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参考人(
岡村武君) 本日は
独禁法並びに
事業者団体法の
二つの
法律につきまして、
業界の代表といたしまして私
どもお招きを頂きまして、
意見を申上げる機会を頂きましたことを誠に有難く御礼を申上げたいと存ずる次第であります。
只今の
工藤さん並びに
仲矢さんの御
意見は、
二つの代表的な総合
団体の御
意見でございまして、私
ども全く全面的にこれに同調をする次第でございます。而もこの問題はかねがねこの
二つの
団体を主にいたしまして、
業界の代表者が集まりまして仔細に
検討を尽したその総合の結果でございまして、只今お述べになりました御
意見は、あらゆる
業界を通ずる共通の極めて熾烈なる
要望であ
つたとおとりを願
つてよろしいのだと思うのであります。
従つてさような点につきまして重ねて私から申上げる必要もないかと存じまするが、いずれにいたしましてもこの
事業者団体法の
立法経過を見ますると、いわゆる戰時中の
統制団体を除去するという点にその主眼があ
つたことは明瞭でございます。
従つて戰時中の
経済団体の過去の性格が
統制の補助と
業界の
組織化とにあ
つたために、当局がその幻想に惑わされた結果、
アメリカは勿論のこと、イギリスにもフランスにもドイツにもないという極めて特異な性格を持
つたものができ上
つたものでございます。
この
法律は先ほどからお述べにな
つておりまするように、その所期の
目的は今日の段階においては一応達成したものといたしまして、大幅の
改正をなさるか、或いはいさぎよく
廃止すべきものであるという結論は、恐らくあらゆる
業界を通ずる
意見であろうかと思うのであります。特に強調いたしたいのは、輸出貿易について
アメリカではウエツプ・ポメリン法が
制定されまして、アンチ・トラスト法の
適用を免除している。欧州では最近は、
鉄鋼について申しますと、
鉄鋼シンジケートが結成されたような
事情もございまして、これらの諸点に鑑みまして、
我が国においても
アメリカのウエツプ・ポメリン法のような
法律が一日も早く
制定せられるということが極めて望ましいのであります。自由を基調といたしまする
アメリカの民主的な
経済政策の流れにおきましても、一九三三年のNIRA、つまりナシヨナル・インダストリーズ・リカヴアリー・アクト、この
制定されました前後の
事情等は非常に私
どもの以て他山の石とすべきものだと思うのでありますが、これは明瞭にカルテルの助長政策でございまして、後に違憲とされましたけれ
ども、とにかくある。これは命脈を保
つて当時の
アメリカの
経済界の危急を救う役目を相当果して参
つたという事実は否むべからざるところであろうかと思うのであります。尤もこの点につきましては、只今の
アメリカの
一般の
考え方は、これに似たような
考え方をとることは面白くないというふうな
考え方でございまして、先般私が
アメリカでこの問題について特に連邦
商業委員会、或いは司法省まで参りましていろいろと
意見を尋ねたのでございますが、こういう
考え方を今の
日本の
経済界に与えることは我々としてはとらない、又ウエツプ・ポメリン法の
適用になる
団体もどちらかと言えば減少をしておる、そういうふうな角度から
日本の
経済界の
組織化を
考えるということは、これはやめたほうがいいだろうと、こうはつきり申してお
つたのでございますが、これはまあ時の流れであり、政策の変遷でございまして、これを参考にいたしますることは一向差支えないかと思うのでございます。この
法律の個個の微細の点に亘りましての
意見は只今のお二人の御
意見でことごとく尽きておりまするので、それを繰返す煩を避けたいと思いますが、私
どもは業種別の
団体でございますので、
現実の問題としてこの
法律が如何に不都合な事態を招来したかという二、三の例証を申上げまして、御参考に供したいと存ずるのでございます。
第一に屑鉄の問題でございまするが、御
承知の
通り屑鉄は非常に大幅の値上りをいたしまして、最近一万二千円のマル公が
制定せられたのでございますが、その前は六千三百何十円、その前は更に四千円というふうな調子でございまして、実際市価と非常にかけ離れてはお
つたのでございます。
従つてややもするとこのマル公を突破する実際の市場価格が横行する心配がございましたり、又
現実に
違反行為が相当生起いたしましたことは御
承知の
通りでございます。そこで
業界といたしましては、たとえこのマル公が不当に安い、市価から隔絶した値段であることにいたしましても、いやしくもマル公として存する以上はこれを嚴守すべきであるということから、そのマル公嚴守の申合せをいたそうということに
なつたのでございまするが、これをこの
事業者団体法の
条文に照らして見ますると、やはり
価格統制を対象とするということは明らかでございまするから、
事業者団体法の違反になるわずらいがある、第五条第四号に果して抵触するかしないかという点について非常に疑義を生じたのでございます。結局これはGHQにも、関係
方面にも、或いは公取
委員会にも御注意を申上げたのでございまするが、マル公を維持するという申合せ、つまり
法律を遵守するという申合せが
法律に牴触するかしないかということについて心配をしなければならんような事態そのものがこの
法律の矛盾を物語
つておる、かように
考えるのでございます。
第二の例といたしまして、屑鉄の不足を緩和いたしまするために酸素製鋼という新らしい製鋼法が
研究され、現に実施の段階に入
つておるのでございますが、これは
日本では何分初めての製造法でございまするので、数社が
共同研究をするということになりまして、連盟がそのお世話を承わ
つたのでございます。この
研究は極めて有用な
研究であるというので
政府から補助金の交付を頂けるようなことにも相成
つたのでございまするが、これをその関係数社が
共同団体としてやるということになりますると第三条の届出も要りまするし、第五条第十号の認可を受けなければならんということになるのでございますが、かようなことはこの予算の支出が年度末になると至急を要することになる場合もございますのでなかなか早急にはできかねることもございまするし、又このことはむしろ奨励すべき
性質のものでございますので、第五条第十号のごときものは当然
削除されるべきものとこの一例から申しても
考えられるのでございます。
第三の例といたしましては製鉄の輸入に関しまして数社
共同しなければうまく行かんという場合が多々ございます。御
承知の
通り鉄鉱石にいたしましても、原料用の石炭にいたしましても、或いはマンガン鉱等にいたしましてもその所要いたします製造
業者は僅かに数社でございまして、その用途は限定をされてほかには使いようもないしろものでございます。これが数社が若し
共同をして買入れるということが許されますると、その価格の点におきましても、或いは輸送の便宜の面におきましても非常に都合よく参るのではないかと思われるのでございますが、これ又
法律の建前から申しますると第五条第十三号を以て律せられるということに相成るのでございます。殊に極く少量の需要者が集ま
つて共同工業をいたしまする必要が緊切に認められるのでございますが、つまりこれは
一つの船をチヤーターいたしまして、それに積合せて持
つて来るというふうな場合に、そういう
共同的な操作が許されませんと非常に不都合が起るということは自明の理であろうと存ぜられるのでございます。その他輸入の面におきましてもこの
法律の制約が非常な
日本全体の福祉、鉄鉱石自体に見ましても、その間における市場の獲得等に妨げをなしておるということは他の
産業と全く同じでございまして、かような極めて少い、二、三の僅かな例から見ましても、この
事業者団体法が現在の段階におきましてもはや必要のない、或いはむしろ害をなす存在であるということは明瞭であるかと存ぜられるのでございます。
何とぞ
業界のかような希望が達成できますよう御
研究を煩わしまして、一日も早くさような
目的達成のためにお力添えを頂きたいと思う次第でございます。