運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-05-30 第10回国会 参議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月三十日(水曜日)    午前十一時四分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○商法の一部を改正する法律施行法案  (内閣提出衆議院送付) ○商法の一部を改正する法律施行に  伴う関係法律整理等に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○非訟事件手続法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○有限会社法の一部を改正する法律案  (内閣提出山、衆議院送付) ○商法の一部を改正する法律の一部を  改正する法律案衆議院提出) ○日刊新聞紙発行目的とする株式  会社及び有限会社株式及び持分の  譲渡制限等に関する法律案(衆議  院提出) ○弁護士法の一部を改正する法律案  (衆議院提出) ○民事調停法案衆議院提出)   —————————————
  2. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 只今より委員会を開きます。  本日は先ず商法の一部を改正する法律施行法案商法の一部を改正する法律施行に件う関係法律整理等に関する法律案、非訟事件手続法の一部を改正する法律案有限会社法の一部を改正する法律案以上政府提出商法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案日刊新聞紙発行目的とする株式会社及び有限会社株式及び持分譲渡制限等に関する法律案、以上衆議院提出、計六案を便宜上一括して議題に供します。御質疑のおありのかたは御発言を願います。
  3. 伊藤修

    伊藤修君 私はこの際法務総裁並びに意見長官に対しまして御意見を伺いたいのであります。第一の問題は、最近政府立法方針が非常に何といいますか政府責任を免るる意味においてと私は解釈しますが、衆議院の名を以て、いわゆる議員立法形式により提出される法案が多いのです。これは衆議院が独自に議員提出として発案なさることはこれは独自の権限でありますから差支えありませんが、そうでなくして実際は政府において立案され、そうして政府においてその法律施行を企図されておるにもかかわらず、その提案名前衆議院にかりて、そうして議会提出する法案が多い、こういうふうに見受けられるのです。この傾向は絶対に私はやめて頂きたいと思うのです。若し政府においてどうしても国民生活の上において必要欠くべからざる事項であるとするならば、みずからの責任においてお出しになることが好ましいと思うのです。そうすることによつて初めてその法律に対するところの私は責任というものを生ずる、結果に対して大きな見通しも目的も達せられるのだと思うのです。我々が審議しておるうちにおいても、どうも衆議院提出としても、その実際は政府提出と異らない審議ぶりを見るのであります。この際この点に対しまして一体政府はどういうお考えを持つていらつしやるか。飽くまでそういうよう傾向を以て今後もお進みになるつもりか、その点を先ずはつきりして頂きたいと思うのです。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 今国会におきまして議員提出法案が相当多くなつておるのであります。この多数の議員提出法律案の中には、政府におきましても必要と認めまして、そうして各省においてそれぞれ提案準備を進めておるものと内容の同一なものでありまするものが相当あるわけでございます。政府といたしましては、政府責任において提案すべきものはできるだけ政府提案するという方針の下に準備を進めて参つてつたのでありますが、これらの法案につきまして衆議院或いは参議院の議員のかたがたにおかれましてたまたま同じ志を持つておられるかたがありまして、議員提出法律案として提案せられるという場合におきまして、その内容政府において予定いたしておりましたものと同じようなものであり、又目的におきましても同じような場合におきましては、政府といたしましては政府提案を差控えまして、議員提案法律案を優先的に取扱うというと誤弊がございますが、政府提案はその代りに差控えて議員提出法律案提案を以て御審議を願うという形になつておるのが相当あるわけでありまして、これに対しまする政府としての考え方といたしましては、国会そのもの立法府でありまする性格から考えまして、その立法府におきまする構成員でありまする議員において必要なる法律案提案をされるということが望ましいことである、かように存じておるのであります。もとよりどうしても政府責任を以て提案しなければならないという性質を持つた議案もあると思います。殊にこれが施行に際しまして予算案を同時に提案する必要がある事項、或いは予算関係ある法律案、これらのものにつきましては、やはり予算案についての将来の計画というものと不可分に御審議を願わなければなりません関係上、政府提案がやはり適当であると、かよう考えておるのでありまするが、併し必ずしも予算の伴わないもの、こういうようなものにつきましては、折角議員におかれまして提案のお考えのあります場合におきましては、その立法府構成員であられまする御性格に鑑みまして、目的において、内容において殆んど同一のものでありまするならば、この御提案に対して御審議を願うということで差支えない、こう考えておるわけでございまして、これは今期国会におきまして特に政府としてさよう考え方をいたしておる次第でございます。このいたし方につきましては、将来とも引続きかようなやり方をとつて参りたい、かよう政府といたしましては考えておる次第でございます。
  5. 伊藤修

    伊藤修君 只今の御説明によりまするところは大体形式論であつて、お説は御尤もでありますが、私はその実質を衝いておるわけです。法務総裁においてもその間の事情はよく御了承のことと思います。たまたま議員の発案せんとする法案政府が企図しておる法案との目的が一致であるから、政府は差控えたという仰せでありますが、むしろそうではなくして、政府のほうから議員提出法案として求めておるというような形があるのではないか、こう思うのです。ということは、提案者に理由をお伺いしても、一つも満足な説明ができない。すべて政府において説明を補つておる。我々は漸くにして法律内容政府説明員のお言葉によつて辛うじて了承するという程度であります。これはそれ自体を捉えましても、真に衆議院議員諸君が自己の持つところ立法権によつて発案されたものと言うことはできないこととは、その一事を以ても明らかであります。私は何も議員立法を否定するものではありません。すべてが議員立法としてあるべきことを一番望んでおる次第であります。政府はたまたま必要な部分限つて御発案になるというように、今大橋さんのおつしやるよう行き方が一番望ましいとは思いますが、今日のこの過渡期においていわゆる形式のみを整えましてすべてを議員立法にして、内容の整わないあり方というものは、私はそれが延いて以て国民生活に重大なる影響を及ぼすと、こういう観点からいたしまして、政府といたしましてはこういう過渡期におきましては、みずから欲する法律はみずからの責任においてお出しになることが一番望ましいと思うのです。若し我々が企図するごとく、法務総裁が企図するがごとく、法案立法権に基きまして議員立法を主体として考えるならば、政府も又国会協力いたしまして、政府蹄持ちになるよう立法に対するところの大きな機関を国会に持つべきように、政府のほうにおいて謙虚な気持で以て法制部を引渡して頂くとか、そういうあり方があつてこそ初めて国会立法権の確立が見られるのでありますから、そういう時期にまだ至つていない今日、ただ形だけを整えるというあり方は、それは国会法にいうところ議院立法権というものをここにクローズアップするという一つ目的のためにはいいかとは存じまするが、延いて以てそれが国民生活に重大なる関係を及ぼす結果を私たちが見れば、これは今日の過渡期において相当愼まなくちやならんと、かよう考えます。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今の御意見も誠に御尤もに存じまするが、政府といたしましては、国会性格に鑑みまして、国会が真に国民のために必要なる立法を常に国会責任において提案せられ、又立案せられるということがやはり必要であると、かよう考えまするので、国会におきまして議員提案になりまする法案に対しましては、政府当局といたしましてもできるだけ御協力を申上げるという態度をとつておるわけでございまして、もとよりこれらの議員提出法案の御審議に当りまして、政府代表者なり或いは政府委員等において説明いたしますることにつきましては、政府としてはもとよりその責任を回避するものではございません。できました法案施行なり、又御審議過程におきましても、政府といたしましては何ら政府としてとるべき責任を回避するという意図を持つていたしておることではないと、政府の意のありまするところは、国会が真に国民立法府といたしまして国民のために必要な法案立案をできるだけ十分に有効にやつて頂くそれに対して御協力をいたしたいと、こういう考えであるということを御了承を願いたいと存ずるのであります。併しお言葉にもありましたる通り何分にも従来の旧憲法時代議会等においてはかようなことは殆んど皆無とは申しませんが、考え方としても非常に違つておりましたので、新らしい国会におきまして立法府としてのあり方考えて見ますると、その理想の状態に達しまするまでの間の過渡期というものには相当いろいろな困難はあろうと存じます。政府といたしましては、できるだけその立案、又御審議によりまして、国民のための国会立法ができ上ることにつきまして御協力をいたしたいと、こういう考えでございまして、責任を回避する意図は毛頭ないということを御了承願いたいと存じます。
  7. 伊藤修

    伊藤修君 法務総裁のお考え方は妥当であると思いますが、どうか我々といたしまして、先ほどからも申上げておりますごとく、基本的におきましてはいわゆる国民を代表する国会においてすべての立法がなされることを一番理想とすることは申すまでもない。併し今日その態勢が実際上整つていないこの折柄におきましては、議員立法はどうしても政府協力を得なくちやならんのでありまするから、これは又政府としても御協力を願わなくちやならんと思うのですが、この点も私としては一つも異存はないのですが、併し実際政府が出そうというものを国会においてその名を取ると、或いは政府のほうが国会の名を借つて、或いは議員の名を借つて提出になるという傾向だけは嚴に愼しんで頂きたいということを最後にお願いしておきます。  それから次にお尋ねいたしたいのは、これは国会法の欠点もあるのですが、国会においても考えなくちやならんと思うのですが、御承知通り国会法が制定された当時におきましては、事別管轄主義で以て各委員会法律案が配属されたのですが、それが変更されまして、所管主義に変更されたのであります。従つて所管ごと法案が各委員会に流れて参りまして、各委員会はそれぞれ独自に審議しておる形であります。これによつて起るところ欠陷矛盾というものを我々は反省しなくちやならんと思います。それと共に政府のほうにおいても私はお考え併せを願いたいと思います。殊に法務総裁内閣におけるところ最高顧問であらせられる関係上、又立法に対しましては意見長官において意見を述べられるということが当然予期されておると思うのです。然るにもかかわらず政府立法の点を見ましても、例えば自動車抵当法のごときは、これを立法なさる場合におきまして、ただ自動車というその名前だけで以て運輸省においてこれを立法なさる。或いはそれを法制意見長官のほうへ廻つて十分審議をなさつておるのか、その内部関係のことは私としてはわかりませんが、こういうよう法案に対しましては、少くとも意見長官のほうにおいて相当な私は審議或いは意見というものが加えられなくちやならんと思います。殊に日本立場におきましては新らしい試みである上においては、ああいうような私から申しますれば杜撰ですが、ああいう杜撰な法律を、殊に何らの関係のない運輸省においてこれを審議して提案せしめる。その結果その所管ところ委員会に入つて行くというあり方は私は望ましくない。それは法務庁責任において国会にお出しになるという形になりますれば当法務委員会に入つて参りますから、そういう点を私はお考え併せを願いたいと思います。ということはそれによつて日本法律体系というものは崩れて参ります。日本基本法規というものの形が非常な矛盾を来たして来ます。その一例といたしまして、例えば商法基本法規は我々の手によつて法務委員会において愼重審議された。そしてその施行法案が現にここに出ておる。その商法内容を変更する法律大蔵省において起案されまして、そうしてこれを大蔵委員会において審議する。例えば消防法改正法案におきましては捜査権を認めようとしておる。又我々は法務総裁としても御所属になつていらつしやるからおわかりになると存じますが、弁護士法のごとき憲法に附属するところ重要法律、これを法律を変更することが大蔵委員会において変更される。例えば弁護士はあらゆることについてできるという従つて当然税務代理士の仕事もできることは弁護士法基本原則であるにもかかわらず、大蔵委員会において、大蔵省においてこれを外してしまう。他の法律で以てこの基本法規を変更しようと企図しておる。それは我我においていろいろ意見を述べた結果、又衆議院においても述べた結果その点は修正いたしたようでありますけれども、併し大部分弁護士に対する監督権というものは依然として修正しようとしておる。その法案は恐らく通るでしよう。そうすると弁護士法の基本的な考え方として、御承知通り自主独立弁護士会というものをおいた。この基本的な立場行政庁たるところの国税庁の監督に服せしめるという矛盾した考え方にここでなつて来る。弁護士法の根本の精神というものはこれによつて破壊される。又近く運輸委員会におきましていわゆる陪審に関する法律を作ろうとしておる。いわゆる鉄道事故に関しましては運輸委員会において立案されるところ法律によつて鉄道法によつてやるのか或いは特別法によつてやるのか知りませんけれども交通事故に対するところの事案に対してはいわゆる参審員という者を設けて、その評議決定によつて裁判所意見を述べ或いは基礎とせしめる、事実認定に対する基礎とせしめるというよう考え方を企図して、これを立案化しておる。その他まあ挙げて参りますればたくさんありますが、こういうよう日本法律体系というものが各官庁によつて自由勝手に崩されて行くというあり方は、私は全くこれは法律の破壊であると思います。迷惑するのは国民だけであります。又日本の一貫した法律体制というものはこれによつて崩れる。国会においても考えなくちやならんが、提案者たる政府においても一本にまとめるかどうか、意見長官がすべての法案に対して閣議を通して、そうして統一あるところの理念を各部局に透徹せしめるという行きかたに私は計らつて頂きたいと思います。これが両々相俟つてやらんというと、将来恐るべき結果に至ると思います。この点を御信念のほどをお伺いしておきたいと思います。
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今伊藤委員のお述べになりました点につきましては、私は全く同感であります。従来法務府といたしましても、あらゆる法令の審議参画をいたしております。少くとも法律案並びに政令案審議には必ず法務府といたしまして参画をいたしておるのでございまして、この審議に対しましては只今御指示を頂きましたごとき精神に従いまして事務を処理いたして参つたつもりであります。併しいろいろな御説明法案等につきまして期待した通りな結果が現われていなかつたという点は、私といたしましても極めて遺憾に存ずる次第でございまするが、今後とも法務府というものの使命、性格という点から考えまして、あらゆる努力によりまして御趣旨に副うように努めたいと、かように存ずる次第であります。
  9. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 只今総裁からお答えいたしました通りに存ずるのでございますが、ただ事務上の扱いをどうやつておるかという点を、丁度いい機会でございますからこの際率直に御説明申上げておきたいと存じます。  例えば只今例としてお挙げになりました自動車抵当法でございます。これは御承知通り陸上道路運送法でありましたか、自動車関係法案が三つあつたわけでございますが、そのうちの一環として確かに運輸省がこれは発議と申しますか、言い出したのは運輸省でございます。従いましてこの自動車抵当法についての一応の案文というものは運輸省で整えておつたことも事実でございます。併しながら只今総裁から申上げました通りに、法律案はおよそ政府から出すものであります限りは全部私の手許に参りまして、私が一一まあ署名と申しますか、決裁をいたしまして、それから総裁のほうへ届けて、総裁の名においてすべての法律案閣議提案されるということになつております。従いまして自動車抵当法のごときももとより私の手許審査のために参るわけでございます。近頃は御承知通りにたくさん法案がございますので、この審査のほうも極めて我我のほうで各省の便宜を図りましてもう謄写版刷でも何でもいい、形をなしたものがあつたら早く持ち込んで下さいという形でやつております。従いましてこの立案そのもの運輸省が言い出したものであり、運輸省がほんの下書を書いて来たものには違いございませんけれども、私のほうの手許におきまして、法務府の中には民事局あたりそのほうの専門家もおりますし、又私のほうの部内にもおりますので、それらの者が一緒に会議をやりまして、そうして抵当法というものをまとめ上げたのでございます。従いましてそのでき上りが上手にできておるか不出来であるかということは別といたしまして、法務府として十分責任を持つて立案したつもりであり、且つ閣議整理の書類も確かに私の記憶では、運輸大臣法務総裁主管大臣として閣議整理大臣になつてつたように思います。その閣議整理書法務府が審査をしたという立場において、法務総裁が右の通り閣議決定されて然るべしという今度は表書きを附けまして閣議に出るのでございます。従いまして少し細かく申上げ過ぎましたけれども、すべての法案について私ども努力のできる限りはかよう手続によつてつておりますのでございますが、何分数百件の法案を短期間に仕上げなければならないという制約もありますし、人員等も戰争前とちつとも変らない人員でやつております関係で、でき上りが非常に不手際であるというお叱りに対しては、これは私は或いは弁明申上げるべき立場ではないかとも思います一が、手続としてはさよう手続で、そうして閣議決定になりますと、内閣から国会提出いたしますときの形は、運輸大臣発議であろうと厚生大臣発議のものであろうと、すべて内閣総理大臣名前において出ておるわけであります。
  10. 伊藤修

    伊藤修君 その法案意見長官のほうのお手許でお審査なつたというならよろしいが、その他の法案について必ず皆意見長官の手を通るのですか。
  11. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 法律案政令案につきましては全部私の手許通ります。且つ法務総裁決裁を経ております。
  12. 伊藤修

    伊藤修君 そういうことになりますれば、意見長官として、私は例えば弁護士法ような場合におきまして、弁護士法において企図しておるところ目的というものは十分おわかりのことと思いますが、それを他の末梢法規によつて変更するというあり方は好ましくないと思うのです。又商法の場合におきましても、商法で大原則としてこれは動かすべからざるものであると関係方面言つておるにもかかわらず、他の省においてその内容を実際に変更してしまうというあり方は、私はどうしてそれを是認されたのか、この点を伺つておきたい。
  13. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 一々お答えを申上げるべきところでございますが、詳しいことを申上げるべき材料もございませんけれども、今御指摘のありました一つの点でありますが、或る法案の例えば附則とかその他の末梢的部分において措置をしておるというお叱りでございます。これはもう確かにほうほうでお叱りを受けておるところでございまして、我々身に染みておるのでございますが、併しただこの際に多少の弁明を許して頂けますならば、例の国会法行政組織法政務次官の設置に関する法案のごとき場合、あのときは政務次官議員との兼任関係において国会法三十九条を同時に直さなければならんという事情があつたのでございますが、ああいう場合にこれが別々の法案の形になつておりましたために、不測の事情によつて一つ法案がとうとう不成立になつてしまうというような形で、道連れの片割れが、はぐれてしまうというような場面がたびたびございますので、純粋の技術的見地から申しますと、関係の非常に密接なものは一つ法案に結びつけておきたいという気持で出ておるのでございまして、特に弁護士法を軽く考えたとか、その他の法案につきましても同様でございますが、それを軽く考えたというようなことではございません。従いましてこの扱い方につきましては誠に仰せ通り国会の中におきましては各委員会というものが事実上の管轄を別々にお持ちになつておるのでございますから、私どもといたしましてはさよう技術上の問題は問題として、なお一方においては各委員会に分かれておるという点についてこれを如何にしてそのほうの要請にマッチせしむべきかということは苦慮しております。ただ委員会関係におきましては、合同審査と申しますか連合審査と申しますか、そういうこともあるので、そういう気持でありますけれども、いずれにいたしましても今御指摘の点は我々として非常に痛い点でありまして、今後も十分考慮いたしたい、どうしたらばその関係が無事に行くものであろうかということで目下非常に苦慮をしておるというところでございます。又伊藤先生あたり仰せもいろいろ将来受けたいというふうに考えているのでございます。一応事情を丁度いい機会でございますから申上げさせて頂きました。
  14. 伊藤修

    伊藤修君 将来よくお互いに研究いたして万全を期したいと考えるのです。悪く解釈しますと、これは決して、あなたたちを私は信じていますからそういう解釈はいたしたくないのですけれども、例えば法務委員会に入つて来ると、何だかんだとやかましく言われるから、他の何も知らない委員会にこれを入れて、そうしてそれの通過を図るというふうな臆測を私たちはたくましうせざるを得ないような実情、例えば先年ありました株式名義書換に関する法律のごとき、これは法務委員会に参りますれば当然否定さるべき性質のものだ、それを大蔵省において立案して大蔵委員会にかけようとする、たまたま私のほうを通つたからいいものの、若し通らんとすると、商法に根拠のない、商法と相矛盾した考え方法律化する、こういう行き方、こういう点は非常に、私はよくないと思う。先ほど例として挙げました弁護士法の場合でもそうです。弁護士会においては強く否定したのです。弁護士法改正言つてぽんと出せば必らず法務委員会に入る。法務委員会に参りますれば、前年の審議過程から申しましても、結果は予測されます。否定されることは当然のことです。これを思うて他の法律に便乗してほかの委員会に入れて、そうして委員の関心がないことを奇貨としてその法律案通過を計る、こういうよう行き方があるのじやないか。そういうことは賢明な皆さんにおいて御企図になつていないと思いますが、我々から見るとそういうふうにも考えられる。でありますから、どうかこういうことはただ法案通過するということのみならず、我々延いて以て法律の及ぼす結果、目的というものを破壊されて行くことは由々しい問題であると思う。これはどうか内閣最高顧問であられるところ法務総裁においても十分お気付け願つて、将来我々万全を期せられるようにお取計らい願いたいと、かように御注文申上げておきます。
  15. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の問題とちよつと関連して聞いておきたいのですが、只今伊藤委員の発言されたことに関連してこの際法務総裁なり意見局長官なりに伺つておきたいのですが、今伊藤委員に対するお答えの中でその点がはつきりしていなかつたのですが、事実上において政府立案された法案形式の上において議員提出とするということは今後おやめになるおつもりなんでしようか、お続けになるおつもりなんでしようか。これは我々が審議をする上に非常に……、第一みつともないと思うのです。法律性質から言いまして、政府の権限を拡張するよう法律とそれから国民の権利を擁護するよう法律とおのずから違いがあることはお認めになると思いますが、今出ております議員提出法律案の中に、政府提出ならばまあそういう気持でこれを審査するということもあり得るけれども国民を代表する議員のほうからみずから国民の権利を制限するよう法律案が出て来るということは、これはどう考えて見てもおかしい。客観的に滑稽です。それから我々審議をする上にも、政府提出のものであればつまりそういう心がまえを以て審議するし、国民提出のものであればそういう心がまえを以て審議するのです。ところがここに出て来たものは議員提出というからには、さぞかし国民の権利を擁護するものだと思つて、その気持で読んで行くと、大変勘違いであるというふうなことがある。これは事実本当にこれが世間に報道されたり、或いは国際的にこういうことが報道されたりすればこれは滑稽と言うよりほかない。国民の代表である議員みずから国民の権利を縮小するよう法律立案するということはあり得ない。そういうことがあるというのは、今伊藤委員が御質問になつた事実において、政府提出法律形式において議員提出になさるということがあるからじやないか、これは国会の権威にも関するし、日本立法の権威にも関する。日本精神年齢において何歳だというようなことをおつしやつたようだが、実際そういうふうなことを言われるというような理由もそういうところにあると思う。私は日本国会の名誉のためにもこういうことは断然おやめになるというお答えがあるものと思つたのですが、それがないようですが、どうなんですか。
  16. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 政府といたしましては、国会立法府としての性格から考えまして、制定せられまする法律につきまして、その提案はできるだけ国会議員がやつて頂くことが適当である、こういう考えを持つております。政府におきまして意図しておりましたる法律案につきまして、たまたま同じ志を持つておられまする議員提案の御意向があります場合においては、政府の案を差控えるというやりかたは、只今変更しようという考えはございません。
  17. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その点に関してもうちよつと伺つておきたい。今意見局長官が、最近は法律が非常に出るので、それについての御研究ということも幾分疎漏になるということをおつしやつていましたが、法律が非常に余計出るということは、そういう弊害があるのみならず、その法律というものはとかく国民の権利を制限する場合が非常に多いので、且つ又その法律施行するに伴つて、官吏の、公務員の人員が殖えたり予算が殖えたり、その方面からも国民に対する負担を非常に殖やすものであるので、過剰な法律ということは民主主義において許されないことだ。それでこの占領下におかれたりする場合に、いわゆる日本が曾つて外国を侵略した場合に、そのときにおいて法匪と言われたというようなこともあるように、現在我々がここで法案審査について受ける感じは、この五年間を通じて実に法律が多い。そうして法律において規定すべきでない、民間において国民が自主的に職業団体なり或いは何なりにおいて十分やれることを、やあ風呂屋の営業法であるとかやあ床屋の法であるとか何の法であるとかめちやちやに出て来ておる。それは私は今まで黙つていたんですが、そのうち反省されると思つたのですが、最近に至つていよいよ甚だしいのですが、そういう点についてどうお考えですか。法律が余りに多いということは、国民の人権を圧迫する腐れがあるというふうにお考えになりませんか。
  18. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私たちはむしろ逆に考えておるわけでありまして、旧憲法時代におきまして、いわゆる委任命令という、これは現在の法律にもありますが、委任命令というもののほかに憲法上当然に認められておりました、独立命令という大権事項がございまして、殊に警察に関するいろいろの事柄というものは命令に委任されておつたわけであります。従いまして個人の権利に対しまして或いは又営業とか、そういう関係のいろいろな法規というものは、多く地方警察令或いは各省令というふうな命令で以て規定をせられておつたのであります。ところが新憲法の時代に相成りましてから、個人の権利と自由というものをどこまでも守る、これに対する制限は如何なる場合においても法律に根拠を規定する、こういう考えかたになりまして、従来警察命令等において制限してありましたいろいろな警察的な取締の必要に基きまする諸制限は、すべて法律として国会の御審議を願うということに相成つたわけであります。現在法律が昔に比べまして非常に増加いたしておりまする主たる原因はここにある、こういうふうに考えております。むしろ法律が殖えたことによつて国民の権利の制限が殖えておるというよりは、国民の権利の制限がすべて法律によらなければならなくなつた結果、昔に比して確実に権利と自由が守られるようなつた、こういうふうにむしろ解しております。
  19. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の御答弁は私の質問を満足させることはできないのでありますが、この政令とか或いは警察的な命令とかいうもので、これを法律によらなければならないというものと、それから相当政令なり警察的な命令なりを要しない、民間でも十分慣習によつて処理できるものとがあると思うのであります。而して法務総裁なり意見局長官も御承知ようにイギリスなどにおいてはそういう方向をとつておる。成るべく法律を多く作らないという方向をとつておる。その点についての御意見を伺つて肥るので、その政令なり何なりをできるだけやれと、法律によらないで政令で、警察命令でやつて頂きたいということを申上げておるのではないのであります。そういう警察命令なり政令なりでやつておるものを民間の自主的決定に任せればいいものがある。国民をそう馬鹿に思わないで、良識ある国民は十分自分でやれることがあります。そういうことにまで今まで警察がのさばり政令がのさばつておる。それを全部と言わないまでも、法律にするよりもそれらは全く自由にしてしまつたほうが、法務総裁の所属しておられる自由党の自由主義に合つているのではないか。この法律をどつさりお作りになるということが腑に落ちない。
  20. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今お述べになりました点につきましては全く同感の意を持つ次第でありまして、いろいろな取締のために必要な事柄につきましても、関係者の自主的な申合せによつて実現できるものはこれはできるだけそうしたことに任せることが将来の立法の施策として必要であるというお考えは全くその通りに存じます。将来の立法につきましては十分さよう気持を活かして行くように努めたいと存じます。
  21. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その点についてもう一つ特に意見局長官に伺つて置きたいのでありますが、この法律が出たあとそれが実際においてどういうふうに施行されているか、施行されている必要にして十分なる理由があるかどうか、それから施行されたことによつてその本来所期する目的というものよりもむしろ他のいろいろな弊害が生じてやしないか、又法律施行しておることによつて過大な公務員の機構とか或いは予算とか、バランスが取れていないものがありはしないか、そういうものはチェックしておられるか、おられないか。その点を承わつて置きます。もう一ついでに伺つて置きます。我々が審議しておるところの住民登録法案というものがありますが、議員提出法案つて、我々がいろいろ御質問申上げている、殊に国民の基本的人権に関する点において質問申上げたのでありますが、殆んど満足すべき御答弁を得なかつたのであります。これは御承知ように現在イギリスの議会でもセンサス・オーダーなどについて討論が繰返されております。そういうような点についても残念ながら日本においては法律にも行政上の便宜とか、リガリテイというほうを主にしてリバテイというほうを主にしない傾向が多いのでありますが、或いは国勢調査でもイギリスの場合ではどういうようなコンフイデンシヤリテーについても尊重する観念があるか、そういうような点については十分御研究になり、日本でそういう危険に対してどういうふうにお考えになつておるか、例えばセンサスについてもコンフイデンシヤリテーというものを尊重するというお考えを持つて努力しておられるのか、それともそうでないのかという点についても承わりたいと思います。
  22. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の立場といたしましては、非常に適切なお尋ねであると思うのであります。第一の法令が出たあとの実施の面についてはどういう態度であるかとおつしやる面につきましては、これは法務庁ができます前に私ども内閣の法制局におつたわけでございます。その当時から御指摘通りのことを我々非常に考えまして、そうして当時いろいろ努力しまして、この法令の実施の監察といいますか、監察というと言葉が惑うございますが、実施状況を把握する一つの機能を法制局に持とうということで、官制まで直した。そうして地方の弁護士さんであるとかその他出先のいろいろな役所の人たち、それらの者を報告主任者みたいにして、そうしていろいろ気付きのところを皆教えてくれるということでやつておりました。ところが新機構、法務庁になりましてから、元の法制局の機能というものは、大きくいいますけれども、人事院なんかもそうでありますけれども、行政管理庁ですね、行政管理庁なんかも元は法制局の一種の機構の中に入つてつた。それか独立して、今の法令の実施状況の部面の監察ということはまあ悪い言葉で言えば我々のほうからは取られて、そうして今の行政管理庁の中に行政監察の委員会ができて、そうしてこれは今でもあるはずですが、一般の行政監察をやつておられます。そのほうに機能が分割されてしまつた。従いまして我我のほうとしては、行政監理庁のほうと今度そつちの機能と我々のほうがタイアップいたしましてそうしてやるべき立場にあるわけであります。現に公けの関連というものはございませんけれども、少くとも私ども半ば個人の立場においては行政管理庁の職員と密接に連絡をとつて、監察の報告ができます。そうすると必らず一部送つてくれるということでやつております。今のところは実情を申上げればそういうことで努力はやつております。やつておりますが、法務府そのものの機能の中には制度上は入つていないということを申上げて置きたいと思います。  それからリガリテイとかリバテイという観念をめぐつての御質疑でこいますが、これは我々の成績と申しますか、憲法ができて以来の法律等について御覧頂ければ証明すべき点は私はあると思うのであります。これは大きな方針からの御批判は別であります。これは国会で最後的におきめになることですから。国会責任を押付けるわけではございませんけれども、これは別といたしまして、少くとも我々のタッチし得る、又中心として関心を持つべき技術上の動きにつきましては、例えば臨検検査の条目というものは、昔の憲法時代の条目とお比べになりますというとずつと変つて来ておるというような点については申上げることができると思う。その点の努力は今後もなお十分続けて行きたいという心構えでおります。
  23. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 なお続けてこの機会に伺つて置きたいと思うのですが、この前にこの法務委員会で問題になりました、二、三カ月前、王子でしたかにおいてニュースカメラマンが傷害を受けた事件がございましたが、あれはその後どういうふうに解決をされておるのでしようか。若しニュースカメラマンというような、社会の耳目たる人か或いは警察官によつて傷害されたのじやないかというような疑いがあつて我我としては非常に関心を持ち、そうして当時質問申上げたと思い、又検察の部面に移つておるということだつたのですが、我々国民の耳目たるニユースカメラマンに傷を負わせたのは誰であるかということはおわかりになつたのですか。
  24. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 傷害の犯人が誰であるかということについては、遂に今日まで報告を聞いておりませんが、あの事案につきましては、大体当時の一方の責任者でありまする警視庁の当局と、それから被害者と目せられまするカメラマンのかたがたとの間に、大体円満な解決がついたというふうなことを聞いたような記憶もいたしておりまするが、なおこの点は詳細に又確めました上で御答弁いたしたいと思います。
  25. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 当時の状況においては、ニュースカメラマンの周囲には殆んど警察官が大多数おつた従つて他の人が、警察官以外の人がその傷害の加害者であるとすれば、ここに多数おつた警察官がそれを目撃していないということは甚だ理解に苦しむのであります。そういう点からもこれは相当量大な問題でありますから、特に重大なのは、私はやはり繰り返し本会議においても述べておるように、新聞のない社会に住むくらいならば、法律のない社会に住んだほうがいいくらいであるというほどに、新聞なり言論というものは重大なものである。社会に起つて来る万般のこともニュースカメラマンなり新聞記者がこれを国民に報道するというようなことかできないようなことになつては、我々の責任実に重大であると思う。その上からも特にこの問題について重大な関心をお持ち下さいまして、今後ああいうふうなことが起らないように、是非お願いしたいのであります。人権擁護局の活動なんかについても、その後十分な感じを受けないのですが、どうなんでありますか。
  26. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 人権擁護局は相当活動をいたしておるつもりでございますが、なお最近の活動の状況について特に御要求があるならば、そのほうの関係政府委員を呼びまして、適当な機会に詳しく申上げたいと存じます。
  27. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 実は余り関連がだんだんと遠くなつて恐縮ですが、最後に一つだけ蹄願いいたしますが、昨夜ラジオで開いておりましたが、二俣殺人事件について人権蹂躪の問題が報道されておりますが、その放送を開いておりますと、依然として、例えばその警察署の中で、若しそれが事実であるならば、警察官による拷問があつたということを非常な勇気を振つて証言した一人の巡査に対して、精神鑑定をして、そうして、精神に異状があるというように持つて行き、その署長は人権蹂躪については全くないというふうに断言し、そうして聞いておる……ラジオの放送の仕方もそうですが、聞いておる我々の受ける印象も、公平に何ら神経質にならないで、極く冷静に聞いておつて、人権蹂躪の事実があり、而もそれを警察側なり当局側なりにおいてはホワイト・ウオツシユばかりやつておるという感じを受けた。こういう点についても私は国民に与える影響は非常に恐るべきものがある。放送局がああいう放送をされることに対しては、私は非常に敬意を表するのです。同時に今言つたような人権蹂躪の事実が、警察官などによつて人権蹂躪の事実が依然として行われておるらしい。それを警察官は断固として厚顔無恥にも否定されるらしいという印象があります。そういう点についてどうか法務庁の人権擁護局が重大な責任を感じて、十分の活動を以て国会の期待に副い、国民の期待に副われることを希望します。   (伊藤修君発言の許可を求む。〕
  28. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 今の議題と別個のものですか。今の議題に対しての質疑ですか。
  29. 伊藤修

    伊藤修君 私の発言中関連してと言つたから讓つたのですが、その関連が無限に拡大されておる。(笑声)
  30. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) では伊藤君。
  31. 伊藤修

    伊藤修君 第三点としてお伺いしたいのは、商法に関してでございますが、御承知通り新らしい商法というものが、アメリカのいわゆる理想主義に基いて、アメリカ企業というものをモデルにいたしまして作られたところ商法を、そのまま日本経済にあてはめようというところに私は無理があると思うのです。当時新商法審議される場合におきましても、向うの意見というものが、少くとも日本の産業界の人々の希望というものを押えておるということは覆うべからざるところの事実です。今日新商法が狙つておるところの授権主義であるとか、或いは総会におけるところ手続の強化であるとか或いは株式譲渡の禁止、累積投票の創設、少数株主権の拡大であるとか乃至は取締役の権限拡大、監査役の権限縮小、こういうあらゆる面に対するところ商法に企図するところの新らしい立て方というものは、これは申すまでもなくアメリカ企業というものに対してこそふさわしいかも存じませんが、日本ようなこういう中小企業を主体とした日本経済界においては誠に迷惑至極なものであるということは一般の世論であり、我々としてもそう考えておつた。併し占領下にある我々といたしましては止むを得ずこれに屈服いたしましてあの新商法ができたのです。できた以上は国民としてこれを守らざるを得ない。併し今日の日本の経済界のありかたといたしましては、未だ以てかような新商法施行を直ちに望むというありかたではないのです。国民の大多数はこれに対しまして反対をし、少くとも講和条約後までこれが施行を延引してもらいたいという強い希望があることは、私がここで申すまでもないことと存じます。それが故に衆議院におきましても十数回に亘つて関係方面にこれが施行延期の要求を出され、ついにそれが通らずして僅かに本法中においては少数株主権に対するところの担保請求権を一つ認め、施行法におきましては、総会の適用条項の日にちを延引せしめるという程度に過ぎないのです。これでは私は今日の日本の企業に携る人の気持としては不満足ではなかろうかと思うのです。仮にこれを止むを得ず押付けるといたしまして、果してその結果日本の経済界に及ぼす影響というものはどうであるかということに対して我々は非常に寒心に堪えないのです。この新商法施行することによつて日本の経済界に及ぼすところの影響というものをどうお考えになつておるか、先ずそれをお伺いしたい。又この新商法を受入れることによつて相当の混乱を生じ、延いては産業の上においてもこれが影響して大きな阻害をもたらすものではないかと、私はかよう考えるのであります。法務総裁といたしましてはこの新商法施行しても日本の産業界にさような影響はないという仰せであるか、或いはあるとしたらどうしてこれを賄うか。いずれか一つ御見解のほどをお伺いしたいと思います。又今日日本国民がさように拒否しておるところのこの法律を、強いてここにどうしても施行しなくてはならんという理由は、いわゆる外資導入ということが大きな原因になつておるのか、それともその他に理由があるのか、その点もお伺いしたい。又政府としてこれほど全産業界の反対するところのこの法案を即時施行することについて、若し政府がそれを欲しない国民の意思を代表して欲しないというならば、政府として関係方面に対してその国民の意思を伝えて、これが施行延期の方途を図られたかどうか。この三点を先ずお伺いしたい。
  32. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 今回の商法改正につきましては、これが従来の我が国の会社制度から見まするというと、根本的な改正でありまして、改正の規模といたしましてはまさに画期的であると存ずるのでございますが、特にこの改正法につきましては、その公布から施行までの期間が、従来この種の改正を実施いたしまする場合と比較いたしまして、非常に短かかつた。それから又内容におきましても株主の権利を著しく強化いたしておるというようなことから考えまして、予定通り七月一日から施行するということが非常な経済界に混乱を生じはしないかという点はかねてから憂えられておつたところでございます。政府といたしましては改正法の国会における審議に際しましても、公布後これが関係方面に対する周知徹底かたを強く要望せられておりましたので、この法律の重要性に鑑みましてパンフレツトを頒布いたしますとか、或いは商工会議所、弁護士会関係官庁等に内容説明をいたし、或いは呼び掛をいたし、全国に亘りまして主要都市約四十カ所において普及講演会を開催いたしまする等、でき得る限りその普及徹底に努力を重ねて参つた次第であります。と申しますのは、民間の実業団体におおきましても、すでに一昨年八月の法律案要綱発表以来、改正案について熱心な研究をなすつておられるのでありまして、又学者研究家の改正法に関する著書、論文等も頗る多数に上つておるのでありまして、改正法の趣旨並びに内容、又これが運用について必要な知識等は一応普及滲透を見ておるものと考えられるのであります。従いまして大体この案を、この法律施行いたしまする際において、企業経営の立場からいつて如何なる点に混乱が生じて来るか、又それに対する対策としてはどういう点の留意が必要であるかというような点につきましても、或る程度経営者の諸君の間におかれましても御研究ができておる。こういうふうに考えておる次第でございまするし、殊に施行法の立案に際しましては、でき得る限り既存の株式会社が制度の改変によつてこうむりまする不便、不都合等を除去することに努めておる次第でありまして、これによつて我が国の産業界がどういう影響をこうむるか、無論多少困難を増大するという面もありますが、又一面におきましてこの改正商法の利益、恩恵に浴するという面もあるのでございまして、かれこれ考え併せまするというと、この法律を実施したことによつて我が国の産業に対して非常な悪影響をもたらすということは十分に予防できるというふうに考えておる次第でございます。又この法案の主たる動機が外資の導入であるかという御質問でございまするが、特に外資の導入ということを最大の理由として本案の施行が必要であるというふうには考えておらないのでございまして、やはり今日の世界経済並びに日本の経済の新らしい環境というようなものを考え合せまして、時代の趨勢としてやはりそのよう改正が必要であろう、こういうふうに考えておる次第であります。なおこれが公布より施行までの間の準備期間というものが比較的短かかつたのでありまして、これを延長するということは産業界、経済界の受入れ態勢を一層十分にする上から申しまして必要であると存じましたので、政府といたしましても或る程度この実施の延期を希望いたしまして、できるだけの努力はいたしたのでありますが、併し関係方面等の意向もございまして、原則的にこれが施行することにつきましてはやはり七月一日ということに相成つたわけであります。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 第一に周知徹底に努められたと仰せになりますけれども、それは法務庁予算を見ましても、その周知徹底せしめるほどの予算は組んでないはずですから、これはほんの形式的な周知徹底の方法であつたと思うのですが、未だ国民全体としてはこの法律に対するところの受入態勢というものは十分できていないというふうに我々考えるのです。又そうであればこそ各産業界の代表者が挙つてこの施行延期方を申出ている次第であります。又日本弁護士連合会においてもこれが施行延期を決議しておる。法律を扱う者においてすらさようなことをはつきり表現しておるのです。でありますからこの法律施行に対しましての延期方を求めることは、殆んど今日では国民の輿論であります。それをもあえてここに施行してしまうということになりますれば、それが日本の産業に対して大きな影響力を持つということは、私は当然技術的に考えられると思うのです。殊に法務総裁においても事業に対しては多少御認識がおありになると思いますが、事業界に携わる者といたしましては、これを直ちに行うとしますれば、相当な経費も要します。これは各会社の全体のトータルの計算を出して見ないからわかりませんけれども、莫大な経費である。又それによつて受けるところの社内の組織の混乱というものも相当なものであると思うのです。それが産業に及ぼす影響というものを我々は考えなくちやならんと思うのです。故にこの法律の真正面から施行ということに対しましては、例えば銀行方面におきましては、先ほども申しましたごとく無額面株の発行をやめてしまうとか、或いは閲覧権を制約するというような規定を設けて、辛うじてその点の圧力を免れておる。日刊新聞の場合におきましては、いわゆる株式譲渡禁止を認めよとか、こうした勢力のある、力のある各企業団体は国会に働きかけまして、自己の思う通りの方向に法律の改廃を持つて行くのです。そういう機会もなし、そういう力もないところは、無為にこの法律施行を甘んじて受けなければならん。私はこういう点から考えましても、国民の中において、又大部分においてこの商法に対するところの圧力というものが拒否されておるということは言い得ると思う。こういう点から考えましても、私はこの法律施行するということに対しましては、政府として相当の責任を負わなくちやならんと思うのです。これに対するところの御見解を伺つておきたいと思います。
  34. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 政府といたしましては、この点につきましては或る程度さよう事情もあろうと存じまして、極力延期方について努力をいたしたわけでございまするが、併し種々の関係上七月一日から施行をしなければならないという考えになつておるわけでございます。この点につきましては特に経済界におきまして新商法受入れのためにいろいろ経費の特別な入用ということも考えられるのでありまするが、施行法案に対しまする衆議院提案の修正案のごとくに定款変更のための期間を延長いたしまするというと、差当り定款変更のための臨時総会のための費用、これも全国の多数の会社の経費というものを考えますると、何十億という多額に上るでありましようがこの点は緩和できると思うのでございます。又改正法の立案の全段階を通じまして、特に国会におきまして愼重な御審議の対象になりましたものは、いわゆる取締役会の権限を強化する半面におきまして、株主保護の見地から株主の権利を強化しておるというこの点でございまするが、いわゆる会社荒しの防止につきましても、すでに立案の際におきまして相当の考慮がなされたわけでありまするが、更に衆議院から提案せられておりまする商法の一部改正法律案というものは、この見地から会社篇に規定する訴えの提起等につきまして裁判所が相当と認める担保の提供を命ずることができるようになつておるわけであります。これらの適切な措置を併せて参りまするならば、産業界に対する影響というものも相当の部分を緩和することに役立つものと考えた次第でございます。
  35. 伊藤修

    伊藤修君 政府といたしましては、本法を施行するということについていろいろな御説明がありましたが、そういたしますと本法を施行するといたしまして、今度はこの施行によつて本法の制約を免かれるために、最初企図しておつたところ株式の民主化という意味において、株式譲渡禁止の条項を極力阻止されたのですが、そうすると新聞社に限つてはこれを許すというふうにして、新商法の企図する制約を免かれると、そうするとほかの事業においてもそういう方法がとられる。或いは銀行におきましても無額面株の発行をやめたいとか、或いは株主権の制約をするとか、各業態々々において新商法の適用を免かれるべき特別の法規を作る傾向がすでに現われて来ております。そうすると新商法というものが、あらゆる事業面からその事業の必要上新商法の適用を免かれるために特別立法をして来るという傾向に対して、政府はどういう考えを持つていらつしやいますか。それから次にもう一つは、少数株主権の弊害というものは、法務総裁においても十分御了承のことと思いますが、これは商法審議の際におきましては、極力両院ともこの点について強く関係方面とも折衝をいたしましたが、容るるところとならなかつたのであります。今度衆議院の御努力によつて担保請求権の一部は認められましたが、併し新商法全体の面から考え合せますると、いわゆる会社ゴロの跳梁跋扈というものは十分予期されるのです。そうしますと、新商法施行されるという前提に立ちますれば、法務総裁としてこの会社ゴロに対して特別な手当をなさるお考えはあるのかないのか。例えば検察庁内に会社に対する経済関係の検事を置かれて特にこれの睨みを利かしておるというようなお手当をなさるかどうか。従来は会社の総会に関し、或いは会社に関するところの事件に対しては、検察庁は余りにも関心を持たれない。いろいろな違反行為をやつてつても、それは常に会社ゴロの利益するところとなつて、検察庁はこれをとつて以て起訴の対象とはしていない。新商法施行する上におきましては、どうしてもその点に対して新らしい観点に立つて法務総裁においても十分この点について事業経営を円満に遂行せしめるように睨みを利かす必要があるのじやないかと思います。その点に対するところのお考え方を伺いたいと思います。
  36. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 株式譲渡の制限に関しまして、これを新聞社について認める必要があるというその理由といたしましては、新聞の公共性及び報道機関の伝統、又新聞紙の個性の維持という点から必要であろうと考えるのであります。この点が特に他の一般の事業とは異なると存ずるのであります。又銀行につきましても、その業態の公共的な性質、殊に信用を重んじなければならないという、そういう点から考えまして、これも他の一般企業と多少異なるところがあるのではないか、こう考えておるのであります。これらの特殊の業態につきまして一般商法原則が変更されるということは止むを得ないと存ずるのでありますが、そのほかの事業においてかような趣旨によつて変更されるということも、将来の問題としては考え得ることでございまするので、この点につきましては新商法の実施と睨み合せまして十分に研究をしなければならん問題であります。又いろいろな業態におきまして、その必要によつて、必要に応ずるよう改正をするという、その点の必要性はわかるといたしましても、これが又基本法である商法を各業態によつてばらばらにしてしまうというような結果に相成りまするというと、基本法たる商法性格というものにも関係するのでございまして、これらの双方の点につきまして十分に利害得失を睨み合せた上で決定すべきであると存ずるのであります。これらの点につきましては、将来実施の結果に基きまして十分に研究いたしまして、経済界の真に必要とするところに即応せしめるように留意いたしたいと存じます。  次に少数株主の保護ということに伴いまして、会社ゴロの跳梁跋扈ということが当然予想され、これに対しましては経済検事を特に專門的にこれらの事案の処理に当らせるというような措置を講じてこの取締面を強化して行くことが必要ではないか、こういう御質問でございまするが、この点につきましては誠にその通りに存じます。実施の結果、いささかなりともさよう傾向がありました場合には、急速にさような措置をとりまして、会社ゴロというようなものの取締についても嚴重にこれを励行いたしまして、企業経営を保護して参る上に万全の措置を講じたいと存ずる次第であります。
  37. 伊藤修

    伊藤修君 最後の万全の措置を講ぜられる具体策として、そういう検察官を專任にお設けになつて、且つ全国に対してそういう訓令をお発しになるお考えがあるかどうか、伺つておきたい。
  38. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは現在経済検事というものは各検察庁に專任の者がおりますが、併し地方によりましては検事の配置等の関係から、必ずしもその方面の仕事ばかりを担当するということも不可能なところもございまするので、各検察庁の実情に即応いたしまして、有効なる取締のできるような態勢を準備いたして、又この方面に検察の力を注ぎまするような趣旨を命じたいと思います。
  39. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 大橋法務総裁は午後はお差支えがあるそうでありますから……。この案について、ほかに御質問ありませんか。
  40. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今のに関連しまして……。今伊藤委員からの御質問の中にありました改正商法施行するについて日刊新聞を発行しておる株式会社が、その株式の讓渡制限或いは禁止ということを改正商法の規定を免れて続けて行きたいという問題についてでありますが、これについて特に伺つておきたいのは、この問題は改正商法全体に対する影響が先ず一つあると思うのであります。第二には、日刊新聞社がこういうふうな希望を主張される根拠について、このいわゆる金融独占という見地と、それから封建的な同族会社的な見地と、それからこの新聞が資本の動揺乃至社会の動揺というものの中に、いわゆる公平中正な立場に立つという見地と、恐らく最後の点が言論の自由ということと関連して主張されておると思うのでありますが、要するに日本の新聞が今まで持つていたようなよさというものを維持するために、こういう主張がなされておると思うのでありますが、併し最近の朝日なり毎日なり、読売なりというものを見ましても、実情においては公平ということに隠れて、実は事実の報道においても必ずしも国民の期待するところに応えていない、そうして大新聞が非常な勢力を持つて、それ以外に新らしい新聞が発生する余地が殆んどない。そうしてなかんずく今のような点から、或いはやはり改正商法の趣旨を新聞社においても実行して、そうしてこの新聞社にさまざまの資本が入り、そうしてそれが利益を挙げることを目的としてそれぞれニユース報道において読者を捉えるということに競争するほうかいいのではないかというような、さまざまの問題がそこにあるように思われるのでありますが、これらの点について各方面のそれぞれの見解というものを御研究になつておることがあれば、伺つておきたいと思います。
  41. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この案はこれこそ純粹の議員立法と申しますか、そういうものでありまして、まあよそ行きの言葉で申しますれば、政府としては関係のないことでございます。ただこれを拜見しまして、今お話の点は一々御尤もな、迷いの種になる事柄であろうと存ずるのであります。併しながらこの新聞というものは、私ども素人考えではございますけれども、普通の商品と違うことは事実であると思います。それからその報道の使命というものが、今御指摘ような事柄で、公平中立でなければならんとかいうことは言えますと同時に、おのおの新聞というものは個性があつて初めて意味があるのだというよう考え方もできそうに思うのであります。昔のように言論統制がされまして、新聞は一つしかない、二つしかないという世の中ならば別でございますけれども、自由に新聞がたくさんできるということになりますれば、おのおの個性を尊重したいということも又なり立ち得るという考え方であると思います。というような面その他いろいろな要素を組合せて見ますと、要するに新聞をこの際特例扱いにしても、ほかとの関連においての不釣合ということはないのじやないかというような、極めて漠然たる気持で、大変申訳ございませんけれども、そういう気分がいたすのでございます。
  42. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) それでは午前はこの程度にいたしまして、午後一時半から開会いたします。    午後零時三十一分休憩    —————・—————    午後一時四十九分開会
  43. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) これより委員会を開会いたします。  弁護士法の一部を改正する法律案を議題にいたします。本案に対する御質疑のあるかたは御質疑を願います。  別に御発言もございませんければ、質疑は盡きたものと認めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。
  45. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 私は弁護士法の一部を改正する法律案に対しまして修正を加えたいと思います。それは   第二十三条の次に次の一条を加える。   (報告の請求)  第二十三条の二 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。  2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。  以上の一カ条を弁護士法の中に加えて頂きたいという提案であります。これは訴訟は攻撃防禦によつて、裁判所がその中間に立つて公正なる判決をなすものであります。従つて攻撃に対しまする防禦も当然裁判の非常な重要な仕事の一つであります。従いましてただ防禦をする者に対する利益の保護という意味でなく、公正なる裁判の判決の結果を得るということに眼目があると思います。それについては防禦に対しまする手段としては、これまで官公署或いはその他の公務所等に対しまして、何らの資料を求めるところ機会を法的に持つておりません。それはやがてやはり裁判の公信力を高め、且つ又公正なる判決をする上において非常な影響のあるものと思います。この意味において私は防禦の任に当りまする弁護士においてそうした一つの武器と申しましようか、手続を許すことになさなければならん、かように存じまするがためにここに修正案を出したわけであります。
  46. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 ちよつと修正案の提案者に質問があります。鬼丸議員の修正案は、攻撃、防禦の立場から非常に結構な御趣旨と存じますが、折角の御趣旨でありますが、公務所又は公私の団体に照会して報告を求めることができるだけであつて、若し相手方がそれをしなかつたときには、何らの方途もないというふうで差支えないのでございますか。
  47. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この程度で以てやはり差支えないと思います。所属弁護士会のほうで以てその取捨をいたしますることで、そのくらいのやはり余裕を与えて置いたほうがいいだろうと思います。
  48. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 役所のセクシヨナリズムといいますか、いろいろな議会調査なんというもので公私の団体等が繁忙に堪えないのでありまするが、強制力があれば止むを得ず出しますけれども、そうでないと、事実上は非常に折角の申出が無視されるような場合がありはしないかと思います。そうすると、なまじつかこれを入れたことが権威のないものになつてしまいますと、非常に大変結構な御趣旨でありますが、何かそこにもう少し、ただ徳義的なことにして置かないで、或る範囲を限つて報告をしなければならないような強制力を持たせる必要はお考えになりませんか。
  49. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 大体日本の法制の立て方としまして、一つの規定を設けますれば、官公署はその規定に従いまして忠実に法の趣旨に従つて行動いたすことになつておりまして、若しも諸官庁がそれに応じないということになりますれば、それは行政処分のほうで又賄い得られると思います。従いましてこれに対する強制方法なんというものを設けますることは、これは却つて不適当だと思いますので、この程度で先ず実行上別段不自由はないと思います。
  50. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 役所の場合には何とかそうすると行政処分で以て、弁護士会の当然申出に応じなかつた場合には行政処分を予想しておられますか。
  51. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 これはひとり弁護士法の場合の規定ばかりでなく、その他官公吏に対しまする法的義務を負わしてありますることで、官公署は法律によつてこれを忠実に履行しなければならないのは当然でありまするから、若し法に違反というようなことがありますれば、これは官公署みずからが行政処分に服するのでありまするから、特にかような官公署に対しまする一つの義務付けた規定があるといたしまして、それに対して一々罰則規定を設けるということは従来の日本立法例にはございません。私はこの程度で少しも法律の威厳を損するというふうな慮れは毫もないよう考えます。
  52. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 官公署に対しては鬼丸議員の御説明はよくわかりましたが、そうすると他の公私の団体の場合は行政処分等がありませんのですが、これも官公署に準じてやるものというふうに御安心になつておりますか。
  53. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 さようでございます。これは別段その点については不自由はないように思いますし、又照会いたしまする側におきましても、弁護士会一つの公的団体でありまするから勿論その取捨におきましては万遺憾なきを期して法の精神に則つてやらねばならない。而もそれだけの有力な理由が見付かれば、それを軽視するというような慮れは私は心配しなくてもいいのじやないか、かよう考えます。
  54. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 他に鬼丸委員に対する御質疑はございませんか。御発言がなければ、本案に対して討論をお願いいたします。他に御発言がなければ討論は終局したものと見て御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 御異議ないと認めます。これより採決に入ります。弁護士法の一部を改正する法律案について採決いたします。  先ず討論中にありました鬼丸君の修正案を議題に供します。鬼丸君の提出の修正案に賛成のかたの御挙手を願います。    〔総員挙手〕
  56. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 全会一致でございます。よつて鬼丸君の修正案は可決されました。  次に只今採決されました鬼丸君の修正の部分を除いて本法案全部を問題に供します。修正だけを除いた原案に賛成の諸君の御挙手を願います。    〔総員挙手〕
  57. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 全会一致でございます。よつて弁護士法の一部を改正する法律案は全会一致を以て修正可決すべきものと決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告の内容につきましては、前例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 御異議ないと認めます。本案に御賛成のかたは順次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     伊藤 修   齋  武雄     中山 福藏  北村 一男     長谷山行毅  左藤 義詮     岡部  常  鬼丸 義齊   —————————————
  59. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 次に民事調停法案を議題に供します。本案は昨日質疑終了と決定いたしておりますから直ちに討論採決に入ります。なお念のため申上げますが、本案は衆議院送付案が原案でございます。本案についてこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  60. 伊藤修

    伊藤修君 私は本案につきまして後後のために一応意見を申上げておきます。過日十八項に亘つて御質問を申上げておりましたのですが、その質問に対しましてはいずれも満足な御答弁は得ていないと自分としては考えておるのであります。そのうちとりわけ第四条の移送の決定に対する裁判の不服申し立ての方法が明確でない。説明によりますれば、二十一条によつて抗告ができる、その中に含まれるのだというお答えでありますけれども、本案の組立てからいたしまして、第四条の裁判をも含むとは考えられないのです。従つて第四条に対するところの裁判に対する不服申立の方法は別に本条においてこれが上訴権のありや否やということを規定せざるを得ないと思います。して見ればこれに対するところの明文がない以上はルールに任す以外に方法はないんです。従つてこれをルールに任すということになれば我々は立法事項に対するところの放棄となり、立法権の放棄となつて、いわゆる憲法七十七条のルール制定権の拡大ということになるという虞れがあると思うんです。又仮処分の問題に対しましても担保の提供請求権を認めるとか、或いは執行停止の場合においてもこれは明文が欠けているとか、又は訴訟停止に関するところの明文を欠いている。これはいずれも立法事項であつて、これをルールに委任するということは悪い先例を残すのではないかと、かよう考えます。その他の内容の点につきましても、第五条関係において、一体本法にいう調停の主体かどこにあるか、裁判所が主体か、調停委員が主体か、裁判官が主体かということが明確でない。又第十五条関係においてもこれによつて準用する第八条と第九条の関係において齟齬があるというふうに考えるのです。又第十八条の規定するところも第十一条で認められた参加というものに対するところの手当がなされていない。それから代理権の問題を明らかにしていない。又過料に対するところの裁判についての不服申立ということに対しての明文を欠いている、こういうふうに指摘いたしますればいろいろな点において私は不備があると思います。この不備は仮に修正いたすといたしましても、根本問題たるところ立法権の放棄に対しましてはどうしても賛成しがたい。本案が通過いたしましても、少なくとも参議院においてはそういう点において認めないという意思を表明いたしまして、私は本案に対して反対の意見を申上げておきます。
  61. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 他に御発言がなければ、討論は終局したものと認めて直ちに採決に入ります。本案に賛成の方は御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  62. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 多数であります。よつて本案は可決すべきものと決定いたしました。なお本会議における委員長の口頭報告の内容につきましては、前例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  63. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 御異議ないと認めます。本案に御賛成の方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     中山 福藏  長谷山行毅     左藤 義詮  岡部  常     鬼丸 義齊  北村 一男   —————————————
  64. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 次に午前に引続き商法関係の六法案を議題に供します。御質疑のおありの方は御発言を願います。
  65. 伊藤修

    伊藤修君 施行法の第二条第二項ですが、「定款の定及び契約の条項は」と、こうありますけれども、この契約の条項というのは、定款による譲渡禁止の制限を指すものだと、こういうように御説明になつておりまするが、その他の契約、いわゆる株主間においてのその他の契約をした場合においては、当然これは自由であろうと考えるのです。先の商法審議の際におきましても、政府の岡咲君の説明によるところの速記録を見ましても、この点は明らかに契約自由を認めておるのです。本法において制限するところ株式譲渡禁止の契約は、これは当然無効になるでしよう。然らざる株主間におけるところのその他の約束がある場合においては、これは私は自由であろうと思うのです。この第二条第二項の契約の条項というものは何を指すのか明らかにして頂きたい。
  66. 野木新一

    政府委員(野木新一君) これは只今御質問の株主相互同士の契約ならば、これは別に改正法二百四条に牴触するものでないと考えております。
  67. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、この第二条の二項にいう「定款の定及び契約の条項は、新法施行の日から、その効力を失う。」と、こういう漫然たる書き方においてそれは賄えるでしようか。あらゆる契約が無効だというように解釈される虞れがありはしないか。
  68. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 新法に抵触する契約の、その抵触する条項はその効力を失う、こういう趣旨でございますから、あらゆる契約が効力を失うというような疑点は生じて来ないのではないかと存ずる次第であります。
  69. 伊藤修

    伊藤修君 例えば株主間において株式譲渡をお互いにやめようじやないかという契約をした場合において、それは登記事項としての契約じやないので、内部関係においてそういう契約をした場合に果してどうなりますか、私はそれは当事者の自由じやないかと思います。
  70. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 御質問の場合は、株主相互間で契約するわけでありまするから、それは別段新改正法二百四条の規定、「株主ノ譲渡ハ定款ノ定ニ依ルモ之ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得ズ」というこの条項には別段に抵触するものではないと考えております。
  71. 伊藤修

    伊藤修君 従つてその条項は、新法によつて禁止することに牴触するという外形的事実だけで以て無効になるという解釈が出る虞れがあるのじやないでしようか。新法では株式譲渡を禁止しておるわけです。従つて当事者間においては、そういう契約が牴触するのだから無効だというような解釈が、この書き方では出るのじやないでしようか。そういう虞れはないのですか。
  72. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 株主相互間にお互い同士でそういう契約をすることは、別に二百四条の関知するところではありませんので、それは差支えないと思つております。
  73. 伊藤修

    伊藤修君 三十三条の規定によりますと、本条の反対解釈をすることになると、利益準備金を資本準備金に繰入れることはできないことになる、そういうように解釈できるが、然るに新法においてはこの点に関し何らの規定もないのに、本法でこういうことを設けるその根拠はどこにあるのですか。
  74. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 第三十三条第二項は、実は現在の会社におきましても、事実上利益準備金と資本準備金と分けておる実際の例もあるようでありまするので、そういうような実情を勘案し、且つ経過の場合にそれがスムースに行くようにいたしたわけであります。即ち条文の建前といたしまして、第三十三条第一項において、旧法の二百八十八条で積立てた準備金は、いわゆる事実上会社が資本準備金と利益準備金と分けているような場合でも、全部これを利益準備金として積立てたものとみなす、便宜上そういたしましたので、第二項を起しまして、併し会社が折角利益準備金と資本準備金と分けているような場合、而も将来分けたいというような場合には、それを尊重して考えていいのであつて、そうすることが会社基礎を却つて強固にするゆえんでもある、そういう考えから第二項の規定を起した次第であります。
  75. 伊藤修

    伊藤修君 四十六条の第二項によつて、合併の双方が株式合資会社の場合に、合併によつて、合併後存続する会社株式会社に変形することは法理上不可能じやないでしようか。この点に対する見解を伺いたい。
  76. 影山勇

    政府委員(影山勇君) 四十六条第二項の規定でありますが、この規定は、株式合資会社が新法施行後に合併等によつて設立されるというのを避けますために、合併後存続し或いは設立して行くという会社株式会社に限ろうとする趣旨で、従つて存続する相手かたの会社株式会社である場合には合併が可能でありますが、存続する会社株式合資会社として合併するということはできないことにこの規定によつてしたわけであります。
  77. 伊藤修

    伊藤修君 この条項によりますると、合併せんとする会社株式合資会社のみであるという場合において吸収合併は認めないという立法趣旨なんですね。
  78. 影山勇

    政府委員(影山勇君) 單純な吸収合併は認めないという趣旨でございます。
  79. 伊藤修

    伊藤修君 これを審議する場合において我々はたびたびその基本原則としてきめたことは、いわゆる日本の産業界に資するために、或いは産業界においてとつておるところのいわゆる商法規定にみならつて作るんだ。従つて会社を中心にして考えられたというふうに私は聞いておるんです。それで日本の場合においては弱小会社、いわゆる小資本会社、小資本企業というようなものは有限会社を以て賄う、商法の企図するところは中若しくは大の会社目的とし、個人会社、小企業というふうなのは有限会社を以て賄つて行こう。そういう意味において有限会社法律は存続さすのだ、こういう趣旨に伺つてつた。然るに今度の有限会社改正法案を見ますると、この有限会社に取入れられたところ改正点は、すべて商法改正点が悉く取入れられておる。有限会社株式会社とが同じ構成の下に組立てられるということになりますれば、この基本的な考えかたというものが私は崩れて来るのじやないか、又崩す考えかたになつたのか。今日の政府考えかたというものはそういうふうに変更して来たものかどうか、その点をお伺いいたします。
  80. 影山勇

    政府委員(影山勇君) この現行の有限会社法の規定を見ますと、全文が僅か八十九カ条ばかりの条文でございまして、而もその中で商法株式会社の規定を準用しておる数は百十数条に上つておりますし、それからこの内容におきましても、株式会社と大体同様の趣旨の規定ができております。その規定の体裁から申しますと、大体において会員組織の株式会社という形に現行有限会社はできておるわけであります。併し只今仰せように、今度の商法改正にならつて有限会社改正するというつもりはございませんで、今度の株式会社法の改正点はもう御承知ように、受権資本制度、或いは無額面株の採用、それから経営の面では取締役制度の採用、それからもう一つ会社構成員であります株主の権利の拡張という三点にございますことは御承知通りでございますが、只今申しました前の二つ、つまり受権資本制度とか或いは取締役制度といつたようなものはこれは主として相当大規模の企業に適用があるので、これは有限会社は今度の改正にも勿論取入れております。で、問題になりますのは、ただこの経済民主化と申しますか、会社企業の民主化という趣旨からこの株式会社で申しますれば、株主有限会社でいえば社員の権利の強化の点で有限会社の特質を考慮しながら株式会社に做つた点が今度の改正の重要点でございます。例えば累積投票というような制度も、株式会社法によりますと定款を以て排除しない限りは法律で当然に累積投票制度になるのでありますが、有限会社は特に定款で累積投票によりたいという場合だけ入れるといつたようにいたしました等多少の考慮をいたしまして、つまり社員の権利に関する規定について株式会社に做つて整理的な改正を加えてこの法案を作つた次第であります。
  81. 伊藤修

    伊藤修君 改正された経過はそれでよくわかりましたが、私のお聞きしておるのは、根本的な理念が変更になつて来ておるのじやないか、いわゆる今の御説明中にもあつたごとく、小資本におけるところの企業形態を賄うために有限会社という法律を以て臨んでおるのでありまして、大企業に対する賄いとして今度の改正商法というものが存在するとかいう、基本的な考え方というものが破壊して来るのじやないか、いわゆる小資本におけるところの企業形態を大資本に倣わせるということは、却つて小資本形態を目的とする有限会社法というものの目的が失なわれて来るのじやないか、その点をお伺いいたします。
  82. 影山勇

    政府委員(影山勇君) この社員の権利を強化するという点は、大体株式会社の規定に従来も做つておりましたわけでございまして、例えば取締役の責任を追及するとかという事態に対しましても、やはり資本を出したときの小数株主がいつも絶対的の権利を持つということになつておりましたので、株式会社とその点は現行法が同じ立場をとつておりますので、株式会社法の改正につれまして、そういう点を有限会社に応ずるよう改正を加えておるつもりでございます。
  83. 伊藤修

    伊藤修君 有限会社に対しまして三十一条の取締役の責任の追及を各社員がなすことができるようにしたことや、或いは四十四条の二に少数社員の会計調査、書類の閲覧権等を認めてあります。四十六条は商法第二百九十三条の五の準用、即ち取締役は計算書類の附属明細書を置くことを要すること、又四十一条は、商法第二百四十五条の二乃至五の準用により営業上の権利譲渡に反対ならば株式の買取請求権を認めること、六十三条は商法第四百八条の二の準用により合併に反対する株式会社の株主の株式買取請求権を認める、こういうことは私は大企業にあつてこそ初めて必要なものかも存じませんが、小資本を目的とし、小企業を目的とするために作られるところ有限会社においては余り大きな権限を与えるものじやないか、それは本来の目的が結局失われて来て、有限会社株式会社と同じことになつてしまうのじやないか、そんなら何も有限会社という一つ法律を以てそういうレベルの資本形態を認める必要はなくなつて来るのじやないか、むしろこの改正をするよりは廃止してしまつて有限会社株式会社を一本にしたほうが却つてその目的を達するのではないか、こう思うのですが。
  84. 影山勇

    政府委員(影山勇君) 御指摘の諸点はいずれも社員の権利の強化の点でございまして、有限会社は一面こういうふうに社員の権限を強化いたしますと、却つて紛争を惹起するかというような虞れもないわけではございませんけれども有限会社はもともと比較的人的な結合が強いので、そういう意味では社員の権利を或る程度強化いたしまして、例えばそれぞれ訴えを提起することができるとか閲覧できるとかいうふうに、個人的な集りでありますからその個人的な集りに、個人にそういう会社の運営に関してこれを管理するといつたような権限を与えても、或いは必ずしも有限会社という企業形態に矛盾するものでもないのではないかというふうな考えでこういう改正案をとつたわけでございます。
  85. 伊藤修

    伊藤修君 いや説明なさるおかたの基本的な考え方が、一体株式会社有限会社と二つを作つて国民に臨まれる、いわゆる実社会に臨んでおる、日本の経済組織に臨んでおるというこの建前が壊わされてしまうのじやないか。これならば何も株式会社有限会社と一本の法律にしても差支えない、却つて国民のほうでは煩しくなくていい。何のためにこの有限会社に対してかように権限を拡大してそうして窮屈ならしむるのか、私にはその目的がわからん。立法の本来の目的がこれによつて相当数崩れて来るのではないか。大体あなた御存じかどうか存じませんが、一体有限会社を作る目的はどこにあるのですか、これは同族若しくは友人知己の間で以て、最も親しい間で、心を一にした人が僅かな資本を持合つて一つの事業を営もうというところに狙いがあるのです。それをあたかも大会社と同じようにいわゆる株式の民主化、法人の民主化、持分の民主化を図る、かように権限を拡大して行くということになれば、却つて紛争を捲き起すところの種になるのです。本来の同族会社とかいう目的がこれによつて少くとも傷つけられて行く虞れがあるのではないでしようか。
  86. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 株式会社有限会社との際限はどこにあるか、逆に言えば有限会社法株式会社法と別個に存在する理由はどこにあるかという点でございますが、日本の現在の有限会社法も先ほど影山政府委員から答えたように、その内容を仔細に点検いたして見ますると、どちらかというと株式会社に近いほうの有限会社の形態になつておるものと考えます。そうしてどこが特徴かと申しますと、一つは比較的小規模であるということを前提といたしまして社員の数なども限定されてある。社員の数が決定されれば従つておのずから資本なども大体の場合にはそう高くならないということ、それから閉鎖的であるということ、即ち株式会社よう株式発行して一般公衆から資本を募集するというのではなくして、そういうような制度をとつていないということ、それに又設立の手続等が非常に簡單になつておるということ、又持分の移転が非常に制約されておりまして、公開されていないという点等が特質として考えられておるわけでありますが、今度の改正案におきましても、これらの特質は株式会社に活きてなお持つておるわけであります。問題はむしろ株式会社法が本来大資本というものを一部頭においていろいろの規定を設けておりながら、日本の現実におきましては極く小さな、資本においても人数においても、規模においても小さな株式会社が非常にたくさんあるというふうなほうがむしろ一つの問題でありまして、この点につきましては改正商法立案しておる過程におきましても、この際株式会社の資本の最低限を切つたらどうかというような非常に有力な発言もあつたわけでありますが、現在の貨幣価値の変動の際、なかなかどの辺が適当であろうかという区切りもむずかしいし、その点の研究も不十分だから、これは又後日の研究に待とうということになつた次第であります。即ち非常に小さな株式会社を認めておきますと、すでに訴訟の上などにもその弊害が現われておるというような有力な発言もあつた次第であります。そこで株式会社の資本の最小限を区切るという問題は、まあ将来の研究に任したわけであります。ところでこの有限会社法というよう改正をなしたのは、即ち株式会社なら相当の規定を取入れるということによつて有限会社の特質がなくなつてしまうじやないかという点につきましては、有限会社の今までの根本的な特質と称せられた点はなお維持されておるわけでありまして、而も新らしく取入れました社員の権限の強化という点は、有限会社が各種商法会社に比較して見まして、どういうところにあるかというところから考えて見ますと、有限会社商法の中では株式会社、合名会社あたりとずつと比べて見ると、むしろその真中に入つて株式会社に近いような位置に来るものではないかというような点を考慮に入れたりいたしまして、やはり商法のこれらの権限が、社員の権限が拡大する以上、有限会社についてもこれに倣つたほうが然るべきであろうという結論に達したわけでありまして、この程度の改正におきましてもなお有限会社法日本の現在の実情におきましては存続する価値あるものと信ずるものであります。
  87. 伊藤修

    伊藤修君 私の言うことは大体おわかりになつておりますが、この程度の改正ではまだ有限会社が存続しておる……それは瀕死の状態で存続しておるだけで、桃色程度にいつているけれども、まだ赤になつておらんのだからいいのだという御議論と同じであります。私は赤になりつつある行き方ならば却つて有限会社を存続せしむる必要はないのじやないかと、こういうのです。大体あなたの先ほどの御説明によりますと、商法が大企業をモツトーとし、有限会社は小資本をモツトーとしておるならば、その特質を活かすべく我々は万全の措置を講じなくちやならん。然るにかかわらず、商法において大企業にふさわしいよう株式の民主化、投資の民主化ということをモツトーとして、いわゆる投資家の権限を即ち有限会社の資本家たるところの社員のほうへ移して来て、そうしてそれの権限を拡大するということは、有限会社の本来の目的がその面から私は阻害されると言うのですよ。あなたがたは机の上で議論されておるのですが、実際に会社の運営の面に当つて御覧なさい、実に迷惑至極のことだ。殊に持分譲渡がこれの最たるものだ。一体有限会社を作る場合においてお互いに人の和ということを基本にして会社が成立するのですが、これは株式の場合のごとく未知の人を吸収して、どの資本でもいいから吸収するという行き方ではなくして、資本を取るにもおのずから自分の信頼し得る人から資本を取る、その取つてそれを基礎にして事業形態を営む。百年の目的を持つて営むのです。その基礎たるところの資本が容易に外へ流れて行つてしまう、分離されてしまう、譲渡されるというやり方は、これは有限会社の基本を私は揺がすものだと思うのです。あえてこれは株式讓渡の制限又は禁止を認めないのに做つてように制限を廃するというがごときは、その点からも有限会社の本質が崩れて来るのじやないかと思うのです。この点はどうですか十九条に対する点は。
  88. 野木新一

    政府委員(野木新一君) この十九条の改正につきましては誠に御議論のような見解が有力にあるわけでありまして、私どもといたしましても一番苦慮した点でございます。即ち従来有限会社の封鎖性、即ちその持分譲渡が非常に制限されたということは、その根本的特徴の一つとされておつたわけでありまして、私どももこの点を如何にすべきかという点は一番苦慮した点であります。併しながら翻つて考えて見ますると、信頼関係にある同志の間で財産を持ち寄つて有限会社を作つた。併しながらそのうちにいろいろの人の間のことでありまするから何か不和があつた、又はその他止むを得ない事情があつたというような場合に、自分の出した財産がそこに封鎖されてしまつて動きが取れないというような状態は、財産権との関係から又考え直さなければならない点があるのではないか。従つて現在の有限会社法はその点において財産権を不当に束縛することになつているのではないか。いま少し何かその間の調和を考えたらどうかというよう考え方の下にいろいろ苦慮した結果、十九条のような甚だ複雑な規定でありまするが、これを考えたわけであります。この考えは私ども自分の頭で一応考えたわけでありますが、あとで調べて見ますと、アメリカなどにおきましてもこういうような制限の仕方はあるようになつております。而してこのような制限の仕方をして置けば、実際といたしましてはそう不当に財産持分が移動されることもないだろうし又不当に持分が封鎖されてしまうこともないだろう、非常に適切なところに落付くものではないかと思つて十九条のよう立案の仕方をいたしたわけであります。
  89. 伊藤修

    伊藤修君 別にアメリカがやるから日本に取入れなくちやならないという法律はないのですから、アメリカだつていいこともあれば悪いものもあるのですから、日本においては日本の美風もあるのですから、日本の個性を活かして、そうしていいものは取入れるというのならばともかく、何でもアメリカにあるからみんな取入れて行く、最近そういう傾向があつて困るのです。この間も誰だかおつしやつたが、アメリカへ行つて来ると、何か土産がなくちやいけないというので、日本にふさわしくないものでもやはり作ろうというよう考え方、私はそういう考え方日本が常に明治以来とつて来た悪い考え方じやないかと思うのです。殊にこの十九条のごときは、一体個人の財産を保護することに重点を置くか、本来の目的たる企業に重点を置くか、いやしくも良識を持つてこの事業を営むために或る人に賛成してそこに投資した。こういうふうになつたと、それはそのときにその財産の目的は定まつてしまうのです。又事業は十日や二十日を目的としていないのです。少くとも一つの事業を始めますれば十年なり百年なりを目的として事業は営まれるのです。そういう目的を持つて構成された資本が、後日その人の考えによつていつでもそれが脱却できるということになりますれば、最初の目的とした事業形態の主体をなすもの、資本の形態というものは崩れて来るのです。それであなたはいわゆる投資した人の後日の意思の変更を尊重して、最初の意思というものをそこで無視しようという考え、無視することもよろしいです。併しそれを基礎にして営まれた事業というものは、本体が崩れて来るのです。どちらに重点を置かれるのですか。私は前者に重点を置いたほうがいいと思う。いわゆる最初の意思に重点を置くべきである。徒らに個人の財産の自由換価ということのみに重点を置かずに、何も強制したのではない、本人の自由意思によつて投資されたのですから、それを後日相続人であるとか或いはその人の心境の変化によつてはその資本がいつも異動するというあり方は、有限会社を組織して一つの事業を営む者にとつては非常に傷手であると思う。又有限会社を認めたところの根本の基礎がこれによつて揺がされると思う。如何ですか。
  90. 野木新一

    政府委員(野木新一君) お説は多々傾聽すべき点があるとは思いますが、この有限会社法において持分譲渡を極度に制限しておる趣旨と申しますものは、資本をそこに封鎖するということよりも、むしろ信頼関係のある同志の者が資本を寄せ集めて或る会社を作つた、その人的の結合の確保を図ろうという点に趣旨があるのではないかと存ずるわけであります。従いまして初め志を同じくして有限会社を作つた者であつても、その者は自由勝手に見ず知らぬ第三者に持分譲渡して会社を出て行くということを認めるならば、折角同志的の信頼する者だけ集つた会社に異分子が入つて来て、会社の平和が乱れるということが生ずる心配があるわけであります。この第十九条の案のように現在の社員が何か止むを得ない事情でその持分を他に譲渡して資本を回収し、或いは会社の社員としての責任を免れたいという場合には、会社のほうで自分の信頼する者にその持分譲渡してもらうと、そういう機会会社のほうに確保して置けば、そう全然会社の好ましくない第三者が飛込むという機会も防げますので、有限会社において持分譲渡を非常に制限しておるという趣旨も達せられるのではないかと存じておる次第であります。
  91. 伊藤修

    伊藤修君 そこでお説のように、資本とその人というものは有限会社の場合は離れない、これは持分とその人というものは一体をなして来ることはこれは当然のことです。持分だけ放つて置いて人だけ離れるとか、人だけ残つて持分だけ出て来るということはあり得ない。持分のない社員はあり得ない。それで必ず持分あるところ人あり、人あるところ必ず持分がある。故に最初人を目的としてその人を信頼してその人の出資を仰いでおるという場合に、その人が持分を譲ることはその人を失うととです。例えば素人である私が或る事業を営む、その場合においてその人の手腕力量を頼みにし、又事業の経営の上においては経営面のエキスパートを頼みにして、そうしてその人の持ち分と、その人を包容して私が一つの事業を営む場合において、その人が持分譲渡すれば、その人も去つてつてしまう。その場合にそういうものを探すということはなかなか困難です。実際問題として困難です、それはほかの人を探せばいいという一つの理窟は立つけれども、この十九条でいろいろのこういう制限をしておりますから、それによつて次に探せばいいじやないかという御議論もありますけれども、それはあなたたちの安易な考え方で、実際問題としては急に言い出されて、ここにある二週間とか五日とか、こんな日にちで容易にそんなエキスパートを選ぶことができるものじやないです。そうすると安心して事業経営なんてものはできるものじやない。いつ何時自分の信頼する持分、それに即ち人というものが去つて行くかわからない。その代る人を我々が求めて来なければならぬということになりますれば、最初出発するときに非常に不安なものができる。いわゆる有限会社という一つの法的措置によつて作られたところ会社経営というものが、その面から我々は好ましくないことになる。そうすると株式会社に今度はよらなければならない。同じことです。そうすると株式会社は、先ほどあなたのお説のあるがごとく、現在の商法の規定によりますれば、大企業形態を目途とした法律の立て方です。十万円や二十万円、十九万五千円などというような、経済価値の違つたこの際においてそういう会社を認めるということもおかしなものです。そういう点に私は非常な、本来の目的を失つて行く傾向にあるのではないかと私は思う。どうも今度の有限会社法改正というものは、ただ一遂に商法改正で右へ傚え、こうやつたような傾きがあつて、あなたの考え方に飛躍があるのではないかと思う、実情に即しないあり方だと思うのです。
  92. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 有限会社法あり方と申しましようか、株式会社との釣合をどの程度にするかという点につきましては、御意見よう考え方も相当有力にあり得るものとは存じます。併し例えば第十九条の点をとつて見ますると、御説のような見解も一部有力にあるとは思いますが、又他面有限会社につきましては、脱退とかいう制度もありませんし、一旦有限会社を組織した以上は、どうもそれから容易に抜けられないということでは、終戰後のこの個人の自由を重んずるというような見地等から見ても、又先ほど申上げた財産権をそう縛りつけてしまうというのも、新しい考え方からいうと少し行き過ぎではないか、むしろ第十九条程度にしておけば、その調和点として適当ではなかろうか、そういう考えの下にこの案を立てたわけであります。
  93. 伊藤修

    伊藤修君 終戰後におけるところの個人の自由の尊重ということはつとに我々声を大にして主張しておるわけです。併しそれも限度がある、公共の福祉も場合によつてはそれは制約されることは当然のことです。又かような経済的価値の問題に対しますれば、いずれを重しと考えるか。個人の自由のみを尊重して、企業形態の本体をも潰滅させるような、又その基礎を揺がすようなことまでなさしめては、それは結局角を矯めて牛を殺ような結果に至るのです。そういうただ新らしがりに考えることはどうかと思うのですよ。それは限度があると思う。今私は直せとか何とか言うわけではありません。修正しろというわけではありませんが、考え方がどうもそういうよう考え方で以て今夜どしどし改廃されますことは。実際企業を営む者としては不安な状態に置かれます。余りに個人の自由を尊重する故に本来の目的というものが失つてつてしまう。それは結局有限会社というものを作る必要もなくなつてしまう。株式会社と何ら選ぶところはない。
  94. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 御質問の点は誠に貴重な御意見でありまして、いろいろの場合に十分常に考慮に入れなければならないと存じます。併しながら十九条は実際の運用を見ますれば、十九条のような立てかたで実際の有限会社の要望は全うせられるのではないか。即ち新らしい十九条のような立てかたにいたしましても、有限会社の結合が、或いは信頼関係が急に薄らいで行くというような心配は先ずなかろう。そう信ずるものであります。
  95. 伊藤修

    伊藤修君 いつまで議論していても果しは盡きませんが、私はどうも今度の有限会社法改正に当つての当局の考え方というものが全く行き過ぎているとこう思うのです。それは親心でなさつたのかもわかりませんが、それならば株式会社有限会社と二つ区別するゆえんが、根本理由が失われて来る。又殊に十九条のごとき複雑な長い条文を置いてまでさような手当をしなければならんという必要性は、今日認められていないのです。一体そういう問題が果して全国にあつたですか。そういう事例がありますか、裁判の上に。そういう数字がわかりますですか。
  96. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 実は株式会社につきましては例えば経団連とか各種の団体等がありまして、いろいろの数字的資料も、又実情もわかるわけでありますが、有限会社につきましては統計的資料が殆んどありませんので、この十九条の立案のときなども非常に苦慮したわけであります。十九条は現実に裁判所あたりで問題になつたことがあるかという質問でございまするが、この点は私ども立案の途中におきましては、特に裁判所関係から出た委員のかたから承わつたことはありません。
  97. 伊藤修

    伊藤修君 さように我々日常法律生活の上においてそういうことが裁判の上に現われて来ないというものを、何を好んで有限会社の本体をもあいまい模糊とするよう改正をするのか、私は実はその点が不思議でならんのです。本来ならば有限会社などというものはなくてもいいでしよう商法の中で、先ほどのお説のように一千万円以上を商法によつて適用する、又小資本会社に対しては小会社というものを置くという行きかたでも私はいいと思うのです。そういう考え方のほうが将来私は非常にクローズ・アップされて行くのだろうと思います。こういうような手を考えますと、今日有限会社法改正しなければならんという、而もその改正の方向が新商法に右へ傚えという行きかたというものは、私は考え方にちよつと飛躍があるのじやないかと思うのです。これは私の意見として申上げておきます。それからただ新らしい法律ができたから、それに一つ右へ倣え式にやろうというようなお考え方は、将来一つ考えを十分盡して頂きたいと思うのですが、実際法律を作る場合においては、国民生活の上においていろいろな隘路があり困難があり、不自由を感じておるところ法律を作つて、それを賄つてやるというのが我我立場であります。今実際問題として、法律生活の上においてそういうことが余りに起つて来ない、又将来起るべしということが予想されれば又別でありますけれども、そうではないのですから、それは余りに理論的にこういうように法文を捻つて、而もこういうわけのわからんような文字を使わなくてはできないような法文は、これは立法技術からいつても全く不体裁なことでありますから、これは立法の大家の佐藤さんがおいでになつておるが、こういう立法形式というものは余り感心したものではないと思うのです。そこまでしなくては賄えないというものは、今日作る必要はないと思うのです。併し出た以上は、我々としては別に反対するのではないけれども意見だけは申上げて後日の参考にしておきたいと思います。
  98. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 御意見のほどはよく拜聽いたして、将来又株式会社法なり有限会社法などが、戰後の日本の経済社会の実情等に考えて又改正問題が起りました場合には、十分御意見のほどを思い出しつ案を考えて見たいと思います。
  99. 伊藤修

    伊藤修君 もう一点だけ……。私はこれはただ商法審議に当つて参議院がどういう態度をとつたかということを将来明らかにしておきたいと思うのです。それというのは、この商法改正に対しましては、先ほど法務総裁にも伺つたごとく、本来ならばこの施行期日を延期したいという気持は皆さん御同様だと思うのです。これは政党政派を問わずそういう考え方が多いと思うのです。それがどうしてもこれを審議結了せしめざるを得ないという立場に置かれておるその根拠を明らかにしておきたいと思います。私の考えとしては、若しこの施行法案通過せざる場合におきましては、本法たる商法がすでに施行されて七月一日から生きるのでありますから、そうすると施行法案が成立しない結果、商法が半身不随になる、そうすると実際の経済界に及ぼす影響というものがその面において大きな影響がある。いわゆる施行法を通過せしめないことによつて、実体法たる商法が七月一日から動くという結果、その動く商法の中で半身不随になる面がある。その半身不随から来るところの実業界に及ぼす影響というものは非常に重大なものがある。こう考えるのです。従つて止むを得ず本法に対しましては賛意を表せざるを得ないと、こう考えておるのですが、ただいわゆる施行法が不成立になつた場合において、実体法たる商法が動いて来る。その場合におけるところの結果ですね、悪い結果……、どういうようなものがあるかということは、私ども調べてありますけれども、一応速記録の上に明らかにしておきたいと思います。お述べ願いたいと思います。
  100. 影山勇

    政府委員(影山勇君) この施行法案におきましては、定款の絶対的記載事項が新旧違つておる点を、新法に規定されたと同様に現存の会社については同様の記載があるというふうにみなすということによつて、絶対的記載事項を欠くということにならないようにしているわけでありますから、先ず第一点に、その点で施行法が成立施行されませんと、定款の絶対的記載事項を欠きますから、現存の会社の存立が危くなるという結果が一番大きい点だと思われます。  それから一面、少数株主の権利の強化というようなことも、これも取締役の権限増大といつたようなものと非常に関係があるわけでありまして、少数株主権の限界をきめます例えば株数であるとか、旧法でいえば資本という点が食い違つて参りまして、少数株主権の適用が非常に困難になるというようなことが起るかと考えております。
  101. 伊藤修

    伊藤修君 まだいろいろ細かい点は大分用意してあるのでありまして、お尋ねしたいと思いますが、もう事ここに至つては何をか言わんやですから、この程度にして打切ります。
  102. 中山福藏

    ○中山福藏君 私の伺いたいところは大体伊藤委員の最後の問でわかりましたから、その点は省くことにいたしまして、ただ二点だけを念を押しておきたいと思います。それは有限会社法並びに株式会社性質に関する質問応答が行われておりましたが、時間がありませんから一切の理由を拔きにして、結論としてお尋ねしたいのは、将来この有限会社というものは、或る時期にはこれに関する法律は廃止したほうがいいのじやないかという考えを持つておるのでありますが、如何でしようか。そういう何はございませんか、政府におかれましては……。むしろないほうがいいと思いますが……。
  103. 野木新一

    政府委員(野木新一君) その点につきましては、有限会社法による有限会社の数も相当ありますし、株式会社法を現在のままにしておいて有限会社法を廃止するということは、又却つて逆に経済界に大きな影響を与えるのではないかと思います。株式会社の資本の額によつて何か特例を設けるなり、或いは株式会社は一定の資本以上に限る。そういうようなことを併せて考えて見なければならないと思うわけでありますが、若し株式会社について適当な資本額を限るというような見解が有力になりまして、適当なる額で限られたならば、その場合において有限会社の制度を再反省して、その際に総合的に全体的に考えるということになろうと思いますが、今すぐこれを廃止したほうがよいかどうかということにつきましては、むしろなお存続さしたほうがいいのじやないか、少くとも愼重研究の結果を待つべきである。さよう考えておる次第であります。
  104. 中山福藏

    ○中山福藏君 その点については十分一つ御研究を願いたいと思います。  最後にもう一つお尋ねしておきますが、これは提案理由の説明の劈頭に当つてお尋ねすることを私尋ね落しておりましたからお尋ねするのでありますが、衆議院法務委員会においてこの施行期日を、改正商法の、つまりこの商法改正に関する法律の適用の施行期日を七月の一日としておつた、それを十二月の一日にするという意見が多かつたので、一先ずそういう仮案をこしらえた、併しながら経済関係或いは経済諸機関の意見を聞いて、やはりこの七月一日に逆戻りしてきめたということに対して、原則としてという御説明があつたということを記憶しておりますが、然らばこの例外というものは必ず起きて来なければならんが、その例外という場合についてのお考え方はどうでしようか、それは例外を認められますか。そのときに原則としてということを御説明なつた。それはどうですか。ここに書いてありますがね。商法の一部を改正する法律原則としてと、原則という字を使つております。例外の場合ということも起り得るということが予想されるわけですね、こういうことになりますと。
  105. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) お答えいたします。この改正商法原則として七月一日から実施されることになりまして、その改正商法の一部分、例えば十七条に「旧法によつて成立した株式会社の総会の決議の要件については、左に掲げる日のうちいずれか早い日までは、」と、こう書いてありますが、こういうような列挙いたしております関係だけは例外となつて、これが一定の期間遅れて来る、こういう意味で原則という言葉を使つてつたのであります。
  106. 中山福藏

    ○中山福藏君 そういう御説明であれば、これはむしろ原則としてとお使いにならんほうが誤解を招かなくてよいと思うのですが、これは十数回交渉があつてこういうふうにきめたとおつしやいますが、その十五、六回交渉なすつた内容の一部を御説明して置いて頂きたい。さつぱりわからん。丁度大人の着物を縫つておいて、日本の社会情勢経済態勢というものが赤ん坊の立場にある。結局アメリカ式の商法改正ということになりまして、もうすでに着物だけを大人の着物を作つておいて、日本の社会情勢がそれに副わないという場合がありますから、この施行期日というものは非常にこの観点から注意をしなければならんと、こう考えますからお尋ねしておくのですが、これはどういう交渉があつてこうおきめになつたのですか。それを一つ内容の一部でも漏らしておいて頂きたい。わからんです、これでは。
  107. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) この改正商法の全体の考え方につきまして、日本の産業の実情と果してそれが一致いたしているかどうかというような事柄につきましては、又いろいろ考え方もありましようが、差当り施行法の審議の状況と睨み合せまして、改正商法の実施に当る準備期間が極めて短いのでありますから、そこでこれを全面的に延期をしたいという考えを以ちまして当初は一年ぐらい延ばしたい、こう考えて臨んだのであります。ところ関係方面意見などを徴しました結果、それが非常に困難であるというので、或いは半年になり十一月になり、十月になるというようなわけで、改正商法の延期の内容は交渉の過程におきましていろいろと変つて来たのであります。そして最後に得ましたのがここに御審議頂いておりますよう法案内容なつたのでありますが、この成案を得るまでには随分関係方面との折衝を重ねて来ました。その重ねました主な内容といたしましては、只今申上げたように全面延期というのを狙いといたしまして、その全面延期がいつまで延期をしてもらえるか、いつまで延期をしようか、こういうところにむずかしい均衡が繰返されておつたということを御承知をお願いしたいと思います。
  108. 中山福藏

    ○中山福藏君 関係方面というのは尋ねずにおくほうがいいのですか。関係方面と言われたが、結局何でしよう、総司令部、これは速記をやめて頂いても結構ですが、そういう意味ですか。
  109. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) そうでございます。
  110. 中山福藏

    ○中山福藏君 それならばわかりました。
  111. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  112. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 速記を始めて下さい。他に御質疑もないようでありますから、商法の一部を改正する法律施行法案商法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案、非訟事件手続法の一部を改正する法律案有限会社法の一部を改正する法律案商法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、右五案について便宜一括してこれより討論に入ります。他に御発言もなければ討論は終局したものと認めて、直ちに採決に入ります。五案をいずれも可とせられるかたの御挙手を願います。    〔総員挙手)
  113. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 全会一致、よつて五案は可決すべきものと決定いたしました。なお只今採決いたしました五法案につきましては、本会議における委員長の口頭報告の内容につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 御異議ないと認めます。正案についてそれぞれ御賛成のかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     鬼丸 義齊  岡部  常     左藤 義詮  長谷山行毅     北村 一男  中山 福藏     宮城タマヨ  齋  武雄     伊藤  修
  115. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) それではこれで散会いたします。    午後三時二十三分散会  出席者は左の通り。    委員長     鈴木 安孝君    理事            伊藤  修君            宮城タマヨ君            鬼丸 義齊君    委員            北村 一男君            左藤 義詮君            長谷山行毅君            齋  武雄君            岡部  常君            中山 福藏君            羽仁 五郎君            須藤 五郎君   衆議院議員            押谷 富三君   国務大臣    法 務 総 裁 大橋 武夫君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務府法制意見    第四局長    野木 新一君    法制意見参事官 影山  勇君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君