○平林太一君 今の新谷君のに関連して、又過日私から発言いたしました
内容にも関連いたしますが、この本法の制定に対しまして深く謙虚の
態度を以て臨まなければならんということを申上げたいと思うのでありますが、御
承知のようにこれがこのような必要を生じて参りました最大の原因をなしておりますもの、いわゆる電燈等の
施設のない、極めて辺陬の
地方におきまして、これは私
北海道にも行
つて参りましたし、一昨日は栃木県に参りましたが、そういう
事情を見まするというと、いわゆる今日約一千万人にも達しておるであろうと称する
無線放送に対する聽取の盛んな実態の中に、なお且つ土地の実情によりまして、或いは生活
程度の極めて低い
関係からいたしまして、それを聽取することができないというような事態に対しまして、それらの
関係地方におきましてやむにやまれない
事情としてこの有線の
施設、いわゆる私の
施設を作
つて、そうして今日文化の均霑に浴し、又生活の一助としての楽しみを強化することといたしているのであります。こういうことがその根底をなしておるものでありまして、そしてこれに対しましては若し今日、嚴しくこれを何か
届出、或いは秩序上
届出は止むを得ないでしようが、
許可というようなこと、或いはその
監督関係の所管を何か大きくこれを取扱いをするというようなことにな
つて参りますことは、非常にこれは注意しなければならないことでありまして、それならばむしろなぜそのような
地方に国家が進んで
一般……いわゆるこの
無線放送、
無線聽取を、聞き得られるだけの
設備をなぜ国家がしないか。そういうことを国家の力を以てしておらんにもかかわらず、たまたま
地方の実情としてそれら
施設関係の創意工夫、それぞれの苦心をして、又
地方におけるこれら有線を通じての
放送の聽取等については、それらの意欲に対しまして
地方の先覚者という者は非常ないわゆる愛郷、若しくは愛国の熱情を持
つてそういうことを斡旋、心配してやつた。そして今日それを安らかに楽しんでおる。突如としてそれに対しまして国として
一つの強い
法律の
規正を与えるというようなことになるようなこの
法律の作りかた、及びそのような
運用をいたし得られないような処置をと
つて行きますというと、これは私は容易ならんことだと思
つております。でありますからこの点を深く考慮せられまして、いやしくも本法の
施行によりまして、これらの従来しておりましたいわゆる
無線による
聽取者の、又今後そういう必要に迫られている
地方がありながら、又計画しておる
地方がありながら、それが非常に何か脅威を受けて、自然に挫折しなければならないというような事態に立至ることも深く考慮に入れて、この
法律に対する取扱いの方向というものをきめて行かなければなりません。
只今関係者から
お話を聞いて見ますと、公衆
施設に対して何か障害を与えるというのであるが、現在私
ども北海道あたりで見ましたところによりまするというと、公衆と申しても、いわゆる私設と申しましても、私はそう違うものではないと思う。私設をいたしておるところの国民皆これ公人である。公衆とはどういうものであるか、それらの人々皆公衆、公けの衆人、人々ではないか。それらを
余り字句に拘泥いたしますことは、国家
施設としては公衆
施設というようなものは官設……昔の言葉で言えば官設でありましよう。そういうことに対していわゆる私設というかも知れません。併しこれは公衆と見て差支えないことである。それならむしろ公衆
施設に
地方の公衆が協力をいたしておるという態勢である。日本のいわゆる
放送及至有線を通ずるところのそういう文化向上の
方面に対する
施設として、むしろこれは礼讃顯彰、大いに褒めてやるべきものじやないか。にもかかわらず、それを逆に何か他人行儀を以てこれを取扱い、
規正をして行こうということは、よほど私は根本観念において大いに
考えを改めてもらいたい。そして今後ますますそういう
施設が伸び伸びとして行われるような方向にして行くべきである。若しそれこれが悪用されるというようなことに対する憂慮は、必ずそういう点も
考えられますが、そういう点は極めて、又そういう
方面でこれは
取締をいたして行くべきである。いわゆる治安警察
方面の
取締でこれは行きましよう。今日といえ
ども放送に対する、いやしくもこの国に障害を与えるような
放送は、その
方面で障害を
取締るべき
方法があるはずである。だからこの
施設に対しましてはできるだけこれが助長発展しそ行くような方向にこの
法律の適用というものを
考えなければならん。かように思うのでありますが、今まで伺
つていると、これを法を立てて、
法律は直ちにそれに対する
取締をし、そして直ちに処罰行為をする、こういうような感覚を与えますが、本法成立の根本というものはそれとは違うと思います。私はだからそれをよく
一つ考慮に入れられまして、そして円滑な、いわゆる有線に対しまする
地方の、折角それらの民衆の意欲というものが、その希望を達成するような方向にいたしたいと思う。その面におきましていわゆる
届出及び
許可に対しましての限度というものがおのずからきま
つて行くのでありますから、それを十分にいま一応考慮せられまして、これがいわゆる非常な行き過ぎのないように
一つ処置をするように願いたい。おのずから法文におきましても、私はこの面におきまして若干字句の修正等をいたす個所が数カ所あると思います。提案者におきまして十分に御考慮願いたい。これは尤も衆議院と参議院とは極く兄弟の
関係ですかすから申上げますが、私の信ずるところから申しますれば、実はこれは
国会が提出側になるべき法案ではない、本来ならばやはりこれは
官庁が、いわゆる
電波監理委員会なり或いは
電気通信省なりが一応の案を作成して来て、それを
国会としては極めて、何といいますか、大きな
一つ広い幅を持
つて、そうして
余りいわゆる大衆というものを奴隷扱いにしないで、或いは信用して若しくは低級に見ないで、民衆を高い感覚に置きまして、そうしてこの法というものを修正或いは削除して行くべきものである。かような
考えておりますが、併しこういうふうに
国会に提出されたことにつきましては誠に妥当であると、この点は思うのでありますが、そういうことを
一つ考えて頂きたい。
余りこの
取締は、これは日本全は今日敗れたりといえ
ども、決して野蛮国民ではない、世界に誇るべき優秀なる民族である。嚴としてこれは動かすことができません。その民族に対して、野蛮国民のような扱いをいたしますことは非常によろしくないと思います。いわゆる民主主義の精神に徹して、そうして
余り疑わない気持を持ちまして、いわゆる高い、民衆に対しまする参議院としては、儀礼として、情操というものを高く持ちまして、この法案に対しまする作成をされるように
一つ希望いたしたいと思います。提案者に対しまして私もそういうことを申上げたのでありますが、この点につきまして提案の御趣旨につきまして又伺うことができれば幸いと思
つております。