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国務大臣(
根本龍太郎君)
只今飯島さんから御指摘なされました問題は、
農業政策の一番の
基本の問題でございまして、これにつきましては、すべてに対して明確な御答弁をいたしかねる点があると思います。
見通しの問題とか、いろいろ問題もあるようでありまするが、ただ併し現在私が
考えておる、又自分の
見通しという問題を極く簡単に申上げます。
第一は、
講和後の
講和成立に伴いまして、
日本農業に如何なる
影響が来るであろうかということの
見通しでございまするが、これはいろいろ複雑なケースもあると思いまするが、大局よりしますれば、先ほど一旦触れましたように、従来は
日本の
食糧の非常に
不足な点は
アメリカの
援助によ
つて相当部分解決されてお
つた、これが殆んど今後は
日本の
外貨を
獲得した金で、
コマーシャル・
ベースで買わなければならないということが一番強く響いて来る問題だと、かように
思つております。従いまして、これは第四の御
質問でありまするところの
自立経済の
前提の
条件としての
食糧自給と、それから
工業振興に基く
外貨の
獲得に基くところの
食糧輸入、この問題と相関連して参
つて来るのでございまするが、
食糧自給政策はどこまでもこれは遂行いたしますけれ
ども、今にわかに短時日の間に、一、二年のうちに
食糧自給を全うすることは困難だと思います。その
意味におきまして、すぐに
食糧自給ができない
部分は、どうしてもこれは海外からの
輸入に仰がなければならない
部分があるのでございます。これについては先ほど
委員長から御指摘なされました
小麦協定の参加に基く
割当量をできるだけ多くして参りたい。かように
思つております。それから現在の
世界の
食糧事情から申しますれば、かなり高いものを現在
輸入しておるような恰好でございます。これは
小麦協定に参加いたしましても、運賃その他の
関係でかなり高いものが入
つて来ておる。これを
日本の
国民の
消費者にできるだけ安く配給するという
意味において、
補給金を付けておるわけでありますが、これは他面におきましては、
日本の
生産者を
補給金によ
つて或る
程度まで低米、低
麦価政策をや
つておるというような結果にもなり、而も一面におきましては、
日本の財政が非常に窮屈なの
で、
農業に対する
補助助成というものも期待のほどはなかなか行かない、こういう
観点からいたしますれば、どうしても私は
農業所得を増す
意味におきましては、できるだけ
米麦価については現在の
農業経営を維持することができるような適正なる
価格を支持して行きたい、かように
考えておるわけであります。
それから
講和後に
日本も
農業生産物で
相当程度輸出をいたしまして、これによ
つて外貨を
獲得する部面もかなり私は出て参るのではないか、これには先ほど申しました生糸の問題もその
一つであり、それからお茶の問題もその通りでございますし、それから
水産関係も同様に私は
考えて行かなければならないと存じます。特に
水産関係につきましては、従来マツカーサー・ラインによ
つて制約されておりまするところの
漁区が今後は
相当拡大されて行くものと私は
考え、これに基きまして、
日本の
漁業の飛躍的な
進展を図りたいと思うのでありまするが、これは今の造船と相絡みまして、
漁業進展のための
資金の
裏付が当面の問題とな
つて参るわけでございます。これにつきましては、
農林漁業融資特別会計の拡大という点も
考えまするが、一面におきましては、
開発銀行の
資金の増大により、
開発銀行の
資金もこちらのほうに入れていいではないか、
要求していいではないか、こういうふうに私は
考えておるわけであります。
それから現在は一応
世界政局は安定の兆がありまするけれ
ども、併し
国際情勢の
見通しは甚だ困難だと存じています。で、そのために若し
平和秩序が紊れた場合における
食糧に対する
自給度を高めるという点からいたしますれば、麦作或いは米作のみならず、
戦時中並びに戦後非常に奨励されましたが、今一応これが下火にな
つておるところの甘藷若しくはポテトーによる
食糧の増加並びに
家畜飼料としてこれを利用することによ
つて、
動物蛋白の
補給の工作という問題が特にこれはとられなければならないのではないか、かように思います。
それからもう
一つは
森林関係でございまするが、今後
講和後、
日米経済協力或いは
国連協力等の形におきまして、朝鮮の
復興のために
相当程度木材の
需要が出て来ることについては、今もその兆があるようでありますけれ
ども、現在においてすら
日本の
木材が枯渇しておる今日、これを強く要請されてもなかなかお答えすることができない、こういうような
状況にありまするので、でき得れば近い所から送
つてやるという点もありますけれ
ども、これにつきましては、今後の折衝でありまするが、アラスカなり、その他
アメリカにおけるところの豊富なる
森林資源を開発することに対し、
日本の
林業者の
協力し得る途を開いて頂き、
パルプ材或いはその他の問題を有利に交渉し
て、
日本にそうした
木材資源を入れて頂くというような
方向も辿らなければならんではないか、かように
考えております。それからこれに対して如何なる
方向を示すべきかということでありますが、これは
只今申上げたことを総括すれば、おのずから出て来ることでありますが、
根本的にはやはり
自給度を高める、
自給度を高めるためには、先ほど申しましたように
金融措置或いは助成の措置を強力にやると共に、その
基盤としての農協の
整備強化を図る、こういうことに究極はなるのではないか、併しこの具体的な方策については、非常に広汎に、而も細部にわた
つて農林、
水産、
漁業、畜産、全面的にこれがいたされなければなりませんので、その詳細についていずれ
機会を得まして、いろいろご相談を申上げたいと存じます。
第四の問題は、
只今申上げたことで総括的に御了承して頂きたいと存じます。
食糧自給のための具体策もおのずからそれに含まれているのでありますが、特に御指摘になりました
食糧の
合理化の問題、これは非常に重大な問題だと存じます。従来米食のみに依存しておる
日本の
国民といたしまして、米に対する嗜好度が非常に片寄
つておる、そのために
折角増産されたところの麦なり或いは「いも」類に対しても、これはなかなか
国民の食卓にこれ供しようとしない、こういうあれがありまするので、できるだけ粉食を
日本の
国民の嗜好に合うように加工するような
方途を講ずると共に、又粉食を増すとすれば、どうしても添加菜としての或いはジヤム、バター、チーズというような問題が出て参りまして、これには是非畜産の
振興を
考えたい。又魚の加工或いは冷蔵というような問題を強力に推進いたしまして、季節的に非常に安いものがどつと出るけれ
ども、鮮度が落ちたために
肥料にな
つてしまう。
折角の
国民の食卓に上すべきものが食卓に上せない、こういう
観点も出て参りますので、そうしたものについては加工、罐詰、或いは冷凍、冷蔵、こういうような措置を大いに講じたいと
考えております。
その次に
食糧の問題と
人口の
包容力の問題でございまするが、終戦後非常に多くの
人口が農村に殺到して参りまして、これが
相当大きな問題に
なつたのでありますが、最近の
情勢はやや農村から都会に
人口が移りつつある、こういう傾向がございます。これは一面におきましては、戦後の
食糧事情が非常に困
つたときには、とにかくいなかに行けば食えるということで殺到したところの人々或いは引揚者の人々が、とにかく都市には住めないからというので戻
つて来たのが、最近には一般産業の回復に伴うて漸次都会に来たという部面もございまするが、他面におきましては農村において
相当経済的に窮窟に
なつたために農村におれなく
なつたというような問題が大きな原因ではないかと
考えております。そのために現在盛んに言われておる次三男の問題が再び戦前の
人口問題と同じような様相を持
つて、これが出て来ておるわけでございます。これが
根本的解決はなかなかむずかしうございまして、単位
生産量を増強する、或いは又開拓を増進する、或いは総合開発に基くところの未開発地を総合的に開発することによ
つて人口の包容度を多くするということもありまするけれ
ども、現在の趨勢ではなかなかこれが困難であります。そこでこの
人口問題は農村だけで解決することは非常に困難なのでございまして、やはり一般産業の繁栄と共に、この
人口問題を解決して行かなければならないと思います。なお
講和後におきましては、或いは南
アメリカその他の移民の問題も出て来るのではないかと思います。これについては相手国の問題もありまするけれ
ども、戦前におけるがごとき民族的な、それから
軍国主義に対する恐怖に基くところの拒否的な態度が漸次緩和されるのではないかというような感じもあるのであります。実はこれは極く私的な話でございますが、先般デユーイ氏が参
つたとき、私と約三時間ばかりいろいろと懇談いたしましたが、その際も東南アジアの開発のためには
アメリカも
相当力を注ぎたい、併し
アメリカからなかなか適当な技術者、労務者その他が行くことが困難である、これについては
アメリカと
日本の技術者若しくは労務者と相提携して行くならば、この途が開けるのではないかと思うが、これについてはどういう方法をと
つたほうがいいのだろうかというようなことまでデユーイ氏が話しております。或いは又現在カリフォルニアの
農業労働者も非常に欠乏しておる現状である。併し移民ということはなかなか困難であるけれ
ども、季節的な労働
需要の途を開いたらどうかというような話もあるようであります。又アラスカの開発には森林と
漁業、更には鉱工物
生産の問題についても、
資金、技術はあるけれ
ども、なかなか労働者は
アメリカから供給することができないというような問題もあるようでありまするので、従
つてこういう問題についても、私は戦前とは違
つた形において、善良にして且つ技術的な教養を持
つた人が入るならば、或る
程度までの海外に対する
日本の移住若しくは出稼ぎという問題で途が開けるだろう、かように感じております。併し一面におきましては、
日本の
人口増殖がこのままで、
増産若しくは移民によ
つて解決するということがかなり困難な点もありますので、いわゆる産児制限の問題が叫ばれているようでありますが、これは原則として
我我は産児制限によ
つて人口を或る
程度縮小するということは非常に困難な問題だと思いますので、この点はなかなか明快なる方策が立てにくいのでございまして、
皆さんからもいろいろと御指示を得まして、この難問題の解決に当りたいと存じます。
その次には
政令諮問委員会で
行政機構の改革、若しくは簡素化の問題が出ているが、これに対して現在の
農林省の機構を抜本的に統廃合するかということの問題でありますが、現在私としては抜本的な農林機構の統廃合をやるという結論に達しておりません。但し戦前の
日本の
経済規模から比較しまするならば、戦後の
日本の官庁機構が非常に厖大にな
つているということは否めない事実でありまして、これはどうしても簡素な姿にいたしまして簡易な制度を作るということは
国民の
要望でもあり、又
行政能率を高める上において必要でありますので、そういう
観点からは検討いたしている次第でございます。
その次に
参議院農林委員会において、或いは本
会議において決議された申入事項に対する
処置でございまするが、これは
農林行政に関する問題が特に多いのでございまするが、これは国家の最高の機関であるところの御
意見は十分に付度して実現いたしたいと存じております。但しこれが実現の方法について、どうしても
予算の
裏付が必要なのでございまして、
予算の
裏付なくして実行できない問題だけが取残されるような感じがいたしますので、これは全体の国家
予算との関連におきまして、順を逐いまして誠意を以てその実現に当りたいと存ずる次第であります。甚だ簡単でございまするが、以上お答え申上げます。