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1951-02-23 第10回国会 参議院 農林委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十三日(金曜日)    午後一時五十四分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○農林政策に関する調査の件  (林業試験場林産研究施設拡充予  算の確保に関する件)  (蚕糸対策に関する件) ○農業委員会法案内閣送付)   —————————————
  2. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それではこれから委員会を開きます。去る二月十六日の委員会で御決定を頂いた農林省林業試験場施設拡充予算確保に関し予算委員長に申入れる件について、お手許にお配りしたような案文が出ましたので、これに基いて御審議を願いいたしたいと思います。最初にこれを朗読してもらいます。
  3. 中田吉雄

    専門員中田吉雄君) それでは朗読いたします。  昭和二十六年二月 日     参議院農林委員会      委員長 羽生 三七   参議院予算委員会    委員長 波多野 鼎殿   農林省林業試験場林産研究施設拡充予算確保方について  我が国経済自立見地からするも、林産資源消費節減は、緊急重要事であるに鑑み、林産に関する基礎的試験研究実施しつつある農林省林業試験場林産研究施設昭和二十六年度予算を以て神奈川県大船に移転拡充する計画であつたが、移転先に予定した施設が総司令部の用途に供せられたることとなり、右拡充計画は、実施不能となつたので、これに代る計画に要する経費昭和二十六年度において確保せられたい。(詳細は別紙説明書通り)右申し入れる。
  4. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 説明書については朗読を省略し、速記録にとどめることにして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それではさよういたします。なほ今の案文について御意見があつた一つ承わりたいと思いますが、御異議がなければこの通り決定してよろしうございましようか……それでは御異議がないようでありますので、御決定を願いまして、これを予算委員長大蔵大臣に申入れることにいたします。    —————・—————
  6. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 次に農業委員会法案予備付託となりましたので、当局から提案理由を聞くことにいたします。
  7. 島村軍次

    政府委員島村軍次君) 只今予備付託になりました農業委員会法案につきまして、その提案理由を簡單に説明申し上げます。  終戰後我が国の農村民主化と、農業生産力発展の障碍を除去いたしますために、画期的な農地改革実施されまして、三百万戸を超える自作農家創設が行われ、その事業もほぼ完成をみたのでありますが、真にこの事業成果確保するためには、わが国の農業生産力発展及び農業経営合理化を促進し、農民地位の向上を図りますことが不可欠であると考えられるのであります。このことは、單に農民のためばかりでなく、国家百年のため、緊急の計と存ぜられるのでありまして、そのため政府はいろいろの方策を講じて参つたのでありますが、何と申しましても、我が国農業の前途に横たわつている多くの問題を解決いたしますためには、先ず以つて農民の積極的な意欲と主体性を持つた活動と協力がなければ、到底望み得ないと固く信ずるのであります。従来の農業施策実施の上におきまして、最も欠けておつたものは、制度農民自主性が重視されていなかつた点ではなかつたかと思うのであります。  この欠陥を補いますには、従来土から行われていた農業政策を下からの農業政策に切り替えることが根本問題であろうと考えるのであります。勿論、地方における農業施策の主体といたしまして、都道府県、市町村という自治体があるわけでありまして、今後とも農業指導助成担当者であることに変りはないのでありますが、施策の実効を充分に収めるためには、それが農民の意欲なり、希望と一致するものでなくてはならないのであります。そこで現在のような困難な事情の下にある日本農業に将来にわたつて繁栄をもたらすためには、どうしても、農民の声をして直接都道府県なり、市町村なりの行う農業政行の上に反映させるための民主的な組織が必要であろうと考えるのであります。  従来農民代表機関といたしまして農地関係については農地委員会食糧供出及びこれに伴う農業計画関係については農業調整委員会が法制上の機関として設置され、農業技術改良関係については別に行政措置によつて農業改良委員会が置かれているのでありまして、それぞれ民主的な農民代表機関として、積極的な活動を行い、その成果も極めて大きいものがあつたのでありますが、時の経過と共に所掌事務性質なり分量が相当つて来ておりまするし、その範囲がそれぞれ限定され、相互に関連をもちませんため、全体としてこれに再検討を加え農業経営全体のための総合的な農民代表機関としての実を挙げ得るよう組織簡素化を図り、且つ機能の上に総合性を與え、真に民主的に農民全体のめの組織とし、再組織することが切実に望まれるわけであります。これが本法律案提案いたしました根本的な趣旨であります。以下本法律案の主要な内容について概略説明申上げます。  先づ第一に本法律案は、農業委員会に関する組織法であるということであります。即ち農業委員会は、耕作の業務を営む農民が、民主主義原則に従つて組織し、運営する農民代表機関でありまして、農村における自作暦小作層意見が公平に代表され得るように原則として階層選挙によるものとし、選挙権、被選挙権市町村に住所を有する成年農民に平等に與え、且つ選挙農民によるリコール制度を設けたのであります。  第二に、農業委員会は、農業全般に関する事項をその所掌事務といたしておることであります。即ち 農業委員会は、執行機関として、自作農創設維持農地等利用関係調整土地改良交換分合に関する事務及び小作調停関する勧解等を処理するほか、諮問機関として、土地の開発、改良保全その他土地生産條件整備農業技術改良、その他農業生産に関する事項農畜産物加工流通に関する事項、その他農業振興のため必要な項についての総合計画の樹立及びその実施について、地方公共団体の長に建議したり、諮問に応じたりするのであります。なお主食の統制との関係におきましては、別途提案を予定しておりまする食糧政府買数量の指示に関する法律案によりて食糧管理手続整備を行い、農業委員会供出割当に関する諮問機関とする方針であります。  第三に、農業委員会は、農民の民主的な代表機関でありますので、その自主性を尊重いたしますため、行政庁監督は、極力排除いたしましたことであります。ただ、農業委員会執行機関として、処理する自作農創設維持及び農地関係調整に関する事項につきましては、事の性質上全然その自治に放任するわけには参りませんので、この事項限つて行政庁監督権限を留保いたしているのであります。  第四に、農業委員会に要する経費は、原則として、これを国の負担といたしたことであります。農業委員会が、地方公共団体機関であり、従いまして、委員なり、書記も身分的に地方公務員であることは、言うまでもないのであります。又その所掌事務につきましても、先に申上げました通り、団の事務と考えられるものばかりでなく、地方公共団体事務と考えられるものもその所掌事務といたしているのでありますが、政府といたしまして、川行政事務及び財源の再配分について、まだ方針が確定いたしておりませんので、従来の農業委員会や、農業調整委員会の例によりまして、農業委員会に要する経費は、原則として、国の負担といたしたのであります。  以上が本法律案内容概略でありますが、何卒愼重御審議の上、速かに御賛同を御られますよう切望する次第であります。
  8. 羽生三七

    委員長羽生三七君) この農業委員会法律案予備付託でもありますので、本日は提案理由を聞くだけにいたしまして、瞬く御研究願つた後、改めて審議を聞きたいと思います。この問題はこの程度にいたします。
  9. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 次に、日程にあります蚕糸対策に関する問題で当局説明を聞きたいと思いますが、この問題は御承知のように本日の各新聞を賑している蚕糸価格問題等も非常に重要になつておりますし、それから日本のこの養蚕というものが戰前一番盛んな時期にはたしか一億貫を超えておつたと思いますのが、現在は千数百万貫に減少し、当時輸出のうちの非常な王座を占めておつたこの生糸というものが最近では非常に減少して来ているわけでありますけれども日本の産業として将来農村の中にどの程度地位を占めるか、或いは将来どういう発展見通しがあるか、それらの問題についても日本経済自立との関係で十分慎重に考える必要があると思いますので、特にこの問題を本日取上げたわけであります。最初蚕糸問題の全般亘つて、特に当面しておる問題から当局説明を承わつて逐次研究をお願いすることにいたします。
  10. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 蚕糸問題につきまして、殊に現存当面しておりまする若干の問題等につきまして大体のことを御説明申上げたいと思います。  第一に蚕糸需給関係でございますが、昨年一月から十一月までの大体の需給状況を申しますると、生糸生産は十四万八千百二十四俵でございまして、このほかに約一万俵近くの坐繰り玉糸がございますので、両方合せますと約十六万俵の生産になつておるのであります。これに対しまして、生糸輸出は九万四千六百二十一俵でありまして、一昨年の四万八千六百六十三俵から見ますならば、約倍近くの輸出になつておるのであります。それと国内消費、これは輸出絹織物用も含めまして国内消費が昨年は十万三千五百七十八俵でございまして、一昨年の十一万五千百二俵と比べまして若干の減少になつておるのであります。輸出国内消費の合計が約二十万俵でございまして、昨年は約十六万俵生産されまして、約二十万俵消費した、こういうことに相成つておるのであります。かように生産の割合に需要が非常に激増いたしましたために、昨年は内外のストックが相当つたのでありまして、昨年の一月には国内におきまして、各種の機関問屋等の手持が約五万俵近くありましたので、それを全部殆んど消費してしまつたのでありますが、かように需給が非常に圧迫しておることが、現在、殊に最近糸価が非常に高騰いたしておる最も根本原因であるのであります。なお最近の、殊に本年度に入りしてからの糸価暴騰原因といたしましては、只く申しましたように、需給関係から見まして、非常に供給不足になつておるということが、一番大きな原因でございまするが、そのほかになお製糸家はすでに大部分のものを先約いたしておるのでありまして、横浜、神戸の市域に出て参りまするものが、一部では現物の売物が非常に少いというような状況が更に加わつておるのであります。売物が非常に少いところへ、或いは運賃の値上というようなことも本年に入りましてからあつたのでありまして、又船積手当のためにふみ上げ、或いは内地の機屋の需給関係で内需が相当加わる、或いは輸出絹織物の一部については、採算が相当いいものがありまするので、そういうものが註文を受けて更に買う、或いは又特需関係等も多少手伝つておると思うのでございますが、かように売物が非常に少いところへそういつたような内外需要相当強いということが、更にこの騰勢に拍車をかけたものと考えられるのであります。かように生糸相当の高価になつて、現在一俵三十万円を超えるような価格になつておるのでありますが、これは実はほかの綿、或いは羊毛人絹等に比べますると、見ようによつては必ずしも生糸のみが高いのではないのでありまするけれども、併しながら最近は相当急激に値上をいたしておりまして、殊にアメリカにおきましては、綿や羊毛等相当つておるのでありますけれども、生糸と最も競争関係にありまする人絹等は余り騰貴していないのでありまして、そういうものに比べますると、アメリカにおける人絹に比べますと、相当値上りが甚しいというような状況になつておるのであります。これに加えまして、一月の二十六、七日でございましたか、アメリカのいわゆる物価凍結令というものが発令されまして、アメリカにおける価格は十二月の十九日から一月の二十六日の間における最高価格を超えては取引をしてはいけないということに、一応釘付けされておるのでありまするが、各人によつてもいろいろその価格が違うようなことも起りますし、生糸については幾らが凍結価格であるかといつたような具体的な細目につきましては、その後いろいろ業者と物価凍結に関しまして、アメリカ政府当局の間で交渉が行われておるようでありまして、極く最近にそれがはつきりするだろうということを聞いておるのでありますが、現在までにはまだその具体的の細目については何ら公式的な見解は述べられていないのであります。併しながらいずれこれは極く最近に判明するものと予想されまするので、これに対するいろいろの対策蚕糸局におきましても協議をいたしておるのでありまするが、大体新聞の報道その他によりますると、当時の十二月十九日から一月二十六日までの最高価格というのは、アメリカにおきまして二十一中のスリーAにおきまして、約五ドル七十五セント程度ではないかというように伝えられておるのでありますが、そうしますると、大体標準物におきまして二十四万六、七十円から二十五万円近くの間に落着く可能性相当多いのでありまして、そういたしますると、内地との関係におきまして、そこに相当価格の差が出るのでありまして、内地価格が高いためにアメリに輸出ができないというようなことになりますると、蚕糸業の将来にも大事な海外市場を狭める、或いは失うというようなことになりまするので、いろいろと対策研究をいたしておるのでありまするが、アメリカの具体的の価格細目等がはつきりいたしまするならば、アメリカにおきまする生糸或いは絹織物は勿論、ヨーロツパに対しましても生糸相当輸出をされておるのでありまするが、その半分以上はやはり製品となつてアメリカ輸出されものでありまするからして、アメリカ絹織物或いは生糸というものが凍結されるならば、勢いヨーロツパのほうるそれに鞘寄せして落着かざるを得なくなるものと考えられるのであります。又内地輸出絹織物等につきましても、アメリカ織物価格がはつきりいたしまするならば、漸次それに落着くようになるものと考えるのでありまするが、併しながら又一方におきまして、需給関係相当窮屈でありまするのでその方面からもいろいろの困難な問題が起ることが予想されるのでありまするが、これはまあ六月下旬から七月になりまして大量の新らしい糸が出て参りますならば、アメリカ価格に漸次、鞘寄せして落着くということになるものと考えられるのでありまするけれども、併しながら内地が高いためにアメリカ輸出ができないというようなことは、又海外輸出市場確保のためにも非常に大きな問題を残しまするので、アメリカ価格がはつきりいたしましたならば、内地におきましても、内地市場状況を見た上で必要な適切な処置をとらなければならなくなるだろうというふうに考えられまするので、その線に沿つて目下物価庁とも種々協議をいたしておる次第であります。最近の内地の市況の糸価暴騰、これに対しまするところの対策等につきましては、只今、申上げたいような段階にあるのであります。甚だ簡単でございますが、一応説明申上げます。
  11. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 只今蚕糸局長の御説明は当面の問題に主として限定されておりましたが、この問題に限らず、この日本農業における蚕糸業の占める地位との関連等もありますので、問題を只今のことだけに限定されることなく、広い意味で順次御質問をお願いいたします。
  12. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) なお蚕糸業の我国の農家経済上におきまする地位というものは、年々増大いたしておるのでありまして、殊に御承知のように養蚕我が国農家経済現金収入の最も重要なものといたしまして、今後もなおその増産に力を入れたいとかように考えておるのであります。殊に農村におきましては、御承知通り、いわゆる余剰労力として婦女子の労力でも以て、比較的短い期間に相当まとまつた現金収入があるということにおきまして、非常な重要性を加えて来るものと考えるのであります。従いまして、終戦直後、いわゆる蚕糸復興五カ年計画というものを作りまして、当時の昭和二十一年の八月に一応閣議の決定をいたしまして、そのときから五カ年後において生糸を約二十七万俵程度増産するということにいたしておつたのでありまするが、その後昭和二十二年にアメリカにおきまする生糸消費状況等が非常に悪かつたために、一時その計画も立ち潤えたような恰好になつておるのでありますが、今般経済安定本部中心としまして、自立経済審議会におきまして三カ年後の自立経済を目標とした計画が立てられておるのでありますが、その中にもこの蚕糸業復興することが取上げられておりまするので、又最近の内外情勢等からも新らしい見地に立つた蚕糸復興計画というものをしてる必要を痛感いたしておりまするので、近くこの蚕糸業復興五カ年計画というものを新らしい見地に立つて計画を立てることで目下審議をいたしておるのであります。大体その根本の考え方といたしましては、現在ある桑園能率を増進する、つまり一反あたりの繭の数量というものが戦前は十五、六貫程度であつたのでありますが、現在は十貫前後でありまするので、現在ありまする桑園能率の増進ということを第一に考えまして、それに或る程度桑園の面積も適地適作という方針で考えて行くという方針の下に、大体五カ年後におきまして二十八万俵から三十万俵程度生糸生産にいたしたい、かようなことで目下審議いたしておるのであります。従いまして昨年は繭の産額は約二千百万貫程度であつたのでありますが、本年はこれを少くとも二千四、五百万程度に増加したい、かようなことでかような計画を立てておるのでありますが、そういたしますると、生糸として約二十万俵から二十一万俵程度の糸になるのでありまするが、それを更に輸出内地と大体半々くらいにいたしまして、計画を立てておるのであります。
  13. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 私からちよつとお伺いしますが、その問題のほかにナイロン等のような人造繊維に対する将来の天然生糸需要見通し、特にアメリカにおいての見通しはどうでありますか。ちよつとお伺いいたします。
  14. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 先ず最初ナイロン関係でございまするが、ナイロンがでました当時は非常にいろいろの面において重大な脅威を與えたものでございまするが、戰前におきましては、アメリカにおいては生糸の大部分、八割程度靴下に使われておつたのでございます。ところがこれは現在殆んどナイロンに取つて代られまして、戰争中生糸輸出できなかつたということも手伝いまして、ナイロンの質の改良、量の増産というようなことのために、大部分生糸が使われておりましたアメリカにおける靴下は現在ナイロンに殆んど取つて代られておるのであります。生糸の絹の靴下というものは恐らくアメリカにおいては僅かに二%か三%程度だと思うのでありまするが、そういう意味におきまして靴下に関する限りはナイロンに取つて代られておるというのがもう現在の事実でございます。従いましてアメリカにおきましては、靴下に復活するということは当分の間望めないと思うのでありまするが、ヨーロッパの方には多少ございまするけれども、主として今後はいわゆる広幅物ドレス中心とした織物に絹は使われるということに相成るのでございます。そういたしますると、ナイロンとの競合という問題よりも、むしろレイヨン等との関係になるのでありまするが、これはまあ絹は絹としてのいろいろの欠点もありまする代りに絹としての特殊もあり、まあ人絹人絹としてのいろいろの特徴がある代りに、又人絹としての欠点もあるのであります。従いまして今後は絹は絹としてドレス方面には十分伸びて行く余地があるものと考えるのであり、そして、そのためには絹と生糸のいわゆる欠点といたしまして、いわゆるラウジネスの欠点でありまするとか、或いはむらでありまするとか、そういつたような品質上のいろいろの改良に対する努力をなさなければならないことは勿論でありまするけれども、又絹に対しては今後大いに宣伝をいたさなければならないと思うのでありまするが、そういう品質改良し、適当な絹の特質を活かすような宣伝をいたしましたならば現在程度消費量はまだまだ極く微量でございまして、アメリカの全体の繊維消費量に対しましては、大体千分の二くらいしか当つていないのであります。繊維アメリカの全体の消費華……まあ年によつても違いまするが、大体六十億から七十億ポンド程度であるのでありまするが、絹は僅かに七、八百万。ポンドに過ぎないのでありまして、僅かに千分の一に上か当つていないのであります。従いましてこれを今後品質改良し、大いに宣伝をいたしましたならば、これが千分の二になり、三になるということは決して非常に困難なことではないかと考えるのであります。戰前は大体千分の十五から二十ぐらいの絹を使つてつたのでありまするが、現在それがかように非常に減つておるのであります。又戦前から見ますならば、アメリカの全体の繊維消費量は大体三倍になつておるのでありまして、昔の織物に使われた面からいたしましても、まだまだアメリカでは伸びる余地があるとかように確信をいたしておるのであります。昨年ニューヨークで国際絹業大会等を開きまして、絹というものを大いに宣伝をいたしましたことも、最近のアメリカにおける絹の需要増産には非常に役立つたのではないかと、かように考えておるのでありまするが、この宣伝の問題につきましては、今後ともできれば毎年世界の主要な都市におきまして、こういう企てをいたして行く方針であります。
  15. 西山龜七

    西山龜七君 私は日本以外の諸外国蚕糸界の実情をわかつておる範囲においてお聞きしたいと思います。それからもう一つは五カ年計画によつて約三十万俵近くのものをお作りになると言うが、その具体的な奨励方法なんかをこれを一つ伺いたい。それからもう一つ養蚕農家が、そういうような政府施策に沿いまして養蚕を大いにやつて見ようと、こういうように安心をさしてやらないと目的を達することができないと思いますが、中途においてこれが中断するとかいうようなことのない安心感を與える方法が何かありますか。その三つをお尋ねしたいと思います。
  16. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 日本以外の諸外国における養蚕の、蚕糸の問題でございまするが、これは中国数量的に言いまして日本の次には一番多いのでございまするがこれは統計がはつきりいたしませんけれども、仮に昨年の統計を以て見まするならば、昨年アメリカの輸入した生糸数量は、七万一千四百十二俵でございます。約七万一千俵の中で日本の糸が六万二千七百三十三俵でございまして、中国の糸が七千七而六十俵、それからイタリアの糸が九百十九俵、かようになつておるのであります。従いましてそれぞれの国内、におきまする生産はどれだけあるか、中国イタリアにつきまして正確な数字は持合せませんけれども、日本の糸を競争になるアメリカ等におきましては、大体戦前から少いときでも八割、多いときは九割以上が日本の糸でございまして、これは価格等にも関係いたしまするけれども、大体九割前後は日本の糸であり、残りが中国、イタリヤその他一ブラジル、或いはフランス等にも僅かに数百俵程度の糸ができると想像されるのでありますが、大して問題にならないと思うのであります。なお蚕糸業のこの次の問題は安定の問題でございますが、これは五カ年計画によつて増産をどういうふうにしてやつて行くかという御質問でございますが、その点につきましては関係養蚕団体、或いは製糸団体等とも協力たしまして、或いは民間の増産運動というようなことも無論展開して行かなければならないと思うのでありまするが、政府といたしましてもこの養蚕奨励、或いは品質改良等のためには、大いに技術の指導を中心として進みたいと、かように考えておるのであります。殊に現存全国に二百八十カ所の蚕業技術指導所を置いておるのでありまするが、主要な地方には蚕業技術指導所というようなものを一置きまして、必要な職員を置き、或いは又臨時の職員等を置きまして、大いに技術の指導をいたしておるのでありまするが、そういう方面に今後とも大いに力を入れて行きたいとかように考えているのであります。なおこの養蚕家が安心して増産に邁進ができるようにというようなことは、従来の蚕糸業の実態を知る麦にとりましては、殊に価格暴騰暴落が非常に甚しいためにその点が非常に問題になるのでございまするが、これは実は従来もいわゆる糸価安定問題というようなことで国内でも非常に問題になり、又国会等においてもしばしば問題に相成つておることでございまして、又海外等におきましても、その強い要望があるのでありますが、これが糸価安定ということで政府価格を安定するということは、いろいろな案を考えて研究をいたして、関係方面にも当つたのでございまするけれども、今のところなかなか了解を得ることができないで現在に至つているのであります。併しながらそういう価格の安定について、政府価格を人為的に安定させるというようなことはなかなかむずかしい問題でございますけれども、何らかの形におきまして、異常な暴落、或いは異常な暴騰というようなことが実際的に防げるようなことを種々研究をいたしているのでございまするが、まだ現在こうするということをはつきり具体的に申上げる段階には至つていないのであります。又これが今後の問題といたしまして、大いに何らかの形において解決に努力をいたさなければならないとかように考えているのであります。伊上ながら結局これは増産に伴いまして内外需要、殊に海外需要が起ればそれで旧跡もおのずから解決するのでありまして、これは価格の問題も安定の問題も非常に重要な一つの問題でございますが、絹というものに対する海外の、殊にアメリカにおきます絹の関心を大いに深め、絹の需要を増大するというようなことに力を入れまして、殊に絹の宣伝或いは又絹特有な絹製品の品質の向上というようなことに大いに力を入れまするならば、現在非常に減産減退しておりまする蚕糸業を今後五カ年間に復興することにつきましては、そのくらいの海外需要は十分あるものと確信をいたしておるのであります。
  17. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 ちよつと局長にお伺いしますが、今西山さんからの質問で大体わかつたのですが、五カ年計画、何カ年計画ということでいろいろやつておりますが、どうも結果は机上のプランに終るということになつておるようであります。殊に私は養蚕は戦時中及び戰戦後非常に戰前に比べて減産だつた。五カ年計画でいろいろ施設はされているが、効果は挙つていない、これは手つとり早く言えば、一群大事なことは技術改良の指導員、これに相当力を入れて然るべきものと思うのでありますが、一向蚕糸局はそのほうに関心を持つておられないのではないか、これについてどういうお考えを持つておられるか、お伺いしたいと思います。
  18. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 先ほど私が申しましたように五カ年計画、これは一つの大いに努力目標として是非その目標に達するようにいたしたいと考えておるのでありますが、その際に一番中心をなすものは、お話のように技術の指導ということが一番中心になるものと考えておるのでありまして、実は全国の主要な養蚕地帯には約二百八十カ所の蚕業技術指導所を設けておるのでありまするが、そこに従来は県の職員で主としてやつてつたのでございまするが、これが養蚕がだんだん盛んになりますに連れまして、その技術指導所の活動にも不足でありますので、適当な技術員、殊に協合組合等におきまする技術員を臨時に嘱託というような制度にでもいたしまして、大いにこの技術の指導を図りたいと、かように考えておるのであります。それで蚕糸局といたしましは、その問題を非常に重要に考えまして、本年度の予算におきましては、その技術指導所の技術の普及強化費として六百万円の経費を要求いたしておつたのでありまするが、これでは非常に少いのは勿論でございまして、来年度はこれを二千四百万円に増額をいたしておるのであります。この金額も私どもといたしましては非常に不満であつたのでありまするが、又更に、再来年度の要求には漸次この技術の普及強化費というものを増額をいたしまして、技術の普及上遺憾なき期したい、かように考えておる次第でございます。
  19. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 この養蚕協同組合に所属しておられる技術員ですね、これが我々郷里に帰るといろいろ会合をやつて、我々に懇望する点は身分の保障ということなんです。これはそう簡単にいかんと思つておりますが、これを何とかしてやらんといかんと思います。殊に普通の農事の技術員に比べてどうも見劣りがするのですよ。何とかあなたのほうで蚕糸局が独立してあるのだから、あなたの力でせめて普通の農事指導員くらいまで引上げてやる、更に進んで私は全体的に申上げますが、技術指導に当つておる者は第一身分の不定ということで本気でやつでおりませんよ。これを私として当局はよほどお考えにならんといけないのではないか、公務員には身分の保障がある、これはどつちつかずのものになつておりますから、これについて一つ意見を承わりたいのです。
  20. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 只今お話のように、地方の事情は私どもも十分承知いたしておりますので、蚕糸局の将来の予算につきましては、その問題を最も需要な問題と考えまして解決したいと、かように決心をいたしておる次第であり序す。
  21. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 私は二、三お伺いしたいのですが、二十一年の八月にできた五カ年計画は冬眠のようなことになつて五カ年過ぎてしまつたのですが、最近の情勢から言つて研究中であるというお話でありますが、一体繭を何ぼ作つて而も桑園はどれくらいにしてそうして戰前は反当収繭というものは多かつたのですが、現存は何ぼになつてつて何ぼにするようなふうにお考えになつておるのですか。
  22. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 現在桑園は約十八万町歩くらいでありまして、それに対しまして本年の生産が約一千万貫であります。従いまして反当収繭量は約十一貫程度になると思うのでありまするが、これをできるだけ桑園能率を増進いたしまして、大体五カ年後におきましては十五、六貫程度までは持つて行きたいと、かように考えておるのであります。桑園は五カ年後におきましては、完成桑園面積といたしまして約二十万町歩、全体の桑園総面積といたしまして二十三万七千町歩くらいに持つて行きたいと、かように考えておるのであります。
  23. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 その次にお伺いいたしますが、この前に五カ年計画を立てた当時は、他の農産物いろいろ闇価格があり、食糧事情があつてその点において予定の計画が進まなかつたというのでもります。併しながら昨今になりましては、すべての農作物というものの闇価格も非常に減つて来た。殆んどないような状態になつてすべての農作物物価というものは一応落着を見せておる次第であります。この状態の小において繭は一体何ぼというか、生糸何ぼというか、他のすべての農作物との釣合はどれくらいであればいいとお考えになつておるのですか。
  24. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 価格の点でございますか、生糸の……。
  25. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 他の農作物と比較して農家で経営する上において…。
  26. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) これはまあ統制を外しまして自由経済になりました現在におきましては、政府価格をどうするかということは非常にこれはむずかしい問題でございまするが……。
  27. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 そういうことでない価格をどうするとかこうするとかいうことではなしに、他の農作物と比較してどれくらいの価格であれば養蠶というものは或る程度まで推進ができて行くかということです。
  28. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) それは農林省におきまして昨年生産費の調査をいたしましたので、そのことを郷参考までに申上げます。
  29. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 生産費の調査ではなしに、そういうことを離れて、他の農作物と比較して養蚕の占める割合はどれくらいの価格に維持されなければいかんとお考えになるかということです。
  30. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) それは結局その地方にほかの農産物がいろいろあるでありましようが、結局まあほかに有利な農産物があれば、そういう他の有利なものとの比較になつて来るのでありますが、大体の考えといたしまして、その問題はパリティの考え方を基礎としての比較ということになると申上げることよりしようがないと思いますが、大体パリティの計算をいたしますと、大正十年から昭和五年までの間におきまする米価とのパリティから計算いたしますると、これは五千六百掛の基礎になつておる基準ベースでありまするが、それから見ますならば、現在或いはこの春頃までのパリティといたしまして、これは毎月違うのでありまするが、大体九千数百掛になるのであります。従いまして、そういう米価とのバランスがとれた価格ならば、養蚕を進める上においても十分やつて行けるのではないかと、かように考えております。
  31. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 私のお尋ねしているのとちよつと違うのですけれどもまあその程度でいいのですが、それからいわゆる価格が或る程度高く維持されなきやいかんということと、それから結局反当収繭というものが相当多くなければ反当收入というものが少いのですから、この点に対して私は最前岩男さんのお尋ねになつたことは、今日の蚕糸業の段階において指導所であるとか、又いろいろな小出しのような奨励をなさるよりも、もつと地点的に本当にその指導をされなければ私はいかんのじやないかと思うのです。というのは、結局落着くところは指導員というものをもつと真剣にお考えになる必要がある。これは最前二千万円になつたとおつしやいますけれども、併しそれならですね、普通農地と一本にしてもらつたほうが私はいいと思うのです。蚕糸局でつかまえておらずに、むしろ普通農地と一緒にしてもらつたほうがいい。現在二千万円にされても実際を言うと、本年の何でしよう、国庫が負担するのは五分の一程度でしよう。蚕糸業はそんなことで、同じ農家に接して行くものとしてですね、それは本当の意味の指導ということはできつこない。そこらの普通農地と一本にしてできないという歴史のことをこの間他の部面でいろいろ話があつたのですが、それは一本にならないでもいいが、蚕糸局でつかまえておられるなら普通農地と同じ扱いをされたほうがいい。そこに力を入れたほうがいい。そんな指導所を全国に三百カ所くらいを舞いて見たところで何の効果もない。そんなことで以て第一線に働く者に力を入れなければ、実際中岡の蚕糸業の技術官がおつてもそれはそれこそ演説屋であつて何にもならん。結局第一線をもつと強化させなんだら実際反当収繭量を殖やすどころか、或いは桑園改良をやることもできんのじやないか、そういうふうに私は思うのです。まあこの点に対してどういうふうにお考えになるか、まあ蚕糸局でその程度までに技術員の給料ができなきやむしろそんなものは置かないほうがいい。思い切つてそういうふうに考えるほうがいいんじやないか。その反面考えると、各府県において葉消費者のところに持つてつて、いわゆる指導員の負担金をなんぼ出せ、かんぼ出せというような実に妙なことがあつてですね。そうしてそのことがやがて指導者の権威をいわゆる失墜している。そしてそれがやがて又繭の価格の価にも影響しておるので、これは実情を蚕糸局としてはお知りになつておられるかおられないか知らないのですが、実情はそういうことである。指導者というものは或る程度の権威を持つておらなきや僕はできないと思うのですが、その点に対して一つお考えを承わりたいと思います。
  32. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 只今白波瀬委員が言われましたように、第一線に働く技術員の問題は最も蚕糸業根本をなす問題でありまして、蚕糸局といたしましては今後ともこの問題の解決を第一に、そうして必ず最も近い機会に解決するようなことで進みたいと、固く決心しておる次第であります。
  33. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 今の養蚕局長の言葉で満足するのですが、何もかもあれもやる、これもやる。これは役所式です。そんなことをするよりも、重点的にこれが非常に効果があり、養蚕の振興にこれが効果があるというなら、それを重点的におやりになる。これを一つしつかり局長やらなければ私は駄目だとと思う。どうですか。
  34. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 全く同感でございまして、本年度の予算の編成に当りましても、この問題を最も重点的に考えまして、この予算一つ認めてもらえば、ほかの予算はあと廻しでも良いという決心でおつたのでありますが、将来も是非そういうことでこの問題を決したい、一切何でもかんでもやるということでなしに、この問題を専ら解決するという固い決心で行きたいと考えております。
  35. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 二千万円ぐらいでどうなるのかな。一億ならまだしもだが……。
  36. 小林孝平

    ○小林孝平君 落下傘、殊に輸送用の落下傘に使う生糸消費量相当量あるのですか。それから落下傘と他の繊維との関係はどうなつておりますか。
  37. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 只今の落下傘の問題でありますが、これは特需関係として多少あるということは噂には聞いておりますけれども、正確な数字はわからないのでありますが、国内でそういつたような落下傘或いは薬嚢というような方面に多少需要があるように聞いておりますけれども、併しそれは大した数量ではもりません。
  38. 小林孝平

    ○小林孝平君 私の言うのは、国内におけるいわゆる特需でなくて、アメリカにおける落下傘の、特に輸送用落下傘の……。
  39. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) アメリカにおいては落下傘はナイロンで作つておるのであります。生糸はありません。
  40. 池田宇右衞門

    ○池田宇右衞門君 どうも蛇足を加えるの感がありますが、白波瀬委員の最前の御質問対して、局長からは、政府も今は非常に決意して、漸次その方、向に向う。こういうお言葉がありましたが、実際問題として養蚕家、製糸家を通じて、今年ほど自然の機会と申しますか、好機会に恵まれた年はない。そこで、一番の頂上に上れば下るということは物の道理であるが、この好機会に日本におけるところの養蚕製糸蚕糸を通じての本当の糸価安定政策を政府としては決定すべき時期だろう。今白波瀬さんの言う通りに、実際御存じの通り私も地方養蚕協同組合に関係を持つのでありますけれども、養蚕方面を指導する技術員が、それぞれ供出するところの製糸家から繭代金と称しながらその何分の一かをこれを頂いて、そうして職員費としての手当を支出するというような現在においてはそこに不安定が伴う。国家的産業の進展を考えるならば、少くとも改良指導員の同じ方法を適用して、政府みずからが蚕糸業に対する指導員は国費を以て支弁ずる。若し国費で支弁できなかつたら、都道府県費と国費との折衷によつて、一人も製糸家、営利関係にあるところのかたがたから支給を受けないような、いわゆる指導者としての安全保障の下に十分なる技術の滲透をして生産にいそしむというような法を今講ずる機会である、そこで今後講ずるというならば、今度は機会が悪くなつてしまつてますます現在の方途を続けて行けば、その機会を失なつて再びこういうことができないのだから、ここは政府としても肚を据えて決定すべきである。こういうお尋ねであり、又全委員の各位がそういう熱望に燃えている際でありますからもう少し局長におかれても又、蚕糸局関係の部課長各位におかれても、これは日本繊維の必要さから見ましても、又輸出の大宗をなした歴史のあるものにおいて、今後の進展性からいたしましても、ここは十分に一つ考慮をいたし、十分に決意して、まだ遅くもないから、こういう小手先の彌縫策のようなことをせずに、しつかり一つ堅実な案を立つて実行に移して頂きたい、この所信ありや如何ということについてもつと明確に一つお話を願いたいと思います。
  41. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 只今池田委員からいろいろお話がございましたが、この技術の普及強化、或いは第一線の技術負の問題は蚕糸局といたしましても最も重要に考えておりまするので、来年度予算要求のときも、先ほど申しましたように、ほかの予算は犠牲にしてもこの予算を是非認めてもらいたいということで折衝したのでありまするが、大蔵当局も財政上の都合もあり、増額するということは異存がないけれども、実は当初一位程度要求したのでありまするが、一度に一億も認めることはできないということで、結局今後だんだん殖して行こうということで、私どもから見れば非常に不満足な結果になつたのでございまするが、只今、池田委員も申されましたように、この蚕糸業も非常に復興の機運にありまして、日本農村経済上占める地位も非常に重くなつております。又輸出関係から申しましても非常にウエイトが重くなつておりまするので、来年度におきましてはほかの予算は犠牲にしましてもこの問題を是非解決したいと、かように固く決心をいたしておる次第であります。
  42. 池田宇右衞門

    ○池田宇右衞門君 島村次官に一つお尋ねいたしますが、今大蔵当局にはねられたと言うが、どうも政治的解決はやはり大臣と次官があと押しをしてくれなければこの問題の解決はできないと思う。それで多くの人も、私どもばかりでなく日本の全員、それから日本農業経営の必要止むべからざる、又農業のあらゆる政策においてこの部面が取り残されたような感がしておるのですが、これに対する次官、農林大臣等が今後大蔵省と折衝される農林省としての方針一つ率直に御答弁を願いたいと思います。
  43. 島村軍次

    政府委員島村軍次君) 前政務次官の時代に実現しなかつたことは誠に遺憾に存じております。今年も実は数が多くてと言うては失礼でありますが、私の責任を転嫁するわけではありませんが、丁度私の入つた当時が予算折衝の最中でありまして、農林省全体の予算の上で実は蚕糸業のほうへ私の手が伸びなかつたわけでございますが、併し二十六年度においてはさようなことに終つたことは誠に遺憾と思いますが、たびたびの御激励でありますから、大いに私も取るべく決心をいたします。
  44. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 ちよつとこれに関連して、これは蚕糸局長ではちよつと残酷だと思つて、控えておつたのですが、一体政府のみならず、当農林委員会もどうも今まで軽視しておつたのじやないかと私は思うのです。殆んど蚕糸対策が今まで登場したことは私はないのじやないか、私は寡聞にしてそういうことを聞かない。そこでこれは申入れということが近頃大そうはやりまするがすぐこれに上の人から嫌われるけれども、もつ農林大臣に農林委員会の申入れとして次の補正予算でもいいから、これについてもうちよつと真剣にやれというような警告を発することが必要である。そうしませんと、局長一人だけで終るのじやないかと、そういうふうに私は考えております。大きく取上げなければ駄目です。
  45. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 私も蚕糸局長の答弁を聞いておりまして実は非常に同情をいたすわけであります。そこで私の感じを申上げますと、確かに蚕糸局予算も極めて額が少いので、ただ問題はさつき白波瀬さんが言われたように過去の五カ年計画、これは実は誰も世間では知らないけれども、それほど実は将来の目標が極めて不明朗であるというところに実は農林大臣も或いは政務次官も、或いはその他のかたがたもどうもはつきりした確信がないということが農林省は勿論、大蔵省の予算の査定に当りましても、ただに二十万町歩がいいとか二十五万町歩がいいということは、要するにそれがはつきりしないというところに私はすべての問題が極めて低調な原因があると思う。そこでさつきお話のような海外需要も勿論変動して来まするし、そこでそろそろ海外情勢もはつきりして参りますので、審議会を作るかどうかは別といたしましても、要するに蚕糸業を将来どうするか、例えば桑園面積は一十万町歩がいいのか或いは二十玉万町歩にしたらいいのか、これは内外の情勢を一つ総合的に御覧願つて、非常にコンクリートなものにしてこれを達成するというはつきりした目標を作らんと、誠に私は蚕糸局のやや低調なる根本原因もここにあると思います。ですから実は私も蚕糸局には全然行つたことがないわけですが、その意味では岩男さんのお叱りを受けるかも知れませんが、ともかく大臣も政務次官も私の経験からしましても、概してそれは関心が薄いということは指摘できると思います。併しそれは軍に関心がないということではなくして、計画が極めて信憑性がないというところに問題があると思うのであります。特に統制が外されて来ますると他の農業との関係が何だか農林省でもはつきりしない、麦の統制を外し、いもの統制を外しますけれども、それがどういうふうになるかという目標がないのだと思うのであります。そこでやはり蚕糸局だけでは私は駄目だと思うのでありまして、やはり農政局なり農業改良局、その方面とよく連絡をとられまして、はつきりした目標を立て頂いて、その上で予算を進めることが必要ではないかと思つております。どうもそれをはつきりせんでやつておると、いつ主でも二千万円とか三千万円というようなことになつてしまうので、特に私はこれは希望として申上げて置きます。
  46. 島村軍次

    政府委員島村軍次君) 熱心さにおいては別に私も劣つておるつもりではありませんが、ただ努力の足りなかつたことに対してはこの際更に皆さんの御激励によつて、うんと勉強いたしたいと思うのであります。この問題について私のほうから一つ希望を申上げたいことは、第一にやはり農業経営全体の土から蚕糸業の置かるる位置というものが、私の今までの考え効から申しますと、片柳さんのお話の通りはつきりしていないと思います。そこで今度本日提案をいたしました農業委員会農業計画を立てて盛んに経綸を行うということは、今後上からの問題でなくして、下からの盛り上る力もこれはやはり地方々々の問題として大いに取上げるということが今後の農業政策上私は必要だと思うのであります。これは農業委員会の問題に結び付けて甚だ失礼かも知れませんが、私はかく信じております。  それからもう一つは、蚕糸の技術員の問題を切り離して予算を計上したということは、これは我々の責任でありましよう。併し農業改良助長法を作るときに、この前にも御意見が出ておりましたように、一本でこれは計上して、そうして一貫した建前の上に計上すべきものであつたと思うのでありまして、今後お申入れ等をされる場合におきましては、総合的に一つ考えた上でやつて頂きたい。勿論農林省といたしましても、この点は一つ十分にこの上に研究を進めて見たいと思うのであります。  それからもう一つ、特に五カ年計画等を立てを場合におきましては、大体従来の五カ年計画というものが、畜産のほうは時局に乗りましたから大体目標を達成したが、蚕糸は不安定の時代にあつて、昨年くらいまでは蚕糸業については世間も比較的考え方がはつきりしていなかつたというところに、熱の入れ方も違つてつたと思うのでありますが、そこでこの問題を解決する上におきましては、やはり五カ年計画というものを農林省の省議できめたというふうな程度でなくして、やはりこの進め方についても、専門家のお揃いである参議院の当委員会においては一つみつちり御研究を願つてはつきりしたことを我々に教えて頂きたいことを希望申上げておきます。
  47. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 これは揚足をとるわけではないのですが、農業委員会法案はまだ内容審議に入つておりませんので、或いは間違いになるかも知れませんが、そういう意味で、農業委員会で総合的な農業計画を立てると、これは趣旨は結構だと思いますが、ただ農業改良普及業には養蚕業はたしか入つておらんと思うのです。そうすると、農業改良委員会農業委員会に合体いたしましても、依然として養蚕業の指導は別に除けてしまうということになると思うのですが、この農業委員会法案審議の際に、今政務次官が総合的な計画としてやるという趣旨は、私は異存ありません。ただ依然としてやはり別建に養蚕業は残つているのではないかと思うのですが、これに対してどういうお考えを持つておられますか、これは今後の審議関係もありますから、伺いたいと思います。
  48. 島村軍次

    政府委員島村軍次君) 農業委員会の建前は、本日提案理由に申上げた通りで、あとで御審議願うといたしまして、ともかくもその村におきまして農業計画を立てる場合におきましては、蚕糸業も当然入るわけであります。それから又農業改良普及委員会というものに対抗する蚕糸委員会というようなものは、これは法制的なり或いは指導的には別になかつたと思うのです。ただ地方では御承知通りにいろいろ蚕糸業に関しては、勿論協同組合が中心になつてつたのでありますが、これが今度の農業委員会のメンバーになることは当然でありますし、農業改良委員会が入つておるが、蚕糸業委員会が入らんと、こういうことにはならんと思うのでありましてこれ又なお研究も進めますか、現在の考え方では入るという考え方を以て進んでおるのであります。
  49. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 今の片柳さんのお話のことは、後でゆつくり一つ農林委員会としても御研究つて、早急に一つ何か考えてもらいたい。  私が更にお尋ねしたいことは、今日糸価が三十万円台を突破しておる。これに対して何らかの措置が講ぜられることは別ですが、去年の春繭の買入れ当時から見ると正に三倍の価格です。これに対して、非常に上つておることは結構だが、併しその半価が常に蚕糸業の上においては考えられるのだが、これに対して局というよりは、むしろ農林省としては相当お考えになつておるか。何とか考えて行かんと非常にその半面が出て来るということが考えられるのであるが、それに対して相当な考えをお持ちになつておるか。或いは又差当りの問題としては、今年の繭は今の状態で行けばどうしたつて二万円以上です。そうする、各製糸の金融というものは相当困難なものになるのではないかと考えられるが、これに対して相当お考えになつておるか、一つそれを聞きたい。  それから第二の問題は、最近蚕糸業問題では、参議院の全体として、ただ農林委員会だけではなしに、全体として相当心配を願つて、会合もし、或いは研究もして頂いておるのであるから、殊に農林委員会のかたには、余りに突込んだ話になりますからどうかと思いますけれど、当つてのあの蚕糸協会の精算剰余金或いは益差金、これをこの機会に一つの土台にして、まあ方法の問題は別として、一つ対策の一歩前進の基地にしようじやないかということまで進んで参つてつたのでありますが、その後蚕糸局のほうの態度がどうなつておるのか、何だか最近うやむやなように聞くので、私としましても、参議院のこの蚕糸業対策の各派の委員のかたに報告のしようがないようなことになつているのですが、これはいずれあの剰余金の問題は、政府の金でもなし、各出資者に帰属する金であるから、それで出資者の意向などを躊躇されていることだと思いますけれども、併し蚕糸業の事態がここまで来たら、まあ多少困難な点があつても、蚕糸局この際には一歩前進した一つのいわゆる根拠をこういう絶好の機会なんであるから、作られることを勇敢にお進めになることが私は必要であると思う。一体その点に関してどうお考えになつておられるか。いたずらに日にちを遷延しても、これはきつと益差金のときと同じように抜き差しならん羽目に来ることはもう当然なんですが、これはどういうふうになつておるか、一つお聞かせ願いたい。そうして、又、衆参両院の蚕糸関係する議員が寄つて、而も衆議院の相当なかたが委員長で、そのときにこういり行き方にしようということをきめられておるのです。ところが、その後一体どういうふうにお考えになつておるのか、一つそれをはつきりお聞かせ願いたいと思う。
  50. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 第一の春繭の問題でございますが、まあ現在の糸価暴騰に対しましては、先ほど申しましたように、アメリカ凍結価格というものが具体的にはつきりいたしましたならば、それに応じて適当な対策をとるように、物価庁と目下協議中でございます。  それから、春蚕につきましては、只今のお話のように昨年の春繭に比べまして相当大幅に値上りが当然予想されますので、これにつきましは、殊に資金面におきましていろいろの困難な問題があろうかと思うのでありますが、これは必要な資金は是非とも円滑に供給してもらうように、日銀当局或いは農林中金等とも話をいたしておりまするので春繭出廻りまでには適当に円満に解決するようにいたしたいと、かように考えておるのであります。なお蚕糸協会の余剰金の問題でございますが、これは白波瀬委員にもいろいろお骨折りを願つておるのでありまして、その通りその方針で何らかの形におきまして、蚕糸業の将来の対策に使えるようにいたしたいという固い決心をいたしておるのであります。従いまして、いろいろ衆議院或いは参議院のかたの蚕糸関係の議員各位のお集まり等におきまして出ました線に沿いまして、出資者の代表者、或いは大蔵大臣等とも協議中でございます。決して方針を変えておるわけではなく、ただその都度公表をいたしておりませんけれども、その方針で、是非進みたい、かように考えて進んでおるわけであります。
  51. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 それじやそういう経過の報告をしてよろしいか。今のお話なら、そういうことに当局は進んでおるのだという報告でよろしいか。
  52. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 結構です。
  53. 溝口三郎

    ○溝口三郎君 蚕糸復興計画を、新らしく五カ年計画というようなことをお考えになつておるように承わりますが、その施策としては、桑園の反当の収穫量を殖やす、これは技術の改良等によつてつて行く、もう一つ桑園の面積を殖やして行く、それについて先ほど片柳委員からも話がありましたように、桑園の面積を殖やすならばはつきり目標を立てて、農林省全体としてやつて行くべきであると私はこう考えるのでございますが、そこで先ほど蚕糸局長は、桑園の面積を殖やす、殖やすには適地適作で将来やつて行きたいというお考えのようでございますが、従来でも実は桑園の増加については、この十数年来始終蚕糸局のほうでお考えになつてはいられたのでございますが、これは食用作物との競合等もあつて食糧になるような開墾適地は桑園にすることは困るというようなことから、桑園の増加については、食用作物にならないような開墾地を拾い集めて実はやつて行くのだというようなことがしばしば今まであつたのであります。今後におきまして、現在は開墾はすべて食用作物のために奨励されているようなことでございますが、今ではまだ桑園の拡張というようなことについて予算等はないと思いますが、若しこの適地適作で、例えば五カ年間に五万町歩を殖やすのだという目標でも若し立つた場合は、それをはつきり実行するには、今までのような考えだつたら私は大体できないと思うのですが、現在内地に百万町歩なら百万町歩の開墾適地がある、それは今は食用作物のために計画を進めているのだ、その中で桑園日本としては必要なのだから、どの程度に配分計画をあらかじめ立てるのだというようなことを農林省としておきめになつて、そうしてそれを若し実行するなら、開墾という予算の中で桑園のためには幾ら、そうして食糧のためには幾らということを確定しておかんと、食糧のほうの予算をやつている人はそれだけ考えている、従来のように蚕糸局で自分で五万町歩もやつて、そうして予算も自分のほうでそれを計上してやつて行くのだというような、部内ではつきり統制がとれていないようなことが十数年来あつたので私は計画が進まないのだと思う。私は別の機会に申上げたいと思いますが、農業委員会で全体の総合計画を立てるのだ、総合計画を立てることはよろしいのですけれども、それに対してこの前農政局長にもお伺いしたのですが、農林省総合計画を立てるほうは立てるだけで実行は別なんだということになると、一つも動かんことになる。全般の農林行政の上に総合計画を立てて蚕糸計画を立てるなら、実行ができるように適地適作をやるのだということを言うても実行できる方法をお考えにならんと、机上のプランになるのじやないかというように考えますから、その点についてはつきりしたお考えを承わりたいと思います。
  54. 最上章吉

    政府委員最上章吉君) 只今の開懇適地に対する桑園関係につきましては、この計画農林省できめます際には、十分農地局その他関係部局とも協議をいたしまして、そういうお話のようなことがないように十分連絡を密にしてやりたい、かように考えます。  それからなおその実行等につきましても、計画計画倒れに終ることのないように、十分関係の部局とも連絡を緊密にいたしまして、計画が必ず実行されるようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  55. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 最前岩男さんからお話のような、この程度では駄目だから申入れようじやないかというようなお話があつたのですが、私は是非そういうことを考えたいと思います。なおほかに片柳さんからも計画の問題に対してお話があつた、その二つの問題を取上げて、一つ起草委員でも作つて前進するようなふうにお取計らい願いたいと思います。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  56. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 只今白波瀬さんから御動議がありましたが、先ほど来問題になつたことでありますし、まあこれは農業改良助長法との関係もあつて、いずれこれは修正をするなり何なり必要もあると思いますが、取りあえず当面今日皆さまから御要望のあつたような点を取りまとめるためには何か起草委員会のようなものを作つて、そうして次の機会までに文案を作つて当局に申入れるようにしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「黒磯なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それじやそういうことに取り決めたいと思います。
  58. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 今のお取上げ願つたやつは、一つ委員は委員長に一任いたしまして、そういうふうに御進行願いたいと思います。
  59. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それじや白波瀬さんのお話のように、起草委員は私に御一任願つて差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それじやそう、いうことにして頂きます。  先ほど岩男さんから御註文のありましたように、当農林委員会でこの問題を取上げるということが手薄であつたように感じまして、今日は第一回のこの問題に関する研究をやつたわけでありますが、随時今後もこの問題に対処するように運営して参りたいと思つております。本日はこの程度で散会いたします    午後三時二十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     羽生 三七君    理事            西山 龜七君            片柳 眞吉君            岩男 仁藏君    委員           池田宇右衞門君            白波瀬米吉君            宮本 邦彦君            小林 孝平君            三橋八次郎君            三輪 貞治君            飯島連次郎君            溝口 三郎君   政府委員    農林政務次官  島村 軍次君    農林省蚕糸局長 最上 章吉君   事務局側    常任委員会専門    員       安樂城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君