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1951-04-16 第10回国会 参議院 本会議 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年四月十六日(月曜日)    午後三時十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三十五号   昭和二十六年四月十六日    午後二時開議  第一 ダグラスマッカーサー元帥に対する感謝決議案大野木秀次郎君外五名発議)(委員会審査省略要求事件)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告報告は朗読を省略いたします。
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、ダグラスマッカーサー元帥に対する感謝決議案大野木秀次郎君外五名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題といたします。  本決議案につきましては、大野木秀次郎君外五名より委員会審査省略要求書が提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明発言を許します。大野木秀次郎君。    〔大野木秀次郎登壇拍手〕      ——————————
  5. 大野木秀次郎

    大野木秀次郎君 只今上程されましたダグラスマッカーサー元帥に対する感謝決議案は、共産党を除く各党各派共同提案でありまして、私は発議者を代表いたしまして、この提案趣旨を説明いたしたいと存じます。  先ず決議案文を朗読いたします。    ダグラスマッカーサー元帥に対する感謝決議   前連合国最高司令官ダグラスマツカーサー元帥が、終戦当時のわが国混乱と窮乏とを匡救し、進んで民主主義の確立と経済の自立とを指導援助し、もつてわが国独立の機運を促進したる偉大なる業績は、国民挙げて感激措く能わざるところなり。参議院は、特に院議をもつてこの全国民意思を代表し衷心より感謝するとともに満腔敬意を表す。   右決議す。    〔拍手起る〕  只今朗読いたしました通り、本決議案は、日本国民挙げて愛慕措く能わざるうちに、本日羽田空港より日本を離れられたダグラスマツカーサー元帥に対し、衷心より感謝敬意を捧げたいという趣旨であります。  顧みますれば、元帥日本に進駐いたされましたのは昭和二十年八月末でございました。当時我が国混乱その極に達し、国民は虚脱の状態に陥り、前途の不安におののいていたのであります。こうした日本に対し、元帥は直ちに正義と救済の手を差延べられたのであります。全国民は、元帥聰明叡智と偉大なる寛容の前に、さながら暗夜に光明を見出す思いがいたしたのであります。爾来五年八カ月、元帥は、日本の政治、経済、治安、教育等各般に亘り、いわゆる無血革命に着々成功されると共に高く民主主義の大旆を掲げて、再建日本礎石たる新憲法の制定に有力なる示唆を與えられたのであります。(拍手)特に国会が国権の最高機関たるの実を挙げ得るよう、終始熱誠を傾けて指導助言せられた御厚意に対しましては、私ども参議院の深く感謝申上ぐるところであります。(拍手)  そもそも人類歴史つて以来、敗戰国を占領管理した軍隊にして、かくのごとく平和に人道的に行動した例があつたでありましようか。元帥の高き知性と温かき真情から溢るる御指導によつて日本国民は心からその占領政策に協力いたしたのであります。そうすることのみが祖国再建の唯一の途であることを自覚確信いたしたのであります。(拍手)この明るく正しき成果こそ、崇高にして敬虚なる元帥人格の反映でなくして何でありましよう。元帥は夙に早期講和締結の必要を提唱せられ、我が国が速かに講和受入態勢を整えることに心血を注がれました。その御意がいよいよ具体化されて、我が国自由世界の一員として光栄ある独立と貢献とをいたし得る日の近付きつつあることは、真に御同慶の至りであります。(拍手)この問題をここまで推し進められました元帥のなみなみならぬ御労苦に対し、誰か感謝至情を捧げずにいられましよう。この待望の講和を前にして、今突如として元帥をお見送り申さねばならぬことは、満腔の思慕、真に慈父に別るるの思いがいたすのであります。我が民族ある限り、子々孫々に伝えて永く元帥の偉績を追慕顕彰いたすでございましよう。  ここに元帥の御鴻業の一端を申述べまして、全国民と共に謹んで感謝至情を表したいと存じます。何とぞ本決議案に対し満場各位の御賛成をお願い申上げる次第であります。
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 本決議案に対し討論通告がございます。発言を許します。細川嘉六君。    〔細川嘉六登壇
  7. 細川嘉六

    細川嘉六君 私は日本共産党を代表して(「一人じやないか」と呼ぶ者あり)遺憾ながらこの決議案に反対いたします。(「恥を知れ」と呼ぶ者あり)  今回アメリカ政府元帥マツカーサー氏の四つの官職を剥奪し、その責任を問うに至つたことは、世界の人道と正義とから見て当然であります。(「何を言つておる」と呼ぶ者あり)天下周知のように、同政府マツカーサー氏の主張と作戦とが第三次世界大戰を激発する危險ありと断定したことは全く必然であります。又世界周知のように、第三次世界大戰は人類社会に対し破滅をもたらすものである。これを挑発することは人類社会に対する史上未曾有の大反逆罪を犯すものであります。(「共産党反逆か」と呼ぶ者あり)それであればこそ、世界人口二十一億中、アメリカ民衆をも含めた過半数の人間が積極的にこの戰争に反対しているのであります。このアジアからヨーロツパにかけた巨大なる世界的反抗力を如何なる武器がこれを鎮圧するでありましよう。それにもかかわらず第三次世界大戰を挑発することが必ず失敗するであろうことは、すでに中国における蒋介石軍の決定的な大敗北、更に又、眼前、朝鮮戰争におけるいわゆる国連軍戰闘状態の実証しておるところではありませんか。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)元帥マツカーサー氏はいわゆる現代兵器の前には人海戰術なるものは敵し得るものではないと言つておられるが、人民戰線の兵法を知らざる者戯言であります。(「戯言を言うな」と呼ぶ者あり)諸君も御存じのように、最近スターリン首相プラウダ記者との問答のうちに、国連軍兵士戰争に関する正義感が薄弱であることとは反対に、人民軍にこの正義感が熾烈であるという事実を指摘し、ここに武力干渉の結局失敗する基礎があると述べられております。このことは、兵器空前なる発達に対抗し、現在の戰争における空前人民軍の持つ熾烈な正義感という特徴に対する(「もつと素直になれ」と呼ぶ者あり)正確な認識に立つているものであります。いわんやこの人民軍も又最も発達せる現代兵器を以て武装されておることは周知の事実でもあります。神の恵み、神の叡智(「共産党に神があるのか」と呼ぶ者あり)或いは十字軍というような言葉が、いわゆる敬虔なるカソリツク教徒であるという元帥マツカーサー氏のもろもろの宣言のうちに示されております。併しこれらの言葉はこれを裏切るもろもろの報道を伴つているのであります。例えばオランダのデ・ワールハイト紙本年一月六日号は、ロンドン特派員の記事を掲げ、マツカーサー氏がアメリカ独占資本家(「何を言つている」と呼ぶ者あり)モルガン、ロツクフエラーの利害と結び付いており、フイリピン、朝鮮、更に我が国において、土地、鉱山、石油事業等について巨大なる利益関係を持つておることを指摘しておるのであります。元帥マツカーサー氏は昨年八月在郷軍人大会へのメツセージの中で、「侵略的な、断乎たるダイナミツクな指導を尊敬し、臆病な動揺する指導から離れて行くということが東洋人の心境の常である。」と述べている。このように見くびつた東洋人に対する見方であればこそ、朝戰戦争で、昨年六月中に戰争に参加した三十万人の朝鮮人が戰病死し、爆撃等男女老若約百万人が死亡したと推定されております。全国土も又(「それは共産党がやつたんじやないか」と呼ぶ者あり)痛ましい焦土と化されたことは言うまでもありません。それで、当然のこととして、昨年十一月、世界十億の人民大衆を代表しポーランドのワルシヤワで開かれた世界平和擁護第二回大会は、国連に対する決議中の第六項目において、「我々は朝鮮戦争中に犯された犯罪、特にマツカサー将軍の責任問題を調査することを要求する」と主張しているのであります。国の内外を問わず、独占資本家は、又その手先軍隊は、バーナード・シヨウのいわゆる「人殺し商人」であり、(「人殺しは誰だ」と呼ぶ者あり)その手先である。今更如何に民主主義で口をすすぎ、神の恵みによつて看板を塗り替えたと言つても、彼らが「人殺し商人」であることは、アメリカ日本は勿論、世界の平和を愛する巨大なる人民大衆からの蔽い隠すことはできない。今や独占資本の「人殺し商人」が人類社会を破滅するか。自由と独立と平和とを愛し人類社会の無限の進歩を求める万邦諸民族が生き栄えるか。言うまでもなく世界はこの峯前の重大危機に立つていることは争われない。この際において、この決議案は、遺憾ながら美辞麗句を以て事実を我々国民の目から隠しておるものである。今日我が国を含めての世界的危機に当つて、又アメリカ政府元帥マツカーサー氏に対する処断に当つて、この決議案に対する賛否を論ずべきときではありません。(「何というひねくれなんだ」と呼ぶ者あり)アメリカ政府のこの処断イギリス国会に伝わるや、議員は総立ちとなつて歓迎したということが報道されております。戦前にヒツトラーやムツソリーニの侵略主義に対し感激おく能わずと感じた軍部とその追従者が、自己の独断の感情国民感情であると国民に押し付けた。このことが再び罷り通さるべきでない。断じてそうあつてはならない。いわゆる国連協力従つて単独講和締結の名の下に、元帥マツカーサー氏の極東乃至世界政策に便乗した現内閣、これを麦拝する自由党、民主党等が、ここに深甚なる反省をなすべきときである。(「共産党が何をやつた」と呼ぶ者あり)我々日本国民は、国内及び国外を通ずる正しき認識真実勇気とを持つてこの危機の打開に立つべきときであります。(「共産党は持つておるか」と呼ぶ者あり)アメリカ政府に対し、又世界万国に対し、朝鮮に対する武力干渉から手を引き、朝鮮問題は朝鮮人に任すこと、中華人民共和国国連に参加させ、無條件に台湾を同共和国に引渡すこと、我が日本国民自主独立美辞麗句の上でなく現実に確立することを要求すべきであります。かくしてこそ我が国自主独立の確保も国内民主主義の発展も実現され、近くは中国朝鮮ヴエトナム等との友好関係が保たれ、世界平和と無限な進歩の道とが確保されるものであります。(「戯言は早くやめろ」「早くやめろ」と呼ぶ者あり)真実愛国者は(「やめろやめろと呼ぶ者あり)当然この挙に出ずべきであります。然らざる者はまさしく売国の徒であり、(「共産党こそそうだ」と呼ぶ者あり)天地の許さぬ世界大戦挑発者である。(「さがれ」「それで引込め」と呼ぶ者あり)我々は、真の愛国者である限り、この決議案に反対せざるを得ないのであります。(「けだもの」「スターリンが喜ぶぞ」と呼ぶ者あり)けだものと言つたのは誰だ。立ちなさい。その勇気があるか。立ちなさい。(「さがれさがれく」「何を言つているか」と呼ぶ者あり)勇気があるか……なければよろしい。(笑声)
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論通告者発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本決議案の採決をいたします。本決議案賛成諸君起立を求めます。    〔起立者多数〕
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて決議案は可決せられました。
  10. 小川久義

    小川久義君 議事進行について発言したいと存じます。
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) よろしうございます。
  12. 小川久義

    小川久義君 只今、議長過半数と宣告されましたが、私は反対した者は共産党の一名だけであつたことを認めて宣告したものと認めますが、それに相違ございませんか。
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 議長におきましても小川君の申される通りに認めました。よつて過半数と宣告した次第でございます。(拍手)  以上を以ちまして本決議案は可決せられました。この決議文贈呈方議長において然るべく取計らうことといたします。  内閣総理大臣から発言を求められております。この際許可いたします。吉田内閣総理大臣。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 本決議に対して政府は誠に同感であるのみならず、本院が本決議により国民意思感情内外に表明せられたことを私は誠に喜ぶものでございます。  終戦以来五カ年有余、その間、数回内閣の更迭がありましたが、党派の如何にかかわらず、内閣首班に対し、常に元帥は公平且つ丁重に応接せられ、温情を以て国政の指導に当られたることを感謝せざるを得ないのであります。ここに特に全国民を代表して感謝の意をいたしたいことは、我が皇室に対し元帥が特別の注意を常に拂われておられたことであります。(拍手元帥は、日露戦争中、父君のマツカーサー将軍と共に日本を訪問せられて以来、我が国に対し非常の関心を寄せられ、元帥日本国情に対する造詣蘊蓄日本国家礎石は一に皇室にあることを洞察せられ、我が皇室に対上非常の注意と用意をいたされたることは、元帥の対日識見のたまものであることは明白であるのであります。(拍手)  私が過日惜別の意を表するため訪問の際にも、今上陛下ほど民主的の元首は曾つて自分の知らざるところである日本国民主化の大業の容易に成つたゆえんは一に陛下のお力であると激賞せられたのであります。(拍手)もとより元帥の謙譲の徳がかく言われたものと存じまするが、同時に、元帥陛下の御性格を熟知し、平生その御性格に対して非常な尊敬を拂われておられたことがこの言のあるゆえんと私は信じて疑わないのであります。(拍手元帥厚木上陸の際、身に寸鉄も帯びずして單機上陸せられたということは当時聞いておりましたが、これは軍人としてその勇気の誠に驚歎すべきものがあると共に、同時に我が国民及び国情に深き理解があつた証拠であると私は信ずるのであります。(拍手)  なお、元帥は常に、我が国民が正直であつて且つ勤勉であるために我が国復興が甚だ迅速である、迅速なること他にその類例を見ないと激賞しておられるのであります。従つて又対日講和の一日も早からんことを希望せられて終始主張せられたことが、即ち今日対日早期講和の空気を世界に横溢せしめられた原因であると私は考えまして、元帥の我に対する厚意並びに努力に対し、私は常にこれに対して感激いたしておるのであります。講和完成を見ずし元帥が今日我が国を去られましたことは、我が国民挙げて遺憾とするところであり、けだし元帥の対自日友情から考えて見まして、この遺憾の意を我々国民と同じくせられるものと私は信ずるものであります。元帥の限りなき対日友情は過去五年有余の間に国民心臆に透徹し、元帥離任の報を得るや、全国津々浦々まで元帥に対して深甚なる惜別の情を期せずして発露したのであります。けだしこの国民的発露元帥初め全米国民の深く了承せられるところであると私は信ずるものであります。終戦以来将軍に親炙いたしておりました私といたしましては、感謝惜別の意を申し盡しがたいのでありますが、全国民が、知ると知らざるとを問わず、きゆう然として元帥に対して敬愛を表する国民的運動ともいうべき形に事実が出現いたしましたことに、みずから私が以て慰むゆえんであります。(拍手)けだし、これはおのずから元帥識見及び有徳の人格のいたすところであることを私は深く信ずるものであります。元帥我が国及び国民に対する絶大なる友情厚意を永く記念し、感謝のため適切なる方法を講じたいと思うのでありまするが、いずれ政府はその構想のでき上り次第、国会に付議して諸君の御協賛を得たいと思つておるのであります。(拍手
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次会議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十八分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 ダグラスマツカーサ元帥に対する感謝決議案