運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-02-19 第10回国会 参議院 文部委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十九日(月曜日)    午前十時四十五分開会   本日の会議に付した事件教育公務員特例法の一部を改正する  法律案内閣提出
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれより本日の会議を開きます。  会議を開きますに先だちまして、参考人としてお越し頂いたかたに御挨拶を申上げます。  本国会に教育公務員特例法の一部を改正する法律案が上程されておりまするが、そのうちの第五條大学教職員の転任の問題についての事前審査に関する手続の問題について、政府側提案理由及びそれに関する委員質疑応答を重ねているのでありまするが、その間の事情などをもう少し詳細に我々が承知した上で審議を進めたいと思いまする関係上、甚だ御多用中恐縮に存じたのでございするが、わざわざお越し頂いて皆様がたからこの事情をお聞きして、我々の態度をきめたいと思うのであります。勿論これはいろいろ関係するところが多いのでありまするし、我々この問題をこの委員会法廷のような形で取上げようという意思は毛頭ないのでございます。ただその事情さえわかればいいのでございます。そういう点をお含みの上で従前一つ事例などに関して、御両者の間で関係しておられる問題についてお述べ頂ければ結構と思います。別に時間は制限しないつもりでおりまするが、大体お一人で十五分ぐらい見当で、場合によつては二十分になつても結構でありますが、お述べ頂ければその点に関してのちほど委員から又御質問申上げるかも分りません。そういう点お含み頂いてお述べ頂きたいと思うのでございます。重ねてお礼を申上げまするが、大変お忙しいところをわざわざ我我のために御出席頂いたことを厚く御礼申上げます。  それでは委員のかたにも申上げますが、この法律案審議に当りまして、もう少し詳細に事情を承わつておいたほうがいいと我々は考えまするので、関係のかたにお越し頂いたのでありまするが、先ほど申しましたように事情さえよく分ればいいのでありまして、それに対して我々がとやかくお越し頂いたかたに御議論申上げる意思は毛頭ないのであります。その点お含みの上で陳述頂いたのちに御質問頂けば結構だと思うのであります。
  3. 岩間正男

    岩間正男君 その前に時間ですけれども、十五分というような、大体これは……。
  4. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 今申上げましたように、十五分乃至二十分ぐらいの見当でお述べ頂いたらと思います。それでは先に東京大学事務局長進藤小一郎君にお聞きいたしたいと思うのでありまするが、従前大学管理機関で、教育公務員特例法の第五條によつて事前審査されたような事例があるならそういう事情について、それが又非常に審査が長引いているというようなことがあればどういう事情であるかというような、大体の事情一つ承われれば結構と思うのであります。
  5. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 東京大学事務局長進藤と申します。  私の大学でこういう事件の発生した関係上、現に只今審理をなしつつあるのでございまするが、事件のあつたのは昨年の十二月でありますが、これを取上げまして、第一回の審議をいたしましたのは四月十一日でございます。それから回を重ねること前回までで十六回になつております。これからなお数回続く見込みでございます。実際審議をやつておる模様をつぶさに見ますと、第一はこの五條公開口頭審理規定がございます。併しこれを審理するに当つて何らの手続きの規定が備わつておりません。従つてここに大きな問題が二つ生じたのであります。それはこの審理性格、つまり大学評議会がこれを審議するのでありますが、その評議会というものはどういう性格のものであるかということについて論議されたのであります。これはこの五條規定から見ましても明らかに行政機関であつて、人事も取扱いますけれども、どこまでもこれは行政手続によつて進めて行く性質のものであること  に間違いはないと思うのであります。ところがこの規定には公開口頭審理となつて、あたかも裁判手続をそのままに適用さるべきであるという意見も起りまして、従つてその裁判をするようなことになりますと、大体その手続法規が何もございません。従つてこれを一々この評議会においてきめなければならないようになるのでありますが、併しその評議会は一方において審理をすると共に、一方において原告的な立場も当然起つて来るわけであります。従つて二重の人格を持つことになつて、この基本的な性格とどうしても矛盾しておる事実が事ごと審査の上に一つの困難となつて現われて来る次第であります。それから手続などにおきましても、或いは記述の問題、或いは証人の問題、或いは弁護人の問題、或いは傍聴人の問題、或いはもつと細かくなりますと、法廷というか、審理の場所に関するいろいろな位置の問題というような、殊にむずかしい従来の刑事訴訟民事訴訟の問題におけるいろいろなきまりなんか参考にする場合は、相当いろいろな問題となる点が生じて来るのであります。そういうようなことになりますと、今度はその審理をするのに相当技術的に精通しておくということも必要なことになる。先ず委員長をはじめ評議会自体がこういう裁判をなすようなことに専門的な知識が多分に必要となつて来るのであります。それから下部組織であるところの我々事務当局などにおいても、或るときには裁判所の書記のような、或いは速記、或いは調書を作るというようなことについても相当専門的な知識を必要と、或いは技能を必要として来るのであります。そうしてそういう不慣れや或いはそういう知識がないためにいろいろな支障が又起つて来るし、その間に非常に時間も費し、能力もその方に傾けられてお金も相当かかるのであります。先ほど申上げましたように、先ず基準となる法則をこしらえるために評議会を開くこと約七回に及んでおるのであります。ようやく一定の基準、それは相手方に十分納得されたものでもなかつた……そういうところまで到達するのにすでに七回も開いております。それから事実の審理に入つてその後十回ばかりやつておるのでありますが、大学としましては、このために多数の人たち相当の時間と能力とを使つて、他の仕事の方に向ける力を殺がれるという傾向はこれははつきりしておるのであります。そうして私の見たところでは、大体因になるのは、結局その手続性格はつきりしないところにある。むしろ根本的にははつきりしておるのかも知れませんけれども、そこが判然と法文に詳しく書かれているといいのでありますけれども、その点がないことであります。それから仮にそういう訴訟手続のようにするとしたならば、大学審理をする特定の機関をちやんと技術的にも知識的にも専門なものを置いてやらなければ、却つて真実発見という段階において、不慣れな者が十分なあれがなくてやつた場合には、果してその目的を達し得るかどうかということについて私は反対というか、却つてこういうことはしない方がいい、こう思うのであります。そもそも大体学内に起つた事件であり、これを評議会委員になつておる人は大方皆学内に日夜勤務している人たちであります。それから審理をされる相手がたのほうもこれと同じ同僚の中から出ておるのであります。事件やその他については多かれ少かれ相当の関心を持つて、そうして相当程度熟知されていることなのであります。従つてこれを判然と別な裁判のように一々こう改まつた機関によつて、そうして審理を続けて行くというような必要はないだろうと思うのであります。大体今のようなことで、こういう事件は私の大学としても審理は続けてはおります。が、幸いに委員長はじめ法学部の関係知識のかたもございますし、まあ困難ながら今日まで来たのでありますけれども、御覧の通りこれだけの回数を以て未だにその結論に到達しないところ覚ますと、全国いろいろな大学における様子なんかも承わつてみますと、こういう手続を以てこういう事件を裁いて行くということは決して適当なものではない。これは何とか本来の姿に還つて行政組織の適当な方向、つまり無論この評議会評議会自体各種の材料によつて各種の証拠によつて事実を審理するのであるけれども、本人その他の事情も十分聴取して、そうして判断をして行くという段階が最も適当なものではないかと思われるのであります。
  6. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは大山動さん。
  7. 大山勲

    参考人大山勲君) 本日東大関係者として原田正道氏が主として喚問受けたのでありますが、非常に急でありましたために連絡が付かずに、この事件に直接関連しておりますのでありまするので、その代理として私がお伺い申上げた次第であります。原田氏は東大職員組合委員長でありまして、私は副委員長でございまして、本来ならば委員長が来られるのが至当と思われます。で、そのことに関しまして是非お願い申上げたいのは、私たちの申上げたいことを聞いて頂くという機会が與えられましたことを非常に感謝しておるのであります。でその際に私たち希望と申しますと、連絡が非常に不手際でございまして、遂に原田正道氏がここに参上することができなくなりまして、その点非常に遺憾に思つております。その点もう少し連絡ができて、そうして申上げることがよくまとめられるような準備の時間を作つて頂くように御配慮願えればというのが希望でございます。  それからこの問題につきまして、只今東大事件が取上げられましたのでございますが、実際は神戸大学とか、それからそのほかにもいろいろ事例があるのであります。で是非そういうかたがたをも喚問して頂いて、先ほどの委員長の御挨拶のように、よく事情をお調べになるためにはそういう関係者を成るべく多数喚問せられるように希望申上げておきます。具体的に申しますれば、例えば神戸大学当事者、或いは神戸大学、それから東大、或いは水戸の問題、水戸大学……茨城大学ですか、そういうところに全部代理人として関連しておられる個人的には寺澤氏、こういう方などを是非この問題について非常に精通しておられるのでありますから、喚問して頂きたいと考える次第であります。  それからこれは私は直接聞きませんでしたが、今までに文部委員会を衆議院或いは参議院で傍聴していた人々から聞いたところによりますと、文部省側からの説明の中に、例えば学生の前で公開審査が行われることは教育上よろしくないというような御趣旨説明があつたやに伺つております。でこういう点につきましては、学生諸君も大いにいろいろと意見がある模様でありまして、やはり学生諸君意見も是非取上げて頂きたいと、註文申上げる次第であります。
  8. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 大山さんに申上げます。成るべくこの事案がですね、遅れておるのはどういうところにあるかというような実情を成るべく詳しくお聞きしたいと思います。
  9. 大山勲

    参考人大山勲君) その件に関しましては、実情文部委員会のかたがちやができるだけ詳しくキヤツチできるための方法として御希望申上げたわけです。で只今この実情に関しまして、当事者の一方の東大事務局長進藤氏が喚問せられたのでありまするが、私から申上げれば、むしろ南原総長をここへ喚問して頂きたいという希望を申上げる次第であります。  五條の問題に関しましては私たちの考えておりますることは、第一に今までに文部省側からこの文部委員会提案せられました理由がどうも納得できないのであります。教育公務員特例法改正につきましては、文部省側説明を私たちが聞きましたのでは、地方公務員法改正とのバランスという点が強調されているようであります。でその中で第五條に関する点はむしろ地方公務員とのバランスではなくて、大学管理法との関連であるように我々は理解しておるのであります。でそういう点が一番根本的な問題ではないかと考えておる次第であります。それでこの文部委員会におきまして、文部大臣、或いは稲田局長の御説明によりますると、現行規定では運用疑義を招きやすい、或いは実施上いろいろと支障を来たす、そういう理由説明されております。併しながら私どもから申上げれば、正に運用疑義を招きやすく、実施上も支障を来たしております。これは只今東大事務局長から説明されたのでもやはりそのようになつております。併しながら文部省稻田局長の御説明によりますると、大学みずからが運用細部決定権を握るべきであるというふうに説明されております。我々はここに問題があると考えるのであります。運用疑義がある、或いは実施上いろいろと支障を来たすということは、これは進藤氏の御説明のごとく公開審理手続について規定がないと、正にその通りであると思います。併しながら文部省の主張せられるような改正方向に行きますと、運用疑義を招くとか、実施支障を来たすというのではなくて、運用及び実施をそのまま廃止してしまうという結論に到達せざるを得ないと思います。運用実施がむしろ廃止せられるという上におきまして、更にその細部決定権大学管理機関が握るとなりますと、これは学園自治につきまして非常に重大な結果になるのではないかと思われるのであります。私たちはこういう意味におきまして、大学管理法というものが学園自治のために非常に重大な段階に立つておる、そしてそれが結局大学管理法におきましては、大学管理機関権限というものが抽象的に規定されまして、そうしてその実際の実施上の具体的なことが、特に任免といつたようなものに関しては第五條に姿を現わしておるというふうに解釈するのであります。このようにいたしまして、私たちの目から見ますると、大学管理機関学内における独裁機構が確立するのではないかということを心配しておるのであります。
  10. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 大山さんに申上げます。御議論に亘ることは別として、従前経過などについてなぜ遅延しておるかというそういう事情をあなたにお伺いしたいのであります。
  11. 大山勲

    参考人大山勲君) その事情を申上げますためには、このような背景についてちよつと言わして頂きたいと思いまして、申上げたのであります。つまり実際の具体的な経過において何が故に暇がかかつた、そのことは結局この問題についていろいろ議論のやりとりがありまして非常に暇がかかつたのでありまして、もう少しでございますから時間を頂きたいと思います。そういうふうにいたしますると、結局終戦後新らしい学園、民主的な学園というものが建設される段階にありましたのが、再び元へ戻りまして、学問、思想の自由が侵害される、或いはこの法規改正によつて人事問題について暗い影ができて、学閥の復活を来すというようなことが非常に我々の恐れるところなんであります。そういう観点から非常に公開審査そのものが紛糾したのであります。  次に、具体的にどのように進展いたしましたかの御説明を申上げたいと思うのであります。部分的には只今進藤氏が発言せられましたのと重複するような点があると思いますけれども、その考え方においては必ずしも一致しないと思いますから、どうぞお聞きになつて頂きたいと思います。つまり現行法におきましては、先ず公開審理を行なわねばならないと管理機関に義務を負わしているのであります。これは非常に重要なことだと私たちは考えております。而もこの第五條最初に立法されましたときの模様などを伺いますと、まさに私が今まで申上げましたように新らしい民主化された学園自治を建設するためにこそ公開審査をやる必要があるんだということが、各党議員から強調せられたように伺つております。それでそういうことがありまするから、私たちはその公開という字の、法律に言われている公開ということの解釈について、最も民主的な意味における公開を私たちは主張したのであります。東大当局はその公開という、これこそ手続規定や何かが詳細になつていなかつたところから発生する問題でありますが、その公開というものをできるだけ幅を狭く解釈しようとせられたのであります。例えば新聞記者席が設けられてありまするから、これは十分に公開されてあるといつたような、一例を申上げますと理由説明されたのであります。併しながら新聞記者等最初の一回か二回は傍聴に来られますが、そういつも来られるものとは限りません。そうするとこれは有名無実になるのであります。むしろこの事件に関しましては、事件利害関係のある人たちこそ最も傍聴希望するのであります。従いましてつまり不都合のない限りはできるだけ民主的な公開という趣旨従つてやるべしというのが私たち意見であつたのであります。これにつきまして、東大評議会とも私どもと十分な論争が行なわれまして、非常に長時間論争が行なわれまして、結局私たちの論理が勝つたと思います。それで結局東大評議会と私どもとの見解の一致の上で、東大におきまして現在行なわれておりまするような事実上無制限の公開が行なわれておるのであります。つまりこういうことは真理を探求する学問の府において、事態が完全に公開されるということは、支障のない限り最も望ましいことであるということに盡きるのであります。そのようにして第一回が行なわれたのであります。第二回以後に問題になりましたのは、只今進藤氏から説明せられましたごとく、どのような方式によつてこの審理を実行して行くかということについての見解の相違がそこに発生したのであります。そもそも非常に手続上暇がかかるというようなことが言われますが、手数がかかつた或いは時間がかかつたということは、私どもは本質的な問題ではないと考えております。何度も申上げますように、手続規定がなかつたということは、実際に事を進行するためにどうするかというと、その手続を結局そこにおいて作らなければならん。つまりテスト・ケースとして一つのモデルを作らなければならない、そういうことに、ぶつかつたのであります。神戸大学におきましても、また事件は解決しておりません。その場合に文部省側説明によりますと、ただ漠然と神戸大学は遅れていると言われますが、神戸大学では学長が病気をなさつたために審理ができなくて遅れたのでありまして、神戸大学における事情は全然別の理由によると思います。東大におきましては、そうようにとにかく法律ができまして、初めてその法律従つて事を進行する、如何にするかという手続規定がないために、手続規定自体を考えなければならん。而も東大という審理探求の最高の学府が、論理的なあいまいなことで事を決するということは、これこそ日本の文化教育上重大な汚点を残すわけであります。従つて論理的に割切れて、あいまいのないことを実行すべきであるというような点につきましては、私どもの意図するところが東大評議会でも了解せられたと思います。従いましてその点について詳細な議論がなされたわけであります。その際に行われた議論は、要約いたしますると、第一に手続を制定する権限がどこにあるかというところに最初疑点が起つたのであります。法律には何も規定されておらなかつたのであります。そこで何も規定されてないといたしますと、私ども見解に従いますれば、学園という特殊な環境において、学園自治という角度から申しまして、民主的に手続をきめるべきであるという我々の主張であつたのであります。当局側は一応は大学管理機関として、つまり行政機関として手続を作りたいと言われておりましたが、併しながらこの公開審査について手続を作るための法律的根拠は結局確かにあるということは言い切れなかつたのであります。でそのようにして先ずその手続規定東大におきましては審査基準という名前を付けておられますが、そういうものの決定する権限がどこにあるかという点があいまいであつた。  次に東大当局が私たちに示されましたその手続、つまり基準案なるものは私たちの目から見ますと、非常に大きな疑点を生じたのであります。つまりこれは只今進藤氏から説明しましたごとく、評議会がいわば判事検事とを兼ねて事を処理するという性格はつきりとその中に盛られて来たのであります。それからとの問題につきましては、その後論争が続けられましたが、結局納得の行く了解には達しなかつたと思います。それからつまり、その管理機関判事検事とを兼ねるという二重人格の矛盾、それからもう一つは、只今進藤氏が言われましたように、真実発見ということにつきましてはどういうことが必要かと言いますと、この公開審査を受ける立場の者の防衛権、これはむしろ基本的人権と申したいと思いますが、十分なる防衛権が認められなければ、公開審査現行法立法趣旨にもどるわけであります。つまりいわば被告立場にある人たち自分意見、或いは自分のいろいろの事情説明のための自己防衛権、これが制限されるということは、非常に真実発見という目的からいたしまして支障を来たすのであります。この点につきましても非常な論争が起つたのであります。そういうようなことが言われまして、当局側が多少原案を修正したのであります。  第三回目は五月十六日でありますが、この時もむしろ我々側のこの審査手続に関する意見について続々我々側が主張したのであります。それにつきまして議会側からいろいろと質疑が出て論争が続いたのであります。それから然らば被告の側ではどのような手続にしたらば最もよろしいと考えるかというふうな提案当局側からなされたのであります。そこで私たちとしましては、必ずしも理想案とは言えませんが、少くとも民主的な方法によつてやるのにはこういうやり方がよかろうという一つの案を作つたのであります。で案を五月三十日の四回目に発表いたしまして、評議会かたがたに皆見て頂き、なお学園の自主のためには教授会が非常に尊重されなければ真の学園自治はできない。従つて評議会だけで事を決するのではなく、教授会にも諮つて、私ども作つた案がいいか悪いかを検討して頂きたいということを申入れたのであります。で私どもの作りました案を参考資料としてここに持つて参りましたので、委員かたがたにお配り申上げたいと思います。部数は十五部しか持つて参りまけんでした。この一部は私たちの作りました案で、もう一つのほうは当局の作りました案に対する批判、それからどうすべきであるかといつたような解略書であります。私どもの作りました案はどういう案かと申しますと、その根本理念だけを申上げます。  先ず第一に、評議会がこの基準を作成する権限を独占することなく、民主的な討議によつてきめようではないかというのが第一点であります。  それから第二点は、大学管理機関はこのような審査を行う場合には三つの原則従つてつて頂きたい。第一の原則審査を受ける者の基本的な人権を制限しない。それから第二は予断を以て審査をしない。これは私ども審査におきまして、私ども当局側の一部のかたがたは明確に予断を持つていると考えているのであります。このように予断を以て審査に当るといたしますると、これは学園自治学問の府という所が真実発見ということにつきまして非常に誤りを犯す危険があります。この点を特に強調するのであります。それから第三番目は公開原則を破るようなことをしない。この三原則を頭に置いて大学管理機関審査を行なつて頂きたい。  それから第三番目には、その方式はどのようでもいいのでありまするか、要するに教授会が十分に尊重されるという根抵の上においてこの審査手続を進めて頂きたい、こういつたような趣旨具体案を作成したのであります。これにつきまして、六月二十日に当局側ではいろいろと検討せられた結果、組合案に対する一つ解答がなされたのであります。その解答につきまして私どものほうからいろいろと鶴をし、その質問の内容、それから解答内容につきまして論理的に矛盾する点、そういつたような点についての論争が続いたのであります。そういたしまして、その日は遂に非常に長時間やりましたが、完全に結論に達せず、七月十一日に更にその点について論争が続いたのであります。遂にこれは要するに平行線に乗つてしまつた。従つて南原総長の言葉によりますると、遺憾ながら見解は対立のままであるというふうに言われたのであります。このことはどういうことを意味するかと申しますと、結局東大当局側は私どもを論理的に、つまり学園の府らしく論理的に私たちを完全に屈服することができなかつたという具体的な現われだと思うのであります。このようにいたしまして私ども平行線で徒らに時間を遷延することは望ましくないものでありますから、それでは一応当局の考えに従つて一応はやりますが、併しながら私たちの正しい論理は飽くまでも貫徹するように努力する考えである。この点につきましては南原総長もそれはよかろう。で遺憾ながら見解は対立のままであるが、併しながら真実発見、具体的に真実発見という目的に副うという趣旨においては見解は完全に一致した。従つてそういう精神のもとに現行法規に抵触しないように事をやろうという点につきましては完全に意見が一致したのであります。このように、今進藤氏が非常に暇がかかつたと申されたのでありますか、まさに大学のこのような人事に関する基本的な重大な問題のやり方をそう軽卒にきめることは間違いでありまして、むしろこれだけ愼重にやつても私どもはまだまだ愼重さが足りないと考えております。このようにいたしまして、一応基準論争は打切りまして、第七回目に入りました。九月十九日であります。この日に初めて当局側から我々が何が故に審査を受けねばならないかという事実関係及び摘條説明書、つまりいわば裁判における告発状のごときものが我々に手交されたのであります。このときは、その内容について字句の質問などでその日は終りました。九月二十六日にこの告発文の内容についていろいろと詳しい質問が展開されたのであります。このことは一種の争いの形式になつておるのでありますから、どの点が争点の中心になるかということをはつきりとして、このはつきりした争点をめぐつて両方の見解か十分に述べられて、そこにおいて初めて真理が発見されるという建前の私どもの論理が評議会に、取上げられまして、このような形式になつたのであります。そのようにいたしまして、当局側の告発文に対する質問が十分なされました。それに続きまして第九回目は私、どもの答弁書というものが作成されたのであります。告発文に対する私どもの答弁書は、部分的にはその通りでありますが、又大部分は告発状の言つておることは私どもの考えておることと違つておるといつたようなことがいろいろと説明されたのであります。その前半部か九回目に提出されて、それについて詳しい質疑応答がなされたのであります。それから第十回目には後半部として、法律的の根拠について私たちの主張が展開されたのであります。で十一回目には当局側から私どもの答弁書の内容についていろいろと詳しい質問がありまして、この手続によりまして、どこに争点があるかということが相当明確になつたのであります。更に私どものそこにおける論争の結果、当局側が告発文を出す以上は告発に値する証拠物件がなければならない、その証拠物件を見なければ処分を受ける側の者は十分な自己弁護ができない、これはとにかく新憲法におきまする基本的人権を守る建前からは当然のことだと思うのであります。そこで証拠物件を具体的に私たちに頂きたいということが要求されまして、当局側はそれを諒とせられ、証拠物件を全部私たちに配付して下さつたのであります。その証拠物件の内容についての質問がそれ以後続けられて、去る三月十三日までにその証拠物件についての詳しい私どもからの内容についての質問が済んだのであります。  で、次の段階は、今予想されておる段階はこの証拠物件をめぐつての私どもの反証であります。このような罪に該当しないという事実や証人を挙げて、私どもに罪がないということを立証するわけです。このようなことが完全なる公開の席で今まで続いたのであります。このようなふうにして十分に手続を養して、その上において処分に価するとして処分されるならば、これはその手続が間違いない限りにおいては、学園自治の一番根本問題は人事問題でありますが、これが最も正しく処理されるのではないかというふうに考えるのであります。只今進藤局長からは、その非常に暇のかかつた点、或いは手続の非常に困難な点が縷々説明されまして、従つて面倒くさいから困るといつたような趣旨説明がなされましたが、今まで申上げましたように、なぜ面倒くさくなつたかというとは、結局我々が新らしい新憲法に則つた民主的な処置をやろうとするのに対してそれを妨害しようとした。その妨害をしようとしましたが、そのの妨害しようとする論理が我々を屈服せしめることができずに結局長びいた。それからもう一つは、この新らしいやり方についてのモデルケースになつたために暇がかかつた。これは一つのモデルができまして、それが確立いたしますれば、これから以後のこういう問題はもつとスムースに行くのじやないか。私どもの是非お願いいたしたいことは、文部省側説明せられましたごとく、運用上、実施支障があるからこそ、従つて現行法規を更に精密化し、つまり現行法規の本当の内容を完全に骨抜にするという形で問題が提出されるのではなくて、現行法規の立法精神を十分に済し、学園の民主化を更に発展し、学問の自由を守るために現行法規の不備を補つて現行法規の根本的な点を抜き去ることなく、不備を補い、そうして手続規定をもつと明確にして、それこそ簡略に而も正しくできるように改正して頂きたいというのが我々の念願なのであります。  それから先ほど進藤氏から説明せられましたことの中に、審理技術が非常に問題になる。これは正にそうであると思いまするが、併しながらこの論争を、この公開審査論争におきまして、東大の法学部長横田喜三郎氏は、少くとも評議会におきましては、我が国の法律学の最高権威の東大の法学部の代表が参画してやつているのであるから、東大辞議会の考えることは絶対に間違いはないというような、主張をなされたのであります。従いまして、必ずしも進藤氏が心配せられるようなことがあつたとは私どもも考えていないのであります。  以上長々と恐縮であり、近したが、なお御質問によつてお答え申上げたいと思います。
  12. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 只今のお二人のお述べ頂いたことに対して御質問のあるかたはどうぞ。
  13. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 大山さんに質問いたしたいと思います。私もよく事情がわかりませんので、具体的に一つお話を願いたいのですが、いろいろ細かくなりますので、ちよつとメモをして見ました。あなたの御言葉の中に、若しこの第五條現行法から改正されれば、更にその学閥の復活を恐れるというようなお言葉があつたわけです。その具体的な学閥の復活を恐れる、その中に民主的な意味公開自分たちは主張しておる、そうして公開ということを本当に民主的にやつて行かなければならないというようなお話でありましたか、民主的な意味公開を、主張して、そうして大学の側では公開の幅を狭くしたと、こういうようなお話であつたわけですけれども、その論争の、主要な点、民主的な公開ということと、公開の幅を狭くしようとしたということ、それによつてつて来る学閥の復活ですね、それらの関連性についてお話を願いたい、これが一点です。  それからもう一つは、予断を以て行わないということが組合側の審査基準案の中に出ておるわけですが、そこが論争の重要な点になつたように思われるのですけれども、今度の審査の中に、予断を以て少くとも……被告という言葉は当りませんですけれども、まあ調べられるほうの側の者が予断を以て不利になるような状況があつたのかどうかということ。  それからもう一つは、あなたがおつしやるように、真理の発見には自分の基本的な人権が認められなければならない、それがなければ公開意味をなさないということを言われましたが、それは御尤もだと思うのですけれども、どんな論争が行われて、そのときにどういつたような結論が出たのですか。意見が対立したというのは、どういうふうになつたままに対立して行つたのかということ。それから冒頭におつしやつたことの中で、学生も一度聞いてもらいたいというようなお話もあつたので、私も一応おつしやることは御尤もだと思うのですが、文部委員会では、教育支障があるというようなことを確かに言つておるわけですが、まあ私の考えでは、その審査の中でいろいろな論議が交わされる中に、傍聴している学生諸君も何らかそこに真理を発見するのではないかというふうなことを考えられるわけですけれども、あなたも学生諸君に接しておられるのでありますので、学生諸君のこの審査に対する感想ですね、そういうものをお聞きになつていたとすればお聞かせ願いたい。果して教育上に悪い影響があつたものか、よい影響があつたものか、そこらをちよつと聞きたいと思います。  大体要約して三点聞かしてもらいたいと思います。
  14. 大山勲

    参考人大山勲君) 学閥の問題でありまするが、改正案によりますると、公開という字が削つてあります。それから現行法においては、せねばならないと義務を課しておるのです。ところが改正案では、することができるというふうになつておるのです。こういたしますと、若しも大学当局管理機関が公正な態度をとらないとすると、管理機関一つの不当な人事処置をした場合に、その不当な人事処置をした管理機関自身が公開審査をしないことができるわけなんです。そういうような形において改正法規を曲げて利用せられまするならば、どのような不当人事でも自由にできるということになるのであります。その点におきまして、そういう学閥の復活も一つの根拠に十分なり得ると私は考えるのです。
  15. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 いや私がお聞きしているのはこういう点なんですがね。例えば私は新聞や何かでちよつと見たのですけれども、わだつみ記念塔を建てるとか建てないとかいうときに、評議会でごたすたして、そうして折角建てるというのがいつの間にか建たないようになつてしまつて、その評議会というのが非常に学閥関係のようなものが濃厚で、極めて非民主的に運営されておるというような仄聞を私たちはしておるわけです。そういうようなことをあなたは学閥の復活というような言葉でおつしやつていたのかどうか、少し具体的に聞かして頂きたいのであります。
  16. 大山勲

    参考人大山勲君) 私どもの考えるところでは、現在の評議会というのは、管理機関は完全に民主的なものではないと存じております。なぜかと申しますると、成るほど評議員の各位は各教授会から選出せられておりまするが、併しながら議員のかたがたは、つまり教授会の代議員というような資格で参加せられておるのではありませんです。一応教授会から、東大におきましては三名ずつでありますが、ただ教授会から出ておるというだけでありまして、評議会の席におきましては、この評議員の方の完全に個人的な意見を主張せられるようになつております。それは部分的には教授会の相談の通り束縛される方もおありでしようが、併しながら実際面におきましては必ずしもそうではないと私どもは考えております。その点につきまして、これは新らしい大学管理法とも関連するのでありますが、管理機関となるものがその意味教授会というものを十分尊重するような法的な規定はつきりされるということがどうしても必要ではないかと私は考えております。  それから予断を以て不利になるということでありますが、東大におきまして処分が問題になりましたのは四名、一名は自発的に退職せられたので問題にならん。もう一名はこれは事務官でありまして、この人はいわゆる普通の公務員法によつて処分されたのでありますが、直ちに懲戒免官になつて、すでに三月の幾日でありましたか懲戒免官になつております。つまり昨年の三月です。公開審査が行われるに先だちまして、そういうことが起つたのであります。こういうことはつまり私どもから申上げれば、大体において同じ罪に該当するということになるのでありますが、その同じ罪に該当するうちの一人がすでに公開審査に先だつて懲戒免官になつておるということは、これは予断を以て不利になるということの事実であると思います。予断を以てさような審査が進行しますというと、初めからこの二人は私どもは悪い者であるという偏見を持つていろいろな証拠が作られ、それからその証拠を調べたり聞いたりする場合にも、そういう偏見を以て聞かれたり調べられたりすると思うので、私たちの言わんとするところが常に歪曲されるということになる。従つてそういうことがないようにということを常にやかましく主張したのでありますが、遺憾ながらその論争の過程におきましては、予断を持つておられるのではないかというような機会がしばしばあつたのであります。それからいわば被告でありますが、被告防衛権の問題でありますが、具体的に申上げますと、例えば弁護士或いは証人、そういつたような者を制限するかしないかということであります。当局側最初提案して来られましたのは、被告一名について代理人一名というようなことを言つておられたのです。それについていろいろ制限的な規定が書かれたのです。例えば強盗殺人事件のような場合でもこのような被告防衛権の制限ということはこのようにはないのであります。それ以上に大学当局が一方的に防衛権を制限するということは、非常に不当なことではないかというふうに我々は、主張した。その結果当局は或る程度譲歩せられまして一三名までというふうに多少譲歩せられたのであります。その他細かい点がありますが、主としてそのような点であります。  それから学生の問題でありますが、教育支障があるということが文部当局側から言われたということは最近聞きましたので、それについて学生諸君がどのような意見を持つておられるかということは、まだ具体的には聞いておりません。とにかく学生諸君としては、大いにその点については言いたいことがあるのだという程度以上には、学生諸君からは直接には詳しく聞いておりません。その意味におきまして、学生諸君から直接お聴取りをお願いしたいと思います。
  17. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 進藤さんにお伺いいたします。二十五年の四月から始まつたわけですから、今までに約十カ月あるわけですが、この間にそのモデルケースをお作りになるのにどのくらい期間をおかけになつたかということが一つと、それからまあ手続の問題ですが、そういうことですつたもんだをおやりになつたと思うが、事実審理に当つてそういう点についてどのくらいおかかりになつたかという期間問題です。それからあなたは公開審理ということを否定されるのか。そういうものはやはりあつたほうがいいのじやないかとこうお考えになるのか。どつちか見解というものをお持ちになるだろうと思う。ですからどちらか知らないが、その見解をお聞きして、その大きな理由というようなものをお聞かせ願いたいと思います。
  18. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 第一番目の案を携えるまでのところは形には現われておらないわけですが、基準手続上の案を作るのに相当研究して案を据えたわけです。それから第一回が四月十一日にその案をつまりその前に評議会、何回ですか、二三回開きまして、そうしてその基準案を確定したわけです、一応……。それをこの請求人側に提示しまして、そうして第一回の審理をやつたのが四月十一日です。それからその総体の問題と各論について詳細な検討というか、論議というか、意見の交換があつて、丁度六回目のときには大体両者の対立がはつきりして、さつき大山さんから話されたように、どこまでも請求人側のほうはこれは憲法違反であるというようなことで、これをテスト・ケースとして最高裁に訴えるかも知れない。どこまでもこつちのほうのあれには承服できないと、それでまあそれならそれでも仕方がないからやつて御覧になるがいいだろう。併しながらそのままに停滞するわけに行かないので、今度は第七回において実体の審理に入りましよう。併しながら大学側から示したこの基準には賛同しかねる。併し一時留保として、とにかく運営によつてこの方式でやつて行く、そのときに又手続の問題が起つたら、それは文句は言わないということにしてやつて呉れというので、丁度それが四月十一日から九月十九日までかかつたわけであります。  それから第二の点につきましては、真実発見のために公開口頭審理ということは、一見大変いいように思われますけれども、それがためには審査する機関がそれにふさわしいものでなければならない。それからそういう審理を進めて行くときに、それぞれの構成する組織というか、機関というか、人間も含めて相当の陣容が整つていなければならない、それからもう一つはその根本となりました評議会自体が、さつき大山さんが言うように、検事の役目と裁判長の役目をするようではどうも公開し、口頭審理といいましても、その真実発見には支障却つて多い。例えば我々の経験で行きますというと、検事は犯罪を捜査して、そうしてあらゆる証拠を固めて、何でももう準備します。併し大学管理機関会議体であつて、そうして誰かが犯罪、これは犯罪じやないかも知れませんが、犯罪の捜査をし、証人を喚問して何をやるのかという、そういうようなあれができないのであります。そういう点でその両方でたたかつて行くというような、形式においては両方がたたかうところの組織と権能とが丁度よい加減に分立し、備えられた状況においてのみ最も正しい発言に行くのだろうと、こう思いますので、現在のところではこれは私は不適当なものと思つて改正を是非して頂きたいというふうに考えております。
  19. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 この評議員会で、そういう件が起きたから、まああなたのほうでは一つのモデル・ケースをお作りになつたわけですね、それまでは全然そういうことは考えておられなかつたわけですね。
  20. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) そういうわけです。
  21. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ですから、今度まあ一つできたわけだと思うのですがね、今お聞きしますと、あと数回やればこの問題は解決すると、こういうふうにお聞きしたんですが、これはあなたじやなくて大山さんのほうからお聞きしたのですかね。
  22. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) いや私ですが、数回で解決するというのは……、それはちよつと大山さんの話のほうが正しいですね、いつまで続くのかわからんというのが本当かも知れません。けれども見通しとしてはもう五六回も続けたらもう何もやることがないんじやないかと思われる節もあるものですから……。
  23. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私のお聞きしたいことは、モデル・ケースが出たんですから、これからは非常に事がスムースに運んで行くというふうに一応あなたのほうとしては言うことができますか、そういうことは言い切れませんか。
  24. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それは言い切れません。それは向うは、請求人側は屈服しておらないのですから、どこまでも対立しておるのですから。
  25. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 わかりました。
  26. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) これはどうしても一方的にならざるを得ないのですから、円満な解決をするということはとてもできないと思います。
  27. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ほかに御質問ございませんか。
  28. 岩間正男

    岩間正男君 二三点進藤さんにお伺いしたいのですが、大体今まで大山さんのお話を聞きますと、まあ職組側と評議員側ですね、評議員側が相当了解していろいろ話が進められて来たと思うんです。途中でまあいろいろ論象あつたらしいですけれども、お互いに了解を得て論争を進められて来たんですね、そういうようなことについて、今度非公開制でやるということになりますと、今まで折角一年かかつてテスト・ケースを作るためにお互いに努力して来て、学園の民主化という点に一番大きな眼目を置いてやつて来たのですけれども、そういうものはすつかりもう今までの成果が無駄になるんじやないかと思うのですけれども、そういう点はどういうふうに考えられるのですか。公開を飽くまですべきだというのですか、公開、これは改めたほうがいいというような御意見なんですけれども、そういう点はどうでしよう、今までの一年間決して無駄じやなかつたと我々考えるのですけれども、そういう点はどう考えるのですか。
  29. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 今の了解ということなんですが、その了解の前提に、了解せざるものが相当あるわけなんで、それが一つのつまりいつまでやつてつてもしようがないから、両方で折れてというか、組合側のほうでも或る程度……、それでもすつかり屈服したとおつしやらないように、屈服せざるままにおいて進めて行くような状態なんですね。
  30. 岩間正男

    岩間正男君 さつきのお話では、いろいろ了解に達して……。
  31. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それはあらゆる場合じやない、相当大部分がそれなんです。例えばさつきのお話の証人の場合でもですね、何も無制限に基本人権をやるようにすべきだと、こういつた工合に無制限にやられても困るのです。それから速記の問題なんか細かい問題ですけれども、我々のほうとしては専門家もいません、速記を頼んでとつております。そうしてその速記をちやんと印刷にして配らなくちやならない。そういう組織もない、何もない、慣れてない、慣れてないとそれで今度は困る、そのうちに或る事について又いろいろな論議が行われるけれども、やはり対立が起つて来て、対立のまま仲分れしてしまつたんじやおしまいですから、まだよちよち続けているが、これは了解なので、これはテスト・ケースとして私たちのほうとしては誠に美わしい状況などとは到底思われないのであります。こういうテストケースが繰返されることは、私としては決していいことではない、こう思つておるのであります。
  32. 岩間正男

    岩間正男君 それは事務局としての立場からですか、そうでしような無論。事務局としてのいろいろな事務上の手続から、非常にそういう組織もないから、そういう点からでしような、事務局としてはいろいろな御意見はこれはお持ちにはなつていても、まあ評議会と職組側の意見とは違うんですから。そういうふうに伺つてよろしいですね。
  33. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) これは事務一つ機関としての意見ではなくして、それは評議会においては私は発言権もないし、何もないですけれども、ここでは自分意見も加えて申上げておるわけであります。
  34. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、そういう例えば機構を、大体そういう事態が起るかも知らんということを予測しないで法案を作つてしまつた、そこに問題があるので、そういう点が充足されれば今の問題は一つなくなつて来るわけですね。  それからお聞きしたいのですが、公開の場合に学生諸君もどの程度傍聴させられたか、こういう問題についてもいろいろ数の制限とか何とか今まであつたと思うのですが、そういう点についてちよつと伺いたい。
  35. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 最初は、評議会の部屋があるわけです。そうすると評議員が並びますと、部屋の位置から何から考えますと、傍聴する席というのは非常に狭いのです。それでまあ適当な所というので、三十人というのを原案にしたわけです。その三十人のほかに、さつきのお話のありました新聞記者の入られる席もこしらえまして、それからまあ組合側、それから一、般学生、それから一般人、職員組合というようなことを予想して、それくらいあつたら適当だろうというので、そうして初め傍聴券を出すようにしてやろうとしたところが、組合側はもう絶対反対を唱えて、そうして一つの集まりを催して入場を肯んじない、全部を入れろと、こういうのでまお一つの大きな騒ぎになつたわけです。で、三時から開くのでしたけれども、それで開くことができない、そのために今度いろいろ協議をした結果、それでは今だけ入れようじやないか、組合側のほうでも十分静粛にするというようなお話でもあつたので、それで最初つたのは、すし詰めのように狭い所に最初二百人も入つた。次回からはそれでは場所を変えてもう少し大きい所でやろうというので、今やつておる図書館の図書、雑誌、閲覧室を片付けてやつておるのですけれども、実はこれも学生の閲覧をそのためにいつも断つておるわけであります。そうしてそこに入つたときに、一番多いときで四百人ぐらいかもう少し多かつたか、まあそれくらいの見当ですが、一般傍聴人の多かつたのは、最初基準をきめるときが盛んでございまして、その後だんだん減りまして、まあ少くなつたときには、もう最近は六七人ぐらいのときが最低でございまして、この前なんかは、前の石井さんが事務局長で、この運動の相手方だつたその人を参考人に来て頂いたときには、まあ石井局長現わるというようなビラや何かも多少貼られたんですが、それでも三十人までは傍聴者はいなかつたかと思います。そういう状況でございます。
  36. 岩間正男

    岩間正男君 学生諸君傍聴させて、そのために結局不都合だつたということはなかつたわけですね。今までむしろ制限されたほうが却つて問題が起つて害があつたんですね、まあ公開原則にして傍聴をできるだけ許すというようにしてからスムースに行つたんじやないのですか。その点……。
  37. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) いや最初の話のように、最初一遍そういうことが起つた以外は、場所を変えて広い所で制限なく入れたら、それは何も支障は起らないわけです。併しながら傍聴人が入つて来たからなお一層問題がなくなつたわけです。
  38. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、どうもやはり公開をしてこういう問題、殊に学生諸君が非常に関心を持つというのは今までの、殊に戦争前の時代なんかと連関して当然持つだろうと思う。それから学園自治というものをやはり学生諸君が非常に関心を持つて、この問題を自分たちの問題として考えている。こういう点から当然こういう形をとると思うのですが、公開ということがなくなつて来ますと、こういうことはなくなつて来るわけですね。そうするとどうですか、公開するのは教育的な影響を考えてやつているということを言われているのですが、我々の見るところではむしろ公開しないことのほうが教育的影響が非常に大きい。というのは、学生自治というものと、それから学園の機能に民主的に参画する、こういう点が非常に制限されて来る。それによつて何かこういう審理が一方的に進められて、そうしてどうも学園却つて又再び昔のように秘密主義的に陷つて学閥の復活ということがやはりそういう点で問題になつて来る。こういう点のほうが教育の民、民主的な空気を非常に破壊すると考えるのですが、この点はどう考えるのですか。教育的な意味というのは、例えば皆のいる所で或る教授の秘密が暴露されるとか、それが與える教育的な影響、こういうふうに考えているらしい、が、そういう考え方であつては、教育の古い考え方ではないかと我々は考える。むしろ公開するほうが教育的な影響、民主的な教育を本当に進める立場から当然とらなくちやならない、こういうふうに考えるが、これはどういうふうにお考えになりますか。
  39. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 私の考えますのは、事件学内にあつて、そうして評議会が単独の機関ではなくて、各学部から選出された多数の評議員から構成せられている。そうしてその間にあつて同僚たる教官相互の身分に関係したことが論議される。論議される場合においてやはりそれは真実に基いて事実を言うのではあろうけれども、いろいろな言葉の上の行過ぎもあり、或いは事実に立脚しないものもありのままにたたかわされる。そういう争いの一面を学生諸君或いは一般の人に無制限に見せるということは、これは教育上愼重に判断さるべき問題だと思うのであります。仮に学生にその場面に接しさせないから祕密主義になるとは思われないのであります。多数の人が参画しておりますから、殊にその同僚たるその先生は知識の点においても或いはいろいろな点において十分な、つまりいろいろな力を持つている、つまり自分の考えを、自分の行動を表現するのに事を欠かない人たちであるので、そういう所でまあ十分なその人の陳述を聞くことによつて十分なのではないかと、こういうふうに思われるのです。
  40. 岩間正男

    岩間正男君 そういう御意見もあるでしようが、学生諸君と言いましても、まあ青年期に達する判断を持つた、小学生や中学生じやないのです。それから今までの何といいますかね、何かくさい物にふたをするというやり方が非常に日本の学校を戦争前のような形にして行く、それをむしろ大きく公開して、正しいものは正しい、そうしてそれを大衆批判によつて民主的なものを確立するというところに、やはり大学なんか新らしい品格の時代的意味がある。こういうふうに私たちは考えて、又そうなくちやならないのではないかとこう考えるのですが、そうすると、今の例えばこれは幾分そううい論争の結果判断する場合があると思いますけれども、そういうことはそれほど苦にならないと我々は考える、学生諸君ですから。そういう点は公開をしない、そうして事務的に急いで処理をするということから得る利益と、それからそれを非公開にすることによつて何か明瞭でないという空気が学内の中に漂つている。こういつた二つから考えてみると、これは教育的には、殊に新らしい教育を考えるときに非常に問題じやないかと思うのですが、そういう点から考えまして、ただ公開審理そのものというものを單にその人の個人的な問題をきめる、こういうことの意味一つあると思いますが、併しその具体的目標以外にやはり学園において自治を飽くまで確立して、そうしてそういうような問題を飽くまで多くの人が参加してこの問題を民主的に大衆の判断、健全な良識によつてこれを決定して行く、そういうことを本当にやるためにこういう学内公開審理なんということによつてむしろお互いにいろいろ関心を持ち、この問題を考えることによつて非常に教育的な意味を持つというふうに考えるのですけれども、その点は進藤さんとしてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  41. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) その民主的ということについては私は異存はないのでありますけれども、こういうような事件審理を大衆の判断による、それが概に民主的だとは私は考えられないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)大衆とは何ぞやという、ことが問題なのであります。大衆によつて判断されるということ自体に又相当考究すべき問題がある。そういう大衆の前にさらさずに、本当にその良識のある人たちが、大学自治のためにまじめにその真実発見して判断されるということが、最も適当な民主的な問題であると私は考えておるのであります。
  42. 岩間正男

    岩間正男君 意見に亘ることをここで申上げないつもりですから、その点は余り言及するのをやめますけれども、非常にそこのところが考え方に相違があるということをはつきり申上げておきます。殊に今度の問題は何でしよう、審理を受けている人たちは職員組合という広範なつまり民主的な学生の代表者だ、そうしてそのためにその大衆から委場託された要求を貫徹する、そのためにやつた。ですからその問題を大衆が無関心で決定されていいのだという論じや私は成り立たないと思う。それから又学内の今までの秘密主義というアカデミツクなものを織込んで行つた形を見ますというと、いつでも少数の良識な人たちによつて決定されておるが、併しそれは独断に近付く道である、独裁に通ずる道だ。そうじやなくどんどんこれを公開して、飽くまでこれはそういうような方向に大衆批判の確立という道が恐らくできるのじやないかと思うのですが、これは議論に亘りますからやめます。  もう一点お聞きしたいのは、進藤さんはどう考えておられますか。例えば今度は文部省から改正法案として頭から出されたわけです。文部省東大意見を聞いたのであるかどうか。これは稻田さんにお聞きしてみればわかるわけですが、南原総長は一番の責任者ですから、この意見を求められた或いは又前局長の石井事務局長、このかたはなぜおやめになつたかは私はよくわかりませんが、現在何か衆議院の專門員をやつておられる、こういうかたの御意見なんかもお聞きになつたのか。こういうこともあとで文部省のほうから伺いたいのですが、併しもう少し学園自治ということを口先だけでなくして、本当に尊重するなら、この自治をやるのは学生大学なんですから、大学の多くの人はどう考えておるか。そうしてこの審理の問題をいろいろ要求を聞いて、そうしてむしろ大学自治的な要求によつてこの問題を決定するのが、私は本当は正しいじやないかと思う、大学自治を尊重するという建前に立つても。ところがそういうことがどれほど文部省では進めておられるのかわかりませんけれども、何か天下りみたいな方式になつているわけです。そういう点はどうお考えになりますか。私どもとしてはむしろ大学側の御意見を多く容れて、そうして大学自身でやはり多くの民主的判断によつて決定された方向によつて、この法案というものが改正される必要があるならば改正してもらいたいというのが、当然私は自治の建前からこれは尊重すべきものだと思うのでありますけれども、こういう点については進藤さんどうお考えになりますか。大学自治というものと大分食い違いが出て来ると思うのですが、この点はどうお考えになりますか。
  43. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 大学法律にきめられてあるところに従つて、これをその趣旨従つて段階においてはやつて行かなくちやならんと、こう考えてやつておるわけであります。併し実際やつておることについてこれが最善であるか、或いは改正の必要があるかということについて、大学自体がそういう論議をしたことはございません。従つて私ここで大学の全体の意見はつきり申上げることは、そういう力もないしできないのでありますけれども、私はこういう事件に携つて、たくさんの大学人たちと会つて、その間において感知されたことは、これはこういう審理方法は決して最善のものではない、むしろ煩に堪えない。真実から却つて遠ざかつて行く、適当に改正せらるべきであると、こういうふうに多数のかたがたが考えておられるのではないかと私自身はそう考えますし、そういう考えのかたが相当、殆んどじやないかと思われるのであります。
  44. 岩間正男

    岩間正男君 先ほどの、大学としてはこういうことについては正式に討論されたことはないし、結論を下されたことはないということになりますと、その点は非常に重大だと思います。文部省がそういう点は大学から意見を正式に聴取した結果に基いていないということが今明らかになつたような気がする。それから多数の人たちはそれにもかかわらず多く改正を望んでおると、こういうようなお話でありますが、多数の人の内容にもよりますね。併し大学自治という建前を飽くまでとるということを考えたならば、大学内でやつぱりそういうことが十分討議され、そうして一つの意向として決定されたもので、そういうものが総合されて、多くの輿論によつてこういう公開制というものをされることが望ましいのじやないでしようか、どうでしようか。これは進藤さんとしてはそういう要求はあるだろうけれども、そういう要求が今までこれは文部省側から聞かれたとか、そういう意見を聴取された、そういうことはほかの教授に関してでもいいのですが、これは御存じないですか、今まで……。つまりこの問題につきまして、正式に例えば文部省側からそういう意見を聴取されたことが、あなたでなくてもいいんです、あなた及びそのほかの南原さんでもほかの教授の方でも、評議員の方でもそういうことを聴取されたというようなことはこれはお聞きになつていられないのですか。
  45. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 聞きません。
  46. 岩間正男

    岩間正男君 正式にはこれはなかつたわけですね。正式な意思表示というものはこれは大学ではされないわけですね。正式に意思表示をされない形で以て大学の問題がこういうふうに一方で公開制にされて来る、こういう形についてはどうお考えになりますか。つまり大学自治を護るという立場から考えてどうですか。
  47. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 大学自治に関する問題は実質的な問題ですね。これは方法の問題であつて、この示された範囲又は改正された範囲において、いつも大学は独自の自治という見解に立つて、そうして進んで行こうと、こう考えておるのであります。その前に当つて改正をどうこうというようなことまで考え至らなかつたというか、つまり大学自体としんの総体的な意思決定をしなかつたということもあるのであります。
  48. 岩間正男

    岩間正男君 改正法案が出されているわけですが、今論議になつておりますが、この改正が若し通つたならば、通るか通らないかわかりませんが、通つたとして、これが今非常に中途で不完全であると、又繰返さなければならない、もつといい状態、惡い状態に陥るかも知れない、これは分らんですね。そうすると十分ここで大学側の意思というものは統一されて、私はこの法案の改正の中にこれは反映されなくちやならない。我々も聞く義務がある。こういうふうに考えるのですが、これはどういうふうにお考えになつておりますか。事務局としてはタツチされておらないのですか。これは見送りですか。
  49. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それは国会において十分審議された結果現われて来るのであります。従つて無論事務局としてそこまで入つて自分意思を決定して、それを議会に反映するとか、政府に持込んで行くというようなことはやつておりません。
  50. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、改正は非常に事務当局としては御賛成な面もあるようですが、併しいろいろな今までお聞きしたことを総合すると、手続規定、そういうものの中で随分反復して議論がなされていると述べられておる。それが一つの大きな原因の中にあるわけです。今度の改正は元よりも簡單になつて来るので、実際さつきの運用支障があつて事務局も大変なことになると思うのです。公開とかそういう点については簡單になりますけれども、この規定が、仮にこの法案でできますれば、例えば施行令のようなもので細かに規定することが必要になつて来るわけですが、この点についてもつと積極的な意思表示をされることが必要だと思いますが、そういう点についてそういう意見をお持ちにならないのですか。どうですか。どうも私たちは実は盲、つんぼ桟敷に追こまれて、この法案を出すことはやさしいが、又先に行つてこの問題が起きて、しよつ中時間を弄するということになると、とにかくいやしくも法案が通つて二年やそこらは……。一回きまつて事故が二、三件しかやらないで又改正してしまう、ここにはやはり国会の権威もある。公開制に対するこれは何といつて大学自治というものが尊重される、こういう建前になつているのですから、いわゆる発言権、これについて関心を一番多く持つて発言の必要を持つておられるのは大学です。国会だけで簡単に決定してしまうというのは一種のフアッシズムだ。そういうことになつて来るとすれば、日本の教育界に対して重大問題になつて来る。大学自治というものが表面は謳つてあるが、看板は掲げてあるが、一方において仮にこういうような法案が決定される。いつの間にか改正される。それが大きなフアツシズムに通ずる口を開いている。大きな口を開いているような形で行つてしまうと重大問題になります。こういう点に大学は大きくここで意見を私たちに聞かして頂きたい。公開審理意見を統一してこの問題に積極的にタツチされるのが当然ではないかと我々は判断するのですか、大学側としてはこういうことに対して黙つておられるのか。これでいいならいい、もつと細かなものにする、或いは反対なり、いろいろな意思表示があるでしようが、この際こそ大いに論議しておいて、将来そういう混乱に陷らないようにするのか当局の仕事じやないか、こういうふうに考えるのですが、その点は如何でしようか。
  51. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) つまり大学が自主的に、自治的にその事件の真相、真実発見する遂に関する方法論だと私は考えるのであります。それで私の思いますのは、こういう事件真実発見する最も適当な方法としては、大学のような良識の人たちのたくさん集つた所において、民主的に選ばれた行政機関である評議会が、十分御本人並びに参考人の陳述を口頭、又書面で十分伺つて、その他の事実をも調査して判断されるところに、そこが一番適当なところであつて、その線において大学自治が侵害されるとかされないとかいうことはないと思うのでありますが……。
  52. 岩間正男

    岩間正男君 まあそこのところは御意見を承わつて置く程度にしたいと思います。議論しても仕方のないことですから、ただまあ大学事務当局としては、事務上のやつぱり手続上の問題と、本質的な問題を、これは混同されるとやはり問題ではないか、というのは例えば人員を殖やしたり、それからさつきのそういう資料を作るとか、そういうような点でこれは改訂のできる問題と、それからもつとこれは学園教育内容と深く関係している、單に学園のアカデミツクな研究で、戰争なんか起つても知らないで、研究室にとじ籠つておればいいというような考えで、そういうような考えで学を追い込むならいざ知らず、少くとも日本の学の性格から言つて、もつとやつぱり社会的な、それから民族の置かれている立場、そういうようなものは当然これは大きな関心を持つでありましようが、殊に若い学生諸君はこの問題を自分の重大な問題と考えるので、そういうものと連関して、こういう問題にやはり教授諸君の自由の問題、それから本当に学を護り得る問題、こういうような問題と関連していますから、この問題自身について関心を持ち、不当なものにはたたかい、真実をどこまでもつきつめる、押し進める、こういう努力をされる、そういうことが非常に大きな私は学問的な意味を持つのである。こういうふうに考える点から言いますと、單に事務的な立場から手つとり早い、こういうことだけではいけないのじやないか、これは大山さんにお聞きしたいのです。大山さんその点はどう考えておりますか、公開審理というものの持つている意味は、單にその人があつたかなかつたかということで決定するばかりでなく、同時にこれが大きく学内の関心を集めて、そこでまあいろいろな公開審理という面が與える教育的な意味、大きな非常な視野から見て、この点を伺いたいのです。もう一つやはり同じ進藤さんにもお伺いした問題でありますけれども大学自治が統一され決定され、そうして大学自治に関する問題ですから、その影響が大きく反映すると我々も考えるですが、この点につきましては、大山さんとしてはどう考えるのですか、この二点について伺いたいと思います。
  53. 大山勲

    参考人大山勲君) つまり公開審査の持つている意味につきましては、先ほど申上げましたように、文部省側、或いは東大当局側からは、專ら手続上の煩雑というようなことが、主として理由になつております。そうじやなくて、それはもう何度も御説明申上げましたように、つまり現行法規が不備であるから手続規定がない、従つてその手続規定一つの最高学府としては不面目ではないというような形で作らなければならないということから、暇がかかつたのである。ですからそういう手続問題で、この公開をやめてしまうということは間違いである。では何であるかと言いますと、もつと本質的な問題で、これは例え最近いろいろ事件が起きておりますが、一番適切な例は過去において瀧川事件がどのように起つたかということをお考え願いたい。この場合には完全に本当の意味の闇人專として日本一の優れた刑法学者が簡單に葬むられてしまつた、そういうようなことが起つたり、例えば或る人の学問的業績が云々されて、その人が処分される場合に、その人の学説が正しいか否かは、これこそ公開論争されるべき問題であるのです。それから学者としての行動において、いろいろ責任が問われた場合に、その学者としての立場を本当に自由に述べられる機会が與えられなくして闇に葬むられるということは、このことが如何に学問を阻害するかということになるのでありまして、この点が根本的問題であります。飽くまでも文部省当局は、この本質的な問題を横にずらしてしまいまして、手続の問題だけでこの運用実施ができないと言われておるんです。ですから私ども運用実施をするためにこそ、現行法規をもう少し内容を精密化して、つまり骨抜きにするのではなくて、現行法規定しておることをもつと精密化して、そうして今後の問題が起きた場合に運用がスムースに動いて行くように、そういう方向改正して頂きたいというのが私たちの念願であります。  それからこのような大学自治の根本問題に関する重大な法律問題が、法律改正問題が起つておるときに、大学当局側として十分に論議し、文部省意見を具申し、或いは国会にその意思を反映せられないということは、私どもは非常に遺憾に思つておるんです。むしろ積極的に大学当局がその意思を反映せられるべきものであると考えるわけであります。その意味におきまして、当然この問題につきまして、私どもと争つておる東大の最高責任者、南原総長がここに喚問せられまして、南原総長から積極的にどのように考えておられるかを、その意思を発表して頂きたいと私どもは思うのであります。
  54. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 岩間さんの質問に関連するのですが、ちよつと進藤さんにお伺いします。先ほど岩間さんの質問に関連してのお答えであつたのですけれども事務局長として非常に時間が長びいたということは、技術的な知識を多分に必要とするので、その不慣れなために非常に時間がかかつて来た、それで專門的な機関がない限りはむしろ有害であるとあなたは先ほど言つておられたのに、岩間さんの先ほどの御質問に対しておつしやつたことは、評議会は非常にたくさんな教授連の中から選ばれて来たものだから、そこでこういう問題が審査されてもいいと考えるというふうに、今度は言葉を変えて行かれたわけですね。專門的な機関ということと、それから評議会というものとを同じように私は考えておらなかつたんです。前のあなたの発言と、岩間さんの今度の質問とは、伺つたときに同じように考えておらなかつたのですが、それを同じように考えていらつしやるのですか、專門的な機関がない限りはこういうことは有害だとおつしやいましたがね。今度は評議会でそれをやつた方がいいというふうにおつしやつていらつしやるんですね。どちらなんですか。
  55. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それはですね、裁判というような御存じのような形式をとつて行きますと、やはり判事さんなり検事さんなり、ああいう專門的な技術的な知識を持つていないと、その進行させる上おいていろいろな支障が起るわけなんです。例えば一例を申上げますと、証人を喚問するといつたときに、証人の位置を弁護人の方からこういうふうにすべきだ、こういうようなことを言われても、今度は我我の方は、いや証人とはそうじやない、刑法上の証人の論理とか何とかはさつぱり分らないものですから、それはこういうふうにするものだということを相手方に納得させることができないのですね。我々事務としますと、そういうようなテクニックに関係した知識はなくても、その事実そのものを一つの形式に入れずにここに陳述されても、それを判断する力というものは、やはりそのほうの專門家でなくともできるという意味を、あとのほうでは申上げたわけであります。
  56. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 そうすると、一番先にあなたはこういうことをおつしやつていらつしやるんですよ。同僚のものが同僚を審査して行くと、審理して行くと、改つた同僚がお互いに審理を続けて行くということはどうも自分としては必要がないように思うということを言つていられるのです。そうすれば今のあなたのお言葉では大分矛盾があるように思うのですが、どうですか。
  57. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それは例えば真実発見するために調べて行くときに裁判のような形式をとつて論告、或いは証人喚問、反対尋問、それはなにかにというようなことを形式を踏んでそうしてやるところに非常に不慣れもあるし、不慣れから来る、又知らざることから来るいろいろなトラブルも起つて来るから、そういう形式をとつて行くよりはそうでないほうが真実発見する上においていいのではないかと私は考えておるわけなのです。
  58. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 進藤さんが先にもおつしやつたように、お互いにまじめに真理を発見して行くということは、非常に自分としても望ましいということをあなたはおつしやつていらつしやる。そのためには專門的な機関がない限り有害だということの蔭をひつくら返せば、專門的な機関があつて、そうしてその機関によつて真実発見して行くためにお互いに努力して行くということについては、あなたはこれは好ましいということを率直に認めていらつしやるわけですね。
  59. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) いやそれがためには、例えば裁判所なり人事院なりのように第三者的立場にある判官がおつて、原告、被告というか、そういう形において、そうして法廷闘争を重ねて真実発見して行くことはどこかの段階にあつて、惡いとは申上げないのです。今度の問題でもこれは事前審査でございまして、これに不服がある場合には人事院に訴えて、そうして裁判のような形式をとつて審判されることなのです。それまで不必要とは申上げないわけでございます。ただその事前審査において我々仲間同志において、大学の中のほうにおいてそういう形式ばつたこと、それもしつかりしたそれぞれの機関とか、手続ばかりでなく、そのいわゆる性格の問題もあるわけなのです。そういう人がそれぞれ揃つてやるなら格別、とこういうわけです。併し事後においてあるのですから、事前においてそれを、又大学においてやる必要はと申しますと、僕はもう必要がないのじやないか。むしろ事前のほうは内輪のほうのあれのほうが却つていいじやないか、そうしてその次においてそういう形式をとられる形態のほうがいいではないか、こう思うのであります。
  60. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 もう一つ、そういうふうにいたしますとあれですね。事前の審査ということはやはりあなたは認めておられるのだけれども事務局長として事務上煩項のためにも誠に困るというだけのことで、本当に大学自治という面から考えればまだまだ考慮しなければならない面はあるということを多分にあなたは思つていらつしやるわけですね。今までのお話の様子ではそういうふうに受取れるわけです。それでよろしいという結論は出しておられない。
  61. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 私は今日もさつきも申上げましたように、事務局長として出て来ておりますのですが、事務煩項のことも縷々述べましたけれども、更にいわゆる裁判形体におけるあらゆる根拠の組織とか、人とか、そういうものなしにこのまま継続することはよろしくないとこう申上げるのであります。
  62. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 事務官としてね。
  63. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) いや事務官としてばかりでなく、私もただ事務のことばかり申上げるつもりではなくて、少し出過ぎておるかも知れませんけれども、個人としてというか、人間としても意見を申述べておるわけでございます。
  64. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 大体事実上の問題に非常に重きを置いた御意見だというふうに私は受取りますけれども、そうでございますね。
  65. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) そうです。
  66. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 簡單に二、三点事実を糾明をさせて頂きたいと思います。今までのお二人のかたから承わつたところにまりますと、基準を設置するために非常に遅れたということと、最初学生が非常に興味と関心を持つてつたのが次第々々に冷却して来た、こういう点では大体お二人の意見は一致しておるかと思います。他の点では相当意見の食い違いもあるようでありますが、二、三点についてお尋ね申上げます。  先ず進藤さんにお尋ねいたすのでありますが、先ほど大山さんがここに延びて来た一つ理由として、論理的に我々を大学の理事者側が屈服させ得なかつたということを申されたわけですが、この公開審理ということが第五條に調われておる関係上論理的に局長は納得させることができなかつた、こういう点をお認めになりますか。
  67. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それは私たちから見れば納得して然るべきだと私なんかは十分思つておるのですけれども、その相手かたのほうは納得しないのが現実であります。
  68. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういう点は、あなたの立場から考えた場合にどういうわけで納得しそうなのが納得しないのか。どういうふうにお考えになるのか。大山さんの意見はさつきよくわかりましたが、あなたのほうからどういうところでそこは意見が食い違うのか。主なる点を一点だけでよろしいのですが……。
  69. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それは一つの問題にしますと、最も根本的な問願ですが、つまり評議会一つ行政機関である。従つてこれはどこまでも行政的手続によつてこの問題を処理しで真実発見して行くべき性質のものである。こういうようなものに対して真実発見にはどうしても訴訟的な手続をとらなければ不可能だと、こういつて対立するわけなんです。それを納得させることができなかつたわけです、最後まで……。それが一つになるわけです。その他いろいろあるのですが、それが一番大きな納得させられない一つの原因だつたのであります。
  70. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今公開審理をやらなくなれば、こういううるさいことなどスムースに行くと、こういうふうに今のところお考えになつているわけですね。
  71. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) そういう論議をとないでも真実発見する最善の法を見付け得ると思いますから、そういう論議をいつまでも納得しない、したで両方の対立のまま長くおるということは実体の審理却つてむしろ妨げることになりはしないか。
  72. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点はわかりました。次に公開審理をやつたために東京大学教育支障があつたとお考えになるかならないか。
  73. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それは大変な御質問なんですけれども、私たち事務に従事しておるものからすると、この公開審理があるために多数の教授、それから我々事務者でもそのために人手の非常に少いところ、相当の時間的にも精神的にも肉体的にも時間を割かれるわけでありますから、従つてその常務の上において、又先生方は研究の上において必然的に支障があつたことは否めないと思います。
  74. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 進藤氏にお尋ねをいしたいと思いますが、今度の審査は一カ年近く続いておつて相当その法の運用上にも疑義があり、自治の上にも相当支障を来して困つていると、こういうお話がございましたが、現在東大で行われておる審査の問題は、いわゆるレッド・パージ、政治的な意図を以て鑛首が行われようとしておる、そういうところにこの審査が長びいている理由相当あるのではないかと私は見ておるのですが、そういう点についてあなたの御見解を承わりたいと思います。
  75. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それは第一回のときにおいても南原総長からはつきり請求人側にも申上げてあるのでありますが、それとは全然関係がないと、私ずつとこう拝見しておつたところにおいてもレッド・パージとは決して結びつけないと、関係して行かないという態度が一貫しておると思います。葉人側からたびたびそれに関連するのではないかというような質疑なり、要望なり、さまざまなものがたびたび出ておりますけれども、その都度これが全然別個のものである、関係がないと、こう言つて進めております。
  76. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 それは私は審査の実際を見ておるわけではないのですが、併しいろいろ新聞紙上に伝えられたり、或いはその当時の情勢というものから見て、それは審査の場合にはそういうことは関係がないと、一応はこうお話があるかも知れない。あの場合の状況から見てこれは確かにそういう点があるのではないか、レッド・パージに関係しておるではないかと私は感じておるのですが、進藤さん個人としてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  77. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 私は審理の実際を見まして、專らですね、その越年資金闘争の実質ですね、活動事実、そういうものを判断の基礎としてその真実を双方で確めようとしておるようでありますから、これが一政党員とか、或いは何とかいうことには全然結び付けていないので、その点は言明通りはつきりしておると私は思つております。
  78. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私はこの点が実に非常に重要な問題であると思つているのですがね。あの当時いわゆるイールズ声明ですか、こういうものが出て、大学教授の中に共産主義者がおるのでは工合が悪い、こういう話があつた、それに対して相当そういう人たちを整理しなければならない、こういう動きがですね、政府部内にあつたことは事実なんです。そういうことがやはり大学に現われたのではないか、こういうふうに見ておるのですか、そういうことが全然ないということはですね、どういう点で立証できますか。
  79. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) まあ第一回のこの審理の冒頭において議長から述べられたところに……これは公開ですから読んでもいいと思いますが、「全国の大学が関心を寄せており、又初めてのこと故愼重に取扱いたい、評議会審理裁判とは本質的に異るので自治的に真実を把握することにしたい。昨年以来所謂イールズ声明が発表されているが、これは連合軍総司令部の勧告に基いて行われて居り單にイールス氏個人の意見ではないと聴いている。本学はこの声明を受け容れない方針であつて、教員が或る特定の政党員であるというだけでその者の進退を決することはしない。あくまでも教員の学問の自由は守る心算である。然しながら教授の自由には教授としての身分に伴う責任があり、従つて今回の事件でこの自由と責任の関係をいかに見るかの問題になるので、この決定は重要である。本件は法令と條理に従つて愼重に審理に当りたい。」こう冒頭にはつきりしておられるのですが、その後もそうい言動はたびたび請求人からもあるにかかわらず、いささかも態度は変つていないのであります。
  80. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御質疑ございませんですか。
  81. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 進藤さんにちよつと伺いますけれども、さつきからのあなたのいろいろな競明を聞いておりますというと、どうしても公開審理というものは、手続上からそういう煩項なことに禍いされてどうも簡略に行かん、こういうふうなふうにとられておるのでありますが、併しその問題は審査基準というふうなものをはつきり立てて、そうしてそういう手続が済めば、これはその不備な点が除去されれば、公開する、しないということとは問題が又別じやないかと思うのです。それについては大学側としてはどういうふりに考えておられるか、その点お伺いいたしたい。
  82. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それは公開一つにだけかかつておるとは私も考えないわけであります。併しその間に弁護人を付けるという問題もあるし、それから証拠を挙げるというような点、それからいろいろな規定がございます、そういうようなことからですね、結局その法の精神もそうではないと思つて我々はやつてるわけでありますけれども、純粋の司法手続にして呉れという要求がですね、熾烈に行われる、そうしてその純粋の司法的手続など要求して来るのに引きずられるわけなんです。それを引きずられないで、或る程度で納得できるかという納得ができないためにですね、そこに長々しい瞬間とあれとがかかつて、そうして真実発見、その中心に突つ込んで行くのが周囲でばかり空廻りするという傾向が率直に申上げるとある。もう一つ根本には、各大学が持つておる、私の大学は別としまして、殊に法学部というような組織のない学部などにおいてこの審理を司法手続に近い形において進めるということは、その学長なり、何なりが適任でありませんと、むしろそれは余り強いる方が無理なのではないか、そういうことを無理にさせることは……。こういうふうに考えられるのであります。
  83. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 いわゆる現行法の法條から行けば、如何にその手続が煩填であろうとも、これは全くそういう手続を経て、そうしてやらなければならないように解釈されるわけなんですね、それがいわゆる大学自治というようなことを重んじておる焦点であろうと思う。それをですね、煩慎であるとか、手間がかかつたということによつてこれを簡略にするというようなことになれば、この法を作つた精神にもどるのじやないか。それから又、法学部の陣容が揃わないところの大学においてはそういうことができないから、それを別な手続にしてしもうということは、私は大学の権威というものに対して非常なこれは権威を失墜するところのことになりはしないかと考える。そういう点については、大学側としてはどういうようにお考えか。
  84. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) 大学がその司法的な手続に最も近い形において事件審理を進めて行く十分な能力をすべての大学が持つておるということは、私は信じられないのであります。そういう意味において権威を失するとも、別にそういうことの専門が大学でもないと思われますので、却つてそういう現状においてそういうものを課するというのが無理ではないか、こういうふうに思われるのであります。
  85. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 その点が非常に私は大学自治という点から見て、大学の権威上大事な点だと思うのであります。そういう点を認めないで大学自治というようなことを考えることがおかしいと思うのであります。それは議論に亘りますから、その点だけを伺いまして、私の質問を終ります。
  86. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御質問がなければ……。
  87. 岩間正男

    岩間正男君 進藤さんに伺いますが、公開審理というようなのはどうしても工合が惡いというような御意見なんですね、それで大体この法案によりますと、この法案の説明にあることなんですが、必要な場合には大学管理機関公開審理をしてもいいというふうな、これは文部省側では、政府では解釈している。そうすると、あなたの御意見と食い違いがあるのですが、それについてはどういう考えを持つていられるのですか。
  88. 進藤小一郎

    参考人進藤小一郎君) それは公開ということを一番問題にお話なされて、公開がすべてのようにお聞き取りと思いますけれども、むしろ準訴訟手続というところに私の申上げたいところがあるのでございます。従つて事件そのものの性質或いはそのときの大学の状況その他において、これが真実発見をするのに大学管理機関において適当だと認めたときに、必ずしも公開まかりならんというふうにまでは私も考えていないわけです。ただその裁判形式をとつた処分が一つの主として公開が重要なるものを占めるものですから、公開することもついそこに行つてお話申上げるわけでありますけれども、そういう意味でございます。
  89. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長、議事進行について……。ちよつと速記をとめて下さい。
  90. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記とめて。    〔速記中止〕
  91. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記始めて。他に御質問なければ本日の……。
  92. 岩間正男

    岩間正男君 大山さんにお聞きします。只今神戸大学事件が遅れておる、何か学長が病気で休んでおられるというのですが、それはいつ頃ですか、いつ頃からですか。期間はどのくらい休んで、どういうことになつておるのですか。
  93. 大山勲

    参考人大山勲君) 神戸大学におきましても、大体私どもよりも二カ月ほど遅れて事件が始まつたのでありますか大体夏頃で、つまり東大手続をどうするかという問題で苦心惨濃しておるときに、やはり神戸でもその問題で苦心惨濃しておつたのであります。大体その問題で東大では一応やつて行く方式が、つまり具体的に申しますれば、総長、評議会と我々と協定が成立したのであります。そのときから、九月頃から学長が病気でお休みになられ、それ以後審査が事実上困難になつて、そのために遅れておるというふうに聞いております。
  94. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御質問がなければ、本日の参考人に来て頂いた審査はこれで終了いたします。それでは終了するに当りまして……、当文部委員会審査を進める上において、議案に関係ある直接のかたにお聞きしたいと思いましてお願いいたしましたところ、非常に御多忙にあらせられるにかかわらず、本委員会のために御出席頂いて長時間御意見を述べられ、又忌憚のない我々の質問に対しても十分お答え頂きまして、非常に有難く感謝する次第であります。本日の委員会を終了するに当りまして、重ねて委員長よりお礼を申上げます。
  95. 岩間正男

    岩間正男君 ちよつと矢嶋君のさつきの発言と関連するのでありますが、それから参考人からのそういう希望もあるのでありますが、やはりどうですか、南原さんとか、この事件に深くいろいろな法的な立場で関連しておる寺澤、都立大学の助教授の寺澤氏、或いは学生立場からという意見も出ておつたのでありますか、これを一応理事会で諮つて頂いたらどうですか。
  96. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) いずれ理事会で……。  それでは本日の会議はこれで終了いたします。    午後零時五十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            成瀬 幡治君            若木 勝藏君    委員            木村 守江君            左藤 義詮君            平岡 市三君            荒木正三郎君            高田なほ子君            梅原 眞隆君            高良 とみ君            山本 勇造君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   政府委員    文部省大臣官房    会計課長事務代    理       相良 惟一君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    文部省調査普及    局長      関口 隆克君   事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君   参考人    東京大学事務局    長       進藤小一郎君    東京大学助手  大山  勲君