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1951-02-12 第10回国会 参議院 文部委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十二日(月曜日)   —————————————   委員の異動 二月十日委員鈴木文四郎君辞任につき その補欠として高橋道男君を議長にお いて指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件教育公務員特例法の一部を改正する  法律案内閣提出)   —————————————    午前十時五十九分開会
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) これから文部委員会を開会いたします。  文部大臣がお見えになつておりますが、まだ総括質問の希望のかたもおありのようでありますから、それと並行して現在逐条審議を進めておりまするから、いずれからなりと御質疑があるかたは質疑を許可します。
  3. 岩間正男

    岩間正男君 私はこの前に続いて大臣に御質問申上げたいと思うのであります。  結局今度の法案で問題になる点は、この第五条改正の点が非常に問題の一つになつておるのでありますが、この改正精神については、これは何ぼ我々が論及しても論じ足りないように思はれるので、これは再三御質問申上げた点でありますが、この問題をもう少し具体的にする必要があると思うのです。それは今度の改正によつて、何回も政府から説明はされたのでありますが、なぜああいうふうに第五条において今までのいわば大学教職員既得権であるようなものが非常に狭められて来たか、それに関連して当然具体的に問題になつて来るのは、やはり日本教育改革の一番大きな根本でありますところの、例えば極東委員会教育指令とか、それから占領軍管理政策の中における教育政策、こういうもので最初から掲げられたものが、果して今度の改正によつて守られるかどうか、本当に貫かれるかどうか、ここのところが非常に大きな問題となると思うのでありますが、例えばこういう問題について私は一つお伺いしたいと思うのです。日本教育改革精神から言いますと、例えば占領軍教育政策の中には、議会政治、国際平和、個人の権威の思想及び集会、言論、宗教の自由等基本的人権思想に合致する諸概念の諸施策を奨励することと謳われ、それから学生教授は、教授内容批判的、自治的に強化することを奨励さるべく、政治的、公民的、宗教的自由を含めて各般の事項の自由討議を許容さるべきことと、こういうふうになつておるようでありますが、最近は必ずしもそういうことが十分にできない。できないどころじやない、なかなかそういうような面において多くの拘束と、或る場合には弾圧さえ加えられておるということを見るのであります。例えば過般におきまして金面講和の問題につきまして、飽くまでもその主張でありますところのものを南原総長が申上げた。それを述べますというと、これに対して吉田総理から、こういうものは現実を知らない要望である、曲学阿世の徒であると、こういうような痛烈な批判さえ加えられておる。そうしてそれが一方権力者の口からそういうことを言われることによつて、そういうものに対する批判というものは、政治的な批判をやるということは非常に制限されて来る。こういう形が出ておるのでありますが、こういう問題とやはり第五条改正などというものは大きな関連を持つと思います。表面的な意味に取れば、これは解釈の仕様でどうとも取れますけれども、実質的にはそういうところに大きな影響を持つて来ると思うのでありますが、こういう点について最初のそういう基本的な性格と、現在行われておるところの実際の状態というものは必ずしも一致しない。そうしてこの法案改正が、現在のこういうような一つの時局便乗的な言動の中に一致するような方向をとられておる点を我々非常に感ずるのでありますが、こういう点について大臣はどのように一体考えて、最初日本教育改革基本線というものを堅持されようと考えておるか、この点を承わりたいと思います。
  4. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今おつしやいましたことなんですが、実際この五条というものは、大学任命権者に対して大学自治を守ろうという趣意から出ておる。これは大学のために作られておるものであります。それが一方に反映して大学教授とか大学職員を保護するという形になつておるのです。その目指すところは大学自治大学の活動というものを主張しようというのが本法案趣意だと私は思うのです。ところが事実においてそれができなくなつて来ている。その事実は、東京大学とか神戸大学などの事実を岩間さんも御承知かも知れませんが、大学のことを少しでも知つておるものなら、到底だめだということを全国大学関係者のみんな知つておることなんです。だから私そういう点において岩間さんの御精神は結構だけれども、そういう認識大学の中に行われていることの認識をどうか深めて頂きたいと思うわけでございます。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 これは大学関係者が、大学機能が十分果せないとおつしやるのですけれども大学関係者とはどういう範囲において例証を出しているのですか。例えば大学総長とか或いは学部長、そういうような人たち意向、これだけで大学関係者意向というものは考えられないのです。果して全部がそういうふうに考えておりますか。私はむしろ東京大学とか神戸大学に起つておる問題は、大体問題の発端において非常に無理があつたのであります。そうしてその無理のために、一方におきまして飽くまでもそういうような一つ権利を護る、学の自由を護り抜く、護り抜くために当然与えられたところの権利を行使する、その結果がどうしてもやはりいろいろ長引いたり、納得の行かない問題のために、事件がまあ面倒なところに行つておる。こういうふうに思うのですが、この点はどう考えておるか。そもそも最初に無理があるではないか、この無理さえなければ、あえて与えられた権利だからそれを全部使わなければならない、それを悪用しておる人は恐らく一人もないと、こういうように私は思うのですが、そこの具体的な認識について大臣はどういうふうに考えておるかということです。
  6. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はこれはやはり岩間さんとは議論の問題じやなく、認識の問題だと思うのです。大学というものを、大学本来の使命を達成するようにして行くのは、私どもは多年の経験によつて見ても、こういうことをおつしやつているんじや本当大学使命を達成できない。この条文は、本来大学使命を達成するために設けられた条文の本旨を考えて頂きたいというわけなんです。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 まあそこのところは非常に認識の相違になつて来るのですがやはり私は大学使命が、何と言つてもこれは抽象的な論議じやこの問題は明らかにならんと思うのです。大臣大学使命考えておられる点と私の考えておる点については、これはもう違つておる点もあると思います。一致しておる点もあると思いますけれども、併しこれは先ほどから申しますように大学使命と言いましても、この使命を達成するような基本的な生活権、或いは研究費の問題、学生一つの経済的な条件、こういうものが充たされなければ、使命を達成すると言つたつて、どういうふうにして使命を達成するかということを非常にこれは考えるものであります。ところがですよ、例えば具体的に申しますと、現在問題になつておる原田教授とか大山助手、こういう人が東京大学職員組合委員になつておる、委員長或いは副委員長の職におる。どういう点から今度こういう問題にかかつておるかと言いますと、これは私が申上げるまでもなく、一昨年の暮に越年闘争というものが起つた。それで大学教授が御承知のように全く食えないというような状態が出て来るのでありますから、これを多くの人のために組合立場から、どうしても基礎的な条件を闘い取る。そうしてそういう要求を貫徹するために、これは当然組合の役員でありますから、これに対しまして事務局長に対しまして団体交渉をする、こういうことが一つやはり今度の追放にされるところの大きな原因として、理由としてそういうものを挙げられておる。こういうふうになりますと、私は非常に問題じやないかと思います。そうしますと大学のそういう常時職域の生活権を確立する行動、そうしてそれが当然認められたところの団体交渉、こういうようなことを行なつたためにそれが大きな問題になつて来て、そうしてそれが又追放理由になつて来た、こういうことになりますと、文相が今言われました、大学機能を果すということを言われまするけれども、むしろ機能を果すのはどつちであるか、機能というものをこれは抽象的に論じて見てもどうにもならないのでありまして、若しも組合員要求を代表して闘う、そういうものが弾圧されて、その理由によつて追放に該当するというようなことになつて来た場合、誰が一体今後そういうような教授職員生活権を擁護して、大学の基本的な基礎を確立するために闘うか、むしろ闘う人がなくなつて来る。だから文相自身が今言われましたところの大学本当機能を十分に達成するということが土台から崩れて来る、こういうふうに考えるのでありますが、こういう点について具体的にどうお考えになりますか。
  8. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 大学使命ということについては私は問題ないと思うのです。大学学問を研究するところである。それが一番の大学使命です。同時に学生学問を媒介として指導するということが第一の使命で、それについては何も異論はないと思うのです。岩間さんは、使命を達するにはいろいろなまだ不充分な点があるということをおつしやいますが、それは勿論あるのです。であるから私どもも努力していろいろな不十分な点を取除こうとしておるので、その大学使命を達成することを妨害しておるところの一つの事実が第五条によつてつて来ておる。だからそれが改まらないと大学使命を達成できない。併しもつと詳しくは政府委員答弁いたさせます。
  9. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今事例をお挙げになりました東大のことでございますけれどもお話のように単に職員組合国家公務員法によつて認められた程度におきましていろいろ管理機関に対して陳情し、乃至は交渉するということについては、これを妨げることはよくないことだと思つておりますが、具体的に問題になりました人々の行動が、大学管理機関の見るところによりますれば事務妨害であるとか、或いは争議行為指導というような点に該当すると考えるので審査の必要あり、こういうことで審査ということが始つた、こういうのが事実でございます。何も概括的に職員団体の適法な行動についてそうした審査請求をするということは、東大においても他の大学においてもこれはあり得ないことと考えております。
  10. 岩間正男

    岩間正男君 これはまあ文部省の得られておる情報は、主に管理機関のほうから得られておるのですが、実際該当者から、いろいろ文部省はそういう人に会つて話を聞くとか、そういうことをしておられますか。
  11. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 問題は法文にございますように管理機関審査を必要といたしました場合には、何で審査を必要とするかということの事由を書面にしたためて本人にも通知いたしております。そのしたためられた審査請求をいたします理由書というものによつてどもは今の事実を申上げました。
  12. 岩間正男

    岩間正男君 だから私は両者の意見をよく聞いて文部省はやはり原案を作成する、そういう立法的な措置を講ずる大きな責任を持つておるのですから、私はむしろ管理機関だけの話を聞いて、大体それが不当に大学機能を鈍らしておるというふうな見かたは、非常にこれは軽卒であるし、形式的じやないかと思う。もつと具体的に調査されることが必要だ。  それからもう一つは、今申しましたやはり一番何と言つても重要なこの生活権の問題、こういうようなものについて文部省自身も十分でないということは認めておられる。それをやはり職場からそういうような声が挙つて来て、そういう要求を貫こうとする、併しなかなかそれが達成できない、そこにやはり当然これは組合運動の本質としまして、多くの人たち生活権担つてそうして代表がそのために挺身するということになりますと、これは当然熱意を帯びて参りましよう。併しその行動の上つ面だけを見て、それをそもそも引起したところの原因がどこにあるか、むしろ原因は現在のそういうような大学職員教授、そういう人たち生活権が確立されていないということです。むしろそれは文部省が大半を負わなければならんところの問題だと私は思います。ところがそのことは問題にされないで、そうして結果そのものだけを見て、そこだけを問題にして来るというような問題の取上げかたによつて、而も今度は大学のそういう一つ既得権、そうして教授職員を擁護するという既得権が非常に遷延して来るという立法措置をとらなければならなかつた、そのことがわからない。こういうふうに申し上げておるのでありますけれども、そういう点をはつきりこれは文部省としては情報をつかんでおられるのでありますか。
  13. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は予算委員会に招かれておつて退席しなければなりませんから、ちよつと私の考えを申上げて置きます。この法律そのものが何のために作られたか、そういう点がこの法律にとつて最も重要な点だと思うのです。これは先ほどから申しておりますように、大学任命権者に対して、自分たちが自由を持ち自治を持つておるという大学立場からこれはできておるわけなのです。それが阻害されておる。それはどつちから報告を受けたかということは、どつちから報告を受けたにしろ、もう六カ月経つても七カ月経つても、少しも進展しないという事実がこれを証明しておることなんですけれども、それでは大学というものは到底大挙の使命を達成できないというのは明らかな事柄だと思います。そういう意味でこれを改めるということが、大学本来の使命を達成するに是非とも必要なのである。それならば大学職員はどうだ、これは人事委員会に訴えて行くという、そういう基本的な権利の擁護という途はあるのですから、それが全然ないというなら別ですけれども、そういう途は幾らでもあるのです。この法文本来の精神がどこにあるかということから論議をしなければならないと思います。岩間さんはほかにのいろいろな悪いことがあるのじやないか、ほかにも大学にとつて悪いことがあるから、この悪いこともそのまま置いて行くというわけには私は行かないのです。少しでも大学機能を阻害することは、それを取除くということが私たちとしてなさなければならないことだと思います。私はこの間から詳しく述べておるから、岩間さんにはもう少し了解して頂きたいと思います。私らの本当日本の文化を進めたいという精神を私は了解して頂きたいと思う。
  14. 岩間正男

    岩間正男君 私も了解したいと思うのですが、了解できないので何回もお聞きしておるわけです。
  15. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) これは少しでも大学実情を知つておる人は、これらの点はみんなが支持してくれる。これは私は決して党派のことではなくして、党派を超えて、私は大学の事情を知つている人からは支持を受けるということを信じておるのです。今日は私はこれから用があるから大変済みませんけれども、又他の機会に一つお願いいたします。
  16. 岩間正男

    岩間正男君 大学自治と言われますけれども、これは大学のそういう、例えば今の問題について輿論調査でもされるとか、それから関係者の、全学投票というようなことでもされたのでございますか。今大臣は退席されたのですけれども、これは大臣の接しておられる人は、恐らく総長であり学部長であり、或いは昔の知友関係であり、そういうところから大臣は聞かれると思う。むしろ大学にはいろいろ助教授助手、講師という人たちもおりましようし、又これは学生もその関係者でないと言うことはできないのであります。なぜかというと、学生は受ける立場教授を受ける立場としましても、もうすでに成年であり、そういう人たちがこの問題に対して入学の自治立場から深い関心を持つておるのは当然であるし、望ましい傾向なんです。こういう点から、そういうような人たち意見大学本当に、文部省調査してはつきりと具体的につかんでおられるのですか。大学自治大学自治ということを言いますけれども、誰のための自治か、総長学部長のための自治であつたならばこれは問題だと思う。それではどこに民主主義がありますか。
  17. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 大学管理機関から審査を必要といたしました事由文部省において是と見るか非と見るかという御質問のように承わつたのでございますけれども、これはどうも任命権者、或いはその下僚でありまする文部省の者どもといたしまして、その意見は申述べられない、これがこの五条精神じやないかと考えるのでございます。任命権者大学審査ということを前提としないで或いは任免について、懲戒について発動することがいけない。とにもかくにも大学審査を経た上において任命権者の発動がある。こういう趣旨でございまして、今の事案につきましては、大学管理機関審査を必要として目下審査継続中でございます。審査の結果を得ません暁においては、文部省といたしましてその審査したことが、果してどういう意味があるのかということは申しにくいと思う。ただこの法案五条改正を提案いたしましたのは、大臣からも繰返して申上げているように、要するに国家公務員法及び地方公務員法というのは、公の機関が能率的に運用するということがその念願であつて、その意味において制約する点は制約するし、或いは保護するところは保護する、こういう観点に立つて五条を見ました場合に、今大臣の話されましたように月に亘り年を経ても大学管理機関審査が終らないということであれば、そういう状態はこれは改善しなければならん。そもそも五条の置かれたのは、本人の申立を聞いて審査を慎重ならしめる、こういう趣旨であるという見解に立ちましてこの五条改正を提案した次第でございます。
  18. 岩間正男

    岩間正男君 私の質問に対する答弁とは思われません。私はこの自治というものを文相が問題にされましたから、この自治は何ものであるか、大学総長や部長のこれは自治であるか、或いはもつと広汎な人たちを含めて、そういう人たちの世論の結果であるかということを私はお聞きしたのであります。文部省としては事由が報告されて、その事由が適当であるかどうかという判断、これ以外に述べられない、こういうことを言われているのでありますけれども、成るほど一応そうでありましよう。併し本当文部省はこういうような事態がスムースに行つた場合はそれでいい、ところがスムースに行かないで、それが長引いておるという現実が起つておる。その現実を一方的な判断で、これは関係者のほうで反対闘争をやるからそれだから悪いのだ、こういうふうな一方的な独断によつてこの問題を処理するのは問題である、こういうように申上げている。文部省は、大学機関に申出て民主的に、このような改正が果して正しいかどうか、こういうことを全学投票によつてつて見るというような方法をとつて見たらどうかということを、こういうことを指示することもできる、助言を与えることもできる。真に内容的な指導をするなら、指導とは言えないまでも、助言を与えるならば、そういうことができるわけでしよう。その上に立つて判断したらどうかというようなことを私は申上げた。私はこれ以上あなたと議論しても仕方がないのですが、私が申上げるのはそれだけですよ。大学の先生を食えないような状態に陥れておつて、こういうような一方において法の改正をやつて、そうしてそのような運動に追い込むのは正しいかどうか、この点については何ら根本的な回答は実はない。大臣お話では、一方では大学欠陥がある、そういう経済的な問題についても随分欠陥がある、これについては十分でないということは認めておられる。文部省のいろいろな調査や或いは教育審議会調査した報告書を見ると、歴然と文部省自身も認めている。経済的に欠陥があるということは歴々としている。文部省が今まであんなに率直にものを言つたことはないので、あの点は相当正しいと認めているのですが、そういう事実があるでしよう。そうしてそれが解決が付かないままに放つて置いて、そうしてこのような法の改正をするというこの意図を総合して判断するときに、そこに非常な大きな問題が出て来るということなんです。だから言葉では多く言われましたけれども行動的にこうするのだということについては何の答弁もない。私は一時間近く質問を続行しておるわけでありますが、結局何ら明確な答弁はあり得ない。ただ言葉の綾だけで引廻されておるという結果になつて、私は甚だ不満足で、だからこの点は大臣から明らかにしてもらわない限りにおいては、やはり私の質問は継続されると考えるのであります。私は時間の許す範囲におきましてこういう問題について私は飽くまで伺いますが、先に行つてああしまつた言つたつて……。単に一つ党派とか何とかいう問題じやないです。今後日本の文教がどうなるか、又民主化がどうなるかという問題でしよう。私は徹底的にこの問題を明らかにしなければ、私のこの法案に対する責任は明らかにできない。文相がおられないのですから、私の総括質問は中止して置きたいと思います。
  19. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは逐条の……。
  20. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 逐条のほうでもいいのですが、この前、逐条は第十五条で途中でしたので……、結局第十五条と第五条の三項から五項までの改正は全く関連するわけです。どちらでもいいと思うのですが、これは問題の焦点になるのはどちらですか……。
  21. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは逐条で十五条……。
  22. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連していますよ。さつき大臣にお伺いしたいと思つておりましたが、大臣お帰りになりましたので、具体的な事実をお伺いするわけですから、政府委員のほうでお答えできると思いますからお願いいたしますが、大臣東大とか或いは神戸大学の例を挙げられまして、その実情大学使命を達し得ない実情に到達しておる、これは大学関係者ならどなたでも十分知つておることで、議員諸君認識が不足である、こういうようなことを言われたわけですが、一体大学使命を達し得ない実情に来ておるという、その実情をもう少し具体的に話して頂きたいと思います。
  23. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 大臣の申されましたのは、要するにこの審議が非常に遷延いたしまして、月に亘り年を経てなお解決の曙光も見出せないというような状態にありましては、行政部面の非常に又重要な人事行政についての能率を阻害すること甚だ大なるものがある、この事実は皆さんも御存じじやないか、こういう意味お話しになつたのではないかと考えております。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 審議が遷延した主なる理由
  25. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 一つは、この第五条規定解釈につきまして、提案の理由にもありますように、いささか疑義があつたせいかも知れないのでありますけれども、従来の規定におきましては、例えば本人代理人弁護人請求することができる、こういう規定がございますので、それが若し本人利益という観点にのみ立つて考えられます場合には、何人といえども代理人を次々に本人請求によつてその審査の場所に呼んで陳述せしめる、或いは参考人につきましても何人でも出せる、又或いは管理機関の出しました参考人に対して何回となく反対尋問ができる。いわゆる争訟、法廷における争訟形式というような方法によりまして、本人自分利益を保護することを心行くまでやる趣旨規定である、こういうふうに解されました場合には、これはやはり本人としては自然にそうした請求を繰返すことになりまして、審査は非常に遷延する、こういうふうに考えられるわけであります。そういうような点と、それからいま一つは、先日大臣も申されましたように常に公開しなければならんということになりますと、この審査が学園で行われる審査でありますので、学生も傍聴に参ります、学内におきまして一部の教職員管理機関が対立抗争する、その抗争の過程においていろいろあらゆる種類の問題について、論議をする、こういうことを教育的に考えました場合には、時として教育上望ましくない場合もあるのではないか、そういうような趣旨からいたしまして、今回の改正におきましては、大学管理機関審査する場合には、本人に対して口頭又は書面で陳述する機会を与える。又公開審査その他の手続につきましては、大学管理機関教育上の見解その他良識によつて適当と認める場合には公する不適当な場合には公用をしない、或いは制限するというようなことは、大学管理機関自体が良識によつて定めることによつて、この第五条の本来の趣旨を能率的に発揮するように改正いたしたわけでございます。
  26. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大学から幼稚園までの教職員という者は、その人がその学園内で教育ができないとか、不都合になて来るとかというわけで転任しなければならない、或いは教職員として好ましくないから降任或いは免職というような事柄については、教職員であれば、周囲が本当にそういうようにみんなが考えて納得しているようなことならば、いろいろ外部から力を加えなくても、教職員という者はみずから自分の出処進退をきめるだけの私は考えは持つていると思うのです。過去の事実においてもそういうことを私は言えると思うのです。こういうように非常に遷延するとか、或いは学内で両派が抗争するような事態に至るということは、ここにやはり無理があるのじやないでしようか。私はこの第五条というものは、やはり大学教職員は簡単には首は切れないのである、身分は保障されるのだ、大学自治学問の自由というものも保障されるものである。時の流れには左右されずに、学問、学術という立場から一国の学問というもの、又国の政治の動向というものを全く純粋な立場から研究し、又意見を発表して行けるような身分は保障する、簡単には切れない、こういう立場で私はこの第五条は作られたと思うのです。この際想起しても、戦時中に大学教授が皆軍部に低頭してしまつた。理科学方面の教授の大会でも、原子核あたりの意見を述べると、今原子核なんかの意見を述べたからといつて、それが今の軍事力に何の関係があるか、そういうものをもてあそんでいるのは日本の学者じやない。あたかも国賊のごとく言つて、皆今直ちに軍事力となるような、いわゆる低級な応用学ばかりに没頭し、その間にアメリカは原子核の研究をして置いて、広島や長崎にどかんとやられて、一時に参つた。こういうような我々過去の反省をするわけでして、そういうことのないように、私は大学教授の身分というものを保障する意味において、簡単に切れない、安心して学務に専念させるというような意味で私は第五条というものは非常に存在価値があると思うのです。それでいろいろ紛糾して、大学使命を達し得ない事情に来たと言いますが、私は結局これは具体的に言えば、やはりレツド・パージに関係していると思うのです。大学教授はやはり真理を探求する意欲は非常に旺盛である。学生も非常に理想に燃え、真理を探求する情熱に燃えておる。そこに日本法律で保障されている思想の自由というようなものが、憲法を別にして、世界情勢とかいうものに流されてそうしてレッド・パージのような形に来るところに、すべての人を納得させ得ないところに、こういうことが起るのじやないか。若しも日本の国内なり何なりにおいて共産主義を持つている学者がいかんとか、生徒がいかんというならば、別の法律でこれはやるべきであつて、そういう一つの問題を解決する手段としてこういう教育公務員特例法の第五条の一部をピック・アップして改正するところに、私は問題があるのじやないかと思います。これはこの改正案を見た識者という者は、皆これはレッド・パージに関係がある、それを簡単にやれるようにする仕組と考えられる、こういうふうに考えているわけです。或いは国民としてはそういう意味において了承する人もあるかも知れません。併しそれだけでなくて、この第五条第三項から第五項までの改正において、私は大学教職員の身分の保障なり、延いては教授の自主性といいますか、学問に対する自由というような点も阻害されて来て、大東亜戦争に日本大学教授が過ちを犯したようなあの前車の轍を又蹈むのではないか、こういうことを懸念する意味において、神戸或いは東京だけの事例を以て、僅かそのくらいの例を以てこの非常に民主的な第五条第三項から第五項までの改正をされた理由というものが、どうしても納得できないのです。  そこで私はお尋ねいたしますが、今私の申したことも関係があるのですが、先ほど大臣言葉を聞いていますと、東大なり神戸大学の事例に関して、日本大学には公開審理というものは絶対にできないのだ、それは全国の大学関係者が皆認めているのだというような口吻が私はとれたと思うのです。で局長としては決してこれは公開審理を否定するものではないと、公開審査をする能力のある大学は、それは公開審査をやるのが望ましいのですと、こう言われましたが、大臣の見解と局長の見解も併せて私は公開して頂きたいと思います。
  27. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今お話の前段にございました大学学問の研究の自由を守らなければならない、この点につきましては、大臣も繰返しその根底に述べておられますように文部省政府側といたしましても、全く見解を一致する問題だと思つております。ただこの学問の研究の自由を維持するのに如何なる方法をとつておるかという点につきまして、この教育公務員特例法の現行法につきましても、又改正案につきましても、それは大学管理機関が人事について審査をしなければ、任命権者といえども処分なり懲戒ができないのだということによつて、その学問研究の自由、いわゆる大学自治を確保しようというところにあるわけでありまして、大学管理機関というものは、御承知のように大学の協議会について考えますれば、それは各学部の教授から選任せられた学部長であるとか、又各学部において選出されました代表教授であるとか、或いは又それぞれ民主的方法によつて選出された部局長であるという者によつて構成せられておる協議会それ自身の構成は、大学の非常に自主的な又民主的な方法によつて構成せられておるのでありまして、その大学管理機関大学自治を守る、こういう点に全般の信頼を與えまして、大学管理機関審査ということによつてそうした只今の御懸念のような学問研究の自由が他から妨害されるということは、大学管理機関自体に守らせる、こういう点にございますので、どこまでも本人本人の保護という立場のみによつてそうした大学学問研究ということをその一点からのみ守るとは考えられないのでございます。  それから第二にレッド・パージについての関連についてお話になりましたが、勿論このレッド・パージという言葉は、我々その内容をはつきり捕捉し得ないのでありますが、いわゆる或る政党に属するとか、或る思想を持つておる者に限つて大学から追放するという意味合いでありますれば、大臣が繰返しこの国会において述べられているように、そういう意図は毛頭政府としても持つていない、又大学長もしばしば各大学において声明をいたしておりますように、そういう点はないことだと考えております。ただ国家公務員法或いは地方公務員法の分限の規定に触れまするような行為のありまする者は、これは国家公務員、地方公務員として、教育職員として適当でない。そういう人々はこれは公共機関から排除しなければならない、そういう趣旨であるわけでありまして、第五条改正お話のような問題と格別の因果関係を持つているとは考えられないのであります。  それから先ほどこの公開審理の問題について大臣の御答弁を私聞いておりましたが、公開審理が絶対にできんという言葉はお用いになつていなかつたのじやないかと思います。現にありまするような、いわゆる争訟的色彩を持つてこの第五条が学内において月を経て運用せられるということは、これは何とかして改正しなければならん、こういう意味合いで第五条改正の必要のあることを申されておつて、絶対に将来公開は認めないというお言葉は今までの大臣のお言葉からは私ども汲み取れないのでございます。で先ほども申上げておるように、公開にするかしないかということは、大字管理機関それ自身が良識を以てお定めになれば結構だ、こういうふうに考えるのであります。この点大臣のお考えも別に違うことではないと信じております。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 局長の先般その大学で公開するのは適当である。公開の能力があれば公開したらいいのだ、こういうことを申されましたけれども、現在ある、第五条の三項から五項までわざわざあるのを改正する法律案を提案されたり、実情としては、各大学は渡りに船ですね、管理機関は絶対に私は公開審理なんかやらないと思う。これは常識じやないかと思います。それと今局長のほうからレツド・パージと関連がないという非常に上手な御説明があつたわけですが、必ずしもそれのみと関連しなくても、私は現在のような日本の激動期においては、この第五条改正というものはやらないほうがいいと考える。それについてもう少し申上げますが、そのわけは、そうしてお尋ねするのですが、一昨年大字の教職員について首切りの問題があつたときに、各大学の学長は一つの指示を受けたと考えられるのですが、そして非常に信念のある、肚のある学長はその指示には動かないで、そうして泰然としておつた。ところがそうでない、若い学長さんは、あわてふためいて、辞職勧告の何をやらして、そうして途中で振り上げた刀が下しどころがなくなつて、非常に困惑したというような事実もあるわけですね。それが大学自治ですよ。又この地方公務員である教職員についても、教育委員会あたりで飛んでもない整理をやつて教育基本法の第八条にも該当しないし、根拠のないのを多量に整理して、そうしてこれを審査要求されて、審査を、その会議も開けないで、未だに開けずにいるような事実が各府県にたくさんあるわけなんですね。これは今日本の置かれておる国際的なこの冷厳なる立場からこういう事態も起つて来るのかと思うのですが、そういうようにこの非常に激動期である我が国において、そういう行過ぎというようなものを是正する、そういうことのないようにする意味においても、私はこういう公開審理というものがあつたほうが、大臣が言われたマイナス面よりもプラスの面が大きいのじやないか、こういうふうに考えるわけなんですが、これからお尋ねになるのですが、そのプラスの面とマイナスの面というものを、文部当局としてはどういうふうに把握されておるか。どうも御説明随分お聞きしたのですが、承わつておりますというと、東大と神戸の大学のこの二件だけで、それのみに非常に気を捉われて、そうして小の虫を生かして大の虫を殺すというような点がまあ懸念されるわけなんですけれども、その点は如何でありますか。
  29. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今のお尋ねの点につきましては、まあ前回から申上げたわけでございますけれども、国家公務員或いは地方公務員の身分保障の問題といたしましては、国家公務員法の八十九条以下の規定地方公務員法の四十九条以下の規定におきまして、国家公務員については人事院、或いは地方公務員については人事委員会、或いは公平委員会において処分の後においていわゆる争訟主義による形式によつて十分慎重な公開審理が行われる。若しその結果処分が非となりますれば、遡つてその処分は取消され、不利益は救済せられる、こういうわけでありますので、教育公務員につきましてもこの二つの規定によりまして十分身分保障は徹底しておると考えるのでございます。只今のこの第五条の問題は、大学管理機関任命権者との関連において、任命権者が専恣な処分をしないために、それが実施の前提といたしまして大学管理機関審査を必要とする、その大学管理機関審査を適正ならしめる意味において、一面本人の陳述も聞く機会を与える。こういう関係になつておりますので、第五条を必ずしも本人の身分保障という一点のみに解釈はできないので、やはり人事に関しまする両法案の全般の趣旨といたしまする行政の能率促進というような点によつてこれを見まする場合に、行政の能率阻害、只今マイナスの部面をお話になりましたが、そうした面がありますれば、それは仮に事例が少いにいたしましても、立法として、或いは適用としてこれは忽せにできない問題と考えるのであります。殊に重要な人事行政であります点から慎重は必要でございますが、又スピードも必要である。そういう面において今マイナスとお話になりましたが、そうしたマイナスの面は速かに除去しなければならんと、我々は固く考えております。
  30. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この公開審理をやるのとやらないのと、この二つの場合において、大学教授の旧来からあるところの閥、学閥、これの関係はどうでしようか。終戦後いまわしい学閥というのは非常に解消され、喜ばしい傾向にあると思うのですが、公開審理をすることによつて、私は再び学閥というようなものが人事面に出て来て思わしくないのじやないか、こういう見かたをしておるのですが、政府としてはどういうふうに……。
  31. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 人事に関しまする処分の一連の経過において若し仮りに公開審理、或いは審査ということが全然ないとすれば、お話のようだと思つておりますが、先ほど申上げましたように事後処分については非常に慎重に、而も争訟形式をとつた公開審理がともかくも行われておりますから、事前の審査につきまして公開審査を必至とするとは私ども考えないのであります。殊にその審査をいたします場所が学園でございますので、学生に対しまして教育的配慮ということは非常にこの問題について考えなければならんじやないか。単に職員の身分保障、個人の主張を十分述べさせるという一点のみにこの問題を考え得られないというふうに私ども考えられるのです。
  32. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はこの大学教授という者は国家公務員であることは勿論でありますけれども、やはり私は学生の先生だと思うのです。そういう意味で曾ては学閥などで蔭から蔭に人事が行われておつたのが、こういう公開審理ということになれば、教授と生徒の関係で、大学生といえば相当の私は常識も持つておりますし、見識も持つて来る年齢であります。学生がそこにあるということが私は審査というものをやはり厚生に明瞭にしてくるのじやないかと思います。随分管理機関でやられるから云々と申されますけれども、この五条第三項で「口頭又は書面で陳述する機会を与えなければならない。」こうありますが、強引にやろうと思えば、書面で陳述さして置いて、機会を与えて置いて、それをほご箱の中に放り込んで置けばそれで問題がないのです。更に又審査を行う場合に必要とするときは参考人云々とありますが、必要と認めないでこうやつたらこの条項は死んでしまう。だから結論として第五条第三項——第五項をこれで改正したら、私は簡単に教授の首を右から左にすげ変えられ、延いては教授のやはり身分というものは非常に安定度を失つて来る。それが更に延びてやはりこれは学問の自由というような点に及んで来る。こういうことを懸念するわけなんですが、局長は大学管理機関でやられるから、やられるからというけれども、この第三項の「与えなければならない。」とか、「必要があると認めるときは、」こういうような点と、現行法の特例法の第五条の三項から五項との間の差等というものをどの程度に考えられるか、この点をお伺いいたします。
  33. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今いろいろ御懸念の点がございましたけれども大学管理機関とそれから一般の教授という者を全く第三者関係に仮に置いて考えました場合には、或いはお話のような非常に残酷なことも懸念されないでもないかと思つておりますが、要するに大学管理機関といいますのは、先ほども申上げましたように各学部において教授間において選挙された学部長、又は学部から選挙によつて選出せられた教授総長、部長たちによつて構成せられ、大学自体で民主的に構成せられた管理機関でありますので、その管理機関が外部に対して、任命権者に対し大学自治を守り、大学学問研究の自由を守るという立場において、こういう機関が、こういう機構が置かれたわけでありますので、大学管理機関自体がその本来の職能を考えました場合に、お話のごとく一部の学閥により、或いは全く他人のような考えを以て学内の人事行政をやるというようなことは、これはあり得ないことだと我々は考えるわけでございます。
  34. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 第十五条に参りまして、この前関口局長のほうから答弁を頂いたのですが、稲田局長に更にお伺いいたしたいと思います。それは今大学教職員については事前審査のほうの公開審理の取上げということが問題になつておるわけでありますが、高等学校以下の教職員になりますと、公開審理は勿論のこと、事前審査も認めていない。それにつきましてもさつき私申上げましたように一昨年あたり随分ひどいことがあつて、事後審査要求したが、事後審査を開き得ない、未だに開かずにおる。こういうふうな行過ぎが各県に相当あつたわけでありまして、大学教職員では事前審査を認めて、同等学校以下の事前審査を認めていない、必要としない、こういう理由、見解、それを少し詳細に承わりたい。
  35. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 大学自治という問題について、それがどういう点から発生したかというような点については、非常にこれは論議もございましようけれども只今の御質問の点につきましては、同じく学問研究の自由と申しながら、大学のそれと初等、中等教育関係のそれとは質の相違と申しますか、少なくも非常に大きい程度の相違があるのではないかと考えるのでございます。これをまあ暫く法制について考えて見ますれば、大学につきましては学校教育法において教育、学術の研究それ自身がその職能であります。その教育につきましても各講座担当教官は、全く自由な見解において学校教育をなし得る、研究についてももとよりであります。そうした個々の教授たちの自由な教育研究のそれ自身を守る意味において、これは学部長といえども、学長といえども専門外のことについてそう全体的に掌握するという関係には行かない。それが故に学部に教授会があり、学部を通じて学内には協議会があつて学部長教授会の議に従い、学長は協議会の議に従つて運営するところにおいて各教授たち学問研究が維持せられる、こういう状態であろうと思います。勿論高等学校以下の教員についても学問研究の自由は憲法によつて保障はされておりますが、ただこれをまあ法的に公けの機関としての、学校の機関活動としての教員ということについて考えますれば、初等、中等の学校はこれは教育を目的とする機関であつて、教員が機関活動として学問研究をするにいたしましても、教育という面と関連のある必要の限度において考うべきでありまして、個人という問題は別でございます。そうした場合にこの初等、中等の教育については、御承知のように学習指導要領の基準により、教材については検定教科書によるというように、それぞれ教育委員会の教育方針というものに即して教育をする、自由につきましてもおのずからそこに根本的に限度があろうと思います。それにつきましては各教育委員会は教育委員会法によりましてそれぞれの所轄の学校の教育の水準を維持し、向上するという責任を持つております。従いまして各教員の人事につきましても、非常にまあ多数の教員を教育委員会が掌握いたしております。それぞれの教員の活動は、各学校内においても、各教官の間に非常に全体的に密接な関連があります。一定の基準の上に関連いたすことでありますから、校長はその全部を掌握し得るし、又掌握しなければならない。又教育委員会は管下の学校のそれぞれの教育を全般的に掌握して行かなければならない、水準を維持する意味におきましても、教育委員会の計画によつて人事を行なうという必要は、これはまあ大学における人事について文部大臣考えますのとは非常な大きな相違であろうと思います。そういうような次第で、実際において定期異動があり、人事について必ずしも個人の意見というもののみに立脚して考えられない。又そうすることが初等、中等の教育の水準を向上するという点について非常に必要なことだと思います。これが大学と初等、中等教育との凡そ法制上の相当な相違であろうと思います。  それからいま一つ事前審査というお言葉でありますが、これは恐らく教育委員会が処分する場合に、教育委員会が事前審査をしろという御意見のように私伺つたのでありますが、若しそうであるとすれば、形式上教育委員会が任命権者であり懲戒権者であります。大学について任命権者であり懲戒権者であるのは大臣である。大臣教育委員会のレベルについて比較すべき問題である。大臣のレベルにおいては大学の人事についてもこれは事前審査を行わない。なぜ大学について事前審査を行わないかと申しますれば、それは大学大臣という関係においての事前審査で、任命権者である教育委員会それ自身、或いは大臣それ自身が処分を行う場合に、事前審査をやりますことは、これは意味がないのじやないか。そこで処分をいたしました場合に、処分をされた者と処分をした者と対等な形において人事院の公平委員会なり、地方の人事委員会なり公平委員会が裁判できる立場に立つて審査をする、これなら意味があると思う。そうして事後といえどもその処分が間違つておれば、遡りて救済されるのでありますから、本人責任という点についても別に欠くるとこるがない、そういうような理由教育委員会所管の職員につきましては、私ども事前審査は必要ないと考えております。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この点はもうきつく質問いたしません。どうしても納得できないのです。教育が不当な支配に服してはならないということははつきり明文化されているのですが、高等学校以下の教職員ほど不当な支配に屈している者はないのですね。一つには教育財政の面からも来るでしようし、教職員みずからの生活の不安定、これは政策のもたらすところですが、そういうところも大きく原因していると思うのですが、最も高等学校以下の教職員が不当な支配に屈服している。そして事前審査についても今局長は教育委員会がやつてはおかしいというようなことを言われましたが、その点はわかります。併しそれに代るべきものは法制上はないけれども、実質的に事前審査をやるような機関のある郡或いは県は、比較的に人事行政がスムースに行つていることですね。そういう機関のない所は、発令した後に毎年いろいろ問題を起し、一度発令をしたのを修正をやつておる。その修正する場合に政治家まで入つて、非常に人事行政を自主性のないもの、不明朗なものにしている事実があるということも、私は政府委員においてはこれは承知して置く必要があるだろうと思つて、ここにちよつとその点申上げたのです。以下討論になりますので私申上げません。  どうしても大学教職員に事前審査が必要であつて、高等学校以下の教職員には事前審査が必要でないという意味の御説明には、残念ながら了承できないことだと思うのであります。
  37. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私も第五条改正につきましてはその理由を十分納得することのできない一人でありますが、特に局長の説明によりますと、今度改正する理由は、「現行規定が運用上疑義を招きやすく、実施上往々支障を生じますので」、こういう理由が挙げられておるわけです。運用上どういうような疑義があるのかという点について先ほどからの質疑応答を聞いておるのですが、その点がなお私には明確にならない。それから実施上往々支障が起るということについても、事件としては挙げられて大臣からも説明があつたのですがその詳細を聞かないと、実施上どういう支障がある、起つているのか、或いはこれは手続上まずかつたのじやないかというようなことも私考えまして、明確でないのですか、できたら私はこの大学の、実施した学長あたりの報告なり、そういうものを聞く機会があれば非常にいいと思つているのですが、この問題は私はやはり研究の自由、思想、言論の自由というものを束縛する慮れのある改正になるということを心配して、重要な関心を持つている条項なんです。運用上どういう疑義があるのか、或いは実施上どういう支障があるのか、もう少し具体的に一つお話を願いたい。
  38. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 他の委員の御質問に対しまして只今質疑の点は申上げましたので、繰返す点につきましては御容赦頂きたいと思います。要するに一言にして申上げますれば、教育公務員特例法の性格という点が問題だと思います。これは地方公務員法の第五十七条に、教育職員についてその特殊性に基いてこの法律についての特例の制定を許す、但し地方公務員法の第一条の精神に反するものであつてはならない、同様な規定国家公務員法についてもございます。又教育公務員特例法それ自身につきましても国家公務員法、或いは地方公務員法と矛盾する範囲においてはこちらのほうが弱いのだという趣旨のものがございます。それらのものから考えますれば、要するにこの教育公務員特例法の各条文は、或るかたがたが申されまするように本人の身分保障、或いは利益保護という一点にのみ解釈ができないのじやないかと思います。この五条解釈につきましても、往々本人利益保護の一点からこれを解釈いたしますれば、現行法規にありまするように本人代理人、或いは参考人請求して、その陳述をしてもろうことができる。これは本人利益から考えまして制限すべからざるものであるという解釈に立ちますれば、何人といえども代理人を出廷せしめ、或いは証人を喚び、又本人自身も陳述を繰返すことができる、こういうことになりまして、それを制約することが五条精神に反するという解釈になりますれば、これは自然この五条の審理というものは遷延日を久しうするもとになつて来る、そういうような関係から考えますれば、又この公務員法の第一条の趣旨に顧みますれば行政の能率、人事行政といえども慎重を期すべき行政の部面でありますので、とにかく能率ということが第一にその目的となる、そういう点においてこの五条というのが要するに任命権者大学管理機関との関係を規定いたしまして、大学管理機関管理機関の良識によつて大学自治任命権者その他から守るという趣旨を明らかにする必要があるのではないか。五条解釈のあいまいさ、行政の運営が阻害せられておるという事案を見ますれば、改正を必須とするというのが私ども考えでございます。
  39. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 今代理人の例を挙げて、代理人を出して、そうして審理の日を無限に延期することができるというあいまいさがある。そうであればその点だけをそういうことのできないようにすればいいのであつて、今度の改正案の中にも「参考人の出頭を求め、又はその意見を徴する」ということがありますが、これは参考人を幾人でも出して無限に遅らすことができるのです、そういう解釈をすればそれは取扱上そういうことがないようにして行けば、別に疑義がないのじやないですか。
  40. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 今度の場合は、根本の趣旨とするところは、大学管理機関がその良識によつてこの審査を運営して行くという点にあるのでありまして、証人、或いは代理人の喚問につきましても、本人からも請求もできましようけれども、この条文といたしましては、それを決定いたしまして、実際にそれを認めるのは、第四項によつて大学管理機関であります。その点において現行法とは違うのです。
  41. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 いやその点はですね、弁護人をたくさん呼んで困るというのだつたら、弁護人を二名とか、三名とか、限定したらその幣は避けられると思います。
  42. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 御言葉の通りでございまして、今度の改正においてはそういう点を明らかにいたしまして、証人や参考人を呼ぶのは大学管理機関が決定するという趣旨を明らかにいたしまして、現行法におきましては本人がそういう代理人参考人を呼んで陳述させることができるというような文面に解釈せられますので、非常にここの点を本人擁護主義に解釈いたしますれば大学管理機関といえども制限をし得ないということに解釈せられる点を改めたのであります。
  43. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 それじやもう一つだけ、私は改正する前の現行法のほうがいいと思います。弁護する場合には本人立場をよく知つている本人から、その参考陳述をする人を選ぶほうがより合理的だと思います。大学管理機関本人意向によらないで自由に参考人を求めるということであれば、これは私は一方的になつて本当の参考にならないと思うのですが……。
  44. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今の点が、この五条解釈に当りまして、これをいわゆる争訟主義によつて五条を見るか、或いは聴問主義によつて五条解釈するか、その立脚点によつて説の分れるところであろうと思います。第五条人事委員会、公平委員会、或いは地方の人事委員会、或いは公平委員会における規定と非常に内容が似ております。似ておりますけれども、根本の精神は私違うだろうと思います。このいわゆる事後処分における審査につきましては、一方において処分した者があり、処分された者がある、それを第三者的立場において公平委員会、人事委員会が裁くと、こういう恰好でありますので、いわゆる争訟主義というような形に解釈いたしまして、その審理はいわゆる争訟法廷においての審理と同じような意味合いにおいて行い得るものだと考えております。ただこの五条におきましては、審査を必要と考えた者と、その審査をする者とが大学管理機関それ自身であります。従つてここにおいていわゆる第三者的立場において裁判するというような形は、これはとり得ない。なぜそれではここに証人を呼んだり代理人を呼んだりするようなことがあるかといえば、審理を必要とする者それ自身が、審理に対して必要な限度においてこういうことをやればいいのじやないか、要するに行政部門においてこういう争訟関係の形態を一部借りております。一部借りておりますけれども、飽くまでもこれは行政行為でありますから、第一条にありますように、行政の能率という点を考えなければいけないというような意味合いからいたしまして、一部借りておりますが、それは行政行為の非常な例外であり、例外規定は極力制限的に解釈しなければならないという法律の原則から見ましても、この形がたとえ争訟形態に似ているとはいたしましても、それを非常に広く解釈いたしますことは、行政関係の法規である本質を失うものだという観点に立ちまして、この改正法を提案したわけであります。
  45. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 大学管理機関が、この教授はよくないということで免職処分にするという場合を仮定したとき、大学管理機関参考人の出頭を求めるという場合に、これは一方的になると思います。というのは管理機関参考人を呼ぶ場合は、やはり管理機関の都合のいい意見を持つておる者を呼ぶという慮れがあります。従つて本人立場を十分に弁護し、陳述するという公平の機会が失われるのじやないかということを心配するわけです。従つてこれは本人立場から陳述してくれる参考人の言う意見を聞かなければ、公平な判断ができないのじやないかというふうに思うわけなんでございます。それが行政法とか何とかどういう関係になるか知りませんけれども、それは現行法のほうが結局うまく行つておるのじやないかと思います。ですからこれを改正する理由というものは私には明確にわからないのです。
  46. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 只今お話によりますと、第五条の段階において、大学管理機関と、それから問題になつております本人という者が全く相対立して、対峙しておるという前提に立つて考えだと思つております。これは事後審査におきましては大学管理機関任命権者をひつくるめて、本人と対立関係に立つておるわけです。その場合におきましてはお話のように争訟主義によつて本人利益をどこまでも救済する方法をとるのが適当だと思つております。第五条の段階におきましては、大学職員の内部から選ばれた大学評議会が、大学自治を、大学の権威を、大学利益任命権者に対して擁護する意味において審査をいたすのでございますから、その前提において管理機関審査せられる者とが対立関係にあるという観点からこの五条をお読み頂きますと、その点が第五条精神と私どもの見解では相反して来るのじやないかと思います。
  47. 岩間正男

    岩間正男君 ちよつと関連してお伺いしたいのですが、大体何ですか、今の稲田局長の説明だけ聞いていると、何だか辻棲が合つているようで、それで如何にも尤もらしく聞える。併し問題は、私は果してこの文部省当局がですよ、具体的に或いは東京や神戸の実態をどれだけ掴んでいるか、その点については何ら……。情報を開いて見ますと、著しく一方的な管理機関、そういう立場からしか聞いていない。だからこの問題は本当にもつと十分に実態が把握されなければ、果して今度の改正がいいか悪いかということはまあ疑問だと思う。大体管理機関が今度の公開審査の問題を、十分に正しく民主的に一体運営なんかしたかどうかというようなことについても非常に問題があります。この管理機関の構成そのものが、果して真に民主的になつているかどうか。一方において非常に一方的に運営されるというようないろいろな事例を我々は又聞いておる。そういう点から考えて、これは実態が把握されないで、ここで一つの架空なものとして論議をする。私はこの法案そのもの現実に即応することができないと、こういうふうに思います。だから当委員会においても、これは一つの私の提案でありますが、これはどうでしようか、管理機関の中に、これは殊に該当して現在審査を受けている立場、或いは学生諸君の立場もあるでしよう。それから大学のそういう関係者、こういうような人たちの、むしろこれは参考人の出頭を求めて、果して両者の言い分はどういうところにあるか、実態はどうであるかということを我々ははつきりつかまえなければ、この法案の問題に我々は十分タッチできない、こういうふうにさへ思うのであります。更に問題になつて来ると思うのは、この法案の説明が如何なる美辞麗句を以てなされようとも、現実に一般に今、日本の置かれている立場、更に一昨年あたりから進められて来ておるところのこの進歩的教員の追放の問題、それが十分にできない、そのための法的措置であるということは、これは紛れもない事実であると思う。こういうことから大きな関心を持つて、それでこれに対してこういうことが日本の学の自由、大学自治、こういうようなものを今後、更にそれだけじやなくて、これは日本の将来に対してどれだけ大きな影響を持つかということを多く心配しておるところの諸君があるのですから、こういう問題をやはり我々は等閑に付して、そうしてこの問題を単なる一つの法理論やそういうもので形式的にこれは処理したならば、全く責任は十分に負い切れないと思うのです。従つて私は一つの提案でありますれけれども、両者の言い分を聞いてもらいたい。果して本当に長引かしたのは誰か、管理機関であるのか、或いは審査を受けておる人なんであるか、それからその方法はどうなんであるか、やり方がどうなんであるか、具体的に民主的に運営されたのかどうか、これが両者の言い分であると思う。我々はこれに対して公正な判断をしなきやならん。それから今問題になつているレツド・パージとの関連においていろいろな問題がある。こういうような問題について当委員会で十分に解明を与える。我々はこれについてはつきりした見通しが持てないのでこれに賛成することはできない。現に稲田局長の説明やら天野文部大臣の説明では、すでにこれは架空の事実になる。具体的の事実は文部省において一般的に調べていないということを聞いておる。例えば学生側と会つているか、或いはそういう者の意見について聞いておることがあるのかどうか。或いは実際一番いいのは、今これに対して審査を受けている立場の人を呼んで、そういう事態を本当に究明したいのである。言い分を聞いたのか、あるとすればはつきりそういうような具体的な情報を示してもらいたい。
  48. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 今実態把握の問題であります。先ほど岩間委員からの御質問は、こういう職員組合行動というものは、岩間委員の御見解では適当なものである。これを一体問題にして審査をしているということについて是と考えるか、非と考えるかという、こういうお話でありますが、それはこの五条というものは、任命権者がお先走つてこれは判断してはいけない。大学管理機関審査をしなければ、任命権者は出られない規定でありますから、未だそれらに対する文部省としての見解は披瀝できない、こういう意味で申上げたのであります。他の意味での実態、遷延して日を送つて、審理がまだ何ら解決の曙光に至つていないという事実、如何なる事由を以てこの審理が始つたか、それについで如何なる論議がその経過にあつたかという、まあ審理調書のようなものはよく我々読んでおります。従つてそれらのプロセスについての実態は十分文部省が把握いたしまして、それによつてこの改正を必至と考えて提案いたした次第であります。
  49. 岩間正男

    岩間正男君 まあそういうものについて我々は実は文部省は出し惜しみをしておるのではないでしようが、聞かされていない。文部省は、どういう根拠においてどうなつたか、この点も必要でありますが、我々自身の身を以て、文部省の感覚でなく、我々自身の感覚で以てこれは見ることが今や必要になつて来ている。どうも臭いものには蓋をするというような感じがしてしようがない。それと一方これをむしろ文部省立場としたら、審査を受ける立場を保護する立場本当だと思う。ところが逆に、これは審査をする立場が非常に擁護されて答弁されている。これは速記録を調べて見ればわかる。あらゆる場合においてそうだ。一遍だつて審査を受ける立場によつて答弁されたことがない。こういう事態から見でもはつきりしておる。我々はそういう文部省的の一つの感覚を以てこの事態を処理することはできないのであります。原案が作成されて提出されておりますけれども、これを判断する大きな資料としてこれは十分でないかも知れませんけれども、この委員会としてはそういう機能を尽して頂きたい。こういうふうに委員長に提案して置きます。是非やつて頂きたい。
  50. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ほかに御質疑ございませんか。
  51. 岩間正男

    岩間正男君 今のことを謳つて頂きたい。
  52. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) これは理事会でやります。
  53. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 先ほどの稲田局長の説明を聞いておりますというと、とにかく五条は、これは大学管理機関任命権者に対していわゆる教授の身分を守る立場にある、こういうふうな御説明であつたように思います。そういうふうであるならば、却つてこれを改正しないで、このままにして置くほうが本当でないか。任命権者に対立してそうして大学自治を守り、教授を守るという立場であつたならば、一体この教授を守るという立場を公開審理なんかというようなことをやらないで、なぜ改正したか、その点を伺いたい。
  54. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 又前言を繰返すことになるわけでありますけれども、身分保障として本来国家公務員法地方公務員法教育公務員特例法の三法がまあ所期いたしましたことは、処分のありました場合に、被処分者と処分者と相対立した形においてそれを公平委員会或いは人事委員会或いは地方の公平委員会が裁く、ここで目的を達成することを考えております。事後の処分でありましても、若し処分が間違つておれば救済は完全にせられるわけであります。今五条を設けましたことは、任命権者大学教職員に対しましては審査処分ができない。一応大学管理機関審査を必要とする。その大学管理機関審査というものは、勿論公平、慎重は必要でございますけれども行政部面の一環として一定の能率とスピードを必要とする。そういう意味において障碍になる規定改正いたしまして、本来の五条の置かれた趣旨を明らかにしたい、こういう念願でございます五条を必らずしも本人利益保護という一点にのみ解釈し得ないことは、国家公務員法及び地方公務員法教育公務員特例法、それ自体の性格によつて考えるほかないわけであります。
  55. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 今の御説明を聞きますというと、本来は守りたいのだけれども、能率とかスピードとかいうようなことによつて方法をこういうふうにしたいと、私は伺うのでありますが、それでいいでしようか。
  56. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 守るところは国家公務法、地方公務員法のそれぞれ事後の審査において十分守り得る。この五条のほうは、大学管理機関大学自治というものを提げて任命権者との関係において立つ問題で、大学管理機関というものが何も大学から離れた立場であつて本人と対立抗争の立場にあると解釈すべきものではないのではないか、こういう趣旨であります。
  57. 岩間正男

    岩間正男君 個人的な問題だというふうにこれは把握されてありますが、説明はさつきから何回も言われておりますが、納得できません。個人的の問題と繋がつている、個人の生活権の問題でもあるけれども、例えば今度の問題なんかは、職員組合の執行委員長であり、副委員長である。そういう立場の多くの人に繋がりを持つている。単にそれだけでなくて、日本の今置かれている学の自由をどうするか、こういう問題と繋がつているのでありまして、単的に一人という、個人という形で現われておりますけれども、そういう形の説明だけでは問題の把握が非常に不十分でないか、こういうふうに思います。
  58. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 稲田局長は、教育公務員特例法で、国家公務員法並びに地方公務員法の特例として設けるというその第五十七条の「その特例は、第一条の精神に反するものであつてはならない。」それで国家公務員として、地方公務員として盛んに能率的にスピードを挙げなければならない、そこにとどめを刺していられる。そこには民主的且つ能率的に運営するとあるので、我々と政府委員質疑の間に食い違いのできるのは、どちらにより以上ウエイトをかけるかというところに食い違いがあるわけで、政府委員の説明を承わつていると、全く能率的のそこだけにウエイトをかけて、我々が民主国家の建設という立場から、民主国家というところに相当ウエイトを置かれている点は無視されているのです。その点どうなんでしよう。
  59. 稻田清助

    政府委員稻田清助君) 決して民主的を無視いたしているわけではございません。要するに大学管理機関任命権者で、大学とは縁なきものでありますならば、而してその構成なるものが天降り的に構成せられるものであるならば或いはおかしいかも知れません。先ほど申上げましたように管理機関の構成は、各学部で選任せられた各部長と、学部教授会で選任せられた代表教授と副部長とで成り立つておりますが、それ自身民主的構成であり、大学それ自身の機関である。従つて今の制度を考えまする場合に、こうして構成せられた代表機関というものの運営を非民主的だとは考えられないのであります。
  60. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは本日はこれを以て散会いたします。明日は地方行政と連合委員会を開きます。明後日更に十五条から質疑をいたします。散会いたします。    午後零時二十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            成瀬 幡治君            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員            荒木正三郎君            梅原 眞隆君            高良 とみ君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    文部省大臣官房    会計課長事務代    理       相良 惟一君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    文部省調査普及    局長      関口 隆克君   事務局側    常任委員会専門    員       石丸 敬次君    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君