○
説明員(
近藤止文君)
繊維の最近の
事情につきまして
概略御
説明を申上げます。お
手許に差上げました
資料は最近の
輸出関係の
状況と
価格の
変動の
状況を
概略表にいたしまして掲げたのでございますが、その前に
只今委員長から
お話がございまして、
繊維の極く大体の概観を
説明するようにということを言われましたので、その点を先ず第一に御
説明申上げます。御
承知のように
繊維につきましては大体
各種の
繊維に亘りまして
朝鮮動乱の
勃発以来
価格は急速に
上昇いたしました。又同時に
輸出の面におきましても
相当大きな引合いが参りまして、本年の一月、二月、三月頃におきましては七、八、九月までは勿論、十月頃までの
輸出契約ができるという
状態であつたわけであります。これらの
事情と並行いたしまして
国内における
繊維の
生産の
上昇の度合も急速に伸長いたして参りまして、これはたびたびこの
委員会におきましても御
説明を申上げたのでございますが、大体すべての
繊維を包括して申しまして、昨年度に比べまして本年は五割の
増産は確実に参るという見込でございますし、従来の六月までの
生産実績から見ますと、五割以上約六割近くの
増増ということにな
つておるのでございます。従いまして
輸出、
内需両方の面から見て参りまして、特に
内需方面におきましてはいわゆるドツジ・ラインによる
資金の引締が、ございまして、
一般国民の
購買力も余り伸長いたしておりませんので、大体すべての纎維につきまして或る
程度需給のバランスがとれつつあるということが申せるのでございます。ただ
只今までの
繊維品の
価格は、従来
生産が少くて、而も
需要が多いという
需給のアンバランスの
関係から大体
売手市場でございまして、
価格も
そういつた面で
需要の強さによりまして
相当高い
価格が出てお
つたのでございますが、だんだんこれらの
価格が修正されまして、最近におきましては大体
国際水準の
価格にまで下
つて参りつつあるのであります。ものによりましてはまだ
国際水準まで下
つておりませんけれども、大部分のものにつきましてはその線にまで下
つて来ておるのであります。そういつた点から考えて参りますと、大体
国内におきましても
生産コストというものを
基準にいたしまして、将来一定の
価格の
安定線が出て参ると思いますし、又
輸出の面につきましても
そういつた線で安定いたしますれば、
相当大きな
輸出が将来期待できるものと考えておるわけであります。こういつた
状況にあるわけでございますが、ただ御
承知のように過度的の現象といたしまして本年の三月頃まで、これは
朝鮮動乱の
影響ばかりとは申せないと思いますが、非常に
うなぎ昇りに昇
つて参りました
価格が頭打ちになりまして、そうして同時にそれに連れまして
国際事情の不安から最近におきましてはだんだん
輸出の
状況につきましても、或る
程度先細りの
数字が出て来ておりますし、又
国内におきましても漸次
価格が暴落して参る、特に
卸関係におきましては、実際の
価格をもつと超えまして
思惑が入りましたために、一層大きな
変動をして参るということになるわけでございます。
そこで最近の
状況はどういうふうであるかということにつきまして
説明を申上げますと、お
手許に差上げました
資料の一番初めに、
輸出の従来の
実績表が上げてございます。これは綿につきましての
輸出の
実績表、これは大体が綿が主なので、綿について質料を作りましたのですが、この表を御覧下さいますと、大体今年の一月かち五月までに綿布の
輸出いたされました
実績は、四億九千四百万ヤール、約五億ヤールの
輸出でございまして、六月も約一億ヤールの
輸出がありましたので、
上半期におきまして、六億ヤールの
輸出があつたことになるわけでございます。ただこれは実際に船積みをいたしました
輸出の
実績でございますが、
契約の面を申上げますと、今後七月以降どのくらいの
輸出契約ができておるかという点でございますが、七月にできております
契約は九千六百九十万ヤール、約一億ヤール、八月が八千三百万ヤール、九月が九千七百五十万ヤール、この辺までは
相当の
輸出契約が進んでおるわけでございます。それから先十月以降になりますと、急速にこの
数字が減少いたしまして、十月に三千三百五十万ヤール、十一月が千百二十万ヤール、十二月が千八百万ヤールというように急激に
契約の
状況は減少いたしておるわけで、ございまして、今後これらの
輸出契約がどの辺まで進んで参るかということでございますが、これは見方によりまして非常に違うのでございますが、先ほども
お話が出ましたように、
米綿の
収穫の
予想が本年は非常に
見通しが明るいのでございまして、
作付面積も
予想以上に殖えておりますし、それにつれまして
収穫の
予想も約千六百五十万俵くらいのものが
米綿としてはできるのではないかという
見通しでありまして、これは八月八日に第一回の收穫
予想が
発表になりますので、その
数字を見ませんとはつきりいたしませんが、昨年に比べますと非常に大きな
増産になるわけでございます。
従つて現在
米綿の
先物の相場につきましては、
ニューヨーク市場におきましては十月以後三十六セントというような
価格で、現在
期近が四十四セントいたしておりますのに対して、約八セント安値にな
つておる
関係がございます。そういつた
状況が
国際市場に反映いたしまして、この
米綿の落着くところを見極めるまではそう大量に
輸出の引合が参るとは考えられませんが、併し大体
米綿がこれだけ
増産になりますと、今後綿の
世界市場における
安定点は
米綿に集中されるということになりますので、この
米綿が安定したということになりますと、それを基礎にいたしまして
相当の
輸出注文というものが参るものと考えておるのであります。やはり多少時期的に申しますと、九月或いは十月頃からになると思いますが、その場合には必ずしも本年の初めに行いましたように半年も
先物を
契約するということでなしに、
期近のものを
相当注文されて来るというように考えるのであります。ただその場合の
価格の問題、或いはどのくらいの数が出るかという問題は、
予想が非常に困難な問題でございまして、特に
価格がどこに安定するかということが、現在の
日本の
綿製品の
価格がまだ
国際価格に比べて見ますと、多少割高の
状況にございますので、それがどういう形でさや寄せされるかというその経過的な問題が今後
相当深刻な問題として出て参るのじやないかというように考えられるわけでございます。で
上半期におきましては非常に順調な
輸出をいたして参
つたのでありますが、本年の下期には
日本の
綿業にとりましても
相当大きな試練の時期であるというように考えるのでありますが、そこの
見通しといたしまして、必ずしも極端に悲観をする必要はない。むしろ安定して参りますれば、今まで控えておりました
注文が一遍にこちらに参るということも考えられますし、又
イギリス、
アメリカあたりの
輸出余力というものは昨年に比べまして、むしろ減少いたしましても増加するようなことは殆んどあるまいと考えられますので、その点では明るい
見通しもあるものと考えておるわけであります。
そこで綿以外のものにつきまして大体どういうふうな
輸出の
実績にな
つておるかということでございますが、これはお
手許に差上げました
資料の三枚目に
人絹糸、
人絹織物、
スフ綿、
スフ糸、
スフ織物、綿糸これの
輸出実績が掲げてあります。それでこの
数字を御覧下さいますと、大体
人絹或いは
人絹織物につきましては、本年の五月までで
人絹糸のごときは、昨年の一カ年の
輸出実績程度のものを現に
輸出をいたしております。金額的に申しますと、昨年よりは三割五分上げくらいの
価格で売れておりますので、
人絹糸なり、
人絹織物というものは本年の上期の
輸出実績は非常に良好でございます。又
スフ綿、
スフ糸等につきましてもかなりの
実績を攻めておるのでございます。
スフ織物と綿糸につきましては、それほどの
実績は上
つておらんわけでありますが、全般的に申しまして、綿以外のものにつきましても、
輸出の従来の
実績は
相当よか
つたのでありますが、ただ問題は、
人絹なり
スフ糸につきましては
価格の問題がございます。一時
人絹糸につきましては一ドル三十五セントぐらいまでの高値の
輸出があ
つたのでございますが、最近におきましては八十三セント乃至八十セントの
輸出契約の
価格にな
つております。これは昨年の
価格に比べますればまだ約二割以上高いのでございますが、昨年の
朝鮮動乱前の頃に比べますれば二割以上高値でございますけれども、一時の非常な高値に比べますと、かなりの低落でございまして、その間に
輸出契約の無効の問題が起
つたのでございます。
人絹の
関係につきましては、量が比較的僅かでございますので、余り
先物を受けてございませんでしたので、
輸出商と
生産者の間におきまして、適当に棚上げ
措置を講じまして、
価格からのキヤンセルの被害を実は未然に防いだような
措置をとりまして、このほうは現在問題は余りございません。むしろ今日八十セント以上の
輸出ができますれば大体七十七セントぐらいが
アメリカの
価格でございますし、イタリーの糸はインド
市場におきまして八十一セントぐらいでございますから、比較的有利な
輸出が今後もできるのじやないか。而も最近ぼつぼつ約定も入
つておりますので、
人絹糸なり
人絹織物の
輸出につきましては、余り綿ほど大きな問題は残
つていないというように考えるのであります。
なお、これに関連いたしまして、キヤンセルの
状態がどうであるかという御
質問がございましたのでございますが、この
キャンセルの問題を御
説明いたしますことは、
数字的には非常にむずかしいのでございまして、或る程度推定をいたしまして、このくらいは
キャンセルになり、又持越しにな
つたのじやないかということを申上げるよりいたし方がないのでございます。それは従来の例から申上げましても、綿布につきましては大体一定の期日までに
LCが参りませんようなケースは、昨年におきましては毎月一千万ヤールぐらいずつあ
つたのでございまして、これは必ずしも
キャンセルとは申せないものもあるわけでございます。つまりバイヤーのほうで仕向け先を変更するとか、或いは取引の
関係上支拂を延ばして、同時に
引取を又延ばして来る。まあいろいろな條件がございまして正確に先方からキヤンセル……、一方的に破約をして参つたものがどれだけという
数字はつかみにくいのでございます。但し一定の期日までに
LCを開いて来なかつた
数字がどれだけであるか、これを機械的に集計いたして見ますと、まあその中で転売されますものも
相当ございますので、全部が
キャンセルになるということにはならないと思いますけれども、大体の
数字はつかみ得るというように思うのでございます。この
数字で申しますと、本年の一月から三月くらいまでは大体一千万ヤールから一千五百万ヤールの間でございまして、昨年の例と殆んど変りがないのでございます。今年の四月、五月に入りましてこの
数字が二千万ヤールを超える
数字にな
つて参
つておりますのでございますが、これは実は直接的な原因がございまして、これは明らかに
キャンセルと見られるものが殖えたと思うのでございます。その内容は台湾に対しまして金巾の
輸出約定が
相当量あ
つたのでございます。ところが台湾におきまして
外貨資金の不足と、肥料その他直接緊急に必要なものの
輸入のほうにその
外貨を振り向けましたために、約一千万ヤールくらいできておりました綿布の約定物につきまして、全部向うから
LCが開いて来ないという例があ
つたのでございます。そのために四月、五月の
数字が
相当殖えておるのでございます。六月に入りましてどのくらいの
キャンセルがあるかということにつきましては、まだ正確な
数字はわからないのでございますが、大体大雑把に見まして、従来
輸出契約がありまして、ほかに転売その他の
措置をいたしましてもなお且つ七月に持込まれたのであろうという綿布の数量は、大きく見ますと五千万ヤール、内輪に見ますと三千万ヤールぐらいのところではないかということにな
つておるのでございますが、これは毎日毎日或いは
国内に売られましたり、ほかに転売されたりいたしますので、正確な
数字をつかむことは困難でございますが、大体そのくらいの
数字じやないかというように思われるのであります。そこで問題は先ほども申上げました七月九月の間における約定物についてどのくらい今後
LCが送
つて来られ、どのくらいいわゆる
キャンセルになるかという問題でございますが、これは現在までの
状況につきましては、実は大雑把な概括的な
数字は、大阪あたりで調べましたもので、あるのでございますが、具体的に調べ上げましたケースと
相当違
つておりますので、この
数字が
最後的のものであるかどうかということはわか
つておりませんのでありますが、今日七月の月半ばまでに参りました
LCの到着しております割合は、大体三割五分だという話でございます。これは社別に見ますと、六割を超えておるようなところもあるようでございますし、
事情を少し調べなければわかりませんが、そのくらいの見当のようであります。八月、九月につきましては、大体二割五、六分或いは二割二、三分くらいの
LCが参
つておるのであります。そのほかのものはまだ
LCが未到着でございます。
そこで
通産省といたしましては、成るほど七月、九月の
契約は実は過去におきまして一番高値の
契約でございますから、
キャンセルをされる可能性は
相当あるのでございますが、これをできるだけ
契約を履行してもらうことにいたしまして、その代り先の商売と、紐付きと申しますか、絡み合わせまして極力この
契約の相手方に履行させる。特にこの売先は先ほど
加藤委員から
お話がありましたように、パキスタンとインドネシアでございまして、パキスタンあたりにおきましては、これ以上もう
日本は値を下げて来ないのだということになれば、
相当程度取るだろうという見込をする人もございますし、又非常に
輸入業者が不確実だから、これが実行されるかどうか危ぶないというような話もあるのでございますが、とにかく
日本はあすこが綿花を買います一番大きな得意先でもございますし、何とかこちらの
態勢を整備いたしまして、極力
キャンセルの出るものを少くして行きたいという
方針から、先ほどちよつと
大臣からも御
説明申上げましたように、この度
輸出に……、これは綿ばかりではございませんが、綿、
人絹、スフにつきましては、
輸出の承認制を布くことにいたしまして、極端に安売をいたしますようなものにつきましては、これを防止いたしまして、できるだけ
輸出価格というものが急激に
変化しないというような線に持
つて行きたい、こういう
措置をとることにいたしたのでございます。同時に現在これらの
LCがまだ参りませんで、而もなお手持ちにな
つておるようなものにつきまして、できるだけこれを先に延ばす、繰延べましてほかの
契約に振り当てるということを考えまして、この間の
金融の問題につきましていろいろ
関係方面とも折衝いたしておるわけでございまして、
大臣にも極力その点はお骨折を願
つておるわけでございますが、大体そのやり方といたしましては、現在
貿易会社と
輸出商との間において考えられておりますような方法によりまして、できれば二月ぐらいこの際決済を延ばすような形で
資金をつけまして、そうしてとにかくこちらとしては安売は絶対にしないのだという
態勢をはつきり向うに見せまして、極力高値の
契約のものを向うにとらせるということにいたして参りたいというように考えておるわけでございます。
それから綿以外のものにつきまして
キャンセルの
数字がございますけれども、これは先ほど申上げましたように、大体
期近の約束でございまして、而も
生産会社と
輸出商との間でほぼ話がついておりますし、又その
キャンセルの
数字も極めて僅かでございますので、特にこの点につきましては融資の問題は現在起
つておりません。ただこの後にございます問題は、化繊会社の運転
資金が原料の仕入れの問題と関連いたしまして
相当困難をいたしておりますので、このほうは別個に
個々の会社につきまして
日銀のほうで
調査をいたしまして、大体七月の分につきましては或る程度の話合いが現在つきつつあるようでございます。まだ最終決定まで参りませんが、或る程度化繊会社に対する運転
資金の融資の問題はできるのじやないかというように考えておるわけでございます。このほうの問題は解決する見込みでございます。
大体最低の
繊維の
事情は
只今申上げましたようなところでございまして、かなり将来むずかしい問題があると思うのでございますが、できるだけこれらの点につきまして円滑にこういつたものが伸びて参りますように
努力をいたしたいと考えておるのであります。なお御参考までに申上げますが、
繊維品の
価格の問題につきましては、
朝鮮動乱以降の
価格の暴騰は非常に極端でございまして、御
承知のように
人絹糸につきましても一ポンド五百円を超えるような時期があつたわけでございます。現在は大体二百五、六十円のところに落ちついておるわけでございます。その場合に一体
生産コストの
関係から申しましてどうなるかという問題でございますが、大体におきまして
繊維品につきましては現在の下つた
価格でなお
生産者は相大当きな赤字を背負
つておるというような
状態ではございませんで、大体原価をペイしてかつかつというようなところが一番低いところでありまして、ものによりましてはまだ或る程度の利潤が含まれておるような
価格にな
つておるのであります。ただそれだけに
価格を動かす幅が大きいということから、
変動が大きくなるという可能性があるわけであります。
大体の
状況はそういつたようなことにな
つておるわけであります。