○片柳眞吉君 私は緑風会所属農林委員の全部を代表いたしまして、
食糧管理法の一部改正法案に対しまして反対の意を表します。
反対の理由は、今日までの
委員会の質疑応答で大体もう御承知のことでありますが、先ず第一点は、外国からの
輸入食糧が、昨今のこの内外の情勢険悪の時期において、果して確保できるかどうかの点であります。この点は
結論といたしましては、私は非常な危惧を持つのであります。
只今西山さんから、
政府当局から輸入の確保については非常に責任のある
言明があ
つたと申しまするが、私は
食糧政策は單に
言明だけであ
つてはならないのでありまして、單に
言明だけでは国民は食
つて行けないのであります。これは飽くまで
実績に基きまして判断をしなければならんと存ずるのであります。この点はすでに小林君からも触れましたように、昨年の七月から今年の六月までの最低の輸入計画が、米換算一百八十万トン余でありますが、これに対しましてすでに三分の二を経過せんとしておりまするが、二月までの
実績は小林君の御指摘のように、半分にもな
つておらないのであります。而も
政府では三月以降には相当好転をするということを言
つておりまするか、私の調べましたところによりますれば、三月の輸入
数量も必ずしも好転はしておらないのでありまして、さような
意味から私は、六月までの計画につきましても非常な心配をいたすのであります。而も
食糧は間断なくこれは配給をしなければならんことは申すまでもないのでありまして、而も七月以降の輸入計画は、全くこれは具体化しておらないのであります。而も私のキヤツチしました情報によりますれば、七月以降のガリオア資金は、殆んどこれは見込薄でありまするし、又一部の専門家の意見を徴しましても、
食糧の足らない
日本が、
国内で
食糧の統制を解きまして、これを勝手放題に
消費をしてもよろしい、こういう
態度をとりながら、アメリカその他の連合国側に、
日本に対して
食糧を優先的に供給をして欲しいということは、少くともこれは理論が合わないということが言われておるのでありまして、私も事理の
関係上、全く同感に思うのであります。そういう点からも私は、輸入計画につきましては、
政府から成るほど
言明はございましたけれ
ども、單に
食糧政策は、
言明だけでは安心ができないのでありまして、今申上げました
実績から見て参りましても、相当の心配をすることか私は常識的な
結論だと存ずるのであります。特に
政府の方針によりますれば、六月頃から麦が出廻
つて参りまするが、十月までは米麦で二合五勺の配給をいたしまして、十一月からは米だけで一合五日の配給をいたす、この米のみの一合五勺の配給につきましても、私はいろいろの
角度から
批判されてよろしいと思いまするが、その問題は別といたしましても、ともかく麦の出廻りまする六月の頃から十月までの四カ月間二合七勺の配給があり、片つ方で
国内の麦が勝手自由にこれが
消費される、こういういわば贅沢な
消費が、
日本の
自立経済を叫んでおりまする今日、果して許されてよいかどうかということも、私は疑問に思うのでありまして、計画配給を自由販売、自由
消費にしますれば、当然これは
消費の増とな
つて来ることは明瞭であるのでありまして、従いまして二百八十万トンの輸入最も、来年度は、人口増加を別といたしましても、相当のその他の
消費が殖えて参りますので、従いまして輸入
数量も当然に私は殖えて行かなければならんと思うのであります。これ又
日本の
経済自立の
方向と逆行するものと思うのでありまして、この点からも私は反対をしなければならんのであります。
第二は、問題の視野を変えまして、
国内的な
事情から見て参りましても、昨今の飼料なり或いは焼酎の方面から、ともかく澱粉
食糧に対する要求は非常に強いのでありまして、最近の飼料の
価格の暴騰は、非常な高値を呼んでおりますることは御承知の
通りでありまして、この最中に今年の麦を外しました場合におきまして、この麦がどういう
方向に流れまするかは、これは私は非常に明瞭だと思うのでありまして、その
意味からも先ほど言いましたような
国内の
主要食糧以外の
消費が殖えて参りまするから、それだけ人間の腹に入る
食糧が減じて参り、飽くまで二合七勺の絶対量の
消費を確保するとしますれば、それだけ輸入量の増加を招来するというふうに、この点からも
考えられるのでありまして、その
意味からも、まだ麦の統制を外すことは極めて尚早だと存ずるのであります。
それからその次は、先ほど西山委員から、従来の統制の経過を見ますると、先ず当初に米をやり、次に麦をやりということでありましたが、戰争以前と敗戰後の今日とは、
食糧事情が変
つて来ておることは御承知の
通りでありまして、戰争前は先ず先ず米だけで何とか食生活ができてお
つたのが、今日ではともかく米半分、麦半分で今後の食生活をや
つて行かなければならんことは申すまでもないのでありまして、
従つて戰争中からや
つて参りましたことと同じ
方向で外すことが、必ずしも私は実態に即しないと思うのであります。むしろ米麦が国民の
主要食糧でありますれば、やはり統制をするのでありますれば、これは同じ歩調で統制することが私はむしろ正しいと思うのでありまして、而も全国の農家の地域的な点から見て参りましても、米の管理は依然としてこれを継続する、夏の統制は外すということになりますれば、米軍作地帯と二毛作地帯上の非常な不均衡もここに起きて来ると存ずるのでありまして、さような
意味で私は米麦の統制をするのでありますれば、むしろ同一歩調で統制することの拭うが正しいと思うのであります。それから農家の側から見て参りましても、或いは麦の統制を外しますれば、
雑穀等の例に徹しましても、直後は或いは値段は上るかも知れませんが、併し現在のような農業協同組合が非常な経営に苦心をしておる、その矢先に統制を外しまして、麦の
価格が上がりましたことが、直ちに農家の手取り増となりまするかどうかは、多大の疑問なきを得ないのでありまして、而も将来を見て参りますれば、私はもつと大きな問題が先に控えておると存ずるのでありまして、何も農家は不当な
価格を要求するわけではないのでありまして、むしろ再生産を償い得るような相当な、安定した
価格を農家は欲すると思うのであります。かてて加えまして、
政府は従来の方針には変更はないと言
つておりまするが、実は重大なる変更を加えておるのでありまして、自由販売、農家の希望に応じて
政府は買うということに加えまして、最近の提出されました法案の
通り、国民の
食糧確保上必要がありますれば、いつでも再統制をなし得るという規定をつけたのでありまして、これは或る
意味では
政府の無定見を暴露しておるとも存じまするし、又農家の側から見て参りますれば、迷惑これに過ぎるものはないのでございまして、昨年の麦の供出の例を見て参りましても、相当
食糧事情も緩和する、
従つて麦の供出も相当緩和をされるであろうという空気でありました。ところが非常な苛酷な補正にしか過ぎなか
つたのでありまして、かような最近の例に徹しましても、一旦統制を外して再統制をするというようなことは、これは非常な、私は間違
つておることと存ずるのでありまして、この点からも我々は反対せざるを得ないのであります。
更に最後に申上げたい点は、司令部から
政府の
食糧政策に一貫性がないというメモが出ておりまするし、更にその
あとで
政府のこの
法律案に賛成したというメモが出ておりまするが、私がこの点につきまして
関係筋の意向も徴したわけでありまするが、この食料
管理法の一部改正、則ち麦の統制撤廃の
措置に対しましては、何も司令部が積極的にこれにOKをしたことではないのでありまして、要するに最低の條件として、今後の資糧
需給上必要がありますれば、何時でも、いつでも再統制をなし得るということを、これを最低の條件としてOKをしたのだということは、私の理解するところでは、まさしくさように解せざるを得ないのでありまして、何も麦の統制を外してよろしいということではないのでありまして、むしろミニマムの條件として、いつでも可統制をなし得るということを、これを、最低の條件として覚書を出されたというふうに理解をするわけでありまして、この点からも私はやはりこの問題を愼重に扱いたいと思うのでありまして、以上の数点の理由を以ちまして、この
食糧管理法の一部
改正法律案にあえて反対をいたすものであります。