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1951-05-17 第10回国会 参議院 文部委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十七日(木曜日)    午前十時二十七分開会   本日の会議に付した事件 ○国立大学管理法案内閣送付) ○公立大学管理法案内閣送付)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれから本日の委員会開会いたします。  開会に先立ちまして委員を代表いたしまして、公述下さる皆様に御挨拶申上げます。本国会に提案になつておりまする国立並びに公立大学管理法案につきまして、御承知のように大学管理について、大学自治と、同時に民意反映を十分に求めて、適正な管理を行いたいというのが目的でございます。従前よりいろいろ議論のあつた法案でございまするので、我々文部委員会といたしましても慎重に審議を進めたいと思つてかかつておるのでございまするが、我々の審議を進める上におきまして、学識経験のあるかたに御意見を求めて、それを参考にして我々の態度をきめて参りたいとも思います。本日は御多用の中、御無理を申上げましたところが、多数御参会頂きまして、大変我々といたしまして喜ばしい次第でございます。どうぞ忌憚のない御意見をお述べ頂きまして我々にお教えを頂きたいと思うのであります。御発言順序は別に他意ございませんが、公報に掲載いたしました順序でお述べ頂きたい。併しそれぞれ御用の多いかたでございまするので、早く済ませたいという御希望のかたがございましたら、只今我妻先生茅先生との御希望は承わつておりますが、その以外にもございましたら一つおつしやつて頂きたい。そうでなかつたら大体この順序でやらせて頂きたいと思います。発言の時間は別に我々お教えを請うのでございまするから、制限はいたしておりませんが、何分今日一日で済ましたいと思いますので、十分なり十五分ぐらいの程度で、あとで又委員からそれについて御質問申上げたいと思いまするので、大体その程度の目安でお願いいたしまして、そこは各自延びましても、縮みましても御自由にお話し頂きまして結構でございます。それから皆様のお教え頂きましたことに対して、更にこちらから重ねてお教えを願う意味において、済みましたら委員から御質問させて頂きたいと思いますので、そういう点もあらかじめ御了承願いたいと思います。早くお帰りのかたに対しては、そのかたに先にして頂いて、お残り頂けるかたに対しては御一緒に後ほどいろいろお聞きしたい。こういうように本日は進めたいと思います。お礼の御挨拶を兼ねて、ちよつと申上げて置く次第であります。それでは我妻先生茅先生以外はこの順序でよろしうございましようか。
  3. 長谷川秀治

    参考人長谷川秀治君) ちよつと私は午後二時には帰りたいと思います。それまではよろしうございます。
  4. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは東大教授我妻先生からお始め頂きたいと思います。
  5. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 私は、御承知大学管理法起草協議会委員長をいたしておりましたので、初めその立場からお話し申上げまして、最後に私個人意見を多少附加えて申したいと思います。  第一に、この法案起草になりました大学管理法起草協議会が、政府答申するまでの経過をお話し申上げまして、次にその内容の要点を申上げたいと思います。起草経過と申しますのは、御承知通り昭和二十三年の秋に、いわゆる大学管理法文部省試案というものが発表されまして、それが我が国実情に適さないという点から、全国的に論議を醸しました。日本学術会議その他から、政府に対しまして新たに委員会を設けて、諮問に附すべきだという申入れがありましたので、政府大学管理法案起草協議会というものを設置したのであります。この起草協議会はどんな構成かと申しますと、政府はこの協議会を作りますに当りまして、先ずこの大学管理法という問題に最も関心を示した団体であつて、而もかようなことに適当なものとして、教育刷新審議会日本学術会議大学設置審議会及び国立大学会議四つ団体を指定いたしまして、それに対して適任者二名ずつの推薦を依頼しました。そうしてその八名のメンバーができたわけでありますが、この八名の委員文部当局とが協議の上で、更に日本教職員組合全国大学教授連合大学基準協会日本私学団体連合四つ団体を選定いたしまして、それぞれに適任者推薦を得まして五名の委員を定めました。それから更に一般民間人からの学識経験者を選定して七名の委員を定めました。それらの名前は省略いたします。そうして最初にきまつた委員の中で、死亡されたかたなどがありまして、多少入れ変つたのでありますが、二十名の委員でこの大学管理法起草協議をしたわけであります。この二十名の委員の互選の結果、私が委員長に選ばれまして、副委員長矢野貫城氏、矢野さんが、あとでアメリカに渡られましたので、矢内原忠雄氏が副委員長になられました。この協議会審議をいたしました過程は、昭和二十四年の九月初めに第一回を開きまして、いわゆる文部省試案について一応の検討をいたしました。それから各委員はそれぞれ自分の所属し、或いは関係しておる団体意員紹介いたしました。それから従来大学管理法に対して意見を発表した団体であつて、而もその関係者委員に選ばれていないというものがありましたので、それらの団体から代表者を選んでその意見を聞きました。それは民主主義科学者協会、大学校対策全国協議会全国学生自治会連合大学婦人協会私立大学協会であつたわけであります。右と並行いたしまして、又個人及びその他の団体意見を文書で申出てもらいました。そうしてそれらのものを材料といたしまして審議を進めまして、昨年の二月頃一応の案を作成いたし、これを中間発表いたしまして、全国的に意見を求めましたところが、予想外にたくさんの意見が集まつて参りましたので、それを参照しながら更に案を練りまして、第二次の案を作成いたしました。そうしてこの第二次案に基いて、東京、大阪、福岡の三カ所で公聴会を開きました。そうして公聴会でもなかなか活発に意見が出ましたので、委員はそれに基いて最後検討をいたしまして、いわば第三次案が最終案となつて政府答申したわけであります。  以上が経過でありますが、次に答申いたしました要綱の骨子を簡単に申上げます。この我々協議会が作成いたし、答申いたしました要綱は、国立大学管理、即ちその行政について規定するものであります。先ほど申上げました文部省試案の中には、大学目的とか、或いは大学設置、或いは財政などにも互つておりましたが、それらは教育基本法学校教育法、その他の法律規定すべきものであつて大学行政に関する規定を作ることを目的とする管理法の中に入れることは、ふさわしくないということで、これは取除いたのであります。又財政につきましても一国の財政全体との緊密な関係のあるものでありますので、この管理法の中に入れることは穏当でないと考えたのであります。更に大学管理法と申しましても、私立大学管理はこれは全く別なものでありまして、これは私立学校法規定されておるのであります。又公立大学は別に公立大学管理法というものが作られるのがふさわしいであろうというので、結局我々の答申案国立大学に関するものであつて、而も大学管理、即ち行政関係するものに限つたのであります。次にこの要綱を貫く根本精神要綱の第一に宣言しておりました。それは今度の法案の第一条に出ておるわけでありますが、結局国立大学自治尊重するということと、国立大学行政民意反映させること、この二つ理想を調和させながら最大限に発揮させようということが、この法案を貫いておる根本思想であります。この二つ理想は、いわゆる文部省議案にも勿論掲げられておつたのでありますが、我々が答申いたしました要綱は、これを我が国の国情に適合するような機構によつて達成させようといたしましたために、いわゆる文部省試案と比較しますと、相当大きな差異を持つことになつたのであります。国立大学に関する機構は、中央国立大学審議会というものを設けて、各大学には商議会、それから評議会教授会というものを置くという三本建であります。中央設置される国立大学審議会はこの法案に詳しく出ておりますので、その詳細は省略いたしますが、政府国立大学一般に関する一定の重要な事項を行う場合には、この国立大学審議会承認を得なければならないという、法律的にも相当強い権限を有するものといたしたのであります。そこでちよつと横道に入るようでありますが、我々の答申いたしました要綱では、今申しましたように、政府はあらかじめその承認を得なければならないということにしたのでありますが、ここにあります法案には、「意見を聞かなければならない。」ということに改められております。そのいきさつを簡単に申上げますと、我我協議会答申いたしましたあとで、文部当局から御相談がありまして、その点を「意見を聞かなければならない。」というふうに改めたいと思うが、委員会意見はどうかという御相談でありました。政府のそう言われた理由は簡単に申しますと、政府行政責任者となつて、例えば内閣行政の最高の責任者となつてつて行く場合に、こうした委員会法律的にその権限を抑えるような場合があつては困る。殊に諮問機関的な委員会に、そうした大きな権限を与えるということは望ましくないので、最近は、そういうものは設けないという政府の方針になつているのだ。従つて法律的に承認を得なければならないということにしないで、意見を聞かなければならないということにしておいて、併し実際の運用においては、そうしたはつきりした機構があつて、そこから意見を述べれば、政府はおのずからそれに従うということになるであろうと予想されるので、そういう事実上の成果を期待して、法律的には意見を聞かなければならないということにするのが、政府としては望ましいように思うというのでありました。そこでこれは答申後のことでありまして、私委員長としては、字句の訂正は委員から任されたのでありますけれども、事柄が非常に重要なのでありまして、直ちに臨時の委員会を招集いたしまして、このことを諮りましたところが、委員会としては、政府の気持はよくわかる。わかるけれども、併し委員会としてはその点も十分考慮した上で成案を得たのであるから、やはり委員会としては改めないで、そのままの答申としておこう。政府が若しそれを改めたいと希望されるなら、政府意見で、政府責任で改めてもらいたい。それは政府の御自由だという趣旨のことを申上げました。それでその点が改められたわけであります。  それからその構成メンバーは第四条に規定してありますが、ちよつと附加えて申上げておきたいことは、案では三つの要素から推薦されることになつておりますが、もう一つ全国官公私立大学教授助教授専任講師という者の半数以上を包含するような団体があつたならば、その団体から推薦する者を三名加えて、メンバーを二十三名にしたいということを協議会としては考えていたのでありますが、併し現在そうした団体がありませんので、その点は法律から落しまして、ただ希望といたしまして、将来若しそういう団体ができたならば、その団体からの推薦を求めるように、法律を改めることが望ましいという協議会意見を附加したのであります。それからこれが中央に置かれる国立大学審議会でありますが、各大学に置かれる商議会というのは、その権限は第十八条であります。これも大学学長大学行政を司つて行きます際に、一定事項についてはあらかじめその意見を聞かなければならないということにしてあるわけであります。構成メンバーは第十五条に規定してあるのであります。  それから三番目の、三本建と先ほど申しました最後のものは、評議会教授会でありますが、これは学部一つしかない大学教授会、多数の学部を持つておる大学はその上にといいますか、それと並んでと申しますか、評議会というものを置いて、そうして評議会教授会とが相合して、当該大学自治的運営中核をなすという形になつておるわけであります。従つて評議会教授会とが多少権限が分れて来ることになりますが、大体申しますと、当該学部だけに関することはその学部教授会審議決定する。そうして評議会当該大学全般に関する事項審議決定すると同時に、各学部及び部局間の連絡調整を図るということになつておるわけであります。例えて申しますと、一例を挙げますと、学生懲戒という問題は当該学部に最も密接な関係がありますから、その学生の所属する学部が先ず第一次的に審議決定する、併し大学全体としての調整を図るために評議会がその上にいて、もう一度審議決定する。両方が審議決定するのでなければ学生懲戒はできないというようなことになつておるわけであります。そのほか学長学部長職務権限規定してありますが、それは省略いたします。  以上の機構を前に述べましたこの要綱の、我々が答申した要綱根本精神であるところの大学自治尊重ということと、民意反映ということの理想に即して考えて見ますと、自治尊重という理想のためには、国立大学審議会が、政府、即ち文部大臣権限調整して、大学に対する官僚的統制の弊を防いでいるということ、それから各大学行政中核評議会教授会とに置いているということ、この二つの点が大学自治尊重という理想のために考えられておる制度であります。次に民意反映するという理想のためには、各大学に置かれる商議会に三分の二以上の学外者を加えて、その意見当該大学管理反映するようにしてあること、それから国立大学審議会メンバー学識経験者を入れておるということ、この二つの点が民意反映という働きをするのであります。併し言う事でもなく、大学自治尊重という理想と、大学管理民意反映するという理想とは必ずしも容易に一致するものではないと思われます。ときには矛盾することさえないではないでありましよう。なぜかと申しますと、大学自治を確立するためには単に政府の官僚的な統制を受けないだけでなく、社会の不当な勢力からの圧迫も受けないことを必要といたします。併し、そのために社会との関連を断つてしまいましては、大学運営民意反映させることは不可能になるからであります。けれども大学自治が確立されなければ大学の使命を達することができないと同時に、大学管理民意反映させなければ大学をして真に国民大学とすることはできない。国民の負担において設立されておる国立大学において殊にそうであります。従つて大学自治尊重することと、大学管理民意反映させることとの二つ理想は、国立大学管理法の中にどうしても入れなければならないものであります。そうして我々が答申いたしました要綱は、その運用よろしきを得れば右の目的を達することができると、委員会としては信じておるわけであります。  次に教育公務員特例法との関係を一言いたします。教育公務員特例法を正面から審議することは、我々の協議会任務ではなかつたのでありますが、御承知通り教育公務員特例法の中には大学管理機関という言葉が暫定的に読替規定になつておりますので、それを埋めて行くことが必要だという限りにおきましては、我々の協議会任務と考えまして、その点を審議したわけであります。併し身分に関することはやはり全部特例法に譲りまして、管理法には規定いたしませんでした。但し教員の意に反する降任或いは免職教授会意見を聞いて、評議会が決定するということにいたしました。この点は相当問題のあつた点でありますが、教授会の専権といたしますと、どうも教授会自分仲間である一人の者の意に反する免職を決定する。そうしてその教授会が決定しない限りは意に反する免職ができないということにいたしますことは、仲間をかばつて公正な判断をしない廃れがある、少くとも一般に疑念を抱かせる慮れがある。従つて大学の全部から選ばれている評議会が公正な立場最終的決定をする。但しその前に、当該教授会意見を聞いて、十分それを尊重するということが望ましいと考えたわけであります。  終りに、私個人意見を附加えさして頂きたいのでありますが、それはこの法案が現在の日本にどれだけ必要かという点であります。その点に関する私の個人的な意見を附加いたしたいと思います。私は東京大学に育つたものでありまして、東京大学で私が育ちました経験から申しますと、現在の法律だけで十分やつて行けると思われます。現在の法律と申しましても、それは主として慣行でありますが、慣行が確立しておりますので、それによつて十分やつて行ける。而もこの慣行も時勢に応じてだんだん変つておりますので、恐らくは又新らしい時代に即応するように、この慣行を変えて行く力を東京大学としては持つておる。従つてこの法律がなくとも東京大学としてはやはり公正を得たやり方をして行けるだろうと考えられます。のみならずこれは東京大学だけではなく、伝統を持つておる大学ならば、恐らくは事情は同じだろうと考えられるのであります。併し御承知のように、新制大学が非常に多いのでありまして、それらの新制大学は少しも伝統を持つておりません。で、現在その管理を如何にして行くかということに非常に困つておる状態であります。そうしてそれらの大学では、この法律の制定を首を長くして待つておるという実情であります。のみならず御承知通り学校教育法教授会というものを規定しておりますけれども、その教授会というものを如何に構成すべきかということは何ら規定しておりません。又、教育公務員特例法管理機関というのは、先ほど申上げましたように読替規定になつておりますが、その暫定的な読替規定を何らかの形で恒常的なものに直して行くことが、法律的に必要とされると考えられます。又、評議会というものについてもはつきりした規定現行法のどこにもないのであります。従つて法律的に見ましてもこの法律が成立しない場合には、教育に関する現行法に大きな穴がある。そうしてそのままこの法律によつて埋められるのが、埋められないでおれば、そこに大きな穴があつて、何とかしなくちやならんという実情にあると考えるのであります。更にもう一歩突つ込んで申しますと、これは私は体験がありませんのでいずれ私のあとにお見えになつております意見を発表される参考人のかたが、体験を以てお話になることとは思いますが新制大学では伝統がありませんので、露骨に申しますと、学長の専制的な立場相当強いかに考えられるのであります。併し又それに対して他方学生団体とか、或いは組合団体とか、その他のものが、いわば専制的な学長に対して又それを牽制しようとする力も相当強いように見受けられます。そうしてそれらのものが、やがて国立大学管理法ができるのだから、それができたらその基準によつて公正にやつて行ける。それまで暫らく現状のままという状態にあるように見受けられます。従つてこの法律が通過いたしますと、それらの新制大学ではこの法律によつて公正な運用をやつて行ける。万一この法律が成立しなければ、ここで学長の専制的な立場がずつと強くなるか、或いはそれに対する反対的な勢力がずつと強くなるか。それは学校によつて異なるだろうと思われますけれども、いずれにいたしましても対立が相当尖鋭化して来て、適正な運営が甚だ困難になるのではないかと憂えられるのであります。さような立場から申しまして、この管理法を一日も早く法律にすることが必要であろうと考えられます。これは苦労をいたしまして、案を作つた協議会委員長立場で申上げるのではありません。一個の学徒として見ましたときにさような感じを持つのであります。これは私の個人的見解でありますが、附加さして頂く次第であります。
  6. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは次に東大伝染病研究所長長谷川さん。
  7. 長谷川秀治

    参考人長谷川秀治君) 私御紹介にあずかりました長谷川であります。只今我妻参考人から縷々この法案内容つにきまして、御説明がございましたので、私は主としてこの中に盛られております大学附属研究所のことにつきまして申上げたいと思うのであります。  そもそもこの文部省関係研究所と申しますのは、直轄に十五、六と、それから大学附置に約五十七ばかりあると思います。数字のことはちよつと間違つておるかも知れません。大体五十六、七あると思うのであります。この研究所が今や日本の国におきまして学問研究に対して非常に大きな役目をしなければならないということは、もう皆さんも御承知通りでございまして、戦争前におきましては、陸海軍研究所とか、或いは財閥の研究所というふうなものがございましたが、今日はもうそれも大体ございませんし、文部省以外の省にも研究所をそれぞれ持つておりますけれども、文部省関係といたしまして、最もたくさんの研究所を擁しておるわけでありますが、その研究所におきまして、今日は大部分教授助教授制度が採用されました。大勢の教授助教授がいるわけでありますが、とかく今日までは研究所というものが学部とは離れた形において存在いたしました。と申しますのは、この中にも盛られてございますが、評議会構成メンバー研究所からは今日までは大体入らなかつたのであります。学部長研究所長を兼任しているような場合におきましては、研究所に関することはその兼任している学部長が大体了解するという状態でありまして、五十幾つかの研究所責任者評議会に正式に入るということができなかつたというので、今回はこの委員会におきまして、第四章、評議会のところの、第二十三条の第一項第四号のところに「附置研究所の長」というのが今回新たに入れられまして、そのほか研究所教授からも何名か、研究所によりましては評議会に入れるということになりまして、それで評議会におきましては、評議会権限のところにもいろいろ重要なことが書いてございますが、各設備の部局連絡調整に関する事項とか、或いは商議会のところにもございますが、各研究所その他研究施設設置、或いは廃止に関する事項というようなこと、いろいろ重要なことを協議するときにおきまして、その研究所責任者大学運用いたします評議会に入つていないというふうな、今日まで大きな矛盾がございまして、これは研究所責任者といたしましては今日まで大きい、誠に大きな不便を感じておりまして、東大のごときは運行できません研究所が約十ありまして、例えば昭和二十五年度の予算によりますと、大学全体の予算で、四分の一を研究所が占めているようなわけでありますが、それでこの肝賢ないろいろ重大なことを議する評議会にも出ていないということでありましたので、これは今回のこの法案では是非入れてもらうということになつておりますので、これで研究所が初めて学部と並行の状態におきまして研究が遂行されて行くということでもありますので、この法案が若し通らないときにおきましては、これは研究所が又今までのような非常に不便な位置におきまして、学問研究の遂行上誠に不便を感じるというふうな状態になるのであります。  なお、この評議会のところにおきまして、第二十三条のところで、最後の第五項におきまして、第一項第四号の附置研究所の長が評議員となるときは評議員の数を制限するというふうに入つておるのでありますが、これは私どもといたしましては数の制限をせずに学長学部長、各学部教授二人、附置研究所の長が必ず評議会に入るというふうにして頂きたいという希望を持つております。これ以外の点につきましては、この法案につきまして私は全面的に賛意を表している次第でございます。簡単でありますが、説明を終ります。
  8. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは御都合によりまして東大教授の茅さんに……。
  9. 茅誠司

    参考人茅誠司君) 只今紹介にあずかりました茅でございます。私は東京大学医学部長を一年半勤めております。現在学術会議の副会長をしております。  最初学術会議の副会長といたしまして、学術会議がこの大学管理法に関しまして関係した事項について経過を申述べたいと思います。先ほど我妻参考人から最初にお話がありましたように、二十三年の秋にいわゆる大学校の文部省試案なるものが示されまして、相当大きなセンセーシヨンを起しました。その年の暮に学術会議が初めてできまして、第一回の総会におきまして、この国立大学管理法というものが非常な論議の中心になりました。その際に、総会で議決いたしましたことは、内閣総理大臣宛に次の申入れをするということでございまして、これは昭和二十四年の二月八日に「内閣総理大臣宛に申入れを行いました。「国立大学行政機構は極めて重要な事項である。併し、文部省の提示した大学校試案には民主化の意図は見えるが、我が国の事情に適しないものがあるから、その国会提出を止め、改めて愼重に審議すべきである。」という申入れを内閣総理大臣宛に二十四年二月八日に出しました。次いでこの大学法案に関しまして委員会を作りまして愼重に審議いたしました結果、更に二月九日に内閣総理大臣宛に次の通りの勧告をいたしました。「国立大学法案は、単に教育組織だけでなく科学の研究にも重大な関係を有するので、科学の向上発達を図ることをその任務とする日本学術会議は、その第一回総会においてこれについて非常な関心を示し、我が国の国情に適した方策を考究するために特別委員会設置した。政府においてもこの間の事情を諒承され、本会議に対し、その意見を諮問されるように、本会議の総会の決議に基いて、これを勧告する。」こういう勧告をいたしました。で、只今の勧告とは別ではございましたが、二月の二十六日に内閣総理大臣から次の諮問を学術会議は受けたのでございます。「大学所属の研究施設機構及び運営について科学研究振興の見地から意見を承りたい。なお右は大学法案(仮称)作成の場合においても参考と致したい。」そういう諮問を受けました。この諮問に対しまして日本学術会議では別の委員会を作りまして、諮問案を作成しまして、その諮問の答申をいたしました。その後、日本学術会議におきましては五月七日附で右の諮問に対して答申したのであります。それから三月二日になりまして、内閣総理大臣に勧告を行いました。「政府は、大学法案作成のために新たに民主的な機関を作つてこれに諮問されたい。右本会議総会の議決に基き、日本学術会議法第五条の規定によつて勧告する。」このようないきさつで、日本学術会議におきましては、この大学管理法案に対しまして審議して、いろいろな処置をとつて参りましたところが、先ほど我妻参考人のお話にもありました通りに、政府当局におかれても、この勧告の趣旨を了承されまして、先ほどのような経緯で民主的な審議機関をお作り下さつて、この管理法案の原案は作成されたのでありまして、学術会議といたしましては、その措置に対して非常に感謝しておる次第であります。又協議会は非常に熱意を以て原案作成に当られ、且つ三回も試案を作り替え、且つ日本全国に亘つて公聴会を開いて意見を問われたという点につきましては、我々非常に満足しておるところでありまして、この法案の原案が作成された経緯に対しましては、我々非常に喜んでおる次第であります。次いでその内容について、私東京大学医学部長といたしまして、一年半ほど教授会を直接に主宰して参りました経験から申しまして、意見を申述べさせて頂きたいと存じます。大学教授会におきましていろいろと問題になりますことは、多くの場合におきまして、大学評議会との間の関連でございます。現在の大学評議会と申しまするのは管理機関ではございませんで、学長の諮問機関と考えるべきものと思います。教育公務員特例法が出ましたために管理機関として書かれたのでございますけれども、あの法案が出ます前までは少くとも学長の諮問機関の性質を持つておりました。併し実質におきましては、評議会において決定されましたことは学長が思案にこれに従うという慣行になつております。従つて学部教授会において、例えば学生懲戒に関するといつたような事柄に対して或る決定を行います場合に、その決定がどの程度評議会において尊重せられるかという問題が相当問題になるのであります。東京大学慣行に従いますというと、教授会において学生懲戒に対して或る決定を行いました場合にそれが全学的の問題でありますと、各部の間に一定の方針があつて、その方針に基いて懲戒の決定をするというのでないと、歩調が乱れる場合もあるのでありますが、そういうことなしに、各部の教授会においては懲戒ということを決定しております。従つてその決定が今度は評議会にかかりました場合に、各学部の間に、足並みの揃わない場合がたびたびあるのであります。その場合におきましては、それは評議会権限に属することでありまして、教授会の決定は、尊重はされますけれども、決して形式的に、評議会の論議を拘束するものではない。そういう慣行従つて我々は現在までやつて来ております。この点につきましては、先ほどの我妻参考人のお話にもありました通りに、慣行が時代と共に、だんだん変つて参りますために、ときどき論議の中心にはなりますけれども、現在までの段階におきましては、私はこのやり方で十分教授会評議会との関係は満足に進行できるものと考えております。ただこの新らしい大学管理法におきましては、この上に更に商議会というものができまして、その三分の二の委員学識経験者によつて占められるということになりますので、今度はこの三者の関係というものが問題になつて参ります。併しこの法律によつて規定されておりますことが非常に明確になつておりますので、この内容をよく検討して見ました結果、私としましては、この法律によつて従来通り慣行と全く同じにスムースに大学管理というものが行なつて行けるということを自分一個としては感じております。そういう見地からしまして、この法案審議の末に通過することを望む一人でございます。
  10. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは次に、京都大学人文科学研究所長の貝塚さんにお願いいたします。
  11. 貝塚茂樹

    参考人(貝塚茂樹君) 私京都大学の貝塚でございます。先ほど東京大学の伝研所長の長谷川さんから、附置研究所の所長の立場として、附置研究所に関する法案規定についていろいろ御意見が開陳されましたが、私も同じこの附置研究所一つである人文科学系の研究所の所長といたしまして、この大学校の中の附置研究所に関する規定について私の意見を少し述べて見たいと存じます。  附置研究所の重要性ということについては、すでに長谷川さんが十分申し尽されたことと思います。その附置研究所規定について少し申上げて見たいと思います。附置研究所についてのこの管理法案規定は、大体において私は適切だと考えております。附置研究所に対する規定の主なるものとして、第三十二条に附置研究所教授会規定したことが先ず第一であります。この点について第三十二条には、「国立大学附置研究所教授会を置くか但し、当該研究所の事情により、評議会の議決を経て、これを置かないことができる。」、こういうように書いてあります。附置研究所教授会というものは、今まで必ずしも大学校において完全に明文化されてはおらなかつたわけでございます。大学管理法案が大学自治ということを目標にして立案されております。更に大学の中は、学部或いは附置研究所に分れておりまして、それぞれが又或る程度自治機構を持つております。そうして学部においては教授会なるものがありまして、教授会自治によつて学部運営されておりました。併し附置研究所においては、今まで必ずしもこの教授会規定が明確でなかつた点がございまして、そのために附置研究所自治は必ずしも完全にできておらなかつたというような実情でございます。これは大学、或いは各部、或いは各研究所によつて多少は事情が違うと思いますが、全体から見たらそうであつたと言つてよいと思います。ところがこの新らしく提出されました国立大学管理法案においては、附置研究所教授会というものが、学部教授会と殆んど同じような性質を持つて作られております。このことは、今まで明確でなかつたところの附置研究所自治機構を確立したものでございます。この点において、私はこの三十二条、三十三条の規定には全面的に賛成でございます。更に附置研究所の長であるところの者に対する規定が、第三十六条以下に、学部長その他の管理機関の長というもので規定されております。この点も今まで附置研究所の長の性格が明確でなかつたものを明確にしたものでございます。この点においても、この三十六条以下の規定にも私は賛成でございます。そういうようにして、この大学管理法においては附置研究所自治機構を確立したという点において、私は賛成するにやぶさかでないものでございまするが、ただ大学全体の自治機構に対する附置研究所の参加の仕方というものについて多少疑義を持つております。大学全体の自治機構において中心的な位置を占めるものは、第四章において規定しておる評議会でございます。このことについては、すでに伝研所長の長谷川さんが述べられましたが、私は蛇足的に一言申上げて置きます。第二十三条の大学自治機構の中心であるところの評議会については、第二十三条にこういうふうに規定してございます。「評議会は、左に掲げる評議員をもつて組織する。一、学長、一、学部長、三、各学部教授二人、四、附置研究所の長」と書いてあります。附置研究所の長は、原則的にこの大学の最も重要な管理機構であるところの評議会に参加することができるわけであります。併しながらその第四項を見ますと、「当該大学の事情により、評議会の定める規程に基いて、第一項第三号の教授の数を五人までに増加し、同項第四号の評議員の数を制限し、又は附置研究所教授、附属図書館長、附属病院長その他重要な職にある職員を評議員とすることができる。」附置研究所の長というものは原則的には評議会に参加されますが、大学の事情によつて評議会はこの同項第四号、即ち附置研究所の長を制限することができるということになつております。このことは、各大学にいろいろ事情がありまして、附置研究所がかなり多数あるために、その各学部長の数の比例及び各部から出る教授の数と比較したときに余り多過ぎるようになりはしないかという老婆心のために、こういう数の制限を設けられたのでございます。それは成る程度の理由は持つておるわけでございますが、先ほど伝研所長の長谷川さんが申されましたように、評議会においては大学の最も重要なことが議せられます。学部、それから当該研究所の規程を制定したり、改廃したりすることが議せられることがあります。更に予算が議せられます。更に人事の基準に関する事項も又議せられることと思います。そういうことについて、その自治機関に参加せずして、如何に小さい研究所長でも当該研究所運営責任を持つ研究所長が、こういう重要なことが議決されるところの評議会に参加することが、大学の事情によつて評議員の数を制限されたために、出られないことができるということは、非常な不都合だろうと思います。その点において私は、三十三条第四項の「同項第四号の評議員の数を制限し、」というこの条項をこの原案から除いて頂きたいと存じております。そのようにこの大学管理法における大学附置研究所に対する規定は、大体において適切でございますが、少し今述べたような欠点を持つておるものであります。こういう欠点が除かれて、御審議の上これが削除せられて、この原案が通過するならば、非常に研究所については満足に運営することができると思うのでございます。  先ほど我妻参考人は、多くの大学については知らないが、東京大学のごとき伝統ある大学においては、十分慣行によつて大学自治の組織が確立しておるから、この大学校案が通過しなくとも、東京大学に関する限りはその慣行によつて十分に運営して行くことができると、そういう御意見でございました。私は東京大学のことは存じませんです。多分東京大学においてはそうであろうと存じますが、京都大学においては必ずしもそのようにはならないかと、このように考えるわけでございます。というのは、慣行というものは相当我妻参考人は、東京大学においてはこの慣行が時勢の変化を受けて、十分時勢に適合して行けると言つておられますが、各大学においては必ずしもこの慣行が時勢にうまく適合しておりません。研究所というものは、大学においては学部よりもむしろ遅れてでき上つたものでありますために、大学自治機構に対する参加規定が十分明確でありません。そのために現在の大学校においては、先ほど長谷川所長が申されたように、正式に参加する資格を持つておりません。それで慣行も又そのようなことを認めておりませんために、現在では大学全体の自治に対する発言権を持つておりません。このことが非常な不便であることは申すまでもございません。ですからこの大学管理法附置研究所の所長の権限を認めたところのこの大学管理法が、一日も早く制定されまして、議会を通過して制定されることが望ましいと存じます。
  12. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは次に東京工大助教授の鶴岡さん。
  13. 鶴岡信三

    参考人(鶴岡信三君) 御紹介にあずかりました東京工大に勤務しております鶴岡であります。  私は国立大学管理法案全体に対しまして、いささか意見を申上げたいと思うわけであります。で先ほど来いろいろと意見が述べられておりましたけれども、我妻さんから述べられましたこの管理法案の第一条に、「この法律は、国立大学管理についてその自治尊重するとともに民意反映せしめて、」ということが謳つてある。この法案においては、総合的にこれらの条件で満足をしておるというような御発言がありましたけれども、私はその観点に立ちますと、全然反対でありまして、この法案は全然大学自治尊重するものでもなければ、民意反映するものでもないということを、先ず冒頭に申上げたいと思うのであります。その理由といたしましては、一応国立大学全体の最高の管理機関であると思われるところの国立大学審議会、これが全く文部省の附置機関に過ぎなくなつております。即ち御承知のように第三条においては、文部省の附置機関ということがはつきり謳つてありますし、第四条においては、その委員の任命を文部大臣が行うということになつております。これではこの全体、国立大学全体の最高管理機関であるところの国立大学審議会が全く政府に対して独立性を持つておらないということになつて参るわけでありましてこの観点からいたしまして、果してこの法案の立案されたときに、大学自治をどうお考えになつておるかという点について、多大の疑問を持つわけであります。なお民意反映するという点でありまするけれども、この我々が考えました場合に、民意反映する最も適当な機関は、それから是非とも必要な機関は国立大学審議会であると思うのであります。この審議会の委員構成を見ますときに、全く民意反映しておらない構成であるということ、こういうことを我々は感じたのであります。従いまして第一条に謳つておりますところの、自治尊重し、民意反映するというのは単なる言葉だけの問題に終つておる。こう感ずるわけであります。  なおそれぞれの管理機関を見ますと、私は大学自治の根本になるものは、大学自治を行うものは、これは民主化された全学的な教授会にその基本をおくべきである、かように考えるものであります。といたしますと、先ほどからの意見の中に現われておりまするように、一応大学自治管理機関といたしまして評議会乃至教授会があるのでありますが、評議会構成を見ますとはつきりしておりますように、教授会評議会は学内におきまするところの一部特権者の集りに過ぎない構成であります。即ち大学自治を完全にやろうといたしますと、全学的な民主化された教授会、即ちここの法案に謳つてあるように、単に教授からだけ構成するのではなしに、規定といたしまして教授助教授、専任の講師、これから構成いたしまして、なお必要に応じては助手以下のそれぞれの職員を参加させる。なお、それと対立いたしまして学生及び職員団体との協議会を以て大学運営をやることこそが、私は大学自治を完全に保つものである、このように考えておるものであります。その観点からいたしましても、この評議会及び教授会構成だけを見ましても、この法案におきます大学自治尊重するというのは、これ又一片の言葉だけに過ぎないということを申上げることができると思うのであります。そこでこの教授会におきます権限の問題でありますけれども、この問題に関しましても我々は大学運営を全く民主的にやつて参ろうとする場合に、どうしても予算の点を教授会でも審議しなければならない、このように考えるのであります。予算の点と及び人事の権限教授会が持たなければいけない。この教授会はこの法案で謳つてあるような教授会ではなしに、繰返しになりますけれども、私の申上げましたような全く民主化された教授会において、さような権限を持つのでなければ、我々は責任を以て大学教育を考え、大学教育研究を実施する立場に立ち得ないと思うのであります。従いまして、以上の観点からいたしますと、先ずこのそれぞれの管理機関、即ち国立大学管理機関国立大学審議会、これは先ず構成の点からいたしまして現在教育委員会というのがありますが、この国立大学審議会教育委員会的なものにしなければならない、即ち全国的に公選された委員によつて構成されるところの国立大学審議会にしなければならない、かように感ずるわけであります。それから又、国立大学審議会予算権を持たなければならない、かように存ずるのであります。全く政府に対して独立性を保持いたしました、而もなお且つ予算権を持つたものでなければ、全く大学自治を保つことができないのではないか、而もなお現在の段階に鑑みましで教育の水準を高め、それから民主化された大学教育を行い、そして我々の本当の国民のための大学教育を行うためには、やはり以上申上げましたように、国立大学審議会予算権を持たせ、そうして政府に対しまして独立性を持たせなければ、非常にその謳つてあります第一条の目的に相反するものになつてしまうということを申上げることができるのであります。  なお、細かく申上げました場合には、評議会につきましては、これは私の意見といたしましては、全く評議会は学内におきます各学部教授会の連絡機関であつていいのではないか。ここにこの法案に誰つてありますように、評議会は学内の、大学内におきますところの最高の管理機関であつてはいけない。それは飽くまでも大学全体の教授会におかるべきである、かように存ずるのであります。それからなお、この法案につきまして欠陥として指摘できますことは、評議会に出席いたしますものが、各学部教授会の意思を代表するものでなければいけない。この法案においては必ずしもさようになつてはおらないと思うのであります。なお、この学部のそれぞれの教授会の意思に反するところの言動がありました場合には、リコール制も考えなければいけないのではないか、このように存ずるのであります。以上指摘いたしました点からいたしますと、この法案はやはり大学教育を官僚が統制するところの、即ち文部大臣の独裁権を強化するところの法案であるに過ぎない。而も学内における民主化の点になりますると、一部特権者の独裁権をますます強化するものである、かように存ずるのであります。そこで先ほど来、代案的なものを申上げておりまするけれども、私の意見といたしまして、この管理法案の代案的なものを申上げますならば、先ず審議会を教育委員会的な構成にして、全国公選によつて、その委員を選定しなければならない、これが一つ。それからこの国立大学審議会には予算権を持たせなければいけない、これが第二番目。それからこの国立大学審議会におきましてはそれぞれの大学管理機関、即ち繰返して申上げておりますところの、民主化された教授会審議されました事項を、全国的な視野に立つて審議決定される、こういうことが望ましいと思うのであります。なお、商議会の点につきましては、繰返して申上げておりまするように、大学自治を完全に保持する立場から、実はこの商議会全部の項を抹殺すべきである、かように存ずるのであります。なお評議会の点については、先ほど来申上げておりますように、各学部教授会の連絡機関でよろしい、かように存ずるのであります。なおこのほかに、教授会構成はこれも先ほど申上げましたように、教授助教授、講師を以て構成することにいたしまして、必要な場合には助手以下の職員を参加させる規定にして頂きたい、かように存ずるのであります。なおこれ以外に、学生、職員団体意見を聞きますために、それぞれの意見大学運営に取入れるために、それぞれの評議会を持つべきである、かように存ずるのであります。最後に、先ほど来いろいろ問題になつておりますところの、この法案が通らなかつた場合、この法案がない場合、この点について一言触れたいと思うのであります。私の工業大学に奉職しております立場から申しますならば、この法案がなくても、この法案が制定されなくても十分大学運営はできるものと、かように存ずるのであります。なお各新制大学におきましては、この法案の制定されることを待つておるというような発言があつたのでありますが、このような内容があやふやなものがあり、それからこの第一条の目的にありますところの、大学自治尊重し、民意反映させるという点に相反する内容を持つたような法案が制定されるそのマイナスよりも、それぞれの大学においてほかの大学の慣例を見、或いはそれぞれの職員の総意を反映するところの、その大学内の自治的な運営をやつて行くことこそが、現在においては最も大切なことであると思いますので、あえてこの法案只今制定されなくとも、私は十分各大学運営はやつて行ける、このように存ずるものであります。以上極く全体的な問題につきまして一応の意見を申上げたわけであります。
  14. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それから次に山口大学教授の広川さん。
  15. 廣川清隆

    参考人(廣川清隆君) 私は本日、山口大学の教官といたしまして、又現在日教組の中央執行委員をしております関係上、日教組の大学部を中心にいたしました意見を元にしまして、その立場から所見を申上げます。  本法案に対しまして総括的に申しまして、直ちに賛意を表しかねるものであります。私どもが考えていますところの最低限度の基本的修正個所も相当の数に上るのであります。以下述べるところにおきまして、それを実は逐条的に申上げたほうがいいかと思いますが、併しそういたしますと趣旨がはつきりいたしません。そのために修正意見の骨組を今から申上げたいと思います。私どもはこの骨組といたしまして、大学自治、それから大学の民主化、それから民意反映、この三つの基本的観点を立てて考えて来ておるのであります。従来の我が国大学は、いわゆるアカデミックな西洋式な形で来ておるのでありますが、それに終戦後米国式のプラグマチックな学制の改革が導入されて来たのでありまして、それを今この大学管理法の面におきましては大学自治、又一方は民意反映、こういう形において現わされて来ておると考えております。私どもの基本的態度は大学管理を考えますに当りまして、その基本精神を大学自治に置くものであります。学問の自由、研究の進歩のために大学自治が要請せられますことは、これは説明の要がありますまい。併しこのようにいたしまして自治尊重が基本であります。そして民意反映はその補助的機能として考えて来ておるのであります。大学自治と申しますときに、我が国の実態は従来からも官僚統制によりまして自治が極めて不徹底である。そのために幾多の問題が起きておつたということを指摘しなければならないと思います。新制の大学におきまして、自治の歴史が殆んどないということは先ほどから申されておりまするが、併し我が国におきまして、この大学自治は、特に官僚的、権力的統制からの自治ということが最も強く必要とされておるということは、当てはまることであると思います。本法案におきまして、この自治が徹底を欠いておる。この点は我々としては大きな難点であるというふうに考えておるのであります。その難点を一つ国立大学全体の自治として考えて見ますときに、国立大学全体としての高次の管理機関といたしまして国立大学審議会というものが、この法案におきましては文部大臣の諮問機関という形において出ております。で、勿論その委員の任命権者は大臣であるということになつております。このことは、この中央国立大学審議会なるものが高次の管理機関でありまするが、又同時に政府に対して自治的な意味において独立性を持つことができないということを指摘せざるを得んのであります。文部大臣行政官でありまして、従つて政府であるところの政府機関であります。政府の意向には従わなくちやならないということが要請されておるのでありまして、そのときの政府の政策によりまして大学行政が左右せられるということになる心配があるのであります。この意味におきまして、大学自治を要求する限り、時の政府の変動する政策に隷属しておるような管理機関で、その大学自治がうまく行くということは論理的に肯定できないのであります。大学自治大学研究教育というものが守られて行くために、その点が基本的に考えられなくてはならない点であると思います。更にこの機構におきまして、学長は入つておりまするが、先ほど指摘されましたように、教授助教授、或いは常勤講師というものが入つておらないということが、そういう意味におきまする統制的なものが一層強化せられるという一つの心配をそこに持つて来るのでありますが、これに対しまして私どもは、中央国立大学審議会にはこの法案よりも学長の数をちよつと減らしまして、その減らされた学長の数と同数だけ教授助教授、或いは常勤講師の代表がそこに入るということを要求いたしたいと思うのであります。そして民主的に選び出されたところの学術会議の会員の数を少し増す、こういうふうにその構成を変えて行つたらと思います。それから更に大事なことは、権限的に先ほど起草委員長から御指摘がありました「意見を聞かなければならない。」というふうに書いありますところを、やはり「審議決定する」というふうにしたいと思います。このことは昭和二十三年の十一月に第八十三回の教育刷新審議会の総会においても、大体確認せられておつた基本線であります。それがその後起草協議会におきまして変更されて来たのでありますけれども、最初考えましたところの基本線には、そういうものがはつきり樹立されたということを申上げます。それから今「意見を聞かなければならない」ということがありますが、申すまでもありません。「意見を聞かなければならない」ということは、つまり意見を聞くだけで、それに対する執行の責任がないということであります。もつと露骨に申上げますと、聞き流しができるということであります。かく聞き流しができるというふうな規定でありましては、極めて不安定なものでありますし、それから不審の念を抱かせるものであります。この機関が形式化して来ることを心配するものであります。この私どもの主張は極めて重大な点でありまして、又この我々の主張に対する注目すべき反対の意見といたしましては、先ほどもちよつと述べられたと思いますが、行政的に大臣の権限を拘束するから、そういう言い方はよろしくないのだと、つまり行政を乱すのである。こういうふうな考え方が、そこに一方の反対意見として展開されているのでありますが、この意見に対して私どもは次のように考えるのであります。 その一つは、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」云云、こう謳い出していますところの教育基本法第十条、それをそのまま引用いたしております教育委員会法第一条及び同第四条におきまして、今日公立学校管理が、その執行を含めて、会議制の執行機関によつて、地方権力などと別途に行われておる。この事実を注目して頂きたいのであります。教育に関する指導者原理、或いは官僚統制的な管理というようなものは、もうすでに我々としては一応研究しなければならない段階を過ぎております。かかる形態の、先ほど申しましたような教育委員会式の、そのような民主的な管理の方法が我々としては教育には望ましいと存じておるのであります。又すでにかような実績を過去において積んで来ておるのであります。それで教育委員会制度運用上の幾多の問題があることはよく承知しておりますが、併しそのような問題は漸次これから改善せらるべきものでありまして、原理的にそれを否定するものではないというふうに考えておるのであります。  それから第二の点といたしまして、本法案におきましても評議会教授会はそれぞれ権限事項審議決定する、こう書いてございます。審議決定することになつております。学長及び学部長はそれぞれ評議会或いは教授会の決定いたしました方針に則つて、そうして責任執行するという線が打出されております。この原理、原則を国立大学審議会と、それから文部大臣との間の関係に適用して何ら痛痒を感じないものと思うものであります。又そのようにすることこそ全体が理論的に一貫するのではないかというふうに考えます。更に閣議におきまして大臣の発言力が、却つてそのような背景を持つことによつて大きくなるということを考えますると、例えば予算獲得といつたような現案の問題におきましても、却つて好都合ではないかと考える線もあり得るわけであります。それから只今申しましたのは国立大学全体として自治を取上げたのでありますが、次は各個の一つ一つ大学自治という立場に立つて考えて見たいと思います。大学自治の主体は教授会に置かるべきであるということは、私どものかねがねの主張でございます。従来からもこの点は広く確認せられておつたところでありますが、併し本法案におきましては評議会というものを考えて来た関係上、一応権限的に評議会のほうが大きくなつて来たということは注目したければならない点であると思います。自治の主体を教授会、勿論この教授会は我々の民主的な主張によりますと、教授助教授専任講師までは必ず構成員の中に含むという要求をいたしたいのでありますが、そのような教授会を置く限り、評議会はやはり連絡調整的な機能ということが主力になるべきであろう。学生の処罰権が先ほどから問題になりましたが、このようなものも一応評議会の中に含めないで、教授会の中にだけとどめて置くということで結構ではないかというふうに考えて来ております。  次に商議会の問題を取上げてみたいと思いますが、これはアメリカのボード・トラステイー、理事会のごとき教育方針の研究、或いは人事或いは予算、そのような根本的な機能を全面的に持つて、そうして極めて強大な権限を持つて来るということは、我が国大学では到底当てはまらないことでありまして、そして又自治を主体と考えます限り、そのような考えは適当でないというふうに考えております。これは教育刷新審議会でも確認しておる事案でございます。各大学におきましてそれぞれ民意反映のために商議会を設けますことは、その商議会構成要素といたしましてできまする委員は、必然的に地域的な限定を受けるという事案を考えて見なければなりません。現在の大学制度或いは使命からいたしまして、地域的な限定の下に出て来まする民意というものは、大学教育研究にとつて見ますと、余り意味があるものとは考えられないのであります。又現実の実態からいたしまして公正なる民意の期待というものがかなりむずかしいのではないかと考えられます。極端な悪い場合を考えます。極端な悪い場合を考えますならば、少数の権力者或いはいわゆるボスといつたものの介在が許される結果ともなるという危険を孕んでいるとも考えられます。このように考えましたときに、現在の段階で商議会はまあなくてもいいのではないかといつたような考え方も考えられます。それで民意反映という観点から更に取上げまして、一応この商議会が必要であると仮定いたしましたとても、その場合は本法案のごとく評議会というものに対する諮問機関で十分である。その権限というものが人事というようなものに触れてはならないのでありまして、従つてこの権限事項の第四号というようなものは当然削除すべきものと考えられます。更にその構成におきましても学内から出まする者は教授が出て、而もそれが三分の一というふうな抑え方をして原案ができておりまするが、教授助教授専任講師のうちから出しまして、そうしてその定数の二分の一まで拡げるということを、私たちとしては考えたいのであります。これは二月二十八日の毎日新聞の社説においても、この点は力説せられておつたくらい、もう世の中に知れ亘つている事実であります。なぜそういうことを申上げますかというと、こういうふうにすることによりまして、学内の意見というものが学外からの意見というものと、公正に、そうして無理なく交換、検討せられまして、そこで一応先ほど申しました諮問機関たるの使命を果す方向に行くことが可能ではないかと、こう考えるのであります。  次に評議会教授会におきましても、これを教授のみに限定するという線が露骨に出ておりまするが、これは是非やめなければならない現実だと思います。教授助教授専任講師までは是非入れて、そうして学内の公正なる総意が常に取入れられて行くということが必要であると思うのであります。この点についてはかなり異議が或いはあるのではないかと思いますので、特に理由を申上げます。その理由は、旧制大学の講座制と新制大学における講座制というものは、一応同じような形をとつて今日に参つておりまするが、その実態におきまして甚だしく異なつているという事実を指摘しなければならない。教授助教授、講師という三つの形がございますけれども、現在の地方の新制大学におきましては、その資格が別々になつておりまするが、内実的にはその資格にそれだけの差がある場合が少い。それから定員の関係から、教授が何名、助教授が何名といつたような定員の関係から区分せられまして、教授の資格のある人が助教授になり、或いは講師に廻つておるというようなケースは相当あるわけであります。更に現在の学校運用上から考えまして、それぞれの学科というものが責任担当せられて来ておるのであります。その関係上、実質的に責任担当しておる関係上から申しまして、その区別をそれほど厳重に立てる必要はない。それから旧制大学におけるいわゆる教授と言われるような、そういう特権的な考え方で、新制大学を律することはできないのではないか、こういうように考えております。常に同等の発言権を認め、そうして学内管理機関構成においては、教授とこの法案において謳つてあるところは、すべてこれを教授助教授専任講師というふうに書き直して頂くことを切望するものであります。この教授会は今の教授助教授専任講師を必ず重要な基本的な構成要素といたしまして、必要に応じてそれ以外の、例えば助手といつたようなものも認めることができるように改正をする。こういうことが望ましいと思います。学内の公正なる総意を十分に取上げられないで、かかる非民主的な形のままに置いて、そうして学外の民意反映ということを強く考えるというようなことなんかは、少し飛躍し過ぎた考え方ではないか。現在の日本大学実情から申しまして、そういうふうに考えるわけであります。先ずそのようなところから確実に固めて行くことが、自然が道ではないかというように考えるのであります。教授のみに限定するということにこだわつて、現在すでに地方の大学におきましては、それが学閥や或いはいまわしい徒弟関係を生んでおりまして、極めて封建的なものを生み出しておつて新制大学のそういうふうなつらい立場に来ておる異例を私は一、二知つております。それで大学の暗い問題は大体ここうあたりから生み出されて来るべき……、又過失においても生み出されておつたというこの事実をよく確認しまして、それから今言つたような民主的な考え方を徹底して行きたいと思うのであります。先ず学内の徹底した民主化を確立する上において、そこに自治の本拠を置くことによつて、明朗にして公正なる管理運営ができて来るということを私どもは確信いたしております。学内運営の民主化を増進いたし、又各種のボス的な、或いは権力的なものの発生というものを防ぐ観点から、次に二、三の点を追加して申上げたいと思います  その一つは、評議員学長或いは学部長の任期がこの法案においては少し長過ぎるというふうに我々は考えております。再任は妨げないという規定があるのでありますから、この任期を多少短縮しても何ら差支えないのではないかというふうに思います。それから第二番目といたしましては、学長学部長の職務において、総括するという文句が使つてあります。総括し、大学を代表するというような文句が使つてあります。この自治の主体というようなものを教授会に置いてございます限り、この総括するという文句は少し不穏当だと思いますので、ただ単に大学を代表するというだけで十分であると考えます。それから第三といたしましては、各大学附置研究所教授会を、学部教授会と同等に扱い、それで評議会に代表を送るというようにするということは、先ほど主張せられたように、私は賛成いたすのであります。附属図書館長、病院長といつたようなものは、それぞれ評議員とすることができるというようにきちんと規定して行くことがよいと思います。第四番目に指摘すべき点は、特例法中の大学管理機関読替規定におきまして、評議会教授会の決議を最終とし各大学の意思決定をするというふうに作つたらいいと思います。それから第五番目としまして、学生代表との協議会につきましては、起草協議会が最終的に削つたと言われておるのでありまするが、大学管理法と謳う限り、正当なる学生団体との協議機関というものは法案の中に謳つて置くのが正しいと思います。私どもといたしましては、この本法案に第八章を追加いたしまして、このうちに今申上げたような趣旨を要録することを希望するものであります。この学生団体との問題につきましても、教育刷新審議会の原案のうちにはちやんと明記してあつたのであります。  以上申述べました主要点は、すでにいろいろな場合におきまして、我々の前におかれましても発言をせられたと思うのでありますが、一応私どもの根本的な修正意見を御説明申上げます。それでこの起草協議会が発足いたしましたときに、実は私政府側の説明を聞いたことがございますのですが、そのときに、大学管理法はとかく文句の多い法律である、非常な問題を捲き起しておる。従つて少々時間はかかつてもよい、とことんまで協議をして、そうしてみんなの納得の行くところまでやろう、急ぐ必要はないのだ、少しぐらい年数がかかつてもよろしい。こういうことをその当時の劔木次官が言われたのであります。そうして実は約二万年の時日をかけまして、今日に至つてこの過程を辿つております。併しながら以上申上げましたことで御理解頂きましたごとく、この法案に対しまして、我々といたしましても基本的な主張点がありましてそうしてこれが出されましておるこの実情におきましては、到底納得行つたと申上げることができない状況であつたわけであります。今これを急いで打ち上げるという必要が先ほどの発言ではあるようなふうに聞きましたけれども、私どものほうの考え方では、そう急いで上げる必要もないのではないか。これほど問題の多い、又無理の多いものを、そのまま早急に押切つてしまうということについては、又後に重大な禍根を残すものである、こういうように考えますので、この上とも徹底的な御協議を頂きましてそうして十分な時間をかけてこれを御審議頂きたい、こういうふうに思うのであります。  それからなお、私どもといたしましては、この本法案に対しまして逐条的な修正の案を用意して持つておるのであります。これを一々申述べることにつきましては、時間的の関係もありますので、先ほど申上げたように、いたしましたが、必要とあらばそれを申上げる用意を持つておるこりとを申上げて置きます。以上を以て私の公述を終ります。
  16. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは午前の御陳述はこの程度にして。
  17. 佐野利器

    参考人(佐野利器君) 私の番のようですが、私は十分かかりませんから、お差支えなければ話さして頂きたいと思いますが。
  18. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 午後お出かけでございますか。
  19. 佐野利器

    参考人(佐野利器君) 成るべくならば。
  20. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではおやり下さい。
  21. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 先ほど申上げましたように、午後は一時までぐらいしかおれませんので、若し御質問がございましたら午前中に。
  22. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 佐野さんのをお聞きして、そのあとすぐにお願いします。
  23. 佐野利器

    参考人(佐野利器君) 我妻氏や茅氏の御意見と大して変りもありませんが、一応お聞きを願いたいと思います。東京大学、京都大学、その他国立の総合大学においては、旧帝国大学以来の制度並びに慣習がございまして、凡そ今まで通りの各学部教授会と、それから本部の評議会とを以て運営して行くことに大して支障あるとも考えられませんが、全国各地方に新たにできた数十の新らしい国立大学は、多く高等専門学校を基礎としてできておるのでありますから、その管理方式においてまだまだまちまち、いわば混乱でありまして、大学の性格を持つていないものが今日多いと思うのであります。今日までは準備時代でありますから、仕方もありませんが、放任して置くわけにも参りません。先ほど我妻氏の言われたように、本法案は随分ありとあらゆる意見を聞いた上で、相当長い間非常なたくさんの回数をかけて研究したのでありますから、さまざまな異論もあるかとは思いますが、あるはずとは思いますが、私は原案を支持する意見のものであります。速かに大学としての管理方式を定めて、これにようしめることが必要であると考えます。前にも言われました通り、この法案の条項は我妻氏の説明通り、大体において従来の帝国大学のときの制度並びに慣習を基礎としておるのであります。勿論法文の配置なんぞは逆並びになつておりますけれども、即ち各学部教授会を以て第一次の運営機関としておる。次にいわゆる本部の評議会を以て最高の管理機関としておるのであります。が併し、従来の大学制度と非常に大きな違いは、このほかに二つの大きな重要な機関を加えると言いますか、伴つておるという点であります。その一つは監督官庁としての文部省内に、政治からかなり独立した国立大学審議会というものを置いて、その監督者のつまり文部大臣の機能を補うと共に、大学自治の保護とでも言いますか、大学自治の保護を図つたことと、もう一つ大学内に評議会のいわば横に、諮問機関としての商議会を設けて、多数学界の有識者を入れまして、その助言や勧告を求めて、以て大学民意反映することを図つた次第であります。即ち本法案は、学部教授と、それから本部の評議会という従来の経験の上に立つて、更に一方では国立大学審議会によつて自治の保護を図る。他方学外人を主とした商議会によつて民意反映を図るという工合で、本法案は今日の大学の使命達成のために頗る適切な案だと存じております。私は速かにその成立を冀つておるのであります。  ついでに、この法案起草協議中にしばしば問題になりました点について、御参考のために所見を申述べたいと存じます。これは申上げますときりのないことでありますが、一、二拾つて申上げます。全体のぶちこわしの意見も随分聞いたのであります。全体をぶちこわすような意見についてはあえて所見を申述べる価値があるとも思いませんから、それは省略することといたします。一つは学内の管理機関の中に学生代表を参加せしめろとの要求であります。併し管理機間は教職員の人事を協議することもありますし、試験やら進級やらの相談をするところですし、一体学生代表を参加せしめよなんという要求の裏には、政治鬪争の場にしたり、ためにしたりしようとする気持も多分にありますので、こういうようなことは断じて取上げ得べきものではないと考えます。  第二には評議会教授会構成員に助教授専任講師を原則として加えろという意見であります。即ち助教授専任講師を原則的に教授と同様に取扱え、こういう意見でありますが、私は原則的に同様と考えることは反対であります。助教授教授の指導を受けつ、一面には勉強している身であります。いわば弟子であります、手助けが原則であります。専任講師は通常の場合更に助教授の弟分であります。専任講師の階段を経て助教授となるのが通常の階段でありまして、更に弟分であります。評議会教授会は人事の協議もするところです。教授の人事に教授そのものの人事に助教授専任講師が原則として参加するなどということは、そういうわけには参らんことと思います。むしろ加教授専任講師等は一心不乱に勉強してもらえばいい時代であります。但しいろいろな特別な場合も生じて参りますから、助教授にも、何かの関係上、助教授を以て教授以上の学識経験者もありますし、専任講師にはまあ少いと思いますけれども、何らかの場合もあることもありましよう。そういうわけですから、教授会の定める規程に基いて構成員とすることを得るという、この法案二十八条の規定程度がせい一ぱいのところであると思います。これを出ればいわゆる行き過ぎとなると思うのであります。そのほかさまざまな意見等は、すべて十分研究されて、結晶して本案となつたものと承知いたしております。原案に賛成した意見を申述べまして御参考といたします。
  24. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは午前の御陳述はこの程度にいたしまして、お急ぎの我妻さん、長谷川さん、佐野さん、茅さんに対して委員のかたから御質問を願します。これはお述べ頂いた点について疑問とする点をお伺いするわけであります。議論に亘ることは避けたいと思います。単に意見の相違であるということにお考えになれば、お答え頂かなくても結構であります。我妻さん、長谷川さん、佐野さん、茅さんに対して委員から御質問を願います。
  25. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 我妻参考人にお伺いいたしたいと思います。教育界は概して非常に保守的であり、封建的であると、こういうふうに許されているわけでございますが、特に大学の内部というものは、人事関係あたりでは、主従関係というものは非常に強くて、自由闊達な研究というものも十分できないほど非常に保守的であり、封建的であるというようなことをよく聞くわけでございますけれども、先生、長らく大学教授としてお勤めでございますが、大学内の封建性であるとか、或いは保守性というものについてどういうふうにお考えになつていらつしやるか、世間の風評というものは、果して当つているものか、その点について御見解をお伺いしたいと思います。
  26. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 今、大学評議会と言われましたか。
  27. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 学内の運営にも当りますが、大学の学内でございますね、一般的な問題でございます。特に大学学部の中で、名前は言えませんけれども、或る学部のごときは非常に封建的なのだということをよく承るわけでございます。この法案審議とも関連がございますので、教授として先生が長く大学におられて見られた、いわゆる世評というものについての御意見を承わりたいと思います。
  28. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 余り一般的な質問で、大学と申しましても、おつしやる通りいろいろ学部もありますし、大学もたくさんありますので、一般的なことはちよつとお答えいたしかねるかも知れませんが、私の狭い経験から申しますと、結論としては世評は当つていないと私は考えております。私は法学部で育つた者でありますが、少くも私の経験して参りましたところでは、そうした封建性と申しますか、或いは一部特権、或いはボス的教授が非常な権力を持つているということはないと私は考えております。評議員というもの、或いは学部長というものが一部の特権教授であるとか、或いは上層教授というよう言葉でしばしば非難されておることも聞きますけれども、併し評議員は、やはり教授会で選んだものでありまして、年齢順になるわけじやありません。目上を飛び越えて有能な人が選ばれております。文学部長教授会で選ばれた者でありますから、その選んだという形式をとつております以上、決して上層教授だとか、特権教授だとか言つて一概にこれを言うことは私は誤りであろうと考えております。只今学部によつてはというお話でありましたけれども、これは学問の性質及び大学構成の上でいろいろになつておるのであります。例えば法学部で申しますと、大学法律的な機構の上では教授一人、助教授一人、助手一人というものが一つの講座にくついておりますけれども、併し実際の運用では、例えば私が教授でありましても、私の助教授とか、私の助手というものはありません。横に東京大学学部の定員は教授何名、助教授何名、助手何名と横に連ねまして、そうして単に助教授、助手ということでなしに定員を埋めて参りますので、縦の連絡はありませんし、これは講座の関係と、学問関係上そうなつているんだろうと思います。併し又或る学問では一人の教授、そしてその講座に属するその下の助教授、それに又属する助手という縦に連絡しているところもあります。世の中の人はそういう場合を見ても、どうも薄弱じやないだろうかと思います。とかくそういう場合には非常に密接になりますから、単に学問上のことじやなく、自分の生活上のことなんかもいろいろ御指導を仰ぐというようなことが多くなり、生活において教授助教授、助手と縦に接触する部分が多くなりますので、単に学問研究の上だけじやなく、他のほうでも先輩の意見を聞く機会が多くなります。意見を聞く機会が多くなりますと、おのずからそこに人情も移つて来るだろうと思います。一身上困つたときに御世話になるようないい半面も無視することはできない。同時に世の中からいわゆる封建的と言われる余地もあるかも知れませんということは言えると思います。ですから、一般にそういう場合の緊密な連絡があるからといつて、それが封建的だというのは間違いで、やはりいい面も悪い面もあるというふうに考えなければならんのじやないかと考えております。
  29. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まあその問題はその程度に承わつて置きまして、次にお尋ねしたい点は、この大学審議会並びに評議会教授会構成については、私は私なりに別に意見を持つておるものでございますが、特に先ほど先生からお話ございました国立大学審議会委員構成でございますが、これは私立大学審議会のほうには、先ほど先生がちよつと触れられましたように、はつきりと全国的な団体がある場合には、その団体から推薦した者をかくかく任命しなければならんということが私立大学審議会のほうでは語われておるわけでありますが、国立大学審議会は、先ほど先生のお話では、まあそういう団体がないからここに挙げていないのだ。こういうようなお話がございましたけれども、そういう団体というものは私は育成すべきものではないか、従つて私立大学審議会のあの条文があると同じように、国立大学審議会もこの第四条の第二項のところには、全面的にかくかくの団体があるときには、そこから推薦された人を選挙するというふうな一部分が明記されて然るべきじやないか、こう考えるのでございますが、如何でしようか。
  30. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 御尤もでありまして、委員会もその点で大分意見が分れまして、御承知かも存じませんが、初めの案にはそれが載つてつたのでありますが、ただ現実においてそういうものがない、いやしくもこの代表として推薦し得る権限を与えるためには半分以上くらいの者を会員に持つておる大きな団体でなくちやならん。ところが現実にそういうものがない、その点国立大学の場合と違いまして、私立大学の場合は現実にない。で、そこにない場合にどうするかということになりますと、立法技術としては恐らく二つの方法がありましよう。ちやんと明文に書いて置いて施行規則のほうに持つてつて第何条第何項に当るものがない場合はどうするか、施行しないか、或いは落して置くか、二つの方法があると思いますが、委員会としましては議論が分れましたけれども、どうもそういうものがない現在において、法律を作つて、いつか当てのない先まで施行規則として置くのは、立法として思わしくない、のみならずそういう目的が出て、それから踏み出して団体を大急ぎで作るということもどういうものであろうか。やはりそういう団体はそういう代表者を送ることだけが目的で会員を集めるというのでは面白くない。大学教授、或いは助教授、或いは専任講師というものがおのずから共通の利益のために集つて来る基盤があつて、そういうものがあつたらそこから代表を送つてもよかろう。そうだとすると、この法律規定して置いてこのために作るということはむしろ弊害があるんじやないか。だからおつしやる通り育成すべきではあるけれども、その育成は法律規定で育成する形にして置かないで、例えば名前を挙げますと、全国教授会連合会並びに日教組のほうの大学部会というものがありますが、そうした団体が自己本来の目的で拡張して行つて、そうしてやつと二分の一というようなことになつたときに、やつたほうがいいんじやないかというのが委員会の考えであつたのであります。
  31. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 先ほど第八条のところで「国立大学審議会意見を聞かなければならない。」、こうなつた経緯を伺つて、非常に参考になるので有難い御意見を伺つたわけでございますが、それに関連いたして、第十八条の商議会のところで、初めから「意見を聞かなければならない。」、こうなつておつたものだと考えるのでありますが、念のためにお伺いいたします。
  32. 我妻榮

    参考人我妻榮君) おつしやる通りであります。
  33. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これで終りますが、重ねてお伺いいたします。先ほど他の参考人からも御意見ございましたが、私まあ教育の、学問の自由とか、それから教育の自主性とか、或いは民主化というものを狙つて、今まで我々が歩いて来たその過程で教育委員会法なんかを制定した、そういうことを併せ考えたときに、どうも法全体が、それは意見になつて済みませんが、少し退却しておるような感じがしまして、その一番大きな問題といたしましては、この国立大学審議会の性格でございますが、先ほど起草委員長の先生から「承認を得なければならない。」、こういう建前を飽くまでも起草委員会としては堅持したという意見を承わつて、私は非常に内心同感の意を表したわけでございますが、これにつきましてもう一歩突込んで先生の意見を承わりたいと思いますが、それはやはり文部大臣というものは、やはりこれは閣僚の一員でありますし、政党政治が行われておりますというと、政党出身のかたのある場合もあるわけでありますし、学問の自由とか、教育の自主性とか、如何なる不当の支配にもましない、こういうような立場から、私はこの国立大学審議会委員の第三号だけは両議院の同意を得ることにしたものと考えますけれども、この審議会の委員を全部両議院の同意を得るものにして、そうして審議会の自主性というものをしつかり持たせる、簡単に言いますならば今の地方の教育における教育委員会的な性格のものにしたほうが、私はこの大学管理法としては、そのほうがすつきりしていいんじやないかという考えを持つておるわけでありますが、審議会の委員を全部両議院の承認を得ることとする、そういう形にすることについて先生の御見解を承わりたいと思います。
  34. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 教育委員会のようにとおつしやると、公選するということをお考えになるかとも思いますが、併し今のお言葉ですと、両議院の承認ということになりますと、そうすれば公選とはお考えにならないのかとも考えられますが、先ほど私が申しましたように意見を聞かなければならない。或いは承認を得なければならないといつて法律的に大臣の権限を抑えるということがどうかという問題は、法律問題としては相当問題の余地がある。そうして私は法律家の一人としましてこの協議会答申いたしましたような形でも憲法違反でないというような考えで答申したわけでありますが、併し政府責任でそれをお変えになつたのでありますが、この法律論は暫らく別といたしまして、それじや実際の効果はどうかということについては、私がどう考えておるかということを申上げて見ますと、これはやはり実際上の問題として国立大学審議会委員たちが十分識見のある人たちであり、そうしてそれがちやんと法律従つて構成され、大臣は法律意見を聞かなければならないということになつておりますと、実際上の力は相当強いだろう。その実際上相当力が強いという点でバランスをとつて行くことが正しいのじやないか。従つて、それが相当の効果を挙げるのじやないか。併し、そういうものであつては、文部大臣の附属機関であつて、言うことを聞くのであるから駄目だろうとお考えになるかたもあります。それは観察の違いだろうと思いますが、ただどうかすると、同じ意見を聞かなくちやならないという規定が、国立大学審議会と、それから各大学商議会と両方にありますが、同じその動きについて、各大学にある商議会では、ボスが非常に強くなつて意見を聞かなければならないだけでも、大学自治を脅やかすことになるだろうとお考えになり、同じ「意見を聞かなければならない」ということでも、国立大学審議会については、大臣はそれを無視するだろうとお考えになるだろうとお考えになることは、多少私は異議がある。同じ「聞かなければならない」ということなんですから、従つて運用の仕方によつては成るほど各大学でボスが頑張るようになるかも知れんが、併し同じように国立大学審議会が非常に強くなつて、大臣が手も足も出ないようなことになるかも知れない。又逆なことになるかも知れない。いずれにしましてもそれは両刃の刀でございまして、それをどちらに持つて行くかということは、やはり運用よろしきを得るということにあるのではないかと、私はそんなふうに考えております。委員長としては答申案のほうがよかつたと今日でも信じておりまするけれども、併し政府責任でお直しになつたからといつて、これが全く無になつてしまうとも考えていないわけであります。
  35. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 両議院の承認にして、もう少し審議会の性格なり権限というものを強くすることについてはどうですか。
  36. 我妻榮

    参考人我妻榮君) どうも具体的な問題になりまして、どういうふうにして誰が推薦するのか、推薦団体をなくして、結局両議院が同意した者というふうにして置きますと、如何でございましようか、却つてそのときの多数党が力を得るというようになりはしないだろうか。そういうことは暫らくおきましても、やはり日本学術会議というようなものが一つ制度としてありますので、それの推薦を待つというほうがむしろ実際上は、時の政府多数党の力が弱くなるというふうに私は考えます。  それから先ほど申落しましたのですが、この第一条を御覧になつて、これは羊頭狗肉だ、大学自治と言つておるくせに全く政府機関ばかりじやないか、従つてここでは公選のものを持つて来て、そうして予算権まで与えなければ駄目だというような御意見もしよつちゆう聞くのでありますが、併し抽象的に申しますと、大学自治といい、どこの自治と申しましても、これは日本国憲法の枠内だと私は確信しております。日本国憲法を離れて自治というものは考えられない。一々断わつていなくても、現在の日本法律はすべて日本国憲法の下にできておるのでありまして、従つてたとえ大学自治を許すと言つても、それは日本国憲法の枠内の自治でなければならない。予算権ということも多少あいまいでありますけれども、全国から選ばれて来た者が国立大学審議会をやつて、そこで文部省予算はこれだけだときめて閣議がそれに従わなければならないということになると、私はそれは日本国憲法の違反だと考えるのであります。ですから日本国憲法という枠の中でやるということが、非常につらいけれども、併しそれは我々としては守らなければならん。委員会はその枠内においてできるだけのことをやろうとして努力したわけでございます。
  37. 岩間正男

    ○岩間正男君 私も我妻さんに二、三点お伺いしたいのであります。この法案が出されておるのでありますが、法案の問題と関連して、やはり現在の教育予算の問題ですね。予算を確立するということが非常に重要だと思うのです。先ほど述べられた御意見と関連する問題でありますが、やはり学内からの現在において輿論は出されておりますが、これがもつと大きく統一されて、そうして日本のやはり政治の中に予算を確立するという働きを自主的に確立しない限りは、どんな法案が仮に作られたとしても、日本の現状では大学の機能というものを完全に果すことはできないのではないか。そういう事態はここでいろいろ申上げる必要もないほど多く出て来ると思います。第一に大学教員の生活の問題から考えましても、研究費の問題から考えましても、殆んど現在は崩壊に瀕しておるような状態でありまして、形がどんなでもこれは問題にならない。そういう点から申しまして、今の中央審議会の問題なんかと関連して来る問題でありますが、現在文部行政を見ておりますと、文部大臣発言権というものは非常に閣内では弱い。私たち四年間教育財政の確立のために戦つて来たのでありますけれども、先ず第一の原因は、文部大臣発言権が非常に弱いということであります。そういう点から申しましても、例えばこれは非常にこの審議会が強くなつて、そうして意見だけでもよいと、これは評議員が決定しなくても意見だけでもいいので機能は果せるのではないかというような御意見があつたのでありますが、併しこれを強くするためには現在のこういう機構で一体できるのかどうかという問題、つまり学内の意見をもつと民主的に統一する立場ですね。そうしますと、例えば助教授、講師、更に関係者の、学生意見というようなものをもつと統一して、民主的に反映させる必要があるのではないか。更に中央審議会の委員なんかは、公選の問題が出ておつたのでありますが、やはり公選して、もつと大きな民意反映させるというような、そういうような輿論の大きな強力なバツクなしにはとてもこれは予算を取れないと、こういう現実があるのです。そういう点から考えますと、どうでございましようか。どうもその点で、この構成の仕方、教授会評議会商議会構成の仕方、中央審議会の構成の仕方、こういう点で全体の意向をもつと強力に反映させる方法こそが、現在の大学の機能を果し、具体的な予算を獲得するという面から考えますと必要だろうと、こういうふうに思うのでありますが、こういう点についてどうお考えになりますか、この点お伺いしたいと思います。
  38. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 大学に関する、或いは文教に関する予算が非常に少いということ、おつしやる通りでありまして、それを拡大するためにもつと大きな力を作らねばならんのではないかとおつしやることもお説の通りだと思います。ただそれをやる方法が問題になるだろうと思いますが、現在のところでは日本学術会議というものは、直接教育は担当いたしませんけれども、研究の面を通じて相当強く働きかけております。又全国大学教授連合会というものも、余り大きな力は持ちませんけれども努力しております。日教組のほうでも随分御努力下さることであり、又国立大学審議会というものも今度設立されまして、そういつたような機構を通じまして、おつしやつたように進んで行くのが現在の状態でありまして、私個人意見を申上げますと、そういつた途がやはり途としては正しいのではないか。少し時間が長くかかるかも知れぬが、その正しい途を進んで行くべきであろう、急ぐ余り学生を動員して、例えばデモ行進までもやるというようなことは、教育上の問題としては妥当な方法ではないと考えております。大体において現在の線をもつと推し進めて行くべきではないかと考えておるわけであります。  それから公選という問題がしばしば出て参りますけれども、国立大学審議会は全国に一つになりますから、全国一区ということになりますか、或いは全国一区と各地区とを分けたものになりますが、そうして選挙したところで、参議院以上に力を持とうとは私は考えないのであります。従つてその点においては、むしろ参議院の皆様がたにもつと力を入れて頂かなければならないのではないか。公選という同じような方法をとつたことによつて強くなるとは、私には考えられないのでございます。
  39. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、その現実に動いております今までのそういう運動方針について言つているのではなくて、この法案のそういういろいろな機構構成する構成の仕方の中にも問題があると、それからこの中央審議会などというものはそう過小評価する必要はないと思うのです。これが本当に民主的にもつと強力な力を持つておれば、この発言権というものはこれは相当大きな力を持つて来るべきだと思います。殊に大学のそういつた予算の問題になつて来ますと、これはもつと大きな力を持つように構成されなきやならないのであつて、そうでないようなところに私は問題があると、こういうふうに考えるのでありまして、無論そのいろいろな運営の仕方とか、そういう点で過小評価はこれはおかしいのではないかというふうに思うのでありますが、そうしたらこの法案について何故そういう方法をお取りになることが工合が悪いとお考えになるか、その点私はわからないのですが。こういう機構は、今も申しました評議会商議会並びに中央審議会、こういうものはもつと全体の力を結集して、その輿論を反映させるような組織の方針を取られるべきではないか。そのほうが、現在の大学一つの大きな欠陥でありますところの予算が足りない、こういう問題に対して、やはり大きくこれは文部大臣の意思に対して大いに反映することになると思いますので、そういう点からこれを伺つているのでありますが、これで行きますと、これはやはりどうしても局部的な意見になるのではないか、その点の食い違い、こういう点はどういうふうにお考えになつているか。私は現在の運動の形とか何とかという問題でなくて、この法案として、今機構の問題を伺つているのです。
  40. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 御質問の要点がはつきりわからないのでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)教授会、或いは評議会、或いは商議会ということに、もう一つもつと輿論を反映するような方法をなぜ取らなかつたかということが御質問の要点かと伺つたのでありますが、そうしますと、もつと具体的に申しますと、教授会助教授、或いは助手というようなものをもつと入れないかというようなことになるだろうと思いますが、それは又それで、教授会というものの任務から考えまして、原則としては教授、それからそれぞれの事情によつて助教授を入れるということが、教授会というものの任務全体から見てそのほうがふさわしいと考えたわけでありまして、若し国会なり、或いは参議院なり、或いは文部大臣に対するアツピールする力ということから考えますと、或いは学生を入れることがより大きな力になるかも知れませんけれども、教授会任務はそれだけではないのでありますから、委員会としてはすべてを考えて教授会のあるべき姿はこうだと考えたというふうにお答えするよりほかにお答えのしようがないかと思います。
  41. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の問題は、議論に入ることを避けますから、大体それで打切りますが、何と言つて一つの大きな任務は、予算を確立するということが最大眼目だと考えておるわけであります。この点について、どういうような態勢を確立したほうが最もいいかという点について再検討する必要があるのではないかと思います。  それから講師とか助教授を入れる問題が出たのでありますが、そういう講師とか助教授ですね、これは定員の問題、それから待遇の問題、学閥の問題、こういうところからもこういう身分上の違いが起つている現実があるのではないか、こういう点は如何ですか、この点伺いたいと思います。
  42. 我妻榮

    参考人我妻榮君) おつしやる通り、学閥はどうか存じませんが、その定員の関係で、十分教授になる資格のある人でも助教授だという場合はあるかも知れません。併しながら、先ほど他の参考人から言われましたように、原則をどこに置くかという点になりますと、やはり教授は独立の責任者で、助教授はそれを助けるというのが本則なのであります。従つて、その本則に従つて法律をきめて、言われたような理由によつて特別な場合には助教授を加えるということになることが全体的の方針としてはいいんではないか。そうして各大学の事情によつてそれぞれに持つて行くということが妥当であろうというふうに考えるのが委員会の考えでありまして、そうして現実はどうかと申しますと、現実は随分助教授が加わつておる場合が多いのでありまして、この法律でもやはりそうした方向にだんだん進んで行くんだろうと、これは私の予想でありますが、そういうふうに予想しております。
  43. 岩間正男

    ○岩間正男君 併し下からそういう要求が、いろいろ先ほどから参考人意見を伺つておりますと、多いわけですね。そういうものを加えて欲しいという要求があることそれ自体が、やはり現実が十分に民意がなかなか反映していない、学内の意見も統一されていない。そういうところに不満があるのではないかと考えられるわけであります。殊に経済的な問題になりますと、助教授とか、講師とか、先ほどの御説明によりますと、やはり予算関係なんかで資格があつてもなれないということになりますと、そういう人の要求というものを私は具体的に反映させる方法を取つてこそ、真に学内のそういう要望に応えることができるのではないか。大学の機能も十全に果す方向に行くのではないかと、こういうふうに考えるのでありますが、こういう点でもつとそういうところを法制的にも参加させるというようなことが、どうしていけないのであるか。そのいけないというような点が私には十分わからないのでありますが、こういう点について何かこういうものを参加させれば工合が悪いと考えておられる点がありましたら伺いたいと思います。
  44. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 先ほど佐野参考人から言われた通りでありまして、工合の悪いところもあるかも知れんし、工合の悪くないところもあるかも知れんが、併し事の筋としては教授を原則とするのだという筋を考えたのでありまして、どうもそれ以上申上げると意見になるようでありますから差控えたいと思いますが、ただお言葉の中で、参考人の中にも助教授を加えるほうがいいという意見は多かつたではないかと言われたように思いましたが、若しそのお言葉が、数が多いじやないか、多数じやないかという御言葉だとしますと、ちよつと釈明をさせて頂きます。それは成るほど委員が先ほど申上げましたような経過をとつて審議をして参ります様に、随分多数のそうした要望がありました。要望としては、数の上ではそのほうが多かつたかと思います。併し全国的な数を考えますときには、どうも賛成という人は賛成と言わないで、反対という人だけが反対と言つて参りますので、反対の数と賛成の数を機械的に比較して反対の数が多いということにはならないと思います。まあ委員として全国の情勢を見まして自分経験なり、或いは関係学校意見を聞くなり、いろいろなことをいたしまして判断いたしましたので、機械的に多数であるかどうかは、委員会としてはむしろ多数ではないと考えたということだけを申添えて置きたいと思います。
  45. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 我妻さんに伺いたいのでありますが、まあこの大学民意反映するというふうなことは、とにかく一つの聞えのよい言葉でありますが、それが学内の運営に関連して来て、この法案では商議会というふうなものが一つの機関として設置されるようになつておるように私は思うのであります。果してそういうふうな商議会というふうなものは本当に必要なものであるかどうか、こういうふうな学内の経営に対して学内の人の意見反映させるということは、これまでの東大あたりの運営から見まして、是非必要なものであるかどうかという点について伺いたいと思います一若し必要でないものであつたとしたならば、これは非常に私の考えでは煩雑に過ぎるところの一つの機関ではないかと、こういうふうに考えるので、その点を今までの御経験の上から伺いたいと思います。
  46. 我妻榮

    参考人我妻榮君) 東京大学として、従来こういうものがなかつたから非常に困つたとは申上げかねるのであります。困つていなかつたのだとむしろ申上げたほうがよいのかと思いますが、ただ他方東京大学は、従来は何と申しますか、自分立場を堅持して、余り世の中の意見を直接に具体的に聞くということをやつていなかつた。併しだんだん時勢が変つて参りまして、東京大学管理なり運営なりに、卒業生なりその他学識経験者意見を伺わねばならんということがだんだん殖えて参つておると考えます。一例を挙げて申しますと、つまらないことのようでありますが、学生の宿舎をどうするかというような問題、或いは戦争中に図書が十分に入らなかつたのをどうして行つたらよいかというような場合に、国立大学ではありますけれども、国家の予算だけではどうしてもうまく行かないというような場合に、やはり卒業生、その他有力者の御意見を伺つて、そうして学校当局の考えることを反省させて頂く、又一緒に協力してやつて頂くということがだんだん必要になつたのであります。そうした立場から今後は、こういうものがあることは東京大学運営相当プラスになるだろうと考えております。それから又地方の大学でございますが、これは私の聞いた話でありますから、そのつもりで御理解願いたいと思いますが、地方にある大学なんかではどうかすると、その地方のいわゆるボスというような人が個人的に大きなインフルエンスを与えることがあり得る。それでそういうふうな場合にはちやんとこういうふうな一つ制度を設けておりますと、却つてボスとしては個人的にただいきなり学長に向つて自分意見を言うより、はつきりした線に沿つて来るために、公正な意見となつて協力を却つてよく求められるのじやないか。地方にあります。大学は従来財政その他については随分地元のお世話になつておるのだろうと思います。今後も又或る程度お世話になるんだろうと思いますが、そういうような場合にはどうも学長室へいきなり飛び込んで行つて、木戸御免で話をするというような有力者では却つて弊害があるのではないか、それをこうした制度にしてレールの上に乗せておくことは、やはり公正な意見にして、而も協力を得ることができるのじやないかというような意味で、運用よろしきを得ればいい面を大いに出して来るのじやないかと考えております。
  47. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは午前の御陳述はその辺で終ります。それでは休憩いたします。    午前零時四十二分休憩    —————・—————    午後一時五十四分開会
  48. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは午前に引続き、参考人のかたの御意見を承わることにいたします。順序を変えまして、柴田さんに先にお願いいたすことにいたしたいと思います。
  49. 柴田雄次

    参考人(柴田雄次君) 大体において、公立大学管理法案と、国立大学管理法案とそう大して違いありませんから、極く簡単に申上げたいと思います。  私は元来この国立大学の、先ほどの法案起草委員のやはり一人でございまして、我妻君なんぞと一緒に二十四年の九月から公立大学管理法案というものの審議にあずかつたのでございます。一方私は公立大学協会に属しておりますので、国立大学管理法案が今できつつあるので、ついては公立大学も恐らく同じようなものを作らなければならん時が来るだろう、そろそろ考えて置こうというので公立大学協会に諮りまして、その準備を始めましたのが昭和二十四年の十月のことでございました。公立大学只今三十幾つございますが、全国に散らばつておりますために、総会で常に審議をいたすということは非常に困難なために、理事校をこしらえまして、理事校の校長のかたに審議をして頂くことにいたしました。たびたび会合をいたしまして、理事会で大体の草案ができましたものを総会にかけ、又それらの修正を又理事会でやるといつたようなことを繰返しました。そのうちに国立大学管理法案がどんどん進行して参り、第一次案第二次案、第三次案ができます。そのうちに文部省からも指示もありまして、公立大学管理法案というものも成るべく国立大学管理法案とかけ隔たつたものでないほうがよかろう、そして又国立大学管理法案が大体起案ができればこれは議会に出すつもりであるから、成るべく同時に出したいから、成るべく並行してそちらも進行してもらいたいと、こういう御指示を文部省のほうからも承わつておりましたので、鋭意こちらのほうでも案を練りました。併しながらここに国立大学公立大学とは大きな性格の差異があるところがございまして、全くこれを鵜呑みにして、その通りなものを公立大学管理法案として出すということは勿論できない。それはどういうことかと申しますと、勿論すぐ皆さんお気付きになることと存じますが、国立大学はどこまでも文部省が設立者でありまして、文部省の管轄にあるのでございますが、公立大学と申しますものは、設立者は非常にまちまちであります。勿論地方公共団体でございますが、或いは都であり、府であり、道であり、県であり、或いは市であるといつたように、非常に設立者の種類がまちまちであります。或る県になりますと、同じ県の中に二種類の大学があります場合に、一つ大学は学務課と申しますか、或いは教育部と申しますか、そういうものに属しておるもの、又或るものは厚生部に属しておる。例えば短期医科大学は厚生部に属しておる。それから又普通の学芸大学のようなものは教育部に属しておるといつたような所もありまして、非常にそこのところが複雑なのであります。もうすでに午前に審議されました国立大学の、例えば大学審議会、こういつたものが国立大学管理法案の中で非常に重いところでありますが、そういうものは公立大学では殆んどなくてもいいということになるのでございます。それは例えば初め公立大学管理法案を作りますときに、中央審議会といつたものはなしにしようというような議論さえもあつたのであります。というのは、文部省との繋がりが非常に稀薄であります。勿論文部省から直接統制を支けるわけではございません。で、我々のほうではこれに対応いたしますものは都道府県であり、市などが設立者になるわけでありますので、中央審議会というものなしにいたしましても、ここに各設立者とそれから各大学との間にそれをコンパウンドするものを考えればよろしい。それに公立大学の参議会……公立大学管理法案を御覧になりますと、参議会というものがあります。それがやや国立大学中央審議会にコレスポンドするものであります。併しながらいろいろ考えて見ましたあげく、審議会なるものは、国立大学は非常に重要なもので、勿論存在いたしております。それから私立大学にも私立大学審議会というものがやはり文部省に置かれてあります。そこでこの公立大学だけが全然文部省関係を断つて、何ら触れなくてもいいかと言いますと、必ずしもそうではない。何しろ教育というものは学校教育法で国家の法律となつておるわけでございますからして、いろいろな意味におきまして、文部省には絶対関係なしとは言えないのであります。それから又ただ将来大学という関係が、これが国内だけでなしに、国際的にでもなりますというと、すべての外国からの問題はいずれも文部省へ集まる、そういうときに無関係でありますというと、そういうものを聞き落したり、又連絡も悪かつたりする。そういうことも考えられるのであります。一つの連絡的の機関としてやはり中央審議会というものを極く軽い条文で置こう。それで公立大学にも公立大学審議会というものを、これは却つて文部省には御迷惑なのかも知れませんけれども、置くことになつております。そうして従つてその権限というものは非常に簡単なものでありましで、国立大学審議会権限というものは幾条か、重要な事項審議決定することになつていますが、公立大学管理法案におきましては、それの第五頁を御覧下さいますと、第八条というのがございまして、「文部大臣は、公立大学関係のある法令の立案に関する事項その他公立大学一般に関する重要事項についてその基本方針の決定をする場合においては、あらかじめ公立大学審議会の意見を聞かなければならない。」それから「公立大学審議会は、公立大学に関する重要事項について、文部大臣の諮問に答え、又はこれに対して建議することができる。」 という極めて簡単な軽いタツチで、文部省との間の関係を結ぶ、こういうことになつております。で、我々のほうの公立大学の重要な機関は、これは公立大学参議会というものでございまして、これは国立大学商議会とも、又国立大学審議会とも大分性格の違つたものであります。その理由は、先ほどからたびたび申上げましたように、設立者が大変に違うという点もございます。そうして公立大学参議会というものは二つの性格を持つておりまして、一方設立者、即ち公共団体の長の諮問機関であると同時に、又成る点におきまして学校学長の諮問機関でもあるという性格を持つております。その点におきまして国立大学商議会が専ら各大学に直属したいわゆる民意反映的の機関であるのに対しまして、これは審議会と商議会とを一緒にしたような性格を持つておるわけでございます。それからそのあと評議会教授会等に至りましては全く殆んど字句的に国立大学と同じなので、これは我々が初めに審議してこしらえました時分にはいろいろな点で違つておりましたけれども、結局性格においては、評議会であるとか、教授会であるとかいうものの性格におきましては、国立大学と違いはないのであります。法律としてこれを出します場合に、非常に字句が通  つておるということはおかしいではないか。殊に同時に御審議を願います際にも、字句が非常に違つておるということは、御審議の際にも面白くないだろうということと、又字句が仮に同じでも少しも差支えないということもありまして、だんだん歩み寄りましてから、只今では評議会以下は殆んど性格におきましても、条文の字句におきましても国立大学と殆んど違つていないのでございます。すでに評議会の性格、それがいろいろ民意反映、或いは大学自治等にどうであるか、こうであるかという御議論の根拠を十分に尽されたと存じますからして、更に進んだ御説明は略しますが、公立大学管理法案というものの成り立ちは、以上のような経過を経ましてでき上りましたものでございます。何か御質問がございましたら……。
  50. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 柴田さんはお急ぎでお帰りにならなければならないので、柴田さんに御質疑があればやつて頂きたい。なければ柴田さんにお帰り頂くことにいたしますが、よろしうございますか。……それでは次に日本学術会議会員の福島さん。
  51. 福島要一

    参考人(福島要一君) 私只今紹介頂きました福島でございます。実はここに日本学術会議会員という形で私の職業が出ておりますのですが、私は日本学術会議会員ではございますが、先ほど茅参考人から申しました中にあります国立大学管理法案審議する委員会委員ではないのでございます。それから又私は元来大学に直接関係をいたしたこともございませんので、そういう意味から申しますと、今までのこの管理法の成立その他につきましては、比較的縁の薄かつたものでございます。そういう点から申しますと、非常に私がここへ呼ばれましたことは、一般的な意見を申すことになるかと思うのであります。併しそれと同時に、午前中からそれぞれのかたの御意見を聞いておりますと、大体それぞれの立場立場に応じてその立場を擁護されると申しますか、そういう点が非常に多いように思うのでありますが、それでそれぞれの参考人としては結構だと思いますが、私はいつそそういう立場がございませんので、そういう意味では極めて素人意見ではございますが、同時に比較的素直にこの問題を見ることができたのではないかというふうに考えておるわけでございます。  私、この国立大学管理法案につきまして大体五つの点を申述べて見たいと思いますが、先ず第一点は審議会の問題、第二は商議会の問題、第三が今朝ほどから大分議論になりました助教授その他のかたがたを各機関に加えるという問題、第四番目は学生を加えるか、学生に対してどういう態度をとるかという問題、それから第五番目がこれを即時に成立させることが望ましいかどうかという、この五つの点に触れて、私の考えを述べて見たいと存ずるのでございます。  先ず第一に審議会の問題でありますが、この審議会の問題について、私この法案を拝見しまして、成るほどこの審議会は文部省権限相当強くするようになつております。この点についてはいろいろ御意見もあると思いますが、これはいわば常識的な立場から、実際上はこの程度は私止むを得ないのではないか、若し審議会というものを作るならばこの程度は止むを得ないんじやないかというふうに考えられます。と申しますのは、行政をやつております場合に、或る程度そこに責任を持つというようなこと、そういうことが起る。この問題を純然たる独立的なものにしようとすることは、結局その力関係であり、又内容の問題でありまして、単に字句だけの問題では片付かないのではないかと、こう思うのであります。ただ私ここで気が付きましたことの一つは、日本学術会議の会員のうちから推薦した者四人というのが第四条の第二項の中にございますが、この四人の数字そのものを云々するわけではありませんが、日本学術会議の会員の中から選ばれてここへ出ました者は、ここへ出た場合に相当日本学術会議意見に拘束されるものであるということをはつきり申上げておく必要があると思うのであります。私案は先頃まで学術会議から選ばれまして総理府の科学技術行政協議会委員をやつておりましたが、その当時、その委員個人的な意見を述べるべきか、或いは学術会議の決定事項を述べるべきかということで相当疑義がございましたが、私はやはり基本的には学術会議意見を代表すべきだ、個人的な意見を言うのであれば、これは全然この学術会議から離れた人として言わなければならない、こういうふうに考えて、大部分の委員のかたもかように了解をせられたのでありましたが、この場合にも私は恐らくそうなると思います。その意味で必ずしもこの数字を固執する必要はありません。併しそれと同時に学識経験のある者について両議院の同意を得た者十人ということは、これは比率から申しまして、これは如何にもこのほうが多過ぎるように思うのであります。これはいろいろの立場のかたを入れるというので、ここではこういうふうになつたものと思いますが、その点は私はやはりそうでなしに、いろいろの立場というのならば、ほかの組織的の選挙によつて成る程度代表され得る、学術会議から四人なら四人、六人なら六人お出になれば、そのかたがたが学術会議の中で二百十人の意見をまとめて、相当ここへ意見を持出すことができる。勿論そう申しましても、この個人のかたのいろいろの性格でありますとか、経歴でありますとかということによつて発言にそれぞれのニユアンスがあり、又それぞれ個人的なにおいが強くなることは当然でありますけれども、併し原則的に、そういう選ばれた形で母体が出て来ておりますものについては、特に逸脱した意見はそこの場合では述べにくくなるのでありまして、そういう意味で、やはり学術会議の会員というようなものを相当重要視されることは私は結構だと思います。と同時に若しも私がここに意見を述べさして頂くとすれば、この学識経験のある者についての十人という中を多少削りまして、先ほども問題になつております、これはあとで述べますが、助教授或いは講師のかたがたをこの十人の中に食い込めるように処置されることが望ましいのじやないか。学術会議の会員の数字を必ずしも殖やさなくても、むしろそちらのほうに重点を置いて、この構成をお考え願うことが必要なんではないか、こういうふうに考えられるのであります。で若しもそういうことがどうしてもできないというような場合に、それではこの同じ三通りしかないというまあ最悪の場合を考えれば、これはもう決して学術会議立場というものではなくて、そういう選ばれた者であり、そうして勝手な意見を言わずに多くの選ばれた者の意見を述べるという意味で、私は学術会議の会員のウエイトが相当多くなることがむしろ望ましいのではないかというふうに考える次第であります。  第二の商議会の問題でございますが、私は一切いきさを存じませんで、この商議会の項目を読んで見ますと、如何にも不必要な感じがいたすのでございます。で、先ほどからそれについての我妻参考人その他のかたの御説明がございまして、茅参考人からもお話がありましたが、どのお話を聞きましても、現在商議会のないような形であつて、別に差支えのあるという積極的な御意見はなかつたのであります。多少そういうのがだんだん必要になつて来る方向にあるようだというようなお話がありましたが、その程度のことでありますならば、ここにこのような大きな形で一つの項目を設ける必要は私はないと考えるのであります。で、事実若しそういうようなことを実際に効果を挙げて行こうとするならば、公選でやられておるところの教育委員との特別な連絡会議を持つことによつても、そのことは可能でありましようし、又同窓会のようなものの活用によつてすることも可能でありましようし、ここで一項目を設けて商議会というようなものを作られるという意味は、私にはちよつと納得できないのであります。そうして殊に先ほどからボスの者が一人いきなり校長室或いは学長室へ入つて来て云々というようなお話がありましたけれども、ここに書いてありますように、商議会の人を評議会がいわば選ぶというような形になつておりますれば、結局はむしろそういうボス的な人々をオフイシヤルに認めるというようなことになる虞れのほうがむしろ多いのではないかというふうに考えられまして、私、この商議会というものはむしろなくすのが正しいのではないかというふうに考えるのでございます。  第三に、助教授その他の人をいろいろの機関に加えろという意見であります。このことにつきましては、案は先ほど二、三のかたがたの御意見を聞いていて、実は少し驚いたのでありますけれども、大体民主主義の原則というものがよくおわかりになつていないのじやないかという気がいたしたのであります。というのは民主主義の原則と言いますのは、それぞれの立場の人にそれぞれの意見を述べさせる。そういう意味で今日参考人をお選びになつたように、あらゆる反対意見のかたもいろいろ聞いて頂いて、そのかたがたの意見を取入れて行くことこそ、本当の民主主義の原則なんでありまして、特に学内等においては、先ほど我妻参考人が申されたように、勿論いろいろの条件がありましようが、いい面、悪い面があつても、何と言つても身分的な、封建的なものが繋がりがある。その中でそういう人がその直接の場面では言いにくいことでもむしろ会議の場面ではそれぞれの立場を代表していろいろ言うことができるのであつて、そこで初めて民主主義的な運営ができるのでありまして、自分立場と違うものを会議に成るべく入れないようにするというようなことでは、これは民主的な運営というのはできるはずがないのであります。でそういう点から申しまして、私はむしろそういういろいろな立場の違う人を入れて運営する方向を第一義的に考えるべきであつて、そういう立場の者を入れないことを原則とするというような考え方は、これは逆な考え方だと思うのであります。特に先ほど委員のほうからお話のありました教育者、研究者の生活の問題といつたような問題は、実に現在としてひどいことになつているのでありまして、実は私、学術会議の中で科学者の生活擁護の委員会のほうの委員及び幹事をいたしておりますが、そこでいろいろ調査をした中に、実に涙ぐましいような報告がたくさん出ておるのであります。特に助教授或いは講師といつたような人々のそういういろいろな御報告を見ますと、実際何と言つていいかお気の毒でたまらない。何とかしてそういう人々がもう少し恵まれて行かなければ、日本学問そのものは進歩しないもののように考えることさへ多いのであります。多少脱線いたしますが、例えば或る理学部の講師のかただつたと思いますが、もう半年以来、自分の子供の女の子のジヤケツを買おうか、自分学問参考書を買おうかと思つて、ここ半年間迷つているけれども、結局どつちにも決心がつかないけれども、そう言つている間にだんだんそのどちらを買う金もなくなつて来ている、こういうような訴えがありました。まだそのほかにそういう訴えが非常に多い。そういう訴えが、何か特別なそういう調査がなければ出て来ないようなことでは、これは先ほども提案がありました、或いはお話のありましたように、本当の学問の進歩というものは考えられない。むしろそういうかたがたが安心して学問ができるようにすること、そのことが初めて日本学問の自由な、或いは大学自治と言い、或いは本当の学問の発展と言い、そういう方向に行くのでありまして、そういうものを全然……全然でなくても公式に取上げてみんなが努力するようなそういう会合がなかつたならば、これは私は大学として本当の健全な発展はないと思う。そういう意味でこういう助教授、講師のかたがたをこのいろいろの会合に入れて頂くことがこれが原則だとむしろ私は思うのであります。  先ほど助教授教授を助けるものだ、そういうふうに言われました。勿論学問研究、或いは学生の指導といつたような純学術的な立場で申しますれば、大体の任務はそうであります。併し実際それだけが助教授の生活ではないのであります。又助教授は自身として研究もしているわけであります。そうして大学全体を伸ばし、日本の国の学問全体を伸ばすために助教授があるのであります。そういう人の意見を入れるということこそ原則だということは今更述べるまでもない。委員のかたがたからむしろそういう御意見が強かつたと思うのであります。私ここでそれを今更ら繰返すこともないのでありますけれども、是非このことは記録にとどめて頂きたいと存ずるのであります。なお先ほど我妻参考人から、すでに東大などでは現実的には助教授その他を入れて運営していると言われている。そうしてそういうものが多いとさえ言われる、そういうものが多いならば、それを現実的に認めたらいいのでありまして、むしろ一般的なものを原則とするのが、これが当然なことでありまして、その点がむしろそれを何らかの形で以て除こうとするほうに問題があるように私は考えるのであります。  第四に学生の問題であります。これは或る参考人のかたには非常に誤解されて、学生教授会評議会に直接参加させるようにこの案がなつている、或いは日教組のかたでありましたが、そういうかたが御説明なつたようにおつしやいましたけれども、そんなことはないようでありまして、これは両者の意思を疏通させるという意味での評議会を持つべきだという御意見のようでありまして、これは私当然のことではないか、今まで思しました考え方からも私は当然のことじやないかと思う。教授会とか評議会というものに学生そのものを参加させるというような御意見ではないようでありまして、むしろそういう点では私、先ほど御提案のようなことを是非これに公式にお入れ願つて頂くことが必要じやないかと考えるのであります。  最後に、この法案を即時に成立させるべきかどうかという問題であります。この点につきましては、私が今までお聞きしている限りでは、どうしてもこの法案を即時に成立させなければならないという強い根拠が考えられない。特に大学附置研究所のかたがたが大学研究所教授をこの評議会なり教授会に加えることがこれによつてできるから、だからこれを即時やるほうがいいのだというようにお話になつたようでありますが、それは少し枝葉の問題を捉えてその面だけを強調しておられるように思うのであります。むしろそういうことは、若しこの法案が延びるようなら、個々の大学でやるならば、或いは便宜的の方法で文部省その他から、いわばそういう点がもうすでに実際上どの方面でも意見がまとまつているのでありますから、それができるように政令なり何なりで措置されることができるのじやないか。それよりもむしろ今まで私が申しましたような非常に大きな問題がたくさんある。そういう大きな問題を残したままでこれをすぐに通したほうがいいかどうかということになりますと、これは相当問題があるのじやないか。むしろ前から問題になつておりますように、慎重にということも、こういういろいろ問題があるからなんでありますから、その点を十分御討議になつて、そうして最も多くのかたが納得して、そうしてその上で将来の運営にも禍根を残さないというふうな点を中心にすることこそ第一義としてお考えになるべきでありまして、この研究所教授の問題というような点だけに重点を置くというようなことであつては、それは非常に危険だというふうに感ずるのであります。  大体まあ先ほどもお断りいたしましたように、多少素人意見の所もあるかと思いますが、それだけにどこの立場にも捉われないような気持で申上げましたので、御参考にお聞きを願いました。
  52. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 次に、東京都立大学助教授の寺沢さんにお願いいたします。
  53. 寺澤恒信

    参考人(寺澤恒信君) 公立大学管理法案について申上げるのでございますが、最初に私の基本的な見解を申上げたいと思います。  私は教育というものは、小学校から大学に至るまで全額国庫負担で行われるべきであるという見解に立つております。このことは勿論理想でございまして、現在の財政状態におきまして直ちに実現ができるとは私も考えておりませんが、その理想に近付くようにいろいろな制度を持つて行くべきであるという観点から、只今上程されておりまする法案についても、批判的な見解を持つわけであります。問題を大学教育に限定いたしましても、現在の国立大学新制大学として発足いたします場合に、その設立費のかなりのパーセンテージが地方財政から支出されている現状であります。ところが逆に国庫から平衡交付金というものが地方財政に与えられております。又私立大学の場合を見ますと、現在私立大学が非常に経営難であつて、授業料等の正規の収入のみを以て維持経営ができないということは明らかな事実でありまして、これを補う手段として学校法人が行うところの収益場事業に対して減税乃至は免税と、こういう制度が開かれておりますが、このことは取も直さず国庫の税収入がそれだけ減少することでありまして、アメリカで行われておりまするように、大学が非常に大きなデパートであるとか、工場も経営して、それによつて減税乃至は免税を受けるというようなことになれば、その弊害も又一面出て来るわけであります。このように一方から金が出され、又それと逆の方向に金が出されるというような複雑な機構をやめまして、できるだけ一元的にしたほうがよいと考える。そのためには単に国立大学におけるのみでなく、公立大学及び私立大学に対しまして国庫から与えられる補助金或いは援助のためのいろいろな財政的な支出というものを一元的に取扱うところの、まあ、名前は何でも結構でありますが、大学教育委員会とでもいつたようなものがただ一つ置かれるということが望ましいと考えます。このような大学教育委員会は、いろいろ午前中の主張にも二、三のかたからありましたように、現在都道府県に置かれております教育委員会と同様の機能を持たせるべきで、全国民の公選によりまして、又都道府県の教育委員会がそうであるように、直接予算案を国会に対して提出することができるような、そういう意味での財政権というものをこの大学教育委員会に与えるべきであると考えます。中央にそのような機関が設立されるならば、公立大学審議会というものを公立大学のみに関して単独に設ける必要はないと考えます。中央機関がそのようになるならば、個々の都道府県市におけるこの原案における公立大学参議会に相当いたすものでありますが、これも又現在置かれております教育委員会任務を若干拡充いたしまして、この中に含ましめることができると考えます。県なり、府なりの県民の公選によつて現在選ばれておりますそれぞれの教育委員会というものが、現在新制高等学校までを管轄しているわけでありますが、これのうちに公立大学をも含ましめるということは少しも矛盾がないと考えるわけであります。以上のような見解はここに上程されております公立大学管理法案と甚だしくかけ違つたものでありまして、私の基本的見解はこのようなものなのでありますが、甚だしく違つているために恐らく私のこの意見というものは御採用になり難いのではないかと思うのでありますが、次にその次善的な、基本的な見解は以上といたしまして、次善的な意見といたしまして、現在の法案に即して少くともこれだけのところは修正して頂きたいというような意見を申述べたいと思います。  その第一は、最初公立大学審議会につきましては、国立の場合の審議会の場合と同様に、ここに大学学長の互選したもののみが含まれて、教授助教授専任講師代表者という意味のものが含まれていない。これを是非入れて頂きたい。それが大きな点の一つであります。細かいことは省略いたしまして、重点であるところの公立大学参議会のほうに移ります。第十二条に「大学設置する地方公共団体に、条例で定めるところにより、公立大学参議会を置く二とができる。」と規定してございますが、この点につきましては、先ほど途中で帰られました柴田参考人からも依頼を受けたのでありますが、急いで忘れてしまつたから言つてくれということであつたのでありますが、置くことができるという可能規定では困るので、これは必ず大学設置する地方公共団体に、必ず公立大学参議会が置かれるように修正願いたいということであります。この点は私と柴田参考人と全く同意見でありますので、依頼を受けましたので強調して申上げます。次の十三条でありますが、「二十人以内」ということの規定がございますが、同一の県乃至は府の中に二つ以上の公立大学を持つておる所がございまして、多い場合には兵庫県のごとく三つの公立大学を持つております。このような所におきまして、二十人の委員という場合に、若干不便を感ずる場合があると思いますので、これは三十人程度に殖やして頂きたいという見解を持つております。それからこの公立大学参議会の構成メンバーでありますが、その十三条の第二項の第二号でありますが、「当該地方公共団体設置する大学教授のうちから」となつております。これは先ほど来しばしば問題になつております教授会構成にも関係した問題でありますが、教授助教授及び専任の講師との間に差別をするという考え方と差別をしないという考え方でいろいろ御議論があつたことであり、今又福島参考人から非常に詳しい御意見がございましたので、あえて重複しますから申しませんが、私はこの区別すべからずという意見でありまして、教授会のみならず、これらの場所におきましても、単に教授と限定しないで、教授助教授及び専任講師というように変えて頂きたいと考えるわけであります。それから第十六条にありますところの参議会の権限でございますが、これは柴田参考人からの御説明もありましたように、国立大学における場合の審議会の権限とがここに合せて盛られておりまして、地方公共団体の長の諮問機関であると同時に、学長の諮問機関であるという性格を持つておりますが、このことは非常に参議会というものの性格を複雑にいたしまして、適切ではないと私は考えるのであります。その意味におきまして公立大学参議会というものは、当該地方公共団体の長の諮問機関とすべきであつて、この第四項に規定するところの大学学長が、そこに掲げてある二つ事項につきまして、公立大学参議会の意見を聞かなければならないというこの第四項は抹殺すべきであると考えるものであります。で、一つの機関がこの二重の性格を持つということが複雑であるというのみでなく、国立大学の中における評議会と、この参議会とは非常に性格の異なるものでありますから、国立大学評議会の持つておるような性格をこの中に盛り込むということには極めて無理があると思うのであります。  それから以下の評議会及び教授会における問題におきましては、公立大学も事情は全く同じでありまして、午前中二、三の参考人から申されたごとくに、全く同意見であります。極く重点のみを申しますならば、教授会構成メンバーの中に、正式に教授及び常勤の講師というものを含ませれば……なおその教授会規定するところに基いて助手を加えることができるというように規定すべきであるという考え、又二十七条にある教授会権限の中に是非とも予算権、予算の原案を審議するという権限教授会に与えるべきであるという考え、このことは極めて重要であると強調いたしたいのでありますが、評議会のみに予算権限があつて教授会予算権限がないということは、極めてこれは大学運営上困るのでありまして、又実際問題として教授会がすでにそういう権限において予算の見積りをする、或いは予算の原案を作るということをやつておるのでありますから、これは法案のうちに是非入れて頂きたいと思うわけであります。なお教授会評議会との関係につきましては、評議会というものは、教授会と相互に連絡する機関であるという見解に賛成でありまして、教授会から選ばれますところの評議員というものは、教授会意見を代表すべきであつて、その教授会意見に反した個人意見を述べるような評議員というものはりコールすることができるという規定を設けるべきであると考えます。  それから次に参りまして、第六章の学長でありますが、学長の所で、これは公立大学の或いは特殊な事情と申しますか、一つ強調いたしたいことは、学長権限の中に、事務職員の待遇について申入れるという権限を加えて頂きたいということであります。これは事務職員を、要するに任命権者は知事なり市長なんでありますが、大学学長がその事務局員の採用につきまして、申出るという権限を与えられておりませんと、大学の中の学長を先頭としてのいわゆる教授から助手に至るところの一連の系統と、それから事務局長を先頭としての事務局員というものを分離する虞れなきにしもあらずで、このことは特に東京ではそういうことが起つておりませんけれども、地方自治体におきまして、それぞれの地方自治体のいわば吏員を長く勤められたいわゆる高給吏員の人で、年齢も相当上になつたという人たち、悪い言葉で申しますと、姥捨山の形で大学の事務職員へ送り込むというような弊害がございますので、学長のほうに、事務職員の任命について申出るという権限を是非学長に与えて頂きたいということが一つであります。なお細かい点についていろいろあるのでありますが、時間が長くなることを恐れますので、お許し願えるならば、後ほど委員長の所へお届けいたします公立大学教職員組合協会で作りましたこの法案の原案に対する批判を書いた文書がございますので、それをお渡しして委員の各位に読んで頂くことをお許し願えれば仕合せと思うわけであります。
  54. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 東京都総務局学務課長の立花さんにお願いいたします。
  55. 立花昌夫

    参考人(立花昌夫君) 御紹介にあずかりました立花であります。私参考人に参つたのでありますが、全国の大学設置者の意見を別に代表しているわけでもないのであります。公式に各府県の意向をまとめたのでございませんので、東京都の立場で一応意見を申述べさして頂きます。  公立大学管理法全般を見まして、公立大学協会が随分長い間慎重に審議されまして文部省に出した答申案に、更に文部省がこれに手を加えまして、法案内容として非常に至れり尽せりの立派な内容になつておると思うのでございますが、大体この公立大学管理運営について、国が法律を以てこういつた規定を作らなければならぬかどうかという根本問題でございますが、地方自治法の精神から申しましても、成るべく地方のことは地方に任せるというのがこの精神であると思うのでありますが、殊に公立大学につきましては、それぞれの大学の沿革なりが違つておりますし、又大学の規模なり或いは内容、その性格と申しますか、いろいろ国立大学と違つたそれぞれの特殊性が非常に強いと思うんでございます。こういつた大学を一本の法律で拘束をするという行き方については必ずしも賛成ではないようでございます。非公式な見解として、地方の各府県の意見といたしまして、余りこれには賛成をしていないというような話も実は承わつておるのであります。併しながら公立大学を円満に、そして非常に内容の充実した立派な大学として発展させるために、或る程度の基本的な事項について法律を以てこれを規定し、そうして大学の発展のために力を入れて行こうという考え方から基本的な問題について法律を以て拘束しなければならんということも、これは或る程度私必要があるのではないかと、こう思うのでございますが、地方の実情が違い、大学内容も違つておるんですから、成るべくそういう場合でも法律上の規定は少くして、あとは地方の実情に合つたように自主的に条例なりその他の方法を以て大学運営して行くといつた行き方がやはり望ましいのではないかと、かように考える次第でございます。従つて公立大学管理法案内容についても、もう少し簡単な内容のものにして、それぞれの条文についても検討をして頂く必要があるんじやないか。規定が非常に細かくなつておるんでありまして、各設置主体の自主性に任せてもいいような部分がこの中にもあるのじやないかと、こういつた感じがあるのであります。  次に内容につきまして意見ちよつと申述べたいと思います。重点は、何と申しましても公立大学参議会にあろうと思うのでありますが、中央に置かれます公立大学審議会におかれましては、先ほども意見が出たのでありますが、常置機関としてこういつた審議会を置く必要性が強いかという問題でございますが、先ほど略お話のあつたように、必ずしもどうしてもこの機関を置かなくちやならんといつたようなほどの強い必要性がないんじやないかとこういつた気持がするのであります。更に又委員を選定する手続方法が非常に繁雑であつて、こういつた複雑な手数によつて、手数をかけて設置するだけの実効はこの審議会に期待できるかどうかということについて疑問を持つものでございます。各地方の実情反映させる方法としましては、別の諮問の方法ということも考えられるのではないかと、かように考える次第でございます。  次は公立大学参議会の問題でございますが、第十二条に規定してありますが、この大学参議会はこれは任意設置になつておりますが、この条文には相当問題があるのだと思います。と申しますのは、この管理法案の第一条にもございますように、大学自治尊重し、更に民意反映せしめるというのがこの法律制定の目的であるとすれば、各地方に置かれます公立大学参議会というものに眼目がなければならんと思うのですが、これが任意設置で行かなければならんというような、そういつた現実の点から考えまして、実情から考えまして、どうもこれは多少骨抜きになつたような点を感じるわけでございます。と申しますのは、この公立大学参議会を必置機関にするということは果してよいかどうか、現在の各地方の事情から見ましても問題があると思うのでありまして、それについてはいろいろ理由もあろうと思うのでありますが、設置者側の意見として私の承わつておるところでは、こういつた諮問機関に大きな権限を持たせて設置者を拘束するという行き方が現在のいろいろな財政的な実情から考えまして適当でない、こういつたような声が相当あるのじやないかと思います。御承知のように地方財政は非常に逼迫をいたしておりまして、六三制の実情等についても非常に困つておるような実情にございまして、殊に大学を置いた地方では、大学運営のため相当な費用を支出しておるようでございます。従つてこの際参議会といつた諮問機関を置いて相当に強い発言力を持たせるということは、必然的に設置者の意見を拘束するという結果になる慮れがあるということは、地方財政実情からいつて、反対をいたしておるのが本当の実情ではないかと思うのでございます。  それからこの民意反映させて大学運営をうまくやつて行こうと、こういつた第一条の目的を達成するためにも、いろいろと委員の選任の方法でありますとか、委員の定数等の点について非常に苦心のあとが旦えるのでございますが、実際問題として、大学自治というものと民意との調和をどこに置くか、調和を如何に実現するかということは非常にむずかしい問題であろうかと思うのであります。大学というものの実体が、まだ一般国民、殊に地方の人々によく理解されていないという実情におきましては、こういつたつまり効果は相当あると思うのでございます。一般民間から委員大学運営に参画して行くということは、おのずから大学の異体を地方の人々に理解させる、こういつた効果はあろうかと思うんでございますが、併しながら大学管理とか経営とかいつたことは、相当高い知識、学識なり経験なりが必要であると思うのでありまして、適当な委員を選定するということ、これは私は実際問題としてはむずかしいのではないか。場合によつて民意反映せしめるということは、案は形式的なものになつてしまつて、参議会の運営ということが一つの形式的な運営に流れる、こういつた虞れもあるのではないかと、かように考えるのであります。殊にこのために非常に繁雑な事務が相当殖えて参ると思うのであります。私ども過去の経験から見まして、いろいろな諮問機関というものが最近非常に法律規定されて、諮問機関が殖えて来ておるのでありますが、そういつたものの運営が従来法律が期待したほどの効果を挙げていないとか、今までの実績から考えまして、果してこの参議会がこの法律の期待しておるような効果を発揮できるかどうかということについては相当危惧の念を持つている次第でございます。  その他それぞれの条文につきまして細かい意見を持つておるのでございますけれども、大体この法案の眼目は、公立大学参議会というものにあると思いましたので、それだけを申上げましてあとは御質問等があつた場合にお答えをしたいと思います。
  56. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 日本教職員組合の井口さん。
  57. 井口次郎

    参考人(井口次郎君) 私は日本教職員組合中央執行委員をやつておりすす井口であります。先ほどこの国立大学管理法の今までの審議過程なんかにつきまして、我妻参考人のほうから申上げられましたが、実はこの三年越しにいろいろこの大学校の問題につきまして審議せられまして、その間できました起草協議会には私どものほうからも代表が二名送られまして、そこでいろいろと私達の意見を具申したわけでございます。併しその場合、私どもの意見といいますか、それは殆んどまあ少数でありまして、全面的に否定せられるというふうなことになつて来たわけであります。それから先ほど我妻委員長のはうでやはり申されましたように、その起草協議会メンバーそのものが大体旧制大学のかたが、古くからありました旧制大学関係者が非常に多くありまして、私たちのような地方の新らしくできました新制大学関係しておりますものが殆んど入つておらなかつたわけでございます。そのために地方の新制大学にとりましては、ここに提出せられましたような原案では、ちよつとこのまま通して頂くことは困るのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。  特に一番問題になりますことは、中央国立大学審議会でございますが、これは先ほど広川参考人のほうからも申上げましたように、私どもといたしましては、これを飽くまでも決定機関として頂きたい。これは例もございますように、例えば文部省の中にも最近できました文化財保護委員会というようなものがあるわけでございまして、先ほど我妻先生が、法律的に文部省の中にそういう委員会ができることはおかしいじやないか、権限的にちよつとおかしいというふうな御意見でございましたが、これは協議体の行政機関としてこういうものができることは何ら差支えないのではないか、そういうふうに私どもは考えておるわけでございます。それからこの構成メンバーでございますが、これにつきましてはやはり先ほどから二、三のかたが御指摘になりましたように、どうしても私たちの希望といたしましては、全国の大学教授助教授、講師と、こういうものの中からの代表者を是非加えて頂きたいのであります。これは何も、例えば私たちの日本教職員組合大学部であるとか、それから先ほど我妻先生がおつしやられたような全国大字教授連合であるとか、そういつたような団体が必ずしもなくても、現実にすでに各大学教授助教授、講師というものがあるのでございますから、それたちに互選をさせるというふうな恰好で選出すれば何ら差支えないのではないか。この所属団体などに関連なしに選挙を行うというふうなことをやれば、合理的に選出はできると、そういうふうに考えておるわけでございます。  次に国立大学協議会権限でございますが、これは先ほど基本的に申上げましたように、やはりむしろ現在の文部大臣と通の立場に立ちまして、第八条の第二項は、国立大学審議会は、前項各号の審議をする場合、文部大臣の報告を求め、又は文部大臣意見を徴することができる。というふうな逆なような組立にして頂きたい、そういうふうに考えておる次第でございます。  それから次の第三章の商議会でございますけれども、この商議会の場合には、やはりこの構成につきまして先ほどから二、三のかたから申上げておりますように、少くとも学外のかたが学内の者と同数であるように直して頂きたい、そういうふうに考えております。それから大学のほうから出るメンバーにつきましては、必ずしも教授に限定いたしませんで、教授助教授、講師というものを含めまして、教員の中から選んで頂きたい、そういうふうに考えておる次第でございます。それからこの商議会権限の中に、人事の基準ということがございますが、やはりこういうふうな外部のかたが入りました商議会のようなところで、大学の人事の基準をおきめになることはちよつと不適当じやないかと、そういうふうに考えるわけでございます。例えば新制の大学が発足するに当りまして、従来大学設置審議会というふうなものが中央にございまして、そこでいろいろと人事の基準をおきめになつたのでありますが、例えば学位を一つの例にとりますと、文科系統のその学位のあり方と、それから理科系の学位のあり方では非常に差異がありまして、例えば理科系のお医者さんなんかを例にとりますと、医学部のほうは相当若いかたでも学位を持つております。それから文学部系統のほうになりますと、殆んど従来も学位を持つておらない、それが例えばこういうところで人事の基準というふうに申しました場合に、第一要件として学位などを問題にされますと、実際問題といたしましては各学部におきまして相当支障を来たすというふうなことになりますので、やはりこの人事の基準というふうなことは、若し設けられるといたしましても、商議会権限からは除いて頂きたい、そういうふうに考えておる次第でございます。  それから次に各大学に設けられますところの評議会でございますが、これはやはりこのメンバーの中には学部長、それから附置研究所の長、それから教授会の代表若干名として頂きまして、大学によりましては学部の数も違いますし、相当東大のような大きな所もありますけれども、地方の大学のように小さな所もありますので、むしろこういう実情に応じてその構成メンバーをきめたほうがよいのではないか、それから教授の代表といつた場合には、やはり先ほどから申上げましたように、常に教授助教授、講師というふうなものから教授会の代表を選んで頂きたい、そういうふうに考えておる次第であります。それから第二十四条の任期でございますが、これは二年を一年に変えて頂きまして、むしろ再選を妨げないということにして頂ければよいのではないかと思います。それからこの評議会の第二十六条の議事及び運営でございますが、この場合に一つ以上の教授会の要求がありましたときには、その評議会学長が招集しなければならないというふうな規定を挿入して頂きたいと考えております。  それから第五章の教授会になりますると、やはり教授会構成は先ほどから申上げましたような教授助教授、講師も含んで頂きたい。この教授助教授、講師を含みますということにつきましては、先ほどから再三意見が出ておりますが、実際問題といたしまして、旧制の大学と、それから新らしく地方にでぎましたところの新制大学とは、その教授助教授、講師及びその大学の講座内容と申しますか、そういうものが少し異なつておりまして、必ずしも教授の下に助教授があり、その下に又講師があるのだというふうな編成にはなつておらないのでありまして、或る講座には例えば助教授しかおらん、或る講座には講師しかおらないというふうなあり方が現在あるのでございまして、そのために若しこういう場合に教授会には教授しか出られないのだということになりますと、或る研究室からは全然大学運営に参画できない、そういうような現象を起すのであります。そういう点で是非教授以外の助教授及び常任講師もこの構成に原則として加えて頂きたいと考えておるわけです。  それからあと学長及び学部長等の権限でございますが、この学長及び学部長は、例えば大学を代表する、又はその学部を代表するというふうな規定にして頂きまして、むしろ総括し、これを代表するというふうな表現をして頂かないほうがよいのではないかと考えるわけであります。それは新制の大学なんかにおきましては、従来の例えば専門学校の校長さんであつたとか、師範学校の校長であつたというかたが、例えば学部長なつたという場合に、その学部長というものが従来の校長という立場を混同いたしまして、実際問題としての大学運営について相当見解を異にしております。旧制大学学部長あたりになりますと、そういうことはございませんが、新制の新らしいところにおきましては、その校長という今までの責任者であつた立場を、学部長になられた場合にも非常に強く考えられておるというような事情がありますので、そういう誤解をなくするためにも、一応代表するという規定にして頂ければいいのじやないか、そういうふうに考えております。  それから第八章に雑則として、学生代表との協議ということを挿入して頂きたいと考えております。これは先ほどから趣旨は二、三のかたが述べておるのでありますが、実際にどういう条項にして挿入したいかと申しますと、学部長学生団体学生活動その他学生生活に関し、教授助教授及び常勤の講師の代表との意思の疏通を図り、学生生活の向上に資するため適当な方法を講じなければならない。第二項としまして、前項の学生代表の選出方法その他実施に関する細目は、教授会の議を経て、学部長が定める。第三に学校は数個の学部又は全学部関係する学生団体、字生活動その他学生生活に関し、前三項の規定に準じ適当な方法を講じなければならない。この第八章として私が挿入いたしました項目は、実は起草協議会審議過程におきまして、第二次試案までには入つておるのでありますが、こういうことは当然のことで、その規定に盛る必要はないじやないかという御意見で削られたのでありますが、やはりこういうことははつきりと条文にも謳つておいたほうがいいのじやないかと考えるわけであります。  大体若しこの大学管理法が成立する場合を仮定いたしまして、成立するものとすれば今のような私の申上げた修正点を是非盛り込んで頂きたい、そういうふうに考えるわけであります。そうしてこの原案のままで通過さして頂きますことは、私どもとしましては、先ほど我妻委員長が申されましたように、むしろこれは旧制の大学においては必要ない、新制大学にこういうことを作つてやらないと、実際問題として運営ができないだろうというようなことをおつしやられましたが、新制の大学にいたしましても、昭和二十四年の五月に、国立大学設置法が制定されましてから以後、二年に亘りましてこれは合法的に運営を続けて参つたわけでありまして、何らその間に差障りはなかつたのではないか、そういうふうに考えております。その意味におきまして、このままのものをお作りになるよりかは、もう一度再考する機会を、もう少し民主的な協議会をもう一度作つて頂きまして、そこで案をもう一度練り直して頂くという機会をお与え願えるほうがいいのじやないかというふうに考える次第であります。
  58. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは最後に静岡大学事務官、伊興田圓止君にお願いします。
  59. 伊與田圓止

    参考人(伊與田圓止君) 只今紹介にあずかりました伊與田でございます。この法案につきまして時間を頂きまして、いささか意見を述べさして頂きたいと思います。  この法案につきまして考える際に、私といたしましては、やはり現在の日本教育制度の向つて行く方向ということを基盤といたしまして、その上に立てられました大学教育、その大学教育管理をするところの法案であるという立場でこれを考えて行きたいと思います。そういう場合に現在の新教育制度に課せられている使命というものは、すでに新らしい憲法に盛られているところのものであり、又それは教育基本法にはつきり謳われておるところのもの前提として、只今大学教育がやはり進められて行かなければならんということを考えるのでございます。そういう立場を考えますと、この法案が適用されるところの、この法案が実際に行われますところの大学の実態がどうかということは、やはり考えなければいけないと思います。この法案ができましても、その法案の、法律そのものが施行されましても、大学そのものについて非常なかけ隔て、食い違いがあつた場合に、その法案が生きて来ないし、却つてその法案自体が邪魔になるというような立場も考えられるわけでございます。そういう立場から考えますと、今朝ほどから我妻さんなどから申述べられておりますところや、ほかのかたがたが言われましたところを勘案いたして見ますと、大体においてこの法案が、旧制大学の現在までの慣例その他と余り食い違わないというようなところに、やはりこの法案の基礎があるのではないかというふうに考えて見ますと、現在の旧制大学と、それから地方に新らしく立てられてできましたところの大学と比較しましたときに、非常にその内容、それから水準などについて食い違いがあるわけでございます。そういう内容その他水準の食違いのあるところへ同じ法律を持つてつて当てはめた場合に、果してこれが合理的に行われるかどうかということはやはり考えなければならんと思います。そういう面から行きますと、現在行われておりますところの新教育制度というものが、従来の教育に対する考え方というものを打破して、即ち教育の機会均等を与えることと、それから平和を愛好するところのよき住民を作る、それと同時に日本の学術の水準を高めるというところのやはり観点に置かれなければならないのではないか、そういうふうに考えられるわけでございます。そういうふうに考えられて来た場合に、現在のそういう方向に教育自体が進んでおるかということにつきましては、必ずしもそうでない、新教育に対する批判の声がしばしば起つておるということは、そういうことをやはり示しておるのではないかと考えられるわけでございます。そういう面から行きますと、この法律を作る前提といたしまして、現在進んでおるところの新制大学の構想というものがはつきり活かされるということがやはり前提になると思います。そういう観点から見ますと、先ず第一の欠陥といたしまして、今朝ほどから申述べられております中で、財政の問題、いわゆる予算の問題が大きく出て来ると思います。予算の問題は何らかの形において解決されて、日本教育予算というものが拡充されなくちやならないということはやはり抽象的に言えると思います。それと同時に現在までの旧制大学がはらんでいたところの長所と、それからそれに附随していたところの短所をこの際打破することが必要であるということを考えられるわけでございます。従つてこの法案で取上げられなければならない問題といたしましては、今までの大学にあるところの欠陥というものをこの法案によつて補い、長所を助長するということが根柢には考えなくちやならないのじやないかと思うわけでございます。ですから先ほど申上げておりますように、現在の新制大学の方針に則つたところの拡充が行われなくちやならないということをやはり前提といたしまして、この法案を考えなくちやならないというふうに、こう考えるわけでございます。  次に、そういう総括的な問題を出まして、次に上程されているところの法案を拝見いたしまして、それについての意見を申上げたいと思います。その場合に立法の趣旨ということが問題になると思います。ここに盛られておりますところの大学自治民意反映ということは非常に重要な問題であると思います。その場合に大学自治ということはどういう形においてされなくちやならないかと言いますと、先ほど申上げましたように、旧制大学の弊害の打破ということがやはりその内容として入つて来なくちやならないのではないかと思うのでございます。大学自治ということが言われます場合に、従来の大学におきましては、権威ということを言われるわけでございます。大学の権威、それが地方におきましては象牙の塔ということが言われるわけでございます。一面大学の権威が、地方で批評されますところによりすと、象牙の塔ということでいろいろな問題が醸し出されるのであります。そういうことを打破する面をこの法案に盛ることが必要であるということか考えられるわけであります。民意反映という点につきましては、従来それらの大学が権威として国民から離れていたのでありますが、これに対して国民大学であるという感じがこの際大きく盛り上げられなければならないという新らしい使命が入つて来たわけでありまして、そういう面で民意反映というものは、この際合理的にこの法案の中に取入れられなければならない。併しながらそれが非常に間違つた方法で取入れられた場合には、非常に今後の問題に大きく反映して来るということが考えられるわけです。その趣旨を一貫して眺めまして、この法案について考えますと、先ず第一に、機関の種類が問題になるのであります。機関の種類につきましては、中央審議会、評議会商議会教授会というものが機関として存在するわけでありますが、その中で大体一貫して流れているところは商議会というものが一つ民意反映であるという形で挿入されておるわけであります。従つてこの商議会の問題につきましては、相当この際この法案を考える場合に十分考えられなくちやならんと思うのであります。なぜかならば、それは民意反映を現わすという形のものであるわけであります。ところが起草協議会で考えられているところを、今朝ほどからの我妻さんなどの発言をお聞きいたしますと、商議会というものが大した重要性を持つていない。もとより財政その他に関連いたしましたような問題、そういうようなものがあつたほうが望ましいのじやないかという程度の非常に弱い形で取上げているように考えられるのであります。そういう面から考えられたところのものを、こういうところへ盛り込むということは、非常に慎重に考えられなくちやならないというように考えられるわけであります。商議会というものを、この場合非常に弱い、何といいますか、お座なり的にここへ挿入して置くというような形であるならば、将来非常な問題を起すのじやないかと考えるわけです。そういう面から行きますと、むしろこういう非常に不十分であるものは、この際一応保留して、むしろ第一の大学審議会その他の構成又は活動について十分にそういう面を考えたほうがいいのではないかと、そういうように考えられるわけであります。  次に機関の構成について考えますと、この各機関を通じましてその構成が非常に従来の行き方、要するに高等的な、いわゆる上のほうのかたがたによつて構成されてそれが管理される、これは勿論責任その他に関連して来る問題ではございますが、そういう面でもう少しこの際大学自治、それから教育の基本方針に則りました点から考えまして、もつと民主的に、もつと大きく拡げていろいろな総意をその中へ取入れて構成されるということが適当ではないかと考えるのであります。そういう意味から中央審議会の構成は、この際何とかして、少くとも全国の大学におきましてそれぞれの責任を持つて教育の仕事をしておるところのかたがたを何らかの形でこの中へ取入れるということをこの際断行する必要があるのではないかと考えるのであります。そういう面については、具体的には先ほどからの参考人の中に、全国の教授助教授、常勤の講師の選挙によるところのものを入れろというようなことも言われておりますが、そういうこともやはり重要な形として考えられるわけであります。いずれにいたしましても、全国の学長日本学術会議文部大臣が任命いたしましたところの学識経験者を除きました以外にも、そういう形のものはこれに取入れなければ万全なものにならないというふうに考えるのであります。  次に評議会教授会でございますが、この構成につきましても、この際やはり旧制大学で行われておりますものより一歩進めて大学自治を確立するには、大学の民主化ということがやはり重要な裏付けであると思うのであります。民主化と併せて大学自治という場合に、やはり大学の封建性が多分に残るという危険性が考えられるのであります。そういう面から行きますと、教授会評議会におきましても教授助教授、常勤講師というものを入れたところの評議会教授会というものが考えられ、評議会は、当然そういう教授会を基礎として選出された人によつて構成されるということを考える必要があるのであります。それは今朝ほど佐野さんから言われましたように、勿論教授責任者であり、その補助をするところの助教授、常勤講師であるわけでありますが、併しながら実際におきまして、新制大学におきましては定員その他におきまして同格のかたがたがそれぞれアンバランスがあるということも考えられるわけであります。而も旧制大学におきましても、私の聞くところによりますると、学科その他によりますと、非常に高年輩で、而も社会的には相当認められるところのかたが助教授として残り、研究にいそしまれているわけでございますが、そういうかたが大学管理する場合にそれにタツチできないということはやはり不合理であると考えられるわけであります。勿論実際教授が行われる場合には、当然教授あり、助教授あり常動講師と考えられますが、それらに対する意見を述べるというときについてはやはり同等に扱われているのじやないかと考えられるわけでありまして、それでもつと拡大して考えますれば、助手以下のいわゆる雇員のかたがたがあるわけでございますが、こういうかたでも何十年となくその大学に勤めております。実際には実験工科関係などにおきますると、実験などについては先生がたよりも実質的に生徒に教える面が非常に多いという場合があり得るのであります。そういうかたがたが、自分の仕事を通じて何らかの形で大学管理機関に対して意見反映するということができ得れば必要ではないかと考えるわけであります。それはなぜかといいますと、大学というものを考える場合に、それはやはり全体的なものとして、教育基本の考え方として、人間完成ということがやはり前提として考えられなくちやならないと思うのであります。そういう場合に助手であつても又それ以下の者であつても、自分教育の場にいるのだという自覚を持たれる必要があるのであります。単なる技術屋であり、単なる小使であるという考え方では、大学の本当の教育はなされないのじやないかと思うのであります。小使でもやはり私は教育の場にあるから、人間を作る場所において仕事をしておるという自覚が必要ではないかと思うのであります。そういう面から来ますと、そういう自覚を高めるためには、何らかの形で自分意見というものが問題になり、又意見というものが申述べられる機会というものがやはり与えられることが必要ではないかと思うのであります。そういう観点から考えますと、今の評議会教授会におきましては、少くとも助手クラスまでは、そういうかたの意見反映するというような機会が与えられることが必要ではないかと思います。それで勿論それを考える場合には、現在の現段階においてそういうことはむずかしいということも考えますが、構想といたしましては、そこに観点を置いて、そういう気持を大学全体に与えるということが、やはり日本の将来の大学教育というものが本当のものになつて来るという点からは十分取上げられなければならないと私は思うわけであります。  それから機関のやはり権限法案としてはやはり問題になると思うのでございます。権限につきましては、中央審議会につきましては、それを委員会のような形にして公選にするというような御意見も出ているわけでございますが、少くともこの法案を考える場合には、財政その他の面から考えまして、やはりこれを審議決定するという機関に持つて行くというようなことが必要じやないかと思うわけでございます。それはなぜかと申しますと、やはり予算その他の問題に関連いたしまして、文部大臣の力を強めるという意味でむしろそういうものを決定機関にすることが必要ではないかということを考えるわけでございます。それは文部大臣予算の場に臨む場合に、そういうようなバツク・アツプがあることによつて日本教育に対するところの教育予算の、文教予算を考える場合にですね、そういうものを背負つて発言するということが非常に現在の段階では必要になるような段階に来ておるのではないかというように考えられるわけであります。そのほか細かい権限について問題になるところはあるわけでございますが、少くとも商議会につきましては、先ほど申上げましたような点から、前のかたも申上げているわけでございますが、人事権などにつきましては、若し商議会のほうを削れない場合においては、人事権などについてはやはり慎重に討議する心要があるのではないかと考えるわけでございます。それから学生懲戒などにつきましては、実際に生徒に接しておるところの各学部教授会などでやはり取上げて決定して行くというような、そこから離れたところで単に学生の問題を討議して決定するということがないように、実際に即したほうがいいのではないかと考えられるわけでございます。  それから管理の主体でございますが、文部大臣の問題は別といたしましても、大学におきまして学長学部長の間に非常に責任を負わされているわけでございます。併し実際におきましては、各大学において評議会で決定されたところのものは大学によつて代表されて、而も責任学長が全部負うんだというようなことがないように、むしろこの際、学長については評議会を代表するのだというような立場に、この法案を持つて行く、これがむしろ実情に即しておるのではないかというふうに考えられるわけでございます。それから職員の問題につきましては、先ほど申上げましたのですが、学生との関係につきましては、やはり何らかの形で学生学校の機関との意思疏通の機会が与えられるということが、むしろ学生との間に問題を起し、又学生自体がどうも解き放たれた形で動くというようなことがないようになるのではないかと考えるのであります。そのためには何らかの形で学生との意思の疏通を図る予備機関を持つて行くことが必要ではないかと考えられます。そういう場合には学生との協議会を設けるというようなことをこの法案の雑則あたりに盛り込んで頂いて学生の生活、それから学生の厚生などについては、学生意見を十分取入れて学生の勉学を助ける基礎を作るということが重要ではないかと考えます。それらを拔かしては、やはりこの法案が不備になるのではないかと思います。大体において大学は、教官と学生と、而もそれに実際に仕事をするところのその他の職員によつて構成されていることを考えますと、学生との意思疏通を図る機関を如何にして法案は考えられないかと考えられます。  その他のことにつきましては又御質問のときにお答えするといたしまして、非常に短い時間で全体的に御意見を申上げられませんでしたが、この辺で意見を終りたいと思います。
  60. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれで参考人のかたの御陳述は全部終りました。お述べ頂いた御意見に対して各委員から質疑のある点をお答え願いたいと思います。先刻も申しましたように、お述べ頂いたことに対して疑問の点、更に詳しく承わりたいということで、議論に亘りますことは避けたいと思いますが、単に意見の相違ということがございましたらお答え頂かなくても結構でございます。
  61. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 福島さんにお伺いいたします。第一点といたしまして、国立大学審議会の権限につきまして現段階においてはこのくらいで止むを得ないのじやないかというふうに御意見を伺つたのでありますが、特に予算のことにつきまして普通の義務教育費につきましては教育委員会がございまして、御承知のように教育委員会は二重提案をするところの権限が与えられておるわけであります。大学が非常に予算が少いということも私ども聞かされておるのでありますが、そうしたような場合にいま少し大蔵省と申しますか、或いは国会と申しますか、そういうような所に対して強力に働きかけて予算を確保するということが必要ではないであろうか、私たちはこういうふうに必配しておるのでありますが、この点につきましてのもう少し突込んだ御見解が承わりたいというのが一つ、もう一点、商議会のことにつきまして、一般的の御意見としては、こういうようなものはなくてもいいじやないか、あつたところが無意味じやないかという、こういうような御意見のように承わつたのでありますが、なお特に商議会委員の中の、第十五条の第二項の中の第三で、「学識経験のある者のうちから、当該大学評議会がその定める方法によつて選定した者」というような、選定した者を任命するということがありますが、こういうことをやつた場合にはボスを公式的に認めたことになつて非常にまずいのじやないかと、こういう御意見を承わつたのでありますが、これを抹殺することができないで、どうしても商議会を作らなくちやならない、こういうことになつた場合、私はそれを入れて来る大きな使命というものは、今申しました第三の、こういう者を、学識経験ある者を入れようということが、この中の大きな眼目になつておると思うのであります。そこであなたの御意見で行くと、そういうものはないのだから、こういうものは抹殺してしまえとはおつしやらないと思いますが、そんなら少い員数にしたらどうかというような意見にお聞き取りしたのでありますが、その点を簡単に一つ……。
  62. 福島要一

    参考人(福島要一君) 只今の第一の質問の予算の点で、この点につきましては、私ども学術会議の中でも、この予算の問題につきましても、非常に苦労しておりまして、そういうような点があつてつておるわけでございます。実際上学術会議の中にも予算委員会というのがありまして、私もその委員の一人でありますけれども、私は従来官吏をやつていた関係上、一般予算については随分苦労をいたしまして、予算を取るということについてのいろいろな技術的な面も心得ているつもりであります。これが審議会というようなもので効果が上るというのは、表向きには非常にいいようでありますけれども、実際には非常に困難であります。むしろやはり審議会は意見を十分述べて、この点については相当両院議員のかたにお骨折り願い、その上に乗つかつてかなり強い事務的な折衝が行われないと、現在の予算機構そのものが非常に不備でありますために十分でない。そういう権限を、ここに権限として持たしただけで十分な効果を挙げるかどうかという点にむしろ疑問があるということを申上げたわけなのでありまして、そういう権限を持たせることが悪いというのではない。むしろそういう権限を持たした場合に、それが具体的に効果が挙るところまで何か、例えば事務機構相当持つとか、或いは調査機関を持つとかいつたような、その機構自体がそういう予算を作り得るだけの大きな組織を持たないと、ただ意見を述べるだけでは非常に弱いだろう、こういう点を強調したわけでありまして、決してその意見を述べるこが悪いとか、そういう権限を与えることが悪いということではないのでありまして、私としては、そういう権限を附与するということは、文字の上では書くことはやさしいけれども、実際に効果を挙げることが困難だろうということを申上げたわけで、それが若しもつと実際の効果を挙げるところまでやるとすれば、ただ単なる二十人の人を選んだというだけでは恐らくうまく行かない。それならばもつとはつきりとした調査機関を持つとか、或いはそれに対する事務機構を持つとかいうようなことがあえて必要であろうという気持で申上げたわけであります。  それから第二の商議会の問題であります。これは今おつしやる通りの点で、非常に大事な問題だと思う。併しこれは私も伊與田参考人の言われたことと大体同意見なのでありまして、単に形式的なこういう商議会を作るようになりますと、むしろそれが悪用される危険があるのではないか、作るとすればこの点についてももう少し具体的なこと、特に人の選び方というような点について、ただ単にその中から当該大学評議会が定めるということでいいかどうか極めて疑問がある。これは中途半端なことになりやすい。殊に地方などにおきましては結局評議会自体がよほど民主化されていないと、こういうことにしたために、却つて私が先ほど申しましたように、或る特定の人に公式の権力を与えるということになる虞れがあるという点を心配するわけでありまして、こういう組織自体が悪いというのでもなく、又そういう人が入つて来ること自体はむしろ望ましいことであるが、ただここに書いてありますように、当該大学評議会が定める方法ぐらいのところでは非常にむしろ危険な面が多いのじやないか、こういう点を述べたわけであります。そういう意味では、この程度規定でありますと私は却つて危険なのではないかということを言つたのであります。
  63. 高良とみ

    ○高良とみ君 私は公立大学の性格についてお尋ねしたいのでありますが、柴田参考人がお帰りになりましたので、寺澤参考人にお尋ねしたいのであります。この公立大学の行き方が、将来国立大学とは違う性格のものになつて行く可能性が非常に多いのでありまして、そうでなければ又公立大学の特色を発揮しないと思うのでありますが、殊にこの法案に出ておりまする学生の定員、或いは授業料その他のやり方について、学校の、これは公立大学実情をもう少し把握したいのでありますが、それについて、この法案を離れるかも知れませんが、どんなふうに御校の教授会等においてはお考えになつておられるか、又それに対する地方設立者との関係においてどういう困難をお感じになつておられるか、伺いたいと思います。大体の行き方が国立大学と同じ方向に行かれるか、或いはより市民的な、夜学等をもつと更に幅を拡げて行き、あなたの言われた大学までの教育を税金によつてやるというような方向に行かれるのであるか、その点を伺いたいと思います。
  64. 寺澤恒信

    参考人(寺澤恒信君) 非常に広い御質問でございますので、そのつもりも、データの用意もございませんので、十分御満足の行くお答えができないことを残念に思いますが、公立大学国立大学よりも異なつた特色を持つべきであるということは、私どもも常に念頭において考えておるわけでございますが、実情を申しますと、まだ十分これだけの特色があるということを発揮するまでには実情は至つておらないと思うのであります。夜間の学生というような問題に及んで来ましては、国立大学にもまあ最近極く僅か夜学が行われるようになつて来ておりますが、その点ではパーセンテージ等の点において、公立大学のほうが遙かに夜間を持つておる所が多いと思います。そういう点は、従つて勤労学生教育というような面で公立大学が現在果しておる役割というものがあると考えます。いろいろございまするので私どもの東京都立大学におきましては、特に夜間部というものを設けないで、昼間でも夜間でも学生が講義を聞くことができるような制度をとつております。つまり極端に申せば、一週間のうち三日間昼間の講義を聞いて、三日間は夜の講義を聞く学生があつても差支えないような制度をとつております。これは成る程度うまく行つておると考えております。それから学生の定員に関することでございますが、これは当然学校の規模、建物の大きさと教職員の定員とかいう問題に関連している問題で、現在いずれの公立大学にいたしましても、まだ十分な施設等を持つておらないために、取りたいだけの定員を取れないというような実情にあると思いますが、その点について、特に設置者と大学との間に何か意見の相違があつて困難を感じておるというようなことは現在ないように思つております。それかう授業料等に関しましては、これは一般的な問題として、やはり奨学資金をもらつておるような学生もかなり多いわけであり、又特定の者に対しては授業料を減免する制度もできております。授業料免除を受けておる学生のパーセンテージというようなものは、詳しくは存じませんが、或いは国立大学よりは若干のパーセンテージが公立大学のほうが多いのではないかと思つております。
  65. 高良とみ

    ○高良とみ君 更にお伺いしたいのは、そういう大学としての公立大学の生命である定員、授業料その他の件に関して、只今ここにありまするような参議会というようなところで決定されるよりも、むしろ教授会等において、より下の段階において決定されるほうがいいのではないかという見解について御意見を伺いたいのでありますが、実際においては教授の陣営等も問題でありますけれども、しばしば教授陣に設置者が無理な数を押付けて来たり、校舎等が充実して来た場合に一教室百名というふうな講義をさせたりというようなことがしばしばあるのでありまして、これはやはり一定教育の標準を維持するためには、教授陣にもう少し力が入つてもいいのではないかという点を考えるのでありますが、最もその教授陣を経て、設置者に対して、これだけの校舎を設置すべしという要望を出し得るのであります。その点について御意見を伺いたい。
  66. 寺澤恒信

    参考人(寺澤恒信君) 現在参議会というような制度はないので、現在におきまして只今仰せのような順序教授会等においてその希望を出しまして、それぞれやつておるわけでありますけれども、何分にも予算のことはそれぞれ地方議会の決定を経なければならないことであり、御承知のように地方財政というものは必ずしも豊かではないので、大学教授が、教授会の側が希望するだけの予算というものが必ずしも与えられない。むしろ端的に申しますならば、地方議会の議員のかたたちというものは、端的に申しまして大学教育というものに理解が比較的薄いかたが多いわけで、こういうかたたちに、大学教育というものはどういうものであるということをむしろ十分理解して頂くというようなために、実は帰られましたが、うちの柴田学長のごときもしばしば都会議員のかたたちを御同道願つて、他の国立大学を見学に引張つて歩いているというような状態であつて、十分理解してもらつて、成るほど大学にはこれだけのスペースが要る、これだけの設備が要るのだということを都会議員のかたたちにむしろ教育する、といつては語弊があるかも知れませんが、それくらいの必要があるような実晴にあるわけでありますし、従つて参議会というものの中に、半数でありますが、大学当事者以外の人たちが半数入りまして、そうしてそれらの人たちが十分大学というものについての理解を持つて、そのことを設置者のほうへ反映させてくれるということは、現状においては、この公立大学関係予算というものを殖やすという点において或いは効果があるのではないかというようにも思うわけであります。ただこの点は全く今後の運用の如何にかかるわけで、先ほどありましたような、この参議会というものの中に、国立大学評議会の場合に考えられるようにボス的な人が入つて来て、大学に無理解なことを押し付けるというような形になるならば、それは弊害のほうが非常に大きい。そこは非常に将来の、現在ないもので将来の機関でありまして、どういうふうになるかということはむずかしい問題だと思います。率直に実情として申しまして、いずれの公共団体におきましても、大学というものは予想以上に経費のかかるもので、公立大学というものを新学制の実施に伴つて設置して見たけれども、実はもて余ましておるというようなことを設置者のほうが、非公式ではあるが、申されたり、或いは私、文部省大学設置委員をいたしておりまして、地方を若干廻りまして、実情にいささかタツチしておるのでありますが、地方の小さな市等におきましては、その市長がたまたま改選されて代つたということのために、前の市長が設置した公立大学というものを、あとの市長がいささか邪魔者扱いにするというようなことも起つておるので、このような場合に、比較的それぞれの地方におけるところの公正な大学に理解のある人たちによつて参議会というものが構成されるということができるならば、そのような知事が代つたり、市長が代つたりしたことによつて、急激に大学が不利益を受けるというようなことを緩和し得ることにもなるのではないかというような点も考えております。
  67. 高良とみ

    ○高良とみ君 更にもう一つ伺いたいのでありますが、前にそういう御質疑があつたかも知れませんが、その参議会と評議会の性格からいいまして、評議会のほうは学部内及び学部間等の連絡機関でありまして、こういう法文的なものを作つて、そうしてそれがやつて行くよりも、私の理解した点では、参議会と評議会とを合せたような性格、設置者と、行政の、学校運営して行くものと連絡した一つなつたものを作つて行くほうが、参議会の要求する、或いはそれが持つておる特色を入れて行くことができるのでありまして、その評議会の殆んどただ連絡機関以外の意義を私は見ることができないのであります。その点は国立大学についても同じような、屋上屋を架しておる形があると思うのです。それについての公立大学関係の御意見を伺いたいのです。公立大学がすでにいろいろな問題を持つておる上に、又こういうふうな屋上屋を架して行くような、政治の、行政大学運営の、そのために非常に時間を使い、又は大学管理のためにいろいろな組織があるというよりも、もう少し簡単に行くのではないかということについて御意見を伺いたいのです。
  68. 寺澤恒信

    参考人(寺澤恒信君) 煩瑣な点は確かに仰せの通りでありまして、それをできるだけ簡素化するということは私も全く賛成するものであります。この参議会というものを置くことによつて確かに煩瑣ともなるので、その点は只今の御意見通りだと思うのでありますが、先ほどから同じことを繰返して申上げるようなことになりまするが、この参議会の構成員の中に、第三号に、学識経験のある者について当該地方公共団体の議会の同意を得た者という、この第三号の委員というものが、適任者が得られるかどうかということにこの参議会というものの性格がかかつておるので、この委員適任者が得られない場合においては、徒らに煩瑣なことをしますので、大学研究にとつても不利益が多い。これが非常に適当な人が得られる場合においては、むしろ大学運営教授会評議会の意向というものをバツク・アツプして、そうして地方議会のほうにその意向を反映してくれるということになるのではないかというように考えるわけであります。
  69. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は鶴岡君か廣川君にお聞きしたいのでありますけれども、先ほど佐野さんの発言だつたと思いますけれども、この法案は帝国大学時代の慣行を基礎としている。こういうようなお話があつたのでありまして、この御発言は非常に重要な意義を持つておるのじやないかと思うのです。そこで私は伺いたいのでありますが、新らしい大学の性格として、今まで戦争前の古い大学、こういう形がここで十分に払拭されなければならないのではないか、これは教育の全体的な民主化とも関係して来るものでありますが、そういうふうに考えております。そういう点から考えまして、現在果してこの大学運営のし方がどういうふうになつているか、古い時代の形が一体どれだけ克服されて、新らしい民主的なものになりつつあるのか。それから又最近の傾向としまして、或いはそういうものが又元へ戻りつつあるのであるか、こういうことを現場にあるかたがたとして先ずお伺いしたいと思います。
  70. 鶴岡信三

    参考人(鶴岡信三君) その点についてお答えしたいと思いますが、先ず最近において大学運営実情がどうかという形であつたように思います。特に戦争前と申しますか、戦争中と申しますか、それらの点についての相違についての御質問だと思います。申上げます場合を、私が勤務しております工業大学に例を取つて申上げたいと思うのであります。工業大学におきましては、主として戦争以後かなり今民主主義の線に沿つた学校運営が行われつあるということを先ず申上げることができると思います。と申しますのは、御承知のように従前におきましての学校運営は文字通り教授会でやつておりまして、教授のみの教授会学校運営が決定されておつた、而もなお且つその教授会は殆んど学長等の学校責任者の意向によつて左右されるということが実情であつたのであります。それに対して戦争終了後は、私たちの大学においては一応教授助教授専任講師、これを混えましたところの、教授総会と名称をつけておりますが、教授総会におきましてあらゆる学校運営についての審議をし、なお法制できめられている、例えば学位の問題というようなものにつきましては、いわゆる教授会審議せられておる、こういうのが実情であります。その点から申しますならば、先ほど申上げましたように、一応民主化の形がとられ、戦争前に比べますれば、かなりその点についてはいわゆる民主的な運営がされておる、このように存じておるのであります。併しながら御質問の第二項の点になりますると、それは遺憾ながら、殊に最近のいろいろな情勢を反映いたしまして、再び教授独裁と申しますか、有力教授の独裁と申しますか、そういう傾向に再び返える、少くとも返えそうとする空気があるということも同時に申上げることができると思うのであります。これが今度の国立大学管理法の制定と非常に重要なる関係を持つておるのでありまして、例えばここでこの今の法文に盛られた通りに国会において決定されるといたしますると、私たちのほうでやつておりますところの教授総会等におきましても、管理法できめられておるのであるから、教授だけの教授会にしようというような動きがすでに一部現われておるのでありまして、この点につきましては、むしろ国立大学管理法が国会においてそのまま通ることが、折角大学運営がやや民主化されたその勢いに逆行力があるというようなことは十分感じられるのであります。以上御質問の意図に外れたかわかりませんが、お答え申上げます。
  71. 廣川清隆

    参考人(廣川清隆君) 廣川でございます。只今の御質問に対してお答えいたします。私の場合は新制大学を大体標準に置いてお答えしたいと思います。我々のほうでキヤツチいたしております地方の各大学実情におきましては、いろいろなケースがございまして、一括して今どうであるというふうに概括的に申上げることはちよつと不可能なのではないかと思いますが、併しその実態を分析いたしますと、教授会なるものは、昔のいわゆる教職員会議といつたようなものの延長のごとく考えておる向もございますが、併し大学となりましてから、先ほどから言われておりますような教授のところに一線を画しまして、そうしてそれ以下の者はまるで大学要員でもないような扱いをしておるような場合がございます。又その半面に我々の要望いたしますような教授助教授或いは専任講師までをきちんと一応要員に入れまして、そうして極めて特殊な場合に限つて、例えば身分上のもので律する、こういうような特殊の場合に限つてのけておいてやるといつたようなふうにして、学校運営がうまく行く場合もございます。それからこの法案に誰つてありますような、いわゆる評議会の形式を大学運営委員会というような名前において事実上実施して、ある程度の成果を収めておる所もあるように聞いております。全体から見まして、大体教授助教授専任講師を入れまして運営をやつておる所は余り問題が起つておりません。そうして比較的うまく行つております。ところが新制大学の癖に、ある某々方面から教授を輸入した、而もその教授は学位を持つておられる、そのほかのことは、世間的のことなどは何らの常識もないようなケースがある、そうしてその人たちが一つの核となりまして、そこにいわば学閥的といつては悪いかも知れませんが、そういうものができまして、それ以外の者を排除するような傾向に運動が起きたり、そのために学内が異常な渦に捲込まれて、私たちがそれの解決のためにその双方をなだめたり、学校運営をうまくするために内面的な努力をした例が一、二ございます。これなんかは旧制大学の悪い例をそのまま新制大学の中に引張り込むという、勢力的な努力の現れが露骨に出ておるのでありまして、そういうふうな非民主的な行き方は、少くともこの際この大学校を考えますときに、完全に根を断つような方向に持つて行かなくてはならない、こういうふうに私たちは思つておる次第でございます。
  72. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、従来の終戦後のそういう活動の中で、相当民主化の方向を自主的に確立する方向がある程度できた、併し最近はどうもそういう傾向が却つて逆戻りしつつあるようなものが現れておる、而もこの法文によつて、この際現在のままで進められるというと、それがもつと強化される、こういうふうに伺つたのでありますが、そのほかに現在の学園の自治というようなものを本当に保つて行くことができない幾つかの要因が出て来ておるのでないかと思う。こういうような要因につきまして、今考えておられる点がありましたら指摘して頂きたい、こういうふうに思うのであります。
  73. 鶴岡信三

    参考人(鶴岡信三君) 御質問にお答えしたいと思いますが、十分お答えできるかどうかわかりませんが、先ずその要因の一つとして考えられることは、何と申しましても我々の場合、非常に大学研究教育のための費用が現在不足しておる実情であります。なお且つ一昨年でありましたか、国会で決定されましたところの国立大学設置法によりまして、非常に窮屈な定員で我々の場合縛られておるわけであります。職場におきます実情を申上げますと、我々の工業大学においては、一つの講座につきまして教授助教授、助手二名、それに対して雇いが一名、こういうような、これが実態であります。要員は、元来は下のほうの第一線の研究に従事するところの助手とか、雇いとかいうような人たちが非常に必要であるにもかかわらず、それを逆に返しましたところの、いわゆる頭でつかちの形において学校研究教育運営されておる、こういう実情であります。この実情からいたしまして、殊に下級職員の生活の実態が非常に窮屈になつておる。こういうようなことで、ただ教授の言うことを聞いておればよろしいというような風潮が再び出つつあるのでありまして、この教授の言うことを御無理御尤もと聞くことによつて自分自身の生活を安定させたい、こういう意向があるようであります。その点からいたしまして、若し十分な予算が与えられ、十分な研究費が与えられ、自由な研究が許されるならば、我々の大学の民主化がもつともつと理想の方向に行くべきである、こういうように考えております。それから今のもう一つの大きな要素として考えられておりますのは、我々の現在の情勢に対しますところの考え方でありますガ、御承知のように、殊に工業大学のような場合でありますると、あの戦争中に非常に戦争協力のために駆り立てられたものであります。それがこの今日の情勢で再び戦争が起るのではないかというような情勢になつて参りますと、研究者としての意欲を失い、再び我々も戦争に協力させられるのではないか、こういうようなことが職場において、殊に研究室においてかなりな強さを以て研究者の間にそういう気風が瀰漫しておるわけであります。そのときに我々の研究意欲がそがれる、或いは再び戦争中に見られたようなあの封建的な研究室における気風がだんだんに復活しつつある、こういうようなことも実情として申上げることができると思うのであります。以上極めて不十分でありますが、要因として考えられております、心にとつさに浮びました点を三点申上げたわけであります。
  74. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 どなたからでも結構でございますが、二、三のかたから御意見があつたかと思うのですが、即ち大学自治中核教授会に置いて、評議会のほうを単なる連絡機関にしたい、要するに大学自治中核教授会に置きたい、こういうような御意見が二、三のかたからあつたかと思うのでございますが、そうであつたのかどうかということと、若しそうだとすれば、幾つかの学部を持つているところの総合大学と申しますか、そういう大学の意思決定機関と申しますか、そういうものは必要がないのかあるのか、若しあるとするならばどういう形でやつたほうが最もよろしいとお考えになつておるのか、御意見を承わりたいと思います。
  75. 寺澤恒信

    参考人(寺澤恒信君) そういう意見があつたかどうかというお尋ねでございますが、私はそういう意見を申上げますと、教授会運営中核を置くという場合に、これは大学としての統一の意見を出す場合に、当然幾つかの学部から成立つておる場合に、その統一的な意見最後的には評議会できめられなければならないということは、これは学部が幾つかあるという以上は止むを得ないことでありますが、その場合に評議員というものが一つ教授会から独立したものとなりまして、極めて重要な議題が何ら教授会にあらかじめ付議されることなしに、いきなり評議会に持出されて評議会だけでそれが決定されるというような実情がありますので、そうではなくして、重要な案件については先ず教授会に付議されて、教授会でそれぞれの意見が出た場合に、その意見を代表して各学部から選出されておる評議員が、その大学の統一的な意見教授会できめるべきである、そのことを私なりの言葉で申すならば、評議会というものは、各学部教授会の代議員から成立つておるというような形に運営さるべきであるというように申上げたわけであります。
  76. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 鶴岡さんでしたか、今の寺沢さんと同じような御意見が出て、そして大学の意思決定というような言葉はお使いにならなかつたのですが、全部教授会に置かれるようにすべきだというようなお意見があつたと思うのですが、それはどういうことを意味なさつておるのでしようか、もうちよつと掘下げて……。
  77. 鶴岡信三

    参考人(鶴岡信三君) その点についてお答えいたしたいと思うのでありますが、この法案に盛られておるところの機関そのままを若し承認するとするならば、只今寺沢さんのほうから申述べられた意見に私も同様なのでありますが、併しながらもう少し原則的な点に立帰つて意見を申述べることができますならば、私は評議会と申しますのは、これは文字通りの連絡機関であつてよろしい、こういう意見を持つものであります。で大学の学内におきます決議機関としては教授会一本でよろしい。これは法案によりますれば、教授会は各学部ごとに設けられておりまするけれども、もう少し原則的な点に立帰つては、必ずしもこれは各学部ごとに教授会が限定される必要はない。これは全学的な、いわゆる教授会というような機関も設けられて当然いいはずである。そして飽くまで大学内の自治機関としては、その全学的な教授会に分れるべきである、こういう意見を持つものであります。勿論先ほどから繰返して申上げておることによつて御了解願えると思いますが、これが全学的な教授会の場合には、これは飽くまで教授助教授専任講師、そしてそれに助手の意見も附け加える、こういう機構で、構成でやつて行くべきである、かように思うわけであります。
  78. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に公立大学関係のどなたでもよろしうございますからお聞きしておきたいと思うのですが、それは現在公立大学相当あるわけでございますが、公立大学協議会と申しますか、名前はともかくも、そういうような全国的な会が何かあつて、そして文部大臣のときには諮問に答えたり、或いは文部省に対して意見を具申するというような、そういう機関は今持つておられないのかどうか。その点と、それから参議会というのが出ておりますが、これに類似したようなものは各都道府県に現在運営上あるのかないのか、それをちよつと伺いたいと思う。
  79. 寺澤恒信

    参考人(寺澤恒信君) 現在公立大学協会というものがございまして、これは各公立大学代表者でありますから、結局言葉を換えていえば学長でありますが、その公立大学代表者が結成しておる協会でございます。これは総会等が持たれてそれぞれの意思決定を行いまして、重要な問題については文部省にいろいろ意見を具申する等のことはあるわけでありますが、別に法的根拠を現在持つておるわけではないので、その公立大学協会の意見というものが文部省の側でどういうように取扱われるかということについては、きちんときまつたものがないわけであります。なお参考のために申上げますならば、現在上程されております公立大学管理法案の現在の法案通りではなく、これの原案になりましたものは、只今申しました公立大学協会において立案されたということは、先ほど柴田氏から説明のあつた通りであります。それから参議会に相当するものがあるかどうかということは、非常に詳しいことは知らないのでありますが、恐らくない。東京にはないのでありますが、或いはどこか地方に置いておる所があるかどうか、確実なところは存じませんが、多分一つもないだろうと思います。
  80. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は午前中ちよつとお伺いしましたが、私どもの耳に入るところでは、ともかく大学というものは非常に保守的で封建的なんだ、人の繋りというものは官庁における封建性以上だということを聞くわけなんですが、それにつけましても公立大学の、これは新設の大学あたりでは全く学長一人のワンマンでやつておる所が非常に多い、こういうように聞くわけですが、日教組のかたもお出になつておるわけでお伺いしますが、あなたがたのほうで情報が入つておるところではどういう状況なんでしようか。そういう言葉を公立大学参議会あたりで設けたほうがいいかどうか、設けるならどういう形で設けたらいいかというような考え方が出て来るのではないかと思います。参考に承わつておきたいと思います。
  81. 井口次郎

    参考人(井口次郎君) 只今公立大学実情でございますが、実は公立大学が私どもの傘下には非常に少いのでありまして、それが入つて来ないような事情ですね。それが今おつしやられたような学長の独裁というようなところに原因があるということを、例えば四国あたりの公立大学におきまして、そういう事例があるということは耳にしておりますが、実際問題としてどういうふうにそれが運営されておるかというふうな実情を、ちよつとはつきりいたしませんですが、その点むしろ寺澤さんのほうから聞いて頂いたら…。
  82. 寺澤恒信

    参考人(寺澤恒信君) 私も具体的な問題に当つて的確なお答えはできないのでありますが、大学の封建性が非常に強いということは二つあると思います。一つは、むしろ非常に伝統を持つておる、古い、つまり旧帝国大学から現在の総合大学になつておるところに、むしろそういう長い間の伝統におきまして、師弟関係というようなものの非常に何といいますか、固い枠があり、そして主任教授の気に入るような研究をしなければ、その研究室へ置いてくれないといつたような実情がむしろあるわけであります。そのような点から言うならば、比較的新らしくできた公立大学にはそういう意味での封建性というものは少いように思います。併し今度は逆に今の専門学校からつまり転換いたしました公立大学におきましては、学長の、今矢嶋委員の申されましたような、学長の独裁権というものが、かなり強い。これは国立大学の場合でも非常に似たような条件はあるわけでありますが、任免権者というものが、文部省とそれから地方の国立大学というよりは、地方の公立大学とその極く近きにあるところの都道府県知事というものとの関係のほうが、距離が近いという点から言つても極めて密接でありまして、その点で人事権等において学長が独裁的に振舞い得る可能性が公立大学のほうが強く現われております。そういう意味において、新制大学、特に比較的規模が小さい公立大学におきまして、今なお専門学校時代そのままのように学長が人事権を一人で握つておるというような所があるわけであります。それから又同じようなことで、少し違つた現象でありますが、成る公立大学におきまして若干の問題がありまして、その責任を負つて学長がまあ辞意を示して、そうして教授会で代りの学長を選出したにもかかわらず、その県の理事者側が依然として古い学長に好意を寄せておつて教授会が選出した新らしい学長を長い間任命することを拒否していたという実情一つ承わつております。そういうような点で、いわば参議会というものが置かれることによつて、今のようなことが緩和されるかどうかという問題は非常に疑問なわけでありまして、むしろ今のような問題が、つまりそれぞれの県の理事者が公立大学に対して或る種の圧迫を加えておるというような場合においては、全国的な機関である公立大学協会のような所から或る種の勧告が行われるということのほうが有効ではないかというようにも思うわけであります。
  83. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一つ、これはほんの念のためにお伺いしたいと思うのでありますが、立花さんとそれから公立学校の先生関係と両方のかたから承わりたいと思います。現在は公立大学は都道府県における所管が知事になつておるわけでありますが、この所管を教育委員会所管に一本にするということについてどういう御見解を持つていうつしやいますか、立花さん並びに公立大学の先生関係から承わりたいと思います。
  84. 立花昌夫

    参考人(立花昌夫君) 現在の地方の財政事情は非常に窮屈であることは私から申上げるまでもないのであります。六三制の整備ということで教育委員会は今非常に努力をいたしておりますし、殆んどそのほうに手一ぱいで、恐らく大学運営までやつて行く余裕と申しますかは非常に少いのではないかと思うのであります。従つて現在の段階におきましては、むしろ都道府県知事が直接教育委員会とは別個に大学運営をやつて行つたほうが実情に合つているのではないかと思います。
  85. 寺澤恒信

    参考人(寺澤恒信君) 只今の問題につきましては、私二段構えで先ほど意見を申上げたのでありますが、大学全体についての仮称大学委員会というようなものが全国民の公選によつて選ばれて中央に置かれる、そうしてその委員会において国庫から、国立大学予算のみではなく、公立大学、更に私立大学に対してもかなり多くの補助が与えられるというような状態を鉱は望むのでありますが、そういうことができるならば、それぞれの地方において現在の公立大学教育委員会の所管に移しても差支えないであろう、それがいいだろう、それが首尾一貫するだろうと思われます。中央に置かれる機関は、法案に盛られておるような公立大学審議会である場合に、中央機関をそういう状態にして置いて、現在の公立大学をそのまま教育委員会の所管に移すということは首尾が一貫しないし、又今立花氏から言われたように、現在の予算状態においては六三制の整備その他のほうに、今のお話のように、教育委員会の主たる任務が注がれているので、このことは実情に副わないことになるのではないかと思うわけであります。
  86. 高良とみ

    ○高良とみ君 ちよつとお伺いしたいのでありますが、鶴岡さんと廣川さんにお伺いしたいのは、この教授会と、或いは全体教授会というようなものを今までお持ちになり、そのほかに運営委員会のようなものをお持ちになつて適当に処置して来られたという立場からいたしまして、やはり教授会目的とするところはアカデミツクな学問上の自由と、それを高めて行くことに本来の趣旨があると思うのであります、教授会自体の仕事としては。それから運営委員会のほうは、いわゆる自治の方面にあると思うのでありまして、そういう御意見がありまするような方向に国立大学協議会あたりでここに出ておりまする国立大学管理法案に対する修正の方には動いておられないのかどうかということを伺いたいのであります。
  87. 鶴岡信三

    参考人(鶴岡信三君) お答えいたしますが、只今の御質問の趣旨が実は呑込めていないのでありますが、国立大学協議会とおつしやいましたのですか。
  88. 高良とみ

    ○高良とみ君 そういうものをお持ちになつていらつしやるのではないのですか、国立大学協会……。
  89. 鶴岡信三

    参考人(鶴岡信三君) それに相当するものは別に今のところないわけでありますが、ただ大学教授連合というようなものはございます。そこでは現在のところ国立大学管理法案について修正して行こうという気運は全然ないように私は承知しております。それでよろしうございましようか。
  90. 高良とみ

    ○高良とみ君 それならばお伺いしますが、全国大学協議会というのはおありになるのですか。それもありませんか。先ほど私ちよつと聞きそこなつたかも知れません。
  91. 井口次郎

    参考人(井口次郎君) 今の御質問に関連しまして……、結局今鶴岡さんのほうから言われましたように、現在の大学教授といいますか、そういうものの機関としては一応大学基準協会というものですね、これは従来の旧制大学を中心としたもので終戦後できたものです。それからこれは学長を中心にしまして、今おつしやられたのと同じものがたしか国立大学協会ですか、そういうものがあるわけです。それからもう一つは今の教授連合、それから私どもの日本教職員組合ですが、その大学の中にやはり教授から、事務系の者まで含めまして相当の人員が一つ構成員をなしているわけであります。大体そういうものが団体と言いますとあるわけであります。
  92. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) よろしうございますか。他に御意見ございませんか。
  93. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはもう先ほどからも述べられたと思うのでありますが、こういう法案で一番重要な、権力の不当な支配から守るというこれが日本教育体制の中で一つの基本的な課題になつておるわけですが、こういう法案によつて、実際守ることができるかどうかというような率直な、素朴な質問になるわけですが、どうお考えになつているか。これはどなたからでも結構でありますが、お伺いいたしたいと思います。
  94. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) どなたか…。
  95. 井口次郎

    参考人(井口次郎君) 只今の御質問の答えになるかどうかわかりませんですが、第三章の商議会でございますが、やはりこれは先ほど我妻参考人のほうからも申されましたように、例えば、地方の新制大学におきましては、当然に国立大学の場合において国家予算の下に新制大学の育成が考えらるべきであるのに、大体大学設置審議会と申しますか、いろいろの終戦後のいきさつから申して、殆んどの大学が地方の、例えば寄附行為であるとか、宝くじを各府県においてやつてもらつてそれによつて施設の充実を図るとか、いろいろの面で地方財政の恩恵を受けているのであります。そうするとたまたま一昨日でありますが、ここで産業教育法の問題を論議せられましたが、あれと同じような、例えば商議会に外部のかたがお入りになりました場合、その外部の協力の問題と大学の自主性の問題がやはりどうしても実際問題といたしましては問題になつて来るのじやないか。いわば職業教育というような部面におきまして、大学の各学部、農学部であるとか工学部であるとか、そういう直接的な関連のあるものについてはウエイトがかかつて来て、文学部であるとか理学部であるとかいうふうな、純粋の基礎的な学問をやるような部面については余り関心を持つて来ないのじやないか。そういうふうな点でどうしてもこの商議会の場合、先ほどから公立の場合におきましても、要するに運用の妙というようなことが問題になつて来るわけでありますが、実際問題として、こういうふうな商議会が置かれました場合に、いろいろ最近の客観情勢から考えまして、どうしてもそういうふうな大学の自主性の問題と地方の協力の問題の関連が非常に危険をはらんでいるんじやないか、そういうふうに考えているわけでございます。
  96. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一点伺いたいのですが、今まで文部行政の中で、ずつと終戦後四年我々見て来たのでありますが、この法案を出されるかたは、いつでも予算の裏付けという問題ですね、経済問題と切離なされて、抽象的な形で出されて来ている。具体的な問題として、現実の上にしつかり根を下していないという、そういうところから来ていると思うのですが、この法案によつてやはり先ほどからの論議でやや明らかにされた点は、こういう所にあるのじやないか。つまり待遇の改善の問題については、殆んどこの法案で何らこれはかち取ることができないようなものだと思うのです。例えば中央審議会、これは非常に重要な機能を持たすべきでありますが、例えば予算審議権、或いはこれを国会とか政府に対して強力に発言する、そういうような面は削除されているような恰好で、こういう形でこういうものを出されるときに、そこに何が起るか、こういう点について皆さんが予測を持つておられるのじやないかと思う。私はこの点が日本教育行政の中で最も重要な問題だと思つているんです。従来そういう点からこの法案がこういう形で出され、一方では全く生活権の問題が解決されていない。まだ大学研究組織の問題についても解決されていない。まるでこれと反するような事態が刻々これは下から起つているわけです。こういう形の中に、このものだけが出されて、抽象的に義務だけ強いて来る。そこから起つて来る次に予測される問題ですね、こういう点について福島さんあたりから、これは一つ予測されるものについてお伺いしたいと思うのであります。
  97. 福島要一

    参考人(福島要一君) 非常にむずかしい御質問でございまして、むしろ参議院のほうの政治的な立場からいろいろお考えを願うべき問題だと思うのであります。私自身の経験しております学術会議を具体的な例として考えて見ましても、今言われたような点は非常に強く、先ほど私が予算審議権がないのも止むを得ないということを言つたのに対して御質問がありましたときにもお答えしましたように、実際上これは非常に具体性がないわけでありまして、若しも本当にこれで大学そのものをよくして行こうというのならば、中央審議会のようなものを作る場合に、それに対して単に紙の上だけの権限ではなくして、それに伴うところの事務機構、或いは審議すべき相当機構からして考えて行かなければならない。例えば学術会議でありましても、ああいう名前だけはできておりますけれども、実際上は何らのそういうことができないでだんだんとむしろ翼賛的な結論を出して行く。例えば実は先だつてもそういうことがあつたのでありますが、そういう建言をしたならば、文部省が困るだろう、或いはそういう建言をしたならば通産省が困るだろうというような意見が次第に出て来る。そういうようなことでは到底正しい方向には進み得ないのでありまして、根本的にそこに大きな問題がある。学術会議予算をいろいろやるといいましても、結局実際上は文部省の中の予算の担当官が大蔵省といろいろ打合せることが一番中心的になるわけです。それでいろいろ意見を出すけれども、それはいわば根のない意見でしかないといつたようなことで、学術会議がいよいよ弱体化し、その中での特定の人達のいわゆるもの取りになる方向が非常に強い。そういう意味で私は法案のようなものができます際に、今御質問のあつたとこがろ一番重要だと思うのです。内容、実態、それが如何なることをなし得るかというその点をはつきりいたしませんと、先ほどから言われたように、非常に微妙な運営という場合には、現在のいわば力関係で、その力の強いほうが都合がいいように運営するということになる可能性が非常に強いわけです。そういう点からこの法案を見まして、非常に全体的に何と言つても不満な点が多いのであります。こういうような形を整えることよりも先に、やはり実体的なものを如何にすればかち取り得るかという点を改めてもう少し考えて頂くほうがいいんじやないかというような気持から、実は二、三の点について重要な問題を提起して、むしろ余り早くこういう問題を形だけで片付けないで頂きたいということを申上げたわけであります。
  98. 鶴岡信三

    参考人(鶴岡信三君) 只今の御質問に対する答えとして補足的に申上げたいのでありますが、一つの例を今我々の非常に問題になつております研究費の点につきまして関連させて申上げたいと思うのでありますが、これは今我我科学研究費の配分を受けたばかりでありまして、この配分に関しまして、殊に第一線の研究者が非常にこの点に不満に思つている、この実情一つの例として申上げたいと思うのであります。というのは、今年度の科学研究費の配分に対しまして、これは学術会議の要望があつたように聞いております。例えば五万円以下の研究費はこの際支給しないほうがよろしいというような御意見があつたように聞いております。というのは、現在の実情におきまして、五万円以下のような零細なものでは研究費としての、研究補助金としての実体をなしておらない、こういうお考えにあつたように思いますが、その点については私も全く同感であります。もう五万円というようなものでは殆んど我々の研究は何もできない。殊に我々のような理工関係研究室に従事しております者については、その点は全くその通りでありますけれども、同時にその配分が決定されますときに、文部省のほうでは、本年度は講座研究費が非常に大幅に増すから、三十万円というような具体的な数字もあつたように承わつておりますけれども、講座研究費が非常に増すから五万円以下の研究費はなくしたほうがよろしい、研究補助金はなくしたほうがよろしい、こういうようなことがあつたように聞いております。ところでそうして我々が承知いたしましたいわゆる講座研究費、教授助教授たちに講座研究費として、いわゆる教育費の研究費としてきまりました額は、年額三万円であります。こういうようなことで、一方におきましては科学研究費の配分の場合には、講座研究費が増すから五万円以下のところは削る。例えば第四部におきます配分を見ますと、助教授などが幾ら重要な研究をしていようとも、全体の額も押えられ、而も五万円以下はいかんということでどうしても件数が削られます。その件数が削られる形がどう現われて来るかというと、実際に講座を持つているところの教授だけに研究費が行く、こういうのが科学研究費の配分の実態であります。ところで教授研究費を持つて助教授はその教授の所に頭を下げて行つてもらえばいいではないか、こういうことであつたのであります。そういたしますと、先ほどから問題にされておりますところの研究室におきます封建性をますます助長させるために科学研究費が配分される、こういうことさえも言えると思うのであります。こういう点につきまして、若し教授会で以て下から組み立てて行つて、例えば私の研究にはこれだけの研究費が必要である、こういうことが出されて、これが中央審議会に反映し、その中央審議会が予算政府に対しまするところの審議権が若しあるとするならば、そういう点はかなりに改善されるはずではないか。要するに我々の実際の研究者、第一線の研究者としての声を十分に反映させるような機構が必要ではないか。その意味におきまして、現在立案されておるこの国立大学管理法案がこのまま通るならば、我々の大学におきます封建制をますます助長する結果になる、こういうことを補足的に申上げたいと思います。
  99. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御意見ございませんか。それではこれを以て本日の委員会を終了いたしまするが、それに先立ちまして参考人の各位に御挨拶を申上げます。  本日は非常に御多忙であらせられるにもかかわりませず、我々がこの重要な法案審議する上において参考にいたしたいと存じまして各方面のかたにお越しを願つたのでありまするが、御熱心にお越し頂いた上に非常に誠意ある御意見をお述べ下さつて、又長時間に互つて会議を進めましたにもかかわらず、大変長くおつきあい頂き、又各委員の甚だ不躾な御質問に対しまして快くお答え下さいまして、我々この重要法案審議する上において非常に利益するところが多いと存じます。この点皆さんに対して厚くお礼を申上げまして、本日の参考人の御意見を承わる会を終了いたしたいと存じます。有難うございました。    午後四時三十二分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            成瀬 幡治君            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員            川村 松助君            木村 守江君            工藤 鐵男君            平岡 市三君            荒木正三郎君            和田 博雄君            高良 とみ君            山本 勇造君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   事務局側    常任委員会専門    員       石丸 敬次君    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君   参考人    東京大学教授  我妻  榮君    東京大学伝染病    研究所長    長谷川秀治君    東京大学教授  茅  誠司君    京都大学人文科    学研究所長   貝塚 茂樹君    東京工業大学助    教授      鶴岡 信三君    山口大学教官  廣川 清隆君    教育刷新審議会    委員      佐野 利器君    東京都立大学長 柴田 雄次君    日本学術会議会    員       福島 要一君    東京都立大学助    教授      寺澤 恒信君    東京都総務局学    務課長     立花 昌夫君    日本教職員組合 井口 次郎君    静岡大学事務官 伊與田圓止君