○中田吉雄君 ほかのほうの犯罪が減
つたと申されましたが、私のこの頂きました犯罪統計におきましては、さつき申上げましたように兇悪犯、粗暴犯、知能犯、その他の刑法犯というものが全部殖えておる。僅かに窃盗と風俗犯が減少しておるというような状態でありまして、私といたしましてはやはり国民生活の安定と向上がならないために起きておる点が多いと思うわけであります。ところが一方におきましては、特需景気その他によりまして、例えば六大銀行にいたしましても、この当期の利益金というものは、前期に比べますと殆んど五〇%も殖えておる。富士銀行のごときは当期の利益金が十四億であ
つて、前期の九億二千万円に比べると五二%も殖えておるというように、一方には富の集中が行われ、他方におきましては低米価或いは低賃金というようなことから、これはこの生活の不安の現われであ
つて、こういうことから
考えて見ますと、むしろ吉田内閣が退陣されることが最良の治安対策ではないかと思うわけでありますが、この点は見解の相違にもなると思いますので、打切りたいと思います。
次にお尋ねいたしたい点は、このたびの
警察法の一部
改正を以て、いろいろ問題にな
つておる犯罪捜査につきまして懸案が解決されるかどうかという点でございます。具体的な例を申上げて見ますと、選挙の違反でございます。如何にも自治体警察が無能で腐敗し、警察機能が低いようにいわれておるわけでありますが、この点は私は必ずしもそうでなく、重大な問題を含んでおると思うのであります。その一番いい例といたしまして、
地方選挙に際しまして大橋法務総裁が鳥取県においでになりましたが、その具体的な例を申上げましで、国家
地方警察も必ずしも機能を果していないということを申上げたいと思うのであります。総裁におかれましては鳥取県においでになりまして、八頭郡で三人の立候補者の応援をなされたことを承わ
つております。具体的な例を申上げますと、定員五名のところに十二名立候補いたしまして、百万円以上の選挙費用を使
つたものが七人ございます。特に一番多額に使
つた自由党の或る候補者はどんなに少く見積
つても百五十万円乃至二百万円使
つたと称されておる。その人はトラツクに乗りまして田圃を歩きまして、おじいさんが野良で働いておると直ちに降りて、おじいさん小遣千円、何々候補ですよと言
つて、ずつとそういうふうにやりまして三千票近く取りましたが、又大橋法務総裁の大臣の援助を以ていたしましても落選いたしましたが、(笑声)とにかくそのかたが全県下におきまして最もたくさん選挙費用を使
つた例であります。県
会議員の選挙に二百万円ぐらい使
つておるわけであります。私が或る農家で私の支持しておる運動員と奥の間で作戰
会議をや
つておりましたとき、その運動員がおいでになりまして、投票するという
署名捺印をしてくれた人には千円を出すというようなことを言
つて、その人が買収、饗応、腐敗の限りを盡した選挙をや
つておるということは世間周知の事実であります。ところが、国家
地方警察はこれに対しまして一指も染めることができていないわけであります。鳥取の八頭郡は二十五ヵ町村でありまして、自治体警察は私のほうの一町でありまして、あとは全部国家
地方警察がありまして、先般も一千万円以上の立派な庁舎を建て、たくさんの優秀な署員もいるわけでありますが、殆んどこういう選挙違反、事実上の違反が検挙されていないわけであります。鳥取県の八頭郡におきましては、検挙せられているのは選挙費用の使い方の少い人が検挙されているという状態なのであります。大橋法務総裁がそういう実質的な選挙違反をした人を応援されたことについて、どうその責任を負われるかということはあえて問いませんが、これは重大な問題であります。そういうふうに十二人の立候補者の中で、七人までは百万円以上の選挙費用を使
つて、至るところで饗応と買収がなされておるにもかかわらず、それが国家
地方警察において一指も染めることができていないということは、私は警察
制度の
改正の問題については基本的な問題であると思うわけであります。こういうことを
考えますと、私はこのたびの
改正法によ
つてこういう問題がどう解決されるであろうか。私は
警察法の一部を今度
改正いたしましても、とてもこういう問題を解決できんのではないかと思うわけでありますが、こういう点が随所にありまして、必ずしもこの自治体警察だけが弱小であり、無能であり、スキヤンダルがあるということは我々としては言い得ないわけでありまして、そういう点が私の散見いたしました例でありますが、こういう腐敗しました選挙
制度と今日の
警察法の
改正にからみまして、こういう
改正で果してこの選挙の取締の公正が期されるか、私といたしましては
警察法の
改正よりか、警察が本当に知
つていたならば直ちに公正な
権限を発動いたしまして検挙することが、
警察法の
改正以上に選挙を公正にする非常に有力な方法であると思うわけでありますが、とにかく大橋法務総裁は三人に応援されましたが、二人落ちまして一人だけ一番少い票で(笑声)当選したわけでありますが、ともかく大橋法務総裁が応援されました人が、鳥取県下におきまして最高の選挙費用を使
つて、そうしてその地域に国家
地方警察の郡の本部がありまして、最も警察機能が充実している所にもかかわりませず、それらについて一指も染めることができなか
つた。むしろ挙げられている人は選挙費用の使い方が少い人であるというようなことにつきまして、大橋法務総裁はどういうお
考えを持
つておられるか、お伺いしたいと思うのであります。