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1951-03-14 第10回国会 参議院 予算委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十四日(水曜日)    午後一時十五分開会   —————————————   委員の異動 本日委員深水六郎君辞任につき、その 補欠として工藤鐵男君を議長において 指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○日米間における経済事情に関する件   —————————————
  2. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) これより予算委員会を開きます。  最初にあらかじめ御了解を得て置きたい点が一つありますが、それは先日御報告しましたように、今日二時半から三時半まで日本銀行の総裁が出席して、日米経済関係についての所見を述べることになつております。そうして日銀総裁の時間の予定は非常に窮屈になつておりまして、正確にやつてもらいたいという要望が向うから強く出ておりますので、二時半になりましたならば、質疑でもちよつと打切りまして、そうして日銀総裁の報告を聞くというふうにいたしたいと思つております。どうか皆さんがたにおいてあらかじめ御了承をお願いいたして置きます。
  3. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 今日ですね、それは。
  4. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 今日です。労働大臣が出席しております。
  5. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私労働大臣にお聞きしようと思いました基本的な事柄につきましては、大体過般木村委員からお尋ねをいたしましたので、相当明らかになりましたので、それらの点を省きたいと思いますが、先ず予算に直接関係ありますもので一つお聞きいたしたいと思うことがあるのです。  それは失業対策費についてでございますが、失業対策費につきましては昨年度から見ますると、労働大臣のお骨折りで、相当予算額が上廻つておる、二十五年度予算に比して上廻つておる。而も前の臨時国会お尋ねいたしましたときに、資材関係の問題をお聞きいたしましたが、この点については努力するというお約束が、今度はともかくも果されておる。こういう点につきましては私としてはお礼を申上げることを忘れてはならない。まあこういうふうに考えておるわけでありますが、同時に実は今度地財計画とそうして大蔵大臣の査定いたしました平衡交付金の支給というふうな内容を検討して見ますると、どうも労働省つまり額と違うのじやないかという点があるのであります。丁度労務費及び事務費の三分の二と資材費申分ぐらいを国庫が持つという計算ですと、地方財政委員会できめましたのが四十六億二千八百万円要ることになつております。ところが大蔵省で査定いたしましたのは二十一億三千五百万円、非常に額が減つております。ここに両者の食い違いがありまして、この点がはつきりいたしませんと、折角労働省のほうで失業対策費として七十七億五千万円をお見込になりまして、そうして大体日によつて違いますが、十五、六万の人から十八万程度まで、日別によつて少しの差がありますが、失業者を吸收収するという御計画に狂いが生じて参る。こういうふうに考えるのでありますが、その点につきまして御意見がありましたら承わりたい、こう思うのであります。
  6. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 明年度審議をお願いいたしております緊急失業対策経費は、総額といたしまして七十七億五千万円、その中にはかねてお力を頂いておりました資材費補助、一人当り二十円の資材を要するものとして、その半額十円の補助をこの七十七億五千万円の中に計上いたしておる次第であります。七十七億五千万円の中に、労務費以外に含まれておりますのは、その資材費事務費一日一人当り十五円の三分の二、それだけが含まれておりまして、あとは労務費の三分の二補助額になるわけでございますから、従つてほかでも御説明申上げておりまするように、もとよりこの経費使いかたにつきましては、財政関係からできるだけ節約し、而も有効に使われるように努力いたして参るつもりでおりますが、これによりまする労務者の吸收人員は、大よそ十六、七万ぐらいを見込んで間違いない。かように今思つております。
  7. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 どうもその点が私労働省のほうがしつかりした認識がおありにならないのじやないかという気がするのであります。つまり国家がこれだけ失業対策事業費としてやると、こう言われても、やはり全額をお持ちになるわけじやない。これは御承知通りであります。資材費二十円というのはどこから出て来るのか、これは別ですが、予算書ではその労務費及び事務費の三分の二は国が持つとある。この緊急失業対策法に基き地方公共団体の実施する事業に対して、その労務費及び事務費の三分の二は国庫が持つと、そうすると三分の一を地方費負担しなければならない。それから資材費は二十円を補助するとあるが、資材費の二分の一、半分だけはともかくも国庫負担すると、こういうふうになつていると、残りの三分の一と残りの半分と、つまり労務資材おのおの半分乃至三分の一というものが、地方がそれだけ財源をもらわなければ、労働省が折角意図されるものも実施できないわけになるでしよう。その分が地方財政平衡交付金が減らされてしまいますと、結局地方のほうでは財源が足りませんから、折角労働省の意図しておられる分ができなくなつてしまう。地方費のほうで……。その点についての心配がある。この点をどうなさるつもりか、こういうことなんです。
  8. 保利茂

    国務大臣保利茂君) お答え申上げます。来年度の予算編成政府におきまする原案審議の際にも、来年度の総予算から来る地方費負担分についていろいろの点から審議をいたしてのでございまして、これはもう堀木委員のお話の通りでございます。国の失業対策予算の枠を拡げますために、それによつて地方自治団体負担すべき三分の一の枠が拡がるということは、もう当然の帰結でございまして、その点につきましても私ども心配いたしまして、まだ確定的に参りませんけれども……、要はこの緊急失業対策事業を当面地方租税負担によつて遂行して行くかどうか、これは如何にも今日の地方財政からいつて無理ではないか。できるだけこの失業対策事業起債に依存する度合を高めるように、只今一生懸命に地方財政委員会のほうと御相談を申上げておる次第でありまして、期待をいたしておりまするが、まだ結論を得るに至つておりません。そういうように御了承願います。
  9. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 起債のほうで枠をお殖しになるか、平衡交付金の増額でお殖しになるか、御承知通り平衡交付金地財提出で、百九億を大蔵省査定減をいたしておりますから、ともかくもどちらにいたしましても、ここに予算に御計上になつた分を、労働省としては責任を以て実質的にやられるようにお考えにならないと、徒らに地方負担をかけるだけになつてしまう。今大蔵省なり、その他地方債の枠を殖やすとか、或いはその他御折衝になつておりますならば、それについて一応御信頼してもいいかと思いますが、率直に申しますと、私どもの見るところでは、中央の施策地方参つて来ますると、十分な財源がない。又地方の実際の労働事情から放つて置けないというようなことで、国庫から財源がつかないままに、地方で相当負担しなければならない実情が出て来ておるわけです。これは労働大臣承知だと思う。ここでくだくだしく例を挙げませんが、でありまするからその点につきましては折角御努力を願いたい。今どの程度殖やされるかといつても無理でしようから、御努力を願いたい。こう思つて申上げて置きます。  それから第二の問題で心配いたしておりますのは、だんだん予算審議して参りますると、非常に予算考えておつたような経済情勢とはよほど違つて来ておる。物価は騰貴し、安本長官は、生産さえ上れば労働賃金も必ず上つて行くようにお考えになるような口吻が多いのであります。これはもう労働大臣木村委員におつしやつたように、最近の情勢では、国民消費水準は落ちておる。それから生計費のほうも落ちて来ておるというふうな点から、大体最近の物価高というものは、決して労働者にいい結果をもたらしておるとは見えない統計が出て来ておる。と同時に私ども心配いたしますのは、この情勢が続いて参りますと一層そういうことになると思う。極く簡單に申上げても、原材料につきましては、日本には国際的な物価高以外に特異な理由がある。それは中共貿易杜絶によりまして、杜絶と言いますと言い過ぎであつて、少しはあるのでありますが、これは殆んどノミナルなものである。そのため海運賃が非常に上つて来ておる。又政府国際物資割当機構に入らないために、物資をいろいろな所で買付けする。そういうふうな点からも上つて来ておる。海運つまり船の足が伸びましたこと、そうして又割当以外で買つておるというような点から原材料が非常に上つて来ておる。併し世界は、実際において、殊に我々の主たる輸出国であるところのアメリカは、物価を広汎に統制して参つておるというふうな点から見ますると、製品についてはそうは上つて行かない。輸出を希望する以上は、製品については或る程度限界は来るであろう。今でもすでに材料高製品安ということが言われておりますが、今の政府施策のようでありますと、いよいよこれがそうなつて来る。そうするとそれがどこに皺寄せされるかというと、どうしても賃金に向つて行くに相違ない。経営規模から、経営の能率から見ましても、戰後のいろいろな施設が老廃しておる。その点はあなたのほうでも、労働者の災害が多くなつておる原因の一つに数えられているほど施設は老廃しておる。それで以て産業の、まあ最近オーバー・タイムその他でやはり生産をこなして行かなければならないというような事情になつて参つておりますが、そういう傾向から見ましても、どうしてもこれが賃金に皺寄せされて行くだろうということは、十分考えられなければならない。これに対して、労働大臣としては、やはり物価賃金関係について、労働賃金が特にそのために低下するというようなことのないなうになさいませんと、又昔のチープ・レーバーに依存する輸出という世界的な非難、これを受けなければならんだろう、こういうふうに私は考えるのであります。これに対して労働大臣としては、今後どういうふうにそれに対してお考えになりますか、その点をお聞きいたしたいのであります。
  10. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 御注意はもう十分頂いたつもりでおります。ただ先日来御審議を頂いておりました物価賃金、それに対して国民生活水準如何ということは、実はこの十二月までの分は、あらゆる統計が整つておりますから、これはまあ説明するまでもない。大体実質賃金実質家計費、共に向上をいたして越年をいたしたわけであります。お説のように、この一月以来かなり消費物資の、漸騰を見つある。それに対して私どもといたしましては、何を申しましても消費財中心をなします食糧衣料の、要するにこの不安なき確保と、これの価格安定が、何と言つてもその面から来ましては一番大きい要素になるわけでございますから、私も自分の立場上から、政府経済閣僚懇談会等におきまして、この点については強く政府施策として、政府全体の力によつて食糧衣料確保及び価格安定について強力な施策をとつて行くようにやつて、先日来安本長官農林大臣から申上げておりますように、ほぼその具体的な方途も定まつております。かような政策が、具体的な計画が実施せられて参りますと、この面における著しい変動はないのではないかという期待をいたしております。同時に又昨年の六月から十二月に至るこの労働統計が示しておりまするように、動乱後の経済景況の示しておりまする通り足取りを以て賃金もそういうふうに現われて参つております。生産が拡大せられ、そうして賃金上昇もそれと足並を合わして参つておるのが今日までの推移でございます。今後この通りに同じ足取りを以て上昇して参るかどうかということは、これは断言できないと存じますけれども、今日以下に低下して参るというようなことは、私どもとしては、あらゆる努力を拂つて防がなければならない、かように考えておる次第でございます。
  11. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 木村委員に対しても同じようなことをお答えになつたのでありますが、統計でいろいろ論議したいこともありますが、先ず第一にお聞きいたしたいことは、生活必需品について大体数量的に、価額的に十分検討した処置をとるということを言われるのでありますが、その後内容的なものをお示し願わんと、ともかく物価がこれだけ上つて来たという情勢、殊にこれはあなたのほうの統計が十一月で切れていたり、十二月までのがどうも……、この労働統計の遅いことが、丁度経済閣僚の頭のテンポそのものを反映しておるような気がするのです。こういう変転の激しい時には、もつとそういう点についてはセンシブルにお考え願いたいと思うのですが、とにかく今までにつきまして、そういう点についての特別な御施策がない。御承知通り繊維製品統計で言えば五割五分或は七割ぐらい、実際の我々の生活に現われて来るのは、約昨年の倍近くになつて来ておるというふうに、いろいろのものが考えられるのでありますが、そういう生活必需品食糧衣料その他につきましてどういうふうに今後、最近御相談なすつておる内容がどういう程度のものか、それがいつ頃行われるか、そういう点について御所見を承わりたい。ただまあ俺たちは考えているんだから安心しろとおつしやつても、今までの過去の経歴が安心するようだと安心しますけれども、どうもそれが反しているように思うので、特にお聞きいたしたい、こう思うのであります。
  12. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 別の機会でも申上げましたように、この労働統計を整備、強化して参るということにつきましては、これは特段努力を拂わなければならんと思つております。なお只今お尋ねでございますが、これはお叱りを頂くと存じますけれども衣料対策にどういう具体的な措置をとるか、食糧問題についてどういう具体的な措置をとるかということは、申上げられる限界までは農林大臣安本長官から申上げておるのでございますから、それで一つその程度において今日の段階においては御了解を頂くほかなかろうかと思います。
  13. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 実は安本長官なり農林大臣がもつとはつきり言うのならいいのであります。でありまするが、今申上げましたような質問に対しても、大体そういうざつとしたお話ですが、まあもつと簡單に言えば、俺たち考えているんだから委しておけと、こういう言いかたなんでありますね。それで一体満足ができるか、そういうことなんであります。生計費でも御承知通り一月の統計を振り返つて見ますると、どうしても二一%は上昇しておる。六月を一〇〇として一月には二一%殖えておる。これは確かなんです、生計費で。そうして安本の出しております消費水準も一十二月は労働大臣承知通り統計外です。これはもう別なんですが、一月になると消費水準が六二%に落ちておる。そうすると安定経済に入つたという二十四年が七〇%だつた。そういうところから見まして、いつでも、例えば国家公務員給與をきめますときに、大蔵大臣は人事院の八千五十八円というものを言うときには、最近二十五年に入つてから実質賃金がよくなつて来ているのだから我慢してくれと、こう言われる。この頃になりますと又違つた議論を立てられるのですが、ともかくも数字はごまかせないので、二十四年は安本で七〇の消費水準である。ずつと七〇を辿つて来たわけではなく、無論これはたつた一月の統計じやないか、こうおつしやるわけですが、どうしても先の傾向はそうは行かないのです。どうも最近現われて来た統計が、どうしてもその方向を辿つて行くだろう。現に大豆だとか雑穀類が非常な値上りをしておる。マル公より何倍かの値上りをしているのを野放しにされる。そのほかに鉄鋼類も三割値上げを最近やられる。各種のものが統制が外れて参る。こういうふうな情勢から見ますと、どうしたつてそういうものが影響して参ることは明らかなのであります。私たまたま一月の統計で以てものを言つているんじやございませんで、そういう傾向に入つて来ておりまするから、特にそういう点について明らかにして頂かないと、今までの何から見まして、ただ考えているからいいということだけおつしやらないで、そういうことはお考えにならないで……。あなたのほうの御統計だけでそれじや今度は例を挙げて見ますると、成るほど安本のこの統計を見ますると、全産業において十一月を標準にして一四%上つて来ておる、これは出ておるのです。と同時にその間に生産指数が、労働生産性としては一九%上つているわけです。これも安本統計政府関係統計であります。であると、それは上つてはおりまするが、労働生産性というものと比較して見ると、少しは低位にあるのです。でありまするからいろんな批評がありまして、殊にCPI統計をお変えになつたり、いろんな問題がありますが、そういう問題は別にいたしましても、今後の傾向としてそういうものが出て参るということは確かだと思いますので、特に具体的な施策、それを労働大臣としてここで御披露なさるのを、安本長官農林大臣にお任せになるかわからないので、労働大臣のほうから、そういう点についてこういうふうに考えておる。大体それが十が十までできないかも知れないが、この程度はやりたいと思うというふうな具体的な方針があつて然るべきじやないか、こう考えるので、重ねてその点についてここで御言明を願いたいと考えるのであります。臭わせるだけではどうも内容がわかりませんから、実際におつしやつて頂きたい。
  14. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 実は十二月までのことは差置きまして、御議論中心になつております一月以降の状態がどうなつておるか、丁度今日集計を終つております一月の賃金状態を、いい機会でございますから申上げて置きたいと思うのであります。一月の賃金統計に現われておりますところでは、全産業平均現金給與が一万一千四十七円という上昇を示しました。これは無論十二月に比較して申上げることは適当でございませんから、十一月に比較して申しますと、全産業において九百九十六円の上昇、そのうち製造業におきましては千二百五十八円の上昇を示しておるわけであります。そういうわけでございまして、非常に御心配を頂いております実質賃金の趨勢がそれによつてどうなつておるかと申しますと、問題になります動乱勃発当時の昨年六月と比較いたしまして、昨年の十一月には一〇七・八%であつたのでございますが、今年一月には一一一・九%と、依然として実質賃金も健全な上昇を見ておるような次第でございます。只今の御注意の点につきましては、私は專ら責任におきまして努力をいたして参るつもりでございますけれども、その方途につきましては、先日来農林大臣安本長官から申上げておることによつて了解を頂きたいと存じます。
  15. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 今一日の統計をお示し願つたのでありますが、私どもも全産業賃金なり鉱工業の平均賃金上つていることを認めないのじやないのであります。ですが、これは一つ数字だけおとりになつても全体の実態を明かにいたしませんので、その点につきましてはいろいろと更に專門的な方面で御議論をしてもいいと思つておるのですが、いずれにしても傾向的なものは今申上げたようなものでありまして、生計費でとります場合と、CPIでとります場合と、その他のものと、いろいろ統計を全部並べて見ませんとわからないのでありますが、全体としてそう楽観をお許しになる状態であるとは私考えません。殊に傾向的なものとしては先ほど申上げたような点がありまするので、十分その点についてお考え願いたい。大体こういうふうに物価が上つて参りますると、常に社会的に問題になりますことは、やはり賃金物価関係等から、労使双方の間に相当争いが多くなり得る。過去の統計から御覧願うと、最近はいいのだというような数字が出て参りますが、長い統計を御覧になると、物価上昇いたします場合には、必ず賃金物価との関係から労使双方の間に問題が生じて参るわけであります。過般の炭鉱争議なんかでも、その点から、いわゆる経済闘争から起つて参つておると言うことも言い得るのでありまして、こういう問題に対しまして、私この間出席いたしておりませんでしたが、何か新聞には出ておりましたですが、労働大臣としては、労使双方争議を円満に平和裡に調整して行くために特段処置を、と言いますか、今後考えなければならないというようなことを言われたということがあるのでありますが、それはいずれにいたしましても、ともかくもそういうことを予想しなければならないことは、労働省としてはこれが平和的に物事が解決するように行かなければならない、ところが過般の炭鉱争議当りましては、非常に日本民主化一つとして重要な機能終戰後持つて参りました労働委員会に対して、労資双方ともこれによるということをいたしませんで、直接解決に入つている。而も直接解決久つた結果は、直ちに労働争議の形になつて現われて来るというふうな情勢でございますが、これに対して労働大臣としては、今後に対処してどういうお考えがございましようか。その点をお聞きいたしたいと思います。
  16. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 労資の紛争が平和的に早期解決せられるというような労働慣行が、我が国産業労働界に叫ばれるということは、日本只今当面いたしております自立経済達成という大きな課題を果して参ります上において、どうしても絶対的に要請せられるこれは課題だろうと思います。そこで先般の炭鉱ストが、ストライキという事態至つて、突入して、事態解決を見ましたことそれ自体は、誠に遺憾に思つておるわけでございますが、併し労働委員会を煩わさずして、労資相互に自主的に解決をせられようとせられた動機は、私は成るほどストライキはやつたけれども、併しできるだけ早期に、早く解決をするために第三者的な機関の介入を、むしろ早期解決の上から言えば好まないという、解決を急がれるという労資双方の気持が、あの解決方途に至つたものと存じまして、決して労働委員会があの場合に、労資双方から信頼を薄くいたしておるというふうには、実は私は思つておらないのであります。併しながら労働委員会の持つておりまするこの産業平和を維持して参ります上における使命につきましては、これはもう堀木さんの御自身御苦心を頂きましたことからいたしましても、非常に大きな使命を持つております。この機関が今日各方面でそろそろ御意見が出ておりますので、或いは労働委員会を更に全体として評価をして行く、そうしてその権威を高めて行くようにすべしという意見もあるようであります。又司法的な実体、事案のみを労働委員会に任して、調停、斡旋等は別に切り離して、労働委員会権威を高めることにしたほうがいいではないかという御意見かたもあるようでございます。併し今日の事情から申しまして、このどちらにも私は十分の聞くべき理由があると存じますけれども只今まだいずれに結論を付けて、その方途を具体化さして行くかという段階には、客観的に申しましてもないように存じます。もとよりこの扱いについては十分愼重に研究をして行かなければならんと思つております。
  17. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 労働大臣は、何とか早期解決をしたいという労資双方の意向から、労働委員会の斡旋的な機能を借りなかつた、調停的な機能を借りなかつたという点については、口ではそうおつしやいますが、ストライキが、あれは何日間続いたと思います。その間に貯炭がどれほど減つたか、そうして一部産業ではその不安にどれだけの心配をしたかということをお考え願うと、私はそうまるで労資双方が直接にぶつかり合つてストライキをやつて解決をして行くのが望ましい姿であるとは考えられません。どんなにかおつしやつても……。殊にああいうものは公益事業として指定はしておりませんが、国民生活に重大な影響を及ぼすものであります。それから今おつしやつた産業の問題から見ましても、非常に重大な問題だと私は思うのであります。それから労働委員会自身が、今おつしやつた点でよくわからない点があるのでありますが、成るほど司法的な機能というものを労働委員会が、過般の労働法改正以後相当それに固執しているということは随分よく承知しておりますが、労働委員会自身を司法的な職分にとどめるという考えかたは、その本筋はむしろ仲裁、調停、斡旋が機能であるべきだ。率直にもう少し私の考えかたを言わせて頂けば、現在の内閣労働政策というものが続いて参ると、労働委員会がその権威を失つて来るのは当り前だと、もう少しその権威を高め、労資双方がこれに依り得るような方向に持つてつて頂くのが本当だと私は思います。労働大臣としてはその点に今後一層の……。最近の実例から見ても、双方が立ち行くようにおやりになつたらいいじやないかというふうに考えられます。そう言いますと、首を傾けておられますから、実例を言いますが、労働委員会の例でなしに、仲裁委員会ができて、私仲裁委員会を命ぜられてやつておりましたが、仲裁委員会の裁定を無視されるような内閣で仲裁委員会をやつてつても、それは仲裁委員会に頼るものがなくなるのと同じであります。是非そういう点については権威を高めるように労働政策としては当然あるべきではなかろうか。たとい現在の機能が、自分としては権威を低めているとはお考えにならないと言つても、現実から見て、頼らない傾向が出て来た場合には、これを権威を高めて、頼るようになさること自体が労働大臣責任ではなかろうか、こういうふうに私は考える。その点について重ねて労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  18. 保利茂

    国務大臣保利茂君) この内閣が続いておつて、どうも続いておる限り労働委員会権威上つて来ないと言われますと、私は非常に遺憾に思う次第であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)労働委員会権威を高からしめるためには、(「その通りだよ」と呼ぶ者あり)この権威を高からしめるよう努力をして参るつもりであります。  なお国鉄裁定の問題の扱いかたについて、ああいう処置が公的な機関の信用を薄からしめておる一つのことであるという御意見は伺いますが、国鉄裁定は、国家経済の許します最高限において尊重いたし、そうして仲裁裁定の権威を高からしめるように、政府としては十分配慮いたしたつもりでございますから、どうかそういうように御了解願いたいと思います。
  19. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 そういうことをくどくど言つておりますと切りがありませんから、私は国鉄の裁定だけではありませんで、專売の裁定もいたしまして、政府が呑まないで私は五日間参考人で、丁度今の大臣ではありませんで、その点は非常に気がお楽かも知れないと思いますが、前の労働大臣のときに、私は專売裁定のために五日間参考人で参りました。政府は初めお聞きになりませんでした。併しお終いにGHQから承認が来て、一遍衆議院が通つて参議院に来ている間に、私のほうの説が実は通つて、それに承認を得たこともあるのであります。これは併し今の労働大臣労働大臣でないときでございますから、又そういうことを細かく申上げると切りがありませんからやめます。  最後にもう一点お聞きいたしたいことは、経済安定本部が中心になりまして、自立経済審議会で御承知通りに三カ年計画ができたわけであります。これに対しまして、御承知通りに、これも深く私は重ねて申そうとは申いません。現に自立経済とおつしやるが、自立経済の目標はどこにあるのかということは、国民をして飢えしめないというところにあるのだということは確かなんであります。それでなければ自立経済の計画は立たない。ところが今のこの三カ年計画では、いわゆる失業者は決して減らないということになつているのだから、あなたがたのお考えの自立経済と我々の考えておる自立経済との開き、殊に労働政策としてはどれだけの開きがあるということをここに明らかに私は証明しておるものだと、こういうように考えますが、この点については他の議員からお話がありましたので、私からあえて申上げようとは思いません。ただ最近の国際情勢その他から見まして、日本産業界は非常に違つた様相を示すのではないか。吉田総理が言つておられますように、いわゆる日米経済の一環としてと申しますか、これはいろいろ表現の仕方はあろうと思いますが、とにかく産業界は非常に変つて参る。そこで自立経済三カ年計画も相当変更をしなければなりますまいというふうな考え方になつて来ておる。安本長官は常にこの前書にあるやつで以て、国際情勢が変つて来たら変るのだ、こういうふうな答弁をしておられるのです。その際に労働大臣としては、更に雇用関係につきまして新らしい観点に立つて、今後起つて来るところのいろいろの経済情勢に対応するためにどういうお考えがあるだろうか、その点をお聞きいたしたいと思います。
  20. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 自立経済の目標が国民生活の安定、国民を飢えしめないというところにあるということは全く私も同感でございまして、政府の自立計画もそこにあるわけでございます。これはよく御承知あられるように、なお、何を申しましても、日本の失業問題の深刻性は相当広汎に推測せられます。不完全失業者と申しますか、不完全就業者と申しますか、その存在が大きな背景をなしておりまして、この問題の深刻性を作つておるわけでございます。従いまして、不完全就業者の安定ということが、完全雇用と申しますか、失業の根本解決へのとにかく大前提でなければならん。そういう上から申しますと、一応の試案ではございますけれども、自立三カ年計画の遂行によりましては、これは無論情勢の変化によつていろいろ変化をして来るであろうと思われるのでございますけれども、この期間において少くとも相当程度不完全就業者の就業状態というものは改善されて来るのではなかろうか。無論経済、産業の規模と申しますか、基盤と申しますか、これは今日の様相を以てトしますのに、相当拡大せられて来るということは期待が持てると思います。従つて雇用の面におきましてもこれは相当改善をして来ると存じますが、併し一方から考えて、今日失業問題で就業斡旋に困難を感ずるのはいわゆる無技能者でありまして、この無技能者に今日の産業の要請する技能を修得してもらうということが、地味ではありますけれども、非常に大事なことだと実は思つておるわけであります。労働省で主管いたしております。職業、補導所の実績を見ましてても、この職業補導所によつて技能を修得した人は殆んど漏れなくと言つてもいいくらい就職ができつつあるわけでございます。この労働人口の溢れている割合に技能者が少い。ここに特段施策を講じまして、そして一人でもより多く常用的の安定した雇用状態に持つて行くように努力をいたしたい。双方睨合せまして今後努力をいたして参るつもりでございます。
  21. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 余りくどくどしく私だけが聞きますと悪うございますから、これでやめますが、私はこういう御質問をするのも、実際のところは自立経済審議会に労働大臣がどれだけ発言をされて、飢えしめないように御努力をなされたかということについていささか疑義があるのでございます。それでこういう御質問をするわけなんですが、つまり何と申しますか、国の経済というものを考えますときには、どうしたつて賃金及びこの労働対策というものが一つの基本になつて、むしろ作り上げられなければなりませんにもかかわらず、ただ産業の趨勢がどうであるとか、貿易がどうであるとか、金融がどうであるかということだけでものがきめられる傾向が強いのであります。むしろ国際価格から見て労銀はどうあるべきだとか、労働者の雇用関係はどうあるべきかということから、そのことが一つの大きな支柱となつて行くべきであると私は考えます。ところが今後伝えられるようにいろいろ日米経済の協力というものが入つて参りまして、情勢が変るだろうということも考えられますときに、やはりそういう点が労働政策としてはつきりした支柱が一つつて、それと他の産業と睨み合せてどうあるべきかということを是非お願え願わなければならん。今のうちから、私は今後起つて参ります日本産業の変動に対しまして、今から是非労働大臣が、むしろ私の心配が杞憂でありますれば仕合せでありますが、私は杞憂でないという確信を持つていろいろ申上げておるのであります。自立経済三カ年計画ができますときよりはもつと強力に、その点につきまして今から御対策をお立てになる必要があると、こう考える。決して今からお立てになつて早過ぎることはございません。こう思いますので、労働者賃金を擁護しその生活を安定せしめる観点から、是非今からお考え願いたい。どうせ予算は変りましようから、極く最近の機会にそういうことが堂々と労働大臣のお口からお聞きしたい。こういうことをお願いして、私の質疑はこれでとどめます。
  22. 山田節男

    ○山田節男君 私はもう一つ委員会に呼ばれておりますので、今回問題は極めて極限して、又後日の機会に御質問したいと思いますが、今私が御質問申上げたいと思いますことは、この朝鮮事変以来、例の特需、スペツシヤル・デイマンドということを言つておりますが、向うさんで言えばダラー・コントラクト、いわゆる外貨で日本のいろいろ軍需的な生産修理それからサービス、役務等に拂うというこの金は非常に莫大なものでありまして、いわゆる特需景気と言われておる。それによつて起きている労働問題に対しまして、労働大臣所見をお伺いしたいと思うのでありますが、昨日も通産大臣にこの問題について專ら産業方面の質問をしたのでありますが、通産省の極めて粗略な計算によつても、朝鮮戰争勃発以来、約三億ドルの金が入つておる。その中でこの役務、サービス労務者の、單純労務者に対して拂つておる金でも約八千万、これを邦貨に三百六十円で換算するというと、約二百九十億円であります。今年度労働省が計上しておる七十七億五千万円の失業救済応急対策費の約四倍に相当する。こういう今大きな問題が起きているのでありますが、これについて先ずお伺いしたいことは、このいわゆるダラー・コントラクトによつて日本の業者並びに労働者が契約するのでありますが、その相手がアメリカの兵站部の出張所である横浜にあるJLC、ジヤパニーズ・ロジステイカル・コンミツシヨン、これが全部これを総括しておるわけであります。私先日横浜のJLCの調達部長のスコット大佐に、この労働問題についていろいろ話したのでありますが、どうもはつきりしないことは、ダラー・コントラクトというものが日本政府を通じないで、日本の私の業者と直接に入札によつて契約しておるのであります。役務の調達でも、或いは生産修理等の問題についても、業者と私的にこれを契約しておるのであります。そういうことになつた場合に、特別調達庁を通じてやる、いわゆる終戰処理費を以てやるのではなくて、ダラーが支拂われるのであつて、契約者はアメリカであります。而もそういつたようなアメリカの兵站部のこれは出先でやつておる。こういつたような場合に、役務者、それから従いまして請負業者とそれから働いておる労働者との労働関係というのは非常にあいまいになつて来ます。例えば賃金の問題その他の労働條件の問題、或いは労働基準法の適用問題、それからこれは団体交渉ができるかどうかという問題、こういうような実際的方面において労働関係が非常にあいまいである。半ば軍事的であるようでもあるし、又一面から言えば末端民間の仕事のように見えるのでありますが、こういう労働関係に対して労働省はどういう見解を持つておるか、これを先ず第一に御質問申上げたい。
  23. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 進駐軍労務者の扱いについて御高見を頂いておりますことはよく承知しておりますが、私ども労働省関係として承知いたしており、又努力いたしておりまするのは、スキヤツプの指令によりまして要員の募集をいたします。そうしてその募集せられた人々が直傭労務者である場合には、その軍の規律、秩序の下に労務に服せられるということは当然のことでございますけれども、併しながらともかくも、国内法として労働基準法がございますから、労働基準法の建前によつて労働條件が満たされまするようにということにつきましては、直接進駐軍に対しましても、又直接の政府責任機関であります特別調達庁に対しましても、労働省は強くそういうことに遺憾のないように今日まで努力をいたして参つておるわけであります。例外的にはいろいろな事態があるかとも存じまするけれども、一般的には皆様の期待しておるような運用をせられておると思います。  なおこれはもう山田さんに申上げるまでもないことでございますけれども、よく混同をせられまして、PD工場の取扱いにつきましてもいろいろ誤解があるようでございまして、これらは全くさような関係になつておりませんので、労働基準法その他関係法によつて取扱われるものでありまして、今後も私のほうといたしましては、直傭労務者の分につきましても、どうか以上申しましたようなことが徹底して行われるように努力をいたして参りたいと存じます。
  24. 山田節男

    ○山田節男君 それはわかつているのですが、今大臣はむしろ私の申したところを余り正当に解しておられない。先ほども申上げたように、特別調達庁を通じてやるものはいわゆる直傭、LRと称している直傭労働、それからPD、即ちプロキユアメント・デイマンド、請負のほうでありますが、今申上げたダラー・コントラクトでやるのは終戰処理費に関係ない。特別調達庁を通じてやることはない。例えば昨年、安定局だつたと思いますが、横浜の特需の人夫の周旋を買つて出て、各県に直接労働募集をやつて、広島県のごときはそのために千何百人も来て、半分は返されたというようなことで、この議会でも問題になつたことがありますが、そういつたような特調を通ずる労働者ではないのです。これは私の質問申上げている趣旨はそこにある。ダラー・コントラクトというものは、特別調達庁と全然関係ありません。それをあなた知つておらんと、私は質問しても何らあなたの正当な返事を求めることができないじやありませんか。非常な認識の不足です。そんなことで私の質問に答えられるわけはない。昨日あそこのJLCのスコット大佐に会つたのです。而もあそこに百類十人の民間業者がん札に来ている。だから通産大臣にもここで質問したのです。これを知らんことでどうするのです。(「ピンぼけだ」と呼ぶ者あり)
  25. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私はつまびらかにいたしておりませんので、政府委員から御説明を申上げます。
  26. 齋藤邦吉

    政府委員(齋藤邦吉君) 私からお答え申上げます。横浜等にありますLR、PDで、只今御質問のような問題がありますことは、私といたしましては承知いたしております。併し私のほうの労務募集の関係から申しますと、向うの申入れがありました際には、自由なる意思で労務者の募集をするというやりかたにいたしております。もとより国内法でありまする基準法も適用されておるものと私ども考えておりますけれども、具体的にはいろいろ問題がありますれば、その都度、その都度レーバーのほうに連絡をとりながら、軍が直接そういう契約によつて使う場合でもそういう国内法を守つて頂くようにということをお願いはいたしておりますけれども、具体的な問題になりますと多少面白くない点もあるというようなことは承わつております。併し私どもといたしましては、具体的な事実に即応してレーバーのほうにできるだけのことをお願いするというやりかたで今日までいたしておるような次第でございます。
  27. 山田節男

    ○山田節男君 これは賀來労政局長に一つ質問したいと思いますが、先ほど申上げたように、この契約を出す人がアメリカの兵站部の出先機関であつて、そうしてそれが発注をして、日本の業者或いは労働者に対して役務をサービスさせるのでありますが、そういつたような場合に、例えば日通が役務についてこれを請負つた場合に、日通がこれの請負者であつて、それに労働者を使う。而もその中間に軍の者がそれの中に介在しておつて、いろいろ労働時間その他就業規則なんかについていろいろ指示を與える。そこが全くいわゆる終戰処理費でやつておる、特別調達庁を通じて行うサービスと同じようなものであるし、実態はもう飽くまでダラー・コントラクト、これは私的なものと認めた、こういつた場合に、この日通とそれから労働者というものは、單なる国内法の、いわゆる労働組合法、或いは労働基準法その他の労働基本法による労働関係労働者側に保障されておるものと見ていいかどうか。この点一つ賀來労政局長に明確な御見解を承わりたいと思います。
  28. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) 只今の御例示によりますと、日通の職員をさような状態に使つた場合にどうなるかという御質問でありまするが、日通の場合には、日通の労働組合と労働者との間の問題であろうと考えております。ただ私といたしましては、さようなことはあるとは聞いておりまするが、問題になつたことは聞いておりませんので、詳細は承知いたしておりません。従いましてさような問題がございましたならば、又あるようでございましたならば、私といたしまして調べましてお答えを申上げたいと思います。
  29. 山田節男

    ○山田節男君 これはまあ非常に私は驚くのでありますが、現在東京、横浜だけでも役務サービスに使われておる者だけでも三万ある。又一月中旬に佐世保に参りました。佐世保でも約一万の者が使われておる。その他役務に多数の人が雇われておる。先ほど申しましたようにもう約三百億円の金がサービスの賃金という形体をとつて携われておる。そういうものについてそういう調査不十分の点は非常に遺憾だと思うのでありますが、今まで私が例に引いた日通は、これは職員じやないのです。日通がいわゆるコンモンレーバーと申しますか、日雇労務者ですね、これを雇つていろいろな積込に或いは積出しをやつておる、このことを言うのであります。それを土台としての見解を伺いたい。
  30. 賀來才二郎

    政府委員(賀來才二郎君) お叱りを受けまして甚だ恐縮でありまするが、労政関係といたしまして、組合か又は団体交渉の関係でさような点が問題になつたことを我々のほうに聞えておりませんので、詳細調べて見た上でお答えをいたします。
  31. 山田節男

    ○山田節男君 これはどうも従来日本政府がそういう問題について軟弱であるがために、私は日本政府のために、むしろ私はスキヤツプなりその他の方面に対して苦情処理機関のような役をしておるのであります。こういう問題は、特需によつて起きた変態的な労働問題に対して、労働省が何ら知らないということは、これは非常に私は残念であります。これはどうも賀來局長すらそういうことを知らないというので、非常に私は驚くのでありますが、中西局長何かこれについて見解を一つ補足すべきものがあれば明確にしてもらいたい。
  32. 中西実

    政府委員(中西実君) 労働者と使用主との間に使用従属の関係がございますれば、これは当然基準法の適用はございます。お話の例が私ちよつとはつきりいたさないのでありますけれども、日通がそういう契約を受けて、そうして日通が使つておるけれども労働者が働いておるということになりますれば、当然そこに基準法の適用がある、かように存ずる次第でございます。
  33. 山田節男

    ○山田節男君 これは今特別調達庁を通じてのいわゆる政府が金を拂いますが、実際は現地の労務士官が使つている。こういう場合はやはり飽くまで、この特別調達庁と、例えば私との労働協約によつてこれは飽くまで団体交渉ができ、又労働基準法に違反した場合にはこれを訴えることができる。これは中西局長御存じだろうと思いますが、今そういうようなために、労働基準法違反のためにこれは労働省の基準局へ一、二の例が出ているだろうと思いますが、これは今申上げましたように特需関係と性格が違う。ところが今回の今問題にしているダラー・コントラクトのやつは、ああいつたような日本が金を拂うのじやない。アメリカが金を拂つて、そうして業者と労働者労働関係ができ、そうして例えば日通の場合においても、現場へ行くと軍人がいる、労務将校がいる。それがやはり指揮をし、指図をする、そうして労働條件のことにまでいろいろ指図する。それをやはり業者も労働者も服従しなければならん。こういう場合の労働関係を一体どう見るか、これは飽くまで労働三法が適用される労働関係と見ていいかどうかということをお伺いするんです。
  34. 中西実

    政府委員(中西実君) 契約の内容で若干そういつた士官あたりが現場におるということは、これは業務の遂行上必要であるのかと思いますが、それだからといいまして、そこの日通が飽くまで使用者であり、その働く労働者との間には、日通との間に使用従属の関係がありますので、当然私は労働三法の適用があると思つております。
  35. 山田節男

    ○山田節男君 これは私何も特需の労働問題について政府より勉強しているという意味で申上げるのではない。どうも大臣以下政府委員の御答弁を聞いても、実際把握していないから回答が非常に又非実際的です。これは私は質問を次回に保留しまして、この予算の分科会が始まると思いますから、その席上でもいいですから、それまでにはつきりしてもらいたい。  次のは今のような労働者の苦情というものが、特調を通じて、終戰処理費による労務者に関する限りは労働三法に保障された労働者の権利というものが、これは労働省の基準局へ持つてつて解決された例がないのであります。これよりもつとシヴイルな、民間的なものに対しても、私はこの政府がまだ事実を認識していないということによつて放置されているということは非常に残念でありますが、これは私はもう少し政府委員のほうで実情を調べて、東京都内でもたくさんあるわけですから、調べた上で、私は次の分科会において質問をすることにして、保留して一応この問題については私は打切ります。  それから次にこれは小さい問題でありますが、職業安定法をたしか第五国会と思いますが、改正する場合に、例の職業紹介というものがありますが、これについていわゆるこの職業紹介、或いは職業補導を徹底させるために学校を利用することになつたのでありますが、これが二十五年度二月或いは一月でもよろしうございますが、それまで一体どのくらいの実績を挙げているかということを数字的に一つできれば簡單にお示し願いたい。
  36. 齋藤邦吉

    政府委員(齋藤邦吉君) お答え申上げます。学校の職業紹介の実績の統計資料を丁度今持つて参りませんでしたから、帰りましてから早速提供いたしたいと思います。
  37. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) ちよつと山田君に申上げます。今一万田総裁が見えましたから私は分科会でこの質問を続行することに保留さして頂いて、質問を打切ります。  ちよつと先ほど御了解を得たように二時半から……。
  38. 岩間正男

    ○岩間正男君 今のに関連して、山田さんの問題に関連して、これは今の問題は非常に重要な問題ですから、この予算委員会審議に当然間に合うように調査して、先ほどのお話では全然知らないというお話ですけれども、これは非常に怠慢だと思う。これを早速報告してもらうことが必要ですが、そのときにこの作業の内容を、どういうような作業をやつているかという、そういう事項についても是非これは資料を出して頂きたい、こういうふうに思うのであります。その点、今の点政府委員に念を押してもらいたい。
  39. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 労働大臣、今聞かれた通りですが、資料と調査の結果の御報告を願います。
  40. 内村清次

    ○内村清次君 時間がないようてありまするから、私は労働大臣に対する本格的な質問は明日に延ばすことにいたします。ただ一、二点お聞きして置きますことは……。
  41. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 内村君、先ほど委員会で了承を得たのですが、日銀総裁は非常に時間がつまつているからあとにして頂きたい。  参考人として日銀総裁の出席を求めまして、日米経済関係についての所見を聞くことにいたします。
  42. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) 今日はここに出まして、アメリカの経済の事情を話せというように承わつて参りました。最近あちらに参りましたので、若干アメリカの経済事情のお話を申上げたい、かように存じております。  御承知のように朝鮮事変以来アメリカの予算は非常に膨脹いたしております。継続費も加えますると恐らく八百七十億ドル以上に上つております。このうちで約六割くらい、六〇%は軍事費、約五百二十億くらい。そうしてアメリカの経済は、当時すでに殆んど完全に近い操業を示しております。従いましてこういうふうなものに対する需要が増加されて来るとこれは非常にインフレの懸念があるのであります。今日アメリカが当面いたしておりますことは、今日の国際情勢に対応いたしましてその必要とする物資を如何にタイムリーに各必要量を確保するかということ、同時に他方インフレはこれは抑圧せねばならん、そして同時に国民生活もできる限りにおいて下げたくない。言い換えれば民需を抑えることはできる限りにおいては避けたい、こういうふうな非常に或る意味においてむずかしい、が併し御承知のように昨年末に国防生産法というものが発令されておりまして、経済の動員態勢と統制の強化ということをよく進めており、そうして同時にインフレを抑制するという資金的見地からは税金によつております。先ほど申しました現金会計年度の予算、当初予算約五百億に近いのでありますが、そうしてこの会計年度に使われる金額も大体そういうふうな金額、あとは継続の繰越になつて来たものと思つております。これは殆んど全部税金であります。言い換ればそういうふうな大きなことをやるのにかかわらず、政府が国債財源に依存せずして、税金というものを以てこれを賄う、こういうのであります。従いまして今日アメリカの税金というものは相当重くなつております。私の推定では州の税、いわゆる地方税、州の税もありまするが、これを加算いたしますと、恐らく国民所得の三〇%くらいには上つておるだろうという推定をいたしております。決して生やさしいものではないのであります。そうして統制の強化ということは非常に強いのであります。これは御承知のようにデイフエンス・モヴイライゼーンヨン・ボードと言いますか、これは先般までゼネラル・エレクトリツクの社長であつたウィルソンがデイレクターで、同時に生産割当のチエアマンをやつておりまして、この人はトルーマンに直結しているのでありますが、非常に強い力を與えられておる。その下にいろいろなボードが又ある。各省もそのデイフエンスの中に入つている。そうして特にそのうちで御承知かたもあろうかと思いますが、エリツク・ジヨンストン長官の物価賃金の安定、いわゆるスタビリゼーシヨン・ボードというものが中心になつているのであります。そこで御承知のように十二月十五日から一月二十五日でしたか、その間の物価賃金の最高水準を取り、ストツプ令を出した。私がアメリカにおりましたのは極く短期間でありますが、その間でも物価統制、いわゆる価格統制の対象となり、或いは使用禁止等の対象となつた商品は数百万種ありまして、非常に大きなものですが、こういうふうにして所要の物資の調達と、同時に価格の安定策を図つているのであります。併し根強いことは、こういう間にありましてアメリカはさすがに大きな資源を持つております。思い切つた生産増大計画をやつております。そうしてこの生産増大の計画において私が興味を引いたこと、そうして私自身のふだんからの見解からいたしまして愉快に感じたことは、アメリカは勿論大きな資源を持つておる。が併しながらアメリカの資源だけではいかない。これは他の国々の資源で開発すべきものがあれば、これは開発をやはりしなくてはいけないという考えのように、これは私が感じたのでありまして、私の主観であります。そう向うで言うておるのではありませんが、私の感じといたしましてはそういうことでした。そうして全体としてのプロダクシヨンをやつて行く。これは私は結構な行き方である。これは一つにはやはり余りアメリカの生産力に偏重を加えるということは、やはり避けなければならない。同時に又その他の国の経済も、こういう機会に徐々に回復を図らなければいかんということは、全体としてバランスのとれたいわゆる或る程度生産力の均衡上がら極めて望ましいことであります。それは私がそういうふうに考えるのでありまして、同時に又私の考えでは、むしろ今日完全な形と言いますか、本当に完全な形の資本主義というものはないのであります。世界どこを見ても……。併しながらこの形態の経済の運営は、やはり私は国際的規模において運営できないとこれは行き詰るというような私はふだんから自分のこれは主観で、自分の考えでありますが、そういうふうに見ております。そうしてそういうような行き方は、やはりものの筋に幸つて来ておるというふうに私は考えるのであります。これは又非常にいいことだと思つておるのであります。アメリカの物価もさような状況でありますから相当上つております。恐らく基礎的な生産資材だけをとりますれば、六割近い、五〇数%の騰貴であります。卸売物価は恐らく三割、三〇%くらいが上つております。この生計費と言いますか、こういうものの騰貴は、いわゆる小売物価になりますが、これは二割までにまだ達せぬだろうと思つておりますが、そういうふうな騰貴率を示しております。併しそうして今日の情勢からしてまだどうしても物価の騰貴は避けられないということであります。これは私もさように見て参つたのであります。併し今後生産力の増大ということが期待ができるのでありますから、物価統制或いは賃金統制に当つているかたがたは、相当強い自信を持つて、或る一定の段階に来れば安定させ得るという自信を持つてつておる。私がどうだと聞くと、今これは非常にむずかしい問題だが自信があるが、非常にむずかしいというふうな、併し相当今後の増産に期待はかけられているということを言つております。物価等につきましてはそういうふうでありまするが、私が又大きな一つの観点で感じましたことは、これも私の感じでありますから間違つておるかも知れない。が、そういうふうな準備をいたして、準備といいますか、又何の準備かということになりますが、そういうふうな、今申しましたような態勢を見て取りつつありますが、何のためか、これはやはり戰争をしたくない、戰争を防衛するということにある、戰争をするためではないと私は感じておる。戰争を防衛する、戰争が起らないようにするのには、さような措置が適当である、こういうふうに私は考えたのであります。従いまして十分なことは、これがためには準備を必要といたすでありましようし、又するであろうと思つておる。民主主義の国ではともすると後手をふむのであります。まあ私はここで後手、それは私は将棋をさしますが将棋で後手というのであります。先手というような方向で進むであろうかと私は思つております。なお私はたくさんの援助を終戦以来受けました民間人として、誰かが向うに参りましてお礼に参上するのがよろしかろうという態度から私は参つたのでありますが、この際私に対して日本に援助を與えたが、今日君たちがやつて来て、日本の経済も自立し得る見通しに立つたということは非常に結構だ、ほかの言葉で言えば、その援助を無駄にしなかつた、それでいいのだ。多くのところに多くの援助を與えたが、なかなかそう成果が見られなかつた言つてもいいかも知れない。特にまだ次々と援助々々と言つて来るかと思つたところが、なにそうなんだが……こう言われました。貸借もはつきりしないような事柄でもないし、貸借ははつきりしておつてもよい、返済計画も立ててよい、金利も拂う、そういう援助があれば、そうしてその援助によつて日本の輸入というものが十分確保されるならば、言い換えればビジネスの、或いはコンマーシャルのべーシスの余力があればまあ私の考えでは日本もやつて行けるだろうというところにある。それを非常にそういうふうな考え方であるべきだという、これは援助する人から見れば成るべく相手がそうなることが望ましいのでありますが、又無論異論のあるはずがありません。併しそういうふうな段階にあるそういうような関係からいたしまして、大体私はこの輸入の確保と、今日資金的な面はそう心配することは、私の見解ではないのであります。要は物にある。もはや物に移つて来たわけで、日本の所要する原料その他の輸入の確保ということが最も焦眉の問題である。同時に国民生活の水準をも上げ、日本の経済が復興して行くとか、こういうふうな過程を通るのには、日本には重油もない、石炭も乏しいが、唯一の持つておる資源であります水力でさえも今日の電力事情は甚だしく不足しておる、こういうことになつておる。先ず電源の今後の開発、物を運ぶのにも船が要る。日本は当分の間世界のほかの国と競争をするといいますか、或いはほかの国の脅威になるような、そういうような商船像を持つという状況にはないのであります。今日恐らく日本の貿易は二割くらいしか日本の船は運んでおらないでしよう。ですからどうしてもこの所要するこの船の点も一つ考えて見なければならないと思います。こういう点を大いに話して見ましたのであります。私といたしましては、よくそれがわかつてくれたと、非常に好意的に考えてくれたということを皆さんに報告してよろしかろうと思つておるわけであります。簡單でありますがこれでおいとましたいと思います。
  43. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 御質問がありましたらば……。
  44. 山田節男

    ○山田節男君 一万田総裁が今回アメリカに重大使命を以て行かれまして、如何に活動なさつたかということはMRAの同人から、このワシントンからニユーヨークから、それからかなり詳細な情報を得まして、非常に私は喜んでおるのでありますが、只今御報告のありましたもの、或いはなかつたものに関して一、二御質問したいと思うのであります。御承知のように、ダレス特使がこつちに見えて、そうして対日條約の問題についてかなり具体的なものを持つて帰られた、そういう対日講和條約が近く実現するということになるという見通しがつくと同時に、最近新聞でああしたような日米経済協力ということが向うのほうから構想されて来ておるわけでありますが、一万田総裁がワシントンにおられて、その一例として例えばブレトン・ウツヅ協定、国際通貨の基金、こういつたような、その他財政問題について、対日講和條約の進行に並行して、こういう問題についても日本は條約の、講和條約の締結後には、いち早くこういうものに参加できるということになるお見通しがついたかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  45. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) 講和のことは私も存じません。が併し今のお尋ねのような国際通貨基金、こういう点は私は講和とやはり睨み合いつ進行は当然するだろう、こういうふうに考えておるのであります。
  46. 山田節男

    ○山田節男君 私一昨年の丁度十月の末でございましたが、ワシントンで今陸軍長官をしておる当時の予算局長をしておつたフランク・ぺース氏、それから名前は或いはニユーヨークの取引所の副所長と混同するかも知れませんが、ワシントンのインターナシヨナル・バンクの副社長をしておるミスター・シユレーダー氏だと思いましたが、懇談があつたときに、例の後進国の開発問題について、これはアランクー・ぺース氏もそのことを盛んに言つておりましたが、條約ができた後はアジアの国々、例えば現在もうすでに後進国を援助している、開発のために援助しているところもあるが、日本もこの開発銀行としては最もこれは重要視しているが、條約ができなければ何ともできない。條約ができればこれは日本に対して最も有力な援助をするのは当然であるというようなことを私はみずから聞いたのでありまして、その後にぺースさんに会いました。アイケルバーカー中将もこれは財政家ではありませんが、極東顧問としてやはりこのインターナシヨナル・バンクの今後の日本における活動について、かなり楽観的なことを言つておられたのですが、この点についてやはり一万田総裁にも何か相当條約後には、いち早く例えば電力の、電源の開発ということ、その他の問題についてそういうようなところから日本に援助してくれる見通しがおつきになつたのかどうか、この点も一つお伺いしたいと思います。
  47. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) 大変いろいろと具体的なお話でございましたが、大体私はそういう点を引つくるめてお答えをしたつもりでいるのでありますが、(笑声)そういうことを挙げてお話したかと思いますから……。大体満足すべきと思つておりますと、こういうふうに申上げたつもりであります。(笑声)
  48. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 一つお伺いいたしたいのですが、今日本で今度の国会に恐らく提出されることと思うのですが、日本の開発銀行案、この開発銀行案につきまては、いろいろ問題があると思うのですが、アメリカの輸出入銀行、ああいう方面日本の開発銀行というものと関連が出て来るかどうか、又ああいう日本開発銀行というものを通してアメリカの外資というのか、クレジツトのようなものですね、そういうものが来る可能性があるかどうか。この日本開発銀行というものは先ほど一万田総裁がお話になりましたように、世界的な規模において後進国の開発をやる、或いは復興をやらなければならん、こういうことの一つとして日本としては考えるべきであるかどうか、そうしてそうなりますと、やはりアメリカの輸出入銀行あたりとの関連、又そういうところを通してのクレジツトの問題、こういう点については可能性があるかどうか。その点についての関連はあちらに行かれましてのお感じを一つお伺いしたいのです。
  49. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) 実はそれももう答えてあると思うのです。(笑声)無論望ましいことであるし、そうして大体おわかりになつておられると思います。もう何もかも一切引つくるめて私はそうありたいと、かように申上げておるのであります。
  50. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう御答弁ですと、皆含まれてしまつて、我々どうもよくわからないのですが、余り具体的にお答えになることは、お立場として差支えられる点があるかも知れませんが、我々やはり今後の日本の経済の見通しというか、特に今度の予算審議する上におきまして、総裁があちらに行かれました結果のいろいろ御意見を伺うことを非常に期待しておつたわけです。我々聞くところによりますと、一万田日銀総裁はあちらの輸出入銀行とそれから日本開発銀行との関連を調整されるというのですか、そういう使命を帶びて行かれて、それでその具体性を確認されずにおいでになつたと、こういうふうに聞いておるのですが、そうしますと、日本の開発銀行というものは、若しそうであると非常に重要な機関になると思うのでありまして、そういう国際的規模において、我々は開発銀行をやはり考えなければならないのじやないかと、こういうように思われますので、日本開発銀行の国際的な性格、こういう点から御質問したわけなんです。もう一度これについての御意見を伺いたい。
  51. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) それは私が仮に可能であると言つてみたところがこれは私の主観でどうにもならない。それで私としては、それは非常に望ましいことである、私としては努力をするということで御満足を願わなくてはなるまいと思います。そうして開発銀行等につきましては、これは私が直接かれこれ言うよりも、これは大蔵大臣からいろいろとお話をすべき筋であろうと思います。私としては今の御説については如何にも私どもも非常に希望しておる、それで努力をする、こういうことで一つ御勘弁を……。
  52. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 もう一つ簡單でございますが、お伺いしたいのですが、それは今後の日本の金融機構の問題ですが、開発銀行というものは長期金融機構の中心になつて、そうしてこれまで勧銀とか興銀とかその他長期金融を持つておりました、前のいわゆる特殊銀行というものは、長期金融をやらないでだんだん輸出銀行になつて来る、そういうように考えてよろしいのですか。この大体長期金融は開発銀行中心に行われる、こういうように見てよろしいのですか。その点について伺いたい。
  53. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) これは金融の問題でありますが、私はやはりこのすべての銀行が商業銀行であるということはこれはできる。日本としてやはり長期金融は長期金融、これをいたし、この資金を債券発行に持つて行き、商業銀行は預金でやる。そうしてこの商業銀行のうちの資力の有力なものはインターナシヨナル・バンキングでやる、こういうような形態が望ましい。そういう意味におきまして開発銀行ができる、これも私非常に当初からの意見でありますし、大いに結構なことと存じております。
  54. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも私は素人なんで、禅問答みたいなことはちよつとわからないので、これは教えを請いたいと思うのでありますが、この外資導入の問題が当然これはまあ講和なんかと連関して問題が起つて来ると思うのであります。日米経済協力の問題も又出ておるのでありますが、そういう場合のこの形ですね、どういうふうになるのですか。まあ開発、向うの国際開発銀行のようなものを通じて、こちらの開発銀行、そういうような機関を通して来るのでありますか。それとも又政府或いは民間から日本の個々の会社のようなところに個別的にそういうものが導入されて来る形をとるのでありますか。こういう点について総裁は向うに行かれまして、大体まあどういうような見当をお付けになつてお帰りになつて来ましたか。是非まあお話頂きたい、こういうようにまあ考えるわけです。
  55. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) いや、別に何も私はおみやげはないのですが、まあそういうことは結局これはどうこうということは何もあるものじやない。これは来る資金の性質にもよりますし、誰を相手にしたほうがこれは便利だ、これの場合にはこれを相手にしたほうが便利だ、これはそのときの具体的の相手の考え、又具体的な事柄によつて私はきまる。何も窮屈に考えなくても結構じやないかと、個々を相手にする場合も結構でありましよう。又ものによつては何かの機関を通して、これも私は結構。あれかこれかでなくして、あれもこれもでいいのじやないですか。(笑声)
  56. 岩間正男

    ○岩間正男君 大体、併しまあこの政策の方向として、どういうようにその潮流が流れておつたかと、それをどういうふうに観測されてお帰りになつたかということをお伺いしているのでありまして、この点お聞かせ頂ければ非常に幸いだと思います。
  57. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) いや、別にその具体的なことは何もありません。それでこれは恐らくどういうものがどういう方向で行くべきか、やはり今私は、具体的な問題を申上げておらんのに、余りかれこれ言うことはない。或いは政府の政策として、政府としてこう考えるというところの御答弁で、私はお求めになつて、御満足を願つたほうがいいのじやないかと思います。
  58. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではこの参考までにお伺いしたいのでありますが、このイタリアとが西ドイツ、そういうところにまあ外資が導入されておつた事実があると思うが、そういう場合にどういうような今までアメリカでは形をとられたか、大体一つの大きな流れとしてそういうような問題について、これは参考までにお聞かせ頂きたい、こういうふうに思います。
  59. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) いや、これは私甚だ不勉強で、西独のことについては正確なことは存じません。
  60. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 何でもまあお話の中に含んでおるようでありますから、たださつきおつしやつた輸入の確保が大切だ、資金面のほうは余り心配ないということをおつしやつたのでありますが、この点についてのお考えをもう少し……。
  61. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) これは私の感じですけれども、結局例えば資金を、具体的に少し申せばドルをもらう、ドルをもらつたところが、これは日本に持つてつてどうにもならん、結局、常に外国から借金でもするということが、外国から物を持つて来るということなんです。そうして今、今日の情勢からして国際的に物価が非常に……いや物価じやない物資が、特に原料、資材というものが不足しておる、それで無論比較的の問題で、一方は楽で、一方は楽でない、こういうふうにどちらかといえば比較的の問題です。この具体的な、物を入れるということが非常にむずかしくもあるし、大切でもある。こういうことであります。
  62. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それで具体的にお聞きしたいのでありますが、まあ、最近外為の金が減つて来たということで心配される向きもあるのですが、外貨が少くなつたときには何らかの方途、この間おいでになつて、何らか不足分については考え方が、見通しがある、こういうお考えでしようか。その点一つ……。
  63. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) それも一つ余り具体的な、何ですよ、私から、私はただもう今度何も政府使命を帯びて行つたわけでもなんでもない。無論、日本銀行総裁の資格は持つて行きましたが、どちらかといえばプライベートな、いわゆる民間人として行つた。それでできるだけの力でいろいろと下働き、いわゆる俗で言う縁の下の力持ちです。それから先は、私はそれでもうよろしいのであります。それから先のようなことは、余り聞かんで欲しいのです。(笑声)そうして先ほど申しましたように、そういうような点は一切引つくるめてお答えをしてあるのでありますから、それで一つ御満足を願いたい。
  64. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 非常に引つくるめたお答えなんで、もつとほかの方面から直接の御関係のことを具体的にお聞きしたいのですが、日本銀行券の発行高をこの年度末、三月末にはどれくらいにお見込みになつておるか。それから二十六年度末までにはその通貨の発行状況がどういうふうになれば一番理想的だとお考えになるか。というのは、政府の報告によりますと二十六年度は相当の生産増加がある、又外国からの影響その他で物価も相当騰貴すると思うのですが、それらによつて日本の経済規模が相当拡大する、そういうことを考慮に入れて、来年度の通貨発行量というようなものはどれくらいのところに持つて行くことが適正かというふうにお考えでしようか。先ずその点を……。
  65. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) この年度末の通貨発行高、これは割合に期間も短いから、大体の私は想定ができるだろうと思う。まあ私の考えでは、やはり四千億を若干超えるというようなところは止むを得ないだろうと考えておりますが、二十六年度末はどうなる、これはなかなか先でありまして、何、当るも八卦、当らんも八卦で、これも結構ですけれども、そういうことを又軽々に言うのも、私の立場からではなかなか言えない。特に今後の日本というものは、しばしば申上げまするように、輸入が如何に確保されるかということによつて、当面日本の経済の動きというものがきまるのであります。従いまして、具体的にどういうふうに輸入がなるか、單にこれは信用状を切つた、或いは外為がどう動いたという問題ではないのであります。具体的に通関して来る——税関を通して来る具体的の物が、どういうふうに又こちらの需要するものが順調に来るか、それにかかるのでありまして、もう暫らく時間をかして頂かないと、なかなか答えができません。今のところはやは周東さん、安本長官から、大体の計画に基いたものでも聞いて頂いて、それ以上は実際家としては、実際面を抑えますから、お答えが困難であります。
  66. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは数字の点はお聞きしないとしましても、最近いろいろ日本銀行を中心にしておやりになつているところを見ると、相当インフレ気構えが懸念されるんで、通貨の面を相当抑えなければいかんというような意味で、量的な制限を更に強化する、そのためには金利をもう少し引上げなければならないというような政策をとつておられるかに見えるのですが、金利政策、今後の金利政策をどういうふうにお考えになつているかというのが第一点、更に今後の金融統制の問題は、單に金利をいじることによつて、量的な制限その他をすることだけで間に合うかどうか、もつと更に進んでは、質的な統制の問題まで進まざるを得ないことになりやしないかどうか、その点を日銀総裁はどういうふうにお考えになつておりますか。
  67. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) そういう政策も、やはり基本は輸入の確保ということによります。これは結局輸入の確保によつて日本の経済の動き方がきまる。それでありますから、やはりその状況を見ぬといかんですし、又若干そういうふうな根本の点から離れても、今金利政策でどうするということは、時期尚早と私は考えます。なぜなら、今日の国際情勢に対応して、日本の経済がどういうふうに進むべきか、又どういうふうに日本の経済を持つて行くべきかという基本がきまらないといがん。例えば今お話がありましたように、今後インフレ的な懸念は無論一面あります。無論ある。これは私どもの立場として十分戒心しなければなりません。それならそれを放つて置いていいのか、放つて悪いとすると、どういう方向が最も日本に妥当するか、そういうものがきまらないと、これはなかなか金利政策だけではできない。今私のとつておるのは、それで若干、もう少し輸入状況、その他そういうふうな基本線のきまるのを暫らく見て行かなければならない、今の市中金利は決して安過ぎることはないので、そう急いで何もこれを上げる必要はない。これは国際金利から見ても言い得る。そうして見ると、ここは暫らくそういう情勢を待つて、私は上げるとも下げるとも申しませんが、今のところは暫らく情勢を見る。ただインフレの懸念はある。まあ昨日すつた「わさび」くらいの警告は與えなければならない。そこで、それは法律的には、これは市中金利には何も影響はない。ただ銀行と日本銀行との関係であつて、ほんのちよつぴりきかすくらいで、これは何も金利を引上げる力はないのですが、まあ気持を若干示した、そういうところで今は私はよろしいと、こういうふうに思つておます。一に今後の輸入その他日本の経済の動向を見つ考える。テンデンシーとしてはこれはインフレ気構え、物価も御承知のように上る、テンデンシーとしては。これは金利は上る傾向を持つ、政策としてでなく、傾向としては上る傾向を持つことは否定できない。政策として更にこれ以上今後金利を上げるべきかどうか、もう少しすべての経済の実態の情勢を見てからで遅くない、こういう見解をとつておるのであります。
  68. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) ちよつと御注意しますが、総裁は三時半でどうしてもよそへ行かれますから……。
  69. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじやもう一点。我々が昭和二十六年度の予算審議しておりますときに、一番大きな問題になつておるのは、申上げるまでもなく五百億のインベントリー・ファイナンスの問題なんですが、この問題に関連しまして、今の日銀のユーザンスの方式、あれをもう少し改正することによつて円資金不足をもう少し合理的に改正するととができないのかどうか、只今大蔵委員会で木内外為委員長の話を聞きますと、ユーザンスの方式を今後はポンドから更にドルのユーザンス制度をとる、そうして又それに関連して市中銀行のユーザンス方式に変えて行きたいというような説明をしておられましたが、この点について、日本銀行総裁はどういうふうにお考えになつておるか、お聞きしたいと思います。
  70. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) 今日は日本銀行ユーザンス制度をとつておることは御承知の通でありますが、これは改善をしたいと、異存はない。併しどこの案とかここの案とかいうものはない。どうも日本ではそれぞれ関係者が寄り合つて、そうして虚心坦懐に相談をして一つの案をまとめ上げると、如何にもうまくでき、且つその後の運用も極めて円滑に行くのであります。従いまして、そう先走つて同じ事柄についてどこの案、ここの案、それについて何か返事をするとかせんとか、如何にも最後通牒で回答するような、そういうふうなやり方が、ともすると多い。これは非常に残念に思つております。従いましてそういう、自分に関係するような、ユーザンスというような事柄については、大蔵省日本銀行とそれから外為委員会、皆で寄つて一つ考えようじやないか、そうして日本の国のために最もよろしい案を採用すればよろしい。今折角それを皆で以て相談中であます。それで今私がここで白銀ユーザンスとかどうとか言えば、折角一緒にうまく行きおるものを壊す虞れがありますので、まあこの辺で一つ御勘弁願いたいと思います。
  71. 高良とみ

    ○高良とみ君 一民間人として一万田総裁がアメリカを見ておいでなつたという御趣旨に非常に共鳴いたすのでありますが、一つ率直に国内の融和を阻害しないという御見識の点を伺いたいのでありますが、一体アメリカの財界にお立寄になりまして、曾ての日本のようでなく、日本の財力或いは日本の経済的国力というものが、曾つて日本の二円が一ドルであつたというようなことはなく、非常に下つておるということを御痛感になつただろうと思うのであます。その点で、私ども国民としても過去の戰争の破壊を思うのであますが、その点日本は今日戰後五年の復活を以てしましても、よほど世界各国の財力からいつて低いところにあるというふうに御覧になつたのか、或いは私ども日本から一方的に考えておますように、アメリカが非常に好意をもつてくれておつて、回復も早い、又国力においても国内輿論のごとく、対米ドルの為替レートさえも上げてもいいんじやないかというような気構えのある状態からいいましても、その国際市場における日本の財力の見通しを、四等国と見られるか、七等国と見られるか、その辺についてのお感じだけで結構でありますが、先ずお聞かせ願いたいと思います。
  72. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) 無論物質力の比較になると問題にならない。私、丁度デトロイドに行つて、そうしてクライスラーのプリムス、あの自動車を見たのですが、これはまあ五十六秒で初めから終いまでの自動車の検査もやり、ガラスも張り、何もして五十六秒で一台できる、もう実にプラニングと言いますか、或いはメカニズムと言いますか、或いはエフエシエンシイと言いますか、実に見事なものである。併し、それを日本に持つて来て、仮にやつたら、一日やつたら翌日から原料がなくなりはしないかというふうにまあ感ずる。これはまあ物質力の比較の一つの問題で、必ずしもそういうことは日本ではやれないということで、そこまでは行かないが、併し一面これは精神でしよう、精神的には……実はこれは甚だ時間がないので、おしやべりをして漫談になりまして恐縮でありますが、実は私は関東大震災の頃にアメリカに行きました。そうしたらもうハワイに着いた頃から、これは大変な国に来た、サンフランシスコに着けば又感心する、ニューヨークに行けばいよいよ以て大変だ。その当時ウールウオースが五十七階で一番高く、その上に登つてニーヨークを見渡し、どうも足や尻が上つて来るようで、何だか下に飛んで見ると気持がよさそうなそういう感懐である。併し、今度それで自分としてもアメリカがどういうように自分に映るだろうかという興味を持つてつたのです。だが併し、行つて見たら何も驚くことはない、ニユーヨークに行つて見るが少し家が高いというふうにも思わないし、エンパイヤステートというと百何階だが、私から言うとクラッチの芯が立つておるような感じ、そこで私はどういうわけかと非常に疑問にした。これは自分が飛行機に乗つて太平洋を、地球の上から見た、そうして地球の廻転と競争して見た、それで自分の気持が大きくなつて、此細なアヌリカどうでもよろしいという気持、そこでそういうふうな感じを私は持つたと思うのです。そんならば同じようにもう一遍地球を上から見て、今度は地球と追駈けつこをして日本に帰つて来る、日本が如何に小さく見えるかと、それで私が羽田が見えたその瞬間において私の胸間において起つた感懐でありますが、何にも小さく見えない、日本はそれでよろしい、何もそういうような点について大小の気持は起らない、形態は違つておるが大小の気持は起らない、これは一体何であろうか、これはまだ私は解決をいたしておりません。だが併し、物質的にさように相違するにかかわらずそういう感懐が湧くということは、これは日本の精神的の成長ではなかろうか、こういうふうにまあ考える、その精神的な成長が具体的にどういうふうに何を意味し、今後においてどういうふうにこれが発展するかということは、私は今宿題としてじつと考えております。
  73. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 高良君、もう最後にして下さい、時間がありませんから……。
  74. 高良とみ

    ○高良とみ君 それでは一点、ドル地域の御感想を承わつたのでありますが、今朝ほど農林大臣が本会議において一万田総裁のみやげ話として、パキスタン地区に何千億という大きな金があるようにお話がありまして、その点でポンド地域が日本に対して非常に好意を寄せておるというような感じをお持ちになつたか、勿論東亜の諸国は貧しい境遇でありますけれども、その点一万田総裁のドル地域とポンド地域との国際財界市場のお感じを一言伺えれば仕合せであります。これは延いては日本国民生活水準の物資を将来輸入しなければならない場合の基礎問題として伺つて置きたいと思うのであります。私ども非常に心配いたしておりますのは、この国民生活水準の問題でありますから、その輸入し得る地域が、アメリカの非常な船賃の高い、又遠いところと、或いはアジアというようなところを考えに入れて、ポンド地域の対日感情を伺えれば仕合せであります。
  75. 一萬田尚登

    ○参考人(一萬田尚登君) 実は私はまだポンド地域には行かないのでありまして、わざわざお尋ねになりましたが、それは新聞、雑誌とかで見たり、或いは自分の意見はありますが、今日はまあお前はアメリカに行つて来たのだから一つアメリカのことを話せというので参つたのでありまして、今度ポンド地域に行きましたら、帰つて来て御報告することにいたします。
  76. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) それではどうも有難うございました。それでは藤野君。
  77. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 私は人権擁護の関係と、事務的で小さい問題のようであるけれども、私などの財産に重大な関係がある土地台帳及び家屋台帳についてお尋ねしたいと思うのであります。先ず最初に人権擁護問題から入りたいと思うのでありますが、人権擁護の必要であることは今更私が申上げるまでもないのでありますが、国民中に人権擁護ということがどんなものであるかということを知らないものが非常に多いのであります。昨年の十一月国立世論調査所調査の結果によつて見ますれば、先ず人権という言葉はどういうふうなものであるかと、こういうふうなことを聞いたところが、人権擁護という言葉がわかつているのは僅かに三〇%であります。又人権擁護局、又は人権擁護委員というものはどんなものであるかと、こういうふうなことを尋ねたところが、これに対する答えは二九%あるのであります、わかつているのは……。若し又人権が蹂躪されたならばどこに申出るかと、こういうふうな質問をして見るというと、それに対しては人権擁護局であるとか、或いは人権擁護委員であると答えたところのものは僅かに六%であります。こういうふうなことで殆んど総数の二%だけが大体においてわかつているのであります。こういうふうなことから考えて見るというと、国民の十人のうちに一人でも人権擁護ということについて正当の解釈をすることができないような状態であるのであります。そこで私は法務総裁お尋ねしたいのでありますが、なぜこのように我が国民が人権擁護に関する知識が低調であるかということであります。人権擁護事業は新らしいところの事業でありますから、大いに人権の思想を啓蒙宣伝をやらなくちやできないのであります。この方面に対する努力が足らないのじやなかろうかと、こう考えるのであります。この点についての御返答をお願いしたいのであります。
  78. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) お答え申上げます。御承知通り人権擁護の仕事は新たに出発いたしました仕事でございまして、法務府といたしましても当初その仕事がどのように進展して行くものか、又どの程度の事務量があるものであるかということにつきまして見通しがつかなかつたのでございます。併し出発以来かれこれ三年にもなりまして、現在では相当に事件の内容も分類整理されて参りましたし、又起るべきいろいろの事務量もほぼ見当がつくに至つて参りました。    〔委員長退席、理事佐多忠隆君委員長席に着く〕 そこで法務府といたしましては現在ございます一局三課の人権擁護局の機構をフルに動かしまして、各地方に起りまする人権侵犯事件その他の人権擁護に関する思想の啓蒙宣伝に当つておる次第でございます。一方地方におきましては法務局、地方法務局並びにその支局等におきましてそれぞれ若干名、例えば法務局、地方法務局等につきましては二、三名乃至三、四名、いろいろございますが、その人数を以ちまして各地方の事務を処理さしているのでございます。そのほかに、それでは勿論手不足でございますので、昨年から人権擁護委員というものを各地にお願いして置きました。この人権擁護委員にそれぞれ担当の市町村の事件を先ず第一次的に取上げて頂く、そうしてそれをそれぞれの法務局或いは地方法務局等におきまして連絡をとり、又事重大なものは法務府においてこれを処理するというふうな大体の仕事の分配もいたしまして、それで地方と中央との連繋をとつておる次第でございます。かように事件の大きさとそれから事務の運営の方法が定まつて参りましたと同時に、一方国民の人権擁護に関する思想も漸次この我々の普及徹底の効があつたためとも思うのでございますが、非常に向上して参りまして、この種の事件が大変我々のほうに連絡が多くなつて参つたのでございます。そこで予算関係といたしましても、これにそれぞれ対応すべく漸次拡充をいたして参りまして、二十六年度の実際の経過も見ました上で、二十七年度には恐らく相当の増員、及び経費の増額のお願いもしなければならんのじやないかというふうに、ここ一年間を見通しておる次第でございます。
  79. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 只今の説明によつて昭和二十六年度は人権擁護関係に相当積極的に働きかけられるということは喜びに堪えないのでありますが、人権擁護委員会の設立は全国に及んでいるかどうか、この点をお尋ねしたいのであります。人権擁護委員会が十分に活動するようになつたならば、現在の悲境の状況に陥つているところのものが救い上げられ、不平や不満もなくなつて来るのでありますから、国民全体は和気藹々のうちに生業にいそしむことができ、産業の発達も図ることがきでる。その効果は非常に重大であると思うのであります。でありますから将来においては人権擁護委員会を十分に活動させなくてはできないのでありますから、現在の人権擁護委員会の設立状況及びこれが活動状況についてなお少しく具体的に御説明をお願いしたいと思うのであります。
  80. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 只今までの人権審判の事件が約六千件にも上つておる事情でございまして、従つてこれを処理して頂く人権擁護委員かたがたにも各町村津々浦々まで置きたいのでございますが、いろいろの次第もございまして、只今約三千三百名ほど任命してございます。正確に申上げますと本年度、二十五年度末を以ちまして三千三百八十八名任命する予定でございます。さよういたしますと町単位まで委員会が全部漏れなく設置される建前でございます。なお将来の計画といたしましては更に一万八百八十一名にする予定でございます。
  81. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は台帳事務でありますが、土地台帳及び家屋台帳を完備するということが、国民経済の上からも私有財産の確保の上からも徴税の上からも絶対的に必要であるということは私が申上げるまでもないことであります。然るに第九回国会で私の質問に対しまして、税務署から地方法務局、同支局、同出張所に引継がれたところの土地台帳、家屋台帳及び地図の間には不備のものがあり、又紛失したものがあるというようなことで相当整理するには日時を要するということであつたのであります。その後この土地台帳、家屋台帳及び地図の整理の状況はどうであるか、こういうふうなことをお尋ねしたいと思うのであります。
  82. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) お尋ね通りでございまして、私どもの法務局、地方法務局、同支局、出張所等におきまして、土地、家屋台帳を引継ぎました当時には、大変に罹災府県或いは不正確の帳簿がございました。これを一生懸命整理をいたしたのでございますが、これは全国的に申上げますと、実は各地で例えば非常にこの一登記所管内で非常に整理が悪いところがあるかと思いますと、他のところでは殆んど未載はないというふうなことでございまして、数字的にはまだ全国的なものを集計はいたしてございませんけれども、引継ぎ以来全力を挙げて一般の登記事務に支障を来たさざる限り全力を挙げてその整理に当つたのでございます。相当予期以上の進捗を示しておるものと私は思つております。
  83. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 過去における整理を完了すると同時に、登記事務は日常起るところのものを即日に処理せなくてはできないのであります。そういうふうになるためには相当の人員を増加せなくてはこの登記事務を完了することはできないと思つておるのでありますが、昭和二十六年度予算ではどのくらいの人員を増加してこの要請に応えられるつもりであるかどうか、これを先ずお尋ねしたいと思うのであります。
  84. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) この点につきましては、私どものほうといたしまして、従来の自作農創設に伴う諸般の登記がまだ十分片附きません間に、この厖大な土地家屋台帳を引継ぐことに相成りました関係上、大蔵省当局に対しまして、相当強くこの増員を要望した次第でございます。然るに御承知だと思いますが、この土地、家屋台帳が当府に移管にたることに決定いたしましたのは二十五年度予算が全部事務的に整理解決いたしました後でございまして、時期的に若干のズレがありましたために、遺憾ながら二十五年度中はほんの差当りの間に合わせということで始まつた次第でございます。そこで二十六年度の予算におきまして、その点の人員の手当をいたそうというので大分努力をいたしたのでございますが、丁度その頃に自作農の関係の事務の一部の終了を見ましたためもありまして、その自作農の事務の余つた人員を以て賄つてくれ、併しまあそれで足らないことは認めるから、臨時職員的な意味で賃金を五百名分を認めるからこれを全国にばらまいて、それで処理して頂きたい。こういうことで私どものほうでも了承したわけでございます。従つてそれを有効適切に使いまして、この整理、今後の台帳事務に当つて行く、かように考えておる次第でございます。
  85. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は地方法務局及び支局の建物及び設備の整備でありますが、これらの建物及び設備は、国民の権利の所在蔵明確にするに必要な土地台帳及び家屋台帳及び地図を保管してあるのであります。而してこれは今お話があつた通りに、税務署から引継がれたそのままになつておるのであります。従つて私などの財産を保管するところの場所が狭く且つ不完全なところに保管してあるのであります。こういうふうなことであつては私などは安心して土地台帳及び家屋台帳を政府にお願いすることができないような状態になるのではなかろうか、こう考えるのであります。従つて私は前国会においてもこういうふうな大切な帳簿を保管する場所としては、完全な建物を準備しなくちやできない。そうしなくては国民は不安でたまらないのだ、こういうふうなことを要求して置いたのでありますが、昭和二十六年度の予算において、地方法務局及び支局の新築、改築、増築に対するところの計画はどうであるか、又いろいろの帳簿を整備するところの、備品の整備計画はどうであるか、これをお尋ねしたいと思うのであります。
  86. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 法務局、地方法務局等の庁舎は、昭和二十二年裁判所から観念上分離いたしました際に、予算の手当が勿論つきませんので、当時裁判所の庁舎のうちに同居しているというのが一般でございました。その後二十三年、四年、五年と、初最は四千方、次は五千六百万、その次は一億二百万、合計約二億円近い三年度の間の予算を頂戴いたしまして、この金を以ちまして法務局、地方法務局或いは支局、ときには出張所に至るまでの新築を実施して参つた次第でございます。然るに土地台帳、家屋台帳が急激にこちらに移管されることになりました関係上、その大切な帳簿類を収納するところの倉庫類の不足は並大抵でなかつたのでありまして、この点につきましてはあらゆる努力を拂いまして、ともかく当面の収容ということを急いで引継ぎを終つた次第でございます。そこで二十五年の下半期から二十六年度にかけましては、この大切な帳簿類の遺憾なき保存を図るために、主として倉庫類等は専ら鉄筋で以て行く、或いはモルタル塗りを以て火災から守るというふうな大体の方針でこれに当つておる次第でございます。予算といたしましては、官庁営繕費といたしまして、これは建設省所管の中に二十六年度は載つておるのでございます。一億四千三百八十九万三千円と相成つております。なお、これに従来設立されました各登記所その他の補修費というものが、修繕費でございますが、補修費というものが若干ございます。それらの金を以ちまして二十六年度は、かような帳簿の保存に遺憾なきを期して行きたい、かように考えております。なお備品類も只今お話のありました通りで、法務局、或いは支局等におきましては大変窮屈な粗末なものを使つておるところが多いのであります。これは仕事の重大性に鑑みまして、何とかいち早くそれぞれの庁舎にふさわしいものを與えたいと思つておりますけれども、なかなか一朝一夕には参りませんので、逐次これを改善するという方向に持つてつているのでございます。
  87. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は出張所の庁舎のことでありまりすが、出張所の建物は大概その出張所の所在の市町村で建設して、法務局は借家の形をとつておるのであります。而してその借家料なるものが非常に安いために、町村でも現在の財政状態からして、改築、増築を必要とするけれども不可能な状態にあるのであります。町村も財政状態がこのようであるのでありますから、できるだけ町村に対する犠牲を少くするには、或る程度の庁舎の借用料を引上げてもらわなくては非常に困るような状態であるのでありまするが、政府において出張所はみずから建設される計画であるか、又は現在の庁舎を引続いて借りて、その使用料は現在よりも引上げられる予定であるかどうか、この点お伺いしたいと思うのであります。
  88. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 各出張所の庁舎は只今御質問にもありました通り、その相当多数のものが各地元の市町村の所有であり、国に貸付けた形になつております。私どもといたしましては、各地方自治体の財政困難のみきり、成るべくこれを国庫負担においてやりたいということも考えておるのでございますけれども、何分にも全国二千七十個所もございまして、これを片つ端からというわけにも参りませんので、毎年ほんの数個所ではございますが、いろいろ各市町村の、特にお困りのところが御上申がありますので、それに対しまして手当を施しております。なお借用賃の、使用料の問題でございますが、これはそれぞれの法務局から増額の上申がありますれば、その都度快く受けておりますので、若しそういうことがございましたならば、余り予算の何倍も超過するようなことでは困りますけれども、何とか予算の範囲内で、賄われる範囲でございましたら十分考慮したいと思つております。
  89. 佐多忠隆

    ○理事(佐多忠隆君) あと大蔵大臣、岡野大臣の出席を求めておりますけれども、見えませんので、暫らく休憩いたしましたら如何かと思いますが……。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 佐多忠隆

    ○理事(佐多忠隆君) それでは暫らく休憩いたします。    午後三時五十五分休憩    —————・—————    午後四時十一分開会
  91. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 休憩前に引続いて予算委員会を開きます。岡野国務大臣が出席しておりますが、最初に委員長から申上げたい点が一つございます。これは先ほど全国教育委員委員連絡協議会会長山崎匡輔氏の名前を以て、参議院予算委員長宛に次のような要望が出ております。    地方財政平衡交付金の増額に対する要望   国会提出中の予算案によれば、昭和二十六年度における地方財政平衡交付金の額は千百億円と定められて いるが、本協議会は左記の理由により、その増額修正かたを強く要望するものである。    理 由   地方財政平衡交付金の増額なくしては地方財政の運営が不可能である ことは、去る二月九日の全国知事会議の要望決議に示されているところであつて、我々は国会におけるこれが善処かたについて深甚なる関心を持つてその審議の経過を見守つて来た、然るに今や事態は極めて重大なる関頭に達した。   教育関係について見るも、二十六年度における平衡交付金は、給與べースについて、級別推定表の実施等も実態に即応しないため、各府県においては、前記諸項の実施は勿論、義務教育需要費等に要する財源の捻出は殆んど不可能である。仮にこれに対する当初予算が成立しても、その実行は必ずや破綻を来たすものと予想されている。従つて若し伝えられるがごとき算定基礎に基いて昭和二十六年度の平衡交付金の額が決定されるならば、勢い財源不足は教員数の減少、又は待遇の低下を余儀なくせしめ、ために教育水準の維持向上は到底実現し得ないのみならず、新教育制度の運営に重大なる支障を来たすことが予想される。国会の御努力によつてこの問題の解決がなされ、教育費における負担が速やかに一掃されんことを強く要望するゆえんである。  先ほど申上げましたように、全国教育委員委員連絡協議会会長山崎匡輔氏の名前であります。この問題はこの本委員会におきましても、しばしば論議された問題でありまして、これに対しまして、政府側から未だ明確な御答弁がないために、こういう不安が漲つており、従つてこういうような要望書の提出なつたと思うのでありますが、岡野国務大臣においては、この問題についてどういう対策をお考えになつておられるか、それを先ず承わりたいと思います。
  92. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答えいたします。平衡交付金財政委員会から千二百九億円要求されておりまして、それに対して政府といたしまして、大きな国家全体の財政金融事情から千百億しか出ないということになりまして、地方公共団体が非常に二十六年度の予算を組むにつきまして苦労しておるということは、私も十分承知しております。併し何を申しましても、只今国民の税負担が非常に苛酷であるというような批評もございまして、政府財政事情といたしましても、これに対して、これ以上支出をするわけに参りませんので、一応千百億ということにきめておりましたが、将来といたしましては、財政委員会と協力しまして、地方における不急若しくは不用と申しますか、余り重要でない事業は中止若しくは繰延べをするということにいたしまして、そうして教員の俸給なるものは遅配なく、欠配なく、ことごとく支拂つて行くというような仕組に財政を運用いたして行くように指導をして行きたい、こう存じております。
  93. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 教育関係経費がまあ一番地方財政において弱いところなんで、そこが最も多くの犠牲を受ける危険があるということは、これは少々懸念しておる点なんです。そこでこういうような要望書が出たんだと思いますが、平衡交付金は一括交付の形になつておるために、ほかの事業について云々しましても、教育関係経費に不足を生ずることがないという保障が果してできるかどうかということも懸念される一点なんですが、この点どうなんですか。
  94. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。我々といたしましても、又地方公共団体といたしましても、教育費というものは中央、地方を通じまして、日本の再建のために非常に大事な仕事であるということは皆承知しておりまして、たとえほかの面を切り詰めましても、教育に関する費用というものに対しては、あらん限りの努力をして捻出するように存じておりますから、私どもの聞いております点におきましては、成るほど地方財政もさぞ苦しいだろうと思いますけれども、その点においてはできる限りと申しますか、教育担当者が俸給がもらえなくて困るというような事態は出かさないつもりでおります。又そういうふうになつておるのでございます。
  95. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) その問題じやなくて、給與べースの改訂、級別推定表の実施等に必要な経費、遅配、欠配のごときはこれは問題外で、そういうことは誰も考えていないので、遅配、欠配はないということは初めから想定されておることでありまして、それ以外に給與ベースの改訂、級別推定表の実施、こういうものに必要な経費がなくて困るというのです。
  96. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 昨年補正予算のときに、年末手当が足りないとか、それから一月、三月の給與ベースの引上げとか、又俸給表の改訂によつて、それがうまく行くか行かんかというようなことにつきまして、いろいろ我々も心配いたしましたが、大体において十分とは参りませんが、大部分の公共団体は法の厳守と運用によつて、これを実行して行つたように伺つております。詳しいことは財政委員会のほうから一つ報告させて下さい。
  97. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 私どもの要求いたしました額は、国会で予算が修正されずにそのまま通りますというと、私ども考えかたといたしましては、私どもの算定しておつた基礎の予算支出は困難ではありますけれども、これは他の財政需要と按排いたしまして、最低限度のことは財政平衡交付金の分配方法において考えたいと思つておりますが、ただ問題は私どもが制定しておりました予算書において、予算編成の基礎的な数字以上に一般のベースの切替えが上廻るということが問題になるわけでありますが、この点に関しては只今私の手許には正確な数字もありません。併し又相当厖大な額に上ることと思つております。又それが一体客観的妥当性を有するや否やについても研究を要する問題でありますから、目下そういう方面について研究いたしたいと思つておりますが、少くとも私ども予算書に要求した程度給與切替に要する費用は、平衡交付金の配付によつて出して見たい、ただそれ以上のものにつきましては、只今のところまだ研究中であるということを御了承願いたいと思います。
  98. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の山崎氏からの申出についての岡野国務相のお答えによりますと、両方の意見が合わなくで、金額をこれだけにとどめざるを得なかつたという事情はわかるのですが、それに対して委員長がお聞きになつたのは、そういう事態なつたときに、その後の対策、善後措置をどう考えているのかということの質問だつたと思うのです。それに対しては、岡野国務相は適当な節約その他で賄わすように措置するとおつしやるが、その点は後ほどもう少しお聞きしたいと思いますが、意見が両方食い違つていて、意見が合わなかつたときに、あとは全部地方自体で措置すればいいのだ、国家は何にも見てやる必要はないのだというふうにお考えになつているのは非常に一方的じやないか。仮に意見が食い違つて合わなかつたとしても、後の善後措置考えられる場合には、地方にも考えてもらわなければならないが、同時に国家自体も考えてもらわなければならないので、国家としてどういうふうにお考えになつているかという点が、特に岡野国務相に対する質問だと思うのであります。その点をもう少し具体的にお答えを願いたい。
  99. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。千百億の平衡交付金にこれを査定をされて、そうして千百億しか出ないということは、これは私は半年ほど苦闘しまして、結局千百億しか出すことはできないという国家財政の立場にあることを私は認めておるわけであります。そういたしますというと、いろいろ地方におきましても、苦難の途はあるだろうと思いますが、併しこれは地方において私は全く冗費がないとも申されませんし、又切詰めれば切詰められる点があるだろうということも認められますから、その辺において中央、地方どもお互いに苦難の途を開拓して行くために、地方財政のほうで一つ切盛りをして行きたい。こういう考えでおります。私は千百億の平衡交付金も、中央政府の出します平衡交付金といたしましては、できるだけのことをしてくれたと、こういう感じを持つております。
  100. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうもその辺がよくわからないのですが、地方財政委員会政府のほうとの意見では、地方費負担増加額の問題にしましても、充当財源額の問題にしましても、殆んどあらゆる項目において意見が一致してない。ところが珍らしくもですね。珍らしくもですよ、充当財源額既定経費の節約の面においては八十億一千四百万円、既定経費の節約ができると、この一項目だけは珍らしくも意思が一致している。そこで節約額はもうすでに決定しているので、これ以上節約をしろということは、この予算を変えろということを意味しているのです。それではおかしいじやないか。すでに節約はもう計上済みなんだ。それ以上に何を求めようとされるのか。
  101. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 委員会の意見を出しますには、八十億の節約をきめたのでございます。これは意見が一致したのでございますが、併し先ほども申上げますように、国の財政からどうしてもこれ以上は平衡交付金を出すことはできないということになりました以上は、地方公共団体におきまして、今もう少し節約若しくは事業の繰延べというようなことも考えて、来年度予算を組むということにしてもらおう。こういう考えであります。
  102. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 併し既定経費の節約は八十億というところで、両方意見が一致しているのですね。ここで意見が一致していなくて、もう少しあるじやないかというお話ならば、今の話はわかるのだけれども、この問題に関する限りは両方完全に意見が一致しているのです。それで若し岡野国務大臣が、これ以上どこかの経費の節約をやれとおつしやるのならば、それならば片手落ちだろう。国庫のほうにおいても、国原財政のほうにおいても、どこかからもう少し節約する、或いは財源を見出して地方財政に適当な交付金の増額をやるから、地方自治体ももう少し節約を考えろというお示しならばわかるけれども、すでに意見が一致したものに更にやれ、そうして自分たちは知らんと、これでは理窟にならないし、通らない話ではないか。少くとも大蔵大臣がそういう強引な一方的なことを言つておるのは、或いは大蔵大臣として意味があるかも知れないけれども、岡野国務大臣がそういうことを言つて恬としておられるのはちよつとおかしいではないか。その点をどうお考えになりますか。
  103. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。節約の八十億が意見が一致しておるから、これ以上節約はできない。だから中央政府の資金を以てもう少しやつたらいいではないかと、こういうような御趣旨のように考えますが、中央政府のほうの支出につきましては、大蔵大臣がこれ以上国家財政としては出すことができない。又閣僚一同もそういうことにきまつたわけでございますから、私自身といたしましては、その国家財政のほうに対しては、所管の大臣の意向を尊重し、又閣議で決定しました線を尊重します。先ほども申上げましたように、地方公共団体のほうで何か仕事を中止するとか、若しくは繰延べをするか、こういう方法に持つて行きたいと考えておる次第であります。
  104. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 政府で決定したものだから、そつちは動かせないとおつしやるならば、さつきから言つておるように、地方財政における既定経費の節約は八十億一千四百万円だと、これも政府でおきめになつた、これも動かせないはずなんだ。それをなお且つ動かせとおつしやるのだから、それならば政府できまつたものを動かせとおつしやるのだから、国庫のほうもそれに応じて動かすのが然るべきじやないか、これは何も地方財政委員会の決定でないことは御承知通りだと思います。その点をどうお考えになりますか。
  105. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 国庫のほうつは所管大臣の大蔵大臣がその当面の仕事をしておりますものですから、私は大蔵大臣の言うことを尊重しまして、国庫から出ないということを了承しておる次第でございます。それから地方自治団体のほうでは、地方財政委員会がこれを所管しておりますから、その地方財政委員会と相談しまして、成るほど一致しておるのだから、而も政府が認めておるのだから、これ以上政府の立場としましては出せんという感じは持つておりません、或いはあの当時、予算を組みますときに八十億ぐらいは地方で節約しろということにしましたものですから、政府としましても、成るほど八十億ぐらいは節約してもらつて結構だということで承認いたしました。それでありますから、先ほども申上げましたように、若し一方に国家財政資金がどうしても出せんということになれば、地方公共団体のほうで、この與えられたところの税収並びに平衡交付金若しくは補助金等をすべて合せまして、そうしてそれで地方公共団体財政を賄なつて行く。その賄なつて行くにはどうしたらいいかということは、これは地方財政委員会と、我々が参加しまして、適当な方策並びに指示をして行きたいと、こういうことに考えております。
  106. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 岡野大臣はしばしば地方団体の行政規模の圧縮だとか、既定経費の節約等々で何か賄わすつもりだというふうにおつしやるのですが、問題は非常に具体的の問題になつておるので、然らば昭和二十六年度の予算の対策として、今後の地方自治、地方行政のありかたとしてならば、今言われておる程度の対策で、構想はこうだということで進むと思いますが、問題はすぐ四月から始まるところの二十六年度予算の対処策をどうするかという問題なんです。それならば岡野大臣は考えられるが、実際の地方自治運営としてそれが可能だと財政委員会はお考えになつているのかどうか。今おつしやつた地方団体の行政規模の圧縮とか、既定経費の節約ということは、具体的にどういうものをどういうところでどう節約できるとお考えになるか、その対策をお示しを願いたい。
  107. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 地方財政委員会のほうからお答え申上げます。
  108. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 今の問題は、恐らく地方の節約というものは非常に困難だろうと思います。結局仕事を或る程度やめるということだろうと思うのです。例えば従来政府補助なしに単独で起債しておるものならばいいのですけれども起債によらないでやつていたというような仕事をやめる、繰延べる、或いは極端になりますれば、国庫の公共事業費に対する負担金が即座に抑えなくなる。起債が許される限度は勿論できますけれども起債の許されないものについては、或いは起債が認められない部分に対する国庫への協力という、公共事業に対する国庫事業に対して、従来のように円満に円滑に行くということは相当困難になるのじやないかとこう思われますが、こういう結果が或いは生ずるではないか。先ず第一には単独事業のようなものの繰延べ或いは停止、その次は国庫、公共事業に対する協力が或る程度不円滑になるということが起つて来るのじやないかというふうに想像して、おります。
  109. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 現在でもすでに地方財政が破綻して、地方自治行政がやつて行けなくなつているということを言つておられるのが今までの申入れだと思うのです。それに更にそういう問題にまでなつたら、殆んど潰滅状態になる以外にないと思うのですが、項目としてはそういうことが考えられるというか、実際の地方自治運営としてそれが可能だと財政委員会はお考えになつているのかどうか。
  110. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 非常に困難な自治団体が出て、団体の財政は勿論一率ではありませんから、多少の財源の余裕の厚薄というものがありますから一概には言えませんが、概して私どもが所期するような自治の運営というものは困難になるのではなかろうかとこう考えておりますが、若し従来のように、或いは税制改革以前のような寄附金をもらうとか、負担金を出すとかいうようなことになつて、税制改革の趣旨が或る程度没却される慮れがあるのではなかろうかと、こういうふうに思います。
  111. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) ちよつと木村地方財政委員にお聞きしたいのですが、どうも少し変ではありませんか、今の御答弁は。例えば公共事業に対する地方負担金の繰延というようなことが起るのを前提としての議論なんですか。そうだとしますと大変なことになるのじやありませんか。そういうことを前提とされたのでは、仕事も何もできやしないのじやありませんか。
  112. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 先ず第一には先ほど申上げましたように、一般的には単独事業か繰述べられ、或いは廃止せられる。公共事業のほうは恐らくそういうことは例外的であると思いますけれども、又私どものほうで起債の許可等について、そういう方面を考慮することによつて(或いは多少緩和できるのではなかろうか。財政の厚薄によつて起債程度等を考慮することによつて、その点は緩和できるのではなかろうかということを申上げたのであります。
  113. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもこれは今の御答弁を聞いていますと非常におかしいことになると思うのであります。いろいろな点を認めておられるわけですが、例えば公共事業が相当圧縮されて来るとか、それから法律による義務行為の果さなければならないものが不円滑になる、そういう問題を認めておられる。それから地方の自治団体の単独事業を中止される。これは恐らく両大臣ともまだ検討されていないと思うのですが、そういうことになつたら自治行政というものはどういうことになるとお考えですか。
  114. 木村清司

    政府委員(木村清司君) その点はなお私どもとしましては、起債の枠に非常に関係があるのでありまして、若し平衡交付金が十分に、この通りになるとしても、起債の枠が或る程度拡充されれば子の補充になるということは申すまでもないのであります。将来私ども委員会としても起債の枠の増額を要求しているわけでありますから、平衡交付金が増額されない場合におきましても、できる限り起債の枠の増額には努めたいというふうに存じている次第であります。
  115. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは起債の枠だけで解決される問題かどうかということが一つと、それから又そういう見通しをお持ちですか。起債の枠が拡大されるか。六百七十五億ですか、こういうような当時の要求が三分の二に減らされた、こういうふうな段階で、而もこれは大蔵大臣にも国策上にも連関して伺いたいのですが、どうなんですか。預金部資金運用部の四百八十億の方から、予備金の方からでも大巾にそういう要求を充たしてやる、こういうふうな操作が行われ得るがどうか、こういう点を伺いたい。先に財政委員会から伺いたい。どういう見通しを持つそいるか、漠然とした要求じやしようがない。
  116. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 只今のところでは希望的観測でありまして、実際上困難であると承知しております。
  117. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 預金部の資金計画におきまして四百億の一応の枠があります。これは国家資金の全体を通じましてそういうふうな一応の算定をいたしたのでありますが、地方団体のいろいろ御要望もありますので、実行上においてはいろいろ枠の拡大ということを考えて参りたい。これは大蔵大臣もたびたび言われていることであります。それから又預金部からの起債の問題でありますが……、市中金融機関からの起債の問題は一応は可能だというふうに私ども考えているのでありまして、そういう点においても融通の道その他は今後において相当考えて行けるのじやないか、私はこう考えます。
  118. 岩間正男

    ○岩間正男君 市中銀行からの枠というのはどういうふうに、具体的にどのくらいにお考えになつているのですか。
  119. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 二十四年度では市中銀行から四十億借りておつたわけであります。これを国の方で肩替りしたわけでありますが、起債の枠と申しますのは、これは地方財政委員会起債が許可される場合の目安でありますが、四百億のものが一応全部預金部から出される。こういう建前になつておるわけであります。地方団体として起債をされる場合において、預金部だけに頼る必要は実はないのであります。市中銀行から借りられることも実際はかまわない、ただ起債の許可が要るだけであります。そういう点から預金部としては四百億という金額を出すことを考えておるわけでありますが、事情によりましてはそういつた市中銀行から借りるものについて、起債の枠を拡げるかどうかということについては、今後相当研究して参りたいと思つております。
  120. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ仮に市中銀行から幾分あつても、それは非常に微々たる額だと思うのです。ところが地財委の要求はとてもそれじや充しきれない、而もそれが考慮中に過ぎない、こういうようなお話なんですが、これはあとで大蔵大臣に伺いたいと思うのでありますが、この預金部資金、資金運用部というふうに今度変るのですが、この資金の性格からいつて大体地方還元、これが非常に一番本来の性格を持つておるのじやないかと。そうしてそれについては非常にこれは大蔵省並びに郵政省の間に大きな問題が現在あるというふうになつておるのでありますが、こういう問題についてはあとで伺いますけれど、どうしてもそういう点について、もつと起債を、こういう要求を充たすという点については大蔵省は考慮の余地はないのですか。
  121. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 資金運用部の資金の大宗は勿論郵便貯金でございまして、これを地方に還元するということは非常に必要なことだろうと思つております。それでその地方に還元の仕方がいろいろあると思うのでありますが、人国債資金、運用部の貸金は国債と地方債とそれから金融債ということになつておるのであります。地方債は勿論地方に還元することになります。それから金融債などにつきましても、農中債券、その他中金の債券というようなことで間接的に金融債を通じまして相当地方に還元されておるわけであります。地方債の引受だけが地方に還元というのでは私はあるまいと思うのでありますが、そういつた意味で各種の事情を勘案いたしまして、預金部としては明年度金融債として四百億を引受ける、こういうふうな資金計画ができ上つております。
  122. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) ちよつと岩間君、地財委で岡野国務大臣に対する質問の通告者がほかにもあるのです。
  123. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじやその問題は、これは大蔵大臣が見えたら問題のあるところですから詳しく承わりたいと思うのですが、簡單に今の問題を結論付けますと、大体これは郵政省あたりの郵便局なんかとは、これは簡保の契約者なんかの意見を聞いてみますと地方にこれを使う、そうして学校を建てたり、堤防を直すとか、そういうようなことでこれは負担しておると思うのです。ところがそれが大体千六百五十億ですが、それくらいの資金の中で僅か四分の一程度のものが地方債として還元される、こういうような問題になつて、これは非常に今大きな問題になりつつあると思うのであります。この点についてはあとで詳しく大蔵大臣から伺います。そこでもう一つ連関してですが、この起債の問題だけで解決する問題ですか、そういうふうにこれはお考えになつているのですか。財政委員会のかたにお聞きしたいのですが、どうなんですか。さつき起債が賄えれば何とか問題を解決するというお話でしたが。
  124. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 一つの方法だというので、勿論れだけで全部賄えるとは思つておりませんが、ただ相当カンフル注射的な効果を持つておるということは言えるだろうと思つております。
  125. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは岡野国務相に伺いたいと思うのでありますが、先ほどのお話では、大体大蔵大臣は国の財政的見地からどうしても平衡交付金並びに起債の問題についてはそれ以上出せない、こういうような担当大臣の決定であつたから、それで自分も了承したのだ、こういうようなお話なんでありますけれども、これはどうなんですか。閣議の中で、今申しましたように地財委からこれはとても賄い切れないというようないろいろな條件が出されておるのです。こういう問題について閣議の中で、これは国務相としてやはりこの要求を代表して大いに戦われる必要がある、こういうふうに考えられるのでありますが、これはもう池田蔵相の決定された線をうのみにされたというふうに今の御答弁では聞えるのでありますけれども、これはどういうふうになつているのでしようか。
  126. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。閣議の席におきましては、先ず地方財政委員会のほうを私が担当いたしておりますから、その意味におきましては各省大臣とは少し違いますけれども地方財政委員会の主張を私が主張する立場になつております。その点におきまして、あの予算が決定されるまでには相当論議を戰わしたわけでございますけれども、御承知通りに各省から出ました予算が、初め数千億円の予算が出ておつた、それと切り離しまして、そうして只今の五千億ですか、六千億の一般予算に切り下げる、こういうふうに国家財政を圧縮したわけでございます。そのときそういう情勢になつておりますものでございますから地方に対する平衡交付金に対してもやはりこれだけの額しか出ない、こういうようなことによつてその点を了承したわけであります。
  127. 岩間正男

    ○岩間正男君 意見を戦わされたということなんですが、結論は何も出なかつた、そうして結局まあ蔵相の案を呑まれたということになると思うのでありますが、これはやはり認識の程度の問題でもあると思うのであります。というのは国家財政と比べて財政規模からいいましても、地方財政というのは公く今日ではもう国と匹敵するような大きなものであり、大きな性格を持つのであります。そういう点についてこういうような決定ではこれは非常に十分ではないのじやないか。それに連関してお聞きしたいのでありますが、一体地方行政の責任官庁、責任者というのは誰であるかという問題です。日本の政治機構の中で地方行政を一体本当に担当する責任者は誰であるか。地方自治庁は、これはどうも何とか腰かけ程度で、ズブッつとその中に入つて、自分の担当事務として十分に努力しておらないというような面があると思う。地財委はこれについてはいろいろな要求を出されて、勧告案のようなものを出されましたが、これはどうも第二の人事院みたいな盲腸的存在になりつつあるのじやないか。恐らく出す、出すけれどもそれはうつちやられる。そうして結局、これは予算説明書なんかには地財委の要求というものは、これは法案によつて明示されていますけれども、いつでもそれは肴のつまほどの予算審議の過程も経ないでうつちやられるという形で、何だか一つの調節弁的な役割を果している、こういうような形になつておるのです。大蔵省大蔵省でまるで地方財政委員会は継子扱いで、これははつきりいたしておると思う。こういうふうになりますと、一体重大な地方財政に対して誰が責任あるところの徹底した方策を遂行するのであるか、これは全体の政治機構の中で非常に重要な問題であると思うのでありますが、岡野国務相は、これは一体誰がこの主体になるべきだとお考えになつていられますか。その点を伺いたい。
  128. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。この問題は前国会におきまして衆議院で大分問題になつた点でございます。私もまだ大臣になりまして余り長くございませんが、たまたま地方財政委員会を担当するという職務を持ちましてやつておるのでございますが、はつきりと申上げて私の立場を御了解頂くと同時に、政府の立場も御了解頂きたいと思いますが、無論地方公共団体というものは、完全なる自治を許す、即ち自治を確立してというのが新憲法の建前でございまして、それには丁度新憲法に地方自治という一章まで設けまして、そうして完全なる独立と申しますか、自治を許して行こうというふうに、そのためにいろいろ地方に対する制度を作つておるのでございます。で私は国務大臣といたしましては、閣内において国務全般の仕事を協議する役目を持つております。併し自治庁長官といたしましては、如何なる職務を持つておるかと申しますれば、自治庁の設置法によりまして、自治庁の長官は政府財政委員会の間に立つて連絡を図ること、こういうことがこれが一番大事な仕事でございます。それから同時にその次には、自治庁長官は地方の制度を作るところの法律を起案して、そうして国会に提出する、これがもう一つの仕事でございます。これが最も大事な仕事でございます。そうしてそれでは地方財政委員会との間の関係はどうかと申しますると、私自身といたしましては、三條の七号に書いてございますが、地方財政委員会より必要なる資料を求めることができる、こういうことになつております。それから同時に私は地方自治庁の長官は即ち地方自治の確立をする仕事を持つておりますものですから、地方自治に対して若し何か重大な影響があるような政府施策あるときには、地方公共団体のいわゆる財政委員会なんかの意見を尊重して内閣にこれを申出るというようなことが私の仕事になつております。でございますから、私は遺憾ながら只今の制度といたしましては、その辺に少し欠けるところがあるのじやないかということをひそかに疑問を持つております。でございますから、先般来関係方面ともいろいろ話合いしまして、こういうことでは一体自治の確立というものは、成るほど憲法によつて保障されておりますけれども、併し果してこれが十分地方公共団体に手離しで、そうして自分自身で自治をやつて行く、そうして財政委員会から出たそういうような御意見とか抱負とかいうものが中央政府国家財政の都合によつて動かすことができない、こういうことになりますと、片方には自由奔放と申しますのは少し行き過ぎかも知れませんけれども財政委員会において地方公共団体の思う通りのいろいろの財政計画を立てて行けるようにしておりながら、それが又中央政府へ持つて来ますと、これが国家財政によつてチエツクされる、而もそのチエツクされた点においては、これは政府責任においてそうせざるを得ないからするのでありますけれども地方に対しては非常に御迷惑なことになるということになりますから、これは何とか一つその辺の、制度の欠陥とは申しませんけれども、欠けるところがやはりあるように感じますから、これは将来どうしても早急に再検討し、同時にこれに対する救済策をしなければならん。こう私は考えております。
  129. 岩間正男

    ○岩間正男君 これに対する地方財政委員の見解を求めます、どういうふうに考えておるか。
  130. 木村清司

    政府委員(木村清司君) いろいろ本制度に対しては私個人としては意見がありますが、委員会の意見として申上げる結論にまだ達しておりませんから、差控えたいと思います。
  131. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは個人でも結構なんですが、今岡野国務相は制度上のやはり欠階を率直に認めておられるようですが、財政委員会では、個人の意見で結構ですが、大体を簡単に答弁願いたい。
  132. 木村清司

    政府委員(木村清司君) これは私個人の意見を申上げますというと、アメリカ式な権力分散の一つの方法と思つております。併しながら我が国の行政一般の組織に適合しているかどうかという点については相当疑問があると思いますが、御存じのようなアメリカのいわゆる権力分散式によつて民主主義をやりたいという一つ考え方としては正しい方法であり、又その理由を以てこれが実現されたものだと思つております。要は運用によつて相当救え、又議会その他社会の人の認識或いは当事者各方面の協力によつて欠陥は是正されて、長所はますます美点を発揮するようになるだろうかと私個人としては考えております。
  133. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも非常に当り前の御答弁なんでありまして、そういうことでは問題は解決が付かないと思うのでありますが、結局岡野国務相並びに地財委からのいろいろな意見として今まで出されたものを総合してみますと、こういう点で最後には何といつて政府から締められる、そういう面が非常に強力である。そういう形でやはり地方自治というようなことを言つておりながら、実は中央の一つの手に握られておる、こういう形にはつきり出ているのではないか。こういう点から私は考えて、これは失礼な言葉でありますが、第二の人事院盲腸と申上げたわけなんです。こういう点で、併し地方財政委員会としてはこの問題に、これは法令的な面もあると思いますけれども、もつと努力されてこれに対する決意を示されることが非常に重要だと思うのでありますが、すでにもう衆議院におきましてはこの勧告案というやつは無視されて本院のほうに回付になつた、こういう段階においてどれだけのこれに対する責任を感じておられるか、財政委員としてこの点ちよつとお伺いして置きたいのですが、念のため……そうでないと、ただ地方財政委員会というものがあつて、盲腸、人事院みたいな性格になつて、如何にも機構の上では日本の行政機構は揃つたと、ぺ一パー・プランとしては立派ですが、実体は今岡野国務相からお話になつたように、更に我々の見る面ではもつといろいろな根本的な欠陥がある。それが大きく地方財政に響いて、そうしてそういう一つの組織の面からも大きな問題が今日地方財政のほうにしわ寄せされておる点があると考えるのですが、この点についてこれは今度の処置に対し、先国会でもそうでありましたが、そういう二回も地財委の勧告というものは通らなかつた、これについてどういうような責任と決意を持つておられるかお聞きしたいと思います。    〔委員長退席、理事平岡市三君委員長席に着く〕
  134. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 若しこういう組織がなければ、こういう意見書は、意見があるという公の意見が出るという機会は全然ないと思つております。とにかく政府に設けられた公の機関による意見なり資料なりが、国家の最高意思決定機関である国会の審議であるということ自体に少くともアメリカ流に考えれば相当異議のあることと考えるのでありまして、これはアメリカ流の議会運営方式であるならば、或いは相当意味があるのではなかろうかと私自身は個人として考えておりますが、ただ若し通らなければ責任を感ずるかと申しますと、これは私は制度上当然政府と離れて独立の意見提出すべき義務を有するのでありますから、その場合において御採用になるかならんかということは国会の意思に任すべきである。これは制度上当然だと考えております。ただ若し私ども意見が間違つており、調査不十分であるという意味のお叱りを受けるならば、その意味においての責任は負わなければならんと思いますが、そうでなしに、例えば国家全体の金融財政政策から見て止むを得ないというような別の観点から見て、御採用にならんということになると、そのこと自体は私どもの存在理由を否定するものではない、こう考えております。
  135. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうもさつきの岡野国務大臣の御答弁はわからない、非常に怪訝に思うのですが、というのは地方財政委員会制度、その他の制度に疑問を持つと、而も地方財政委員会で要求しているこの要求は、地方団体の自由奔放の要求を一方に突きつけて、それが国家的な立場から見ると、調整ができない、意見が合わないということで、そこに非常な疑問を持つというような御意見と拝聴したのですが、少くとも我々の聞くところによれば、この地方負担の増額の要求は地方自治団体が自由奔放にいろいろ得手勝手な計画をやつて、そのために負担なり経費なりが殖えたのではなくて、中央がいろいろな施策をやり、いろいろな法令を作つて、それに関連して止むなく殖えたのがこれだけなんだというふうな要求として我々は受取つているのですが、にもかかわらずこの地方自治庁の長官たる国務相がそういうお気持で、さつきおつしやつたようなお気持でこの増額をお受取りになつておるのかどうか。
  136. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。私の言葉が不完全であつて、言つた点において誤解を生じたかと存じますから、もう一度申上げます。自由奔放という言葉を私は使つたかも知れませんけれども、併し私は地方公共団体というものが自由自在に自分自身の経論を行わせるような制度になつておるのだ。それを集計したのが財政委員会のものであると、それをそういうふうに自治を十分生かして置いてそうしてこれを中央政府に持つて来て、中央政府のつまり平衡交付金のような援助を受けなければならんというようなところに一つの欠陥があるのではないかと、こういうようなことを申上げたんで、ですから私は自由奔放にやつて、実に濫費若しくはふしだらな財政若しくは予算で以てやつているという意味にお受取りになつたら、それは私の言葉が足らなかつたんだ。私は自治を尊重する、即ち完全なる自治を地方に任せておる。完全な自治というものは自分が自由意思を以て予算も組み、自由意思によつていろいろ仕事もして行こうというようなことでやつておる。そういうような制度をしておいて、それを一応中央に持つて来で中央から金をもらわなければやれないという制度になつておることはちよつとおかしいのではないかということで私は申上げたのです。
  137. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、それが地方自治庁の長官としての認識がおかしいのではないかと思うのです。制度は今のようになつているのでしようが、ここに挙げられた増額要求なるものは、今、日本地方自治制が許された範囲における地方自治のイニシアチブを生かして、その創意に基いていろいろな計画をやつたためにこういう増額が出て来ているのではなくて、地方自治のそういう問題が確立されない前にそこにただ国家がいろいろな施策をやつて、それに関連してこういうものが必然的に地方自治の創意その他にかかわりなく、必然的に結果的に出て来ておる。これだけを見るべきだという要求としてここに掲げておると私たちは聞いておる。その点を岡野国務大臣の前に、地方財政委員会はどういうふうにお考えになつておるか。先ずそれからお聞きしたい。
  138. 木村清司

    政府委員(木村清司君) これは岡野国務大臣がたびたび地方行政委員会等においてお述べになつておる通りでありまして、地方の実情から見て数字としては止むを得ない、より妥当な地方財政委員会のものである。但しこれは国家全体の財政から見て止むを得ず抑えられたというように岡野国務大臣からもおつしやつておりますから、その通りどものほうも了承しております。
  139. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その経費数字の問題については、政府のほうで査定されたことに拘束されるという意味はよくわかるのですよ。併し問題はそうではなくて、ここに挙げてある各費目の……項目があるですね、一体これらの項目は地方自治体が自治の精神に則つて自分たちが自分たちのイニシアチブにおいていろいろな計画をやつたためにこういう増額になつたか、そうでなくて私たちがこれ一つ一つ拾い上げて見ると、国家施策がきめられてしまつて、それに関連して出て来ておる経費なんだ、費目としてはこれをどういう金額に見積るかについては政府とあなたがたのほうに意見の相違があるだろうが、費目の性質から言えば岡野国務大臣言つておるようなことは非常な見当違いじやないか、地方自治に対する完全な無理解なんじやないか、そのことを地方財政委員会お尋ねしておるのであります。地方財政委員会はたびたびそういうふうに御説明になつたので、私は記憶しておるのであります。もう一遍その点ははつきり御答弁願います。
  140. 木村清司

    政府委員(木村清司君) その点はお説の通り国策に基き、例えばべース・アップ或いは年末手当、或いは自然の増加を見ましても、学童、人口の増加というようなものと、或いは新らしい国会の御議決になつた法律の施行というものの総計であろうと存じます。
  141. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それではその次に岡野国務大臣に……。
  142. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。佐多委員のおつしやる通りに、国の施策によりまして地方公共団体がいろいろ仕事をしなければならない、そのために国庫も金も出しますけれども地方公共団体がそれを大部分負担しなければならん、そのために地方財政が膨脹して来るこれは私も認めておる。それを私は制度上として検討しなければならん。これが私の頭の中にある一つの点であります。
  143. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はお聞きしたいのですが、一体これは地方財政委員並びに自治庁長官としてどういうふうに一体つかんでおられますか、例えば予算を具体的にお聞きしますが、予算編成難というものはこれは地方の現状では非常に起つておると思うのであります。予算編成期になつておりますけれども、暫定でも赤字でも何でも組まなければならんとこういうふうになつておるのでありますが、地方では一体こういうような操作はどのようにして現状において果しておるか、これは昨年度の年度末の財政操作の困難な問題と非常に関係がありまして、からまつてつておる問題でありまして、年度末の困難さ、或いは新らしい予算の組み方、これを現実的にどういうふうな操作をやつてるというふうにおつかみになつていらつしやいますか、この点認識の程度を伺いたいと思います。
  144. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。昨年のべース・アップ並びに昨年の年末手当、今年一月—三月までのベース・アップなんかについて地方で非常に因つたことも承知しております。それから又この平衡交付金が千百億ということになりますと、地方で来年度の予算を組むのに非常に苦労をしたということは私よく認めております。併しながら先ほど申上げましたように、大体こういうふうに国家財政としてはして頂かなければならんと、こういうことになつておりますものですから、財政委員会のほうでいろいろ御主張並びに案を考え、御指示もして頂くということにして行きたいと思います。
  145. 岩間正男

    ○岩間正男君 財政委員木村委員にちよつとお伺いいたします。どういうふうにやつておりますか、地方で実際に……。
  146. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 実はそれに対して的確にお答えする資料は今收集中でありますが、私の見解から申しますというと、非常に困難をしておる、最近は丸一年の予算を完全に組むということに非常に困難をしておるというように考えております。殊に給與べースの改訂が政府や或いは地財委の予定した程度のものでおさまらないというところに問題の要点があるというふうに私自身としては考えております。
  147. 平岡市三

    ○理事(平岡市三君) 簡単に願います。
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常にこれは困難な状況で、今組めないのじやないか、こういう実態が出ていると思います。殊に前年度の操作さえも十分つかない。ベース改訂何かでも実際教員、地方公務員の場合にこれは実際できない、べース改訂の問題では、教職員組合何かの場合ですと、地方の各県でやはり大きなこれに対する財政的な裏付けがないので、これに対するところの鬪争が起つている。山形あたりでは現にこの問題が非常に大きな関心を集めて、そうしてこれは県のほうに多くの教員諸君が集会をいたして、これに要求を突き付けて交渉した、こういう実態も出て来ているのであります。で更に、まあ殆んでこれは組めないと……、そこでその中では数字的な操作だけ何とかやつて、ここのところ凌がなければならないというので、平衡交付金については相当大幅の増額を、もう来るものと、こういうふうな観点からそれを先に見越して、そうして組んでいる、こういうところが相当多い。こういうふうに聞いているんであますが、こういう点については、これは情報は如何でございますか。
  149. 武岡憲一

    政府委員(武岡憲一君) 私からお答え申上げます。明年度予算の編成状況につきましては、いろいろまあ話としては、只今岩間さんがおつしやいましたような編成難からいろいろの操作と申しまするか、工夫をしておられるということは伺つているのでございますが、只今地方財政委員会におきまして、各団体から実際に組んでおられまする予算の資料収集中でございまするので、的確なことはその上でないとお答えできません。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあそういう資料が出てから詳しく発表するというのですが、少し遅いのじやないかと思うのですね。我々が聞いた例では、職員の給與をこれによつて非常に削減しなければならない、更に又定員をここで切下げなければならない、それから地方自治体單独事業なんというものは大幅に中止しなければならない、こういうような形で、一方においては、歳出面において大削減を加えれば、歳入面におきましては、取れない狸の皮算用で、これは平衡交付金というようなものを大幅に見る、起債も見る、こういう形で架空な数字が組まれているというのは、殆んどこれは全国の実態じやないか。そこに持つて来まして、これは予算が、この交付金が現状のような形で通る。そうするとどういう一体動揺が起るか、こういうことは非常に重大な問題と思う。これは我々予算審議の中で十分にやらなければならない、こういうふうに考えている。そういう事態が起ればそのしわは結局どこに寄せられるか。それについては先に岡野国務相のお話では、何とか節減すると、節約の面で以てまだ余裕があるという話でありますが、そんなものは微々たるもので、それはできないという根拠については、先に佐多委員のほうからも話があつた。そうしますと当然これは大きくしわ寄せされて行く所がはつきりしていると思うのですが、このしわ寄せの点についてはどこに行くというふうに岡野国務相はつかんでおられますか。これは本村財政委員にお伺いいたします。
  151. 木村清司

    政府委員(木村清司君) その点は具体的には私からお答え申しかねるので、若し府県のほうを仮定いたしますというと、府県のほうに、余裕を府県のほうに十分廻せば市町村のほうが少くなる。市町村のほうはどうしますかというと、結局従来のような寄附金に依存するというようなことになるのじやないかというふうに私自身は考えております。
  152. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 私は地方財政は、結局二十五年度から比べますというと、相当膨脹しておりますから、その点において余りたくさんな事業を中止しなくても、今年度通りにやればむしろやつて行けるのじやないか、こう大まかに考えております。併し細かい点がどうも一万数百ございまして、実情を明らかにするのにもやつぱり相当の時間がかかりますし、よくわかりませんけれども、我々が耳に聞いておりますところにおきましては、各地方公共団体で相当来年度予算を組むのに苦しむということを言つておられるようであります。併し二十五年度の地方財政委員会の集計しました総予算と、二十六年度の総予算と比べまするというと、幾らか金額が上つておりますから、これを切り縮めるのにやりやすいのじやないか、こう考えております。
  153. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも非常に頼りない御答弁だと思うのです。やはり政治は見通しです。そういう意味で何が起るかということの事態の認識がないから閣議なんかで、本当に国務相は頑張られることが少いのじやないかということを私は考えるわけであります。これは非常に及ぼす影響というものは、問題にならんと思う。第一今のお話だと、昨年度程度のことは何とかできるだろう、こういうわけなんでありまして、今年度は地方に移管されておる行政という面が非常に大きいと思うのです。財政需要がそういう面から、先ほど佐多委員のお話にもありましたように、これは出ておるのだと思う。これは給與の問題もその一つになりますけれども、公共事業費の面においても、当然そうしますとそういう仕事はやれないというようなことが起つて来る。一方では当然これは節約だけでは間に合わないから、税の強化、百七十八億の増税では間に合わんので、もつともつと大きな方法で税を強化しなければならない。そうすると住民税なんかは三つの方式がとられておりますけれども、所得に対して一〇%というような方式が非常に強化されて来て、そうして源泉課税を強化するという態勢になつて来る。恐らくそういう恰好で多く大衆に随分影響を広汎に與えて行く面が出て来る。それから一方では、どうしても職員の面については、これは賃金を切下げる。定員を非常に縮小して首切りが行われるという形になつて来るのであります。それから公共事業面なんかでは、とても工事量ということは、物価値上りが加わつて来て非常に削減されて来て、そういう点では国家の要望する点についても殆んど果すことができない。そうして寄附金はし、なくも、寄附金ということも木村財政委員のほうから出たのでありますが、寄附だけではない。こういう点についての御認識をどのようにお持ちになるかということ、これは地方財政を本当に真剣に取つ組むかどうかという気魄の問題にも関係するのでありますけれども、どうも岡野国務相の只今の御答弁では甚だ頼りないと思うのであります。そういうような態勢が起つてからじや……いや起つてからじやない、すでに起つておる、現実は崩れておる。こういうものに対して今のような御答弁だけでは満足しないのでありますけれども、もう少しこれに対する徹底した御意見をお聞きしたいと思います。
  154. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。これは私見でございますが、地方財政は約一千億殖えております。二十五年度は四千三百二十億でございましたが、今年は五千億幾らになつております。それで御承知通りにいろいろ事業も、先ほど佐多委員から仰せられたように、中央からいろいろな厚生施設とか福祉施設とか、それから社会事業とかいうものが出ておりますが、そういうことをやりますためにも、無論殖えたことになつておりますが、併し大局から見まして御承知通りに、やつとインフレが収束しかかつたときにこれを若し手放しにどんどん事業があるからとか、しなければならんとかいうことになつて、大きい財政支出をして行くということになりますというと、又再び国民が塗炭の苦しみをこうむるような、インフレのようになつて来はせんかということで、結局大きなつかみどころからできるだけ財政を緊縮して行こうということになつて来るわけであります。それで或る関係方面のおかたの言われたように、日本では非常に国が困つておるのだから、若し一省が自分自身のために事をやろうと思つても、国の全体の予算を全部食つてしまうほどの希望があるのだ、だからインフレを起さず、又金を上手に使つて、そうして経済界を安定して行こうというには、やはり金がないという点において事業も切詰めて行き、又節約もして行かなければならんじやないか、こう考えております。でございますから、私は地方公共個体の味方でございますから、地方公共団体財政の基礎を確立して行くということは、無論望ましいことではありますけれども、併しながら国家財政、即ち大きな立場から見て、こういうふうにして行かなければいけないというような立場で若し検討しますれば、やはり必要でないという事業はありますまい。ありませんでしようけれども、先ず最も重要なる仕事から取掛つて、そうして或る與えられたるところの財政収入によつて、そのいわゆる地方財政をとにかくやりくりして行くということが、大きな観点から望ましいではないか、こう考えておるわけでございます。でございますから、こんなに苦しい地方財政がどうして来年度の予算をしておるかということにつきましては、それはなかなかお苦しいということは重々私は承知しており、又非常な関心と同情を持つておりますけれども、先ほども申上げましたような観点から、今度の財政の規模において、そうしてできる限り不急なものを除いて予算を組んで、そうして事業をやつて行きたい、そういうふうにやつてもらいたいということを地方公共団体に望むものであります。
  155. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもまるで地方長官の会議に出て御訓示でも頂いておるような御答弁だと思うのであります。何だかわけがわからない。一千億のこれは財政の額が殖えるという話でありますけれども、これは物価値上りというものは、お考えになつておるかどうかということが第一点、それから仕事を切詰めてというのですが、先ほどから申しましておるように、国家からの行政移管が非常に多いんです。それなら国家が行政移管をしなければいい、今のあなたの説に従えば……。ところが押付けておる面は非常に多い。ここで具体的に挙げませんけれども。そうして置いて、そうして置いて、今のように苦しければこれは切詰めたらいいのだ。それは国家の面は義務的に果さなければならない。法制的な裏付けのある問題です。そうなると、当然これは地方の自治体独自のそういう仕事とか、それから公務員に大きくしわ寄せられて来る。非常に表面の御答弁のお話だけ聞いておると、うつとりしそうでありますけれども、大変なことになる。これは余り理解のない実にむごたらしい御答弁じやないか、こういうふうに私は考えます。こういう問題につきまして、なお税金の問題を詳しくお聞きしたいのでありますけれども、あとの諸君がありますから私はこの点で打切つて置いて、又質問を保留さして頂きたい。
  156. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 先ほど来の質疑で以て、いろいろ御答弁の方面についても大分御見解がわかつたのでありますが、私は、いわゆる岡野国務大臣の立場は、所掌事務の上から見まして極めて重要な立場にあると思う。それでこの平衡交付金を千百億に決定するということは、極めてこれは重大なことであろうと思うのであります。先ほど来の御答弁で以て伺いますというと、閣議においても、他の閣僚と違つて、自分の立場はその地方財政というような方面では重要な立場であるからして、その点に相違がある、そういうことから、特に地方財政というようなものに対しては、十分同情ある立場からいろいろ考えられたと思うのであります。そこで閣議においてこの千百億をきめる場合に、いろいろ論議されたというふうなことでありますが、どういう点がこの論議の中心なつたか、それに対して岡野国務大臣はどういうふうな一つの見解を持つて進まれたか、この点を伺いたい。
  157. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。遺憾ながら閣議の内容は、大分長い間の論争でございますから、一々申上げるわけにも参りませんが、とにかく千二百九億という財政委員会からの要求が出ておりますものですから、それに対して千百億円と縮められるまでにはいろいろ論争があつたということだけを申上げて置きます。
  158. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それではとにかく私は岡野国務大臣責任あるところの立場は明瞭にならないと思う。いろいろな論議があつたというだけではこれは了承することはできない。地方負担額の総額、そういうふうな方面などについても、いろいろな問題があつたと思うのであります。そういう点についてもう少し具体的に……。
  159. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) それは私自身としては、とにかく千二百九億中央国家財政から頂くことが目標なんですから、その千二百九億というものを取るためにいろいろ内容に亘つても検討したわけでございます。併しながら遺憾ながら、微力のいたすところが、千百億しか確保することはできなかつたという結果になつておるわけです。
  160. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それでは誠に私は心許ないところの話であると思うのでありますが、私の見るところでは、これは給與改善に必要な経費においても、地財委としては百七十六億を見ておる。大蔵省はこれを百五十九億に縮減しておるのであります。こういうふうなことに関しまして、算定の方法が、片方においては、現行の給與に対して六千二百七円分の、千円上げた。つまり一五%八というようなものを掛けておるような算定になつておる。片方は、大蔵省の場合は一律に千円を上げておる。こういうようなことに関しまして、これは相当私は論議の行われるところであろうと思うのでありますが、これに対して岡野国務大臣はどういうふうな立場をとられたか。
  161. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。閣議の席上におきましては、そういう内容には亘りません。それは財政委員会の事務当局と大蔵省の事務当局との間で検討したのであります。我々といたしましては、大きなところを閣内で討議したのであります。
  162. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 これは平衡交付金を決定する場合において、極めて重要なことであつて、ただ重なる事務的なことでないと思う。これは結末に必ず関係して来るものであろうと思うのであります。そういうことに関しまして、自分は更にそういうことは知らない、大きなことだけをきめたというところの答弁では、私は責任ある立場として、責任を十分にとり得たものではないというふうに考えるのでありますが、その点如何ようにお考えになるか。
  163. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 事実を申上げますというと、そういうような細かいことを閣議で以て議論しておりましたら、これは一省の予算をきめるについてもやはり相当な時日が要ると思います。でございますから、実情を申上げますれば、閣議では各省から出ました主なる項目を検討するものでございまして、そのあとは事務当局が各自相互間でいろいろ検討し、そうして検討したのでございまして、これは私はいたしませんけれども財政委員会の事務当局がやつたわけでございます。そうしてその上で財政委員会の事務当局並びに財政委員会が検討したということは認めて頂いて結構と思います。
  164. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それでは財政委員会のほうに伺いますが、この点については、財政委員会としてはどういうふうにお考えになりますか。この点を一つ
  165. 武岡憲一

    政府委員(武岡憲一君) 御指摘のベース・アツプの算定についての問題でございまするが、これにつきましては、先に地方財政委員会の案と、それからいわゆる政府案との相違点に関しまして、御説明を申上げたのでございまするが、地方財政委員会におきましては、従前財政計画を立てまする際の基礎資料といたしまして、その教職員の予算單価と申しますか、吏員の給與単価を出しますのでございまするが、それに対しまして今回の給與改訂により、大体その基準べースが千円上る。こういうような計算で以てこれを出したわけでございます。それに対しまして政府案のほうでは一律に各職員について一人当り千円ということで計算をいたしておられるのでございますが、私たちが出しました計算におきましては、地方の各職員はそれぞれ地方の実情によりまして職員構成等も政府職員とは異なつておりまするので、それぞれの各職種別の單価もおのずから又変つておるわけであります。従いまして、その各單価々々によつて上りまする率を個々的に計算したほうがより正確である、かように考えましてそういう計算をとつたわけであります。
  166. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 全国の知事会議におきまして、このいわゆる二十五年度の補正予算において、平衡交付金地財委の八十八億の要求に対して三十五億しか與えられなかつた。こういうふうなことが非常に地方財政の上において困難な事情を来たした。それから実際においてべース改訂というようなほうも今以てできない事情にあるところの県があるのでございますが、そういうふうなことからこの会議におきましては、二十六年度においてはそういうふうな轍を踏まないように、而も地方財政の構成といいますか、そういうふうな方面から非常に心配されて一つの会議の決議を以て岡野国務大臣のほうにもそれが提出されておるようでありますが、こういうふうないわゆる決議に対して、大臣といたしましてはどうお考えになつておるか、その点を伺いたい。
  167. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 幾度も申上げたのでございますが、昨年度八十八億の平衡交付金地方財政委員会で要求をされましたけれども、併しながらこれも国家財政の立場から三十六億しか出すことができなかつた。又来年度もやはり千二百九億出して頂きたいという財政委員会の希望でございますが、併し国家財政の立場からやはり千百億しか出せなかつた、こういう結果になつておるのでありまして、地方公共団体もいろいろお困りのことと思います。これは同情いたしますが、併し先ほども申しましたように、やはり今年は地方財政の全体といたしましては約千億殖えておるわけでありますから、これで一つ今年の予算は組んで行つて頂きたい。こういう私は念願を持つておるのであります。
  168. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そういう念願を持つてつても事実は地方財政がとにかく立つて行けない。こういう事態が私は起つて来るだろうと思う。そういう場合に大臣は今の責任ある立場から如何なるところの措置をとられるか、この点を伺いたいと思います。
  169. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。私は非常に来年度の予算を組むのには苦しい、又財政を運営して行く上において非常に窮屈であるということは認めますが、これで地方財政が破綻してしまうとは私は思つておりません。その点は私は地方財政がこれで破綻してしまつて、そうして地方が崩れてしまうというようなことは考えておりません。
  170. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それはとにかく大臣としてそう言わなければならんだろうと思います。が併し全国の知事会議におきまして、かくのごとき状態にあるというふうなことから決議をして、それぞれその決議を提出しておるのであります。これは由々しい私は事態であると思うのでありますが、もつとそれらに対して詳細にこの地方財政方面を調査して善処するところのお考えはないか、その点を伺います。
  171. 武岡憲一

    政府委員(武岡憲一君) 明年度地方財政に関しましては、お手許に資料を差上げてございますように、地方財政委員会は推計を出しておるわけでございますが、なお具体的な来年度の状況、現実に各団体でお組みになつております予算等に鑑みまして、最も詳細に来年度の傾向と申しますか、状況を的確に把握いたしたいと考えておるのでありまして、地方財政委員会におきましても、更に地方財政の実態調査等も行いたい、かように考えておるわけであります。
  172. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 ただ単なる調査を行いたいというような程度では私は了承できない。それに対してどういう処置をして行くか、対策をお伺いしたいと思います
  173. 武岡憲一

    政府委員(武岡憲一君) 地方財政委員会におきましては、一応来年度の地方財政の推計をいたしまして、その財政計画に基きまして、来年度において措置すべき平衡交付金の額、或いは起債の額等について、政府に対し措置せらるべき旨の勧告を出したわけでありますが、更に実態を調査いたしまして、若しこの推計が非常に誤つておる、或いは又いろいろな事情によりまして変つて来るというようなことでもございますれば、そういう事態が発生いたしましたならば、更に新たな工作につきまして、更に政府にお考えを願うように勧告或いは意見書を提出するというようなことをしなければならんじやないか、かように考えておるわけであります。
  174. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 地方財政が現在瀕死の重傷にありますので、甚だ遅くなつて恐縮でありますが、前質問者に重複しないように若干お伺いしたいと思います。先ず私は、地方財政委員会木村委員お尋ねいたしたいのでありますが、どうも各委員に対する御答弁を承わつておりますというと、私は納得できない点がある。それは政府の千百億に対して千二百九億の意見書を出された地方財政委員会委員としてどうも納得できない。それはあたかも政府案の千百億を我々に納得させるように政府の援護をしておるような印象を私は受けます。岡野国務相は閣議できまつた以上、千百億をいろいろと弁解されることは一応わかるのでありますが、地方財政委員会の私は肚というものがどうも納得できない。地方財政委員会は千二百九億というものは私は一つゼスチユアで出したものではないと思う。どのくらいの決意を持たれておるのか、その点について木村委員の御答弁を承わりたい。
  175. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 私どもはできる限り正確なる客観的に妥当な資料に基いて、地方財政の推計をし、そして必要と思う予算政府に勧告し、或いは意見書を提出するということが、私どもの職務でありまして、この職務を完全に遂行することが私ども責任だと思つております。だから私どもの出しました意見書なりに欠点があり、或いは不十分である点については十分お叱りを受けたいと思つておりますけれども、これが通るか通らないかということは政府、殊に国会のほうにお願いをしたい、こう私は考えておるので、私自身といたしましては、私どもの出しました資料或いは意見書等について不十分なものについては十分責任を負わなければならんと考えております。
  176. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 勿論その点については木村委員のおつしやる通りでありますが、言葉を承わつておりますというと、如何にも千百億を了承したようなそういう印象を受けるのです。私受けたのでありますが、木村委員がそうでなければそれで結構です。資料が間違つていなかつたので、どなたからもまだ指摘されていないのだと思う。地方財政委員会は一度千二百九億の意見書を出された以上は、飽くまでその線を堅持して進んで頂きたいと、私は要望するのです。次に承わりたい点は、事業の繰延べとか、或いは中止などによつて地方財政はやつて行ける、見通しは立つている、こういうことを岡野国務相は申されておりますが、岡野国務相は現在各都道府県がどういう来年度の予算編成をやつておるか、苦しいということはおわかりだと言いますが、もう一歩どんな予算の編成の仕方をしておるかという点と、それからその中において占めているところの人件費のウエイトというものはどのくらいと現在キヤツチされているか、この二点について岡野国務相並びに地方財政委員かたに承わりたいと思います。
  177. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 苦しい苦しいというお言葉は、各公共団体から私よく聞いておりますけれども、併しどういうふうになつておるかということは、私はまだ詳しく報告を受けておりませんのでよく存じません。ただ概括的に非常に苦しいということは承わつ ております。
  178. 武岡憲一

    政府委員(武岡憲一君) 先ほども申上げたのでございまするが、来年度の二十六年度予算として、各地方で現におきめになつで、又各地方の議会で御審議になつておられます予算財源につきましては、只今資料として提出を求めておるわけでございまして、まだ全体的な取りまとめができておりませんので、的確なことは申上げかねます。
  179. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 都道府県がたくさんありますので、現在つかんでいないことを責めることは無理かとも思いますけれども、私は少くとも自治庁の長官としてはもう少し地方にも出張なさいますのですから、もう少しキヤツチしておいて頂きたいと思うのです。現在各府県は予算編成期にありますが、県によると二カ月か三カ月の暫定予算しか組めない。七、八カ月組んだところもあります。或いは岩間委員が言つたように平衡交付金が多くなるだろう、ならなかつたら投げつぱちだというような態度で組んでいるようなところもある。而も先ほどから継続事業の中止とか、新規事業の云々と言われますけれども、人件費のウエイトというものは極めて大きいのです。そういうことを私は恐らくつかんでおられるだろうと思うのでありますが、つかんでなかつたら私これは問題だと思うのです。継続事業さえできなかつたのですから、できないのは勿論のこと、地方の首長が地方自治の新らしい構想の下に新らしい事業など、これはしたくも行われないというのが現実であります。そういう点ははつきりと私は把握しておつて頂きたいと思うのであります。繰延事業もないし、新規事業もない。結局問題は人件費だけだということになつておるわけです。そうずると岡野国務相は、地方財政は破綻しないと思うと申されますが、そうだとすると結局ウエイトの重い人件費の削減というところに来るのです。これはもう必然的にそう来る。そうなると大きな行政整理というものが行われて来る。それとも地方の行政の合理化という立場からならいいけれども、やらなくてはならない仕事まで中止して、そうして行政整理というものをやるということが起つて来る。それが最も現われるところは、これは私がもう申上げるまでもなく、地方財政の四三%から五〇%という大きな費用を使つている教育面に現われて来るわけなんです。そういたしますと、目に見えてはすぐ人は息を引取つて倒れるというようなことはないかも知れないけれども、教育面に現われた場合にどういう事態が起るか、これは御承知だと思いますが、現在でさえ教員は足りないのです。足りないためにたくさんの生徒は遊んでいます。それは不良化して来ます。社会悪の温床となります。教員は過労を続けます。結核にかかります。集団結核に発展して行きます。或いは女の先生は出産のときでも無理して出勤します。これは人道上の問題にもなります。男女同権といつても、整理するならば共稼ぎの者はやめてしまえ、女教員の高給者はやめろ、こういう男女同権とか、或いは男女同一労働、同一賃金というような、民主国家の原則というものが破綻して、延いては教育の崩壊というものが起りつつある。中央におられますと何とかやり繰りして一応はやつて行けるというけれども、そういう面に露骨に現われて来るのです。そうしてこの弊害の現われて来るというのは、十年、二十年先に取返しのつかない形において現われて来る、こういうことを私は認識してもらわなければならんと思うのです。更に、寄附と申されますが、地方は消防の施設なんかでも寄附に困つております。衛生然り、地方税が上つたのに持つて来てそういう消防、衛生、警察は申すに及ばず、こういう面に今寄附がたくさん来ている。更に教育の面では、これは文部省の調査でありますが、PTAの経費は九十五億と申されております。我が国の文教の予算は来年度の予算で二百六十九億、二百六十九億に対してPTAの支出は全国で九十五億、こういう実態であるということを私ははつきり把握して頂かなければならんと思うのです。であるにもかかわらず、来年度の予算が組めなくて先ほどから問題になりますように、先般給與改訂の法律が出たが、その法律通りの切替えができん、級別推定表の改訂ができたが、その表の通りの切替えができない。これは現実なんです。この原因がどこにあるのか、それをどういうふうに解決しようとしているかという点について、その原因について木村委員解決策について岡野国務相に承わりたい。
  180. 木村清司

    政府委員(木村清司君) これは私どもの要求通りに国会より御配慮にあずからんという点もありますが、給與の改訂に関して当初私どもが推定した以上に上がるというところに、明年度予算編成の重大な難関があるのではないかと思つている。従つて或る程度これの見通しがつかん以上は、政府、つまり国家公務員の例に倣つた程度に上げることは非常に困難ではなかろうか。地方財政委員会の推定程度なれば私ども是非平衡交付金の配分等において考慮したいと思つておりますが、それ以上のことはなかなか困難ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  181. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。憂国の至情から溢れ出るお言葉は、言々私の胸を打つのであります。至極御同感でございます。その点におきまして、先ほど縷々申上げました通りに、国家財政の立場から十分なることが地方公共団体にできなかつたということは遺憾と存じます。併しそれに対しまして、いろいろ私が考え、又地方財政委員会でもこの苦難の道を避けて行くというためには、苦心していろいろの方法を考えております。追つてこの参議院にも提出されるはずでございますが、私たちが如何に苦心しておるかという点の一端を先ず法案で出すことにしておりますが、それは平衡交付金の一部を改正する法律案として不日こちらに附議されることと存じますが、これには今までの財政収入というものを、平衡交付金を割出すために出す基礎といたしまして只今までは税収入の百分の七十というものにしておつたのを、今回百分の八十に一〇%上げまして、そうして起算しようということになつております。これは表面から考えますというと、ただ單に財政収入の基礎を百分の七十から百分の八十に上げたというだけでございますけれども、これはどういう結果をいたすかと申しますれば、結局財収入の余裕のあるところ、その方面には平衡交付金の交付される額が少くなる、そうして同時に財政収入に非常に困つておられるというような公共団体には割増されて、そうして交付される。こういうような一つの進歩的の制度になるわけでございまして、そういたしますれば、幾らか楽な方面の公共団体は平衡交付金が少し減つて、そうして非常に困つておる方面平衡交付金が今年度より余計に増して行かれるということで、千二百九億が千百億に減らされたその百九億の不足というものを公平に、そして非常に困つておる方面に分けて差上げて、そうして幾らかでも地方の苦難を軽くしようというようなことも考えております。又そのほかいろいろ財政委員会のほうとしても、我々自治庁といたしましても考えておるのでございますが、そういうふうにしてできるだけのことをいたして、この苦しい財政を切抜ける策を考え、同時にそれを指示して地方公共団体の来年度の財政を確立して行きたい、こう考えております。
  182. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その百分の七十を百分の八十にするという点については、これは均衡化という点については確かに進歩でありますけれども、絶対量は変りませんし、更に他に影響する問題がありますが、それには私はこの際横道に入りますので触れないで、さつきの問題について更にお尋ねいたします。地方財政委員会のほうでは、地方財政委員会が予想した以上に上るので、相当地方は苦しいらしいというような御発言がありました。確かに地方財政が今一番困つているのは地方公務員の給與改善に必要な経費、これは一番重圧を加えているわけなんです。そこで問題はこの給與引上に要する経費が、地方財政委員会で算出した数字、更に文部省の数字大蔵省数字というようなものが一致していない。先ほどから地方財政委員会は的確な資料がなくて実情研究中だとこう申されておりますが、実際に現場において法規通りの切替えができないとすれば、而もその上所要経費というものは文部省と地財と食違うのでありますから、私は地財なり、或いは自治庁としては、日本の標準的な県をとつて現地に行つて直接に調査して、はつきりした数字を打出して、更に政府なり国会に然るべき意見書を出すというような挙に出ずべきである。実際切替ができておらないのであるから、手を拱いて見ていないで、実情はどうなんだ、原因はどこにあるのだということをデータによつてはつきり調査してつかみ、更に善処すべきだと私は思うのでありますが、大蔵、文部、地財、こういうところを中心にしてそういう調査をし、善処する意思が地方財政委員会おありでありますかどうか。木村委員に承りたいと思います。
  183. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 地方の実情を正確に把握するということは、我々の当然の職務と思つていますから、その点については一つ関係方面とも連絡いたしまして、独善的にならない、客観的妥当性のある調査をいたしたい、こう考えております。
  184. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 通り一遍の言葉では困るのでありまして、現在非常にこの問題で地方当局は困つておりますから、至急にその調査にとりかかつて頂きたい。又そうして下さる意味において今御答弁下さつたものと了承して差支えございませんか。重ねて木村委員お尋ねいたします。
  185. 木村清司

    政府委員(木村清司君) 大体御趣旨の通りにいたしたいと考えております。
  186. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はこの地方財政につきましては先ほど佐多委員からも発言がありましたが、地方財政を圧迫しているものは、地方自治当局が自由自在に地方自治をやられて財政が膨脹したのみでなくて、それがあつてもそれは微々たるものでありまして、大部分は内閣から国会に提案され、我々立法府が議決し法令として出した、その法令に基いて義務的に支出される額、それらが非常に累積されて地方財政を圧迫している。その証拠には地方財政法の十三條の二項によつて、各県知事は法令がいろいろ出ているが、それに対しての財政措置は講じていない。だから然るべく財政措置を講ずべきであるという意見書を両院の議長にたくさん出されております。これは明らかに地方の自治に影響するような施政というものが行われたのであります。従いまして岡野国務相としては、内閣にその影響の重大性というものを十分申入れ、善処をされるべきだと思うのであります。善処されたということはさつき承わりましたが、こういう事態ですね、法令を制定することによつて地方に義務的支出を非常に強要して、それを圧迫している。埼玉県の例によりますと三億有余といいます。福岡県は十二月末で六億五千万円、こういうようにその意見書に書かれております。これらに対して岡野国務相並びに木村委員はどういうようにお考えになりますか、御所見を承わりたい。
  187. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。それは佐多委員からのお説もございましたし、又矢嶋委員からのお説の通りでございまして、国家の中央で考えましたいろいろな政治を地方公共団体にして頂くということによつて地方負担が殖えておるといつた事実がございます。それが結局織込まれまして財政委員会としても千二百九億を欲しいというような希望が出たわけであります。それで千二百九億のうちどうしても千百億しか出なかつたということでありますので、結局そういうもので地方公共団体が非常に負担が重くなつておることはお説の通り認めます。認めますけれども、先ほども申上げましたように百九億を出すことはできないという点において地方財政は非常に困るという結論になるのであります。そこで私は先ほども申上げましたように、まあ今行政調査委員会議の報告が出ておりますが、あれによりましてそうして地方の公共団体にあれは市町村に非常に大幅な仕事を委譲するというようなことになつておるような趣旨でございますが、あの行政調査委員会議の報告書に基きまして早急に地方の本当の仕事、即ち自分のやる仕事は、皆自分の国民の仕事にして行くというふうに早く法制上の規定を作つて頂くべきだこう考えてやつておりますが、この国会では、どうも今広範囲でありまして提出することができませんが、併しこの次の通常国会には是非出したいと存じております。それで私の構想といたしましては、先ほども申上げましたように只今の税法なり、平衡交付金なり、財政委員会のあり方につきまして遺憾な点も多うございますが、その地方公共団体の本当の事務が再配分されて、大体において自分自身の個有事務になつてしまうというようなことがきまりまして、スケールがきまりましたら、大幅な地方税法の改正もしなければなりませんし、平衡交付金に対しても十分な検討もしなければならん、その場合におきまして十分皆様がたに御満足の行く、又地方公共団体も安心して財政運営ができるというような方向に持つて行きたいと考えております。何を申しましても只今過渡期でございまして、平衡交付金も昨年の春できたばかりで、税法も昨年の春できたばかりでございます。又地方公共団体のあり方も十分安定しておらないということで、いろいろの條件が混合しまして、そうして今日の中央並びに地方の苦難が加わつておるのでございますから、その辺のことをよく御了承下さいまして、我々も財政委員会と協力しましてできるだけ地方公共団体財政がうまく行くように検討もしますし、この苦難を乗切るためにいろいろな苦心もし案も作り、仕事もしておりますから、暫く一つ御猶予を願いたいと思います。
  188. 木村清司

    政府委員(木村清司君) これはもう簡單に申上げますが、当財政委員会としては、十分なる財政措置をされないことを遺憾に存じております。
  189. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 遅くなると気の毒でありますから、先ほどのに関連してもう一点だけお伺いして私の質問を終ります。それは財政委員のほうにお伺いするのでありますが、さつきの問題に関連してであります。給與切替えに要する所要経費地方財政委員会と、それから政府との算出額が非常に差が大きい。その場合政府のほうでは一人千円平均というので出されておるわけなんです。そこでその言い分としては、地方公務員としても国家公務員と同じようにということを大蔵大臣は申されるわけでありますが、又地方財政委員会としては地方公務員の切り替えの実情はどうかということを調査して下さる、そうして善処して下さるということをさつき伺つたのでありますが、ここでお伺いしたいことは国家公務員の、具体的に言つて中央官庁の各省ですね、切り替えた結果それが千円、一人平均千円のべース・アップでとどまつているのかどうか、そういう実態の調査をつかまれているかどうか。つかまれておるならば、一人平均幾ら切り替えに要したかということを木村委員に承わりたいのであります。若し木村委員のほうでわかりませんでしたら、地方自治庁の例をとつた場合に、地方自治庁としては切り換えに要した経費は幾らと算出されているかということを私はこの際念のために伺つて置きたいと思います。
  190. 河野一之

    政府委員(河野一之君) この問題はたびたび申上げたのでありますが、国のほうの職員につきましては、昨年の十二月の末におきまする一般職員全体の平均が六千九百七十三円、これに対して新らしい給與水準によりましてやりましたものが七千九百八十一円で千八円、大体千円を目安としてその俸給表を作つたのであります。政府全体として従つて切り替えの結果、これは個々の官庁についてはいろいろ違いますけれども、全体を平均しました結果千八円上る、こういう計算になつております。
  191. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私は一つの提案をいたしたいのであります。お諮り願いたいと思います。この地方財政の問題につきましては先ほど来いろいろな質疑がありました通り、極めてこれは重要な問題であると思うのであります。なおこれについては質疑が残つているものもあると思うのでありますが、この際小委員会を設けましてこれを十分検討する必要があると思うのであります。その点をお諮り願いたいと思います。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 只今の動議に賛成いたします。
  193. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今の若木委員の動議に私は賛成でございます。併しながら今のこの委員会では定足数を欠いておりますから、その若木委員の動議を委員長から改めて諮つて頂きたいと思うんです。そうしてこの動議を正式に成立するようにお取計らい願いたいと思います。
  194. 平岡市三

    ○理事(平岡市三君) 只今木村委員の若木委員の動議に対してお聞きの通りでございますが、さようお取計らいすることに御異議ございませんか。
  195. 高良とみ

    ○高良とみ君 只今の若木委員の御発言は、それは分科会ではいけないのでございましようか、その点お伺いしたいと思います。大変結構な御提案と思うのでありますが、どの点に関する特別委員会であるか、その点ちよつと……。
  196. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 御尤ものようなお話でありますが、この問題は特に重要でありますので、特別に小委員会を設けたいというわけであります。
  197. 高良とみ

    ○高良とみ君 只今の御趣旨とするところは、この給與の、べース・アップの問題だけの小委員会でありましようか、お伺いいたします。
  198. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 給與問題だけではなしに地方財政一般の問題でございます。
  199. 高良とみ

    ○高良とみ君 地方財政上の特別委員会ということでございますか。
  200. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そういうことでございます。
  201. 高良とみ

    ○高良とみ君 そういう御意見もあると思うのでありますが、分科会において、ただ地方財政の中の文教予算は非常に主なるものを占めております。又人件費が大きな部分を占めていることは認めるのでありますが、これは又厚生委員会からも同じ要求もあると思いますので、只今の御提案は理事会にお諮り願つて、そのほうの決定に待つことを希望したいと思うのでありまして、あながち若木委員の御主張に反対するものではありませんが、理事会の意向に待ちたい、こういう希望を更に提案いたしたいと思います。
  202. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは理事会に諮つて頂いても、又委員長から委員会へ諮つて頂いても、私はどちらでもいいのでありますが、薪炭特別会計のときに、六国会だつたかと思いますが、こういう小委員会を作つたことがありますね。その問題なんかと比較しますと、遥かに重大な問題でありますから、分科会ということになりますと、分科会なんかでは非常にもうほかの問題とも錯綜しますので、十分にこの問題だけを真劍に討議することができないと思うのです。これは是非そういうふうな意見を取上げて、理事会なり本委員会なりに諮つて頂きたい。ここではまあ一応そういうふうな話合いに進めて頂きたいと思います。  なお続いてこれはお願いして置きたいのですが、大臣が見えておりますから、明日の日程の中でまだまだこの地方財政の問題は論議しなければならない非常に大きな問題だと思います。そこで午後からでございますが、午後からの劈頭に、できましたら文部大臣がここに加わつていないと工合悪いのですが、それから関係閣僚、政府委員の出席を求めまして、この問題について、もつとやはり本委員会で討議する、これは非常に重要だと思いますので、そういう計らいをここで、岡野国務大臣木村委員なんかの出席が求められますか、委員長からお諮りを願いたいと思います。
  203. 平岡市三

    ○理事(平岡市三君) 若木委員の緊急動議に対しましては、極めて出席者が少うございますから、一応明日理事会を開きまして、これによつて一つ相談いたしたいと思いますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 平岡市三

    ○理事(平岡市三君) それでは本日はこれにて散会いたします。    午後六時十二分散会  出席者は左の通り。    委員長     波多野 鼎君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            佐多 忠隆君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            工藤 鐵男君            野田 卯一君            長谷山行毅君            一松 政二君            山本 米治君            岩崎正三郎君            内村 清次君            下條 恭兵君            山田 節男君            吉川末次郎君            原  虎一君            若木 勝藏君            高良 とみ君            西郷吉之助君            高瀬荘太郎君            高橋龍太郎君            菊田 七平君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    労 働 大 臣 保利  茂君    国 務 大 臣 岡野 清豪君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    地方財政委員会    委員      木村 清司君    地方財政委員会   事務局財務部長  武岡 憲一君    法務府総裁官房    経理部長    岡原 昌男君    大蔵省主計局長 河野 一之君    農林政務次官  島村 軍次君    労働省労政局長 賀來才二郎君    労働省労働基準    局長      中西  実君    労働省職業安定    局長      齋藤 邦吉君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君  参考人    日本銀行総裁  一萬田尚登君