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1951-05-24 第10回国会 参議院 地方行政委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会 ———————————————— 昭和二十六年五月二十四日(木曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○警察法の一部を改正する法律案(内  閣送付)   —————————————
  2. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) これより警察法の一部を改正する法律案について、参議院地方行政委員会公聽会を開会いたします。  公述人としておいで頂きました各位に御挨拶申上げます。各位には御多用中にもかかわらず、万障繰合して御出席頂きまして、委員会委員一同を代表いたしまして、厚く御礼申上げます。  昭和二十三年の三月に施行されました警察法は、治安の確保を図ると共に、新憲法の精神に従い、警察地方分権民主化趣旨に副い、且つ基本的人権を飽くまで保障するものであることを眼目といたしておりますことは御承知通りであります。然るに警察法施行後三年有余の実績と現下治安実情に鑑みまして、政府においては、この際警察力強化し、その運営を更に能率化する必要を認めまして、警察法の一部を改正するこの法律案国会に提出して参つたのであります。この法案は本国会における最も重要なる法律一つであります。それで当委員会におきましては、昨日及び本日の両日に亘りまして公聽会を開催いたしまして、広く国民の各方面から腹蔵のない御意見を拝聽することにいたしました。どうか各位におかれましては忌憚のない御意見の御開陳をお願ヤいたします。  なお念のために申上げますが、時間の都合で、各位お一人の公述の時間は大体十五分見当にお願いをいたしたいと存じます。なお公述は求められた課題以外に亘らないようにお願いをいたします。又公述に対しましては、委員各位から質問があると思いますから、これに対しても忌憚なくお答えをお願いいたします。  それではこれから順次公述お願いいたします。お待たせをいたしまして恐縮でございました。それでは先ず高辻武邦君にお願いをいたします。高辻君は知事代表であられまして、富山県知事であります。
  3. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) 警察法の一部改正に関しまして、私の所見を申上げるに当りまして、先ず私の所見結論を先に申上げて見たいと存じます。  今回政府国会に提出せられましたところの警察法改正案は、現下我が国の国情からこれを考えますというと、極めて不徹底であり、又極めて不完全な改正案であると存じます。従いまして国会におかせられましては、これに適当なる修正をお加えになりまして、法案が成立することが最も望ましいことと存ずるのでありますが、併しながら、この法案が或いは否決せられるとか、又は審議未了ということに相成りますことは、これ又非常に遺憾なことに存ずるのであります。即ち最善の我々の所見といたしましては、適当なる修正をお加えを願つて、本案が成立することを希望いたしますけれども、次善の所見といたしましては、せいぜいこの法案が成立することを希望いたす次第であります。  今回の改正案によりまして、私どもが最も疑問と存じます点は、自治体警察に関する事項であります。今回の改正案によりますというと、良治体警察における警察職員定員は、当該自治体において地方的要求に応じて自由にこれを決定するという点に相成つております。なお第二点といたしまして、人口五千以上の市街地町村におきましては、住民投票によつてその自治体警察を将来に向つて維持しないことを決定する。又更に将来これを維持する必要を生じたならば、ひとしく住民投票によつてこれを維持する、こういうことでありまして、即ち市街地的町村におきましては、この自治体警察を置くとか、置かないとかいうことを自治体自由意思によつて定めることに相成つております。これは非常に私は疑問に思うのでありまして、本来警察行政は自治行政的の区面もあることは、これは認めざるを得ませんけれども、むしろ一面におきまして、自治体警察相互協力及び国家警察との協力によりまして、警察が一体となつて国家治安維持に任じなければならない使命を持つておるわけであります。この事情から考えますというと、いわゆる自治体警察なるものは、私はむしろ自治行政的の面よりも、国家要請に基くところの治安維持という、即ち国家的要請のほうが重いのではないかと思うのであります。これが単に自分自治体でその警察を置くことを自由に、置くも置かないも自由にきめるということで何らの弊害がなく、又国家治安維持する上におきまして別段の支障、がないことでありますならば、これは自由に一任されて置いてよろしいと存じますけれども、すでに今日我が国地方自治体において現われております通り、いわゆる特別の有力者によつてその警察権が或いは左右せられるような事例もあります。或いは又極めて小さい自治体警察におきましては、その警察官の昇任、任用という点におきましても甚だ不自由な状況でありまして、極めて士気の沈滞を来たしております。これによつて生ずる弊害というものも又誠に測るべからざるものがあると考えられるのでありますから、かような観点からいたしますと、単にその自治体自分意思で置こうと思うから置かせる、置きたくないと思うから置かないというような制度は、私はこの際大いに検討を要するのではないかと思うのでありまして、やはりこれは法律によつて国家最高機関たる国会が広く同情を察し、民意の赴くところを考えられて、法律によつて地方自治能力を計られて、そうして自治体警察というものの組織を法定せられるほうがいいと考えるのであります。地方自治体警察制度法律によつて如何ように定めるかということにつきましては、これらはもつといろいろ意見の分れるところと存じますが、少くとも今回提案になりましたような、地方自治体の任意によつて警察を或いは置くとか、置かないとかいうことを決定せしむるという制度は、甚だ私は憂慮すべき結果を招来するのではないかと考えるのであります。  そこでこの自治体警察如何ように法定するかということにつきましては、我々全国知事会におきましては、一定所見を持つておるのでありまして、それはすでに政府にも御提出申上げておりまするし、或いは参議院地方行政委員会におかれましても、資料としてすでに御提出申上げておるかと存ずるのでありますから、これらにつきましては、くだくだしくは申げ上ることは避けたいと存じますが、私ども所見といたしましては、地方自治体組織府県自治体警察というものを基本にいたしまして、更にこれを一定大都市、例えば人口二十万以上の都市とか、或いは人口十万以上の都市とか、そういうふうな相当自治能力ありと認められる地方自治体に対して自治警察を認めて行くほうが最も適当ではないかと考えるのであります、府県自治体警察ということは、あたかも昔の官僚警察に帰るかのごとき印象を与えるかと存じますが、これはすでに今日府県知事が公選によつて選ばれることに相成つております。すでに府県自治体たる性格は新らしき地方自治法によつて極めて明確に規定せられておるのでありますから、いわゆる警察民主化ということの線には私はあえて反しないと思うのでありまして、かくすることによつて警察機動力を十分に発揮して参ることができると思います。今日の治安維持という観点から立ちまして考えますと、一府県というものを一つ単位と考えまして、警察機動力を発揮して参るのが最も適当であろうと思うのであります。  私は昨年アメリカに参りまして、アメリカ地方制度を視察をいたして参りましたが、その際におきましても、アメリカ警察制度もでき得る限り研究いたしたのでありますが、アメリカにおきましては、御承知のごとく州というものは極めて大きい地域でありまして、或いは日本全国若しくは日本全国の半分ぐらいの大きさの州が極めて多いのでありまして、その他の州といえども、その地域におきましては極めて広大でありますから、それを一体的に警察制度の上において考えることは極めて困難であろうと思いますために、市町村という小自治体にいたしましても、今日の我が国市町村自治体とは比べものにならないぐらいの大きな自治体でありますけれども自然市町村というものが社会生活単位として考えられて参つておることと思います。併しながら日本のごとき、国土が狭小でありまして、人口が極めて稠密いたしておりまして、甲の町と乙の町というものの境界がどこに参りましても極めて密着いたしておるような状況でありますので、必ずしも私は自治体警察単位というものを小さいものに置くということが適当ではないと考えますので、これは我が国の実際の実情から考えますと、府県基本といたしまして、更にこれのほかに相当大都市にいて自治体警察を設置せしむるという方針をおとりになることが最も適当であろうと考えるのであります。  なお今回の改正案によりますと、府県知事に対しまして、或る程度治安維持上の権限が与えられることに相成つておりますけれども、これは今日の実情よりも一歩前進いたしたことは、これを認めるのでありますが、併しながら実際の面におきまして地方の文化、産業の一般行政を担当いたし、又従つて治安維持と密接な関係を持つておりまする府県知事に対しまして、今回の改正による権限というものは極めて狭小に過ぎるように思いますので、今少しく自由裁量余地をお与え下さつて、緊急非常の場合における警察に対する権限を認めることが適当であろうと考えるのであります。  要するに今回提出になりました法案は、冒頭に申上げましたように、極めて不完全であり、且つ不徹底でありますが、これを修正を頂くことを最も希望すると同時に、又これが審議未了に終る、或いは否決せられることのないように希望いたす次第であります。  以上を以ちまして私の公述を終ります。
  4. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。質疑は又あとから一括してお願いすることにいたします。  それでは次に田中二郎君にお願いをいたします。田中君は東京大学の教授であられます。
  5. 田中二郎

    公述人田中二郎君) 今回提案になつております警察法の一部改正に関する法律案は、いろいろの考慮から一種の妥協の産物としてできて参つているように思います。その狙いとなつております警察力強化とその運営能率化という点は現在の治安実情に鑑みまして、確かに考慮しなければならない重大な問題であると存じます。ただその目的を達成いたしますために、今度改正しようとしてありますその方法の点につきましては、いろいろの点で疑問を持たざるを得ないのであります。その方法の主眼となつておりますのは、国警強化ということ、一般的に申しますと、国警を優位に置き、場合によつて自治体警察をその指揮下に置くという形において実現しようとされております。特に現在の実情から申しますと、大都市警察のごときは非常に強力な存在でありますが、その大都市警察をも含めて、時には都道府県公安委員会運営管理の下に、いわば国家地方警察立場でそれを指揮統率ができるようにしようという考え方が現われているように思います。その方法につきましては、私は地方自治立場からして相当疑問であり、反省されなければならない点を含んでいるのではないか、こう考えております。これまでの実際の警察運営におまきしても、国警優位的な考え方がかなり強く働いておつたように思います。都道府県警察長能力を判断いたします場合に、どの程度自治体警察を把握しているかということが標準にされるというような傾向があつたように私は了解しておりますが、今後こういう形で国警そのものの力を強化し、又国警自治体に対して優位に立つという形になりました曉、恐らく国警指揮下自治体警察が置かれるというような勢を醸成いたしまして、やがては元の国家警察一本に統一されて行くというような過程を迫るのではないかという危惧を抱かざるを得ないのであります。このことは現在非常に問題になつております地方自治強化或いは事務の再配分という点から、地方行政調査委員会議或いは自治庁あたりでいろいろ検討しております方向と正に反対方向を示すもの、今後行政事務のいろいろの問題について起きる問題の一環として、この問題について根本的に考えて見なければならないのではないか、こう考えるのであります。  私の結論を申しますと、行政事務を国に集中し、行政事務全体としての能率化を図つて行くということは、世界一般趨勢であるという意向があるにかかわらず、日本の現在の段階においては、少くとも地方自治を確立し、地方に民主的な基礎を作り上げることこそ重要な課題ではないか、諸外国の趨勢が仮にそうであるといたしましても、それと根本において事情を異にする日本の場合には、とにかく地方自治強化し、行政能率化という点もそれによつて実現できると思いますが、仮に行政能率化ということが実現できない危険があるといたしましても、それをできるだけ考慮しながら、併し飽くまで地方自治を確立するという基本方針を実現して行きたい、こう考えます。そういう意味から私は将来の警察あり方どいたしまして、偶然今高辻さんのお話になつたの結論を等しくすると申しますか、方向を等しくいたしますが、府県自治体警察都市警察との二本建を考えて行くというのが正しい行き方ではないか、こう考えております。即ち現在の国家地方警察弱小市町村自治体警察とを統合して、府県自治体警察を作る、それと都市警察とを並行せしめ、相互協力によつて治安維持を図るという行き方が最も適当な行き方ではないか、こう考えております。そういう結論をとります理由としては、現在の弱小市町村町村は勿論でありますが、小さな市をも含めまして、その現在維持しております自治体警察は、それが自治体としての仕事の上から申しまして、非常に大きな比重を占め、その行政面財政面相当負担を与えているのみならず、それでさえ真の地方治安維持目的は果し得ないという実情にあることを考えざるを得ないのであります。二十三年に警察法が制定されます際の公聽会でも、私は弱小市町村自治体警察というものについて、その機動的な能率的な運営が可能であるかどうか、その財政に与える重圧は考えなくてもいいかという意味において、それに対する反対意見を述べました。そのことはその後地方の実態を見て廻りまして、いよいよ痛切に感じましたそのことが、今度の改正案におきましては、恐らく自治体側との妥協の結果であろうと思いますが、自治体意思に基いて、即ちその住民投票の結果によつて設けてもよし、設けなくてもいいという考え方で、その制度を一応存置しようとしております。併しこういう問題は自治体が欲するが故にその制度を持ち得るとか、欲しないが故にそれを国警が預かるというような考え方で採否をきめるべき問題ではないのではないか。むしろ全体の治安維持ということを考えますと、それが果してその責任を果し得るかどうかということのもつと一般的な見地から考慮さるるべき問題であろうと思うのです。そうして実際に自治体警察としてその責を果し得るためには、或る程度能力、例えば警察吏員の数の上から申しましても、又その財政的、行政的能力という点から申しましても、或る程度の大きさを持つた、力を持つたものであることが要求されるのではないか。若しそれが非常に弱体であるという場合には、そこに極めて容易にはつきりした口実を以て国家地方警察が入つて行くという可能性を作り出すことになるのではないか、こう考えます。そういう見地から最初警察法ができますときには、大体人口五万、少くとも人口五万ぐらいということを申しました。併しその後いろいろ検討し、又実際について見ましたのちの考え方といたしましては、大体人口十万程度と申しますと、財政的にも、行政的にも相当能力を持ちますし、又警察吏員の数という上から申しましても、大体百数十名を確保することができるだろうと思います。それだけの人員を擁しますれば、或る程度にこの人事の交流を考え、その研修を考え、警察力を常時強化するための努力をして行くことができるという点を考慮に入れまして、その程度都市には都市警察を設ける。これは飽くまでその自主性を尊重し、都市責任においてその治安維持に当らしめるという考え方をとります。そしてそれ以外の区域につきましては、その都市警察と全く対等に並ぶ形において府県自治体警察というものを設ける。その府県自治体警察都市警察を支配するというようなことのないように、都市警察府県自治体警察とは対等で、而も実際の警察活動につきましては、飽くまで相互協力をし、地方治安維持支障なからしめるように運営して行く。そういう方法が十分考え得られるのではないか、こういうふうに考えております。その府県自治体警察というものについては、先ほどもお話がありましたが、官僚警察に逆転するのではないかというような考え方府県行政事務配分するというのに対しては、元の中央集権的な行政へ逆転するのではないかというような懸念を抱く向きもあるようでありますが、私は現在の府県というのは、元の府県とは違うし、又違わなければならないものだということを考えます。府県知事を初めとして、自治体としての基礎をすでに作り、又六十年の伝統によつて漸次その自治体的な基礎が作られつつあるということは認められてもいいのではないか。そしてその府県行政事務一般について、これまで考えられている以上に多くの仕事を担当して行く余地があるし、その一環として、警察についても府県自治体警察ということで警察制度維持するということが、私は十分にその理由があるのではないか、こういうふうに考えております。今度の改正案で、府県知事地方治安維持のために特に必要があると認める場合には、自治体警察に対しても一定指揮権を持ち得る、都道府県公安委員会の手によつてそれを運営管理するという行き方を認めております。そういう考え方府県知事警察権というものを認めるよりは、むしろその点でも府県知事の所轄の下に、都道府県公安委員会都道府県自治体警察行政管理並びに運営管理を行つて行く、飽くまで一般の政治から独立した府県公安委員会の手によつてそれが運営されるという行き方になることが公安委員会制度の本来の趣旨から言つても妥当ではないか、こう考えるのであります。要するに今度の改正案は、いろいろの要求妥協の結果としてできたものと察せられますが、そしてそれは警察の機動的、能率的な運営という点においては、いろいろ従来とは違つて、その効果を実現することができることにはなておりますが、その結果として自治体警察或いは地方自治という根本の建前に大きな変革を加えることになる第一歩、その端緒を与えているのではないかという意味において非常に疑問といたします。若し国全体の治安という観点から、私の申します府県自治体警察及び都市警察のそれぞれの手によつて、或いは相互協力の結果としても、なおよくその目的を果し得ないという場合には、その場合こそ警察予備隊というものがその両者の足らないところを補うという働きをすべきで、その点においては別に危惧余地はないのではないか。やはり警察仕事自治体仕事として、その自治体というのが現在の地方財政能力或いは地方的な治安維持を図るための機動的な運営が可能な体制を作る、それは自主的な機動的な適切な運営ができるような体制を作る、そして一朝事あるときには警察予備隊の手によつてその足りないところを補う、そういう行き方をするのが警察あり方ではないか、こういうふうに考えております。  これを以て終ります。
  6. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。次に田畑忍君にお願いいたします。田畑君は同志社大学の教授であられまして、前に京都市公安委員長をしておられました。
  7. 田畑忍

    公述人田畑忍君) 私は結論を先ず申しますとしますならば、今回の警察法改正案は大修正を施すべきものであると、かように考えておるわけであります。改正草案要綱の順に従いまして、私の意見を述べさせて頂きたいと思います。極く大体論であります。時間の関係上書いて来たものを読ませて頂きたいと思います。  第一、国家地方警察に関する事項改正要綱(一)の1は、結局のところ国家地方警察警察官の数を実質的に五千人増員することを目的とするものである。従つてこれによつて国家地方警察警察官の数は三万五千人になる、五千人の増員はそれだけとして見れば決して多い数ではない、併しすでに昨年七月特別警察一つとして、警察予備隊七万五千人が編成せられ、又かかる特別警察一つとして法務府には特別審査局が設けられているのであるから、全国的な性質を持つた警察官総数は十一万以上という数になる。更にかくのごとき全国的な性質を持つた警察協力すべき関係にある、お互いに協力関係にある自治体警察警察吏員が九万五千人あるのであるから、これを加えると、その総数は二十万五千人以上という大きな数に上り、旧警察時代に比べて飛躍的な増員であります。警察官定員を多くすることは治安維持という点で一見頼もしい感じを与えます。又或る程度ならば、それは必要だとも言えるのでありますけれども、その数は国家全体の行政機構並びに会計においてバランスのとれたものでなければなりません。それ故バランスのとれない警察官定員増大は、国家国民にとりて決して好ましいことではありません。又少くとも政府警察国家を作ろうとしているのだといつた感じ国民に与えるならば、それだけで治安の上では、プラスにはならないのであります。それ故治安の名に籍口して或いは国警五万説を称え、或いは小自治体警察の併呑を策するなど、いたずらに警察官増員するということは、威勢を張るのにはよいが、慎しむべきことであると存じます。「常備の兵力も又会計制限による、決して無限の虚勢を張るべからず。兵気を鼓舞して精兵を仕立てなば、兵数は少くとも折衝禦侮ともに事欠くまじきなり」という大西郷先生言葉は、警察官定員を考える場合においても味おうべき言葉であると私は考える。なぜかと申しますならば、治安や防犯のことは、警察官の数を最大限に拡大して、従つて国民財政的負担を増大することによりまして決して保たれるものではなく、むしろ国民の台所を賑わせ、国民生活を経済的に安定せしめて税金を安くすることによりまして、否、これを国民生活を向上せしめることによりまして、而して国民道義心を盛んならしめることによりまして、維持されるものであり、且つ可能となるものであるからであります。而して警察官科学的訓練が、その科学的施設と相待つて行われるならば、国家地方警察はその数を三万以下に減じましても、すでに設けられておるところの特別警察もあることでありますから、むしろ十二分に、今まで以上にその能率を発揮することができるはずであります。為政者としては少なきを憂えず、むしろ多きを憂えねばならないと思うのであります。  以上のごとき見地におきまして、私は要綱(一)の1、従つて改正案第十九條は削除すべきであると考えるものであります。右に申述べて参りましたことは、自治体警察につきましても同様に言わるべきことであります。従つて要綱(二)の1が問題になります。即ち改正案のごとくに、何らの枠も設けずして「その定員当該自治体において地方的要求に応じて自由に決定するものとする」ということにしますならば、恐らく会計上の無理をあえてしても、その全国的な自治体警察吏員総数現行法の定めている九万五千人を遥かに上廻ることになることは必定であります。故に要綱(二)の1、即ち改正案第四十六條第三項は、現行法従つて全国的総数九万五千或いは十万を超えてはならない。その配分地方的要求に応じて……。
  8. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 議事の運営について……。少し早く言つていらつしやるようだが、時間の制限を考えていらつしやるのでしようが、折角書いたものを読まれているのですから、五分や少しくらい時間が長くなつても、もう少しゆつくり読んで頂くようにお願いいたします。
  9. 田畑忍

    公述人田畑忍君) 地方的要求に応じて、法律によりて定めて、その範囲内で自由に当該自治体において定めるという趣旨修正するのが適当であります。自治体警察吏員の数を増大せしめるがごとき方向に誘う虚れのある今回の改正案のごとき立法は、自治体警察側の要求にたとえ基くものであるとは言え、現行警察法の精神に忠実だとは言えないと思うのであります。すでに大都市自治体警察は新警察制度に切換えの際におきまして、数的にも非常な強化を見たことは想起しなければならないのであります。且つ都市人口の増加に対しましては、警察の科学化と警察官の優遇とを以てこれに即応せしむべきである。増員のみを考えることは科学的ではない、能のないことであると私は確信するのであります。自治警察はそれ自身民主的警察であるから、然らざる国家地方警察定員は減らしても、その数を増すべきであるという論理を立てることはできるものではありません。なぜかと申しますならば、国家地方警察も又民主警察だからであります。右のことは自治体警察を減らして国家地方警察を増すべしとする主張が大いに誤まつておるのと同様に誤まつた見解であります。国家地方警察自治体警察警察予備隊、ともどもに相競つてその定員を増すべしとする政策は、国家国民のために憂うべき現象であります。国と国民が主であつて警察も又他の諸機関と共に公僕であることを銘記しなければなりません。要するに改正案等十九條と改正案第四十六條第三項は国警、自治警こもごもその数を競つて国と国民と危しといつた感を強く与えるものであります。私は日本国憲法の民主主義の精神に立脚する現行法立場に立ちましてその撤回と修正を要望するものであります。  次に要綱一の2についての私見を述べますと、これは非常の場合における治安維持を第一義の目的とするものであることは疑いありません。而してそれは現行警察法が総理大臣にのみ認める非常事態宣言権を拡大して、都道府県の自治にも付与するものであり、従つて現行警察法の定めた自警と国警の平等的関係を打ち破つて府県ごとに国警優位の例外的方式を樹立することになるのであります。私見に従えば、かくのごとき手段に出ずして、特別の場合にも治安維持を全うすることは不可能ではないのであります。即ちすでに非常事態宣言権については、現行警察法第六十二條乃至六十六條におきまして十分にして周到なる規定がなされております。即ち国家非常事態に際して治安維持のため特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣が国家公安委員会の勧告に基き全国又は一部の区域について国家非常事態の布告を発することができ、内閣総理大臣は一時的に国警自警を問わず全警察の統制を行うことができるのであります。而してこの場合には国警長官、又は国警管区本部長は関係区域内の都道府県警察長、又は市町村警察長に対しこれを命令することができるのであります。即ちこの規定に基きましてそれぞれの地方治安維持上必要である場合には、内閣総理大臣が国家非常事態の布告をすればよいのであります。故に屋上屋を架して都道府県の知事と都道府県公安委員会にかくのごとき手段の権限を与える筋は毛頭ないと確信いたします。アメリカのような厖大なる国土の国であるならばいざ知らず、日本のような国土の小さい国ではその職務にある者が怠慢無能でない限り、総理大臣の有する非常事態宣言権の運用よろしきを得れば治安維持の重大な事件についてその時期を失するようなことは絶対にないわけであります。若しあるとすればその職にある者の怠慢によると私は考えます。故に都道府県の知事に非常事態宣言権を付与することは、全国的見通しを持ち得ること少い立場にある知事の場合、責任重きに過ぎ且つ濫用せられることにもなりやすく、以てかくのごとき面からも警察国家を招来せしめる可能性を生ずると思います。それのみならず、改正案のごとく知事に非常事態宣言権を附与すると共に、自治体警察及び都道府県公安委員会運営、管理下に立たしめることになりますることは、自治体警察に対する国家地方警察優越の地位を一層力強く築くことになるわけであります。国家地方警察は、現行警察法におきまして、非常事態関係事務警察教養機関、警察通信施設、犯罪鑑識施設の維持、管理権及び犯罪統計事務という諸事務を有し、国家警察たる機能をも有しております。これに対しまして、自警連側におきましてはそれらの事務の共同管理を主張しているようでありますが、私は現行法通りでよいと考えます。即ち、国家地方警察国家警察たる面も、国家地方警察たる面も大体持つているので、それでよろしいと私は考えるのであります。それでなけそば警察はばらばらになつてしまいます。併しそれは以上に進んで、国家地方警察地方ごとに地方自治体警察に優越せしめるような今回のそういう改正をすることは、警察法の精神では快してないと思うのであります。即ち、警察法の精神に忠実であるためには、非常事態宣言措置が地方的な権力にも仮に必要であるといたしましても、知事のと同様なそのような措置を必要とする当該自治体の長にもかような措置権を附与し、従つて同時に該自治体公安委員会運営、管理下に応じて国警をも置くことにすべきであると考えます。即ち都道府県公安委員会中心の地方的非常時態勢をとるべきような改正立法はなすべきではないと考えます。併し勿論右に述べましたような代案措置は飽くまで代案措置であり次善策であります。改正案第二十條の二の代案もすべてこりを放ましまして、現在警察法によるのが順当であると思います。而して第六十二條以下の現行法の規定の運用よろしきを期し、且つそのように工夫努力すべきであるというのが私の主張であります。さするならば、不幸にして暴動に直面しましてもこれを大事に至らしめないで済むということは優に可能であります。それで治安維持の要は革命又は革金的暴動を防止するにあります。決してこれを挑発するような感を与えるような立法は極力避くべきであります。されば現行規定の運用の妙を発揮するにかかわらず、その努力を怠り、徒らに被害妄想的心理に便乗するがごとき行過ぎの改正規定を設けることは国家のために百害あつて一益がないと考えます。肝要なことは後に申すごとく平等独立の関係に立つた国警及び自警の協力を緊密化すればいいのであつて、その点においての警察法改正こそが望ましき改正であると信ずるのであります。  次に改正要網一の3及び4につきましては異議はございません。次に自治体警察に関する事項改正要綱二の1についてはすでに論述のごとくであるから繰返しません。  改正要綱二の2及び3については、明らかにそのような改正自治体警察弱化への改悪であると考えます。従つてかくのごとき面倒な手続を要し、従つて混乱を来たさせる虚れがあり、且つ多くの時間を空費せしめるがごとき立法はこれを避けるべきであります。而して現行法通り人口五千人以上の市街的市町村にはすべて自治体警察を置くようにすべきであると考えます。即ち私見は警察地方分権自治体警察強化を主張します。現在すでに人口五千人以上の市街的市町村には自治体警察が設置され、比較的弱小のかかる市街的町村のごときも財政的困難と闘いながら、その警察を旧警察時代以上によく維持して今日に至つています。昭和二十四年九月二日のマツカーサー声明を見ましても明らかなごとく決して失敗とは言えない。然りとすればこれを今更住民の投票に聞いてゆさぶるがごとき必要も理由も見出されないのであります。論者或いは弱い自治体警察はボスによつて毒せられやすいというがそのような例は多くないのみならず、旧警察時代においてもかかる事例がなしとしないのであります。即ちいわゆるボス化なるものは自治体警察特有の附随現象とは言えないのであります。又小自治体警察は暴動を鎮圧できないとも言われるが、かかる場合には他の自治体警察及び国警が特別協力すればよいのであります。従つてこの協力関係について現行規定を強化すれば解決のつく問題であります。又旧警察時代において例の米騒動があつたことを見れば、強力なる一本立の旧警察が常に自警以上に有能であつたとは必ずしも断ずることはできないのであります。要するに警察の有能無能は自警たると国警たるとを問わず旧警察と異なるものではありまん。即ちそのような制度的な問題ではないのであります。そこに必要なものは明らかに警察官科学的訓練であり、又国警自治体警察相互間及び自治体警察相互間のそれぞれの協力の緊密化を図る立法を工夫する以外にはないのであります。而してそのことと関連しまして、少くとも警察官のそのような訓練をすること、繩張意識を一掃すること、対立意識を一掃することと、同時に英断を以て国庫負担財政的配慮を十分にすることが必要であります。殊に小自治体警察の最大の弱点は、何人も指摘されておりまするように財政難であります。小自治体財政難こそはその小自治体警察の致金的な問題であります。これを解決する途は、小自治体警察国家地方警察に吸收すること、その下に立たしめることによつて可能なのではなくつて国家が小自治体財政的窮状を救うことによりてのみ可能であります。これはただに自治体警察のみに肝要な問題ではなくて、地方自治体における教育、文化、産業の万般について必要な問題解決の方法であります。而してそのような方法は不可能ではなくして明らかに可能であります。この可能な方法を度外視して小自治体警察の廃止を叫ぶことは、或いはそれを狭小ならしめることは、小自治体警察財政難に乗じて国家地方警察がその勢力拡大の野望を遂げようとするものという非難をされても仕方がないことということになります。財政難さえ救済するならば返上論を唱える自治警察は恐らく一つもないと思います。国家が小自治体財政難の救済をすることはまさになされざるべからざる国家的努力であると申さねばなりません。  次に三に移ります。国家地方警察及び自治体警察に関する事項改正要綱三の1、これは公安委員の資格の要件の緩和の規定でありますが、これは妥当であると考えます。それから改正要綱三の2、これは犯罪捜査上の連絡、協力強化規定でありますがこれも妥当であると考えます。それから改正要綱三の3、これは犯罪に関する国警、自警の情報の交換についての規定でありますが、これも妥当であると考えます。改正要綱三の4、これは自治体警察間の相互援助における国家警察への連絡の規定であります。改正要綱の三の4についても異議はありませんけれども、ただ自治体警察が他の自治体警察に援助を要求する場合に、あらかじめ国警に連絡しなければならないというのは納得しがたい感じがいたします。かくごとき連絡は事後であつても  よろしいわけであり、又国警に限らず他の自警にも連絡する必要があるのでありましよう。それ故、右のごとき国警優越的感じを与える規定は明らかに警察法の精神には合わないと思います。  それから改正要綱三の5であります。これは自治体警察に対する国庫の負担についての規定を総括したものでありますが、改正要綱三の5は妥当であると考えます。  それから改正要綱三の6は、自治体警察の公務傷病者の保護規定でありますが、これについても異議はございません。以上改正要綱の三に示されておる改正こそは我々の夙に主張して来たところでありまして、かくのごとき改正のなされることはまさに適当であるのみならず、又これによつて十分に警察法改正目的たる警察力強化と、警察運営警察民主化を妨げることなくして、警察法の精神を害することなくして一層能率化することができるものであると考えます。勿論これのみでは足らんと思いますけれども非常に大きな意味をなす改正規定であると思うのであります。今回の警察法改正はここに限定すべきではないかと考えます。更にその趣旨を徹底させる意味におきまして現行警察法第四十二條「自治体警察に要する経費は、当該市町村負担とする。」とあるのを修正しまして、但書を加え「但し必要ある場合には国庫の援助を受けることができる」というようにすべきであろうと考えます。  それから第四でありますが、改正要綱四の1については異議がございません。  改正要綱四の2についても、私見は自警のすべてを存置すべしとする立場をとるものでありますから問題にはならないと存じます。  以上時間が超過しまして大変恐縮に存じましたが、これで私の公述を終らして頂きます。
  10. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。次に塚本壽一君にお願いをいたします。塚本君は東京新聞の論説委員であられます。
  11. 塚本壽一

    公述人(塚本壽一君) 私は警察制度に関しまして考える場合に国民感情に重きを置いてやるべきだと考えておるものであります。そういつた意味から現在の警察制度或いは又警察官に対する国民感情はどういう程度になつておるか、つまり信頼されておるかどうかというような一点を考えてみまするときに、大体において全面的には信頼されておらない。従つてそこになんらかの改革すべき点があるのじやないか。まあこれを考えます場合に、私ども新聞記者でございますので各方面の意見を聞いてみますと、殊に一般の大衆は警察の機能に関しましては、大体共産党首脳部の逮捕の問題なんかを直ぐに例に挙げるのでございますが、この点につきましては単に警察機能ばかりを取上げるわけには参らないと思うのでありますが、そういつた点から窺いまする警察制度に関する考え方は、私の考えますところでは、やはりなんらかの是正をする必要があるのじやないかという点に帰一されるのでございます。  然らばその改正する場合に当つて根本的に改正すべきであるか、つまり制度上に改変を加えるべきであるかどうかということになりますと、その点までは必要がないというのが、或いは私の寡聞にしてその結論が誤つておるのかも知れませんけれども、大体私の考えるところではそういつたところになるわけなんでございます。そうすると、その点から推し進めて参りますると、結局二十三年の三月にマツカーサー書簡によつて日本警察制度が従来の警察国家体制を崩して、そうして根本的に国警自警両建の警察制度というものを急速に作つた、そこでこの二本建の制度、つまり国警と自警との平等の地位に立つ警察制度運営の点において改むべきであるということが今日当面の課題として残つておるのじやないかと思うのであります。  それで今日警察制度改正案国会提案になりましたけれども、もう半年以上も大きな問題として我々は注意しておつたわけでありますが、その結論として今日提案になつておりますものが、運営の点を中心として、つまり自警、国警の間の技術的調整、技術的と言つては少し語弊がございますけれども自警、国警間の運営の点に重点を置いてやつておられるという点につきましては、その専門的に見ました国警、自警間の妥結点に対して大きな価値を私は見出してよいのではないかと考えます。さようなわけで、この警察そのものに対する根本的な考え方からいたしますと、国警、自警の両建の制度は、これは将来も地方自治の有終の美をなす意味においてもこの二本建の点を平等の立場においてやるべきだということには異存はないのでありますが、この運営の点において見ましたこの改正案については、私は先ほど来公述人の方々が詳しくお述べになりました点で非常に参考になる点がございますのですが、その運営の点においては、大体改正案を次善の案として認めりてもいいのじやないかというような気持でおります。そういつた点からこの改正案を見て参りますというと自警、国警の間のいわゆる調整の問題につきましつては私はこれを認め、而も都道府県知事に非常重大事態の認定の権を与えるという点につきまして、やはり公安委員会が中心になつて公安委員会の機能が停止されたときというような條件がついて、初めてこれを知事にその権能を与えるというような一つの停止條件というようなものをつけて認むべきではないかというような気持もいたします。  それから又この市街的町村住民投票、この点は住民投票と申しますというと非常に民主的なやり方として表面的にはすぐ肯けるのでありますけれども、今日のいわゆる一般住民を考えた場合の政治認識と申しますかそういつた点から考えますというと、ややともすると浮動票というものは一つの動きによつてさつとこう動く嫌いがある。この点から考えましてよほどその点の、これ又政治教育と言つては語弊がございますけれども相当程度考える必要があるのじやないか。それから又これを逆に考えまして、この住民投票にようないでもう自治体警察をそのまま存続するというのは、私も前々から考えておつたのでございますけれどもそういつたことにしますというと、地方のかたのお話を承りますというと、どうも財政上の関係からいつて我々の負担になつて因る、どうもよくないというような意識が潜在的に動いておる場合がある。そういうような状態において、存続いたします場合においては、いわゆるその警察というものは国民協力によつてその完全な作用を果し得るというようなことを考えまするときに、そういういやいやついてくというような状態のことも或る程度は考えなければならんのじやないかと、かように考えるわけなんでございます。  それから国警定員の五千人の増加、この問題につきましても、私は数の点においてはいろいろな意味においてこれは慎重に検討を要することと考えておりますが、大体見積りというようなことに承わつておりますので、殊に住民投票の結果、国家警察定員増員されるという点も考え合せますと、二万から五千に下つたのだから、その点では随分減らしたのだというような御意見もございますけれども、その程度ならば一応の見積りとしてよろしいのではないかというように解釈するわけであります。  改正案のその他名称の問題、いろいろ今度階級が置かれたようでございますが、こういつた点につきましても、これは技術的ないわゆる運営上の問題であつて、これが警察内部の問題として非常に効果が挙がるということでありますればこれは私どもは一向差支ないと思うのでありますが、ただそういつた形式的な名称のためにややともすれば誤解を生じ易い、警察が軍隊的な組織であるとかというふうな工合に認められることは非常に損なことではないかというような気がいたします。これも併し私はそういつた意味能率の点から考えまして消極的には賛成をいたしておるわけでございます。  又ピストルを所持する、交通巡査までピストルを持つておるというようなお話もよく聞くのでございますけれども、そういつた意味で形式的な点が実質上役立つ点を考えての方法ではございますけれども、よく我々の国民感情に映ずる機微の点をよく察せられて考える必要もあるじやないかと思います。中央集権的にどうするとか、或いは又そういつた軍隊化というような誤解を、或いはときに正しい見方というような場面もあるかも知れませんけれども、そういつた見方が現われますこと自体が、今日大きな意味の政治的な環境から考えましてよくないことじやないかとも考えます。私はこういう国民に密接な関係を持つております法案は、この新憲法の下における国会におきましては、どうかそこを一つ皆様方の御協力によつて議員提出の案として根本的なものが出されて、そうしてこれが国会で納得の行くような論議の下に国会の権威において制定されるということが、理想として、又理想に近い現実として希望いたしたいところなんでございますが、今日は三十三年三月のマツカーサー書簡に基いてでき上りました警察法に対する一部修正の問題でございまして、これをすでに数ヵ月に亙りまして論議されておることが新聞にちらちら出ております関係から、これがそのまま審議未了に終るというような状態の後の政治的考慮なんかを考えますというと、ここに能率能率という問題を特に重点を置いて考えますときに、その結果の方が大きいじやないかというような気持がいたしますので、修正すべき点は修正して、これを立派に実行に移す、そうしてこれは政府の御懸案でございますけれども、殊に警察法を実施してから三ヵ年も経つておりまして、しばしば修正の問題も起つておるときなんでございますから、これで一応能率の点を見て、そうして修正すべき点があるならば、今度こそ一つ国会議員の殊に民主制度の下におきまして、衆議院で立案いたしましたら参議院においてこれを行過ぎを是正されるというような点を考えるなり或いは参議院の立場において新たなる立案をされて、私ども国民とぴつたり合つた警察法を実施に移して頂きたいというような気持でございます。そういつた観点から現在の警察法の一部改正案につきましては、中央集権化の方に極端に移行するという憂いがございます点については嚴重に警戒して、そうして運営の点を改めて能率的にされて行くということを一つ大きな見方からして考えて行きたい、かように考えるわけでございます。
  12. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。次に兵頭丈四郎君にお願いをいたします。兵頭君は一般応募の方でありまして、岡山県小田海区漁業調整委員であられます。
  13. 兵頭丈四郎

    公述人(兵頭丈四郎君) 私は申上げようと思うことは前の公述者の方々によつて大体盡きておりますのでありますが、今面の警察法の一部改正につきましては、法案の到着が遅れましたので個々の面につきましてはよくわかりませんが、概念的には新聞その他によつて承知いたしておるのであります。  私は過去の経歴その他から考えまして、事務的な面につきまして意見を持つておるのであります。それはおおむね五つの項目から申上げたいと思うのでありますが、自治・国警の人事の交流に関する事柄を法文化してほしいということ。二番目は警察官の疾病、なかんずく胸部疾患に対しまする療養期間というものが一般公務員のそれと同じになつておりまして、それはあとから理由を述べますがこれはいかんので延長してほしいという事柄であります。第三番目は経費の節約と警民一如という趣旨から、警察義勇隊というのを作つて非常勤の警察官を作りたい、こういう事柄であります。第四番目は漁業取締に関しまする事柄でありますが、漁業取締が只今のところで主管が明らかになつていない、海上保安庁なるものができました当時水上警察は自然廃止になつたのでありますが、当分の間従来の通りにやるというような通達がありましてそれによつてつておるということでありますがこれもいけない、主管を明らかにしたいという事柄。それから第五番目は公安委員の資格條件に関する事柄でありますが、これは撤廃をしてほしい。この五つの事柄につきまして申上げたいと思うのであります。  第一に申上げます人事の交流、警察官の人事交流に関する事柄を法文化してほしいという事柄は、この自治警察が発足いたしました時分に人口五千そこそこである。小さい自治警察は、本人の希望を大体入れましてその人事を配置される、これは私どもの狭い視野から見ただけではなしに全国的にもそういう傾向があるのではないかと思うのであります。故に我が家から通う、自宅から通う、従つてその管轄区域には親族縁者もあり警察的に見まして芳しからざる人もある。具体的な事例を言えばアンチヤンのようなものもおるとか、或いは闇屋さんもおるとかいつたようなことで非常に仕事がしにくい、警察官であります者も神ならぬ身でありますからおのずからそこに情実ということが生じないことはないのでありますが、それがために仕事に行詰りを来して遂にその職を辞したという事例を私は二、三知つておるのであります。かくのごとき事柄では安んじて仕事ができない、いわゆる警察の使命であるところの強く正しくという仕事をやつて行くためには、少くとも自分仕事はこの道で飯を食うて行けるのだという安心感を与えなければならないと思うのであります。地方分権という事柄と矛盾するのではないかという反間が起ると思いますが、それは決してそうではない、人を運用いたします上においては地方分権とあえて齟齬矛盾はないと思うのであります。殊に自治警察国家警察との間には、いわゆる民間人の雑音によりまして確執相剋といつたようなものがかなりあるかに聞えております。これは何らかのためにせんとするもの、或いは自分の欲望を満足せしめんとする不純な理由から出発をしておるものも相当あるとは思いますが、少くとも自治警察国警との間には極めて円滑に我々は同じ仲間であるという気持で行つておるのが少い、こういう空気がかなりあるように聞いております。具体的事例は我々は承知いたしておりますが、狭い視野から見たのでありますから全般をこれによつて律することは勿論できませんが、こういう観点から人事の交流ということは、安んじて仕事をするという意味から是非法文化してほしいということをお願い申上げる次第であります。  次に警察官の疾病、なかんずく非常に長期に亘つて療養を要するところのこの胸部疾患でありますが、警察官は御承知のように晝夜兼行、特に刑事事務などに当ります者は、おれは時間が来たからこれでお前と交替をしてやろうというわけに行かないのであります。相手方と本当にはつきりと精神、意思が交流いたしましてそこに初めて所期の目的が達し得られるので、いわゆる自白をいたしますとか、その他捜査の目的を達するというのであります。従つて二十四時間たとうがねむたければ寝るとかというようなわけに行かない。仕事性質その他人員の配置等によりまて、おのおのそこに特徴があります任務につかせておるのであります。農村などの小さい自治警察において特に然りであります。こういつた人たちが一旦病気にかかりますと、一年間の療養期間を一般公務員につきましては認められておるのでありまするが、警察官は採用の際に最も嚴格なる身体検査をいたしまして、胸部の写真をとり或いはその後においてもしばしば検査をするというのでありますが、実際問題は他の官公吏、公務員に比しまして非常に胸部疾患が多いということはこれは非常に勤務が過労である、それによつて生ずことは明らかであります。私どもは専門家でありませんからそのよつて起る原因はよくわかりませんけれども、胸部疾患が多いという事実は違わんのであります。でありますからこれは一般公務員より除外りいたしまして別な療養期間を置きまして、本当に生金を賭して仕事をするという安心感を与えてほしいという要望であります。  それから次に義勇警察除の事柄でありますが、これは実は上海に工部局という、警察だけではありません、行政面仕事もやつておるところがあります。これは英米系の警察制度でありますが、そこにこの三分の一のスペシヤル・ポリスマンというものを作つております。いわゆる義勇警察官でありまして、これは平生は会社なり銀行なりその他それぞれの業務に服しておるのでありますが、一旦事がありますとその召集に応じまして配置につく、それは勿論規定の訓練を受けたいわゆる常勤者と非常勤者を組んで配置につける。そうして採用の資格條件は勿論年齢、境遇、身元その他いろいろの点におきまして厳選をされます。私が曾て上海の社会教育課長と警防課長をいたしておりました時分にも、その部下の人が十幾人もこの義勇警察隊におりましたが、日曜その他休の日に訓練をやる、非常事態があつたときには出て参りまして、被服だけは平生家庭でちやんと持つております、武器などはその都度頂く、そうして常勤者との区分は肩章にスペシヤルとちやんと入つておりますから、決して間違う気ずかいはないというような制度になつております。服制においそやや同様でありますけれどもわかるようになつております。そうしてこれらの人は出た日には若干の日当をもらえる。そうして採用に当りましてはその勤務先の長である人とその父兄である監督者との連署によりまして、何どきでも非常事態が起り御用の節にはお役に立てるという誓約書を出しておる。そうしてその勤務に服しましたときにはいつからいつまで勤務に服したという事柄を書いてその所属の平生俸給をもらつておる所へ持つて帰りますから、決して嘘を言つてごまかすようなことはありません。それでその結果は警民一如となり、いわゆる我々の警察だという民衆の気持が非常によく反映しておりまして円滑に参つております。それから平生の仕事立場上いろいろな部面の人がおりますから、これらの人から雑談その他によりまてもいろいろな情報を得るといつたような便宜が非常にあります。そうして経費は非常に少くて済む。自治警察大都市にありましても、或いは小都市でありましても、こうした制度はいろいろの面から見ましして非常に役立つのではないかと思うのであります。警察予備隊なるものの制度がありますが、聞くがごとくんば地上軍にいつでも転換ができるという、目的がおのずから違うのではないかと思うのでありまして、いわゆる我々の警察警察民主化地方分権といつたよう立場から考えまして、この警察義勇軍なるものの採用制度というものは非常に私はいいと、かように感じております次第であります。出来得べくんばこの事柄を一ヵ條に加えればよろしいので、改正法案の十五條の二に、二定の訓練を経た者でなければ警察の執務に服してはいけないということがありますが、但し、ここに但し、警察義勇軍はこの限りでないということにさえすれば差改えないことでありまして、而も長い期間に亘りまして、日曜とか祭日とかその他のひまな場合に訓練をいたさせればいいのでありまして、一向差支えないのでありますから、これはこの制度を採用いたしますれば非常に役立つ、警察民主化のためにも役立つと、かように考えるのであります。  次の第四項目は、私は海区漁業調整委員をいたしております関係上、漁業取締というものが、漁業制度というものが一大改革をされまして、農地改革のそれよりももつと大きい問題になつておることは皆さん御承知通りであります。でありまするが、その中にこの非常な零細漁民を困らせるような漁業が近時相当に勃興いたしておるのであります。名付けまして戰車漕漁業というものがあります。或いはブンチン漕というようなものもあります。これらの取締につきましては海上保安庁がその所管に属しておりますが、海上保安庁でも全部それをやるのではありませんので、或る一部には、私のほうはこういうふうな役割で、そういう小さな問題に干与しないのだというような所もある、従つて我々の岡山県の西部のほうから見まするというと、広島、或いは香川ともうような面からそれらの戰車漕漁業がやつて参りましてやつておる、非常に高速度のモーターをつけておりますために早く帰つてしまう、而も、根本から稚魚を取つてしまう、だんだんだんだんに零細漁民は窮迫に追込れるというような実情でありまして、この取締を頼みましても、先ほど申上げましたように、警察署は当分の間従来の例によつて、従来の通りに漁業は取締をするとはありますが、船の制度がないので船を雇えない。海上保安庁は尾ノ道に属しておりまして、尾ノ道へ行つて、いつ来るかわからないから前以て言うておくわけに行かんからそのときに言う、お願いをするが、現実の問題として間に合いませんので、その時分にはさつさと帰つてしまつていないというような実情でありまして、漁業制度の一大癌である。これは非常に大きな問題であると県下の我々調整委員も申しております。先般神戸で瀬戸内海の漁業取締規則に関しまする会があつた時分にも、やはり同様な案件が問題になつてつたようであります。この点は警察に取締の権限をはつきりと持たせるように法文化させるということが非常に便宜でありまして、又そうでなくちやならんと思うのであります。海上保安庁で持つておりますような大きな船で参りましても到底そばへ寄れないので、追つ駈けごつこをしてさつさと悪口を言つてつてしまうという程度になつて誠に困つております。折角いい制度ができましても、本当は役立たんというような漁業改革に関しては何にもならないことでありまして、この点は警察にその主管を、はつきりと取締の主管を明らかにしてもらいたい、こういうことであります。  次は公安委員の委員中から警察職員関係だつた者及び警察職員、職業軍人であつたものを除外してありますが、私は全部これは全員がこれになつていいような制度になつて欲しいということは言わない。勿論いろいろの角度の人たちが入つていいと思うのでありますが、例えば三人であれば一名はそういつた者が任用されてもかまわんというようなふうにいたしませんと、この教育委員にいたしましてもずぶの素人ばかりがなつては本当の運営がうまく行かない。ここに掲げられた趣旨は、私どもが拝察をいたしますのに、警察国家に逆戻りする虞れがあるのであろうという感じからこうした問題を取上げられたのであると思いますが、警察職員だつたものが公安委員になつたからというて、決してこれは元に逆戻りをするというがごときことはないが、執行部の、おのずから公安委員には一定の線がありまして、その線を勿論越えてはならないのでありますから、自分たちの役割を、自分たちの宣誓を忠実に守る上におきまして制約を受けておるのでありますから、警察職員だつた者が公安委員になつて何の害がありますか。むしろそれは非常に役立ち、玄人がなることが必要だということを特に強調いたしたいのであります。そうしてこの事柄をば條文に改正を加えて欲しいという要望を申上げた次第であります。以上、私はこれで終ります。
  14. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それでは御質議を願います。なお田中二郎君は所用がありまして御退席になつております。
  15. 相馬助治

    ○相馬助治君 塚本先生に、今般の警察法の一部改正に伴つて、先生の御意見の前段を要約いたしますと、自警並びに国警間における運営について支障のあつた点を直すことは極めて必要であろうが、さればといつて制度にまで手をつけるということはかなり問題であるという御意見のように拜聽いたしました。そこで私個人の意見としても、今度の改正運営について支障のあつた面を直して、能率化されるということが先ず大切ではないかというふうに考えておりますが、塚本先生の御意見としては、現在の自警、現在の国警という制度をそのままにして、運営上の技術面を直せば足れりとされるのであろうか、それとも現在の自警、即ち弱小自警を含めての現在の自警の制度というものを、組合警察或いは府県単位としたより拡大強化された自警にまで引上げることによつて、その上に立つて運営上の調節をする必要があると、こうされるのであるか、その点について一つ御見解を賜わりたいと思います。
  16. 塚本壽一

    公述人(塚本壽一君) 私は制度的の改革という点におきましては、根本的な改革という点はこれはもうよほど愼重にしなければならんと、勿論今の国警と自警という関係は、これは私今度の改正案においてもどちらが優位という点は余り神経質には考えないのでございますけれども、そういつた意味における自警が弱小であると見なされる点は上へあげて、そうして並行してやつて行くということを私は考えたいと思うのでございます。
  17. 相馬助治

    ○相馬助治君 次に一点やはり塚本先生にお尋ねしたいと思いますことは、警察能率化するためにこの法律改正しなければならない、こういう御意見、但し、中央集権化することは、これは巌に成しめなくてはならない、こういう御見解と承わりましたが、御尤もでございますが、残念なことに、能率化を急に考えますというと、勢い中央集権化することが必定でございます、私の見解を以てしますれば。そういたしますというと、お話のウエイトが実際問題としてどちらにあられたのでございましよか。極めて限られた時間での御見解を承わつて、而も又私聞き下手でございますが、今度の改正法についててマツクアーサー・レターの精神に従つて、どうしても中央集権化する方向をこの際嚴に戒めなければならないとするのでございましようか。それとも現在の時代に応じて根本精神はさようではあろうが、先ず能率化ということが急務であるから、この際能率化という観点からものを考えて行く必要があろうというのでございましようか。これらの点について承わりたいと思います。
  18. 塚本壽一

    公述人(塚本壽一君) お話の点私却つて口下手のためにお聞き苦しくて、そういつた御質問を受けたと思いますが、私は中央集権化という点、これを考えます場合に、この国警強化したが故に中央集権化したと、こういう工合にはすぐさま考えないのですが、例えば現在幾多の事例もございましようが、要するに今の国警で、地方自治強化するという建前で以て、自警と国警というものを両建にしてやつたというのは、マツクアーサー書簡の趣旨ですね、こういつた趣旨で行くときに、国警強化するときに、自警を強化するということは、運営上彈力性を持たしてもいいのではないかという考え方で、従つて中央集権という言葉意味をそういつた意味には解釈しないのでございますけれども、ぞれで国家公安委員会というものが、御承知通り内閣総理大臣の所轄の下にあるのですが、これが指揮命令系統がないということは、いつぞや齋藤国警長官のことが起つたときに表面化したわけで、そういつた工合に国警と自警というものが遊離していないということを極端に申上げましたのですけれども、参議院、衆議院の関係のような工合に、衆議院と参議院のどつちが遊離しておるかということを考えないのと同じように国警、自警というものを考えて、運営の面においてうまくやりたいというような気持でおります。先ほどちよつと技術的調整ということで言いましたけれども、そういう技術的ということは要するに小さい意味に解釈されると誤弊があるのじやないかというようなことで申上げたので、気持はそういつたところです。
  19. 相馬助治

    ○相馬助治君 お話よくわかりました。ただそれに附帯いたしまして一つ御見解を承わつておきたいと思うのです。先生自身は自警と国警とのいずれが遊離しておるとはお考えにならない、その通りでございますが、実際問題といたしまして、国警の職員、自警の職員並びに一般の人たちは国警が自警に優越しているものであるという一つ考え方を持つておる事実はいなめないと思うのです。その場合に、実は本委員会におきましても私どもの党の吉川委員がたびたび論及されておるのですが、国家警察という名称と地方自治警察という名称から来る観念的な影響というものが実に重大であるという点を指摘されておりますが、これらの点について先生は輿論を指導される立場にある関係上、名称についてどうお考えであるか。これは直す必要があるというふうなまでに積極的なお考えが進んでおられるか、どうか、これらの点を一つ参考にお伺いしたいと思います。
  20. 塚本壽一

    公述人(塚本壽一君) 非常に私の気持とぴつたりしたお話でございますが、私も一政治記者として院内にお伺いして取材しております人間でございますが、そういつた点から考えましそ、非常に先ほど申上げましたように、国民感情のデリケートな面をよほど考えなければならないということで、今お話のような国家ということがつきますと、中央集権的な考え方があるという意味のところから、できれば名前を変えたほうがよいと思いますが、できればという程度考え方で、今のところでは……。
  21. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 先ほど来の公述におきましては、兵頭さんを除いて公述なすつたおかたがたは、第二十條の二の都道府県知事の、治安維持上重大な事案についての認定権なり或いは公安委員会に対してそのことから要求する点について御意見をお述べになつておられるのでありますが、そこで私は田中さんがおいでになりませんから高辻さん、塚本さん、田畑さんのお三人のかたに同じ内容の質問をいたしたいと思います。それで高辻さんは、府県知事に対してもつと自由裁量警察に対する権限を認めたらどうかという御意見があつたのでありまするが、どういう理由でどういう内容の権限を希望せられるのであるか、もう少し詳しくお話を願いたいのであります。それから田畑さんだつたと思いますが、これに触れられて、府県知事にこういう認定自体をあれするのはいかん、内閣総理大臣の、現行法に基く権限の運用によつて治安の確保ができる、こういう御意見であつたようでありますが、そこで私はもう一つ問題としては、都道府県知事が、完全に独立した他の市町村の自治警内に起つたものに口ばしを入れる権限を持つということならば、却つてその当該市町村の長という独立の首長に、そうしたやはり公安委員会の意を通さず、直接こうした認定権を与えて、何らか操作をする手続をとるというふうなことが、地方自治という上からいえば、法制上の建前からは、論理的ではないだろうかというような点を考えるのでありますが、御意見がありましたらこの点お伺いしたいのであります。それから塚本さんは、昨日これは東京管区のほうの公安委員長も或る会合におきましてはそういう意見があつたということで御披露があつたのですが、この知事の認定権を、当該自治体警察公安委員会の機能が停止したときというふうに制限の條件を付したらいいのじやないかという御意見があつたようでありまするが、これならば又同様知事以外に、若しも抜本的に、真に民主的に治安確保のためにやるという場合には又別な手続方法があるかという点について御所見があつたら承わつておきたいと思います。
  22. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) 私の先刻公述いたしました事柄、実は全部が相互に関連を持つているのでありまして、この点につきまして、特に都道府県知事権限というものだけをあとに附加えましたわけでありますが、これは全体を通じて簡単に申上げますというと、これは今日の国家地方警察というものの内容をよく調調べて見ますと、御承知のように中央に国警本部があつて、そうしてその管区に管区本部長があつて、その下に府県国家地方警察というものがあるわけであります。ところが実際の例から見ますと、中央の本部長或いは管区本部長というものよりも、その府県内の治安府県国家地方警察が何と申しますか、殆んど独立的にやつているのであります。そこで私は先刻申上げました府県自治体警察というものを、一応某本的に考えるのがいいと思います。これは実は今日やつておりますことを制度の上で自治後警察に改めて行くということになると思うのであります。そこで何か人口五千以上の市町村という小さいものにしておけばそれは民主化で、小さい市町村警察権を置いておけばそれが直ちに日本民主化されたのだといううふうに考えるのは、ちよつと私は疑問に感ずるのでありまして、むしろ府県なり大都市なり、人口十万以上の大都市都市警察を認めるとすれば、そういう府県とか都市とかいうものを、成るべく新らしい自治法にかなうような民主的な運営をするようにして、そこに警察権を置いておいても少しもそれは民主化の精神に反しないと思うのであります。基本的にはそういう意味におきまして都道府県知事というものの権限を拡大して行くことが妥当ではないか。勿論今日の都道府県にあります公安委員会という民主的な組織は、これを維持して行かなければならんと思います。公安委員会というものによつて運営をして行くというのであります。そこでその次にこの非常事態の場合における問題でありますが、これは都道府県知事は非常事態というものの認定をいたしまして、その際においてその管轄における府県警察都市警察と一元的にこれを指揮するということを臨時に、特定の場合にそういうことをお認め願うのが適当ではないか、こういうふうに考えているのであります。これでお答えになつているだろうと思いますが、如何でございましようか。
  23. 塚本壽一

    公述人(塚本壽一君) 私の点は高辻さんとは意見が違うのでありまして、その点は飽くまでも公安委員会によつて秩序は維持さるべきものだという考えに立つものでありまして、ただどうしても機能が喪失するような状態に陥つたときに、その被害をこうむるのは一般の市民でありますので、そういつたときに、何がやはりないことに越したことはないのでありますけれども、そういう場合も想定しての現定と考えているのでありまして、消極的な意味において賛成しているわけであります。ですから知事に広汎な警察権を持たせるということにつきましては、私は絶対反対でありまして、その点だけに限られているのであります。
  24. 田畑忍

    公述人田畑忍君) 私は先ほどの公述のときに申しましたように、都道府県知事に非常事態宣言権を与えることはよくないと思うのです。若し地方的な権力にも非常事態宣言権を与えることが必要であるとするならば、知事だけにではなくて、自治体の長にも、即ち市長にも町長にも村長にもそれは与えるべきであるということを言いましたのでありまして、小笠原さんの所見とその点は一緒なんでございます。併しながらそれは次善策だと思うのです。知事だけに与えるよりは、与えるとするならば市町村長すべてに与えるほうがよろしい、こう考えるのです。併し知事及び市町村長にそういう非常事態宣言権を与えるということは全国的なバランスから見まして私はよくないと思うのです。非常事態宣言権というような、そういう大きな権力なんというものは多くの者に与えるべきではない。それは総理大臣だけが持つておればよろしいのだ。十分それで運用よろしきを得れば活用できる、かように考えているわけでありまして、若し知事なり或いはその他の市町村長にそういう権限を与えますと、全国的な見通しをそういうかたがたは持ち得たいから下手をしやすい。これは失礼な言葉でありますが、制度上そういう立場にありますから下手をしやすい。濫用に陥りやすいということになると思います。従つて余りに重い責任を負わしめることにもなり、又全国全体の治安という大きな点から申しますと、それはまずい、かように考えているわけであります。なほ足らん点あれば御質問になつて頂きます。
  25. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 高辻さんにお伺いするのは、当事者であるからちよつとお答えになるのはむずかしいかも知れませんですが、何か意見がましいことを申して大変恐縮ですが、知事さんであるから知事の権限を肥らせるというふうに聞き取られたら、高辻さんとしてはえらい迷惑だと思うのでありますが、都道府県単位自治体警察ができた場合において、知事が或る種の警察行政に関する権限を持つということは、これは当然あり得ることでしようが、現行法においては知事が他の市町村団体の上に、他の自治団体の長の上にある自治機関ではないという点から亨うて、他の自治体の問題にいろいろ介入する結果になるということについてはどういうものかという疑問を持つているわけですが、それはそれとしまして、この二十條の二が法律なつた場合に、知事さんは体験上そうした事案が起つた場合に、これは県の公安委員会要求したらいいだろうか、しないほうがいいだろうかという判定をする場合には、どういうブレインを使い、或いはどういう機関なり或いは人と御相談になつておやりになるお考でありましようか。知事さん個人の考えで誰に相談もなく要求してやるということはないと思うので、実際の運用はどうやるのでありますか。まあ想定の下での質問で大変失礼でありますけれども、お伺いしたいと思います。
  26. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) お答え申上げます。あとのほうの御質問から先にお答え申上げます。
  27. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 前のほうはいいのであります。
  28. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) 二十條の二の規定が実り際に規定された場合のその運用でありますが、それは私はどの府県知事自分の一個の独断を以て判定をいたさないであろうと思います。又事実今日ここでそういう御質問があつたことを他の知事にも私伝えるつもりでありますが、これは独断で判定すべきものではなかろうと思います。思うに、やはりその県内の公安委員会とよく協議いたしまして、なお又県議会の議長、副議長とも相談いたしまして、県によりましては警察に関する委員会を県会内に設けておりますが、そういう委員会と協議いたしまして、迅速にそれらの機関と協議いたしましてこの判定をいたすこととなると思います。  それから私どもの考えております府県自治体警察というのは、今日国家地方警察府県の公安委員の選任権を知事が与えられております。勿論県議会の議決を経て同意を得てきめるのでちりますが、与えられております。この点において現在すでに府県の知事というものは国家地方警察の、その府県の公安委員と非常に密接な関係を持つているのでありますが、これが若し自治制度の上にこの制度が布かれますというと、自然今の公安委員会の持つておりまする運営管理というものが、公安委員会がみずから執行機関として警察権を執行するようなことに相成るであろうと思うのであります。
  29. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 もう一つとつぴな質問ですが、殆んどこうしたことは、もうこうした事案はあり得ないことと思うのですが、まあ理論上こういうようなものがあるとしまし、その都度それぞれの機関なり、おかたがたと御相談の上で要求したりしなかつたりして、事後議会において報告をするという問題等から、県会における政争の具にこういう治安問題がなつて、知事さんの立場というものがいろいろ困るというようなことになつたりする場合はないだろうかという心配もあるのですが、知事さんとしてはやはりこういう権限が与えられておるほうが、県下の治安確保の上からいつてよろしいとお考えになつておりましようか、この点をお伺いしたい。
  30. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) 今の御質問は、今日の自治制度一般につきまして非常に皆心配している問題であります。私どもの同僚の中でも或いは自由党、民主党、社会党の党派に党籍をおいている知事もおります。そうでない知事も多数おるのでありますが、党籍を持つておる我々と協議いたします場合におきましても、たとえ自分が党籍を持つてつても、自治体の政治というものは政党勢力のみによつて左右せられるものではないということを常に私どもは話合つておりますので、無論少くとも現在の状況におきましては、この権限が与えられたために政党的に利用せられるという虞れはあるまいと思うのであります。併し将来におきましてそういうことの心配が絶無であろうかということを考えて見ますと、これは相当警戒を要することと思います。今回の規定によりますと、治安維持上重大な事案につき止むを得ない事由があると認めるときというように、非常に厳密に規定せられておるのでありまして、この規定はそういう用意の上に出でたものと思います。要するに現在の状況といたしまして、これが政党的に濫用せられることはなかろうと存じております。
  31. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 私は高辻さんにお伺いいたしますが、今の府県単位自治体と、大都市と申しますか、十万以上の都市警察の二本建が一番いいと申されますが、あなたの御意見でございますが、そういたしますと、今の国警という関係のものはどういうふうに修正せられるお考えであるか、この点を一つ伺いたい。
  32. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) お答え申上げます。私の申上げました意見に基きますというと、現在の国警というものは、その権限警察予備隊を以てこれを運営することが一つであります。第二の点におきまして考えておりますことは、いわゆる府県自治体警察若しくは人口十万以上の都市警察にしましても、或る程度の監督権を国家警察の機構において持つほうが適当ではないかと考えるのであります。これは極めて例を引きますことが適当な例でないと思いますけれども、旧警察制度におきまして、内務省が人事権を持つておりまして、警察部長についてのみは他の部長と違つた意味において強度の監督権を持つてつたのであります。この旧制度をここに引用いたしますことは最も愼しむべきことと存じますけれども、事実上において警保局長が全国の警察電話を以て支配しておりました事実があります。こういうふうな強度な監督を行うことは極めて私は適当でないと存じますけれども自治体警察を、先刻から申上げましたように、編成しました場合に、国警のほうにおきましては或る程度指揮権を留保せられるほうが適当ではなかろうかと思います。
  33. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 今の問題ですね、留保するという問題は、経済面で監督するのか、又はそこに常置するのか、非常に私たちこの問題を、あなたがたのほうから何と申しますか、陳情とかいろいろ出ておるのですが、やりますと、なかなかむずかしい問題で、英国のようにやるから英国式に財政面制限を受ける、或いはアメリカ式の、何ですか、FBIというような変形したものでやつて行くのか、この問題につきまして知事さんがたのお考えですな、それをもう一遍伺いたい。
  34. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) お答え申上げます。この点につきにましては私ども全体の知事の意向は、そこまではまだきめておりません。併しながら私の考えております意見を明確に申上げますと、財政面においては、国と地方団体との何と申しますか、協力という面を余り考える必要はないのじやないか、むしろ地方に御一任になつたほうがいいのじやないかと思います。それから又ただ警察隊長の人事の任免におきまして国家警察権限を保留せられるほうがいいのではないかと思います。
  35. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 田畑さんにお伺いしたいと思いますが、田畑さんはこの改正案におきまして一番問題になつております国警の五千人とか、或いは自治体自由裁量という、こういうものには全面的に御反対のように拜承したのでありますが、現在我々が地方行政委員となりまして地方に参りましても、いろいろ弱小自警の問題に対しまして人事の交流とか、これはもう全部いろいろ御承知のことと思いますが、弊害がたくさんあるのでございますが、こういう点でもただ財政をやつていればいい、或いはあなたが先ほども申されました何と申しますか、要件が備わればそれでいいとおつしやいましたが、現実でそれが可能でありますか。もう一度はつきりと一つお願いしたいと思います。
  36. 田畑忍

    公述人田畑忍君) お答えいたします。今の御質問の国警五千人増員ということですねぞれから自治体警察の枠を外すということにいて私は反対であるということについて、もう一度言えというお話でございましようか。
  37. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 そうして少し現実に私は合わんと思うのですけれども……。
  38. 田畑忍

    公述人田畑忍君) 現実しから申しますと、私は現在の数は決して少くはないと考えております。それは旧警察の時代におきましても、御承知のこと、もつと少かつたのです。新警察制度に切替えられたときに非常にこれは殖えているのですから、それでなお且つ足らんということは不思議に思うのです。なお昨年御承知のごとく、警察予備隊というものができて七万五千人とついうものが殖え更に又特別警察一つとして特審局というのができて、何名が知りませんが殖えておるのです。その上なお殖やすということはわからないのです。それからなお実際の面から見まして、決してそんなにたくさん要らないのじやないか、アメリカ警察におきましても、そう人数は多くはないのです。それで十分やれると思うのです。欲を言えばきりがないと思います。だから威勢を張るのにはこれはいいかも知れないのですけれども国民国家にとつてはいいことではないと、かように考える。治安維持、防犯ができればそれで足りるのであつて、それ以上の警察員を持つておるということは無駄なことであると考えております。若し治安維持が必要だとすればお互いに協力すればいいのです。国警、自警お互いに協力するという点につきましては、現在の警察法に欠陥がありまして、これは是非改正しなければならんのであつて、今度は考えておりますから、その点については私は全面的に賛成しております。それ以上のことは必要はないと思います。その上に機械化されて参りますれば、この人数の足りん点ができればそれで補うべきでおつて、更にこの警察官の優遇ということが大切であります。治安維持という点におきまして、或いは防犯という点におきましてそれができればよろしいと考えます。人事の交流の問題はこれは別な問題になるのじやないかと思います。
  39. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 今のお話誠に御尤もの点があり、又ないような点があると思うのです。旧警察制度と今回の新警察制度につきましては、人の配分が非常に異なつて来たと私は思うのです。都市のほうへ非常に重点がある。又五千人以上のところで今まで駐在が二つ、三人おつたところに十人来たとか五人来たとぁ、そのために非常に少くなる。小さいところにおきましては殆んど駐在のいない五千人以下のところがある。こういう何と言いますか、警察員の平衡でないといつたような点がたくさんあると思うのです。もう一つ警察予備隊と今の普通警察の問題、特に普通の警察官との間におきましてちよつと意見が違いますのでそれは申上げませんが、そういう点を考えますと、あなたはお調べになつたかどうかわかりませんが、昔の警察よりか殖えておるから必要がないと言われましたけれども都市のほうへたくさん持つて来られまして、配分の点に非常に不均衡があると思いますので、この点はお考えになりまして申されておりますかどうか、もう一点だけちよつとお伺いします。
  40. 田畑忍

    公述人田畑忍君) お答え申上げます。今のお尋ねでわかつたのでございますが、この自治体警察についてはその警察員の数は殖えておりるということをお認めになつておると思うのです。併しながらそれに反比例して国家地方警察警察官の数が減つておるりじやないかと、こういうお考えだろうと思うのです。で、私が今のお話になりました五千人弱のところで以て、駐在所がないという話は実は私は知らないめでございますが、若しそういうところがありましたところがありましたとしましたならば、そこには必ず駐在所を置くべきであろうと思うのです。それは私は現在の二万五千人の人数でできないことはないと思います。私は或るところ、京都府下でありますが、駐在所に行きまして、そこに電話がない、警察電話もなければ公衆電話もない。そういうところに金をかけるべきではないか。電話を増設すべきことくらいは何でもないと思うのです。それをおやりになる、これは科学化の一つでございます。そのほかの科学化をやつて行けばこの自治体警察の二万五千人で足りるとこう思つております。
  41. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 私もう一点お伺いしますが、この点におきましてはちよつと意見が違いますが、滋賀県など私はずつと行つて見ましたが、大津市の警察ですか、あの朝鮮人の事件などありましたが、大津市も自治体が少い。それから国警の方面におきましても、ああいうところにおりましても人員は相当程度増さなければやつて行けんと思うのですが、先生は概括的に、学者でいらつしやいますからそういうふうにお考えになりますが、現実とあなたのとはちよつと違うかと思いますがどうですふ、お調べになりましたですか。
  42. 田畑忍

    公述人田畑忍君) その点は私は現実的にも見ておるのですが、それは公安委員をやりました経験上から言いまして、実は国警のほうには関係しませんでしたが、多少調べる機会もありましたから考えておるのです。そういう点からもやつて行けると思つております。それは協力ということです。若し足らん地域がありましたならば、自警が協力したらいいのです。協力しないということが間違いであつて協力できるように警察法改正すれば、つまり協力連絡関係を十分ならしめるような改正立法をされるならば、若し足ららんことがあつても十分補つて行けると、こう思つておるのです。
  43. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 塚本さんにお伺いして、ほかのかたからも私が申上げることについて御意見があればこの機会に言つて頂ければ結構だと思うのでありますが、それは先ほど相馬委員が質問いたしましたときに、たまたま私の名を出されまして、それに関連してすぐ申上げるべきだつたと思いますが、時間が遅れましたが、相馬さんが言われた、即ち名称の問題でありましてり、相馬さんの言葉が、ちよつと私がこれを問題にしている意思が十分に表白されていないと思いますので申上げたいと思うのであります。一応国家地方察と自治体警察という法文上の名称を、実は私個人といたしましてはこの際に変えたいと思つておる。併しこれは関係するところは相当に大きい問題であります。慎重の上に慎重を期さなければなりませんから、目下鋭意自分といたしましても研究をし、又国家地方警察の当局にも研究をしてもらいまして、それに対する報告を求めておるのでありますが、まだ実はそれは出て来ないのであります。と申しますのはマツカーサー元帥、GHQのサゼスチヨンによつてこの警察制度ができたことはよく御承知のことだと思うのであります。国家地方警察という名称を法文に規定たしておりまする、この原語は御承知通りナシヨナル・ルーラル・ポリスという言葉を飜訳しておりまして、その当時当局からいろいろ話をされて参りましたときに、ナシヨナル・ルーラル・ポリス、そうしてその略語はN・R・P、こういうことでいろいろお話をして来ているのであります。これを訳して国家地方警察と飜訳いたしております。それらら自治体警察というのは、これをミユニシパル・ポリス、これを略してM・P、その当時いろいろと当局から話をして来ています。ところがM・Pという言葉に勿論自治体という、ミユニシパリテイという、自治体という言葉がありまするならば、片方のルーラル・ポリスという言葉に対抗いたしましてのミユニシパルという言葉は、即ち農村地帯に対する都市地帶、シテイエンド・タウンというようなアーバン・デイストリクトという意味警察であることは、法文からいたしましても人口五千以上の市街地形態を有しておる場合にこれを置く、即ち市街地形態、アーバン・デイストリクトに置くということは明白でありますから、一方のルーラルという言葉に対抗いたしまして、これは都市警察と飜訳して法文化するということが、その趣旨を十分に表白することができる訳語であると考えるのであります。又一方のナシヨナル・ルーラル・ポリスという言葉は、それに対抗して農村警察或いは村落警察と飜訳することが私は適訳であると思うのであります。でルーラルという言葉地方と訳しますることは、必ずしもこれは全部が誤訳であるということはできんと思ついますが、その意思を体得いたしますならば一方を都市警察と飜訳し、一方を農村警察と飜訳するほうが適訳であると思うのであります。ところがナシヨナルという言葉国家と訳しておるのでありますが、これも又必ずしも全部が誤訳であるということは申すことはできないと思うのであります。併しながらこれを国家と訳しますと、日本人は我々子供のときから国家というものは神様のようなものだというように、いわゆるドイツ公法学の国家屋上主義の思想によつて教育されて来たのでありますから、一般国民及び役人の諸君というものはそういう意味国家、即ち英語で言うならばステートでありますがど、イツ語のデア・シユタートという意味の神格化されたところの国家という意味に、これはもう日本人の観念としては解しているのであります。それでその結果どういう間違いが起つて来ておるかというと非常な間違いが起つて来ておると私は思うのでありまして、即ち国家という名が附いておるから自治体警察よりも一段優位のものであるという、塚本さんがさつきお話になつたよう一つの錯覚観念が非常に瀰漫している。一般に非常にそういう観念になつておる。でありますから新警察法に基いて地方の警官に、お前自治体警察国家地方警察とどちらのほうに行くかと申しますると、この警察法によりましては国家警察本部及び非常事態の宣言というようなことで、このナシヨナルと言いますか、全国的なフアンクシヨンを持つた面が国家地方警察にも一面あります。併しながら運営の面におきましては先ほど高辻さんがお言いになりましたように、府県単位としたるところのルーラル・ポリス、農村のポリス、即ちミユニシパル・ポリスで、法文上の自治体警察に收容することができない農村地帯の警察力を統一として、そうして府県単位にこれを運用して行くという、そういう面が運用の面においては非常に多い。それで今の警察官がどらへ行くかということを問われるときには、警察制度の上から、少くとも運営の面からいえば、自治体警察の面のほうが主眼でなければならん。又警察官の数も一方は九万五千で、一方は三方ということになつておりますが、やはり子供のときから教えられて来た、そういう国家至上主義的な、日本人の伝統的な考えで書かれておると思つておりますから、私は国警のほうへ行きたいということで、国家地方警察、即ちに農村警察を希望するところの警察官が非常に多かつた。そこで又役所のほうでも志望者が国警のほうに多いものでありますから 国家地方警察のほうへ希望するものから抜擢してやりましたから、比較的素質の優秀な人間が、機能の上においてはむしろ劣位にあるところの国家地方警察のほうへ非常に行つておるという結果を来たしておる。だからこれを私はこの際に、一方では国家という言葉を捨てかねるならば、それを使つてもいいと思いますが、私はむしろナシヨナル・ルーラル・ポリスは全国農村警察、そうして一方は都市警察、こういうように言葉を直してしまおうという修正案を私は出したいと思つておりますが、さて修正案を出すということにつきましては、周到なる調査研究に基かなければなりまりせんから、今はその過程にあるわけであります。塚本さんに私が申上げましたのはそういう意味なのです。東京新聞の私は愛読者でありますが、東京新聞の論説委員として、先ほどの相馬君の御質問に対して、そういう意味だということをもう一度お答えを願いたい。又そのかたについても、そのような問題について御意見があればこの際御教示を願いたいと思います。り
  44. 塚本壽一

    公述人(塚本壽一君) 吉川さんの御指摘の通りだと思うのでありまして、できればこれは専門のかたにお願いして、そういつた工合に修正できればいいと思います。修正技術の上においてこれは非常にむずかしい問題も伴うのでありますけれども修正の精神は誠に私は御尤もと思いますし、大賛成だと思います。
  45. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) 現在法律にあります国家地方警察という言葉と、それから自治体警察という言葉一般に与えておる印象は誠に御心配の通りでありまして、私もその通りに考えております。余り適当な名称ではないのではないかと考えております。これは修正に相成りますといたしますれば、只今の都市警察という名称、これも一応適当であると思いますが、一方私先刻から申上げました趣旨に基きまして、むしろ思い切つて警察ということに御改称願つたほうが適当ではないかと思います。都市警察と県警察、こういうふうに考えるのでありますし、なお委員長にお許し頂きまして、先刻申上げましたが、私ちよつと申上げ損なつたと思います点がありますので、一言だけ附加えさして頂きたいと思います。
  46. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) どうぞ。
  47. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) 私どもの主張いたしましたことについて、財政的の地方と中央の関係の点でございますが、地方財政的には、享受的な関係を持つことから煩雑を来たすだろうと思いますので、その意味において財政面地方にお任せ願つたらとこう申上げたのでありましたが、財源等の措置につきましては、別に平衡交付金その他のものにつきましては、更に改めて考慮いたしたら如何かと思いますので、附加えてこの際申上げておきます。
  48. 兵頭丈四郎

    公述人(兵頭丈四郎君) 私も自治警察或いは国家地方警察という名称には反対でありまして、やはり一つ警察が何となしに、おのずから任に服しておりまするものが、お互いに反目をいたしますので、先ほど言われましたように、都市警察府県警察というふうに改めますならば、おのずからそこに融和もできると思います。又検事の勾留をいたします面においても非常にいい、こういふうに考えております。
  49. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ちよつとお尋ねいたしますけれども、各県とも国家地方警察に対しまして、県の公安委員会を通じていろいろな形で相当たくさんの金を、形の変つた寄附金のような形で流しておると思いますが、或る府県については、我々の調査つしたのでは、数千万に及ぶような協力をして、国家財政の足らないところを負担しておるような県がたくさんあると思いまますが、御当地はどういう状態ですか。
  50. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) 私の県におきましても相当の経費を出しております。東北、北陸大県のうちでも私の県が一番余計に出しております。これは全国的に各府県ともだんだんそういう風潮になりつつあります。これは取りも直さずその警察府県治安維持して下さつている、自分警察というような気持が現われておると思うのです。県会等においても少しも異存はないと考えております。
  51. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私も県会議長をやつておりますときに出していたのですつが、実際上の地方財政の建前からいうと、国の機関に対しまして府県がそういう費用を負担するということは、負担区分の建前からいつて財政法の違反なんですが、その地方治安維持してもらつて地方自治団体の発展に貢献するという意味で以て理解できるのですが、私はかなりの負担になつておると思うのですが、御当地ではどれぐらい昨年は出しておられますか。
  52. 高辻武邦

    公述人高辻武邦君) 昨年度はたしか六百万円出しております。これは只今御指摘になりました法律に抵触してはなりませんので、公安委員会の費用として支出しております。
  53. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それでわかりましたけれども、御当地が六百万円というと関西に比べて非常に少ないのですね、参考までですけれども、私の知つているのでは一千万、二千万、もつと越すのもあることを参考までに……。
  54. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ほかに御質疑ございませんか。
  55. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 兵頭さんにお伺いしたいのですが、岡山県からわざわざおいでを願つて、而も職掌柄何と申しますか、沿岸漁業関係警察についているお話があつたのですが、もう一度どういう状況にあるかということを詳しく御説明頂いて、実はわざわざおいでになつておりますから、政府委員にも質してお帰りになられたらいいかと思います。もう少し……。
  56. 兵頭丈四郎

    公述人(兵頭丈四郎君) 漁業制度は開拓の途上にありまして、従つてまだ結論に到達をいたしておりませんので、具体的な問題につきましていろいろ申上げるということは、これは私の想像になりますので如何かと存じますが、先ほど私の申上げました禁止漁業の取締機関を警察に、その所管警察に委ねて頂くように法文化して頂きたいということを申上げたのでありますが、戰前に比しまして漁民が非常に殖えて参りましたために、さなきだに零細漁民であつたものが漸次窮迫へと追込まれて参りつつあるのであります。これはいろいろな意味もあろうかと思いますが、特に実際に現場において働く漁民が殖えたいということが原因のために漁獲が漸次減つておる、こういう実情にあるわけであります。そこに持つて来まして戰争後に戰車漕漁業というものができました。非常に優秀な漁具でありますが、丁度一名方言で「ぶんちん漕」とも申しますが、そこに「ぶんちん」のようなものがくるくる廻つて参りまして、地面を掘つて行きますので、成魚でないところの小さいものを皆取つてしまう、冬眠状態にあります「かに」のようなものも、丁度子を孕んで、今から種族が殖えるというようなものをぽんぽん取つてしまいますために、「かに」のごときは僅かに二〇%くらいしか取れんというような実情に相成つたのであります。そのほかいろいろあるのでありますが、こうした時分にその沿岸漁民は戰車漕というものの漁具を作ろうと思えば、少くとも三十万円の金がなくてはできない。最小限三十万円というようなことで、数人が共同してやるということでありますが、非常に収獲がありますので、これに対しましては勿論重い罰則を加えてあります。懲役、罰金の両制度がありまして、なお且つ漁具、場合によつては漁船をも沒收するという規定があるのであります。でありますから、非常に恐れは抱いておるのでありますが、これが夜間行われる。或いは又集団的に行われる。而も取締を仮に、香川県がこの面に対して取締をいたしますと、岡山県に来て、或いは広島県が取締をすると又岡山県に来るというようなことでなかなかこれが取締の徹底を期することが困難な次第であります。故に所管官庁である海上保安庁に申入れますと、岡山県には宇野に海上保安庁の出張所がありますが、これは課せられた役割がそうした面でないというので禁止漁業の取締はやりません。それからそれでは尾道にある海上保安庁のほうに行つたらよかろうというようなことから、尾道に頼むと何とかしてやろうということで来られるのでありますけれども、その時分には全く姿を消しておる。それで地方国家警察のほうに頼みますと、実は船を借上げなければならないというので、これからすぐ行くということは困難だ、海上保安庁と一つ相談してやろう、追つ払う程度ならほかの船で乗つてつてもいいが、それを捕えて漁具を沒收するとか何とかいうことはなかなか困難だという実情にあるわけであります。それから今申上げましたように「かに」とかいうものを取つて参りましても、魚市場で買うという場合には買うた者も又処罰がある。それらの禁止漁業によつて取つたということを知つて買うた人も、売つた人も処罰があるのでありますが、実際において「かに」の場合で申しますと、そういうような場合にいつも戰車漕漁業を禁止しては食えない、而も香川県と岡山県の中間にある島のごときは七十隻もそれがありまして、それを緩和して欲しいということで、陳情を農林省にいたしております。そうした能率漁業をやめるなんということは以てのほかである、できるだけ最小限度の人を以て大きな能率を上げるというので、それをやめるということは以てのほかだ、而もたくさんの金がかかるというので、それらの業者の人たちは緩和乃至はその罰則を撤廃して欲しいという陳情を行なつておるのであります。地方の零細漁民はああいうものがあつたのでは我々は食つていけない。みんなが一つ少いものを分け合つてつて行くというのでなければ困るじやないか。そこで警察は取締を徹底して欲しいというので、我々の海区の漁業調整委員が取締をして欲しいという陳情をいたしたのでありますが、どうもなかなかそれはそう徹底しないというような実情にある次第であります。でありますから警察署に所管を移して頂きまして、そうして取締の徹底を期してて、みんながいわゆる……一方のほうでは暖衣飽食という者があり、一方には飢えに泣くというようなことのないように、一つ均霑的な漁業を営んで行けるようにやつて欲しいというのが、我々零細漁民の念願であります。
  57. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それでは午前の部はこれで終るこりとにいたしまして、公聽会を休憩いたします。    午後一時五分休憩    —————・—————    午後二時二十二分開会
  58. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) これより公聽会を再会いたします。  鈴木一夫君にお願いをいたします。鈴木君は一般から応募なさつたのであります。三重大学教授をなすつていらつしやいます。
  59. 鈴木一夫

    公述人(鈴木一夫君) 委員長さんのほうから公述人の私たちに与えられました時間が十五分でございまして、その間に重大案件でございます警察法改正の問題についての焦点を論じ盡すということは非常に至難ではないかと思われますので、私は午前前中述べられたかたかたと重複する面は避けるということと、極力修飾語は省いて私の意見の要点を述べさして頂きたい、こう考える次第でございます。そう申しながらもやはり根本問題に触れなければなりませんので本改正案、これに対しまして直接の関連はございませんけれども、法全体の問題としてやはりそこには一連の関連を持つておると思いますので、先ほど東京新聞のほうの塚本さんもその点は御指摘になつたと思うのでございますが、やはり議会制、この本義から行きましてでき得ベくんば議員提出議案というものにやはり重点が置かれ、政府の一方的な政府案によつて法が提出される、そういうふうな傾向と申しますと誤解があるかもわかりませんけれども、状態が可及的に早くなくなりまして、やはり一般民衆は自分たちの選良という意味合いから議員に期待すること非常に大でございますので、できた法が自分たちの法であるというふうな気持を育成するためつにも、先ほど塚本さんとやはり同じ意見になりますが、議員提出議案がやはり重点を占めて行く、こういう恰好に行つて頂きたいと思考するわけでございます。更に次は現下の状態から行きまして、大陸傾向から、私たちの法機構というものが米英系の法のシステムを取入れるということに急でありますために、ややもすると日本の国の社会的、経済的なバツク・グラウンドというものを十分考えないで、この案でいいだろうというふうな深い思考を伴わない法制定というものも、間々見られるのではないかと思われるわけであります。そういうふうな意味合いから、折角根本精神において立派な目標を掲げた、次から次へ出て参ります法が朝令暮改、国会のたびことに一部改正、一部改正を重ねまして竜頭蛇尾に終つてしまう。いつの間にか最初作られた法の精神がそのうちに沒却されるというふうな事態もあるのでなかろうかと考えますので、この警察法改正に当りましても私たちは警察法の前文に掲げましたあつの基本精神というものは、全面的に支持したいと考えるものでございますけれども、それがいつしか警察国家、或いは官僚国家、これは中央集権化というふうなことのないようにということを祈念するわけでございます。  次はそれにやはり総合的に関係するのでございますけれども、大体向うの言葉の訳語でございますけれども日本人は非常に何と申しますか、語感というものに存外囚われる習性を持つておりまして、先ほど午前中も討議の的になりました自治体警察の名称をどうするか、更には国家地方警察の名称をどうするか、この名前はとにかく国家という名前が国民に何といいますか、国家主義の再現を招来するような心配を与えるのだからして、こういうふうな名称はやはり是非改正案に盛り込んでもらつたほうがいいのじやないかというような御意見が強かつたようでございますけれども、この点私も同感でございまして、やはりほかの用語というものにも英語そのまま私たちの個々に当てはめるという場合に、マツチしない言葉もあるわけでございますので、その語感、それを十分一つお考え願いたい。最初余談は申上げないということになつておりますし、制限時間でございますので、本論のほうに入りたいと思いますが、私たちが警察法の前文で許容した精神、これの具体的な現われが警察の他方分権と運営民主化ということに帰着するのでないかと思うわけでございまするが、この法律実施三年有半の実績を考えました場合に、必ずしもこれが所期の目的を達しているかどうかということには多分の疑義が持たれるのでありまして、公僕、警察官の公僕問題が言われながらもその公僕は結局一部のものの私僕と化してしまつている。又地方分権意味から行きましてもこの地方分権の真意がそこに酌み取られずに孤立、対立化というふうな傾向を讓成しているなんじやないか、その結果岡警察機構の中には相剋がありまして、統一性の欠如というものもその結果生れて来ているのじやないか。更にその結果としまして機動性、能率性というものの低下が見られ、一般大衆からは警察力の弱体化というふうな批判が強く下されているのでなかろうかと思います。そこでこれらの問題を勘案いたしまして、この改正の論点とでも申すべきところは、根本精神においては変らない。この民主的な警察がより能率の高い警察になるというのが論点でなければならないのではなかろうかと考えます。そこでそのためには組織の改革を如何にやればいいかというふうな問題に移るわけでございますけれども、先ず結論を申上ずます前に、気付きました主な要点を指摘しまして、その後におきまして結論を申上げたいと考える次でございます。  なお私たちの本日の使命は、警察法の一部改正に対する意見開陳でございますけれども、ここで私たちが忘れてはいけない大きな問題を指摘したいと思うのでございます。それは警察組織法でありますこの法の改正に汲々として、これらに関係のあります一連の法、こういうものを私たちが育成し、或い廃止統合するというふうなまじめさというものをなくしたときには、如何に組織法である警察法だけをよりよいものにいたしましてもその実は挙らない。実は警察の弱体化と言われておりますその原因の大きな中にも、新らしい警察関係、或いは先ほどもちよつとお話が出ました予備隊との関連、海上保安庁との関連、こういつたような一連関係、相関関係においての再検討というものに私はもう少し重点が注がれてもいいじやないか、このように考えるわけでございます。ですからここで特に指摘したいことは、単に警察法改正のみに私たちは専念するのでなとに、これを活かすべくやはりバツク・グラウンド、これの人たちがやはりウエイトにおいても、努力においても惜しまないものがなければならないと考えるわけでございます。  次にそれでは本日の問題であります警察法の実体そのものに入るわけでございますが、これにつきましての私の意見は、結局目途とするところは治安維持、更には予防警察とでも申しますか、治安維持する、それを回復するという以上に、やはり医学の立場の予防医学のような意味合いでの私は治安というものが確保されなければならないのではないか、私たちには国家警察地方警察、これは非常にお互い長を延ばし、短を矯めるというふうな意味合いから非常によさそうにも見えながらも、治安維持というこの目的のためには却つてこの二重の組織が禍いをしておるのではなかろうか。それであればこれを如何なる組織を持つて行くべきかということになりますと、午前中の田中さんの御意見と大体合じようになるわけでございますけれども、名称は先ほど申上げました通りで、府県単位警察と、それから都市警察ではその自治体の、都市人口の問題はございますけれども、特にローカル、地方府県実情からいたしましたときには、その人口十万くらいのところへ置いて然るべきでないか、それについてのいわゆるデータは揃つておりますので、又後刻御質問の際にそれについてはお答えしたいと思います。結局におきまして名称は十分又考こることにいたしまして、組織をとにかく一元化する。府県の民主的な警察とそれから都市の民主的な警察、そういうふうな組織にいたしまして、結局現在の相剋の問題も、同じ警察官でありながらも市町村警察国家公務員であるところの警察、この間に身分、待遇においてひとしく見えてはおりますけれども、非常に大きいアンバランスも介在する。こういつたような事例も組織の一元化というところから私は解消いたしまして、府県都市とのウエイトは如何という場合には、先ほどこれも田中さんがおつしやつたのと同じでございますが、そういうふうな組織にして行けば、午前中に問題になりました両者の協力、提携ということも、上下関係ではなしに、身分待遇においてもひとしいというふうな組織機構を考えれば、機動、能率性というふうな問題におきましても十分の成果が挙り、従つて国民の期待します民主警察能率化という問題も私は徐々に解消されて行くのではなかろうかと思います。而もその場合私だちは現在の改正案では満足できないのでございまして、最初国警当局或いは政府が意図しましたものとは町村会長の意見聽取、或いは府県知事意見聽取、自治体警察意見聽取、或いはそういう面からの反撃というふうなものからいたしまして、最初企図したものとは相当変つたものになつてしまつて妥協的なものになつておるというふうなここに実態もあるのではないかと思いますが、実際地方で私たちが自治体警察或いは国家地方警察、民衆、更には検察庁というふうな方面での意見を聞きました場合におきましても、とにかく現在よりももつと治安の確保を頼める、頼もしい警察になつて欲しい。その場合に頼もしいという言葉の中には、ちよつと言葉が前後撞着してしまいましたけれども、そういうふうな根本の希望は変りはないといたしましても、漸く最初企図したものよりは折衷が加えられまして、自治体警察あたりにおきましても現在のなら我慢できる、こういうふうな改正案なら我慢ができるのじやないか、府県知事さんのほうにおかれましても、午前中の意見がございましたようにとにかくまあ了解できるというふうなことでございましたけれども、単にそういつたような反撃といいますか、そういうものによつて妥協されたものが、これが一応妥協点まで来たからこれで改正ができたので、問題はないのだというふうな微温的なものではなしに、もつと高邁な見地からの検討がなされていいのではないかと思う次第でございまして、その意味で先ほどそれぞれのかたかたの意見がございましたけれども、やはり公正な批判を下すという見地に立ちましても、自分の地位というものはどうしても人間の弱体の関係りで介入するのではないか、こういうふうに考えます。単なる妥協ではなしに、先ほど申しましたようによりよきものを得るという方面での真摯なる努力というものが払われなければいけないのじやないか。それで色目と申上げますと語弊があるかも知れませんが、そういうものをなくするという意味合いからも一本の……府県都市警察がございますけれども、それが内容的には同じようなことをする、而も府県知事の下にそれを置くということになりますけれども、その府県知事が思想的な問題と関連いたしまして、極めて右である、或いは極めて左であるというふうな場合には、二十二條の二項の精神も私はむしろ逆行するというふうなこともなきにしもあらずというふうに考えますので、現在の国家地方警察のあの人員、あの組織、あの装備というものは、これをとにかく府県自治体の、府県警察の中にこれを移行する。そうしてだんだんこれに対しましては知事その者にも啓蒙の時期が来、而も国警が移行しました自治体警察というものにも、その間のやはり切瑳琢磨によりまして、私はむしろそれが民主的警察の、一つの過程になるのじやないかというふうに考えるのでございます。でございますので結局一元化する。而もその一元化を、府県と名称は分けてございますが、それと都市警察……、都市警察地方自治体からして十万以上、或いはその人的装備の面におきましては現在の国家地方警察を延用する、そういうふうな仕組。而も更に府県警察都市警察との間の上下のそこに関連はつけなければいけない。こういうふうな恰好のあり方を期待したいと考えるものでございます。  それから更にこの中央集権化、独裁化というふうなものを防ぐ一つ目的といたしましては、委員会制度につきまして、そういうまだ私たちもこれの妙味を発揮するだけの運用が十分なされていないわけでございますけれども、この委員会、例えば警察の場合でございましたら公安委員会の運用の妙を期するということになれば、独裁化、専制化、或いは中央集権化というようなものも、そこにおのずから私は防止できる途も講じられるではなかろうか、このように考えるわけでございます。この国警を一応府県警察に人員を延用すると言いましたのは、戰時中……、これは先ほど田畑さんもその点を指摘されたのでございますが、人員の多くなるということは好ましくないという論拠のように伺つたのでございますが、戰時中三重県の場合でありますと、一千名くらいの警察官治安の確保がほぼできておつた。ところが現在地方警察が八百人、市町村警察が八百八名、それから国家地方警察が六百名ばかりで、千四百余名ばかりでありますが、併しその中には二つの組織がうまく噛み合わない関係でのギヤツプ或いはロスというものがございますので、この一体化というものを実現しました場合には、私は一千四百名くらいの現在数で以てローカルの、とにかく治安は確保できるというふうに、人的な問題の面から考えるわけでございます。  次は少し小さいと申しますと誤解があるかも知れませんけれども、人民投票の問題でございます。現在の人民のいわゆる意識の状態というものから考えました場合には、私はむしろこの人民投票という制度は逆効果を及ぼす場合が多いのじやないか、このたびの地方議会の選挙におきましても、その投票が本当に正しい投票ではなく、単に数のみの投票であつたというふうな点も勘案されますので、この人民投票の制度については更に私は十分なる考究を加えなければならんところの余地がここに介在しているのではないかと考えるわけであります。午前中からも名公述人のかたにおかれましていろいろな面を指摘されておりますので、与えられた時間を余り超過することも如何つかと思いますので、触れ得ない面も多々ございまして残念なんでございますけれども、一応この点でとどめまして、あとの御質問の際にいろいろ調査したその内容、こういつたものを一つお話したいと思います。以上で私の意見開陳を終らせて頂きます。
  60. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。
  61. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 質問ではないのですが、午前中に実は兵頭さんにお伺いした点を……、兵頭さんはわざわざ遠くからおいでになつているるで、国警側からでも、どういう意向であるか解明して頂きたいと思うので、ちよつとそのほうで質問をお許し願いたいと思います。
  62. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) どうぞ。
  63. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 それは禁止漁業の取締について、海上保安庁等も密入国とか密貿易のことで忙がしぐて、余りしつかりしたこともやつでもらえん。或いは国家地方警察では船なんというものの施設が完備しておらんということで余り大したこともできない。で沿岸零細漁民は非常に困るから、是非こういう点はしつかりやつてむらいたいというのでありますが、そういう公述があつたのですが、海上保安庁或いは国家地方警察なり、自治体警察等、それぞれの理由で、海面における取締等、いろいろ問題があろうかと思うので、この際公述人もわざわざ遠くから参つているので、国警側の考えをお伺いして置きたいと思うのであります。
  64. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 海上の取締のことでございますが、海上保安庁法ができます際におきまして、これは警察制度の改革とほぼ同じ時期において行なわれたものと記憶しておりますが、その際におきまして、当時警察の持つておりました船はこれをすべて海上保安庁のほうへ、極く小さなものは若干残つたかとも思いますが、殆んどすべての船を海上保安庁のほうに譲り渡すことにいたしまして、海上における犯罪の捜査、被疑者の逮捕というような仕事は、海上保安庁法の建前からいたしまして、海上保安庁の権限責任になるということになつたのでございます。ただ海上保安庁法におきましりては、海上保安庁は関係警察に対しまして援助を要求できるということになつておりまして、警察のほうといたしましては、援助の要求がありました場合には出て行く、併しその場合にも船はございませんので、或いは海上保安庁の船に乗つて行くとか、或いは特別に契約しておきました船をその都度借りるとかいうようなことをいたしております。又これとは別に警察法の五十八條の関係で、警察の管内に始まりました犯罪、例えばこの場合は陸上に始つて海上に出た犯罪でありますとか、或いは海上に始つて陸上に出た犯罪でありますとか、関係します場合におきましては、警察法によりまして固有の権限を持つているわけであります。併しそれとても今申します通り船がございませんので、非常に困難を感じている事項一つでございます。海上保安庁のほうの船が十分でないということもいろいろの機会において聞くのでございますけれども、午前中お話になりましたような事態があつたといたしますれば、私どもといたしましてもこの方面に更に国会のほうの御審議を頂きまして、適当なる権限と職責をお考え頂けば結構であると存ずる次第であります。
  65. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それでは次の公述に移ります。土屋正三君にお願いいたします。土屋さんは学識経験者としておいでを願いました。
  66. 土屋正三

    公述人(土屋正三君) 今回の警察法改正提案理由にもございますように、警察力強化とその警察運営能率増進を目的としているようであります。国家地方警察の実人員を五千人増加する。或いは又弱小自治体警察住民投票によりつて整理させまして、それだけの数は国家地方警察増員になる。こういうような方法警察力強化せられます。或いは又改正法案の二十條の二でありますか、特別の場合においては国家地方警察自治体警察の管内で職権を行使することができることを認め、或いは又従来規定が明確でないためにいろいろ疑念のございました市町村警察が、国家地方警察なり或いは又他の市町村警察に応援をすることができるようにはつきり認め、或いは又国家地方警察の応援を求めたり、或いは国家地方警察要求によつて市町村警察が他の市町村警察に応援に赴いた場合、こういうような場合の経費を国庫が負担することによつて、応援が楽にできるようにする。或いは又各種警察相互間の犯罪に関する情報の交換をするようにする。或いは又各種警察が他の管内において職権を行使し得る場合を拡張する。かような各種の方法によりまして、能率の増進を企図しているということが窺われるのであります。今回の改正によりまして、現行法の欠陥を或る程度是正しようとするのでありますが、この欠陥は実は立法の当時においてすでに考えられておつたことなのでありまして、私はたしか昭和二十二年の十一月の何日かでありましたか、やはり当委員会公聽会にお呼出しを受けまして、これらの点につきまして或る程度意見を申上げてあります。  今度お呼出しを受けましたので、古いメモをひつくり返して見たのでありますが、そのうちに弱小自治体警察の問題につきましては、人口五千程度町村で果して独立の警察維持し得る力があるだろうか、いやしくも一つ警察単位として、有効な活動をなし得るには最小限度の人的、物的設備を要するので、それは人口五千でも一万でも大した相違はない、人口五千だから人口一万の半分でよいというものでは決してないということを申しております。それから各種警察相互間の連絡提携につきましては、警察行政における地方分権は本質的に何ら反対すべきものではない。ただ警察地方分散しても、警察取締の対象を、例えば犯罪のごときものは全国的、少くとも数府県に互つて行われるものがますます増加する傾向にあるのであり、分散した各地の警察の働きが、相互に十分連絡協力して行われるのでなければ到底目的を達することはできないと述べ、又市町村警察国家地方警察運営管理、又は行政管理に服するのではない、両者の関係は単なる協力又は緊密な連絡の範囲にとどますのであるから、自治体警察相互間並びに国家地方警察自治体警察を一貫したる組織的系統的な警察運営管理はでき得ない、全面的な警察運営管理の統制は、警察地方分権の精神に牴触するかも知れないが、第五十四條乃至第五十六條に再検討を加えて、場合を限つて警察運営管理の或る程度の統制を国家地方警察自治体警察とを通じて認める必要がある。それでないと警察がばらばらとなつて成績が挙らなくなる危険があると申上げておつたようであります。これらの意見を私は今日においても何ら変更を考えておりませんので、従つて今回の改正によりまして、これらの点が改善されますことは大変結構なことと思うのであります。ただ今回の改正法の趣旨が、国家地方警察の拡充強化によつて市町村警察の弱点を補正するような考え方にあるのではないかと見受けられるでありますが、果して然りとすれば、これは現行警察法根本精神と矛盾するものであると思います。その点だけを一点申上げさせて頂きたいと思うのであります。  現行警察法根本理念は、これは申上げるまでもなく警察民主化とその地方分散であります。これは警察法の前文なり或いは又各條項に明瞭に現われております。警察法の母体とでも申します、かの二十二年九月十六日でありましたか、マツカーサー元帥の書簡がございますが、この書簡は、従来の日本警察国家だつということを痛烈に批判いたしまして、今後の警察はは憲法に盛られた地方自治の原則に則つて、完全に地方分散したものでなければならん。過去における国家権力による警察力濫用の根本的是正をなすには、中央集権的統制に不可分に附随する警察国家可能性は最も注意して避けねばならんとも申しております。又警察力を現在の中央集権的形態において保存することは、新憲法の精神及び意図と全く相容れないとも述べているのであります。然るに警察法施行以来その改正がしばしば世上の話題に上つております。これは或いは下山事件でありますとか或は三鷹事件でありますとかといつたような、世上の不安を抱かしめるような事件が起りますと、この警察法改正が問題になるんであります。そうして要求せられるところは、常に国家地方警察の拡大強化であり、政府警察に対する指導力の増強であります。若しかくのごとき声が真に国民の世論であるといたしまするならば、これは国民民主化せられたる警察に対する不安、若しくは一種の不信任を抱くものである。これでは現行警察法日本の民情に照しましてむしろ進み過ぎておるのではないかと思われるのであります。警察法の前文にもあります通りに、警察は個人の権利と自由を保護するために国民に属する民主的権威の組織で……、こう前文に書いてありまして、果してそれであるならば、その仕事は、これも前文に書いてあるのでありますが、個人と社会の責任の自覚を通じて行われるべきものなければならん。事件が発生するたびに治安維持に強力な国家の権力の発動を要求するというのでは、民主警察維持して行く資格はないと申さねばならんと私は思うのであります。現行警察法アメリカ法律に倣つたものであり、アメリカ法律がイギリスの法律に出たものであることは、これは申すまでもないのでありまするが、イギリスの警察の歴史などを覗いて見ますというと、中世紀におけるイギリスの治安は必ずしも良好ではなかつたのであります。併しながらその当時のイギリス国民は、今日でも同様でありますが、治安維持国家の権力の発動を要求することは極めて稀でありました。或る学者はこういうことを申しております。当時有力な警察があつたならば、各地に発生した騒擾は大事に至らずして食いとめることができたのであろうが、イギリスの自由のためには幸いにも全国一般に亘つて威力を振い得るような強力な警察はイギリスには曾つて存在したことはないと言つております。これは二十世紀の初めに出ました書物に書いてあるのでありますが、多少の騒擾ぐらいはあつても、全国一般に亘つて威力を振い得るような強力な警察はないほうがイギリスの自由のためには仕合せであるというこの説は、これは大いに注目すべきものであると私は思うのであります。いやしくも民主的警察を持つ以上は、多少の社会不安がありましてもびくびくしないで、国民自身の力でこれを解消せしめるぐらいの太い神経がないというと、民主警察というものはやつて行けない。地方分散せられました警察が、中央集権下における警察に比べまして能率の下がることはこれは当然であります。その能率の下がつたところは、或いは全員の増加なり装備の充実なり、訓練の徹底なり、物約精神的両方面からこれを補充すると、口では容易に申しますが、実際にはそれはなかなか容易なことではない。警察能率が従来に比べて多少下がつても、それは国民のために人間の自由の理想を保障する、これは前文に書いてある大理想であります。又は人聞の尊嚴を最高度に確保する、これもやはり前文に書いてある大理想でありますが、こういう大理想のためには、警察能率が少しぐらい下がつても仕方がないのじやないか、止むを得ざる犠性であると覚悟しなければならない。かような国家地方警察の拡充という声が果して国民の真の世論であるかどうか。今般頂戴いたしました資料を拝見しますというと、自治体警察を或る程度において縮小するとか或いは廃止するとかいうような意見が大分あるようであります。併しこれは私の考えでは、主として財政上の理由に基くものであろうと思います。弱小警察を合同するとか、或いは国家の補助金が出るとかいうようなことで、財政問題が解決されましたならば、恐らくこういう声は影を潜めるだろうと思います。これだけを以てこの自治体察警の縮小が世論であるとは断言できないと思う。併しながら若しも只今申上げましたような国家地方警察拡充論が、真に国民の世論であるといたしますならば、いやしくも現行警察法の精神を確保する以上は、国家国民を指導啓発しまして、民主的警察にふさわしき心構えを体得するように指導すべきものであると思う。然るに今回の改正案は、或いは直接間接に国家地方警察増員を図つて、或いは一種の準非常時体制とでも申しますような二十條二の規定を設けまして、国家地方警察自治体警察の管内で職権の行使ができるというような場合を設けるのは、あたかも私に言わしめれば、誤つておる世論に迎合するやに見えるのは甚はだ遺憾とするところであります。現在の警察が弱体であるとするならば、その強化策は、どこまでもこれは自治体警察の側にこれを求めなければならん。例えば小さい自治体警察を集めまして、強力なる警察隊員を作る、或いは又午前中にも御意見があり、只今もあり、私も同感でありますが、府県警察を作る、これは今日の府県は我々の関係しておりました当時と違いまして、純然たる自治体でありますが、この現状で警察を求める、かような方法をすれば自治体警察強化する方法は幾らでもある。警察強化、即国家地方警察強化であると断ずるのは、これは論理の飛躍であると私は思うのであります。国家地方警察は元来、これは申すまでもないことでありますが、独立の自治体警察維持する力のない小町村に設置せられるのでありますそれで今回の改正によりまして独立警察を返上する町村が多少出て参ります。併しながらいやしくも市の名のつく以上は、三万ぐらいの人口の地でも自治体警察を持つ、そういたしますと国家地方警察は山間僻地とか或いは農村とかというような警察事故の比較的少い方面を管轄するのであります。これは申すまでもないことでありますが、この方面の警察強化いたしましても、その本来の管轄区域の警察力強化になりますが、警察事故の発生する、従つて社会不安の種をまく大都市、中都市警察力は、結局には何ら強化にならない。そこで今回の改正案第二十二條の二によつて、いわば地方非常事態ともいうような特別措置を設けたり、或いは又応援を楽にするようにするというようなことをいたしまして、国家地方警察機動力を発動させる、そしてこれで国家地方警察市町村警察の管轄区域内で仕事ができるようにするのであります。今回五千人の増員があるのでありますが、これも私の考えでは、恐らく予備隊等の形式で集団的に配置するようなことになりはせんかと思うのでありますが、それは警察の力の強化を必要とする方面を強化しないでおいて、強化の必要のない方面を強化して、それを必要の方面に転用しなければならんということになるから、かような間接的な措置をとるようになる。何故率直に警察の必要の方面を強化しないか。現在政府自体が自治体警察を信任しないのではないかというように、これは私の僻みかも知れませんが、そう疑われるのは誠に遺憾なことであります。或いは今日の何條でありましたか、自治体警察定員、四十六條三項ですか、自治体警察定員の枠を撤廃しましたから、必要があればこれで拡充ができるではないかというような意見があるかも知れませんが今日の地方財政の現状におきまして、国家の補助金がなくて、お前は勝手にどうでもしろと言つても、これは無理であろうと思います。私は世上伝えられますような、今回の改正案官僚警察復活の野望だなどといつたような批判に決して同調するものではございませが、併し衣の下から鎧がちらちら見えるような気がしないでもないのであります。  それで日本の現状に鑑みまして警察あり方について、国家警察がいいか、自治体警察がいいかという問題になります。即ち現在の警察法がないものといたしまして、白紙に立帰つて日本警察法を立案する場合になりまするというと、私はむしろ国家警察をとるのでありますし。私は曾つて警察官の一員といたしまして、日本警察が、例のマツカーサーの書簡でこきおろされておるような不都合な代物であつたとは必ずしも考えないのでありますが、勿論幾多の欠陥はあつたに違いありませりん併しながらこれは適当に補正いたしますれば、国民の信頼を博し得る、有効適切な国家警察であり得ると考えます。警察の対象である犯罪その他の警察事故が全国的に、若しくは国際的に互いに連絡して活躍するのでありますから、それを取締る警察がばらばらでは能率が挙がらないことは、これは当然であります。併しながらこの問題はすでに現行警察法の採用によつて警察民主化警察地方分散が国是として決定しておる、この国是を変更しない限りは、日本警察の中心はどこまでも自治体警察である。若し警察強化の必要があるならば、自治体警察強化すべきである。国家警察強化することによつて自治体警察力の欠陥を補わんとするごときは倒行逆施せんとするものであると思うのであります。現行法の数個の欠陷が、今回の改正法案によつて補整せられますことは誠に結構でありますが、これは今回の案のように、国家地方警察の拡充にようなくとも、例えば府県繁繁を作りまして、これに現在の国家地方警察の全部と、それから自治体警察の次部分を吸収するというような方法をとりますれば、自治体警察強化によつて、今回の改正法案目的を達することはできるのであります。国家地方警察を拡大強化する行き方は、現行警察法根本精神であります限りは、私は俄かに賛成はできないのであります。今回の国家地方警察は本部長官を初め全部が警察官であります。これは今回の改正案によりまして、一層明瞭になるのでありますが、従いまして昔の内務大臣——府県知事系統の旧警察に比べますというと、より中央集権化されているとも言える、これを強化いたしますことは、マツカーサー書簡において、これだけは防止せなければならんといつておりました「中央集権的に統制された国家警察網が、再び形を変えて現出」するものであるという批判を免れないかも知れない。国家地方警察を拡大強化するならば、むしろ民主的警察の看板を外すがよろしい。それならばこれならばこれは一つの立派な見識であると思います。民主的警察の大旆を振りかざしておりながら、而も国家警察を拡充するというのは、これは羊頭狗肉と言つては大変失礼でありますが、少くとも角を矯めて牛を殺すぐらいのそしりは免れないと思うのであります。
  67. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 次に佐藤和三郎君お願いいたします。  市長代表としておいで頂きました宇都宮市長であられます。
  68. 佐藤和三郎

    公述人(佐藤和三郎君) 今回の警察法の一部改正について一応の意見を申上げたいと存じます。  只今お話もありました通り市町村自治警察が発足いたしまして、大体三年ぐらいになりますが、逐次これに対しまする充実が図られつつある現状であります。殊に自治体といたしましては、更に行政事務の再配分等に基きまして、今後確立を見なければならないわけでありまして、自治体立場から申しまするならば、当然自治体自身についてやられる行政をやつて参るということに相成るであろうと存ずるのであります。その点につきまして、つまり自治体警察におきましても、当然今後の拡充を図つて参る必要があるわけであります。ただ現在の自治体といたしましては、只今もお話がありました通り財政面というものに或る程度の制約を受けているわけであります。而も現在の社会情勢から申しましても、国家非常事態の場合には特別な六十三條、六十四條が規定されておりますが、地方的な非常事態と申しまするか、かようなことも考えられるわけであります。大きな騒擾事件或いは内乱というような場合においては、果して現在の自治体だけでよくこれを収拾できるかということについては、甚だ遺憾なるがら不安なきにあらずということになるわけであります。その関係におきまする今回の二十條二のということにおきまする関係が規定されておるわけでありますが、我々は自治体立場から申しまするならば、原則的には反対せざるを得ないのでありまするが、かような面におきまする実際問題としての立場からいたしまするならば、これも例外として認めざるを得ないという立場になるわけであります。ただ従いまして、これはその例外規定でありまする関係上、治安維持上重大な事案で止むを得ない、真に止むを得ないものに限るというふうになるわけでありますが、果してこれを拡張解釈されたのでは困るわけでありまして、飽くまで一自治体或いはその他において到底收拾できないという見込のある場合にこれは限定さるべきものであるというふうにして置かれなければならないというふうに考えておるのであります。この点に対し、勿論これは国家非常事態の宣言の場合と同様な取扱になるのであろうと存じまするが、例示がありませんので、飽くまで地方的な治安維持上の重大事件であつて、いわゆる地方自治体、一部自治体だけでは運営できない、これが収拾ができないと見込まれる場合には、然らばどういう問題があるかということにおいては、十分一つこれは例示なり、その他の取扱等においても十分にお考え置きを願いたいものであるというふうに考えるわけであります。更に、この場合に関しまして、これは手続上の問題になるかと存じますが、知事が県の公安委員会にこれが請求をいたす、これはその場合においては、都道府県の公安委員は、その措置をとらなければならないことになりまするが、その措置をとる場合に、自治体の公安委員のほうにも然るべく連絡を願うということも必要ではないかというふうに考えるわけであります。これは国家非常時宣言の場合と同一に論ずべきではないと考えるわけであります。その他、今回、国家地方警察及び地方市町村自治体警察との相互関係というものにつきましては、今回規定せられておりますので、大変便利に改正されると思います。従来この点については非常な悩みを持つておつたわけであります。幸い今回の原案にあるわけであります。この点につきましては賛意を表する次第であります。その他市町村関係につきましては、私意見をこの際御遠慮申上げたいと存ずる次第でありますが、更にこの際、希望意見といたしまして、人事の交流の問題についても考えて行かなければならない。御承知通り自治体警察ということになりますれば、どうも長く滞在し、そこに勤務をするということになりますので、結局下におりますかたは昇進の道がない、くさつてしまう慮れが多分にあるのであります。やはり巡査は巡査部長に、又は警部補に昇進の道を与えるということは、誰しも考えておるわけであります。これらに対し、定員條例というものにおいて抑えられて、そこに勤務するということは、若い警察職員をくさらせる虞れがあるということが考えられるわけであります。それからなお、退職年金に関しまする今回の経過規定には、今度の町村において警察維持しないという決議をされた場合の、町村における警察職員の退職関係につきましての手当については暫定規定がありまするのでありますが、従来の国家警察から自治警察に入つた場合における規定が未だにないのであります。と申しますのは、自治警察はまだ三年少しでありますが、警察官は非常に長い期間勤めておるわけでありまして、それまでは府県警察といたしまして、自治警察に入られましたかたは、署長のごときは三十年にも或いは三十数年にも亘る場合もあるのであります。この場合、自治警察に入つてやめるという場合は、当然退職手当をやらなければならんわけでありますが、その場合に、府県警察としての年数も通算されるかどうかという非常に自治体としては財政上因るわけであります。そういう点につきましても、やはり経過規定を置いて頂いて当然それは府県負担になる、或いは国の負担になるというようなことも規定して頂くということが望ましいのであります。かように考えるのであります。  以上大体要旨を申上げました。
  69. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。  それでは御質疑を願います。
  70. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は土屋先生に二、三ほどお尋ねしたいのです。公述された御意見は誠に貴重な、そうして私どもにとつて非常に参考になることで本当に有難うございました。  先ずこの際是非ともお伺いして指導的な立場からお示し願いたいと思いますことはこ本質的にはこの一部改正法律案がいい悪いという問題でなくて、具体的な問題なのですが、弱小自治警察を廃止するかしないかということを住民投票に訴えるように今度の原案はなつております。この住民投票がどのような形で行われるかと思うかとの質問に対しまして、政府側の答弁は終始首都建設法案その他で住民投票をやつた経験に徴して、大した問題ではないと思うという意味合いの答弁に盡きておるのでございますが、非常に国民と緊密な関係を持つておりまする警察を廃止するかしないかという問題について国民の関心は異常に高い。併しながら何が故に廃止するのであるか、又どういうわけでこの住民投票が行われるのであるかということに関して何人がこれを的確に説明するのかわかりません状態が出て来ると思うのでございまして、先生の該博なる御研究から推論いたしましてつ、この住民投票がどのような形で行われ、而も極めて問題であろうとするならば、それはどういう意味でこの法律案にも考慮を払わなくちやならないかというような意味において是非ともお示しを願いたいと存じます。
  71. 土屋正三

    公述人(土屋正三君) 只今の御質問は実は私がお答えするのはどうかと思うのでありますが、折角の御質問でありますから意見を申上げますが、私は実は只今の御質問のようなことは考えたことはないのでございますけれども、只今のお言葉の中に首都建設法と同じだという政府委員の説明であつたということがございましたが、首都建設法の住民投票とこれは大分違うと私は思います。私も東京都の住民でありますから首都建設法の住民投票をいたしましたが、併し何ら説明も受けておりませんし、ただ新聞の片隅で多少承知いたしておりましたが、恐らく東京都民の大部分は何かわからずに投票したのだろうと思うのでありますが、ところがこの警察のほうは大体まあ人口五千から一万程度弱小町村で恐らくあるだろうと思いますから、範囲が非常に狭い、それから問題が非常に身に迫るシリアスな問題であります。首都建設法というのは丁度絵に描いたようなものでありますけれども警察の問題はこれは日常の問題でありますから、もつとひしひしと住民の身にこたえるのであろうと思います。これはまあ大体今度の制度は住民が自分自分の身を守るということが本旨でありますから、誰も自分のところでやることには違いないのでありますが、ただ私は現在の状態ではそうそうは負担が堪え切れないから返上するということになるだろうと思うのでありますが、そこでこれは首都建設法とは大分違いまして、もつと身近な問題として考え、それからこれを進めるほうの側も、これに反対するほうの側も膝を交えて話をするような形がとりやすいのではないかと思いますが、併しこれは只今思い付きの意見でありまして、詳しく考えたわけではございませんから、御了承願います。
  72. 相馬助治

    ○相馬助治君 甚だ御無理なことを申して恐縮でありました。第三点は政府提案理由説明を見ますというと、現下治安の実状に鑑み警察力強化ということを謳つておるのでありまして、私ども委員会で問題にしておりますことは、現在の警察予備隊との連関をどう考えるかということを我々は頻りに政府に尋ねたのでありまするが、その答えは常に我々をして満足せしめ得なかつたのでございます。そこで先生のお考えといたしましては、こういう一部改正法律案というものは、警察予備隊或いは海上保安庁という方面との連関の上に立つてなされるべきであろうと私自身は思つておるのでありまするが、これについて一つこれ又甚だ無理なことを聞くようでございまするが、指導的な立場を以て御見解がありましたならば、是非聞かして頂きたいと思います。
  73. 土屋正三

    公述人(土屋正三君) 只今お尋ねの点は、ちよつと私は御趣旨を十分に取りかねましたから或いは間違つた答弁を申上ぐるかも知れませんが……。
  74. 相馬助治

    ○相馬助治君 ちよつと先生、速記を止めて。
  75. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  76. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 速記を始めて。
  77. 土屋正三

    公述人(土屋正三君) 只今の御質問に対して私の意見を申上げますが、警察予備隊のことは官報とか或いは新聞で見るだけでありまして、よく知らないのでありまするが、どうもまだ制度的にももつと補修を要する点が多々あるのじやないかと思うのであります。あれだけ見ましたのでは、はつきりいたしかねます。併し私どもの素人考えといたしましては、日常の治安維持というものは、警察予備隊を使うべきものじやない。これはもう現在の制度では、国家地方警察なり或いは自治体警察だけでこれは維持つする。ですからそれについて政府当局が日常の治安維持するに足らんという確信があるならば、これは増員要求されることも無理からぬことであると思うのであります。然らば警察予備隊というのは、どういうところに使うのか。これは私もよくわかりませんが、これは日常の治安が乱れましたときに、外科手術のようりな場合としてり考えていい。すでに警察予備隊を発動いたしますときは治安が乱れているときなのでありまして、それを抑えるために予備隊を発動する。平素の治安というものは予備隊に頼らないで、これは普通の警察維持すべきである。かように私は考えます。
  78. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 鈴木公述人にお尋ねいたしますが、一つの私案とされまして人に十万くらいの都市まで都市警察を引上げ、あと県一本にまとめるような案を示されたのですが、その県一本にまとめた警察というものは、これは人口十万以上の都市以外の自治体の連合組織としてのいわゆる自治体警察と理解していいのですか、その性格なんですが……。
  79. 鈴木一夫

    公述人(鈴木一夫君) 今の御質問に対してお答えいたします。私が大体一体化、一元化、単一化と言いましても、府県警察、それから都市警察、こういうところではつきり私の御趣旨を酌み取つて頂けなかつたところもあるのじやないかと思いますが、いずれにしてもその警察が民主的でなけりやならないということは当然なんでございますが、その場合にその両者の関連、並びにその性格というものにつきましては、先ほど土屋先生からもおつしやいましたように、現行のやはり警察法趣旨根本精神を体する以上は、飽くまでも私はこれは自治警察という性格を備えなければいけないじやないか、それから人口十万と申しましたのは、これは実は三重県という地方的な……全国的な視野ではございませんで、三重県という環境からの判断で、非常に偏見並びに私見に亘つてしまうのじやないかとは思いますけれども、現在三重県では十万以上の市街地は四日市だけでありまして、その他は四万、五万、六万、こういつたのが大体市でございます。それから国警の……、それからそのバランスをとつて行きますと、現在市町村警察が二十六あるのでございますけれども、その中で市街地が、市が七、それからあとは大体人口五千……一万を超したところは殆んどないと存じますが、そういつたような実態でございます。で、その町村を除きました市のほうでも十万を超えるのは四日市がありますだけでございますし、その他の市部にいたしましても、現在の人員を大体支えるので市の経理、経済の方面も精一ぱいじやないか、更にはその人員面でも精一ぱいであり、機能面からいたしましても、やはり国警との間にトラブルもありながらも、やはり援助というふうなものを受ける面もあるのじやないかと思いますし、いずれにいたしましても市の経理の問題、それからその経理に関連いたしまして、これは国警対自警の問題だけではなしに、その市の吏員、これとの間に相当その給与に間しまして睨み合いの状態が出て来ておる。更には公安委員会が、市会或いは警察というふうな、その間の本当に委員会としての妙味を発揮するのではなしに、先ほど兵頭さんのほうからもおつしやいましたように、何と言いますか、自治警活動の悪い意味でのコントロールというふうな関係もございまして、それに対する市民の強い相当な批判も浴びておりますので、そういつたよう意味合いをいろいろ勘案いたしまして、私は特に三重県が、四日市が十万以上であり、四日市の実体というふうなものを考えまして、非常に狭い視野ではございますけれども、最初のこの法律の出ました当時のいきさつあたりからも勘案いたしましても、やはり十万くらいがいいのじやないかというふうな大体基準を一応立つて見たわけでございます。
  80. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 上屋先生に一点だけお尋ねしまして、お考えをお聞きしたいと考えるのでありますが、今度の改正案の内容には入つておらないのでありますけれども、私、判断の一資料にいたしたいと思いましてお聞きいたしたいのであります。現在の警察法によりましては、市は勿論、当然警察維持するわけでございますが、人口五千以上の市街的町村維持する、こういうことになつているのは御承知通りでありますが、従いまして人口五千未満の町村維持することはできないことになるわけであります。従いまして、それは国家地方警察の区域に入つておる。こういうことになるわけですが、ここに一つの大きな自治体警察がございまして、その近くに人口五千未満の市街的町村でない町村があるということを仮定いたします。ところがその町村は平生の日常生活は殆んどその市と大体同じような生活をしている。当然合併されてもいいような状態であるけれども自治体関係からして合併もされていないというような町村があるわけです。そういう際に五千未満の市街的町村でない町村が、大きな自治体と一緒になつて自治体警察を連合して作りたいというような希望があつた場合には、それと一緒に警察維持するということに仮に法律改正するというような場合に、土屋先生はどういう御意見を持たれるか、その点を一つお聞きしたいと思つております。他の、誰かほかのかたでも御意見がありましたらお聞きいたしたい、こう考えるわけです。
  81. 土屋正三

    公述人(土屋正三君) 只今鈴木さんからお尋ねになりました点は、私ども多少警察の飯を食つた人間から見ますというと、大変大事な問題でありまして、これはアメリカ等におきましてもさような例は多々あるように承知しております。例えばボストンのごときはその最も有名な例であります。これはかなり只今御指摘になりました接讓をしている小さな人口五千未満といつたような村だけでなく、その附近の衛星都市までも取入れて大きな警察、メトロポリタン・ポリスというものを作つております。これは是非必要だと思つております。例えば東京の警察は、市川の橋の真中までしか権限がないのでありますが、江戸川の橋の真中まで……。ところが市川に住んでおりまして、夜出て来て東京で稼ぎをして、朝になると市川に帰るというような者はたくさんある、そこでそういうようなリージヨナル・ポリスと申しておりますが、そういう一つの大都会の中心にある影響の多いところは、何らかの方法でその大都会の警察に取入れまして、少くとも警察行政の範囲入においては一団の自治体として取扱うということは極めで適切であると考えております。
  82. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 私もちよつと土屋先生にお伺いしたいと思いますが、先ほどの公述人のかたにもお伺いしたのですが、府県警察都市警察と、その二本建がいいというような御意見が先ほどのかたにもありましたのですが、そういたしますと私が考えますというと、国家と申しますか、それの連絡が非常に悪くなるような考え方になりますが、土屋先生はその問題に対してはどんなふうなお考えがおありになりますか。鈴木さんもさような都市警察、いわゆるまあ地方公務員同士ならばいい。片一方は官吏であつて、片一方は公吏であるということもいかん。それから感じの上におきまして都市警察府県警察と言つたほうが、国家警察より民衆に当りがいい、こういうようなことを申されておりますが、この点につきましては、土屋先生はどういうふうにお考えになりますか。それから今の連絡の問題と……。
  83. 土屋正三

    公述人(土屋正三君) 只今お尋ねのございました点は実はこの改正法案とば多少離れておるかと思いますが御質問ありましたから私の私見を申上げますが、私は新らしい警察の立て方を考えるとすれば、やはり今朝来いろいろ御意見がありました府県が一番いいと思うのであります。府県は、法律改正の結果立派な自治体になりまして、市町村と何ら違うところはない普通公共団体でありますから、この府県警察の主体となつてよろしいと思うのであります。ただ六大都市のようなもの、或いはこれに近いもの、私は人口十万というのは、ちよつと単位が小さいと思う。尤もこれは大した基準もなく、まあいい加減な話でありますから、必ずしもそれに固執するわけではありませんが、まあ六大都市のほかには福岡とか、川崎とか、仙台とかいうので、大体まあ三十万くらいの人口以上の都市は、これは独立した警察を持つてよろしいが、あとは全部府県で、一本でやつたらよかろう、かように考えるのであります。それからその国家的の連絡の問題でありますが、これはそういたしますと、私の案のようにいたしますというと、国家地方警察というものは要らなくなる。これは全廃してよろしい。その代り地方警察でない、国家警察を東京に作るのであります。これは何をするかと申しますと、いろいろ国家地方警察でやつております通信でありますとか、或いは統計でありますとか、或いは教養でありますとか、そういう全国的なものをそこで取扱う、或いは又警察法に関するいろいろな疑義等もそこで判断をする、それから連絡の手もそこでとつたらよろしい。それだけでは実は足らないのでありまして、特殊の犯罪につきましては、みずから捜査をする。丁度アメリカのF・B・Iといつたようなものをそれにくつつけるというようなことをすれば、自治警察という建前は、どこまでも維持しながら、相当有力な警察日本に置かれるのではないかと考えておるのでありますが、これは只今のお答えになりますかどうか、御返事申上げます。
  84. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ほかに御質問ございませんか。それではこれで公聽会を終ります。公述においで下さつたかたがたに御礼申上げます。お忙しいところを万障繰合せておいで下さいまして、厚く御礼を申上げます。皆様方がお述べ下さいました公述は、貴重な私ども委員会の資料といたしまして、審議の参考にいたしたいと存じます。どうも有難うございました。それでは公聽会はこれを以て散会いたします。    午後三時四十四分散会  出席者左の通り。    委員長     岡本 愛祐君    理事            堀  末治君            吉川末次郎君            竹中 七郎君    委員            石村 幸作君            安井  謙君           小笠原二三男君            相馬 助治君            中田 吉雄君            西郷吉之助君            鈴木 直人君            岩木 哲夫君            石川 清一君   政府委員    国家地方警察    本部総務部長  加藤 陽三君   事務局側    常任委員会専門    員       福永輿一郎君    常任委員会専門    員       武井 群嗣君   公述人    知事代表富山県    知事      高辻 武邦君    東京大学教授  田中 二郎君    同志社大学教授    前京都市公安委    員長      田畑  忍君    東京新聞論説委    員       塚本 壽一君    岡山県小田海区    漁業調整委員  兵頭丈四郎君    三重大学教授  鈴木 一夫君    学識経験者   土屋 正三君    市長代表宇都宮    市長      佐藤和三郎君