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1951-03-05 第10回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会 ———————————————— 昭和二十六年三月五日(月曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員楠見義男君辞任につき、その 補次として竹下豐次君を議長において 指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) それでは只今から公聽会を開きます。  公聽会公述人として来て頂くかたがたは、お手許に配つてあります書類に書いてございますように全国指導農業協同組合連合会事務局総務部長平尾卯次郎君、日本銀行理事井上敏夫君、文部省職員組合委員長佐藤忠夫君、中央酒類株式会社社長松隈秀雄君、日本産業協議会理事仲矢虎夫立教大学教授藤田武夫君、本日の公述人はこれだけでございます。会を開きます前に、公述人かたがたにちよつと御挨拶申上げますが、これまでの規定に従いまして、参議院の予算委員会として公聽会を開くことになつたのでございますが申上げるまでもなく、昭和二十六年度予算には非常に多くの重要な問題を含んでおりますし、殊に今後一カ年の日本経済をどう運営して行くかという問題の柱ともなるべきものでございますので、是非各方面の権威のかたがたにいろいろな意見をお聞きしたいと思いましてお呼びしたわけでございますが、皆さん非常にお忙しい中にかかわらずおいでを頂きまして我々予算委員として厚くお礼を申上げます。  それではこれから今申上げました順序で公述をお願いしたいと思います。大体午前中は平尾さん、井上さんお二人でございますから、時間はかなりたつぶりあると思いますので、そのおつもりでお話を願いたいと思います。先ず最初全国指導農業協同組合連合会事務局総務部長平尾さんにお願いします。
  3. 平尾卯次郎

    公述人平尾卯次郎君) 私は全国指導農業協同組合連合会に奉職をいたしております平尾でございます。主として農業の立場から、二十六年度の予算に関しまして意見を申上げたいと思う次第であります。  私たちは今日本独立日本経済自立という問題が論議されておりますが、その基本をなすものは国内における食糧自給度向上、でき得べくんば、国内で必要とする食糧をすべて日本農林水産業者たちによりまして自給をして行きたい、こういう考えの下に立つているわけでございますが、單に二十六年度にとどまらず、最近の日本予算の組み方というものが、この点において非常に遺憾な点が多いのではないかということを痛感いたしている次第でございます。日本農家経済の安定、或いは食糧自給度向上する食糧増産の基本的な方策ということのためには、最も簡單にして基本的な方法といたしましては、区々たる予算的措置よりも、農産物、水産物、畜産物その他の価格を引合う程度に、又国際的な水準まで引上げるということが最も基本的な方策であると考えるのであります。ところが二十六年度の予算にも現われておりますように、海外から高い小麦、米、大麦等を買いますために、二十六年度におきましても二百二十五億でございますか、程度輸入食糧補給金が計上されております。これは御承知のように、二十三年度までは見返資金から支出されたのでございますが、二十四年度からは一般予算の中に計上されまして、二十四年度、五年度、六年度の累計を見ますと、一千百五十九億円がこの海外から輸入します食糧補給金として支払わされておるのであります。従いましてこれだけ国内農民が作りました食糧は、国際的な価格より安く買われておるということであります。一般消費者のためにこれだけの補給金が払われておる、こういうことが言えると思うのであります。即ち小麦につきましては、二十六年度において石当り六百円から千三百円、米につきましては石当り千円から二千百四十円、大麦につきましてはやはり石当り七百六十円から千円という多額の金額が輸入食糧補給金として払われております。これにつきましてはいろいろ解釈の仕方もございましようが一般消費者のほうに安く食糧を供給するということのために、これだけの予算が、国民の税金から出されたものが支払われておるということであります。この中には農民が納めました税金も入つておるということであります。即ち農民は自分で税金を納めて、そうして安い価格食糧政府に売つているそれだけの大きな犠牲を払つておる。二十四年度からの累計におきまして千百五十九億円という多額補給金が出されておりますがそれに対しても農民税金を払つておる。若しこの補給金が支出されないで、即ち国際的な価格と同じ水準農家主要食糧政府に売つたといたしますると、農家收入は、即ち補給金が全然支出せられなかつた場合はどうなるかと言いますと、農家收入は、二十四年、二十五年、二十六年の三カ年におきまして、三千四百四十七億円の余計の收入があるという計算になるわけであります。勿論これは極めて單純にトン当り補給金供出数量を掛け合わしたものでありまして、実際ははね返りの問題であるとか、或いは税金部分であるとか、いろいろな点を考慮いたさなければ正確でないと思いますが、大体の概念としては、こういうことが言えると思うのであります。即ち食糧国内自給度を高めるという問題につきましても、これらの予算から食糧輸入補給金が払われないで国際価格農家から買入れるということにいたしますと、食糧増産のためのいろいろな施設について、又農家経済安定のためのいろいろな施設について区々たる予算的な措置を講じなくとも、十分農家自体の力によつてつて行けるということを最初に申上げたいと思うのであります。即ちこのことは、日本経済全体の自立のために非常に大きな犠牲を数年間払つて来た、農業がそういう犠牲を払つて来たということを端的に物語るものだと、こう考えるものであります。  そこでこの価格を上げただけで果して国内食糧自給足或いは自給度の飛躍的な向上ということが果されるかどうかと言いますと、その点につきましては、いろいろ論議があるところでありまして、單に供出をする農家だけを救うということにならないという議論もそこには成立つと思うのであります。従いましてそういう補給金を撤廃いたしまして、すべてこれを農家收入にする、国際価格農家食糧を買上げるということをいたしましても、それは農家の全体ではなくして、食糧販売しております全農家の半ばに満たない程度であります。戰前におきましては、農業人口が一千四百万人、農家戸数が五百五十万戸、耕地面積は六百万町歩というのが一般の常識でございまして、そういう推移を重ねて参りましたが、戰後の現在におきましては、農家戸数が六百二十万戸、それから耕地面積が五百万町歩減少いたしまして、一戸平均の耕作面積戰前の一町一反から七反九畝というふうに非常に減少いたしております。日本農業零細化をしておるということを端的にこの数字が物語つておるのであります。従つてそういう食糧を自家用以外に販売するものを持つておる農家というものは、日本農業農家人口の全体ではなくして、そのほかに非常に零細な経営を営み辛うじて生きておるという状態農家戸数相当数あるということを前提といたさなければならないと思うのであります。従つて食糧自給度向上、或いは農家経済の安定ということのためには、これらの水準以下の零細なる農家についても十分御考慮をお願いを申したい、こう考えるのであります。これにつきまして、二十四年度の予算以降だと思うのでありますが、経済ベース、或いは投資効果というようなことが予算編成自体に非常に大きく取上げられて参りまして、それらの経済ベースに乗らない部面につきましては、これを切捨てるというような考え方相当強く予算編成の上に現われておることは事実である、こう考えるのであります。併しながらこの日本農業、或いは日本農村実態を見ますときに、單に経済的なベースということだけでは考えられない問題がそこにあると思うのであります。一例を申上げますと、農林従業者全体が千九百万人程度ございます。全産業人口の半ばを農林従業者で占めておるわけでございますが、内閣の調べによりますと、一週間の就業時間三十四時間以下のいわば半失業人口というものが六百万から七百万という非常に大きな数に上つておるということであります。これらの人たち経済ベースに乗るというようなこと、農業一つ企業であるというようなことはどうしても考えられんのでありまして、いわば日本農村は非常に狭い国土に多くの人口を養い、資源の少い日本の過剩人口対策をみずからの力によつてつておる。みずからの生活を下げることによつてこの重大なる過剩人口対策を負担しておるということが言えると思うのであります。従いまして当然この農業に対する予算的措置ということは單なる経済ベース、或いは予算投資効果というような問題に限らないで、これを社会的な見地、或いは政治的な見地から当然取上げなければ、日本農業は非常に大きな不幸に逢着するということが言えると思うのであります。従いまして予算全体につきまして、そういう一つ農業企業と見るという見地でなくして、社会政策的、或いは政治的な見地というものを是非お取上げ願いまして、これらの問題を御考究願いたい。従いまして二十六年度の予算につきましても、こういう見地から見ますときに、非常に大きな不満を農業関係のある者は感じておるわけであります。  具体的な問題に入るわけでございますが、公共事業費につきましても、この配付を頂きました昭和二十六年度予算説明という中にも、公共事業費は前年度より九%増額され、災害復旧公共事業費全額国庫負担制度の廃止によつて地方負担分が増加をしたから、総事業費はこれも約五%増加した。治山治水費公共事業費に占める割合も前年度より見て増加したということが謳われ、公共事業費についても、農業或いは林業等に非常に大きな考慮を払つておるということが書いてございますが、併しこれは前年と比べますと著しく違つておりまして、農地改良、造成、災害復旧等に対する財政投資並びに融資実質額というものは、前年に比べまして非常に減少をいたしております。これも昨年の経済白書に出ておるように覚えておりますが、昭和九年から十一年の三カ年、これを物価指数に換算した実質額を見ますと、九年、十年、十一年の三カ年を百といたしますと、二十三年は五割七分、二十四年、二十五年は四割四分というふうな、戰前に比べてこれらの公共事業に対する財政投資及び融資の額が減少しておると政府が発表いたしております。本年はまだ詳細に計算をいたしておりません。いろいろな計算の仕方があると思いますが、恐らく五割を超えるということは明らかだ、こう考えられるのであります。これらの前年より殖えておると言われる公共事業費国内資源の培養或いは食糧増産のために治山治水費が非常にたくさん出ておる、災害の予防のために費用を取つておる、こういうことを言われておりますが、併し今申上げましたように、戰前に比べて非常にその額が減つておる。先ほど申上げた数字に明らかなように戰前六百万町歩と言われた耕地面積が五百万町歩に減つておる。その中には勿論供出制度による隠された数字もあるということも事実でございましようが、併し荒廃してそのまま放置されてあるという面積相当に上つておるということはすでに明らかなことでございます。従いまして戰前に比べたこれらの率、戰時中に放置されたというこれらの土地の条件というものは、なかなか回復をいたさない。国内食糧自給度を高めるということが重要であれば、もう少しこれらの点についても基本的な考え方をめぐらさなければ、荒廃する面積はだんだん殖えて行く。御承知のように農地改革によりまして、農民土地禁縛から解放せられたと言われておりますが、その得ました土地は、金を借りるための担保としては価値のなくなつたものになりまして、そういう意味においてもこれらの公共事業についての融資ということは大きな制限を受けておるわけであります。  更に非常に小さな問題でございますが、先ほど申上げた二十四年度からの新らしい予算編成によりまして、非常に広汎な範囲の事業が国営或いは県営でやり、あとはそれから受益するところの個人施設をすべきだ、こういう原則の下に団体営土地改良というようなものが非常に補助金減少して参りましで、殆んど言うに足りない額になつております。又畑地灌漑或い農地交換分合というようなものに対する補助金は、この予算説明には出ておりませんが、そういうものは二十六年度において、前年に比べましても非常に減少をいたしておるのであります。勿論基本的な、基幹的な工事が行われたあとならば、小規模の土地改良というものが、いずれ来年か、再来年附随して来るということは考えられるわけでありますが、これらについて予算全体の額を合せるために見捨てられておるということが端的に言えると思うのであります。更に畑地灌漑その他の問題でございますが、これは御承知のように来年度から麦の統制が緩和される、いもはすでに緩和されているとうことで、畑地に対する問題が非常に大きく取上げられておりまして、畑作の改善ということについて、当然非常に大きな犠牲を、最初に申上げましたように、払つて来ている日本農業に対して、畑作のことについて何らかの対策を必要とするわけでございますが、これらが殆んど顧みられていないということが、小さな問題でございますが、指摘できる、こう思うのであります。  次に、昨年から興農増産運動というようなことが強く叫ばれまして、多額予算を計上してこの運動を実施するというかけ声がございます。予算を拜見いたしますと、昨年に比べまして約十億近くの予算がこの食糧増産関係経費として増額をいたしております。二十五年度は十六億七千三百万円、二十六年度は二十六億五千四百万円、十億近くの金が食糧増産関係経費として増額をいたしております。そのほかに食糧増産関係では、公共事業費のうちに関係経費があるし、農林漁業資金融通特別会計を設置いたしまして、予算から二十億、それから見返資金から四十億というものが計上されて、食糧増産のために非常に重点をおいている、こういうことが言われておるのでございますが、併しこれで現在日本経済自立のために最も基本的な問題となる食糧自給度が飛躍的に向上するということになるかどうか、この点になりますと非常に大きな疑問があるわけでありまして、実は私どももこの食糧増産関係経費増額に、いろいろ農林省大蔵省等事務当局とも折衝いたしたわけで、当初の大蔵省の予定ではこれよりももつと少い額でございましたが、漸くここまで漕ぎ着けたというようなことでございまして、我々としては、なお食糧増産運動農業団体として協力をする。又みずからの問題として取上げるということのためには、甚だこの方式を嘆かざるを得ないのであります。例えば畜産振興に関する予算が極めて貧弱である。或いは病害虫の防除に関する予算がなお不十分である。又さつき申上げましたような団体営土地改良畑地灌漑或い農地交換分合というようなことについての補助が殆んどない。こういう点につきまして、我々はなお非常に不十分さを認めているわけであります。これにつきましては、当初申上げましたように、農業に対する考え方がどうであるかということが極めて大きく影響する、こう考えるのであります。即ち日本農業経済ベースに乗る一つ企業であると考えるか、そうでないかということが、これらの予算をよしとするか或いはその必要がないとするかという問題の私は基本的な考え方の分れる点だと、こう思うのであります。例えばこれだけの経費を出せば増産がこれだけあるということが明らかだということを説明をいたしますと、予算事務当局のほうは、それが明らかになれば農家が、例えば百円を出して千円の收入のあるだけの増産があるということであれば、みんなで百円ずつ出しておやりになればいいじやないかこういう考え方が成り立つわけでございますが、残念ながら日本農業実態、或いは日本農村実情というものは、そういうふうに経済効果を測定いたしまして、事業に投資するという経済的な余裕もございませんし、又それだけの考えになりきつていないということが申せると思うのであります。従いまして私は食糧自給度を、特に現在の国際政局の中にあつて自給度を高めるということのためには、そういう観点から小さな経済効果投資効果、或いは経済ベースというような問題を、一応そういう論議を離れまして大きくこれを取上げて行くということが是非ともお願いしたい点だとこう考えるのであります。勿論それだけの予算を出して、国内において食糧自給ができるかどうかという点について、いろいろ議論はございますが、私はそういうことは可能であると、詳しく申上げませんが可能であるというふうに考えておる次第でございます。  次にもう一つ申上げたい点は、私が関係しております農業協同組合の問題でございます。これはすでに議会等においても農業協同組合再建整備法を提案するかどうかという問題が論議されております。これにつきましてもいろいろ議論があるところでありまして、現在農業協同組合が非常に経営が困難である、その原因はどこにあるか、又その責は誰が負うべきであるかといういろいろな問題がございます。その半ばは農業協同組合経営を担当しておる役職員責任に帰するということも明らかでございますが、戰後引続いて統制経済末端組織として、食糧供出、或いは肥料の配給というような仕事を担当して参りました農業協同組合というものが、統制経済転換、或いは日本経済の大きな転換の前に痛手を負いまして公団等にも相当損失補填のために予算が計上されておるようでございますが、やはり同じような形で農業協同組合もこの経済転換のために止むを得ず犠牲を負つた、こういうことが言えると思うわけであります。これにつきましても、二十六年度予算において予算的な措置を講じてもらいたいということを事務的に折衝いたして参つたのでございますが、法律が通つてからあと考えるということで、この二十六年度の予算の中にはまだ出ておりません。併しながら日本農業の全従業人口、或いは全人口の半ばを占める日本農業、それが非常に経済的にも困難を極めておる。その農民が作つておる農業協同組合経営の困難に逢着いたしまして、県の連合会等は軒並みに赤字を出して、赤字じやなくて多額損失固定した財産を以てその利払いに追われておる。新らしく立て直しをいたしましても、この旧債務利払いに追われまして、なかなか経営が軌道に乗らないというような状態が県及び町村の組合に方々で見られる事実であります。これを新らしく再建の計画を自発的に立てさせ、今後の食糧増産の重大なる責任を負うたところの農業協同組合に十分その仕事を果させるということのためには、二百二十億の固定債務に対して五分程度利子補給をするという案が是非とも最小限の要求として必要であろうということを痛感いたしておる次第であります。これにつきましても、今後補正予算その他で十分御論議を願いまして日本農業再建農家経済の安定、食糧自給度向上のために、農業協同組合が十分その負いました責務を果し得るために御協力是非ともお願い申上げるわけであります。
  4. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 只今平尾君の公述に対して御質問がございましたら……。
  5. 岩崎正三郎

    岩崎正三郎君 お話の中に、農村工業という問題について出ておらなかつたようですが、農村人口問題を解決するためには農村工業ということが当然必要だと思いますが、その点お話がなかつたようですが、何か御意見があつたら……。
  6. 平尾卯次郎

    公述人平尾卯次郎君) 農村工業について申上げなかつたわけでございますが、過剩人口対策、或いは農産物を加工して、それに価値を加えまして、貯蔵性を持たして販売をするというような面におきまして農村工業が非常に重要であるということは我々も考え協同組合におきましても共同の事業としてそういうことを行なつております。これにつきましては、農林省予算等におきましても、昨年、或いは昨年以上に予算措置を講じている、こう考えられるわけでありますが、我々としてはもう少し、例えば指導の仕方にいたしましても、單に唐辛子がよいとか或いは筍がよいということではなくて、一貫的なこれの指導育成方策をとつて頂きたい、こう考えておる次第であります。
  7. 岩崎正三郎

    岩崎正三郎君 私も今の平尾さんのように、農村の問題は経済べースではなくて、社会政策的なベースで対さなくてはいかんという考えには御同感ですが、そこで農村工業考える場合、やはりこれは農業協同組合、今の協同組合を助成するためにはやはり必要な補助が必要であるが、農村工業というものはやはり協同組合でやるといつても、或いは個人企業でやるといつても、育成するために、ここでは農村問題一般として、社会政策的に取扱つてどういうものか。やはりこれは一つ企業として考えなければなかなかいかん問題だと、そこの行き違いといいますか、けじめといいますか、何か御意見があつたら聞きたいのでございますが……。
  8. 平尾卯次郎

    公述人平尾卯次郎君) 最後にその点申上げたつもりでおつたのでありますが、言葉が足りなかつたと思いますが、協同組合のみならず、他の工業資本によつて営まれるということは、いずれによるにしても問題ではないと両方とも必要だと、こう考えられるのでありますが、單に原料を儲かるからと言つて作らせた、併しそれが過剩生産になりまして、これを安く買い叩くというような、そういう例がしばしばあるわけであります。原料の生産からこれの加工というものまで、十分輸出品につきましても、或いは国内の需要に応ずるものにいたしましても、一貫した指導方策というものが、特に農林省になくてはならないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  9. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 農村協同組合が非常に損失をやつて赤字を出して、その負債に困つておるので、それに対して利子補給金予算に計上するようにしてもらいたい、更正予算を組んででもしてもらいたいという御要求つたと思うのですが、それは大体御要求になる総額はどれくらいになるわけですか。
  10. 平尾卯次郎

    公述人平尾卯次郎君) 農林省農業団体或いは大蔵省事務当局とも、今その額について研究をしておりますが、最後的な決定にはなつておりませんが、大体固定された債権というものが二百二十億程度でございます。これは農業会から讓り受けました資産というものが非常に大きな部分で、そのほかは報奨物資等で、いわば押し付けられた品物で、非常に品質が惡くて値下りをしたというのがその次でございます。そういうものによる、現在現実に値打がなくなつて、借金はしておるということで、農業協同組合預金というものはそれに固定をいたしておりまして、十分いろいろな仕事農民のためにできない、こういう実情でございます。従いましてまあ潰れるものは潰してしまつたらどうか、こういう意見もあるわけでございますが、そういたしますと、單位組合では貯金業務と、それから販売、購買という仕事を同じ一つの單位の中でいたしておりますが、県では信用組合連合会というものが別に存在しております。そこが貸しておることになつているわけで、これらの金が駄目になるということになりますと、農業全体、農民預金が駄目になる、こういうことでありまして、波及するところは單に経済機関のそういう破綻という問題だけにとどまらない、こういうふうに考えるわけであります
  11. 永井純一郎

    永井純一郎君 今の指導連お話の中に、農産物価格の話がありまして、米価を初め価格国際価格に近寄せればもつとたくさんの收入農村にあるのだというふうに簡單お話なつたように思うのですが、これは指導連としては、そういう考えでなくして、差当りは国際価格に近寄せれば、たくさんの收入があるわけですけれども、本質的な問題としては、そうではなくして、農産物の生産費を十分償つて、且つ農業の近代化等ができるような、拡大生産ができるような生産費を償う価格でなければ困るのだというのが、本質的には指導連考え方であろうと思うのですが、先ほどの説明だけでは、ただ国際価格に近寄らせて行けばよいと、そのことは自由経済組織の下においては、ゆくゆくはそのことにおいて非常な圧迫を農村が受けるわけです。そこは簡單な御説明でありましたが、私が今言うような、生産費を十分償うところの農産物価格要求し、そういう趣旨から農業関係予算の編成がなされなければならないという指導連のお考えだと思うのですが、その点一つ伺いたい。
  12. 平尾卯次郎

    公述人平尾卯次郎君) 拔かしました点を御指摘になりまして、有難うございました。お説の通りに、何と言いますか、農家が頭を下げて僅かな補助金だとか、或いは施設要求すると、お願いするということではなくて、計算上は三千四百四十七億もらつて経済的には差支えのないものを取つていないのだということを申上げたわけでありまして、第二の点で申上げましたように、農家の中に、これらの收入となるべき販売する農産物も持たない農家が非常に多い。従いまして国内における食糧の生産性を高める、或いは自給度向上するということのためには、單に価格政策だけでは駄目であつて、当然全体の生産の水準を上げるためには、皆の税金で納めたものを予算的な措置によつてやらなければいけないという考えでございまして、供出をしない飯米農家というものは、食糧の供給を受ける。養蚕農家もそうであります。従つてこれらの農家につきましては、主要食糧価格が上るということは必ずしも有利ではないわけでありまして、予算的な措置価格政策というものが一貫して、單に値段だけが上るということを期待しておるわけではないわけでありまして、この点は誤解のないように、改めて申上げて置きます。
  13. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) それでは平尾君の公述は大体これで打切りまして、次に日本銀行理事井上敏夫君にお願いいたします。
  14. 井上敏夫

    公述人井上敏夫君) 私只今委員長から御指名のありました日本銀行の井上でございますが、二十六年度の予算案と金融との関係につきまして卑見を申述べさして頂きたいと存じます。  二つに分けまして、一つが、昨今新聞紙上等でもいろいろとやかましくなつておりますところのインフレーシヨン再燃の懸念というようなこと、これをどう抑制いたしますかという問題、それから見た二十六年度の予算案がその一つ、その次に産業資金の調達と財政との関係につきまして若干申上げて見たいと思うのでございます。  第一のインフレの観点からいたしまして二十六年度の予算案をどう我々として感ずるかという点を申上げて見ますと、この予算案におきましては一般会計も又特別会計も政府機関の收支、更に地方財政について見ましても総合的に考慮されておりまして、一切の支出を收入の範囲内に抑えて、いわゆるニユートラルな予算という形態になつておるのであります。この点につきましては、我々といたしましても予算案作成の衝に当られましたかたがたの御苦心に対して賛意を申述べるのにやぶさかではないのでございます。  顧みまして二十四年度、大分古い話でございますが、この予算はいわゆる非常な超均衡予算でございまして、そのためにインフレーシヨンは完全に予算面から抑圧をされたのでございますけれども、産業の規模を維持する上におきまして、どうしても金融面から相当額の追加信用をせざるを得なかつたのでございます。この結果といたしましていわゆる金融機関のオーバーローンの形態を招来いたしまして、却つて又生産に対してマイナスの効果を与えるような傾きがあつたのでございます。次の二十五年度におきましては、当初の見込は相当激しいデフレ的の予算であつたと思うのでございますが、実際面におきましては外国為替特別会計からの円資金の放出を主な原因といたしまして、年度間におきましては大約六百億円程度政府資金の撒布超過になる予想でございます。そのあとを受けた二十六年度の予算が先ほど申しましたところの中立と申しますか、修正と申しますか、收支均衡の取れた形態の予算であるということは甚だ好ましい形であると思うのでございますが、少々掘下げて考えて見ますると二十六年度の予算には、やはりややもすればインフレーシヨンへ向わんとする一、二の要因を臓しておると、こう申上げて差支えがないのじやないかと思うのでございます。  その一つが、この予算案は二十五年の十月当時の物価を基準とされまして、その後の物価の値上りというものが織込まれていないのでございますが、御承知のように朝鮮事変以後におきましては日本の物価の上昇率は相当激しいのでございます。もとよりそれには国際物価の上昇ということが大きな働きをしておるのでございますが、この昭和二十五年十月以降及び今後の国際物価上昇が、二十六年度の予算に対しまして如何なる影響を及ぼすかここに相当の懸念があると私は考えるのでございます。  第二の点といたしましては、今後の国際情勢の進展でございますが、これに伴いましていわゆる日本とアメリカとの経済提携の規模が如何なる状態で実現するかというようなこと、若しくは又国警予備隊等のこの増強などが予想されるところでございますが、これによつて財政的均衡が崩壞する懸念はないかどうか、そういう点であろうと思うのでございます。これにつきまして極く一般的に私どもとしての希望を申上げますと、日本経済が輸出の増進、或いは又朝鮮事変によるところの特需の増大ということを主因としまして、非常に様変りの状況にある、即ち日本経済の振幅が相当大きくなつてつておるのでございます。従つてこれは当然国民所得の増大ということを招来するに間違いないと私どもは考えておるのでございますが、従つて租税面におきましても、いわゆる自然増收ということが大きく期待できるのではないかと思うのでございます。そういう考えに立ちますると、今後この予算を執行する上におきまして、又将来若しかして補正予算等が組まれることがあり得ると仮定いたしましてその場合におきましてもこの租税の自然増收というものを飽くまで財源として頂きまして、その範囲でいろいろの支出の増大ということを賄つて頂きたい、かように考えるのでございます。  今度の予算案におきまして二十五年度の予算と違つておる点で、大きく金融の面の感覚からいたしまして違つておると思われる点が二つあると思うのでございます。その一つが、外国為替特別会計に対する一般会計からのいわゆるインベントリー・ファイナンス、五百億でございます。第二が債務償還費が非常に二十五年度に比較して縮小される。こういう点であろうと思うのでございます。第一のインベントリー・ファイナンスにつきましては、私ども新聞、雑誌を読んでおりますと、これについてもそれぞれの立場からいたしましていろいろの論議があるようでございます。併しながら私どもの立場からいたしますると、このインベントリー・ファイナンス五百億でもむしろ少な過ぎはしないかという考えを持つのでございます。外国為替特別会計の支出が非常に大きいことにつきましては、その根幹は申すまでもなく輸出の増大でございますが、今後半面輸入の状況等を考えますると、この五百億のインベントリー・ファイナンスで、果してインフレ的な影響を与えずして賄つて行くということが、その狙いが達成できるかどうか、ここに若干の不安を持つておるのでございます。この機会に第一次大戰当時の前例を想起して見たいと思うのでございますが、その当時も外貨の急増によりまして、国内的にインフレーシヨンの影響が大きく作用することを恐れまして、その影響を緩和いたしまするために財政資金によつていわゆる在外正貨を買取つたのでございます。この金額は大正三年から八年に亙りまして、一般会計で十四億二百万円、預金部において一億四千百万円その他臨時国庫証券の收入によりまして一億七千万円、合計十七億一千四百万円でございますが、これは私の記憶によりますと、その当時日本として取得した外貨の約半額に相当すると思うのでございます。かようにいたしまして、その当時もインフレ的な影響を抑えるべく、財政資金によつて外貨を買取つた。こういう方策がとられたのでございますが、これらの考え方を今後実施面にやはり現わして行く必要があるのではないか、さように私としては考えるのでございます。それから第二の違い、即ち先ほど申しました債務償還の減少でございますがこれは二十六年度の予算案を拜見いたしますると、債務償還として予定されておるものが百三十億円ございます。一般会計のいわゆる財政法による分が百八億円、特別会計の借入金の返済が二十四億円、合計百三十二億円と相成つておるのでございます。これが前年度におきましては千二百八十五億円という厖大な債務償還費を計上しておられたのでございます。但しこれは実際には債務償還がこの額だけ行われることではございませんで、結局これの運用によりまして予備隊の創設であるとか、或いは海上保安庁の増強であるとか、或いは又輸出超過によりますところの財政的なインフレ要因、これを調整されたのでございますが、二十六年度におきましては、やはり支出調整が常識的には予想されるにかかわりませず、それのこういうクツシヨンとも申しますか、そういう作用をするものが極めて少い。これに対しましても若干のインフレ的な要因ということを否定することはできないと思うのでございます。  従来もこの財政が金融面に及ぼします影響を金融政策によりましていろいろと調整して参つておることは御承知の通りでございます。本来財政と金融とはいわゆる二元金融のようなものでございまして、この間に密接な調和がなければならないと存ずるのでございますが、昭和二十四年度におきましては、政府資金の民間から引上げ超過になつ部分に大体相当する程度日本銀行の追加信用によつて補足いたしたのでございます。二十六年度におきましては、結果におきまして、只今申上げましたように政府資金相当額の撒布超過になつておりますので、金融面からこれを特に補充する必要はない結果に相成つたのでございますが、これまでの過程におきましては、やはり相当の何と申しますか、追加信用と申しますか、或いは消極的に信用收縮すべきところを收縮させなかつたと申しますか、そういう結果が今残つておることは事実でございますが、この二十六年度の予算につきまして、只今申上げたような要因があるといたしますると、今後の金融政策としては相当考えなければならないのではないか。もとより経済機構を大きくいたしますること、又国際收支の、バランスを大きくさせますこと、日本の産業を極力合理化しつつこれを発達せしめますこと、これらについて十分の考慮が払われることが当然でありますけれども、又一般的に申しまして、金融面からいわゆるインフレーシヨン再燃を抑制する方策がとられなければならないのではないかと考えるのでございます。最近日本銀行といたしましては、いわゆる第二次高率適用の強化を行なつたのでございます。これによりまして市中銀行の貸出金利と、それから日本銀行から信用を獲得するために払う市中銀行の金利との利鞘を相当縮小いたしまして、過度な日本銀行への依存態勢の是正を図るのに一歩進んだのでございます。今後も或いは状況によりまして金融の量的の何と申しますか、規則と申しますか、これは免れないところではないかと思うのであります。のみならず、場合によりましては、重要な生産資金を確保いたしまするその必要からいたしまして、不急不要な金融というものは抑えられなければならない、このような方向に向うことも状況の進展の如何によりまして、そういうことも常識的にやはり予想できるのではないかと考えるのでございます。  その次に産業資金調達の面から二十六年度の予算がどういう状況になつておるかということを拜見いたしますると、昨年度に比較しまして財政資金による産業資金の供給額が増加しておるが、又一面減税が行われまして民間資本の蓄積が筋としては容易になる形がとられてあるのでございまして、この基本的な傾向に対しましては極めて結構であると申上げたいと思うのでございます。産業資金につきましては、財政資金から出ますものが見返資金の私企業投資に三百五十億円、預金部の金融債引受けによりますものが、これが必ずしも最善とも申せないと思うのでございますが、政府資金の意味で申上げたいと考えますが、その預金部の金融債引受けが四百億円、それから日本輸出銀行に対する出資が百億円、その他若干の出資を加えまして合計九百四十四億円になつておるのでございますが、これは二十五年度の六百五十五億円に比較いたしまして相当の増加と見ることができると思うのでございます。減税につきましては、これは私から申上げるまでもなく大体、七百五十億円程度の財政上、税法上の減税が見込まれておるのでございます。産業資金につきましては、元来これはその全額を民間の蓄積資本によつて賄うことが、これが本筋でございます。ただ何と申しましても日本只今状態では蓄積資本が非常に不足でございますので、止むを得ずいわゆる強制貯蓄的な性格を持つたところの財政資金、若くは政府に蓄積された預金資金、こういうもので以て賄わざるを得ない状態でございます。資本蓄積につきましてはいろいろの方策が主張もせられ、又とられておるようでございます。その一例を申上げますると、例えば積立金に対する課税の減廃、これは二十六年度から廃止と私は承わつておるのでございますが、そういう計画と承わつておるのでございますが、積立金に対する課税の減廃、或いは企業の再々評価の実施であるとか、固定資産税の軽減でございまするとか、或いは再評価税率の引下げであるとか、各種の問題があるようでございますが、その中につきまして、やはりこの資本の蓄積を、而も一般大衆の資金の蓄積を容易ならしめる意味におきまして、預貯金の源泉課税選択の復活、この問題が二十六年度より実施される予定と聞いておるのでございますが、これらの大衆の預貯金に対する税制上の優遇ということにつきましては、今後も十分に考慮さるべきではないかと私は考えるのでございます。ただ産業資金をそのように供給するといたしましても、現在の状態からいたしますと、あらゆる産業資金に対して、この財政資金からするところの資金の供給をすることには、これは相当な無理があると思うのでございます。従つて勢い重点的な供給にならざるを得ないと思うのでございますが、これにつきましては申すまでもなく、只今日本経済状態からいたしまして、船舶であるとか或いは電力であるとか、農業関係の設備資金であるとか、そのような重要産業であつて而もいわゆるコンマーシヤル・ベースに乗るところの金融はなかなか困難である、そういうものに対しまして、特にこの財政面よりするところの資金の供給を希望する次第でございます。大体日本経済とし概して、この産業が非常に大切であるというようなものが、とかくこれが一般のコンマーシャル・ベースの金融のラインに乗つかりにくい、こういう情勢にあることを篤と考える必要があるのではないかと思うのでございます。もとより私どもといたしましても、例えば企業の資本の増加であるとか、或いは祉債を発行することであるとか、これらの増資及び起債の計画につきましては然るべき調整する手段をとりまして、できるだけ重点産業に或る安定した長期の資金の廻ることに努力するつもりではございます。又それらの増資、起債計画の調整のみではなく、例えま株式市場の健全なる育成であるとか、又は長期金融機構の確立であるとか、そのようなことにつきましても、いろいろと政府当局その他の関係方面へも、意見としては述べまして、いろいろと御決定を頂きたい、かように考えておる次第でございます。  貯蓄奨励のように相成りまして甚だ恐縮でございますけれども、結論といたしましては、やはり日本の資本蓄積、又狭い意味では資金の蓄積が足りないこと、これがすべての只今経済界及び金融界の悩みでございまして、これらの蓄積が順調に参りますために万般の措置を講ずる必要がある。預貯金を国民に向つてためろためろと申しましても、やはりため得るような環境を政治面からも又行政面からもこしらえる必要があると思うのでございます。それにつきましては予算の執行上、先ほど申上げましたように、極力この自然増收の範囲で今後増嵩すべき支出の増加を賄つて行く、そうして国民をしていわゆるインフレ気がまえ乃至は又物価が将来どんどん上つて行くというような気がまえからするところの買溜めであるとか、或いは売惜みであるとか、このようなことを極力とめて行く方策が必要であろうと私は考えるのでございます。  甚だ雑駁でございますが、私の二十六年度の予算に対する所見の開陳を終ります。
  15. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 只今公述に対して御質問ございませんか。
  16. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 二つばかりお伺いしたいのですが、先ほどお話のように、二十六年度の予算はいわゆる総合予算で、一般会計、特別会計、政府機関、資金運用部、地方財政はすべて一応ニユートラルになつておりますが、一つお伺いしたいのは、外為会計におきまして対民間收支だけの勘定を見ますと、千七百億程度の撒布超過のように聞いております。併し対日銀、対政府を入れると一応ニユートラルになる、外為会計だけで。その間の事情をお伺いしたいのですが、対民間のみですと千七百億ぐらい引揚超過になる。対日銀、対政府を入れると、これが僅かの撒超になる、こういうことになつた場合に、日本銀行券、いわゆる通貨の膨脹に対する影響の問題ですね、これはどういうふうに考えたらよろしいのでございましようか。結局対日銀、対民間、対政府考慮すると、年度末には成るほどバランスはとれるのですが、そういう間におきまして、その期間においてやはり対民間関係が千七百億も支払超過になりますと対日銀関係が又うまく行かないと、丁度二十五年度のように当初はバランスが合つておりますけれども、結局先ほどお話のように六百億の支払超過になつてしまう、こういうようなことになると危險がないかどうか、その点が一つと、それからもう一つ、質的金融統制の問題、これはやはり実際問題としてどういうふうになつて行くものか。前の融資準則のようなものが問題になるか、或いはそうでなくどういう形でこの質的統制が具体化して行く方向にありますか、この二点についてお伺いしたい。
  17. 井上敏夫

    公述人井上敏夫君) 只今お尋ねの外国為替特別会計の收支の問題でございますが、これは今後の輸出入の状況にかかる点が一番大きいだろうと思います。いろいろ世上でも問題になつておりますが、輸入促進が第一義であるという現在の状態からいたしまして、日本銀行が外国為替特別会計がら外貨を買つて、これをユーザンスで以て為替銀行に貸付けるという制度をとつているのでございますが、ここにも或いはなお検討を加えるべき余地があろうと思うのでございますけれども、率直に私の考えを申上げますと、先ほど第一次大戰の例を申上げましたように、このことの実現はそれはなかなか問題はあろうと思うのでございますが、やはり外国為替特別会計が財政資金で以て大体動いて行くという行き方が、私の個人的の希望といたしましては非常に強いわけでございます。  それから第二の資金統制の問題でございますが、これは單独に日本銀行だけでやろうとしている考えでは毫もございません。如何なる方式で物と見合つた資金の調整と申しますか、需給が行われて行くか、これは大きな国策の問題であろうと私は考えるのでございますけれども、併しながらいやしくも日本銀行の信用を用いてやる、即ち日本銀行の資金を使うような面につきましては、日本銀行政策委員会の決定するところによりまして、でき得る限り、先ほど申しましたような重点産業にそれが向くようにすること、そして不要不急のもの、いろいろのものが今世間にできつつあります。娯楽設備であるとか、享楽設備であるとか、そのようなものができているのでございますが、差当り誰が考えてもそういう所へそういう公的な資金が向くべきでないと考えられるような面につきましては、これは極力抑制して行きたい、こう考えているのでございますが、全体的のあり方につきましては、今後政府当局ともいろいろと御相談いたしまして、成るべく効果が多くて摩擦の少いような方法をとつて行きたい、こう考えております。甚だ抽象的でございますけれども。
  18. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 御答弁、御趣旨はよくわかりましたが、それから又インフレ防止という意味からは、外為会計五百億をインベントリーへやるということは少いのじやないかという御意見は私もそう思つております。併しですね、先ほどお伺いしてお答え願いたいと思つたのは、政府は成るほどニユートラル予算と、こう言つておりますけれども、外為関係の場合、対民間だけのことを考えた場合、対民間だけ考えましたならば、千七百億の支拂超過になる、こういうふうに見てよろしいのかどうかです。成るほど対日銀を入れ、対政府を入れるとそれだけにならないのですけれども、対民間收支といいますと千七百億支払超過になる勘定になつております。これを綜合予算として総計しますと、約千三百九十三億の支払超過になる。対日銀、対政府関係を除けばですね。それはそういうふうに考えることは、その前年度二十五年度の場合の対民間のバランス、こういうものと比較する場合に、二十六年度は政府はそう言つているけれども、やはりそういう意味で対民間だけから考えると非常な支払超過になると、こう見てよろしいかどうか、こういう点かあるのでございます。
  19. 井上敏夫

    公述人井上敏夫君) その千何百億という数字は、実は私も詳らかにいたしませんので、その数字についてはそれがどうであるかということをちよつと申上げかねます。けれども、私は対民間に対しては、やはりこの輸出特需の状況からしまして支払超過になる。ただその支払超過になる資金をどう調達するか、こういう問題であろうと思うのでございます。若しも一般会計からの繰替え使用及び預金部等の、これは可能であるかどうかは申上げられませんが、筋としてはそういう蓄積資金から支払われる、こういう状況になる。一般的にはそれだけでインフレにはならないだろうと思います。ただ問題は、日本銀行からそれが供給される場合には、これは相当警戒を要するのではないかと私は考えております。
  20. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その場合にですね。外為会計の対日銀勘定というのは、これは輸入が促進された場合、日本銀行に金が返つて、それで外為から出た金がそこで吸收される、こういう関係になるわけですか。そういうふうに考えてよろしいですか。
  21. 井上敏夫

    公述人井上敏夫君) 今までのところ、外国為替会計としては日本銀行から結局二千何百億という金が供給された形になつております。これはすでに起つたことでございまして、二十六年度としましてはだんだん減つて来る、現在ではまだ若干殖えると思いますが、そのピークは、私どもの見通しでは、大体四月か五月頃でございまして、或いはその頃には三千億くらいになるかも知れませんけれども、その後はだんだん決済がつい参りますので、これは相当回收ができるものと、こう思つております。回收というと語弊がありますが、外貨を今度は売戻す形になります。
  22. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 もう一つだけ。私ばかり質問して恐縮ですがユーザンスの問題ですが、いろいろ資金、まあインフレの点からも問題になつておりますが、日本銀行としてはこのユーザンスについてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  23. 井上敏夫

    公述人井上敏夫君) 只今のユーザンス制度は非常に何といいますか、喫緊の必要に迫られて実施された制度でございまして、決して我々といたしましてもこの制度自体ノーマルな制度とは考えておりません。ただこれを單にインフレ的見地から即座に民間の外国為替銀行の手に移すとか何とか申しましても、やはり外国為替銀行の資金的の力が今のところなお足りないように思いますので、結果においてはインフレ的観点からするやり方としましては同じになるのではないか、こう考えますので、只今の制度から取りあえず一、二点の難点を除くことに努力いたしまして、当分暫らくはこれでやつて行く、その間に外国銀行、アメリカの銀行であるとか、或いは英系の銀行であるところから相当フアシリチーが得られるようにと聞いておりますので、そういうフアシリテイーを得た上、なお又先ほども申しました長期金融機構等の整備によりまして、外国為替業務を営む金融機関が長期資金等に煩わされることなく、もつと自己資金を以て外国為替業務に專念と申しますか、もつと大幅にその方面へ進出することができるのではないか。それから一般的には、だんだんこの国民経済も大きく幅が広くなつて参りますので、それらによる蓄積資金の増加、そういうような三つ乃至四つの条件が熟成いたしますれば、乃至は又近くそういう条件が熟成する見通しがつきますれば、もう少し本来のあり方、即ち一般の外国為替銀行が主としてユーザンスをやつて行くという制度に行くのが好ましいのではないかと考えておりますが、ただ目下、今すぐそれをやると申しましても、条件が少し足りないように考えておるのであります。
  24. 高良とみ

    ○高良とみ君 先ほどお話のありました二十六年度予算の二つの経済の見通しと言われましたうちの一つの、十月物価を基にしておるということ、第二点の国際状況、殊に日米経済提携の面をどういうふうに考えておられるかをもう少し伺いたいのであります。殊に二十六年度予算というものは、こういう形でやつておりますけれども、例えばこの六月、七月頃までの間に日米提携において二十四億ドルというような、或いはもつと大きなものが入つて来ました場合に、それは日本国内の物価に直接関係せずに事業が営まれるとも考えられますけれども、実際労賃その他の面でこれは相当インフレの要因になるのではないかというふうに考えられるのであります。その点で先ほど国警の増強及び警察予備隊等が今までのような形でなく、もう少し拡大強化されるという場合には、それも一つのインフレの要因になるだろうと、先ほどちよつと暗示があつたと思うのでありますけれども、その二つの点について、どういうお見通しでありますか、伺えれば仕合せであります。
  25. 井上敏夫

    公述人井上敏夫君) どうも私といたしましては余り細かくお答えできないような非常に大きい御質問なので、簡單に、考えといいますか感じだけ申上げたいと思うのでございますけれども、第一の国際物価上昇の波及でございますけれども、これが大体国際物価の上つた程度の波及ならば、これは日本が鎖国経済を営んでおるわけでございませんし、且つ又日本の貿易が輸出面におきまして、その原材料が海外からの供給に待たなければならない、こういう情勢でございますので、その程度の波及ならばいたし方ないと思うのでございますれども、ただ昨今の日本の物価の上り方は、アメリカの物価の上り方より相当大幅に上つておる、これにつきましては先ほど申しましたように、国民の間に相当物が先行き不足するとか、或いは再び金より物への時代に移るとか、こういう先走つた人気があるのでございます。殊にそういう人気に拍車をかけておりますものが、問屋間の取引等に非常に大きな作用を及ぼしておると思うのでございますが、これにつきましてやはり政府のほうとして、何かそこにそういう懸念を払拭するように、又先走しつた人気を鎮静するような措置をとられたいというのが、私の希望でございます。  第二の御質問の日米経済協力の問題でございますが、新聞に出ましたあの大きな計数については、私何ら関知するどころがございませんので、二十何億ドルというようなことについては、何とも申上げかねますけれども、併し大体の方向といたしまして、日本とアメリカとの経済が密接な協力態勢に置かれることは先ず疑いのない事実だと思われるのでございますが、これは具体的に申せば、やはりアメリカからのいろいろな商業的或いは半政府的或いは又政府的な援助を意味することになるであろうと思うのでございますが、これにつきましても、実は私として考えますのは、成るべく物の形態でこれを入れて貰いたい。そうすれば、直ちに外国為替特別会計で外貨を買うとか、それがために円資金の大きな支出を伴うというようなことがないわけでございまするからして、そういうインフレ的な影響を極力及ぼさないように、具体的な取決めを行なつてもらいたいというのが、私のまあ金融人としての希望でございます。余り細かいことはまだ資料もございませんので、ただそういう傾向に対しては、今からそういう心がまえでいろいろの施策を講じて行くのが必要ではないかと考える点を申上げるにとどめます。
  26. 高良とみ

    ○高良とみ君 もう少しお伺いしたいのは、物の面でということは可能でありますが、労賃その他の点でやはりインフレの要因になる要素が非常に大きいと思うので、その点では先ほどお話のあつた国内物価の上昇傾向と関係いたしておりまして、そういうように、労賃で、或いはその他荷役等で入りましたものは、やはり買溜め或いは物資の消耗のほうに使われて行く傾向はもうすでに否むことのできない状況だと思うのであります。従つて先ほどお話のありました、政府としても適当な手を早急に打つということもありましようが、私どもの了承するところによりますと、今日漸く資本が蓄積傾向になりましたものが、今の物価高と、それから今現われて来ました日米経済提携というようなこと等によつて、又警察予備隊等の強化によつて崩れつつあるように思われるのであります。その点で税制において資本蓄積をもつと奨励すると言われることは、私どもも同感でありますけれども、なかなかそれを乗越えてまでも民間の資本蓄積を進めるようにするには、物価と、それから労賃の両方を抑えなければならないかと思うのでありますが、その二つの面についてのお考えを伺いたいと思います。
  27. 井上敏夫

    公述人井上敏夫君) 物価の点につきましては、先ほど申上げた程度一つ御了承を願いたいと思うのでございますけれども、この労賃の点ですが、これはもとより日本経済機構が非常に大きくなるのでございまするからして、総体の産業活動が大きくなる。従つて又それに対して資金がいろいろの形態で撒布されるということは、これは必ずしも私はインフレーシヨンを意味しないと考えておるのでございます。ただ当面の必要産業というものに余りに重点を置く結果、国民生活がどうなるか、国民生活水準がどうなるか、又国民生活水準を或いは維持でき得れば、これを若干向上させますためにどういうような、端的に申しますれば、消費資材等がどのような量で確保されなければならないか。要するに資金のバランスが大きくなる、それに対して物量でどれだけ裏付けを行なつて行くかということが今後の最も大きな問題であろうと思うのでございまして、これにつきましては、輸入政策というような点につきまして、よほど考慮されるところが必要ではないかと私考えておるのでございますが、その辺から私の考えをおくみ下さるようお願いいたします。
  28. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 午前中の公聽会はこれで終ります。それではこれで一応閉じまして、あと更に午後から引続いてやることにいたします。    午後零時十七分休憩    —————・—————    午後一時四十七分開会
  29. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) それでは午前に引続きまして公聽会を再会いたします  午後はお願いするのは四人のかたでございまするが、時間の関係もございますので、お一人質疑まで入れて大体のところ三十分程度にお願いをしたいと思いますので、どうぞそのおつもりでお話或いは質問をお願いしたいと思います。  最初文部省職員組合委員長佐藤忠夫君にお願いします。
  30. 佐藤忠夫

    公述人(佐藤忠夫君) 私文部省の職員組合におります佐藤でございます。昭和二十六年度の国家予算につきまして何か意見を述べろということでございましたが、私ども直接この国家予算の実施面を担当しております組合関係からいたしまして、非常にこの予算につきましては重大な関心を持つているものでございますが、特に組合員としての立場から、この問題に対しまして意見を申上げて見たいと、その我々の特に関心事といたしましては、やはり何と申上げましても給与の問題であります。で、お手許に差上げましたこの給与の資料を御覽頂きまして、多少数字に亙る点もあるかと存じますので、まあ極く要点だけを申上げるつもりでおりますけれども、是非、我々がどうしてそういう意見を述べなければならないかということにつきまして、特に御配慮を頂きたいというふうに考えております。  先ず第一番目でございますが、何と言いましても、我々はこの給与の問題が国家予算に占めます比重というものを考えますと、絶えず我々の給与の問題が、同時に例えば民間の税金の問題とか、こういうふうなものと関連して、或いはインフレの問題とか、そういうものと関連いたしまして考えられるところであります。と言いますのは、役人、公務員の給与を上げるとインフレになるとか、或いは国民の税負担が増すというようなことは、我々といたしましては非常にこの点について不満を感じておるものでございますけれども、その点につきましても逐次順序を追つて申上げて見たいと思います。  先ず第一番目は、私どもが昨年までのいわゆる六三ベースを支給されて参りましたのは、昭和二十四年から二十五年に亙りまして約二年余りというものはこの六三ベースで釘付けになつておりました。次いで私どもは当時の状況から考えまして、非常に内輪の数字でありまする九千七百円ベースというものを主張して参つたわけでございます。併しながら、遺憾ながら昨年の暮におきましては、現在の政府の給与法案が通過いたしまして、実際は七千数百円にしかなつておらない、こういう実情でございます。そこでこの昭和二十六年度の予算案との関連におきまして、私たちの給与問題を論ずるわけでございますけれども、先ず第一番目は、御判断を頂きまする順序といたしまして、人事院の八千五十八円の勧告ベース、それから政府の現在の給与法というものと比較して見たい、こういうふうに考えます。先ず第一番目、人事院のほうから申上げますと、これは根本的には八千五十八円ベースのものは、これは昭和二十五年の五月の資料に基いているのであります。従いましてこの八千五十八円の、その最初の出発点が先ず非常に遅れている、時間的に非常に遅れておるものである。そういうことが第一番目になるかと思います。それから二番目といたしまして、その計算の方法でございますが、御承知の通り人事院の勧告書には、非常に合理的にやつた、或いは科学的なんだとかいうふうな言葉で自画自讃をしておるようでございますが、決して私どもはそういうふうには考えないのでございます。と言いますのは、先ず食糧費の計算の方法を見ましても、成るほど一応マーケツト・バスケツトと言いまして、バスケツトを持つて市場へ物を買出しに行く、そのときの値段を見ております。それは食糧費でございますが、その他の衣料とか住居費或いは光熱費とか、こういうものはいわゆる内閣のCPSによつておる。こういう次第で、一見いたしまして非常に合理的に見えますけれども、実はその内容は、根本的には昭和二十四年七月から二十五年六月の経済安定本部の需給計画、計画です、需給計画によつておる。そこからカロリーを計算しております。従いまして例えば動物蛋白におきましては、鯨を殆んど大部分食べておる。現実に私たちは牛や豚を相当食べておりまして、鯨の肉はそう大して食べておらないにもかかわらず、鯨で動物蛋白の量を計算しておる。それから例えば野菜につきましても、やはり大根の葉つば、根つこの小いさいところは勿論ながら葉つぱ全部を食べる計算になつております。つまり一〇〇%食べることになつておりまして、そのロスを見ておりません。こういうような計算方法で以てなされたのが人事院の八千五十八円ベースでございます。それから次には民間の賃金の丁度真中の平均のところを我々の給料の各号俸の一番頭に持つてつて最高にしているということも非常に重大なことであろうと思います。それから地域給を切下げている。つまり二・五割を最高として五分刻みにしております。それから全体といたしまして上に厚く下に薄い、そういう能率給を非常に強化しておるような傾向がございます。大体申上げますと、人事院のいわゆる八千五十八円べースは、そういうような、我我としては非常に不満足なものがあるわけでございます。  次には然らば政府の現在の給与法は一体どうかと言いますと、これ又御承知の通り人事院の八千五十八円の勧告よりは更に下に薄く上に厚いようになつておることは御承知の通りであります。それから調整号俸を切下げている。こういうようなことも相当重要であります。それから一見非常に我々にとつて都合のいいような昇給の規定でございますが昇給の年限を短縮したと、或いは二号俸の特進を認めているこういうようなことが現在の給与法にございます。併しながらこれ又いわゆる予算の範囲内で行われなければならないというあの条文によりまして、実質的に空文に帰しております。で我々の現在の俸給がこういうような予算額を伴わない空文とも申すべき給与法によりまして、実際は相当上の人たちとか、或いは上司にへつらう人たちだけがこの昇給規定、或いは二号俸特進のこの規定にあずかつている、こういうような現状がありまして、職場の勤務上の心がまえというものは想像以上に沈滞し、或いは或る意味におきましては乱脈をきわめている、こういうような実情があるわけでございます。それから将来の見通しといたしましては、これ又御承知の職階法の実施に伴いまして、或いは例の閻魔帳とでも申したいような勤務評定表というものを四月一日から実施することになつておりますが、こういうようなことによりまして、いよいよ私たちは昔の軍隊のような、そういう封建的な官庁体制のうちに身動もできないような、そういう状態に追込まれつつある。決して給与法は金だけの問題ではなくて、実はこういうような重大な官庁の状態を現出している、こういうことを特に私は皆さまに申上げたいと思います。  それから今までは人事院の勧告ベースと、政府の給与法とを大体比較したのでございますけれども、要するにその両者いずれも、結果から申上げますと、或る一定の枠を、つまり八千円見当でやれというような枠を至上命令的に押付けられまして、それにいわゆる合理的だとか科学的だとかというような言葉で以て、現実の生活を完全に無視した、そういうこまかしの計算をして、つまり逆算をいたしまして、今日のような給与法を作り、或いは人事院の勧告に見られるような、ああいう各号俸の段階や、地域給や調整号俸や、いろいろな規定が出て来ている、こういうふうに考えざるを得ないわけであります。そこで私どもは、然らば今日給与につきましてはどういうふうに考えているか、こういうことに入りたいと思いますが、いわゆる朝鮮動乱以来、特需インフレと申しますか国民の消費物価は非常に値上りを示しております。なお且つ税金は非常に重く徴收されている。そういうような事態がございますので、特に私どもの生活は一日々々針の山を渡るような、そういう気持がしているわけであります。なお私は国家公務員ばかりでなくて、これは全政府関係或いは地方公務員もやはり同様な状態ではないか、いや、状態にあるのでありまして、この点につきましてはこの公述人のほうにそういうかたがたによつて組織されております組合のかたがおられませんので、特に私からも全体を代表する意味でお願いしたい。  それからお手許に配りましたこの満十八歳、勤務地手当ゼロ地の税込最低賃金七千五百円、扶養手当一人千五百円、勤務地手当最高三割支給、こういうような私たちのスローガンはこれはなぜ、どういうふうにして出て来たかということを申し上げたいと思います。  先ず、一体国家公務員でも、地方公務員でも、公共の福祉に携わる者は国民の生活より以下の生活であつてよろしい、こういうことはこれは誠にどこの世界へ行きましても通用しないのでありまして、現実に我々は非常に下廻つたそういう待遇を受けて参つたわけであります。併しながら人事院勧告にもございます通り、やはり国民生活、その表面に言つておりますところは、国民の生活水準でなければならない、こういうようなことも勧告では言つておりますけれども、実際はそうなつておりません。従いまして私たちもせめて国民水準並のそういう生活をやらせて頂きたい、こういうのが私たちの給与改訂要求の前提になつているわけでございます。勿論この数字は、敗戰下の今日における日本のいろいろな諸条件、特に経済情勢から割出しました非常につましい最低限度の数字でございまして、この計算の資料は昨年、昭和二十五年の十一月によつたわけでございます。十一月に大人がどうしても税込七千五百円一人要る、こういうことでございます。併しながらもうそろそろ世界情勢も変りまして、対日講和の動きもすでに日程に上つているようであり、こういう際には何と言いましても、やはり我が国のあらゆる希望なり意見なり、そういうものが広くやはり世界に対しまして、特に日本を占領している諸国家に対しまして本当のところを、まあ本当の希望や意見なりを率直に申出たらいいのではないか、そういうような観点に立ちまする場合、特に昭和八年から十年のあの線に日本水準を戻すというような既定方針というような観点からいたしましても、我々の給与の比較というものは、このニユースにございますけれども、とにかく半分以下の状態になつております。まだ昭和八年から十年までの線の申分以下である、こういう嚴しい現実があるわけでございます。それで七千五百円の最低賃金は決して不当なものではない、そういうふうに私たち考えますし、なお且つこの要求にいたしましても、昨年の十一月の資料によつておりますので、もう毎日々々この頃は惡性インフレのような状況で物価が上がつて来ておりますので、むしろこの数字につきましても非常にまだ低い数字だというふうなことを組合員の人人は申出ております。そういうような実情があるわけでございます。まあそれはそれといたしまして、この算出の方法は、非常にまあ、私のほうから率直に申上げますと、つましい最低の線を抑えてこれだけになつておるのであります。算出の方法の概略を申上げますと、いわゆる人事院方式とでも言うべき食糧品はマーケツト・バスケツト法により、その他のものにつきましてはCPSによつて計算しており、ここらあたりは政府考えておる給与べースの計算の方式によつてもこれだけになるのだ、そういうふうな意味で私たち政府と同様な方式によつて計算をしたわけであります。この資料には、総理府の統計局のいろいろな調査、それから労働省の毎月勤労調査、それから勤労者世帶收入調査というような政府側の発表の資料によつておるのでありまして、これは必ずしも私たちが勝手に作つた資料ではない。そういう資料によりまして一先ず計算をしたわけであります。それで然らばなぜ最低賃金だけをこういうふうに表現したかと申上げますのは、必ずしも現在の給与法にありますあの給与体系とか、或いは人事院勧告の給与体系とか、こういうものを私たちは肯定できないというふうに考えまして、それは飽くまでまだそういう能率給によつて考えるべき時期ではないというような点から、やはり原則として生活給でなければならない。そういう立場を今現に持つているものでありまして、従いましてこのニユースにもございますけれども、一人幾ら、夫婦者ならば幾らになる、こういうものはやはりこれ又国際的なそういう算出の方式によりまして、例えばお嫁さんをもらつたという場合ならば〇・九をかけて行く、こういう算出の基準によりまして生活給的なそういう方法を現在考えております。従いまして最低の線は七千五百円でなければ一人食えないのであつて、二人となり、三人となり或いは四人、五人の家族になりますと、これに国際的な一つの算出方法の数字をかけて行きますと、それが私たちの主張する給与の最低生活の金額になる、そういうような考えをしているわけであります。  只今申上げましたようなそういう立場から、この昭和二十六年度予算案を検討して見たいと思います。先ず重要な点といたしましては、米価の問題、それから税金の問題、それから給与ベースの問題、それからインフレ対策の問題、こういうように大体四つの重要な強調すべき点を考えております。  先ず一番目の米の値段につきましては、今年の一月から米の消費者価格が十キロ当り一六・八%引上げになつております。これは米の値段は、会社の重役さんも大臣も、それから我々勤労者も重労働者もみんな同率であります。配給を受ける値段はみんな同じである。従いまして生活水準の低い家庭ほど主食への支出が非常に多いという点から考えまして、この米の値段というものは非常に苦痛を我々の生活に与えている。ましてや米が上ればだんだん他の物価にも影響されて参ります。こういうようなことから、この米の値段を上げるということにつきましても、将来非常な不安を持つて見ておりますし、私の見るところでは、将来ますます米の値段が上つて行くんじやないか、そういうような感じがするわけであります。  それから税金でございますけれども、いわゆる七百億の減税は帳面ずらだけの減税でございまして、いわゆる政府が税法上の減税も実際上の減税も同じなんだということを言つておられますけれども、これは非常にあいまいと言いますか、或いは嘘を言つておられるのではないか。つまりなぜかというと、物価が上つておるというようなそういう現実を無視しておられるからそういう御意見が出て来るのでありまして、我々税金を取られる側、或いは高い物価を払わなきやならない、そういう立場から申しますと、決して減税にはなつておらないで、実質的には我我にとつては増税になつておる、こういうような気がするわけであります。それから米価の引上げは先ほど申上げましたが、地方税、これも非常に我々にとりましては苛酷なまでにひどい取り方をしておりまして、現に私どもの組合におきましては、一期分はまあどうやらこうやら納めたけれども、二期、三期分はまだ納められない。差押えの通知が来ておるけれども、役場の吏員が来たけれども押えるものがなかつたと、そういうような実例も聞いておるのでありまして、税金は非常に国税、地方税を問わず過重な負担になつております。それから一方それじや税金につきまして、我々以外の比較的裕福なかたにはどうなつておるか、まあ多少しかつめらしい言葉になるか知りませんが、資本を蓄積するためにはいわゆる合法的な脱税というものを認めておる。それはあの無記名預金とでも申しますか、いわゆる短期債がそれではないかというふうに考えます。こういうことでは、一方から取上げて、弱い者から取上げて、そうして実際にその能力があり、又決してそれによつて事業が停滯するというようなふうには考えられないそういう資本家のかたがたには比較的、まあ比較的と申上げましたが、相当ゆるやかな方法で考えておられる。こういうことは何といたしましても、我々から見れば租税公平の原則を無視した非常に一方的な税金ではないか、そういうふうに考えます。最近新聞にも出ております通り、鶏を四羽以上、兎は六羽以上、山羊は二頭その他柿、梨、梅四本以上、こういうようなものにみんな税金をかける。こういう国民の零細な收入から非常に残酷なまでにこうもぎとつて行くような、そういう税金の徴收の仕方ではなかろうか、或いは一方我々から殆んど緑の遠い高級な織物、衣類等につきましては、課税の対象から除外されておる、こういうようなこともありまして、非常に我々としては不満に考えておるわけであります。まあ本年度予算を見ますと、この最後のほうに政府関係職員の給与改善費というものを多少は見ております。併しこれも実質的には單に昇給した場合の金額しかないようでありまして、今後予想されるインフレ等を考えますときに、非常に我々は不安にならざるを得ないのであります。多少若干の賃上げを仮にするといたしましても、やはりその結果、勤務評定表による非常に窮屈な職場体制ができましたり、或いは労働時間が延長いたしましたり、更に超過勤務手当なんかも、殆んど従來の実績から申上げますと三割程度しか支給されなかつたり、そういうようないわゆる労働強化になつて来るような虞れが十分あると考えます。そういうような諸点を考えますると、この税金の問題にしましても、米価の引上げにいたしましても我々の生活は全く致命的な、破局的なそういう状態に追い込まれて行かざるを得ないというように考えられるのであります。  それから次に重大なことは、このインフレの問題であります。よく組合がこれだけの賃金を欲しいというふうに要望いたしましても、インフレになるからいけないとか、或いは税金が殖えるからいけないとかいうようなことで、我々は随分にがい思いをさせられて来たわけでありますけれども、一体我々が仮に、先ほど申上げました七千五百円の最低賃金が実現するものといたしましても、昨年の十一月の資料によつているというようなこと、及び将来予想せられるいわゆる惡性インフレの状態考えますと、非常に下廻つたものとなるのでありまして、我々は何としてもこのインフレを一日も早く克服するような、そういうやり方を是非考えて頂きたい。二十六年度の予算も、聞きますところによりますと、昨年の十月頃の物価を基準にしているというふうにも聞いております。そういうものとすれば、そこにもう一つの大きな問題があります。現にこの予算説明書の総説にございます。「動乱後の国内物価の騰貴が海外の上昇率を多少上廻つている事実等に徴する時、引続き均衡予算の基調を堅持して、インフレーシヨンの回避に努めねばならぬと考えられる。」、こういうふうに本年度予算説明の総説において述べております。こういう点は政府みずから言つておられるわけでありますけれども、我我はこれでは夢々安心できないと考えます。物価も昨年の六月くらいに比較いたしますと約四〇%も上つております。それから例えば終戰処理費が約一千二十七億円あるのに対しまして、対日援助費がそれよりもずつと小さいものだと、こういうふうなこともありまして、ここらあたりにも、何とかしてインフレを克服し、なお且つ我々の給与財源を考えて頂く余裕があるのではないかというふうに考えます。それから警察予備隊費とか、或いは終戰処理費も同様でございますけれども、ここらあたりに非常に大きなインフレの要因があるというふうにも考えております。ここらあたりも、是非ともできることならそのインフレを惡性化させないという、そういう絶対的な前提の下に本予算をやつて頂きませんと、これは我々としてはもう実に危險極まりない予算のような気がするわけであります。  要するに結論といたしましては、どう見ましても、政府はインフレの回避ということをみずから言つてはおりますけれども、遺憾ながら惡性インフレは不可避の状態である。特にこの予算を実施します場合には、ますますそのインフレが好むと否とにかかわらず増大惡性化するであろう、そういう気がするわけであります。  いろいろ二十六年度予算につきましてまだほかに申上げたいことはありますが、先ず結論を最初に申上げますと、私が先ほど来申上げました賃金のこの非常につましい要求是非認めて頂きたい。この財源につきましても、我々が考えました場合には、まあ各款項目の節約ということは確かにございます。給与財源といたしましては、現在の税法下におきましても、相当な脱税があると見ております。合法的な脱税をも含めまして、そういう脱税を徹底的に取締つて頂けば、必ずそこだけでも我々の財源はある。又いわゆるインベントリーの五百億につきましても、これはインフレを回避するということを条件といたしまして、ここらも財源の可能性として私ども考えておるわけであります。そういう立場から、是非賃金要求を認めて頂きたい。それから第二番目といたしましては、徹底的にインフレ対策を講じて頂きたい。従来よく賃金値上げの運動を我々がやつて参りましたけれども、賃金は必ず物価のあとからついて参りますので、どうしても或るベースが改訂されるにいたしましても、やはりこのインフレの問題があとからあとからと出て来ますので、この点につきましても、徹底的にインフレ対策を条件とした賃上げをやつて頂きたい、こういうことになるわけであります。それから三番目といたしましては、行政整理の問題であります。すでに二年前から行政整理が行われておりまして、非常に機械的に我々がそのあふりを食つて、たくさんの人たちがやめて、現在失業者もおりますし、非常に生活に困つておる連中がおるのでありますけれども、よく我々が政府のかたのところに参りますと、行政整理をして首を切つて、その余つた財源でお前たちの給料を上げてやる、こういうような御意見を聞くのであります。この行政整理につきましては、やはりお手許に配りました資料にも書いておきましたけれども、蛸が手を食うというような、我々自身はその最大の犠牲者でありますし、国家並びに地方の行政上のマイナスというものは、もうすでに現在その兆候が見えておりますが、更に将来行政整理をするとすれば、非常にそういうマイナスの面が多くなつて来るであろう。行政は非常に乱脈化し、統制強化によりまして、ますます昔の封建的な態勢に復活して行く。これも我々が絶えず主張しております官庁の民主化に逆行して行くというふうに考えられますので、是非この行政整理というような、こういう誰の得にもならないことをおやめ頂きたいというふうに思います。  それから更に、この賃金要求のところでちよつと言い忘れましたけれども、私たちベースをもう少し殖やしてもらいたいと言いますと、必ず国民の側からも、或いは政府のほうからも、反対意見が出ると言いますのは、税金が殖えるとかいうようなことであります。これは私たちの立場から申上げますと、実におかしな話でありまして、これだけ物価が上つたからこれだけに賃金を上げてもらわなければ食えないと言つておるわけです。我々が好んで物価を上げておるのではないのであります。従いまして、我々の賃金改訂の要求というものは、政府経済政策と言いますか、或いは財政政策と申しますか、その結果によるものである。決して我々は、我々自身の要求によつて惡性インフレになつたり、或いは物価が上つたりするということは考えておりません。昨年も人事院は僅かに五%しか上らないというようなことを言つたようにも聞いております。徹底的なインフレの要因、いや税金の問題に、決して我々の賃金改訂の問題はそうならないのでありまして、むしろ我々の立場から申上げますと、それは政府のそういうような財政政策の結果、我々はどうしても生活のためにはそれだけをもらわなくちやならない。こういう順序が全く逆立ちしているのではないかというふうに考えます。その点をちよつと補足さしてもらいたいと思います。次には、私どもの意見といたしましては、やはり国際的な関係もありまして、單にインフレを抑制すると申しましても技術的な困難もあるかと思います。それでやはり国内資源の積極的な開発というものを是非つて頂きたい。今までのような行政上の、例えば県とか市とか村とか或いは関東ブロツクとか中国とか、そういうような行政上の勢力関係、或いは例えば水について申上げましても、県と県が水利権の争いをしているというような、そういうふうなやり方では、国内資源の積極的な開発というものは望まれない。やはりこれは全国民的な、国民全体の立場からの、総合的な国民の利益という立場からの資源開発を積極的にやつてもらいたい。こういうことはやはり貿易関係とも裏表のような密接な関係において考えられるのでありまして、非常に国際情勢も多端を極めておりますので、若し外国の輸入が絶えたならば、一体我々はどうなるかというような不安もあります。そういう点からも、是非今申上げました資源の開発という問題を取上げて頂きたい。  まあいろいろと申上げましたけれども、結論といたしまして、この予算は資本蓄積という美しい名前の下に、勤労者を初め善良な国民の大衆を非常に苦しい生活に追い込んで行くのではないか。又今までの苦しい過去を顧みますときに、やはり一〇〇%そうなるのであるというふうにどうしても考えられるわけであります。こういうような国際的な、或いは政治的な、経済的な危機の中におきまして本当に一部のかたのための利益において、大部分の国民大衆がそういう不幸を味わわなければならないということは、これはまさに日本民族の悲劇でありまして、ここらあたりにおきましても、十分参議院の各位にお願いしたいと、こういうようなことはもはや再び繰返さないように是非ともお考え頂きたい。私個人考えではございますけれども、一体こうして勤労者を初め全体の国民の生活を追い込む場合には、決して資本主義の発展にすらならない、資本家を擁護する、資本を蓄積するというようなことが原則になつておるようでありますけれども、その資本蓄積にすらならないのではないか。勿論歴史的な意味における資本主義の発展でございますけれども……、そういうふうに私個人考えております。  時間でございますので、そろそろやめたいと思いますが、とにかく單に私たちの給与問題だけを考えましても、こういうような国家の二十六年度予算では、どうしても我々の本当のぎりぎりの要求と言いますか、要望と言いますか、その最低の生活もできかねるような気がいたします。そのほかに教育、文化の問題とか、或いは社会保障の問題も言うつもりでおりましたけれども、時間がありませんので、これでとめたいと思いますが、とにかく今申上げましたような給与問題だけでも非常に大きな問題を孕んでおりまして、この予算書の全款項目に亙りまして直接、或いは間接に影響するところが多いわけであります。決して私どもは不当な要求をしておるつもりではないという信念を持つておりますし、その点につきましては、すでに御承知の向きもあるかと思います。どうか参議院の良識におきまして、私たちの本当の最低ぎりぎり一ぱいの要求を、要望を聞いて頂きたい、そういうふうに考えて私の公述を終りたいと思います。
  31. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 只今公述につきまして御質問ございませんか。
  32. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 要求なさるところの給与の標準につきましては、今御説明で満十八歳最低賃金七千五百円、こういうふうな最低賃金を以て標準にして行くというのでありますが、これを今人事院あたりで勧告をしておるところでも、いわゆる給与体系について換算して行つたら幾らか……、そういうふうな形に直して見たら幾らになるか。
  33. 佐藤忠夫

    公述人(佐藤忠夫君) 政府、人事院勧告のあの給与体系に直したら大体どうなるかという御質問の御趣旨と思います。これはこの最低賃金七千五百円と言いますのは満十八歳でございまして、大体私たち考えといたしましては、人事院勧告の二級一号をとつております。併しながら、これを従来のいわゆるベースと言われました家族二・九人の公務員の平均に直しますと、六級六号で一万二千円になります。併しながらそれは現在の……、先ほど御質問にありました人事院の勧告の体系をそのままこの二級一号から出発したカーブに当てはめて行くと一万二千円、六級六号になるという意味でございまして、そこで先ほど申上げましたように、あの体系には非常に註文がある。それで必ずしもあの体系を容認するわけではないが、あの体系で行きますと、次官級と言いますと恐らく概算八万円か、或いは九万円程度になりはぜんかと思う。そういうことは非常に国家財政の上からも、或いは生活給という原則の上からも非常に大きな問題でございますので、これは我々のほうでも今検討中でありますから、一つ是非皆様の御意見を十分考えながら、私どもの妥当なそういう給与体系を作り出して見たいと、そういう立場から今研究中であります。併し先ほど申上げましたように、最低七千五百円というの二級一号を大体基準にしていると、そういうふうに申上げたいと思います。
  34. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 もう一つ伺いたいのですが、先般のこの予算委員会で、人事院総裁も見えられておつたのですが、その際に、もうベースのいわゆる勧告をやる時期ではないかと、こういうふうな質問があつたのですが、ところが人事院といたしましては、未だその時期ではないと、いわゆる五%の増額をするというふうな条件にまで来ておらない。そういうふうなことであつたのですが、それが十一月の調査によつて三・五%の程度までは来ておるということです。五%には達しておらない。そういうことであつて十一月以降におけるところのいわゆる物価の上昇そういう方面から考えて、もう五%を超えつあるのではないか、こういうような質問が出ているのであります。そこで私の考えることを申上げますというと、十一月の調査によつて少くともこの条件を考えて見るということは、今日の物価の上昇の場合に比べて非常な開きがある。条件についてはもう古いものになつておる。刻々そういうふうに現在では物価が上昇しておる。そういう点について人事院ではまあどういうふうに考えるか、こういうことを質問したのでありますが、それらについては何しろ正確な調査に基いた手続によらなければならないのであるから、今すぐこういう状況になつておるからと言うわけには行かない。こういうふうな答弁であつたのでございます。そこで私のあなたに聞きたい点は、その後特に今人事院の勧告なり、或いは政府の給与体系の基本がそういうところにありとすれば、三月に入つた現在においては、いわゆる八千円ベースに切替えられ、非常な私は生活の方面の苦しさがあるのではないか。それにつきましては恐らく苦しさがあるということは私自身にとつても見当がつくのでありますが、若しそれに対してかくのごとき状態になつておるというところの何か資料がありましたら、お聞きしたいと思います。
  35. 佐藤忠夫

    公述人(佐藤忠夫君) 御趣旨は賃金が低いからどういう具体的に困つた点があるかということだと思いますが。
  36. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうです。
  37. 佐藤忠夫

    公述人(佐藤忠夫君) 実は資料がないので数字的に申上げることができないので申訳ないのでありますけれども、とにかく欠勤が非常に多いことですね。これは私の省におきましては、大体五分、全職員の五%程度が長期欠勤者になつておると思います。こういうようなこと、それから要注意者までを含めますと、もう二割ぐらいの数字が出て来ておる。こういうようなことは、やはり生活に追われておる公務員の実態から、そういうことになるのではないか。それから実はお尋ねの件を私のほうであれして見ますと、ここの二面三面、特に三面に書いてあるわけです。給与関係資料の分析と批判の……賃金ですが、昭和九年から十一年の頃と現在とがどういうような状況かというふうなことをずつと書いてございますが、大体私どもの調べでは、このどこかに書いてあつたと思いますが、昭和十一年頃の属の五級が八十五円でございますが、これは当時一年四回のボーナスがありましたり、或いは旅費がありましたり、そういうことは拔きにして、八十五円だけで現在と比較して見ましても、大体四九%という数字が出て参ります。そういうような工合でありまして、そこで私公述の際に先ほど大体半分にまでなつていないと申上げましたのは、その最低の、旅費やらそれから年四回のボーナスもなくした八十五円の俸給だけから考えても、それだけになつておるのだと、そういう工合に申上げたわけであります。生活が困つておる実態ということは、そういうことからも申上げられると思いますが、まあ病気が殖えておるということ、それから借金ですね。これは私ども生活調査をやりましても殆んど借金をしていない者はありません。親のもとから通つておりますような二十歳前後の若い人ならば借金はありませんけれども、現に昨年の暮に、余りに年末資金要求が強いので或る銀行から相当金を借りたわけです。ところが今年の三月末までに返すということでありましたけれども、各組合の分会はもう絶対にあれを期限通りには支払うことができないから、もう少し延してくれと、或いは何かと帳消しにしてくれ、こういうような要求が盛んにやつて来ております。つまり借金はしたけれども、使つてそれを返せない。それから共済組合とかいろいろな方面で借金をしておりますけれども返済率が少いのであります。非常に焦げつきが多いということも生活に困つておる一つ実情になるかと思いますが、若しあれでしたらあとからそういう資料をお届けしても結構だと思います。
  38. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 佐藤君の公述に対する質問はこの程度でありますか。
  39. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 若し資料がすぐお手許にありましたら、一部でもいいのですが、国家公務員の実際の生計において毎月の……、事変前後どうなつて来ているか、実態生計費の調べがあるはずだと思うのですが、そういう事変前後から最近までの調査があれば非常に結構だと思うのです。これを一つお願いしたい。ないようでしたらなくてもようございますが。
  40. 佐藤忠夫

    公述人(佐藤忠夫君) お手許の資料は十一月であります。これはなぜそうなりますかというと、CPSの調査なり、或いは毎月勤労統計は役所でやつておりますので、而かも全国的な調査でありますので、時間的にどうしてもズレが出るというので、遺憾ながら遡つてつております。併し組合員自身の、幾ら赤字が出たとか、そういうことは今までも何遍も調査したこともございますし、いわゆる我々が生活白書と呼んだり、生活調査表と呼んだり、いろいろなことで各組合ともやつております。そこで給与共闘委員会におきましても、そういう労働省或いは人事院方面からの資料も相当集まつておりますので、そういう点は是非近々中に一つ準備してお手許にお配りいたしたいと考えております。
  41. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) それじや次に、中央酒類株式会社社長松隈秀雄君にお願いします。
  42. 松隈秀雄

    公述人(松隈秀雄君) 昭和二十六年度予算案を論評するに当りまして、何人も問題といたしますのは、歳出の合理的にして且つ有効な削減が行われたかどうかということと、その結果といたしまして租税負担が軽減されたかどうかということであろうと思うのであります。二十六年度一般会計予算は六千五百七十四億円でありまして、二十五年度の予算六千六百四十五億円に比べますというと、七十一億円しか減つておらないのであります。この点に関しましては二十五年度予算が二十三年度予算七千四百十億円に比べまして、七百六十六億円の削減を行なつているのに比べまして、遺憾ながら削減の割合が低いと存ずる次第であります。尤も二十六年度予算案といたしまして、昨年九月末閣議で内定いたしました案におきましては、歳出が五千九百八十億円であつたのでありまして、これがドツジ氏が来朝いたしまして検討した結果、決定案におきましては五百九十四億円増加いたしました次第であります。そこで本年度の予算と前年度の予算と対比いたしまして眼につきますことは、削減の大きいものは第一が、価格調整費の四百十五億円であり、第二が国債費の三百七十七億円となつております。前年度におきましては御承知の通り巨額の債務償還費を計上いたしまして、いわゆる超均衡性を持つといわれたのでありまするが、本年度予算におきましては、この点の行き過ぎは改められております。次に増加しているもののうち、最大のものは外国為替資金特別会計への繰入れ五百億円を中心といたしますところの出資及び投資の七百七十八億円でありまして、これは公共事業費千百五億円、地方財政平衡交付金千百億円、終戰処理費千二十七億円に次ぐ大きさを持つております。外国為替資金特別会計への繰入れは、いわゆるインベントリー・ファイナンスでありまして、これを一般会計で支弁すべきか、或いは金融操作によつて処理すべきかは意見が分れるところであります。結果的に申しますと、二十六年度予算が前年度予算に比べまして僅かの減少にとどまり、又昨年九月の閣議原案に比しまして五百九十四億の増となりましたのも、このインベントリー・ファイナンス五百億円を一般会計からの繰入れによつてつたからであるとも言えるのであります。現に閣議原案で五千九百八十億円の歳出を内定した当時は七百億円に近い減税ができる。税法上の減税においては、約九百七十億円に及ぶという発表であつたのであります。然るに決定案においては、租税及び印紙收入は四千四百四十五億でありまして、前年度の四千四百五十億円に比べますと僅かに五億円の減少に過ぎないのであります。尤も政府は税法改正案の提出によりまして、二十六年度に五千百八十八億円となるべき税金を四千四百四十五億円にとめたのであるから、税法上は七百四十三億円の減税であると言つております。更に二十六年度の地方税予算は二千八十七億円でありまして、二十五年度の千九百八億円に比べますというと百七十九億円の増加である点が注目を要すると思います。国民所得の増大はあるといたしましても、国税地方税を通じまして国民の租税負担が依然として過重であるということが今日一番問題であると思うのであります。  更に遡つて考えますれば長い戰争、そして敗戰によつて極度に疲弊した日本の国民経済にとりまして財政の規模が不釣合いに大きいということが禍いの根であると思うのであります。これを証しまする種々の資料があるのでありまするが、一例といたしまして昭和六年と昭和二十五年とを比較いたして見ます。昭和六年は実際の金額をとりますし、昭和二十五年は東京卸物価の指数で調整をいたしました金額によつて比較いたして見まするというと、先ず国民所得は昭和六年におきましては、百五億円でありましたものが二十五年は九十一億円でありまして、八八%に過ぎません。次に国民一人当りの收入昭和六年が百六十円でありましたものが二十五年は百十円でありまして、僅かに六九%に過ぎないのであります。然るに一般会計の予算昭和六年が十四億でありまするものが昭和二十五年が二十一億という数字になりまするから一倍半に増大しておるわけであります。即ち国家予算であるとか、或いは財政資金というものが日本経済に大きな圧力を持つておるということがわかるのであります。この予算の重圧ということが国民の租税負担の過重となつて現われるわけであります。ここで一つ問題になりまするのは、国家の歳出を減らして、租税負担を軽減いたしまするというと、民間資本の蓄積を図り得るのでありまするが、一方に消費インフレを招来する危險があるから、むしろ租税の形で民間資金をできるだけ多く吸收して、国家の手で公共企業等に投資するのがよいという見方と、国家が民間資金を引上げまして、これを使うということは民間資本に比しましてはどうしても生産的活動性が少いから、むしろ租税負担を減じて民間の資本蓄積を図ることが重要であるとの見方があるわけであります。いずれも一理ありまするが、今日の現状では前述のごとくに財政の規模が国民経済に比して大に失し、国民は納税に苦しみ、その結果後にも申述べまするように種々の弊害も生じておりまするので、財政の縮減と租税負担の軽減に力をいたすべきであるとの結論に達する次第であります。ここに注意を喚起いたしたいのは地方財政でありまして、国家予算は二十四年度を峠として下り坂に向つておるのでありまするが、地方歳出額は逆に上り坂に向つておりまして、二十四年度予算は三千七百九十八億円、二十五年度予算は四千九百九億円と増加いたしております。二十六年度においても増加することが見込まれておるのであります。  国の財政に対比するところの地方財政の比率は、昭和十六年度以降五割以下でありまして、一番低い時におきましては、国の財政に対して二割台であつたのでありまするが、昭和二十五年度においては、国の財政に対しまして七四%という比率にまで上つて來ておりまして、地方税が二十四年度は千五百二十四億円、二十五年度は千九百八億円、二十六年度は二千八十七億円と増大いたしているのと併ぜて対策を講ずる要があると思うのであります。これに成功いたしませんければ、国家財政の縮減、国税の軽減もその意義が失われるのであります。  そこで歳出削減の問題に移りたいと思うのでありまするが、二十六年度の一般会計予算、果して歳出削減の可能性があるかどうかということであります。二十六年度予算は本年の四月以降一年間の政府の活動を金銭の面から規定しておるのでありまするが、今後一年の問題といたしましては、講和問題の進展に伴いまして、その影響を考慮する要があると思うのであります。例えば再軍備の問題等であります。併しこれは事態が具体化した際に処置を考究すればよいということも言えるのでありまするが、ただ問題は物価の問題でありまして、この点だけは現に発生している事態でありまするので、よく究明しておく必要があると思うのであります。二十六年度予算は昨年の十月頃の物価基準によつているのでありまして、前年度の予算編成の際の物価基準に対して、政府説明によりますれば、一割乃至三割の物価引上げを織込んであるということの説明であります。併し昨年六月朝鮮事変が勃発して以来、物価は上昇傾向にあります。殊に中共の朝鮮事変介入以来世界的軍拡傾向にある次第でありまして、又米国は戰時経済体制をとりまして物資の統制を拡大し、又物価賃金の凍結を断行いたしたのでありまして、それらが日本経済に影響して来るところは実に大きいのであります。更に我が国といたしましては、中共貿易の禁止によりまして、中共から輸入する品物を他の地域に切替えることを余儀なくせられました上に、世界的運賃の暴騰は輸入難に拍車をかけ、又輸入コストに大きく影響することを考えまするというと、物価は上る一方であると思うのであります。二十六年度予算六千五百七十四億円のうち物件費は、政府予算説明によりますれば、二千十四億円となつておりまして約三分の一を占めております。物価が仮に予算編成当時に比し二割上つたといたしましても、四百億円以上の予算不足を生ずるのであります。政府予算に彈力性を持たせてあると言つておりますが、果して如何なることを考えておらるるのでしようか。二十五年度におきましては先ほども申述べました通り巨額の債務償還費を計上しておりました関係上、国債費のうちから臨時に起りました警察予備隊と海上保安庁とに必要な金二百四十五億円というものを移用することにしたのでありまするが、今年度には債務償還費が巨額に見積つてありませんから、そういう手はないわけであります。本年度といたしましてはインベントリー・ファイナンスに手をつけるくらいしか移用の途はないと思われるのであります。  次に歳入面に移つて論評いたしたいと思うのであります。二十六年度歳入予算中、租税及び印紙收入は先ほど申上げた通り四千四百四十五億円であります。專売益金も消費税的性質を持つておりますので、專売益金千百三十八億円を加えまするというと五千五百八十三億円が広い意味の租税でありまして、歳入の実に八五%を占めているのであります。租税の国民所得に対しまする割合は大蔵省が議会に発表したところによりまするというと、国税だけで一四・七%、地方税を含めて二〇・二%ということになつております。なお同じ発表によりますれば、二十五年度について国税地方税合計額の国民所得に対しまする割合を日米英を比較いたしまして、日本は二二・六%米国は二六・六%、英国は三六・八%として日本が一番低率になつていると発表しております。併しエンゲル係数が近年改善されたとは申しましても、なお食費だけに收入の五割以上を費しまする国民と、それが三割程度で済む国民とでは税を負担する力に大きな差のありまするととは論ずるまでもないのであります。更に問題を具体的に取扱つて見まして、今回の税制改正後においても夫婦者の勤労所得者は年收五万二千九百四十二円、即ち月收約四千四百円から、又夫婦に子供二人即ち四人世帶の勤労所得者は年收十万五千八百八十三円、即ち月收約八千八百円から所得税がかかることになつております。夫婦きりでも月收四千四百円ではとてもやつて行けるはずがありません。夫婦に子供二人即ち四人世帶で月收八千八百円ではぎりぎりの生活しかできません。これらの所得者を課税の圏内に入れることは何としても苛酷であると言えると思うのであります。所得税だけならばまだしもこれに加えて市町村民税がかかり、又住宅には固定資産税がかかつて参ります。そこで巷には、正直に所得を申告して納税していては食つて行けないという声があるわけであります。これが納税申告を低調ならしめ、或いは滯納増加の原因となつており、延いては税務行政を複雑困難ならしめていると思うのであります。敗戰国の状況から見まして、又日本を援助しておる米国が増税をしている際、これ以上の減税は困難であるとの見解も成り立つのでありまするが、自立経済の絶対的要件といわれる資本蓄積、生産増強等の観点から、或いは税務行政の円満な執行、そうして能率を上げるという見地から重税は決して得策でないということも考えて見ることが必要であるように思うのであります。  所得税納税人員は戰前は百万へ前後でありましたものが二十五年度には千五百七十七万人で十六倍余に殖えております。このうち源泉課税の分は比較的に手数を要しないのでありまするが、申告納税者は約五百五十万人あります。これが手数を要するのであります。もう少し基礎控除を引上げたり、或いは税率の引下げ等で納税者数を減らすことができますれば、税務官庁の手数が省けまして調査能力が出て来ると思うのであります。そこで調査能力が出て参りますれば調査が行き届くようになりまするので、不当に課税を免れている部分に課税が徹底することになりまする上に、負担の不均衡を歎く不平の声もなくなり、納税観念も向上するので、課税最低限の引上げ、税率の引下げにもかかわらず税收入が減らず場合によつては増加するとさえ思われるのであります。五百五十万人の申告納税者を約一万人の税務官吏が受持つておるのでありまして、一人の受持が五百名余りであります。戰前におきましては熟練した税務官吏は千人からの納税者を受持つたことがあるのでありまするから、今日の分担は必ずしも多過ぎるとは思えないのでありまするが、税務官吏に未熟練の者が多いためであるか、或いは戰後納税者の納税観念が低下したためであるか、甚だ能率が上つておらないように見受けるのであります。営業者につきましては実際を調査する割合が極めて減つております。又同業者間の負担の釣合いを図るための、いわゆる権衡調査と言つておりまするが、その権衡調査までは行つておるのでありまするけれども、広く納税者の分布状況、課税洩れの有無、負担の適不適等を調査勘案いたしまするいわゆる戸順調査又は戸押調査というものまでは手が廻りかねておるのが実情であります。従いまして随分課税の不権衡が起つておるのであります。所得税におきましては源泉徴收というような関係があつたり、或いは累推税率というような関係がありまするので、他人の納税額はわかりにくいのでありまするが、たまたま二十五年度において住民税の所得割が所得税の一八%を標準といたしまして、住民税は近所の人に比較的知れ易いのであります。そこで所得税が重過ぎるとか、軽過ぎるとかいうことに不審を抱く者が出て参つたのであります。この点は戰時中もあつた例でありまして、戰時中に国債を消化する際に、隣組で市町村民税を標準に国債の割当を行なつたことがあります。それまでは市町村民税の権衡のとれていないということが比較的問題にならなかつたのでありまするが、国債がそれを標準として割当てられるようになつてから俄然市町村民税の不均衡に気が付いてということがありまするが、所得税の凸凹ということが、住民税において所得税を課税標準にとつたことから人の注意を非常に引くようになつてつたようであります。その人の住居であるとか、或いは生活から見まして余りにも住民税が少いと、その人は所得税をごまかしておるのであろうと疑いたくなるのが人情であります。そうすると自分だけ正直に納税しておるのがつまらなくなり、その結果は申告にも納税にも非協力になりがちであります。そうなると申告をさせたり、或いは更正決定をしたりすることに税務官庁の手数が殖えて來るのでありまして、又滯納整理ということも大仕事になるわけであります。  そこで私は是非戸順調査を行うことを提唱したいのであります。戸順調査を行うからといつて、先ほども話が出たように柿の木が何本あるとか、鷄が何羽おるとかいうような細かいことに拘泥しろということではありません。大局的に観察して誰でも気の付くような大きな不公平をなくすということだけで結構なんであります。例えば相当に担税力はありながら全然納税していない者がいる。これはブローカーのような商売をしている人にはその例があることであります。又は著しく低い課税で免れている者がないようにできますれば、国民感情は満足するのでありまして、納税思想が高揚される次第であります。人によりましては、ドイツで問題になつた支出税というのがありまするが、これはその人の生活程度、例えば自動車があるとか、或いは電話があるとか、雇人がいるといつたような支出を参考にいたしまして、生活に要する費用を測定いたしまして、そこから所得を推定して、課税する案を勧める人もありまするが、新税の創設ということは相当問題でありまするし、又この支出税は支出税としての短所もありまするので、そこまで行きまするのは行き過ぎであるといたしましても、もう少し納税者の実態調査ということを徹底する必要があるのであります。今回所得七十万円以上の人は、財産の明細書を出すことになつておりまするのでありますから、これをも記入いたしまして納税者の分布及びその隣戸の実況等は一覽してわかるような納税者図というようなものができるといたしますれば、課税の公平にはかなり役立つのではないかと思うのであります。  次に、方面を変えまして、酒税或いは物品税等の間接税につきましても、税率が余り高いということは脱税することによる不当利得が大きいので、つい脱税を誘致しやすいのであります。商品原価に占める税の割合が非常に多い場合に、一部の業者が脱税して安売りをするということになりまするというと、正直に納税している業者はこれと競争ができない、その結果、止むを得ず脱税に誘われて行くというようなことがあるのであります。税率が低ければ脱税の利益も少いので、誰も好んで税を免れる者はないと思うのであります。不正業者が脱税で競争することがなければ、正直な者も安心して納税をいたしまするから、両々相待つて税率を下げても税收入は減らないということになるのであります。税率ばかり高くして、税收を確保しようとしているということは、とかく陷りやすい錯覚でありまするが、嚴に反省を要することであると思うのであります。  結論といたしましては、財政規模の縮減を真剣に取上げてもらいまして、その結果生ずる財源を租税負担の軽減に向けて欲しいのであります。議会におきましては、税法改正の審議されまする委員会におきましては、租税負担が重いというようなことが問題になつて論ぜられるのでありまするが、歳出予算の審議になりまするというと、とかく多々ますます弁ずる式になりがちであります。そこでどうしてもこれは何とか新らしい工夫が必要であるように思うのであります。或いは一つ特別の委員会を設ける、それも議会中でなく、継続的な委員会のようなものにいたしまして、予算成立前におきましては、專ら歳出削減の面を研究いたしますると共に、成立後の予算の施行につきましても歳出の節約に関心を持つて、随時必要な調査と監督を行うようにして頂ければと思うのであります。殊に地方歳出の縮減が重要でありますことは、先ほども申上げた通りであります。国税は減りましても地方税が増すのでは国民の納税の苦痛は緩和されません。地方税の軽減につきましては地方自治庁自身も行政整理によるほかないことを認めております。本年の二月二十四日の東洋経済新報に、地方自治庁財政課長奧野氏が送つた論説が出ておりまするが、現在の地方行政は贅沢過ぎる、このままでは行政亡国は避けられないのではないか、と言つておるのであります。御参考までにここにその一節を読んで見たいと思います。「アメリカのよい制度を採り入れることは誠に結構なことである。封建的な旧制度は是非民主化しなければならない。ただ、その場合、日本実情に即した方法を採ることを忘れてはならない。われわれが五年間やつて来たことは、正直にいつて乞食が百万長者の生活を真似ているような気がする。贅沢な組織も充実した行政も、懷勘定を忘れてはならないと思う。  昨年夏以来、地方税の負担が重いという非難の声が高いが、何故に負担が重くなつたか、その原因を考えて貰いたい。国が府県や市町村に、現在のような贅沢な金遣いを強制している限り、地方団体は巨額の金が要る。けれども今日はそれを賄うだけの財源を住民に求めることは不可能に近い状態だ。だから今日の問題は、府県や市町村に財源を与えるということよりも、国が府県や市町村に強制している仕事を一時中止することである。これを解決しない限り住民の負担は軽くならないと思う。政府は府県や市町村に節約せよ、冗費を省けといつているが、冗費はあるとしても極めて小さいものと思う。無駄をなくせといいながら、一方で非常な無駄——といつて惡ければ、分に過ぎた贅沢な施設を強要しているのが現状である。」こういつております。で、一番最後に「今日混乱した地方財政問題の解決策は二つ考えられる。仕事をさせるなら財源を与えること、さもなくばこれ以上の仕事を強制しないことだ。しかし財源を与えるといつても、結局負担がかかるのは国民である。そして国民はこれ以上の負担には耐えられまい。つまるところは、これ以上の強制をしないこと、更に一歩すすめて、終戰以来五年間にふくらんだ現在の機構や行政内容を再検討し、国民の懷具合に釣合う程度に簡素化することである。このままでは、行政亡国は避けられないのではあるまいか。」というのが地方自治庁財政課長の御意見であります。そこで病根はわかつておるのでありまして、どう治療するかであります。このような問題こそ議会が取上げまして、全智全能を傾けて解決を図りますることになれば、それによつて国民負担は軽減されますし、その結果は負担の公平ということも望めるようになり、納税道徳が向上することになりますので、税收入は強力性を発揮いたしますでありましよう。従つて財政の健全性ということも期し得ると思うのであります。これを以て終ります。
  43. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 只今公述に対して御質問ございましたら……。じや私から一つお尋ねしたいと思いますが、今財政規模が非常に大きいというお話があつたのですが、成るほど戰前に比べますと相当大きくなつておりますが、併し戰後の形として、世界的に財政規模が大きくなつておることは、一つの世界的なる傾向でもありましようし、そういう点から見れば、さつき租税負担も国民所得との比較においては、諸外国に比べればまあそれほどではないという数字をお述べになつたのですが、同じような意味において財政支出としても、戰後の傾向としては、これは或る意味では止むを得ないじやないか、逆にこの国際的な比較から見れば止むを得ない点もあるのじやないかという気もするのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  44. 松隈秀雄

    公述人(松隈秀雄君) 只今お述べになりましたように、戰後の一般的な傾向といたしましては、国家財政が膨脹の趨勢にあるということは事実であります。ただ日本におきましては、終戰以来国家財政においては租税負担がやかましくいわれましたことと比例してであると思うのでありまするが、財政縮減の方向に向つておる、それだけ財政が改善されつつあるということは慶賀に堪えないのでありまするが、何といつてもこの日本が長い戰争をして、そうして敗けてしまつて、極度に疲弊しておるという点を考慮に入れまするというと、世帶が脹れ過ぎておるということは何人も考えると思うのであります。この点につきまして、諸外国との比例、比較でありまするが、とかくこれがミス・リードと申しますか、人を過つのでありまして、数字の上では財政の規模の国民所得に対する割合におきましても、又先ほど申述べました租税負担の国民所得に対しまする割合におきましても、日本はそう極端に悲観すべき数字には出てないのでありまするけれども内容から申しまするというと、日本国民の実力が非常に戰前に比べて減つておる、これがうまく数字に出ないのであります。例えば同じ国民所得にいたしましても、その総額を捕えただけでは議論が不十分でありまして、非常にたくさんの国民が僅かの資産しか持つておらん、僅かな所得しか持つておらん、それを寄せ集めてその総額が多いということではやはり力がない、これに反して国民の数が少く、そうして所得なり、国富なりが多くて一人頭が非常に多い、そのことは先ほども申上げましたように、生活の面におきましても衣食住に是非割かなければならない部分というものが比較的少い、こういう国と、それに大半が取られる国とではいろいろな、この支出余力の点で現実に違つて来る、これを考慮に入れますれば、やはり私は財政の規模がどうしてもまだ国、地方を通じて日本実情に照らしては賛沢過ぎる。或いは大き過ぎる。それから租税も国民の懷ろ勘定に比べては重過ぎる、苦し過ぎる。こういうことは否定できない、だんだんよくなつておりますけれども、もう一歩よくするということが更に他の方面においてもいい効果を挙げる基になる、こういうように考えております。
  45. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) もう一点それじやお尋ねいたします。納税者全体が非常に多過ぎて捕捉が十分に行われていないから、むしろ基礎控除なり、何なりを上げて正確に收入したほうがより税收が多くなるのじやないかというお話ですが、そういう感覚からした場合に基礎控除、その他を今よりどれくらい上げたら、引上げたにかかわらず税收は殖えるというような線になるというふうなお感じがいたしますか、大体の感じでいいですが。
  46. 松隈秀雄

    公述人(松隈秀雄君) 只今の御質問は非常にむずかしい御質問でありまして、基礎控除というものは、戰前の免税点というものに或る意味で匹敵するのでありますが、御承知の通り、戰前個人所得税においては千二百円というのが免税点でありました。今日は基礎控除で従来二万五千円、それが三万円に引上げることになつたのでありまするが、一般物価が二百倍に上つておるということから考えまするというと、戰前の千二百円と今日の三万円を比較したのでは問題にならないのであります。さらばと言つて、それに匹敵するまで基礎控除を上げるということになれば、これは税收が非常に減つてしまいます。その点見当を付けかねますけれども、先ほど私が述べましたような夫婦の勤労者又は子供二人の勤労者の生活程度から申しますると、三万円というようなものは確かに低いのでありまして、これを倍くらいにまで引上げるというようなことにでもしないというと、余り税の圧迫がひど過ぎる、そういうふうなときに、果して調査が本当に徹底して課税洩れ、課税の低いものを救い上げて穴が埋まるかどうかという点でありますが、これはやり方によつては埋まると思うのでありますがその見当を付けることはなかなか容易じやないと思います。
  47. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) それからもう一つ酒税の関係ですが、これは一番大きい問題であると思うわけでありますが、前の二十五年度は千四十六億の予算、それでその場合に税を引下げまして、引下げても税收は減らないのだ、むしろ来年度あたりはこれと逆に殖えるのだというようなことが、あのときの酒税引下げの大きな理由になつていたのですが、今度出された予算考えますと、それほど、言われたほど、宣伝されたほど、税收は殖えてないのですね。これはさつきのお話によると、もつと下げたほうが税收が殖えるのか、或いはもつと他の原因で税收がそう殖えないのか、その点はどういう事情になつておりますか。
  48. 松隈秀雄

    公述人(松隈秀雄君) 酒の税金につきましては、昨年十二月改正以前の税金は、昨年の四月に、シヤウプ勧告の結果、一般物価が下る、殊にたばこのようなものが下るというようなときに、反対に引上げられましたために、非常に酒の価格が高過ぎまして売れにくかつたので、これは税が高過ぎる、税が高過ぎるということになりますというと、先ほどもちよつと申上げましたように、脱税をすることによる利益が大きいものですから、密造者が密造した酒を売り歩くということによつてますます正規のものが売れなくなる。そうすると税收入が減つて行く、一方では、このままではいかん、ここで税率を下げて、そうして酒の価格を低くすれば、密造者が引合わなくなつて引つ込むから、その代りに正規の酒が進出して行くからして、税率は下げても酒の税金は減らんということを我々は主張したのであります。本年度の予算を見てみまするというと、酒の税金は千七十億円で、昨年のどの予算よりも少し殖えておりますが、これはただ、もう少しこれより殖えたはずではないかというような点があると思うのでありまするが、それは御承知の通り酒の原料の中、米と麦は、今日まで統制されております。麦はまあ近く外されるのでありまするが、少くとも米の統制は続いておりまして、お酒に使う米の量というものが制限されておる。「いも」のほうは自由になりまして、統制がないのでありまするから、このほうの酒は「いも」が獲得できる限り殖えるはずでありまするが、その原料の見通しにつきまして、昨年考えたことと最近の状況とで或る程度の食違いがありまするから、お尋ねのようにもう少し殖えるべきであつたのが、僅かの増でとどまつておるのではないかと思うのであります。  更に第二のお尋ねの、もつと税率を下げたならば、もう少し酒税收入が殖えるということにならんかというお尋ねでありまするが、これは今も申上げたように、米から作る酒については望みのないことであります。「いも」から作る酒につきましては原料事情が昨年考えた当時と今日とで少し事情が違つておりまするから、差当りのところでは税率を下げても供給力のほうに限りがありまするからして、思うように殖えないと思います。もう少し原料事情がよろしいということであれば、私は税率をもう少し下げて、市価をもう少し下げれば酒の税は上つて来ると、かように考えるのであります。一体日本人はどのくらい酒を消費しておつたかと申しまするというと、戰前におきましては景気のいい時は、国民一人当り一年に一斗二升ぐらい、景気の惡い時でも八升ぐらい消費した実績があるのであります。仮に真ん中をとつて一斗平均飲むといたしますれば、八千万人でありますから八百万石の酒が消費されるわけであります。今日できておりまする酒は清酒、合成酒、焼酎、ビール、それから雑酒、果実酒の一切を合せまして、四百万石を少し超えてる程度でありますので、戰前の消費量から見れば正規のものは申分を少し超したぐらいしかない。その以外は景気が惡いから飲むのを我慢しておるか、或いは密造がそれに食い込んでおる。こういう状態でありまするので、もう少しこの酒が下つて購買力に匹敵し、それから密造が引合わなくなつて引込めば、正規のものが割込んで行く余地があるのでありまするから、理窟としては税率を下げて市価を下げれば正規のものが伸びることによつて、酒税は上る、こういう理窟は成立つのであります。ただ原料事情と睨み合せて申上げないというと、はつきりしたことが言えない。今年はまあ原料事情は今のところ一ぱいですからして、税率を下げても供給力が余り増さん。将来ならばまだ今申上げたように正規のものが伸びる余地がある、こういうことを申上げられると思います。
  49. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) それでは次に、日本産業協議会理事仲矢虎夫君。
  50. 仲矢虎夫

    公述人(仲矢虎夫君) 御承知のように現在の日本で一番やかましい問題になつておりますのは、統制の問題と、それから物価騰貴、いわゆるインフレと称しておりますが、このインフレ、これがインフレであるかどうかは別といたしまして、統制と物価騰貴の問題であります。これを回避する、これを避けて行くということがまあ当面の非常に重要な問題となるわけでありますが、それを避ける最も決定的ないい政策の一つは輸入の促進の問題であります。ところがこの輸入促進の問題は従来非常に官庁のほう……政府のほうでも、それから民間業界のほうでも非常にやかましく真劍に取上げられておるにかかわりませず、一向に輸入が伸展していないので、結局現在では輸入が立遅れになつておるというような状況でございますが、併しそれかといつてもうやつてないというわけのものでもございませんので、今後におきましても、この輸入促進の問題に努めて頂きたいと思うのであります。これにつきましては、これは誰でも申すことでございますが、ただ輸入に当りましては、輸入金融の問題とそれから為替の割当、その他この貿易の方式、いわゆる輸入方式の問題と、それから船の手当の問題、この三つに盡きるわけでありますが、このうち輸入金融の問題につきましては、とかくこの財政金融当局、関係者はどちらかというと、いわゆるこの信用膨脹から参ります通貨の増発を非常に、極度に恐れる余りに、実際問題としてこれに対して消極的な態度をとつておるのであります。で、私はこの最近の政府の政策につきまして、根本的な経済国策といつたような中心政策がなくて、やたらに財政金融政策のみが突走つて行くというところに非常な問題がありはしないか、こう思うのであります。例えば輸入の問題につきましても、輸入するのか、しないのかという問題を根本的に考えるべきであつて、先ず輸入の方式がどうであるとか、或いは輸入の金融がどうであるとかといつたような、いわば、二義的な問題に一生懸命騒いでおるという恰好に私は見ておるわけでありますが、併し問題はそういう輸入の方式とか、そういうことではなくて、輸入するのか、しないのかということを、先ずきめることが、第一の問題だと思うのであります。そういう観点におきましても、ややもすれば財政金融当局というものは、これに対して消極的になりがちでありますが、この問題につきましては、いろいろなむずかしいインフレの理論もあると思うのでありますが、通貨の量が殖えるということを以て、必ずしもインフレであるということに定義することは、これは非常な誤りでありまして、又仮にそれがインフレになる場合があるといたしましても、物価の騰貴というものは、必ずしも通貨の絶対的な増加、通貨の増発ということからだけ来るのではなくして、物資そのものの不足という逆の面から来ることもあるわけでございますので、この点も考えて頂きたいと思うのであります。それから更に仮にそういう問題があるといたしましても、輸入するということは、結局ただで輸入して来るわけには参りませんので、いずれ行く行く通貨の吸收になる。これは時期の問題もありますが、いずれは増発された通貨が吸收せざるを得ないわけでございますから、この点も今のようなことを考える前に十分に考えなければならんことだと思うのであります。従いましてこの輸入金融についてはそういう問題があるわけでありますが、輸入の次に、第二の輸入の方式につきましてはかねがね産業界といたしましてはいろいろな要望を関係政府当局にも要望いたしまして、最近におきましては、殆んど、例えばこの輸入外貨予算の増大であるとか、或いはいわゆる自動承認制の拡大であるとか、或いは長期契約子算の実施であるとか、或いはドル地域からの買付けの増大であるとか、その他のいろいろの要望が大体最近におきましては実施されるに至りましたので、この点については大分問題が解決されたように思うのでありますが、ただ外貨予算の編成に当りまして現在三カ月区切りになつているのでありますが、これを六カ月乃至一年ぐらいに、拡大して融通性を持たせるということと、それからいま一つ、輸入に当つての自主性と申しますかを確保する意味におきまして、又適当な値段で、適当な時期に売るという、そういう商機をつかむ意味におきましても、例えばガリオア物資で入つておる油脂原料としての大豆といつたようなものは、これはむしろ自動承認制くらいにするといつたようなことが一、二考えられるわけでありますが、併しとにかくその方式の問題といたしましては、大体現在の方式は改善のあとが顯著に見られるわけであります。ただちよつと申し落しましたが、先ほどの輸入金融、それからいま一つ第三の船舶の対策でございますが、原料輸入を促進するために、船舶対策が急務であることは先ほど申しましたが、今年も見返資金の海運支出は昨年に比べて二十億減少しているような状況であります。日本経済を維持して行く上に、造船、それから海運が決定的に重要な意味を持つているということは、これは現在のような状況にならない前から明らかなことでありまして、急に最近船が足らなくなつたということで、騒ぐこと自体が非常に不見識であると思うのであります。併し現在となつてはそれもいたし方がありませんので、今後の問題として、例えば六次船の場合も非常に困難を来たしましたが更に今度の問題におきましてもますます困難なことが予想されるのであります。強力なこの点の対策が必要であると思います。二十六年度の初めにおきまして、船腹の不足は大体九十六、七万トン、大体百万トンと言われているのでありますが、これを戰時標準型船舶の改造とか、或いは外国船の買入れとか、或いは沈んだ船の引揚げ、それから新造船といつたようなことで補填するのに、合計大体四百九十億の資金が必要とされているのであります。貿易特別会計の余裕金五十億で中古船を買入れるということが実現いたしましても、まだまだ多額資金が必要であります。ところがこれに対しましては市中銀行としましては非常に造船金融が長期に亙るという、又同時にリスクを伴うという関係上、造船資金融資することはどちらかと言えば見送りがちの状態で表ります。従つて、どちらかと言えばこれは造船対策といたしましては、結局何らかの長期金融機関を設立して、これに当たるということが、どうしても必要になるかと思うのであります。この長期金融機関の設置につきましては、單に造船ばかりでなくて、鉄鋼、電力、石炭等非常に長期に亙るもので、且つリスクの相当伴うというものがございますので、單に政府考えておりますような復金の回收金の四十億と、それから見返資金の運用益の八十億、合計百二十億の基金でこの長期金融機関を設置しようとしておるのでありますが、これにつきましては、伝えられるところによりますと、新規貸を認めないで、單に市中銀行の現在行われておる貸付の肩替りにとめようとしておるようでありますが、このようなことではとても当面の対策に応じ切れるものではございませんので、どうしても、以前ありました興業銀行であるとか、或いは勧業銀行というようなものを、以前のような姿で復活することが、不可能だろうと思いますが、現在のように商業金融も、中期金融も、長期金融も、ごちやごちやに分れておる。こういうでたらめな金融制度でなしに、それぞれの適当な需要に応じた長期金融機関を作ることがどうしても必要だと思うのであります。従つて私は特別銀行法をなくしたということはこれは非常な失敗であつたということを断言し得ると思いますので、どうしてもこれに対して何らかのもう一度その点を振り返つて再検討する必要もありはしないか、こういうふうに考える次第であります。  以上は、大体輸入の問題について申述べたのでありますが、一つ予算そのものの特別会計の問題といたしましては、例の鉄道輸送の増強の問題を要望したいと思うのであります。朝鮮事変以後、特需その他の関係上、鉄道輸送が非常に円滑を欠きまして、貨車の滯貨は……最近駅頭の滯貨は大体百六十万トン近くあると言われております。国鉄の輸送増強のためには、廃車の補充を大体年五千輛必要とすると言われでおるのでありますが、伝えられるところによりますと、これは大体二千輛近くに減るのではないかと言われておるようでありますが、この点も先の船の問題と同様に、いずれ経済規模が拡大するにつれて輸送力が必要になるということは、これはあらかじめ許されておる事実であります。そのときになつて騒ぐということはこれは余り智慧のあるやり方ではございませんので、こういうようなこともただ当面のその日暮しという意味ではなしに、そうしたいろいろの対策を要望する次第であります。  同じく電話施設の改善の問題であります。電話の復旧につきましては、これはまだ非常に遅れておりまして、御承知のように、電話が甚だしく……聞くところによりますと、通話率が大体四〇%程度だと聞いておりますが、なお電話の申込、その他も何年待つてもわからないというような状態であります。これというのも結局これを政府予算としてやつておるからでありまして、これに対して何らかの対策を必要とするということは、従來から言われておつたことであります。ところが最近政府は有線電気通信法案と電気通信営業法案とを国会に提出いたしまして、民間の構内電話なり、或いは民間の構内の交換電話、それから普通の自宅の宅内電話、こういうものを原則として政府予算……国でなければ施設できないというふうにしておるようでありますが、これは加入電話の増設を不足がちな政府予算の枠の中に閉じ込めるということになりまして、通信の復興を阻害することが非常に大きいわけでありますから、この点につきましては電話施設の増強に支障のないように法案の内容を検討いたしまして、でき得べくんば、むしろ電話公債でも発行して、この拡充に努力して頂きたいと思う次第であります。  それから最後に物価の問題でございますが、聞くところによりますと、予算案は昨年の十月頃の物価を基といたしまして、一般、特別両会計、それから政府機関、資金運用部を通じまして約百十億の支払超過予算として組まれているようでありますが、その後の内外情勢の急変に照らして見るときに、右のようなことで間に合うかということが恐れられるのであります。一つ海外物価の騰貴、特に食糧価格、それから運賃の騰貴に鑑みまして、価格調整費の再検討がどうしても必要であると思います。現在組まれている価格調整補給金小麦、米、大麦というようなものを合せまして三百二十万トン分、二百二十五億円が計上されておるようでありますが、十月頃の單価でありまして、すでに一割近くの現在値上りをいたしております関係上、こういうことで賄えるかどうかということも考えておかなければならんと思います。それからこの食糧補給金の問題に関連いたしまして、肥料の価格の問題があります。肥料の価格食糧問題と同列の意味において、これは切り離すべからざる重要性のある問題でありますから、このためにこの輸入燐鉱石に対しまして四月以降の補給金を支出する必要がどうしても出て來ると思うのであります。大体政府もそのつもりであるようでありますが、この点燐鉱石については、この運賃だけでもすでに現在二倍近くの値上りを来たしておりまするし、それだけで輸入価格に大体五割の影響を及ぼしている次第でありますから、これにつきまして、この点からしましても補給金予算はこれを増額する必要があるかと思うのであります。なおこの補給金の問題に関連いたしましては、政府は四月以降の銑鉄の価格統制と、それから配給統制を継続するといたしましても、補給金は四月以降これを削除するというふうなことを言明しておるようでありますが、そういうようなことが果して事実可能であるかどうか、非常に疑問でありまして、場合によつては結局銑鉄のマル公を引上げると同時に、或る程度補給金を、これは現に一貫メーカーは補給金を撤廃して、一切の統制を撤廃して欲しい。統制を撤廃してもらえば補給金は要らないということを一貫メーカーは主張しておるのでありますが、政府の方針としましては四月以降もこの統制は続ける、統制は継続するとしても補給金は出さんというようなことを言つておりますが、これが場合によつては結局或る程度マル公を引上げると同時に、何がしかの補給金を出さざるを得なくなるような事態が来るのではないかということも考えて置いての補給金予算を組んで頂きたいと思うのであります。大体以上で私の公述を終りたいと思います。
  51. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 只今公述に対しまして御質問はありませんか。
  52. 平岡市三

    ○平岡市三君 今お述べになりましたこの輸入の問題でございますが、勿論輸入を促進するためには金融、船舶等を十分考慮する必要があることは言うまでもありませんが、実は輸入のうち、この備蓄輸入の問題でございますが、これに対しましては業者のかたがたが、例えば紡績事業などを考えた場合におきまして、大体原料の貯蔵というものが平常におきましては一年くらいだろう……そうしますればそれ以上の原料の輸入を備蓄輸入と、こう称せられるだろうと思うのでありますが、ところが、業者のかたが二年、三年の先の原料までを今日の国際情勢の変転極まらない時代に、備蓄輸入をするということは、非常に一つの大きなリスク、危險を負担しなくちやならん、こんなような意味で、業者が余り先物の輸入を好まない。こういうことが輸入が比較的促進されない一つの原因である、こういうふうに聞いたことがあるのでございますが、その点は如何なものでございましようか。
  53. 仲矢虎夫

    公述人(仲矢虎夫君) 御説の通りでございまして、大体二年なんというようなものは、私どもの調べでは極めて例外でございまして、こちらで調べたもので二年分に相当するようなものも一、二ないではございませんが、大体において、六カ月くらい持ちたいというようなものが普通でございます。中には勿論もつと、それより一年分くらいというようなものもありますが、併しそういうようなものは非常に大量の物資ではなくて、割合に量としては少い。それからなおそれと関連いたしまして、この政府輸入と民間輸入の問題がございますが、この点につきましては民間としてはできるだけ、自分で入れたいというふうに希望しておりますが、ただ自分で入れるという場合に、お話のようにリスクの点、それから金融の点とございまして、なかなか自分で入れるということには非常に限度がございます。例えば調べたところによりますと、自分で希望するものが大体自分でできるというのは、これはもう紡績の関係は調べにはございませんが、化学纎維、それからパルプ、板ガラス関係では大体自分の欲しいものは自分で入れる。併し、その他麻であるとか、或いはカリ塩であるとか、それから火薬、そういつたようなもの、それから電線関係、それから燐酸肥料、こういつたようなものについては殆んど当面のランニング・ストツク以外に自分で求める能力がないという調べであります。
  54. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 別にございませんか。……なければ次に立教大学教授の藤田武夫君にお願いいたします。
  55. 藤田武夫

    公述人(藤田武夫君) 二十六年度の国家予算につきましては、いろいろな観点からこれを批評することができると思いますが、私は今日は地方財政との関係から明年度の予算を検討して見たいと思うのであります。  地方財政の問題といたしまして、第一に問題になりますのは、御承知のように地方財政平衡交付金の問題であります。地方財政平衡交付金は、シヤウプ勧告による改革以後、二十五年度においても二十六年度においても地方団体收入総額の二〇%乃至二一%という大きな割合を占めておるのであります。特に財政力の貧弱な、例えば山形県のような場合をとつて見ますると、二十五年度におきましては、県税收入の三・七倍の平衡交付金が交付され、又秋田県では三・三倍の交付金をもらつているといつたような状態であります。又町村におきましても町村税收入の二倍乃至三倍というものも決して稀れではないのであります。こういう状態にありますために、平衡交付金の総額が不十分であり、又配分の方法が不適当であります場合には、これらの地方団体の財政に対しまして決定的な影響を与え、又それからその地方の住民の租税負担にも大きな関係を持つて来るのであります。  ところで二十六年度の予算におきまして、こういう重要な意義を持ちました平衡交付金の総額を見てみますると、大蔵省の案といたしましては一千百億円計上されております。それに対しまして地方財政委員会側からの要求は一千二百九億七千五百万円ということになつておるのであります。その間に百九億七千五百万円の食い違いが出ておるのであります。平衡交付金の本来の算出の仕方はすでに御承知のように全国各地方団体につきまして基準財政需要額と基準財政收入額とを計算いたしまして、收入額が財政需要額に足りない不足額を集めまして、これを国の予算に十分な額において計上しなくてはならない、そういう法律上は建前になつておるのであります。併しながら今日の財政の実情の下におきましては、一応今言つたような基準財政需要額と收入額による計算をいたしてはおりますが、併し明年度の地方団体の経費の増加額と、これに見合うところの財源との関係から、その開きから平衡交付金の額を見て行こうという考え方もかなり強く働いているようであります。従つて当面の問題といたしましては、平衡交付金の額が適当であるかどうかということは、この明年度の地方財政の大きさ、即ち地方経費の増加額とこれに見合うところの財源の如何という問題にかかるわけであります。それでこの二つの点を見て参りますると、明年度の地方経費の増加額の見込みにつきましては、大蔵省では五百八十一億円、地財委のほうでは七百十二億円と見込んでいるのであります。その間にかなりの食い違いが見られるわけであります。その経費増加の内容を見てみますると、給与ベースの改善、又年末手当の支給その他によりまして、大蔵省では百八十億円、地財委では二百五十七億円というふうに見積つております。そうしてこの両者の違いにつきましては、地方におきましては御承知のように非常に団体の数が多いために高給職員が割合に多い、又長期間勤続の職員が多いといつたふうに、中央の職員とはその構成の内容が違つているというふうな、その他にもあるようでありますが、問題がこの食い違いを生じた原因だと言われているのであります。又国庫補助金及び法令等に伴う地方経費の増加、これにつきましては、大蔵省では七十八億円、地方財政委員会では九十五億円、又公共事業に伴う地方負担の増加についても両者の間にかなりの食い違いがあるのであります。この二つの点におきまする食い違いは、中央で見積りましたところの事業費の單価と、地方において実際にその事業を実施しまする場合の事業費の單価との食い違い、或いは国庫の補助の直接に対象にならないものであつて、それに連帶した事業について地方ではいろいろな経費が必要である。そういつた点がこの食い違いの大きな原因であるようであります。そのほか人口の増加に伴う経費の増加につきましても両者の間に食い違いがあるのであります。これは人口増加に伴う経費の増加の比率、又地財委のほうで言いますれば、平衡交付金の基準にしておりまする某準財政需要額との関係、そういつたいろいろな点から食い違いが出ているようであります。この両者の見積りについてどちらが正しいかというふうなことは、具体的な基礎資料を持ち合せておりませんので、私がここで断定することはできないのであります。併しながら第三者として見ました場合に、同じ国内の地方団体の財政需要に対しましてこういつたふうに両者の間に食い違いが起るということは、これは一般の国民の地方財政に対する信頼感を失う大きな原因にもなることでありまして、できれば両者の間が協調され、そうして正確な具体的な資料によつて計算され、その具体的な資料が広く国民の前に公表されるということを要求したいのであります。それからこの経費の見積りにおいて一番重要な欠陷だと思われまするのは、地方財政委員会の見積りにおきましても、大蔵省の見積りにおきましても、最近の物価の騰貴ということは別に見込んでおらないようであります。そうして例えば地財委の来年度の五千九百二十五億円という地方経費の総額というものも、昭和二十五年度の予算推計を本にして、そこへ明年度において増加すべき経費の増加額をプラスして出しているようであります。併しながら御承知のように昨年秋から物価はかなり騰貴いたしておりまして、日銀の小賣物価指数を見てみますると、昨年の七月に比べまして今年の一月におきましては、六カ月の間に約二〇%騰貴いたしております。従つて若しこのパーセンテージを使いまして昭和二十五年度の地方予算総額の四千八百八十六億円というものに対する二〇%を見込んで見ますると、九百七十七億円という数字が出て来るのであります。こういつた物価騰貴によつて、将来膨脹すべき地方財政の経費額というものが織り込んでないという点は、地方財政に対する見積りにおいて大きな欠陷ではないかと思うのであります。従つて若しこの物価騰貴によりまする経費の増加ということを考えますれば、地方財政平衡交付金の増額も又動いて来ざるを得ないのではないかというふうに考えるのであります。  次に平衡交付金を算出しまする場合の、増加経費に対する充当財源の問題でありますが、これにつきましては既定経費の節約八十億円、又地方税の改正による百七十九億円、こういつた点においては両者の見解が一致いたしておるのであります。併しながら地方債の増額につきまして、大蔵省では明年度は九十億円、それから地財委のほうでは二百七十五億円というものを見込んで、そうして平衡交付金を求めているのであります。その間に百八十五億円という大きな開きが見られるのであります。この地方債の起債に関しましては、御承知のようにいろいろな関係方面が多いのでありまして、そういつた方面から二百七十五億円の起債は恐らく困難ではないかというふうなこともいわれているようであります。こういうふうになつて来ますると、そこに重大な歳入欠陷が生ずることになりまして、これが又地方財政平衡交付金の額に大きな影響を及ぼさざるを得ないのであります。こういうふうに見て参りますると、物価の騰貴、又地方債が予定額だけ起債できない事情というふうなものを考え合せまする場合に、平衡交付金の増額は地財委が提出しております。千二百九億七千五百万円でも恐らく不足するのではないかというふうに考えられるのであります。尤も物価の騰貴については補正予算によつて、これを補正するという方法も考えられるわけであります。併しながら国家財政の場合のように、主体が一つでなくして一万有余の地方団体に関係を持ち、又非常に複雑な組織によつております平衡交付金につきまして、あとで改めて補正して増額するというようなことは、これは地方団体の財政を非常に混乱せしめるものでありまして、平衡交付金に関しましては、できるだけ年度全体を通じて正確な見込みの上に立つべきものであろうと思うのであります。更に若しいろいろな関係によりまして、平衡交付金の増額が十分に与えられないという場合には、これは地方財政に非常な混乱を生じまするが、特に財政力の貧弱な地方団体ほど、それによつて受ける影響は大きいのであります。そうしてそのために農村とか、農業県では地方税を増税しなくてはならないということに追い込まれるのであります。ところが現在すでに地方税法で定められました標準税率を超過して課税している町村や府県が相当あるのであります。又いわゆる法定外の独立税をいろいろ設けて、そうして財政を賄つているところも現にあるのであります。こういう状態にありまする場合に、この平衡交付金が若し十分に確保されなければ、これは折角国税においてとにかく減税されたものが、地方税において増徴されるという結果にならざるを得ないのであります。平衡交付金につきましてはこれは平衡交付金の総額は税制の立て方によりまして、例えば現在の都道府県税のような立て方であれば、これはかなり総額が余計要ると思うのでありますが、これは税制の立て方によつて総額に影響を大いに持つと思いますが、とにかく今日与えられた税制の下においては、平衡交付金を確保するということが重要な問題であります。特に平衡交付金は明年度が本格的な出発をする最初の年度であります。而も総額については制度上何らの保障も与えられておらないのでありまして、一にかかつて国会の議定に待つ仕組になつているのであります。国会において従つてこの点について十分御審議を煩わしたいと思います。御承知のように、この四月には地方選挙が行われますので、各政党も地方自治の問題については、重大な関心を払つておられることと存じますが、どうかその地方自治の財源を確保する基本的な問題であるこの平衡交付金の問題について、十分の御審議を煩らわしたいと思うのであります。  明年度の予算につきまして、地方財政の関係から次に問題になりますのは、公共事業費の問題であります。本年度の公共事業費は、今まで公共事業費の中で扱われておりました文教施設、厚生施設等が他のほうに、関係の省のほうに廻されましたので、表面上は千一億円ということになつております。併しながら今まで入つておりましたそれらの施設関係しまする経費を含めますると、二十六年度は一千百六億円でありまして、前年度と比べ三十五億円の減少になつております。併しながら地方団体との負担関係が今年度変つたものがありますために、地方団体の負担をも含めた全体の総事業費を見てみますると、二十六年度は一千六百七十二億円でありまして、昨年度よりも百四億円増加いたしております。地方団体の自治財政という立場から考えますると、この公共事業費の中でいわゆる補助事業と言われるものにつきましては、国家的な統一が是非必要であるものはとにかくといたしまして、できるだけこれを削減して、むしろこれを平衡交付金のほうに繰入れて、そしてその財源を以て地方団体が自治的に仕事を推し進めるというほうが自治の本旨に副うのではないかと思うのであります。御承知のようにシャウプ博士が、日本の地方団体において国庫補助金が非常に多いことに驚いて、約三分の一に削減することを勧告したのでありますが、その場合に公共事業による補助金には、余り手をつけることを言つていないのでありますが、併し私の考えといたしましては、公共事業費の中の補助金についても中央集権的な、国内行政的な機構を改めるためには、できるだけこれを削減して、平衡交付金のほうに委すべきだと思うのであります。公共事業費のうちで補助金として支出されておりますものは二十六年度はまだ資料が手に入りませんのでわかりませんが、二十五年度によつて見ますと、総事業費の七六%を占めております。従つて二十六年度においても恐らく八百億を超えるのではないかというふうに考えるのであります。それから公共事業費につきまして第二の問題は、国と地方との負担の割合が来年度変更いたしますために、この公共事業費による地方の負担部分というものが二十五年度の四百二十六億円から二十六年度には五百六十六億円に、百四十億円増加することになるのであります。そのうちで一番大きな増加分は今回災害復旧費の全額国庫負担が改められまして、約七六%を国庫が負担するという制度に改まつたために地方団体の負担が百二十二億円増加することになるのであります。従来も災害復旧の事業については、多く公債の発行によつて地方団体は財源を賄つて来たのであります。然るに先ほど申しましたように、地方債の明年度の増加額は九十億円ということが今一応考えられているのであります。災害復旧のための地方負担の増加分でさえも百二十二億円の増加が見込まれるのでありまして、この点においても、地方債の起債の枠の拡大ということが必要になるのではないかと思うのであります。更に災害復旧の国庫負担金につきましては、例えば七六%国が負担するといたしましても、その負担金を実際に政府から地方団体に支出されますのが、非常に遅れることが多いようでありまして、このために災害復旧の事業がはかばかしく進捗しないということが盛んに指摘されております。こういう点において災害復旧費の国庫負担というものをできるだけ早く、少くともその年度内にはこれを支出する。できればもつと早くこれを地方団体に交付するという制度が確立されることが望ましいと思うのであります。その他地方税制の問題につきましても、例えば今度法人に対して新らしく所得割が設定されまするが、法人税に対する一〇%という率になるようでありますが、果して一〇%で十分であるかどうか。又物価がどんどん騰貴し、そして一般の勤労大衆の実質的な收入がそれほど上つて行かない今日の情勢において、個人の均頭割が今の額で適当であるかどうか。いろいろな問題があるわけでありますが、地方税制は、今日の予算委員会の問題といたしましては、直接の問題でありませんので省略させて頂きたいと思います。  以上いろいろ申述べましたが、私のお願いしたいことは、地方財政平衡交付金の総額の確保及びその増額、それから公共事業費の中の補助金の平衡交付金への繰入れ、並びに地方債の枠の拡大、この三点であります。今年度の国家財政は、昨年と比べまして僅かながらも縮小をしたのでありますが、その点においては私たちも非常に喜ぶわけでありますが、この国家財政の縮小のしわが、地方財政の面にしわ寄せられて、殊に財政力の貧弱な農業県や町村に対して、そのしわが強く寄つて、そのために農民その他の負担が過重されることのないように、十分平衡交付金その他について御審議を煩わしたいと思う次第であります。
  56. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 只今公述につきまして御質問がございましたら。……ございませんか。たければ、本日の公聽会はこれで散会にいたしたいと思います。    午後四時二十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     波多野 鼎君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            佐多 忠隆君            伊達源一郎君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            泉山 三六君            一松 政二君            深水 六郎君            安井  謙君            山縣 勝見君            岩崎正三郎君            加藤シヅエ君            永井純一郎君            山田 節男君            吉川末次郎君            若木 勝藏君            高良 とみ君            西郷吉之助君            高瀬荘太郎君            高橋龍太郎君            竹下 豐次君            一松 定吉君            堀木 鎌三君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   公述人    全国指導農業協    同組合連合会事    務局総務部長  平尾卯次郎君    日本銀行理事  井上 敏夫君    文部省職員組合    委員長     佐藤 忠夫君    中央酒類株式会    社社長     松隈 秀雄君    日本産業協議会    理事      仲矢 虎夫君    立教大学教授  藤田 武夫君