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1951-02-22 第10回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十二日(木曜日)    午前十時六分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算内閣  送付) ○昭和二十六年度特別会計予算内閣  送付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算  (内閣送付)   —————————————
  2. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 只今より予算委員会を開きます。昨日の委員会において申上げました通り、本日の外交問題に対する質疑は各党代表一名ずつでありまして、各一名のかたの持時間は二十分であります。この二十分のうちには応答の時間も含めておりますから、どうかそのつもりでお願いいたします。
  3. 山田節男

    山田節男君 対日講和に関しまして、ダレス特使日本に見えまして、吉田首相は幾たびとなく会談をされたわけでありますが、その結果をステートメントにし、或いは本院の本会議において御報告になり、又それに対する緊急質問等がありまして、大体全貌がわかつたようにも思われるのでありますけれども、何分この問題は全国民が非常な関心を持つておりますので、今までの吉田総理の御答弁によつては、どうもはつきりしないという点があるというので、いろいろ国民の間にも臆測が進められている。然るにダレス大使日本を去られまして、フイリピン、濠洲に行かれまして、ニユージーランド濠洲等会談される結果が、日本のほうに情報がもたらされて参りました。そういうようなことで却つて首相の御答弁よりも、ダレス大使からのいろいろなステートメントコミニユケ等によつてはつきりするというような工合で、我々国民吉田総理外務大臣の下に何だかつんぼ棧敷におるような気がするのでありますが、多少今までの各議員の御質問と重複するかも知れませんけれども、この際はつきりと一つ答弁を願いたいと思う次第であります。  先ず第一に、講和形式の問題であります。全面講和ということについては、吉田総理も従来たびたび、これはできればこれに越したことはないということをおつしやつて、必ずしも反対ではない、又会談中におきましても、ダレス氏も又必ずしも全面講和を否認しない、又対日講和の例の七原則にいたしましても、これ又全面講和を否認しておらないのであります。又日本憲法の建前といたしましては、飽くまで全面講和で行かなければならんということは尤もであります。又日本が将来安全保障を求めるという意味におきましても、どうしても国連に加入しなければならんということは、これは絶対的であります。然るに今日の国際連合の機構から見まして、殊に安全保障理事会総会等関係から見ますと、全面講和でない限りにおいては国連に加入できない。私はそういうふうになつておると解釈するのでありますが、そういう意味から私は是非全面講和を主張するものでありますが、総理がいろいろとダレス特使会談になりました後の国際情勢を見ますると、例えばアジアにおける印度を中心としたアジア、アラブのいわゆる第三勢力と、ヨーロツパにおける第三的な勢力が、どうも吉田ダレス会談に対していろいろ猜疑の眼を以て見、又怪訝の念まで持つておる。又最近におきましては、スターリンの国連に対する攻撃、或いは又ソ連並び衞星国家世界平和大会を開きまして、日本の対日講和の問題、特に再軍備中心にして非常な猛烈な抗議が今出ているというような工合で、非常な反響を及ぼしているのであります。こういうようにいたしまするというと、吉田ダレス会談の結果が、国際的客観情勢を見ますると、我々のいわゆる全面講和という希望がすでに壊されておるかに感ずるのでありますが、こういうような各般の点から見まして、吉田総理吉田ダレス会談におきまして、全面講和日本は飽くまで全面講和をやりたいという懇請をなさつて、そうしてこれに対する具体的な各種の立場から意見を述べられ、又これに対してダレス特使も何か具体的な意見、或いは見解の披瀝があつたろうと思うのであります。この点を一つ明らかにしてもらいたいと思います。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。ダレス氏と私との間の話の内容を話せとおつしやいますが、これは無理な話で(笑声ダレス氏がおつしやるならば我々は異存はありませんけれどもダレス氏の立場もありましようから、ダレス氏がこう言つた、私がこう言つたという内容を申上げることはできません。ただダレス氏との会談において私の感じたところを申述べれば、米国といえども全面講和ができれば結構である。又全面講和をつまり連合国各国に対して、米国政府といえども、又ダレス自身といえども、成るべく円満に全面講和ができて、そうして全面講和というか、世界の平和が確立することができることを希望し、従つて連合国各国がすべて対日講和を早期に結ぶことに同意するように希望をしておられることは確かであり、又米国政府その他の国も、今のような不安定な世界状態におるということは好ましくないから、極東においては日本との講和も成るべく早くして、そうして安定を図るということにしたいという考えから、連合国各国に対して無論勧告すると言いますか、交渉を開始せられたのであろうと思います。併しその結果においては、無論今日のような米国政府立場として、ダレス氏の考えとして、各連合国に対日講和を早くしようというように言つて、一様に交渉を開始せられることは私は信じて疑いません。
  5. 山田節男

    山田節男君 只今のお言葉で、吉田総理全面講和という立場を非常に強く繰返して御開陳願つたということについて、我々非常に安心するわけであります。併し若し不幸にして完全講和と申しまするか、これが結ばれなくて不完全講和、或いは單独講和、或いは多数講和なつたということを、これは勿論そういう想定の下において会談もあつたろうと思うのでありますが、若しそういつたような全面講和が不成立であつて、多数講和乃至單独講和をしなくちやならんというようなことになつた場合、我々の一番心配いたしますのは、やはりポツダム宣言、或いは殊に例の東京湾上のミズーリ艦上におきまして署名いたしました日本無条件降服の文書の効果というものが一体どうなるか。換言いたしますると、そういつたような不完全条約の下では、日本と他の連合国との関係が一体これはどうなるのかという点が非常に不安なのでございます。若し不幸にしまして、連合国の一部がこの対日講和条約から脱落するということになりますと、具体的に申しますならば、ソ連、殊に国連にまだ加入を許されていない中共が、我が国への駐兵権を主張し、又場合によつて実力でも駐兵するというようなことになつた場合には、日本としましてこれを峻拒する、拒絶すべき何らかの国際法上の根拠が得られるのか、又実力を以て集団的にこれを阻止し得るというようなことについてもお話合いがあつたのかどうか、又これに対しまして、首相の御見解を具体的に承わりたいと存じます。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。全面講和ができず、或る国との間に依然平和関係が成立しておらない、その場合にどういう様相を呈するか、これは幾多の想像なり、又仮定を前提としての話で、一言に申せばそのときの様相について考えるより仕方がないと、こう申すより仕方がないと思います。併し私は私の一個の感じから申すと、或る国と、例えば英米との間に講和ができた、その他の国と講和ができた、そうしてソ連その他の国と講和ができなかつた場合どうなるか、お話のような中共が直ちに日本に対して駐兵を要求するとかいうような場合があれば、日本としては無論それに応ずるわけには行きませんが、併しこれはポツダム宣言の義務として我々が受諾する理由はないと思うのであります。ポツダム宣言というものは連合国の間の合意によつてできたものであつて連合国のすべてが同意をすればとにかく、すべてが同意しない、或る一国がポツダム宣言によつて駐兵する、これはできないことである。ただ平和の関係がないからして勝手なことをするというなら別でありますけれども、ポツダム宣言によつて日本駐兵を要求するということは、これはないと思います。又ないことを希望します。それでいずれにしても、不完全講和と言いますか、連合国のうちの或るものがやはり依然として平和関係に入つておらない、これは世界の安定を害するものでありますから、これは日本の国の問題というよりは、むしろ連合国の間の問題として、世界の平和を維持する国連の問題として取上げられるべきであろうと思います。又日本として、然らばどうするというような立場におりませんが、即ち世界の平和、安定を目的としておる、趣意としておる国連が、決してこの問題を打つちやらかして置かないと思います。日本としては飽くまでもその場合の自衞権の発動を行使するという以外に方法はないと思います。
  7. 山田節男

    山田節男君 時間がありませんから、又反問することを差控えまするが、次には例の安全保障の問題であります。これは私は大体国内治安と、外国侵略に備えるための安全保障ということと二つあるわけでありますから、二つに分けて御質問申上げますが、殊に第一に国内治安の問題であります。  首相は本院の本会議におきましても、去る十三日と記憶しますが、国内の現状からすると、国内治安については、現在の警察保安機関を充実すれば毫も懸念する必要はない、こういうようにおつしやつておるのでありますが、これは私は吉田総理は非常に進歩的な思想の持主であるのでありますが、こういう首相の観念はやはり警察国家というものを非常に過信しておられると思うのでありますが、ヨーロツパの文化の高いところでは全体主義思想が阻止されておる、十分に当達ができないというところは、これは相当社会保障制度が十分布かれておる。フィンランド或いはスエーデン、スイス等を見ましても、非常に社会保障制度が布かれておる。そこに私は治安が保たれておる大きな根本原因があると思うのであります。換言いたしますと、何と申しましても、やはり警察国家というよりか、治安根抵は民生の安定である。こういう点から私は今年度の、二十六年度の予算を見ましても、社会政策的な支出が僅か総予算の八%弱であるというようなことで、誠にこの点においては私は心細いのでありますが、これは私は希望として首相にこの点をお願い申上げて置きます。  第二は、外国侵略に関する安全保障の問題であります。これは首相の御説明、御報告によりましても、日米共同防衞ということをおつしやつておるのでありますが、この安全保障のための日本のとるべき形式安全保障形式と申しまするか、ダレス特使濠洲にお出でになつて、キヤンベラにおいてニユージーランド或いは濠洲首相並びに外相との会談によりますと、ここに太平洋同盟というような形で、具体的に言えばアリユーシヤンからニユージーランドまで、日本を含めた一つ合同チエーン、連鎖を作る、こういう構想を発表しておられるのでありますが、来日中のダレス氏と総理との御会見の間に、この日本安全保障というものが日米共同防衞だけであるのか、或いは日米共同防衞を中核にした太平洋同盟的な構想の御発表があつたのかどうか、こういう経緯を一つお聞きしたいと思うのであります。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  社会制度警察国家云々というお話でありますが、警察国家と、私の申す治安維持とは全然違う思想であると思います。  警察国家と言えば警察政治をやるという話で、探偵も付ける、ゲー・ペ一・ウーも付ける、言論警察力で圧迫するという行為でありますが、私の申す治安維持警察力を以て言論を圧迫し、若しくは政治活動を圧迫するというような気持ではないのであつて、一に国家治安維持任ずるというだけの目的を以てすれば、現在の警察力組織で以て一応十分である。今後の事態の変化に応じて更に増強を必要とすることがありましようが、現在はこの程度で以て満足いたすべきだと思います。又財政余裕があり、そうして又必要が生ずるというよりは、財政余裕があるならば、お話社会保障制度についても政府はこれに対して用意をすることについてはやぶさがでないのでありますが、現在のような限られた財政の面において、すべての社会保障制度を実施するとすれば、これは非常な莫大な金がかかるのであります。現にイギリスのごときは、このために今労働党内閣が倒れるか倒れないか、国が倒れるか倒れないかというところまで行つて、そうしてそのために社会生活はむしろ不安になり、肉がない、何がないと言つて日本以上に生活が今窮屈になり、不安を與えておると思います。社会保障制度も結構なことでありますが、これは財政と見合わせて権衡をとつて行かなければ、社会保障制度は成立した、国の財政破綻を生じたということになれば、これは何ですから、お考えのところは了承いたしますが、これも財政見合つてのことになり、いたしたいと思います。  太平洋同盟お話でありますが、これは使節と私は何らのお話合をいたしておりません。何となれば、今日日本独立を回復するのが先ず第一でありまして、国外のこと、外国との関係に言及するだけの余裕がないので、成るべく早く日本独立を回復して、然る後に外交その他の面について今後はいたすべきでありますが、今日は発言する理由がないのみならず、地位にないと考えますから、そういう発言はいたしませんし、又ダレス氏もこれに対して何ら言つておられません。
  9. 山田節男

    山田節男君 次に再軍備の問題でございますが、再軍備の問題については、どうも総理にたびたび御発言願つて、我々が、国民が感ずる点は再軍備には反対であるというようにもとれまするし、経済力が許すようになれば、又国民感情としても、そういう時機が来れば再軍備をしてもいいというような工合で、どうもこの点が非常に国民をして迷わしめておるのであります。これは去る十九日にシドニーの国際問題研究所におきまして、ダレス特使の話によりまするというと、日本の再武装を禁止することはこれは愚の骨頂である。デモンストラブル・フーラリーだということを言つております。  第一次世界戰後ベルサイユ平和条約において、ドイツの再武装を禁止したことは、これは非常な大失敗である。これを再び繰返してはいかんということをはつきり言つておられるのでありますが、こういう意見を持つておられるダレス氏と総理が、東京でこの対日講和問題についていろいろ会談なつたということは、私はダレス氏はすべて日本の再軍備というものを前提として話をされたろうと思うのであります。総理の、どうも我々にははつきりしないこの再軍備に対する御見解をお聞きしたいのでありますが、総理としてはもう今日すでに再軍備はやむなしというように腹をきめられておるのかどうか、又そのことをダレス氏にも公約を與えられたのかどうか、その点を一つお聞かせ願いたいと思います。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ダレス氏との間にどういう話合いをしたかということは、お話できないことは前以て申した通りでありますが、併し米国政府若しくはダレス氏の考え方としては、日本に対して完全なる主権を回復せしめるということに主意があります。即ち完全なる主権を回復するという以上は軍備を持つてはいかんとか、何とかいう制限は加うべきものでないのでありますからして、ダレス氏がどこで言われても必ず日本に再軍備を許してはいかん。そうさせてはいかん、再軍備を禁止するということを言われるはずはないと思います。又私として、これに対してどういう態度をしたかは別として、私の考え方は終始一貫いたして変つておりません。私は再軍備ということは、第一憲法が今日許さないことであつて、又実力において許さないことである。今日軍備をいたすということになれば、まあ非常な費用を要するということは、これは列国の例を見ても明らかであり、曾つて軍事費よりは一層厖大な費用を支出しなければならない。敗戰後間もない日本国として、これはできないことであります。不完全な軍備を持つたということは過去において非常な禍いを生じて、日本軍隊というか、海陸軍は、日本軍備が一番優秀であると言つてうぬぼれた結果が戰争になり、そうして遂に敗戰ということになつた。この過去の歴史は、過去の経験は我々が今日において常に心にいたすべきものであると思います。いわんや今日国民の間に親を失い、夫を失い、子供を失つたという幾多の家族が残つており、而もまだソヴイエト地方におる未帰還者というものが何千、何万に達しておるときであります。こういうときに再軍備又は再び戰争をするということになると、国民に非常な不安を與えると思います。私は故に再軍備ということは軽々に口にすべきでないと申すべきであつて、極く愼重に、この問題は国民も我々も国会においても極めて愼重態度を以て、この問題に対処して頂きたいと思うわけであります。併しながら、然らば未来永劫に日本軍備を持たないか、いやしくも独立国であり、又必要が生ずる場合或いは外国侵略を受けた場合に、一に外国の力によつて保護するということは、日本国民自負心から言つて見ても、名誉心、愛国心から申しても、かかる思想は許すべからざるところであつて、できるならば今日といえども再軍備をして、みずから守るだけの力を養いたいと思いますけれども、これができない以上は、又することによつて非常に国民に不安を来たし、或いは更に増税をするとか何とかいうような問題になりますと、とても日本国力の堪えきれないところでありますから、国力に対応してすべての施設をなすべきものであり、軍備といえども同じことで、日本国力が回復した場合、なお且つ軍備を持つべからず、外国から侵入を受けても漫然これを甘受すべきであるというようなことは常識としても成立しないところであります。現在の状態においては日本は再軍備をすることができない、再軍備以外の方法によつて国を守ることを考えるべきであるというこの持論は終始一貫して変らないところであります。
  11. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) もう時間が切れましたから……。
  12. 山田節男

    山田節男君 今日は非常に総理から御丁寧に御答弁して頂きましたので、私の質問がその半分もできないのですが、もう一点だけ……。(笑声)非常に総理から御丁寧な御答弁を頂きまして有難うございます。もう一言だけお伺いいたします。これは私は日本国民としても非常にやはり心配しておることでありますから、あえて総理の御答弁を煩らわすのでありますが、と申しますのは、ずつと終戰後アメリカには、私も一昨年アメリカ行つて、いろいろな各階層の人に会つて感じたことは、日本に対する対日政策についての輿論二つはつきりございます。具体的に言えば、日本はもうアメリカにとつては第二義的なものだというのと、日本はもう一度どうしても盟邦にしなければならないという意見二つある。これは私自身アメリカにおいて感じて来た。少くとも朝鮮動乱まではそういう状況があつたということは、これは十分国民が見ておるのであります。ということは、日本を含むアジア政策というものは、アメリカにおいて一元化されておらなかつた。併し今度ダレス氏がおいでになつて、ああして対日講和の七原則と申しますか、セブン・ポイントを持つて来られて、そうしていろいろ総理会談されたわけであります。私はこのアメリカにおける対日の輿論二つのカーレントと申しますか、流れ、これは今後は絶対にないということを私はアメリカに信頼するのでありますけれども、併し不幸にして世界大戰が勃発するというような場合、今日欧洲第一主義というようなものが向うにやはり蓬頭いたしまして、日本が置きざりにされてしまう、火中の栗を拾うのは日本ではないかという不安が非常にあるのでありますが、こういう点に関して、総理ダレス氏に対して、こういうふうに率直には言われないかも知れませんけれども、こういう国民の不安に対して何かの一つ保障と申しますか、そういうような一つの御見解を述べられ、又総理がそういう保障ダレス氏から得られたかどうか、これを一つ聞きたいと思います。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先ほど申しました通り、私日本としては世界の平和と言いますか、ヨーロツパの平和或いは極東の平和、国内に及んでまでの議論をいたすことは差控えたのであります。言うだけの資格もなし、又如何なる情勢世界が動いておるか、新聞以外に我々としては議論を立てる論拠は持つておらないのでありますから、国外のことについてはすべて言うことを差控えたのであります。そこで今のお話でありますが、ヨーロツパ第一主義ということは、これは米国国民としては当然な考え方であろうと思います。なぜかと言えば、アメリカ国民は即ちヨーロツパその他の国々から移住した人間であつて、今なおアメリカイギリスその他に相当な親戚故旧関係もあるでありましようから、その点から言つて見て、米国国民としては極東よりもヨーロツパを重んずるということは、これは当然な感情であろうと思います。併しながら今日例えば朝鮮動乱の結果、朝鮮が赤くなつて更に日本に及ぶ。世界の平和は極東からして破れて行くというようなことになれば、如何にヨーロツパ第一主義であつても、極東をうつちやらかして置くということはできないだろうと思いますが、又最近と言いますか、昨年の末、北鮮において中共が突然進撃して来た、そして北朝鮮は勿論のことでありますけれども、南まで進撃して来はしないかというような様相を一時呈したそのときに、米国政府としては、初めて日本国地位というものが国防上、軍略上と言いますか、日本軍事上の地位が明瞭になつて来て、そうして日本をうつちやらかして置くわけに行かない、太平洋防衞と言いますか、太平洋防衞の一環として、日本をうつちやらかして置くことができないという考え方は、対日講和を一そう早くしようということになつたんであろうと思います。今後といえども、今申すような関係でありますから、殊にアメリカの東海岸は御承知の通り最もヨーロツパ関係の深いところでありますから、而もその地方政治上の勢力中心であるとすれば、米国輿論としても、米国政府としても、ヨーロツパ関係を無視してうつちやらかして置くわけに行かない。或いは更に極端なことを申せば、ヨーロツパアジアを両天秤にかけて見れば、どちらに重きを置くかということになれば、これは人情の上から言つて見ても、経済上の利害から言つて見ても、ヨーロツパ関係重きを置くということは、これは当然な人情でありましよう。けれども、これも世界情勢によるわけであつて極東からしてヨーロツパ戰争に及ぶということになれば、極東破綻からしてヨーロツパまで及ぶということになれば、これは東洋をうつちやらかして置くことはできないでありましよう。これはできないでありましようが、併し今後といえども、ヨーロツパ第一主義という気持は現われないかと言えば現われるであろうと思います。又現われるのが当然であろうと思います。そのために然らばアジアを無視するか、放り出して置くか、これ又太平洋防衞というところから考えて見て、今日世界はいわゆる国際相依であり、インター・デペンデンスでありますから、極東の形勢を無視してヨーロツパだけ考えるということは無論ないと思います。どちらに重きを置くかということになれば、将来といえどもヨーロツパ第一主義ということは自然米国国民の頭の上に浮んで来るであろうと思いますし、又ヨーロツパもこれを要求するであろうと思います。アトリー首相がこの間ワシントンに行つてどういう話をしたか知れませんけれども、けだし思うにヨーロツパ第一主義を説かれたものと想像いたします。
  14. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 私は最初に講和問題の形についてお尋ねするのでありますが、申すまでもなく日本無条件降服でありまして、降服の条件は戰勝者から戰敗者にデイクテートされて、申渡されて、それを受入れねばならんという形であろうと思いますが、時間がたくさん経ちましたために、だんだん世界情勢及び日本立場変化が生じまして、向うからダレスさんのような人が来られて、日本国民の要求、意見感情等をよく聞いて、現在の世界情勢に適したる方法において講和条約をしようという段取になつて來ておると思うのでありますが、そこでこの講和講和会議というものが開かれて、そこで最後の条件をきめて条約締結ということになるのでありますか。講和会議というものはなしに、アメリカの仲介によつていろいろ意見の交換がされて、アメリカにおいて講和の草案が作られ、それに調印させられるということによつて、この講和条約が成立つのでありますか、そういう点について国民は知ることを希望しておるのでありますから、総理大臣の御見解を承わりたいと思います。  なお国民の意思を尊重して、この講和問題を進めて行こうとするアメリカ考え方に副うように、総理大臣は日本国民を代表しておる国会にこの講和問題の働きの重点を置いて、今後こういう大きな問題は、即ち国を挙げての大問題は、それに処するには国会に重点を置くということでやるべきでないかと考えますが、総理大臣はそれについてどういうお考えをお持ちでありますか。なおこれに附加えて、講和条約の調印ということは、およそいつ頃になるお見通しであるか、これは予算委員会として非常に必要なことでありまして、我々が最も知らんと欲するところでありますから、およその見通しでもお知らせ願うことができれば仕合せかと思います。
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。つまり日本国との間に成るべく早く円満なる早期講和を締結いたしたいというのが、今日米国政府の真に考えておるところと思います。即ち日本国国民希望するところ、要望するところは成るべくこれを取入れて、そうして講和条約を拵える、その講和条約が長く、東洋は勿論ですが、世界の平和の基礎をなすようにしたい。これが本当の気持であり、その気持があるがために、特にダレスさんが日本に来られて、そうして日本の各層の輿論考え等を直接に聞かれた次第だと思います。而して又ダレス氏の声明にもありましたが、日本連合国との関係は、戰勝国、戰敗国の関係においてではなくて、友邦の関係としてお話がしたい、条約締結がしたいと言つておられるのでありまして、講和条約を押付けるというような気持はない。連合国一方の考えで以て講和条約を作り、そうして日本にこれを強制するという考えは毛頭ないということは明瞭であると思います。然らばその形式はどうするかというと、講和会議を開いて、なお日本側に意見を聞くことになるか、ならないか、これは将来のことに属しますから、私がここでこうなるであろうという予想さえも私としては本当に付けにくいと思います。今後の情勢によると思います。先年パリの講和会議の際に伊達君も御承知の通り、ドイツの全権を呼びつけて、そうして二十四時間内に返事をしろと言つてクレマンソーが談判を開いたことは御承知の通りであります。そういうような形式日本に対してとらないであろうと思います。これはダレス氏の話の内容になりますが、ダレス氏は私に、これが二、三年前において講和条約ということになるよりも、今日のこの時期において、この機会に、この機会にというのはおかしいのですが、もつとはつきり申せば、朝鮮事変後におけるこの時期においての講和ということは、二、三年前における講和よりもよほど条件は緩和されて、日本のために利益になつたであろうという打明け話をしておられた、けだしこれは真相であろうと思います。そこで講和会議の形でありますが、先年のような形ではないだろうと思います。然らばどういうような形式になるか、これは今日は予想も許されませんが、決して先年のような、講和をデイクテートするというような形には多分ならないと思います。又ならないことを希望いたします。そうしてその時期でありますが、私の第一次吉田内閣が総辞職をしたのは、たしか一九四七年でありますが、総辞職をする当時の空気では、その年の、四七年の秋には講和会議になるであろうという予測を以て私はやめたのでありますが、その後の状態、つまり国際関係の変転から、今日に至つてなお講和条約ができないというようなわけで、その如何なる時に、どの時に、今年のいつ講和条約ができるかということはこれは予測も今日許されません。ただ成るべく早くしたいという希望はあつても、連合国は十三ヵ国あるのであつて、これと一々個別的に談判するということになるでありましようから、一堂に集めて会議できめるという形にはなりますまいから、相当時間はとれると思います。決して楽観は許されないと思います。国会に重点を置くか。これは当然のことであつて、重点を置かないとは申せないのみならず、重点を置くべきであり、又私は今日日本に最も欠けておることは、国民国際情勢に対する認識が欠けておると思います。例えば朝鮮動乱において機械力その他に優秀なアメリカが、朝鮮において敗れて追い佛われるということは私は毛頭信じないのでありますが、日本国民はそういうことがあり得るかも知れないと言つて東京の土地……、都以外のところに土地を求めて家を移そうというような慌てた人もあつたようでありますが、かくのごとき国際情勢に対する認識が不完全であるということは悲しむべき点であり、今後日本は外交、国際関係、国際知識についての十分な認識を持つて臨むのでなければ、日本の外交或いは日本の安全は保障されないと思います。即ち国会を通じて国際知識については十分国民の承知の下に置きたいと私は念願いたしまするから、無論私は国会に重点を置くことは当然でありますが、更に国会におかれても、国会議員各位におかれましても、国際情勢については十分御研究になつて、そうして国民に周知せしむるように御協力を願いたいと思います。
  16. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 安全保障ということと講和条約との関係でありますが、安全保障が基盤にならないと、この講和条約はできないということははつきりしたことでありますが、安全保障の仲間になる国と、講和条約を締結する国とが丁度同じくはないと思います。その場合いろいろな困難が起るのじやないか、再軍備の問題にいたしましても、駐兵の問題にいたしましても、いろいろな問題がこの安全保障に立つ仲間と、講和条約を締結する国々と必ずしも同じくないのであります。一昨日の日本タイムスに濠洲からの、あつちで発表しましたコミニユケとして出ておりますところによりますと、三国で協定したところは、日本の占領軍は撤退しない、そのままで駐兵させて置くということの必要があるということに話が進んでおるということが書いてあります。これがどの辺まで事実か存じませんけれども、そういう場合にいたしましても、講和条約としては、占領軍は撤退して、日本に完全なる独立ができなければならないのでありますが、安全保障の点から言うと、軍備の真空状態を置きたくない、兵隊はそのままに置く、兵隊の資格は違つて来るけれども置くのだというようなことに、その通りになるかならんか知りませんけれども、そういうふうに解釈の違い、要求の違い、いろいろありまして、安全保障の国と講和条約の国との違う点から、多大の困難が起るように思いますが、総理はこの点についてはどうお考えになられますか。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今のコミニユケはどこのコミニユケですか。
  18. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 それは二十日の日本タイムスに、米国濠洲ニユージーランドと、三国の会談のコミニユケとして……。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そのコミニユケについてはよく存じませんが、米国側の今日の気持としては、日本は防備がない。防備がないこの真空状態にあるこの日本に、万一共産主義国が北朝鮮におけると同じように、突然に進撃した場合に、日本はこの安全を保障をするために力がないはずであり、又これは極東において、朝鮮と同じような問題が再び日本に起つた場合には懸念せざるを得ない。これは世界全体の平和と申すか、極東の平和の破綻から第三次戰争にまで及ぶというようなことになつては大変であるからという考えから、米国政府としては、講和後において日本の安全をみずから守ることができない場合には、そのままアメリカの兵隊を、そのままでやるかどうか知りませんけれども、日本において、日本の安全を保護する用意があるということをダレス氏から聞いたのでありますが、併しこれは話合いの程度であつて、協定をしたわけでもなければ、又政府からして公然の話として受取つたわけでもなくで、ダレス氏が大統領の特使として話をせられたのであります。従つて駐兵がどういうふうな形になるか、今日の連合軍と言いますか、国連軍と言いますか、そのままおつた場合にどうなるかということは一切話しておりません。これは又いずれその場合には協約とか、何とかいう形で国会にもお諮りすると思いますが、確たることは何にも……。ただ気持を話合つた程度だというように御承知願いたいと思います。それで講和ができた、日本独立が回復された、そうして防備はない。然らば日本の安全はどうするか、これはしばしば申すのでありますが、すでに独力において集団攻撃を支えるということは、これは日本ばかしでなく、米国といえども今日軍備を拡張いたしたところが、独力を以て支えることができないから、そこで大西洋条約というようなことになつたのであつて、集団的に攻撃を受けた場合に、どうしても集団的にこれを防禦するという以外に方法はないのでありますから、日本といえども、集団的に防禦をするということを考えるべきであろうと思います。然らばどういうふうな集団的防禦を考えるか、例えば国連軍によるとか、或いは米国軍によるとかいう具体的な話にまでは、今日我々として考えるべき地位でもなし、又具体的にこうすべきであると申すべき地位ではございませんから、これは答弁は将來に保留いたしたいと思います。
  20. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) もう時間が切れましたから……。
  21. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 時間が切れましたから、私はこれで……。
  22. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 マ元帥がこの太平洋戰争の原因といたしまして、世界各国が関税障壁を設け、或いは経済ブロツクを権成いたしまして、日本の必要なる原料入手を困難ならしめたがために、それが太平洋戰争一つの原因であつたということをフオーチユンの雑誌かに書かれておつたかと思うのであります。然るに未だ講和が開かれない日本に、非常に明るい面はございますけれども、この必要なる原料入手にいろいろと困難の面が生じて来ておる。国民経済の再生産が維持されなければ、国民の生存そのものの安全保障が得られないと考えられるのであります。安全保障のことがいろいろ言われますが、この経済上の安全保障こそ、我々は真剣に考えなければならない問題だと思うのでありますが、ついこの十八日に日米の経済協力について、アメリカ政府日本政府に対して次のような諮問を発しておる。それは各業種に亙る遊休生産施設はどうあるか、又その生産施設を復旧するためにどれほどの資金資材を要するか、或はアメリカの求める生産量を上げるために、特にどれだけの資金、資材が必要であるかというような、或いは原料を必要とするかというような諮問が日本政府に発せられておると聞くのであります。而もその真意とするところは、日本アメリカの戰時経済に協力するならば、所要の資金と原材料は好意的に確保するというふうに報道されておりますが、成るほどアメリカの必要から、かかる日米経済協力態勢というものが考えられましようが、それ以上に日本といたしましては、経済上の安全保障ということから考えるときに、日本としてはこれらのアメリカの要望に比例して、いろいろと要望すべき点があるべきではないかと考えるのでありますが、この日米経済協力についての政府が入手せられておりますところの確実なる、何と申しますか、資料と申しますか、そういう点或いは今の日本経済上の安全保障という点について、総理の御見解を伺いたいと思うのであります、
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今米国政府からしてこういう諮問が来たということについて私は承知いたしておりません。併しながら今日原料の不足は決して日本のみではない。アメリカ自身がすでに原料が不足しておつて、その確保に努めておるような状態であります。又その他イギリスにしても、フランスにしても、ことごとく原料の確保については心配をいたしておるときであります。故に日本が仮にアメリカの註文に応じて、そうして軍需生産と言いますか、軍艦を造つてくれということも、まさかありますまいけれども、アメリカ政府からこういうものを註文があつた場合、どうしてくれるかというような……、アメリカ政府ではなくつて、同業者同士の間の註文は来ておるかも知れません。又日本が協力し得る程度によつて原料の確保はできるかも知れませんが、今日では何らの話合はいたしておりません。
  24. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 今回ダレス特使が見えられまして、その間における最も具体的な問題といたしましては、総理ダレス氏との間で、この漁業問題について文書が交換せられた点であつたと思うのであります。その中で私どもが大きな関心を持たなければなりませんのは、一九四〇年に操業していなかつた漁場では、自発的措置として日本の漁民及び船舶の漁業の操業を禁止しますということを総理はその書簡の中で明らかにしておるのであります。勿論これは講和が行われた後の漁業条約が結ばれるまでの暫定的な措置としての総理の書簡の内容であつたと思うのでありますが、私が虞れますことは、この交換文書によりまして、日本の漁業というものについて著しい制限を與えるがごとき意思表示をされた。勿論これは今言う一九四〇年という線を引かれておるのであります。又意図せられるところは、或いは国際信用の維持と申しますか、そういう点にあつたと思うのでありますが、これはアメリカ政府との間にかかる覚書を交換せられたということは又直ちに他の各国との間にこの問題が影響して行くのではないか。こういう点を憂えるのでありますが、書簡を交換せられましたその真意をお聞きしたいのでございます。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。従来日本の漁船が世界の各地を荒らして濫獲をいたしたという非難が相当強くあり、殊に何年の頃かは忘れましたけれども、農林省の水産練習船と言いますか、それが、つまり政府の船がブリストル・ベイの入口において濫獲をした事実がある。米国政府としてはただに濫獲を禁ずるのみならず、魚族の保護のためにあらゆる手段を講じておるのに、日本の漁船がブリストル・ベイの鼻先に来て堂々と濫獲をするというので、当時非常に非難を起したそうであります。かくのごとく日本の漁船が、今日魚族の保護ということは列国がことごとく関心を持つておるにもかかわらず、ひとり濫獲をほしいままにして顧みない。これは困るじやないかということで、私は濫獲はいけない。濫獲は禁ずる。禁じて、よつて以て長く漁業の継続を維持するという政策については、日本といたしましても協力すべきものであると考えましたから、ダレス氏に同意を表したのであります。これはダレス氏に対して同意を表したので、米国政府に対して日本政府として同意を表したわけではありませんから、これは交換公文と言いますか、交換公文の性質を持たないと思うのでありますが、又将来これは協約という形で改められると思うのでありますが、日本政府としての意思表示はいたしません。のみならず、これは日本の漁業権の制限になるというお話でありますが。それでありますならば、これは制限にならんと思います。なぜかと言えば、自重することに、みずから愼重に自戒することによつて、他の漁区にも日本の漁船が入ることもやがてできることにもなるでありましようから、国際的の徳義なり、或いは水産、魚族の保護ということに日本が協力いたすことが、やがて日本の水産業者の利益にもなると考えます。決してそれがために利益を制限するというようなことはないと思います。又各国がということでありますが、若し各国が水産保護のために、或いは濫獲を防ぐがために、魚族の絶滅を防ぐがために、日本政府の協力を求むれば、日本政府としてはまさにこれに協力いたすべきものと思います。
  26. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 同じ漁業上の問題でありますが、講和後における安全保障の問題が随分論議されますが、一番先に安全保障の問題の上でいろいろとトラブルが起ることは漁業の上にあると思うのであります。現在すでにマツカーサー・ラインというものがありますが、中共政権においては認めないということからいたしまして、本年一月二十九日現在の政府の調査によりましても、拿捕された船舶四十六隻、その人員五百五十九人に上つております。ソ連、韓国を加えますならば、その数は百八十二隻、人員千七百七十七名というように、拿捕船、又拿捕された船員の数というものが次第に増大しておるのでございます。この場合におきまして、海上保安の上から見て、今までその自衞権の問題の上におきまして、警察予備隊の拡充等については御所見の御披露があつたのでありますが、この海上保安につきまして、どういうふうにお考えになるかということをお尋ねします。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) マツカーサー・ラインを中共政府が尊重をしないということは、これはないと思います。何となれば、これは連合軍総司令部としての声明と言いますか、取りきめたラインでありますから、中共といえどもこれを守るべきであり、又中共はこれを守らぬと声明したということは私は記憶いたしません。被害のあつたことはお話通りでありましよう。これに対してはその都度司令部を通じて抗議をいたして釈放された船もあり、又未解決の問題もあります。又何分現場において日本の船舶その他が監視が手薄であつたがために問題が起つて、これに対して反対の証拠を突き付けるというだけの証拠もないために未解決になつて、今なお懸案になつている問題もあります。ありますが、結局海上保安庁の監視なり、或いは農林省の監視ということによつて、そうしてマツカーサー・ラインを侵したか侵さないかということは、監視船の証拠等によつて、これに対して抗弁をいたす方法より仕方がないのでありますが、その監視が不十分であるということは事実であります。故に只今農林省においても、又海上保安庁においても、監視船を雇入れ、若くは建造することに努力いたしております。今後相当の成績は上るであろうと思います。現在のところはおつしやるように、御指摘の通り不十分であります。
  28. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 先ほど山田委員の質問に対して、再軍備の問題については明瞭になつて参つたのでありますが、いろいろの議論は別といたしまして、総理の御見解の中で具体的に明らかな点は、日本の現在の国力経済力というものが、再軍備には耐えられないというところが最大の原因のように考えられたのであります。軍備をいたしましても、これが国際上の信用上、何ら日本国民侵略の意図を持つていないといたしますならば、確かに総理の言われる通り国力に応ずる軍備をいたすべきであると考えるのでありますが、ところでこの自衞権の問題につきましては、総理は私としてはできるだけの財力を傾けて、日本の自衞権は守るべきものだと思うということを、衆議院の予算委員会答弁をいたされておるのであります。できるだけの財力を傾けて自衞権を拡充して行くという場合に、当然そこに軍備と紙一重、或いは軍備と言われてもいたしかたない状況に至つているのではないかと思うのであります。さような次第でありますならば、むしろ私は明瞭に日本軍備をするのだ、国力に応ずる軍備をするのだ。併しこれは飽くまでも自衞のためであるというふうに口にされるべきではないかと、かように思うのであります。  それから更にもう一つお尋ねしたいことは、総理は自衞権の拡充につきましては、国警の拡充或いは予備隊の装備強化というようなことを言われておりますが、その中で私が非常に関心を持ちますことは、智能的自衞を行うべきであるということを総理は言われております。この智能的自衞というものは、どういうものであるかということをお聞きしたいのであります。現在の日本のこの自衞の方法が、人を中心として行われておるということにつきましては、相当議論があつて然るべきだと思うのであります。世界各国が予想せられる第三次大戰に、日本の人的資源が活用されるのじやないかということをいろいろ言われておる。又国内におきまして、再び夫や或いは子供を戰場に送るのではないかというふうに恐れられておる際に、人を中心とするところの自衞権拡充ということについては、私は少しく議論がある。むしろ逆にその装備の強化というほうがいいんじやないかというふうに考えるのであります。かかる場合における総理の智能的自衞ということについてお尋ねしたいと思います。
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、いずれの国といえども、侵略のために軍備をするといつて広告をしている国はないと思います。いずれの国においても、自主である、自衞であるということを呼号しているのであつて、仮に日本軍備について疑惑を抱いている国に対して、日本軍備がこれは自衞のためであるといつても、これは効能がないと思います。又現在において軍備はできないという以上は、ないと言わざるを得ない。従つてこれに対する弁明はいたしません。又只今智能的自衞という意味合は何であるかというお尋ねでありますが、私は智能的自衞ということを申したことはないと思います。従つてこの意味合は私自身はわかりませんが、併し今の警察組織或いは警察予備隊についても、装備の点について遺憾であることは勿論であります。甚だ不完全であります。併しながら現在の財力といたしましては、これが予算の措置として最後のものであつて、できるだけのことをいたしておりますが、現在のところはこの装備以上に装備を完全にするということは予算上できません。併しながら予算の、財政余裕あるに従つて、装備を完全にすることにいたしたいと思います。
  30. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 最後にお尋ねしたいことは、講和に際してのソヴイエトの関係でございます。非常に私は不審に思いますことは、降伏文書に、ポツダム宣言にソヴイエトが参加したことが降伏文書だけに日本にとつては明らかなのであります。降伏文書の中に後にソヴイエト社会主義共和国連邦が参加したる宣言の条項というところだけが、日本国民としては、ソヴイエトがポツダム宣言に参加したということが明瞭になつておるのでありますが、このソ連が参加したという意味合は、当時ドイツが降伏後、日本を速かに降伏せしめて戰争を終結に導きたいという意図であつた。そういたしますならば、これは世界平和の見地に立つて、このポツダム宣言に参加したのであつて、ソヴイエトに関しては私はこのポツダム宣言日本が束縛されないのじやないかというような一つの疑点を持つている者なのであります。それはどういうことかと申しますならば、一九四五年の御承知の通り八月八日に、日本に対してソヴイエトは一方的に宣戰を布告した。その宣戰布告の事由は、日本ポツダム宣言を受諾しないからという点であつたと思います。これは外務省のこの調査によつて私の手許に出されておるのでありますが、そのときに日本は何らの外交的な措置を講ぜすに、八月十日にスイスと、それからスウエーデンを通じまして、ポツダム宣言を受諾することを通告して、そうして今日の状況に至つているのであります。そういたしますと、このソヴイエトの立場というものが、私は今回いわれる講和に際して、合衆国と中華民国とイギリスに対しては、日本は当然いろいろと論議をしなければならないが、ソヴイエトの場合はその比重が違うのじやないか。同時にその当時の状況を調べて見ますと、モロトフ外相は一九四五年四月の日ソ中立条約の破棄に際しては、なお中立関係の存続は明瞭に肯定することを言われておるのであります。こういうことから考えまして、私は特に外務大臣にお願いしたいことは、ソヴイエトの参加の経緯なり、或いは日本の降伏、戰勝国と戰敗国の関係であるとかいうような問題について、もつといろいろと検討されますならば、相当日本としては言い分があるのではないか、こういうことを私は考える者なのであります。それについて総理の御見解を承わりたいのであります。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 仮に言い分があるとして、日本としてはソ連に対して直接交渉ができるかと申すと、これはできません。又御承知の通り今日までは外交交渉はすべて総司令部を通じてなすのでありまして、直接にこうする、ああするということはできがたい状態にあることを御承知を願いたいと思います。  それからソヴイエトの問題については、更に遡つて考えて頂きたいのは、ヤルタ協定その他において、日本の軍が相当強力だと考えた結果であろうと思いますが、米国政府としてはソ連の参加を、連合軍に参加することを要求いたしております。でありますからして、ソヴイエトのいわゆるこの外交文書その他においては、如何ように書き出されておるにしたところが、事実においてはソヴイエトは連合軍に参加して対日戰争を……。参加したのは八月、九月に行つてからでもあるかも知れませんが、事実上、参加したのは八月に入つてからでありましようけれども、それ以前ヤルタ協定、テヘラン協定その他において連合軍の一部として参加いたしておることは明瞭なる事実であります。
  32. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 先ほど山田委員と吉田総理との応答、全面講和とそうして再軍備についての御論議の間を考えておりますと、実によく一致しておるというふうな感じを受けるのでありますが、にもかかわりませず、ここに一つの大きな国内においては二つ意見が対立しておると思うのであります。それは端的に申しますれば、日米相互防衞協定ということが大体既定の事実としてでき上つて来ておるわけであります。ダレス氏は日本国民がこれを歓迎するならば講和直後において日本に軍隊を、アメリカの軍隊を駐屯するであろう。そうして総理日本国民の大多数は歓迎するであろうということを言われておりますにかかわらず、実は一方において確かに国論は分裂しておる。分裂しておりながら、そのままの姿において、併しながら私どもはこの防衞協定ができ上ることが客観的に必至である。こういうふうにも考えるのであります。そうなりますると、この日米防衞協定、成るほど日本の国が講和直後真空状態になりますことが、朝鮮事変の例のように非常に危惧される状態である。そういうふうな点から、この日米相互防衞協定に入りますとしましたときに、実はその内容がどうであるかということが、私は一番問題になるところではなかろうかとこう考えるのであります。従いまして、この点について少しく総理大臣にお聞きいたしたいと思うのであります。この防衞協定は今後の国際情勢関係もあり、又日本の防衞力との睨み合せはありましようが、相互対等の主権に基くところのものであるということは、これは総理大臣もおつしやつておるのでありますが、従つてこれはあの七原則に書いてありますように、国際連合によつてその安全が保障される、或いは集団的地域保障によつて安全が保障されるまでの暫定的のものであろうかと考えるのでありますが、この点について総理大臣のお考えはつきりと承わりたいのであります。従いまして、その内容になつて参りますところの便宜供与として挙げられるところの軍事基地その他の問題も、租借地の設定でありますとか、いやしくも日本主権を制限するものであつてはならないと、こう考えられるのでありますが、この点について総理大臣のお考えを先ずお伺いいたします。
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お尋ねはあたかも日米の間に相互防衞協定ができ上つたようなお話でありますが、これは單にダレス氏が大統領の特使として気持を言われただけの話で、協定を拵え上げたわけではないのであります。従つてその内容如何とおつしやられても実は内容はないのであります。互いの気持を、日本が真空状態になつておる日本の安全を侵された場合にはどうするか、或いはアメリカとしてはその場合には協定によつて保護する用意があるということを申されただけの話で、それは誠に結構な話である。国民も歓迎するであろうと、こう申しただけの話で、然らばその協定はどうなるか。その内容は今後に生ずるわけでありまして、今日の段階において、こういう話合をいたしたことはないのでありまするから、ないとお答えするより仕方がない。それから軍事基地等の問題は只今問題にいたしておりません。今後のことであります。
  34. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうも、実は無論私の話から、この防衞協定ができ上つた、すでにでき上つているような話合をしておるが、その段階に立つていないということをおつしやいましたですが、併しながらこういうふうなダレス氏の話合というものは、先ほども総理大臣が言われましたように、大統領の特使としてお話になりましたのでありまして、この問題について我々としては真剣に考えなければならない。そうしてその希望なり、考え方をまとめて考えなければならないのじやなかろうかと、こう考えるのでありますが、その点について重ねてお考えをお聞きいたしたいのであります。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ダレス氏の声明にもあります通り、このたび見えたのはネゴシエーシヨンをするためでなく、デイスカスをするために見えて来たのであると、こういうことをはつきり申し伝えて来ておるのでありますからして、従つて私のさつき申した通り、協定の内容とか、協定が成立したとか、それは今後のことでありまして、現在においては何らの話合はないと御承知を願いたい。
  36. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうもこの点については私は総理大臣がダレス氏とどうお話合なつたかは別として、総理大臣としてどうお考えになるかということをお聞きしたいと、こう思つてここに立つたわけでありますが、もう一つその問題について、若しも総理大臣が自分としてはこう思うというようなお話があれば、頗る私としては結構だと、こう考えるのであります。  更に第二の問題といたしまして、これはダレス氏も言つておりますし、ダレスが言わなくても、アメリカの各方面でしばしば言われておることでありますが、やはり自国を防衞するだけの意思と能力のないという国と手を携えるつもりはない、こういうことを言つておることは明らかでありますし、又総理大臣も、この国会で国内治安の問題について、国内の、つまり間接侵略に対してはこれはどうしてもすぐやつて行かなければならない、こう言つておられるのでありますが、一昨日実はここでその本筋をなしますところの警察予備隊について予備審査をやつたわけであります。どうも今この警察予備隊の内容をいろいろ検討いたしておりますと、現在の段階においては、而も率直に申しますと、昨年マツカーサー元帥の書簡が出まして、もう半年経つておるのでありますが、この警察予備隊が現在の状況を以てしては、その間接侵略に対して十分であるかどうかということについて頗る疑いなきを得ないのでありますが、この点について総理大臣は如何お考えになつておりますか。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 警察予備隊の性質については、しばしば国会その他において言明いたしておるのでありますが、これは全然日本治安維持のために設けられた組織であります。これが不十分であるか、不十分でないかということは、これは見ようによる話でありますが、私といたしては、現在の日本治安維持するためには、これだけの力を持つていればたくさんであると思います。併しながらなお今後の事情等によつて一層充実いたしたいと思つております。
  38. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 前半はどうしても総理の御意見を促しておるのでありますが、お答えを得られないようであります。直接侵略に対する便宜供与の問題については、衆議院で以てお答えになつておるようだと思うのでありますが、この便宜供与の内容はどの程度でありましようか。なおその費用の負担等については、衆議院で、これは米軍の駐屯費というものは多分米国が出すのだろうというふうなことを、負担するのだろうということをおつしやつておるのでありますが、そうなると、終戰処理費の一千億余に上るものは節約できると、こういうふうなことになると思いますが、これらについてどういうふうにお考えになつておりますか。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り、いわゆる相互保護と言いますか、駐兵の問題については気持を話合つた程度であつて内容については何ら細かいことには触れておらないということは先ほど申した通りであります。従つて費用の問題についても話はいたしておりません。新聞に駐兵費はことごとくアメリカ政府が負担してくれるだろうというふうなことが新聞に出て、私がそう申したように書いてありましだから、昨日の外交委員会において取消して置きました。私はそういうことを言つたつもりではありませんが、そういうふうに伝えられたとすれば、これは誤伝でありまするからして、昨日の外交委員会はつきり取消して置きました。
  40. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実は日米の相互協定がどういうものであるかということについては、お話合だけであつて内容にまだ入つていないとおつしやいますが、もう一点お聞きしたいことは、この日米相互協定の性質は、何らかの形で国際連合憲章との結び付き、国際連合との結び付きというような点についてお考えがありましようか、どうでありましようか。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国際連合との関係が将来どうなるかということは、これは将来の講和条約の内容関係することでありまして、どうなるかということは今日私としては見通しがないのであります。従つて今の駐兵国連との関係はどうなるか、これは先ず第一に、米国政府日本駐兵をするという場合には、米国政府国連の間に話合ができることと思います。
  42. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 話の方面は一変するのでありますが、これも先ほど櫻内君からお話のありました防衞にやはり関することでありますが、日本の国の自立経済を達成いたします点から見まして、雇用の問題から見ましても、日本の工業、特に重工業というものが相当発達しなくては、なかなか達成しにくいということは明らかだと思うのであります。今回の本年度の予算及び安本の自立経済審議会の報告によりますと、どうもこの点につきましては少し疑いなきを得ない。全体の鉱工業生産指数は一五%でありますが、実は重工業部分では一〇%であります。その他の部分が約一九%から二〇%増で、平均一五%というふうになつておるのでありますが、又アメリカのほうから見ましても、日本の工業力に依存するという必要性は非常にあると思うのでありますが、それらの点について、先ほど民間ではああいう姿で話合があるだろうということをおつしやつたのでありますが、政府のほうで積極的にその点についてのお考えはございませんでしようか。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今政府としては原料確保のためにできるだけの努力を払つております。併しながら御承知の通り原料は各国ともに不足をいたしておるのでありますからして、十分な確保はなかなかむずかしいと思いますが、併し政府としてはできるだけのことを現に努めております。
  44. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 最後に一言お聞きしたいのでありますが、ともかくも講和が時期がいつであろうと、伝えられるところによれば、七月であるとか、或いは秋であるとかいうことが期待されるような状態になつて参つたことは事実だと思うのでありますが、この際民族が独立を遂げる、そうしてその国土についてのあらゆる文化、経済、そうして軍事力等も含みまして、日本安全保障につきまして、相当深刻に考えなければならんときが来ておると、こういうふうに考えられますが、この際に内外の権威を集めて、そうしてそれこそ党派を超越した姿において何らかの形で総合的な政策、そういうものを樹立する必要があるのじやなかろうか、少くともそういうことの基本的事項だけは準備する必要があるのではなかろうか、そういう観点から安全保障会議と申しますか、そういう種類のものをお作りになるお気持はございませんでしようか。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 経済自立については、すでに安定本部において自立経済審議会でありますか、として研究いたしております。今お話安全保障のために審議会をということでありますが、これは相手国もある話でありまして、日本ひとりできめられるわけでもなし、又相手国の、例えば米国政府講和がこうだといつて提案されておる場合でもありませんから、これは将来置くかも知れませんが、今日においては置く考えはございません。
  46. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は二十六年度予算を我々が検討し、審議する前提として、国際情勢というものが非常に重要な要素になりますので、先ず総理に、この二十六年度予算を編成するに当りまして、その前提条件、基礎条件として、国際情勢をどういうふうに御判断になつたか、これを具体的に申上げれば、朝鮮の戰局、これをどういうふうにお考えになつておるか、又講和の見通し、先ほど前途相当まだわからないというお話がありましたが、我々予備審査のとき外務当局に聞きましたときに、この予算を編成する前提として、講和は大体秋ぐらいにでき上るものという想定の下に立てておるというお話であつたのです。その点、先ほど総理の御答弁を聞いていますと、又その時期の測定についてやや違いが生じておるように思われますので、先ずそういう点についてお伺いしたいと思います。先ほど総理大臣は、国民国際情勢に対する認識を十分持つていない、遺憾であると申されましたが、私は総理が昨年十一月二十七日の施政方針演説におきまして、朝鮮事変は国連軍の適切果断の処置により、事変の終熄が図られつつあるが、本日マツカーサー元帥みずから陣頭に立つて全軍を指揮し、北鮮の戰闘もついに終熄せられんとする趣きである、これにより朝鮮全土の速かな平和回復も期待され、喜びに堪えない、こういう国際情勢の想定の下に立たれて総理は補正予算を組まれ、又その想定の下に、日本は非常に貿易計画、その他において多大な損失をいたしたのでありますが、総理も神様でありませんから、責めるのは無理でありますが、そういう過ちを現に犯されたのでありますから、この二十六年度予算を審議するに当りまして、どうしても我々は国際情勢の見通し、それから特に朝鮮戰局、或いは講和の締結の時期等について、この予算審議の前提として先ずその点をお聞きしたいと思うのであります。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国際関係は数字とは違つて、二一天作の五というふうには参りません。又将来の見通し見通しと言いますけれども、見通しは各個人が考えるべきものであつて政府としては今年の秋に講和ができるだろうという約束はできません。併し当局者としては一定の考えを持つておるでありましようが、つまり大蔵当局としては大体から見当を付けておるでありましようが、私として国際情勢の見通しはかくかくなりということを申すことはできません。
  48. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私はそう感情的に御答弁願わないようにお願いしたいと思うのであります。これは特に経済の貧弱な日本にとつては、国際情勢の想定が間違つた場合には非常な損をするのでありますから、現実に五億二千万ドルの資金が、昨年末に外貨は得られましたが、その後海外物資の買付競争が激しくなつて、ここに一割物価が、二割物価が、先に上つてしまえば、五千万ドル、一億ドルの損、一億ドルは三百六十億でありますから、非常な損であります。そういうような点は、私は少しみみつちいようでありますが、そういう点からお伺いしておるのですから、冷静に、感情的に御答弁にならないようにお願いいたします。決して非難しておるわけではないのでありますから、人間ですから、我々自身も間違うことがあるのですから、そういうことを問題にしておるのじやないのですから、冷静に御答弁をお願いしたいと思うのであります。問題は、総理はたびたび朝鮮戰局が、これは世界戰争にまでは発展しないだろうという想定に立たれておると思うのです。その根拠です。どういうわけで世界戰争に発展しないのであろう、その根拠を明確に伺うことによつて国民は相当それが合理的な根拠であれば安心すると思うのです。その根拠の理由につきまして、御答弁を願いたいと思います。
  49. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り国際情勢は数字ではお話できないのであるから、あなたと私は立場が違うから、幾ら説明しても私の説明はあなたの満足せられないところであり、了承できないところでありますから、こういう空論についてあなたと討議する時間がありませんから、お断わりいたします。
  50. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 決してこれは私は空論ではないと思います。空論ではない。数字をよそにして予算はないわけです。我々予算委員は数字と取組んでいるのであります。総理は外交関係においては権威かも知れませんが、やはり国政を担当する場合に、数字を、そういう二一天作じやないから、数字と違うのだからといつても、結局すべて結論は数字にならざるを得ないのです。予算に具体的に現わさざるを得ない。外交でも政治でも結局問題は予算に帰着するのです。数字に帰着するのですから、我々予算委員としては、数字を検討するほかはないと思います。そういう御答弁は私は甚だ遺憾だと思います。立場が違う。我々日本人です。又人間です。立場が違うということは非常に私はおかしいと思うのです。そういうような挑戰的なような御答弁は私は非常に遺憾だと思うのです。総理はたまたま施政方針演説において、ああいうことを言われたのが間違いであつたと指摘されたのを、総理感情的におとりになるならば、それは非常に襟度が狭い、民主的な態度ではないというふうに思われます。そこで私はこの点については御質問申上げません。  次に総理は十五日の参議院の外務委員会で、講和問題については日本はとにかく経済自立が前提になるのであつてダレス特使から再軍備を強要されたようなことは決してない、こういうふうに言明されているのでありますが、やはり講和前提として経済自立ということが前提となる、こういうふうにお考えになつている、こう解してよろしいのでありますか。
  51. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 秘密会で申したことは私は責任を負いません。(笑声
  52. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それではその外務委員会で申されたという意味でなく、総理のお考えとして、講和問題の前提として自立経済がやはり前提にならなければならない、こういうふうにお考えかどうですか。
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはお答えするまでもなく当然なことであります。
  54. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういたしますると、ダレス氏との講和問題に対するネゴシエーシヨンでなくて、デイスカツシヨンにおきまして、講和問題として、申すまでもなく重要な前提条件についてデイスカツシヨンが行われたと思うのです。そこで経済自立のいろいろな条件があると思うのです。日本はこのままに手放しに自立できないと思いますが、その講和前提条件として、自立経済の問題について総理は何かデイスカツシヨンをされたかどうか。又その点については話合だから話せないとおつしやるならば、自立経済について、講和問題についてどういう点が解決されなければならないと、こういうふうにお考えでありますか、お伺いしたいのです。
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ダレス氏との話合の内容お話ができない。(笑声、「そういうことはないよ」と呼ぶ者あり)
  56. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 静粛に願います。
  57. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 ダレス氏との会談お話できないというならば、講和前提としての自立経済の条件、これについてお考えにならなければ、デイスカツシヨンも意味がないと思うのです。私は経済の自立条件についてお話合があつたと思うのですが、総理は自立経済の条件として、例えば講和後終戰処理費というものはどうなるのか、或いは対日援助費というものはどうなるのか、又賠償はどうなるのか、それから借款の問題はどういうふうになるのか、或いは備蓄の問題、自立経済に非常に重要な備蓄、それから輸入の問題、こういう問題はどうなるのかということについて前提になるのでありますから、そういうことについての総理のお考えがあると思うのですが、それは総理としてデイスカツシヨンされた後において、総理はこういう問題がどういうふうになるとお考えでありますか。先ず第一に講和後の終戰処理費、それから対日援助費というものはどういうふうになつて行くのであるか。これは国民の非常な関心を持つていることだと思うのです。それから賠償の問題がこれもまだはつきりしていないと思うのですが、大体の方向としてはどうなるのか。第三に借款の問題、経済自立、日本は手放しに自立できないと思うのです。やはり借款の問題が起ると思いますが、借款の問題についての見通しはどうなるか、伝えられるところによれば、一万田日銀総裁はアメリカへ行きまして、電源開発その他についていろいろ個人的でありましようが、いろいろな話合いをしていると伝えられておりますが、そういう借款の問題はどういう見込であるか、それから備蓄の問題、輸入の問題、この四点につきまして、総理考えを承わりたい。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お尋ねのことは、講和条約の見通しが付き、或いは時期がはつきりして、そうして講和条約の内容が示されたときにお答えのできる問題でありますから、今日はお答えしない。
  59. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 講和条約ができるまで何もしないでいるはずがないと思います。やはり講和前提というものに、その準備態勢というものが必要であろうと思うのです。ですからその準備態勢として、又その講和前提という問題を解決して行かなければならないと思うのです。一挙に講和ができるものでないと思う。ですからその準備態勢或いはその前提条件の問題について、こうなるだろうということ、大体こういうものを判定しなければ、国民日本経済が今後どうなつて行くか、又講和前に日本経済はどういうふうに動いて行くのか、こういうことについて重大な関心を持つているのでありますから、講和がきまつてからどうこうというのでは遅いと思うのです。ですから国民全体の重大な関心を持つている問題について、総理話合いもされない、ダレス会談においてデイスカツシヨンもされない、そんなら講和前提の話に来られたと思うのですが、何を話されたか。私は一番重要な講和前提としてのその中味になるべき対日援助の問題とか、賠償、借款、備蓄、そういう問題について全然国民にお示しがない、会談内容お話できないといつても、それがどうなるであろうということについて総理が明らかにされないことは、非常に不親切だと思うのですが、やはり依然としてこれについては総理のお考えを、こうなるのではないか、大体こうなるんじやないか、こういう御答弁が願えないでしようか。
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の説明は前言の通り。(笑声
  61. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 実際問題として講和ができる前に日米の経済協力態勢というもの、こういうものはだんだんに実際問題としてでき上りつつあると思うのです。それがいろいろ伝えられておりまして、日米合同経済委員会或いは又朝日新聞の二月十六日号では、極めて詳細に日米の経済協力態勢として日本経済の動員構想というものが書かれておりまして、例えば米国日本において必要な生産を行わせるため原材料を日本に供給する。その資材は原則として他に流用できない。そういう日本経済の動員構想というものがここに示されておりますが、そういうものは今後の日米の経済協力態勢の内容になつて行くのじやないか、こういうふうに報道されておりますので、そうしますと、日本経済には今後非常な重大な変化がもたらされると思うのです。こういう経済の方向について、その経済協力の方向について、総理はどういうふうにお考えでありますか。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見は御意見として伺つて置きます。
  63. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は意見ではないのでありまして、こういうふうに新聞に出ております。従つて国民は日本経済はこういうふうに行くのじやないかと考えておるのですが、それがやはり対日講和中心とするダレス氏と吉田首相との会談の結果、こういうような方向に結論がだんだん出て来ているのじやないか、ダレス氏の来られる前はわからなかつたけれども、ダレス氏が帰られて後に、だんだんとダレス会談の結果が具体的にこういうふうに伝えられている、こういうことについて総理お答えがないということについては、私は非常に遺憾でありますが、これは決して意見ではないと思うのです。総理は私に答弁されない決意をされたようでありますから、イエス、ノーだけの御答弁で結構だと思いますが、重ねて私は御質問いたします。  二十六年度予算を今後審議して行く上において、我々が予備審査において各省別に審議して参りましたが、政府が提出された二十六年度予算は現実と非常に遊離してしまつておると思うのです。で、私は全く非常に現実から遊離しているこの予算を大まじめになつて審議するのも非常に妙な気持もするのですが、政府も現実と非常に遊離してしまつているこの予算を我々に審議させているのも非常に無責任だと思うのです。朝鮮動乱後の経済情勢変化について、政府は非常に見方が甘いと思うのです。で、今後のインフレの動向については、一月の二十六日、日米協会の会合で行われた総司令部のフアイン博士の講演の内容を見ましても、日本のインフレの前途は容易ならんというふうに警告されておるのです。これは安本で出されている経済月報二月号に附録として載つておりますが、これを見ますと、容易ならんものがあると思うのです。で、フアイン博士は大体経済統制を早くやつたほうが、後にやつたよりも犠牲が少いということを言つておる、それで自分は統制の必要を説くと、日本言論機関その他はこれに対して反対意見を述べていることを自分はどうもおかしい、非常に遺憾であるというふうな意見を述べておるのですが、政府は今後起るであろう相当のインフレの問題に対して輸入を努力する、輸入を努力するというだけで、掛声ではそう言つておりますが、実際においてこれに対処し得る、そういうような経済体制をお考えになつているかどうか。殊に統制の問題、地方選挙を間近に控えているので、統制というものはやらないのである、言わないのである、地方選挙後これを急にやるのかどうか、このインフレ見通しです。これは総理経済專門でないと言われましても、この大きな問題については総理は重大な関心を抱かなければならないと思いますが、このインフレの問題と、それから統制の問題、今まで自由経済でやつて行くと言われていますけれども、そんなことでやつて行けるかどうか、この点についてお伺いしたいのです。
  64. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えをさせます。
  65. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 木村君時間です。
  66. 内村清次

    ○内村清次君 議事進行について……只今の木村委員に対しましての総理の御答弁態度を見ていますと、これは木村委員の質問内容につきましては、現在の日本情勢といたしまして、又我々予算委員会の委員といたしまして、一十六年度の予算の及ぼす影響の点から考えまして、いわゆる朝鮮動乱の問題や、或いは又ダレス特使との会談内容・即ち講和の見通し、こういう点が至大な関係を持つておることは申すまでもないことでありまして、その質問は決して、私たちが今聞くところによりましても、これは意見ではなかつたはずであります。意見に対しましては、又総理といたしまして、或いは又一面自由党の総裁として、意見の異なる点に対する御態度としては、或いはその総理の御態度、勝手と申せば勝手、自由と申しますれば自由でありましようが、いやしくも国民の代表といたしましてのこの質問に対しましては、我々党派が違つておる者でさえも、国民の代表として聞かんとするところであります。その聞かんとする質問内容に対しまして、党派の如何により、或いは又人の如何によつて、ああいうふうな重大な問題を感情的な答弁をなされるということは、誠に不愉快であります。又これは影響するところ、国民に対しましても申訳ないことであると存じますが、こういうような重大な、而も又時日の最も極限せられましたときにおいて、総理の出席をみずから求めて、そうして極限された時間内におきましての答弁を求めまするこういう貴重なるところの段階におきまして、ああいうような御態度のないよう、もう少し親切に、而も国民の聞かんとするところは率直簡單に明瞭に答弁をして頂くように私たちは要望することが切でございまするが、委員長におきまして、この点に対しまして、国会の権威において、或いは委員会の権威におきまして、或いは議員の即ち質問のこの権威におきまして、総理答弁が親切で、而も又明瞭で、而も要を得た答弁をして頂きまするように、委員長から御注意あらんことを私は希望いたしまして、議事進行をしたいと存じます。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  67. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 総理、お聞きの通りですから、どうかよろしく……。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 同時に私もお願いするが、質問者におかれても、要領の得られない、できない答弁を強いるようなことをせられずに、又その結果が国民に対する影響は勿論のことでありますが、海外情勢にも関係することでありますから、質問者におかれても同じように、私に対するあなたの御注文と同じように、質問者に対しても、あなたからして御注意願いたいと思います。
  69. 岩間正男

    ○岩間正男君 忠言耳に逆ろうという言葉があります。良薬口に苦しという非常に下世話に言われた言葉があります、だから或いは総理の気に入らないそういうこともこの予算委員会では吐かれるかも知れない。併しこの気に入らないほうにこそ、むしろ多く総理としては傾倒されなければならない問題があるのではないか。今先の提案がありました点につきまして、やはり我々もその感を深くするものでありまして、どうもそういうことだと、国会における言論の自由というものが非常に保障ざれがたいと思うのであります。たしかボルテールだつたと思うのでありますけれども、「君の言うことは私は反対だ。併し反対であるけれども、君がそれを力説するその自由については、命をかけてもその自由を守りたい。」こういうことを申しております。私はこの態度こそが真に民主主義者の態度であろうと思います。そういう点におきまして、総理の御答弁も、我々は国民の代表としまして、今置かれておる日本のこの民族の遠い運命を決定するような重大問題について、国民を代表して質問申上げるのでありますから、これは誠心誠意御答弁されんことを期待いたしまして、私は質問をいたしたいと思うのであります。  先ず第一に、総理お話の中に、講和問題をめぐりまして、集団の侵略がある場合には、これを集団で防衞しなければならない、そういうことをしばしば申されるのであります。そこでこの侵略の問題でありますが、外国からの侵略がある、こういうことが非常に前提になつております、総理は仮説のことは答えないと常に答えられておるのでございますけれども、併し日本の現在のこの外交政策を見ますと、どこかの国が侵略をして来る、まあ或る場合には共産軍がはつきりこれは侵略する形がある。これに対して日本の再軍備問題、それから外国兵の駐屯の問題、こういうものが問題になつて来るのでありますが、そうしますと、この侵略が果してあるのかないのかということが、非常に講和問題を決定し、講和後の日本の態勢を自立する上において、これは根本的に重大問題になつて来るわけであります。従つて私はお伺いするのでありますけれども、外国侵略があると、こういうふうに考えておられるのか、ないのか、あるとすれば、その根拠、どういうところに一体根拠をお持ちになつておられるのか、お伺いしたいと思います。
  70. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はあると断定して考えておるのではないのであります。併しながら集団攻撃があつた場合、現に朝鮮においてあつた場合にどうするかということは考えますけれども、あるということを前提として、従つて又再軍備等は考えておりません。
  71. 岩間正男

    ○岩間正男君 あつた場合というような仮定でございますが、やはりこの仮定を想定して、そういう何かの根拠があるように考えられるのであります。そのことが非常にいつでも論議のときに前提条件となつているのでありますが、こういう点についてもつと腹蔵なく総理の御意見を承わりたいと思うのであります。もつと具体的に言いますと、例えば中共軍が侵略して来るのであるか、或いはソ連軍が日本侵略して来るのであるか、そういうような情勢が今の情勢の中にあるのであるかどうか、この点について具体的にお伺いしたいと思いをす。
  72. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 朝鮮動乱というような、事態があつたことに考えて、日本も大いに考えなければならんとは考えておりますが、あるということを前提としての話ではなく、又あるというのは、どういう根拠があるなんということは、今日日本は占領下にあつて、外交機関も何にも持つていないときだから、お答えできない。
  73. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、仮にあつた場合というのも一つの想定になるのでありますが、この想定によつて軍備考えるということは、非常にこれは私は危險な問題ではないかというふうに考えます。と言いますのは、同じことを総理は、実は第九十帝国議会におきまして、憲法審議の中において、我が党の当時中央委員でありました野坂氏の質問に対しまして答えておる条項があるのであります。それはこういうことでありまするが、その一節を述べますというと、「国家正当防衞権による戰争は正当なりとせられるようであるが、私はかくのごときことを認めることが有害であろうと思うのであります。近年の戰争は多くは国家衞権の名において行われたことは顯著な事実であります。」こういうような御答弁を今から五年前になされておるのでありますが、私はこの総理のこういう御返答は誠に当然であると思う。日本の過去の侵略戰争、帝国主義侵略戰争の様子を見ますと、必ず仮想敵国というものを作りまして、敵が侵略すると、こういう前提の下に、我々はこういう防備を作らなければならないと、こう申しまして、日本帝国主義は実に自分の力以上の態勢を強化して、そうして他国に侵略することによつてみずから今日の破滅を招いたのであります。そういうことを考えましても、現下日本の置かれておる態勢を考えるときに、果して日本が今日外国侵略があるのか、毎日の新聞を見ても、又ラジオを聞いても、そういう侵略日本の周囲をめぐつてつておる、これに対して日本は備えなければならないのであるから、再軍備又止むを得ない、或いは外国兵の駐屯もこれを許さなければならない、こういうような論調が非常に行われておるのでありますけれども、これは総理曾つて五年前に答弁されたこの事態とは非常に違つて来ておる、様子が違つておるのでありますけれども、こういう情勢に対しまして、総理は何とお考えになるか。多年の自由主義者であり、そうしてそういうような主張を貫かれた総理としては、こういうような現在の情勢に対しまして、どのような批判を持たれ、処置をされようと考えておるのか承わりたいと思うのであります。
  74. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はしばしば申しておりますが、再軍備考えは持つておりません。
  75. 岩間正男

    ○岩間正男君 再軍備考えはお持ちにならないということでありますが、そのことはあとでこれはやろうと思うのであります。併し再軍備のことと連関した問題で、駐屯の問題ですね。外国兵の駐屯の問題、これについてはどうお考えになつておりますか。
  76. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先ほどしばしば申した通り米国政府としてはこういう考えがある、これは結構な話だと申しただけで、この点については具体的にこう考えておる、こうするということは私は一度も述べたことはないのであります。
  77. 岩間正男

    ○岩間正男君 首相が今言われた再軍備考えを持つておられるかどうかということについて、私は先ほど質問したのではなく、日本の態勢が、今の論調が全部そういうふうに、何か侵略して来るこれに対して備えなければならん、こういうことを言つておるのだが、これは過去の今までの総理の主張と非常に違反しておるが、こういう態勢についてどのような処置を持たれ、それに対して覚悟を持つておられるか。こういうことを承わつておるのでありまして、この点の御答弁を承わりたいと思います。
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この点はしばしば申しておるので、万一集団的攻撃を受けた場合には考えざるを得ないということを申しただけの話で、未だ集団的攻撃を受けておりませんから、具体的にこうするということは申さない。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 とにかく現在の情勢と過去の侵略戰争当時の情勢と非常に似て来ておる。ここに根本的な態勢があるというふうに考えられるのであります。何か侵略をするということを書き立てて、そうして戰争を煽つておる。こういう戰争挑発的な行為に対しては、これはむしろ日本の置かれておる現状、それからポツダム宣言下の総理としましては、当然これに対してそういうような方向を抑圧するような態度で行く、そうして飽くまでも平和を守る態勢こそが最も望ましい態勢だと思うのでありますけれども、現在の情勢はまるでこれに反したような態勢が刻刻強化されて、そうして日本人が今不安の中にさらされておることを非常に遺憾とするものであります。そこで次に今の問題、これはもつと申上げたいのでありますが、時間が許しませんので、次にお伺いしたいのでありますが、再軍備経済的にできないということを言つておられまして、総理は再軍備のできない根拠としては経済理由を主に挙げておられますが、そうしますと、逆に経済的な余裕が来た場合には再軍備が必要である、どうしてもこれはしなければならないと、こうお考えになつておられますか、この点をお伺いしたい。
  80. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この点もしばしば申しております。経済力が回復すれば持たないとは申さない。
  81. 岩間正男

    ○岩間正男君 今のほう、ちよつと語尾がよくわからなかつたのでありますが、経済力が回復すれば、これはやるというお考えでありますか、もう一度伺います。
  82. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の言うのは、未来永劫再軍備考えないのではない。一国として独立国である以上は、軍備もその他も考うべきであり、でき得るなら考えたいが、できないというのであつて、現在は考えていない。将来は将来であります。
  83. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもそういうことを言われまして、将来は将来、現在は現在だと、こういうふうに言われているのでありますが、そうすると、こうですか。よく巷間に伝えられている問題として、恐らく国民が全部耳を傾けて聞きたいと思つているのは、吉田内閣の時代においては再軍備はやらない。併しながら一定の条件で單独講和か何か、とにかく講和を急ぐ、どういう形でか講和を急ぐ。そうしてそのあとは、あとの態勢については自分の知つたことじやない。これは新聞で見たのでありますけれども、功成りておごらずというような総理の心境をたしか色紙に染められたということを我々は新聞で見たのであります。そうしますと、総理講和を以てその任務を終る。従つて自分の時代には再軍備はしない。そういうことを声明して單独講和を急ぐ、こういう形になる。併しそのあとは一つの後継内閣ができる。そうしてそういう態勢ができた時代においては、はつきり再軍備をそれによつてやる。或いは憲法改正をそれによつてやる、こういうような態勢があるのでありましようか、どうでしようか。この点は非常に問題になつて来ると思うのでありまして、この点と連関してもう一つお聞きしたいのは、鳩山氏とダレス氏の会談であります。この点についてそういうような構想が巷間に伝えられているのでありますが、そういうような事実があるかどうか。この点ともう一つは、鳩山氏が追放の身分でありながら、ああいうような会見をされた。つまりそうすると、大体追放者はあれだけの政治的自由は差支えないと総理においては御判断なさるのであるか。我々の党におきましても追放者を持つているのでありまして、こういう点について政治的自由の限界というものをはつきりさせて置くことが非常に重要なのであつて、今後の参考のためにお伺いするのであります。この点お伺いして置きます。以上三点。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 新聞その他の噂については私は答弁の責任を持ちません。又鳩山君の追放者としてダレス氏に会われたことは、これはダレス氏との間にどういう関係があつたか知りませんが、連合国司令部、若しくは連合国の代表者との間の話は、これは追放規定の範囲外にあると思います。こう解釈いたしております。
  85. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 時間がないからあと、一問で……。
  86. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも今の御答弁では十分でないのでありますが、最後にもう一つお伺いたしますが、これはダレス氏がキヤンベラで語られた言の中に、こういうことがあります。日本人は再軍備は望んでいない。又この中の一節に、私は滞日中日本の個人や団体から幾千という書信を受取つたが、それはどれ一つとして再武装に賛成したものはなかつた。再武装に対して日本人の意思が非常に大きくダレス氏に表明された。それが世界的に語られた。こういうふうに思うのでありますが、総理がこれについて日本人は全部再武装反対している、こういう少くとも輿論が圧倒的多数を占めているという事実を認められますか。認められませんか、この点如何ですか。
  87. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は外国通信については責任は持たない。
  88. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後零時十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     波多野 鼎君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            佐多 忠隆君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            櫻内 義雄君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大島 定吉君            小野 義夫君            白波瀬米吉君            野田 卯一君            長谷山行毅君            一松 政二君            深水 六郎君            安井  謙君            山本 米治君            内村 清次君            加藤シヅエ君            下條 恭兵君            永井純一郎君            山田 節男君            原  虎一君            若木 勝藏君            飯島連次郎君            高良 とみ君            西郷吉之助君            高瀬荘太郎君            前田  穰君            鈴木 強平君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   国務大臣    内閣総理大臣外    務大臣     吉田  茂君    運 輸 大 臣 山崎  猛君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    内閣官房副長官 井上 清一君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省政務局長 島津 久大君    外務省監理局長 倭島 英二君    大蔵省主計局次    長       東條 猛猪君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君