○三輪貞治君 私は日本社会党所属委員を代表いたしまして、
只今議題とな
つておりまする
農業委員会法案及び同法
施行に伴う
関係法令の
整理法案に対しまして反対をいたす者であります。
本
法案は従来行われて参りました
農地調整法に基く
農地改革のための
農地委員会、
食糧管理法及び食糧確保臨時
措置法に基く農業調整
委員会並びに農業の技術面の改良
事業を行うための知事の諮問に答えて助言をなすため農林次官通牒に基いて設けられました農業改良
委員会、この三つの機関をやめまして農業
委員会一本に統合せんとするところの
法律案でございます。
御
承知のように、前三つの各
委員会の性格を見まするに、先ず
農地委員会は連合軍の日本占領政策の根幹でありまするいわゆる農民解放令に基くものでありまして、過去長きに亘りまして日本農業の前進と農民の経済的安定を阻害して参りました封建的な地主制度の廃止を内容といたしました
農地改革の議決並びに執行の機関であるのであります。一方農業調整
委員会は戰後極度に逼迫をいたして参りまして国民最大の関心事と相成
つておりました食糧の生産確保並びにこのための農民に対する事前側当、供出の仕事をなして参
つたものであります。なお農業改良
委員会は農業改良
事業のための専門技術員、改良普及員その他試験
研究に従事する主要なる技術旦の任命、異動、解任等、更には農業改良
事業についての計画の設定並びに
予算及びその執行に関することを
取扱つて参
つたものであります。
以上述べましたように、この三つの
委員会はそれぞれ重要であり、且つ性格が非常に兵
つておるところの独立の機関であるのであります。ところが
政府はこのたび
予算が足りないという理由でこの三つをまとめまして、
一つの農業
委員会として書記も平均一・二名でこれらを全部行わせようというのであります。併しながらこれは誰が
考えましても何もできないということは自明の理であります。ここに
委員会を形骸的なものにいたしまして、
政府並びに與党の諸君が最も嫌いでありますところの
農地改革、食料統制というような仕事をうやむやにするというところの鎧がこの
法律の衣の下にはつきりと見えるのであります。(「そうだね」と呼ぶ者あり)(笑声)勿論この
政府の言を以てしますれば、
農地改革も大部分終りました。食糧も安定したから麦も統制を外して自由にする。食糧の割当事務も
従つて少くなる、こういうのでありますけれども、我々は決してさようには思わないのであります。
政府のこの
考え方こそとんでもない間違
つた前提でありまして、非常に危険千万であると言わなければならんのであります。則ち
農地改革のごとき、その仕事は終
つたどころかこれからが本物の仕事と申さねばなりません。例えて言いまするならば、ただ單に川の中に一時的な川堰を作
つたようなものでありまして、本当の永久的な
工事はこれからであります。殊に最近現内閣を支柱といたしまして、非常にその力を盛り返して参りましたところの旧支配勢力の洪水に対するところの防壁といたしましては、ますますこれを強化拡充すべきが当然でありまして、今よりもこれを弱体化してその川堰さえも取外そうとするようなこの
法律に対しましては絶対に我々は承服できないのであります。その上にまだ登記事務の多くも残されておりまするし、肝心な交換分合も一向に進んでいない。更には最も重大であると思われるところの山林、未墾地の解放等は多く将来の仕事として残されておるのであります。我々は山林の解放、全小作地の徹底的解放を含むところの第三次
農地改革を主張いたしておりますけれども、それは暫らくおくといたしまして、現行法による改革においてすら旧地主、山地主等の反撃のために完了どころか後戻りの実情であることは少しく具限の士であるならば容易に首肯し得るところであります。なお又食糧割当事務と一緒に、而も同一の
委員会で、た
つた一人の誤記でやれる仕事の分量でも、性格でもないわけであります。
なお食糧割当事務のごときも不安定な食糧事情のままに、国内の自給策も完全でなく、而も海外食糧の見通しも五里霧中の中におきまして、選挙の時に公約をされておるかどうか知りませんけれども、その低劣なる自由販売の公約にこだわ
つてここに麦の統制を外して、或いは製粉業者、或いは米穀加工業者、こういうような諸君を儲けさせまして、自由党の選挙対策を物心両面から稼ごうというのでありまするから、あとで一層の食糧需給事情の惡化と混乱の中で、再び統制割当をやらなければならないということも予想されるのであります。又困難な仕事がたくさん残
つておると思われるのであります。
更に農業改良
委員会の仕事に至りましでは質的にもつと違うのでありまして、農業改良局の定めましたるところの
委員会設置要綱というものをもう一回見て頂きますると、その機構、任務の中でこう書いてあるのであります。即ち農業改良
事業に従事するところの職員は供出割当、配給等の
行政事務を担当してはならないと規定してあるのであります。これは即ち供出割当の仕事と技術指導が両立しないこと、又させてはならないということを
政府みずからが言明したというべきでありまして、その上に更に性質が根本的に異
つて分量も多い
農地委員会の仕事を統合しようということに至りましては全くナンセンスであります。又本
法律案の第一條に掲げますところの目的を見ますと、「農業生産力の発展及び農業経営の合理化を図り、農民の地位の向上に寄與する」云々とあるのでありまするが、これは全く農業改良
委員会の仕事でおりまして、この條文を見ただけでも
政府の言うところの三つの
委員会の統合というものとは本質的にこれは違
つておりまして、正に羊頭を掲げて狗肉を売るというものであると断ぜざるを得ないのであります。又そもそも農業生産力の発展とか、農業の合理化というものは、それはあに農業
委員会のみたらず農業立法の一大基本目標でありまして、このような重要題目を心やすく使いながら、而も費用はた
つた十八億しか出さない。はした金を支出しようとしておる。ここに
法律の権威の失墜があるのではないかと思うのであります。私はここにもう一度申上げたいのでありまするが、一体
政府は三つの
委員会を合せて一本にして強くしようとするのか、弱くしようとするのか。もつと極言するならば、やる気かやらない気かと言わざるを得ないのであります。
政府の真意は我々これをば察しますが、この
整理統合に名をかりまして農業調整
委員会が過去において持
つておりましたところの議決権というものを剥奪して、食糧割当の民主的な
取扱を問答無用の天降り割当にすり替えて、更に三機関の統合に藉口いたしまして
農地改革の打切りを目指し、反動的地主制度の復活を図るものと断ぜざるを得ないのであります。現に
政府の原案はその同調者の修正によりまして真意が暴露され、その
修正案が原案として本
委員会に回付されておるのでありまするが、それによりますと農業
委員会の階層別の委員の選挙を拒否する修正をや
つておりまするが、時間的にも、経済的にも余裕のないところの小作層、或いは零細農民の本
委員会に対する進出は非常な制約を受けまして、同
委員会における
農地改革
事業のウエイトは著しく減殺され、食糧供出、技術の指導等、これ又富農的な色彩を濃厚にするであろうことは明瞭であります。階級対立を避けまして、円満にその目的とする農業経営の合理化と農民の地位の向上を図ろうというのでありましようけれども、過去の農村において如何にこの円満と平和という美名が反勤労力のために有利な搾取と圧迫の温床と
なつたことを思いまするときに、我々はこれを額面
通りに受取れないのであります。又
予算についてこれを見ますと、た
つた十八億で平均一二名の書記で一体何ができるというのでありましようか。
農地改革、食糧供出等困難な仕事の中で訓練されて、とにかくもこの仕事を成し遂げて参りました書記こそ将来の新農村建設の有力な担い手でなければならんのであります。この有能な書記を将来の農業生産の拡大と農業改革に優遇活用して初めて最小限度の所期の目的は達成されるのであります。特に
農地委員会の書記、
農地委員会の従来為して参りました仕事を継続して参りまする詳記一名の残留任用は、絶対に必要不可欠のもので彫ると思うのであります。然るにこれらの人々をば弊履のごとく捨て去りまして、單なる機関の形骸のみ残すことは、まさに日本再建の後退を招くものであると断ぜざるを得ません。
日本社会党は以上述べました理由によりまして両
法案並びにその
修正案に絶対に反対の意を表明するものであります。