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1951-02-02 第10回国会 参議院 文部委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二日(金曜日)    午後一時三十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社会教育法の一部を改正する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) それではこれから本日の委員会を開きます。本日は社会教育法の一部を改正する法律案、先ず総括的の質問を始めまして、次に逐條的に審議をしたいと思います。御意見のあるかたは御質疑を願います。
  3. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 昨日提案なつ社会教育法と、それから教育公務員特例法審議に関する点でありますが、昨日は社会教育法をやつて、そうして関連しておるから、教育公務員特例法関連事項であるから、その都度々々というような話も出たかと思うんですけれども、提案理由、それから改正法案を見ますというと、結局社会教育法改正で、社会教育主事身分的な取扱だけが教育公務員特例法関係して来るだけで、あとはそんなに関係ないから、審議の能率を上げる意味において社会教育法一本でやつて、そうしてまあ問題の多い教育公務特例法あとにする、こういう方針で進んで行つたらどうかと思います。  先ずお尋ね申上げたいのですが、この社会教育が非常に重要視されながら振わない。これはまあ学校教育と比較するときに、余りにもこの社会教育が落ちておるという点については、適当なる指導者を得られないという点が又大きな原因ではないかと思うんですが、そういう根本的な点について、社会教育局長はどうしてその適当な人材を得られないか、その理由並びにその指導者の育成について、過去においてどういう努力をされたかということを先ず承わりたいと思います。
  4. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 御指摘通り社会教育学校教育に比較いたしまして非常に劣つておるということは、遺憾ながら認めざるを得ないのであります、併しながら学校教育のことを考えましても、古い歴史を持ちまして除々に充実いたして参りましたのでありまして、社会教育歴史を辿りますというと大体昭和四年に初めて文部省社会教育局ができましたことを契機といたしまして、徐々に発展して来たのであります。その当時は御承知のように社会教育法という社会政育というものに関しまする法令の整備は全然ありませんでございました。而も関係方面が非常に広いのにもかかわりませず、確固たる機関と申しますか、施設と申しますか、そういうものが欠けておりますので、指導者が一旦社会教育関係いたしましても、他に進んで行く道が非常に狭まれるという関係もございまして、指導者になり手が非常に少かつたのであります。つまり社会教育関係しました以上は、社会教育としてどんどん進んで行くということの道が塞がれておるということと世の中の認識が非常に不足しておるということ、従つて予算その他も、確固たる機関施設を持たない関係上、なかなか取りにくかつたというような点で、未だに社会教育が不振の状況に喘いでおる状態であります。併しながら終戦社会教育関係者が多年熱望しておりましたところの、関係法令社会教育法ができまして、これを契機といたしまして、一段と盛んになつて来る情勢にあることは、誠に喜ばしいことであると思うのでありまして、この間に処しまして、指導者養成につきましては、文部省がいろいろの方面指導者講習会実施いたしましてやつて来ておるのでありますが、根本的に大学その他に社会教育に関する講座開設等方法によりまして、大学を卒業すると同時に社会教育に関する理念方法等をつかまえました立派な指導者が非常に多く望ましいのでありまして、これを非常に慫慂して参つたのでありますが、東京に例をとつて見ますと、東大にも、或いは教育大学にも、それから私立に例をとつて見ますと、日大等社会教育に関する講座ができまして、今漸く学校教育大学における社会教育の研究もその緒についたという恰好になつて参りましたので今後かすに多少の時日を以ていたしますならば、指導者養成も又社会教育振興も、期して待つべきものがあると思つておるのでございます。
  5. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点についてもう少しお伺いいたしたいのですが、この地方社会教育方面に携わるかたがたというのは、丁度学校教育に携わつた人姥捨山みたいな恰好になつておりまして、時代感覚においても非常に現在の世相とマッチしないかたが非常に多いように思うのです。そういう点を排除して行くのに、どういうまあ対策を持たれておるか。  更にまあ社会教育家という、この所管事項というものは非常に幅が廣い関係もありましようが、非常に政党方面に利用されるんですね。で具体的に申上げますと、そこに勤務しておるところのまあ専門職員というものは自主性を非常に喪失しておるわけです。殊に地方選挙を前にして参りますというと、社会教育の人事については、その地方地方の、府県心々政党相当の関心を持つて、要するにそういう方面に蔓のある人物をそこに据える。予算においてもそういうものを考慮して予算を組む。全く政党の院外的な動きをする場合もあるわけなんです。私はこういうことは今度の改正法案が、専門職員に人を得るし、その身分を保障するという立場から改正案が出たのでありまして、従来のような姥捨山であるというような点も、これは、改められるような方向に行かなければならん。又学校教育に携わる職員が、非常に自主性を持つておるに対して、余りにも社会教育に従事する専門職員自主性を持つていない。それを如何にしてこれを解決して行くかという点についての御見解を、ここで承わつて置きたいと思います。
  6. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 従来の社会教育関係者が、一般学校教育関係者姥捨山の観があるというお話は、或る程度当つてつたのでありますが、併しながら最近の情勢よりいたしますと、例えば我々が社会教育主事会議を開きましても、或いは又社会教育課長会議を開きましても、相当若手の大学出といろ学歴を持つておられる、ちやきちきの社会教育関係者が大部分でございまして、従来のような考え方各地方々々においても一新されておる、少なくとも一新されつつあるという私は確信を以てお答えできるのではないかと思います。  それから政党方面に利用される虞れが多分にある、現に利用されておるというようなお話でありましたが、我々は社会教育というのはいろいろ多岐に亘りまして、道義高揚も勿論やらなければなりませんし、又選挙があるたびに選挙粛正運動等にも及びまして、それらの政治関係がいろいろ政治教育として入つて参りますので、特にこれらには政党に利用されないような、極めて中正な人々によつて運用されるのでなければ弊害が生ずることを痛感いたしますので、特にそのほうの色彩があるかないか、又そういうふうな動き方をするかどうかということについては注意を佛つているのでありますが、今まで我々の関知するところによりましては、あまりそのような虞れもなさそうであります。而も社会教育法の制定によりまして、県市町村社会教育委員というものができまして、その社会教育委員は御承知のように、教育委員会に出席してまで意見を述べることができるような制度になつておりまして、この人々がいろいろアドバイスいたします関係上、一、二の政党色のある人に利用されるというような恐れは万ないと考えます。又そういうことがないように極力我々としても今後注意して行きたいと考えております。
  7. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 小さい点についてはあとで御質問申上げることにしまして、もう一点大まかなことをお伺いいたしたいと思います。それはこの法案社会教育振興一環としてここに出されたわけでありますので、その立場からお尋ねするわけですが、社会教育方面予算ですね。これが従来余りにも、学校教育も勿論でありますが、貧困だと思うのですね。具体的に一つの例をとりましても、公民館運動というようなものは、これは社会教育の欠くべからざるもので、その持つウェイトというものは相当大きいと思うのですが、これらの補助につきましても、或いは公民館の、モデル公民館設立あたりにつきましても、国家としての指導なり、国庫補助というようなものも非常に私は貧困だと思うのですね、現在どういう段階にあり、又総元締である局長として現在これに対してどういう見解を持たれ、将来如何になさろうとしておられるかという点を社会教育振興一環として、その点についての見解を承わつておきたいと思います。
  8. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 只今のお尋ねは非常に痛いところを突かれましたのですが、全く私は矢嶋委員と同様な考えかたを持つているのであります。今まで社会教育が非常に重要であるといわれ、又その社会教育の対象が極めて広範囲に亘るにかかわりませず、その予算的な措置になりますというと、これは極めて貧弱なものでありまして、この点振興さすというようなことは、これはなかなか望み得ないのじやないかというふうに悲観的にさえ考えられるのであります。而も御指摘になりました公民館というふうな社会教育第一線の場合としては活躍するものに対しまする補助といたしましても、僅々二千万円ぐらいしか計上されていないのでありまして、この二千万円の額は全公民館が使つております費用の五%にも相当しないと思うのであります。でいつか御承知義務教育費関係で教員の俸給の半額補助政府目標として努力したことがありますが、我々社会教育立場から申しますというと、これらの公民館でありますとか、或いは図書館でありますとか、その社会教育の立派な施設として第一線に活躍する職員につきましては少くも半額補助というものの実施が望ましいということを我々理想といたしているのでありますが、終戦後は特に補助金政策のいろいろな再検討等に会いまして、なかなか困難なのであります。併し年多少の向上は見えているのでありまして、例えば公民館につきましても全然補助ということは考えられなかつたのが、あの社会教育法ができましてから千九百万円の補助を受けることになり、更に来年度は二千万円少し上廻る補助に拡張されたのであります。又図書館につきましてもこれは図書館の開始以来補助金を交付したというようなことはないのでありますが、お骨折りによりまして成立いたしましたところの図書館法実施によりまして新たに来年度に約一千万円の補助が計上されるということに相成つておるのであります。又予算を御覧になるとおわかりになると思いますが、その他この図書館なり、公民館なりの建設につきましては、我々は資材斡旋その他のことを縁の下の力持ちといたしますだけで、何ら国庫のほらからの補助はなかつたのでありますが、もう僅かでありますけれども約九百万円ぐらいの経費公共事業費補助として新たに来年度から公民館図書館という項目を出してこれに補助するということに相成つたのでありまして、微力で甚だ貧弱なことでありまして、お叱りを受けることは万々承知でありますけれども、先ず一歩々々向上しつつあるということ、又我々がその向上に向いまして遠い理想目標を掲げまして、その点に万全の努力をいたしますということをお誓ひ申上げまして御勘弁を願いたいと思います。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 予算の点は本法案審議の主題と離れますので、今後とも努力を願いたいということを要望いたしまして私の一般的な質問はここで一応打切ります。
  10. 若木勝藏

    若木勝藏君 今の矢嶋委員予算関連を持つ問題になるのでありますが、この文部大臣提案理由の中にも社会教育の画期的な振興のためには、まだまだたくさんいい問題が残つておる。だけれどもその中の一つとしてこの社会教育主事というようなものに対する身分の保障を與えるのが当座の問題である。それを強化して社会教育振興させる、こういうことろにあるのでありますが、この社会教育法が制定される場合における審議の中で相当論議の行われたところの問題はこういうところにあつたと思うのであります。まあこういうふうな法律作つて、一応社会教育というふうなものを整備するような法律はできておるのであるけれども、而もこれに対して国と公共団体が、地方公共団体一つ任務を持つておる。これを明らかにしておりながら、これに対するところの財政裏付けがない。これでは法ができても何ら社会教育振興にはならないじやないか。そういうことから第四條を修正いたしまして、「前條の任務を達成するために、国は、この法律及び他の法令の定めるところにより、地方公共団体に対し、予算の範囲内において、財政的援助並びに物資の提供及びその、あつ旋を行う」ということにしたのであります。ところが今伺いますというと、非常に悲観的な答弁があつたように思うのであります。これは誠に遺憾なことでありまして、国が相当の金額を地方公共団体補助するというふうな、援助するというふうなことが行なわれなければ、如何に社会教育主事というふうなものの身分を保障してこれを強化しても問題にならない。根本ができておらない、こういうふうに考えるのであります。それで現政府学校教育ばかりでなしに、いわゆる文教一般振興ということに対しては非常に積極的な立場をとつておるといいながら、今のお答えがあるような状態では私は今後においてものさびしいものがあると思うのであります。そういう点から何故に一体そういうふうな必要なところの経費文部省として取れないのであるか。この点について一つ伺いたいと思うのであります。
  11. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 只今若木委員の御質問財政的な裏付けというものがなければ振興できないということは全然同感でありまして、これはまあ社会教育だけでなく、教育全般につきまして財政的の裏付けという問題で大きな問題が提供されておると考えるのでありますが、御承知のように、御指摘になりましたように、社会教育法の第四條で、我々は地方公共団体に対して多額社会教育に要する経費を流すように努力しなければならず、又努力して参つたのであります。併しながらそれは只今申上げましたように、僅かに来年度認められるといたしま立ても、図書館関係が一千万円、公民館関係が僅か二千万円、或いはその他公共事業費その他で九百万円、講習その他のいろいろなことはございますけれども、又或いは学級の開設学校開設等につきまして若干の地方へ流れる経費がございますけれども、大体において私はこれは理想に甚だ遠いところの遺憾な状態にあると思わざるを得ません。今後は大いに努力したいと思いますが、今何故にという御質問でございましたが、なかなかこの予算獲得ということは一朝一夕にはできないのと、もう一つは御承知の六・三制の完成に非常な努力をいたしまして、あらゆる経費を犠牲にしても、この六・三制の完成だけは是非やらなければならんというような、たびたび大臣が声明いたしましたように非常に今努力をいたしておるのであります。その間隙を縫うてと言えば語弊がございますけれども、お余りを頂戴しておるのでもありませんけれども、その六・三制の完成に非常に多額経費を要する、国費多端の際にかかわらず、少しでも社会教育のほうにというので努力して参つたのであります。結果から見まして不満足でありますけれども、多少努力あとを汲んで頂きたいのは、例えば文化施設につきまして新らしい近代美術館設置のために一億円の経費が計上される様子になつて参りましたし、或いま又芸術その他の復興のために新たに、これは本年度からでありますけれども、七百万円に近い経費が取れることになりましたし、その他国民体育大会のためにも年々相当額の、来年度は約一千万円になると思いますが、そういうふうな経費も計上されつあるのでありまして、勿論御期待に副うようにおほめにあずかるようなところまでは参りませんけれども、除々に我々の努力によりまして解決されつありますと同時に、又六・三制が完成に近くなりましたならば、又改めて大いにこの方面にも我々はがんばりたいと思つておるのであります。
  12. 若木勝藏

    若木勝藏君 今の御答弁では甚だどうも私は不安に堪えないものがあるのであります。やはり六・三制というふうなものがあるので、社会教育というふうな方面はお余りを頂戴するということではないけれども、遠慮しなければならんというふうな意味が含まれておつたようでありますが、そういうことでは私はいわゆる文教振興ということはできないと思います。六・三制で必要であるならば、更にそれ以上に、共に社会教育方面が必要であるという建前から、これだけの事業をやるためには、どうしてもこれだけの経費というふうなものは何をおいても優先的に取らなければならないというふうな強い肚がまえを以てこの政府予算獲得に当つてもらいたいと、こう思うのであります。  次に質問を申上げたいことは、やはりこれもこの社会教育法審議する際に論議された問題でありますが、つまり第三條に社会教育のあり方というふうなものが載つておるのであります。要点を読んで見ますというと、「社会教育の奨励に必要な施設設置及び運営、集会の開催、資料の作製、頒布その他の方法により、すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に印する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない。」こういうふうなことは、これは極めて重要な問題であるとして論議をされたのでありますが、つまり社会教育法というようなものを制定して、そうして社会教育団体社会教育を規正するような形をとつてはいけない。この三條に示されたような、いわゆる「自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない。」こういう立場においてこれを進めなければならない。それでこれに対するいわゆる「環境を醸成する」ということに対しては、先ず予算の面においても必要であろうし、物資斡旋でも必要であろうと思います。そういう関係からこの十一條を修正してこういう形を入れておるのであります。これは現在予算は先ほどのようなことで大体わかつたのでありますが、この物資斡旋、そういう方面における環境を整えるということの実情は現在までどういうふうであつたか、これについて伺いたいと思います。
  13. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 只今の御質問によりましてあとからお答えいたしますが、資材斡旋等につきましては、御承知公民館図書館その他社会教育的に集合する場所につきまして、例えば椅子を一つ買いますについても、或いはベット一つ作るにいたしましても、或いはポーダブルを付けるにいたしましても、ラジオ受信機を付けるにいたしましても非常に高くつきますので、こういうふうな資材斡旋をたびたびいたしておるのであります。その都度非常に好成績を挙げて参つておるのであります。勿論中には失敗に終つた例もございますけれども、大体におきまして設備のために要するいろいろの資材につきましては、我々のほうであらゆる場所を駆けめぐりまして、極めて安価でそうしていいものが手に入るという見通しがつきましたならば、直ちにこれを地方公民館図書館その他社会教育的な場所に配付するように努力して参つております。それから環境の醸成につきましては、大体世の中一般教育的な環境になつて来ることが非常に望ましいことでありますけれども、一朝一夕にはこれも解決できませんので、例えば公園でありますとか、或いは国宝その他のある場所でありますとか、その他公民館或いは図書館等の増設、或いはそれの利用、又その附近を一定の教育場所としていろいろの施設を講ぜしめるというふうな方向に向いまして、地方を指導しつつ現在までやつてつておる次第でありまして、社会のあらゆる施設全般がすべての教育的な考え方設置されるということは非常に望ましいことでありますが、一方におきまして、例えば競輪でありますとか、その他の思わしからざる施設も出て参つておるのであります。こういうことにつきましては我我は極力そういうものの教育的に悪い影響を與えるものを最小限度にとどめるために今までも大いに努力をいたして参り、又今後といえども努力したい、かように考えておるのであります。
  14. 若木勝藏

    若木勝藏君 そういたしますというと物資斡旋、そういう方面については、とにかく十一條にそういうことを謳つてあるのであります。こういうことは相当やり得たということに私認めて差支えないのですか。
  15. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) はあ。
  16. 若木勝藏

    若木勝藏君 それでは次に一、二お伺いしたいと思うのでありますが、先ほども現在の社会教育委員の、何といいますか、素質といいますか、そういうことについての質疑応答があつたようでありますが、現在の社会教育委員の経歴といいますか、そういう方面がこの改正法案に示されたところの第九條四の社会教育主事資格に参照いたしまして、どういうふうな一般実情にあるか、これをちよつと伺いたい。
  17. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 只今若木さんが社会教育委員とおつしやいましたのは、社会教育主事の間違いだと思いますが、それは現在各都道府県設置されておりますところの社会教育主事関係者の利益の点から申しますと、学歴の点は、大体只今第九條の四に書いてございますようなことにふさわしいのが大部分でありまして、学歴の点では、必ずしも現在の主事諸君資格と申しますか、そういうことにつきましては、悲観的に考えていないのであります。にもかかわらず、こういうことをしますということは、つまり学校関係指導者同等、若しくはそれ以上の資格がある者が往々おるにかかわらず、同等の待遇をされていないということで、今回の改正を明確にするわけでございまして、御指摘になりました御質問の点につきましては、私たちは詳しく調べますれば例外もあると思いますけれども、大体において学歴点等から考えては、余り悲観する必要はないと思つております。
  18. 若木勝藏

    若木勝藏君 もう一つ伺いますが、この提案理由うしろについているところの社会教育主事の現況の表でありますが、これによりますというと、都道府県の定員に非常な差があるようであります。これはどういうふうな事情でこういう差ができておるのでありますか、それについて伺いたいと思います。
  19. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) この表を差上げましたのは、これは非常に遺憾な点があつたということをお詫びしたいのでありますが、それは社会教育主事と名をつけておりますところと、或いは主事と名をつけておりますところと、或いはそういう意味でなく嘱託的な名前でやつておりますところと、種々雑多でございまして、それも法令が整備されなかつたせいと考えられるのでありますが、従つてこちらが出しました調査表に対する回答は、その注意書が書いてありますにもかかわらず、各府県いずれも解釈がまちまちになつておりました結果、こういうふうな非常な不揃いな表になつたのでありまして、それは遺憾でありますが、併し大体において、例えば二乃至三くらいのところの府県が大多数でありまして、あとは特に社会教育に熱心でありまして、或いは地方事務所に所属せしめるものを一人づつ別に置いたとか、そういうふうな特に熱心な県が多くなつているという関係でございまして、この表は遺憾な点があるということをお詫び申上げて説明に代えたいと思います。
  20. 岩間正男

    岩間正男君 私も二三点お伺いしたいのであります。この法案が一昨年のたしか四月か五月だつたと思うのですが、これが通過するときに我々はこれに反対いたしました。反対した理由は、先ほど若木君から述べられたところの予算的措置の問題、もう一つはこういう機構を作ることによつて、実は下から民主的に盛り上つて行かなければならないところの社会的な教育が、官僚統制方向を迫る結果になるのじやないか、こういう点が反対理由の大きな点であつたのであります。そこで殊に一番問題なのは、予算的措置の問題でありますが、これは只今の御答弁によりますと、我々の心配したことが全くその通りになつておる。殊に我々が論拠として挙げたのは、例えば六・三制を見るがいい。六・三制は最初に十分な準備をしないで、そうして單にイデーだけが最初に発足してしまつて、八億円というような問題にならないところの予算を取つて、そうして発足した。そこに今日の六・三制の困難のすべての原因がかかつている。これと同じような行政が、文部行政の上に又重ねられようとしておる。一方におきましては、大学とか高等学校、こういうものの新築は、看板の塗り替えだけであつて、内容はない。何ら研究機関を持つていない。又教授陣も充足していないような大学を作られて、教育の改革は名目に終つておる。成るほど機構だけは作られて、ペーパー・プランだけはできるけれども、内容はない。そういうもを作られることが、つまり六・三制において失敗したところの、そうしてそのために費用の負担が皆人民大衆にしわ寄せされて、そうしていろいろな悲惨な問題を起しておる。町村長が自殺までしたというような例がある。更に多くの町村長がやめた。その辞任するに至つたところの大きな原因がやはり六・三制にある。こういう同じような方向にこの一つ教育改革を重ねる点において、予算の伴わない点において、我々は再び六・三制の愚を重ねたくない。こういう点について申上げたいのでありますが、只今の御説明を聞きますと、誠にそういう感じが深く出ておるように感ずるのであります。殊に若木君の主張によりますと、なぜそれが予算が取が取れないかということの説明を求めますというと、只今の御答弁では、これは六・三制のためである。六・三制の完成ということが重大な問題となつておるので、その影響のために殆んどこの社会教育に対しては予算が取れない。只今聞きますと、来年度の予算においては僅かに三千九百万円である。一体三千九百万の予算で以て、そうしてその結果が地方財政に大きく負担させられるというような形になつて来る、この負担に堪え切れるかどうか。そういうことによつて、名目は謳つておるけれども、その内容は一向充実しない。こういう形が出ておるのでありますが、こういう点から、どうしてもやはり只今の御答弁で、いわば何といいますか、現状止むを得ないのだというような枠内の御答弁だけでは、すでにこの社会教育法が発足してから一年有余の期間を経つておる現在においては、やはり満足な状態とは言えないと思います。これは無論教育財政の国家予算との関連における根本的な問題が解決しなければ、この問題も解決のつかない問題であると思いますが、それにしても社会教育局として先ず私は第一にお聞きしたいことは、大体現在社会教育という一つのイデーを持つておられると思うのでありますが、このものを具体的に実施するとすれば、大体どれくらい予算の粋が必要であるか、こういうことについて社会教育局では調査を進めておられるか、そうしてとれがどのような枠に押えられておるか、このことが非常に重要だと思うのであります。單に現状においては何ともならん、何ともならんからまあ仕方がないその範囲内で最善を盡すのだと、こういうことでは何らつまり行政の名に値しない。こういうふうに思うのでありまして、社会教育局として押えておられるそういうものの内容について私はお伺いたしたいのであります。つまり最低の線で現在到達しなければならん線をどの線に抑えておるか。この点が重要であると思いますので、その点をお伺いしたい。
  21. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 只今の岩間委員の御質問でありますが、御質問の中にありました三千九百万円と申されました数字は、これは公民館図書館に関するもののみでありまして、社会教育全般のものではありません。社会教育全般といたしましたならば、例えば青年学級の開設、成人学級の開設社会学級の開設に対するところのもでありますとか、或いは芸術、文化その他の向上に関するもの、或いはリクリエイシヨン施設向上に関するもの等多々ございまして、相当額に上つておるのであります。又若木委員並びに岩間委員から御叱正を受けましたところの我々の努力も足りない点につきましては、それは六・三制があるから止むを得ないのだと我々は考えていないのでありまして、若しそういうふうに聞えましたならば、私言葉を訂正したいと思うのですが、それは六・三制で国家は非常に経費が多端で経済が苦しんでおるけれども、先ず義務制であるこれを解決しなければならない文部省に責任があるのでありまして、この方面に力を入れなければならない。その際にもかかわらず、我々はできるだけ一つ努力いたしまして、その予算獲得努力しておるのだ。而もその結果は決して満足すべきようなことではございませんし、又皆さんの前に御自慢申上げるようなことはできませんれけども、先刻から申上げましたように、一歩々々いい方向に伺いて参つておるのでありまして、少くも公民館、或いは図書館、その他社会教育的な施設につきましては、不満足ながらも大体改善の曙光が見えて参りましたことをむしろ喜んでおるのでありまして、只今岩間委員の御指摘になりました一体社会教育としてどれだけの予算を考えたらいいんだというお考えにつきましては、我々のほうで市町村、府県等の実際の予算がどういうふうにあるか、又国のほうでは、我々のほらですぐ統計が出るわけでありますが、それがどういうふうにあるか、それが学校教育一般教育に対してどのパーセンテージにあるか、将来どういう線にやつたらいいかということについては、昨年の秋頃からデーターを集めつつありまして、これを皆さんにお示しすることもできる機会があると思いますが、目下のところ我我予算獲得されましたところの案は、大体今こういうことを申上げていいかどうかわかりませんが、五分の一、我々の要求の五分の一くらいが大体取れたというような経過であります。それから非常に悲観的なことばかり私が申上げたようにお聞き取りでございますが、併し私たちは悲観はしていないのでありまして、社会教育局ができまして以来、公民館というようなものが、国家が何ら設置補助をしないにもかかわらず、すでに五二%の市町村には設置されまして、それの分館を合せますというと、一万数千の数に上つておるのであります。その他社会教育的な活動は地方で非常に重視されまして、これも国家としては申訳ない僅かの補助しか出せないにもかかわりませず、非常に地方的には活躍をいたしておるのであります。又中央から、我々から申しましても、来年度近代美術館として一億金を初めといたしまして、相当我々が予想以上に取れたという方面もあるのであります。この機を逸せず社会教育の活動ができますように、予算獲得努力したいと考えております。
  22. 岩間正男

    岩間正男君 大体五分の一程度が取れたというようなお話でございますが、大体社会教育局として持つていられるようなプランが、これは示して頂くというと、なおその問題を我々検討して見なければならない、こういうふうに思うのでありますが、まあ今全体の今度の予算をよく細かに見ていないのでありますけれども、大した額にはならない。それでも五分の一ということになりますと、非常に最初の要求額が低いものだと思うのであります。ただそれは文部省補助、それから文部省を通じて仕事を行う、そういうような面のものだと思うのでありますが、この問題はやはり地方財政の現状、並びに地方財政の中でも最もやはり困難な原因になつておりまする教育財政、こういうものと非常に深い連関があるのでありますが、例えば今の公民館を建てる、こういう問題になつて来るというと、非常にこれが大きな地方財政、市町村の財政を圧迫して来る。こういう形が出て来るのでありますが、こういう面についても、これはこの法案実施されてから大体公民館が建つたのはどういうようなことになるか。而もそれを建てるためにどういうような財政的な措置をやつて建てておるか、こういうような調査も必要と思います。只今お聞きしますと、あのとき法案審議中に、この公民館のあるところは五%くらいあるのじやないかというふうに我々は漠然と聞いておつたのでありますが、その後そういう調査はできておりますか。その後今の説明では五二%ということになつておりますが、その後余りつていないのじやないか、こういうふうに考えますが、我々はそういうデーターは持つていないのでありますが、最近の公民館の設立のデーターなんかございますか。
  23. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) ございますから、あとで差上げます。
  24. 岩間正男

    岩間正男君 そういうものを見せて頂いてから、なお細かに申していいのですが、大体そういう点まで深く入つて行かなければ、現在の地方財政の状況では、本当に社会教育を確立するという面に行かないのじやないか。これを地方財政に任して置いて、そうして国家は全くこれは監督官庁的な、必要なそういう費用だけを組む。こういう形の計画では、とても本当に機能を果すことができないのが、今の日本の経済じやないかというように考えられるのであります。この点については又資料をもらつてからなお細かにやりたいと思うのでありますが、とにかく社会教育局が持つておるプランそのものを、是非これは我々に検討する資料を出して頂きたい、こういうふうに考えます。  それから公民館の問題が出たので、ちよつと法案とは面接今関係ございませんが、直接的な関係ではございませんが、この際にお伺いしたいのであります。公民館の運営状況、これはいろいろあると思いますが、その中で問題になりますのは、この法案にも規定してありますが、どういうことになつておるか。例えば政党の演説会のようなものに対しましてこの公民館を使用するというような場合が起つて来ますときに、どういう建前を文部省がとつておるか。ところによつては全然これは公民館というものを使わせない、全部政党の演説会のようなものを締め出しておる。こういうところが実は多いのでありますが、我々の考えはむしろ、公民館のような施設は最もフリーに開放して、あらゆる政党の演説会のようなものにこれを使用させる、これが非常にむしろいい立場じやないか。殊に小さい市町村に参りますと、こういう施設がないもなかなかそういう会場の便宜がないというようなところにおきまして、どうも法案の解釈の仕方が非常に消極的になつていて、つまり詳しく申上げますと、第二十三條の第二号ですか、「特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。」こういうような條項の解釈の問題になつて来るわけでありますが、これを非常に狭く解釈するというと、事なかれ主義で、どこにも貸さないほうがいいのだ一切そういう政治活動から締め出して、超然としたところの公民館を置かなければならん。こういうような考えを若し持つとすると、これは非常にこの法の正しい解釈がなされておるかということが問題になつて来ると思うのであります。  それから政治を離れたところの公民教育とはそもそも何ものであるか。政治活動の現実にそういう非常に大きな要求のあるところに対しまして、そういうものから離れて行つて遊離された純粋な公民教育は何ものであるか。こういうことを私は疑問に思うのでありますが、文部省としてどういう方針を以て臨んでおられますか。この点をお伺いしたい。
  25. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 公民館の使用に関しましては、この法律ができました際に、ブロック的に会議を開きまして、いろいろ検討いたしたので、只今指摘になりましたような虞れはないと思つておるのでありますが、併しながらこれもやはり人の問題でありまして、非常に消極的な公民館長のところでは、或いはおつしやるような弊害があるかと思うのでありますが、若し具体的な例がありましたならば、後刻お知らせ願いますれば、その事情を捉えまして、その県の指導者注意を喚起したいと思つております。只今指摘になりましたように、公民教育ということの内容には、正しい政治教育ということが一つの要素になつておることは疑いを入れないのでありまして、公民館の運営方針といたしまして、社会教育法の二十三條の二に書いてございますように、今お述べになりました通り「特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。」という、これは禁じられておりますけれども、それ以外のことはどんどんやるべきであると考えております。従しましてそれが正しい意味政治教育ならば大いに公民館を利用さるべきものだと考えておりますので、若しおつしやるような間違つた、極めて消極的な事なかれ主義の公民館長があつて、誤つた解釈をしておりますならば、我々のほうから注意を喚起いたしたいと思つております。
  26. 岩間正男

    岩間正男君 実例は我々が地方に出ますというと、たびたびぶつかるのです。特に我々の党の場合ですと、こういうものから締出すというような傾向が非常に出ておる。こういうような指示でも或いは出ておるのであるかと思うほど強硬にこういうことが行われておるのは、これは非常に政治活動の自由という点から考えて遺憾であるというふうに考えます。実例は細かいものが必要ならたくさん我々は提出する用意があるわけですが、こういう点について文部省はやはりその趣旨を徹底して、もう少しそういう点は明らかにされる努力が必要ではないか、こういうふうに思いますが、如何でございますか。
  27. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 只今申上げました通り、正しい政治教育というものが非常に必要だと考えますので、この二十三條の二項が間違われないように、会議その他の機会に特に只今指摘になりましたような点を強調いたしまして、周知の方法をとりたいと考えます。
  28. 岩間正男

    岩間正男君 次にこの官僚統制の問題、これがやはりあのとき法案が新たに出されましたとき、我々が反対した第二の理由なのでありますが、こういう傾向が最近の社会教育の運営の中に非常に見られるのではないか。殊に今度の社会教育主事、この主事一つの法的な根拠のある機関にする、こういう形になつているのでありますが、最初はそういう点が非常に問題になつて、現在の改正法案で出されたような形をとつていなかつたのでありますが、今までのやり方で特に甚だしい障害があつた、こういうふうに考えておられる点はどういうところでございましようか。この提案理由説明の中には、そういう点が何といいますか、「社会教育の分野が整備され発展するに伴い、社会教育の仕事に従事するためにはどうしても不可欠な専門的な技術、知識というものが必要になつて参るのであります。」これは一応そういう面もあると思いますが、併しそれだけでしようか、この社会教育主事というものをここで一つの法的な根拠のある機関として規定しなければならなくなつ理由です。そのほかにいろいろな、一年半の経験によつてつかんでおられる情勢があるのでございますか。
  29. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 今般の法令で御改正を願いましたところによりますところの社会教育主事と、今までの社会教育主事とを比較いたして見ますと、大体三点が違うのであります。今までの社会教育主事は上司の命を受けて仕事をしておる。今度の社会教育主事は上司の命ということでなく、自発的に自己の専門的識見において仕事をやつて行くという点が一つでございます。もう一つの点は視察指導であつたのでありますが、これが今般は裏門的技術的な助言と指導という点になつたのであります。社会教育のほうでは御承知のように学校教育と違いまして、その施設があちらにもこちらにもあつて、その施設自体を視察指導することが最大の目的であるというのじやなく、いろいろの例えば会則のきめ方とか、運営の方法でありますとかにつきまして助言指導するというのが主な点と考えまして、助言、指導というふうにいたしたのであります。それから従前の社会教育主事はその他の事務というのがございまして、雑務にも従事しておつたのでありますが、今度はそういうことはやらないのであります。つまりそういうことにいたしましたのは、社会教育学校教育の指導と並びまして、高度の専門的技術的な指導をしなくちやならん、しつかり勉強もしてもらう、又しつかり研究してもらうと共に、その高度の学識経験、又識見を持ちまして専門的技術的な助言と指導に専念してもらいたい。こういうふうにして参つたのであります。今までの社会教育主事が、いろいろな雑務をやらなければならんし、又一々上司の命を受けなければならない。そういうようなことから、法令的な根拠がなかつたということも一つの原因になりますけれども、ややもすれば、自分自身を学校の指導主事と比較しまして、一等低いものと見ておつたという、みずから卑下しておつたという弊害もなきにしもあらずであります。そういうことのないように、同等以上の学識を以て、識見を以て仕事に専念してもらいたい、こういう意味でこの規定をおいたのであります。
  30. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 社会教育振興のために社会教育法が施行されて、この所期の目的を達するためには、これに携わる人を得ることも必要であります。それからその裏付けとなる予算の確信ということも必要だということは、今までも議論されたわけでありますが、その人を得るという立場から、ここに一部の改正法律案が出たということは、私は時宜に最も適した案であると、こういうふうに考えているわけであります。それで、一般的な質問相当出たようでございますので、私はここで、ややこの法案の具体的な点について御質問申上げたいと思います。
  31. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 逐條でございますか。
  32. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 逐條まで行きません。
  33. 岩間正男

    岩間正男君 総括質問がまだあります。
  34. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではどうぞ……。
  35. 岩間正男

    岩間正男君 さつきの局長の説明は、私の質問の趣旨と少し違つたのじやないかと思います。今度の社会教育主事の性格と、従前のこの社会教育主事の性格の違いについてお話があつたのでありますけれども、これの改革、改正しなければならないような事態が具体的に起つたか。特に改革をする必要に迫られた事態ですね、そういう点について私はお聞きしたのであります。この点どういうように今までの実績から判断されまして改革なさつたか、これをお伺いしたいと思うのであります。
  36. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 答弁が的を外れまして失礼いたしました。第一の理由といたしましては、何と申しましても社会教育の担当者が、学校教育の担当者に比較いたしまして一等低き地位にあるのだ、又手腕、識見もちよつと低いものがなるのだというような一般通念があつたならば、大衆を相手といたしますところの社会教育の効果は上らない。それで社会教育関係者は、従来とも異口同音に、我々は予算的にも学校教育と同じようにしてもらいたいと同時に、我々の資格、我々の職務等についても学校指導者と同じようにしてもらわなければ、到底業績を挙げることができんというのが輿論としてあつたのであります。我々はその要望に応えるためにいろいろ研究をいたして来たのでありますが、今や各大学にも社会教育的な講座の置かれる気運にもなりました。又世間一般社会教育というものを非常に重視するという傾向にもなつて参りましたし、その他諸点を考えまして、今こそ改正をいたしまして、この要望に応えて、社会教育の画期的な進展を期すべきであると、こういうふうに考えたわけであります。一等低いものであると考えることによりまして、自然優秀な指導者社会教育方面に志願しないという、こういう弊害があつたことは否み得ないのでありまして、若しもこの法律が通されまして、学校の指導主事と同格になるならば、多士済々の人々が、社会教育指導者として志願されることであろうと私たちは考えておるのであります。
  37. 岩間正男

    岩間正男君 やつぱり最初文部省が考えた考え方、つまりなんといいますか、そういう一つの系統だつた方向でなくて、上から下のほうに統制するというのではなくて、実は下からそうして民間にある人材をなんとか挙げて、それを十分に運用して行くと、こういうような方向は、ここで転換されるわけですね。それじやうまく行かなかつた人も得ることができまして、又地位の低かつた、それに対してあたりの認識も、やつぱりどうもこれに対して関心の程度が十分なかつた、そこから効果が挙らなかつた、こういうことが認められるわけであります。そこがまあ少しやはり問題のあるところではないか。我々は最初に心配したのは、官僚統制の問題です。無論いろいろな欠点が起つたと思います。併し形の上において整備することによつて、やはり恐れられたことは、官僚統制の問題である。これは形だけでなく、而もこれが今のような時代の動きを見ると、この法案が制定された約二年前と比べますと、非常にこれはあらゆる状態が統制的な方向に動いておる。殊に我々がここに憂慮しなければならないのは、日本の置かれている現在の立場、一方においては、例えば人的資源、これをとにかく我々は一国に提供して、そうして或る特定国に対するところの防禦の態勢をとらなければならん。こういうことが相当に、相当どころではない、日本の重大な指導的立場にあるところから話されておる、こういう現状、こういう現実的な動き、そういうものから考えて来ますときに、それを統制して、そうして一つの官僚的組織の中にそういうような筋を入れる。こういうことによつて非常に統制はうまくきくだろうと思います。そうしてそれによつてこの動員計画といろものに連なる一連の構想というものは、可能になり得ることを我々は考えることができると思うのでありますが、無論文部省がそこまで考えたのですか、或いは文部省が考えたのではないとしても、そういうような時代の要請なりに文部省は乗つて、そういうような方向をとつた、とらないとまでは言えないのでありまして、こういうような最初の疑念が、そうして十分にこの点について論議を繰返された問題につきましては、文部省の今度のこの社会教育主事ということをはつきりして置いて、そうして系統立てることについて、こういうような観点からしてこの問題を検討されたかどうか。こういうことはどういうような見解を持つておられるか。この点について……
  38. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 官僚統制というようなお話が出ましたけれども、我我は絶対にさようなことは考えておられんのでありまして、殊にこの法案は各地方の市町村の末端に至るまで、社会教育関係者の要望に応じ、声に応じてやつたことでありまして、決して統制的な意味を持つておりません。併しながらこれを皆さんの要望に応えまして、学校の指導主事と同格にするためには、或る程度の資格というものが要求されておることは、これは当然でありまして、止むを得ないことだろうと思うのです。而もその要求される資格については、地方のほうでは十一分なる賛成と、認識を得ておるのであります。而も最後にこれは特に申上げたいのでありますが、逐條的に申上げることでございますけれども、民間の今までのやり方によりまして、こういう資格がなくても有能人を採用するというとことが、広い社会教育を掌る上においては必要なことであるかも知れませんし、又こういうふうな明確な資格規定を設けましても、これによつて当分のうちは、まだまだいい人が得られない恐れもございますので、当分のうちは今まで通り民間のいろいろの事業をやつておるところの人々で、社会教育に関する学識経験豊かなる人、立派な人格者等は、特別任用のできる途を講じておるのでありまして、而もこの規定は当分のうちとはいいながらも、殆んど半永久的にこの條文を活かすことによりまして、社会教育指導者としての形式的なことに走る欠点を補つて行きたい、こういうふうに考えております。
  39. 岩間正男

    岩間正男君 まあそういうような御説明ならそれは大体予想がつくのでありますけれども、私のここで特に申上げて置きたいことは、文部省の当局者がそういう意図を持つておられるにもかかわらず、その客観的な情勢が、そういうものを一つのシステム化して行く、こういう現実がありはしないか。こういうことからはつきり問題を今のうちから考えて置く必要があるのじやないかということが、例を挙げますというと、例えば教育委員会法、これによるところの教育委員会の運営は、飽くまで自主的に、民主的に運営されるという、こういうふうになつておるんです。併しながら果して実はどうだろうか。この一例を挙げますというと、これはおわかりであろうと思います。教育庁がどういうふうに一体統制的になつて来つつあるか。全国的にこれは統制されて、やはり文部省一つの直轄というような形の傾向を表面はとつていなくても、実質的にはそういう形を漸次とりつつあるのではないか。こういう一つの傾向に対して、こういうものと連関して私は考えなければならないと思います。だから地方からの要求としては資格がない、漠然としてどうも日本の社会情勢では、いろいろな最初の理念にもかかわらず結果は成熟していない。そこで例えば、本当に社会教育主事であるところの人材を集め得ない。アメリカとは事情が違うのであります。だからして当然それに資格を與えたい、こういう要求が起つて来る。と思うのであります。これは我々が最初から問題にしたところの、大体條件が違うために、同じような理想的なものを、型を押しつけられて来た。そこから来る矛盾なのでありまして、そういう矛盾を本当に切り抜けるために、実は社会教育政策の中で、大いにその面で、本当は検討を盡されたかつたのでありますが、その点については單に文部省努力だけでもできない点もありまして、十分にできなかつたと思います。従つてそういう立場を放棄してしまつて、今度はこれを任命して、一つのシステムの中にもちやんと系統つける、こういうことになつたのであります。この運用の仕方、そういう問題が非常に残つて来ると思うのですが、それと連関しまして、当然もう一つお聞きしたいのは、社会教育主事講習ということになるのですが、この講習の内容とか、それからこういう具体的な問題でありますが、これはどういうことになるのでありますか。この教科、その他についての大体の見当はついておるのですか。
  40. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 講習の具体的な内容につきましては、勿論まだ研究中でございますが、大体の構想はできておりまして、例えば必須科目、選択科目と分けまして考えております。期間は大体三カ月の予定でございます。詳しく申述べる必要がございますれば、その科目につきまして今まで考えておりますことを申上げるにやぶさかでございません。この機会に岩間委員の御質問じやなかつたのでありますが、文部省のほうの観方によりまして、意見もあるかも知れませんが、決して非民主的な教育方法乃至は官僚統制的な方向に動いておりませんので、その点ははつきりした指導方針の下にやつておるのでありますが、この現われました結果が、運営はやはり人にありまして、或いは一、二の例を挙げたり、見方によりましては、さようでないこともあるかも知れませんが、社会教育主事動き方につきましても、特に御指摘のありました点を注意いたしまして、我々は運営して行きたいと思つております。
  41. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) ほかに総括的な御質問はございませんか。
  42. 岩間正男

    岩間正男君 今の問題は、これは議論に亘ることでありますから、繰返えしたいと思わないのでありますけれども、とにかくこういう情努、現状が、こういうふうな形になつて参りますと、やはりまあいろいろ例えば追放者が追放解除になつた、そういうような情勢でも一つの、一半が出ておるのでありますが、いわば日本の態勢が元に戻るような傾向は最近誰しも感じておると思うのであります。こういう中で、例えば曾つて、この何といいますか、そういう社会教育指導者たちが、戰争時代に果した精神動員的な役割、この役割が復活されるということならば、非常にこれは重要な問題になるのでありまして、その温床になりかねない。これは文部省の意図如何にかかわらず、むしろもつと強力な要請によりまして、そういうものになりかねないという実情がある。こういうものについても文部省が真に今申しましたこの民主的な態勢を守り抜く決意があるかどうか。こういう点について簡單にその所見だけお伺いいたして置きまして、私の一般質問は終りたいと思います。
  43. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 我々は飽くまで職を賭しても、非民主的乃至は官僚的、その他好ましからざる方向教育が導かれることは極力避けまして、既定の方針に従いまして、戦後確立しました立派な教育方針に従いまして、これからも努力をいたします決心でございます。
  44. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 他に総括的な御意見がなければ逐條に移ることにいたします。簡單でありますから、大体附則を残しまして、附則までのところを一括してやりたいと思いますが、附則だけ残して前を全部読んで下さい。
  45. 高橋眞照

    ○説明員(高橋眞照君) 読み上げます。
  46. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 只今朗読いたしましたところで御質問がありましたら……。
  47. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 結局学校教育社会教育とは歯車が合うということが、文教振興のために一番大事なことだと考えます。その立場から私お尋ねするわけですが、先ず学校教育の面において、指導と助言を與えられておる指導主事の免許状を附與するときの資格、それとここにある第九條の四との釣合いはどうなつておるかという点を先ず伺いたいと思います。
  48. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 実は片方が免許状でありますと共に、片一方は免許状でありません。その比較は困難でありますが、大体この程度ならば、免許状を、指導主事に対する免許状の交付と同程度に考えられる点まで持つてつたのであります。それならば何故免許状制度にしなかつたか、一足飛びに免許状制度にしなかつたかと申しますと、社会教育というものは非常に広範囲に亘つておりまするので、免許状制度をとるにいたしましても、その免許を受くべき科目につきまして非常に意見が分れるところであります。且現在の大学教育におきましては、まだ社会教育的な講座の確立を見ておりません。そういうふうな諸点を考慮いたしまして、当分のうちは、常識的に考えて指導主事の免許状を與えると同程度と考えるような方法によりまして、免許状を與えないけれども、これを一定の資格を定めるということが、ふさわしい、こういうふうに考えてやつたのであります。
  49. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 過渡的な措置は別としましてですね、恒久的な措置として、ここに掲げられた第九條の四、この点についてお伺いしておるわけです。これと関連しますが、第九條の五の第二項の社会教育主事講習のほうですね。この講習文部省令で定めるとあるのですが、これは指導主事の免許状を附興することに対して講習を開かれますね。あの講習文部省令と、これとは大体同程度ですか、或いは差等がありますか。
  50. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) まだきまつていないわけでありますが、只今研究中でございますが、大体の案ができておりますが、その案によりますと、大体のところ、おおむね同じであると考えて、いろいろの点は同じと考えておるのであります。
  51. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この文部大臣提案理由のところの二枚目に、「社会教育主事と指導主事の取扱いをおおむねと出ておるのは、どうもそこが少し気にかかるのでお伺いしておるのですが、さつき一般質問のときに申上げたように、指導主事社会教育生事と資質のところに余りにも現在開きがあつて社会教育学校教育の歯車がどうしても合わんわけです。これは私はどうしても合うようにしなければならんと思うのです。そのために「おおむね」というのが気になつて来るわけですが、資格付與の講習についても、資格についても殆んど同一にして、その裏付けとして待遇も同じにして行く、こういう方向に進んで行かなければ、私はただ單に社会教育主事教育公務員として、その身分の取扱いを教育公務員特例法の中に入れて、又社会教育主事という者をこの法令の中にはつきりと謳うというだけでは、実質的な私は社会教育振興に寄與する点が薄くなるのではないかと、こういうふうに考えてお尋ねしておるわけです。それでもう一つそれについてお伺いしますが、学校教育の指導の面に当つておる指導主事では定員がきまつておりまして、それでどうしても足らなくて指導に困る面は、指導委員というのを任命して県ではやつておるように記憶しておるのですが、その学校教育に携わる指導主事に対する指導委員と、社会教育のほうでは主事補という名を設けてあるのですが、その関連ですね。それから教育主事並びに主事補の定員、そういう方面については、どういうふうにお考えになりますか。
  52. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 指導主事社会教育主事はおおむね同じだという、その「おおむね」と申しますのは、先刻御説明申上げましたように、免許状を同じようにやるという制度が、社会教育主事に関しましては時期尚早であるし、且つ現状ではふさわしくないと考えましたので、免許状制度にしなかつた、その点が違つておるだけでありまして、あとは殆んど同じであると考えて差支えないと思います。又、一方のほうの社会教育主事補を設けましたのは、御承知通り只今一級、二級、三級と社会教育主事或いは主事というのが地方にありますが、指導主事は一級、二級でありますので、今までの社会教育関係主事の中の一級、二級の者は主事になるが、併しながら三級の者がこれを主事にいたしますというと、均等が破れますので、その三級の者が主事補ということになるわけでありまして、仕事は、只今指摘になりました補助の仕事をやります意味におきましては、学校教育のそれとほぼ似ておると思います。  それから定員は、こちらでは定めませんので、地方々々の実情によりまして條例で定められることと考えております。
  53. 岩間正男

    岩間正男君 総括的なことと関連するのですが、これはどうなんですか。新しく第二章が設けられて、非常に社会教育主事という者の権限が拡大されたような形がとられておるのですが、社会教育委員という者が存在して、それとの関係ということの規定が余り明確でないように思うのでありますが、こういう点については考慮されておらないのですか、これはどうですか。
  54. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 社会教育委員は指導機関でもなく、又実践家でもないのでありまして、これは諮問機関でございます。社会教育主事のほうは、地方公務員といたしまして、もつぱら指導の実践に当る人でございます。
  55. 岩間正男

    岩間正男君 無論教育委員会における公選とは違うのでありますけれども、併し社会教育委員が、まあこれは直接的な選挙ではなくて、間接的に公選というような形にしてそうしてやるのですが、諮問機関……、ところが従来の例を見ますというと、非常に社会教育委員の権限というものは、わざわざ一章を設けて謳われておつて社会教育主事については無論なかつたですね。ところがこの法案そのものの、形の中にも、今度やはり教育主事という者が、一章を設けてここに挿入されるというような形で大きく浮び出して来ておるわけですが、この相関関係というもので、今後問題になる点はありませんか。單なる諮問機関だからといつてこういうような形では、相互関係がはつきりしないと思うので、そこから摩擦、或いはそういう問題が起り得る可能性があると思いますが、その点はどうなんですか。
  56. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 御心配の点は全然ないと思います。尤も社会教育委員につきまして、現在の教育委員と同じように実践的な機能を與えるというような御意見でありますならば、これは大いに考えなければならんし、又非常に傾聴すべき御議論だと思いますが、社会教育委員が、現在の法令立場で存在しております以上は、両者の間に全然矛盾も相剋も何もなく運用されることと確信いたしますし、又そういうことが想定されることもないのであります。社会教育委員につきましては、今申しましたように、この委員の資格というものは、ただ單に諮問的な機関であるということに満足しないので、これではいかんから、実践的な機関にしろどいうふうな声も相当にあるのでありますが、若しそういうふうになりますならば、只今岩間委員の御指摘になりましたように、法令の上で十分その関連について規定すべき必要があると思いますが、現在では全然その必要はないと思います。  それから社会教育主事という者の章を設けてやるということについて、非常に不審に思われておられるようでありますが、御尤もなんでありまして、実は本来ならば地方の公務員でございますから、教育委員会法の中にこれを規定するほうが正しいのじやないかという意見もあるわけであります。併しながら社会教育法というものは、あらゆる社会教育の面に解れまして総括的な法律にしたいと考えまして、こういうふうな例をとつたのでありまして、例えば、社会教育法の行き方としては、図書館法におきましても、図書館法の中に職員のことを明記しており、そういう行き方にしたわけであります。これは若しも社会教育主事というよう者を教育委員会法に作りますというと、社会教育法教育委員会法と、又特例法というふうに、あらゆる方面に亘りまして非常に煩雑になりますので、立法技術上、この社会教育法のほうへ設けるのが適当であるというふうに考えてこういうふうにいたしたわけであります。
  57. 岩間正男

    岩間正男君 法的な建前から言えば、一方は諮問機関であり、一方は実務に当るのであるから、形の上では権限というものははつきりしておるから問題ない、こういうお話なんですが、社会教育委員という者が、そもそも設けられた目的は、そういうところになかつたのじやないか。成るほど諮問機関という形をとつておりますけれども、この委員会がいろいろ調査したり、それから会議で決定をみた事項は、それが相当実施ざれるということを建前としなければ、こういうものは單なる盲腸的存在で、ただうわべだけこういうものを作つて、実は何もないロボットということになるのですが、そういうことがますます強くなる傾向はありませんか。具体的に申しますれば、社会教育委員会が決定し、こうやりたいという考えを社会教育主事が行わない、そうしてその考え方が相反しておる。こういうふうな場合を考えますと、これは相剋が全然ないと……、法的な権限の上においてはそうでありますが、実際の運用の面においてそういう事態が起り得ないということは言えないと思うのでありますが、こういう点についてはどうなんですか。
  58. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 只今のような点につきましては、今までの社会教育委員制度の実施状況に照しまして、全然その虞れはございません。社会教育委員がいろいろ相談しまして助言を行いますが、それは社会教育に関するこれは御存じの通りでありますが、諸計画の立案でありますとか、それから諮問に応じて意見を述べるというのでありまして、その意見の出るところは、教育委員会に対して意見を申述べるのであつて教育委員会がそれを採択するかせんかということは、教育委員会の委員として決定されまして、そうしてその方針に従いまして社会教育主事が動くということになりますので、その間の関連は、強いて心配すればともかくも、現在のところは全然そういう虞れはないと確信をいたしております。
  59. 岩間正男

    岩間正男君 それはどうも、社会教育委員会というのは、非常に無力だつたからじやないですか。あつてもなきがごとき存在であつて、そうして殆んど痛痒を感じないような一つの模擬機関というような恰好をとつていたんじやないですか。それが今度はそういう主事という者ができまして、そういうところが、而も相当な法的根拠のある機関というようなことになつて確立されて来るということになると、ますますこれが盲腸よりももつとひどい、扁桃腺というか、もつとひどいものになる可能性があるというように思うのですが、こういうものはどうも日本民主化の功罪の一つじやないかと考えるのです。こういう機能が十分活かざれるということをお考えになりますか。この社会教育委員会というものは、成るほど権限の上から言いますと、教育委員会の諮問機関であり、その結果行なうというのですが、社会教育委員会というものは、相当な手段を盡してそうして選ばれたところなんです。このものが実際執行するのは社会教育主事だ、こういうことになるわけなんですが、そうすると教育委員会というものは挟んではやりまするけれども、この委員会一つの何といいますか、権限というものが非常に問題になつて来るんじやないかと思うのです。そこに一つの互いの対立なんか起つて、全然これが無視されたというようなことになる。そういう事態もこういう構成になつて来ると起り得る可能性が相当あるのじやないか、こういうふうに思いますが、その点は如何ですか。
  60. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 社会教育委員は、只今のところ非常に活躍いたしておる県が多うございます。勿論こういう制度は、すべて人でありまして、その人のよろしきを得なければそうは行きませんが、大体におきまして社会教育委員が進言したために、新らしい社会教育の施策が教育委員会として予算化したとか、或いは社会教育委員のおかたがたの計画、立案によりまして、社会教育に関する諾施策を根本的に考え直したとかいうような実例が多々あるのでありまして、私たちは盲腸的の存在でなく、非常に活躍いたしておると思います。併しながら、中には或いは一、二そういうところの県もあるかも知れません。又社会教育主事ができましたならば、この社会教育主事社会教育委員という者は、非常に密接な関係を持つて、実質上は連絡すると思います。社会教育委員が、例えばいろいろ意見を申述べんとする場合には、その専門指導官であるところの社会教育主事のいろいろ意見を聞いて、そうしてそれを参考として意見を申述べることができるし、又社会教育主事の指導に当りましては、社会教育委員なつたおかたがたの御意見を参考としてやるというふうに、これは両者が相剋摩擦というのでなく、むしろ何と申しますか、非常に相談相手となつて、両方相待つて社会教育のほうでは非常にうまく運用されることと確信いたしております。若しもそうでないならば、これは人のよろしきを得ないか、又は指導のよろしきを得ないのでありまして、我々のほうでも十分うまく行くように、今後指導をして行きたいと思います。
  61. 岩間正男

    岩間正男君 どうも教育委員会でさえもいろいろ教育庁と委員会の問題というものは、非常にこれは問題になつているわけなんです。多くを言う必要はないのです。ところがそれよりも権限のないような社会教育委員会というものが、今後ますますどうもそういう点では無視されて行く傾向が多くなるのじやないかというふうに考えられるのですね。どうなんでしようか。教育委員会の問題が随分出ておるので、それよりもずつと権限の少いものなんですが、こういう点はどういうふうに考えておられますか。これは御答弁は要りませんが、やはりちよつと見たいですね。実際我々国会に来ていてもわからなくなつているんです。実はどうなんですか。ちよつと東京都内でもいいが、見て来るところはありませんか。名前だけは日本の民主化ができて、社会教育委員会というものができて、名刺にはそういう肩書が刷つてある、併し実際は教育主事がもうすべてをやつて、事後報告なんかやるということになると逆立ちなんだ。これは委員長、何とか一つ考えて頂きたい。
  62. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) それに対する案を考えましよう。
  63. 若木勝藏

    若木勝藏君 今の問題にも相当関連するのでありますが、先ほどの話からも、いわゆる社会教育官僚統制というような形において行われてはいがん。これは社会教育法の制定当時から問題になつておるのであります。そういうことから社会教育主事の職務を強化して行けば、今のような憂いが出て来る。こういうことは我々としては考えられることなんです。そういう点からこの第九條の三について私は質問したいのです。これによりますというと、「社会教育主事は、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を與える。」とある。「但し、命令及び監督をしてはならない。」というところでは抑えてあるのでありますけれども、これは社会教育法の元の第二章の「文部大臣及び教育委員会との関係」といういわゆる第十一條ですね、第十一條に「文部大臣及び教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、専門的技術的指導又は助言を與えることができる。」とある。ところが九條の三を見ますというと、求めに応じようが応じまいが、とにかく専門的、技術的な助言と指導を與えるというようなことが謳われている。この二つの関連がどういうふうなことになつているのですか。
  64. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 十一條のほうは、民間の社会教育関係団体の求めに応じた場合に、官僚と申しますか、公務員であるところの文部大臣なり教育委員会が、それに対して指導又は援助を與える、こういうふうになつておるのであります。こちらの社会教育主事のほうは、県又は市町村の職員でありまして、公務員でありまして、当然市町村の義務として社会教育というものは行わなければならないのであります。而もその行ないかたによりまして、例えば社会教育を行なうものと申しますのは、公民館であり図書館であり、その他いろいろのものがありますが、鮟鱇の餌待ちのように待つておるのでは駄目で、現在の段階におきましては、親切な専門的な技術的な助言と指導を積極的に與える、又それを與えるためにわざわざ俸給を拂つた公務員として社会教育主事を、市町村なり府県なりは、その市町村、府県の住民のために雇つておるということになるので、命令及び監督をしてはならないということの明文をはつきり実施上守りますならば、おつしやるような憂いはないのじやないかと考えております。
  65. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうするとその問題は、社会教育を行う者というもののいわゆる内容に関係して来るわけですが、ここは限定されたものになるわけですか。
  66. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) いや、これは限定はいたしておりませんが、只今申しましたように、その府県或いはその市町村の社会教育を行うために、社会教育の専門的技術的な助言と指導を行うために、わざわざ雇い入れた指導主事でありますので、その社会教育主事は、積極的に専門的技術的な助言と指導を行うことがその人の本分である。間違いさえなければ、積極的に又只今は行なわなければならない段階に来ておる、こういうふうに考えております。
  67. 若木勝藏

    若木勝藏君 社会教育を行う者というものについての具体的なことをお伺いしたいのですが、誰が行うのであるかというようなことについて一つ
  68. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) 社会教育を行う者と申しますのは、国民全部のわけでありますけれども、国民全部と言いましても、おのずから指導的立場に立つ人とそうでない人との区別ができて参ります。従いまして社会教育主事の行います指導助言というようなものは、特に都道府県の場合は、社会教育関係団体や社会教育施設において指導的立場にある人が重点になるということでありますが、簡單に申しますれば、指導的立場にある社会教育関係者は、皆含んでおるとお考え願いたいと思います。
  69. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうするとやはり求めに応じということが活きて来るのじやないでしよへか。
  70. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) その若木委員のおつしやる意味は、非常によくわかるのでありますが、今申しましたように都道府県及び市町村の社会教育振興さすために、指導助言を與えるために傭入された専門的な社会教育主事でありますので、積極的な求めに応じなくとも、求めが来なくとも積極的に親切な指導、助言を與えることが必要である。こういうふうに考えて規定しておるのです。
  71. 若木勝藏

    若木勝藏君 これがややともすると命令及び監督に移行して行くところの原因になるのではないでしようか、そうお考えになりませんか。
  72. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) そういう弊害が生ずる虞れがあると考えましたので、特に社会教育法社会教育関係団体のところに書いてございます「命令及び監督をしてはならない。」という字句を挿入いたしたわけであります。
  73. 若木勝藏

    若木勝藏君 ちよつとそこが面倒なところと私も考えますが、これから第九條の四で以て資格問題になりますが、現在の社会教育主事には一級とか二級とかこれに載つておりますが、この第九條の四の各号は、同等のもので、一級とか二級という区別はないでしようね。資格はどういうふうなんでしようか。
  74. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) ございません。
  75. 若木勝藏

    若木勝藏君 全然同一のものになるのですか。
  76. 西崎惠

    政府委員西崎惠君) はあ。
  77. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 前段で御質疑がなければ、それでは附則全部を一括して朗読して頂きさす。
  78. 高橋眞照

    ○説明員(高橋眞照君) 読み上げます。     附 則  1 この法律は、公布の日から施行する。  2 改正後の教育公務員特例法第五條第三項から第五項まで(同法第六條第二項及び第九條第二項において準用する場合を含む。)の規定は、この法律施行の際現に大学管理機関において審査中の事案についても適用する。但し、改正後の教育公務員特例法第五條第三項(同法第六條第二項及び第九條第二項において準用する場合を含む。)の規定による請求をすることができる期間は、大学管理機関から説明書を受領した後三十日以内とする。  3 地方公務員法第四十九條から第五十一條までの規定施行の際既に改正前の教育公務員特例法第十五條第三項(同法第十入條第二項において準用する場合を含む。)の規定により教育委員会が審査の請求を受理している事案に関する審査については、地方公務員法第四十九條から第五十一條までの規定にかかわらず、なお従前の例による。  4 この法律施行の際現に公立学校教育公務員で地方公共団体の議会の議員を兼ねているものは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第九十二條第二項の規定にかかわらず、その議員の残任期間中、なお議員を兼ねることができる。
  79. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 只今朗読いたしました附則全部について御質疑がございましたらば……。
  80. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この附則のあちこちにも市町村の教育委員会という言葉が出て来るのでありますが、これに関連してここでお尋ねいたしたいと思うのです。全国市町村の教育委員会相当発足しているのでありますが、その成果については、必ずしも好ましくないという結論が出ているというようなことを、曾て政府委員から本委員会の席上で承わつたことがありますし、先般は埼玉県の或る町では、教育委員会の返上決議なんかがあつて、その決議の効力について問題もあつたようでありますが、この教育委員会法の中の教育委員会設置單位ですね、あの改正をやる意思は、現在文部省にはないのかどうか。過去の実績から行きまして、あの教育委員会法の第七十條でしたか、あれは当然早急に私は改正するのが、日本の実情に即する教育委員会というものの制度を育てるために必要だと、こう考えるのですが、文部省は一体現在どういう肚でおるのか、ここで承わりたいと思います。
  81. 田中彰

    ○説明員(田中彰君) 教育委員会設置單位のお尋ねでございます。御指摘通りに現行法におきましては、各市町村にこれを置くようになつております。尤も必要があります場合には、必ずしも市町村には置かないで、地区地区の組合の委員会を置くことができるようになつております。只今のところ、米国の第二次教育使節団の勧告もございます。又その後の、教育委員会法が施行されてから後の実績等に鑑みまして、各市町村に教育委員会を置くということは、経費その他の点におきまして必ずしも適当でないということがわかりましたので、文部省におきましては、教育委員会制度改正のための協議会を近く設けまして、愼重な審議の結果、成案を得ましたならば、これを何らかの形で、必ずしも各市町村でない、一定の市町村を超えた広い地域に教育委員会を持つたほうがいいのじやないか。然らばその範囲はどうなるかということは、今後協議会等におきまして愼重な審議の結果定めたいと思います。
  82. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部省は日本の文教政策の中枢であるし、大きな指導と助言の力も持つておられるのでありますから、私は愼重審議ということは了としますが、早急に結論を出して、日本の実情に即したところの教育委員会制度というものを育てるために努力してもらいたいと思うのです。実際現実の問題として、例えば非常に弱小の市あたりではどこでも、自分の市で教育委員会作つても、経済的にも困るし、適当な人物も得られない。必ずしもこの弱小の市に教育委員会設置することは、教育の民主化に貢献するものじやないという、地域人民の意向によつて二の足を踏んでいるのに、関係方面から早く委員会を作れ作れ、委員会発足の時期を外したならば、それに代るものを作れ、その委員若干は、然るべき機関で指名すればいいというような強い助言があつて、実際下部は困つているわけなんです。文部省に協議会が設置されて、愼重審議されているそうでありますが、これはもう私は、そう愼重審議されなくても、教育の民主化のために日本に教育委員会というものが、どの範囲ぐらいに設けられるのが適当であるかという結論は、そう苦労しなくて心掛て来るのじやないか、早急に私は結論を出してもらいたいと思います。現に新制中学の設置の問題ですが、あのときも指導を誤まつたために、如何に弱小地帯が苦労したかということを、私は想起しなくちやならんと思うのです。新制中学ができるから各町村に作れというので、じやんじやん町村では弱小地帯が骨を折つて新制中学を作る。作つたところが、新制中学の教育もできない。そのうちに今度は組合立のほうがいいのだというように指導方針を変えられても、もうできてしまつた校舎を簡単に引張つて行くわけに行かないので、当初の指導方針が日本の実情に副つていないために、その指導に従つて学校設置したところの地方公共団体というものは非常に苦しみ、非能率な現状を来たしているということを私は想起する必要があると思うのです。それとこの教育委員会設置単位というものは、非常に好個の例ではないかと思うのですが、その点について十分の文部省で肚を持つて対処して頂きたいということを要望いたします。  それからこの法案の一点についてお伺いするのですが、この第五項に「この法律施行後三年間は、社会教育主事となる資格を有するものとする。」と、こうありまして、第六項の二行目のところに「当分の間、社会教育主事となる資格を着するものとする。」こう出ております。それから現在一級又は二級の社会教育主事という者は、既得権を保持されて、その大部分講習も何も受けられないで三年間、三年間が終つたら、当分の間社会教育主事で行けると、こういうお考えで立案されたのかどうか、これを承わりたい。
  83. 田中彰

    ○説明員(田中彰君) 現在の社会教育主事で、第五項によりまして三年間というものはとにかく資格を與えて講習を受けて、大体百五十名くらいと思いますが、すべて立派な、本條に書いてございますような資格を揃えた社会教育主事とすることを目的にしておるのでありますが、併しながらその講習を何らかの事情で受けられなかつた、或いはその講習を受けるというまでの形式的の資格を具備していないというような者で、非常に有能な者がありましたら、これを第六項で救おうというような意味でございまして、おつしやるような対策にもなりますけれども、当局といたしましては、形式的な資格を揃えておる者は、講習というもう一つ資格を與えて、すべて正式の主事としてやりたい。併しながら有能な者にその資格がない、例えば学歴等の資格がないというような者につきましては、第六項でこれは救つて行こう、こういう考え方でございます。
  84. 岩間正男

    岩間正男君 四人しかいませんからこの辺で……。
  85. 堀越儀郎

    ○委員長(堀越儀郎君) 大体質疑は終了したものとして、来週の火曜日に他に重要な御意見があればお願いし、なかつたら討論採決することにいたします。続いて教育公務員特例法を議題にすることにしたいと思います。  ではこれで本日は散会いたします。    午後三時二十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            成瀬 幡治君            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員            高田なほ子君            高良 とみ君            山本 勇造君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   政府委員    文部政務次官  水谷  昇君    文部省社会教育    局長      西崎  惠君   説明員    文部省社会教育   局社会教育課長  高橋 眞照君    文部省調査普及   局地方連絡課長  田中  彰君