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政府委員(平田敬一郎君) 次に、
国税徴收法の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案の理由を御
説明申上げます。
政府は、昨年以来引続き税制の
改正を断行し、
国民負担の
軽減合理化を図
つて参つたのでありますが、徴収制度につきましてもその合理化に努め、一層円滑且つ適正な納税が行われるように
措置することが必要であると認められますので、ここに
国税徴収法の一部を
改正する
法律案を提案いたした次第であります。
以下本
法案の大要を御
説明いたします。
先ず、最近における滞納の発生及びその処理の
状況に鑑み、
納税者に特別の事情がある場合における
租税の徴収及び滞納処分につきその合理化を図ることといたしました。
その第一は、分納及び
徴收猶予の制度を新設したことであります。
即ち、
納税者が災害、盗難、疾病、廃業等により、又は申告期限から一年以上経
つて更正、
決定を受けたことにより、その
税金を一時に納付できない場合は、その申請によりまして、一年以内の分納又は
徴收猶予を認めることといたしているのであります。而してその分納又は徴収猶予の期間中は、延滞加算税額を免除するほか、一定の場合には利子税額をも免除することができることといたしております。
なお、
昭和二十四年分以前の
所得税、相続税、物品税及び増加
所得税、財産税等の旧税につきましては、その
負担の
状況及び滞納の
現状等に鑑みまして、
徴收猶予をなし得る場合の條件を若干緩和いたしますと共に、猶予期間を二年以内とする等の
措置により、その合理的な整理に資することといたしたのであります。
その第二は、滞納処分の猶予制度を新設したことであります。
即ち、公売処分等の執行によりまして滞納者の事業の継続を著しく阻害する虞れが強く、且つ又、その処分を一時猶予して置くほうが究極において徴税上有利であると認められますときは、二年以内において適宜その処分の執行を猶予することができることとし、その期間中は、延滞加算税額を免除し得ることといたしたのであります。而して二年以内に資力が回復したとき又は新規に発生した
税金の滞納等の事実がありました場合は、直ちに滞納処分を続行することといたしております。
その第三は、滞納処分の停止の制度を設けたことであります。
即ち、滞納者が無財産の場合又は著しく
生活困窮に陥る虞れがある場合等におきましては、三年間滞納処分を停止することができるものといたしておるのであります。而してこの停止期間中は、利子税額及び延滞加算税額を免除することができることといたしております。
なお、この停止期間中におきましても、滞納者が資力を回復したと認められる場合には、停止処分を取りやめて
徴收するのでありますが、停止後三年た
つてもなお資力が回復しない場合には、納税義務が消滅することといたしております。
以上の三つの
措置によりまして、滞納につき特別の事情がある
納税者につきましては、その実情に応じ、努めて合理的に且つ適切な徴税を行うごととしている次第であります。
次は、差押禁止物件の範囲を拡張したことであります。
即ち、現在の
国民生活の実情及び滞納処分の執行の
状況に鑑みまして、差押禁止物件の範囲を拡張し、主として自己労力による農業者、事業者及び営業者につきましては、その業務上不可欠な農具、器具、材料、肥料、牛馬、種子等を差押禁止物件とすると共に、食糧及び薪炭につきましては、六カ月間の
生活に必要な部分について差押をすることができないことといたしております。
次に、
昭和二十四年十二月三十一日以前の期間に対する加算税及び延滞金につきましては、特定の場合に限り、これを
軽減し得ることといたしました。
即ち、加算税につきましては、申告期限から一年以上た
つて行われた
更正決定に基いて徴収される場合、又は一度
更正決定を受けた後の修正申告又は更正に基いて
徴收される場合には、日歩十銭のものを日歩四銭に
軽減することができることとすると共に、これらの場合には、日歩二十銭の延滞金を日歩八銭に
軽減することができることといたしております。而してこの
軽減措置は、加算税又は延滞金を現に滞納している場合のみならず、すでにこれを納付している場合も適用するのでありますが、既納分の還付を受けますためには、本年六月末日までにその申請をしなければならないこととしております。
又、
納税者が災害、疾病又は廃業等によ
つて現に加算税又は延滞金を滞納しております場合には、加算税の日歩十銭を四銭に、延滞金の日歩二十銭を八銭に、それぞれ
軽減することができるものといたしました。
次に、督促手数料は
徴收しないことといたしました。
即ち、滞納者に督促状を発する場合の十円の督促手数料は、今後徴収しないこととして、事務の簡素化を図ることといたしたのであります。なお督促状を発する場合には、原則としてこれを発する日から十日を経過した後の日を納付の日とすることといたしております。
次は、
納税者に詐害行為等がありました場合の
徴收方法を改善したことであります。即ち滞納処分の実情に顧みますと、滞納者が故意にその財産を親族等に移転し、或いはその事業を同族
会社に組織替えをする等により、滞納処分の目的達成を不可能ならしめるごとき事例が少くない実情でありますので、正当な
納税者との権衡上、かかる場合には滞納者本人について滞納処分を執行してもなお
徴收すべき
税金に不足するときに限
つて、これらの親族又は同族
会社から徴税できることとしたのであります。
次は
国税と
地方税との間の徴収の順位を同一にしたことであります。即ち昨年四月の
改正によりまして、
国税と
地方税の徴収順位は原則として同順位とし、ただ納税人について強制執行等がありました場合には
国税が
地方税に優先することといたしたのでありますが、今回これらの場合にも全く同一順位といたしたのであります。
以上が今回の
改正の要点でありますが、そのほか、納税義務の承継、滞納処分の管轄権等につきまして規定の整備を
図つております。
政府は、以上の
改正によりまして、今後一層適正、且つ、円滑な徴税を行うよう期しているのであります。
御
審議の上何とぞ速かに御賛成せられるよう切望してやまない次第であります。
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