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1951-03-28 第10回国会 参議院 農林委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十八日(水曜日)    午後一時五十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○食糧管理法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 羽生三七

    ○委員長(羽生三七君) それではこれより委員会開きます。  本日は最初食糧管理法の一部を改正する法律案を議題にいたします。昨日の小林君の動議が成立しましたので、本日この法案については質疑を終了して採決に入ることになつておりますので、御了承を願います。御質問のあるかたは……。
  3. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 食糧庁長官にお尋ねをして見たいと思いますが、雑穀の統制は解除になりましたが、政府手持雑穀拂下げをいたされておるのでありますが、どうも聞くところによると、政府が親心で拂下げをしたものが、その趣旨に反した方向に行つておるようなことも聞いたり、又重要な部面に振向けるために拂下げをしたものも、名目に過ぎないことをして、他は方向違つた方面に行つておるというような話も聞きました。非常に責任のあることは、十分にそのほうの調査もいたしておりませんし、存じておりませんので、非常に困つておるのでありますが、長官としておわかりになつておる点もあると思いますからお伺いいたします。
  4. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 二十五年産雑穀につきましては、まだ大部分のものは拂下げをいたしておりませんから、恐らくそういうお話のありまするのは、旧年産のものについて数カ月前に入札をいたしたような、数カ月前でなくもつと前でございますが、したものが、一部実需者でないものが思惑によつて買占めをして、それが実需者方面に、将来の値上り期待のために渡さなかつたというようなことの点があつたのじやないかと思うのです。そういうことは甚だ適当でありませんので、最近におきましては、大体拂下げの主体は実需者ということに限定をいたしたいと思つております。そういう一般の経済界の変動に鑑みまして、そうした心配も特に重点を置いて頂かなければならんと考えておりまするので、今度の新らしい雑穀につきましての拂下げにつきましては、只今申上げたような方法実需者限定をし、価格等も暴騰しないような一種の見積り合せ方式をとりまして、御批判のないようにいたすつもりでおります。私が承知しておるのはその点だけでございます。
  5. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 これも大体安孫子長官御存じになつておるのではないかしらんと思つておりますが、実は「てぼう」の拂下げを第一回に北海道の販連が入札で落してそうしてやつたのでありまするが、第二回目もやろうと考えたのでありますが、遠慮したほうがいい、こういう話があつて、そこで私は遠慮する必要はなかろう、価格の点でとれなければ別だが、遠慮する必要はなかろうと言つたのでありますが、やはり又食糧庁にいろいろと御相談もし、御世話になることが多いと考えたが、安い価格に入れて落ちなかつたのでありますが、そのときに拂下げになつたものは、輸出目的拂下げをして、そうしてその目的の品物はほんの小部分、名目的輸出をして、あと国内に流して、相当な儲けをした、而も長官はおいでにならなかつたでしようが、下の係長か課長のところへは、非常に威嚇するような態度で、向うに廻してとらして、この方向に向けないという話題が非常に大きく響いております。私は長官自体知つてつたとは考えておりません。併しながらそのときから遠慮しようということは聞いておりましたが、前に申上げますように、遠慮しなくても結構ですから、入れて落ちないものはそれで仕方がないのであつて入札はしたほうがいいというのでやつたが、それが落ちなかつたのでありますが、それは遠慮するつもりで安くやつたので、落ちなかつたのであります。こういう話でありますが、その後の行き方は非常にまずいので、如何にも食糧庁が威嚇をされたのか、又は解釈のしようによつては、少し買わされたのか、どつちかわからんが、そういつたように聞こえるので、非常に不愉快であります。私はそういうことはないと信じておりまして、そういつてもなかなかそうは割切れんので、その事情長官御存じであると思うのですが、御存じでしたらお聞かせを頂きたいと思います。
  6. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 只今お話の点は、私よく承知いたしておりません。「てぼう」等につきましては、これは大体輸出向が主になりまして、これは外国市場の開拓という意味もありまして、できるだけ高く、併しながら引合のとれるところで出すというような形になろうかと思います。従つて「てぼう」等につきましては、LCの開設がありましたようなものについて、そうしたもの同士の間における入札という形でやるのが一番公正じやないかということで、そういう方法でやつたのでありまして、今後入ります「てぼう」につきましても、大体そういう方向で処置して行きたいと考えております。
  7. 西山龜七

    西山龜七君 最近の食糧配給に対する辞退状況をお聞きしたいと思います。その次に米の生産地に、新聞なんかの報道を見ますと、五、六十円ぐらいの安値で売買ができておる、かようなことを新聞紙上で見ますが、そういうような実情があるかどうかというようなこと、この二つをお聞きしたいと思います。
  8. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 去年の十二月までの配給辞退数字は前にも申上げましたように、大体三万トンから五万トンの間、月々四、五万トン程度というふうに記憶いたしております。一月以降の配給辞退は三カ月間のフリー・クーポン制に移行いたしましたので、三カ月間締めて見ませんと、その実績が出て来ないわけであります。一月は割に少くとも、二月でそのクーポンを使うかも知れない。三カ月間締めました実績はまだ出ておりませんけれども、一月は割に配給辞退が多かつたかと思います。麦製品につきましては。二月はそれが相当回復をして来ております。やはり三カ月間締めましても、数量は何とも申上げられませんが、従来程度ぐらいの配給辞退はあるのじやないかと想像いたしております。  それから価格の問題でありますが、私どもの調査いたしましたところでは、産地における自由価格只今御指摘のような、お話のような価格を出しておる地帶もあるようでございます。これは本当の産地に限られた地方でありますけれども、詳細な各地における自由価格というものは調査しておりません。そういうお話のような価格を出しておる地帯もございます。
  9. 西山龜七

    西山龜七君 卸が実行に移行しました後におきまして、その配給辞退なんかによりまして、その卸、小売のマージン現状のままでは経営ができない、こういうような実情がどうも来るのではないかと、かように思いますが、それに対しまして、何か政府のほうに対策がありますか。
  10. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 卸のマージンは私どもできるだけ圧縮をして参るのが、自由にいたした場合の一つ目的であつたので、これが今後相当殖えて行くというような形は、方法としては正しくないと考えております。現在のマージンをはじきますについて、その基礎となりました取扱数量、その他のものが配給辞退のために減つて来る、その結果計算上のマージンが殖えざるを得ない。一定の收入を得させようといたしますならば、数量減つた分だけについてはマージンを上げなければならんのじやないかということに、まあ計算上そういうことになろうかと思います。併しながら自由にいたしました趣旨、又できるだけマージンを切詰めまして、中間経費を切詰めまして、消費者価格を低目にするという根本方針からいたしましたならば、配給辞退がありましたら、直ちにそれを反映して卸のマージンを殖やすというようなことはやりたくないと考えております。
  11. 江田三郎

    江田三郎君 この法律の第三條の二の一番終りのところでありますが、政府が麦の買入れをする場合の価格は、生産費及び物価その他の経済事情を参酌してこれを定むる、こういうように書いてございますが、今政府のほうで現在麦に対しての価格のきめ方というものを、生産費及び物価その他の経済事情を斟酌してこれを定むるというような方式でやつておられるのかどうかということであります。いろいろ政府の発表されたものを見ますというと、單に対米価比率を何%と、こういうように出しておられるように我々は見受けるのですが、そういう対米価比率を何%という行き方、面子に囚われている行き方、ここに書いてある行き方、これはまあ従来も第二條でそうなつてつたと思うのですが、これとは果して矛盾するところがないのかどうかということを一つお答え願いたい。
  12. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 価格算定についてはまあ前から価格については生産費物価経済事情を斟酌して、こうやつておりまして、非常にきつい議論をいたしますれば、現在パリティ計算なんかでやつておりますことも果してこの條項から見て適当であるかどうかというような御批判は十分あり得るかと思います。麦価については対米価比何パーセントということで出しておりますが、やはり何パーセントできめることにつきましても、やはりそのときの物価或いは経済情勢、それかり麦の生産費も一応考慮には入れてその辺をきめておるわけであります。ただ麦の生産費につきましては、米よりも高い数字も出ておりますので、それと織込んで現在の麦価はきめられておるということまで申上げることはなかなか申上げにくい点でありますけれども、大体従来の消費傾向或いは小麦の、麦の価格の動向、まあそういうようなものを織込んでその総括的に判断をして価格をきめておる、従つてこの條項に頭から抵触はしていないというわけであります。
  13. 江田三郎

    江田三郎君 この際、生産費については一応考慮に入れるということでありますが、併し、この條文を率直に読みますというと、先ず第一に生産費というものが出ておるわけでありまして、生産費及び物価その他の経済事情を斟酌するということでありまして、生産費が中心に出ておるわけであります。そういうことと、生産費というものが非常にできにくいから一応考慮に入れて、ということでは非常に違つて来ると思うのでありますが、そういう点、果して今の御答弁のように矛盾をお感じになつておらないのかどうか。更にそういうよりな建前でやつておられるときに、従来の対米価比率を一挙にここで引下げようというのでありますが、そういうような引下げという根拠が一体どこから出て来ておるのか。その点を詳細に一つ納得の行くようにお答え願いたい。
  14. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 生産費論はしばしば議論されたのでありますけれども、まあ生産費をどこでとるか、資料のとり方、或いは資料をどの辺で整理してやるか、又出た生産費をどの辺で切つてやるかということによつてつて参りますので、一概に生産費と申しましても、その建て方によつて方法は変つて来ると思います。その辺の事情は一応考えておりますが、生産費算をやりましてそれを基礎にいたしまして、その上に物価事情を斟酌してやるということは具合のところはやつておりません。やはり米価というものが基準でありまして、それに物価その他の経済事情、或いは生産費等も若干睨み合せをいたしまして、対米価比というものをきめて参つておるのであります。率直に申しますれば、その條項を頭から読んだ通り行き方というものではなくて、もつと広い意味においてこの価格を取扱つておるというふうにお答え申上げるのであります。
  15. 江田三郎

    江田三郎君 若しそういうことでありますならば、この際改正法律案を出されるときに、この書かれ方を直されたらいいのじやないか。今までそういうことをやつていないということでありますが、併し今度たまたまこういう改正法律案が出るわけでありまして、その改正法律案にやはりこういう言葉が出て来て、今の御答弁のように、実際にはこれを読んだ率直な受取り方の通りにはしていないということを長官のほうでも認めておられるのでありますから、それならばそういう羊頭狗肉的なことをしないで、これをもう少し別な言葉で表現されたほうがいいじやないかと思いますが、その点どうお考えになりますか。
  16. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 私も率直に申上げますと、麦というものを何で形成するかということは、非常にむずかしい問題でありまして、生産者だけの立場から申しますならば、生産費というものを基礎にしてやることが一つ方向だろうと思います。併しながらやはり商品として出廻るものの価値というようなものになりますと、必ずしもそれだけによれない過去における実情もあるわけでありますから、その点をどういう方式で以て価格を出すのかいいかということについては、なお十分研究しなければなりませんし、又我々もいろいろ研究はいたしておりますけれども、最後的な結論も出ておりませんので、令すぐにこの條文を別の書き方にするというふうな書き方、別の條文内容というものをまだはつきり私どもは確信を以て書けるという段階にまだ至つておりません。それでこのままで御審議つておる次第であります。
  17. 江田三郎

    江田三郎君 そうしますと、一応政府のほうで考えておられるのは、この條文に書かれてあることを率直に受取れることと同じような方向へ持つて行こうとする意図は持つておられるわけですか。この点はいつかの本委員会におきまして農林大臣及び安本長官質問いたしました場合に、農林大臣生産費方式をとることに努力をするという言明があつたわけでありますが、その言明通り、そうしてここに書いてある文章このままから受取られる通り生産費方式のほうへ持つて行かうとする努力はやつておられるのですか。
  18. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 大臣お話を申上げておる通りだと存じますが、私の感じを申上げますれば、生産費主義というもので是非やつて参りたいとこう思つております。併し麦価につきましては、生産費主義のほかに他の要素を米の場合等よりもより多く加味して行かなきやならんのじやないかというような感じもしております。
  19. 江田三郎

    江田三郎君 それなら私はおかしいというのでありまして、この管理法第五條の場合に、米について書いてあることは、「生産費及物価其ノ他経済事情参酌シテ之ヲ定ム」ということになつており、又この改正案の麦に、適用する場合も同じ文句を使つてあるわけでして、同じ文句を使つておりながら米の場合と麦の場合とは内容が違うんだということは少し脇に落ちん点がある。こういう点も少し政府考え方は杜撰ではないか、杜撰とはお考えにならんのか。
  20. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 生産費主義ということだけで理論的にだけ考えて参りますればそうしたお話になるかと思います。併しやはり物価格というものはそれだけで形成されるものでありませんで、いろいろな要素が加わつて参りまするから、その間米麦について若干のニュアンスがありましても、それが適正じやないということにはならないというふうに私は思つております。
  21. 江田三郎

    江田三郎君 重ねて申しますけれども、これは法律ですよ。これは詩でもなければ随筆でもないのでして、そういうものを同じ文章をAの場合とBの場合と内容を違つて解釈しようというのは無理な話だと思うのです。これは法律ですよ。どうも今の答弁では答弁にならんと思うのです。
  22. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 私もこれは詩だとは思つておりませんが、(笑声)法律條文としては同じでありましても、若干米と麦との場合にその適用の内容について、例えば現下の経済事情というものを十見るところを片方八を見る、これは例でありますけれども、そういうような措置はこれはあり得るのじやないか、それで非常に不明確になるというものじやなくて、そういうことは考え得るのじやないか、こういうふうに思つております。
  23. 江田三郎

    江田三郎君 まあそれ以上はあんまり申しませんけれども、とにかく今の答弁では、常識で行きますと納得できんと我々は思うのです。更にもう一つお尋ねしたいのは、こういう価格をきめられる場合に、米価審議会というものをどこまで尊重して行かれるのか。米価審議会の尊重という問題は長い間の問題になつているわけでありまして、特に二十五年産米価決定に当つて政府のとられた態度は、米価審議会というものを実質的には全く無視されたような形になつて来たわけでありまして、その際米価審議会自体におきましてもそういうことが更に問題になつたし、又参議院の本会議におきましても我々の同僚議員からこの問題に対して質問をしたわけでありますが、今後政府のほうは米価審議会というものをどういうように取扱おうとしておられるのか、これをはつきりと法制化して行こうというようなお考えはないのかどうか、依然として一方的にきめて置いて、きめたあと米価審議会へ何か相談をかけるというようなでたらめな態度をおとりになるかどうか、その点お聞きしたい。
  24. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 米価審議会運用について、米価等政府がきめまして、一方的にきめてこれを審議会にかけて、形式的にただやつておるという御批判でありますが、私どもはもつと実質的に米価審議会にお願いをしたいと、こう思つておるのであります。一昨年の米価等につきましては、従つて政府としては何らの案がなくて、米価審議会において御決定を願う、案の実現方について努力をしようという形で一昨年は参つた。併しその運用上から、それよりもやはり政府一つ原案を出して、それを審議するほうが或いは円滑に行くというような一昨年の経験からいたしまして、委員各位お話もありましたので、昨年は原案を出して御審議をお願いいたしました。御答申を得ました数字実現するにつきましては、現在では日本政府のみで決定し得ない実情にありますために、関係方面とも折衝する、そのためにいろいろ時間もかかる、又御答弁通り実現を見得ない場合もあるということが今の状況であります。この点は御答申がありますればそれをできるだけ実現するように私どもとしては最大の努力をいたして参るつもりであります。米価審議会については十分御意見を尊重してその線に沿うてやつて行くという気持は、終始変らない点でございます。
  25. 江田三郎

    江田三郎君 只今のお説のように米価審議会を尊重せられるのでありますならば、百尺竿頭一歩を進めて、米価審議会を法制化するという御意思はございませんか。そこまで行かないと結局徹底しないと思うのでありまして、尊重すると言いながら、実はとんでもないことばかりおやりになる。
  26. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 只今のところ法制化する考えを持つておりません。
  27. 江田三郎

    江田三郎君 もう一つ最初質問お答えがなかつたわけでありまして、それは従来の対米価比率を一挙に六四%に裸小麦で下げたのは一体どういうような理論的根拠があるかという質問に対しましてはお答えがなかつたのですが、その点一つこの際お答え願いたい。これは理論的根拠及び実情を詳細にお答え願いたいと思います。
  28. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) この点は十分御承知だと思いますが、一応申上げますと、曾つて米価麦価開きというものは大体六十二、三であるというのが実情であつたわけであります。ところが食糧需給状況が非常に窮迫をして参りまして、食糧増産関係或いは集荷の関係等からして、麦価というものをできるだけ上げなければならんということからいたしまして、米価麦価開きというものが順次圧縮されて参つたのであります。併しながら消費形体のほうを考えますと、やはり米価麦価をそこまで鞘寄せいたしますことは、どうしても米に対する割高というものが如実に出て奉ります。接近をいたしておる関係麦類消費というものが合理的に行われないという、点も出て参りますので、私どもとしましては麦価は下げないでできるだけ米価を上げるという方向考えで来ておるわけであります。その場合に米価を上げれば直ちにそれについて従来の比率程度麦価を上げて行くかと、こういうことを考えますと、これはやはりその間に合理的なと申しますか、従来の米価麦価開きというようなものも考慮に入れて、合理的な消費が行われるような形において価格を形成するのが適当であろうという考え方で、麦価は下げないで米価を上げて行く、上げて行く過程において麦価米価との比率を順次開いて行くという方向考えておるわけであります。従つて六四という数次についてはいろいろ御批判もあろうと思いますけれども、大体開いて行くという方向についてはその辺で御了解を願えないものかと存ずるのであります。できるだけ米価を上げて麦価上げ方米価上げ方よりも少くして比率を開いて行くというのが経過措置といたしまして適当であろうと実は考え方をしておるわけであります。昨年度六四にきめました場合のいきさつも大体そういうような考え方からこの辺に線を引いた次第であります。
  29. 江田三郎

    江田三郎君 今の御答弁でもやはり納得できないのでして、麦価を下げないで米価を上げるというような建前で行かれるのならば、米価についての今までの政府のやつて来ておつたパリテイ価格というものに特殊な上げ方をされたのは、今度のプラスアルフアーというものだけ、そうだとしますというと、麦価を下げないで米価を上げるという行き方をそのまま信用するとしますと、少くともプラスアルフアーをとつたパリティ価格に従来の比率をかける、最少限その方式しか私は出て来ないと思うのでありまして、更に比率を動かすということはとんでもない間違つた結論に行つていると思うのであります。而もそういう際に、我我が理解するところによりますと、政府のように生産費ということは書いてあるけれども、書いてあるだけだというのなら別問題でありますけれども、少くともこの価格決定の書かれた法律を読んで見ますと、生産費というものが第一に来ておる。その生産費について本年度特に米価に比べまして麦価のほうは過燐酸等価格が非常な上昇をしているということがあるわけなんでありまして、どういう、角度から見ても、少くとも生産費というものを考える限りは、この対米価比率を更に変えて行くというような理論的根拠はないと思うのであります。ただ若し一つ根拠ありとすれば、それは日本における食糧増産考えないで、ただ将来の日本食糧需給が、自立経済がどうなろうと、国の独立がどうなろうと、外国食糧に依存して行くのだ、そういう角度から考えるのなら別問題ですけれども、少くとも国内食糧増産をしようということをかりそめにも考えておられるならば、而も私はこういう考え方は、かりそめではなしに、本当に真剣に考えなければならないと思うのでありまして、日本の現在門かれているところの国際的地位、将来の問題を考える場合に、どうしてももつと経済自立という問題を、食糧日給度の向上ということを考えなければならないのでありまして、そういうような角度から問題を考えて行きますならば、今言われましたようなこの比率をここで変えなければならんというような事情はどこにもないと思うのであります。そういう点農林省の考え方というのは、一体食糧増産ということを考えているのか、もうそんなことはどうでもいい、国の自立もどうなつてもいい、万事あなた任せで行こうということに切替えたのか、一体どうなつておるのですか。
  30. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) できるだけ食糧自給態勢を確立しなければならんということは、食糧庁としましても当然その方向考えておるわけであります。然らば麦価を相当上げる、従来の傾向から見ますれば、こういうことは言えると思うのです。いろいろ御批判もあろうかと思いますが、需給が非常に緊迫をいたしておりますれば、やはり麦価等も上げるような状況になろうと思います。上げた価格取引も実際に行われると思うのです。ということは、輸入食糧を相当減らすということ、輸入食糧を減らして主要食糧についてすれすれのところで行くというようなことになりますれば、その辺は取引価格の上においても反映して参ろうかと思います。併しそうした状態に置きますことは、只今お話のありましたような日本経済健全化或いは自立経済の促進という点から言いまして、食糧についてはやはり安定をした状態に置かなければならんということもやはり正しい私は見方だと思うのであります。そういたしますれば、結局現状におきましては相当量輸入食糧に仰がなければならんのが需給推算から明瞭なところであります。従つて輸入についても促進をいたしておるわけであります。又いろいろ輸入食糧についての御鞭撻も受けておるわけであります。そうした状況において又食糧増産というものがそれでは行われないじやないかというような意味お話もありましたけれども、私はそうは考えませんので、やはり別のいろいろ農業増産上の諸施策というものを強く運動を展開して参りまするならばやはり増産ができるのであつて輸入食糧が多く入る入らんということのみによつて増産ができるできないというような形になるのじやなかろうというふうに存じております。
  31. 江田三郎

    江田三郎君 今長官のおつしやつたことは、少くとも現在の政府が農村対策として一番鳴物入りで宣伝されました麦の増産運動或いは食糧の一割増産運動のあの要綱の一番最後に書いてあるところの価格に対する條項とははつきり別な考え方になつておるということだけを申上げまして、質問は打切ります。
  32. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 どうも長官のお考えになつていることと、我々の寝ても起きても考えていることと、非常に違いがある。これは米価麦価開きが非常に狭まつて来て、比重が非常に麦のほうが重い、これは終戰後止むを得なかつた、そこで今後その開きも戰争前の比重まで成るたけ早い機会に下げて行きたい。これは長官でなしに大蔵大臣がそういうことをたびたび言つておりますが、非常に間違つた考え方で、戦争前の日本状態と今日の状態を何にも区別せない考え方でありまして、現在のようなことになり、米と麦との比重が大体戰前に近付いて来たようになつておりますが、私はそういう考えは一切おやめになりて、そうして自給食糧の確立に一本槍に進むには、前の終戰後の米の比重と麦の比重ほど接近してもこれは困ると思います。併しながら余りにも六割だとか或いは六割五分だとかいう値段では、決して引合わないから作らない。そこで今長官は米の価格をだんだん上げていこう、これは同じことなんで、麦を下げないで米を上げれば比重が開くに違いないのであつて、そうでなしに、輸入はできるだけ下げて国内自給態勢を整えて行こうという考えでは、どうしても日本の国は増産をすればするほど收入は多くなる、単位の価格も上つて来る、こういう態勢にならなければいかんと思うのです。ほかのものの増産ならば、工業品ならば、どんどん増案をすれば安くなるにきまつている。併しこれはそれとは少し違います。どうしても日本食糧の確立は、今の政府考えておられるよりな、長官が今まで江田さんといろいろお話になつたような形では絶対に私は上つて来んと思います。そこで鳴物入りで騒いでも、どうしても農家は何とか採算のとれるものを選んで作りたい、これは当然なんです。そこで麦より作る方法がない所は別ですが、若しそれをそのままにして置きますと、麦以外に作る方法がない所は、ますます農家の経済が苦しくなる。どつちにしても、国内食糧国内自給態勢を飽くまでも立てるという方針でなければ、話ではそうなつても、半面にそうでないと、今言つたようなお話を聞かなければならんことになると思うのですが、これでは私は日本食糧自給態勢は何ぼたつても立たないと思つております。それから外国食糧の輸入を心掛けてやつておりまするが、併し肚の底を締めて、そうして外国食糧を輸入はしないという考えで進めば、おのずから目安は立つ。そういう考えで、獲れなければ輸入する、獲れなければ輸入するというお考えなら、何ぼたつてもいかんのです。その半面は、国内にも強力に鞘寄せをしたり、いろいろな方法経済を圧迫いたしまするし、農家の場合はだんだん町に行つて駄目だ、こういう結果になつておりますから、絶対日本食糧の自給の確立はできないと思うのですが、何とかもう少し変つた、成るほどそうかというようなお考えはこの際一体ないものでしようか。これは政務次官でもいいし誰でもいいのですが、長官ばかり責めても仕方がないから、政務次官に言うのですが、もう少し自給態勢を整えられそうな、成るほどこれなら任せるというような案を立てて進むのでなければ、非常に困つたことになると思います。私が始終言つてつても、まだ行かんのでありますが、行つてから言つたのでは困ることですが、何ぼ言うてもそのことが実行されてないのでありますが、やがて本当に困つてから一つてもそのときの責任だけになるんです。一向役に立たないということになるから、この際もう少し変つた政策があるかどうか伺いたいのです。
  33. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 本法律案を提案する場合の問題の中心がいろいろあつたと思いますが、そのうちに統制を外すという問題に関連を持つている麦価の問題が、只今お話のような見地から当然安過ぎるということは、我我も同感であります。そうして私の根本的な考え方は、全くこれは岡村さんと同一でありまして、麦の統制を外すと同時に、安心して作れるような価格が欲しいことは、どうしても農林省の政策として考えなければならん事柄だと存じております。非常な鞭撻を受けておりますので、機会あるごとにこの問題を取上げて、できるだけさような方向に向うことに今努力中であります。
  34. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 これは長官にお聞きしますが、今回配給辞退が起きております。これは米と言わず麦慶と言わず起きておりますが、どういうわけで配給辞退が起きるかということをお調べになつておりますか、一応これについて……。
  35. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 配給辞退の原因はいろいろあろうと思います。今までお話がございましたような米価麦価との比率も問題であろうと思います。米の割安、逆に言いますと麦の割高という問題もあろうと思います。それから現在の統制の方式というものは、全国プール計算でやつておりますので、産地におきましては生産者消費者の価格を比較いたしますれば、消費者価格産地においては割高である。従つて生産者消費者の関係を申上げますれば、生産者政府売渡価格よりも高くなつても、消費者は政府の配給価格よりも安く買つても、それで経済的に引合うという現象が出ているわけであります。これはまあ皆さんが御承知のように、薪炭の統制等につきましても、末期におきましてはその傾向が非常に顯著になりまして、その結果が統制を外すというところまで来たわけでありますが、そうした現象は食糧についても如実に現われつつある。そういうことも一つ配給辞退の原因だろうと思いますが、プール計算をやつておりますための産地におきまする価格の算定は、それ自体としては合理的でありますけれども、その地方々々をとつて見ますと不合理になつているという点からの配給辞退、こういうものもあろうと思います。それから政府が歩留りを一手でやつておりますので、それよりもいい品質のものを産地等において、これは闇値でありますけれども製造されて、それが消費者の嗜好に適するためにそれを買つて政府が配給するものについては配給辞退ということになつているという場合があると思います。いろいろな点があろうと思いますが、主なる点はそれであります。
  36. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 まあ消費地の大都市は、日本では東京でありますが、配給する時分に、米は別でありますが、麦の配給をどうすれば需要者が一番喜んで受けてくれるか。又そうすることが食糧としてやらなければならんことでないかと思うのですが、丸麦で配給したりするのがありますか、ありませんか。
  37. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 大体大麦は押麦にして出しております。小麦は製粉にして出しております。非常に押麦の事情が旺盛でありますために、小麦を製粉しないで押麦の形において出したらいいだろうというような議論がございます。これは現実にはやつておりませんが、そういうものがその食物としての合理的な使用であるかどうかという点について私ども研究はいたしておりますが、出したものはないのであります。
  38. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 第一点は、昨日長官にお伺いいたしましたのですが、食糧管理法の第一條で米、麦、雑穀等は政府に売るというような規定になつておりますが、この法律の根本規定が政令以下で実は換骨奪胎になるということでありますが、現在の解釈ではさような解釈ができるとは思いまするが、どうも趣旨からして、折角の法律が政令或いは省令で実際には効力を失なうという政令が実は相当あつたのではないかと思います。これを政令を改正され、要するに政令の改正で本法の規定を実際上無効にするというような政令は、これは私はやはり大きく言えば憲法違反になると思うのでありますが、これを近く改正する御意思がありますか、それが第一点であります。  それからこれは本日可決をされました農業委員会法のことでありますが、実は食糧庁のかたが余り御出席がなかつたのでありまして、御質問をする機会を失したわけでありますが、農業委員会で町村段階は先ず先ず十五名の委員で大体各部落の代表が選任されると思いますが、府県段階では、各委員の御意見を聞きましても、又私が直接関係者に聞きましたところでも、都道府県の農業委員会が十五人では、これは各郡市から最低一名の代表者は選出できないということで、むしろ食糧庁なり供出関係で、これは非常に私は運営上支障が起るというふうに実は心配しておりますが、これは恐らく内部で御相談があつたと思いますが、これをどういうふうにお考えになつておりますか。  それからもう一つは、間もなく問題の食糧管理法結論が出ると思いまするが、結論が出ませんと何とも言えませんが、一応仮定でお聞きいたしまするが、食糧管理法改正案が通過しない場合におきまして、これと関連的に出ておりまする食糧政府買入数量の指示に関する法律案、この十一條で麦についての準用規定がありまするが、仮に通過をしません場合に、こつちのほうの法律案はこのままで差支えがないかどうか。これは実はこれをどうするかという問題になると思いますので、立案者の政府側の支障がありや否やの御意見を一つお聞かせ願いたいと思います。
  39. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 第一点は只今政令を改正する考えはございません。これはいろいろ諸先輩の御努力の結果でありまして、(笑声)その点は十分尊重いたしまして、余り手を加えないで、最小限度のところでやつて行きたい、こういうふうに考えております。  それから委員数の点はこれは研究をして、この点はできるだけ運用が適正に行くように御審議をお願いしたいと思つております。(笑声)  それから十一條の点はやはり若干字句の修正等は必要ではないかというふうに考えます。根本的に申しますと、これは仮定の問題でありますから何とも言えませんが、米麦の指示とか何か、そういう修正は是非とも必要だと思います。
  40. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 第二点の委員会の府県委員会の定員の増の問題でありまするが、これはお言葉のごとく研究をいたしたいと思つておりまするが、この買入数量の指示に関する法律案の附則で、委員会の機構そのものを直すような、或いは定員十五名を、例えば供出関係だけでは府県の実情において殖やし得ると、こういう改正になると思うのですが、これが附則でさようなことまでできまするかどうか、我々も研究はして行きたいと思つておりまするが、政府側はできるというふうにお考えになつておりまするか。
  41. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 少し研究して見たいと思います。無理にやればできんこともないかと思いまするが、適当じやないような点もありますので、もう少し研究したいと思います。
  42. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 これは政務次官にお聞きしたほうがいいと思いますが、政務次官はよく御承知のように、食糧確保臨時措置法をきめる時分に、相当議論し盡してきめたのでありまするが、これは事前割当の形式であの法律を主として論議してきめたのでありますが、三條に相当混み入つた條項を加えられて、生産をする責任を持つ代りには、政府もその片棒を担ぐ、こういうので資金を融通されて、農機具は申すに及ばず、生産資材は全部政府と共に心配をされたような形にしてあつたのでありますが、これにはそれが同じよりなつもりで米の供出に向うつもりかどうか、それが百姓に対する忠実か、そうすることが政府の義務か権利かということを聞きたいと思う。
  43. 島村軍次

    政府委員(島村軍次君) 食糧確保に関する法律案審議の過程から申しま下ると、御意見の通りであります。ところが政府のほうで今回提案をいたしましたその理由にも挙げておりまするように、食糧事情は、或る程度当時よりは安定をいたし、而して漸次統制を外して参るということが、例えばその裏付になる農具であるとか、或いは肥料であるとかというような問題について漸次統制を解除して参つておるのであります。従つて政府自身でこれらを全部配給ルートへ持つて行く場合においては、制定当時の意味が十分あつたわけでありますが、その後の情勢から申しますると、実際問題としてなかなかその裏付が確保できないというのが現状であるかと思うのであります。そこで肥料、農機具等においてはできるだけ国内の生産を増強するという施策を行うと共に、輸入についてもできるだけの数量を確保するという見地で、他の施策によつてこれを行い、又価格の点につきましても、そういう方法をできるだけとつて行くということが、即ち食糧確保臨時措置法の或る程度の裏付の趣旨目的を達成する一つ方法である、さような考え方で参つておりますので、現在のところでは、食確法の第三條の規定については、勿論執行と同時にさような意味においてとりたいという意味でお考えを願いたいと思います。
  44. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 とんでもない間違いで、統制を外すことは、我々は何でも自由になることが結構で、決して統制をすることを好んでおらんのでありますが、肥料を外してその結果が現在のようなことになつてしまつた。それから今例えば農機具は非常に今製造時期であり、拡張いたしておりましても、工業者に聞いて見ますると、日本政府のやり方は戰争当時企画院でやつたのと同じで、もう全然駄目じや、これなら工業家はやつて行けない。そこで重点主義にしなくても結構だから、重点主義の産業ならこうならんと思うが、折角手を拡げたわ、資財はない、我々は止むを得ず室蘭から東京に買つて送ろうとしておる事実があります。我々はそういうようなことでは、話合なり何なりするのでなければ、私は百姓はなかなか政府の要望に副い得ないことになると思いますから、この点はそう思つておるのじや駄目なんで、しつかりした方針を立てて食確法の三條の末尾に項目を挙げておりますることは、書かなくとも全部政府が手配をして遺憾ないようにするというのでなければ、責任ばかり負わすのは甚だ遺憾であり、又あとから議論をすることになるわけでありまするから、今からそのことを言つて置きます。
  45. 島村軍次

    政府委員(島村軍次君) 一応お説の点はよくわかりますが、なお附加えて、誤解があつては困りますので申上げて置きたいと思うのであります。生産の増強を図がということに対しては、先ほど私が答弁申上げた通りで、従来の流通機構と言いますか、公平なる分配を期するという意味の不足した場合の政策は漸次生産増強の方向へ転換せねばならんということは、これは御意見のありまする点であります。そこで予算上におきましても、生産増強に関しては、従来なかつた各般の生産増強施設を加えて参つておるのでありまして、従つて食糧増産の経費につきましても、前年よりは相当増額をされておることは御承知の通りであります。そこで具体的に挙げていろいろ考えて見まするというと、農具の裏付、或いは肥料の裏付等については、勿論統制を外す時期については、朝鮮事変後におけるいろいろな情勢から御異論のあることだと思うのでありますが、併し、我々はこの肥料の需給が非常に重要な問題であり、むしろ価格と同時に需給のバランスをうまくとつて行くという点から、国策として、肥料の確保についての施策を今後当然とらなければならんと存じておるのであります。農機具につきましても、いろいろ議論はあろうと思いますが、資材の確保その他については、できるだけこれを強力に推進いたしまして、増産のできるような方法をすべての農林行政全般に及ぼすという方向へ進めたいと考えております。と同時にさような施設を漸次二十六年度予算においても計上いたし、施策をやつておる次第であります。
  46. 羽生三七

    ○委員長(羽生三七君) ちよつと念のためお諮りいたしますが、今日は御承知のように本会議で予算の採決がありますので、時間の制約もある関係上、今このあと池田議員から御質問がありますので、それが終りましたら、御動議に基いて討論採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 羽生三七

    ○委員長(羽生三七君) それでは池田さん。
  48. 池田宇右衞門

    ○池田宇右衞門君 ちよつと政務次官並びに長官にお尋ねいたしますが、特に長官日本食糧のすべてに対して、全責任を持つて国民生活の安定、又食生活の円滑性に対して御努力をしておられるというのはよく認識し、敬意を表しておるものでありますが、先に国会において食確法が参議院を通過しなかつたことは、私の申上げるまでもなく、農民の供出に対しまして、三十一條からずつと供出を怠つた者に対しましては、懲役又は罰金に処すというこの大きな問題が一番の難点であつたのであります。麦の統制を外して生産意欲を向上し、農民生活の安定化を図るという建前になつておるにもかかわらず、第三十四條の二に、「第三條ノニ第四項ノ規定二違反シタル者八二万円以下ノ罰金二処ス」、現行三十四條を見れば、「第三十一條乃至第三十五條ノ罪ヲ犯シタル者二情状二因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得」と、こう出ておりますが、若し統制を解除すると共に、必要によつて政府は買入数量のものを命令の定むるところにより政府に売渡すべしということが今度の改正案にも出ておりますが、本来この趣旨から言つて、若し八百八十万石が買入できないときに政府は命令を出す、命令を出したらこれに違反した者には二万円以下の罰金をとるというのは、併科して罰金を科せられれば、二万円で済まなくて、或いは懲役或いは三万円以下の罰金というようなことになると、この精神が未だ政府において、農民の汗と血の結晶と申しますか、国民生活のために晝夜分ちなく食生活の安定のために努力しておるところの農民の犠牲的精神のこの気持がわからないというようなことにも考えられるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この点を又明快に一つ我々に御答弁下さるならば、私どもはこの法案の審議に当りまして、非常に得るところがあるのでございます。先ずこの点を政務次官並びに長官から明らかにお聞きしたいと思うのであります。
  49. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 私から申上げます。今端的に申しまして、八百八十万石が予定数量になつておりますが、これが買い得ない場合には罰金を科すということはございません。自由な場合には勿論罰金はないわけであります。ただここにありまするように、国民の食糧事情が相当窮迫して参りまして、自由でなくて、割当買入をしなくちやならんという面倒な事態になりました場合に、その割当しましたものができない場合の罰則でございます。仮に今年の麦については自由にいたします、こういたしますれば、今年の麦については、全然罰則という問題は、政府は一応八百万石は買う予定をいたしておりますけれども、これが買えなくても勿論罰則を科すということはございません。
  50. 池田宇右衞門

    ○池田宇右衞門君 只今長官の御答弁のようなことでありましたならば、何故この煩雑になる規則をここに残しなさるのか、麦の統制を外したら、外すと同時にこの三十四條の條項などは、これは書かないほうがいいので、(「その通り」と呼ぶ者あり)それだけ農民が安心して、そうして政府の政策に協力する。どうか今後の施策においては、(拍手)農民をしてすべて安心して、而も農民は常に国民生活のために大きな防波堤となつて、犠牲的精神を発揮するということを御認識頂きたい、かように強く主張するものであります。
  51. 羽生三七

    ○委員長(羽生三七君) それでは他に御発言もなければこれで質疑は終了したものと認めて、討論に入つて御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 羽生三七

    ○委員長(羽生三七君) それではさよう決定いたします。  食糧管理法の一部を改正する法律案について、これより討論に入ります。賛否を明らかにしてお述べを願います。
  53. 小林孝平

    ○小林孝平君 私は日本社会党所属の農林委員を代表いたしまして、只今議題になりました食糧管理法の一部を改正する法律案に反対の意を表するものであります。  先ず第一に、私は政府が国民経済的見地から当然擁護されなければならない食糧問題、価格体系に対しまして、正しい認識を欠いて、これを混乱の極に陷れんとする基本的態度をとつていることを指摘いたしたいのであります。即ち今日の日本における食糧の統制を大幅に緩和するための前提條件は、先ず外国からの輸入食糧に対する絶対的自信であり、次に国内食糧増産における絶対的確信でなければならんことは言を待たないところで、これなくしては戦後日本食糧政策に一指も触れ得ないことは、自明の理であると考えるのであります。    〔委員長退席、理事片柳眞吉君委員長席に着く〕 然るに政府は麦の統制解除の方針についてとつて来ました態度は、昨年春のいわゆる湯河原会談以来朝鮮事変勃発直前に至る間の比較的輸入食糧の見通しの容易の情勢解釈をそのまま一歩も発展させずに今日まで引きずり、当時と同様な過大な條件を確信しておられるのであります。かかる確実性を政府言明する一方、過日日本農民組合、農業復興会議を中心とする緊急食糧対策実行委員会質問に対しまして、今後の食糧事情は必ずしも現在より好転するとは考えられないと回答しておるのでありますが、この自己矛盾こそは実に政府の政策の貧困を物語る以外の何ものでもないと断定せざるを得ないみてあります。廣川農林大臣が唐突として提唱をいたしました食糧一割増産運動がこれらのカモフラージュのためであつたとは勿論私も考えたくありませんが、その予算的措置から考察すれば誰でもその達成の困難からこの情勢に対する政府の逃避的の口実だと痛感せざるを得ないのであります。ではかかる無定見の下における輸入食糧の実態はどうであるか、詳しい数字については一々ここで申しません。又本委員会においてしばしば議論されたところでありますから、これらの点については簡単にここで触れることにいたして置きたいと思います。一例を挙げますれば、政府の二十五年七月から二十六年六月までの間における輸入計画は二百八十五万トンになつておるわけでありまするけれども、二十六年の二月までの輸入は約百三十六万トンとなつております。この輸入計画達成のためには三、四、五、六の四カ月に残りの百四十九万トンを輸入しなければならないのであります。これに対しまして、政府は三月中に四十万トンの輸入を成し得ると見込んで楽観しておられるのでありますけれども、四月、五月、六月の配給計画が未だ立つておらないという実情から考えますると、非常にこの今後の計画の達成は不安定である。更に又七月以降の輸入の見通しが全くついていないということでありますれば、私たちは非常に憂慮に堪えないと考えておるのであります。又このことは本年の六月を以て打切られますところのガリオア資金のことを考えますれば、一層の不安を醸し出すことは必定であります。全世界が挙げまして軍拡に狂奔しております現在、輸入食糧の今後の値上り、更に各国の輸出拒否が、必要量の二割を海外に依存しておるところの、我が国の食糧の絶対下足の実情考え合せますれば、非常に今後我が国の食糧事情は不安定なものになり、又国内に與える影響というものは非常に重大なものであるということはここで申上げるまでもないところであります。即ち国内においては麦の統制が撤廃されます場合には、米の配給は一本ということになります結果、政府は米の配給基準量は今後一合五勺ということを言つておいでになりますけれども、今日までの配給量を見まする場合、米麦がその豊作と凶作を相互に補うことにより生ずるところの相当の弾力性からこれが保たれて来たことは明らかであります。麦の統制撤廃後米の不作が起きたような場合には、この不安定な輸入状態の下においてはそのしわ寄せが当然米作農家にかかつて来る。これは米單作地帯の農家の上に非常に重くかかつて来ると我々は考えておるのであります。このように単作農家に対する供出の強化ということは、これらの事態に対する今後の精神的の不安、今後の供出の問題に大きい不安を與えるのではないかと心配しておるのであります。更にこれらのことは輸入食糧の不安定と相待つて、結局商業資本などの中間商人の思惑を助長せしめて、思惑業者の中間利潤は殖えますけれども、農家の甲取りは少しも殖えない。これは先般の雑穀の統制によりまして、雑穀の値段が二倍、三倍になつたけれども、農家の手取りは少しも殖えないという事実を見ましても明らかであります、このような検討を進めて参りますると現段階においては、麦類の統制撤廃をやつて見ても結局政府は再び法案の中にあります、必要に応じて統制することができるという規定を発動いたしまして、麦類の再統制をしなければならなくなることは明らかであります。むしろ根本的には統制解除をなすべき理由がどこにも見出せないということは勿論、このため農業経営の撹乱は免れ得ないと考えておるものであります。かかることは政府の意図が一体どこにあるかということを判断するのに苦しむことは勿論、一方において主要食糧たる麦を自由に放任しながら、一方においてはその足らざるを理由として輸入の懇請をするということは、余りにも全世界に我が国政府の非自主性を暴露するものではないかと考えるのであります。又これが近付きつつある地方選挙に対応する自由党の人気集めのスローガン的意味を持つものといたしますれば、なお更国民大衆を愚弄するも甚だしいと言わなければなり、ません。  最後に私は麦類統制撤廃に関する我我の基本的立場を極く簡單に申上げたいと思います。我々は少くとも食糧に関しましては、国内生産力の増大による自給度の引上げを主張し、農民生活と農業経営の安定を図ろうとしておるものでありまするけれども、この場合特に経営の合理化と、供出制度の民主化と、価格の適正化を図る施策を考えなければならんのであります。むしろ今日は政府の言うがごとく外見的な統制を如何にするということではないのであります。即ち麦はその対米比価を戰前のウエイトにこだわらず、現実面から考察して引上げ、他面消費者に対しては、二重価格制による価格を保障することこそ必要であろうと考えておるものであります。政府のごとく古典的自由主義経済をあえて強行するの余り、国内生産を無視して、不安定な外国食糧に色眼鏡をかけてこれを見るということは、自由党の公約自身が全く誤まれる公約であつたことを実証し、その破綻が今こそは麦の統制撤廃を通じて現われて来たものと見なければなりません。かかる時代錯誤的食糧政策に対しましては、私は全日本農民の名において絶対反対し、速かに政府の撤回を要求するものであります。    〔理事片柳眞吉君退席、委員長着席〕
  54. 西山龜七

    西山龜七君 私は自由党を代表いたしまして食糧管理法の一部を改正する法律案に賛成するものであります。その基本的な賛成理由を実情に即して以下説明をいたします。第一我々の生命をつなぎます食糧は、昭和十四年、米から統制が始まりまして、十数年間の長きに亘りあらゆる食糧全般が統制せられまして、八千万国民は身にしみて統制の善悪を体験しておるのであります。現在までの官僚統制方式は国民大多数がこれを嫌い幸して、統制が緩和せられること、事情が許すならば一日も早くすべての統制撤廃を要望しておるのであります。本法案に反対せられておりまする人々におきましても、これは認めておる実情であります。第二点は過去における食糧統制の経過より見ていたしましても、統制の初めは米のみを統制したものでありまして、次に麦、雑穀、その次に甘藷、生鮮食料品を初め、味噌、醤油その他あらゆる食糧全般に亘り順次統制を強化したものであつたのであります。従つて統制を緩和し、又は撤廃せんとするならばこの逆のコースを迫ることが最も妥当なやり方でありまして、主要食糧においての政府のやり方を見ましても、昨年は甘藷の統制撤廃を実施いたしましてよい成果を攻めておるのでありましてよい成果を攻めておるのであります。本年三月雑穀を外しまして、次に麦の統制を撤廃するということは食糧行政上最も時機を得た健全なる政策であると思うのであります。第二点に統制の緩和と撤廃の利益は一、国家の予算を節減して需給を円滑にするのであります。二、農村におきましては農家の増産意欲を高揚いたしまして、農家経済を確立するのであります。三、消費者階級におきましては食出活を安定するのであります。その事実を証明する一例を挙げて見ますならば、昨年の甘藷の統制撤廃によりまして、国の予算の節減は数十億の莫大なる額になつておるのであります。昨年甘藷の統制撤廃に当りましては、御承知のように辰村を初め一般国民の不安によりまして反対は非常なものであつたのであります。然るにもかかわりませず事実は逆でありまして、農村に多大な利益を與え、消費者も又何らの不利益もなく、不便もなかつたのであります。去る三月一日より雑穀類の統制を撤廃した僅か一カ月足らずの事実から見ましても、北海道の雑穀のごときは農家は最も有利に処分ができておるのであります。消費者は今まで容易に口にすることのできなかつた雑穀類を統制時代よりも自由に且つ割安く手に入れておるこの事実は官僚統制による莫大なる中間費用が要らなくなつて、これが農家と消費者に利益を與えている証拠であります。第四点に麦の対米比価が六四%、大麦が五四%は麦の増産意欲を阻みまして、食糧行政上よくないことは先ほども各委員から述べられた通りで、これは輿論であります。麦の統制を撤廃いたしますならば、対米比価は必ずや七〇%或いはそれ以上になるたろうと思うのであります。従つで農家ば最も有利に処分ができるのみならず、麦の増産となるのであります。半面消費者も又銃制撤廃によりまする中間経費の削減によりまして、決して不利とはならない。これは甘藷や雑穀などの実例によつて証明ができると思いす。若しこのまま米麦の統制方式を続けますならば、麦の対米比価を七〇%或いはそれ以上にきめましたならば、これは配給辞退が続出いたしまして混乱に陥りはしまいかという懸念があるのであります。先ほども岡村先輩、江田先輩からも対米比価を上げてそれで麦の増産をせよ、政府の当路者はこれは研究中であります、かような答弁をせられておりますが、この問題は先ほども小林委員から申せられましたように、二重価格にして麦を増産するか、又はこれを麦の統制を撤廃して自由時代におきまして麦の産地から北海道、東北方面へ愛が非常に流れた、そういうような実際に即した政治を行わん限りは、これは言うべくして如何に研究しましてもできない相談であると確信するのであります。第五点、米の闇相場は東京、大阪等では百五、六十円内外のように聞いておるのであります。半面米の産地におきましては一升五、六十円程度の売買ができておる。これは統制の結果でありますが、麦類の闇も米と大同小異でありまして、その通りの経路を辿りまして麦の産地と都会地との価格は非常に高下が甚だしいのであります。且つ或るところでは麦の辞退が多くて配給ができない、或るところでは麦が足らないというような実情でありまして、需給が不円滑であるが、これらの不合理は麦の統制の撤廃によりまして大いに緩和せられるのみならず、米の不合理なる闇相場も大いに是正せられることは勿論、農村都市の食生活の改善によつて一段と需給を円滑化することは明瞭であります。第六、本法案に対して反対しまする人々は輸入食糧の不安、麦の買入不能に基く需給不安、時局に対する不安、価格の変動の不安等々を唱えまして反対せられておるのでありますが、現実は政府の手持数量の充実、今後の輸入の見通しに対する所管大臣の責任ある言明等によつて見ましても、需給その他に対しまする不安はないと思うのであります。特に昨年六月、事変勃発以前において、主要食糧配給辞退が続出いたしましたがために、配給機関は混乱せんとした事実があるのであります。その後需給状態は決して悪くなつていないのであります。ただ客観情勢より、一般に不安感を與えておるのみでありまして、食糧全般に亘る事情は根本的に一変いたしまして、非常によくなつておるのであります。過去の自由時代と大差のないまでになつておることは、一般の認むるところであります。この現状からいたしまして、この際麦の統制を撤廃し、長村を益すると共に、需給の円滑を図り、国民の食生活安定のために、本法案に賛意を表するものでありますが、参議院の農林委員の各位はそれぞれの権威者であります。私はこの人々が実際においてできないことを言うてもできんと思いますからして、どうかこの問題につきましては、十分に御考慮をして頂きまして、でき得れば私のこの賛成意見にどうぞ御賛成を願いたいと思います。
  55. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 私は緑風会所属農林委員の全部を代表いたしまして、食糧管理法の一部改正法案に対しまして反対の意を表します。  反対の理由は、今日までの委員会の質疑応答で大体もう御承知のことでありますが、先ず第一点は、外国からの輸入食糧が、昨今のこの内外の情勢険悪の時期において、果して確保できるかどうかの点であります。この点は結論といたしましては、私は非常な危惧を持つのであります。只今西山さんから、政府当局から輸入の確保については非常に責任のある言明があつたと申しまするが、私は食糧政策は單に言明だけであつてはならないのでありまして、單に言明だけでは国民は食つて行けないのであります。これは飽くまで実績に基きまして判断をしなければならんと存ずるのであります。この点はすでに小林君からも触れましたように、昨年の七月から今年の六月までの最低の輸入計画が、米換算一百八十万トン余でありますが、これに対しましてすでに三分の二を経過せんとしておりまするが、二月までの実績は小林君の御指摘のように、半分にもなつておらないのであります。而も政府では三月以降には相当好転をするということを言つておりまするか、私の調べましたところによりますれば、三月の輸入数量も必ずしも好転はしておらないのでありまして、さような意味から私は、六月までの計画につきましても非常な心配をいたすのであります。而も食糧は間断なくこれは配給をしなければならんことは申すまでもないのでありまして、而も七月以降の輸入計画は、全くこれは具体化しておらないのであります。而も私のキヤツチしました情報によりますれば、七月以降のガリオア資金は、殆んどこれは見込薄でありまするし、又一部の専門家の意見を徴しましても、食糧の足らない日本が、国内食糧の統制を解きまして、これを勝手放題に消費をしてもよろしい、こういう態度をとりながら、アメリカその他の連合国側に、日本に対して食糧を優先的に供給をして欲しいということは、少くともこれは理論が合わないということが言われておるのでありまして、私も事理の関係上、全く同感に思うのであります。そういう点からも私は、輸入計画につきましては、政府から成るほど言明はございましたけれども、單に食糧政策は、言明だけでは安心ができないのでありまして、今申上げました実績から見て参りましても、相当の心配をすることか私は常識的な結論だと存ずるのであります。特に政府の方針によりますれば、六月頃から麦が出廻つて参りまするが、十月までは米麦で二合五勺の配給をいたしまして、十一月からは米だけで一合五日の配給をいたす、この米のみの一合五勺の配給につきましても、私はいろいろの角度から批判されてよろしいと思いまするが、その問題は別といたしましても、ともかく麦の出廻りまする六月の頃から十月までの四カ月間二合七勺の配給があり、片つ方で国内の麦が勝手自由にこれが消費される、こういういわば贅沢な消費が、日本自立経済を叫んでおりまする今日、果して許されてよいかどうかということも、私は疑問に思うのでありまして、計画配給を自由販売、自由消費にしますれば、当然これは消費の増となつて来ることは明瞭であるのでありまして、従いまして二百八十万トンの輸入最も、来年度は、人口増加を別といたしましても、相当のその他の消費が殖えて参りますので、従いまして輸入数量も当然に私は殖えて行かなければならんと思うのであります。これ又日本経済自立方向と逆行するものと思うのでありまして、この点からも私は反対をしなければならんのであります。  第二は、問題の視野を変えまして、国内的な事情から見て参りましても、昨今の飼料なり或いは焼酎の方面から、ともかく澱粉食糧に対する要求は非常に強いのでありまして、最近の飼料の価格の暴騰は、非常な高値を呼んでおりますることは御承知の通りでありまして、この最中に今年の麦を外しました場合におきまして、この麦がどういう方向に流れまするかは、これは私は非常に明瞭だと思うのでありまして、その意味からも先ほど言いましたような国内主要食糧以外の消費が殖えて参りまするから、それだけ人間の腹に入る食糧が減じて参り、飽くまで二合七勺の絶対量の消費を確保するとしますれば、それだけ輸入量の増加を招来するというふうに、この点からも考えられるのでありまして、その意味からも、まだ麦の統制を外すことは極めて尚早だと存ずるのであります。  それからその次は、先ほど西山委員から、従来の統制の経過を見ますると、先ず当初に米をやり、次に麦をやりということでありましたが、戰争以前と敗戰後の今日とは、食糧事情が変つて来ておることは御承知の通りでありまして、戰争前は先ず先ず米だけで何とか食生活ができておつたのが、今日ではともかく米半分、麦半分で今後の食生活をやつて行かなければならんことは申すまでもないのでありまして、従つて戰争中からやつて参りましたことと同じ方向で外すことが、必ずしも私は実態に即しないと思うのであります。むしろ米麦が国民の主要食糧でありますれば、やはり統制をするのでありますれば、これは同じ歩調で統制することが私はむしろ正しいと思うのでありまして、而も全国の農家の地域的な点から見て参りましても、米の管理は依然としてこれを継続する、夏の統制は外すということになりますれば、米軍作地帯と二毛作地帯上の非常な不均衡もここに起きて来ると存ずるのでありまして、さような意味で私は米麦の統制をするのでありますれば、むしろ同一歩調で統制することの拭うが正しいと思うのであります。それから農家の側から見て参りましても、或いは麦の統制を外しますれば、雑穀等の例に徹しましても、直後は或いは値段は上るかも知れませんが、併し現在のような農業協同組合が非常な経営に苦心をしておる、その矢先に統制を外しまして、麦の価格が上がりましたことが、直ちに農家の手取り増となりまするかどうかは、多大の疑問なきを得ないのでありまして、而も将来を見て参りますれば、私はもつと大きな問題が先に控えておると存ずるのでありまして、何も農家は不当な価格を要求するわけではないのでありまして、むしろ再生産を償い得るような相当な、安定した価格を農家は欲すると思うのであります。かてて加えまして、政府は従来の方針には変更はないと言つておりまするが、実は重大なる変更を加えておるのでありまして、自由販売、農家の希望に応じて政府は買うということに加えまして、最近の提出されました法案の通り、国民の食糧確保上必要がありますれば、いつでも再統制をなし得るという規定をつけたのでありまして、これは或る意味では政府の無定見を暴露しておるとも存じまするし、又農家の側から見て参りますれば、迷惑これに過ぎるものはないのでございまして、昨年の麦の供出の例を見て参りましても、相当食糧事情も緩和する、従つて麦の供出も相当緩和をされるであろうという空気でありました。ところが非常な苛酷な補正にしか過ぎなかつたのでありまして、かような最近の例に徹しましても、一旦統制を外して再統制をするというようなことは、これは非常な、私は間違つておることと存ずるのでありまして、この点からも我々は反対せざるを得ないのであります。  更に最後に申上げたい点は、司令部から政府食糧政策に一貫性がないというメモが出ておりまするし、更にそのあと政府のこの法律案に賛成したというメモが出ておりまするが、私がこの点につきまして関係筋の意向も徴したわけでありまするが、この食料管理法の一部改正、則ち麦の統制撤廃の措置に対しましては、何も司令部が積極的にこれにOKをしたことではないのでありまして、要するに最低の條件として、今後の資糧需給上必要がありますれば、何時でも、いつでも再統制をなし得るということを、これを最低の條件としてOKをしたのだということは、私の理解するところでは、まさしくさように解せざるを得ないのでありまして、何も麦の統制を外してよろしいということではないのでありまして、むしろミニマムの條件として、いつでも可統制をなし得るということを、これを、最低の條件として覚書を出されたというふうに理解をするわけでありまして、この点からも私はやはりこの問題を愼重に扱いたいと思うのでありまして、以上の数点の理由を以ちまして、この食糧管理法の一部改正法律案にあえて反対をいたすものであります。
  56. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 私は国民民主党の所属農林委員を代表いたしまして、本法案に断乎反対をいたすものであります。この問題は、事は極めて重大であります。そのために本委員会は小委員会を設け、又本委員会において、未だ前例のないほど長時間に亘つて委員諸君と政府の間に愼重に質疑応答を加え、審議をいたしたのであります。その結果を見ますというと、どうも政府食糧政策というものに一貫性がない、甚だとしい、言い換えれば、確固不動の食糧政策の持合せがないということをはつまり認めたのであります。かるが故に、この緊迫しているところの国際情勢下において、かかる暴挙をあえてなそうとなさつておるものと私は考えておるのであります。これを実施しますというと、さつき西山委員は、如何にも御用党振りを発揮されまして、百姓が喜ぶ、消費者も喜ぶ。喜びません。百姓は糠喜び。一時的には喜ぶ。これは程度の低い田舎の百姓であります。生産者の側に立つて長い眼か’見たならば、これは喜びません。消費者大衆も喜びません。誰が喜ぶか、それはブローカーと大資本家が喜ぶだけであります。畢竟私はそういう結論に到達したのであります。西山委員が賛成論旨の中で、統制を緩和し、これを撤廃して自由にすると、これは誰も喜ばぬものはない。私もそれの一日も速かならんことを希うておるのでありまして、八千万国民は皆それを思うておる。が、今日の情勢からそれが許されないのを我々は遺憾としているのであります。そこで結論的に申上げますというと、これは時期尚早なんです。悪いものじやない、時期が悪い、時期古年ということになるのであります。私は近来健康を害しております。身体も悪い、咽喉も悪い、その他心臓も弱つておる。そこで運動を禁止されております。又長くしやべることを医師から禁止されておるのであります。長いことは申上げません。小林委員、片柳委員、これの言われたことと、私が長く言えば論旨は殆んど大同小異であります。多く申上げませんが、今申上げた理由によつてこれは時期尚早であるということで反対いたすものであります。
  57. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 各位から反対、賛成の討論がありました。私はそう長くしやべられなくてもよいのでありますが、第一クラブの農林委員を代表して反対の趣旨を極く簡単に申上げます。本員はこの食管法の一部改正が上程されそうだというときに、最初からはつきり反対をして政府に申上げております。政府最初の意図のごとき法案が出ますると、如何なることがあつても通さない、よく心得て置きなさいということを御注意申上げております。ところが嘗めて出したのでありますが、私どもは需要者の立場を考えますと、麦の統制を廃止する時期でありません。日本政府は、敗戦後あらゆる手段をとつて来たのでありまするが、近頃軽はずみでいかんのであります。よく地についた、じつくりした考えで、そうして事に当るのでなければ二十五年度の食糧が、輸入がどうにかなつたからこれを廃止すると、とんでもないことです。私は十分に落ちついて確めた上も確めたことでなければ、事食糧に関しまする限りは、絶対にいかんと考えております。百姓は如何なることがありましても、自分の食う食糧くらいば誰が何と言つても作つて食べます。併し需要者はそうでありません。いろんな小理窟を言うておりまするが、それは全部当たらぬのでありまして、日本がこういう態度をとるためにやり過ぎて来たことを忘れてはならんのであります。先ほど西山さんが、食糧の統制の順序をお話になりましたが、それはそのときの事情でありまして、日本が支那事変を起して、あの大戰争になろうとは考えておりません。併しながら、なつて負けてしまつた。そこで負けた以上は世界に類のない考え方をして、経済も生活もそれで行くのでなければいかんのでありまするが、実に日本政府そのものが軽はずみをするために、国民がやがて非常に困る事態が来ると思います。ドイツの敗戦後の今日を、よくつぶさに聞きますと実に目まぐるしいそうであります。それではいかんので、我々はこの統制の廃止ということについては、時期尚早として反対をいたしておりまするが、そこで半面農家の二とを考えて見ますると、これまで馬鹿扱いをして参りました。併しながらこれ以上農家を虐げることは罷りなりません。どんなことがあつても、我々は承知しない。そこであえて両手を使うように、一方は外してもよい、一方は統制してもよいという自由なものだ、非常に便利なものだということを農林大臣は言つておりますが、それは人を馬鹿にしておる。法律というものは、どちらでもいいような法律はないはずであります。そんなことに臨まかされてはいかんのであります。誰か幸いに丁度私の意見のように不賛成を唱えてくれまして、実は今日は意気揚々といたしております。どうぞそのおつもりで、今後やることは絶対に軽はずみをしないようにということを申し置きまして、反対を表明いたします。
  58. 羽生三七

    ○委員長(羽生三七君) 他に御意見がなければ、討論は終局したものと認めて、採決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 羽生三七

    ○委員長(羽生三七君) それでは採決いたします。なお念のために申上げて置きますが、現在農林委員会の定数は、委員長を除いて十九名であります。過半数は十名でございます。食糧管理法の一部を改正する法律案原案通り、念のために更に申しますが、原案通りであります、可決することに御賛成のかたの御起立を願います。    〔起立者少数〕
  60. 羽生三七

    ○委員長(羽生三七君) 起立者少数であります。従つて食糧管理法の一部を改正する法律案政府原案は否決と決定いたしました。  なお諸般の手続は、委員長に御一任を願います。なお例によつて多数意見者の御署名を願います。  多数意見者署名    鈴木 強平   岩男 仁藏    三輪 貞治   飯島連次郎    溝口 三郎   加賀  操    片柳 眞吉   赤澤 與仁    岡村文四郎   三橋八次郎    江田 三郎   三浦 辰雄    小林 孝平
  61. 羽生三七

    ○委員長(羽生三七君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     羽生 三七君    理事            西山 龜七君            片柳 眞吉君            岩男 仁藏君            岡村文四郎君    委員           池田宇右衞門君            白波瀬米吉君            瀧井治三郎君            平沼彌太郎君            宮本 邦彦君            江田 三郎君            小林 孝平君            三橋八次郎君            三輪 貞治君            赤澤 與仁君            飯島連次郎君            加賀  操君            溝口 三郎君            鈴木 強平君            三浦 辰雄君   政府委員    農林政務次官  島村 軍次君    食糧庁長官   安孫子藤吉君   事務局側    常任委員会専門    員       安樂城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君