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公述人(佐藤忠夫君) 私文部省の職員
組合におります佐藤でございます。
昭和二十六年度の国家
予算につきまして何か
意見を述べろということでございましたが、私ども直接この国家
予算の実施面を担当しております
組合の
関係からいたしまして、非常にこの
予算につきましては重大な関心を持
つているものでございますが、特に
組合員としての立場から、この問題に対しまして
意見を申上げて見たいと、その我々の特に関心事といたしましては、やはり何と申上げましても給与の問題であります。で、お手許に差上げましたこの給与の資料を御覽頂きまして、多少
数字に亙る点もあるかと存じますので、まあ極く要点だけを申上げるつもりでおりますけれども、
是非、我々がどうしてそういう
意見を述べなければならないかということにつきまして、特に御配慮を頂きたいというふうに
考えております。
先ず第一番目でございますが、何と言いましても、我々はこの給与の問題が国家
予算に占めます比重というものを
考えますと、絶えず我々の給与の問題が、同時に例えば民間の
税金の問題とか、こういうふうなものと関連して、或いはインフレの問題とか、そういうものと関連いたしまして
考えられるところであります。と言いますのは、役人、公務員の給与を上げるとインフレになるとか、或いは国民の税負担が増すというようなことは、我々といたしましては非常にこの点について不満を感じておるものでございますけれども、その点につきましても逐次順序を追
つて申上げて見たいと思います。
先ず第一番目は、私どもが昨年までのいわゆる六三
ベースを支給されて参りましたのは、
昭和二十四年から二十五年に亙りまして約二年余りというものはこの六三
ベースで釘付けにな
つておりました。次いで私どもは当時の状況から
考えまして、非常に内輪の
数字でありまする九千七百円
ベースというものを主張して参
つたわけでございます。併しながら、遺憾ながら昨年の暮におきましては、現在の
政府の給与法案が通過いたしまして、実際は七千数百円にしかな
つておらない、こういう
実情でございます。そこでこの
昭和二十六年度の
予算案との関連におきまして、私
たちの給与問題を論ずるわけでございますけれども、先ず第一番目は、御判断を頂きまする順序といたしまして、人事院の八千五十八円の勧告
ベース、それから
政府の現在の給与法というものと比較して見たい、こういうふうに
考えます。先ず第一番目、人事院のほうから申上げますと、これは根本的には八千五十八円
ベースのものは、これは
昭和二十五年の五月の資料に基いているのであります。従いましてこの八千五十八円の、その
最初の出発点が先ず非常に遅れている、時間的に非常に遅れておるものである。そういうことが第一番目になるかと思います。それから二番目といたしまして、その
計算の方法でございますが、御
承知の通り人事院の勧告書には、非常に合理的にや
つた、或いは科学的なんだとかいうふうな言葉で自画自讃をしておるようでございますが、決して私どもはそういうふうには
考えないのでございます。と言いますのは、先ず
食糧費の
計算の方法を見ましても、成るほど一応マーケツト・バスケツトと言いまして、バスケツトを持
つて市場へ物を買出しに行く、そのときの値段を見ております。それは
食糧費でございますが、その他の衣料とか住居費或いは光熱費とか、こういうものはいわゆる
内閣のCPSによ
つておる。こういう次第で、一見いたしまして非常に合理的に見えますけれども、実はその内容は、根本的には
昭和二十四年七月から二十五年六月の
経済安定本部の需給計画、計画です、需給計画によ
つておる。そこからカロリーを
計算しております。従いまして例えば動物蛋白におきましては、鯨を殆んど大
部分食べておる。現実に私
たちは牛や豚を
相当食べておりまして、鯨の肉はそう大して食べておらないにもかかわらず、鯨で動物蛋白の量を
計算しておる。それから例えば野菜につきましても、やはり大根の葉つば、根つこの小いさいところは勿論ながら葉つぱ全部を食べる
計算にな
つております。つまり一〇〇%食べることにな
つておりまして、そのロスを見ておりません。こういうような
計算方法で以てなされたのが人事院の八千五十八円
ベースでございます。それから次には民間の賃金の丁度真中の平均のところを我々の給料の各号俸の一番頭に持
つて行
つて最高にしているということも非常に重大なことであろうと思います。それから地域給を切下げている。つまり二・五割を最高として五分刻みにしております。それから全体といたしまして上に厚く下に薄い、そういう能率給を非常に強化しておるような傾向がございます。大体申上げますと、人事院のいわゆる八千五十八円べースは、そういうような、我我としては非常に不満足なものがあるわけでございます。
次には然らば
政府の現在の給与法は一体どうかと言いますと、これ又御
承知の通り人事院の八千五十八円の勧告よりは更に下に薄く上に厚いようにな
つておることは御
承知の通りであります。それから調整号俸を切下げている。こういうようなことも
相当重要であります。それから一見非常に我々にと
つて都合のいいような昇給の規定でございますが昇給の年限を短縮したと、或いは二号俸の特進を認めているこういうようなことが現在の給与法にございます。併しながらこれ又いわゆる
予算の範囲内で行われなければならないというあの条文によりまして、実質的に空文に帰しております。で我々の現在の俸給がこういうような
予算額を伴わない空文とも申すべき給与法によりまして、実際は
相当上の
人たちとか、或いは上司にへつらう
人たちだけがこの昇給規定、或いは二号俸特進のこの規定にあずか
つている、こういうような現状がありまして、職場の勤務上の心がまえというものは想像以上に沈滞し、或いは或る意味におきましては乱脈をきわめている、こういうような
実情があるわけでございます。それから将来の見通しといたしましては、これ又御
承知の職階法の実施に伴いまして、或いは例の閻魔帳とでも申したいような勤務評定表というものを四月一日から実施することにな
つておりますが、こういうようなことによりまして、いよいよ私
たちは昔の軍隊のような、そういう封建的な官庁体制のうちに身動もできないような、そういう
状態に追込まれつつある。決して給与法は金だけの問題ではなくて、実はこういうような重大な官庁の
状態を現出している、こういうことを特に私は皆さまに申上げたいと思います。
それから今までは人事院の勧告
ベースと、
政府の給与法とを大体比較したのでございますけれども、要するにその両者いずれも、結果から申上げますと、或る一定の枠を、つまり八千円見当でやれというような枠を至上命令的に押付けられまして、それにいわゆる合理的だとか科学的だとかというような言葉で以て、現実の生活を完全に無視した、そういうこまかしの
計算をして、つまり逆算をいたしまして、今日のような給与法を作り、或いは人事院の勧告に見られるような、ああいう各号俸の段階や、地域給や調整号俸や、いろいろな規定が出て来ている、こういうふうに
考えざるを得ないわけであります。そこで私どもは、然らば今日給与につきましてはどういうふうに
考えているか、こういうことに入りたいと思いますが、いわゆる朝鮮動乱以来、特需インフレと申しますか国民の消費物価は非常に値上りを示しております。なお且つ
税金は非常に重く徴收されている。そういうような事態がございますので、特に私どもの生活は一日々々針の山を渡るような、そういう気持がしているわけであります。なお私は国家公務員ばかりでなくて、これは全
政府関係或いは地方公務員もやはり同様な
状態ではないか、いや、
状態にあるのでありまして、この点につきましてはこの
公述人のほうにそういう
かたがたによ
つて組織されております
組合のかたがおられませんので、特に私からも全体を代表する意味でお願いしたい。
それからお手許に配りましたこの満十八歳、勤務地手当ゼロ地の税込最低賃金七千五百円、扶養手当一人千五百円、勤務地手当最高三割支給、こういうような私
たちのスローガンはこれはなぜ、どういうふうにして出て来たかということを申し上げたいと思います。
先ず、一体国家公務員でも、地方公務員でも、公共の福祉に携わる者は国民の生活より以下の生活であ
つてよろしい、こういうことはこれは誠にどこの世界へ行きましても通用しないのでありまして、現実に我々は非常に下廻
つたそういう待遇を受けて参
つたわけであります。併しながら人事院勧告にもございます通り、やはり国民生活、その表面に言
つておりますところは、国民の生活
水準でなければならない、こういうようなことも勧告では言
つておりますけれども、実際はそうな
つておりません。従いまして私
たちもせめて国民
水準並のそういう生活をやらせて頂きたい、こういうのが私
たちの給与改訂
要求の前提にな
つているわけでございます。勿論この
数字は、敗戰下の今日における
日本のいろいろな諸条件、特に
経済情勢から割出しました非常につましい最低限度の
数字でございまして、この
計算の資料は昨年、
昭和二十五年の十一月によ
つたわけでございます。十一月に大人がどうしても税込七千五百円一人要る、こういうことでございます。併しながらもうそろそろ世界情勢も変りまして、対日講和の動きもすでに日程に上
つているようであり、こういう際には何と言いましても、やはり我が国のあらゆる希望なり
意見なり、そういうものが広くやはり世界に対しまして、特に
日本を占領している諸国家に対しまして本当のところを、まあ本当の希望や
意見なりを率直に申出たらいいのではないか、そういうような観点に立ちまする場合、特に
昭和八年から十年のあの線に
日本の
水準を戻すというような既定方針というような観点からいたしましても、我々の給与の比較というものは、このニユースにございますけれども、とにかく半分以下の
状態にな
つております。まだ
昭和八年から十年までの線の申分以下である、こういう嚴しい現実があるわけでございます。それで七千五百円の最低賃金は決して不当なものではない、そういうふうに私
たちは
考えますし、なお且つこの
要求にいたしましても、昨年の十一月の資料によ
つておりますので、もう毎日々々この頃は惡性インフレのような状況で物価が上が
つて来ておりますので、むしろこの
数字につきましても非常にまだ低い
数字だというふうなことを
組合員の人人は申出ております。そういうような
実情があるわけでございます。まあそれはそれといたしまして、この算出の方法は、非常にまあ、私のほうから率直に申上げますと、つましい最低の線を抑えてこれだけにな
つておるのであります。算出の方法の概略を申上げますと、いわゆる人事院方式とでも言うべき
食糧品はマーケツト・バスケツト法により、その他のものにつきましてはCPSによ
つて計算しており、ここらあたりは
政府の
考えておる給与べースの
計算の方式によ
つてもこれだけになるのだ、そういうふうな意味で私
たちも
政府と同様な方式によ
つて計算をしたわけであります。この資料には、総理府の統計局のいろいろな調査、それから労働省の毎月勤労調査、それから勤労者世帶
收入調査というような
政府側の発表の資料によ
つておるのでありまして、これは必ずしも私
たちが勝手に作
つた資料ではない。そういう資料によりまして一先ず
計算をしたわけであります。それで然らばなぜ最低賃金だけをこういうふうに表現したかと申上げますのは、必ずしも現在の給与法にありますあの給与体系とか、或いは人事院勧告の給与体系とか、こういうものを私
たちは肯定できないというふうに
考えまして、それは飽くまでまだそういう能率給によ
つて考えるべき時期ではないというような点から、やはり原則として生活給でなければならない。そういう立場を今現に持
つているものでありまして、従いましてこのニユースにもございますけれども、一人幾ら、夫婦者ならば幾らになる、こういうものはやはりこれ又国際的なそういう算出の方式によりまして、例えばお嫁さんをもら
つたという場合ならば〇・九をかけて行く、こういう算出の基準によりまして生活給的なそういう方法を現在
考えております。従いまして最低の線は七千五百円でなければ一人食えないのであ
つて、二人となり、三人となり或いは四人、五人の家族になりますと、これに国際的な
一つの算出方法の
数字をかけて行きますと、それが私
たちの主張する給与の最低生活の金額になる、そういうような
考えをしているわけであります。
只今申上げましたようなそういう立場から、この
昭和二十六年度
予算案を検討して見たいと思います。先ず重要な点といたしましては、米価の問題、それから
税金の問題、それから給与
ベースの問題、それからインフレ
対策の問題、こういうように大体四つの重要な強調すべき点を
考えております。
先ず一番目の米の値段につきましては、今年の一月から米の
消費者価格が十キロ当り一六・八%引上げにな
つております。これは米の値段は、会社の重役さんも大臣も、それから我々勤労者も重労働者もみんな同率であります。配給を受ける値段はみんな同じである。従いまして生活
水準の低い家庭ほど主食への支出が非常に多いという点から
考えまして、この米の値段というものは非常に苦痛を我々の生活に与えている。ましてや米が上ればだんだん他の物価にも影響されて参ります。こういうようなことから、この米の値段を上げるということにつきましても、将来非常な不安を持
つて見ておりますし、私の見るところでは、将来ますます米の値段が上
つて行くんじやないか、そういうような感じがするわけであります。
それから
税金でございますけれども、いわゆる七百億の減税は帳面ずらだけの減税でございまして、いわゆる
政府が税法上の減税も実際上の減税も同じなんだということを言
つておられますけれども、これは非常にあいまいと言いますか、或いは嘘を言
つておられるのではないか。つまりなぜかというと、物価が上
つておるというようなそういう現実を無視しておられるからそういう御
意見が出て来るのでありまして、我々
税金を取られる側、或いは高い物価を払わなきやならない、そういう立場から申しますと、決して減税にはな
つておらないで、実質的には我我にと
つては増税にな
つておる、こういうような気がするわけであります。それから米価の引上げは先ほど申上げましたが、地方税、これも非常に我々にとりましては苛酷なまでにひどい取り方をしておりまして、現に私どもの
組合におきましては、一期分はまあどうやらこうやら納めたけれども、二期、三期分はまだ納められない。差押えの通知が来ておるけれども、役場の吏員が来たけれども押えるものがなか
つたと、そういうような実例も聞いておるのでありまして、
税金は非常に国税、地方税を問わず過重な負担にな
つております。それから一方それじや
税金につきまして、我々以外の比較的裕福なかたにはどうな
つておるか、まあ多少しかつめらしい言葉になるか知りませんが、資本を蓄積するためにはいわゆる合法的な脱税というものを認めておる。それはあの無記名
預金とでも申しますか、いわゆる短期債がそれではないかというふうに
考えます。こういうことでは、一方から取上げて、弱い者から取上げて、そうして実際にその能力があり、又決してそれによ
つて事業が停滯するというようなふうには
考えられないそういう資本家の
かたがたには比較的、まあ比較的と申上げましたが、
相当ゆるやかな方法で
考えておられる。こういうことは何といたしましても、我々から見れば租税公平の原則を無視した非常に一方的な
税金ではないか、そういうふうに
考えます。最近新聞にも出ております通り、鶏を四羽以上、兎は六羽以上、山羊は二頭その他柿、梨、梅四本以上、こういうようなものにみんな
税金をかける。こういう国民の零細な
收入から非常に残酷なまでにこうもぎと
つて行くような、そういう
税金の徴收の仕方ではなかろうか、或いは一方我々から殆んど緑の遠い高級な織物、衣類等につきましては、課税の対象から除外されておる、こういうようなこともありまして、非常に我々としては不満に
考えておるわけであります。まあ本年度
予算を見ますと、この最後のほうに
政府関係職員の給与改善費というものを多少は見ております。併しこれも実質的には單に昇給した場合の金額しかないようでありまして、今後予想されるインフレ等を
考えますときに、非常に我々は不安にならざるを得ないのであります。多少若干の賃上げを仮にするといたしましても、やはりその結果、勤務評定表による非常に窮屈な職場体制ができましたり、或いは労働時間が延長いたしましたり、更に超過勤務手当なんかも、殆んど従來の実績から申上げますと三割
程度しか支給されなか
つたり、そういうようないわゆる労働強化にな
つて来るような虞れが十分あると
考えます。そういうような諸点を
考えますると、この
税金の問題にしましても、米価の引上げにいたしましても我々の生活は全く致命的な、破局的なそういう
状態に追い込まれて行かざるを得ないというように
考えられるのであります。
それから次に重大なことは、このインフレの問題であります。よく
組合がこれだけの賃金を欲しいというふうに要望いたしましても、インフレになるからいけないとか、或いは
税金が殖えるからいけないとかいうようなことで、我々は随分にがい思いをさせられて来たわけでありますけれども、一体我々が仮に、先ほど申上げました七千五百円の最低賃金が実現するものといたしましても、昨年の十一月の資料によ
つているというようなこと、及び将来予想せられるいわゆる惡性インフレの
状態を
考えますと、非常に下廻
つたものとなるのでありまして、我々は何としてもこのインフレを一日も早く克服するような、そういうやり方を
是非考えて頂きたい。二十六年度の
予算も、聞きますところによりますと、昨年の十月頃の物価を基準にしているというふうにも聞いております。そういうものとすれば、そこにもう
一つの大きな問題があります。現にこの
予算説明書の総説にございます。「動乱後の
国内物価の騰貴が
海外の上昇率を多少上廻
つている事実等に徴する時、引続き均衡
予算の基調を堅持して、インフレーシヨンの回避に努めねばならぬと
考えられる。」、こういうふうに本年度
予算説明の総説において述べております。こういう点は
政府みずから言
つておられるわけでありますけれども、我我はこれでは夢々安心できないと
考えます。物価も昨年の六月くらいに比較いたしますと約四〇%も上
つております。それから例えば終戰処理費が約一千二十七億円あるのに対しまして、対日援助費がそれよりもずつと小さいものだと、こういうふうなこともありまして、ここらあたりにも、何とかしてインフレを克服し、なお且つ我々の給与財源を
考えて頂く余裕があるのではないかというふうに
考えます。それから警察予備隊費とか、或いは終戰処理費も同様でございますけれども、ここらあたりに非常に大きなインフレの要因があるというふうにも
考えております。ここらあたりも、
是非ともできることならそのインフレを惡性化させないという、そういう絶対的な前提の下に本
予算をや
つて頂きませんと、これは我々としてはもう実に危險極まりない
予算のような気がするわけであります。
要するに結論といたしましては、どう見ましても、
政府はインフレの回避ということをみずから言
つてはおりますけれども、遺憾ながら惡性インフレは不可避の
状態である。特にこの
予算を実施します場合には、ますますそのインフレが好むと否とにかかわらず増大惡性化するであろう、そういう気がするわけであります。
いろいろ二十六年度
予算につきましてまだほかに申上げたいことはありますが、先ず結論を
最初に申上げますと、私が先ほど来申上げました賃金のこの非常につましい
要求を
是非認めて頂きたい。この財源につきましても、我々が
考えました場合には、まあ各款項目の節約ということは確かにございます。給与財源といたしましては、現在の税法下におきましても、
相当な脱税があると見ております。合法的な脱税をも含めまして、そういう脱税を徹底的に取締
つて頂けば、必ずそこだけでも我々の財源はある。又いわゆるインベントリーの五百億につきましても、これはインフレを回避するということを条件といたしまして、ここらも財源の可能性として私ども
考えておるわけであります。そういう立場から、
是非賃金
要求を認めて頂きたい。それから第二番目といたしましては、徹底的にインフレ
対策を講じて頂きたい。従来よく賃金値上げの
運動を我々がや
つて参りましたけれども、賃金は必ず物価の
あとからついて参りますので、どうしても或る
ベースが改訂されるにいたしましても、やはりこのインフレの問題が
あとから
あとからと出て来ますので、この点につきましても、徹底的にインフレ
対策を条件とした賃上げをや
つて頂きたい、こういうことになるわけであります。それから三番目といたしましては、行政整理の問題であります。すでに二年前から行政整理が行われておりまして、非常に機械的に我々がそのあふりを食
つて、たくさんの
人たちがやめて、現在失業者もおりますし、非常に生活に困
つておる連中がおるのでありますけれども、よく我々が
政府のかたのところに参りますと、行政整理をして首を切
つて、その余
つた財源でお前
たちの給料を上げてやる、こういうような御
意見を聞くのであります。この行政整理につきましては、やはりお手許に配りました資料にも書いておきましたけれども、蛸が手を食うというような、我々自身はその最大の
犠牲者でありますし、国家並びに地方の行政上のマイナスというものは、もうすでに現在その兆候が見えておりますが、更に将来行政整理をするとすれば、非常にそういうマイナスの面が多くな
つて来るであろう。行政は非常に乱脈化し、
統制強化によりまして、ますます昔の封建的な態勢に復活して行く。これも我々が絶えず主張しております官庁の民主化に逆行して行くというふうに
考えられますので、
是非この行政整理というような、こういう誰の得にもならないことをおやめ頂きたいというふうに思います。
それから更に、この賃金
要求のところでちよつと言い忘れましたけれども、私
たちが
ベースをもう少し殖やしてもらいたいと言いますと、必ず国民の側からも、或いは
政府のほうからも、反対
意見が出ると言いますのは、
税金が殖えるとかいうようなことであります。これは私
たちの立場から申上げますと、実におかしな話でありまして、これだけ物価が上
つたからこれだけに賃金を上げてもらわなければ食えないと言
つておるわけです。我々が好んで物価を上げておるのではないのであります。従いまして、我々の賃金改訂の
要求というものは、
政府の
経済政策と言いますか、或いは財政政策と申しますか、その結果によるものである。決して我々は、我々自身の
要求によ
つて惡性インフレに
なつたり、或いは物価が上
つたりするということは
考えておりません。昨年も人事院は僅かに五%しか上らないというようなことを言
つたようにも聞いております。徹底的なインフレの要因、いや
税金の問題に、決して我々の賃金改訂の問題はそうならないのでありまして、むしろ我々の立場から申上げますと、それは
政府のそういうような財政政策の結果、我々はどうしても生活のためにはそれだけをもらわなくちやならない。こういう順序が全く逆立ちしているのではないかというふうに
考えます。その点をちよつと補足さしてもらいたいと思います。次には、私どもの
意見といたしましては、やはり国際的な
関係もありまして、單にインフレを抑制すると申しましても技術的な困難もあるかと思います。それでやはり
国内資源の積極的な開発というものを
是非や
つて頂きたい。今までのような行政上の、例えば県とか市とか村とか或いは関東ブロツクとか中国とか、そういうような行政上の勢力
関係、或いは例えば水について申上げましても、県と県が水利権の争いをしているというような、そういうふうなやり方では、
国内資源の積極的な開発というものは望まれない。やはりこれは全国民的な、国民全体の立場からの、総合的な国民の利益という立場からの
資源開発を積極的にや
つてもらいたい。こういうことはやはり貿易
関係とも裏表のような密接な
関係において
考えられるのでありまして、非常に国際情勢も多端を極めておりますので、若し外国の輸入が絶えたならば、一体我々はどうなるかというような不安もあります。そういう点からも、
是非今申上げました
資源の開発という問題を取上げて頂きたい。
まあいろいろと申上げましたけれども、結論といたしまして、この
予算は資本蓄積という美しい名前の下に、勤労者を初め善良な国民の大衆を非常に苦しい生活に追い込んで行くのではないか。又今までの苦しい過去を顧みますときに、やはり一〇〇%そうなるのであるというふうにどうしても
考えられるわけであります。こういうような国際的な、或いは政治的な、
経済的な危機の中におきまして本当に一部のかたのための利益において、大
部分の国民大衆がそういう不幸を味わわなければならないということは、これはまさに
日本民族の悲劇でありまして、ここらあたりにおきましても、十分参議院の各位にお願いしたいと、こういうようなことはもはや再び繰返さないように
是非ともお
考え頂きたい。私
個人の
考えではございますけれども、一体こうして勤労者を初め全体の国民の生活を追い込む場合には、決して資本主義の発展にすらならない、資本家を擁護する、資本を蓄積するというようなことが原則にな
つておるようでありますけれども、その資本蓄積にすらならないのではないか。勿論歴史的な意味における資本主義の発展でございますけれども……、そういうふうに私
個人は
考えております。
時間でございますので、そろそろやめたいと思いますが、とにかく單に私
たちの給与問題だけを
考えましても、こういうような国家の二十六年度
予算では、どうしても我々の本当のぎりぎりの
要求と言いますか、要望と言いますか、その最低の生活もできかねるような気がいたします。そのほかに教育、文化の問題とか、或いは社会保障の問題も言うつもりでおりましたけれども、時間がありませんので、これでとめたいと思いますが、とにかく今申上げましたような給与問題だけでも非常に大きな問題を孕んでおりまして、この
予算書の全款項目に亙りまして直接、或いは間接に影響するところが多いわけであります。決して私どもは不当な
要求をしておるつもりではないという信念を持
つておりますし、その点につきましては、すでに御
承知の向きもあるかと思います。どうか参議院の良識におきまして、私
たちの本当の最低ぎりぎり一ぱいの
要求を、要望を聞いて頂きたい、そういうふうに
考えて私の
公述を終りたいと思います。