○河崎ナツ君
只今議題となりました
社会福祉事業法案につきまして、厚生
委員会における
審議の
経過並びにその結果を御
報告申上げます。
先ず
本案の提案理由につきまして説明申上げます。現下の社会情勢によりまして、社会福祉事業は、公的扶助制度の確立とその専門技術化の促進が強く要望せられ、先に生活保護法の全文
改正及び社会福祉主事の
設置に関する
法律が制定せられたわけでございます。而も約二百億円の経費を要する公的扶助その他児童及び身体障害者等の福祉に関する行政は、今や一層の強化を要請されつつありまする次第でございますが、その運営の合理化と能率的組織の整備がますます要求せられているのでございます。他方、民間の社会福祉事業の分野におきましても刷新拡充の必要が痛感されておりますことは、御承知の通りであります。なお又、社会保障制度
審議会からの勧告のうちにも、社会福祉事業を能率的、科学的に運営する民生安定所の
設置が謳われ、特別
法人の制度確立により、民間社会事業に自主性を與え、公共性を高めることと述べられております次第でございます。ここにおきまして、
昭和十三年に制定せられました社会事業法を廃止して、新らしい社会福祉事業の全分野における共通的基本事項を定め、生活保護法等の既存立法と相待ちまして、社会福祉事業が公明且つ適正に行われることを確保し、以て社会福祉の増進に貢献いたしたいというのでございます。以下本
法案の内容の要点を簡單に申上げます。第一に、社会福祉事業を分けまして第一種事業及び第二種事業とし、その
おのおのについてその事業内容を具体的に定義いたしております。なお、
更生緊急保護法に基く事業及び一定の基準に達しないものは、この法の対象から除いております。第二に、社会福祉事業の経営主体についての
規定でございますが、第一種事業は、国、
地方公共団体又は社会福祉
法人が経営することを
原則といたしておりますが、宗教
法人、その他個人であ
つても、許可を受ければ経営することができる途を開いてあります。第三に、事業経営の準則を定め、社会福祉事業を経営する者のそれぞれの責任を明確ならしめ、公私の関係を確立することにいたしてあります。第四に、社会福祉事業に関する共通的基本事項その他重要事項を調査
審議するため、中央に社会福祉
審議会を
設置することにな
つております。第五に、福祉に関する
事務所の
規定を設け、都道府県及び市は、福祉に関する地区を定め、その地区ごとに
事務所を設けて、生活保護法、児童福祉法及び身体障害者福祉法に定める援護、育成又は厚生の
措置に関する
事務を掌るものといたしております。なお町村及び一部
事務組合も福祉に関する
事務所を
設置することができることにな
つております。第六に、社会福祉主事に関する
規定を設け、社会福祉主事の
設置に関する
法律を吸收することにな
つております。第七に、指導監督及び訓練の
規定を設けまして、行政の効果的遂行を企図いたしております。筋八に、社会福祉
法人の制度を創設し、その組織及び運営について一定の基準を定め、災害時における緊急復旧に際しては、公の支配に属する社会福祉
法人に対しては補助の途を講じ得るよう
規定いたしてあります。第九に、社会福祉事業の経営と寄附金募集の
規定を設けまして、これが適正に行われるようにいたしております。第十に、共同募金及び社会福祉協議会の組織及び運営について
規定し、共同募金会と、その区域内の公私社会福祉事業関係者の協力による社会福祉協議会との密接な連絡により、社会福祉事業の組織的活動を図ることといたしてあります。第十一には、従来の各種の課税除外に加えて新たに登録税の課税除外の
規定を設けようとするものであります。
以上がこの
法案の提案理由及びその内容の概略でございます。
厚生
委員会におきましては慎重
審議を盡しまして、
政府当局との間に幾多の重要な
質疑応答が交されたのでございますが、そのうち要点を申上げますと、
山下
委員から厚生大臣に対しまして、この
法案は社会福祉事業全般に関する基本
法案である、近来の社会福祉事業は著しく公共性を帶びて来たが、
政府は本
法案成立後如何なる政策を実施する方針なりや。即ち一、国の責任に属する社会福祉事業は将来如何にして実施するか。二、
地方公共団体経営の社会福祉事業に対しては如何なる方針で望むか。三、民間社会福祉事業に対する態度如何という趣旨の質問に対しまして、厚生大臣から、社会福祉事業の経営については、国又は
地方公共団体は十分責任を持
つてこれを実施する、民間経営の社会福祉事業に対しては指導監督を強化し、公明適正に行われるようにしたいとの答弁がありました。
次に、国自体の責任に属する社会福祉事業を民間に委託しているが、その現状は頗る消極的であり、民間社会福祉事業の特性を減殺している、事業委託に際しては十分なる費用を支出すべきだと思うがどうかとの質問に対しまして、民間社会福祉事業経営者へ事業を委託する場合は、十分なる成果を挙げ得るよう責任を持
つて実施し、且つその自主性を十分尊重して行きたいとの答弁がございました。
又社会福祉事業の振興を図るには人の問題が最も大切であるが、社会福祉事業従事者の養成及び処遇並びに社会福祉事業功労者に対する処遇問題等についての所見如何との質問に対しまして、社会福祉事業従事者の養成には
昭和二十六年度予算にも
相当な額を計上してあるので、極力これが養成に努めるつもりである、又社会福祉事業の功労者に対しては藍綬褒章を授與することにな
つておりますが、文化勲章授與等の
措置についても善処いたしたいとの答弁でございました。
次に、民生
委員法及び民生
委員の取扱方を如何にするか、民生
委員の
地方議会議員兼職等は差支なきや、日本赤十字社も社会福祉事業を経営しているが、本法と日赤との関係如何との質問に対しまして、民生
委員法の取扱方については、目下研究中である、民生
委員は本来のボランテイーアとして存続せしめることとし、民生
委員が
地方議員選挙に立候補するのは差支ない、本法は日本赤十字社にも適用されるとの答弁でございました。
次に、本
法案の内容につきまして、同じく山下
委員から木村社会局長への質問に対しての局長の答弁の要点を申上げますと、
先ず社会福祉
審議会につきまして、これを
設置する必要があるのか、ただ名目的のものならば無意味である、
設置するとすれば権威あるものでなければならぬが、如何なる事項を
審議するか、又児童福祉
審議会、身体障害者福祉
審議会等との関係如何との質問に対しまして、社会福祉
審議会は、社会福祉事業全分野における共通的、基本的事項その他の重要事項を調査
審議する、本
審議会を中心として他の
審議会との調整を図り、できるだけ権威あるものにいたしたいとの答弁がございました。
次に、福祉に関する
事務所につきまして、福祉に関する
事務所は、都道府県及び市のみならず町村も
設置することができるようにな
つておるが、その結果濫設して複雑化する慮れはないか、又
事務所の長に保護の
決定権がないのは甚だ遺憾に思うがどうかとの質問に対して、町村が福祉に関する
事務所を
設置せんとする場合には、真によく運営し得る見込があるものに対してのみ都道府県知事は
設置の承認を與えるよう指示して、濫設、混乱を防止することとし、保護の
決定権は一応
事務所の
設置者に與えるが、これを
事務所の長に委任する形式をとらしめたいと思うとの答弁がございました。
又社会福祉
法人につきまして、本法により設立された社会福祉注入に対しては、災害時一のみならず、平時においても十分補助の途を講ずべきであると思うが如何との質問に対しまして、社会福祉
法人に対する補助を災害時のみに限定したのは関係方面の意見を勘案した結果であり、これにより憲法第八十九條の問題は一応解決したことになるとの答弁がございました。
次は共同募金の問題につきまして、共同募金の配分を受けた者は、受配後一年間はその事業経営に必要な資金を得るため寄附金を募集してはならないことにな
つているが、これはその配分金が事業経営に十分であることを前提とするもので、実際は配分金は僅少で、事業経営に不十分であるから、この
規定(第八十一條)は不当だと思うが如何との質問に対しまして、これは共同募金の性質上一応かように
規定したので、若し自発的に寄附を申出る者があれば、これを受入れることは少しも差支ないとの答弁でございました。
次に社会福祉協議会につきまして、社会福祉協議会の下部組織について何らの
規定なきはどうか、又
更生保護事業は社会福祉事業から除外してあるにかかわらず、社会福祉協議会の構成メンバーとなり、且つ共同募金の配分を受け得るものとしてある理由はどうかとの質問に対しまして、社会福祉協議会は地域社会の組織化を基調とするものである、共同募金会との関連上、都道府県を單位として立案したのであるが、町村も任意に協議会を
設置することができる、
次に
更生緊急保護法に言う
更生保護事業を社会福祉事業から除外した理由は、
更生保護事業は刑事政策的色彩が濃厚であるため、法務府の意見を尊重し、社会福祉事業から除外するを至当と認めたからであるとの答弁でございました。
次に石原
委員から、共同募金会の役員問題につきまして、共同募金の配分を受ける者はその共同募金会の役員にはなれないことにな
つておるが、これは或る程度認めては如何との質問に対しまして、木村社会局長から、従来の実績に徴し、利害関係の密接な者は一応共同募金会の役員にはなれないことにいたしたのである、共同募金を実施するには、あらかじめ社会福祉協議会の意見を聞くことにな
つている、本法施行後の結果を見て、将来考慮することにいたしたいとの答弁がありました。
その他、社会福祉主事の資格、養成及び処遇問題、本法施行に伴う財政問題その他についても
質疑応答が交されましたが、その詳細は
速記録によ
つて御覧願いたいと存じます。
なお、本
委員会におきましては、本
法案は日本におきましても最初の
相当重要性を持
つておる
法案でもございまするので、特に小
委員会を置きまして、本
法案の取扱方並びに
政府に対する要望事項等の
決定方を付託いたしましたのであります。で、小
委員会は、松原一彦
委員を小
委員長といたしまして二回開会し、
愼重審議の結果、
政府に対する要望事項を
決定して関係当局の所見を質し、且つこれが実現方を要望いたしました旨、小
委員長から
報告がございました。次にその概要を申上げます。先ず
政府に対する要望事項といたしまして、小
委員会は次のことを
決定いたしました
一、
政府は国民にあまねく社会福祉事業の重要性を認識せしめ、その協力態勢を確立するよう努めること。
二、
政府は社会福祉事業の振興に関する根本計画を樹立すると共に、
地方公共団体をしてその地区の
実情に即応した社会福祉事業振興計画を樹立せしめること。
三、不良社会福祉事業の粛正を断行すると共に、優良社会福祉事業の助成を図り、且つ公的社会福祉事業
施設の改善向上に努力すること。
四、社会福祉事業関係者の処遇並びに社会福祉事業功労者の表彰について特別の
措置を講ずること。五、社会福祉事業経営者に対する国又は
地方公共団体の事業委託費を大幅に増額すること。
六、社会福祉事業
施設に対する免税を更に拡大すること。
七、戦争犠牲者に対して速かに適切な方途を講ずること。
八、本
法案成立後適当な時期に左の通り條文を
改正すること。
(1)第二條第四項第一号を削除す
る 即ち
更生緊急保護法に言う
更生
保護事業は、この
法律における社会
福祉事業にこれを含める。
(2) 第六條第二項中「監督に属し、
その」を削除する。即ち第六條第二項において「社会福祉
審議会は、厚生大臣の監督に属し、」とあるが、文句が妥当でないから、この「監督に属し」という文句を削る。
(3) 第十三條第四項及び第五項を削除し、関係條文を整理する。即ち町村及び町村の一部
事務組合は、福祉に関する
事務所を
設置することができないことにする。
(4) 第五十六條中「緊急にこれを復旧する必要があると認めるとき」の次に、「又は、国若しくは
地方公共団体が、要援護者等に関する収容その他の
措置を委託したことによ
つて、社会福祉
法人その他の者の経営する社会福祉事業
施設の改善をする必要が生じたと認めるとき」を加える。即ち国又は
地方公共団体が要援護者等に関する収容その他の
措置を委託したことによ
つて、社会福祉
法人その他の者の経営する社会福祉事業
施設の改善をする必要が生じたと認めるときにも補助金を支出する等のことができるようにする。
(5) 第七十三條第三号を、「当該共同募金の配分を受ける者が役員又は評議会の総教のそれぞれ五分の一を超えないこと。」に改める。即ち共同募金の配分を受ける者が役員又は評議員に含まれないことが共同募金会の設立の認可の
條件にな
つているが、これを共同募金の配分を受ける者が役員又は評議員の総数のそれぞれ五分の一を超えないことに改める。
(6) 第八十一條を削除する。即ち共同募金の配分を受けた者は、その配分を受けた後一年間はその事業の経営に必要な資金を得るために寄附金を募集してはならないことにな
つているが、これを緩和して、特別の事情があ
つて第六十九條により都道府県知事の許可を受けた場合は寄附金を募集できるようにする。
以上が
政府に対する要望事項でございまして、これに対し木村社会局長からは、この要望事項に対しては、将来関係方面ともよく協議して、成るべく御趣旨に副うよう善処したいとの答弁がありました。
又社会福祉事業に対する
法人税の減免問題につきましては、大蔵省当局から、社会福祉事業に対する
法人税については、これを全面的に免除するわけには行かぬが、でき得る限り御趣旨に副うよう努力いたしたい旨の答弁があり、又
地方税の減免問題につきましては、
地方財政
委員会事務当局から、市町村民税の
法人の均等割については運営の面で善処することとし、附加価値税及び入場税の減免問題については、これは消費者負担の税である関係から減免困難とは思うが、研究善処いたしたいとの答弁がございました。この税の減免問題は社会福祉事業の育成発展に重大な関係がありますので、極力善処するよう特に強く要望いたしました。これが小
委員長報告の大要であります。そうして本
委員会におきましては、小
委員長のこの
報告を全面的に承認いたしました次第でございます。
かくて
質疑を打切りまして、
討論に移りましたところ、中山
委員から、
本案については小
委員長報告中の要望事項の実現方に関し
政府の善処を期待して原案に
賛成の意を表されました。次に、日本社会党を代表いたしまして私から、この
法案は、(1)社会福祉に関する責任は国家社会にあることを明確化し、且つ国、
地方公共団体及び民間社会福祉事業の分野をそれぞれ明白にしてある点、(2)社会福祉事業を二大別して、公私の協力を必要とする事業種目と民間社会福祉事業家の活躍に期待すべき事業種目とを画然区別し、且つ民間社会福祉事業に対する国又は
地方公共団体の補助の途を開いてある点、(3)従来一般
事務的に処理されていた福祉行政が、福祉に関する
事務所の
設置、専門職員の配置、指導訓練の制度等により一段の発展を期することとし、且つ地域社会を基礎とする社会福祉関係者の協議会が組織されて協力態勢を整えた点、(4)共同募金を法制化してある点等々、その構想は時宜に適したもので、社会保障制度の一環をなす社会福祉部面の公私の活動組織を確立し、その活動の一歩前進を促すべき
法案といたしまして、賛意を表するものでありますが、まだまだ完璧なものとは言えない、
政府はよろしく小
委員長報告の要望事項の実現方に関し最善の努力を拂うべきことを要請いたしまして、
本案に
賛成する旨を申述べた次第でございます。次に松原一彦
委員は、小
委員長報告中の要望事項実現方その他に関し
政府の善処を要望して、原案に
賛成の意を表せられ、又谷口
委員は民主党を代表して、
本案のごとき重要
法案は最も慎重に
審議すべきもので、この意味において特に小
委員会を設けて
審議せしめたことは適当な
措置と考える、小
委員長報告中の要望事項の実現方を強く
政府に要望して原案に
賛成する旨を述べられました。
かくて
討論を終り、
採決いたしましたところ、
全会一致を以ちまして
本案は
政府原案通り可決すべきものと
決定いたしました次第でございます。以上御
報告申上げます。(
拍手)