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1951-02-14 第10回国会 参議院 文部委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十四日(水曜日)    午前十時五十六分開会   —————————————   委員の異動 二月十三日委員工藤鐵男君及び木村守 江君辞任につき、その補欠として左藤 義詮君及び上原正吉君を議長において 指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件教育公務員特例法の一部を改正する  法律案内閣提出)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれから会議を開きます。  本委員会提案になつております教育公務員特例法の一部を改正する法律案の逐條に移りますが、更に又繰返して総括的な質問の残つておる方は逐次やつて頂くことにいたします。現在のところまでは十五條のところまで行つておりますが、更に今日は十五條のところから始めますから、質疑のある方は。
  3. 岩間正男

    岩間正男君 十五條削除理由はしばしば今まで説明があつたのでありますが、これによると、私学の構成とそれから公立学校の場合はいろいろ違う、その違う理由としては大体まあ大学自治の伝統がある、それは尊重されなければならない、こういう面と、それから仕事内容において大学研究並びに教育機関である、然るに又公立学校の場合は教育が殆んどその重なる任務である、こういうふうな仕事建前から考えて当然そこに違いが出て来る、事前審査の問題もそういうものと連関されるのだ、更にまあ非常に公務員の数は多い、その煩にも堪えないというのが言外に含まれておられたと思うのです。これが大体稻田さんの今までの説明趣旨ではないかと思うのですが、私はそういう問題についで全然これはそういう建前について無視するということを私も言つておるのではないのでありますけれども、問題は教員身分の問題、教育公務員特例法教員身分、その点私はお伺いしたいのでありますが、従来のいわゆる教育制度による階級制といいますか、大学は非常にこれは何か重々しく、そうしてここは非常に国の最高研究機関である。こういうような権威を付與する。併し一般公立学校におきましてはどうもそういう面が殆んど認められない。これはあとで大臣にも質問しようと思うのでありますが、そういうようないわば大学をアカデミツクなものに非常に権威を認めて置いて、そうして一般学校に対しては手足のように使う。これは国家として支配権力末端機構だから、全く手足のように動くべきだというふうな根本観念が底にひそんでおることを私は発見するのでありますが、そういう形において果して日本教育改革はあり得るかどうか。これは従来の関係であつて、従来の観念がこういう時代一つの反動時期において再現しつつある。こうしか見られないのでありますが、我々は日本教育、敗戦後の教育改革にそういう一つ階級制というようなもの、セクシヨナリズム、こういうものからどれほど教育がそこなわれて来たか。むしろこういうものを撤廃して、そこに流通したどころの姿を確立しなければならない、こういう観点からたたかつて来たものから見るというと、甚しく不合理を感ぜざるを得ないのでありますが、そういう点についてはどういうふうな見解を持つておられるか、これについて御答弁を承わりたいと思います。
  4. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今岩間委員の仰せられました通りに、この十五條につきましては前回一応申上げたわけでございます。そう申上げましたのは、決してこの初等教育乃至中等教育における教育の自由、或いはそれに関連いたしまする研究の自由というものを全然無視するとか、或いはそれを制約するという意図で申上げたのでないことは御了承を頂いておるかと考えております。又大学のみに権威を認めまして、初等中等教育に対しまして、権威を軽んずるというような気持も毛頭ないのです。ただその間現実の両者の教育を比較いたして見ました場合に、自然教育の質の差と申しますか、軽度の差が著しいものがあるであろうということを申上げたわけでございます。大学教育におきましては、講座担当教官がその教育方針を立てまする場合も、これはまあその担当教官意図によつて非常に自由にいたします。又研究も勿論である、そういうように銘々が自由にいたしておりまして、これに対しましては学部長といえども専門外のことは分らん、学長といえども……そういう各教授個々教育方針を立て、或いは研究方針を立てて運用する場合に、それが一体としての学部、或いは一体としての大学教育という機能を発揮いたしますためにどうしてまとめるかという点については、教授会或は協議会のその議に従つて学部長学長が働く、それに対しては任命権者でありまする文部大臣といえどもこれを非常に尊重する。それがまあ自然の、質から出て参りまするところの必然の帰結である場合、これに対して勿論初等教育中等教育におきましても、各市町村を通じ、日本全国といたしましても、日本全国を通じまして、とにかく一応共通的な基準がある。あえて画一を意図するのじやありませんけれども、自然の必要といたしまして、そういう共通点基準に基いて教育運営せられ、而も又各教科を担当する教官教授なりそれに関連する研究といたしましても、学校においては学校一体的な連繋が必要である、又人間においては人間一体的な連繋が必要である、従つて校長或いは任命権者である教育委員会において、その教育水準が向上するというような点から見ますれば、全体を把握する必要もあり、又それも可能であるわけであります。そういう意味においてこの人事の問題につきましても、府県教育委員会教育水準を維持するという必要から、教育委員会のほうで自発的に人事考慮しなければならんという要素が、この部面の教育においては非常に大きいことが大学とは違つて来る、必ずしも本人自由意思のみによつてこうした初等教育中等教育ができにくいと申しましても、中等教育乃至初等教育に対する教員に対して身分保障が要らないというのではない、身分保障につきましては、公務員法の第四十九條以下の條項によりまして、人事委員或は公平委員において愼重に而も又適正な審査が期待せられる。その結果若し処分が間違いであると思つたならば訂正せられる。この身分保障に依存して参りまする場合に、これらの教員に対する身分保障は徹底し得るんじやないかと、こういうまあ見解で申上げたのであつて、あえて片方のみに権威を認め、或いはあえて片方の自由を制約する。そういう意図でなくて、本質上そういう相違があるんじやないか、こういう意味で申上げたのであります。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 何遍説明を繰返してお聞きしましても、我々を納得させるものにたらん。無論そういう差違については私も先ほどから申上げまするように、現実にあるということはわかります。併し大体大挙でもこれが無方針で全然一つの統一された目的の下にやつてないということじやないのであつて、やはりそこには一つの、一国の文政の方向に合致するという意味では、やはり教育委員会府県教育を自主的にやはり一種の統一的な形でやつているような意味を持つておる。そういう点を、いろいろ大学特殊性について説明されるのでありますが、私はこの中で特にお伺いしたいのは、これは教員身分の問題なんですね。身分の問題をどうするか、つまり大学教員身分公立学校教員身分、それを一体これに対しまして不利益処分を受けたときに、まあこれに対して公平な一つ処置を與える、こういうことが一番大きな眼目になつて来るのでありますが、そこに性格とも無論関連しないということは脅えませんけれども、併し身分上の問題を考えて行くときに、なぜそういう差違を立てる必要が出て来るか、その根拠が今の説明ではまぎらわしいと思うのであります。その点もう少しはつき力した根拠があなたのほうにあるのですかどうですか。
  6. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) どうも説明が大変まずくて、同じことを繰返すことになりまして大変恐縮でございまするけれども、ともかくこの第五條を設けられました趣旨が、本人立場のみに即しまして、本人身分保障処分事前に争う、この一点からのみこの第五條は解釈し得ないんじやないか、なぜ大学について第五條があるかと申しますると、任命権者大学管理機関、いわゆる大学自治というような観点においてこの五條が設けられたというふうに考えられるのでございます。初等教育乃至中等教育関連いたしまする教員につきましては、先ほど申上げましたように、あえて本質上の相違というと、これは誤りかも知れませんが、その間非常に程度の相違と申しまするか、実際教育運営される状況を見まして、大学文部大臣というような関連と、教育委員会高等学校以下の教員という間におきましては、その関連相違するところがある。その点から見まして、第五條大学について設けた、同じことを高等学校以下の学校考えることは、高等学校以下の教育に関する人事行政運営から見て適当ではないのじやないか。身分保障という問題につきましては、先ほど申上げましたように、地方公務員法四十九條、国家公務員法八十九條以下の規定によつて相等しく保障を期待する、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 これはまあ何回繰返しても同じようなことになると思う。まあ議論の範囲まで入る段階じやありませんから、私はこの相愛にしておきますが、要するに、今の説明では根拠が非常に薄弱である、どんなに繰返されても……なかなか稲田局長答弁の妙を得ておられるということは、先に大学審査の場合はどうだかというと、やはり当人の身分の問題だと言われた、それに対して私はこれは単に個人身分だけの問題じやない、大学もやはり一つ機能、こういうものと深く連関するであろう、こういうことを私がまあ反間しましたら、これはその線を改められて、今度の公立学校説明のほうにおいては、軍に個人だけの問題じやない、そうしてこれは一つのやはり公立学校機能と連関する、こういうふうに説明を変えられたのは進歩と認めるのでありますが、それは非常に妙を心得ておられることは事実でありますが、もう少し統一した、確信  のある答弁を私は切望します。併しこの問題はなんぼ深入りしても恐らく水掛論になるでありましようから、この辺に止めておきます。併し又関連したらやりますよ。
  8. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 稲田局長にお伺いしたいのですが、十五條削除についてはこの前から御説明を承わつて天体政府委員気持はわかつたわけでありますが、この際私は一つお尋ねいたしたい点は、高等学校以下の先生事前審査の手続きがない、それで法的になくても、それに代るべきようなものを実質的に設けることに対してはどういう見解を持たれているかということを承わりたい。と申しますのは、私この前もちよつと申上げましたが、高等学校以下の教員は非常に身分が不安定なんですね、教育委員会当局としても、やはり教育振興を図るために現在は殆んど教職員出身地主義になつておる、そして空気がどうも停滞する慮れがある、だから出身地主義なんかに捉われずに、適材適所職員を大移動さしたいという気持を持たれておると思うのですが、それも確かに必要なことなのですが、それにはやはり学校教育法にあるような教職員の住宅を作るとか、それから教育機会均等という立場から、非常にこの海上の孤島に勤務されておるとか、或いは山岳の奥に勤務されておる方の僻陬地に対して僻陬地手当というようなものを十分出すとか、更に一般的には教職員研修費等も含んだところの給與というものを上げると、そういう研究なり、或いは生活に対する裏付措置が十分とられれば、教育振興を図るという一点から自由奔放な適材適所人事行政というものは行えると思いますが、併しそれがない現在、その観点のみから教育委員会当局はやられようとするのですが、そうなりますと随分無理が出て来ると思うのです。それともう一点、これはまあ皆さん御承知と思いますのですが、曾つて日本の元の中等教育、現在は高等教育ですが、これには相当根強いところの学閥というものがあつて、これが民主教育を非常に妨げたものです。それから義務制によります。と、県によりますと二つ師範学校があるというようなところは随分ボスが多くて、例えば東京とか、大阪、福岡はその典型的なものだと思うのですが、そういうようなものが終戦後なくなりつつあることは民主教育の確立上非常に喜ばしいことであるのでありますが、そういうものを是正する意味からいつて教員自主性を持たせる、教員権威を持たせるという立場から、私はやはり岩間委員の言われましたように、原則的には大学教員事前審査というものは高等学校以下の人たちにはないのである。こういうことを考えるのですが、政府委員説明も一部諒とするところがあります。そこで私はこういうことをやつておるところがあるわけですね。教職員の任免についてそれをやる場合には、発令したのちに無理が出てはいけないから、だから民主的に若干の代表を選出して、それを学校長諮問機関として、学校長はその人の意向を聞いて、勿論教育委員会教育公務員特例法によつて学校長意見を聞かなければならないことになつておるので、そこで校長はその諮問機関意見を聞き、教育委員会はその校長意向を聞いてやる、こういうふうにしますと、法制上の事前審査というふうなものはないけれども、実質においてその精神を酌んだところの無理のない民主的な人事行政が行われるのじやないか。そういうことをやつておる府県もあるやに聞いておるのですが、そういうものに対して局長はどう考えられるか、又これを助長するような意思はないかどうか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  9. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今お話のように、各教育委員会当局がその管下の各地に存在いたしまする学校が土地の情況によりまして、或いは山間、或いは離島、都市といろいろ條件が違います中に、すべての学校に対しまして教授力を充実いたして、管下教育水準を向上する、こういう観点に立つて考慮と、又個々教員の一身上のいろいろな條件から考えまする要求と、この二つの問題を結び付けまして人事行政を行うという点が非常に御苦心もあり、又その辺について何とかよい結果を得るように御工夫になつて只今お話のようか種々の方法を取つておられるということにつきましては、我々といたしましても、それぞれの教育委員会が、この人事行政を今の二つの要請を適当に合致せしめる意味において運営する手段としておとりになつておることは、大変結構なことだと考えております。
  10. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは第十六條に移つてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 岩間正男

    岩間正男君 これはちよつと今の連関ですが、やはり稲田局長現実的に話をします。どうも十五條をこれだけでは見送れないと思う点がある。それはやはり文部省一体教員身分というものを保護しよりと考えているのか、それとも又昔のような支配をやろうと考えているのか、教員に対してこれはどうなんですか。これを先ず承わつておきます。
  12. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 学校教育目的を達成するという観点から考えまして、まあこの教育公務員特例法一般国家公務員法、或いは地方公務員法特例としてまあ制定考えておるわけでございますが、すべて学校教育における学校基幹活動としての教員活動がその目的に副う、そういう観点考えておるわけでございます。そういう点から見まして、身分保障をいたしますことがその目的に適うというような点につきましては、極力身分保障を必要と考えておる、まあこういうふうにお考え頂きたいと思います。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 学校教育目的を達成する、その範囲内において身分保障をするというふうに答えられたように思うのでありますが、そういう点から考えてみてもいいのですが、大体どういうふうに思われますか。戦争前にですね、随分これは殊に田舎の小学校、中学校先生などというのは権力者に非常に左右されたし、非常に卑屈になる、或いは又その意に反すると随分ぽんぽんやられた。それから又太平洋戦争中なんかはまあ自由主義者くらいのもので全国的にこれは教壇を追放された。例えば綴り方事件、こういうような問題があります。又長野における教員赤化の問題、こういうもので厖大に何百人の人が実に不当な形で追放された、教壇を追われた、そういうことが非常に日本教育を弱体化した。弱体化したから御承知のようにあの戦争一つの原因にもなつた。この教育行政そのものが大きく批判されているわけであります。連合軍日本にやつて参りますと、先ず真つ先にやはりそのような戦時中追放された教員は即刻これを教職に復活させなければならないという指令を出して、その処置をとらざるを得なかつた。こういう事態が起つたのでありますが、こういうことについては文部省は深くこれは考えておられるところがなければならないと思うのでありますが、そこでこのような追放をですね、戦時中行われました自由主義者あたりまでも含めたところの追効、こういうものは教育機能を本当に達成するために十分な措置であつた考えるか、それとも教育機能がそれによつて破壊されたと考えるか、つまり過去に遡るのでありますが、この過去に対する判断現実情勢に対する判断と非常に似通つて来ておる、今日の情勢では……。そういう点から私は伺つておるのですが、この点はどういうふうに判定されておるかということをお伺いしたい。
  14. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今お話通りでございまして、戦前に行わました教員に関しまする人事の非常に多くのものが戦後においては反省せられ、改められなければならんということは確かにその通りであると考えております。それらの考えからいたしまして、教育が不当な支配に影響されないという目的を以て公選教育委員会教育の万般を掌る。而も又曾つては知事或いは市長の下に視学がおりまして、人事指導を同時に一人が持つてつたというような問題も改められまして、指導主事は軍に指導助言機関となり、又ここに地方公務員法規定もできまして、身分保障に関する種々の規定を設けられた。こういうふうにまあ制度も十分改善せられましたし、又これの運営につきましては、全くお言葉通り教員ができ得る限り広範な教育活動、自由な教育活動乃至研究が助長ぜられるように努むべきものだと考えております。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、まあいろいろなそういう措置が今までとられた。その中の一つですがね、例えば今度問題になつている教育公務員法の十五條第三項、つまり「任命権者が、校長又は教員に対し、その意に反して降任し、免職し、その他これに対しいちじるしく不利益処分を行い、又は懲戒処分を行う場合については、国家公務員法第八十九條から第九十二條第二項までの規定を準用する。」いわばこれは保護規定なんです。つまりなぜこういうものが設けられたかという趣旨に遡つて考えて見ますというと、あの戦争時代の馬鹿げた一つ思想彈圧、こういうものを保護する目的が、これはなされているのでありますが、これを今日制限し剥奪しなければならないという事情が起つているのでありますが、再びこういうことをやることによつて折角保護されたものがここで又剥奪されるということは、どういう事態と必要からこういうことが起つているのであるか、この点がはつきり答弁される必要があると思うのです。
  16. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今お話の点でございますけれども、従来の十五條地方公務員法ができておりませんでしたので、国家公務員法の例を準用いたしたわけでございます。今度は新たに地方公務員法においてそれに代るべき第四十九條から五十條の、その意に反する処分に対し、或いは懲戒に対する救済の規定がそのまま置き替えられましたものですから、技術的に従来の十五條削除しても、従来持つてつた特権をいささかも剥奪していないのです。
  17. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) よろしうございますか。それでは十六條。    〔関口政府委員朗読〕  第十六條第二項を次のように改める。  2 前項採用志願者名簿は、教育長及び指導主事については、それぞれの免許状を有する者で採用を願い出たものについて、社会教育主事については、社会教育法昭和二十四年法律第二百七号)に定める必要な資格を有する者で採用を願い出たものについて、それぞれ都道府県教育委員会が作成する。    〔「質疑なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは十七條。    〔関口政府委員朗読〕  第十七條の見出しを「(教育長退職等)」に改め、同僚に次の一項を加える。  2 教育長については、地方公務員法第二十二條(條件任用及び臨時的任用)の規定は適用しない。
  19. 若木勝藏

    若木勝藏君 第二項の点について具体的に説明を願いたい。理由を聞きたい。「教育長については、地方公務員法第二十二條(條件附任用及び臨時的件用)の規定は適用しない。」ということについて質問いたします。
  20. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) 教育長一般職に属する教育公務員になることになります。ところがその職務内容とか責任度合という点において、教育委員会の他の一般行政事務を取扱つている職員事情を異にした点がございます。父御承知通り教育委員会は直接の公選で選ばれた教育委員により構成された会議体行政機関でありまして、その委員としては、原則的には一般の住民の代表という資格が予想されております。又委員会は原則としては大体通例月に一回とか二回とかいう難度の会合をして、そこで主だつた事柄を相談をし、きめて行くという建前をとつております。従つてその技術的な、専門的な助言機関として教育長という独特の立場職員を置くを必要とし、又そういう職員採用しておるわけでございます。そこでまああこの制度の先輩であるアメリカの話などを伺つても、教育委員の非常に大事な職務一つは、立派な教育長を探して来て、立派なよい教育長を選ぶことにあるということを言われているようにも聞いておるのでございます。現実どものほうで、国におきましても教育長についてはそういう意味でいろいろの要件ということを考えておりまして、そのために資格につきましても、或いは講習をいたしますとか、或いは一定の資格要件というものを條件といたしますとかいうことをいたしますと同時に、一方では又任期四年ということも定めまして、身分保障と申しますか、仕事継続性ということも考慮に入れておるわけでございます。従いまして六カ月の條件附任用一般地方公務員にありますような六カ月の條件附任用のこと、又臨時的任用のこと、これらのことはその職務内容責任度合及び資格の問題、及び仕事内容等からも考えまして望ましいことでないと思いますので、この点を除外いたしたいという考えであります。
  21. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) よろしいですか。    〔「進行」と呼ぶ者あり〕
  22. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 十八條。    〔関口政府委員朗読〕  第十八條を次のように改める。  第十八條削除    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 第二十一條。    〔関口政府委員朗読〕  第二十一條を次のように改める。  (兼職及び他の事業等の従事)  第二十一條 教育公務員教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと所轄庁において認める場合には、給與を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。  2 前項の場合においては、国家公務員たる教育公務員にあつては、国家公務員法第百一條第一項の規定に基く、人事院規則又は同法第百四條の規定による人事院の承認又は許可を要せず、地方公務員たる教育公務員にあつて地方公務員法第三十八條第二項の規定により人事委員会が定める許可基準によることを要しない。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この提案理由の中にある「現行制定において実際運営上とかく疑義が生じたのであり」、とかく疑義が生じたというのを極く簡單に説明願いたい。
  25. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 提案理由ですか、局長説明ですか。
  26. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 局長説明の四枚目の表の中ほど……。
  27. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) 最初に現行の規定をちよつと読み上げて見ます。「第二十一條教育公務良は、法律若しくは人事院規則に特別の定がある場合又は所轄庁において教育に関する他の職務に従事することが本務の遂行に支障がないと認める場合のほかは、給與を受け、又は受けないで、他の職務に従事してはならない」ということになつておりますが、その中で「法律若しくは人事院規則に特別の定がある場合、」ということが一つ、次に「又は所轄庁において教育に関する他の職務に従事することが本務の遂行に支障がないと認める場合」この二つ條件があつて、その上でそれが差支えないとならば給與を受け或いは受けないで他の職務に従事しては……場合のほかは従事してはならない、差支えがないと認められる場合には従事してもいいと、言い換ればそういう規定になつております。そこで法律若しくは人事院規則に特別の定があるという場合、或いは教育に関する他の職に従事することが支障がないと認めるという点について符に誤解を生じたということが実例に二、三起つたということを申上げておきます。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この第二十一條は、現在教職員組合の専従者というものは給與を受けないで教職員組合の職に従事することができるようになつておるわけだが、この既得権というものは、局長説明から言つても今後堅持される、こういうふうに解釈されるのですが、間違いないですか。
  29. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) 只今の問題はこの條に該当する問題ではなく他の條に該当することだと思います。なお併し関連して申上げますと、専従職員になる場合には俸給を受けなければ専従職員になることができる、専従職員なつた場合には身分としては継続すると、そういう考え方にあると思います。附加えておきます。
  30. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 現状と何ら変りないということなんですね。
  31. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) この改正はこの問題に関して現状を変えるということはございません。
  32. 岩間正男

    岩間正男君 この現状で問題が起つておると思うのですが、文部省と違つた意味で……。というのは支障がないと所轄庁において認める場合というのですが、この基準一体大体立つておるのですか。これは主観的判断に非常に落ちて行つて、それで監督者の場合と、それから当人の間には意見相違が非常に出て来ると、こういう事態が非常に発生しておるのですが、これはどういうふうに処理されますか。こういう漠然たる規定では非常にあぶない、こういうふうに思いますがどうですか。
  33. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) ここで申します所轄庁と申しますのは、地方公務員である教育公務員については教育委員会を指しております。さて教育委員会が管理的な、教育管理の責任から判断を下すわけでありますが、その際に繰返し申上げましたように、委員会で愼重に検討された上で何らかのそこに基準を設けられる、その基準従つて判断を下されるということになると思います。なお文部省といたしましてもこの基準の骨組については将来研究をして地方の御要求があればそれに対して助言、援助をいたしたいと思つております。
  34. 岩間正男

    岩間正男君 これは食違つた場合にはどうするのです。つまり教育委員会と、それから当人の意見が食違うということが出て来る、又そういう事態も発生しておるのですが、こういう場合はどうしますか、どう処理しておりますか。
  35. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) これは所轄庁としての教育委員会意見に従うほかないと思います。
  36. 岩間正男

    岩間正男君 どこまでも従うというのですか。従わない場合はどうします。
  37. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) 従う従わない、又適当と認める、支障ありと認める認めないという点につきましては、やはり願い出る御本人の相当の理由というものが挙げられると思いますし、又教育委員会側の方でもそれに基くと同時に、又委員会側でも相当の調査なり研究をされた上で、それと照し合せて適当でないというふうに判断されるということであれば、その間にそうむやみにいろいろの食い違いが起るということは実際上そうないのではないかというふうに予想されます。若し不幸にしてさような事態が起つた場合には教育委員会責任に基いてされる処置というものが優先する、これはいたし方ないことだと思います。なおその際に御本人がそれで満足でなくて、そうしてその決定に背いた行為をされるという不幸な事態が起つた場合には、やはり服務違反というふうなことに或いはなつて来るかと存じます。まあそういうことがないように双方で十分資料を出して、又説明し合つていい解決を得られることを期待したいと思います。
  38. 岩間正男

    岩間正男君 これはやはり飽くまで一定の基準を明確にするということは非常に必要になつて来ますね。これをしないと、情勢が変つてそこで主観的な判断というものが非常に入り込む余地がある。現実そういうところから問題が起りかけておることを我々知つております。こういう点について、できたら文部省にこういうところを大体考えておる骨子としては、この審議の過程でどんなことを考えておるか示して頂けば明らかになると思いますが、これはどうですか。
  39. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) まだ私どものほうの研究がまとまつておりませんので、まだ私ここで御披露申上げる程度になつておりません。残念でございますが……。
  40. 高橋道男

    ○高橋道男君 矢嶋君の質問に関連しますが、第一項の教育に関する他の職、又は教育に関する他の事業若しくは事務という言葉を使つてあるので、現行のものよりも詳しく解読をしておるということになると思うのですが、その詳しく書いてあるところに理由があるようにも思われるのでありますが、その点が一つと。  それから職務或いは事業を項目的に並べて行くことができるならば、只今の矢嶋君の質問にも答えるところがあるのじやないかと思いますが、項目的に挙げることができましようか。
  41. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) この点は原則としましては、地方公務員法の箇條に併せて、国家公務員法と併ぜてここに書き入れたのであります。なおどういうものかということを具体的に事例を挙げていないということでございますが、これはなお研究中でございますので、先ほど申上げました基準というものに当嵌まるかと思いますが、なお研究中でございますので、ここではつきりと御披露申上げる程度になつておりませんが、なお適当の機会にこれはこんなふうに考えておるということをお話申上げることができるかと思つております。
  42. 高橋道男

    ○高橋道男君 立法措置としては、或いはこれ以上細かく追及することができないかも知れませんが、こういう如何ようにも解釈のできる言葉が非常に多いために、その解釈が地方によつて非常に異なるということがその度ごとに問題になると思うのであります。殊に第二十一條公務員身分に関係することでありますから、ほかのものと違いますので、そういう点を成るべく早く行政的な措置を以てしてでも明示できるようにお取計らい願えれば結構だと思いまするが、只今仰せられたようなことをいつ頃できるというようなことについては如何でありましようか。
  43. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) できるだけ速かにと思つております。
  44. 岩間正男

    岩間正男君 さつきの私の質問に連関してちよつと一、二具体的な例をお引きしたいのでありますが、これは大学教員が今日食えないという事態がすでに出ておる。半カ年くらいの赤字が出ておる。食えないから止むを得ずほかの事業というようなものに何とか関係する、こういう事態が起つて来るのですが、そこに内職問題というものがどうしても発生する。こういう事態についてはどう処理するのですか、やはり今の高橋君の御質問とも関連するのですが、非常にあいまいにどうとも処理できる、この問題は一番大きな広汎な問題になつて来ると思うのですが、食えない問題と、政治活動の問題がこのなかでは一番大きな現実的関係を持つと思うのですが、この食えない場合にどういうふうに一体文部省では考えておるか、これをお聞きしたい。今食えないのは事実なんだから、文部省も認めておられる、この前文部省から使節団に出した報告書、あのなかで認めておられることははつきりしておるのだから、これはどうするのですか。
  45. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今大学教職員の生活の困窮という問題について御質問がございました。この点につきましては大学教職員の俸給と一般国家公務員との比較という点につきましては、いささか大学教職員のほうがよくなつておるのが現状でございます。併しながら全般をひつくるめまして、生活が苦しいか楽かという点になりますれば、それは勿論決して余裕のあるものではない、これは申すまでもないことでございます。それに対しまする処置といたしましては、差当り大学教職員研究のためにいろいろ書籍を必要とするであろう、或いはその他研究に関する費用が嵩む、この点を先ず第一に是正しなければならない。そういうような関係からいたしまして、今度提案いたしておりまする明年度予算におきまする大学の講座研究費等につきましては、従来よりも相当増額いたしておるわけであります。決して十分とは考えておりませんけれども、将来にかけまして研究費の増額その他の点からみまして、研究活動に支障のないような措置は講じて参りたいと考えております。
  46. 岩間正男

    岩間正男君 どうも私の質問に対する答弁にならないと思うのです。これはちよつぴり研究費が殖えたというのは予算委員会のほうでやればよいかも知れませんが、生活費の問題なんです。研究費の問題を先ず問題にする前に、これは私は大学を一例として引いたのでありまして、無論大学先生だけの問題じやありません。これは小学校、中学校高等学校先生が今食えない、こういう事態がどのように深刻に発生しておるかということは多く議論を要しない。そういうときにやはり内職的な形で兼職をする、こういうような事態が発生して来て、今後これは教育委員会あたりそういうところで非常に問題を起さないということはできない、この條項によりますと……。これについては取りあえず文部省一体どう考えておられるのか、この点明確に。食わせないで置いて最低生活をすることができないで、現に原田教授のごときは地方税を納めるということができないという良心的な責任を感じて自殺をした。そういう現象さえ起つておる、そういう例はたびたび申上げましたから、たくさんありますが申上げません。こういう事態が起つておるときに一方ではこういう規定はしたのでありますけれども、こういう條項と連関してどういうふうに文部省はこれを解決しようと考えておるのか、こういう事態が発生した場合に、発生した場合でなく発生するのです。発生しつつあるのですが、どうですか。
  47. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) 大学から幼稚園までの学校先生がたの生活が非常に窮迫しておる、或いは非常に困難であるということは私どものほうで作りました俗にいう教育白書の中でも残念ながらこれを肯定いたしておるわけでございます。この事態を解決するためには文部省といたしましても或いは地方といたしましてもそれぞれ待遇を改善し、給與をよくするためには努力をいたしております。その努力にもかかわらずなおこの事態を全く改善するというには至らないということは返す返すも残念だと思つております。併しながらこの問題は直接この條項にからんで来るのではありません。この條項教育に関する職務については地方公務員法の三十五條国家公務員法の百一條教育以外の仕事については三十八條及び百四條というものに対応した事項をここに盛つておるのでありまして、従つてその兼職兼業から收入を生ずる場合もあり、或いは生じない場合もあるかも知れないのでありまして、必ずしも收入ということに関連してだけ考えておるのではないのだということを一つ御了解を得たいと思います。併しながらなおかようなことのほかにも或いは兼職兼業によつて事実收入を図ることができ、それによつて生活費の相当の補給ができるという場合も勿論あることであろうと、私どもとしましてはどうかその教員のかたがたが自分の本務に支障のないようなことであつて、なお且つ望むらくは本部門にも役に立ち、その兼業或いは内職が又社会の役にも立つようなものがあつて、それによつて内職しつ本業のほうを少しも阻害することなく行くことができるというようなことがあれば、非常に結構なことだと……。
  48. 岩間正男

    岩間正男君 結構ですな。
  49. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) そういうふうに思つております
  50. 岩間正男

    岩間正男君 そういう職業があれば非常に結構だと思います。ところがそういうのがなくなつて、どんどん狭められて、御承知のように失業者が街にあふれておるという形が出ておる。併し一方では本務を果すことができないというような給與状態であるということは、文部省も今の御答弁で認めていられる。基本的には何といつてもこういう條項が本当に行われるなら、ちやんと少くとも最低生活を何とか教員として食えもし、食つて身分を維持して行く、これだけのものはちやんと充足された上でこういうことを言われるのだとまあ我々も一応納得できるのですが、食えない。そうしてひどい赤字に苦しめられておるというところに追い込み、現在の具体的にいいますと、七千九百円のベースでは問題にならん。だから例えばこれは日本教職員組合の過日の中央委員会におきましては、一万二千円ベース、これなしにはもうとても問題にならん、そうしてこれは民間の多くの労働者たちからも全面的に支持を受けておる、科学的な一つの調査に基いたそういう線さえ出ておる。そうしますと、まあそういうふうに大ざつぱに見ましても大体三分の二、我我の計算ではもつとひどいと思いますが、三分の二しか国家では保障していない。食えないところに置いて兼職のほうは何とかうまく行くようないい職を選ぶことを欲する。これでは何だか希望的な條件だけであると思うのですが、具体的にそういう問題が起つた場合に、そうして恐らく食えないから何でも……、先生といえども霞を食つて生きておるわけに行かない、そういうふうな場合に例えば戰後のことで我々が組合運動に関係しました場合なんか、おでん屋をやつてつた先生なんかも大勢おつたが、おでん屋なんかやつておると、これはどうも教員の対面上工合が悪い、それで教育委員会のほうではこういうような仕事はまずい、これは兼務ということにはなりませんけれども、非常に性格が似て来ます。これと同じような、又専業に関係しておるのはやはり一種の兼務と考えられます。こういう事態が起つたときに文部省はどのようにこの事態を地方教育委員会をして裁かせる方策を考えでおられるか。これは現実的に実に大きな問題です。法案の法律的な審議よりも現実の問題とこの法案とが関連して来るところに我々の審議を盡さなくちやならない問題があるのです。これについて今のどつちもいいような職をなるたけ選んでやつてもらうことと期待するというようなことだけでは、非常に現失認識が足りないのじやないか。そういう職が一体ありますか。あるとお考えですか、大体に……。どうもその点私は今の御答弁には満足できない。もう少しそこのところ考え答弁願いたい。
  51. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) この規定につきまして、教員の生活給が十分でないという点からの御質問でございますが、繰返して恐縮でありますが、この規定は必ずしも教員の兼業或いは兼務ということは生活條件ということを考えての問題ではないのだ、総括的な箇條であるということを一つ御了解を願いたい。なおこの規定を設けたことによつて、この規定を設けないのに比べると、地方公務員法のまま、或いは前の規定のままよりは手続がずつと簡單になる。そして他の教員教育公務員でない職員に比べては有利な改善になつておるというふうに思います。それからなお最後にそんないい職が、勉強と本務と兼業兼務、或いは收入のある内職と申しますか、そういうものとうまく合うようないい職が実際にそうたくさんあるかとおつしやいましたが、ちよつと私大学からずつと考えておつたのですが、例えば大学先生がたではその方面によつては私は相当あつて、そのことが又社会の役に立つておるものも相当あるのではないかというふうに考えております。まあ例を挙げますと、例えば医科のかた、その他文科、法律、経済、そういうほうにも私はあるのじやないかと思う。ただその同じ文科といつてもその中でそういう機会の比較的少いのもあります。又、お医者さんの医科のかたでも私は少いかたもあると思います。併し全般的に見てそういうものがないということはないので、やはり私相当あると思うのです。それから地方の高等学校から小学校、幼稚園のほうの先生方がたにとつてはそれは大学先生に比べたらやつぱり都合のいいものというのは少いかと思いますけれども、併しやはり現にそういうことをやつておられるかたもあつて従つてそういう條項を設けてその辺については役立ちたいということになつておりますので、私は全然ないとは言えない、又あることを望んでいるということを申上げておきたいと思います。
  52. 岩間正男

    岩間正男君 どうも、御親切に文部省から内職御案内を頂いたようなことになるのでありまして、まあ關口局長が今こういう現段階で内職案内の例まで挙げなきやならない、又我々も挙げさせかきやならないということについて、日本の非常にミゼラブルな條件考えるわけです。改めてこの審議そのものを振返つて見るわけですが、私はこの條項は無難この兼務に関して言つているのですが、兼務の事業若しくは事務に従事する、こういう幅が具体的には拡がつて行くだろうということを察しておるわけです。名誉職で、そうして実は生活と関係なしに兼務をしたいなどと考えている、又それができる人は、そういう経済條件に立つている人は一体何入ありますか、教員の中で。だからこれは教員公務員法ですからね。これは総理大臣大臣の兼務法じやない。だからそういうことから言いますと現実にはそういうことが具体的に多くなつて来る。そういう解釈の中で、これは例えば事業事務というのは、私は卑近な例でおでん屋というものを挙げました。併してこれを広義に解釈すれば事業に属するので、おでん屋に関係した、それで報酬を受けた。仮にそういうことになつたときに、教育委員会がこれに対して教員身分を、非常に体面を汚すものだ、こういうことだけで拘束しておる。こういう立場に追い込まれておる。私の例が適切でないかも知れませんが、そういう傾向が非常に出て来るが、文部省はそういう問題を解決することなしに、一方でこういうような法文だけで教育委員会に権限を持たせる。而もそれに従わない場合にはやはり優先的に教育委員会の決定によつてこれは左右されるのだというふうになつて来ますと、どうも教員のこれは根本的な待遇の問題になりますが、こういうものを伴わなければこういう條文も非常に空文になつて悪用されるので、この点を私は非常に心配するのであります。(「進行々々」と呼ぶ者あり)
  53. 加納金助

    ○加納金助君 只今政府委員説明によりまして、本條の精神が初めてまあ私もぴつたり来たように思います。大体におきましてこの改正の精神は、私はもう少し崇高な深い意味を持つておる、こう考えております。つまり食えないもののために、内職のためにこの法文を設けるにあらずして、もつと高く広い意味を暗所しておるのじやないかと思う。と申しますのは、例えば教授というもの、或いはお医者にいたしましても、一つの学問に対するところの権威者というようなものはそうたくさんありません。又一つの医者にいたしましても、非常な技術の優秀なもの、これもたくさんはない。ところがその人が自分の勤めておるところにおいてのみ自分の学問或いは医術を施すだけでは如何にも惜しい。他にもその人について教育、指導もしてもらいたい、研究もその人にぶつかつて深めたい、こう希望するところのものがたくさんある。又優秀なるその医者の技術を養成することをお願いしたいものもある。そういうようなもののために、本務の遂行に遺憾のない場合においては広くこのような求めに応じてもいいのじやないか。これを許してやつても、そうしてそのものの学問なり技術なりやがあまねくできるだけ本務の遂行の上に支障ない場合におきましては、その人の力を十分にあちこちに施してやつてもいいのじやないか、こういうような意味合いからできておると思いますが、如何なものでしようか。
  54. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) 御見解通りだと思います。
  55. 加納金助

    ○加納金助君 はつきりさせて下さい。今何か許可基準文部省が作つて地方の教育委員会のほうに與えると聞いたが、ただ内職的な意味のみを含めたものでなくして、もつと高く深き意味のあることを十分貫いて頂きたいと思います。
  56. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういうことになれば私は政府委員のかたに一つ言わざるを得ない。これは地方会務員法並びに教育公務員特例法の両案の審議に当つて最も論議の中心になつたものは、政府の出すところの法律というものが一体地方公務員或いは教育公務良の保護法規であるのか、それとも制限法規であるのかという点が総括論においていずれも最も議論の中心になつたところなんです。そういう意味においてまあ公務員に適用するところの法律制定されるのはいいけれども、十分の行政ができ、又公正にして民主的、能率的な行政……、教育公務員で言えば教育でありますが、そういう事業に携われるようにするという立場からまあ論議が進められて来たわけなんです。この二十一條の改正案は、今のも勿論入つておりますけれども、先ほどから岩間委員の言つておりました内職の問題ですね、地公もできた、教育公務員特例法もできたという、それじやそれを忠実にやろうとすれば教師は生活安定の裏付がないから霞を食う以外にないんだ、それに対して政府がどれだけのことを考えておるのかという立場から一般質問的なことを申上げたわけですが、今の我々に適用されている法律からいつたら、今先生がたが食べられないで内職でダンサーをしておる。それは地公の三十八條にはつきりと出ている。おでん屋もいけない。そういうことはこの改正を待つまでもなくちやんと地公の三十八條にそういう内容のものがはつきりと規定されておる。そういう法律ができて更にこういう特例法というものが出た。そこに教職員の生活の実体とそれから教職員規定して行くところのこの法律の間に非常にギヤツプがある。それに対して法律提案される政府としてはこれに対処するどれだけの決意を持ち、又問題が起つた場合に責任を持つかという角度から立てられておるわけでありまして、今言いましたようにこの解釈をこれだけにして、そういう方面の問題を全く無にするということは許されないとこう思うのです、如何ですか。
  57. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) 先ほど両委員の御質問に対してお答えしました際に申上げましたように、内職或いは生活費の問題からだけここは考えているんではないということを申上げたんですが、生活費の問題でない点について、今加納委員からのお話がありました。それに対して私もそういう趣旨だと思つておるのだとこう申上げたので、これはやはり一方だけというふうには一度もお答えしてないと思つております。なお必要な生活費をとる方法について、内職案内のようになつたのは恐縮でございますが、根本的に申せばやはり教育公務員の待遇がその生活の必要に対して十分なことができるようになることが望ましいのであつて、そのためには皆様がたと又地公の関係のかたがたの御協力によつて、待遇の向上については我々もますます努力を重ねて行きたいと考えております。
  58. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 責任がありますね。
  59. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 この條項関連する事項になるかと思うのですが、現在教職員学校に籍を置いておつて、而も教育委員会事務局に勤務しておる、或いは市町村の自治体の学事関係に勤務しておるものが相当多数に上つておるわけであります。これは従来から問題になつてつたわけでございまして、そのために定員の少い学校においては相当多数の人が直接教育に携わらない、学校教育に携わらないでそういう事務をしておる。而も給與の面においても教員給がその方面に相当割かれておるということは、従来相当問題になつてつたわけです。こういうことはこの第二十一條規定によつて行われておるのか、或いは他の規定によつて行われておるのか、或いは全く違法なことをやつておるのか、その点をこの際明らかにして置いで頂きたいと思うのです。
  60. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ちよつと政府委員に……大臣が見えまして時間の都合がありますので、荒木さんに対する答弁はちよつと保留したいと思います。文部大臣が見えましたから、文部大臣に対する質問のあるかたはどうぞ。文部大臣は次に行かれる時間の予定もありますから、十二時二十分くらいまでの間に済むように……。
  61. 岩間正男

    岩間正男君 私は総括質問を継続したいと思うのであります。やはり第五條の問題に関連するのでありますが、この第五條の改正につきましていろいろ政府側の説明を聞いたいのでありますが、この公開審理がされない。そうして恐らくこれは管理機関のほうでやられるだろう、こういうことを言つておるのでありまするけれども、実質的にはこれはそういうことは不可能な情勢に落されると思う。そうしてその結果はそれがどういうところに問題が来るかといいますと、要するに大学教育の思想の自由、研究の自由というようなものが非常に制限されて来るものと深く連関して来ると思うのであります。そこで今日やはり具体的にお聞きしたいのでありますが、例えばこの前もお聞きしたのですが大臣からお答えがなかつたのですが、南原氏が全面講和の意思を表明した。ところがこれに対しまして、即刻吉田総理から曲学阿世の徒であるというような一つの批評が下された、こういうような形で、これは非常に端的に、最も量的に権力から直接なされたような批判でありますが、そうでなくてもいろいろ今後そういうような面において大きな制限というものが加えられる傾向が多く出て来ると思う。例えばそこで問題にしたいのですが、文相は平和擁護とか、それから全面講和の問題とか、それから再軍備反対の問題、これはやはり日本の学に携わる者としては絶対に、世界の情勢の中に置かれている日本の現在、或いは民族の将来、こういうものを考えてみるときに等閑視することのできない問題だと思うのでありまして、当然そういうような問題に対して意思表示をし、更にそれに対する自分の信念を貫くというような立場をとるというようなことも発生すると思うのです。こういうような問題、或いは国民的な運動が社会党、労農党、共産党並びに民主団体、文化団体、婦人団体、こういうところから展開されております全面講和の、これは投票のようなものが展開されているのでありますが、こういうような運動を大学教授教職員関係が支持する、或いはその中に行動するというような事態も或いは起るかも知れないのでありますが、そういうとき文相はどのように一体考えになりますか。これは大学研究並びにこの学の自由、こういう点から考えて具体的に伺つて置きたいのであります。
  62. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はよく岩間さんから学の自由学の自由ということを伺いますが、学の自由ということはどういうことか、伺つてから御返答申上げます。
  63. 岩間正男

    岩間正男君 これはしばしば申上げたと思うのであります。この学というものは、アカデミツクの一つの伝統の中に入つているだけでは日本の現状においては使命を達成することはできない。やはり一つの確信を持てばそれを力強く主張するでありましよう。主張することはすでに行動であります。文相はどう考えておられますか知りませんが、例えば南原総長が全面講和でなければならん、こういう固い信念を持つてこれを主張したことははつきりした行動だ、これは或る場合においては具体的に小さい行動よりももつと大きな影響を日本の国民大衆に與えるところの一つの行動なのであります、言動なのであります。こういうものが起りましたときに、これは南原さんの信念乃至学の自由ということを堅持する一つの精神と無関係に起つた事態ではないのであります。ですからそういうような面で、そういう事態が起つた場合には、文部省としては、大臣としてはどういうふうにこれを処置すると考えておられるのか、その点承わりたい。
  64. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 只今承わりましたけれども、学の自由という概念は一つも解明されないと思うのです。私は岩間さんから学の自由という言葉は幾十回聞いたか知れませんが、曾つて学の自由という概念はどういう意味かということがはつきりしないのです。常識で考えると、学に自由があるはずがない。自由というのは主体の持つものである、学が自由を持つということは、それならば学の自由といわれる言葉は今まで盛にいわれますが、どういう意味であなたがここでお使いになつておるかということを伺つてから御返事しないと、そうしないと概念が喰違つては返事にならない。
  65. 岩間正男

    岩間正男君 私はそういう哲学的ないろいろなことをいうよりも、憲法に保障されておる学問、思想の自由、それを大学において、殊にその方面にこれは文相の言を借りますと、学を專門にその点に没入するのだ、こういうことをいつておるのでありますが、学問をする自由、そうしてそれに対していろいろな何といいますか、権力とかそれから政治的な圧力、こういうものが関連して問題になつて来るのでありますが、そういうものの中で殊に現実的にはそういうものの圧力が非常に強くなつておる、その中であくまで一つの真理を探究して行く、その自由です、その自由をどういうふうにして守つたらいいかこういう問題であります。
  66. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) まだ私には漠然としておりますけれども、併し今自由を探究、学問を探究するといいましたから、これは私が学問の自由というならば普通には学問の探究へ教授、学習こういう三つのことをドイツなどでは学の自由ということでいつておりますから、そういうことで解釈して御返事いたします。
  67. 岩間正男

    岩間正男君 結構です。
  68. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 学問の探究はいくらしてもいいいくらしても差支ない、学習もどうにやつてもいい、問題は学の教授ということでございます。これには当然限界があると思つております。これは国家公務員でありますから大学教授国家公務員としての制限を持つておられるということは岩間さんも御承知通りだと思います。その制限内において許されておる。これは前から申しておりますが、政治的自由というのはいつでも制限のないところに自由はない。その制限というのはどこにあるかというならば宙にぶら下つておるのではなくして、我々の歴史の中にその制限がある。こういう場合私は前から申しておることで、無制限の自由というのはあり得ない、人間の社会にはあり得ない。ましてこの敗戰国にはそういう自由なんというものはあり得ないと私は考えます。
  69. 岩間正男

    岩間正男君 私は何回も大臣にそういう御説明を伺つたのでありますが、私は学は研究して、探究してそれをそつとしまつておくということでは意味がない、そういう学というのはアカデミツクに考えられて来たけれども、それではやはり日本の少くとも敗戰後の学の、大学に少くとも人民の手によつて作られたということが建前になつておる。そういう大学としては私は意味がないと思う。そこで探究して学者が一つの結論を得て信念を持つ、真理を持つのです。その問題をやはり社会改善なり、それから政治上の理念として当然これは主張する、そこまで含まなければ私は学それ自身は完成しないだろう、その点から申上げておる。ですから南原総長が当然自分の信念であるところのものも、全面講和でなければならない、いろいろな情勢、世界の情勢を見、日本民族のおかれておる姿を見るときに全面講和以外にない、こういうことを主張する。これに対して具体的に吉田総理からああいうふうな批評を蒙つておる。こういうときにこれは具体的に申上げておるのですが、そういうときどういうふうに文相としてはこの自由を守つたらいいか。つまり学の自由に対する今度は言動の自由も当然ここで必要になつておりますが、あなたは国家公務員法範囲を逸脱したと考えておられますか、南原総長のあの言はどういうふうにお考えになつておりますか。
  70. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は南原総長の言説が逸脱しておるかどうかというようなことを少しも言つておりません。あれは殊に吉田総理が秘密会で言われたということであつて、私は南原さんが全面講和を唱えたからそれで吉田総理がこれを曲学阿世だというわけがないと信じております。いくらでも全面講和を唱えて吉田総理と親しくされておるかたもある。だから私は全面講和を学説として唱えたから曲学阿世ということを言うわけがないと自分は思つておりますが、併しそういうことは明らかな事実でございませんから、それをとやかくここで言うことは私のしてはいけないことですし、又する考えもございません。
  71. 岩間正男

    岩間正男君 文相としては言いずらいだろうし、恐らく言いたいだろうと思う、私が推測するのに、そういうことを言われますけれども……。そういう事実がないと信じている、これは自由であります。文相が、併し現実、実際は客観的な事実なんです。というのは南原総長がこれについて吉田さんの批判に対してはつきりした反駁を出しておられるのだからこれは具体的な事実だ、そうでしよう。これは新聞でお読みになつたと思います。文相が新聞をお読みになるかどうか知りませんけれども、お読みになつただろうと思う。こういう事実を指して言つているのだ。文相自身はそういうことがないだろうと信ずる。これは説明上には便宜だろうけれども、客観的事実でありませんから私はその点をどうしても文相を追い込めて……、この点はなかなかむずかしいだろうと思うんです。この点はまあいいでしよう。  そこでそれと連関しまして、私は昨日行われましたこの衆議院における予算委員会の戸叶里子氏の質問に対しまして文相が答えられた。この問題は相当これは今後の日本のやはり文教政策の上において大きな関係を持つて来ると思うので、こういう点から今の問題と連関してお伺いしたいのであります。第一まず今日の朝日新聞によりますと、戸叶氏が「今まで新憲法の精神を教えていた小学校で、再軍備問題など憲法と食い違つた問題が現実に起り、先生説明に困つているが、文相としてどう説明するつもりか」との質問に対し、天野文相は大要つぎのように答えた。平和を愛し、全面講和をしたいのは日本国民全部の願望だが、生きた歴史の現実は固定したものではなく、大学などでは政治について論じてもよいが、小学校先生はこれら政治問題に深く立入らないほうがよいと思う。子供にはこのような政治問題を教育する必要がない。こういうことを御答弁なつたように新聞に出ているのでありますが、これは文句は違いましようし、速記録も今私は調べ中でありますが、大体こういうような趣旨のことをお答えになつたかどうか、その事実の有無をまずこれは文相に確めたいと思うのであります。
  72. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 前の問に対してくどいからこの辺でということですが、私は少しも困りませんから幾らでも御質問頂きたいと思います。  それから又第二の点につきましては私はこういうことを言つたのであります。即ちこの政治教育ということは必要なんだけれども、併しこの大学と小学というのは同じには行かない。大学ではそういうことに立入つたどういうことでも結構だけれども、小学校では余り立入つたことを述べる必要はないと思うといつたんです。私は自分ではこの政治というのは決して政党にはつきないと思うんです。政党関係とか、或いはいろいろな派閥とか、そういうようなことを離れた一般の国民としての心構えとか、国民として持つべき愛情とか、そういうものがすべて政治問題なんです。そういう政治を教えることはいいけれども、政党的な事柄とか、そういうことに余り立入るのはよくない、こういうことを申したのであります。
  73. 岩間正男

    岩間正男君 私はまあ大体文相が今朝日新聞に書いているようなことをお述べになつたかどうかということを確めたのですが、大体まあそういう御趣旨のことをお述べになつたと確認して話を進めたいと思います。  私は只今の御説明並びに答弁だけでは第一戸叶氏の、これはやはり非常に適切な、そうして恐らく小学校なんかの数職に奉じているものから見るというと実に困難な現実的な問題だと思うのであります。そういう点から発せられた説明に対しては余り御答弁になつていないんじやないか、こういうふうに思うんです。戸叶氏の説明趣旨は憲法では戰争を放棄している、然るに再軍備という問題が起つて来ている。これは憲法に違反する。今の憲法はあくまで守れということを教えて来た先生が再軍備という事態が起つてときには、どのように今の矛盾をこれを調和して教えなければならんからという点については非常にこれは苦しむ問題であります。現実的な問題といわれますけれども、單にこれは現実的な問題じやなくて、日本の根本的な憲法の問題であります。そうして政治教育におきましては、憲法を拔いた政治政育というものは考えられませんから、憲法の條項の解釈そのものと現実に起つた問題とのこの相剋矛盾、こういう問題についてどういうふうにこれを調和的に教えるのであるか、文部大臣に伺いたい。こういうふうな適切な御質問であつたように思うのでありまして、文相の御答弁はこの点については御答弁がなかつたと思うのでありますが、私は何も戸叶氏の代弁をするわけじやありませんが、もう一度これにつきましては文相はどうお考えになりますか、今の点だけお聞きしたいと思うのであります。
  74. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は憲法の戰争放棄の條項というのは、あれがある以上日本が再軍備をするということは、憲法上無理ではないかと思つております。併しこれは憲法学者にいろいろの説がありますから、私は今ここで私見を述べるのでありますが、自分は無理ではないかというふうに考えております。又現に差当つて日本が再軍備をするということになつているわけではないのでありますから、それでいいのだと思います。
  75. 岩間正男

    岩間正男君 私も文相とこの点は同意見であります。現在の憲法において再軍備は許さるべきじやない、こういうふうにはつきり考えております。そうしますと、学校先生立場に戻りますが、先生がそういうふうに今まで教えて来た、それから日本の民主憲法の本質的な最も大きな特徴として世界に我々が謳い、そうして憲法発布記念日なんかに大きく宣伝していることは戰争放棄のことです。だからこれは強力に教えていたに違いないのです。ところがまるでそれと変つた事態が起つて来るときに、先生は非常に混乱して困るだろうと思うのでありますが、文相はこういうふうな問題に対して、あくまでやはり現在の憲法の精神の指示するところによつて、あくまで再軍備は反対する、こういうことを学校先生たちが教えて少しも差支ない、当然である、こういうことははつきり確認されておりますか。
  76. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 今まだ日本には再軍備をするということを言つているわけじやないのです。吉田総理大臣は再軍備はしないと言つているのです。そういうときですから、憲法の條項には再軍備というものはしないことになつている。現在の日本でもそういうことになつている。けれども歴史の現実というものはいろいろに動くから、社会には再軍備の論をする人もいる。しかしそういうかたのもまたこれはその論として聞くべきものもある。そういうようにただ客観的に教えればいいのであつて、どの党派がいいとかどの党派が悪いとか、誰がこうだというようなことを立入つて教えるというような必要はないと思います。
  77. 岩間正男

    岩間正男君 現在においては再軍備ということがまだ先の問題である。吉田総理も再軍備はしないとおつしやつておられる。少くとも国民でそういうふうに考えておられる人もあるかも知れない。併し我々国会議員の立場から、これは先までそういう吉田総理の言が守られて行くかどうか、これについての客観的な判断は我々にはできているのであります。又非常に今までの変化について感じているのであります。  そこでこの憲法の問題ですが、憲法は一体そんなに、今度の民主憲法でも一番骨格をなすところの戰争放棄の規定についてそんなに簡單に変更するというような建前からこれを作られたものかどうか。これは非常に困る。学校先生の場合においても非常に困る。これは日本は永久にこれを守り、平和を守り、再軍備は反対だ、そうしてどのような意味でも戰争に介入しない、そういうふうなことによつて今まで子供を教えて来て、得々として確信を持つて教えて来て、それから公民教育文部省が計画したそういうような先生たちの集会の中でも、我々が富山、石川あたりを視察に行きましたときに、この問題が非常に大きな一つの重要な課題として教えられているのは事実であります。だから当然そのような信念を以て教えて来た。それが情勢が変つた。明日明後日変るかも知れん、来年ぐらい変るかも知れん。こういうような不安定な形で一般教育の理念、そういうものを一体追求することができるかどうか。そういうところをどういうふうに調和して教えたらいいと文相はお考えになるか、少くともこれは指示を得たいと全国五十万の教職員考えていると思うのでありますから、この点について私は懇切な御説明を頂きたい。
  78. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 何も変らない。変らないことは平和を受ける、そういうことは変らない。併し日本を、どこまでも国を立てて行くということも変らないのです。そういう点において何も変らない、この思う。ただどういうようにして平和を守つて行くか、どういうようにしてこの日本国というものを立てて行くかということについては、これは複雑極まりない世界の現実においては、いろいろの考えが出るというのも当然なことであるから、我々は素直にそういういろいろな考えを聞いて、そうしてそれを客観的に考えて行くという時期に今はあると思つております。
  79. 岩間正男

    岩間正男君 変らないとおつしやいますけれども、例えば昨日の吉田総理の本院における説明を聞きますと、ひとの国によつて安全を保障される、そういうようなことは民族の自負心が許さないというようなことを言われた。この言葉をもつと進めて何を示唆しているかということを考えれば、やはり再軍備の問題に大きくつながつて来る、自衞権の問題につながつて来るだろう、そういう形で論議が大きくされて行つております。又ダレス氏の報告を見ても、こういう問題についてこれはつんぼ棧敷にいることはできない。でこういう中で、この論議をここで繰返すのは目的ではありませんからお聞きするのでありますが、日本のそういう教職員はあくまで憲法を守つて、そうして平和の線を維持する。そのためにはやはり再軍備は反対だ、こういう確信をもつて教えてよろしい、こういうふうに確認してよろしうございますか。
  80. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は一番大切なことは本当に日本を愛することだと思うのです。この国を他国に隷属させて、他国の指示を受けてこの国のことをやるというような精神では一体駄目なんです。そうじやなくて、本当に日本国というものを石にかじりついても自分たちは守つて行くのだ、この歴史と伝統を持つている、そうして文化創造力の豊かなこの民族の住んでいるこの国、こういう日本国はどこまでもこれを守つて行くのだ、こういうことが一番の重要な問題で、同時に我々はどこまでも平和を愛して行く。平和というものをどこまでも貫くのだ。併しこの手段に至つてはいろいろな考えがあり得るわけです。この複雑極まりない現実においてはどういうことによつて平和を守るかということについて、いろいろな考えかたがあるのです。我々はそういうことを素直に聞いて、これを検討して行きたいと思うのです。少くも差当つては再軍備ということは決してしないということを総理が言つておられるのです。我々はそういう線でいけばいいと思うのです。重ねて申しますが、一番大切なことは、その国を愛することだと思う。我々の国を、愛することだ。併しその愛するということはただ激情的にじやなくて、本当に心の底からこの国は自分たちの国だ、ここに生れここに育ちここに死ぬ、この国はただの国土ではない、ここに歴史と伝統を持つた我々の住んでおる国だ。この国を愛しこの国を尊重しない思想なら私は全然反対です。
  81. 岩間正男

    岩間正男君 私も日本を愛することにおいてあえて人後に落るものではありません。その点をはつきり言明しておく。そういう観点から論議を進めておるのであります。そういうところに問題があるのではなくて、大体ポツダム宣言を受諾して再軍備はできない、そうして日本の憲法を作つた。これは固い信念であつた。そうして我々は憲法記念日なんかにおいてしばしばそれを繰返して来た。教育もそれの一つの指導原理になつておるのであります。そういうことが日本を愛する遂になる、こういうことを我々は確信しておる。世界の情勢を見ても確信しております。ところが隷属したくない、これは無論であります。文相の言われる隷属という意味はどういう意味でありますか具体的に言われてないが、隷属と言えば例えばいろいろあります。ソ連から侵入してソ連の奴隷になるというような言いかたを今日放送をしておる者もあります。又アメリカのあやつり人形になるのだ、そういうような点からこれを見ておる者もあります。これはいろいろな事実が示す問題でありますから、これはここで論議の中心にしませんけれども、少くともこの憲法を守り拔いて行く上において戰争を放棄する、こういう形だけが今憲法にはつきり規定された問題であり、そうして又日本人の、今までもやつて来、又今後守つて行かなければならない方法だ、これが本当に国を愛する途だと、こう考えて差支ないと思う。文相もそういう観点から平和ということを言われ、或いは又全面講和に署名もされたんだと、こういうふうに我々は労えるのであります。ところが非常に私はさつきから伺つておりまするように、非常にあいまいなんです。例えば只今の文相の答弁によりますと、差当り再軍備はしない、差当り再軍備はしないということは、同時にいつかするかもしらん、そうすると情勢の変化によつてはこれは再軍備をするかもしらん。併し再軍備そのものがどういう一体現在のこの世界の情勢においては、意図によつて使われ、そうして自衞の裏なんかによつてやられることが、実は自衞でなくて他衞である。他の一つの勧めにより、或はそういう国から軍備を借りる、兵器を借りる、或いは援助を受けるというような形でこれはされるという形になる。そういうようなところに追込まれることを、一体これに対していろいろ意見があるんでありますけれども、これを守り拔くというのが正しい一つの今の情勢から見たところのこれは愛国の熱情でなくちやならんと私は考えるのであります。  そういう点から、問題を戻しますが、文相の先ほどの私の質問に対する御答弁、まだ具体的に頂けないのでありますが、学校先生たちはあくまで憲法を守り拔いて、そうして平和を愛し、そうして軍事基地に対して反対するんだと、こういう根本的な思想に対しては何ら変更を加える必要はない、こういう点について私は文相が端的にお答えなされんことを切望するものであります。どういうふうにその点お考えになりますか。
  82. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私の考えはほぼ盡したと思つておる、私は併し全面講和とか或いは軍事基地反対とかいうことを学校先生が先に立つて唱道されるということは不適当ではないかと思つておりますけれども、その平和を愛しこの日本国を守つて行こうという精神は、どこまでもこれは当然の話でありますが、それをどうしてするかという方法については、私はよほど愼重に考えて行かなければならないという考えでございます。
  83. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、非常に只今の御答弁は重大なことに関係して来ると思うのです。全面講和を主張するのはいけないんですか、これはポツダム宣言の精神というものを我々今日大きくこれを主張することがいけないんですか、あれは我々は無條件降服じやありません。日本の陸海空軍はミゾリー艦上におきまして、これは無條件降服をしたことは事実であります。併しながら我々は同時に降服文書の中にポツダム宣言を受諾する、このことを條件としてあくまでこれを守り拔くと、この固い決意の下に我々は降服した、いわば無條件降服じやありません。この点は文相はどうお考えになつておるか知りませんけれども、これは国際法的にも研究して頂きたいと思うのでありますが、はつきり然らばこのポツダム宣言をどういうふうに守るかということが日本が今置かれている国際信義の上から考えましても、又日本の現状から考えましても、当然とらなければならないところの道であります。このうちに全面講和、これはこのポツダム宣言の精神からすれば、当然それが将来導き出されるのでありますから、この精神に立つ限り、学校先生だちが全面講和を主張することが何で一体悪いのですか。我々はだから文相にもしばしば申上げておる通り時代の権力やそのときの情勢や、そういうものによつて日和見をやつちやいかん、我々は一つのはつきりした信念の上に立つて、その信念を貫くためには、いろいろな圧力や困難もあるだろうけれども、これは一つの目標、遠い目標を考え、そうしてその方途を本当に実現するためにこれは努力すべきだ、少くとも教育はそういう力強いものを持ない限り、何らの意味を持たないということは、これは大東亜戰争がはつきり具体的にこの事実を証明しておる。事実が証明しておる。こういう観点に立つて私は質問しておるのでありますが、そうしますと、全面講和の主張をすることはいけないということになりますど、ポツダム宣言に違反しなければならないことになる。こういうことに追込まれることになりますが、この点について文相の御答弁を願います。
  84. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 全面講和の主張がいけないと言つたんじやないんです。義務教育に従事するかたがたが全面講和とか軍事基地反対とか、そういう考えを懷き、主張することはいいですが、それを実際の政治活動として、そうして政治的な意味において活動することは、私は不適当だと思うと言つたんです。
  85. 岩間正男

    岩間正男君 憲法を守る限り、そういうことを仮に教壇で教えますそのことさえも、今問題になつておるのであります。例えば全面講和、当然ポツダム宣言、あの指向するところにおいて、大体これを教壇で数えて御覽なさい。そうすると、どう一体矢弦が変つて来るかということを文相御存じですか。これはどうなんです。私は現実論に戻して貰いたい。観念論はもうたくさんどう一体考えになりますか。  それからもう一つ、そういうことを論ずる必要はない、小学校先生はそういうことをやることは必要でない、こういうことを言われておりますが、大学先生なんかはいいだろう、実にこれは滑稽です、私は滑稽だと言いたい。なぜ一体その自由が、ほかの公立学校先生にはないのであつて、なぜ大学にだけ與えられておるのであるか。こういう点も非常にそこに階級的なアカデミツクな大学に対する考えが、まだ文相の考えかたの中に残つておる、こういう事実を私は確認する。而も判断はするが、それから政治論議はしてはいかん、つまり盲目にされる、現実から盲目にされておいて、而もどうかというと、一方におきましては政治活動一体全然今学校先生はやつてないかというと、とんでもない話、やらせられている。それはどういう形でやらされておるかというと、例えば国連協力の慰問文を書け、こういう形でやらせている。或は予備隊が町にやつて来ますときに、日の丸の国旗を持つて迎えている。こういうことをやらせておりますが、こういうことに対して、文部省はこれはやり過ぎだ、これは一党一派に対する偏した政治活動であるといつて批判され、これに処置ざれた事例がございますかどうか、これは如何ですか。
  86. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 岩間さんに、どうか私の言つた趣旨をよく聞いて頂きたいと思うのです。私は大学では学生にはよほど立入つてそういうことを話すのもいいけれども、学生がもう批判力もあり、大きいからいいけれども、小学校というような子供には、そういう立入つたことを言うのは不適当だと、立入つてという言葉を使つて、不適当だと言つたんです。これを研究したり何かすることを、大学と義務教育との間に差別をつけようと言つたわけではございません。そればかりではなく、国家公務員としては制限を非常に持つておるのです。だからしてそれに制限されているようなことは、義務教育先生がたにおいても不適当だと言つたんであります。よく私の申した趣意を御了解頂きたいと思います。
  87. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 岩間さん大体申上げた時間が過ぎておるから……。
  88. 岩間正男

    岩間正男君 時間が過ぎておるが、私は非常に重大な問題だと思う。だから国家公務員法地方公務員法が大きく問題になるのであります。併し教育内容というものは、そういうような今例えば具体的に起つた、私は具体論として進めておるのでありますが、憲法或はポツダム宣言、こういうものを規定する法について、確信を以て教えることが国家公務員法に違反すると、こういうことになつた場合には、明らかにそういうような政治的條例というものは、むしろ人民彈圧の性格しか持つて来てないと思う。それから学の自由を奪うという機能しか持つて来てないと思う。文相はどのような説明をうまくされてもそれはそういう結果に陥つておると思います。だから当然そういうところまで規定して私はいないんだと、教育内容そのものが、又一方におきましては基本法の第八條、これだけが問題になつて、これは政治活動の制限ということが非常に問題になつておりますが、逆に第一項のほうの精神は沒却されておる、これはやはり政治教育は與えなければならない、こういうような面があるのでありますが、成るほど公務員法規定を受ける面はあるかと思いますけれども日本のこれは今置かれておる立場、それから民族の将来、それから文相が絶えず口にされますところのこの愛国の問題、それから民族の独立の問題、こういうものから連関するときに、私は当然一つのはつきりしたよりどころに従いまして、これは平和を守らなくちやならない、全面講和の線、或は軍備は反対だ、こういう線はこれは一部の政党がそういうことを政治的な問題だと言つておるところに問題があるのであつて、何らそれは元来本質的なものじやない、当然それくらいのことは人民の常識として教えられるのは、これは当然の今の教育内容をなすものだと思いますけれども、どうお考えになりますか、その点について。
  89. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) どうも複雑し来て、岩間さんが私に問われるということは、もう自分の答えた範囲のことじやないと自分は思います。新らしいアイデアというものをあなたからここに聞かないのですね、同じことを幾度も幾度も私は問われておるように思うのですが、そうじやないでしようか。
  90. 岩間正男

    岩間正男君 そうじやありません。
  91. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はあなたの問にはもう答えておると思います。
  92. 岩間正男

    岩間正男君 そうじやないのです。何回も文相は同じことをお答えになつておる。それを私も繰返しておるものですから……。それは繰返すというのはそのところに非常に大きな問題があるのですから、これは止むを得ないと思います。それから角度も少し変つて、そういうところもあるだろうと思いますが、これは今検討して言つているわけじやありません。併しこういう論議は何ぼ繰返しても日本現実の中では決して足りないということはない。繰返しやる。こういう事態におきましては明らかにそういうことに対して言うことは何か差支えがあるだろう、これに対して何か身分の拘束があるだろう、或いは何か一つの彈圧的なことを受けるだろう、こういうことを考えて国会がこういう論議をしないところに大きな問題がある。これは東條時代一つの社会情勢がはつきり示しておる。だからむしろそういうものに陷つてはいかんというような立場から私は聞いておるのですが、だからそういう点でもつて結局何ぼ速記録を研究しても、私が今お聞きした点については具体的に文相は御答弁がなかつたじやないか、どうもあいまいでありますね。非常にこれは焦点が巧みに外してある、例えば私は端的にお聞きしておるが、小学校先生はどうするかという、こういう問題について具体的なお答えがないと思うのですが、その点。
  93. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 焦点が外れておるとおつしやいますが、実際焦点がつかめないのです、うまく私にはそういう点があるから、焦点を外そうなんという考えはちつともないのです。何でも率直に言つて行こうというのですが、焦点がつかめないから勢い外れるということになるかと思いますが、私の趣意は只今述べたところに盡きておるように思うので、改めて何か別の御質問がありますならば。
  94. 岩間正男

    岩間正男君 それじや私は條項的に簡單に申上げましよう。  第一に天野文相が多年抱懷される思想からすれば、当然私は全面講和、平和を飽くまでも望むということを文相が、これは署名もされており、それから又日本国民全部の願望だとこういうふうにおつしやつておるのでありますが、理想主義的な哲学に立たれる天野文相としては当然その願望を貫くために御努力があつて然るべきと私は考えるのであります。この点はどうなんですか。
  95. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は当時署名したときにこれは願望だというので署名しておるのです。その願望が達せられないときは、どこまでもいつまでも日本はこのままでいたほうがいいのだとそういう考えには到達できないのです。だからして願望として署名して来ておるのです。今日日本人誰でも、吉田総理初め願望としてすべてそういうことをこいねがわないものはないと思います。而も現実はなかなか自分たちの思うように行かないことがある。そういうところに私は歴史の非合理性ということを痛感しておる人間なのです。
  96. 岩間正男

    岩間正男君 だから文相の今置かれておる立場は刺戟的存在であるというふうに考えるものです。実際そうでしよう。私は願望し、そうして国民はそう考えておる、そうして天野先生自分自身もそれはそう考えておる。こういう問題に対してこれを行動をもつて貫くかというところに、日本の今までのありかたと、敗戰後の我々の覚悟の問題がはつきり分岐点がかかつて来ると思うのでありますが、そういう点からいいまして、願望を持つておられて、併し情勢が変つてそうしてそれを達成されないようないろいろな條件もあるから、これについては考え直さなければならない、そうしますと願望というものと現実というものはそういうふうに矛盾し、隔離されているものであるかどうかです。私はやはり当然文相が多年抱懷されておるこれは御意見なり、御思想なりを何すれば、当然それはそれを貫くというところに問題が蔽いかかつている、こういうふうに思うのでございますが、どうでございましようか。
  97. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は、岩間さんは実に私ども観念論と言われるけれども、あなたが非常な観念論者だと思うのです。願望と現実が乖離しないというようなことを言われるのは非常に意外であつて、私どもは自分自身についてさえ自分の願望をするようなありかたになれないので、六十有余年苦労して毎日現実に自分を反省しつつある人間で、自分の願望するような人間に一足飛びになれるものならこんな有難い話はないのです。まして社会が自分らの願望通りに直ちになれないというようなことは当然の話ではないか。そういう願望を持つておりますが、併しその手段というのは、願望を持つているからそれでなきや駄目だというのではなく、我々はときには次善ということをも考えて行かなければならない。現実においては次善が最善であるということも私にはあり得るのです。平和を守ろうという考えは私は徹底的に持つておりますが、如何にして平和を守るかという手段をきめるものは歴史の現実だと思つております。だから願望通りというわけには行かないのがこの現実ではないかと自分は思つております。
  98. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと文相はその願望をどのように果そうとして今まで御努力をなされたか。私は行動の問題についてお伺いするのであります。  それから願望々々という名前で言われていますが、我々の見るところでは、これはむしろ世界の現実を、これは我々の把握するところではむしろ全面講和は具体性のある、そして可能性のある一つのこれは現実だ、こういうふうに我々は把握しておるのでございますが、この二点は如何でございましようか。
  99. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) そういう点に認識の私とあなたとの違いがあると思つております。
  100. 岩間正男

    岩間正男君 第一の点は如何でございましよう。どういう御努力を今までなされたか。
  101. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) どういう努力をしたかといつて個人的のことを述べる席ではないと私は思いますけれども、自分は今まで自分の文筆を通じ、思想を通じて平和のために自分の乏しい力の及ぶ限りを盡して来たと思つております。ただ併し平和ということをどうして獲得するかという手段は、現在の現実が非常に複雑である、靜かにそういうことをも学んでみたいとこの頃思つております。
  102. 岩間正男

    岩間正男君 私は何も個人的でなく、閣僚としてもどういう努力をされたか、こういう点をお聞きしたかつたのでありますが、その点は余りお答えがないようであります。  それからもう一つ問題になりますのは、この第八條第一項ですね。それから文相が言われました小学校先生たちはこういう政治問題に立入らないほうがいい、こういうところの見解は、これはどういうふうに解釈なされるのでありますか。
  103. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 政治という概念が非常に岩間さんなどは狹いのじやないかと思うのです。政治というのは国家に関したことはすべて政治的なんです、私の考えでは。でありますから、ここで自分の国というのは、これは自分たちの存在の基体なんだ、この国に盡すことが本当に生きる道なんだということを教えるのも政治的なんです。そういう国家と国民との関係とか、そういうようなことを何するというのはすべて政治的なんです。あなたのお考え伺つていると、政党的というようなことが政治的の中心であるようでありますが、私は政治という概念をもつと広く考えておりますから、只今申した條項の政治教育を重んずるということと、私の考えとは少しも矛盾しないというように思つております。
  104. 岩間正男

    岩間正男君 それじや具体的にお聞きしますけれども、教えないでまあ見ざる、聞かざるというところに追上げて、そうしてまあ教員も子供も盲目にしておきまして、最後の段階になりますと太平洋戰争の中期から末期にかけましては、もう戰時動員をやりまして、そうして工場に入れたりあらゆる戰争協力にこれを追込んだわけなんであります。こういうような態勢はやはり一つ現実把握、それから政治的判断、こういうようなものが十分に與えられていないところの欠陷であるというふうに私は考えるのであります。で今言われましたように、こういう問題を單に一般の常識としての政治、痛くも痒くもない教えても大して余り必要もないような点については、これはまあやつても差支ない。併し今日本の運命を決するような重大な、提起された問題については、これは小学校も、中学校も、高等学校の生徒も、それからその教育内容の中においても、そういうことには触れちやいかん、こういうようなことにこれは解釈されて来るのでありますが、そうしますとこういう態勢こそは非常に危い態勢である。暫てのフアシズム時代にとられた態勢は、見るな、聞くなという態勢である。そうして而も目隠しをされておつて最後には全く物量的に肉彈として徴用されて行つたというのが日本の五、六年前の記憶に新たなるところの我々の体験なのでありますが、こういうものと、今言う現実の問題に触れていけないという教育内容というものは非常に深い関係を持つ、こういうふうに思うのでありますが、再び昔を繰返さないという保証をどういうふうにこの教育体制の中に文相はこれをはつきる確立することができると考えておりますか。
  105. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 岩間さんの批評は、何でも人の言うことは悪く悪く解釈して行こう、そうして一番極端なところへ持つてつてそれを批判されるというのでは、如何に論議を盡しても私はどうも盡きないと思う。私は非常に嫌いな言葉だけれども、結局見解相違ということになるのではないかと思います。
  106. 岩間正男

    岩間正男君 そういうふうにとられるところは不徳のいたすところでありますが、これはそういうつもりで私は無論申上げているのではなく、これは非常に、何としても重要なことであり、今日これを繰返してはならないという点から申上げている。  最後に一つお聞きしますが、国連の慰問文のような問題、これはやはり一つのそういう現実を把握して行くということと関連して行きます。例えば全面講和がいけないように、国連の慰問文を出すということは戰争協力という形になる。事実はそうなる。弁解はどうあつてもそうなり得る。或いは警察予備隊が町に行つたときに、これに対しまして日の丸を持つて出迎えに行くというような行為、或いは更に私は非常に多くの例を持つておりますけれども、最近すでに戰時動員に近いものが一方で起つております。これは品川の、名前を挙げないほうがいいのですが、某女学校ですが、私立の学校ですが、一、二年生の年齢十六、十七歳ぐらいで国連協力の実施をして来ている。これは食糧会社に動員されているような形なんで、これはアルバイトという形かどうかわかりませんが、そういう形で出ている。これに対しまして校長がときどきやつて来て、奉仕作業だ、だから授業は受けなくても進級させる、こういうような事態もすでに発生しておるのでありますが、こういうものについて文相は、これは今の政治教育と連関してどうお考えになりますか。
  107. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 文部省としては、そういうことをしろと言つたこともちつともございません。又そういうことが或る限度を越えているということがあれば、それに適当な処置をとりたいと思つております。
  108. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は簡單に済みます。岩間君の問題は質疑応答が盡されたようでありますので、ずつと角度を変えまして一点だけはつきりさしたいと思います。  それは今の新教育の進みかたからいつて、恐らく小学校、中学校高等学校で、この外交の問題というのは随分とやはり取上げられるだろうと思う。で彼らの自由討議の時間あたりに随分出て来ると思います。それでこれをどういうふうに取扱うかということは、一層教師諸君は悩んでおると思いますが、ここで私がお伺いいたしたい点は、今朝朝日新聞に出たあの記事を見ますと、先生がたの中に、子供は知ろうという意欲があるのに、そんなことを聞くんじやありません、それは言われんことになつております。そういうような態度をとられるような先生がたが出て来やしないか。そういうふうに記事を読まれはしないかという点を私は懸念するわけであります。そこで質問になつて来るわけなんですが、そういうふうにとる教師があるというと、文部大臣教育基本法第八條の政治教育を、この問題に関する限りは否定した、こういうようにとられはしないか。教育基本法は御存じのように「日本国憲法を確定し、」そうしてあとのほうで「根本において教育の力にまつべきものである。」というふうに前文で示されて、それから第八條で第一段と第二段があるわけですが、この二段では、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」こう出ているわけなんですから、教師諸君は具体的にそういう問題が出て来た場合は、然るべき良識によつて教授しているだろうとは思うのですけれども、今朝の朝日新聞だけで見ますと、政治教育を否定した、こういうふうにとられはしないか。で、もう少し具体的に申上げますが、私は外交上の問題につきましても、これは螺旋状に小学校の生徒は小学生らしく、中学校の生徒は中学生らしく、大学大学生らしく、らしさをやはり時事問題としてとり上げなくちやならない政治教育の問題があると思うのであります。もう一つ具体的に申しますというと、例えば教育の場において全面講和ということを、それだけを主張するということになると、若干問題も起つて来るかと思いますけれども、生徒の問題になつた場合、全面講和というのはこうなんだ、多数講和というのはこうなんだ、單独講和というのはこうなんだ、こういう考えかたがあるというような教育というものも大臣は否定されているのか、その点を私承わりたいと思います。でないと教師諸君の中には生徒から聞かれた場合、生徒が最も関心を持つている事柄だから聞くと思います、そのときに、聞くのじやありません、というと、生徒は疑惑を持ちますし、うつかり言うと教育委員会から首にでもなるのじやないかと、こういうふうに考え先生がいるのじやないかと思います。その点をもう少し私は大臣に、衆議院で答弁された気持をはつきりここで承わつておく必要があるのでその点だけお伺いします。
  109. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 只今の御質問は非常に要領を得ておりまして、又私など小学校を教えたことのないものに体験のあるお言葉を聞いて、やはり私ももつと詳しく言えばよかつたと思つて、大変感謝すべき御質問だと思つております。私は今申しましたように、政治教育という概念を、国家に関するところの所轄と関連しているところでは政治的というふうに考えております。従つてそういう意味の政治教育というのは是非とも必要だ、日本の世界に置かれている位置とか或いは今世間で全面講和とか單独講和というものはどういう事柄であるとか、そういうことの教授は、これはもう当然して頂かなければならないことなんですが、その際に、自分が何かの立場をとつて生徒を説得するような、或いは又いずれかの政党がどうとかという党派的なことに引込んで、或る政党を不利にするというような意図を以てやるとか、或いは国家公務員法規定していることを超えたことをするとか、そういうことを私は立入つたという言葉で言つたのであつて、今矢嶋議員の言われたようなことは、これは当然なすべきことだというふうに思つております。
  110. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは文部大臣に対する質問を終了しまして、先ほどの二十一條関連する荒木君の質問に対して政府委員答弁を承ります。
  111. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) 荒木委員の御質問に対してお答えいたします。教員であつて教育委員会職員仕事をしているものがあるというのは、どの規定によつて可能なのかという御質問だつたかと思います。それにつきましては教育委員会法第四十七條に該当する一つ規定がございますからちよつと朗読いたします。「教科用図書の検定又は採択、教科内容及びその取扱、その他特殊な事項に関する專門職員には、教員をもつて、これに充てることができる。但し、その期間中は、教員職務を行わないことができる。」ということになつておりまして、この規定説明を簡單に申上げますと、教科書の検定、採択、教科内容、その取扱その他特殊な事務又は技術に関する事務職員又は技術職員ということの限定がありまして、さような事務又は技術については、教員がそのまま教員としての身分を持つてそのままでも、事務をとつて差支えないのだという規定がここに置かれております。その趣旨は恐らく教員以外に全然專任の職員として適当な人を得ることができない場合もありましようし、又教員身分のまま、その職務に従事しても差支はないという両点からしてこの規定ができたものと了解しております。
  112. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 そうすると、現在学校教職員教育委員会事務局に勤めるということは、教育委員会法によつて正当に認められておるということになるわけですね。そうすると、又問題は別な点からこの是非について問題ができると思うのですが、これはまあ今の際述べるべき問題ではないかと思うのですが、現在においても学校教職員の数が少いといわれているわけであります。それを更に事務職員のほうに多数振向けるということは、学校教育に非常に支障を来すことになつて来ると考えるのですが、そういう点については文部省はどういうふうにお増えですか。各都道府県には教育委員会は相当数置かれております。これらの事務職員が、教職員を以て充てられるということになれば、学校の現場に働く教職員の数は非常に少くなつて来る、その数だけ少くなつて来る、又給與の問題についてもその方面へ引裂かれるというようなことになつて学校教育の上に非常な支障を来すような結果になつて来るわけですが、現在支障を来しておつて問題を起しておるのですが、こういう点についてはどういうふうにお考えになつていますか。
  113. 關口隆克

    政府委員關口隆克君) 四十七條でこういう特殊な事務又は技術を取扱う職員採用できるようにしておるということは、趣旨としては学校教育を助長し学校教育を充実する、同時に教育委員会としてとるべき事務内容に欠けるところをなくなすようにするという両方の趣旨を兼ねておるのでありまして、そういう意味から言えば、学校教員教員身分を保有しておつてそうして教育委員会に来てこのような事務を取扱つておるということは、いわば学校を助けているというような恰好にもなつておる点があります。  なお学校教員の数が足りないのにそういうことをしたら学校では手不足で困るではないかというお話でございますが、それはやはりその辺にはおのずから適当の限度というものがあつて教育委員会としてはこういうことについてはやはりその管下学校の実情というものを十分考慮し、愼重に考えられ、なおその当該の学校先生がた等ともお話合の上でやつておられることと思つております。
  114. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私今の答弁困るのですけれども、これ以上申上げてもしようかないと思いますがね。というのは、教育委員会事務局に使う人は教職員をやめてそこへ使えばいいわけなんです。それを学校に籍を置いて使うということになれば、学校に割当ててある定員というのがあるわけです。その定員が減少するわけです。それだけ学校教育に支障を来すと言つておるのであつて、今の答弁ですと支障を来さない、非常にいいことがあるのだというお話でしたけれども、てんで違つておるのですね。まあ併しこの問題は教育委員会法にそういう規定があれば、この問題について私どもなお検討します。これ以上御質問してもせんかたがないと思います。
  115. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時から開会いたします。    午後一時五分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員            上原 正吉君            左藤 義詮君            平岡 市三君            荒木正三郎君            高田なほ子君            高橋 道男君            山本 勇造君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    文部大臣官房会   計課長事務代理  相良 惟一君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    文部省調査普及    局長      關口 隆克君   事務局側    常任委員会專門    員       竹内 敏夫君