閣僚の中なんかでも軽々にこれを論じておるように思う。過般の座談会の、国会討論会の席上でありますが、それはここにおられる岡崎官房長官であつたか或いは佐藤幹事長でありましたか、お二人出ておられたのですが、憲法はどうせ人間の作つたものだ。そこで必要があればこれはどんどんその必要に応じて変えていいのだというような、たしかそういうような言葉を述べられたのを、私は夕食のとき聞いておりまして、これに実は愕然として驚いたわけです。少くとも責任のある者がこれは国民に向つてやる放送討論会の席上で、憲法に対する信念というものが、それくらい変り易いものだということになれば、これは実際問題だと思う。それからこの点についてはやはり吉田総理もこの前の九日の委員会のときにおいても、木村委員の御指摘に対しまして率直にこの憲法を改正する意向はない。これが若し言つたとすればそれは自分の間違いであるからはつきりこの委員会を通じてその点は取消すと、こうおつしやられておるのですが、そうしますとこれは総理の意向ははつきりしておるのでありますけれども、総裁としましてはですね、こういうような憲法改正、殊にこの憲法改正の必要が、再軍備如何という問題に具体的な現実的な問題と繋がつて来るのでありますが、こういう点についてどういうふうにお考えになるのでありますか。只今のこの平和擁護或いは再軍備、この二つの論議のごときを同じように日本の憲法下において認めるというお考えは、やはりこの憲法に対する信念の程度の問題になつて来るのではないか、こういう点が非常に関連付けて考えられるので、私はこの点お伺いしたいのです。
  135. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 憲法、殊に再軍備を禁止いたしておりまする憲法第九條の規定について、これを今日改正するということを考えておらんということにつきましては、私も総理と全く同意見でございます。ただ集会或いは国民意見の表現、こういう問題の取締につきましては、これは法令の定むるところによりまして公平に取締を行うべきものでありまして、集会を許すか禁止するかというような場合におきましても、やはり公共の安寧秩序にこの集会が、如何なる影響を及ぼすかという考慮からのみ決定せられるべき問題でありまして、その集会において論議せられるところの事項の内容というものは、それ自体としてかような集会を禁止するか許すかということの標準になるのでなく、その内容それ自体がひいて公共の安寧秩序に対して如何なる影響を及ぼすかという点を考えまして、この治安という点から決定すべきものであると、こういうふうに私は考えております。
  136. 岩間正男

    ○岩間正男君 それを判定するのは、そうすると公安委員会ということになると思いますが、公安委員会のあり方が非常に問題になつて来る。併しこれが政治的な意図で取上げられたり、こういうような安寧秩序の問題が私的解釈によつて左右されるということは非常にあり得ると思うのです。ころいうようなことで実際は問題が起つておるのです。むしろこういう直接人民の多くの意思を信頼する、そうしてその点については余りいろいろな干渉や圧迫をしない、これが基本だと思われるのでありますけれども、逆に今の安寧秩序というものの程度如何ということの判定が異なるところに握られておる。或る場合には政治的なこれは一つ意見というものによつて非常に左右されておる。こういうものが起るというと、これは基本的人権というものは絶対に尊重されないと思うのですが、こういうような意見について公安委員会そのものが人民の意見代表の機関でありますけれども、そうしますと公安委員会、そういうようなものに対しましてこれは一つの一方に偏した立場というものに対しましては、大きくこれは国民の立場を出し、又それに対しましてこれを改正をする、こういうことは可能なわけですね。
  137. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察制度の根本といたしましては、警察権の行使が飽くまでも政治的な中立という立場において守られるということを保障する。その制度として公安委員会というものが設けられておるわけでありまして、現にこれがために公安委員たる者が同一の政党に所属するという者が多数になるという場合におきましては、当然排除せられるという方法も講じられておるわけでございまして、政治的な動機によつて警察権の行使が左右されるというようなことがあつてはならず、又あり得ない仕組に相成つておるわけであります。
  138. 岩間正男

    ○岩間正男君 やはり只今の総裁のお話を聞いておりますと、過般のこれは検察庁人事なんかは、どうもこれはいろいろここで私が問題にする本筋ではありませんから触れませんけれども、どうもこれが政治的な面があると思います。どうも十分論議され、或いは選挙対策である、或いはこれに対して政治的な圧力があつたのではないか、或いは又一つ弾圧強化の体制をとるのじやないかという、こういうような問題が非常に論議され、その懸念なきにしもあらず、いや大いにある。こういう点では今大橋総裁の言われた意向からすると、まずい人事であつたと思います。これは私の意見でありますから、その点の意見はお伺いしないのでありますが、そこで話を少し進めますが、さつき挙げました学校の問題であります。憲法において、飽くまでこの憲法は正しいものだとして教えて来たけれども、ところがこれが今度はなかなかこのまま教えられない形が出て来ておる。現に大阪の例でありますが、大阪の高等学校におきまして一体平和を飽くまで守るか、或いは戦争自分で欲しておるか。これに関して世論調査をやつたのであります、社会党で。ところが男子のほうでは飽くまで平和を守つて全面講和でなくてはならんということが圧倒的であつた。ところが女のほうではやはりこれは再軍備戦争、こういう意見が出て来た。そこでどうもおかしいというので、よく調べて見たところが、実は受持の先生が非常にこれに対しまして一つの意思表示をして、やはり戦争を讃美するようなふうに注ぎ込んで、これを監視しておつたという事態があつた。そこで受持の先生に抗議を申込んだ。ところが実はいやこうしなければ私たちの背後から力が及んでおるので、若しこういうような処置をとらなければ我々の首が危いのだということだ。これは悲しいことだ、一つのナンセンスだと思います。これは現在の公務員の俸給では生活権が確保されておらない。それから今のような思想的な首切り、追放が行われておる。そういうことの弊害が今はつきり現われて来たのであります。軍にこれを思想問題で追放しておつた、こういうことなんでありますが、その結果はあらゆる公務員の首を、実は半分ぐらい切つておることになる結果、権力につきましては首をすくめるというとが出ておるのでありまして、敢然としてあらゆる権力に対しても闘うという、戦後に当然要求されるような気魄はなくなつておる。そこで今言つたような実にみじめな形が出て来ております。飽くまで憲法を守り抜き、平和を守り抜くなんということはなかなか要求しても無理な情勢が出て来ております。ちよつとそういうことを言うと、お前危険だ、赤じやないかといつてこれは校長が睨む、視学が睨む、こういうような形勢が終戦後まだ何ほどもそういう時期を経ないところの、民主的な訓練が足りない場合はそういう事態に陥るのです。そうしますというと、こういうような態勢に立つても憲法を守れないという事態が起るのでありますが、こういう点については文部大臣にもお聞きすべき問題でありますが、こういう問題について文部大臣は、曽つて質問をしましたら、こういうような問題を論じちやいかん、こういう問題は政治問題だ、こういうことを言つているが、政治問題じやない、社会科の問題だ、はつきり……。社会科でやはりこういうものを教えなければならん。日本国民として憲法を教え、そうして平和を守るということを教えておいて、そうして今度は再軍備の問題が起つてそんなことはどうも正しくない。こういうことを封殺するというのは全くこれは精神的自殺だ、これは午前中も私は吉田総理に質したのでありますが、まさに精神的自殺であります。五年も六年も平和を説いておきながら、再び今度はぺこぺこ権力の前に頭を下げて再軍備を唱えなければならん、戦争協力を唱えなければならん、或いは具体的に慰問文を書かなければならん。こういう事態に追込まれたのです。どういうところに一体精神的な教育なんというものは達成できるか、こういう点から考えて憲法を擁護するということは、非常に重要な課題になつているんでありますが、今のような矛盾、こういうような点に対しては法務総裁としては直接の責任者じやないかも知れませんが、併しこれは法を守る政府法律顧問としては、こういうものに対して見解を披瀝されることは非常に重要だと考えますのでお伺いいたします。
  139. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 教育の問題につきましてはどうぞ文部大臣からお聞きを願いたいと存じます。
  140. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは文部大臣に聞きましたところが、今のような少しどうも拍子外れた政治問題だ、それを論ずべきじやない……。併し政治問題なんか論ずるというのは、これも法務総裁にお聞きしたいのですが、政治問題を論ずることは学校でやつていいのか悪いのか、どうなんでございますか。これはどこで禁止されておりますか、政治問題を論ずることはむしろ奨励されている。極東委員会の教育指令によるというと、はつきりこれはそういうような政治問題を大いに論ぜよ、そうして教師そのものは飽くまで独立不覊の精神を養うべしということが規定されている。占領軍の管理政策の中にもあの三浦半島から上つて参りました直後に出されましたところの、教育指令の中にもはつきりそれは出ております。政治教育は十分にすべきである、こういうことは論ずべきである。然るに天野文部大臣は論ずべきじやないというようなことを新聞に出されて……、これは我々も質問したのでありますが、不明瞭であります。この点は法務総裁としてはどうお考えになりますか、この点も併せてこれはお伺いしたい。さつきの問題と今の問題……。
  141. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 教育の方針といたしましては、学校において政治問題を論じさせるのがいいか、或いは論じさせないのがいいか、こういう問題につきましては何ら法律で定めたものはございませんでございます。それは文部大臣からお聞きを願いたいと存じます。
  142. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうような論議をこれは禁止していない、法律的な何がないとすれば、これは大いにさせるべきじやないか。それをさせないからこそ日本はああいう馬鹿げたことが戦争前に起つたのでありますから、これはさすべきである、させろということがある。法ではありませんが、法令に先行するところの指令の中にあります。お目にかけてもいいんでありますが、……そうしますとあとでお尋ねしますけれども、これはむしろ違反じやないかと私の考える点です。こういう点を法務総裁に尋ねているんでありますが、こういう点についてももつとはつきりすべきだ。そうして政治的な意見や行為は悪いと言つておきながら、一方では今度は慰問文を作れ、輸血のために血を出すべきだ、こういうことを一方では半強制的になされたのは、これは政治的行動ではありませんか。或いは又いろいろなそういう点で、今度は全く日本民主化を逆行するような方向に、例えば警察予備隊が今度別な所に移つて行くというと、小学校の生徒を出して行つて日の丸の旗で以て迎えた。こういう事例があります。こういうのは何ですか、これは政治行動よりもつとひどいものだと思いますが、こういう点につきましてはやはり法務総裁としての意見をはつきりとお尋ねしておきたいと思います。この点お答え頂ければお答え頂きたいと思います。
  143. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 教育の問題につきましては、私の立場といたしましてお答えを差控えさせて頂きたいと思います。
  144. 岩間正男

    ○岩間正男君 私のお聞きしたのは教育問題でなくて、実は学校の教育の中にあるところのやはり一つ法律上の問題なんであります。その法律の運用の問題なんであります。こういう意見について質したのでありますけれどもお答えがないようでありますから、それではもう一点お聞きしますが、先ほど竹下委員の御質問の中に今の警察制度では非常に微弱である。従つて情報を得ることが十分にできない。昔の特高制度の中には非常にとるべきものがあるのであつてそこから特高制度をとつてそうして足らないところを補つたらいいのじやないか。法務総裁はそれに対して技術的な面について十分検討したい、こういうお話で、何だかその特高の復活の方向に対して一つの伏線があるように私は考えたのであります。これは私の思い過ぎかも知れません。併しこれは重大問題であると思う。特高がなぜ一体終戰後アメリカによつて解散せられたか。この事実を想起するときに、この問題は軽々に見逃すことのできない重大問題であると思います。そこで法務総裁にお尋ねするのでありますけれども、一体技術的な面で非常に優れた面が、それは必ずしも捨てたものではない、こうお考えになつておる点は具体的にどういう点であるか。そうして又一つ伺いたいのは、そういう点だけをピツク・アップするというふうなことはこれは不可能じやないか、やはり組織と技術というものは一体不可分なんです。同時に一つのものを取上げてやらないというと、それによつて再び特高の暗黒状態が繰返されるということになる。そういうきつかけから始まつて来るのでありますから、こういうような事態に対しましてはこれは軽々に論ずべき問題でないと思うのでありますけれども、先ほどの御答弁では私は非常にこれは危険性を持つ、こういうふうに思うので、質しておるのであります。
  145. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 先ほどの答弁が誤解を生じまして非常に遺憾でございますから、この機会に補足をいたしだいと存じますが、先ほど竹下委員から言われました御趣旨は、情報の収集ということにおいて敏速にやつてつた、そうしたことが今日の警察においても必要ではないか、こういう意味に私は理解をいたしたわけでございます。もとより曽つのて特高というものは一つ政治警察でございまして、今日の民主警察の下におきましては、断じて政治警察の存続ということが許さるべきものでないということは明らかなことでございます。ただ終戦後警察の制度のいろいろな遷り変り、又警察官の教養が非常に変りました関係におきまして、警察が平生の警察個有の事務であります警備の関係につきまして情報を収集するにおいても、今日なお幾多の至らざる点があるわけでございまして、かような警備上の情報の収集につきまして昔のような敏活な情報の收集の機能を発揮するということは、これは今後の警察としても極めて必要なことである。こういう意味におきまして、さような技術的な面としてこれを考えて、かようなふうにありたい、こういうことを申上げたわけであります。もとよりこれが曽つての特高の復活である、即ち国家的な警察をあらしめたり……、或いは政治警察を復活する、そういうふうな形であつていいというふうには私はもとより考えておりません。これは断じて排撃しなければならんことである、さように存じておるわけでございます。
  146. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほどの御答弁ではやはり特高との関連でいろいろこういう非常に誤解を招く言葉のように思われるのであります。いやしくも特高の爪の垢ほども復活するというようなことは許されない。殊に情報を特高がどうして集めたかというに至つては実に聞くに堪えないのですよ。実に人間としてあるまじきようなことを言つてそうしてスパイ的な行為によつて全く基本的人権を蹂躪するというような形においてやられたというのが、これは戦争前の姿だと思うのです。だから少くともそういうような範疇に属せない情報の敏速は、それは必要でありましようけれども、それならばこれは一つ科学化するとか、いろいろもつと明朗な方法があるわけでありましていやしくも特高の復活を少しでもにおわせるようなことがあるならば、これははつきり、こういうことにしないということを大橋法務総裁はむしろこの場ではつきりおつしやつたほうがいいのじやないかと思うのです。さつきの言葉は非常に誤解を招くのでありまして私はその点を総裁にお勧めしたいと思うのであります。如何でしよう。
  147. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 只今も申述べましたるごとく、特高警察の復活というようなことは断じて許すべきではない。これは私の信念でございます。
  148. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総裁にお伺いいたします。先般の予備審査のときに総裁は、少年法の適用年齢の満十八歳から二十歳の引上げに伴つて、法の盲点があるので、この改正案を本国会に出すつもりだということをお話なつたわけでありますが、その後新聞報道によりますというと、最高裁の殿堂の考え方と最高検の刑罰の考え方と、それがどうしても折合わずにこの改正法案の提案を中止されるやに聞いておるのでありますが、その真僞のほどは如何でございますか、お伺いしたいと思います。
  149. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 少年法の改正の問題につきまして、法務府と最高裁判所の間に多少意見の調整を要する部分がなお残つておるということは事実でございます。従いまして法務府といたしましてはなおこの問題につきまして研究を継続いたしておるような次第でございまして、只今のところいつ提案できるかということは申上げることが不可能な状態であります。
  150. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 年齢の引上げを一月一日付において断行されたわけでありますが、十八歳から二十歳までのこの年齢層の青年の犯罪の質並びに量について、相当危惧される点がある。なお、法としてもそこに盲点があつて非常に困るように聞いておるのでありますが、まあ具体的に言えば成人ならば罰金を受けるようなものを、罰金を受けなくて単なる説諭ぐらいで済む。十八歳から二十歳までの間で子供を持つておる者もおるし、或いは結婚している者もある。これを少年法を適用するというようなところに非常に……、延いては少年院の施設あたりと関連いたしまして、非常に支障があるように聞いておるのでありますが、一月一日実施後の十八歳から二十歳までの間の年齢層の犯罪の動向に特に著しい点があるか、なお非常に不都合な点についてどういうふうにお考えになつておるか、承わりたい。
  151. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) まだはつきりした統計が手許に集まつておりませんので、しつかりした御答弁を申上げることはできないのでございまするが、十八歳から二十歳までの者の犯罪というものは相当な数に上つておる。又、この新らしく少年になりました人たちの犯罪というものに相当悪質な犯罪があるということも大よそ察しておるような次第でございます。これにつきましては、現在のところでは現行法の運用によりまして、家庭裁判所において必要な者はこれを検察庁に送致するという措置をとりまして、それぞれ適当な処分に取運びように努力をいたして曲るわけでございまして、改正案におきまして考えております主要な点は、これらの年齢の者を、現行法のごとく先ず家庭裁判所に送致する、家庭裁判所において検察庁に回付して検事をして起訴せしむべき者はそちらへ廻すということでなく、むしろ先に検察庁において受理して、そうして起訴すべき者は直ちに起訴し、起訴する必要のない者を家庭裁判所に廻す、こういうふうにしたらどうか、この点が改正の要点でございますが、要するにこの問題は家庭裁判所が果してこの多数の少年の犯人を処理する能力があるかどうかという問題に相成つて来るわけでございます。只今のところでは裁判所側においては十分にできるというふうな考えでおられるようでございます。併し只今なお相談を継続いたしておりますので、最後的な点を申上げるわけには参りませんが、只今の状況はそういう状況でございます。
  152. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 予算書を見ますというと、少年院並びに少年鑑別所の施設の整備を図るというふうに述べられ、その立場から予算も昨年度の一億百万円から二億四千八百万円にその施設の拡充費を含まれておつて、その収容予定人員を一万人と見られておりますが、この収容予定人員の一万人というのは十八歳の場合ですか、二十歳の場合ですか。
  153. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この予定人員となつておりますそれらの者のうちには、十八歳から二十歳までの者、即ち新らしく少年法の適用を受けるようになりました者も含めて計画を立ててございます。
  154. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はここで総裁に是非要望しておきたいと思うのですが、この問題は非常に私は大きな問題だと思うのです。先ず犯罪を犯さないように指導するということが第一でありますが、それが犯罪を実現した場合にこれを如何に観護し指導して行くかということです。これは私は政府としても抜本的に一つの対策を講じなければならないと考えるのでありますが、先ほど法務総裁は岩間委員の教育の問題について答弁を避けられたわけでありますが、この二十歳未満の少年層並びに二十歳から三十歳までの青年前期から後期までまあありますが、そういう年輩の青年層の問題は、これは是非とも私は裁判所とか或いは検察庁、そういう立場からでなくて、これは教育の責任省である文部省と十分連絡をとつてつて頂かなければ根本的な解決はできないと思う。切にこの際要望しておきたい点が私は二つあるのでございます。それは一つには、法務総裁としては法律というものを厳守して、過ちを犯した者に対しては峻嚴なる態度をとるということが、私は現在の世相では大事だと思うのです。それについてちよつと申上げますが、非常に青年は理想に燃えておりますし、正義観に強いわけです。それでまあ二十歳から特に三十歳の年齢層の人間というものは戦争にかり立てられて、戦争が終つて、ただこれから生きる一筋の途は新憲法だと、こういうふうに與えられて来た。ところがさつき岩間委員からも一部言われましたが、やや新憲法がぐらつきかけた。そうして曽て我々を戦野に導いたところの国家に最高指導者におられたかたが、再び出て来られて指導されるという、こういう点は、何にもわからずに戦場に引張り出されて、そうして戦火の下を潜つた青年には、どうしても理解できないところがあるとこういうふうに私は考える。又この十八歳から二十歳の青年層は力で抑えつけておつた社会制度の下ならいいのですが、この民主主義の時代になつて、納得づくめということになりますというと、私は非常にこの問題は変つて来ると思うのです。まあ具体的に申上げますというと、法の峻嚴ということを私申上げましたが、いろいろな疑獄事件が新聞あたりに報道される。えらいことを偉い人がやつておる、こういうふうに思つていると、暫く後にうやむやになつてしまう。何かあるらしい、そのまま済む。こういう問題に対するこの年齢層の青少年の疑惑というものは絶大なるものがある。そこに国家指導者に対する不信頼感というものは、彼らの虚脱感というものを助長さして、私の考えでは今のまま進んで行つたならば、この十八歳から二十歳、更に二十五、六歳までの青少年層の犯罪というものはますます私は凶悪性を帯び、量的にも質的にも私は悲観すべき方向に辿つて行くのじやないか、そこで広い意味の教育というものと十分な連絡をとられてやられないと、法務庁だけの考え方でこれをやられて行つたらば、幾ら少年院とか或いは少年保護鑑別所とか、更に刑務所の増設をしても、これは追着かないというような私は事態に追い込まれると思う。その点について私は特に法務総裁に強く要望して置きたいと思うのでありますが、それに対する法務総務の所見を承わりたい。
  155. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 只今の矢嶋委員のお話に対しましては、私も全く同感に存ずるところでございます。殊に少年に対しまするところの保護処分或いは刑事処分、又はこれらに関連いたしました制度を如何に運用するか、又制度を如何に定めるかという問題につきまして、教育の問題とこれは不可分の関係にあるという御説には、全く同感に存ずる次第でございますが、政府といたしましてもこの少年に対しまする対策につきましては、関係の各官庁の意見を総合いたしました対策を打出すという目的のために内閣におきましてその方面委員会を設けられておるのでございまするが、なお私どもといたしましては、かような委員会におきまして十分各般の事項につきまして広汎な研究をいたしますると同時に、特にこの少年保護の担当者といたしまして教育の関係者、殊に文部省当局とは今後一層密接な連絡を保ちまして、少年保護の上におきまして遺憾なきを期して参りたい、かように考える次第でございます。
  156. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一点についてお伺いいたします。それは警察予備隊の宿舎の点でありますが、例えば福岡県とか山口、岡山、石川、そういう県におきまして警察予備隊の宿舎として教育施設が接収されて、ごたごたが起つているということを聞いておるのでありますが、近くは足下で水産大学が接収されて、警察予備隊の隊員諸君と学生との感情も非常に悪化して、憂慮すべき事態だということの陳情を受けたことがありますが、来年度の予算に、警察予備隊の宿舎の設営費として予算に組まれているあの予算において、施設が施された後には、教育施設は全部開放されることができるのかどうか、その点承わりたいのであります。  もうちよつと附加いたしますが、地方公共団体は非常に現在地方財政が窮迫していますので、背に腹は換えられんというところで、極めて非常識なことをやつているわけであります。金さえできれば競輪でも結構だし、更に競犬なんか言つておりますが、それでも結構だと、そういうような、金さえもらえればいいというので警察予備隊を引張つたら、元軍部で儲けた経験があるものですから、警察予備隊を持つて来さえすれば何とか地方の繁栄になるというのでそのためにはどの学校を提供しようが結構だというような、まあ文化国家を掲げている政治家としては実におかしいと思うのでありますが、そういうときかく感覚で、教育施設というものを警察予備隊に提供して、そうして警察予備隊のおいでになるのを請願するという態度を地方公共団体のほうはとられておると思うが、私は確かに予備隊の国内の治安確保のために必要ではありますけれども、文教施設を横取りにして、そして悶着を起すということがあつてはならないと思います。あの連合軍が進駐して来た場合でも、その基本線として、文教施設は成るたけ接收しない。接収しても早く返すと、こういう基本方針をとられたことを記憶しておるのですが、こいに対して法務総裁は、文教施設と予備隊の宿舎の関係をどういうふうにお考えになつておりますか。なお係争中のものについて、将来の見通しをどういうふうに立てられておるかという点について承わつて置きたいと思います。
  157. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊を創設いたしまする際に、極めて短期の間にこれを編成いたしましたる関係上、既存の建物を利用するという方針にいたしたわけでございます。併しながら現在教育施設に現実に用いられておりまする建物を、これを予備隊に取り上げるというようなことは絶対に避けて参つたつもりでございます。ただ併し一応将来においで教育施設のために使うという理由におきまして、従来のいろいろな国の施設が地方に払い下げられておる。併しながら現実には学校の学生が少い。そうして使つておらないというようなものを、地元におきまして調整されまして、これを予備隊の宿舎に提供されたという事実は二、三の地方においてございます。併しこれはいずれも他に教育に用いまする適当なる施設があつて、そこに教育施設を移譲せしめまして、そうしてその空いたものを提供を受けるというような形で行われたわけでありまして、予備隊ができたために、無理やりに教育施設を取上げて、これがために教育上の支障を生ぜしめたいということはないと思つております。ただ実際問題といたしまして、地方において予備隊を招致せられまするために、いろいろな無理な工作をせられたいというようなこともあるかも知れませんが、予備隊といたしましては、さような無理な工作をせられて、そうしてそれがために予備隊が教育施設を無理に立退かしたとか、或いは非常に迷惑をかけたという問題に捲込まれないように注意をいたしておりましたのでその大した問題を生じておるとは思つておらないのでございます。併し地方々々の実情を未だあまねく承知しておるわけでもございませんので、今後十分取調べまして、さような不都合なものがございまするならば、成るべく速かに適切な措置をとりまして、この予備隊ができたために、教育に御迷惑をかけるというようなことは絶対にないようにいたしたい、かように存じております。
  158. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 警察予備隊の設置したさに、恐らく法務総裁のほうには一方的な都合のいい報告だけ届いているかと思うのであります。従いましてあなたのほうでも、又更に文部省とも十分連絡をとられまして、十分調査されまして、そうして教育優先、教育施設の尊重という立場から善処されるように要望いたします。
  159. 内村清次

    ○内村清次君 ちよつと法務総裁にその前に一点。地方選挙がやがて行われるわけですが、現在の状態では、地方の市町村議員の立候補をしたいというような希望者がそれぞれ本人のいろいろの立候補の意思自覚をやつておる。ところがこれが地方の、例えば市会分野に相当大きくなつて来る。或いは小さく言えば、それが政党の勢力の分野に影響する、或いは又それが勤めておるところに対して、相当その人が立候補して、そうして例えば市会あたりに六つて来たならば、即ち自分の団体の中のことが混乱になるからというようなところで、そういう立候補の意思ある者の行為に対して、これは犯罪形成になるかどうかわかりませんが、些細なことを事由として、そうして警察のほうで告発する検察庁がこれを調べるというようなことで身柄を留置する、それが新聞に載る、このために本人は折角そういうようなことを思つてつたにかかわらず、もう立候補どころの騒ぎではない。本人はその些細なことについての抗争、その他の問題を考えなくてはならない、種々の周囲の団体も考えなくてはならない、こういうような事件が私は相当起きておるだろうと思う。現に起きておるのが一件あります。こういうことが、総裁といたしまして、総裁の即ち職務権限におきまして予防できるかどうか。又そういうような関係につきまして、この地方選挙に当つてのいわゆる検察当局又は警察当局に対するところの公正な要望というものがなされておるかどうかという点をお伺いいたします。
  160. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察と検察と法律的な関係が違いますので、区別して申上げまするが、警察は、自治体警察につきましては、私が指図をすることのできないのは申すまでもございませんが、国家地方警察も内閣から指揮を受けることのない国家公安委員会が管理をいたし、又府県の公安委員という者がその運用について責任を持つのであります。従いまして政府の権限といたしましてこれに指図をいたすということはこれはでもないことでございます。これに反しまして、検察庁に対しましては、法務総裁といたしまして指揮をなし得る建前になつておるのであります。そこでこの選挙に関連いたしまして、選挙を妨害するという意図の下に警察権或いは検察権の発動を促がす、いわゆる一種の選挙妨害と申しますか、選挙運動と申しますか、そういう意味合いにおいて警察権、検察権の発動を促がすような動きというもの、これは十分に想像できるのでございまするが、私の考えといたしましては、すべて警察権にいたしましても又検察権にいたしましても、これは最も重大なる国民の基本的人権に関連いたす国の行政作用でございまするから、この運用は飽くまでも公正妥当でなければならん、こういう立場におきまして、これが如何なる側に利用されるにいたしましても、政党に利用されるというようなことは絶対に許すべきでない、こう考えておるのでございます。従いまして検察権の運用に当りましても、もとよりそれがために法をまげるということはこれは絶対に許すべきでないと思います。確実なる犯罪が行われているにもかかわらず、これが立候補をいたしておるという理由によつて、検察権の運用を抑えるということは、これは許すべきではないと思いまするが、併しながらこの検察権を運用いたすに当りましては、できるだけ判決のありますまでは無罪同様に取扱うというのが、これが今日刑事訴訟法の精神でもございまするから、できるだけそういつた選挙の迷惑にならないような、そういう方法によつてやる、又若し急を要しないものであるならば、適当なときまで取調べを延期するという方法によりまして、この検察権の運用が選挙を妨害したり、或いは一方の立候補者に有利に動く、そういうことは絶対に避けるべきであると考えて、これはもともとさように考えておりまするし、特に選挙も差辿つておりますので、さような運用につきましては、私の責任におきまして十分に注意を喚起いたしておるのであります。  公安委員会に対しまする警察運用の面につきましては、私といたしましては、先に申上げました通り指揮の権限を持つものではございませんが、何らかの方法によりましてかような要望をいたしまして、できるだけこれも又そういうふうに運用をしてもらいたいものと考えております。
  161. 内村清次

    ○内村清次君 労働大臣一つ……、昨年の十二月、この国会が開かれまする頃から労働省におきましては労調法と同時に労組法の改正を、その要点について各方面に質問書を出された。そのために、これは労使、或いは公益的な関係の諸団体でもいろいろ改正要点につきまして相当論議があるわけですが、この労働省が意図されております改正は、どういうふうな点を改正しようとなさつておるのか、又そういう論議から来ました質問書の提出というものが、今どういうふうな経過になつておるのであるか。又第三点といたしましては、一体それではいりからその改正をされるのであるか、この国会改正した要点を……、各法案に対して改正の法案を提出される意図があるかどうか、この三点につきまして先ずお伺いいたします。
  162. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お説のように昨年の暮に労組法等に対して実施以来の経験に鑑みて、主要な問題点となるような事案を捉えまして、それに対して約四千通ほどの御意見を、質問と申しますか、意見を求めた通信をいたしておるのは事実でございます。併しこれは法律改正の意図を以ていたしたのではございませんので、労働法の主要点について関係の人々が如何なる意見を持つておるか、現行法において満足をせられておるのか、或いは更に改正を要望するところの声が多いか、それをできるだけ的確に把握いたしたいためにそういう多数の御意見を徴しておるわけでございますが、只今まで回答を頂いておりますのは約二千通くらいになつておる。そういう次第でございますから、法律改正する意図を以ていたしたことではございませんから、無論研究は十分いたさなければならん、事務当局において研究は十分盡しておりますけれども、今日のところでは改正をするというような気持は持つておりません。今後の研究に待ちたいと思います。
  163. 内村清次

    ○内村清次君 第二点のどういう意見を各団体は出されておるか、確かに現行法につきましても相当な改正要望があるはずです。特にこれは又労働組合におきましても、現在の労調法につきましても、或いは労組法につきましても、当然早く改正をしてもらいたい。勿論これは我々につきましても、そういう要旨がはつきりと出されてありまする関係で、私たちもその点につきましては考えておるわけですが、これは労働省が先般の質問書によりまして、相当な意見提出されてあるだろう、そのうちの重要な点は即ちどういう点であつたか、この傾向を見られて、現在の即ち労使双方の意見というものが労働省に反映しておるはずだと思うのですが、この一番重要な点につきまして、労働大臣としてお気付になつたところの一番重要な点、こういう点を一つお伺いしたいのです。
  164. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 実は先ほど申しましたようなことでございまして、その結果について私のところまで、まだ十分挙がつておりませんので、政府委員から申上げられる限度において御説明を申上げるようにいたします。
  165. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 御質問申上げました内容についてはすでに御承知と思います。御承知のように項目は非常に多く並びましたが、大別いたしますと三つになるわけであります。  第一は、現行法につきましては改正の経過から見まして不備な点、或いは不明な点、いろいろ運用上困る点等があると思いますが、かような点についての意見はどうか。  第二は、調整制度、即ち労働委員会制度につきまして御意見はどうかということ。  第三点は、交渉單位制をとるべきかどうかという点、これら主要な点が三点に分れておるのであります。これにつきましてはおのおの具体的に例を挙げまして、改正を必要としないか、或いはするか、する必要を認めるか、若し必要と認めるならばどの点か、必要と認めるけれども、差当りはもう暫らくやるべきであるという御意見があるかどうかと、こういうふうな問いかたをいたしたのであります。  ところで只今大臣から申上げましたように、約半ばの回答が来ておりますが、これは申上げましたように、約半ばの回答が来ておりますが、これは統計的には非常に統計を出しにくいのでありまして、統計的に申上げることは非常に困難だと思いまするし、未だ集つておるのがそういう状況でありまするから、確実な数字の計算もいたしておりませんが、大体のところは、第一点につきましては成るほど不明な点、不備な点等もある、従つてそれらは修正すべきであるというふうな御意見は相当あるようであります。  それから労働委員会制につきましては、これは改正を何とか考えるべきであるけれども、もう暫らく様子を見るのがいいのではないかという御意見は、労働委員会のほうから多く出ておるようであります。併しやはりこの現在のような状況から見まして、労働委員会制度というものに何とか考えなければならないのではないかという御意見は全体を通じてあるようであります。  それから第三点の交渉軍位でありまするが、これは非常にわかりにくいような状況が多かつたのでありまして、單位制そのものがどんなものかおわかりにならなかつた向きが非常に多いと思いまするが、大体のところを見ますと、時機が尚早ではないかという意見が多うございまして、直ち実施すべきであるというふうな御返事のありましたのは過半数にはなつていないようでございます。
  166. 内村清次

    ○内村清次君 そこで時間の関係もありますから、労働大臣にちよつとお尋ね申上げます。 この改正要点のうちに、特に私たちがこれは実際の面を見まして、この労組法の一番重要な点で、而もこれが、労働組合といたしまして非常に要望いたしておる点は、不当労働行為です。不当労働行為につきましては、これは一体労働大臣のほうで労働委員会から答申されて来られましたところの、又これは統計その他がありましようが、そういう点でどういうふうな趨勢になつておるか。これはもう極く接近した月の趨勢でもよろしいのですが、比較があればなお結構ですが……。
  167. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 政府委員から……。
  168. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) お答えいたします。大体お手許にありまする数字について申上げますと、労働組合法が改正実施されましたのは一昨年の六月でございます。従いまして一昨年の七月以降の状況を申上げるのが必要だろうと思います。ところで昨年の七、八月以降につきましては、レッドパージが行われましたので、この申請取扱いの状況は特別な状況になつておりますので、これは別にして申上げるというのが至当だろうと考えます。  先ず第一点の一昨年の改正後から一カ年間の状況につきましては、全国の労働委員会におきまして申立を受けました不当労働行為の数は五百十四件であります。そのうち事件として終結いたしました数は三百五十三件でありまして、六九%が大体終結ということになつております。但しこの終結のうちには、却下、取下げ等いろいろありまするが、大体におきまして三百五十三件のうち約三〇%は仲裁或いは和解によりまして復職等、即ち仲裁された件数になつておるのであります。その後レッド・パージの行われました以後の数字につきましては、集計をいたしておりませんが、最近我々が持つ七おりまする統計の数字から見ますると、先ず十一月の状況を申しますと、これは先ず地方と中央に分けて申上げたいと思います。地方労働委員会におきまして十一月中の取扱件数は、前月からの繰越しが百十八件、新らたに申立を受けましたものが四十九件、合計百六十七件、中央労働委員会におきましては、前月から繰越しましたものが七十件、申立を受けましたものが四十九件、合計百十九件でありまして、この十一月一ぱいで終結いたしましたものは、地方で三十件、中央で四十八件ということになつておるのであります。で、これをざつと比較いたしますと、二十四年の労働組合法改正以後の一カ年間の取扱いを平均して見ますると、一府県一月一件という割合になるわけであります。ところが十一月の状況は繰越しを合わせますると、取扱件数は相当増加いたしておりまするが、これはレツド・パージ等の特別な関係があつたのであります。その後やや取扱いが、レッド・パージのほうもだんだん済みました結果、本年一月の状況を申上げますと、地方の労働委員会におきましては、繰越しが四十八件、新らしい申立は八件であります。中央におきましては繰越しが二十四件で、申立は一件ということになつております。処理いたしました数は、地方におきましては総体で二十件、中央におきましては二件、翌月に繰越しましたのは、地方では三十六件、中央では二十三件であります。最近はやはり平常の状態に帰つて来て参つておるというのが現状でございます。
  169. 内村清次

    ○内村清次君 その趨勢が相当現段階におきまして増加いたしておる傾向につきましては、我々も認めるものですが、その原因の問題ですが、これは労働大臣にお伺いしたい。この不当労働行為というのが発生いたしまして、こうやつて労働者の権利を非常に侵害して行く。又労働組合の権利を侵害して行く、こういうようなことにつきまして、新憲法におきましては、財産権と労働権というものは同じ平等な立場で取扱つてあるはずです。これがアメリカの労働組合又は労働の問題に対しての取扱いかたというものは恩恵的であつて日本の新憲法の下における取扱いかたとは趣きが異つている、こういうような考え方で、私たちは労働の尊重を主張いたしておる。然るにこの労組法におきましては、かような状態において労働権というものが侵害されておるにかかわらず、この労働立法におきまして、基本法におきまして刑罰がない。いわゆる不当労働行為をやつたほうに対する刑罰規定がないというようなこと、これは私は重大な問題であると思う。資本形態においては、やはり現在の資本主義の下においては、立法面におきましても、諸條件におきましても、相当な恵まれたところの恩恵があるのであつて、その中に労働権というものが、これが平等形において認められている新憲法の下において、さような状態であるということは、私は不平等であると思う。こういうような点をなぜ早く労働省は取り上げて改正をしないか。そのためにひれはもろ現地におきまして、勿論これは個人の不当労働行為によつてそうして解職処分をされるということもありましようが、ただ私が恐るるのは、個人問題も勿論重大でありましようが、労働組合そのものというものが二つにも三つにも分解されてしまう。それには理事者の暗躍があつて分解されておる。それでは、労働組合というものが実質的にその介入を拒否すると言うじやないかと、簡単にそうおつしやつておられるけれども、やはり法においてそういう点は、まだいろいろな水準が上つて行くまでの点におきましての問題におきましては、やはり憲法に認めたような同等の権利を以て法律もできなくてはならないと、私たちは考えておるわけでありますが、これに対する労働大臣所見を先ず伺いたい。
  170. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 労働権の尊重すべきことは、内村さんの御説と同感でございます。不当労働行為の件数の趨勢が殖えつつあるのではないかということでございますけれども、只今局長からも申上げましたように、昨年の議論をかもし出しましたレッド、パージ、その以後におきましては、大体それ以前の状態以下に申立件数も減つて参りまして、無論これは労働運動に対する経営者側の理解、これが漸次徹底をして、何と申しましても、法の精神を理解徹底して頂くということが、何をおいても大事なことでありまして、不当労働行為が一件も起きないように法を守られるということが大事なことでございます。不当労働行為によつて申立を受けて、どのくらい面倒な事態に逢著しなければならないかということは、経営者のほうも相当応えることでございますから、法の精神が理解徹底せられて、私はこの不当行為の事態は今後は非常に減つて来る、絶滅しなければならんけれども、決して憂慮すべきことにはならない、我々こういうふうに思つておるわけであります。法改正の要ありや否やにつきましては、先ほど申上げました通りであります。併し前回の改正当時問題になつて今日の現行法ができておりますが、只今の現行法のあり方が制裁方法としては妥当であろう、こういうふうに考えております。
  171. 内村清次

    ○内村清次君 このたび政府のほうで労災保險法を改正せられようとしておりますが、とのメリット制の採用によりましてこの料率が下がる事業場というのが約六〇%、それから据置の四八%、料率の引上げが行われる事業場が三四%、こういうふうな形態になつておるわけでありまして、この事業場の中にはこれはもう労働大臣も御承知の、ごとく、先般労働争議をやりましたところのこの石炭鉱業、こういうような面があるわけです。この石炭鉱業や或いは金属工業等の諸設備におきましても、或いは文安全教育におきましてもまだ十分でない、こういうようなところにおきまして、而も又先ほどの炭鉱争議におきましては殆んど日本の労働者におきましても相当低い賃金をもらつておるというような、こういうベース関係で喘いでおりますところの労働者自体に対しまして、このメリット制を採用さるるとしたならば非常にそこだけ不当なことになつて来る。いわゆる災害が多いとやつぱり料金払込みが多くなつて来るというようなことになつて、非常にこれは負担の即ち不平等になつて来はしたいか、かように思うのでありまするが、そういうような重要産業関係につきましては何らかの法的対策をするか、或いは又労働大臣といたしましてどういうような処置をとつて、こういうこの石炭鉱業あたりに対しまする労働者に対する問題を解決してやろうとされるのであるか、この点を一つお伺いいたしたい。
  172. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 労災保險が労働者保護について非常に大事な役割を果しつつあるということは御承知の涌りであります。従いまして、この労災保險の運営が円滑に行われると否とは労働者の福祉の点に及ぼす影響が相当大きいと存じますので、何とかこの労災保險の、今日では御承知のように相当の赤字を生み出して運営の上にも相当困難を感じておる現状に相成つております。そこで今回保險法の一部を改正いたしまして、現行法ではまあ五年となつておりましたけれども、三年の実績によつて災害を多数発生せしめた事業場は幾らかその負担を多くしてもらう、その代り災害防止に努力して頂いて、その結果の現われた事業場に対してはこれを軽くして行くというようなことによつて、実は労使双方の災害防止に対する熱意を喚起いたしたい。何を申しましても先般も申上げましたようにこの労働災害が與えるところの影響は、軍に労働者個々のかたがたの不幸をもたらすのみならず、国民経済全体の大変な損失に相成つておるわけでございますから、労働省といたしましては災害撲滅というのを目標として今後努力をいたして参りたい。来年度の予算にもそういう意味合から僅かでございますけれども、予算措置も講じているわけでございます。なお災害多発の事業場に対しましては、安全管理についての特別指導をいたして行く。昨年以来約六百四十の事業場にその特別指導を実施いたしました結果は、非常に成績がよろしいようでございます。平均一五%の減少を来たしているというような実情でございますから、今後はこの点にも力を注いで行かなければならん。そういう処理を講ずることによりまして、災害の減少、而してこの労災保險の円滑な運営を期して参りたい。石炭の関係につきましては御指摘の通り相当災害事態が多い事情になつております。今回のメリット制が採用せられますと石炭鉱業の面における負担が相当増加いたします。併し同業者の間におきましても災害防止に対する熱意はこの問題が上つて参りますと同時に相当喚起せられて参つておりますようでございますから、ただ遺憾ながら鉱山災害が資源庁の所管になつております、そこにまあちぐはぐの面がないように通産省とも十分の連絡をとりまして鉱山災害の減少に対しても極力要望いたして実績を挙げて参りたい、そういうふうに考えております
  173. 内村清次

    ○内村清次君 赤字の原因につきましては医療費の値上りや生産設備の荒廃、こういう点が挙げられておるのでありまするが、問題は今回のこのメリツト制の採用によりましていわゆる保險料が大体一億三千万円ですか、それくらいしか増加しないという、大体赤字は十四億あるのだというような説明を聞いておるわけですが、そういたしまするとどうしてもこれはやはりこの労災保險の運営を円滑化する上から申しましても、健康保險或いは国民健康保險と、こういうようなふうに先ず政府みずからがこの医務費の費用だけは一つ負担してもらつてこれを予算に織込んで行く、こういうような御努力につきましてはどういうようなお考えでございますか。
  174. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 私といたしましては実はそのことは全く同感なのであります。労災保險のみが全額事業主負担であるということになつておりますから、これを社会保障的なと申しますか、社会保險を実施するに当つて国が一つも見ていないということについて、私は少し疑問を持つておりまして、その点を一つ今後の研究と、そうして何とか改善せられないかということに努力いたしておる次第であります。
  175. 内村清次

    ○内村清次君 時間がちよつと何でございますから、これで保留いたします。
  176. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) それでは本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会  出席者は左の通り。    委員長     波多野 鼎君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            佐多 忠隆君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            工藤 鐵男君            白波瀬米吉君            野田 卯一君            一松 政二君            山本 米治君            内村 清次君            永井純一郎君            山田 節男君            飯島連次郎君            高良 とみ君            西郷吉之助君            竹下 豐次君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    国 務 大 臣 大橋 武夫君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    労 働 大 臣 保利  茂君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    内閣官房副長官 菅野 義丸君    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    国家地方警察本    部次長     溝淵 増巳君    国家地方警察本    部総務部会計課    長       三輪 良雄君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法制府特別審査    局長      吉河 光貞君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省政務局長 島津 久大君    大蔵大臣官房長 森永貞一郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    農林政務次官  島村 軍次君    航空庁長官   松尾 靜磨君    労働省労政局長 賀來才二郎君    労働省労働基準    局長      中西  實君    労働省職業安定    局長      齋藤 邦吉君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君