○清澤俊英君 丁度いい機会でございますから
ちよつとお伺いします。農業所得の計算に、労働力の計算を所得からのけられていることが、しばしば問題になるのでございますが、そこで
一つ考えて頂かなければならんことは、特に單作地帶などですが、大体労働力が一反歩について、今のところ農林省
あたりの計算にして見ましても、二十八人から二十三人くらい、こういう点でございますが、実際はもつと開きがございますが、三十三人くらいから十八人くらいと思
つております。それで労働力のかかる所ほど収穫がないのです。これが事実なのでございまして、そういう逆比例を持つのが実態に
なつております。まあこれを私どもの單作地帶で
一つの例を挙げますれば、今東北地方へ汽車に乗
つておいでになればすぐわかる。桑畑をずつと見て歩くと、一株の桑を五所なり六所なりちやんと縛
つてある。これは秋口になりますと、一反歩に数人の手間をかけてこれを皆結えて、そして雪に害されないようにする。春先になりますと、それをほぐす、これに十人くらいの者が一反歩に費される。而もその十人を、それを計算において必要経費として見積るときは、その
方法がない。而もそういう冷害地帶であるというような場所の、山奥等になりますれば、耕地整理もできておらないし、非常に交通も不便だし、又冷害も受けやすいというようなことで、従
つて収穫もずつとこれは他の場合よりは減
つて来るのであります。こういう逆比例がある。そこで昔からこういう労働力と収穫との不均衡を直すために、徳川時代でも
一つの刈地
制度という
制度が設けられて、大体
余り労働力を計算に入れない時代でも、収穫を中心にして、そうして一反歩という地積を対象にしませんで、百刈、こういうものを中心にして大体の小作料等がきめられている。それで結局百刈とれるという地籍が二反である場合も、一反半である場合もある。そうしてその地積を中心にしないで、そこからでき上る収穫を中心にして年貢を取る。昔の年貢米は今の
税金と同じようなものと考えていい、いろいろ性質は違いますが……。こういう心遣いが行われている。それが今のような進歩した時代におきまして、ただ一反歩の収穫だけを、いろいろな諸経費で見積るが、その一番の逆比例を持つた労力をお考えに
なつて頂かなかつたら、それは農村における所得の計算が、千日た
つても解決つかない、こう思うのであります。私は是非
一つ、御無理をお願いするわけじやないのですが、少くともこの実情を調べて、そうしてこういう昔からのそういう
方法があるならば、
一つそういうものについて、何らかの合理性を発見し出そうという考え方ぐらいして頂いて、
一つのそういう調査機関ぐらいをお設けをして頂く御意思があるのかどうか。現在正直に申上げますと、そういう
事情が大分わか
つて参りましたから、必要経費というものを多分に見て頂く、併し実際には、そろばんに合わんものは、多分に見てもらうものに引当てて行く上に実は困
つている。相当の額まで必要経費として余分のものを見て頂きたい。これを引当てて行くのに困るという状態に
なつていて、なお解決つかんものが残るというのは、この矛盾した労働力の計算を看過せられているのだというところに私は基因するのだ、こう思いますので、これは非常に重要な問題であり、而も数百年来と言
つていいか、いつ頃から刈地
制度が始まつたのかわかりませんから、何百年来というわけには参りませんが、古い昔からそういう
一つの形が残されて、そうして収穫というものを反別等でなく、収穫の上で反別をきめて行く、結局分け前の問題が、そこに出て来るのでありますから、こういうものが取られておるということを
一つお考え置き下さいまして、何とかする
方法を、何か
一つ調査機関でも設けて、まじめに研究して頂くようなことが考えられませんかどうかということを
一つお伺いしておきたいと思います。