○木下辰雄君 只今議題となりました
漁港法第十七條第二項の
規定により
漁港整備計画について承認を求めるの件に関しまして、水産委員会における審議の経過並びにその結果について御報告申上げます。
先ず政府提出の理由を申上げます。我が国の経済を再建し、国民生活を安定せしめる方策の一環として
水産業を発展させることは、地理的條件から見て極めて適切且つ必要である。戰前世界第一位の水産国であつた我が国の漁業も、現況を顧みると、その経営形態或いは漁獲物の利用効率又は漁業労働の生産力等の点において未だ原始産業の域を脱しない憾みがあるので、これを近代産業の列に伍して健全に発達せしめるため、先ず漁業の根拠地である漁港を全国に亘つて計画的に
整備拡充し、その機能を増進させることによつて、漁業の合理的経営を行い、生産の増強を図ると共に、漁業経営費を低減し、漁民生活の安定向上に資する必要があるが、この
漁港整備計画については、
漁港法第十七條の
規定により最終的には国会の承認を受けることによつて確立されるわけで、極めて権威があり、いわば我が国の
水産業の面における国土の総合開発計画の根幹をなすものと考えている。農林省としては、
漁港法施行以来、漁港の
指定と共に愼重に審議して、漁港の
整備計画を立て、漁港審議会の意見を徴したところ、五月七日原案通り議決の答申があつたので、去る二十二日の閣議決定を経て、諸般の手続を終了したので、国会の承認を頂きたいというのがこの提案の理由であります。
次にこの
整備計画の内容を申上げます。計画の方針としましては、一、漁業と漁港施設の現状に一応基礎を置き、なお、漁業の将来性や国際関係による種々の制限の推移、及び漁場資源と生産條件との関連、配置を勘案し、施設の不足度合の高いもの又は経済的効果の多いものから順次
整備する。二、漁港の
整備計画は原則的には相当長期に亘る計画とすべきであるが、差当り
昭和二十六年度以降に緊急
整備を要するものについて第一次
整備計画を立てた。三、漁業根拠地は全国沿岸に亘り大小数千あるが、この計画においては、近く漁港として
指定される予定の約三千港のうち、修築の方針が具体化された一千六十港を
整備計画の選定対象とした。以上の方針に基きまして、漁港の充足度は漁業の推移と並行或いは優先して行われなければならないが、従来実施されて来た経過や国家財政の現況を考えて、この第一次
整備計画においては、
昭和二十五年から継続施行分百三十六港のほか、新規着手分三百十四港、合計四百五十港を採用計画しておるのであります。その種別の内訳は、第一種漁港百九十八港、第二種漁港百五十二港、第三種漁港六十一港、第四種漁港三十九港となつております。又本計画におきましては、漁港の機能を遺憾なく発揮させるために、各漁港における漁業状態、施設の現状等を勘案し、それぞれの漁港に適応した外郭施設、繋留施設、水域施設の基本施設や、輸送施設、航行補助施設、漁港施設用地、
漁船漁具保全施設、補給施設、漁獲物の処理、保蔵及び加工施設、漁業用通信施設、
漁船船員厚生施設、漁港管理施設等の機能施設を
整備することになつております。なお
整備漁港の一つ一つの名称その他については説明を省略いたします。
委員会におきましては、政府当局と質疑応答を重ねましたが、政府説明のうち主なるものを申上げます。一、この
整備計画を実施するために、内閣は毎年愛国の財政の許す範囲内において必要な経費を予算に計上しなければならないことになつているので、この
整備計画は、漁業の発展、漁業経営の安定の見地から漁港施設を計画的に充実させるための、いわば我が国の
水産業の面における国土総合開発計画の根幹をなすものである。二、
整備計画に取上げられる漁港は農林大臣が
指定したものでなければならない。
指定があつて初めてその漁港の修築及び維持管理に関して国家的な施策が與えられることになる。三、
整備計画樹立の基準については、
整備漁港四百五十港を各都道府県別に割当てるために、各都道府県別の
漁船隻数、
漁船トン数、海岸線の
延長、漁獲高及び漁港施設の不足度合、漁業開発の面等を考慮して割当比率を定め、各都道府県別の港数を定めた。四、各都道府県別内における採用漁港の選定については、各漁港の現状における利用
漁船の収容能力及び水揚高に対応する接岸能力の絶対量の不足度合、経済効率、配置等によつて採点し、高点順に採用した。五、
整備漁港資金計画としては、
整備漁港数四百五十港を完成させるためには総事業費
昭和二十五年現在の單価において五百四億七千三百四十一万円を要し、このうち国費は二百五十億二千二百五十八万円を必要とする。六、本計画実施の成果としては、新たに接岸設備
延長十一万四千百五十メートル、碇繋用水面積一千二百六十七万二千平方メートルが増加され、
漁船一トン当りの接岸長は〇・二三メートル、(現在は〇・一三メートル、所要量は一・ニメートル)碇繋用水面積は二十平方メートル(現在十平方メートル、所要量は六十平方メートル)に増加され、
漁船の保全、漁業能率の増進、漁獲物の鮮度保持等、漁港の機能及びその利用率が総合的に増強されるので、漁業の進展に資するところが著しい。六、経済的効果としては、直接的には
漁船の保全、
漁船稼働率の向上、
漁船船型の増大、鮮度の保持、漁獲物の処理能力の強化、漁業経営費の節減が可能となり、間接的には、加工業保蔵施設の発達による漁獲物の高度利用、漁価の維持、漁民生活の安定、漁村文化の向上等、多方面に亘つており、数字的に算定することは困難ではあるが、この第一次
整備計画が完成した暁において生ずる効果のうち、概数的に挙げれば、
漁船の収容能力、接岸能力が約倍加されることによつて、年々百億円程度の便益が得られ、投不資本額即ち総事業費約五百億円を五カ年乃至六カ年程度にて回収することができる能力が附加されることになる。
以上政府当局よりの説明があつた後、質疑を打切り、討論に入りましたところ、一委員より、本
整備計画は総事業費約五百億円を要し、農林省としては三カ年を以て完成したいとのことであるが、我が国の現況を考えると、漁港の
整備充実は極めて緊急を要するものがあるので、政府は今後可及的速かに必要なる予算的
措置を講じ、本計画の完成を急がれたいとの希望を附して賛成する旨の意見の開陳があり、他に発言なく、かくて討論を打切り、採決に入りましたところ、全会一致を以て原案の通り可決すべきものと決定いたしたのであります。
以上御報告申上げます。(拍手)