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1951-02-20 第10回国会 参議院 農林委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十日(火曜日)    午前十一時二十二分開会   —————————————   委員の異動 二月十九日委員門田定藏君辞任につ き、その補欠として江田三郎君を議長 において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員補欠選任の件 ○農林政策に関する調査の件  (食糧管理方式に関する件)  (民有地に対する電柱敷地手当金の  件)  (農業協同組合再建整備に関する  件)   —————————————
  2. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それではこれから農林委員会開会いたします。  最初農林委員変更がありましたので御報告いたします。  門田定藏君に代つて江田三郎君が委員になられました。  なおこの際、食糧統制に関する小委員変更がありますので、これを変更いたします。三輪君に代りまして江田君が、鈴木君に代りまして岩男君が、岡村君に代りまして三浦君がそれぞれ小委員になられました。  続いてちよつと小委員会に切換えますが、ここで農林委員会を暫時休憩し、小委員会に移りますが、農林委員かたはそのまま暫らくお残り願いたいと思います。    午前十一時二十四分休憩    ——————————    午前十一時二十六分開会
  3. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それでは小委員長からの申出もありましたので、この際委員会に移します。御承知のように、この食糧統制問題に関しては、小委員会で久しい間に亘つて検討願つて、その結果一応の結論に到達しておりますので、小委員長から、この問題に関する御報告を願つて、それから関係大臣の御意見を承わることにしたいと思います。
  4. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 只今小委員会で今日までいろいろ審議をし参りました最終的な結論といたしまして、小委員会考えておりますことを申上げまして、これにつきまして、御意見を更に御開陳願いたいと思います。政府におきましては、過般の三相会議におきまして、今年の麦につきましては、統制を撤廃いたしまして参るということで、今日まで参つておりますか、併しその後朝鮮動乱が起きまして、内外情勢相当つて来ておるのでありまして、その点から、先ず第一には輸入食糧の確保につきまして、いろいろ政府当局の御説明も伺いましたが、この問題につきましても、相当心配をしなければならん情勢であるのであります。昨年の七月から十二月までの平均の輸入数量は約十五万トンでありまするが、本年の一月から六月までの輸入数量は、計画では毎月三十二、三万トンの同着を見ませんと、予定輸入数量が確保できないのでありまして、この点につきましても、現在のような情勢から実は相当心配をいたしておるのであります。政府当局では、これは確信があると、こう言つておりまするが、単にこれは口頭だけの説明でありまして、果して毎月三十万トン以上の大量のものが円滑に回着することにつきましては、実は非常な心配をいたしておるのであります。更に今年の七月以降の計画につきましては、これ又一応の御説明がありましたけれども、まだ頗る不安定でありまして、これにつきましても、更に心配の度を大きくいたしておるのであります。さような点から、やはり麦の統制撤廃につきましても、この際愼重考慮をすべきではないだろうかという方向意見が向いておるのであります。そこで麦の統制を撤廃することになりますると、政府におきましては、八百八十万石の麦を農家希望に応じて買うということにたつておるようでありますが、最近の肥料情勢なり、或いはアルコールの原料等買付状況から見て参りますると、昨年決定いたしました麦の対米比価を下げるというような、かような麦の価格によりましては、到底八百八十万石の政府買入れは困難ではないだろうかという結論に大体なりつつあるのです。更にその点は本日も特に明瞭にして頂きたい点でありますが、八百八十万石が買えない場合に、二合七勺の配給との関係でありまして、これにつきましては、やはり二合七勺の配給は一応続けるという御説明があつたのでありまして、そうしますると、八百八十万石が現在の政府の持つておりまする対米比価を下げますると、さような価格では所定の買入れは困難ではないだろうかというふりに議論が進展して参りまして、それに対して政府は、さような場合には強制供出を指定して、最悪の場合に備えると、実は答弁があつたのであります。この点も特に関係大臣から明瞭な御答弁を本日得たいと私も考えまするが、二合七勺を果していつまでこれを続けまするか、又これを続けるとしますることと、八百八十万石との関係でありまして、而も自由販売にすると称しながら、情勢の如何では更に供出を命ずるということが、非常に農家にとりましても迷惑な話でありまして、この点が特に実は本日の懇談会でも問題かあつた事項でありまして、この辺を本日は特に明瞭にして頂きたいと思うのであります。  要するに食糧問題でありまして、七月以降の計画は、まだ非常に見通しはつきりしておりませんし、少くとも現在の内外情勢から見て参りますれば、先ず相当警戒的にこれを見なければならんと思うのであります。その点から、やはり国内産の麦を農家生産費をカバーする程度政府買入れをするということが、非常にこの際とるべきことじやないだろうかというような考え方が一般的であるのであります。ただまだ具体的な法律案もできておりませんので、その前に今申上げましたような、内外情勢をよく見て頂きまして、食糧管理方式の転換につきましては、特にこれは愼重を期しまして、いろいろ政府考えられておりまするところの関係法律案提案につきましては、篤と検討をして頂きたいというのが、実は現在小委員会検討しておりまする考え方の骨子でありまして、先ほど申上げましたように、なお若干重大な事項につきまして、明瞭を欠く点がありますので、その点につきまして、明瞭な御答弁を頂ければ幸いと思うわけであります。
  5. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 国際情勢の変転につれて、今まで三相の間において決定いたしました主食の配給の問題、特に麦の統制撤廃の問題についての御懸念のようでありますが、我々といたしましては、最初方針通り七月から麦を外す方針でおるのでありまして、その間における食糧配給の問題についてのお話でありますが、大体これは十月末までは二合七勺の基準量をやつて行くという考えでおるのでありまして、その間今まで持つてつた政府手持のもの、並びに七月に統制が解除になりましても、民間から、一般生産者から買入れたもの等を加えまして、当然これはやつて行けると思うのであります。その後におきましては、米のみ一合五勺のものを配給する、こういう方針で行くのでありまして、七月から外しまして、その間は政府手持のものと、それから民間のものとが相流れまして、非常にそこの間に妙味が出て参ると思います。そうしてそれが流された後に丁度うまい工合に行くと私は考えておるのであります。  それから輸入についての見通しでありますが、三十万トンは危ないのじやないかというお話でありますが、これはあるゆる手を通じまして、政府一体となつてたくさんとれるように努力いたしておるのであります。それから八百八十万トンの買入価格の問題でありますが、これも今のような対米比価ではなかなか買入れられないのじやないかというお話のようでありますが、これも我々といたしましては、多分値が上ると思つております。そうしてただ十月末まで保有できないか、できるかというようなことのようでありますが、これは輸入と、或いは又買入れられるものを加えて、その点不都合がないと思いますが、「いも」の統制を外したと同じように、多分これは価格が一時は上昇するかと思いますが、これは一般市場の慣例に倣いまして、或る限度において適正な価格民間において生れる、こう考えております。
  6. 小林孝平

    小林孝平君 今小委員長からお話がありました中の最後に、政府只今提案予定しております食糧関係法律案を、更に愼重検討して御提出になるようにというような希望が述べられたのでありまするけれども、それに関連して一つお尋ねしたいことがあるのでございます。それは政府は非常に食糧統制を緩和する方向をとつておられるのでありますけれども、私はその前に今の食糧管理に関する法律というものは、食糧管理法、それからこの三月効力を失います臨時食確法、この二本によつて行われているのでありますが、この食糧管理法戦時中の昭和十七年に制定されたものでありまして、御承知通り国家総動員法と並んで、戦時中のあらゆる統制がこの二つ法律によつて行われたと申上げても過言でないのであります。ところが終戦国家総動員法廃止になつたのでありまするけれども、この食糧管理法はまだ効力を持つてつて、これによつて食糧統制が行われている。他のいろいろの嚴重なる統制が戰後緩和されたにもかかわらず、強権無比な食糧管理法が未だ効力を有しておる。而も昭和二十一年には終戦後の社会的、経済的の混乱のさ中にありまして、未曾有の食糧危機を打開するために、食糧緊急措置令によつて強権発動が行われるごとになつたのでありまするが、こういうような戦時中に制定されました法律、並びに戦後の非常な混乱時代に制定されました法律が未だに存在しておる。然るに政府食糧の需給が非常に緩和したというので、統制を解除しようとしておるにもかかわらず、この基本的な法律が、この強権無比な法律がなお存在しておるということは、非常に矛盾だと私は考えるのであります。政府はこの食糧管理法根本的な改正、並びに強権発動食糧緊急措置令廃止ということは一度もお考えにならないで、單にその末梢的な問題だけをお考えになつておるということは、私は非常に矛盾だと思うのであります。政府はこの機会に、食糧管理法の大幅の改正並びに食糧緊急措置令廃止をお考えになるかどうかということをお尋ねいたしたいのであります。又同時に、これに関連しまして、この食確法が制定されます際におきましては、この強権無比な食糧管理法を或る程度民主的に公正な割当をしようということで、食確法が制定されたのでありまするが、今ここに突如政府は一方的に食確法廃止をきめまとて、そうしてあとにただ食糧管理法だけ残るということにつきましても、私はこれは食確法廃止というのは違法ではないかも知れませんけれども、非常に穏当でない措置であると考えておるのであります。これらの点につきまして、農林大臣並びに安本長官の明確なる御答弁をお願いしたいと思います。
  7. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 食糧管理法根本的な改正の問題についてのお話でありますが、食糧管理法戦時中の立法だということで、いろいろ御批判を受けておりますけれども、第一條にもございまするように、これは国民生活の安定を期する上においての根本観念について立法されておるのでありまして、時期は戦時中でありましたものの、必ずしも全体の構成がさようであるとは考えておりません。又これを非常に緩和するとか、根本的に手を付けるとかいうような段階にも、只今のところはないと考えております。情勢がもつともつと緩和をいたして参りましたならば、そうした時期も参ろうかと思います。現段階においてはさような時期ではないというふうに考えておる次第であります。それから食確法廃止に伴いまして、別に割当手続に関しまずる法律案を御審議をお願いいたそうと思つております。この法律案は、食確法の民主的なやり方の長所をとりまして、案を作成いたしております。その上で御審議をお願いいたしたいと思います。
  8. 江田三郎

    江田三郎君 若干お尋ねしたいのでありますが、第一の問題は、輸入食糧価格相当つておるわけでありまして、政府のほうで二十六年度予算を組まれたときの単価というものと、現在とは、相当大幅に上つておるわけでありますが、その際政府としては、予定数量を入れるために、輸入補給金について或いは追加予算等措置をとられるのであるか、或いは又現在の輸入補給金の枠内で、従つて数量が減るような輸入になるのか、どちらにせられるかということが第一点です。それから国内産の問題について、只今農林大臣は多分価格が上るであろう、そうして政府手持食糧自由販売食糧二つが出て行く間に、民間に適正な価格が生まれるであろう、こういうようなことを言われたのでありますが、多分価格が上るというのは、これはどういう意味なのか。政府の対米価比率の六四%というものを動かすということなのかどうかということです。先ほど小委員会懇談会におきまして、山添次官或いは安孫子長官のほうは、要するに日本でできた麦が、政府のほうが買おうと買うまいと、国内に流れる限りは同じことだ、こういうようなことを言われたのでありますが、これは国内へ流れる限りは同じことだと言つて場も、国内へどういう価格で出て来るかということが問題なのでありまして、農民にとつても問題であるし、消費者にとつても非常に大きい問題なんでありまして、そのときのいろいろ話を聞いておるというと、要するに政府輸入の麦の大きな手持を持つて、これを適当に放出することによつて民間に出て来る自由価格を押えて行こうというような考え方に聞えたわけであります。そこでそうしますというと、依然として統制が外されようと、外されまいと、麦の対米価比率は六四%あたりへ持つて、行くということになり、従つて先ほど農林大臣の言われた民間の適正な価格というものも、やはりその程度のことを考えておられるようにも思えるのでありますが、併しこれは一方から考えまして、今日「ぬか」の相場が八貫俵一俵が八百円しておる。そこへ持つて来て新らしい麦の相場が、仮に二十六年度の予定される六千百六円の六四%としても、これが石が三千九百幾らしかならんわけでありまして、従つて四十貫が三千九百幾らということは、「ぬか」の相場よりも安いということになるのでありまして、そういうことになつて来ると、これは今年の麦はすでに生えておるからいいということになるかも知れませんが、これは将来にとつて、とてもこれで麦を作る意慾というものも出て来ないわけであります。いろいろなものが一つの国際的な価格が生まれつあるときに、麦についてだけ六四%というような比率を持つて行かれることが妥当であるとお考えになつておられるかどうか、或いはこれを改正せられるとすれば、どの程度に攻められようという御意思があるのか、少くとも今日までの対米価比率八一%へ戻すというお考えはないかどうか。この補給金の問題と今の点をお聞きしたい。
  9. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) この統制を外した今までの例から見て、外した当座においては、価格が一応上昇するのか、これが普通であります。あと市場妙味を取入れて適当な価格になることは、今までの外した例を見てわかるのであります。今日対米比価とその他の問題については、これは物価庁との関係をお聞き願いたいと思いますが、我々といたしましては、生産者が喜ぶ価格が一番嬉しいのであります。
  10. 江田三郎

    江田三郎君 今の問題につきまして、輸入補給金の問題について、それから六四%の対米価比率の問題についても、安本大蔵大臣のほうのお答えを願います。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 輸入補給金は私の所管でございますので、お答え申上げますが、御承知通り昨年の秋頃から米麦の価格上昇ということよりも、運賃の上昇によりまして相当CIF価格が高くなつたのお話通りであります。而して今年度におきましては、当初の三百二十万トンの予定がそこまで参りませんので、高くなりましても、補給金は今のところでは余るのじやないか、即ち三百二十万トンか、二百七、八十万トンぐらいではないかと思いますので、本年度は或る程度上るようであります。併しこのままで船賃も下らず、今まで余り上つていない麦が或る程度上るということになりますと、二百二十五億円の補給金では今のところでは足りない情勢にあるのであります。従いまして我々といたしましては、船舶の増強をやるとか、或いは小麦協定に参加する等、いろいろな方法でCIF価格を下げるようにいたします。併しこれができない場合におきましては、お話通り二百二十五億円では足りません。その場合に数量を減らすか、補給金補正予算で出すかという問題は、今暫らく検討をしなければならん問題であります。即ちアンナウ・フアクター、国際小麦協定船賃の問題があります。併し考え方といたしましては、やはりできるだけ食糧輸入して置く必要がありますので、若し予算の執行上非常に困るということになつて来れば、これは本年の秋頃くらいに或いは補正予算を組まなければならないような状況になるかもわかりませんが、只今のところはこの予算で進んで行きたいと考えております。
  12. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 対米比価の問題のお尋ねでありますが、これは私は非常に将来の農業政策等についても、又消費者生活についても重大問題でありますので、愼重考慮しなければならんと思つております。本来ならば経済の自然の形におきましては、戦前においての米と麦の価格というものが六〇前後ですか、にあつたわけでして、それをいろいろな事情において増産をお願いするために、かなり高い価格で買うというような形がとられた結果、今日惰性になつて来ておるこの姿が、実際の農業政策立場から、又消費生活立場から妥当であるかどうかということは愼重に私は考慮しなければならん問題だと思います。それで、ただその間に私は間に戰前における比価そのものが、そのまま再び取入れられて行くのがよろしいか、戰後における状況、殊に朝鮮台湾失つた現在において、千数百万石を内地に米として入れて食生活をやつたときにおける米と麦の比価が、今日麦の会長生活におけるウエートというものがかなり大きくなつて来ておる今日において、同じ形でよいかどうかということについては検討を要するものがあると、かように考えております。そこで今後の状況を、殊に国際小麦輸入関係状況なり、国際価格との関係なり等をも考え合せつ、将来の状況においてこの対米比価というものについて考慮をして行きたいと考えております。
  13. 江田三郎

    江田三郎君 今安本長官も言われましたように、六四%という数字は、大体戦前数字でありますけれども、戦前の我が国の食糧事情というものが、外国食糧を入れるとしても、朝鮮米なり台湾米なりというような、日本米と余り違わない米が大部分入つて来ておつた従つて麦というものは食生活の上に余り大きなウエートを持つていなかつたというときと、今日の嫌でもおうでも麦を食わなければならん。農林大臣の御説明を聞きましても、十一月から米を一合五勺とするということになれば、あとの殆んど半分というものは麦を食わなければならん。こういうことになるというと、戦前事情とははつきり違つて来ておるわけでありますし、それから又片方農業経営という面から見まして、今麦を作つているところへ、例えば「なたね」を作り、或いは「いぐさ」を作り、或いは「そら」豆を作り、どれが一番採算がとれるかということは、もとよりはつきりしていることでありまして、六四%というようなものでは、ほかの作物に比べまして余りにもかけ離れておるわけでありまして、もともと六四%を仮にも政府が出されたこと自体がおかしいのでありまして、この点はもつと速かに改訂を要すると思うの一であります。特にこの現在の段階におきまして、輸入食糧が入るといたしましたところで、私たち一つの不安を持つているわけでありまして、戰争というものが近い将来にあるかどうかということは、これは私たち吉田首相と同じように、近い将来に戰争があるとは思いませんけれども、併し戰争がなくても備蓄輸入という形はつぼまつて来つあるわけであり、片方一番大きな供給国としてのアメリカとしても、先だつての麦の輸出禁止なり或いは国際小麦協定においても、新たな措置をとるというような状態でありまして、特にそういうような供給力がどうかということよりも、一体我々が将来どこまで国外の食糧を買う経済力があるかということも問題になるわけで、どうしても食糧増産ということは、これは農林省が興農運動をおやりになつておるように、現在の段階において誠に重要な問題でありまして、これを六四%で麦を増産しろということは、どう考えたところで、あらゆる角度から見て答えが出ないわけである。そこで政府のほうでは、従来食糧価格につきましては、米の場合におきましても、麦の場合におきましても、大体供出が済んだ頃に価格をきめられるという、極めて農民を無視された、いわば基本的人権を無視したといつてもいいかわかりませんが、そういう態度をとつて来られたのであります、もはや今日の情勢から考えて、我々はこの六四%を、誰が考えつて不合理なんでありますから、これを速かに改訂される御意思を表明して頂きたいと思うのであります。これは一つの政党的な立場でなしに、大きな立場から私は考えられる時期だと思うのでありまして、今小委員会におきまして、問題になつている諸點も、結局は価格問題と関連して来るわけでありまして、食糧増産を、或いは供出制度において無理に縛り上げるという行きかたもありましようけれども、併し根本は何としたつて価格が問題なのでして、この価格問題について政府のほうがもう少しはつきりとした態度を表明されなければ、この小委員会で問題になつておるような事項も、ちよつと納得行く結論になりかねると思うのでありましてもう一度その點をはつきりと御意思を表明して頂きたいと思うのであります。
  14. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お話の点は誠に御尤もな点でありますが、私どものほうでも、その点については至急に研究はいたしたいと思います。ただ併しここでよく御理解を頂きたいのは、価格を高く上げることによつて増産意欲を向上させるという行きかたは再検討して行きたいと思うのであります。私はむしろそういうことでなくて、やはりその点にも予算が少し不十分ではありますが、やはり麦という畑作のものだけに関しまして反当収量を増加すること、生産性を高めるという方面から一つ收入を上げるということに対して施策を持つて行くことが根本の問題と思うのであります。この点は基本的に考えて頂かなければならないと思うのであります。応急措置をどうするかということにつきましては、今深く研究をしておりますので、何らか考慮いたしたいと思つておりますが、ただ飽くまで、つまり価格を吊り上げることによつて余計作らせるという戰時中にやつた行きかたというものは、やはり考えて行かなければならない、私は畑作として考えると、年々の豊凶によりまして、殊に水の関係によつて麦というものが非常に豊凶の差が激しいのであります。それで反当収量をもつと増加し得る途というのが一番残されているのは麦だと思うのであります。こういう面にも政府としても力を入れて、行きたい、それでなければ、いつまでも戰時中のような、やむを得ない事情でありましたが、価格を引上げることによつて、これだけ高くなつたからこれだけ作る、又これだけ高くしてやるからという行きかた、このことは根本的にはやはりお互いに考えて行きたい、併しそれに対して応急措置はどうするかということについては、どれだけ高くということは申上げられませんが、よく考えて見たいと思います。
  15. 江田三郎

    江田三郎君 この価格を吊り上げて増産を図るということについては、考えて十分検討して行かなければならんというようにおつしやるのですが、今我々が言つておるのは、無理な価格の吊り上げでなしに、むちやくちやに無理に不当に低められているものを、少くとも生産費の償り程度に正常の価格にして行かなければならんということなんでして、これは国際価格から睨み合せ、或いはその他のものから睨み合せて正常なる価格に落着けなければならんということなんでして、六四%というものが正常な価格とは、とても長官のほうでもお考えになつておらないと思う。根本的には例えば土地改良の問題であるとか、種子の問題であるとか、いろいろな問題がありますけれども、勿論そういうことは私たちもわかりますけれども、併しながら二十六年度予算にあの興農運動の延長として、それはそういつた方面にどれだけのことができておるか、殆んど私は見るべきものはないと思うのでありまして、そういう状態で政府のほうが今日の財政慕情からして、農村に思いきつた国家投資ができないとすれば、やはり価格問題で問題を解決付けて行かなければならんわけでして、その点どうも長官のほうもその必要は認められておると思うのでありますけれども、もう一つはつきりした答えがないのでありまして、そのはつきりした答えがないと、やはり今小委員会で問題になつているこの申入書の問題は、これはスムーズに行かんと思うのでありまして、その点は農林大臣からも一つはつきりとお答えを願います。
  16. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) ではこれはざつくばらんに申上げて、そう固くおなりにならんで、私どもも研究いたしますと申上げてあるのですから、価格については応急措置としては、これか必要であろう、併し考え方の底には、やはり反攻を上げて、そうして総収入を上げることによつて単価は適当なる価格に持つて行くというのが根本でなくちやならない。今年の予算では満足すべき価格ではありません。財政上やむを得ません。併しそういう方向に持つてつて、適正なところに落着けるということが、応急措置としては、お話のように、一つ今が無理であるならば、食生活に及ぼす麦のウエート考えて再検討いたしたいと思つておる、こう申上げて置きます。
  17. 江田三郎

    江田三郎君 これは只今の周東大臣のお答えは、どうせ財政的な問題が出て来るのでありますが、大蔵大臣のほうはどうですか。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はずつと前から日本の物価は国際価格に順次行くのだ、近寄つて行くべきものだ、それはいろいろな事情がございましようが、ずつと見まして、最近では国内物価と国際物価の合わない点が事変関係で出て参つております。又非常に合つて来る点も出ておるのであります。主食につきましては、御承知通りまだまだ国際物価に行つておりません。殊に船賃が上つて参りまするというと、米のほうでも相当開きができましたが、麦のほうは今まで余り開きがなかつた。例えば小麦協定へ入りますと、三年目には七十一ドル、併し日本の石三一千七百五十円の買上げは、六十八ドル程度になつて小麦協定の最低価格に近よりましたが、併し現在の小麦は、御承知通り予算では一トン九十五ドルから九十三ドルに見ております。石五千五百円に出ておつたのでありますが、これが百八ドル、百五ドル、百十ドルになんなんとしておりますので、大変開きが出て参ります。実際問題として、もう好むと好まざるとにかかわらず、国際物価にさや寄せして来るのが自然の勢いでございます。私はそういうのを見ながら、やはり主食の値段をきめて行くべきだと考えておるのであります。これは私の持論であります。ただ余りに急に国際物価にさや害せすることによりまして、労賃その他経済の基本になるものに非常な影響を與えるということは、これはとるべき策でありませんので、今まで徐々にそういう方向に向つて来たのであります。今後とも私の考えには変りございません。ただ今の麦の問題が対米比価の問題ということになりますと、これは国の事情によつて違いますが、アメリカにおきましても、加洲米と小麦は六〇%以下のほうではないかと思います。麦のほうは国際的に見て大体そのぐらいの程度であるのではないかと思いまするが、併してこの対米比価というものは、安本長官が言われましたように、そのときの状況によつて経済原則によつてきまるべき問題で、初めから六四%がいいのだというわけの出題ではないのであります。ただ予算を組む上におきまして、できるだけ米は高く、而して麦は安く、昔の状態にまで帰らなくても、そういうのが日本として本当であるのじやないかというので一応組んでおるのであります情勢によりまして変えるのに何ら各かではございません。又農林大臣が言つておりまするように、我々は米や麦の値段が高くなり、農村の増産意欲ということは妨げない、併し片一方では生計費に影響するということを考えながら今まで施策をして来たのであります。今後もそういう考えで進んで行きたいと思つております。
  19. 江田三郎

    江田三郎君 大体わかりましたが、そういうようにして、応急措置として麦の買入価格を改訂するというようなことが予想されたときに、そのときに一体これを消費者価格の値上りで片付けられようとするのでありますか、或いは補給金等を以て二重価格消費者に負担をかけないような形で行かれようとするのか、その根本的な考え方を周東長官に……。
  20. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 御尤もな仰せで、農家に対してはできるだけ高くきめて行き、消費者には負担をかけないようにしてくれという御意向は、そこに食糧政策のむずかしいところがあるのでありまして、理想としては私もそういうふうに考えます。併しこのことは日本の財政事情にも関係がございまするし、又対米比価というのは、只今私がお答えしたような形で来ておりますときには、どのくらいの上りかたになるかということが、上るとした場合においても、額によつてどちらが高いということにも考えが及ぶでありましようし、若し財政の問題で何とか行けば、ほかのほうへ向けて、消費者のほうをできるだけ安くするという考え方もありましようが、只今直ぐどつちへ持つて行くということをきめろというのは、只今のところでは御無理かと思いますので、その品質は今後十分考えて行きたいと思います。
  21. 羽生三七

    委員長羽生三七君) ちよつと今のことで誤解があるといけませんので、私がちよつと御了解を得て置きたいと思いますが、小委員会でこの問題を取扱うようになつた経過を見ておりますと、決して物価体系が崩れてもいいということを前提には全然していないので、むしろ物価体系を堅持して行くということを心配した結果、例えば麦の統制方式に変更が起つた場合、正規ルートによつて確保できるような部分が非常に狂いを生じたような場合に、それが消費者にどういう影響を及ぼすかということも検討しておるわけで、物価体系全体の点を考えてやつておるので、農村の生産費だけ、生産者価格だけ高くしてもらえば、あとはどうたつてもいいということはこの小委員今は全然考えておらん、そういうふうに私は理解しておりますので、それは曲府当局は誤解ないようにお願いいたします。
  22. 小林孝平

    小林孝平君 只今食糧長官は、食糧緊急措置令についてはお答えがなかつたのでありまするけれども、これについても食糧管理法と同様な御答弁だと思いますが、安本長官から、先ほど私がお尋ねしたことをお答え願いたいと思います。繰返して申上げれば、食撮管理法と食糧緊急措置令、こういうような一貫した封建的な法律を大幅に修正する、特に強権発動を規定しておる食糧緊急措置令廃止するお考えがないか、大体そういうふうなものを存置して行くほど食糧事情はやはり窮屈であるかという点をお尋ねいたして置きたい。
  23. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 食糧管理法と言いますか、戰時中に出された法律につきましては、只今食糧長官が申しげましたように、まだ米の統制が続けられておる現状でございますし、その法を根本的に改正する段階に至つておらんという考え方でありますが、併しあなたのお話通り、できる限り強権力を用いるような法制はだんだんやめて行きたいという考えてはあります。その一つの現われが、今度農林省から出まする食糧確保臨時措置令というものの改正を企図しておるのでありまして、そのことは従来は事前に供出割当をいたして、事後にこれを修正するというようなことで、場合によつては補正するというような行きかたでありましたが、今度はそれらの事情を恐らく変えられまして、事後に、一切生産が出来上つた後に検見をして、必要なものを、米等についても出してもらうというような形で実情に合うようにして行こう、成るたけ無理のないようにして行こうということも、だんだん緩和して行くという一つの現われと考えております。
  24. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 麦の対米比価の問題でいろいろ御意見がありましたが、もう一つ私が麦の対米比価の問題で考えておりますのは、麦は御承知のように燐酸肥料を相当使うわけであります。これが実は非常に最近では特に値段が高くなつておりまして、そうしますると、周東長官の言われましたような、敗戰の結果日本食糧政策が変つて来た。麦のウエートが高くなつたということも一つありますけれども、もう一つ生産費の点から見て参りますると、やはり相当高い燐酸肥料を使つたというようなことも、これはやはり対米比価の場合に考えて頂きたいというふうに考えますが、これに対するお考えと、それからもう一つは、非常にこの間農林団体等の意見を聞きましても、現在の燐酸肥料の状況ではとてもやつて行けないというようなことでありますが、この燐酸肥料につきまして、何か適当に価格を調整するようなお考えがありまするか、どうか。
  25. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お話の点御尤もでありまして、私が先ほど、現下の事情において対米比価等についても新らしいフアクターを捉えて研究をするということを申したのは、そういう生産費問題も当然含まれて来ると私は思います。次に、燐酸肥料の価格の値、上りということがあるだろうが、そういうものをコストを下げたりする或る程度何か対策があるかということであります。殊に政府におきましても、燐酸肥料の原料である燐鉱石等の確保ということに対しまして、過燐酸の値を低目にするために、従来補給金を出して、畑作に対する肥料の措置考えております。今後において非常な値上りというようなことがあるとすれば、将来に向つてその点についてもよく考究をいたしたいと、かように考えております。
  26. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 今の問題はその程度で大体の含みを了承いたしますが、もう一つ先ほどの問題で、政府は既定方針通り麦の自由販売を実施する。併しこの間の小委員会等では、その最後に実は紐が付いておるのでありまして、先ほどいましたような情勢如何では、強制供出を命ずということでこれは実は廣川大臣からはまだ一遍も聞いたことがないのでありますが、これが本当でありまするかどうか。本当でありますると、実は我々の審議の結果はどうも若干自信の喪失の徴があるのではないか。衣の下に鎧がちよつと見えるというような状況で浸りまして、これが果してさように本当にやる御意思がありますのか、どうか。それからこれをやるとしますれば、一旦自由販売にして、どうも情勢が悪いという場合に、中途で強制供出ということになりますか。或いは麦の供出の始まる前に、今年は全く自由で行こう、或いは内外情勢を総合して、強制供出で行くというふうに、どつちか画一的にあらかじめきめてしまつたらどうか、その点につきまして、特に廣川大臣一つ明快な答弁を頂きたいと思います。
  27. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) これは立法技術によるだろうと思つておりますが、要するに幅を広くして置くほうがやはりよろしいのじやないか。国際情勢の変転が極まりないときでありますから、ずつと先々のことまで考え法律を作つて置いたほうがいいのじやないかということに趣意が私はあると思います。すぐ今度の供出からあれをちらつかせるというようなことは、私は断然ないと断言いたします。それから又途中でそういつたようなことをやつて決してうまく行くものでもありませんので、我々といたしましては、既定方針通りつて参りますが、将来を見込んでの立法の精神だと御解釈を願いたいと思います。
  28. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 そうしますと、今年の麦については強制供出はもうやらないという方針であると了承してよろしうございますか。
  29. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 全くその通りであります。
  30. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 そこで私は、まあこれは見解の相違になるかと思いますが、どうも先ほど毎月三十万トン以上の輸入を大いにやると、非常な強気な御答弁があつたわけでありますが、どうも私はやはりこの点に心配がされてならんのであります。特に七月以降の問題は先ほど江田さんが言われましたような、戰争はまあ起らんにいたしましても、少くも情勢はプラスにはなつて行かないと思うのであります。そこでやはり私は食糧問題は或る程度安全率を見ることが、これはもう当然だと思うのであります。そういう点からもやはり国内麦を政府がつかんで置いて、その上で更に強気な輸入計画を推進して頂くことのほうが、私はやはり問題の性質上適当ではないかということを実は非常に確信をしておるのでありますが、その辺について更にお考えをなさる余地がありませんか、どうかお尋ねをいたしたいと思います。
  31. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 国内の麦をどこに置くかという問題のようでありますが、これを政府倉庫に置くか、民間に置くかということになるのでありますが、特にまだ麦等に関しましては、完全な貯蔵法も考究されておらないようなわけでありまして、これをやはり政府の一定の場所に置くよりは、自由な民間のほうに置いて適正な流れに待つほうがよろしいと思います。併し国内の麦を或る程度押えたいというあなたのお気持はよくわかるのでありますが、併し決してこれは外国に流れるのではないので、国内にあるのでありますから、私はその心配は要らないと思います。ただここで自給度を高めて増産を本当にやつて行くことが一番大事だ、こう考えております。
  32. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 そうしますと、まあ麦は政府の倉に置かないでも、どこに置いても国内にあるのだということはその通りでありますが、ただ先ほど来申上げましたような、昨今の飼料事情なり、その他の澱粉食糧に対しまする買あさりと申しますか、欲求度が相当に強いわけでありまして、そうしますと、十月までは依然として二合七勺の配給を米麦でやる、ところが麦が七、八月頃から出廻つて参りますと、政府配給と一般農村からの販売とが競合するわけであります。その間に適当な価格が生れるというような見解も出ると思います。ただ今言つたような飼料方面なり或いはアルコール方面から相当に実は需要が高くなりますので、その間にやはり主食以外に相当に廻つてしまつて、やはり農民の腹には入らないということが起きはせんか。更に言いますと、三百二十万トンとか或いは二百七十万トンの輸入計画は、これは大体従来麦が国民の主食に廻るという前提で恐らく立つておると思うのでありますが、それが飼料なり、工業方面に相当流れてしまいますと、三百二十万トンなり、二百七十万トンの絶対不足量を更に殖やして行きませんと、一般国民の腹には不足が来る。こういうことを実は心配するわけでありまするが、その辺をどういうふうにお考えになつておりますか。
  33. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 一時的現象だと思いますが、飼料が非常に値上りいたしましたことは事実であります。これは国会の要望もありましたので、実は今月中に大量に手持のものを該当団体を通して行くように手配をしておるわけでありまして、これで私は相当抑えられると思います。それから又飼料の絶対量の問題でありますが、すでにもう脱脂大豆その他「とうもろこし」等、十五、六万トンですか、買付も終つておるわけで、このような面に対してもできるだけ手を打ちたいと考えております。
  34. 江田三郎

    江田三郎君 先ほど農林大臣は片柳さんの問われたことに対して、今年の麦については強権発動はしないと、こう明言されたわけでありますが、今年の麦についてそういうことをしないというそれだけの確信があるのならば、食管法の罰則規定を除外するということになさつたら如何ですか。今の晴を聞きますと、幅の広いものにしなければならんと言われるのでありますが、少くとも今年の麦について、強権発動をしないでもいいだけの確信があるのならば、当然私はこの食管法の罰則規定等は外して然るべきだと思うのでありまして、これは先だつた地方公務員法の場合に、何人といえども地方公務員に対して政治活動を強要してはならんという規定がありましたが、これは一つのそういう規定があつただけで、罰則規定は何らないのであります。少くとも情勢強権発動をしなくてもいいということまで行つているのなら、一つの勧告規定で十分だと思うのでありまして、或いは将来情勢が変化するかもわからんということを言われるかも知れませんが、情勢の変化ということは、我々は実は今日の情勢において輸入食糧の確保というものは困難である、予定通り確保することは困難であると考えておるのでありますが、政府のほうが考えているのは、今日の情勢は困難でない、若しそれ以上の情勢の変化があつたらということを言うのでありまして、そのことは何かと言えば、言葉を換えて言えば、戦争が勃発するか、或いは戦争と同じような状態になるか、こういうことだと思うのでありますが、そういうように世界情勢が大きく違つたならば、そのときに初めてこういう職事立法を強行されることは、これは差支えないと思うのでありますが、今年の麦について強権発動をしなくてもいいというだけの自信を持つておられるなら、もう当然食管法などの罰則規定などは速かに廃止されるべきだと思う。その点一つどうお考えになつておるのか承わりたい。
  35. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 一面統制廃止で、一面統制継続しているのが現在の食糧事情でありまして、まだ米のほうは継続しているのであります。麦に対しましては、私はそういう自信を以て言つているのでありますが、その場合に今年強権を発動しなくても、麦についてはよろしいから、これは入れなくてもよろしいのだという只今お話でありますが、併し先ほど申上げた通り、これは幅を広くして、あなたの御指摘のようにもう一段階、いつ何どきこういうことがあるかわからんというようなことまで、実は立法の上では含めておつたほうが幅が広くてよろしいのじやないか、ただ法律はそれを使う人の要するに気持にあるわけであります。又その運用によつて生きもし、死にもするのでありますから、そうこだわらんでも私はよろしいのじやないか、こう考えております。
  36. 江田三郎

    江田三郎君 ますますわからんような答弁になつてしまうのですけれども、法律は使う人の気持によると言うたところで、併しながら誰が使おうと、こういうような戰事立法が今なおあるということは、これは農民に対しましては大きな侮辱ですよ。そういうものは速かにこれはなくすべきであつて而も本年度の麦について強権発動をしないという約束ができるまで行くならば、当然この規定は改正することが妥当であつて、米については統制を続けて行くというなら、米については別問題にしましても、少くも麦については私はこれは速かに罰則規定を適用されんということでなければならん、それ以上にこの幅の広いものを置いておかなければならんということは、言葉を換えて言えば、政府のほうが実は輸入食糧について自信がないという裏書きをしているのではないかと思うのであります。その点ごまかしでないようにやつて頂きたい。
  37. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 私ごまかしでなく率直に言つておるのでありますが、要するに麦に対しては、私は発動しなくてもよろしいとはつきり言つているのでありまして、ただ法の運用の上において、将来そういうように幅を広くしておつたほうがいいのではないかということだけ私は申上げているのであります。
  38. 小林孝平

    小林孝平君 私は江田さんの質問の中にちよつと関連しておりますが、先ほど農林大臣が麦類の統制を、場合によつてはするかしないかということは、本年度の麦について強権発動をするかしないかという御答弁ではなくして、その麦の作付前に決定するというような御答弁であつたと思うのですが、そういうように解釈してよろしいのでございますか。例えば今年の秋麦を蒔きますが、その麦を蒔く際に、今年の麦については麦類の強制買上げを行わない、或いは行うという決定をするかしないかということをお尋ねしているのです。
  39. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) ちよつと誤解じやないかと思いますが、来年度作付の麦については私言及していないのですが、ただ将来あの法律があつても大して邪魔にならないのじやないかということだけ言つているのです。
  40. 小林孝平

    小林孝平君 それではいつきめるのですか。買上げをするか、しないかということをいつきめるのですか。それをせつぱ詰つてからおきめになつたのでは非常に困ると思うのです。
  41. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 強制買上げのお話ですが、若しそういうことをやる場合にしても、中途でやつて混乱する。片柳さんのお話通りなんです。そういうことがあつた場合に、無論それは作付前に農民団体の了解を得てやるようにということだろうと思いますが、今のところはそういう必要がないということを言つている。
  42. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 最後に一点だけ御質問をいたしますが、今年の七月以降の輸入計画の具体的なるものがありましたならば一つ……。
  43. 廣川弘禪

  44. 安孫子藤吉

    政府委員安孫子藤吉君) 七月からの輸入問題でありますが、会計年度が変つて参りまするので、ガリオアが大体どのくらいになるかというようなことを只今具体的には折衝いたしております。五十万かち八十万くらいという見当に只今のところなつておりまするが、まだはつきりいたしません。それから来年の四月から再来年の三月までの会計年度であります。日本の会計年度であります。これの輸入計画は三百二十万トンでございます。従つて四月から三月までの会計年度中の後半期、今年の後半期というものと、アメリカの会計年度との繋ぎ合せで以つてどうなるかということが問題でありますが、いろいろ検討している最中でありますので、具体的な買付計画見込というものは只今申上げるところまで参つておりません。
  45. 小林孝平

    小林孝平君 最後に一つお尋ねをい、たしたいのは、農林大臣は非常に友の統制撤廃に自信を持つてやるようなお話でございまするけれども、先般の「いも」の統制撤廃の際は、全然紐を付けないで統制撤廃をおやりになつた、ところが麦の場合は及び腰で、場合によつて統制をやるというようで、非常に自信があるように言われておりますけれども、よく考えて見ると非常に自信がない、こういうふうに私たち考えるのですが、この「いも」の統制撤廃の場合と麦の統制撤廃の場合の気持を一つお伺いいたしたい。
  46. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 気持ですが、「いも」のときは実はもつと不安な気持でやつたのであります。価格が下落して農村に非常な迷惑をかけるのじやないかという非常な私心配をいたしておつたのですが、最後のほうに行きまして、澱粉等の値上りその他で非常に農村のほうが恵まれて私は喜んでおるのですが、今度は最低価格でこれだけ買うのだという、売れば買うのだという一つの、八百八十万石ですか、買うのだという一つの目度を付けておるのでありますから、最低価格をきめておるので、これ以上下らないという見通しを付けておるので、農民に対してはこれは喜んでもらえる、実はこう考えて自信を持つておるのであります。
  47. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 大分時間も経過したので、ここで終りたいと思いますが、一つ問題を整理して、政府当局に再考を煩わしたいと思うのであります。その第一点は、先ほど安本長官が麦の対米比価の問題で、価格政策だけで増産ができるものではないというお話がございましたが、それは或る意味においてはその通りであります、併し他の物資のマル公が撤廃されようというような矢先に、麦の価格が決定されておるのであります。これは自分の自由価格で売ることが将来できるにしても、大体政府供出数量というものはマル公できめられておる。従つて米比価というものが増産意欲の上に非常に大きな影響をもたらすであろうということ、つまり自由価格の場合とこれは全然違うのであります。その点から対米比価についてはもう一度十分御再考願いたい、これが一つであります。もう一つは、各議員からお話がありました、本当に自信を持つて麦統制を外されるならば、この立法をする場合に、再び紐を付けて、情勢の変化によつては強制力を伴うというようなことは、立法の形式上から言つても、又精神から言つても極め一奇妙なもので、飽くまで政府当局統制を外しても食糧確保に絶対の自信をお持ちになるならば、出される立法も又然るべき体裁を以て臨まれるのが当然でまろう、こういうふうに考えるわけであります。問題はこの二点だと思いますので、この点についてなお次のこの小委員会の発展の度合において、随時御意見を承わることがあると思いますが、御再考をお願いしたいと思います。  これで委員会は休憩いたします。    午後零時三十三分休憩    ——————————    午後二時四十四分再開
  48. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それでは午前に引続いて委員会を再開いたします。  前国会から当委員会で、取上げておる問題の一つに、民有地に対する電柱敷地手当金の問題でございますが、本日はこの問題について今までの経過を聞きましたり、或いはこれに関しての御発言を願うことにいたします。
  49. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 この電柱敷地料金の問題に関しましては、昨年十一月三十日の当参議院の農林委員会におきまして、これを取上げたのでありますが、そのときに電通省の伊藤事務官の回答は、大体法律改正をして、そうしてできれば第十国会において提案の運びにしたい、それから手当金等の増額については、はつきりしなかつたのでありますが、できるだけ希望を取入れて予算的な措置一つ考慮して見たいというふうに答弁があつたのであります、で、この電柱敷地料金の問題に関しましては、これは全国の農民並びに農民国体も非常に熱心に要望されておるところでありますが、農地価格統制撤廃をされて、固定資産税等の標準によつて農地価格も値上げをされたのでありますし、又その他一般物価が高騰しておる諸情勢にもあり、現在一本について二十銭という法外な値段で据え置かれておるという現状は、全くこれは非常識極まるものでありまして、よくも農民が今日までこういう状況で我慢をしておつたということについて、むしろ我々は驚嘆せざるを得ないのであります。これは申すまでもなく、電柱が耕地の中に、或いは宅地等に立つておることによつて、直接これが収穫に対する大きな妨げになることは申すまでもないわけでありますが、なお、この電柱が立つておることによる耕作上の労力に及ぼす損害、これは測り知れないものがあるのであります。こういう観点からいたしまして、特に政府では農業の近代化を叫び、我いは畜力、機械化の普及が唱道されておる今日、耕地のうちに電柱が点々として立つておるということによつて、これが大きな農業の近代化を妨げられておる実情は実に枚挙に遑がないのであります。従つてこれを、できれば電柱を耕地の中から取除いて頂ければ、一番耕作上は仕合せでありますけれども、そういうことを言つてもなかなかできない相談でありましようから、今日まで電柱の敷地料金に関しましては、手当四銭、その他十六銭、合計二十銭という規定が昭和二十年の閣令第三十九号によつて保証をされておるわけでありますが、実情は殆んど請求によつて支拂うということになつておるために、殆んど請求がされておらない。請求をすれば、むしろ請求のためにより多くの経費を支出するということであるので、事実は殆んど支拂われておらんという状況でありますので、これを是非ともこの際法律改正によつて適当の、適正の価格に改めて頂きたいということを主張したいのであります。なおこの前の委員会あとを受けまして、もう状況も差追つておりまするので、電通省の施設局長もお見えのようでありますから、以下の点をお伺いしたいのであります。つまり改正をされるという意図は、この前承知しておりまするので、改正に当つての構想をどういうふうに持たれておるか、即ち第一には改正料金をどう、どの程度にお考えになつておるか。それからなお請求によつて支拂うということは極めて不当でありますので、この支拂いの手続をもつと簡易化して頂きたい。請求がなくても支拂うというように改めて欲しいのでありますが、その二点。それからその次は、この改正法律案は今国会に提出される準備ができておるかどうか、これが第二の点であります。それから第三は、手当金改正に関する予算措置が、昭和二十六年度になされておるかどうか、なされておるとすれば、どの程度どういう費目で計上されておるか、これを明確にお伺いしたいのであります。なお料金等の希望に関しましては、別紙がお手許に配付されておりますが、その詳細等につきましては、必要があれば全国指導連のかたがたもお見えになつておられますから、後刻説明一つする機会を與えて頂きたい。
  50. 林一郎

    政府委員(林一郎君) お答え申上げます。電通省所属の電柱が民有地に立てられまして、従来非常に御迷惑をかけておつたにかかわらず、その損失に対する補償が一本二十銭というようなことで誠に不合理であるのであつて、そのようなことが継続されることは許されないという点につきましては、誠に同感でございます。この問題につきましては、従来いろいろとその改善かたについて研究して参つたのでございますが、今国会におきまして、いよいよその改正を実現しようという運びになりまして、目下その実施かたにつきまして検討を続けておる次第でございます。改正の構想ということにつきましては、只今までの不合理を是正するにあるのでございますが、新憲法の精神から言いましても、私どもこの損失に対する補償という問題は、十分に個人の権益を侵すことのないように、公平でなければならないという見地に立脚しなければならんことは申すまでもないのでございます。併しながら厳密に言いますならば、一本々々につきまして、その損失の対価を拂わなければならないということに相成るといたしますれば、これは実行上不可能の問題にもなりますので、如何ようにしてこれをできるだけ実際の損失を補償し、而も実行上可能であるという、その方法について、いろいろと研究して参つた次第でございます。そこでこの補償の問題は、いろいろの手段が考えられるのでございますが、目下のところでは、今回の国会に提出を予想されておりますところの電気通信営業法という法案によりまして、この名前は仮称でございますけれども、電気通信営業法という法案の中に、この土地使用の対価を支拂うべき基準が示されることになろうと考えます。その内容は、要するにこの拂う基準といたしましては、その土地の価格を基準にするということに只今のところなつておるわけでございます。土地の価格を基準にいたしまして、料金の算定をいたしますのでございますけれども、要するに内容はこの電柱が立つておることによりまして、如何ほど耕作に邪魔を與えておるか、その邪魔によつて生ずるところの損失が幾ばくであるか、こういうことが内容となつて来るわけでございます。そこで全国的に補償を可能ならしめる基準としましては、土地の価格でございますが、これに私ども邪魔料と言いますか、これらが立つておる、又支線等があることによりまして、耕作上に支障を来たしておるその内容を検討いたしまして、この邪魔料を鑑定いたしまして、それを以ちまして補償料といたしたい、使用料といたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。個別の補償をいたすという原則に基きまして考えますと、少くも田と畑と、その他山林等、いろいろございますが、こういつた種類に分けまして、それぞれの使用料をお拂いいたしたい。従いまして、土地の価格が基準になります。関係上、全国全部違うということに相成るわけでございます。併しながらこの土地の価格は今後できますところの、現地にございます土地台帳に規定されますところの価格がございますので、それを元としまして、その土地の電柱の使用料を決定するということで、一本々々ではございませんが、その土地々々に適当するところの使用料を設定したならば実行可能であり、最も個別補償に近付くというふうに考えておる次第でございます。この大体の使用料は如何ほどであるかということにつきましては、只今述べました通り、目下検討中であり、この法案が成立した後におきまして決定される問題でございますが、大体のところ田におきましては、二十七円程度考慮いたしたいと思います。これは全国平均と大体考えております。畑におきましては、十六円程度予定いたしております。又一般の宅地を迫ることもございますので、これらにつきましては、非常に場所によつて上下はありますが、大体十一月程度というようなふうな算出を目下のところ持つておるのでございますが、これらは申すまでもなく確定的な数字ではございませんし、又その土地によりまして、相当の差違を見る次第でございます。支拂の方法につきましては、従来は請求を待つて、支拂請求、かなければ、そのままだというようなことは誠に不都合でございますので、将来は請求を待たず、当初から直接お拂いをいたしますということに汚すよりに現在計画いたしておるのでございます。なお予算措置につきましては、一応二十六年度の分といたしまして、約九千万円程度予算に計上いたしております。併しながらこれは実行して参りまして、勿論この額は変つて来ることは当然でございまして、これから場所場所で一々計算いたしまして、これを積上げるのでございますので、この金額はほんの概算でございます。なお又、将来のやりかたとしまして、私ども新たな構想と申すべきことが一つあるのでございますが、従来のように電柱を建てさせて頂きましてから、年々この使用料をお拂いするということは極めてこれは手数がかかりまして、非常に実行上困難もございますので、今後の問題といたしましては、新たに電柱を建てる場合には、これは木柱につきましては、十五年分を一遍にお拂いする、建設したその年に直ちにこの十五年分をお拂いいたしたい。又コンクリート桂や、鉄塔のような種類につきましては、五十年分を一遍にお拂いいたしますようにいたしたら、双方非常に手数が省けてよろしいのじやないかと考えておる次第でございます。併しながら従来のすでに建つておりますところのものにつきましては、土地の所有者に対しまして、こちらから請求を待たず、年々お拂いするという方法を実施いたしたいと、こういうような考えでおる次第でございます。大体のところそういつた運びになつておるのでございます。お答え申上げます。
  51. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 大体私の質問する要点に関しましては、お答え頂いたわけでありますが、ただ改正のこの金額について今お伺いするところでは、田で平均二十七円、畑で十六円、宅地で十一円見当と、こういうことでありまするので、手許に頂いておる資料の計算の一例では百三十四円何がしとなつておりますので、余りにほかと開きが大き過ぎると考えます。で、この計算の根拠については、いろいろの方法がとられるかと考えるのでありますが、この電柱による損害は要するに耕作の労力を妨げるという点がやはり最大の点だと思うのであります。従つて労賃を基礎にする計算の根拠がその小心をなさなければならないと考えるのでありますが、先ほどの説明によりますと、地価によつてそれぞれ料金の算定をされておるようでありますが、私はむしろ農民団体で計算された表でもおわかりの通り、直接のつまり地方がもたらす収穫物、これは極めて少額でありますので、むしろ労賃が全体の価格の約八割以上を占めておるわけでありますから、恐らく先ほどお伺いした価格では、農民団体、直接被害を受けておる農民等は納得をされないと考えておるのであります。従つて只今価格等については再考の余地があるかどうか、是非これは再考して頂きたいと考えるのでありますが、この点をもう一つ改めてお伺いいたしたいと思います。
  52. 林一郎

    政府委員(林一郎君) 只今申上げました価格は、勿論殆んど全部がその労力から算定された額になつておるのでありまして、土地の価格から出るものは二十七円というものの数字の中においては、例えば二円程度である、こういうことになるのでございまして、仰せの通り私どもはこの労力の損失ということを考えての算出でございます。そうして又この労力が如何ほど損失を受けるかという算定につきましては、いろいろその筋の権威者等や一般的なデータに基きまして算定いたしておる次第でございます。
  53. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 さつき価格は承わつたのですが、この平均二十七円というのは、土地台帳による地価に対して或る一定の比率で以てこれは出しておられるんですか、例えば地下百円に対して七割五分とか或いは八割とかという比率で算定されたものですか。
  54. 林一郎

    政府委員(林一郎君) 考え方といたしましては、電柱を立てます場合、又それに支線を張る場合或いは支柱を立てる場合に、それらが如何ほどその土地を占有するか、例えば大体において電柱は半坪ほど占有することに相成るわけでございます。従いましてこの半坪に対しまして、その土地の価格が算定され、そうしてそれを私どもはこの電柱の立つておる間お借りするわけでございますから、その地価に対して利子を拂うという計算が、いわゆる土地の価格を基準として定めるという内容を現わします。併しながらこれは極めて少額な数字になりますので、非常に開きましても、一円から三円とか、せいぜい四、五円ということでございますので、これは実際問題としては損失の補償にならんではないかということに相成りますので、その一木が立つておることによりまして、例えば畜力を利用する場合に、そこはうまく廻れない、従つてそこは手で耕すということになる、そういうことになりますれば、それによりまして、例えば一反歩でどれほどその電柱があることによつて能率的な耕作を妨げるであろうか、これを時間で計算いたしまして、その時間が一日幾らである、従つて一時間幾らであるという計算に基きまして労力の損失を補償する、こういうような今構想でおる次第でございます。
  55. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 これは今コンクリート柱又は鉄塔は五十カ年分を考えておられるというようなことをお話になつたのですが、これは土地收用法を適用できる事業になつておるし、そうしてこれは強制買収もできるのですが、コンクリート柱だとか、鉄柱というのは、これはむしろ私ども建設工作物とすれば、むしろこれは永久的な工作物というふうに考えらるべきものじやないかと思うのです。こういうものは五十カ年間の借地料を支拂うとか、或いはその損失を補償するという意味の補償料を算定するというよりも、むしろこういう永久的な工作物を国が土地收用令か何か、そういう強制執行力を持つた法律で設定をして、そういうものを拂うのはちよつと筋難いじやないかと思いますが。
  56. 林一郎

    政府委員(林一郎君) お答え申上げます。アメリカ等の例によりますると、おつしやる通り九十九カ年、殆んど永久という意味だと思いますが、それに対する使用料を拂いまして、その割りの悪さを消しておるわけでございます。併し日本におきましては、この電信軍話の発達の状況から見まして、私どもとしてはまだこれは遺憾ながら難行中でございます。今後いろいろ永久施設といたしたいと考えておりましても、非常に施設の変動が予想されるのでございます。従いまして電柱を建てたから、木柱を建てたから、これが五十年そこに居据つているとは考えられない。大体としては二十年ぐらいと思いますけれども、いろいろ移転その他を考えますと、十五年ぐらいで以て一応変るものというような統計がございますので、一応十五年間はお拂いして置いて差支えないのではないか、又コンクリート柱や、鉄柱を建てるやつは永久として考えたいのでございますが、これも又百年というようなことは、目下の事情では少しく行き過ぎであるという考えを以ちまして、五十年を以て半永久と考える、その後これが継続せられるか、或いは又地上物を全部廃止いたしまして、地下式に変えるという問題も検討せられるべきであろうということによりまして、取あえずのところ、そういうような考え方で業者の支拂いかた考えた次第でございます。なお土地收用法の問題でございますが、従来は非常に一方的な建設條令がございまして、土地所有者が不同意であつても、こちらで建てることができると、こういうような法律で進んで来たのでございますが、これは全く憲法の精神に反するということでございまして、協議が整わなければ電柱を建てることができない。若し協議が整わない場合は、土地收用審査会というものが各県にありますので、そこにこの問題を持ち出しまして、そこの裁決に待つということになつておるわけでございます。
  57. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 局長の御説明で私まだどうも納得が行かないのですが、田畑、宅地等について、それぞれ価格に等級を付けたということは納得できますけれども、特に田畑等に関しては、算出の根拠をもう少し詳しく発表して頂きたい、余りに開きが多過ぎると思うのです。
  58. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それからちよつとお答えの前に、私たちの記憶に誤まりがなければ、いつの国会でしたか、土地台帳法の一部改正で賃貸価格というものがなくなつたということになつておりますが、その点ほどうなんですか。
  59. 林一郎

    政府委員(林一郎君) この補償の基準になります土地の価格というのは、賃貸価格がなくて、土地の価格である、こういうふうに時価になつております。なお先ほどの御質問でございますが、この算出につきましては、いろいろと出しかたがあろうと思います。一日の労力を如何ように見るか、又邪魔の仕方を如何ほどに見るかということは、これは恐らく殆んど全部が違つた数字を出すであろうと考えられる次第でございますが、私どもはこの点につきましては、できるだけ愼重に公平にこの土地を使わして頂くかたがたに大体了承して頂ける程度考えておる価格でございまして、この価格が非常に低きに過ぎるというようには今考えておりません。なお又余計な考え方かと思いますが、実は私ども電気通信の運営に当る者といたしましては、できるだけ電信電話の料金を低廉にいたしまして、一般の御要望に応ずることを以て第一義と考えております。従いまして諸経費が余りに出まして、電話をかけるのに非常に高く付くというようなことは、できるだけ避けなければならない。併しながら正当の補償をこれによつて拒むことではないというような趣旨におきまして、できるだけ合理的な補償令を設定いたしたいと考えておる次第でございます。
  60. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 実は今の木柱の問題は、私はこれは通信事業の、これはまあざつくばらんに申上げるならば、仮施設だというふうに考えてもいいのじやないか、別にこの問題を問題にいたしておるわけではないのです。大体コンクリート柱だとか、鉄柱ですね、これは同じような問題が建設省だとか、農林省だとかに多少あるのです。はつきり申上げると、従来建設省あたりのやつておるやりかたと、農林省のやつておる扱いかたはまちまちなんです。その統一が付いておられるかどうか、これは大蔵省の管財などでやつておるものとはこれ又違う。今までは皆これはばらばらなんです。それでそのために始終問題が起るのです。それが同じような強制力を持つた土地收用法とか、そういうものを与行できるようなもので、同じような国の施設であり、国が管理しておるのであつて、こういうような同じ性質のものは皆足並を揃えて行くことが私は必要じやないかと思います。そういう点を御研究になつておられるかどうか、その結果かどうかということを承わりたい。
  61. 林一郎

    政府委員(林一郎君) 誠に仰せの通りだと私は考えます。併しながら従来明治二十三年に制定せられました建設條令に見るごとく、非常に官営というものにつきましては、大きな権力を持つておるのでありまして、まあ国の事業である、公共事業であるという見地から、こういう問題は非常に成るべく安くというようなことが入つておりまして、この一般の民営事業とは少しく変つた料金が制定せられておつたというふうに考えて来たわけであります。今日は私は民営、官営にかかわらず、これは平等の立場で国が補償すべきであるというところに立脚したわけでございますので、私どもの予想といたしましては、恐らく私どもの算定するところと大体同等の価格が結果においては設定せられるのではないかというふうに考えておる次第でございます。なお又コンクリート柱や鉄柱の問題につきましては、これはたくさんないのでございます。大体におきまして、コンクリート柱はすでに都市計画等によりまして、新たに設定せられた永久道路、こういつた道路の側面に建てるような場合がこのコンクリート・ポールになる、こういうところは容易百に動かされないという場合、これは併しながら補償料をお拂いする対象にはいたしておりません。それから鉄柱につきましては、これは主として河岸の問題、大きな河川の河岸は木柱よりも鉄柱のほうがいいという場合にこれをやつておるわけでございまして、やたらにこういうものが建つわけではございません。そういうことで量的問題から言いますと、本当にとるに足らん程度の本数になつておる次第でございます。
  62. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 料金の問題についてもう一言お伺いを申上げたいと思うのでありますが、局長の御答弁では、さつきの価格は決して不当に安い価格ではないという御答弁ですが、私はどう考えてもこれは不当に安い価格だと考えます。なお先ほどのお話では計算の根拠が明確に示されませんので、ここの場所で即答することは困難であれば、後の機会に委員会一つ計数的にお示しを頂きたいということをお願いをしたいと思つておるのでございます。これが一つ。それからもう一つは、明治二十三年に電信電話建設條令が制定されて以来、約六十二年もこの電柱を立てられた、いわば被害者は料金を請求することなしに默殺をされて今日に至つておるわけであります。これもこの際補償の場合に大いに考慮の余地があろうかと考えるのであります。それでただ目下の地価、それに若干の邪魔料というふうな考え方だけでなしに、今日まで農民が耐え忍んで来たこの被害の累積は、これは簡単に計算に現わせないと考えますけれども、これを補償するという、今日においてこういつた政府考慮が全然拂われなかつたということであれば、恐らく今の価格で納得する気遣いは私はないと考える。ですから飽くまでこれはこういつた人権が尊重される今日でありますから、新たに法の改正をして、予算措置なくして政府が補償されるという親心を示される以上は、飽くまで納得の行く金額にして頂きたいということ。それから手当は、さつきの御説明で了承いたしましたが、極めて簡易な手当の方法で支拂つて頂くということ、この点を一つ、再考を煩わしたいと考えるのであります。
  63. 林一郎

    政府委員(林一郎君) 今日までの補償料の不足を今後補償せよという問題は、私はこれは不可解に近い問題だと考えております。それから又料金の算定の根拠を本委員会で示すようにというお話でございましたが、実はまあ法律が確定いたしまして、如何ようにこの使用料を算定すべきかという法律がきまつてから後に、具体的にこれらの料金の算定をすべきであつて、まだその法律はこれから出そうという実情にございますので今考えておりますような算出の根拠をここでお示しするのは却つて不適当ではないかと考えておる次第でございまして、この点何とぞ御了承願いたいと思います。
  64. 小林孝平

    小林孝平君 今の局長のお話は誠におかしいので、きまつてから示して頂いても仕方がないのであります。きまる前にどう考えておるか、それは適当であるかどうかというのを私たち研究いたしたいから、是非きまる前に一つおつしやつて頂きたい。大体原案というものがあるはずだから、それを一つ是非お示し願いたい。
  65. 林一郎

    政府委員(林一郎君) かような料金につきまして、一々法律の中にこの金額を示すということは、今度の出る法案の中には、そういう今にはなつておらないのでございまして、これはだんだん時代と共に変るものであり、いたしますので、如何ようにしてこれらの補償をなすべきかという基準を示すことは、法律の内容が規定せられるではないかと考えられます。そこでその基準に基きまして、これらのその精神を十分に盛りましたところの、これらの料金を設定すべきではないかと、こういうように申上げた次第でございます。
  66. 江田三郎

    江田三郎君 問題になつておるのは、基準に対する根本的な考え方を聞いておるので、それをはつきりしてもらいたい。それをあなたのさつきのお話しのように、不当に安くもなく、公平にというような、そういう抽象的な言葉だつたら納得がなかなか行かぬと思う。而も過去における補償は考慮することは不可能だと一方的なことを言つて置いて、誰が考えつて今まで出してなかつたものは出さんければならん、それを考慮するのは不可能だということを一方的に言つて置いて、考えを持つていない。而も公平で安くないようなことをするのだという、そういうような根本的な考えで、そういうふうに一方的な考え方で基準を立てられては困るということです。基準を立てられるなら、この際そういうような安くもなく公平にという抽象的な言葉でなしに、もつと具体的にその考え方を承わりたいと思います。
  67. 林一郎

    政府委員(林一郎君) 私一存で以て過去の補償ができるか、どうかについてお答えすることは、私は困難でございます。それからこの補償料のきめかたにつきまして、先ほどから私ども今まで考えておる点は申上げたつもりでございまして、この法律の中にもこういつた妥当な補償料を設定するようにということが書かれるわけであります。従いましてその根拠に基きまして、私どもはこの料金を算出して行くと、こういう順序になるということを申上げておる次第でございます。で、大体の価格幾らかという御質問に対しまして、先ほどのような根拠に従いまして出た数字を申上げたと、こういうわけでございます。
  68. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 私もくどいようですが、つまり問題は抽象ではないのでありますから、田二十七円、畑十六円、宅地十一円と、この内訳を一つ示して頂きたいと思います。計算例がはつきりしておるはずですから……。
  69. 羽生三七

    委員長羽生三七君) どうでしようか。今すぐと言つても資料がなければお困りでしようから、あとで資料として本委員会に提出して頂くようにしたらどうでしよう。
  70. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 只今お持ちでなければ、あとでよろしいです。
  71. 江田三郎

    江田三郎君 そのときに、過去のものは賠償が不可能だという理由をもう少し具体に示してもらいたい。そのときに借りつ放しで拂わないことが当り前だと、そんなばかげたことはない。それをフリー計算でやるのか、そんなことを言つておるのではない。然るべき考慮が拂われるのが当り前だということを言つておるのだ。
  72. 林一郎

    政府委員(林一郎君) 一緒にお答えいたします。
  73. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 最後に局長がいろいろ今後計算をなさる場合に、或いは計算を一つ示される場合に参考になろうかと考えますので、折角お手許に配付してある資料について、計算した当の責任者がお見えになつておりますから、要点だけを一応聞きとりたいと考えます。
  74. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 実は委員会の日程がまだあと二つありまして、もう三時半にたつておりますので、これを拜見して、当局も又これに基いて十分御検討願うということにして頂いて如何でございますか。
  75. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 それでも結構です。
  76. 羽生三七

    委員長羽生三七君) そういうことに一つお願いいたします。
  77. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 今資料をお出し願うということになつたのですが、実は私はよその農林省だとか、建設省なんかの補償の何を見ておりますと、やりかたが違うのです。これは現にやつておるものを見ますと、税務署は農家の闇価格ですね、あれを税金に引つかけて来ているのです。税金でとつたものは、地価でなくてもやはり国が執行した行為なんだから、それを参考にして、実は補償で出している事実があるのです。それで委員長のほうからでも、又こちらのほうからでもかまいませんが、同じような種類を各省別のものを参考資料として、この次に何でしたら御一緒にとられたときにでもお示し願つたら、検討するのに都合がよいのではないかということを希望として、申上げます。
  78. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それでは今日の当局の御答弁で明らかになつた点は、要するに今までと違つて、つまり請求者の求めによらず、受益者がみずから支拂うという点で、この手続が非常に簡易になつた点は、これは非常に結構だと思いますが、今の料金の点については大分食違いがあるようで、特に只今の全国農民連盟から御提出のあつたこの資料によりますというと、算定の基礎が明らかになつてつて、その計算の結果はかなり違つた数字になつております。これらの点も当局で御考慮を願いまして、次の機会に、先ほどの資料の要求もあつたことでありますので、重ねてもう一度改めて御答弁を願いたいと思つております。それではこの資料を成るべく至急に御提出をお願いいたしたいと思います。それじやこの問題はこの程度にいたします。   —————————————
  79. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 次にやはり先般来問題になつておりました農業協同組合再建整備の問題について、この際飯島さんから発言を求められておりますから、先ずこの問題に入りたいと思います。
  80. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 農業協同組合再建整備の問題に関しましては、これは全国的に大きな農業協同組合の浮沈を決する重大案件でありますので、過般東京におきまして、各県の協同組合連合会長が参集いたしました席でも、この問題は熾烈に論議を闘かわされたのでありますが、これに対して政府御当局では非常に鋭意これが法案の作成等について準備を進められつあるやに承知いたしておりますけれども、まだ過般の大会等におきましても、参集した各連合会の各県の責任者等は極めて大きな不安のうちに凝視されているような状況にありますので、この問題については当委員会としても、これは最も大きな関心事の一つでありますから、是非一つこれを取上げて頂きまして、政府御当局のこれに対する強い態度で、是非とも一つ協同組合の大きな危機を突破するために格段の御協力を煩わしたいと考えておりまする
  81. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 打越部長が都合で戻られましたので、代つて農業協同組合課長の平木さんから、説明員として今までの、特に最近の経過について御説明を願いたいと思います。
  82. 平木桂

    説明員(平木桂君) 農業協同組合再建整備の問題につきまして、各方面の非常に大きな御関心を頂いているわけなんでありますが、農林省におきましても、昨年の春以来、この問題につきましては非常に大きな初心を以ちまして、いろいろ対策を練りつつあるわけであります。特に最近の経過についてお話いたせということでありますので、今までの詳細な経過は省略いたしまして、最近の動きだけを申上げます。  それにつきましては、極く簡単に現在の農業協同組合の実態について申上げたほうがいいかと思うのであります。すでに御承知かと思いますが、農業協同組合の数は約三万三千ほどございます。そのうちの約半数が出資組合であります。その出資組合のうち信用事業以下各種の事業を総合的に経営している組合が一万三千ほどございます。この一万三千ほどの組合が農村における農民の生産或いは生活の面に重要な関係を持つ仕事をやつておるわけでありますが、この組合が一昨年の暮以来、いわば一般経済界の大きな変動に伴いまして、非常に経営上に大きな困難を露呈して参つたのであります。その原因はいろいろ考えられます。勿論一方には協同組合自体が責を負うべき原因もございますが、又客観事情のやむを得ざるものが、組合にかかる困難を招来したという面もあるわけであります。そうした原因を一々取上げますと、これは非常に複雑でありまして、なかなかむずかしい問題になりますが、結論におきましてともかく今日の農業協同組合が非常に大きな経営の困難を来たしておる。これをこのまま放置いたしますならば、協同組合というものは、一つの私企業体ではありますけれども、これはその一つの私企業体が一つの私企業体として考えられたい。いわば協同組合そのほかに極めて密接な有機的な関係がありますし、従つて一つの組合の破綻というものは、延いて他の健全な組合の経営にも大きな支障を招く、又そうした組合の経営の破綻というものは、延いて全国の各系統機構を通じまして、全国の連合会或いは農林中央金庫というようなものにも大きな影響をもたらし、又それが延いて単位の組合にも影響を及ぼすというような関係になつております。それのみならず農業協同組合の破綻は、おのずから農民経済にも非常に大きな困難を與えることになりますし、又協同組合と取引関係にあります第三者たる債権者にも非常な迷惑をかけるというようなことにもなります。いずれにいたしましても、この協同組合の現在の欠陷をこのまま放置することによつて、協同組合を破綻に導くというようなことがあつてはならない。これに対する対策を講じなければならないということで、昨年の春以来いろいろやつてつたわけでありますが、昨年の秋あたりまでは專らこの協同組合の内部の欠陥を除去するという、いわば自力再建というような面に全力を挙げて参つたわけであります。併しながらだんだん明らかになつて参りましたことは、自力再建にはおのずから限度がある。如何になすべきことを十分にやつても、それだけでは組合が立ち直らないほどの重大な欠陥が内部に包蔵されておる。そうである限りにおいては、国がやはりここに何らかの援助の手を差延べる必要があるのじやないか。そこで自力再建の限度を超えた分につきまして、国が何らかの措置をとるという考え方を以ちまして、具体的にその方束を練つてつたわけであります。そのようにして今日農林省におきましてまとまりましたのが、いわゆる農業協同組合再建整備法案であり、又それに伴う予算措置の案であるわけであります。で、この案を実現いたしたいというのが私どもの強い念願でございますが、何分そこにはいろいろな困難な問題が実在しております。  第一には、この協同組合というものは、いわば自由なる私企業体という考え方で取扱われております。如何にやむを得ざる事由があつたといたしましても、その事由は他の私企業体にも同様に存するものであり、特に農業協同組合にのみ、そうした国家の援助措置を講ずるということが妥当なりや否やという問題が先ず第一番にあるわけでありまする同時に又この自主的なるべき協同組合に、国家が何らかの経済的な援助の手を差延べるということは、組合自体の自主性を害う結果になりはせんかというような考え方がございます。そうした考え方が強くこの案に対する反対の意見となつて出て参つてもおるわけであります。そこでそうしたいろいろな困難な諸情勢を如何にして打開して行くか、これを実現に導くかということが非常に大きな問題として1出て来るわけでありますが、ともかくも農林省内におきましては一つの案がまとまりまして、これを目下大蔵省との間で事務的な了解を得べく折衝いたしておるわけであります。日本政府といたしましては、大体今月中には結論に到達せしめて、国会提案の運びに至らしめたいという考え方を持つております。併しながら、これを政府で提出するか、或いは議員のかたがたのほうからの御提案になるかということについては、いろいろな考え方もあるようでございますが、いずれにせよ、この国会にこの法案が上程されるように持つて行きたいということで、鋭意この必要な手続きを進めておるわけであります。その間一番大きな問題は関係方面との関係であります。その関係におきましても、国内を固めながら同時に関係方面の了解を得べく、いろいろ折衝中でありますが、率直に申しまして、関係方面のほうの折衝は、まだ今日の段階におきましては、はつきりした見通しが付いておりません。併し目下のところ政府といたしましては、今月中には何とかこれを取りまとめたいということで進んでおるわけであります。  経過と申しますと、以上申上げたようなことでありますが、なおいろいろ具体的な細部に亘りますことにつきましては、御質問によつてお答え申上げたいと思います。
  83. 飯島連次郎

    ○飯島連次郎君 私も過般の農業協同組合の連合会長会議に列席いたしましたときに、たまたまNRSのワードさんのお話を伺つたのでありますが、なかなか話全般の模様では、再建整備についてかなり難色があるように聞きとつたのであります。只今の御説明でも、なかなか向うの関係方面の了解を得ることが容易でないというふうなことでございましたが、若し差支えなければ、どういうところに向うの難点があるか、それらを一つお聞かせ願いたいと思います。
  84. 平木桂

    説明員(平木桂君) その点につきましては、先ほど説明のうちにちよつと申上げましたが、やはり一点は、特に農業協同組合行政を監督いたしておりまする天然資源局の考え方といたしましては、農業協同組合の性格からしまして、これに国家的の援助を與えることが、却つて協同組合の本来の自主性を害うという虞れがあると同時に、そのように農業協同組合経済的な援助を行うということは、私企業体としての用同組合である限りにおいては、これは考慮を要する。むしろ農業協同組合としては他になすべきことが多々あるのではないか。それをやることによつて農業協同組合の再建を図るべきだ。国家がこれに対して何らかの経済的な援助をなすということは面白くないという考え方であります。それともう一つは、経済科学局の方面の考え方でありますが、これは具体的な折衝をした結果、それが明らかになつたということではなくて、従来の財政政策というところから判断いたしまして、私企業体たる協同組合に財政的な補助に等しいような国家資金の支出をするということは、これはなかなか通らないのではないかというようなことが豫測されるわけであります。従いましてそうした異論に対して、これを如何にして納得せしめるかということについて、案の内容にもいろいろ検討を加えますし、同時に又その説明方につきましても、いろいろ検討しているという次第でございます。
  85. 片柳眞吉

    片柳眞吉君 私もこの農協の再建法案につきましては、いろいろ今までの経過も大体承知でありますが、まだ結論として出すには早いと思いますが、やはり関係方面の考え方のように、直接国から利子の補給を受けるというような考え方は、これはやはり相当私は難航ではないかと思うのですがね。そこで曾つて個人の負債整理というような問題をやつたことがありますが、ああいうような農協として自力で或いは出資金を殖やすとか、責任限度を加重するとか、要するに自分の組合で自力でやれることだけをやつて、どうしてもできたい部分を国が面倒を見てやる、こういうような構想が描かれていいのじやないか。利子補給ということになると、恐らく過去の従来の借入金の利子の補給になつて、金額的な利子の補給があつたとしても、軍に損益計算ばかりが、あとでその分だけ少くなるのに過ぎないのじやないか。それで今後の更生資金なり、活動資金なり、それで十二分とはいがんだろうと思いますが、何かクツシヨンを付けて、国が何か非常に低利な融資をしてやる。どうしても更生ができないで、損失が起きたその場合には政府が見てやる。一遍クッシヨンを付けてやるというような考え通りもいいし、単に利子補給だけでは再建案はなかなかむずかしいと思いますが、そういうような考え方は、現在の段階では全く絶望なわけですか。
  86. 平木桂

    説明員(平木桂君) その点につきまして、少し御説明申上げたいと思いますが、只今おつしやいました再建のためいろいろな手を打つということは、私どもの考え方の前提になつておるわけです。で、増資或いは固定した債権の回収、或いは在庫品の処理、或いは経費の節減のための措置、或いは過去における欠損の原因が役職員の責に期すべきものがあるならば、それもそれぞれ責任をとるべきものは責任をとり、一切のなすべき債権の措置をとつて、なお且つ自力再建の限度を超えたものが少くない。で、それはどういうことかと申しますと、ともかく現在相当額の資金がいろいろな形で固定しております。焦付いております。これを流動化しない限りは、その資金が背負つている金利だけが常に赤字の原因となつております。従つて如何に努力をいたしましても、今後の努力はその過去の固定した資金の負担する金利によつて食われてしまう。そこでそういう金利をできるだけ少くするために、固定している資金を少しも早く流動化しなければならないのであります。流動化ということ、言葉を換えて申しますならば、具体的に申しますならば、固定資産、比較的金利を生まない固定費産、特に事務所のごときもの、こういうものは当然金利を負担しないような資金で賄う。つまり自己資本を増加することによつて、これで賄つて行くということが必要です。それから固定している債権、これは回収することが必要である。それから固定した滞貨、こういうものはできるだけ早く処理するということが必要である。で、そのほかに欠損金がある。その欠損金は事業収益を上げることによつて、これによつてこの損失を消して行くということによつて、いわばそこに投ぜられている資金が流動化して行くということになるわけです。ところがそうした固定費命の流動化について品は、あらゆる努力を拂うと申しましても、これには限度がある。つまり一定の期間を必要とすることであります。そうすると、その一定の期間、これを流動化する間は、これはどうしてもその負担している金利というものがおつかぶさつて来て、これが通常の企業努力による収入を皆食つてしまう。そういう関係に立つておる。そこでいわば再建のために一時時間を與えてやる。再建の余裕を與えてやるのがこの趣旨であります。つまりそうした過去の固定した資金の負担している金利を一部抑えてやりまして、いわば棚上げしてやりまして、その間に実際の努力による自力再建を実現させる。そうしてそのために国が一時補給しましたその金利というものは、その再建後において順次返還させる。そういう考え方をとつておるわけです。従つて利子補給と申しましても、只今申したような意味で、つまり固定した資金を流動化する間の金利の累増を一時チエツクしてやる。そういう考え方の利子補給を、新たに供給する資金に対する利子補給とか、或いは過去の赤字を消してやるための利子補給ということではないのです。なお片柳氏からお話のありました今後の事業運営のために必要な資金の供給というようなことは、これはこれとは別個の問題として考えられるのでありまして、只今申しましたような点を解決しない限り、自力再建は不可能である。又今後協同組合のためにいろいろ他の施策をなしましても、それが水泡に帰する危險がある。そこで共にここで協同組合を健全な基礎に引戻したい、そういう考えなんです。
  87. 江田三郎

    江田三郎君 協同組合の欠損金その他の問題について、私企業である組合に金を出すということは建前として面白くないのじやないかということを関係筋のほうで言つてておるそうですが、そういう際に、若しその欠損金を起したり、不当な、不適当な固定資産を持つことが、その責任の一部に政府も負わなければならんような原因があつたときにどういうふうに考えておられるか、具体的に申しますと、私は岡山県の旧農業会から農業協同組合に資産を引継ぐ場合に、平木さんのところへ行つてその内容をお話ししたことがある。帳簿価格は二百万円の山が実際の現実の価格は十七万円しかない。こういうものを農林省が資産引継ぎの認可をやられるときに、一体どう処理されるのか、農林省から調査に来た人も、これは妥当でないということを調査に来て言つておられる。そこまではつきりしておるものを農林省のあなたたちのところで認可のときにどう処理されるのか、或いは山の問題でなしに、自家製塩の問題についても、その他のことについても、こういうことがあるということを具体的に申上げて、若し農林省の係官自体が見ても不適当だというものを、何が出るか知らんけれども、默つて通すというようなことをすぐ農業協同組合である。それに頼りきらなければならん農民である。この問題についでどう処理されるかということをあなたにお尋ねしたときに、そういう問題について慎重に考慮せられると、こういうことを言れたのであります。言われたけれどもその後のやりかたを見るというと、そういうことが全く不当処理されてしまつておるわけです。一体そういうときに誰が一体この責任を負わなければならんか、前の責任者も責任を負うべきでしよう。併しながら許可の権限を持つておる政府も大きな責任があるわけです。而もあの資産処理は非常に時間がズレたわけです。経済界がまだ混乱しておるときに、若し早く資産処理ができれば、もつと損害が軽くすることができたものを、それを無暗に長く引つぱられたので、処分の機会を失つてしまつて、必要以上に大きな損害を受けた面もあるのであります。そういうことについでは一体政府はどう処理せられようとするのか、その点の考え方を承わりたい。
  88. 平木桂

    説明員(平木桂君) 只今農業会の財産の引継ぎについて、不当な処置がとられたのではないかというお話でありましたが、これにつきましては、このように私どもは考えております。確かに個々の資産について申しますると、帳簿価格に対して非常に不当と思われるような高い価格で引継ぎを行われたのは事実であります。併しそのことは一つの物件費について御覧になりますと、そうでございますが、全体を通じまして、不当な処置がとられたということを意味するものではないということは言えると思うのであります。と申しますのは、これはどうもこういう席で明らさまに申上げるのは、これは却つて組合或いは団体にとつて御迷惑かと思いますが、御承知のように農業会は金融機関として金融機関再建整備法により、戰時補償打切りに伴う損失の処理をやつてつた。その過程に国から多額の補償も受けております。ところでその際、いわば固定的な資産というようなものは多く旧勘定として処置される、この旧勘定資産についてはこれを第三者に処分する、或いはその他によつてこれから利益を挙げた場合には、挙げた利益を国家の補償の返還に当てなければならないという建前になつて、そこで仮に非常に安い帳簿価格であり、現在の時価はそれの数倍になつておるといたしましても、それを適正な価格で新らしい連合会に譲渡するという形式はとれなかつたのであります。そういう形をとることによりまして、国家補償の返還という問題がありました。そこでそう言えば帳簿価格の非常に安い固定的な資産を見合いの上で、或る一部の資産は高く評価して組合のほうに讓らざるを得なかつたという関係がございます。その点につきましては、農林省といたしましても、厳重に監督いたしました。全体を通じて不当な処分が行われないようにという監督をして参り、農業会から協同組合への資産の引継ぎの全体を通じましては、不当処分或いは連合会にとつては不当な価格で以て引受けるということはなかつた。又その間に非常に大きな物価の変動、経済界の変動等がございまして、事実上それが連合会にとつて大きな負担になつたということは、これは否定できません。併しいずれにいたしましても、農業会も又農民の団体であり、その財産は農民のものであります。若し農業会が清算の過程に、協同組合との間で円滑に財産の引継ぎが行われないために、農業会に多額の欠損が出た場合には、農業会に対する出資は勿論でありますが、組合員の持つておるところの債権、貯金その他の債権に傷が付くということになり。要するに農業会の清算の過程に農業会を破産状態に導いてはならない。従つて農業会ににある赤字は、この財産の譲渡の過程に何とか処理しなければならないということも、農民立場からいたしましても、必要なことでありまして、そういう関係相当協同組合のほうで農業会の内部に存在いたしておりました欠陥の一部を引継がざるを得なかつたということも、これは現実にあつたことと思います。そういう非常に複雑な過程を経まして、農業会から協同組合に財産の譲渡が行われたわけであります。そこでまあこれを一例とされて、政府が責任をとるべきものもいろいろあるのじやないかというお話がありましたので、それについて申上げますと、確かに一部にはそういうものがあろうと思います。で、その一例は昨年国会の御承認を得て補償されました報償用衣料品の値下りによる損失補償、そういうように政府の政策自体に原因があり、その結果こうむつた損失については政府が補償するというような、明確な筋の通るものにつきましては、そういう措置もとり得るわけであります。そこで私ども今この協同組合の欠損金の発生原因をいろいろ調べておりますが、非常に複雑であります。これを深く検討いたして参りますと、中には確かに政府が責任を負うべきものと考えられるものもあります。ありますけれども、それ自体を的確に掴み、それが確かに政府の責任であるということを万人が認むるというようなものは比較的少いのであります。多くの場合、現在の欠損の主な原因は組合の経営の失陷によるものであるという結論になるものが多いのであります。その行きかたをとりますことは、結局この問題を解決するゆえんでないという見極めを付けまして、私の先ほど申上げましたような措置をとりました。今日この原因をとやかく言うよりも、今日の農業協同組合がそのまま放置できないということを強く取上げて、この問題を解決したいというふうに考えております。
  89. 江田三郎

    江田三郎君 今日この原因をとやかく言うよりもと言うても、やはりそれはそのままに済まされない部分があるわけでありまして、今あなたは資産引継ぎに当つては一部不当な評価をしておるものもあるけれども、全体としては不当ではないということを言われましたが、それは最後までその答えで突張る確信がございますか。私は今岡山県の例を言つたわけでありますが、私は岡山県のあの資産引継ぎの内容については細かく検討いたしております。ただここで思いつきに言つておるわけじやないのであります。そこでわざわざあのときに、私はあなたのところに出向いてその話をしたわけであります。而も今お話しいたしました二百万円の山というようなものは、実は旧農業会時代に理事会にかけ合つて支出しているような金なんであります。これは明らかに旧役員が責任を負うべきものであるということを申したのであります。あの農業会の最後の段階に当つて、従業員の給料を何か縛つた規定がございましたが、そういうこともこの規定を無視したやられかたをしているわけであります。そういうような前の役員が当然自分で責任をとらなければならん部分を、そのまま事実頬かむりをさしてしまつたものが農林省の態度であります。なお旧農業会が赤字を出しても、或いは新らしい農業協同組合が赤字を出しても、負担するのは農民だということを言われましたが、旧農業会と農業協同組合との間にははつきりと性格が違うわけでありまして、戰争以来国家的に大きな役割を負わしておつた旧農業会が赤字があるならば、これは只今関係方面が言うような、私企業である農業の損失を補償してやるのがおかしいということとは違つた意味が出て来るわけなんです。国家的な役割を負わしておつた旧農業会が当然赤字になつているなら、それについての補償というものはもつと私は措置が講じやすかつたと思う。そういうことを一緒にされるということは、平木さんとしては少し考え方が違うのじやないか。それは別問題としまして、あなたのほうがあの資産の引継ぎの処理については間違いがないということを確言されるなら、私は別の機会にもう一遍あなたのところに行つて具体的に話をしましよう。
  90. 平木桂

    説明員(平木桂君) 農業会の赤字に対する責任というお話でございますが、これは戦時中の農業会の、農業会に対して国がいろいろ課した任務を果す過程において生じた赤字というものに対しましては、先ほど申しました金融機関再建整備法の実施によつて一応結末が付いているという建前になつております。問題は、従いましてその後の問題であります。その後の問題につきまして、先ほど申上げましたように、農業会から協同組合の引継ぎの過程には、その間に不当な処分が行われないように嚴重な監督をして参つた。で、考え方といたしましては、飽くまでその間に不当措置を……あればこれは勿論いろいろ罰則規定がございます。
  91. 江田三郎

    江田三郎君 今からでも責任を負いますか。
  92. 平木桂

    説明員(平木桂君) それはやらなければなりませんが、とにかく今までやつて参りましたことの中に見られるようなことがありますならば、それは措置できないことはないわけでありまして、その辺は一つお教え願つて結構だと思うわけでありますが、問題は要するに現在の協同組合の欠陥の原因は非常にたくさんある。その原因を問わないということを今申上げましたのは、これは政府は責任を負わないのだという意味じやありません。ただそれはいろいろありますが、個々を取上げましても、いずれ皆議論の対象になりまして、なかなかそこに結論は出て来ない。そうこうしている間に協同組合のほうは非常に困つた事態に立至る。従つてその原因を今日論じているよりも、ともかく現在協同組合が当面している困難を一日も早く救うために必要な措置をとるということが先決問題である、そういう意味で申上げたわけでありまして、私どものほうではいろいろ原因は承知しております。ただその原因別に、例えば欠損金額を算定して、それぞれの欠損額に対して国庫が補償的な措置をとるということは、理論的にはそれが正しいと思いますが、それをやることが非常に困難な事情がありますので、先ほど申しましたような行きかたをとることにいたした、そういうわけであります。
  93. 羽生三七

    委員長羽生三七君) この問題についての御参考になるかと思つて、今日の日程に農業協同組合の実態調査の成績について、経済調査庁から説明を聴取するということになつておりますので、簡単にこの問題についての説明を求めたいと思います。
  94. 江田三郎

    江田三郎君 ちよつと一言だけ……。今過去の問題についての若し間違つた点があれば責任をとらなければならんということを言われましたが、そういう責任ということは、私の理解するところでは旧農業会の資産処理に当つた人々だけでなしに、それの監督の立場にあつたあなたがたの責任があると解釈しておりますが、そうでしよう。それからもう一つは、私はこういう問題をどこまでもむずかしく言つてるのじやない、ただ問題はこの農業協同組合再建整備について、もつと政府が、政府自身も責任があつたのだということをはつきり考えておやりになつて頂きたいということなんです。先はどあなたの話を聞いておるというと、最初の話を聞いておるというと、すべて政府の責任というものはまるでないような話で、その点は誠に怪しからんと思います。結論は私はそれを言いたい。
  95. 平木桂

    説明員(平木桂君) わかりました。私はそういう意味で申上げたのではありません。勿論政府はこの協同組合行政について責任を感じておるわけであります。当面の責任者として非常に責任を感じております。従いまして何とかしてこれを健全な基礎の上に立てたいというのが今申上げた案の内容でありますが、ただこれを外部に持出します場合には、この問題を速かに解決するための一つの行きかたとしまして、政府のとるべき責任というものを具体的な個々の問題について取上げますと、これはななか議論が百出しまして、結局落着くところに落着かない。そういう意味合でこれを先ほど申したような考え方で参りたい、そういう考え方をとつたということを申上げます。
  96. 羽生三七

    委員長羽生三七君) それでは只今の実態調査成績について、木村監査部長から説明を求めます。
  97. 木村武

    説明員(木村武君) お手許へこの資料を早くお廻しして、御覧頂いてから申上げたほうが非常におわかりいいかと思つたのでありますが、本日お廻しいたしまして、誠にどうも手順がよくございませんで、お詫びを申上げて置きます。  この四册の実態調査報告は、これは実は私どものほうの調査庁の個有の権限に基いてやつたのではないのでありまして、農林省のほうから最近の農業協同組合の問題が非常に心配状況にあるので、調律はいろいろ現地に手足を持つておられますので、いろいろな自分のほうの政策立案の資料として必要な材料をとつてくれないかと、こういうお話がございまして、そういう観点からとつたのでございます。で、この四つを並べて御覧下さいますとわかりますように、第一は、福井県の福井市の郊外の比較的恵まれた単作地帶の例でございます。それから第二は、筑波山の麓の茨城県の非常な勤勉な村ではありますが、農業技術水準が非常に低い、殆んど灘田で二毛作ができない、こういうような地帶であります。第三は、態本のすぐそばでございまして、非常に農業環境立処はいいのでありますが、これはどうも他力本願的に無気力な事業経営を続けているところ、第四は、愛知県の元の農業協同組合でございまして、非常なるたくさんの貯金を抱えて、いわゆる貯金組合型に偏している。こういうふうな見方であるのであります。これを御覧下さいますと、第三の熊本県の豊田村農業協同組合というのは、この調査当時におきましては、どうもレベル以下ではないかというふうに考えられた組合でございますが、ほかはいずれも大体レベル以上の組合ということになつてつたのでございます。これは農林省のほうから特別の手配がございまして、権と相談して権の指定した組合を、つまり県のほうでは見られて恥かしくないという考え方で選んだ組合でございます。従つて今日問題になさつていらつしやいます農業協同組合の再建というような観点から言うと、或いは余りこういうものを考えるわけに行かない、こういうふうな点がおありになるのではないか、こういうふうに考える次第であります。実はさようなわけで、それぞれの組合ごとに政策立案の基礎材料を得たいという、こういうふうな農林省のお考えを受けて出しましたので、例えばその一を御覧下さいます。と、七十頁以下に、この組合の一つの処方箋と申しますか、この福井県の福井市郊外の組合は、実は形式的には破産状態に陷つている組合なんでありますが、その組合が破産に陥つているにもかかわらず、殆んど村では問題になつておらん。こういうふうな状況になつている。これは言換えれば、組合というものが、余り組合員の経済と結付いていない、こういうふうなことになるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、然らばその組合に対してどんな処方箋を與えれば、その組合が立直るということになるだろうかというのを、七十頁以下に一応書いて見たのであります。併しこの組合は、4の三頁をあけて頂くとわかるように、こういうふうな略図を書きますと、こんな地域にあつて、そうして殆んど大部分が濕田であります。それで昨年なども、「いもち」の害を非常に受けたところでありますが、そういう農業の土地改良の問題という大きな問題を持つている。而も、自分だけでは何ともならないという組合でございます。そこでこの組合自身の力で立上れというようなことを言つて見ても、大体無理なような状況にあるのであります。大ざつぱに申上げますと、その上に而も福井の辰災後の影響を受けて、無論震災のために焼ぶとりじやなくて、地震ぶとりみたいな恰好になつているのでありますが、それが非常な借入金をして、そうしてその他入金のまだいわゆる償還の時期の来ない時代でありますので、どうやらこうやらやつておりますが、償還が始まつて見ますと、これはどういうようなことになるかというような状況に当時陷つているのであります。そういう状態において、どんなようなことをやればいいかというのが、ここに書いてございますような、いろいろな問題でございます。これを一つ一つ申上げている暇はなさそうでありますから、御覧を頂けば、こういうふうな組合がどんなところに欠階を持ち、かなわんまでも、どんな方向にやり上げて行けるかというようなことが出て参ります。特にこの問題として、諸先輩がたを前に置いて生意気なことを申上げて恐縮でありますが、一つのトピックになりますのは、七十三頁に書いてございますが、中金の資金というのが、どんなふうな流れかたをしておるか、これは特に震災の関係がありましたので、まあ中金の御弁解によりますと、あのとき非常に急いでやつたので、こんなようなことも必ずしも全国的な問題ではないというお話でございますが、七十三頁のDに書いてございますような問題が、中金の末端の問題として、かような問題があるということであります。それから特にこの七十六頁のところを御覧下さいますと、七十六頁から七十七頁につきまして、県当局或いは中央当局の行政施策面として、こういう問題、この組合から伺われる徴表の中で、どういう対策を講じて行くことが適当であろうかという問題があろうと思うのであります。一番大きな問題は七十七頁の(1)に書いてございますように、農業土木の問題ではないかと思うのであります。ここは自分のところだけではどうにもならない。而もこの工事が上のほうからやつて来なければならない、一番川下に属しておるというような事情から、自然全体としての、而も長期的な農業土木の計画というものがはつりきしておつて、これが基礎になつて、そうして初めて確固たる基礎の上に復興計画が組立てられて行くという関係にあるように思うわけであります。それから農事改良指導事業の問題も、殆んどここには手が及んでいないのでありまして、指導連の指導というようなことも非常に弱い。これは見せかけだけは如何にも立派に震災後復興しておりますので、負担金とかいうものは一人前以上かけられ、見せかけだけは立派なんでありますが、その反対給付というものは殆んど受けられないというのであります。それからこれはもともと、戦前は福井の機業地帯に属しておるわけでありますが、その後殆んど復興しない。つまり単作の稲作と機業というものが結び合つて、この村としての営みができておつたというのが従来の例なんでありますが、その機業のほうは殆んどできておらない。それでそういうふうな村の全体としての農村の自治向上と言いますか、そういうふうな点まで問題を單に農業という問題だけで考えて行つたのでは、この村というものの復興はむずかしい。こういうふうな点などがここで特に考えられる問題であります。あとは大体従来から言い古されております単作地帶にある共通的な問題であります。七十八頁のところに書き上げております問題は、単作地帯の共通の問題或いは全国的に共通の問題というようなことになろうかと思うのであります。それが(その一)であります。  それから(その二)は、これは茨城県の筑波山の麓の組合でございます。この所見の要約のところをちよつと読まして頂きますと、志筑村農協は、昭和八年話にならぬひ弱な奇形的巣立をした形ばかりの志筑村信、購、販、利組合の農業会時代を経た実質的後身。これが不良環境面、特に感情的政策に基因する激烈な積年の村内不協和の特殊雰囲気の中を切りぬけて、よく今日の小じんまりした規模なりに、一本立のこの村の場合としては精一ぱいの線に近い逞ましい堅実な典型的総合事業協同組合にまで成長しているのが見られる。專ら文字通り十年一日産組創始以来不撓不屈の努力を続けて来た現常務役員の努力が立派に実を結んだもの。この意味で「農協の問題は先ず中心人物という法則」の一検出例をここに見る。二といたしまして、組合事業と村民経済の接着ぶりは、信用事業受信業務の七〇%程度達成を初めとし、生産消費資材両面に亘る購買事業の積極的汎行が頂点となつておる一方、利用事業面は精米、麦は勿論製粉、麺にまで手を拡げて来ており、販売事業面では、一〇〇%主食供出販売面は勿論のこと、粟、繭、煙草、蔬菜等、むしろこの村民経済の重点がおかれている特用作物の共同出荷面にも最近漸く手を伸ばそうとする若さの段階にあり、四種事業のいずれもに亘つて積極面徴表に満ちている。  三としてただこの村の農業技術水準は未だに耕地整理ができていないほどで、いわゆるアジア的停滞の域にとどまつているとさえ見られる程度の低さであるにかかわらず、生産指導事業面が賦課全徴収の手前の申訳的月並的消極なものに堕しているのは、まさに玉に疵と言うところ。並行してこの面の積極的打開がない限り、折角の他のすべての事業面の努力の効果の限界は非常に低からざるを得ないこととなり、如何にもみじめな感じ(村民貯蓄高の七〇%を吸收しながら組合貯金高の一戸当り僅かに一万八千二百円)である。(この点について、単にこの組合の生産指導事業面の強化という底のものだけで展望が開けて来るわけのものでないのは言うまでもない。この意味で組合の力の限度を超えた大きな施策がそこに加わらない限り、何ともならない限界にすぐ突き当るわけであるが、ここに我々は日本農村の共通的存命の具体事例を見るということにろう。)こういう状況であります。次に四としまして、小じんまりとした規模なりに堅実で、而も積極的な事業面を反映しての経理面は、その上にこの組合独自の事業部門別原価計算主義経理運営の好影響をも受け、貸付金、売掛、棚卸しその他の各面共差当り順調堅実に過ぎるほどの数字の動きを見せており、何らの懸念すべきものをはらんでいない。当面の農村危機を叫ばれる時期に当り、この堅実さは賞賛に値する。これ又組合常務役員のまじめな努力ぶりに專ら負うところ、ただ極めて最近の経理数字徴表面に小額なものながら貸付金線の上昇傾向と定期貯金線の頭打ち傾向が見られる。この組合の場合も、又ついに最近の農村不況の影響を免れ得ぬものがあることを物語るものであろう。  志筑村農協は、その次に書いてありますように、筑波山の石岡町のそばで、筑波山のすぐ麓にある組合であります。この組合につきまして、ちよつと面白い分析をいたして見たのでありますが、それはこの三十四頁、三十五頁のところに図表を書いてございますが、組合に貯金を預けておるものと、それから組合から資金を借り出しておるものということが、むしろこの少し持つておると言いますか、それは当り前とも言えるかも知れませんが、組合の貯金方面では余り協力しないで、資金の貸出面だけで組合に厄介をかけておるということ、而もそれを階層的に見ると、どんなことになるかというようなことは、これは詳しく御説明しておる暇がありませんが、相当細かく組合員一人々々についてそういう分析をして見たのが、この図でございます。結局それじやこの組合については、どんなふうなことがあれだろうか、これは八十三頁以下に書出しておるわけであります。大体もう組合について組合員自身の努力というようなことは、ほぼ限界に来ておるのじやないかというふうに考えるのでありますが、ただ生産指導事業面は、先ほど中土げましたようなことで、もつとやる余地があるであろうというふうに今考えるのであります。主としてその面にこの村の問題があります。そこで八十六頁に書いてございますように、やはりこの組合の場合も、さつきの福井の郊外の組合で見ましたように、六條村で見ましたように、濕田地帶の乾田化計画というものをもつと計画的に持つて行くということが、やはりこの組合の場合も基礎的な問題である。そういうことがやはり大いに必要であろう。この組合で申しますと、殆んど冬麦を作つておりませんが、冬麦は筑波の風が影響して、この地域ではなかなか作れないということを言つておるのでありますが、さようなことが言える程度で、まだ日本の冬麦の農業技術はこんな程度のくらいかというふうに考えますと、いささか心細いのではないかと思うのであります。次は、熊本県の豊田村の農協であります。この所見要約を、これが一番わかりやすいと思いますから、朗読いたします。   豊田村農協は熊本市経済圏に包攝されつ、田畑それぞれ四百町歩そこそこ、山林五百町歩足らず、それに年産一千万円程度の雑多な特産物という底の折角の一応均衡を得た農業環境立地に置かれながら、最近の組合の当事者の消極退嬰と村民環境の協同精神の欠如によるものを主因とし、典型的な他力本願的お座なりの事業経営に停滞し、いささかも自力による積極的伸展の望みの窺われない総合農協である。  戰時経済以来の農村経済統制機構の與えられた官製狙い手としての地位に安住し、專ら主食類の共同販売事業と肥料中心の共同購買事業とを表看板に内部受信の極端な貧弱さにもかかわらず、一見不思議な信連借入金で綱渡り式にそのカバーをして来ている基盤脆弱な信用事業で、これを危なつかしくも支えているだけのもの。結局見せかけの総合農協と評することができようか。  これはいささか手厳し過ぎると思います。私ども見ました限では、これが一番ひどいのであります。  二、組合経済事業と村民経済とのつながりは、すべての面で淡い。信用業務——村民貯蓄の四〇%程度の受信にとどまり、而も小口当用資金的なものの取扱いのみ。販買業務——主食類ラミーの一〇〇%共販取扱いのほか、雑多の特産物販売取扱い面にはノータッチ。購買業務——肥料、農薬類のほか、生産資材も生活物資も微々たる取扱量。利用事業——貧弱な精米、麦、製粉、麺設備について、村民利用率は一〇%程度のわびしさ。僅かに農倉事業だけが、主食供出制の余慶を受け、どうやら一人前程度の收益を上げ得るだけの利用度に達しているというところ。  これは調査当時がこうでありまして、その後室はいいことに、丁度理事者が交代いたしておりまして、あとの理事者がその後精を出しておられるということは、実はその後わかつておるのであります。  三、生産指導事業面、又御他聞に洩れぬ賦課金徴収の手前の申訳的月並のもののみ。否、それどころか、徴收額に見合うだけの事業費支出をさえ行わず、二十四、二十丑両年度とも、相当額の支出抑制を行い、これを僅かな黒字を出すための組合損益計算操作に使つている事実さえ看取される。この村の農業技術水準は、折角の村央を流れ才浜戸川の治水、利水は勿論、農道、井堰、用水路の改修さえ思うに任せず、灌漑用水は專ら村内三十カ所に点在する溜池に依存する底の低さに低迷しているというのに。遺憾は二重にも三重にも深い。  四、主反歩以下の耕作農家四五%、主食不供出農家二五%程度という比較的貧窮農家の多いこの村で、このような程度の活動ぶりしか、この農協が示していないのは、或いは当然ではないかという見方も生れよう。それにしても二に述べて明らかな信用事業面についてのうち、富農層の組合非協力ぶりが端的にこれを物語る通り、協力の能力は十分なのに意識的に協力を怠つている村民の存在は目障りで何としてもこれを組合宗に改宗させる要があろう。貧乏人と一緒では損ばかりしてつまらぬという底の気持がプリヴェイルしていては、共存同栄、互助機関としての農協は永久に育成されまい。  五、事業面の消極性お座なりぶりを反映しての経理面は、資産、負債構成面の不堅実、不安定を結果し、資金運用面の行詰り症状を漸次悪化させ、従つて損益計算面では三にも触れた通り、指導事業のための賦課徴收金をセーゼングする権道を敬えてして、僅かの見せかけだけの黒字決算を行い事態を不明朗に糊塗している始末。このままの経理態様では、早晩経営危機に見舞われること必至と言えよう。これはその後の理事者が非常に努力しておられるようであります。我々の慮れが杞憂につたという見込みが大体付いて参りまして、非常に喜ばしいと存じます。  六、これを要するに、耳田村農協は事業面経理面共に全面的に標準以下のレベルにあると思われる。そのよつて然るゆえんは、従来おしきせの官製農村経済統制機構の上に安易に坐つたまま、他力本願的運営を事として来、折角の均衡を得た農業環境立地を生かし得なかつたがためと断ずることができよう。これだけの農業環境立地に置かれた農協がせめて標準線にまで漕ぎ付けるについて、今以て他力本願的態度を棄てないということになるならば、又何をか言わんやである。幸いにして、この五月組合長の更迭があつた。この組合に関する積極的展望の開けて来るのは、先ずこの機を外さず、何をおいても、せめて総合農協としての体をなす標準レベルに達するまで、自主的建直しに向つての澎湃たる機運と姿勢とができ上つてからのことということになろう。  こういう、まあ相当これは手厳しくやつたんでありますが、これはさつき申上げたように、その四頁にございますように、熊本のすぐそばであります。この組合は相当今日いろいろお話になつておりますような問題に関連する組合かとも思います。が、その七十六、七十七頁にどんなふうな然らば問題があるかというと、理事の問題、職員の執務態勢の問題、出資金の増加、出資金の増加はすべての組合を通じての問題でありますが、それから事業部門別損益経理仕組の確立をやらなければならん事業運営改善面では信用事業が、信連との間がこれは実は農手であるということがわかれば、成る程度それがわかつたのでありますが、最初わからなかつたものですから、信連から金を借りて、又信連に預けておるというような妙な恰好に見えておりまして、従つて信連と両建貯金とでも言いますか、そんなふうなことで、妙な因縁があるのではないかというふうに、初め想像したのでありますが、これは農手の利用であつたのであります。そこで最後に八十一頁のところに、どういう問題をお考え頂けば、この組合にそれではどんなことが適当であろうかということが八十一頁に書いてありますが、この場合も同様に又農協との問題というのが一番目に出て参つたのでありますが、そのほかの問題は大体あれでありますが、併し今までの組合についてもそのことが言えたのでありますが、この組合の場合にはつきりして参りましたのは、今の信連と今の問題がいささか不明朗であるというようなことからいたしまして、この系統農協の中央機関というものが、更に自治指導の面を大いに強化して参るという問題があるのではないか。  最後に、愛知県美津町の農協でありますが、これは非常に特徴のある組合でありますが、本文一頁の所見要約のところを、これを読んで頂くとよくわかりますが、  一、愛知県御津町農協は、東海道線に沿つた中京地区経済圏内の一農漁村として、田、畑、山林それぞれ三百町歩前後を擁し、魚介藻類を饒産する渥美湾に臨み、どんな多角経営でも、三毛作さえ可能な温和な気象條件に惠まれた、いわば最良に近い産業、交通、気象立地の上に立つている。この余りにも恵まれた環境は、この農協をして、一面労せずして流入する多額の組合員貯金の吸收を可能ならしめ、典型的ないわゆる貯金組合型に仕立てる素地を提供している。(二十五年七月末組合員一戸当り平均貯金額は五万円)反面この土地柄から胚胎している町民習性の事なかれ式保守的傾向を如実に反映し、折角の集まつた多額な貯金の総合農協的活用面が見送られ、単にこれを殆んど全部的に信連中心の預金(定期預金)運用に廻し、その間の利鞘稼ぎを以て組合運営の鍵とすれば事足りるやの錯覚的運営の弊に陷らしめている。  二、組合経済事業と町民経済生活とのつながり面を見よう。組合業務と組合員経済とは、それぞれ思い思いに離れ離れの方向を辿つているきらいがあると断じたら妄断に過ぎるということになろうか。  イ、信用事業面——文字通り組合事業の大宗というわけであるが、 一、に掲げたように、組合理事者の運営方針が貯、預金間利鞘稼ぎ中心に堕しているため、折角受信面では殊のほか旺盛な貯蓄心に裏付けされた町民貯金高の七四%に達する巨額なものを吸收しながら、組合員授信額は、微々言うに足りず、(組合員貸出額対貯金額比率三・五%)他事業への融通資金額、又この組合としては驚くべき低さ(他事業融通資金対貯金額八・二%)で結局、組合員の直接、間接の再生産のためへの協同組合的資金還流の見地は殆んど無視されてしまつている形。  ロ、購買事業面———生産資材関係。肥料取扱い面のみ一〇〇%。飼料、農機具その他の生産資材取扱い面は部分的なもののみ。組合員一戸当り年間平均購買高僅かに九千円程度。生活物資関係、組合員一戸当り年間平均購買高僅かに三千円程度。  ハ、販売事業面——供出主食類のみ一〇〇%取扱。他の特産品蔬菜、繭、乾海苔、牛乳の同町内に同質的共坂団体を結成しているものについては、巧妙に連繋をとり、代金精算貯金振替の形で、実質的共販事務取扱いを行なつているのが目立つ。その他の自由販売「いも」類、藁工品、鶏卵の出荷取扱いは未だ少量部分的なもののみ。  二、農村工業(利用加工)事業——組合みずから農村工業と銘うつほどで、組合員自体の利用面はほとんどネグリジプル。專ら政府委託加工收入面に期待。(オ)農倉事業、——キュアリング倉庫まで加えて三棟の倉庫を備えているが、いずれも專ら政府指定倉庫としての利用面のみに期待をつないでいるだけ。  三、生産指導事業面。この組合の実力からして、専任指導員二名のお抱えは、さこそと肯かれるものの、従来の実施事業の月並的お座なり振りには失望を禁じ得ないものがある。組合員の畜力、機械力の導入面など相当水準に達しながら、一面この組合地区では未だに水田用水は天水に依存し、海田残存率二八%、耕地整理事業さえ未着手という驚くべきアジア的農業技術停滞の事実が残存している。信用事業授信面の組合員再生産のためえの積極的考慮と相待つて、名実共に備わつたこの面の事業の積極的振起こそが、たとえ若干のスペキユレーシヨンの危険を伴つた多難な道であろうとも、この組合のわけ進むべき協同組合的大道であろう。  四、事業面で預貯金間利鞘かせぎを組合運営の鍵として事なかれ主義、堅実一点張りの運営ぶり、プリヴエイルの当然の反映として、経理面では、資産、角、征、構成面に現われた各財務比率も、総合損益計算面結論数字も、言うところなく実に見事なもの。ただ、この見事過ぎる数字の羅列の裏に、いわゆる貯金組合型に偏し過ぎての受、授信交錯操作面の危険徴表のかくされているのを感ずるのは、ひとりわれわれのみであろうか。又総合農協としての経理面数が、果してこんな事なかれ主義的きれいごとだけで済まされてよいのかどうか、大いに疑問の存するところということになろう。  五、折鶴集まつた貯金をば、組合内で有利、着実な再生産事業をさがし、これに資金還流を図ろうとしても、もともと日本の農業は資本主義的採算に乗り得ないのであるから、この農協のような事例にぶつかるのは、むしろ当り前で、これをどうしようもないではないかとの見方もあろう。この論点を徹底すれば、日本における協同組合金融系統組織の否定論にまで発展すると思うのであるが、それはさておき、われわれは少くともこの農協の場合、どのような議論の成立つ程度にまで、問題がまだまだ詰められていない段階にあるのを感ずる。又組合の理事者自体が、意識的にもせよ、法意識にもせよ、このような見地から事を処理しているのでないことも言うまでもない。要は、何と言つても信用事業を基底として組立てらるべき総合農協としてのあり方について、この農協は易きにつき過ぎている、いやでも応でももつともつと苦労の途を求めるのでなければ、到底本ものとは言えないというのが、我々の所見結論である。  これはいささかペダンテイツクになつたかも知れませんが、少し高度な要望をして見たわけであります。それがこの組合でございまして、この組合に対して然らばどんなような処方箋が必要であろうかということでございますが、これは八十四頁以下に書いております。やはり結局は信用事業の本質追及、なかんずく授信業務面についてもつと合理化してやる必要があるのではなかろうか、こういうことであります。この点は実は愛知県では相当なセンセーシヨンを起しまして、愛知県の経済部が中心になりまして、この報告書を中心にして只今いろいろ関係者が集まられて研究会をしておられると、こういうふうな状況にまでこれを持つてつておるわけであります。それから一番最後に、九十四頁に皆様にお考え頂くような問題がこの組合の徴表から出ておる、こういうふうなことでありまして、協同組合金融のあり方、限界の問題或いは農業長期資金の問題なり、又やはりこの組合の場合にも農業土木の問題が出て来ておる。そのほかは全国的に共通の問題、こういうふうなことでございます。要するに県が指定した割合に標準の高い農協を選んで私ども調査いたしておりますので、或いはそんなに御参考にならんかも知れませんが、参考までに申上げました次第であります。
  98. 羽生三七

    委員長羽生三七君) 只今の木村監督部長の御説明で非常に参考になる点があつたと思いますが、取りあえず、今日問題になつておる農協の再建整備の問題は、こういう基本的な單位農協振興の恒久対策とは別に、当面取上げられなければならない問題でありますので、これは法案の提出と共に、又それ以前においても随時必要に応じて、なおこの問題を検討することにいたしまして本日はこの程度で散会いたします。    午後四時四十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     羽生 三七君    理事            西山 龜七君            片柳 眞吉君            岩男 仁藏君    委員           池田宇右衞門君            瀧井治三郎君            平沼彌太郎君            宮本 邦彦君            江田 三郎君            小林 孝平君            三橋八次郎君            飯島連次郎君            溝口 三郎君            三浦 辰雄君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    農 林 大 臣 廣川 弘禪君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    食糧長官   安孫子藤吉君    電気通信省施設    局長      林  一郎君   事務局側    常任委員会專門    員       安楽城敏男君    常任委員会專門    員       中田 吉雄君   説明員    農林省農政局農    業協同組合部農   業協同組合課長  平木  桂君    経済調査庁監査    部長      木村  武君