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1951-03-20 第10回国会 参議院 文部委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十日(火曜日)    午後二時五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度に入学する児童に対  する教科用図書給与に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○教科書発行に関する臨時措置法の  一部を改正する法律案衆議院提  出)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれより本日の会議を開きます。  それでは日程第一、昭和二十六年度に入学する児童に対する教科用図書給与に関する法律案を上程いたします。これは昨日質疑を終了いたしたのでありまするが、質疑は終了いたしたものと取扱つて異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは御異議ないと認めます。これより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  4. 高田なほ子

    高田なほ子君 本法案に対しましては、賛我の意を表するものでございます。本法案政府提案理由通りに、画期的な文教政策でございまして、憲法に示す義務教育無償という精神を一日も早く生かしたいと念願しますが故に、原則的に賛成をするものでございますけれども、本法案審議過程におきまして、この崇高な精神実施し得ない幾多欺瞞性が露呈されていることを私はここに指摘しなければなりません。第一番に挙げられることは、この法案精神を生かすためには、基本的な計画性というものを持たなければならないのでございます。全児童に対して無償給与するというような文部省主張並びに本法案主張でございますけれども、実際的には経済的な事由を楯にとりまして、二十七年度における計画さえもまだ立てられていない。文部省は来年度からはよい案を出して、そして期待に副いたい、或いは審議会によつて更に本法案実施については検討をするというようなことを言われておるのでありますが、少くとも画期的な文教政策であるならば、すでに発足前に審議会というものが作られて、或いはその他の機関によりまして、もつと計画的な実施をするのに何ら支障のない方向がとられなければならないはずなのに、こういうような無計画性であるということは、これは単に本法を実施すれば、それで済むのだというような意味にとられても、これはいたしかたがないということを考えざるを得ないのでございます。次に挙げることは、予算的な裏付がないために非科学的な基礎数字によつて、非常に低廉極まる単価を出しておることでございます。今日国際的な情勢によりまして、物価の値上げが一日ことに高まつて参りますので、非常に今後の用紙値上りということ、或いはその他教科書発行に関するあらゆる経費の値上りということが考えられなければならない。而もこれに加えまして、用紙統制撤廃の問題がからんでおりますので、この低廉な非科学的な基礎数字によつた単価で以ては、到底本法案精神実施することの不可能であることは、当初における文部省の案は三つの種類教科書を配給する案でありましたにかかわらず、この案の審議過程において、遂に算数国語の二種類だけきり出せなくなつたということによつても明らかであろうと思うのでございます。而も本法案は、国庫においてこの二分の一の負担をするということが明記されておるのでありますが、今日地方財政の逼迫した折から、更に平衡交付金の中に教育費が含まれておつて、画然としたそこに教育費というものの建前がはつきりしておりませんために、このような物価値上りによりました場合には、二分の一国庫負担ということを言いながら、実質的には三分の一が国庫負担、三分の一が地方負担、そうして残りの三分の一が父兄負担になるということは火を見るよりも明らかなことであると思うのであります。現在においても全児童の二割乃至三割の子供教科書を買うことができないというようなみじめな現状に追い込まれておりますのに、今後この法案実施よるに当つて考えなければならないことは、量の問題であると同時に、この低廉な単価によつて来たるところの質の低下ということが当然憂慮される問題になつて来ると考えられるわけです。こういうようなことは一時的に国民を糊塗する方便であるというような鋭い批判を更けても、これはやむを得ないということを言わざるを得ないのであります。そこで私は本法案実施に当りまして、このような一時的の糊塗的な手段ではなくて、義務教育無償理想を本当に実現するために、計画性を樹立して置くということが先ず第一であります。而もその計画の樹立に当りましては、子供のよい成長を願われるならば、先ず教科書の質と、そして量ということに対してもつと本質的な方策が講じられなければなりませんし、そのためには予算的な裏付というものを十分にして行かなければなりません。今日のこの法案実施に当りまして、文部省は当初の計画の二百分の一乃至三百分の一というような非常な少い予算でこれを実施するというようなことではなくて、単位を実際的な科学的な調査によつて、これを引上げて、そうして父兄負担をさせることなく、義務教育全額国庫負担というこの憲法精神を歪曲することなく、これを広汎に全義務教育児童に対して行わなければならない、これを条件といたしまして、私は賛成をするものであります。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 私はこの法案に不賛成であります。謳われておるところは義務教育無償、それを一部分果すのである、この法案の第一条にその趣旨が書かれております。その趣旨を見ますというと、義務教育無償理想のより広範囲な実現への試みとしてと、なかなか大きなことが書かれておるのでありますけれども、果してこれだけの手段で以て、憲法保障しておりますところの義務教育無償理想が一体どれだけ達成されるかという点において、非常にこれは疑問を感ぜざるを得ないのであります。大体日本の文政の性格がこの法案にも出ておると思うのでありますが、これはしばしば我々も委員会或いはあらゆる機会におきまして論議して参つたところでありますけれども日本教育改革の大きな目標は教育民主化或いは又教育機会均等確立、こういうことが謳われておりますけれども、これが予算的な措置財政的な基礎を確立しない、そういう努力が非常に十分になされていないために、この理想は達成されていないのであります。先ほども予算委員会のほうで論議したのでございますけれども、六三制がその最もよい一つの性格的な現われでありまして、つまり現在の段階におきましては、まだ中学校の校舎さえ十分に満足するような状況にならないのに対しまして、一方人口の増加によりまする自然増学級がどんどん殖えておる。ところがその自然増学級数を吸収することもできない。こういう形によつて実際は六三制が不完全な予算的措置のために、実は小学校の面において大きくこれは崩れておる。そうして一学級が八十人、七十人というような戦争前と少しも変らないような態勢に追込まれているのであります。こういう点から考えますときに、一つ試みというようなものをただ試みのままで、本当に十分な計画と、それからそれに対するところの予算的裏付けを以てやらないときには非常に危険な事態が発生することは、六三制そのものがこれは前車の轍を示しておるのでありまして、我々はこういう事態に対しまして、つまみ食い程度のことをやるべきではない、我々といえども、最初から義務教育無償ということを非常に大きな念願としてやつてつたわけであります。そうしてこのことは同時に、戦争前の日本教育が持つておりましたところの貧富の差によるところの教育一つ階級性、つまり貧しいものが教育を受けたくても、才能があつても、受けることができない。そうして富めるものがそれほど才能がなくても親の光や財的な裏付によつて、上のほうの学校に進む、ここに近代日本一つの不幸があつた、こういうふうな考えで、こういうものを解決するために、飽くまでこれは強力な財政的措置をしなければならない。そうしてそういうような要求を本当に叶えるのが、つまり憲法二十六条におけるところの「義務教育は、これを無償とする。」というような気高い一つ理想盛つた条項であろうと思うのであります。それが五年間放置されておりまして、今こういう形で、全くその一端ということでなされるのでありますけれども、これは何と言いましても、今言つたように非常に杜撰なものであるということを言わざるを得ないのです。仮に昨日の委員会審議におきましても、文部省の側の意向を伺つたのでありますが、最低の限度において義務教育を達成するためには、どれだけの費用が要るか、これに対しまして、文部省側の答弁としましては、教科書小学校の全部、盲学校、そういうものを見積りますと、約四十九億、給食費が二百三十三億、それに学用品として二百三億、大体計五百億足らずの予算が要るということが言われておるのであります。併しこれは物価高になる前の一つの推計でございますから、物価の現在の値上りを見ますというと、約七百億というものが、教科書給食費学用品、これだけの最低義務保障をするために必要なのであります。然るに更にこれに対しまして、子供の雨傘とか、履物とか、そういうようなものまで、もつと教育の十全な機会均等というものが実現される、そういう理想的な場合を考えますと、これは千五百億とか、二千億とかという数字が出て来るのであります。こういうような要求に対しまして、一億三千何万という数字というものは、甚だこれは僅少なものであります。その結果は、先ほど高田委員からも指摘されましたように、非常にこれは数学的にも問題にならないというようなことが起つて来るのであります。そうしてそれが又見通しのない一年限りの法案という形で出されております。先に行つて果してこういうようなことが持続されるのであるかどうかという保障も現在ではないのであります。又こういうようなやりかたによつて起るところの一つの代償として支払わされて来るところの思想統制的な面が、こういうようなことによつてないということが、現在の情勢の中で果してこれは保障することができるかどうか、こういう点を考えますときに、我々としましては、義務教育無償そのものを根本的な一つ教育対策の中に熱意を持つておるのでありますが、それがこういう形で全くこれが一つの思考錯誤的なことによつて繰返されるごとによつて、再び六三制の混乱のようなものを小型でここに繰返すということになりはしないか。もつともつと根本的に少くとも義務教育無償という名前をかぶせるのでありますから、これによつて現在非常な生活苦にさらされ、税の負担物価値上り、こういうところで殆んど教育機会均等というものは戦争前の形のような形に戻され、そうして教育に対する権利を奪われているところの多くの国民大衆に対しまして、もつと或る程度の少くともこの義務教育無償の名に値いするだけの、これは楔を打込まない限りは、この問題に対して何ら根本的な解決をするものではない。これは悪意にとれば、これによつて実は四月に臨んでおるところの選挙対策である。こういう形で、やらないよりはやつたほうがいい、こういう形によつて実は微細なところの一つ予算を提出することによつて大衆にそのような幻想を振りまく。併し実質は何かというと、殆んどこれは論ずるに足りないところの形になります。こういうような欺瞞性に対して我々はこれを賛成することはできないのでありまして、我々はそういう点で、このような、ないよりはあればいいというような、実際は必要額の五百分の一とか、全く問題にならない〇・〇何%というような形で出されて来るものを、而も財的な裏付はなくても、併し精神はいいじやないか、或いは親心がいいじやないかというように文相は説明されておるのですが、この説明そのものが非常にこれは一つの宣伝を目指しておるところのものと言わざるを得ない。こういうところに現在陷つているところの文部行政の大きな矛盾がある。むしろわれわれはこういうような一つの欺瞞的な雰囲気というものを打払つて、もつと冷厳に、この時代の中に本当に大きく楔を打込むということが、目下の日本教育を真に改革する途であり、それから又人民大衆教育平等権を奪われつあるこの現象に対しまして、我々は解決を与えるところの途であると、こういうふうに思うのでありまして、むしろこういうような思考錯誤そのものから起るところの欠陷の面について、いろいろ考えられるのでありまして、得るところよりもむしろ失うところが多いという点に立つものでありまして、こういう点から私はこの法案に対しまして反対せざるを得ないのであります。
  6. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は本法律案賛成の意を表明するものであります。本法案理想への第一歩を踏み出したもので、その立法趣旨は大変結構だと考えるのでありますが、審議過程においても指摘されましたように、教科書行政の無計画と、その無責任のそしりは免れないと思います。今後立法精神を十分発揚できるよう、この法の運用よろしきを得よう希望して賛成するものでありますが、最後に若干の希望を申上げて置きます。それは当面の問題といたしましては、国庫補助で、不足する部分については必ず平衡交付金の積算の中に入れて地方財政を圧迫しないように善処すること。それから補助金交付時期を提案理由にも書いてありますが、できるだけ適時、的確にされて、教科書制度供給の円滑を期するように考慮されたいこと、それから将来の問題といたしましては、この立法精神を十分伸長さす意味におきましても、明年度において継続すると同時に、更に年次を逐つて学年へと拡大するように努力すること。もう一つの点は、将来検定制度を育成する方向に参りまして、できるだけ早い機会国定制度というものを廃止される方向検定制度を育成して頂きたい。以上の当面並びに将来への希望を申上げまして、私は本法律案への賛成意思を表明するものであります。
  7. 加納金助

    加納金助君 私は本法案に対しまして、全体的に賛成の意を表するものであります。義務教育無償配付ということは、これは理想でありまして、すべての教科書無償で配付するということは皆さんと共に私ども念願してやまぬのであります。併しながら御承知のように敗戰後日本財政は相当の窮迫を伝えておる。従いまして、理想のすべてをこれを一時に実現するということの不可能なことは皆様承知通りであります。敗戦後ここに五年、政府におきましては、一日も早くこの理想実現を念願しておつたのでありまするけれども、今申上げましたような、あの破壊されたる財政の下においてはこれを実現することが困難である。それを幾多国費多端の際に当りまして、この理想第一歩を踏み出したということは、私は政府に対してのむしろ賞讃すべきごとじやないかと思う。すでに本年度においてその糸口を開いた以上は、来年、再来年におきましては、更に一歩を進めて、そうしてこの全教科書無償配付の域に達するということは、私ども政府を信じてよかろうと思うのです。且つ又お話のありました用紙の問題もありまするが、この用紙の問題につきましても、しばしば政府当局が言明したごとくに、あらゆる方法を講じてこの教科書用紙に対しましては、必ずその質を保持せしむべく努める。殊に又物価におきましても、低廉なことを力を挙げて保証しておる、こういうことでありまするから、私はこれに対しまして信じてよかろうと思うのです。又今お話のありました、何かこの教科書無償のことが来たるべき選挙に備えろというようなことは、私どもはこれは全く邪推と、こう論断せざるを得ないのであります。そういうようなけちな考えの下に、かような神聖な教科書の点を利用するというようなことは万々ないと私は信じておるのであります。皆様と共に、私はこれに対しまして、全幅的の信頼をいたしまして、ここに賛成の意を表する次第であります。
  8. 高橋道男

    高橋道男君 私も本法案賛成するものでございます。義務教育無償の大理想は一日も早くこれを実現いたしたいのでありますけれども国家現状からいたしまして、理想が突然変異によつて起り得るのではなしに、我々の努力によつて段階を経て実現せざるを得ないことは、やむを得ない現実でございます。ただこの問題に関しまして、私は本会議において教育予算と比べて甚だ比重が軽過ぎるということについて、文相並びに蔵相の御意見を伺いました際に、蔵相からはそこまで伺わなかつたのにもかかわらず、本年、二十六年度からは各一学年生徒に対しては教科書を全部無償で配付するがごとき言質を与えられたのであります。従つて私は一年に入学する生徒の全部に教科書無償配給があるものだと、こういうように極く簡単に単純に存念しておつたのでありますけれども、現われた法案を見ますると、僅かに国語算数教科書にとどまるというようなことになつておることは誠に意外でございまして、このことについては、当局の私は無計画とは申しませんけれども計画の甚だ薄弱さに驚くのであります。併しこれも財政上の変動その他の理由によつて、一年生に対する教科書の全部を今すぐに無償配付できないということも了承いたしまして、僅かに理想への第一歩を踏み出しただけでございますから、その意味においては賛成をしなければならんと思うのであります。もう一点附加えて置きたいのは、この法案におきましては、私は委員会質疑の中にも伺つたのでありますけれども国民たる児童に対しての差別感を持つておるということについては、どうしても納得できかねるのであります。学校経営の上において、公立学校私立学校の別が存すること、これは当然だと思うのでありまして、その私立学校補助については幾分、或いは多分の国家からの援助の面において差等があることは当然だと思うのでありますけれども辻田政府委員の言われた、この法案の対象は児童であつて学校ではないということを伺いますれば、なお更のこと国民たる児童差別を与える、国家の恩恵の差を与えるということは、国民養成の上に非常な汚点になることを私は恐れるのでありますけれども、二十六年度はともかくといたしまして、二十七年度からは誠意を以てその点に対処するというような約束に近い言明を得ておりまするので、この点当局誠意に信頼して、私はその点に強く希望を寄せて本案賛成いたすものでございます。
  9. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御発言はございませんか……。御意見も尽きたようでありますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。昭和二十六年度に入学する児童に対する教科用図書給与に関する法律案本案を議題といたします。本案を可決することに賛成のかたの御起立を願います。    〔起立者多数〕
  11. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 多数でございます。よつて昭和二十六年度に入学する児童に対する教科用図書給与に関する法律案は多数を以て可決することにいたしました。  なお本会議における委員長口頭報告内容は、本院規則第百四条によつて、あらかじめ多数意見者の承認を経なければならんことになつておりまするが、これは委員長において、本案内容、本委員会における質疑応答要旨討論要旨及び表決の結果を報告することにいたまして、御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないと認めます。  それから本院規則第七十二条によりまして、委員長が議院に提出する報告書に多数意見者署名をすることになつておりまするから、本法案を可決することに賛成のかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名  加納 金助  木内キヤウ  工藤鐵男   大谷 瑩潤 木村 守江  高田なほ子  高橋 道男  山本 勇造  大隈 信幸  矢嶋 三義   —————————————
  13. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 次に、日程第二、教科書発行に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を上程いたします。
  14. 岩間正男

    岩間正男君 大体昨日いろいろな点について発案者並びに政府委員から承わつたのでありますが、ただ一点、文部省最高責任者としまして、御意見確めて置きたいと思いますので、文相にお尋ねしたいと思います。それは今度の法案が今までの供託金三分のものが一分になりますと、これによつて大体まあ二億五千万円程度金融措置が緩和される。こういうことになるということを昨日承わつたのでありますが、全体としまして、補助金としては二億五千万円くらいで、そのうち三分の一になりますと、約八千万円程度だけが補助金ということになるので、あとの一億六千円くらいの金融が非常に緩和される、ここにまあ狙いがあるわけなんです。それと連関しまして、そのいうような措置法案によつてとられますれば、当然現在この地方で行われておりますところの教科書代金事前に、二月も三月も前に取立てるというような問題であります。これはしばしば文部省のほうから通牒なんかも今まで出たそうでありますけれども、末端のほうではこれは行われていないのであります。そうして事前教科書代金を取立てまして、それがまあ配給機構の間でいろいろな金融措置のほうに廻されておる、或る場合にはそれがストツクされて浮貸しをされておるというような実情も発生するわけであります。従つてこのような法案がここで通過を見れば、当然そのような、この一般の父兄に対しまして、非常に経済的に影響を持つような問題については当然取りやめられる措置をとられるのが、本法律法趣旨から言つても当然だというように考えられるわけです。これにつきましては、政府委員並びに発案者のかたの御確約を承わつたのでありますが、最高責任者文相としまして、この法案の施行後においては、そのような事態は起らないように適当なこれは措置をおとりになる御意思がありますか。我々としても、むしろこの法案の中でそのような修正をいたしたいと考えたのでありますが、時間の余裕がございませんので、省令なり、訓令なりを以ちまして、その点を十分に下部のほうに、こういうことを徹底して頂くところの措置をおとりになる御意思がありますかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  15. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 今承わりましたような弊害が起ることは非常に困ることでございますから、そういう弊害が起らんように十分適当な措置をとりたいと考えております。
  16. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御発言はございませんか……。それでは本法案に対する御質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  18. 高田なほ子

    高田なほ子君 教科書発行に関する本法案は、教科書需要供給に対しまして、確実迅速にするための修正案でございますが故に賛成をさするものでございます。併しながら法律法律であつて、その運営を誤まつた場合には、この法律精神現実に生かされない幾多の例を見る場合がございます。特にこの三分を一分に改めた場合に、よつて来たるところの幾多の問題を解決して頂く努力がされなければならないということを申上げて賛成をするわけでありますが、先ず第一に、用紙統制撤廃という問題が出され、而も近い将来において、教科書用紙統制撤廃になる、こうなりますと、教科書用紙が必然的に値上りを来たして参りまして、小資本を持つ発行会社は、この法律によつて発行義務を負わされても、遂に発行することができないで、小資本を持つておるものは、これが倒壊して行く、こういうことになつて来る危険性を私は持つと思うのでございます。又これと逆に三分のものが一分になつた場合には、大資本を持つものは今よりも三倍の資本を投資して営業を拡めて行くというが逆に考えられて参りますので、大資本を持つておる会社の独占的な仕事になつて来るというようなことを非常に私は懸念をするものであります。教育委員会法は教育の自主性を尊重いたしますが故に、検定制度を助長することが規定されておりますし、又教育の本来の姿を正しくあらしめるためには、どうしてもこの検定制度の育成を図つて行かなければならないのでございますが、一つの大きな発行所に資本が集中されました場合には、この検定制度というものが現実的に崩れて参りまして、国定教科書への逆戻りが考えられるということを先ず指摘して、私はそれを憂える一人でございます。こうなりますと、教育の官僚化というものがはつきりここに出て参りまして、而もこれが戦争につながる途であるということは、太平洋戰争の歴史を考えて見ても明らかでございますが故に、本法案賛成するに先立ちまして、先ず検定制度を助長育成させる、大資本資本を集中させるな、それから教科書用紙統制撤廃をしない。これを条件にいたしまして、私は賛成をいたします。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は本法律案賛成意思を表明するものであります。  この法律案の成立によつて、業者は資金の面に約一億五千万円の資金緩和が図られるようでありますが、業者の恩恵というものは、生徒児童に必ず還元されなければ本法律案趣旨というものは意味をなさないと思うのであります。従いまして、発案者は責任を以て行政府を監督指導することにより、例えば教科書供給を適時的確に円滑化するとか、先ほど問題になりました教科書代の前払いというような事柄のないように努力されることを強く要望しまして、賛成意思を表明するものであります。
  20. 岩間正男

    岩間正男君 この法案が一番先に出されましたとき、我々は今日改正点が問題になつているような点を主張したのであります。つまり三分でなく、これはやつぱり一分ぐらいでいいじやないか、余りにこれは過大になるというと、それで資金が固定する、これはまずいじやないか、こういう点を我々は教育民主化の立場から考えましてこれを主張したのでありまして、それから当然今日こういうような措置がとられることは、私は必要だと思つて、この法案賛成する次第であります。先ほどから諸君が述べられておりますところの検定制度に対して、飽くまでもこれは民主的な立場をとりたい、それから配給機構については、これは従前に整備をされて、従来陷つているようないろいろ不評判な問題を改正される点、それから第三といたしましては、先ほど文相に質しましたこの点を十全に今後の措置としてとられることを私は切望いたすのであります。
  21. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御発言はございませんか。
  22. 木村守江

    ○木村守江君 本法案は最近の資材の高騰と金融の逼迫したときに際会いたしまして、最もよい本を確実に而も迅速に児童生徒の手に入れしむるというような点から、全幅的に賛意を表する次第であります。
  23. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御意見も尽きたようでございまするが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。教科書発行に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、本法案を議題といたします。本法案を可決することに賛成のかたの御起立を願います。    〔総員起立
  25. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 全会一致でございます。よつて教科書発行に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、全会一致を以て可決することに決定いたしました。  なお本会議における委員長口頭報告内容は、本院規則第百四条によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならんことになつておりまするが、これは委員長において、本案内容、本委員会における質疑応答要旨討論要旨及び表決の結果を報告することにいたして、御承認を願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないものと認めます。  それから本院規則第七十二条によりまして、委員長が議院に提出する報告書につき多数意見者署名を附することになつておりまするから、本法案を可決することに賛成されたかたは順次御署名を願います。   —————————————   多数意見者署名     加納 金助  木内キヤウ     工藤 鐵男  大谷 瑩潤     木村 守江  高田なほ子     高橋 道男  山本 勇造     大隈 信幸  矢嶋 三義     岩間 正男
  27. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ちよつと速記を止めて下さい。    午後二時四十九分速記中止    —————・—————    午後三時三十四分速記開始
  28. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を始めて……。それでは本日はこの程度にて散会いたします。    午後三時三十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            木内キヤウ君    委員            大谷 瑩潤君            木村 守江君            工藤 鐵男君            高田なほ子君            高橋 道男君            山本 勇造君            大隈 信幸君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    文部大臣官房会   計課長事務代理  相良 惟一君    文部大臣官房人    事課長     岡田 孝平君    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君   事務局側    常任委員会専門    員       石丸 敬次君    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君