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1951-05-18 第10回国会 参議院 文部委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十八日(金曜日)    午後一時三十九分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○産業教育法案衆議院提出)   ―――――――――――――
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれより本日の会議を開きます。  この前の委員会において委員各位から御発言がありました点、産業教育法案制定のために産業教育法制定推進委員会が主になつて多額の資金を集められたという風聞がありまするので、事教育に関する問題になりまするので、我々はそれを重要視いたしまして、その点を明らかにしたいということの御意見に賛成をいたしまして、只今文部省辻田局長もお見えになり、又特に推進委員会責任者として、委員長都立北豊島工業高等学校長佐藤孝次さんに参考人として来て頂いて、その間の事情を明らかにいたしたい。こう存じますので、先ず文部省辻田局長からその点の説明を承わり、その後各委員から御質問を願うことにいたしたいと存じます。
  3. 辻田力

    政府委員辻田力君) 産業教育法制定に伴う全国職業高等学校長協会並びに全国職業高等学校PTA連合会による募金について調査をした結果を御報告いたします。  このことにつきましては、昭和二十五年五月、全国農業工業商業の各高等学校長大会が、神戸及び奈良で開かれまして、この際「職業教育振興に関する件」の決議をみたのでありますが、これより端を発し、衆・参両院職業教育法制定に関する請願をいたし、両院ともに採択せられたものであります。  その後、昭和二十五年十二月五日、全国農業工業商業水産の各高等学校長会並びにPTAが連合して、ここに職業教育法制定推進委員会が結成され、その目的のために活動が開始されたのであります。  この推進委員会の組織の中に企画委員会があり、ここで、この法律制定のための啓蒙運動費のことについて協議されましたとき、平素よりの会費の集り状況より見て、一応の募金可能範囲を五百校と予想し、一校一万円で合計五百万円を目標として集めるという原案をもつてPTA連合会と相談したところが、この一校当り一万円という基準は、公平に似て公平でなく、結局においては父兄負担なのだから、生徒の数を基準として定めることが公平であるというPTA側意見により、その一万円の額とにらみあわせ、一校生徒四百人平均計算基礎の上で、生徒一人当り三十円平均割合ということになり、これを十二月二十日の関東地区職業高等学校長協会並びにPTA連合会に諮りましたところ、全日制の生徒一人当り三十円、定時制生徒一人当り十五円の割合で、各校夫々の事情に応じ自主的に醵出しようということになつたのであります。この関東地区校長会及PTA連合会の結果を全国に流しましたところ、各地区においても、自主的にこれに同調することになりました。なお、この点について地方誤解を生ぜしめてはいけないとの趣旨から、北海道、東北、海東、近海、中国、四国、九州地区職業高等学校長及PTA連合会議に、佐藤委員長をはじめそれぞれ各委員が出向き、その真意の何処までも、地方自主性に応じ、任意であることの話合いをしたのであります。  この結果、中国地区では一人当り十円ずつの割合とか、大阪においては実業界方面からの寄附とか各地に於て自主的に集め易い方法を以つて醵出することになつたのであります。しかしながら一部の学校においては、生徒の手を通じて募金したことが誤解を生ぜしめているようでありますが、趣旨はどこまでも地方の実状に応じた任意醵出であつたようであります。  昭和二十六年四月三十日現在の募金総額は、四百四十八万七千五百七十一円で、昨年五月よりの支出は額、二百四十五万二千百六円五十銭であります。  その支出の主なものは、旅費交通費の約四十万八千円、産業教育法制定促進全国大会費の約三十六万六千円、印刷費の約二十三万七千円、農工商水産部会会議費の約二十三万六千円、世論喚起報道宣伝懇会談費の約二十八万二千円、消耗品費約十七万六千円、通信連絡費約十二万八千円、その他十二万円未満となつております。  なお集まりました金額に余裕が生ずれば、これを以て産業教育振興についての意義ある事業を行いたいとの意向であります。  以上概略でありますが、文部省において調査をいたしました結果を御報告いたします。
  4. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 何か御意見ありますか。或いは更に佐藤委員長から承わつてからにいたしますか。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 文部省はこれを報告されるに当つて、どういう調査に基いてこういうことになつたか、その経過をちよつと……。
  6. 辻田力

    政府委員辻田力君) 文部省におきましては、この職業教育法制定推進委員会本部と申しますか、幹部のかたがたにお目にかかつて資料を提出して頂きまして、口頭によるお話伺つて、それをまとめてかように御報告した次第でございます。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 どうも私たち要求したのは、そういうことではなかつたと思いますね。文部省の独自のやはり調査に基いて調査報告されなければ効果のあるものだとは思えない。通牒したとか、そういうことはなかつたわけですか。これは今責任者見えておるのだから、そこからお伺いしてもわかることで、文部省文部省として独自の機関を発動して、調査機構を持つておる。調査部長もおる。そういうわけで調査して、時間的に不可能な点はあつたと思いますけれども、そういうことを私は聞きたい。それでなければ重複するだけだと思う。そういう点はどうです。
  8. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今申しましたように、本部かたがたについていろいろ調査いたしましたのと、又地方からこの関係で出て来られたかたがたにも地方実情等につきましても、いろいろ意見その他について調査したわけでございます。併し我々が特別にこの問題について特別の機関を発動して調査するということにつきましては、これは只今ではできるだけのことはやつたつもりでございまするが、それ以外に別に調査するということも困難なのでございますので、今申しましたようなことについて調査したのであります。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 各県教育委員会通牒を出されましたか。我々が休会に入る前にお願いしたのはそういう意味じやなかつたのです。このP・T・Aでやられたとするならば、各県教育委員会にはP・T・Aを所管するちやんと課があるわけですが、文部省としては調査すると言つた以上は、各県の教育委員会にこういうような調査の私は通牒を出すべきであつたと思いますが、出されたのですか。
  10. 辻田力

    政府委員辻田力君) 通牒を出して照会はいたしませんでした。ただ併し各県別のどれぐらい集つておるかというようなことにつきましては調べております。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どこで調べたか。
  12. 辻田力

    政府委員辻田力君) それは帳簿によつて調べました。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 推進委員会のほうで調べた。
  14. 辻田力

    政府委員辻田力君) さようでございます。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは調査にならん。我々が要望した調査にはならん。
  16. 岩間正男

    岩間正男君 それから実際に子供だとかそういう父兄だとかそういうことについて調査するとか、そういう方法はとられなかつたのですか。そういうことでは調査とはいえない。それでは私たちには意味がない。こういう推進委員会で聞いたようなものでは十分な調査とはいえない、文部省教育的に判断して……、これは大きな問題とも関連する問題ですから、これについては、やはり独自の調査機関を発動して良心的な調査を我々はお願いしたいのです。これでは一方的な調査になつて余り参考資料にならん、この点我我は確認しなければならん。これでは責任逃れです。
  17. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 一応ここで佐藤先生見えになつておられるのですが、佐藤先生から承わつたら如何ですか。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  18. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは佐藤参考人からこの問題について詳しく御説明を願うことにいたします。
  19. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 詳しくと申しましてもどういう点を御要求なさるのでありますか。まあ募金趣旨経過、その募金状況並びに処置につきまして具体的に申上げるよりほかに仕方がないのでありますが、その募金状況につきましては、只今文部省から御説明がございましたが、私どもはありのままに、その通り事実のままに御報告申上げておりますので、私といたしましてもこれ以上違つたこととてはないのであります。併しながらここに  一言附加えて置きたいと思うことは、これはこの推進のためには費用が必らずかかる、併しながらこの費用については各自の十分な御意見を持寄つてそうして皆さん意思によつて決定されたのでありますが、なお使途につきましてはこれは当然、勿論皆さんの御意思によるものでありますけれども、特に我々といたしましては、この法案運動のために、法案そのものは国家のために極めて重要且つ緊急を要するものであるという私どもの信念に基きまして、どこまでも強力に運動いたしたいという決心は持つておりましたが、その運動に関しましていやしくも全国の農、工、商、水産その他の、主として公共の団体でありまするが、これと提携いたしまして、PTAでありますけれども、いやしくも教育真意を失するようなことがあつては将来に汚点を残すことであるから、十分その点は慎重に進むべきであるという皆さんの御意見によつて、私どもといたしまして私どもの信ずるところにおいては、断じて皆さんの御心配なさるような消極的な事情は一切含まれていないという確信を持つておるのであります。募金につきましても、これは私ども調査では或いは信を置けないというようなお話只今お聞きいたしたのでありますが、大体これは全国に千三百の学校を持つておりまするし、これがかりそめにも或いはその集金の点において、不明の点がありましたとしますれば、我々自体から当然の疑問が起るところであります。これはこの事業の結果の報告なしには済まんのでありますから、その際には各校ごとの明細なる報告をしなければならない当然の義務を持つておるのであります。ここに詳細な資料を持つておりますが、それがためには最後の場合だけでなしに、その中間におきましても、明らかにして置きたいというので、各県ごとグラフを作成いたしまして、一目瞭然その集まるごとに各県の集金状況がかわるように、而もその合計が幾らになつておるか、或いは支出はどのくらいになつておるかということをその都度発表しておるのであります。  かような次第でありまして、若し御質問がありますならば、どんなことでもお答え申上げたいと思つております。  これが十二月五日に推進委員会というのが結成されたのでありますが、(図表を示す)これが昭和二十六年の一月にこういう起草をいたしまして一月頃には募金状況が少かつたのでありますけれども、かようにして、これは十二月以降全体の集計がどういうカーブになつておるかという全体のカーブをとつて示しておるのであります。それからここには北海道の各学校醵出金額を盛りまして、そうして北海道総額がどのくらいになつておるかということをグラフに示しております。かぐのごとくにいたしまして、これは青森県の状況、それからこれは岩手県の状況、かようにいたしまして、全県、全校に亘つて帳簿には勿論つけておりますけれども各校の不審の点が一切ないようにするために、かように取扱つておるのであります。質問がありますと、説明をいたしますが、一応うしろのほうにこれを掲げておきまして、そうしてここに見出しもありますが、自分の県その他どこの県でも、他の県の状況もわかるようにかように発表しております。  もう一つ私をして言わして頂きたいと思うのでありますが、とかくかような運動にはいろいろな誤解が生じやすい、このときに、私は一生を賭けて教育に従事して来たのでありますが、私ども運動はやむにやまれない気持から起つたのであります。併しながらかようなことについて世間の指弾を受けるというようなことは断じて忍びがたいのでありましてこの点については皆さまと同様に深く注意を払つておるつもりであります。(「了承」と呼ぶ者あり)
  20. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御意見ございませんか。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 只今の御説明頂いたのでありますが、この前これに対しまして動議者のほうから動議が出されまして、その趣旨に対しまして私は賛成したのでありますが、問題は産業教育職業教育ですかそういうものに対する今までの欠陷に対して、今参考人が述べられたようなこういう意図についてはわからないことはないのであります。ただこの方法としてやはり問題になつて来る点は二点あるのじやないか。一つはこのような運動政治資金規正法、その他のやはり政治的活動との連関においてこれはどうなるか、この点が私は法制的に明らかにならないのでありますけれども、こういう点はどうであるか。それからもう一つ教育的に考えて、こういうようなことが一つの慣例ということになつて是認せられるということになりましたときに、果して今後のやはり一つの立法の措置としまして、それにつきまとつたところの問題としてこれはどうであるか。この二つの点からやはり私は明らかにされて置く必要があるのじやないかと思います。といいますのは、輿論を作るということは、それは緊要性があつて無論作る、輿論というものが作成されて来るのでありますが、併しこの前もちよつとお話したのでありますけれども日本教育の現情において、例えば六三制のごときは、非常に現在のこの予算不足からしまして、これは至るこころ輿論が起つておる。そうしてすでに両院を通じて請願が約二千万も集められている。併しこの運動が今申しましたような実際的な運動資金の面において、これはいわば足を持たなかつた。こういうことによつてこういうような輿論が本当に大きくクローズアップされない。こういう事能がこれは一応考えられるわけであります。そうしますと、果してこういうことが許され、堂々とこれは何ら差支えないことであるとして許されるという態が起りました場合には、今申しましたような全額国庫負担の最も切実なこういう要求に対しましては、堂々とそういうようなものが父兄の間から、或いは子供の間から運動そういうような資金が、厖大なものが集まりましてそうしてもつともつと広汎な運動が起される、こういうふうになりますと、そういうことが許される、そういうとも可能なことになるのでありますが、そういう事態に対して、これはこういうものを放任して置いていいのであるかどうか、こういう一つの見地に立たなければならないのであります。我々はそういういろいろな実情から起つたところの要求について無関心でおることはできないのでありますが、同時にその問題も広くこれは一国の文政、或いは政治の面、こういうものと関連した中において、これを大きな視野の面において、合理的に解決して行くということが絶対必要である、こういう観点から私たちはこの問題を問題にしたわけなんでございますが、そこで先ず伺いたいのでありますが、これは文部大臣見えておらないのですが、どういうふうに考えておられますか。こういうような運動のために、学童からこういう資金を集めて運動をする、こういう事態はこれは正しいと文部省においては是認されておるのであるか。文部省は法制的な見解については、これは専門でないからおわかりにならないかと思いますから、これはいずれ法務総裁なりの出席を求めて、この点を明らかにしたいと思うのでありますが、文部省はこれは一つ文教政策の上から見まして、こういうような法案に対する運動としまして、これを正しいと考えておられるのであるか、この点についてお伺いしたい。
  22. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今質問がございました中で、児童から直接取つたというふうにお考えになつた点もあるかも知れませんが、この点は先に私が御説明いたしましたように、当事者についてよく調査いたしましたところ、児童から直接ということでなく、ただ計算をする上において、生徒一人当りという計算基礎をそこに置いたということでございますので、その点は御了承願いたいと思います。それからこういうふうに法律案をその関係者、特に希望する場合にこういうようなことが先例になるということは望ましいことかどうかということにつきましては、私は輿論を高揚するために、或る程度の運動といいますか、こういうような働きかけも認められると思いまするが、併しそれはこういうように金を集めてやるということが、望ましいことだとは思つておりません。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 今の子供から取つたか、取らないかというようなことで、いろいろこれは要するに手続上で、そこのところはこれは当事者からお聞きになつたと思うのでありますが、子供については別に文部省調査されないわけですね。それから実質的には子供から取つたというのは、そういうところから出て来ておるわけなんでしよう。それから子供から取つたか、親から取つたか、そういう事実の問題でなくて、やはりこういうようなところに、そういうような資金を……殊に私たちの見るところでは、こういう学校に行つておる生徒子供たちというものは、どちらかというと恵まれない階級子供であると考えます。これはこの前のいろいろな本法案の議の中にも出て来た問題であります。そういうときにやはり現在はそれは職業教育というものは不完全だからして、いわば腹を減らさして置いて、物をぶら下げて見せるような恰好になります。から、そういう関心も起つて来るのでありましようが、それだけになおそういう一つの貧しい階級、こういうところに対しまして、そうしていろいろこれは私たちここで説明されておるのを仮に肯定したとしましても、これは弁解がましいことだと思う。負担方法というものはいろいろとられると言いますけれども、出すものは父兄懐ろであり、子供負担になる。こういうようなやり方、これについて文部省は望ましくない、こういう見解を述べられたが、これに対して文部省はどういう方法考えておられるのですか。これは今まで曾つてそういうことについて注意をされておるとか、文部省意見をそれに対して与えるとか、そういうことをされたことがありますか。ただ望ましくないというので放置されて置いただけでありますか。それから今後望ましくないとすれば、これに対してどういうような方法を持つておられるか。これは大臣の答弁に属することかも知れませんが、局長としてはどういうふうに見られますか。
  24. 辻田力

    政府委員辻田力君) こういうふうに法律案を促進すると申しますか、法律案制定を促進される場合に、一々経費を双方から募集しまして、それによつて推進して行くというふうなことは、教育の場合には望ましくないと思いますが、それについて文部省として今までどうしたかということでございますが、従来は私寡聞でございますが、私自身としましてはそういうことがあつたことはまだ聞いておりません。今回の場合にそういうことがあつたのでございますが、併しこれも実は文部省責任逃れをするわけではございませんが、こういうことが始まつたことにつきましては、実は承知してなかつたわけでございます。で文部省として今後これをどうするかということにつきましては、相当金額も、調べて見ますと、目的の額にまで近く集まつたようでございますが、今後はこういうふうなことはできるだけないように希望しておる次第であります。どこでこういうふうなことが起るかということについては、あらかじめ予見ができませんのでありますが、我々としましては、この国会における答弁を通じて国民にも、国民と申しますか、教育関係のかたにも十分承知して頂きたいというふうに考えておる次第であります。
  25. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 佐藤さんにお伺いいたしますが、五百万円という目標最初立てられたのはどういう見通しであつたのですか。少し私は多かつたと思いますが……。
  26. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 申上げます。率直に申上げますと、私は最初から皆さんと話合しておつたわけでありますが、大体この運動についてどのくらい我々の費用がかかるかというようなことにつきましては、正直のところ予想ができなかつたのであります。併しながらただ特に私が考えておつたのでありますが、大体こういう運動をせざるを得なくなつたという本当に根本的な理由を考えて見まするならば、日本国民の従来職業教育に対する関心至つて薄い、これが基盤をなしておる、根本的な原因をなしておる。よしやこの法律ができない、不幸にして制定の日の目を見ないというようなことがあつても、私ども職業教育重要性については一つ陣頭に立つてこの際輿論を喚起し、認識を深めることに努力しなきやならんと、こういう考え方でとにかく五百万円という目標を立てたのであります。
  27. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここに職業教育法制定推進委員会というのが校長会PTAによつて結成されているようでございますが、この提案というものは恐らく校長会のほうから出し、リードして行つたように私承わつておるわけでございますが、こういう金をきめる場合に、そういう態度をきめる場合に、学校長としては、やはり職員意向というものを相当聞いてからやるべきでなかつたのでしようか。更に又こういうことにPTAを働かせるということは、PTA学校責任者との今後の関連において如何なものでありましようか。そういう点、将来の問題としてどういうようにお考えになつているかと私お伺いするわけは、この決定に対して或る県によると猛烈な反対が出て、拒否して出さなかつた県もあるやに聞いておるわけであります。それは結局校長さんが皆学校に鍛えられて、学校職員から猛烈な反撥を受けたたと聞いておるわけです。それで県によると拒否して出さなかつたという県もあると承わつておるのですが、そういう点は今後の問題としてどういうふうにお考えになつておりますか。
  28. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) それにつきましては、文部省から御説明を頂いた中にもございますと思うのですが、大体これは自主的に決定されたのでありまして、この運動には資金を出すことに同意いたしかねるという者の意向があれば、どこでも、寄附的行為でもありますし、自発的なものでありますから、決してこれを強要するというようなことはいたしておりません。従つて今後のことについては別に考えておりませんけれども、これまではそういうふうにして参つておるのであります。
  29. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 職員との関係はどうお考えになりますか。
  30. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 職員との関係は、大体この運動は、これも御説明の中にあつたように、去年の五月神戸及び奈良において大会がありましたのは、校長協会大会でありまして、その校長協会において一応職業教育振興に関する決議をいたしたのであります。その決議に基いて職業教育法制定を望むというような結論に達して一応その校長協会の発議と言いますればなんですが、その決定に基いてやつたものでありますから、一々最初職員に御相談申上げる機会がなかつたわけであります。その後職員のほうから反対がある所があつたといたしましても、これはその職員考えでありますから、私どもはこれに関してとやかく申していないのであります。
  31. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はまあこういう運動を起す立場に追い込まれた職業学校責任者のかた、本当に気の毒に思いますし、お金を集めて運動をしようとなられたお気持は万々わかるのでございますが、実際にこれをやられる場合に、県により又学校によると、生徒に不用意なことを言つて、これで君たちの作業は楽になるのだとか、学校の施設は非常によくなるのだというような不用意な言葉を言つて生徒を通じて出させたというような面が末端に行きますとやはり現われております。そこのところに非常に非教育的な面が欠点として出て来ているわけなんです。それから私はこの行き方から見て、やはり我が国のPTAというものが、与えられたPTAで、PTA封建性、多くを申しませんが、やはりPTAは本ものになつていない。PTA封建性というものを私は将来の問題として非常に心配しているものでございますが、佐藤先生としての立場もよくわかるのでありますが、私は今後はこういうことはして頂きたくないということを希望しまして私は文部省のほうにお伺いしたいと思います。  我が国の民主教育を打立てるという立場から、PTAの果すべき役割というものは極めて大きいと思うのですが、このPTAのあり方ということにつきましては随分いろいろと議論され、文部省としても、又地方教育委員会としても相当の指導をされているわけですが、私は重ねてお伺いいたしますが、PTAがこういうことをやられることはいいのかどうか。指導される立場としてはどういう立場をとられるのか。私はもう少し申上げますが、私も国会に来て見て、ともかく余りにも陳情の政治だということに私は非常に疑惑も持つし、不満を持つておる。もう少し科学性のある政治をやつて、あんな陳情攻めの政治でないようにしたい。皆さん御承知と思いますが、府県によると、何億、一億、少くとも三千万円からの予算を組んで皆わんさわんさとやつて国会に来る。我々立法府におつて法律を作るのですが、炭鉱の国管法の場合が私は一番醜態を曝露したと思うのです。法律を作るたびにいろいろこういうことが行われて、特にこういう教育立法ということになつて、それを通すためにこういうように教育者を追い込んだということは、政治家の責任であり、文部省の責任でもあると思うのですが、そんなことを言つていても、しようがないのですが教育の立法をやるのに生徒の頭数を考えてこういうふうな金を出す、当面教育財政の確立ということも問題になつておりますが、それをやるからと言つて全国の学生の頭を揃えて金を集めて、そうして与論を喚起して行く、而もそれをPTAがイニシアをとつて行くこういう行き方ですね、どういうようにお考えになるか。これは一つのモデルケースになります。どういうような指導を文部省としてはされるべきかという点について、私は今後のこともありますから、はつきり御意見を承わつて置きたいと思います。
  32. 和田博雄

    ○和田博雄君 矢島君、僕は大臣からその答弁を聞いたほうがいいと思う。事務当局から聞いてもしようがないと思うのだ。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
  33. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その通りでございますから、大臣は一度お伺いしたときには、事実があれば言々と言うて、あと具体的にわかつてからなんにも意思表示されていないのです。確かに大臣の答弁を……。
  34. 和田博雄

    ○和田博雄君 大臣に来て頂いて答弁してもらつたほうがいい。
  35. 平岡市三

    ○平岡市三君 この問題につきましては打切りいたしまして、法案の審議にお入りの動議を提出いたします。
  36. 岩間正男

    岩間正男君 今の動議反対ですなぜかというと、この前の動議が成立したときに、この問題が明かにされなければ審議には入らない、こういうことが確認されているはずです。これは波多野委員からの動議もありまして、まだまだ問題があるわけです。私はそういう意味から今の動議反対しまして質問を続けたいと思いますが、文部省は文部大臣を呼んで来て頂きたい。それから先ず第一に伺いたいのは、推進委員会というのはどういうふうにして組織され、どういうふうな機構を以て運動を展開しておるのですか。その点を一つ伺いたいと思います。その組織の内容です、これについて伺いたいのですが。
  37. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 岩間君に申しますが、今動議々々と平岡さんからおつしやいましたが、定足数が足りませんから動議になりませんが、この前のときも定足数に足りませんから動議は成立しておりません。併し委員長が事が重大だと思いましたから自発的にこの問題を取上げたんですからさよう御了承願います。委員長教育上重要だと思つたから自発的にこの問題をやつているのですから……。
  38. 和田博雄

    ○和田博雄君 大臣にちよつと出て来て頂いて、今の問題大臣から答弁を頂いたほうがいいと思う。
  39. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  40. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を始めて下さい。どうぞ御質問願います。
  41. 岩間正男

    岩間正男君 この前委員長から別にそういう注意がなかつたから速記録にははつきり動議は成立しているわけです。僕が賛成している。
  42. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 動議として成立してないのです。そういうことは抜きにして重要な問題として取上げておりますから……。
  43. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 推進委員会の組織は従来の校長協議会ができておりまして、協議会の常務理事というのが大体あるのであります。元来がその協議会の決議に基いて進行したことでありますので、その常務理事が大体推進委員になつております。それから又この運動に関しましては、常務理事だけではいかんというようなことで、全国の更に理事、それから更に理事はこれが変りましたが……。その他は各県ごとにこれを選出して頂きまして各県ごとに三人、少くとも三人、或いはそれ以上五人というようなふうに選んで頂いて、そうしてこれを御報告を頂いたものが推進委員会であります。全国に約二百五十名以上、全推進委員は二百五十名くらいになつております。
  44. 岩間正男

    岩間正男君 これはいつ頃そういうような会を持たれまして結成されたのですか。推進委員会というものが結成されまして、そうして役員なんかも決定されたのですか。
  45. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) これは十二月の五日に結成されまして、その後にできたわけであります。推進委員会というものが結成されたのは十二月五日でございます。
  46. 岩間正男

    岩間正男君 どこかで大会か何か持たれたのですか。
  47. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 推進委員会大会は東京において開かれました。
  48. 岩間正男

    岩間正男君 参加者はどのくらいでしたか。
  49. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) そのときの参加者は六、七十人くらいであつたかと思つております。今二百五十名と申しましたのは、その後追加をいたしまして、現在の数でありますが、そのときには取りあえず各校長の常務理事その他各県で選ばれております理事諸君が推進委員になつております。とにかく出席の数は六、七十人くらいでなかつたかと思つております。
  50. 岩間正男

    岩間正男君 これは、委員会の構成の中には、各実業学校の先生がたも皆人つているわけですが、役員はそうでありましようが、構成はどうなつているのですか。
  51. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 先ほど申しましたように、これが校長協議会の一つの仕事でありましたために、これの委員になりましたのは校長が主たるものであります。
  52. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、これは一般のなんですか、実業学校の教員のかたは入つていらつしやるのですか。
  53. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 推進委員には入つておりません。
  54. 岩間正男

    岩間正男君 入つてない。
  55. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) はい。
  56. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、こういうような運動資金を集めるということが決定されまして、それが校長さんから今度は各教員にそういうようなことが伝達されるわけですね。そういう場合について、何かこういう点についてお考えにならなかつたのですか。大体今の職制から見ますと、校長がそういうことを上から持つて来た場合には、殆ど絶対的にそれが押し付けられることになる。これに反対でもして見たときには非常なことになる。殊にそういうような、教員が意思を表明するということは大変なものです。先ほど矢嶋君から話を聞きますと、中には反対した人があつたようですが、すぐ赤だとか何とか言つて頭からレツテルを貼られる。その中からのこういうような反対というものは、余ほどの度胸がなければ反対というものはできなかつたと思うのですが、こういう点についてどういう意見を持つておられたのですか。これを見ますと自主的々々々ということが何回となく繰り返して謳われておりますがそういう実際上の職場に起る上からの押付け、こういうものに対しましては、どういう見通しを持つておられましたか。その点の御考慮についてお伺いしたい。
  57. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 私どもは絶対にこれを強制するという意思は毛頭ありませんで、ただ強制されたと思うならばその人の解釈であり、強制されたと見るならばその人の解釈にあり、私どもの意図といたしましては、全くここに申上げております、本人の自発的な賛否によつて決定せられたのであると確信しているのであります。
  58. 岩間正男

    岩間正男君 私は意思がどうこうというふうなことでなくて、現在の教育の組織の中で、そういうことが推進委員会のまあメンバーになつております校長から、そういうものが上から一つの伝達という形で来る場合には殆んど身動きができない、こういうような職場の実情について私は知つている。現実は非常にそういう形になつて来ている。最近は殊にそういう中でこういうものが押付けられる。そのことについて、これに対してどうされたかということをお伺いしている。この点については顧慮されなかつたのですか。
  59. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) どうされたかということでありますが、そう申されましても、これを強制しなかつたと申上げるよりほかにないのであります。
  60. 岩間正男

    岩間正男君 その点は私の質問には御答弁ないようでありますから、これで打切ります。それで現在どうお考えになつておりますか。これを実際問題としてこういうような運動の方式……御熱意はわかるのでありますが、ここに出されたやむにやまれなかつたという気持は矢嶋君が述べた通りだと思います。併しその問題とこの方法ですね、これについてはやはり我々は厳密に、これは感傷に陥らないで考えなければならない。が、こういう疑問を持つているのです。現在どういうふうにお考えになつているのでありますか、もう一つ運動をされたやりかたです。方法について……あなた自身が責任者としましてはどういうふうにお考えになつておられるか、この点伺いたい。
  61. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 我々は現場の実情によつて、かような必要がありますれば、それぞれの責任ある機関請願或いは陳情、それは一向差支ないと考えております。金を集めてしたということについては私どももどうしてもこの運動をどこまでも我々の強い決意を以て進めて行くためには、効を奏するためには、金が必要であると考えたわけです。かようにいたしたのでありまして、金がかからんで済むならばこれに越したことはない。こういうふうに思つております。
  62. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると先ほど局長のほうから出ました遺憾であるという意思については、あなたは遺憾でないとこうお考えになるわけでありますか。
  63. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 遺憾であるという意味のことは、どういう御意味であるか私にもわからんのでありますが、運動することについて、我々はよりよくその自分たちの責任を果すために、よりよく努力したという確信を持つておるのでありますが、このために金を集めたということについては、どうしてもこの必要な通信連絡をとるというようなことは何としても費用がかかりますので、金の高についてはそのときの事情によつて決定して行かなければならんのでありますけれども運動が必要である、このためにどうしても金がかかるということになりますれば、これは適当なる正しい方法によつて金を集めるということは差支えないと私は思うのでありますが、現にそれがために私は五百万円という最小基準を持つていながら今日決して五百万円を使つているわけではない。当然必要ならば必要であると私のその信ずるところによりまして当然の費用を支払つただけのことでありまして、集つた金の有無には関係なしに金を使つておるのであります。
  64. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると何ですか、結論としてお聞きしたいのですが、結局何ら方法としてはそれは落度がなかつた、今局長が述べらつれた点で、遺憾の点はない、こういうことを確認されるわけですか。
  65. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 遺憾の意味ということはどういう御意味であるかわかりませんけれども、私のやつたことに対しては、金を集めてもしなければならなかつた。そういう事情については私も遺憾なふうに考えるのでありますが、ここにこういう実情においてやつたということに対しては私は遺憾に思つていない。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 これは常識問題だと思う。そういうような答弁をされるのだと重大問題だと思う。多く言う必要はないと思うけれども、先ほどから問題になつている点は、教育立法について、これは制度的な法律的な問題については、これは残して置きます。これは問題としては政治資金規正法からこういう運動に私は疑義を持つておるものであります。「この法律において協会その他の団体とは政党以外の団体で政治上の主義若しくは施策を支持し、若しくはこれに反対し、」こういうような条項にこれは触れるのじやないかという私は、見解を持つものなのでありますが、そうしますと、政治資金規正法の当然の適用をこれは受けなければならん。こういうような法案を支持し、そうしてこれを推進するというようなことが当然これは政治結社的な届出をする、又その資金の額につきましても、一々これは明細に届けなければならないという規定があるわけであります。こういう点について、これはあなたたちは今まで検討されたのであるかどうかわからないのでありますが、この問題はあとに残すとしまして、併し教育的にこれは私は良心から言いまして、あなたがそういうところに陥られたという気持、こういうものは併し感傷に陥つてはならないと思うのであります。この問題は、やはり区別しなければならないと思います。子供は而も先ほどから申しますように、いわば貧しい階級子供です。こういうところからいろいろな方法は、特に従来のやり方の巧妙な方法で、この説明はとられておるけれども、併し実質的には、そういう上から押付けられた形がとられていて、自発的とか何とか言つておりますけれども、現実にどうなつているかということを、文部省もつと厳密に調査して欲しい。又我々はいろいろ地方実情ついて聞いて日教組あたりからのいろいろのそういう何を得ておる。あなた自身がどういう意思であるかどうかにかかわらず下においては非常にやはり苦しいところから出している。こういうことについて止むを得ず、そこに落ちたのだから私の行動は何ら差支ない、恥じるところがないというふうに言われたとしても、これは我々了承することはできない。やはり教育的な一つの何といいますか、見識といいますか、良心といいますか、そういう面からこういうような行動が何らこれは恥ずべきことでない、我々はむしろいいことをやつたのだ。こういうふうに単に言われるとしたら、私は重大問題だと考えます。こういう点はどうでございますか。
  67. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 私は只今の御質問がありましても私の気持には変りがないのでありますが、従つて改めて申上げるのはどうかと思うのでありまして、どうも常識によつて判断をすればというお話でありますが、私の常識を以てすれば、これは一向教育的な、私は悪いことをしている、教育的に見てよろしくないことをしているとは私の常識によつて考えていないのであります。
  68. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私も若干御質問を申上げたいと思うのであります。この産業教育法を成立せしめたいという御意思はよくわかるのですがそのために一応五百万円という相当な金額を見積られる、こういうことは余り私前例がないと思うのですが、そういうお考えになる場合に、五百万円くらいかかるであろう、こういうふうなお考えなつ事情を一応お聞かせ願いたいと思うのです。
  69. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 先ほども質問がありまして、この点お答え申したのでありますが、重ねてお答え申上げます。五百万円ということにつきましては、私も全く見当がつかなかつたのは事実であります。併しながら金はかかる。併しそのときに五百万円ということ自体は私も全く見当はつかなかつたのでありますが、何としてもこの輿論喚起のことにつきましては、職業教育推進のために、教育振興のためにどうしても努力して行きたいという気持がありましたので、あえてこの五百万円という見当をつけたのであります。全くその点の基礎は私にも正直のところなかつたのであります。
  70. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 そうすると、この法案の達成のためには、目的の貫徹のためにはかなり輿論の喚起を必要とする。だから相当な金額が要る。こういうふうにお考えなつたわけですね。
  71. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) さようです。
  72. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 文部省報告の中にも、啓蒙運動費としてこれが集められたように書いてあるわけなんですが啓蒙運動というのは一般国民に対するそういうお考えなんですか。
  73. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 全体的に行きますれば国民といたしましても主部含まれるわけでありますけれども国民は勿論、或いは教育者自体に対します認識も一層強固ならしめて行かなければならんとも思いましたし、その他いろいろな報道機関方面、ジヤーナリズム方面にも私どもは訴えて行きたいというような気持を持つておりました。
  74. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 そこでそういうふうな趣旨の下に、大体学校に割当をして、そうしてその金を集めた、こういうふうになつたのでございますが、さてこの金を集める場合に、この運動をしておられるかたがた教育者であるということ、又その金を集める対象となりましたものがPTA或いは生徒であるという点から何らか特別な考慮をせられたかどうか、この点お伺いしたい。
  75. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) 私も考えないわけではないのです。それでここにきまつた場合などは、学校関係ない実業界とか、或いはその他これに対して理解のある方面から金を集めるということが望ましいというようなことも話の中に出たのでありますが、とにかく本当に金を早急に集めるためには、こういうような方法をとつたほうがよろしいというようなPTAの諸君の強い支持もありましたので、結局こういうことになつたわけであります。
  76. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私は経験が少いのですが、こういうふうにして一つ法案を通すというために、一般に広くPTAなり、そういう方面から、かなりの金を集めて運動をしたということは余り今まで聞かないのです。だから相当これについては慎重な考慮が払われたのではないかというふうに私どもは想像しておつたのですが、ついては何でしようか、このことについてはあらかじめ文部省あたりとも御協議になつたのでしようか。或いはそういうことは全然なかつたのですか。
  77. 佐藤孝次

    参考人佐藤孝次君) いや文部省には全然行きませんでした。
  78. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 やはりこの問題は、かなり私は重要な問題であるというふうに考えておるわけなんです。これは根本的には矢嶋さんからもいろいろお話があり、又曾つてはこの吉田総理が陳情政治を廃止するための措置をとつたことがあります。そういう問題と関連をしまして、これは我々の側においても相当考える必要がある問題であると思うのですが、やはり教育者という立場において、こういうふうに募金をして、一つのまあ政治運動政治運動となるか、ならないか、これは政治運動をやつていけないと言つておるのじやないのです。こういうことをやつても差支えないと思う。だからこういう運動はどんどんやつていいのですが、こういう相当多額に上る金を集める、そうしてその集める場所が或いは学校とか、PTAとか子供、こういう対象になると、非常な誤解を招く虞れがある。こういうことを私は感ずるわけなのですが、そういう点についてはよほど注意して頂かなければならん問題があるというふうに思つておるわけであります。その集め方が一つの問題でありますし、又これの金の使途ですね。どういうふうにこの金が使われるか。ここにはこういうふうに明細に、明細と言いますか大綱を明示されておりますので、このことによつて別に金の使い途についてどうこういう意見はないわけなんですけれども、やはり一つ法案を通すのに、先生がたが五百万円も金を集めて、そうして国会に働きかけて運動をやつておる。そうしなければ法律ができないのだ、こういう印象を社会一般に与える、国民一般に与えるということは私はより重要な問題ではないかというふうに感じておるわけなんです。そういう立場から佐藤さんに対して責めるという意味でなしに、私ども政治家としてそういう点について今後かなりの考慮をしなければならないのじやないかというふうに思つておるわけなんです。そういう点から考えまして、このことについては十分今までやつたことは、何ら間違いがないのだということだけで済まされないので、相当なやはり検討が必要ではないかというふうに感じておるわけなのですが、こういうことを申上げると非常に失礼になりますので、この辺でとどめて置きたいと思います。  それからこれは文部省質問するわけですが、この調査報告をせられたわけなのですが、このことについては、今日大臣が見えておりますし、矢嶋さんから先ほど御質問がありましたから、矢嶋さんのほうに先に譲つて、若し私の考えておるところが述べられなければ、その上で質問することにいたします。
  79. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣にお伺いいたします。自然休会に入る前にこの法案が提案されたときに、この法案推進運動費として教育界で若干の募金がされたというふうに聞いておるがということを御質問申上げたときに、そういう事実があるとすれば遺憾である、文部省としても調査する。こういうお話で、私のほうからも調査して頂きたいということを要望申上げて置いたのでございますが、その後大臣はこの募金について委細報告を事務当局から受けられたかどうか。現在御存じになつておるかどうか、この点伺いたい。
  80. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 当時矢嶋さんからそういうお話があつたので、これをよく調べるように言つて置きました。その内容も私は聞いております。そうしてこの前も申上げたように、これは私は遺憾なことだと思います。こういうことが今後は起らないように私も配慮をしたいと思つております。
  81. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部大臣は遺憾だと表明されたのでございますが、もう少し掘り下げて、どういう意味において遺憾だとお考えなのでありますか。
  82. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) この法律というものが作られるのに、何らか資金を作つて運動せねばならないというようなことは面白くないという意味でございます。
  83. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点について私は誠に満足な気持がいたしますが、重ねてお伺いいたします。私からも要望し、又大臣のほうからも調査するように事務当局のほうに要望されたわけでございますが、私はそのときの調査というものは、これが法規的に云々というより以上に、教育的に第一線にどういう影響があるかという点において調べて頂きたい、こういうことを要望したわけでございますけれども、事務当局では地方教育委員会に何ら調査依頼を発することなく、推進委員会のほうにお伺いして、そうしてその調査報告を我々に提出された、こういうような調査方法に対して大臣はどうお考えになりますか。
  84. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) この推進委員会というものを成立たせておるのが、私どもが平常非常に立派な教育者だと思つておるかたがたが中におられるのです。ですから、そういう人にものを尋ねればそれで事理は明白だとこう考えたのでございます。相手が信頼するに足るかたがたですから、そのかたがたによく伺つたというわけだと思います。
  85. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その相手が信ずるに足るかたがたであると、その点はそれで私はよろしいと思うけれども、こういうお金の、金額もございましようが、こういうふうに集めるということが教育に私は何らかの影響があると思うのです。そういう影響というものは推進委員会の幹部の三、四人のかたがたから帳簿で承わつただけでは、私はわからないと思うのですがね。そういう点を私は第一線で教育をやられておられる地方教育委員会において初めて教育的影響性というものがはつきり把握される、そういう意味において私は大臣と意見は違いますが、調査の仕方については不満を持つておるものでありますが、今後は御注意願いたいと思う。  次にお伺いいたす点は、確かに私は実業学校校長さんがたが、現状において教育はできない、自分の教育方針を推進して行くに当つてとにかく居ても立つてもたまらない、そういう気持でこの法案推進運動に当られた点は万々わかるのでありますけれども学校におられる先生がPTAと連絡をとつて、かくも莫大な金を集めて運動しなければならないという、こういう苦境に第一線の学校長さんが追い込まれた。こうこういうについて私は我が国の文教の責任者としての文部大臣はどういうような御所感でいられるかお伺いいたします。
  86. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はここにやはり幾らかの誤解があると思うのです。誤解があるといいましようか、意思の十分疎通していないところがあるのではないか。そういう方法でなくても十分こういう法案を提出することもできるし、又文部当局もそれに助力をするということもあるのですが、そういうお互いの意思の疎通といいましようか、事情の了解というところに足らなかつたという点があります。そういう足らなかつたところが文部省の文部行政の不十分な点たとおつしやれば誠に申訳ないというよりほかいたし方ないと思います。
  87. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私まあこういうことをお伺いするのは、結局将来のこともありますので、お伺いしておるわけですが、大臣が日本教育復興のために教育財政の確立という点において考慮を持たれ、努力をされておるわけでありますが、教育財政確立のために、又全国PTAから多額の金を集められ啓蒙運動をやり、推論を振起して、そうしてその法律制定運動するというような姿が又私は出て来てはならないという、こういう立場からまあ質問を申上げておるわけです。  もう一点お伺いいたしたい点は、まあ先ほど大臣が申された通りに、法案を通すために多額の金を集めて院内外の運動をやるという、こういう政治の行き方に対して大臣は不賛成だという意見を言われたのは、私は非常に全く同感なんでございますが、このたびの五百万円というのは、私は教育関係者としては随分と私は垢抜けしておると思うのです。ほんの先生がただけとPTAとだけでは五百万円という見当を立つてやられたというのは、我が国の普通の教育人としては、随分と言葉が適当かどうか知りませんが、垢抜けがしておると思うのです。五百万円集めるのが問題なのにもつて来て、更にそれがPTA学校長さんで構成される推進委員会の名によつて、而もこれを生徒を通じて集めたというところに、私は政治的に考えても、又それ以上に教育的に考えたときに問題があると思うのですが、こういうPTAの行き方ですね、PTAのあり方については、まあこれは民主教育の確立のために非常にPTAのあり方というものが重大である。こういうふうに識者から呼ばれ、即ち非難もされておるわけでありますが、こういうPTAのあり方についてどういうふうにお考えなさるか。  なおPTAというのはやはり文部省では社会教育局で指導されておると思いますが、地・万教育委員会ではPTAのあり方について、学校教育立場において又社会教育立場において指導されておるわけですが、このPTAのあり方をどういうふうにお考えになりますか。今後どういうふうな方向に指導されるべきかという点について御意見承わりたいと考えます。
  88. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はPTAのこういうやり方というものは、或る意味ではやはり日本の一般の社会の教養の水準を示すものではないかと思う。私はいろいろなところ日本の社会があらゆる面において教養が低いということをしばしば感ずることがありますが、これも一つの教養水準の低くさをここに露呈しておるのじやないかと思うのです。だからこれはどうしてもそういうことがいけないということを一般に知らせると同時に、誠に廻り道のようですけれども、やはりいろいろな社会教育とか学校教育を通じて社会の教養を高め、一般教養を高めるというところによるほかないのではないかと思うのです。これは一事がそうですが、その他の現象においても我々が感ずることは、教養水準の低いということの現れであると思う。それを改めるということによらなければ根本的には改まらないという考え方であります。
  89. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後にお尋ねいたします。このたびのPTAのあり方としては不満足だという意味の大臣はお気持でおられるという答弁ですが、今後のこともございますので、文部省としては指導の立場においてそういう意味のことを地教育委員会に通達でも出される意思がありますか。
  90. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はこれをなさつたかたがたは何も悪い考えでなさつたのじやないが、今申しましたように、こういうことをやらなければ法律が成立しないとかというような非常に間違つた考えに立つておられるのだから、そういうことが今後起らないように是非配慮をしてもらいたいということを教育委員会にも伝えたいと思つております。
  91. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私は大臣に二、三の問題について御質問申上げたいのです。この通常国会が開かれる直前のことでございましたが、文部省から出すことに予定されておる法案の中には確かに職業教育振興法案というものがあつたように聞いております。これは文部省においても、かなりその必要を認めて、立法化するという御意思の下に進んで来られたのであろうと、こういうふうに考えますが、それが文部省の提案にならない。言い換れば職業教育振興法というものが日の目を見ない、こういうことがやはりこういう大きな運動を展開せざるを得ない情勢を私は作つて来たものだと、まあ、その大きな理由に少くともなつておるのじやないか、こういうふうに考えておるわけであります。そういう観点から言えば、やはり文部省自体の中においても、この問題についてはかなり反省と申しますか、そういう点があるべきではないかというふうに思つておるわけであります。そこでどういうわけでそういう法案が立ち消えになつてしまつたのか、そういう点をこの際明かにして頂きたいと、かように思います。
  92. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 文部省でもこの点は研究をしておつたのですけれども、それが遅れておつた。その間にこういう法案が出て来ましたから、それでこの法案に譲つたわけだと思います。
  93. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 これは大体は自由党のほうで御提案になつたように私は考えておるのですが、自由党は政府の与党でございますし、その点は十分連絡をしていろいろ話合いができるのじやないかというように考えるわけです。やはり大々的な陳情運動というものが行われて来た有様というのは、文部省ではこの法案がむずかしいのだ、できないのだと、こういう点が相当あるのじやないかと思う。ですからやはりこういう点についても今後文部行政に当つておられる大臣としては、そういうことにならないように十分な考慮を願いたいと、私は思うのです。(「議員提出が理想だ」と呼ぶ者あり)私は議員提出を否定しておるわけではない。現に文部省においてそういう計画があつてそれが立ち消えになつておるというところにやはり私は問題があると思うのです。  それからもう一つお伺いしたいのは、昨年でありましたか、一昨年でありましたか、吉田総理が特に発表せられた陳情政治を打破しなければならない。これは新聞に非常に大きく掲載された。陳情政治に伴う石炭国管の問題にいたしましても非常に大きな弊害があつて、又そのほかこれに要する労力と費用、そういう問題も考慮せられたのであろうと私は思います。これを打破しなければならないという声明に似たものをお出しになつたけれども、その後においてもやはり陳情政治というものがあとを絶つておらないと思います。それは一つの現われであると見てもいいと思うのですが、やはり政治の局に当つておられるかたとしては、こういうことが起つて来るという理由について十分御検討を願つて対処して行かなければ……、先ほどいろいろ今後こういうことがないように配慮する。これは一片の通知とか、そういうものによつて防ぎ切れる問題ではないと思う。政治のあり方そのものを考えて行かないと、これは解決し得る問題じやないと思うのですが、こういう点については、大臣はどういうふうにお考えになつておられますか。
  94. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 今おつしやることは私もそういうように思います。そういう点についても十分注意し、又研究もしなきやならないというふうに考えております。
  95. 岩間正男

    岩間正男君 私は二、三点お伺いしたいのでありますが、先ほどこういう行動は非常に遺憾あると、こういうお話なんでしたが、この遺憾であるということで又これだけでこの問題が解決する段階じやないと思うのであります。遺憾であるならそれに対して再びこういうことが……、これは今後の前例になるのです。これに対して文部省はどういうふうな処置をとられますか、文部大臣の意見を一応承わつて置きたいと思います。或る意味ではこれは遺憾である……、このままでこういう問題が収拾される。そうして置いてこの次に又もつと広汎なことは起らないのだと言いますか、こういうものがそのまま通つた場合に、遺憾であるということだけでは、この問題は私は解決がつかないのじやないかと思うのですが、これについて大臣はどういうふうに処置を考えておられますか。承わりたい。
  96. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は遺憾であると言つたばかりじやなくて今後こういうことが起らないように配慮をしたい。その一つ方法としては、委員会に通知を出すとか、又一般にこういう法律を作るということが何もそういう運動をしなくてもできるというようなことを一般に知らせるとか、又廻りくどいけれども社会教育によつて一般の教養を高めるとか、知識を高めるとか、そういう方法をやりたいと考えております。
  97. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、この問題はこのままにして置いてそうして更に通知を出される、こういうわけでございますか。どういう意味ですか。
  98. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) ただこのままに打ち捨てて置くというのではなくして、そういうことがないようにいろいろな配慮をしようというこういう意味であります。決してこのままに打ち捨てて置くというわけじやありません。
  99. 岩間正男

    岩間正男君 この問題はこういう遺憾な事態が起つているのに対して、どういうふうに具体的に処置されるものと考えておられるのか、これが先に行つて通知を出すとか何とかいうことは、この問題の処理がどうであるかということについて、これは文部省がどう処置したかということによつて私は一番はつきりして、今後の問題が決定されると思う。この問題はこれで捨て置いてあとで遺憾であるという通知を仮に今後出したとしても、これは何ら又事態が起つたとしましても、文部省としましては、それを取締ることができないであろうと思う。こういう点はどうなんでありますか、現実の問題としてお伺いします。
  100. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 文部省が直接にその関係者をどうするとか、そういうことはできないと思うのです。だからしてそういうことの起らないように、いろいろのことを考えるというよりいたし方ないと思うのです。この起つた事実の関係者をどうこうということはできないと思う。
  101. 岩間正男

    岩間正男君 それから文部大臣の見解を一応お伺いしたいのでありますが、これは法務総裁に詳しくは後に伺いたいと思います。これはやはり一つ政治活動になるのであるか。なるとすればやはり協会とか結社とかいう形で届出れば、私は法的には決して何ら差支えない。これは教育的な一つの面は別におきますと、そういうことになると思うのですが、これは大臣としてはこういうような一つ運動推進して行く……、資金規正法によりますと、先ほど申しましたように、一つ政治上の主義若しくは施策を支持し、若しくは反対する、これが政治活動だということになるわけですが、そのときにこれに抵触すると考えておられるかどうか、これはやはり大臣の見解を一応承わつて置きたいと思います。
  102. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はこれはやはり教育の欠陥をどうかして償おうという意図から出たことで、純粋にこの教育的なことと申しましようか、そういういわゆる政治的な意図を以てした行為とは言えないのではないかという考えを持つております。
  103. 岩間正男

    岩間正男君 私もそのことは望ましいのでありますが、こういう活動がこれは政治的行動でないと解釈されることが望ましいのであります。ともするというと、教員の行動に対しては、これは政治的の活動として狭めて来る部面があるから、これは望ましいのであります。ただ一つ問題は実際そういう中におきまして、やはり規正法との関係で、こういう面でこれはどうなりますかという問題を私は法的に伺つて置きたいのでありまして、これは文相の見解がそういうところについてまだ研究しておられないとすればそれで差支えないのであります。これはどういうことになるのでありますか。そうしますと、仮にこれは政治的な一つのそうういう規正法との関連で行動だということに仮になるとすれば、そういう政治資金等を学童から集めるという形になると、そうするとここが非常に問題になつて来ると思うのですが、これはどういう見解をとつておられますか。
  104. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) これは先ほど申しましたように、私は狭い意味政治活動というふうに考えてはおりませんから、そういうものとの関連ということは出て来ないと思つております。
  105. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 文部大臣に対する質問よろしうございますか。ほかにまだあれば……。
  106. 和田博雄

    ○和田博雄君 この五百万円集めてそれでやつた行為の始末は、これは今文部大臣お話になつたのですが、私はやはりどうも根本の原因は、今の政治のやり方といいますかね、そこらも問題じやないかと思うのですがね。そうするとこの問題について、たまたま教育関係でこれは起つたのだけれども、実は各県の行政のやり方を見ても、やはり陳情というものを基礎にしてやつている形が非常に多いわけなんです。ですから私は文部省とされては、この際こういう問題が起つたときに、又もう一遍こういう問題をお捉えになつて、閣議か何かで、やはり政治や何かのやり方についてはつきりした正政府の方針なり、何なりを打出すだけでなしに、それをやはり実行して行くように何か措置をとられて頂きたい、こう私は思うのでありますが、この問題に対して教養水準という問題だけを対象にしてしまつたのでは、一つ政治的な問題として起つている問題については、差当つての措置にもならないし、将来の措置にも私はどうもなりにくいのじやないか。もとより教養水準が低いということは、これは我々も同感でありますが、一応やはり政治のあり自体が教養水準が低いところに……、それが政治面にも出ているのですから、それを政治の問題として解決して行くのには、やはり文部大臣とされて、そういうような御処置を一つ一体とれんものかどうかといような点についでちよつとおり伺いしたい。
  107. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 和田さんの御意見は非常に私を啓発するところがございますので、よくそういう点を自分も考えて善処したいと思つております。
  108. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それに関連して私も一つ大臣にお願いして置きたいと思います。短こうございますから……。
  109. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) ちよつと、大変私、失礼ですけれども……
  110. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 二分間で終ります。
  111. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) そうですか、どうぞ。
  112. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣は吉田内閣においても、超党派的な珍らしい存在であると思うのですが、そういう意味において、私特にお願いして置きたいのですが、例えば今度の地方選挙で閣僚の皆さん地方に出張されて応援に行かれた、そうして例えば知事の選挙に当つて、今自由党内閣だから、自由党の知事が当選しなかつたら平衡交付金はやれん、教育振興も何もできない、こういうふうに街頭演説しておられる閣僚もたくさんいらつしやるのですが、だから大臣は閣議において討議される場合に、そういう閣僚がおられるということと、それとやはりこうした陳情政治と関連があるということを、超党派的にやつて頂きたいということを申上げて置きたいのであります。
  113. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 大変失礼ですが、私今日文部省に研究所長会議がありまして、そこに二時に出席するという約束をしておりますから、大変失礼でありますけれども……
  114. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 文部大臣退席されますから……。他にこの問題について御質疑ございますか。
  115. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 この報告についての事務当局に対する御質問がすでにあつたと思いますが、若し重複しておれば省いて下さい、答弁は……。一、二点報告について質問いたします。この報告書の終りのほうから第三パラグラフですが、中国地区では一人当り十円ずつの割合、大阪では実業方面からの寄附とかいろいろあつて、集めやすい方法を以て拠出したと、こう出ておりますが、これはどういう方法、具体的にはどんな方法であつたかということを一つ。この以外に、十円ずつ割当ててやつたという場合と、実業方面からの寄附金の場合を除いてどんなことがあつたかということと、それから実業方面からの寄附は一体どんな額のものか、幾らぐらいのものかということ、それからもう一つは同じパラグラフに一部の学校においては生徒の手を通じて募金したということでありますが、一部の……、何校ぐらいそういう学校があつたかという点、何校ぐらいそういう生徒の手を通じて募金した学校があつたか、それらの点、若し御答弁が済んであれば速記録を見ますが、済んでなければ……。
  116. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 責任者佐藤さんが今見えておりますからそれ以外に詳しいことがあつたら……。
  117. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 いや、文部省報告についての質問ですから、文部省から……。
  118. 杉江清

    説明員(杉江清君) 第一の自主的に集めやすい方法と申しますのは、これは実業界から大体の予想された金額を一括して寄附を集めたというような場合、又はPTAの会合でそのことをお諮りして、そこでその承諾を得てPTAのほうに集めて頂いた、そのときどきの情勢に応じて集めやすい方法をとつたと、こういうのでございます。それから一部の学校と申しますのは、その校数が幾らであるかということは承知しておりませんが、例えば私の承知しておる限りにおいては、岐阜だと思いますが、これは併しはつきり覚えておりませんが、一部の学校においてこういつたことがあつたということを聞いております。以上であります。
  119. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 岐阜一校ですか、岐阜の何という学校ですか。
  120. 杉江清

    説明員(杉江清君) そこまでは伺つておりません。
  121. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 いや調査して頂きたいと思います。それからもう一つ、今の実業方面からの寄附というのは金額は幾らです。
  122. 杉江清

    説明員(杉江清君) そういう詳細なことにつきましては本日ここに責任者がおられるということを聞いておりますので、その方面から御答弁して頂くということでそれ以上のことは私のほうで調査いたしておりません。
  123. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 いや、それは私がこの前言つたのは……、僕は責任者とか言つたようなことは知らんですよ。ただ監督官庁としての文部省立場においての調査要求したのです。だから文部省は我々に納得の行くような調査報告を出す義務があるのです。ほかの人は、例えばここに佐藤さんおられますが、佐藤さんに責任を転嫁するというような言い方はいかん。監督官庁たるの地位を放棄することになる。これだけの報告じや実はわからんですよ、何のことか……
  124. 岩間正男

    岩間正男君 今のに連関して今の波多野さんからの話は先ほど問題になつた……、こういうのを聞いて見たらこれは推進委員会から聞いた材料だ。こんなものは何も必要ない。当人を呼出してお聞きずればいいのだから……。だから文部省が独自で、やはり独自でそういうものを出してもらいたいということを、こういうことをこれは話したのでありますが、文部省はもう一遍これはどうですか、正確に調べて……、非常にあとで尾を引く問題なんです。そういう点をこれは早急に出すような方法はとれないですか。それと連関しましてね、なおこの際下のほうの子供とか、父兄にどういう影響を与えているか、これはそういう点は文部省のほうがなおよく調べがつくと思います。
  125. 杉江清

    説明員(杉江清君) 私のほうで調べる際に、教育委員会などにも一部連絡をとりましたが、教育委員会では実は詳細なことはわからないのであります。で校長協会のほうで自主的にやられ、又PTAのほうで自主的にやられたので、教育委員会のほうでもその方面のことはよくわかつおらないので、私のほうといたしましては本部かたがたにお伺いいたしたわけであります。勿論その一部につきまして、そういつた父兄のかたにも事情を聞いております。
  126. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 この行政上の職分というのが、区分というのが混同してしまつては困るので、推進委員会というのはこの場合では被監督者の地位に立つておるのです。監督される側なんです。文部省は監督官庁の地位に立つているのです。で私どもは、少くとも私は推進委員会のかたにいろいろ意見を聞くつもりはなかつた。今でも実はないのです。そういうことは私聞きたくないのです。監督官庁としてあなたがたがどういうふうな考えを持ち、どんなような事実の実態を把握しておられるかということを実際聞きたかつたのです。でその報告を求めたのです。その出た報告がこれでは、私どもは納得できないのですよ、実を申すと……。手を尽して改めて調査してもらいたいと思うのですがね。  (「必要ないよ」と呼ぶ者あり)それじやそういう動議を出します。動議します。それじや調査不十分だ。
  127. 辻田力

    政府委員辻田力君) お答えいたしますが、この事柄が推進委員会を中心とし、これは先ほど杉江説明員が説明しましたように、PTAが自主的にされましたので、結局そこについて調べなければならない。教育委員会自身について調べましても、教育委員会はそこに聞きに行くという以外のことが、実は二、三の点について聞きましたけれども、ないのでございます。そこで我々といたしましては収支の関係を最も明らかにしておられる推進委員会について帳簿について調べて、そうしてそれをここにその要約を御報告いたした次第でございまして、御了承願いたいと思います。
  128. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 例えばですね、大阪方面においては実業方面からの寄附があつたものといつたようなことが出ておりますから、そうすればわかるですよ、このことは……。どういう学校に対してどれくらい総額寄附があつたかということは聞いただけでわかる。大阪方面、それから一部の学校寄附だけで、目鼻がついているのですから、寄附に、ついて調べたらわかる。
  129. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今お尋ねのようなことにつきましては早速お答えいたします。
  130. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 私はできないことを要求しているわけじやない。わかるのです。
  131. 辻田力

    政府委員辻田力君) よくお話はわかりました。
  132. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御質問ございませんか。
  133. 岩間正男

    岩間正男君 まあ私の先ほど疑問にしました法的な問題、これは今後のこともありますのでね。これは何か法務関係の……、是非これは明らかにして置いてもらいたい。大臣から今ありまして、我々もそういう解釈をとりたいのでありますが、併しこれを明らかにして置くことは今後のやはりこういう運動に対してつの例証のあることでありますから、これは同委員会で行がかり上是非それを明確にする処置をとつて頂きたい、こういうふうに思います。
  134. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それは委員会として法制局長意見も聞き、又更に……。
  135. 岩間正男

    岩間正男君 委員会として、そうですな、一度出席を求めて……。
  136. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 研究して置きましよう。
  137. 岩間正男

    岩間正男君 やはり一度質問して置きたい。正法でやるべきものか、或いはそのために手落があるかということは、これは少し委員会として行き過ぎのように思いますが、そういうことはどういうふうに解釈されるかということをよく研究して置く必要があると思いますから、法制局長さんに研究して頂きましよう。又専門員もおりますから……。これは十分研究する必要があると思います。
  138. 岩間正男

    岩間正男君 これは併し早急にやつて下さい。
  139. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それは今のところ法制局長に多少真相を伝えて研究してもらつておりますから……。ほかに御意見ございませんか。それではこの点はこの程度に切り上げて、法制問題は後に残して研究することにいたしましよう。続いて法案の審議に移りますが如何ですか。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  140. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 長野さんにお尋ねいたしますが、この法案で対象としては、この前も問題になりましたように、生徒、学生それに青少年その他一般公衆というように入れておりますし、それから提案理由にもありますように、学校教育それから社会教育の両方に股をかけて補足的な法律として作られたとこういうように提案理由を書かれておるわけでありますが、こういう立場から考えますというと、この第二条の学校のところには、各種学校も入れる筋が出て来るじやないかと思うのでございますが、これはどういうようにお考えになつていらつしやるか承わりたいと思います。
  141. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 専門員から一応…
  142. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 各種学校のことは立案に当りましても考えたんでございます。それで一応構想の中に入れたんでありますが、全体の構想を結論を大体立ててみますと、学校教育法の第一条による教育体系で行きた  い。学校教育法第一条による学校教育体系で行きたいという構想になりましたので、自然各種学校はそこで一応省いて立案いたしたのであります。
  143. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 学校教育法の第一条にある教育体系で行きたいというお考えでやられた、そういうことと青少年その他の一般公衆というのを入れて、社会教育も入れるというところに矛盾を感じませんか。
  144. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 青少年を入れましたと申しますのは、義務教育と高等学校という、やはり教育法第一条の学校中心の体系の中から考えますと、義務教育を終つてから経済上の都合でさらに上へ進めない、いわゆる勤労青少年の大多数の、教育の機会に恵まれないでおるという点を考えまして、それと同様に第一条の学校を中心として高等学校という課程の中でやはり機会を与えるべきじやないかというふうに考えました。ところが高等学校には定時制も別科もございますが、地域的の関係で交通費も出し得ないような青少年大衆が、折角そういう施設があつても行かれないという人が非常にございまして、中学に短期の教育課程を附設して、そういう人たち教育の機会を与えたかどうかということで、青少年大衆をそういう意味合いで加えたんであります。従いましてこの短期の教育課程の中に入ります勤労青少年大衆は、その教育課程に入りますと同時に、生徒であり学生になるわけでございます。
  145. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 短期の課程を中学校に附設するというとどういう形になりますか。
  146. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 附設と申します言葉が或いは当らないかも存じませんが、具体的な例で申し上げますと、高等学校の分校乃至は定時制の分校というような形でございます。
  147. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は今あなたが中学校にと言われたからお尋ね申上げたのですが、定時制の分校とか別科がこれは今あるのですから、そうなりますと機会に恵まれない青少年のためにというこういう言葉がございますが、各種学校に行つている諸君は、機会に恵まれない不遇なものであるという点になんのかかわりもない。お読みになつたと思ますが、社会教育というものは、学校教育法に基いて行われる教育活動以外の教育活動で、青少年及び成人に対して行われる教育活動である、こういうように規定してあります。それで私のお伺いしている点は、この産業教育振興法というものを、学校教育法に、一条で謳われてある学校ですね、あの学校体系だけを取上げたというならば、話がわかります。ところがそれから出て社会教育と両面に股かけて、そして青少年一般大衆を加えたりして、各種学校をどうして入れんかということになると、どうしてもそこに矛盾を感じてしようがないのですがね。
  148. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 一つには学校教育法及びたしか社会教育法であつたと思いますが、学校は普通申します狭い意味学校教育のほかに併せて社会教育をやるという使命が課せられておると承知いたしておりますが、その線で今の学校が中心になつてやる社会教育、こういうことを考慮に入れた次第であります。従つて学校が何故社会教育をやるなら、今の各種学校をどうしたという御質問の問題になると思うのでありますが、これは先刻も横田専門員からお答え申上げましたように、最初は随分いろいろの面から広く構想を練つて見たのでありますが、何分にもこの予算が非常に厖大なものになつて参ります。各種学校というものは種類も非常に多いし、その完備の程度も非常に違いますし、或いはやつております単科の内容も非常に変化に富んでおりますので、到底そこまで手を伸ばし得ない。とにかく先ず学校教育法のいう狭義議の学校に限定いたしまして、そしてできるだけそこに先ず重点を置こう。併し只今ちよつと申上げました義務教育を修了しただけで、地理的に、或いは主としてそれは経済的の事情によりましようが、高等学校定時制にすら行き得ないものが全国では六三%あります。而もそれは労働基準法との関係でまる三カ年これが職場にも十分に恵まれず、又教育的には放任状態に置かれておるので、これを何どかしなければならない。それには今の中学校というものに目をつけましたときに、地理的にも分布が非常に広くなつております。従つて時間的に経済的に今の不幸な人たちが容易に学び得ない。従つて学校、高等学校に社会教育の形においてやるとこういう考えなつた次第であります。
  149. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は各種学校を入れたがいいという前提に立つてお伺いをしてないのであります。それだけ申上げて置きたいのであります。この高等学校には別科というのがございまして、定時制があります。この定時制も分校も許されるわけです。御承知のように定時制は必ず卒業するために行くのじやなくて、一つでも二つでも自分の好きな単位を取れるような組立てになつております。一般教養の前に職業課程を先にやるという、そういう組立てのできるように定時制の職業課程は組立てられておるわけです。第一条でいう高等学校の体系はそれだけでどうしても足りませんで、私は別科、定時制の中心校、分校、それらを活用することによつて、こういうものを全部包含されるのではないかと思いますが如何でございますか。
  150. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 只今の御意見によつて考えまして、相当な範囲救済できるということも勿論考えますのですが、併しそういたしましても、今のすべての中学校に、すべてそれぞれ高等学校の分校を置き得るということはちよつといろいろの事情、具体的にすべての中学にそれぞれ高等学校の分校が置き得るということは見通しがつきかねると私どもつておる次第でございます。只今お話がありました、高等学校定時制或いは別科というものに、これに多分にこの法律が成立ちました場合、充実を図る補助をしようということを考えておりますのは、只今の御質問と全く同じ趣旨であります。それだけではやはり依然残るということを予想しまして中学にも今の社会教育立場で、即ち高等学校とは関係なしにでも置き得る途を開いて置いたほうが実情に適するのではないか。こういう考えなつた次第でございます。
  151. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 お伺いしてどうも私一つわからないのですが、第十九条に短期の教育ということを書かれてありますね。今の言葉の中に、すべての中学校定時制の分校は置けないから云々ということがございますが、中学校でそうした人に、短期の教育を中学校でどうしようというお考えですか。
  152. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) すべての中学校に高等学校の分校を置き得ないと断定してしまう、しまつて申上げたんでもないのでございますが、つまりすべてに置くということがはつきりと見通しはつけかねるという私ども考え方でございまして置き得ればできるだけ置きたいとは思いますけれども、漏れるものができるんであろうということを勿論前提にいたしております。その場合に中学校で何をやるかという御質問、それは中学校の社会教育、中学校がやる社会教育、こういうふうに考えております。学校がやる社会教育というふうに考えております。
  153. 平岡市三

    ○平岡市三君 十八条の点について、私の不明の点をお伺いするのでございますが、この前私が大学のことについてお伺いしたときに、短期大学は大学の中に包含されておるから、短期大学という名称を表わさなかつたのだ。大学だけでそれでこれが包含せられるのだと、こういうふうにお聞きいたしたのでありますが、この十八条の問題でありますが、四号でございますが、この産業教育に従事する教員又は指導者の養成は、大体が短期大学では行なつておらないのであります。大体四年制の大学が行なつているわけであります。そういたしますとこの十八条の規定から私が推察いたしますれば、短期大学は実際としてこの十八条では補助の対象にならないのだと、こういうふうに解釈されるのでございますが、その点如何でございましよう。
  154. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 先般の御答弁は法規上の解釈として大学の中に短期大学を特に断らない場合には、短期大学を含むという通常の解釈に従つて答弁を申上げたことであつたと思つております。只今のは十八条の第一項第四号のお話と承わりましたのですが、この産業教育に従事するような教員を養成いたしまするというのは、お話の通り大部分は四年制の大学のほうが大部分であろうと思います。併し大学二年で、下のほうの学校の教員資格が養成せられると資格が与えられるという意味でもございますが、なおここにあります現職者の教育、現職教育というものを頭に描いております。短期大学では教職課程までその大学で持つということは、非常な経済的負担になるから持ちにくいということを私ども立案の当時に十分念頭にあつた次第でございます。併しその短期大学が専門の事柄について、例えて申上げますならば、工業或いは農業なりについての短期大学でありますと、その部分については相当な専門指導力を持つた先生がおられるはずでありまして、これらが若し夏休みその他の時期を利用しまして、今の中学校或いは高等学校における先生がたに、現職者にいわゆる夏期講習のような再教育をやつて下さるということになりますれば、当然にこの法の適用が受けられるとこういうことを考えております。最初に大学の中に短期大学を入れた解釈、それはそのままここの第四号にも適用して考えておるつもりであります。
  155. 平岡市三

    ○平岡市三君 四号に対するところの解釈はよく私にもわかりますが、けれども実際に短期大学では、教員の資格を取るといたしますれば、あなたがおつしやる通り普通教育の科目を非常に配列しなければならんというような実情にありますために、実際には教員の養成はやつておらないのでございます。あなたがおつしやるように、教員の質は確かによろしうございます。これは四年制の大学の教員と同じような資格審査を受けておりますから、短期大学にも立派な教員はおりますけれども、実際にはこの教員の養成とか、或いは指導員の養成とかやらないのです。現実はその場合には結局補助の対象にならんと私は解釈いたします。この条から見ますれば……。そうすると結局短期大学すべてに対してこの実習実験の施設又は設備に対して補助を与えてやろうという心持がありますれば、ここに一項目設けまして、短期大学における産業教育のための実験、実習の設備又は施設という項目を入れたければ、これは補助の対象にならんと思うのです。その点をお伺いしているのです。
  156. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) この条文の中に「現職教育又は養成」とありますのは、先刻ちよつと申上げました夏休みなどに、普通教職課程の設備は持つておらない短期大学も大分あります。ところが自分の持つておる専門の範囲内において現職の教員を、再教育をやるということによつて、当然に補助が受けられるとこういうことを最初から考えております。
  157. 平岡市三

    ○平岡市三君 今度同じことをお伺いするのでありますが、結局それでは夏の講習会などにこういうことをやらなかつたら補助をもらえない、やれ補助をもらえるということですね。
  158. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 簡単に申しますと、そういうことでございます。これが大学についてもそういう考え方で教員の養成なり、或いは再教育なりをやるということで、なおもう少し全般の考え方を立案のときの考え方を念のために申上げます。中学卒業後先刻ちよつと申しました通り満三カ年のプランクになる国民の青少年の過半数になり、高等学校に入るものがその他にあるけれども、それも現場の事情を御覧になつて多分御存じだろうと思うのであります。惨澹たる設備であります。従つてこの三カ年、大体高等学校卒業までくらいの年齢層にいわゆる産業能力を与える教育施設というものが一番弱点になつております。なお教育的に年齢が青年心理の発育過程から見て一番そこが動揺期の大事な時期であるという点で、この法案を作ります場合において一番重点をそこに置いたのであります。それから年齢の若い中学のほうへぼかし、それから更に上のほうへぼかして行つたという考え方であります。そうして大学につきましては、大学プロパーは学術研究が本来の使命であるということで、五億の科学研究費が現在すでに年々盛られておりますが、それが十分であるとは決して思つておりませんけれども、一応その線を延ばして行くということになるということを前提といたしまして大学のほうは従つて高等学校、中学校から見まするとずつとぼかしたものに持つてつております。教員養成、即ち高等学校なり、中学校の先生を必要とする、それの補給源であるという意味で大学のほうへこの考え方を延ばして参りました。
  159. 平岡市三

    ○平岡市三君 わかりました。補助を与えないということは、その短期大学には補助をやらないのだと、こういう趣旨なんですよ。あなたの説明いろいろ言いますけれども結局結論はそうなりますね。
  160. 長野長廣

    ○衆議院議員(長野長廣君) ちよつと私から補足いたします。実は短期大学をどうするかという問題につきましては、いろいろ関係方面でも心配してくれました。それで私どもも深刻な研究をしました。大学ということになりますると、非常に当面において予算が厖大になつて来るのであります。学校の数も多うございます。そこでやはり大学は産業教育に従事する教員又は指導者の現職教育又は養成云々というその範囲において短期大学も成るべくこれを認めて行くようにする、併し現在におきましてはお示しの通りいろいろ法律上の関係で教員資格等で規定されておりますので、そこでこれについては私はこれは或いは又個人の意見に片寄るかも知れませんけれども、私はこういう意見を持つております。これからの日本の産業体系から行きますと、非常に分業的になつて来ますから、工業のごときはそれでまあ具体的に挙げるまでもなく御承知の通りの、精密工業立場につきましても各種の分業的な立場になつて来ます。殊に最近私立学校関係、特に短期大学関係においての陳情書をずつと眺めて見て行くと非常に細分せられた、言い換えたら間口を狭くして技術的にも奥行きの深いような教課がだんだん創設せられて行く傾向があります。そこが我々の非常な狙いでありまして、今後はその意味において私は短期大学というものは他の四カ年大学に比べて、或いはそれと併行して非常に重要性を帯びて来るものと思いますし、又教員につきましてもそういつた間口の狭い奥行の深い非常な高能率的な真の技術的な指導者を要求することがもうすぐこれは切実になつて来ますから、その意味においても短期大学に多少の手を加えてこれを教員養成の、資格あるものを出すという、いわゆる新らしい今申上げた意味の指導者を、教員を養成するという必要が出て来るのではないか、こういうふうに考えます。又家事が非常に関係方面でもやかましく言いましたが、洋裁とか何とかいう面から言いましても、むしろ私は短期大学の形において非常に充実して能率的な刺繍であるとか何とかというような非常な能率的なものを、高能率的な指導者を養成する。指導者が言い方が悪ければ教育者的な一つ各種の施設を充実いたしましてやつて行くと、こういうようにいたしたいという考えであります。  それからすでに前のほうにありました教員資格の点につきましては、これは思い切つて現在の実業学校、現在のいわゆる実業高等学校、この実業高等学校の教員養成の制度はどうしても改善せにやならんと思うのであります。只今申上げたように時代の分業的産業の徹底的な高度の教育に応ずるような人を養成する。この意味においてはむしろ学問的に割合に間口の広い大学よりも間口を狭くして、奥行の深い技術的な短期大学を要求する面も非常に多い。又私が今申上げたような意味でなく、当つていない意味の短期大学につきましても、およそ今後においては教育面から見ても非常に必要でないかと私は思います。そこをどうぞ御考慮願いたいと思いまするし、なお教員養成以外の面において一般大学及びこれに含まれておる短期大学というものの全般に補助を加えまして十分なる充実をする必要が迫つておるのであります。現に、これは速記に入れていいかどうかわかりませんが、某一流の地方における大学におきましても明治時代の機械をそのままに持つて、そうしてそれとは全然離れた技術的教育をやつておるという事実があるのであります。我々はここに議会の人間としても責任を非常に痛感しておる次第であります。かような意味で一般大学も、それから短期大学も、共に教員の養成如何を問わず、私はこの次にはこの方面に力を十分に加えるべき予算を増額すべきものがあると思います。そういう意味も実は構想に入れましてこの法規を作つておる次第でございますのでどうぞ御了承を正願います。
  161. 平岡市三

    ○平岡市三君 実は私が質問したのは皆さんが出しましたところの原案の英文にユニバーシテイというのが入つておる。ユニバーシティというのは、御承知のように四年制の大学でジユニア・カレツジというのが抜けておるということははつきりわかつておるので、それで御質問を申上げたわけです。それでなお職業教育と謳うならば、これは一番重点を置くべきことは、私は短期大学だと思つておるのです。これは予算関係皆さんが知つてつてこれをわざと抜かしたかどうかという点で以てお伺いいたしたわけでありますけれども、私はこの法案趣旨から申しましたら、予算関係もありましようけれども、二年間で以て特色のありますのは、この職業教育に重きを置いておる点ではなかろうと思つておるので、法案趣旨から、そういう今の御質問をいたしたのであつて、それをはつきりいたしますれば、改正なりその他の点においてもう少し我々は考えて見るつもりであります。意見だけを申上げて置きます。
  162. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  163. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは速記を……。
  164. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 只今の長野さんの御発言の中に産業が分化して来るとそれで間口が狭くて奥行が深い短大で、教員養成をされるのが非常に大事で、養成講習等をする場合に、補助する意思がある。こういうふうに申されましたが、短大のほうで教員養成をされるとこういう言葉でございますか。
  165. 長野長廣

    ○衆議院議員(長野長廣君) 何のほうですか。
  166. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 短期大学の間口を狭くして奥行を深い云々とこういうふうに言われましたが、短期大学のほうで教員養成をするのがいいと、こういうお考えのように拝聴しましたのですが……。
  167. 長野長廣

    ○衆議院議員(長野長廣君) お答えします。それは全くあなたのおつしやる通りでございますけれども、私の申上げたのは、特に私が個人ということを申上げたのはそこでありまして、すでに私の意見としては御承知の通り例えば工業にしますと非常に精密工業化して分化して来ますから、従つて実習教育、いわゆる学課ではない実習教育というものが御承知の通り職業学校では非常に必要なのであります。そういうような実際に手にとつて魂を打込んで生徒を指導するようなものは、むしろ学科ということも勿論必要ですけれども、特に技能的に進まなければいけないということが非常に多くなつて来る。例えば農業のほうでいいますと、温室園芸、こういふうになつて来ます。最近は特に大学のほうでは電気栽培ということを研究し始めました。そうなつて来ますと、そういうことによつて水温度を高めて稲の発育をよくすると、或いは電気の光によつて夜も同化作用をせしめるとか、そういうような面が鹿児島その他の大学でもやられておりますが、そういうふうになつて来る。非常に分化して来る。分化ということは悪いかも知れませんが、私はほかにいい言葉がないからその表現をしますが、そういうことですからお含み願いたい。そこで例えば普通の職業教育におきましても、工業職業教育という面におきましても、実習に先立つて生徒に本当に実地に教育をする教員というものがやつぱり必要です。或いは又家事教育においては進歩した刺繍とかなんとか、洋裁とかいう面についても特にそういうことを周知した教員が必要である。こういう意味であります。それから教授の内容については、それはその当時の、つまり教員の資格内容に対するいろいろな法規上の規定もありますが、それに基いて行かなければなりませんので、現在の短期大学をすぐそれにするという意味はありません。やつぱり内容は然るべく改善をされなければならないし、それは又そのときの機会なり或いはその他の面において大いに研究をして、新たな施設として完全なものとして行かなければなりませんけれども、大体私の意味は、そういう粗筋に基く構想なんでございますが、そこを御了承願いたいと思います。
  168. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今教員養成計画は六三三四になつているのに、短大というものが非常に強く出ましたのでちよつと心配しましたが、これは免許法なんかもございますし、実習教師に限られるということになりますが、これには免許の基準というものがありますし、そちらとの関係もございますので、ここで質問を打切りたいと思いますが、先生の実習教師に対する御見解には全く同感の点も多々ありますが、教員養成計画も考えなければなりませんからここで打切ります。  それから私はどうしも被教育者の対象というものがここに問題になりますので、その点と、それから初日に議論された今の教育体系との関連からどうしても割切れんところがあるわけですが、先ほどこういうことを言われましたですね。結局承わつたところによりますと、できるだけ定時制の分校とか別科を作ることができないところには結局中学校でやる社会教育立場で青少年一般大衆を教育する。どうしてもそこに私は補習学校というものが頭に浮んで来るのですが、これは実施面をちよつと考えて見た場合に、社会教育だとすると社会教育主事がこれは教育をする。学校教育だと指導主事が指導して行く。こういうような今の体系あたりから考えるときに、あなたさまの答弁なさつたようなところから行くと、どうしても今の学校体系というものにひびが入るような気がします。これは杉江課長にお尋ねしたいのですが、と同時にそういう元の補修学校を連想するようなものが頭にどうしても現われると思いますが、そうなるというと今の教育の内容なり指導の方法というものに対する規定というものが、どうしても相当あるように考えられますが、その点文部省として杉江課長如何でございますか。
  169. 杉江清

    説明員(杉江清君) 御説明申上げます。先ず第一に十九条では短期の教育を実際行うのは定時制の一部と、先ほども答弁されましたように、定時制の一部として行う、即ち定時制は今単位制をとつておりますし、事実において一、二年で終る、それが非常に多い、そういうような現状でもありますので、そういつた定時制の充実という形で、而も青少年の実際の要求に即して、一年乃至二年のものを充実するという形において行う方法と、それから学校教育法にやはり規定されております別科の形において行われる、この二つがあるわけであります。それと社会教育でありますが、今しばらく定時制と別科の問題について見るというと、先ほどの御意見では、第十八条の第一項のほうにある高等学校という中に含まれるから、そちらで見てはどうかというふうな御意見もあつたように思われますが、その点は実は第十八条の第一項におきましては、これは一定の基準が作られるわけなんでありますが、その基準で、この定時制のそういつた課程の基準とか別科の基準というものはなかなか実際に定めにくいと思います。と申しますのは、これは地方によつていろいろ要求が異なり、従つてその内容も異なつて来るのでありまして、十八条に規定されるような、こういつた同じような基準で、十九条の基準を定めることは困難であるということ。それから十九条で非常に実施する上においては私は重大な意味を持ちますことと思いますのは、終りから二行目の、運営に要する経費について、予算の範囲内で補助をするということに規定されておる点であります。即ち十九条においては、十八条と違いまして、単に実験実習の施設又は設備に要する経費だけでなく、運営に要する経費が含まれておる。即ちここでは私考えますのに講師謝金というものも相当織込み得るように考えられていると私は理解しておるのでありますが、この運営に要する経費は十八条には規定されておりません。そうして又こういつた短期の教育、実際の実状に即したこういう教育を行いますのには、地方の適切な人々に臨時に来て頂くか、或る程度長期に亘る講師を招聘するということが実際に必要になつて来ると思います。そういう意味におきまして十八条の中に入れるのでは、この辺の実施が困難である、こういう意味におきまして、十九条が特設されておることだと考えます。それから社会教育として行うものを含むと申しますのは、現に中学校が社会学級、成人学級というものをやつております。これはなるほど県において指導する部局も違うというようなこともありますけれども、実際において学校が主体になつてつている場合も相当多いのでありますから、そうしてその狙いは、やはりここに規定されておりますような、青少年に対してその地方の実状に即すると共に、やはりそういつた青少年の実際の生活に即した教育を行う。例えば農閑期に行うとか、又は休暇中に行うとか、それも例えば一月のものもありましよう。又三カ月程度のものもありましようし、いろいろな場合もあつたと思いますが、そういつたものが学校が主体になつて行うときには、やはり本法によつて、本法が学校を中心にして産教育を充業実しようとする意図を持つておりますので、学校が行う限りにおいてこれを一括ここに規定することは自然であり又適当である、こういうふうに考えるのであります。
  170. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 皆さん方の御意見わかりましたからそれはそこで打切ります。  次にお伺いする点は科学教育の科学の振興、科学教育振興ということは非常に我が国にとつては重大であることは申すまでもありません。今の文教政策でも非常に重視しておるわけでございますが、この振興を図るということを考える場合に、結局私は国民大衆の科学的神精の涵養、このレベルが上らない以上は、私は学校における科学教育というものをいくら頑張つてみたところでなかなか成果は上らないと思うのです。そういう意味からここに広い意味学校教育産業教育あたりを通して国民全般の科学精神の向上を図り、延いて科学の教育振興、科学の向上を狙つておる科学教育法というようなものを私頭に考えるのでございますが、こういうものの制定についてどういうふうにお考えになりますか、御賛成頂けましようか。
  171. 長野長廣

    ○衆議院議員(長野長廣君) この科学の振興を図るということを国民全般にも一つ気分を促進するという点は大賛成でございます。ここでは併しその科学教育法というようなものを作るかどうかという問題については、実はその点がこの法案の中に非常に含まれておるのでありまして、その意味が第一条に産業教育を通じて、勤労に対し云々というその次に「産業技術を修得させるとともに工夫創造の能力えお養い、」ここが非常に我々その気持を現わしているところでありまして、この技術というのは勿論科学技術、科学と技術、科学によつて啓発せられた技術であります。それから単にそれを現在の社会の技術として習得させるのみならず、それを基にして更に工夫創造するところの創造の科学、進歩の科学、この点を十分織込む必要があると思いまして、さような意味から持にこの文句を入れたわけであります、お説のごときことは、国民大衆にこれを徹底させることが必要と思いますが、特に青年層の中には学問が比較的低い、或いは場合によつては小学校を出ただけの者であつても、非常な飛躍的な発明をする者もあります。これは科学的に飛躍的素質を持つたもの、こういう者もときにはこれを顕彰し、ときにはこれに大いに経費を与えて、更にその工夫創造の能力を助長するということもこの中に含まれておるのでありまして、現在のところとしてこの産業教育の中で一般大衆に対する技術教育、科学教育というものの徹底を図るべきではないか、これに一つ国として力を入れましてお説のようなことにいたしたい。併し更に私は先ほど申上げました大学教育立場になるとこれは又更に以上高い高度の科学になりますから、この問題についても勿論先ほど申上げたようにこの法律の中でやるつもりでありますけれども、時勢の進運に伴うては、やがて御意見のような必要に追られることが非常に近いこともあるのではないかとも想像しますけれども、現在としてはこの第一条の中に含まれたものを展開させるようなことに応じて行くように努めたいこういう気持を持つております。
  172. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 確かに科学の中にも入るんですけれども、まあ産業教育法の狙つているところというのは、結局私は非常に応用という面が大部分だと思うのでありまして、本当に科学の振興の具体的の面の振興ということは、これでは私は期し得られないと思います。そうなりますと、これは文部省のほうにお尋ねするんですが、産業教育法で今お伺いしたような質疑応答の結果、そういうようなところから考えるというと、私さつき言つたような理由で科学教育法というようなものも私は考えられると思うんです。そういうことを考えられないかどうか政府にちよつとお伺いしたい。若し考えられるとするならば、そういうふうに科学教育法、産業教育法というふうに出で来て体系上よろしいものかどうか。その点について文部省見解を伺いたい。
  173. 辻田力

    政府委員辻田力君) 科学教育振興するために科学教育法を御制定になるということを国民の総意で決定されれば勿論結構だと思いますが、そのときに内容をよく拝見しないとそれが学校教育、社会教育に牴触するかどうかというようなことは私は言えないと思います。なお現在の科学教育につきましては日本学術会議関係法律とか、或いはその他若干の規定がございますので、それによつて純粋の科学については振興しているのでございます。なお科学教育については学校教育法によつてそれぞれの分野において実施したいつもりでございます。
  174. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私の質問とちよつと外れておつたのですが、私は将来のことを考えているわけなんですが、観光都市計画法というものが出ると次々にああいう法律が出て来ますので、そういうことも併せて将来のことも一応考えておるんですが、確かに日本の終戦後の教育というものは教育基本法を基にして社会教育学校教育と体系付けて細分化して来ているわけですね。そこで今言つたような産業教育法というもの、科学教育法、そういうものが出て来た場合、当初教育基本法を作つて、これから学校教育を打出して行く、スタートしたああいう当時のことを思い出すときに、その点いいかどうか承わりたい。
  175. 辻田力

    政府委員辻田力君) 矢嶋委員がお考えになつております科学教育法の内容が学校教育法なり、或いは社会教育法規に準拠しまして、それを補足し、その足らざるところを補足し、又助成するというようなことであれば、別に矛盾はないと思います。結局内容如何にかかわる問題だというふうに存ずる次第でございます。
  176. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一点について質問して終ります。辻田局長にお伺いしたいんですが実業教育費国庫補助法というものを廃止したわけですが、その廃止した理由を念のために承わりたい。
  177. 辻田力

    政府委員辻田力君) これは私から申上げるのは適当であるかどうかわかりませんが、私が推察するところによつて、理解するところによつてお答えいたしたいと思います。それは実業教育費国庫補助法は明治二十七年にできました法律でございまして、それ以来非常に移り変りがありますが、それは必ずしも現在の実情にぴつたり合つているかどうかという問題につきまして相当疑義もございますので、時代に即するようにこの法案の中の第三章にそれに代るべきものとして規定がございまするので、従つて実業教育費国庫補助法は不要になるから廃止されるんじやないかというふうに理解しておる次第であります。
  178. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この産業教育法とか或いは職業振興法というものを予想して実業教育費国庫補助法というのを廃止したのではないのでしよう、そうじやないでしよう。私の聞いておることは的確でないと思うからお伺いしたのですが、実業教育費国庫補助法をなくしたのは、要するに平衡交付金法の精神にこれが反するという立場からこれが廃止されたと、こういうふうに私は了承しておるのでありますが、そうではありませんか。
  179. 辻田力

    政府委員辻田力君) それは一つ御質疑の本当の意味がよくわからなかつたからでありますが、法的には私さつき申した通りであります。現在法律としては、この法律ができるまでは、実業教育費国庫補助法というものはあるわけであります。ただそれの裏付けをなす予算がないというのが現状でありまして、法律自身は法文としては現在あるわけであります。廃止されてはおりません。それでその予算の裏付けがないということは、それは平衡交付金の関係でございます。
  180. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうだとすれば、この予算の裏付けを規定したこの法と平衡交付金との間には矛盾はないのでありますか。それともGHQの考え方が変つたのでありますか、念のため伺つて置きたいと思います。
  181. 辻田力

    政府委員辻田力君) この産業教育法案の第三章を拝見いたしますと、皆奨励的な規定でございまするし、又これを強制しておるのではございませんので、その間に矛盾はないと思います。
  182. 高良とみ

    ○高良とみ君 二、三疑義がありまするので、発案者のほうにお伺いして置いたほうが、今日で質問を打切りかと思いますので伺いますが、今回のこの法案の中の実業界、産業界との協力を促進するという点について、この間文部大臣の御答弁の中に、学校で機械等を設備しても、これを使用する期間が短いし、共同でも設備ができないような場合には、産業の現場へ生徒を引率して、そこを以て実習の場に充てるということも可能ではないか。或いはよくはないかというお話があつたのでありまして、そういうことを発案者はお考えになつておられるかどうか伺つて置きたいと思います。
  183. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) そういうことも念頭にないことはないと思います。それからそれは私もこの法案を作つて初めてそういうことを考えるのではなく、すでに地方によりましては、例えば名古屋などでは現にそういうことを現制度のままで苦んで工夫をしてやつておられる学校も私一つ見て参りましてそういうことも行われておるようであります。その今の実業界との協力ということはそれなどに限定しないで、もつと広く、例えて申しますれば、先生の教育を受けるとか、或いは足りない場合にはかけ持ちでやつてもらうとか、理解を以てやつてもらうとか、或いは卒業生の実業界においての実際の状況などを常に知らしてもらいまして、そしてそれによつて学校のほうも考え、或いは学校からも実業界のほうへ註文をつけるというような、もつと広い意味に私どもはその問題を考えております。
  184. 高良とみ

    ○高良とみ君 そういう御趣旨は多少了解し得るのでありますが、産業界或いはその他の職域と教育の場面との考え方をこの際はつきりして置く必要も相当あると思うのであります。そうでないと一体教育というものが産業のほうに隷属して来る性質もできて参ります。なお更にこの点について発議者はどう考えておられるか知れませんが農、工、商、水産等はそれぞれ大きな国の予算を持つておるのでありまして、例えば農業のほうに実験場とか実習場、或いは指導員、技術官というようなものが随分あつて、それが常に農業学校の普通の課目より比重がそのほうに非常にかかつておる。勿論これは食糧増産その他にもありまするけれども、それと教育の場面とは多少違うのでありまして、理念が違うと言つていいかと思うのであります。勿論教育の中で養成しましたものが工業商業水産方面に行くのでありますが、常にそういう方面に働くためだけの人間を作るということになりますと、むしろ農業教育は農林省に委託して、下の義務教育だけを文部省その他地方教育委員会でやつてよろしく、農林省は殊に農業を専門とする高等学校定時制のものなどそういうふうにしたほうがいいのじやないかということをしばしば考えるくらいであります。水産などに至りましては、常に魚を取る漁村においてもそういう必要があるのでありますが、そういう面をどこまで割り切つて考えておられるかということを一応発案者に伺いたいのであります。特にそれについて考慮すべきは、医学及び看護婦等の養成については、殆んどそういう教育の面から離されているのでありまして、これは厚生省或いはこの所轄が全然違つているというのは、先ほど人間としての教育というもの、或いは基本的な教育の面がよほど簿くなつて行くきらいがありまして、これは上のほうだから、単に大学だからよろしいというふうに考えられるかも知れませんが、そういう面についてどこまで割り切つて考えておられるかを一応伺いたいのであります。
  185. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 只今の御意見、御質問非常に御尤もであると思いまして私ども全く同感であります。只今ちよつと申しました名古屋で見た現制度において行われている工場の現場へ在校生を派遣してやつておりまする実修正状況も、非常に細心の注意を払つてつておられます実情を見て、さすがにやはりそれぞれの専門家である、そこまで十分考えておられるということで、私は実は嬉しく感じました。極く簡単に申しますと、一組五十人くらいのものを、五人くらいの十班くらいに分けまして、そうして曜日等をきめまして十カ所くらいの、主にこれは父兄の工場でありますが、特殊のそういう工場の多い所でありますから、行えることでありますが、それをやる場合に非常に時間を限定して、大体二時から三時くらいの時間を選んで行かれます。それは工場の休憩時間でないので、そこの工場で働いている成人の勤労者が暇で無駄口をきいておらない時間というものを第一に念頭に置いておられます。それから第二は非常に危険性のない部分ばかりをやらしておいでになります。この現場も数カ所案内してもらつて見て参りました。そしてその父兄のかたが学校側から十分な一人々々を受けるだけの人件費がないから、父兄の中のそういうことに成るべく理解のあるかたを選んで教育的な環境を十分に作るように努力をしておられる。学校側はそこを自転車などで巡回をして回つておられるということであります。そこが済みますとそのまま家庭へおつぱなさないで、すぐ又学校へ招集しまして、そうして学校で全部まとめて純然たる授業の一種という形でやつておられるのでありまして、只今お話の実業界に教育を隷属させてしまう、或いはその仕事の一部分をただで、悪い言葉で言いますならば労働を搾取させるというような形には全然ならないように十分な注意を払つてつておられたので、現状においても私あそこまで注意をしてやられれば、大変結構だと思います。将来の問題といたしましても只今の御意見は非常に御尤もでありまして、文部省においてもすでにそれらの専門家が揃つておられますし、運用の上において勿論適正を期してもらえるものと考えております。
  186. 高良とみ

    ○高良と君 そういうお話を伺うとそうお思いになるだろうと思いますが、併しそこに危険があると思うのであります。如何にそれがよくあつても、それは要するに産業の場面である。非常にこの社会教育が、教育を社会に引張り出そうとし、又は社会現象に教育の貢献を要求しますけれども、それは教育を放棄してしまつて、それならもう教育というものはすべて水産、農林その他の、法律法律、現場は現場、料理は料理屋へ行つてやればいいというような、非常な実利主義に走つてしまつて(「それは教育の否定だ」と呼ぶ者あり)そうしてこの教育の否定になるということを私どもは非常に心配するのでありまして、(「その通りその通り」と呼ぶ者あり)それは裏から言えば教育が余りに貧困であるために、遂に文部大臣が悲鳴を上げられたと思つて、私はこの間の大臣の御説明を聞いて実に申しわけがない、我々予算委員とし、文部委員としても実に悲しみに堪えないものを感じたのであります。又実際の実業学校、例えば農業教育している現場なんかを見ますと、如何に不熱心であるかということは、実業教育というものをほつたらかしておることは、学校であるが故にといつて、夏休みは教育すべき農業科目のほうは夏休みを全部休んでしまいますから、その学校の農場は草ぼうぼうであつて、片方の学校の普通科のほうの先生が休むから農業のほうも休むというようなことになるので、工場に機械があつてもこれは錆ついておるというような状態でありまして、これは私どもはこの際バランスを教育へ持つて行つきたいということを思うのであります。私はだからこれは実業振興教育であるのか、実業教育振興する案であるのか、そこの考えをきめて行かないと、やはり金がないということ、或いは教育の貧困の故に教育が否定されて行くとまでは言わないでも、ますます貧困になつて行く、今までの教育の欠陥を十分認めますけれども、私どもが期待したいのは、今日挙げて実業界の人も実社会の人もも、大きな予算を取り、或いは教育をよくし、教育の現場をよくして、自分たちよりももつと優れた次の時代の産業人を作るという決意を示してもらいたいと思うのであります。学校の先生、教員等も、或いは校長を初めそこまで自分の教権を捨てずに、自分の学校及び現場の実業教育の面で生かし得るものは十分に生かして、工場を自分のほうへ持つて来るというような、そういう建前で行かないと産業教育法というものは危険性を持つておるということを思うのでありまして、私はその点について発案者の御説明を伺いたいと思います。
  187. 長野長廣

    ○衆議院議員(長野長廣君) 全く高良委員の御心配は私どもの平素心得ておるところでありまして、御同感であります。この間の文部大臣の御説明などは、ややもするとその危険性を御心配になる一つの材料になりはせんかというお話もありましたが、文部大臣としても現在の職業教育の内容の実情をよく御存じであるが故にあういう御説明をなさつたことと思います。私ども考えとしましては、つまり今日及び今後の産業教育なるものは、例えばその設備で考えて見ますと、その時代における一番進んだ設備によつて練習をさせる、修練をさせるということでなければ役に立たんと思います。ところが実は現在我々の調べた範囲では、最高の工業学校とまで言われておる学校へ行きますと、明治三十七、八年の時代に買求めた機械がそのままなのです。例えば米沢のあの織物の米沢工業、これは恐らくそれだけでありません。恐らく全国学校において、学校当事者はそれに泣いておるのであります。そこで大臣の言われたのは、恐らく特別なそういう施設をしますと莫大な経費がかかる。現在はない。ないならば、勢いどこかに非常に進んだ施設があるならばそれで練習をさせてもらうということを、それを申したのではないかと私は黙つてそれを承わつてつたのであります。併しそれではいけない。それでは只今申されたような心配があるが故に、私どもは二百億円、併し当時者の中には、これに関係した或る有力者の中には、二百億円でもなお少い、自分はそれ以上この議会において検討して御援助したいという有力な責任当事者も実はおるわけでありまして、私どもの申上げるのは、そういう御心配があればこそ我々はこんなもう実に産業界に隷属したような、言い換えたならば、産業界の設備を使わしてもらつて教育するということではいかん、これはすぐに出さなければならんというようなことから、やや飛躍的なことでありますけれども、この莫大な経費を要求した次第でございます。それからなおこういう場合もあります。山間などへ行きまして造林の実習をやる場合におきましても、山は買えませんから勢い国有林等に関係をつけて植えさしてもらうとか、或いは最後に収益は折半とか何とかいうことになるのでありましようが、たくさんの山を遊ばしておる人から植林のほうを担当してもらうというようなことも実際上はあり得ることでありまして、併しながらどこまでもつまり産業人を作るという魂の教育だけは絶対にこれは離してはならない。どこまでもこの魂で教育を打込んで行く。これさえ私は学校経営の中心であるならば、設備を変えたからという危険は相当防げるのではないかと思います。それでこれは私の意見でありますが、それで思い切つた予算を当局に要求して、そうして協議をして議会提出というところまで運んだ次第であります。それでその点は全く御同感でございますが、これ以上のことは行政面になりますから文部当局から御説明を願います。
  188. 高良とみ

    ○高良とみ君 併し今までの教育を非常に貧困にして置いて、そうしてその結果役に立たない人間を作つて来るといつて実業界、産業界から文句を言われるということは、今までどんなに一般教育基礎教育が貧弱であつたかということに限を蔽つて、さてそれならば産業のほうが発展して来るし、需要が多いから、一躍今まで苦心して養成して来たものを、今度は産業の役に立つ産業人を作るほうに方向を変えろ、こういうふうな気運を聞きますることは、そこに非常なギャップがあると思うのであります。先ず私どもをして言わしめれば、基本の教育国民の大多数が全部責任を負うて、このままにして置けばかくのごとき中学の卒業生、かくのごとき高等学校の卒業生が出るについては、学校の現場をもつと充実し、これをよくして行かなければ自分たちは期待できないんだということを農、工、水産その他の方面から認識してもらうためにも、やはり教育というものを確立してこちらへ持つて来るということに重きを置かないならば、先ほど心配したようなことがやはりあると思います。産業人を作るという御趣旨は結構でありますが、産業だけを目的にして人間を作ることが、今まで日本の進路をどのくらい誤まつたかということは、我々すでに産業の結果として輸出しました東南地区その他の方面から、縷々新しい日本の産業人が出て来なければ、如何に技術を持つてつても、如何に知慧を持つてつても、如何に科学を持つてつても、如何にもこれでは自分たちは協力しにくいという声さえ出ておるのでありまして、更にもう一段根本的な人間としての教養といいまするか、民主主義的な謙虚な基本教育が大切であるということで、我々は基本教育に力を尽して来ておるのであります。その意味文部省が今後こういうことをなさるときも、余りに貧弱である教育の現状に対して、産業界の方面の協力というものが、今度できます中央及び地方産業教育審議会というものにおきましても、どうかどこどこまでも教権を基に次の時代を愛し育てるという意味でやつて頂きたいという希望を持つのでありますが、文部当局においてはそういうお覚悟がありますか、或いは暫く教育が豊かになるまでは産業界の方面にというお考えでありますか。その点をちよつと一応伺いたいのであります。
  189. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今の御質問は非常に重大な御質問で、我々といたしましてはこの点について適当な機会にはつきりしたいと思つてつたのでございますが、このことについては或いは大臣も若干お触れになつたと思いまするし、又最初この委員会にこの法案が審議されましたときに、基礎教育とこの産業教育との関係についても御質問がございまして、そのときに若干の意見は申上げたのでございますが、只今お話があつた通りに、我々といたしましても考えております。従つて教育は何といつても人格の完成が目標であることは、教育基本法に明示してあるところでありますし、我々としましてはそのために全力を注いでおるつもりでございます。従つて基礎教育と申しますか、普通教育と申しますか、その点に最も力を入れてやつておることは間違いのない事実でございます。併し現在の実情から見まして、これはこの間も大臣が話されましたように、産業教育の面が立ち遅れになつている。むしろ一方のほうが、高等学校にいたしましても、高等学校産業教育に従事しておる学校におきましても、大学の予備校というふうな感さえすると大臣は言われましたが、そういう感がなきにしもあらずでありまして、むしろ非常に立ち遅れておりますので、こういう法律を作りますると追いついて行くようになるだろうというふうに思うのであります。これは只今お話がございましたように、人格の完成という点を最重点として教育としては考えておりますから、この点は御了承願いたいと思います。なお先般運輸省が所管しておりました商船学校文部省のほうに商船高等学校として所管替えをいたしましたのでございますが、その場合の考え方といたしましても、商船人といいますか、海員の養成のために技術面だけを考えれば運輸省の関係でもよかつたのでございますが、併しこれは高等学校生徒として十分に人格教育をしなければならん。又基礎教育をはつきりしなければならんという立場を強く主張いたしまして、この主張を又関係方面においても十分納得いたしまして、所管替ということが実現したわけでございます。我々といたしましては国会の御意思も十分わかつておるつもりでございますので、この上とも加力したいと思つておる次第でございます。
  190. 高橋道男

    ○高橋道男君 簡単ですからもう少時間を頂きたいと思います。十八条と十九条あたりに「政令で定める基準」ということがございますが、これは発案者のほうで、或いはこれに即して文部当局のほうで成案ができておるかどうか。できておるならばそれをお示しを願えれば結構だと思います。
  191. 石井勗

    ○衆議院専門員(石井勗君) 政令の案の内容そのものは私どものほうでは今用意をいたしておりません。文部省で或いは準備が進んでおるかも知れまけん。
  192. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今発案者のかたからお話がございましたが、政令の詳細のことにつきましてはまだできておりません。ただ併し現在までにありまする委員会等によりましてだんだん準備をいたしておりまして、毎週一回くらいは会合を開きまして、その準備を進めておるような次第でございます。従いましてこの法案が幸いに成立することになりますれば、できるだけ早い機会に政令を出して基準を定めるようにいたしたいと思つておる次第でございます。
  193. 高橋道男

    ○高橋道男君 そうしますと、その基準がはつきりと定まつていないといたしますれば、七年間に二百億円の予算で既設の設備を充実するということについては、確定的な根拠がないわけですね。従つてその政令のきめ方によつては二百億円というものが或いは一千億円になるかも知れんというふうなことも、極端の場合考えられるように思われますが……。
  194. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 政令の基準は確定したものはまだございませんけれども、現在行われております教育制度と申しますか、教育の程度を見まして、職業高等学校とかそういう職業課程を行なつておる学校で行い得る、少くとも教育を行うという限度まで、そう言い得るだけの程度まで達していないものがまだ多数あるのであります。それで私ども考えました予算の限界は、これならば職業教育が行えるという最低限度を押えて一応数字を出して見たのでございまして、その最低限度が果して妥当なるものであるかどうか、文部省で実際に基いて政令をきめる場合にはこれでもまだまだ行えないというふうな、もつと基準は高くなると思います。私どもの予算の捻出の最初の華は、まだまだ職業教育と言い得るところまで行つてないところが非常に多いのでございまして、学校と名のつく以上は、少くとも学校といえる程度のところまででも高めたいという、本当の実質的な最低の基準を見まして数字を出したのでございます。
  195. 木村守江

    ○木村守江君 簡単に、第二節の私立学校のところですが、ここには学校法人に対していろいろ規定してありますが、各種学校についてはないようですが、これは入れるつもりはありませんか。
  196. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) その点については……、ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  197. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を始めて。
  198. 辻田力

    政府委員辻田力君) 今の十八条の基準の問題に関連いたしまして私から御説明いたしますが、大体先ほど専門員のかたからお話があつた通りでございますが、ただ高等学校につきましては、昨年度全国的に実態調査をいたしまして、それで大体の現在の実情というものは一応わかつておるわけでございます。それで従来のいろいろ研究した結果とそれと対照いたしまして、その差額を見まして算数計算でございますが、推算をしたような次第でございます。従つて非常な厳格な意味におきましては、基準はまだきまつておりませんし、政令も、勿論まだこの法律が出ておりませんので政令もできませんが、併し全然根拠のない、財政的に漠然たる大ずかみの数字だということではないわけでございます。
  199. 高橋道男

    ○高橋道男君 その財政的援助につきまして半額は地方負担ということになりますと、これは前にちよつとどなたかから御質問があつたかと思うのですけれども、財政の比較的豊富なる地方においては然るべき予算がもらえるけれども、その財政の貧弱な県においては、産業教育が振わなくなる。結局地方産業教育振興状態が不均衡になるということは当然考えられると思うのです。それも併し又別の考え方からすれば、財政の豊かなところには充実すべき学校も多い。又財政の豊かでないところにはそういう産業教育をする学校も少いというような見方もできますから、これは必ずしも不公平ではないということも言えると思うのでありますが、その財政的な基礎の薄い県においてもつと積極的に産業教育を拡充して、その地方産業教育のみならず、産業の振興を図らなければならないというような場合には、どうしてもやはり地方だけの財政的基礎ではその振興が図られないと思うのであります。そういう場合には国家的な立場からもつと積極的な十分な直接の補助をするというようなことについてはお考えはないのでございますか。それはどこまでも二分の一しか国家としては援助できないのであるというような考えでおられるのかどうかをもう一度お聞きして置きたいと思います。
  200. 横田重左衞門

    ○衆議院専門員(横田重左衞門君) 只今の点は地方実情から見まして誠に尤もな御心配だと思います。私どもも同様に考えておりましたのですが、その意味で補助額を二分の一というふうに限定せずに、枠をはずして……、お手許にお配りしてある法案の中にはそうなつておりますが、大体この現状のまま放置して置きましても、地方では県立の高等学校、公立の高等学校、中学というものに対して、年々約二十億円ぐらいの費用を投じてどうにかこうにか今日までやつて来ておるのでありまして、放つて置いても地方では何がしかの負担をかけてやつておる実情でございます。そこで今度この法案が幸いに成立いたしますと、多少とも国から補助が行く。それだけむしろ地方にとつてはプラスになるというふうに私ども考えておりまして、只今の御心配の、財政能力の少い県は又苦労するじやないかという点を考慮いたしまして、二分の一という枠を外しまして、少いところには比較的多く配分できるようにということを考えまして、二分の一という枠を外したのでございます。
  201. 辻田力

    政府委員辻田力君) これは審議会今におきまして、いろいろ研究して、必ずしも二分の一という算数的な計算で行かずに、その実情をよく調べて、場合によつたら或いは三分の一の場合もあるかも知れないし、更に又四分の三の場合もあり得るというように審議会で十分に案を練つてすればその点は是正できるのではないかというふうに考えます。
  202. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御意見ございませんか。……それでは本法案に対する総括質問は大体この程度にして、次回から逐条審議に移りたいと思います。
  203. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 異議あり。今までの文部委員会は満場一致で議事の進行をやつておりましたが、併し今日は社会党と共産党のかたがいらつしやいませんので、この次社会党、共産党のかたの総括質問があつたら、総括質問を許すことにして、今後は仮に総括質問があつたとしてもそれはして頂かないほうがいいと思います。
  204. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 承知いたしました。私の考えも、総括質問があれば総括質問、総括質問がなければ逐条に移つて行く、そういう考えでありますから御了承願いたいと思います。
  205. 木村守江

    ○木村守江君 この法案については相当総括質問があり、重複した質問も相当出て来ると思います。そういう点で重複した質問はもう避けて、(「それは常識だ」と呼ぶ者あり)成るべく早く逐条審議に入るように、委員長の権限において御進捗お願いいたします。
  206. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) よくわかりました。  明日は各派から代表で出て頂いて、午前十時本会議があれば懇談会をいたしたいと思います。二十一日の月曜日は午前十時から地方行政との本法案に対する連合委員会、午後は単独委員会、こういうふうになつておりますから御了承願います。   それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後四時四十四分散会出席者は左の通り、    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            木内キヤウ君    委員            木村 守江君            平岡 市三君            荒木正三郎君            波多野 鼎君            和田 博雄君            高良 とみ君            高橋 道男君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   衆議院議員    文部委員長   長野 長廣君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君   事務局側    常任委員会専門    員       石丸 敬次君    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君   衆議院事務局側    常任委員会専門    員       石井  勗君    常任委員会専門    員      横田重左衞門君   説明員    文部省初等中等    教育職業教育    課長      杉江  清君   参考人    職業教育法制定    推進委員会委員    長都立北豊島工    業高等学校長  佐藤 孝次君