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梅津錦一君 第二班の
報告を申上げます。主として東北
方面の仙台地区を中心に国の出先
機関を廻
つて歩いて来たのでありますが、私と松平両
委員並びに藤田專門員ほか二名を同伴いたしまして、三月六日の日に東京を出発して、七日から十日の日の予定でありましたが、一日殖しまして、十一日に亘る五日間、仙台地区所在の特別審査局東北支局、それから管区の経済局、それから管区特別調達局、警察予備隊、それから第二管区海上保安本部、これは余計でありましたが、特に一日延ばして、東北海区にある水産研究所を見てくれという水産研究所のほうからのた
つての要望がありましたので、水産研究所を
調査に行
つたわけであります。なお「かき」の種ですか、種「かき」を輸出する丁度作業中でありましたので、野々島という松島湾にある支所、野々島支所へ参りまして、「かき」の養殖乃至輸出に対する
状況を視察をいたしまして、宮城県庁を訪問しましたが、県庁における業務
実態は所管外でありますので、特にそうした出先
機関を中心に視察をして来たわけであります。以下順を逐うて
調査内容を御
報告申上げるのであります。
特別審査局東北支局は、昨年八月ポ政令即ち法務府
設置法の一部を
改正する政令第二六三号により、公職追放及び政党、協会その他の団体の結成禁止に関する覚書並びにその後に発せられた補足指令の命ずることを実施するために、
全国九地区に
設置された出先
機関の
一つでありまして、
予算定員は東北支局の四十九名に管内各県駐在官十五名を併せて六十四名であります。特審局は業務の性格上、職員の採用については特に思想
関係等極めて愼重なる注意を要するために、多くは縁故
関係等を通じて、安全確実なる者を採用するという建前をと
つているので、職員の充員については相当の苦心があ
つたということであります。又特審局の業務は常時第一線的活動を必要としてをり、且つ暴力団体の解散等の場合は身辺の危険も少くないのであるにかかわらず、職員の待遇問題については国家
地方警察、自治体警察等の特別職の職員と比較して、待遇の改善を考慮する必要があるという点を強調しておるのであります。なお現在
事務官一人当りの月額旅費が僅々三、四千円
程度では、事実第一線の
事務を十分達成することは不可能であろうと思われるのであります。
公職追放者の監査業務は、県に委任して県の
調査課で行な
つているのでありますが、県は管内の
各地方
事務所に要員を配置してこれに当
つている、ただこれら職員の身分は知事の監督下にあるのではありますが、
事務の運営については一切特審局の指揮監督を受けているという実情で、県の
一般吏員との間に寒冷地手当とか、ベースアツプ等、いわゆる待遇問題の点で不満の声があるようであり、又県側としても、現行の制度には不満があるようであります。公職追放該当者の監査の行動については、その追放該当者が知事との個人
関係等がある場合には、監査の実施の上に往々にして公正を欠く嫌いがあるということは、やむを得ないと称しているのであります。
仙台管区経済局は、昨年五月の機構改革即ち経済安定本部
設置法の一部
改正並びに経済
調査庁法の一部
改正によ
つて、昨年六月一日より仙台
地方経済安定局、仙台
地方物価局及び仙台管区経済
調査庁の三者が一体となり、仙台管区経済局と
なつたものでありまして、総務課のほか、調整部、物価部、監査部、査察部の四部制をと
つており、その下部機構としては管内各県に
地方経済
調査局を置いているのであります。現在職員数は本部職員が九十七名、各県にある
地方経済
調査局の職員が百六十三名、合計二百六十名であるが、業務多忙のため人員の不足を訴えている、現に職務上過労の結果数名の長期欠勤者を出している
状況であります。今回の視察においては、主として経済
調査庁系統の特別調達局業務の監査
状況について
説明を聴取したのでありますが、特調業務の
調査結果については、昨年十一月以来、両
機関の
関係官が相会して
調査結果の具体的な
事例について種々協議を試みた結果、特調側として改善すべき点を明らかにし、その実施に努力しているようであります。特別調達局の業務は漸次
事務に習熟して来ていることと、近来
事務処理の上に軍側から大分自主性を与えられて来ている
関係もあ
つて、終戦直後の両三年当時と比較して著しく政善されて来ているものと思われるのであります。特調業務の監査結果についてこれを概観しますと、需品
関係で非難される点は、何と言
つても業者の選定方法がまだ一部特定業者に限られている傾向があ
つて、門戸開放、機会均等の主義が未だ徹底されていない憾みがあり、業者名簿が整備されておらず、納入実績のある特定の業者が選ばれるという傾きがあるようであります。従来支払が遅延しがちなため、小規模の業者は資金逼迫の
関係もあ
つて漸次落伍して行き、自然大きな業者に独專される傾向があるようであり、又急速に軍の需要に応じ得るということが第一の必要條件となるために、勢い需品の価格がルーズになり、ひいては国費の濫費を招くという結果になる。三沢監督官
事務所のごときは、或る特定の商社と一括契約を行な
つているという
事例もあ
つたようであります。又
地方における需品契約は金額が五万円に制限されているにかかわらず、五万円を超過する場合は契約を幾つにも分割して形式を整えるということになり、制限額を設けているということも、ただ形式だけで
有名無実の場合が多いようであります。
次に、工事
関係では、土建業者が接待饗応に使用する金額が莫大なものであり、進駐軍
関係の工事は軍側の厳重な監督、而も短期間に竣工を要する場合が多く、且つ調達局及び監督官
事務所の監督又はその仲介を要する場合が多いために、これら
関係者に対する土建業者の接待費、饗応費或は寄附、協力等の形で、監督官
事務所の修増築、補助員、使用人等の給与、宿舎の斡旋等に投ずる経費が勢い工事費の見積の中に含まれることになるわけであります。土建業者の消費した雑費を
調査したところによりますと、請負額の七・三%或は九・二%、営業費中に占めるその割合が一三%或は一九%にも上るという実情で、
一般民間工事や公共
事業の工事等とは比較にならぬものがあるようであります。経済局の見解によれば、特別調達局
関係の工事請負業者が、前述のごとき接待費、饗応費、寄附、協力等をしても、なお多額の利益を上げているというわけは、特調当局の積算の甘さと監督のルーズさから来ているということであります。又役務
関係については、特調当局の責任である業者の選定、作業の取締、役務の検査、格付等が軍側の意向によ
つて左右され、制約されることが多いために、業者は巧みに軍側と直取引をして、特調当局を牽制し、不当の利益を獲得せんとする傾向があるということであります。
仙台特別調達局は、局長官房のほか五部(経理、契約、技術、促進、監督、管財)十八課に分れており、三月一日現在の職員数は
事務官一九八名、技官一五九名、雇傭員三〇五名、合計六六二名であ
つて、定員より十六名少ないが、近く採用予定の者が十三名あるから、ほぼ定員一杯の職員数であるとのことであります。仙台特別調達局の管轄は東北六県及び新潟県であり、各県及び主要の地に計九カ所の監督官
事務所があり、なかんずく三沢、八戸、山形の三監督官
事務所は所管
事務が大きい。又仙台特別調達局においても連合国軍人等、住宅公社の支部があ
つて、管内八カ所にすでに建設竣工を見た住宅があるが、現在利用されているものは僅かに総体の五分の二に過ぎないとのことであります。特別調達庁の
事務は近来職員が
事務に習熟して来ていることと、米軍側が特庁の業務運営に相当自主性を持たして来ているせいもあ
つて、概して業務の取扱振りが改善されて来ているものと認められるし、曾
つて支払遅延の点で悪評があ
つたようでありますが、現在は支払
事務改善のために、特に支払促進の係を設けて内外の
連絡に努めているというふうで、支払の面は著しく改善されておるようであります。
次に、特別調達局の業務の監査は、現在五系統の検査を受けている、即ち(一)、進駐軍の検査、(二)、会計検査院の検査、(三)、財務局の検査、(四)、特別調達庁本庁の検査、(五)、経済
調査庁の検査で、而も右の検査に立会う特別調達局の職員は概して主任級の幹部職員であるから、このため日常の業務に相当支障となる点があるようであります。今
昭和二十五年度の受験
状況を見ますと、会計検査院の検査は、仙台市における特別調達局を初め、出先七カ所に亘る検査を通じて、延べ百四十八日間、これに対し特調側の応接の
関係者数は延べ二千二百三十二人であり、経済
調査庁の検査は需品、工事、役務、解除物件を通じて、延検査日数百二十日、これに対する特調側の
関係者は延べ九百三十五人であり、仙台財務局の検査は延日数二十日間、とれに対する特庁側
関係者は百六十八人で、以上三者の検査に立会
つた特庁側の
関係官は延べ三千三百三十五入の多きに及んでいるのであります。
警察予備隊は、仙台市の東南約四十キロ、船岡町にある元陸軍火薬廠跡の建物に駐屯している。警察予備隊は千葉部隊長(二等警察正)の下に隊員約千名、米軍の将校少佐級が二名、アドヴアイザーとして常駐しており、その配下には同じく米軍下士官級の者数名がお
つて、部隊の修練作業等を
指導しているのであります。この米軍人と部隊員の間には多少意思の疎通しない面もあるようではありますが、千葉部隊長はカトリツク信者であり、人柄も温厚で、その間円満に調整をと
つているように見受けられたのであります。警察予備隊の開設後日が浅いせいもあ
つて、船岡キャンプの諸
施設は未だ整
つていない感が深く、部隊訓練の敷地として近接の丘陵に沿うた沼沢地約四、五千坪の埋立てを終
つて、目下地固めの工事中であ
つたのであります。たまたま昼食の時間に会い、一行は
希望して部隊員と部隊員の食堂で会食する機会を得たのでありますが、食卓を共にした部隊員は約五、六十名で、いずれも下士官に相当する下級幹部の者で、食後自由懇談の形で隊員の
希望、所感等を聞いたのでありますが、その一、二を御紹介しますと、一、新聞雑誌等その他読書室の設備が欲しいということ。一、娯楽室或いは映寫室等、いわゆるリクリエーシヨンの設備が欲しいということ。一、被服、靴下等は現在至
つて粗末なものであるが、靴下のごとき消耗の甚だしいものは、もう少し支給をよくして欲しいということ、昨年九月から現在まで七カ月の間に配給を受けた靴下はた
つた一定であ
つて、隊員は多く私費で購入して補給している
状況であるとのことであります。又計理班長をしている一幹部隊員の言によると、部隊における大小
各種の
施設等を行うについては、一々
中央本部に上申して、その許認可を受けなければ処理し得ない制度にな
つているが、これは各駐屯部隊に割当てられている
予算の範囲内で、現地調弁が容易にできるような便宜措置の途を開いて欲しいとのことであり、又部隊員の食事の献立はすべて
中央本部よりの指令献立によ
つて調理しているという、食器類は皆簡素な金属性の器で衛生的にできのいるものと思われるが、隊員の主食(
一般配給量の約六割増という)は麦飯で、その量は割に少量であると思われたこと、又副食物も馬鈴薯と生揚げの煮付が一皿であ
つて、カロリー計算の点はわからないが、極めて簡素な内容であると思われたのであります。
第二管区海上保安本部は塩釜に本部を置く、第二管区海上保安本部の管轄水域は東北六県の周辺即ち太平洋、
日本海に亘
つて約一千浬であ
つて、北海道の第一管区に次ぐ長い海岸線を有しているのであるが、
日本全土から見れば、北海道と西
日本という重要地区の中間にある
関係で、不法入国等の悪質犯罪は少く、
昭和二十三年本部の開設以来、不法入国を逮捕検挙したという
事例はないということであります。同本部の定員は、現在陸上勤務者三百七十二名、海上勤務者三百七名で、合計六百七十九名であるが、業務の内容から陸上
事務要員の不足を訴えているのであります。陸上本部職員の超過勤務は月平均実働六十時間を超えているのであるが、給与面は
予算の
関係で二十時間分、金額にして九百円
程度を支給しているに過ぎない
現状であるとのことであります。海上保安業務の改善の点で管区本部の要望しているところは、(一)、定員の増員、(二)、東北
地方沿岸の特異性に対する海難救助
施設の強化、(三)、
地方海難審判庁の
設置、(四)、職員宿舎の設備、(五)、海上保安官に対する被服官給の改善等を挙げているのでありますが、特に海難救助
施設の強化は優先的に考慮さるべきものと思われたのであります。現に第二管区における海難救助の実績を見るに、
昭和二十五年一カ年において、難破船の数は四百五十七隻、損害見積金額二億三千六百五十万円であ
つて、四百五十七隻の難破船中保安本部が救助に着手し得たものは僅かに十九隻であるとのことであります。これが
対策としては、第一に海上保安本部の基地を
増加すること、航路標識を整備すること及び現在配属されている老朽巡視船艇に換えて、相当な荒天にも長時間行動し得るような大型巡視船の
増加配置が必要であり、又燈台の増設及び遭難船の捜索のために、航空機の使用が可能になれば格段の効果を挙げることができるであろうと称しているのであります。これは人命の救助と国家財産の喪失を防止する上に真に軽視し得ない重要な
施策であると思われる。又民間の水難救済会のごときは、世相の変遷に会
つて昔日の面影なく、微力なものとな
つているということであります。
海上保安庁の
資料によ
つて、
昭和二十五年一カ年間における
日本の全水域に亘る海難発生救助件数を見ると、海難発生件数は計二千九百十三件(汽船千百三十件、機帆船千四百七十九件、帆盤三百四件)で、うち要救助件数は千四百五十三件とな
つているが、救助件数の方を見ると、その総数は八百七十七件(内訳
海上保安庁救助百六十件、民間救助六百八十七件その他三十件)で、救助率は六〇%にとどま
つているのであります。
塩釜にある第二管区海上保安本部を視察したついでを以て、同地にある水産庁の
附属機関たる東北海区水産研究所を視察したのでありますが、この水産研究所は従来の農林省水産試験所が八海区に分散されて設けられたもので、東北海区水産研究所もその
一つであるのであります。この水産研究所が実際発足したのは昨
昭和二十五年度からであり、現在極めて小規模のものではあるが、所長初め水産
関係の専門の学者が集ま
つており、現在この研究所が担当している主要課題は「さんま」と「かつを」の研究であります。近年我が国の沿岸漁業はいわしの不漁問題を初め水産界にさまざまな問題を生起しており、漁民の死活問題、国民の蛋白油脂給源としての水産漁獲物の問題がやかましく論議されているが、漁民の
指導、水産業に関する諸
施策の問題は、勿論飽くまでも科学的研究を基礎とすべきであることは申すまでもないのでありまして、それにしては現在のこの水産研究所の組織、経費等を見るに、如何にも不備不徹底なものがあると思われるのであります。東北海区水産研究所は、所長の下に資源部、増殖部、利用部の三部があり、八戸港に資源部の出先として支所があるのでありますが、通じて職員数は四十八人、経費は
昭和二十六年度
予算によれば千二百七十六万余円であり、人員、経費共に不足のために十分な研究ができず、漁民の要望に応えるには余りに貧弱な
状況であ
つて、研究所の当局はいずれも專門家、学者であるために、ただ許された人員と経費の範囲内においてそれぞれ良心的に熱心に勉強しているようでありますが、人員経費共に現在の約七、八割見当は拡充してやる必要があるようであります。これは同水産研究所の
調査研究による一見解でありますが、近年沿岸に来游する「まいわし」群が急激に減少して、殆んど絶滅に近い
状態であると憂慮されているが、一方遥か沖合の「かつを」漁場には「かたくちいわし」の游泳が頗る多い事実から見ると、近来寒流勢力の発達につれて、「まいわし」の産卵区域が沖合に移り、沖合に多量に廻游しているということが想像されるので、従来の漁法を改め、沖合で漁獲し加工する「いわし」工船漁業な
ども新たに計画さるべきであるということであります。要するに終戦後我が国の水産業界は引揚者或いは他産業の
失業者等を吸収して、その数においては一段と態勢強化の状、態にあるが、徒らに旧来の漁法、加工技術等の枠に閉じこも
つて自縄自縛のままに放置すべきではなく、積極的にこの種研究所の科学的
調査研究を推進せしめて、漁法技術の改善発展を図るべきであろうと思われるのであります。
時間の都合で、県庁訪問は極めて短時間佐々木知事、崎田副知事等と会談した
程度でありまして、格別御
報告するような案件はありません。現在宮城県庁として特に委讓を
希望している出先
機関としてはなく、県側の意向として話に出た一、二点を御紹介しますと、一、特別調達庁の下請業務はこれを完全に県の
事務として県に任せるか、若しくは特別調達庁の直営
事務として欲しいこと。これは県の渉外第二課約二百名の職員が終戦処理に関する特別調達庁の
仕事を担当しており、管内四カ所の渉外管理
事務所(職員百四十人)は知事の監督下にあ
つて、身分権は知事が持
つているが、
仕事の実体は特別調達庁の指揮下にあ
つて、主として役務
関係の
仕事をしているので、県としてはむしろこれを特別調達局の直轄
事務に移すようにするか、或いはこの
仕事を全面的に県に移管して欲しいというのであります。
米の供出に関する
府県別供出割当については、概して東北地区の各県割当は関東以西に比較して加重の感じがする、食糧
事務所や
統計調査事務所などは
廃止されても別に支障はないというのであります。なお今回の視察に際して、それぞれ出先各
機関から若干の
資料を入手しておりますので、必要に応じ御覧を願いたいと存じます。
以上を以て
報告を終ります。