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1951-05-10 第10回国会 参議院 文部委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十日(木曜日)    午後二時六分開会   —————————————   委員の異動 五月九日委員岡田宗司君辞任につき、 その補欠として波多野鼎君を議長にお いて指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○産業教育法案衆議院提出)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれより本日の会議を開きます。  日程に上せておりまする産業教育法案総括質問を始めることにいたします。提案者代表長野衆議院文部委員長がお見えになつておりますので、御意見のあるかたは御発言を願います。それから明日もずつと続行いたしまするが、提案者衆議院委員長以外にそれぞれ関係する或いは大蔵省、或いは文部省政府委員をお呼びになる御予定があれば、同時にお申出頂いて、そうして明日のその手配をいたしたいと思います。それと十五日に公聴会を開いて参考人を召喚して、参考人の出席を求めていろいろ御意見を伺いたいと思いますので、どういう形でお呼びするか、この前申上げておきましたが、お気付の点、今日もう一度改めて專門員のほうにお申出頂きたいと思います。それではこれから質疑を始めます。
  3. 平岡市三

    平岡市三君 これは総括質問になるか、逐条審議にもなりますが、この産業教育範囲でございますが、そこの第二条に中学校高等学校、又は大学と、こうなつておるのでございますが、私の知る範囲では、大学と申しますれば四年制の大学意味するように考えるわけであります。そこでいわゆる短期大学が抜けておるのではないかと、こう思うわけであります。職業教育といたしましては、この短期大学專門学校が変つたといえ誤弊があるかも知れませんが、非常に重要性があるのでありますが、その点を一つ説明願いたいと思います。
  4. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 只今質問にございましたように、大学とだけしかここに書いてございませんけれども、実はこれは学校教育法の第百九条にございますので、短期大学大学に含む意味合いの条章がございます。私どもこの中に短期大学を含めたつもりでおるのでございますが。
  5. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 この財政的援助の項目の下で、予算範囲内においてということが入つているのでお伺いいたしますが、大体においてこれを十分な財政的援助を行うということにして、日本の現状において幾らほどの財政的援助を必要とするか。現在すべてのものにやるものとして、現状において周到につまり財政的援助を施すという場合には、幾らの金を見積つて置かなくちやならないかと、こういうことです。
  6. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 資料といたしまして、お手許に細かい計算の基礎を曾てお差上げいたしたと思いますが、それにもございますように、大体全部で二百億ということで、そのうちの半分の百億を国庫が負担するということでございまして、それを七年計画でやつて行きたいという計画の下に立案いたしてございます。
  7. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 七年計画というわけですね、どれですか、その数字のやつは……、一年に二百億というものは、つまり全部を総計せられてですか。
  8. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) はあ、さようでございます。
  9. 加納金助

    加納金助君 対象になる学校はどのくらいになりますか。
  10. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) ちよつと今トータルを出すのは何でございますが、この表に全部挙げてございます。職業教育統計資料、一九五一年というやつです。金額のことはずつと休会前の国会のときに皆様のお手許に配付いたしたのでございますが。
  11. 平岡市三

    平岡市三君 今ここにはないのでございますか。
  12. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 表題産業教育振興に必要な経費という表題です。
  13. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 それは今ここへは来でおらないのですね。
  14. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 休会前に皆さんに御配付しております。今手許ちよつと少数残つておりますから、御参考に。
  15. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 二百億で七年間で、その半額補助するというと七百億ということなんですか。
  16. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 七年間の総トータルが二百億でございます。それの中の百億を国庫で支出するということになつております。その百億を七年計画で割つて参ります計算にしてあります。
  17. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 その補助する額が、つまり向うにおいてそれを準備した場合に、この規定の基準に達したものにやるわけですね。一般のものにやるわけでない。
  18. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) さようでございます。
  19. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 そういうことにおいて、つまり能力のある学校には援助が倍加して行くと、援助が与えられて倍加して行くということが成り立ち得る。能力のない学校というものには、これには補助が行かないということなんでしよう。結局そういうことになつておる、どうですか。
  20. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) 只今のお尋ね一応確かにそういう形になつておるのです。併し各学校実情教育的に見ますると、早晩どうしてもやらなければならないほどの状況が全国に多いのでございます。そこで結局はこの国庫のこういう方法を講じ得なければ、全国学校が早晩解決をしなければならないことになつておるのでして、結局熱意と申しますか、努力をせられるのが従来よりも半分で済むということになつて参ります。従つて全般に放つておきましても、力のあるところのほうが先にできるのでございましようが、それを全体にその努力負担量を半分にした。こういう点において意味があるじやないかと思います。
  21. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 それはよくわかりますが、私の質問をしておる点は、つまりそれをみずから負担する能力を持つておる学校は無論やるが、能力においてそれが、成立しない学校というものがあると見なくちやならない。
  22. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) なおそこのところは十分に、助成金を出しますときに実情を見まして、どうしても努力しておられるけれども、そこまでは追つかないというところへは勢い若干濃く、多く割合をお上げする。そうして力が十分にあるというところへはお上げするのを、予算範囲内において比較的薄く行くと、こういう調節はいたす余地があると思います。
  23. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 その調節をすることが法的に何か中に入つてなくちやならないが、何か入つておりますか。
  24. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) 実は最初の頃に、成立ちを申しますると、二分の一という計数が入つておりましたが、いろいろ練つて来ました間に、殊に司令部あたりとのいろいろのお話の間に、その数字があるほうがいいこともあるが、又困ることもあるというようなことで、その二分の一というものが数字の上から消えております。
  25. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 ここに書いてあるのは何ですか。
  26. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) 只今手許に差上げてあります法案にはそういう二分の一というきまつた比率はないのであります。
  27. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 これは前のやつですか。
  28. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) 二分の一というのが若し書いてあれば、それは非常に古いのでございます。ずつと最初の、まだ決定に至らない前に……。
  29. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 まあよろしい、それはこつちの材料がわからないのだから……。ともかく二分の一を削つたということ。
  30. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) そうです。
  31. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 つまりあなたがたのほうでも私の今問おうとしていることはわかるでしようが、つまり強力なものに補助してやるということは、価値のある、弱い学校にも早く独立するように補助するということも必要だと思う。そこで私はその点がむしろ、採用しちやつた場合に、弱いところに余計廻すような方法をとろうかというようなふうにも聞えたんですがね。
  32. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) それでよろしいのでございます。
  33. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 そういうふうにまあ聞えた。そういうような法的措置がこの法文の上にできておるかというのです。それは文部省の役人とか審議会の人の手心でやるというのでは、我々納得できないから、その考慮があるならば、その考慮はこの中に盛つておるのでありますか。
  34. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) それは盛つております。
  35. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 それは逐条審議に入つたときに言いますが、盛つてあればよろしい。  その次にお尋ねしますが、七年間に百億という金が、新らたに大蔵省で入れて、現状ほかの教育の場面につまり侵害することなしに、それが独立して今これを作り得るという見込が立つておりますか。言葉を変えて言うと、まあ露骨に言うと、六三制あたりのものを多少動かすということを全然考慮なしで、これだけで行けるというような見込大蔵省のほうから立つてあるか、ここへ……。
  36. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) そのことでございますが、これは六三制の予算とは別個考えまして、又その建前予算折衝もいたしまして解決を得たのでございまして、この法案全体は、いわば六三教育と申しますか、それの補足と申しますか、補充と申しますか、さらに足らざるものをこれを補おうという、充足的な意味のものでありまして、補充することで、足らざるところへ更にこれを充たして行こうという考えかたであります。
  37. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 わかりましたが、補足するという意味のことで私が問おうとしているのは、早い話で六三制がもう全部でき上つたものと見て、或いはこつちでこまかすとかいうような措置でなしに、別個立場において百億という予算大蔵省に納得さして交渉されたか、こういう点です。在来つまり六三制に当て得べき今までの計数があるのであります。結局これを完成して行くにはまだまだ我々のほうの主張がある。そういうものと別個に、それ以外に百億という金をつまり大蔵省が捻出するということに関する大蔵省見込なり考えかたを、あなたがたが吟味して頂いたのか。
  38. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) その点は大蔵省と交渉いたしますときにも私ども念頭に置きまして、六三予算とは別個折衝して参りました。
  39. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 六三予算のほうには食い込まない。
  40. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 私ども立案者のほうの建前といたしましては、そういう建前でやつて参りました。
  41. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 つまりそうなりますと、今までの文部予算というものに新しいこれが附加されるということにならぬといかんわけです。結局別個の財源を発見して来るか、つまり今まで持つてつた予想の中のものでせずに、新らしくこれだけのものを増加する。今年殖えておりますから、われわれは文教のほうにもつと重要な予算を取ろうという肚は持つておるのです。ですから今までのに附加してこれをお取りになるというのなら、私どもはその功績を非常に感謝したい。併しながら今まであつたものをこういうふうにするのだということは、これは先ほど申上げたように侵蝕する慮れがあるので、だからその点は、こういう点は、立案するに一番重大な問題として当られたと思いますから、そこで十分大蔵省と交渉しておりますかということを、私も大蔵省に問おうとしたこともこれなんです。つまりこれによつて従来持つておる教育体系なりそれから教育の理念なり、基本なり計画なりあるもので、そういうものに廻すべき金をそういうところに廻すことがあつては困る。私の主張を言つてしまうと、交渉する際に新らしいものでやろうという、こういう主張なんです。そういう点に考慮があるかないかということなんです。
  42. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) 只今の御質問非常に御尤もでございまして、私ども只今横田專門員から申しました通り最初から既存経費と取換えるというようなことは全然頭に置きませんので、大蔵財務当局と数回の折衝をして参りました。なお事務当局では、余りに数の大きい問題でありますことであり、それから二十七年度の問題であるということなどで、事務当局だけでは背負い切れない問題であるやの空気もわかりました。結局これは内閣或いは党と申しますか、政策問題としてこの問題を了承すべきか否かという問題になるというようなことで、結局高いところのほうにおいて大まかのことが立てられたように私承知しております。
  43. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 よろしい。その点はもう一遍更に大蔵省のほうに、かなりこの問題を取扱う根本的な問題なんですから、予算措置の上においては在来の諸計画に関して支障を起さないということ、これの援助ということが最も正しく、その教育の発展する形の上に使われる、こういうやり方、それをあなたは考慮したかどうかというその問題は、私は逐条審議で行きたいと思うのです。  それでその次にお尋ねしたいのは、百億という金のうち二十七年度にはどれだけ見積るか。
  44. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 一カ年に約十五億ほどが入ります。二十七年度には。
  45. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 つまりあなたのおつしやるのは、二十七年度から、年度で平均割にお割りになるという肚なんですか。
  46. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) はあ、さようでございます。平均割にいたしますとそういうことになります。
  47. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 平均割ということを私ども問うのではない。そういうことは資料があればすぐわかる。そうではない、二十七年度に支出し得る金、これが与えられたんだ。それがどれだけ実際にあるかということが問題なんで、今私は何も百を七で割るようなことを問うておるのではない。(笑声)つまり二十七年度に百億のうちどれだけ取るかという、これははつきりしたことはわからなくてもいいが、見込はどういうふうに折衝なさつたかということを私は問うておる。
  48. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) 百億と申しましたことも、事務的に実情を概観しまして……。
  49. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 ちよつとあと数字の表を下さい。私は見当つきませんから。
  50. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) あとで差上げますが、百億という数も、実情を概観いたしまして、それからそれを最小限度ところに持つて行くところの、その限度に必要なところに持つて行くというふうで出しました数です。従つて事務的に見たミニマムの必要数というふうに見ております。それで大蔵当局などにもその数は数回勿論お耳にお入れして、話を今日までして来たのであります。それからそれを大体において七年くらいに割つて、即ち平均約十五億くらいずつということならばやつてもらえるのではないかという我々の気持から申上げておるのでございまして、それで二十七年に具体的にどれだけかということになりますと、二十七年度の予算はまだ着手されておりませんから、その確たる約束はできておりません。
  51. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 約束はできておらんが、ほぼ百億を七で割つた数ぐらいは何とかもらえるかと、予算において見たところ、又あなたが予算内においてほぼそれだけあるとおつしやる点と、まあ今どうせ整理しなければならないが、はつきり出るわけはないが、ほぼそれだけというならば、何ほどかの了解があるかないか。
  52. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) 只今申上げました平均額に少くとも近いところに是非持つて行きたいという気持でありまして、今後もその線で努力したいと思つております。
  53. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちよつと今のに関連しまして、それじやあの大体平均額に近いところに持つて行かれるだろうという今の御答弁つたのですが、「予算範囲内において」、法文の上にこういうものがあるわけですが、この財政的援助補助ところですが、十八条、ここのところ高等学校における産業教育の具体的の意味、まああとでお伺いしたいのですが、これの説明書によりますと、国又は地方産業発展のために特に必要と認められるものに対しては第十八条の基準以上の設備の充実を図ろうとするものであるということがありまして、予算内におけるという言葉と、それから基準外に出てもいいという言外の意味がこの十八条の中に含まれている、その矛盾をどういうふうにお考えになつていらつしやるわけですか。
  54. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) これはお説の通りそういうふうに分けて  法文を組んでございまして、十八条の第一項は、一つ基準にまで高めるために補助する目的で作りまして、第二項は基準を別にしまして、必要な産業教育と認めた場合、それに必要な額を補助すると、二つに分けて考えてございます。
  55. 高田なほ子

    高田なほ子君 結局これは予算範囲内ということは、ここから崩れて行くということは当然わかるわけですね。国が必要と認めた場合には、この基準以上のものを出すことができるということがこの条項に謳つてあるわけなんで、結局根源は、高等学校のその産業教育内容の問題に触れて行かなければなりませんが、それはあと質問に譲りますが、そういうような法文解釈であるということが確かになればいいわけです。
  56. 石井つとむ

    衆議院専門員石井つとむ君) 只今の御質問、私が伺い違いしたか知りませんが、予算範囲内というこの文字の意味は崩しておらんつもりでおります。第十八条の第一項では、つまり全国的に一つの共通のと申しますか、一貫した普通の標準としての、特に一つ基準考えられております。第二項のほうは、この特別の、この地域において特殊産業、特徴のあるものがございますから、そういうものに関係したところには、もう少しそれにプラスした別の意味基準考えまして、それに継ぎ足して行こうということでございまして、予算を組むときにそれらを双方念頭に置いて予算を組んでおります。従つて総額としては、やはり依然予算範囲内においてでございます。
  57. 木村守江

    木村守江君 学校施設充実によつて教育の向上を図ることは、これは誠に結構なことであつて、どうしてもやらなくちやならない問題だと考えております。そういう点から考えて、一体予算を取るのに、取る面からいつて、こういうような法案作つて、幾分でも文部省関係予算を増額するということは誠に結構だと考えております。併し先ほど梅原さんから申された通り文部省に今まで与えられた予算の中のからくりであつては飽くまでもいけないのであつて、そういう点では絶対にないという御答弁であつたので、大変に満足した次第であります。どうぞそういうような立脚点から今までの予算の上にこの法案作つて、新たなる予算を取るのだというような考え方であつてもらいたいと思います。それで私の聞かんとするところは、先ほど学校に大体二分の一の補助をするというような御説明でありましたが、大体今までの補助の形式から申上げまして、如何なる補助であつても大体は二分の一であつたと思うのです。ところが今の答弁によりますと、地方状態によつて学校状態によつては何らか斟酌するというようなことを申されましたが、これは答弁としては誠に結構でしようが、実際問題としてそういうことを如何なる基準において判定し得るかという問題なんです。これは天災地変によつて学校が焼失したというような場合だつたらば特別でしようが、それ以外には、町村財政の窮迫しておるところ府県財政の窮迫しておるところは、いずれのところにおいても同じだと思うのです。そういう点から、その答弁は大変結構なんですが、軽々しく地方事情によつて勘案するのだというようなことであつては私はいけないと思うのです。飽くまでも地方のこの学校施設充実を図るために助成するのだというような点から、基本方針を二分の一ときめたらそういう方針で進めて行つて頂きたいと考えるのです。それは勿論平衡交付金割当等についても、地方財政状態によつて非常に違うというような観点から、割当額を決定するというようなことを申されるかも知れませんが、これは学校施設充実の点については、飽くまでも原則的な半額補助という線をきめたらば、その線を強く出して行くのでなければ非常な弊害を招くのじやないかと考える次第であります。それについて先ほどの答弁では余りどうも答弁としては結構ですが、どういうところ基準として地方実情に応じて勘案すると言われるのですか、そこのところちよつと説明して頂きたい。
  58. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) 只今の御質問非常に御尤もでございます。軽々にやるべきことでないということは十分私どもも感じております。ただこの基準を作りまして、それに到達するまでに、それを二十年でやりますか、或いは五年でやるか、ところよにつては早いのと遅いのとがありますから、結局においてはその基準に達するまで補助をして行くべきことでございまするが、そこに緩急の順序を立てるというような問題もございましようし、或いは非常に特別の事情のある場合に、若干そこに色合をつけなければならないというようなことが起り得るかも知れないと思うのでございます。  そういうような場合には、相当それは重要な問題と思いますので、これらの問題について文部大臣が、即ち文部省事務当局だけで勝手にやるのではなしに、そういうような問題を審議する、そういうような重要な問題を審議するという意味において中央審議会に当然こういうような問題はお諮りして、そうしてそこに若し動かすとしても、若干の標準を立てて、その線で動くべきものであるということをこの法案では構想いたしております。
  59. 平岡市三

    平岡市三君 この産業教育という意味でございますが、文部省設置法教育課程審議会では、これを職業教育というようなことを語つておりますが、産業教育職業教育に、職業産業というのにこれは違いがあるかないかということをお尋ねしたいのであります。  と申しますのは、この文部省設置法のほうの審議会に、今度新らしく中央産業教育審議会というようなものが設けられますれば、その教育課程等はどちらでこの審議をするのか。即ち教育課程審議会審議をするのか、新らしく設けられますところ中央産業教育審議会審議をするのか、その他のいろいろな問題が起きるのじやないかと思いますが、産業教育職業教育の違い、或いは同一と御解釈せられておるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  60. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 只今の御質問でございますが、職業教育と申しますと、音楽とか美術、そういつたものも従来入つておるのでございます。それらはこの法案の中では入れない建前考えられました。従つて産業という名前のほうが適当であろうということでつけたような次第でございます。
  61. 平岡市三

    平岡市三君 そういう御解釈をなさいましても、この産業教育職業教育というものには幅の違いがあるというだけでありまして、いわゆる狭義に解釈するか、広義に解釈するかという問題でありますから、結局審議会でも一つ教育課程のような問題が起きますれば、どつちでこれを審議するかという問題が起きて来るのじやないか。教育課程審議会でやるか中央産業教育審議会でやるのか、我々といたしますれば、今日の行政機構というものは非常に複雑でありますからして、これを経費節約意味においても簡単化する必要があるのじやないか、そういう場合に非常に似寄つたような事柄が重複して審議されるというのはどういう取扱いをするか。これは地方産業教育審議会教育委員会との関係においてもそれは考慮すべき問題じやないか、こう思いまして御質問いたしておるわけであります。
  62. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今教育課程教育課程審議会審議するか、或いは新らしくできる中央産業教育審議会において審議するかということでございますが、この法案が成立いたしました場合に、我々といたしましては、中央産業教育審議会におきましては、産業教育という全般立場から審議して差支えないと思いまするが、併し教育課程はそれぞれほかの教育内容とも非常に密接な関係がございますので、そういう連関も考えまして、専門的な事項は最後に決定的には教育審議会においてきめらるべき問題であると解釈いたしておるような次第であります。
  63. 高橋道男

    高橋道男君 私も政府委員からの御所見を伺いたいことがあるのでありますが、衆議院文部委員会における速記録を拝見いたしますと、文部大臣は、普通教育職業教育或いは産業教育、これはずつと以前は別であつたのです。ところが六三制になつてからはこれは一つ体系の中に考えておるというような意味の御所見があつたように思うのであります。今この法案ができますれば、私は無論従前のような普通教育違つた別個産業教育というようなものが当然できて来るように思うのであります。これは産業教育を盛んにする、その趣旨がこの法案にも盛られておるように、趣旨としては誠に結構なことでありますけれども、そういうように産業教育に関する点が強く印象付けられることによつて普通教育が圧縮されるということは一応考えていいと思うのであります。先ほども質問がありましたが、六三教育に必要な経費がこの産業教育法のために縮められはしないかということの御質問がございましたが、私もその点は非常に虞れるものであります。憲法において義務教育の無償ということが定められておりまするが、これは現在においては決して完成しておるものとは考えられない状態にございまするので、これが完成をされない限り六三制と別個予算の配慮をしてあるということを申されましても、私はその御所見には賛成することはできないように思うのであります。この点専門員に対しても重ねてお尋ねをしなければなりませんが、政府委員においてこの義務教育産業教育と、どちらが優先すべき問題であるかということの御所見を伺いたいのであります。
  64. 辻田力

    政府委員辻田力君) 義務教育産業教育との問題でございまするが、これは或いは大臣あたりから答弁されるほうが適当だと思いますが、私から便宜お答えを申上げますが、勿論義務教育はこれは教育の中核でなければならんし、基盤でなければならんと思つております。従つて義務教育の振興につきましては、文部省といたしましても懸命にその努力をしておるものでございます。併しこの義務教育を完成すると申しますか、六三制の関係が完成する、その暁に産業教育に着手するんだ、その産業教育の振興のために経費を見積るんだということになりますと、そこに義務教育自身についても跛行的なものになる虞れがございますので、それは見方によつていろいろ差異があろうと思いまするが、義務教育の振興を図るためにも、義務教育に次ぎまする高等学校等の教育におきまして産業教育を振興いたしまして、両々相待つてその振興を図るようにすれば両方が立行くのじやないか、而も又義務教育振興のためにも決してマイナスになるんじやなくて、プラスになるんじやないかというふうに考えておる次第でございます。従つてどちらが優先するかというようなことになりますと、勿論義務教育を中心として考えなければならんと思いますが、併しその義務教育を振興する上においても、産業教育は是非完成する意味において振興しなければならんというふうな考え方を持つておる次第であります。
  65. 高橋道男

    高橋道男君 もう一つお伺いしたいのは、先ほど平岡委員からもお話がございましたが、教育委員会地方審議会との権限争いというか、所管問題が恐らく実際的には問題になつて来ると思うのであります。それは普通教育産業教育と二元的になればなるほどその感じは具体的に甚だしく問題になつて来ると思うのであります。六三制の完成ということからも関連いたしまして、私は学校教育法にも産業教育は決して満たされていないと思うのでありまして、ただこれを徹底してというか、これを強く遂行するかどうかということのために今度の法案をお考え頂いたのだろうというように思うのでありますが、そういう点から考えますると、むしろこういう単独の法律をこしらえるよりも、学校教育法の一部を改正して、この産業教育の面に重点を置くというような行き方のほうが、むしろ教育行政を単一化するという意味においてはつきりできるんじやないかと、こういうことを思うのでありまするが、その点政府委員からも又専門員からも御所見を伺いたいのであります。
  66. 石井つとむ

    衆議院專門員石井つとむ君) 専門員側としての御答弁を申上げます。普通教育と申しまするか、義務教育とこの産業教育とを二元というふうにして解釈いたしておらないのでありまして、いわゆるリベラル・アーツと言われておる学科のほうにその削減を求めるとか、或いはこちらの時間を特に多くするとかという問題はこの法案にはちつとも予定をいたしておりませんのです。全国のいろいろな現場をご覧頂いたかたは十分御存じだろうと思いますが、職業科というものが置いてある学校におきましてすら如何にも設備が惨憺たるものでありまして、学校教育法が予定しているところのものが法文の上には書いてありましても、実情は大よそ距離の遠いものでありまして、その面を多分に補つて行かなければならないということを痛感いたしてこの法案に謳つて来た次第であります。従つてここにいわゆる地方審議会と申しますのも、どこまでも教育委員会の諮問の附属機関になつております。知事及び教育委員会、こういたしておりますのは、知事と申しまするのは、御承知の通り私立学校教育行政の主務官庁が知事になつております。公立学校教育委員会になつておるという点においてこの二つを並べて、若しくは結付けるような形になりましたが、この本線におきますところの、根幹の線を守り立てて行く機関、又法案としましてはそれを守り立てて行く法案ということに考えておる次第であります。  それから学校教育法の中にむしろ修正を加えてやるべきであろうという御意見も承わりましたように思いますが、その問題は、これは御覧の通りに多分に助成の問題を織込んでおりますから、学校教育法としてはその性質上、その形態は如何かとも思うのでありますし、かたがたこういう形をとつた次第でありますが、どこまでも二本の、二元的ということは考えておりません。只今学校教育法に従うあの線の最も弱いところを補つて、もう少し補強したいということを狙つておる次第でございます。
  67. 辻田力

    政府委員辻田力君) 法体系の上から考えて、産業教育法というようなものを特別に作るということは混乱を起すのじやないかというような御質問つたと思います。その点は私たちといたしましては、この産業教育法は学校教育法或いは社会教育法に並立してあるべきものではなくて、むしろ学校教育法、社会教育法の足らざるところを補足すると申しますか、補正すると申しますか、そういう意味においての法案だというふうに解釈しておる次第でございます。従つてその間に矛盾撞着ということはあり得ないというふうに考えております。次に地方教育委員会審議会と、それから知事との関係でございますが、これは本来であれば当然教育委員会だけのものでなければならんわけでありまするが、御承知のように私立学校は知事の所管になつております関係上、而もこの私立学校は非常に産業教育関係の多い学校もございますので、そこでいろいろ立法技術上こういうふうな途をとられたのじやないかと推察しておる次第であります。従つて現在の制度を前提といたしましてはこういう形にならざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  68. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 この問題に関連して、只今高橋委員のほうから御質問なつた点について私も若干の疑義を持つておりますが、今説明を聞きましたけれども、少くともこの法律を成立せしめるということになれば、体系の上からはやはり対立、並立しておる、こういう形にならざるを得ないと思います。若し説明のごとくであれば、私は産業教育振興法というふうな名前であれば、それは学校教育法、社会教育法に則た、その範囲内における問題として解釈できると思うのです。けれどもそうでなしに、すでに御承知のように教育基本法があつて、その上に立つて学校教育法、それから社会教育法というものがあるわけです。それに更に産業教育法というものが追加されるわけです。そうするとやはり三本建になる、法律の建前から言えば……。それがならないというようなことは、私は少し曲解じやないかと思うのです。ですからそれが若し並立的なものでないということであれば、やはり学校教育法の中の産業教育産業教育という言葉については先ほど御質問があつたように、多少私も疑念を持つております。或いは職業教育がいいかどうかという点は検討しなければならないと思つておりますが、少くともその中で産業教育をもう少しやつて行くのだ、もつとやつて行くのだということになれば、やはり産業教育を振興する、こういう法律であれば、並立的な立場に立たなくて、そうしてその中でやつて行く、こういう意味はわかつて来ますけれども産業教育法というふうに銘を打てば、三本建になつて来るということは、体系の上からいつて否むことができない問題だと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そういうふうに私は思うのでありますが、この点について更に御説明を願いたい。これは専門員のほうから先ず御説明を願いたいと思います。
  69. 横田重左衞門

    衆議院專門員横田重左衞門君) 只今のお話でございますが、確かに何々教育ということになりますと、三本建のように思えるのでございますが、学校教育法の中で義務教育を終えたあとの、高等学校へ行かない者に対しての教育という面が少し欠けておるように存じます。その点を社会教育法のほうで拾つておるようにも思えるのでありますけれども、社会教育法のほうでは公民館中心でやつておるように思えますが、これには一つのノルマルな教育コースというものをとつておらないように見受けられます。そういうことから学校教育法のほうでは義務教育を終つた人と高等学校の中間というものとの間が抜けておる、そういう両面の抜けておる面を拾い上げてここに補足するという意味で作つたものでございまして、やはり一つ体系の中に入るものだと存じます。
  70. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 只今説明を聞いて更に明確になつて来たと思いますが、この産業教育法の対象になる者は、今のお話、或いは第二条にも多少その意味が出ておると思いますが、いわゆる生徒、学生という者を対象にしないで、義務教育を終えた一般青年、こういう者もこの中にやはり対象として考えて行く、こういうことが明らかになつて来たわけであります。そうすれば尚更これは学校教育法の範疇に入るのだということは、全然考えられない問題になつて来るのじやないか、この点について文部省の見解を伺つて見たい。
  71. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今の御質問でございますが、これは先ほど私がお答えいたしましたように、これは学校教育法と社会教育法との両方を補足と申しますか、補正する、いわば補正的な法規であるというように私たちとしましては解釈いたしておるわけであります。学校教育法だけの問題でないといふうに思つておるわけであります。両方に跨がる問題だと思つております。なお補正という意味は、この法案を拝見いたしますると、非常に補助的な面が多く出ておりますが、現在実業教育国庫補助法というものがございますが、これは全く死文に化しておるわけでございます。従つてその国庫補助的な面を多分に取入れられて、そうしてそのことによつて産業教育を振興さすというふうな面がこの中の相当大きな部分になつておるように拝見するわけであります。従つて国庫補助法的な性格もこれには多分に盛られておるというように考えまするが故に、学校教育法自身にこれを盛り込むということは必ずしも適当でないのじやないかというような感じを持つのであります。
  72. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私は学校教育法の中にこれを盛り込んだらいいという見解は述べたことはない。私の趣旨とするところは、職業教育というものは産業教育を振興する、こういう考え方に立つておるのだと思うのであります。そうすればもつと率直に産業教育を振興する法律だ、こういうふうに銘を打てば、いろいろの疑義というものが少くとも解決するのじやないかと私は考えておるのです。それをそういう名目にしないで、産業教育法という一つの法律ですね、こういう名称になれば、そうして又一般公衆に対しても教育するのだ、こういうことになれば、日本の教育体系にやはり大きな変化をもたらすというふうにまあ考えざるを得ないと思うのですがね。それで産業教育を振興するためにこの法律を作らせたのじやないですか、長野さんどうですか。(「目的にちやんと書いてある」「その通り」と呼ぶ者あり)非常に疑義があるのじやないか、産業教育法というのは。(「名前はどうでも、目的にちやんとそう書いてある」。と呼ぶ者あり)
  73. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 荒木さんの今の答弁ないのですか。よろしいですか。よろしいですね。それでは私は初め極く基本的なことを若干お伺いしたいと思います。発議者である長野さんは自由党に所属されておるわけでございますが、自由党の政調会のほうで講和条約締結後、或いはそれの前後に六三制度、いわゆる新教育制度を再検討するやに新聞紙上で承わつておるのでございますが、先生は自由党に所属されるのでお伺いするわけでございますが、現在のところどういう筋で検討される段階に参られておられるか、なお党として出ておられなかつたら、(「関係ない」「ある」と呼ぶ者あり)それはこれと非常に関係があるのでございます。長野先生個人としては、六三制度、いわゆる新教育制度に対してどういうお考え方をしておられるか承わりたい。
  74. 長野長廣

    衆議院議員(長野長廣君) 私不幸にしてまだその新聞記事は実は承知いたしておりませんが、なお又特に現在の六三制を党のほうにおいて検討するという責任ある話を聞いたこともまだありません。併し党の教育部といたしましては、恐らく六三制に限らず、大学教育その他各面の教育については絶えず調査を進め、検討を進めておるはずであると存じております。その意味を或いは何かの形で表現されたのじやないか、教育部といたしましては極めて熱心な広範な、又実際的な調査をいつも進めて、誤りなきを期し、且つ教育の円満なる発達を図るべく努力しておるはずでございますから、そのことはその意味ではないかと存じます。私まだ責任ある話を伺つたことはございません。それから六三制につきましては、実は私も文部政務次官時代に特にアメリカの視察団の示唆を受けまして研究調査をし、又或る程度まで法律案の審議に参加いたしたこともあります。誠に従来の我が国の教育の非常なる欠陥を教育基本法或いは学校教育法、従つて六三制というような面において行いまして、非常なる成績を挙げつあるものと存じております。併し又日本といたしましては、御承知の通り戦後産業方面その他社会に、各方面に非常な変動をいたしするし、又いよいよ講和会議が終りますれば、独立国として独自の大なる文化的産業的発展も期さなければなりませんので、そういう点を見通しまするというと、六三制そのものの円満なる発達を図ると共に、又なおその時勢に順応した新施設も非常に必要ではないかというふうに考えておる次第であります。今回の産業教育法もそういう日本の一大転期に、及び今後の日本の新建設に絶対に必要なものではないか、又現在も産業教育をやつておりますから、これはやつていないというわけじやない。やはりやつておるものを一層時代に順応したように促進しなければなりませんから、この意味において振興という文字も特にはつきりいたしたような次第でございます。大体そういうふうな見解を持つておる次第でございます。
  75. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 個人としても党とされても調査研究されておる点につきましては私も敬意を表するものでございますが、重ねてお伺いいたしたい点は六三制度、つまり教育制度そのもの、並びに新教育の指導理念というもの、こういうものを基本的にお認めになつていらつしやるのか、それともこれは不十分であると否定のお考えに立たれておられるのか、その基本的なものをお伺いいたしたい。
  76. 長野長廣

    衆議院議員(長野長廣君) 私は申上げるまでもなく我が国の教育の指導理念というものは、二つないのでありまして、教育基本法、これが大体我が国の教育の進むべき理念を説明しておるものであると思います。そうしてそれに基いて又これを如何に実施するやという具体面に進むに当りましては、学校教育法、社会教育法というようなものがありまして、これによつて更にこれを具体的に示しておると思います。只今産業教育基本法というがごときは、教育基本法の中に、勤労を尊重するという問題を特に示してあります。学校教育法におきましても各学校において勤労ということについては特に力を注ぐことになつておりますが、これは申上げるまでもなく、単なる観念的な文句でありまして、これを具体的に表現し、教育の進むべき道を示すにはやはり産業教育法というようなものを新たに設けまして、従来もやつておるけれども、更にこれを振興する、以て普通教育といいまするか、とにかくその教育と相併行して、そうして決してこれは産業教育が別なものではなくして、この普通教育の中に根拠付けられまして、そこに初めて円満な人格と、そうして具体的に社会に功を立てる、つまり有為の人間を作る、こういう意味で振興するために設けておるのでありまして、やはり日本の現在の教育基本法というものの一貫しておる生命、真髄に一歩も外れんように、本教育を以て徹底すべきだと、こういうような観念を持つております。
  77. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 先ほどからの若干の質問なり並びにこの提案理由、それから法案を拝見しまして、最も強く私に響いた点を申上げますが、そして又発議者の御意見を承わりたいと思いますが、どうもお言葉ではそう申されますけれども教育基本法、学校教育法、社会教育法、こういうふうに法律で我我が我が国の教育というものを律して来たこの新教育制度の基本的な立場ですね、これを私は、更に新教育の指導理念なり或いはその方法というものを否定するという底意があるというような感じがしてしようがないのです。提案理由の中には「新教育制度が実施せられ、今日ようやくその完成を見ようとしております。その結果に対しましては軽々しく即断は下し得ないのでありますが、ただ併し、甚だしく我々の失望を感じ、憂慮に堪えない事実が明らかになつて参りました。」と、こういうお言葉があるわけでございますが、確かに職業教育と申しますか、産業教育と申しますか、それが不十分な段階にあるということは、これははつきりしております。振興させなければならないということははつきりしておりますが、新教育制度の下に今の指導理念というものをはつきりと再確認して、その立場から、職業教育というものを強力に推進するという立場から指導されたものであるならば、私も当然そうなければ、ならないと思いますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)そうではなくして、病気でいうならば外科と内科があつて、丁度産業教育職業教育は外科のような形で、ここに化膿し、痛みを覚えて来たから、現象面のひどくふくれ上つて、他の内科的な面、或いは一般教育、専門教育の問題とか、或いは基礎科学の問題、そういう面が目につかないで、外科的症状である一現象面を引張り出して、そうしてそれに膏薬を貼るような恰好で、現在の日本の教育法からいえば特例法的な存在として、ここに産業教育法というようなものができて来たような感じがして、先ほど高橋委員なり或いは荒木委員から、二元になるのではないかという質問が出て来たことに対して私は全く同感に感ずる。これに対する専門員なり或いは政府委員答弁は、私はこれは支離滅裂に感ずる。そういう点から私は重ねて承わりたいのでありますが、その意味でこの我が国の新教育制度というものをはつきりと再確認して、そうしてこの線に沿つての我が国の教育の振興、その一部面であるところ職業教育の振興を強力に推進させる。こういう立場においてこの法案を立案されたのかどうか。その点についてどういうふうにお考えになつておるのかということを、私はこの説明なり或いはそれからさつきの質疑応答を承わつて、どうも割切れないと考えますのでお伺いします。
  78. 長野長廣

    衆議院議員(長野長廣君) 外科、内科というふうに、やはり人を治する上においても二つのやり方がある。普通教育産業教育というふうにやはり二つの見方になりはせんか。一元的な意見から見ると少しく腑に落ちないし、今までの説明が支離滅裂ではないかというような意味の御質問と存じましたが、私のほうの考えではこれを極めてわかりやすく考えまして、ここに一人の青年がある、この青年が鍬を持つて農場に立つ。この場合においてその青年は勤労の尊貴なるゆえんも解しておる。又一応父兄その他から耕作に関する技術も教えられたとまあいたします。又事実そうであります。併しここに鍬を持つてその魂を肥しと共に打込むと共に、又同時にこれに対して日進の技術、科学的技術をこれに加えましてそうして働くときにおいて、大地より産み出す生産というものは、そのまま習つた、いわゆる普通教育により受けた智徳体意の関係と、父兄よりの指導によつてつただけのものと、それは同時に一面学校において勤労の根本体験から、いわゆる農民としての根本体験及び農業に対するところの勤労観念の確立、同時に進んで工夫改良をして行く、工夫創造をする、つまり技術上の発展的能力の陶冶を加える、これが鍬を持つてつた場合とこれを比較しまするときにおいて、私どもはやはり、普通教育を受けたままで鍬を持つて十六歳から畑に働いている人間よりも、学校教育なりその他の形において技術、更にそれをより以上に工夫改良する能力及び熟練せる技術、こういうものを以て鍬を打込むときにおいて、天地霄壤の差ができて来るのではないか。殊に一方においては特に現在を改良し魂を打込んで行く、つまり職業を芸術化する、農業を芸術化するほどに熱意のある青年が今後できて行くならば、又そうすることが職業教育の理想であると思いますが、そうするならば、ここに産業教育を授けることは、決してそれは単なる別技、特技ということではなくして、その人の魂そのものの教養であり、その人の人格、若し積極的と消極的とあるならば、単に善人であるということに止まらず、家のため、村のため、国家のため有為なる仕事をなすという積極性を與えるところに人格の積極性も考えられるのではないか。私は今後農場に立ち、或いはハンマーを持つて立ち、或いは櫓、櫂を持つて海に出る人々も欲しい。そういう有為の人材であつて欲しい。そういう今申上げたような人物を作り上げる、善良にして有為なる人物を作り上げて行くということが必要ではないかという気持からやつているのであります。幾多これには誤つた点があるかも知れませんから、皆さんの一つ意見を承わらなければなりませんが、私はそういう観念からやつているのでありますから、決してこれを外科とか内科とか、或いは両者得失のあるものであるとか、或いは職業教育というものが単なる特別なものであるというふうには考えていない。でありますからそこを御了承願います。
  79. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 発議者の熱意はよくわかります。同感の点がたくさんあるのでございますけれども、一番根本は、発議者には元の職業学校、中学校というものが対照的に映つて、この中の職業学校というのが非常にクローズ・アップされているのではないか、そこに戦後の教育の方向と私は食い違つたものがあるのじやないか。その点において私は戦後展開されておるところ教育の制度なり或いは教育の指導理念という立場から、昔に逆転すると申しますか、そういう感じが受けられるわけであります。若しそうだとすれば、今まで折角ここまで築き上げて来た、いわば血のにじむような努力をしてお互いが築き上げて来た新教育というものが、ここでその躍進の芽を摘み取られるような感じになるのではないか、そういう立場から私はこの法案というものを重大視しているわけであります。そういう気持があられるのじやないか。
  80. 長野長廣

    衆議院議員(長野長廣君) その気持は、全然そういう特別な気持は持つておりません、只今私が申上げた通りでございます。若し私をしてここに比喩的に説明さするならば、従来普通教育という言葉を使われておりまするから言うのでありますが、私は普遍教育も特別教育もありませんけれども、普遍教育という建前で、文化的な頭で世間を眺めれば、例えば月を眺めて詠うた文化も、まあ山に木を植えて欝蒼たる森林が聳えて来たというところを眺めてそれを讃美し、又それに魂を打込んで行くような、そういう精神教育といいまするか、普通教育といいまするか、文化教育といいまするか、そういうところまで発展し得るのではないかというふうに考えられるわけであります。説明が足らんかも知れませんが、決して別々に考えているものではございません。ただこれが法律であるから、又比較的今まで、今後の日本の大進軍に向つてどうしても覚束ないものであるから、特に産業教育に力を入れて、これに大きな設備も要ることだし、先生もたくさん要るし、先生の質も必要だし、それだけではなく、これは社会全般の人々がこれを応援しなければなりません。審議会のようなものを中央に設けたのもその意味でありますが、さような意味から、産業教育というものが決してこの殻に閉じ籠つた産業教育ではない、見方によると極めて茫漠として、あらゆる教育活動の中にこれが入つているものと私は考えております。そこを一つ誤解のないように、これだけに閉じ籠つた産業教育ではない、産業教育というものの魂というものは、或る場合には文化教育、或いは文化の進展に、あらゆる面に活動するような人材を作ることさえやつておけば、そういう意味においてなお従来の教育よりその点がプラスするところがあるのじやないかとまで私は考えるわけであります。而も私は日本の今までの教育界において認められておつたところであると言つても明らかなところであります。どうぞ決して私はそういうふうに誤解していないということを、あなたがたの考えている通りである、こういうことを一つ御了承を願います。
  81. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 発議者に対する質疑は一応これで打切りまして、政府委員にお伺いいたします。中学なり或いは高等学校職業課程が振わないということはよく言われておりますし、その原因もいろいろお考えになつていると思いますが、これは振興させなくちやならんということははつきりしておりますが、その方法としてやはりこういう方法以外にないとお考えになつているかどうか、文部省としてもその振興についていろいろお考になつていると思うのですが、産業教育法という、こういう形以外に方法はないとお考えになつておられるかどうか、その点一つと、それから文部省で盛んに奨励されました高等学校の、いわゆる総合高等学校ですね、その運営というものを非常に指導されて参つたわけでございますが、こういう産業教育法、こういうものが出た場合に、今まで指導されて参りましたところの総合高等学校というものの運営との関連そのものを、どういうふうにお考えになつているか、更にはあの総合高等学校の運営というものはやはり堅持して行かれるつもりでおられるのか、或いは打ち切ろうとしておられるのであるか、政府委員の御答弁を伺いたいと思います。
  82. 辻田力

    政府委員辻田力君) 産業教育の振興について文部省でどういうふうに考えているかという先ず最初のお尋ねにお答えいたします。産業教育の振興については、その不振の原因を突きとめなければならんということは勿論でございます。それにはいろんな事情が輻湊いたしまして、今日のような状況になつているのでないかと思つております。例えば人の問題にいたしましても、産業教育に従事する人について特別の考慮を余り払わなかつたということもあつたのでありましようし、又従つて現在におきましては、御承知の通り産業教育に従事する学校の先生を特に養成する機関も全然ないというふうな状況でございます。でそういうふうなこともございまするし、又戦災或いは転用というふうなことで施設、設備が非常にこわされたとか、なくなつてしまつたというふうなこともございましようし、又新らしい教育内容と申しますか、方針につきまして、正しくそれを把握すればいいわけでございますが、場合によればそれが誤まつて、いわゆる一般教養を重視すればそれがいいんで、こういうふうな技術的なものであるとか、或いは職業知識というふうなことは第二、第三であるというふうな考えかたも、或いは新教育方針を誤まつて解釈する場合には考えられたのじやないか、そういうこともやはり影響しているのじやないかと思います。いろいろな面がその他一般に、これ今はから勿論始まつたことではありませんが、産業教育或いは職業教育ということに対しまして比較的軽視するという弊風が一般にございまするが、そういうことに対する是正ということも考えなければならんのじやないか、かようなわけでございます。従つてこれらのいろんな原因を探究いたしまして、それに対する根本的な施策をしなければならんと思つているわけであります。従つて先ず文部省といたしましては何といつても人の問題が大切でございまするので、教員の養成、特に産業教育に従事する先生がたの養成につきましては懸命に努力をしているわけでございます。本年から例えば総合農業科を設置いたしまして、農業教育に従事する先生を特に養成するというふうな施設を設けましたのもこの現われの一端でございます。併しこれは農業に限らず、工業におきましても商業におきましても、水産業におきましても同様なことを考えなければならんことだと思つております。なお教育内容につきましても人格の完成と申しますか、これもただ抽象的な、一般的な、観念的なことだけでは必ずしも人格の完成はできない。むしろこういう仕事というか、技術というふうなものを通じて人格教育ということも考えられなければならないのじやないかというふうに考えております。従つてそういう面からも教育内容、或いは方法についても十分これを研究して、よくして行かなければならないように思つております。併し最も困つております点は、今の施設、設備の点でございまして、戦災或いは転用というふうなことによりまして非常に学校では困つておる次第でございます。こういう点につきましては特別の国家的な措置をいたしまして、国で補助するというような点を強くいたさなければ、その振興は期し得ないのでございますので、従つて今回の産業教育法案におかれましてその面が強く出ておるということも肯かれることだと思つておるのであります。又育英の方面からも特にこういうふうな産業教育については、比較的今までの実績によりますと、貧困な子弟がほかの場合よりも多いようなことも考えられますので、育英関係についても考えなければならん。又一般の世間的な風潮といたしまして、大学まで出るのが一番いい方法だというふうな、而もそれが一般の教養的な面を重視して、そういうふうに考える傾きがございますが、そういうことはだんだんに改めて行かなければならんというふうに思います。従つて先ず一般の職業教育、或いは産業教育を軽視するという弊風を、これをいろいろな方法で改めて行かなければならんというふうに考えておる次第でございまして、これらのことを逐次実行化する、或いは又予算化するというふうにいたしまして、産業教育の進展に尽したい。従つて又日本の再建に貢献したいというふうに考えておる次第でございます。  第二の問題の総合高等学校の運営の問題でございますが、これも先般のこの文部委員会におきましてお答えいたしたことでございますが、この総合高等学校の運営につきましては、いろいろな問題がここに伏在しておりますが、必ずしもこの総合性ということにつきまして真意を理解していないという点から起る不振ということもあるのであります。併し真意は理解しているが、実際具体的に運営する場合に非常に困るというふうな場合も考えられるのであります。そこで我々といたしましては、この点について研究を進めておるのでありまするが、現在の段階におきましては、これを直ちに改めるという結論に達していないのでございます。この内容をよく改善いたしまして、本当の意味の総合性を実施したい、その理想を実施したいというふうに考えておる次第でございます。
  83. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 お尋ねしたいことに余り触れなかつたのですが、端的にお尋ねいたしますが、文部省としては、例えば高等学校の運営について、総合高等学校一つの型でございますが、要するに新教育の徹底のためには教育者が非常に少ない。この職業教育について特に不十分な点がある。予算を取るにはこの法律が出れば、その点だけでも予算を取るのに都合がいいわという、そのくらいのお気持じやございませんか。予算を取る足掛りになつていいという意味になつて肯定されておるのであつて学校教育法とか教育基本法とか社会教育法とか、そういうふうな関連性とか、或いは教育委員会、ここに設けられる審議会との関係とか、そういう教育体系の本質的なものは余り考えないで、とにかく予算が押えられているので、これが出れば足掛りがあるので予算を取るのに都合がいいわという、このくらいに軽くお考えになつておるように思うのですが、如何ですか。
  84. 辻田力

    政府委員辻田力君) 勿論予算を要求する場合に非常な強みになることは勿論でありますが、ただそれだけを考えておるわけではございませんので、このために国会において産業教育重要性が非常にはつきりと法律という形において認識されるということになれば、そのこと自体でも産業教育の振興に非常に役立つものであると私は考えております。従つて精神面或いは物質面、両面においてこの法律が成立することが非常に望ましいことだと考えております。
  85. 加納金助

    加納金助君 本法律のうち最も重要な役割をするのは審議会のようでありますが、この審議会はどこまでも諮問機関ですね、つまり教育委員会とこの審議会の権限争いが生ずるというような疑義がありましたが、これは諮問機関なるが故に権限争いをするということはないわけですね。併しながらこの特に審議会を設けました以上は、教育委員会普通教育に対しましてはみずからの考えにおきまして予算その他を決定する。併しながらこの法案におきましては、審議会意見を聞いて自分たちが意思を決定する、こういうことになりまして、従来の教育委員会の職務の上に更に又もう一つ附加えたわけですね。そうなんでしようね。そこで今申しましたような、何故そういうふうにしたかというたら、率直に言えば現在までのいろいろな制度において実業教育の振興を図つて来たけれども、甚だその意思に副わない、そこでかように特別なる法を設けて、真実に日本再建の上に最も必要であるべき実業教育の振興でありますか、そういうために特にこういう制度を一つ設けて見よう、こういうわけだと思います。如何でございましようか。
  86. 石井つとむ

    衆議院専門員石井つとむ君) お尋ねの通りでございます。それで教育委員会がすでにありますが、それにこういうものを諮問機関として更に附加えたということは、第八条にございますように産業、経済、教育、勤労等、つまり産業教育関係の深い立場におられるところの学識経験者の専門家を以て充当することがいいであろう、教育委員の中にそういうかたも選出せられておられる可能性もありますけれども、必ずしもそういうかたが全部とは限らないというような意味におきまして別にこういう諮問機関を設けました。どこまでも附属の諮問機関でございます。
  87. 加納金助

    加納金助君 もう一つ伺いますが、町村にさような諮問機関を選び得るというようにお考えでしようか、現状において……。
  88. 石井つとむ

    衆議院専門員石井つとむ君) できるだけそういう面の人を求めようとすることによつて、若干でもそういう傾向の人を集め得るであろうということは考えておりますけれども、都道府県中心に考えておりまして、町村のほうにおきましては強制的なものにいたしておりませんのでございます。
  89. 長野長廣

    衆議院議員(長野長廣君) ちよつと補足しておきます。学者というようなそういつた知名の士というような者は、大抵大都市とか或いは中小の都市なんかにおりまして、中央審議会なんかに参るわけでありますが、地方のほうではこれはむしろ経験のほう、農業や林業や、漁業というものに卓越しておる人がおりますから、これは実際化して来まして、青年、被教育者の生活とも極く接近しておりますから、そういう意味地方実情をよく知つておるということから、総合的な教育計画というものに非常に役立つのじやないかという意味でございます。何といいますか、余り科学性を帯びたような、学問というような、現在普通いうところの学問の高い人というよりは、地方の場合ではむしろ実際の町村を知り、実際この家をどう改良するとか、牛をどう飼うとか、如何に帳面をつけて行くとかというような面を特に考えて行かなければ、子供の実修教育というようなことはできないのでありますから、そういう面も併せてお考えを頂きたいと思います。
  90. 岩間正男

    ○岩間正男君 私もこの法案が持つている意味は、今の日本の教育実情から考えて非常に重要だと思いますので、二、三点お伺いしたいと思います。実は衆議院のほうの速記録を見ている暇がなかつたのでありますが、衆議陣のほうでは十分にこれは論議される時間がなかつたのだと思います。実は、少くとも日本の教育改革をやつて行き、而も相当日本の教育体系の上から申しますと重要な問題でありますから、これを取上げるに当つては、殊に立法府としまして、文教担当の立場からしまして、日本教育体系の根本問題にこれを当てはめて考えなければならんと思います。衆議院においては、残念ながらそういうような論議が十分になされたかどうかということを私は知らないのであります。速記録を詳細にまだ検討いたしておりませんけれども、そういうことについても余りなかつたのではないかと思いますので、あえてお伺いするわけであります。  生産教育といいますか、産業教育という名前を使われておるのでありますが、これは非常に重大だということは、我々はもつと基本的に考えております。これは非常に重要だということは、又日本の実情から考えて、生産教育を盛んにすることなしには日本の経済の復興ということは不可能だ、こういうことは我々も終戦後直ちにこの問題を取上げて、今まであらゆる機会に論及して来た問題であります。併し問題は、これを基礎的な知識、こういうものを啓発する面とどういうふうに総合的にマッチさせて、一本の教育体系にはつきりこれを確立するか、こういうことにあると思うのであります。そういう点でこれは文部省は、教育体系そのものにそういう検討をされて、一体辻田局長なんかは……、私は先ほど参りまして三十分ほどしかお聞きしていないのでありますが、何らそういう点について御答弁がないのであります。そういう点の検討がなければ、我我はこういう重大な法案、日本の教育体系が変わるような問題を軽々にできない。こういうふうに思うのでありますが、先ず第一に現在行われておる義務制度の六三制であります。六三制の教育においてこの生産教育というものをどういうふうにマッチさせようと考えて来たのであるか、更にこういうような法案がいわば枠外に出されるような形で行われることによつて、そこに困難が起らないのであるかどうか、これは後ほど文相の出席を求めて、我々は一つの文教政策としてお聞きしたいのでありますけれども、取りあえず辻田局長はどういうふうにこの点を考えておられるか、この点お伺いしたい。
  91. 辻田力

    政府委員辻田力君) 只今の御質問に似た御質問が先ほどございましたが、重ねて申上げます。この法案で狙つておられます点は、現在の学校教育或いは社会教育面を混乱さすということよりも、むしろこれは今まで学校教育法、社会教育法において足りなかつた分を補足される、いわば補足的な或いは派生的な法案であるというふうに実は私解釈しております。従つて体系を乱すとか、或いは教育体系を乱すものではないというふうに考えております。
  92. 岩間正男

    ○岩間正男君 随分今の御答弁は、膏薬貼り的な、或る意味では補足ということになるかも知れませんけれども、私の言つておるのは、少くとも一つの年産教育、まあ技術教育と言つてもいいかも知れません。それと基礎的な知識を啓培するということが同時に総合的に行われなければ片輪になる。これは今までの終戦前の教育が明らかにこれを実証しておる。そこに日本教育の根本的な欠陥があつたのです。だからその根本的欠陥を建直すために六三制の問題なんか出て来たわけなんです。その中でやはり我々の反省としては、そこに産業教育的な方法をどのようにその基礎的な教育の中に総合的に入れて行くかということの研究が、文部省でもやつておくべきだと思うし、又現在の文政の中でもそういう批判は持たれる。そこでいわば同じようなそういう教育の場で同時に生産の問題と基礎的な教育というものとを総合的に発展させるということなしには非常にこれは片輪になる。こういうふうに考えられるのでありますが、あなたの言うのは、別に枠外に出して、いわゆる実業教育というような形で……、或る場合によつては、現在の日本の情勢から考えるとこういう危険さえも考えられる。それは過去の青年学校が何をやつたか、そういうようなほうに持つて行かれる……、これは日本の現在の情勢、国際的、国内的な情勢から見るとそういうような危険さえ考えられる。そういう教育方法を今のような問題で解決できるかどうか、こういう問題に対してもつと根本的に文部省は検討すべき立場にあると考えるが、これはどうですか。今のような御答弁では私のお聞きしているところに触れて来ない、いわばこの法案説明でもわかりますけれども、現在中学校を卒業して、どこにも行けないで二年間遊ぶ子供がいる。これが氾濫して、盛り場なんかに行つて不良化する。こういうような者を救済して、何とか職業を与えなければならない。一方には六三制の基礎的なものをやると共に、そういうような教育をやつて行くべきだと思う。これは膏薬貼りである。教育体系というのはそういうものではない。むしろもつと総合された形の基礎的な基本的な問題、それによつて具体的に技術、生産というものに連なつて来るそういう問題をどういうふうに発展させるかということに、教育改革の問題がなければならん。そういう問題を解決しないで、これに対しての説明の便宜のいいようなことをあなたがそこに出て役割を果されたとしても、私たちは絶対に承服できない。こういう点についてもう少し説明をお聞きしたい。これは大臣にお伺いすることにいたしたい。重大な問題ですから……。
  93. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 明日更に総括して続行いたします。文部大臣及び大蔵当局の出席を求めることになつております。更に御意見のあるかた……、若しなければこれで散会をいたしまして、そのあとに懇談会をいたしたいと思いますが、如何ですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではちよつと長野委員長から補足して……。
  95. 長野長廣

    衆議院議員(長野長廣君) ちよつと今岩間さんのお話の中に、衆議院ではどういうふうに検討したかというお言葉がありましたが、これは私は先ほど御報告申上げましたが、皆さんお揃いでありませんでしたからちよつと今申上げます。非常に重大な問題でありますし、又時期も切迫しておりますから、時間的には随分勉強して参りました。特に懇談会式に特別な委員を選びまして、数日間、時間的には非常に充実した時間を与えまして、机をこういう式でなく、突き合わせて、十分審議、協議を進めましてやりました。それだけのことが皆さんの御熱心な協議の中に特にプラスされておりましたから、それを御了承願いたい。それは特にこの点はできるだけ努力します。
  96. 岩間正男

    ○岩間正男君 やはりこれは公式な記録として残して頂かないと、重大な問題ですから……。
  97. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは本日の文部委員会はこれで散会いたします。    午後三時四十五分散会  出席者は左の通り。    委員長 堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            成瀬 幡治君    委員            川村 松助君            木村 守江君            工藤 鐵男君            平岡 市三君            荒木正三郎君            高田なほ子君            梅原 眞隆君            高良 とみ君            高橋 道男君            山本 勇造君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   衆議院議員    文部委員長   長野 長廣君   政府委員    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君   事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏男君   衆議院事務局側    常任委員会専門    員       石井つとむ君    常任委員会専門    員      横田重左衞門