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1951-06-04 第10回国会 参議院 本会議 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年六月四日(月曜日)    午前十時二十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五十一号   昭和二十六年六月四日    午前十時開議  第一 司法書士法の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第二 警察法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 医師法及び歯科医師法の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第四 北海道開発法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 電話設備費負担臨時措置法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、司法書士法の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。法務委員会理事宮城タマヨ君。    〔宮城タマヨ登壇拍手
  4. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 只今上程されました司法書士法の一部を改正する法律案につきまして、法務委員会におきます審議の経過並びに結果について御報告申上げます。  本法案要旨は、先ず第一に、現行法上、司法書士報酬額法務総裁が定めることになつておりますが、これを司法書士会において定め、法務総裁の認可を受けるものとすることに改めること。第二に、現行法上、司法書士でない者は、他の法律に別段の定めがある場合又は正当の業務に附随して行う場合以外は司法書士業務を行なつてはならないことになつているのでございますが、このうち正当の業務に附随して司独書士業務を行うことをも禁止するように改めること。第三に、報酬に関する罰則を削除しようとするものでございます。  委員会におきましては愼重に審議いたしましたが、詳細は速記録によつて御了承願いたいと存じます。討論に入りまして、伊藤委員より、法務総裁は、その認可した報酬規定が適正を欠くと認めるときは変更を命ずることができるものとし、正当の業務に附随して行う場合の規定及び報酬に関する罰則規定現行法通りに改める趣旨修正案提出されたのでございます。採決の結果は、修正案及び修正部分を除くその余の原案全部について、いずれも全会一致数を以て可決すべきものと決定いたしました。  右御報告申上げます。(拍手)    〔議長退席、副議長着席
  5. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔総員起立
  6. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  7. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 日程第二、警察法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。地方行政委員長岡本愛祐君。    〔岡本愛祐登壇拍手
  8. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 只今議題となりました警察法の一部を改正する法律案に関し、内容の概要と地方行政委員会における審査の経過並びに結果について御報告申上げます。  警察法改正の問題につきましては、すでに以前からいろいろ論議があつたことは御承知通りであります。今回、政府より本法案提出され、現下治安実情に鑑み、警察力強化すると共に、警察法施行経験に徴して、警察運営を一層能率化する必要があるというのが提案理由に相成つております。  改正の主要な点は、先ず国家地方警察に関しましては、一、警察力強化のため管区警察学校及び警察学校に在校する警察官五千人以内を国家地方警察基本定員三万人分ほかに定員外として増置すること。二、自治体警察区域内における治安維持上重大な事案につき、止むを得ない事情があると認めるときは、都道府県知事がその事案の処理を都道府県会安委員会要求し、二の場合、該公安委員会国家地方警察をしてこれを処理させることができ、又都道府県会安委員会知事に対して右の要求をするよう勧告することができること。三、都府県には一の公安委員会を置くか、北海道には、特に道知事の所轄の下に、下部行政区画により十四以内の道公安委員会を置くこと等であります。  次に自治体警察に関しましては、一自治体警察警察吏員定員総数九万五千人の枠を外し、各自治体警察職員定員は、それぞれの市町村がその地方的事情に応じて條例で自由にこれを決定するように改めたこと。二、現在人口五千以上の市街的町村は、市と相並んで警察維持することになつておりますが、町村については、その実情に応じて、住民投票により警察維持しないことができ、又一旦警察維持しないこととした後も、投票のあつた日から二年後には再びこれを維持することができること。この場合、警察維持しないこととなつ町村については、その警察吏員国家地方警察が引受け、これを国家地方警察基本定員外警察官とすること。併せてこの場合における警察職員の恩給の通算、警察用財産処分等について規定したのであります。  次に国家地方警察及び自治体警察の両者に関係する主な改正点は、一、都道府県及び市町村公安委員資格要件を幾分緩和し、警察職員検察職員、旧職業軍人前歴者と、公安委員に任命前十年間に職業的公務員であつた者だけを欠格者としたこと。二、警察活動能率両三のために、各警察相互間に犯罪に関する情報を交換するものとし、又、各警察は、その管轄区域内で行われた犯罪、その管轄区域内に始まり又は及んだ犯罪のほか、更にこれらに関連する犯罪についても、管轄区域外職権を及ぼすことができることとしたこと。三、自治体警察警察吏員も、国家地方警察又は他の自治体警察要求があつたときは、その援助に当つて管轄区域外においても職権行使ができることを明らかにしたこと。四、自治体警察要求によつて国家地方警察警察職員援助した場合は勿論のこと、国家地方警察要求により、及び国家非常事態の布告のあつた場合において自治体警察職員区域外に出動し直接要した費用、及びこの場合自治体警察職員公務傷病の補償について、国庫負担することを明確にしたこと等であります。  その他は、国家地方警察警察官の階級を明らかにしたこと、都道府県国家地方警察本部の長を都道府県国家地方警察隊長に改めること、若干の経過規定を設けたこと等であります。  地方行政委員会は、五月十一日、本法案が付託せられるや、本法案重要性に鑑み、連日委員会を開き、なお法務委員会との連合委員会を三回に亘つて開催し、主として大橋国務大臣及び政府委員等との間に質疑応答を重ね、又五月二十三日、四日の両日には、本法案に関する公聴会を開き、各地方公共団体の首長及び議員、自治体警察その他各界の代表者学識経験者一般応募者等、二十名の公述人より意見を聴取しました。  次に委員会における国務大臣政府委員との間の主な質疑応答について御紹介いたしますと、  一、国家地方警察増員が五千人に落ち着いたのは財政の都合によるものであるか、治安上の見地からはどうであるか、又政府は、本法案は暫定的にこの程度にとどめて、将来、警察予備隊国家地方警察自治体警察の三者を包括した警察制度根本的改革を企図しているのであるかとの質問に対し、大橋国務大臣より、国家地方警察五千人分増員財政上五千人に減員を余儀なくされたという意味のものではなく、装備充実をも併せ考えて、この程度現下治安上満足すべきものであると考える、今のところ将来更に根本的改正を行うつもりはない旨の答弁がありました。  二、政府は本法案提案理由として、現下治安実情に鑑み云々と言つているが、治安実情とはどういう意味であるかとの質問に対して、朝鮮の動乱が起つて以来、国内治安に対する国外からの影響も十分考慮しなければならないと考えている旨の答弁がありました。三、本法案警察予備隊との関係如何との質問に対しては、政府側より、警察予備隊は、内乱状態に陥つたとか旧制度の下において軍隊の出動を余儀なくされた事例にも匹敵すべき全く非常の場合に、初めて出動するものであつて、平常普通の治安確保責任は飽くまで普通警察にある、即ち法案第二十條の二に規定する治安維持上重大な事案について止むを得ない事由があると認められる場合、知事要求により、国家地方警察自治体警察管轄区域へ立入りが認められるのも、それは普通警察協力によつて事態の収拾ができると考えられるからである旨の答弁がありました。  四、本法案は、民主警察を圧迫し、国家警察中央集権化を企図するものではないかとの質問に対しては、政府側より、現行警察法基本精神たる警察地方分権化運営民主化の二大方針は今回の改正においてもこれを堅持したつもりである、併し余りに小さい自治体警察では僅かな人員だけしか本来の警察力行使に従事することができず、運営管理上非常に不経済であり、装備も不十分、能率も低下する、このような弱小自治体警察に対して住民の意思によつて廃止の途を開いたのであつて改正案の狙いは自治体警察育成強化にある、警察中央集権化というがごときことは政府の根本的にとらざるところである旨の答弁がありました。  五、政府自治体警察定員の枠を外すと共に、国家地方警察増員提案しているが、これに対する財政措置、殊に平衡交付金についてどのように考えているかとの質問に対し、大橋国務大臣より、国家地方警察の五千人増員なり、又自治体警察増員については、大蔵大臣において当然これが新らしい財源を考えられることを確信している、又平衡交付金がこれがために減額されるようなことはないと確信しているとの答弁があり、池田大蔵大臣よりは、国家地方警察五千人増員に対する財政措置は、改正法案成立の曉には一応既定予算で賄つて置き、将来補正予算で補正する、平衡交付金は殊に府県が困つているから成るべく減らしくない気持を持つている、今後警察法施行の状況を見究めて善処したい旨の答弁がありました。  六、小自治体警察の弱体であるのは、政府がこれを育成強化することを怠つた結果ではないか、平衡交付金をもつと増額すべきではないかとの質問に対しては、政府は、勿論自治体警察育成強化を考えている、自治体警察応援費用国家地方警察要求にかかる場合には国庫負担とすることを明足したのもその一つの現われである、平衡交付金については御趣旨に副うように努力したい旨の答弁がありました。  七、人事交流を考えないかとの質問に対しては、国家地方警察自治体警察との間に人事交流を考うべき事情のあることは否めないが、原則としては、交流を必要とする自治体警察が小さければ小さいほど、相手方の国家地方警察に対する従属性ともいうべきものを助長する結果に陥ることも憂慮されるので、自治体警察が今後発展して十分独立対等の地位に立ち得るときまでは、これを消極的に考えている。併しその半面のことも考えなければならないので、これらの利害得失を、なお、よく検討したいという意味答弁がありました。  八、第四十條の改正によつて自治体警察を廃止した町村が市になつた場合はどうかとの質問に対しては、政府側より、市は自治体警察を必ず設けなければならない、従つて町が市となつた場合は、住民投票を待たず、又二年間云々の字句にかかわらず、その場合、自動的に直ちに自治体警察を置かなければならないことになるとの解釈を明らかにされました。  その他多くの重要問題をめぐつて熱心な論議が行われましたが、それは速記録に譲ることにお許しをお願いいたします。  地方行政委員会においては、二日質疑も打切り、討論に入りましたところ、先ず社会党吉川末次郎君より社会党修正案提出されました。その内容はすでに各位のお手許に配付せられ再び本会議提出される修正案と同一のものでありますから、その内容説明を省略させて頂きます。  次いで民主党岩木哲夫君及び緑風会鈴木直人君より修正案提出されました。その要旨は、自治体警察維持の責に任ずるものとして政令で告示された町村以外の町村で、隣接の市と公共秩序維持上特に密接な関係にあつて政令で告示されたものは、住民投票によつて共同自治体警察維持することができる。即ち国家地方警察管轄区域内の町村隣接の市との間に以上の條件が備わつている場合には、これにいわゆる組合警察の設置を認めようとするものであります。  なお、岩木君は、国民民主党緑風会共同提案にかかる組合警察に関する以上の修正を加えることを前提として、政府原案には財政その他の点について不十分な点はあるが、それは政府の善処に期待して、政府原案賛成すると述べられ、緑風会鈴木君よりは、今回の改正に伴う予算措置に遺憾なきを期すること、及び改正伴つて平衡交付金の移用を考えず、必要な経費については新らしい財源を求めることの二つの希望事項を附して政府原案賛成すると述べられました。  次に社会党の相馬君よりは、社会党を代表し、一九四七年九月十日内閣総理大臣宛マツカーサー元帥の書簡及び警察法前文に述べられている新警察制度真義を貫くために、社会党修正案及び修正部分を除く政府原正案賛成し、民主党緑風会共同提案にかかる修正案に反対する旨を述べられました。  次いで自由党の高橋君及び第一クラブの石川君より、民主党緑風会共同修正案及びその修正部分を除く政府原案賛成し、社会党修正案に反対する旨の討論がありました。  かくて討論を終り、採決の結果、吉川提出修正案少数で否決、鈴木岩木両君提出修正案及びその修正部分を除く原案につきましては、それぞれ多数を以て可決すべきものと決定いたしました。即ち本法案修正可決せられた次第であります。  以上御報告を終ります。(拍手
  9. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 本案に対し、吉川末次郎君より、成規賛成者を得て修正案提出されております。この際、修正案趣旨説明を求めます。吉川末次郎君。    〔吉川末次郎登壇拍手
  10. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 私は只今上程されましたる委員会議決警察法の一部改正案に対しまして、日本社会党を代表いたしまして、すでに皆様たちのお手許に届けられておりまする我が党のこれに対する修正案につきまして、その提案理由を申上げまして、皆様たちの御賛同を得たいと思うのであります。  先ず第一に我々の修正案根本観念について申上げなければなりません。即ち原案政府提案と共に警察法前文規定いたしておりまする民主警察の基本的な精神に背反するものであると我々には思われるからであります。即ち現行警察法前文規定によりまするというと、「……国民のために人間の自由の理想を保障する日本国憲法精神に従い、又、地方自治真義を推進する観点から、国会は、秩序維持し、法令の執行を強化し、個人と社会の責任の自覚を通じて人間尊嚴最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する」。と規定されておるのであります。然るにこの委員長報告原案は、その理由書を見まするというと、これ又委員長報告せられたごとく、警察力強化警察運営能率化ということばかりを目的といたしておるものでありまして、單なる警察力強化能率化ということのために、戰争前のプロシヤ的な旧警察国家日本警察制度を再び復帰せしめようとするところの反動主義的な見解の上に立ちまして、折角終戰後我々が育成して、又国民の間に芽生えつつあるところの民主主義的な警察意識育成発展を阻止し、新らしいこの警察制度の基本的な精神蹂躪せんとする官僚主義的な改悪案であるということが、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)我々が修正案提出する根本的な理由でございます。(拍手)  今ここに原案を批判しながら、我々の修正案原案との相違点を明確にいたしたいと思うのであります。  原案は、委員長報告せられましたように、現行警察法によれば、いわゆる国家地方警察隊定員三万とありまするのを、管区警察学校及び警察学校に在校する警察官五千名をば現在の定員以上に増員せんといたしておるのでございます。現在日本警察官の数は、いわゆる国警三万、いわゆる自治警九万五千、計十二万五千であることは、皆さまたちがすでによく御承知のことであると考えるのであります。今この十二万五千という現行法によるところの数を、警察法施行前の日本において、そもそもどれだけくらいの警察官国内にあつたかという、その定員数を調べて見まするというと、大正十三年におきましてはその定員は五万七千四百七十六人でありました。又昭和二年におきましてはその定員は六万八百五十三人、昭和十一年におきましては六万八千四百二人、新らしい警察制度施行せられるに至る直前昭和二十二年におきましては、日本警察官定員は九万三千九百三十五人と増加いたしておつたのでありまするが、これを今申しましたごとく、昭和十一年、日本のいろいろなる国民生活は、昭和十一年日華事変の発生いたしました直前を大体基準としていろいろな再建計画が考えられておるのでありまするが、その昭和十一年に比べまして、今日すでにありまするところの十二万五千の警察官の数というものは約二倍の多数存在いたしておるということを我我は考えなければならないと思うのであります。然るにこの原案によりまするというと、その十二万五千に加うるに、国家警察側のみからいたしましても、更にこれを五千増加いたしまして、これを十三万名、国家地方警察だけで以て即ち三万プラス五千、三万五千と増加しようといたしておるのでありますが、我々は何が故にそのような増員を必要とするのか、その理由を発見するに苦しまざるを得ないのであります。又委員長報告の中にもありましたように、このたびの原案におきましては、国家地方警察側のみならず自治体警察の側におきましても、その定員は現在の九万五千の振当てを破棄いたしまして、それぞれその地方自治体が條例を以て任意に増減することができるようにしようとするのでありますから、(「民主化々々々」と呼ぶ者あり)その結果、現実的には、前述国警定員の五千名の増員と相待ちまして、この原案国会を通過するに至りまするならば、日本警察官の数は無制限にこれを増員することができるということになるのでございます。このような警察官をただ徒らに増員するということは、直ちに以て警備力強化とならないと私たちは考えるのであります。それは或いは警察の官僚主義的な威容を張るということには貢献するかも知れませんが、今申しまするように即警察力強化となるとは我々は考えることはできません。烏合の衆からなつているところの、ただ量的に大なる軍隊も、それよりも少数の精鋭なるところの軍隊に常に敗れるものであるということを我々は考えなければならぬと思うのであります。そうした数だけの増員をするということよりも、我々はそれよりも前に、自警、国警及び警察間の協力関係緊密化を図り、又警察装備科学化機械化を図るということ、科学的警察技術向上警官の待遇を改善すること等、一般警察官定員を徒らに増加するということよりも、これが質的内容向上と、その充実を図るということが、この際、我が日本警察行政の上において、より必要なことであると考えざるを得ないのであります。この観点よりいたしまして、政府提出案を鵜呑みいたしましたところの、委員会多数決による原案におけるところの警官増員改悪條項をは、我々は修正案におきまして削除いたしておるということが、原案と我が修正案との異なる主要点の第一点であります。  又委員長報告原案と我々の修正案との相違いたしまするところの主要点の第二点といたしまして申上げたいことは、これ又委員長報告のうちに多少触れられたところでありますが、原案は、政府案そのまま、都道府県知事は、治安維持上重大な事案について、国家地方警察にその都道府県内の自治体警察官轄区域内の事案を処理することを都道府県公安委員会要求することができるとしておるのでございまするが、(「当然」と呼ぶ者あり)ここにいう「治安維持上重大な事業案」というのは、現行警察法によりましても、第七章に規定いたしておりまする国家非常事態特別措置に関しまする第六十二條の規定のうちにおいて、ひとり全国的区域のみならず、一部の区域についてもそれを行うことができるということになつておるのでありまするから、新たに知事にこのような特別の権能を與える必要は、私は今更ないと考えるのであります。又新警察法施行せられました後の三カ年余の実績に鑑みましても、特にかかることをば新たに規定するところの必要はなかつたということを、政府委員委員会におけるところの答弁において我々に明白にいたしておるのであります。このような独裁的なる非常特権をば総理大臣以外の者に、即ち新たに各知事に與えまするということは、公安委員会の持つておりまする自主権を侵害するばかりでなく、これより起るところのいろいろな弊害を予想することができるのであります。このような意味におきまして、かかる原案現行法に対して加えておりまするところのこのたびの案における改悪條項は、これを我々は無用のものといたしまして、我々の修正案におきましてはこれを削除することにいたしておるのでございます。(拍手)  又相違点の主要なるものの第三点といたしまして、これ又委員長報告にありまするように、原案人口五千以上の市街的町村住民投票によつて警察維持しないことを定めて、これを国警に移管返上することができることを規定いたしておるのであります。現に町村にして、このいわゆる自治体警察を持つておりまするところのものの数は、昨年四月一日現在において千三百四十八であります。これに属するところの警察吏員の数は一万八千四百一人と示されておるのでありまするが、これらの町村警察が廃止されまするならば、これらの警官前述の五千名の定員増のほかに国警警察官の増加と相成りまして、国家地方警察のほうへ自然に流れ込んで来るということになるのであります。而も前に述べましたように、自治体警察定員というものは、この原案によりまするというと、條例によつて自由に各自治体がこれを増加することができるのでございまするから、国が自治警に対するところの平衡交付金による財政上の援助をここに低下いたしまするならば、その結果として、自己の警察維持するところの財政力を喪失いたしまして、止むなくその自治体警察維持管理を拠ちまして、これを国警に返上し、事実上、国家警察警察官の数は幾らでも無制限に増加するの結果をもたらすことは明らかであると考えるのであります。国家警察の側におきましては、自分たちの縄張りを拡張したいというような考えを以て、そうした自治体警察からの財政力負担に堪えかねてこれを拠ち、国家に返上するようなときが、一時も早く、又多く来るということを期待しておられるかのような疑いを持たざるを得ないということは、誠に残念なことであると考えるのであります。併し現在このように自治体警察の返上を希望いたしておるところの町村が若干国内に存在いたしておるということは、我々もこれを耳にしないわけではないのであります。併しながら、このような自治体警察がみずからの警察を廃止して、これを国の警察に返上しようといたしまするところの要求が、この際そもどこから起つて来るのであるかということを我々は十分に検討吟味して、その対策を考えなければならぬと考えるのであります。私は思いますのに、そのような要求町村その他の自治体が持ちまする原因は、その主たるもりは、これらの町村がそれみずからの自治体警察維持するところの財政力の不足のために警察維持の経済的な負担に堪え得ないこと、及びもう一つは、なお戰後におきましても、新憲法下甚だ残念なことでありまするが、日本国民の間におけるところの、殊にこの地方におけるところの町村のなお抜け難き封建性というものが、みずからの手によつて自己の警察をば経営管理するという民主主義的な訓練に習熟していないということから私は起つて来るものであると考えるのであります。若しそれでありますならば、我々は先ず住民自治の精神からして、その誤まれるところの蒙を啓き、又新警察制度の自主的運営の習熟発展を指導して行くと共に、他の面においては平衡交付金の増額によつてこれが財政難を打開するに努め、又一面数個の自治体警察の組合組織の奬励によりまして、地方自治体警察の機能的な欠陥を補充することを奬励助長するということが必要であると考えられるのであります。又その廃止返上につきまして住民投票制度をとろうといたしておりますことは、形式的には一見如何にも民主主義的であるような感を與えるかも知れません。併しながらその実質的な結果というものは必ずしも民主主議的なものを得るということにはならないと私は考えるのであります。何となれば、その警察を返上するというところの住民投票それ自身が、みずからの有するところの地方自治体の自主権のり放棄であり、住民自治の精神の自己否定の住民投票であるからであります。とかく、形式は法律制定ばかりが民主主義的でありまして、その内容実質というものは少しも戰争前と変つておらないのが、私は現在の日本の政治の実情ではないかと考えられるのであります。特にそうしたことが現下日本の地方行政が当面いたしておりますところの最大の私は病弊であるということを平素痛感いたしているものであります。こうしたことに関連いたしまして、私たちは、曾つて第一次欧洲大戰後のドイツが人民主権を規定いたしますところの彼のワイマール憲法をば新たに創建採択いたしましたけれども、久しく半封建的な国家至上主義の政治によつて訓育されて参りましたドイツの国民が、その新らしきワイマール憲法の民主主義的な精神を十分に理解し、これを実践化する素地を持つておりませんがために、選挙という民主主義的な制度を通じて遂にナチスをドイツ国会の多数党にまで祭り上げて、遂にヒツトラーの独裁政治をみずから承認するところの授権法を国会において制定するに至つたということは、併せて考えなければならぬと思うのであります。以上申しましたような観点に基きまして、我らばかかる原案におけるところの住民投票による自治体警察廃止の改悪案に反対いたしまして、原案におけるこれについての條項を又同様に削除するように修正いたしているのでございます。(拍手)  第四番目に、原案と我々の修正案との異なりまするところ、我々が時にこの際これを修正いたしたいと考えておりますることは、現行法上の国家地方警察及び自治体警察という名称の修正についてでございます。即ち国家地方警察とは、現か行警察法の制定の基礎をなしましたマツカーサー元帥の首相宛ての書簡におけるナシヨナル・ルーラル・ポリス、略しましてNRPと言つておるのでありますが、その訳語であります。又自治体警察と言われておりまするのは、ミユニシパル・ポリス、略してMPの訳語でありまするが、私はナシヨナル・ルーラル・ポリスはこれを全国村落警察と訳し、又後者はこれを都市警察と訳するというのが語学的にも正しい訳語であり、又警察法規定内容によりまして、そのいわゆる自治体警察と申しまするのは市街地に設けられる警察なのであります。而もその市街地の警察に収容せられざる農村地帶、山村地帶、漁村地帶の、いわゆる自治体警察に収容することのできない村落地帶のこの警察のために、国家地方警察というものが設けられておるのでありまするから、これが行政の対象とするととろの区域及び現行警察法規定内容からいたしましても、私たち修正案のように改称いたしまして、国家……(「社会党内閣で付けた名前だ」「黙つて聞け」「その通り」と呼ぶ者あり)社会党内閣のときに付けた名前でありましてもです、(笑声)今日誤まつておるならばこれを直すということが正しい国会の職能であると私たちは考えておるのであります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手国家警察という名を非常に使うものでありまするから、我々が明治以来教え込まれて来ましたドイツ流の国家至上主義、絶対主義的な国家神格化の日本人の明治以来の伝統的な国家観念と、その言葉が結び付きまして、国家警察自治体警察より一段優位の地位にあるものであり、国家警察自治体警察を当然に支配すベきものである、又その半面において自治体警察国家警察に従属すべきものであるというところの観念をば、現実上知らず知らずの間に導入いたしておると我々は見受けるのであります。これがために、国警及び自警がそれぞれ独立対等、相互に補完的役割を務めるものであるというところの新警察法精神の正しい理解を妨げ、旧警察官の優秀な者は、その農山漁村地帶をこれが所管区域といたしておりまするいわゆる国警側に、これらの優秀な警官が多く収容せられてしまいまして、自治体警察側はその残り滓とも言うべきものをば受取つて、それによつて、この自治体警察を構成せざるを得ないというような誤まつた結果を来たしておるのが、各地方における今日の実情であるのでありまして、このような結果を来たしたことにつきましては、今もお話もありましたが、当時これが訳語の選定に当りましたところの人が、今日それが不適当であつたということを認めておるのでありまして、どうぞこの際この名称をば「全国村落警察」及び「都市警察」と改めることに皆様たちの御賛同を得たいと思うのでございます。こうした名称の変更ということは、その波及するところの極めて広汎であるということを十分に我々は知覚いたしまするので、これについての研究調査は相当正確綿密に我々もこれを行なつたつもりであります。ここに詳しくその結果を一々申上げておるところの時間はございませんが、どうぞそれらの詳細な我我の調査研究につきましては委員会速記録を御覧願いまして、この際、特にそれに附随して申上げたいことは、たまたまそうした誤まれる訳語の選定から由来したところの警官及び国民の間における錯覚を利用いたしまして、旧式官僚政治の(「ひがまんでもよい」と呼ぶ者あり)それを運用しようといたしておりまする考え方に対しましては、我我は強く反対するものであるということを、この機会に附言いたして置きたいと思うのであります。  又この警察法改正につきまして附け加えてこの際申上げて置きたいと思いますることは、現下の国際情勢の緊迫化に伴いまして、往々警察能率化を希望するという余り、警察法基本精神でありまする市民警察精神を破壊することを顧みないというような者のありますることのその観念の誤まりでありますることは、すでに一昨年の九月二日マツカーサー元帥がそれらの謬見に答えて、「現在のような機構と陣容の警察制度では治安維持ができないという危險は全然ない」、全然ないと声明せられておることによつて私は明らかにされておると考えるのであります。又こうした要らざる心配をしておるところの人々は、国家警察といたしましては、この警察法規定のいわゆる国家地方警察以外に、それ以外に、なお、国家警察として八万七千余名の国家警察官が存在しておるということを同時に併せ考えて、一元的な考察に基いて、この法案の審議に対さなければならないと思うのであります。(「駈足々々と」呼ぶ者あり)その点を忘れておるところの人が私は相当あるかのように感ぜられるのであります。それは即ち七万五千人の警察予備隊員、一万九百四十五人の海上保安官及び法務府特審局員その他の国家警察力であります。  今、私たち修正案提案理由説明を終るに際しまして去る五月二十三日、二十四日の両日、参議院において政府案を基本といたしまして公聴会が開かれました。その公聴会における証人の証言について一言私は申述べる必要があると感ずるものであります。即ち大体におきまして、当日の証人のうち、各大学の教授、ジヤーナリスト、警察の専門研究家等の、いわゆる有識者の意見と見らるべきものは、大体におきまして以上私が述べて来ましたところと共通いたしまして、委員長報告原案の官僚主義的な考え方に立つ人は、多年旧内務省の官僚によつて頭を半封建的にスポイルされて来まして、終戰後においても、なお、その頭の切り換えのできておらぬ、地方庁の役人上りと見受けられるような人々のほうに多かつたと私は見受けたのであります。(拍手)私は当日の証人の一人でありました一大学の公法学の教授でありまするまじめな一法学博士が、その後、私に寄せ来たりました私信のこれに関する一節をここに御披露申したいと思うのであります。即ち曰く、「警察法改悪が、警察法改悪が、参議院の力によつて阻止されるよう念じています。阻止されるよう念じています。よい立法が改悪されて行くのを見るのは辛いことです。日本民主化の前途遠きを思わずにはいられません」と書いて参りました。よい立法である現行警察法が、官僚主義によつてこのように改悪されて行こうとしているのを前にいたしまして、辛いことと思う者は、ひとり私はこの公法学者のみではないと思うものであります。  国民民主党のかたがたは、先に衆議院において政府提出案に対しては反対の表決をなされたのであります。それにもかわらず、参議院におきましては、衆議院において国民民主党提出されたと全然異なれるところの修正案をお出しになりまして、違つた態度をとつていらつやいます。そうして緑風会内にいられるところの旧内務省官僚上りの一部の議員にお働きかけになりまして、政府当局及び自由党ともいろいろ協議を重ねられて、衆議院における態度と違う、ほんの申訳的な些末な事項についての修正案委員会に御提出になりまして、そうして今日委員長報告原案ができ上つたのでありまするが、そのように反動政府の民主正義警察法改悪に同調するために與党的な立場を示すに如何に苦心されたかは、その原案における、即ち民主党提案されたるあの笑うべきところの(拍手修正案と相照応いたしますならば、誠に御苦心のほどは深く御同情申上げたいと考えるのであります。(拍手)  私は降壇に際しまして、特に政府與党であるところの自由党及び国民民主党のかたには申しません。それ以外の、本当に真劍に日本民主化を念とせられるところの議場の同僚諸君に私は衷心より訴えたいのであります。その会派に所属していられるところの旧内務省官僚系の議員が、本案に対して、その会派内においてどのように誤まつたところの指導をせられ、或いはどのような與党的な合作工作を行われたかは知りませんが、どうぞそういう工作や指導に従うことなく、それらを断乎一擲して、この警察法改悪原案に断乎としてここに反対の意を表明されて、日本の民主主義の発展のために、我が社会党修正案に切に御賛成下さいますことをばお願い申上げまして、私の最後の言葉といたすものであります。(拍手
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。相馬助治君。    〔相馬助治君登壇拍手
  12. 相馬助治

    ○相馬助治君 私はここに日本社会党を代表いたしまして、只今議題に供せられておりまする警察法の一部改正案に関し、吉川説明にかかる日本社会党提案修正案賛成いたしますると共に、政府提案修正いたしましたるところの委員長報告にかかる原案に対しまして反対の意思を表明するものでございます。(拍手)  昭和二十二年制定せられました警察法による新警察制度は、戰前の日本の病根でありましたるところの強大なる中央集権的国家警察の機構を地方住民の自治的な機関に還元することによりまして、真に民主的な社会を建設せしめようと意図したものでございます。曾つての不幸なる戰争によりまして多くの犠牲を拂つた結果、ただ一つかち得た教訓でありまするところの民主主義を守るために、そうして平和の日本を建設するためにも、この基本的な方針こそは飽くまで我々は国民として守り抜かなければならないことは、あえて今日論ずるまでもないところでございます。要するに、新らしい警察制度の根本精神は、これを政治社会の基底を流れておりまするところの近代精神の中にこそ求めることができるかと思うのでありまして、(拍手)曾つて日本の政治は神の権威の下にあり、それは王者の権威と合体したところの神権的絶対主議政治となつて、我々の前に、警察も、軍隊も、そうして政治のすべてが民衆の上にのしかかつて君臨して参つたのであります。この政治社会におきましては、個人尊嚴などというものは問題にされない。個人の仕合せなどというものは常に捨てて顧みられなかつた。お国のためにというただ一つの美名の下に、国家の一部少数の特権階級の下に、それらの人々の必要の範囲内においてのみ個人は尊重をされて今日至りました。かかる社会においては、その制度の必然的結果といたしまして、あらゆる制度というものは、既存の権威を維持し、これを存続するためにのみ動員されて参つたのであります。(拍手)従いまして、警察は常にそれらの支柱としての役割を果して、あの恐るべき戰争に、そうして不幸なる敗戰にまで導き来たつたのであります。繰返して申しまするならば、軍隊或いは警察というものが、曾つて日本においては民衆の味方として或いは国民の幸福を確保するために存在したのではなくて、封建的なる政治の仕組を支える支柱としてだけ役割を果して参り、(拍手)常に物理的威力として最大の効力を発揮すべく、時の為政者によつて指導されて参つたのであります。(「公式論だ」と呼ぶ者あり)これが皆様、日本の過去の悲しい歴史の事実であります。安井君はこれを公式論だと言うが、かかる公式論すらも理解されなかつたところに曾つて日本の悲劇のあつたことを我々は顧みなければならない。(拍手)かかる歴史的反省を持つときに、戰いに敗れ、再建の途上にある日本の将来の運命を思うときに、我々は昭和二十二年度に作られましたる新らしい警察制度は軽々しくは変更してならないとする大きな義務感を持つものでございます。而ういたしまして、人類文化の発達ば社会の固定を許さないものでありますると共に、あらゆる科学の進歩は社会経済の実態を時々刻々に変化して参ります。従いまして立法におきましても、或いは時の政府の政策におきましても、動きつつあるところの、進みつつあるところの社会を現状のままに金縛りに縛ろうとするような、民主主義とはおよそ縁の遠い強権的な作用が行われまするときには、そこに無用の摩擦を生じるばかりでなく、それは民主的なる社会秩序を破壊することと相成りますることは必定の問題でございます。今般の警察法改正に当つてとられましたるところの政府の心構えを見まするときに、我々は残念ながらかかる懸念を持たざるを得なかつたのでありまして、(「大丈夫」と呼ぶ者あり)不肖私も委員会におきまして、再三に亘つてこの点質疑を試みたのでありまするが、立案者たる政府側委員の答弁は、常にこの点に関しましては曖昧模糊、本員を満足せしむるに足るものではなかつたのであります。このことは、質問いたしまする私どもにとりましても、これを答える政府にとりましても、極めて不幸なことであつたと存じまするが、この見解の相違というものは一体何に基因するものでございましようか。これは現在の政府が真実の民主主義を如何に把握しているかという点に問題はかかつて参ると思うのでありまするが、マツカーサー元帥が累次の書簡の中において指摘いたしましたる中心理念というものも、一言してこれを申しますれば、如何にして日本の民主主義を守るかの一点にあつたと私は理解するものであります。従いまして、国民の選良として今日議席を有する光栄を持つ我我議員たる者は、常にこの点に関して思いをひそめますると共に、民主主義を守るという一点こそが不動の指導理念として我々の胸の中を流れて行かなければならぬと思うのであります。即ち近代民主政治におきまするところの主権在民の概念と申しまするものは、個人尊嚴と福祉の維持発展ということを飽くまでも基調とするものであります。そのことが、他面において、例えば警察問題を中心といたしましたときに、運営上いささかの不便はあろうとも、運営上の少々なる欠陥はあろうとも、そうしてそのために国自身がいささかの迷惑をこうむろうとも、民衆の尊嚴と福祉が維持されるという一点が確保される限りにおいては、それは国家国民の盛大を意味するものなのであります。(拍手)人類社会普遍のこうした理念を我々は飽くまでも中心としなければならないと思いまするときに、国家があつてその下に個人が附随するのではないということを我々は再確認しなければなりません。かくいたしまして、社会公共秩序と福祉の維持についても、国民はそのみずからの権利を以て公共の福祉に反せざる限り適当なる方策を立て、適当の施策を行い得ることとなるのであります。地方自治団体の維持するところの警察制度の本質的価値というものは、一にかかつてこの精神の中に求められなければなりません。たとえ、その運用の面におきまして、いささか支障ありといたしましても、基本的な問題といたしまする場合には、そのこと自身によつて、自警の持つ、いわゆる自治体警察の持つ本質的な価値というものは、いささかも浸せらるべき性質のものでは断じてないのであります。こうした精神を我々が推し進めることによつて、こうした精神に指導された法律が成立することによりまして、初めて、警察は、我々民衆の上に君臨するものではなくて民衆に奉仕するものと相成りますると共に、権威の駆使に甘んじ、その威力に附随して、小さき権力意識の蔭に躍つて参りましたるところの曾つての中央集権的官僚機構とはおよそ姿を変えた、内容を変えた、人民の真の公僕として警察が我々の前に現われる可能性を我々は考えるのであります。(「警察講演会だ」と呼ぶ者あり)現在において我が国の自治警察というものが分散の状態にありまして、運営上統一的不利の存することは、むしろ却つてこの間の消息を事実によつて、示さんとする教育的措置であると、我々はこの際考えて然るべきものであろうと確信するものであります。(「演説が違うぞ」と呼ぶ者あり)言い換えまするならば、今日運営上の不便の点におきまして、自治体警察が世の冷たい批判の前にさらされておりまするが、そのこと自体が自治体警察の持つ啓蒙的価値を明らかに我々に雄弁に物語るものであることを私は確信するものであります、警察法改正に当りましては、常に以上申述べました角度に立つて我々が検討することが必要であると思うのでありまして、この点を、私、第一に満堂の諸君と共に確認いたしまして、逐次問題の要点に触れて参りたいと思うのであります。(「時間が切れるぞ」と呼ぶ者あり)  勿論警察制度においては、当然社会の治安維持いたしまして、犯罪を最も能率的に検挙する使命が存ずるのでありまして、現在の制度がそれを完全に果しているかどうかとなりますると、問題があると言わなければなりません。即ち財政的基礎の弱い地方のいわゆる弱小町村が、その費用負担に堪えかねまして、今日むしろ国警編入を望んでおる事実、或いは国警と自警とが繩張り争いをし、二階の上と下に巣を構えて、署長を初めとして一般警察官が睨み合つておるという痛ましい姿、或いはその自警、国警の連絡不十分のために起る捜査能力の低下、人事交流の不円滑から来ますところの自治体警察職員の意気の銷沈、地方ボスとの容易なる結託、警官の素質の低下、こういう点におきまして、今日多く問題となつておるのでありまするが、政府が真に善意を以て警察法改正するとするならば、この不備を補うという点を第一点といたしまして、飽くまで自治警察の精神を没却してはなるまいと思うのであります。要するに警察制度が今日一応検討されなければならぬ段階に立ち至つていることは私どもも認めるところでありまするが、その前提に立つ場合におきましても、新警察制度の持つ理想精神を否定することなく、法改正によりまして運営上の不満なる点を矯正すべきでありまして、仮にも、警察能率向上であるとか、朝鮮事変がどうだとか、或いは治安確保がどうだとかいうような名の下に、好機逸すべからずとして国警を強大ならしめ、中央集権的警察制度の復活を図り、或いは警察官僚機構の拡大を招くことによりまして、再び国家警察へ逆行するような意図を含むところの政府原案に対しましては、生長の過程にある日本の民主主義を守るためにも、民主社会にふさわしい警察制度の確立を望む立場からも、我が日本社会党は声を大にしてこれに反対せざるを得ないのであります。同時に、先ほど吉川説明通り、我が党の基本精神に則りまして修正案を上程せざるを得なかつた理由というものは、一にかかつてこの不備なる政府原案に胚胎しておるのであります。即ち政府原案は、国警捜査権の拡大、国警における自治警察への優位の確保、或いは小自治警察の廃止、国警定員の増加などを骨子としたものでありまして、新警察制度の企図いたしまする警察民主化、地方分散、或いは警察地方自治真義に則つた国民に属する民主的権威の組織であらねばならないとすること等とは、全く相反しておるものでありまして、要約して申しまするならば、政府原案は、第一に、地方分権による民主主義育成の政策をいささかも講ずることなく、單に能率的立場に名を借りまして、民主主義的地方分権主義の圧殺を図らんとすると言われても一言もないところであろうと思うのであります。第二には、現在の国内情勢からして警察制度を再検討するとするならば、当然、予備隊であるとか、或いは海上保安隊、或いは法務府特審局等、一連の関係において調整いたしまして、根本的検討を加えるべきであつたと思うのであります。本問題に関しましては、私どもは二三度に亘りまして大橋君に対しても水を向けたのでありまするが、一応この改正で以て当分は足りるとの答えは我々を誠に悲しませたものであります。従いまして、かようなことを怠つた片手落ち法案でありますると共に、新警察法基本精神でありまするところの、警察官だけが警察であるという考えでなくて、市民みずからの警察であるとするところの市民自治警察の精神に反するところの反動的なる内容を持つものであろうと我々は理解したのであります。従いまして皆様、民衆の喜びを喜びとし、民衆の悲しみを悲しみとしないと言われるところの反勤労者的性格を持つ現政府の反動政策の先駆をなすものが本法案であります。ここに日本社会党は全国民を代表して、(笑声)敗戰国民当然の責務として、諸君は笑うけれども、そんな悲鳴はやめ給え。とにかく我々は自信を以て今日政府原案に我が党は反対するのであります。なおこの際一言申したいことは、国民民主党並びに緑風会より修正案が上程されております。これは政府原案の持つ不備に対しまして、第四十條においてこれを修正し、市に隣接する町村においては、住民投票により当該市と組合警察を作り得ると規定しておるのでありまして、少くともこの点だけに関しましては、その精神に対して我我は敬意を表するにやぶさかではありませんが、楽屋裏において行われたことは、先ほど吉川君が痛烈に発表の通りであろうかと思うのと同時に、先ずこの問題につきましても、かかる部分的一部修正を以てしては、政府原案の持つ欠陥を救うことの断じてできないことは、恐らく良識ある緑風会の皆様、民主党の皆様御自身がこれを御了解であろうと思うのであります。従いまして、かかる局部的修正案の上程が、道義的には極めて善意に満ちた皆々様のその意思というものが、結果からいたしまするというと、逆に吉田内閣及びその與党である自由党の諸君に断乎たる勇気を與え、そうして民主党並びに緑風会諸君の良心的な政治意図すらが遂には反動的な政府原案を成立せしめる片棒を担ぐことに相成つておるということは、国家の悲劇であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手、「ノーノー」と呼ぶ者あり)従いまして、我が党は、緑風会並びに民主党の諸君苦心の結果に成つたのでありましようところの(「さようであります」と呼ぶ者あり)この折角の修正案に対しまして、その不備な点を衝きまして、これ又断乎として反対せざるを得ないのであります。同時に、修正案第四十二條二の規定によりまするというと、「前項の規定により共同で警察維持することのできる町村は、政令を以てこれを告示する。」と書いてありまするが、極めて問題は大であります。国会みずからがかかる重要なるポイントを政令に任せるということは何でありましようか。結局これは国会審議権の放棄であり、立法府に連なる我々議員みずからの権威を失墜せしむるものとして、諸君に猛省を促してやまないところであります。(拍手)次に政府原案條項従つて重要なる数点を指摘いたしまするならば、先ず国家地方警察並びに自治体警察の名称に関してでありまするが、先ほど吉川君が該博なる知識を傾けてこれを述べました、この国警の語源はナシヨナル・ルーラル・ポリスでありまするが、(笑声)ナシヨナル・ルーラル・ポリスを不用意にも国家地方警察と訳したところに今日の問題があります。社会党時代にそうしたことをしたのではないか、お前らそういうことを言うことは怪しからんというならば、これは論理学の一頁をも知らぬものである。なぜならば、過まちを改むるに憚ることなかれであります。(笑声、拍手)従いまして、問題は、我が国におきましては、有識者を含めまして一般民衆が持つておりまする国家というものの概念が極めて特殊だ。幾らこれをアメリカ人なんぞに説明しても彼らにはわからない。我々日本人においては、今日においても、ヘーゲルの哲学を中心といたしまする旧来の国家至上主義観念が根強く我々の胸の中に巣を食つておる。インテリと言われる者ほどこれがひどい。個人のために国家が存するにあらず、国家のために個人が存するというようなへーゲルの言葉を、残念ながら我々は長い間肯定して今日に至つた。彼はその著述を通じて、国家制度のうち、立憲王制が理念の発展及び実現の最高理想の姿であると述べておる。このヘーゲルの考えが我が国に導入されまするというと、結局するところ、王制という特権階級が保有しまするところの権威に対する絶対の服従を強要する哲学と化けました。こうして、曾つてホツブスが説いたように、国家というものは社会契約であると共に服従の契約であるということと本質的には何ら差異を認め得ないものとなりまして、これらの思想によつて、或いは日本の幇間的なへーゲリアンの指導によつて、明治以降最近まで、日本の思想界というものは徹底的なる奴隷的根性に養われて参つたのであります。(「同感」と呼ぶ者あり、拍手)戰いに敗れた今日、我々がこのことを思いまするというと、誠に燦然たるものを感じますると共に、今にして目覚めなかつたならば、国民の不幸これに過ぎるものなしと断ぜざるを得ないのであります。要するに国家という語は最高の権威を伴う特別な内容を持つものであると、これは議論を抜きにして常識的に国民に思い込まれておる。問題はここにあります。従つて国警の諸君が自警の諸君より偉いと考えて来るに至りました。又一般国民も、国警は自警に優越するという、名称より来たる錯誤観念を持つに至りまして、この観念をこの際徹底的に是正することなくしては断じてならないのでありまして、私は社会党修正案通り、啓蒙的意味を含めまして、言語の意義を明確にいたし、法文規定の実質に即応いたしますように、前者を全国村落警察と名付け、後者を都市警察修正することにしまして、名は体を現わすという日本の言葉を思い浮べながら心から賛成するものでありますと共に、諸君の御賛同を少くともこの一点に賜わりたいと存するものであります。次に定員の問題でありますが、政府原案によりますと、弱小自警の廃止によりまして、当然それだけの自警の定員国警に流れ込んで来る。うつかりあの政府原案を見ますというと五千人だけ定員が増加すると感違いをするのでありますが、何ぞ測らん自警の定員は無制限である、即ちこの自警のほうは定員の枠が外されていることを忘れてならぬのであります。従いまして現在自警と国警と合せて十二万五千人、国民六百人が一人の警官並びにその家族を食べさせているということになる。これで足りなくて、なお又定員を増す。我々は国家治安のためという説明を聞きましたけれども、今日警官の少なきを悲しむ者はない。むしろ月給が安くて、教養が低下して、質の悪い警官が余りに市中に多いことを我々は悲しんでおる者が多いのではなかろうかと思うのであります。(拍手)従いまして、特別なる国家擾乱には警察予備隊のあります現在、私ども、この官僚組織が持つところの、特有でありますところの、何とかしてみずからの陣容を拡大強化せしめんとする習癖に対抗しますためにも、この定員増加に反対してやまないものであります。(「同感」と呼ぶ者あり)要するに、この場合において定員増加の費用というものは警察官の給與に廻し、警察官が命がけで後顧の憂いなくその職務に勉励できるようにいたしますと共に、近代的な装備をするところの費用に充当せしめるべきであろうと考えるものであります。第二十條による都道府県知事に対する新たなる権限付與の問題は、吉川君の説明通りでありますが、仮にも公安委員会の権限を、我々の否定しない限りにおいて、公安委員会が自動的に或いは他動的にその機能を失つたとき以外には、絶対にかかる措置はとるべきではないと考えるものであります。次に弱小自警廃止の問題でありますが、これは財政的問題より今日弱小自警の存在が問題となつておりまするが、我々といたしましては、最終的結論といたしますれば、将来自治体警察都道府県及び人口十万以上の都市に置くこととし、国警は全部これに吸収せしめるべきであり、今日自警を潰して国警をふくらますというのは我々は反対である。こういうことをすることによりまして、又一方、中央には、国家的規模の特殊犯罪を取締り、且つ警察通信施設、犯罪鑑識施設、警察教養施設、統計等の事務を掌るアメリカのFBIに近い機構を設けるべきであると共に、北海道のごとき特殊地域については別にこれを考慮することによりまして、且つ又警察予備隊の任務を明確ならしめることによりまして、真に理想的なる警察制度を確立すべきであろうと思うのであります。住民投票の問題に関しましても、住民投票というものは民主的なる一つの方法であることには間違いはないけれども、一体今突如として……、皆様の国の状態を考えて下さい。自警を廃止する、住民投票をやる、一体どういう結果がこれは起きて参りますか、(「なぜ賛成したんだ」と呼ぶ者あり)思い半ばに過ぎるものがあるのでありまして、我が党はこれに対して反対せざるを得ないのであります。従いまして、その意味におきまして、これは大幅な組合警察の設置を期待する我が党の修正案警察法の根本を生かすものであるとして、私は心から賛意を表するものであります。次に本法案は予算の裏付けを今日いたしておりません。勿論これはこの場合止むを得ないとする一つの口実もありますが、延長又延長のこの国会におきまして、一体この定員増によりまするところの予算は如何相成るか。これは確信があるということを政府側からは聞いたのでありまするが、当初二万人を要求した法務総裁要求が、池田蔵相の裁断によつたのでありましよう、五千人に削られた。如何に今日何と抗弁いたしましても、こういう私は内部のからくりを新聞を通じて残念ながら知つております。従いまして、且つ又廃止せられまする自警側の平衡交付金問題に対しましても、政府答弁では極めてあいまいであります。従つて、私は予算の面よりいたしましても、本法案は不備なりと断ぜざるを得ないのであります。以上私は、極めて概括的ではありましたが、問題の所在を明らかにしまして、何が故に委員長報告にかかる原案に反対し、何が故に日本社会党提案修正案賛成するかを申上げたのでございまするが、諸君、警察制度なるものは、警察の性格なるものは、誠に国の性格にかかる重大問題であります。延いては一国の運命にかかる問題であります。本案は衆議院におきましては多数を以て政府原案が可決になつたはずでございまするが、我が参議院は二院制度の妙味を発揮いたしまして、是非とも新たなる角度に立つてこれを眺めなければならない義務感を私は持つのでありますが、諸君は如何でございまするか。国民を代表する我々議員が、民主主義を守るためにも、今日こそ比類なき勇気と良識を持たなければならない。こういう意味におきまして、私は殊に民主党の諸君、なかんずく現在の反動的なる吉田内閣の内政に批判的でありまする健全なる民主党の諸君、(笑声)それから是々非々を以て常に天下に聞えておりまするところの良識ある緑風会のゼントルマン諸君、(拍手、笑声)そうして第一クラブの諸君(「そうだ」と呼ぶ者あり)及び小会派の諸君は、今日こそ、この改正に当つて、勇気と良識とを必要とするのであるということを、私は日本社会党を代表して心から訴えまして、私の討論を終る次第であります。(拍手
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 石村幸作君。    〔石村幸作君登壇拍手
  14. 石村幸作

    ○石村幸作君 私は自由党を代表して本案賛成するものであります。本法案は、政府提案理由から見て明らかでありまするごとく、その基本的目的治安の確保にあるのでありまして、警察運営民主化と、その地方分権を主眼とする民主警察精神を尊重しつつ警察力強化運営能率化を図らんとするもので、国民待望の講和を前にして国内治安の万全を期せんとするものでありまして、これは当然のことであります。以下主要の点を挙げまして本案賛成理由を申述ベます。  その一つは国家地方警察に関する事項でありまして、先ぜ国家警察警官で、警察大学、管区学校等に在学する者五千人を限つて国警基本定員の枠外に置き、その実動勢力三万人を常に確保しようとする点でありまして、私も勿論国警の無謀な増員に対しましては、曾つて警察国家の弊害を恐れ、にわかに賛成いたしかねるのでありますが、現在大きな欠陷とされております在校警官五千人による空隙を補うこの程度の最小限の増員によつて国警として必要な勤務の配置を可能ならしめ、自治体警察からの援助要求に対しても十分に対処し得る等、補完的役割を持つ国警本来の使命を達成するに足る警察力の増強を図り、以て治安の完璧を期せんとすることは、誠に機宜を得た措置と思うのであります。  次に、治安維持上重大な事案につき、止むを得ない事由があると認めたときは、都道府県知事国警の出動を都道府県公安委員会要求することができるということと、都道府県会安委員会都道府県知事に対してその措置をとることを勧告することができるという点であります。これは自治体警察が重大な事案を処理せず、又は処理を誤まつた場合、そのまま放置するときは治安上憂慮すべき事態であるにもかかわらず、当該自治体公安委員会が何らかの理由国警への援助要求しない場合、例えば自治体公安委員会が外部勢力の圧迫によつて機能を喪失したというような止むを得ない場合に備えて、治安維持の万全を期せんとすることは、極めて当を得た案であると思うのであります。これに対し、往々これは国警優位、中央集権化への端緒であるかのごとく憂慮される意見も聞くのでありまするが、国警がこのような事態収拾に乗り出すということは、前にも申述べた通り国警本来の役割の一つであり、又都道府県は完全なる自治体で、その管内一般治安責任を有すると地方自治法の上に認められている地方公共団体の公選知事にこの権限が與えられるのであつて、而も知事の措置が適正に行われることを保障するため、その事案の処理が終了後、都道府県の議会に報告することを規定されていることは、知事の措置に対する批判の機会を持つものであつて、決して民主警察精神に反するものではないと思うのであります。又都道府県公安委員会都道府県知事に対しましてその措置をとることを勧告することができるという点は、知事要求がない場合でも、国警自体が発動することなく、先ず知事の意向、判断を待つというわけで、極めて民主的と言や得ると思うのであります。その二は、自治体警察の総定員九万五千人の枠を外し、政令の定める基準による定員制と、法律による全員配分の調整制とを廃止いたしまして、地方的要求に応じ、且つ地方的事情によつて、その自治体において自由に條例を以てきめることができることとすると共に、人口五千人以上の市街的町村は、住民投票によつて自治体警察の存廃を決定できるようにしたことで、これらは、全く中央集権を政め、地方分権を推進し、地方住民の意思を尊重する、民主主義に基く新警察制度精神に副うもので、頗る妥当なる案であります。又自治体警察が廃止された場合、その警察吏員を全員国警に編入し、国警基本定員外に置くことにしたのも、それら警察吏員の身上を保障するための適当な配慮が加えられておるものと思うのであります。殊に能率の点においても、財政の面からも、とかく論議のあるいわゆる弱小自治体警察が、これによつて住民の意思により廃止され、当該自治体財政が緩和されることは、天下り式で自主性のない自治体警察定員制の撤廃と共に、地方側多年の要望に応えたものでありまして、恐らく国民大多数の意思に副うものと存ずるのであります。その三は相互援助規定を明確化したことであります。即ち相互援助をその自警国警間のみにとどめず、自治体警察相互間に応援の途を開き、且つ管轄外における職権行使規定を設け、なお、相協力して治安維持に当るべく、連絡の保持、情報の交換等を規定し、応援出動に要した費用及びこの場合の公務傷病死亡等については、すべて国庫負担とすることを明らかにして、現行法の不徹底と欠陷を補い、多年の懸案を解決したことは、地方行政上一つの功績として高く評価さるべきものと思うのであります。その他、公安委員資格要件を緩和したことや、北海道における特異性に鑑みての道公費委員会の改革など、いずれも実情に即した案であります。要するに本改正は、全体的に見て、現下治安事情に鑑み、全く十分なりとは言い得ない点もあるのでありますが、ここに取上げられた限りにおいては、いずれも適当且つ必要な改正であつて、我々は、政府国会も相携えて今後も研究を重ねて、地方分権を主眼とする民主警察の実を失うことなく、更によりよき改良案を考えられることを将来に期待して、本法案に対しては全面的に賛成するものであります。なお、本法案に対する修正案については、先刻委員長より報告がありました通り委員会において可決された修正案は必ずしも不適当な考え方ではないと認め、これに賛成するものであります。以上を以て話手紙の賛成討論を終ります。(拍手
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 羽仁五郎君。    〔羽仁五郎君登壇拍手
  16. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は本案に反対し、従つてこれを根本的に修正していない委員会修正議決案に反対し、これを根本的に修正しようとしている社会党修正案賛成するものであります。その理由は次の三点に要約されます。一、日本国民が現在その生活の実情よりして、切望しているのは、警察の増強よりも社会保障の充実であります。この社会保障を後廻しにして警察の増強を先にしようとするのは本末の顛倒も甚だしい。(「其の通り」と呼ぶ者あり、拍手)二、現在の日本警察に対して国民が希望してやまないのは、先ず第一にその素質の改善向上であつて、今日の劣悪厭うべき素質の警察官の数ばかりを増大することは国民の苦痛の増大にほかならない。(「その通り」と呼ぶ者あり)三、我が警察民主化の主体たる自治体警察の未発達を口実として、これが改善の努力をなさずして、ひたすら国家警察の拡大を図り、我が警察民主化の根本を覆えさんとするような企てに対しては、国会は飽くまでこれに反対しなければならない。これら三点について、次にそのおのおのにつき根拠を証明いたします。第一、社会の平和は、社会保障と警察治安秩序と、この二つが車の両輪のように、両々相待つて初めてこれを望むことができると言われます。而も実はこの二つのうちの社会保障こそが主であり、第一義であり、ここには積極的な生産的の意義があり、国民の幸福の希望がある。これに反し、警察は飽くまで従であり、第二義であり、ここには積極的の生産的の希望、意義もなく、国民の幸福の積極的の希望もない。ここにおいて、この社会保障の車輪を余りに小さいままにして置いて、警察の車輪のほうばかりを大きくして、この両輪の車を走らせますならば、この国家はおのずから如何なる方向に向つて突進することとなるか。何びともその恐怖に堪えないではありませんか。(拍手政府はまさか警察のみに頼つて治安維持しようとしているのではあるまい。それならば、政府本案によつて警察の増強を我が国会に求められる前に、どれだけ社会保障の充実に努力されたか、一体、国の行政は、そのそれぞれの方面にバランスのとれた力が注がれるときに、初めて健全なる政治の状態を実現し得るのであります。予算においても、国の行政の百般の各項がそれぞれ、如何なるウエートを以て、全体のバランスが得られるものであるか。不幸にして政府本案に関し、この点について私が幾たび委員会において質問しても、その数字を與えることができなかつた。現に今回の警察法改訂について大蔵省に反対があつたことを誰も知つております。現在大蔵省がこれを自覚しておるかどうか。いずれにしても、本案にその頭を出しているような警察増強の主義には、国の行政及び予算のバランスを破り、頗る危險の状態を導くものがあるからこそ、それが大蔵当局において問題ともなつたのであります。我が国の国民の現在の実情からして、現在の社会保障は余りに不十分であり、バランスを失し、危險であります。社会保障制度審議会は、その委員長大内博士が財政の権威でもあり、我が国の経済の実情において当面最も緊急の最低限の要求を答申したのであります。然るに政府は、この当面最も緊急の最低限の社会保障費を出していないではありませんか。当面緊急の最低限を下つているということは、我が国家社会の危險をそのままにしているということなのであります。然るに、現在、警察は、事実最大限を超えています。我が国は戰時中でも警察官の数は十方を超えたことはなかつた。それが現在では自治警及び国警合わせて十二万五千、数において決して少くないのであります。治安情勢から見てというが、そのために国警予備隊もある。帝政ロシアの秘密警察オフラナは、仕事がなくなると暴動を扇動して、みずからが太る理由としたということは、この一月十一日の読売新聞の社説であります。諸君は我が国を帝政ロシアの歩んだ方向に置こうとするか、しないか。これが第一の問題であります。第二、新らしい警察法、なかんずくその前文規定せられておるような民主的任務を遂行すべき我が警察官の素質が、未だに甚だしく劣惡を極め、国民に厭うべき感情を與えていることは、国会の深く遺憾とするところでなければならない。最近、海上保安庁の汚職事件は、国民に深い悲しみを與えている。警察官の汚職は、これが摘発最も困難であるだけ、白晝公然の秘密というか、国民周知の事実を警察側が公然これを否定し、如何とも手の着けようがなく、国民は憤怒と慨嘆とに堪えない。商売ものを只でとるというようなことは、百姓、町人、民間の正業ある者の決してしないところであります。警官がこのようなことをするならば、無頼漢が店頭に座り込み、商品に手をかけても、市民がこれを如何ともすることができない。日常、警察の取締の対象とされておるいわゆる弱い立場に置かれておる市民老若男女の嘆きは、諸君の耳目に達していないはずはない。数日前の東京新聞の投書などを御覧なさい。私はこれらの事実を一々とがめようとするものではない。私の主張しようとするのは、民主警察官、なかんずくその第一線の一般下級警察官の素質の向上を今日当面第一の急務とする民間の世論が、無視されてはならないということであります。そのために、良識ある政府国会とが今日当面先ず第一になすべきことは、警察官の数の増加ではなく、(「その通り」と呼ぶ者あり)その素質向上及びそのための待遇の改善、設備の充実であるとするのである。この二十六日の読売新聞は次のように記している。「現在結核にかかつて勤務を休んでいる療養中の警官は警視庁管下において六百二十名という。六百二十名と言えば国警神奈川全体に匹敵する。大きな警察の三カ署ぐらいは新設できる数である。これは容易ならぬことである。警官と言えば薄給という言葉が連想される世の中であつて見れば、結核警官の療養設備を先ず考えねばなるまい。然るに二百名を收容する警察病院と、年一回の健康診断だけが設備の全部とあつては、それこそ二階から目薬である。何よりも心身の疲労に対して十二分の栄養のとれるような給食が必要であり、十分に安眠のできる宿舎の設備が欲しい。睡眠不足の、栄養不良の神経衰弱気味の警官などは私たちにとつては困る。男の警官のヒステリー症状ほど、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)私たち良民を悩ませ、苦しめるものはない。」(「法務総裁よく聞け」と呼ぶ者あり)更に重大の問題がある。民主講義の原則、基本的人権の尊重のないところには、警察官に対して国会が與えている取締、又逮捕、尋問などの権力は、忽ち人民の自由を圧迫する恐るべき專制権力となり、その武器は凶器となるのであります。兵は凶なり。梶棒、拳銃、皆凶器である、基本的人権の意識に伴われない武器又は過剰の武器は、いずれも取りも直さず人民の自由と人権との侵害となる。現に憲法、又警察法、又警察官職務執行法あるにかかわらず、拳銃が人民の基本的人権の最高のものたる生命を脅かして使用されている事実が数えるにいとまないのである。(「その通り」と呼ぶ者あり)現在の我が警察官の拳銃の武装は、いわゆる警察予備隊の設置以前において、およそ国に存在すべき必要にして十分の武力として承認されたものであるから、この警察予備隊の設置以後においては、従来の一般警察官の拳銃武装がそのまま承認さるべきかどうか再検討さるべき問題である。果して一般警官の拳銃携帶に如何なる必要があるか。私は当局に対してその数字的根拠を求めましたが、與えられたのは、拳銃暴発、即ち警官の拳銃携帶が如何に不必要であり危險であるかの数字的根拠のみでありました。新聞などに掲げられたメーデーなどの写真を見ても、民主主義以前の警官は、帶劍していたけれども、容易に拔劍を許されず、專ら素手を以て処理していたに対し、民主主義の今日の警官が右に拳銃左に棍棒、而もややもすれば忽ち棍棒を振りかざすその人相は、民主主義以前の当時よりも却つて險惡なるものがあります。(拍手)我が国の交通巡査が拳銃を携帶していることの必要が果してどれだけあるか。如何なる事態にも対処し得るために、常時必要がないのに武器を携帶するというのは、武力主義の時代ならばいざ知らず、国家の権力又武力がいやしくも人民の自由と人権とに圧迫的に働くことを許さない今日の民主主義において、許さるべき観念ではない。我が警官の拳銃携帶が、却つて我が国のギヤングたちの拳銃携帶を挑発している傾向のあることも悲しむべき事実であります。而もこうした武力をも含む警察権を国会が承認する警察官が、果してどれだけの民主主義的教養を以て、この武力を含む警察権を、決して国民の自由と人格とを圧迫する方向においてでなく、常にこれを擁護する方向においてのみ行使するという保障を、我が国会の信託に応えて示すことができるか。この最も重要な点についても、法務総裁国警長官も何らの調査資料を我が国会提出し得なかつたのであります。基本的人権を、概念においてのみならず、感覚においても切実の体験として身に付けるためには、文学などを含む一般的教養が最も重要であるけれども、これらの点が全く閑却され無視されているのみならず、警察学校警察大学などの教育において、近代教育学の進歩が殆んど取入れられていない。東大又国立大学そのほか日本の教育学の進歩を代表している学者たち協力さえ求められていない。公務員の素質と能力とをあらゆる方面からテストする方法として、人事院が研究し実行しているマルテイプライ・チヨイスなどの方法もある。又国立大学の社会学心理学研究室などに委嘱して、外から見た日本警察の現状を客観的に明らかにすることもできるのである。委員会において、法務総裁国警長官がこれらの点につき私の指摘に服され、今後これらの実施に速かに手段を盡すと公約されたことは、国会の銘記監視されたいところでありますが、現在、国会がこれらの客観的資料に基いて安心して本案を可決することができないことも事実であります。この二十七日の東京新聞の世論調査においても、警官の質の向上を希望する者が第一位であります。人員の増加の希望は第六位であります。そのパーセンテージにおいて後者は前者の実に五分の一に過ぎません。この二十九日、放送局が静岡県二俣における拷問事件について良心的な放送を行なつておりました。警察民主化の今日の日本に、未だに警察官が民主人民に対し拷問を行なつているかの疑惑の存する事実は、誠に由々しい問題であります。素質劣悪の警察官、なかんずく基本的人権の尊重の意識の低い警察官の一の増加は、国民を苦しめ、民主主義を危くする。今日、当面の急務、先ず第一になすべきことは、警察官の素質の改善、そのための下級警官の待遇改善及び教養、休養、そのほか各種の設備の充実であつて、断じて、数の増加を先にし、これら当面の急務をあとにすべきではない。第三、本案民主警察の根本たる自治体警察の範囲を縮小し、国家警察を拡大し、即ち、我が日本の史上空前の犠牲を以て我が国民の誓約した警察民主化の根本を覆えそうとしている点は、国会の決して看過してはならない最後の重大問題であります。本案に対する公聴会公述人の多数がこの点を強く批判している事実は無視さるべきでありません。衆議院の公聴会においては、鈴木大阪警視総監が、平衡交付金の基準單価が合理的に是正されれば、自警を投げ出す町村はないと信ずると公述し、梅津東京都会議員は、近頃の警察は強盗殺人等に対しては歯がゆいが、労働者の団体交渉などに対する出動には熱心なようだと批判していたではありませんか。(拍手)そして、本院の公聴会において、我が警察制度の権威者土屋正三君は何を公述せられていたか。今回の改正法案の主旨は、国家地方警察の拡充強化によつて町村警察を補正するという考え方によるのではないか。果して然りとすれば、これは現在の警察法の根本精神と矛盾する。我が警察法の母体ともいうべき二十二年九月十六日連合軍最高司令官書簡は、従来の日本警察国家であつたことを痛烈に批判し、「今後の日本警察は、憲法により、地方自治の原則に則つて、完全に地方分散でなければならない」と断じ、「過去の日本における国家権力による警察力の濫用の根本的是正をなすには、中央集権的統制に不可分に附随する警察国家的可能性は最も注意して避けなければならない」と記しています。然るに事件発生のたびごとに治安維持に強力な国家の権力の発動を要求するというのでは、我が国民民主警察維持して行く資格はないと申されなければならない。イギリスの警察の歴史を見ても、イギリスの治安は必ずしも常に良好ではなかつたのでありますが、而もイギリスの国民は、治安維持国家の権力の発動を要求することは極めて稀でありました。イギリス警察史の名著の著書リイは、行政官としても学者としても知られているが、彼はこう記している。「当時有力な警察があつたならば、各地に発生した騒擾は大事に至らずして食いとめることができたであろうが、イギリスの自由のためには幸いにも、全国に亘つて威力を振い得るような強力な警察はイギリスには曾て存在したことがない」と記しているのであります。(拍手)多心の騒擾ぐらいはあつても、全国一般に瓦つて威力を振い得るような強力な警察はないほうが、イギリスの自由のためには幸福であつたのであります。警察制度についての権威者土屋正三君はこう公述しているのであります。更に彼は公述を続けて次のように言つております。現在、政府自体が自治体警察を信任していないのではないかと疑われるのは誠に遺憾なことである。自治体警察定員の枠を外したというかも知れないが、今日の地方財政の現状において、国家の補助金がなくて勝手にやれと言われても無理である。国家警察強化して自治体警察力を補わんとするがごときは、倒行逆施せんとするものである。今日の国家地方警察強化しようとすることは、連合軍司令官書簡において、これだけは防止せねばならないとした中央集権的に統制された国家警察綱が、再び形を変えて現出するものであるという批判を免かれない。国家地方警察を拡大強化するならば、むしろ民主警察の看板を外すがよろしい。民主警察の大旆を振りかざしながら、而も国家警察を拡充するのは、羊頭狗肉のそしりを免かれない。諸君、警察制度についての学識経験者土屋正三君が本院の公聴会においてかく公述しているのであります。一般に、そしてこの場合、特に、国会が果して公聴会の公述を尊重して議案審議にこれを反映させるか、事実上に無視するか、この問題は最近特に国民が監視を集中しているところでもあります。一九四五年十月四日、連合軍によつて日本治安維持法が廃止され、十一月二十一田、連合軍最高司令部ソオプ准将は新聞発表において、「警察官国民の主人ではなく、その公僕とならねばならず、暴力、威嚇、及び非人道的な状態の留置所などによらず、賢明と模範とによつて治安を確保するよう訓練されねばならない」と強調している。「日本警察は、民衆に奉仕するためでなく、政府当路者の野心を達成するために創成されたものであつた」とは、日本警察改革に関する連合軍最高司令官書簡の前提として、一九四六年日本に派遣されたヴアレンタイン・ミツシヨンの報告書の結論として、その六月九日の発表に明記されていたところではありませんか。警察の対象とすべき「犯罪は、局地的であり、局地的に処理すべきものである。」これは、このヴアレンタイン報告書に明記されていたところであり、近代的なる警察の根本原則である。然るにこの点について、私が委員会において二度繰り返して質問したのに対して、大橋法務総裁は遂に確信を示されなかつたのであります。法令によつて罪の範囲を拡大するのは民を網するものであります。警察の対象とすべき犯罪は飽くまで局地的のものであり、全国的の問題は政治の問題であります。この政治と警察との混同、これこそ警察政治、警察国家の復活ではありませんか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)日本における民主主義の建設は遂に失敗に帰するのではないかということは、今日、世界の新聞及び一般の世論の疑惑の的となつていないでありましようか。最近フイリピン航海を終つて大阪に帰つた富士丸の海員は、フイリピンに行つて見て、如何に日本の再軍備がひどく嫌われているかを知つた。人夫も口をきいてくれなかつた上に、上陸も許されなかつたと語つているではありませんか。去る十三日のニユーヨーク・タイムスは、西ドイツにおいて最近ナチスの復活による新らしい右翼政党が、サキソニイ州議会選挙に一一%の投票を得て、十六の議席を獲得した事実を重視し、この事実は、フランスそのほかの西欧諸国をして西ドイツの再軍備の問題を改めて考え直さねばならない危險を感ぜしめていると記しております。すでに遅い、というようなことになつたらばどうするのですか。日本占領軍最高司令部労働課教育班長ブラツテイ君は、その任務を解かれて数日前帰国されましたが、同君が、去る二十日、総評主催の労働運動彈圧反対大会におい、帰国の挨拶に何と言つていたか。「私は帰国したら米国の労働者に、日本の労働者に與えられた基本権或いはその保障を次々と奪い去ろうとしている反動的政策について報告することを、第一の仕事と考えている」と述べられているではありませんか。  結論として申上げます。「何びとも、自己の自由を守ろうとする者は自己の敵をも圧迫から守らなければならない。若し我々がこの義務をやぶるならば、我んはやがて我々自身の身に振りかかつて来るであろう前例を打ち立てることとなるのである。これこそトム・ペインの不朽の名言であります。論語、顔淵第十二に何と記されているか。「子貢攻を問う。食を足し、兵を足し、民これを信ず。必ずやむことを得ずして、去らば、この三者において、何を先とせん。子曰く、兵を去らん。」現在の日本の現実の実情において、社会保障よりも警察強化を先にし、警察の素質の改善よりも、その劣悪の素質のまま警察の数の増加を先にし、警察民主化の根本を覆えして、自治体警察を軽視し、国家警察を重視しようとする本法案に対し、我が国会が民主主義と平和との誓約の下に立つ限り、断じてこれを否決すべきであると私は確信するものであります。(拍手)而も本案のうしろに、又、そして、このあとに、現在の政府は何を考えているか。諸君もこれを知つているはずであります。これらの理由により、私は本法案に反対し、従つてこれを根本的に修正していないような委員会修正議決案に反対し、これを根本的に修正しようとしている社会党修正案賛成するものであります。(拍手
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 鈴木直人君。    〔鈴木直人登壇拍手
  18. 鈴木直人

    鈴木直人君 私は委員会において可決されましたところの修正案賛成し、又衆議院から送付されましたところの原案賛成し、先ほど吉川末次郎君から提案されましたところの修正案に反対するものであります。(拍手)その理由を申上げます。現在の警察法は、数年前に片山内閣時代に、マツカーサー元帥の書簡に基きまして、我が国の警察民主化し又地方分権化するという目的の下に制定せられたのでありまするが、その後、数年の間、実際にこれを我が国において実施いたしておりまして、その経験の過程におきましていろいろな欠陥のあることが指摘せられて参つたのは御承知通りであります。その都度におきまして、いつも警察法改正が世論となりまして、或いは言論機関において取上げられ、或いは国民からの切実なるところの警察法改正の請願或いは陳情ということになりまして、国会に訴えられ、我々の地方行政委員会におきましても、それらの多くは社会党を含むところの満場一致を以て請願が採択されて、その改正方について政府に送付いたしているのであります。今回の政府修正案内容をよく見ますると、その殆んど全部が、我々本院において修正尤もなりと考えられて決議されました内容の主なるものが取上げられまして、修正案内容になつておるわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)そういうふうなことでございまして、今回の修正案内容を私が見ますると、これは現在の内閣とか或いは党の性格というようなものには余り関係を持たない事務的な内容を持つておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて、この民主警察の根本、この民主警察維持して行く、又育成して行く、或いは更に強化して行くという観点については、いささかも変りのない内容を持つておるわけでございますが、(「明快」と呼ぶ者あり)例えばその重要なる一点でありますところの弱小自治体警察に関する問題であります。これは先ほど相馬君が、弱小自治体警察に関するところの世論の批判について、数項目について非常に切実なるところの、尤もなることの批判がございました。あのような批判がございまして、この自治体警察につきましては、今後どういうふうにやるべきかということがいろいろな点において検討されたわけであります。その結果といたしまして、自治体警察は廃止するということをせずして、これは自治体の自主性に任してそうして人口五千以上の市街的町村におきましては、そこの町村住民投票によつて存置するか廃止するかの意思を決定して、その決定に従うという、極めて民主的な方法によつてこの重要な問題が解決されたわけであります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)私はこの解決法につきましては、自治体の自主性を尊重し、民主警察維持育成しつつ、この弊害をこの町村民の自発的意思によつて解決するという方法をとつたということは、非常に、これは何と申しますか、手際よい考え方であつたと私は考えておるわけであります(拍手、「ノーノー」「その通り」と呼ぶ者あり)又自治体警察定員につきまして、これは七万五千人というふうにはつきりきまつておるのでありまして、これも自治体自身の自主性を傷つけるものであります。これは現在の法律においては、法律を以てこれを制定するということになつておるのでありますが、今回の改正によりますと、自治体自身の警察定員はその自治体自身の自主性に任すということになつております。即ち自治体自身が定員を必要としないということであるならばそれを減らしてもよい。又多くするということであるならば多くしてもよい。これまさに民主化の一歩であります。今までの警察法法律で以て自治体定員をきめるというような考え方よりも、自主性に任したという点において、我々地方行政の強化という点から考えて、非常にこれはいい法案だと考えております。(拍手)これについて、定員が多くなるとか、数が多くなるとが少くなるということは、それは、その人の主観に過ぎない。これは実際将来やつて見て初めてわかることであつて、すべてそれは自治体の必要性に応ずることであるからして今徒らにそのために警察官が殖えるとが少くなるというようなことはそれは批判家の言うことに過ぎないのであります。我々はこれを実現して、そうして自治体の自主性というものを発揮するというところに、我々は賛成をいたしておるわけです。又今まで問題になつておりましたのは、ここの自治体警察自治体警察との間の応援というものが法律的にできておらない。隣の町に問題が起つた、そうして、その町の警察官では足りないというときに、そりすぐ隣りの町の自治体警察官は応援に行くことができない。応援に行きましても、それは警察官としての職権を持つことができない。こういうことになつておるのでありまして、そこに行きまして或いは死んだり傷ついたりしました場合においては、警察官でないのでありますから、補償の方法もないというような状態になつておるのであります。ところが、これは制定当時におきましては或いは意味もありましたでしよう。いわゆる自治体自治体との間において、或いは国家警察或いは自治体警察の間を隔離することによつて、半身不随のような考え方にしようとするような意向も或いはあつたかも知れない。併しながら、この数年間実際にこれを経験いたしましたところが、非常にこれは不便であります。理論は別として不便であります。そういうことで国民の間に改正の声となつた。それが又陳情となり請願となつて、数度に亘つて我々は社会党等すべてを含む委員会においてこの改正について満場一致を以て政府に送付しておるのであります(拍手)それが取上げられまして、そうして法的措置がそれに與えられたのです。自治体相互間においても応援ができるということになりました。又問題になりましたりは、応援に行つたときに、その費用が出す所がない。その費用を出す所がない。その自治体において負担に堪えないというようなことになつておつたのでありますが、今回は、国家地方警察にあらかじめ連絡して要請の形式をとつた場合には、全部これが国庫負担するということになつたのであります。これはまさに自治体警察というものの育成強化でありますが、こういうふうにすることによつて、その費用国家負担することによつて自治体警察というものが育成強化されたのでありまして、決してこれを弱化したのではない。最近聞きますというと、そういうようなことになつたならば、我々はもう住民投票のときには、そういう廃止するということをやめようという者すら非常に起つて来たということを聞くくらいに、自治体警察育成強化の案であります。こういうようなことでございまして、これは国家警察におきましても、自治体警察におきましても、数回、何回も集まりまして両方それが一番いいということに現在なつておるのでありまして、反対という点は社会党においても全然ないと思います。その点については先ほどもその点について賛成ということであります。又五千人を増加するということは非常に人間が増加するように思われますが、実は現状はこういうふうになつておる。いわゆる三万人の定数がございます。併しながら、平素、管区の警察学校それから警察大学に五千人程度の者が巡査、巡査部長、警部補、警部というものが一年中引上げられて訓練を受けておるわけです。そうして、その配置はどうなつておるかということです。吉川君の言うように、国家警察という名前であるが村落警察でございます、実際においては。でありまするからして、各町村に駐在所が一つくらいある、それが国家地方警察の第一線であるわけですが、五千人近くの者が引上げられているために、その程度におけるところの町村が一年中欠員になつているというのが現状であります。或いは地区警察の幹部が欠員になつておるというようなことで、第一線がそのために欠員になつておるというのが現状でございます。それを今度五千人を殖やすことによつてその町村の欠員を補充することができるのであつて、決して、第一義的に言えば、何といいすか、いろいろ先ほど皆さんが言われましたような国家警察強化ということにもなりますけれども、第一義的にはそういうふうに村落におけるところの治安維持を確保するということが第一のこれは使命を持つております。併しながらそれだけではございませんで、平生五千人というものが学校におりまするから、いざという場合には勿論応援ができることになりましよう。従いまして、これは、いざという場合の治安維持確保にもなりまするから、これは一石二鳥の案でございまして、非常にこれは私はいい案だと考えておるわけでございます。(「そういうことは詭弁だ」と呼ぶ者あり)又知事要求権でございまするが、これは相当いろいろ問題がございましよう。知事警察に対するところの権限を持つておらない。平生全然持つておらない、ところが、いざという場合にそれを要求するということは木に竹を継ぐようなものでございます。従いまして私たちはそういう方法は必ずしもいいかどうかという点については疑問がありまするが、然らば、こうしたらいいじやないか、ああしたらいいじやないかといろいろなことを考えた結果、それ以外にないという結論を持つておるわけです。そういうような意味におきまして、このことも止むを得ないだろう。先般神戸事件というのがございました。社会党の中村君、我々も一緒に参りまして実情を調査したのでございまするが、あの際には、県庁の知事室に、知事、或いは国警警察隊長、検事正その他あらゆる人が幽閉されまして、数千の人が県庁を包囲いたしまして、そうしておりましたのでありまするが、結局、知事にそういう権限がありません。而もあれは神戸市の警察の範囲内であります、神戸市の警察におきましてなかなか動かない。而も国警が何らの権限もないというようなことで、何日間というものが問題を起して、遂にアイケルバーガー中将でありましたかの非常事態宣言ということが起つたのでございまして、ああいうような場合には、やはり市内においても国家警察が権限を持つことができるというようにすることは、やはり今後いざという場合の必要性があると私は思うのであります。(「総理大臣がいるじやないか」と呼ぶ者あり)決してこれはいろいろな意図があるわけでなく、実際の経験に徴しまして、この程度のものは現在の段階においては改正して置くことがやはり最も妥当だ。私はもう何らの政党にも関係ございませんし、何もございませんが、(「嘘を言え」と呼ぶ者あり)そういうふうに考えているわけであります。而もこういうような案に到達いたしましたのは、国家警察又は自治体警察間におきまして何回も協議されまして、そうしてこれは苦心の合作だということであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)先般この警察法が最初制定される場合においても、片山総理大臣が我々の所に参りまして、これは実に苦心の合作だと、だからして一句一言一つ修正しないで通してもらいたいというような切実なる御要望がありました。実にこの国家地方警察自治体警察というものとの二本建にして、そうして権限をどういうふうにして行くか、そうして治安をどういうふうにして保つて行くかという問題は、非常に困難なる問題でございます。それをそのようにやるということは、やはり苦心の合作であつて、片山さんが言われたのは、それは当然だと思うのであります。今回もこれは両者の苦心の合作でございまして、現在の段階においては、これを成るたけ早く通過させることによつて、全国の警察官の不安を一掃して、そうして、ここに犯罪人の逮捕、被疑者の検挙という面に、一つ十分に精を出して頂くということが私は必要だと考えるのでございます。勿論根本的な改正というのはこれでは足りないと思います。併しながら私は、根本的な日本治安対策というものは、これは講和條件内容がわかつて後に立てられるべきものである。講和條件の中に如何なるところの安全保障があるか。そうして講和條約というものがどうたるか。そうして、それがきまつて後に国内治安の根本的機構というものは考えられるべきものであつて、現在の段階において、これをこれ以上強化するとか或いはどうするということは必要ない。結局、現在のような今までの数年間の経験を尊んで、その経験に基いたところの不合理を地ならしをする。道路であれば地ならしをするという程度で私は差支えないと、こう考えるのであります。そういう意味におきまして私は原案賛成しておるのであります。ただ私が非常に疑問とする二点があります。これは政府に強く希望したとのであります。この案は相当の予算を伴うところの案であります。数十億になると思います。この案は結局予算を伴わなければ動かないというのがこの法案であります。大体、予算を伴うところのものは常に法律と共に予算が提案されておるのが例であります。然るにこの警察法は予算が伴つておらない。そこで政府当局に聞くというと、この次の追加予算において十分なるところの措置をするという言明であります。それは先ほどの委員長報告通りであります。併しながら先ほど相馬君が言われたように、大蔵大臣とそれから法務総裁との折衝の経過というものを新聞等を見てみまするというと、これは必ずしも楽観を許さないものではないかという想像が行われるのであります。従いまして、この法律ができましても、この法律を執行する上において十分なる予算的の措置を今後してもらわなければならぬということが、私の希望の第一條件であります。第二は、先ほども相馬君も言われました平衡交付金の問題であります。いわゆる自治体警察から国家警察に移管されるという分については、その費用国庫負担することになつておるのでありますけれども、その分は今千百億というのが二十六年度の平衡交付金になつてありまするが、その千百億の平衡交付金の中から更に差引いて、必要があつたならば数十億だけ差引いて、そうして、そつちに充てるというのが最初の原案になつておつたように聞いておるのであります。ところが、その後それがなくなりまして、こういう法案になつておるのでありまするが、そういうことが又行われるのではないかということが非常に疑問になるのであります。それで、私たちといたしましては、そういうことはあつてはいけない。勿論大蔵当局としては、そういうことをしないで、新らしい財源を求めて、そうしてその必要なるところの予算的措置をするということでありまするから、私たちはそれを信頼をして賛成をいたしたのでありますけれども、念のために、千百億、これはすでに予算でできておりまするが、そのうちから又それを削減して、そうして新らしいところの警察法の実施に必要なところの予算にそれを組替えるというようなことについては、絶対にやらないように一つ希望をいたしているのであります。この二点を強く希望いたしまして、先ほど申上げましたように、衆議院送付原案民主党緑風会修正案には賛成いたしますが、吉川君の修正案には反対をいたします。(拍手
  19. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  20. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして、委員長報告修正案には反対を表明し、社会党提出修正案には賛成を表明するものであります。(拍手警察とは、申すまでもなく、社会秩序維持するために行われるところの公けの権力作用であります。その限りにおきまして、警察行使の結果、人民に命令し、或いは強制し、又成る程度その自由を拘束することは止むを得ないのであります。従つて、若しもこの警察の権力というものが個人又は機関に独占され、それが強力に遂行されるならば、人民の自由は全く奪われてしまつて、いわゆる警察国家を現わすに至ることはすでに歴史の証明するところであります。そこで民主国家におきましては、警察権の行使に制限を設け、人民の自由の拘束を最小限度に食いとめ、個人の権利と義務をできるだけ保障しようと努めるのであります。例えば警察権の行使については、これを法律に基くべきものとするとか、或いは警察権の行使は、社会の障害を除去し、或いは又これを予防するためにのみこれを行うべきものである。その限度を越えてはならないというように規定するとか、或いは又、社会の秩序が害され又は害されようとする直接の危險ある場合に限つて警察権を行使すべきである、こういう工合に規定され、その障害の発生しない以前において、これを予防するために警察権を行使する場合がある、併しその場合には障害の発生が十分予想される場合に限り、單に可能性があるというだけでは警察権を行使してはならない、などの、各種の制限が民主国家においては設けられているのであります。又、その機構、それからその運営につきましても、中央集権化による権力の強化を防ぐために、或いはこれを二本建にするとか、或いは公安委員会制度のごときものを設けて、官僚の警察行使を抑制するとかいうようなことをやつているのであります。又その警察の人員につきましても、これを必要の最小限度にとどめようとしているのが民主国家におけるところの警察実情であります。現行の我が国の警察法も、この民主警察精神に基づいて設けられていることは言うまでもありません。現行警察法前文に「個人の権利と自由を保護するため」云々という言葉が記載されているのがその何よりの証拠であると申さなければならんのであります。今回の政府提案にかかるところの警察法改正法案は、警察力強化と、その運営能率化とを目的としたものであることは、政府提案理由説明によつて明らかであります。先ず警察力強化でありますが、改正法案の第一は、定員の増加によつてこれを達成しようというのであります。即ち国家地方警察については、管区警察学校及び警察学校に在校する警察官の数五千人を限つて基本定員三万人のほかに置くということ、又自治体警察につきましては、九万五千人の定員の枠を外して、それぞれ自治体條例によつて、その定員をきめることができることとしておるのであります。管区警察学校及び警察学校において訓練中の警察官は常時警察活動に任じ得ないという理由によるものと思われるのでありますが、併し実際においてこの訓練中の警察警察活動のために動員されておる例は枚挙にいとまないのであります。只今鈴木君は、この五千人を訓練に当らせる結果、第一線警察官の手薄となり、それを補充するためには、どうしても常時三万人を確保するために五千人を枠外に置いて増加しなければならぬということを言つておる。而もこの五千人増加は、一朝有事の場合に治安維持するために極めて妙であり、一石二鳥の妙案であるということを言われておるのでありまするが、(「その通り」と呼ぶ者あり)併し実際において訓練中の警察官警察活動のために動員されておる例は枚挙にいとまないのでありまして、これによつて常時三万人の定員を確保するというよりも、むしろそれだけ増加になるということは、はつきりしておると申上げることができるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)又自治体警察警察官定員條例できめるという問題であります。成るほど條例できめるということは極めて民主的なように見えます。この点は先ほど吉川君、相馬君も指摘されておるのでありまするが、若しもこれを最近の反動的な情勢から見るならば、この條例によつてきめるという結果がどういうものになるかは見やすいところであると言わなければならんのであります。(「そうだ」「民主的じやないか」と呼ぶ者あり)なお、我が国において、国家地方警察自治体警察のほかに、国家警察予備隊であるとか、海上保安隊であるとか、法務府の特審局などの、いわゆる警察力というものが存在するのでありまして、これらがすでに我が国の治安維持についてはむしろ過大な警察力であるということは、外国の例を待つまでもなく、我が国戰前の警察力を見るならば一目瞭然であると言わなければならんのであります。従つて今回の定員増加が不当な警察力強化であることは言うを待たないのであります。次に警察力強化として企図されておるのは、都道府県知事の要請によるところの自治体警察の処理であります。非常事態の場合につきましては現行警察法第七章に規定されておるのでありまするが、ここに言う自治体警察の処理というのは、知事治安維持上重大な事案について止むを得ない理由があると認めたときには、これが処理方を都道府県公安委員会要求し、これによつて当該国家地方警察が市町村警察区域内においてその職権を行い得るものとしておるのであります。これは自治体警察並びに自治体公安委員会に対するところの権限の侵害であると同時に、都道府察知事警察に関する特殊の権限を認める結果となりまして、多くの弊害を予想されるのであります。むしろこのような場合においては、都道府県会安委員会自治体公安委員会と連絡協議して、自主的にきめるのが至当であろうと思うのであります。このほか町村警察の廃止を住民一般投票で行うことができるものとしておるのでありまして、国家地方警察がこれに代るということになりまするならば、前述自治体警察の処理の問題と関連して、国家地方警察の拡大強化を結果するものであることは言うまでもありません。勿論一部には、小都市特に町村警察については廃止の声もあります。この点は吉川君も相馬君も指摘しております。併しこれは民主警察の意義と精神とが理解されていないということ、財政上の負担に堪えないということの二点から来ているものでありまして、財政援助の増加なり民主警察の意義を十分理解させるようにするならば、社会党修正案の示しているような組合警察の奬励などをそこに加味いたしまして、自治体警察の拡大を図ることができるのであります。これを住民一般投票によつて存廃をきめるというがごときは、地方自治精神に悖るものだと申さなければならないのであります。(「そんなことあるものか」「ノーノー」と呼ぶ者あり)次に警察運営能率化の問題であります。今日、警察の機構が二本建となつておりまするために、ともすると官僚の繩張り主義が支配し、その機能の発揮を阻害されるものが多いことは事実であります。相馬君は、これについて適切な例を引かれたのでありますが、これを是正するためには、両者の間に機能的な連絡を付けることができるようにしなければ、單に情報を交換するとか、或いは国家地方警察自治体警察、或いは自治体警察相互間においてそれぞれ要求のあつた場合に、管轄区域外においても職権行使ができるというような、捜査権の拡大というようなことだけでは、この両者の官僚の縄張り主義というものを打破することはできないのであります。而も警察活動能率化のためには、單に両者の連絡を付けるだけでは不十分であります。警察の科学的な技術的な改善、特にその機械化ということが要請されるのであります。又警察官の素質の向上、生活の安定が極めて重要な意義を持つのであります。先ほど羽仁君は、警察官の素質の向上について極めて適切な話をされたのでありますが、確かに今日警察官の素質が低下しておることは国民のひとしく認めるところであります。成るほど警察官の素質向上のためには管区警察学校あり、警察学校の設備があります。私も議員になる前には警察学校において数度講義をいたしておりますので、警察大学というものがどういう教育設備のものであるかについては、恐らく諸君よりも私自身かよく知つておると思うのであります。私の経験によりますと、警察学校の教育施設は、普通の民間の大学に比べまして、その教養の程度、教育の水準が極めて低いということをはつきり申上げなければならんのであります。(「教師が悪いからだ」と呼ぶ者あり、笑声)人民の権利と自由を保護する重大な任務を持つところの警察官が、ピストルと棍棒で人民を脅かし、零細商人に物品を強要したり、或いは町のボスと結託したりする、そういうような警察官が、この警察法改正法案によりまてますます増加するとなりましたならば、その結果ほどうなりましよう。恐らく警察国民の怨府となるでありましよう。  警察力強化のためには以上のような措置がとられようとしておるのでありますが、その理由は何によるのであるか。政府説明によるというと、現下治安実情にあるということであります。だが、果して警察力強化を必要とするほど今日の治安実情が危險なものであるかというならば、決してそうではありません。成るほど、最近、特に終戰以来犯罪が増加しておるかも知れません。又その犯罪が悪質化しておるかも知れません。併し犯罪が増加したからといつて警察力を強化しなければならぬということは、最も愚昧の専制君主か或いは官僚の行うところでありまして、決して今日の民主国家の行うべきところではないのであります。(拍手)むしろ、かかる犯罪のよつて来たるところを究明いたしまして、これが対策を講ずることこそ、今日の急務であると言わなければならぬ。政府は口を開けば民生の安定だと言う。併しながら低賃金と、低米価と、重税とに喘いでいる人民の実態は何を物語るでありましよう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この実態を究明せずして、警察力強化し、人民を制圧するに汲々としておる。これが取りも直さず今日の吉田内閣の性格である。こう申上げなければならんのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)吉田内閣は組閣以来、集会結社の自由、言論思想の自由、労働者の団結権、団体交渉権を抑圧し、特に昨年の夏以来は一段とその抑圧を強化して参つておるのであります。我が国における学問技術の最高機関でありますところの日本学術会議は、学問思想の自由の脅かされつつある現状に鑑みまして、特に学問思想の自由を守るための特別委員会を設置しておるという事実に徴しても、如何に今日の抑圧が強いものであり、戰前のそれにも優るとも劣らないものであるかということを知ることができるのであります。今回の警察法改正法案の狙いは取りも直さず政府の抑圧の機構的な整備にあるということは言を待たないのであります。それは結果において、吉田内閣の一層の反動化、フアツシヨ化を意味するものであると考えざるを得ないのであります。(「それは僻みだ」と呼ぶ者あり)以上のような意味におきまして、私は政府原案並びに民主党緑風会提出修正案に反対し、社会党提出修正案賛成をいたすものであります。(拍手
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 竹中七郎君。    〔竹中七郎君登壇拍手
  22. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 私は国民民主党を代表いたしまして、政府原案賛成し、修正点におきましては緑風会並びに民主党修正案賛成するものであります。我々国民といたしまして、警察とか或いは消防というものが必ずしもたくさんある、こういうことに対しましては、これは疑義がありまして、我々全体が神様であるならば少いほうがいい、こういうことはわかつておるのであります。併し初め、この終戰後におきまする警察制度改正がありましたが、その実体におきましていろいろ欠陥があつて、それは我が民情に一致しておらない点がたくさんあつたのであります。先ほど吉川君も申されました通り、戰前におきましては警察官が十万人以下であつたものが十二万五千人になり、それに又五千人の定員外増加をするというようなことはいけないと申されまするが、廃置分合と申しましようか、配置状態におきまして我々は考えなければならん点がたくさんあるのであります。ということは、昔五千乃至一万でありまする町村におきまして、その警察官は何人おつたかということを我々考えますと、先ず三人か五人、駐在所がありまして、そこにおつたのであります。然るに現在ではその五千或いは一千の所に十人或いは十五人、二十人というようなかたがたがおられる。そうして署長さんがおり、次席がおり、何々係がおる。本当の実際におきまして働く人というものは非常に少いのであります。こういうことがありますから、今まで十万人でできたのが、できないような状態にある。そうして又都市に集中されておる。大阪或いは東京、名古屋というような大都市にはたくさんありますが、かく小さいところにおきまして、いわゆる国家地方警察が管轄しておる所におきましては、駐在に一人も警察官がおらん、こういう状態をいろいろ勘案いたしますときにおきまして、このたびの五千人増員ということは、吉川君が言われるような状態ではないと、私は国民の一人として思うのであります。又知事の権限などにつきまして、知事に権限を與えるといかないと言いますけれども、知事そのものは公選の知事でありまして、社会党のかたがたの推薦ある、社会党にあられる知事さんもあられる、或いは自由党或いは民主党の人があると、こういうふうになつておりつまして、その権限問題に対しましても、必ずしも知事が独占してこれをやるのでなくて、そのあとの問題に対しましては、これは議会に対しまする責任があるのでありまして、そんなめちやくちやなことはやらない、こういうことを考えます、私は一々を今更ここで申上げますることはいたしません。ほかの只今いろいろと御討論になりましたかたがたが全部言い盡されておりまして、賛成或いは反対、こういうことがありますけれども、我々国民といたしまして、我々の国民民主党といたしまして、中道政治を行く者は、今の現在の政府のお出しになりましたものが現在の日本に適しておると、かようなことを特に感じました。併し社会党のかたがたのことも考えまして、我々は修正をしたのであります。これをよく社会党のかたがたもお考えになつて頂かなければならない。それが、その何と申しますか、暗がりでやつたとか、いろんなことを言われますけれども、そうではないのでありまして、これは政治的な、何と申しますか、手腕によりましてやつたのでありまして、(笑声)この点はどうか御了承願いたい。それで、どうしてもこの問題に対しましては、現在の状態におきまして、我々は必ずしもこれが完全なものとは思いません。併し現在の日本の国情に照しますときにおきましては、この程度改正をやらなければならないと、こういうことを深く信じましたが故に賛成をするものであります。(「税金はどうした」と呼ぶものあり)税金は……(「野次を相手にせんでもよろしい」と呼ぶ者あり)まあ、このくらいにして置きます。さような点におきまして、私はこの民主党並びに緑風会修正をやりましたところの原案賛成するものでございます。(「社会党には」と呼ぶ者あり、拍手
  23. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 須藤五郎君。    〔須藤五郎君登壇拍手〕    〔「同じことを言うなよ」と呼ぶ者あり〕
  24. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 よく聞いて下さい。(笑声)私は日本共産党を代表して、只今議題となつている警察法の一部を改正する法律案、及び民主党緑風会修正案に反対するものであります。(「社会党案は」と呼ぶ者あり)社会党案は賛成です。  先ずその反対の第一点は国警五千名の増員の点であります。政府増員理由として、警察学校に常時五千名の入学者があるからと言つておりますが、これは明らかな欺瞞であります。若しもこれが真実の理由ならば、なぜ最初から五千名の増員を計画しなかつたのか。(「そり通り」と呼ぶ者あり、拍手)最初二万名の増員を計画したのは大橋法務総裁ではなかつたのか。予算が許さないために四分の一の五千名に減らしたのは誰であるか。このようなごまかしは今日人民はもう誰一人信ずる者はいないのであります。(「共産党は地下にもぐれ」と呼ぶ者あり)又現在の定員でも、国家の状況に比し多過ぎるとは、あらゆる公述人の述べるところであります。いわゆるマツカーサー書簡の線に沿つて三万の枠を三万五千に殖やそうとしておるのは表面上のことで、増員は恐らく二万以上に達し、少くとも法律上は無限に増大することができるという、全く国民を馬鹿にした仕組みになつているのがこの法案の狙いであります。大橋法務総裁もこの点に関し、私の質問に対し、この法案を悪用するならば以上のことができると答えているのであります。(「二重煙突だ」と呼ぶ者あり、笑声)即ち自治警九万五千の枠を外し、地方的要求に応じて、その市町村條例定員を決定することができるようにしたことであります。而もこの枠を外された自治警自治体の意思によつて無制限に国警に吸收するのでありまするから、国警定員が無限に増加することは当然であると言えるのであります。その結果、世界の民主勢力が日本警察定員としてきめた十二方五千の枠は破られ、日本の武装警官の数は警察予備隊、海上保安庁、鉄道公安官等々を加えるならば、戰前の日本の正規軍十七ケ師二十三万を遙かに超過することは明らかであります。これは全世界の平和勢力特に隣国中国に対し重大なる脅威を與え、全面講和の障害を日本の支配層みずからが作り出していることを証明しているのであります。又連合委員会質疑におきまして、先に警察法の決定されました当時と今日と、都市と農村との人口増加の比重を尋ね、むしろ増員の必要ありとするならば、人口の増加の多い自治警増加のほうが妥当ではないかとの私の質問に対しまして、斎藤国警長官は、自治警は当初から国警に比し人口に対する割台は十分過ぎるほどの数になつていたと、つい口を滑らしてしまいました。道理で街頭には巡査がごろごろしておると、私の逆襲に慌てて失言の申訳をしておりますが、これこそ国警の名に恥じない本音を吐いた全く滑稽なことだと思うのであります。(笑声、拍手)今日、自治体において自治警が問題になつているのは経費の点であります。自治警を無制限に吸収できる予算を持つならば、なぜ政府自治体に対して自治警維持するに足る平衡交付金を與えないのか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)政府は今日地方自治体に対する平衡交付金を出ししぶり、即ち兵糧攻めにして、強引に自治警国警に吸収せんとしているのであります。これは警察民主化を阻害し、曾つての中央集権的な警察国家への第一歩であります。この点は、東京、大阪の田中、鈴木両警視総監さえ、警察民主化に逆行するものとして強く反対しているのであります。又反対の第二点は、都道府県知事警察の指揮権を認めたことであります。この法案によると、都道府県知事治安維持上重大な事案につき止むを得ない事由ありと認めたときは、当該都道府県知事は区内の市町村警察管轄区域内に国家地方警察の出動を命じ処理させることができるのであります。これは自治体の自主性を否認したものであります。なぜ自治体からの要請によつて出動しないのかとの私の質問に対し、法務総裁は、自治体当局が好ましからざる政党及びその同調者によつて占められた場合、国家が出動の必要ありと認めても自治警を出動させないようなことの起るのを予想したからだと答えておるのであります。これこそ全く国民の意思を無視し、自治体を侮辱した言葉ではございませんか。吉田総理が、知事は野党を選ぶと損だと言つた非民主的態度といい、大橋総裁のこの答弁といい、まさに自由党内閣のフアツシヨ的性格をみずから暴露したものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)万一、知事諸君にかかる権限を與えるならば、知事は、その府県内のいわゆる治安維持についての責任を負う立場となり、事、治要維持に関する限りは、血道をあげて専念し、一般犯罪は上の空という戰前以上の状態が起る慮れがあるのであります。これは全く警察国家の法的明文化でありまして、警察行政政府の一手に握り、日本を戰場化せしめるところの單独講和と、再軍備に反対する愛国君たちを逮捕彈圧するに便ならしむるためのものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)、その他発言する者あり)  なお、この警察官増員によつて必然的に伴う予算措置がとられていない点であります。従つて、人民はこの改正案によつて幾百億に上る増税を負担せしめられるかは、何ら知らされていたいことであります。これは曾つて東條軍閥内閣が国家予算を無視し、人民の犠牲の下に厖大な軍隊を作り上げたのと揆を一にするものであります。(拍手)  最後に、賢明なる同僚諸君の注意を強く喚起したいと想います。それは、この法案提出と時を同じくして、曾つて日本帝国主義者が侵略戰争に反対した愛国者を逮捕し、拷問し、虐殺したところの戰犯、特高警察官を多数追放解除せんとしていることであります。これは本改正案の狙いがどこにあるかを語つて余すところがありません。(「全く明瞭だ」と呼ぶ者あり)尤もらしく警察民主化の笛を吹きながら、人民に單独講和と再軍備の死の舞踊を強制し、愛国者の抵抗にはピストルと手手錠を以て臨み、(笑声)全人民を挙げて單独講和と画武装に右へならえさせ、外風帝国主義者への奴隷化せしめんとする吉田自由党内閣の意図に対し、我々は断乎として反対するものであります。  なお、本日上程されました社会党修正案は、以上述べました我々の反対点が修正されております。私は社会党の労を多として、(笑声)社会党修正案賛成するものであります。(拍手、「共産党やめて社会党に入れよ」と呼ぶ者あり)
  25. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。先ず吉川末次郎提出修正案全部を問題に供します。吉川提出修正案賛成の諸君の起立を求めます。    〔起立少数
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 少数と認めます。よつて吉川提出修正案は否決せられました。(拍手「共産党が賛成するからだ」と呼ぶ者あり)      ——————————
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に本案全部を問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。本案の表決は記名投票を以て行います。委員長報告通り修正議決することに賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  28. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算いたさせます。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事道標を計算〕
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数百八十四票、  白色票百二十五票、  青色票五十九票、  よつて本案委員会修正通り議決せられました。(拍手)      ——————————    〔参照〕  賛成者(白色票)氏名 百二十五名    結城 安次君  山川 良一君    玉柳  實君  村上 義一君    溝口 三郎君  前田  穰君    藤森 眞治君  藤野 繁雄君    早川 愼一君  野田 俊作君    徳川 宗敬君  常岡 一郎君    高橋 道男君  高木 正夫君    田村 文吉君  鈴木 直人君    新谷寅三郎君  島村 軍次君    西郷吉之助君  小宮山常吉君    楠見 義男君  木下 辰雄君    河井 彌八君  片柳 眞吉君    柏木 庫治君  加賀  操君    奥 むめお君  岡本 愛祐君    岡部  常君  小野  哲君    楠瀬 常猪君  溝淵 春次君    長島 銀藏君  木村 守江君    宮本 邦彦君  秋山俊一郎君    高橋進太郎君  仁田 竹一君    宮田 重文君  上原 正吉君    草葉 隆圓君  石川 榮一君    大谷 瑩潤君  九鬼紋十郎君    深水 六郎君  加納 金助君    平沼彌太郎君  大矢半次郎君    城  義臣君  植竹 春彦君    岡崎 真一君  小野 義夫君    鈴木 安孝君  黒田 英雄君    石坂 豊一君  岩沢 忠恭君    北村 一男君  中川 幸平君    一松 政二君  横尾  龍君    中山 壽彦君  小串 清一君    工藤 鐵男君  小杉 繁安君    中川 以良君  赤木 正雄君    廣瀬與兵衞君  野田 卯一君    重宗 雄三君 大野木秀次郎君    谷山 行毅君  松平 勇雄君    古池 信三君  中井 太郎君    白波瀬米吉君  安井  謙君    岡田 信次君  瀧井治三郎君    石村 幸作君 池田宇右衞門君    入交 太藏君  島津 忠彦君    石原幹市郎君  山崎  恒君    紅露 みつ君  深川タマヱ君    木内キヤウ君  鈴木 恭一君    大島 定吉君  郡  祐一君    川村 松助君  竹中 七郎君    谷口弥三郎君  有馬 英二君    油井賢太郎君  山田 佐一君    西山 龜七君  堀末  治君    團  伊能君  鈴木 強平君    西田 隆男君  大屋 晋三君    泉山 三六君  平岡 市三君    佐藤 義詮君  小林 英三君    栗栖 赳夫君  林屋亀次郎君    櫻内 辰郎君 深川榮左エ門君    大隈 信幸君  岩男 仁藏君    駒井 藤平君  境野 清雄君    木内 四郎君  稻垣平太郎君    岡村文四郎君  東   隆君    森 八三一君  千田  正君    三浦 辰雄君  石川 清一君    堀木 鎌三君  田方  進君  反対者(青色票)氏名 五十九名    中田 吉雄君  村尾 重雄君    金子 洋文君  門田 定藏君    カニエ邦彦君  藤原 道子君    島   清君  野溝  勝君    加藤シヅエ君  若木 勝藏君    三橋八次郎君  原  虎一君    齋  武雄君  高田なほ子君    吉川末次郎君  小林 孝平君    山花 秀雄君  荒木正三郎君    山田 節男君  三輪 貞治君    成瀬 幡治君  田中  一君    松永 義雄君  小泉 秀吉君    小笠原二三男  羽生 三七君    江田 三郎君  大野 幸一君    中村 正雄君  細川 嘉六君    須藤 五郎君  兼岩 傳一君    千葉  信君  木村禧八郎君    堀  眞琴君  水橋 藤作君    鈴木 清一君  梅津 錦一君    重盛 壽治君  佐多 忠隆君    岩崎正三郎君  相馬 助治君    椿  繁夫君  岡田 宗司君    松原 一彦君  羽仁 五郎君    内村 清次君  小酒井義男君    栗山 良夫君  山下 義信君    矢嶋 三義君  佐々木良作君    木下 源吾君  棚橋 小虎君    和田 博雄君  三木 治朗君    河崎 ナツ君  上條 愛一君    森崎  隆君      ——————————
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて午後二時まで休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ——————————    午後二時四十三分開議
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  日程第三、医師法及び歯科医師法の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。厚生委員会理事小杉繁安君。    〔小杉繁安君登壇拍手
  32. 小杉繁安

    ○小杉繁安君 只今議題となりました医師法及び歯科医師法の一部を改正する法律案につきましての厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。  先ず本法案の大要を申上げます。終戰前、朝鮮、台湾、樺太、南洋諸島等の旧外地及び満洲国におきまして、医師免許又は歯科医師免許を受けていた日本国民につきましては、医師法及び歯科医師法の附則に特例の規定がありまして、内地における医師免許又は歯科医師免許を受ける途が開かれているのであります。ところが、これと全く同様の事情にある中華民国の旧治外法権地域において領事館の免許を受けていた日本国民、或いは諸外国殊に南方の英蘭仏領植民地においてその地の政庁より免許を受けていた日本国民につきましては、かような取扱がなかつたのであります。これらの者は、永年外国において医業又は歯科医業に従事し、十分な臨床的経験を有する者であり、且つ終戰の結果として止むを得ず永年辛苦の末築いた地盤を放棄し、内地に引揚げを命ぜられた者でありまして、これらの者のみ特例を認めないということは、不合理な差別的取扱と言わざるを得ないのであります。よつて、この法案は、これらの者に対して昭和三十年の末まで、旧外地又は満洲国の引揚者と同様、選考又は特例試験を受ける資格を與え、医師又は歯科医師になる途を開き、その窮状を打開せんとするものであります。なお、同時にこの法律の制定に伴いまして関係法令の整理をいたしたのであります。以上が本案の大要であります。  本法案は衆議院議員提出法律案でありまして、六月二日衆議院より送付となり、直ちに委員会を開催し、愼重な審議を行なつたのであります。委員会における質疑応答内容等については詳細は速記録によつて御覧をお願いすることといたします。かくて二日の委員会において質疑を打切り、討論を省略して採決に入りましたところ、原案通り全会一致を以て可決すべきものと決定した次第であります。  以上をもちまして御報告を終ります。(拍手
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔総員起立
  34. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程の順序を変更して、日程第四を後に廻し、日程第五、電話設備費負担臨時措置法案内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。電気通信委員長寺尾豊君。    〔寺尾豊君登壇拍手
  37. 寺尾豊

    ○寺尾豊君 只今議題となりました電話設備費負担臨時措置法案について、電気通信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。  先ずその提案理由といたしますところは、電話の設備に要する資金の不足を補うため、加入電話又は増設機械の設置に要する費用の一部を加入申込者又は加入者に臨時に負担させようとするものでありまして、その内容は、先ずこの負担をなすべき人は、加入電話の申込者、構内交換機及び電話機の装置を請求する加入者並びに戰災電話の復旧を請求する加入者でありまして、その金額は、六大都市及び福岡、金沢の八郡市の局におきましては三万円、その他の局は二万円、共同電話は、その局の等級及び共同の数によつて右の金額は段階があり、又構内交換機はその設備費の実費程度、電話機は一個につき四千円と予定をしているのであります。又この負担金は、五年以内に加入契約が消滅しました際には、その全額を返還し、増設機械につきましては、十年以内にその利用を廃止しましたときには、一年につき負担額の十分の一を差引いた残額を返還するのであります。戰災電話はこの年限に関係なく、加入契約が効力を失つたときはこの負担金を返すのであります。なお、国の機関の電話に対しましては、この法律は適用除外となつているのであります。又この法律は本年七月一日から施行され、昭和三十一年三月三十一日までの間に加入申込の承諾又は戰災電話の復旧を受けた者に対しまして適用されるものであります。  以上が本法案提案理由並びに内容でありますが、電気通信委員会におきましては、本法案が付託されまして以来、愼重な審議を重ねまして、委員各位から熱心綿密な質疑があり、政府当局から懇切詳細な答弁がありましたが、政府説明及び質疑応答によつて明らかになりました点を申上げますと、電気通信設備の拡張のための外部資金は、昭和二十五年度において百二十億、同二十六年度において百三十五億出でありますが、この予算では、昭和二十六年度には電話加入者が七万五十しか殖やされないこと。一方加入申込をしてまだ加入されない数は本年度末は七十万余に達する見込であり、又構内交換機及び電話機の装置の希望も厖大な数に上つております。来年度以降拡張資金の枠が著しく拡大されない限り、この需要を充たすのに殆んど十年を要することになります。本法案による二十六年度内の資金は約三十四億円を見込んでおりまして、これによつて三万三千個の加入電話が殖やされるわけであります。この資金は本年度予算で認められた百三十五億円の枠の外であり、来年度以降も本法による資金は予算の枠外として取扱われるべきこと。戰災電話の復旧工事完了後にこり負担金支拂わぬときは、電気通信大臣はその加入契約を解除することができるという規定はやや酷に失するきらいがあるが、政府としては、これは料金支拂のない場合と同様に考えられるので、必ずしも不当でないとの見解であるわけであります。  質疑を終えまして、討論に入りましたところ、労働者農民党の水橋委員より、国民のひとしく熱望をしている電話の増設は、予算不足のために遅々として進まない際に、国の資金の不足を補つて電話の増設を図ろうとする本案は極めて適切なものであるとの賛成の意見を述べられ、採決の結果、全会一致を以て本案原案通り可決すべきものと決定をいたした次第であります。  以上御報告を申上げます。(拍手
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔総員起立
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。(拍手)      ——————————
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第四、北海道開発法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。    〔河井彌八君登壇拍手
  41. 河井彌八

    ○河井彌八君 北海道開発法の一部を改正する法律案につきまして、委員会経過並びに結果を御報告申上げます。内閣委員会委員会を開くこと二回、地方行政、農林、水産、建設各委員会連合委員会を開くこと一回、地方行政、農林、水産、建設、人事、大蔵、運輸、経済安定、予算各委員会連合委員会を開くこと二回、この法律案につきまして愼重なる審議をいたしました。又その間に、田中北海道知事、椎熊北海道開発審議会委員を連合委員会に参考人として出席を求めまして、この法律案に対する意見を聴取いたしたのであります。先ずこの法律案要旨提案理由について御説明申上げます。この法律案は、昨年五月第七国会において成立いたし六月一日から施行せられました北海道開発法の一部を改正して、北海道の開発を強力に推進しようという趣旨のものであります。又その改正要旨は次の二点に帰するものであります。第一点は、北海道開発に関する公共事業費のうち国が行うところの直轄事業は、北海道知事の監督から切離して、これを直接国が執行し得るように、現地に国の執行機関として北海道開発局を設ける点であります。第二点は、この北海道開発局は、局長官房のほかに、建設部、農業水産部、港湾部、営繕部の四部にて組織せられまして、総理府直属の北海道開発庁の支分部局として設置することといたし、且つ農林省、運輸省及び建設省の各大臣がそれぞれの所掌事務について開発局長を直接監督するものとした点であります。そして、この改正法律案は本年七月一日より施行することとなつておるのであります。次に政府がこの法律案提出する理由として申述べますところは、北海道開発の公共事業費は開発庁の予算に一括してこれを計上して置いて、然る後に農林省、運輸省及び建設省の予算に移し換えをして執行させているのでありまして、又この直轄事業を執行していますのは、現地即ち北海道におる約三千二百名の官吏たる地方事務官並びに地方技官でありまして、この官吏の任免及び俸給の支給はすべて現に内閣総理大臣の直接権限にあるのであります。然るに北海道が戰後の我が国国民経済の中に占めるところの重要性並びに北海道の持つ特殊性に鑑みまして、昨年、国策として北海道の開発を行うために北海道開発法が制定せられたのであるが、今後ますますその重要性が加えられて、国費の直轄事業はますます増加拡充されなければならない段階にあるのである。従いまして、従来のごとく北海道知事にこれらの国の官吏を指揮監督させて置いたのでは、その責任の所在に明瞭を欠く嫌いがあるのみならず、所期の目的を達成することが至難であるから、これを根本的に改めて、国家北海道の開発を国民的事業として、その計画から事業の執行に至るまで一貫して行うことによつて国民に対して責任を明らかにし得る体制を整える必要があるというのであります。内閣委員会並びに連合委員会におきましては、それぞれの立場においてあらゆる角度から極めて熱心に質疑応答が重ねられたのであります。先ずその全体に亘る主なものだけを次に御報告申上げます。第一に、国の行うところの直轄事業について、その計画から事業の執行に至るまで一貫して国が責任を負うことは当然であるとしても、何故に昨年五月第七国会において北海道開発法案が提出せられた当初においてその措置がとられなかつたかというのであります。なお、北海道開発庁が設置されてより僅か一年を経過したばかりの今日、にわかに国の出先機関を設けるという理由、並びにその闘いわゆる政治的意図がありという噂まで飛んでおるのであるが、そういう経緯は如何であるかという質問であります。これに対しまして政府側答弁は、北海道の拓殖事業は明治初年から永く国が行なつて来ており、国の直轄事業として、国の行政機関たる北海道庁長官が担当して来ておつたのである。而して昭和二十二年の四月に地方自治法が制定せられて以来、現在でも国のこの行政事務が全体の事務量の八割を占めておる。残りの二割が自治事務であるのであるが、かような状況において、北海道の行政は、内地の諸府県よりも遥かに官治的の色彩が強いのである。それにかかわらず、自治法が施行せられるに伴つて公選知事に委任せられておつたのである。これら直轄事業が漫然と公選知事に委任せられていたのである。かようなことは全く誤まつておる事柄である。そうして、この重要な国家事務をば国自身がこれを行うのでなければ、北海道の飛躍的発展は期することができない。特に終戰後北海道において、これが重要な問題となつておりまして、識者の間においてもこのことが叫ばれておるのである。そこで、政府においても、第二次吉田内閣の頃に、北海道の行政機構について検討をいたした結果、昭和二十四年四月に北海道開発審議会を設けたのであるが、その答申によれば、国の総力を挙げて重点的に且つ急速に北海道の潜在資源を総合的に開発すべきであるということであつたのであります。この答申に基いて、昨年七月、北海道開発庁が設置されたのであるという沿革を政府は詳しく説明いたしました上で、この質疑に対しましては、その当時の事情と照し合せて、計画官庁たる北海道開発庁を設けた。そうして更にその出先機関としての実施官庁を設けるのは、その当時すでに必要とは考えておつたけれども、まだ設置には至らなかつたのである。その後、北海道開発審議会の答申に基いて、この開発局を設置することはどうしても必要で、躊躇すべきことではない、今が最も適当な時期である。故にこれを提案したのであるという説明でありまして、従つて知事の選挙にからまるというがごとき風説などは、これは取るに足らないことである。或いは又党利党略に囚われておる提案であるというがごときものでは決してないという説明があつたのであります。第二は、この改正案によつて、国の委任事務であるところの北海道開発事業を北海道知事の手から切り離すことは、地方自治権の侵害ではないかという質疑が繰返されて出たのであります。又これは憲法の規定でありますが、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体住民投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」という憲法第九十五條の規定に牴触するのではないかという質問があつたのであります。これに対する政府答弁は、今回北海道知事の手から切り離される国の直轄事業の内容は、内地における諸府県において国が執行しておる直轄事業と全く同じ性質のものである。即ち事業費は全額国庫支弁であり、且つその職員国家公務員であつて、その任免及び俸給の支給がすべて内閣総理大臣の直接の権限にある。これまでは北海道知事国家公務員の指揮監督を或る程度認めていたに過ぎないのであるから、本来、国が事業の執行について責任をとるべき筋合いである。従つて北海道庁の自治事務には全く関係のないことであつて地方自治権侵害という問題は起り得ない。又北海道の直轄事業の執行の仕方を内地並みにするということであるから、一つの地方団体のみに適用される特別法ではなくて、従つて住民投票を必要としない。又北海道開発法の制定それ自体がすでに住民投票を必要としなかつたのであるから、その一部を改正するこの法律案についても同様に住民投票を必要としない。従つて憲法第九十五條の規定に牴触することはないという説明であつたのであります。第三に、北海道においては現今がすべての事業執行の最盛期である。然るに本案施行によつて、本年度半ばに、かかる行政機構及びその権限の改変が行われることとなるならば、広汎な人事異動や所掌事務の転置、又は物品、機械器具等の配置転換を要する等のために、現在円滑に執行せられておるところの事業が妨害せられ、停頓せしめられるのであつて、本年度初め以来経費を投入したその効果も減退するではないかという質問があつたのであります。これに対する政府答弁は、国の直轄事業は官吏である地方事務官及び地方技官約三千二百名のみが執行の任に当つており、その指揮監督の職権が北海道知事の手から建設大臣、運輸大臣、農林大臣の手に移るのである。而してこの各大臣はそれぞれ所掌事務について責任をとるのである。又国家公務員の執行する仕事と地方吏員の執行する仕事とは、この法律によつて画然と区分されるのであるから、国と北海道庁の業務の執行には何ら変化はない。事業の遂行上支障はないのである。いわば單に看板がかけ変つたというがごときものであるという説明でありました。第四には、然らば新たにこの出先機関を設置すると、差当つて要する経費の増額が、概算して国庫関係において約二十億円、消費関係において約十億円、合計三十億となると言われるのであるが、この数字は架空の数字であるかどうかという質問でありました。これも詳細に亘りましてたびたび行われた質問であつたのであります。これに対しまする政府答弁は、政府は増加経費が十五億円くらい出るであろうというようなことは聞いておつたが、三十億円も増加するであろうというようなことは聞いたことはない。元来二十六年度の北海道開発局扱いの事業費予算額は、直轄事業において五十九億余円、補助事業において二十九億余円、合計八十八億余円であるが、三十億円の増加というならば、直轄事業費の半額にも相当する数字であつて北海道の事業費は直轄と補助と共に全額国庫負担となつておるのであるから、性質上さような数字が出ることは考えられない。又、国の直轄事業は予算の範囲で行われるし、又、国と北海道庁の事業とは截然と区別されておるのであるから、地方費の増大ということも理論上はあり得ないことである。ただ実際問題としては、道庁が国有の機械や建物を借用しておる場合があるから、このことは嚴格に言えば或いは非合法であるかも知れぬが、かかることがないという前提の下に増加経費があるかないかということを論ずべきである。併し国の出先機関が設けられると、道庁は現に使用している国の機械や建物をば国に返却することを要することになるから、事業の遂行上別途の措置を講じなければならないということになる。それ故に経費の増加が当然となるわけであるけれども、開発庁としては、将来所要の手続をとつて、従来通り無償で貸與する等の合法的措置を講ずるのであるから、経費の増加は実際においてはあり得ないであろうという答弁でありました。第五に、直轄事業は北海道知事の手から切り離されても、道庁に委託代行する事務が残るとすると、この事務の委託料はどこから支出せられるのであるか。直轄事業費について新たに追加予算を要求するのであるか。それとも北海道庁の負担に帰せられるものであるか。そのいずれの場合としても、政府説明に反して増加経費が必要となるのではないかという質疑があつたのであります。これに対する政府答弁は、北海道庁に委託代行させる事務は予算の範囲内において融通を付けるつもりであるから、経費の増加は起らないであろうという説明でありました。第六に、北海道開発局の行う事業実施の責任は、北海道開発庁長官にあるのか、それとも農林大臣、建設大臣及び運輸大臣がそれぞれ所掌事務の執行について責任を負うのであるか、どちらであるかという質問が、これも繰返されて出たのであります。なお、これと同様な実例が他にあるかという質問もありました。これに対する政府答弁は、北海道開発庁は北海道開発局の業務執行を指揮監督する権限はなくて、單に北海道の開発計画を樹立し、且つ開拓業務の執行の推進及び各省間の調整を図るにとどまる企画官庁であるから、業務執行上の責任はとらない。農林、建設、運輸の三大臣は、それぞれの所掌事務について北海道開発局の業務執行の指揮監督の権限を有するのであるから、業務執行の責任はそれぞれの分野においてこれらの主務大臣がこれを負うことになるのである。併し開発庁長官は開発計画樹立についての責任は負うのである。こういう説明でありました。かような例があるかということに対しましては、それは二三ある。例えば税関は大蔵省の出先機関であつて、関税賦課の業務を行うのであるが、このほか輸出品取締法等による輸出入貨物の取締を行なつており、この業務については大蔵大臣の指揮監督を受けるのではなくて、通商産業大臣の指揮監督を受けておるという例を挙げたのであります。第七に、水産に関する開発計画の範囲はどの水域までであるのか。漁港法によれば、漁港計画は農林省が立てることとなつておるが、北海道開発法によれば、開発庁の立てる開発計画中に漁港計画も包含せられておるとのことであるが、この両者の関係はどうなるのであるか。両者の間に矛盾を生ずる場合はないのであるか。又水産に関する調査は開発庁も北海道庁も行うということは、二重調査、二重行政となつて、この両者の調査の結論に相違の起つた場合には、水産に関する開発計画を立てる上に大なる支障を生ずるものと信ずるがどうであるかという質問も出たのであります。これに対しまして、開発庁で行うところの水産に関する開発計画は、單に北海道の行政管轄区域内にとどまらず、それ以外の区域にまでも及ぶ。即ちこの開発計画は国策の立場から計画を立てるのであるから、マツカサー・ラインを越えない範囲内で、広い水域まで調査をして計画を立てる考えである。次に、北海道の漁港計画は、北海道の開発計画の一環をなすものであつて、この計画を立てるについては農林省と十分連絡をとつて行うことは勿論であつて、若し両者の間に矛盾の生ずる慮れがあるような場合には、閣議で以てこれを調整し得るものと考える。故に両者の間に矛盾の生ずることはない。水産に関する調査は、この改正法律が成立した場合に新設せられる開発局の農業水産部の手で、地元の意見を十分に尊重し、又北海道庁とも十分協力して行う方針であつて、二重行政に陷らないよう十分配慮する考えであるという政府答弁でありました。第八に、農業及び林業行政は、この法律によれば閑却せられてしまつて、建設行政が重視せられるがごとき観がある。又開拓関係は、その面積及びこれを担当する吏員の定数から見ても、現行のままがむしろ適当である。而してこれは現に府県がその通りつており、この制度をとることは却つて時勢に逆転するものである。更に又、北海道の総合開発というけれども、これは無計画な寄せ集め的なものであつて、機構の上から言つても、監督の上から言つても、或いは又技術力低下の上から言つても、その目的を十分に達成することはできがたいというような質問もあつたのであります。併しこれに対しまして、要するに、この計画、本案目的としておるところは最も適当であるという説明があつたのであります。第九には、北海道の総合開発においては林野行政が重要な地位を占めておることは言を待たない。従つて林野行政の実施機関として北海道にある営林局も農業水産と共にこの開発局に部として收めるのが適当ではないか。然らざれば到底理想的な総合開発の実現は期せられないと思う。何故に営林事務だけを別の取扱にしておるのかという質問に対して、政府は、北海道の林野行政は、知事が公選となつた以後は、これを知事に行わしめずに、林野庁の出先機関であるところの営林局で行わしめておるのであるが、これは総合開発の見地から重要な事務であるから、開発局をして行わしめることの可否については今後十分検討するつもりである。併し今直ちにこれをその通りに実現することはできないという答弁でありました。第十に、北海道開発法第二條によれば、「国は、国民経済の復興及び人口問題の解決に寄與するため、北海道総合開発計画を樹立し これに基く事業を昭和二十六年度から実施する」と規定してあるが、この規定の建前からすれば、総合開発の具体的な計画がなくてはその事業はできないはずであるという質疑がありました。これに対しまして、北海道開発に関する大綱の計画はすでにできておる、更に本年度二千万円の調査費を以て十分な計画を樹立する見込であつて、これと並行して開発事業を実施し得るものであるから、何らこれは矛盾するものではないという説明でありました。更に第十一点といたしましては、或る委員から、この法案について地方行政調査委員会議の意見はどうであるかということの説明を求めたのであります。地方行政調査委員会議長神戸博士は、昨年十二月に行なつたところの市町村都道府県及び国相互間の事務の再分配の調整等に関し、とるべき措置に関する勧告は、中央と地方との間に新たなる共同関係を打ち立てることを目指して、市町村都道府県及び国相互間における事務の配分の調整についてその計画の大綱を勧告したものであつて、右勧告の事柄を実施するに伴つて更に必要とされる幾つかの補足的措置については、引続いて調査研究を進め、後日勧告するということを附言しております通り、特殊性のある北海道についての事務再配分に関する意見は、ここ二三カ月もたてばそれはでき得る見込であるという答弁があつたのであります。更に又第十二点といたしまして、この法案が成立した結果として地方自治体たる北海道の経費負担が増加することを考慮するならば、当然地方財政法第二十一條によつてあらかじめ地方財政委員会の意見を問うべきではないかとの質疑があつたのでありますが、これに対しまして、地方財政委員会では、本法案については未だ意見を徴せられておらない。従つてこれ又調査していないので、この場合に委員会としては答えることができないということを申したのであります。大体以上申述べましたごとく、連合委員会におきまして、各委員はそれぞれの立場から極めて熱烈なる質疑をなして、政府答弁を聞いたのであります。政府答弁も又最も綿密に行われたのであります。そこでかくのごとくにいたしまして、連合委員会は三日間かかりまして、その三日を以て終了いたしました。最後に、内閣委員会は一昨日これを愼重に審議いたしたのであります。結局、只今申しました重要な諸点について、即ち第一には、本法案は今直ちにこれを施行しなければならない緊急性があるかどうか。第二には、これまで北海道知事の下に総合且つ一元的に行われて来た開発行政の制度を今急激に改変して、国の事務と自治体の事務とに截然分離する必要があるかどうか。第三には、本法施行の結果、北海道に地方費の負担を過重ならしめることはないか。第四には、北海道開発計画が未だ完成を見ざる今日、本法を施行して、開発庁の出先機関である北海道開発局を設けて、公共事業費の支弁にかかる国の直轄事業を実施することは、北海道開発法の第二條の規定に牴触するのではないか。第五に、本法案は憲法第九十五條の規定によつて住民投票に付すべきものではないかというような諸点を中心にして、十分審議を盡したのであります。かように審議を盡しました上で、一昨日午後の委員会において本法案が討議に付せられまして、吉田委員から次のような修正案提出せられたのであります。これを朗読いたします。  北海道開発法の一部を改正する法律案に対する修正案北海道開発法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。附則第一項中「昭和二十六年七月一日」を「昭和二十七年四月一日」に改める。  附則第二項を附則第三項とし、附則第三項を附則第四項とし、附則第一項の次に附則第二項として次の一項を加える。 2 この法律は、日本国憲法第九十五條の規定により、北海道住民投票に付するものとする。  なお、次に梅津委員より次に述べるような修正案提出されました。それは、  北海道開発法の一部を改正する法律案に対する修正案北海道開発法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。附則第一項中「昭和二十六年七月一日」を「昭和二十七年四月一日」に改める。  これであります。  吉田委員は、この法律案によつて本年七月一日から北海道開発局を急遽設置することは、本法施行の円滑を期しがたい旨を述べ、又この法律案北海道のみに適用される特別法と認められるが故に、憲法第九十五條に規定する住民投票に付すべきであるという説明をいたしたのであります。又梅津委員は、吉田委員の発言になつておる前事と同一趣旨の発言をいたしましたのであります。討論に入りまして、溝淵委員からは、この法律案趣旨に照して、今日この開発局の開設のため更に昭和二十七年四月一日まで施行期日を延長する必要がない。又この法律案については憲法第九十五條の住民投票に付する必要はないという二点から、この二つの修正案に対して反対の意思を表し、且つ原案に対しまして賛成の意見を述べたのであります。かようにいたしまして採決の段階に入りましたが、先ず吉田委員の提出修正案について採決をいたしましたところが、少数を以てこれが否決となり、次いで梅津委員提出修正案について採決をいたしましたところ、これ又少数を以て否決せられたのであります。最後に本法律案につきまして採決をいたしましたところ、多数を以て可決すべきものと議決せられたのであります。最後に委員会経過として一言附加えて申して置きたいのであります。委員会の審査は周到正確を期すべきことはこれは勿論のことであります。内閣委員会におきましては、審査の周到を期するために公聽会を開会するという点につきまして十分な考慮を拂いましたけれども、日時においてこれを許さない事情がありましたから、止むを得ず只今報告に述べましたように参考人の陳述を聞くことにいたしたのであります。而してその参考人の選定は、本案に対して最も強い代表的の意見を持つておるところの田中北海道知事及び北海道開発審議会委員の椎熊三郎君の説明を承わつたのであります。第二点といたしましては、この議案の内容及び特にこの法律案の持つところの重要性に鑑みまして、審査日数が十分ではないという感じがいたしたのであります。特に連合委員会を開きましたところが、内閣委員会に対しまして連合を申込まれた常任委員会の数が九つにもなつておるのであります。然るに、一方、連合委員会は初めは二日間と予定いたしましたが、それではどうしても足りませんので、三日間ということにいたしまして、最後の一日は内閣委員自身の審査の日に充てたのであります。そこで、この連合委員会におきましては、連合各委員から、各方面の委員からあらゆる角度で以てこの法律案に対しまして極めて周到な多角形的な質疑応答が繰返されたのであります。これは内閣委員が委員会において審査をいたしまする上において大いなる参考となつて、誠に結構なことであつたのであります。ただ私はこの連合委員会運営する上におきまして、少くともどの委員会も、必ず一人だけは、せめて少くとも一人だけは代表的の発言をして頂きたいということを考えまして、再三常任委員長と懇談をいたしたのであります。常任委員長もよくこの趣意を御了解下さいまして、その委員会に属する委員に対しまして御配慮を下さつたのでありまするけれども、最後の日に十二時まで委員会を開会いたしましたが、とうとう二、三の委員会の代表の御発言を聞くことができなかつたことを遺憾とするのであります。而して私は、今朝、事務局について実際発言をせられた時間はどのくらいあつたかということを取調べましたのであります。その結果は、連合委員会において実際発言せられた時間は総計二十時間八分であつた。内閣委員会におきましては総計六時間四十四分、合計で二十六時間五十二分ということでありました。従いまして、各種の意見がかなりたくさんに開陳せられたという結論を得たのであります。第三に、吉田総理の御出席を必要とするのは、内閣委員会におきましても、又連合委員会におきましても、これは最も強い希望であつたのであります。ところが遺憾ながら所労のために御出席がなかつたということは、これは止むを得ないことであります。委員諸君におかれましても、よくその事情を諒察せられたのであります。大体以上を以て私の報告を終ります。(拍手
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 本案に対し、吉田法晴君より成規賛成者を得て修正案提出されております。この際、修正案趣旨説明を求めます。吉田法晴君。    〔吉田法晴君登壇拍手
  43. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 只今上程せられました北海道開発法の一部を改正する法律案に対する日本社会党提案にかかる修正案について趣旨弁明をいたします。先ず修正案を朗読いたします。  北海道開発法の一部を改正する法律案に対する修正案  北海道開発法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  附則第一項中「昭和二十六年七月一日」を「昭和二十七年四月一日」に改める。  附則第二項を附則第三項とし、附則第三項を附則第四項とし、附則第一項の次に附則第二項として次の一項を加える。 2 この法律は、日本国憲法第九十五條の規定により、北海道住民投票に付するものとする。  先月二十六日、一たび延長せられた今第十国会が終了せんとする直前政府によつて提出せられ、このために会期をわざわざ延長して、数日間本院において、内閣委員会を初め、地方行政、農林、水産、建設、運輸、人事、大蔵、経済安定、予算の各委員会による未曾有の大連合委員会によつて審議せられて参りました北海道開発法の一部を改正する法律案は、連合審査の席上その他でも疑問が提出せられましたが、次に述べるように、憲法第九十五條に規定する「一の地方公共団体のみに適用される特別法」であると認められますので、憲法第九十五條及びこの條文に基く住民投票の手続法たる地方自治法第二百六十一條、第二百六十二條により、北海道住民投票によつてその過半数の同意を得なければこれを制定することができませんので、この修正をなさんとするのであります。附則第一項中の実施期日「昭和二十六年七月一日」を「昭和二十七年四月一日」に改めんといたしますのは、実施期日が七月一日では、それまでに北海道において住民投票をなすべき時間的余裕がありませんので、来年四月一日とするという技術的な理由であります。戰後、新日本建設の熱意に燃えて、三十世紀的な民主主義の原則の上に、新たに日本国民の総意によつて作られた日本国憲法の中に、特に「地方自治」の章を設け、その最後の條文である第九十五條において、地方特別法或いは地方自治特別法制定のためには住民投票を要すると謳つた意義につきましては、今更私が説明するまでもないと考えますけれども、提案者である政府においては、故意に忘れ去つたのか、目と耳を覆うているがごとくでありますから、改めて議員諸氏のみならず我々の代表する全国民の記憶を喚起したいのであります。我が日本の近代国家は、明治維新後先ず藩閥政府を中心として出発し、官僚或いは軍閥による絶対専制政治の下に、資本主義の後進性を取戻すべくあらゆる犠牲を拂つて強行されて参りました。ために、強い中央集権的な制度をとつて参り、明治二十二年、市制、町村制が実施せられ、翌二十三年府県制が施行せられました後も、地方自治は名目と形骸にとどまり、特に都道府県のごとき、いわば官僚的中央集権国家の出先機関的な性格を多分に持ち、その長の名前も地方長官と呼ばれたことは、未だ国民の記憶に新たなとこころでございます。殊に満洲事変、日華事変勃発後は、軍閥と官僚によつてフアツシヨ的中央集権主義が漸次強化せられ、僅かな地方自治の実体も次第に奪われて参りました。即ち昭和十八年の地方自治制の改正により、地方自治は殆んど全く否定し去られ、地方行政は中央集権的官僚行政の一環となり終り、地方公共団体は軍閥官僚の方針を末端まで滲透させるための一手段と化し去つたのであります。かように地方自治が殆んど完全に蹂躪し去られた理由の一半は、我が国の国民の間における民主主義の未熟不徹底にもありましたが、他の一半は地方自治が憲法上保障せられていなかつた点にあつたのであります。こういう過去の失敗の経験にも鑑みまして、新憲法は特に地方自治の一章を設けて地方自治を確保せんとしているのであります。この新憲法の精神は、新憲法制定後の一切の法令の制定改廃、あらゆる制度と機構の新設変更によつて貫かれて参りました。地方自治法の制定、警察法、教育委員会法、或いは地方財政法、地方財政平衡交付金法の制定、地方税法の全面的改正等がこれであり、これらの法律に基く各種の委員会はこのための制定であります。最近のシヤウプ勧告に基く行政事務の再配分のための地方行政調査委員会議設置のごときもその一つであります。憲法第九十五條は、かかる地方自治確保のために、立法権の恣意による地方自治の侵害に対する保障を憲法上與えたものであります。この憲法第九十五條によつて地方特別法による自治権の不当なる侵害に対する保障を憲法上確立するの制度は、法制意見局長官佐藤達夫氏、或いは衆議院法制局長入江俊郎氏寺によれば、過去における英米殊にアメリカの苦しい経験を他山の石としてできたもののようであります。その詳細は、佐藤、入江氏等の論述に持つとして、ここでは佐藤法制意見局長官の記述の中で参考になる一点、即ちニユーヨーク市その他セントルイス、シカゴ等の諸市において、州の特別法による自治制への干渉が「党派的利益が動機となつているものが少くなく、市においては少数勢力であるために思うように行かないが、州議会では多数を占めているというような政党が、州の立法によつて市政を自党に有利に動かそうという党略の手段として用いられたなどということも言われている。」と書かれているのでありますが、まさに他山の石であります。更に、以上の諸氏のほか、この地方特別法について触れたすべての人たちが紹介されております一九二一年のアメリカ都市連盟の総会で採択せられました州模範憲法第七十九條の「都市及び村落の政治、組織に影響する法律は、この法律を成る都市又は村落に施行するには、その地方の選挙人に付議し、その投票の多数決による賛成を得なければならぬという條件を以つてのみ制定せられる。」ついででありますが、佐藤氏の訳では、「都市及び村の組織及び政治に影響する」となつておりますので、「政治組織」ではなくして「政治及び組織」であることは明白であります。この「都市及び村落の政治及び組織に影響する」という表現は、日本国憲法第九十五條の「一の地方公共団体のみに適用される特別法」の解釈というか、真の意味を把握するについて、重大な鍵を提供するものとして、特に紹介して置きたいと考える次第であります。なお、この際、入江衆議院法制局長の明快な説明を二三附加えて置きたいと思うのであります。即ち入江氏によれば、「地方公共団体の基本法の制定については、でき得る限り当該地方住民の意思を尊重しようとする買主政治の具現は、最もよくアメリカに見られるところであり、そのホーム・ルール・チヤーター・システムのごときは、最も徹底したものである」云々。「特別法というのは通常いう一般法に対する特別法というような広義のものではなく、地方公共団体の組織及び運営に関する事項につき、一又は二以上の特定の地方公共団体につき、專らそれにのみ適用ある法律として基本原則を創設し、又はすでに存する一般的基本原則を排除した特殊の基本原則を規定するというような、特別な法律意味するものと解したい。」又「憲法第九十五條の規定の置かれたゆえんのものは……地方公共団体の個性の尊重ということであつて……特定の地方公共団体につき一般に適用せられる法律の持つ基本原則と異なるものを規定して適用するということはその当該団体が特に他と異なつた取扱を受けることになるのであつて……地方自治の本旨(憲法第九十二條)から言えば、すべて地方公共団体はその団体としての個性が尊重せらるべきであるから、まさにその趣旨において憲法第九十五條が設けられたのであろう……。」ここに入江氏が言われる一般法というのは地方自治法のことであり、北海道開発法の一部改正法が、この地方自治法により一般地方公共団体即ち都府県に適用される基本原則と異なるものを適用することによつて北海道という一の地方公共団体が、その組織及び運営に関する事項につき他と異なつた取扱を受けるか否か、北海道という特定の地方公共団体の個性が尊重せられるか否かであります。そして入江氏は「憲法第九十五條の特別法と考うべきものを挙げれば、若し将来東京都法又は北海道法というようなものが制定されて、地方自治法の基本原則と別に法制が立てられるとすれば、それは明らかにここにいう地方自治特別法である」と言われたのであります。然るに、ここに論議の対象となつております北海道開発法の一部を改正する法律案は、第一に、憲法の地方自治精神を蹂躪し、新憲法制定後の一切の地方自治強化の方向を逆転後退せしめんとするものであります。北海道においては少数勢力であるために思うように行かないから、国会で多数を占めている政党が、国会の立法によつて北海道政を自党に有利に動かそうとする党略の手段として用いんとするものでありますと共に、(「ノーノー」「独断」と呼ぶ者あり)最も民主化された段階においても、なお、民主化されずに残つた特権的一部官僚が、反動化した資本家代表と結託して自治体を骨抜きにし、これを官僚的中央集権主義の出先機関とせんとする陰謀の第一の現われであります。このことは、現在行われておる行政事務再配分のための行政調査委員会議の調査が、シヤウプ使節団の勧告に基き「地方自治を拡充強化して国政の民主化を推進する」という見地からなされ、勧告の第三原則は、これをもつとはつきりと「地方自治のためにそれぞれの事務は適当な最低段階の行政機関に與えられるであろう……中央政府は地方の指揮下では有効に処理できない事務だけを引受けることになるであろう。」と謳い、このことを原龍之助氏は、地方公共団体の事務に属すべきものとして、住民の福祉を助長し、住民の生活に直接利害関係を持つ事務、例えば地方公共団体の組織及び財政自治体警察、消防等々を挙げ、「この種の事務のうち現在すでに地方公共団体の自治事務として自主的にこれを処理することのできるものとされているものもあるが、取分け河川、道路、土木、建築、保健、衛生、民生などの事務は、現行法上、団体委任又は機関委任の形式で処理されているものが多い。従つて現行法上委任事務にされているものは、すべて固有事務と同様、地方公共団体の自治事務に再配分さるべきである。又機関委任事務とされているものについては、それが国と地方の双方に利害関係を持つ事務であることに鑑み、これを地方公共団体の事務として、地方住民の創意と責任において自主的に処理せしめると共に、国は或いは立法によつて一定の基準を設定し、或いは司法によつて事後の矯正監督を行うほか、国家的見地から総合的施策を必要とする限度において、企画、立案、勧告、助言などをなすにとどむべきである。……言い換えれば、国が施策経営の責任を負い、地方団体は管理執行の責任を負うというような仕方で、合理的に事務の配分を行うこととするのが妥当であろう。」と言い、行政調査委員会議による行政事務再配分に関する勧告総論第二、「国と地方公共団体との関係」の二、(二)1機関委任の項では「国の責任とされた事務を地方公共団体の機関に委任して行うことは極力避けるべきであるが、ただ三の2において述べるような場合には認められてよい」として、「地方公共団体の事務と密接な関係を有するものについては、地方行政の円滑なる運営住民の利便等を考慮し、出先機関を設けないで地方公共団体に委任して行うことが望ましい。」としております。北海道開発法の一部改正法は、これとは逆に、従来、北海道知事に委任せられて来た権限と事務とを国に取上げんとするものであります。即ちこれは新憲法制定以来の地方自治強化促進の方向とは逆であつて、新憲法の精神に違反するものであります。第二に、憲法第九十五條は、地方自治に関する第九十二條乃至第九十四條の規定を受けて規定せられたものでありまして、第九十四條は、地方公共団体の権能として、その財産の管理、事務の処理、行政の執行及び條例の制定を例示的に列挙しておりますが、前の三つは地方公共団体の行政権を地方団体の固有のものとして憲法上これを保障し、法律を以てしてはこれを容易に奪うことが許されないこととなつた次第であります。而もこういう事務は、地方自治法の定める固有事務、委任事務、行政事務のすべてに亘り、公の権力の行使の性質を持つものを除いたものが含まれるといたしまするならば、この憲法第九十四條を受けて規定せられました第九十五條の「一の地方公共団体のみに適用される特別法」は、その内容が、固有事務、委任事務、行政事務のいずれに関するかは問うところではありません。従来北海道知事に委任せられて来た事務或いは権能を、それが国費で負担せられて来たからと言い、或いは何ら法的の根拠のない直轄事業の名の下に、国に坂上げるということは、明らかに憲法第九十五條違反であります。(拍手)第三に、「一の地方公共団体に適用される特別法」というのは、先に述べましたように、沿革的、淵由的に見て、特定の地方公共団体の組織及び運営に影響ある法律意味だといたしますならば、この北海道開発注の一部改正法律によつて改廃を余儀なくされる法令及び地方公共団体の諸法規としては、地方自治施行規程、地方財政施行令、国庫負担地方職員に関する政令のほか、北海道道路令、北海道処務規程、北海道支庁規則、北海道職員定数條例等二十一が挙げられているのでありますが、このことを以てしても、如何に北海道開発法の一部を改正する法律案北海道という特定の地方公共団体の組織及び運営に影響あるかは明らかであります。この点に関し北海道側ではこう言つておるのであります。即ち「今回の改正法律案は、政府がただにその出先機関を設けて国の事務を処理するという單なる形式的問題でなく、開道以来八十年間に亘り北海道の首長に與えられた開発事務処理の権能を奪い、その行政執行方式に一大変革をもたらすものであるばかりでなく、開発事業そのものを重要部門とする市町村の行政にも至大の影響を與える極めて重要事項でありまして、而も道路法、河川法、港湾法等の諸法規に基く他府県の公共団体に與えられた権能についても、北海道のみに限り、直轄事業なる名の下に、国の出先機関に包括的に奪うものでありまして、明らかに自治権侵害の結果を生じ、又地方自治法附則第八條の規定内容を変更して、公共団体に勤務する職員の大半を国の出先機関に移す結果、自治団体たる北海道の諸法規の変更を余儀なからしむるものであります。    〔議長退席、副議長着席〕 故に北海道を対象とする法律であることは全く疑問の余地はなく、憲法第九十五條の「一の地方公共団体のみに適用される特別法」に該当し、当然住民投票に付すべき事項であります。若しもこれを以て公共団体たる北海道関係なきものとして処理せられるならば、憲法第九十五條の規定は死文に化すると断ぜざるを得ないのであります」と、こう言つておるのでありまして、全くその通りだと信ずるのであります。北海道開発法の一部改正法律案が憲法第九十五條に牴触する理由につきましては以上述べた通りでありますが、住民投票の手続は、地方自治法第二百六十一條、第二百六十二條によつてなされますので問題はございませんが、或いはこの住民投票に付すべしとする一カ條を挿入する本修正案は、北海道開発法の一部川改正案の他の全部の承認の上になされるものであるかの誤解に基く愚論をなす者がありますが、御存じのように憲法第九十五條には「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体住民投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」と明記してあるのでありまして、北海道開発法の一部を改正する法律案に関する国会の議決全部が停止條件附のものとなつて北海道住民投票において過半数の同意が得られなければ法律として有効に成立しないのでありますから、念のため申添えて置きます。なお、又、かかる特別法が国会で最後の可決がなされますると、かような「住民投票に付するものとする」という條文があるなしにかかわらず、当然衆議院議長は、当該法律を添えてその旨を内閣総理大臣に通知しなければならないものと信ずるものであります。「北海道住民投票に付するものとする」という一項は、国会の解釈を確定するため念のため挿入せんとするものであります。この問題の最終的な解釈は最高裁判所においてなされるでありましようし、又その手続もなされると存ずるのでありますが、願わくは最高裁判所の裁判を待つまでもなく、国会がみずから持つております憲法の解釈権に基いて公正なる判断をなす意味において、本修正案提出する次第であります。週間朝日六月十日号には、この問題について「仮に自由党政府が多数党の力を発揮して、議会の本会議委員会で所志を貫徹したところで、それが憲法の明文に抵触する疑いがあれば、当然、現地の人民投票問題が起る可能性があり、結局、事柄は最高裁判所にま、で持ち込まれて黒白を明らかにする必要が生じないとも限らない。憲法の嚴然と定めるところを尊重する責任は、むしろ多数党であればあるだけ重いくらいのものである。」と論じておりますが、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)私は新憲法が第一段の試煉に遭遇した今日、民主憲法を守るべき国民の代表である国会、国権の最高機関である国会、而も一その第二院として、衆灘院における多数党の横暴と間違いを是正すべき使命を持つ抑制機関たる参議院が、政府及び一部官僚の一方的解釈に従うのではなく、よく新憲法の精神、真精神を了解し、憲法第九十五條の正しい解釈の上に立つて地方自治を擁護するため、住民投票に付すべきものとする本修正案に御賛同賜わらんことを(「反対」と呼ぶ者あり)切にお願いして、趣旨弁明とする次第であります。(拍手
  44. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。若木勝藏君。    〔若木勝藏君登壇拍手
  45. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私は日本社会党を代表いたしまして、只今上程されました北海道開発法の一部を改正する法律案修正案賛成原案に反対の意思を表明するものであります。本法案は、その提出理由にも明らかなように、北海道開発に関する直轄事業を国が道知事の手から回收して、八十年来、北海道庁長官、或いは北海道知事の下に一元化されておつた開発行政と自治行政との間に一大変革を與えようとする、まさに行政事務再配分に関する重大なものであります。この重要法案が五月二十五日という第十国会の会期末に突如として衆議院に提案されまして、二十六日に審議に入り、三十八日に本会議を打ち上げ、会期五日間を延長して、全くフアツシヨ掛値を駈け足するがごとき様相で参議院に送付されて参つたのであります。この審議過程は、よくこの法案の立案事情、その性格等すべてを如実に現わしていると言つてもよいでありましよう。私は今これを分析して所論を明らかにしたいと思います。第一は、法を制定する手続が民主的でないということであります。即ち北海道の行政から開発行政を分離しようとすることは、北海道民の利害得失に影響するところが大きいことは明らかなことであるのであります。でありまするからして、法の立案に当つて、先ず住民の意向を十分に聞かなければならないのに、政府は一向その方法をとらないのみか、知事選挙に敗れた後に突如として国会提出したため、北海道民は全く驚愕のほかなかつたのであります。のみならず最も関係深い道知事に対しても何らの話合いもなく、又北海道開発審議会の議決に諮うところもなく、事後に了解を求めるというような態度は、甚だ遺憾なことであると思うのであります。更に御承知通り地方行政調査委員会議では、地方における国と地方の行政事務の再配分のために昨年十二月に政府及び国会に勧告をしており、特に北海道と東京都に対しては、特殊の事情があるからこれを延ばし、この六月には北海道実情を十分調査した上で結論を出すということになつているにもかかわらず、政府機関であるところのこの地方行政調査委員会議の答申も待たずして政府が一方的な措置に出たり、又この開発事業の分割によつて北海道財政に経費増額等何らの影響なしと強弁して、地方財政委員会の意見を求めようとしなかつたのは、全く行政民主化のために設置された政府自体の機関を無視したるものであり、政府の赤民主的な反動性を暴露したものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)第二は、この法律施行された場合には、北海道総合開発の意義を失うと同時に、地方自治の発達を妨げるものであるということであります。元来、北海道総合開発ということは、どんなことを意図しているものであるか。これは誠に重要なことでありまして、この総合開発の意義が開発のすべてを決定するものであるといつても過言でないと思うのであります。これは先日この法案の連合審査におきまして、田中北海道知事がその参考意見として次のように述べられているところを見まするというと、こうなつておるのであります。「戰後の北海道の総合開発は、国家的重要な使命を達成すると共に、北方地域社会の経済文化の後進性を克服して、住民福祉の増進と安寧水準の向上をその基本目標とすべきものであるのであります。従いまして、総合開発の基本目標を遂行するためには、北海道に賦存する農林、水、鉱等、豊富な未開発資源を有機的に開発すると共に、これを原始産業の振興を基盤とする高度の第二次産業を確立しつつ、以て日本経済復興に寄與し、なお、併せて人口問題を解決する有力な環境たらしめんとするにあるのであります。同時に、道民生活文化の向上を図り、更に又道及び市町村自治体の根基を培つて、国力の伸張、国運の進展に寄與するよう、総合的な開発の実を挙げなければならないことが強く要請されるのであります。従つて当面の北海道総合開発のあり方は、総合といいましても、單にいわば自然科学的な資源の有機的総合にとどめることなく、これより深く、文化科学的な、いわば住民文化の立体的自治行政の面との総合にまで結合し、TVAにおけるエンソールの言われておるように、資源の開発は自然自体の一体性によつて支配されなければならないということと、民衆が開発に積極的に参加しなければならないということの二つは、北海道開発の場合においても基本理念として堅持すべきものであり、又これなくしては真の北海道総合開発の実現は到底不可能と信ずるのであります。」こうなつておるのでありまして、誠に私は明快な所論であると思うのであります。面して北海道の開発は、明治二年の開拓使設置以来八十年を経過し、その間いろいろと消長変遷はありましたが、国策の意図するところと北海道民の意思とが堅く結びついて、又行政面について見ましても、北海道庁長官の下に、国の行政と自治行政とが緊密な連繋を保つて、一元的総合的に運営され、民選知事になりましてもそのまま継承され、今日に至つておるのであります。換言いたしますれば、国の仕事と自治体の仕事、或いは民間の仕事が、北海道の全地域に亘つて、開発という点においては誠に調和されているのであります。即ち、或いは民間において鉱山の発掘を開始し、自治体においてこれに必要な病院、学校を設置し、国及び北海道において道路の新設を図つてやるごときは、その一例でありまするが、かような工合に、民間、自治体、国が相互に相協力し、その密接不離の関係を切ることなく進んで来ておるのであつて、この中心となり中核としての使命を果して来たのは北海道庁であり、首長が官選か公選に変つても引続きこの大原則に変化がなく、八十年前全く未開の地であつた北海道が、今や人口四百三十万を算し、農、畜、水、林等の生産額も全国第一位に位する今日の発展を築き、優秀な開発の成果を收めておることは、全国民のひとしく認めておるところでありまして、現に支障なく事業の遂行が行われておるのであります。然るにです。本法律施行されることになりますれば、開発事業関係の事務が、国と北海道とに両断、分離されまして、道の各地域において国の行政と自治行政が二重行政の姿を現わしまして、前に述べました北海道八十年の歴史ある開発行政と自治行政の調和点が破壊されてしまうのであります。と同時に、開発そのものについても、いわゆる総合開発の真の姿を失い、北海道における国の公共事業としての意味しか持たない。而もその事務が農林、運輸、建設各省所管として、ばらばらな形で、極めて殺風景なものとして行われ、国、道、民間一体の北海道総合開発の躍如たる姿はいずこにも見ることができないのでございます。政府は何の必要があつて、再三会期の延長までやつて焦躁のうちにかかる改悪をやろうとするのか、私はその理由の発見に苦しまざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)増田建設大臣は委員会でしばしば、国の直轄事業は国がやるのが当り前で、(「当然だ」と呼ぶ者あり)そうでなくては責任の明確化が期せられない、(「その通り」と呼ぶ者あり)こう言つておるのでありますが、それは重なる私はこじつけの議論に過ぎないのでありまして、これは全く事務の分割というものを、経費の支弁の面、いわゆる金の面からのみ考えまして、その事業内容、行政の運営の面を没却した浅薄なる考え方であると言わざるを得ないのであります。(拍手)又責任云々、そういう責任のない者に、はつきりしない者にそういう事務を預けてたまるか、こういうふうなことをよく言われるのでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)この地方自治上、主務大臣の知事に対する国の委任事務の監督権によつて極めて明瞭で、国会に対しては当然主務大臣が責任を負うべきものであり、何ら疑問の余地がないのであります。(「その通り」「その意味とは違う」と呼ぶ者あり)元来、開発行政は地方自治事務とは密接不離の関係にあり、その本質においては、たとえ国家的見地から必要とする事業であつても、開発はそれ自身地方の開発発展をもたらし、住民の利害に深い関係を伴うものでありまするから、自治事務の性格を持つているものであつて、本質的に何らの差異がないものであることは、神戸地方行政調査委員会議長説明によつて窺い得るものでありまして、開拓の例を見ても、森林を開放し、入植地を選定し、(「時間々々」と呼ぶ者あり)道路、橋梁を造り、入植者を受入れ、学校、診療所を造り、営農を指導し、生活を援助する仕事は一貫しておるものでありますが、これらの事業には多くの経費が必要であつて、未開発地の自治体ではなかなか行い得ないのであります。そこで国が国費を投じて基本的な施設をする事業を行うことになるわけでありまするが、これは要するに財政援助の一形態である。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)それを国みずからの手で行わなければならないという理由にはならないのであります。(「なる」と呼ぶ者あり)それよりも、むしろ、かような一貫した作業は北海道のような自治体に一貫して行わせるのが合理的であり、能率から言つても経費の面から言つても、一部の仕事を国が切り離して行うよりは遙かに優つておるのであります。而も北海道で殆んど開道以東やつておるやり方を急に改め、一刀両断、北海道行政を分離することは、北海道の開拓の歴史に一大変革をもたらすものであり、地方自治の確立を破滅に導くものと言わなければなりません。(「反対」と呼ぶ者あり)第三は、(「又か」と呼ぶ者あり)開発行政の分離は道の経費負担の増加をなす、即ち道財政を危殆に瀕せしめるということであります。    〔副議長退席議長着席政府は本法案が成立しても、建物を貸し、或いは機械も貸すのであるから、北海道財政には何ら影響なく、一文も経費は殖えないとしばしば言明しておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)併しこれは先日田中北海道知事の参考意見にもあつたごとく、(「間違つておる」と呼ぶ者あり)実態に基いて検討して見れば、政府の考えておるような簡單なものではないことが明らかである。北海道の開発は自治体行政運営の実態と密接な関連を有しており、過去幾十年一本建て運営の妙味を発揮して、最小限度の機構と最低の経費を以て最も効率的に事業を遂行して来たのであります。これが分離された場合は、田中北海道知事の言われるように、出先機関とは別個に、道においても開拓部長、土木部長も新たに置かなければならず、人手も殖え、建物も必要となり、又事業最盛期の短かい北海道では、それぞれの事業の都合から機械の貸借等は到底満足に行くものではなく、ために事業に非常なロスの生ずること等から考えまして、道の経費の増加は定員増や或いは施設の上から必至のものであることは、常識を以てしても容易に判断し得るところであります。不幸にしてこの法案が成立した場合には、道の財政にかかる重圧や道民の負担過重等による道政の困難が予想されるのでありまするが、かかる場合が生じたときにあつては、その責任は挙げて政府にあることを強く表明するものであります。(「知事の無能」と呼ぶ者あり)政府は何故にかくのごとくわかり切つたことに対して強硬に経費の増加を否認しておるのであるか。こういうことを考えますると、これは幾多の質疑応答によつて看取されるところであるのでありまするが、増加を認めれば財政法の二十一條に牴触することになるので、審議における委員の質問にも逃げの一手を以て来ておるのでありまして、政府の法を軽視するところの態度には今後といえども断乎追及の手を緩めないものであることを表明するものであります。第四には、開発行政の分離は、自治体の権能を著しく制限し、北海道自治行政を破滅に陷れるものであるということであります。(「大げさ過ぎる」と呼ぶ者あり)これを道路事業を例にとつて見まするならば、都道府県知事が道路法に基き国の事務委任を受け道路管理者であるという制度上、道知事都道府県知事との間には何らの相違もないのでありますが、経費については北海道北海道道路令の特例がありまして、国が多額の負担をいたしておるのであります。河川法、港湾法における特例も同様でありまして、故に、今に、今出先機関を置き、北海道開発費を單に予算上の直轄事業と補助事業とに分割するとします制度上、一般に府県知事の委任事務とされておるものも北海道に限つては出先機関に移ることになつて地方自治体の権能に甚だしい制約を加えるということになり、政府は本法案を以て北海道を府県並みにするのだということを頻りに言つておるのでありますが、実際はこのように矛盾するものでありまして、地方自治確立への理想に到達せんがために努力しつつあるものに対し、却つてこれに重圧を加えるに等しいもので、断じて容認できないものであります。これはひとり北海道のみにとどまらず、各地とも(「上手に読め」と呼ぶ者あり)政府に強い反省を要望していることは、去る五月二十五日の全国知事会議における(「趣旨が違う」と呼ぶ者あり)地方自治の確立に関する声明書によつても明らかであります。(「朗読者」「もう乱れて来た」と呼ぶ者あり)そのときの地方自治の確立に関する声明書を読み上げて見ます。趣旨が違つておると言われますから……。  地方自治の本旨は(「わかつた」と呼ぶ者あり)憲法の條章により巖として保証せられ、地方自治に関する三法律とともに我国地方自治の根幹をなすものである。謂うまでもなく自治の精神は民主思想の根源をなすもので、生々脈々たる政治形態は自治の政治を除いてはあり得ないと深く確信するものである。  然るに最近における政府の施策は、地方財政委員会及び地方行政調査委員会議等の勧告にもかかわらず、社会福祉事業法その他地方に関する立法において、稍々もすれば中央集権的な色彩が見受けられる。のみならず開発事業その他に関し政府の地方出先機関を強化せんとするが如き傾向のあることは誠に吾等の諒解に苦しむところである。(「頭が悪い」と呼ぶ者あり)  講和体制確立の一環として、国内制度の再検討を要求する声が挙つて居る際、政府は深くこの点に留意し、苟くもその能率化、合理化の必要なるに藉口して、漸く確立の緒についた地方自治の実現を遅延せしむるが如きことのない様、愼重な考慮を加えられたい。  全くこれは趣旨が変つておらないのであります。(「切ないな」と呼ぶ者あり)今や北海道におきましては、この五月の十七日における北海道総合開発委員会の決議を見ましても、又五月二十四日における出先機関設置反対道民大会の決議を見ましても、更に有力な新聞の論調に照らしても、又幾百に上るところの陳情、電報、葉書を見ましても、(「意見を述べろ」と呼ぶ者あり)輿論は、この民主主義確立の基盤をなす地方自治団体の自律性に甚だしい圧迫を加え、過去幾十年北海道庁を中心として、自治体、民間の渾然融合して運営よろしきを得て来た(「然り然り」と呼ぶ者あり)北海道の開発行政を、自治体の手から、否、道民の手からもぎとつて中央に集約し、資本主義の強化を図らんとする反動政策の代表とも言うべきところの本法案に、絶対反対するところの空気が澎湃として起つておるのであります。私は以上所論を述べまして、本法案修正案賛成し、原案に反対するものであります。以上。(拍手
  46. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀末治君。    〔堀末治君登壇拍手
  47. 堀末治

    ○堀末治君 私は自由党を代表いたしまして、只今提案となりました北海道開発法の一部を改正する法律案政府原案賛成し、社会党修正案に反対するものでございます。(拍手)本法律案は、一言にして申せば、頗る簡單明瞭な法律案であると思うのであります。即ち政府提案理由にもあります通り北海道の総合開発を強力に推進するため、その開発に関する公共事業費のうち、国の行うところの直轄事業を直接国が執行するようにするために、現地に執行機関として北海道開発局を設けようとするものであります。而してその執行機関は、北海道開発庁の支分部局として設置することとし、且つ農林省、運輸省及び建設省の各大臣は、それぞれその所掌事務についてその機関の長を直接指揮監督するものといたしておるのであります。戰後、北海道は、我が国国民経済の復興、人口問題の解決等、我が国全体の立場において占むる地位並びにその特殊性に鑑み、国策として北海道に存在する豊富なる未開発資源を急速且つ積極的に開発すべく、昨年五月第七国会において北海道開発法の制定を見たところであります。(「その通り」「咽喉を冷やせ」頭を冷やせ「涼しい声でやつて下さい」「論旨は立派だ」と呼ぶ者あり)この開発法に基いて総合開発計画の樹立機関として北海道開発庁が総理府の外局として設置せられたことも御承知通りであります。而してこれが現地執行機関としては、国家公務員たる地方事務官、地方技官約三千二百名を配置して、北海道知事をしてその指揮監督に任ぜしめておるのでありますが、申すまでもなく北海道における公共事業費の割合は国の直轄部分が八〇%の多額を占めておるのであります。而してこれが使用実施は直接国会に対して責任を有せざる民間知事によつて行われるという頗る変則的な形式をとつているのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)要するに本法案趣旨は、この点を改正して本然の姿に是正せんとするものであります。(「正直に言え」と呼ぶ者あり、拍手)これは正直だ。(「知事を取られたじやないか」と呼ぶ者あり)これは君たちの言うことで、私はそういうことを言わん。(「ひがむな」と呼ぶ者あり)我々北海道選出議員としては、(「ひがむな」と呼ぶ者あり)北海道事情に精通せる立場上、本開発法の制定に当つて、(発言する者多し、「黙れ」と呼ぶ者あり)総合開発事業は飽くまでも開発庁支局を現地に設置して、自治行政と官治行政とを明確に区分し、その責任の所在を明瞭ならしむると共に、一元的に且つ強力に推進するにあらざれば、到底所期の目的を達し得ないことを大いに強調したのでありまするが(「その通り」と呼ぶ者あり)当時の客観情勢は遂にこの希望を実現せしむるに至らず、頗る微温的な企画官庁たる開発庁の設置にとどまつたことは、まさに仏作つて魂を入れざるそしりを免かれないのでありまして、我が国会議員として、はた又北海道民として、非常に遺憾に思つたところであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)今や講和を間近に控え、我が国自立経済の要請極めて嚴しきものあるときに当つて北海道開発の重要性はますますその度を加えて行く段階にあると申さればなりません。従つて国費に属する直轄事業は多々ますます増加拡充せられることは必至でありましよう。即ち北海道の開発こそは国家の総力を挙げて解決すべき問題であり、国民的事業として、国がその計画から事業執行に至るまで一貫して名実共にその責任を負うことが、全日本の再建はもとより、北海道民生活の飛躍的向上のため絶対に必要であると信ずるものであります。(「ヒヤヒヤ」「地方自治の侵害だ」と呼ぶ者あり)然るに政府においては、過ぐる一年の経験に徴して、従来のごとき変則的行政組織を以てしては、到底所期の目的を達成することの至難であることを認め、今回この法案提出に相成りましたことは、我ら年来の主張が達せられたものであり、いわゆる北海道開発法に対する画龍点睛とでも称すべきものでありましよう。(「反動」「水を飲みなさい」「御同慶に堪えない」と呼ぶ者あり)我我北海道重要性を知る者ことごとく双手を挙げて賛成するところであります。(拍手)  以上申述べました通り、本法案の持つ性質は頗る單純明瞭であります。然るにもかかわらず、今国会においては、これを重大視し、審議に当つて国会初めての十に亘る常任委員会の連合審査を行い、而も委員諸君は、連日深夜に及ぶという、曾つて見ざる熱烈なる審議振りを展開せられましたことは、如何に各員が北海道総合開発に対し深甚なる関心を持たれているかという証左でありまして、北海道民といたしましては深く感謝の意を表するものであります。(拍手)審議の過程において、感情的に且つ頑強に反対の気勢を示された社会党の諸君も、審議の進むにつれて、政府の意図する本案趣旨をよく了解せられ、原則的に賛成せられ、僅かに施行期日の修正のみを要求せらるる温和なる態度に出でられたのであります。併しながら北海道の開発が必要であればあるほど、速かに本案を実施し、機構の整備と編成期を間近にして予算の充実を期する要があるのであります。私は社会党の諸君が原案のより妥当なることを認識されまして、欣然原案賛成せられんことを希望してやまないものであります。(「醉つぱらつている」「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)  私はここに政府に対し若干の希望を申述べて、私の演説を終りたいと思います。  先ず第一に、この法案地方自治権の侵害であると主張せらるる現知事田中君の立場であります。私は決してさようなことがないばかりでなく、むしろシヤウプ勧告の原則を具現して、国と地方との行政区分の責任所在を明確にし、地方自治の確立を目途としたものであることを固く信ずるものであります。政府は今後の施策において、知事はもとより、道民に対し、いよいよ地方自治真義を具現し、田中知事の危惧が全く誤解に基くものであることを明らかにするよう十分の配慮を拂うべきであります。  第二には、本法施行の曉には、道費の増嵩を来たし、道民の負担を加重するという議論が、全く反対せんがための独断であるということを実行の上に明らかにせられたいことであります。(拍手北海道は開道八十年の歴史を持つことは、先ほども若木議員から御指摘されたのでございますが、多くの市町村は僅かに三四十年の開拓に過ぎません。而も地理的、気候的に天恵に浴すること薄く、地方自治の基盤は脆弱極まるものであります。殊にソ通によつて不法にも占拠せられたる根室国歯舞諸島との間は僅かに三千四百メートルを隔てるばかりで、一千七百メートルを以て我が国境としている状態であります。この狭隘なる領海にて生計を立てている沿岸漁民の生活の不安困窮は実に言語に絶するものがあります。又最近に至つては、ソ連製機雷が津軽海峡を脅かして、夜間の舟行を中止するという由々しき事態に逢着しておるのであります。従つて道途の噂に、ソ連と結んで北海道を独立せしむべしなどという過激の言を耳にするのであります。私は縁あつて父祖の代より北海道に住み、北海道に生れ、北海道に育ち、北海道に事業をして、やがて北海道の土になることを念願しておるのであります。従つて国家北海道の開発に絶大なる努力を拂われ、北海道民をして物心共に安定せしめ、かりそめにも独立論のごときが流布さるる余地をなからしめたいのであります。これはただに私一人の願望であるばかりでなく、道民四百三十万のひとしく念願するところと推察するのであります。何とぞこれらの事情を篤と考慮せられて、今日以上地方税の増徴を見るがごときことなからしめるは勿論、平衡交付金の配分に特別のフアクターを加えられたく、又地方起債の枠の増加及び国庫補助金の増額等、道財政の拡充強化を図ると共に、国の開発行政と道の自治行政との調整連絡に万全の措置を講ぜられたいと思うのであります。(「法律案趣旨は違うぞ」「地方税増徴だぞ、北海道は」と呼ぶ者あり)それは全国的だ。北海道ばかりでない。  最後に、今や北海道は各種事業の施行の最盛期であるが故に、その引継ぎ切換えに対し、いささかの事務、事業に澁滞、遅延を来たさないよう、現地の公務員諸君を督励監督して、万遺漏なきを期せられたいことであります。なお、本法案成立の曉におきましては、田中知事を初め、その配下に属する道公務員諸君においても、感情にとらわれることなく、よく国家の方針を体して、いわゆるフアインプレーの精神を発揮して、本法の遂行に協力して、北海道の開発に寄與せられんことを切望いたしてやまない次第であります。  以上を以て本員の賛成討論を終了いたします。何とぞ満堂の御賛成あらんことを切望してやまない次第であります。(拍手、「増田君よう聞いておつたな」と呼ぶ者あり)
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 千葉信君。    〔千葉信君登壇拍手
  49. 千葉信

    ○千葉信君 私は労農党を代表して、北海道開発法の一部を改正する法律案に反対をいたします。本法案は、仔細に検討いたしますると、形式上は一法律改正案に過ぎないのでありまするけれども、実質的には單に北海道総合開発事業の執行方式の変化にとどまらずして、実に北海道における行政機構を根抵より覆えすものと断ぜざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そもそも北海道におきましては、開発計画の進展と共に自治体が発達して来たものであり、今日においても依然として自治体たる北海道及び道内市町村行政の重要部分は開発計画の推進にあるのでありまして、これを除外したところの北海道における自治行政は全く考えられないのであります。而も開発計画の実施に基く移民の入植に当つては、道路、橋梁、土地改良等の基礎的建設工事のほかに、これと並んで学校、診療所の設置、生活保護関係費用の支出、産業技術の指導、産業奬励費の交付等、万般の措置が必要であり、このことなくしては北海道開発そのものもその成果を期待し得ないのであります。特に北海道における移住当初の住民は極めて担税力が弱く、これら移住民に対する大半の保護施策は、北海道及び市町村費用を以て賄われていたのであります。開道八十年の間、北海道においては、国策たる開発事業とその地域内における自治体との密接不可分の関係を断ち切ることなく、今日まで両者相共に生成発展し来たつたのであります。昭和二十二年地方自治施行に伴い、従来の官選知事は公選に変りましたが、その事務の範囲には殆んど変化なく、北海道開発事業は従来通り北海道に一任し、他の一般行政と有機的総合的に運営せられて参つたのであります。然るに、今回政府提案せられました北海道開発法一部改正案は、事実上、この歴史と伝統ある一元的開発方式を一方的に変革せしめようとするものであり、北海道住民は勿論、関係自治体にとつては、これほど重大な問題はなく、又その影響するところ、自治体にとつても、住民にとつても、極めて深刻なるものがあるのであります。ローマは一日にして成らなかつたごとくに、今日の北海道発展の蔭には、粒粒辛苦の先人の努力と、一元的な開発行政執行の結合に基く八十年の歴史と伝統が秘められているのであります。連合委員会において、委員諸君より、北海道にとつてかかる重要な問題を、何故地元側の意向も聞かず、又十分に審議する期間も與えないで、一方的な政府の意思のみによつて強行せんとするかという質問が再三あつたが、特に予算上、財政上、頗る広汎なる疑義が伏在するにもかかわらず、我が党の木村議員の質問のごときは、殆んどその時間は與えられずして審議が終了したという状態であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)而も、政府はかかる急激なる開発行政分離を強行することによつて挙げ得るプラス面を未だ具体的に示さないのでありまするが、今回の機械的分離は、却つてそのマイナス面の極めて大なるものがあると言わざるを得ないのであります。  即ちその第一点は、今回の出先機関設置に伴う行政費の増嵩についてであります。政府は、機構の分割に伴つて経済の増嵩を来たすことはない。従つて、地方負担の増加は到底考えられないなどと言つておられまするが、如何なる根拠に基いてそのようなことを言われるのか、甚だ了解に苦しむのであります。常識的に言いましても、役場を二つにした場合、町村長も、助役も、收入役も二重に必要になります。政府の案によりますれば、この出先機関は、局長官房、建設部等の五部を置くことになつておるのでありまするが、かかる二次的機構の膨脹は、当然、現場作業定員に影響を来たすことは明らかであります。それとも政府は、現在の国費は現場作業の実情に照らしてまだ余裕があるとでも考えておられるのか。機械器具等にしても、指揮系統を分割し、作業の実施を二元化した場合には、それぞれの作業所にそれ相当の設備を必要とすることはわかりきつた話であります。政府は、現在のままでやられると言われたり、又相互に融通し合えばよいと言われるが、一つの世帯を二つにして、果して毎日々々鍋釜を融通し合えるでありましようか。北海道庁では、この分割に伴つて、人件費の増加、現場事務所の設置、機械器具の設備等で、経常費、臨時費を含めて十四億余円を必要とすると言つておるのでありまするが、この事実を政府はどう見るか。いずれにせよ、この点は財政問題として極めて重大なる影響のある点でありまするから、十分調査してこれを明らかにし、これについての財源措置を明確にした上で改めて審議する必要があつたと思うのであります。  第二点は、開発行政を分離することによつて、行政執行が著しく非能率となり、複雑化することであります。北海道の開発は、政府提案理由にもありまする通り日本経済の再建、人口問題の解決を目的とするものでありまするが、その根柢は地域住民の生活文化の向上に置かなければならないと確信するものでありまして、道路、河川、港湾等は開発の重要な基礎施設でありまするが、開発の一部分に過ぎないのであります。いわゆる真の総合開発は、自治行政に属する産業、文化、厚生等の、あらゆる分野の発展向上を含む総合行政であつて、この理念に立脚してこそ、初めて日本経済再建への貢献も可能となり、又人口問題解決へも寄與し得ると考えるのであります。北海道は、過去八十年に亘り、かかる開発行政と自治行政とを、一元的、総合的に運営し来たつたものであつて総合的な地方行政庁として十分な組織と機能を備え、道民の信頼と協力の上に立つて、今日の成果を收め得たと考えられるのであります。然るに直轄事業を開発局において政府が直接施行することによつて、今まで密接な連繋の下に実施して参つた一貫性のある事業を分割施行することとなり、効率的な事業の実施を期待し得ないこととなるのであります。例えば開拓事業について申上げまするならば、開拓用地の取得は道開拓部において、取得された用地に対する開拓計画は開発局が施行し、開拓計画によつて決定した入植地の建設工事は、一部は道、一部を開発局、入植施設は再び道が施行するという、頗る錯綜繁雑極まる形態となり、今までのごとき有機的な事業の執行を阻害すること甚だしいものがあるのであります。  第三点は、本法施行の時期についてであります。先に各議員も触れましたけれども、北海道におきましては、大体におきまして四月末から十月末までが工事の最盛期でございます。その期間中にあつて、このような機構の大変革を強行するということは、広汎なる人事異動、これに伴う事務の再配分、庁舍、官公舎の移動、機械器具、物品の配置転換などを要するのでありまして、これが末端までの処理を完了するには恐らく数カ月を要し、その間、事業の円滑なる執行を停滞せしめ、経費投入の効率を著しく減殺せしむることは、常識的にも容易に判断し得ることでありまして、政府が何故に施行期日を七月一日とせねばならなかつたか、甚だ不審に堪えないのであります。  第四点は、事業内容より見たる出先機関設置の必要性の如何についてであります。現在実施している北海道開発費支弁の事業内容を見ますると、例えば道路については、国道の改修維持、開拓道路の新設改良、腐朽木造橋の架換等は、その主なるものであり、又河川においては、部分的な切換、掘鑿、堤防盛土、応急的な護岸工事等がその主なるもので、現在の道庁機構を以てしても何らの支障なく実施し得る程度のものであります。又北海道は、開道以来、歴史的にも制度上からも、一道一行政組織となつており、内地における地方建設局或いは農地事務局の実施しているような数府県に関連を持つ工事は全くないのでありまして、大規模にして高度の技術を必要とする工事等も殆んど見られないのでありますから、今急速に今回の開発局のごとき特殊な実施機関を設置する政府の意図は、全く納得し得ないものがあるのであります。  最後に申上げたいことは、本法案のあの非民主的な而も唐突な立案の政治的な意図でございます。委員会における答弁におきまして、過ぐる地方選挙の惨敗に対する感情的なものは持つておらない。こういうことは、これは増田建設大臣からもはつきりと申されたようであります。一部そういう感じを以つて眺めておりましたかたがたは、この答弁によつて恐らく誤解は解かれたと思います。併しながら今度の法案審議に当りまして、唐突に、非民主的に、一方的にこの法律を強行しようとして提案し、而も少い、ほんの少い時間で、━━━━━━━━━━━━━━━━これを一挙に通過させ、更に参議院におきましては会期延長……(「今の発言を取消せ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)会期延長を再三試み、而もかかる状態においてこの法律案を強行しようとするのでございますが、(「怒るな」と呼ぶ者あり)北海道におきましても、これらの状態に対しては頗る納得できない気持を持つておるのでありまして、一体、何が故にかかる横暴な、多数にものを言わせて通さなければならないかということについて、いろいろな非難なり、疑惑を持たれておるのであります。  而も昨年以来北海道におきましては、道庁が中心となつて鷹泊というところに頗る大きな工事を計画いたしまして、そのときに、北海道からこの問題を中央に折衝に参つた北海道の代表に対してどういう返事がなされたかといいますと、北海道に対して、その工事を我々は承認しよう。併しながらその承認には前提條件がある。建設大臣の指定するところの内地の事業者にその工事をやらせるならば賛成しよう。こういう返事があつたということが、はつきりと新聞にも出ておるのであります。(「不都合だ」と呼ぶ者あり)この考え方、この態度というものが、今度の開発法の一部修正関係がないとは国民は考えておらないのであります。(拍手)而もその話をされたところの建設大臣は、近く大自由党を背負つて幹事長になられようとしておるそうでございます。大政党の運営に如何に多くの政治資金が必要であるかということは、それは我々の常識的に考えられるところであります。(「何を言うか、早く本論に入れ」と呼ぶ者あり)これが本論であります。こういう点について北海道の道民諸君は、頗るこの法律の制定に対して疑惑の眼を持つておるということを申上げて、少くとも我々は、国会議員として、かかる風評なり、かかる疑惑に対して、無関心でいてはならないのであります。  以上繰返し申上げたごとく、本法律案は、北海道総合開発事業の実態とその重要性より、更に慎重審議を加うべき幾多の余地を存しておるのでありますから、私はこれらの諸点について盡し得る限りの手段と方法を盡して疑点を解明するため、本来ならば継続審議に附すべきで、その提案の時期からいつても当然その措置が必要だつたということを痛感するものであります。  以上を以て私の反対討論といたします。(拍手
  50. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 有馬英二君。    〔有馬英二君登壇拍手
  51. 有馬英二

    ○有馬英二君 私は只今議題となつております北海道開発法案の改正につきまして、原案賛成をいたし、且つ社会党修正案に反対するものであります。(「挨拶はそれでいいよ」と呼ぶ者あり)  先ほど来、堀君からも縷々申述べられた通りであり、この改正法律案は誠に時宜を得た法律案である。第一にその内容におきまして、又時期において、私はやはり適当だと思うのであります。先ほどから北海道選出の議員諸君によつて北海道開発の重要性について縷々お述べになりましたが、これは誠にその通りであります。八十年来我が北海道は、重要なる我が国の北地の鎖鑰として開発に専念せられて来たのでありましたけれども、只今までやはり我々が期待したほどの開発が行われて来なかつたということは、これは我々北海道に長い間住んでおるところの者のひとしく遺憾に存じておつたところであります。口を開けば北海道の総合開発或いは北海道の開発の重要性というようなことが、至る所で叫ばれるのであります。又只今勿論国会において北海道総合開発審議会を作り、又北海道開発庁が設置せられた。そういうところから見ましても、これはその通りでありまするけれども、併しながら、私ども北海道に数十年間住んでおる者がその経過を顧みまするというと、誠に開発が遅々としておるということを認めざるを得ないのであります。これは一に我が国の国民全体が北海道の開発の重要性ということを本当に理解しておられなかつたということが、その理由の一つと私は考えるのであります。勿論、明治初年以来、北海道に開拓庁ができ、開拓長官が置かれまして、鋭意そのときどきの政府が開拓を計画されたこと、又実施せられたことは明らかでありまするけれども、如何せんいろいろの事情が突発いたしまして、北海道の開拓が遅れておるということは明らかであります。日清、日露戰争或いは第一次欧洲戰争或いは第二次欧洲戰争、世界戰争、そういう戰争の間、北海道の開発はいつでも置き去りにされておつたのであります。こういうところから見まして、我々北海道に長らく住んでおる者は、どうしても北海道の特殊の開発に関する機関を要望しておつた。それがこの北海道開発庁の設置になつて現われたのでありまするから、これこそ我々が多年北海道におりまして要望しておつた者の発言でありまして、これより我が北海道が長足の開発進歩を行うに違いないということを我々は大きな期待を以て見守つておるのであります。(「あけて口惜しい玉手箱」と呼ぶ者あり)併しながら御承知のように、北海道は非常に大きな土地であり、ここにおられる皆様方の何%が一体北海道を本当に御存じでありましようか。(「何を言つているのだ、そんなこと関係ないんじやないか」と呼ぶ者あり)北海道の港湾にいたしましても、或いは漁港にいたしましても、或いは山林或いは炭鉱の開発にいたしましても、まだ本当に緒に付いたと言わなければならぬくらいな程度であると私は思うのであります。でありますから、この際、政府は本当に強力なる機関の設置を行なつて、一挙にしてこの開拓を促進さしてもらいたいということが我々多年の希望であります。然るに(「予算ももらわにやあかんで、しつかりなさいよ」「謹聽々々」「法案だけ作つても駄目だよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)公選知事になりましてから、どうでありましようか。我が北海道の行政が誠に弛緩しておると私は思つておるのであります。(「汚いぞ、選挙に負けておいて」「その通り」と呼ぶ者あり)丁度私は、これは甚だ卑近な例かも知れませんが、大きな世帯を任された学校を出たばかりの息子が、世帯を持ち切れなくて、(「その通り」と呼ぶ者あり)おやじが今度手助けをしてやるというのと同じでありまして、(「余計な失敬なことを言うな」と呼ぶ者あり)何にもそこに差がない。(「その通り」)「選挙に負けたから口惜しいだろう」と呼ぶ者あり)私どもここに開発庁が特別に末梢機関を設置しまして、(「民主党万歳だ」と呼ぶ者あり)強力にこれを促進し、ここにおいて初めて私どもが多年希望しておりますところの北海道の真の開発が非常に促進せられることを、私どもは大きな期待を持つて見守らなければならんと思うのであります。(「その通り」「法案だけだ」と呼ぶ者あり)先ほどから選挙に関してというようなことが言われておる。(「そうだ」「その通りなんだ」と呼ぶ者あり)そういうことは誠に遺憾至極であります。併しながらこれは選挙前にすでに考えられた事実であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)昨年の暮すでにこのことが考えられておるのでありまして、この選挙に関係なくこれは実行されるものである。但し選挙の前は非常に忙しいから、これは選挙後に延ばそうというのに過ぎなかつたのでありまして、(「その通り」「そんなことあるか」と呼ぶ者あり)そこに如何わしい点はないと私は考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その点は北海道におりまする私どもがよく承知しておるものでありまして、あなたがた北海道関係のないおかたが、ほかから御覧になつて、大変燒きもちをお燒きになるようなことと、私どもは考えるのであります。(拍手)決してそういうことではないのであります。その点誤解のないように私はお願いしたいと思うのであります。又北海道の行政が一元化しておつた。今まで一元化しておつたものを二元化する或いは分離するようなふうになるというようなことを言われるのでありますが、私はこの点において、何にも、少しも、この二つの行政機関がおのおのその責任を持つてつて行く上において、少しもそこに矛盾がないと私は思います。(「自由党は何でもそう言うよ」と呼ぶ者あり)あなたがたは終戰後いろいろの出張機関が持たれたことを御存じでありますが、今でも厚生省が厚生省の出張所を北海道に持つております。その出張所が北海道庁と関係なく、即ち北海道庁の直属ではない国の直属であります。(「そんなことはわかつているよ」と呼ぶ者あり)その厚生省の出張所があるために北海道の衛生行政が誠に工合よく行つておる。このことを私は明言いたします。(笑声、拍手)少しも差支ないのであります。この点においても私は、(「冗談おつしやつちやいけません」と呼ぶ者あり)私たちが衛生行政においてはあなたがたよりは北海道のことにおいては精しいのであります。(拍手、笑声、「それだけか」と呼ぶ者あり)私はこの点におきましては、先程から二元化というようなことで、この法案の実施を望まれないというようなかたを私はおかしく思うのであります。  どうぞそういうようなひがんだ心をお持ちにならないで(笑声、拍手北海道を愛して頂きたい。北海道を愛して、北海道の生長をもつと促進するように、皆さんが熱心な御支援あらんことを私はお願いするのであります。私非常に簡單でございますけれども、これを以て終ります。(拍手
  52. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  53. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表いたしまして、只今議題なつ法案に反対するものであります。  本法案につきましては、我々が反対するだけでなくて、関係当事者の多くが反対しているのであります。例えば五月下旬に開かれました全国知事会議におきましては、自由党系の知事諸君までが出先機関の強化には反対であるということを声明し、又現地で開かれました開発庁出先機関設置反対道民大会におきましては、民主党の道議会副議長齋藤藤吉氏も絶対反対を表明しておるような次第であります。増田建設大臣は今日では口を極めて本法案改正の必要を力説しておられるのでありますが、同大臣が北海道長官であつた昭和二十二年には、北海道会は地方分権の精神に逆行するという理由を以ちまして、反対の決議をしていることは周知の事実であります。増田建設相は曾つて北海道知事たらんとしたこともあり、又一義には、曾つて社会党に入党を申込んだこともあるそうであるのでありますが、(笑声、拍手)今日知事になつておれば、恐らく現田中知事同様に反対運動の先頭に立つておるであろうことを私は推測するにかたくないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)何となれば、北海道民はここ数十年来中央集権に反対し、地方自治の確立を主張して来たからであります。これは先ほどから同僚諸君によつても極めて詳細に論及されたところであります。元来、北海道、東北などの地方は、日本の植民地若しくは半植民地的性格を濃厚に持つておつたと言わなければならないのであります。永い間これらの地は中央の収奪の犠牲にさらされまして、苛酷な国家資本の搾取に苦しめられ、その開発や人民生活の向上については政府は何ら親身になつてこれを取上げなかつたのが実情であります。然るに昨年度から政府がその開発に乗り出し、今日法律改正をさえ強行して事態に対処せんと腐心しているのは、そこにそれ相応の隠された理由がなければならないのである。その理由とは何であるか。それは言うまでもなく現東亜の情勢において占めている北海道の軍事的重要性であると言わねばならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)すでに州兵━個師団の大部分がここに配置され、開拓政策、道路政策の面においても着々その態勢が整えられようとしているのであります。即ち本法案の狙いはこうした外国の要請による軍事基地化の強化でないと誰が一体保証できるか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)今日、本法案の有する意味を、自由党対社会党の対立問題、或いは中央集権政策対地方自治の問題として局限し、又は私的な狹い視野からこの問題を考えるということは、決して妥当なものではないということを私はここではつきり申上げなければならない。再軍備、軍事基地化の重要問題としてこれを論ずるのでなければ、決してその本質を明らかにすることはできないのであります。(「論旨不徹底」と呼ぶ者あり)若しこの法案が真に北海道の平和とその裏付けとしての人民生活の向上を目指しているものであるならば、なぜこのような地方自治体の機能を無視したような立法措置が必要であるのか。又会期を再三延長してまで強引にこれを通す必要があるのであろうか。又更に予算的裏付けにおきましても甚だ不十分であるということを我々は指摘しなければならないのでありますが、こういうようないろいろな欠陥を持つたままでこの法案を通過させる、それが非常に急がれておるというところにこそ、問題の本質が隠されておるということを言わざるを得ない。増田建設大臣は北海道公共事業費の増額を大いに自慢しておりますが、例えば十三億円の開拓事業費を以て、新規に入植させる開拓農民の生活を、政府は一体どれほど保証できるというのでありましようか。  元来政府の農業政策は、低米価、重税政策であり、高い肥料、高い電力料金その他高い工業生産品を農民に押し付ける政策であつて、(「本論々々」と呼ぶ者あり)その結果は農業の再生産を不可能にし、農民の生活を到る所で破滅に導いていることは、今更私が言を費す必要はないと思うのであります。而もこれに加えて北海道の開拓民は、その特殊の気候、地質から、絶えず大きな脅威にさらされ、入植民の多くは今日実に悲惨な生活にさらされているのであります。現に私は一昨年の夏、根室と釧路との間にありますところの根釧原野の開拓の実情を視察したのでありますが、ここでは一年の日照時が北海特有のガスによりまして極めて少く、生産品のごときも麦の生産高は一反当り僅か一俵足らずというような收穫であります。そこで厖大な耕地がこのために必要となり、そのために労働が強化されまして、農民は鶏と共に起き、又これと共に寝る。いわゆる鶏生活をやつているのがまぎれもない実情であります。石油の配給も非常に不足である、その他、生活必需品の供給が又極めて乏しい。更に教育その他の文化的施設は殆んど絶無であります。人間生活とは全く名ばかりの悲惨な原始的生活に追い込まれているというのがこの開拓民たちの姿であります。(「けしからんことを言うな」と呼ぶ者あり)この結果、入植者は開拓地に定着せず、多くの逃亡者をさえ出しているというのが実情であります。(「そうだ」「簡單」と呼ぶ者あり)このような悲惨な開拓事業の現実を、たつた十三億の公共事業費でどれほど救済できるか。これはむしろ明らかに満蒙開拓義勇軍の復活費であるという人も多いのであります。(「何を言つておるか」と呼ぶ者あり)全国農村の失業者、殊に土地がない、次三男貧農青年を、北海道へ行けば何とか食えるとだまして、全国農民の燃え上る憤懣を消し止め、儚い希望を持たしてその反撃を防ごうとするものであります。而も一朝事ある際には竹槍を持たせて外国の傭兵にしようとする、いわゆる北海道屯田兵のあの曾つての姿を再現するものでないと誰が保証できるか。(「そうだ」「けしからん」と呼ぶ者あり)北海道開発法とは、実は今回の改悪のあるなしにかかわらず実にこのような意図を包含しておるのであります。  次に、政府は資源の開発について強調しているのでありますが、吉田内閣の下では資源の開発は一体誰のためにこれを行うのであるか。(「共産党のためじやないぞ」と呼ぶ者あり)平和産業をぶつ潰し、国民をこき使う政府の下では、開発された資源は軍事的生産と結びつかない限り、そのはけ口がないというのが実情であります。曾つて売れないで山と積まれた北海道の石炭が自然発火して大損害を起したこともあつたのでありますが、この事実こそは、資本主義社会での資源開発が国民の生活に何ら利益するものでないことの何よりの証拠であります。アメリカにおきましても、政府部内で赤とさえ攻撃されましたリエンタール氏のTVA計画も、その電力が第二次世界大戰のアメリカ軍需工業の強力な支柱となり、又原子爆彈の生産にとつてなくてはならぬ軍事資源となつたのであります。これらの例は明らかに資本主義と戰争の緊密な因果関係を物語つているものと言わねばなりません。今回の改正案は、これらの性格を更に強力に推し進めるために作られたことは明らかであります。即ち、これを知事に任して置いたのでは、北海道の軍事基地化を思う存分政府は遂行することができない。(「狙いはそこにある」と呼ぶ者あり)総額百億のドル箱をやすやすと社会党に譲るのが勿体ないということもあるでありましようが、それは個個の現象であつて本質ではない。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これは道路事業にも現われているのであります。今回の改正案が通れば道知事は道路総延長の三八%を施行することとなります。これに対しまして、国は、国道、地方道、準地方国道等を通じまして総延長の六〇%を施行することになるのであります。(「いいじやないか」と呼ぶ者あり)而も北海道知事施行する道路工事費に対しまして国庫補助額は僅かに、一億九百万円に過ぎないのに対しまして、国の施行する道路事業費は実に十三億七千余万円に達しておるのであります。このことは、北海道住民大衆が切実に希望している道路工事はこれを道の費用で賄わせ、従来までやつておつた道路工事費はこれを中途で横取りして、軍事的道路の大建設に振り向けようとする意図であることを、極めて明白に物語つておるのであります。(「何を言うか」「そうだ」と呼ぶ者あり)更に開発局は国の支弁による建物の営繕を行うことになつているのでありますが、これも又駐屯軍兵舎や警察予備隊兵舎など、直接住民の生活に関係のない建築物に振り向けられることになるでありましよう。一方、北海道住民が最も切実に要望しておる民生施設はどうでありましようか。先ほど民主党の有馬議員のお話によりますと、中央の機構によつてやるというと厚生施設はうまく行つておるということを言つておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)果してそうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私は次の事実を指摘したい。現在北海道には三十八カ所の保健所しかないのであります。あの広大な地域に散在する住民十一万人に対しまして一カ所の割合であります。医者に至りましては実に三万三千百六十平方粁内地では想像もつかない厖大な地域に対しましてたつた一人という実情であります。結核患者に対しましては、十万に対して僅かに三千六百の病床しか確保されていないというのが現状であります。これで厚生政策が最もよりよく施行されておるということになりますならば、これは誠に呆れたものと言わざるを得ないのであります。又教育面について見ますならば、校舎の不足は四十万坪の現状に対しまして、計画面におきましては、昭和三十一年度までに二十七万坪の仮校舎を建設したいということを予定しておるのでありますが、これも崩壊の一路を辿りつつありますところの地方財政の現状におきましては、殆んど不可能と言わなければならないわけであります。更に住宅の面から考えますならば、最低需要数が三十七万戸に対しまして、本年度庶民住宅予算は国庫補助が二億円であります。これは低家賃住宅建設予定を以てしましても僅かに千百八十戸分、即ち必要額の僅か〇・三%の需要を満たすに過ぎないというのが現状である。これでは政府北海道民のために力を入れておるということは到底言い切れないのであります。現状では、炭鉱労働者の生活を初め、一般勤労大衆の生活窮乏はその極に達しております。炭鉱ではすでに「タコ部屋」が又復活されつつある。而してこれらの生活窮乏は本改正案によつては何ら救われないのみか、政府は声を大にして国費で開発すると宣伝これ大いに努めておるのでありますが、もともと半植民地的北海道から搾りに搾り取つた税金の一部を国費の美名によりまして返しているのがこの法案の実体なのである。(「嘘つけ」と呼ぶ者あり)而も教育、文化、保健、住宅等は、国費からは雀の涙で、あとは道でやれ、知事がやれ。大きな道路、港湾、これは軍事的に重要だから国がやる。これが本法案の誠にこれは隠されたところの狙いであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)吉田首相は日本をアジアにおける反共産主義の一勢力として期待をかけられたことに非常に満足の意を表しているようでありますが、日米経済協力によつて日本の資源をアメリカ軍拡経済のために総動員し、日本を反ソ反共の前進基地とするために、又不沈の航空母艦とするために、北海道が今や帝国主義者の重要な戰略地点として再編成されつつあることは周知の事実である。(「そんなことを言うな」と呼ぶ者あり)この法案は、まさにかかる計画を更に強力に推し進めんとするものでありますが故に、我我日本共産党は、(「誰も聞かない」と呼ぶ者あり)北海道の平和を愛する人民大衆と共に、原案並びに修正案に断乎反対するものであります。(「面白かつた」「詭弁を弄するな」「誰も聞いていないよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手
  54. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 先ほどの千葉君の発言中に不穏当な点がありましたが、千葉君において取消されたいと存じます。
  55. 千葉信

    ○千葉信君 議長において不穏当とお認めでございましたならば、議場の品位保持のために取消すことに異議ございません。
  56. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 然らば議長において適当に措置を講ずることにいたします。(拍手)  これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  先ず吉田法晴君提出修正案全部を問題に供します。本修正案賛成の諸君の起立を求めます。    〔起立少数
  57. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 少数と認めます。(拍手)よつて修正案は否決せられました。      ——————————
  58. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に本案全部を問題に供します。本案の表決は記名投票を以て行います。本案賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  59. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算いたさせます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  60. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数百八十一票、  白色票即ち本案を可とするもの百十九票、(拍手)  青色票即ち本案を否とするもの六十二票、  よつて本案は可決せられました。(拍手)      ——————————    〔参照〕  賛成者(白色票)氏名  百十九名   結城 安次君  玉柳  實君   村上 義一君  前田  穰君   藤森 眞治君  藤野 繁雄君   野田 俊作君  徳川 宗敬君   竹下 豐次君  高橋 道男君   高橋龍太郎君  高瀬荘太郎君   高木 正夫君  田村 文吉君   鈴木 直人君  新谷寅三郎君   島村 軍次君  小宮山常吉君   河井 彌八君  柏木 庫治君   加賀  操君  奥 むめお君   岡部  常君  小野  哲君   楠瀬 常猪君  溝淵 春次君   長島 銀藏君  木村 守江君   宮本 邦彦君  秋山俊一郎君   高橋進太郎君  仁田 竹一君   宮田 重文君  上原 正吉君   草葉 隆圓君  石川 榮一君   大谷 瑩潤君  九鬼紋十郎君   深水 六郎君  加納 金助君   平沼彌太郎君  大矢半次郎君   城  義臣君  植竹 春彦君   岡崎 真一君  小野 義夫君   鈴木 安孝君  寺尾  豊君   黒田 英雄君  石坂 豊一君   岩沢 忠恭君  北村 一男君   中川 幸平君  横尾  龍君   徳川 頼貞君  中山 壽彦君   小串 清一君  工藤 鐵男君   小杉 繁安君  中川 以良君   赤木 正雄君  廣瀬與兵衞君   野田 卯一君  重宗 雄三君  大野木秀次郎君  加藤 武徳君   長谷山行毅君  松平 勇雄君   古池 信三君  白波瀬米吉君   安井  謙君  岡田 信次君   愛知 揆一君  瀧井治三郎君   石村 幸作君 池田宇右衞門君   入交 太藏君  島津 忠彦君   石原幹市郎君  山崎  恒君   紅露 みつ君  深川タマヱ君   木内キヤウ君  鈴木 恭一君   大島 定吉君  郡  祐一君   川村 松助君  竹中 七郎君   谷口弥三郎君  有馬 英二君   油井賢太郎君  山田 佐一君   西山 龜七君  堀  末治君   團  伊能君  西田 隆男君   大屋 晋三君  泉山 三六君   平岡 市三君  左藤 義詮君   小林 英三君  栗栖 赳夫君   林屋亀次郎君  櫻内 辰郎君   一松 定吉君 深川榮左エ門君   岩男 仁藏君  境野 清雄君   木内 四郎君  稻垣平太郎君   岡村文四郎君  東   隆君   森 八三一君  石川 清一君   松浦 定義君  堀木 鎌三君  池田七郎兵衞君  田方  進君   平林 太一君     —————————————  反対者(青色票)氏名 六十二名   木下 辰雄君  中田 吉雄君   村尾 重雄君  金子 洋文君   門田 定藏君  カニエ邦彦君   藤原 道子君  島   清君   加藤シヅエ君  若木 勝藏君   永井純一郎君  三橋八次郎君   原  虎一君  齋  武雄君   高田なほ子君  片町 文重君   吉川末次郎君  小林 孝平君   荒木正三郎君  菊川 孝夫君   山田 節男君  三輪 貞治君   成瀬 幡治君  田中  一君   松永 義雄君 小笠原二三男君   吉田 法晴君  羽生 三七君   江田 三郎君  大野 幸一君   曾祢  益君  中村 正一君   細川 嘉六君  須藤 五郎君   岩間 正男君  千葉  信君   木村禧八郎君  堀  眞琴君    水橋 藤作君  鈴木 清一君    梅津 錦一君  重盛 壽治君    佐多 忠隆君  相馬 助治君    三浦 辰雄君  椿  繁夫君    岡田 宗司君  松原 一彦君    羽仁 五郎君  内村 清次君    小酒井義男君  栗山 良夫君    山下 義信君  矢嶋 三義君    佐々木良作君  木下 源吾君    棚橋 小虎君  和田 博雄君    三木 治朗君  河崎 ナツ君    上條 愛一君  森崎  隆君      ——————————
  61. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、お諮りいたします。本日、木下源吾君から人事委員長を、山下義信君から厚生委員長を、それぞれ辞任いたしたいとの申出がございました。いずれもこれを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 佐藤尚武

    ○議員(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつていずれも許可することに決定いたしました。      ——————————
  63. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、常任委員長の補欠選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  65. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 只今の常任委員長の補欠選挙は、成規の手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  66. 木村守江

    ○木村守江君 私は只今の小笠原君の動議に賛成いたします。
  67. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小笠原君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長人事委員長に吉田法晴君を、厚生委員長に梅津錦一君をそれぞれ指名いたします。(拍手)  本日の議事日程は終了いたしました。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 司法書士法の一部を改正する法律案  一、日程第二 警察法の一部を改正する法律案  一、日程第三 医師法及び歯科医師法の一部を改正する法律案  一、日程第五 電話設備費負担臨時措置法案  一、日程第四 北道道開発法の一部を改正する法律案  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長の補欠選挙