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1951-03-23 第10回国会 参議院 大蔵委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十三日(金曜日)    午後二時五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○関税定率法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○関税法の一部を改正する法律案(内  閣送付) ○理事補欠選任の件 ○小委員補欠選任の件 ○旧令による共済組合等からの年金受  給者のための特別措置法の一部を改  正する法律案衆議院送付)   —————————————
  2. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) これより第二十五回大蔵委員会を開会いたします。本日は委員長暫らくの間欠席いたしますので私が代理をいたします。  関税定率法の一部を改正する法律案及び関税法の一部を改正する法律案を議題といたします。予算委員長波多野君。
  3. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 関税定率法の一部改正法律案について一つ質疑をしたいのですが、私の問題としたいのは、法律案の附則のところであります。四でありますが、「関税定率法別表輸入税表番号第七百五号合成染料の項中第六項建築染料乙、その他の税率は、当分の間、同表の税率にかかわらず、一割五分とする。」この点に関する質問なんであります。私は先ず最初に今度の関税定率法改正根本精神が一体どこにあるかということからお伺いしたいのであります。大体日本自立経済の線に副うて自立をして行かなければならん。これは国民的な要望でありまして、その自立経済を実現する上において注意すべき点は、できるだけ我が国がほかの国の影響を、いい影響はいいのですが、悪い影響を受けないようにそうして国内産業発達を図るようにという点が中心点であろうと思うので、その場合に関税という問題は非常に大きな役割を占める問題だと思う。関税が仮に日本の或る種の産業を圧迫するというような非常な低率であるならば、自立経済達成という大目的を阻害することになるし、そういう点から、今度の関税定率法の一部改正精神はやはり自立経済を達成するという意味においてなされておる、こう理解するんですが、その点はどうですか。
  4. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 私化学局長でございますので、その基本的な答弁は……。
  5. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 化学局長でもいいんです。只令建染染料の問題ですからね。化学局長として一般関税定率法を立案するについて化学工業を保護するという見地から何らかの意見を大蔵省に出しておられると思うんです。その点を聞きたい。
  6. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 化学工業関係関税率の問題としてお答え申上げます。只今お話のございましたように、この関税率を定めまする場合に、特に私ども立場といたしましては、国内産業としてその確立振興是非とも図らなければなりませんものにつきましては、その確立に必要な程度の保護を與える、こういう意味におきまして、関税率を定める上においてもこの点を十分に考慮しなければならんと存ずる次第でございまして、こういう見地から、私ども化学関係関税につきましても確立の必要なものにつきましては、或る程度の保護的な税率を設けて頂きたい、こういう希望を強く持つているわけでございます。
  7. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) ところが、建染染料税率を、合成その他の染料税率が二割五分であるのに一割五分とするというよう量な但書をここにつけているのは、建染染料生産というものを国内において保護する必要はないという考えで、特に一割五分に引下げるということになつたのですか。
  8. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 染料工業は御承知よう化学工業の中でも最も基礎的な工業でございます。各種の合成工業発達のためには染料工業確立というものが最も必要であると確信いたしておる次第でございます。そういう見地から染料関税につきましては、これに先ほど申しました趣旨において相当程度税率を設けて頂きたいと思つておるのであります。この建染染料につきましては、染料建染と然らざるものとを大別すればこうなると思いますが、特に建染染料染料中でも高級な染料でありまして、染料工業全般確立のためにも建染染料確立というものは、これは是非とも必要なものであると思うのであります。今日の情勢からいたしますると、昭和二十六年度の計画と申しますか、見通しといたしましては染料全体で一万二千五百トン程度生産を私どもは見込んでおります。そのうちスレン染料建染染料は六十トンばかりであります。数量は少いように見えますけれども、最も染料中高級な染料であります。これの確立は他のすべての染料、延いては他のすべての染料工業確立のために是非必要と思つております。こういう見地からいたしますると、少くとも染料関税率を定めます場合には、建染染料は他の染料と少くとも同一の関税率をきめるのが至当である、かように私ども立場からは考えられるわけであります。そういう見地から根本的の建前としては今回の法案でもさよう建前をとつておるわけであります。ただ当面の問題といたしまして、染料の用途と申しますか、これが御承知よう纖維関係に非常に多く使われており、なかんずく輸出纖維関係に非常に多く使われます関係もございまして、その輸出振興という点と、只今申しました染料工業確立という点とをどういうふうに調和するかという問題が考えられると思うのであります。二十六年度の見通しといたしまして六十トン程度スレン染料生産考えられるのでありますが、品種にいたしますと二十品種ばかりあるのであります。御承知ようスレン染料品種が非常に多いのでございますが、特に多量に、多量と申しますか、消費者希望しております品種は二十六年度の第一四半期では二十八種ばかりの品種消費者希望しておるのであります。これに対しまして現に二十品種ばかりのものが考えられておるのであります。尤も二十八品種と申しますのは、二十六年の第一四半期計画でございまして、消費者希望といたしましては総計しまして四十種くらいの品種のものを希望しておると思うのであります。染料工業、特に建染染料工業技術的にも非常にむずかしい関係から、今日のところでは遺憾ながらこの消費者希望いたします品種全部ができておりません。只今は、今申しましたような二十品種くらいでございますが、実は着々と業界におきましても研究を進め、工業的に新らしい品種追加生産して参るという計画も大いに進んでおるのでございます。只今どものほうの見通しといたしますと、かれこれ三十八品種程度のものは、若干の時をかして頂けるならば十分に消費者の満足できるようなものを生産し得るものと考えておるわけでございます。  かような次第でございますので、工業としては、これは飽くまでも維持確立をしなければならんと存じまするが、当面の情勢として、必ずしも全部が全部、国内需要されますものすべてを充たしがたい、或る程度のものの輸入は当面の事情としては止むを得んという情勢もあります。これに対しまして先ほど申しました纖維その他のほうの輸出振興という見地もあるわけでございます。かれこれ勘案しまして、かよう見地から建前としてはスレン染料と他の染料との税率区別しないという建前をとりながら、当分のうちは、若干の輸入も止むを得ざるスレン染料についてのみ、税率を多少引下げるというふうに相成つておるわけであります。併しながら私どもといたしましては只今申しましたように着々とこの面におきまする品種追加生産の増強ということも現に眼に見えて進んでおるわけであります。又今日の日本染料工業技術及びその他関係者全部の努力からいたしますならば、極めて短時間の間に国内需要者全部が希望しますものが追々できて参るということも確信しております。仮に当分の間はかようなことになるといたしましても、この当分の間は極めて短い期間でありまして、早晩これは国内でも全部が自給できる態勢になる。従つてこの間の区別も必要がない状態になることとかよう考えております。
  9. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) まあ輸出振興見地とそれから基礎的な工業として最も重要なこの建染染料工業確立という見地とは、必らずしも現在においては両立しないので、そこで一応輸出振興というほうに重点を置いて関税率を一割五分に下げる、つまり染色業者利益を図るために国内工業確立という点は一応遠慮しようというふうな考え方で理解していいですか。
  10. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 私の申上げ方が若干至らなかつたかと思いますが、当面の情勢といたしまして需要者が要求しております品種、四十品種全部をことごとく国内生産で賄いがたい、これは事実でございます。併しながらこの品種は早晩全部生産上得る態勢にまで持つて行けるという、これも事実でございます。こういうふうな情勢差当りの問題としましては、全部が全部国内で賄えませんもので、而もその品種是非とも輸出繊維その他に必要だという状態でございますので、これはどうしても輸入しなければならぬ、こういう点から暫定的な措置として只今差当り区別をする、こういう結論なつたわけであります。かように私は思つております。
  11. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) そういうことをやつてつて税率を下げて置いて而も工業としての確立を目指しておるというのですがね、それは実際できるのですか。外国の製品が非常な競争力を以て入つて来ているときに、そういう低い関税率で以て日本基礎工業確立するという目的が達せられるのですか。
  12. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 率直に申しますならば、先ほど申しましたよう染料のごとき最も基礎的な、而も最も確立を要する工業を十分に保護するための手を打つ、その意味におきまして関税率相当考慮を加えなければならぬ、かよう考えておるわけであります。もとより関税率だけで確立はできません。無論私どもといたしましても、資金の面その他におきまして極力援助もいたしておるわけでございますが、只今の見込といたしましては、幸いにして関係業界その他の努力によりましてはの方面の発展ということが進んで参つておるわけであります。加うるに関税率方面も十二分な関税率がこれに加えられますならば、更に染料工業自立性見地からいたしますならば結構なわけでございますが、これらの点につきましては、先ほど申しましたようにこれは他の考慮等もあつたので、結論としてはかように相成るかと私は考えております。
  13. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 建染染料は私よく知りませんが、東大のある教授に聞いて見たところ、こういうことを言つておりました。建染染料種類が非常に多い、今言われたように何十種類もある、そうしてその建染染料生産しておるどの国をとつて見ても、すべての種類建染染料が自国で生産できるというのはめつたになかろう、そんな国は一つもありはせんというふうな意見なんです。而もそういう国々建染染料生産しておる国々関税率というのはどこでも非常に高い。世界で建染染料生産された国というのは、工業的には第一流国しかないと言つておりましたが、幾つくらいの国があるかを聞き落しましたが、どんな国が幾つくらい建染染料生産ができるか、その国はどの程度関税率をかけておるか、それを御説明願いたい。
  14. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) これは科学的な先進国でありまするアメリカドイツその他の国は、いずれも非常に進んだ染料技術を持つておられます。
  15. 石田正

    政府委員石田正君) 各国の建染染料に関する率はどうかという質問でございますが、これはたくさんの国について資料をここに持合せておりません。ただドイツにつきまして、建染染料生産を相当やつておりまして、最近では第一位を占めておりまするアメリカ関税率をとつて見ますると、四五%ということに相成つております。なおイギリスとか、ベネルツクス、即ちオランダ、ベルギー、ルクセンブルグ等については、フリーということになつております。
  16. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) アメリカよう染料工業において最も進んでおる国が四五%で来ておる、なぜそうなつておりますかといえば、そういう四五%というような高い関税率をかけてもなお国内染料工業を保護育成する必要があると考えておるから、進んでおる国にしてすでに然りなんです。日本はこれからそういう工業確立ようとしておるときです。そのときに一五%なんという開け放しの関税率で一体できるのですか、工業育成という見地からいつて……。
  17. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) お話よう日本よりも技術が進んでおると考えられますアメリカでも高率の関税をかけております。この点から申しますと、当初私が申上げましたように、少くとも建染染料普通染料と同率の関税をかけるべきと私は考えております。特にこの染料はこの工業育成のために保護的な意味相当程度関税是非かけなければならない。化学工業育成見地から考えますればさよう考えておるわけでございます。ただ当面の情勢といたしまして、そのほかにいろいろの情勢も入れなければならん。輸出の問題、その他の情勢もありましたので、本当の応急の措置として当面の情勢として、かような一五%程度なつたと思うのであります。率直に申しまするならば、化学工業維持育成ということから申しますれば、関税率は飽くまでも他の一般染料税率と同じでなければならん、かよう考えております。
  18. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) その基本的には化学工業の最も基礎的なものであるこの染料工業を保護しなければならん、こういう考えを持つておる、然るにかかわらず一五%という低率関税にしたのは当面の必要だと言われるのですが、その当面の必要という点をもう少しお聞きしますが、仮にその染料関税率を一割五分から二割五分に上げた場合に、輸出染色業者はどれだけの負担増加になりますか。
  19. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 再三申上げまするように、実は私ども立場としましては、できる限り関税率は高率なることを希望しておるわけであります。今お話輸出染色業者のコストにおきまする関係その他ということ、これは私から実はお答えするのは甚だ適当でないと思います。纖維関係政府委員その他から……。
  20. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 誰でもいいのですが、つまり私の聞きたいのは、輸出に従事している纖維業者利益が損われるから、だから関税率を二割五分にしないで一割五分にして、つまり安く染料輸入してやつて、そして一方においては輸出しなければならんという、基礎的な化学工業発達に不利な條件を作るということが非常に不可解なんです。自立経済という見地からいつて非常に不可解なんです。そこで一割五分から二割五分に関税率を上げた場合に染色業者はどんな負担を受けるのですか。どのくらいの負担を受けるのですか。そしてその損害を何人の染色業者が分担するのですか。それを一つはつきり説明して頂きたい。当面の問題だけ言われるから……。
  21. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 今の染色業者に対する問題ですが、纖維局長その他のかたから……。
  22. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 誰でもいいのですが、実はそれが問題なんですよ。輸出染色業者利益を保護するか、それとも基礎的な化学工業確立を図るか、どつちかということが問題なんです。
  23. 松永義雄

    松永義雄君 とうもろこしのことで質問したいと思います。お答えになるかたは来ておられますか。鳥屋さんがこの間お出でになつて飼料が高くなつてやり切れない。売るものは安くて原料が高いというようなことを申しておつたのですが、この点に関してあなたの御意見一つ伺いたい。
  24. 石田正

    政府委員石田正君) とうもろこし関税につきましてはこれは飼料という点もございますし、それから又食糧のいろいろな点がございます。日本におきましても、現在とうもろこし栽培が或る程度寒冷地等において行われております。これが安いとうもろこしがどんどん入つてくるということに相成りますれば、その面から申しまして日本におけるとうもろこし栽培に支障がある。そこでとうもろこしについては、関税をかけてもらいたい、こういうその方面の御要求があるわけです。一応いろいろな点を考えまして、一〇%という日本におけるとうもろこし関税率を設定したわけであります。なお飼料の点につきましてはこれは食糧の問題と飼料の問題と両方からみ合せまして、食糧にする場合には幾ら、それから飼料にする場合には幾ら、というふうな工合に関税率はかけませんで、そこで飼料の場合どうするかという点が残るわけであります。この点につきましてはこれは多少問題もあるのでございますが、大体戰前におきましてもとうもろこしを入れまして、そうしてそれをすぐ輸入手続きをとりませんで、飼料を作るところの工場保税工場にいたしまして、そこで飼料にいたしまして、内地に輸入手続きをとります場合には、輸入される場合は飼料でございますので、実際は飼料として取扱いまして税金がかからない、こういうことを行なつて来たわけであります。今回とうもろこし関税を一〇%にいたしまして、従量税を改めました後におきましても、現在の事情におきましては保税工場制度を活用いたしまして、輸入税はかからない、こういう措置を優先的にやつて行きたいと思つておる次第でございます。
  25. 松永義雄

    松永義雄君 そうするとその保税工場を通つて来たものは無税になる。ところが通らないでお百姓さんの手に入つてそれを飼料にするという場合があるらしいのですが、そういう場合には片一方は高くなつて片一方無税だから安い。それで保税工場を通つて来たものは高く取つて儲けるということになつて、お百姓さんは利益を得られないという点はどうですか。
  26. 石田正

    政府委員石田正君) とうもろこし国内のお百姓さんが直接外国からとうもろこしを買うというようなことは大体ございませんで、やはり大量にとうもろこし輸入するということに相成ります。そうして飼料のほうにいたすにいたしましても、或る程度の規模を持つたところで飼料にいたしまして、そうして個々のお百姓さんのほうに廻る、こういうふうに理解いたしておるわけであります。
  27. 松永義雄

    松永義雄君 そうするとお百姓さんが自分で兼業みたいなことをやつているのは、保税工場を通つて来ると大体それで賄つて行く。ところが加工業者はそれを儲けて、そうしてむしろ農家としてもそのまま関税なしに原料のままでもらつたほうがいいというふうに農家考えていると、こういうふうに思うのですが、あなたのお話によると農家とうもろこし生産影響があるようお話なんです。その点どうなんでしようか。
  28. 石田正

    政府委員石田正君) とうもろこし原形のままのものを入れまして、お百姓さんが飼料に使うということはないので、やはり碎きましてそうして使うのでありまして、何と申しますか御質問ようなことはないのではないかと思つております。ただ大きな会社等がやりませんで農業組合なら農業組合が相当大きな……、まあたくさん集まりましてそういう設備を持つ、こういうことでやりまするならば、その設備のあります所を保税工場として指定いたす。こういうことはいたそうかと思つております。
  29. 松永義雄

    松永義雄君 そうするとまあ協同組合なら協同組合保税工場へ行つて加工するということになれば、それはまあ何というか、ほかの人が加工すればほかの人が儲けるのを儲けさせないで自分の所でやるということになる。併しそのまま入つて来れば農家で碎かなければいかん。併し若しそれが無税であれば農家がそれを利益するというので是非無税にしてもらいたい、こう言つておると思うのです。そうして農家自分のところで碎く、協同組合なら協同組合のほうに原形のまま来る、税金がかからなければそれだけ飼料も高くかからないで済む、だから是非そうして欲しい、こういう考え方を持つているのです。この税金をかけなければとうもろこしの出来が少くなるということはないのですか。
  30. 石田正

    政府委員石田正君) とうもろこし国内のものにいたしましても結局需要がございますから、国内生産が行われるわけでありまして、これが例えばアメリカあたりから安いとうもろこしが入つて来てしまつて、そうしてもう国内需要を賄つてしまうということに相成りますれば、自然とうもろこし栽培もしなくて済む、こういうことになろうかと思つております。
  31. 松永義雄

    松永義雄君 そこはまあ議論の争いになつて、実態はどうかということに帰着すると思いますが、農家でない養鷄業者なんかはなお無税にして入れてもらえばいい、それだけ得が行く。農家にしても普通のあれじやとてもやつて行けないし、兼業してやつてそうしてまあ農家経済を立つて行く、幾らかでも負担を軽くして行くということがむしろ農家利益を守るのじやないか。どんどん外国から入つて来て自由にさして行くと、国内とうもろこしに関する生産がそれだけ少くなるということを私は憂えるのですが、只今お話ように保護したほうがいいのか、幾らかでも生産費を安くしたらいいのかという点の争いになるらしく思われます。その点を考え法案を出されたいということでありますが、農家及び養鷄業者に対しては税金一つ取らないようにして行くという考えを持つているのですか。実情はどうかということなんですが。
  32. 石田正

    政府委員石田正君) これは農家といいましても、いろいろの農家がございまして、自分とうもろこしを作りまして、そうして而も養鷄をやつておる。そういうかたがたがどうもろこしに税金をかけてくれと、こうおつしやるのではないのでありまして、とうもろこしができます所は寒冷地とか、その他地域的に限定せられておりまして、そこの所はとうもろこししかできないという地域であるわけでございます。で大体養鷄をやつております所は、そういうとうもろこしだけ單作でやつて行くところの農家のかた、そういう近在の所ではございませんで、これは例えば名古屋というような、名声屋は有名な所でございますが、そういう違つた地域に対しましてそこのところの利益をどうするかという調整の問題に相成るかと思うのでございまして、我々のほうといたしましては、とうもろこし栽培する人の利益考えたい。それからして又更に申しまするならば、我々が食糧としてとうもろこしを買つて来るということはやめたい。飼料の点につきましてはこれはそうその何と申しますか、足りないところのものを養鷄業者に非常な負担をかけることはいけないから、その点は保税工場を通しましては税金がかからずに行くと、こういうことにいたしたいと思います。
  33. 松永義雄

    松永義雄君 非常にこう飼料が高くなつて卵が安くなつた。卵が安くなることは、我々消費者のほうからいえばいいのですけれども、例えば養鷄経済のほうからいえばどうかと思うのですが、実情はどうなんですか。買う原料が高くなつて、売る卵が安くなる。これではやり切れないというところまで行つているのですが、どうやらこうやら利益が上つているというのですか、現在……。
  34. 石田正

    政府委員石田正君) これは私不敏にいたしまして農林省のかたに養鷄しておられるかたの実情は御答弁願わなければならんかと思うのでありますが、我々関税をかけますという建前から申しまするならば、関税飼料についてはかけないよう措置を講ずる。従つて関税をかけましたことはこれは飼料にする限りは影響がないのだ。但しこれを食糧としてこれを入れるという場合に対して一〇%かかる。こういうふうに私たちは措置いたしたいと考えております。
  35. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) ちよつとお諮りいたします。委員外議員片柳君から発言方申出がありましたが、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 片柳眞吉

    委員外議員片柳眞吉君) 発言の機会を與えられまして感謝いたします。実は私ども農林委員会から関税定率法の一部を改正する法律案の修正に関する申入れをいたしておりますので、この機会にこの御説明をいたしたいと考えます。内容はすでにもうお読みになりまして御承知と存じまするが、今回の関税定率法改正案講和会議等を前に控えまして、この際関税自立権確立を期して行きたいという政府考え方には賛成でありまして、ただ如何にも現在の国際価格等から見て参りますると、或いは食糧関係なり、或いは畜産等関係からこのままで参りましては、到底やつて行けない情勢がはつきりしておりますので、大豆、とうもろこし、こうりやん、この三つにつきましては、当分の間無税として頂きたいという実は申入れをいたしたのであります。この考え方只今申上げましたように、関税の自主権の確立という基本線にひびを入れないという考え方で、実は非常に限定的にこれは品目をいたしたのであります。例外が余り多くなりますと抜本的に、法律そのものにも影響を及ぼすという心配は余計なことでありましようが、いたしたのであります。従つてその心配がありませんければ、大豆、とうもろこし、こうりやん以外のものにつきましても、実は無税の要望をいたしたいのであります。ただ今言つたような基本線にひびが入ることを虞れまして、特に重点的な物資に限定いたしたわけでありますが、当委員会でその辺の情勢で、さような心配がないということになりますれば、或いは菜種でありますとか、或いは落花生等の油脂原料なり、或いはやがては肥料にも廻るような、かようなものにつきまして、品目の拡充をして頂きたいと考えておりましたが、その辺は当委員会で今言つたような基本線にひびが入らないということでありますれば、例外品目をできるだけ多くして頂きたいというふうに考えておるのであります。現在の国内価格と輸入価格が非常な開きがありまする点は、すでにお申入れをしております参考資料に付いておるわけであります。すでに御覽置きを願つたと思いますが、例えば大豆の価格は国内産の生産者価格は三万五千百七十一円、トン当りでありますが、それに対して今年の一—三月のアメリカもののCIFの相場で、五万七千六百円から六万一千二百円というような、非常な開きが出ておりますし、それからとうもろこし国内産価格は七百三十三円、それに対して輸入品の価格は千四百二十円、十貫当りのことであります。それからこうりやんが国内産が十貫当りが七百二十三円に対して輸入の価格は千二百円、かように非常に高率な、高い価格になつております。味噌、醤油の原料、或いは油脂の関係、或いは畜産飼料関係に非常に大きな影響を持つておりますので、この申入れをいたしたわけであります。どうか一つよろしくお取計らいを願いたいと思う次第であります。
  37. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 今の片柳君の御意見に対しまして政府から何かお答えすることございませんでしようか。
  38. 石田正

    政府委員石田正君) 大豆の関税の問題は非常にむずかしい問題でございまして、原案として出されました一〇%の案ができるまでにも、相当の経過を経て来たわけであります。いろいろな見方からいろいろな議論がございまして、殊に最近のように異常な情勢に相成つて参りますると、当面の問題としては今お話のありましたような議論が出て来ることも或る程度尤もなる点もあろうかと思います。ただ政府といたしましては原案を出しまして、原案通り一つお願いしたいというふうに考えておるわけでありまして、なお今のお話のうちに、大豆の点についてはその通りでありますが、とうもろこし、こうりやん等の点につきましては、先ほど松永委員からの御質問に対しましてお答えいたしましたから、これ以上繰返しません。
  39. 片柳眞吉

    委員外議員片柳眞吉君) 先ほどちよつと説明を落しましたが、こうりやんと、とうもろこしにつきましては、実は私のほうの審議の際にも、大蔵省の政府委員のほうから保税工場でやつたらどうかという実は御意見があつたわけであります。それも我々の考え方でも一つの方法とは考えましたが、現在のところでは先ず大部分が飼料に向けておりまするし、それからこの法案も大体四月から実施になるというような時間の関係もございまして、四月から保税工場の民営ということは実際上相当問題がありはせんだろうか。こういうことも考えまして、まあ当分の間無税にするというよう結論に達したわけであります。大蔵省の政府委員のお考え方もよくお聞きいたしましたが、やはり時間の関係等から、準備の関係等から、やはり円滑な保税工場の運営はむずかしいのではないかということでかよう措置をとつたのでございます。
  40. 石田正

    政府委員石田正君) 今御発言がありました点につきましては、我々は初めからこれは飼料には税金をかけないよう措置をしたいと思つておりますが、ただこの法案がどうなるかわかりませんけれども、すでに或る税関に対しましては、本省から指令を発しまして、そうしてこの保税工場の運営が遺憾なきように、よくこちらから連絡をとつて、支障ないように準備をしようということをいたしております。現に名古屋税関のごときは、すでに十数件保税工場の申請を受付けておりまして、若し保税工場制度で行くならば、すぐ許可して四月一日から行く、かように準備はいたしておるようなわけでございます。
  41. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 関連して当局にお聞きしたいのですが、この法案食糧関係のいわゆる第二類のほうで、何故同じ豆類に、大豆とか、あずき、こういうものは一割課税し、緑豆は無税にするとか、或いは落花生は一割にするとか、その他二百十五において、ほかのごまの種とかは無税にかかわらず、菜種とか、からし菜の種が五分の課税をする、こういつたような分け方はどういうことを根拠とされたか、先ず承わけたいと思います。
  42. 石田正

    政府委員石田正君) これは我々の立場からいたしますと、税金をかけるということよりも、できるだけ無税であつたほうがよろしいというふうに考え方を、根本の立場としてとつております。ただ併しながら国内生産がありまして、どうしても維持とか、或いはその増産とかいうふうなものを図らなければならないところのものについては、所要の、できれば最小限度において保護をいたしたい。こういう点から考えまして、例えば大豆のごときものは、現在甘薯をいろいろ栽培しておりますが、この作付けの点からの対象といたしましては、大豆が一番大切である。そういう意味で一〇%かけた。お話のありました緑豆、これは大して国内的にまとまつた生産もございません。これが入つて来ても、別にそういう点から日本がどうにも困るということはないのではないか、こういう点から無税にいたしたのであります。
  43. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 只今の基本方針ですね。それに対してお伺いいたしたいのですが、例えば大豆は将来日本で以て盛んに栽培しなければならないという見地から税金をかけた。緑豆はどうでもよいというふうなお言葉のようですが、併しながら緑豆というものも、やはり日本で相当食糧として若し盛んに使用されるようになれば、この栽培つても結局値段の都合によつてはできないわけはないと思うのです。同じような豆類で以てどういうわけでこの二通りのよう税率表をお出しになつたのか、どうもまだはつきりしませんが、どうですか。
  44. 石田正

    政府委員石田正君) 緑豆が将来日本において増産をするということが必要であり、又そういう気運に向いますならば、我々はやはり関税率改正して税金の適当なものをかせなければならんと思うのであります。併しながら大豆あたりと比べますると、非常に違うのでありまして、大豆は現にもう四十万町歩ぐらいまでの作付反別をこれからしようということが具体的の計画になつておりまして、そのために着々実行中であるのでございます。で具体的な計画がありませんうちに、将来そういうことの可能性があるからというので税金をかけまして、消費者負担を直ちに多くするというのはどうであろうかというふうに考えまして、差当り緑豆は無税にいたした次第でございます。
  45. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 纖維局長が見えられましたから、先ほどの波多野さんの御質問、もう一遍その要旨だけを……。
  46. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 纖維局長にお尋ねしますが、先ほどこういうことが問題になつたのです。化学局長意見では、建設染料工業というものは化学工業中最も基礎的な工業であるが故に、是非これは確立する必要があると思う。併し当面の問題として輸出纖維染色業者に便宜を與える必要上、建染染料に限つて輸入関税を一割五分引下げる、これは全く当面の必要だということが答弁されたのであります。そこで当面の必要ということはどういうことかということを質疑しておつたのでありまするが、私が聞きたい点は、建染染料輸入関税を一五%から二五%に仮に上げるとして、染色業者はどれほどの負担を受けることになるのかという点を一つ御答弁願いたい。
  47. 近藤止文

    政府委員(近藤止文君) 只今の御質問でございますが、建染染料につきまして二五%の関税をかけまする場合と、一五%の関税をかけまする場合の相違は、原価で見まして三%乃至四%の相違でございます。それで染料関係は染色にとりましては非常に重大な問題でございますが、結局加工賃のほんの僅かなところによりまして日本品の競争の威力があるかたいかということを決定する場合が多いのであります。従つて建染染料工業確立ということは勿論必要でありまするが、当面の日本の特に高級な加工品の輸出をこの際増進するという建前から参りまして、建染染料につきまして一般染料との差を置いてあるという考え方であります。
  48. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 一五%から二五%に関税率を上げた場合に、原価で僅か三%か四%……。
  49. 近藤止文

    政府委員(近藤止文君) ええ、そうです。
  50. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) ところが輸出染色業者というものは、最近非常にうけに入つているわけなんです。あなたがた御承知の通りと思うけれども、こういう業者は年間に三十割だ、五十割だ、或いは八十割だという利益率を挙げておる。そういう利益を多少犠牲にすれば、而も染色業者の数は多いのだから、頭割にすれば極く僅かなものだと思う。そういう犠牲を負わせることを避けて、国策上、又経済自立確立しなければならんと認めておる建染染料工業のほうに負担をかけるというのはどういうわけですか、その理由を聞きたい。
  51. 近藤止文

    政府委員(近藤止文君) 只今御指摘がございました輸出の染色加工をしております者が非常に莫大な利益を得ておるようお話があつたのでありますが、実は染色加工業者の面におきましてはそれほど莫大な利益を得ている者は余りないのでありまして、現実は紡績会社或いは人絹会社、そういつた所が原糸を製造いたしまして織物については大体賃織をさせ、又染色加工につきましても賃加工をさせております染色加工業者は、実は相当叩かれた工賃で現在でも輸出の仕事をやつておるわけであります。而もその相手先というものはいろいろ競争の関係がございまして、価格の点ではかなり〇・五セント程度まて争つておるというよう状態でございます。それから同時に建染染料につきましては、現在国産としましてはすべての種類のものができておりませんで、極く一部のものができておりまして、相当部分のものは現在輸入をしなければならんわけであります。その輸入をいたしますのに関税をかけますことが、差当りの現状といたしましては決して建染染料の製造業者に直接の影響があるという関係でございません。特に染料につきましては、そう大量に同じ種類のものを輸入するということはございません。やはり輸出の引合等によりまして極く僅かの数量の染料輸入いたしておるのが現状でございまして、この僅かなものは、なかなか国産でやると申しましても、大量の需要口がないという関係から、簡単には国産では製造されないよう状態にございますので、そこで私ども関係から申しますれば、むしろ輸入する場合には関税がないほうが輸出振興という建前からいいますと、いいのでございますが、建染染料工業確立という問題も極めて重要な問題でございますので、大体戰前におきましても或る程度建染染料と一般の染料とは輸入税率を変えておつたのであります。そういつた趣旨によりまして二様の区別をするという形になつたわけであります。
  52. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 染色業者が大して儲けていないという話なんだが、それならば、紡績会社にしましても、人絹会社にしましても、そういうところから委託染色を受ける場合に又変化が起つて来るにきまつている。それはもう見ていいのじやないですか、日本の国の全体の経済の連関を見て行けばですよ。見ていいわけなんだから、ちつとも差支えない。紡績業者が儲けるのなら、その儲けの一部を染色業者に與えるような工夫になつていいのですよ。そんなことを見ておつたのでは政治にならない一つ一つのものを見ておつたのでは……。全体の関連を見なければ駄目なんですよ。それから日本経済自立ということを一番考えなければならない。いつまでも加工業者として日本経済があるというようなことはよくない。今のようなかつこうで行つておれば、先ほどの化学局長が言つておりましたのも、とても建染染料工業確立はできないと思う。あとで聞きます。保護しているなんて言つておるのはどんな保護をしておるのか聞きたいのだが、とにかく世界で第一位の染料工業国のアメリカでさえも四五%の関税をかけておる、建染染料を保護するために……。それがこれから確立して行こうという日本において一五%なんというべらぼうな低い税率では、染料工業確立できません。それはわかり切つておる、私が言いたいのは、そういう染色業者並びにそれに繋がる一連の産業が非常な高率な利益を挙げておるのですよ。これを分配し直しをやればいい。そういうふうに指導しながら、一方において是非確立することが必要だという建染染料工業のほうに力を入れるべきじやないか、もう一度お伺いしたい。    〔理事大矢半次郎君退席、委員長着席〕
  53. 近藤止文

    政府委員(近藤止文君) 只今お話でございますが、現状におきまして紡績なり、或いはその他の繊維関係は非常に好況なんでございますが、実は一昨年の秋におきましては非常な不況にでございまして、輸出の場合におきましても原価を割るよう状態であつたのでございまして、染色業者なり紡績業者なりの利益をこつちに廻したらよろしいじやないかというお話でございますが、只今のところでは相当高收益を挙げておりますが、これが永続するというなかなか見通しも困難だと思うのであります。目先は相当好況でございますけれども、将来又一昨年のようなことを繰返す場合もございます。結局建染染料確立ということは極めて重要でございますが、差当りのところとしましては国産としてできませんものを対象に考えているわけでございます。実は建染についてだけはできないものについて一五%の保護をするということで染料工業確立という問題を取上げておる次第でございまして、関税制度としましてはこういつた開きを置くのが適当ではないかと思います。
  54. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) それではもう少しお伺いしますが、建染染料の中で、日本生産できるものが二十種類ぐらいあるというのですね、今現にある、そうして更に近い将来に、近い将来にではない、近いうちになお数種の染料生産可能になつて来るという話なんだが、この国内でできる二十種類染料については二五%の税率をかけるのですか。
  55. 近藤止文

    政府委員(近藤止文君) これは染料の実は区別の問題になるわけなんでございますが、技術的な問題から申しまして、現に国産としてできておりますものに高い税率をかけまして、国産としてできないものにつきましては低い税率をかけるということが、理窟から申しますると一番適当だと私ども考えております。ただ技術的な問題としまして非常に鑑別が困難であるという点から、現在といたしましては建染の相当部分が輸入ということになつておりますので、一応建染染料として低い税率のほうを適用するということになつておるわけであります。
  56. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) それでは折角芽生えかけて来ているこの基礎的な化学工学が圧倒されるのじやないですか。相当部分が輸入だと言われるが、輸入のほうが少い、国産のほうが多いですよ、数量から言えば……。輸入のほうが少いはずだ。どうなつています。
  57. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) これは品種ごとに非常に細かいのがございますが、現在のところでは、大ざつぱに申しまして、染料の中の輸入のものと国産のものと先ず大体半々、只今のところはそういう程度だと思います。
  58. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 半々じやないのですよ。私の持つている資料では六二%くらい国産になつていますがね。そうじやないですか。
  59. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 細かいパーセンテージは何でございますが、五〇%乃至六〇%までの間大体半々という数字でございます。
  60. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) それではそういう国内生産できるものに対しても一五%という低率の関税をかけて置いてですよ。そして一方においては化学局長が言つているように、染料工業をどうしても確立しなければならんというその方針と、どう調和するのですか。アメリカでさえ四五%という関税をかけて、非常に競争が激しい染料なんだから、生産できる国でもそういう高い関税をかけて保護しているわけなんですね。そいつを日本だけが一五%という開けつ放しの関税率で、どうして国内化学工業確立ができるのですか。その点もう少しお尋ねしたい。
  61. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) その点は、お尋ね、非常に問題があるところだと思うのでございますが、税率の点から申しまするならば、化学工業保護の見地ということに徹底しますなれば、もとより少くとも他の染料とは同じ率をかけなければならんと思うわけでございます。併し先ほど繊維局長からの答弁もありましたように、これは本当の差当りの、何といいますか、臨時と申しますか、暫定的と申しますか、当面の措置としましてただ一時の便法として建染染料について或る程度のものの輸入が必要でありますので、税率を下げる、まあこの程度であれば、かれこれ勘案して、化学工業確立の点から無論これは遺憾の点もございまするけれども、先ず止むを得んではないかという見当をつけておるわけでございます。保護育成にいたしましても……。御承知の通り今日では特別に強力な措置ということも具体的には今ないわけでございますが、先ほども申しましたように、例えば資金の面等につきまして或いはいわゆる見返資金等をつけます際に、これを優先的に考えるというようなことその他をいたしまして、この方面からの一日も早い建染染料の新らしい品種の追加なり、設備の拡充を考えたい。従いまして、当分の間と申しまするけれども、これは極めて短期間と私ども考えておるのでございます。僅かな期間経ちますならば、当然本来の他の染料と同率の建前に一日も早く帰するという期待を持つておるわけでございます。
  62. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) その僅かの期間は、先ほど言つたように、紡績業者や染色業者が儲けておる期間なんだ。その期間にこちらの化学工業確立という基本方針があるならば、こちらのほうに阻害になるようなことをする必要はないのですよ。二年先、三年先はこの繊維工業がどうなるかわからんでしよう。そのいわゆる僅かな期間、これはどんな期間かもう一遍確かめたいのですがね。僅かな期間はまさにそちらの繁栄を謳つているときなんです。その繁栄を謳つているときに、こちらのそういう負担をかける必要はない。僅かの期間というのはどういう期間ですか。見通しはどうなんですか。
  63. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) これはこれから新らしい品種が如何に早く工業的にできるかという点にかかりますので、今日の技術、これを基礎にしました今後の進歩の程度等を考えなければならんと思いますが、今日の情勢を以て言いまするならば、私どもここ一年内外のうちに相当程度のものが、現にできておりませんもののうちの相当程度のものが国内で自給できる態勢になり得るものと考えております。
  64. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) その期間に現にできておるものまで潰れるですよ、こんなことをしていては、新らしいものなんか起つて来んですよ。防風林を取つちやつたようなかつこうにして……。その辺どういうふうに考えておるか。通産省としてどういう対策をその点にとられるか。新らしいものなんかできつこない。あるものさえも倒れる。どういう対策をとられるか。
  65. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) これは先ほど申しましたように、染料工業界にはかなりな努力をしてもらわなければならんのであります。私どもとしましても新らしい染料工業品種の追加、その他設備の拡充のために、資金の面等におきまして先ほど申しましたように、或いは見返資金をつけるというようなことで、早急に確立を図つて参りたい、かよう考えております。
  66. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 余り申上げてもきりがないので、どうも甚だ勘どころが違うと私は思う。だから余り申上げませんが、最後に一つ、二つお聞きして置きたいのは、国内で現に生産されておる建染染料種類についてだけは少くとも二五%の税率にするということでなければ、建染染料工業確立なんということは空念仏です。そういう方針はないのですか、お考えは……。
  67. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 先ほど来申しますように、私は率直に申しますならば、建染染料というよりも、染料全般の工業確立のためには、少くとも両方が二五%或いはそれ以上ということが最も望ましいと、かよう考えております。併しながら関税率の決定にはその見地だけで事がきまるというわけにも参らんのではないか、この点は私ども立場と離れた別の立場も考慮に入つておるのではないか、かよう考えております。
  68. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 大蔵省、どうですか。
  69. 石田正

    政府委員石田正君) 建染染料の問題は非常に問題のある点でございまして、率直に申しまして、最後の段階までその率はきまらなかつたのであります。大体大蔵省独自の考え方はどうかということでございまするので、率直に申上げるのでございまするが、大蔵省の事務当局といたしましては、やはり二五%という染料全体の率が妥当であるかどうか問題があると思いますが、併し普通の関税率の体系から申しまするならば、建染染料以外の染料が二五%であるならば、建染染料は二五%、或いはそれよりも少し上というふうに考えるのが、これは常識ではないかと考えるのであります。これはただ関税の体系、それからしてその当該産業の保護という点から考えるのでありまして、他面染料を使いまするところのほうの立場もございまして、そのほうの点から申しますると、むしろもつと極端な議論でございまして、無税にすべきである。とても日本建染染料をやつても駄目なんだから、幾らつても実績は上らんのだから、これは当分の間見込がないから無税にすべし、こういうような強い議論もあつたわけであります。私たちといたしましては、結局二五%という染料を全体同じ率にいたしましたものをやつて行くということで実は進んでおつたのであります。併しそれにつきましても始終異論が絶えなかつたのです。関税率審議会の審議の際におきまして、この建染染料が非常に問題になりまして、二五%と政府が出しました案に対しまして、無税論その他がありまして、そうして採決をとりました場合には、この二五%が一五%乃至無税になるというふうな空気に相成つたのであります。そこでそういう決定も如何かと思います。従いましてその間をとりまして、二五%の税率そのものは動かさないが、当分の間一五%、こういうふうな結局案になりまして、そうして国会に提出されたという経緯がございます。なおこの非常に競争の激しいことが予想せられるところの建染染料について一五%にしてやつて行くというようなことはナンセンスではないか。或いは現に折角芽生えかけたところの建染染料が皆崩壊してしまうのではないか。この点も誠に御尤もな点であるかと思うのであります。ただ現在の税率は従量税に相成つておりまして、これを従価に換算いたしますると。〇・三%見当のものに相成るかと存じます。その〇・三%のものが当分の間一五%になるということはこれは現状から申しますれば、保護が殖えるということに相成ります。それから又この当分の間というのも成るべく早く短い期間にやめてしまつて二五%に復帰する。こういうことでありまするならば、何とかこれは建染染料の存在が危機に瀕する、或いはその発展が阻害される、非常に阻害されるということもなしに、輸出その他におけるところの利益というものも加味して行けるのではないか。こういうふうに考えまして、終極的には国会に提出をいたしたような案になつたわけでございます。
  70. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) そうすると、大蔵当局においてもつまり事務当局では建染染料税率を一五%にするということは、これはもう関税審議会あたりの圧力で止むを得なかつた。本来はそういうつもりはなかつたんだ、こういうことに理解していいですか。
  71. 石田正

    政府委員石田正君) これはその前段に申上げましたように非常にむずかしい問題で、どつちに傾くかという点につきましては、どちらかというと、二五%のほうに余計に傾いておつたというような気持を申上げたわけでございます。
  72. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) それから通産省にお伺いしますが、建染染料工業保護のために、例えば見返資金を出すといつたようなことを言われますけれども、こんなものだけでは大した保護にならないです。どういう点が保護になるのですか。
  73. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 新らしい建染染料を作ります場合には、この設備関係或いはこれの償却の関係その他から申しまして、資金の面でいろいろの困難もあるわけであります。この点につきまして、援助するという意味におきまして、見返資金についてもこれを根本的に考慮したい、こういう考えでおることをお話したわけであります。
  74. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) それはこういうことが前提になるのです。即ち現在日本生産されつある建染染料について、先ず具体的に保護の手を差延べておく、つまり関税率のその点については二五%にして置くという手が一本打つでなければ、勿論資金を例えばやるからといつて……やるのじやない貸すのですが、相当高い利子を拂わなければならん。その資金を借りて新らしい種類建染染料を作ることをやらなければならん。併しやらうとしてもやれない。企業的な考え方から行けばそれはできつこない。現にやつているものに対して保護しないのだから、これからやるものを保護を與えるといつても空手形になつてしまう、乗つてこないですよ。これは東大の或る教授から聞いたのですが、大学実験室ではよくできると言つておる。実験室でやつておる間はいろいろの種類染料ができるのだ。さて企業化する場合には非常な苦心、非常な高度の技術が要る、実験室でやつたらすぐ企業になるかというと、いかんと言つておる。そういう点から考えましても、この染料工業として確立するということが非常な苦労が伴つておると思うのです。而も競争は激しい、世界的に競争が激しい、どこの国でも高率関税で以て保護しておるのに、日本だけがなぜそんなことをしなければならん必要があるか。私は通産省が現存生産されておるものに対しては、少くとも二五%の税率をかけることによつて保護の実績を示し、新らしい製品を作れ。この程度の保護はしてやるぞという目度を見せておかなければできつこないと思うのだがね。見返資金の融資斡旋をして見たつて、見返資金はいらんと言い出す。お先真暗な仕事には手が出せない。で私は二五%に引上げるようなふうのお考えはないのか。既製品は、国内産既製品についてでもいいのだから、そういうお考えはないか。
  75. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 再三申しておりまするように、私どもとしましては、少くとも二五%、つまり同率の関税が保護のためには適当でないかという自信を未だに持つております。或いは保護的の意味においては、それ以上の保護税率ということを研究しないでもないのであります。先ほど大蔵省の政府委員のかたから法案提出に至ります経緯につきましていろいろとお話がありました。繰返して申上げませんけれども産業保護といいまするか、染料工業保護の見地考えまするならば、税率の問題もおのずからこの法律が予定しておりまする建前である二五%、いずれも二五%、これが最も望ましいと思うのであります。先ほど大蔵省側の政府委員からもお話がありました経緯で、まあ今日の結論が出ておるわけでありまして、私といたしましては染料工業の保護のためには、確立のためには、税率はやはり両方とも建前である二五%、これが望ましい。これに対してまあ他の情勢をどの程度汲み入れて参るかという問題になろうかと思います。
  76. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 通産省のほうは、二五%にしたいという御意向ということがはつきりしたから結構です。大蔵省はどうです。
  77. 石田正

    政府委員石田正君) これは実は私通産省といろいろ御相談を申上げておりまして、これは両方の意見が通産省のなかにありまして、非常に困つたのでありまして、ただ先ほど波多野先生からお話がございましたが、紡績及び染色業者が或る程度建染染料確立のために貢献すべきだという点は、これは逸してはならない点かと私はこう考えておるわけでございます。ただ問題は今まで殆んどなきに等しかつた税率を一挙に二五%まで持つて行くか、それとも一五%にして置いて、次の段階においては二五%まで行くか、こういうふうなことに追い詰められたのでありまして、これは私は現状から申しますれば、退歩でなくして、一つの進歩である。而もそれは全体の関税率がたつたこの一つの品目のために、いつになつても固まらんということでは困るという見地から、こういうふうな案になりましたということを一つ御了承願いたいと思います。
  78. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 合成染料で、ほかの染料は今まで従量税でどれだけかかつたか、それを従価税に直すとどんなものですか。
  79. 石田正

    政府委員石田正君) 建染染料よりほかのものでございますか。
  80. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) ほかのもの。
  81. 石田正

    政府委員石田正君) 大体ほかのものは二、三%かと思います。
  82. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) それじや建染染料だけ区別する必要がない。ほかのものでも従価税に直せば二、三%であつたものを、今度は従価税にして二五%に上げたのだ、それは建染染料でなくてもそう飛躍じやないじやないですか。
  83. 石田正

    政府委員石田正君) これは化学局長から御説明願つたほうがいいかと思いますが、ほかのほうは二五%の関税率建染染料以外の染料にもかけましたけれども、これは我々は入つて来ないと思つております。二五%の関税を拂つてつて来たところの建染染料以外の染料が使われるということはない。建染染料は現に入つておるのであります。そこに多少違いがあるかと思います。
  84. 波多野鼎

    委員外議員波多野鼎君) 最後に一つこれは先ほどから私議論しておるように、日本経済を本当に自立させるかどうか。ほかの国の品物を使つてつていつまでも賃労働者として日本の国民が生きるかどうかという重大問題にかかつているのです。そこで目先云々という問題もありますけれども、もう少し大局的に考えてこの関税政策というものをやつて頂きたいと思うのです。と申しますのは関税定率を一遍きめますと、これでなかなか動かせないので、これは国際関係があるから今後は恐らく日本一国だけのことじや動かされないのじやないかという気がする。これは非常に重大なんです。仮に独立国になつた睦には相当問題になると思う。で特にそういう点から考えて愼重にこれはやらなけりやならんが、特別にこの附則にまでこの建染染料のものを持ち出して特別にこういう染料工業に不利な扱いをしなければならんという理由はどうしても僕にはわからない。どうしてもわからない。私はまあ委員諸君の御賛同を得て、この点についてもう少し何かの修正意見を出したいと思つておりますが、これは私の関係している労働組合からも非常に熾烈な要求がありまして、そんなことをされたのでは、染料工業は参つてしまうというような、これは多少の輪をかけてあると思いますが、これは有利じやない、詰つておるのです。そういうふうなことで組合側が非常にこの頃は躍起になつておる。企業家側は匙を抛げたかつこうだ。染色業者が数が多いものだから、関税審議会あたりでは関税は圧倒されてしまうということで、こういうふうになつたという裏話を少しは聞かされたわけですが、とにかく企業家のほうは匙を抛げておる、労働組合のほうは匙を抛げないという事情であるということも一つ御了承願つて、私の質問をこれで終ります。有難うございました。
  85. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関税定率法の適用地域の問題ですが、第十二條に「本法ノ適用二付テハ本州、北海道、四国、九州及命令ノ定ムル其ノ附属島嶼以外ノ地域ハ当分ノ間之ヲ外国ト看做ス」ということになつておるのですが、鹿児島県の南西諸島に属する奄美大島諸島、あれはこの地域からいいますとどういうことになりますか。
  86. 石田正

    政府委員石田正君) これは外国のほうに入りまして、日本並の扱いを受けないということになります。
  87. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これが外国という観念がどういうところから出て来るのか。これはその命令にそういうように定められるのですか、どうなんですか。
  88. 石田正

    政府委員石田正君) これは命令はちよつと逆のことを、逆の言い廻しが使つてありますが、実質は同じことになつておりますので、法文通りになつておると御了解願います。
  89. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 法文通りというと、命令の定むるその附属島嶼以外の地域……。命令に定められてないというわけですね。それを命令に定めるということは全然不可能なんですかどうですか。
  90. 石田正

    政府委員石田正君) それはひとり関税定率法、或いは関税法だけの問題ではございませんで、外国為替管理法その他諸法令におきまして、講和條約未締結の現状におきましては、すべてそういうふうな扱いになつておるのであります。
  91. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 経済関係その他からいうと、鹿児島県の内部の問題であることが非常にはつきりしているのです。それから向うの施設その他から考えましても、軍事施設その他は何らやつていないのですが、そういう意味で少くとも、関税定率に関する限りはこれを別途扱うというような特別な規定はできないものでしようか。
  92. 石田正

    政府委員石田正君) 御指摘の点は奄美大島、或いは沖繩島も類似のケースかと思われます。これにつきましては、すでに例えばつむぎとか、それから上布というようなものにつきましては、これは関税法上あたかも内国の産品のごとき取扱をいたしておるわけであります。ただこれにつきましては、物の品物が特別でありますだけに、書き方によりまして事例を挙げないでもそれしかないというふうなことでありまするので、そういうふうな仕方ができるわけであります。併しそれ以外の品物に拡大するということになりますと、これはその地域別以外の地域を合せて一緒にしなければ規定上むずかしい、こういう問題であろうかと思います。なお将来の問題といたしましては、これはお話地域が講話條約その他によりましてどういうふうな結末を来たすにいたしましても、国際的な関税一つの慣行といたしまして、隣接地域につきましては特別の扱いをするということが認められておるケースが多いのでございます。そういう観点からいたしまして、我々はこれは成るべく早い機会にそういう形において処理するのが適当ではないか、こういうふうな感じを持つておる次第でございます。
  93. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 奄美大島、沖繩は同じだというふうなお話ですが、奄美大島を特に挙げたのは、沖繩島は又別途違つた意味において沖繩には信託統治その他の問題もあるかと思いますが、これは非常にむずかしい問題ではあると存じますけれども、奄美大島に関する限りはそういう問題は全然ありませんので、もつとそれを地域的に除外例にすることが、話のしようでは可能じやないかと思うのですが、そういう具体的な問題としてお当りになつたことはないのですか。
  94. 石田正

    政府委員石田正君) 私、経済的にお話地域と沖繩島とが全一であるということを申上げたのではないのでありまして、現在の国際関係から申しまして扱いとしては同じに扱われるというような状況になつておつた。我々はそのところを、どういうふうにどの程度まで、先ほど申しましたような扱いにするかという点につきまして、区別したほうがいいのか、区別しないほうがいいのかという点におきましては、やはり非常に密接な所と、少し離れた所との間には、非常にニユアンスがございまして、我々としては、できれば両方一緒にしたほうが、若し例外扱いが認められるならばいいではないかと考えておる次第でございます。
  95. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 若し地域的にそういう例外扱いをすることが非常にデリケートな問題があるとすれば、そこの土産品に限つては何か輸入に関して外国とみなさないように、内地と同じような扱いをするということを一括してできないかどうか。それから今それが一括してできないとすれば、今お挙げになつた品以外に、大島つむぎとか、或いはあそこで出るかつお節とか、そういうあそこの土産品と考えられるものを殆んど網羅的に品目として何か除外するような方途は考えられないのか、その点はどうですか。
  96. 石田正

    政府委員石田正君) 本案を国会に提出いたしまするまでの間におきましてはむずかしかつたのであります。併し最近の情勢におきましては、お話ような筋で行くということが相当可能性が強くなつたと私は了解いたしておるのでございます。
  97. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 繊維局長がおられるようですが、ぼろは無税になつておるですね。ところが最近輸入されておるぼろのなかでそれが衣料に相当使われております。この関税定率法によれば、そういうものを使われないものというふうに謳つてあるのですけれども、これはまあ税関関係のほうと両方の御意見を聞きたいのですが、そういう区別ははつきりつくのですか。
  98. 近藤止文

    政府委員(近藤止文君) 輸入いたしまするぼろにつきまして大体においては区別がつくのでありますが、境になつておるところでいろいろあいまいな点があるのでございます。大体税関におきまして只今まででも相当嚴重に審査をいたしまして、ちよつと衣料に廻るような虞れのあるものについては、すぐ押えておるような状況で、境目のところは実際問題でやるより仕方がないと考えております。
  99. 石田正

    政府委員石田正君) お話の点につきましては、我々は区別のつきにくいものは税関において裁断することをいたしております。切つてしまつております。これが税関の波止場におきましてできないことが多うございますので、そういうようなぼろとして使うのだという工場につきましては、それを保税工場にいたしまして、そこに一応入れまして、税関官吏立会の下にみんな切つてしまつて、要するに衣料としては使えないというようにいたしております。
  100. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 国内生産品の保護助長というよう建前でこういう法律をきめておるとすれば、ぼろはいつでも国内生産できるのです。そうすればどうせ輸入されるときは、特別に価格が安いと思うのです。安いぼろに対しても一応税金をかけても差支えないかと思うのですが、そういう点は考慮されたことはないのですか。
  101. 石田正

    政府委員石田正君) ぼろは国内でも出ないことはないのでありまするが、併し戰時中から今日まで衣料不足でありましたことは御承知の通りでありまして、現在ではぼろを入れましてそれを羊毛に還元いたしまして、そうして紡織等をいたしておるというのが現状でございます。羊毛自身を入れるということもこれは考えられるわけでございまするけれども、併し羊毛よりも安く入つて来る、こういう面もございます。そうして羊毛は御承知の通り無税でございます。ぼろは羊毛が特に入らないという場合にぼろを入れたほうが、最近の情勢におきましては衣料を充足するのに工合がよろしい、こういう面もございまするので、現在の状況の下においては、無税にして置いたほうがよいのではないかと考えられます。将来大いに情勢が変りました場合には、考えることにしたらどうかと思います。
  102. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 無税のものをあとから又税金をかけるというのは、これはなかなか容易じやないのです。そこでさつき繊維局長からお話がありましたように、ぼろと古衣料の区別というのは非常にデリケートなのです。それで一応一割五分なら一割五分、ほかの織物と同じようにして置いて、特別に保税倉庫で以てぼろと見分けのついたものは無税にするとかいう措置はとれると思うのですが、甚だ小さい問題ではありましようけれども、やはり根本原則になると思いますから、一応御考慮を煩したい次第であります。
  103. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 先ほど関税部長から御答弁があつたのですが、この関税定率法改正の場合、原則として成るべく無税にしたい。或いは又税率を低くしたい、こういう考えである。これは農産物に関する限りにおいて、そういうお考えなんでございますか。それとも全般的にそうなのですか。
  104. 石田正

    政府委員石田正君) 日本の国というものを考えました場合に、我々はやはり貿易をやつて行かなければ国が立たない。こういうふうに思つております。それから又それをするのについて、いわゆる国産品だけを原料にいたしまして貿易ができまするならば結構でありまするが、遺憾ながら多くの原料輸入しなければならない。これが日本実情であろうかと思うのであります。それから又予想いたしますると、日本の貿易というものは、加工貿易という形をとることが非常に多いということに相成ると思います。そういう場合には、原料輸入して作つて、それを又輸出するということをやるのでありまするから、相当能率的に運営されなければ、これは平常時の国際経済の下においてはなかなか成り立つて行かないのではないか、こういうふうに思うわけであります。従いまして成るたけ国内産業に脅威を與えない、競争しないというものであるならば無税であることが望ましい。それから又競争するものでありましても、関税障壁によりましてその産業に対する刺戟といいますか、合理化というもの、熱意というものを失わせるよう関税を設定するということは、大局的に見まして、日本の国が自立する方向に逆行するのではないか、かよう考えるのであります。むしろ農産物の場合はそういう一般原則によらない例外的の場合ではないか、かよう考えておるのであります。
  105. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そのことはこの関税定率法の一部を改正する法律案の提案理由の三に一応書いてあるのです。ところで私なぜこういうことを質問するかといいますと、この間大蔵大臣がこちらに参りまして、実はガツトなんかに入る場合、無税主義ではまずい。そこで有税主義を原則として一応立案したのだ、こういう話があつたのです。ですから今の石田部長のお話と食い違つているのです。原則は無税主義で行きたいのだけれども、ガツトに関係するような場合には有税主義で行かないとまずいから、そういう建前になつておる。そうすると食い違つているのです。その間の事情が……。ですから農産物或いはその他特殊のものについてそういうお考えかということを質問したわけなのですが、原則論としてやはり今後加工貿易になるのだから、原則としては大体無税主義或いは低税率で行きたい。そうするとそれと大蔵大臣の御説明と食い違つているのですが、その点はどういうふうに解釈したらよろしいのですか。
  106. 石田正

    政府委員石田正君) これは関税の問題というのは御承知かと存じますけれども一つでは割切れない。いろいろな例えば財政収入の関係もございます。それから又不要不急品の輸入に対するチエツクという問題もございます。それから又関税としての国際的に通用する関税体系と申しますか、そういうものでございます。いろいろな観点からこれは考えなければならないのでありまして、そのどの部面を取上げるかによりまして説明の仕方は異つて来るかと思います。併し現実の関税率の問題になりますと、一つの理論だけから割切れないのでありまして、いろいろな理論がその中に複合されておると申しますか、そういう形をとるかと思います。それからなおそういう大きな原則で行くというようなことを考えました場合に、それでは日本経済の実態というものとその理論というものが直ちにマツチするかどうか。それはいろいろなそのときどきの事情で、短期なものもございますし、それから又或る程度の長期間を考えなければならないような問題もあろうかと思うのでありまして、この現実の問題というものとのマツチということも考えなければならんかというふうに考えるのであります。  それからガツト等の関係におきまして高い税率をかけなければならんではないか、こういうお話もございましたが、これはガツトだけを考えますれば、これはそういう場合におきまして下げることは楽でございますが、上げることは困難である。こういうことが言えるのでありまして、その点から申しますれば、なるべく上げて置いたほうがよろしい。バーゲニング・パワーをとつていつたほうがよろしい、こういう議論も成り立つと思うのでございます。併しながら、この関税をそういう意味において上げて置きますると、そうすると今度は関税をかけて行つて国内で消費するものの立場というものをどうするかということも又考えなければならないのでありまして、なかなか一筋縄で割切つてこの率というものを出すことができないというのが実情でございます。
  107. 小串清一

    委員長(小串清一君) ちよつとお諮りしますが、この御質疑も相当続こうと思いますから、この際一時これを中止して、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案、これは大変……。
  108. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 ちよつとそれを諮る前に、今こんなところで打切つては中途半端ですから、この質問だけは続けさして頂きたい。
  109. 小串清一

    委員長(小串清一君) そうするとどのくらいかかりますか。もう時間が来ているのですが……。
  110. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう常識的な考えで……、今答弁最中にいきなりほかのものを出されるということは無茶だと思うのです。それは決して御迷惑かけるようにはしませんですから……。
  111. 小串清一

    委員長(小串清一君) 私の予定しておるものをやろうかと思うのですが、あなたの御質問が若し短いならば一向かまいません。併し相当長いのですと、昨日もそれがためにやらなければならない問題を延ばしてしまつたので、それではどうかと思いまして少し急ぎました。それではそのおつもりで成るべく適当に打切つて頂きます。それでは続けます。
  112. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今の御答弁ならよくわかるのです。ところがこの前の大蔵委員会におきまして、機械その他の輸入関税につきまして、恐らく緑風会の高橋さんだつたと思いますが、関税率についていろいろ御意見があつたのです。その時に大蔵大臣の答弁としては、実は無税主義で行きたいのだ、行きたいのだけれども、実際問題としてガツトその他の関係で有税主義で臨んだのだ、根本原則として……それだから無理があるかも知れない。あるかも知れないけれども、大きな方針としては、無税主義でなく有税主義で当方としては臨んだのだから、我が国としては、この点は了承してもらいたい、特にこの点を念を押されて、それでその説明に代えたのです。それは非常にデリケートな御説明でありますから、これは一応皆さん了承されたような、或いはされないような、割切れなかつたと思うのです。ですから今の関税部長のお話では、原則としては無税主義で行きたい。大蔵大臣としてはそうなんであるけれども、併しこの関税定率法考えたときには、いろいろな折衝の過程においては有税主義を原則とする、これは原則問題ですから重要だと思うのです。それだからこそ関税をかけちやいけないものにかけたり、今現実の問題として無理に有税主義を原則としたから、本当はかけなくてもよいものまで一応かけたのではないか、又今すぐ必要であつてもなくても、将来のことを……。そういう点が非常に委員諸君の割切れない点で、いろいろな業者からも、なぜ国内で自給できない、大豆でもそうだと思う、絶対足りない、そういうものにどうして関税をかけるか割切れないのです。それですからいろいろな議論が出て来て実情に副わない、実情に副わないというのは、有税主義で臨んだという根本原則、そこに、とにかくそういう建前から、今ちよつぴりでもかけて置く、ちよつぴりでも形式的に、そういう点が相当あるのではないか、そこで私は非常にこの点は重要だと思うのです。それは大蔵大臣の機械その他の輸入関税に対する答弁と、石田部長の御答弁とは食い違つておる。石田部長の御答弁は非常に折衷論みたいで、実情に副うようなあれをしなければならない、それは御尤もだと思うのです。それですから石田部長のようなお考えでこれをお作りになつたならば、いろいろとうもろこし、或いは大豆、或いはこうりやん、或いは機械、先ほどの染料、いろいろそういうものについてもつと現実に即した私は案ができるはずだと思うのです。そこに現実に即し得ない一つの或る根本原則、或いは根本方針、そういうものがあるんじやないか、それをどの程度まで現実にマツチさせるかが非常に問題で、議論が沸騰するのじやないか。そのところを正直にはつきりして頂きたいのです。何だか割切れないのです。そこのところが……。有税主義を原則としてと言つたり、無税主義を原則としてと言つたり反対の議論なんです。全くこれは……。原則論ですから非常に重要だと思うのです。その点明らかにして頂きたいと思うのです。
  113. 石田正

    政府委員石田正君) 今度の全体の税率の品目は約九百三十ほどあるわけでございます。そのうちで無税品目としておりまするところのものは、百七十ばかりあるわけでございます。その中には羊毛とか、塩とか、石炭とか相当重要なものが入つておるわけであります。私たちの考え方といたしましては、先ほども申したのでありまするが、日本生産がないとか、或いはその生産の見込が薄いとかいうふうなものにつきましては、これは無税にすべきだろうかと思うのであります。併し国内生産がありますところのものにつきましては、何と申しましても、日本の現在の産業段階と申しますか、経済段階と申しますか、そういうふうなものは、いろいろな業種を整理いたしまして、そうしてどんどんいいほうに展開して行く、こういうことができないような状況になつておるだろうと思うのでございます。その点から申しますると、少しでも将来のことは考えながらも、差当り必要なところの関税率というものは守らなければならんかとこういうふうに思つておる次第でございます。  それからなお、この交渉の問題でございまするが、これはよその国と国定税率をきめたのでありまして、国定税率を、どういうふうによその国と、交渉の場合に率を定めるかというのが協定の問題になるのであります。この協定の問題につきましては、下げるということが交渉の対象になる、或いはそのものを据置くといいますか、それが交渉の対象になるわけであります。それでその点を考えますならば、我々といたしましては、或る輸出産業がこれだけの利益を得る、そこで我々のほうの輸入の面においてもこれだけの影響を受ける。併しこれは双方を比較考量いたしまして、止むを得んとそういう決定を交渉の際においては行わなければならんのでありますが、そういう交渉に入らんうちに、こちらが得たいような率というものは、これは無理に下げる必要はないのじやないか、かよう考えて作つたような次第でございます。
  114. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それならば、交渉の場合に、一応関税をかけておいたほうが我が国に有利であるという場合におきましては、これはかける。それが若し現実に弊害があるとすれば、暫定措置として無税なり或いは臨時措置がとられ得ると思うのです。そういうことが適切だと思うのです。併しこうりやんとか大豆ですか、とうもろこしですか、大豆は今までは無税だつたですね、現在はどうですか。
  115. 石田正

    政府委員石田正君) それは現在は従量税率でございますが、併し税は盛つておるのでございます。その設定当時の税率というものと今度の従価税率と比べて見ますると、むしろ設定当時の税率のほうが高い、こういうふうなことに相成ります。
  116. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 現在は税率はあるけれども、かけてないのでしよう輸入について……。
  117. 石田正

    政府委員石田正君) 税率は適用いたしております。ただ従量税率でありますために、通貨価値の低落によりまして、二百分の一、三百分の一というようになつておりますのでかけざるも等しいというような状況に相成つております。
  118. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 ですからそれを今度四月一日からこれが通れば一割ですか、かかるわけですね。それをなぜ今までのようにその臨時措置として、農林委員会からの要望もありまして……、そういうことはできないのですか、臨時措置として暫定的にですね。
  119. 石田正

    政府委員石田正君) これはお話の点は、関税率改正の際において非常にむずかしい問題でございまして、これは関税率というものが現にございまして、そうして情勢が変りますれば、これは暫定免税というようなことをやるのが、国際的な習わしになると思います。そういうことが多いと思います。併しながら関税率改正をしますときに、これは無税であるのが本当なんだが、税率を置いておくのだというようなことはこれはおかしいので、むしろ逆に、今お話のやつは、税率はこうだが、現在の情勢から当分の間無税にする、こういうことになるのでありますが、そういう形をとるのは前のおかしい議論にとらわれてしまう……。
  120. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 食糧はそうじやないですか、税率を一応かけて、それで実際問題として無税、免税にして置く、こういうよう措置をとつておるんでしよう
  121. 石田正

    政府委員石田正君) これは関税率改正をいたしますときに、本来でありますれば、関税率改正は何らの保護をつけずにやるのが改正の趣旨なんです。それをやることにつきましては、余りにも主食の点につきましては甚だしい。殊に輸入補給金は與えておると、こういう状況でありますので、その点だけの例外を規定した例外的なものでございます。
  122. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 今までの質疑応答を聞いておりますと、石炭において無税であつて、石油はなぜ課税するかということは非常に矛盾になつて来るのです。これはどういうふうに解釈されますか。石油は今日本においてはやはり保護生産を加えなくてはならんと思うのですが、これは一〇%くらいしかの生産量しかないのです、使用量の……。石炭のほうはどつちかというと、輸入のほうが少いのです。併し現在輸入されておることは事実です。その間にどうしてこういう差違を設けておるということは、大変な矛盾になつて来ますが、この点について……。
  123. 石田正

    政府委員石田正君) 石炭は燃料であり、動力源であり、石油も又然り。従つて同じことにしたらいいじやないか。これは理論としては御尤もでございますが、併し保護の問題になりますると、その点おのずから異なるものがあるわけでございます。石炭がいわゆる強粘結炭以外の一般石炭が、外国からどんどん安いものが入つて来て、そうして駄目になつてしまうかどうかという問題になりますると、それからしてこれは石炭の中にもいろいろ企業によりまして違うとは思いまするけれども、そういう心配が各方面において強いのでありますならば、これは保護税率を設けるべきものだと思います。石油のほうは少いから当然外国のほうから買わなければならないからこれは無税でなければならないとしておるのは、消費者のほうから見た議論でありまして、国内生産を保護して、そうして成るべく外国から買わずに日本のものを使うようにしたいと、こういう関係から申しますると、石油は何と申しましても資源状況か悪いのと、それからしてまだ保護育成の過程にありまして、石炭のごとくまだ進んでおらないと、こういう事情がございます。そこらのところを考えて見なければならない。そういう具体的なケースの各品目を見て参りますので、差違が出て来るわけでございます。
  124. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 要するに大蔵大臣が原則としてやはり有税主義をとつたということと、それから関税部長の言われる無税主義をとつた、これは食い違つておるのでございます。大蔵大臣は何か部分的にそう言つたのかどうか。大蔵大臣が言われたことは、あなたの御説明と違うのですが、確かに……。ですからその点はどうなんでしようか。その点だけを……。
  125. 石田正

    政府委員石田正君) 私は関税率の問題は先ほどから申しましたように、非常にいろいろな面が多うございまして、例えば今のお話の面、私は関税率に九百何十品目というものを頭に置いて、できるだけ無税でやりたいという気持で申上げたので、恐らく大蔵大臣が申されておりますのは、その中で無税が妥当としないものとしてそういうふうなものを無税にして置くか、或いはさつきお話がありましたような、石油なら石油はこれは動力資源であり、従つて大切なものであるから無税にするのだというふうな考え方をとるか、それともこれは国内生産の保護という面に応じて税金は殖えたほうがよいという、そういう問題になつて参りますれば、やはり税金を取るという、取つて保護して行くという建前をとる、こういう意味ではないかと思います。
  126. 小串清一

    委員長(小串清一君) 関税の問題はなお十分質疑する必要があろうかと思いまして、本日はこの程度でとどめまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 小串清一

    委員長(小串清一君) 御異議ないものと認めます。   —————————————
  128. 小串清一

    委員長(小串清一君) それではこの際お諮りいたします。理事及び小委員の補欠選挙についてお諮りをしたいと存じます。今般森下委員、及び九鬼委員委員辞任に伴いまして、理事及び請願、陳情に関する小委員にそれぞれ欠員が生じましたので、その補欠選挙について前例によりまして、委員長の指名に御一任願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 小串清一

    委員長(小串清一君) 御異議ないと認めます。それでは私から森下君の後任として理事に清澤俊英君を、九鬼君の後任として、請願、陳情の小委員に山本米治君をそれぞれ指名いたします。   —————————————
  130. 小串清一

    委員長(小串清一君) 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案、これは衆議院の小山長規議員の発議であります。丁度関係政府委員も出席しておられますし、本案は予備審査ではありますか、昨年来多数労働者の非常な利害に関するものでありますから、この際この案を御質疑並びに御審査願いたいと存じます。提案の理由を発議者から御説明願いたいと存じます。
  131. 小山長規

    ○衆議院議員(小山長規君) 只今議題となりました旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申上げます。  御承知ように第九国会におきまして、日本製鉄八幡共済組合の年金受給者の年金額につきましては、先に国家公務員共済組合の年金額が改定されたのに鑑み、昭和九年一月三十一日以前、即ち、官業共済組合時代の退職者の分に対して、国が、その年金額の改定に伴い必要となる責任準備金の増額分に相当する金額を同共済組合に対し交付する法律的措置が講ぜられたのでありますが、官営時代からの在職者で民営後受給資格の発生するものの分に対しては、何らの考慮がなされてないのであります。  思うに、八幡製鉄所が日本製鉄に移管されましたとき、従業者のうち官吏に対しましては、恩給法の定めるところにより、官営時代の清算が一切国庫負担により行われたのでありますが、雇傭員及び職工に対しましては、実質上官業共済組合の形態をそのまま存続させ、政府は移管後の待遇につき従来と変らないことを保証し、官営時代の清算を一挙に行うことがなかつたのであります。又、当時従業者の退職手当については、官営在職期間に相当する部分を、移管後におきましても政府が責任を負う趣旨の規定を法律を以て設けているのであります。従いまして、退職手当については、第八国会において、日本製鉄株式会社廃止にあたり、政府がこれを補償する措置の講ぜられましたことは既に御存知の通りであります。共済組合年金につきましても、曾つて官業に在職しておつた以上、官業時代の退職者のみならず、民営後に退職し又は退職すべき者の年金増加額のうち、官営在職期間の増加部分を国庫が負担することとするのは、如上の経緯並びに趣旨に照らして、曾つて事業主の立場にあつた政府の当然の責任と考えられるのでありまして、現行法が官業共済組合時代の退職者の分のみに限定しているのは、極めて理由薄弱であるばかりでなく、公平の観念にも反すること明らかであります。従いまして、本改正案におきましては、受事由の発生が官営時代であると民営時代であるとを問わず、年金増加分のうち、官営在職期間に相当する部分の二分の一を国庫負担とすることとし、その交付方法としましては、一時交付を取りやめて毎年四半期に交付するようにいたしたのであります。なお本改正法の施行期日は昭和二十六年五月一日でありますが、その適用は一月一日に遡ることにしまして、旧法の規定によつて交付した金額は改正法の規定により二十五年度及び二十六年度に交付すべき金額の全額とみなすことといたしました。  以上がこの法律案の趣旨並びに内容でありますが、何とぞ愼重御審議の上、速かに可決あらんことを切望いたします。  なお附加えて申上げますが、本法案は衆議院の委員は自由党、民主党、社会党、共産党全員一致で立案し且つ賛成いたしたものであります。
  132. 小串清一

    委員長(小串清一君) 御質疑はありませんか。
  133. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちよつと今の御説明の最後のところがどうもちよつとわかりかねるのですが、旧法の規定によつて公布した金額は、改正法の規定によつて二十五年度及び二十六年度に交付すべき金額の全額とみなすことにしたというのはどういう意味ですか。よく内容がわからないのですか。
  134. 小山長規

    ○衆議院議員(小山長規君) お答えいたします。このいきさつを申上げますと、現行の法律におきましては、三月三十一日までにこの共済組合が規定を改正いたしまして、そして現行法によりますところの受給資格者と申しますのは御承知ように官業時代に恩給資格を得て且つ退職した五百二十六名であります。その五百二十六名分の金を政府が予算上六千三百万円でありましたか組みましておるのでありますが、その六千三百万円の金を受取るのには、共済組合の規定を変えなきやならんのであります。その共済組合のその六千三百万円の金を共済組合は受取りたいのでありますけれども、この共済組合には御承知ように一万四百人ばかりの組合員がおります。そのうちの五百二十六人だけをベース・アツプする。現在の年金平均は一年に三百円でありますが、ベース・アツプいたしました年金は平均二万一千円でありますが、この五百二十六名分だけを二万一千円にベース・アツプするといたしますと、ほかの九千七百人ばかりのものに対する分が、財源が足らなくなるのであります。そこでこの改正法律案を出したわけでありますが、その場合にこの六千三百万円の分は二十五年度の分の、二十五年度の補正予算に組まれてあるわけでありまして、この分を受取る場合にこのまま改正いたしますと、二十六年度の補正予算を組まなきやならない。こういう関係が起りましたので、補正予算を組まないで現行法のままで受取る方法はなかろうかといろいろ苦心しました結果、この二十五年度の補正予算に組んであります六千三百万円かを受取つた場合には、それは二十六年度分も含めて受取つたことにいたそう。そうすれば予算の変更を伴わないで受取れる、こういう趣旨を書きましたのが、ここに書いてあります適用期日を五月一日とし、それは二十六年の一月に遡つて適用される。こういう趣旨なのであります。以上御説明申上げます。
  135. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとこれには別途予算を伴う必要はないわけなんですか、二十六年度は……。
  136. 小山長規

    ○衆議院議員(小山長規君) このままで参りますと、この法律案によりますならば予算の変更はございません。と申しますのは、二十五年度の予算に六千三百万円の予算が計上してありますが、それを共済組合が現行の法律、この改正前の現行の法律によりまして規定を変えますと、三月三十一日までにその五千三百万円の金を受取れるわけであります。その受取つたものはこの改正法によつて受取つたものの二十六年度分と一緒になつて丁度六千三百万円になりますので、二十六年度の予算は変更されないでよろしいのであります。ただ現行の法律と違います点は、二十七年度以降において若干政府負担が殖えて来るという点が違つておるわけであります。
  137. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その負担増加はどれくらいになりますか。
  138. 小山長規

    ○衆議院議員(小山長規君) 二十七年度以降、約三、四年の間、或いは四、五年になりますか、これは非常に細かい計算ではつきりした計算が出ないのでありますが、大よその見当を申上げますと、二十七年度以降四年間か五年間くらいは約五千万円乃至六千万円の負担があるであろうと思います。その後におきましては急激に減る見込みであります。と申しますのは現在年金受給者の平均年令は七十二歳でありますので、五、六年後においては政府負担は急激に減るであろうと考えております。
  139. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 これは参考にお伺いしますが、八幡製鉄以外はこういう特例はないのですか。ほかにもこういう例がありますか。
  140. 小山長規

    ○衆議院議員(小山長規君) 私の承知しております限りではほかにこういう事例はないという確信が得られたのであります。
  141. 小串清一

    委員長(小串清一君) 別に御質疑がないようでありますが、この案につきましては本日はこの程度で御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 小串清一

    委員長(小串清一君) それでは本日はこの程度で散会をいたします。    午後四時八分散会  出席者は左の通り。    委員長     小串 清一君    理事            大矢半次郎君            清澤 俊英君            木内 四郎君    委員            愛知 揆一君            岡崎 真一君            黒田 英雄君            山本 米治君            佐多 忠隆君            松永 義雄君            小宮山常吉君            小林 政夫君            高橋龍太郎君            山崎  恒君            油井賢太郎君            森 八三一君            木村禧八郎君   委員外議員    予算委員長   波多野 鼎君            片柳 眞吉君   衆議院議員            小山 長規君   政府委員    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省主計局給    與課長     磯田 好祐君    大蔵省主税局税    関部長     石田  正君    通商産業省通商    纎維局長    近藤 止文君    通商産業省通商    化学局長    長村 貞一君   事務局側    常任委員会專門    員       木村常次郎君    常任委員会專門    員       小田 正義君