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1951-01-29 第10回国会 参議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年一月二十九日(月曜日)    午前十時十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五号   昭和二十六年一月二十九日    午前十時開議  第一 常任委員長辞任の件  第二 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りいたします。堂森芳夫君から海外旅行のため三十日間請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。議席第五十二番、地方選出議員、広島県選出楠瀬常猪君。    〔楠瀬常猪君起立、拍手〕      ——————————
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、常任委員長辞任の件。  去る二十五日農林委員長岡田宗司君から委員長を辞任いたしたい旨の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、只今欠員となりました農林委員長選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  10. 小川久義

    小川久義君 只今農林委員長選挙は、成規の手続を省略して、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  11. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 小川君の動議に賛成いたします。
  12. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小川久義君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長農林委員長に羽生三七君を指名いたします。(拍手)      ——————————
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、国務大臣演説に関する件(第三日)。  一昨日に引続きこれより順次質疑を許します。前之園喜一郎君。    〔前之園喜一郎登壇
  15. 前之園喜一郎

    前之園喜一郎君 私は国民民主党を代表いたしまして、吉田総理大臣に対し、最も重要なる二三の問題について質問をいたさんとするものであります。  昭和二十六年の国際情勢はまさに戰争と平和の関頭に立つと言われるのでありますが、国連の平和へのあらゆる努力にもかかわらず、戰争への傾斜度が日々濃厚になりつつあることは見逃すことのできない嚴然たる事実でございます。我が国終戰後五年有半連合国支援と同情の下、国民忍従努力によつて、今や漸く独立国として立ち上り得る力を回復し、待望の講和会議も目前に迫り、特にダレス特使の来訪は一段とその機運を早めるであろうとの明るい期待を国民に與えつつあるのであります。併し一面、対立する二つ世界の激しい争いの中にあつて未曾有一大危機に直面しなければならないことは、誠に日本の避けがたき運命であることを痛感いたすものであります。ここにおいて我々は、内外事情を見極めつつ、愛国至情と親愛と協力とによつて、襲いかかる国難を克服し、祖国の再建を図らなければならないのであつて吉田内閣の使命は特に重大なりと言わなければなりません。  私は以下数項に亘つて吉田総理に質し、総理決意と真情を国会を通じて国民の前に披瀝されんことを強く要望するものであります。  先ず質問の第一は、マツカーサー元帥日本国民に寄せられたるメツセージ後段は、最悪の場合、日本憲法改正並びに再武装を示唆されたるものと総理はお受取りになつておられるか。若しさように御解釈なつたとするならば、これに対する吉田総理心がまえはつきり承わりたいのであります。マツカーサー元帥は本年初頭日本国民メツセージを贈られ、我々国民に新たなる感激と、決意と、而うして希望とを與えられたのでありまするが、特にその中で広く世界の視聽を集めたのは、むしろその後段にあると思われるのであります。即ちマツカーサー元帥は、「日本憲法国家政策の具としての戰争を放棄している。この理念は、近代世界の曾て経験した至高とは言えなくても最高の一つ理念を現わしており、且つ文明が維持されるべきであるならば、すべての人々は、いずれは信奉しなければならないものである。」と説き、「併しながら若し国際的な無法律状態が、引続き平和を脅威し、人々生活を支配しようとするならば、この理想が止むを得ざる自己保存の法則に途を讓らなければならなくなることは当然である。」と述べられた点にあると思うのでありまして、このお言葉は、実に国際情勢悪化に伴い、止むを得ざる場合は、戰争放棄を規定せる日本憲法改正も又あり得ることを示唆されたものと解すべきではなかろうかと考えるのであります。更にマツカーサ一元帥はその後に続いて、「自由を尊重する他の人々と相携えて、国際連合の諸原則の枠内で、力を撃退するに力を以てすることが諸君義務となるだろう。」と諭されておるのでありまして、このことは、実にこれまで元帥日本国民に寄せられたるすべてのものに曾て見ざる画期的な強力なものであると信じまするのであります。併しながらこの言葉の持つ内容が余りに微妙且つ深遠でありまするので、報道機関においても、各政党においても、解釈がまちまちでありまして、国民は大いに迷つておる有様であります。併しながら元帥が中段において日本憲法改正を示唆せられたるものであるとするならば、続いて以上の所見を述べられたことは、日本の再武装も場合によつては止むを得ずとの意思表示と見ることができるのではありますまいか。このことは講和会議後における日本のあり方と国民の覚悟に重大なる関係があるのみならず、我が国ポツダム宣言受諾によつて武装を解除せられ、且つ将来戰争のための再軍備を禁ぜられているのでありまして、たやすく論議すべきにあらずと考えまするが故に、質問冒頭において、吉田総理の御見解と、これに対するお心がまえを承わつて置きたいのであります。  第二に総理にお尋ね申上げたいことは日本自衛の問題であります。自衛問題はこれを自衛権と具体的な自衛権手段に分けることができるのでありますが、目下占領下にある日本といえども自衛権のあることは論議の余地はないと存じます。自衛権は、国際法上の解釈を待つまでもなく、国を保つ基本的な権利であるからであります。併しこの自衛権性質内容範囲等については、おのずから異論の起り得ることは当然でありましよう。その議論の主なるものの一つは、日本自衛権憲法第九條の制約を受けるかどうかという問題であります。某氏は去日、毎日新聞紙上に、「武装するも天賦の権」と題する論文を寄せられて、賛否両論が大きく波紋を画いているのであります。某氏所論を要約いたしますと、先ず憲法第九條第一項の武力行使の放棄は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄するのであつて日本が持つ自衛権を否認したものでもなく、又自衛権に基く抗争を排除したものでもない。戰力を保持しないというのは、絶対的ではなくて、侵略戰争の場合に限る趣旨である。それ故に日本自衛権力強化するのは必ずしも憲法の修正を必要としないと説いておるのであります。ここにおいて、いわゆる某氏自衛力強化とは、日本の再武装を意味するものであることは文意の示す通りであります。この解釈論特異性のあるものでございますけれども、これに対する有力なる反対設もあり、中には政略解釈であると反駁しているものも見受けられるのでありまするが、この條文解釈上明確を欠いており、疑義のあることは見逃せないのでありまして、国際情勢悪化により、連合国の示唆と承諾従つて自衛のために将来再武装を行う必要が起つた場合、憲法第九條が人なる力を持つことは申すまでもないところであります。十分研究しなければならないと思うのでありますが、この際、重大なる問題の一つとして、政治の責任者たる吉田総理の御見解を承わりたいのであります。  次に、吉田総理は、実際問題としての祖国自衛について如何なる政策をお持ちであるか。その内容方法等について承わりたいのであります。吉田総理は、国際情勢に対して、施政方針演説の中においても、極めて楽観的態度を示され、国の自衛問題にしても明確なる発言を避けられたようでありますが、たとい、これが政略的な御答弁で、総理真意でないといたしましても、時局重大なる今日でありまするから、国民心理総理の一挙一動によつて動くことば当然でありまするので、総理が余りに楽観的であられると、国民は一時の安心に走つて国際時局と逆行するような結果になる虞れがありますので、速かに国民の前に、従来の頬被りを取去られて、堂々と御信念を披瀝されるべきものであると私は固く信ずるものであります。  今日、日本自衛強化は、その内容手段方法は別といたしましてもはや議論の域を脱して、直ちに実行に移すべき時期に達しておると私は確信いたします。然るに吉田総理は、これまで中共に対してもその実力を過小視しておられ、又中共がなぜ北鮮援助の挙に出たかということについても、それが直ちに世界革命戰で一部であること、及び中共朝鮮介入をあえてした目的がむしろ日本にあるのではなかろうかという見方に対しても、どの程度の考慮をお拂いになつているか。国民は大きなる疑問を持つているのであります。伝えられるところによれば、中共はすでに日本侵攻するという風評をばら撒いておるようでありますが、一方では日本人の手によつて日本を解放するとの宣伝も行われておるのであります。これは或いは單なるデマで、総理の言われる通り神経戰を狙つておるのかも知れませんが、さりとて日本国民は決して無関心であつてはならないと私は信ずるものであります。更に、中共朝鮮の背後にあつてソ連が強大なる軍事力を持ち、世界政府の達成をもくろんでいることは、定評のあるところであります。西欧においても二つ世界は激しく対立して、ソ連西欧侵攻は單に時の問題と考えられておるようであります。即ち今日の国際情勢は、各国の平和への努力にもかかわらず、第三次世界戰争の危險は漸次増大しつつあることは争われない事実であると私は考えるのであります。かくのごとき世界情勢の下において、今日のごとく日本が無防備に等しい状態であることば許さるべきことではないのであります。もとより日本連合国によつて十分なる安全保障を受けるでありましようが、日本みずからも、連合国承諾支援の下に、国民の正しき判断によつて自衛強化を講ずべきであります。我が国民民主党は、昨年十二月二十六日、外交対策委員会において、自主的自衛力強化国際連合憲章則つて安全保障の確保という基本方針を決定いたしまして、その実現を期しておるのでありますが、自衛問題に関しまして総理の徹底的な御所見を承わりたいと考えるのであります。  第三に、私は国内治安対策について、政府は、騒擾動乱予防鎭圧に万遺憾なきを期するために何らかの措置を講ぜらるる御準備があるか否かについて、総理にお伺い申上げたいのであります。総理施政方針演説の中でも、治安上何ら憂うべきものはないと、甚だ楽観的な御意見を述べられたのでありまするが、これは全く反対であります。我が国は外からの侵攻に備えるための自衛力強化の必要があるだけでなく、騒擾動乱等がいつ勃発するかも知れないということを十分に考えて置くことが必要でありまして、不幸にして内外相呼応して暴力的破壊行為が企図されるならば、一瞬にして国内は暗黒となるのではないかという、最悪の場合を憂慮しておる国民も決して少くないのであります。我が党は当面の対策として、特定有事の際、騒擾動乱予防鎭圧、警備、情報收集等に遺憾なきを期するために、これに関する国家非常事態宣言法及び特設民間防衛隊法とも言うべきものを制定して、具体策を講ずる必要のあることを考慮いたしておるのでありまするが、この際、総理の本当の治安に対するお気持を承わりたいのであります。  第四に私は講和問題に関して質問をいたします。総理はその施政方針演説の中に、講和機運を高めつつあることは、終戰以来我が国民の独立を思う熱誠と愛国至情であり、これを了解せらるるマツカーサー元帥の終始変らざる好意ある努力の結果であると述べられたのでありますが、極めて同感であります。それ故に国民は、講和に臨むに当りましては、元帥の志を十分に体得いたしまして、極めて謙虚で、いやしくも国際時局に便乗的な思い上つた態度があつてはならないのでありまして、謙虚にして而も正しく統一せる国民世論を十分に推し進むべきであると存ずるものであります。講和問題についての私の質問は三つの問題に限定いたします。  そり一つは、我が国終戰後五年有余受諾いたしましたるポツダム宣言をすべての連合国に対して忠実に履行いたしまして、漸く今日に至つたのであります。このことは言うまでもなく敗戰国として当然のことではございますが、日本も又他日すべての国との完全なる講和を期待していたことは多言を要しないのでありまして、漸く講和機運の熟したる今日、日本の願望は一国も漏れなく日本講和條約を結んでもらいたいということであります。そのための連合国相互の協定を十分に遂げられたいという願いでございます。私がここに連合国のすべてと申しまする理由は、日本は個々の国に対してポ宣言受諾したるものでなく、連合国に対して受諾したるものと解するからであります。このことは昭和二十年九月二日、東京湾上において署名いたしました降伏文書冒頭に、「右四国ハ以下之ヲ聯合國ト稱ス」と明記されておることからも、さように解釈されるものと私は考えるものであります。今日各政党では、講和会議基本方針といたしまして、いろいろの政策を掲げておるのであります。社会党全面講和自由党の多数講和、而して我が民主党が止むを得ざる場合の多数講和等がその主なるものでありましよう。併し私をして言わしめれば、これら諸説は結果論であつて心がまえとしては無論必要でありまするが、今日の段階においては旗印をはつきりとすべきものではないと考えておるのであります。現にアメリカにおいては、対日講和に関する七項目からなる草案を作成せられて各国予備交渉をしておられるのであります。ソ連との間にも今なお交渉が続けられておるのであります要するに完全講和か多数講和かということは、一にかかつて連合国の対日講和への協議が調うか否かにあるのでありまして、日本意思によつてきまるべきものではなかろうと私は考えるのであります。それ故に、今日の国際情勢下、不幸にして多数講和に落ち着くといたしましても、これは日本希望でないことは勿論、又日本責任でもないと私は考えるのでありまして、外交問題については特に愼重を期せらるる吉田総理大臣が、今日軽々に多数講和を主張せられることは、誠に不可能と申すほかないのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)(拍手)  なお続いて御意見を承わりたいことは、ポ宣言受諾並びに降伏文書連合国との條約であるのか、一方的な片務契約的な性質を持つものであるかという点でありまして、これに対し両説あることは御承知通りであります。仮に後者なりといたしましても、少くも双方の意思の合致によつて成立しておるのでありまするから、連合国といえどもポツダム宣言内容に拘束せられ、その内容範囲において道義的に日本に対して履行義務があるものという見解が漸次強まりつつあるのであります。果して然りとするならば、完全に武装を解除せられた軍隊を各自の家庭に帰して平和且つ生産的な生活を営む機会を得せしめられることも、又連合国が一体となつて対自講和を行うことも、おのずから生じて来べきものと考えるのでありまするが、この点について総理の御見解を承わりたいのであります。  尚、総理は、講和会議後、我が国が真の独立国としてと述べられているのでありますが、総理は平素の御主張の通り、多数講和の場合も真の独立国家又は完全なる自主権の取得ができるとの御見解であるか。講和に参加しなかつた国々と日本との爾後の関係は多数講和によつて消滅して何ら残るものはないとの御解釈であるか。この点、特に詳細に承わりたいのであります。  その二といたしまして、私は現下の国際情勢下におけるところの対日講和は、平時における講和とは格段の相違があるということを申上げたいのであります。即ち我が国講和によつて東亜における平和な安定力ともなり、世界の恒久的平和に貢献しなければならないのであつて、そのためには極めて重大なる責任を負担することが予想されまするので、連合国にこの点十分なる理解支援を求め、日本自立的活動のできる、幅の広い、無理のない講和を結んでもらいたいと思うのであります。  その三として私の強く要請いたしますことは、千島、小笠原諸島、奄美大島沖縄等日本に帰属せしめられんことであります。これらの諸島は、朝鮮、台湾と事情を異にいたしまして昔からの日本の領土であり、住民もすべて日本民族であります。又これらの島々から日本内地に移住しておる者も頗る多数に上るのでありまするが、敗戰の結果、南西諸島のごときは、連合国の戰略上の都合によつて、三十度線を境にして南と北に嚴重に区別せられたのであります。終戰後、親兄弟の間においてさえ吉凶禍福に訪れをなすこともできず、たまたま三十度線を越えて絶えて久しい近親と相見えんとすれば、密入国者としての制裁を受けて逮捕せられなければならぬという実情に置かれておるのであります。吉田総理はこれらのことも強く念頭に置かれて、ダレス特使に対し、正しい国民の要望として十分に訴えられんことを切望するものでありまするが、講和問題に対する私の以上述べました点と、総理決意及び見通しについて承わりたいのであります。  私は最後に、総理自民連携推進目的が那辺にあるかについてお伺いしたいのであります。我が党は昨年来超党派外交を主張したのでありまするが、自由党は頗る熱意のない態度で、遂にこれが実現を見ることはできなかつたのであります。併し我が党は、今日の時局下速かに国民的意思の統一を図つて、少くも外交問題に対しては、社会党その他の会派も含めて、党を超越して講和受入挙国態勢を整えて日本自立百年の大計を誤まることのないようにという大方針を堅持して来たのであります。二十三日の吉田苫米地会談においても、我が苫米地委員長から強くこのことを主張せられたはずであります。不安と昏迷にさまよつておる日本世論を揺り起して統一するには、自由党の力のみでは不十分であることを、吉田総理は漸く自党されて、民主党協力を求められたのでありましようが、然らば政府みずからが謙虚なる気持熱意をもつて各党各派協力を求められるべきであると私は信ずるものであります。我が党が超党派外交を主張いたしまするゆえんのものは、一に国民が一人でも多く挙国態勢理解協力を持つことを願うのみでありまして、決して他意はないのであります。吉田総理は、祖国危機に直面する今日こそ、自由党の面子を顧慮することなく、又他党を毛嫌いすることなく、虚心坦懐であられることを国民もひとしく希望しておると私は考えるのであります。  なお、最後に附加えて申上げたいことは、自由党自民連携の動きは、ともすれば参議院民主党工作にあるごとき誤解を受けがちでありますので、(「そうだ、その通りだ」と呼ぶ者あり)十分にこの点を御留意の上、いやしくもかかる疑いの起らぬよう、嚴に自由党幹部を戒められんことを私は切望するものであります。  以上を以て私の総理に対する質問を終りますが、明確に答弁せられんことを重ねて切望いたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  私の施政方針において言い現わし所見楽観的に過ぎはしないかという第一問の御質問と思いますが、又私の施政方針において言い現わしました意見は私の真意を卒直に申したのではないのであろうかというお疑いのように考えますが、私がこの議会において申しまする意見或いは所見は、これは卒直に申しておるのであつて政略とか或いは特にためにするところあつて楽観を装つておるというようなことは断じてないのでありまして、客観情勢についての見方でありますが、私も現在の客観情勢楽観を許す或いは大したことはないと考えてはおらないのであります。これは私の施政演説その他を通じて御覧になつても、現在の状態が甚だ容易ならざるものであるということは卒直に認めておるものでありまするが、これが朝鮮動乱から延いて直ちに第三次世界戰争になるかと言えばそれはならないと申すだけであります。第三次戰争のごとき重大な、歴史においても若し起るとすれば非常に人類の破滅とか或いは文明破滅以上のような事態を起すこの第三次世界戰争が、そう容易に起るものではないということを、私は確信いたして申しておるのであつて、然らば現在の状態が容易ならざるものがないかと言えば、あると申すのであります。直ちに第三次戰争になるほど急迫はしておらないと申すのは、この第三次戰争を防がんとするがために国際連合その他が全力を盡しておるのであります。戰いは多くは不用意の間に起るのが一番こわいのでありますが、第三次戰争の恐るべきことを考えて、これに対して列国殊国際連合のごときは、あらゆる手段を盡し、あらゆる考慮拂つてこれを防止せんと努めておるのであります。即ち第二次戰争に対する防止の手段は、あらゆる方法を以て現に盡されておることは諸君承知であろうと思います。即ち不用意の間に第三次戰争が起らない用意があるものとすれば、第三次戰争が起るとしてもそれは相当時間のある問題であつて、早急に、朝鮮問題からして第三次戰争に発展をするということは私はないと断言して憚からないのであります。併用しこれは楽観ではないのであつて、事実、現在の状況を私は申すのみでありますが、然らば第三次戰争が起らないとすればどうなるか。即ち私の申す神経戰世界至る所において激化せられるであろう。現に我が国においても神経戰にかかつておるがごくき流言飛語は勿論のことでありますが、客観情勢に対する事態に対して、私よりも一層悲観論が横行しております。現に御質問の趣意もそこにあると思いますが、私の所見を卒直に申して、第三次戰争に直ちに発展しないが、併し神経戰は激化するであろうから、我が国民たるもの、その神経戰にかかつて、そうして方途を迷うようなことがあつては、国民として進む途を迷うようなことがあつては相成らんと申すだけであります。  マツカーサー元帥声明については、これは声明に対する私の見解はどうかという御質問のようでありますが、私はマツカーサー元帥声明は、その声明に示すがごとく、日本自衛権は大事である、自衛のためには決して国民としては心を許すべきものではない、自衛権を放棄することはないことば勿論のこと、自衛権擁護のためにはすべての力を盡せという親切なる忠告と私は考えるのであります。然らばこれに対してどう心がまえを持つかというお尋ねのようでありますが、私はこの声明に対しては、マツカーサー元帥の好意に対して感謝をいたすと共に、いわゆるマツカーサー元帥が想像せられる最悪の場合は未だなお起つておらない。最悪の場合において処するべき途は元帥の言われる通りでありましようが、その最悪状態は未だ現出いたしておらない。併しながら将来現出した場合はどうか。で、その場合において政府は善処いたすと申す以上に、今日においてあらかじめ申すわけには行きませんが、併しおのずから途があるものと考えます。  再軍備論に対しては、しばしば私はこれに対して国会内外において申しておりますが、再軍備論は今日においては日本憲法の精神に基いても考えをいたすべきものではないのみならず、現在敗戰後未だ年月を経ない日本において、再軍備をいたすだけの力のないという現実の状態は、これを認めて行かなければならぬと考えるのであります。故に再軍備論については軽々しく論ずべからざるものなりと私は申すのであります。  中共の介入或いはソ連についてのお話でありますが、中共介入の、朝鮮問題に介入した真意は私は存じません。又これはいずれの国も問題と現にいたしておるのであります。何が故に中共朝鮮問題に介入いたしたか、これは世界がこれを疑問といたしておるのであります。従つて私においても、この趣意を以てこの意思を以て介入したということを断言するだけの資料を持つておりませんが、併し今日の新聞或いは最近の新聞等において御覧になる通り朝鮮における中共軍の進撃の度合は、漸次現在においてだんだん緩やかになつているということは事実であろうと思います。又その背後におけるソ連の勢力如何、これも私は存じませんが、併しながら新聞の伝うるところにおいては、ソ連が相当の力を以て援護しているというように聞いておりますが、私においては何らのこれに対する、これを証明する事実は存じません。  国内治安状態についても甚だ楽観に過ぎるではないかというお話でありますが、現在のところ、現在の警察組織及び警察予備隊の組織を以て、現在日本国内治安に対して備うるだけの力は十分持つつている。私はこの警察力に対しては何らかの心配を持つておりません。又現在においていろいろ流言飛語はありまするが、併し事実としては何ら起つておらないのであります。又地方擾乱その他朝鮮人の問題とか、共産党の問題とかありまするが、これも現在においては、或いは少くとも昨年の状態よりは、現在は、甚だ平静とは申しませんが、併しながらその憂いはよほど減退しつつあるものと私は考えます。  次に全面講和論でありますが、これもしばしば私は申しておりますが、全面講和ができれば誠に結構なことであります。又我々は全面講和を望んでやまないのでありまするが、併しながら全面講和に応じない国がありとするならば、これは如何ともできないのであります。故に成るべく多くの国と講和状態に入つて日本独立を確かめる。日本独立を早める。すべての国が全面講和をしない間は日本国は如何なる国といえども講和をいたさないということは、国民の要望するところでもなければ、又いたすべきことではないと考えまするから、私は全面講和希望いたすことであるけれども、これに応じない国があれば如何ともできない。いやしくも日本と平和状態に入りたいという国が一国でもあれば、一国と平和状態に入り、それが多数になれば誠に結構である。事実できないことを強いるよりは、成るべく早く一国といえども独立の……平和の状態に入つて、そうして日本独立を回復いたしたいというのが私の念願であります。  超党派外交についてのお話も、これ又私が絶えず申していることでありますが、趣意は誠に結構なことであり、得べくんばそれが実現希望いたすのでありますが、併し超党派外交協力しないと申すか、一緒にならない、協力しないという政党があれば、是非とも超党派外交に入るようにと強制いたす方法はないのであります。又超党派外交ができないからといつて、この講和外交問題を等閑に付しているわけには行かないのであつて、いやしくも我我といわゆる憂いを同じうし、志を同じうして、そうして一日も早く独立を回復したいという政党があるならば、これと手を携えて行くの、これは常識であると考えます。御指摘のようなこの超党派外交に対する反対が即ち自民提携の裏であるとお考えになるならば、これは邪推であつて、我々の考えておらないところであります。講和問題に関しまして、ポツダム宣言なるものは連合国をも束縛するかというようなお尋ねのように考えまするが、これは曾つてこの国会のここにおいて私が言明いたしました通りポツダム宣言によつて、戰勝国、連合国は束縛せられるのではない。これは日本国に対する声明であつて、その声明日本国においては守るべきであるが、塾舎国としてはこれに対しては道徳上の義務は負うが、併しながら法律的に束縛を受けるものではないということは、トルーマン大統領の言明しておられるところであります。又講和ができた後において、占領中においてできたいろいろな法律その他はどうなるかというお尋ねでありまするが、これは占領の必要上こしらえた法律もあるでありましようし、制度もあるでありましようが、占領がなくなつた後において、その占領を前提とする法律が自然消滅するのは当然のことであり、如何なるものが占領の目的のためにできたか、或いは占領の必要上できたかということは、講和條約の場合に自然決定せられることと思います。  領土の問題についてのお話でありますが、これは私は前之園君の御希望のように、私もその通り考えますが、これは講和條約の内容をなす主なるものでありまするから、これに対しては私の所見は申し控えます。  大体以上のことを以て御質問のお答えといたします。(拍手)     —————————————
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 羽仁五郎君。    〔羽仁五郎君登壇拍手
  18. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ここは参議院であります。衆議院の重大切実の使命とは又異なつた重大高遠の使命がここにあります。今日の境涯に立つて我が国民はこの参議院を通じて、如何なる深い、如何なる真率の問題について、我が首相の高邁なる所見を聞きたいと願つているか。ひたすらここに思いをいたして私が只今我が首相に向つて伺いたいことは、端的に、そもそも我が首相は、今日、世界及び我が国の民衆、老若男女、なかんずく直接に青年を脅かしておるところの最大の暗雲、戰争か平和か、この深刻な不安に対して如何なる信念に立つておられるのか。我が首相は内心の信念において戰争に賛成か反対か。ただこの一点であります。(「わかり切つたことではないか」と呼ぶ者あり)我が首相は、何らかの意味において戰争に賛成されるのでありますか。それとも飽くまで戰争反対し、防止されるのでありますか。この点について只今吉田首相の明確なる信念を伺うことができれば、国民にとつて大いなる幸いであり、又みずから決意を新たにすることができましよう。全国民の生命に対し責任を有せられる首相が、この緊迫の今日、戰争か平和か、この根本問題について端的なる所信を披瀝せられる勇気を持たれると信じます。そうしてこれと不可分に関連して、現在の世界及び我が国民の最大の問題及び不安となつている原子爆彈使用の問題について、我が首相は内心の信念において賛成の意向を持つておられるのか、反対の意向を持つておられるのか。世界及び日本の置かれておる現状において、而も我が日本の首相が良心と節操とを以て断然として所信を述べられることができるならば、その内外へのリーダーシツプにおいて、これは決してその意義が小さくないと思うのであります。  吉田首相兼外相が最近それぞれの機会において明らかにされた所見は、確かに国民に一脈の光明を與えようとしております。強制的なる国論統一は民主主義に背くと首相は明言した。更に最近、首相は凡百の俗論に抗して、敢然として再軍備反対し、国を守る最大の力は武力にあらずして民心にあることを喝破され、曾つてその所信と節操とを以て、あえて縲紲の辱しめをも忍ばれた吉田現首相は、必ずやこの再軍備反対の信念として内外に與えられた印象に対しても、如何なる眼前の事態の変化があろうと、如何なる種類の圧迫があろうとも、その節操を守られるものと信ずることができるならば、今日の世界に、この首相を有する我が国民にとつて、これより大なる幸福はないでありましよう。(「その通り」と呼ぶ者あり)アメリカの軍部の要路の一人が、吉田首相の肚はわかつておると言われたとか、或いはこれは一種の取引であるとかも伝えられておりますが、我が国民は首相の言明がそのようなものとは信じたくないでありましよう。  次に第三に、この参議院を通じて、この際、現在の国際情勢について我が首相兼外相の認識を質したい。占領下にあるとは言え、講和を要望する我が民主主義日本の首相兼外相は、現在の国際情勢を如何に認識しておるか。言うべきことを言うことは許されることであらねばならぬのみならず、国際的良心の要請であります。認識の不安或いはあいまい、又は含むところがあるというような疑惑を受けらるべきではありません。具体的に申せば、我が首相兼外相は、現在の国際情勢におけるイギリス連邦及びなかんずくインドの外交上の努力を如何に認識しておられるのでありますか。現に、本年一月九日、英連邦首相会議の対日講和方針についても、日本一つの大新聞は「中ソを含む会議」という標題で報道しておる。ところが他の一つの新聞は「中ソを除いても推進」と標題しておる。事実は、英連邦首相会議は、第一に全面講和を要望し、第二に、その際、中共がまだ完全に承認されていない場合でも中共の参加を要望し、第三に、以上の方針が困難な場合、草案の準備の進行を承認するとし、但しその際、中ソがあとから参加することができなくなるような決定を行わないとしたのであります。吉田外相の下にある現在の外務省の一部には、或いは曾つてのミリタリズム專制独善への協力を今又別の形で続けようとするかの疑惑を受けておる向きもないではない。外相は外務当局のエチケツトのみならず、その外交上の識見の向上にも留意されておるでありましようが、官僚独善外交や二つ世界の対立などという大雑把な議論で民主主義日本講和問題を担当されては、国民は不安に堪えません。現在イギリス連邦の外交政策において、対日講和につき、常に全面講和の要望とそのための努力が続けられている事実を、吉田首相は十分認識されておられるのでありましようか。そうして当面、全面講和が不可能の場合にも、中国又ソ連がこれに参加することができなくなるような決定は避けねばならないとする英連邦の外交政策における終始一貫の態度を、我が首相は如何に認識し評価しておられるのか。次の戰争のことを考えて結ばれるような講和講和ではないとは、カントが永遠平和論に述べた不朽の真理であります。全面講和はアカデミツクに成立するのみならず、現実論として、現にこの十二月二十二日にワシントン電報は、インドがアメリカに向つて、対日講和中共の参加が必要であると通告し、対日講和から中共が除外されるならば、それはアジアの平和と安定とに何らの現実の効力がないと警告している。ワルター・リプマンはこの八日のニツポン・タイムス紙上に、近来アメリカは国際外交上に形式上には国連の多数の支持を受けているが、事実上は孤立状態に陷りつつあり、欧洲諸国も形式上の承認の下に深い無言の保留なしではない事実を指摘しています。その後アメリカは中共非難案を單独で提出されました。我が吉田首相兼外相は英連邦の対日全面講和のための努力を全く無価値として無視されるのでありましようか。少くとも中国又ソ連の参加ができなくなるような決定をこちらから先に決定し、こちらから扉を閉ざすようなことは避けなければならないとする英連邦の原則的方針を、我が首相兼外相は無視してよいと考え、場合によつては、中ソのみならず、英連邦も無言の保留なしではないような決定でも、早いほうがよいとお考えになつていますか。深甚の関心を以て所信を伺いたいのであります。  現在の国際情勢におけるインドのネール首相の不屈の努力に対して、我が国民は、もとより、まだ独立なき我が国の首相がこれに賛成することも反対することもできないということは知つております。けれども、たとえ、まだ独立していないとはいえ、講和の重大問題を前にして、日本の首相兼外相が、アジアの問題は、アジアの現実なかんずく中共の現実を無視して決して平和の確保の方向に解決され得ないとするネール首相の信念と努力に対して、何の関心もないのか。このことを知りたいと考えているのです。それとも最近のフオーリン・アフエアーズ誌寄稿に対して、ワシントン外交筋では、吉田首相がソ連及び中共を徒らに刺激すると見る向きもあつたと報道されていますが、現在日本の首相兼外相の真意か或いは性癖かにそのようなことがあるのでしようか。現在の至難の国際情勢の下にあつて、我が首相兼外相が、自己の性格や党派的主観のいわゆる世界観を外交政策と混同して、国民及び世界に不安を與えられようとは私は信じたくないのであります。  第四、再軍備の問題に関連して。首相は、再軍備は国際的疑惑を招き、国民負担の堪えないところだ、自衛の根本は国民の民主主義的愛国心にあると見事に結論されました。そうしてこの結論をたびたび繰返されましたが、この結論に到達された根拠を更に詳細に知りたいと国民は考えている。第一に国民は、如何なる意味において国際的疑惑があることを首相は認識しているのか。まさか形式上のことだけを考えておられるのではあるまいが、この点を知りたいと考えております。先日のオーストラリア下院においてスペンダー外相は、日本に対し、早期講和希望されるが、併しその際、日本軍国主義の復活には飽くまで反対すると切言され、日本の軍国主義、帝国主義が、アジア及び東南アジアを犯罪的暴力によつて支配しようと計画し続けていた当時からまだ五年の短かい年月しか経つていないという事実をたやすく忘れることはできない、この短期間に、あの猛威を逞しくし、若し阻止されなければ更にどのくらいの暴虐を遂行したかも知れない日本の侵略主義を可能ならしめた背後的又基本的の諸勢力がすでに全く消滅したと信ぜよとは、如何なるオーストラリア人にとつても余りに過大の要求ではないか、こう述べて、日本における軍国主義の復活の危險に対しては最も嚴重な監視を必要とすると断言されています。然るにニユース・ウイーク誌はこの一月八日号に、日本の再軍備はすでに七万五千の警察予備隊を以て開始されていると報道し、次に続いて十五日号には、ニユース・ウイーク誌のパケンハム東京支局長が、セミ・アーミイ、半ば軍隊としての警察予備隊は中外に不安を感じさせている、これは変装をしたる軍隊ではないかと報告し、又シカゴ・デイリー・ニユースのカイズ・ピイチ特派員は、予備隊を参観して、これは警察ではないと報告しています。更に最近増原警察予備隊本部長官が新聞記事写真の事前検閲を命じ、日本新聞協会会長はこれに抗議している。吉田首相はみずから警察予備隊の最高司令官であるというふうに言明されましたが、予備隊の軍隊化に賛成されているのでありますか。又USニユース・アンド・ワールド・レポート紙の十二月十五日号には、旧日本軍部の最近の活動について報道し、再軍備の代償として、朝鮮、台湾、満洲に対する要求についてまで報道しております。驚くべきことである。  再軍備国民負担に堪えないとされたことは、国民の重税にあえぐ生活の苦痛に対する一片の同情心の発露として国民の銘記するところでありましよう。日本をヴアキウム、真空状態に置く危險とか、自衛権国際法論なども述べられておりますが、いずれも原子爆彈発見以前の議論で、今日国民の重税によつてみすぼらしい軍備又は警察の軍隊化などを図ることが、却つて相手を挑発し、進入の契機を與えることは、現実の教訓が眼前になかつたでありましようか。イギリスの有力紙二ユー・ステイツマン・アンド・ネーシヨンは、南鮮は国費の過半を警察と軍隊とに使用し、国民生活の水準の低下を顧みず、民心を失つていた事実を指摘しています。西ドイツの再軍備についてリプマンが、これは安全の保障であるよりも、非安全、即ち危險の保障となる虞れがあるとし、挑発の危險を指摘しています。ネール首相、日本の再武装日本の非武装よりも遙かに大なる世界平和の危險であると声明しています。且つこの十二月二十二日、ワシントンにおいて、インド大使マダム・パンデイトは、ダレス氏に対し、いわゆる対日七カ條草案に含まれているいわゆる安全保障関係の條項には、日本の主権をヴアイオレートする、これを侵犯するものがあり、日本に主権を承認しようという講和の根本と自己矛盾していると警告されています。  最後に、国民が説教されることなく、みずから自発的に、この国を愛し、擁護し、侵略に対して抵抗しないではいられないような希望を感ずるためには、政府としては、失業対策、社会保障、結核対策など、広く社会政策において認識を一新される緊急の必要を感ぜられないのでありましようか。  以上、戰争か平和か、我が政府政策の根本原則を知りたいと考えている国民のために、親切のお答えを願いたいのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  戰争と平和といずれを愛するかというような御質問のようでありますが、私は勿論のこと、日本国民は、戰争は好まない。平和のために、その擁護には飽くまでも盡す、平和の擁護に徹底する意識があるということを私は毫も疑つておりません。(拍手)又原子爆彈についてのお尋ねでありますが、現に原子爆彈を使うか使わないかというような現実の問題がないのでありますからして、お答えはいたしません。  国際情勢について、英連邦首相会議におけるネール首相その他の所見に対して何と考えるか、無関心でおるかということでありますが、会議の経過については何ら私は政府として正確なる報道を持つておりませんから、これに対して何らの批評を加えたり若しくは所見を申述べますことは差控えます。  又私のフオーリン・アフエアーズに寄稿いたしました論文に対して、外国においてかれこれの批評があつたそうでありますが、これは私において責任を負いません。  再軍備について、外国の新聞等がいろいろ書いている、こう書いている、ああ書いているということでありますが、私として外国の新聞の記事に対して責任を負うことはできません。又警察予備隊は、これは軍隊ではないのである。再軍備の始まりでないということはしばしば申しておるのであつて、又その考えで以て当局は警察予備隊なるものは一に治安の維持のために必要なる装備を行い、又訓練を行いつつあるのであります。これは断じて再軍備のためではないのであります。(拍手)     —————————————
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  21. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は労働者農民党を代表いたしまして、吉田首相の施政方針演説及び池田大蔵大臣、周東安本長官の経済演説に対しまして、御質問をいたしたいと思うのであります。  先ず第一に吉田総理に対しまして、朝鮮動乱及び国際情勢の見通しにつきましてお伺いしたいのであります。と申しますのは、インターナショナル・エコノミツク・サーヴイスの社長アルバーという人が、こういうことを言つているのであります。これまでは日本の経済を見通す場合、ドツジ・ラインを眺めておれば大体よかつたけれども、最近起るかも知れない世界大戦或いは再軍備の情勢を考えると、ドツジ・ラインはすでに第二義的になりつつある、国際情勢を見なければ日本の経済の動向がわからないということをはつきり述べております。これは軍に経済問題だけではなく、講和の問題も、安全保障の問題も、再軍備の問題も、又我々がこれから審議しようとしている二十六年度予算の問題も、今後の朝鮮動乱の動向及び国際情勢がどうなるかということに対してのはつきりした認識がなければわからないのでありまして、今後我々にいろいろな予算を中心として法案の審議が課せられるのでありますが、その前に先ず政府朝鮮動乱及び国際情勢についてどういう見通しを持つておられるか、これについて確かめて置きたいと思うのであります。  この前、第九国会において吉田総理は、朝鮮事変は国連軍の適切果敢の処置によつて事変の収束が図られつつあつた、本日マツカーサー元帥みずから陣頭に立つて全軍を指揮し、北鮮の戦闘を遂に終結せしめんとする趣きである、これにより朝鮮全土の平和回復も速かに期待され、慶賀に堪えないと述べておられます。こういう認識の下に予算及び経済政策を行いまして、私は少くとも五千万ドルは損をしてしまつたと思うのであります。貿易計画その他について非常に立ち遅れておる。例えば五億ドルの外貨、これに対して一割外国の物価が上つてしまつた。その後においてこの買付けを行なつたならば、少くとも私は一割損、五億ドルに対して五千万ドルは約百八十億円であります。非常に大きな浪費をしてしまつたと思うのでありますが、この意味においても、貿易計画その他の経済政策を立てる上においても、この国際情勢の認識、特に朝鮮動乱、今後どういうふうにしてこれが収束されて行くかについて、吉田総理の御所見を伺いたいのであります。先ほど来朝鮮動乱は決して大戰にならないという御意見でありましたが、それならば、これを裏を返して言えば、朝鮮動乱を中心として、ソ連、中国、英米等が協調できるか。恐らく総理は第三次戦争にならないとおつしやるならば、協調の可能性がある、協定の可能性がある、平和的解決の可能性があるとお信じになつておると思うのでありますが、この点について御所見を先ず伺いたいのであります。  第二は安全保障の問題であります。先ほど羽仁君も言われましたが、吉田総理が再軍備について、特に安全保障に関連して、再軍備について軽々に口にすべきでないと言われたことについては、我々は全く同感であります。そこでお伺いをいたしたいのは、武力によらない安全保障とは具体的に何であるか。総理国民独立自由に対する情熱であり、独立自由、愛国的精神の正しき認識とその観念でありますと、施政方針演説で述べられております。併しそれだけで安全保障ができるでありましようか。私は第三表戦争が起つてしまえば、日本の経済の自立化も自主性もすつ飛んでしまう。あらゆる問題は、あらゆる計画は空中樓閣に等しくなつてしまうと思うのであります。従つて日本の最もよい安全保障の途は、第三次戦争を起させないということ、ソ連、中国、米英をして戦わないということ、これを避けるということ、絶対の平和に対して我々がこれを努力するということ、これこそが最もよい安全保障の途であると思うのであります。憲法の第九條によつて日本は再軍備しない、こういうことを言われておりますが、而も憲法の前書におきましてこういう規定があることは総理も御承知通りであります。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」これが第九條が出て来た根本であろうと思うのであります。従つて日本は平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我々の安全と生存を保持しようと決意したのです。従つて如何なる意味においても我々は武力を持つべきでないし、又それが羽仁君も言つたように、却つてこれが安全より承脅威になる。ドイツのカール・シユミツトは、半分の武装は十倍の破壊を伴うのであるということを言つております。そこで私は総理にお伺いしたいのであります。この英米及びソ連、中国を戦わせない、第三次大戦を絶対にこれを起させないという努力、これに対しては、イギリス労働党の前の書記長ハロルド・ラスキー氏は、最近の米ソの対立につきまして、これは不可避的に戦争になるのではない、第三次大戦はこれを避けられるのだ、これに対してはイギリスはその調停に立たなければならん、若しイギリスが調停に失敗しても、イギリス国民というものは人類の平和を熱願して努力したいという記録が世界の中に残るのであるから、イギリスはこの米ソの戰争を起させないように、世界の平和に努力すべきであるということをラスキー氏は言つております。又最近インドのネール首相の平和に対する努力、昨年十月三日の太平洋問題調査会において述べられたあのインド首相の、第三次戰争を起してはいけない、どうしてもこれは防止しなければいけない、こういう熱意に対しまして、首相はどういうふうにお考えであるか。この観点から考えまして私は首相に御質問したいのでありますが、第一に首相は、米ソを戰わせない、協調させる條件があるとお考えであるか、或いはないとお考えであるか。我々はあると考えておりますが、これは間違つておるかどうか。首相の御見解を伺いたい。又いわゆる単独講和は米ソの協調を却つて破ることになりはしないか。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうして第三次戦争に拍車をかけるような結果になるのではないか。この点をお伺いしたいと思います。更に又、総理は再軍備の問題について軽々に口にしてはいけないということを言われましたが、その半面において、池田大蔵大臣は本年一月十三日大阪駅での記者会見において、再軍備や再武装の問題が起つても、二十六年度予算には彈力性があるから、増税を行わなくてもこういう費用は賄えるということを言われたのでありますが、これは平清盛の衣の下(「その通り」「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)から鎧の袖を出しておるところの類ではないか。(拍手)頭隠して尻隠さずではないか。(「その通り」と呼ぶ者あり)一方では、口ではそう言いながら、実際においてそういう再軍備のための準備が伏在的に行われておるやに解される言動が、言葉がありましたが、この真相はどうなんでありますか。更に又周東長官は、国連協力方法として、例えば鉄鋼生産についても国内消費を削減しても国連に協力すべきである、こういうことを言つておりますが、こういう戦略物資を相手国に供給するということ、意識的に戦略物資ということがわかつていながら供給するということは、どういう国際法上の根拠に基いてできるのであるか。又そういうことは、世界戦争を起させないという努力と、これは逆の方向に行くのではないか。この点についてどうお考えでありますか。所見を伺いたいのであります。それから第三に、対日講和の意義について首相にお尋ねいたしたいと思います。首相は施政方針演説におきまして、「極東共産主義制圧の一勢力たるの期待をかけられつつある国際的環境にあるのであります。この内外の情勢は自然対日講和機運を促進して参り」云々と述べておられますが、この表現から見ますと、最近対日講和が促進されるようになつたのは、日本を極東共産主義制圧の一勢力たらしめんとしておる、そういうところにあるのであるか。即ち極東共産主義制圧を目的としたものが対日講和なのであるかどうか。私はこの言葉は非常に重大であろうと思うのです。一体制圧とはどういうことを意味するか。我々の感じでは、制圧と言いますと、何か武力を以てこれを抑えつける、我々はこういうような感じを抱くのでありますが、この言葉は、首相の再軍備はすでに不必要なる疑念を中外に招いておるという、そういう総理言葉と矛盾しはしないか。極東共産主義制圧の一勢力と日本がなるために講和を結ぶのでは、ますますこれは世界の疑惑を招くのではないか。米ソを戦わせない、全体の平和を我々は世界に確立する、そういうふうに我々が努力する方向と、これは矛盾するのではないか。一体この制圧ということは具体的に何を意味するか。我々は非常に不安であります。この点について総理の具体的な御説明を願いたいのであります。今進んでおるいわゆる対日講和は制圧の義務を持つものであるか。その制圧の義務に対する代償として講和が許されるものであるかどうか。そういう内容講和であるのかどうか。こういう点についてお伺いいたしたいのであります。  首相に対する質問最後といたしまして、国民生活の問題について質したいと思うのであります。首相は、施政方針演説におきまして、国民生活水準は向上しつつあると言われております。その向上しつつある、又改善されつつあると言われるその根拠はどこにありますか。これは首相が具体的に御答弁できない場合には、周東長官その他関係大臣からその根拠について私は伺いたいのであります。朝鮮動砧以後国民生活水準は下つておることば明らかであります。朝日新聞の昨年十一月二十日の世論調査によります「暮し向は去年とくらべてどうですか」という世論調査、「よくなつた」が一九・三%、「変らない」が二五・〇%、「悪くなつた」が五一・九%、「判断かつかぬ」が〇・七%、「わからない」が三・一%、明らかに生活は悪くなつておるという、これが絶対的に多数であります。又毎日新聞の世論調査、昨年十二月二十九日、「歳末の暮しを主婦にきく」と題して、「お宅ではこの年末は昨年とくらべて暮し向きはどうですか」という問いに対して、「楽になつた」が八・〇%、「苦しくなつた」が五二・五%、「かわらない」が三五・九%、「わからない」が三・一%、無回答〇・五%、この場合においても五二%が暮し向きが悪くなつたと回答しています。又東京都庁の調べによりますと、家計収支の状況は昨年四月から六月までは八%の余剰が出ている。これが七月—九月になつて五%に減り、十月は三%に減り、十一月は二%の赤字になつているのであります。家計が……。又安本調査によりましても、昨年四月、戦前の七九%にまで回復した国民消費水準はその後どんどん低下しまして、九月においては七一%、十月はCPSの統計の作り方を変えまして、ここで統計作成を変えて、そうして漸く七三%にしておりますが、四月の七九%には及ばない。はつきりと朝鮮動乱以後は国民生活水準は下つておる。にもかかわらず首相は、これは生活水準は向上したと言われる。周東安本長官は向上しているとは言いませんで横這いである……。横這いではない。はつきりと下つております。従つて若し向上しておる、横這いと言うならば、その根拠を示して頂きませんと国民は納得できないと思うんです。  次に池田大蔵大臣に御質問申上げたいのであります。先ず第一に、この予算編成の基礎となりました我が国経済の現状と見通しにおきまして、特に物価の動向について私は御質問したいのであります。蔵相の経済演説の中で、日本の物価が海外の物価よりも余計に上つていることについては注目すべきであるということを言われております。この点は私は非常に重大であろうと思います。この予算編成におきまして池田大蔵大臣は、こういう物価騰貴を予想しましてこの予算を編成されているかどうか。私はそうではないと思います。これは織り込まれておりません。昨年の十月頃の物価を二十六年度の予算を編成される基準にしている。(「その通り」と呼ぶ者あり)朝鮮動乱以後、安本の調べによりましても、この一月におきまして朝鮮動乱以後、卸売物面は四〇%上つております。これに対してアメリカ物価は約一〇%、一割であります。この物価統計はアメリカよりも日本の統計が三〇%も多い。高い。これは何が原因でありますか。この原因についてはいろいろあります。いろいろありますけれども、私はその一つとして、日本朝鮮動乱以後インフレの新らしい段階に入つたことが一つの原因であると私は考えております。アメリカと日本との物価の統計のとり方の遠い、或いは日本がアメリカよりマーケットが狭い、又物価の基準のとり方が違う等々もありましようけれども、通貨が、アメリカでは大体連邦準備券が二百四十五億ドル見当を維持しているに対して、日本は昨年一月の三千四百四十六億から年末には四千二三百億台になり、三〇%以上も通貨は膨脹している。この根本の原因が貿易インフレにあることは言うまでもないのでありますけれども、こういう意味で通貨膨脹を中心にして日本の物価が上り出している。日本は再び新らしいインフレの段階に入つたと私は考えておりますが、池田大蔵大臣はこの点についてどうお考えであるか。先ずこの点についてお伺いしたいのであります。毎日新聞の世論調査によりますと、「あなたは主婦として政府にいまどんなことをしてもらいたいと思いますか」という問いに対しまして、物価を引下げて生活を安定してもらいたいというのが三七・二%、減税が一八・五%、主食の増配が五・三%、主食価格の引下げが四・七%、給料の引上げ、遅配をなくすことが三・二筋、米価引上げが二・六%、主食統制撤廃二・二%その他一一・九%です。減税の要望よりも、物価を引下げて生活を安定してもらいたいという要望のほうが圧倒的に多い。これは最近朝鮮動乱以後における顕著な趣向です。その前は圧倒的に、税金が高い、まけてもらいたいという要望が多かつたのが、最近では物価を引下げてもらいたいという要求が多いのであります。これこそはインフレの段階に入つている明らかな証拠であります。この点を先ずお伺いしたい。  第二は、今後のインフレの動向についてお伺いしたい。池田大蔵大臣は二十六年度予算はいわゆる均衡予算であると言われておりますが、一般会計、特別会計、預金部の資金運用部及び政府関係機関予算をひつくるめて、これはむしろ統計において一千三百九十三億の政府資金の支拂超過になると思うのです。決して均衡予算ではありません。むしろインフレ予算であります。この点に一つの大きなインフレ要因があります。  第三には、終戦処理費、対日援助費の比較において、二十五年度より二十六年度においては終戦処理費のほうが対日援助費より遥かに多くなつて来ております。二十五年度においては、私の計算では、援助費が九百二十九億に対して終戦処理費が一千九十二億、二十六年度には援助費は四百八十六億に対して終戦処理費は一千二十七億、差引七百四億というものが終戦処理費のほうが援助費より多いのであります。これは明らかにそれだけ非生産的消費が多くなるということでありまして、これも明らかにインフレ要因であります。  第四には、海外のインフレの輸入であります。一ドル三百六十円の為替相場をそのまま維持しておれば、海外のインフレが高進すれば、これは、じかに日本に輸入されて来ます。この点について私は池田大蔵大臣に、海外のインフレ防止策として円価を切上げる意思がおありかどうか。このままにして置けば海外のインフレは日本に……日本は無防備でありますから、これは際限なく日本に波及して来ます。これに対する対策をどうするか。又政府の余裕金、この政府の余裕金が、今後の国際情勢如何によつて、例えば警察予備隊費用の増加等々に使われますれば、これは明らかにインフレ要因になります。従いまして私は、今後、朝鮮動乱を契機としてすでに日本はインフレの段階に入つておる。而も今後に今申上げたようなインフレ要因があるのであります。従つて日本の今後のインフレの動向は決して楽観できない。これに対して大蔵大臣はどういう対策をお持ちであるか。又一月十三日の大阪駅での新聞記者に対する談話としまして、これまで予算したくさんの蓄積をしておるから、警察予備隊或いは再軍備費用ができても増税を行わなくても賄えると言われましたが、その蓄積というのがどのくらいに上つておるのでありますか。又どういう所に、どういう会計にその蓄積がしまつてあるのでありますか。その蓄積のしまつてある会計のポケツトはどのくらいでありますか。これも又お伺いいたしたいのであります。  更に池田大蔵大臣に対する最後の御質問として、税の問題についてお伺いしたいのでありますが、詳しいことについては予算委員会或いは大蔵委員会において御質問したいと思いますが、二つの点をこの際お伺いしたいのであります。  それは、しよつちゆう問題になります税法上の減税と実際上の減税のことでありますが、大蔵大臣は緑風会の小林政夫氏の質問に対しまして、税法上の減税も実質上の減税も、学問上も実際上も同じことだという御答弁でありました。併しこれについては重大な前提條件があるのでありまして、若しその前提條件を大蔵大臣は言わないでこういう答弁をされましたら、これは国民をごまかすものであります。その前提條件というのは、物価水準が同じならばということであります。物価がどんどん騰貴してしまえば、税法上の減税と実質上の減税と違うことは明らかであります。例えば基礎控除を同じにして置いて、物価がどんどん上つて、賃金ベースが上つたときに基礎控除を引上げなければ、実際上増税になることは明らかであります。所律が殖えたから税金が殖えたのは当り前であると言われますけれども、それは実際上の増税であります。これを税法上の減税と実質上の減税とが同じであるということは、物価が動かないということであろうと思いますが、そうであるかどうか。或いは物価が騰貴しても同じであるかどうか。この点は重大でございますから明確に御答弁願いたい。  更に資本蓄積に関連しまして、大蔵大臣は、最近ややもすると資本蓄積に便乗いたしまして、合法的脱税を認めるがごとき方策を行わんとしております。総司令部のモス歳入課長は、最近この点について鋭く指摘しております。合法的脱税を認めるならば、そういうような減税は、たとえそれが資本蓄積に役立とうとも認めるべきではない、そういう提案は否決すべきであるということをモス歳入課長は言われております。更に租税の公平の原則にとらわれることなく減税を行うと言つておりますが、これこそはまさに民主的な財政を破壊するものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)民主主義の基礎は財政の民主化にあり、財政の民主化は租税の公平化にある。これを除いて民主主義はないのであります。従つて租税の公平の理論にとらわれることなくということは、これは民主主義を破壊するフアツシヨ財政になつて行くと私は思うのであります。この点、私は重大な発言であると思う。如何に資本蓄積が大切でも、民主主義の原則を曲げることはできないのであります。合法的な脱税を認めるような形において減税をしたならば、国民の租税に対する考えは非常に悪くなつて行くと思うのです。これは私は池田大蔵大臣の重大な失言であると思う。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この点は私は取消して頂きたいと思います。(「まさに危険思想だ」と呼ぶ者あり、笑声)  最後に周東安本長官にお伺いしたいと思いますが、時間がございませんので、要点を申述べましてお伺いしたいのでありますが、(「堂々とやれよ」と呼ぶ者あり)周東安本長官は演説の中で、日本経済の自立と発展のため必要な経済規模を拡大し、併せて国連に協力する態勢を推進すべきものであると言われていますが、これは具体的にどういうことなんでありますか。経済的に国連に協力する態勢を、これを推進するということは経済的にどういうことなんですか。具体的内容をお伺いしたい。これが第一であります。  それから、この経済演説の中で述べられております日本の経済の情勢につきまして、私は安本長官は実情を正しく伝えてないと思うのです。第一に貿易が非常に好調であると言われた。輸出は八億ドルを超え、輸入は十一億ドルを超えようと言われておりますが、これは金額から言つたことでありまして、物に換算しますとどうでありますか。安本長官の所で出されておる経済月報本年度の一月号によりますと、朝鮮動乱以来の物価の上昇を考慮に入れれば、輸出数量は前年に比し極めて好調であり、同時に輸入数量はむしろ前年を若干下廻つていると、こういうふうに報告されています。金額で言いますと、成るほど殖えているように見えますけれども、物から見るとむしろ減つています。減る傾向にある。これは重大であると思う。こういう私は国民を惑わするような報告はされたくはない。やはり実情は我々に今現在不利であつても、実際を正しく私は報告して頂きたい。従つて物の面から見て輸出はどうである、今後どうなる、この点についてお伺いしたい。  更に、生活水準は先ほど横這いと言われていますが、その根拠を示して頂きたい。又なぜ昨年の十月からCPSをお変えになつたか、何故にお変えになつたか。私はそう想像したくないのでありますが、この前もそうであつたのでありますか、この物価が上昇期になると統計操作が行われる。この改正が行われる。なぜ十月からCPSをお変えになつたのか。何だか我々はそう想像したくないのでありますが、政治的な統計操作が行われたのじやないかというふうな私はどうも疑念が起るのであります。この根拠について的確にお伺いしたい。そういう操作を行わない東京都の統計と、操作を行なつ総理庁の統計を見ますと、非常な違いがある。例えば衣料費なんかについては、東京都のほうにおきましては非常に上つておりますが、総理庁の統計では今度は下るようになつておる。それであるから、その点、疑念を持ちますので、明らかにして頂きたいと思います。  時間がありませんので、最後に一点だけお伺いしたいのであります。それは物価政策であります。一月二十三日の周東長官の新聞記者に対する談話におきまして、周東長官は、今後は従来のような低物価政策はおとりにならない、国際物価に鞘寄せして行つて、それで又物価が上るのを放任して賃金ベースもそれに応じて上げる、こういうことを言われております。新しい物価政策をとられる、これは私はインフレ要因の政策だと思うのです。先ほど申上げましたように、インフレ要因はたくさんあるのです。むしろそれは物価を抑えなければならない方向に経済政策を持つて行かなければならないのに、又物価と賃金と悪循環する方向に政策を持つて行くような談話が行われておる。この点は今後私は重大な問題だと思うのでありまして、この点について物価政策をどういうふうに持つて行くか。この点について私はお伺いしたいと思うのです。  なお、もう一つ最後になつて恐縮ですが、自立経済の問題ですが、この点についてたつた一つ伺いたい。周東長官は財政演説におきまして、昭和二十八年度において我々の生活水準を九〇%まで引上げると言われておる。併しながらその前提は、昭和二十五年度の国民生活水準は八〇%になることを前提といたしておる。ところがすでに国民生活水準は七〇%台に下つてしまつておる。それにもかかわらず九〇%に持つて行かれるというのは、これは途中において、朝鮮動乱以前にお作りになつた統計だと思うのですが、朝鮮動乱の影響を考えておられない、時間がなかつたので非常にそういう粗雑なあれでお出しになつたのではないかと思うのでありますが、その基礎が崩れております。(「たるいぞ」と呼ぶ者あり)基礎が崩れておる。又貿易の収支につきましても、安本で御計算のように、物価というものを、価格を離れて計算しますと、数量としてはむしろ輸入が減つておる。輸出も計画通り殖えていない。従つて自立経済を達成する一番重要な問題、貿易計画において崩れ、国民生活の水準確保においても崩れておる。こういう基礎條件が崩れておつて、二十八年度において九〇%に我々の生活水準を引上げることができるか。この点についてお伺いしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  朝鮮動乱及び国際情勢の見通しに関して、朝鮮問題から米英とソ中共と協調ができるものであるか、あると考えるかというお尋ねでありますが、外交当局者としては連合国間の関係について言及いたすことは差控えます。又米英とソ中共とが協調して第三次大戦を避けることが大事であるが、多数講和締結はこれを妨げやしないかという御質問のようでありますが、多数講和目的とするところは、米英とソ中共との協調を破るという、又第三次世界大戦争を惹起するためにいたすのではありませんから、私はその趣意には反しないと思います。  又対日講和締結の意義は極東における共産主義の制圧にあると考えるかと言われるが、これは今日の情勢は、日本が自由意思で自由民主主義の国家の中に入るものと考えて、その民主自由主義国家の勢力が日本が入ることによつて独立を回復することによつて勢力を増す、従つて共産主義の制圧になるであろうという考えから言うのであろうと思いますが、併しながらこれは共産主義を制圧することが義務であるか、対日講和義務になるか、講和條約の義務になるかならぬかは、條約の内容を見ておりませんから言われませんが、けだし思うに、義務付けられることはないと思います。その他については主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣周東英雄君登壇拍手
  23. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。  第一は、自立経済に関連して貿易に関する見通しが間違つていないかという御親切なお尋ねでありますが、間違つておりません。大体昭和二十四年には輸入が九億でありました。これに対して二十五年度は十一億ドルを見込んでおります。面してあなたの御心配になつておる点はとつくに織り込み済みでありまして、大体二十五年度上半期四億五千万ドル、これは従つて下半期における関係を六億五千万ドルと見て、計十一億ドル、面してこれに対しましては朝鮮事変以後における物価の上昇を二割程度に見込んでおりまして、それから数量的に言えば五億五千万ドルということになります。面して前年に比べて一億ドル数量の増はあると考えております。従つて十分この点についでは考慮を抑つております。  それから生活水準に関するお尋ね、これは御尤もであります。併し統計についての操作が特に特別な考慮を抑つて、上げるとかいうような目的改正しているのではありません。御承知のように日本の統計というものは、かなりまだ不備な点があります。あらゆる面について刻々によく改正する方向に向つて考えておるのであります。決してそういうふうな考え方で統計の改正はしておらないのであります。面して実際上においてお話を申上げます。二十五年度の六月は一九六、七月は一九一、八月が一九三、九月が一九五、十月が一九一というような恰好に大体消費者のCPSが動いております。従つて私どものほうは一応見ましてまあ横這いと、こういうふうに申上げたのであります。面してあなたのお話についても私は尊敬を拂つて聞いております。成るほど価格の上昇が一番問題であります。併しながら一番高く上つた方面ばかりをおとりになりますが、私どものほうで計算いたして見ましても、最近の情勢におきまして世界の国際物価の影響を受けまして、その相当部分の原材料が高くなつておりますので、上つておることは事実であります。面して平均が生産財について四割上つておるということは、統計の示す通りであります。その中にはウエートがある。稀少物資については六〇%以上も上つておるものもあります。その平均した割合が四〇%である。面してこれに対して一番我々の消費者生活に必要なところの消費財の騰貴は五%であります。そういうことはよくお考えになつて頂きたいと思います。従つて物価の上昇に対しては、絶えず私どもはこれに対する施策を考えておりますが、今のところ、そうびつくりするほどのことはない、かように考えております。  面して物価政策についてお尋ねであります。我々は決して高く上げることを言つておりませんのでありまして、先ほどお引きになりました新聞記者諸君との対談において私はそういうことを申上げておりません。今後における日本の物価は将来はどうなるだろうかというお尋ねに対して、国際経済に結び付いて必要な物資は相当原材料の輸入を仰いでおる。それは国際的な価格の影響を受けるから、だんだんと上昇の傾向を迫るであろうということを申しましたので、高く上げて、賃金を上げるとか何とかいうことは申したことはありませんから、はつきりとお答え申上げて置きます。    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  24. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えを申上げます。先の国会までは非常に大蔵大臣の政策はデフレ政策じやないか、こういう議論が多かつたのでありまするが、今回木村君からはインフレが危い、インフレ政策ではないか、こういう議論に変つて来たのであります。これは私は両方とも間違いでございまして、デフレで竜なかつたし、又今はインフレ政策でもありません。はつきり健全財政、均衡予算で行つておるのであります。(「嘘つけ」と呼ぶ者あり)面して只今貿易インフレと言われましたが、これは御承知通りに輸出が非常に増加いたしました。輸入がそれに伴わなかつたのであります。従いましてお話の通り通貨が八百億程度殖えております。これはやはり輸出増加と日本銀行の貸出に基くものであります。これをとめるためには極力輸入に力を注がなければなりませんので、財政演説につきましてもそのことを申述べておるのであります。減税もさることながら、物価の上らないことを望む。これは、この世論調査は非常に結構でありまして、我々も減税もやはり、物価も上らないように努力しておるのであります。  次に昭和二十六年度は千三百九十三億の支抑超過、どこに根拠があるのか私にはわかりません。いずれ又詳しい数字はお聞きしたいと思いまするが、只今のところは二十六年度は政府の収支はとんとんで行く予定であります。それは相当やはり輸入に力を入れなければなりません。  次に円価の切下げはどうか、こういう問題でございます。外国よりも日本の物価が非常に上つておるということを御心配になるのならば、円価の切下げは勿論やつてはいけないのであります。輸出が非常に殖えて輸入が伴わない場合には、円価の引上げをしなければならんということもありますが、これは只今のところ一時的の現象でございまして、為替レートの変更というものは全然考える必要はありません。このままで行くのが本当だと思います。  インフレの原因はどこにあるか——これは先ほど申上げましたように、輸入が輸出に伴わない貿易インフレの恰好を今呈しておるのでありますが、二十六年度におきましてはこれを是正いたします。これにはやはり政府が今のような収支を均衡いたしまして、そうして問題になりまする五百億のインベソトリー・ファイナンスも、これは貿易インフレをやめるための措置でございます。インフレ防止につきましては万全の措置をとつておる次第であります。  今までの蓄積はどれだけあるか——これはいわゆる問題になりましたインべントリー・ファイナンスの問題、例えばこれを集計すれば出て参ります。又アメリカの援助資金をどう取扱うかによりまして数字が変りますが、いずれ又の機会にお話を申上げてもよろしうございます。  次に税法上の減税、実質上の減税、これは今のままで行きまするならば、昭和二十六年度は五千百八十八億の租税収入になります。五千百八十八億の租税收入になりますが、主としてこれは生産増に基くものであります。それを税法を改正いたしまして四千四百四十五億円にしたのでありまするから、七百四十三億の減税、これは当然の減税と言い得るのであります。  それから租税の公平の原則を忘れてはいないか、こういうお話で、失言だと言いますが、租税には勿論公平の原則は尊ばなければなりませんが、併し公平一点張りで、経済の復興ということについての施策をしないのはよくない。租税の原則には公平の原則もありましよう。社会政策的の原則もありましよう。或いは経済政策的の原則もありますが、私は租税の公平の原則のみにとらわれず、社会政策的な考えも入れ、又経済政策的の、日本の経済を上げるような方策をとるのが最もいい政治であると考えるのであります。決して失言ではありません。租税の原則につきましてはいろいろな原則がある。公平の原則ばかりにとらわれないで、経済政策的な原則、社会政策的な原則も当然考えなければなりませんが、日本の今の立場としては、とにかく資本を蓄積し、産業の復興に相当の措置をとらなければなりませんので、公平の原則ばかりに拘泥することなしに、いろいろな考え方で租税政策をやつて行こうというのであります。失言ではないということをはつきり申上げます。(拍手
  25. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 国務大臣演説に対する質疑はなおございますが、これを明日に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際日程に追加して、地方公共団体の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案両院協議会協議委員の選挙を行いたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。協議委員の数は十人でございます。
  29. 小川久義

    小川久義君 只今の両院協議会協議委員の選挙は、成規の手続を省略して、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  30. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 只今小川久義君の動議に賛成いたします。
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小川君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。両院協議委員の氏名を参事に朗読いたさせます。    〔海保参事朗読〕  地方公共団体の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案両院協議委員    野溝  勝君  棚橋 小虎君    吉川末次郎君  中田 吉雄君    岡本 愛祐君  西郷吉之助君    鈴木 直人君  岩木 哲夫君    小川 久義君  矢嶋 三義君
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより直ちに両院協議委員の正副議長選挙せられんことを願います。      ——————————
  34. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際お諮りいたします。厚生委員長山下義信君及び法務委員長北村一男君から、それぞれ委員長を辞任いたしたい旨の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、只今欠員となりました厚生委員長及び法務委員長選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  38. 小川久義

    小川久義君 只今の厚生委員長及び法務委員長選挙は、成規の手続を省略して、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  39. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 小川久義君の動議に賛成いたします。
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小川君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長は、厚生委員長に河崎ナツ君を、法務委員長に鈴木安孝君をそれぞれ指名いたします。(拍手)  次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十一分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員の請暇  一、新議員の紹介  一、日程第一 常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  一、日程第二 国務大臣演説に関する件(第三日)  一、地方公共団体の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案両院協議会協議委員の選挙  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙