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1951-06-02 第10回国会 参議院 地方行政委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年六月二日(土曜日)    午前十一時二十五分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○議員派遣要求の件 ○警察法の一部を改正する法律案(内  閣提出・衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) これより地方行政委員会を開会いたします。  お諮りいたします。過般国と地方の間における事務の再配分その他につきまして調査のため議員派遣要求書議長宛に提出いたしましたところ、議院運営委員会におきまして希望が出まして、三班で、一班の人数は二人以内ということにしてもらいたいということであります。こちらは三班は三班ですが、四人と、こういうふうにしておつたものですから、訂正をしまして申出なければならんことになりました。そこで同時期に出ます公職選挙法調査派遣とダブらないようにしてもらいたいということで、それでそのほうでお出になる方と分けまして、お譲り合いを願いたいと思いますが、一応急ぎますので、第一班、つまり北海道、秋田班、これは西郷君と中田君、第二班は安井君と岩木君、これは島根、廣島、愛媛であります。それから第三班は熊本、鹿児島、これを高橋君と相馬君、こういうことでお願いしておきたいと思います。日にちはまだきまつておりません。日にちは七日以内、遠いところは十日以内ですが、こちらは皆遠方に入つております。十日院地方行政で要求いたしたいと思います。
  3. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 いつ頃立つのでございますか。
  4. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) これはなお各班で打合せして頂きたいと思います。五日から月末の間にということで……。それじや一応これで出しておきますから御了承願います。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕   ―――――――――――――
  5. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 次に警察法の一部を改正する法律案につきまして審議を行ないます。
  6. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 先般たびたび私が申上げて非常に皆さんのお耳障りの感を与えていると思つて恐縮でありますが、名称の問題につきまして国家地方警察文書を以て御回答願い、それが昨日我々の手許へ届けられたのであります。それから又これは我々立法府の内部の問題でありますが、委員会專門員の中に同様な調査委員長を通じてしてもらうことをお願いしまして、これ又昨晩遅く專門員から私の部屋に届けられまして、武井、福永專門員の名を署名してここに文書参つたのでありますが、昨晩受取りまして、その両方の文書をちよつと見ただけでありますが、国警側御返事文書は、一応こういう御返事があつたということだけを御了承申上げることにいたしたいと思うのであります。併しながらこの機会專門員諸君文書を見まするというと、その内容国警側文書拔萃に過ぎないとのころのもので委員会会議録ありまして、これを私の手許に届けられたる福永專門員にもその節、昨晩大分申上げたので、ここでは繰返して余り声を大にして申上げるようなことは差控えたいと考えているのであります。併し專門員調査報告については、一委員といたしまして非常に不満足であるということを結論的に申上げておきたいと思うのであります。で、言うまでもなく立法府行政府に対立いたす関係にあるのでありますから、国会の我々の最高の相談役であり、又日本全体といたしましても、その管掌事務についての最高の第一流の権威者でなければならないところの人が、その行政組織の上において、憲法上対立の立場にあるところの行政府調査というものを拔萃して、そうして立法府議員に配付し、これを調査報告に充てるというようなことでは、何のために立法府のそうした專門員を置かれておるのか、全く意味をなさないと思うのであります。で、言葉の、英語の問題につきましても同じことを書いて来ておるのでありますが、即ちヴアーレンタインオランダー日本警察制度改革についての報告書原文と照応して、そうしてそれについての調査の検討をしてくれということを言いましたのに、国警と同じようなことを書いて来ておりますから、そのオランダーヴアーレンタイン調査報告書原文は見てくれたのかと尋ねますると、それは見ない、そうして国警に聞いたというような返事でありますが、そんなことでは何も意味をなさないのでありまして、どんなにしてでもオリジナルな資料を得て来るという努力を、国警から離れてオリジナリーにしてくれられるのでなければ、立法府の権威いづこにありやということを、私は不平を言いたいのであります。又そのときも実は私は個人的にも言つたことでありますが、あなたたちがやはり、こう言うことは悪いかも知れませんが、この間の公聽会でも出た言葉でありますから使わして頂きますが、旧内務省官僚であつたから、立法府議員というものに親近な念を持つよりも、先ず自分古巣であるところの旧内務省官僚である国警諸君に対して伺いを立てるようなことを考えるということが、それが日本政治上における、そういうものの考え方欠陥であるばかりでなく、地方行政の面においてもそういう考え方立法府の人が払拭し、一擲するのでなければ、これは私見を以てすれば、断じて日本地方行政民主化はあり得ない。日本地方行政従事者という者は、今日各地方庁及び中央を通じまして数十万いると思いますが、それが旧来からの旧内務省官僚諸君考え方が戦前と同じように、今なお同じ考えでそれを完全に支配している。それが日本地方行政の当面している最大欠陥であつて、言を発すれば常にそういう旧内務省官僚諸君の感情を刺激するような言を私が言うが、あえて私たちの面接し、親近しているところのこれらの旧内務省官僚諸君は、個人的には実に尊敬すべき紳士であり、又優秀なる素質を持つた人であるということについては常から非常に尊敬の念を持つて私は対しているのであるが、併しながらむしろ意識的に、それらの人の考え方を刺激するような、反感をそそるような言を私は意識的にいたしております。みずから、その数十万の地方庁の公務員、その他の地方行政従事者の頭を支配している、そうしてそのリーダー・シツプを握つておるところの旧態依然たる旧内務省官僚諸君に意識的にその反感をそそるような、官僚イデオロギーの打破ということを第一義の地方行政上の問題として、機会あるごとに私が言うことは、全く私が一政治家として現下日本が当面している政治上の病弊を矯正して、殊に地方行政における最大病弊を治療したいという、一片湫々の憂国の至誠にほかならんということを繰返して申上げておきたいのでありますが、そういう意味から、君らの頭の切替が旧態依然としてできないで、そうして我々が調査をしてくれということを言うと、オリジナリー立法府立場で独創的な調査研究をするのでなしに、自分の元の古巣の者に伺いを立てて、そうしてその意見を持つて来る。そうして向うの文書拔萃して我々の手許へこんなものを出して来るというようなことは、全くナンセンスであるばかりでなしに、私どもが平素言うところの、地方行政最大欠陥を治療せんとするところの、現下当面せる日本民主々義の育成のためにも、最も悪い考えと同調しているものであるということを、個人的には甚だ失礼でありましたが、言を極めてその諸君にも言つたのでありますが、繰返してこの言を私は速記録に特に残しておきたいと思うのでありますが、どうぞそういう点について十分お考え直し願つて立法府調査はそんな行政府調査拔萃のようなことで事足りるものではない。独自の見識と独自の見解を以てやらなければ意味をなさんということをこの機会に申上げておくものであります。若し何か答弁せられることがあるならば、答弁して頂いても結構であります。  なお附加えて国警側から提出せられておりまするところの書類に、私がMPという言葉を……、以前たびたび我々に警察制度説明に来られたときにMPという略称を非常に使われた。これは国家地方警察についてはNRPという言葉を非常に使われて、NRPは言うまでもなくナシヨナル・ルーラル・ポリスであるが、MPという言葉は何の略称であつたかということについての調査文書受取つたのでありますが、即ち私が申すような意味においてのMPは、ミユニシパル・ポリスという意味MP言つた場合がありますと、私が問題にいたしておる点を、ほかのことも書いてありますが、肯定された返事がここに来ておるということをこの機会に申上げて速記録に残しておきたいと思います。
  7. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ほかに御質問ございませんか。
  8. 中田吉雄

    中田吉雄君 私たびたび欠席しまして、会期も差迫つ大変恐縮ですが、一つ重複するところもあると思いますが、若干質問をお許し願いたいと思います。先ず大橋法務総裁にお伺いしたいことは、この法案現下治安状況から見られまして、現行法改正を要する点を最終的に現段階において改正されたものであるかどうか、この法案通過を心から望んでおられるかどうかという点なんであります。なぜこういうことをお尋ね申上げるかと言いますると、自由党におかれましては、二十六日の総務会におきまして自衛治安対策要綱決定されたわけであります。その内容につきましては時間がありませんので申上げませんが、国民の自主的な立場からこの自衛治安の万全を期するために国会常任委員会を急設する、この常任委員会国警自治体特審、海上保安庁、出入国の管理庁、警察予備隊等の事項を所管する、更に專任の所管大臣を置く、内閣国家保全調査庁を置く、或いは国警、自警の能率を向上し、その調整を図るために国家公安委員長国家安全大臣の兼務とするというような極めて広汎な、確かに現在におきますところの治安に関するいろいろな盲点を百取上げられたような、総合的なこの治安自衛対策総務会で二十六日に決定されているわけであります。御存じのように憲法の第六十七條によりますと、内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決でこれを決するということになつていまして、少くとも我々としましては、今回国会に出されましたところの警察法の一部改正法案というものは、吉田内閣警察法に対する改正案であると同時に、自由党治安に対する基本的な考え政策的に集約されたものであると思うわけでありますが、我々が相当長期間に亘りまして漸く審議最終段階に入る頃に、自由党とされま してはこういうような更に広汎な警察制度改正案を出されるということは、一体奈辺に真意があるかどうかということ、我々としましては十分その真意を捕捉することが非常に困難なわけであります。或いはこの警察事務担当者がいろいろ要請されるから、もつと根本的な改革があるのだが、まあそういう切なる要望に応えて、大橋法務総裁政治力を示すために、内閣を説得してここまで持つて来られたのではないかというようなことすら思われるわけでありますが、少くとも今回出されたものは、吉田内閣警察法改正案であると同時に、我々としましては、これは自由党改正案であるというふうにもとるわけでありますが、総務会が二十六日に突如として治安担当專任大臣を置くということを含むところの広汎な改正案を出されるということは、国会の現在の審議に対する或る意味では冒涜ではないかとすら思いますし、そういう点で我々は甚だ遺憾の意を持つわけでありますが、少くとも総務会がこういう決定案を新聞に公表される段階に至りますに当つては、所管專任大臣であられるところの大橋法務総裁にこの問題について相談をされ、或いは指導的な役割を果されたと想像してもいいと思いますが、大橋法務総裁のこの要綱決定されるに至ります関係、それに対してどういう関係をお持ちであるか、更に法務総裁とされましては、このたび出されたような改正案が一応ここで国会通過いたしましても、直ちに又このような広汎な改正案国会に出される意思があるのかどうか、これは大体現下治安の諸情勢からして、当分の現段階としては或る意味では最終的な改正法案であるという二点につきまして、お伺いしたいと思います。
  9. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 中田委員の御質問にお答え申上げます。政府といたしましては、今回提案いたしましたる警察法改正案は、現段階におきまする最終的の措置考えております。  第二に、この法案に対しまして私が衷心より成立を望んでおるかどうかという点の御質問につきましては、私といたしましてはその通り通過の一日も速かなることを希望いたしておることをお答え申上げます。なおこれに関連いたしまして、二十六日の自由党総務会において採択せられましたる治安対策について御質問があつたのでございますが、自由党といたしましても、治安の問題は今日最も重要なる問題でございまするから、党を挙げて研究をいたしておることは申すまでもないのでございまして、総務会におきまする決定というものは、党としての政策の採択ではなく、党の政策を検討する一つの過程に過ぎないのでございます。私といたしましてはまだこれを党の政策として受取つたこともございませんし、この審議に当りまして、私の側から特に意見を述べたこともございません。ただこの審議過程におきまして、治安の現状に関する説明をいたしたことがありますが、併しこの対策の樹立につきまして特に私として意見を申述べ、又は政府の側から意見を申述べたことはございませんことを附加えます。
  10. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますと、只今の御答弁によりますと、この治安犯罪等状況についての報告はしたが、この立案についてはそういう参画はされていないように申されたのですが、いろいろ具体的な條項の中には地方自治体国警、総司令部調整がついて、この最終案がまとまるまでに、我々に一応の構想として話されたようなことがかなり具体的にそのまま織込まれておるようなことがたくさんあるようでありますが、とにかく御関係はなかつたのですか、こういうことにつきまして……。
  11. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 内容として取上げられておりますることは、今国会の初めに当りまして私の希望として構想しておる事柄を申上げました。それと或る程度似通つておることがあるかも知れません。併し私といたしましては、その後各方面の情勢を総合いたしまして、現在提案いたしておりまする程度を以て警察法改正目的は達し得るものである、又最初考えておる程度まで行かずとも、この改正案十分工夫をいたして運用に努めまするならば、必ずや今日の段階において治安目的に適い得る、こういうふうに考えておる次第であります。その後におきまして今回取上げられましたる治安対策について特にさような意見を持つたことはございません。
  12. 中田吉雄

    中田吉雄君 現行警察制度改正する前に私は考えて見なくてはなりません点は、マツカーサー元帥書簡に基きまして新しい警察法ができまして、画期的な改正がされた当初のいきさつを、その当時を振返つて見ることは非常に問題の所在をはつきりするではないかと思うわけであります。丁度私のことを申上げまして恐縮ですが、私が昭和二十二年鳥取県の県会議長をしましてその翌年でしたか警察法改正されまして、国家地方警察自治体警察が分離されまして画期的な改正がなされたわけでありますが、そのときにどういういきさつと混乱が自治体国家警察の中にあつて、そしてそれが依然として今日に持込れていることが、私は非常にこの治安状況に対処できないところの大きな原因ではないかということを考えるわけでありまして、その当時の状態を申上げまして、これに対しまする大橋法務総裁のお考えを承わりたいと思うわけであります。  それは警察制度改正されました際に、当時の警察部長がこれに対しました態度というものが、依然として従来の警察国家当時におけるようなああいう考えを持ちまして、マツカーサー元帥書簡に基くところの警察民主化地方分権に対する十分な理解を持たずに対処いたしましたために、人材配置備品配分等につきまして国警優先国警第一主義を強力にとりまして、私はそれが今に至るまで改められないことによつて警察機能を非常に阻害しておると思うわけであります。当時の状態を申上げますと、部長は先ず全体の警察官能力調査をやりまして、そして全部優秀な警察官国家地方警察に持つて行く、そしてこういうことを申上げましては大変恐縮ですが、非常に素質のよくない人を自治体警察に持つて行く、そして備品のごときものも有無を言わさずにトラツクを持つて来まして強奪するような態度で金庫や備品を持つて行きまして、これが鳥取県会でも非常に大きな問題になりましたが、そういうような国家地方警察第一主義優先主義人材の面に強力にとられまして、その後の人員補充等によりましてはこの出発当初における欠場点が依然として除かれないということが、私は非常に大きな原因であろうと思うわけであります。御存じのようにその当時の警察財産というものはこれは地方公共団体財産でありましたので、その財産議会承認なしには自治法に抵触いたしまして、国家地方警察が取上げることについて非常に問題になりまして、新らしい配分計画を立つて議会承認を経て、そういうふうな移管の手続をとつたわけであります。とにかくその当時の優秀な人材は挙げて国家地方警察に持つて行き、自治体警察に関しては二流、三流以下の、警察官としての素質能力に十分でないような人を持つてつたことが、現在その後の人員補充等で十分補えない、このことが私は非常に大きな原因を持つていると思うわけであります。そして自治体警察の人の一日も念頭から離れない問題は、自分たち国家地方警察に対しまして劣等感を抱いているという蔽いがたい事実でございます。ああいう生命の危険も顧みず治安を維持するというようなことは、自分の職務に対する優越性と十分な自負心がなくては私はやれないと思うわけでありますが、そういう人員配置をとりましたために、どういたしましても拭うことのできない劣等感を抱いて今日に至つています。このことが私は非常に大きな癌をなしておると思うわけであります。こういう点におきましては東京警視庁大阪警視庁等におきましてはそういうことがありませんので問題にならない。この点につきましては私は田中警視総監鈴木警視総監等は、弱小自治体警察が持つている悩みというものは大都市の自治体警察の長の人には十分にわかつていないと思う。東京大阪でありましたら、そういう人員配置がありませんから、この精神上の差別感というものはありませんが、府県の自治体警察におきましては、これが鈴木さんや田中さんが考えられる以上に今に至るまで拭うことができないということがありまして、こういうことを改めずに、私は今回出されたような法案が無意味だとは申しませんが、むしろ私はマツカーサー元帥書簡に基いて改正された、その出発の当初においてずつと持込んでいるところのこの問題を解決せずして、いろいろ警察法改正を二、三いたしましても、十分目的を達成することができんのではないかと思うわけであります。私は鳥取県におきまして直接その当時のことをよく知り、四カ年間、分れた以後の動きをつぶさに見まして、今に至るまでそういうことが拭われないことがこの治安に対処することのできない非常に大きな原因と思うわけであります。これにつきまして大橋法務総裁は、このたびの改正でそういう出発当初に持込んだところの欠点が拭えるとお思いでありますか、このことについて御所見をお伺いしたいと思います。
  13. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察法実施当時のいろいろな御経験について非常に貴重な御所感を承わつて感謝する次第でありますが、この中で最初にお述べになりました自治体警察創設当時の国家地方警察自治体警察との間の備品等配分の問題でございます。このことにつきましては警察法の附則の第九條に規定がございまして、この法律施行の際、又はこの法律施行後新らしく市町村警察の責に任ずることになつた場合に、現に警察の用に供する都道府県財産又は国及び都道府県の所有に属する物品は、国家地方警察に不必要なもので、市町村警察に必要なものを無償でこれを市町村に譲与する、こういうことに規定をいたしてある次第でございまして、当時物品の分配におきまして国家地方警察が多少優先的な扱いをしたような感じがあつたといたしますると、この規定によつて処理をいたした結果さように相成つたと存じまして、これは当時の規定から出るとしても或る程度止むを得なかつたのではないかと思います。それから特にかようにいたしまして自治体警察から国警備品等を引上げましたあとにおきましては、約百億からの備品費に対する国庫からの調弁費に対する補給をいたしておるわけでございまして、この点はなおそれが不十分であるということはあり得るかも知れませんが、取扱の方針としては止むを得なかつたと、かように考えております。  次に人員配分の問題でございまして、国家地方警察に優秀な人をとり、自治体警察にそうでない人を押付けたような感じがすると、こういう点をお述べ頂いたのでございますが、当時の人事方針といたしましては、何分にも職業の問題でございまするので本人希望を第一に考えるということがこれは妥当な措置である、こういう考えの下に一応は配置をいたしましたが、その一年聞は特に国家地方警察自治体警察との間に人事交流の途を開きまして、この間に本人希望によりまする交流を認めたわけでざいまして、大体今日の配置は、当時の本人希望が主になつてそういうことに相成つておるという点が或る程度あると、こう存ずるのでございます。併しながら原因は如何なるところにありましようとも、その当時の人事のやり方に基きまして今日自治体警察において劣等感を抱くというようなことがありまするというと、これは警察法の本旨から考えましても、又治安の要職にありまする警察官地位というものから考えましても誠に遺憾に存ずるところでございまするから、これらの点につきまして国家地方警察において何らかさような感じを惹起することについて原因があつたといたしまするならば、これは国家地方警察においても将来十分に反省を加えまして、速かにさような感じを払拭するように努力をいたすべきであると、かように存ずる次第でございます。
  14. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういうような感じもあつたようなお話でありますが、これは実際事実なんです。私はよく、その名前は申しませんが、部長からあなたはどういう方針でこの人事の再配分をやられ、公安委員をどういうような方針で選定されるかということを申しましたときに、いろいろ調査した結果があるから、それに基いて国家地方警察を第一にして優秀な人材を挙げてそちらに持つて行く、ところがその人は警察部長をやめまして、幸か不幸か大阪自治体警察の今相当な地位についておられるわけでありまして、当時と現在を考えおれましてどういう心境になつておられるか、まあ問いたいと思うほどですが、この問題を私は解決しません限りは、将来自治体警察に優秀な人を吸収することもできませんし、先にも再三申上げましたが、大阪東京警視総監は、そこで生涯を傾けるような気にならなければいかんというようなことは言えるのでありますが、それは大阪東京のような再配置のときにそういう悩みを持たん体験者にして初めて言い得ることでありまして、私は将来強盗、殺人等生命の危険を冒しながら治安を維持するような職につく人は、何といつてもこの差別的な劣等感を拭い去るという方法をとらなくては素質の向上と能率化は図れないということを考えるわけであります。最近二年目からですか、人事交流によつてそういう欠点を補正しつつあるように申されましたが、齋藤長官にお尋ねいたしますが、具体的にどういう方法によつてそれはやつておられますか。
  15. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今警察法実施当時の人時の関係の御質問がございましたが、大橋法務総裁から御答弁になりましたように、当時といたしましてはできるだけ本人希望を第一に置くというのが当時の本部のとつ態度であります。従いましてその考え方は、我々といたしましても将来自治体警察において自分の一生を捧げるというような熱意を持つたかたが先ず一番望ましいという意味が一番多かつたわけであります。従いまして実際希望をとつて見ますると、大都市警察のできまするところにはそれはむしろ優秀な人が非常に希望者が多い。殆んどそうである。東京大阪、或いは横浜のごとき。ところが大都市警察でない小さな警察になりますると希望者が殆んどない。そこでどうしても無理に或る程度においては行つてもらわなければならんということに相成ります。併しながら今までより自治体警察がたくさんできるわけでありまするから、警察署長になれるという希望を持つことによつて自治体警察のほうに斡旋をするようなこともいたしたのであります。一高のいい方法は、当該公安委員会からこういう人が望ましいという声のあるところに優先的にそれを斡旋するようにいたしたのであります。併し全部が全部その希望に応じてというわけにも参りませんでしたから、従つて半強制といいますか、或る程度申含めてやつたというところが相当多いと思います。そこで将来は又国家地方警察のほうに吸収する。そしてその代りに自治体警察に又優秀な八をやるからということにして落着けたところが相当多かつたのであります。そういうところの是正を施行後一年間に相当行なつたのであります。自治体警察の、地方に成績の悪い者ばかりやつたというようなことはございません。例に挙げられましたところにおいては或いはそういう傾向がありましたか、私はそれを聞いておりませんけれども、全体といたしましてはそういう方針でやるほうが、今申上げましたような方針でできるだけ本人希望に副うように是正をいたした次第でございます。
  16. 石川清一

    ○石川清一君  一昨日でありましたか、警察大学校と管区警察学校を視察いたしまして、一応現在の教養程度或いは内容を拝見いたしましたのでありましたが、先ほど中田委員の申しましたように自治体警察並びに国家警察官としての素質関係或いは数養の程度に、或る程度の差があるというように聞いて参りました。現在の改正法では一応警察大学校と管区の警察学校の定員を五千名という、そういう点において改正されておるのでありまして、現在とりつつあるところの短期教育を徹底するごとによつて自治体或いは国警間の素質の違いというものが取り直されるか。それとももつと積極的な教育の体系を立てて、長期の一年以上の大学校といいますか、大学校においてそういうような考えの上に立ちまして、現在とられておる教育の制度の根本的な改革と申しますか、或いは自治体警察国警間の緊密性或いは人事のスムースな交流の面にそういう教育の施設が向けられて行くというような方向に、国家公安委員会の意見なども考えて、積極的に今のような認められておるところの弊害を是正する考えがあるかどうか承わりたい。
  17. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 警察の教養は、国家地方警察及び市町村警察を通じまして国家公安委員会の、学校における教養は一応責任になつておりまするから、只今お述べになりましたような事柄を念頭に絶えず置きながら計画をし、実施を進めておる次第でございます。今後もなお十分そういうような点に気をつけて参りたいと考えておるのであります。  警察大学の本課程六カ月を一年に延長ずる意思があるかどうかというお尋ねでありますが、現在のところでは只今六カ月の教養を以て警部になる、幹部教養は先ず先ず十分と考えておりまするが、なお今後よく研究をいたしまして、できるだけ一層教養面の強化をして参りたいと考えております。
  18. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 本日は質問はこの程度で打切りまして討論に入られんことを提案いたします。
  19. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 まだ私質問ありますのでちよつと許して頂きたい。
  20. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) どうぞ。
  21. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 一昨日この委員会は、私たちが主張いたしましたことの御採択を十分にして頂けなくて、我々が希望いたしましたことは十分の一くらい御採択を願いまして、実地調査に参つたわけでありますが、国家警察本部でおやりになつております警察大学校、それから関東の警察管区の警察学校を視察いたしまして第一に感じましたことは、軍の一つの電信隊の建物を使つていること、一つは海軍経理学校でありますか、陸軍経理学校でありますか、経理学校の跡を使用しているようであつたのでありますが、十分に的確な数字を覚えておりませんが、一つは坪数だけでも三万数千坪、それから管区学校のほうは学校のほうは学校の敷地が五万何千坪というところの大きな敷地を持つておりまする非常に立派なものでありまして、堂々たる総合大学に匹敵するような校舎も、設備も、校庭も持つていらつしるのを拝見いたしましたのですが、立派なことは大変結構でありますが、よその地方における管区警察学校も大体視察をしたかつたのでありますが、採択にならなかつたから行くことができなかつたのですが、あれと同様な数万坪、五万幾千坪というような大敷地を持つた大きな学校、設備によつて行われておるのであるどうかということ、他の地方の、他の管区の管区学校の内容設備等についてこの機会に一つお話を願いたいと思うのであります。  それから第二には、中田君が問題にされました警官の配分自治体警察及び国家地方警察にするときに、国家地方警察に優秀な人材が殆んど吸収されてしまうという御質問、それについては齋藤長官からも必ずしもそうでないというような御答弁がありましたが、中田君が質問の中に言われましたように、石川君でありましたか言われましたように、視察いたしましたところにおきましても、優秀な生徒は国家地方警察のほうから来ている、大橋法務総裁の御答弁によりますと、その原因はいろいろあるとおつしやいましたが、私はこれ又その国家という言葉が錯誤観念に陥れているということが一つの原因であると思いますが、今の学校を中心としてとにかく我々が実地調査いたしました結果によると、優秀な警官が国家地方警察に多くて自治体警察には少い。これは一つ学校を中心にして、学校生徒の素質について他の管区警察学校の設備等について御説明を願うと同時に、他の管区警察学校を中心としてのそうした問題、学校を中心としてのそういう問題について御答弁願いたい。
  22. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 警察大学の坪数は非常に大き過ぎたという御感想のようでありますが、一応御尤もにも存じます。併しながらあの警察大学に、今挙げられました坪数の中には東京都の警察学校もありまするし、勿論御視察を頂きました通りに通信学校も施設をいたしておりまするが、又勿論それぞれその宿舎も必要であります。又職員の官舎等も必要でありまするから、私どもといたしましては広過ぎて利用ができいないというよりは、むしろあれでまあまあ必要な施設は十分賄うのに丁度くらいであろうと、かように考えておる次第であります。東京の管区学校は御承知の通り敷地は相当広うございますが、あの一つの区切りをもらいましたために、更にあれを縮めるというわけにも参らなかつたという理由もあります。今後考えておりまする施設等を考えますると、必らずしも尨大に過ぎるとも思えないと考えております。併しながら全国の他の管区学校から比較いたしますると東京が一番大きいのでありまして、あれの半分或いは三分の一程度のところもあるのであります。今各管区学校の坪数は記憶いたしておりませんが、東京はずば抜けて大きいということだけを申上げておきます。なお学校の生徒につきまして、自治体警察から来ている職員よりも国家地方警察の職員のほうが成績がいいという御意見でございましたが、或いは平均いたしまするとそういうことにもなろうかと思いまするが、併し警察大学なんかの卒業生にいたしましても、優秀な成績を以て卒業いたしまする者の中に、例えば一番、二番という者は自治体警察の者も相当多く優秀な成績をとられるのであります。かような点から見まして、一概にさように自治体警察のほうが劣等であるというようなわけには参らないかと考えております。自治体警察の職員の教養にも全力を注いでおるので、その点を御了承願いたいと思います。
  23. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それに関連してもう一つお尋ねしておきたやと思いますが、現行法上の自治体警察で、例えば東京警視庁のごときは九段でありますが、私見に行つたことはありませんが、警官の養成のための学校を経営いたしておるということでありますが、この設備内容のようなものは、管轄があなたとは違うでありましようが、御承知であるならば……、あなたも警視総監をしていらつしやつたこともおありになるのでありますから、一つこの機会に比較し七お話を願いたいと思います。それから他の自治体警察で、大きな自治体警察で同様にそういう警官のための学校を持つておるところがあるだろうと思いますが、そういう実例についてもできるだけ詳しく一つお話を願いたい。それから全体を通じてたびたびこの委員会で私も申上げ、他の委員諸君からも出ておる言葉でありますが、今度の改正案が、やはり国家地方警察自治体警察との官僚的な縄張り根性がどこかにあるような臭いが非常にする。そうして自治体警察の繩張りを狭ばめて自分たちの縄張りを拡げて行こうというような観念が伏在しておるというように、我々は十分あるように考えておるわけなのでありますが、この警官の養成、教育というようなことにいたしましても、自治体みずからが東京警視庁のように学校を経営して教育するというようなこともできるだけさすようにして行く、そうして小さな自治体ではそれだけの能力がなければ、自治体警察連合団体もあるのでありまするから、そこでそういうことをやつて行くというような方向へ、警察法の精神からして全体的に、国家的な立場からリードして行く必要があるのじやないかと思われるのでありますが、そういうことについてこれは大橋法務総裁が総理大臣代理としての立場でお答えを願つても結構であり、又国警長官にも御意見がおありになるかと思いますが、お二人からそれぞれそういうことの必要の有無、又そういうことについて今日までどういう努力をした、実績があるかというようなことについて一つ御答弁が願いたい。
  24. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今自治体警察の学校を持つておるのは……、初任教養現任教養と両方やつておるのは警視庁だけでございます。警視庁は新たに採用いたしました警察官の見習生を自分の学校でやつております。又現任教養もやつておる、巡査部長までの現任教養をば自分の学校でやつておられます。その学校は今おつしやいました通り九段にあるわけであります。この学校設備は東京都の国家地方警察の学校に比べまして、私は警視庁のほうが設備等立派なものがあると、かように考えております。それから大阪におきましては警察官の現任教養は大阪警視庁でやつております。初任教養はまだ国家地方警察のほうで委託を受けてやつておりますが、近く自分のほうでやられるということがあるやに聞いてております。そこでそれ以外の自治体警察は、すべて初任教養は国家地方警察で委託を受けてやつておりますしそれから現任教養も国家地方警察のほうで委託を受けてやつておるわけであります。そこでこれらの自治体警察又はその連合体でやらすということについての意見はどうであるかというお尋ねでございますが、これには一つは財政上の問題があると考えます。両方でそれぞれ同じような設備を持つという場合に、その適当なる数に達するまではこれを小さく分けて両方に持つということは、財政上の負担も非常に多くなると考えます。これは併し財政面で解決のつく点と考えておりますが、先ほど中田委員からでありましたか、石川さんでありましたか、御意見がありましたように、国家地方警察警察官もそれから自治体警察警察官もできるだけ一つのところで教育を受けるということは、将来お互いに緊密にやつて行こうという非常にいい雰囲気をそこに作り出すものと考えておるのであります。初任教養から全部国家地方警察自治体警察と分けて参りますと、その間の親密性というものが警察官相互の間に失われてしまうという点があろうかと考えております。併し国家地方警察でこの教養を引受けるということになると、国家地方警察的な見地からばかり教養をするのではないか、都市警察市町村警察に又独得な教養面もありはしないかという疑問も起つて来ると考えますが、現在の方針といたしましては、できるだけ自治体警察の持つ特性にふさわしい教養も必要でありまするので、さような意味から自治体警察警察官の幹部のかたがたにも教養面を手伝つてもらつて、単に講師として来てもらうというだけでなしに、事実上手伝つてもらうということにいたし、講師にも来てもらうという ことにいたしまして、その間軒輊することのないように十分留意をしながら教養をやつておる次第でございます。
  25. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 大橋法務総裁に御答弁お願いします。
  26. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今大体齋藤長官から申上げたのでありますが、自治体警察警察官の教育について、自治体警察の連合体において自治体警察だけの教育施設を持つという問題でございまするが、私はそのようなことについてはむしろ望ましくないというふうな見解を持つております。と申しますのは、そうなかなかともなかなか国警、自治警のお互いの対抗的な気持というものがあります際に、今日この双方の気分を多少融和するに役立つておりますることは、共通の施設によつて共通の教育を受けておるという、この感じなのでございまして、私はむしろかような感じを持ち得る機会を外すということは、反対の効果のほうが強くなりはしないか、こう考えるのであります。やはり国警、自治警双方とも教育についてはできるだけ共通の施設を、共同の施設を持つということが望ましい、又いろいろ意味におきまして、特に大きな自治体等におきましては完全でありますが、大抵の自治体におきましては国家地方警察と十分な協力をしなければならない場合も多いのでございますから、できるだけ双方の気持を融和して行く機会を持つという意味におきまして、むしろ今日のように自治体国警、双方を一緒に教養上、て行くということが望ましいことである、こういうふうに考えておるわけであります。勿論この教育施設の運営に当りまして、経営者でありまする国家地方警察が、国家地方警察本位の運営をいたして参るというようなことになりますると、これは好ましくない結果を生じまするから、その運営に当りましても、只今申上げましたような効果を挙げ得るような運営の仕方をしてもらう必要がある。これがために必要がありまするならば運営の実際に当つて自治体の当事着の代表が或る程度参画して行くというようなことも将来の問題として研究すべき問題である、こう考える次第であります。
  27. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 大橋総裁の御答弁承わりましたが、私たちはやはり自治体警察は自主的に協同組織によつて教育機関を持つという方向へ少くとも現段階においては進めて行くことを考えて行く必要があると実は考えておるものであります。大橋総裁の御答弁によりますと、そういうことをするならば、さなきだに自治体警察国家地方警察警察官とが対立的な意識を持つということを激成して行く憂いがあるとおつしやるのでありまして、実地検査をいたしまして多少そういうことも聞かされて来たのでありますが、むしろそれよりも対立的意識を、仮に自治体警察の出身の警察官があの学校においても持つということは、やはり先般来たびたび申上げておりますように、国家地方警察の者が自治体警察よりも優位のものであるという昔からの観念を払拭しておらないということに対する私は反感がそういうことをなさしめているのであると、こういうふうに考えております。、而も先ほど来御質問いたしましたように、ほかの有名なる総合大学といえども殆んど類例を見ないような五万何千坪というような大敷地を持つておるところの大きな学校が、国一家地方警察の人を中心としてそれが経営せられ、そうしてそういう教育が、自治体警察出身の警察官の学生生徒に教育をいたしているということが、国家地方警察自治体警察に対する優越性の意識というものをば、その学校教育の間においていやが上にも私は植えつけており、従つて大橋法務総裁が言われたところの両者対立意識の醸成の原因に私はなつていると考えるのであります。併しながらこれは意見の相違であるかも知れませんから、これ以上そのことにつきましては質問いたしませんが、これもそれに関連してもう一つお尋ねいたしておきたいと思うのでありますが、あの学校を実地調査いたしまして、戦後における警察行政及び戦後における警察行政を対象とするところの教育、それは主にアメリカによつて指導されたものでありますが、学校の校長その他の経営者も私たちに話したのでありますが、実に終戦前の日本警察に比べるというと、その装備であるとか或いは犯罪の捜査方法であるとか、そういう実際的な現実的な警察行政の面においては、もう昔に比べて隔世の感があるくらい科学的であり、又進歩的になつたということを数名の学校の当局者が私たちにも話をいたしたのであります。私も実際その通りであると考えるのであります。ところがその改正案を御提出になつておりまするところの精神の潜在的な観念として横たわつておりまするところのものは、アメリカの示唆によつて改正せられたるところの日本警察制度、現行新警察法に対するところの不信任の念が、又そういう言葉を使いますが、旧内務省官僚諸君の非常に強い潜在意識になつていることを私たちは看取せざるを得ないのであります。そうしてその渕源するところは、これもたびたび言つたことでありまするが、日本の旧内務省官僚その他の諸君というものが、自分たちが大学の学生であつたときに教わつて来たところの第一次欧洲大戦前の旧プロシヤ王国の憲法と結び附くところの古いドイツ行政法学、古い帝政時代のドイツ公法学によつて教育されて来た、それは全く新憲法の精神を蹂躪し、又新しい憲法の精神に基くところの英米式の、殊に米国式の警察制度の精神と反立するところの、一切の国家観念、法律観念の上に立つたところのものでありまして、これを払拭し、これを学問的にも教育的にも日本の国民から、又今日警察行政その他の行政を担当している官吏の頭から拭い去るということが必要なことで、基本的にはこれは公法学研究の基本に遡つて日本のそういう行政法学を相変らず昔の第一次欧洲大戦前のドイツの行政法学を持続している各大学の旧式の行政法学者をその教擅から放逐して、その誤りを訂正することから私は始めなければならないと思いますが、これはむしろ学問上の問題になります。併しながらあの実地検証をいたしました結果でも、実際行政上の面においてはもう隔世の観があるくらい終戦後の警察行政は進歩したものになつているのであります。ところが必要なことは、行政の実体そのものが、アドミニストレーシヨン・イツト・セルフであるにかかわらず、英米には特に行政法学というものはないのであります。ドイツにはそういう行政法学がある、それをそのまま皆さんたち……と言うと大変失礼でありますが、旧内務省官僚諸君が学校で習つて来て、もう世の中が変つて来ているのに頭の切換えができないで、やはりそういう学律字ばかりやつて警察行政に当つていて、その進歩した警察行政そのものには余り深い関心を持つていない。私は日本警察行政と、この警察法提出の、国警を中心とする旧内務官僚諸君の基本的な疲弊というものを痛感する意味において我々は先般来いろいろ申上げているのでありますが、その問題について大橋法務総裁はどういうふうに考えておられますか。
  28. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今の御質問内容は大体において吉川委員の多年の御研鑚に基く高邁なる御識見を承わつたのでありまして、私といたしましては現状についての分折については必ずしも意見を同一にいたすものではありませんが、併し警察行政の進歩、向上のために真に憂慮しておられまする吉川委員の御心情につきましては十分なる共鳴を感ずるので、ございまして、今日の御教訓は私としては十分に今後拳々服膺いたしまして、(笑声)御期待に副うように努力いたしたいと思います。
  29. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 先ほど竹中委員より、昨日の委員会におきまするお取決めの実情等に鑑みて質疑を打切られることを要望する動議が出されたと思うのでありますが、委員長はこの採択の可否を問わずして、各質問者の挙手に対して、古川委員質問をお許しになつたのであります。それも非常に結構とは思いますが、やはり秩序を立てて頂きたい。昨日の委員会において、高橋委員より、どなたでございましたか、大体遅くとも一時ごろまでに仕上げるような希望條件に対して、社会党のかたがたもこれを了得されて今日の委員会なつたと考えます。よつて質問はまだおありのように承わつておりますか、だんだん質問が高邁なる御意見に変つて来つつあるようなこともございますので、質問から意見に変つて来るということは次の討論において御見解を願いまして、大体かなりの時刻でもありまするので質疑はこれで打切られ、そうして食事の休憩に入らなくして討論採決にお運び願いたい。(「賛成」と呼ぶ者あり)で、今社会党のかたかたにもちよつと承わつたのでありまするが、緑風会及び我が民主党におきましても、討論は大した時間を要さないと考えますので、腹が空いたこととは存じますが、せめてまあ一つ御辛抱願つて、今申上げたように討論採決を続行せられんことを要求いたします。
  30. 安井謙

    ○安井謙君 只今の岩木君の御動議に賛成いたします。
  31. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 只今動議が出ましてそれに対して賛成がございました。動議は成立いたしました。先ほどは竹中君から質疑打切りの動議が出たのですが、賛成の声が聞えませんでしたから質疑を続行したのであります。今度は岩木君から質疑打切り、続いて討論採決すべく動議が出ました。それにつきまして安井君の賛成がありました。よつてこの動議は成立をいたしました。よつて質議打切りの可否につきまして採決をいたします。質疑打切りを可とせられるかたの起立を願います。    〔起立者多数〕
  32. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 八人であります。八対六であります。従いましてこの動議は成立いたしました。  これより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正意見がございましたら討論中にお述べを願います。
  33. 相馬助治

    ○相馬助治君 議事進行について…。只今民主的なる方法によつて質疑打切りの動議が比較的多数を以て成立をいたしました。極めて結構なことでございます。問題は、私は岩木さんの提案そのものを折角民主的に成立したその動議を否定するものではありませんが、私は打切りには従つて賛成でございますが、ただ人道的立場よりいたしましても、すでに一時十分前であります。私は詭弁を弄しているのではなくて、今後委員長の取扱いにおいて予定されておりますのは、民主党から緑風会の同調を得まして岩木並びに鈴木両氏提案にかかる修正案が用意されているやに聞いております。従つて我々はこの修正案に対する質疑をも行わなければ、十全なる討論が不可能であることは一目瞭然でございます。即ち討論の過程においてこの修正案に対しまする質疑が必然的に起るのでございます。なお我が党からはこれ又修正案の用意が関係方面の了解を得て用意されてございます。これに対しまして同僚各位が又これに対する質疑を行うであろうこともこれ又予想せられるところでございます。従いますると、その過程においてどこで一体飯を食うかという問題が起きて参るのでございます。そういう意味合いを以ちまして私は私の見解を以ていたしますれば、この辺で晝食とされ、晝食後委員長が先ほど貸せられましたような過程において討論採決に入られることのほうが、先ほど来申しまする通りに極めて人道的な立場からも常識的な立場からも結構ではなかろうかと存じまするので、誠に公明にして而も円満なる議事を進行せられまして、今日まで我々を敬服せしめておられました岡本委員長、特に特段の御配慮をお願いしたいと存じましてあえて動議を提出するのであります。
  34. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 速記をとめて頂きたい。
  35. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  36. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 速記を始めて下さい。お諮りをいたします。只今速記をとめまして委員長と理事と打合せをいたしました。先ほどから皆様から議事進行につきましていろいろ御意見が出ました。それをまとめました。ではこれから一時間休憩をいたします。その間に修正案が出ておりますので、それについての御検討を願つて、それから或るべく速かに採決ができますように皆様が御協力を願うということにしておきまして、御異議ありませんか。    「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それでは異議ないと認めます。二時まで休憩いたします。二時から時間通り再開いたします。    午後一時二分休憩    ―――――・―――――    午後二時十九分開会
  38. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 休憩前に引続き会議を続行いたします。  これより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正意見がございましたら討論中にお述べを願います。
  39. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 私は日本社会党を代表いたしまして、議題になつておりまする政府提案の警察法の一部改正案に対しましての我が党の修正案を提出して皆様たちの御賛成を得たいと思うのであります。修正案の内容につきましては、参議院の委員部の職員をして皆様たちのお手許に配付いたさしめたいと思いますが、配付の手続は済んでおりますか、委員長
  40. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 済んでおります。
  41. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それではすでに皆様たちのお手許に配付済になつておりまする我が党の修正案に対しまして、これを中心としての修正案提出の理由を簡単に申上げ、御賛同を得たいと思うのであります。修正案の案文を一応朗読いたします。   警察法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   『「都道府県警察長」を「隊長」に改める。』を『「国家地方警察」を「全国村落警察」に、「国家公安委員会」を「全国交安委員会」に、「国家地方警察隊」を「全国村落警察隊」に、「自治体警察」を「都市警察」に、「国家地方警察本部」を「全国村落警察本部」に、「国家地方警察部長官」を「全国村落警察部長官」に、「都道府県国家地方警察」を「都道府県村落警察」に、「国家地方警察都府県本部」を「全国村落警察都府県本部」に、「都道府県国家地方警察本部」を「都道府県村落警察本部」に、「都道府県警察長」を「隊長」に改める。』に改める。  第十五條の二の改正規定中「国家地方警察」を「全国村落警察」に、「国家公安委員会」を「全国公安委員会」に改める。   第十九條の改正規定を削る。   第二十條第一項の改正規定中「国家公安委員会」を「全国公安委員会」に改める。   第二十條の二の改正規定を削る。   第三十條の改正規定中「都道府県国家地方警察」を「都道府県村落警察」に、「国家地方警察部長官」を全国村落警察部長官」に、「都道府県国家地方警察本部」を「都道府県村落警察本部」に改める。   第四十條の改正規定を次のように改める。   第四十條に次の一項を加える。    前項の規定により告示された町村以外の町村で市又は同項の規定により告示された町村に隣接し、公共の秩序の維持の上において当該市町村と緊密な関係を有するものは、当該市町村地方自治法規定による組合を組織して共同で警察を維持することができる。   第四十條の二の改正規定を次のように改める。   第四十條の次に次の一條を加える。  第四十條の二前條第三項の規定により共同で警察を維持する町村は、その警察を維持することとなつた日から二年を経過するまでは、その警察を維持しないこととすることができない。    前項の町村が警察を維持しないこととしたときは、当該町村長は、全国公安委員会を経てその旨を内閣総理大臣報告しなければならない。    十月三十一日までに前項の規定による報告のあつた町村については、翌年四月一日にその警察維持に関する責任の転移が行われるものとする。   第四十三條の改正規定を削る。   第四十六條の改正規定を次のように改める。   第四十六條第二項中「第三十五條第二項及び第三項」を「第十五條の二第一項及び第二項」に改める。   第五十四條の二の改正規定中「国家地方警察」を「全国村落警察」に改める。   第五十五條後段の改正規定中「この場合において、市町村公安委員会が他の市町村警察に援助の要求をしようとするときは、あらかじめ必要な事項を国家地方警察に連絡しなければならない。」を削る。   第五十五條の二の改正規定中「国家地方警察」を「全国村落警察」に改める。   第五十八條の改正規定中「国家地方警察」を「全国村落警察」に改める。   第六十七條の二の改正規定中「国家地方警察」を「全国村落警察」に、同條第二項中「市町村」を「第四十條第三項の規定により共同で警察を維持する町村(以下本條において町村という。)」に、「当該市町村」を「当該町村」に、同條第五項中「国家地方警察部長官」を「全国村落警察部長官」に改める。   第六十七條の三の改正規定中「第四十條第二項の規定により告示された町村が、同條第三項の規定により」を「第四十條第三項の規定によ  り共同で警察を維持する町村が、」に、「当該町村警察吏員」を「当該町村にかかる警察吏員」に、「国家地方警察」を「全国村落警察」に改める。   第六十九條の改定規定中「国家地方警察」を「全国村落警察」に改める。   附則第三項を削る。   附則第四項中「市町村警察の職員である者が、当該市町村において警察を維持しないこととなつたことに伴い、」を「第四十條第三項の規定により共同で警察を維持する町村が警察を維持しないこととなつたことに伴い、当該市町村警察の職員である者が、」に、「国家地方警察」を「全国村落警察」に改め、「市町村の」を削り、同項を第三項とし、同項の次に次の一項を加える。  4 他の法律中「国家地方警察」とあるのは「全国村落警察」と、「自治体警察」とあるのは「都市警察」と、「国家公安委員会」とあるのは「全国公安委員会」と、「国家公安委員委員長」とあるのは「全国公安委員委員長」と、「国家公安委員委員」とあるのは「全国公安委員委員」と、「国家地方警察隊」とあるのは「全国村落警察隊」と、「国家地方警察本部」とあるのは「全国村落警察本部」と、「国家地方警察部長官」とあるのは「全国村落警察部長官」と、「都道府県国家地方警察」とあるのは「都道府県村落警察」と、「国家地方警察都府県本部」とあるのは「全国村落警察都府県本部」と、「都道府県国家地方警察本部」とあるのは「都道府県村落警察本部」とそれぞれ読み替えるものとする。   附則第五項から第七項までの規定中「都道府県国家地方警察隊長」を「都道府県村落警察隊長」に改める。   附則第八項を次のように改正する。  8 行政機関職員定員法(昭和二十四年法律第百二十六号)の一部を次のように改正する。    第二條に次の一項を加える。    5 警察法第四十條第三項の規定により共同で警察を維持する町村が警察を維持しないこととなつた場合においては、第一項の規定にかかわらず、当該町村にかかる警察職員を、予算の定める範囲内において、全国村落警察の職員として置くことができるものとし、この場合における職員の定員は、政令で定める。  以上であります。我々のこの法案に対して考えておりまする意見につきましては、質問過程におきまして我が党所属の委員からの質問のうちにその一端が今日までいろいろな形において表明せられまして、或いはその外貌についてはすでに御了解を得ておる点もあるだろうと思うのであります。で、基本的な立場といたしましては、我々はこの修正案を提出いたします理由は、警察法の前文にその根本精神が規定されておりまする、現行警察制度の根本原理とも言うべき警察地方分権警察民主化の精神をば飽くまでも尊重いたしまして、これを擁護し、飽くまでもこれを育成して行くということが、我が日本の国民生活の民主化達成の極めて重大なことであると考えますので、このような観点から今回の改正案に対しましての我々の修正案を提出するわけなのであります。  修正の第一点といたしましては、いわゆる現行法上に規定されておりまする国家地方警察と、又同時に現行法規定せられる自治体警察というものは制度上は相互に独立し対等の地位を持ち、或いは又お互いに補完的な立場に立つて行かなければならないものであると私は考えておるのであります。然るにいわゆる国家地方警察がこの現行法規定自治体警察に対しましていろいろな点において優越したところの地位を持つものであるかのごとき誤まつた観念が、警官の間にも又国民の間にも一般に行われておりますがために、この警察法の前文規定の基本精神でありまする警察地方分離と民主化の根本精神の理解が十分に徹底しておらないところの憾みが少くないと考えておるのでございます。そこで私たちはこのような誤つた観念がどこから生じて来たか、いろいろな原因が数えられると思うのでありますが、その最も大きな原因の一つといたしましては、この国家地方警察というところの名称にあると考えるのでございます。即ち民主々義の発達が非常に遅れまして、又旧プロシヤ王国におけるところの政治思想の影響を受けまして、国家至上主義的な観念というものが、半封建的な性格を持続して参りました日本の国民の間になお十分に払拭されておらんというときにおきまして、この国家という言葉を使用いたしておりますことによりまして、不当に国家の優越性、或いは絶対性というような、旧来からの、私たちが明治の時代から、子供のときから押しつけられて来た観念と結びつくところの傾向が非常に強いということを我々は平素考えておるのでございます。元来警察法に言うところのこの国家地方警察と申しまする言葉は、警察法の制定の基礎をなしましたマツカーサー元帥書簡によりますというと、その原語はナシヨナル・ルーラル・ポリシー、略称いたしましてN・R・Pでありまして、これは国家地方警察と翻訳することなくして全国村落警察と翻訳すべきものであると私たち考えるのでございます。又これに対しまして現行法自治体警察と称しておりまするところのもの、略してM・Pと言われていたのでありますが、これは都市警察という意味でございますから、今申しましたような誤解を招きやすい国家という言葉を避けまして、そうして国家地方警察、国家公安委員会、国家地方警察隊、国家地方警察都道府県本部というような言葉はこれをそれぞれ全国村落警察、全国公安委員会、全国村落警察隊、全国村落警察都道府県本部等と名称を改めまして、それと同時に自治体警察の名称はこれを都市警察と改めることといたしたいと存ずる次第でございます。  我々修正案の第二点といたしまして、警察力の強化ということは警察職員の資質の向上、装備の改善を図りますると共に警察相互の間の協力応援を一層緊密にすることによりましてこれを期すべきものであると我々は考えるのでありまして、ただ徒らに警察職員の定員を増加いたしますることが直ちに以てその警備力の増大となるというような考えには直ちに賛成することができないのであります。で、このような意味におきまして現段階においては警察官の徒らなる増員を図ることなくして、先ず以上申しましたような質的強化と相互間の協力の緊密化ということを図るべきことを第一にしなければならない段階にあると考えておるのでございます。このような意味におきまして、現行法上に規定しておりまするいわゆる国家地方警察の定員をばこのたび定員外の警察大学校及び管区警察学校等に在学いたしておりまする学生生徒五千名をそれ以外に増加しようといたしますこと、並びに自治体警察の側におきましては同様に九万五千の定員以外に自治体の條例を以て随意にその定員を規定することができるというような趣旨の政府提出の改正規定、即ち政府原案の第十九條、第四十六條第三項及び附則第八項の改正規定でありまするが、かくのごとき政府改正規定改正の必要がないと考えるものでありますから、これを削除すべきものであると、このように私たち考えておるのであります。  又第三点といたしましては、人口五千人以上の市街的町村が住民投票によりまして警察法を維持しないようにするということを政府原案は認めておりまして、これをいわゆる国家地方警察にその廃止しましたところの自治体警察の警官及び警察力を統合しようということを考えておるのでありますけれども、これは最初に申しました現行警察法の根本精神でありまする、警察は飽くまでも地方団体住民の固有の権利であらなければならないという立場、又地方自治における自治精神の暢達、発展を図らなければならないということ、民主警察をば同様の見地に基いて飽くまでも現段階においては育成して行かなければならないという考えからいたしまして、政区が意図しておりまするようなかかる改正には賛成することができないのであります。却つていわゆる弱小自治体警察と言われるものに対しましては、先ほど申しました自治精神を昂揚せしめること及び財政上の援助を強化することによりましてこれを飽くまでも育成強化すべきものである。このように我々は考えているのであります。むしろ人口五千人以下の町村におきましても警察を維持する隣接市町村と組合警察を組織いたしまして、共同で警察維持の責に任じさせますることが警察法の精神にも、又憲法によつて保障されました地方自治の精神にも合致するものである。このように我々は考えるのでございます。この趣旨によりまして第四十條の第三項を修正し、警察を維持する市町村に隣接し、公共の秩序の維持の上において緊密な関係のありまする町村は、当該市町村警察事務を共同処理する地方自治法規定の一部事務組合を組織しまするときは、共同して警察を維持することができることになるのでありますから、その方向へリードしなければならないと考えているのでございます。でこのような組合を組織しておる町村が組合警察から脱退し、又は組合警察の解散によつて警察を廃止しました場合は、その町村にかかる組合警察警察吏員は、現行法規定のいわゆる国家地方警察の定員にそのときは編入されることといたしまして、警察維持に関する責任は十月末日までに内閣総理大臣に対しまして廃止の報告をいたしました場合には、翌年の四月一日から国に転移するものといたしておるのであります。なお組合警察を組織する時期につきましては、廃止の場合と異りまして予算の増額を必要としませんので、特別な制限を設けないことといたしたのでございます。  我々の案の重要な第四点をいたしましては、都道府県知事に対しまして、警察法上の特別権限を付与せんとする原案は、警察の民主的運営のために設けられまました公安委員会の独立性を毀損し、警察官警察権を濫用する途を開く危険性を持つておるものであると考えますので、第二十條の二の改正規定を削ることといたしたいのであります。  最後の第五点といたしましては、市町村警察が他の市町村警察の援助を要求する場合に、政府案のごとくに事前に現行法上の国家地方警察に対しまして必要な事項を連絡すべきことを義務付けますことは、ともすれば現行法上のいわゆる自治体警察が同様現存法上の国家地方警察に従属せしめられる結果を招く慮れがあると考えますので、このような政府原案の改正條項を削りまして、法律上の義務としてでなく、実際上の問題といたしまして相互の協力に委せてこれを処理することができるというようにいたしたいのであります。  以上が本修正案の要点でございます。どうぞ皆様たちの御賛同によりまして、政府の原案に現われておりまするような、又その理由書にも書かれておりまするような、単に能率本位の立場に立つて、そうして折角の警察法の民主主義的な根本精神を崩すというようなことを考えることなくして、今日日本の国民が当面いたしておりまする日本の民主主義を育成して行かなければならない、民主主義発展の初期段階に善処にいたしまして、能率を発揮すると共に、而も警察の運営を十分にその効果を挙げて行くことができるような改正法にいたしたいというのが我々の基本的なこの修正案を提出いたしまする理由でございます。どうぞ皆さんたちが我々の意のあるところを御了解下さいまして御賛成下さいますように切にお願いいたす次第であります。
  42. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 私は国民民主党を代表しまして、本法案に対する態度を表明いたしたいと思いまするが、それに関連いたしまして僣越でございまするが緑風会並びに民主党からの共同提案に係ります修正意見を披瀝いたしまして、この修正意見が採択議決されることを希望條件といたしまして、前段申上げました民主党の本法案に対する態度、意思を表明いたしたいと思います。  我が国民民主党は、只今私が申上げましたような建前によりまして本法案に賛成の意を表明するものであります。その趣旨といたしまするところは、この法案警察法本来の建前を考えまするに、要は地方分権確立と民主国家建設の上に立つ警察制度のあり方は、常に国民生活と社会秩序の安寧確保によく連関された一貫性を持つべきことはもとよりでありますが、特に当面する講和後の自立体制におきましてこの必要度は一層深く痛感されるわけでございます。そこで今回の改正法案が従来の国警並びに自警の有機性を欠く二元的な措置によつて、或いはおのおのその地方によりまして地方自治達成と治安確保と又財政の健全化の上において多少矛盾があつたということは否めないのでありまして、これらを打開する方途といたしまして、ここにこの改正法案が立案されたということは、又私たちのよく理解されるところでありますが、ただ問題はこの改正趣旨を以て、果して講和後の自立、日本の秩序確保の上に万全を期し得る最終的な警察法警察制度のあり方であるかどうかということにつきましては、なお議論の余地を残していると思料されるわけであります。そこで特に今回のこの改正法案によりますると、国警がその制度の上におきましても、財政的態度、或いは自治の上におきましても、最終的におきましては優位の立場に立つているということは仮にいいといたしましても、その半面におきましては平常地方自治の治安確保に專念している自警の立場と申しましようか、その熱意、或いは実質上これを幾分弱体化される傾向が窺がわれる点と、ややもいたしますれば対蹠的な状態に追込まれるやの印象を受ける点につきましては多少懸念なきにしもあらずと感ずるのであります。この点はなおこれが運営の上におきまして研究調整を要する点であると思うのであります。特に国警におきまするこの所要経費年間一人当りが二十六万六千余円の国費支弁に対しまして、自警におきましては給与さるべき地方平衡交付金は十六万三千幾がしというようなわけでありまして、一人当りの差が七万円ほど生じているということは国警の装備並びに設備の必要度が大なるゆえんに起因するものとは幾分了解されますが、併しながら大都市以外の自警のこの点の諸般の実情に鑑みますれば、これらの国庫補給支弁のこの差額の開きの大きいということは将来調整さるべきだろうと思うのであります。ただ私はこの際国警が多過ぎるとか自警が少な過ぎるとかという点でなく、もつとこの点に対しまする研究調整を要するのではないかということを痛感するのであります。従つて政府はこうした点に相当早急の調整を図ると共に、幾分自警に対しまする常衡交付金の引上げにつきましての努力もさるべきであろうと思うわけであります。それから火に考えられますることは、只今吉川委員も御指摘になつた点でありまするが、弱小町村におきましてその環境或いは経済と公共の秩序の保持上必要である近接せる自警と組合警察をこしらえて治安を維持するという考え方は、これが国警、自警の縄張りであるとかという問題ではなくて当然の必要度から、これらに対する打開の途を開いて行くということが必要ではないかという観点に基きまして、私が当初申上げました緑風会並びに民主党は、これらに対する修正意見を有しておるのであります。そこでその修正意見内容を申上げる前に修正案の案文を読上げます。   警察法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   「第四十條の次に次の一條を加える。」を「第四十條の次に次の二條を加える。」に、第四十條の二第一項中「前條第三項」を「第四十條第三項」に改め、同條を第四十條の三とし、同條の前に次の一條を加える。  第四十條の二前條第二項の規定により告示された町村以外の町村で市に隣接し、公共の秩序の維持の上において当該市と緊密な関係を   有するものは、住民投票によつて、当該市と地方自治法規定による組合を組織して共同で警察を維持することができる。    前項の規定により共同で警察を維持することができる町村は、政令を以てこれを告示する。    第一項の住民投票については、第四十條の三(第八項及び第十二項を除く。)の規定を準用する。    第一項の規定により共同で警察を維持することとした町村は、住民投票によつて警察を維持しないこととすることができる。この場 合には、第四十條の三の規定を準用する。   第六十七條の三中「第四十條第二項の規定により告示された町村が、同條第三項の規定により」を「警察を維持する町村が」に改める。   附則第三項中「第四十條の二」を「第四十條の三」に改める。  以上であります。なおその修正理由の要点を申上げたいと願います。  即ち警察法の一部を改正せんとするその條文でありまする第四十條第二項の規定によりまして、本来警察を維持することにきまつておる町村以外の町村であつても、その市に隣接しておりまして、地理、交通、通信、経済等に関する諾條件から見まして、その当該市と共通の事情があり、相互に密接な関係のあるものは、国家地方警察から分離して当該市と共同して組合警察を維持することができるようにすることが、地方自治の本旨から見ても好ましいことであると考えまするし、又警察取締及び犯罪の捜査の面においても有利でありまして、警察力の能率化を図る上において適切であると考えられるのであります。そこで本修正案は右の趣旨に基きまして第四十條の二の規定を新設し、第四十條第二項の規定により、告示された町村以外の町村でその市に隣接し、公共の秩序の上において当該市と密接な関係を有するものは住民投票によりまして当該市と共同で警察を維持することができることといたそうとするものであります。この場合におきまして、右に述べまするように町村がその隣接せる市と共同で警察を維持するに適する要件を具備しておるかどうかにつきましては、具体的に当つて疑いを生ずる虞れがありまするので、かかる要件を具備する町村は政令で具体的に告示することといたしたわけであります。なお町村が市と共同で警察を維持することといたしまするには、住民投票に付することが必要であることにしておるのでありまするが、その投票の手続等は第四十條第二項の規定により告示された町村が警察を維持しないこととする場合の住民投票に関する規定をそのまま準用することといたしました。但し国家地方警察の責任の転移の時期は、関係市町村において自由に定めることができることといたしております。又町村が市と共同で警察を維持する場合には、すべて地方自治法に定める組合の組織をとることを要することといたしました。  最後に一旦市と共同で警察を縦持することとなつた町村は、住民投票によつて再び警察を維持しないこととすることができることをも規定することといたしました。  以上が大体修正案の概要でありまするが、なお疑義が生じてはいけませんから次に二、三の点を附加いたしたいと思います。即ち私が先ほど申上げましたこの修正案の中にありまする公共の秩序維持の上において当該市と緊密な関係のある場合といたしましての説明は、警察法第二條の第二項第一号に該当する事項のみでありませず、そのほかに、一つ市街形態の連続しておること、又は住宅地帶、学校地帶、工場地帶等としての生活環境が一体となつていることにより密接な関係のある場合、その次第二は、道路、鉄道、軌道、バス等の交通機関の延長状況が一体的脈絡関係を形成しておることにより密接な関係のある場合、第三は、特殊の地形により連繋されておることにより、密接な関係のある場合、第四は、物資の交易その他各種の経済取引き上わかちがたい密接な関係のある場合等を考えておる次第であります。もう一点申上げておきたいことは、修正案第四十條の二、第二項の政令による告示とは、同條第一項の住民投票によつて町村が警察の共同維持をすることの意思を決定する前に行われるのかあとに行われるのかという点であります。法律上はどちらでなければならないという必然の構成はないと考えますけれども、告示以前に住民投票を行なつても、その告示による指定がされない限りは、その町村は結局適法に警察維持をすることができない結果になりまするから、その投票は全く無駄なことを行なつたこととなりまするのであつて、町村としては軽々にかような濫費を行うことはできないであろうと考えるのであります。従つてことの性質上から言つて、右の告示は住民投票以前にあらかじめしてあることが適当であると思うのでありまするが、実際こうした現象の生じた場合に、この告示がなされるということが妥当であろうと思料されるのであります。発議者といたしましては、告示が住民投票に先立つて、つまり先行することを予想しまして、ここにその趣旨を本修正案の定義の註釈として申上げたわけであります。もう一点最後に附加えておきたいことは、修正案第四十條の二の規定により共同で警察を維持しようとする場合におきましては、組合設置のための関係市町村間の協議及びこれに関する議会の議決等の手続は住民投票の前に行われるべきか、あとに行われるべきかという点につきましては、協議及び議決の終最的なものは住民投票による当該町村の意思決定が行われたあとでなければできないはずであります。併し関係市町村に意思の合致を見る見通しを有しないで、いきなり住民投票を行うことは結果において無駄な投票を行なつたことになる場合が起りまして、経費の濫費になりまするから、実際問題としては住民投票前にあらかじめ関係市町村間におのおの議会の意思に基く事実上の協議を進めておくことが妥当であろうと考えるのであります。  以上述べました趣旨は、緑風会及び民主党の共同提案の條文に対しまする註釈でありまするが、この修正案が実現されることを條件といたしまして、当初申上げました本案に賛成の意を表する次第であります。
  43. 鈴木直人

    鈴木直人君 私は緑風会といたしまして、只今民主党の岩木委員から提案されました一部修正案の発議者として御説明を申上げるという件につきましては、岩木君の御説明で十分でありまするので、省略いたします。  次に衆議院から送付されてありまするところの政府提出の警察法に関する改正につきましては、先ず第一に賛成の意を表するものであります。  その理由につきましては詳細を避けまするが、要するに現行の警察制度は、御承知の通り数年間前に、片山内閣時代に国会を適過されまして制定されたところの民主主義憲法の趣旨に則つた警察民主化地方分権化ということを目途として制定されて現在に至つておるのでありまして、我々もこの部屋で片山総理大臣から、強くこの法案が現代の民主化のための最も必要なものである。従つてできるならば一言句も修正することなくして通して頂きたいというような御要望もありましたほどでございますが、この民主的な警察制度地方分権化の警察制度につきましては、今もなお我々が強くこれを要望し、育成したいと考えているものであるということを申上げておきたいと思います。而もこの民主化された、地方分権化されたところの警察制度なるものは、極めてスムースにそうして能率的に運営されることを期待しているわけでございます。  さてここ数年間この民主的な警察制度の運営を体験して我々は参つておるのでありまするが、その間におきまして、国家地方警察方面におきましても、又自治体警察方面におきましても、これを維持するところの地方公共団体自身におきましても、或いは国家地方警察或いは自治体警察間におけるところの権限の行使の関係におきましても、世間からいろいろなところの御要望がございまして、実施して見たところが相当の欠陷があることが指摘されまして、これを警察を運営して行く側からも、これを受けるところの民衆側からもこういうふうに修正をしてもらいたいというような陳情なり請願なりというものがあつた。これを通じましてしみじみと体験をいたしました結果、請願、陳情その他のものとして取上げ、或いは言論機関等においてもその都度常に親切に表現されて参つておるのでありまするが、今回提案されましたところのこの警察法内容を見ますると、我々は数年間聞いておりまして相当考えておりました重要なるところの数項について修正されるような内容になつているのであります。従いまして実は私どもといたしましても、この法案を見ました際に、成るほど今まで国民から陳情や請願が来、又は地方行政委員会等においてもそれを採択されて、そうして政府改正を要望した点が取上げられているというので、実はこの点につきましては賛意を表したわけでございます。その後この委員会におきまして皆様の執拗なるところの熱烈なる御研究を通じましていろいろ教へられる点がございましたけれども、要するに現在の段階といたしましては、この程度のものでも早く法律化してそうして実現化することがやはり日本の現状から見て必要なものであるというふうに考えているわけであります。勿論講和会議後におきましては、又日本全体におけるところのいろいろな制度の検討もございましよう。併しながらこれは一にかかつて私は講和條件の内容如何によると思います。安全保障の問題、或いは講和條件の内容において、日本を内外方面から守るところの日本治安維持をどうするかというようなことは、根本的にはいずれも講和後においては講和條件を基礎として国内の治安考えるべきものであると考えているわけであります。従いましてその曉においては、その講和條件なり、安全保障なり、或いはその他の諸條件と睨み合せまして、新らしい警察制度、而も民主化され、地方分権化された制度の改革というものが行わるべきであるということを私は考えているわけでございますが、併し現在の段階においては、この程度のものを成るべく早く成立せしめることが、国家地方警察側におきましても、又自治体警察側におきましても、又国民の側におきましても、この不安定な制度のままにあるということは面白くないことだと存じまして、この成立を期待するわけでございます。  ただこの成立を期待するにつきましても、私は強く希望する点が二点あるわけであります。この法律案は、実は予算を件つておらない法律案であります。大体予算を伴うところの法律案は予算と共に提出されることが常識であります。従いましてこれを実施する上におきましては、相当の予算を必要とする。定員外でありまするけれども、五千人の増員ができる。又十月十日になつてみると、今年度の関係ははつきりいたしますけれども、自治体警察から国家警察に移管されるであろうと現在推定されるところのものは一万数千人あるというようなことになりますると、二万数千人の者の新らしく国家の予算というものが必要になつて来ると思います。又この内容におきましていわゆる自治体警察官或いは国家地方警察自治体警察との間の交易関係規定されておりまして、そうして国家地方警察の要求によつて出動した場合においては、国費を以て費用を負担するというようなことがあり、又その交渉についても国費を支弁するというようなことがあります。そういうようなものを考えますと、相当予算が必要と考えるのであります。この予算がこれと同時に提出されなかつたということは、私は非常に遺憾に考えておるのでありまするが、政府当局の答弁によりまするというと、これは必ず次の補正予算等において提出する。いわゆる必要な予算は提出するというようなことを言明いたしておりまするので、それを信頼して実は予算のないところのこの法律案を成るたけ早く確定する必要があるという観点から賛成をいたしておるわけでございまするから、どうかこれに必要なところの経費につきましては、十分に政府において検討して、そうして次の議会に提出されることを希望するのであります。第二に強く希望いたしておきたいのは、この法案の成立過程において、非公式でありましたけれども、いろいろと事務当局の案でもあつたと思いますが、法案の草案を見せられ、又直接政府当局から法案制定の過程のいろいろ実情も聞きました。それによりまするというと、最初の案にはこの五千人分につきましては、勿論最初は二万人とかいうことでありましたが、現在の五千人の分にいたしましては、平衡交付金を流用するというふうに法案の中には織り込まれるというようなことになつていた。ところがその後政府の部内の折衝によりましてそれがなくなりまして、そうしてここに提案されているのであります。従つて我々も何回もこの法案審議過程において政府当局に質問もいたし、要望もいたしたのでありますが、この趣旨に鑑みまして、今度新らしく国家予算を取る場合においては、この実は五千人じやなくて、自治体からかわる分でございますが、この分につきましては自治体自身がその分の警察上の経費も要らなくなるからして、平衡交付金を以て流用するというようなことになつてつたのでありますが、この点については当初から現在の法律案に移りました過程を尊重いたしまして、新たなるところの国の財源を以てこれに当てて貰いたいということを強く要望するのであります。そういたしませんというと、平衡交付金が今でも不足しているということは御承知の通りでありまして、理論的にはいろいろ解釈がありましよう、併しながら我々といたしましては、平衡交付金から流用するという当初の案が現実の予算を組む場合において、再び持ち上がるということがないように、持ち上りましても、それは実現しないで新たなる国費を以てこれを計上するというようなことにしてもらいたいということを強く要望いたすわけであります。  以上二つの希望條件を付しまして原案に賛成をするものであります。    〔小笠原二三男君発言の許可を求む〕
  44. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 議事進行ですか。
  45. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 いや、討論……。
  46. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 相馬君のほうが早く御要求があつたのですが。
  47. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 討論の過程の中で議事進行もかねて発言をいたしたいのですが、こういうふうにこの修正案が出ておりますし、この修正案の提案の御説明伺い、又それに附加えてこの修正案の実施に当つての法解釈まで具体的に伺つた以上は、いろいろ疑問が浮んで来るものがあるのでありまして、この際修正案に対する質疑をほんのちよつとでございますけれどもさせて頂くわけには行かないか、私不馴れで議事手続がわかりませんので、委員長のほうでお調べの上一つ合法性がありましたら是非お許しを願いたいと思います。
  48. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 修正案に関する質疑は、修正点に直接関連しましてその字句の内容の疑義を正す簡明な質疑に限られることを希望いたしましてお許しいたします。
  49. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 御賢明な委員長のお取計らいで(笑声)質疑ができることを感謝するものであります。(「簡明、簡明」と呼ぶ者あり)簡単にお伺いしますが、民主党等のほうから出ておりますこの修正案の第四十條の二でありまするが、自治体警察を持つておる市町村がある中に、特に市の部分にだけに限つて市の周辺の特殊なる地域の自治体警察を持ち得ない町村との間に組合警察を持つということに限定をなさつた原則を先ずお伺いしたいと思うのであります。
  50. 鈴木直人

    鈴木直人君 私から……
  51. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 賛成者になつたり、発議者になつたりするのか。
  52. 鈴木直人

    鈴木直人君 修正案については発議者で、他の原案についての賛成をしたのです。提案者といたしまして御説明を申上げます。只今の御質問は誠に尤もな御質問でありまして、実は我々は最初市町村というふうに案もできておりましたのを町村をやめまして市と書いたのであります。その理由は今回の政府提案によりまするというと、全人口五千人以上の市街的町村即ち警察法によりますれば警察を維持し得るところの町村、これをも実は加えたらという案がざいましたが、この分につきましては、政府原案の中に住民投票によつて警察を維持することもできるし、維持しないこともできるというようなふうになつておりまして、そこに相当の自由な意思が加わつておるわけでございます。そこでそういうふうな自由認定のあるところの町村と組合を作るということになりますると、警察を維持するか維持しないかということを決定する場合に、非常に迷いが出て来るというようなことも考えまして、今回は一応そのような町村は除いて、市につきましては、これは住民の意思によつて廃止することはできないのでございまするから、そういうふうな市に隣接した場合のみに限定いたしたというのが、その理由でございます。
  53. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 どうも今の御答弁ではますますその疑義が起るようなあいまいな点があるわけでございますが、先ず余り触れないことにいたしまして、公共の秩序維持の上において、こういう組合警察を持つということが必要であるとお考えになる場合には、町村の自治体警察を持つておるものの周辺においても、公共の秩序維持上、やはり組合警察を持たなければならんと思われる地域があるはずであろうと思いますので、論理的にはこれだけではどうも納得が行かない点がありますが、財政的に負担の軽い方法で、こういうふうなことがなされるというお考えもあろうかと思いますが、鈴木さんの今お話の理由から申上げまして、自治体警察を持つことを余り必要としないとされておる町村に連合して、自治体警察を持たせるということは、今の理由から言うと矛盾しておる点があるんじやないかと私は考えるのでありますが、私ぼけておりますならば、これは謝まりますが、と申しますのは、自治体警察を持つたり持たなかつたりすることが自由にできる自治体との組合につきましては、これはいろいろ問題があるからというくらいのお考えであるならば、初めから自治体警察を持たないとされている村が持つようにとつくり返して来て、市を組合せるということをお認めになるということはこれはおかしいことではないか、こういう疑問なのであります。
  54. 鈴木直人

    鈴木直人君 実は自治体同志の組合は自治体警察を維持することができる資格を持つている。町村同志の組合警察はやれることに現在の警察法ではなつておるわけであります。従いましてそれには今回の修正案は触れておかません。いわゆる今度のものは自治体警察を維持する義務を持つている市と、それから自治体警察を持つことができないようになつている国家地方警察の区域内の町村との組合せになつておるということを申上げます。
  55. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 それでは次に伺いますが、この改正法の趣旨は、そういう形で組合警察なつた場合に、村自体が警察を維持するための負担というものが、独立したものよりは遥かに小さな負担で済む。大部分は市に負担してもらうという建前があつてのこういう改正案であるかどうかお伺いしたい。費用分担についてはどういうお考えをお持ちの上でこういう改正案になつておるかお伺いします。
  56. 鈴木直人

    鈴木直人君 その費用分担につきましては、組合警察を維持しようとするところの市及び町村間におけるところの話合いできめる以外に方法がないと、こういう考え方で、費用分担については法制的には規定をいたさなかつた次第であります。
  57. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 それからもう一点伺いますが、そういう点は余り考えなかつたということですから、次の重要な点も考えなかつたのじやないかと思われますのでお尋ねしますが、自治体警察を政令上維持し得る町村に対しては、その自治体警察にかかわる基準財政需要額というものは、これを見て平衡交付金において操作するようになつておるのですが、そうでないこういう町村が合併し自治体警察の組合を持つたという場合に、その村の負担分について平衡交付金において基準財政需要額を見てもらい、国もこれをカバーするということを前提としての改正法案であるかどうかということをお伺いしいた。
  58. 鈴木直人

    鈴木直人君 実はその点につきましては、警察法については、その町村自体は警察を維持することができないという法律になつておるのであります。従いまして原則としましては、警察の維持はできませんが、この改正法に基いて初めて共同で警察を維持する場合にのみその町村は警察を維持する権能を与えられたと、こういうふうに私たちは解釈いたしたわけであります。従いまして地方自治法二百八十四條の一部事務組合につきましても、一部事務組合である以上は、警察を維持する権能のあるものとものとがその権能の一部を共同で維持する以外にはできないのじやないかという解釈がございましたが、この点については、単独では警察は維持はできませんが、共同で維持する場合に初めてこの改正法によつて一部事務をその町村が持つことになつて来るのであるから、そこで一部事務組合はできる。そうしますというと、共同で維持するという事務がその町村に与えられたことになつておりますから、平衡交付金におきましてもその分のいわゆる配交付分を受け得るところの可能性ができる、こういうふうに解釈いたしております。
  59. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 可能性が出て来るのではなくて、そうなることが当然であるということで御主張を願いたいわけであります。次に先ほど岩木さんの御説明では、この政令で定めて、そういう町村を指定する場合の原則條件を列挙されてこの法を解釈しておられるのでありますが、この政令は、政府機関のどこでお定めになるものであるか、又岩木さんの原則なるものは、そのまま実行に当る場合に動かない、その法にくつついた発議者の解釈として活きて行くのであるか、この点お伺いをしたいのであります。
  60. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 只今小笠原さんの御指摘の点は、警察の組織に関しては国家公安委員会がその組織を立案することになつておりまして、総理府がこの告示を政令を出し得ることと指定をいたします。それから第二点の御指摘の点は、この法案にはくつついてはおらないのでありまして、先ほど私が申上げましたような工合に、その市と町村が、組合警察をこしらえようという町村が、片一方は住民投票、片一方はその議会においてそれぞれ協議が進められると同時に、こうした現象が生じた場合に、政府においてこの現象に応じて告示がされる、かような工合に考えるわけであります。
  61. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 そうしますならば実際形式上の手続がそうであるならば、政令で告示するということにしたのはどういう利便があるからこういうことにしたのか。端的にお伺いしますが、現実には下で組合せてきめて行く、その可能性のあるものを政府があとで裏付けしてやるという本旨はどこに利使があるということでありましようか。
  62. 鈴木直人

    鈴木直人君 運営上においてはいろいろ、例えば告示ということがあることによつて、厳密にその要件、いわゆる共同で警察を維持し得るところの資格要件をいろいろ厳密に調査するところの機会も与えられるということも考えるのでありますが、法律的には自治体警察を維持するところの町村につきましては、政令で告示するということになつておりまするから、この町村にのみ告示をしないということも片手落といいますか、問題がはつきりいたしませんので、他の自治体警察と同じように政令で告示するという措置とつたわけです。
  63. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 それでは希望するところのそれぞれが自治体警察を連合して持つという意思表示があつたあとで、手続上は政令がこれを追つかけて告示をする、こういう場合もある、地方の意思というものによつて政令告示ということができる場合がある、こういうふうに了解してそれでよろしうございますか。
  64. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 それは地方の意思に基くことが原則でありまするが、それには條件があるわけであります。條件は修正案文にありまするような工合に、公共の秩序の維持の上において必要な場合に限られているのであります。その公共の秩序の維持ということにつきましては、先ほどお答え申上げましたような工合に、警察法第二條の第二項第一号に該当する事項のみでなく、市街形態の連続していること、又は住宅地帶、学校地帶、工場地帶等としての生活環境が一体となつていることにより密接な関係のある場合とか、或いは道路、鉄道、軌道、バス等の交通機関の延長状況が一体的脈絡関係を形成していることによる密接な関係のある場合とか、又は特殊の地形により連繋されていることにより密接な関係のある場合とか、物資の交易その他各種の経済取引上わかちがたい密接な関係のある場合等を考えているわけであります。
  65. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 それでさつきもお伺いしたのですが、政令で告示をする場合の條件は、発議者が今並べたその條件ということが法の実施の場合、政府機関においてもそのまま取入れられる、法にくつついてこれは解釈されている條件であるのか、政府機関は政府機関としてその政令告示の條件というものを別途御考慮になるものであるのか、極めて厳格に発議者のかたが説明しておりますので、この点どうなりますかお伺いしておきたい。
  66. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今岩木委員並びに鈴木委員からの修正案におきまして、政令の制定ということが内容となつております。又その政令の制定につきましての條件について発議者より御説明があつたのでざいまするが、この国会におきまする御審議におきまして、希望としてお述べになつた、或いはその文案についての解釈として御説明になりましたる事柄につきましては、将来これが成立いたしました後におきましては、政府といたしましては本案の解釈上、又実施上十分とるべき資料としてこれを尊重いたさなければ相ならんと、かように考える次第でございます。
  67. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 次に先ほど住民投票の場合について具体的に懇切丁寧な、発議者の手続についてまでの御発言があつたのですが、その中に私の聞き方が悪いのなら御容赦願いますが、両方の議会が下相談をして大体行けそうだとなつたら、そういうふなことをやつて、金がかかつては困るからそうしておいて、住民投票をやるのである、こういうお話があつたのですが、私は政府側にお伺いしますが、只今議題になつております民主党のこの修正案が、政府改正案の住民投票のそれをそのまま使うというふうになつているのですが、政府側としては、例えばこの法が成立した曉、そういうやり方でやることを望ましいとお考えになつておられるか、望ましくないとお考えになつているか、又基本的には住民投票を用いるという精神が奈辺にあるか、明らかにして頂きたいと思うのであります。
  68. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 両委員の御提案になりましたる修正案におきまして、住民投票を要件としておられる趣旨を、御説明の全趣旨から拝察いたしまするというと、これは地方自治に関する重要なる事柄でありまするから、従つてその自治体の住民の意思によつて決定をいたしたい、こういう御趣旨であろうと拝承をいたした次第でございます。而して住民投票の方法等につきましては、おのずから政府原案におきましても住民投票ということがあるわけでございますから、そのやり方については政府といたしましても或る程度考えを持つておりますが、併し小笠原委員の御質問になりました点、即ち住民投票を実施いたしまする前において、関係市町村の間に十分事実上意思の疏通を図る、こういうような事柄は住民投票についての法律上の手続とは考えられませんので、これからは実際住民投票の効果を挙げるという上から申しまして、実際上の必要に基きまする実際上の手続である、かように存ずる次第でございまして、御説明のうちにお述べになりましたようなことにつきましては、政府といたしましても、さような手続に自然相成ることが適当であろうという感じを以て承わつた次第でございます。
  69. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 そうしますと、大変くどいようですが、私の考えでは議会の意思よりも住民投票によつて決定される意思というものが優先する建前であろうと思うのであります。それが議会間において意思の疏通を図つたという結果において、住民投票を行うということは、この決定に賛成せよと言わぬばかりのことではないかと思うのであつて自由なる住民の意思を表明する住民投票としては、手続上如何かと思われる点が少しく残るのであります。で村は村で単独の意思をきめた場合に、村の住民の意思を聞き、市は市でそういう手続を踏み、そうしてその意見が合致するというところで初めてこの警察が維持でき、或いは維持することをやめる、こういうようなことになるのではないかと思うのであります。やめる場合には、片方のやめたいと思うものが住民投票をして態度決定すれば、これは市側のほうの意思がどうであろうと、もうやめになつてしまう筋合いのものだと思うので、それらの点を考えると、この点は明らかにそういう意思の疏通を図つた上で住民投票をすることが望ましいということを、国会の意思として、この法案を成立させる過程の中にこういう意見を残しておくということは如何かと思うのでありますが、この点どうでしようか。
  70. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 誠に御尤もな御質疑でございまするが、政府考えといたしましてはあらかじめ市町村の間におきまして、議会間において話合いを付けるということは、これは折角町村の側におきまして警察を持つための住民投票をいたしまして、その結果警察を持つということがきまつた場合におきましても、これが市の側から拒否されて事実上無効と相成るという、そういう無駄な手続を予防しようと、こういう御趣旨であろうと存ずるのであります。従いまして事実上町村の側において住民投票を実施し、警察を持つということが決定した場合においては、確実に市の側からこの希望が受入れられるという或程度の保障を得て置きたいというための手続でありまするから、ひとり議会同志の話合いという形に限るだけでなく、現実にそうした保障が与えられればそれでいいと、こういう御趣旨の手続ではないかと拝察をしながら拝承をいたしておつた次第であります。
  71. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 そこで私はしつつこいようですが、地方は具体的に組合を持とうとするときには、それぞれ我々が考える以上に有効適切に相談もあるでありましようから、国会として発議なされるかたが、そこのところまで懇切に御説明になつて、そうやるというふうに意思をはつきりしておいてのこの法案の成立ということは、私は住民投票なり議会の意思なんというようなものの関係から言つても、如何かと思つて質問しておる次第でありまして、まあ発議者において適当にお取計らい願えれば幸いであるというふうに私は思うのでありますが、すつかり初めから終りまで内容についてはわかりましたので質問を終ります。
  72. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は只今議題に依せられておりまする法律案に対しまして、日本社会党を代表いたしまして、先ほど吉川委員説明にかかりまする日本社会党提案の修正案並びにこの修正された部分以外の政府原案に対しまして賛成いたしますると共に、岩木委員説明にかかりまする民主党並びに緑風会提案の修正案並びに社会党が修正いたしました部分を除く政府原案に対しまして反対いたすものでございます。  先ず政府原案を私どもが見まするというと、御承知のように今般のこの警察法の一部改正法律案というものは、国民の異常なる関心が持たれておることは皆様すでに御案内の通りであります。この只今議題に供せられておりまする政府提出の原案を見まするというと、これは国警の捜査権の拡大であり小自治警察の廃止であり、加えて国警定員の増加等々を骨子としたものでございまして、これが意味するところは、新警察制度が従来のプロシア乃至フランス流の中央集権的警察制度を、米英風の自治警察を主体といたしまする警察制度に切替えたもの、即ち曾つてマツカーサー元帥が或々日本国民に対しまして手紙を以て警告いたしましたところの精神、今再びこれを思い返して読んで見ますならば、マツカーサー元帥はこの書簡について、次のように述べているのでございます。過去における国家権力による警察力濫用の根本的是正をこの際なさなければならない。この目的を達成するためには、中央集権的統制に不可分に附随する警察国家的可能性は最も注意してこれを避けねばならない。極右たると極左たるとを問わず、反民主的分子が、国民を警察テロの網の中に陷落させるような事態を再び可能ならしめてはならない。以上の根本目的憲法に盛られた地方自治の原則に則つて警察制度を完至に地方分散することによつて最もよく達成することができると指摘しておるのであります。そういたしまして、昭和二十二年十二月十七日法律第百九十六号を以て公布されましたるところの警察法、この法によりまして、警察民主化というものは非常に進められたのでありますと共に、この警察法の前文が謳つておりまする「国民のために人間の自由の理想を保障する日本憲法の精神に従い、又、地方自治の真義を推進する観点から、国会は、秩序を維持し、法令の執行を強化し、個人と社会の責任の自覚を通じて人間の尊嚴を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組織を確立すると警察法の前文が謳つておるでありましてこの前文が余すところなく日本警察制度の根本、いわゆる真義を説明しておると思うのでありまして、その根本精神は飽くまでも警察民主化地方自治の真義に則つて、国民に属する民主的権威の組織でなければならないとし、中央政府から独立したそれ自身の地方警察であらねばならないと規定しておりますし、そのことは中央集権的に統制された国家警察網が再び形を変えて現出することを嚴に防止せねばならんということを教訓的に示しておると私は理解するものでございます。こういう意図を以て施行されましたところの警察法によつて警察民主化というものは非常に進み、日本民主化に当つて相当貢献するところのあつたことは我々それを否むことのできない事実であろうと思うのでありますが、ただこの制度の導入に当りまして、やや直訳的に過ぎ、日本の実情を然視したきらいがないではなかつたのでございます。即ち自治警察或いは国警の縄張り争いから来るところの捜査能力の低下、こういうような意味におきまして、今日警察制度が根本的に再検討されねばならん段階に至つておることは私も認めるところでございます。併しながらこの際我々が忘れてはならないことは、警察法の前文に謳われている真精神を飽くまで保持しようとするならば、過去三カ年間に亙つたいろいろの自治警察或いは国警の運用上の欠陷を是正するにとどめる、別な面から言いまするならば、自治体警察をいよいよ強化せしめるという一路を迫ることこそが、飽くまでも警察法の真精神に徹するものであろうと思うのであります。ところが今般警察法の前文はそのままといたしまして、政府より我々に示されたような原案が提出されたのでありまして、これに対しましては我々は残念ながら反対せざるを得ないのであります。国家の治安という観点から眺めて、国の治安は飽くまでも国家それ自身がみずからの責任において守らなければならない、理の当然であります。警察を最も機能的ならしめるためには、それが勢い中央集権的な形態を迫るということは必然的な運命であります。併しながらさればといつて、我々はくどいようでありまするけれどもマツカーサー・レターによるというよりも、誤れる戦争に突入し、日本のもろもろの誤れる制度のうちでも、特に軍閥、官僚と並んで、曾て警察国家といわれたその弊害を知れる我々は、敗戦というこの大きな教訓の下においては、どこまでも警察法の前文が謳つている真精神を確保しなければならない、敗戦国民としての必然的な義務であることを思いまするときに、能率主義と民主主義は或る点において相剋する必然的の運命を内蔵しておりまするけれども、それにもかかわらず我々は今般の政府提案の原案に対しまして、残念ながら賛成することが到底不可能なのでございます。  先ず政府原案におきまして、第一に地方自治警察の廃止を謳つております。これは一応肯けます。即ち下部の声というものが弱小自治警察を廃止せよという論に満ちていたことは我々も肯くのでありますが、これは第一の理由といたしまして、財政的欠乏ということが挙げ得られると思うのでございます。従いましてかなり困難な注文ではありますけれども、財政的裏付けをこれに加えることによつて本問題は解決されますると共に、住民投票という極めて民主的なる方法をとるのであるから、このことはよろしいという説をなすものがありますけれども、残念ながら日本民主化の度合いにおきましては、住民投票という極めて形式的には民主的であるというその方法においても、弱小自治警察廃止問題をめぐりまして、住民投票の形というものが、どのような形において現われるかということを考えましたときに、思想的な面からも、且つ又別個の治安の面からも、我々は今日警察廃止をめぐつて極めて不十分なる準備の下に住民投票をする姿を思うときに、一応慄然ならざるを得ない点があると思いますことは、不肖相馬一人の懸命にとどまるものではないことを私は確信いたすものでございます。而もそうすることがよいと申すわけではございませんけれども、この際我々は民主主義という言葉そのものに迷わされることなく、むしろ法律を以て十万人以下の所はなになにせよということをやられることこそが現実に即していない、かくせよというのではないのでありまするが、政府原案のような形を以て行くならば、そうすることに符節を合しておるものであると私は警告的意味を以て附加えざるを得ないのであります。現在の警察法の根本的な基調となつておりまする中央集権から、地方分権への精神、こういうことを考えるときに、我々といたしましては、一面実行不可能のごとき、又一般の声を無視しておるかのごとき姿を以つておりますけれども、吉川委員の提案にかかりまするところの社会党の修正案は、誠に警察法前文の真精神を活かしたる理想の案なりと自負せざるを得ないのであります。  第二には定員の増加の問題であります、原案によりまするというと、地方自治警の廃止によりまして、当然それだけ国警の定員も増加いたしますると共に、警察学校及び警察大学に在学する警察官五千人を限り云々といたしまして、国警が定員の増加を図つております。表面見まするところは五千人の増員であるかのごとく見えますが、先ほど鈴木委員も指摘されましたように、弱小自治警察の廃止によつて一万人、且つ又、自治警察側の定員が廃止されたということによりまして、少し大袈裟な話をするならば、今日日本警察の定員は無制限に拡大される一つの必然的運命をこの法案は持つておるということを指摘しなければならないのであります。我が国は戦時中におきましても警官の数は十万人を超えた歴史的事実を持ちません。それが現在でも自治警並びに国警合せて十二万五千人、数においては決して少くございません。治安情勢から見て云々ということを言つておりますけれども、これは先に警察予備隊も生れておるのでおります。従いましてこれだけの数を持つておる警察治安の必要上、なお増員しなければならないとすることは、法務総裁以下、国警長官以下みずから警察の無能なることを天下に声明することを意味するものでございます。とかく官僚組織というものは、何か口実を見付けまして、みずからの身代を殖やすというこれは性格を持つております。このことは幾つかの我々は歴史的事実において知つております。帝政ロシアの秘密警察が仕事がなくなるとストライキや暴動を煽動して、みずから肥る理由とした事実、或いはナチスドイツにおいてもそのような事例を我々は知つておるのでありまして、定員の増加ということを考えるならば、先ほど我々の党より指示いたしましたるような形におきまして、むしろこの問頭は暫らく放棄して、実質的に警察の機能を高めるように、警察官の教養を高めるための給与の改善、通信、鑑識その他警察の持つ機能の力をより科学的ならしめるという方向に目を向けるべきであろうと私は考えるものでございます。  要するに基本的な問題について一応述べたのでございまするが、とにかく政府原案の持つものは、しばしば吉川委員の指摘いたしましたように、一言にして盡すならば、吉田内閣の反動政策の先駆を示すものであります。且つ又地方分権による民主主義育成の政策を講ずることなくして、単に能率立場に名を借りて、民主主義地方分権主義の圧殺を図らんとするものであります。国家警察力及び治安対策といたしまして、警察法規定以外に警察予備隊、海上保安隊、法務府特審局のいわゆる警察力があるにもかかわらず、これに目を蔽うて、一連の繋がりにおいて改正するということを怠つた政府の怠慢を如実に説明しておるものでございます。そういう意味合いにおきまして、私ども日本社会党におきましては、先ほど吉川委員説明いたしましたる通り、定員五千名の増加に反対いたしまして、装備、機械力、科学的捜査方法の完備、相互間の協力による警察力の質的向上を図ることを考えました。且つ又二十條の二におきまして、知事の非常事態時における自治体警察処理に対しまして我々は反対するものでありまして、この治安維持上重大なる事案ということも、言葉としてはわかりまするが、具体的にはこれはそのときどきによつて解釈は極めて困難なるものを含んでおると思うのでありますると共に、とにかく自治体というものの今の政治的な立場考えて見まするときに、政府原案は極めて危険なりと言わざるを得ないのであります。同時に我々は次には町村警察の廃止を住民の一般投票によつて行うということに反対いたしますると共に、どこまでもこの町村警察というものを、地方自治法の真精神によりまする自治体警察というものの姿を我々は残して行くということを基本精神とするものであります。次にこの国家地方警察或いは自治体警察というようなことで、たびたびその名称上から来る論議が繰返されたのでありまして、これにつきましては本質的な立場から私は討論する用意を持つのでありまするが、時間の都合上これは本会議に譲りたいと思う次第一であります。  要するに私は、先ほど来縷々述べましたように、政府原案に反対いたしますると共に、民主党、緑風会の修正は極めて善意に満ちたるものであつて、両委員の修正動議に敬意を表しまするけれども、百尺竿頭一歩を進めて、現在の日本状態に照しまして、組合警察の精神を確保いたしますると共に、根本的な修正が必要であつたと思うのでありまして、残念ながらこの修正案にも反対せざるを得ないのであります。従いまして以上述べましたような立場を以ちまして、私は日本社会党提案の修正案に対する賛成の意見を開陳するものでございます。
  73. 高橋進太郎

    ○高橋進太郎君 私は自由党を代表いたしまして、民主党並びに緑風会の提案にかかる修正案を含む政府原案に対して賛成し、社会党の提案にかかる修正案中民主党及び緑風会等重複する部分を除いたる部分に反対するものであります。  その理由といたしましては、現行警察法に対しましては、制定当時より町村の財政の現状並びに自治行政の運営並びに警備力等の関係上幾たびか問題になつてつたものであります。私は今回提出の政府案は、これらの論議の対象になりました多くの問題に対しまして極めて少部分であり、従つて警察制度に対しましては更に根本的にこれを改正するの要ありと考えるものでありまするが、新憲法制定と新自治制度の発足が日なお浅い今日、諸般の情勢から考えまして、この程度改正は誠に止むを得ざるものと考えられますので、今回はこれを了承するものであります。従つてこれが提案に当りましては、当局者の苦心の程度がその條文ごとににじみ出ている点は十分わかるのでございまするが、政府におきましては更に研鑚を重ねられまして、一方においては警察制度民主化の徹底化と、他方においては警察能率化との均衡調和を実現し得る制度の改善化を更に考究せられると共に、これが法の不備は運用において十分発揮せられることを念願するものであります。次に本案において最も高く評価されますのは、自治警察の応援に要するところの費用を、その応援をなしたるものが自治警察であると或いは国家警察であるとを問わず、すべて国家においてその費用を分担するという点であります。この規定の結果、自治警察はその定員に相当の伸縮性を持ち得ることとなりまして、これがため地方財政の負担は極めて軽減せらるる結果となり、警察地方財政の調和に極めて役立ち得るところの規定と相成つたものと存ずるのであります。次に定員の問題でございまするが、現下警備の諸般の情勢から見まするならば、原案の五千人を限度とするところの定員外の増員は極めて僅少であると考えまするが、先般当委員会におきまして大蔵大臣の言明にもありました通り、いわゆる一方においては十分なる装備と且つ又警察官に対する待遇改善と、これらの両方を以てその量の不足をこの質の充実によつてこれを補うとの説明がありました通り、これらが実現いたしまするならば、現下この程度改正によつて十分なりとの確信を得ましたので、この点については不十分ながら予承をするものでございます。その他知事に、地方治安上の判断と責任を規定いたしまして、地方治安上、国家地方警察と自治警察の運営に総合調整を与えました点、或いは町村警察が住民の投票によりまして或いは国家警察或いは隣接市自治警察に加入でき得る途を開きました等は、いずれも多年の住民の要望に応えたところの規定であると考えるものであります。  これを要するに現段階におきましては、これらは現下警察制度の不備を改善し、地方自治運営の便宜を考え、更に地方財政の負担を軽減するという観点から、本案は極めて現段階においては適当なりと考えますので、先ほど申上げました通り政府原案に賛成をいたすものであります。なほ民主党、録風会の修正案に賛成し、社会党の修正案に反対いたしたいと存ずるものでございます。
  74. 石川清一

    ○石川清一君 私は第一クラブにおりますが、第一クラブはその思想がまちまちでございまして、賛成、反対相半ばいたしましたところに、政府の原案と二つの修正案が出て参つておりますので、大体の意伺を私なりに酌みしまして民主党並びに録風会の修正案、それ以外の部面の政府の原案に賛成をいたします。結果といたしまして社会党の修正案には反対をいたすものであります。(拍手)賛成の理由を申上げますにつきましても、すでにそれぞれの会派から党勢拡張の意味を含めました賛成の御意見がありましたので、それを略しまして、第一クラブの性格に則りました全国民的な立場を加味いたしまして賛成を申上げたいと存じております。  今回の改正案につきまして各党各派一致して論議されましたのは、国家警察、曾つて国家警察的なものになり、中央集権的な傾向の深まるのを恐れたのと、更に自治体警察地方財政平衡交付金の交付の額、交付に対する大蔵省の強い権力に対する反抗、これに対するそれぞれの措置その他について論議されたのでありましたけれども、これ以上今回の問題の中心になりますのは、町村規模が主でありまして、現在日本の町村数が四島合せまして一万余と存じております。その中には五千人未満の町村が非常に多数でありまして、これらの町村の規模を再編成しない限り、恐らく現在の国家地方警察の持つておるところの権力が、その住民の自由な意思によつて自然條並びに経済條件を中心としたところの自治体が作られ、その上に立つところの自治警察制席が布かれないと私は存じております。今回の改正案を中心にしまして自治体警察、特に弱小自治体がその警察力の維持に困難を感じておるようでありましたが、これはその自治体の責任ではなくて、日本の町村の構成の規模が、曾つての明治時代のそのままであるのでありまして、これは法務総裁の責任でもなく、又村住民の責任でないのでありまして、行政事務の再配分と共に、行政規模の再編成が単に自治体警察の維持育成という面ばかりでなく、広汎な自治体の育成のために論議、早急に結論を出さなければならんと考えております。次は現在の警察官の、内務省時代の古い国家集権的な考えを持つておる警察官の観念の一蹴でありますが、これも警察官の養成には相当の日時を要するのでありまして、これも又大橋法務総裁の責任ではないのでありまして、それは新たに作られておりますところの警察大学、或いは警察学校のこの教養の制度を、十分財政的にも、教育担当教官の質的向上を急速に図りまして、警察法に示さるる通り、又日本の急速に急がなければならない国民の、制度の民主化のために協力し得る、或いはその中核となり得るところの警察官の養成に大努力をしなければならんと考えております。次は通信或いは鑑識施設その他装備に対する急速なる整備でありますが、これも現在の警察担当の警察官或いは公安委員会の責任でないのでありまして、挙げて大蔵省の考え如何によるわけでありまして、我々はどこまでも我々の治安を我々の力によつて維持し、我々の生活の安定が、国家財政の支出が単に独占資本の擁護のために向けられるのではなくして、我々国民大衆の生活の維持に向けられる、国家財政支出が急速に変更しない限り、我々の期待するところの警察民主化警察制度のスムースな運営はでき得ないと存じております。更に警察官の五千人の増員でありますが、この警察官国家地方警察の五千人の増員が警察大学校或いは警察学校の教養のために、警察の現場を離れる人のために考えられておりますが、地方自治体警察官九万五千人をこの割合で見ますときには一万五千人の比率の数字が生れて参りますが、これらの自治体警察官のためにも同じような施設が自治体の協同の力により、或いは国家の協力によつて同じような形で向けらるべき財政的、或いは制度的なものが急速に作られなければならんと存じております。これらの諸点は、国際情勢の如何にかかわらず、日本の国が単独講和或いは全面講和の如何にかかわらず、早急に実施しなければならん点でありまして、現在の政府が講和問題に終始するよ治りも、この国民の生活を護り、国民の公共の秩序を真剣に考えるという立場に立ちまして、この点に十分な努力を続けられるように希望をいたしまして前に申上げましたような賛成の討論を終ります。
  75. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ほかに御発言はございませんか。(「なし」と呼ぶ者あり)ほかに御発言もございませんようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   (「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  76. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。警察法の一部を改正する法律案について採決いたします。先ず討論中にありました吉川君の修正案を議題に供します。吉川君提出の社会党の修正案に賛成のかたの起立を願います。    〔起立者少数〕
  77. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 少数でございます。よつて吉川君提出の修正案は否決されました。  次に鈴木君及び岩木君の修正案を議題に供します。両君提出の修正案に賛成のかたの起立を願います。    〔起立者多数〕
  78. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 多数であります。よつて両君提出の修正案は可決されました。  次に只今可決されました岩木、鈴木両君の修正にかかる部分を除いて内閣提出にかかる警察法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成のかたの起立を願います。    〔起立者多数〕
  79. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 多数でございます。よつて警察法の一部を改正する法律案は修正可決されました。  なお本会議における委員長の口頭報告内容は、本院規則第百四條により、あらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 御異議ないと認めます。
  81. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 我々は遺憾ながら本委員会において我々の案が破れましたけれども、本会議に更に全議員審議を求めて我々賛成を求めたいと思つておりますから、本会議にこれを持込むということについて御承認願つておきたい。
  82. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 御異議ないと認めます。それでは本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書につき多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     堀  末治  竹中 七郎     石村 幸作  岩沢 忠恭     高橋進太郎  安井  謙     岩木 哲夫  鈴木 直人     西郷吉之助  石川 清一
  83. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 御署名漏れはございませんか……。御署名漏れないと認めます。速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  84. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 速記を始めて。それでは本日はこれで散会いたします。    午後四時二十一分散会  出席者は左の通り。    委員長     岡本 愛祐君    理事            堀  末治君            吉川末次郎君            竹中 七郎君    委員            石村 幸作君            岩沢 忠恭君            高橋進太郎君            安井  謙君           小笠原二三男君            相馬 助治君            中田 吉雄君            西郷吉之助君            鈴木 直人君            岩木 哲夫君            石川 清一君   国務大臣            大橋 武夫君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    国家地方警察本    部総務部長   加藤 陽三君   事務局側    常任委員会專門    員       福永與一郎君    常任委員会專門    員       武井 群嗣君