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1951-05-18 第10回国会 参議院 地方行政委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十八日(金曜日)    午後二時五十五分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件警察法の一部を改正する法律案(内  閣送付)   ―――――――――――――
  2. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) これより地方行政委員会を開会いたします。  警察法の一部を改正する法律案予備審査を続行いたします。御質問を願います。
  3. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 この前の委員会法務総裁質問いたしまして御答弁を得たいと申上げておきましたが、ほかの委員会に出席しておりましたために、折角法務総裁御足労願つたのですが、お帰りになつあとで、御質問できませんで、甚だ残念でした。全く私が遅かつたのですから、罪は私にございますが、その節、大体伺いたいことのうち、極く総括的な面につきまして、一二点これを除きまして、他のことについては、斎藤長官から御答弁を得ましたので、斎藤長官に伺わなかつたような点、それについてお伺いいたしたいと思つております。一括して質問いたしまして、一括して御答弁を願いたいと思います。大体私のお伺いいたしたいことは、技術的な、或いは法律の条文に関した面のことは、審議の進行に伴いまして、後日いろいろお伺いいたす機会があると思いますから、その前提になります、むしろ政治的なことについて、お伺いをいたしたいと思います。  それで私たちがこの警察制度改正法案に対して、そういう点から一番問題にいたしておりますことは、先般も斎藤長官に対する質問のときに若干触れたのでありますが、この警察制度改正ということそれ自体が非常に重大な意味を持つておるばかりでなくして現内閣が現段階において日本国民になさんとしておるところの政治の全体に亘つて、折角終戦後作られた諸種の民主主義的な政治というものをば、旧憲法時代に逆転させようとするところの傾向が非常に強いということを我我が看取いたしておりますということ、及び先にマツカーサー元帥に代つてリツジウエイ将軍最高司令官に就任しまするや、いわゆるリツジウエイ声明を出しまして、それに基いて今日までの占領政策に基くところの日本の過去の被軍事占領国としての諸制度が再検討されるという、この重大な問題に関連して、その一環として警察制度改正が含まれておるということがここに加わりまして、更に警察制度改正に対する政治的な関心が高まり、又その重要性が単なる警察制度改正のみの問題でないという点において、非常に大きな政治的意義を持つておるのであると私は考えるのであります。で、先般も申したことでありますが、終戦後、日本は新憲法を制定いたしまして、旧憲法基本的な精神でありました君主主権、或いは国家法人説基本とするところの国家主権というような考え方を一擲いたしまして、主権人民にあるという、いわゆる人民主権基本的精神に基くところの新らしい憲法が作られ、又その憲法に基いて、すべての法律及び制度改正が行われて来たのでありますが、制度は非常に民主主義的になつたのでありますけれども、その実は民主主義的になつておるかというと、少しも民主主義的になつておらないのが現実の事態であると考えるのであります。而も吉田内閣は、制度に副うところの実をもたらすために、国民生活民主主義的な方向へ指導するということを図らないで、為政者それみずからが新憲法精神をば理解するところの知性欠除いたしておりまするがために、ただ新らしい制度国民が不慣れであり、そのことから来る何らかの弱点といいますか、欠陥が露呈せられるというと、忽ちこの新らしい制度はこういう欠陥があるのではないかというので、自分が持つているところの民主主義的知性欠除を反省することなくして、これを直ちに旧憲法的な考え方に逆転せしめ或いは反動化そうとする傾向は、これは一切の政治の部面に現われておると考えるのであります。人間は子供の時から養成されて来たところの教育によつて大体においてその人の思想が固まるのでありますから、すでに四十、五十になつたところの大人が頭の切替を憲法が変つたからといつてすることは、普通人には私はこれは極めて困難なことだろうと思うのであります。況んや八十に近いところの吉田さんなどには、これは似てのほかの困難なことだと思いますが、せめては私はこの若き世代を担うところの青少年の諸君の教育だけでも新憲法精神に基いてやつて貰いたい、そうして、その将来は非常に遠いことであつても、それに待つよりしようがないというようなことを考えておつたのでありますが、それも又新憲法精神を少しも理解しないところの、ビスマルク、モルトケ時代の第二次欧州大戦前日本泊憲法が制定せられた時代ドイツ国家哲学ドイツ思想から、頭が動きがとれないようになつているプロシヤ主義的な教育者でありまする天野氏を文部大臣にして、そうして日本学制制度をば旧憲法時代のそうした古い考えに逆転さすように教育をリードしておるということは、非常に重大な問題であると考えるのであります。それが大体お尋ねしたいところの大体の私の基本的な考えなのでありますが、そういうようなことについても大橋法務総裁内閣を代表しての大体の御意見をこの際承わつておきたいと思うのであります。それに関連いたしまして、この警察制度改正意義政治的に非常な重大性を持つのでありますが、この重大性を持つたところの重大な法案閉会間際の会期切迫せる今日においで御提出になつたのはどういうわけであるか、もつと早くこれをお出しにならなければならないのじやないかと私たちは思うのであります。十分の審議を尽すということは、立府法の私は義務であるだろうと思うのでありますが、すでにもう二十八日に迫つておりまするところのあと十日の間では、到底私は国会が十分審議するいとまを持たないと思うのでありまして大体におきまして我々はこれを握り潰すとか否決するとかいうような考えは今持つておりません、警察制度改正については十分慎重に審議したいというのが我々の望みでありますが、期日が十分ないと思いますので、本会議の選を経て引続いて次の臨時国会審議を重ねて行きたいというようなことが今日の我々の心組みでありますが、そういう心組みを先ず申上げて、それと併せて一つ今の大橋法務総裁に対するお答えを願いたいということが第一点、その前提として考えるならば、今申しました非常に抽象的なことでありまするが、吉田内閣政治が新憲法精神を十分に理解しないで、そうして新憲法精神方向日本制度改革し又国民教育して行くというようなことに努力しないで、逆転さす方向へのみ努力していられるということが非常な政治上の危機であるというふうに思いますることについての御答弁を得られるならば、それをその前提として御説明を願いたい。  それから第三番目に御答弁を得たいと思いますことは、このリツジウエイ声明によつて大体政府考えていることとして伝えられておりますることには、こういうことが大体言われておるのであります。これは何も政府の御発表になつたものではありませんが世間では大体こういうふうに見ておる第一には、ポツダム政令はすべて国内法に切換えられ、物統令公益事業委員会令持株整理委員会令団体等規正令等の再検討が行われる。これは政府が発表していらつしやる正式に発表していられるものや、或いは大臣の談話そのほかでも公式或いは非公式に発表されておるものもあると思いますし、大体第三者観測に基くものもあると思いますが、ともかくこういうことがまあ予想されておるのでありますから、これについて御答弁願いたい、それから集中排除法事業者団体法全面撤廃考えられ、戦前のような輸出入組合設立が問題となつて来るだろう。それから各種委員会廃止、殊に教育委員会公益事業委員会公安委員会人事院廃止、これに伴う大幅の行政機構改革が行われるのではないか。又安本を中心とした企画官庁をいわゆる戦時体制或いは準戦時体制的なものに呼応して強化する、殊に経済上の統計、調査を全面的に安本或いは総理府へ委譲することが内定しておるというようなことが伝えられておる。総司令部商業勘定、外貨の運営権並び通商協定締結権関税自主権の実質的な委譲が行われる。これはまあ結構なことでありますが、それから独禁法や労働基準法運用は国際的な水準に止めるということ。それから農地改革を恒久化するため、農地強制譲渡に関する政令自作農創設臨時措置法農地調整法を一本に纏め、農業用地法案休会明け国会提出するというようなことが伝えられておる。又食糧緊急措置令は、これは超過供出を規定したものでありますが、今国会提出中の食糧政府買数量指示に関する法律案超過供出も規定しているので、同法案に切換える。それから米価の決定、供出等補正割当食糧輸入計画等日本側に委される可能性があるというようなこと、これもまあ結構なことだと思いますが、それから漁船の操業区域制限に関する政令については講和後の漁業協定で漁区の拡張を解決したい。まあこれも結構なことだと思うのであります。それから又一つには、我々が今審議しておる問題でありますが、警察制度改正については、国警自警統合の場合、政府の直轄より国家公安委員会委員長国務大臣を当てるというようなことの見透しが非常に強いということを第三者が言つておるのでありますが、こういうこと。それからまあ大分いろいろありますが、これは余り言つておると非常に長くなりますから、ともかくも、そういうようなリツジウエイ声明に基いて政府がいろいろな法令改正を行うということを考えておるということが伝えられておるわけなんです。で、今読みましたものの中でも要するに日本自主権の回復に基いて、非常に結構なことも沢山ありますが、今言うような人事院廃止するとか、或いは各種委員会を、教育委員会公安委員会というようなものを廃止するとかいうようなこと、これらは先般も申したのでありますが、新らしいアメリカの制度として日本には非常に新しい委員会制度のコンミツシヨン・ガバーメントというようなものが、三権分立以来の大事件であると言われておりますが、非常に日本には新らしい計画であつたと思うのであります、この委員会のごときものは……。ところが、それが日本には不慣れであるために、古い考えで、そんなものは要らんということで、一括こういうものはみんな廃止されるということが伝えられておるわけでありますが、その一つとして公安委員会というようなものもこれは廃止してしまうのだということが伝えられておるのでありますが、一々について御答弁を願えなくても結構でありますが、総括いたしまして、まだ大分ありますけれども、私が申上げました範囲内においても大体申されたと思いますので、こういうことを政府ではどのように考えていられるのかということを、特に読み上げました条項に基いて、人事院廃止その他各種委員会教育委員会等委員会制度廃止の問題、及び公安委員会廃止、並びにそれが存続されて何らかの形で残つた場合においては、これを委員長国務大臣にするというような世間の説に対する今日までのいろいろなお考え内閣内における意向等、或いは、はつきり言つて貰つて差支えのないことならお話を願いたいと思うのであります。なおお尋ね申上げたいのでありますが、御答弁を伺いましてから再質問をいたしたいと思います。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 吉川委員お答えを申上げます。最初の御質問の点は、吉田内閣性質を眺めるというと、新憲法民主化精神と逆行しておるのではなかろうか、最近の施策が、殊に憲法精神から見ると、進歩的な線でなくして逆転の傾向のほうが強いように思われる、こういう御趣旨でありまして、これについてどう考えるかという御質問の御趣旨つたと私は思つております。勿論この問題に関連いたしまして、吉田総理なり、或いは天野国務大臣なりについての個人的な御批判もございましようし、かような点は別といたしまして、御趣旨について申上げますると、現内閣といたしましては、この内閣が組閣いたしまして以来、我が国の再建をいたしまするためにはできるだけ速かに講和条約準備するということが必要であります。そうして講和条約締結後ということによりまして、初めて我が国外国とできるだけ有利な立場において、産業上、或いは通商上の立場をとる、これこよりまして国民経済の立て直しということもあり得ると思う。その前提としてどうしても講和条約を早急に締結するような態勢国内において作り出す、このことが必要である。こういうふうに考えて参つたわけであります。そうしてこのことを実現いたしまするためには、ポツダム宣言その他終戦当時以来の占領政策並びに諸外国におきます日本に対する考え方、こういつたものから考えまして、国内におきます民主化というものをできるだけ推進いたして参りたいということがその前提として欠くべからざるものである、こういうふうな考えの下に国内民主化ということの推進努力がなされなければならないという次第であります。政府といたしましては新憲法民主主義というものを国内の施政のあらゆる面において活かして参りたい、行政の面におきましても、又教育の面におきましても、この新らしい民主主義精神というものをできるだけ活かし、そうしてできるだけこれを広い範囲に完全に受入れて行く、そうした態勢国内の情勢を導いて行くてことが使命だと、こう考え施策を進めたいと思つておるわけであります。これらの努力につきましては、幸いに総司令部を初め諸外国におきましても、漸次その実情を認識せられまして、最近におきまして講和条約に対する諸国の気がまえがとみに進んでおるということも、又かような面におきます政府施策が多少なりとも効果を生じた結果ではなかろうかと、かように考えておる次第であります。併し事は政府施策実績についての御批判でございますので、政府としては、又さような方向施策を進めて行きたいと、かように考えておるのでございます。その実績から考えましていろいろの立場から批判をされるということは、これはそれぞれのお立場においてあり得る。少くとも吉田内閣におきましては只今申上げましたような趣旨によつて民主化推進するということが必要であり、又そのために努力をいたして参りたい、こういうふうに考えておる次第であります。  それからこの問題に関連いたしまして、ややともすれば民主的な新らしい制度国内において新らしく取入れる、そうしてこれを運用いたして参る上におきまして新制度運用に習熟しないために、多少なりとも好ましからざる結果が現われるということ、これは制度全体の罪でなくして、制度に対する未熟なことが原因であるにもかかわらず、この民主的な制度そのものに本質的な欠陥があるのではないか、こういつた考え方が最近横行しておる次第であります。こう私はすべての面においてかような考え方があるとは考えせんが、併し相当いろいろな面におきまして、そうした欠陥があるという批判は、これは現在の我が国のいろいろな問題を考えた場合に免れないところである。この点については或る程度まで了解できるが、警察制度の面につきましても、例えば現在の公安委員会というようなものが真に警察を運営するだけの能力がないといつた問題、この問題につきましても、公安委員会制度というものを今後経験を重ね又習熟を積んで参りまするならば本当にこれが警察民主化推進力として十分に期待できるほどの働きをなし得るということも考え得られるのでありますが、これに対してややもすれば、かくのごとき制度は無用の長物ではないかというような批判もあるわけであります。又国家警察自治警察との関係につきましても、現在までの状況においていろいろ必ずしも緊密なる連絡があるということが言い得ない。そして、この点は、この国警自治警という二つの対立した警察制度運用ということについて、未だ関係者が十分習熟しておらないという点から来たところも多々あると思うのでございまするが、ややもすると、これは自治警国警の二元的な制度そのものの本質的な欠陥であるというふうに見られるようでございまするが、これはやはり制度の本質というものを私どもが今少し掘下げて研究し、そして、この制度の真の性質なり又意味なりというものを十分理解をいたし、その完全なる理解の上に立つてこれを運用いたして行くということにいたしまするならば、相当解決のできる部分がありはしないか、こう私個人としては考えておるような次第であります。これらの点についての世間の今日普通に行なわれておりまする批判というものを考えて見ますると、吉川委員の申されましたごとく、制度運用に習熟せざることから来たいろいろな欠陥を似て制度の本質的なる欠陥ではないかというふうに考え傾向がある、この点からもそういう傾向を認めざるを得ないと、こういううふうに思うのでございます。私は警察制度の問題につきましても、この制度の習熟せざるために生じた欠陥、それから制度の持つ本質的な欠陥というものを十分にこれは区別をいたし、殊に制度改正等の場合におきましては、この点について十分な認識を以てそして改正考えて行くということは必要であると、こう確信をいたしておるのでございまして、微力ではございまするがさような面におきましてもできるだけの努力をいたして参つたつもりでもあり、又今後におきましてもこうした点にできるだけの努力をいたしたいと、かように念願をいたしておるものでございます。  第三に、リツジウエイ将軍声明に基きまして、占領政策についての再検討権限日本政府に与えられ、これに基いていろいろな現行の法令につきまして、こういう点をこういうふうに直すであろうという観測が行なわれておるのでありまして、この点について政府の態度なり見解なりについて御質問を頂いた次第でございまするが、政府といたしましてはこのリツジウエイ声明というものが非常に含蓄のある声明であると、こういうふうに考えております。と申しますのは、この声明の中には、日本政府が従来と同様に占領政策の重要なる事柄はこれを引続き持続して行く、守り続けて行くということについての完全な期待の下に、諸制度の再検討権限を与える、こういうふうに書いてあるわけであります。これは何でもかんでも日本政府考え従つてすべて直してやろうという意味ではないのでありまして、あくまでも占領政策基本政策というものが維持されると、そういう前提の下に、今その占領政策基本的な精神というものを、日本実情に照らし、過去の経験に徴しまして、よりよく、より十分に実現するという線に沿うてこの改革というものは許されておるものであると、こういうふうに政府といたしましてはこの声明趣旨考えておる次第でございます。従いまして、お述べになりましたるいろいろな制度につきましては、この占領政策としての中核をなしておりまする各方面におきまする民主化推進、或いは軍国主義乃至独裁主義の払拭、こういつた線は如何なる場合においても守られることが必要であるから、むしろさような精神は、より以上将来においても育成されると、そういう方向従つて改革ということを考える、こういうふうに考えておる次第でございます。これはこのリツジウエイ声明に従い諸改革についての根本的な精神についての政府考え方でございますが、政府といたしましては、この考え方に従いまして、各種法令につきまして再検討の仕事を只今準備をいたしておる次第でございます。そしてこれは先般来新聞紙にも伝えられましたる通り、政府の本来の機関だけでこれを立案するということは必ずしも適当ではない。民間における諸方面の有識者を広く集めまして、その御意見を十分に参酌した上で改革案を立案いたして参りたい、こういう考え方をいたしまして、現に今週の月曜日に関係委員かたがたに委嘱をいたし、そして、その第一回の会合をいたして、明日第二回の会合を持とうといたしておるわけであります。そういうような次第でありまして、このリツジウエイ声明に基く国内改革準備の手続が、只今その案を考えて頂きまする前提なる重要ないろいろな問題についての基本的な考え方、それを先ず話合つて頂く委員会のごときものを持つ、その段階でございまして、これらの重要ないろいろの問題につきましてどういうふうになるかということについての考え方というものは、まだ全く白紙的な状態であるという次第でございます。なお特にこれらの問題のうち新らしくできておりまする委員会制度人事院でありまするとか或いは公安委員会、こういつたものについてはどういう扱いになるであろうかという点を特に御質問を頂いたのでありまするが、公安委員会につきましても、現在のところ特に変つた考えを持つておるわけではございません。ただ公安委員会において、国務大臣委員長にするとか、或いは委員に入れるという考え方が一般に政府考え方として流布せられておることにつきましては、多少原因はあると存ずるのであります。即ち当初政府といたしましては、これは分けのはつきりとした案というわけでもございませんが、試みの案といたしまして、従来特にいろいろな点において問題となつておりましたる内閣国家公安委員会との関係をできるだけ緊密密接ならしめる、こういう趣旨から申しまして、国務大臣委員長に入れるということにしては如何であろうということを考えておつた時期もあるわけであります。併しこのことは、その後いろいろ研究をいたしましたる結果、一応さような案ということについてはとりやめる。そして現在の公序委員制の下において、できるだけ運用工夫によりまして、政府公安委員会関係を緊密ならしめるような、そうしたことをもう少し努力をいたして参りたい。直ちに制度改正ということでなく、制度としては現状のまま、その運用の上においてできるだけ工夫をいたして参りたい、こういう方針にいたしまして、現在の警察法改正案におきざましては、この線に沿うて、国家公安委員会については、この際改革の手は染めないという方針をとつておるわけであります。従いまして今回リツジウエイ声明が出ましたのを機会に、本来、政府はさようなふうな考えを持つてつたこともあるのでありまするから、今後その声明趣旨従つて改革の案を構想するという場合においては、当然そうした前の考え方が復活して来るのではなかろうか、こういう推察の下にかような説が流布されておつたのではないかと思うのであります。併し政府といたしましては、只今のところ、警察法改正ということにつきましては、もとよりこれらの特別の委員かたがたにおいて御研究は十分に願わなければならんことであるとは思つておりますが、併しこの法案提出いたしまする心持といたしましては、これを以て警察法改正は先ず一段階である。そして、これを以てできるだけ当面の治安上のあらゆる要請に応じ得るように、そうした面に向つて運用上の工夫努力いたして参りたい。そして恐らく我々の努力如何によつては、必ずこれを以て治安上の十分な効果を期待できるものだ。かような確信の下に提案をいたしておる次第であります。どうかさよう御了承をお願い申上げます。
  5. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 いろいろ御答弁を願いまして、なお法案審議の過程におきまして、いろいろその他にも御答弁を促したいことがたくさんございますが、先に斎藤長官からも大分答弁を承わつておりますので、大体今の御答弁に関連して更に一、二点のことだけをお伺いして、それでやめたいと思うのでありますが、吉田内閣と我々とは、もとより、拠つて立つところの政治的なプリンシプルが違い、プラツトホームが違うのでありますから、思想相違がありますが、その思想相違のことにつきましては、考え相違でありますから、これ以上お伺いいたすことは避けたいと思います。それで、今の御答弁で大体了承いたしましたが、もう一度ためを押してみたいのでありますが、お伺いいたしておきたいのでありますが、このリツジウエイ声明に関するところの政策再検討とでも申しますか、それについての委員会が組織されて、すでにそういうことが始められておるということは、法務総裁から只今お話になつた通りであり、又新聞記事等におきましても我々承知いたしておるのでありますが、これも思想相違であると言えばそれまでのことでありますが、併しながらその顔触れを見ますというと、これも先般言つたことでありますが、或いは前田多門であるとか、そのほか木村篤太郎であるとかいうような、いずれも最近まで戦犯によつて追放されていた人で殆んどそれが満たされておるということは、戦犯になつた人の中には気の毒な人もあり、必ずしも思想がそれほどの人でなかつたけれども、法律に触れて形式的な立場で追放の憂目を見ている人もありますけれども、併しあの顔触れは、本当にこの戦犯に値するような、いずれも新憲法精神理解し得ない、それに背反するところの言動に終始して来たところの、やはり日本民主化を本質的に妨げるような線の人であつて、そういう最近まで戦犯であつたところの人間ばかりを集めて、リツジウエイ声明を再検討するところの重要な委員会を構成するというようなことは如何かと思われるのですが、これも思想相違でありますが、もう一度これについての御答弁を促したいということが第一点、これは総理大臣から聞くことかも知れませんが……。  それから、だめを押すようでありますが、警察制度改正は大体これで打切つてリツジウエイ声明に基くところの政府審議会の答申、或いはその他の内閣方針の変更というようなことによつては、もう少くとも、百年、二百年の後は別でありますが、今日においてはもうしない、これで打切りだ、警察制度改正はもうこれでいいのだというように御答弁つたものと思いますが、さよう了承いたしましてよろしうございますか。その二つについて御答弁を願いたいと思います。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 委員の顔触れの問題でございまするが、実はこれは新聞には委員とか委員会というふうに伝えられておるのでございまするが、実際は総理の個人的な相談相手と申しますか、さような形でございまして総理が平素よく信頼しておられまする近しいかたがたを内々でお招きいたしまして、そうして忌憚のない御意見をお述べを頂きたい、こういう趣旨のものでございます。従いましてこれが委員会として或る諮問に応じて答申をするとか、そういうふうなものではございませんので、ただ委員会においてこうした意見があつたということを、将来この再検討に基く諸種の施策を講じて参りまする際の参考にいたしたいという程度のものでございます。従いましてこの委員会におきまするいろいろなかたがたのお述べになりまする意見というものは、もとより外部に発表されるようなものでもなく、又その意見というものは、全くこれは総理に対する個人的な意見の発表というだけの事柄でございまして、これによつて政府が如何なる解釈をとられるかということは、これは政府独自の責任によつてなす、全く政府としての責任で内閣がやつて参るのであります。こういう事柄でございます。顔触れについての御批判は拝聴いたしましたが、ただこの性質についてはさようなものでございますということを御了承頂きたいと存じます。  それから警察法改正につきまして、この改正はこれは先ず第一段の手始めであつて、これを手始めとして次に適当な機会に根本的な改革をするのであるというような噂も一時伝えられておりますが、政府並びに公安委員会考え方といたしましては、先ず現状において過去の経験から見て改正すべき諸点いろいろありまするが、これだけの改正をすれば、先ず現在において治安上いろいろな要請には十分に応じ得るものである。無論これは運用に応じてさような実効を挙げまする上におきましては関係者の十分なる努力を必要とするとは存じますが、関係者といたしましてはあらゆる努力をいたし、又政府といたしましても十分に努力をいたしまして、この改正を完全に実施することによりまして、完全な改正の目的を達したい、こういう考えでございます。将来これを運用いたしまして、又相当の期間の実績を見て、どうしても直さなければならんという場合がありましたならば、それはそのときに考えるべき事柄でありまするので、只今考えといたしましては、これだけの改正をしましたならば、これをあらゆる努力をして完全に運用すれば、これ以上に改正をする必要はなかろうという確信を持つて提案をいたしておる次第であります。
  7. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 第二番目のあとのほうの御答弁に関連して申上げたいと思うのでありますが、警察法改正については、現在のところこれ以上のことは確信を持つて改正するということはないということで、ややその点だけは確かな御答弁を得ましたので、若干安心をいたしたようなわけなんであります。端的に私たち考えを申しまするというと、新警察法は地方分権を骨子といたしておるのでありますが、地方分権と申しましても地方行政全般に通じまして正しい地域を小分して、その小分されたるところの地域の自治体が、それぞれ独立の識見を持つて行くということが単なる地方分権であり、それが又即民主主義であるというような考え方が、地方自治体の一部に今日非常に瀰漫いたしておるのでありますが、我々社会党の立場からいたしまするというと、横断的機能的に、いろいろな行政機構考えて行くという立場をとつておりまするから、必ずしもそう小間切れのような地域の小分したる個々の自治体が独立的な自主権を持つということが即民主主義精神に即応するものであるとは、実は我々は考えておらないのでありまして、それはむしろ中世紀的な、封建的な地方分権主義であつて、我々はそれを小間切れ的地方分権主義と言つておるのでありますが、それをフアンクシヨナリーに、機能的に分権を考えて行かなければならんということを考えております。そういう点からいたしますというと、私は現在の地方制度というもの全般に亘りまして改革の余地が多分にあるということは平素考えておるものであります。併しながらただ久しく封建的な、中央集権的な官僚政治に壟断されて来ました日本の地方行政といたしましては、一つ一つの過渡的な段階としては、一時は、これを警察国家的な中央集権から、多少小間切れ的な地方分権主義というと語弊がありますが、そういう方向へ一度還元して、そうして更にそこから芽生えて来るところの民衆の民主主義的な意識、警察行政について申しまするならば、警察というものはシテイズンの警察である。シテイズンすべてが警察官であるというところの精神に基いて民主主義的な警察制度が打ち立てられなければならん。そして、それから機能上地域を拡大していろいろ考えて行くということの必要があるならば、その民主主義的な意識の発展によつてそれが行われなければならんというような考えを持つておるのが、我々の基本的な考え方でありますから、その点は十分御了解を得たいと思います。又我々はそういう態度で臨みたいと思うのであります。それで、必要なことは、なぜ我々が一時的にも、一時はどうしてもこれを旧制度というものをば、全面的に変革してしまつて、そうして小さな自治体の居住民それ自体が、自分の自治体を、自分が警察官である、ポリスメンであるというバイ・ザ・ピープルの精神によつて警察行政をやるという考えを持たすという必要があり、そのためには全面的に個々民の民主主義に対するところの意識の成熟を待つということがどうしても必要になるのではないか。ところが先ほど来、申しましたようなことで、日本の為政者が、そういう新憲法民主主義精神というものを十分に理解されないために、それに逆行するような一切の政治を行なつていらつしやる。又殊にヤンガーゼネレーシヨンを養成するということについても、又知性の欠如から、古い国家至上主義の精神で以てそれを養成する方向へ、吉田内閣になつてからいろいろな性教育なり何なりが少くとも逆転したということが、私は当面しているところの日本の非常に大きな政治の危機であると考えているものであります。それにつきましては、先に宮城前広場のメーデーの禁止において、やはり吉田さんが少しも民主主義はわかつていないで、旧憲法のときと同じように、天皇陛下というものはやはり神様のようなものである、いわゆる天皇の神格化、天皇さんみずからが自分は人間天皇であると言つていらつしやるのに、やはり神さんにして置こうというような考えでいられることを看取して非常に残念に思うのであります。又最近の母の日なんかも、これは私は非常に民主主義的ないい祭日を作られたものであると思つて非常に喜んでいるのでありますが、ところが実を見まするというと、自分の母親の情愛をすべての子供が偲ぶという極めてヒユーマニステイツクな観念に基いて作られた祭日であると思うのでありますけれども、町に母を偲ぶしるしであるカーネーシヨンを胸につけている人は非常に少くて新聞に出ましたところは、やはり皇后陛下に母の日にお祝いの花束を持つて行くというようなことが主なる何か祭日の目的のように知られておる。昔の国母陛下であるというような立場の、封建的な考えが、やはり祭典の目的であるかのような、これは内閣がそのようにおしになつたかどうか知りませんが、少くとも天野文部大臣教育思想からすれば、やはりそれのほうがいいようなところへ行くのであつて、これも非常に私は最近の傾向として残念なことと思いますが、一切の面に、そういう面が非常に強くなつている。思想相違としていたし方ありませんが、ともかくも民主主義的な警察制度を作りながら、それを育成して行くところの裏付けになる民主主義的意識の制度ということについて、それに逆行するようなことばかりを吉田内閣がやつていらつしやることを非常に残念であるということを更に附加えて申上げておきたいと思います。  なお御質問申上げたいことが多々ございますけれども、これを以て私は打切りたいと思います。
  8. 安井謙

    ○安井謙君 先ほどの吉川委員の御質問に関連して一つ、国策審議委員の中に戦犯者がいるというようなお話でしたが、戦犯者と公職追放者は同じ意味に解釈してよろしいのかどうかを念のためにお伺いしておきたい。
  9. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 議事進行について……、私は戦犯と公職追放と混同して申上げたかも知れませんが、公職追放の意味なんです。それはその意味において一つ御了解願いたい。ただその公職追放者のメンバーを以て殆んど満たしているというところに、やはり吉田さんが民主主義的な精神理解していらつしやらないで、新憲法の下におけるところの総理大臣たるところの資格をお持ちにならんものであると私は考えるということを申上げておきます。
  10. 安井謙

    ○安井謙君 戦犯者ではないという御意思はよくわかりました。じやよく一つ速記録を御訂正でもなさるといいと思います。
  11. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 私の言葉が速記録に載つていればいいでしよう。私自身が取消せば……。
  12. 安井謙

    ○安井謙君 それは結構。それに関連して委員の皆さんの非常に御熱心な御質問と、当局の懇切丁寧な御答弁で、非常に大綱的な問題は進捗したかと思うのでありますが、私も今日の法務総裁の御答弁に関連しまして、一二念のためにお伺いしたいと思つておりますが、警察制度の、今日国警と自警の問題が、運営の不慣れのために非常に支障を来たしているということも確かにありますが、同時にこれは制度の根本的な問題が、依然として、警察能力というほうから見ると、能率化という面から見ると、相当まだ残つているのではないかと思いますので、これは法務総裁としては、差当つてこれを改正する御意思がないというように承わりましたが、私はこれをただ国警のほうの権限拡大という線で、これを持つて行くということは、にわかに賛成できないのでありますが、もう少し進んで、これは吉川委員もおつしやつていたようでありますが、本当の警察の能率化、或いは権限、権力の強化という意味からは、もつと別な線から考えられるアイデアがあるのではなかろうかという気がいたしますので、これは今日御答弁になられなくとも結構でありますが、私どもは、今度の改正はその意味から甚だ微温的なものではないかというような考えを持つておりますことを一つ附加えておきたいと思います。  それからもう一つ関連しまして、この改正案が出ます当時どの首都警察は、首都であるために、国警に移管したほうがいいんじやないかというような御議論もあつたようでありますが、この点につきまして、今日政府当局ではどういうようなお考えを持つていらつしやるか、その点の御答弁を頂きたいと思います。その二点をお伺いいたしたい。
  13. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 首都警察の問題はこの改正案について取上げておりませんが、この問題は慎重に研究する必要があると考えておりまして、今なお研究をいたしております。
  14. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 皆さん本日法務総裁に特に御質問がない場合には、私、地方財政委員会、自治庁のほうにお伺いしたいのですが、よろしゆうございましようか。
  15. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 私、二、三お伺い申上げたいと思いますが、現在の国家公安委員会がありますが、これと、いわゆるこれは国警関係委員かたがたでありますが、併しこの自警関係国警関係の連絡、協力というものがどうもないために、このたびにおきまして相当その調節に手間を取られる、或いは随分いろいろなことが起こる、こういうことになつておりますので、こういうことをお考えなつたかどうかという問題です。国家公安委員会に、国警並びに自警と申しますか、自警からの推薦者、内閣からの推薦者で合同してやるとか、或いは連合委員会を作つて、これを法制化して、はつきりやるというようなお考えをお持ちになつたことがあるかどうかということを、一つ、第一点としてお伺いいたします。  次に、この近隣の町村が連合いたしまして、三万、或いはその程度、こういう程度の人口がありますものが組合警察をこれから作ると、こういうときに対しまして、これに対するいろいろなお考えをこのたびの改正案を作られるときにお考えなつたことがあるかどうか。又現在市の三、四万の所で、その近隣にありまする一万か二万、一万くらいのものが一つ一緒にやりたいしいうときにおきまして、これは全部国警に持つて行くというお考えでなくして、そちらのほうがいいという住民の意思があつたときには、そうしたほうがいいかどうか、こういうことに対しましてお考えがあるかどうか。  次に現在の自警の単位費用の問題がありますが、これは平衡交付金におきまして、先般も自警側の代表者から申されました通り、十八万のものが十六万数千円になつている。現在行つているのは二十万くらいである。こういうことになりますが、このたび警察の強化をせられますにつきまして、この自治警のほうに対する平衡交付金の単位費用、これを増額するということに対しまして、法務総裁は御努力なつたかどうか、こういうこと。  それからもう一つは、現在これはちよつといろいろの問題がありますが、特審局の問題でございますが、現在の特審局は法務府の管理になつておられて、その人員が非常に少かつたために、その活動が非常に緩慢であるというように見受けられますが、これに対しまして何かお考えがあるか。いわゆる米国式のFIBというような捜査局式のものをお考えなつたことがあるかどうかということをお伺いいたしたいと思います。
  16. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 第一の御質問の点は、国警と自警との連絡を図りますために、国家公安委員会の中或いはその所轄の下に、何か合同委員会のようなものを作りたい、こういう御質問であつたかと存じますが、この国警と自警、並びに全国に多数ありまする自警を将来できるだけ育成するという面におきまして、何らかの機関が必要であるということは考えております。丁度自治体の消防に対しまして、これの指導育成に当りますために、国家消防庁というものを国家公安委員会の下に置くというようなことですが、そうしたようなことが少くとも必要ではないかということを考えているわけでありますが、差当りましては自治体公安委員の連合会、それから国家公安委員の連合会がございまするので、これらの双方から適当な代表者を選びまして、法制の根拠はございませんが、事実上定期的な会合を持つというような工夫は或る程度試験的に只今試みようといたしております。これはできるだけ早くやつて行きたいと考えております。  それから近隣の市町村が集まりまして、組合を作つて、自治体警察を独立して持つということはどうかという点でございますが、実は私の考えといたしまして、今日の警察法というものが地方分権という精神を持ちまして、自治体警察を多数持つております。併し現在の警察法の建前は、自治体警察だけで以て全国の治安を十分にやれるという考え方ではないのでございまして、やはり自治体警察の間に国家地方警察があり、国家地方警察が必要な場合には応援或いは援助する、こういうふうな、自治体警察に対する補完的な作用をもつ、こういうその補完的な作用をもつたところの国家地方警察と、個々の自治体警察、この協力によつて全体の警察制度ができ上るという考え方になつておる。こう思うのでありまして、かような次第でございまするから、現在の警察法運用いたして参ります上から申しますると、国家地方警察というものはこれはやはり自治体警察と同様に必要なものであります。そうして、それが或る程度の規模を持つということが必要であります。そういう意味におきまして悉くの町村が組合を作つて自治体警察になつてしまうということが現在の建前といたしましては困ることではないか、こういうふうに考えております。  それから交付金の問題でございまするが、交付金につきましては、国家公安委員会におきましても、又内閣の一員といたしましても私、自治体警察の費用のための交付金をできるだけ増額することによりまして、自治体警察の育成を図ることが必要である、こう考えまして、これに努力をいたしておる次第であります。
  17. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 特審局の問題を……。
  18. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 最後の特審局の問題でございまするが、只今の私の考え方といたしましては、こういつた民主主義的な活動に対しまする特別な取締の機構といたしましては、特審局というものを持つておることが必要である。そうしてこの特審局を単なる警察というものに限定することはどうであろうかという考えでございます。と申しますのは、昔の特高の時代におきましては、御承知の通り未だ今日のように人権というものが十分に確立されておりませんので、警察が或る犯罪の端緒を得まするというと、直ちに逮捕捜査するというようなことが許されておつた。まあ、これは公然と許されておつたか知りませんが、事実そういうことが行われておつたわけでございまして、そういう場合におきましては警察だけで以てこうした犯罪の捜査というものができるわけでございます。併し現在におきましては、刑事訴訟法の改正によりまして、さような警察だけでやるということは困難でございまして、どうしても裁判所の令状を得る、或いは適当なる手段、警察が逮捕いたしました後四十八時間以内には必ず検事に送らなければならんというような関係上、これらの犯罪についての完全なる捜査というものは、検察庁と警察というこの二つのものが協力して、一体として活動をして行くということでなければ、捜査上の能率を挙げることができない。従いましてその協力をすべき警察と検察庁、この二つのどちらかが全体についての指導的な役割をもつて、そうして一方は他方を指導するというような形では、現実の問題として協力関係がうまく行かない場合がありはしないか。従つてやはり機構といたしましては、こうした非民主的な犯罪に対する捜査機関といたしましては、この両者に属せずして両者の中間的な立場にあります特審局というようなものがあつて、そうしてこれが警察と検察庁双方の協力を得て進んで参るという形が、現在の刑事訴訟法の下においては実際的ではないか。こう考えておる次第でございます。
  19. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 昨日法務総裁に自治体警察に関する財政的な裏付けの問題について伺つたのでありまするが、それと関連しまして地方財政委員会にお伺いしたい点があるのであります。  先ほど竹中委員から御質問があつたのでありまするが、昭和二十五年度の平衡交付金配分におきまして、警察吏員一人当り仮決定においては十八万二千八百円とされておつたものが、その後の本決定において十六万三千五百円というふうに減額を見たわけであります。そこで国家地方警察のほうは一人当り十九万六千円も見ておるのに、規模の小さい地方の自治体警察が、その主たる経費である人件費そのものも国の見方が小さくなりたということは、非常にこれは重大な問題でありまして、ますます弱小自治体警察を行殺しにしてしまう結果になつたのではないかという批判が強いわけでありまするが、先ずなぜこういう減額を財政当局でなさつたのであるか。又こういう国家地方警察と均衡のとれない予算単価というものをおきめになられた根拠について御説明願いたいと思うのであります。
  20. 荻田保

    政府委員(荻田保君) お答えいたします。この地方財政平衡交付金法にあります基準財政需要は御承知のように、普通地方関係、自治体の支出しております全経費を目標にしているのじやなくて、平衡交付金の九割の額と、それから地方税の七割の金額、これに見合うだけの経費を見ております。従いまして全般的に普通の地方団体が支出しております経費よりも基準財政需要は相当内輪になるのでございます。その意味におきまして、警察官吏一人当りの経費も実際の必要額よりは少し内輪に見てあるのでございますが、それはそれといたしまして、全体的に、警察に限らず外の経費につきましても、現在の平衡交付金の額では足りませんので、この点につきましては先国会以来たびたび我々の考えております額を見積りをお示ししてあるのでございまするが、それだけ確保できませんので、どうしてもそこで全体的に基準財政需要をそれ以上に低減しなければならないという問題が起つているわけでございます。これは今後とも全体的に地方財政強化のために私共努力したいと考えております。
  21. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 自治体警察とは言いながら、国家地方警察と共に相協力して全国的な治安維持のために警察の能率化ということを考える建前の警察における警察官の基準財政需要額が内輪に見られるということ、それ自体において、平衡交付金の枠が殖えないという理由があるのじやないかと思われるのですが、私素人でわからんのでありますけれども、なぜそういうふうに内輪に見ておつて、それで地方の自治体警察が、地方自治の一つの固有事務である自治体警察が育成強化せらるると地方財政委員会がお考えになつておられるのであるか、その辺の事情を御説明願いたい。
  22. 荻田保

    政府委員(荻田保君) これは先ほども御説明申上げましたように、総額におきまして、ひとり警察に限らず、義務教育費等すべて或る額を毎年度必要額としてきめるわけでございます。そうして、それに基きまして地方財政平衡交付金の額とか、自治体の額とか、地方税の額とか見るわけでございますが、そのようにしてきめましたものにつきましては、先ほど申しましたように、平衡交付金の基準財政需要としては総額をとらずに、平衡交付金の額の九割をとる。それから地方税の七割の額、これだけに圧縮しましたものを基準財政需要に計算いたしまして、平衡交付金の配分をいたすのであります。従いましてこの額以上に、先ほど申しました残りの地方税の額の三割とかいうものが地方団体に残つておりますのでありまして、これにつきましては、むしろそのように各費目に分けてしまわずに、地方が自由に使うという余地を残しております。その意味におきまして、平衡交付金に用います基準財政需要の額は普通の額よりも少し下廻つて、これはひとり警察費だけに限つてはおりません。一般の経費もそのようになつております。
  23. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 そうしますと、国家地方警察同様の警察官の水準に達せしめるためには、結局自治体警察におきましては、足りない分を特別平衡交付金でもらうか、三〇%の税その他で見ておられる平衡交付金の需要額を算定するときに見ない収入の一部を以てこれで賄え、それでいいのだということになるように聞えるのですが、そう了解してよろしいかどうかお伺いしたい。
  24. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 国家地方警察と、それから自治警察の実際要ります単価というものは必ずしも国家警察と一緒ではございませんで、国家警察のほうには通信費とかその他、地方にない経費も入つております。必ずしもこれは一緒にならないのであります。それはそれといたしまして、基準財政需要額は先ほど申しましたように一般財源によつて賄われるもののうち一部しか対象にとつていないのでありまして、その残りにつきましては、財源として残された分、主として地方税の三割の分、この額が当ることになつておるのであります。
  25. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 今の御説明では、国家地方警察のほうは相当厖大な通信資材その他の設備いろいろのものがかけられて、一人当りの経費として十九万六千円と出ておる、従つて当然高いのであつて、必ずしも警察官一人当りの対象として地財委が見ておるものは権衡を失するものではないという裏付けになるような気持でお話のようでありまするが、私たちは必ずしもそうは考えない。規模が小さい自治体警察であろうとも、一つ警察運営をやるのには、初めから警察署を建て或いはその内部に設備を持つというようなことは、個人当りの負担というものは、国家地方警察総体の人数における個人割の負担よりも重いのじやないかとさえ思われる。で、必ずしもその意見には同意しがたいものがあるのでありまするが、又あとでお尋ねする機会もあると思うので、次に移りまするが、昨日法務総裁質問した場合に、実はこういう質問でありまするが、今度の新らしい警察法一部改正法律案によつて、自治体警察がその定員の枠を外されたという場合に、自治体警察官が減るか殖えるか、その見通し如何ということを伺いましたところが、市街的な町村において自治体警察を今維持しているものが一万九千人あるが、これが全部国家地方警察に吸収される態勢なつた場合吸収されるとも考えられない。而もその他都市部における自治体警察等は、却つて治安確保、能率化のために定員を従来よりも殖やして行くという意向があるようでもあるから、一般的には自治体警察の総体の定員の枠は殖えるんじやないか。こういう見通しだつたのであります。従つてその場合には、各自治体警察が自由意思で警察官の定員を殖やす場合には、国が平衡交付金おいてそれぞれの増員分を警察官の費用というものを見てくれるかどうか、このことについてどういう裏付けを持つてこの法改正案を出したのであるかということを伺いましたところが、法務総裁は、そういう場合には当然平衡交付金において見て行くというようなことが望ましいことであつて、私は極力そういうことに努力したいというお話でありましたので、再度質問しまして、そうなつて実際定員が殖える場合には、今限られた平衡交付金総額の枠内操作では解決しないのであつて、交付金全体の総額という問題まで、この内閣国務大臣であるあなたが努力せられるということであるか、という質問をしましたところが、そういう意向を持つてこの問題を考えておるということであつたのでありまするが、そこで地方財政委員会としましては、そうした場合に、法務総裁考えられるように、平衡交付金の算定の基礎の中に、地方が自動的に増員した分を見てくれるのであるかどうか、この点を承わつておきたいと思うのであります。
  26. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 只今質問になりました点は、非常に実際問題としてはこのお考え方にむずかしいところがございます。と申しますのは、自治体警察の、今後定員等について国からの枠を外す、自由にやるという場合に、自由に殖やしましたものを、何でもかんでもこれを国家の平衡交付金の枠の中に入れて見るということは、これは少しむずしいと思います。ただ国家的見地から見まして、増員したほうがいいということが認められるものにつきましては、これは飽くまで平衡交付金において裏付けをして行かなければならないと思います。従いまして、現実の問題に当りましては、地方がただ地方だけの考えで殖やしたものか、或いは全体的に見てもそれだけ殖やすのが当然であるかどうか、そこの見分けをしまして、国家的に見ましても、どうしても殖やさなければならんという数字につきましては、それは平衡交付金の枠の拡張ということによりまして、財源の裏付けをして行くべきであると我々も考えております。
  27. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 そこもどうも私必ずしもそうだとは考えられない部面がありますのは、国家的見地に立つて判定を下して、その場合には考えられるだろうが、地方が自由にやつた分を全部見るということについては如何かという話でありまするが、私は平衡交付金の制度から言うて、少くともその地方の標準財政需要額を考えるという場合には、警察の能率化、強化という問題から、これだけなくちややつて行けないというものが、地域の住民の意思として決定になつたならば、これは国の意思がそれに作用する、しないにかかわらず、そういう観点ではなく、まさか無駄な警察官を置くというものはどこにもないのであつて、十分これは国が見て行かなくちやならん立場になるのじやないかと考えられるのですが、まあ一応荻田さんには別な問題を質問するとして、地方自治庁が地方自治の建前から、今のようなことに対してどういうお考えをお持ちになつておられるか、お伺いしたいと思います。
  28. 小野哲

    政府委員(小野哲君) 今回御審議を願つております警察法の一部改正によりまして自治体警察の定員の枠が外されるということになるについての交付金の取扱方の問題でありまするが、只今荻田君からお話をいたしましたように、地方財政平衡交付金の算定の方法をどこに求めて行つたらいいか、言い換えれば測定の基準をどこに求めるかということについて、従来の考え方をこの際、今回の改正に伴うて考え直して行かなければならない問題が起つて来るのではないか、かように思うのであります。即ち定員について、測定の範囲並びにこれによる数値を求めて行くという考え方で、果して公正な平衡交付金の算定の基礎が求められるかどうか、こういう問題が起つて来るのではないかと私は想像するわけであります。この点につきましては、勿論地方財政委員会において十分に研究をしてもらわなければなるまいと思つておるのでありますが、総体的に申しまして、自治体警察を現状通り維持して行くという当該地方公共団体の意思の決定がありました場合におきましては、自治体警察の維持の本質から考えまして、今できるだけこれに必要な財政措置は講じて行かなければなるまい、又そうすべきだという考えを私どもは持つておるわけでありますので、地方財政委員会における研究の結果と相待ちまして、財政措置については遺憾のないように自治庁においてもいたして参りたい、かように考えておる次第であります。
  29. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 今の御答弁で、遺憾のないように善処して参りたいというのですが、これは地方の財政内容が遺憾のないように措置して参つて頂けばいいのですが、そうではなくて、地方自治庁の責任が一応全うされるように遺憾ないようにやつて行くというだけでは、私は誠に遺憾なんでありまして、今お話になつた点についても、私は非常に不満な点があるわけであります。と申しますのは、廃止になる分は、勝手に地方自治本義に照して廃止することもいいだろう、減員するという場合についても、それは地方自治の精神に副うて減員してしまう、却つて平衡交付金をやらないだけでも儲かるというくらいのことであつて、そうして殖える分については、必ずしも地方自治の本義ということは言わんで、国家的の見地と言う。私はこの点はわからんのであります。少くとも特殊なる事案の問題で、自治体警察国家警察が相共に関連を持つて、いわゆる国家治安を維持しようという建前から言うこの警察行政費については、他の部門とはやはり趣きを異にすべき点があるのじやないかと思うのであります。そうして少くともそういう場合には、増員することは余裕財源を持つている所は増員したらいいだろうということであるならば、若しもそれを是とする場合には、少くとも最低水準だけはこの線において維持しなければならんというふうに、この減らすというほうを維持して行くように強制するというようなことででも財政的に国が考えて、而も警察の能率を強化するという万何に行くべきものではないか、こう思うのであります。今、地方財政委員会並びに自治庁からお伺いしますというと、昨日の法務総裁などの意見とは必ずしも同じではないどころか、全然これは連絡もとれておらないし、問題にならんと思うのであります。本日も他の法務委員会との連合審査で住民登録法案の問題で、地方財政の問題を法務府に聞きましたところが、法務府側ではこの諸度調弁書費については国で見るように努力したい、来年度予算化する、こういうような話があり、経常年度における経営事務費については、平衡交付金の算定基礎の中にこういう事務費という項目を入れるようにしたい、それでこの点については地方財政委員会とも成る程度の了解が得られているやの話があつたのですが、これも他の委員会において、荻田さんなり小野政務次官をお呼びして質問して行くと、本日のように又ぐらぐらして来るのじやないかと思うのでありまするが、この点がはつきりしないというと、実は我々社会党としましては、この警察法一部改正法案に必ずしも同調できない。一般にこの法律は如何ようにでもきめるけれども、財政的には何らはつきりした目途を持たぬというようなことでは、私たち国会議員として責任を持てない。而も小野政務次官は、先ほどこれは今の地方自治の建前から、地方財政については地方がそれぞれ考えるのが本義であるということを言つたのですが、私御尤もと思うのであります。併し今の地方財政は、平衡交付金の制度或いは起債その他とからみ合つて、国と地方とが持ち寄つて地方財政を維持して行くという建前をとつておる限りは、必ずしもそういうことだけで地方にこれを任せきりにして手放せということは、この法律がいわゆる治安の維持確保、その現状に鑑みてこの改正をするという趣旨には絶対合わぬと思うのであります。そこで、この点、法務総裁のほうとは関係御当局は如何ようなる御連絡があり、如何ような財政的な裏付けを以てこを措置しようとしたのであるか、伺いたいと思うのであります。で、それに関連しまして、自治体警察相互間、或いは自治体警察国警側から協力をされた場合に、自治体警察側は、その金の負担は国家地方警察が持つというふうになつておるのでありますが、この点についても、まあ請願、陳情等で見ますというと、そういうことのために、国家地方警察に一々連絡するというようなことを抜きにして、そうしてそれぞれ協力し合うたときの金そのものは、平衡交付金などにおいてプールしておいて、そうして国から直接金がほしい、こういう自治体警察側の意向もあるのでありまするが、こういう協力費と申しますか、これらの関係については、自治庁はどういうふうに国家地方警察なりからお話を受けておるのであるか、受ていなければ、何も御答弁は要りません。関連しましてこの二つお伺いしておきたいと思うのであります。
  30. 小野哲

    政府委員(小野哲君) 私が先ほどお答えをいたしました中で、或いはお聞き誤まりがあるかとも思うのでありますが、自治体警察をそのまま離してしまうという意味ではないのでありまして、制度改正に伴うて警察費の財政需要の測定についてのやり方は検討を加える必要が起つて来るのではないか、この点を私が申上げたのであります。と同時に、先ほど荻田政府委員から、国家的見地から云々というようなお言葉がありましたが、その点につきましては、小笠原さんがお考えになつておりますように、やはり自治体警察と国家地方警察とが相待つて初めて国全体の治安の維持が全うされるわけでありますので、従つて当該地方公共団体において幾ばくの警察吏員を必要とするかどうかということは、やはり国全体の治安維持の見地からも見るということが妥当ではないか、さような考え方から、恐らく国家的見地という言葉を使つたのではなかろうかと思うのでありますので、この点、補足的に私から申上げておきたいと思うのであります。なお自治体警察の財政措置の問題につきましては、事務当局におきましてもいろいろと研究をして参つておりますし、なお今後とも研究をいたさなければならない問題もあろうかと思いますので、地方財政委員会とも連絡をとりまして、これらの諸問題について検討を続けて参りたい、かように考えております。
  31. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 ここで再三論議しても、これはどうもはつきりしませんので、又後日岡野自治庁長官、法務総裁と御列席の上で、統一ある御意見を伺いたいと思いますので、一応この財政問題について留保をしておきたいのですが、ただ、あと研究したい関係から、ちよつと御質問しておきますが、自治体警察側においては、実際の警察官一人当りの所要経費が二十万余円かかつておるというのでありますあなたがおつしやるこの七〇%の税収を見、平衡交付金の九割を見る、標準財政需要額として十六万三千円というのを見たというのでありますが、他のそれら全部入れて一〇〇%に計算しても、現実に今かかつておる二十万余円に達するであろうかということは、私、計数上の疑問があるのでありまして、現実に二十万余円一人当りかかつておる、こういうことから地方財政が圧迫せられ、自治体警察の維持ということが非常に困難であるということから、廃止論が出、又それらも一部の理由として取入れて、治安の確保に資したいという警察法案の改正なつたと思うのでありまするが、この現実の地方の二十万余円もかかつておるということと、標準財政需要額が十六万三千円にしか見られないという点について、事務当局の責任者として荻田さんの御所見を、この際承わつておきたいと思うのであります。
  32. 荻田保

    政府委員(荻田保君) ちよつとくどくなるのでございますが、この平衡交付金の問題を少しばかりお話しておきたいと思います。只今二十万何千円とおつしやいました数字、ちよつとどういう数字か私承知いたしませんが、大体三つ数字があるとお考えになつて頂きたい。平衡交付金の基準財政需要額として見る額と、もう一つは、政府が総額において警察費に幾ら要するかということを算定いたしまして、それから平衡交付金の総額、或いは起債の総額、地方税の総額というようなものをきめますその数字と、それからもう一つは、現実に地方団体が支出しております現実の数字でございます。その現実の数字と政府の枠として見まする額と、これとが一致いたしますれば、地方団体がこの自治体警察をやつて行くのに、実際の経費には事欠かないわけでありますが、そこに開きがありますことが、現実の問題といたしまして、財政がやつて行きにくいということになるわけでございましてこの点は恐らくひとり自治体警察だけではなく、他の経費にも一般にあるのだろうと思います。そこからいたしまして、地方財政が一般に苦しいという問題になつて来ているのでございます。それに対しまして我々といたしましては、今の枠ではいけないから、もう少し地方財政平衡交付金なりを総額において殖やさなければ、全体的に地方財政がやつて行けないということを考えておるわけであります。次に第三番目の基準財政需要として見まするのは、先ほどからたびたび申しておりますように、この中の一部分、地方税の七割と交付金の九割の額とを見ておりまするので、これは当然低くてよいのでございます。  それからもう一つ、先ほどの御質問に関連いたしまして、お答えしておきたいのは、この平衡交付金の基準財政需要に使いますのは、現実にその地方団体が支出しております額というものは、これは掴まえるべきではないと思うのであります。国家的見地という言葉を使いましたが、小野政務次官から御註釈もありましたように、全く私もそのような意味で申したのでありまするが、つきましては、全国的に考えまして、基準となりまする数字で以て、この基準財政需要をきめるのであります。例えば小学校の経費つにいたしますれば、一学級当り一・五人の教員を持つというのが、全体的に見て基準になるこれで以て義務教育費の基準財政需要を算定するわけであります。それ以上の一・五人以上、その団体がもつと教育に力を入れたいために、一・五人以上のものを出しましても、それに対して国の平衡交付金の算定の際、それを直ちに基準にして分けることはできないのであります。併しながら国家的見地から一・五人では全体の教育のレベルを推持することができない。従つてこれを一・六人に殖やさなければいけないというようなことが決定になりますれば、その殖えまする分につきましては平衡交付金の増額をいたさなければならん。従いまして自治体警察につきましても同様でございまして、仮に今の警察官の総数で以て、自治体警察の数で以て、全体的にはそれで治安が保てるのだということになりますれば、それは別に平衡交付金を殖やす必要はないのでありますが、自治体警察についても或る程度増員をしなければいけないということになりますれば、それは平衡交付金の総額において増額をしなければならなくなる。併しながらこちらから見まして、中央から見まして、一応それでよいという数字をつかまえて基準財政需要を算定して、それによつて地方財政平衡交付金を分配いたしまするので、仮に或る団体が、政府の見るところはこれだけだけれども、自分のほうではもつと治安に力を入れたいという希望がありますれば、自由に増員してもいいということになるわけでありまするが、その分までも全体的にこちらの基準財政需要によつて見ることはできない。その点、従いまして具体的には殖やしたものが皆平衡交付金の算定に入るかといいますると、そうはならないのであります。ただ中央から見まして殖やさなければ治安が保てないという数字は、これは飽くまで平衡交付金によつて財源の措置をして行かなければならないかと考えております。
  33. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 いろいろ義務教育等の経費などを例にして御説明がありましたが、少くとも平衡交付金の制度そのものは、地方の標準的な公共団体の規模を捉えて、そうして、そこにおける実態を基礎にして一つの単位費用その他の基準というものが出て来るように私は考えるのでありますが、只今申しました現実に地方の警察費がかかつておるという二十万余円というものは、これは平均値なのであつて、その下もあればその上もあるわけなんです。そういうモデル的な、標準的な地方自治団体における自治体警察の実態を御調査の上で、こういうものをおきめになつたのであるかということを伺いたいものでありまするが、そうでなくして初めから九万五千人という一つの大枠をきめて、そうして大中小の都市の規模というものでその人数もきまつて来たわけでありまするが、それらに合せて先ほど荻田さんのおつしやるような総体の警察費という枠を出すわけだから、こういう結果になつて来たのではないかと、素人流にも考えられる。三本建てでいろいろ調査の上、諸種の事情を勘案の上、十六万三千円という警察の単位費用が出たとは断じて考えられない。そういう証拠には、義務教育でも一校当り中学校等においては二十数万円の所要経費を最初見ておつたものを、これを十一万円位に大削減して、これらはただ単に平衡交付金の総額を逆算して一つ一つの学校に当てはめたのであるという、これは世上隠れもない定評なんです。荻田さんうまいことを如何ほどおつしやつても、私は私なりの頑固な頭でその通りには受取ることができない。而も今はつきりと地方の自由意思によつて、国家的な見地から見て、もうたくさんだと思われるのに、それ以上の警察官を持つておる町村には必ずしも平衡交付金は行かないのだということは、これは誠にはつきりしたわけでありまして、こういうことでは非常に法務総裁等の御答弁とは違つておる点がある。これは私の誤解かも知れませんから、あるやに思われる、こういうことにしておきますが、再度この点は御質問申上げることにして、時間もありませんから、私だけは質問を留保して終ります。
  34. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 私は今の小笠原君の質問に関連して一点だけ荻田さんにお伺いしたいと思います。それは、昨年と申しますか、前国会と思いますが、基準財政収入額を七割から八割にするという政府の平衡交付金一部改正法案が出たのであります。その時におきまして、あなたのほうは三割が余分であると、かようにお考えになつて御了承になりまして、あの議案が出たと私は思うのでありますが、今お聞きしますというと、警察費におきましても、教育費におきましても、消防費におきましても、この平衡交付金の項におきましては八割乃至九割ぐらい、その三割が全部税金が入つて来た、かようにお考えになつておるかどうかという問題でございますが、これはどういうようにお考えになりますか。この収入額は税金が実際十割入つておるというならば、三割の余裕があるわけでありますが、これは八割或いは九割、私は最低八割くらいしか入つておらない。悪い所になりますと、七割、そういうのにかかわらず、警察費でも、三割残つておるからこれを出す。こういうことでは、あなた方財政委員会は地方財政を如何にしてうまくやつてやるかということに対して非常に不親切な考え方だと思う。この三割というのは、いろいろなことで困つておるやつをやるので、三割必ず入るというのではない。一割入るか、二割入るかわからん。その中で九割ということはちよつと無理がある。私はこれは今聞いて憤慨に堪えないから、これを一つ聞くのです。
  35. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 只今質問になりました点は基準財政需要の見方が強過ぎないかということに帰するのだろうと思います。つまり地方税といたしまして千九百億を去年取れるといたしまして、その七割の額を基準財政需要に持つて来ておるのでありますが、果して千九百億円取れるかどうかという問題に帰着すると思います。まだ詳しく二十五年度の実績が出ておりませんので、的確な数字は申上げられませんが、道府県分について、もう二カ月前ぐらいの二月末ですか、一月末でしたか、数字が集まつております。それによりますると、道府県分は大体九百億取れるということになつておりますが、たしか調定額はすでに上廻つております。従つてその徴税率が七割、八割になるか九割になるか、そこの問題に帰着するだろうと思いますが、これが必ずしも今おつしやいましたように、去年いろいろ問題がございましたので、徴税成績がよくなつて、果して収入額において九百億円ができるかどうかということは今ちよつと申上げかねます。むしろ少し怪しいのじやないかと考えております。
  36. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 昨日法務総裁に今回提出された警察法改正過程における予算的措置等について質問をしたのですが、地方財政委員会関係のかたがおられなかつたから、この際改めてお尋ねしておきますが、問題は平衡交付金に関することになるわけでございます。即ち当初の国警の案によりまするというと、地方自治体から国警方面に移行するところの警察官に必要なところの、新らしく必要になつたところの予算については、二十六年度においては二十六年度の平衡交付金を以てこれに充てるというようなことが案文の中に入つておりましたが、この国会に提案されたところの成案によるというと、それがなくなつておるわけであります。それについて法務総裁に昨日聞いたのでありまするが、大蔵省といたしましては、平衡交付金から減らすということも言うておらないし、又その分については新らしく財源を大蔵省自体が認めまして、そうして、それで以て国の責任において賄うのだ、こういうこともはつきりいたしておらないというような説明であつたのです。私の推察によりますというと、最初二万人の増員をするという計画に対してそれを五千人に切つたということは、これは国の財政関係からして一万五千人というものがどうも金を出したくないということからして五千人になつたのだ、こういうふうに思つておるのです。理由はいろいろ付いております。五千人にいたしましたところの理由が、いろいろ弁解的な理由は付いておりまするが、現実は要するに大蔵省方面から査定において削られたのだということになると思う。で、それについて治安上遺憾のある点がないかという点については昨日聞きましたのですが、本日はその予算的な方面なのですが、そういういわゆる大蔵省の考え方である限りにおきましては、この十月三十日を以て大体本年度におけるところの自治体警察から国家警察のほうに移行される人数が町村民の一般投票によつてわかつて来るわけですから、十一月以降においては何人が自治体警察廃止されて国家警察のほうに増員されるということが十一月になるとわかるわけです。その際に予算的な措置が行われると思うのです。で、法務総裁の言うように、一万九千人が全部仮に自治体警察から国家警察のほうに移行されたということにいたした場合においては、二十五年度の平衡交付金の算定から見ますと、警察官一人当り十六万三千五百円でありまするから、それに一万九千を掛けますと約三十一億程度のものになるわけであります。そうしますと、仮に本年の十月末を見まして一万九千人のものが国警のほうに移管されたということを仮に考えた場合に、地方財政委員会といたしましては大蔵省との折衝が必らず始まると私は考えるわけです。そのときに三十一億というものを既定予算から減らせというような交渉が始まるのじやないかということを想像できるわけであります。そういう際において地方財政委員会としては如何なるいわゆる態度をとられるか、又この警察法か制定される過程において地方財政委員会法務総裁なり大蔵大臣等との間においてそれについての交渉があつたのかどうかという点を第一にお聞きして、第二には、いわゆる十一月以降において三十一億程度のものを地方財政平衡交付金から減らせというような折衝が始まるような場合には、どういうような見解をとつて行かれるかということをお聞きしておきたいと思うのであります。  又第三には、現在当初予算において計上されたところの平衡交付金の総額におきましては、地方財政委員会の勧告通りには行つておらない、要求通りには行つておらないのでありまするから、恐らく今後補正予算等におきまして地方財政委員会の主張によるところのいわゆる総額について、国会及び政府方面におきましても平衡交付金の増額がいわゆるだんだん考えられ来ることになると思う。その際に、もう三十一億というものは警察が維持しないことになつたのだから、それは要らんじやないか、従つて新らしく必要なところのものに対してはその三十一億を以て充てたらいいじやないか、決してもう余分に更に追加予算を出す必要はないじやないか、こういうようなことの折衝が始まると思うのです。そういう際にはどういうように考えられるか。その三点についてお聞きしておきたいと思います。
  37. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 法務総裁と大蔵大臣の間にどういう折衝がありましたか、細かい点については承わつておりませんが、私が大蔵大臣と折衝いたしました経緯及び事務当局が大蔵省の人々と折衝いたしました経緯につきまして申上げますが、最初は只今お話のありました通り、町村の警察廃止をしたならば、それだけが国家地方警察に肩替りになることになるわけでありますから、財源も肩替りになるというように大蔵省の事務当局のお話がありました。最初の原案はそういうように聞いておつたのであります。即ちその場合において平衡交付金の一部を移用することができるということを原案に入れておつたのであります。ところが、その後、大蔵大臣は、平衡交付金の枠が非常に少な過ぎるという強い輿論と議会の要望があつた従つて町村の警察廃止しても平衡交付金は減らさない。その代りこれを国家地方警察に肩替りした分は新たな財源を以て賄うというように方針の変更をするということを言明されたのであります。そのゆえを以ちまして平衡交付金の一部を移用する規定も削除いたした次第であります。で、今日の予算の折衝はその基礎に立つて折衝をいたしておるのであります。一万九千人の町村警察警察吏員のうちで幾ばくが廃止になるかわかりませんが、今日約半分一万人は見るということを前提にして、予算の面では新らしい財源で賄うというように事務当局との話合いをいたしております。これはただ予算を作る際にメドを作る必要がありますから、一応一万人という予定で新らしい財源を考えておりまするけれども、現実にこれが一万五千人であるとか或いは極端な場合には一万九千人になつた場合にも財源は新たに附ける、平衡交付金から附けるのではないという原則は私は確立されていると考えております。大蔵大臣もその方針は変更になることはなかろうと、今までの折衝の経過はさようになつておりますから、さよう御承知を願います。
  38. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 直接法務府と大蔵大臣との折衝の結果は存じませんが、我々といたしましては、先ほど斎藤長官のおつしやいましたように、原案にあります移用の規定がなくなりました以上、どうも、この点これは将来にそういうような場合があつてもそういうことはないものと考えております。
  39. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そうなりますと、当然現在の平衡交付金の算定の法律の内容によりますれば、その自治体の警察から仮に一万というものが移動する、そういうことになれば、その算定の基準から当然その分がなくなるということになるのでありますから、その分につきましては、新しく平衡交付金の増額を要求しておるその額については自然放棄するということになりますか。
  40. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 実際の数字はわかりませんけれども、いずれにいたしましても、半年分だけ要らなくなります分につきましては、余分な財政需要までその団体に対して與える必要はないから、全体の計算におきましては差引きいたしたいと考えております。
  41. 石川清一

    ○石川清一君 只今質問に関連をいたしますが、斎藤国警長官のほうは総体の一千二百億は減らさないと、こういうように聞えますし、又一応理解されたのは、その町村の、自治体警察を持つてつた町村の一応の定員の枠の一年分だけは減らさないのだと、こういうようにも理解いたされるのですが、その点についてどちらでしたか、一つお聞きしたい。
  42. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 私の了解いたしておりますのは全体の枠でありまして、個々の町村は警察は持たなくなるということになれば、これは今荻田局長から話がありましたように、その分は不要になるということになるのが当然であろうと思います。
  43. 石川清一

    ○石川清一君 その場合に、定員の枠が廃止になりまして、町村自治体警察で定員を殖やした場合には、自動的に平衡交付金が多くなつて行くように考えられますが、その点お伺いしたい。
  44. 荻田保

    政府委員(荻田保君) これは先ほど小笠原委員の御質問お答えいたしましたように、定員の枠が廃止されますると、定員で以て平衡交付金を分けることができないのでございまして、枠の基準を作らなければなりません。その際に適当にその市町村の、客観的に見まして、妥当な警察費の額というものを算定いたします基準を新たに考えたいと思います。
  45. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 実はそれは非常に理論的ないいことなんですが、先般自治体警察廃止する場合にも調べたのですが、最初の案によりますと、自治体警察廃止しますれば定員の半分程度は国警が引受ける、後は半分程度は一ケ年間の定員外として養つては行く、こういうような案でありました。そういうことでありますれば、おそらく全国の自治体警察官は自分の身に振りかかる、不安を考えて……廃止するということが非常に困難ではないか。それよりも全部この際は引取つたほうがさつぱりしていいではないかということを申上げましたが、それは今回の案によりますと全部引取る、こういうことになつているから、それは解消したと思うのです。ところが財政関係から見ますと、非常に町村自治体などは敏感でございまして、いつ平衡交付金の配分が決定するかわかりませんが、一度決定した後において警察廃止されれば、その分のものは引上げられるのだというようなことになつて、そうしてそれが町民なりそういう人たちにだんだんわかつて来たということになれば、おそらくそれなら一つ警察を維持して行こうじやないか、そうして行けば平衡交付金ももらえる、ところがそれを取上げられるようなら、それはどつちに得にもならん、それじや持つて行こうじやないかという感じが自然起りやしないかということが想像できる。それで今小笠原君なり皆から言われる通り、自然に殖える場合にはもらえない、ところが廃止すれば取上げられるというようなことでありまするというと、非常に一方的な考え方で余り感じがよくないことにかりやしないか。一年間くらいは平衡交付金は減らさない、こういう大蔵省の方針である限りにおいては、一度やつたものはほかの厚生施設なり何かに使つたほうがいいというくらいにしてやつたほうが却つて警察廃止するためにいいのではないかというふうに考えられる。まあ警察廃止すればその分は一つほかの方面に使つて下さいというくらいのやり方をやつたほうが、警察廃止する意図であればいいのじやないか、こういうふうに考えられるのですがどうでしよう。
  46. 荻田保

    政府委員(荻田保君) その点でございまするが、先ほどからも御説明しておりますように、基準財政需要はいずれにいたしましても八割くらいの額しか見ておりませんので、仮に平衡交付金の額だけを、廃止なつたから廃止なつた半年分を出さないといたしましても、やはりその分におきましては相当地方の財源にゆとりができるというふうになりますれば、単に財源的に計算すれば、それは廃止したほうが得になると思います。
  47. 石川清一

    ○石川清一君 今度の改正法案によりますと、定員が自治体警察では或る程度自由になる。その場合に、現在の自治体警察は平時には無用で有事には無力だという説に従いまして、現在の数を半分にした場合に、万一の場合には国警の応援は手弁当でやられるのですから、その場合に平衡交付金の配分の状況はどういうようになりますか、お尋ねいたします。
  48. 荻田保

    政府委員(荻田保君) 先ほどから申しておりますように、個々の団体で殖やすとか減らすとかいう単なる考えによつてやりますにつきましては、何らこちらとしては関與しない。それが事実だろうと思います。併し国家的見地という言葉を使いましたのですが、全体的の均衡から見ましてどうしても殖やさなければならん或いは減らしたほうがいいという場合におきましては、その額は平衡交付金にプラスするなり減額することになります。要は、中央と申しますか、全国的な見地から見まして、国家警察と自治体警察を併せ見て、そうして自治体警察にどれだけの人数、どれだけの財政需要が要るかということを計算いたし、その額だけは国として確保して行こう、こういうふうに考えております。
  49. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) よろしゆうございますか。それでは今日はこの程度で散会いたします。    午後五時七分散会  出席者は左の通り。    委員長     岡本 愛祐君    理事            堀  末治君            吉川末次郎君            竹中 七郎君    委員            石村 幸作君            高橋進太郎君            安井  謙君           小笠原二三男君            西郷吉之助君            鈴木 直人君            石川 清一君   国務大臣    法 務 総 裁 大橋 武夫君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    国家地方警察本    部総務部長   加藤 陽三君    地方財政委員会    事務局長    荻田  保君    地方自治政務次    官       小野  哲君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君    常任委員会専門    員       武井 群嗣君