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1951-02-13 第10回国会 参議院 通商産業委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十三日(火曜日)    午後一時三十七分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○通商及び産業一般に関する調査の件  (鉄鋼対策に関する件)   ―――――――――――――
  2. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 只今より委員会を開きます。  当委員会における「通商及び産業一般に関する調査」を迎えて、ここに第三回目となりました。即ち第一回は総合的見地に立つて貿易対策の全般を調査し、次いで第二回には、輸出入貿易の王座を占める纎維産業について検討したのでありますが、本日は纎維に次いで非常なウエイトを持つと同時に、企業内部に極めて複雑微妙な問題を内包している鉄鋼業を取上げて議題といたしたいと存じます。当委員会といしましては、昨年以来機会あるごとに鉄鋼業の当面する諸問題を取上げて参つたことは、委員各位の御承知通りでありまするが、国際情勢の推移は、いよいよ以て鉄鋼業自立緊要性を愬えて参つているのでございます。かような意味合いからいたしまして、本日は特に業界から、富士製鉄永野社長、新扶桑金属日向取締役鉄鋼連盟岡村專務の御三方を参考人として御出席お願つた次第でございます。そこでお年の順序でございまするが、何分にも時間が限られておりますので、先ず通産省担当者から、昭和二十六年度の鉄鋼生産計画概要とその計画達成見通し如何について御説明を願い、次いで永野日向御両氏より、これに対する批判的御意見を承わると同時に、当面している諸問題について問題の所在点を明確にして頂く。次いで通産省を初め、安本、物価庁為替委員会、或いは船舶局等政府側委員に質疑して頂くと、大体かような順序で参りたいと存じます。更に又本日の本会議との関係でございまするが、二時から首相が外交問題について発言することになつておりますので、適時委員会休憩等方法によりまして、支障のないように取扱つて行きたいと存じますので、この点はあらかじめお含み置きのほどをお願いいたしたいと思います。
  3. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 鉄鋼の現状、特に生産についての大要を御説明いたします。昭和二十六年度の生産計画に入る前に、昭和二十五年度の生産の現在の状況を簡單に説明いたします。昭和二十五年度の第一、第二四半期普通鋼鋼材百五十二万トン、第三四年期は九十九万八千トン、第四四半期は、現在の生産をもとにいたしまして、二月の操業日数その他を勘案いたしまして、おおむね九十六七万トンに達すると思います。従いまして年間を通じましての生産は、少くとも三百四十万トンを超える可能性が強いと考えます。  二十五年度におきます輸出状況を関連して申上げますが、現在のところ、特需を含めまし七おおむね六十五万から七十万トン程度に相成るかと思います。一月の輸出状況は従来に比して著るしく伸長して参りましたので、恐らく先ほど申上げました数字を更に上廻る可能性が強い、こういうことを附言いたしたいのであります。従いまして、内需に向きまする普通鋼鋼材は二百七八十万程度と考えられます。  このような状況からいたしまして、通産省といたしましては、現在の需給関係はおおむね均衡を得ておると見ておるのであります。特に薄板硅素鋼板等需給関係が逼迫していると言われている。品種につきましては、例えば薄板につきましては、第四四半期は第三四半期に対して約一割の生産増強をいたしております。このような状況需給関係に対しますいわゆる割当統制というような問題は考える必要がないと確信いたしております。  次に昭和二十六年度におきます生産計画大要と、これに対しまする現在までの対策大要を申上げます。昨年の十月、国際情勢の変転に対応いたしまして、通産省といたしましては普通鋼鋼材四百万トンの生産目標を立てまして、これに対します所要の原材料輸入について、関係方面に折衝いたして参つたのであります。この四百万トン生産計画の中核をなしますものは、高炉銑三百二十万トンの生産でございます。これに対します重要な鉄鉱石と強粘結炭輸入につきまして、今日までの経過を申上げます。最初に強粘結炭輸入でございますが、これは昨年の十二月、朝鮮におきます動乱の問題に関連いたしまして、中共地区の強粘結炭輸入、特に開静炭輸入が非常に問題に相成つたのであります。当時これらが輸入について非常な不安がございまして、杜絶するのではなかろうかという説が流布ぜられておつたのでありますが、今日までのところ月大概二万トン乃至三万トン程度輸入を考慮し得られる段階でございます。併しながら三百二十万トンの生産を維持するための強粘結炭供給相当思い切つた方向転換をいたさねばならんことは御承知通りでございまして、これに対しまして対策といたしましては昨年の夏、緊急輸入の問題にも関連いたしまして、ドル地域より米炭その他の輸入計画いたしまして、第二、四半期には十五万トン、第三、第四、四半期につきましてはすでに通産省のほうで公表しておりますような数字承認がありまして、目下これに基く契約をいたしまして、この輸入が三月以降順次入つて参る予定でございます。この石炭鉄鉱石輸入につきまして、最近自動許可制による輸入制度が確立いたしまして、今後におきまして二つ原料輸入確保相当重要な役割を果すと考えておるのであります。  次に鉄鉱石について申上げたいと思いますが、昭和二十五年度におきまして鉄鉱石供給源といたしまして、中華民国或いは朝鮮というものが対日供給いたしました数量は今日まで大体数万トンに過ぎないのであります。これらの鉄鉱石を主として供給いたして参つたものはマレーにおきますズングーン、或いはフイリピンにおきます鉄鉱石でございまして、昭和二十六年度におきます計画目的達成のために、この地域におきます生産増加を期待すると同時に、ドル地域からの鉄鉱石輸入について昨年の秋以来折衝いたしておるのでありまして、幸い第三四半期以降鉄鉱石輸入を得るに至つたのであります。今日先ほど申上げました自動許可承認制実施と共にこれらの供給源確保通産省においても、又業界においても專念いたしておる実情でございます。でこれらの鉄鉱石石炭輸入確保見通しがつきましたので、通産省といたしましては先ほど申上げました高炉銑三百二十万トンの生産目標達成するに最も重要な役割を果しまする八幡製鉄洞岡千トン鈴鉱炉火入を三月十日頃実施する運びにいたしまして、目下司令部方面と折衝中でございます。この千トン溶鉱炉の稼動によりまして高炉銑年間二百八十万トンベースに到達いたすのでありまして、今後におきまして特に四月以降ズングーン、或いはドル地域、或いはフィリピンにおきまする生産増加に期待する輸入増加によりまして更に三百二十万トンに達する溶鉱炉の再開について特段の努力をして参りたいと思うのであります。  次に四百万トン生産計画遂行上必要を要素を占めます屑鉄輸入について一言申上げたいと思います。屑鉄につきましては、二十六年度に年間三十万トンの輸入計画いたしておりまするが、目下状況を申上げますと、国内におきます軍の拂い下げが、昭和二十五年度におきまして実績おおむね五万トン程度でございます。二月上旬におきます沖縄の屑鉄入札の結果、約四万トンを下らざるスクラップ供給確保し得るのではなかろうか。なおその他の南方諸国、或いはその他の地域より大体数万トンのスクラップ輸入を期待し得られるのでありまして、三十万トンのおおむね半分は見通しがついたと申上げてよろしいのじやないかと思うのであります。残りの半分につきましても、目下これが輸入につきまして鋭意努力中でありまして、年間三十万トンのスクラップ輸入は決して不可能でないと確信いたしております。  輸入問題につきましてはその程度にとどめまして、国内資源活用について一言触れたいと思います。昭和二十五年度、即ち本年度におきます国内鉄鉱石使用実績はおおむね八十五万トン程度と考えます。これに対しまして二十六年度は百万トンの予定を考慮しております。硫酸津活用につきましては、二十五年度の実績がおおむね三十七、八万トンと考えられまするが、二十六年度の計画においては五十万トンに引上げる方針であります。次に砂鉄利用でありまするが、昭和二十五年度におきましては、おおむね電気銑を中心といたします使用年間十二、三万トンと考えるのでありますが、昭和二十六年度におきましては高爐鉄にも一部これを活用いたしまして、年間二十五万トンの使用予定しております。かような数字を合せまして、大体四十万トン程度国内資源活用を更に期待し得る情勢に相なつていると思うのであります。この国内資源活用に関連いたしまして、技術の問題に触れて一言申上げて置きたい思うのであります。一つ砂鉄利用につきまして、日曹製鋼の簡易な団鉱方式による精錬の技術が完成いたしました。これに対しては目下工業化助成に対します助成金の交附を検討中でございます。次に硫酸滓活用につきましては、二十五年度におきます日本鉱業河山鉱山におきまして磁硫化鉄鉱磁力選鉱による脱銅式研究実施中でありこれが研究の促進をいたしております。二十六年度におきましては、富士製鉄広畑工場におきまして、硫酸滓の脱銅工業化試験相当大規模に実施する予定でありまして、これにつきましては国家的助成方法検討中でございます。これらの諸般の技術の向上、これに対しまして各業界努力によりまして先ほど申上げました国内資源活用量は更に増大するものと考えてよろしいのではなかろうかと思います。生産に関します大体の説明をこれを以て終りたいと思います。
  4. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) ちよつと申上げます。通産大臣から三、四分の間挨拶したいと御申出がありましたから発言を許します。
  5. 横尾龍

    ○国務大臣横尾龍君) 通産省が考えておりまする製鉄業に対しましては只今局長からお話しをいたした通りでございます。製鉄業国家産業のうちで最も重要なることは今更私が申上げることもないことでございます。我々は銑鉄三百二十万トン、鋼材四百万トンを目標として二十六年度には進んで行きたいと考えるのでございます。一面これに対しまして原材料不足はもはや皆さん御存じの通であります。原材料入手に関しましては、業界かたがたはいろいろと御苦心のことだと思います。政府といたしましても強力に御協力をいたしたいという考えであります。これにつきましてはよくお話しも承わり、又打つべき手がありますれば、その方向に邁進したいと思いますから、御遠慮なくお申出を願いたいと思いまするいずれにいたしましてもこの困難なるとき、而も船舶不足輸送の面が一段と困難度を増すときに、何といたしましても政府といたしましては、通産委員かたがたの強力なる御支援と御指導をお願いすると同時に、業界かたがたの御支援と御鞭撻をお願いする次第であります。今日は折角お忙しい中をお出かけ下さいまして敬意を表しお礼を申上げて御挨拶に代えたいと思います。
  6. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは次に今日の出席されましたかたの御発言を順次にお願いしたいと思います。どうぞ永野重雄君お願いいたします。
  7. 永野重雄

    参考人永野重雄君) 富士製鉄社長をいたしております永野であります。只今大臣並びに鉄鋼局長より最近の鉄鋼事情お話がございまして、なお二十六年度の計画等につきましても御説明がございましたが、その計画の大幅のラインに沿つて実施をいたします我々の立場といたしまして、只今数字銑鉄三百二十万トン、普通銅鍋材四百万トンというのは、現在の技術並びに設備等から言えば生産可能でございます。又是非それを貫徹することが我々の第一の責任と考えております。ただ先ほども御説明の中にありましたごとく、一にかかつて我々の不安に思つております点は、これだけの生産をいたすために必要な原料資材確保のことであります。今も大臣からもお話がありましたように、この確保をいたします段には、先ず輸送力確保、ついで現在持つております外貨、ドル・フアンドの有効適切な活用等でありまして、なお慾を言えば同じく買いますならばできるだけ有利に買付けることが外貨の節約の点からも大事なことだと思いますが、現在あります諸法律統制の中で業界で下らん競り合いをしないような相談ができることが法律上許して頂けるならば、なおこの点についてもやりよい点があるのではないかと思います。その点につきまして、これは鉄の問題のみならず、一般産業を通じまして事業者団体法、独禁法についてそういう見地から御研究を頂ければ仕合せだと思います。なおそのほかに、何と申しましても経済再建のために我々が最も必要な資材である鉄鋼を作ることにつきましては、万全な努力もし、又責務を感ずるものでございますけれども、何と申しましても企業は営利が伴わなくちやならん立場もあるわけであります。従いまして現在の公定価格がありますのは銑鉄でありますけれども、この銑鉄公定価格がきめられました時期が、すでにこれは去年の秋初めと考えますが、当時の鉄鉱石は十ドルそこそこ、又輸入します石炭は、当時は先ほどの御説明にありましたように、最も近い国の支那開演炭が参つておりましたが、これは十一、二ドル見当で来ておつたときの採算から成立つておるわけでありまして、それが御承知のような事情を以ちまして、先ほど鉄鋼局長の御説明にもありましたごとく、開演炭は極めて微量なものしか参り得ませんで、大部分のものを遥か大西洋沿岸からパナマ経由で……休憩するんですか。
  8. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) ちよつとお諮りいたします。只今会議のベルが鳴りましたので、折角御発言中でございまするが、甚だ失礼ですけれども、一時休憩したいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは休憩することにいたします。甚だどうも失礼でございました。    午後二時二分休憩    ―――――・―――――    午後二時二十六分開会
  10. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 休憩前に引続きまして委員会を再開いたします。  それでは引続き永野重雄君の発言をお願いいたします。
  11. 永野重雄

    参考人永野重雄君) それでは続きまして……。支那から参つておりましたので距離が近く、従つて安かつた石炭が、只今も申上げかけておりましたように、遠くアメリカから買つて来るというような状態になつております。従いまして一時原価を構成されたときの価格が十一、二ドル見当つたものが今日では二十七、八ドル乃至三十ドルという高い値段を呼ぶようになつておるわけであります。この原因の大部分距離が長くなつて、なお且つ当時よりも海運市況が強くなつておるという二つの理由を以ちまして、こういう高い石炭を使うような破目になつておるわけでございまするけれども、価格は先ほど申しました去年の秋頃制定されたそのままの価格で、我々は銑鉄を販売いたしておるわけであります。こういう点につきまして企業の健全なる育成を国としてお考え頂けるものならば、こういう問題に対しましては適正な敏速な処置をお願いしたいものだと考えておる次第であります。  なお我々の立場から考えますると、こういう外国原材料に多くを、大部分のものを依存しておる産業、殊に最近のごとく、そういうもの並に運賃がひどく変動しておるものを主要原料としておる産業に、刻々の変化に即応するような統制価格ができるものかどうかということに対して非常な疑問を持つておるわけでありまして、この点につきましても、格段な御研究、御配慮を願わしいものだと存じておるわけであります。  なおその他鉄鋼の問題といたしましては、お手許にも資料が差上げてあるかと存じまするけれども、外国原材料買付け方法等につきましてできるだけ実情に副うように、有利に買付け得るような手配を頂きたいこと、お考え頂きたいこと、並にさつきも申しましたように重要品を遠く運ぶわけでありますので、船腹の問題が大きな問題として我々としては考えられるわけでございまして最近各方面船腹海運業者方面でも御苦労りようには伺つておりまするけれども、外船の買入れなり、傭船なり、或いは国内船舶建造等につきまして国としてできる限りの賃金の面、或いはその他の面につきまして御援助頂き、それが延いては多く輸送力に依存する我々産業に寄與して頂くことができれば幸甚に思う次第であります。  もう一つ製鉄業では相当大量な重油使用いたしますので、現在この重油につきましてはいろいろな事情があるように伺いますけれども、相当不自由をいたしております。これが生産相当影響を與えており、又今後與える虞がありまするので、この点につきましても国として御配慮頂きたいと存じます。その他細かい点につきましては、お手許に差上げてあります資料を御覧頂ければ概要については御理解が頂けるかと思います。
  12. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 次に新扶桑金属株式会社取締役日向君の御発言を願います。
  13. 日向方齋

    参考人日向方齋君) 御紹介に預りました新扶桑金属日向であります。先ほど通産大臣、並びに鉄鋼局長より昭和二十六年度の鉄鋼政策につきまして御高見を拝聴いたしたのでございますが、我々業界から見ましても、昭和二十六年度のいわゆる四百万トン計画は是非達成いたしたいと思つておるのであります。幸いにいたしまして、最近の業界はやや企業的に見ましても採算をとることができておりますのでありますから、これに原材料補給さえつきますれば、確実に四百万トンを達成することができると思うのでございます。けれども遺憾ながら原材料の面につきましては、いろいろ困難が予想せられるのでありまして、我々業者といたしましてもその成行を異常な関心を持つて見つめておるのでございます。特にこれは一貫会社、主として一貫会社の問題であります。銑鉄鉱石石炭等輸入の問題も、延いては我々平炉会社の問題でもありますので、我々の立場からも是非ともこういう原材料が的確に十分に入るように御配慮を願いたいと思つておるのでございます。例えば鉄鉱石開発に必要なる長期資金開発金庫から出しまして、鉱山開発長期計画をするというような方法もお考え願いたいと思うのであります。  又我々平炉業立場から申しますと、一番問題になりますのはスクラップの足りないことでございます。これ又最近の価格改訂等の適切なる措置もありまして、やや最近は入手楽になつておりますが、けれども全体といたしまして、国内にありますスクラツプの量にはおのずから限度がありますので、我々といたしましては、極力このスクラップを以て生産を長く続けるような方法を考えて行きたいと思うのであります。それには一貫会社において行つております鎔銑とスクラツプ配合率をなるべく少くして頂きまして、我々平炉業のほうにスクラツプを廻すような方法をお考え願いたいと思うのでございます。けれどもこれには先ず以て鉄鉱石石炭等において銑鉄そのものを殖やすことが先決で拠りまして、これをしませんと、折角配合率を下げましても、我々が銑鉄を頂く量が少くなるという問題になりますので、根本はやはり原料輸入の問題になると思うのでありますが、これと併行いたしまして、何とぞ銑鉄スクラツプとの配合率の問題をお取上げ願いまして、国家としてスクラツプを長く維持できるような方法をお考え願いたいと思つておるのであります。  なお国内鉄鋼資源開発の問題につきましてもいろいろございますが、先ず資金の問題もございましようし、差当つての問題といたしましては、国有財産スクラツプ化の問題が近年非常にやかましく言われておるにもかかわらず、実現せられていないという点を御注目願いまして、何とぞ早くこれをスクラツプ化することにお願いしたいと思います。大蔵省のほうもなかなか算盤高うございまして、スクラツプ化する場合にその中の或る部分鉱山に使えるとか、いろいろむつかしい計算をなさいまして、今までのところ余り早期スクラツプ化できておりませんのでありますが、これ又一つ最近スクラップ値段も上りまして、国家といたしましても相当値段で今度売れることになりましたので、何とぞ一つ早く拂い下げ願いたいと思つております。  それから永野社長からお話もありましたように、海外の原材料が高騰いたしましたために、銑鉄値段が大分上つて来るという問題がございますのでありまして、我々これは銑鉄消費者の側から見ましても、銑鉄価格改訂は焦眉の急であるということを申上げたいと思うのであります。そういたしまして、銑鉄業者におきましても適正なる利潤を以て一刻も早くたくさん銑鉄を作るように御配慮願いたいと思うのであります。ただ昨年来問題になりました銑鉄補給金の問題につきましては、昭和二十六年度において、一応打切になるという御方針を決定せられたようではございますが、財政資金の多い折からしまして、財政の面からそうした措置も肯けないこともないのでありますが、銑鉄補給金がなくなつた後の銑鉄価格を考えてみましたときに、異常なる値上りになると思うのでありまして、我々のざつと計算いたしましたところによりますと、補給金を撤廃いたしました後における、即ち昭和二十六年四月以降における銑鉄値段は恐らくCIFの七十ドルを下ることはむつかしいのではないかと思うのであります。CIF七十ドルといいますと、只今銑鉄の約倍近くなるのでございます。そういたしますと、それは鋼材に影響いたしまして、これ又鋼材値段も恐らく五割増以上になるのではないかと思うのでございます。鋼材がこれ以上更に五割も上るといたしますと、それは造船業でありますとか、機械工業でありますとか、その他万般の産業に影響いたしまして、おのずから我が国の製品の原価高を引起すのであります。これは国家的に言いましてもなかなか問題であろうかと思うのであります。我々銑鉄消費者立場から申しますと、この際銑鉄原料に対する輸入補給金を復活いたしまして鉱石石炭等は主としてフレイトの問題から値上りしたのに対して国家的補助をしてもらいたいと思うのであります。銑鉄値段につきましては、只今永野社長からも、刻々と変る国際価格にスライドして、銑鉄価格公定をすることはむつかしいのではないかという御意見がありまして、私もこのまま時々刻々に変わるフレイトにリンクした公定価格を作ることはむつかしいと思うのであります。そこで政府において少くともこのアレイトの値上りに対しても補給金をつけまして、幸いにしてアメリカにおきましては、鉱石石炭公定価格でありますから、そのプレイトを補給いたしますと、或るコンスタントの値段を以て銑鉄値段が出せると思うのであります。かようにいたしまして、我々銑鉄消費者に対し多くとも六十ドル以内ぐらいで銑鉄供給して頂きますならば、我々のほうにおきましても、鋼材を適正の値段に配給いたしまして、少くとも国際価格よりも低くめに売ることによりまして、我が国物価政策或いは産業政策に多大な貢献ができると確信いたしておるのでございます。而もこの七十ドルと六十ドルとの差はずつと計算いたしますと、年間約百億からせいぜい二百億までの問題でございまして、この補給金財政需要の多い折柄、極めて無理なお願いかも知れませんが、我が国産業政策なり、物価政策の堅持という大きな方針の下から考えますと、決して高いものではないと確信いたしておるのでございます。  それから近頃鉄鋼業はやや景気がいいのでありますから、何となく世間も我が国鉄鋼業に対して楽観的に見、業者の間においてもややもすれば楽観的になり勝ちでありますが、これを冷静に考えて見ますと、我が国鉄鋼業のごときは決して楽観をすべきものではないのでありまして、つい半年前まで欧州もの鋼材が東亜の各地にまで進出いたしまして、我々業者として如何に我が国鉄鋼業を維持するかということについて晝夜寝る暇もなく考えたような時代がつい半年前にあつたのでございます。今世界の軍拡時代におきまして、鉄鋼業もやや景気がいいように考えておりますが、平時になりますと、我が国鉄鋼業のごときは極めてみじめなものになるのであります。そこでそれでは我が国鉄鋼業をなくして我が国が軽工業で行けるかと言いますと、これは決して行けないと確信するのであります。我々鉄鋼業者はこの機会に何とかいたしまして、我が国の基礎産業である鉄鋼業の自立を完遂いたしたいと考えておるのであります。それにはこの機会におきまして、設備の合理化をいたしまして、いつ如何なる時代においても世界の鉄鋼業に対抗すべき企業形態になることが先決問題であろうと思うのであります。然るに政府鉄鋼業に対する重点は近来とみに薄くなりまして、例えば本年度の見返資金の割当のごときを見ましても、僅か十数億程度の見返資金しか割当られないというような状態にあることは我々といたしまして誠に残念に思うのでございます。我々はこの際に見返資金、見返資金ができなければ長期資金、即ち金融債或いは開発金庫資金というようなものを利用いたしまして、この機会に我が国鉄鋼業を極度に合理化いたしまして、世界各国の鉄鋼業に競争できるようなものに持つて行きたいと思うのであります。この点も政府におきましては十分お考え願いまして、何とぞ深甚なる御配慮を願いますようにお願いいたします。  最後に巷間往々にして一貫業と平炉業との間に対立があるかのごとき噂がよくあるのでありますが、これはそういうことはないのでありまして、我々鉄鋼業に関する限り、やはり一貫業が本でありまして、それが栄えなければ我々は栄えない。又日本の現状におきましては一貫業だけで我が国鉄鋼業が行けるかと申しますと、そうではないのでありまして、両々相待ち唇歯輔車の関係に立つておるのであります。この点も御了解願いまして鉄鋼業全体のために各方面の御援助を賜りますようこの機会にお願いいたします。
  14. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 次に鉄鋼連盟專務理事の岡村君にお願いいたします。
  15. 岡村武

    参考人(岡村武君) 私は鉄鋼連盟の專務理事の岡村武でございますが、当参議院におかれましてはつとに鉄鋼業の重要性について御留意を頂きまして格別の御理解と御同情を頂きまして鉄鋼業の維持発展のためにお力添えを頂きましたことは誠に感謝に堪えん次第であります。のみならず今日は極めて政務御多端のときにもかかわらず、業界の代表三名お招き頂きまして、私どもの考えの一端をお耳に達する機会を與えて頂きまたことをかさねがさね御芳志に対しまして業界を代表いたしまして厚く御礼申上げる次第であります。  鉄鋼業につきましてはまあ恒久的な問題も、又当面の問題もいろいろございまするが、それらを一々取上げまして私どもの考えを申述べる機会もございませんので、差当りの、刻下の急務と存ぜられまする鉄鋼原料問題につきまして、すでに永野社長、西山重役から申上げたのでございますが、重ねて私どもの存じ上げるところを御参考までにお耳にいたしたいと存ずるのでございます。  鉄鋼業は普通鋼ばかりではございませんで、そのほかに特殊鋼もございます。鍛鋼も鑄鋼もございます。或いは又普通鋼、特殊鋼から出発をいたしますいわゆる二次製品、例えば釘、針金、鋼索、五ガロン罐、鶴嘴、ハンマー、或いは高圧容器、針布線、いろいろそういうふうな縁に繋がる二次製品、三次製品の業界を抱えておるのでございます。又、この鉄鋼業原料供給いたしまする立場の耐火材の関係業でございますとか、或いは又燃料関係もございまするし、いわば鉄鋼銑鉄を本流の一番源といたしますれば、その下流に厖大な関連産業が連なり、互いに連繋をいたしておるのでございます。この本流に注ぎ入りまして本流を培い、沿岸を潤す種がつまり鉄鋼の諸原料でございます。若しこの水の手が切れますると、本流は干上り、上流はもとよりのこと、下流もすつかり枯渇いたしますことは見やすき道理でございまして、その結果とまでは申上げられませんけれども、将来において非常な不安を感ずることにつきまして、申上げたいと存ずるものであります。先ほど通産大臣並びに鉄鋼局長から誠に行届いた御説明を頂きまして業者一同も十分了承いたしたのでございますが、何せ世界の政局の動きは日本全体がとつてかかりましても自由にならない絶対のものでございまするので、その大きな流れに押流されまするならばこれは如何ように政府でお考えを願いましても、如何ともしがたい事態が招来されるものでございます。私どもはその点につきまして懸念をいたしておるような次第でございます。特に鉄鍋の重要原料といたしましては、石炭鉄鉱石スクラツプ、液体燃料、こういうものがございます。石炭は御承知通り国内に四千万トン程度生産がございますが、鉄鋼業で使いますいわゆる製鉄用のコークスにする粘結炭は非常にその生産が乏しく、又品質も良好でないのでございまして、戰前、戰中を通じましてその大量を開らんその他の中国のソースに仰いでおりましたのでございます。その鉄鉱石も遺憾ながら国内のものは甚だ貧弱でございまして、これはどう逆立ちをいたしましても国内で百万トンを掘出すことが精一ぱいでございます。その他は先ほど御説明のございましたような硫酸澤でございますとか、或いは圧延の際に生ずるスケールでございますとか、いわばこれは食べ物の腹をこわしやすい代用食でございます。そういうものを全部掻き集めまてせいぜい一年の国内の自給量は百五、六十万トンと存ずるのでありますが、この数量は絶対所要量の三分の一を賄うに過ぎないのでございます。三分の二はこれを外国から買入れざるを得ないのでございますが、その主な供給源といたしましては、従来は海南島等もあつたのでありますが、只今のところではこれに殆んど期待が持てないために、フイリピン、マレー、遠くはインド、エジプトからも入れておるような次第でございます。又スクラツプの点はこれ又非常な不安があるのでございまして、その大部分は勿論国内でできまするスクラツプ使用いたしますのが筋合いで、又従来それでよかつたわけでございます。戰争前は非常にアメリカから安いスクラツプが殆んど船賃に僅か加えた程度のもので手に入りましたために、やすきにつくような傾きから、相当大量の、二、三百万トンのスクラツプを毎年アメリカから買入れておつたのでございますが、戰争中は昭和十五年のエンバーゴ以来一切入つて参りません。爾来日本の中でスクラツプを全部賄つて来たのでございますが、昨今の異常な生産の上昇に伴いまして、これに伴うスクラツプ供給確保ということは、将来に亘つて非常な不安を感ぜざるを得ないのでございます。液体燃料に至りましては、国内生産はたかだか一割でございますから、その殆んど全部をアメリカから輸入いたしまして、重油でございますが、これを平炉、加熱炉その他に使用いたしておるような始末でございます。又その他の原材料といたしましても、日本で完全にどうやらこうやら賄えると申すのは鉄鉱石ぐらいのものでございます。そのほかマンガン鉱にいたしましてもこれは到底国内では自給できない又特殊鋼に欠くべからざるニツケル、コバルト、タングステン、モリブデンパラジウム、こういうものも国内で全然できないか、或いはほんの僅かしかできないものばかりでございます。これらも輸入をいたしませんければ、鉄鋼業といたしましては、首尾一貫した生産が不可能なのでございます。従つてかような原材料の非常な貧弱さから日本鉄鋼業の脆弱性がしばしば伝為される。二、三年前、つまり鉄鋼補給金が二千億にも上つておりました時分には、その故を以て日本鉄鋼業を抹殺とまでは参りませんけれども、これ以上の国家的な庇護の下に維持培養する必要はないのじやないかということさえ産業界の一部から持ち上りましたことは、極めて遺憾と存ずるのであります。申すまでもなく鉄鋼は、電力、石炭と共に近代的な産業国家を支える三つの支柱の一つでございまして、そのどの一つが欠けましても、近代産業国家というものは成立いたさないのでございます。故に、羊毛、綿花のごときは、殆んど国内生産はございませんけれども、全部輸入でやつてつておる。鉄鋼業は、甚だ貧弱ではございまするが、若干の原料国内生産もございまするので、只今申した国家的な重要性の絶対的な性質から申しましても、何としてもこれを維持発展させなければならないし、又それが私どもの義務であろうと存ずるのでございます。この点に非常に私どもは常日頃から留意をいたしておるのでございまするが、昨今の情勢からいたしまして、鉄鉱石石炭、そのいずれもが主な供給源泉を遮断され、或いはそれに近い状態に追込められましたために、代るべきソースを求めざるを得ない。その主な相手が米本国に相成つておるのでございます。司令部の非常な好意によりまして、終戰直後においても相当輸入をいたしましたが、昨今又その御手配を願いまして、日本に相当量の供給ができる状態ではございまするが、遺憾ながら価格が海上運賃の非常な高騰によりまして非常に高いものになつておるのみならず、将来の海上輸送力見通しから申しまして、果して私どもの所期いたしまする鉄、石炭だけで約七百万トンの輸入が完全に確保できるかどうかという点になりますると、海上輸送力の逼迫の点からいたしまして、危惧の念なきを得ないのでございます。日本の総海上輸送力、要輸送力がどのくらいかは存じませんけれども、まあたかだか千七、八百万トンかと存じまするが、そのうち約半ば近いものを鉄鋼関係だけで占めるのでございます。併しそのほかに三百万トンの食糧もございましようし、百五十万トンの塩も入れなければならない。又相当の液体燃料の輸入も必要とする。油脂原料も入れなければならん。又燐鉱石も勿論欠くことができないということになりますると、限られた輸送力では、どうも鉄鉱石並びに石炭の所要量の海上輸送がその点に完全に遂行されるということにつきまして、非常に心配いたさざるを得ないのでございます。かような点から、若し逆に申しまするならば、この原料確保が内外を通じて完全に期待できまするならば、先ほど御説明のございました普通鋼鋼材四百万トンの生産は、易々たるものと申すわけには参りませんけれども、ほぼ期待し得るものではないかと考えられるのでございます。その他約二十万トンの特殊鋼その他の鑄物に至りまするまで、この原材料確保によりまして、大体その生産を所期し得るものと、かように確信をいたすのでございます。従つてこの生産確保ができるかできないかということは、まあいわば一にかかつて海上輸送が円滑に行くかどうかという点に問題は帰着をいたすのでございます。その故にこそ私どもは、海上輸送力の増強、これを具体的には国内商船隊の再建、建造の問題もございましようし、或いは外国船のチヤーダーの問題もあろうかと思いまするが、差当つての問題といたしましては、いずれの途を選ぶにいたせ、この厖大なる要海上輸送力を如何にして充足するかということについて、GHQ並びに政府の万般の御配意を仰ぎたい、かように存ずるのでございます。このことによつて四百万トンの普通鋼鋼材生産が完遂をされまするならば、大体国内の所要量は賄うことができると存ぜられますし、又この厖大なる要輸入量を賄うに足るだけの輸入力を造出する輸出も可能かと存ぜられるのであります。従つて又このことは、延いては昨今かまびすしく論ぜられておりまする鉄鋼に関する再統制の要否に関する問題をも雲散霧消せしむるものと、かように考えるのでございます。ほか旨いろいろ問題がございましようが、差当つて私どもの心配いたしまするのは、二十六年度生産を可能ならしむる原材料確保如何ということでございます。このことが業界自体の力では如何ともいたしがたい輸送力船腹の問題にかかつておりまするので、この際重々御承知のこととは存じまするが、この点につきまして何分の御配意と御理解を頂戴いたしたく、重ねてお願いを申上げたいと存ずる次第でございます。  爾余の問題につきましては、お尋ねによりまして、この三人から如何ようにもお答え申上げたいと存じます。
  16. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 只今の御説明に対して御質問がございましたら御発言を……。なお只今政府側のほうで、小峯安本政務次官と牛場外国為替管理委員会の事務局長、甘利運輸省船舶局長、それから首藤通産政務次官が見えております。なお中村鉄鋼局長は司令部に出頭いたしましてその代りに川島政策課長が代理としてお見えになつておりますので、併せて政府側にも御質問がございましたら、以上のかたがたで御説明申上げるかと存じます。
  17. 小野義夫

    ○小野義夫君 只今業者かたがたからお話を聞きまして、相当深刻な御要望があるようでありますがこれに対して政府側の関係者から重複する面もあるかも知れませんが、いま一応御納得の行くような一つ説明を願つて、そうして業者の各位において政府の意のあるところを御説明に満足が行かるるということであれば、我々委員におきましても大いに了とするわけでありますが、業者が御満足が行かんということになりますと、我々委員会においても相当な要望を政府に申上げるということに相成ると思うのでありまして、先ず甚だ何でありますけれども、折角各方面の関つ係官庁のかたがたがいらつしやるわけでありますから、御三方の要望に対して今改めて一つこの席で御説明を願いたいと思います。
  18. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 安本の政務次官も見えておりますので、安本からお答えする点も多々あるかと存じまするが、取りあえず通産省立場といたしまして、その範囲内でお答えいたしたいと思います。  永野社長の御意見で最も主なものは、銑鉄のマル公改訂の問題、並びに原材料の適宜適量の買付、船腹確保、それから重油の増配と、大体四つの御指摘があつたかと考えるのであります。銑鉄のマル公改訂は、全くお説の通りでありまして当時の鉄鉱石並びに強粘結炭価格並びに運賃、これを今日に比較いたしますると、格段の開きを生じて参つておるのでありまして、政府におきましても、つとにこの改訂の必要を認めまして、安本のほうにお願いしてあるのであります。実はスクラツプのマル公よりも銑鉄のマル公改訂を早く実現いたしたいとかように考えておるのでありますが、先ほどお話もありました通りに最近民貿に追われておりますのと、海外の市価が非常に激変いたしておりますので、過去のマル公設定とは非常に事情を異にしております。どういう方法を以て最終に決定することが適当であるかということについて、いろいろ検討されておりますことが、予想以上に延びておることになつておるのであります。併しながら事態は急迫しておりますので、極く最近のうちにこれが決定を見るものと考えておるのであります。なお通産省といたしましては安本のほうに対しまして速急に決定されるよう引続き折衝いたしておることを御承知願いたいと思います。原材料の適宜適量の買付はこれ又お説の通りでありまして、我々も是非ともそういう態勢に持つて行きたいということを強く念願しておるのでありまするが、御承知通り現在日本の置かれておるところの立場、そうしていろいろの点につきまして制約を受けておりまするのと、なおこの為替関係その他の面からも又いろいろの制約を受けておりまするので、御希望に副うところまで行つていないことを非常に遺憾と考えております。併しながら昨年の春、民貿に移された当時の輸入條件並びに買付の條件等を今日のそれに比較しますると、これ又相当現在は改善されておると考えておるのであります。例えばユーザンスの設定であるとか、或いはスクラツプの制度であるとか、或いは又長期買付であるとかいろいろの面におきまて隘路は漸次打開して参つておるのでありまするが、今後もこの問題につきましては引続き成るべく適宜適量をいつでも買えるというふうな態勢を是非とも至急に確立するように邁進いたしたいと、かように考えておるのであります。  船腹確保でありまするが、これ又お三かたからも御要望がありますし、政府におきましてもその点につきましては最も関心を持つておる一つであります。といいますのは生産を増強いたしまするためには輸入の促進をやらなければならん、輸入の促進をやりますためにはそれの前提としてそれに充当するところの船腹がなければならん。ところがその船腹が昨年末以来急激な変調を来たしまして、外国船に依存しておつたその外国船が大部分他のほうに行つた、そこで日本船が急に浮び上つたわけでありますが、その日本船の現在の輸送量というものは誠に微々たるものである。そこでチャーターでも結構ですから、買船でも結構、何でもかんでもとにかく船の確保のできる方法があれば、そのいずれを問わず、急速に確保いたしたいということで、これは運輸省が主としてやつておりまするが、通産省といたしましても、輸入を促進するという建前、これがためにはどうしてもその前提として船腹確保しなければならんという信念から、すでに御承知かとも存じますが、貿易特別会計として物資の購入に充てておりまする五十億も、この際そういうことよりも船を買おうじやないかというような考え方の下に五十億だけは出しまして、適当な船があれば買おうというような方針で、現在進んでおるのであります。  かようなことで、以上四つの御意見に対しましては我々も全部御同意いたし、できる限り速かにそういう時期の来たることに邁進いたしたいと考えておるのであります。  なお又重油の問題も、これは最近相当改善されたと考えておるのでありまするが、来年度におけるところの鉄鋼の増産、そうして更に我々はできるならば現在の世界的軍備拡張が今や軌道に乘つたこと、そうしてこれがために鉄鋼の需要が予想以上に殖えるであろうこと等から考えまして、それの資材、特に需要の面におきましてはこれ又格別の関心を持つておるものでありまして、この上とも一層需要にマッチするような方法をとつて参りたい、かように考えている次第であります。  更に日向さんの御意見でありまするが、鉱山開発、少くとも国内でできるだけその資材確保いたしたいという御意見に対しましては、これ又政府も御同意いたすところでありまして、すでに通産省といたしましては、この開発につきましては特別の助成金、或いは炭鉱その他に対しましてもこれ又特別の助成金を交付いたすよう現在この手続を進めておるのでありまして、できるだけ国内の資源を開発いたしたいということを根本方針といたしておるのであります。ただ先ほど日向さんの御説明によりますと国有財産がとかく拂下げが遅れている、最近価格が非常に上昇したから、この際急速に国有財産を拂下げてもらいたいという御意見でありましたが、これに対しては、いささか我々は異なつた見解を持つておるのでありまして、この際私はできる限り外国からの輸入に待つて、そうして国内の需要に充てたい、万が一の場合には国内のこれらの資源をこれに充てたい、そうして国内鉄鋼生産に支障のない準備を整えて置くことがむしろとるべき策ではないか、かような見解の下にこの問題に対しましては若干消極的な態度を実は持つておることを御承知願いたいと存ずるのであります。と言いましてもこの消極的なものを別に表向きにしたわけでも何でもないのでございまして、主管は大蔵省でございますので、大蔵省のほうで拂下げるということになりますれば、これは何をか言わんやでありますが、少くとも通産省といたしましては、この際できる限り海外からの輸入に依存いたしまして、そうしてどうしてもそれらのものがうまく行かないという場合は、国内のこれらの資源を充てて行く、そうして鉄鋼生産の維持を図つて行きたいという一応の考えを持つているということを申上げて置きたいと存ずるのであります。一般メーカーとしましての傭船、そのスクラツプの配合でありますが、これは現在鉄鋼局でもその点は十二分に考慮をいたしましていろいろ検討をいたしておると承わつておりまするので、後刻担当官からこの問題について御説明をいたしたいと、かように考えます。なお銑鉄に対するところの補給金の打切後の措置であります。恐らく打切られました後における鋼材相当上昇するであろうということは現在の原材料、或いは運賃等から考えまして当然予想されることでありまするけれども、幸いに昨年朝鮮事変勃発後における鉄鋼界は相当恵まれていると我々は考えておるのであります。これも国家財政が非常に余裕がありますれば、更にこの上一層国家の補助をいたしまして、以て合理化の促進に寄與いたすということも考えるのでありまするけれども、国家財政が御承知のような極めて窮迫な状態でありまする際、更に又他の産業の現状から見た場合に、鉄鋼の近来の景気は非常に好調を呈していると我々は見ておるのであります。特に今後補給金を打切ることによりまして非常に鋼材が上りましても、而もその上つた鋼材が現在の国際価格に比較した場合、これが非常に高くなるとは考えていないのであります。むしろ現在の内地における鋼材価格に比較しまして或る程度低いのではないか。これが顔合せをする程度には上るかも知れないけれども、非常に割高になるとは考えていないのでありまして、従つて国家財政の現状から見まして、この際フレート或いはその他の名目の下に補給金を出すということはいかさま困難ではないかというふうに考えておるのでありますが、仮に国家からかような特別措置をいたさなくても、現在の鉄鋼状況、更に又世界各国の軍備拡張が今後何年続くかという見通しを根拠といたしまして考えた場合、鉄鋼界の好調は相当続くのではないか。従つて政府が特殊の補助をしなくても少くとも自立体制を以て合理化がこの際こそできるのではないか。又是非この際にやつてもらいたい。尤も合理化問題につきましてはすでに御承知通り別個に鉄鋼の合理化という問題は通産省におきまして取上げまして、既定方針の下に合理化を促進いたしたいと、この面につきましても政府もできるだけの御援助を申上げたいと実はかように考えておる次第であります。従つてこういう面に対しまするところの長期資金等々は見返資金であろうとも、或いは又ほかの名目であろうとも、できる限り政府といたしましては融資いたしたい。かような気持を持つておりますが、なおこの岡村專務の仰せも大体永野社長並びに日向重役と同じようでありましたが、とにもかくにも鉄鋼産業の基礎である。特に現在のごとく軍備拡張熱の甚だしいときには一層その重要性が認識されるのでありまして、軍備即鉄鋼と申してもあえて過言でない。軍備拡張には鉄鋼が絶対必需品であるということは政府も十二分にこれを認識いたし、従つてその認識の下にあらゆる障害を排除いたしまして以て困難な原材料確保に邁進いたしたいと、かような決意を持つておるのでありまして、先ほども局長から申上げましたごとく、来年度の鉄鋼生産はズク三百二十万トンと鉄鋼四百万トンを想定いたしておりまするが、現在の国際情勢、特にアメリカの軍備拡張のいよいよ軌道に乗つてつておる点を思い合せますと、今後輸出面におきまして予想以上の好調を呈するのではないか。現に最近一月の輸出量を見ましても全く驚くくらいな量を示しておるのでありまして、この輸出量を十二分に供給いたし、更に進んで内地の需要にマッチいたすという点を考えますると、来年度の四百万トンは更にできる限り増産いたしたい。又増産する必要がある。従つてこれに対しましても万遺憾なき措置を講じて参りたいという決意を持つておりまするので、さよう御了承願いたいと存ずる次第であります。
  19. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 価格問題につきまして日向さん何か御意見ございませんか。
  20. 日向方齋

    参考人日向方齋君) 通産次官の御説明のうちで、輸入補給金の点につきましては、基本的に考えが違つておるようであります。大蔵次官からそれを伺つたのならわかるのですが、通産次官がそういうふうにお考えになるのは甚だ心外でありまして、御承知のように補給金打切後の我が国鋼材国際価格に対して高くないとおつしやいますが、私は高くなると思うのであります。それは先ほども申上げましたように恐らく補給金打切後の銑鉄は七十ドルをCIFで切るまいと思われるのであります。アメリカでは五十ドル、而もこれは外売りの銑鉄でありまして、社内で使いますものはもつと安く使つております。アメリカと日本と比較いたしまして、銑鉄そのものがそれだけ開いておる。それで鋼材価格が同じて行くとはどうしても思えないのであります。従いまして私は補給金が出る出ないは二の次にいたしまして、銑鉄補給金がなくなつた後において我が国鋼材国際価格よりも高くなると思います。それを御承知の上で自由にやるというなら又それは考えが違うのであります。  それからもう一つ、又次官は業者のために何か補給金を出すようにおつしやつたのでありますが、これは誠に以て心外なのであります。我々鉄鋼業補給金を頂いたのは消費者に安く供給するために頂いたのでありまして、そのために鐚一文も自分のためにもらつておらんはずであります。御承知のように価格を統制して頂いておるのでありまして、私たちがここで補給金を出してもらいたいというのは、自分たちのために申しておるのでは毛頭ないのでありまして、ここに我が国産業の一番基礎である銑鉄が倍になるということの産業に及ぼす影響、価格を通じて諸般に及ぼす影響が重大であると思うから、我々は事実を一番よく知つておるから、そういうことを申しておるのでありまして、如何に高くなつてもかまわないというのなら我々は売ります。その点次官と私は考えが全然違うのであります。  最後に第三点に、鉄鋼業は非常にぼろ儲けをしておるような感じのお話でありますが、決してぼろ儲けをしていないのでありまして、なお今は資本は非常に圧縮されましてこんな不自然な資本構成はないのでありまして、非常に原料が高く、製品が安く、売上げが多いにもかかわらず利益が極めて少い。従いまして極めて薄利でありまして、資本に対する收益率は割合多いのでありますが、これは資本が不当に圧縮されておるのでありまして、例えば資本を再評価しましても評価すべき価格の三分のとか五分の一にしか再評価してない。その再評価したものを自己資本として考えれば非常に利益が少い事業でございます。例えばよそのほかの業種、紡績業と比較いたしますれば如何に我々が薄利で事業をしておるかということはおわかりのはずであります。  以上の三つの点、国際価格に対する点、それから業者のための補給金で出ないということ、利益の少いという意味で補給金を是非つけて頂くほうが国家のためによいと思うのでありまして、我々の業種のためによいと言うのではありませんが、これは通産大臣でもおいでになりましたら造船等の関係でよくおわかりかと思いますが、我々はそう、いう立場から主張するのでありますから、その点を一つ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  21. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 補給金を打切つた後におきまして鋼材が倍になる。そうしてそれは国際価格よりも非常に高くなるというお説であります。私は專門家でありませんから、果して国際価格よりも遥かに高くなるか、ならんかということははつきりと断定は下し得ませんが、大体の感じとして、現在の鋼材の内地の価格輸出に振向ける場合の価格とを比較した場合に、補給金を打切つた後におきましても、その価格は大体現在の輸出価格程度にとどまるのではないか。併し又現在の国際情勢から見ますると、今後なお一層この鋼材値上りを予想されるのであります。かような見解から、補給金なくしても大体やつて行けるのではないか。同時に又多少無理がありましても、この際こそ設備の改善その他合理化の線を惜みなく推進いたしましてそうしてできる限り原価を安くして頂くという方面に特別の御関心を持つて頂きたいという意味から申上げておるのであります。なお補給金の性格が業者のためでなくして、これは国家経済のためである。これはもうお説の通り、見方によればそういうことにもなるのであります。併しながら、これ又実際に従来の鉄鋼業が国際水準とマッチいたしまして、国際価格と同一の生産を上げるような体制になつておりますれば、補給金もなくて済んだのではないかというような又見方もあるのであります。ただ併し日本といたしましてはいろいろな事情が海外に比較いたしまして非常に恵まれていない。あらゆる点において日本の鉄鋼業は條件が不利である。従つて原価が高くなるということも又否定し得ない事実でありまるので、そういう面からいろいろの情勢を勘案いたしまして、以て補給金という制度を作つておるというふうに考えておるのであります。が結論的に、それだからといつて、この価格国際価格よりも本当に非常に高くなる。これでは日本の鉄鋼業の進展があり得ない、というような事態に逢着いたしますれば、又そのときはそれに即応するような対策も十二分に講じられる、かように考えておるのであります。
  22. 日向方齋

    参考人日向方齋君) 今の価格の比較でありますが、通産次官は国際価格輸出値段と言いますが、輸出値段は大体国際の闇価格を基準にしてやつております。従いまして将来日本が軍需生産とかいろいろな問題が起きたときに、アメリカ公定価格を中心にして比較せられる虞れがあるのであります。その段になつて、お前のところは国際的に高いじやない会又統制だというふうにやられることは甚だ迷惑であります。この点を是非一つお含み願いたいと思います。従いまして情勢によつて考えるというのは誠に結構でありますが、情勢は必ず我々は行詰ると思います。それもお考え願いたいと思います。もう一つは合理化をしろとおつしやいますが、この点前に銑鉄補給金を切るときに、池田大蔵大臣はその代り鉄鋼業の合理化については十分考える、資金についても十分考えるというような話であつたように思うのでありますが、さて見返資金を開けて見ますと、四百億もある見返資金のうち、鉄鋼業は僅かに十数億しかもらえないというような結果になつておるのは甚だ心外でありますので、どうか一つそういうことのないように、合理化を育成するなら育成するように、本当に一つ面倒を見て頂きたいと思います。その点を附言いたします。
  23. 小野義夫

    ○小野義夫君 政府と並びに業者のかたにお伺いしたいのですが、一体我々の目標とするところは弊害のない限りは世界経済の一環として、すべての業体が立つて行こうというのが大体日水産業の狙いである。ところで今業界からのお話はどうしても補助金を出さんというと、将来我々は外国の鉄や銅に圧倒されて外国より高い品物が出るから甚だ憂慮に堪えないというふうに聞えるのであります。一体さように国際価格というものをきめた場合において、不安定な、非常に危いような状態にあるかどうか、それが第一問。  その次に国際価格というものは二種ある、或いは三種もある。一体輸出一つの相場であるが、輸入も又一つの相場であります。極端なことを言えば太平洋の真中が相場であるかもわかりません。かかる意味において、国際相場というものはいろいろやるのでありますが、そういう意味において価格はその統制価格みたようなことで、一方に補給金をもらえば一方に統制価格ということは止むを得んと思う。そこで統制をやはり鉄のほうは要求せられて、そうしてその損益、大した損もなければ得もないというような官業式のやりかたをしたいとおつしやるのでありますか、それとも自分の腕で儲けるときはうんと儲けて、そうしてそれを備荒貯蓄して置いて、そうして不況対策を講ずるというような意味を以てやられるのでありますか。その点一つ改めて承わりたいと思います。  又、政府のほうは、ややもすれば業者の危險において物事をやつて行こう。非常に鉄鋼なら鉄鋼が高くなると、国家が予算の遂行が困難になるから、何とかかんとか言つて、ややもすれば価格の抑圧というようなことに力をいたす虞れが多分にあるのでありますが、これは私は僅かの製造業者の犠牲において、そうして全国民の利益を図るということは不当だと思う。全国民の利益を図る心はおのずから又別途の方向によつてやるべきでありまして産業の自由と産業の発展のために、業者を抑圧せず助成するというのが国家本然の目的でありますけれども、この点につきまして価格統制をする意思が絶対にない、国際価格一本でやるという当局の御意見でありますか、それを一つ承わりたいと思います。
  24. 日向方齋

    参考人日向方齋君) 最初に、日本の鉄鋼業はそれほど不健全なものであるかというような御質問であつたように思うのでありますが、その点はそれほど悲観的なものではないと思うのであります。勿論我々が今まで補給金を出して頂きましたのはほかの、鉄鋼業の責でない原因によつて、例えば石炭が高くなる、いろいろなインフレの影響もあつて、今ここで国際価格だけではいかんというような諸般の状況があつたために補給金を出して頂いておつたように思うのであります。従いましてこれからの輸入補給金の問題にいたしましても、アメリカでは鉱石が例えば十何ドルなら十何ドル、日本へ持つて来たら三十ドルというふうな場合、これは船が非常に高くなつて、船が高いために鉱石が上つて来ているのであります。そういう不自然な原因のために日本の銑鉄が非常に高いというのは、それは従つて日本の全産業に影響を及ぼすということが面白くないので、その原因に対して政府が見て頂きたい、こういうつもりであります。従いまして平時になりまして例えば日本の船も十分使えるし、日本の船員がやつて行く場合、或いは鉱石も東亜の各地から自由に手に入るというような場合には、大体において自信を以てやつて行ける、又そういうふうに現在のうちに合理化をして、いつでも自由にやつて行けるような状態に早くして行きたい、こう考える次第であります。現在いろいろな世界の情勢が不自然なために、特に日本の鉄鋼業の不利益な点はカバーしてもらう、そうして又他面においては自立化のために合理化資金を出して頂く。全然自由になつたときには日本が世界的に競争できるようにいたしたい、こういうふうに考えているのであります。従いまして全然不健全でないかと言いますと、これは諸般の状況で不健全なきにしもあらずですが、では全然自立の見込がないかと言えば、平時になれば自立の見込もある。  第二の補給金か統制かの問題でありますが、統制は成るべくして欲しくないのであります。従いましてできるだけ自由にやらして頂きたいのでありますけれども、国家の保護を加えられた場合は、一方において保護すると同時に、保護するというのはやはり日本の基幹産業であるために保護するということが原因であろうかと思うのでありますが、同時に又その半面基幹的な産業であるが故に、国家的利益のために統制しなければならんという場合にはどうしても止むを得ないけれども、事業としましては成るべく自由にやらして頂きたいと思います。
  25. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 政府の統制に対する考え方は私から申上げるまでもなく、小野委員の御承知通りでありまして、自由経済を根本政策といたしておるのであります。従つてできる限り統制価格を排除いたしまして、自由価格にいたしたいという方針を進めて参つておるのでありますが、特殊のものに限つては現在なお統制価格を維持しておるのであります。特に磁気鉄に関しましては御承知通り日本の生産事情が非常に外国に比較して不利な立場にある。これがために原価が高い、更にそれが関連産業、広く一般国民生活に相当影響するところが深いという関係から、補助金を出して参つておるのであります。従つてそういう関係から今日まで統制価格を続けて来ておるのでありまするが、できるならば一日も早くこれらも撤廃いたしまして、以て自由価格にいたしたいという基本的な考えは毫も変つていないのであります。ただ事情が現在のところ、なおこれを撤廃するのにはいろいろの面から考えて、時期が若干早いのではないかというような考えを持つておる次第でございます。
  26. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 政府のほうの御方針補給金を打切るという、非常に強い立場であることは私は承服いたしておるのであります。併しながらそれはそういう態度を御決定になつたのは、朝鮮事変勃発前のことでありまして、それを世界の経済、或いは産業情勢が非常に変化を来たしたわけで、従つて今次官も朝鮮事変前の態度を、現在における制度の態度として強く表明せられましたけれども、周東安定本部長官は必ずしもそうは言われなかつたはずでありまして、国際情勢の推移如何によつては、一応補給金の打切りの態度は変えないけれども、考慮したいと言つておられると思うのです。従つて国際情勢の推移によつて考慮すると言われると、その国際情勢の推移というものは、果してどういう工合になつておるか、これを一つ詳しくお聞かせ願いたいと思います。これは通産省並びに安定本部両方からお聞きしたいと思います。
  27. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 国際情勢の推移ということは、少くとも鉄鋼に関する限りは、各国の需要が減退したことによつて非常に市価が低下した、そうして日本のように経営面において非常な不利の條件を持つておるために割高になつて、そうして国際的に競争できないというような情勢に立ち至つた場合は、国家として当然補給金その他適当な方法によつて鉄鋼業の維持存続を図るということが考えられると存ずるのであります。更に又半面におきまして、非常に需要が増大した現在の生産力では、能力ではそれにマッチし得ない、何らか抜本塞源的な増産方法を講じなければならん、然るに業者のほうでは、それだけの資力に乏しいというようなことで、国家がどうしても必要とするという場合に、又補給金或いはその他の適当な方法を講じなければならんということは考えられるのでありますが、恐らく周東安本長官が国際事情の推移ということを申されたのも、こういう点から申上げたのではないかというふうに想像できるのでありますが、現在の鉄鋼に関する国際情勢を見ました場合に、再び補給金を出さなければ、日本の鉄鋼界が衰退するということは、私どもとして考えられないのであります。従つて補給金は打切つたまま推移いたしたいと、かように考えておるのであります。
  28. 小峯柳多

    政府委員(小峯柳多君) 私どもの長官からの御答弁に関連した問題でありますからお答えいたします。鋼材価格の問題は先ほど来業者かたがた及び通産政務次官からもお話がありましたが、少し分析して考えますと、国際的な原材料高が一つの原因、それから船の問題が非常に窮屈でありますので、船運賃が非常に高い、而も原料の入手先が少し船運賃が余計かかるほうから買つておりますから、船運賃と先高見越しによる思惑というのが当然のことで、そういう買い急ぎ等もあるだろうと思います。そこで国際経済の中に、日本の経済が入つております限り、一般論としましては、結局国際的な原料高から来る物価高というものも、これは或る程度承認しなければならんと思います。只今申上げましたような、特に船運賃等の條件が惡い、或いは先高見越しによる買い急ぎ等があるとすれば、一応そういうものに対して努力をいたしまして、いわば国際的な原材料高だけが響いて来るような形に努力していいんじやないか、又先ほどお話がありましたが、合理化といいますか、コストを引下げるような面で、資金の面、その他復興金融機関も今練つておりますし、預金部の金融債による紐は付きますかどうか、指導による資金の流し方も考えたいと思いますし、僅かではありますが、見返資金の中に更に期待しておりまして、そういうことをいろいろ努力をいたしております。そうして一応国際経済の中で、特に日本の不利な條件というものを克服するように努力しまして、なお且つその努力のしがいが少いならば、効果が現われないというときには、私ども今の補給金の問題も考えて行く場合があるのではないかと思います。ただ鉄が何と申しましても、産業中の基幹産業でありまして、通産行政にも非常に大きく響くものだと思いますので、私ども非常に深い関心を持つておりますので、今申上げましたような努力の効果の薄いということがわかりました際には、補給金の問題は改めて考えなければならない問題だと思つております。なおマル公のお話が出ましたが、実はこれも通産政務次官からお答え申上げましたように、国際経済の状態が大分変つて来ておりますので、マル公は一応全面的に現在存在いたしますものも洗い直して見る必要があるだろうと思います。そういう意味で今物価庁の事務当局において、その洗い直しをやらせておりますが、マル公を外してしまつてもいいもの、外してしまうが基準価格のような、一応指導価格といいますか、そういうふうな残して置きたいもの、それとマル公は残すがそれを改訂するようなものに分けまして、折角検討中でありまして、不日それを練りました案でも提出できるような時期があるだろうと考えております。
  29. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大体補給金を打切るということは、前には国内物価の調整を主体に考えて、そうして企業の合理化によつてこれを吸收して行こうというような方針であつたわけでありまして、この点では異議のないととろでありますが、今次官の御答弁を聞きますと、私は首藤次官のお考えは、鉄鋼国内需給度、或いはまあ国際需給度までをお考えになつたか知れませんが、そういうことを中心にして、国際情勢の推移というふうに解釈し、そうしてこういう問題を将来考えたいとおつしやつたのでありますが、これはやはり飽くまでも価格調整の面が主体になるものだと思いましてその点は安本の次官が大体そういう工合におつしやつたわけであります。少しお考えが齟齬をしておるのじやないか。それから従つてまあ価格統制で行くわけでありまして、全般的なマル公の洗い直しまでも考えておるとおつしやつたことは、まさにそのことを裏書してだと思うのでございまして、そういう情勢の中で私は伺いたいことは、今も安本次官は補給金を出さなくても事業をやつて行かれる、或いは出さなくちやならないようなことになつたときには出すと言つて鉄鋼業者の経営を中心にしてお考えになりましたけれども、これはやはりそうじやなくて、鉄鋼というものが、国の産業生活、或いは国民生活に非常に大きな広汎な影響力を持つのでありまして、これはやはり考え方の基礎は、国民生活というところに私は置かなければいかんと思います。そういう考え方からいたしまするならば、今おつしやつたような工合にしてマル公の洗い直しをされる、そうなるとこれは全部上るだろうと思いますが、そういうときに国民生活の基準をどこに置きますか問題だろうと思いますが、その実態生活費を仮に昨年の朝鮮事変の勃発直前というようなことを考えるとしますれば、そこを主体にして国内価格を全部一律に地ならしされる、そういうふうな考えでおやりになるのかどうか、この点を私は重要な点でありますので伺つて置きたい。例えばそれはただ單に鉄鋼だけでありません。石炭にしましても或いは電力、食糧その他肥料更には勤労者の賃金までも全部に及ぶ問題でありまして、ただ一つ一つを問題が出て来たというのでつまみ食い式に取上げ、そうして解決されて行かれるのでは一番最後に非常に大きなしわが勤労大衆へ出て来るというようなことになると思う。その点は安定本部の物価政策というものをどういう工合にお考えになつておるか。只今関係から一つお答え願いたい。  それから第二点は、只今主として国際価格の場合は輸入価格だけが問題にされておりますけれども、輸出価格というものは私は非常に低廉になつておると思うのです。これは非常に安く海外に出されておる。従つて今申しましたような状態で考えて行きますときには、この輸出するほうの価格も国際的にお付き合いのできる価格に釣り上げて、そうして外国に買つてもらわない限りは国内の国民生活の水準というものはなかなか上がらない、こういう工合に考えるわけでありますが、安定本部は輸入の面でなくて輸出のほうの問題について、これは通産省にも関係がありますのでお考えを願いたいと思います。これはどういう工合にお考えになりますか、その点伺いたいと思います。
  30. 小峯柳多

    政府委員(小峯柳多君) 私の言葉が足りませんかつたのかも知れませんが、私は業者のそろばんの点から補給金の問題を考えるというふうには申さなかつたつもりなのです。これは御指摘のように鋼材が非常に基幹産業でありますし、日本の国民生活にも関連がありましよう、又機械工業などの輸出にもすぐに響いて来る問題でありますから、そういう意味で業者の私企業的な意義よりも国民経済的な意義で考えたいと思つております。ただ先ほど申上げました点は日本の鉄鋼業の後進性と言いますか、又それに最近の船や何かから来ておる特殊の弱みというものを先ず解決することに努力いたしたい、又積極的には合理化等をやつてそういう面でコストの引下げということに努力して、なお且つそれで国際的なお付き合いがしにくいという点、即ち後進性の問題や特殊の弱みがなかなか解決しにくい、そういうふうに考えていいのではないかと申上げたのであります。なお物価一般の問題といたしましてはマル公の問題でありますが、全面的に、例えば今アメリカでやつておられますような釘付けをするつもりはございません。国際経済に参加しておりますと、特殊な形で日本だけの立場で以て物価を釘付けするということは全くこれは私は不可能だと考えます。ただ今ありますものがその業界なり、或いは国民経済的な経済循環をブローにしておるような形のありますものを直して参りたい。根本的な考えといたしましては国際経済の一環として参加しております以上、前の戰争のような、孤立経済時代のような私どもの立場だけで物価を釘付けするということは私は不可能だろうと考えております。
  31. 古池信三

    ○古池信三君 今まで価格についていろいろ論議されましたので、私は量の問題について少しお尋ねをして見たいと思うのであります。先ほど通産省の政務次官から詳しく御説明を承わつたのでありまして、今後鉄鋼の需要はますます増大するであろうことはもう国内的はもとより国際的にもその通りだろうと思うのでありまするが、これについて我が国の二十六年度の生産目標銑鉄三百三十万トン、普通鋼鋼材が四百万トン、こういう目標を掲げてありまするけれども、これも或いはもつと増産になるかも知れんというようなお話に承わつたのであります。誠に結構なことで、この目標がこの通り或いはこれ以上増産できれば非常に我々としては喜ばしきことと考えるのでありまするが、問題はやはり何と言いましても国内資源に乏しい我が国としては輸入にどれだけ本当に頼れるかどうかという問題であろうと思うのであります。二十五年度の実績数字只今お配りを願つた資料の中にあるのでありまするが、これと比較して見ましても、例えば原料輸入鉄鉱石にしましてもこの別表第六によりますると三百五十七万トンという輸入鉱石が掲げられております。二十五年度の輸入実績に比べまして相当多量になつておるのでありまするが、これだけ果して二十六年度には確実に輸入する見通しがあるかどうか。更に原料炭につきましても輸入原料炭二百三十五万トンという数字なつておりまするが、これも二十五年の実績に比べて果してその見込は確実であるかどうかというような問題があると思うのであります。これにつきまして先ほど冒頭に局長からもいろいろ御説明があつたのでありまするが、もう少し具体的にどの方面からこれだけは確実に輸入見通しがあるというようなことについてお話を承われれば非常に幸いだと思います。殊に目下問題になつておりまするこの船舶の問題についても丁度本日は運輸関係政府当局が見えておるようでありまするから運輸当局のほうからも船腹については大体自信があるというような御説明が聞けるかどうか、これを一つお願いいたしたいと思うのであります。  それからその次には設備の問題でありまするが、我が国の設備は相当に老朽したものもあると考えておりまするが、この設備を世界的水準にまで近代化して行くというような計画はどの程度まで本気に政府は考えておられるかどうか。又これに対する資金その他の手当はどうなつておるか。要するに設備の近代化、或いは設備の強化に対する政府方針を、これもできる限り具体的にお示しを願いたいと思うのであります。  以上三点についてちよつとお尋ねをいたします。
  32. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 明年度の鉄鋼生産を既定方針通り進めますれば鉄鉱石三百五十七万トン、粘結炭が二百三十数万トン必要となつて参るのであります。これが買付の地域、数量の御質問だと思いまするが、鉄鉱石は最近マライのズングーン並びにフイリツピン等におきまして相当多量の獲得ができる見通しがついて参つたのであります。例えばズングーンのごときは一―三では四万トンでありまするが、四―六では十六万トン入る。或いはフイリツピンのほうでも四―六で二十万トン入る。更にアメリカのほうから相当大量買付けられることは了解が最近できたのでありまして、船腹確保ができますれば十二分に供給できると、かような確信を持つておるものであります。粘結炭も又然でありまして、これは主といたしまして御承知通り開瀾炭が主な輸入炭でありましたが、これは昨年から切換えざるを得ない情勢になりましたが、幸いこれもアメリカ方面から大体必要量の確保ができる見通しがついて参つたのであります。そこで現在のところ粘結炭鉄鉱石確保につきましては船腹さえありますれば、何ら心配ないというふうな我々は見解を持つておるのであります。船舶につきましては先ほども縷々申上げました通り、これは運輸省のほうから直接詳細に申上げたほうが適当かと考えまするので、私はこれは差控えたいと考えます。  何かもう一つありましたね。
  33. 古池信三

    ○古池信三君 設備の近代化の問題。
  34. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 近代化の問題、即ち合理化の問題でありまするが、これは実は昨年炭鉱、それから並びに鉄鋼関係の合理化を強力に推進いたしたい、かように考えまして合理化促進委員会の実は答申もあるのでありましてこの委員会の答申に即応いたしまして、通産省といたしましても四百億かの実は計画を進めておつたのでありまするが、一般財政との振合上、それがだんだん圧縮されて来ておりまするけれども、なおできる限りの長期資金その他を以ちまして、この機会に両者の積極的な御協力を待ちまして、以て機械の近代化或いはその他の方法によりまして合理化をできる限り強力に推進いたしたい、かような気持を持つております。
  35. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 政府側からほかに船腹関係そのほか御説明はありませんか。
  36. 甘利昂一

    政府委員(甘利昂一君) 船腹輸送等については海務局長から御答弁するのがあれでありますが、丁度ほかの会議に行つておりますので私から一応御説明申上げます。  先ほど来すべての原因が船腹の増強にあるというようなことはお話があつた通りでありまして、来年度主要物資の輸入量が千五百万トンと言われておりまするが、それに対する船腹量は非常に不足しておりまして、この四四半期につきましてもすでに百万重量トン、来年度の第一四半期においても七十万重量トンというふうに相当船腹不足をいたしておりますので、これに対しましては―番早急に手当のできますところの外国船の傭買船というふうなことを考えまして、これについても資金の面、或いはいろいろ手続きの面においてできるだけ早急に取計もえるようにあらゆる措置を講じておりますが、なかなかこれも相手のあることでありますし、こういう船腹不足時代におきましては、諸外国においても同様船腹の獲得に一生懸命になつておりますので思うようには参りませんが、できるだけそういう途を開きましてその方面努力しておりますし、現に傭買船につきましても数隻のものが成立しかけておる、或いは成立したものもあります。併し最も基礎をなしますものはやはり自国の造船能力を利用しまして、これによつて積極的に造船をするということが最も必要でありまして、この方面につきましても一応確定しております。見返資金によつて来年度は約二十万総トンの船腹の建造計画をやつております。我々といたしましては更に見返資金及び市中金融の増援によりまして約四十万トンくらいを造りたいということで各方面といろいろ折衝いたしておりまので、これも当初の模様では幾分遅れるかも知れませんが、あとの三十万トンも年内には何とか見込がつくのじやないか、こういうふうに考えております。やはり船腹増強も内地船を造るということになりますと、問題がやはり鉄鋼問題でありまして、これについては特に量の問題もありますが、いろいろ価格の面におきましてもやはり採算の行くような建造船でなければ、結局運賃も安くならないというようなことから、目下鉄鋼価格のいろいろ御援助を得まして適当の船価で船腹を増強する、この面につきましては特に鉄鋼界のほうから非常の御援助を頂きまして、国内船については従来とも一般市場の建値を下廻るような価格で特に御援助頂いております。不幸にして昨年それに対してとりました低性能船の価格につきましていろいろ事情が変つて参りましたために、当初予定しましたところの買上船が一部改造によつて又就航するというふうな事情なつて来たことと、又屑鉄価格が非常に上つて来ましたために、当初予定したような価格鉄鋼業者のほうにお渡しすることができないということになりました。これについては運輸当局としてはできるだけの措置を講じましたが、いろいろと大蔵省との問に十分の了解が得られずに、現在においては当初の約束通りに行かないのは甚だ遺憾に思いますし、それにもかかわらず、鉄鋼業界のほうから適当の価格で新造船の鋼材を頂くことについては特に我々のほうからも感謝いたす次第であります。又先ほども御質問がありましたように、折角我々が犠牲を拂つてつた船が自分たちの原料を運ぶのに使われていないというようなお話がありましたが、これは御承知のように、未だ外航船が十分でありませんので、なかなかその方面まで手が廻りませんので、外航船腹の拡充について十分その点については御趣旨に副うように配船計画をいたしたいと思います。中には一、二第三国間の貿易に従事しておる船もあるようであります。これは目下それを運ぶ原材料輸入船腹不足しておる際に、如何に外貨の獲得上有利であるかということから見ても、これを先ず国内原料のほうに廻すのが最も妥当でありますので、そうい点につきましては、今後運輸省といたしましてはできるだけ考慮を沸いたいと思います。ただ今後と申しますか、将来の海運界といたしまして、終戰後外航に出る機会がなかつたのでありまするので、幸いにしてそういう外航に出る機会ができました際には、やはりこの際一、二はいの船は運んで、外航権と申しますか、そういう方面も或る程度獲得して置くことが、将来の海運界において非常に大事じやないかという考えから、一部やつておるものもありますが、併しこれも国内輸送力不足の際できるだけ国内輸送に向けたいということは先ほど申上げた通りであります。
  37. 古池信三

    ○古池信三君 只今政務次官のお話によりまして、生産上の原材料輸入、その確保につきましては相当確信がある、自信があるというお話で非常に安心したわけであります。併しやはりそれを持つて来るためにどうしても外航船の増強ということが最も焦眉の急であると考えまするので、これはあらゆる手を盡して一つ至急実現に向つて努力をお願いしたいと思うのであります。それから最後の、設備の近代化、合理化の問題につきましては、産業合理化審議会の答申に従つて大いに努力するつもりであるという基本方針を示しされたのであります。もとよりその方針は結構でありまするが、いつまでも答申ばかりを言うのではこれは仕方がないのであつて、やはり一日も早くこれを具体化して実際に近代化し、優秀になつて行くようにあらゆる点から、これも政府は大いに馬力をかけて頂きたい、それだけをお願いをいたしまして私の質問を打切ります。
  38. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 私ちよつとお伺いしたいと思つてつたことを古池委員からお尋ねを頂きましたので、重複しない点を二、三お尋ねいたしますが、二十五年度の輸入計画を、これは対照しますればわかることではありまするけれども、今手許にございませんのでちよつと伺うのですが、この資料の五に入荷実績が書いてございます。これは輸入計画の何%になつておるかということを伺いたいのと、殊に朝鮮動乱に中共が介入をしたということが明らかになりまして以後、十月以降の計画量に対する入荷の実績がどのように相成つておりますか。これは鉄鋼原材料のすべてを海外からの輸入に仰がなければならんという点から考えまして、最近の計画に対する入荷の実績ということが今後の見通しにも関連して重要なことでございますのでちよつとお伺いをいたしたいのであります。それから先ほど運輸省のほうでお話ございましたが低性能船のスクラップ化の問題であります。第八国会のときでありましたか、予算が出ましてこの国会でも通したのですが、その後国際的な船腹事情の逼迫に伴いまして、スクラツプにする予定のものが補修されて輸送に就く、就航するというような事情の変化もございましたので、実際はどの程度これがスクラツプに今日までなろうとしておるのか、買上げがどの程度に行われておるかというようなことも国内スクラツプ見通しなどを考えます場合に参考にいたしたいと思いますのでお伺いするのであります。第三点は殊に輸出製品の場合を申しますと、原料高の製品安ということで国内需要が振つておりませんために十二月、一月頃の製鉄の産額のうち輸出品と国内需要がどういう比率になつておるかどういう比率を示しておるかというふうなことを実はちよつと伺いたいのであります。輸出のほうは代金決済が非常に順調らしく、国内のほうでは相当危險率も高い等の関係から、原材料は入荷が非常に困難な見通しの下にあるにかかわりませず輸出のほうが振つて国内需要のほうが十分に賄われていないというふうなことを伺いますので、その三四半期、十―十二月、最も近い月の生産量に対する輸出並びに国内需要の比率について、これは業者のほうのかたからでも結構でありますから、ちよつとお伺いしたいと思います。
  39. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 只今の御質問の第一は昨年の鉄鉱石並びに粘結炭輸入計画に比較してどういうことになつておるかということであると伺いますので、その点をお答えいたしますと、二十五年度の実績でありまするが、只今手許に差上げてありまする表の原料炭五十一万余トンが十二月末までの合計であります。鉄鉱石は大体今の状態を継続すると考えまして、三月末までの推定いたした数字でありまするが、この原料炭は大体十二月末まで、で計画の五六%であります。それから鉄鉱石のほうは五八%でありまして、計画よりも非常に入荷実績が一応非常に惡い成績になつておかまするが、これは一つは昨年末まではこの以前の持越ストツクが相当豊富でありましたので、更に又この購入方式の変化その他いろいろな面から計画と比較いたしまして非常に不成績を示しておりましたが、一番大きな原因は先ほども申上げましたごとく国内のストツクが幸いに豊富であつたということが取上げられておるのであります。なお国内消費と輸出の比例でありまするが、明年度の鉄鋼生産四百万トンと仮定した場合に、この輸出国内消費の比率は大体輸出百万トン、国内消費三百万トン、或いはこの国内消費が二百七十万トンになつて、輸出が百三十万トンぐらいに伸びるのじやないか、この程度であれば国内消費に圧迫を加えないという実は見通しを持つておるのであります。なお最近のずつと国内状況を見ますと、昨年十二月までの鉄鋼生産は百万トンでありまして、その中で輸出が二十万トン、国内が八十万トンというような比率になつておるのでありますが、先ほども申上げましたごとく、最近輸出が非常に上昇して参りましたので、今後の輸出は従来よりももつと高い比率を占めて来るのではないかというような見通しもついておるわけであります。
  40. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 これは只今次官から普通鋼材四百万トン生産計画が行われた場合に百三十万トンを輸出して、国内需要に二百七十万トンを振向けるということでありますが、これが政府の御計画を超えて輸出のほうが採算上利益であるというようなことから、これを遥かにオーバーして国内需要を圧迫するような状態が出て参りましたときには輸出制限というような方策をおとりになるつもりでそういう比率をお考えになつておるのでございましようか。重ねてお尋ねをいたします。
  41. 首藤新八

    政府委員(首藤新八君) 只今申上げました国内需要の二百七十万トン乃至三百万トン、これは過去の国内消費並びに最近における国内消費の実態を対象といたしまして、大体明年度の国内消費はこの程度で抑えても十二分に充足するのではないかとかような見解を持つておるのでありまして、併しながら若し輸出が非常に伸びまして内地の供給に支障を来たす、これがためにこの鉄鋼の市価が暴騰いたしまして国民生活に重大な脅威を考えるというような事態に立ち至りましたならば、何と言つて国内経済の安定が前提であるとかように考えますもので、そういう場合には輸出を若干抑制するという方法も又考えざるを得ないのでないかというふうには考えております。
  42. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) お諮りいたします。この辺で委員会は一応打切りたいと思います。そして懇談会に入りたいと思いますが、と申しますは、業界から参考人のかた以外に多数御参集下すつておりますので、これらのかたがたとも一緒に懇談会を開いて、業界からは只今お見えになつておるのは、参考人のほかに八幡製鉄の稻山常務さん、神戸製鋼の市川常務さん、川崎製鉄の小田常務さんその他がお見えになつておられますので、懇談会に入りたいと思つております。如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 異議なしと認めます。それでは只今から懇談会に入りますので、本委員会はこれを以て散会といたします。    午後四時十一分散会  出席者は左の通り。    委員長    深川榮左エ門君    理事            古池 信三君            廣瀬與兵衞君            栗山 良夫君            結城 安次君    委員            小野 義夫君            加藤 正人君            椿  繁夫君            駒井 藤平君            境野 清雄君            西田 隆男君   国務大臣    通商産業大臣  横尾  龍君   政府委員    外国為替管理委    員会事務局長  牛場 信彦君    通商産業政務次    官       首藤 新八君    通商産業通商    鉄鋼局長    中村辰五郎君    運輸省船舶局長 甘利 昂一君    経済安定政務次    官       小峯 柳多君    経済安定本部産    業局長     増岡 尚士君   事務局側    常任委員会專門    員       山本友太郎君   参考人    富士製鉄株式会    社社長     永野 重雄君    新扶桑金属株式    会社取締役   日向 方齋君    鉄鋼連盟專務理    事       岡村  武君