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1951-03-27 第10回国会 参議院 文部委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十七日(火曜日)    午前十一時三十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件宗教法人法案内閣提出・衆議院送  付) ○市町村立学校職員給與負担法の一部  を改正する法律案内閣提出・衆議  院送付)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれより本日の会議を開きます。  日程第一、宗教法人法案。この法案は大体逐條の審議は終つておりまするが、総括質問が残つておりまするので、総括質問をして頂き、又各條文について御意見のあるかたは御質疑頂いて結構であります。
  3. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 文部大臣にお伺いいたしますが、終戦後いわゆる新興宗教届出によつて族生し、中には淫祠邪教と思わるるものもなきにしもあらずであります。こういうような種類のものは殆んどすべてと申してよいほどに医療類似行為が伴うておりまするが、今厚生省においては国民健康向上に種種なる法律や多大の国費を使用して施設を拡大強化しているのに照し合せて見まして、誠に憂慮に堪えない現状であると思うのであります。文部大臣は今日まで届出でられたる宗教団体として既得権認証する場合において、これを拒否せらるるお考えでありますか。或いは又今まで届出られた宗教団体はすべてこれを認可、認証さるるお考えでありますか伺いたいと思います。
  4. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私も今大谷委員のおつしやられた点は非常に遺憾なものが多いと思つております。ですからしてそういう医療のことは厚生省関係になつて来るかと思いますが、そういわゆる淫祠邪教と申しますか、そういうふうのものはできるだけこれを取締らねばいけないという考えでございます。こちらで認めるのは宗教活動だけのことであつて、その医療に関したほうは厚生省のほうのことになるのではないかというふうに思つておりますが、併しこれは法律関係して来ますから、政府委員からして補足させて頂きたいと思いますがよろしうございましようか。
  5. 藤原義雄

    政府委員藤原義雄君) 只今の御質問でございますが、かかる向の宗教団体はその主たる目的教義を広め、行事をなし、或いは信者教化育成のために、それを主たる目的とする宗教団体でない場合が多いのでございます。従つて主たる目的がお説のような方向に進まれる宗教団体につきましては、法の関係から申しまして法令違反等関係もありましようし、従つて認証のできない場合があり得ると考えております。併しこれにつきましては、認証できない場合等につきましては、勿論宗教法人審議会に諮問した上で行いたいと思つております。
  6. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 大寺院又は宗派には、多数の事務、宗務に従事している僧侶がおりますが、労働基準法適用はこの人たちにはないとお考えになつておりましようか。この点をお示し願いたい。
  7. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) この点も誠に済みませんが、政府委員にお答えさせて頂きたいと思います。
  8. 藤原義雄

    政府委員藤原義雄君) その使用関係がいわゆる労働関係として技術考えれば、こういう向きのものにつきましては、勿論基準法適用がある、こう考えておりますが、但しそれが專ら宗教活動のために、或いは教義を広める儀式、行事、或いは專ら布教の任に当る、いわゆる宗教活動の部面の奉仕者である限りにおきましては、この点につきましては労働関係とは別個技術関係があるものですから、従つてそういう場合においては技術関係をよく審査いたしまして、恐らくそういう向きのものは、專らその宗教活動のための奉仕者である場合においては、労働関係基準法適用はないのじやないか、こう考えております。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部大臣にお伺いいたします。宗教法人は従来届出制で、終戦後雨後の笥のごとく発生し、中には随分といかがわしいものまで出て来て、識者の顰蹙をかつているところは御承知のことと思いますが、かかるが故にこの宗教法人法案なるものが提案された一つの大きな理由となつているとこういうふうに考えるのでありますが、ここでお伺いいたしたいのは、こういう法人なるが故に税金がかからない、そうしていろいろなことをやつおられる。ところが広い教育の面を考えた場合に、生徒児童視覚教育立場から一つ映画を見ても、或いは劇を見ても、そこに税がかかる。一つ教育延長として修学族行行つても、そこに宿泊に伴う。名前は誠におかしなものでありますが、遊興飲食税なるものがかかる。こういう両面を大臣はどういうようにお考えになつておられるか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  10. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) この法案はやはり宗教団体が活動するのに、それが活動しやすくなるようなことを私は目的としておるのです。だからこのほうは何も問題がないのじやないか。今のことと比較して申しましても、この宗教のほうは、そこに非常に注意を深くしなければ、成るほど運営ということについてどうも非常に弊害が起る虞れがあると思いますが、それは厳重に起らないようにすればよろしいので、そのほうはよろしいでしよう。併し片一方で以て学校の兒童が映画を見るというような場合に、やはり税を取られるというような点は、私も何かそういう場合には教育のためならば、免税とかいうようなことを講ずることが適当であろうと思つております。修学旅行のときもその費用をみんなというわけには勿論いかないでしようけれども、鉄道の運賃などについては非常に割引きをしてもらうとかいうようなことは、現にしておると思いますけれども、なお一層そういうことにするほうがよいかと思います。けれどもこれは両方を比較して、こちらがこうだから宗教法人のいろんな事業をしてはいかんということにはならないのではないかと考えるのでございます。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私のお伺いいたしたい点は、職後たくさん届出主義制によつてできました宗教団体が、法人の名の下に或いは旅館とか、或いは料理屋とか、そういうのを営業しているのを私も見たし、聞いておるわけなんです。こういうかたがたは宗教団体の名に隠れて税を免れておる。こういうものについては恐らくここに提出されておる法案というものは、淫祠邪教の部に入るものとして粛正するということを目的にしてかかつておられるものと思うのですが、その点を先ずお伺いしたいと思います。
  12. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私もその点は、矢嶋さんのお考えになる点は確かに一つの点だと思つております。これが若し免税というようなことが濫用されることになつたら、非常に困るということは私もこの法案に対して考えておるのです。併しその点は厳重にそういうことが起らないように考えていろんなことを処置して行くことが必要だと思つております。淫祠邪教というものがたくさん出て来るということはこれは職後の当然起つて来る一つ現象であるから、そういうものを取締意味でもこの宗教法人法案というものができて、審議会というものが作られるということは、私はそれをなくなす意味でも役立つというように考えております。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで私さつきお伺いいたしましたのは、直接は関係がないのでありますが、やはりこの文部委員会関連のあることでありますので、私はお伺いいたしたわけです。従来のこの実情を眺めるときに、私は非常にそこに疑問を持つてつたものです。ここに宗教法人法案が出て、そういう大きな脱税行為取締ることができるであろうと考えられる法案が出たことを喜ぶと同時に、私は今まで非常に疑問に思つてつた先ほども申上げました生徒児童学校内における教育延長として修学旅行に行く。そのときに旅館に泊れば遊興飲食税という名前の下に税金を取られる。或いはこれは府県によつて違うのでありますが、視覚教育を今後は団体がやる場合に、それを無税にしないで税金を取るということ、こういう点については私は非常に今まで不満であり疑問を持つてつたものなんです。ここに丁度宗教法人法案が出たのにつきまして、私は更にそれを想起して、大臣はこれに対してどういうお考えを持つて、将来どういうふうにあるべきとお考えになるかという大臣所見を、直接関係ないのでありますが、承わりたいと思つて質問申上げた次第でございまして、将来に対するお考えとしてどういうお考えを持つておられるか重ねて承わりたいと思います。
  14. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは今矢嶋さんのおつしやる通り別個の問題だと私も考えます。併し別個の問題でも私に関連があるから答えろということでございますが、私もそういう点は先ほども申したように、できるだけ改めるようにして行かなくちやならないのではなかろうか。併し旅館の税というのは、旅館から取つて当然なんですから、ただ行つた学生費用をできるだけ減らすという方向に、これはやはり考慮されて行くべきものだろうと思つております。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 認証制というのは私は一刻も早く施行したほうがいいのじやないか、こう考えるのでありますが、この提案理由によりますと、法律施行後一年半ということで期限を切つておるようでございますが、一年半というのはどういうところから出されたのですか、その根拠を……。
  16. 藤原義雄

    政府委員藤原義雄君) 御承知のように、現在宗教法人になつておるものが教宗派教団で約六百五十、神社寺院教会等につきましては、約十八万余に上つておる状況でございます。これらの宗教法人規則をこの法案に基きまして、新らしく規則作成して認証申請をすることになつておるのでございまして、従つて約二十万に及ぶような宗教法人規則認証でございますと、その作成といい、又その審査といい、相当期間を要するのでございます。従つてその規則作成につきまして、少くとも一年半くらいの見通しが必要だという関係から、一年半の認証申請期間を設け、その後認証申請ありましてから一年半の間に認証する。こういうふうな全体的に通じまして、約三年の間に宗教法人約二十万の規則認証し終るという見通しの下に法案を規定しておるのでございます。
  17. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 宗教法人法案提案が巷に噂されてから届出が急に多くなつたような現象はございませんか。
  18. 藤原義雄

    政府委員藤原義雄君) 最近目立つて多くなつておる現状でございます。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは合法的に一年半抜けようというわけでございましはうが、そういうことを考えるときに、これを一年半を一年に縮めるということはやはり無理なんでございますか。
  20. 藤原義雄

    政府委員藤原義雄君) かかる向き宗教団体におきましても、一応規則取扱いといたしましては、宗教法人令がこの本法実施と共に廃止になりますけれども先ほども申しましたような宗教法人は非常に厖大な数でございますので、従つて規則作成などにも時間を要する関係上、認証申請をされるまでにつきましては、現行宗教法人令がそのまま効力を有する、こういう形をとつておるのでございまして、従つてその中に法令に違反するとか、公益を侵害するとかいうような場合におきましては、解散等の処置もできることになつておるのであります。従つて法令違反等の場合がありました場合におきましては、かかる向き発動考えられるわけでございます。必らずし本法のみによつていわゆる解散とか、認証取消というようなことでなくても一応済むし、且つ又期間を縮めますと、何と申しますか、宗教界実情を恐らく御承知と思いますが、教宗派教団規則を作るだけでも、非常に大きな期間を要する。いわんやその所属するところの神社寺院教会の個々の規則にまで及びますときには、非常な時間を要するのであります。恐らく宗教団体側におきましては、この一年半も非常に短期間だというふうな恐れを感じているくらいな実情でございまして、我々といたしましては、最短距離で少くとも一年半は必要だ、こういうふうに認定をした次第でございます。従つてその期間中に法令違反のような事実があるならば、これは現行宗教法人令下におきましてもその発動を見得る場合があり得るのであります。従つてお説のようなものにつきましても、かかる方向で進んで行けば、必ずしも防止できないこともないのではないか、こう考える次第であります。
  21. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これで終りますが、宗教活動の自由というのはどこまでも確保しなければならんと思いますが、法の運用並びに適用については、峻嚴にやつて頂きたいと思います。
  22. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 私は大臣に三つお尋ねしたい点があります。一問一答の形で簡潔にお答え願います。第一は、第二條に宗教団体の定義を下して、この中に神社を加えてあるのであります。これは大臣自身相当に御考慮になつた点だと思いますが、併し神社側それ自身が希望しているというのだから私はその点には触れません。ただこの神社は御承知通り明治以来神社宗教にあらずという基盤によつて、今日の制度、若しくは今日の宗敬氏子を作つているのであります。現在の神社のあり方というものは、神社宗教にあらずという立場で以て成立している。これは事実です。それを神社宗教として処理をなすつた、こういうために当局も幾分の指令は出ております。併しながら先だつていろいろの世論調査御覧になつてもわかるように、ダレスが来たのは何のために来たか知らんという国民が三〇%ある。そういう国民であるのたから、政府が出したといつても、殆んど効果は現われておらない。これが実情です。こういうために国民の信仰の足らんものがあるということが一つ、第二は、氏子というような問題は、各地方において非常に一つの割切れない問題になつて残つている。ここに私の考えることは、これは神社のほうにも私は先だつて多少申上げて置きましたが、神社側宗教としてはつきりした再認識国民にせしめるということ、若しくは氏子というものに対して新らしい立場において再編成を行うということもあり得るだろうと思うのです。政府もその辺に十分の考慮をいたされまして、私は適当な施策をなさる必要がないかとこう思う。そこでこの神社宗教であるとしうことを声明した場合には、ここに二つの宗教を信ずるという変態現象も起る。又鎌倉時代から興つた神仏御合のような妙な形態が起つて来ると当然考えられる。それは信教の自由として私は認めますが、ただ現存の国民としては宗教であることを知らずに、ただ日本国家弊倫の大本を掌るものであるという立場で、道徳的にこれを処理している、この国民というものに対しては、相当認識をはつきりせしめなければならないという点に、私は大臣相当のお考えがあると思うから、一応御所見を伺つて置きたい。
  23. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私も單にこの原理的と申しますか、そういう理論的に申せば、神社宗教ではないと自分思つております。従つて神社を宗敬するということと同時に、又他の宗教を信ずるということもあり得るわけであると思います。そういう原理から行けば、これは宗教の中に入れるべきではないのでありますけれども、併し神社現状を見ますというと、こういう宗教法人として扱うことが先方も希望するし、又このほうが実際の取扱いとしていいのではないかという考えでございます。併し神社に関する理論としては、今梅原委員の言われた通りでありますから、政府もその点については、なおさまざまの配慮を繞らす必要があると考えております。
  24. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 なお第二にお伺いしたい。それはこの法令は、これを成文をされた方々に私は敬意を表して置くが、信教の自由ということに関して最大限度考慮を拂われておるということに、私は先ず敬意を表する。但しその信教の自由を尊重したがために、或る意味から見るというと、非常な臆病な態度すら一方に出ておると思う。信教内容に触れてはならないというような、非常な警戒し過ぎた、信教自由というようなことに関して最大限度処理をしておる。そこでこういう信教自由というものを現在の日本の国情に行なうのには、私は相当考慮が要ると信ずる。この自由を処理し得るだけの国民一般的教養、殊に宗教に対するところの無関心、宗教に対する教養の低くさ、そういうものを余程考慮しなくちやならない。然らずんばこれは淫祠邪教と称せられるものが、これがどんどんと起つて来る余地があり得る。そういう点を、いろいろな点でも考えなければなりませんが、これを食い止めるのは言うまでもなく国民教養です。これは又その法令の上から言つても、そこでも食い止めなければならない。そこで国民教養ということになりますと、これに関しては第一国会のときも、我々が宗教連盟か何かから出した請願を取り上げまして、我々は重要な強い線で、これを院議を以て決定をしておるわけです。それには日本教育機関に、つまり日本教育者を作る機関宗教科を置くべしということを第一国会にこれを強く要望した。そうしてそのときの委員長田中君でありましたが、田中君からも強く要求した。併しそれが今日まで現われておる現象を見ると、私はそれができておらないと信ずる。先だつてこちらに示されたものを見ますと、御覧のように国立大学一つ、あとは宗教学校宗教的な学校宗教科を持つことは当り前、その他は殆んどやつていない。こういうことに関しましては、これはまあ文部省のほうは多忙で、殊に教育制度の変革の上においてそう手を触れられないということは、我々は十分わかります。わかりますが、かなり教育基準法におきまして、宗教は尊重しろということを調つておる。この教育基準法から見ましても、この法令を出されるということを契機として、私は大臣が勇敢に一つ日本国民宗教的教養を高めるという点を非常に考慮せられまして、最も具体的な私は方途を講じてもらいたいということがこれが一つ。  第二には社会教育の中に通じて、宗教というものに関する国民教養を高めるという点に特殊な御考慮を拂われないと、この高度な自由がやがて放恣な淫祠邪教便乗主義になつたり、或いは悪い脱税主義者の利用するところになることは実に見やすいことである。こういう高度の自由を処理する場合においては、国民教養を思い切つて高めるだけの国家的措置を講ずることが必要であると私は信じますし、そこでこの法令が行われると同時に、私は大臣の手において、つまり学校教育の中に第一回に出したような、そういう宗教科をもう少しはつきり制定せられること、及び社会教育の中にこの宗教の自由を正しく活かし得るように日本人を教養するという点に一つ皆様が御盡力を願いたいという点があるのです。この点にも大臣相当な見識があると私は信じておりますが、この点の御所見を伺つて置きます。
  25. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今梅原君の申されましたことは、私も全然同感でございます。これは非常な自由を認めている。併しこれは一方においては、従来非常に宗教というものを戦時中などひどく圧迫して来たものですからして、幾らかそれに対する警戒が過ぎたというようなところがあるかも知れません。非常に自由を認めておるけれども、私は宗教内容の非倫理的なもの、そういうものはどういう方法かで以て、これを取締るということは絶対必要だと考えております。だから一面においては、今言われましたような国民一般宗教的教養を高めるということに、私どもが十分の配慮をすると共に、この非倫理的な、宗教という名に値いしないものは、どうかしてこれを排除するということにも、十分の考慮をしたいという考えでございます。
  26. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 今の大臣のお考えは、どうかこれはただ考えるだけでなしに、私はこういうことの実施を、いわゆる日本教育宗教科を設定するという実施、及び日本社会教育の面にこの線を出されるということの実施を私は特に要望して置きます。それから今大臣の説明の中に、非倫理的なものには十分監督をした心というお話がありましたが、それは併し大臣がそうおつしやつても、私はこの法人法ではできないと信じております。そういう法人法を作つておるのです。今あなたのおつしやるような非倫理的なものに関しては、何らかの形でやりたいとおつしやるが、それは監督する側としては、この法人法ではできないと私は信じております。そういう法人法なるが故に、国民教養というものを飽くまで高めなければいかんのである。私はこういうことを特に要望して置く次第であります。  第三には認証に関してであります。この認証の中のこれを見ますというと、これが宗教団体であるということが最初の條件であります。認証をして行く場合、当該団体宗教団体であることということが第一の條項です。そこでここに宗教団体であるということを認めるのにはどういう方針で認めるのかということを一つお尋ねしたい。そこで届出として、私は宗教を信じておる、若しくはここに礼拝の設備を持つておる、こういうことを言うておる。そうするといろいろなかたも出て来る。その場合にただここに書いてある礼拝施設を持つておる或いは教義を説く、信者教養するその三点が成立つたならば宗教団体として認める、こういうお考えを持たれるかどうか。そういう場合には、実は悪い意味においてこれを利用する人、そういうような者は歴史を見てもすぐわかる。古来日本歴史の上を御覧になつても、脱税行為で以て大きな書院を造つてみるとかあらゆる時代の特権階級なり、若しくは心よくない人たちが、宗教を悪辣に利用して来たということは、歴史の上に明瞭である。こういうものは、宗教を惡辣に利用したものだと私は見ておる。つまりどんな場合においても宗教法人法の八十四條です。どんなことをやる場合にも、「宗教法人宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。」こういうことを謳つておる。それだからして、今おつしやるように非倫理的であろうが何であろうが、それに触れるだけの余地があるかどうか。その点における大臣の手心を一つ聞いて置きたい。なお私は、これに関してはここに法務総裁が見えたから、一ついでにお尋ねしたいと思いますが、先ず大臣お話を伺いたいと思います。
  27. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はそういう非倫理性を持つているかどうかということは、宗教審議会で以てよく審議して、そうしてたとえそういう形が整つてつても、非常に非倫理的なものというのは、宗教の名に値いしないものだと思うのです。だからそういうものは審議会で以てそれを認証しないということもできるのではないかと自分思つております。
  28. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 今の大臣意見は非常に歓迎をするのであり又同意するのでありますが、果して大臣のおつしやるようなことがこの法人法で行われ得るかどうかということに私は疑問を持つておる。これを読まれると、この点におきましてはどうあるにしても、私は大臣が今のようなお考えで、言葉を換えていうと、社会公共福祉を阻害するものだとか、或いは人類社会の発展に伴うて、倫理その他のものを傷つけるというようなものに関しては、大臣がそういう心がまえを持つておられることについて、私どもは感謝もし、又そうありたいと思うのです。ただそういうことで処理して行かれるのには、宗教法人法に示された審議会、若しくは認証手続において十分な、特別な御考慮を拂われる必要があるということを附加えて置きたい。それから今ここへ法務総裁が見えましたから、私は一つお尋ねをして置きたい。これは八十一條であります。裁判所宗教団体解散する行為を規定したところがある、第八十一條のうちの第一項です。「法令に違反して、著しく公共福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。」こう書いてある。これで一つお伺いをしたいと思います。大体これは言うまでもなく、宗教に対する法令ではなくて、宗教法人に対する法令であるのです。従つて信教の自由を尊重するということと、宗教団体というものを取扱うということの上においては、私は徒らに信教の自由という名にかつて宗教団体を乱雑に取扱つたり、甘やかして扱つてはならない、こういう意見を私は根底に持つておる。そういうことからお尋ねしたい。大よそ法令に違反しておる事件、それから公共福祉を害することが著しいと書いてある、而も明らかに認めると書いてある、一体こういうつまり條文によりまして、日本裁判所法務官が果してこれを解散し得るだけの立場をつかみ得るかどうかということを私はお伺いしたい。こういう寛大な、法令に違反しておるのにかかわらず社会公共福祉を破り、而も著しくという、どの程度で著しくというか、明らかに認めるという、明らかに認めるというこういう抽象的な形容詞がたくさん入つておる。こういうことは余りに宗教というものの自由を尊重し過ぎたということから来ておると思う。宗教団体は私は厳格に処理すべきだと思う。宗教に対しては信教の自由をやらなくちやならないが、いやしくも国家の免税の特典を持ち、又社会公共福祉を保つというものには、相当に制限を加えることに明断でなくてはならない、これはひようたんなまずのようなことになつておる。私が法務官になつた場合に、法令に違反するは、これはわかるのであります。社会公共福祉は何だ、而もこれは著しくといつておる。どの程度が著しくか、明らかに認めるというのは何を意味しておるか。こういう條文で、果して団体を規正するだけの、私は裁判官のほうにおいて、法務のほうにおいて、用意ありや否やということを、私は素人ですからあなたにお伺いしたい。この法文があると裁判官が殆んど解散し得ないのではないか、こういうことを考えるがためにこれを法務総裁にはつきり御所見を伺つて置きたい
  29. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 非常に詳細な條文の文句でございますから、一応政府委員にお答えさせたいと思います。
  30. 林修三

    政府委員(林修三君) 只今宗教法人法案の第八十一條の第一号の條文についてのお尋ねでございました。これは御承知のように宗教法人令では、「宗教法人法令二違反シ若ハ公益ヲ害スベキ行為」云々ということに相成つております。今回のこの宗教法人法案においては、「法令に違反して、著しく公共福祉を害すると明らかに認められる行為」と、こういうふうに書いてありまして、多少そごの字句が違つておるわけでございますが、これは文理解釈といたしまして、法令に違反し且つ著しく公共福祉を害すると認められるとき、こういうふうに相成るかと思うのでありますが、そういう意味におきまして法令違反及び公共福祉を害する、こういう二つの要件を今回の法案においては必要とする、こういうことに相成るかと思うのであります。この点は、勿論この條文宗教法人、財産管理主体としての宗教法人に対する規定でありまして、宗教団体そのものの解散規定ではないわけでありまして、直接信教の自由云々ということにつきましても、多少宗教団体解散とは違つた意味を持つものとは考えるわけでございますが、やはり事宗教信教の自由にも関連いたす問題でありますので、この條文の体裁を従来よりは愼重な考慮を以て規定したわけでございます。ただこの考えといたしまして、法令に違反して著しく云々ということでございますが、法令に違反いたしました場合には、おおむねその法令違反行為というのは公共福祉を害する行為になるのではないかと考えるわけでございまして、その点におきまして現在又はというふうに上下を繋いでおるわけでございますが、それと比較いたしまして実際問題の適用といたしましては、認定問題といたしまして  は、それほど大きな差を生ずることはないのじやなかろうか、かように考えるわけであります。結局「著しく公共福祉を害すると明らかに認められる行為」と、こういう意味は、最近のこれは立法例でやはりこの認定に当ります裁判官なら裁判官のその認定の基準をはつきりするという意味で、かようにいろいろ形容詞をつけたのでありまして、結局これは裁判官の認定問題になると思うのでありますが、かような字句が入つておりましても、その認定ができないということはないのじやないか。むしろ或る行為を捉えて見れば、この條文違反ということは却つて認定が割合はつきりとできるのじやなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  31. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 私は今の御答弁で私がお尋ねしようとした点がわからない。はつきりしたことは……。もつと言つて置きますが、これは私が宗教団体といつた意味は、この法令宗教を取扱つたのではない。これは宗教団体法人化する法令なんだ。私が言つている意味宗教信教の自由に関するのではない。宗教団体法人化する法律なんです。そこは私は誤解ないようにお伺いしておる。かるが故に信教自由の尊重、又法人化されない宗教団体の存在することについて言つているのじやない。今は法人化された団体についてこの解散を規定するのである。法人化された宗教団体は、ここに免税となる規定もあり、又いろいろな恩典がある。そういうものを処理なさるのには、相当嚴格な処理をなす必要があると私は一つ意見を持つておる。信教の自由を尊重しなければならないが、宗教団体としての法人格は適切に処理をすべきである、こういうことを私は前提としてお尋ねしておる。それで以前は法令に違反したという行為一つと、社会公共福祉を妨げるということ、この二つを示しておるのです。ところが今この場合は法令に違反しておるだけでは解散にならない。その上に社会公共福祉を害することがついて来る。この法文の書き方では……。二つの條件を備えなければならない。而もこの公共福祉というものに著しくとこう来ておる。これでまあ裁判官が明瞭に処理し得るだろうかということを私は慮る。裁判官が認定しにくいんじやないかということを私は問うておる。これは著しくとか、更に明らかに認めるとか書き添えてある。法律を決定するのにこんな形容詞、文学的な形容詞を入れて置いてよいかどうか。これでは裁判官の取扱いは容易なことじやない。そこでこれは私は在来のように、法令に違反するとか、又は社会公共福祉を阻害するものを解散するというなら却つて処理しやすい。而もこれを二つを一つにしてあるから困難となる。あなたは法令の違反は公共福祉に反するという内容を持つておると言うが、そうだけではない。これは無論、公共福祉のものは法文化されて法律になつてもおる。併し法律に法文化されてないところの公共福祉もたくさんある。先ほど大臣が言つたように、つまり倫理に反しておるかどうかということは、何も法律に出て来ない。そこでこの公共福祉というものは非常に場面が広いのである。それへ持つて来て著しくとか、明らかにというようなことを附け加えてある。これは法務総裁にもお尋ねしたいが、こういう法律が、こういう文学的な形容詞をここに入れてある法律によつて果して解散ということが処理できるかどうか。こういうことを私はお尋ねしたい。
  32. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 梅原委員のお説は誠に御尤もに拝聴いたした次第でございます。ただ私どものほうでこの法案をこしらえました当時の気持といたしましては、宗教法人法でありますが、これはやはり法人格を與え、又これによつて伴いまするところの能力を宗教団体に対して與えるということが宗教活動の自由というものを尊重する上から言つて適当であると、かような前提の下に宗教活動をできるだけ自由ならしめ、殊に憲法上の基本的権利でもありまするので、これをできるだけ尊重いたすという趣旨を以ちまして関係方面とも十分協議をいたしましたる末、かような條件を定めた次第であります。
  33. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 今のこれが作られたあなたがたの意図なり、関係筋の意図は私は敬意を表する。ただ信教の自由を尊重するというこの枠によつて、偽宗教宗教を利用した行動を制止しようというところに眼目がある。今の八十一條あたりは……。だからして信教の自由を尊重されることには私はちつとも不快を持たず、又その必要であるということを私は主張しておる。それを信教の自由を尊重し、自由な活動をするがためにつまり混雑する。宗教を擬装したものの非合法的な行動をこれを許容するようなそういう緩衝地帶なり、温床を作つてはいけないということを私は言うのであつて信教自由を尊重するが故に、この信教自由が濫用せられないようにしろということを私は注意しておるのであつて信教の自由からこれを構想せられたことは私は敬意を表しておる。更にもう一遍私は私の立場から言うと、信教自由を尊重せられるがために信教自由が濫用せられないように警戒をして置いてもらいたい。これが宗教信教自由の尊重であるということを私は前から文部大臣に問うておる一貫しておる線なんです。その点はよく考慮してこれで果して行けるかどうかということを聞きたい。私はこういう法文のやり方に、やれ著しくだの、明らかにだのとかいうことを書いて、こういうことで、而も二つを、今まで別々になつてつたのを一つにしてこれで一体処理ができるかどうか。これによつて現在たくさんの宗教が利用しておるということは、これは皆さんがたも御存じの通りなんです。多数の淫祠邪教脱税行為をやつておることは御覧通りである。これがために何か処理が必要なのであつて、そういう場合においてあなたがたの立場としてこの法文において十分にやり得るということを私は法務総裁から聞いて置きたい。
  34. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 重ねてのお尋ねに対してお答えを申上げます。この宗教法人法案の八十一條第一号はただこれだけの法文でございまするが、宗教団体が実際に社会的に活動をいたしまするに当りましては、若し政治的な活動をする場合におきましては、その方面に関するいろいろな法令、又経済的な活動をいたしまする場合におきましては、その方面におきまするいろいろな経済法令、こうした他の法規がございまして、おおむね公共福祉を守るためにはそれぞれの法令が備わつておると存じまするので、恐らくさような場合におきましては、必ず何らかそれに対する法令がある。そしてその結果、公共福祉に著るしい支障を與えておるということが明らかに認定され得る、こう確信をいたす次第でございまして、実際の運用におきましては、これを以て僞宗教の不当な活動を抑制いたしまするには十分にできるであろう。こういうふうに考えておる次第でございます。
  35. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 まあこれはよく私もこの成文ができた今の現段階における諸関係がありますから、これは私は一応ここで打切ります。ただ私がお願いしたいことは、これを御覧になりますと、信教の自由を尊重するということのために、本当に信教の自由を尊重するという実践の上に当つて、本当の信教の自由を阻害して行くような僞宗教の跳梁する余地がこれは各條に多い。殊に今の裁判というような、裁判所において、文部大臣に別に私が申しましたが、裁判所関係にも相当あるのであります。こういう点におきましてはこれを処理なさる裁判官にも又宗教的な教養ということが相当に必要である。これは、どうか今後この法令によつて大臣がおつしやつたような意図をよく体せられまして、これを実施せられる上に十分の御考慮を私はお願いを申したいと思う。
  36. 高橋道男

    ○高橋道男君 私は先だつて文部大臣にこの政教分離の方針によつて宗教団体側においてこれを利用して、自分たちの勝手気ままに振る舞うこともできるというような曲解をしている者もあるということについての御質問を申上げましたが、更にそれに関連して、先ほど梅原委員もおつしやつたうちにございますが、この宗教団体1でなしに、社会の大勢が宗教団体に対して如何なる考えを持つておるか。又今後持たせなければならないかということが私は非常に大事な問題だと思うのであります。具体的に申しますと戦後パージということは宗教界には適用されませんでした。これは信教の尊重という点において誠に結構なことだと存念しておるのでありますが、このことが社会的にはやはり宗教団体の一部が考えているように宗教関係は何をやつてもいいのだ、自分たちもそれに関連して、これを利用すればいいのだというようなひどい見解を持つておる者が今なお世間には多いと思うのであります。これは社会教育によつて是正しなければならんということは、一応簡単に言われるのでありまするけれども、その具体策として如何なることをお考え頂いておるかどうか。先ほど梅原委員からは、教育においてその是正すべき一端を具現すべしという御意見がございましたが、今回の教育免許法の一部改正によつて、私立学校において宗教を免許科目の中に加えられましたことは、これは結構なことと思うのでありまするが、併しこれは国立学校及び公立学校については、この免許の適用は甚だ私は表面的なことであつて、免許法の改正によつて宗教という科目が免許科目の中に加えられたといたしましても、その教えらるべき内容を一応考えてみますると、單に宗教に関する知識を生徒に示すという程度にしか出でないのじやないか。若しそういうことであるならば、これはその程度のことであるならば、私は正常にその免許状を持つておる者ならば、公立学校、国立学校において宗教に関する教育を與えても何ら一宗一派に偏よるようなことはあり得ないと思うのでございまして、何故に私立学校に限つてこういうものを適用しなければならないか。公立学校、国立学校にはどうしてできないかということを関連してお尋ねいたします。  更に仮に教育面においてそういう宗教に関する免許科目ができましても、現在までのような表面的な、單に宗教に関する知識を與えるという程度の教育でありまするならば、私は宗教を情操教育と称する程度のものすらも徹底して生徒に涵養することはできない。宗教自身は身を以て魂に食い入る教育を、或いは教化をするのがその使命であると思うのでございまするが、私は現在の日本の思想界、或いは教育会を善導するためには、些少の弊害が伴うことを予想されましても、もつと徹底した魂の教育をしなければ、将来の日本を十分に再建して行くことはできない、こういうふうに考えておるのでございます。従いまして今申した一端に入るのでありますが、教員の免許法改正に当つて、何故に私立学校だけにその科目を限らなければならないかということの一点と、それから宗教関連して社会教育を如何なる方法によつて充当して行かれるのかということについてお尋ねをいたしたいのでございます。今度の宗教法人法案が提出されるについて、これはいわゆる淫祠邪教取締るのだというような、或る一面の結果を予想しての推断を下しておる行動を耳にするのであります。又目にもするのでありますけれども、これは私は宗教法人法案を誤解しておる一つであると同時に、そういう教育関係されておる人すら、宗教に対して、又宗教団体に対する政府の施策に対して認識が足らない一つの証左である。そこにそういう人達にすら十分の認識が得られていないということも、附加えて大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  37. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) この第一の点でございますが、官公立においては、その科目の中に入れていないというのは、憲法に公のものが一定の宗教というようなものを唱えるといいますか、それを補助するとか、そういうことがあつてはいかんということがあると思います。そういうところに基を持つておるのであります。そのことが又高橋さんの言われるように、ただ宗教歴史だとか、宗教に関する知識とか、そういうものを與えるのでないといけないんだ。本当の宗教心といいましようか、本当の宗教的信仰でしよう、一方から行けば……。そういうものを與えなければいかん、こういうお考えと承わりましたけれども、それは私立学校ならできますけれども、現在は官公立の学校ではできないと思うのでございます。やはりそういう一定の宗教的信仰を教えないで、宗教的情操を持たすというようなことはできないという議論も成立ちますけれども、これは教育本法を作りますときにそういう議論があつて宗教的情操を養うといつたところで、一定の宗教を教えないでは養えないという論もありましたけれども、併し消極的には宗教というものを、否定するとか、宗教というものをひどく侮るような言動を教育者がしないで以て、宗教に対して敬意を持つた、理解を持つた態度を以て教育者がやつて行くということによつて教育的情操も養えるということも教育本法にも入つておるわけでございます。一定の宗教の信仰を官公立の学校で養うということはできないと思つております。そこに今のお尋ねの点の基が伏在しておるように考えております。
  38. 高橋道男

    ○高橋道男君 社会教育の面について御抱負があればそれをお伺い申したいと思います。
  39. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 社会教育の問題に関しても積極的に文部省が一つ宗教の信仰というものを宣伝するというわけには行かない。それはやはり宗教団体の活動をやりやすくするように、宗教法人法案というものを作つて、各宗教団体が宣教をやさしくするように、できやすくするということを一方において努めると同時に、一般的に社会教育の面において、さまざまの宗派のかたがたの講演とか、或いは一般に対する講座とか、そういうものを開くとかいうようなことでやるよりほかに道はないのではないかと今は考えております。
  40. 高橋道男

    ○高橋道男君 この法案の第二條に、宗教の尊重ということが掲げられておりますが、宗教は元来申すまでもなく内在する精神から発すると思うのでございます。ところがこれの尊重ということについて、具体的に現われているところだけを以てこの尊重ということがなされたのか、或いは内在する、発生して来た過程までを認めてこの精神を適用されるのか。具体的な事例について申上げて御所見を伺いたいと思うのでございます。これは労働基準法にも関係がございますので、労働大臣或いは政府委員のかたからも併せて御所見を伺えれば幸いと存じます。労働基準法によりますると、その法律適用される事業或いは事務所というものが、たしか十七項目ばかり列べて掲げられておつたと思います。その一番最後のところに、その以前に掲げられておる業種以外のものは別の政令で定めるというようなことが掲げられておつたと思いますが、その政令によつて、つまり労働基準法の施行規則によりまして基準法に掲げられていない事業をやつておる法人或いはその事務所というようなことが適用範囲に掲げられておつたと思うのであります。ところがこの法人として、一般的に掲げられておりますが故に、不幸にも私はこれが宗教法人にも一部適用されているところがあることを残念に思うのであります。先ほど大谷委員からのお尋ねにつきましては、これは奉仕の態度から勤めておるものに一ついては、これは適用されておらないということの明言がございまして、これは誠にその通りで結構でございますけれども、やはり宗教団体が大きな組織となつて行く場合には、当然この組織を動かして行くべき機構が必要になり、従つてこれに従事する人も又必要になつて来ると思うのであります。で而もその人は決して事業に従事して対価を目標として、いわゆる労働上の雇傭関係においての勤務であるというような観念ではなしに、みずからも神に仕える、仏に仕えるという、その奉仕の態度からその機構の一員として勤めていると思います。勿論たくさんの宗教法人の事務所の中には、そういう信仰関係でなしに勤めているというものもないとは申せないと思うのでありますが、私の関する限り、日本宗教法人の事務所においては、そういうようなものはおられないと考えておるのでございます。で具体的に申すと、私は天理教の教派の事務所に関連をしておりまするが、その事務所に基準法適用させられておるということを一つの具体例として申上げるのであります。而も勤めておるものは神に奉仕する、神に感謝するという観念の下に勤めておるにもかかわらず、その精神に反して基準法適用され、或いは時間その他について法の範囲から外れることができない。これは私は二面から申せば信教の自由の圧迫だと思うのであります。労働或いは勤務という観念に対して、形式的に外見から見たところのものを法律によつて強制せんとする行き方だと私は見るのであります。こういうことは今申しましたように、信教の自由を圧迫するものである。こういう観点から私は労働基準法施行規則のうちから、宗教法人はこれを除くべしという考えを持つておるのでありまするが、この点信教の自由、宗教の尊重という面から大臣並びに労働政府委員の御所見を伺いたいのであります。
  41. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 信教の自由とか、宗教の尊重と、こう言つてつても、ただそれだけでは消極的で、政府が別にその中に立入つてどうたということはしないほうがいいのですから、そういう意味ではこの信教の自由を尊ぶのですが、それから同時にその活動がやさしくなるようにするということが必要だと思う。これが信教或いは宗教そのものでなくして、その教義が宣伝されるのにやさしくなるように、しやすくなるようにというその意味団体を保護する。団体の活動をやさしくする。この法案の関するところはそういう意味において宗教団体関係して来るということだと思う。けれども併しすでに団体ということになつて来ると、それがやはり労働法規とか、そういうもので束縛を受けるということも又止むを得ないものがあるのではなかろうかと思うのでありますが、この点については政府委員にお答えしてもらいたいと思います。
  42. 中西實

    政府委員(中西實君) 法律関係只今おつしやいました通り、なお基準法におきましては労働者という定義をしておるのでありますが、これによりますと、職業の如何を問わずに、あらゆる法人団体の事業或いは事務所に使用されておるもので、賃金を受けておるもの、これを労働者というということで、原則として基準法適用があることになつております。おつしやいますように宗教団体宗教活動関連いたしまする人の中には、労働者と見るへきかどうかということについて非常に疑わしいケースが多かろうと思います。大体抽象的に申上げますと、宗教上の例えば布教とか儀式に従事する者とか、或いは祭祀のための巫女だとか、そういつたつまり宗教上の奉仕をするというものにつきましては、これは労働者じやないというふうに取扱つておるわけであります。ただ併し宗教団体におきましても、全く一般の企業と同じような使用人もあるわけでありますから、これにつきましては、やはり基準法適用がある。そこで一番問題になりますのは、宗教上の信念から奉仕的に仕事をしているかどうか、これが一番問題になろうと思うのですが、結局はやはり個々の事例を見まして、それが果して宗教の奉仕に出ているものかどうか、或いは單なる雇用関係に立つものかどうか、これはやはり個々に判断するよりほかはないのじやないか、かように考えておるのであります。
  43. 高橋道男

    ○高橋道男君 重ねて労働政府委員にお尋ねをいたすのでありますが、この発生過程において奉仕観念に出ておるものまでその法を強制するということは、私はどうしても誤りだと思うのであります。でその奉仕ということについても、或いは形においてはいろいろ問題があるかも知れませんが、とにかく宗教家と称するものも、或いは奉仕するということにつきましても、これは霞を食つて生きているわけには参りませんので、やはり然るべき給與を與えられることが、これは事実だと思うのです。その事実すらも雇用関係における給與関係とこう即断されることは、これは今おつしやつたように個々の事例について考えられないと、非常な誤りが起つて来ると思うのでありまするが、個々の事例、特に今私が申しました著しい事例について適用が是正されるならば、すぐにでもその適用範囲から解除するというようなお考えはお持ち頂いておりますかどうか。  それからこれもついででありますからお聞きしますが、衆議院においても同様の質問がなされて、参議院の宗教法人法案審議中に基準法適用されておる宗教団体の事例を調査して報告してもらいたいという申入をしておるそうでありまするが、それはいつ頃資料ができるものであるか、ついででありますから併せてお答え願いたいと思います。
  44. 中西實

    政府委員(中西實君) 資料につきましてはでき次第成るべく早い機会にお渡ししたいと思います。それから今の、單に金銭を受けておるということで直ちにこれを労働者ということは、これは勿論早計ではないかと思うので、それが報酬的な程度のものか、或いは一般企業と同じような使用人に対する賃金であるか、これはやはり十分に実体を見極めましてきめる必要があると思うのです。若しも單に給與を受けておる、併しながらそれは結局信仰の奉仕というところから出ておるのだという事例がございまして、現に適用しておるというようなものが若しありますれば、勿論それは個々に見まして適用の除外ということを考えて行きたいと思つております。
  45. 高橋道男

    ○高橋道男君 労働関係につきましては以上で終ります。  次に文部大臣にお伺いするのでございますが……。
  46. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 高橋君、法務関係質問がありますか。
  47. 高橋道男

    ○高橋道男君 若干ございます。
  48. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ではそのほうを先にして頂きたい。
  49. 高橋道男

    ○高橋道男君 それでは法務関係のほうを先に伺います。  私は本会議において信教の自由ということに関する御解釈について、これは絶対的なものではないという文部大臣法務総裁御両所から伺つたのでございます。そのお考えかたについてはその通りだと思うのでありまするが、その実例として、法務総裁からは団体等規正令及び宗教法人令適用によつて処置をしたことを具体例として挙げてお答えを頂いたのでございますが、これは私がお尋ねしたいと思つておりましたことは、先ほど梅原委員からも大分詳しくお尋ねがございましたので、重ねてお伺いしたい点もあるのですけれども、お急ぎのようでございますから省きます。具、体的に一、二お伺いを申上げたいのは、宗教活動と、それから政治活動とは如何なる面で区別ができるか、これは政教分離ということに関連しても大事な問題だと思いますので、はつきりした御解明がありますれば、誠に結構だと思うのであります。例えて申しますると、今回の宗教法人法案の成立につきましては、多くの、と申しますか、正常な宗教団体つて賛意を表しておるのであります。これの成立につきましていろいろ宗教団体側の運動がございますが、これはみずからの信教の自由を守らんがための運動であつて宗教活動だと私は考えるのでありまするが、それはどちらの活動になるか、そういう具体的な例を挙げてお尋ねをいたします。
  50. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 先ず宗教活動と申しますのは、どういうことでありますかということは、これは非常にむずかしい問題であると存ずるのでございまするが、宗教法人法案におきましては、第二條におきまして、「この法律において「宗教団体」とは、宗教教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者教化育成することを主たる目的とする」団体である。こういう定義が掲げてあるのでありまするが、これから見まするというと、形式的にはかような行為を行いますることを宗教活動と言い得るのではないかと考えるのでございます。併しこれは宗教活動というものを法律的な形式の面で捉えたものでございまして、この内容の個々の行動について見まするというと、その活動の態様というものは、誠に千差万別でございまして、場合によりましては、宗教教義なり、教化の内容というものがそのままで政治活動となることも大いにあり得ることと存ずるのでございます。信教の自由と申しますることは、これは先般もお答え申上げましたる通り、憲法上の絶対的の自由ではなくして、宗教をその種類によつて差別待遇をするということは、もとより許されないところでありまするが、他の一般的の見地からいたしまする公共福祉に基く制約というものは、当然これに対してもあり得るということを予定いたしておるわけでありまして、宗教活動が同時に政治活動となります場合におきましては、政治活動に関する法令の規定は当然に適用がなければならない、こう解釈いたしております。例えば公職選挙法でありますとか、政治資金規正法でありますとか、或いは団体等規正令、こういつた法令はこれは宗教活動が同時に政治活動となりまする場合において、その活動に対して適用があるわけでございまして、この趣旨は宗教法人法第八十六條の規定にも謳つてあるところであります。なおここで政治活動と申します言葉は、法令の上におきましては、おおむね政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者、特定の政党、その他の政治団体、特定の内閣等を推薦し、支持し、芳しくはこれらに反対するようなことを目的とする行為を総称するものと解釈をいたしておるわけでございまして、従いまして国会において法律審議せられまするその際におきまして、この法案の成立を目的として行動をされる場合におきましては、これはやはり政治上の一つの施策を推進し、支持するという行為になるのでございまするから、それが宗教団体としての当然の宗教的な活動でありまする場合におきましても、その半面において又一つの政治活動たるの性質をも帯びて来るものである、かように解釈をいたす次第であります。
  51. 高橋道男

    ○高橋道男君 只今の御解釈によつておおむねわからして頂いたように思うのでございますが、次にお尋ねいたしたいのは、団体等規正令の解釈について、解散団体の構成員が別の団体を構成して、それが解散団体の構成員であつた者が、新らしい団体の四分の一以上を占める場合には解散させられるというようなお示しを頂いたことが曾つてつたと思うのであります。それは宗教団体を組織する場合においてもやはり同様であるかどうか。これもやはり信教の自由という建前から、何らほかの悪意なしに宗教団体解散団体であつた構成員が干與することもあり得ると思うのでありますが、そういうことはあるかどうか一つ……。
  52. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 団体等規正令第五條及び第六條に関しましては、実際上の運用といたしまして宗教団体に対しましては特段に緩和した取扱いをいたしております。なお宗教団体といえども第二條に該当する行為があるときは、これは当然に適用をいたしております。それから団体等規正令第五條と信教の自由という関係でございまするが、本條の適用上、信教の自由を阻害することのないように特に配慮いたしました結果、宗教法人に対しましては、全国的組織を有するものの本部を除きまして、原則として同條第一号の規定を適用しない取扱いにいたしております。つまり全国的組織を有するものの本部についてのみこれを適用する、同條第二号におきましては、法務府といたしましては実害性がないと認めました場合にはこれを現実に適用しないという取扱いにいたしております。それから団体等規正令第六條につきましては、宗教団体が第六條の第二号、第三号「政府又は地方公共団体の政策に影響を與える行為をする」、「日本国と諸外国との関係に関し論議する」、こういう点でございまするが、これに該当いたしまする場合は、中央及び地方庁におきまして、団体調査並びに団体の公開という見地から、特に必要と認めて指示をいたしたものに対してのみ届出を行わしておる。宗教団体が第一号即ち「公職の候補者を推薦し、又は支持する」、この場合におきましては、当然一般団体と同様、選挙期間届出を要する、こういう取扱いに現在いたしておる状況であります。
  53. 高橋道男

    ○高橋道男君 大変細かなお答えを頂いて誠に有難うございました。そうしますと、政令の第六條の二号、三号のほうは当局のほうから求められたことによつて届出をするわけですね。
  54. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 団体調査の上から言つて必要であるとか、或いは団体等規正令が、いろいろな政治活動をいたしまする場合におきまして、これらの政治活動をいたす団体というものは社会的にその内容を公開すべきものである。こういう原則をとつておりまする、その公開の見地からいいまして、具体的に必要であると認めて特に届出を指示いたした場合においてのみ届出をして頂く、こういう取扱いに相成つております。
  55. 高橋道男

    ○高橋道男君 先ほどのお言葉の中で、全国的なものは届出をさせるが、個々のものはこれから除外してあるというようなお言葉があつたように思いますが、それは何か区別される理由はどういうことでしようか。
  56. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 団体等規正令の第五條におきましては、「左の各号の一に該当する団体は、法務総裁の特に指定するものを除くほか、第二條の団体」とみなして解散しなければならんという趣旨でございますが、それは「主要役員のいずれかが左の一に該当する」場合、「解散した団体の構成員であつた者」、これが主要役員になつておる場合、それから正規の陸海軍将校等が役員である場合、又憲兵隊、特務機関、陸海軍警察機関或いは祕密牒報機関に勤務した者、こういう者が主要役員になつておる場合、それからその構成員の四分の一が解散団体の構成員であつた場合、こういう場合に解散団体を指定いたすことになつておりますが、その取扱いといたしましては、全国的組織を有するものの本部についてのみ適用をいたす、こういうことにいたしております。これは特に信教の自由を阻害することのないように配慮いたしまして、宗教団体に対しましてかような取扱い方針をきめておるのでございまするが、その理由といたしましては、全国的な組織を持ちまするものの本部の活動につきましては、これは国家社会に及ぼす影響が重大である。こういう見地からこれを取締ることにいたしておるのでありまして、それ以外のものはそこまでやる必要はなかろう、こう実際的に考えた結果の取扱でございます。
  57. 高橋道男

    ○高橋道男君 お答え有難うございました。法務総裁への御質問を終ります。
  58. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 法務総裁に他に御質問はございませんですか。……それでは法務総裁に退席して頂きます。
  59. 高橋道男

    ○高橋道男君 文部大臣にもう一点お伺いを申したいのでありますが、主としては法案の第五條に関連いたしまして、所轄庁が文部大臣と地方の知事、こう二つになつておるのであります。ところがこれは先般の参考人の陳述の場合にもございましたが、包括団体であるもの、或いは單立的なものは、都道府県知事をこの法案に基いて所轄庁とするものでも、すべて文部大臣を直轄庁としたほうがいいじやないか、今までのものは勿論その通りに置くけれども、今後できるものにもそうしたらいいじやないかという意見がございまして、私もこれと同じ考えを持つものであります。私は宗教関係につきましては殊更自由と平等ということが称えられております上から考えて、府県別にこれを取扱う、或いは認証を與え、認証できないことにするということにいたします場合の取扱い方に差別が生じる可能性が十分あると思うのであります。こういう上から宗教法人に関する限りこの法案の法の適用の場合に、文部大臣に一元化することを原則としてお考えになることはできまいかどうか。これは法案の立案過程におきましても、地方におきましては、地方にも宗教法人審議会を設けて欲しいというような希望も随分あつたようでありますが、これは一つには知事の取扱につきまして、地方によつていろいろ差別が生じやすいということに対する一つの懸念から起つている声だと私は聞いておるのであります。その面からいたしますと、仮に地方に地方審議会がありましても、差別が起つて来ることはこれは否めないことでございますので、私はそれよりもむしろ中央において、これはいわゆる以前の統制とか、そういうような思想とは別に、宗教を平等に扱うという上から申して、中央においてその扱いを一つにされるのが適当であるというように考えるのでありまするが、その点の御見解を伺いたいのであります。
  60. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今の御意見は確かに御尤もなことと思いますが、併しそういうことのために、審議会が中央において一つしかないというのはその意味かと思つております。一応は従来の慣習もありますからして、地方庁で以てそれをやつて、そうして異議のある場合にはすべて中央においてそれをきめる。中央に十分吟味した立派な審議会を作つて置いて、そこできめたと言えばそれで一元的な点においても私は十分できるのではないかというふうに思つておりますが、併しこの点については私は政府委員に補足さしてもらいます。
  61. 藤原義雄

    政府委員藤原義雄君) 只今の中央の審議会と、地方の審議会との関係につきましては、大臣の御説明で十分御了承願えることと存じますが、各所轄庁を中央にしてはどうか、文部省にしてはどうか。こういう御意見の点につきましては、御承知のように事柄の性質から考えまして、宗教法人に関する事務と申しますのは、いわば国家的性格を持つておるというような一面がございますので、お説の通り我々も考える次第でございます。併しながら何せ二十万の施設を持ち、北は北海道、南は鹿兒島の個々の社寺につきまして、これが中央の審査に付するということは甚だ事実上の困難性がありますものですから、事柄の性質と反しまして、事実上の要請から、而もこれが各都道府県の社会的、経済的諸般の生活面とも関係がございますので、且つは旧来もそういう前例がございましたので、以て社寺につきましては地方を所轄庁にいたし、各都道府県知事がこれを責任者として、教宗派は相談のみを中央にしたわけでございますが、この一般原則の適用につきまして、例えばお説のいわゆる單立の教会等につきまする御所見でございますが、これにつきましても公平、平等という建前から、一律に社寺等につきまする取扱を原則的に公平にこれを処理したいという一念から、かかる向きの單立宗教法人につきましても、各都道府県でこれを処理して頂く、こういうふうにきめた次第でございます。
  62. 高橋道男

    ○高橋道男君 宗教団体は全国に散らばつておるわけでありまするが、これは宗教に関する限り、多くの場合においては、いわゆる地方自治法とは私は別個のものだと思いますので、只今大臣からお話がございましたように、この法案から見ますれば、宗教法人審議会に持つて来られるものは極めて特別な場合だけのように言うのでありますけれども、多くの場合そうでなしに、統一して行われることを希望いたしたいとこう思うのであります。重ねてお伺いいたしまするのは、地方におきまして府県……、今回はまあ知事の所管に移されるのでありまするけれども、その機関だけでなしに、末端の市町村において宗教関係の書類を扱う人の立場考え方なども、決して形式的なことにならないように御指導をなさる御計画ができておるかどうかということと、それからもう一つはこの宗教法人法の解釈について、或いは法務府、或いは大蔵省、その他の所管庁との間に、従来はややともすると御見解の相違を来しておるような向きもあつたのでありまするが、この法案に関する限り、文部大臣を主体として法の解釈を確立し、その精神を関係官庁及び地方の末端にまで徹底させられるような、如何なる御計画があるかを念のために伺つて置きたいと思います。
  63. 藤原義雄

    政府上委員(藤原義雄君) 只今の前段の、地方庁との連絡関係につきましては、我々も細心の注意を拂い、各庁との連絡も密にしておる次第でございます。その事務執行につきましても、一々につきましては各府県との関係は今までとつておりませんが、大まかな線につきまして意見を聞き、且つは中央における財政委員会、或いは地方自治庁との関係につきまして、大まかな枠につきまして御相談して、その実施の面における地方事務の円滑化を図つて行く努力をいたして来ております。将来につきましてもますますこの法案の重要性に鑑みまして、その点につきましては遺憾のないように進めて参りたいと、こう思つております。中央におきます大蔵省その他の関係につきましても従来とも密接な連繋を持つておりましたが、特に宗教法人の性格がはつきりいたしまして、なお新宗教法人としての門出につきましてもいろいろな諸問題があるわけであります。登録、登記その他の関係に事務上種々の趣旨徹底の必要がございますので、中央、地方との連絡につきましては細心の注意を拂い、且つ又そのために講習会とかいうような、こういうものをすでにだんだん計画を進めておるような次第であります。お説の通り我々もこの法案につきましては十全の配慮をいたす努力をしてその趣旨の徹底を図つて行きたい、こう考えておる次第でございます。
  64. 高橋道男

    ○高橋道男君 有難うございました。
  65. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 最後に一つ私は大臣に重要な提言をしたい。この宗教法人法が成立せられると同町に私は日本の文教政策の上に画期的な線を描いて頂きたいということを考えておるのであります。先ほど申しました点で内容は盡きておりますが、どうか教育本法の上における宗教は尊重すべきという線と、特殊な宗教教育は国立の学校でやらない、この二つの線は非常に重要な線であるのであります。これを在来は倉皇の間にいたしまして、日本の文教の中に宗教というものに関する重要な政策はなかつたと私は思う。これはこういう倉皇の間にあるので我々も愼重な態度で行きましたが、どうかこれが成文化されると同時に私は画期的な一つの文教政策の中に宗教を尊重するという立場を具体的に示して頂きたい。それで、先ほど高橋委員にお答えになりました中に、大体大臣考えは私は同感で、そこで国立学校において特殊な宗教教育を施すということはないことはこれは言うまでもないと思う。特殊な宗教の信仰というものは、これは家庭とか、若しくは教会とか、若しくはそれに属する私立学校がやるべきであるけれども、ここで非常に重要な問題は、国家の教育に、どういう程度について宗教が取り入れられるかということに関しては、相当な研究点がある、これに関しては今相当に研究もし、又この前の田中君との間にも相当な論議もしたのでありますが、前の最終の議会におきまして、宗教情操を尊重するということは、私らから言えば素人のこれは議論で、かなり面倒なことであるということを考えております。我々としては、はつきりした宗教の客観的知識として、宗教を取扱つて社会現象なり歴史現象として、客観的知識を入れるということには極めて、ちつとも無理はないと信じております。こういう点について、国家の、何か国家の機関が、つまり教法に関する客観的知識を與える程度で私はいいと思う。それ以上出てはいかんと思う。それにつきましては十分な施策をやつて頂きたい。ただ素人が見ますと、こんな政教分離のお考え教育本法の、特殊な宗教を教えてはいかんと書いてある以上は、手も足も出ない素人考えを持つておるが、あの二つの基準法の原則を守りながら宗教教育が溌剌と行われるという点を十分にみんながお考えになると信じております。こういう点について私は天野文相がこういう重要な時期にお立ちになつたということに対しては、敬意を表しますが、ただこの際、いい加減な答えとかこういうことに対して事務的なことでなしに、どうかこの際天野文相が文教政策の中に宗教を尊重して頂くような緒を頂いて、そうしてこういうことの第一歩を踏み入れるということを深くお願いして置きたい。
  66. 高良とみ

    ○高良とみ君 この御趣旨は、只今梅原委員がおつしやつたことに対しては、私は非常な敬意を表するものでありますが、その点は曾つて衆参両院で宗教教育の尊重の決議がとられました当時から私ども考えておりましたことでありまして、どうしても最近までの教育改革及び日本の戦後の社会情勢を深く思いまするものは、すべて信念のある国民がいつ育成されるだろうということであります。即ちこれは政教分離の論理から行きまして、国家の教育機関はこれに参加できないと言いますけれども先ほどお話の、御答弁にございました通り、情操、宗教情操育成については、ただ社会教育の面だけでなく私どもの手許で兒童、学生に食物として與えておりますところの教科書の内容及びその他の図書を通じても幾多宗教文化を與える機会があると思うのであります。それらについて私ども過去の日本教育を見まするときに、非常な唯物的な流れが強く、又科学を尊重すればするほど、それの裏付としての科学及び物質文明を見るその裏の宗教的態度の育成について欠けたどころが相当にあつたと思うのであります。申上げるまでもなく日本の文化母体として殊に近来文相、吉田首相言われる道義の昂揚或いは愛国心というようなものが、狭い孤立の国家主義ではない。世界を目の中に容れて人類に立脚した世界宗教をほかにして、どこに求められておるかということが常に私ども疑問であつたのであります。そういう点におきまして、梅原委員の御発言になりましたことと関連いたしまして、私はこの改革期にあります日本教育及び文化その他の将来の規模というようなものが文教政策の根本として、宗教情操及び情操文化の昂揚のために文部省におかれましても、深く御考慮を煩わしたいと思うのであります。申上げるまでもなくGHQの宗教部、及びCIEにおきましても、曾つて教科書の中に私学を教えるときに、それに対する宗教的態度を加えて行く、教材等の考慮について特別な専門家をよこされたこともあつたのでございますが、私ども国民側からの要望といたしましても、教育の末端におります教員たちも、或いは母親たちも、これを母親や教員のみに要望されているが、今日の日本社会情勢はその要望に直ちに応えることは非常に困難である。殊に教会やその他伝道機関行つてこれを求めろと言われても、幼兒のときに、幼稚園、小学校等において、何ら基礎を與えずして、母親が、父親が努力いたしましても、これは根のないところに宗教情操、宗教文化を或いは宗教哲学を求めるようなものであつて及びがと求めるようなものであつて、及びがたいろいろ訴えをしばしば聞くのであります。こういう意味におきまして文相の宗教、これらのことについての、宗教についての御信念をお伺いできる機会があればしあわせと存じます。
  67. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 今梅原委員、高良委員から承わりましたように、私も宗教教育ということの非常に重要なことを痛感いたしておつて、殊に今のような歴史的現実の中に生きている日本人としては、そういう宗教的信念というようなものがなくしては、本当に正しい生活をして行くということも非常に困難だということを痛感いたしておるものでございます。ただ併しこの学校においてどういうふうにしたら一体宗教的な情操というものは養われるものだろうか、成立宗教を教えないで、成立宗教を媒介としないで宗教的情操とか、宗教的信念というものをどうしたら一体養えるかということは非常にこれはむずかしい問題だと私は思つております。客観約な宗教に関する知識を授けることは当然できますけれども、そのむしろ根本ともいうべきものを養うにはどうしたらよいかということについては、非常に私は苦慮する点でございますから、又皆さんのお智慧も拜借して、そうしてそういう点に十分なしつかりした考えを以て教育を指導して行きたいという考えでございます。
  68. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御意見ございませんか。それではこれを以て本法案に対する質疑は終了したものと認めてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれを以て本法案に対する質疑は終了いたします。これを以て午前の委員会は休憩いたしまして、午後三時半から再開することにいたします。    午後一時二十二分休憩    —————・—————    午後三時開会
  70. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは午前に引続き委員会を開会いたします。日程第二、市町村立学校職員給與負担法の一部を改正する法律案を上程いたします。御質疑のあるかたから……。
  71. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣が来るまでにほかの点について政府委員のかたにお伺いいたしたいと思います。それは市町村立学校職員給與負担法の第一條でそれぞれ職権血挙げられているわけですが、傭人の給料並びにその他の給與はどうしてここに省かれてあるわけですか。従来傭人の給與その他は市町村負担で、県負担にしていないわけなんですが、そういう根拠はどこにあるわけですか、承わりたいと思います。
  72. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) これは従来から傭人につきましては、市町村負担でございまして、別に問題を生じなかつたためでございます。特に昭和十五年の負担法の改正に伴いまして、寺に問題になりましたのは教員給與関係だけでございまして、それと学校の事務官、事務職員の問題が特に財政上重要な問題であつたからであります。特にこの傭人につきましては、学校の規模によつて、又町村の能力によつて、いろいろと事情もございますから、これを一律に府県の負担にすることは必ずしも適当でないと考えているのであります。
  73. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この事務官は教育公務員でない。で教育公務員だけの給與を都道府県が負担して、然らざるものを市町村が負担するということになればまあ筋が通るわけです。教育公務員でない事務官のほうもやはり都道府県負担にしてある。それは而も定員がきめられてある。重要だからといえばそうでありますが、その重要という立場から言いますと、私は各学校に傭人が幾ら確保されて、いるかということは、その学校教育を続けて行くに当つて私は非常にやはり重大だと思うのです。特にこの防災、防火あたりを考えるときに、適当なる傭人を適当人数を私は確保するということは、これは非常に大事だと考えるのです。そう考えて参りますと、教育公務員でない地方事務官もやはり教育に重大な関係あるという意味において、都道府県の負担にされてあるゆえんでありますね、傭人だけを切離すというのはどうしても理由がよくわからないのですが、この傭人もやはり都道府県の負担、こういうことにしたほうがよろしくはございませんか。
  74. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) この点につきましては、従来この官吏の身分を持つておるものだけを中心に考えたのであります。官吏の身分と申しますと、教員と事務職員、これが昔の官吏というものでありまして、実際教育事務に携つているものを対象にしたわけであります。ところが傭人は御承知通り学校の維持経営という面の、維持のほうにあたる部分でございますので、維持経営に要する経費は、教職員の給與を除いては市町村が負担するという従来からの建前もございまして、現在までのところ、そういう過去の経緯からこの制度を踏襲したわけであります。傭人を果して教育事務の直接の対象にし得るかどうかという点は非常に疑問だと私ども考えておるのであります。でこの問題は結局町村財政との関連の問題でございまして、現在傭人の給與が町村財政のうちで非常に困つておるということはございませんので、むしろ市町村の傭人でありますところの小使さんの給與が場合によつては教員の給與よりもいいという場合もありますので、必ずしも都道府県の負担に移さなければならないということはないと思つております。それから市町村の負担にして置いたほうが市町村の規模によつて学校実情に合うような傭人の配当ができ得ると考えておるのであります。ですから今直ちに傭人を都道府県の負担に移すという必要はないと考えております。
  75. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 内藤課長の説明確かに御尤なところはあると思うのですが、私はもう少し飛躍して、この傭人の給與というものをやはりこの都道府県の負担にして、そうしてこれを今まで私たちが小使という概念で考えたよりも  一段飛躍した守衛と申しますか、そういう性格のしつかりした人物を私は傭人に入れ、そして学校の校舎の維持というものに当らせるようにすれば、盗難にしても、或いは学校のこの火災というような面についても私は相当好結果をもたらされるのじやないか。勿論この市町村学校の校舎というものは、設置者が市町村であるわけでありますけれども、大きく考えるというとやはりこれは国の財産でありまして、市町村に委しておくというと、やはり市町村は足腰の十分立たないような人物を、非常に薄給で雇用しておる場合に、十分の維持が果されないという関係学校の備品が盗難に会つたり、或いは火災にかかるという場合も私はあると思うのですが、そういうことを併せ考えるとぎに、数も少く予算も少い問題ではありますけれども、やはり教育公務員でない事務職員も、一応都道府県の負担というところに持つて行くならば、その同じ職場である学校に勤務しておる人の給與というものを、都道府県を単位に一本に持つてつたほうが私はよろしいのじやないか、こういうことを考えておるわけなんです。それに対する課長の見解如何でしようか。
  76. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 学校教育法第五條の規定によりまして、設置者負担の原則が明らかにされておりますので、設置者があらゆる経費を負担するのが建前であります。ただどうしても困るような教員の給與費、それから事務職員の給與費については都道府県に移したのでありまして、これは飽くまでも例外的な措置であります。そういう意味から考えまして、市町村の傭人まで、或いは守衛までを全部含めるという点については若干の疑義を持たれるのじやないかと考えるのであります。その点は従来の事務職員にいたしましても、教育職員にいたしましても、非常に厳重な資格要件を伴つておりますので、任用する場合に相当な資格がいるわけでございます。ところが傭人につきましてはそういう資格が従来はなかつたのでありまして、誰でも採用できる、こういうような建前になつておりますので、従つて学校の維持に要する、まあ附随的という言葉を申上げては大変恐縮ですが、そういうような立場のかたでありまして、教育事務に直接携るというかたではないわけであります。そういう点から市町村に置かれておるのですが、矢嶋委員のお話のように、そういう傭人についても厳重な資格を考慮するならば、それも一つ考えかたと私ども考えておりますが、ただ財政的に現在のところ都道府県の負担が余りにも過重ではないか、これは義務教育の教員の給與だけでもすでに六百億を超えておると思います。こういうようなときに、更に傭人まで、或いは現在事務職員でも完全な配置ができていない今日において、傭人まで都道府県の経費に移すということになりますと、果して十分な傭人が、学校維持経営するに必要な傭人が置けるかどうかという点にも問題があるのではないかと考えるのであります。こういう意味から税制改正と関連してこの問題を考えなければ、現在の建前から考えますと、もう相当都道府県は財政的に手一ぱいになつて市町村のほうがむしろ余裕があるという状態でございますので、これも都道府県の負担に移すという点については、只今のところ非常に困難ではないかと考えるのであります。
  77. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではこれはまあこの程度にしまして、それとやはり関係があるわけでございますが、設置者が市町村である校舎の維持に当る日宿直料、これは都道府県負担になつておるわけですね、これはどういう御見解ですか。
  78. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) これは超過勤務の一種でございまして、お話のように校舎の維持経営という点が一つ上げられると思いますが、そうではなくて超過勤務という観点から見ますと、やはり公務の延長の部面もあり得ると思います。そういう意味学校の公務をその間に掌るという点を考慮し、更にこの額が厖大な額になりまして、恐らく現在の計算でも二十数億、三十億程度に上ると思うのです。ですからとても町村の負担にして置きますと、完全に日宿直料が支拂い切れない。かような観点から日宿直料を都道府県の負担に移したわけであります。これは新らしい問題ではないのですが、日直、宿直料のベース改訂に伴う改正もございまして、市町村に財政的な負担が重かつたのでこれは都道府県の負担に移しましたが、これは税制の改正と関連してやつたわけでございます。
  79. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういたしますと、傭人の日宿直料は市町村負担で、教育公務員並びに事務職員の日宿直料は都道府県負担、こういうふうになるわけですね。
  80. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 傭人には大体日直、宿直という考えを私どもつていないのでありまして、教員にのみ特殊なものだと考えておるのであります。ですから傭人が日直、宿直するということは今のところあり得ないのですが、あるとすれば市町村負担になると思います。
  81. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうするとまあこの文部省の考え方というのは傭人の給料というもののなかには、夜間いわゆる宿直として宿泊するまでも入つているという、こういう御解釈のようですけれども、実際においては各都道府県とも教育公務員並びに事務職員一名、それから傭人一名、おのおの一名ずつが日宿直をやつて、それぞれに手当を出しているわけですね、そうなりますというと、同じ日宿直をやつても、一方は都道府県負担、一方は市町村負担という非常に複雑な点もあるし、筋の通らんところもあると思うのです。
  82. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 各市町村とも傭人に日宿直料を支拂つているという私は事実を聞いていないのでありますが、と申しますのは、日宿直料というものはこれは或る意味では公務の延長の部面になりまして、政府職員の給與に関する法律のなかでは超過勤務として扱われております関係上、傭人についての超過勤務というものは見ておらないと思います。ですからそれは学校経営全体として給與がきまつておりますので、こういうものの超過勤務の性質は恐らく認めていないと思つております。
  83. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 原則でそうかも知れません。小さくなりますけれども一つ学校に一人の傭人がおつて部屋をもらつて、そこで家族が生活しているというふうな場合には問題がないわけですけれども、それが二人或いは三人とこうおりますというと、そこに定住していないで輪番で泊るというような場合には、課長の言つたのと違う問題が起つて来る、ですから両方の場合があるわけですね。ですから私申上げたいのはどうも非常に現実的と申しますか、妥協的で、筋の通つていない感じがして、私といたしましては大した予算を伴うことでもなし、校学の維持とか管理あたりを考えるというと、課長は税制の改正とも関連すると申しましたけれども、やはりそういう筋金を入れたほうがいいのではないかと考えておりましたのでお伺いしておるのです。これはそこで一応抑えましてそれから又これに関連するのでありますが、さつき課長の言明では、日宿直はやはり超勤の一種として云々という言葉があつたわけですが、確かに教育公務員の日宿直というのはやはり前から問題になつた問題ですが、確かに問題があるわけですね。果してこれは教員のなすべきことかどうかということは問題があると思うのですが、それだけに教員の過重労働というような関係から十分の宿直勤務はできない。そういうところに盗難とか、或いは火災の誘発する一つの大きな原因が考えられると思うのですが、従つて従来から問題になつている日直料、宿直料の問題ですね。それはやはりできるだけ早く根本的に解決せにやならんとこう考えるのですが、ここで課長にお伺いしたいのは、日宿直料定額で拂つている都道府県と、それからいわゆる超勤手続によつて支拂つている都道府県と、一体どのくらいの比率になつているのですか、それを伺いたい。
  84. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 最近の傾向といたしましては、大体いわゆる超勤の形で支拂つているところが大分多くなつたのであります。併し必ずしも超勤とも言えない実質的な性格を持つておりまして、先ほど矢嶋委員のおつしやつたように、学校の維持運営という意味の校舎の運営維持というような観点から、定額で支給しておるところもあるわけでございます。これは主として財政の都合でそうなつておりますが、私どもの指導としてはできるだけ超勤の形で支拂うようにということを申上げておるのであります。ところがこれには非常にいきさつがございまして、あの法律を作るときに、この日直、措置というものを超勤の形にみることが妥当かどうかということが議論になつたのです。そこで大蔵省側としては当時日直宿直は、これは別個なものであつて、いわゆる勤務の延長ではないのだ、学校の維持をするのだ、こういう観点が非常に強かつたので、これを超勤とみなすかどうかという点が問題でありまして、人事院のほうでもその点を気付いたのであります。そこでこれは将来法律改正をして改めるという意見も出ておつたのですが、現在のところそういう法律改正が行われていないわけです。現在のところでは、いわゆる超勤の一種という形になつておるわけであります。そこで私どもの指導といたしましては、超勤の一種で支拂うようにということを府県に伝えておるのであります。ただ当時の昭和二十四年の予算において定額の補助をいたしました関係上、各府県は定額でやつておるところが未だ相当つておると認める。その数は明確に記憶しておりませんが、大体半々くらいかと思うのでございますが、最近は超勤のほうが少し多くなつて来ておるのです。
  85. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は全部調べてないのですが、私の見通しでは、定額で拂つておるところが多いと思うのですね。例えば県立の学校考えた場合に、同じ場所にあつて、そうして県の建物で県の事務吏員がそこに宿泊した場合に、県立の学校の先生が県立学校に宿直した場合に、同じ県の公務員であつて、同じ県の建物に宿直をつとめて宿直料が半分にも満たない、こういうようなのではどうしても納得できないわけですね。やはりどの県でも県の事務吏員の宿直に対しては超勤で出しておるわけです。ところが県立学校教育公務員、それからそれにならつて市町村立学校教育公務員については、おおむね定額でやつておるわけなんですが、これを超勤の手続によつて支給するためには、やはり相当の金額になりますので、平衡交付金その他で考慮しなければ、地方の自治体でなかなか拂わないと思いますが、その点についてはどういう考慮をなさつておりますか。
  86. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) お話のように起動で拂う場合と定額で拂う場合では相当の開きがございまして、全国で恐らく二十億を超えるかと考えております。大体倍以上になると思つておりますが、そこで只今御指摘の県立の学校で事務吏員は超勤の形で拂い、教員は定額で拂う。これは非常に筋の通らないことじやないか。少くとも設置者が同じであります場合には同様な措置が教員であろうと事務職員であろうととられるものであろうと考えております。ただこの場合は、問題は小中学校等のいわゆる市町村立の学校の場合でございまして、只今お話になつた例とはちよつと異ると思います。この起動で支拂うように地方財政委員会にこちらとしては折衝したわけでありますが、まだこの問題は最終的には解決しておりません。ところが千百億に定められた関係上、非常に新らしい財政需要として追加することが困難ではないかという見通しなんであります。これが勿論給與ベースの改訂等のように新しい問題ですと、非常に話がし易いのですけれども、すでに二十五年度に国庫負担金として一応計算したものが平衡交付金の中に入りましたので、その額は確保されておるわけです。それ以上に超勤の形で出す場合の差額の経費について大蔵省、地方財政委員会に本年も実は要求したのでありますが、これについては考慮されるということが非常に困難ではないかと考えておりますが、できるだけの努力をいたしたいと考えております。
  87. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは教育公務員の超勤の中の一部に過ぎないわけですけれども、日宿直とか、やはり超勤手当というものをはつきり確立しなければいけないと思うのです。超勤手当を確立することを話すると、教員は職務と責任の特殊性から別表というものを考えていると、こう出ますし、別表になりますというと、今度は職階制との関連がある、こういうふうに次々に発展して来るというと随分なかなか解決できないだろうと思うのですね。だから少くとも将来のことは将来にして研究を続けなくちやならんと思うのですが、差当つて超勤の一種として日宿直料だけでも、これは超勤料によつて支拂われるような財政的措置を早急に私はやるべきだと思うのですね。更にそれが発展して教職員の勤務の拘束時間の関係で超勤手当というものを確立するならば、それが教職員の勤務時間の把握が十分できなければ、そこに特殊性から別表というものを確立するか、いずれかを早く私は緊急結論を得べきものだ、こういうふうに考えるのですが、やはり当面別表の作製については努力して下さつているという大臣の答弁も曾つてつたわけでございますけれども、当面お願いいたしたい点は、日宿直料の超勤による支給ができるように地財委、大蔵方面とも十分の折衝をして頂きたいと思うのですが、見通しはどうでしようかね。
  88. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 予算の折衝のときには、只今申上げましたような数字で大蔵省或いは地方財政委員会と交渉して参つたのですが、千百億にきめられた今日、来年度の基準財政需要に見込む分としは非常にむずかしいのじやないか。と申しますのは、一つは給與ベースの單価の問題によりまして、給與ベースの単価を十分見込まないと級別推定表の改訂が完全に実施できないといいますか、その方面の圧力が財政的に相当厖大な額に上つておりますので、この際お話の日面、宿直料の起動なみの支給に要する財源を新たに追加することは非常に困難だろうと考えております。この点については具体的に教育費の財政需要を算定する場合に、地方財政委員会と折衝いたしたいと考えております。殊に今年は只今申しましたような級別推定表、或いは給與ベースの改訂、年末手当、こういうようなものが重つておりますので非常に困難ではありますが、来年度は必ずそれができるように私どもも努力いたしたいと考えております。本年度は努力はいたしておりますけれども、お約束できるような段階ではないと思つております。
  89. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に地財委並びに大蔵当局と交渉される上に十分入れて置いて頂きたいと思います。それは先ほどあなたが申されたように県の従事員が宿直して超勤の手続を受ける、県立の職員が同じ県の建物にいて違うというのはおかしい、同等でなくちやならん。若し同等だとするならば同じところにある建物に、同じ教育公務員であつて教育従事者で一方は市町村立の校舎に宿直を詰める、一方は県立の校舎に宿直を詰める。それが手当は一方は一、一方が二、二対一だというのは同じ地方公務員であり教育公務員である県立学校の先生と市町村立学校の先生とは非常にまずいわけですね。で教育公務員という立場から同じ扱い方にするなれば、同じ県の建物に宿泊しておる県の従事員と教育公務員との間に差がついて来るというように、いずれにしてもちぐはぐでおかしいと思う。その現実は各都道府県にあつて年来の抗争を続けているわけでございますけれども、金額は余りにも厖大になりますといけないわけで、何とか先ほどお願いしたような方向に努力もして頂かなければならんと思います。こういうように考えておるわけです。最近東京都でもちよつと問題が出たようでございますけれども、非常に火災の頻発するような都道府県にはこんなに次々に炎上してはとてもかなわないから、教育公務員の宿直制をやめて、国立の学校適用しているような守衛制でもとつたほうが却つてよろしいのじやないかというような根本的な研究をしている都道府県もあるようでございますから、少くとも超勤手続による支給については相当至難かとも思いますけれども実情を十分御斟酌下さつて今後も努力して頂きたい、こう思うのであります。
  90. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 文部大臣が見えましたから……。
  91. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 只今議題になつております市町村立学校職員給與負担法の一部を改正する法律案につきまして大臣に若干お伺いいたしたいと思います。それはこの提案理由にも書いてありますように、従来都道府県が支給しておりました石炭手当、それから寒冷地手当、そういうものをはつきりと都道府県が給與責任者であるということを謳う。それから公務災害補償、これが今まではつきりしていなくて市長村負担にした場合に非常に困るし、何とか特別平衡交付金で切抜けて来たけれども、ここにはつきりする必要があるので、都道府県負担ということを明記したというようなことを述べられておるわけでございますが、これをずつと通観して考えますときに、これはやはり教育委員会というものは都道府県でとどめるか、それとも極く規模の大きいシティ、市にとどめる程度で、教育委員会法にあるところの町村までに教育委員会を設置するというのは、やはり適当でないという結論がすでにこういう法案のところに私ははつきり出ておると思うのでございますが、或る方面から聞きますというと、昨年末地方行政委員会議のほうで事務再配分の勧告を出されたときに、文部省はその事務再配分の勧告というのは結局教育委員会は県にとどめる。市町村はその自治体の任意に任せるのが適当だと、こういう勧告意見に対して文部省は反対であるという意思表示をされたということを耳にしておるのでありますが、それが真なのかどうなのか。それから大臣としてはこういう提案をされながら、やはり教育委員会というものは二十七年の十月三十一日までには町村にも設置するがよろしい、或いは今教育委員会制度審議会も発足したから、その研究に待つという程度のお考えでおられるのか、大臣個人として現在どういう構想、見通しを立てておられるかということを私は承わりたいと思います。
  92. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 今矢嶋さんのおつしやつたような意見を述べたことは事実であります。一体教育委員会というのを町村にまで及ぼすということは、私は一つ考えとしては認めておるものです。ただ私はすべての町村に、一つ一つに及ぶという考えは、自分個人として持つておりませんが、そうい点についていろいろ人の考えを聞くことが必要だということで、今度の教育委員会協議会というものを作つておりますが、その意見を聞いた上で善処したいという考えでございます。
  93. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは根本的な問題になりますけれども教育委員会が設けられますというと、やはりその教育委員会を設けられた自治団体相当の財政力があつて、設けられた教育委員会が自主的に教育行政をやれるのでなければ、意味がないと思うのでございますが、ここにずつと掲げられてありますように、給與に関する支拂い責任者が県であるから、その條例は勿論県できめるし、定員も都道府県当局がきめるのだ。でそのきめるときには県の教育委員会が市町村の教育委員会の意見を聞いて、そうして議案を作る。そこで都道府県のほうで定員をきめられる。そうすると市町村教委というのは都道府県できめられた定員の枠内で而も県教委と話合つて、話合うということはその枠内から幾らかもらうことを話合うのでありますが、そうして初めて市町村に設けられた教委というものが定員をきめて計画する。こういうふうにずつと提案の趣旨からはつきりしているわけなんですが、そうなりますと私は町村に教委があるということは殆んど有名無実で、教育委員会方の狙つている目的完遂には殆んど副つていないのじやないか。今度の提案にも退職年金、退職一時金の問題がありますが、そういうものもやはり教委が設置されておりますというと、その教育委員会で退職年金なり、或いは退職一時金の制度も確立できるというような関係になければ、私は何のためにその委員会を設けたかわからないと思うのです。従いまして私の現在考えている点、並びにこの今度の提案に当つて配付して下さいましたこの資料から、私自身結論付けるところは、文部省としても町村に原則として教育委員会を認めるということは妥当でない、こういうお考えで進んでおられるのだなとこういう印象を強くするのでございますが、大臣の今の答弁は町村は原則として認めるのだ、こういうので私は非常に遺憾に思うのでございますが如何でございましようか。
  94. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは市町村には教育委員会を置かないという趣旨じやございませんのですが、一つ一つ置くのは無理である、だからして或いは幾つかの町村が集つたものであるとか、そういうようなことも考え余地があると思うのです。とにかくすべての町村に置くという建前で出発したのだからして、それをもつともつとと研究して見て……、これは一つ一つ置くことは私は無理だと思つております。併し市町村のは、まるでよしてしまうという建前ではないので、若し市町村のほうにも教育委員会がすべて、すべてという意味一つ一つという意味じやないのですが、できることならば今のこの考えも又幾らかの変調と言いましようか、モデユレーシヨンをつけることになつて来るのじやないか。
  95. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではその点につきましては、今後の大臣としても諮問機関を持たれておりますので、御研究をお願いいたしたいと思います。  次にお伺いいたしたい点は、御承知のように教育公務員特例法が二十四年の一月に実施されて、それ以後教育界に身を投じられた人には恩給法が適用されない。従いまして地方公務員法におきましても、退職年金、退職一時金の制度は早急に研究実施しなければならないと、こういう明文が地方公務員法にあるわけでございますが、二十四年の一月、特例法実施以後に教育界に入られた諸君は、将来の希望という立場から我々の退職年金、退職一時金、いわば従来の恩給でありますが、そういうものが一体どうなるのだろうかと非常に心配されているわけでありますが、これがこのたびの提案で退職年金、退職一時金は都道府県の負担にする、こういう線が打出されている点は非常に私結構だと思うのですが、施行法における退職年金、退職一時金というものはどういう方向で今進められておりますか。万が一これが市町村というようなことになりますというと、これは地方公務員法の原則的な精神から行きますと市町村というところに来るかも知れませんが、そうなつた場合には規模の弱小であるところの市町村は年金も一時金も出すことができない。そうなりますと、そういうところに先生が転勤して行くのを拒むようになるだろう。そうなりますと子供から考えますと教育の機会均等というものが非常に動揺をして来る、こう考えられるわけでございます。退職年金、退職一時金を都道府県負担にすると、ここに書いてありますが、これは施行法から出て来る退職年金、退職一時金の線に、これはやはり将来市町村に下らないで、都道府県にとどまつて、もう少しはつきり申しますと、昔の恩給に代るべきものの給與責任者が都道府県になるという見通しの下にこれが出されておられるのですね。その点を一つ承わつて置きたい。
  96. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) この従来の恩給に当るもの、今度の退職料、或いは一時資金、そういうものは、どういう意味においてか、私はこれは確実に誰でもが安心しておられるふうにならなければならないと思つております。近くこの恩給制度というものが改正されるについて、その際にそういうこともきめて行かなければならないと思つております。今からすぐどうということはちよつと私は言うことができないけれども、その際に必ずそのすべての人が安心しておられるような制度考えられて行くと思つております。
  97. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これに関連して承わりたい点は、昨年の恩給法に関する勧告以来、人事院で新らしい恩給制度というものが、根本的な研究立案が急がれていると思うのです。そこで地方公務員である教職員につきましては、どうするかということにつきましては、文部省といたしましてはやはり態度をきめられて、今研究立案中の人事院に働きかけて頂かなければならんと思うのです。それについて文部省としては現在どういう立場をとられておるかということ、まだ大臣のお耳にまで届いておらないかも知れないが、主管の局長、或いは課長でよろしうございますが、如何なるお考えで交渉されておるかという点を承わりたい。
  98. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 私からお答えいたします。只今お話のありました恩給制度全般に関するマイヤー氏という人の勧告を具体化するために、目下人事院で研究中でございますが、それにつきまして文部省といたしましては、この勧告のうちにも地方公務員については包括加入ができるというような、強制加入、或いは任意加入という問題もあるのでございますが、是非公立学校の先生はこのうちに、国家公務員に対する恩給制度のうちに、加入できるように人事院と交渉中でございます。
  99. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 是非ともそういうふうにして頂きたいと思います。全額都道府県になつても困りますし、更にこれは市町村に行つた場合には、これは目もあてられないと思います。その及ぼす影響というものは極めて大きいものだと思います。ここで喋々申上げるまでもないことと思います。是非マイヤー氏の勧告に副つて、根本的解決はこれは文部省として強力に御交渉されるように要望いたして置きます。  次にもう一点お伺いいたしたい点は、公務災害補償が従来問題になつていましたのを、これをはつきり都道府県の負担というようなことにここに明文化されたことは結構でございますが、この点につきましてお伺いいたしたい点は、最近修学旅行が非常に盛んになりまして、生徒の保健養護という立場から、教育公務員以外に、いわばこれに準ずるものと考えられますが、学校医、お医者さんですが、学校医を修学旅行団に随行させる教育的な処置をとられておるところが非常に多いのです。そして修学旅行先で一つの事故があつて学校医がそこで殉職する、こういう場合に公務災害補償法を適用するか、適用しないかということは問題になつた例があるのでございますが、実質的に考えるときには、明らかに校医に対しては公務災害補償法を適用すべきだと、こう考えるのでありますが、これに対して大臣はどういうお考えを持つておられますか。なおどういうところに解決の隘路があるかということを申述べて頂きたいと思います。
  100. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私もその際には、やはり学校医といえども生徒について行つたものなんですから、今のほかの教育職員と同じに扱つてよろしいだろうと思いますけれども法律上どういうところに困難があるか、政府委員からお答えさせたいと思います。
  101. 相良惟一

    政府委員(相良惟一君) 学校医は学校の嘱託になつておりますが、現在の扱いは特別職ということになつておりますので、直ちに公務災害補償法の規定を適用するということは困難があるのでございまして、なお研究してみたいと思つております。
  102. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 学校衛生というものが非常に盛んになりますと、やはり理解のある学校は校医をそういう場合に随行させる。そうして校医は家業を犠牲にして、そうして随行して行く。そうして遭難した場合に適用されないというようなところは、私は実質的に問題を考えたときに、まあ法律で若干規定もあるかと思いますけれども、非常に納得しかねるところがあるわけなんでございますが、まあ研究されるということをおつしやつたわけでございますが、見通しどうでしようか。実際そういう例は私は二つも知つておるのでございますが。
  103. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) ただ公務災害補償の問題と切離してこの問題を解決しますならば、或いは問題がはつきりするかと思いますが、結局非常にこういう学校医のかたがたの身分関係をどうするかという全体の中で解決しなければならんと思います。若し校医を一般の公務員といたしますと、それに伴う正治活動の制限とか、いろいろと又面倒な問題もございまして、そういう問題との関連においてこの問題を解決しなければならんと考えております。そこでなかなかにわかに結論が出ないわけでありまして、一方を救いますと、他のほうにおいて非常に又不利な点もありますので、実は研究はしておりますが、直ちに解決点が見出せないという実情でございます。
  104. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういう場合が起つた場合は実際非常に困るのですね。教育公務員と校医とが同時にそういう問題を起した場合、教育公務員に対しては公務災害補償を適用される。こうなりますと、その市町村としては校正医のほうを見捨てるわけには行かないものだから、それに準ずる手当というものを市町村独自で出さなければならない道義的な面に追い込まれる。そうなりますというと、市町村が財政上非常に困るというような事態が起るわけでございます。何とか今後これは確かにむずかしいと思うのでございますが、十分御研究願いたいと思います。
  105. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 只今のような若し事例が起きました場合には、地方財政委員会と協議いたしまして特別平衡交付金の交付に頼るというような措置で折衝してみたいと思います。
  106. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 市町村立学校職員給與負担法の第二條によりますと、定時制の教員は全部県に移管されることになると思いますが、併しこれと私は関連して御質問申上げたいのでありますが、大臣にお願いしたいのですが、五大市におきまして高等学校で市立の高等学校と県立の高等学校と入り組んでおりまして、そして而もそこに教育委員会が設置されておるわけです。そこで人事の交流は勿論、教育の画一というわけではございませんけれども、いろいろな内輪揉めとか、或いは困難を来たしておると思う。そういうものに対して、例えば今まで県立のすべてのものを教育委員会が市にできたわけですから、市のほうに移すというようなことを文部省としてお考えになつているかどうかということを承わりたいと思います。
  107. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) そういう点については別に考えておりません。
  108. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そういたしますと、実際問題としてこれは私はほかのことは知りませんですが、名古屋市の例をとりますと、名古屋市立の高等学校と愛知県立の高等学校とが二つ名古屋市の中に高等学校としてあるわけです。そこで本当のところを申しますというと、相当教育委員会として、片一方は県の教育委員会、片一方は名古屋市の教育委員会というふうに監督機関というものが二つになるわけです。そこで非常に困ると言つてはおかしいですが、例えば学生の問題であつて生徒を募集するため、どういうふうなことをするとか、或いは一つ行事を行うような場合にも非常な困難を来たしておる。私は相当教育委員会のほうから文部省に対しても、いろいろなお願いが出ておると思うのですよ。それに対しまして、今申しましたように、ただやらないのだというお考えであるのか。相当具体的な研究をされて、現状というものが非常にいいのか、或いは非常に困難であるから、何とかしなければならんけれども、建物の移管とか、いろいろなものがあるから困難な状態にあるというのか、そこの辺のところを一つお願いします。
  109. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 只今の御指摘の問題は非常に御尤もな点でございまして、この点はシヤウプ博士の勧告によりましても、同時にアメリカ教育使節団の第二次の勧告によりましても、大体末端の機関に六三三までを移して、そこに県と市の間に重複がないように、デユープリケーシヨンを避けるようにという勧告が出ておるのであります。ただこの問題を解決するためにはどうしてもやはり財源的に解決しなければならないので、今にわかにこの問題を処理できないことが一つと、それからもう一つはさようなことは市町村の事務の再配分という問題とも関連しておりますので、只今新らしい教育委員会の設置單位の問題とも関連して研究を続けておるわけです。
  110. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは私の意見一つ言わなくちやいけないと思いますのですが、名古屋市に教育委員会があれば、市の教育委員会が、高等学校ならそこにある高等学校すべてを一応私は指導をし、いろいろなこともしていいと思います。それが私は原則だと思います。それに対して学校の俸給はさきほどの問題じやない。教員の俸給は国庫が半額負担しているような恰好ですから、平衡交付金が入ろうと何しようと市でやつたのか、県でやつたのかの違いだけで、建物は県立の建物であるから、それを市に移管するということが困難であるとかなんとかいうことは別個として、本当の教育委員会制度の建前からいえば、当然これは市なら市へ移されるべきだと思うのです。それに対してそういう建物をどうこうするというようなことは、その県と、市なら市で話合ができるものだと思う。そういうものについてただ單に研究すると言わずに、これに対して文部省はどうするかというような、もう少し突込んだ見解を承わりたいと思います。
  111. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 御承知通りに現在の教育委員会法の建前の中でも当然協議をして今お話のような措置をすることができることになつておるのであります。ただ私が申上げましたのは、将来の問題として事務の再配分の中でこの問題は当然考えなければならない問題で、すでに両使節団からも指摘されてありますので、成瀬さんのお話のように行くのが理想ではありますが、それでは現在のところ税制の改革、事務の再配分とかいうような問題の関連において処理されなければ、この問題だけを切離して文部省が勧告するという立場には現在ないわけです。そういう点を申上げるわけです。
  112. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それではこの問題はそれまでにしまして、次に恩給のことで先ほど矢嶋君の質問によりまして、まあわかつたわけでございますが、私が心配することは、切替といいますか、今まであつたものをどうこうするとか、或いは転任して来るようなもの、そういう非常に細かいことですけれども、附則みたいなもので解決しなければならない問題が私はたくさんあると思うのです。そういう点について一つ落ちなく文部省のほうでいろいろ御勘案願いまして、人事院のほうへ御連絡をお願いいたしたい。こういうふうに思う次第でございます。
  113. 高橋道男

    ○高橋道男君 私のお尋ねは、別に文部大臣の御答弁を要することではないと思います。一点はこの一條の中で字句の改正がございますが、これは別に何か法令ができて、その法令関連してこういう字句の呼び方が変るのであるか。又その順位が同じ字句についても変つて行くのがありまするが、便宜上この現行法のどのものが改正案のどのものに当るということをお示し頂きたいと思います。
  114. 辻田力

    政府委員(辻田力君) お答えいたします。俸給は給料になるのでございます。それから特別加俸はこれは特殊勤務手当。死亡賜金は死亡一時金。それから旅費は旅費であります。扶養手当、これは扶養手当。勤務地手当は勤務地手当。退官又は退職に関する手当、これは退職手当。それから日直及び宿直に関する手当は同様であります。この中で俸給が給料に変りましたのは、地方公務員法において変つたからであります。それから特別加俸を特殊勤務手当にしたのにつきましても、政府職員の新給與実施に関する法律によつて名称が変つたからでございます。退官又は退職に関する手当は、これは昭和二十四年度総合均衡予算の実施に伴う退職手当の臨時措置に関する政令によつてこういうふうに変つた次第でございます。
  115. 高橋道男

    ○高橋道男君 そうしますとこの新らしいものが追加されておるわけでありまするが、その年額予算の見当というものはどのぐらいになるのでございますか。
  116. 辻田力

    政府委員(辻田力君) 新らしいものは年末手当と、寒冷地手当と、石炭手当、それから退職年金及び退職一時金と公務災害補償ということになりますが、先ず年末手当の支給額は、本俸、扶養手当及び勤務地手当の合計に月額の半額ということが支給額でありますが、昭和二十六年度の給與費の予想単価と予想人員により算出いたしますと、小中学校、盲聾学校、定時制高等学校の教員に対して支給される年末手当を総計した手当所要領は合計いたしまして二十四億七百三十八万余円でございます。それから次に石炭手当でございますが、石炭手当は法令によりまして北海道に勤務する職員に対して一人当り世帶主は八千百円、非世帶主は二千七百円を支給するのでございますが、二十六年度の公立の小中学校、盲聾学校、定時制高等学校の所要経費合計は概算いたしまして、一億六千三百九十九万余円でございます。それから寒冷地手当は従来本俸、扶養手当の合計月額が支給額の算定の基礎となつており、各土地によりまして支給額も相違いたしまするので、昭和二十四年度の実績を基礎としてその支給額を算定いたしました結果、所要の経費は七億五千九百七十四万余円ということになります。  それから退職年金及び退職一時金の関係は、これはまだ昭和二十四年一月十二日以降に新らしく教員になつたものに対して適用されることになりまするので、その関係は現在としては計算が、そういう事件が起つておりませんので、計算いたしておりません。  公務災害補償の問題ですが、これにつきましては、これは国家公務員の災害補償の算出方法と同様に本俸、扶養手当並びに勤務地手当の年間合計額に千分の一・五を乗じて得た金額でございまして、おおむね八千六百六十六万余円を予定いたしておる次第でございます。
  117. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 大臣はほかに御用件がありますから大臣に御質問のあるかたは先にお願いいたします。
  118. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 一点だけ御質問申上げます。それは幼稚園の教員に関する問題でありますが、根本となるところの幼児教育に対する大臣の見解をここで質して置きたいのであります。御承知のように幼児教育はこれは義務教育ではございませんけれども、アメリカ教育使節団の指摘に待つまでもなく、極めてこれが重要な問題であることは論を待たないと思うのです。最近の荒廃した社会世相の中で一番母親の関心となつているのは自分の、まだ学校に上がらない子供の教育の問題ではなかろうかと思います。ところがこの幼兒教育に対しては基本的なあり方というものがまだ確然としていないような点が多々ございますために、幼稚園の教育というものがややともすれば看過されがちなのは非常に遺憾と思うものです。そこで広い意味の幼児教育は今保育所と幼稚園と二つの形に分かれており、而もそれが一方は厚生省の管轄であり、一方は文部省の管轄であり、而も文部省の管轄である幼稚園の教育費の支出面に対しましても特にこれが重要に上げられることなく、その他の教育費というような項目の中に置かれておりますために、いろいろな不便を生じて来ておることは申すまでもないと思うのです。特にこの度の市町村立学校職員給與負担法の中に、定時制高校が含まれましたことは誠に当を得た措置と思うのでありますが、これらの中に全く幼稚園というものが考えられておらないのでございますが、幼稚園の教員もこれは明らかに教育を担当するものとして公平な取扱いを受けるべきことは申すまでもないと思うのです。特に公務災害補償が、幼稚園の教員だけがこの枠から外れて行くような危険性をさえ私は感じますので、多くを申上げることは要さないのでありますが、こういう情勢下における幼児教育の基本的な考え方並びにその対策というものについて大臣の御見解を伺いたいと思うのです。
  119. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 幼児の教育ということも確かに必要なことに違いないのですが、まだ日本社会ではそこまで及んでいないといいまし、払うか。だからして一般にはむしろこの保育所とかそちらのほうへ子供を託すということが行われていて、幼稚園のほうに子供を託すものは一部分に限られているというようなことからですね。どうしても先生の災害補償というようなことでもほかの小学校の先生がたとは別に取扱われて、その中に入らないというようなことになつて来ていると思うのですが、もつと幼兒教育というものを研究して、そうしてこれがすべての家庭が小さい子供を送るというようになればですね、ほかの小学校や何かと同じ取扱いを受けることになるわけだと思うのです。だからそういう意味でもう少し幼児教育というようなことをよく研究して、どういうようにして日本社会に適切に幼兒教育が行われるかというようなことを私たちはもつと調べて、その上でこれを普通の小学校の先生と同じように幼稚園の先生も扱うようにしたい、そちらに向つて進みたい、こういう考え々持つております。
  120. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 あらましのお考えは、わかつたのでありますが、一部分の子供が託されておるから重く上げられないということは一応考えられるのでありますけれども、現在幼稚園の各先生がたからのお話を伺つてみますと、非常にこの今の社会で、母親たちがどう子供を扱つていいかということに悩まれるために、幼稚園の月謝が多少高くとも無理をしてこれを入れる。けれどもその受入態勢ができておらないために、非常に母親が困つている。こういう声を聞くし、又收容率とそれから希望率でございますか、需給の関係から考えてみても非常にバランスがとれておらない。これは又文部大臣もお認めになつておいでですかどうですか。でこういうところに対しての具体的な考えかたをもう少し明らかにして欲しいのです。
  121. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 幼稚園の教育というのはそこに私はやはりむずかしいものがあるように思うのですがね。よほど幼稚園の教育というものがよくならないというと、やはり子供は家に置いておいたほうが、子供のためによいという考えかたも一般に支配しているようです。で小学校のような義務教育ではないのですから、どうしても先生たちに対してもそこに取扱の違いが起きるというのは、現在のままでは当然だと思うのです。併し私はこれでいいというのではなくて、一歩進めて幼稚園の教育も義務教育として行われるようになれば、これはなお一そういいのだと思うのです。で幼稚園の教育というものをもつとよく研究することが必要だと考えております。
  122. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 もう一つ……。それでは非常に具体的な問題に入りますが、公務災害補償の問題に限つてお尋ねしますが、仮に幼稚園の教育が公務で傷害をこうむつた、こういうような場合に、市町村がその負担に耐え得ないような場合は、具体的にどういう一体方策を講じられるおつもりか。それを伺いたいと思います。
  123. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それはすみませんが、政府委員にお答えいたさせまして……。
  124. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 どうぞ。
  125. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 義務教育の小学校及び定時制の場合は、これは都道府県の負担になつておりますが、只今御指摘の幼稚園については市町村の負担、そこで市町村の点から考えまして、大体数が少ないからこの場合には或る程度処理され得ると考えておりますが、どうしても止むを得ないような、不測の事態が生じました場合には、特別平衡交付金がございますので、この特別平衡交付金のほうで処理できるように地方財政委員会と折衝するつもりでおります。
  126. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 折衝するつもりはわかりますが、具体的に折衝がされておるのかどうか。又いつ頃それをされるおつもりか、それをはつきりさして頂きたいと思います。
  127. 内藤誉三郎

    政府委員(内藤誉三郎君) 基本的な方針についてはすでに折衝済みであります。ですから本年度の平衡交付金を配分するに当りましても、公務災害で補償費のかかつた場合には、都道府県が見れば、都道府県の経費の中に算入して、それだけを特別平衡交付金から出す、こういうふうになつております。ですからこれの具体的な事例が出ませんと具体的な調査について特別平衡交付金を算定するということができませんので、それは個々の問題として行いたい、原則的にはそういう方針に変りはございませんです。
  128. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 大臣に御質問はございませんか。それでは私が一点大臣にお伺いして置きたいのですが、この法律が施行されますると、市町村の負担が府県に委譲することになるのでありますから、この問題について地方自治庁或いは地方財政委員会と、文部省との間に完全な了解がついているのでありますか。この点をお伺いしたいと思います。
  129. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは完全に了解がついております。
  130. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御意見のあるかたは……。それではこの法案は大体質疑を終了したものといたしまして、明日討論採決の前に少し御意見が出ればそのときに御意見を伺うことにして、大体打切つたことにいたします。それではちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  131. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を始めて。  それでは本日はこれで散会いたします。    午後四時十八分散会  出席者は左の通り    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            成瀬 幡治君            若木 勝藏君    委員            大谷 瑩潤君            木村 守江君            工藤 鐵男君            高田なほ子君            梅原 眞隆君            高良 とみ君            高橋 道男君            山本 勇造君            大隈 信幸君            矢嶋 三義君   国務大臣    国 務 大 臣 大橋 武夫君    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    法務府法制意見    第二局長    林  修三君    法務府特別審査    局長      吉河  光君    文部省大臣官房    会計課長事務代    理       相良 惟一君    文部省大臣官房    宗務課長    藤原 義雄君    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君    文部省初等中等   教育局庶務課長  内藤誉三郎君    労働省労働基準    局長      中西  實君   事務局側    常任委員会專門    員       石丸 敬次君    常任委員会專門    員       竹内 敏夫君