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1951-03-22 第10回国会 参議院 通商産業委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十二日(木曜日)    午前十一時十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○輸出品取締法の一部を改正する法律  案(衆議院提出) ○中小企業等協同組合法の一部を改正  する法律案内閣送付) ○地方自治法第百五十六條第四項の規  定に基き、日用品検査所出張所の  設置に関し承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○熱管理法案衆議院提出) ○通商及び産業一般に関する調査の件  (資本蓄積、特に資産評価に関す  る件)   —————————————
  2. 廣瀬與兵衞

    ○理事(廣瀬與兵衞君) これより通産省委員会開会いたします。  今日は輸出品取締法の一部を改正する法律案中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案予備審査)。地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、日用品検査所出張所設置に関し承認を求めるの件、熱管理法案、以上四案について質疑をお願いいたします。第一番の輸出品取締法の一部を改正する法律案は、提案者小川平二君が今日は欠席になつたのでありますが、政府委員のかたがおいでになつておりますから、あらかじめお含みおきの上御質疑を願いたい、こう存ずる次第でございます。
  3. 加藤正人

    加藤正人君 ちよつと伺いますが、輸出品取締法の第三條の製品、及び第四條の製品は、第五條官報公示を義務付けているのでありますが、第七條についてはさような表示が法文のうちに謳つてありませんが、どういう形式で指定を行うのでありますか、第五條におきましては、「経済安定本部総裁の同意を得てこれを定め、その施行の期日の少くとも三十日前に、これを官報公示しなければならない。」というように書いてありますが、この点はどういうふうになりますか、更に又どういう品目指定するおつもりでありますか、そういう品目に対する予定、それから今後どういうものがこれに指定されるという見通し、更に又検査設備とか、検査人の資格についてはどういう條件をお考えになつているか、それらの点についてお聞きをしたいと思います。
  4. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 只今加藤委員から今度の改正の第一点でございます登録制度実施に関連しましての御質問に対してお答えを申上げたいと思います。  今の御質問通り、第七條の二におきましては、その指定物資指定方法につきまして、従来の第三條第四條の指定の場合には具体的にそのやり方が法文上明記されておるのに対しまして、直接にはこの指定がないかのごとくに見えるのでございますけれども、第七條の二の指定物資につきましては、実は登録基準をその指定物資ごと公示をしなければならないという規定に相成つておるのであります。即ち第七條の五の第二項におきまして、前項一号の種類及び性能並びに同項第二号の條件は、利害関係人意見参考としてこれを決定し、これを官報公示しなければならないということになつておりますので、その登録基準公示をいたします場合、各物資ごとにこれをいたすことになりますので、その登録基準公示の場合に当該物資についても当然公示の内容としてこれが現れて来るわけでございます。その意味でこの第七條の二の指定物資登録基準公示と同時に公示になるというふうに御了解を願いたいのであります。  なお検査機関登録を必要とするその指定物資はどういうものを考えておるかという御質問でございますが、これは今回の登録制度というものが、国が別にきめました検査基準に基きましての検査が確実に正確に行われるかどうかということを保証する意味におきまして、或る程度検査器設備或いはその検査人知識経験を必要とする、そういう高度の技術を要する点から今般の登録制度を行うわけでございますので、一応今日考えておりまする指定物資対象としましては、カメラでございますとか、或いわ顯微鏡でございますとか、そういう光学機械関係、或いはミシンその他の機械類関係が主なる対象になろうかと考えております。なお、その検査設備或いは検査人知識経験としては大体どの程度のものを考えておるかという御質問でございますが、その点につきましては、これはまあ検査基準に基きましてこれを具体的にきめて参ることになるわけでありますけれども、例えば只今申しましたカメラを例にとつて申しますと、シャッターの試験器でありますとか、或いはシャツターの繰返しの試験器でございますとか、或いは分解力測定の装置でございますとか、    〔理事廣瀬與兵衞君退席、委員長着席〕  或いは焦点距離測定器でございますとか、そういうようなものはどうしてもこれは検査の場合に必要な設備でございますので、そういうものを検査設備基準として考えたいと存じます。なお、検査人知識経験程度でありますが、これはいろいろその具体的物資につきまして異なつて参るかと存じますけれども、一般的に申しますれば、或る程度学歴と或る程度の実際の業務に従事した経験、その学歴及び実務の経験、そういう両面からその検査人に必要なる知識経験というものについて基準を設けて参りたいと考えております。
  5. 加藤正人

    加藤正人君 もう一つ承わりたいのですが、第七條の四でありますが、事業者団体法第四條及び第五條規定適用を受ける団体というのは新らしくできた規定でありますが、従来はこの事業者団体法適用を受ける団体でも検査機関となり得たのでありますか、そしてこの規定が加わつたために検査機関となり得ないものができて来るようなことはないのでありましようか。その点について。
  6. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) お答え申上げます。この第七條の四の第四号に、只今指摘通り事業者団体法第四條及び第五條規定適用を受ける事業者団体登録を受けることができないというふうに相成つております。これは御承知の通り事業者団体法におきましては、その事業者団体が行い得る事業即ち許容事業と、行い得ない事業即ち禁止事業とが明瞭に法律規定になつておるのでありますが、この検査というような事業につきましては、実は事業者団体法明文上では、これは許容行為のほうにも又禁止行為のほうにも出ていないのでありますけれども、公正取引委員会の従来のこの検査事業についての解釈乃至は運用方針としましては、公取委員会に対しまして申請がございましても、大体認可をしないという方針に相成つておるようであります。そういう意味からしまして、この事業者団体法の第四條第五條規定適用を受ける事業者団体については、登録を受けることができない、こういうことにここに明文が設けられたわけでありますけれども、これの半面といたしまして、中小企業等協同組合につきましては、事業者団体法の第六條におきましてこれが除外されておるのであります。例外として協同組合については認められておりますので、この第七條の四の今御指摘運用としまして、協同組合につきましては、検査事業について登録を受けることができるということに相成ります。なお今日事業者団体であつて検査をやつておるものは全然ございませんし、又同時に今後この第七條の四の四号の規定の挿入の結果従来やつておる検査事業ができなくなるという事業者団体も起きないわけでございますが、従来の検査機関、いろいろな各業務種別検査団体がございますが、いろいろ解釈上この事業者団体法第四條、第五條規定適用を受ける事業者団体ということには従来の検査機関はこれに該当しないという解釈をとつておりますので、この規定が入りましても従来の検査機関につきましては、今後も引続き登録を受けることができるということになつて、実際上混乱とか或いはその他の支障は生じないものと考えております。
  7. 加藤正人

    加藤正人君 それでは従来はかような明文がなかつたのであるが、公取のほうで今度の七條の四の規定のようなことをやつてつた従つて現在認められておるものは今後も認められるのであつて、この規定が加わつたために検査機関となり得ないものが新規にできるということはない。例えば紡績のほうでやつておる検査協会というようなものは今後も認められて行くというふうに承知して差支えありませんか。
  8. 井上尚一

    政府委員井上尚一君) 全くその通りであります。
  9. 加藤正人

    加藤正人君 それからもう一つ承わりたいのですが、事外国に関することでありますからちよつと速記を……。
  10. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 速記をとめて下さい。    午前十一時二十八分速記中止    ——————————    午後零時十五分速記開始
  11. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 速記を始めて……。
  12. 下條恭兵

    下條恭兵君 只今非常に石炭が重要であるからこういう法律を作るのだというふうに長官のほうから御説明があつたのですが、私は日本の国情からして、非常に石炭が重要であるということは勿論わかりますけれども、同時に鉄に対しても綿花に対しても重要であるということは言えると思うのです。そうするとだんだんこういう法律ができると、次から次にこれに似たような法律を作ることが当然起つて来ると考えられるために、将来の問題としてはつきりして置くほうがいいとこう考えるわけです。この点に対して提案者はどういうふうにお考えですか。
  13. 中村純一

    衆議院議員中村純一君) 只今申上げましたように、この問題は石炭を主としておるものでございまするが、全く技術的な見地におきまする、技術者技術的な意見を尊重しろという宣言的な規定でございます。類似のケースが将来起きまする場合には、これは又御意見のようなことを考える場合も出て来るかとも思いまするが、なおこれは又今後本法律実施後の状況等によりまして、将来の問題は又そのときに考えて行くべきことではないかと考えておるのでございます。  又先ほどの特殊な立場を持ちましたものが、この條文を楯に取つて無理難題を吹つかけるだろうというような御懸念の点でございまするけれども、これはさような場合はこの種の規定があつてもなくても、そういう特別な立場で働きかけますものは、これは又別の見地で十分対処することを考えて行くべきではないかと、かように考えておるのでございます。
  14. 下條恭兵

    下條恭兵君 そうしますと、提案者意見としましては、この第六條第五項というのは、折角熱管理を効果的に実施させたいための蛇足みたいなものだとこれを解して、仮に実際さつき私が申しましたように、場合によつて何か必要から必ずしも尊重しない場合があつても、そのために末段のほうにある罰金に処せられるとか何とかいうことがないというふうに解釈してよろしいですか。
  15. 中村純一

    衆議院議員中村純一君) お説の通り考えておるわけでございます。
  16. 下條恭兵

    下條恭兵君 今一つお尋ねして置きたいと思うのでありますが、これは説明によりますると、消費量千トン以上というような非常に大企業だけを対象としておられるようですが、これをだんだん中小企業にも及ぼして来るというような考え方をお持ちなんですか、どうですか。その点一つお尋ねしたい。
  17. 中村純一

    衆議院議員中村純一君) この法律の直接対象といたして考えておりまするものは、お話のごとく千トン以上を消費するものを考えておるのでございまするが、それ以下のものにつきましては、大体五百トンから千トンの間ぐらいを消費いたしまするものにつきましては、都道府県におきまして本法律案に準じた指導をさせて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  18. 下條恭兵

    下條恭兵君 そうなりますと、大企業はとにかくとしましても、中小企業なんかでは非常に従来熱管理に対する観念がなかつたために、急速に設備の改良でもやらんとなかなかうまく行かないというような工場がたくさんあるだろうと思うのですが、こういうものに対して設備改善に対する何か補助とか助成とか、そういうことの考えをお持ちなのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  19. 中村純一

    衆議院議員中村純一君) 御尤もでございますが、その点はまあ通産省の所管から申しますと、中小企業庁あたりと連絡をとりまして、できるだけ中小企業そういつた方面の資金的な援助、或いは面倒を見させようと考えております。
  20. 下條恭兵

    下條恭兵君 折角法律を作るのですから、できればそういう設備改善のための長期資金の斡旋か何かのような準備までしてこの法案をお出し下さつたのなら誠に結構だつたと思うのですが、そういう点に対して引続いておやりになる御計画はおありですか、どうですか。
  21. 中村純一

    衆議院議員中村純一君) 只今の点は、実はまあこの法案提出いたしまするまでに相当考慮もいたしましたし、又関係の先きとも十分相談をいたしたのであります。今回のところはそこまで参りかねる状況にありまして、併しながら当然又それは考えなければいけない問題でありまするので、現状で許しまする範囲におきましても無理なことでありまするが、将来の問題といたしましては是非ともそういう方向に持つて行きたい、かように考えておる次第であります。
  22. 下條恭兵

    下條恭兵君 最後にお願いいたして置きます。私はこういう法案はもうとつくにあつて然るべき問題であると思うのでありますので、法案自体に対しては私は賛成なんでありますが、むしろ大企業は従来それぞれ研究もし、改善もして来たと思うので、むしろ大企業よりも中小企業のほうがこういう点は指導なり、助成なりが大きな問題になつて来ると思うのでありまして、これは結局国際競争のためにも是非こういう面の合理化からやつて行かなかつたらいけないと思いますので、どうか一つ引続いて折角御研究のところをそういう面において実現するように一つ御盡力を願いたいと思います。
  23. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) ほかに御意見はありませんか。それでは一旦委員会は休憩いたしまして、午後一時から再開することに御異存ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは午後一時から再開いたします。    午後零時二十四分休憩    ——————————    午後二時六分開会
  25. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは委員会を再開いたします。通商及び産業一般に関する調査の一環として資本蓄積、特に資産評価に関する件を取上げて議題といたします。  速記を止めて下さい。    午後二時七分速記中止    ——————————    午後二時四十分開会
  26. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 速記を始めて下さい。それでは参考人のかたから御発言をお願いいたします。なお念のために申上げておきますが、意見を開陳されるという意味で御発表を願いたいと思います。
  27. 中島俊一

    参考人中島俊一君) 私、紡績協会中島でございます。  私はこの問題について再評価最高限度の問題と、それから第二に再評価税の問題、この二つの点について申上げたいと思います。第二の再評価税の問題はあとのかたからもお話があると思いますが、私は特に再評価最高限度の問題について強調して申上げたいと思います。前回の再評価は我々のかねての主張でございまして、企業として資本食潰しを避けるため固定資産の再評価をしなければならないということはしばしば繰返して来たのでありますが、結局前回制定されました再評価法を見ますと、その再評価法定限度が一部の産業に対しては非常に低くて、このためにそれらの企業は適正な減価償却実施し得ないで、引続き資本食潰しを継続しておるという状況でございます。元来企業の側から申しますと、再評価固定資産の取替えを可能にして適正な償却をするという意味にあると思うのでございますが、その意味から見れば、当然再評価最高限度はあらゆる企業固定資産時価を包含するように定めるべきが理論的に妥当だと思うのであります。これは或る企業利益があるとかないとかいう問題と別個の問題であると思うのでございます。従つてそれが国際的に全然陳腐化しておる設備とか何とかいう場合は別でございますが、そうでないときには、仮に利益があつてもなくても、損失であつてもそれは償却の繰延べその他の別個措置でこれは解決すべき問題で、再評価は飽くまでも適正に減価償却ができるような線に定めるのが妥当であると思うのであります。今回政府において新たに資本蓄積見地から再評価の問題を再びお取上げになるようでございますが、この場合には単に前回最高限度範囲内におきましてこれをやるというような姑息なものでなく、進んで最高限度引上というような積極的な措置を織込んで、企業をして真に適正な減価償却実施せしめる途を開くべきだと思うのでございます。一例を挙げますと、我々紡績業においてどれだけ現在の再評価後なお資本食潰しをやつておるか、概算的な数字で御説明いたしますと、現在紡績業の一錘当りの再評価額は四千百六十二円程度に大体再評価されておるのでございます。これに対して現在の紡績の持つておる設備三百四十万錘をこれに掛けますと、大体百四十一億程度の再評価前回の再評価によつて行われておるということになるのでございます。ところが現在新らしく設備を新設いたしますと、大体時価にして一錘当り二万円程度するのでございます。これに耐用年数建物は平均四十年、機械は二十五年として、過去の経過年数に応ずる減耗分を考慮すると、錘当り一万八百二十円となり、これに三百四十万錘を乗ずると三百六十八億円となるわけでございます。従つて現在当然あるべき紡績業帳簿価格は三百六十八億円であるにかかわらず、現在行われておる再評価額最高限度に掣肘せられて百四十一億円程度しか評価されておらない。従つてその差、二百二十六億円が評価不足額として現われておるのでございます。これを一般的、標準的な計算をして償却率を見ますと、大体二百二十六億円の評価不足額に対して、償却不足が十六億五千四百万円生ずるわけでございます。十六億五千四百万円の償却不足額に対して現在法人税の三五%が掛けられておりますから、その課税額は五億七千九百万円、それから事業税関係は、翌年の法人税から損費が認められますけれども、損費が認められるということは、翌年度において法人税相当額の三五%だけが返還されるということでありまして、六五%はやはり余分に課税されるという見地計算いたしますと、その分によつて一億二千九百万円が事業税において課税されておる。従つてその法人税課税額の五億七千九百万円と、事業税のうちで翌年に返還され得ない一億二千九百万円と両者の和七億八百万円、大体これくらいの額が年々当然納税しなくてもいいものを納税しておる恰好によつて資本食潰しを続行されておるというようなことになるのでございます。こういうようなことで私どもとしては今回の再々評価措置おいては是非最高限度引上を織込んで頂きたいと思うのでございます。  それについてその具体的な方法といたしましては、理論的に申しますると、むしろ残存耐用年数業種ごと設備実体によつて確認して、それによつて既経過年数を算定する方法が妥当だと思うのでございます。例えば二十五年の耐用年数のものであつて、現在までに三十年帳簿では経過しておる。従つて後五年しか残つていないというものについては、実際その設備を見てあと十五年持つものであるならば、それは二十五年から十五年引いた十年が経過年数であつて、それの妥当な時価はむしろ十年の経過年数によつて算定すべきだと思いますので、理論的に言えばそういうふうな設備実体を確認して、最高限度をきめ、既経過年数をきめるという方法をとるべきだと思うでございますが、これは実施上いろいろ具体的な面で困難な点があると思いますので、最高実施容易な左の三点について最高限度引上を行いたいと希望する次第でございます。即ちその具体的方法と申しますのは、既経過年数計算定額法併用を認めるということでございます。元来定率法企業会計安全性という意味では妥当ではございますが、過去の経過年数に対応するその設備減耗度計算する意味から申せば、むしろ理論的に言つて定額法のほうが正しいではないかと我々は思つております。そういう意味で、必ずしも定額法に限定する必要はないにしても、少くとも定額法併用という途を認めるようにお願いしたいと思います。  それから第二に、これと共に同時に実行して頂きたいことは、前回の再評価基準物価指数採択時当時以後の物価騰貴を考慮して再評価限度を定めて頂きたいと思うのでございます。この二点を同時に織込んで実施して頂きたいと思うのでございます。これも数字で御説明いたしますと、紡績業の土地、建物機械全部合せまして、一錘当り大体六十五円という数字になつております。これは標準的な価格でございまして、個々の具体的な場合にはいろいろとございますが、一応標準的は六十五円になつております。これについて前回物価指数採択時から後の物価指数上昇は大体三四%でございますが、一方償却のほうが一年分増加しておりますのでこれを織込みますと、物価指数上昇だけが大体前回に対して二五%殖えておるのでございます。それからさつき申上げました定額法を採用した数字を用いてこの一錘六十五円の標準価格計算いたしますと、前回に対して大体五九%くらい殖えることになるのでございます。従つて両者併用しますと、大体一一四%の増加になるのでございます。先ほど申上げましたように綿紡績業の一錘当りは大体現在再評価は四千百円程度にしか評価されておらないのでございますが、実際時価は二万円になり、これに中古品としての経過年数を見たところでかなり高いものになるべきなんです。従つてこの両方の今の方法を織込みますと、大体一錘当りが八千九百円になつて企業安全性から見て若干低いとは思いますが、少くとも最小限度この程度最高限度引上が行われなければ、紡績業として適正な減価償却を行うことは不可能だと思うのでございます。以上の再評価限度引上問題について我々は強く希望する次第でございます。  それから第二に再評価税の問題でございますが、再評価税についても我々は本来再評価というふうなものは一つの価値の是正であつて、これに課税されるということは理論的には妥当でないと思つたのでございますが、ただ政策上或る程度止むを得ないという点も考えられたのでございますけれども、前回のを実施して見ますと、このために一部の企業が非常に適正な評価を躊躇しているというような傾向がございますので、政策的にどうしても課税しなければならないとしても、少くとも課税率は三%程度にとどめらるべきだと我々は考えるものでございます。この点はあとのかたからもお話があると思いますが、我々は特に最高限度引上について希望したいと思います。私のお話は以上でございます。
  28. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは次に金子さんどうぞ。
  29. 金子佐一部

    参考人金子佐一部君) それでは時間の都合がございましようから、私は再評価の問題についてお話しまして、資本繰入につきましては他のかたに譲りたいと考えております。  今回再評価を再び実施することになりましたのは、これは非常に適切な処置だと考えております。というのは再評価は最初から強制してもよい性格を持つたものでありまして、でき得る限りこれらは実施する機会を与えることはよろしいと考えております。ただ問題は、昨年これを実施いたしましたときに、その結果は非常に低調であつたのであります。これについてその原因を十分探究いたしまして、その原因を是正することによつて今回の第二次再評価が成功するか、又再び低調に終るかというような問題が潜在しているのではないかと考えるのでございます。  それは第一番は今回再評価の第二回目を取上げた機会となりました企業収益力であります。これは昨年は丁度再評価を締切いたします八月頃にまだ朝鮮動乱の影響というものがよく現われておりませんので、むしろデフレ的傾向を懸念いたしておつたような経済界であつたために、一般が躊躇したということも言えるでありましよう。けれどもそれは今回第二次再評価を取上げて参りました場合は、その特需関係等によりまして当時の不況であつた企業がその後収益力を増して再評価実施することができるように変つて来たというところにあるかのごとく思われるのでございますが、これは我々から見れば、考え方においてはやや同じような立場に立つておるものと思うのであります。というのは、昨年はその企業収益力がいつよくなるかという見通しを考えねばならなかつたの皆あります。現在はその収益力はよくなつて来たけれども、これがいつまで持続するかどうかということを考えねばならないというような工合で、決して安定のある而も将来性ある特需関係の結果が企業収益力となつているのではないのでございまして、まだこれには多少の不安が伴つております。そこで企業は、これをやるというときにやはり同じような悩みがあるものと考えます。ただこれがそのときの収益力がないので将来を考える、現在あるけれども、それが存続するかどうかということを懸念するという意味において違つても、本質的には同じでございます。そこでこの際踏切をさせますには、今再評価をしてしまつたけれども、後に収益力が余りにも低下しても、何とかこの再評価の效果を収めて行けるという方法考えねばなかなかやはり踏切は付かないと思うのでございます。  そこでやはり今回取上げるべき問題として我々が提案いたしたいのは、償却ができなくなつた場合においては、その償却の不足額をそのまま税法上繰越を認めて頂きまして、そして収益力が変更したならば、随時にこれが償却できるような弾力性のある処置が考えられねばいけないかと思います。勿論現在はその不足の償却額を耐用命数が延長する形においては繰越が認められておりますが、これでは実質的に企業の運営をうまくやれませんので、これは随時できるときにはすると、できないならば繰延べるというような幅広い処置が望ましいのであります  それから次に、この際低調であつた原因を見ますと、やはり再評価税が相当問題になつております。というのはこれは最初のシャウプ勧告を見ましても、強制して税を取るというときに、私は税を取るならば到底強制はできないんだという意見を述べておきました。これは誠に再評価は強制するほどの意味があるものではありますが、併し税を取るとなると、赤字企業は税負担に堪えられませんので、結局強制ができなくなるのでございまして、この問題がやはり改められまして、任意にいたさざるを得なかつたのでございます。それほど再評価税というものはやはりこの再評価をのびのびとやらす上においては、相当の阻害になつておることは明らかであります。ただ当時の財政上の点から見ますれば、この再評価を許しますと、減価償却費が増しまして、法人税が激減するということは確かに言えたのであります。そこでこの法人税の激減の穴埋めとして他にいい税制が見られませんので、勢いその再評価税という形でこれを穴埋めをするということも一応考えられます。そして二、三年これによつて調整を取つて参りますれば、後は自然増収なり又他のほうでこの問題を解決しようという政府の意図があつたのではないかと想像するのでございます。併しこれは昨年と今年とは大分事情が変つて参りまして、本年は税の面におきましても国民所得の増大が見込まれまして、自然増収が期待されておりますので、このような問題はこの際昨年取つたから今年も取らねばならないという意味とは大部違うのではないかと考えます。併しながら昨年その半分を納めておりますので、これを今更昨年やつたものと今年やつたものとの均衡を欠くということはできませんので、せめて昨年納めた三%の程度にこれをとどめることが最も至当であると思います。なおこの税を取りますことによりまして、もつと大きな問題がこの裏に出て参ります。というのはこの再評価をやらせますことは資本蓄積を図りまして、そして企業資本充実を図ろうという狙いがあるにかかわらず、その資本蓄積ができるというのは取りも直さずこの再評価をやりまして、名目利益がなくなつたことにかかつております。不当な法人税なりその他の税が排除されるところに狙いがある。併しその身代りとして再評価税を取るのでありますから、再評価税を完納するまではこれが再評価の実質的效果が現われて来ないというわけでありますので、この再評価税を取れば取るほどその再評価を実際やらしているということは事実であつても、その企業にその效果が現われるのは再評価税を完納するまでは現われて来ないのでありまして、意味がないのであります。そこでこの際是非ともこれを三%にいたしまして、その再評価をした実質的の效果が一刻も早く企業の経理面に現われて来るように措置が願いたいという意味でありまして、単にこれを負けるということのみを主張するばかりでなく、その再評価の真の意味から申しましても、できるだけこれを低率にすることが必要であると思います。それから更に昨年この問題になりましたのは、やはり固定畜産税との関連性であります。この固定資産税の関連性は、再評価をいたしました資産基準としてその固定資産税がかかるという印象が強うございますので、併しそれを最高限度額の七〇%のところに線を引きまして、七〇%以下は再評価をやらなくてもやつて資産評価基準は変らない。つまり固定資産税の課税基準としては変らないというふうにいたしましたので、七〇%までは固定資産税のことを考えないでもまあやるというようなことにもなつたのでありますが、この一〇〇%までやらせようということになりますと、七〇%以上はやれば固定資産税は余計かかるということによりまして、相当この問題は企業立場にあるものからは懸念されております。又現実に相当の負担が予想されておるのであります。そこでこのような点を考慮されまして、償却資産等に対する固定資産税そのものが初めから財界では好ましくないということを主張しておつたのでありますが、この際それをできるだけ低率にするがための何かよい方法考えなければ、この問題はこの再評価を相当に妨げておるのではないかと思います。特にこの固定資産税の中の法文の中には、この再評価をいたしました各企業から現在提出いたします申告書を、この地方財政委員会と税務署長が密接な連絡をとつてこれの写しを廻すというようなことが規定されております。でこの條文がありますために、この再評価をすれば固定資産税が余計かかるのだというような印象が強くありますので、これは関西方面でもお話があると存じますが、強く主張されておるようでありまして、私どもも非常に同感に考えておるわけでございます。それからもう一つ阻害いたしておりますものは、昨年は再評価をやつて当然製造原価が増すのだと我々は考えておりますのに、その減価償却費が増して、そうしてその製造原価が増すということは、これは再評価をいたします趣意から言つてもこれは認めてよろしい正当な原価の上昇であるにかかわらず、公定価格は物価政策の面からこれに伴つては改訂しない。とむしろ逆に公表されたくらいであります。これでは公定価格によつて抑えられておる企業といたしまして、再評価をやる実質的の意味がないというので、これはやめたものがたくさんございます。今回は公も随時取除かれまして、又現在ある物についても十分考慮しようという当局のお考えについては非常に妥当なお考えだと思うのでありますが、ただ特にこの公共事業につきましては影響度が非常に強いというので、一時にこれの理由で以て電気料なり或いは運賃を上げることができないので、これを将来に延ばすという意味で、その裏付として今回の再評価法におきましても一年だけ延ばすことになつておりますが、果して一年でこれらの公定価格が改訂されるかどうかということはいろいろと疑問視もされておりますわけでありますので、少くとも公共事業につきましては、これは公は改訂されて、そうしてこの再評価による減価償却費を完全に織込またれ時期にやれるように処置が望ましい、今一年ときめるならば、それまでの間にはそういうものが価格の面の改訂が実施されなければ、実際は処置し得ないのではないかと思うのであります。特に一般の公改訂につきましては、先ほど申上げました通りこれは是非とも当然の結果として変えて頂きたいと思います。結局昨年やりましたときに低調であつたということは、改益力の、当時は減退していたものが多かつたということにも起因いたしますが、殊に今申上げましたようないろいろの隘路があつたということを是非とも忘れてはならないと思います。これらの問題をこの際同時に解決した上で第二次再評価をやれますならば、これは恐らく企業といたしましても資本食潰しを排除し、そうして無駄な税金を払わないで済むのでありますから、でき得る限りやれるものと期待しておるわけでございます。まだいろいろ申述べたいこともございますが、この辺でとどめたいと思います。  ただ、この資本の組入れについて一言申上げたいと思うのは、昨年この実施いたしましたときは、三年の間はまだ経済も安定しないし、そうして一般の金詰りも排除できないし、一般に株のほうも低調であるので、これはシヤウプ氏が五年と言つたのでありますが、それをせめて三年は延ばすべきであるというような議論で我々は納得もしたのであります。然るに今回これを商法の二百九十三條の三項で、一般の任意積立金が役員、取締役会の決議だけで資本の組入れもできるということになりますと、これだけ押えておることもそう意味がないというような立場から、恐らくこれを許すという段階になつたとも考えられるのでございますが、やはり財界の金詰りの点、或いは株式市場の低調であるという点については、昨年と何ら異なるところがないと確信いたしますので、こういう点について果してこういうことを行なつて、株価が予想外に重圧を受けて却つて株主の有利と考えた問題がその結果としては反対になるというような懸念なしともいたしませんので、これについては愼重な考慮が必要だということを申添えて置きたいと思います。以上でございます。
  30. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは次に小野さん一つお願いいたします。
  31. 小野清造

    参考人(小野清造君) 私は資本の組入れについて若干申上げます。  この際、再評価差益の資本組入れを認めようとせられる理由としては大体二つ考えられると思います。一つは御承知のように終戦後非常に歪められておる資本構成を正常なものに引直すということが一つ、それからもう一つは、これは私の想像でありますので違つておるかも知れませんが、この際株主と申しますか、資本をこれによつて優遇する、これはこの法案の趣旨として無償交付を認めよという点からいうと、資本の優遇をこれによつて図ろうという考えがあるのであります。この二つが大体この法案の理由だというふうに考えるわけであります。  第一点の資本構成を是正と申しますか、正常化しよう、その途を開くという意味ではこの資本組入は誠に結構なことだと考えるわけであります。ただその時期をいつにするかということにつきましては、今、金子さんからもちよつと御意見が出ましたが、今去年と今年の経済状態を見て、ここでこれを認めても大した影響はなかろうと言われる御判断については、まだ私も一抹の懸念を持つております。併し資本を正常化するという意味でそこで再評価差益の資本繰入を認めようとされることについては、私は結構なことだと思います。ただそれに関連いたしまして、最近御承知のように、非常に資本金が過当に小さくなつておる。而も一般の常識から言いますと、配当と申しますのはやはり資本金に対照して何割という見方をするのが通例であります。この見方は現在の歪められた資本構成の下ではこれは非常な間違いであつて、若しこういう状態で配当率を云云するならば、資本金ではなく、総資本金が幾ら、それに対してこれだけの配当だという考え方をするのが妥当だと考えるものがありますが、併し一般の慣習といたしましては、やはりこういうふうに不当に小さなものでも資本金は資本金であるのでありまして、その資本金に対して配当が何割というように考えがちでありますので、その点を一つこれを正常化と申しますが、そのときの金利なり一般情勢から見て妥当な線にこの配当率を引直そう、こういう考え方があると思うわけであります。この点に関連いたしまして、これを逆に若し悪く考えますと、こういうことになりますと、この際高率配当を奨励するというような結果が出て来るのじやないかという点に多少の懸念を持つております。併しこれは全部が全部そうであるというわけではなくて、一部にそういう点があるということを考えるのでありますが、いずれにしても資本構成を直すことによつて配当率も又同様に正常化されることになることは、これはその通りでございます。今のような若干の懸念はございますが、資本を是正するという意味ではこの資本組入は結構なことと考えるのであります。  第二点の、この資本組入を認めることが資本の優遇になるかどうか、この点でありますが、この点につきましては私は非常な危惧を持つておるわけでございます。先刻酒井次長のお話のように、現在再評価差益が三千五百五十億ということを承わつたわけでございますが、三千五百五十億の再評価差益はどのくらいの時期にどの程度資本化されるかということによつて影響が違つて来ると思いますが、現在私の聞きましたところでは、株式取引所に上場せられております会社の払込資本金は大体二千億あるということを聞いておりますが、そうしますと現在上場されておる会社の払込資本金二千億というものに対して、二の再評価差益がまるまる資本化されるということになりますと、三千五百五十億、約その一倍半に相当する株式がここで殖えることになるわけであります。これが果して証券市場に影響なしに行われるかどうかという、この点について非常な危惧を持つておるわけでございます。これは特にこの組入の結果出て参ります増資、これと、それからそれとは関係なしにいわゆる資本調達の意味で行われる普通の増資、これとの関係がどうなるか。この組入れによる影響は無償交付による株が市場に氾濫する、その結果本当に資本が入用のために増資をしようという面の増資が圧迫を受けまして、そういう意味の増資ができなくなるという慮れが多分にあるのではないかということを非常に懸念しておるのでありまして、これを円滑に実施いたしますためには、やはりそこに何か各企業企業としてではなく経済全体としてこれが至当であるというふうな金額の調整をするという措置が要るのではないかということを考えておるわけであります。特にこの点はこの組入れをやります結果、無償交付が盛んに行われます場合には、やはりそれにさそわれて或る会社で無償交付の増資をし、そうするとそれをしない会社は何が特に株主に与えるべき特典を与えておらん。特に不利な取扱をしておるというふうなことにもなる慮れがあるわけでありまして、結局必要でないものにまでどんどん増資をするということになつて参りまと、ますます普通増資が圧迫を受けるという懸念が大きくなるという心配を持つておるわけであります。これをそういう心配を除去して、これをスムーズにやりますためには、どうしてもやはりそこに各企業立場を離れた全体の立場として増資金額を調整して行くというような措置をすることが必要ではないかというふうに考えております。  それから最後に、先ほど再評価税について御意見が出たようでありますが、この資本組入れを認めますについても、これを若し一応は各企業の自由に任かせるわけでありますが、そういつた趣旨から見てこれをできるだけやらせようという御趣旨であるとすれば、やはり再評価税の負担が問題になると思います。それから更にこの場合には登録税の関係も出て来ると思いますが、こういつた税負担についてはこの組入れがやり易いようにできるだけ負担の緩和を図るという点について格段の御配慮をお願いしたい、かように考えるのでございます。以上でございます。
  32. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは次に内山さんから一つ
  33. 内山徳治

    参考人(内山徳治君) 大体ほかの皆さんと私ども同じ考え方でございますので、成るべく重複を避けて簡単に申上げたいと思いますが、一、二点附加えさして頂きたいと思います。  今回の再評価法の修正におきまして、若干の点において前の法案よりも進歩した改正が行われておるということにつきましては、私賛意を表するものでありますが、ただ私の感じでは一番大きな点が全然手を付けられなかつた、こう思うのであります。それはすでに先ほど来のお話に出ておりますように、再評価税の問題でございます。今度再再評価を認めるようになりました一番大きな根拠は、昨年度再評価のときには収益が少かつたから再評価をすることができなかつた。それが朝鮮事変その他の影響で大分収益も殖えておるから、もう一つ評価機会を与えてもらいたいという要求が出て来ますから、それに応じてもう一度再評価をするのだというような点にあるように思われますが、それは確かに考えられるのでございまして、私どものほうで若干いろいろな事情を調べておりましても、或る事業におきましては、昨年はとても再評価するような自信がなくて全然再評価をしないことに方針をきめておつたと、ところがその後急激に事情が変りまして、今度若し事情が詐されるならば、限度額の六割乃至七割程度是非評価したいというふうな会社が相当出て参つております。それでありますから、もう一度再評価を認めるということは当然のことでございますが、一体こういうふうな事態が起つたのは何故であるかということであります。何を意味するかということであります。昨年の再評価法に基いて再評価を行い得なかつた会社は、若し今年もう一度再評価が認められなければ非常にそれは不公平な、いわば悪い害を与える結果になつておるということが一番大きな意味だと私思うのであります。従いまして、そういう不公平なことが将来においても又起らないようにするのでなければ、折角再評価法を改める一番の眼目がなくなるのではないかとこういうふうに私は思うのであります。ところがここに再評価税をそのままにしてもう一度再評価を認めるということでは、今年のやはり収益のなお十分に上つておらない会社、或いは将来の収益に対して非常に不安がある会社は、やはり十分の再評価をすることができないであろうことは、大体これは間違いないと思うのであります。そういたしますと、将来その会社の収益情況が変つて来たときには、やはりその会社は非常に不公平な待遇を受けることになるということになるのであります。それでありますから、この再評価を本当に公平な措置として行おうとするならば、将来如何に情勢が変つても、それに応じてもう一度再評価というようなことは必要なくするのが本来の趣旨でなければならん。即ち昨年の再評価に基いてやつた結果が、今年もう一度認めなければならんということは、根本的に昨年の再評価法に間違いがあつたのだ。このことをよく考える必要があると私思うのであります。ところがその点が改められておらない。全然手が付けられておらないという点において、今度の再評価法の正改は、改正をしないのに比べれば非常な進歩でありますけれども、一番大切な眼目が抜けておるというふうに私は個人として感ずる次第であります。  それから次に、再評価積立金の資本繰入につきまして、簡単に私の感想を附加えたいと思いますが、私どもの団体で各方面の意見を伺つて見ましたところ、この問題につきましては、産業界、或いは生産業者といつた方面におきましては、大体においてこの資本繰入ということに対して相当の不安を持つておられるということが感じられたのであります。その不安は、只今も小野さん及び金子さんからもお話がありました通りで、誠に御尤もな不安であると私どもは思うのであります。ところがそれに対しまして証券業関係のかたがたが非常に熱心にこの積立金の資本繰入を要望しておられるのであります。この証券業界のかたがたの御意見にも又一面誠に御尤もなことがあると思われるのでありまして、私ども経済団体連合会といたしましては、両方に理由がありますので、はつきりした結論を出さないことにいたしたのでございますが、すでに繰入を認めることに法案が出ておりまするので、そのこと自体に対して強く反対を申述べるとか何とかということは私のほうとしては必要はないと思いますが、ただ今までに各方面から出ました要望を分析して一つ注意しなければならないと思いますことは、結局産業界のかたがたの懸念されるところは、この再評価に関する措置というものが非常にむずかしうございまするので、各方面の理解がなかなか十分に参らない。そのために証券業関係、或いは投資者、或いは株主等の方面において相当まだ誤解が残つておる。即ち資本繰入ということが非常に全く新らしい特別配当でもされるようなふうに考えて、それが非常な利益をもたらし、株式市場に非常な好影響を与えるようなふうに感じておる向きがまだ相当残つておるのではないかというこの問題でございます。若しそういう誤解が残つておるといたしますれば、株式発行会社の方面から見ますれば不安があるのは当然のことであり、又若しも証券業界その他の面の要望が多少でもそういう誤解に基いて非常に強く要望しておる傾きが若しあるとしまするならば、これはよほど注意しなければならないことである、こういうふうに私は思うのであります。理論的に再評価措置に対する理解がすつかり行き届きまして、積立金の資本繰入が何を意味するのかということがはつきり国民全部に理解されておりますならば、これに対して反対するという理由は毛頭ないと思うのでございまして、成るたけそれは早く実行したほうがいいに相違ないのでございます。ただ問題はそういう誤解が残つておる場合にこれを今やるのがいいかどうか、もう少し認識が徹底するまで待つたほうがよくはないかというところに、この問題があると思うのであります。それでありますから、若しそういう多少とも不安の残つておる中でこの措置を実行いたしまするならば、一面におきましては投資者、株主等の方面における誤解を取除くことの運動が相当に必要であろうという、これは一般的にもそうでありまするが、又株式を発行いたします産業会社等の方面においてもそういう注意、努力が非常に必要なことになる、こういうふうに思うのであります。大体この資本繰入の問題の要点はそういう点にあるようなふうに私は感じておりますので、御参考までに申上げる次第であります。私の申げることはこれだけであります。
  34. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それから次に工藤君。
  35. 工藤友惠

    参考人(工藤友惠君) これはみんな同じことになるので、私も実は前の四人のかたのおつしやつたことで言うことが大体ないのですが、大体少し特に私が申上げたい点だけちよつと強く申上げる必要がある点だけ申上げたいと思います。  大体私の考えております点は、書類にしましてお手元に差上げてあるのでございまするから、非常に面倒でも是非これは読んで頂きたいということ、これは同時に酒井さんもお見えになつていますが、私は同様の趣旨をしばしば大蔵省にも申入れておるのですが、残念ながら大蔵省はまだ容れるところが少いのでございますから、これも一つ酒井さんがここにいられるので、特に強力にこの参議院のかたと共に是非お願いしたい、こう思います。  強調します点は、順序が今差上げてあります私の原稿と違うのでありますが、第一にこれは金子さんも非常にお触れになつた点でありまするが、再評価と統制価格の問題であります。電鉄事業や、或いは電気事業その他は料金又は価格が現在まだ統制されております。再評価をしてその結果減価償却が殖えていても、これを価格の上、或いは運賃の上に織り込むことが許されないのが現状でありまして、大体申しますというと、関西が特に再評価を私鉄関係が行えない、電気は特殊な関係がございますけれども、今の状態では行えないこういうことにおきまして、さほどはつきりした根拠は私は今申上げるあれを持ちませんが、例えば電鉄事業におきましては、今の再評価をしないままで、而もできないままで今の減価償却をやつて行きますというと、二千五百年掛る計算になるそうでありまして、こういうことを恐らく天文学的数字というのでしようけれども、二千五百年掛らなければ償却できないような状態になつておるということについて、これはむしろこういう問題については根本的に政府も国会も一緒になつて一つ考え願わなければならん。理由をはつきり申上げますれば、安い電気、電気は公益企業だ、ガスは公益事業だ、或いは電鉄は重大公益事業だ、それの影響がどうだということに藉口しておるならば、それは電鉄事業、或いは電気事業、若しくは倉庫も入るでしよう、ガス事業、そういうものの株主を犠牲にして、株主の皮肉な言葉で言えば上前をはねて、それで国民が甘い汁を吸つておるということでありまして、これは許さるべき現象ではないと思うのであります。この点についてどうも世間は少し同情が足りな過ぎるのでありまして、これは申上げますれば、電気業者、ガス業者にも責任があると思いますれども、何せ公衆の利益とか、一般産業の基礎産業であるとか、そういうようないろいろなことに籍口してお藉口しておりますのは全く不当でございまして、この点を何とか是正するのでなければ、到底再評価のことはできないのであります。伝え聞くところによりますと、主税局方面におきましても、電鉄等についても再評価した場合に、いろいろ又いいことがあるような……、それも又無理のない点でございますけれども、税の上でいろいろ措置もできるようなお考えもあるように、ちよつとこれは公式ではなくて噂さで聞いたのでありまするが、そういうことになればますます以て電鉄、その他の事業は苦しくなるのでございます。こういう点において十分にこの再評価を行える状態を作つて上げて頂きたい。これにつきましては、一年というようなのは先ほど金子さんもおつしやいましたが、到底望みがないのじやないか、こう思うのであります。併しそれについても、一年延ばしても、それを一日延ばせば延ばすだけその一年間だけはその電鉄は食い潰しになるのでございますから、今後その点についてよほどお考え願いたい。私どもの考えによれば、例えばこれらの公益事業の増加償却額全部を他の一般に転嫁するために、料金を一時に引上げることは、一般産業、或いは社会に急激なる影響を及ぼすからよくないというならば、料金引上げを順次に認めまして、それに応ずるだけ再評価を行い、再評価限度に達するまでに小きざみに何回でも再評価ができるようになるまで、従つて一年という短期間に限らないように願いたいと思います。この点につきましては、先に申上げましたが、この方面の企業家の声がいろいろな事情でまだ十分に挙つておらない、私どもは心配するが故に申上げるのであります。これに関連しまして申上げたいのは、一般におきまして再評価の時期でございます。大蔵省も……これは私のほうで頂いたのは最初の案でございます。それから大蔵省案も少し変つておるかも知れませんが、これによりますというと、先ほど酒井さんの御説明もそうでございましたが、二十六年の一月一日次後九月三十日までに開始する事業年度の初日現在で再評価を行う、こういうことになつております、即ち遅くも本年九月三十日までに第二次再評価実施させようという御意向のようでございますが、前回の再評価が不十分であつた理由は、先ほど内山さんからも言われ、皆さんからも言われたように、いろいろたくさんの原因がございますが、その一つにこの時期の問題が非常に短期で見通しが付かなかつたということがあるのであります。そうして今年は一年経つたから少しは考えも付いたろうと言いますけれども、更にその間の実際の動きを見ますというと、こういう短期では到底内外の経済情勢の見通しが付き得ないのであります。従つてこの点に御考慮頂きまして、是非こういう短期間を強制しないように、私どもの考えによりますれば少くとも三年間ぐらいの間に改むべきだと思うのであります。それを早急に片付けてしまうということにも日本人らしい何というか、潔癖さというのか、短兵急というところがあつて、いい点があるかも知れませんが、いろいろ事務上の都合もございましようけれども、実際の経済界のために本当に日本の経済というものを正常な姿に置こうという念願にこの再評価法があるならば、是非この点についてもう少し考慮すべきじやないか。勿論私ども三年というものはときに長きに失する場合があるというならば、例えば二年間ぐらい、少くとも二年間ぐらい、昭和二十七年ぐらいまでは行くべきだ、今年の九月三十日までにやつてしまうというのは余り酷ではないかこう思うのであります。この点については噂でございまして、こういうことを責任を持つて言うのは或いはいかんかも知れませんが、関係方面に九月までというような約束をしたというようなことを聞きますが、こういうことは恐らく噂に過ぎないと思いますから、国会の方面において十分にお考え願いたいと思います。この点は先ほども公益企業等につきましては三年でも困る、恐らくなかなか許されない、それは公益企業におきましては、例えば私鉄等を見ますというと、国鉄との競争問題がございまして、国鉄はこれは完全に資本の食い潰しで経営をやつておるので、国家というものは有難いものでございますけれども、併し私企業はこれに対して競争して行かなければならないのでございますから、この点を御考慮になつて、国鉄のほうも妥当なところに上げて行く、それと同時にマル公のほうも上げてもらうと、そういうような面を考えまして、そういう面の業者も私どもにいろいろと意見を言うて来る者は非常に長い期間を要求しておるのであります。従つて少くともこの時期をこの辺に考慮された上におきまして、私どもとしましては二十八年末までに延ばすというような御方針を御再考願いたいと思います。  再評価基準資産の問題につきましては、中島さんから紡績業を例にとつて言われましたが、紡績業が非常にはつきりしまして、非常にいい詳しい数字が出ておりますが、ほかの産業においてもみんな同様でございまして、これは卸売物価指数をとつて御覧になればわかるのであります。大体におきまして昭和二十五年六月を一〇〇とすれば、昨年十二月は一三四になつておるのでございまして、三割もすでに違つておる。こういうことをやる場合にはこれはもう一度考え直す必要があるのじやないか、こう思うのであります。なお既経過年数に関する問題につきましては、中島さんがお挙げになりました紡績の例は、これはあらゆる産業に通ずる問題でございまして、この点も十分に御考慮願いたいと思います。それから再評価税の問題はこれは無視することができないのでございまして、金子さんもおつしやいましたし、内山さんも言われましたが、再評価税というのは、特に最近或る種の糸へんとか、金へんとか新聞が書き立てまして、この方面の事業では非常に利益があるから、これに税金をかけるのが当然だという頭が一部の経済というもの、はつきり申上げれば或いは税法というものさえも理解のない方面から言われておるのでございますけれども、払うべきものは払う、これは当然でありまするけれども、不当なものを払つて、而もお題目は企業の健全化とか、或いは経済の再建とか言つて意味ないのであります。この点は再評価税は私どもはすでに委員会の皆さんに昨年差上げました通り、昨年私どもが調査したところによりますと、この再評価税というものは非常に阻害になつておるということは数字の上で出ております。数字は一々詳しく申上げませんが、すでに詳しい報告を差上げておりますからお読み下さつて是非この点は本来基本的に無税であるべきものが六%ということになつたことに対して御再考になりまして、勿論これは一旦取つた税金を返すということはこれはなかなか困難でございましようから、昨年一年やりまして、三%納めておるものはそのままにしまして、今後三%に済ませて、そうして納税期についてもこれは更に先ほど酒井次長のお話がございましたけれども、あの程度でなくてもう少しいろいろお考え願いたいと思います。尤も理財局のお考えになつておるその点は、非常に私どもは延ばすようになつておりますことは賛成なんでございますが、一層そのことを願います。特に税率六%は不当であるということにつきまして、これは恐らく経済界におりまするすべての者の意見だということを申上げたいと思うのであります。公平とかいうようなことを観念で言いますけれども、公平というものは正当か、不正当かということから起るのでございますから、こちらのほうで今儲けておるそうだからとか何とか理窟を付けて寄附金を取るというような頭の税法については、少くとも今日の税体系にあつてはならないと思います。この点につきまして附加えますれば、本来再評価法というものは理財局の主管でありまして、主税局の主管でないというところにむしろ非常な意味がある。これはむしろ通産委員のかたが非常に御注目になるべき点だと思うのですから、通産省方面が本当に……、通産省方面並びに国会の通産委員の方面のかたが非常に熱心になつて頂かないと、企業の健全化だとか或いわ日本の経済の安全ということが目的であつて、税が目的ではない。或いは公平理論ではないかということをよく頭の中に入れて置いて頂きたいと思うのであります。この点は幾度申上げても足りないことだと思います。  その次に、これに関連いたしまして固定資産税、これもすでに金子さんが御指摘になりました通りでございまして、私どもの調査によりますれば、固定資産税がどうも邪魔になつて困る。あれは少くとも再評価をするというとそれたけはやられてしまうということがございましたが、事実法律的にもそういうようになります。私どもがシャウプ一行のワーレン氏と懇談いたしましたときも、実はこの点で何とかして再評価をまあ勢いづけるために、水増しにならんためにやるんだと、まあ要らん心配だということだつたのでございますが、そういうことをワーレン氏も言つております。ところが今日ではこれを実行しなければ、そうして弱い産業ほどひどい目に会うということを避け、そして又、非常に孜々営々として収益力を回復していい配当をしようとしているときになつて固定資産税や再評価税が調いして、十分な再評価ができないために正当な収益が得られないとすれば、これは非常に産業間の不公平を来たすものだと思うのでありまして、今の固定資産税のことにつきましても十分な御考慮を願いたいと思うのであります。この問題のために再評価を十分にし得なかつたというものは、私どもの調査によれば三八%の多きに達しておるということを御記憶願いたいと思うのであります。これに対する方法といたしまして、私どもの取敢えず考えましたものは、再評価と何らの関係がこの固定資産関係にないということを一つつて頂きたいと思うのであります。そうすれば事は簡単なのでありまして、現下の資産評価法第四十五條に法人の再評価の申告が詳細に規定されておるのでございます。その第八項にはこういうことがございます。「税務署長は、第四項(第五項において準ずる場合を含む。)の規定による明細書又は前項後段の規定による書類の提出があつた場合においては、その写に誤りがない旨を確認して、大蔵省令で定めるところにより、遅滞なく、地方財政委員会又は当該資産の所在する市町村の長に送付しなければならない。」と規定しておるのでございますがこれは明らかに固定資産税の課税の参考のためにでございますから、これを削つてしまうと、この一連の法律を削ることによつて事は簡単に片付くのでございます。而もこの事は非常に考え得ることだと思うのであります。この点を是非考えを願いたいと思います。  最後に、再評価積立金の資本組入について申上げたいと思うのであります。これは金子さんも内山さん、小野さんも非常に慎重に、どちらかと言えばまあもう少し慎重にしたほうがいいのじやないかというような御議論もあるようでございまして、その点、私どものほうでもそういうことをいろいろとお話になるかたがたくさんございます。一々御尤もで、殊に内山さんの言われた証券業者諸君の中に途轍もないことをいろいろ言うて煽つておる者がある。そして割合に株主の何といいますか、思惑的株主の策動を恐れること、これは御尤もでございます。それで従いまして内山さんのおつしやることに私は反対するわけではございませんが、その理由といたしましては、大蔵省が原案とせられておるところの資本の組入を許すということが理窟の上で当然でございまして、今のような弊害はあらゆる新法で以て削除し、いろいろの株価の上とかその他で考慮することは別といたしまして、是非これは大蔵省原案を支持すべきものだと私は思うのであります。この点につきましては、従来経済界が再評価法ができた当時に、五年間据置くということに対しまして非常に反対もありましたし、いろいろの意見がございました。ところが今日になると又逆の現象になるというのは、むしろ不思議でございまして、私から申しますれば、これは今お述べになつたような、皆さんの危惧の点を十分に御考慮の上に是非この原案は生かして頂きたい。と申しまするのは、第一は今も申したように、例えば糸へんは儲け過ぎるのではないか、金へんは儲け過ぎるのではないか、百貨店は儲け過ぎるんじやないかということですが、そのときは常に名目的な配当率になつておるんでございます。どうも社会的に見ましてもいかんし、同時にこの点は本当を言えば大した配当じやない。三割配当といつてみたところで、今考えれば非常に低いものなんでございますけれども、これに対して非常に大きなような感じを世間に対して与えるということもいかんし、同時に非常に重大なことは、私の心配することは企業経営者を怠けさせる傾向があるのでございます。申上げるまでもなく、配当がたくさんあるときには、企業経営者が非常にその人が優秀であるかのごとき錯覚も起すのでございまして、更に企業の経営の合理化もやらなければ……一言に言えばこれは非常に悪いことでございまして、今日の代表的産業には絶対にございませんが、低い産業ではやはり余計なような配当に乗じまして不当に、従業員にも不当に出すだろうし、そうして自分もたくさん取る方法考えないとも限らない、この点は私は企業の健全化から見まして名目的には如何にも世間で納得するような配当ができるようなあれを是非資本の金額にして行くほうが正しい道だと考えるのであります。但しかえすがえすも申しまするが、今のような危惧の点、金子さん、内山さん、小野さんのおつしやつた危惧の点は是非なくなるようにして頂きたい。こう思うのであります。  なお、これにつきまして資産評価の積立金の資本組入れもやつた場合に、これが増資、承わるところによりますれば、最近のあれには少し直つているようでございますが、これが例の千分の七の登録税を誘せられるということはこれは甚だ意味のないことでございまして、有償交付の場合であろうと何であろうとこれは本質的にはいわゆる一般の増資とは違うのであります。本来登録税というようなものは理論的に言うとおかしなものでございますけれども、そういう登録税の根本的のものをやりましても、千分の七というのは一億やつても七十万円ですか、十億やれば七百万円、非常に大きい数字が出て参りまして、こういうものも又やはりこの資本組入を阻害することになる、これはそれを阻止するというならいいかもしれませんが、これは元来無税とすべきものであるということを私は強く申上げて置きたいと思うのであります。  以上、雑駁なことでございまして、その他の、今私の資本組入れに関する多少の問題を除きましては、大体お手許に差上げました私の原稿の通りでございます。よろしくお願いします。
  36. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) いろいろ有難とうございました。只今参考人のいろいろの御意見の開陳につきまして、大蔵省側から御意見ございましたら、御発表をこの際お願いいたしたいと思います。
  37. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 先ほどの御説明でいろいろ足りなかつた点もございますし、只今参考人の皆さんがたからの御意見の開陳がございまして、これに対しまして若干補足さして頂きたいと思います。御意見のなかで、皆さんが口を揃えてお話になりました再評価税の問題であります。おつしやるように理論的に申しますと、再評価について税は取るべきではない。これは一昨年のシヤウプ勧告にもはつきりそのことは書いてございます。ただシヤウプ勧告にもございますように、すでにそういう資産を処分いたしまして過去の税法で名目所得を課税をされて取られている、そういうものがございます。又同じような意味で金銭債権の持主、例えば株主でなくて社債権者というようなものを考えますと、このインフレに乗つて金銭価値が下落をいたしまして、実質的に大きな犠牲を払つているわけであります。それらのものとの均衡を全然無視してしまうということは、多少その間に公平ということを考えなければいけないのじやないかということがございまして、軽微な再評価税を課するということで六%の税が課せられたわけでございます。今回それではこれを三%にしたらいいのじやないかということでございます。或るほどできるだけ軽くするということは、理論的には正しいと思うのでございますが、只今申上げましたような公平な見地から申しますならば、やはりあのとき、昨年六%課税いたしましたと同様な考慮がそこに必要でございます。なお、再評価が昨年の一月から実施をされまして、個人等におきましてはすでに資産を処分して、六%の税をまるまる徴収されてしまつている者もございます。これらを今から還付するというような非常な面倒な手数も併せて起るということを考えますれば、理論的には考えらるべきでない。又これを徹底的に直せば、ないほうがむしろ再評価はやりいいということは御尤もでありますが、この際としてはやはり従前通りの課税をして行つたほうがいいのじやないかというふうに考えます。それからいろいろお話の出ました中で、再評価の時期の問題でございますが、これもできるだけ長くしたほうがいいのじやないかということは、前々から財界の各方面から御意見を伺つております。ただ、先の見通しというものは、これはそれでは一年延ばしたらはつきり付くかというと、必ずしも一年延ばしたから先々までのはつきりした見通しが付くというようなものではなかろうと思います。いつまでもその状態が確定しないで、ふらふらとしておるということはやはり企業経営の上から言つて面白くないのじやないか。そこに、再評価というものを考えましたのは、戦後の甚しいインフレーシヨンによる貨幣価値の是正ということでありますから、これは或る一時期をとらえて、やはりはつきりそこでけりを付けてしまうということのほうが、むしろ経済にとつて望ましいことではなかろうかと考えまして、まあ今年の九月までということで、短い期間にはつきりけりを付けるということにいたしたわけでございます。なお、昨年は初めてのことでありますから、これはなかなかいろいろな事情を御考慮になつて、どの程度つたらいいか、或いは同種の事業等がどのような計画を持つておるかというようなことで、いろいろ考慮すべきことがあつたと思うのでありますが、今日すでに昨年の再評価の結果が或る程度現れております。ほかの同種の事業につきましても、大体再評価程度等もわかつておるのでありますから、昨年ほどむずかしくお考えになることが少いのじやなかろうか、そういう見地から九月までといたしまして、十一月三十日までに申告をいたして頂くことにいたした次第であります。  それから次に問題になりました定額法定率法の問題でございます。これはおつしやるように、減価償却には定額法もあり、定率法もあり、いずれがいいかということは議論のあるところであります。ただ従来定率法を用いて、まあ先ほど中島さんも言われましたように、企業の健全性から見れば、むしろ定率法のほうが望ましい場合もあるように伺つたのでありますが、これは議論のあるところでありますが、従来定率法を使つてつたという見地から、現行法がすでに定率法になつておりますので、そのままこれを踏襲しようということにいたしたわけであります。  それから公定価格の問題でございますが、これは御意見のありましたように、公定価格の中に減価償却をなし得るだけの計算を織込んでくれなければ、公益企業については全然再評価の余地がないじやないか。非常に御尤もであります。これはやはり先ほで工藤さんでございましたか、お話になりましたように、公益事業の株主の負担において物価政策が行われるということはけしからんということは御尤もでありますが、ただ全体の物価体系というものから考えまして、なかなかむずかしい問題でございまして、従いましてこれらの公益事業につきましては、一般企業と異りまして、一年だけ再評価の時期を延長しまして、その期間内にできるだけ価格に合理的な解決を与えて行きたい、こういう考え方でございます。それから、昨年いたしました再評価と今日とではすでに物価が三割程度つているじやないかという御意見でございます。これは成るほど上つておるのでありますが、元来この資産評価というようなドラスチックな措置は戦後の非常な大きなインフレーシヨンの跡始末をするという意味におきまして考えられておつたことでありまして、物価の二割、三割の上下の幅ということは、これは普通の経済状態におきましても好況、不況の波動によりまして、その程度の物価の幅は当然出て来るのであります。その物価の二割、三割の変動につれて常に評価を増して行くということは、これは商法等の原則から見ましても、やはり会社の健全性ということを考えますれば、その程度の物価の上昇で更に再評価の倍率を多くするということは如何かと考えまして、一応昨年の物価倍率そのままを使いましたわけであります。ただこれが今後又非常に甚だしい上昇が起る、非常に悪性インフレーシヨン的な上昇が起るということになりますれば、そういうインフレーシヨンの終熄を待ちまして、或る程度措置考えなければならんということは当然でありますけれども、二割、三割程度のことは、これはしよつちゆう考えておつたのでは企業の経理というものは毎年々々安定しないというようなこともございますので、昨年の倍率そのままを使つた次第であります。  それから固定資産税の問題でございますが、これはおつしやるように固定資産税が心理的に甚だしく再評価を阻害しておるということは、各方面から私どもも伺つておるわけであります。特に減価償却資産につきましては、固定資産税をこういうふうなかけ方をまることがいいかどうかという点につきましては、議論のあるところでございますが、一面地方財政の問題もございますので、なお固定資産税の問題といたしまして十分検討さるべきものだろうと考えております。  それから登録税の問題を先ほど問題にされたかたがあつたようでありますが、登録税につきましては、今度の資産評価法の一部を改正する法律案の附則の第五項、終りのほうでございます、ここで登録税を千分の一・五、これは企業再建整備法のときの税率と同じだつたと思いますが、現在の千分の七を特に千分の一・五にするという特別規定を置いて救済をいたしております。  それから資本組入れにつきまして、これは先刻来いろいろ御意見がありまして、株式市場を非常に圧迫して今後の増資を困難にするのじやないかというような御意見でございました。ただ我々といたしましては、先ほども工藤さんからお話がございましたように、再評価の目的が正しい資本金の観念をはつきりさせる、そういたしませんと如何にも自分の企業は儲けておるというような錯覚にとらわれがちでありまして、そういう点から企業の経理に不合理が起る、濫費が起るというようになりますので、やはり企業の正しい姿を現わして、そうして企業の正しい経理をして頂くということのほうが非常に大切ではないか。勿論その場合に株数が多くなりまして、従つて証券市場を圧迫する懸念もございますし、又株数を殖すことによつて一株当りの株価が下つて来る、従つて増資がなかなか今までよりはしにくくなるというようなこともございましよう。その辺は併し会社の経営当事者が十分お考え願いまして、どの辺が一番適当であるかということを御判定になつて、適当な株を交付されるということにして頂ければいいのじやないかと思います。増資と申しますと、無償交付ということになりますと、各企業間に競争的に無償株を交付するようになるというような懸念もお述べになりましたけれども、これはやはり企業経営者がそれぞれの会社の将来をお考え下さいまして、確つかりした態度でそういう競争的な、無理な増資にならないようにお考え頂くほかないのじやないかと考えます。  その他御意見があつたかも知れませんが、簡単にお意見を伺いましての私の感想を申上げまして、なお経済課長が来ておりますので、何かありましたら補足的に申述べさして頂きたいと思います。
  38. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは委員のかたに申上げますが、只今政府側から大蔵省の理財局次長と通産省企業第二課長、理財局の経済課長、安本財政金融部の財務課長がお見えでございますが、御質問のあるかたは、参考人にも御質問のあるかたがあれば御発言下さい。
  39. 加藤正人

    加藤正人君 資本の繰入の場合に株式の無償交付というような場合が起つた場合は、無償交付を受けた株主のこの所得に対する所得税というようなものはどういうことりになりますか。
  40. 吉田信邦

    政府委員(吉田信邦君) 再評価積立金は本来株主のものになるというふうに考えられますので、これが交付を受けましても所得税の課税は受けません。一応交付になりましても所得税の課税にはなりません。
  41. 加藤正人

    加藤正人君 全然所得税に関係ありませんですね。
  42. 吉田信邦

    政府委員(吉田信邦君) 更にその株式を売りました場合に、若し取得価格より高く売つたというような場合には、これは譲渡所得の問題が起つて参ります。又その株が昔から持続けておるものであるといたしますれば、その株式についての再評価額を算出いたしまして、その再評価額を超えるものがあれば、譲渡所得税を課税されるけれども、再評価額限度内であれば再評価税だけを取るということになります。
  43. 加藤正人

    加藤正人君 今酒井さんの御説明の中に、鉄道事業のようなものに対して再評価の問題についてお話参考人のほうからあつたようでありますが、それについては何かお話がありましたでしようか、それが落ちているように思うのですが。
  44. 吉田信邦

    政府委員(吉田信邦君) 先ほど来公益事業等について公定価格がきまつておる。そうして公定価格につきましては従来再評価に応ずる償却費はその原価計算に見ないというような方針で公定価格がきまつておる、従いましてこれは永久にという意味じやなくて、経済安定計画が完成するまではという條件でございますが、従来公定価格の建て方がそういう建前でございます。そういたしますと、公定価格企業につきましては、再評価をしても再評価額に応ずるだけの減価償却ができないということになりますので、実際問題として思い切つた評価ができないでおるという実情でございます。これは物価政策といたしましては、公益事業は非常に国民生活にも経済全体にも重大な影響があるので軽々しく取扱われないことは勿論のことでありますが、併しながら企業という立場からいたしますれば、配電会社にいたしましても、私鉄にいたしましても、いずれも株式会社として一般企業として成立つておるわけでございますから、その場合に公益ということによつて償却ができないということは、取りもなおさず資本食潰しを続けるということになるわけでございます。そういつたことは本来望ましくない。従つて物価政策上の緊急止むを得ざる措置としては或いはそういう措置も止むを得ないかと思われるわけでございますが、経済がだんだん正常化いたして参りますにつれて、そういつた緊急措置的な部分は順次改正せられて行くべき筋合のものであります。  併しながら先ほど酒井次長からもお話申上げましたように、やはり公益事業価格というものはいろいろ波及するところも大きいのであります。今すぐその公定価格を直すというようなことはかなり困難もございましようし、又私鉄であるとすれば、単にその公定価格改正するのみならず競争的関係にある国鉄自体の料金というものとも関連するというようなことで、早急に再評価し得る立場に立ち得ないというふうに考えるのであります。そういつた意味合で一般につきましては本年の九月三十日までが再評価の期限でございますが、更に一年間余裕を置いて来年の九月三十日までにもう一度再評価する機会を与える。従つて又極力それまでにそういつた価格問題を正常な線に乗るように解決することが望ましいというふうな考えでおる次第でございます。
  45. 加藤正人

    加藤正人君 そこの問題なんですが、一年くらいの短期間の内にそういうお考えのような大きな目途が付きましようか。
  46. 吉田信邦

    政府委員(吉田信邦君) その点は政府としてもできると言い切るほど最終的な結論に至つてございませんのですが、ただ徒らに遷延するよりも、できるだけ早い機会にそういう問題を解決すべきであるということは現在としては考えられるんではなかろうか、万が一それが実際問題として困難であつた場合には、この法律を一年間というものは更に延期しなければならないという場合もあるかと存じますが、一応差当りとしてはその期間程度で目的を達するのではなかろうかというところで、こういうような法案にいたしたのでございます。
  47. 加藤正人

    加藤正人君 どうもいろいろ承わつておりますと、今の御説明のようなのが余りにも多いのです。全般にまあこれは白、黒というようにはつきりした問題ではないのですから、議論の余地があるのは明らかでありますけれども、如何に有能、達識な人が大蔵省に存在しておられても、今参考人としてここへ来られた人の背後には何万、何十万という人がおられて、それぞれいろいろな陳情や提案がここへ出て、その結集を今日皆さんが発表されておりますのですから、これらの人の御意見がですね、政府の先ほどのお話と食違つている点が大変多いのであります。單に人数で私は言うのじやありませんけれども、相当真剣に小委員会などを開いて各団体とも熱心に討議の結果ここへ持つて来られた……一応今酒井さんその他の御説明を聞いて、ああそうだつたのかと我々は感心することができないのであります。従つて公述をされたかたがたも、いろいろあの御答弁については御意見があるだろうと思いますが、参考人にもう一度御答弁のあつたところについて、再び質問参考人の人にして頂いてそれを私たちが承わることが大変都合がよかろうと思います。
  48. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) その前に通産省側として何かさつきの参考人側の御意見について……。
  49. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 通産省といたしましては、先ほど参考人の全部のかたが主張されてありました課税率でありますか、この点は通産省といたしましては飽くまでも三%かが適正である。これを六%にすることによつて折角企画したこの再評価が低調に終る虞れがあるということを今日まで機会あるごとに述べて参つたのであります。併しながらこれはシヤウプ勧告にも六%ということははつきり規定されております。こういう関係が一番大きな原因となつて関係方面ことごとくこれを強く主張されておりますので、遺憾ながらこの六%に同意せざるを得ないというような状態にあるわけであります。従つて若しこの六%が三%に引下げられるというようなことになりますれば、通産省は無條件に賛意を表するものであります。その他の問題につきましては、いろいろこれは御意見がありまして、見方によつていろいろの御意見がありますが、大体大蔵省のほうから御答弁弁されたように、通産省も同じ意見を持つてつておるのであります。これに対しましては、大蔵省から詳細に御答弁されましたので、これで大体御了承お願いしたいとかように思います。
  50. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) なお参考人のかたで補足的な御意見ございましたらどうぞ。
  51. 中島俊一

    参考人中島俊一君) 只今私の申しました再評価限度引上の問題について、大蔵省の酒井次長からお話のあつた点について、一言参考人としての意見を申述べたいと思います。  酒井次長は今の限度引上のうち限度額の引上について、私は過去の減耗度計算する際に定率法のみでなくて定額法併用する。それから今後の物価指数を、前回の再評価のときの物価指数を参酌して、再評価のとき以後の措置を織込んで頂きたい、この二つの措置を同時に実行して頂きたい。こうすることによつて企業の適正なる減価償却がなし得るのだ。そうしない限り適正な減価償却はし得ない状態にあるのだということを先ほど申上げたのでありますが、このうち過去の減耗度計算するに際して定額法併用するについて、只今酒井次長のお話では、慣習上現行法は定率法を用いておるから、そのままによるというお話でございましたが、これに対して私の意見を申述べますと、現在、今後の償却につきましては定額、定率の併用ははつきりと認められておるはずでございます。従つて定額法が慣例上だめだということは、今後の償却において認められる点から見て考えられないのじやないかと思うのでございます。更に過去の減耗度計算については、先ほどもちよつと触れましたように、過去の減耗度については、いわゆる定率法減価償却というものは、当初の償却が多くてあとのほうの償却が少いのでございます。ところが実際の企業の状態を言いますと機械の磨り減るのはむしろあとのほうが多いのでございます。これについてはいろいろ議論のあるところと存じますが、仮にこれを当初もあとのほうも平均にやる定額法こそは、その議論の分れるところのどちらをとつても最も公平な考え方であつて、過去の減耗度計算についてこれを用いることこそは、今後の償却よりもむしろ減耗度においてこそ定額法をとる必要が強く感じられるのじやないかと我々思うのであります。このままで是非過去の減耗度計算する場合に定額法を用いて頂きたいと、いうことを切望する次第であります。物価指数上昇、これとこの措置を同時に織込むことはもう当然のことで今更説明するまでもないことだと思うのであります。以上でございます。
  52. 吉田信邦

    政府委員(吉田信邦君) 今のお説について少し御説明申上げたいたいと思うのでありますが、定額法定率法はいずれも償却方法として認められておるところでございますが、定額法は毎年同じ金額を償却する、定率法は同じ率で償却するという形で、実際面として今お説のように定率法のほうが最初に余計を償却してしまう。従つて残る帳簿価額は比較的小さくなるという相違を持つております。併しながら再評価そのものは他面資本の堅実な企業の経営という点に重点をおいております。再評価自体は一面から言えば、インフレーシヨンによつて誤られた価格を是正するということに主力を注いでおりますが、同時にその後の企業の健全性というところに重点を置いておりまして、そういう意味から言いますと、定額法よりも定率法のほうが企業の健全に資し得るというふうに考えた次第でございます。更に本日のいろいろお説を伺つていますと、一つの矛盾がある。それは再評価限度額そのものは成るべく価格引上げたい、それと同時に再評価をした結果の積立金の資本組入れについては極めて躊躇をしておるという意見が出ております。これは実は一つのものなんでございます。再評価をするということは、本来から言えば直ちに資本に組入れるいとうのが本来の筋である。それに応じた配当を同時にするというのでなければならんのであります。併しながら現在の情勢としては直ちにそれには行けないということで、その期間途中の一つのクツシヨンとして再評価積立金という制度を置いて、それに応ずるところの償却ができるように、償却ができるのみならず資本の組入れをして行くというような形になつておるわけでございます。従つてこの場合限度額を高くするということは、一面から言えば、減価償却資産を、減価償却を余計し得るという意味において、価格はございませんが、同時にそれをしたならば、それに応ずるだけの資本の組入れができ、それに応じて配当ができるということが併せて考えられなければならない。そういう点から申しますと、一面再評価限度のしては成るべく堅実に考える。同時に再評価した限りはそれは資本に組入れるようにするということが、再評価の実際の現実的なあり方であろうと思うのであります。従つて昨年の上半期におきましては経済情勢がかなり下向きでございましたので、その場合においては一応仮に再評価積立金という形で暫く置いて、現実に資本として配当などの源泉にならないような措置を講じておつたわけでありますが、経済界が漸く正常な姿に戻つて参りますに従つて、現実に配当もし得るということになれば、それに応じて資本の組入れもしなければならない。又それが正常な姿であるというふうに考えられるのでございます。従つて限度引上只今定額法限度引上という主張と資本組入を躊躇されるという点はむしろ矛盾がある。この二つを歩み寄らせて、この限度額は成るべく堅実にして再評価した限りにおいては資本の組入れが現実に行い得るように、円滑に推移するようにというのが妥当ではなかろうかと思われるのであります。
  53. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) ほかのかたは御意見ございませんか。
  54. 金子佐一部

    参考人金子佐一部君) 今経済課長からのお話がございましたように、再評価をいたしましたその所期の目的は、勿論資産の価値を時価に引き直したという半面、又それが資本に組入れても適正な配当ができないような企業であれは、それは企業としては病人であるというようにも考えられますので、理論的にはこの意見に対して私も異議はないと思います。ただここに実情としては幾多の問題が残されておりますが、ただ特にここに大きな問題として考えなければならないことは、先ほども次長からお話がありましたが、今回の再評価の積立金の資本組入は、このやり方については全部企業の自主性に任すというところにあるのであります。私は企業の経営者といたしましては、勿論相当に自己の企業立場をよく知つておりますから、配当も付かないような、而もそれを資本に組入れて株価が非常に低落するような場合であれば、これは恐らくやらないであろうというようなところに一応の安全瓣があるように考えますが、これは企業自体だけの立場考えた問題であります。若しも私どもの立場において、自分の企業においてはこれは一対一の無償株を交付してもよろしいと考えた場合においては、自信を持つてこれを交付いたします。けれどもこのような会社が非常に多くあつた場合において、果して株の分量というものはこれは巨額なものになると考えます。特にこの無償株ということはあたかもちよつと口当りがよろしうございまして、会社が株主に渡すときには無償でありますが、一たび株主の手に入つた以上は、これは有償でなければ動かないのでありまして、これは全部金庫の中へ無償株であるということでしまつておいてくれればよろしいのでございますが、恐らくこれが大部分が売出されると考えられますので、現在でも少しの浮動株があつても株価は必要以上に低落いたします。勿論会社の経営内容が変らないのにかかわらず株価が左右されるのは、このような少しでも浮動株が出たというだけでも左右されるという現状を見ても、この結果は私は予断は許されないと考えます。従つて私はこういう問題について果して政府はどのように考えられておるのか、全然これで懸念なしとお考えになつておるかどうかも承わりたいのであります。特に今回この問題につきまして、全く企業の自主性に任すということは企業の自由でありますので、無償株も交付できないような収益力の低い会社が反対する理由がないのにかかわらず、相当多くの会社がこれに対して反対の意見をはつきり言つておられます。これはやはり共連になることを恐れておるからであります。共連れれになるということはしばしばお話がありましたように、同じような同業者で以て無償株交付その他が行われた場合において、やはりこれに対して共連れのような気分でやる、こうなると非常に辛いというわけでございます。そういうことはやらねばいいじやないかということは考えられますが、なかなかやらないではいられない、この点も考えて頂きたい。それからもう一つ無償株の今度の交付につきましては、全く資産の裏付がない、ただ株そのものでありまして、資産は現在の株の中に全部入つておるわけであります。ただ一株で持つていたものを二株にして持つというだけでありまして、結局株価は半分になつて然るべきものだと思います。それから配当も今まで四割として配当しておりました会社が多少高率であるというのが仮に二割に引き直されて、丁度これが元通りでありまして、株主はこれだけでは利益ということは考えられない、ただ配当が適正になされた、適正の率になつたというだけでありまして、ほかには利益はないはずであります。然るにこれが非常に先ほど内山さんからも言われましたように、何か非常に株主の利益になるように言われまして、株価を吊上げるというような気配も見えますので、この問題についての啓蒙もしなければならないと思います。ともかく私は結局高率配当が適正率になるようにこの処置が取られることはいいのですが、ややともすれば高率配当を慫慂するような形になりはしないか、これは資本蓄積を現在強調しておる際に、多少この問題と矛盾しやしないかという懸念もございます。又この配当金というものは、配当金をもらつたからといつて株主が得をするわけではございません。積立金にして置いてもこれを株主のものでありまして、むしろ借入金のある会社が配当をするということは、結局その裏付として会社は又借入金を返せるのを返せなかつたという裏も出て参ります。結局借入金をして配当をしたというようなことと大した違いがないのでありまして、結局これは利益が幾らあつても、各会社は相当皆借入金を持つておりますので、本来ならばこの借入金を返して資本蓄積をしてこそ現在持つておる株が堅実なものになつて、株主はその意味で有利になるのでありますが、併し株を持つためには金利を払つておるというような面もありますので、適正な配当は必要だと思いますが、徒らに高率配当を喜ぶということは、これは甚だしく株主としては矛盾な考え方ではないかと思いますので、この際こういう点も十分考慮して政府はこの問題をお取上げになることがよろしいと思います。つまり理論的には先ほどお話のあつた通りこれは正常経済界において考えられることでありまして、まだ日本の企業は病人でありまして、収益力も非常にちぐはぐであり、又低調な企業も多いのでありまして、その点は慎重に願いたいということと、それから企業の自主性において行なつても、それが競合した場合に、株式市場に如何なる変化が来るかという対策も御考慮願いたいと思います。以上。
  55. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) ほかに御意見ございませんか。
  56. 小野清造

    参考人(小野清造君) 今の金子さんの御意見と同じようなことになるのですが、つまりこの資本組入れによる株式発行の結果、それが市場に与える影響の問題なんです。これは先ほども御説明がありましたように、大体各企業の自粛と申しますか、当然自制するだろうというお話なのであります。これは理論としては非常に結構なことで、又そうあるべきことだと思いますが、併し実際の面から言いますと、やはり私はそれでは到底株式市場の影響というものは免れないだろうということを非常に心配するものであります。特にそうなつた場合に懸念されますのは、無償交付の株式発行によつて、有償交付の株式の発行が非常に困難になるということが起り得る、どうしても無償交付の株が有償交付の株と金額の上で適当に調整して行くということは、これは絶対必要じやないか、若し無償交付の株式の発行のために有償交付の株式が発行できないということになりますと、私どもとしては株式市場からする資本の調達ということはできなくなる。それは結局一つの例を言えば、金融機関にかかつて行くだろうということになつて、今後の資本調達の上に非常に大きな影響を与えるのではないか、将来はわかりませんが、現在の差当りの状態としては、大体増資の金額は月に二十億程度で調整されておるようであります。而も現在でも四月では大体三十億、五月になりますと四十億以上の増資の計画がある。でこの組入が認められない現在でも、月大体二十億見当という調整額を超えた増資の計画があつて、そういうものが出たのでは株式市場に影響があるというので、無理にそれをいろんな方法で押えて、無理に調整しておるという現状でありますので、こういつた程度の株式市場の株の吸収力といいますか、消化力といいますか、そういうものが急速に殖えるということはこれは到底考えられないことであります。そういう状態のところへ本来資本調達の上からする増資の要求があり、その上に組入れによる、特に無償交付の場合にそれがはつきり出て来るわけですが、資本組入による株式が競合するということになりますと、これは当然有償交付による株式の発行ということが非常に抑圧されざるを得ない。それが結局他の資本調達の上に非常に大きな影響を与えるのみならず、この結果株式市場を非常に混乱させるというような虞れが非常に多いと考えるわけでございます。実際私どもの望むところとしては、できるだけ各企業自体の自制によつてこの調整が付くということならば、これは誠に結構なのでありますが、実際問題としてはなかなかそれは行われにくいのであります。そこに何か各企業立場を離れて、全体の立場から見て本当に必要なものに必要な増資を適宜やらして行くというためには、企業立場を難れてこれを調整して行くというふうな措置をどうしても考える必要があるのであります。そういうことをすることによつて初めてこの資本組入を認めると、これを認める以上は、できるだけ各企来にこれをやらせるのがこれは本来だろうと思うわけであります。従つてこれをやらして行くためには、それがやれるような状態に置くことが必要であろうということを考えておるわけであります。
  57. 工藤友惠

    参考人(工藤友惠君) 私は今の問題として、一つ酒井さんの御説明なつた点につきまして、なお二、三私の考えを申上げたいと思うのであります。  第一に千分の六、千分の三の問題でありますが、或いは公平の観念とかいろいろなことがございます。併し本当のことを言えば、実際の公平ということを期しますれば、再建問題とか何とか言つて、これはいつまでたつても片が付かない。そういう問題を六%、三%とかいうようなことでお考えになること自体に物の軽重においてお考えが違うのじやないかと思うのです。私どもの考えによれば、一番大事なことは何であるかというと、再評価法というものにつきまして、私ども従来、純粋に資本食潰しを防止する、必ずしも税金の問題だけではないのでありまして、あらゆる意味からそれを防止する立場から来たものであります。その目的を、三%違つただけでも、更にこれを再評価する意欲を起し、或いは度胸を起し得るような措置ができるならば、そちらに近付けるということが大事ではないか。これを阻害するものはあらゆる手段を以てやるということが大事なのであつて、これは非常に変な言葉でありますが、センチメンタルな公平理論というものは一応お考え直される必要があるのじやないかと思います。これは個人的に非常に尊敬している酒井さんと以前お話したときにも、やはりお互いにお話したのでありますが、安定価値計算の問題に行くのですなと、そういうことであつたのでございます。それはまあそれとしまして、その辺のことをお考え下さるというと、千分の三にすれば大いによいということが一般の見込としたら、是非この点を御再考願いたい。特に私聞き違いかも知れませんが、個人についてはすでに六%支払済のものがあるからこれを返すのは非常に面倒だと言われますけれども、私はそれがどのくらいあるか知りませんが、面倒さというものは、個人に返す場合に果してどのくらい面倒かということを私疑うものでありまして、それが理由の一つになるならば、この点はどうも解しかねるのであります。  その次に公益企業の問題につきましては、吉田課長からも非常にいろいろお話がございまして、十分に御理解を頂いておるようでございまするが、飽くまでこれは一年では恐らく困難だろうということは、酒井さんも吉田さんも御異議ないと思うのであります。この点につきまして積極的に、今の物価体系について犠牲になつておるというか、実に残酷な犠牲になつておる産業について御再考願い、而もそれが重要な産業でございまするから、これについては十分に、何と申しますか、再評価法の問題を離れても、理財局方面、或いは大蔵省全部としてお考え願いたいのでありまして、これはたまたまその一部が通産省関係でありまして、例えば電鉄のごときは運輸省関係かも知れませんけれども、この辺も全部政府が一丸となつて考えにならんというと、そう簡単に困る困るで済ませる問題ではなくなつておるということを改めて申上げたいのであります、なお、ちよつと返りますが、三%問題につきまして通産省が非常に産業界に御理解があるということは、非常に私どもも喜ぶところでありまして、なお私の申上げたような線に従つて一層の御奮闘を願いたい。これは私は勿論国会のほうにお願いすべきでしようが、お願いいたしたいと思います。  その次に、登録税の千分の一・五という問題でございますが、千分の一・五というものをおかけになるのは、これにはつきり申上げますが、こういうもので税が取れるということは主税局でも非常に失礼ながらお考えになつておらなんだと思うので、どうするかという問題を出してからお考になつたのだと思いますが、そういう要らんものをわざわざ少くとも税収の通りに予定しなかつたものをお取りになるという必要がどこにあるか。まあとにかく取つて見ようというお考えであつて、これも多少でも組入れの場合に邪魔になるとしたら……、まあ組入れの問題は今の小野さん、金子さんのお話一々御尤もなんでありますが、一応組入れの方針としては、私自身といたしましては、適当な措置があることは必要であります。よいと思います。同時にこの点は千分の一・五というようなものもまあそう邪魔になるということはないと思いますが、要らんものはお取りにならんほうがいいのではないかと思うのであります。  それからもう一つ固定資産税に対しまして、固定資産税そのものをもう一遍お考えになろうというのは非常に賛成でありますが、同時に早急の問題としては、私は非常に大事だと思うこの再評価が完全に行くために、特に零細企業とか、或いは非常に微弱な力の弱い、或いは時局に恵まれない産業のためにもお考えを願いたい。これは公益企業の面にも非常に関係がございます。是非この点再評価法と切離す方法についてもう一度お考えを願いたいと、こう思うのであります。
  58. 境野清雄

    ○境野清雄君 だんだん議論になりましても何ですが 一つ二つ通産省のほうにお伺いしたいのですが、今日ここに頂きました資料を見ましても、日本紡績協会は二月十二日に要望書を出しておるようでありますし、それから経済同友会は十一月の十八日か京都の大会か何かやりました席上、工藤昭四郎氏から何か要望が出ておる。経団連からは二月五日に資産評価に対しての意見が出ておりますし、関西の経団連からは同じように二月の十七日に出ておる。このような問題はもうすでに私はこういうような要望書、陳情書その他によつて通産省自体は勿論、先ほどどなたかからもお話がありました通り通産省産業界に非常に理解があるので感謝するというお話でしたが、私たちは通産省産業界に理解があるのは当り前の話で、もつと理解がなくては困ると思うのですが、こういう要望書がたくさん出ておりますので、特に今のお話の六%を三%とかに減額しろとか、こういうようなお話がありまして、こういうような問題を事前に通産省はこれを承知していて日本産業界のために大蔵省に折衝をやつてつたのかどうか。或いは今日初めてお聞きになるのかどうかという点について、先ず政務次官にお聞きしたいと思います。
  59. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 通産省といたしましては、只今境野委員の御質問にありましたかような陳情書は、今日まで企業局のほうで受取りまして、十分検討いたし、成るべくこの陳情書の御希望に副うように、大蔵省との間に幾たびかの折衝をしたそうであります。併し先ほど申上げましたごとく、一番大きな問題は、再評価税の六%が一番重要な問題だと思うのであります。これに主として力を入れたらしいのでありますが、どうもそれがうまく行かなかつたという現状にあるのであります。その他の問題につきましては、いろいろ議論が闘かわされはのでありまするが、その結果が一応原案のようなことになつておるそうでありまして、併し実際今後実施いたしまして、なお且つ不公平があるということになりますれば、当然これは修正の面に進んで行かなければならんというふうに私は考えておるのであります。
  60. 境野清雄

    ○境野清雄君 まあ今までの経過は、大体余り議論しましても水掛論になりますから、従来当委員会として、請願、陳情、或いは今日のように薀蓄を傾けたこの証人の証言みたいなものがたくさんありましても、いつもその委員会で取上げたものがあとうやむやになつてしまいまして、これは私はわざわざ参考人としておいで願つたかたがたに甚だ申訳ないと、こういうふうにも思つておりますので、陳情にいたしましても、請願にいたしましても、或いは今日のような重大問題の参考人の御議論が、ただ気休めに参議院へ来てしやべつたということでは、私は今後何ら価値がないのじやないか。終いには諦めて参考人のかたも参議院の委員会へ来てしやべつても無駄じやないかというようなことになつてしまうので、一つ通産省としてもこの点を重視して頂いて、例えば今のような資産評価の問題にしましても、事前に我々の委員会に、こういうような問題が現在としてはこの業界では要望されておると、併しこれは大蔵省でこの面はどうも通らないならしい、或いはこの面はなかなかこういうところが難点じやないかというようなことを事前に御報告願つて、そうして我々としては業界と緊密な連絡をとつて何とかそれを乗り切るようにしたい。又大蔵省自体に対して、この通産省だけでいかんのなら、通産委員会として一つ決議でも何でもとりまして、そのもので併せて通産省と一緒に大著省のほうへお願いするとかいうようなことも今後やつて行きたいと思いますので、一つ通産省自体でも従来のような委員会の取扱方ではなく、こういうようなことがありまして、今の参考人の御議論の中で、今の御議論は御尤もだと、それは併しすでに大蔵委員会で決定しちやつたので止むを得ないというようなことでは、今後の日本経済の再建のために非常に難点ではないか、こういうことを斡旋するのがむしろ通産省としては一つの大きな役目じやないか、こういうように思いますので、一つ大臣とも御相談の上、通産省としてもう少し陳情、請願或いは公述というものに対して重点を置き、又そのものに対して今後一層御研究して頂いて、次の機会には今参考人のおつしやつたような点を幾分でも取入れて来るというようなことに、一つ格段の御努力を願いたいと思います。この点一つ通産政務次官に特にお願いいたします。
  61. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 通産省といたしましては、従来も陳情、請願につきましては特に重大な関心を持ちまして、この内容を慎重に検討いたし、推進すべきものは推進して参つた考えておるのでありますが、たまたまこの問題に対しまして、今までこの通産委員会に御報告していなかつたということは、この再評価の問題が今まで取上げられてなかつた結果かと考えておるのでありますが、いずれにいたしましても、境野委員の御希望は全く御尤な御意見でありますので、今後できるだけ御趣旨に副うように努力いたしたいと考えております。
  62. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) ほかに御意見なり或いは御質問なりございませんか……別にないようでございますが、先ほども境野委員から発言がありました通り、こういつた貴重なる意見を十分に取入れて善処して頂くように、通産当局並びに大蔵省の善処を要望いたしたいと思つております。この点は特に一つ御配慮をお願いいたしたいと思いますので、委員会として申上げて置きたいと思います。  それでは本日の委員会はこれで散会いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは本日の委員会はこれで散会いたします参考人のかた、いろいろ有難うございました。    午後四時四十五分散会  出席者は左の通り。    委員長    深川榮左エ門君    理事            古池 信三君            廣瀬與兵衞君            栗山 良夫君            結城 安次君    委員            小野 義夫君            上原 正吉君            小松 正雄君            下條 恭兵君            加藤 正人君            山川 良一君            境野 清雄君            駒井 藤平君   衆議院議員            中村 純一君   政府委員    大蔵省理財局次    長       酒井 俊彦君    大蔵省理財局経    済課長     吉田 信邦君    通商産業政務次    官       首藤 新八君    通商産業通商    振興局長    井上 尚一君    工業技術庁長官 井上 春成君    中小企業庁長官 小笠 公韶君   事務局側    常任委員会專門    員       山本友太郎君    常任委員会專門    員       小田橋貞壽君   参考人    日本紡績協会財    務課長     中島 俊一君    十條製紙株式会    社常務取締役  金子佐一部君    富士製鉄株式会    社常務取締役  小野 清造君    経済団体連合会    理事      内山 徳治君    関西経済連合会    常任理事    工藤 友惠君