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1951-05-21 第10回国会 参議院 地方行政・法務連合委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十一日(月曜日)    午後一時四十六分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○警察法の一部を改正する法律案(内  閣送付)   ―――――――――――――
  2. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) これより地方行政法務連合委員会を開会いたします。  警察法の一部を改正する法律案予備審査を行います。質疑を願います。
  3. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私は法務総裁警察法の一部を改正する法律案につきまして、疑義を若干質して見たいと思います。警察法が実施されまして以来、従来の日本警察運営と著しい違いが出て参りましたので、いろいろの方面に対して欠陷があるので、これを速かに改正しなければならんのであるということは朝野ひとしく言うておるところでありましたが、今回いよいよその警察法改正政府のほうで以て計画されたようであります。只今提案されましたる警察法改正に対しまして、政府としては先ず今日の段階においては、及び今後の日本治安上に関しまして、万全なりとお考えになつており、更に又この改正がただ一時的の改正であるか、或いは将来ともまだこの点について続いて改正に対するお考えを持つておられるのであるか、この点を伺つて置きたい。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 鬼丸委員お答え申上げます。従来警察法は新らしくできまして、約三年の経験を経て参つたのでございまするが、これに対しまして国民諸君の間におきまして、警察制度欠陥を何とか是正することが必要ではないか、こういうふうな一般的な感じを持つておられるということは、これは只今鬼丸委員のお述べになりました通りと存ずるのであります。私といたしましては、この警察制度というものについて、国民一般改善を要する、こう考えておりますので、いろいろな問題を各種の方面から検討をいたしました結果、これは二つの面があるということを考えた次第であります。その一つは、警察制度改革というものが、何分にも短期間に、而も非常に大幅な改革が行われましたる結果、警察関係者の間におきましても、十分に新警察制度の精神を了解して、そうしてこれを完全に運用するだけの準備が未だ十分でない、漸次運用経験を重ねるに従いまして、改善せられることと存ずるのであります。他の面におきましては、警察法に対して若干の法制上の改正を加えなければ、その欠陥は補い得ない、こうした二つの面がある、こういうふうに考えた次第でございます。そこでこれを今日改正いたすに当りましても、かような二つの面からの欠陷があるということを前提に置いて考えまするというと、重なる法律改正だけですべての欠陥の是正という問題を処理すべきではないのでありまして、改正しなければ、どうしてもいけないという部分は、これは改正をいたさなければなりませんが、それと並行いたしまして、警察法運用について今後とも工夫改善を加えまして、そうしてその面からも改善の実を挙げて行く、両々相待つて警察制度としての改善をいたして行きたい、こういうふうに考えた次第でございます。従いまして今回の改正案は、かような見地におきまして、現在の段階において必要といたしまする改正措置をとりたいという趣旨でいたしたものであります。それでありまするから、今回の改正をすれば、これによつて現在の警察完全無欠になるというふうには考えておりません。即ち今回の改正をいたしましても、やはり運用上の工夫或いは経験、こういつたものにつきましては、引続き警察関係者において十分に研究を続け、経験を積んで行つて、そうして法制としての欠陥でなく、運用上の欠陥として存在いたしておりまする部分は、今後においても並行的にこれを改善するような努力を続けて行くのである。即ち法制上の改正運用上の工夫と相待つて、初めて所期の改善効果を挙げ得る、こういうふうに考えておるわけであります。而してこの法制の面におきまする改正といたしましては、先ず私は現在の段階におきましてはこの程度改正をいたしましたならば、只今申上げました、他面運用上の工夫と相待ちまして、今日の治安において必要とされるところに適応するような、そういう警察を作り上げて行くことができるのではないか。又そういうふうに努力をしなければならん、その努力が相伴いまするならば、必ず今回の改正を以ちまして、警察改善について相当な効果を挙げ得ると、こういう確信の下に提案をいたした次第でございます。
  5. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 先ず第一に私は伺いたいと思いますることは、国内治安最高責任者となられる人は、警察法を通じて、誰であるかということをこの際明確にして頂きたい。なお大橋法務総裁警察に関する事務を管掌しておられると承わつておりまするが、それは一体どの根拠に基くものであるかということも、この際伺つて置きたいと思います。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察法運用責任にありまするものは、警察行政管理の面におきましては国家公安委員会、それから運営管理の面におきましては、都道府県公安委員会国家地方警察責任機関であります。又自治体警察につきましては、各自治体公安委員会というものが機関であります。この国家地方警察運営或いは行政管理に当つております国家公安委員会又は都道府県公安委員会というものにつきましては、それぞれ内閣総理大臣及び都道府県知事が議会の承認を経て任命をいたす、そうして国家公安委員会につきましては、これは内閣総理大臣所轄機関ということに規定をいたしてありまするから、自然警察に関する最高責任者というものは内閣総理大臣と換言すべきものであると存ずるのであります。それから私が国務大臣といたしまして警察関係していると言われておりまするが、それは如何なる法律的な根拠にあるかという次第でありまするが、只今申述べましたる通り国家公安委員会内閣総理大臣所轄に属する機関でございまして、而してこれが所轄事務に関しまして、法律或いは命令というものを出します際におきましては、これは内閣或いは内閣総理大臣によらなければならないし、又警察に必要な予算を国として定めまする場合におきましては、即ち閣議においてこれを決定するということに相成るわけであります。従いまして、国家公安委員会内閣に属するものではございませんが、併し国家公安委員会所掌事務であつて閣議決定を要する事柄は少くないのでございまして、これにつきましては、当然所轄大臣たる内閣総理大臣がその提案をいたし、又それについての説明をいたすという立場にある次第でございますが、御承知通り総理府には所管の事項が多々ございまするので、便宜国家公安委員会より閣議に対するいろいろな仕事につきましては、国家公安委員会を代表して、閣議におきまして説明をし或いはこれを処理するということ、それについての内閣総理大臣の職権に属する事柄を、総理特命によりまして、事実上私がお手伝いをいたす、こういうことに相成つておるわけであります。従いまして、私が警察関係いたしておりまするということは、これは内閣総理大臣特命によりまする事実上の事柄でございまして、法律上の根拠があることとは考えておりません。
  7. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私ども平素から、この警察法制定当時から、とかく責任の帰趨というものが非常に明確を欠いておるきらいがあると思います。殊に只今法務総裁の御説明にありましたごとく、運営管理に関する方面については、国家公安委員或いは自治体公安委員がそれぞれの運営管理についての責任者である、総理大臣は別といたしまして……。それから行政管理のほうは国家公安委員のほうではないということになつておりまするために、責任が分担されておりますために、自然やはりこの仕事の面におきましても、責任者が分れておるということが非常な実は大きな影響運営の面においても、実際の面においても、大変悪い結果をもたらしておるのじやないかということを気遣うものであります。殊に只今総裁の御説明にありましたごとくに、国内治安最高責任総理が持つておりますようであります。この「所轄の下」にとありますし、又国家地方公安委員警察公安委員任命権がございまするので……、ただ総理大臣公安委員任命権だけを持つておるだけであつて、あとの指揮監督、即ち行政管理に対しましては、直接に何も持つていないように規定の上では見られます。それがためには一方においては任免黜陟権をも持たず、指揮権をも持たず、そうしてその治安最高責任を負わしめるということがすでに根本において私は無理なことがあるのではないか、かように実は気遣つておるのであります。例えば警察法の第一条にもありまする通りに、一つ警察という大きな目的に対しますることに任ずる最高責任を持つものであるならば、全局に対するやはり指揮監督権或いは任免黜陟権を一手に収むるにあらざれば自然徹底を欠くことになつて、結果に対しましても、大きな響きを持つもののように思われます。今朝でありましたか、昨日の多分新聞だと思いますが、警察予備隊、それから警察その他海上保安庁、これらを一つに、一丸としてそうして治安省の設置の計画があるように、時事新報だと思いまするか、出ておつたようであります。誠に私は時宜を得たる措置であつて、少し遅きの感を持つておるのであります。只今私の申上げました趣旨によつて、そうした一つの統制をこの際なされるというようなふうな計画案があるのかどうか、この点を先ず一つ承わりたいと思います。
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在のところ治安省を作るという方針も別に決定いたしておりませんし、又この警察についての、殊に公安委員会のあり方というものについて根本的な改正を加えるという方針決定はいたしておりません。
  9. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 近時この警察軍隊との関係が非常な重要なる関係になつておるのでありまするが、私はこの際総理の事実上の代行者であられる総裁に、軍隊意義と、それから警察意義、それから国家地方警察自治体警察のそれらの四つ意義です、それを一つここで明確にして頂きたい、どういう意義を、それから両者移動ですね、この四つ機関移動です、移動のそれらを一つこの際明確にして頂きたいと思います。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 軍隊と申しますのは、いわゆる陸軍、海軍、空軍というようなものを軍隊と申すのでありますが、これらは憲法第九条によりまして、日本国としては保持しないことになつておるわけでございます。その最も根本的な点は、どういう点であろうかということを考えて見まするというと、これはいろいろな見方もあろうとは存じますが、併し私の見方といたしましては、この軍隊というものは戰争、専ら戦争のために、或いは当然戰争というものを予想して、戦争に用いるための実力機関として設けられたものが、これが軍隊である……。
  11. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 專らですか、專ら戰争を予想して……。
  12. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 戦争というものを予想いたしまして、専ら或いは主として戰争のために設けられておりまする実力機関軍隊である。こういうふうに観念をいたしております。これに対しまして、警察というものは国内秩序專ら国内秩序維持のために設けられた機関であると、こういうふうに考えておるわけであります。なお国家地方警察と申しますのは、これは現在警察法によつて認められておりまする国家公安委員会所属警察機関が、この国家地方警察に当るわけでありまして、その目的自治体警察管轄区域外におきまするところの国内区域におきまして警察権を行使すること、及び自治体警察に対しまして必要なる援助を与える、そういうことを目的といたして設けられたものである、こう存じます。又自治体警察というのは、これは自治体警察を置くことを法律上認められておりますところの、そういう自治体におきまして、その自治体区域内におきまする警察のために設けておる組織、これが自治体警察であると考えております。
  13. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 少し質問が、御即答をお願いするのは無理な考えがいたしますので、私は只今総裁のお述べになりました答えだけを以て、この意義が完全なものとは考えられません。殊に只今お示しになりました憲法九条との関係について、一段とこれをこの際明確にいたして置く必要がある、御印答をお願いすることは無理だと思いますので、でき得るならば、今一つ退いて十分にお考えを願いまして、他日で結構でありますから、万遺憾なき明確なるお答えをこの委員会においてお願いいたして置きたい。今いろいろこの憂ついて細かい論議をいたしましても無駄であります。どうか一つお願いして置きます。それから現在施行いたしております警察法の中で、どうも明確を欠いておると平素から思つておりますことは、風俗警察予防警察、この点に対してどうも法文上明確でないように考えます。即ち第一条に、警察は、国民生命身体財産だけを保護する、これを保護し、そうして犯罪の捜査、被疑者の逮捕一公安維持に当ることを以て責務とすると、こうなつております。従つてこの前提たる法文だけでは予防警察並びに風俗警察等の点については含んでいないのではないかということの実は嫌いを持つておるのです。そこで第二条のほうの今度の運営管理のほうに行きますと、公安委員所管になります。運営管理の中には、その三において犯罪予防及び鎮圧予防警察が入つております。かくのごとくして、どうも警察本来の予防警察司法警察衛生警察或いはそういうような風俗警察、かたがたそうした意味における全体のものを含んでおるというふうに法規の組立てが完全なるものではないように思います。この点については、政府のほうではどういうふうな一体まとめ方をお考えになつておるか、或いは又現在施行されております、株に今度改正されます分についても、これらの欠点については、取りあえず賄い得て余すところなしとお考えになるかどうか、私の今申しております、指摘いたしております予防警察風俗警察或いは衛生警察、こういうふうな面をも現行警察法において、当然明文において指摘し余すところなしやということをお伺いしたいと思います。私それを伺いますことは、御承知通り、今風俗警察に対しますのは、殆んど紊乱の極に達しております。見るに忍びざるものがあつて、いずれも実は本当に眉をひそめております。又射倖行為、即ち風俗撹乱に関しまする射倖行為ども殆んど博打で以つて国内を蔽つておりますが、これに対して一体警察責任があるのかという点をやはり加味いたしましてのことであつて、事重大なことだと思います。
  14. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 風俗その他の問題におきまして、今日の我が国の実情か国の警察的措置に期待するところが非常に多いという御所見につきましては、全く私どもといたしましても同感に考えておるわけであります。この警察法の第一条におきましては、国民生命身体及び財産を保護しということか書いてあるのでありましてもとより生命身体財産を保護するために必要な予防的措置というものも、やはりその必要の限度におきまして、警察責務観念すべきものである。そういう意味において第一条に書いてある、こういうふうに考えておるわけであります。第二条の第三号におきまして、「犯罪予防及び鎮圧」と書いてあるのも、実は第一条において当然予想しておりまするそれをここにいたしましたのに過ぎない、そういう意味におきまして予防警察、こういうことも当然警察範囲に属する事柄だと考えられるのであります。但し実際の問題といたしましては、警察の権能というものは、ただ個々警察法におきまして、抽象的にきめてはありまするが、この中におきまして、当然一般的には警察責務観念すべき事柄であつて、特別な法規によりまして、他の機関権限に属せしめられておる事柄もあるわけでありまして、衛生警察或いは風俗警察等の一部につきましては、他に特別の法律がございまして、そうして通常警察機関以外の他の機関がそれぞれ必要な措置を行うということに定められておる部分もある次第であります。又風俗の面におきましては、さような特別規定によりまして、他の権限に属せしめられてある事柄を除きました一般的な事柄、これは当然警察責務観念すべきものでございまして、風俗の面におきましても、例えば風俗取締を要するような、そういつた営業許可というようなことにつきましては、公安委員会において許可権を保留いたしておるという事柄もある次第でございます。
  15. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そういたしますると、総裁もお認めになつたごとくに、現在あらゆる射倖行為跳梁跋扈でございますね。それから又風俗の壊乱と申しますか、紊乱と申しましようか、それらについては、やはり警察のほうから御覧になりましても、この程度で別段差支えなしというふうにお考えになつておるのでありましようか。若しお考えになつていないとするならば、どうしてそれを一体放つて置くか、これを一つお伺いいたします。
  16. 武藤文雄

    政府委員武藤文雄君) お答えいたします。現在警察といたしましては、先の国会で通過になりました風俗営業法が、警察として風俗関係営業取締つている主なものでございますが、その他風俗関係といたしましては、例えば旅館に関する旅館業法或いは浴場に関する法律、そういつたものは従来においては警察で扱つておりましたが、現在では我々の別個の所管になつております。警察といたしまして、許可関係を持つているのは主として犯罪予防という見地から、風俗営業取締法中心になつておるわけであります。で、この法の執行については、公安委員会がそれぞれの所轄公安委員会におきまして許可権限を持つておりまして、そこにおいて法の要件に従つて厳正にこれを遵守し、又これを監督するということに方針をとつております。その他の関係法規につきましては、それぞれ所管監督官庁にございます。で、罰則の関係につきましては、犯罪行為としてこれが又警察の対象になるということは言い得るわけであります。で、只今のお話の、現在の風俗営業状況はどうかという問題であります。これはいろいろ立場によつて、見る人の目によつていろいろ角度も違うと思いますが、我々としては我我法規に与えられたもの、これについては忠実に執行しなければならない、かように考えております。
  17. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私の今質問しました面は、やはりそういう風俗に関しまする興行、その他各所で以て相当極端なる紊乱状態があるように聞いておりまするが、それはそうすると、現在の状態で別段差支えないというふうに御覧になつておりますか。
  18. 武藤文雄

    政府委員武藤文雄君) 現在の状況でいいか悪いかということは、只今申上げましたように、いろいろその人その人の観点によつて、或る人はこれではひど過ぎる、或る人はこれでいいのではないかといろいろ御意見があると思います。私といたしましては、私と申しますか、警察といたしましては、刑法を初めとし、諸法規に反するというものは、これを検挙しなければならない、刑法の猥褻に関する条項を中心とし、その他それぞれの法令で違反とされた場合に、これを検挙するという立場を堅持するということにいたしております。
  19. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 次にこれはやはり法務総裁に伺いたいと思うのでありまするが、先ほどお答えのありました都道府県治安維持に対しまする責任としては、市町村公安委員会と聞いております。そうすると、都道府県知事には責任はないのでございますか。そこで若し市町村公安委員だけがつまり責任の衝に運営管理の点についてあるとか、或いはその他警察の面においては行政管理の点においては警察のほうがあるということでありまするが、このたび改正せられんとする第二十条の二の規定によりますると、都道府県内の治安維持責任都道府県知事がやはり持つにあらざれば、この二十条の二の規定というものが出て来ないのじやないかというふうな疑問を持つのであ力まするが、この点はどういうことになるのでありましようか。
  20. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現行法の解釈といたしましては、都道府県区域は、自治体警察区域国家地方警察区域に分れておりまして、自治体警察区域におきましては、自治体公安委員会がその警察運営の責に任じているのであります。又国家地方警察区域におきましては、都道府県公安委員会がその同様の責に任ずる、こういう機構に相成つているのであります。而して都道府県知事といたしましては、この都道府県公安委員任免権限を持つている、こういうわけでございまして、その範囲内におきまして、都道府県治安について責任を負う建前と相成つているわけであります。今回の改正案におきましては、都道府県公安委員会任免のほかに、自治体警察区域内において国警活動が必要であると認めました場合には、その活動を要請するという権限を新たに附加しよう、こういう趣旨でございます。
  21. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そういたしますると、二十条の二によつて見ますると、新らしく「都道府県知事は、治安維持上重大な事案につきやむを得ない事由があると認めるときは、当該都道府県区域内の市町村警察管轄区域内における当該事案国家地方警察に処理させることを当該都道府県公安委員会に要求することができる。」と、こうなつております。そうすると、結局やはり治安維持について都道府県知事一つ責任を持つている関係でなければ、そういうことを公安委員会のほうに求めるというのは、みずから任免したり、公安委員会に対して都道府県知事がそれを求めるなんということは、その点の調節はどうですか、確かめて置きたい。
  22. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) すべて権限ある事柄についてのみ責任があるわけでございまして、この二十条の二によりまして、都道府県知事にかような権限を認めたということは、つまりこの権限の行使について知事責任を認めたという趣旨に相成るわけであります。
  23. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それからやはり同じ二十条の二には「治安維持上重大な事案」ということになつておりますが、この「重大な事案」ということを、それから六十二条の一部の区域内について国家非常事態の布告に対しまする規定がございます。この「国家非常事態」ということと、「重大な事案」というものとはどう違うのであるか。又これを別に作らなければならんのであるか。六十二条だけで賄い得られるのじやなかろうかと思うのです。若し「国家非常事態」ということを、内乱、暴動とか、騒擾とかいうふうなものを含まれるものであるとするならば、殊更「重大な事案」というようなものをここに加えなくてもいいのじやないか、この両者の区別はどういうふうになつておりますか。
  24. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この「治安維持上重大な事案」という第二十条の二に規定いたしてありまする観念は、それは一般的な社会情勢と申しますか、地方情勢と申しますか、そうした一般的な情勢治安維持上重大であるというような事柄ではなくして、発生いたしました個々の具体的な事案のうち、その事案種類性質によりまして、治安維持上重大なものと、そうでないものとがあるのではないか、こういう考え方でございます。ここに「治安維持上重大な事案」として取上げますべきものは、例えばこの一つ犯罪について考えますると、その犯罪の処理が適正に行われない場合におきましては、相当広い範囲亘つて関係地方治安維持上重大な影響を与える、こういつた性質犯罪、これを「治安維持上重大な事案」と、こういうふうに考えたわけであります。これは或る程度犯罪性質からも種類からも来ると存じまするが、必らずしも或る種類犯罪だけに限定することも不可能であろうというので、「治安維持上重大な事案」と、こういうふうに書いたわけであります。これに対しまして第六十二条におきまする「国家非常事態」というのは、その原因が如何なる事案から起つたかは別といたしまして事態が非常に重大化してそうして通常警察機構では処理できない。従つて自治体警察に対しましても、国家地方警察がこれを一元的に統制して活動させる。こうしたふうな措置をとらなければ事態の収拾が困難である、そういう場合に、こうした措置をとるということを予定いたしておるのであります。従いまして、六十二条の非常事態措置がとられました場合におきましては、さような事態を生ずるに至つた原因となつ事案についてのみ、そうした特別の警察措置がとられるばかりでなく、あらゆる警察事務全体につきまして一元的な統制を行う。こういうことになるわけでございまして、この点は二十条の二の場合におきましては、特定の事件についてのみ特に国家地方警察に処理の権限を与えるという場合とは趣きを異にいたしておるものと存ずるのであります。
  25. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それからこの五十四条の二として、やはり今度加えて参りました事項中に、犯罪に関する情報交換の規定がありまするが、これは勿論常時情報交換するということなのであるか、或いは特に一つの事件が起つたときにのみ情報交換の方法によるのであるか、むしろ犯罪捜査に関しましては、常に緊密な連絡をとつて情報を交換するような、殆んど一体となつ犯罪捜査の網の中、枠の中でやるようになるのであるか、その点はどうですか。
  26. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 情報の交換につきましては常時国家地方警察或いは自治体警察同士の中の相互的な交換は予想いたしております。
  27. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 このたび改正されまする中に、大分警察官の身分と申しますか、とにかく名前が大変殖えて参りましたが、これまで五階級のものが今度は九階級になつておるようであります。私はこの警察にいたしましても、殊に従来からとかく官名とか或いはそういういかめしいようなことを、概して求め過ぎる感がある。このたび今までの五階級のものを今度は九階級に殖やして、例えば十五条の二に、今度作られました、長官、次長、警視長、警視正、警視、警部、従来は警視、警部で賄つて余るところがなかつた。或いは巡査部長、巡査、これが警視正だとか、或いは警視長だとか、非常に名前がたくさんになつてしまつて、こんなことを一体そういうふうに作らなければならない理由があるのですか。例えば地方警察本部であるならば本部長で結構。それは非常に名前を付けて、そしていかめしいようなことを好むきらいがあるので、それは何だか、機構のほうの形はむしろいかめしくますますなる、他方では口に民主主義を唱えている。これはどうも右と左に非常に逆行しているきらいがあるのではないか。こんな一体細かいことを殊更作らなければならない理由が私にはわかりません。それはどういうことですか。
  28. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 誠に御尤もな御質問でございますが、実は現在の警察法では、警察官の階級は府県の国家地方警察警察官の階級しか書いておりません。ところが管区本部にも警察官を置くということが現行法にあるわけでありますが、そこには階級のことも、それから採用のことも、又服装その他全部府県の国家地方警察のところに書いてありまして、本部管区のところには落ちておる。従いまして本部には長官以下、府県にいるよりも階級の高い者がおりまするし、現実に何万の警察が、場合によりますると、一つの組織として活動をしなければなりませんので、やはり上から下まで階級が実際問題として必要だというふうに相成ります。さような関係から、実際上は公安委員会規則によりまして、階級を設けておるわけでありますが、これをこの改正の際に法律の上にもはつきりして頂いたほうが警察の構成上にもよろしい、かように考えた次第であります。勿論府県の警察は、これは階級のほうでは警視正又は警視長ということに現在なつておりまするが、この法律のほうでは警察長ということになつております。これにも府県のほうにも階級が書いてありませんから、これを実際問題として現わす、かように考えております。
  29. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 これまでの警察には、そんなたくさんな名前はなくて、一向不自由も感ぜず何十年の間やつて来たのに、殊更同じ市内におりながら、警視正、警視、こんなことを一体区別する必要は私ども甚だわからない、それのみならず、この私今申上げました九つのほかに、今度は隊長とかいうようなものがある、第三十条ですか「都道府県国家地方警察に隊長を置く。」、隊の組織の隊長だけあつて、あとは何もない、本当の軍隊だか何だかわからない。そういうふうに名前ばかりたくさん付けて、如何にもどうも警察のほうが一歩々々やはりいかめしいほうに持つて行くきらいがある。ところが豈図らんや、立法の本旨というものは警察の民主化を唱えておる、だから組織は非常ないかめしい元のほうにどんどんと帰らんとしておるが、法律の精神はむしろ民主的に行こうとする、その点をやはり考慮に入れておるならば、この名前がたくさんできて、いかめし過ぎるように考えますので、これなどはいま少し整理はできませんか。隊長なんて一体そんな必要かありますか、やはり国家地方警察には、都道府県には都道府県警察本部があるのですから、本部の部長でたくさんではないか、殊更隊長なんという名前を付けて行かなければならんのは、私どもにはその必要はないように思いますが、その点どうでございますか。
  30. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 現在は都道府県警察長という名前になつております。ところがこの警察長は府県の本部の主任であるのみならず、府県の警察全体の締めくくりをするのでありまするから、従つて府県の警察隊の長という意味警察隊長と、かようにいたしたいと考える次第であります。
  31. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 今のお答えから見ると、なお以てその必要はないのじやないか、隊長というものは府県の全体を統べておる。警察長なら殊更別に隊長なんて名前は付けなくていいのじやないですか、どうも何だか隊長という名前が新らしく加わつておるところから見ると、警察はやはり先ほど異同の弁を伺つたのでありますが、軍隊とやはり似寄つたような形になつてしまう、殊更隊長なんという名前は新らしく私は作る必要はないように思う。殊におかしいのです。例えば今の検察庁と警察とは表裏の関係があります。検察庁のほうの側の検事正というのは相当上の階級です。検事正の上には検事長があるというようなことで、ところが警視正というのができた。それがために何だかその警視正で以て検事正と殆んど相匹敵するようなふうな名前をこしらえるようなきらいがあつて、非常に何と言うのですか、そういう一体要らんものを作らなくても警視でたくさんである。むしろ私はいかめしい名前があるならば、それを振り捨てて、やはり本当の警察制度の本旨に則るように私は合わして行かなければならんじやないか、組織のほうはますますいかめしくなつて、ピストルを持つてわつとやる、名前もいかめしいものを付けておるということは、右と左に分れるきらいがありますが、隊長なんという名前は一体必要じやないじやないですか、併せてもう一遍伺いたい。
  32. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 誠に御尤もでございます。実は新らしい警察ができました際に、警察の身分規定は、これは公安委員会で握つておるわけでありますが、その内容につきまして、関係筋からのいろいろなサゼツシヨンによりまして、名前はそういうような名前が適当であるということで今日に来たつておりまするので、これをそのまま法律の上に認めて頂きたいというのが本旨でございます。
  33. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それは嘘です。恐らくそんなばかなことはありません。殊更そんな隊長なんという名前を付けようということを、実際そんなサゼツシヨンのあろうということは私ども信じられません。又そんな必要がないならば、仮にサゼツシヨンがあるといたしましても、強力に異議を申出て、それの改正案を出さなければならん、おかしいじやないですか、そんなことはないです、お考え願いたい。それから次に自治体警察のほうから、これは住民の意思によつてそれは廃止されることになるのであります。そうすると、それが今度国家地方警察のほうに移つて参ります。これが自由にできる制度になりまする結果としては、警察の恩給など、そういうような場合に、市町村の恩給の負担を免れようということの趣旨から、だんだん日を経るにつれて、そういうような動機で、やがて国家地方警察のほうに委譲して来るような虞れがありはしないかということを考慮に入れたことがあるかどうか、それを伺つて置きたい。
  34. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 只今のお尋ねの点でございますが、私どもといたしましては、いずれにいたしましても、自治体警察の職員のかたが国家地方警察のほうに移つて見えるということになりますと、その人の不利にならないように恩給を通算し得るだけの規定を設けて置かなければならない、こういう趣旨から申しまして、附則の第四項にこのための必要な規定を置いたのでございます。このために、この規定を置きましたことによりまして、特に町村のほうの警察に存廃が影響されるというようなことは毛頭実は考えなかつた次第でございます。
  35. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 財政上の影響のあることだけは確かですね。つ
  36. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) それは負担がなくなりますから、それはございません。
  37. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 次に伺いたいと思いまするのは、この自治体警察といい、或いは国家地方警察という新らしい制度に対しまして、三年間の経験の上からいたしまして、自治体警察のほうの犯罪検挙の実績から見まするというと、破廉恥罪以外の事件というものは自治体警察のほうからは殆んど検挙がない。これは統計を調べられれば極めて明瞭でありまするが、そこで検察官が、犯罪検挙に当りまする警察官との関係について、いささかも身分上に対する発言権を持つていない、これがためにやがて司法警察に対しまする検察方面の威令というものが果して保ち得られるかどうかということが懸念に堪えない、その点について御考慮になつたことがあるかどうか。
  38. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 警察官及び警察吏員が、検事の一般指示に故なく従わない、職責を果さないという場合には、検事側から当該任命権者に対しまして進退を考慮してもらいたいという訴追ができるように刑事訴訟法の百九十四条に規定があるのであります。
  39. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それから警察官の身分保障に対しまする従来何らかの規定がありましたが、その点については今どういうふうになつていますか。警察官の身分保障について従来やはり委員会か何か作られて、そして身分についての、免職等についての懲戒裁判か何かありましたが、それらの身分保障についての規定は今どうついうふうになつていますか。
  40. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) これは国家公務員法の適用をそのまま受けております。
  41. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 公務員法だけですね。警察のほうには特にないですね。
  42. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 警察には国家公務員法の規定に基きまして、その懲戒の場合には懲戒委員会というものがあります。身分保障の点は、そのための制度というものはございません。
  43. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 従来一般公務員よりも警察官だけに限つて、特に免職の場合だと思いますが、何か單行法が出ていましたと思いますが、それが全然なくなつて一般公務員の規定なつたのですか。
  44. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 以前は確か巡査懲戒令というものがあつたと思います。これは府県の当時の……。
  45. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 巡査懲戒令ではない、もう少し何か委員会がありましたが……。
  46. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) それに基きまして懲戒委員会というのがありました。これは他の官庁における懲戒委員会とやはり同じ作用をいたしておりまして、ほかの官庁と別段変つた扱いはなかつたのであります。
  47. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 一般官吏と同じことですか。
  48. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 同じでございます。
  49. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 その当時もですか。
  50. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) さようでございます。
  51. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それは違います。それはですね。私はなぜ記憶しておるかというに、私はやはり議会に主張して、特に警察官の身分保障についての規定ができておる。それは多分安達さんの内務大臣のときです。一般官吏よりも厳格な身分保障の規定ができております。
  52. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 更に詳細に取調べてお答えをいたしたいと存じまするが、私の記憶におきましては、警部補以下はこれは府県の吏員と国の吏員と中間のような立場にありましたせいであろうと思いまするが、巡査懲戒令という特別の法令に基いてやつておつたのでありますけれでも、その内容は一般官吏懲戒令と変つたものではなかつたと記憶いたしております。なお詳細取調べまして、お答え申上げたいと思います。
  53. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 この現行警察法に代りまして、警察の寸断によりまする結果としましては、自然成績の上において大変な変化が生じて参りました。殊に犯罪捜査に着手してすべての一件記録が若干できたといたしまして、その場合に検事に対する送致等もなさず、警察だけで以て握り潰している事件が相当あります。それなどは一体どういうふうな自治体警察などは内規になつているかをこの際承わりたい。例えば私ども先回警察官がピストルを使用して殺傷いたしました事件がありました。それなども相当な検討を加えるべき事件だと思いまするのにもかかわらず、そのままもう警察だけで以て握り潰して検事にも報告してない。自治体でしたか、それらについてのこれまでの警察全体に対する指導方針というものはどういうふうになつておりますか、それを一つ伺いたい。
  54. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは国家地方警察の場合よりも、主として検察庁側のほうからお答えをしたほうがいいかと思いますが、いずれ法務府の政府委員を呼びまして、後ほどお答えいたすようにいたしたいと思います。
  55. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私は検察庁のほうのことでなく、警察のほうが一体どういうふうに考えて、どういうふうに扱つているのかを伺えばいいのです。それから丁度法務総裁が見えておりますから、私はこの際併せで伺うのですが曾つて私は本会議において警察官のピストルの濫出に対しまする殺傷の甚だ多いことに対する問題についての質問を申上げましたところが一総裁からこれはもうすでに法務府のほうにおいて、近くやはりピストルの使用に対する規定改正考えておるというようなお話があつたので、今日まで参つたのでありますが、依然として事故が頻発して、若しそれが本当に正確な私は資料を今求めておりまするが、恐らく相当な件数に私は上つておると思います。これについて勿論この警察のほうとしましても、やはり御研究になつておることと思いますけれども、成るほどこの非常な国内治安の現状から見て、ピストルは必要かも知れませんけれども、従来久しきに亘つて警察官は帶劍だけで間に合つて、さしたる支障はなかつたのであります。ところがこのピストル携帯後における殺傷というものは本当に大変な件数だろうと思います。曾つて私は二カ年間における国家地方警察の事故だけで資料を出してもらつただけでも、二カ年の間に三万人の警察官中一割か二割しか持たないときにおいてすら百件近くの暴発その他の事故が統計上出ております。恐らくこれが全日本の九万五千の自治体警察全体に亘つての統計から言つたら大変な数に上ると思います。この頃は新聞などでもそのくらいな事件は取扱わなくなりましたか、それですらときどき出て参ります。これはどういうふうにお考えになつておりますか、帶劍規程による場合の帯剣時代のほうがむしろ警察官自身の身を護るのにいいんじやないかというふうに考えておりますが、それを一つ併せて伺いたい。
  56. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ピストルの発射に関連いたしました過失というものは事実相当あるようでございまして、これにつきましては、検察庁といたしましても、絶えずその事件の都度関係者に対しましては警告を発しておるところでございますが、現在におきましても法制といたしましては、警察官職務執行法におきまして、厳重にピストルを使用すべき場合を制限いたしておるわけであります。十分にこの趣旨従つて取扱いまするならば、そう間違いはないはずでございますが、併し何分にも警察官諸君といたしましても、従来から取扱いに慣れておりませんので、今までいろいろ間違いも少なくなかつたと存ずるのであります。併しながら最近の傾向といたしましては、漸次注意も行渡りまして、又取扱いについても慣れて参つたことと相待ちまして、事故は漸次減少しつつある状況と存じております。
  57. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) それでは須藤君。
  58. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この二十条の二ですね、都道府県知事は、治安維持上重大な事案、止むを得ない事情があるというふうになつて都道府県の認定の下で国警の出動をさせることになつておりますが、こういうことをすれば、自治警の自主性というものが侵されるのではないかと思いますが、その点如何ですか。
  59. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) かような権限が濫用されるということになりますると、確かにこれは自治警の自主性が侵されるということも考えなければならんと思います。併し二十条の二にあります通り治安維持上重大な事案であつて、而も止むを得ない事由があると認めるとき、この止むを得ない事由と申しますのは一誰が見てもこのままでは自治体警察が処理できないというふうに認定する合理的な根拠がある場合に限つて、例外的の措置としてこういうことを認めて行く、こういう趣旨でございまして、この運用に当りましては、厳格にこの制限の範囲において運用させるように注意をしなければならないと思います。又それならば自治警察に対する侵害ということも当らないであろう、こう考えております。
  60. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それならばその重要な非常時だという認定を先ず自治体がして、そうしてからあと国警のほうに出動を依頼するのが筋道だと思うのですが、いきなりそういうことを抜きにして、自治体の認定を抜きにして、そうして都道府県知事の認定でなすというところに、少し自治体を無視した面が出て来るのじやないかと思うのですか、その点……。
  61. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 誠に御尤もなお尋ねでございまして、私どももかような場合におきましては、原則として自治体公安委員会が要請をして、それに応じて国警が出て行く、これが本来の建前であると考えております。そしてその場合につきましては、すでに現行法においても自治体警察国家地方警察に対して応援を要請するという規定があるわけでございますので、その原則で行くのが建前でございます。然るにこの二十条の二が予想いたしておりまするのは、誰が考えても自治体公安委員会では処理できない、従つて自治体公安委員会が本来の警察的な立場に立つて考えるならば、当然国家地方警察に援助の要請をすべき場合であるにもかかわらず、何らかの事情によつてこれは主として自治体に関連した地方的かいろいろな情実その他の関係で、或いは地方の特殊事情といつたよう関係で応援すべきではあるが、自治体内のいろいろな関係上、進んで応援の要請をいたすような運びを公安委員会が付けない、そういう場合において、これを放置いたしまするというと、他へ波及する、或いは一般の治安上重大な障碍を生ずる、こういう例外的なそういつた場合におきまして府県の知事の要請によつて活動する、こういう趣旨でございます。これは例外的な措置でございます。
  62. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私たちが考えまして、その例外的な場合ということが具体的にわからないのですが、若しも総裁のほうで、こういう場合というふうに、具体的に説明を願えれば結構と思います。
  63. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 例えば或る自治体警察区域で相当の警察官を使つて或る事態鎮圧しなければならんというような事態がある。このためにはその場合に当該自治体警察の力だけでやれる場合は、その自治体で勿論やるわけでありまするが、特殊の理由でこの事件は穏便に計らうほうがよろしかろう、今警察官が出て鎮圧をしては面白くないという公安委員会の意見というような場合には、当該自治体警察活動することができない。或いは当該自治体警察のみで活動ができない、国警の応援の要請をもらわなければならないというので、当該自治体の署長が国警のほうと連絡をとつて段取りを付けましても、公安委員会が応援を国警のほうからもらうということを公安委員会できめなければなりません。そういう場合に特殊の、政治的な背景というようなところから、今応援要請をもらつて、この事態鎮圧することは却つて望ましくないというようなことから、応援要請をとらない、或いはそのために時間が遅延をする……。
  64. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その特殊な場合という、その場合を具体的に説明して欲しいのです。どういう場合が特殊な場合かということです。
  65. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 公安委員会が特殊の政党の党員である、或いはそのシンパというような関係、或いはそういつたようなことが極端な場合に考えられるであろうと考えます。
  66. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあその公安委員会が共産党に全部牛耳られておるということは今私たちも考えを持つておりませんが、そういう場合を指しておつしやるわけなんですが、具体的に言えば……。
  67. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) そういう場合には限りませんが、そういう場合が一番典型的な場合であると思います。
  68. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうするならば、自治体を実に無視した行動であると思うのです。自治体が若しも社会党が全部牛耳ろうと、共産党が牛耳ろうと、そういう場合は自治体の自主性を認むべきで、その場合に自治体がそういう政党に握られているからと言つて、それを国家の力を以て弾圧するなんてのは、自治体を無視するのも甚だしい、そういうふうにやりそうな気がするから、私は心配して質問するわけなんですが、すでにそういうことがこういう中にあらかじめ計画されていると、大変飛んでもないことだと思うのです。
  69. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) その場合にこれは自治体の自主性を認めて、自治体の利害関係自治体に関するだけだから……、一般的に国家的に考え、或いはもう少し広い地域から見て差支えないという場合は、これはそのままでよろしいと思うわけでありまするが、事柄自治体区域内で起つた事柄でありましても、それを処理をしないで放置をしておくということは国の治安或いは自治体よりも、もう少し広い公益治安という点から考えて、知事はこれは放置ができないという場合には、当該公安委員会活動しない場合でも、その事態を処理をするという途を開いて置く必要がどうしてもあると思うのであります。
  70. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは非常に危険なことで、私は自治体立場から大きな問題が出て来るだろうと思いますが、まあそういつてつて置きましよう。それから次に、第四十六条の項には、市町村警察職員の定員は、地方的要求に応じてその市町村の条例できめるということになつておりまして、これにははつきりした数の決定というものがない。条例でどんな組織でも変更できるということになつていますが、それと同時に今度は自治体でその自治体警察を廃止するかどうかということは又住民投票で決定できる、そうしてその廃止されたものは価制限に国警にするとなつて参りますから、そうすると、国警の数そのものも定員というものは決定できないということになつて、どれだけでも殖やすことができるということに解釈していいのですか。
  71. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 国警の定員は大体基本的な数は三万ということでありまして、それが今回十九条に新らしく一項附加えたことによりまして、五千以内、学校に行つておる者、これだけは附加定員として、そのほかに只今御指摘の通り自治体警察が廃止になつた日における職員をそのまま定員に附加をする、こういうことになつておるわけであります。従いましてその自治体警察が廃止になる日の定員というものは、これは当然この法律施行後のいずれかの期日でありまするから、そのときの自治体警察の定員というものは市町村条例できめ得るわけであります、抽象的に考えまするというと、それなら無制限に定員をきめ得るじやないか、こういうことも言い得るわけであります。併しこれは単に条例できめた定員をそのまま国警に附加するという趣旨ではなく、現実に決定いたしました日に実在する定員を以て新らしい国警の定員に附加する、こういうことに相成つておりまするから、それも極端な場合を予想いたしまするならば、条例を変え、又臨時にその日にたくさん警察官を入れて置いて、そうして廃止の投票をすればいい、こういうことも言い得るのでありますが、それは先ずそういうことは今日の常識から考えまして事実あるまい。そう非常識な、無制限に近いような定員が国警に附加されることはなかろうという前提の下にこの規定ができておるわけでございます。将来さような非常識な、非常に莫大な定員ができるということになりまするというと、これは当然その際においては何らかの処置を考えなければならないということになるわけでありまして、私どもといたしましては、これによつていたずらに国警の定員を多くしようという意図は何らないのでございます。ただ廃止の日におきまする実際の実員をそのまま新たな定員に加えて行く、これによつて先ず国家地方警察としては、定員の現状から見まして必要と認められておる程度の増員がこれで可能である、こう見ておるだけであります。
  72. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 総裁が良心的にそう思つておつしやるならば、そういうように信用していいわけなんですが、併し今も申しましたように、自治体の自主性を極端にまで踏みにじつて行こうというような条項があれば、いわゆる無制限に国警を殖やすために、今言つたそういうことを予測したくないような方法でも或いはとられる虞れが、大橋さんが総裁でおられる間にはないが、ほかの人が総裁をした場合に又そういうことが起つて来るかも知れない。非常にそういう条項がそういうふうに使われる場合があるのではないか、私たちそういうことを心配するわけです。ですからそういうことのないように、こういうどちらにも付くような条項は、何とかもう少しそういうふうにならないように前以て考えて置く必要があるのではないか、そういうふうに考えます。それから自治体が自治警察を廃止するということは、結局予算の面で、経済の面から持ち切れんからということになつて来るだろうと思いますが、自治体で持ち切れんものを、それを全部国警に吸収して国警としてやつて行けるならば、その費用をむしろ自治体に補助をして、自治体警察というものをやはりそのまま残して置く、そういう方法を考えるのが当然ではないか。自治体で費用がないから、自治体警察を国家が国警に吸収して費用を出して行く、それではどうも自治体警察をむしろ経済の面から圧迫してだんだん壊してしまつて、そうして国警を殖やす、中央集権的なものの方向に持つて行くということが、この法案の狙いであるようなふうにもとられる場合があるのですが、そういうふうなことに関しまして、総裁はどういうふうな意見を持つていらつしやるか。
  73. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この点につきましては、私どもはむしろ御想像とは逆の考え方でありまして、現在の警察法趣旨から考えるとすると、警察制度地方分権というのは飽くまでも維持して行くのが建前であります。併し現実の問題といたしまして、自治体警察、殊に小規模なる自治体警察というものが治安上の今日の要請に十分に答えられない実情にあるということは、これは国民一般の定説になりつつあるわけであります。この点につきましては、お話のように国家ができるだけ経費を補助する、こういう方法で十分に自治体警察の完璧を期するということも一案であります。併しながらただ小規模な自治体警察ということについては、次のような点を考えなければならんと思います。それは即ち警察が独立した組織ということに相成りまするというと、現実に外部に対する活動に用いられまする人員のほかに、部内の行政管理のために相当の人員が固定的に使われて行く。このことは警察單位が大きくなればなるだけ行政管理の面に使われる人員の相対的の比率というものは小さくなつて行く、従つて単位が小さくなるほどそういつたものは逆に大きくなる。これはどうも免かれない点であると思うのであります。そうしますと、国民経済の立場から申しまするというと、小さな警察單位をたくさん作るということは、警察の人員の経済的な利用という点から言つて困難があります。この点が一つであります。それから近代の警察というものは装備、機動力というような点を考えて行かなければなりませんが、これにいたしましても、やはり警察の單位が大きければ比較的経済的にそうした施設が賄い得るのでありますが、単位が小さくなればなるほど経済的に非常に大きな混乱が生ずる、こういうふうな点を考えますると、能率上或いは経済上から言いまして、小さな警察許可するということには現実に非常な困難があります。従つて今日では或る限度を超えまして、小規模な自治体警察というものの強化ということを今図るのは、越えがたい一つの限界かありはしないか。この限界ということは、こうした警察の強化ということが要請される今日にありましては、自治体警察としては、一つの致命的なマイナス点でありますから、これは何とかして補強して行かなければならん。この補強の方法として今回の改正案において取入れました方法は、例えば国家地方警察が応援をいたしまする際には応援費は国庫が負担をする、従つて自治体警察はその必要に応じて財政上の点などを心配せずに十分に応援を求めることができますし、又いろいろな事情で応援を積極的に自治体公安委員会が求めない場合においては、知事の発意によりまして国家警察か応援に行くというような措置を講ずる。又こういうふうに国家地方警察の応援というものが、或る程度確実に保障されるということに相成りまするというと、自治体警察が自主的にその定員を定めまする場合におきましても、経営的に必要な最小限度の人員というものを抑えて行くことができます。有事の際にはいつまでも国家地方警察から応援がもらえるということを、こういうことを前提にして行くこともできる。こうなりまするというと、自治体警察が人員を縮小することによつて経費の節約を図ることもできまするし、又それによつて何ら非常の場合におきまする警察機能を損われないという保障も与えられておる。こういう意味におきまして、このことが今最も問題となつておりまする小規模自治体警察に対する強化育成という作用を営むものだと、こういうふうに考えておるわけであります。そしてこうしたことと並行いたしまして、他面におきまして警察費のためにする平衡交付金、こういつたものは無論従来からも政府といたしましては、できるだけ必要な増額を図つて行きたいという考えを持つております。これは引続き政府といたしましては、その方向に努力したい。両々相待つて自治体警察の経済的な援助もし、又自治体警察の致命的な欠陷についての救済的な措置をこの法律で講じて行く、こういうふうに考えておるわけであります。
  74. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 できるだけその平衡交付金を増額して、自治体警察が経済的な面から崩壊して行かないように一つつて頂きたいと希望いたします。なお先ほど鬼丸議員から申されたように、非常ないろいろな名称の植えた点でありますが、私たちもこれはおかしいと思うわけなんです。これは若しもそうでなければいいと思うが、即ち警察軍隊を作る前提としておる。いわゆるドイツが、ヒツトラー政権が警察軍隊を先ず作つたごとき、そのドイツの轍を日本が履もうとしておるというふうにいろいろな誤解を招く点がたくさんあると思うのです。総裁はそうでないとおつしやいますから、その通りそうでないと受取るとしましても、ほかからいろいろ誤解を招く点がある。又本日の新聞を見ますと、又ここに治安省設置の問題などもたくさん出ておりますが、こういうことと関連しりまして、いろいろな問題が起つて来ると思いますから、そういうことはできるだけおよしになつたほうがいいのじやないかと、私はそういうふうに申上げたいと思うのであります。外国からもいろいろ、この前の警察法改正のときも外国の新聞はいろいろなことを日本に向つてつておる。日本の特高の復活や、いろいろな問題を取上げて、非常に民主的な日本から反動の方向にどんどんと向いて行きつつあるということを外国からも指摘されておりますが、今日の日本状態を見ますと、どうも残念ながら私たちもそういうふうに認めざるを得ない状態なんであります。若しもそうでなければ、そういう疑いを受けるようなことはどうぞ御遠慮願いたい。そういうふうに希望いたします。
  75. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は大体主要な点で七点ばかりについて法務総裁或いは責任のかたに伺いたいと思うのです。一番最初に伺いたいのは、この警察法規定されておるような警察の任務を果されるということには、これは言うまでもなく、警察だけが切り離されてこの警察法の精神が実現せられるとはお考えになつていないと思うのですけれども、特に広い意味の社会保障ですね。広い意味の社会保障があつて初めてその警察の対象となる犯罪というものを防止するということもできるので、社会保障が非常に不完全な場合には、その原因から来る犯罪の発生ということを防ぐことができない。それに対して警察のみによつて防ぐということができるとは恐らくお考えになつていないだろうと思うのです。そういう意味でこの警察法改正するというときに、当然今度こういう改正を行われるのは必要止むを得ないから、こういう改正を行われるという判断に、結論に到達されたと思うのですが、そういう結論に到達されたその根拠として第一に伺いたいのは、現行の警察法によつて犯罪を防止し、国民の自由と安全とを守つて行かれるのに警察だけでなく、そういう犯罪が発生しないような社会保障の努力をどれだけやつて来たというふうにお考えになつておるが。それから今こういうふうな改正を行われるのと並行して、警察だけでは犯罪を防止できないのですから、その犯罪の根源を除去するためのどれくらいの社会保障、広い意味の社会政策というものが現在の内閣において実行されるというふうに法務総裁御覧になつておるか。この点について伺いたいと思うのです。例えば最近の児童福祉法であるとか、或いは社会保障制度であるとか、社会保障制度についての審議会の答申であるとか、こういうものが実行されることによつて犯罪が著しく減るということも確かにあると思うのです。そういうものとどの程度までに睨み合せて現在この改正が必要止むを得ないものであるというふうにお考えになつておるか。その点について第一に伺つて置きたいと思う。もう一遍繰返して申しますと、こういう改正を必要にして止むを得ないという結論に到達されるについては、現在の内閣は広い意味の社会保障、ソシアル・セユリテイという点についてどれだけの予算を持つておる。どれだけの努力をしておる。例えばそれが完全に現在の内閣としては理想に近い社会保障をやつておる。それにもかかわらず犯罪がこういうふうに増大して行く。それを防止することができない。そこでこういう改正を国会に向つて願われるのである。先ずその点について伺いたい。
  76. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現内閣といたしましては、警察法改正もお願いをいたしたのでありまするが、同時に今国会におきましては、社会保障に関する幾多の施策をお願いいたしておるわけでありまして、又これに要する予算等はすでに国会の承認を得、又関係法律案等もいろいろ御審議を頂いておるのでありますが、この社会保障と警察制度改正というのはこれは両々相待つて初めて治安の全きを得ると、こういう考えでありますることは羽仁君と御同様であります。
  77. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点についてそれでは委員長のお許しを得て、私のこの警察法改正に対する判断を確実なものにするために、現内閣は今法務総裁がおつしやつたように、警察法とそれから社会保障と両々相待つて行くと、こういう改正を必要とする止むなきに至つたというについては、これだけの社会保障関係の予算なり或いは努力なりをやつておられるということについて、私の判断の根拠となるような資料を出して頂きたいというふうに考えます。第二に伺いたいこと、この警察の任務を遂行するためには、言うまでもなく警察官の人数を殖すだけでそれが遂行できろというふうにはお考えになつていないだろうと思います。それから又いわゆるこの機構改正されることのみによつて達成されるとは思わない。そこで問題になつて来るのは警察官の素質であると思う。それについて現在あれだけの多数の警察官を擁しておられながら国民の見るところ、世論の批判するところ警察がその機能を十分に発揮していない、能率が上つていない。そこで人員及び機構の上の改正だけを今ここに提案されたのですが、私が伺いたいのは、その警察官の素質の向上についてどれだけの教育をやつておいでになるか。特にこの際に伺いたいのは、警察官がその能率を発揮するためには、言うまでもなく国民の支持がなければ警察官の能率は発揮できないと思う。ところでその国民の支持を受けるためには、警察官が国警長官も或いは警視総監も本当に国民の自由を擁護する人であるという実感を国民に与えていなければならないと思う。そこで以て現在国警なり地方警察について特に教育の点について伺いたいのは、警察官がこの警察法の前文に規定してあるような国民の基本的人権というものについてどれだけの理解を持つておいでになるか、認識を持つておるのか。それについて資料をお持ちであればお答えを願いたい。
  78. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 只今お述べになりましたことは一々御尤もでございます。私どもとしてもつねづね心掛けており、微弱ではございますけれども努力しておる点でございます。今回国家地方警察のほうにおきまして五千人の増員をお願いしておりますのも、実は国家地方警察警察官は警部補以下巡査部長、巡査の全員に二カ月ずつ現在勤務についております者も学校に入れまして再教育を全部やつております。そのために約五千人近くの第一線勤務のほうが欠けますのでその欠員をお願いいたしたい、欠けました部分の補充のための分をお願いいたしたいということを考えておるのでございます。それで教育の内容につきましてはいろいろの工夫を凝しやつておりまして、具体的にちよつと申上げることはむずかしいのでございまするけれどもお述べになりましたような種のことは十分に我々といたしましても考慮し、警察法の講義或いは民主主義の講義等につきましては特にその点に重点を置いた教育の方針を定め、又実際の教育をやつておるのが実情でございます。教育の計画の概略につきましては、お手許に差上げました国家地方警察統計の中に二十四年度分が書いてございます。又御要求がありますれば二十五年度もどういうことをやつておるかということは後ほど申上げてもよろしいと思います。
  79. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私どもは数カ月前に八戸の警察予備隊を見せて頂いたときに、あれは設置以来すでに四カ月か五カ月ぐらいになつていたと思うのですが、その間に警察法についての講義はあつたようですが憲法についての講義は全然なかつたようであります。これはやがて五カ月目か六カ月目になさるというお考えであるのかも知れませんが、併し警察法というものはどうして成立するのかといえば、言うまでもなく憲法前提の下に成立するものだということはお認めになるだろうと思うのであります。なぜそういうことをやつておいでになるのか。それから又今いずれ詳しく資料を拝見したいと思いますが、警察学校において重要な学課についてどんな時間割を今までなすつておるのか、それについてもここでお答え願いたいと思います。
  80. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 最初にお述べになりました八戸のことでございますが、八戸には私の方の所轄の学校はないのでございますが予備隊ではございませんか。
  81. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 予備隊です。
  82. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 予備隊の方は私の所管でございません。で教育の課目の内容につきましては只今手許に資料がございませんから取寄せまして御説明申上げます。
  83. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この点特に重大であるので私が特に拝見したいと思いますのは、一般警察官ですね。当面は国家警察だけについてでもいいと思うのですが、国家警察に属する警察官の全員が基本的人権という問題についてどれだけの了解を持つておられるのか。例えば読まれるものなり、書かれるものなりにおいて基本的人権がどれくらいの頻度を以て出て来るのか。まさか基本的人権という字が書けないような警察官はいないと思うのですが、基本的人権ということがどういうことなのか、特に警察官としては基本的人権についてどのくらいの程度を以て考えなければいけないと思つておるのか。そういう問題について調査されたことがありますかどうか。若しあればその材料を頂きたいと思います。
  84. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 只今の点は重要な点でございますので、私所管の部長でございませんので所管の部長を呼びましてお答えをして頂くことにいたします。
  85. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それじやその点についてはあとから又伺うことにしまして、第三に伺いたいのは、これも特に国家警察、まあ地方警察の場合も想像できると思いますので、国家警察についてでも伺いたいと思うのですが、警察官の総員の配置をどういうふうに配置なさつておるのか、その点についで伺いたいと思うのです。つまりこういう技術的な点を伺いたいのではないので、どういう方面にどれくらいの人を配置しておるのかということです。これは特にこの警察法規定してある警察の任務に鑑みて、本質的な点でお答えを願いたいというふうに思うのです。
  86. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 只今警察官の配置を申上げますと、昨年の末でございますがまず所属別に申上げますると、中央にございます国家地方警察本部、ここに二百三十三名、それから御承知のように警察管区本部というのが全国六カ所にございます、東京、大阪、広島、福岡、仙台、札幌、この警察管区本部に合計いたしまして三百二十二名、それから都道府県の本部、北海道が五つに分れておりますから五十ございます、この都道府県本部に合わせまして四千八百七十九名、それから都道府県の下に警察法によりまして警察署、支署というふうなものが置かれておりますが、この方署のほうに置かれておりまするものが百五十三名、警察署に配置されておりまするものがこれは駐在所、派出所等を含んでおりますこれが二万三千六百九十三名、それから警察学校に置かれておりますものが十百二十名、こういうふうになつております。これが所属別の配置でございます。  それから事項別と申しますか、勤務の内容について申上げますと、内勤と申しまして本部及び署内の事務の方を司つておりますものが九千八百三十名ございます。それから外勤、いつも駐在所、派出所に勤務し、或いは警察をいたしておりますものが一万三千五百四十二名、刑事、防犯、捜査、その他でございますがこれらの方に配置になつておりますものが合わせまして六千六百二十八名、こういうふうになつております。
  87. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 大体今のような点ではあるのですが、もう少し詳しく伺いたいのですが、と申しますのは今朝の新聞でしたかに拝見しましたが、警察のほうで逮捕をしようというお考えで以て逮捕できないで今までおられる共産党の元の幹部の七名ですか、八名ですかの方に対する捜査本部とかなんとかいうものをお作りになつて、そうしてそれに今百五十人とかなんとかいう人間を置くという計画を立てておられるというような記事が読売新聞に出ておつたようですがそのことを今伺おうというのじやないのですが、この内容的に、私は警察に勤めたことは一回もないし、警察の内容については何も知らない。警察に留置されておつたことはありますが勤めておつたことはないから内容上のことを伺いたい。というのは一体警察はどういう方面に何パーセントの人間を使つておるかということを伺いたいんです。言うまでもなく私が伺うのは警察警察法規定してあるような、治安警察としての任務に大多数の人員を配置しておられると私は承知するのですが、どうも最近のいろいろな事実を見るとそうではなくて、いわゆる政治警察的な方面にかなり人員を配置しておられるじやないかという疑いがあるので、そうでないということをここで立証して頂きたいのです。
  88. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 結局只今私が申上げました配置の内訳を申上げることになると思うのですが、内勤と申しましたが結局いろいろな面の行政官吏でございます。人事の方でございますとか或いは会計の方でございますとか装備の方をやつておる者もございますが、こういうふうなものに当ります職員でございまして、それから非違を監察するというようなもの、こういうようなものもこの内勤の中に含まれておるのでございます。それから外勤というのが派出所とか駐在所国家地方警察は主として村落を主管いたしております関係上一万数千の駐在所がございますので、こういう方面に勤続配置になつております、或いは警察署によつて巡邏をするとかというようなものもこの外勤でございます。それからあとが刑事の関係でございます。犯罪捜査の本部におりましたり署におりましたり、事件がありますればすぐそこに行つて捜査するそれから平生も種を求めて歩きますものもございます。こういうものを併せて六千数百、こういうことになつておるんでございます。お尋ねのような政治警察云々ということにつきましてはです、どういうふうにお答え申上げたらよいのか、とにかく警察犯罪を捜査し逮捕するのでございますから、犯罪の捜査逮捕の事務にこれらの職員が当つておるこう申上げるよりほかないと思います。
  89. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の伺いたいと思つておることは結局おわかりになつておると思うのですが、そういう点についてもう少し詳しく資料を示して頂きたいと思います。  それから第四に伺いたいのはこの今度こういう警察法改正提案されるについて、現在までに警察官に認められておるところの武装ですね、つまりピストル、これについての何らの変つたお考えがこの改正法律案には出ておりませんが、別に何もそれについて新たに考えがお変りになつておる点はないのかどうか、その点を伺いたいと思います。これはさつき鬼丸委員からもそういう点についての御質問があつたと思うのですが、現在の警察官が現在のような武装を持つておるということが認められたときの事情や状況と、それから今日の状況とは非常に違つておると思うのです。その中でもこれは法務総裁にもよく聞いて頂きたいと思うのですが、その中でも大きな違いは警察予備隊というものができておることだと思います。現在の警察官の武装が承認された当時は警察予備隊はなく、従つて国家全体としてこの或る程度の武装力というものの最小限度の存在の必要ということから考えられて、警察官にピストルが配付せられたということがあると私は思うのです。それはそういうふうに了解をし得ると思うのです。だからその警察官そのものが拳銃を使用する具体的な必要と場合とがあるかないかということだけでなく、その日本治安維持するためにこの程度の武器というものが政府の一部分としての警察にあるということが必要だ、そうして十分だという考えが私は確かにあつたと思うのです。ところがその警察予備隊というものができてその国家の権力に装備されるところの武装というもののかなり大きなものがそつちにあるんですね。そうだとするとこの市民的な警察に従事する警察官というものの武装は、警察予備隊ができてもその武装をその市民的な警察が保持して置く必要があるかないかという点について、どういうふうにお考えになつておられるかそれを伺いたいと思います。
  90. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この警察の武器というものはこれは国内の一般的な治安状況から警察にこれだけの武器を持たさなければならない一こういうような一般的な考えからでなく、これはやはり現行法において規定いたしてありまする警察官というものの具体的な職務というものに照し合せまして、そうしてかかる職務を行う警察官としてはこの程度の武器を持つことが必要である。こういう考えできめられたわけでございまして、この点につきましては現在警察予備隊が一方でできたということは成るほど国内におきまする何と申しますか武力を行使する機関といたしましては、ほかに新らしいものができたということは明らかでありますが、併しこれによりまして警察官の職務というものは何ら変更を見ておらないわけでございまして、従来の職務を引続き警察官が取行なつて参りまする以上は、従来必要と認められておりました武器を当然引続き操作されて行くということは、これはやはり必要あるものとこう考えておる次第でございます。  なおこの機会に最近におきまする警察官のピストル事故の統計が只今参りましたので御紹介申上げておきます。昭和二十四年、これは非常にまだ警察官に全体にピストルが普及しておらなかつた当時でありますが、その当時は検察庁において二十六の事件を受理いたしまして六件起訴いたしております。二十五年におきましては三十四の事件を受理いたしまして十三件起訴いたしております。昭和二十六年度といたしましては、只今までのところ十六件受理をいたしまして二件だけ起訴をいたしております。これが警察官のピストルの暴発事件であります。
  91. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今お答えには私は必ずしもどうも納得できないのですが、率直に考え日本警察法規定してあるような市民的な警察がその職務を遂行するのに、あのように大袈裟なピストルを腰に四、六時中下げておらなければ職務が遂行できないというように、まさか大橋法務総裁考えておられる、又何人がこれを認めそういうことが納得できるとは私は思えないのです。ですけれども今の点については御研究を願つて、それから特に私の申上げることは客観的に理論的に申して国に存在する武装力というものと、それからそれが主として国家警察及び地方警察しかなかつたときに、その国家警察地方警察においてその国の全体において必要最小限度と考えられる武装力がそこに配置されておつた場合、それから今日警察予備隊というものができてそこに相当な武装力を持たしている場合においては、やはりもう少し考えて頂く必要があるじやないかと思うのです。只今の御説明で納得しないんでもう少しその点について御研究願いたいと思います。それから仮に今の点はそれとして、次の第四の点として伺いたいのは、警察官がああいうピストルを持つて行つて正しく行使しなければならなかつた事件が幾つあつたのかそれを伺いたい。それからその次に伺いたいのは、交通巡査というのですか、電車の交叉点で手を振り足を振つておられるあのお巡りさんがやはりピストルを下げておられるが、あのピストルを行使せざるを得ないような場合に正しく行使した事件が幾つおありになるのか、これを伺いたいというふうに思うのです。それから特に前の方の場合に伺いたいのは、勤務中でなくて、何だか私は専門家でないから俗語で言いますが、下宿しているお巡りさんは寝ておるときにも自分の枕許にピストルを置いておるらしいのですが、そういうことをしてそうしてその必要が生じてこれを正しく行使したという事実があるならば、その事件が幾つあつたのかそれを一つ。それで三つになるわけです。一般に警察官が絶えずあのピストルを腰にしていなければならないという場合に遭遇して、これを正しく行使した場合が幾つあるか。又特に勤務中のみならず家に帰つてまで、警察におるときは私は警察にピストルを置いておいたらいいじやないか、それを一々家に持つてつて家でゆかたを着て飯を食つておるときにも傍に置いて直ちにそれを行使しなければならないような場合があつてこれを正しく行使した件数が何件あつたか。最後に交通整理のお巡りさんが正しく行使しなければならない場合があつて正しく行使した場合が何件あつたか、それを伺いたい。
  92. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 只今のお尋ねでございますが、正しく行使しなければならなかつたかどうか、行使した件数については調査がわかると思いますけれども、正しく行使しなければならなかつたかどうかということについては調査が届いていないと思うのでございます。  又家に帰りましても警察官にピストルを携帯いたさせておりますのはいつ非常の場合におきましても直ちに必要なる配置につき、勤務ができるということのために持たしておるのであります。交通巡査についても同様に考えておるのであります。今の正しく行使しなければならなかつた事件数というのはちよつとわからないと思います。
  93. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 わからないでいいというふうにお考えですか。
  94. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) わかればわかつた方が結構と思いますが、なかなか調査がむずかしいので……。
  95. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 交通巡査の場合は……。
  96. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 交通巡査の場合も今申上げましたように、必要なる場合に他の必要なる配置につき、勤務につき得るということのために持つておるのであります。
  97. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この点は非常に重要だと思うのでもう少し具体的に伺わなければならないのですが必要以上の武器は警察法の全文に示されておるところの国民の自由の権利を侵害する虞れが多分にあるのだということは、十分御認識になつておることだと思うのです。如何ですか、その点法務総裁なり何なりから。
  98. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 必要以上の武器ということになればこれは持つ必要はないと出思いますが現在はこの程度の武器は必要であるという考えの下に持たしておるわけであります。現在の程度の武器というものは職務を執行して参る上において警察官にとつては必要である、こういう見地から持たしておるわけであります。
  99. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それを判断するのは誰ですか。この程度の武器が必要にして最小限度である、国民の自由なる権利を侵害しないという判断をするのは誰ですか。
  100. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは法律によつて持たしてあるわけであります。
  101. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その法律を制定するのは誰ですか。
  102. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは国会において御制定になつておるのであります。
  103. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それを伺つて安心したのですが、それを国会が判断するために只今の資料を要求いたします。もう一遍念のために申上げますが、警察法、それから警察官等職務執行法というのですか、で、我々は当時この法律が制定されるときに反対意見を述べて置いたので、法律を施行せられるときには、反対意見に聞くべきものがあれば十分これは施行せらるる場合にお聞きになつて参考になられることだろうと冠は確信いたしますが、警察官が拳銃を使用しなければならない場合であるということを警察官が認定するように、この警察官等職務執行法というのはできておりますね。ここが非常に大きい問題があると思うのです。これは法務総裁も十分御了解になつておると思いますが、警察官が拳銃を使用する場合、その判断を誤つておる事例が甚だ多いのです。例を挙げよとおつしやれば直ちに例を挙げますが、或いは法務委員会で調査しましたものの中にも静岡県で、この警察官等職務執行法に従えば、非常に重い罪を犯した前科があるか或いは現行犯であるかという場合に逃走を防止するために発射することができるというふうになつておるのに、前科もなければ又重大なる犯罪の、現行でもない人に向つて発射してこれを殺しておるという場合がある。これについて我々が現地に行つて調べて見たところが、確かにその直接の監督者である警察署長も、この場合の判断が正当であつたというふうにすることはできないというふうに言つておる。それから私は念のために、そういう重大な犯罪でも現行犯でもない、まあちよつとした与太者程度のものを射つて殺しちやつた、それで、殺した警察官に私が念のために質問してみたのです。つまりその人のお墓に一遍でも行つたことがあるかどうかということを聞いたらそういうことはない、気の毒なことをしたとは思つていないらしい。自分は多少判断を誤つて一人の人を殺したのに、普通の人間で教養のある人間ならこれは誠に気の毒なことをした、法律では処罰はされないけれども併し人間として相済まんことをしたと言つて、これはお墓に行つて頭を垂れるくらいの、そのくらいの人情を持つて欲しいと思いますが全然持つていない。私からお参りしましたかと言つたらお参りはしませんと言つて平気な顔をしておつた。これは非常に重大な問題であつて只今法律ではその警察官がこの場合に拳銃を使用する十分なる根拠ありと判断して使用するというのだけれども、これは極めて主観的な要素が強い。私どもは直接に反対をしたときて、これが客観的にそう認められる場合にどういうふうに思う、客観的な要件をもう少し重く見て頂きたいということだつたのだが、残念ながら多数で以て……この主観的な要因で以てこれが使用される場合には、必ず主観的な判断が正しかつたかどうかということもチエツクする責任がその当局にあると私は考えるのです。それをチェックする責任がないというふうにお考えになれば、どういうふうにお考えになるのか。個々警察官が拳銃を使用した、その使用は十分なる根拠を持つていない、正当な使用であつたかどうかということを本人がそのとき使つただけでなしに、そのときの警察署長がそれについて判断するだけではなくて、それについて絶えずそれが正しい使用であつたか、ないかということを調査するチェックの責任法務総裁なりその責任者なりはお感じになつておられるのか。あると認めておられるのかないと認めておられるのか。
  104. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は就任以来警察官のピストルの使用ということにつきまして、これはその被害の及びますところ国民の基本的人権に関係するところ非常に重大でありまするのと、それからこの使用が誤つて使用されましたる場合においては回復すべからざる損失を生ずるものでございますから、これにつきましては、十分最小限度の必要の範囲にとどめるべきである、こういう根本的な考えを持つてこれらの治安に当つておるわけであります。今日の法制といたしましてはお話の通り警察官等職務執行法におきまして武器の使用には一定の限度を設けておるのでございますがこれは決してこの警察官の主観的判断のみによるという趣旨ではないのでございまして、警察官等職務執行法第七条「警察官等は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、」これはひとり主観的判断において相当な理由ありと認めるばかりでなく、これを相当な理由と認めるについ客観的な根拠がある場合、こういう意味に解釈して規定いたしておるわけであります。かような場合におきましても、武器を持ち得ると否とは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において武器を使用する。こういうふうに規定をいたしておるわけでございますから、厳重に濫りに亘らないように留意をして運用されておるものと期待をいたしておるのであります。併しながら往々にしてお示しの通り濫用に亘つたと認められる事態が発生いたしておるのは極めて遺憾でありまするが、これらの事案はいずれも検察庁に送致せられまして法律上の手続に付せられる次第でございまするが、検察庁におきましては特に愼重に取調をいたしまして、正当なる理由であるということが証明された場合におきましてはこれは当然不起訴になつておるのでありまするが、併し多少なりとも濫用に亘つておるという疑いのあるものにつきましてはすべてこれを起訴いたしまして、そうして裁判所の公正な御判断に委ねるという態度をとつておる次第でございます。
  105. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点についてなお伺つておきたいのは、今のようなお答えであることは私も甚だ満足するところでありまするが、そうであるとするならば只今お答えは、個々のケースにつき正当な使用であつたかないかということについては、そういうふうにして結果が出るということで満足することができると思うのでありますが、併し最初に申上げた現在の警察官の武装が過剰なりや過剰でないかということを国会が判断するについては、個々のケースにつき不当なる使用であれば検察当局がそれに対して処分をしておるというだけでなく、全国に亘つて全体において正当なる使用として行われたものがどれくらい、それから正当だと認める理由なくして不当に使用されたパーセンテージがどれくらいあるかということは一法務総裁なり警察責任者なりはそういうことを感じておいでにならないとしても、国会はそれについて絶えず監視しておる必要があると私は思うのです。そうでないと、この現在の武装力が必要の限度を越えていないか越えておるかということもやはり我々の主観的判断になつてしまいます。具体的に統計的な数字に基いてこれだけ正当に使用しなければならない場合があつたということであれば、これは確かに過剰ではないということになるし、正当に使用しなければならない場合が殆んど全然なかつたということになればこれはその必要がない、過剰であるというふうに判断することが論理的なんです。ですから国会としては、この警察法改正するという今の任務を良心に基いて遂行するためには、現在の警察機構において特にこの武装が過剰なりや過剰でないかということを判断するためには、正当の理由に基いて使用した件数が何件あるか、そうして不幸にして正当の理由に基かずして使用した件数が何件あるかということを伺つておかなければならん。先ほどの御答弁では、例えば交通巡査というのですか何というのですか、ああいう方がやはりどういう不時の必要があるかも知れないからピストルを持つておるというだけのお答えでは、どういう不時の必要があるかも知れないから機関銃を持つておるということにもなるのです。ですから現にこういう必要があつて、こういうふうに正当に使用しなければならなかつたという事実を我々の前に出して下さらなければ、国会はそれが必要な武装であるかないかということを判断することができない。單に主観的に如何なる必要があるかも知れないからというのでは、我々が金を持つておるのだつてよそへ出ればどういう必要があるかも知れないから一万円持つて出たらよいか、或いは千円持つて出たらよいか、まあ余計持つておられる方は余計持つて出るからよいでしようが、一年を通じてこれだけの金が必要があるということでも個人の場合にはその見当でよろしいけれども、国家としてはその見当ではなくして、その必要に応じて国家としては過剰な武装であるか必要な武装であるか、過剰な武装であるならば国民の基本的人権を侵害するものであると見なければならないが先の御答弁では只今の数字を望ましいということでありましたが、我々としてはそういうものが必要でありますのでお示しを願いたいと思います。
  106. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御趣旨はよく了解いたしましたのでできるだけさような資料を集めるように努力いたします。併し何分にも全国に亘る多数の自治体警察を含んでありますので……。
  107. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 国家警察だけで結構でございます。
  108. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 国家警察だけならば割合に早いと思うのですができるだけ早く成るべく御要求を網羅するような資料を準備するように努力いたします。
  109. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その資料を拝見した上でなお伺いたいと思うのですが、勿論フエアーな資料を出して頂くと思うのですが、つまりこれは今法務総裁法務総裁のお立場としてばかりお考えになつておるのではなくて、第一流の政治家としてお考えになつておることだと思うのですが、警察を大きくしさえすれば国は立派にはならないですよ。そのために国民の人権が圧迫され侵害されれば実に惨めな国になつてしまうので、これは法務総裁のステイツマンとしての本意ではないと私は思うのです。ですから今の数字を拝見すれば事実は交通巡査があのピストルを腰に下げておる必要があるとは私の直感では信じられないのです。そうしてあれがあるために交通整理の職務が円滑に行われるかない方が円滑に行われるかいずれであるかということは、私は少くとも議論の余地があると思うのです。議論の余地がある場合には国会はそれを判断しなければならん。そのために必要な資料はやはり必要なんです。そうして若し法務総裁がステイツマンとして、この警察法改正するときに、五千人なり何なり殖やす場合に、同時に現在の国家警察もピストルを下げておる必要はない、あの警察署にピストルを下げて置けばよろしい殊に交通巡査はピストルを下げておる必要はないというような改正をここへ出して来られれば、国民の間に警察に対する信頼を高め民主警察の発展を著しく促進するということであるかも知れない。そうすれば我々国会はそういう修正をなすべきであるというように考えるのです。その意味で今の数字を是非拝見したいと思うのです。  それから第六に伺いたいのは、警察官の人員を殖やすこと、又機構改正すること、のみならずその教育のレベルを高めること且つ又決して過剰なる武装をさせないことというような要件と並んで、それから又その配置を誤まらないことというようなことと並んで必要なことは、この警察官に対して警察官の職務を遂行するに足るだけの待遇をしておるかどうかということがあると思うのです。この点について率直に申上げて人数を倍に殖やすことよりも待遇を今までの倍にした方がよいのではないかという世論が世間にあります。只今私の申上げておるこの七カ条の質問はいずれも多くの国民の意見を聞いて国民が知りたいと思つておることを伺つておるのですからどうかそのつもりでお聞き願いたいのですが警察官の数を殖やすよりむしろその待遇をよくしてくれた方がよいのではないか、そうすれば一人の警察官の待遇で三人以上の能率が上るのではないかという意見が随分民間にあります。この点についてどういうふうにお考えになつておるか、現在の待遇で十分とお考えになつておるか、それともこの待遇をこういうふうにして改善するつもりだというようにお考えになつておるか。なかんずくこの問題に関連して伺いたいのは、警察関係において非常に汚職或いは不正の事実が最近不幸にして頻発しています。海上保安庁などの場合にもどこまで延びろのかわからないということを新聞は報道している。それから又特に国家警察においても、或いは新宿などの警察の腐敗について警視総監のお答えというものも甚だ苦しいお答えではなかつたかというふうに心配しています。それから又この地方自治体警察が腐敗しておる場合が非常に多いと思うのです。これらの原因の一つには、私は警察官の待遇が人たるにふさわしい待遇でない、警察官たるにふさわしくない待遇であるためにそういう誘惑に乗り、そうして或いは汚職或いは腐敗ということが起るのじやないか。そうして有力者に対しては卑怯未練な臆病な態度をとつてそうして弱い民衆を守るためには少しも勇気を持たないという、日本の旧来の強い者には弱く、弱い者に向つては強いという実に男らしくない恥ずべき警察官の態度というものがあるのじやないか。この点について私はこの五千人増員されるよりも待遇を改善した方がいいんじやないかと思うのですが、これらの点については法務総裁なり、そのほかのかたがたはどういうふうにお考えになつているか。
  110. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 公務員を徒らに増加するよりも待遇の改善によつて能率の向上を期したらどうかこのお考えにつきましては、私も原則的には全く同感に存ずる次第であります。但し御承知通り国家地方警察の職員は国家公務員でございますので、この待遇の問題につきましてはおのずから他の公務員との釣合ということもあるのでございまして、これだけを切離して取扱うということは困難な事情にあるわけでございます。政府といたしましては行政整理ということと関連いたしましてやはり早い機会において公務員の待遇の問題を再検討する必要がある、こういう考えを持つておるのでございまして、その際におきましては当然警察官につきましても待遇の問題についての再検討を行うべきである、こう考えております。
  111. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでは只今お答え趣旨に副うて、もう二つの点を伺つておきますが国家公務員と照し合せてというお答えでありましたが、国家公務員の方は総理大臣も絶えず言われておるようにできるだけ人員を整理して、そうしてこの待遇を改善したいということを言つておられますが、その際何故にこの警察方面だけにおいては五千人人数を殖やして待遇はそのままにして行くという方針をとられるのか。やはり国全体の方針で国家公務員について人員はできるだけ整理してそうして待遇をよくして行ごうというお考えであるならば、この警察法においてもやはり人員を殖やすのじやないむしろ減らしてそうして待遇を改善すべきであるというふうにお考えになりませんか。  次に伺いたいのは、警察官が汚職或いはその他の不正行為を金銭上の理由から行なつた事件がどれくらいあるのか、そうしてそれが明らかにその待遇が不十分で生活ができないためにそういうことになつたという事実がどれほどあるのか、この問題についてどれほどの調査をなさつているか、そうしてその調査の結果があれば示して頂きたい。
  112. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 一般に行政整理をやつてそれによつて待遇の改善を図つて行くという、こういう方針をとる以上は、警察についてもやはり人員の整理ということを考えるべきである、それを逆に殖やすのは如何にも釣合いがとれない話ではないかという御意見でございまするが、この点は警察につきましては実は特殊の関係があるわけでございまして、一般の行政事務につきましては統制の撤廃その他に応じまして相当減少の余地を生じつある、こういう実情だと存じます。然るに警察官につきましては犯罪の増加によりましてなかなか減少をするということはできない。又国家地方警察の当初の定員を決定いたしまする際にいろいろ考え決定をされたと思うのでございまするがその後警察民主化に伴いまする警察官の再教育等に即応いたしますために、常時二割以上の人員を再教育のためにとられるというような事態を生じておりまして、現在の国家地方警察の配置といたしましては、絶えず二割以上のものが教育に持つて行かれてそのあとは補充ができないという実情にあるわけでございます。そうして現実に各警察署におきまするその勤務の職場或いは駐在所等はその期間止むを得ず代りを置かずにそのまま埋めずに放置してある。従いまして、地方の駐在所等におきましてはその間止むを得ず警察官の不在中はその家族の者が代つて本署との事件についての取次をして窮状を糊塗しておるというような実情でございまして、とにかくいろいろ考えまするに、これを整理をするどころか差当つてそれだけはどうしても殖やさないというと今日治安の要請に応え得ない、こういう意味におきまして最小限度の増員をいたしたというわけでございます。勿論これにつきましては当初国家公安委員会におきましてはもう少し殖やしたいというような希望も強く述べられておつたのでございますが、政府の一般の行政整理というような考え方と睨合せまして、合理的な根拠ある要求であるとは考えましたがその要求をできるだけ抑えてこの程度にとどめたいという次第でございます。
  113. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あとの方の点について。
  114. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 国家地方警察警察官につきましては、汚職いわゆる贈収賄といつたよう事柄で事件を起しましたのはこの三年間に全く記憶がございません。一件もないとここで断言できるかどうか私疑問に思いますけれども私のみならずここにおりまする部長も記憶にないと言つておりますからさよう御承知願いたいと思います。(「そんなことは絶対にない」と呼ぶ者あり)
  115. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今の御答弁が実に問題の真相を明らかにしておると思うのです。法務総裁どうお考えになりますか。さつきから伺つておるのも私はできるだけ礼儀を守つて失礼なことには亘るまいと思つておるが、事実拳銃が正当に使用されていたかいないかという調査を望ましいという程度考えで、拳銃の使用を国会に対して御希望になつておる。それから今の御答弁、これはまあ僕がああいうふうな答弁でもしたのならだが、いやしくも仮にも国家地方警察の長官という方がああいう御答弁をされておる。これは委員各位が十分にお考えを願いたいというふうに思うことであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  そうしてこの際なおこれは警視総監に伺いたいと思うのです。警視総監の管下において警察官が無銭飲食をしておる事実があるかないかということについて、あなたはどの程度のお考えをお持ちになり、どの程度の調査をなすつてどういう結果をお持ちになつておるかということを伺います。
  116. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) 各位に申上げますが警視総監は参考人として来て頂いておるのであります。
  117. 田中榮一

    ○参考人(田中榮一君) 只今警視庁の管下の警察官で無銭飲食した罪がどれくらいあるか調べたものがあるかというお話でございまするが、私は絶対にないとは申上げないのであります。多数の警察官のことでございますから或いは不心得な警察官がありまして、業者に大変御迷惑をかけたり無銭飲食をしたというような事実があつたかと存じます。併しこれらにつきましてはその都度(「ここは国会ですよ」と呼ぶ者あり)事実を調査いたしましてそれぞれ措置をいたしておると考えております。
  118. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は実に感情的にならざるを得ないというくらいに憤慨していますよ、国民の代表の一人として。法務総裁もどういうお考えを持つておいでになるか。こういう方々と御一緒に、いやしくも我々の尊い憲法の下にできた警察法を実際その通り実行することができるのか。国民の自由と安全とを守るための民主警察というものを遂行するのに、只今のような御答弁で国会が満足するというふうにお考えになつておるかどうか。これは私は只今警察官の無銭飲食なんという問題には実際触れたくないのです。併し待遇が非常に悪ければそういうことが事実起るのです。我々は到る所でこういうことを聞きます、又見ます。警視総監も本当に良心をお持ちになるならば、私はそういうことをお聞きになつたことかあるだろうし、御覧なつたこともあるだろうと思う。いつかも私は警視総監に警視庁を外から御覧なつたことがあるかと言つて伺つたのですが、どうか外から御覧になつて頂きたい。警察官の方からばかり御覧になると、そういうことは絶対にないとは申上げかねるなんて、それはそうです。哲学的にいえば、併し問題は哲学的な議論じやないのです。世間のほうから見れば、ないとは申上げかねるけれどもなんという程度の問題かどうかということは、あなた方が本当に一人の市民として生活をなさる、そういう気持でおありになるならば、私は全く違う御答弁があるだろうと思う。少くともこの改正法律案を我々が審議するのにその材料は私は必要だと思います。委員の各位及び委員長の御判断に従つて少くとも警視庁の管下において警察官が、そういう言葉を私は使うことは非常に遺憾といたしますけれども無銭飲食をした場合がありはしないかという問題について、調査の方法は私はあると思うのです。警察官を侮辱することなく、警察官の威信を害することなく近代的な合理的な調査を行う方法は今日の進歩した技術を以てなすことができろと思うので、その調査はして頂きたいと思うのです。そしてそれがその待遇改善のための方に予算を盛ることが必要か、それとも人間を殖やす方が必要かということについての私は良心的な判断の基礎になるものだと思います。お笑いになつている方がいるようだが私は良心に基いてそう言つているのです。実際暮せないような警察官を殖やしてそして無銭飲食をやるようなことかあつて、どうして民主警察の任務を果すことができますか。だから簡單に五千人殖やしたいとかいうような問題ではない。この無銭飲食が実際警視総監が今おつしやつたようにまま起るような程度ならば私は決して問題にしません。併しまま起る程度じやなくて必然的に起つて来るような理由があるならば、私は人数を殖やすよりも何らかの方法を講じて待遇を改善した方がよろしい。その判断をするための資料を是非見せて頂きたいと思います。
  119. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 今羽仁委員から非常にお叱りをこうむつたわけでございますが現実の問題といたしまして警察官が汚職的の行為がある、或いは職権の濫用をする、或いは一例として無銭遊興的なことがある、こういうことはこれは必ずしも否定はできない事柄と存じます。但しこれがそれでは仮にあつた場合におきまして、それは待遇が特に悪いからそういうことができておるかどうかということになりますというと、これは必ずしもそれだけが唯一の理由であるとは言い得ないのではないか。と申しますのは、警察官の給与というものは、今日一般の公務員から比べますと決して特に警察官だけが待遇が悪いというようなことはないわけでありまして、むしろ他の公務員のペースに比べますると多少特別な考慮によつて号俸も変えてあるわけであります。決して警察官だけが特に悪いということは言い得ない、こう思うのであります。それなら涜職その他いろいろな不在についての調べでございますが、これは現に国家地方警察といたしましては、こういう事柄はどうしてもただそういう事件があつたというだけでなくてあつたら恐らく問題となつて、そうして適当な行政上或いは法律上の処分をいたすということになつておるわけでありますが、その処分をなしたということについて、現在の国家地方警察の幹部がそういつた事柄の記憶をいたしておらない、これも事実記憶をいたしておらないので記憶をしておらないとお答え申上げたと思うのであります。それでは記憶をしておらないのは、これはそういうことは絶対にないからであるかというと、これは本人からも申上げました通り絶対にないという保証はなし得ないだろう、こういう意味でございまして、ただこの際どのくらいあつたかという御質問でございましたから自然記憶をしておらないというお答えをいたしたと思うのでございます。併し只今の羽仁委員のお話は非常に事をわけてのお話でございましてそうした事柄について監督的な立場にあるところの国家地方警察の幹部として、将来についてそうした事案の有無並びにどの程度あるかということについての概略或いはその内容等について十分調べをしてくれ、この調べをすることが将来の警察制度改善という上から必要ではないか、こういう誠に事をわけたお話でございまして、私はこれにつきましては公安委員会のほうに対しまして十分に御趣旨のあるところを伝えまして善処を要望いたしまして、できるだけ御趣旨に副うような調査を得たいとかように考えておる次第でございます。只今の問答を伺つておりましたところでは、多少羽仁委員の御理解になりたような悪意のある答弁或いは誠意のない答弁ということではなかつたろうと思いますので、十分国家公安委員としてはその職責から考えまして御趣旨のような調査はできるできないにかかわらずこれをなすために努力をするそうして必ず努力をすれば或る程度の調査はでき得るこう私は考えまするからそういう運びを取るようにいたしたいと存じます。
  120. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今の御答弁は甚だ私も幸いとするところでありますが、どうか私の申上げておることは、憤慨したのは決して特定の個人に対して憤慨したのでなくて、そういう問題がおかれておる現在の状況に対して客観的に憤慨せざるを得なかつたのでありまして、私の願うところは、警察官が本当に民主的な警察官として民衆の信頼を受けてそうしてその機能を十分に発揮するということにあるのです。  今の御答弁で満足をいたしますが、この際なおもう一言付加えておきたいのは、どうか近代的な調査をやつて頂きたいと思うのです。それで近代的な調査は今日の社会科学の進歩の上でいろいろな方法がございますからそれを十分御研究になりまして、そうして例えば旧式な古い形ですと、警察官のかたにお前は無銭飲食をしたことはあるかというふうにお聞きになればないとお答えになります、これは近代的な調査の結果とは申せないのであります。それから又飲食店へ行つて警察官に無銭飲食をされたことがあるかというふうにお聞きになるとこれもないと答えます、これも近代的な調査ではないのです。問題はその事実を警察目を侮辱することにもそうして又警察官の威信を害することにもならないで、そうして客観的にこの事実を捕える方法があると思うのです。そのどういう方法をお採りになつてこれをおやりになるかということの御研究をできるだけ近い将来に願いたいというふうに思います。  それから警察制度改正について我我承知しておるところでは、敗戰後間もなくニューヨークの警察関係しておられた方であつたかバレンタインという方が日本に来られて、そうして警視庁の改革の顧問というようになられた事実がございます。初め我々は新聞で読んでおるところではこのバレンタインといわれたか、バレンテインといわれたか、この顧問の方は相当日本に長くおられて、そうして警視庁の民主化について具体的な提案をなさるように期待をされておつたと思うのです。ところが我々の考えておつた予想された期間よりも非常に早く帰られた。そうして帰られる時に日本タイムスでありましたかにはこういう意見を述べられていたことを私は記憶しているのです。それは非常に不幸な御意見ですが、警視庁を民主化するなんということはとてもできない、自分はその責任を負えない、だから自分は予定の期間滞在をすることができないで早く帰るのだと、私は確かにこの記事を読んだととがあるのです。若しそういうことの事実があつたとすればそれは一体どういうことであつたのか。当時の最初に敗戰直後に日本警察の民主化に盡力されようとされたこのバレンタインといわれたか、バレンテインといわれたか、この方との交渉の経過、そうして又それが帰られる時にどういう意見を残して行かれたのか、これをこの改正の際に参考にしたいと思いますので、これを伺つておきたいと思うのです。若しそこにおありになるならば一応伺います。
  121. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 私から若干その間の事情を存じておりますから申上げます。バレンタイン氏はニユーヨークの警視総監をやつていらつしやつた方でありまして私の承知しておる範囲では、総司令部から委嘱を受けられまして日本警察制度改正のための調査においでになつたように私は承知しております。それでお帰りになります際に総司令部に対して報告をお出とになりましだ。その報告は先般地方行政委員の皆様方にお配りいたしました。逐条解説要旨だけを拔萃して載せてございます。
  122. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今私が述べましたような、日本警察の民主化ということはとてもできないという意見を懐いて帰られたという資料はお持ちありませんか。お持ちなければ私の方から持つて来ましようか。
  123. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 私の関します限り承知いたしておりません。
  124. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 確かにそういう意見を述べて帰えられた。でそういう意見を述べられたということに我々国民としては非常に深い憂慮の念を持つたのです。併し当局の方々がそういう資料を御覧にならない、又は御覧になつても何らの御感想がないということであるならば、それを我々の委員会における判断の材料とするだけであります。  この問題と関連して近代的な警察観念では、この警察が対象となし得る犯罪というものはローカルなものであるという考え方があります。これについで法務総裁はどういうお考えを持つておられるか。即ち過去の時代においてはこの警察が対象とし得る犯罪というものが必ずしもローカルなものとは考えない、全国的なものをも警察の対象となし得るという考え方が過去にはありました。過去と言つてもほんの六年ばかり前までにはそういう考えがございました。で警察の力によつて一定の政治的主張を暴圧することができるというような考え方が六年前まではあつたのです。治安維持法がその根拠です。併し現在の考え方によれば警察の対象となし得る犯罪というものはローカルなものである、全国的なもの、全国民の間にそういう動きがあるものはもはやこれは警察の対象ではなくして政策の対象です。ポリスの対象ではない、ポリテイツクスの対象である。これは政治的にその原因が除去されなければ決して解決されるものではないということは、現代の警察に関する理論の明らかにしておるところです。この点について併しこの現在の警察法改正の際にどういうお考えの上に立つておられるか、これを伺いたいのであります。
  125. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察につきましてはすでに警察法の第一条に明らかにされております通り警察というものは国民生命身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安維持に当ることがその趣旨である、こういうことになつておるのであります。これ以上に国内の世論を動かすとか或いはあらゆる制度についての改革の空気を作り出すとなそういつた事柄はお説の通りこれは警察の任務を越えたものと考えております。で、戰争前の警察におきましても警察本来の仕事というものはやはりかような消極的な面に限られておつたものでありまするが、併しいろいろ当時の国内事情によりまして治安上の要請、丁度国防上の必要ということがあらゆる政策の基礎、原動力となつたように、警察官僚の治安上の必要という、こういつたことを根拠といたしました一方的な意見が相当政策を動かす力があつた、こういう事実はあるのでございまして、これはいわゆる警察国家的なあり方として、現在の警察法においては嚴に排除をいたしておるところであります。かような警察法の新らしい建前、これは改正に際しましても飽くまで堅持せられておるという考えでございます。
  126. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私まだこれらの点について多くを伺いたいと思うのですが時間の御都合等もあることでございますから、この連合の委員会を更にお開きを下さることができるならば、本日はこの程度で以て次回に譲らして頂きたいと思います。
  127. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) 羽仁君に申上げますが、法務委員長とも相談しておりますがすでにもう二回開きました。この前は法務委員誰も出席がなかつたので一日空費してしまつたという事情で、もう御承知通り会期も幾ばくもありませんので我々の審議も急がなければならないという関係で今日一日にして頂きたい。
  128. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると大分遅くまでかかるかと思いまするが。
  129. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) まあ成るべく簡單にお願いいたします。    〔相馬助治君発言の許可を求む〕
  130. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) 議事進行ですか。
  131. 相馬助治

    ○相馬助治君 議事進行です。只今羽仁委員からこの連合の委員会をもつと回数を殖やしてやつて欲しいということに対して、委員長から速断的にこれをお断りするような意見が出ておりますがこの警察法の一部改正ということは実に大きな問題であつて、單に警察法云々の問題でなくて警察の問題は国の性格の問題に響くことでございますし、且つ又この重要な法律案地方行政委員会だけに付託されておるということについては相当そのこと自身にも問題があろうと私は考えておるのでございます。そういうような意味で特に法務委員会の委員の希望でございまするので、是非とも今の羽仁委員の動議を委員長は取上げられてその希望を協えさせてやりますように、私は地方行政委員として委員長に希望いたします。
  132. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) 相馬君に申上げます。この警察法につきまして法務委員会から連合審査をお申込になつたときに地方行政委員会で皆さんにお諮りをいたしました。そのときに小笠原委員から御発言がありまして、この前の地方公務員法案の場合のこともあるから成るべく連合委員会はそう長くやらないで欲しいという動議が出ております。皆さんもそれは御承知通りであります。そこで法務委員長とも御相談をしまして、そうして大体二日ぐらいにしましてこの間も開きそれから又今日も開いておるのでありますから、今日は御辛抱して頂いてもう少し続けてやつて頂きた、と思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  133. 相馬助治

    ○相馬助治君 これはちよつと速記をとめて頂きたいのです。
  134. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  135. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) では速記を初めて下さい。
  136. 吉川末次郎

    ○吉川末次郎君 相馬さんのお申出も羽仁さんのお申出も承わりましたが、前にそういう連合委員会について議決があつたかどうか私よく記憶いたしておりませんが速記録に残つているだろうと思います。併し委員長がおつしやつたことも私は相当道理があると思われる。それでこうしたらどうでしようか。羽仁さんもまだいろいろ質問したいとおつしやるのですが、相馬さんがおつしやる通りこれは非常に重大な法案ですから十分に我々は愼重に審議しなければならんと思いますし、地方行政委員以外のかたで御意見のある方には残るところなく十分にその御意見を吐露して頂くということが我々も又望むところなんですから、併し連合委員会についてはそういう議決がありましたら、委員以外の議員といえども随意出席してその意見を述べるということは国会法上許されていることなんでありますから、今日は委員長がおつしやる通りにできるだけ言わんとせられるところは言うて頂いて、なお後日申述べたいとお思いになつている点は、地方行政委員会が開かれたときに羽仁委員が更に重ねて御出席になつて、そうして特に委員長の許可を求めて御発言になるという場合には、我々も勿論賛成でありますからそういうように取運んだら如何かと思うのです。  それからなお先ほど羽仁委員からニユーヨークの警視総監でありますか、バレンタインとか何とかいう人の調査報告等についての御発言がありましたが、この警察法が制定されたときには私が委員長をいたしておりまして若干の記憶も今日なお持つているのでありますが、この加藤陽三君の図書の中に集録されておりますもの以外に、アメリカから参りましたアメリカの警察行政のエキスパートのいろいろな言はそれぞれ飜訳されて活版に附されてその当時の委員に配付され私も今日なお保存いたしていると思いますが、この加藤君の図書に集録されているもの以外に多数あります。それからそういうものがあつたということ、又御必要があれば羽仁君が更にこれ以外のそうした資料を御覧になる御機会もおありになることだろうと私は思うのであります。それから日本タイムスの記事云々とお話になりましたが、これは羽仁君非常に御記憶がいいことだろうと思いますが、併しそういう新聞記事の記憶というものはもう大分年月がたつておりますから、必ずしも羽仁君がお言いになつ通りであるかどうかはわかりませんが、我々が参考になるような資料があつたならば羽仁君の方でそれを御提出になつて我々の参考にして頂けば大変結構でありまするし、併し新聞のインタビユーなどは与太なものも相当あるのでありますから、そのバレンタイン氏の言として我々が第一に資料として取上げるべきものは、オフイツシヤリーにその人がマツカーサー元帥に提出されたところのレポートであるとか或いはそれの飜訳であるとかいうようなものが、私は権威あるものとして我々が資料にすべきものであつて、数年前の單なる新聞記者とのインタビユーの而も印象のヴエイグになつているところのものを直ちに取上げるということは少し不正確じやないかと思うので、極めて信憑すべきものでありますならばどうぞ羽仁君からこの際出して頂くというふうに委員長からお取計らい願いたいと思います。  それと今の羽仁君の質問の続行については、私はそのようにして頂くのが妥当じやないかと思いますので所見を申上げたのであります。
  137. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は続行したいという羽仁さんの動議に賛成しているのです。今吉川委員の発言はそれを修正して、続行は打切るけれども地方行政委員会に羽仁委員が個人的に希望ならば出て意見を述べよということですが、それは羽仁さんは言いたいことが言えるから内容的には何ら変らないようであるけれども実際問題として私はそれは大いに変つておると思うのですが、それで先ほどの羽仁委員の動議に私は賛成してもう一回お聞きして意見を附加えて申します。  第一、この連合委員会は幾日ということに理事会で決定したのか正式に、それを第一点委員長にお伺いいたします。それから第二点はこの問題について法務委員会の委員長はどういうふうに考えておいでになるか。法務委員会の委員長もこれで打切ること差支なしというならば又この問題は別であると思います。併し私は本法案は極めて重大であるという点に鑑みまして是非とも円満を期する上からも私自身が岡本委員長に対して比類なきまじめさを以て今日まで議事進行に協力しているものでありまするが、そういう意味を以て私は羽仁さんの意見に賛成して、もう一日でもよろしいからこの連合委員会を持つて欲しい、こういうふうに希望いたします。
  138. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 たとえこの連合委員会で二日となつておりましても、それは励仁委員がエツセンシヤリーに本質的に諸問題をいろいろ質問しおられますが、それに対する完全な回答があつて初めて私はそういうことを是認してもいいと思いますが、調査を待たねばならない、いろいろ調査して回答するというようなことを以て見ましても、私はどういたしましても連合委員会を開くべきだ、又法務委員と相談されて善処するようにされるのが、地方行政委員会の委員長としての私は責務であろうと思いますので、その点を申上げまして相馬君の動議に賛成するものであります。
  139. 鈴木安孝

    ○鈴木安孝君 最初法務委員会におきまして警察法の連合委員会を開くことに申出をいたしました際に、岡本委員長から、この警察法については会期も切迫していることであるし成るべく早く議事を進めたいからして、どの程度の法務委員会の希望であるかというようなことのお話がありまして法務委員会のほうにお諮りをいたしましたところが、その当時におきましては二回も開いたならばそれで我々の質問も終るだろうということで、実は何日までということはありませんでしたけれども成るべく早く連合委員会を閉じるというようなことで、その御承諾を得て連合委員会を開いたのであります。その後連合委員会を開きました第一回の際に丁度質問のありました伊藤委員、鬼丸委員が出席をいたされないために、そのときにはつい連合委員会を開くことができなかつたような、質問のできないような事情になつたのであります。そうして今日に至つたのでありますが、今日はその当時申出のありました鬼丸委員から先刻質問があつたような次第であります。続いて須藤委員、羽仁委員から質問が続けられたのでありますが、この御両君からは、実は質問があるということは委員長の私の方でも承知しないでおつたような次第でありますが、最初の連合委員会を開くことの申入をしました際には大体二日間ぐらいで法務委員のほうの質問は終るというようなことで、今日を以て大体この委員会を閉じるというようなことを岡本委員長のほうにも申上げておつたのであります。そういう次第でありますから只今吉川理事の提案されたようなことにおきめになつた方がよかろうかと私考えます。
  140. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 誠に御尤ものことであり且つ委員会の進行については全く両委員長の御判断にお任せをいたすつもりであるのですが、雲は私健康の都合もあり、且つ又皆さん先輩各位の質問を拝聴して恐らく満足し得るものと考えておつたのでございますけれども只今いろいろ伺いました間にも各委員がお聞き下さいましたように、私の質問に対して勿論非常に手数のかかるお答えなり御調査なりというものまで私は待つもりはないのでありますけれども。併し直ちに材料を頂戴してそれによつて満足し或いはそれによつて又伺いたいということもあると思いますが、進行上甚だ恐縮でありますけれども願えれば更に次回もう一回だけ。先ほどのお話で委員外発言ということもございますけれども、併し法務委員会との連合委員会の席上においてお尋ねをしたいというふうに考えておりまするので、どうか……。
  141. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) 各位に申上げます。連合委員会を開くや否やというのは地方行政委員会決定でございますから連合委員会ではいたさない筋合でございます。それでいずれ連合委員会を閉じましてそうして地方行政委員会を開きますからその際皆さんにお諮りをして決定いたしたいと思います。なお……。
  142. 相馬助治

    ○相馬助治君 それは少し話が変ですね。羽仁さんは、遅くなるけれどもこれで打切られるならばやる、そういう言葉で言つておられないが、病気されても倒れるまでやるという熱意を含めたような意味で遅くまでやると言つておる。この連合委員会を一時休憩して地方行政委員だけできめなくちやならないとするならばそこできめて何分の回答を羽仁さんに与える必要があろうと思う。さようお取計らい下さい。
  143. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) 羽仁さんに申上げます。若し今日やつて頂くということになればおやりになりますか。
  144. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 先ほど鬼丸さんが質問なすつた中でも慎重によく調べて答弁して貰いたいという条項もあつたし、それから伊藤委員の質問がまだ残つているように思うのです、伊藤さんが質問していないというような話。しますからもう一日延ばしてほしいと私たちは考えるわけであります。
  145. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) 御希望は承わつておきます。ただ鬼丸君は委員長から答弁を促して速記に明らかにとどめて置いて貰えればいい、こういう御博言で帰られました。なお伊藤君はこの前の連合委員会のときもお出にならない、今日もお出にならないのですからいつまで待つているわけにも行かない、こういう事情でございます。  なお、先ほど鈴木委員長からこの前の委員会を開かなかつたというお話でしたけれども、開いたのです。開きまして法務委員会から御質問がなかつたから、連合委員会のままで地方行政委員会委員の人が長時間に亘つて質問した、こういう事情でありますから御了承願つて置きます。  それでは暫時休憩いたします。    午後四時五十六分休憩    ―――――・―――――    午後四時五十九分開会
  146. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) 休憩前に引続き連合委員会を開きます。只今相馬君、中田君から御発言がございました羽仁君からの御要求のもう一度連合委員会を開いてくれというお申出、これを地方行政委員会の方では受け入れることにいたしまして資料が全部揃いませんでも多少揃いましたら時を見計らいまして二時間くらいの程度委員会を開くことにいたしたいと思います。それで一回限りで御勘弁を願いたいと思います。御了承願います。  なお羽仁君に対する答弁が一つつておりますから答弁を許したいと存じます。基本的人権に関する問題の部長が来ております。
  147. 中川淳

    政府委員(中川淳君) 基本的人権に関連いたしまして警察官の教養に関するお尋ねがありましたので、私から現在の教養の内容につきまして御説明を申上げます。  新らしい民主的な警察になりますために現在警察におきましては警察官の教養を非常に重視いたしております。その機構におきましても府県の警察学校、管区警察学校、警察学校の大学、非常に充実したものを持つておりまして、殊に本科、正科、或いは専科というような各種の科目をおきまして、現在におきまして初めて警察官になります者の教育といたしまして初任教育六カ月、それから巡査部長から警部補になります者それから警部補から警部になります者はそれぞれ管区学校、警察大学等におきまして同じく六カ月間の教養を受けることになつております。そのほかに警視以下の国警の全警察官は毎年一回三週間乃至五週間の現任教養を管区学校、或いは警察大学校で受けることになつております。更にそのほかに刑事専科或いは教養専科であるとか、或いは警備専科であるとか、それぞれの専門の研究をいたしますために六カ月乃至二カ月の専科教育を実施いたしております。これらの大部分自治体警察警察吏員も一緒に教養をいたしているのであります。  学校における教科目を言えというお話であつたそうでありますが、先ず府県の警察学校におきまして実施いたしまする六カ月間の初任科教養初めて警察官となる者のための教養を申上げます。
  148. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それは何か印刷したものがありますか。
  149. 中川淳

    政府委員(中川淳君) ございます。
  150. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それをあとで頂いて拝見いたします。
  151. 中川淳

    政府委員(中川淳君) 科目は今お申出がありましたから印刷したものを別に差上げます。その科目のうちで基本的人権の尊重について如何ような指導をしているかという御趣旨のお尋ねだつたと思いますが、やはり警察におきましては警察官の思想を中心の教育ということが大事だ、これは訓育という言葉で私ども実施いたしておりますが、例えば先ほど申上げました初任科の初めて警察官になる者のための訓育といたしましては警察官としての信念、職責の自覚、公衆の接遇、品位の保持、規律の厳守、民主主義の原理こういうような物の考え方の基調につきましての指導を六カ月間のうち三十六時間やつております。そのほかいろいろ消防、警務、警邏、刑事各種の実務の部門がございますが、御承知通り現在におきましては警察官といたしまして当然学ばなければならない日本国憲法、或いは刑法、刑事訴訟法、警察官等職務執行法、その他一切の法律におきまして基本的の人権の尊重ということがやはり基調になつておりますので、それらの基礎法学の修習に対しましても十分に基本的人権の尊重ということが教えられるわけであります。私どもといたしましては今日の警察官が文字通り意味の民衆のための公僕である、その公僕精神に徹することが最も肝要であると存じまして、先ほど申しました訓育における課目を主としその他の課目を従といたしまして、それらのすべての機会におきまして警察官の教官或いは部外の講師を求めまして、さまざまな角度からこの民主主義的なものの考え方を徹底するということに努めております。なお科外教育といたしまして各界の方、文化面の方、或いは宗教界の方、或いは芸術界の方、そういうような方に夜間などおいで頂きまして、そうした面から民主的な情操の陶冶ということにつきまして努力をいたしている次第でございまして、急激に古い警察官の頭が直ちに変つて参るということを期待することも間違いとは存じまするが、とにかく警察官の頭脳というものがこうした教養を通じましてだんだんと民主化いたしつつあるということを信じている次第であります。
  152. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 先ほどの委員長の御決定従つて私の残余の質疑は次回に譲らせて頂きます。只今の点について御説明範囲はよく了承いたしましたが、私の主として伺いたかつたところは、そういう教育の結果が現実の警察官に現在どういうふうに現れているか、これは警察官全員についてお調べになることは非常に大変だと思いますけれども、或る特定のランダムなり或いは何なりで特定パーセンテージの上だけでも、その基本的人権というものについてそういう教育を受けた結果どの程度の認識を持つておられるかというその事実の方も伺いたいというふうに思つているのです。これはあらゆる近代的に進歩した学校教育においては絶えずそういうことが行われております。そうして警察学校などにおいても必ずや近代の最も進歩した教育、学術的及びその専門家の意見を参考にしつつその学校をやつておられるものだと私は信じておりますから、従つてそういう結果の調査も絶えず行われているものと思います。昔のように一方的にただ教え込めば皆がそれを行なつているのだというふうな考え方の学校は民主的な学校ではないということは申上げるまでもありません。従つてその結果がどういうことになつて現れているかということも伺いたいと思います。  それからなお念のために伺つておきたいと思いますが例えば文学というふうなものについて現代の警察学校ではどういうふうにお考えになつているか。正科にお入れになつているか、或いは専科にお入れになつているか、或いはその夜間の講話程度でお考えになつているか。それから警察官はどういうものを読んでいるかという調査をなさつたことがあるか、読んでおられるものが基本的人権を理解させる、又はそれを進めるような読書をやつているのか。それとも單に法律の条文の末節に拘泥するようなそういう雑誌とか或いは極めて低級な読物が多いのか。そういう点についても十分関心がおありになると思つてそういう調査もおありになることと確信いたしますのでそれもお示し願いたいと思います。
  153. 吉川末次郎

    ○吉川末次郎君 議事進行について、今日は非常に時間も過ぎたようでありますが、なお議案について御審議を願いたいものが委員長の手許にあるようであります。それでこの改正案に対する審議につきましては先ほど大体おきめを願いましたように法務委員会との連合委員会を更にもう一度お聞きを願いまして、羽仁委員の質問及び応答を続行して頂き、なお法務委員のほうで伊藤修君等も申出があるそうでありますが、御希望の方がありますならば是非御臨席願つて意見を開陳して頂いて、我々が議決に際して重要なる参考に資することができるようにして頂きたいと思うのであります。それでそのように議事をお運びを願いたいと思うのであります。  なおこの機会に委員長に希望いたしておきたいことは、この法案はたびたび今日までに私も申しておりますように、今期国会におけるところの最も重要なるところの法案でありまして、この法案を如何に国会が議定するかということにつきましては国民環視の標的になつていると考えるのであります。この法案それ自体が警察制度改正として重大性を持つばかりでなく、却つて私も申しましたようにいわゆる吉田内閣の世間の俗語を以てすれば反動革命の先駆であるという意味においての政治的重大性を合せて有しておるのでありますから、このような重大な意味を持つたところの警察制度改正案を会期切迫せるところの閉会まぎわにおいて政府が我々に提案されたということにつきまして、甚だ我々は審議の上におきまして、政治的な見地からも不満足に考えておるものであるということは先に申した通りであります。それでどうぞ委員長におきましてはただ政府の意を迎えて、審議が不十分であるにもかかわらず最後の結論を出すということ戸時間的にしきりにお急ぎになるというようなことの絶対にないように、どのようなことになりましても十分の審議が盡され、十分の民意が国会に反映することができるような議事の取運び方を御努力して頂きたいということをこの機会に合せて希望いたしまして、本日はこの法案に対するところの議事はこれをもつて打切つて、そうしてなお先刻来今日の予定の審議議案になつておりまする地方自治法の一部改正案、即ち表示都の部局の改正に関する法案につきまして東京都からその係の吏員の方が参考人として出席して待ちうけていられるようでありますからそれに対する討論採決等は後日のことといたしましても、改正を要求しておるところの東京都の立場だけをこの機会に、大した時間はかからないと思いますから聞かせてもらうというようなことでもつて本日は、まあこれは連合委員会の後でありますが混線しましたが地方行政委員会だけでありますが、このように一つ委員長において議事の取運び方をお願いいたしたいと思います。
  154. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) お諮りいたします。吉川君から今日はこの程度で連合委員会を散会したらという御動議がございましたが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 岡本愛祐

    ○委員長(岡本愛祐君) それでは散会いたします。    午後五時十三分散会  出席者は左の通り。   地方行政委員    委員長     岡本 愛祐君    理事            吉川末次郎君    委員            石村 幸作君            岩沢 忠恭君            安井  謙君            高橋進太郎君            相馬 助治君            中田 吉雄君            西郷吉之助君            石川 清一君   法務委員    委員長     鈴木 安孝君    理事            鬼丸 義齊君    委員            北村 一男君            左藤 義詮君            齋  武雄君            羽仁 五郎君            須藤 五郎君   国務大臣    法 務 総 裁 大橋 武夫君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    国家地方警察本    部総務部長   加藤 陽三君    国家地方刑事本    部警務部長   武藤 文雄君    国家地方警察本    部警務部長   中川  淳君   事務局側    常任委員会專門    員       福永與一郎君    常任委員会專門    員       武井 郡嗣君    常任委員会專門    員       長谷川 宏君   参考人    警 視 総 監 田中 榮一君