運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-12-14 第10回国会 参議院 文部委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月十四日(木曜日)    午後一時二十四分開会   —————————————   委員の異動 十二月十日委員山本米治君及び谷口彌 三郎君辞任につき、その補欠として平 岡市三君及び深川タマヱ君を議長にお いて指名した。 十二月十二日委員平岡平三辞任につ き、その補欠として西川甚五郎君を議 長において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件教育及び文化に関する一般調査の件  (教職員に対するレツド・パージの  問題に関する件)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長(堀越儀郎君) それでは本日の文部委員会をこれから開会いたします。  政府側から文部大臣の出席がございますので、御質問のあるかたは御発言を願います。
  3. 波多野鼎

    波多野鼎君 この際文部大臣に一、二の点を明らかにしておいて頂きたいと思うのでありますが、それはもう日にちは忘れましたけれども十月頃であつたかと思いますが、この文部委員会におきまして、大学その他学校教職員レッドパージの問題につきましていろいろ御質問申上げたことがあるのであります。この問題は非常に関係するところも大きな問題でありまして、よほど愼重に、併し断乎としてやらないといけない問題だと私は思うのであります。そのときいろいろ具体的な問題についてお尋ねしておいたのですが、一つ適格審査委員会、特に各府県に設けられる適格審査委員会、こういうものをどういうふうにして構成するか。その方針はどういうふうになつておるのかという点と、もう一つはこの教職員は不適格であるという判定基準となるべきものを全国的に示しておく必要がある。そうでないと公正な判定ができないじやないかという点、この二つの点が具体的な問題としては特に重要なる点であつたのでありますが、これらの点につきまして文部大臣は、文部省のほうでも十分愼重考えて、そして準備をするというお話であつたので、先ずこれらの点について準備がどういうふうに進捗しておるかということをお尋ねしたいのであります。
  4. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) この前波多野さんから質問を受けた頃には、間もなく準備を整えてやろうという考えを抱いておりました。ところがその後私がああいうことを言つて以来、どの大学でも非常に教授諸君が自粛されて、そうして学校が非常に静かになつて来たということを諸方から報告を受けております。私はもともと申しましたように、この計画は決して行き過ぎをした人を探し出して、そうしてその人を追放するというようなことが私の意図では少しもなくして、学園秩序を守るということが私の意図であるということは、波多野さんにもお答えしたつもりでありますが、そういう静まつてやつておるのに、すでに学校静まつておるなら何もそんなに急いでやる必要がないということがあります上に、従来やろうとしておつた基準というものについて関係方面と幾らか考え方についてなお相談を要するものがあるものですから、それで今日まで延びて来ております。併し私は只今申すような趣意ですから、取急いでこれをやるという考えを持つておりません。けれどもそれならば全然やめたかというと決してやめるのじやないので、これは学園秩序を守るために私のよんどころない義務だと思つておりますから、決してこれはやめはしませんが、今言つたような事情延び延びになつておるといいましようか、或いは見送つておるといいましようか、そういう状態にあるということを申上げさして頂きます。
  5. 波多野鼎

    波多野鼎君 まあ文部大臣の言われることはよくわかるので、その後学園秩序を紊すような動きがなかつた、これは私共も大体わかるのでありますが、新聞の伝うるところによると、再び学生自治会というようなものの組織の問題が起きておりますし、現在の学園秩序が守られておるという状態は、これは一時の嵐の前の静けさということであろうと私は思う。特に世界情勢が非常に緊迫して参りまして、現に関西方面におきましてはいろいろな問題が起きておる。朝鮮事件というものが朝鮮という地理的な区域に限られていなくて、もうすでに日本にも波及しておるというようなことさえも感ぜられるような状態が起きております。こういうときに学園がこのままで静かに推移し得るとはどうしても私は考えられない。そこで天野文部大臣が、学園が自粛して行けばそれでいいのだというふうにお考えになつている間に、もつともつと激しい動き準備がなされるのであります。これを、こういう点については見解相違と言われればそれまででありますけれども、およそ常識的に物事を考えて行けば、その見解に非常な違いが出て来るわけのものではないと私は思う。でありますので、つまり私としてはこういうことを言いたいのであります。レツド・パージの問題は愼重にやらなければならん。これはしようがないから私はやかましく言わない。併し愼重であるごとと断乎としてやるということとは、両立することと私は思う。愼重準備し、愼重に考慮しながら、併しやるべきことは断乎としてやる、これでなくちやならんと思うのであります。今天野文部大臣が言われたまうに、現在靜かだから見送つていようということでは私はいかんと思う。なすべき準備はどんどんやつて行かなければならんと思う。そこで問題が起きたときにこれを即座にこの方針を貫徹するという準備態勢が十分なくちやならんと思うのです。若し現状だけを見て單に見送つておるだけでは私は甚だ不満である。もう一度文部大臣にこれをお伺いしたい。
  6. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 波多野さんの言われることは私は一々御尤もで、私の考えと別に違つておらないように思うのです。私も学生はこれで静まつたとは決して思つておりません。けれども併し学生動きというものは決してただ教授にのみよるものでなくて、今もおつしやるような朝鮮の動乱とか、その他さまざまの社会的な事情がこれに加わつて来ておるので、教授パージしたらそれですぐやむかというと、決してそうは行かないので、教授パージすることは一つの要素に相違ない。その教授が自粛をしているという事実はやはり認めていいのだと私は思つております。ですから何も緩漫にやつておるわけではないのですが、なかなかいろいろなことで簡單に行かないのです。決してただ見送つてのろのろやつているというわけではないのですが、ただ取急いでというようなことには私は思わないので、十分いろいろなことを用意してやろうと思つておるわけであります。波多野さんの御意見と私は別に自分考えが違つておるとは思つておりません。
  7. 波多野鼎

    波多野鼎君 そこで具体的な問題なんですが、この適格審査委員会というようなもの、こういうようなものはもう予算も通つておるようなことも聞いておりますが、すぐお作りになつて何もこれを作つたからすぐ動かせという意味ではございませんし、これを作つたからすぐ誰かをパージしなければならんという意味じやないのです。ただ万全の準備だけはしておかなければならんと思う。審査委員会の構成の問題にいたしましても、非適格者パージ基準の問題にいたしましても一応何か立てなければ……立てておくことが必要だ。嵐に向つておるときにやつぱり戸は閉めなければならんと思う。その戸を閉めることだけはやつて頂かなければならん。嵐が来なければこれに越したことはありませんけれども、そういうことが見通されるような現状なんだから準備万端整えておいて頂きたいことなのです。それからなおレツド・パージで二、三の教授追放したから、それで事は済むということは私も考えているわけでは毛頭ないので、この社会不安、学園に捲き起つている社会不安の原因はいろいろあるでしようが、これは問題にしますれば切りがないことなんですが、併しそれにしてもこの文部省方針としてとられたレッドパージの問題をおろそかにしていいということには私はならんと思うのです。現にこういうことがあるのです。私はよく知つておる或る有名な大学なのですが、そこで若い相当急進的な教授なのですけれども、こういうのが学生にどういうことを話しておるかというと、この間聞くところによると、昔から進歩的な思想家と言われておつた教授を指して、某々教授たちはもう余命幾ばくもない、どうせ五、六年の間に死んでしまうのだから、ああいうのはいいのだが、併し若い者は今後の世界情勢に適応して共産主義の思想を持ち、そういう運動に入らなければ長い二十年、三十年の生涯を見誤るぞというような訓辞といいますか、話をしておる。それを聞いた学生が私のところに来て、或る先生はこういうことを言いました。一体私に向つて先生はどうお考えになりますか。今後二十年、三十年先の見通しは一体どうなるのですか。というようなことを聞きに来て、私はそこで知つたわけですが、こういつたことがあるのです。決して表面に現われたことだけでない、門を閉めて押し合いへし合うということはなくなつておりますけれども、併し根抵はちつとも変つておりません。いつ門を閉めて又押し合いへし合いしなければならん事態が起るかわからない。こういうような危険な状態にあるということを文部大臣はよくお考えになつて、とるべき準備だけは十分万遺漏のないように準備しておかれることが必要ではないか。重ねて文部大臣のお答えを得たいと思います。
  8. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 文部省としましては、前に考えましたことについて十分の用意はしております。例えば波多野さんからお尋ねになつた基準というようなことも、細かく考えたり、いろいろ用事していつでもできるようになつておるのです。けれども事情が、それを許さないものがあるのです。そのために延び延びになつておる。そこは併しすぐやらなければいかんということなら或いはもつと方法があるかも知れませんが、幾らかそこのところは私の気持波多野さんからいえば生ぬるいところがあるかも知れませんが、私は何かこの地道に進みたいと思つておるので、文部省用意はもうすでにできておる。こういう事情にあることをお考え頂きたい。只今おつしやるようなことはすべて御尤もなことで、私共も一層こういうことを忽かせにしないでやりたいと思います。
  9. 波多野鼎

    波多野鼎君 文部省のほうにおいても万遺漏のない準備をしておるということを聞いて、一応安心はするのですが、他方においてこういうことがある。学生も騒ぎ教授も騒ぎ、法政大学などではいろいろなことをやつおるようですが、これで文部省は腰が折れたのだろう。やはり騒いでやればなんとかなるのだといつたような気持相当ほうぼうで持つておる。私自身も聞いております。やはり騒ぐに越したことはない。こういう気持に対しても文部大臣政治的に適切な手を打たれる必要があると思う。そこで私が言いたいのは、最初から申上げておるように、事は愼重に運ばなければならんけれども、文部省断乎こういう方針は貫くのだ、これをはつきりして頂きたい。この方針を曲げたんじやないのだ、貫くのだという点を、これは天野文部大臣信念に訴えて、私は御返答をお願いしたい。
  10. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今おつしやいましたように、これが遅れるということが、何か騒いだから文部省が躊躇しているんだというような印象を與えるということは非常に困るということを、私は実は自分でも強く感じております。だからしてそういう点も顧慮してできるだけ早くやりたいという考えは持つております。又私はこれは初めからやる考えなんで、少しもそれをやめようと考えたことはないのですから、御注意によつて適当な機会には、又遅れておるけれども何もやらんというのじやないのだということを、私も何かで世間に知らせることがよいかとも思いますのです。そういう考えでできるだけ早く、又注意深くやりたいと思います。
  11. 波多野鼎

    波多野鼎君 まあ最初質問申上げたときから私は言つておることなんだが、事は日本の文教の問題に関することであるが故に、非常に愼重にやつてもらいたい。愼重であるが併しやるべきことはやつてもらいたい。で今文部大臣もよくおわかりになつておるように、非常に文部省がぐらついているんじやないかというような印象世間が持つということは文部省としても困るということをはつきりお認めになるならば、もう一度文部省方針というものはこういうのだということをできるだけ早い機会に天下に声明して頂きたい。そうでないと非常におかしな混乱が生じておるんです。やらんならやらんでいいのです。やるならばやる、こういうふうにしてやるということを明確にしておく必要があるということを重ねて申上げたい。私の質問はこれで終ります。
  12. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私から大臣に若干お尋ねいたします。国家公務員である教職員と、地方公務員である教職員と同時にやられるおつもりでありますか。それとも切り離してやられるおつもりでございますか。その点を……。
  13. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は本来一緒にやりたいと思うのですけれども、ただ地方公務員については、文部大臣が直接人事権を持つておりませんから、遅れるということも起り得るかと思つております。
  14. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 地方公務員は、人事権は直接教育委員会にあるわけでありますが、昨年問題が起つた場合も、これは文部省から何らかのサゼツシヨンをしておることは、これはもうはつきりしておると思うのです。今度の問題についても十一月九日でしたか、全国教育長会議を招集された。そのときの議題地方公務員レツド・パージ主要議題である。その指示を受けるべく全国教育長会議が招集されたわけでありますが、どういう理由かその主要議題であるレツド・パージの問題が、準備の都合上という名前で取上げられずに、教育長は何のために招集されたかわからないような気持地方へお帰りになつた。これはどういう理由で急にそういうふうにお変えになつたか、その点を伺いたいと思うのです。
  15. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私共は十一月の中頃だと思いますが、その頃は直ちにやれるという考えでおつたのです。ところがここに、そのやり方についてもつと検討しなければならんことが急に起つたのです。そのために議題にすることができなかつたのです。
  16. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほど波多野委員質問に対して、大臣は各大学教授並びに学生学園が非常に穏やかになつて学園秩序が保たれるような状態になつて来た。だから今すぐというわけではなくて、まあ準備しながら見送つておるという趣旨の答弁がありましたが、当時国立大学において、或いは私立大学においては相当学園秩序を乱すとか、或いは学園内が動揺するというような点は見られたと思いますが、高等学校以下の学校においては、あの当時問題が起つた場合においても生徒が騒ぐとか、或いは教授が騒ぐ、学園の動揺というものは一切なかつたと思うのです。そうなりますというと、大臣がまあ学園の平穏と、それから秩序の維持という立場から遅れたという先ほどの御説明は、高等教育については納得できないと思うのですが、その点国家公務員地方公務員について何か差異を考えられておるのじやないかという私は疑問を持ちますので、重ねてお尋ねしておるわけであります。
  17. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はちよつと先ほど申上げなかつたのですけれども、この教育委員長会議というものは文部省で招集したわけでも何でもない、教育委員長が……。
  18. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 教育長会議です。
  19. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 教育長自分で集まつたので、文部省が招集したわけでも何でもない。それから又、今の公立学校大学ということのお話ですが、成るほどそういう違いがありますが、私は専ら大学のほうを考えたというのは、公立学校についてはすでにもうやつておる。やつておることでありますから、そこに幾らかの違いがあつていいのじやないかと思います。
  20. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大学学生高等学校学生は智能の発達程度においても相当相違がありますし、まあ大学教授高等学校以下の教師の教壇上におけるところの教育者としてのあり方というものについては相当の私は幅があると思います。事実今、大臣が申されるように、高等学校以下においては昨年度において相当の勢力……、而もこれは随分と行過ぎまして、その行過ぎたというのは、結局中央からの指示が不徹底であつたためにそういうことを招来しておる。事実は、地方教育委員会の責任であると言いながら……、教育委員会は單独でああいうことがやれるものではない。何らかの形において強力な指示があつて、その指示に従つてむやみやたらにやつたという点が相当にあつて、そうして後に復職問題を起したのじやないかと思う。今漸くけりがつきかかつておりますが……。その上に更に、高等学校以下の教職員適格者追放しようとしても該当者は極めて少いのであります。殆んど私はないと思つております。私の知つておる範囲内において若干の県において私はそういう者を探そうと思つてもいない。ないと私は確信を持つて言えると思つておりますが、当時随分と多く喧伝されて、大臣繰返し繰返し我々の質問にも、新聞報導においてもまあ一カ月以内には少くとも行われるというような報導が盛んにされて、本日まで来ておるわけでありますが、私は結論として大臣大学以下幼稚園に至る学園現状からして、又過去に行なつたところの効果と反省からして、いわゆるレツド・パージなるものは初期の予想よりは縮小される、狭まるものである、そうして適正を期するんだ、こういうふうにとつてよろしいかと考えるのですが、大臣お答え願いたいと思います。
  21. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私ちよつと十分呑み込めない点もありますが、要するにこの公立学校等では一度やつたことなんだから、従つて相当多くの人は出さないのではないかというお考えであれば、私もそうではないかと予想しております。
  22. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一、二点お伺いしたいと思うのですが、二、三カ月前から、問題になつたときには追放法的根拠政令六十二号に求めた。これはまあ閣内の関係閣僚意見も一致して法的根拠疑義がない。こういう解釈の下に政令六十二号を適用するということを発表されたわけでありますが、或る時期に、私はこの政令六十二号でちよつと疑義があるから、この政令六十二号の改正政府は考慮中であるというようなことを耳にしたのでありますが、そういう事実があるかないかという点と、更にこのたび地方公務員法国会で成立さしたわけでありますが、今後若しもいわゆるレツド・パージなるようなものをやるに当つて政令六十二号を投げ打つて、今度新たに国会を通過した地公法のいわゆる不適格條項というものを適用して、そこに法的根拠を求めよう。こういうふうに政府考えられておるのじやないかという点を私は予想しておるのでありますが、それに対する大臣答弁を求めます。
  23. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは、私は初めからただ政令六十二号でやるという考えじやないのであつて、同時に国家公務員の場合は国家公務員としてもやる。その両方でやるということは初めから言つておるわけです。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は今お尋ねしたのは地方公務員法を主に考え言つておるのですが、確かに法務総裁政令六十二号なら法的根拠疑義がない。閣議関係閣僚の間でも意見が一致して政令六十二号でやるということを新聞でも発表されましたし、大臣委員会においても答弁されておるわけです。その当時は地方公務員のあれに当つては、他の法規を適用しようということを考えられたことはないと私は思いますが、その点は変つて来ておるのじやないかと思いますが、重ねてお尋ねいたします。
  25. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 初め国家公務員法については両方でやるということを言つております。それは初めから言つております。地方公務員についてはまだ地方公務員法というものはないのですから言いませんが、国家公務員については両方でやるんだという答弁をしております。
  26. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 さつきお尋ねした点で、まだ答弁が頂けないことになつておるわけですが、それは政令六十二号は法的根拠として十分だと、こういうふうに閣僚の間で意見が一致したものの、さあということになると政令六十二号では疑義が若干あるというので、政令六十二号の改正政府は企図しておるやに一時耳にしたのでありますが、そういう事実があるかどうか。
  27. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 政令改正するという考えはございません。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 或るときに私はラジオを聞いていまして、非常に、自分一人で笑い出したことがあるのです。それは公務員追放法的根拠をどこに、求めるかということが閣議で問題になつたのであります。国家公務員については国家公務員法上不適格性には問題がない。地方公務員である教職員についてはなかなかこの根拠がないから、明日まで文部大臣を中心に文部省で探し出して来るようになつておると、こういうような言葉使いラジオが放送したときに私はちよつと自分一人で吹き出したのです。法的根拠がないのを文部省で今晩から探して、それは明日の閣議に持つて来る。それほどまでにして教員を追放しなければならないのか、こういうふうに思つておりました。ところがそれから一週間くらいして政令六十二号に疑義がないと、こういう結論に到達した。そうして準備は済んでおるというようなことを盛んに報道されておりまして、本日まで来たところによりますと、地方公務員法の制定と相待つて適格條項を適用するのではないか。こういう意思が政府にあるのではないかということを私は考える。と同時に大事なことは、その地方公務員法の不適格條項を適用するとなりますというと、先ほど波多野委員が言われたように基準になるものをはつきりとして置かないというと、余りにも抽象的にただ不適格ということだけしか現われておりませんから、私は実際の運用において非常に間違いを起す虞れがあるのじやないかということを懸念するが故に、重ねてお尋ねをしたいのです。  若しもそういう地方公務員法のあの不適格條項を適用されるということになつた場合におきましては、これは十分なる基準を設け、そうして愼重にやつて頂かなければならないということを要望申上げる次第であります。  最後にもう一つお尋ねしたい点は、若しもお答え願えるならお答えして頂きたい。それは八月頃からずつと経過して本日の大臣答弁伺つてどうしても割切れない点は、検討していたか、急に事情が起つてとかいう言葉、或いは事情が許さないようになつたので云々と、こういう言葉波多野委員に失ほどから答弁されておるわけですが、事情が許さないとは如何なることか、検討を続けておつたが急にというのは、どんな急な事柄が起つたのか、御答弁願えるなら御答弁して頂きたいと思います。でないと、波多野委員がさつき言われたように現政府ではいわゆる廣川農林大臣廣川朗報というのを盛んにぶつ放すわけですが、文部大臣は切るぞ切るぞという、廣川朗報ちよつと対蹠的なものを出されているというところにやはりまあ日本民族独立とか、或いは愛国心とか、そういうことを一方で盛んに総理以下閣僚の皆さんが主張され、国民を指導されておる半面、そういうことが出て参りますと、やはり政治に対する不信と言いますか、日本政治家自主性がないのだといつたような不信頼感からいわゆる国民の真の愛国心とか、独立心とかいうものが薄らいで、植民地的な国民感情というものが萌して来る虞れがあると私は思います。そういう意味から言つてもやはり大臣曾つて如何なる人の指図も受けでいない。自分信念によつてやるんだということを再三申されただけに、私はその点をやはりはつきりする必要がある。こういう立場からお尋ねをしているわけです。
  29. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 閣議でこうあつた文部大臣が探して来るなどということは閣議の、それは外に出ないことですからあり得ないはずです。ラジオ言つたからそれをみんな文部大臣言つておるとお考えになつては私は迷惑をします。そんなことはありません。それから又その他の事情において私がやるぞやるぞということが悪いとおつしやいますが、これはものの考え方であつて、そういうことを言つたために非常に教授がたが自粛している点もあるのです。ですからこれが必ずしも悪いとは私は思つていません。それから又ごとがはつきり進まないという事情は、今のところ御説明いたすことのできないことを遺憾といたします。
  30. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はレツド・パージの問題につきまして、先ほど波多野委員からどういうような質問がされましたか、ちよつと所用がありまして遅れまして存じないのでありますけれども、何かあとのほうで文部省の態度をはつきりすべきである。やるのならばはつきりやるべきではないかというようなことが話されたと思うのでありますが、このレツド・パージに対しましては私は絶対反対であります。先ずこの態度を明らかにします。で、私がここでお伺いしたい点は、実は赤い教員とか何とかいう名前で言われておるそういう教員が、一体どのような形で……、現在の文部行政、これを大きくいいますれば、吉田内閣の政策、この政策の如何なる面によつて一体発生せざるを得ない実情にあつたか。こういう点について文部省が真剣にこれを検討しているかどうか。この点が非常に重要な問題でなければならない、こういう工合に考えます。私はお伺いするのですが、例えば池上の特飲街の問題が起りました。これについては実際問題として父兄の、大衆の輿論が非常に大きく結集されて、結局あのような余りこの頃ないような、実に日本国民としては一つの希望の持てる、そういうようなささやかな成果ではありましたけれども、それがなされた。我々はこの動きの中にいろいろなものをいろいろ分析して見ているわけです。例えばこの運動がそもそも始められたのは、これは共産党のあすこの大田地区委員会の細胞がこの問題を取上げて大衆に訴えた問題であるということは事実である。これは隠すことのできない事実である。そういうような問題の中で、例えばこれに対して警察がこれに水をさし、赤の手先に踊るなと一方で抑えることによつて、あの業者たちの建築をぐんぐん進めて行つた、こういうことも事実であります。併しそういうような彈圧が一方にあつたにかかわらず、併し自分の子供を飽くまで守り抜くという親の教育に対する、子供たちに対する愛情、更に大きくいえば、民族の将来、こういうものに対して深く憂えるところのこういう大きな親心が結集されまして、あのような輿論を形成されて勝抜いた、その動きの中に、私たちは現地を視察しましてゆくりなくも一つの実に激しい情熱にぶつかつた。それは何かといいますと、あの中の先生が、あそこの多分池上の学校先生つたと思いますけれども、こういうような環境の中に子供を放置することはできない。従つて我々はこれを阻止するためには或いは命を賭けても断乎として守り抜くというような、実に教育に対する情熱が披瀝されて、我々は実にこれを感動なしには聞けなかつたのが実情であります。ところがこういうような先生たちに対しまして、運よくあのような成果が挙げられたから、このような先生は輿論の中で守られている。ところが逆にこれが非常に保守勢力の強い田舎なんかでこういうような叫びが仮に上げられたとすれば、それが警察あたりで、十分に、本当にこれを彈圧するというような形でやつて行く。恐らく一般の人民のこれに対するところの輿論も十分にこれをバツク・アツプすることができないという場合には、恐らくこの先生は孤立し、そうしてそこに附け加えられるのは、恐らくあの先生は赤いとか、激しいとか、常識外れだとか言われるのが落ちであるということは、これは私自身の田舎における教員生活を通じて実に感じて来たところです。ああいう場合に、これは文相に私は伺いますけれども、あのような教師に対して文部省はどのような一体考えを持たれるか、これは当時私は本院におきますところの厚生、文部合同委員会のときに、東京都の教育行政者にも伺つたことですけれども、これは文部大臣にもこの点をお伺いしたいと思う。ああいう破壊の中から、そして実に激しい、或る意味においてはこういう公務員の型を抜けているかも知れない、それは政治活動をするということで、そんなことは政治活動に属するので、そういうものはやつていかん。こういうような一方で批判さえ起りかけているような、そういう先生に対しまして、これは文部大臣としては一体どういうふうにお考えになるか、この点は非常に重要でありますから、先ずお伺いしたい。
  31. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は、聞いている限りでは、差支えないばかりでなく、大変よいことだと思つております。
  32. 岩間正男

    ○岩間正男君 ところが過般全国でこれは約一千名に余る教員がいわゆるレツド・パージというような形で追放されたのでありますが、これらの教員の活動につきまして、これは文相は、尤もその当時は関係しておられなかつたと思いますが、例えば東京において二百六十名になんなんとする教員諸君が首切られました。これはいつかも申しましたが、敗戰後の混乱の中で子供たちが食うや食わずで、中には体格検査をしますと一ヶ月に〇・六キロほども体重が落ちるというさ中で、教育を何とか守ろうとして、結局これに対して当局が動かない。不正もある、どうしてもこのままではいられないから、飽くまでこれに対しましてもつと力を結集して鬪おうというようなことになつて、その中で中心になつて働いた先生が殆んど首切られておるのですが、こういう点について文相は検討されましたか。今度の池上の事件の中で確信を持つて鬪われた先生、切られた中で確信のある先生、こういう人たちの形が私は非常に似ておると思う。片一方は、結果におきましては非常に輿論の支持を受けて、これが支持される。一方においてはこれは非常に行過ぎであるとかいうような一つのデマ宣伝の中に流されて、赤い教員とかいうことになつておるのですが、こういう点について文相は仔細に検討されましたか。この点非常に重要と思うのでございますが、どうでしようか。
  33. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は今後すべてを愼重にやろうということを申しておるわけであります、。
  34. 岩間正男

    ○岩間正男君 私がなぜそういうことを今お伺いしなければならないかといいますと、実はレツド・パージそのものの持つておる影響が大きいのでありまして、このことに対しまして十分にこれは今後考えなければならんことでありますが、これと同時にもつと重要な関連を持つ問題を取上げたいのです。というのは今日本教育はどうなつておるかという問題であります。そうして子供たちや父兄の中で何が起つておるか、又社会面においてどういう問題が起つておるか。こういう問題を、誰がどのように鬪つて行くかということを考えますときに、これは何といつて教育の担当者が本当に確信のある愛情によつてこれと闘つて行かなければならない。邪悪なものと鬪つて行く、正義観で鬪い抜いて行く。こういう態勢でなければ日本教育は支えられて行かない。全くそういうところまで行つておる。こういうことを考えますと、今の教育が完全無欠に行われておるならば、これは文部省がそういう手段をとつて、これで以て問題は解決すると考えるのも或いは妥当かも知れない。ところが一番大きな問題は教育の破壊や腐敗の面について鬪う人がなくなつて来るレツド・パージで……。例えば私がここで挙げますけれども、今日の読売に出ましたところの、本年の五月におきまして長期欠席の子供がすでに六十万ある。これは東京、北海道のようなところを抜いておるのでありますから、これを入れればもつと多くなると思うのでありますが、これは中央青少年問題協議会、こういうところの調査によりますとはつきりそのような数字が出て来ておる。このことは今までもしばしば我々はこの委員会で問題にして参つたと思うのでありますか、併し統計的にそれが六十万という数字が示された。而もそれは本年の五月のことであります。五月以後には何が起つておるか。この半ヶ年には何が起つておるかということを考えましたときに農村の最近の情勢、殊に東北におきましては闇米一升五十円で売らなければならない。売り叩かなければならないという実情の中では、恐らくこの数字は倍加されておるだろう。こういうように考えられるのでありますが、こういう問題を取上げて職場から声を上げ、そうしてこういう破壊のために戰うということが、やはり教員の任務であると考えるか、考えられないか。これを放置しておつていいものであるかどうか。そうしてこれが放置されておる形においては、私の考えでは恐らくこれはやはり世の中の問題にならないし、やはり政治的にも取上げられないと考えるのでありますが、直接その職場を担当する教員において、黙つてこれを見ておつていいのであるかどうか。文相はどうお考えになるか、この点お伺いいたしたいと思います。
  35. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 黙つて見ておるわけではないので、適当な順序を踏んでそのことを一般に知らせて、又それが改良できるような適当な順序を踏むことが必要だと考えます。
  36. 岩間正男

    ○岩間正男君 こういうような問題にタツチし、そうしてやつて見ますというと、なかなかこれが実際問題として文相は、できましたら私は地方のそういう農村あたりで我々も一応やつて見たいと実は思つておるのであります。最近はこの院内に参つて、院外の本当の姿というものは我々も十分にタツチすることが少いと思う。文相もこれはやつて頂きたいと思うのでありますが、殊に封建色の強いところのこういう問題を取上げて闘うことがどんなに困難だか、どういうふうなそこにボスがいて、そうしてそれらの者を赤とか何とかいう名前の下に結局は自分たちの、そういう一つの邪なやり方に対しましてメスを入れることになる、結論からいいますと……。そういうことなしにこういう問題を取上げて鬪うということは結局できないことでありますから、当然そこに衝突が起つて来る。その衝突の中で本当に鬪い抜くということはどんなに困難な問題であり、そうしてこれは努力を要する問題であるかということを、文相は本当にこれはお感じになつていらつしやるか、この点私は是非これは見頂きたいと思うのでありますけれども、私の体験や最近の、殊に反動的に動いている時代の風潮を考えましたとき実に容易ならない。そこへ持つて来て教員は出る釘は打たれるという形で以て、非常に抑圧されておる面が大きいのです。職階制が強化され、地方公務員法が非常に拘束的な規定を大きく盛つてここに現われて来るということになりますと、文相は成規の手続をとつて云々ということをおつしやつたのでありますけれども、これは現情ではなかなかこれはやり難い。こういうふうに考えられるのでありますけれども、こういう点を現在地方公務員法が出されたり、そうして反動色の強い中で教員はどうすべきであると、これはお考えになりますか。この点私はやはりお伺いしておきたいのであります。
  37. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 前に答えたと同じことであります。
  38. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは実情を見て頂いて、そうしてどんなに一つの真実、正義を貫くために闘うところの教員が困難におかれておるかということ、そうしてそのために本当に教育、民族の教育を守る立場から考えて必要なところのものが、実際は逆の方向に流れておるか、こういうことを私は訴えたいのであります。例えばもう一つ例を挙げますと、今日の新聞に、やはり同じ問題としてこれは我々は考えなければならないのでありますが、この予習教育学校高等学校に進む予習教育をやめるように、こういうことをしないようにという訓令を東京都の教育委員会がわざわざ東京都下の教員諸君に向つて訓令をせざるを得ないというような状況が起つておるのであります。これは言うまでもなく戰争前の教育というものは、東京都は殆んどこれは予習教育であつた。そうして教育の一番重点は何かといいますと、小学校あたりでは六年生を持つて、そうしてその教えた子供たちが何人中学校や女学校に多くパスしたか。そのパーセンテージによつて教員の優劣がきめられる。そうして又それを一方では半職業化して、それによつて或いは家作なんかを建てるという教員もあつたのは事実であります。これは東京でありますが、これは恐らく都会地では大なり小なり行われておつたと思うのであります。そこで非常に教育の問題にならない腐敗が起つておるのでありまするけれども、そういうような状態が今日再びできておる。できておるからこそ、今日そういう訓令を発してこれを取締らなければならない。そこに落ちておるのでありますけれども、こういうような問題に対して、この原因はどこにある。そうしてこの対策については文部省はどういうふうに考えていられますか。この点文部省見解をお聞きしたいと思います。
  39. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は或いは新聞をよく見ないために、私が間違つているかも知れませんが、東京都で専らやめたいと思つているのは、いわゆる受験ということではなくて、この頃言うインテリジエンス・テストとか、そういうようなものの機械的な勉強ですね、そういうものを專ら目標としてあれを出されたものではないか。私もはつきりは、詳しく読んでおりませんから……。予習復習ということ以上にああいうことは勉強したつて何にもならない。そういうことが含まれているのではないか。私がちよつと見たところでは、毎日には、「受けん」の「けん」という字に検定の検という字があつて、試験の験でなかつたと思うのであります。そういうふうに私はちよつと見ましたが、或いは私が間違つているかも知れません。
  40. 岩間正男

    ○岩間正男君 これも私は今ここで新聞を持ちませんので、確実にはいずれ新聞で何したいと思うのですが、そうじやないと思う。つまり教育内容が今までのようなものを残して、やつぱり或る特定の子供だけを教育する。或いはこれを自宅に連れ込んで教育する実情を、文相は御承知かどうか知りませんが、そういうことが行われている原因について、文相一つ、御存じないと思いますけれども、何といつてもこれは最近の六三制そのものが問題になつて来る。普通の、公立の六三制では十分な特別教室も持つていない。又設備も悪い。校舎さえ十分に建たない状態でありますから、これは全くそういう状態ですから、これに対してやはり施設のよい、それから教育内容のよいところに行きたい。こういような希望が、非常に父兄の経済状態が悪いにもかかわらず、やはり父兄はそう考える。これは、教育のない観念と言えばそれまででございますけれども、やはり親心のそういう盲点がある。その盲点を利用して、そうして私立学校はそういうような募集を煽つているという事情が、去年あたりはもの凄く出て、或る学校では三倍五倍殺倒したというような事実もある。そこです。それともう一つは、教員の生活が非常に破壊されているという現実がからまつているのであります。これは東京都の実情を東京の教員組合あたりで調査したものがございますけれども、内職内容について研究した。私はこれも資料を持つておりませんけれども、二、三年前を見ましても相当の数が内職をしなければ食われないという実情に陥つております。この内職の中にはいろいろあります。中にはおでん屋をやつている者もある。或いは洋裁を、ミシンを踏んでやつている者もあり、或いはひどいのは占いまでやつている実情であります。併し何といつても多いのは手つ取り早くて自分の職場と関係のある子供を特別な形で教育することによつて報酬を得る。それによつて自分の暮らしの補いをしておる、この事情が非常にからんでいるのであります。この二つの條件を私たちに分析して、はつきりこれに対する対策を考えなければ、今の新しい教育、受験勉強などという、つまり戰争時代に行われて、それの結果兒童の心身を蝕んだあの恐るべき状態を打破するためにこそ、新しい教育がなされておるが、その新しい教育の体制がそこで壊される。こういう面でたしか今日の指令は出されていた。これはさつき二、三面繰返して読んだのでありますけれども、恐らくそういう点間違いないと思う。單なるテストの問題ではない。いわゆる昔に帰つた受験勉強の体制、こういうものについてこれを取締つている、そういう訓令のように私は見たのでありますが、そういう点について文相はどういうふうな対策を持ち、お考えになつていらしやるか。
  41. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私も今の教育について教場が不足しているとか、或いは又教員の生活が悪いとか、いろいろ不十分な点があると思つております。そういうことは私も相当つておるつもりであります。だからそれに十分対処するためには予算を殖やすとか、先生の生活をよくするとかいうようなことを考えておるわけであります。
  42. 岩間正男

    ○岩間正男君 この点は、まだ文相も十分実態を把握されないようでありますから、いずれ次の機会において十分この対策を私はお伺いいたしたい。秋は只今の予算に対するそれだけの漠然とした御答弁では……、実は残念ながらこの前の予算委員会におきましてもややその点が問題になつたのでございますけれども、我々はこういう漠然とした御答弁によつて満足する段階にはない。日本教育はそんな状態でない。そのことをはつきり確認したいと思うのでありまして、その点は是非この次に明らかにして頂きたいと思うのであります。同時に先ほど私が質問いたしましたところの長期欠席がすでに今年の五月において六十万を超えておる。このことは実に重大なる問題であり、もう一つ問題にしたいのは同じく読売新聞の今年の一月の二十五日の記事によりますと、少年の集団家出が非常に激増しておる。そうしてもうこれは一月の半ばでありますけれども、半カ月の間に約六百名を突破しておる。これらの原因は何であるか。これが分析して出されておるのでありますけれども、これによりますと何と言つても最近の農林の不況状態が大きな原因をなしておる。こういうような実態が出ておるのであります。こういうようなものに対する対策は一体どういうことがなされておるのでありますか。これこそ実に重大であると考えております。成るほどレツド・パージの費用は一千三百万円、この補正予算におきましては……、我々はこのような予算には賛成できなかつたのでありますけれども、通りました。これはそういうものが通る……、これは何人の先生か知らん、五十数人だか百人だか一千人だか、これに対する対策は一千三百万円、併しごの六十万の子供、更に厖大なるこの集団家出の子供、そうしてますます増加の傾向の、増加しつつあるところのこれらに対する対策は一体どういうふうになされておるのでありますか。こういうものが放置されて、一方でレツド・パージというものがどういう主張によつてなされておるかわからないけれども、そういうことによつて一方で教育の破壊を防ごうとする。そういう防ごうとする一つの力というものは、逆に助長される力に、ますます教育破壊のほうに加速度的に動いて行くという、こういう態勢に対しては私はこれは非常に重大問題だと考えるのでありまして、このレツド・パージの政策を一方的に進めておるところの文部省が、如何にして事実に起つておるところの、これらの実に深刻なるところの破壊の状況に対して対処されるか。具体的なこれは策がきつと文部省としてはおとりになつておると私は考えざるを得ない。若しそうでないとすれば、これは大変な錯誤である。文部行政の根本的な錯誤と言わざるを得ないのでありまして、文相の一つはつきりした具対策をお伺いしたいと思う。
  43. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) レツド・パージも必要であると私は考えます。それから又そういう農民の、農村の疲弊とかそういうことも、ひとりこれは文部省だけの問題でなくして、政府全体としてそれにさまざまな対策を講じておると思います。
  44. 岩間正男

    ○岩間正男君 レツド・パージは必要であり、そうしてこういうことも必要である。これに対していろいろの対策……、レツド・パージはつきりしておる。一千三百万円の予算を取つて、そうして審査委員会を作つて、そうして或るときには早くしなければたらないというような報告も又あつたりするような話で、具体的に動いておる。然るにこの対策については私は具体的なものを聞かないのであります。これは予算の裏付けなんという面でどう現われておるか。これは恐らくないのであります。この点について、而もレツド・パージの問題とこういう問題と一体どつちが重大であるか。この点について一体本当に民族の将来ということに思いをいたされるときに、文相として一体どつちを重大とお考えなさるか。こういう対策は今の御答弁では満足しません。もう少し文相は具体的な、或いは今後とられるどういうお考えでもいいのでありますけれども、これについてお伺いしたいと思います。
  45. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) このレツド・パージも必要であると思います。それから又例えば長期欠席の生徒はどれだけあるかということを調べるとか、そういうようなことも皆文部省でいたしております。人によれば、世間では、日本の経済事情では六三制教育というものは無理なことであるという人もあるのでありますけれども、私共は、どうか九年の義務教育がそのままよく実施できるように、いろいろの策をいたしておるのであります。又更に根本においては、これは経済問題、予算が……、如何に具体的に農村などをよくしようかということを、不十分でありますけれども示しておるものだと私は思つております。
  46. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもこれは一つの吉田内閣の根本的な政策の問題にかかつておる。又それを具体的に言いますならば、農業政策にかかつておるのであります。これは無論農業政策だけではない。いろいろなあらゆる社会政策、労働政策と関連して来ますけれども、そういうものから来ておる。併し文部省としまして当面の教育部門を担当する、そうしてそういう面においてできるだけこの破壊を、これを防ぎ止めるという対策が、何といつてもこれは膏薬貼りになりますけれども、この膏薬貼りだけでもやるだけの決意、そうしてそれを具体的な対策の上に現わす。そうして一番重要なところはこれを予算化するという問題、こういうものが大きくこれは政策の面に取入れられなければならないと思いますけれども、今お伺いしますと大切だということを言われておりますけれども、全くこれは具体的な政策が乏しい。こういうふうに考える。この点が明らかになつたのでありますけれども、私はこの問題はまあ又近い次の機会に、十分にこれに対する文部省の対策、これを明らかにして頂きたいと思います。非常にこれは重大問題なんです。こういうことを要望しまして私の質問を終ります。
  47. 高良とみ

    ○高良とみ君 私は予算関係の実績の中から、試験制度、試験と採点のやり方をどういうふうに全国の中等学校でやつておられるかを伺いたいのです。聞くところによりますと、従来のような点数の取り方、曾つてのようなものでなく、最近の傾向を伺うのですが、一つのクラスを統計学的な分類をいたしまして、真中の五十人、五〇%を零点の標準にして、それよりも上のパーセントをプラス一、プラス二というふうに分類して、又それ以下の者をマイナス一、マイナス二のクラスにして、そういうような採点方法を小学校から出学校の済むまでやるような指示が與えられておるのであるかどうか。それによる教員等の訓練が統計学的の基礎を持つておるか。そうしてそれが人数の少いような場合には非常に分類方法が困難でありまして、事実上児童の分類に困難を来たしておるというような報告を得ておるのであります。若し御存じのかたがありますればお聞かせ願いたい。
  48. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 今日高良さん、遺憾ながら政府委員が来ておりませんから、他の機会にお答えいたさせます。
  49. 高良とみ

    ○高良とみ君 何か相良さんが御存じのように伺つたのですけれども……。
  50. 相良惟一

    ○説明員(相良惟一君) そういうことをよく存じておりません。
  51. 堀越儀郎

    委員長(堀越儀郎君) 他に御発言がなければ、本日はこれを以て散会いたします。    午後二時二十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員            高田なほ子君            波多野 鼎君            高良 とみ君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   説明員    文部省大臣官房    総務課長    相良 惟一君