○
政府委員(
最上章吉君)
蚕糸問題につきまして、殊に現存当面しておりまする若干の
問題等につきまして大体のことを御
説明申上げたいと思います。
第一に
蚕糸の
需給関係でございますが、昨年一月から十一月までの大体の
需給の
状況を申しますると、
生糸の
生産は十四万八千百二十四俵でございまして、このほかに約一万俵近くの坐繰り玉糸がございますので、両方合せますと約十六万俵の
生産にな
つておるのであります。これに対しまして、
生糸の
輸出は九万四千六百二十一俵でありまして、一昨年の四万八千六百六十三俵から見ますならば、約倍近くの
輸出にな
つておるのであります。それと
国内消費、これは
輸出絹織物用も含めまして
国内消費が昨年は十万三千五百七十八俵でございまして、一昨年の十一万五千百二俵と比べまして若干の減少にな
つておるのであります。
輸出と
国内の
消費の合計が約二十万俵でございまして、昨年は約十六万俵
生産されまして、約二十万俵
消費した、こういうことに相成
つておるのであります。かように
生産の割合に
需要が非常に激増いたしましたために、昨年は
内外のストックが
相当あ
つたのでありまして、昨年の一月には
国内におきまして、各種の
機関、
問屋等の手持が約五万俵近くありましたので、それを全部殆んど
消費して
しまつたのでありますが、かように
需給が非常に圧迫しておることが、現在、殊に最近
糸価が非常に高騰いたしておる最も
根本の
原因であるのであります。なお最近の、殊に本年度に入りしてからの
糸価の
暴騰の
原因といたしましては、只く申しましたように、
需給の
関係から見まして、非常に
供給不足にな
つておるということが、一番大きな
原因でございまするが、そのほかになお
製糸家はすでに大
部分のものを先約いたしておるのでありまして、横浜、神戸の市域に出て参りまするものが、一部では現物の
売物が非常に少いというような
状況が更に加わ
つておるのであります。
売物が非常に少いところへ、或いは運賃の値上というようなことも本年に入りましてからあ
つたのでありまして、又
船積手当のためにふみ上げ、或いは
内地の機屋の
需給関係で内需が
相当加わる、或いは
輸出絹織物の一部については、採算が
相当いいものがありまするので、そういうものが註文を受けて更に買う、或いは又
特需関係等も多少手伝
つておると思うのでございますが、かように
売物が非常に少いところへそうい
つたような
内外の
需要が
相当強いということが、更にこの騰勢に拍車をかけたものと考えられるのであります。かように
生糸は
相当の高価にな
つて、現在一俵三十万円を超えるような
価格にな
つておるのでありますが、これは実はほかの綿、或いは
羊毛、
人絹等に比べますると、見ようによ
つては必ずしも
生糸のみが高いのではないのでありまするけれども、併しながら最近は
相当急激に値上をいたしておりまして、殊に
アメリカにおきましては、綿や
羊毛等は
相当上
つておるのでありますけれども、
生糸と最も
競争関係にありまする
人絹等は余り騰貴していないのでありまして、そういうものに比べますると、
アメリカにおける
人絹に比べますと、
相当値上りが甚しいというような
状況にな
つておるのであります。これに加えまして、一月の二十六、七日でございましたか、
アメリカのいわゆる
物価凍結令というものが発令されまして、
アメリカにおける
価格は十二月の十九日から一月の二十六日の間における
最高の
価格を超えては取引をしてはいけないということに、一応釘付けされておるのでありまするが、各人によ
つてもいろいろその
価格が違うようなことも起りますし、
生糸については幾らが
凍結の
価格であるかとい
つたような具体的な
細目につきましては、その後いろいろ業者と
物価の
凍結に関しまして、
アメリカの
政府当局の間で交渉が行われておるようでありまして、極く最近にそれがはつきりするだろうということを聞いておるのでありますが、現在までにはまだその具体的の
細目については何ら公式的な見解は述べられていないのであります。併しながらいずれこれは極く最近に判明するものと予想されまするので、これに対するいろいろの
対策を
蚕糸局におきましても
協議をいたしておるのでありまするが、大体
新聞の報道その他によりますると、当時の十二月十九日から一月二十六日までの
最高価格というのは、
アメリカにおきまして二十一中の
スリーAにおきまして、約五ドル七十五セント
程度ではないかというように伝えられておるのでありますが、そうしますると、大体
標準物におきまして二十四万六、七十円から二十五万円近くの間に落着く
可能性が
相当多いのでありまして、そういたしますると、
内地との
関係におきまして、そこに
相当の
価格の差が出るのでありまして、
内地の
価格が高いためにアメリに
輸出ができないというようなことになりますると、
蚕糸業の将来にも大事な
海外の
市場を狭める、或いは失うというようなことになりまするので、いろいろと
対策を
研究をいたしておるのでありまするが、
アメリカの具体的の
価格、
細目等がはつきりいたしまするならば、
アメリカにおきまする
生糸或いは
絹織物は勿論、
ヨーロツパに対しましても
生糸は
相当輸出をされておるのでありまするが、その半分以上はやはり製品とな
つてアメリカに
輸出されものでありまするからして、
アメリカの
絹織物或いは
生糸というものが
凍結されるならば、勢い
ヨーロツパのほうるそれに鞘寄せして落着かざるを得なくなるものと考えられるのであります。又
内地の
輸出絹織物等につきましても、
アメリカの
織物の
価格がはつきりいたしまするならば、漸次それに落着くようになるものと考えるのでありまするが、併しながら又一方におきまして、
需給の
関係が
相当窮屈でありまするのでその
方面からもいろいろの困難な問題が起ることが予想されるのでありまするが、これはまあ六月下旬から七月になりまして大量の新らしい糸が出て参りますならば、
アメリカの
価格に漸次、鞘寄せして落着くということになるものと考えられるのでありまするけれども、併しながら
内地が高いために
アメリカに
輸出ができないというようなことは、又
海外の
輸出市場確保のためにも非常に大きな問題を残しまするので、
アメリカの
価格がはつきりいたしましたならば、
内地におきましても、
内地の
市場の
状況を見た上で必要な適切な処置をとらなければならなくなるだろうというふうに考えられまするので、その線に
沿つて目下物価庁とも
種々協議をいたしておる次第であります。最近の
内地の市況の
糸価の
暴騰、これに対しまするところの
対策等につきましては、
只今、申上げたいような段階にあるのであります。甚だ簡単でございますが、一応
説明申上げます。