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1951-05-28 第10回国会 参議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十八日(月曜日)    午前十一時十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○住民登録法案衆議院提出) ○日刊新聞紙の発行を目的とする株式  会社及び有限会社株式及び持分の  譲渡の制限等に関する法律案(衆議  院提出)   —————————————
  2. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) 只今より委員会を開きます。先ず住民登録法案を議題に供します。
  3. 須藤五郎

    須藤五郎君 この住民登録法案第一条に事務簡素化というようなことがいわれておりますが、果してこういうやり方事務簡素化ということができるのかその点をちよつと御説明願いたいと思います。
  4. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) この制度の狙いは今までありました寄留簿、並びに法律上定められておりませんが地方自治体にとつても面倒なことをやつておりました世帶台帳とを合致しまして、これを併せますることが最も地方行政としての簡素化になる根本であろうと考えられるのであります。そのほか個々取扱事項に関しましてもこの登録一本に頼るということになれば非常に簡易化するものと考えられるのであります。例えば選挙人名簿学齢簿め作成に便利な、それから住民税の賦課、徴収等についてもその他配給、衛生等諸般事務に便益を與えるものと、かように考えております。
  5. 須藤五郎

    須藤五郎君 これをそういうふうな組織にするために、これまでよりも人員の増加とか経費増加ということは関係ないのですかどうでしようか。
  6. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 経費の点も今申上げましたように、寄留のための使用それから世帶台帳作成のための使用、及び手数等考えまするならばむしろ簡易化するものと考えられます。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 この第四条の第二項ですが、「市町村は、前項各号に掲げるものの外、条例住民票記載すべき事項を定めることができる。」という条項がありますが、それを具体的に一体どういうことを予測しておられるか、ちよつと伺いたい。
  8. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 大体今までに予想されておりますることは、印鑑証明のための印鑑、又選挙権があるかないか等、それから学齢児童が適しておるかどうかというようなこと等あるものと考えております。
  9. 須藤五郎

    須藤五郎君 学齢児童の問題は生年月日の問題が今度第四条に書かれるのですから、そんなのを特に条令で云々する必要はないように思いますがどうでしようか。
  10. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) お説の通りでありますが、ただ学校へ出ている者が何人いるとか、今年出る者は何人いるとか、そういうようなことを一目見て見れるようにというほんのただ行政上の措置だけなんです。
  11. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういうそんな簡單なことを法律をきめなくつちやできないというわけでもないし、又条例でそんなことまできめる必要はないと思うのですが、私はそんなことは信用できないと思いますが、まだそのほかに隠された問題があるのじやないかと思いますけれども……。
  12. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 今後においてどうかわかりませんが、今日我々の考えているところではほかに別にありません。そういうことがあればやれるということだけであります。
  13. 須藤五郎

    須藤五郎君 宮城県でこういう例があると思います。宮城県で指紋条例作つてそうして指紋条例でやつている、このうちにもそういう条例作つてそしてこの住民登録の中に指紋を取ると、そういうふうなことが意味されているのではないでしようか。そのためにこういうことを入れているのじやないかと思いますが。
  14. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) その問題についても前からいろいろ議論がありましたので我々も関心は持つておりまするが、今日のところそういうことを予想してこれを置いたのではございません。
  15. 須藤五郎

    須藤五郎君 私としては、どうもこの条例云々条項があなたが前におつしやつたよう学齢とかそんなことはこまかしに過ぎなくて、結局そういう点を本当に隠しているんじやないかというそういうふうに考えるのです。どうもこの点納得の行かん条項だと思つております。それから第五条の「届出がない場合及び届出を要しない場合には、職権でする。」という条項がありますが、この届出がない場合とか届出を要しない場合というのを少し具体的に示して頂きたい
  16. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 第五条によると、届出がない場合というのは本法において届出を要求しているものに対して本人届出をしなかつた場合であります。それから届出を要しない場合は、これはこの法律にもありまするが例えば出生とか死亡のように戸籍へ出ることによつて当然わかるものは、届出をしなくてもこちらで附票及び登録表記載することになつておりますから、それらの点もいたしております。
  17. 須藤五郎

    須藤五郎君 届出がない場合に職権ですると本法に定めているとおつしやいますが、それで果して正確な記録ができるものかどうか。届出があつて初めて正確な記録ができると思うのです。職権でやつて果して正確なものができるかどうか、その点をお伺いします。
  18. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) お説の通りで、届出をしてもらうことを原則としております。届出がなかつたらこれは正確でないのですが、併し届出せんからといつてこの制度をやめるわけには行きません。それで職権調査をすることにいたしております。従いまして職権調査に対して或る程度の強制力を認めざるを得んということになりまして三十一条以下の規定ができたのであります。
  19. 須藤五郎

    須藤五郎君 届出をしない場合は罰則はありますね。罰則を設けません調査ならばともかく、記載、消除ということを職権でするというふうなところに矛盾があるのではないか。罰則があるならば罰則はつきりできるものだ、それを罰則を置きながらなお職権記載、消除をするということはどうも腑に落ちないと思うのです。
  20. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) この罰則はほんの過料でありまして、それほど強制的のものではありません。又、それのみならず仮に重い刑を科すと言つてみたところが、それでも聞かなかつたらやめるわけに行かんものですからこちらでやる、こういう趣旨であります。
  21. 須藤五郎

    須藤五郎君 それからもう一言お伺いしますが、若しも罰則を受けて過料を取られましても届出をしない場合正確な記録というものはできないと思うのです。それで職権でやつたその記録が不正確なものであつてもそれで責任は誰がとるのですか。
  22. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) それはこの責任者である市町村長責任をとるよりほかはないと思います。
  23. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじや不正確な記録作つた市町村に対する罰則というものは、これは何ら記載されていないと思います。そういう不正確な記録作つてそれでこの目的が達せられるものかどうか。
  24. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 市町村長が能力の限りを盡して記載いたします以上は一応それに頼るほかないと思います。然るにそれに罰則をやるということになると市町村長は大変な迷惑をいたします。但し今あなたのおつしやるように、万一故意に何か特別のことを嘘のことを記載したといたしますれば、これは別に刑法上、公文書僞造そのほかに当てはまると思います。これ以上の調べ方がないとして作つた場合についてはそれ以上追及するわけには行かんのじやないかと思います。
  25. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういう場合の刑法は、私は法律家じやありませんからわかりませんが、若しも現行法の中にそういうものがあればその点をお示し願いたいと思うことと。それからこの住民登録法は飽くまでも正確を期するということが目標であるのに、そういう場合が予測されているのはやはり法の不備だと私は思うのです。それでむしろ過料をかけることでもう事足れりとして、職権でそういう不正確な記録を作るということをもう予測しているのだつたらこれはとんでもない間違いじやないか。飽くまでも正確な記録を作るというのが目的である以上、この職権でするというようなことは私はちよつとおかしいと思うのです。
  26. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) いやお説の通りで、原則としては本人届出になつているわけです。それでも届出なんだら指をくわえて黙つているわけに行かんから止むを得ず例外的にやるという意味で、何も初めから届出でんでもやれるという意味じやありません。これは十分この点でわかると思います。  それから故意にやればいわゆる公文書偽造になるわけで、刑法第百五十六条又は百五十七条にはまることがあると思います。
  27. 須藤五郎

    須藤五郎君 それから第二十二条ですが、住所を定めた日から十四日以内に転居届をしなければいけない、これを怠るというと罰金ですか何かに過科かに処せられることになつております。これまでの寄留届ですと市町村長が二、三回注意を與えてその上なおやらないものに対しては過科か何かを考えておつたように思うのですが、今度はそういう注意とかそういうことをしないでいきなりもう罰則に、罰金ですかをかけるということですが、これは余り人情味がなさ過ぎやしないかと思うのですが。
  28. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) この点は現行寄留法一つも変りがないわけであります。従いましてそういう注意をするとかせんとかというものは行政事務をとる者の何といいますか裁量に待つものでありまして、規定の上では十四日済んだら処分ができるということにはなつております。それは行政事務をとる者といたしましてはそれくらいの親切は当然やるべきものと思います。これは一つも変りございません。
  29. 須藤五郎

    須藤五郎君 二十九条ですが、「法務総裁は、市町村に対し、住民登録事務取扱に関して必要な勧告をし、又は助言をすることができる。」ということになつておりますが、どういう必要があつてこういう条項が必要なのか伺いたい。
  30. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) この点はこの間から随分質問を受けたのでありますが、これは監督ということよりもむしろ事務の統一を図るということに重点を置いているわけであります。従いまして、どこででも市町村の思い思いでいろいろの取扱をしては極めて国民全体に迷惑になろうと思いますから、そういうやり方でない方がいいと思うときにはこういうふうにした方がいいということを勧告するわけであります。併しこの勧告強制力を持つているわけではございませんから聞かなければ止むを得ませんが、そこは何というか睨みの問題であると思います。あと助言は向うからこういうことはどうしたらいいと来たときに消極的にこちらから意見を出すという意味だけです。
  31. 須藤五郎

    須藤五郎君 それから次の三十条の中に「住民票記載事項に関して報告を求めることができる。」という条項がありますが、これは警察法の改正による国警の強化というような点と考え合せて昔の内務省のごときものを作る前提のような感じも私たちするのですが、住民票記載事項に対して報告を求めることができるというのですが、この記載事項のどこがこういう国の行政機関報告の必要があるのかその点を伺いたい。その記載事項の中の条件は氏名住所住所を定めた年月日こういうことが記載事項の中にあると思うのですが、これのどこが必要なんでしようか。
  32. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) これを設けました根本の理由は主として統計上の問題でありますが、現在においてもいろいろのことを中央なり又県なりから市町村報告を求めているのは実際なのであります。例えば男女別の数であるとかそれから公民権の有無であるとかそういういろいろの行政上の都合で知りたいことを各官庁それぞれにおいて実際上皆報告をとつております。とるところは必ずとるのだから、それよりもむしろそういう報告はやれるということにしておいて中央地方とのつながりを明確にしておいたほうが却つてよかろう。こういう意味でありますが、今あなたのお説のようなさような目的は入つておらんことは間違いございません。
  33. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たち中央機関住民票にある氏名生年月日とか、男女の別とかこんなことを報告を求める必要はないように思うのです。そういうようなことは中央機関国民個々のことを知つても何もならないので、そういうことは地方自治体に任しておいた方がよい。殊に中央機関にそういうことを報告させる権利があるような条項を入れたということは、私たちは次の二十二条の、先ほど申しました条例できめたことですね、即ちいろいろなことが条例できめられると思うのです、即ち政党の支持とか何とかいうこともこれは記載せいということを条例できめてしまえば書かなくちやならない。そういうことをむしろ中央機関が求めている点ではないかと思いますがどうです。
  34. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 今おつしやるようなことをやるとすればそれはどうも行政事務を離れて政治活動に使うものでありまして許すべからざるものである、そういうときは法務総裁勧告でさようなことはいかんと言わせなければならんと思います。それが却つて生きて来るわけでありまして、これは主として今使われているのは統計上の問題です。いろいろなことは予想されますが、大抵配給するために必要なものとか、或いは生産者幾らつて消費者幾らあるのか、そんなようなことに実際使われておりますから、そこで明確にして置いて、あとでそういうものに使つたらどういうふうに経費を負担するというようなことを却つてこれがあればきめやすいものでありますので、これは実際家からの公聽会の要望が多かつたこともあり、前にもこれがいいと言つて要請されたこともありますので。
  35. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたが大臣をやつていらつしやれば間違いないかもわかりませんが、こういう条項があるところは使い方によつて非常にいろいろな危險が生じて来ると思うのです。そういう間違いが将来起つて来るような法律がこの頃盛んに作られつつあると思います。警察法にしましても自治体警察は無制限に殖やすことができる、そうしく自治体の決議でそれを国警に吸収することができる、こういう条項が作られている。運営によつてどうでも使えるような法文がたくさん出て来るように思いますが、あなたのおつしやるようなことならばもう少し具体的にこれを明示する必要がないでしようか。どういうことに関してということを、今あなたのおつしやつたことなら簡單なことですが、そういうことに関してということをはつきりさして置く必要はないでしようか。
  36. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 記載事項は前に四条で限定されているのでありますからそれに関するものというので、問題はあと条例の問題だけになると思います。条例で殖やしてこれに持つて来るというあなたの御疑念だろうと思いますが、その条例にいたしましても行政事務に必要なもの以外をやるということは、本法精神を逸脱しているものでありますからそういうことは法務総裁勧告で十分防止できると思います。
  37. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは指紋をとることが行政上必要なんでしようか。
  38. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 我々はそういうことは予想しておりません。
  39. 須藤五郎

    須藤五郎君 現在宮城県で指紋条例を出して指紋をとつている、そういうことが言われているのですが。
  40. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 宮城県の場合は我々にはよくわかりませんが、町村できめたのか或いは県の方針できめたのか知りませんが、この指紋の場合については従来からもあつた方がよろしいという意見をたびたび聞いております。この法律をこしらえるときもそういうことを予想されたそうでありますが、この法律でそういうことをやるのは本法精神と違うだろうということでそういうことは入れなかつたのだそうであります。これは指紋をとりますのは主として犯罪捜査の便に資するためであります。そうだとすると住民の現状を把握するということ以外の刑事訴訟法上の目的になる、こういうところからそういうものなどは入れん方がよかろうという意見であつたそうであります。従いまして今日はそういうことを予想しておらんわけです。
  41. 須藤五郎

    須藤五郎君 次に三十一条に関してお尋ねしたいと思いますが、これは全般的に見まして憲法で認められているところの人権の蹂躙になると思うのですが、一々お尋ねしますとこの二項にありますところの「前項調査のため、必要のあるときは、当該吏員は、関係人に対し質問をし」ということになつているのですが、この関係人というのはどういう範囲を指しているのか。
  42. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 勿論この制限はその調査のために必要な者に限られておりますることは当然でありますが、その範囲内において必要な者を家族は勿論或いは隣の人くらいに聞くこともあるようなことがあるかも存じません。ただし今言うようにその必要な範囲にとどめられることは当然のことであると思います。
  43. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると本人のみでない、家族及びその近所隣の人というようなことになつて参りますが、その関係人質問を受けた場合にその質問に答えない、拒否する場合もなおこの罰則によつて罰金に処せられたり過料に処せられたりなどしなければならんということが起つて来るのかどうか、本人以外に。
  44. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 理窟の上ではそういうことになりまするが、隣の人に聞いて俺は知らんと言つたからといつてそのくらいのことでやるような非常識もなかろうかと思います。理窟でそう言われるならばそういうことになるかも知れませんが。
  45. 須藤五郎

    須藤五郎君 併しそういうふうに法人ができているのですが、これは運用の如何によつて結局そういうことまで来ると思います。非常に危險があるのじやないかと思います。そんな馬鹿げたことはないと思います。本人以外の者が質問に対して拒否した場合に責任を取られる、皆さんはそれが当然だとお考えになりますか。
  46. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 我々はそういうようなことはないと心得ますが、条文に現わす以上はそういうものよりほかないので、関係人のうちこれこれの者だけは罰するがほかは罰せんということを書くわけに行きませんが、必要な限度ということになれば隣の人に聞いておれは知らんと言うから罰するというようなことはあり得ないと思います。拒否したというようなこともよほど重く見られなければ起訴にもならないと思います。
  47. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたはそんなことがないとおつしやいましたけれども、私たち考えるとないどころか起ると思うのです。ですからそういうことがあり得るかあり得ないかわからないような条項はおかしいと思うのです。関係人というようなこういう漠然とした言葉で現わすことが実に法律を作る上においておかしいのじやないかと思うのです、どちらでも解釈できるような。それから文書提示なんということ、これも憲法の二十一条、三十五条、三十八条で我々は全部守られている人権だと思うのですが、これをここで認められていないことになると思うのです。若しもこういうことを拒否した場合に我々は過料にされたり又罰金刑にされるということになれば、これは憲法を侵害する条項になるのではないかと思いますが、その点どういうふうに解釈いたしますか。
  48. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) これは衆議院でもずいぶん議論をしまして相当訂正いたしました。積極的に妨害したときだけにとどめたわけであります。それ以外は罰しないことに制限したつもりであります。従いまして故意に積極的に妨害する、こういう場合でなかつたらこの適用はさせんつもりであります、そういう趣旨でございます。従いましてこういう例は、これよりもつと広い例はたくさんいろいろな法律にもあるのでありまするが、本法においてはできるだけ縮めたつもりであります
  49. 須藤五郎

    須藤五郎君 三十三条と関連がありますからお尋ねしますが、積極的に陳述を拒み、忌避しということになると思うのですが、我々憲法黙秘権ということがはつきり認められているのですが、積極的な黙秘権黙秘権というのは区別は実際にどういうことでしようか。又文書提示を求められたときに積極的にそれを拒むということと文書提示を拒むと、積極的ということは具体的に現わしたらどういうことになりますか、ちよつと御説明願いたいと思います。
  50. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) これは原文では陳述をなさないとあつたはずです。それをあなたのようなお説があつて、それを拒むということに改めました。従いましてだまつておれば適用がないのです。だまつておらずおれは嫌だといえば拒んだことになります。
  51. 須藤五郎

    須藤五郎君 それはおれは陳述しないといえばそれが拒み、忌避したことになつて罰則にかかる、何と言われようがだまつておればそれでいいという、そんなことはおかしいです。実際の上において同じことをそんな形容詞みたいな言葉をつけることによつて区別する、それはとても私どもの考えではおかしいことと思います。お前は答えろ、おれは答えられませんと言えば拒否になる、何と言われようがだまつておればそれでいいと、あなたの解釈はそういうことになつておりますが、これは随分おかしなことだと思います。そうしてその証拠はどこにあるか、私は答えませんといつて答えなかつたのと、拒んでだまつてつて答えなかつたのと、おれは言つた、おれは答えないといつても何もそこで速記をとるわけでもないし、録音をするわけでもない。それに対して悪意な吏員に、あれは答えんといつた、拒むといつたから直ぐ罰則にかかる、これはとんでもない危險法案だと私は考えます。皆さんはそういうことで納得できるかどうか、若しあなたがそういう場合になつたら恐らく問題になることだと思うのですが、我々は飽くまでも人権を擁護する立場からこういう条項には断固として反対したいと思うのです。
  52. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) それは誠に極端な場合を予想してのお言葉でありますが、そんなことは困るといつたからといつて直ちに起訴するかどうかということは、条文に表われるのはそう表われますが、法律というものは一切そういうものだとは我々は心得ておりません。それから今あなたのおつしやるように、それでは証拠もないのに起訴するといつても、証拠がない起訴状では刑事訴訟法起訴になりはしません。恐らくこれはそんな急がしいときに困るからと言つたつて直ちに告発するやつもなかろうし、又持つていつたところがまさかそこでそういうことを検事が起訴するとも考えませんが、極端に議論すれば法律上こういうことはたくさんあるものであります。これだけではございません、ほかの法律には始終こういう例は出ております。
  53. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは実際にそういうことがないということが考えられる条項を殊更設けなくちやならん、それはどういうためなんでしようか。私はこの条項を設けなくちやならん実際的な具体的な例をあなたに教えて欲しいのです。私たちには考えられない。
  54. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) これは先ほどあなたの御議論がありました通り本人から届出することを原則としております。そうでなかつたら正確なものはできないのです。然るにやらなかつたらどうするか、やらんからといつて住民登録から除くわけに行きません。こういうものができた以上は一人でも洩れないように期さなければならんのですから、そこでやらなかつた場合には職権調査をする。職権調査する以上は職権調査できるようにしなくちやならん。それで邪魔する者があつたら罰するのだというので、これにあるからといつてこれを振廻して罰して歩くというようなことは考えられない。そうであつたら法律は危くてそばにおけんようになりますが、やはり法律常識というものもありまするし訴訟法上相当の何もありますから、そういう危險なものとも考えませんが今までの例でみな行つております
  55. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たち幾ら説明願つても、陳述を拒み忌避したことによつてこういう罰則を設けられるということは、憲法において認められている人権の無視になつて来ると、そういう立場からどうも納得が行かない。そうして積極的忌避とか消極的忌避というような言葉は非常にあいまいで、悪意的な個人的なうらみのあるような吏員にかかつた場合には非常に迷惑する条項だと思いますが、あなたに聞くとそういうことは常識でないと言いますが、今日そういうことが本当にすべて良識の下において運営されている場合ばかりではない。非常に人民が迷惑を受けている場合が多いので、特に私はこれは非常に危險条項だと思うので反対の意思表示をするわけなんです。  それからなおこれを拒んだ場合は「五万円以下の罰金に処する。」となつておりますが、住民登録法違反というような罪名で罰金になるのだろうと思うのですが、これは現行犯として逮捕されるのですか、どうですか。
  56. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 極端な場合はそういうこともあるかと思いまするが、それはやはり常識でこんなものを調べに行つたからといつて現行犯だといつて引つ張つて行くやつも世の中にはなかろうと思いますが、理窟においてはあり得るというようなことです。
  57. 須藤五郎

    須藤五郎君 逮捕する場合は、裁判所の逮捕状か何か持つて来てやるのですか。
  58. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 刑事訴訟法上の現行犯の取扱にまつよりほかないと思います。
  59. 須藤五郎

    須藤五郎君 誰がしばるのですか。
  60. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) それはやはり取調に行つた者がやるより仕方がないと思います。
  61. 須藤五郎

    須藤五郎君 行政官の吏員が逮捕するのですか、それはおかしい。行政官に警察権を與えるということになつて参りますが、どうですか、そういうことが許されますか。
  62. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 刑事訴訟法上の規定でございまして、それは何人も逮捕できることになつております、現行犯があるとすれば。
  63. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は法律を知らないからお尋ねしますが、そうすると、現行犯は誰でも逮捕することができるのですか。我々でも逮捕することができるのですか。
  64. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) それはそうです、現行犯となれば。
  65. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は法律家でないからその点はそのくらいにしておきます。そうすると、行政官でも逮捕できるということですね。それでは私の質問は一応これで終ります。
  66. 伊藤修

    ○伊藤修君 今須藤さんのお聞きになつた最後の点は、そういう非常に危險のあるものだから議論があると思いまするが、それはのちにいたしまして、根本の問題として、鍛冶さんがいわゆる寄留法に代るべき住民登録法を制定する必要があるということについて縷縷御説明がありましたが、私はこの法律の態勢から考えますと、この法律はやはり依然として寄留法と同様な運営になつて行くのじやないかと、こういうことを非常に憂うるのです。若しそうであるとするならば、何もここで事好んで住民登録法などというものを作らんでも現行寄留法で差支えないのじやないか、有名無実になるならば苦しんでかような法律を作る必要はないと思います。この法律をお作りになつて今日まで御努力になつたのであるならば、これを完全に運営できる方向に持つて行くように法律自体が仕向けなくちやならんと思います。それには第一にこの間あたり論議されております予算の裏付、これも勿論必要でしよう。それから根本的には法律自体に何か法的効果を與えるということが必要じやないか、そうすることによつて初めてこの法律が活きて来るのじやないかと思う。この法律の第一条を見ますると、「その日常生活の便利を図るとともに、常時人口の状況を明らかにし、各種行政事務の適正で簡易な処理に資することを目的とする。」即ち資料が少いのですけれども資料を求めるだけならば、あえてかようなぎようぎようしい手続をとり、且つ又先ほど須藤さんが質問になりましたように、理窟を推して行きますと結局現行犯として逮捕されるという由々しい問題が出て来るというような法律を作る必要がないのじやないか。私はこの法律を作ることは結構だと思う。作るならばそこに法律的効果を與えるように仕向けたらどうかと、こう考えるのです。今日頂きました資料の中に、京都、大阪、神戸、名古屋、横浜の市長の要望事項の中にもそういう趣旨のことが現われている。「国又は地方公共団体その他の公けの機関が、市町村の区域内に住所を有するものに対して処理する選挙人名簿、学令簿、予防接種台帳等の調製及び主食の配給、生活保護法による保護の実施等の事務は、住民票によるものとする。」こういう法律上効果を與えようとする要望がなされている。併しこういう書き方はくどくどしい書き方ですからこういう書き方をせなくても、第一条に、いわゆる他の法令によつて住所という場合なら、本法によるところの住民登録されたところを以て住所とみなすというような推定規定を設けて、そうしてそうでないというものに対しては反証を以てこれを主張せしめると、こういう行き方をすれば本法が活きて来るのじやないか、精神はそこでできるのじやないかとこう考えるのですが、提案者の一つ意見をお伺いしてみたいと思います。
  67. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 御尤もな御議論でありまして、我々も非常にその点考えておりますのですが、立案の際も十分考えたのだそうでありますが、現行戸籍法にいたしましても今のところすべて身分上のことは戸籍によることにはなつております。絶対的なものと言うていいくらいのものでありますが法定していないのだそうであります。事実においてあれに頼るほかないということで相当の公証力を持つているのですが、今何かできますならば当然そういうことになるものと心得ます。ほかに何もよりどころがないのでありますから、法律でこれに記載されているものは動かんのだということはおだやかでなかろう、今御指摘のようにみなすとして反証を挙げたらいいじやないかということをおつしやいますが、法律によつてそういうことをきめるよりは事実はそういうことによつて行くほかないからそれで差支えないのじやないか。立案者の考え方はそこに結論が行つたものと聞いております。選挙法については一昨日随分議論がありましたがこれはきめてきめられんことはありませんけれども、選挙法できめるべきことで、これにあるものは必ず選挙に行くということはちよつと手続が違うのではないかと、こう思います。選挙法に対する考慮といたしましては十分考慮して頂くことは結構だと、かように考えます。
  68. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうしますと、これはただ参考だというような趣旨に伺つたのですが、そうすればやはり市町村では配給台帳だとか、或いはその他のいろいろな先ほど読上げたようないろいろの台帳をこれは作らなければならん、結局そういうことになつて来るのじやないかと思います。それに市町村行政事務はこの住民登録を基礎としてすべて行うという考え方にして行い、初めて住民登録法を作ることの意義が出るのじやないのですか。これによらないのだ、ただ参考だと、よりどころだとおつしやるならば、そうすれば各種の帳簿をお作りにならなければならなくなり、行政官として、市町村事務としては依然として今日の寄留簿あと附属してこういうような各種の帳簿を作つて、それで事務をやらなくちやならんことになつて来る。結局住民登録法はあつてないようになつてしまい現在の寄留法と何ら変りがない。それでは目的を達しないのじやないか。少くとも私の申上げる程度の、いわゆるこれによるところの登録されたものについては住所とみなすという程度の基礎を與えた方がいいんじやないでしようか。そうすればこそ初めて住民は競うて届出をします。それで先ほどの処罰してまで届出させるような強硬手段を設けなくても事たりると思う。御提案の面子のことは、よき法律を作るために、又法律目的を達成するためにはどうしたらば余計これに国民が寄つて来るかということをお考えなつた方がいいのじやないか。
  69. 小木貞一

    衆議院專門員(小木貞一君) 非常にこの住民登録法にとつての一番重要な問題でありますが、現在先ほどから鍛冶委員から説明ありましたが、戸籍法におきましても、その公証力につきましてはこれは何も法律で定めてはおりません。併しながら一応のこれは公証力を持つているということは現在確定した意見であります。この戸籍法との関連におきまして戸籍法以上の公証力をこの住民登録法において認めるということは、これは権衡上妥当ではないという一つ考え方もあるわけであります。それから若しお説のようにいたしますると、みなされますとこれは反証は勿論許されないと思います。戸籍の場合におきましても記載はこれは一応の公証力を持つているだけに過ぎませんので裁判所に訴えて勿論反対の事実もこれは認定されると思いますが、若しこの住民登録法におきまして、住民登録票に記載されたものはもう住所とみなされて動きがつかんということになりますと、これは戸籍法との関係におきましてどうかと思うのであります。  それからもう一点これはできることなら仰せのように、これが法律上他のいろんな行政目的で作られまする、例えば選挙人名簿にいたしましても、或いは学齢簿にいたしましても、或いは予防接種等の帳簿にいたしましても、そういう他の行政目的に利用されるために作られている現在十幾種のものがございますが、それらの基礎資料となることが法定的にこれに住民登録法規定することができるならば、これは非常に望ましいことでございますが、この点につきましては今までに御説明もあつたと思いますが、施行法の際に殊に選挙人名簿との関連等につきまして十分研究してその関係はつきりするようにいたしたいと、こういう考え方をとつておる次第でございます。
  70. 伊藤修

    ○伊藤修君 仮に一歩譲歩いたしましてみなすということが仮にいけないとするならば、この市町村の要望事項のごとく住民票によるものとすると、こういう一つの基本を與えるならば一応これによつて私は一つの法的効果があるから進んで住民登録するでしようし、又せざるを得ないです。その程度まですることによつて初めてこの法律目的が生きるのじやないですか、そういうお考えどうですか。
  71. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 勿論この法律を作りましたのはそのつもりで作つております。ただそれを条文に表わすか表わさんかということですが、実際になるとこれによるほかなくなるという考え方からそれがなくともいいという考えでやつております。これが適当でこれによるほかないのですから、従つてこれによつて基礎付けて参りますればこれは相当の公証力がおのずから出て来るものと、かように考えております。
  72. 伊藤修

    ○伊藤修君 それから提案者の御意思は、最後に申し上げました趣旨目的としている、こういうことでございます。してみれば、あとの見解は、あなたの方ではこの条文もそういう趣旨が表われているとおつしやるのですが、我々としてはそれは明文にした方がいいと、こう考えるのです。本法中の世帶及び世帶主と、こういう表現があるのですが、その表現は單に文字の進め方に使つているわけじやなく、それによつて罰則規定の根拠になるわけです。従つてこの際世帶ということと世帶主ということの意義を明らかにして頂きたいと思います。
  73. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) この世帶というのは、これはいわゆる社会通念で認めて頂くことでありまするが、ここで法律的に申しまするならば、居住と生計を共通する者によつて構成されている一つの生活單位であると、こういうふうにお答えするよりほかないと思います。それは事実を見て、そうであるかどうかをきめるよりほかないと思います。
  74. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうすると、下宿屋とか、宿舎とか、寮とかいうものは、これはどうなんですか。
  75. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) この場合には入れておらんです。
  76. 伊藤修

    ○伊藤修君 入れてないと誰が届出るのです。誰が世帯ですか、誰が世帯主ですか。
  77. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 学生が寄留している場合でしようか、学生が寄宿舎におる場合であるのですか、あなたのおつしやる寄宿舎とは。
  78. 伊藤修

    ○伊藤修君 そういう場合もあるし、工員が寄宿する場合もあるしいろいろありますよ。寄宿舎は学生のみに限りません。
  79. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 寄宿舎でありましても、仮に宿屋の二階におりましても社会通念上、そこに一つの世帶を持つていると、そこを生活の本拠にして一つの団体を作つていると、こう見られる場合は、これはやはり世帯主があると解釈するよりほかない。たまたまそこで暫くおるというときには世帶がないというふうに考えております。
  80. 伊藤修

    ○伊藤修君 只今私が申上げる罰則がなければいいですよ。罰則があるから、届出の義務もあるのですから、だから世帶ということは、世帶主の観念を明らかにする必要があるのではないかと思うのです。あなたの提案者の説明があいまい模糊たる法律解釈では困るのです。
  81. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 先ずこの法律適用に当つて根本はどこに住所があるかどうかということです。住所があつてそうして生計を一つにしている団体があるとすれば、それが一つの世帶であつて、その事実上の何というか支配者がその世帶主、こういうことになります。一人でもおらんときは世帯主兼世帶員です、これは届出なければならない義務があると、かように考えております。問題は住所があるかどうかによつてきまるわけです。
  82. 伊藤修

    ○伊藤修君 然らばこの場合住所があると解釈されるのですか、ないと解釈されるのですか、学生、工員寮に入つている者、具体的々々々とおつしやるけれども、具体的に争いを生ずるということを防ぐのが立法者の親切じやありませんか、罰則を以て臨んでおるのだから、逮捕するということになつておるのだから。そういう重要事項ならば法律で手当すべきですよ。
  83. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) これは住所のときのいつも言う議論で、同じように、生活の本拠がどこにあるか、ということできまるわけでありまして、学生が親のところから資金を貰つて学校に行つている、休みになれば帰るというような場合は、生活の本拠と認められんから普通入れておらんです。問題は生活の本拠がどこに固定しておるかどうかということできまるのではないかと思うのですが、これはやつぱり抽象的にそれをきめると言われても困るので、ここにおいてやつぱり定めるほかない。併し届出るその本人の意思が、これは衆議院で随分議論しましたが、何といいましても、本人の意思により届出れば、一応住所があるものと認められることが多いと思います。本人が届けても、いやお前は違つたものを届けたということは事実上少いと思いますが、理窟の上からは、商用のために来ているなら用が済めば帰るし、又学生なら学問のためにおつても休みになれば帰るというような場合は、普通入れないということになつております。
  84. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうしますと、第一条にいう住民の実情を把握するということにならんことになるでしよう。結局東京に学生が数万おるでしよう、これはあなたの言うような生活の根拠が郷里にあつて、東京は住所でないということになりますと結局寄留になります。従来の言葉の居所になる。居所の者が届け出んでもいいことになる、それでは実態は把握できません。そうすると何のために配給制度の足しになるか、或いはその他の足しになるか、一つの足しにならんでしよう。依然として寄留と同じような効果をもたらすというようなことになる。例えば刑務所におるものは一体どうする、終身懲役をどうする、これは住所はない、十年の者はどうする。世帶ということが、世帯主の観念を明らかにせざる以上はそういうことになる。法律目的はそこでごちやちやになつてしまうではないか。大部分の者は皆住所と居所と分離してしまう、これが把握できないことになる。あなたとじては高遠なるところの第一条の目的というものは、その点から言つて崩れてしまう。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  85. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 個々の問題に対してはそういう例もありましようが、居所は入れんことに本法はしております。
  86. 伊藤修

    ○伊藤修君 居所は入つていないことはわかります。だから永い居住というものに対して少しも把握できないことになつてしまうでしよう。
  87. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) それはやはり国勢調査と確かに違うところでありまして止むを得ないと思いますが、これは住民ということを元にしておりますから。
  88. 伊藤修

    ○伊藤修君 そういたしますれば結局寄留法と同じことになつてしまうのじやないですか、この法律では寄留法と同じような効果になつてしまうのじやないですか。
  89. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) 只今の点若干補足申上げますが、仰せのように学生のような場合にはこれは具体的にきまらざるを得ないと思います。現在の寄留法では寄留手続は準世帶というものを考えまして、学生のような場合、例えば寄宿舎に入つておる、こういうような者は一つの準世帯として包括的にそれらを寄留させなければならんということに建前を取る、そういう考えでやつておるのでありますが、このたびの市町村住民、つまり市町村住所を持つている者を把握しよう、そうしてこれによつていろいろな選挙であるとか、そのほかのたびたび申上げましたような行政目的にこれを使つて行こう、こういうことでありまして、今のお話の、それは居所のある者は把握できないじやないかというお話でございますが、先ず住所を持つておるという点で、これは学生のような例の場合には住所地の住民として把握できると思います。そうして、これはそれじや配給に何の役にも立たんじやないかというようなふうに私は今聞きましたのですが、この点は居所においても配給は受けられるということになりますから、これは差支えないのじやないかと思います。それから刑務所のような場合でございますが、これも問題になつたのでございますが、これは強制的に居所を、住まつているところを指定せられているのでありまして、これは住所とは勿論言えないだろうと思います。こういうふうなものは例えばほかにも類似なものが、少年院であるとか養老院であるとかたくさんあると思いますが、これらのものはこれらの施設においてこれらの数を掴むことは十分できるのでありますから、仮に人口その他の問題で全国的にこういうものを考えようとする場合には、これはそういう施設々々について把握できるのでありますから、私はこの住民登録によりましても住所を持つている住民を把握する、而もこれを基礎にして他の行政目的使用するということは、これは十分目的を達することではないかと思うのであります。
  90. 伊藤修

    ○伊藤修君 居所にいる者は配給台帳によつてやるからいいじやないか、それを簡易にしようと思えばこそこれを立案したのだとおつしやつておりますけれども、その説明は提案の理由と齟齬しておりますから。  それからなお、仮に選挙権の場合にもそうです、寄宿舎によるような場合、或いは女中に来ているような場合、そういう場合に選挙権は移動しておりますか、現在移動していることは事実です、そこにおいて生活しているのですから。そういう場合において入らないというような一つの公証的な性質があるということになると、結局それは本法によつてお前は住所がないじやないかと当然無効の扱いが出て来るのですよ。だから一体絶対的公証力を持たすのか、或いは準公証力を持たせるか、公証力がないとするか、基本的な観念がそういう点から動いて来る。現在日本の選挙において二カ月以上三カ月ほど寄宿舎におればそこで選挙権を與えているのですよ、それを住民と称してやつているのですから。刑務所の場合だつてそこにいることだけで以て選挙権を與えているじやないですか。
  91. 小木貞一

    衆議院專門員(小木貞一君) これは勿論具体的にきめなければならんのでございまして、学生でも勿論具体的な場合にはその下宿屋に住所があるという場合は勿論あると思います。女中の場合も又然りだろうと思います。これは住所住民ということで考えている以上は当然そうならざるを得ないのであります。
  92. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうなれば結局そこが住所ということになる。そうして届出義務者が消滅した場合においては誰が届出をするのか、世帯主が届出るのか、誰が届出るのですか。
  93. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) それは先ほど申上げましたようにこれは学生個人、女中個人が届出る、こういうふうに考えております。
  94. 伊藤修

    ○伊藤修君 女中が世帶主という観念は我々通用しませんよ。
  95. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) それはそういう場合もあるということでございまして……。
  96. 伊藤修

    ○伊藤修君 場合でない、そういうことは常識上通用しません。日本中歩いたつて女中が世帶主ということはどこにありますか。
  97. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) それは文中の場合は世帯主は使つている主人ですから、それは当然です。
  98. 伊藤修

    ○伊藤修君 それと同じような関係に立つところの寄宿舎なり下宿なり刑務所等、人の集合する場所においては誰が世帯主であるか、一人々々が世帶主になつて届出をしなくちやならんのかどうか。だから私は根本的に世帶主とは何かという定義を明らかにしろということを申しているのであります。
  99. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 個々の場合で論じなければならないと思います。学生がここに長くいるのですから、生活の本拠を持つているといつてみずから届出れば学生一人が世帶主であろうと思います。そういう場合は寄宿舎のおやじが全部届けなければならん義務はないと思います。自分で住所地を移したということは、何か生活の本拠を持つているという、大体そういう常識でおのずから判断せられるのじやありませんか。
  100. 伊藤修

    ○伊藤修君 どうも鍛冶さんと話していると友だちと議論しているようなもので駄目です。もう少し私たち一つ法律を作る上においては親切があつていいと思います。少くとも立法者として、法文の上に表わすとか表わさないは列として、世帶とは何か、世帶主とは何かという解釈を明らかにしておいて頂くということが必要じやないかと思うのであります。将来において最高裁判所の判例が出るかも知れませんが、少くとも立法する場合には法的観念を定めておいて頂きたいと思うのであります。そうすることがこれを運営して行く場合国民の利益じやないか、そういう示唆を與えることが必要じやないかと思うのであります。今日できなければ午後でもよろしうございますから一つ考えになつて頂きたいと思うのであります。  次にお伺いしたいのは、転入の場合、転入したことによつて先の住所地へそれが届かなければ移転してこないという法文の建前になつております。そうすると一体住所地はどつちが住所地か、その間一体どうなるのですか。二重配給になるのですか、これはちよつと私はこの法の穴じやないかと思うのであります。本人は二重配給を受けるのですよ、こちらでも配給を受けて、先の所でも配給を受けることになるのでしよう。だからこれは現在東京その他の地方でやつているように、登録の場合においては、先に転出の証明をもらつて新らしい住所地に届けるという一つのものにした方がいいのじやないですか。二つの建前をとつているのですから、届出を受理して、受理されるまでの期間というのは二重に住所地を持つことになるのです。配給その他のことが常に二重に行われるということになりはしませんか、これは一つ考え願つてはどうですか。
  101. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 今のような場合は勿論想像せられまするので、これはいろいろの議論があつたわけでありまするが、先ずこつちを取消して行つてそれで向うへ行つてやつた方が正確ではないかと思いますけれども、これはやはりそうなりますると、どちらが最も公平かということになりますので、そうすると今の場合は二重になるので惡いのですが、ここで取消して行くということになると向うに行くまでに空白の事態が出て来る、こういうことになります。
  102. 伊藤修

    ○伊藤修君 ところが現在みんな終戰以来今日まで国民はそれに慣れて来ているのです。転出届をもらつて行かなければ転入はできないですよ。これに慣れて来ているのです。それで国家もこの間に二重に食糧を配給する必要がなくなるのですよ。これは日本国民の移動総数というかどのくらいの統計が出ておるかわかりませんが、それによつて消耗されるところのものは相当数量に上つて来る、配給制度がこのまま続くとすれば。だから私はやはり従来やつてつたように転出を先にして転入によつて初めて住所登録ができるとこういう転出証明をつけて住所登録をするという、こういう行き方の方がいいんじやないかと思う。これが一番整理もいいし正しいのじやないでしようか。
  103. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 配給のことを考えまするとそういうことが考えられまするが、この住民の把握ということになりますと暫らくでも空白を置いておくということは面白くなかろうということでこういうことにしたというのが実状であります。
  104. 伊藤修

    ○伊藤修君 今日日本の交通機関関係からいつても大体一晝夜です、端から端まで行つても。一晝夜の空白の時間がいいか、届出していわゆる元の住所地に行政官庁が書類を送つて二週間も三週間もかかる実状です、恐らく今後もそうだろう、この空白、いわゆる二重住所地を認める方がいいか、どつちが法的措通としていいですか。これはもう私が説明するまでもなく賢明なる鍛冶さんおわかりのことだと思います。(笑声)
  105. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) その配給のところから言うとその通りなんですがね。
  106. 伊藤修

    ○伊藤修君 その他の場合でも二重に住所を認めるのがいいか、先ほどの質問の、少くともそれに法的根拠を事実上は與えるものだというように現実的の法的公証力を認めるというのでなくて、事実上公証力を與えるというなら、我々の法律生活の上において二重の住所を認めるということそれ自体が矛盾じやないか。而も今日の行政の運営の仕方からいえば少くとも二週間は見なければならない。これからやつて御覧なさい、これは今まででもそうだ、今まででも戸籍を私が届けて一週間でやつたことがない。先ず二週間が三週間かかる。その謄本をとるには一月かかります。そういう今日の遅々たる行政運営の上に立つてあなたのように一日の空間を免れるために一月の我我の不安定な法律生活を認めるということはよくないと思うのですが、これは立法せられたあなたの方のちよつとミスじやないですか。
  107. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) やつぱりこれは考え方だと思いますが、(笑声)事実と合われるところの理窟は今あなたのおつしやつた通りです。こつちから住所を移転したにかかわらず移転でないことになつております。それで二重ということはないのです。こつちに来ない間は元のところにおることになる。それが事実と違うということは確かに面白くないと思いますが、今のあなたの場合はですね、先にやつて行くというと向うへ行つて向うへ届出するまで住所のない人間が出て来るということになる。これが面白くなかろう、こういうことなんです。それ以上はこれは考え方ですが。ですから一日でも住所のないということになつてはいかぬから、そこで成るほど時日が遅れてしまうか知らぬが、向うへ行つてやれば……。
  108. 伊藤修

    ○伊藤修君 現在日本でやつている場合でも転出届を持つてつて、岐阜県なら岐阜県に住所を届けるまでは日本国民でないということになるのですね、それを現にやつているのです。けれどもそれは我々の生活の上において可及的に速かに行われている、飯を食わなければならぬのですからどうしたつて届けるのです。放つておいたつて届けるのです。それは実際の問題としては先へ転出届を送つてしまうのです。住所のないときはできませんよ、事実問題として。それよりはむしろ二重届の方が弊害が生ずると思うのです。住所登録をした向うへ行つて取消してしまうまでは、こつちも住所を持ち、向うも住所を持つことになるのです。
  109. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 大分時間もたつたし、答弁ももう少し御研究、打合を頂いた方がよいように思いますから、この程度で休憩をして午後続開することの動議を提出いたします。
  110. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) 午前はこの程度で休憩いたします。午後一時三十分より再開いたしまして本案に対する質疑を続行いたします。    午後零時二十七分休憩    —————・—————     午後二時十六分開会
  111. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) 只今より委員会を開会いたします。  日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社及び有限会社株式及び持分の讓渡の制限等に関する法律案を議題に供します。先ず提案者の説明を求めます。
  112. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社及び有限会社株式及び持分の譲渡の制限等に関する法律案につきましての提案理由を御説明申上げます。  御承知のように、新聞は社会の公器であり、その事業は高度の公共性を持つものでありまして、その主張の自主性と報道の真実性は実に新聞の使命そのものであります。従いまして、新聞における言論の自由を確保し、報道の正確を保持し、その伝統を守るためには、外部から来る資本の圧力などを十分警戒せねばなりません。現在日本の新聞は九〇%以上株式会社によつて経営されているのでありますが、各新聞社はこの使命を達成するために、定款を以てその株式の譲渡制限乃至は禁止を規定しているのであります。これはひとり日本においてのみならず米英等先進民主国家においてもおおむね是認されているところであります。  ところが御承知のように、本年七月一日より実施せられんとする改正商法第二百四条は株式の絶対的譲渡性を規定し、従つて株式譲渡の禁止乃至制限は無効とする建前をとつているのであります。かくては新聞における言論の自由と、伝統の保持は危險にさらされ、その使命達成の上に重大なる障害の主ずることを免れません。このことば日本の民主化及び文化の発展に極めて重大な影響を與える結果とも相成るのであります。元来、この問題は改正商法の施行延期と関連して起つて来たものでありますが、その改正商法自体の審議過程におきましても、株式の絶対的讓渡性につきましては相当強力な異論があつたことは御承知の通りであります。衆議院法務委員会におきましては、以上申述べました諸般の事情を十分考慮いたしまして、在京有力新聞社の代表を参考人として招致しそれぞれの意見を聽取すると共に、資料の提出を求め且つ名古屋、大阪、福岡に專門員、調査員を派遣いたしまして地方新聞社の実情を詳細に調査いたさせたのであります。かくして次の点を内容とする改正商法に対する特例法の成案な得た次第であります。本案の内容の主たる点を御説明申上げますと、  第二点は、一定の題号を用い時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社にあつては、定款の規定を以て株式の讓渡を制限することができることといたしました。その制限の方法は、株式の讓受人を、その株式会社の事業に関係ある者であつて取締役会の承認をしたものに限ることができることとしたのであります。  第二点は、日刊新聞紙の発行を廃止し、又は引続き百日以上休止し若しくは休止しようとするときは、速かに定款を変更して、株式の讓渡の制限に関する規定を削除しなければならないことといたしました。  第三点は、有限会社の形態をとる新聞紙にあつては、その持分の讓渡について以上の規定を準用することができることといたしました。  以上が本案の大要であります。何とぞ御審議の上御可決あらんことをお願い申上げます。
  113. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) 本案に対して……。
  114. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 只今御説明申上げました法案の内容の説明につきまして第一点の申上げたことに多少相違がありますから訂正をいたしたいと思います。第一点をこれから申上げるように訂正をいたします。一定の題号を用い、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社にあつては、定款の規定を以て株式の譲渡を制限することができることにいたしました。その制限の方法は、株式の讓受人を、その株式会社の事業に関係ある者であつて取締役会の承認を得たものに限ることができることにしたのであります。こう訂正をいたします。
  115. 伊藤修

    ○伊藤修君 質疑に入りますか。
  116. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) 本案に対する御質疑の方は御発言を願います。
  117. 伊藤修

    ○伊藤修君 私はこの際衆議院のかたに一言申上げておきたいと思います。本案が衆議院の議員立法として御提案になつたその趣旨については別に異論があるわけではありませんが、会期末においてこういう基本的な問題の変更に関する法律を御提出になるという止むを得ない事情もあつたことと存じます。著しそうであるとするならばいろいろな事情があつてそういうことに止むを得ず来たという御理由ならば、少くともこの法案を起草さるる相当な時日があつたことと思うのでありますが、その当時において参議院に私はいろいろ御相談あつていいのじやないかと思うのですが、勿論提案がずつと早ければ何も御相談なくいつでもお出しになつてもかまいませんが、会期末にならなければ出せないという事態があるときには事前において、相当の專門家が皆おるのですから專門家同士でお打合せになつて参議院においても愼重にこれを調査し、そうして必要のあるゆえんを究めておきたいと思うのです。成るほど御提案理由の中には專門員を派遣して全国に亘つて調査したとおつしやる。それは一院だけの考え方であつて、参議院はどうでもよいのだ、会期末に持つてつて押付ければいいのだという考え方は私はよくないと思う。  こういう点は今後少し考えて頂きたいと思うのです。それは両院が独自に立法権を持つておるのですから、いつ何時お出しになろうと、又相談せずにお出しになろうとそれは御自由でありますが、少くとも我々法務委員会といたしましては従来からの慣例からいたしましても、或る新らしい立法をしようというときにおいて、お互いの考え方というものは事前に通達いたしまして、そうしてお互いに研究する時日を與えておるのが、今日までの行き方であるのであります。本案に対しましてはそういうようなことは今日まで私は聞いておらない。たまたまこういう会期末に、すでに本来ならば本日を以て終了する、その終了する間際にかような法案を出して我々にうのみにしろという扱い方はこれは納得できない。この間全国のこの法案関係なさる方のいろいろな御意見を伺いました。その際たまたま参議院はいつも法案に対して揉むとこういうようなお説があつたのですが、これは私は聞き流してはおきましたが我々決して法案に対して操むというのではありません。少くとも憲法の上において二院制度を設けている以上、お互いによき法律を作るために十全を盡すことは当り前なことです。疑義のあることは疑義を質すのは当然なんです。研究されることも当然です。憲法六十二条において国政調査権が與えられているのはそれがためです。だからかような私は見方、考え方ということは我々として納得できない。その点に対する今後のこともありますから衆議院の態度を一つお聞かせ願いたいと思います。
  118. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 只今伊藤委員の御発言の御趣旨は極めて尤もだと存じております。この法案につきましての参議院の方面に対するあらかじめの打合或いは了解等の手続が十分ふまれていなかつたことは誠に恐縮に堪えないのでありますが、実はこの新聞紙の商法の特例、新聞社の株式譲渡に関する商法の特例につきましてはかように急いで出す必要がないと考えておりましたのは、商法の延期と睨み合せをいたしておつたのでありまして、すでに今この委員会で御審議をお願いいたしております商法の一部改正の法律案において、あれは今年の十一月一ぱいぐらいは当然延期されるものである、なんぼ近い時期におきましても十月一ぱいくらいは延期になるものだという一つの見通しを以ちましてかかつておりました。若し商法が十月、十一月に延期になりますならばこの譲渡制限等に関する特例につきましてもゆつくり両院において審議をしても遅くはないと、かように考えておりまして相当落着きを持つておつたのでありますが、その商法延期の方が御承知のようにできなくなつたわけでありまして、全面的に、この一部を除いたこういう関係におきましては七月一日から実施をされることになりましたので、そうなると譲渡制限に関する特例法律案の本案につきましては急いで審議をせなければならんという事態に立ち至つたのであります。そこで衆議院におきましてこの法案の成案を得るのに非常に急いで、やつと本法案の委員会における成案を得、その筋のOKをとりましたのはたしか一昨日であつたと思いますが、ごく近い期日に早々の間にこういう手続を経て参りましたので、参議院の方面に向つてのあらかじめの打合、了承等を得るに至らなかつたことは誠に済まないのでありますが、こういう特殊事情に基くものでありましてこの点を御了承を願うわけであります。今後一般の法律案の審議に当つてはこういうことのないように衆議院法務委員会においては十分考慮をいたしたいと考えております。
  119. 伊藤修

    ○伊藤修君 いわゆるここに至つた経過は我々諒といたし、これは十分了承しております。私のお尋ね申上げたいことは、すでにこれが起案されておるのは地方選挙以前のことと考えられるのでありますが、でありますからそういう場合におきましては少くともこういう法律考えているということを一つあなたの方の事務当局から我々の方の事務当局へ御通達願えますれば、こちらの事務当局もそれに向つて一カ月、二カ月という相当の期間研究する余地があると思う。我々はただ委員会にいきなりこれを出されましても、実際には実情を何も知らずしてあなた方のお考え方をそのままうのみにするということになりますので、そういうあり方はよくないと思う。我々の扱うこの法案というものは少くとも今日まで政党政派を超越して参つたこういう建前から考えましても、どうか今後の扱い方としては、そういうような新らしい立法措置がとられるような場合には、事前に一つ御通達又お打合を願いたいと、かように考える。そのあり方を一つここで衆議院として今後実行して頂きたいと思う。かように先ず私は注文をつけるわけです。
  120. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) この法案につきましての資料は多少以前にお渡ししておつたようでありますが、事務的ないろいろな関係で手落もあつたことと存じます。伊藤委員のお説は全面的に賛成でありますから将来さようにいたしたいと存じております。
  121. 伊藤修

    ○伊藤修君 次にお尋ねしたいのは、この法律の立てられた趣旨はいろいろおありになりましようが、要するにここの提案理由に謳われたような趣旨が表面的な趣旨でありますから、これから考えますと、いわゆる言論の自由、公共のためにというような、これを強く保持するためにかような措置をとるのですが、他面においてこういう虞れはないでしようか。いわゆる独占企業となつてこの商業新聞が、而も世論に対して大きな力をもたらすところのこの言論機関が、いわゆる右翼化して行く、独占的に右翼化して行くという、この点は考えられないでしようか。又御考慮になつたかどうか。
  122. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 今日の資本系統が全部右翼であるという形におきましてならば、或いは右翼化する、この形を保護することにもなるかもわかりませんが、大体において公正な新聞社が今希望しているような資本関係におかれているのでありまして、それは左右両翼に偏せざる資本系統だと考えておりますから、御心配はないと存じておりますが、同時に又新聞の関係が資本関係から論調が変つて来るとか偏頗な論調になつて来るような場合におきましては、それはおのずから読者が公正なる批判をしてその新聞の将来の運命を決することになると思いますから、さようなことも一応考えたのでありますが先ず心配はないと考えております。
  123. 伊藤修

    ○伊藤修君 私はいわゆる前門の狼、これは或いははつきり申しては悪いかも知れませんが、共産党系の資本系統の流入ということを阻止するために後門の虎を引入れるというような結果になることを懸念されますが、この点も十分今後我々としても考えなくちやならんと思いますが、いわゆる一面だけを恐れて他面の方に余地を與えるようなことがあつてはならんと思います。  次にお尋ねしたいのはこの新聞紙という特殊性から、いわゆる譲渡禁止の規定の特例を設けられたのですが、現行商法の上におきましての株式讓渡の禁止ということに対して、この存続の希望というものは日本全国民と申してもよろしいと思うのです。御承知の通り日本の企業形態というものはいわゆる同族会社の企業形態が多くある、この一つの資本によつて一つの事業がなされる、そこへ異分子の資本が流込んで、その形態がその一角から崩れることは好ましくないあり方だということが、日本の企業形態の家族的な同族的な集まりにおいて考えられている。この形において常に株式の譲渡禁止の存続を推している傾向がある。これは世論ではないかと思う。そういたしますると、ひとり新聞紙においてのみこの特例を許すということになりますれば、例えば西陣織の会社が求めたい、或いは鉄道が求めたい、或いは電気がこれを求めたい、いろいろな各事業の異なるごとによつて求めて行つた場合におきまして、果してそれらに対しても容認するという考え方を持つのかどうか。その場合におきまして公共性ということがあつた場合においては必ず許すというお考え方かどうか、その点をお伺いしたい。
  124. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 改正商法の株式の絶対的讓渡性を認めたという一つの特質は、これにつきましてはいろいろ議論のあるところだと存じております。特に産業方面の議論等は随分やかましいものがあるのでありまして、私どももこれには十分いろいろと考えたのでありまするが、改正商法の特質を直ちに全面的に変更することは今日の事情におきまして許されないと存じております。そこで高度の公共性をもつている事業であつて、資本系統からの圧迫でその事業の公共性に重大な影響を及ぼすようなものは、こういうような特例を設けなければならんと考えたのでありますが、それを日刊新聞の発行を目的とする株式会社だけに限りましたのは、今日の日本の企業状態で新聞と同様の公共性をもつているものを他に求めたのでありますが、私どもの考えの中にはさようなものが浮んで参らなかつたのでありまして、差当り新聞だけを特例の対象といたしたのであります。併し今後事業界においてその目的の達成が資本系統からの圧迫によつて重大な影響を受けるであろうことが考えられます業種の株式会社がありとするならば、こういうような特例法は当然考えられるべきである、かように考えております。
  125. 伊藤修

    ○伊藤修君 細かい点でありますが、この説明の第二点にあるこれは休刊した場合のみが想像されて掲げられておりますが、新聞紙といつてもぴんからきりまであつて、大新聞はともかくといたしまして、地方のいわゆる與太新聞に至りましては月に一回くらい印刷して出して、あとは謄写版で号をつないでいる、こういうような新聞もあるのですが、そういうような新聞に対してもやはり何らの制限もない以上この法律適用があることと考えられます。提案理由のようないわゆる社会の公共性に重大なる影響を及ぼすという一つの点が重点としてこれが考えられたとするならば、いわゆる発行部数であるとか、事業形態の大小というものにおいて枠を設ける必要があるのじやないでしようか。この点の御意見を承りたいと思います。
  126. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) お説御尤もでありますが、この特例法の対象を日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社株式といたしたのでありまして、その締め方をば日刊新聞ということに考えておつたのであります。従いまして、その部数でありますとか、或いは事業の形態であるとかいうことをお説のように縛ることにいたしますれば、一層この除外例の適用に当つてはいいとは思いまするけれども、こういう特例法の法律でありますが、細かいところまで規定して行く方がいいかどうかということも相当議論の対象になつておりますが、衆議院におきましては、日刊新聞の発行を目的とする株式会社と、こういうところに制限の重点をおいたのでありまするから、さように御承知をお願いいたします。
  127. 伊藤修

    ○伊藤修君 まあ立法論といたしましては、提案理由の全趣旨から申しましても、私は企業形態の大小というところに一つのポイントをおくということが望ましいと考えるのですが、ただ一般的に株式会社というだけで事を処しようという考え方は余り特例法としては広きに失するのではないかと、かように考えるのであります。若し、大新聞の場合にはそういうこともありますまいが、地方の與太新聞が株式讓渡禁止の規定を利用するために、それが主たる目的で、それで営業の目的は新聞の発行、附帯的事業として、例えば鉱山をやるとか、或いは商売をやるとか、或いは生産業をやるとかいうものがあるとする、例えば新聞社の場合には、紙の製造をするとか、これは自分のところの使う紙は自分で製造するということで、附帶事業として、一貫作業でやると、事実はそうでなくて紙の製造の方が主であつて新聞の方は附帶活動である、その附帶事業をやるということがこの特例によつて保護されるというので、これを利用する虞れもなきにしもあらずです。私のお伺いしようとするところは、要するに附帶事業に対してもなお且つこの特例は適用されるかどうか、附帶事業を営む営業目的株式会社にもこれが適用されるのか。この会社目的一つが日刊新聞を発行するという目的さえあれば附帶事業が何であつてもその会社はこの禁止規定をおくことができるかどうか、制限規定を置くことができるかどうか、その分析を一つつておきます。
  128. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) この讓渡制限の定款を作りました会社が、讓渡制限目的を以て脱法的に日刊新聞発行を表看板に使つたというような場合におきましてその定款の有効無効は、脱法的な手段として日刊新聞を名目的に極く少数発行いたしておるというような場合においては、おのずから別の議論が立つて有効無効は判断されるものだと存じておりますが、たとえ附帶事業でありましても、その日刊新聞を発行するという真面目な目的の下にそういう事業を行いつある株式会社の定款において株式讓渡制限規定を設けたときには、当然それは有効と解釈されるべきである、かように考えております。
  129. 伊藤修

    ○伊藤修君 いわゆる定款の有効無効ということはあり得ないと思うので、定款の有効ということは疑いないので、別に禁止するわけではないでしよう。私は先ほどの例に申上げましたごとく、月に一回くらい印刷して発行し、その他は謄写版で刷つて発行する地方の與太新聞が、第一目的はこの日刊新聞発行と謳つて、そうして第二、第三においていろいろな事業を営むことを目的とするその会社が、やはりこの特例によつて制限規定が設けられるとかように考えますが、それは結局許すことになるのですか。
  130. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 一応許されるべきだと思いますが、先ほども申上げましたように、その新聞の発行の真意が、株式の讓渡制限をしたいためにほんの形式的にやつているのだと、いわゆる日刊新聞の発行を目的とする株式会社という言葉に入りにくいような場合におきましてはそういう制限はできないものだと、かように別の観点から解釈すべきであると存じております。
  131. 伊藤修

    ○伊藤修君 それだから先ほどお聞きしたのです。よく新聞が月に一回くらい発行してあと継続している場合もこの法律によつて賄うのだとおつしやつたのですから、そうすると当然それは真意がどこにあろうと、形式的にさように謄写版で以てただ号をつないでおけばいわゆる日刊新聞発行者としてこの特例の適用を受けるのではないでしようか。それですから前提にそれを伺つているのです。今最後に伺つたことでそれは矛盾して来るのですが、結局そういう会社でもやはり日刊新聞の発行会社ですからこの特例が適用されることは当然であると思うのです。
  132. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) それはそういう会社でありましても、一応この特例の適用の対象になるということが私はいいのだと考えるのです。ただおつしやいました日刊新聞の発行というのが、謄写版刷で簡單に出して命脈をつないでいるというのならまだですが、そういう形をとつて特に株式の讓渡制限をしたいために、新聞発行は目的ではないのだけれども形だけはとつているのだというような場合においては、別の法律観念からこれを讓渡制限の対象とすべき株式会社ではないと考えられることもあると、こう申上げたわけなんです。
  133. 伊藤修

    ○伊藤修君 それは別の観念というものはどこから来るか知りませんが、結局それはできないのではないでしようか。とにかく謄写版で刷ろうが何で刷ろうが前提においてそれは制限しないのだと枠ははめていないのだとおつしやる以上は、そういう場合においても適用があることはこれは当然のことなんです。それが他の目的であつても、少くともこの会社の定款において目的が日刊新聞の発行であると、而も事実として謄写版でも何でも、別に活版を以て輪転機を以てやらなければならないという枠はないのですから、何でやつても印刷して出せばいいのですから百部出そうが五十部出そうがいいので、いずれも日刊新聞として扱われるでしようが、それが他の観念で無効だということはどこからも出て来ないと思う。又そういう場合には勿論適用になるのじやないかと思います。適用になるものと思うが、なる場合があるから何かそこに枠を設けなければならんのじやないか、こういうように思います、この目的を達するならば……。
  134. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) この表面かも考えましたならば、さような場合におきましても一応日刊新聞の発行を目的とする株式会社ということになると思いますが、そうなれば当然適用されると考えていいと思います。ただそれが脱法手段として用いられた場合には、脱法的な法律議論から一応有効無効を考えるべきであると、こういうことを申上げたのですが、併し一応そういう新聞紙を出して命脈をつないでいるような場合におきましても、定款で制定することが許されるということになると思うのでありますが、そういう場合においてこれの規定の仕方ですが、伊藤さんの言われまするように、或いは事業の形でありますとか発行部数ということをここできめて行くということが、法律といたしましてどうかと考えて一応ここに書きましたこの日刊新聞紙というようなくくり方をいたしたわけであります。
  135. 伊藤修

    ○伊藤修君 私はこの法律にはそういう欠点があると思うのであります。恐らくこれは利用される虞れが十分あると思います。仮に利用された場合においてそれを脱法行為であるから無効だという反証は挙らないと思う。何となれば、そういう事実は必ず行なつているのですから、出しておる以上は基本的にはそういうものをも日刊新聞と認めるという基本的な建前ですから、それが無効であるということは言えないと思います。どこかで私は絞る必要があるのじやないかと、こう思います、これを完璧を期しようと思うならば。だから資本の形態で枠を作るとか、或いは目的に主たる目的が新聞発行の会社に限るというふうにするか、何かそこで絞る必要があるのじやないかと、かように考えておるのであります。そうせないと、恐らく私は将来おいてそういう会社が現われることを今から指摘しておきます。そういたしますと、商法において関係方面において強く示唆したあの讓渡制限というものがこの面から全部逃げてしまう。恐らく占領でもはずれまして独立になりますれば、禁止規定は一般的に設けられるとは思いますから余り必配も要らんかも知れませんか、少くともそういう穴があるということを申上げておきます。
  136. 須藤五郎

    須藤五郎君 この法案の中にある第一条の「株式の讓受人を、その株式会社の事業に関係のある者」というところでありますが、これは関係のある者という範囲は、どういうことでしようか。
  137. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 只今のお尋ねの事業に関係のある者という関係の意義でありますが、或いは従業員でありますとか株主でありますとかといつた、その会社の事業そのものに関係をしている者という意味であります。
  138. 須藤五郎

    須藤五郎君 この場合、その関係ある者というのは国籍とかそういうことは問題にならないのですか。
  139. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 問題にいたしておりません。
  140. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、若しも或る外国人が関係しておつてその示唆によつて制限株式が集められてしまう、要するに或る外国系統の新聞によつて日体の新聞社が全部占拠されてしまうというような懸念はないでしようか。
  141. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) むしろこういう制度があるから今御心配のような事態は生じないと考えておるのであります。自由に外国新聞によつて日本の現在の新聞の株式が買占められるようなことがこの規定によつて制限されて来ると考えております。
  142. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちは、今押谷さんが、現在の民主的な新聞がこの法律によつて守られる、民主的な立場が守られるというように解釈しておりまするが、私たち立場から言うと、むしろ今日の新聞のあり方は民主的というよりも反動的な方向に向つているように思います。むしろこの法律案は現在の反動的な新聞を守るという立場、民主化して行く方向を逆に拒否している、拒否するための法律案のように考えられまするが、押谷さんは、今日の日本の新聞が、民主的な立場から実際に理想的な形であるかどうか、この点を。
  143. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 今日の日本の新聞のあり方或いは資本の形というものが民主的であるか、或いは反動的であるかということは、それぞれのの新聞社の特質によつてきめるべきであつて一概に申上げることはできないと考えております。中には反動的なものもあります。又中には共産党的なものもあると思いますが、いずれにいたしましてもそれぞれの伝統は持つているのであります。それぞれの性格もはつきり現われているのでありまして、それに対して各読者は信用をしてその伝統を好んでいるのであるから、これを成るたけこわさないように、資本の圧力によつてその伝統がこわれるとか、言論の自由が圧迫されるようなことのないようにしたいというのがこの法律趣旨でありますから、さように御承知を願います。
  144. 須藤五郎

    須藤五郎君 現在の新聞自体が資本の圧力が加えられているように私は思うわけです。現在のそういう方向に何ら触れないで現在の方向を維持するための法律案のような形をなしているように感ずるわけですが、先ほど伊藤委員がおつしやつたように、この法案は共産主義系の資本が日本の新聞を左右するようになるのが恐ろしいから、この法案でこれを守るのだというような意見をおつしやつたのですが、あなた自身はそれに対してどういう考えを持つていらつしやいますか。
  145. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 現在の日刊新聞社の殆んど大部分と申上げてよい九十幾%のものが株式会社であり、而もその大部分がここに規定しようといたしまするような讓渡制限を皆付けているのです。その讓渡制限の主なる定款例では、社内株であるとか、従業員だけに株式を持たすというようなやり方でありますから、そこで新聞社の従業員が即ち資本家であるというような形であつて、私どもはこの形はむしろ好ましい民主的な資本のあり方であると考えているのです。この考え方を各新聞社も望んでいるところでありまして、こういうような新聞の資本と経営と従業員の形並びにそれから来る言論の自由、伝統というようなものを極端な左派から或いは極端な右派から、伝統の違うそれぞれの系統のものから急に株式の移転がされ、資本の圧迫によつてその伝統がこわされるというようなことを防ぎたいと思うのでありまして、ただ單に共産主義者の資本力によつて新聞の伝統をこわしてやることを警戒しただけではございません。どちらでもいいわけです。とにかくその新聞の伝統を読者が愛して、これを守ろうとしている、それを知らんうちに資本の変化によつてこわして来ることを警戒せなければならん、これは新聞が公器であるという点から特にこういうことが必要であると考えているのであります。お尋ねのように共産党に対する警戒だけでは決してございません。
  146. 須藤五郎

    須藤五郎君 この関係ある者という条項で、外国資本に新聞社が乗取られる心配はないという御意見ですが、こういう形でなくても大分この外資導入というような形を以て、日本の或る特定な新聞社が外国の大きな新聞社と提携することによつて、そこの経営まで外国の資本の掣肘を受けると、そういう危険が起る場合が予想されるわけなんですが、現在そういう危險があるかないか。又單にこういうだけの条項で外国の資本に日本の言論機関が牛耳られるという心配が防げるものかどうか、その点を伺いたい。
  147. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 只今の各日刊新聞社の株式はそれぞれ禁止又は制限をされておりますから、そこで外国資本によりまして買収をされるということは殆んどないのであります。この制限が更に有効に続いて参りますならば、大きな資本力によつて日本の新聞を買収しようと考えましても外資によりましては直ちに買収することができない。それは従業員でなければ、いわゆる事業の関係者でなければ株式の買取りができないこと、殊に取締役会の承認を得なければ株式は買えない、望ましからざる、好ましからざる外国資本によつて日本の新聞の株式を買占めようといたしましても、それがこの条件に当てはまりませんから、そこでそういう危險はこの法律によつて防止することができる、かように考えているのであります。
  148. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは取締役会さえ承認すれば外国の資本に讓渡することも可能である、言い換えれば外資によつて或る新聞社が買占められてしまうというそういう危險は起り得ると思うのですが、どうですか。
  149. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) この制限関係が二つの条件にかかつているのでありまして、その一つ会社の事業に関係のある者ということが一つと、そうして取締役会の承認を得なければならんということと二つでありますから、取締役会が自由に承認を與えましたところで、その讓受人が会社の事業に関係がなかつたならば讓受けることができぬわけであります。
  150. 須藤五郎

    須藤五郎君 その関係の程度なんですが、いわゆる外資導入、投資という形で外資が入つた場合、やはりこの事業に関係があるというふうに解釈できると思うのです。そうすると、取締役会が承認すればその関係人株式を讓渡することができるということになつて参りますからそういう危險が起つて来るのではないか。そこで私は前に国籍の如何を問わずということについて質問申上げたわけです。
  151. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) この第一条の事業に関係のある者といううちには、外資導入の関係において、いわゆる新聞社に対する債権者というような形における外国資本家、これはこの関係の中には入らないと考えております。いわゆる利害関係者ではありますけれども「事業に関係のある」というこの縛られた言葉の中には当てはまらないと考えております。
  152. 須藤五郎

    須藤五郎君 投資家がこの会社の事業に関係がないということは常識では考えられないと思います。やはり投資をすればその会社の事業に関係があると考えるのが正しい見方でないかと考えております。その事業に関係がない、投資家などということは私たち考えることはできないですが、どうでしよう。
  153. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 投資という言葉の中には、單に資本を貸してやるという投資家もありますれば、いわゆる株主としての投資家もあるわけなんですが、株主としての投資家は事業に関係を持つている者だと考えております。又單に金融をしたというような関係者は、利害関係者ではありますが事業の関係者という範囲には入らない、かように考えております。
  154. 須藤五郎

    須藤五郎君 国籍の如何を問わずということでなしにこの中に日本人というふうな制限規定を設ける意思はおありですか、どうですか、関係者の国籍の問題です。
  155. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) さようなことは考えておりません。
  156. 須藤五郎

    須藤五郎君 どうも私は今伺つただけでは、私が心配しているような状態が今後起つて来るような懸念があるのですが、絶対そういうことがないというならばはつきりそういう懸念のないような条項をこれにお付けになる御意思があるかどうか。又ただこれだけの条項でそういうことが絶対心配ないというふうに解釈されるのですか。
  157. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 須藤委員のおつしやいます外国資本によつて日本の新聞社が買収されるというような心配が将来起らないように、その目的で作られたのがこの法律案でありまして、これが成立いたしますれば、今日の株式会社がやつております……お手許にあると思いますがこの附則の第二に書いてありますように、今日までやつて参りました定款を全部そのまま有効にあらしめたいというのが一つの大きな願いでありまして、こうすることによつて外国資本によつて日本の新聞が買収されるような虞れはなくなるであろう、かように考えておりますから、この内容につきましてはあまり訂正をしよう、改正をしようという考えは持つておりません。
  158. 須藤五郎

    須藤五郎君 私の質問は終ります。
  159. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  160. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) 速記を始めて下さい。
  161. 伊藤修

    ○伊藤修君 先ほどお尋ねした中でもう一点ちよつと残つているのですが、第四条に「第一条第一項の株式会社の設立の登記にあつては、同条第二項の定款の規定をも登記しなければならない。」とこうあるのですね、これは新設の場合、それから旧設の場合は、附則の二項ですね、「第一条の株式会社又は第五条の有限会社で、この法律施行の際、株式又は持分の讓渡の制限を定めた定款の規定株式申込証及び株券のその記載並びにその登記があるときは、その規定記載及び登記は、この法律規定によつてされたものとみなす。」だから設立の場合と、すでに登記のあつたやつと制限規定のあるやつとはこれによつてつているわけですね。ところが会社はできているがこれから制限しようというやつは、とても手当をしていないんですな、それはいいのですか。
  162. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 従来制限をされております会社につきましては附則の第二が適用されますが、本法は日刊新聞の発行を目的とする株式会社の古いものも、これからのものも皆平等に適用の対象になると考えております。
  163. 伊藤修

    ○伊藤修君 それはちよつと違いますね、それは四条の「設立の登記にあつては、」とこうあるのです。設立の登記にあつては、だから古いもので制限の登記のない会社があります。そういうものに対する賄い規定がないじやないですか、経過規定がないじやないですかというのです。
  164. 押谷富三

    衆議院議員(押谷富三君) 第四条の「第一条第一項の株式会社の設立の登記にあつては」とこうありますからお説のような御意見が出て来るのでありますが、定款を変更いたした場合におきまして、その部分を登記いたします際におけるその用語は、やはり設立登記の変更ということになるらしいのでありまして、その部分が設立登記の欄と申しますか、そこに登記をするというのでありますから、すでに設立されております株式会社のこの部分の変更になつた場合におきましても、第四条によりまして登記はしなければならないということになるのであります。
  165. 伊藤修

    ○伊藤修君 それは索強附会の御議論です。設立登記と変更登記とは登記法によつて明らかに相違しておるのです。会社が設立されてから後に登記事項の変更をする場合には変更登記の手続があるのですから、変更登記によつて設立の登記を変更するのです。議論が違いますよ。この表現で以て変更登記を含むと、そんなのは暴論ですよ。
  166. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  167. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) 速記を始めて下さい。本案に対する質疑は次回にこれを続行いたします。   —————————————
  168. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) 次に商法の一部を改正する法律施行法案、商法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案、非訟事件手続法の一部を改正する法律案有限会社法の一部を改正する法律案、商法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、以上五案を便宜一括して議題といたしたいと思いますが、これを一案ずつ質疑をいたしますか、又は一括して質疑しますか、お諮りいたします。
  169. 伊藤修

    ○伊藤修君 一括でいいでしよう。
  170. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) それでは一括して質疑をすることにいたします。
  171. 伊藤修

    ○伊藤修君 今の議題になりました、一括して下されたんですが、これに対する質疑ですね、私は法務総裁とそれから法制意見長官両氏の出席を求めたいと思います。なお本日これを上げてしまうことになりますれば別に質疑もしません。それから会期が延長になりますならこれは質疑しておきたいと思います。私の希望としては明日朝からずつとお願いしたいと思います。
  172. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) まだ会期がはつきりしていませんので、只今議題になりました五案は本日はこのままといたしまして明日にいたします。
  173. 伊藤修

    ○伊藤修君 なお今の議案の上程されるときに法務総裁と法制意見長官の出席を求めます。   —————————————
  174. 鈴木安孝

    ○委員長(鈴木安孝君) 次に住民登録法案を議題に供します。質疑のおありの方は御質疑を願います。おありですか……それでは本日はこの程度で散会いたします。    午後三時三十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     鈴木 安孝君    理事            伊藤  修君            鬼丸 義齊君    委員            北村 一男君            左藤 義詮君            長谷山行毅君            岡部  常君            齋  武雄君            羽仁 五郎君            須藤 五郎君   衆議院議員            鍛冶 良作君            押谷 富三君   政府委員    法務府法制意見    第四局長    野木 新一君    法制意見参事官 影山  勇君   事務局側    常任委員会專門    員       長谷川 宏君   衆議院事務局側    常任委員会專門    員       小木 貞一君