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1951-05-23 第10回国会 参議院 地方行政委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ―――――――――――――――― 昭和二十六年五月二十三日(水曜日)    午前十時四十八分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○警察法の一部を改正する法律案(内  閣送付)   ―――――――――――――
  2. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) これより警察法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会公聽会開会いたします。  開会に当りまして公述人として御出席下さいました各位に御挨拶を申上げます。本日は御多用中お繰合せ、この公聽会において下さいましたことを厚く御礼申上げます。昭和二十三年三月に施行されました警察法は、治安の確保を図ると共に、新憲法精神に従いまして、警察地方分権民主化の趣旨に副い、且つ基本的人権を飽くまで保障するものであることを眼目としておることは皆様の御承知の通りであります。然るに警察法施行法三年有余の実績と現下の治安の実情に鑑みまして、政府においてはこの際警察力強化し、その運営を更に能率化する必要を認めまして、警察法の一部を改正する法律案国会に提出して参つたのでございます。この法案は本国会における最も重要な法律案一つでありまして、参議院の地方行政委員会におきましても、今日及び明日の両日に亘りまして公聴会を開催いたしまして、国民の各方面からの忌憚のない御意見を拝聽することにいたしました。どうか御腹蔵のない御意見を聞くことができますようにお願いをいたしたいのでございます。各位お一人の公述の時間は大体十五分見当といたします。公述は求められたこと以外には亘らないようにお願いをいたします。又公述に対しまして、委員各位から質疑がございますれば、御遠慮なくお答えを頂きたいと思います。それではこれから始めることにいたします。よろしくお願いをいたします。  先ず兒玉九十君にお願いをいたします。兒玉君は府県公達代表東京都の公安委員長でおありになります。どうぞ。……。
  3. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) 私は東京都の公安委員長として意見を申述べたいと思つております。他のいろいろな例えば管区であるとか、全国の公安委員連合会会長とか、或いは副会長とかいつたようなことをいたしておりますが、今日のお招きは、東京公安委員長というふうになつておりますから、その立場で申上げます。各いろいろな団体のほうには団体としての取りきめたこともあるのでありまして、そういう点と違うような点もありますが、東京公安委員長としての意見でございます。  第一に、国警増員の問題でありますが、これは警察法改正相談が始まつたときには、二万ということになつてつたのでありますが、それが国会提案のときには五千ということになつております。私は五千の増員では強化ということはちと無理ではないかと考えております。そこで私の意見としては、初めの二万ということに近寄るような改正をする必要がある、かように考えております。そこで私の考えとしては、初めの二方の半分くらい、一万くらい増加する必要がある、つまり政府提案の五千に更に五千を増すわけであります。そういうふうにいたしますれば、自治体のほうの人民投票もどういうふうになるか、この法案通つてから実施して見なければわからない問題でありますが、それを非常に大ざつぱな話でありますが、これは誰でもわからない問題でありますから、推定するよりほかない。そこで私は半数くらいというふうに推定をいたしております。そういう点から、大体町村警察人員は、これも概数でありますが、一万八千というふうに考えて、半数自治体のほうがやめるということで、人民投票がそういうことになれば、九千くらいが国警のほうに移る、そうするというと、一万の増加にしておけば、一万九千というくらいになるのではないか、そうすると、ほぼ二万というふうに考えた数に近付いて、ここで初めて警察力増強ということが言い得ると思うのでありますが、五千でありますというと、これは私は増強というようなことには無理だと考えております。そこで是非これはもう五千殖やして、一万というふうに修正をされることを私としては希望いたしておるわけであります。  それから恐らく今度の改正の問題で一番むずかしい点は、只今の人員の問題、国警人員増加の問題と、もう一つは、今まで全然関係のなかつた知事重大事案認定権を與えるという問題だと思うのであります。この点は今度の改正案相当に長い期間審議されたのでありますが、その審議の際においても最も苦心した点で、従つて恐らく国会においても、これらの点がよほど問題になることであろうと思うのでありますが、然らば今の警察国警自治体というふうに分れておる、一番その盲点でありますが、本質的に言えば一つになつて働かなければならないのが、法の上からそれができなくなつている、そういうことから治安の上に非常に困ることを醸しておるわけでありますが、それをどういうふうにして改正するか、その盲点をなくすかという点が、この知事重大事案認定権を與えるということになつたのでありますが、私も初めはそういう点についてはよほど疑問を持つてつたのでありますが、だんだん会議に列して、それならば他に如何なるこの盲点を取除く方法があるかということになつて来て、そういうことになるというと、恐らく誰も妙案がないのであります。随分その間に苦心をした、一番初めは検事にそういうような重大事案認定権を與えるということであつたと思うのでありますが、どうもそれでは民主警察として適しないというようなことから、知事というようなことに落ち着いたのでありますが、併し知事にそういうことを與えるというようなことになりましても、相当にやはり問題が残つておると思うのであります。そこでこの点について、私が関係しております団体あたりでも、何とかしてもう少し制限を加えるようにというような希望もあるのでありまして、例えば自治体公安委員機能失つたときというようなことの制限を入れてもらいたいという意見なんかが、自治体方面からも出ておるわけでありますが、併しその機能失つたということの認定をするのは誰が認定するか、ここに又同じような問題が湧いて来るのであります。そうするというと、結局この問題をそういうふうにして行くというと、妙案がないわけであります。そこで知事民選知事であつて、その自分のとつた処置については議会に報告しなければならない、そこで若し妥当でなければ、そこで批判を受けるわけであるから、従つて自分の良識に訴えて行くことであろうというようなことで、こういうような原案ができたと思うのであります。そういうようなわけでございまして、まあ私も非常にいい案とは考えないが、他に妙案がないから止むを得ないことであろう、で、盲点をなくすほうから止むを得ないことであろう、こういうようなふうに考えておるのであります。その他の点については、私は今度の改正案は非常に妥当だと考えております。  かようなわけで、更に総括して全体に対する意見を申して置きますが、私はこの改正案は、警察法の出発したときから、もう各方面から叫ばれておつた、ずつと三年間叫び続けられて来たうちの最底限度改正でありますので、一刻も早く私はこれが実現することを希望しておるのであります。何か治安に関する根本的の改正というような声が起つてつたために、そういうことが起るならば、こういうことを今やる必要はないじやないかというような意見もあるようでありますが、講和会議も近付いて、そうしてそういうような心の動きに乗ずるというようなこともありますので、私はそういう点からも最小限度改正は一刻も早くやつて置くべきだと、かように考えておりますので、この国会において通過することを切に希望しておるのでございます。
  4. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ちよつと兒玉君に申上げますが、先ほど公述の初めにおつしやいました、東京都の公安委員長としての意見だと府県公達代表としては又違つた意見があるようなお話もあつたのでありますが、実は今日は府県公連代表としてお出で頂いたつもりであつたのですから、府県会連代表としてのものと、今お述べになつた自身の御意見とどの点が違つておるか、違つておる点があれば、その点を指摘して頂きたい。
  5. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) それではその点を申して置きますが、ちよつと知事重大事案認定権を與えるというところで申述べたことでありますが、この管区のほうの私は公安委員連絡協議会長をいたしておりますが、そのほうの会議の際に、知事にこのような強い権力を與えてもらつては困るから、そこでまあ重大事案認定ということに少し制限を加えるようなふうな意味で、自治体公安委員会機能失つたときというような條項を、その文章の間に挾むようにという希望が出ておりまして、それは私会長立場からも、私一個の意見とは違うけれども、全体の意思代表する意味において、こういう意見があるということは、国家公安委員長のほうへ通知をして置きましたので、従つてそういう点がまあ違うということでありますので、東京都の公安委員長としてというふうに申したのであります。
  6. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 御質疑はございませんか。
  7. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうしますと、府県公達意思としましては、今でも自治体警察機能失つたとき知事認定権を與えると、こういう主張をお持ちになり、そういう修正が望ましいとお考えになつておられるかどうか、お伺いしたい。
  8. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) 何でございますか、知事認定権を與えることがいいか悪いかという意味でございますか。
  9. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 制限付でですね。
  10. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) その点は管区公安委員運営委員会に出た意見でありまして、これは全体の都道府県公安委員会意見ではない。東京管区において出た意見であります。従つてその点はどうぞ一つ混同のないように願いたいと思います。
  11. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 次に府県公達代表として兒玉さんから、府県公連のこの警察法改正法案に対する態度をお伺いしたい。
  12. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) 府県公連といたしましては、私は大体原案に賛成だと考えております。
  13. 竹中七郎

    竹中七郎君 知事の今の認定権の問題でございますが、これらに対しまして、知事はまあ専門家じやないと、こういうことでありますから、知事認定するときには公安委員に諮問するとか、県の或いは都の……。そういう点に関しまして、何か御相談になつたことはございますか。
  14. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) ええ。そういうようなことにしたらどうかという意見会議の際に出ております。で、これはまあ運営に属することであるから、法律のほうにそれまで明示するということは適しないであろうと……。
  15. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 次にもう一点。各都道府県公案委員会の管内ではないですけれども、県内にある自治体警察を持ち得る町村が、自由意見廃止して、これを皆さんの公安委員会管轄する地方警察の中に吸収するという点については、どういう御意見をお持ちになつておられるか、承わりたいと思います。
  16. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) これはやはり地方警察のほうに吸収するのが適当であろう。かように考えております。
  17. 竹中七郎

    竹中七郎君 現在国警関係とあなたがたのほうの関係公安委員においては、どういう御連絡がありますか。
  18. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) 現在国家公安委員会連絡会というものができておりまして、これはもう全然私設の団体であるわけでありますが、これには国家公安委員会都県公安委員も皆参加をいたして、そこでまあ絶えず連絡を図つておるわけなのであります。
  19. 竹中七郎

    竹中七郎君 この問題が一つ問題があるのでございますが、このたび何と申しますか、住民投票において廃止されまする町村警察、これを全部国警のほうへまあ吸収すると、こういうことがこの法案の建前になつております。それに対しまして、いろいろ意見があるのでございますが、これを今あるものに、既設の或いは組合或いは警察に吸収すると、こういう考えも一部にあると考えますが、これに対しまして、あなたはどういうふうにお考えになつておられますか。
  20. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) まあそういう既設組合あたりに吸收することができれば、それは大変私はいい方法だと思つております。併し今までのところではそういう点がやはり非常にむずかしい、費用分担なんかの点、それから地域的にも相当むずかしさがあると思うのでありますが、そこに組合警察がうまく発達しない点がありますので、相当にやはりいろいろな難点が起つて来るのではないかと考えております。そういう点から私はむしろやはり住民国家地方警察のほうに吸收してもらいたいというのならば、その意思に従うほうがいいと思います。
  21. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 明星中学の校長さんでおられますね。お伺いしたいことはあなたの御管掌になつております東京都の国家地方警察公安委員会管轄下で、今言う町村警察でみずから廃止希望している町村がありましたら、一つ名を挙げて頂きたい。
  22. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) これは私まだどうもそういうことを、まあ一、二の人には聞いて見まして、個人的意見は聞いておりますけれども、この町村が廃したいという希望を持つておるという、そういうことはここで以てはつきり公の立場から申上げることはできません。
  23. 中田吉雄

    中田吉雄君 このたびの改正法案には出ていないのですが、法務総裁関係方面と折衝したときには、東京都の警視総監も、警視庁国警に取上げて行くというような思い切つた改革を折衝したように聞きますが、関係方面のほうで許さなかつたというふうに承わつていますが、そういうようなことに対しましては、どうお考えになりますか。
  24. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) 私は東京都の公安委員長でございとして、警視庁は御承知のように特別区の自治体警察でございますから、管轄が違いますので、いろいろな風説は私耳にいたしておりますが、正確なことは一向に存じておりません。
  25. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 さつき竹中さんや私の聞いたことは、自治体警察住民意思によつて廃止をした場合に、これは吸收するとなれば国家地方警察以外にはないのですから、当然そこへ行くわけなので、そういう答弁をして頂きたいと聞いておるわけじやない。そういうあり方についてどうお考えになつておられるかをお伺いしたいと思います。
  26. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) 私は国家警察原案はそうなつておると思いますが、そうすると、御質問の点は組合警察といつたようなことに移すほうがいいのじやないか、そういう点についての意見、こういうことなのですか。
  27. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それは現在の自治体警察廃止したいという希望を持つている、その根拠になる理由或いはそういう希望があるから、法律もそう出して、国家地方警察に吸収すればいいのだということが、まああなたの所管しておる部分は一つの大きな部門ですが、全体の警察制度の上から公正に見てどういうお考えをお持ちになつておられるか。そういう意見を伺いたいというわけであります。
  28. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) これは何ですね。組合警察なんかがうまく発達すれば、大変自治体警察としては新らしい面だと考えておりますが、先ほど申したようなふうに、これが非常にむずかしい場合が多いと思うのでありますが、それと組合警察にいたしましても、幾つかの町村が合併すればですけれども、そうでないというと、警察組織の上から申しましても、それから経費の点から申しましても、極く小さいのが二つ合併しても、例えば今小さいのは六、七名ぐらいのがありますが、六、七名のが他の小さなのと合わさつたところで、やはり警察力としては非常に弱体。私自身警察は何としてもやはり組織力機動力とか、科学力を使う上から組織力を持たなければならん。そういう点から言えば百名以下の警察というものは、なかなか機能が発揮しにくいと考えて、これは専門家のほうにも絶えず意見を聞いておるのでありますが、そういう点から申しますと、極く小人数を合せたところで強化ということは困難である。従つて経費の点からもいろいろな問題が起ると思うのでありますが、警察の本質問題から、やはり合さつたところで、どうも機能が期待したほど発揮できないというようなことがあるのじやないか。組合警察がうまく行かんというような点はいろいろな面がある思うのでありますが、まあそんなことから私は現在の日本の状況から言うならば、一刻も早く警察力強化しなければならない。治安の徹底を図るという上から、むしろ国警のほうに入れて、そうして国警機能がもつと発揮されなければならない、かように考えます。
  29. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 兒玉さんに最後にお尋ねしますが、先ほど知事重大事案認定権を與える問題につきまして、自治体公安委員機能失つたときというような條件を付けたほうがいいというような説があつたと言われるのは、これは自治体警察側意見ですか、或いは府県公安委員会連合会、即ち国警側意見ですか、どちらですか。
  30. 兒玉九十

    公述人兒玉九十君) まあ自治体側希望でございます。東京管区は何ですね、国警自治体一つになつて連合会を作つておるものですから、自治体のほうの意見がその席に出たのであります。それはもう全然自治体希望であるということははつきり申上げます。
  31. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それじや有難うございました。  次に須貝脩一君、お願いいたします。京都大学の教授でございます。
  32. 須貝脩一

    公述人須貝脩一君) 私がこれから警察法改正案につきましてお話申上げたいのは、主にこの改正案の基本的な線についてでありまして、個々の問題につきましては、御質問に答えまして、そちらのほうに譲るということにします。これからお話するところは政治的な、何と言いますか、どちらの党派に片寄つた意見というようなものじやなしに、国民として客観的に、極く中立的な立場から考え意見であるということをお断わりして置きます。  先ず第一に、この今度の改正案ができるということにつきましては、それまでに昨年の末から今年の初め、ずつと今までいろいろそれに関する動きは新聞に報道されておりまして、私は非常に興味を持つてこれを見ておつたのでありますが、その結果承知したところによりますと、結局出て来ました改正案は、これは先ず政府がこの一定提案をしまして、これに対して自治警の側なり、その他の側からいろいろ反対があつて、結局両方が折合いまして、妥結したところがこの程度の線に落着いたということであるように承知しております。そこで出て来る結論は、これ以上この強い改正をやるということになると、これは自治警の側としては、これに対する指示をしないであろうということが予測されるのでありまして、これが私の先ず第一に指摘したい第一点であります。  次に第二点は、警察法改正ということにつきましては、これはこの引張り合う二つの力というものが対立しておりまして、一つ中央集権のほうへ警察法改正して引張つて行こうという方向、もう一つ地方分権立場から警察法を成るべく改正させまいとする、そういう力の動きと、両方引張り合つたあげく、この力の何と言いますか、対角線というものができましてそういう両方の力の折合つた点が結局こういう改正案に落着いたというふうに見られる、これが第二点、つまりこれ以上強い改正をやれば、これはこういう力の均衡が破れるということになる、それが第二点であります。  第三に、この警察法は現在地方分権という主義を大体とつております。勿論国家地方警察という妥協的な制度がこれと並んで認められておるという点では完全な地方分権ではありません。で、こういうような警察法根本精神というものは、これは決して連合軍の総司令官が書簡を出して、それで要求したから仕方なしにこういうことになつたのだというふうに我々は考えたくないのであります。実はこれは日本国憲法、この新憲法の要求しておる民主制民主主義国民主権というような考え方、それから地方自治というものを完全に発達させなければ民主制というものも本当に徹底し得ない、そういうような考え方、そういう日本国憲法から実は警察法という制度が必要になつたのであります。現行制度が必要になつたのであります。然るにこの警察法には一定根本原理がそこにありまして、こういう警察法根本原理に鑑みまして、この改正案を見まするときに、これ以上強い改正をやりますと、これは警察法精神に反する、ひいてこの新憲法の要求するところに反する、こういうことになる。そこでこの占領軍引揚げた曉には、これは元の中央集権制度に引戻してやろう、こういうような考え方は、これは日本国憲法に正面から衝突するものであつて、こういうやり方には賛成しない、これが第三点であります。  それから第四点は、今度は積極的な理由でありまして、警察法根本原理というものに従いまして、地方分権制度をとりながら、而もこの警察力強化するということはできない相談ではないということであります。できるというのであります。つまりこれは現にイギリス、アメリカというような国で、地方分権制度をとりながら警察力強化という点について大過なきを得ておるのじやないか、そういう実例があるばかりでなく、地方分権制度をとつておりましても、つまり行政管理の上で地方分権をとつておりましても、その運営の面でこれを相互に連絡提携を密にしまして、こういう地方分権された警察諸單位の間の緊密な協力ということによりまして、殆んど一体としてこれを運営するということが決して不可能ではない。むしろそういうことによつてこの地方分権基礎としながら警察力強化する、民主的でありながら、而も強力な警察、こういうものが少くとも国民にとつては一番望ましい、こういうふうに考えられる。そこでそういうような密接な協力ということを確保するためには、これは自治警を全部廃止するというなら話は別でありますが、自治体警察を認めて置く以上は、自治体警察の快よい協力を確保できるような点で、そういうような線で改正をしなければならん、こういうことになる、これが第四点であります。そこで結論としまして、今度の改正案の線は大体この地方分権というものをぶち壊すというものじやなくて、地方分権基礎としながら、その地方分権の枠の中で、現行警察法根本原理に反しない一定の枠の中で警察力強化しようとしておるというふうに見られる限り、こういうような改正案に対して特に反対すべきではない、供しながらこれ以上に出て、この中央集権方向に逆行するような改正案を将来出されるというような考えがどこかにあつて、そうしてそれがいろいろ噂として流布されるということになつては、自治体警察の側では、どうしてもこの警察職員の動揺を来たすのでありますから、非常に何と言いますか、尻が落着かない、安心して、安堵して警察の職務に精励するということの点について遺憾なことが起きて来るのでありますから、そういう点で、そういうことを将来やらないというような保証を、何らかここで改正法案を若しも通過させるとすれば、その際にこれは政府提案でありますから、附帶決議というようなものを付けることは、ちつともおかしくないと思うので、そういう附帯決議でも付けまして、一体釘を打つて置く、これ以上強い改正を、将来根本的に改正をしまして、警察を一本にするというような改正はやらない、そういう付帯決議をここに付けて置くということが望ましい。  これで私の意見を述べ終つたわけです。    〔小笠原二三男君発言の許可を求む〕
  33. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 小笠原ちよつと待つて下ざい。
  34. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 議事の進行についてちよつと申上げたいのですが、公述人が非常に多数いられるのでありまするし、各一人々々について議員の質問を展開して行きますと、非常に時間が長くかかると思います。又質問もすべての公述人に共通している面も非常に多いと思いますから、一応午前ならば午前或いは本日ならば本日一日を単位にしまして、まとまつた多数のかたの御公述終つたあとで、我々のほうから質問してお答えを願うように取計らつて頂くのがいいのじやないかと思いますから、そのように一つお運びを願いたいと思いますが、如何でしようか。
  35. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) お諮りいたします。只今吉川君から動議が出ましたが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 公述人の自由なる発言ということから言うと、私は問題があるとも思いますけれども、同僚委員の発言ですから、賛成をいたします。
  37. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それでは次は梅田博君、読売新聞社論説委員でいらつしやいます。
  38. 梅田博

    公述人(梅田博君) あらゆる制度運営というものにつきまして、能率というものが強く要求されるときには、民主主義は或る程度犠牲になるのであります。又民主主義が強く要求される場合には能率というものは或る程度制約を受ける、いわば能率というものと民主主義というものは二律背反と申しますか、相剋的な関係にあると、こう申して差支えないと存ずるものであります。資本資義国家ばかりにおいてではなく、ソヴイエト・ロシアにおきましても、第二次世界大戦の場合に、戰いが激烈になるに伴いまして、兵士ソヴイエト、工場ソヴイエトというものが赤軍一本に統括されているのであります。これも民主主義と能率というものとの関係を現わしたものと言つて差支えないのではないかと、かように存ずるのであります。  ところで現在警察法について問題となつております第一点は、国警自治体との二本建になつているために能率が上らない、こういうことが問題となつております。それでありますので、従来のごとく国警一本建にしたらどうかという意見が非常に強いのであります。私の読売新聞社で現在世論調査と紙上討論を行なつております。これは一部を持つて参りましたものですが、これにおきましても、国警一本にせよという意見が非常に強いのであります。併しながら先ほど公述人から申されましたように、新警察制度地方分権警察民主化というものを基本のラインといたしまして発足いたしたものであります。それでありますから、この二つの目的はよほど大きな理由がなければ、これは軽々に廃止し、若しくは変更することはできない、このように存ずるのであります。換言いたしますれば、能率というものが最大限に要求されるとき、例えば仮に第三次大戰が起りまして、国内の治安が非常に乱れて、どうしても国警一本でしなければならないというような客観的情勢があつた場合に、この場合にはどうしても国警一本建にしなければならないという事情が起きるかも知れないのであります。必要の前には理論というものは或る程度犠牲になる。併しながら、こういつたような場合でも異例は異例、権道は権道で、やはりそういつたような情勢が收まれば、地方分権乃至民主主義というものが高く評価され、尊重されなければならないのであります。いわば警察制度を如何に運用すべきかという問題につきましては、一方において能率、一方において民主主義地方分権との睨み合、言換えますれば、そのかね合いにおいて、客観的情勢に基いて決定さるべき問題であると、このように私は信ずるのであります。  従つて現在の日本の情勢はどうか、これは決して国家警察一本建にすべきほど切迫しておる情勢とは思われない。むしろこの現在の非能率的であると言われている地方警察、これを能率的に育て上げるというような努力を先ず第一になされなければならない。このように信ずるのであります。第二点は小町村自治警廃止する問題であります。改正草案によりますると、小都市は住民投票によつて警察廃止することになつておりますが、これは止むを得ないのではなかろうかと、このように信ずるのであります。小都市の大部分が財政的な負担を云々しております。成るほど数字的には全町村の予算の三〇%、これが警察費に消費されているのでありますが、併しながら平衡交付金を差引きますと、実際上においては大体四%であります。昨年度の自治警の費用は、すべての費用が警官一人当り十九万二千円であります。然るに十六、七万というものは平衡交付金によつて賄われておる。従つてたとえ十人の警官を維持いたしましても、二十万乃至三十万円の負担であります。このくらいの負担は決して地方自治を維持するために持てないというような負担ではなかろうと思います。それよりもむしろ小警察というものを廃止すべきであるという私の意見は、能率、これが非常に非能率である。それからボスに左右されるような地方警察は昇進の道がないので警察官が堕落する、そういつたような方面でやはり小警察廃止も決して不当ではないと、このように思うのであります。イギリスにおきましては一八八二年の地方自治体法以来、人口二万以上の都市でなければ独立の警察を持つべきではないと、こう決定しております。有名なデイスバロン委員会は、議会の諮問に対しまして、人口少くとも十万以上の都市でなければ独立した警察力を持つべきではないと、このようにデイスバロン委員会は議会に報告しておるのであります。イギリスにおきまして最も小さい警察はテイ・バートンという警察でありますが、そこは署長を含めまして僅か十一人であります。ところが日本におきましては、五名乃至六名という警察がざらにあるのであります。言うまでもないことでありますけれども、イギリスにおきましては、警察自分自身のものであるという観念が非常に強いのであります。イギリスには昔からすべての人が警官である、巡査である、エヴリイマン・イズ・ア・ポリスマンという言葉は国民の隅々まで浸潤しております。こういつた英国においてすら、自治警察の狂信者であるイギリスにおいてすらも、能率のためには小警察廃止しなければならないという機運に向つているのでありまするから、我が国におきまして人口僅か五千、警察官は五名、六名といつたような小警察廃止せられなければならないということはむしろ尤もであることと私は是認するものであります。  第三点は、改正案附則にある町村警察廃止になつた場合、これを国警に編入するという原案に対することであります。甚だ極端な言葉を用いますれば、私はこの案は、旧内務官僚並びに警察官僚の陰謀と申上げて差支ないのではなかろうか、このように思うのであります。これでは何のために新警察制度を採用したかわけのわからないことになる。イギリスにおきましては、小警察というものを廃止した場合には郡の警察、カウンテイ・ポリスというものに整備統合しているのであります。決して国警というものはメトロポリタン・ポリスの外ではなくて、国警というものに吸収はさせていないで、郡単位の警察に吸收されているのであります。若し我々が地方自治精神を愛するならば恐らくこういつたような方向に進むのが当然ではなかろうか、このように信ずるものであります。私は原則論といたしまして行政警察、アドシンストレイテイヴ・ポリスというものは原則として府県單位と大都市警察とのこの二本建、言い換えれば自治体警察一本建にして国家警察というものは廃止すべきが妥当ではないか、このように考えているものであります。そうして現在の場合これが積極的に行うことは甚だ過激であるようならば組合警察というものをやはりそこで育て上げるように指導しなければならない。指導もしないで組合警察にはいろいろ障碍があるから駄目だということでは余りにも短見なことではなかろうかと思うのであります。それでありますから若し自治体警察を創設いたしました精神を理解し尊重するならば、小警察を再び国警に編入することには断固として私は反対するものであります。  第四点は国警の定員の増加の問題であります。国警と申しますと如何にも地方警察の上にあるような印象を受けるのであります。国家警察といいますと地方警察の上にあつてこれを指導しているような錯覚が起るのでありますが、これは言葉の魔術でありまして、現在国家警察が持つているのは全国の五千以下の小漁村、小農村、言い換えれば全国小漁村警察本部といつたらば現在の国警の本体にぴつたり合う。それが増員をする理由は現在の治安状況から見てといわれますけれども、小漁村警察増員して治安状況の責任を持つということはこれはナンセンスといわざるを得ないものと私は考えるのであります。現在はめぼしい場所、大都市、富裕な都市はすべて自治警に押えられている。国警といたしましてはあとのつまらない場所しか持つていない、手も足も出ない。それでありますから治安状況を口実といたしまして、その増員を目論んだのが今回の増員の問題ではなかろうかと、私は先ほど申しました通りに、行政警察というものは地方自治法に委せて治安状況上必要であるならばアメリカのFBI、連邦検察局のような組織を作りまして、そうして各府県に若干名ずつ分置をすればいい。そう行くのが本筋の行き方ではないか、このように存ずるのであります。  第五点は公安委員会組織であります。現在公安委員会は統計にもありますように、大部分がいわゆる会社の重役であり、医療関係のお医者という方が非常に多いのであります。遺憾ながら警察というものに対するところの見識、法律というものに対する無知というものがある。殊に或る場合にはボス的な人がおり、又ボスに利用されるような人が多いということも報告に参つているのであります、それでありますから警察の運用という問題につきましてはいろいろの障碍があるようであります。改正案公安委員になる資格の緩和というものをやつているのでありますけれども、私は更に百尺竿頭一歩を進めまして公安委員会組織そのものについてもう一度検討し直す必要があるのじやないかと、このように考えるのであります。再びイギリスの例でありますが、イギリスの郡警察は常設委員会というものを、連合委員会というものを持つております。それは郡会議員と四季裁判所の判事が同数ずつ出まして、そうして会議の上運営しているのでありまして、民主主義という原則を破らず、同時に警察事務は円滑に運営されるためには、せめて大都市には公安委員と判事とが同数で公安委員会組織するといつたような、案として私はこうせいというのではございません、成案はないのでありますが、ともかく警察という重大な事柄を素人の公安委員で、ひどいのになりますと前科者であるといつたような人にお委せしておくというようなことになりましては甚だ危険ではなかろうかと、このように考えるのであります。  第六点は警察官の待遇の問題であります。警察官は大体初任給は五、六千円でありますけれども、これは警察官というものは生命を犠牲としているのでありますから、生命の危険にさらされているのでありますから別個な観点で考えなければならない、このように思うのであります。警察官は労働組合に加入することは禁ぜられております。従つて給與に対する不平の息抜きどころがない。例えば恩給の問題にいたしましても国警予備隊のごときは六万円というものは保証されている。ところが警察官に対しては一般の公務員並であります。これに対するところの或る程度の保障、そのためには法令を以ちまして警察連合会といつたようなものを作る、現在は警視庁にも類似のものがあるようでありますがこれを法令を以て作つて、そうして一つのしつかりした認識の下に彼らの生活を保障するということが私は甚だ必要な問題ではなかろうかと、このように思うのであります。  時間でありますので大体私の公述はこれでおしまいといたしまするが、先ほどからイギリスを多く並べたのは、日本の警察法制度というものがアメリカの警察制度に非常に模倣して、そのアメリカの又模倣であるところのイギリスにおいて幾多の欠陥を曝露している、又イギリスではこういつたような方向に進んでいるということを申上げて御参考に供したいと思つて申上げたような次第でございます。要するにこの線を通りましていろいろの口実の下に自治警察を破壊し、中央集権的な方向に持つて行こうとする努力に対しましては私は断固として反対するものであります。私の公述はこれを以ておしまいといたします。
  39. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。  次に塩谷信雄君にお願いをいたします。日本労働組合総評議会争議対策部長であられます。
  40. 塩谷信雄

    公述人(塩谷信雄君) 私は只今御紹介にあずかりました総評の塩谷信雄であります。働く者を代表いたしまして皆様に警察法改正に関する公述を申上げますることを非常に光栄に思う次第であります。他に公述人の御意見もありすでに時間も参つておりますので、私は簡單に要旨を申上げたいと存じます。  労働組合は日本の新らしき憲法に副いまして日本の民主化を推進する極めて重大な支柱であります。これを保護し育成することは刻下のところ重大な問題でありまするが、遺憾ながら過去の経験に徴しまするに、労働組合は今日保護し育成せられる方向から逸脱しておるのではないかということを非常に遺憾に思うのでありまして、私はその一つの現われとして今日警察法改正の問題が、ここに我々の考えておる方向とは趣きを異にしておる方向において現われつあることを非常に遺憾に思うのであります。  国警長官が院内において説明したと言われるところによりまするというと、国内の治安を維持するために、特に農山漁村等において共産党の諸君の侵透力が強いので、これを排除するために国警を増大する必要があるという説明をされております。私が縷々申上げるまでもなく、又前の公述人のすでに指摘せられましたように、私どもは今日農山漁村の生活状態を非常に憂うるのであります。このような状態の下において、或いは都市の失業者を作りつつある状態において、むしろ刻下の治安を乱しつつあるものは政府の政策であるといわなければならない。このような状況の下にあることをのみ事由として数を増大するということには何ら私はならないと考えるのであります。  更に地方のボス勢力が非常に強いという指摘もあるようでありまするが、ボスを排除することこそ警察本来の任務でありまして、このため、にわかに地方の自治体警察をこれに藉口して増大するという理由にはならない、かように思うのであります。  更に経済的な困難の面を指摘されておるようでありますが、今日まで地方交付金によりまして一部は補填せられておるのでありますが、このような方向を或る程度とることは、本質的には多少の問題はありましようけれども、今日の状態上止むを得ない。これを増額することによつてこの困難は克服せられると思うのであります。  私は特に国内治安の問題について一言触れたいのでありまするが、今日私は総評の意見を申上げるとして、我々の自由にして民主的なる労働組合はまさにその行動において、考え方において現実にいわゆる今日の共産党の諸君、共産主義のあり方について戰つてつたのでありますが、率直に申しますと先の憲法記念日においては、我々は今日の平和憲法を守るという意思表示を憲法の式典においてすることがどうして不当であるということの理由を理解するに苦しむのであります。憲法を護るということを式典において意思表示することは、如何に法治国でありましようとも今日当然であろうと考えるのでありまするが、これを彈圧し去るような情勢の下において、常に権力には権力を以て対抗するというような今日の政府のやり方は甚だ遺憾であると思います。我々は思想には思想に基く行動を以て戰つたときに、初めて国内の治安基礎が確立されると思うのであります。私はあえてこの点を附言して置きたいと思うのであります。  内容の問題につきましては、いわゆる二十二條の二の問題もございまするが、知事に非常に権限を大きく與えておるこの規定は、聞くところによりますると、公安委員会が暴徒に包囲せられてその権能を発揮することができないような状態を想定しておるということを私は情報として聞いておるのであります。それ以外の情報は余り聞いておりません。例を幾つか聞いていないことは甚だ遺憾に堪えないのでありまするが、ここには「治安維持上重大事案につきやむを得ない事由がある」ときというふうな極めて抽象的な表現を以て書かれておりまして、何がこの治安維持上重大な事案に該当するかということについて極めて幅の広い含みがある表現でありますために、その内容を捕捉することは非常に困難であると思う。本質論は別にいたしますが、これはそういう只今の例として申上げたような事態を想定しない限り当然公安委員会に権限を持たすべきでありまして、若しそのような包囲されたような状態があつたといたしましても、検察当局にこれを持たせるという行き方もあるのでありまして、知事にどうしても持たせなければならないという理由は非常に了解に苦しむ。今日いろいろの民主的法律が改悪されつつありますが、立場の相違によりましては改正とこれを称しておられるかも知らんけれども、私どもの立場に立つて今暫らくの時間をかしまするならば、今日合法的に活動をいたしております我々の組合も、やはり名称は合法的でありましても、社会の雰囲気は極めて非合法の雰囲気の中に我々は活動しなければならないような事態がもはや寸前に来つつあるのじやないかということを非常に憂うるのであります。例えば先の五・三事件のごときああいう事態を称して、この二十二條を発動する危険性が多分にあるということを私は推察いたしておるのでありまして、このようなことになりますことは、申すまでもなく甚だ遺憾に堪えない。日本のあり方そのものについて重大なる蹉跌を来す契機になることを恐れるのであります。率直に申上げますならば、この規定自体は甚だ遺憾でありまして、更にこの抽象的に書かれた理由について、もつと誠意があるならば、具体的にその事例を挙げるべきである、列挙主義にすべきであるということを申上げたいと存ずるのであります  更に地方自治体警察なるものを、特に五千以上の市街を除きまして、市街的町村警察自治体意思によつて廃止するということでありまするが、私が頂きましたレポートによつて計算してみますると、管区警察学校及び大学等の五千名と今日いわゆる市町村警察のうちの市街的町村警察、これが総計一万八千四百一名でございます。合計いたしますると、二万三千四百一名という数字になるのでございまして当初噂されました二万をややオーバーするようであります。若干の値引をいたしましても二万名前後になりましておおむね所期の目的が達成せられるというふうに理解せられるのでありますが、先ほど申上げましたように、市街的町村は今日財政の苦しさを理由といたしましてこれを国家に信託する危険性が非常に多かろうと思うのであります。更にこの問題のほかに、今までのいわゆる九千五百名の枠を外しまして、自治体の欲するところに従つてその数を設定せしむるに至りましては、私は誠に先の公述人のお言葉のように、非常にこれは内務官僚諸君の勢力拡張の具に供せらるる危険性があろうかと思うのであります。地方の自治体が意の欲するところに従つて若しこれを増大したといたしまして、増大してなお且つ経費がない場合はこれは国家に信託するのであります。財政上の制約はあるという点はわかりまするけれども、併しながら財政を若し顧慮しないとして困難の中に数を設定して、財政上の理由を以て国家に信託するとするならば、これは相当数の国警を増大し得るという基礎になるのであります。この数は算定することはできません。非常に私は陰険な方法であろうと思う。むしろ正面切つて堂々と数字を出される方が望ましい今日の日本の状態にあつてはその危険性が私は多分にあるということを指摘しなければなりません。私は、国警及び自治警相互間の応援の態勢、或いは管轄区域外において権力を行使するということに対してもつと密接な連絡を図るという点につきましては、その必要を十分に認めるものでありますが、併しながら今日は国警の数を増大し、権力を非常に大きく増大するという方向に、直接国警の数を殖やしながら、間接には地方自治体の警察の数を殖やしながら持つて行こうという御意図が十分にここに盛られておる。これは先ほどのお話のようにいわゆる分権の制度に非常に相反するものであるという点において誠に遺憾に堪えません。特に日本の実情にそぐわないという理由を以て、今日占領下数多くの民主的な法律改正し、若しくは修正しようという準備が、今日の内閣の下に着々進められております。特に我々の関係いたしまする労働三法を初め労働者の関係法律、その他幾つかの法律がそのような方向に進みつつあるのでありまするが、何を以て日本の国情に適しないと判断するか、これは極めて重大な問題であると思うのであります。このような抽象あいまいな表現を以て判断することは、その立場考えによつて極めて幅のある話でありまして、私は率直に申上げて、今日日本の民主化は講和を前にして形の上においては貫徹せられたと、しばしば連合国司令官によつて声明を見ておるのでありまするが、その内容においてはあたかもまだ幼年期より漸く少年期に達した程度を出ないのではないかということを心配いたしておるのでありまする特に今の政府の諸君が日本の実情に即しないと判断することのそのような原因を多く與えておるものは、個人若しくは個人の集団が長い封建的な、全体主義的な教育環境の中から脱し切れないで、いわゆる民主的なる自覚が十分に育たない、伸び切つておらないというところに多くの原因が包蔵せられておる。そこに原因が胚胎しておると考えるのでありまして、このような段階におきましてはまさにこれをむしろ維持育成するという方向に、より一層進まなければならないにかかわらず、このような事態を以て日本の国情に適しないと言つて修正を加えて参りますることは、日本の民主化を逆行させる危険性がある、まさにそういう危険性が非常に強いという意味合において、私は遺憾ながら全面的に反対をせざるを得ないのであります。  どうか、今日の警察法というものの改正は、日本の民主化を推進する上において役立つか役立たないかという観点において、この問題の修正考えられなければならない、論議されなければならないということを最後に附加えまして私の公述を終ります。
  41. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。  次に河野勝敏君にお願いをいまします。町村議会の代表であります。千葉県の松丘村議会議員であられます。
  42. 河野勝敏

    公述人(河野勝敏君) 私は極めて山間に住む五千以下の町村の議会の議長をやつておる者でございます。従つて見解その他におきましても極めて狭いものであります。従つて言うことは誠に狭い範囲に亘つて甚だ皆さんに徹底しないという憾みがあるかも知れませんが、その辺はどうぞ悪しからずお願い申します。今度の警察法改正をいろいろ拝見いたしますると、大変にいい工合にできており又大変に進歩的にできておると私といたしましては考えております。併し中に自治警の問題でありますが、自治警察といたしましては、五千以上の市町村にこれを作ることは人民投票によつてなし得るというようなことがありまするが、五千以下、現に私どもの村は五千になんなんとしておる村であります、而も私の村あたりでこれが人口において千多くなつたら、ここに作つた方がいいか悪いかということを先ず考えて見ますと、平衡交付金を受け、種々な面において考察する場合において、経費という問題が一番大きな問題になつて来て、而もそれによつて村そのものはどのくらいの苦痛を将来與えられて行くか、こういうことになつて行くと、自治警察を五千、六千くらいの町村において作ることは却つて苦痛を増すものであつて、決してそれだけの効果はないと私は信ずるものであります。而も今私どもの隣の久留里町に自治警ができております。而もその人員は五人か六人です。長及び署僚がおり、而も主任がおり、そうして外へ出て始終警邏に当り、或いは警備に当るようなものは僅かに一人か二人の巡査に過ぎない。そうした場合にただ一人や二人なら、現在我々の村におる駐在は一人でありますが、その一人にどれだけ勝つておるかということになるのですから、そんな小さな警察、弱体なものならむしろない方がいい、こういう結論に到達すると思います。むしろ現在の国家警察の施行せられておるところの駐在員を増すべきではなかろうか。一人の駐在員が現在においては、相当に広い長い村でありますから四里ぐらいある、その中を一人の警察官が種々なことに当つておるということは非常に苦痛なことであり又なし得ないことであります。そうして駐在巡査に聞いてみますと、我が村には二つの停車場があります、而もその停車場には一日一回ずつは必ず行つてよく取締を見ろという話であり、そうしてそのほか又住居を届出によつてつているもののところは一カ月一遍ずつ廻れとか、種々の注文があるような話を聞いておりますが、一人の警察官によつてそれだけのことをなし、而もそういうふうに警察行政面の種々な事務もとらなければならん。なんで一人の駐在巡査で一村を維持できましようかということは、一人私のみでなしに、皆さんのお考えによつてもわかるのではないかと思いますが、この駐在を増すことはさつき五千人の増員ということが案にあるというように拝見しておりますが、五千人のものは、これは末端の今言う駐在巡査を殖やすにしても、五千人ではなお不足しやしないか。それで又五千以下の小さい村の自治警廃止になる、廃止なつだ場合の巡査を国警に吸収してでき得るならばこの駐在を増して、そうして一層の取締強化を図つてもらつたら大変いいじやないか。このところの運営を御考慮下すつてそうしてこの将来警察力強化ということに処して頂きたいと思うのです。  一方においては圧力的に自治警察が国家警察によつて圧迫されておるということは、これは実際において、私はいろいろの私どもの県の、種々な町村自治警のあるところの様子を聞き、種々なことを見ますというと、国家警察にやや圧迫をされる傾きがあります。これは誠にけしからんことだと思います。自治警というものを作つた以上自治警本来の本当に本質的な活動をさせるべく、又させるのが本筋であつて、そうして又国家警察が先んじてできておるからといつて国家警察そのものが一方に圧迫的な種々の面を見せるということは、これは頗る連絡が悪いからの結果であつて制度そのものよりも今までのありきたりの何といいますか習慣といいますか、先に生まれてわしの方が先のものだというような観念的なものからか知らんが、そういうような工合になつてつて、この自治警を圧迫し、そうして自治警の成育というものを阻んでおる。これは誠に遺憾なことに堪えません。でこれはもう少し横の連絡を緊密にそうしてお互いの接触をなごやかにして行つたならば、たとえ二本になつてつても、一本と同じ性格を持たせてそうして働き得ると私は信じております。是非そういうことにやつて頂きたいと思います。  それから次にこれはちよつと今度は警察法改正とは離れておる問題でありますが、いずれにしても自治警にしても国警にしても両方を、巡査の素質、巡査どころじやなく或いはもう少し上のほうまでも警察官の素質というものの向上を図つてもらいたい。今では甚だ申上げにくいことですが頗る低下しておる、こういうように存じます。どうも質が低下しておる。そのためにボスと手を握り種々なことが起り、或いは種々な部面において警察の不評を世間に暴露するというようなことが多々ある。これは質の問題であり又待遇の問題である。待遇がくつ付いて行きますが先ず質の向上ということに是非努めて頂きたい。それで幾ら百人おいても立派な警官一人に勝ることはないのですから、それでこの質の悪いやつを多く放しておられることによつてつて害を流す。結局本当によく治まつて行くものでないということを我々は考えております。(「賛成」と呼ぶ者あり)そうして一面においてこの素質が悪くなるということは、私に言わしむるならば待遇問題が非常に悪い。この待遇を変えて行つたならばいま少し自重し反省して立派なものになるのじやないか。一例を申すならば我々の村へ曾て来た駐在巡査が非常に立派な巡査でありました。それが来る早々、まだ非常に主食も逼迫しており円滑に行かない時代でありましたが、来ると同時に主食の配給だけでは子供と親との生活が維持ができない、それでこの土地へ来て初めてでありどこへ行つて米を無心したらいいんだかわからん、何とかこれは方法がないのかといつて来られて話されたということを聞いたが、事実この巡査は純情であり正直である、普通の巡査であつたらすぐ変なことをやてつ、悪いことをする、悪い印象を與えておるのですが、そういうような巡査があるように、もう少しみんなそういうような巡査にしてもらいたい。それは要するに待遇ということが一番必要なことだろうと思います。で待遇を是非よく改善して、そうしてこの増員と並んでやつて頂きたいことを私は考えております。  その他についてはこの改正案は頗る妥当なものであると拝見しております。以上で終ります。
  43. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。御質疑を願います。小川君はまだ見よませんから………そのお席でお答えを願います。
  44. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 須貝さん、梅田さんに共通した二つの点についてお伺いしたいのであります。警察力の維持、能率の強化という点、又日本の置かれている地方自治団体における財政の規模等から見て、自治体警察を育成強化するとしまして、その自治体警察を置くことが望ましいと考えられる財政基準の地方自治団体の規模というものはどの程度にあつたらいいものであろうか。この点御見解がありましたら、この際お伺いしておきたいのであります。  第二の点としましては、行政警察なわ治安警察の問題が言われているのですが、現下のこみ国内の治安の状況に鑑みということはこの法案提出の大いなる理由でありまするが、国家警察予備隊というものが今あるわけでありまするが、これとこの現在の警察とはどういう関係を持つて行くということが最も望ましいことであるのか、御見解がありましたらこの点をお伺いしたいのであります。  次に梅田さんにだけお伺いしますが、公述中に、戰時中であれば自治体警察を一時やめても国家警察一本で国内治安非常体制に陥るということも止むを得ないというような御意見を伺つたのですが、この点に関連しましても、この予備隊警察のあり方について御所見を承わりたいし、又或いはそういうことは過去における憲兵隊のいろいろな弊害等があつたのでありまするが、戰時中といえども平時における警察制度、或いは運営というものはやはり国家地方警察並びに自治体警察二本建で運営の面で考えてやつて行くという基本的な態度を堅持することができないものであろうか。この点について御所見を承わりたいのであります。  もう一つはアメリカの郡警察の例を引きまして、住民の自由意思によつて自治体警察廃止されるとしましても、これを国家地方警察に吸收することは不当であるという御意見で、行政警察の面は府県單位が望ましいし、国家警察的な治安警備という問題、或いは自治体警察の応援というような意味もあるでしようが、これらの点は各府県に地域的に分駐せしめてこの仕事をやれば定員増の関係から言つてもいいし、組合警察の育成という点から言つてもいいように御説明を伺つたのですが、もう少し個々の点、いわゆる国家地方でなくて国家固有の事務としての国家警察府県單位なり、或いはその他の市町村自治体警察なり、共に自治体警察以外にある場合のあり方について御所見がありましたらお伺いしておきたいのであります。  それから河野さんにお伺いしたいのですが、この法律の建前上、五千以上の市街的町村住民の自由なる意思によつて自治体警察を維持すること、或いは維持しないことができるわけでありますか、法の建前から言うて五千以下の町村といえども、新らしい警察制度精神から財政的負担に堪えるという場合には、国家地方警察から離脱して自治体警察を持ちたいという場合には持ち得るような法律の建前にして置くという意見が一部にあるのですが、これについて御意見があつたらお伺いいたしたいし、又千葉県下における自治体警察が暗黙のうちに国家地方警察の権力的なものでありましようか……に圧迫せられる事実があるということを率直にお認めになつておられまするが、具体的にその事例の一端について御承知であれば御披露願いたい。以上御質問申上げます。
  45. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) では須貝さんお願いいたします。小川さんは見えられませんから………。
  46. 須貝脩一

    公述人須貝脩一君) 順序でありますから、最初に私からやらせて頂きます。  御質問がありました第一のほう、つまり財政上の負担に堪え得ないという小町村自治体警察住民投票によつて設置すべきや否やを自由に選択させるという、そういう点に関するつまり義務的設置を認めるべき自治警の範囲と、それから選択的設置を認める自治警の範囲、その間の標準、人口の標準というものをどういうふうに考えるかというお尋ねであります。その第一点についてお答えしますと、今御質問がありましたようなそういう財政上の負担に堪えないというだけの理由からそういうことを考えられるのでありましたら、これに対する答弁としては、それじや財政上困るなら、国費の補助を十分してやつたらいいじやないかと、こういうことになるのでありまして、私は問題はそういうところにあるのじやなくて、むしろ警察の能率という点から考えまして、一定の広い地域でなければ十分に能率のよい警察を行い得ないと思います。或いはこの独立した警察の費用というものはその住民の人口の数、或いはその人口の種類、そういうものによつて左右されて来るという点にあるのであります。こういうような点、実はイギリスのデスボロ委員会というのもそういう点から一つは勧告をしたというふうに了解しておりますが、むしろそちらの問題が大事なんではないかしらというふうに考えます。それで結局その人口の点どういうふうになるかというお尋ねの点につきましては、これは私はただそういう問題に関しましてどういうふうに考えて行つたらいいかという方針だけは今お答えしたわけなんでありますが、実際上のいろいろな統計資料とか、そういうものは詳しく存じておりませんので御満足の行くような解答はできません。そのお答えはそのくらいにしておきます。  それから第二に警察予備隊と普通警察との関係をどういうふうに考えるべきかという御質問でありましたが、この点は普通警察という意味はこれは常時勤務しまして、住民の安寧を維持して行く、こういう目的を持つた制度でありますし、警察予備隊というのはこれと全く違いまして、非常事態の場合に普通警察を以てしては対処し得ない、そういう場合にこれを発動しまして普通警察の補いとする、少し語弊はありますが、以前の普通警察と軍隊とのような、そうい関係であるというふうに了解をしております。
  47. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 須貝先生は、先ほどこの住民の自由なる一般投票による自治体警察廃止はこの法案程度であれば止むを得ないという御意見があつたのでありますから、従つて或る物差を当てて、而も自治体警察の存続ということは飽くまでもこれは育成して行かなければならないという御発言もあつたのででありますから、従つて先生には或る程度の物差があつてのこういう御意見であろうかと思つて実はお伺いしたわけでありまするが、それなら別の角度からお伺いしますが、この程度の、五千以上の市街的町村だけは地方の自由意思に任せるということもこれも止むを得ない。この程度の改正ならいわゆる警察民主化地方分権を阻碍せぬ、又警察の能率化という点から言つても或る程度やつて行けるのではないかという議論になると思うのでありますが、その点どういうわけでこの程度であればよろしいとお考になるのかお伺いします。
  48. 須貝脩一

    公述人須貝脩一君) それは先ほど申しました通りに、初めの政府側の糧案と、それから自治警側の意見とがお互いに競合いましてここに落着いた、そういうことがあります。それから又住民の自由なる選択に任すということがありまして、決して一方的にこれを政府から押付けということではないという点があります。そういう点でこの程度であれば決して警察法精神に違反しないと考えられる、こういうことを申上げたのであります。これでお答えになつておりますかしら……。
  49. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 もういいです
  50. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) では次に梅田君にお願いいたします。
  51. 梅田博

    公述人(梅田博君) 第一に、私の理想としておる警察の構成の問題であります。理想といたしましては、府県單位と大都市單位、人口は先ほど申上げませんでしたが、やはりデスボロ委員会あたりが発表しました十万以上、そのくらいが最も妥当ではなかろうか、このように存じます。  第二点は、国警予備隊の問題でありますが、国警予備隊は歯に布を着せないでものを申しますと、実質上の軍隊であります。これがちよつと治安の撹乱にカービン銃をぶら下げて行くということはアメリカでもやれないことでありまして、アメリカではやはりFIBがそういうところに出て一応解決を付ける。そうして軍隊というものは專ら敵国と戰うものでありまして、国内の争いというものは軍隊がやらないのが大体の建前であります。イギリスにおきましては、常に警察も、直ぐ判事の要求さえあれば軍隊も出動するといつたような体制になつておりますけれども、大抵軍隊が常に民衆の矢面に立つということになりますと、軍隊そのものが非常に反民主的になる、そういうことで軍隊はそういう治安の問題には使わないというのが大体の建前になつておりますので、国警予備隊は実質上の私は軍隊だとこう考えております。  第三点は、世界大戰が起り国内の治安が極度に不安になつたときには、国警一本建にするのも止むを得ない。僕はこう申したというお話でありますけれども、言い違いであつたかも知れませんが、この原稿を見ますると、国警一本槍とする必要が起るかも知れない。こうありまして、私の主観と客観に対する認識であります。これは私言い間違えたかも知れませんし、或いは甚だ三百代言的であるかも知れませんが、そういつたような場合が考えられないではないかと申上げた次第でありまして、決して止むを得ないという私の見通しを申上げたのではないのであります。  それから第四に、郡警察にすべての地方警察が吸収された。それはアドミニストレーテヴ・ポリスだけであつて治安警察はどうなるかというお話であります。先ほどはアメリカと申上げたのでありますがイギリスであります。イギリスにおきましては、国家警察というものはメトロポリタン・ポリス、これは一八二九年に作られました警視庁で、これだけが内務省に直属している国家警察のように私は記憶しております。その治安警察というものは殆んど軍隊に任す。そうしていわゆる犯罪人を捉まえるとか、それから密輸入を挙げるとか、交通取締をするというような行政警察はすべて自治警に属しているように記憶しております。これでよろしうございますか。
  52. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 次に河野さんにお答えを願います。
  53. 河野勝敏

    公述人(河野勝敏君) 只今質問されました、自治警察の費用を負担したら作るか作らんかというような御趣旨でありましたが、我々の村及び近村の五千以下の村の様子を見ますと、現在においてはそれまで補助を頂いてまでこれを作らねばならんというような必要性を今は感じておりません。従つて小さな村では組合で作つたらいいじやないかというようなお話が又あるかも知れませんが、組合で作つてしても現在においてはさほどの私は能率は上らんと思います。で、やはり現在の駐在を殖やしてそうしてやることが最も妥当ではないか、これが最もいいことだろうと思います。  次に国警自治警を圧迫して云々ということにつきましては、これは千葉版あたりにそういうことが出ておりまして見ているのですが、具体的にどこの自治警国警に圧迫されたということはちよつとここで申上げかねます。
  54. 竹中七郎

    竹中七郎君 梅田さんにちよつと一つだけお伺いいたしたいと思います。梅田さんはこのたびまあ改正になりまして、町村自治警察が住民投票において廃止されたときにおきまして、国警に吸収することは内務官僚の独占的な一つの非常なる弊害だとおつしやいましたが、それならばどうしたらいいだろうか、この御対策をあなたも相当御研究になつておられるようですが、それならどうしたらば実際一番初めに申されました通り、能率と民主化というものは反比例すると、これは我々もよくわかつております、併しそうしたときにはどうしようかと、この現在の状態においては国警がいわゆる国の警察じやなくて県単位の警察だというふうに考えてやらなければならないだろうと私は思いますが、あなたは絶対それは反対だと言われますが、その点につきまして、はつきりお話を願いたいと思います。
  55. 梅田博

    公述人(梅田博君) ちよつと今聞き漏らしたのでありますが、府県單位反対と、私申しましたですか。
  56. 竹中七郎

    竹中七郎君 いやそうじやないのです。今の廃止されましたものを国警に吸収することは反対であると私はとつたんです。その点につきまして、然らばどういうようにやつたならば警察力強化され、民主的になるかということをあなたの御意見として承わりたい。
  57. 梅田博

    公述人(梅田博君) 内務官僚の陰謀だと申上げましたのは、それは別段資料があつて申上げておるのじやないのであります。いわゆるまあ新聞記者的な感覚と申しますか、我々の皮膚で恐らくそういつたようなことになるのじやないかという感覚がするのであります。それで第二点の代るべき方法といたしましては、県警察並びに大都市、先ほど申上げました十万單位以上の警察の二本建にする、それも今の情勢でどうしでもできないというならば、一概に組合警察はこういつたことで費用分担が要るとか若しくは管轄区域でいろいろな不便が起きるとか言わずに、如何にしたら組合警察を作つて、それを能力的、能率的に運営をするかということに対しまして、もつと研究し、指導すべきが先決問題であつて、直ちに国警に編入すべきだといつたような議論を排斥すると、こう申上げた次第であります。
  58. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は須貝先生に一点お尋ねしたいのですが、須貝先生のお話を結論的に見まするというと、この程度ならばよかろう、併し心配の点もあるからそれは附帯決議を附けることが望ましいというお話でございまするが、この問題に関しましては梅田先生が御指摘になつておりまするように、国警というものは自警に傷越しているということを一般民衆、それから当事者、これらが観念的に考えているということは否定できない現実でございます。そういたしますと、今度の改正案なるものは、やはり私は進歩的なる方向に対しての一つの堂々とした政府の抗議であろうというふうに考えておるのでありまするが、須貝さんはこの程度なら止むを得ないという論拠を、自警と国警とが数次会合をして妥協点に到達されたものであるから、まあこの辺ならよかろうという極めて私をして言わしむれば不満足なところにその論点を求められたのでございまするが、卒直に申して一つのこの法律案に対して学識経験者としての立場から、先生が一つの理想という点から考え、本法案をよしとするか、それとも極めてこれは矛盾に満ちたものであるというふうにお考えであろうか、これを一つ政治的な今までの駈引状況というものを抜きにして大胆率直にお話下さつて、参考にさせて頂きたい、こう存じます。
  59. 須貝脩一

    公述人須貝脩一君) 今の御質問甚だ尤もであると思いますので、お答えしたいのでありますが、理想がどこにあるかということはこれはよくわかつておるのであります。ただ法律案というものは、理想だけでは法律案をきめるわけには行かないのでありまして、理想を実現するのにはいろんな現実的な諸要素というものを考えまして、そこで初めて理想が法律案において現実化される。その姿が出て参るのであります。ところがそういう現実的な諸要素というものを最もよく知つておるものは誰であるかと言えば、これは国警並びに自治警というようなそういう当事者なのでありまして、そういうような警察関係の当事者がそういう現実的な諸要素を勘案しまして、この程度で差支えなしと考えたということ、これが実は理想を実現する、現実化する上の一つの実際的な標準になるのではないかと、こういう点を考えましたことが一つ。それからもう一つは、この地方分権というそういう理想を、実際上遺憾なく生かして行くためには、この国警のほうも又自治警の側も、快くこの制度の下に、運営協力して行けるような、そういう法律案でなければならないということがあるわけでして、そういう点からこの両方の当事者がいろいろ折衝の結果一定の妥結点に到達したということは、こういう改正案については将来どちらの側からも不満足な点はありましようが、これを公然と大つぴらに、これに対して不満を表明し、又その不満の故にこの職務遂行の上に遺憾を来すというようなことがなかろうと、こう考えられる点がもう一つございます。私はそういう趣旨で申上げたのであります。
  60. 中田吉雄

    中田吉雄君 須貝教授にお尋ねしたいと思いますが、その前に読売の梅田さんが申されました後段の点につきましては、アメリカの警察法の母法であるイギリスの諸制度につきまして、該博な蘊蓄を傾けて頂きまして、特に我々が国会でそのような問題を提げて四つに組んでこの法案と鬪つています際に、非常に有益なサゼツシヨンを與えて頂きましたことに対して深く敬意を表するものであります。(「同感」と呼ぶ者あり)そこで、須貝教授にお尋ねいたしたいのですが、このたびの改正法案国警側並びに自治体警察意見を調整しまして、新憲法の命ずる警察民主化の線を、地方分権制度を崩さずに、その枠内において妥結点を見出しているので、附帯的な決議をいたしまして可決するなら大体誤りはないではないかというふうに申されたわけでありますが、成るほど外観上からいたしますれば、我々も一応そういうような結論に達することができるわけでありますが、併し仔細にこの案を検討いたしますると、特に人口五千以上の市街地的町村住民の自由意思によつてこれを国家地方警察に編入することができるという点は、実はごうごうたる世論の批判を恐れながら、この警察地方分権制度をこわしまして、中央集権への大きな一歩を踏み出したものであるというふうにとりまして、私は極めて危険な、日本を敗戰に至らしめたこの警察国家への大きな新らしい途を開くものであるというふうに考えるわけであります。勿論私といたしましても、五千くらいの小さい町村にああいう形の自治体警察を持つことに対して賛成するものではないわけでありますが、住民の自由なる意思によつてと言いましても、現在の国家が財政的な援助をいたしません限りにおいては、財政的な負担に堪えないからという意味で、住民意思が経済的な負担に堪えかねまして、全国的な規模においてこれは自由なる意思という名において全面的に国家地方警察に統合される虞れが極めて深いわけであります。御存じのように、昭和二十五年度の平衡交付金の中にこれが入つておるわけでありますが、概算交付の際におきましては、警察官一人に対して十八万幾ら出していたものを、最終決定におきましては十六万と減らしていますし、そういうような形で平衡交付金をどんどん減らして行きますと、地方住民警察を維持いたします財政負担に堪えかねまして、だんだんと自治体警察を返上するような決議をすることはこれは明らかであります。現在の税法の建前からいたしまして、地方住民の大部分が所得税でとられる、更に地方の大きな財源であります固定資産税、市町村民税だけでこれを賄うことは不可能でありましで、そういうような一角からいたしまして、自由なる意思、自由なる意思という表現に名を借りまして、財政的に平衡交付金を抑えることによつてどんどんとこの制度はこわされまして、我々が敗戰という大きな犠牲を拂いまして、かち取りましたところの、この自分たちの選んだ代表によつて、洗練された公安委員会によつて我々の警察運営されるというこの大きな画期的な改革というものがこの一線からこわれまして、恐らく往年の警察国家への大道を開く大きな契機である、こういうふうに考えるわけであります。国家地方警察といたしましては、成るほど最初には二万の増員というような大きな改革をひつさげてやつたのでありますが、反対されまして、この辺で妥協されているようでありますが、少くともこの人口五千以上は住民の自由な意思によつて存廃を決定するという、これだけは私は地方財政に圧迫を加えることによつて殆んど国家地方警察が意図されるような方向に行くと思うわけであります。果して数個の点を挙げられまして、原理的な立場からこの案は政治の現実としては止むを得ないと申されたわけでありますが、附帯的な決議を付けて中央集権に還らないような釘を差しておけばいいではないかと言われたのですが、一体それは何を意味しておるか、お伺いしたいと思うわけであります。
  61. 須貝脩一

    公述人須貝脩一君) 大変いい御質問でありまして、この質問に対しましては、私は成るほど恐れておられるようなそういう危険が多分にあるということはそれは確かでありますが、併しこの現実の情勢におきまして、警察力強化するというために、やはりその理想というものはこの場合そのままには実現されがたいという点があると思うのでありまして、そういう意味でこの程度ならば自治警の側も止むを得ないということでこれに対しまして自分らの主張を讓られたというふうに考えておるのであります。で私個人の考えとしましても、こういう点につきましては、これは一体そういうことをこの改正案従つてどの程度弱小自治体警察国警側に吸收されるかという点をよく見究めた上で、そうしてその実際の結果が果して今質問なさつたこの委員のかたが恐れておられるようなそういう結果を生じたならば、その際には又警察法改正案を出しまして、そうして理想の実現の上において誤りのない方法をおとりになることができるし、又そうあるべきであるというふうに私は考えておるのであります。それはさつきお話申上げるときに省略したのであります。まあ一遍これでやらしてみろ、そうしてその結果を見た上で又考え直す、こういう実は考えなんであります。
  62. 相馬助治

    ○相馬助治君 私も先ほどの御答弁に追加してお聞きしようとしたときに、中田委員から尋ねられたのでありますが、須貝先生のお話を要約しますと、この際日本の民主化のために一つの試行錯誤も止むを得ないであろうと、こういう前提に立つておられまするが、事は私は極めて重大であろうとかように考えておるのでございます。それで中田委員が尋ねられた点を是非お聞きしたいのですが、附帯事項を付けるとしたならば、どういうふうな点を強調しなければならないかということを具体的にお示し願わないと、先生の熱意をこめて公述して下さつた趣旨が我々には了解できないのです。なおこれは先生を指すのではございませんが、日本の学者と言われる人々の新聞や雑誌に寄稿しておるものを見まするというと、平和ということを息せき切つて力んで語らなければならないというようなこの時代において、平和というものが真劔に論じられていない、むしろ敗戰後の、何人が見ても平和への途を日本が歩みつつあるときにおいてのみ学者が平和々々ということを大きく国民に呼びかけていたということを我々は看逃し得ないのです。従いまして、私どもこの重要なる法案の審議に当つておりまする国民代表として、この議員としての職責から学識経験者でありまする先生にも御多忙のところお出で願つて、我々がお話を承わるというのは現実に即して法律改正せられるということはわかつておりまするが、政治そのものは先生に対して釈迦に説法でありまするけれども、現実を見究めて法律が生れると共に最終的には常に高遠なる理想に向つて総括的には歩んで行かなければならないということは、もうこれは議論を待たないところであろうと思うのであります。先ほど中田委員が指摘された点を私がもう一度繰返して申しますと、民主主義の名を利用して住民投票という何びとも否定し得ない民主的な方式を利用して、その実は民主主義とはおよそ縁のない方向に逆行する懸念が極めて濃厚であるというのが今般のこの改正法案なのでございます。須貝先生がこの際試行錯誤は止むを得ないとこうおつしやつたけれども、我々はあのみじめな戰争をして、そうして多くのものを失つてやつとかち得たこの民主主義を又この際警察法で試行錯誤も止むを得ないというがごときことは断じてとらないところであるのでございまして、総括的に本改正案をよしとするかどうか。学者としての立場から……。もう一つは附帯條件を付けるとするならば、それは具体的に如何なることを付けたならば我々は立法府に連なる者として悔を残さないことに相成るであろうかということを指導的な立場を以て是非とも一遍お示し願いたいと存ずるものであります。
  63. 須貝脩一

    公述人須貝脩一君) 吊し上げになつておる状態でありますのでどうも……。今御質問の要旨よくわかりました。この附帯決議の内容を具体的に示せということでございますが、それはずつとこの第一点、第二点というふうに数え挙げてお話したことからどのような附帶決議を付けるべきかということは、これはおのずから出て来ると思うのであります。でこの附帯決議というものはこれは私はよく知りませんが、恐らく何といいますか、大きなプリンシプルを示しまして、そしてこの附帯決議をするというようなことが多いのではないかと思うのであります。それからもう一つの御質問の点、つまりこの改正案をよしとするか否かはつきりせよと、こういうお話でありますが、これは私が先ほど十五分に亘つてお話申上げました通りに、この改正案そのものには反対しておらないのであります。それからもう一つ、この試行錯誤というような態度はけしからんという、こういうお話でありますが、この点はまあ見解の相違というようなことになるようでございまして、私は只今のところはさつきから申上げたようなことを考えておるのでありまして、公述人としまして、この程度のお答えで責務を果したことになるのではないかと思うのであります。
  64. 相馬助治

    ○相馬助治君 その通りです。よくわかりました。
  65. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それではこの辺で午前の部は終ります。どうも長時間有難うございました。二時から午後の部を開始いたします。    午後一時四分休憩    ―――――・―――――    午後二時九十分開会
  66. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それではこれより公聴会を再会いたします。  皆様大変お待たせいたしまして、どうも御苦労様でございます。では菊地民一君にお願いをいたします。菊地君は府県議会代表で、東京都議会議長であられます。どうぞ……。
  67. 菊地民一

    公述人(菊地民一君) 只今御紹介を頂きました菊地民一であります。各府県代表といたしまして本日公述人として参りました。あいにく本日都議会が招集されておりまして、時間がたまたま又同じような時間になつております関係から、極めて簡潔にお許しを願いたいと存じます。かねて府県会のほうからは意見書をまとめて提出しておることでもありますので、このことも私の早引きの理由といたしましてどうかお許しをお願いいたします。  マツカーサーの書簡やシヤウプ勧告に基きまする、いわゆる中央集権より地方分権として諸制度と共に改革したところの警察制度というものが、又再びここに改革の必要に迫まられたということでございます。その理念を細かに検討いたしますと、非常に議論が多く、又専門の委員各位には、これは決して我々の申上げることが適切なものでもない、いわばその結論を得たいというようなお気持じやないかと思いまするため、早足に申上げまするが、現在の警察制度国家地方警察自治体警察となつて、同じ部面において、同じ形態の下にその警察行政を行なつているというのが事実であります。人口五千未満のものを国家警察とし、その上のものを自治体警察とするところに幾多今日地方々々に起るところの諸問題を散見するのであります。この根本的な問題を解決せざる限り、恐らく今日の警察行政は円滑に行かないと私は信じております。自治体警察の都市の間に弱少の町村が入つて同じ形態の下に警察行政を行なつて行くというこのこと等は顯著な事実でありまして、これは必ず統合しなければなりません。人口を以て制限することが甚だ不自然であるということも合せて考えられます。その不自然な警察行政が続く限りは、決してよい警察行政は行われない。勿論警察行政は東京都のみのものではありません、全国地理的にいろいろと考え併せて検討しなければならんものでありますが、我が東京都におきましても、この行政下におきましては頗る不便であります。多くの住民は二重な行政監督を受けるがごとく、又国家と自治体警察のその権限の間に優劣の考えを持つものがあるのであります。これは警察制度改善の上に必ず直さなければならん問題だと私は思う。構想といたしまして、余りくどくど申上げませんが、私は今日の国家警察というものは、結論として廃止すべきであると信じております。都市におけるところの都市警察は、これは当然現在の地方行政に伴つた制度でありまするから、これは存置いたします。国家警察に属するところの弱小の町村は、これは地理的に考えまして、組合警察とすることも結構でありましよう。成るべく県単位におけるところの警察組織を以てこれを統合し、連合して運営することが適当であると信じます。東京都におきましては、大都市である。大きな都市でありまするから、その附近におけるところの小さい都市の管轄というものは、大きいものに併合して考えるべきものである。今日そのままにして置くことにおいては、国家の負担を以て運営するところのこの国家警察というものと、自治体警察との間に多少は財政的の考えも持たれるものでありましようが、併しこれは我々がよく検討して見ますというと、共に全国的に県単位の一つの連合体を以てなすべきものであつて、共に我々東京都民の希望するところであると私は信じております。否、全日本におけるところの各都市においても同様な感じを持つております。こうして考えて見まするならば、我々が今日希望するところの、真の民主警察として国民に親しまれ、いい習慣によつて運営しておるところの現状を改革するのならば、いつそこれは三つの段階に分けたほうがよろしいと私は思います。先ほど申上げました町村は、組合その他或いは合併すべきところの都市、統合すべきところの警察行政を、これを県單位のものと都市のものとに分け、国家の警察は、これは国家事務として最高度の運営に当るべきであると、私はかように信じております。勿論国家警家としての運営には大きな問題がありましよう。取りあえず国家警察の事務というもの、その行政というものは、国としての取扱の上に大きな線に向つてその機能を発揮すべきである。而してその本体というものは、これは各所にある今の予備隊の組織を以て国家警察運営すべきと考える。丁度東京都におきまするところの警視庁の予備隊のような、あんな組織で別にいたしまして、国家のためになすべき警察事務でいいと思う。私はかように考えます。恐らく多くの人々の中には昔の日本におけるところの警察制度考え直す人があると思います。又新聞を見ますると、多くこの議論を述べる人があります。これは大きな間違いじやないかと思います。それは若し古い日本の警察のごとく、その特高的の機能を発揮するために、警察国家として一般民衆に君臨し、気持いいところの気持を傷つけるところの憂いが生ずると私は案じております。かようなことは民主日本の、民主警察の本質から離れたものであつて、現在行うところのこの警察機能を発揮させ、国家警察の持つてつたところの事務は、自治体警察、先ほども申上げた県単位のものにこれを連合させ、国家が負担したところの費用を以て、この自治体運営させるならば、決して機能的に、能率的に或いは機動的にも決して不便はないと思います。国家最高の責任者であるところの政府においても、当然これは考うべきことじやなかろうか。而して国家というものは国家たるの地位において国の治安維持に当るということが一番適切であると、私はかように考えます。いずれこの問題を検討するに当りましては、それぞれの機関において論議され、或いはすべての調整、作成をなされるでありましようけれども、私どもが現在都政万般から眺めておる面におきましては、これはよろしく特別の機関を設けて、特別の人々の組織によつて検討すべきものであつて、おのおの自分の身勝手な、例えて言うならば、東京都におきましては警視庁意見として述ぶべきものでもなく、国家警察として、自分意思を発表すべきものでもないと思う。これはよろしく自治庁その他の機関において、十分に中正の立場において検討して我が国家警察の改革の任に当つてもらいたい。  以上甚だ簡単でありまするが、私の私見を申述べまして、失礼させて頂きます。
  68. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ちよつとお待ち下さい。委員各位に申上げます。菊地君はこれから都会においでになりますために御退席になりますから、この機会に御質問があれば御質問願います。
  69. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 最後の所で警察制度の改革については、中正な立場にあるところの機関において審議されるべきものであるということを言われましたが、この点は全く同感なんですが、その機関として自治庁という名前を言われましたが、そういう公正な立場に立つて、そういうことを規定するために国会があるので、国会憲法上最高の政治機関なのですから、政治の最高機関である国会がこれに当ることが当然なんで、国会というお言葉が出ないで、政府の機関である自治庁という名を挙げられるというところに少上我々変な感じがするのですが、どうでしようか。
  70. 菊地民一

    公述人(菊地民一君) 申上げます。私は現在警察行政の改革のために、民衆の声もあり、併せて報道機関の意見もあり、諸種の情報を以てこれを検討せられておりますが、取りあえず中正な立場においておのおのの職能の自己的な意見を述べないで検討するのには、今見渡すところ他に相当の機関を持つていないので、仮定の下に、こういうところの立場にあるものにおいて検討したらどうかという考えを申述べただけで、最後的にはそこでその機構等ができましたら、勿論これは国会において御決定になることでありますから、その中間のことを実は申上げたわけでございます。
  71. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ほかに御質問ございませんか。それでは有難うございました。
  72. 菊地民一

    公述人(菊地民一君) 誠に相済みません。
  73. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 次に馬渕威雄君お願いいたします。馬渕威雄君は実業界の代表としておいで下さつたので、東宝株式会社の常務取締役であります。
  74. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) 只今御紹介にあずかりました馬渕でございます。只今実業団代表という委員長の御紹介でございましたが、実は私は日本経営者団体連合会、略称日経連のほうへ誰か公述人を出せというお話がございましたそうで、日経連から指名を受けて出て参りました。広く日本の実業家全体の総意で選ばれたという資格はございません。その点を一応御了承願いたいと思います。今回警察法改正の案が国会に上程せられました。我が国が当面いたしております刻下の急務である治安の確保等を考えまするときに、この警察法改正案が出されましたことにつきましては、その趣旨において我々民間側といたしまして賛成でございます。ただ根本的な警察のあり方につきましては、我々といたしましても若干の意見を持つておりまするものでございまするが、例えば只今のお話のように、府県單位の自治体警察を持つ、或いは又日本全体を一本にいたしました国家警察一本の組織体を確立する、その他いろいろの案が根本的には考えられるのであろうと存じまするけれども、我々といたしましては今回上程せられておる改正案に基きまして、更に御考慮を願いたいと思う点につきまして、二、三希望を開陳いたしまして職責を果したいと存じます。  我々民間におりまして従来いろいろと見ておりまするところによりますと、これは大方もうすでに識者が指摘しております通り、警察民主化、或いは地方分権というふうな名の下に、国家警察並びに地方自治体警察というふうに分れて、そうして警察全体の機能がこま切れのようになつておるということに関しまして、種々の不安を感じております。又現にそのこま切れ的警察機能からして、ほうぼうに事件が起り、それの処理に当つて、ただ我々といたしましても、もう少しどうにかならないかという点が痛感されておるわけでございます。我々民間の経営者といたしましては、従来も産業を守り、或いは経済を守つて行くということのために、ひたすら産業防衛の必要を感じまして、みずからの力で以て我が国の産業経済を維持して行く、そうして危機を自力を以て救おうというふうな決意をいたして参つたのでありますが、併し今後更に予想せられる組織的な暴力というものに対しまして、果してかかる………言葉はやや極端でございますが、分断された、機動性のない警察力を以ていたしまして、果して我が国の経済或いは産業というものが守られて行くかどうか、或いは又、大きく見まして我が国の民主化を否定しようということの大きな動きに対しまして、現在の警察機能を以ちましてこれを防いで、そうして真の日本の民主化を実現し得るものであるかどうかということにつきまして、多大の不安と危惧を感じておる次第でございます。  そこで今回の改正案を拝見いたしまして、我々は、従来も諸所に起りました通り、今後といえども偶発的ではなくして必然的に大規模な、相当組織的な暴力が国内に起るのではないかという危険を感じます。その場合に、これに対応いたしまするのに、先ほども申し上げましたような分断された組織警察力では、到底この全国的な、或いは又場合によつては国際的な組織下に立つておる組織的暴力というものに対して、果してこれが対抗できるか。それにはどうしても全国的な組織、機動性を持つた強力な警察というものの布陣がなければならないのではないかというふうに考えます。現在の警察力は、今回の改正案によりますると、現在は十二万、それに警察学校その他の職員を併せまして十二万五千というお話でございまするが、その中約九万が自治体警察、あと三万が国警、そしてあとの五千が国警に包含されるところの警察学校の生徒ということになるといたしますると、如何にも以て全国的な組織機動力を発揮するのには国警の力が弱いのではないか。現に警視庁管下、東京都の警視庁管下においても二万数千人の地方自治体警察がある。全国を一本に眺めた場合の国警の力が僅か三万或いは三万五千というふうなことでは、到底こういうふうな組織的な暴圧に対しまして対抗をするのにはやや不足なんではないかというふうな感じをいたします。勿論今回五千人以上の市街地、町村自治体警察が、住民投票によりまして、国警に転移できるというふうな措置があるということを拝見いたしましたが、それを以てしても、到底五万にも達しない。私は専門家でございませんので、よくその数幾らが妥当なりや存じませんが、十二万のうち、少くとも半数程度の国警の要員というものが必要なんではないかということを考えておるものでございます。元来、自治体警察というものは、これは誠に結構な制度でありまして、決して異議を差挾むものではございませんが、それは恐らく国内の治安が非常に安定しており、その各自の市民生活或いは経済生活、産業生活というものが安定をしておる、そして外敵、或いはその他国内の擾乱というようなものが予想されない場合、自分たちの都市、自分たちの町、村をみずからで以て守つて行こうという理念には一向異存はないのでありまするが、遺憾ながら我が国の現状はそういう事態ではない、もつと緊迫した事態が予想せられておるその場合に、自分の町を守ろうというふうな本質的な自警の観念からいたしますると、それがために問題が起つた場合に、すぐに飛び出して行つて、他の地域に行く、或いは又一つの地方に問題が起りましたときに、自分の村を守る。常に自警の、すぐにそこに出て行くというふうな、すぐに観念は飛躍しない。やはり固定化されてしまうということが考えられる。どうしてもその場合、一つの地方或いは国全体を機動的に守り得る警察力というものが必要なんではないかということを考える次第でございます。  次に、只今申上げました五千人以上の町村において、住民投票によつて国警に転移がなし得るということになつておりまするが、現在の六大都市或いはその他の若干の小都市を除きまして、大部分の都市、町村というものは、財政的な負担の面におきまして、現在の自治体警察を十分に成長し、活躍せしめるための財政的な素地に恵まれておらないということはほうぼうで我々が瞥見するところでございます。折角の警察民主化自治体警察の健全なる発展ということを考えましても、こういうふうな現状では、真の自治体警察の健全な発展ということは当分望むことはむずかしいのではないか。而もそういうふうな窮屈な財源から警察職員を設けておりながら、曾つての全国一本の警察絹織より見れば、むしろ多数の職員を擁しておるというふうな地方も、或いは町村もあるのではないか、多数の人間を雇つて、而もその機能が十分に維持されない、その待遇或いは経費等も極めて僅少であるという場合を考えますと、誠に非能率であるというふうに我々には感ぜられてならんのであります。従つてこの際、單に五千人以上の町村のみでなく、もつと小都市を含めまして、この際国警転移が考えられて然るべきではないか、というふうに考えております。もつと極言いたしますれば、この際六大都市以外の都市は、すべて一度国警に転移せしめるということが考えられてもよろしいのではないかというふうに考えておる次第でございます。  次に五千人以上の市街地区、町村の自治団体警察国警に転移せしめる場合、住民投票によつて、その多数決によつて決定するということになつておりまするが、現在の我が国の危機はどこに現われるかわからないという状態であろうと存じます。單に自分の町を町村が守つておればよろしい、或いは村を守つておればよろしいということではなくして組織的な暴力というものは、我々の守備の警察力の弱い所を衝いて来るのが大体の傾向であろうかと思いますが、そういう危険がある場合に、一つの町なり、村なりの警察力の存廃のことに関しまして、その地方の視野は極めて低い、挾い視野の住民が、住民投票によりまして一切を決定するということは、いささか危険であろうかと存じます。たとい理想的に住民投票が行われましても、今申しましたような広汎な立場に立つてものを見ておらないことでありますので危険があると存じますが、いわんやその間に不純なものが重さまり、何かためにせんとする動機から、この住民投票が左右されるということになつた場合、誠に危険千万であるというふうに存じます。従つて我々といたしましては、これは最後的にはこの国会において、国会の協賛を得て、その存廃のことを議せられんことを希望します。国会が余りにも大げさであるならば、市町村議会というもので以てこれを決定する。理想を申せば、これは国会におきまして論じて決して軽からざる問題であろうかというふうに考えております。以上総合いたしまして、今回の改正案が全体として見まして、一方においては警察民主化地方分権という線に沿つて、そしてなお且つ本日の事態に招いたいという御苦心の点は重々我々としても拝察せられるのでありますが、その改正の点が極めて微温的であつて、我々の意に満たない点があることを先ず申上げます。  それから国警の力を増加せしめて、自治体警察をやや弱めるといつたような我々の主張に対しまして恐らく非難があり反対説が十分あろうと思われます。これは我々の真の意思を誤解しておられるかたがたの意見であろうと思います。たとえこれが、極端に申しまして、全国一本の警察組織になり、そうして一つの統制ある組織警察が日本に存在したといたしましても、それは決して警察中央集権化、或いは幹事警察、或いは又警察国家になり下るというふうな危険は我々は全然感じないのであります。すでに我が国には国会の権威が存在いたしております。この国会の権威によつて日本の民主政治は十分に養われつあるのでありまして、それに対して私たちはいささかの懸念も差挾みもいたしませんし、又心配もいたしておりません。十分日本の国会が権威を持つて国政に関與している今日、又警察行政が公安委員会制度によりまして十分に民主的に養われているというときに、自警と国警が行われておればそれで警察民主化された、或いは又警察中央集権化は防げたという説は誠に形式論といたしまして、我我といたしましてはそういう説には反対でございます。又今日我々はありていに申上げまして、共産勢力の脅威下にさらされております。これは英国或いはアメリカ等の市民生活とは全く異なつた特殊な国情にあることは皆様御承知の通りであります。而して共産党は申すまでもなく民主主義に対する脅威でありまして、この日本を健全に発達せしめようとしている民主主義を根本的に覆えそうという暴力であります。従つてこれに対しましては如何なる努力を持つてしてもこれを排斥し、拂いのける必要があることはもうここに申上げるまでもないわけでありますが、これを單に今すでに相当改正を要しなければならんということが、もうすでに幾多の事例ではつきりわかつているにもかかわらず、單に形式上の問題で警察民主化であるとか、或いは地方分権であるとかということのために、無力な、又機動性のない組織の弱い現在の警察力を動員することによつて防ぎ得るということを考えているとするならば、誠に危険極まりないというふうに考えます。そういうふうな考え方をなさることのほうが、むしろ日本の民主化考えておらない、暴力にむしろ服従する考え方ではないかというふうに考えます。従いましてどうかこの際今回の改正案を審議せられますに当りまして、どうぞかかる点を十分御審議頂きまして、少しでも強力な機動性のある警察が日本に実現いたしますように御努力を願いたいと、かように考える次第でございます。  誠に愚見でございまするが、これを以て私の職責を果させて頂きます。
  75. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。次は安積伊二郎君にお願いをいたします。安積君は弁護士代表としておいでを頂きました日本弁護士会の常務理事であらせられます。
  76. 安積伊二郎

    公述人(安積伊二郎君) 只今御紹介を受けました安積伊二郎でございます。秋は只今日本弁護士連合会の常務理事をいたしているものでありまして、かたがた弁護士会の意見代表する意味でお招き下さつたことと思うのであります。  まあ弁護士会といたしましては、今度の改正案は要するに国家地方警察自治体警察の間の調整を図る、而して警察力強化をしようということの狙いのようであります。それともう一つは、例の自治体警察がとても地方民の負担に耐えないで、それを廃するというようなことで、さすればそれをどうしたらよいかということのようであります。まあ私としてはこの改正案は賛成であります。ただ先ほど来も前弁士のかたが申されましたが、そういう狙いの下にやるならば、もう少し思い切つてつたらいいじやないかということをば思つている次第であります。それと一番お忘れに……そこに気が付かないのかどうかわからんのだが、とにかく今日警察運営をなすのは公安委員会というものが運営する。この公委員の選定にどうして一体弁護士をそれに少くも一人は加えないのかということなんであります。これは或いはお気付きにならなかつたことだと思うのですが、これは御案内の通り我々弁護士というものは、弁護士法第一條によつて、弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする、というように規定されておるのであります。弁護士というものは、そういう使命に向つてこれは立つている代物なのであります。こういうのを公安委員に一枚加えないということは、これはどうも警察力強化する上においても、又公安委員が主として運営することになるのですから、公安委員警察のあり方その他法制に通じている人を加えないということは、これは甚だいかんじやないかという点で、何とか修正ができるのであれば将来公安委員は、うち一人は必ず弁護士を入れることというふうにしておきますれば、公安委員会強化にもなる。従つて警察運営するやはり一つの力強いことになるのではないかと、さように考えます。  その他申上げたいこともありますが、私はこれだけ申上げあおきます。
  77. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 委員の各位に申上げます。馬渕君は三時までにほかに用事がおありになるそうでございまして、質問のおありのかたはこの際に馬渕君に対して質問をして頂きたいと思います。
  78. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 馬渕さんは中労委のほうにおられたときに、私たち労働運動の先輩として御指導を受けたかたでありまするが、当時日本の民主化のためにお働きになつておられたおかたが、治安の現状に鑑みて自治体警察の趣旨そのものは賛成でも、現実の問題としては国家地方警察警察員を十二万程度の総警察員とするならば、六万程度、半分くらいは持ちたいという御意見つたのでありまするが、未だこういう厖大な国家地方警察増員を主張せられた意見を聞かぬのでありまして、どういう根拠でこの半数程度のものを必要するかという点をもう少し御説明を願いたいというのが第一点であります。  第二点としましては、この国際的な、或いは国内的な組織的な必然的大規模な暴力が起る可能性に対して、これを防ぐだけの力を国家地方警察のようなものに持たせる必要を説いておるのでありまするが、その場合そういう意味合いにおける暴力に対抗するものとしての国家警察予備隊というものが現在七万五千人あるのでありまするが、これとの関連性はどういうふうにお考えになるのであるかということが第二点であります。  第三点としましては今の話とも関連があるのでありまするが、全国的に機能を発揮し、機動性を十分持つ必要があるということをこの暴力問題で説いているのでありまするが、これを裏からひつくり返して聞きますというと、何か戰前における特高警察的な組織網を持たない限りは、これらから情報を取り、いち早くこうした暴力に対抗する措置ができないじやないかというふうにも考えられる節があるのでありまするが、この全国的な機動性を発揮し、機能を十分に果すというような組織というものうものは具体化にはどういうものを指しておられるのかお伺いしたい。以上三点であります。
  79. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) お答えを申上げます。第一点の、私が十二万五千のうち半数あたり国警に入れてはどうかということを申しましたのは、現在の自治体警察のうち町村、五千人以上の市街地町村に勤務せられておる警察職員の数が、よく存じませんが、私が目で調べたものじやありませんが、聞きますところ、約二万人弱あるかというふうに聞いております。それ以外に私の考え方どいたしまして、その他の都市におきましても自治体警察機能自治体警察と申しまか、警察力機能が十分発揮されておらないところが相当あるのではないか、その他をあれこれ考えまして五千人以上の市街地町村のものは全部自治体から国警に転移するとは思いませんが、その他を併せまして約五万ぐらいは国警のほうに来るのではなかろうか、これは私の勝手な私見でございますが……、併しそれだけでもなお現在の自治体警察というものの機能は十分に発揚されておるとは思わないので、六大都市以外の小都市全部が仮に国警のほうに転移されたということになれば、それだけでもすでに概算半数くらいになるのじやなかろうか。その程度のことでなければ国全体の警察力機能というものは十二分に発揮されないのではなかろうかというふうな、大つかみに申しまして半数というようなことを申上げたのでありまするが、これは数字的によく当つて見ないとわかりませんが、ざつとそんなことになるのじやなかろうかというふうな感じでございます。  次に第二点の……、ちよつと失礼しました。第二点は何でございましたか……。
  80. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 国内外の情勢から必然的な大規模な暴力の、騒擾の起る可能性というものが現在或いは将来に亘つてあるのじやないか。それに対してこれを鎮圧し又対抗する意味合いからも国家警察的なものを強化する必要がある、こま切れ警察ではいかぬ、こういう御趣旨だつたのですが、そういう場合現在の日本には国家警察予備隊が実力行使に当ることになつておるのですが、これらの関連はどうですか。
  81. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) 警察予備隊の現在存在しておることは私も十分存じておりまするが、問題は現在の国内の犯罪その他序司つておる国警、並びに自治体警察のあり方、それが先ず強力であり、機動性がなくてはならぬというふうに考えます。予備隊の出動します場合は、これはもう非常な場合でございましよう。併しながらそういう場合は考えませんでも、現在、現に行われつある大きな犯罪、或いは又我々が危惧を感じておりまする現在の国際情勢その他から考えまして、先ず以て警察力が拡充強化されておらなければならないというふうに考えます。それをどうしたら一番最少の人員で最大の効果を発揮し得るかということが、恐らく警察法改正の根本義であろうと存じまして主張を申上げたのであります。必ずしも警察予備隊を念頭におかないで論じておるものではないわけであります。  次に第三点といたしまして何か特高警察をお前は望んでおるのではないかというお話でありまするが、決してそのようなことは考えておらぬのであります。ただ然らばどうして一体全国の機動性を発揮し、随時随所に起るであろうそういう組織的暴力に対抗するのだということになると、私は専門家でございませんで、一体どうすればいいかわかりませんが、やはり国家全体を睨みますところの強力な本部があつて、そうしてそれによつて手足のごとく動くものが何かなければ、やはり今後の国内の治安というものは護れないのではないかという気がいたしておるだけでございまして、必ずしも思想警察、特高警察の再現を私が希望しておるというようなことは夢ございませんので、その点はどうぞ御了解を願いたいと存じます。  最後に私は先ほども申上げましたように、今後の日本の警察というものが、国家警察が大きくなつたから直ちに警察国家になつたり、或いは又中央集権的な官僚統制の警察になつたり、人民に天降つて来るような警察になつたり、というふうな危険は我々としては感じないのでありまして、それこそ日本の政治というものがすでにもう民主政治の基盤の上に立つておる。そうして繰返し申上げますように、公安委員制度による運営警察に施されておるという以上は、そのような懸念はないというふうに確信をいたしておるのでございます。甚だ答弁といたしまして用をなしませんかも知れませんが、又先ほど申上げました点について、種々誤解のあります点につきまして、お許しを願いたいと思います。
  82. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 大胆率直な御意見を承わつて、私も誠に快よいのでありまするが、公述人公述を批判し、追及する権限は国会法にもないのでありまして、これ以上意見がましいことを申したくないのでありますが、日経連の代表として出て来られた馬渕さんの御意見としては、誠に資本家を代表し、過去においてこの資本家が警察を背景にして、その資本の蓄積なりに当つて来た如実な主張を生々しく我々は聞いたという点で、誠にこれは貴重なる御意見であつたと思うのであります。併しそれにしましても、午前以来、或いは政府の再三の答弁においても御承知の通り、中央集権的ではない、官僚統制ではないと申しましても、自治体警察縮小し、その部分を人的にも、或いは機能的にも、行政規模においても、大いなる国家を背景とする警察を持つということは、これは明らかに中央集権的な警察であつて地方分権地方自治憲法上の論議から言うと、正面からやはり衝突する問題でないかと思うのでありまするが、少くとも総理大臣、或いは関係大臣等において、現下の治安上何らの心配がないというておる現状において、我々としましてはやはりこの憲法の下にある法律として、この警察改正法を考えます場合には、今の御議論にはどうしてももう一回御質問したい点があるのです。それはいわゆる治安確保という問題から言えば、機能の発揮なり、機動性の発揮なりという能率化の問題から、中央集権的なそれが最も望ましいかも知れないのでありまするが、一方警察力の分散、民主化という問題から、自治体警察の育成、強化の問題を考えます場合に、これらをどういう調整をおとりになるのが現実上最もよいとお考えになつておるのか、この点をお伺いしたい。先ほどの御意見の中に、六大都市だけは自治体警察を認め、他を国家地方警察に吸収するという場合においては、大体半々程度の警察官の人数の振り合いになるのじやないかという御意見の点から触れると、自治体警察は六大都市に限るというふうにも聞きとれますので、もう一度この調整を現実的にした場合に、どの程度の国家地方警察、或いは自治体警察というものの存続をお認めになられるか、この際伺つておきたい。
  83. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) 御答弁申上げます。警察の根本的な改正ということについては、私どもまだ何ら結論を持ち合せておりませんし、それに触れるべきでないと存じて参つたのであります。それが今日まかり出ました私の根本的な態度でございますが、今回の改正法を拝見いたしまして、その中で多少なりとも、意見として開陳し得る点があるならば、かくかくである。そういうことで先ほど申上げたのでありますが、でき得べくんば五千人以上の市街的町村国警転移、これも結構であろう。併しながらもう少し幅を拡げて、その他の小都市に現在いろいろと問題があるやに承わつております。小都市にもこの際国警転移をなし得る幅を持たせてはどうか。更にもう少し極言すれば、現状では六大都市以外は一応国家警察に転移できるような方法をとつて見てはどうかしらということを、ただ意見として申上げたのでありまして、自治体警察を根本的に破壊しよう、或いはそれをなくしてしまわなければいかんというふうな根本論議につきましては、私ども何ら説をなすものではないわけであります。それは冒頭にお断り申上げましたように、いろいろ意見があろうと存じます。国警一本で行け、或いは又、自治体警察をもつともつと発達させろ、或いは又先ほどの府県單位の自治体警察というものの拡充、私が言つたようなことの御議論もあろうかと存じますが、それを私論じる資格もありませんし、又何ら構想もあるわけではないのであります。
  84. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 馬渕さんのお話を伺いまして、私も小笠原委員からお話がありましたように、資本家的な精神の、非常に力強い御高揚がありまして、現在の日本において資本家、金持ちというものがどんなことを考えておるかということを、端的に御主張になつたことによつて国会として非常に貴重な資料であつたと思うのであります。又、そういうふうに極めて端的に表白せられた資本家的精神が、その利害を代表いたしております吉田内閣によつて警察制度改正によつて恐らくは馬渕さんが御要求になつたようなことを、初めは吉田内閣は考えておつたろうと思うのでありますが、GHQから叱られて、だんだん後悔して、そのような改革案になつて来たのだと思うのでありますが、併し、これも小笠原さんの御質問にあつたと思うのででありますが、警察法というものについて公述人としておいでになるのに、現在の制度を十分に御研究になつておいでにならなかつたような憾みを私は多少感ずるのであります。それは御公述の中に、警察官の数にしても、五千の誤りがありましたし、それから、そのほかの点にも、この現行警察法精神がどういうところにあるのかということについての十分な、失礼ですが、御理解が十分なかつたような感を持つたのであります。  それでお尋ねいたしたいことは、このお言葉の中に、警察民主化を唱えるということは、暴力に追随するようなものであるというような多少不穏当に思われる言葉があつたと思うのであります。警察民主化を唱えるということがどういうわけで暴力に追随するのか。それは必要以上に何か共産党というようなものの行動について被害妄想に少しかかつておるような私感がするのでありますが、(「批判々々」と呼ぶ者あり)現行法には全国的な立場の騒擾事件ということが起りましたときには、国家非常時態宣言というものによつて全国の警察を総理大臣の指揮下においてそれに当ることができる規定があるのも十分御承知なのかどうか。それから又そういうことのためには、海上保安隊及び警察予備隊という制度もありますが、その警察予備隊は十分知つておるというお話でありましたが、それで警察予備隊のことは御答弁があつたものといたしまして、警察法上に規定されておる国家非常事態宣言というものの場合のことについては、どれだけ御理解を持つていらしつて、それとの関連性において、非常に失礼な言葉でありますが、私たちは被害妄想のように思うのですけれども、そういうこととの関連性をどうお考えになつておるかということが第一点。それから先に申しました形式的に民主化を唱えることは暴力に追随するものであるというようなお言葉がありましたが、警察法精神を別に講釈を申上げるのではありませんが、ともかくみんな国民というものは警察に従事しなきやならんものである。先に朝の公述人の言葉にもありましたが、イギリスではエヴリ・メンがポリスマンであるという意識の上に立つて、イギリスの民主的警察制度ができ上つておるという考えもありますということも言われたのでありますが、全くその通りなんですが、我々はそういう精神から日本の民主化のためには一切の政治、行政というものが、リンカーンの言葉のいわゆるバイ・ザ・ピープルのガバメントでなければならんという精神を育成して行くという点から、今日の警察制度が、前の古い中央集権的な、官僚主義的な国家一本の警察に代つてでき上つて来たと思うのでありますが、そういうお言葉の趣意はどこにあつたのであるか。又今申しましたようなガバメント・バイ・ザ・ピープルというような、基本的な民主主義精神に立つた警察の、この現行制度のシステムの基本的精神との関連性というようなことについて、まあ一つお答えを願いたいと思うのであります。それからこの現行制度精神を、これは非常に失礼でありますが、よく御理解になつておらなかつたと思うのでありますが、その言葉の中にこういうことがありました。即ちレフエレンダムによつて町村警察を随意に廃止をするということはいけないというお言葉の中に、そういう住民投票できめないで町村議会できめたらいい。国会できめてもいいが、国会まで行かなくても町村議会できめたらいいというお話でありましたが、これはもう全く今日の憲法精神を無視し、又憲法の規定に基いて制定されて参る地方自治法の、即ち地方行政の制度も全然これは御否定になるものであつて、さかさまにしようといお考えであると思われる。何となれば現行の地方制度によりますというと、議員のようなものも、これが住民の本当の民主的な自由の意思に基がないで勝手なことをしておる。本当に東京都議会議員ならば東京都議会議員が東京都民の意思を真に代表していないようなときには、その選ばれて来ているところの議員というもの、及び議員によつて構成されておる議会というものよりも、これを選んだところの選挙民の意思即ち住民意思というものに還元する。住民意思が基本であるということが、この民主主義精神であり、憲法精神であり、又憲法に基く地方自治法の精神なんでありますから、議会がきめることをむしろレフエレンダムによつてきめて行くということを、あなたはさかさまに否定するようなお言葉があつたかと思うのでありますが、それについて御答弁を願いたいと思います。
  85. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) いろいろと私の公述に対して御批判が出まして恐縮でございますが、最初の何か形式的云云とか、或いは又共産党に対して非常に被害妄想的になつておるのではないか。こういうふうな御質問でございますが、これは立場によつて或いはいろいろと考え方の食違いがあるかと存じますが、我々経営者といたしましては全く従来も又現在も、今後も絶えずそういうふうな共産党的暴力の前に曝されておるというふうな感じを持つておるものでございまして、勿論一方にそれをそういうふうな国家擾乱というような場合に、警察予備隊が現存しておつて、そうしてそれが出動し得るということについても十分存じておりますが、繰返し申上げますように、嚴には嚴にこれをお互いにいたしまして、日本の治安、或いは又そういう非民主的な活動に対して防衛をいたさなければならんのではないかということから申上げただけでありまして、言葉の過ぎた点がございますれば幾重にも御容赦を願いたいと存じます。形式的というふうなことを申しましたが、これは單に現在の自治体警察の中に形だけは備えておるけれども、財源の関係、その他の諸種の関係で必ずしも十二分の警察力としての力を持ち合していないのが現状ではあるまいか。これを私は全国に亘つて見て廻つたわけでもありませんし、この小さな目でただときどき瞥見し、或いは聞いた範囲でございますので、間違つておれば御叱正を頂かなければなりませんが、そういうところがあるのではなかろうか。それをそのままにしておいたのでは、やはりいけないのではなかろうかというふうな意味合いで、單に形だけの自治体警察というものに我々がお頼りするということは、如何にも危険でありはしないだろうかということを心配いたしまして、そういう点で使つた言葉でございますので、これも使い方が誤つておれば御勘弁を願いたいと存じます。それから二番目でございまするが警察制度が先ほど仰せられましたような主権在民の形で、そうして国民の上にサービスするものとしての警察というふうなことから、すべてが割出されておるというようなことにつきましては、不肯私もよくわきまえておるつもりでございます。従いまして、先ほども申上げましたように、根本的に自治体警察、或いはその方向への阻止して行くというふうな考えを私は申上げたことはないということを、繰返し申上げておるのでございまして、ただ現在の警察の力を幾分でも強めて行くという形をとる必要があるとすれば、現状においては多少自治体警察の力を、自治体警察と申しますが地方の警察の力を、或いは市町村警察の力を強める意味合いにおきまして、多少負担に堪えかねるところは国家のほうへ転移せしめるということが、時にとつてよろしいのではないか。これは必ずしも先ほどのお説のような警察法警察のあり方に対する根本に抵触するというふうには考えられないのでございます。  それから住民投票を、レフエレンダムを私が根本から否定した、怪しからんというお声でございまするが、これも先ほど申上げましたように、決してこの点もすべてが国会或いは市町村議会というところで決定され、住民投票が全然不必要である。或いは又住民投票のほうを重く見なければならん、すべては住民の、市民の多数決によるということの民主政治の根本を知らんわけではないわけでありまするが、事は全体の治安をどうして確保して行こうかということの一点から考えますときに、地方にたまたま起つた問題でもすぐに全国的な問題に波及しかねない。これも私の被害妄想であるかも知れませんが、一地方、或いは一村落に起つた事件が直ちに以て大きく燎原の火を焼くように拡がる慮れもなきにしもあらずというような情勢下にあつて、果してこういう警察の存廃を住民投票に一切委せるというふうなことでよろしかろうかという疑問を持つたに過ぎないのであります。これもどうしてもいかんというその立論が間違つておるということであれば勿論お叱りを受けて然るべきであろうかと思いますが、申上げました趣旨はそのようなことでありますので、どうぞ一つ御了承お願いいたします。
  86. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 もう一つだけ御質問したいのですが、国家非常事態の場合に処とするところのものとして、警察予備隊があるということはよく知つておるという御答弁でありましたが、私はそれと同時に現行警察法第七章に規定されておりまする国家非常事態の特別処置ということについての規定が五條に亘つてあるのでありますが、この現行警察制度に規定されておる国家非常事態の特別処置、七章の六十二條から六十六條までにある規定とあなたがいろいろ憂えていらつしやる場合の発生との関係についての御答弁がなかつたようでありますから、それを承わりたいということが再質問の第一点、それから第二点は我々はその警察制度改正につきまして、すべての行政の面についてそうなんでありますが、新憲法精神に副うておる民主主義の自治性ということを地方行政を通じて、地方自治を通じて我々は大いに努力しなければならんという、何と申しますか、行政上の民主主義の原則といいますか、そういうものと一面において行政の能率をできるだけ発揮させるようにして行かなければならんという、まあ行政発揮の原則といいますか、そういう二つの考え方両方とも満足することができるように、いろいろ調整して行くというところに我々の苦心があるのでありますが、あなたの大体のお考えはこの新憲法に則るところの民主主義の育成ということの面はもう殆んど御閑却になつて、能率の面ばかりを高揚していらつしやるわけなんで、そうすると、あなたは民主主義の発展を共産党が非常に害するという意味のお話がありましたが、これは今御意見として承わつておきたいのでありますが、能率を発揮するという考え方に偏しまするというと、これは軍隊組織のようなものがいい、或いは現在の制度より昔の制度のほうがよかつたというようなことで、すべてが独裁政治の傾向に行かざるを得ない。即ちあなたと違つた意味において我々からいたしますると、日本の政治が反動化し、フアツシヨ化する、むしろフアツシヨ革命が……、共産主義に対蹠するところのフアツシヨ革命、右翼革命的なものの方向ヘリードして行くという必然性が、あなたのお考えから湧いて来るということに、我々は非常な政治家として現段階において日本の政治が当面して行く危機を感ずるのでありますが、そういう考えをあなたが代表していらつしやるように思うのですが、そういうことの関連性において、そういう考えとの関連性において、さつき申しましたように、すべての自治体の居住民がポリスマンであるというところの考えの上に立つた見解と、どうもそれが背馳して来る。それであなたのお考えとして昔のような国家警察一本の警察制度に変えてしまうか、それが行過ぎであるならば、せめて六大都市だけでも自治体警察を持たすというようなお考えでありましたが、併しながらそれはそういうように変えても何も政治を民主主義から離脱さすところのものではない。何となれば国会というものがあるからであるというところのお話でありましたが、併しこの国会政治が本当に民主的に運営されて行くということのためには、その基金としていわゆる地方自治というものの精神が非常に国民の間に育成されて行くのでなければ、その実を上げることができないということが、現在の憲法の規定いたしておりまする地方自治條項精神でもあり、又憲法全体を通じての精神でもあり、又それに則るところの終戰後の地方自治法の精神にもなつておるのであります。併しこれは何も今日において始まつたわけでなしに、昔のときから地方自治こそは中央政治の基本であるということは、官僚でも随分昔から言うて来たことなんですが、そういうようなわけでやはりこの地方自治そのものがガバメント・バイ・ザ・ピープルのローカル・カバメントになるということを建前にするそういう建前からやはり現行警察制度が規定しておるような精神に則つて、こういうフオームで警察行政を運営して行くということになるのでなければ、あなたがそんなことを一本にしてしまつたところで、国会さえあればそれで民主主義は行われるのだという考えはどうも我々賛成することができないのですが、それについての一つ考えを……、私の質問はその点……。
  87. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) お答えいたします。私はこの本日私の申上げるようなことを申上げますと、恐らく今申上げるような諸種の反対論が出て参るのであろうということも多少考えておつたのでございますが、それで実はたとえ一本の、全国一本の警察制度というものが仮に行われたとしても必ずしも警察というものが民主化の妨害になつたり、或いは又警察国家の再現というふうなことにはならないという、たとえばということで申上げました。その点はたとえでありますが、併しながら考え方としてはたとえそうなつたとしても、恐らく日本の警察が再び特高警察、或いは警察国家というふうなものになり果てるというふうな心配は恐らくないということは、私はそう考えておりますけれども、併しそれと私が今の自治体警察を全然認めない、そう  いうものはやめてしまえというふうな所説を申上げておるわけではないのであります。従つて先ほど申上げました公述の中にも民主主義の理想からいつて自治体警察自分たちの町を自分たちが守つて行く、自分たちの市民生活を守るために自分たちの村を自治体警察で守つて行くという理念について、毫末も間違いをいたしておらないのであまして、一挙にそういうものをやめてしまつたほうがよかろうといつたことを考えておるわけではありません。ただたとえそうでない形をとつたにしても、必ずしも国家が警察国家になり下るというふうな危険は、今や日本にはないのではなかろうか。そんなことになり果てるような、日本の民主政治の基盤というものはそんなに弱いものではない。それよりもむしろ将来、警察予備隊のお話になるかも知れませんが、日本が今置かれておる諸種の不安な情勢から見て、少くとも警察を強力なもの、力の強いものに一応するということが先ず急務ではなかろうか。それこそ日本の民主化を強力に推進せしめる一つの力になるのではなかろうか知らんというふうに考えましたのでございまして、いろいろお説を承わつておりまして、御尤もな点も多々ございまして、まあ当面の、要を得ないかも知れませんが……。
  88. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 第七章の規定についてのあなたのお考えを伺います。
  89. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) 私はここへ参ります場合に、第七章の国家非常事態の特別措置ということも十分考え且つ勉強して来たつもりでございます。従いまして今お話のようにこれを全然見ておらんのではなかろうかというふうなお話は、一応心得て参つたつもりでございます。
  90. 相馬助治

    ○相馬助治君 馬渕さんの発言が極めて注目すべき御意見でございますので、念のために二つの点だけ簡単に承わつておきたいと存じます。日経連を代表されて馬渕さん個人としての御意見でございまするか。それとも或る程度日経連としてまとまつた意見であるというふうに承わつてよろしいのであるかどうか。これを一点念のためにお聞かせ願つておきたいと思うのです。  第二点は、私どもがこの委員会で非常に問題にしておりまするのは、政府原案というものが結局するところ、国警の力というものがいよいよ自警を圧迫する、具体的にいうならば、弱小自警の廃止というようなことは、我々としても或る程度必要であるということを認めておるのですけれども、実際問題として、いよいよここにデリケートな幾つかの問題を起し、なお公安委員会の力も逐次無力化するものであるという傾向を含んでおるというような意味で、この法案を極めて我々は問題といたしておりますが、馬渕さんの御見解を以てするならば、むしろこの政府原案改正案というものは、現在の日本の状況に照して、やや手ぬるいという程度にお考えであろうかどうかということ、それに加えまして治安国警を充実するという論を推し進めて参りますというと、先ほど小笠原委員が質問したことでございますが、予備隊というものの性格を、馬渕さんが如何に御認識であるかということが基本的に重要な問題でございます。予備隊というのは、政府が如何に説明しようが、これは軍隊なのである。こういうことに規定付けて、その前提に立つといたしましたならば、これは国家警察を国内の治安を確保する意味においてこの際強化しなければならないという立論が、いい悪いは別として、ロジツクとしては正しいということに相成るわけでございます。従いましてこの予備隊の性格というものに触れられながら、政府原案というものがむしろ手ぬるいのではないかというお考えであつたといたしますならば、率直にそれらの御見解を承わつて参考にいたしたいと存じます。  以上二点お尋ねいたします。
  91. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) お答え申上げます。第一点は私も申上げようと思つておりましたが、経過はこういうことでございます。日経連のほうへ参議院のほうから、誰か公述人として出すようにという御連絡があつたそうでございまして、日にちはちよつとむずかしい、そこで日経連当局でいろいろ人選をいたしまして私を指名いたしまして、是非出るようにというお話でございます。私誠にそういうものに向きませんのでお断わりしたのでありますが、他に適当な者がないから出てくれということで、あとは私がいろいろ勉強を多少いたしまして、二、三の人の意見を聞きまして、それに私としての考えをまとめまして、で実は最後的なものを日経連と打合せる暇がございませんので出て参りましたようなわけで、私個人の意見になつてしまつたという点と、先ほど冒頭に実業団代表としては資格がないということを申上げましたが、私の個人意見ということでお考え置き下さいますほうがいいというふうに考えますので、日経連の総会にかけたとか或いは日経連の代表と数時間相談したという経過はございませんので、その点は一つ御了承願いたいと思います。  第二点、小笠原議員と同じような御質問で、予備隊を全然考慮に入れておらないで、ただ手ぬるい手ぬるいと言つておるという意見でございますが、予備隊が出動するというふうなことは、これは非常の時だと思いましてただこの警察法を、この警察が非民主化されたり警察国家になり下つたりするということは、絶対に私としてもそれは考えないのでございますが、そういうことにならない範囲内で、今の誠にこま切れ的になつておる警察を、今よりも更に市民生活によく貢献できるような警察制度にするにはどうしたらよかろうか。但しそれは先ほど申上げましたようにいろいろ御苦心を国会でなさいまして、そうして警察の非民主化にならない程度で、いろいろ今の事態を考えて配慮されておるという御苦心については十分わかるのでありますが、もう少し突き進んで見ても、必らずしも今の警察が直ちに警察国家になつてしまう。或いは官治警察になるというふうな虞れはないのではないか。それならばもう少し今の警察を強いものにして頂く方法はないものか知らんというので考えたのが私の考えでございまして、それが直ちに以て非常に反動化す、或いは警察国家になるという虞れがあるというならば、私としてもなお十分に考えなければならんと存じまするが、趣旨としてはそういういう意味で申上げたのでございます。大変言葉の行届かん点を深くお詫びいたします。
  92. 中田吉雄

    中田吉雄君 馬渕さんのお話承わりまして、全体としての印象では、やはり国家地方警察強化しなくては、起るかも知れないところの諾事態に対処できないというふうに、何とはなしにこの国警優位のような印象々受けたわけですが、馬渕さんの申されたような私は非常事態が起きましたならば、これを全国国警一本にいたしましても、とてもこの事態に対処できないと思うわけであります。その際におきまして最も大切なことは、私は民衆のこれに対する協力、理解というようなことが非常に大切ではないかというふうに考えるわけですが、そういう際において、私としましてはむしろ馬渕さんの先に申されたこま切れになつておる自治体を、もつと大きな組織的な機動力を持たせるということは大変必要だと思いますが、民衆の、国民の十分なる協力を得て警察力にそれをプラスして行くというような考えからいたしましても、私はむしろ現在国家が国家地方警察に注いでいるような温い関心と財政的な援助というようなものを自治体に注ぎ、民衆に本当に愛されて、非常事態にこれと協力するというような方向に持つて行くことがいいではないかというふうに考えるわけでありますが、馬渕さんが申された御意見では、何とはなしにこの国警でないとできないというふうにお考えつたのでしようか、それは結局小さく分断されているというようなことから来たんでしようか。私としてはむしろ五千くらいなものを大きな單位に改めるということについては賛成なんですが、そのことを直ちに国家地方警察強化に結付けることは、非常事態においても必ずしも得策ではないではないかというふうに考えるのですが。その点は如何でしようか。  それから馬渕さんが共産党その他に対してお考えなのは、東宝で非常に暴力的な行為でさんざんお苦しみになつた点が印象的でああいうふうになつたと思うのですが、私鳥取県ですが、共産党の力は殆んど微々たるものでございまして、民衆の信頼をも失つていますし、そうこの辺は余り考えんでもいいではないかと直感したのですが、ちよつと附言しておく次第であります。
  93. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) 御答弁申上げます。自治体警察が健全に発展して、そうしてその機能を発揮し、市民から愛されて行くというふうな状態ができ得るならば、これはもう理想であるということを再々申上げておるのであります。従つてそういうことが今度の改正法でびしつとでき上るのだ、間違いないのだということであれば、私の申上げておる目的は達成するのでありまして、その点懸念がないという議会のお見通しでありますならば、勿論おめでたい話であると存じます。ただ再々申上げておりますように、今の状態だけを見ますと、如何にも以て自治体警察がやや弱力でないのではなかろうか、それをどうやつたらよいものになるのかというと、一時的には反動化すような方法ではあるけれども、そういう国警に転移をせしめるということも一つ方法ではないかということを考えただけでありまして、今の自治体警察警察民主化の大きな線に沿つてやることによつて十分目的が達成するのだ、そうして又非常事態の場合には予備隊が出動するのだということで十分やれるというお見通しであるならば結構だと存じます。  それから第二点で、東宝争議でやられたものだから、小笠原議員も言つておられまするが………(「ノー、ノー」「そうは言つていません」と呼ぶ者あり)まあ非常に苦しめられました経験上、何か怯えておるのではなかろうかというお話が先ほど来出ておりますが、(「ノー、ノー」と呼ぶ者あり)私は成るほど共産党の力も表面的には微々たるものであり、何ほどのことやあらんということであるのかも存じませんが、私は個人としてはさように余り考えておらないのでございます。非常な危機がやはりあるのではなかろうかというふうなことは、これは個人の考えでございましていたしかたないのでございますが、必ずしも東宝争議で怯えたからどこへ行つても恐怖症にかかつてつておるということでもございません。その点だけは一つ………。
  94. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 質問ではございませんが、相馬君の発言について社会党に関係します部面がありますと思われる点について訂正いたしておきます。昨日相馬君が発言の中に、社会党はこの警察法案に対して今最終的な結論を、反対とか賛成とかいうようなことでなくて、検討中だというふうに話しておりましたが、それは基本的には反対でありますのではつきりしております。本日又発言の中に、弱小自治体警察廃止するのも止むを得ないということを我々は認めるものであるがというのですが、その我々というのが社会党であるならば、それは御訂正願つておくのでありまして、社会党はそういうものを認めておりません。この点速記にはつきりして置きたい。
  95. 石川清一

    ○石川清一君 馬渕さんには誠にお気の毒でありますけれども、やはり日経連への質問だと一つお聞き取りを願いたいと思いますが、先ほどお話のありました産業防衛と申しますか、産業施設の保護と申しますか、これが非常に危険に曝されておると、こういうように受取れましたが、八千三百万の国民の生活が同じように危険になつておるのか、特にこれだけが危険なのか、これを先ずお聞きいたしたいと思いますが、その次にはこれをどこまでも重点的に保護せんければいかんのであるか、それとも全部同じような形で国民の生活、全部の産業を保護せなきやいかんのか、この点を一つ明らかに簡單にお答えを願いたいと思います。  その次にはこれを国警によつて保護或いは維持して行くのだ、強化して行くのだと、こういうことに結論付けました場合には、それを保護しこれを発展さして行くところの国警は即ち国の政治権力と結付かなきやいかん。従つてこれを否定するような思想は徹底的に弾圧をしますし、又これを反対をする政党は選挙干渉をやつて、やはりこの産業防衛或いは産業施設の保護をやつて行かなければ維持できんのであるかどうか。この点を簡単でよろしいからお答え願いたいと思います。
  96. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) 私は先ほども申上げましたように必ずしも日経連の代表意見でもございませんので、その点は一つ前以てお断り申上げておきます。ただ日経連といたしまして或る意味において産業を自分たちの力でよく守つて、そうして産業内部に起るいろいろのトラブルを解決したいということは皆考えております。殊にいろいろの情勢から考えまして、我々が本当に産業を守つて行かなければいかんのだと、これは決して反動的な思想でも何でもなく、我々国民生活を豊かにするためにどうしても守つて行こうという考え方をいたしておるのでありまして、その場合に、じやどこの何もかもそれは直ちに警察に守つて頂こうとか、或いは日本中を国家警察にして、それに守つて頂こうというふうなことを考えておるわけでは絶対にございません。併しながら我々経済産業人といたしましては、そういうふうな一つの或る種の不安を感じて、そしてそれに対して我々の態勢を強めまして、そして産業が破壊に曝されないように守つて頂こうということは、これは先ず今のところ我々としては常識的にさように考えておるのであります。どの産業をそれじや一体優先するか、あとに廻すかというようなことまで別に考えておるわけじやございませんが、そういうふうな気持で産業に当つて行かなければならんということを考えておることは、これは申上げてよいかと存じます。それから第二点は何でございましよう。
  97. 石川清一

    ○石川清一君 それを重点的に取上げれば、それが国家警察強化による場合は、当然思想弾圧と選挙干渉が起る……。
  98. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) 私はそういうふうにちつとも考えないのでありますが……。
  99. 石川清一

    ○石川清一君 それならそれでよろしいですが。
  100. 馬渕威雄

    公述人(馬渕威雄君) 御懸念があるように伺いましたが、直ちにそれで以て選挙干渉に警察が乗り出すとか、言論を圧迫するとかいうふうに直ちになるとはどうしても私どもには考えられません。元来公安委員制度も確立されており、その下で構成されておる警察制度が、直ちに又従来のような憲兵政治、或いは特高警察に堕してしまうというふうに、すぐにそつちへお考えになることには私はちよつと同意しかねるのでありまして、又そういうことを希望しておるものでも絶対にございませんので、その点は繰返し一つ御了解を得たいと存ずるものでございます。甚だ言い足りませんが。
  101. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それでは次に移ります。小川精一君にお願いいたします。小川君は町村代表で、北多摩郡小金井町長であられます。
  102. 小川精一

    公述人(小川精一君) 私は只今御紹介を受けました東京都下の小金井町長小川精一です。私の立場は今日は全国町村会の立場から申上げますので、小金井町長の立場では勿論ございません。従いまして全国町村会が今まで関心を持つて調査なり検討を続けましたその結果に基きまして意見というよりはむしろ報告を申上げるというようなことに相成るわけであります。  先ず自治体警察制度に関しまして、全国町村会が検討して参りました経過の概要について申上げますならば、この制度が施行されまして以来、御承知のように設置しました町村が、その運営に当りましてどういう点を痛切に感じたか、経験して来たかということを先ず申上げたいのであります。これを申上げて見ますると、大体次のようになりますが、先ず第一に財政の問題でありまして、この制度を維持運営するために、その経費相当多額になりまして、町村の財政を圧迫しておる、社会に過重な負担をかけておるということであります。これをちよつと数字で申しますると、昭和二十四年度の平均の数字でありまするが、総予算、町村の予算に比較いたしまして警察費の予算は、一番少いので七・四%、最高になりますというと一七・九%、平均してまあ八・五%程度になつております。経費は一人当りが最低で十六万五千余円、最高は実に三十二万七千になつております。平均で申しますと十八万八千というふうになつております。それが二十四年度の統計でございますが、現在集まつております資料によりますと、二十五年度の当初予算までが来ておりますが、二十五年度の当初予算について見ましても、一般の比率で最低五・七%最高が一八・四%、平均で二・七%というふうになりております。経費のほうでは最低は非常に安くて十万二千余円、最高は二十五万三千余円、平均で申しますと二十四年度とほぼ同額の十八万五千百四十円程度でございます。これらの比率及び金額は、多いときにおきましては給與ベースの改訂等もありまして更に上昇をいたしていると感ずるのであります。勿論御承知のように警察費につきましては平衡交付金の算定の中に入つておりますので、当然国のほうからの計算が入つて参りますが、調整を受けておりますが、その標準の経費は一人当り十八万余円ということに相成つております。従つて大体通々に感ぜられるわけでありますが、実際は補正係数というのがありまして、一人当り單価が十五、六万程度に下がつているように承知いたしております。この差額は極く少額の差額というふうに見るのでありますが、町村の貧弱な財政から申しますと相当大きい負担なのでありまして、万一大きい事件、重大な犯罪事件でも起きました場合には、直ちに三十万、五十万というような金も吹飛んでしまうような状況であります。こういうようなことは、今日財政に非常に困つております小町村では到底その負担に堪え得るものではないのであります。第二番目に、小さい町村におきましては規模の点で十分に事務の能率を挙げることができないのであります。御承知のように現在全国で一千三百二十ばかりの町村自治体警察運営して参つておりますが、その吏員の総数は、二十五年四月一日現在の数字でありますが、一万八千六百二十五人であります。これは自治体警察九万五千人の定員から見ますと非常に少い数字であります。町村はかように多くて定員が少いわけでありまして、これを一町村に分けて見ますというと、私の計算では一町村当り十四人程度に相成るわけであります。で、一番小さいのは六、七人で警察をやつているのがあります。かような警察におきましては署長とか或いは署僚とか或いは司法主任とか、そういう者を一人一人とりますというと、残るのは三人か四人、そういう程度でありまして、而も警察は二部制、三部制を実施しておりますので、毎日々々警察に残つて、外に出て働く者は一人か二入、こういうことになるわけであります。こういうようなことでは警察を設置いたしましても全く意味をなさないということになるのではないかと考えます。次に第三には、警備区域が非常に小さく限られております。そうして横の連絡がつきにくい場合が非常に多いのであります。と申しますのは、我々東京都下でありますが、東京都下のごとき近隣が皆自治体警察を持つておるというところは比較的横の連絡はとりやすいのでありますが、その他の地方に参りますというと、ぽつんぽつんと自治体警察があつて、大部分国家警察がやつておるというようなわけで、連絡が非常に取りにくいように窺われる。従つてそういうようなことでは治安の維持が確保されないのじやないかということであります。それと第四には、人事の交流の問題があります。人事の交流が非常にむずかしいのであります。それぞれ独立して存在しておりますので、署長さんを更迭させるにも、或いはその他の職員を交流するにつきましても非常に困難を伴つておるようであります。従つて警察内の人事が欝滞いたしまして、而も警察官の職員の士気が衰える、事務能率が挙らないということになるのであります。以上のようないろいろの理由のために自治体警察の存否の問題に対しましてはいろいろの意見が各全国の町村で主張されまして、それを申上げますというと、現行制度を可とする者、先ず一番に現行制度でよろしいという者も勿論あります。これは申すまでもなく地方自治の本質、地方自治精神、こういうものを維持し、なお今後もどんどん拡充すべきであるというふうな立場のかたの意見であります。これらのかたがたは、多少の不便、不能率があつても、又多少の財政上の困難があつて地方自治拡充のために、維持運営すべきものであるというふうな考え方であります。  次に第二番目には、設置の基準を引上げてくれ、引上ぐべきであるという、かように申す意見であります。人口五千や一万の小地方自治体では警察を維持する能力がないから、設置基準を人口三万乃至五万以上の町村にまで引上げるべきだ、こういうような意見であります。第三番目には、設置したい町村組合警察を設けて、或いは又設置町村もそれぞれ組合に加入しで内容を合理化してこの制度を維持すべしという意見があります。第四番目に、現行警察事務の内容を改めたらどうか、つまり保安とか衛生とか交通とか、そういうようなものの取締だけに限つて、その他の一般司法事務は国又は県に移したらどうか。そうして町村はこれを補助したらどうかというふうな意見であります。第五番目には、自治体警察を全廃して、国又は府県に委譲すべし、こういうような意見が多数出ております。以上のような多数のいろいろの見解が主張されまして、意見の一致をとうとう見ることができずに参つております。勿論個々の町村の実情というのは異つておりますので、これは止むを得ない次第であります。  そこで二十五年、昨年の末に全国の千三百ばかりの設置町村に対しまして全国町村会から照会をいたしまして意見を徴した結果、次のような回答の結果に相成つております。回答をよこした町村は四百七町村であります。その中で現行制度でよろしい、可とする者、これが十八であります。それから二番の設置基準を引上げるもの、これに二つありまして、人口一万以上の町村に設置すべしというのが十三、人口三万又は五万以上にすべしとするものは百八であります。三番目には設置していない町村組合で設けたらどうかという案、これは二種ありまして、中小都市を中心に数ヵ町村組合警察を設ける、これが十一、その二はそれ以外の町村がそれぞれ相互間に何ヵ町村がよつて組合を設けたらどうか、これが十、四番の回答は、現行警察制度の事務の内容を改めて、警察事務を町村條例の執行とか或いはその取締事務、或いは保安、衛生、交通等の行政事務、或いはこれに伴うところの取締、そういうものだけをやつたらどうか、それ以外の事務は国又は府県に移して、そうして町村もこれに対して援助する、こういうような意見、これが七町村であります。五番は国に参議すべしとする意見、回答が百七十五、六番は府県に委讓すべしというのが五十六、七番はその他の意見でありまして九町村、大体四百七ヵ町村の回答はそういうふうに分類できるのであります。  さてこのたびの警察法改正に対しまして全国町村会といたしましては以上のような各町村の回答を得ましたが、これを結論付けるわけには勿論参らんわけであります。併しながら過去における自治体警察制度の実施以来の経験に鑑みまして、町村がこの制度によつて経費の負担の過重なことや、或いは單位警察間の連絡の不十分なために治安の維持が確保されがたい、又協力して治安に当つて経費の支弁に処する道がない、それらの経験に鑑みまして今日我々申上げることでありまして、今回の改正案はこれらの諸点をよく考慮されまして、自治体警察を設置する町村警察は全般に亘りまして住民投票に任せる、そうして又一旦廃止しました町村一定條件の下に再び維持、運営することができるというふうに案をいたしますことは実際的でありまして、地方自治精神を能う限り尊重したものと我々は考える次第であります。  次に国警自治警及び自治警相互間の協力援助の方法も明らかに規定されましたし、又その際の費用の負担方法についてもきめられてありますので、この案は非常に結構だと考えます。なお警察吏員の数におきましても地方的の実情、或いは地方的の要求によつてその市町村が條例でこれをきめることができる。そうして今までの九万五千というふうな制限が撤廃され、自由に町村住民意思によつてすぐ設けられる、かようになつたことも我々大いに賛意を表するものであります。こういうような改正によりまして、従来財政難とか或いは治安上に悩んでおりました町村は、住民投票の結果、自治警を設置したり或いは廃止したりする途を開かれまして、地方自治運営し、又地方自治を確立する上において極めて彈力的の実際的の効果が期待されるものと考えております。大体全国町村会としての集めました資料に基く報告は以上のようなものでありますが、どうかこの制度は地方の我々にとりまして、殊に新らしい憲法の下におきまして警察民主化というふうな非常にいい制度であるということを我々常に考えておりますので、この制度が地方住民のためになるように、而も負担においても過重な負担にならんように、よろしくこの制度改正につきまして愼重な御検討を頂きたいと思うのであります。簡單でありますが、一応……。
  103. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。  次に永田圭一君にお願いいたします。永田君は自警連の代表としておいでを頂きました京都市の警察本部長であられます。
  104. 永田圭一

    公述人(永田圭一君) 自警連を代表いたしまして公述をいたします。私は京都市警察本部長永田圭一でございます。  警察法改正は日本民主化の根幹に影響する重大問題として国会におかれましても平素からあらゆる面に亘つてつぶさに御調査、御研究に相成り、大所高所から真の民主警察完成のために御検討を頂いておりますことは我々自治体警察職員一同感激しておるところであります。今回法案が提出されますと、早速愼重の上にも愼重を期せられ、各方面の殊に本日は又我々自警連、自公連側の意見を御聽取下さることに相成りまして、誠に有難く厚く御礼を申上げます。各位におかれましてはすでに何事もよくよく御承知のことと存じますから、いろいろ理念的なことを詳しく申上げることを省略さして頂きまして、私は本年一月大橋法務総裁の車中談が新聞紙土に掲載されましてから後に我々自治体警察側のものはどんな処置をとつたか、その経過から妥結に至るまでの状況を御報告いたしまして、御審議上御参考にして頂いたならばと存じておるような次第でございます。何事の忌憚なく申述べるようにという御注意も頂いておりますし、私はこれから申上げにくいことも押して申述べる決意をいたして参つておりまして、或いはお気に召さんことの数々を申上げるかも知れないと憂慮いたしておるような次第であります。併し一点の私心もなく一に公のために申上げることでございますから、平に御容赦のほどをお願い申上げます。  さて警察法改正問題は樋貝国務大臣当時からたびたび政府が一方的に問題にいたしまして、その都度立消えになつた多くの前例もありますので、総裁車中談の新聞を見ましたときに我々はその改正方向があまりにも憲法警察法精神に反し、明らかにマツカーサー元帥書簡に逆行する無暴な内容で、各方面から最も嫌われ、反対されるにきまつている警察中央集権化を積極的に図ろうとする思想が到るところに現われ、実に地方分権精神を踏みにじり、元の警察国家を再現しようとする化物の案であると思つております。  例えば東京警視庁は首都警察であるという理由でロンドン、ワシントンにならつて国警に入れるとか、国家公安委員長には国務大臣が当る。公文書偽造とか通貨僞造、麻薬取締、密貿易、国家公務員の犯罪等特殊犯罪については国警自治体管内にも、自由に入つて捜査することができる、犯罪情報を国警に報告ずる義務を自治体警察に負わせる、応援を自治体相互間でやる場合にも直接はいけない、必ず国警を通じてからにせよ、小自治体警察廃止するなど、全くお話にならない内容で満たされておつたのであります。これは何かの間違いに相違ない。警察法を多少でも読んで、少しでも民主警察の理念を了解するものであるならば、正気で言えぬことばかりである。誰もかれも極めて軽く看過しておつたような次第であります。ところがその翌日か翌々日の新聞に国警長官談として、この総裁車中談を確認するがごとく、又せざるがごとき変なあと味の悪い記事が掲げられたのであります。一応念のために自警連会長の田中警視総監のほうへ事の真偽を問合せましたところ、齋藤国警長官に聞いてみたと申されてこんな返事が参つたのであります。法務総裁が新聞記者と会見の際、新聞には書かんという約束で希望的構想を話したらしい。ところがそれが新聞に書かれて困つておる、自分国警長官のことであります、自分も総裁の話を否定するわけにも行かず実は困つたと言うているとのことでありました。我々は多少変だと思いながらもあまり深く追及せずに参りましたが、その後国の内外の情勢が非常に緊迫し、或る種の政治革命を企図し、全国的に指令一本で蜂起する、同時多発の組織的犯罪が起る形勢になつているからこの際急に国内治安強化する必要があるとか、地下に潜入いたした日共幹部が逮捕されないのは警察がばらばらに分散され、警備情報が一カ所に集まらないためで、警察は一本建にせなければ能率が上らないとか、今にも日本全国に大混乱が起るかのような風説が流布され、中小自治体警察が腐敗し、弱体で秘密も守れないし信頼もできない、能率も悪く役に立たないから、この際警察制度強化改善するために警察法改正を早急に行う方針で月下政府で内容を検討中であるというような新聞記事もどんどん出るようになつたのであります。その中に相当詳しい専門的の研究事項が掲載され始めました。このような記事たびたび出ますと極めてまじめに正直に勤務をいたしております多数の地方の中小自治体ではどうなるのかと非常に心配いたしまして動揺して参りました。それで我々は法務総裁国警長官にはつきりした意図を確かめようと努めたのでありますが、依然あいまいな態度で要領を得ず、このような鬼面人を驚かすような記事が一般世人に信用されると、本当の社会不安はこんなことから起される虞れがある、それを防止し、治安を確保しなければならない責任のある警察職員がこのように動揺していてはどうなるかと、識者は心から心痛したのであります。御承知のことではありますが、敗戰後幾多我が国の法律制度が改廃せられました。その中でもこの警察制度の変革ほど大きなものは他にあまりないのであります。それにもかかわらずこの国民生活と最も密接な関係を持つております警察制度が百八十度の転換をいたした、つまり従来の上から下へ、内務大臣の命令一下全国の警察が動いて国民に対した、あの一糸乱れない中央集権的な統制の下にあつた警察が、逆に下から上に新らしい憲法精神に基きまして、地方自治の真義を推進するため、国民の公僕、公の奉仕者として国民自身法律執行機関としての警察に変り、全国の市と人口五千以上の市街的町村自治体警察を維持管理し、それより小さな一人で警察の持てない農山漁村の巡査駐在所ばかりを府県で一まとめにし、国費で引受けている府県地方警察と大きく二つに分かれて、この府県地方警察の上に全国的に統制しても一向差支えのない、又そのほうが便宜である統計、通信、鑑識、教養の事務を合せて管掌させた国家地方警察というようになつて、全国千五百余の自治体警察の定員は合せて九万五千、後者は三万と限られ、治安確保の点からは常に重大事件にさらされているのは自治体警察であつて、これが警察の主流であるということを十分に理解認識していない人が世間にあまりにも多いのであります。それにはいろいろ原因もあると思います。第一に画期的変革を僅か法律制定後三カ月という短期間に、準備不十分のまま速急に実施されたこと。第二に旧警察職員がそのまま新組織警察機関となり、頭の切替えが十分できていないこと。第三に警察法が非常に難解ですつきりできていない。何故自治体警察の規定を先にせなかつたかと大いに疑うのであります。国家地方警察を第二章第四條乃至第三十九條に、自治体警察を第三章第四十條乃至第五十三條に規定し、国家地方警察には三十六箇條を費やしながら、自治体警察には僅かに十四箇條を補充的な読み替え、準用規定でお茶を濁し、あたかも国家地方警察警察の主流たるがごとき観を呈している。これは立法技術上の便宜からと説明されておりますが、警察法原案作成当時、参考として示されたアメリカのポリス・リオーガニゼーシヨン・プランの中にある新警察理念が十分に理解せられていなかつたか、或いはそこに何かあつたのではないかという疑念を挾む余地が十分あるのであります。第四に国家地方警察自治体警察両当事者とも世人が十分に理解していない、否相当大きな錯誤に陷つたり、誤解をしているのにかかわらず、あえて周知徹底せしめようと努力していなかつた、このほうが警察人には都合がよかつたのであります。これらがその原因として挙げられ、これが民主主義の履き違えや、変革された新警察制度の実体を理解しない人たちから、いろいろと不信の声を起させているのではないかと思うのであります。一般の無理解はともかく、当然心得ているはずの有識階級、政治家、官公吏、弁護士、実業家の中にもたくさんありまして、驚くべきは要路の大官で、警察法を読んでいなかつたと見えて、権限もないのに国警長官の罷免を計画して失敗し、世間に名を轟かせた人が二人か三人ほどあります。又地方選挙の応援演説に出張し、その地の自治体警察を視察すると申出て、「一般の誤解を受けるとお互いに困りますから」とあつさり体よく断られたり、警察法が簡單容易に改正されない種々の情勢下にあることを知らずに、どこへも連絡せず、軽率に改正を放言し、問題を起して自分がやめねばならぬようなことになつたりした人があります。中央においてかくのごとく、地方における知事、これも名前は申しませんが、或る大府県知事です。大阪、京都、神戸の自治体警察も、国家地方警察大阪管区本部長の指揮命令を受けるもののごとく誤解しておりましたので、私はその蒙を啓いて上げたこともございます。有識者の認識が先ずこのような程度で、中央官庁方面でも極めて認識が浅く、自治体警察に対する態度は非常に冷淡で、国警が全国警察代表であると思つているのでありましよう。治安関係の法規、制度の審議会のようなものを作るときに、国警本部から長官や次長を委員に入れますが、自治体警察のほうへは一言の挨拶もないのであります。それでたびたび、国会、内閣、国警本部、検察庁その他関係方面に注意を喚起し、再三自警連大会等の決議として自治体警察関係あるものは勿論、治安関係の法規、制度の改廃審議に当つては、自警連にも事前に連絡協議せられたい旨の申入れをしてありますのに、殆んど実行されていないので、一月末に更にこの申入れをして置きましたが、その効なく、二月六日全国の自治体公安委員会代表が大橋法務総裁に会見して懇談したところ、国警二万の増員、捜査権介入、犯罪情報の報告義務、自治体相互間の直接応援行動を否定し、すべて国警を通じてのみ行わしめることの法文化等を内容とする改正案を、具体的に立案中の旨を明らかにしました。公安委員側から「我々はすでに三年間自治体警察運営管理を実際にして来たので、我々の意見も聞いて欲しかつた警察と密接な関係のある検察官等の意見も広く聴取せられましたか」と尋ねると、総裁は「法律を作るのに一々業者の意見を聞く必要はない、検事なんか法律を知らないから聞いていない」と答えられたそうで、公安委員中には「総裁は自分公安委員を、自分勝手な営利のみを追うて陳情に来た商売人の陳情や反対と間違えて、業者というような言葉を使つたり、国の法律執行官であり、公益の代表者である検事を侮辱したりしてお話にならぬ」と怒つている人もあつて、全国の公安委員は結束して絶対反対の意思を表明するに至つたのであります。二月八日に開かれた全国自警連協議会でも大橋総裁から同様の説明があり、ここでも一時間半に亘り苦しい答弁をされましたが、一方改正案の具体化も着々進行したとみえ、二月十九日東京新聞夕刊には、案の法文化が完了したので近く閣議決定の上、三月上旬の国会に提出されると、第四條以下の改正條文を羅列掲載せられました。さすがその後形勢非なるを悟られたとみえて、警視庁国警に入れる、大臣を国家公安委員長にするというような乱暴な構想は引込められましたが、国警の特別犯罪捜査権の介入強化等はもとの通りで、どう間違つたのか更に新らしく国道、府県道上の交通取締権の介入という化物が附加えられていました。  自治体側では民主警察強化を念願するのあまり、この中央集権化の虞れある警察法改正をどこまでも阻止しなければならない。併し国家治安の重大性と、徒らに反対せんがための反対で、警察の繩張り争いであるかのごとき誤解を避けるため、この挑戦的態度にかかわらず終始紳士的に熱意ある態度で目的貫徹に努めることを申合せ、自公連が中心となり各方面協力支援を求めたのであります。二月中旬には国会でも取上げて頂き、衆議院の地方行政委員会へ自公連、自警連、市町村長会等からも代表が参り、意見の開陳を行い、御了承を得、我々の主張が決して無理でないことを関係方面から認められ、中には日本民主化がここまで徹底して来たか、誠に喜ぶべき現象であると力強い激励を與えられた筋もあつたのであります。その後自公連、自警連代表は引続き法務総裁国警長官等と折衝を続けておりましたが、三月に入りまして急に妥協的空気が濃厚となり、我々も勿論反対せんがために反対するものでなく、法務総裁等の面子とか申すものを潰すという考えも我々のほうにありませんので、自治体側としては飽くまで、国警自治体警察の優位に立つものではなく、相互に絶対平等の立場において協力する根本精神の下に、地方分権強化育成する方向に、中央集権改正にならぬよう厳重に検討し、多数の納得する程度の、辛抱のできる、三十八度線まで後退し、共に協力して国の治安確保に当ろうということになり、今度の妥結案ができたので、我々は初めの案の骨は殆んど抜いたつもりでおるのでありまして、改正案第二十條の二のごとき、万一の万一、殆んどあり得べからざる、発動することのない空文にも等しいものと存じておるのであります。もとより我我はこれに満足しているのではありません。我々も研究しており、全国市長会、知事会、国会、その他各方面で調査研究せられた案も十分承知いたしており、将来は只今のような、国警廃止し、警察事務は市町村固有の業務であり、人口五千を境に警察を持つとか持たんとかを定めるべきでなく、全国の市町村は全部持つ、実情に応じて単独又は小さい自治体は、組合警察を持つことにせなければならないと考えております。差当り只今警察を持つている市町村が財政的に困窮し、折角與えられたみずからの警察を持つ権利を住民投票で拠棄せなければならないような平衡交付金制度の再検討をして、もつと機動力や科学的装備を充実し、せめて町村で維持できる程度にまで平衡交付金の基準率を上げるようにし、治安の重点はむしろ自治体警察にあるので、これをもつと重視強化し、一方名実の一致せない名称のためにいろいろと間違いを起している国家地方警察の名称を全国農山漁村警察と改称し、徒らに何々本部何々本部と本部ばかり多く、そこに優秀な人材が冗員として埋もれ、多額の国費を濫費していると世間から厳しく批判されている現在の国警は、七万五千の警察予備隊の設けられた後の今日、なお非常事態時において必要ありや否やを疑われていますが、この国家地方警察制度の再検討を大きな国家的立場から取上げて調査研究すること、このたび五千の増員を計画されているようですが、今後の警察は数の問題でなく、質の問題である。装備と警察職員の質の向上を図るべきで、徒らに数を増すべきでない等等が、今後の問題でないかと存ずるのであります。最後に私は一言法務総裁その他のかたがたにお礼を申上げねばならぬと思うていることがございます。今回の警察法改正の問題をこんなに大きな問題にして頂きまして、そのために新らしい警察のあり方を国民の大多数が了解して、殊に有識者たちが大きな関心を持つて我らの警察として一層親しみを持つてくれるようになつた。これ全く法務総裁以下の御功績で、いずれにしても日本民主化のために大きな貢献をされたのではなかろうかと愚考いたす次第であります。  大変無遠慮に失礼なことを申述べて申訳ありませんでした。御静聽を感謝いたします。
  105. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 次に神宅賀壽惠君、神宅君は自公連の代表、市側の代表としておいでを頂きました。大阪市の公安委員長であります。
  106. 神宅賀壽惠

    公述人(神宅賀壽惠君) 私は只今御紹介を賜わりました神宅賀壽惠であります。自治体公安委員会全体を代表するものではありませんが、その方面の役目もしておりますので、今日は大多数の自治体公安委員会がかように考えておるということを申上げたいと思うのであります。  本日は参議院におかせられましては、公聴会をお開き下さいまして、我々自治体公安委員意見をお聞き下さることになりましたことを厚く感謝する次第であります。と申しますのは、二月の六日に大橋法務総裁に全国の公安委員代表がお目にかかりましたときに、永田さんも申されましたように、法律改正するのに業者の意見は聞かない、業者の意見なんかは聞いておつて法律改正はできないのだ、こういうお話がありました。そのときに我我が参りましたのは一月の二十五日、長崎市における自治体全国公安委員連絡協議会において常任理事会を開いて、その決議文を持つてつて警察法を御改正になるならば、一千六百の自治体公安委員意見も十分お聞き取りの上で願いたいと言うたら、そういう御挨拶であつたのです。それにもかかわりませず参議院におかれましては、我々の意見をお聞き下さるのでありますから、全く無上の光栄であります。厚く感謝いたします。一月の初め頃新聞で大橋法務総裁や齋藤国警長官の御意見を新聞で拝見しました当時の感想を申しますと、これは警察国家再現をするのだ、こういう意見を述べた人もありましたが、私どもは少くともこの改正意図の中には中央集権的な意見があるのだ、かように考えまして憲法なり警察法なりマツカーサー元帥の書簡に相反するものになりはしないかということを恐れたのであります。その後いろいろな経過がありまして、自治体公安委員代表自治体警察長の代表者、国警側からは辻公安委員長、齋藤国警長官等の御出席を頂きました。齋藤国警長官の官舎において数度、いろいろお話をなさいました結果、妥結案がございました。それが法文化されて、只今議会に御提出になつておるものでありますが、この法案の内容は、全部が自治体側国警側と完全な意見が一致したのであるというのではありません。大部分がそうであるというのであます。又自治体公安委員なり自治体警察側では、この妥結を完全なものだとは今も考えておりません。理想的なものではないのでありますが、現在の警察法の早急の改正とするならば、先ずこの程度で辛抱しようじやないか、こういうことになつたのであります。それは大橋法務総裁なり辻さんなり、齋藤さんのお話によりますと、共産党の八幹部がつかまらない、その他今にもその方面の人たちの跳梁があつて、非常に急速に改正しなければならん、こういう事情であるというお話でありましたので、それならばこの程度の改正は先ず一応御賛成を申上げようじやないか、こういうことになつたのであります。それでその改正要綱、或いは二月の二十日の東京新聞に出ました当時までの自治体公安委員会側の意見は、二月の二十日の衆議院の地方行政委員会におきまして小幡全国自治体公安委員連絡協議会会長なり私が供述してありますので、甚だ厚かましいお願いでありますが、これを御一覧賜わりまして、私のその方面に関する意見は今日は省略することにさして頂きたいと、こう考えるのであります。  それで今日申上げたいと思いますのは、御送付を受けました地方行政委員会専門調査室でお書き下すつた警察法改正案についての問題点、これで大体現に政府の御提出になつておりまする改正案についての主な問題点が出ておると思いますので、これについて申上げたいと思いますので、さよう御了承賜わりたいと思います。その一から三までは、これは国家地方警察若しくは政府に対する御疑問のように考えますので私から申上げることは差控えます。四、五、六、七、八、これを一括しまして、即ち二十條の二の点であります。これについて私どもの考えを少し詳しく述べさせて頂きたいと思うのであります。二十條の二に、治安上重大なる事案につき止むを得ざる事由ありと認むるとき、知事府県公安委員会に対し警察の出動要請を認める條項については、これは自治体側の主体性にかかわる基本的な問題でありまして、今次改正法中の最も重大論点となつたものでありまして、妥結案は絶対に国家地方警察の優位を認める趣旨のものではありません。国家地方警察の首脳部と自治体警察代表側との相互にこの点において運用上過誤なきを期するように徹底的に了解し合つておるものであります。本條におきまする治安上重大なる場合と申しますのは、飽くまでも特別な非常例外の場合のみに限るものであつて、一般犯罪につき積極的に解釈することは断じて許されるべきものでないのであります。私どもの妥結しました限界は、一つ自治体公安委員会が全くその機能を失つて自主的な応援要請をなし得ないような場合、これを例えまするならば公安委員会が暴力団体等のために自由を奪われましてその正当な機能を発揮できないような場合、次には治安維持上事態が重大であつて公安委員会が速かに隣接の自治体警察又は国家地方警察の応援によつて管轄区域内の法と秩序とを回復すべき事態であるにかかわらず、その土地の特殊な勢力に圧迫せられまして、応援要請を躊躇逡巡して適切な措置を懈怠しておる場合等、特別な異例極端な場合におきまして、治安維持の立場から速かに事態を収拾するため客観的に見て止むを得ざる事由があると認められた場合に限りまして知事の要請権を非常例外的に認めたに過ぎないのでありまして、このことは斎藤国警本部長官も妥結に当りまして進んで強く同感の意を表明せられたところであります。従つて当初の政府案に掲げておられました特殊犯罪に関して国家地方警察自治体管内への一方的乗入れという問題は理念的にも完全に撤回されたと見るべきでありまして、本條は現行警察法盲点を救済するための補充的な規定なんでりあます。それから九として問題になつておりますること條文と六十二條と六十三條との関係でありますが、本條は六十二條及び六十三條にいう国家非常事態の場合とは全然別個の場合でありまして、さような国家非常事態に立至つていない場合であります。これの運用の程度に至らない一地方の局地的なものであります。この実例として斎藤長官がお挙げになりましたのは、地方自治体が機能を失つておるというような場合、その場合に多く適用したいのだ、又一部思想的な不法的な行為をするものが将来蜂起したような場合、これを地方的に片付けたい、こういうのでありますから知事にその権限を與える、こういうことになつたのであります。それから十二、十四として自治体警察の、小自治体警察と言いますか、この存廃に関することと、国家地方警察管轄区域内にある町村自治体警察に隣接しておつて国家地方警察の地区警察署とは非常な間隔を持つておるというような、こういうようなところをどうするかという点でありますが、これは自治体警察側のほうからは強くそういう隣接の国家地方警察官轄区域内で自治体警察組合警察を作つて頂くようにお話したのでありましたけれども、これは現行法の改正というよりもむしろ政府、或いは自由党の政策として考えるべき問題であるから、我々もそれには反対しないけれども、この自治体公安委員なり自治体警察長との協議会では別にして置こう、こういうのであつたのでありますが、この点につきましては五月の十七日附で全国自公連の小幡会長から陳情をしておりますし、大阪警察管区自治体公安委員会連絡協議会からは本院に対しても請願書を差出しておるのでありますから、これを十分御高覧賜わりまして、自治体警察の発展強化のために、或いは住民意思によつて警察を自治でやろうということのために十分の御同情を賜わりたい、かように本院において御改正案を出して頂きたい、かように考えておる次第であります。それから小自治体の存廃に関する点でありますが、小自治体廃止しなければならないという事情はこれは主として財政面であります。今までは或いは相互援助関係が問題になつたかも知れませんが、今度は改正案で相互援助、即ち隣接の自治体警察に対する、或いは国家警察に対してできないのでありますから、小自治体のその点に対する不安は、即ち弱小であるという点は解消するのであります。ただ財政の面において困つておるために返上したい、こういうのが今後に残る一つの問題でありますが、私は法律を議会の協賛を得て作られて三年間、この弱小自治体が如何にして警察を維持するかというとように考えさせられまして、困難の上に困難と鬪つたのであります。これは金がないからというのがその主なる理由なのでありますが、それは三年たつてお取上げになるという言葉は悪いかも知れませんが、さよなうことは自治体警察に対して政府が本当に温かい心持と言いますか、自治体警察を育成してやろうという考えがないのであろうと思うのであります。これを自治体警察側からお取上げになります数が、全部廃止すると警察官は一万九千とか八千とか言われる、半分ぐらいはできるだろうというのが国家地方警察側の予想であるように或る所で聞いたのでありますが、これは勿論国家地方警察強化策になりまして、地方町村自治の本義に反すること甚だしいものなのでまります。十分に国家警察になりましても費用はかかります。国家警察になつてからその費用は外国が出してくれるのでもございません。国民の費用でこれは支弁するのであります。最初国家警察が二万に増員しようという計画をなされたときの新聞の記事を見ますと、六十億というのでありまして、一人当り三十万円の国費をこれにお使いになろうとする計画であります。その半分でも、現在の自治体にもらつております平衡交付金の上にくれるならば、即ち現在は十六万三千五百円だそうでありますが、これを倍加でもして頂くならば、自治体が如何に小自治体といえども、返上するというようなことを言うものはないと私は考えるのであります。でありますから、折角自治体警察を持たしたのでありますから、そうたやすくお取上げにならないで、これを育成して頂きたいのであります。親が子供にものをやりましても、都合が悪いからすぐ取上げるということになりましたら、子供は怒ります。地方自治体がどうしても返上しようという本当の心持の根底を十分にお酌み取り下さるならば、この住民意思によつて返上するというようなことは、規定はできないと思います。住民意思によつて返上するというのは、現在困つておるかち返上するという思想であります。それを金も與えて見ずに取上げるというなら、初めからおやりにならなかつたらいい。警察法をこしらえるときからわかつてつた事情だと思うのであります。そのときから地方の財政事情がわからなかつたというならば、それは当時の政府が責任を負うべきものだと私は思うのであります。その当時から悪かつた、如何に多少でもよくなつておる、よくなつてつても困つておるのでありまするが故に、これをどうか国会におかせられましては、平衡交付金を十分に出すようにしてやつて頂きたいと思うのであります。それからなお九万五千の枠を外しまして、これは枠を外すというのは、大体において減少するということにはならないと思うのであります。自治体が、警察法ができましたときの人口比率によつて割当てられたものが、その後都会におきましては相当人口が増加をしておりまして、警察の職員を増員しなければならない、こういう事情になつておるのであります。これは大阪の近くにも、尼崎市とか布施市とかいうのが最もその顯著なものでありますが、増員するのでありますが、増員されました場合に、その平衡交付金は、必要によつて増員するのでありますから、従前に與えられた平衡交付金の基準に従つて、即ち定員の一定の最高率を決定して頂いて、交付をして頂くようにお取計らいを願いたいと思うのであります。従前の比率以上に増員をしたものは、当該自治体が勝手にやつたのだから、お前のほうで費用を支弁せよ。こういうようなことは、その地方の治安維持に非常な困難を生ずるものであります。警察職員地方自治体が殖やすのは、贅沢でやつておるのでもありませんし、飾りものにするためにやるのでもありません。市町村長並びに市町村会議員は、警察費の膨脹を非常にやかましく言うておるのであります。それを殖やさなければならないというのは、治安維持上さような必要があつてなされるのでありますから、平衡交付金は、その増員しました場合には、増員に応じて、而も十分な金を出して頂くようにしたいとお願いする次第であります。最初十八万二千八百円出そうというのが、実際の支給額は十六万三千五百円になつたというようなけちなことをなさらないで、十分に賜わりまするように、皆様方の御協力によりまして、実現をさせて頂きたいと考えるのであります。それから最後に二十一というところで、自治体警察相互援助の出動の場合に要した費用の負担が不明瞭のようであるがというお話でありますが、條文の書き方が不明瞭なのですが、国家警察に通知をして置いたら出そうというのでありますが、これを明確にして頂くこと、私どもの熱望するところであります。非常事態で応援を、非常事態と言つても、小さな市町村だけの非常事態ですけれども、急を要する場合に、国家地方警察へ御案内を申上げて、それから応援要請をする、或いは要請に出かけるということのできない場合もありましようから、その点を十分御考慮下さいまして、法文化して頂くと結構であります。斎藤長官はそういう場合は勿論出そうじやないかということで、この條文を作る場合に明確にならなかつた憾みが私どもあるのでありますが、そういうお話でありましたから、どうかこの現行法を修正を願えれば、さようにして頂いたほうが、自治体側といたしまして最も喜ぶべき点であります。まとまらないことを而も無遠慮に申上げましたが、どうか意のあるところをお酌み取り下さいまして、私どもの希望に副うように改正案が通過することをお願いする次第であります。
  107. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。  次に森川要君、お願いをいたします。森川君は自公連の町村のほうの代表であります。千葉県の東金町公安委員長であられます。
  108. 森川要

    公述人(森川要君) 只今御紹介にあずかりました森川でございます。自公連関係から伺つたわけでありますが、今度の改正案に対します最も大きな話題として取上げておられます弱小自治体警察の存廃の対象になつております小さい町でございます。従いまして全般に亘りましては申上げませんが、制度改革の中の弱小自治体の存廃についていささか申上げたいと存じます。  元来、弱小自治体の存廃を聞きますときに、制度改革以来僅かに三年にしてその存廃を取上げ、その正、不正に終止符を若し付けるならば、我々は就任当時そういう予想はしておらなかつた、少くも民主警察の建設には五年、六年ででき上るべきものではないということを最初から考えております。それはただ想像だけでなく、過去におきましても水野錬太郎内相時代に警察民主化を盛んに唱えた時代を記憶しております。而も幾ばくもなくそれは覆えされた。若しこれを国の民主化であつても、警察民主化であつても、拙速を尊んで急いだならば、若しほかの思想、或いはほかの力が加わりましたならば、直ちにこれに磨く憂えがある、いわゆる哲学的観念から築き上げた民主警察でなければ成功しないと我我は考えておつたのでございます。従いまして現在の状態におましては、我我の自治体警察は進歩の道程にあるという結論を出さなければならない。そう存じておる次第でございます。然らば実際現在自治体警察の、弱小自治体警察の存廃が論議されますのは、当初におきましては我々の好むと好まざるにかかわらず、人口五千以上の市街地を形成する自治体には設置すべしという指令がございましたのででき上つたのでございます。今度はそれが住民投票によつてこれが決定されるという案が出ておるそうでございます。これは確かに自治権の伸張の一歩だと、しかと考えております。併し、その点に行きましたならば、人口五千以上の枠をどうして固執するか、若し人口五千以上あつても市街地を形成しないところには自治体警察の設置を許さないということはまだ生きておるように記憶しております。然らば人口五千以上あつて隣接町村を合併して五万にしても、市街地を形成するという意味からいいますと、市街地の性格はマイナスになつて来ます。いわゆる五千の人口が全部市街地をなしておるならば、これは人口五千であつて自治体を形成することができる。その人口五千の自治体が四隣の農村を加えて、五万になつてもそれは五万の中の五千とか、いわゆる市街地を形成していない、市街地の性格からすれば、マイナスになつて行くということになるわけです。然らば農村は自治体警察を設置する資格はないか、能力がないかということに相成りまするが、私は農村に囲まれておる町にありまして、農村こそ自治体警察の本質にによつたような進歩を遂げておるというふうに考えております。いわゆる相互扶助の関係、或いは消防団が義務消防で発達しておる、いわゆる精神消防といいますか、義務消防といいますか、それは職業消防でない。自分の村は自分で守ろうという観念は必ずしも都会よりも落ちていないというふうに考えます。そういう意味において農村を合併した場合に、自治体警察を設置する能力がないという断定は無理ではないかという結論に達すると思います。なおこの経済問題から参りますと、改革の根本は民意に問うというのもありましようが、弱小自治体警察は許すことのできる機会を與えられることに相成るし、その一歩考えれば、弱小自治体はよしたほうがいいのではないかということが想像される。然らば現在の平衡交付金の制度から考えまして、平衡交付金の性格はいわゆる実力のある町村へは少く参ります。貧弱な町村へは多く交付金が行くはずであります。そういたしますと経済面の角度から考えますと、或る富んでおる町村は全部平衡交付金が零の場合もあります。恐らく私の聞いておる範囲は、全国で四百内外の平衡交付金ゼロのところがあるそうでございます。非常に富んでおる町村自治体警察を持つておるにもかかわらず交付金はゼロだ。貧弱な町村自治体警察を持つておるものは、平均警察に十六万三千五百円以上行つておるところもあるでしよう。或いは二十万、二十五万行つておるところもあるかも知れません。いわゆる貧弱なるがために金を余計もらつておる。そういう観念から言いますと、町村の本能から言いますと……警察を持つておるがために警察費を全部自分の手許金から出さなければならないのは有力な町村であります。それから一文も出さずに警察費を賄つて行く、いわゆる交付金によつて賄い得られるものは貧弱な町村だ。ですからいわゆる改革案の結果は果してどういう結果が出るか。経済面から考えるならば有力なものは手許金を余計出すからつまらんから止そう、貧弱なるものは警察を持つていても一文も出さなくてもいいから持続しようじやないかという結果が生れないものとも限らないということになると思います。それから小さい自治体にはボスの勢力が侵入する、自由を束縛するということが異口同音に申されておりますが、これは自治体の大小にかかわらず、警察制度が……いわゆる警察費の自由が非常に窮屈になつております。教育費、或いは裁判所費とは性格は違いまして、経済権は町村長或いは町村議会の自由でございます。いわゆる警察公安委員から提出します予算は町村長の原案を作る参考として出す程度であります。あとはその原案の取捨は町村長自由でございます。それから議場に参りますれば、町村長の出しました原案を議了するその場合、議会が必要と認めて招集された場合に公安委員が行つて説明するという程度でありまして、経済に対する殆んど無力な状態にあります。従いまして自治体警察運営するには、金の圧力というものは相当加わるのは自然の勢いであります。こういう観点からこの制度は交付金によらずして、平衡交付金によらずして、独立財源を町村に與えまして特別会計にすべきじやないか。それによつて警察の独立が図り得られるのじやないかというふうに考えております。それかな先ほど自治体の不便な点をいろいろ列挙されましたうちに、人事の交流並びに人員の多いこと、これが列挙されましたが、これは我々の考えておるそういう自治体の理想のものを作るのとは少しく離れた考えではないかというふうに考えております。即ち人事の交流は現状においては進歩の過程として必要でありましようが、将来我我が、自治体警察の理想として築き上げるものが、そこのところの警察なり、そこのところの首長は、その治安のために一生そこで暮す、一生を捧げる、金筋の大小によつて名誉とするのではなくて、その土地の治安の功労者として民衆の喝采を受ける。これが最大の名誉であるべき警察を作るべきじやないかというのが我々の理想としておるわけであります。それから人員の多いこと、全国を通じて自治体の分裂しておることは、人員の多いことは確かであります。併しながら現在の過程といたしましては、国家警察とは違いましたところが防犯とか、市民のいわゆる従来の警察官に與えられた使命以外に、民衆に接触する、民衆を指導するというのが自治体の本質であります。ので、それに該当する意味において多い。併し将来は私はこの自治体人員は頗る小さくしてもよろしいのではないか。而もそれに協力する民衆ができ上つて初めて自治体警察の本質が生れる。極端に言うならば大きな事件のない限り、小自治体におきましては、警察署長、或いはその下一、二名であつて、若し非常な場合半鐘でも叩きましたら、村中或いは町中がその警察協力してお互いの治安のために奮鬪する。そういう性格のものにでき上るべきものが自治体警察の本旨ではないかというふうに考えられますので、現在においては人員の多いということは言い得られますが、でき上るべき性格の自治体警察はしかくあるべきだと、そう考えております。それから自治体警察の性格からいたしまして、自治体警察の各個の優劣ができる。非常に進歩した所とあまり進歩しない所ができる。これは自治体警察に限り仕方がないと思います。但し世間で言ういわゆる優劣なるものがその自治体の個性を考えずに、或る一つ自分の持つておる型によつて自分の物差によつてその尺度を測るということは少しく早計ではないか。そこの自治体にはおのおの個性がありますので、その個性によつて特徴ができて来る。そこで一つ考えなければならないのは、若し国家非常事態のときには全部の自治体を解体して内閣の統制下に入る。そのときにおのおのの個性のみによつて活動が分解作用を起すようなことがあつてはならない。これは確かに考えるべきことと、しかく考えております。それがためには現在事実においては申合せによつております公安委員連絡協議会、これらのものを法制化して万一の場合のお互いの統制に資すべきじやないかというふうに考えるものであります。以上いろいろ申上げましたが、要するにでき上らない中途においてその終止符をつけずに、又復活のできる制度にはなつております、併しながら復活のできるというのは一遍よしましても二年後には又再編成ができるということは確かに伺つておりますが、然らば事実問題として実際警察署を建て、自動車を買い、或いはほかの設備万端を臨時費によつて殆んど町の財政をマイナスしながらも作り上げたものを、一遍廃止してこれをほかに転換した場合に、二年後に又してもその犠牲を拂わなければならんということは、好きならやつてもいいが、やれないぞということと同じではないかというふうに考えるのでございます。この点につきまして政府は、或いは中央の機関におきまして、適当の、或いは再編成の場合に補助金なり、或いはそのほかの方法によつて住民意思を助ける意思を生かしてくれる手段を講じてくれることを切望しておる次第でございます。以上申上げまして大体の実情を申上げた次第であります。
  109. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました。なお委員各位に申上げます。小澤二郎君は今日不快でございまして、明日に廻してもらいたいということでございます。御質問を願います。
  110. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 只今までの公述なさつたおかたがたの御意見は専門的な、その職責に照らして尤もであると思われる御意見が非常に多かつたので、何ら質疑すべきような、疑義を抱く点はないのでありまして、質問は控えますが、この際委員長においてお取計らい願つて、小金井町長さんの小川さんの御答弁、公述は全国の町村長を代表して統計資料等も、非常に明細な公述があつたのでありますが、速記が近近なかなか出て来ませんので、一つ全国町村長会のほうで御苦労でも小金井町長さんにお願いしまして、その原稿等の要点を、統計を中心にしてプリントして資料として提出願うようにお取計らい願いたいのですが………。
  111. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) よろしうございます。
  112. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その点だけは関係団体意見として私たちの手許に参つておりませんので、お願いして置きたいと思います。
  113. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 承知しました。それでは全国町村会のほうにお願いして出して頂くことにいたします。
  114. 中田吉雄

    中田吉雄君 小川町長さんにお尋ねいたしますが、昭和二十六年の四月二十三日に新らしい自治法による第二回目の選挙があつたわけでありますが、その選挙後に全国の町村会議をお開きになりましたか。
  115. 小川精一

    公述人(小川精一君) 実はまだ集まりませんので会長も役員もないのであります。
  116. 中田吉雄

    中田吉雄君 こういうことをお尋ねしましたのは小川町長さんに対してではないのです。実は全国の町村長会といたしまして昭和二十六年五月十五日の日附を以ちまして警察法の一部を改正する法律案の緊急成立方要請の件という厳しく国会議員を督励するものが町村長会の事務局長の名を以て我々に出ておるわけであります。私鳥取県ですが、昭和二十六年の四月二十三日に選挙が行われてからまだ鳥取県では町村長会の会合も開いておりませんし、恐らく全国的にそういうことが開かれていないと思いますし、ましてやこの改正案について全体的な討議がなされたようには私承わつていないわけです。ところが大変いい案だから一つ国会で早急に審議して可決するようにと、こういう案が出ておるわけなので、実は往々法案が難航いたしますと政府が手を打ちまして拍車をかけるということは、例えば地方税法案の際におきましてもそういうことがありまして、却つてその案が通つたのですが、地方税法にしてもいろいろ問題がありまして、あとから直ちに第九国会で又修正しなければならんというようなことが行われたのですが、従つて町村長会の運営につきましてこのような点を一つ御説明して頂いたら大変結構と思うのですが、ここにありますが、地方行政委員だけと思いますが、こういうはつきり今度の改正法案はいろいろな点で問題があるから速やかに可決するようにということが要望されておりますので一つ……。
  117. 小川精一

    公述人(小川精一君) 只今御指摘がありましたが、先ほど申しましたように、全国町村会議におきましてもまだ会長も役員もできておりませんので、恐らく今までもたびたび審議いたしましたときにおきまして事務局長のお計らいでそういうようなものを出したものと思います。
  118. 安井謙

    ○安井謙君 自警連、自公連のかたから現状に対するいろいろ御批判があつて大変参考になつたと思います。まあ新らしい制度でいろいろ欠陷があると思いますが、その欠陷を最善のものにするか、しないかは別といたしまして、今日の欠陷を差当り間に合せるという意味でこの改正案に対して採るか採らないかという結論だけちよつと……。お三人のお方にお伺いしたいと思います。
  119. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) では永田君かちお願いいたします。
  120. 永田圭一

    公述人(永田圭一君) 只今の御質問の趣旨をはつきり了解いたしておりませんので、もう一度御質問に対するお尋ねをいたしたいのであります。
  121. 安井謙

    ○安井謙君 いろいろ御批判や実際のお立場からの改正案というものがおありだろうと思うのでありますが、現在でもそれはいろんな欠陷も持つている、その場合に、今回提出されておりますこの改正案は、やつたほうが便利であるかどうか、従来のいきさつとか、そういつたものは別に考えまして、現在の困難を救うために足しになるであろうかどうかという点について、どういうお考えをお持ちですか。
  122. 永田圭一

    公述人(永田圭一君) 先ほど申上げましたように、今回の改正案自治体警察側といたしましては、決して満足をいたしておるものではございません。併し我々の理想としていろいろ先ほども申上げましたが、考えております建設案を我々のほうから代案として提出をいたします場合に、反対せんがために反対をしておるんだ、つまり繩張り争いを警察がやつておるんだというような誤解を受けると、治安確保の責任を持つておる警察が二つに大きく割れて、非常に国家のためにならないというような大きな考え方から、先ず出ましたあの案に対して我々の忍び得る程度はどの程度まで忍び得るか。先ほども申上げましたように、三十八度線はどの点かということで、あの妥結案ができたのでございます。あの中には自治体警察側として通して頂いて結構なものでございますし、又我々の考えから非常に離れておるところもございますので、どうか各位の御良識によりまして、最もいい案を作つて頂いたならば大変結構だと思つております。
  123. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 次に神宅君にお願いいたします。
  124. 神宅賀壽惠

    公述人(神宅賀壽惠君) この自公連、自警連を代表しまして、妥結したのでありますけれども、これは自公連側といたしましては、総会に諮つてその決議をやつたのでありませんので、この法案ができましてから、或る地方ではこれは困ると、こう言われるところもあるのでございます。それは町村自治体警察の移管に関するあの住民投票できめるという規定の点でありますが、これは中国、四国の公安委員連絡協議会におきましては、こういう規定を置くと、国警側からの御勧誘といいますか、ちよつと言葉が大袈裟になるのでありますが、お誘いといいますか、御注意といいますか、そういうものがあつて廃止するものができると、本当に育成しなければならないのに廃止するものができて、それに又附和雷同する他の町村もできるのですから、この規定に廃止して欲しいという決議をしまして、私当時全国自公連の関係者として、その会合に臨んだのであります。そういう決議をして関係方面に陳情したのでありますから、自公連全体としての妥結に対して、意見がまとまつておるというのではないのであります。といいますのは、この自公連の連絡協議会にしましても、各公安委員会の権限を犯すものでないということが、協議会の規則の中にはつきりありますので、総会にもかけないで、まあまあこの程度ならば止むを得ないだろうと考えてやりましたことなのでありますから、他の方面ではさような反対の意見といいますか、苦情を私どもに申し出ておられる向もあるのであります。それから先ほども申上げましたように、既設自治体の存廃を、住民の自由意思によつて、自由にせられるというのならば、それと同じような思想の下に、国家地方警察官轄区域内の市町村住民も、自由意思によつてその建設した自治体警察を持つ町村との間に、組合警察を作つて運営をしたいという意向も、これは相当多数に各方面出て来ておるのであります。こういう途もこの改正に当りましては、含んで頂きたい。こういうことができまするならば、先ず現在の差当つて必要な改正としての点には、先ず先ず辛抱しなければならないのじやないか、こう考えますのが、全国自治体公安委員会側の希望であります。
  125. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 有難うございました、森川君。
  126. 森川要

    公述人(森川要君) 大体の意見といたしますと、神宅さんの意見のようですが、ただ立法の精神に結果が伴わないことがありはしないかと思われるのは、組合警察を作ることはできるが、それは生活の相類似したる而も隣接したるということ、それと人口五千以上というのが疑問になるのですが、人口五千以上の市街地を形成するということになつておるようですが、そうしますと、現在まあ国家も県も町村合併を非常に奨励しております。そうしますと、先ほども申上げましたように、五千以上の人口を持つておる町が周囲を集めたために仮に五万になつた、そうしてその周囲を集めたのは全部農村であつた、そうすると、五万の人口の中の市街地を形成するものは五千だということになる。それは果して大部分が市街地を形成しているという解釈に行くかどうか、合併したために前の五千の市街地が自分の自由な自治体を持つか持たんかという自由は失われはしないかというふうに我々は想像できるのであります。言い換えますと、市街地を形成する人口のパーセンテージが、合併によつて低下するということになるのであります。
  127. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 他に御発言ございませんか。
  128. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 簡單なことですが、小川町長さんにお尋ねしますが、後で正確なものを出して頂くとして、先ほど御陳述のありました資料というのは、いつの御調査だつたのでありますか。賛否の四百何町村から出て来ました資料というものは、いつの調査であつたのでありましようか。それから、それは町村長の個人意見なのか、或いは決議機関の議決を経るという手続をしたものなり、或いは役場の吏員等において回付したものなのでありましようか。その辺の事情を御承知でありましたらお伺いしたいのであります。それから本日は町村代表のように承わつておるのですが、全国町村会長の白鳥義三郎氏から昭和二十六年二月二十一日附で各都道府県町村会長宛にこういう文書が出ておるのでありまするが、こういう事実がありますかどうか、ちよつとお伺いしたいのであります。前文は省略いたしますが、「本会においては御承知の通りしばしばこれに関して協議、検討を加え、又最近全国の自治体警察設置町村から直接徴した意見の報告を尊重し、愼重なる検討の結果、地方自治体警察の分配は自治体の自由なる裁量に一任し、廃止自治警察は国警に編入する等政府の方針とほぼ一致する結論に到達しているのであります。然るに最近本問題について徒らに現行制度を固守せんとして地方町村にその賛成を求めんとする運動が存するかに聞き及ぶのであるが、万一誤つてかかる動きに乗ぜられんか、本問題解決に妥当を失する結果に至るかも計り知れないので各位におかれては前記本会の結論を御了承の上愼重なる態度を持せらるるよう管内関係町村に至急御連絡いたされたく、この段取急ぎ情報いたします」ということで、統計その他の資料を貼付してあるこういう文書をお出しになつたということが事実であるかどうか、この三点、簡單なことでありまするから……。
  129. 小川精一

    公述人(小川精一君) 只今の資料の年月日でございますが、今実は資料を……、そつちのほうにありますのであとで申上げます。それからこの只今の第三点を先に申しますが、この三点のほうは私も実は末端の町長でありまして、実はその文書を見なかつたのでありますが、昨日町村会に参りましてその参考資料を初めて拝見いたしました。それは都道府県会長宛に参つております。従つて末端のほうには参つておりません。併し輿論調査としては参つております。第二点は……。
  130. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 この統計資料ですね、先ほど出ておりました統計資料がどういう手続で出て来たものであるかということについてです。
  131. 小川精一

    公述人(小川精一君) 輿論調査のほうですね。輿論調査は文書を以て通じて参りまして、その輿論調査は別に議会の議決とか或いはそういうものではなくですね、町村長宛に参つた資料であります。従つて町村長におきましては、或いは町村の議会の委員会とか或いは全員協議会とかに諮つたところもあるでありましようし、諮らんところもあるかとも思います。
  132. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ほかに御質問ございませんか。
  133. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつと公聴会に大変失礼ですが、政府委員のかたにお尋ねいたしますが、警察法の第四十條のこの人口五千以上の市街的町村といいますと、五千以上で幾らくらいこの集団的に固まつてパーセンと……、大体基準があるやに承つておりますが……、三千ですか。
  134. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) これは警察法の施行の当初に実際の扱いとしてきめたものがございますが、中心市街地において全戸数の三五%以上の扱いでやつております。
  135. 中田吉雄

    中田吉雄君 わかりました。  森川さんにお尋ねいたしますが、平衡交付金をもらつていない町村が全国でどれぐらいあるんでしようか。ちよつと……。
  136. 森川要

    公述人(森川要君) これは私じかに調査したんじやないんですが、聞くところによりますと、自治体警察を持つておるところと持たないところとで四百五十と記憶しております。平衡交付金のゼロのところで……。
  137. 中田吉雄

    中田吉雄君 貧弱な町村警察を置いているところは苦しい、裕福なところでもらつていないところはあほらしいから何かこうもらつているかも知れんというような御発言でありましたのですが、併し裕福な町村でも置きますと、やはり平衡交付金を決定されまする前の基準財政收入の見積りにおきまして警察職員一人当りの單価を計算して、財政收入も殖えるわけでありまするから、そういうところに置きますれば、やはり裕福なところでも、今除外されておつても、この平衡交付金をもらえる圏内に入るわけで、あなたが言われたようなことはこれは適用されないのじやないかと思いますが、これはどうでありましようか。私も実際の数字はわかりませんのですが……。
  138. 森川要

    公述人(森川要君) それは廃止廃止でないというのは別といたしまして、財政面からのみ考えますと、自治体警察を持つてつても、非常に富んでおるところは、平衡交付金の性格からして貧富の差を平衡にする意味からゼロになる場合があるのです。これで何か……。(「参考人のかたもお疲れでしようから一つ今日は」と呼ぶ者あり)これはあり得るんでして……。それからそれと同じ、極端に言えばそうですが、それと同じような比例で、富んでおるところは十六万三千五百が十万になつているかも知れんし、五万になつているかも知れん。これは事実あるのです。これは併し十六万三千五百円というものが若しその全部各町村平衡に来るんならば、これは平衡交付金の性格を失うものだと私は解釈しております。
  139. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ほかに御質問もなければこれで公聴会を閉じたいと思います。  では今日の公聴会はこれで終ります。又明日午前十時から開会いたします。公述人のかたに申上げます。どうも御多用中長時間有益な公述をして頂きまして誠に有難うございました。この委員会におきまして貴重な審議の参考資料にいたします。有難うございました。    午後五時四十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     岡本 愛祐君    理事            堀  末治君            吉川末次郎君            竹中 七郎君    委員            石村 幸作君            岩沢 忠恭君            安井  謙君           小笠原二三男君            相馬 助治君            中田 吉雄君            西郷吉之助君            鈴木 直人君            石川 清一君   政府委員    国家地方警察本    部総務部長   加藤 陽三君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君    常任委員会専門    員       武井 群嗣君   公述人    府県公連代表東   京都公安委員長  兒玉 九十君    京都大学教授  須貝 脩一君    読売新聞論説委    員       梅田  博君    日本労働組合総    評議会争議対策    部長      塩谷 信雄君    町村議会代表    (自警を有しな    い町村)    千葉県松丘村議    会議員     河野 勝敏君    府県議会代表東    京都議会議長  菊地 民一君    実業界代表東宝    株式会社常務取    締役      馬渕 威雄君    弁護士代表日本    弁護士会常務理    事       安積伊二郎君    町村代表北多   摩郡小金井町長  小川 精一君    自警連代表京都    市警察本部長  永田 圭一君    自公連代表    (市)    大阪市公安委員    長       神宅賀壽惠君    自公連代表千葉    県東金町公安委    員長      森川  要君