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1951-03-15 第10回国会 参議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十五日(木曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○絹人絹織物に対する物品税課税反対  の請願(第二八号) ○絹織物物品税課税反対に関する請  願(第七八号) ○絹織物物品税課税反対請願(第  一五六号)(第一六六号)(第一八  四号)(第二六六号)(第四八四  号) ○高級織物物品税課税反対陳情  (第七四号)(第九四号) ○絹織物物品税課税反対陳情(第  七五号) ○喫煙用具物品税免税点設定に関す  る請願(第八号) ○喫煙用ライター物品税法中丁類と  するの請願(第三三号) ○芋あめ物品税撤廃に関する請願  (第七号) ○ラジオ受信機等電機器具物品税軽  減に関する請願(第二八四号) ○彫刻物品税軽減に関する請願(第  七〇一号) ○揮発油税軽減促進に関する請願(第  九〇号)(第九二号) ○揮発油税軽減に関する請願(第九一  号)(第一三七号)(第一三八号) ○織物消費税廃止に伴う損失補償の  請願(第六号) ○所得税適正賦課に関する請願(第  一一九号) ○被災害農家に対する所得税適正賦課  の請願(第三一六号) ○農民課税に関する請願(第一六九  号) ○水産業協同組合に対する免税等の請  願(第四七五号) ○冷凍業固定資産耐用年数改訂請願  (第五九一号) ○印紙税法中一部改正に関する陳情  (第一五号) ○家畜滯納処分対象物とすること  に関し善処の陳情(第三四号) ○中小企業に対する租税軽減陳情  (第四九号) ○税制改革に関する陳情(第五九号)  (第八六号) ○民間資本蓄積のための租税政策に関  する陳情(第一四〇号) ○古書籍業者に対する課税適正化の陳  情(第一六七号) ○公務員退職給與金免税に関する陳  情(第一八五号) ○納税準備預金利子引上げ等に関する  請願(第三五一号) ○信用保証協会保証額の再保証に関  する陳情(第四八号) ○閉鎖機関整理委員会等職員退職手  当制度確立に関する請願(第六一三  号) ○国内塩業対策確立に関する請願(第  六一二号) ○ソーダ用原料塩輸入確保に関する請  願(第六六五号) ○たばこ事業民営移管反対に関する  請願(第二三〇号)(第二五五号)  (第三七一号)(第四〇九号)(第  四二八号)(第五〇二号)(第五七  〇号)(第五七四号)(第五七五  号)(第六七三号)(第八七九号) ○たばこ事業民営移管反対に関する  陳情(第一一四号)(第一三九号) ○江戸川改修工事に伴う土地買收代金  免税請願(第三九七号) ○アルコール添加による果実酒実現の  陳情(第一五七号) ○豪雪地方減税に関する陳情(第六  八六号) ○寒冷地住民所得税軽減に関する陳  情(第一七三号) ○大蔵省所管の故銑拂下げに関する請  願(第五〇八号) ○葉たばこ耕作保護対策確立に関する  請願(第四一〇号) ○鳥取日野上生山山陰合同銀行  支店設置陳情(第一五四号) ○徴税整理期中小企業金融対策に関  する陳情(第一六〇号) ○公庫予算及び決算に関する法律案  (内閣送付) ○農業共済保險特別会計法の一部を  改正する法律案内閣送付) ○資金運用部資金法案内閣送付) ○関税定率法の一部を改正する法律案  (内閣送付)   —————————————
  2. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) これより第二十二回の大蔵委員会を開会いたします。  本日は都合により委員長出席いたしかねますので、私が委員長の代りを務めさせて頂きます。  先ず請願及び陳情に関する小委員長報告を求めます。
  3. 杉山昌作

    杉山昌作君 請願及び陳情に関する小委員会におきまする審議の顛末を御報告いたします。  小委員会は去る二月二十日及び三月八日の二回に亘つて開催いたしまして、紹介議員又は請願人から請願趣旨事情等説明を聞いたり、又政府のこれに対する意見等をも聴取し、更に質疑応答を重ねる等、愼重に審議いたしましたのでありますが、その結果は次の通りであります。  先ず請願第二十八号、第七十八号、第百五十六号、第百六十六号、第百八十四号、第二百六十六号、第四百八十四号及び陳情第七十四号、第七十五号、第九十四号は、いずれも絹織物等高級織物に新たに物品税を課することに反対するとの趣旨であり、請願第八号は喫煙用具物品税免税点設定せられたいとの趣旨であり、請願第三十三号は喫煙用ライター物品税課税分類丁類とせられたいとの趣旨であり、請願第七号は芋あめ物品税を撤廃せられたいとの趣旨であり、請願第二百八十四号第七百一号はそれぞれ電機器具及び彫刻物品税を軽減せられたいとの趣旨であり、請願第九十号、第九十一号第九十二号、第百三十七号、第百三十八号はいずれも揮発油税を軽減ぜられたいとの趣旨であり、請願第六号は織物消費税廃止伴つて生産業者及び販売業者の蒙つた損失を補償せられたいとの趣旨であり、請願第百十九号、第三百十六号は宮崎県下における先年の颱風による被害の実情所得税賦課に当つて考慮せられたいとの趣旨であり、請願第百六十九号は、農民に対する課税を軽減せられたいとの趣旨であり、請願第四百七十五号は、水産業協同組合に対する法人税等を免除し、並びに漁業関係各種税の不合理を是正せられたいとの趣旨であり、請願第五百九十一号は、冷凍業者に対する課税に当りその固定資産耐用年数実情に即するよう改訂せられたいとの趣旨であり、陳情第十五号は入金領收書及び商品券印紙税免除額引上げ等印紙税法改正せられたいとの趣旨であり、陳情第三十四号は家畜租税滞納処分対象とすることに関し善処せられたいとの趣旨であり、陳情第四十九号は中小企業に対し、勤労控除設定基礎控除引上げ等租税軽減を図られたいとの趣旨であり、陳情第五十九号、第八十六号、第百四十号は資本蓄積重要性に鑑みて税制を再検討し積立金課税廃止等措置を講ぜられたいとの趣旨であり、陳情第百六十七号は古書籍業者、古本屋でございます、古書籍業者に対して営業の実情に即するよう課税適正化を期せられたいとの趣旨であり、陳情第百八十五号は、公務員退職給與金所得税課税対象から除外せられたいとの趣旨であり、請願第三百五十一号は納税準備預金利子を引上げられたいとの趣旨であり、陳情第四十八号は信用保証協会保証額に対し政府資金による再保証実現せられたいとの趣旨であり、請願第二百七十四号は財団法人日本製鉄八幡共済組合年金受給者中第九国会の立法にかかる年金受給者のための特別措置法適用から洩れた者に対する年金を増額がた措置せられたいとの趣旨であり、請願第六百十三号は閉鎖機関整理委員会等職員に対しても、恒久的な退職給與制度を確立せられたいとの趣旨であり、請願第六百十二号は塩田の災害復旧設備改善を促進するため、塩業者に対する融資及び減税措置を講ぜられたいとの趣旨であり、請願第六六五号はソーダ用原料塩輸入確保のため諸施策を講ぜられたいとの趣旨であり、請願第二百三十号、第二百五十五号、第三百七十一号、第四百九号、第四百二十八号、第五百二号、第五百七十号、第五百七十四号、第五百七十五号、第六百七十三号、第八百七十九号及び陳情第百十四号、第百三十九号は、いずれも煙草専売事業民営移管に反対するとの趣旨でありまして、これらはいずれも政府において研究の上その実現を図るべきものとの考の下に、採択の旨を決定いたしました。  次に請願第三百九十七号は江戸川改修工事に伴い土地を買取られたものに対する所得税賦課に際し右の土地代金收入への課税を免除せられたいとの趣旨でありますが、今後本件と同様の問題はしばしば起ることが予想されますので、政府も一般問題として十分研究すべきであり、又本件実情については更に調査し善処すべきものとして、陳情第百五十七号はアルコール添加による果実酒実現せしめられたいとの趣旨でありますが、ただその限りにおいては現行法規上可能でありますので、あえて異議を唱えるべきものではないとして、請願第六百八十六号、陳情第百七十三号は寒冷豪雪地帶住民に対しては、税率の引下げ又は基礎控除引上げ等減税措置を講ぜられたいとの趣旨でありますが、税法上かくのごとき特別措置規定することは適当でありませんが、所得の認定又は必要経費計算等に当り十分実情に合うよう見積る等、課税の適正を図るべきであるとの意味において、請願第五百八号は大蔵省所管の故銑をこれが使用者である鋳物業者に直接拂下げられたいとの趣旨でありますが、これがために拂下手続を随意契約制度に改めることは考慮を要するけれども、現行指名競争入札制度の下においては、適当な配慮を行なつて願意を達成せしむべきであるとして、請願第四百十号は昭和二十五年産葉煙草買上げに当り、今後はその標本の適用を緩和し、等外品もこれを買上げ、更にすでに買上げたものに追加代金を交付する等、耕作者保護措置を講ぜられたいとの趣旨でありまして、その一つ一つ措置は実行困難としても、将来に亘り耕作者保護趣旨を取上げる意味におきまして、陳情第百五十四号は鳥取日野上生山山陰合同銀行支店を設置せられたいとの趣旨でありますが、要望政府に取次ぐこととして、陳情第百六十号は二月、三月の徴税期に際して、中小企業金融特別店舗設置等中小企業金融対策を講ぜられたいとの趣旨でありますが、二月、三月の臨時急速実現は別としても、徴税期における中小企業金融の強化を図る要ありとの意味におきまして、それぞれ採択をいたしました。  右御報告いたします。
  4. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 只今報告のありました請願及び陳情につきましては、小委員長報告の通り決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 御異議ないものと認めまして、小委員長報告通り決定することにいたします。   —————————————
  6. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 次に公庫予算及び決算に関する法律案及び農業共済保険特別会計法の一部を改正する法律案議題に供します。先ず政府説明を求めます。
  7. 西川甚五郎

    政府委員西川甚五郎君) 只今議題となりました公庫予算及び決算に関する法律案ほか一法案の提出の理由を御説明申上げます。  国民金融公庫及び住宅金融公庫予算及び決算に関しましては、従来公団等予算及び決算暫定措置に関する法律適用されていたのでありますが、これら公庫業務特殊性に鑑みまして、今回この法律を制定して、業務の円滑な運営に資し、且つ、予算執行を適正ならしめようとするものであります。  次に本法の内容の要点を御説明申し上げますと次の四点であります。その第一点は、公庫予算につきましては、原則としてこれを収益及び費用收支予算といたそうとするものであります。即ち貸付金利子その他資産運用にかかる收入及び附属雑收入をもつてその收入とし、国民金融公庫にあつては、借入金恩給債券利子事務取扱費業務委託費固定資産取得に要する経費及び附属諸費を、住宅金融公庫にあつては、借入金利子事務取扱費業務委託費固定資産取得に要する経費及び附属諸費をその支出といたしております。右のほか予算の形式及び内容につきましては、これを予算総則及び收入支出予算とし、收入支出予算は、收入の性質及び支出の目的に従つて款及び項に区分することとしたほか、その他の細目は大蔵大臣主務大臣と諮つて定めることといたしたのであります。  第二点は追加予算予算修正及び暫定予算規定を設けると共に、移用、流用、繰越及び予備費に関する規定を設けようとする点であります。  第三点は、大蔵大臣は、公庫予算執行の適正を期するため必要があると認めるときは、收支の実績若しくは見込についで報告を求め、又は予算執行状況について実地監査を行うことかできるようにいたそうとする点であります。  第四点は、公庫決算は、翌年度の七月三十一日までに完結することとし、決算報告書は、予算の区分に従い毎事業年度作成の上、大蔵大臣の承認を経た財務諸表を添え、主務大臣を経由して大蔵大臣に提出することといたそうとする点であります。  次に農業共済保険特別会計法の一部を改正する法律案について申上げます。  農業共済保険特別会計におきましては、気象上の悪條件に基く、異常災害発生に伴いまして、再保険金支拂が増加し、これがため支拂財源不足が生じ、毎年、一般会計からこの不足財源を補てんするため繰入を行つて来たのでありますが、今後も同様の事態が発生する可能性考えられますので、このたびこの会計に新たに再保険金支拂基金勘定を設け、農作物共済及び蚕繭共済に関する異常災害発生伴つて生ずることのある農業勘定における再保険金支拂財源不足に充てるための財源一般会計からこの再保險金文拂基金勘定に一括して繰り入れて置き、農業勘定において再保險金支拂財源不足が生じた場合には、再保険金安排基金勘定からその不足を補填することができることといたそうとするものであります。  なお、再保険金支拂基金勘定に属する現金は、この会計農業勘定及び家畜勘定において一時支拂上現金不足が生じたときは、これを繰替使用することができることとし、農業勘定及び家畜勘定における支拂円滑化にも資することといたそうとするものであります。  以上の理由によりまして、この二法律案を提出いたした次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御賛成あらんことをお願い申上げます。   —————————————
  8. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 次に資金運用部資金法案議題に供します。
  9. 愛知揆一

    愛知揆一君 只今議題になりました資金運用部資金法案につきまして若干の質問をいたしたいと思うのでありますが、御承知のごとく、この法律案国会に上程せられまして以来、その前後から相当各方面にいろいろと反響を起しておるわけでございますが、私が考えまするのに一番その基本になつておりまするのは、昨年の十一月にドツジ氏から政府資金運用管理につきまして覚書が出ておる。その覚書趣旨ということが本法案審議いたしまする場合の一番前提として重大な問題であると思うのであります。この点につきましては、大蔵大臣郵政大臣等にお伺いすべきでありますが、本日は先ず以て事務当局のお考えを伺いたいのでありますが、一体ドツジのその書簡なるものはどういう構想から出たものであるのか、或いはそれが覚書として出ます前、或いはその後において、その解釈等についてどういう応酬が行われたのであるか、その点を先ず第一に伺いたいと思うのであります。なお資料としてそのドツジ書簡の全文を各議員に配付して頂きたいということを併せてお願いいたします。
  10. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 現在の預金部資金につきましては、終戰後昭和二十一年の二月に司令部指令が出ておりまして、いろいろの制約が加えられておるのであります。只今この資金運用方法だけに限つて申しますれば、国債地方債引受ける以外は、従来認められておりました金融債引受、社債の引受というようなものは一切これを禁止せられたわけでございます。こういう状況でこの二、三年参つたのでございます。他面預金部資金産業方面へ還流さすということについては、熾烈な要望もあり、又金融財政総合施策上その必要が痛感せられますので、少くとも金融債引受ということにつきまして、これを前の指令からはずして、認めてもらうことにつきまして、懇請を続けて参つたのでございます。昨年の秋になりまして、二十六年度予算の編成と相関連いたしまして、この宿願が認められることとなりました。この際司令部意向と申しますか、ドツジ氏の意向と申しますか、その考えに基きまして、現在の預金部制度を根本的に改正いたしまして、その上に、それを認めました上に、金融債引受を認めようということに相成つた次第であります。当初の指令が出ましてからドツジ氏のメモランダムが出ます間には、国内的にはいろいろの意見があつた次第でございます。即ち当面問題となつております簡易保険積立金独立運用というようなことにつきましても、政府部内でもいろいろ意見がございまして、又衆参両院におきましても、院議の決定等もあつたわけでございます。それに基きまして諸般の事務的手続を用意いたしたこともあつたのでございますが、昨年の秋になりまして、司令部関係方面意向も判然といたしまして、又これは当面の財政金融施策上極めて望しいことであるのでございますので、今回御提案いたしましたような預金部改組案を作成いたした次第でございます。
  11. 愛知揆一

    愛知揆一君 ドツジの昨年の十一月のメモランダムというものは全文発表されて然るべきものだと思うのでありますが、その点は如何でしようか。
  12. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) ドツジメモランダムは公表して差支えないものと存じますので、資料として御配付申上げたいと存じます。
  13. 愛知揆一

    愛知揆一君 そのメモランダム十分拝見をいたしました上で、又改めて伺うこともあるかと思うのでありますが、それはともかくとして、只今銀行局長の御答弁の中に、当面の財政金融政策立場から見ても、この考え方日本側としても適当だという御発言がございましたが、これは当面の財政金融政策上の立場から必要だというふうにお考えになつておるのでありましようが。
  14. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 私が当面の必要と申上げましたのは、この資金運用部資金法に盛られております従来の預金部資金運用方法、これにつきましても、例えば金融債引受ける場合にはいろいろな制約がございます。これをもう少し自由にならんかといつたような問題や、或いは金融債のほかに特定の会社債引受けたらいいのではないかといつたような理論やいろいろあり得ると思いますけれども、これらにつきましては、現在或る程度まで非常な従来の行き方から比べますれば改善になるという考えであるのであります。この預金部制度改正いたしまして、資金運用部とするということの制度根本改正につきましては、これは今後正に恒久的の制度としてかくあつて然るべきものと考えておる次第でございます。
  15. 愛知揆一

    愛知揆一君 次に伺いたいのは、先ほど御説明もありましたが、日本側政府部内でも相当閣議決定に至りますまでの間にも、いろいろ論議があつたように承知しておるのでありまするが、この法案がまとまりまして閣議決定になつて国会に提出されるに至りました間にどういうことがどういう観点から問題になつたか、概略で結構でございますが伺いたいと思います。
  16. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 一番問題になりました点は、簡易保險積立金を戰時中から預金部に統合して運用しております。それが二十一年の司令部司令によりまして、なおはつきりと謳われたのでございます。これに対しまして、郵政当局におきましては、戰前におけるがごとく、簡易保険積立金郵政省において、独立運用すべきである、こういう意見が擡頭して参つたのでございます。これを是とするか、否とするかといつたような点につきまして、いろいろの論議があつたわけであります。併しとにかく司令部指令が厳存いたしておりまして、問題はこの司令部指令修正してもらうことを要請するか否かということに問題はなるのであります。いろいろ郵政省方面から司令部に対して、そういう要請もいたされたようでございますが、又日本政府といたしましては、内閣等においても論議し、でき得ればそういう方向に持つて行こうかといつたような意見にもなつたかに伝つておるのでありますが、併しそれは最終的なものではございません。即ち司令部指令改正してもらうというところまでは参りませんのであります。この論議が段々発展して参りまして、ドツジ氏の覚書によつて結論を出されたものと承知いたしておるのでございます。
  17. 愛知揆一

    愛知揆一君 その次に伺いたい点は、先ほど御説明にありましたが、今度の法律案によりまして、従来の預金部資金取扱い法が全面的に修正されることになつたというような趣旨の御説明があつたのでありますが、同時にやはり御説明のうちにありまするように、昭和十八年以来の預金部資金運営方法、それから特に昭和二十一年に関係方面から発つせられたところの覚書に基いて今日まで預金部資金運営されて来たと思うのでありますが、その過去数年間に亘るところの預金部資金運営の実際のやりかたは、この法律案によつても実質的には大した変化はないというように私は考えるのでありますが、その点はどことどこが根本的な修正になるのか。或いは根本的な修正というのは何と申しますか、多少誇張しておつしやつたのであつて実質的には従来の法律及びそれに附加されたところのデイレクテイヴその他を総合して見れば、現実の運用方法と殆んど何らの違いがないと、こういうふうになるのでありましようか。これは預金部資金運用先金融債まで拡がつたというようなことを別にして、その特に今問題となつております簡保との関係においては、従来とこの法律案によつてどういうふうな取扱い方が違うのでありますか。その点を伺いたいと思います。
  18. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 根本的な改正という用語を用いましたか、どうですか、ちよつと記憶がはつきりいたさないのでありますが、この長年の制度でありました預金部という制度資金運用部に変えるということにつきましては、考え方の上においては従来の預金部という観念は、或いは郵便貯金といつたような観念と非常に密接な関係があつたかと思うのであります。このたびは政府に預託せられました国民からの資金、こういうものは今後の資金運用部に統合され、且つそこで総合的に管理せらるべきものであるという原則が確立せられたと思うのでございまして、このものの考え方についてはこういうような変化があつたわけでございます。併し実務的と申しますか、実際の運営上につきましては従来の行き方、特に昭和二十一年の司令部指令以来、実行しております方法改善が加えられこそすれ、実態的には殆んど変化はないと申してよかろうかと考えます。  そこで従来の預金部に比べまして、事後の取扱い方法につきまして変りました若干の点を例示いたして参りたいと存じますが、従来は預金部に対しましてはほかの特別会計等から定期預金或いは当座預金として資金を受入れておつたのでございます。これが今回の改正法におきましては大体定期預託金ということになりまして、これに約定期間の長短によりまして、これに対して附する利率も異なつて来るのであります。それでありますからこれを預ける側につきましてはあらかじめ長期の余裕金ができまして、これを資金費用部に預託いたしまするならば、従来に比して運用利廻りが非常によくなるわけでございます。これに対しまして資金運用部預託証書を発行いたします。  それから運用方法につきましてはこれを戰前のものに比べるか、或いは二十一年の司令部指令以後のものに比べますか、一つ考え方の相違であると思うのでありますが、ここ数年続いておりました現状は、二十一年以来のものでありまして、それに対しては先ほど申上げましたように、国債地方債に対する引受ということに原則として掲げられておるのであります。その範囲が拡張せられまして金融債引受が可能となつたのであります。これが変化と見れば変化になるわけであります。  それから冒頭に申上げましたこの国民から政府に預託された資金の安全確実なる保管という意味におきまして、この資金運用部運用いたしましたものについて万一欠損が生じました場合には、その補填として一般会計から繰入れをする、そうして国民にもう一〇〇%の安全感を與えるという点、これは従来に比べまして大きな改正であると考える次第でございます。  次にこの運用審議会の問題でございます。従来預金部には預金部資金運用審議会というものがございまして、大蔵省におきまして大蔵大臣預金部資金運用に関する諮問機関となつてつたのであります。このたびは内閣運用審議会を置くことになりまして、内閣総理大臣がこれが会長となり、大蔵、郵政両大臣が副会長となりまして、預金部資金が国の全体の利益のために運用せられるということについて、その諮問機関といたしまして万遺憾なきを期するようになつた。これは大きな変化と言つてもよかろうかと思います。その他若干の点があるかと存じますが、これは法案の各條に出て参ることでもございますので、なお御質問等があれば御説明申上げたいと存じます。
  19. 愛知揆一

    愛知揆一君 只今の細かい点につきましては、追つて逐條的に伺うことにいたしまして、問題を変えましてその次に伺いたいのは、いろいろと全逓信従業員組合、或いは郵政省簡易保險局その他からいろいろと陳情資料を頂戴しているのでありますが、それに関連いたしまして、若し簡易保險が、いわゆる積立金運用を独立に運営することができるならば、独立採算制が一層確保されるというような点があるように承知いたしているのでありますが、この点につきまして郵政省のほうから御意見を伺いたいと思います。
  20. 金丸徳重

    政府委員(金丸徳重君) 保險事業は、これは申すまでもなく積立金運用をその事業の内容としていたしますにおいて初めてその完全さを期し得る次第であります。これはもう私から申上げるまでもないことでございまして、その積立金運用を事業の内容として運営いたします理由は、契約者の利益を運用利のできるだけの向上によつて確保いたしますると共に、その運用先を契約者のできるだけ利益において探し出すということにおいて、これを又確保したいというところにあるわけであります。そこで運用先を契約者のできるだけ利益において探し出すということによりまして、或いは契約の募集面、或いは、契約の維持面に恐らく資することができるでありましよう。又利子のできるだけのよいものを探し出すということによりまして、延いては事業の経営面収支上に大きな利益をもたらすことになります。従いまして、独立運用ということと、つまり事業の運営内容としてこれをやることによりまして、それらの自由が得られますると共に、事業経営面におきましても、大きなプラスになる、独立採算制に非常な影響をもたらすことと私は考えるのであります。
  21. 愛知揆一

    愛知揆一君 その点につきまして、実は私多少疑問を持ちます。今度の運用資金法によりますと、この積立金運用先というものが、やはり、相当限定されておるのでありまするか、独立運用ということは別といたしましても、簡保の積立金について、ここに法案規定されておるような運用先に限定されるということになりますと、今お話の契約者の利益において運用先を探すということが制度としても非常に限定されるのではなかろうか。そこで問題は簡保というものの制度の根本に触れて来る問題になつて来るかと思うのでありますが、この運用先は、こういうふうに限定されておるにもかかわらず、簡保の積立金独立運用をすることがしかく必要であるのか、又これが独立採算という観点からいつて、具体的にどういうことに計算になるのであるが、その点を今少しく詳しく伺いたいと思います。
  22. 金丸徳重

    政府委員(金丸徳重君) 事業創始当時からこの点につきましては問題があつたようであります。積立金をどういうふうに使うべきであるかということは、かなり事業創始当時の記録にも載つておるところでありまして、特に大正五年の議会におきまして、貴族院において取上げられましたときにおきまして、この法案の決定の最終の議会であつたのでありますが、そのときにも積立金を如何に運用するかということにつきましては、提案者と質疑者との間に論議が交わされました。そのとき提案者逓信大臣は、国家財政のために運用するということは絶対に避くべきである。避ける方針であるということを言明いたしておるわけであります。爾来その方針に基きまして国家財政の直接のためではなしに、専ら事業の利益において契約者の利益において、そうしてそれが又公共の利益になるという運用先を探しつ、二十数年間その運用におきましては極めて効果的な、有効な運用方法をとつて参つたのであります。これはもう私からこと改めて申上げるまでもなく、従来の歴史がこれを証明いたしておるわけでございます。戰時中の止むを得ざる措置といたしまして十八年に一部の運用先を当時の預金部に任すこととなつたのでありますが、当時におきましてもこれは戦時中の全くの特例であり、戦争が終つたら元へ戻すという約束が大蔵、逓信両当局の間に出来上つておつたことも御存じの通りであります。二十年戦争が終りまして、従つてその当時の協定からいたしますれば、当然に本来の姿に帰るべきであつたのであります。二十一年の一月でありましたか、マーカツト指令が出まして、当時も又これは終戰後の特殊な国家金融の非常状態に処するための、止むを得ない措置と私どもは考えておるのでありますが、この止むを得ない措置として引続き今度は全部を預金部に預託して、今日まで参つたのであります。併しながらこれが事業経営上決して本来の姿ではないことは、もう議論の余地もないところでありまして、我々はこれをできるだけ早くこの非常事態に処する止むを得なさの状態が、脱却し得るそのできるだけ早いときにおいて、本来の姿に帰して頂きたいということをその筋にも懇請をいたしました。又各方面からも陳情があり、国会もこれを取上げて決議をいたしました。政府もその方針を数回に亘つて言明されておつたのであります。本来簡易保險事業は元来申すまでもなく国営の生命保険事業であります。生命保險事業である限りにおきましては、運用権は先ほど申上げましたように事業の経営の内容として持つていることは当然のことと考えます。
  23. 愛知揆一

    愛知揆一君 その今のお考えを発展的に考えますと、国営の生命保險事業であるという点を取上げて考えますと、今日のような情勢において考えますると、将来の問題として簡易生命保險事業を政府会計からもつと独立させて、例えて言いまするならば一種の公企業組織とでも申しますか、そういうものに将来の制度としてお考えになるというようなことは、構想として考えられておるのでありましようか。その点を伺いたいと思うのでありますが、と申しますのは、国営の簡易保險事業ということになりますると、現在いろいろの議論があるようでありますが、例えば郵政省所管の全国多数の郵便局を窓口とし経営をしておられる。勿論会計上経理上の問題としては郵政事業全体に対する保險業務関係というようなことで、一定の比率や按分を作られて、経理も明瞭に分れておるようにはなつているようでありますが、実際上民間の政府事業などから見ますと、有形無形のいろいろと簡易保險事業については便益もあるように思われるというようなことがしばしば話題になつておるようでありますが、それらのことも考え合せて将来の一つの体制としては、何か別個の組織をお考えになるというようなことの方がむしろすつきりするかのようにも思われるのでありますが、そういう点につきましてはお考えなつたことがありますかどうか伺いたい。
  24. 金丸徳重

    政府委員(金丸徳重君) 簡易保險事業を公団のような形で経営して見たらどうかというような意見は、私どもも再々聞いております。又全然考えないわけでもありませんが、現在のところ我々が郵政省で経営いたしておる上におきまして、何らの不便も、何らの損失も感じておりません。ただ問題は、国家資金のために、現在の先ほどのお話の中に、当面金融政策上の必要というような上に資金の統制を受けるというようなことの不便を非常に今痛感いたしておるわけでありまして、それが臨時非常のものである限りにおきましては、それを除きましては何らの不便も感じておりません。従いまして只今公団論云々につきましては、それほど深く検討の必要を認めておりません。又郵便局を利用いたしておりまするために民間会社などと違つて、相当便益を受けておるのではないかというようなお話でございました。私は確かに郵便事業や、郵便貯金事業の総合的に経営いたしますための便益は確かにあろうかとも思うのであります。又それ故に郵政省が持つておることの私は利益が非常に多いだろうと思います。併しながらそれかといつてほかの事業におぶさつているということはありません。ただ單に総合経営によつて自然に受ける便益だけを今享受いたしておるわけであります。
  25. 愛知揆一

    愛知揆一君 簡易保險局長にもう一点伺いたいのでありますが、簡易保險の法定の保險金の限度は五万円になつておるわけでありますが、昨年中などにおきましては、ときどき新聞記事等にも、或いは投書等にも現われておるようでありまするが、超過保險を実際上取つておられて、そうして保險事故の発生いたしましたときには、法規上は五万円が限度になつておりますけれども、事故のありました場合の超過保險金支拂いについては、郵政省としては責任を持つておやりになるのだというようなごとき御態度がそれらの問題のときに現われておるように思うのでありますが、この問題は、そもそも法律で限度がきまつておりまする以上は、事故の発生の場合に、超過保險金支拂ということについては、私は法律上も相当問題があるかと思うのでありますが、この点について御見解を伺いたいと思います。
  26. 金丸徳重

    政府委員(金丸徳重君) 終戦後、簡易保險事業も、他の民間会社経営の保險事業と同様に、或いはそれ以上の痛手を蒙りまして、非常に経営上の危機に直面いたしたのであります。何とかしてこれを脱却いたしまして、契約者側の安心を得なければならない。そのためには、できるだけ多くの契約を獲得いたして、又獲得いたしました契約をできるだけ確保いたすということに、従業員一同努力を傾倒いたして参つたのであります。それにもかかわりませず、二十二年、二十三年におきましては、大きな経営上の赤字を計上せざるを得なかつたのであります。私ども非常にこの点を残念にも思つてつたのでありますが、特に二十四年におきましては、当時のドツジ・ラインと申されましたか、ああいう政策からいたしまして、均衡予算を組まざるを得ず、この均衡予算を組むためには、どうしても收入の増大を図らなければならない、その收入の増大を図る最大の方法といたしましては、できるだけたくさんの高額の保險契約を獲得するということに、当面の問題といたしまして落ちつかざるを得なかつたのであります。そこで二十四年度におきましては、月額保險料二十億というような、誠に従来の経験からいたしましては、大き過ぎる目標まで掲げまして、この均衡予算の遂行に当つたのであります。そのために現場のほうにおきましては、異常な苦労を続けまして、どうやら二十億の目標を達したのでありますが、その間いろいろと無理がありましたことは、私ども認めておるところであります。その無理の一つといたしまして、すでに五万円契約いたしておりまする契約者に対して、又勧めたというような例もありましたけれども、それからして十万、二十万というような契約を勧めたということはなかつたのかも知れませんが、当時事情を調べて見ますると、あとで調べてわかつたのでありますが、保險料を計算したところが、ほかのものよりもよろしかつたというところから、五万円ではいやだけれども、高いなら入るということで入つたということがあとでわかつて、いずれにいたしましても、そういうようなものにまで食いつかざるを得なかつたほど現場の者は苦労いたしておつたわけであります。併しこうしたことが法規上好ましくないことは、御指摘の通りでありますが、私どもはこの事実が発見されまして以来、特にこうしたことの絶無を期して現場の指導に特に注意いたし、或いは人を派遣いたしまして、或いは通牒、文書によりまして、そうした契約の絶滅、手をつけてはいけないということの厳重な申渡しをいたしておつたのであります。二十四年当時におきまして、そうした止むを得ざる事情からいたしまして、若干そうした契約の生じたことにつきましては、誠に遺憾に存じております。爾来そういうことにつきましては、特に留意いたしまして、絶滅を期しておる次第であります。事情はさようでありまするが、更にそうした契約について責任を負うかのごとき態度を見せておるのはどうかと思われるというお話であります。私どももこの点につきましては、この誤つて契約いたしたものなどにつきましての処置につきましては、いろいろと苦心、検討もいたしたのであります。その結果、契約者側の意向を尊重いたしまして、勿論それはもうそういうものは将来いやだということの契約者に対しましては、無効処理もいたしております。併し勧めたのだから、或いは自分が知らずに、そういうことでもいいと思つて入つたという者につきましては、私どもは法規上はとにかくといたしまして、道義的には無効でありますからということを申しかねるような気もいたします。殊に何といいますか、保險事業は信用を第一に持つて行かなければならないことは、今ここで申上げるまでもございません。例えば知らなかつた、或いはうつかりしたということにいたしましても、でき上つた契約に対して、あとで知らんふりをする、冷酷な扱いをいたすということにつきましては、甚だ信用を基礎といたします事業経営者といたしましても、とるべき方法ではないと考えまして、理窟はとにかくといたしましても、責任は負うからということの態度を以て進んでおる次第であります。
  27. 愛知揆一

    愛知揆一君 只今局長の御説明を伺いまして、二十三年、二十四年当時の御苦心のほどは、重々お察しするわけでありますが、且つ昨年の暮に漏れ承わりますると、超過保險の問題につきましては、今後絶対に超過保險をとることをしないようにという末端までの示達を郵政大臣からされたということも承知をいたしておるのでありまするが、只今お話のございましたように、一方からいえば、契約者は善意で勧誘に乗り、或いは自発的に超過保險を契約をした、そこで事故が発生した場合に、これに対して支拂うかどうかということについては、非常にこれは実際問題としてむずかしい法律的な問題も勿論でありますが、社会的な問題でもあり、又只今お話の通りの簡易生命保險事業の信用にも関係する問題だと思うのでありまするが、十分一つこの点につきましては、各方面とも御協議の上、善処して頂くように重ねてお願いをする次第でございます。なお又誠にこれは微妙なところでありまして、その処理の如何が、又将来における長保との間にいろいろと紛糾を起すこともあると思いますので、その点については、特に十分御配慮願いたいということを希望として申上げて置きます。  次に問題を元に戻しまして、大蔵省のほうに伺いたいのでございますが、今度この新法案が提案されることに関連いたしまして、私どもの待望しておりました従来の預金部資金が相当程度民間に還元されるということになつたという点は、非常に御同慶に堪えないのでありますけれども、申すまでもなく郵便貯金にしても、簡易保險にいたしましても、全く零細な大衆からの資金を吸収しておるものでありまするが、今度の法案では先ほど申しましたように、拡がりました点は一口に言えば、金融債運用先が拡がつただけであつて、どうも社会的な感覚から申しますと、金融債だけでございますると、農林中金や商工中金も勿論ありましようが、一口に言えば、大企業に偏重してこの金が運用されるのじやなかろうかという感じを、どうしても私は否定し得ないと思うのでありますが、戦争前の預金部資金運営のやり方にも、いろいろ問題はあつたことと思いますけれども、この際今少しくこの資金運用部資金を広汎に、いわゆる大衆に還元するというような点については、もつと配意が加えられて然るべきではなかつたかと思うのでありまするが、その点についての御意見を伺いたいと思います。
  28. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 今度運用範囲が拡張せられまして、金融債引受けることができるようになりました。現在金融債を発行できます金融機関といたしましては、実際問題といたしまして興業銀行、勧業銀行、その他農林中金、商工中金、こういう長期の資金を扱う特定の銀行に限られることになるのでございます。私どもはこの興銀等におきましてはこの資金が主として今大企業方面に流れるということになるかと思うのでございますが、商工中金、農林中金等は必ずしもこれは大企業を対象とする金融機関ではございません。この預金部資金が長期であるという本来の性質、これをこの資金需要者側で本当に要求しております農業方面資金、或いは中小企業者の必要としております商工中金、こちらのほうに資金が流れますことは国民にあまねく便宜を供與するゆえんであると考えておるのでございます。もつとこの行き方を拡げたらどうかというような点につきましては、若しそういう金融機関ができまして、そうして債券を発行するということになりますれば、これを拡張して参るということについては、少しも異論がないところでございます。
  29. 森八三一

    ○森八三一君 先刻大蔵省の御説明によりますると、本法と現在の制度と変りまする点は、預金部預金法を廃止して新たに資金運用部資金法を制定したという形式的な一つ変化と、更に運用に関しまする運用先が拡大をせられたというような点が取上げられまする大きな点でありまして、実質的には大して現在のそのものと重要な変更はないというような御説明であつたと伺うのでありまするが、そういたしますれば、郵政関係からいろいろ陳情やら意見を述べられておりまするような問題を惹起することはなくして済むようにも思われるのでありまするか、どうか非常にこの問題が発表せられましてから大きな問題を捲き起しておるのでありまして、ただ形式的に多少の変化はあるが、実質的な変化はないということについては、この捲き起つておりまするいろいろな事態から考えまして、まだ問題があるのではないかというように思われますのでありますが、これに関しまして、郵政当局にお伺いをいたしたいと思うのであります。と申上げるのは、先刻抽象的に、観念的にお話はありましたが、今度の制度によりまして、戰争中から今日まで止むを得ざる非常時の対策としてやつて来られたという、それを元へ戻そうというのでありまするが、その非常時対策として進んで参りました間に、具体的にどういうような支障があり、どういうような不便があつたのかという点を一つお話を願いたいと思います。
  30. 金丸徳重

    政府委員(金丸徳重君) 戦争中一部を預金部のほうに預託いたしたのでありまするが、又一部は当時の逓信省独自で運用いたしております。その運用先地方債が主でありましたために、資金還元という一応保險積立金運用先一つの眼目とでも申しまするか、運用方法原則一つとでも申しましようが、この地方還元の途は開かれておつたのであります。二十一年のマーケツト指令によりまして、又全部を統轄いたしましたが、その預金部における運用先につきましてはかなり拘束がありましたが、地方債のほうに一部は流れておつた。実質的に地方債のほうに流れることによりまして、地方還元の途は開かれておるとはいいながら、実は契約者のほうといたしましては、自分たちの保險の積立金かこういう形で地方に戻つて来ておるのだという。その過去の実績を見ておりまするために、何とかそういう実体を明らかに見せつけられるということによりまして、非常に契約を続けて行く上の意欲を向上いたしまして、又従業員といたしましては、戰時非常のために一時或いはこういうことになつたとはいいながら、将来はやがて元のような姿で郵政省運用するのであるという大きな希望を持つて進んでおつたのであります。その希望を持つておりましたために勤労意欲も向上して参りました。暑い所、寒い所も、一度で足らず二度、三度、五度契約者の家にお邪魔しては集金をいたし、又募集をいたしておつたわけであります。それはただひとえにこの苦労は将来本来の姿に戻つて来て、自分たちの契約者側に対する約束通りの運用ができるという、ただ一つの希望の下に努力を続けておつたわけであります。従いましてその希望を絶たれるということになりますれば、忽ちここにがつかりすることはこれは人情の自然でありますし、契約者といたしましては、事業創始当時からそういうものである、保險の積立金は保險事業にふさわしい使い方をするということによつて契約をいたし、又契約を続けて参つたのでありまするが、今日只今よりそういうものではないのだ、制度としては変つて行くのだというふうになりまするというと、約束が違うという気持も起つて参るのであります。それらの点は非常に今日若しそうなつた場合におきましてはと心配されると同時に、今後一層の心配があるのであります。現場のほうで心配いたしておりおりまするのもその点であります。
  31. 森八三一

    ○森八三一君 只今のお話はやはり抽象的なお話であると思うのでありますが、戰時中に臨機の措置として進んで来られたその実績において契約者なり預金者が非常に意に満ちませんために、契約が非常に具体的に減少をしたとかいうような事実が考えられますかどうか。抽象的でなくて、具体的に何か問題があるのかないのかという点は如何でございましようか。
  32. 金丸徳重

    政府委員(金丸徳重君) そういう止むを得ざる拘束を受けておる故にどれくらい不便なり不利を具体的に受けておるかを、何か事実、或いは具体的に示せということでございますが、專ら非常な不便を感じておりますることは、もう縷々申上げる必要もないと思いますが、その不便を将来への希望のためにあえて克服しつつ、言つてみますれば、二度で済むところを三度、四たび契約者をお伺いする。或いは晝ですむところを夜まで行つて、いろいろ説き伏せて契約を取る。又集金をいたしておる。つまり言葉を換えて申しまするならば、その不利、不便、不自由さをただひとえに従業員一般の努力によつてカバーしつつ今日まで参つておるわけであります。
  33. 森八三一

    ○森八三一君 今度の制度によりますると、資金部の運用審議会というものを設置することに規定をされておるのでありまするが、只今のような契約者なり預金者の希望というものが当然審議会を通じて十分に主張されて然るべきものであり、ここで問題は総合的に解決をされて行くという方向が見出されるように思うのでありまするが、この審議会を通じて、今お話になつたような契約者なり預金者の希望というものが達成されるというような方向を見つけて行くということについてどうお考えになりまするか。
  34. 金丸徳重

    政府委員(金丸徳重君) 委員会によつてこちらの希望なり意向なりを十分に反映するということも一つ方法ではある。併しながら先ほども私は申上げたのでありまするが、保險事業と積立金とは切つて切り離せないものである。この切つて切り離せないものをあえて切つて、そうしてそれを委員会運営によつてカバーしようといたしましても、これはもう全く本質的に違つて来ておりまするので、私はさようには考えません。
  35. 愛知揆一

    愛知揆一君 私はまだたくさん伺いたいことがあるのでありますが、もう一つだけこの際に伺つて置きたいのは、本年度地方債金融債の発行の計画、それから本年度に限らずこの三月までの地方債の起債の状況並びに金融債の発行の状況、これを数学的にお伺いしたいと思います。若しこれは今詳細な御答弁がむずかしければ、資料によつて説明願いたいと思います。
  36. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 只今の点は高橋説明員から御説明いたしたいと思います。
  37. 高橋俊英

    説明員(高橋俊英君) 只今のお尋ねになりました地方資金及び金融債のほうは、終戰後マーケツトの指令によりまして資金部の資金国債及び地方債に限定せられまして、実際上は国債の新規発行は、昨年度までは預金部として引受けるべきものはございませんでした。それで殆んど主力を地方債に集中いたしておりましたので、最近におきまする地方債運用額の現在高は非常に大きなものとなつております。これをまあ数字的に申しますと、昭和二十一年度末におきましては、地方債運用額は四十八億円余りでございました。二十二年度、この頃はインフレ等のために預金部資金自体の増加が余りありませんでしたので、地方債に対する枠も勢い少くなつたのでありまするが七十八億円、現在高として七十八億円でございます。それから二十三年度になりますると、この頃から漸くインフレが解消、インフレの度合が鈍りまして、資金の蓄積も多くなりましたので、相当多額に地方債引受け得ることになりまして、四百九億円に達しました。つまり二十三年度の起債は四百九億円でございます。なお二十四年度末におきましては七百九十八億円、それからなお本年に入りまして相当多額の短期融資もやつておりまするが、それとなお起債前貸しの形でやつておりまするので、十二月末現在におきましては一千五十七億円が地方公共団体のために投資されております。そのほかなお別に金融債につきましては、本年度二百億円という枠を、この資金運用部資金法を成立せしめるという予想の下に、つまりそういうことを考えた上で月々特別の許可をもらつておりまして、只今までに二月分まではおおむね予定通りやつております。三月分としてなお六十七億円を予定しておりますが、この三月分は未だ許可を得るに至つておりませんので、それを除きましては、二百億円のうち六十七億円を除きましては大部分は運用しておるわけです。その預金部資金地方債運用された経過につきましては、ここに資料がございますからして提出いたしたいと思います。
  38. 愛知揆一

    愛知揆一君 それからいま一つ細かいことで恐縮でありますが、先ほどちよつとお尋ねしました中で十分お答えがなかつた点をもう一つだけ追加してお尋ねしたいのですが、それは簡保の運用収益と独立採算の問題であります。けれども簡保の場合におきましてはたしか簡易生命保險法の十八條であつたかと思いますが、それによりますと、資金の予定運用利廻りは年三分五厘を前提にしておられるように思うのでありますが、これを資金運用部に、今度新設される資金運用部に預託されるということになりますると、その預託の利子は何分になるのでありましようか。
  39. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) ちよつと要点を、甚だ失礼ですけれども……。
  40. 愛知揆一

    愛知揆一君 伺いたいのは、簡保の資金の予定運用利廻り、それからそれの現状と、それから今度この法律案によりまして資金運用部に預託しました場合に、その預託利子がどういうふうになるかという点であります。
  41. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 簡保の予定利率は三分五厘であります。それで二十六年度におきましては預金部資金の場合でありますと、簡保からり預け入れに対して年四分五厘を拂う計画になつております。それが今度の改正によりまして、資金預託の資金の長短によりまして利率が異りますが、簡保の資金のごときは長期に預託することが可能なんでありまして、五年以上になりますれば五分五厘ということになります。
  42. 愛知揆一

    愛知揆一君 そうするとその点だけから申しますと、却つて資金運用部に長期に預託したほうが、簡保としては独立採算が有利になる、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  43. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 私はそう考えます。
  44. 愛知揆一

    愛知揆一君 それからそれに関連しまして附則の第十項で、この法律施行の際、現に積立ててあるものについては云々という規定がございます。この法律施行の際にこの附則十項の適用を受ける金額は幾らになりますか。
  45. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 三十六億円程度であります。
  46. 愛知揆一

    愛知揆一君 そうするとその三十六億円についての利子は幾らになるのでしようか。その三十六億は今回は預託をされないことになる……。
  47. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) そうなんです。
  48. 愛知揆一

    愛知揆一君 そうすると仮にこれが預託された場合とこの法律の附則によつて預託されない場合とがありますね。その間の利廻りの差額が、どつちがどういうふうに有利になるか、その点を伺いたい。
  49. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) この附則の十項によりまして運用されております資産につきましてはいろいろのものが入つておりますので、その平均利廻りは簡易保險局からお聞きとり願いたいと思います。これを資金運用部運用するとすれば先ほど申上げたようなことになると思います。
  50. 金丸徳重

    政府委員(金丸徳重君) 只今舟山銀行局長からの回答で或いは誤解されるといけませんので、私から附加えさして頂きます。四分五厘で従来預金部のほうにお預けいたしておつたのは、一時の止むを得ざる措置といたしまして、すぐにこれは本来の姿に戻つて来る、独自の自主的な運用ができるまでの我慢であります。若し自主的に運用いたしまするならば、昨年或いは一昨年あたりは相当の高利に廻し得たのであります。それにもかかわらずまあ一時的……、一時である、やがて本来の姿に帰えるからというのでむしろ根本問題の解決のほうに努力をいたしておりまして、利子の点についてはあまり大蔵省側に交渉も積極的にいたさなかつた結果でありまするが、今度は五分五厘であるから三分五厘の予定率からいたしますれば、相当有利であるということにもなるわけでありますが、併し簡易保險事業が若し自主的に運営いたすといたしますれば、五分五厘以上に、もつとにも運用できるものと私どもは考えております。又仮に五分五厘で運用いたすといたしましても、その運用先が契約者の利益に直結するものと、そうでないものとの違いによりましては、私は契約者側に與える利益、実際上の利益及び勘定上の利益は随分違うだろうと思います。これだけ附加えさせて申上げて置きます。
  51. 愛知揆一

    愛知揆一君 その点は私ももう少し調べて見たいと思うのでありますが、今の三十六億円の問題については、昭和二十四年度なり二十五年度なりには実際の運用収益はどのくらい上げておるんでありますか。昭和二十四年度なり二十五年度なり、最も最近の過去の年度において、この第十項に関連するものから……、と申しますのはこれは單独運用をしておられたわけですね。その單独運用をしたものの収益が実額で幾らであり、これは利廻りが何分あるかということがおわかりになりましたら……。
  52. 金丸徳重

    政府委員(金丸徳重君) 実額は今ちよつと我々資料を探すのにちよつとなんでありますが、利率は四分程度であります。四分ちよつと欠ける程度であります。過去の投資が利子収入ということもさることながら、契約者の直接の利益というような点を考慮いたしまして、曾つては低利資金という代名詞までも頂戴いたしたほどに低利に運用いたしたこともあります。專ら契約者層の利益に直結するというその点に着目いたしておつたわけであります。
  53. 愛知揆一

    愛知揆一君 その契約者の利益になるようなところに運用するという点になりますと、先ほど私お尋ねしました根本の点に触れて来るのであつて若し簡保たりといえども、政府資金であるからその運用を独立にするせんは別としまして、運用の先がこの法案のように限定されているということであれば、只今説明ありましたようなふうには私はならんのではなかろうかと思うのでありますが、この点につきましては更に私も研究いたしまして質問を続けることにいたしまして、一応この程度で打切ります。
  54. 松永義雄

    ○松永義雄君 銀行局長にちよつとお尋ねしたいのですが、銀行にしましても、その他金融機関にしましても、地方で集まつた預金は大部分大都市に集中して、そして大都市の金持のほうに融通されている傾向がある。いずれ資料として細かい数字は頂きたいと思いまするけれども、一応結論だけお聞きしたいと思います。
  55. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) この地方から集めた資金を專ら中央で使うのじやないかというお尋ねと拜承いたすのでありますが、ここ二、三年の実情を申しますと、国債の発行はなかつたのでありますから、預金部としましては、地方債だけを引受けており、そうするとこれは専ら地方で使われておつたわけになります。或いは御質問の趣旨を忖度いたしますと、甲の地域で集まつた金額だけを甲の地方に還元するというお尋ねになるかと思うのでありますが、そういうことは日本の経済全体から見ましていかんかと思うのであります。そうすると富裕な地方だけその金が借りられる。貧乏県に災害等がありましてもそちらに少しも金を廻すことができない、こういうふうな実情であるのであります。そういうような意味におきましては、狭い意味の地方還元ということにつきましては、私はとらざるところであります。併し大きな意味ではこの二、三年におきまして運用を許されております資金の殆んど大部分が地方に還元されているということを申すことができると思います。
  56. 松永義雄

    ○松永義雄君 私のお尋ねしたのは銀行についてお尋ねしたのであります。
  57. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 銀行につきましても、大銀行と地方銀行とでは多少趣きを異にしておると存じます。地方銀行の金は殆んど全部が地方において使われておる。それから大銀行の資金におきましても、成るほど大企業に相当金が出ておるのでありますけれども、併し大企業の地方の工場或いは支店という面に廻り廻つて遂に戻つておる金が相当あるのであります。これを統計的になかなか精密なことを引出すことは、或いは困難かと思うのでありますが、一応お答えいたします。
  58. 松永義雄

    ○松永義雄君 只今局長の言われました結論については私は反対の見解を持つております。地方銀行の預金は大部分地方に還元されておるということは、私は遺憾ながら否定しなければならんと思うのであります。例えば東京、大阪の大都市に本店を有しておる大銀行においてすら一企業者に対してその預金の大部分を貸付けておるものがあるということを聞いておるわけであります。実際において地方から集まつた金が、例えば中小商工業者の預金が中小商工業者に対して戻つておらないという傾向が強いと思うのであります。只今銀行局長が統計をとるのは困難であるとおつしやいましたが、聞きようによつては逃げられておると考えられる。実際或いは困難かも知れませんが、併し我々の見るところによると、或いは耳にしたところによりますと、地方還元が非常に少ないということを感じておる。従つてここで問題になつております簡易保險の問題に移るわけですけれども、そうでなくても我々の零細な貯金の集まりである郵便局の金が、若し万一これが大都会の方面に廻つて来るというようなことになると、終戰後汗と血の結晶である郵便貯金が大部分大都会に、大企業のほう、或いは大商のほうに廻つて来るという結果になつて来る。而も農村において金詰りがひどい、中小商工業者が如何に金詰りのために労賃すら拂えない始末であることはよく御承知の通りであります。我々郵便貯金階級のものから見るというと、昭和三、四年のあの銀行恐慌の際にも還元したことがあるのでありまするが、郵便貯金こそ我我は確実である。利息は安いけれども確実である。間違いない。まあ市中銀行が確実な運営をやつておらない。国家の機関のほうが割合まじめであるといつた印象からしまして、我々は郵便貯金にできるだけ預金した。そうして預金金額の上ることを望んで参つておる。我々は郵便貯金にいたしましたその預金というものは、全く我々が病気になつたときに医者にかかる、万一のときに現金は必らず戻るといつた気持で、経済的意味というものは極めて薄い。この簡易保險というものは、或いは郵便貯金というものは、従来社会政策的にこれが利用されて来たということは顯著な事実であります。従つて郵便貯金につきましては、御承知の通り長い歴史があつて郵便貯金の濫用ということが或る種の問題を起し、そうしてその後これは確実に運用しなければならんという規定ができて、長く今日に至つておるわけであります。然るに今度その郵便貯金大蔵省のほうへ持つて来て、そうして大蔵省運用するということは、一体どういう趣旨でもつてなさろうとするのであるが、一ところへ集めれば統制がしやすいというのか、それとも又一体こうした郵便貯金の性質、預金者の気持というものをどういうふうにお考えになつて、これは運用して行かれるつもりか、その点についてちよつとお尋ねしたいと思うのであります。
  59. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 銀行預金が中央に集中してしまうのではないかというような点につきましては、私の見解は先ほど申上げました通りであります。申すまでもなく、金融というようなことにつきましては、この金が流れて行きますのでありますから、單に形式的に借入したいということだけで、その金はその資本に使われるのだということをきめるわけには参らんのでありまして、その意味で統計等もむずかしいことになる点を申上げたのでございます。それから次の預金部の問題につきまして、郵便貯金と仰せられたのは簡易保險の資金意味かと拝承いたすのであります。と申しますのは郵便貯金のことにつきましては、明治初年から郵便局の窓口に集つて参つたのを、大蔵省では運用して参つておるのであります。そこで簡易保險等この政府資金は、この日本におきましては、金融界と申しますか、国民経済に対しまする比重は非常に大きいのでございます。現在預金部資金は二千五百億ぐらいでございます。これは、銀行預金は丁度一兆円ぐらいでございますのに対して、四分の一に達しておる。こういうような非常にウエイトの大きい量に達しておる資金というものは、日本みたいな経済方の微弱なところにおきましては、財政一般、それからほかの金融政策一般、これらと総合して運用しなければ国全体のためにはならん。こういう考えにおきまして、この資金運用につきましては、財政金融の担当者であります大蔵省が総合的な目でもつて運用して行くということが最も適切である、こういう考えを持つておる次第でございます。これによりましてこの預金部資金は従来も公共の利益のために使つてつておるのでございます。その中には資金の中央集中を極力避けて、地方に還元するという考え方も入つて来るわけであります。單に地方から集つたものをそのまま地方に返してやるというだけでは、国民経済全体の発達なり、進展なりというものは期し得られないということは申上げるまでもないことと思います。
  60. 松永義雄

    ○松永義雄君 郵便貯金へ、或いは簡易保險へ金が集つて来る傾向については、これは長い間の市中銀行の経営振りがよろしくなかつたからで、最も顯者なる例は金融恐慌に現われておる。台湾銀行と鈴木商店のことは誰しも知つておることなんであります。でそのように我々は郵便貯金をいたすのだから、その郵便貯金なり、簡易保險というものは、確実に使つてもらいたい。確実にしてもらいたい。大きな人は利息を勘定して郵便貯金、或いは簡易保險に入られんかも知れないが、我々のごときものは、確実なんだから、だから預金したり、保險料を納めておるというわけです。それが今度一般の銀行に金を廻して、そうしてそれはどこへ行くか、我々預金者にはわからないというような運用振りに相成りますと、我々はその簡易保險なり、或いは又貯金なりについて考えなければならんということになる。例えば国債を第一に買つて置こう、或いは地方債に金を向けて行こうといつたような、我々としては極端なものの言い方ですが、そうした方面に金を持つて行く道が塞がれて来るということになると、これはもう疊の中にしまつて置いたほうがいいのであります。疊の中にしまつて置くということは、それは利息を考えるというような、そんな経済的な利好さを持たない、元金が戻つて来る、元金をつかんでいなければならんというのが郵便貯金をする者の気持ではないかと思うのであります。然るに今度の法律を見ますというと、こうした気持の金を、金融債といつたような方面に向けられて行くことになれば、我々の気持というか、恐らく預金者の気持に反することに私はなると思う。零細な労務者の貯めた金が一部の大きな企業家に金が向けられて、而も市中銀行がそんな金をいつまでも置くというのは困るのだといつた、そうして肩代りでもさせるかのごとき印象を與えつつある。私は今度の法律をそのまま解釈し、銀行局長のお話を聞けば、恐らく間違いないと思うけれども、併し世間で流布されておるところによりますと、いろいろな噂が飛んでおる。その噂自体が御承知の通り札に対する信頼というものを、まあ言葉は卑近ですが、置いておればこそ、札の値が出ておるのだということを世間で言つておる。それと同じように、まあ預金部へ預けて置けば間違いないのだと言つたような、一つの先入主で以て預けておる。そういう考えがぐらついておる。これは現実の事実でありますが、それに対してどういうふうにお考えになるか。
  61. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 今度の資金運用部資金は、国民から預かつた資金でありますから、もう絶対確実に運用しなければならんということは、御指摘の通りでございまして、そのためには第一條の目的にもそのことが謳つてございます。それから預金部資金運用法ではなく、特別会計の経営におきまして、万一運用によりまして欠損を生ずるといつたようなことがありましたならば、一般会計から補填して、預金者、保險契約者等には絶対に迷惑をかけないということが今度新らしく改善せられました大きな改正点でございます。それで預金者及び保險契約者等の安全感を増したのでございます。併しこういう規定があるからといいまして、運用でルーズになりまして、損失を来し、一般会計から補填してもらうことを漫然と期待しておるということは、適当でないことは申すまでもないのであります。そこで資金運用部資金運用方法といたしましては、やはり第一に国債地方債という、信用確実なものに原則としては限るのだということに相成つておるのでありますが、併し資金に余裕があり、又郵便貯金に例をとりましても、これが貯蓄銀行でありますれば、集まりました資金が産業に還元するのであります。そこで資金運用部におきましても、それらの資金金融債のルートを通じて産業界に還元するという措置をとつた次第でございますが、この金融債引受につきましても、漫然とどの金融債を無制限にとつてよろしいということでは、非常に危い事態も想像されますので、法律規定におきまして、金融債引受方法につきましては、いろいろの制約があるのでございます。これは第七條の二項、三項に出て参るのでございます。これを一口に申しますれば、当該金融債が市場においても一般から確実と見られて、十分に市場に信用あるもの、そのものの金融債、その金融債の一部分を資金運用部においても引受けてよろしい、こういう規定になつておる次第でございます。
  62. 松永義雄

    ○松永義雄君 只今第七條に融資絶対額の規定がある。若し損失を生じた場合には、政府は補償するという規定があるということでありますが、何かあなたがた御承知ないかも知れないが、あの金融恐慌のときにおいて、最後に安田銀行が取付に会つて、今日はあすこの銀行、明日はどこの銀行というふうに潰れた。政府はあとで損失を補償するというが、金融界の問題はもつと大きな問題だ、そんな小さな問題ではない、我々外部からみておつたものですらそういうことが受取れるのであります。それを一片のただ條文で、政府が補償するから安心だなんて、殊に最近の日本の経済界の進行振りをみますと、ちようど第一次大戰のときのような好景気まさに至る、そういつて言いはやして兜町あたりも盛んに煽り立てておるけれども、我々曾つてそういう経験を新聞なり実際においてみて来た、今にしてこの肚を引締めてやつて行かないと再びああした現象が来ないとも限らない。終戰後めちやくちやになつた日本の財政経済、それを急速に建て直そうという気持は了とする。誰でもしなければならんと思うけれども、それに対して余り大きな欠陥を包蔵して行つたならば、私は恐るべき結果が起きるということをここに予想し得る。我々勤労階級の頼りというものは郵便貯金である。又簡易保險である。簡易保險金額が殖えて行くのを喜んでおる。これが伸びて来るならばその資金は出せるだろう。経済界が金が必要だ、それはわかります。わかるからといつてその金をそうした一つの穴を作つて向けて行くということは、それは三億や四億は何でもないが、それからそれへと進んで行く。あなたは法律を作るときにはそういう考えでお作りにならんだろう。もうそう信じてお作りになる。ところが絶えず組織は変り、人が代つてつて、そうしてその金を運用する人になつてみると、法文があつて大丈夫だ。今もおつしやつた通りに、いずれこの法律が通過することが予想せられるから、まあ金を迴しておるのだということもおつしやつておる。我々はこの点において、ここで我々のような金に縁の薄い者がそんなことを言つてもおかしいが、併し我々は大正から昭和の三、四年頃までの金融恐慌で、大勢の人に頼まれて、銀行に行つて、そうして預金を返してもらつたときのことを我々は思い出す。最近の経済界なり、或いはここでも問題になつておる公団の問題もあり、実際に信用する気持を棄てて行かなければならない。我々にしたつてそうです。政府、我々自身だけのことを申上げるのではない、政治が何となくわあわあしておるという状況なんです。世間全体がわあわあしておる。幾分でもこれは引締められるところがあれば引締めて行かなければならん。全体そうやかましく言つたんでは産業は伸びられないだろう。こう言われればその通りですけれども、或る程度まで引締めるところは引締めて行き、守つて行くべきところは守つて行かなければならん。それを市中銀行に廻して、市中銀行が更に産業界に流す、私は頭をひねらざるを得ない。殊に今まで簡易保險なり、或いは郵便貯金地方債に廻つてつて、地方費に廻つてつておつた。そうでなくても窮屈になつて来ておる今日の地方なり或いは中小商工業者は、ますます金の廻りがもう悪くなつて困る。一方で大きなものをこしらえて、そうして大きなものに経営さして行くというのは日本の復興のゆえんである。確かに効用はあるけれども、併し大きなものを作るということは、現在日本の幸いかどうかということは又大きな疑いがある。国民全体が平穏な生活を送つて、初めてそこで国家というものは守つて行かれるし、治安が守つて行かれる。百年先に金持になるか、十年先に金持になるか、私はむしろ今日の日本の情勢としては、私はゆつくりやつて行つたほうがいい。腰を落ちつけて。今に三年経つたら百億ドルできるとこの間或る元の銀行の総裁がおつしやつた。それに対して水を浴びせるような非難が英国で出て来ておることは御承知の通りであります。少し財界は酔い過ぎている。思い上つている。勧銀の副総裁の山田さんでさえ、二割、三割の配当をしている会社があるじやないか、ああいう人たちですらそう言つておる。我々が言うなら、あいつらいつでも言うから言いそうなことだと言うだろうけれども、そういうことを言いそうもないような人が言うようになつておる。非常に不健全、気持が不健全だ。二十五割、昨日の新聞を見ると利益が二十五割、二割五分ではない二十五割。そういう方面に金を廻さなければならん……。尤も地方なんかで勧業銀行ならば信用する人もあるでしよう。併し市中銀行は何でも短い間に金を貸して利息を上げる機関なんだ。だからそんな金貸しに貯金するのはやめて、その金を郵便局に乗変える。すべて利己的な考えから出発しておる。決して国家及び国民のためを思つて彼らは考えているのじやない。若しそれに諸君が乗つて行つたら、我々の郵便貯金というものはどういうふうに使われて行くか。郵便局の連中、全逓の諸君たちは、こんなふうになつたら、おれたちは簡易保險なんか山の中を歩いてなんかやつても馬鹿々々しいということを言つておる。あんた耳にしておられるかどうか。お前たちならば集めた金を貸してやることもできるのだ、こういうところに初めて簡易保險の生命がある。或いは貯金しなさい、盛んに僕らのところにやつて来て、今月貯金をしてくれ、貯金をしてくれと言つてやいやい言つておる。やらなければ貯金の目標が達せられないから、やいやい言つておる、まあ郵便貯金をやらなければ貯金の目標が達せられないから、やいやい言つて来る。まあ郵便貯金ならいいよ、私もやつてやるよ、貯金しよう、貯金しなければ怒られる。併しその気持は、確実だという点が中心なんです。やはり人間は利己的ですから、確実ならそんな利廻りなんかいい。利廻りがどうかこうかということになるならば、兜町へ行つてスペキユレーシヨンをやればいい。あそこでも間違いないということを言つております。この言葉はどこでも使われている。問題は具体的に……、我々としてみれば、我々の値人的の考えとしてみれば、ああした金は社会政策的に使つてもらいたい。社会政策的に使つてもらつて、そのために仮に不回収になつても、くやしいけれども又それに慰むるところがあるというくらいに我々は考えておる。大体郵政省の大臣をここにお呼びして、少ししつかりしようじやないかと僕は言いたいのだけれども、この頃池田さん、羽振りがいいものだから、金をどんどん集めている。併しそれは一つの笑いごとじやないので、我々としては……、疊貯金も、箪笥預金も少し置いておかないと危ないです。まあ八割ぐらい戻つて来るかも知れん。そういうようなことです。まあ、一つ考えて置いてもらいたい。
  63. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 郵便貯金等の安全性につきましては、まあ政府保証するのでありますから、まあこれ以上の安全を保証する方法はないように考えるのでございます。それから金融債を発行いたしますけれども、これは何も銀行の貸しておるのを肩替りするということではございませんで、現在市場では長期資金が非常に足りないということ言われておる。たまたま資金運用部資金がその性質の長期資金でありますので、そういう債券を持つことが経済の上に非常に有益であるということで、その運用につきましては危險を防止する方法は十分考えておるわけでございます。
  64. 松永義雄

    ○松永義雄君 もう一点だけ。運用は昔運用委員会というものがあつたようですが、今はどういうふうになるのですか。ときどき日本銀行の政策委員会なんかでも議論しておるように新聞で散見しました。その結論だけ簡單に申しますが、勤労者、預金者の代表というものは入つておるのですか。
  65. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 運用審議会につきましては、従来預金部時代には大蔵省にありましたのを内閣に置いております。国政一般等を勘案いたしつつ運用の適正を図ろうというわけでございます。それからその委員には、会長は総理であります、それから副会長は大蔵大臣及び郵政大臣、そのほかの委員には郵政、厚生等の事務次官も入るのであります。これは預金を預かる、集める側の代表といたしまして十分にその利益は主張される仕組になつておるのであります。
  66. 松永義雄

    ○松永義雄君 勤労階級はどういうことになるのですか。勤労階級が預ける金が大部分です。金持が郵便局に預けに行くと金のありかがカムフラージユできるという方法もあるでしようが、併し実際は大部分が勤労階級です。勤労階級の代表者は……、いつも財閥の代表者ばかりで……。これは人間ですからね。財閥の代表者は自分の利益のために主張する。勤労階級は一人も入つておらん、どういうわけですか。
  67. 舟山正吉

    政府委員舟山正吉君) 今申しましたように郵政、厚生等の関係官吏も入りますれば勤労者等の利益も十分代表し得るものと考えております。なお学識経験のある者というものも若干加えてあるのであります。これらのかたは大所高所に立つていろいろ意見を申しておるのであります。
  68. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) これにて休憩にいたしまして、午後は一時半再開いたします。    午後零時三十五分休憩   —————————————    午後二時九分開会
  69. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 午前に引続きまして会議を開きます。  関税定率法の一部を改正する法律案議題といたします。
  70. 愛知揆一

    愛知揆一君 関税定率法改正について一、三主税局長にお伺いしたいのでありますが、その第一は今回の改正案によりますると、従価税制度をとられることになつたわけでありまして、且つ従価税の課税価格の決定の基準については、法案の第二條に詳細な規定がありまして、現在の従価税に比しますると、相当客観的な基準がきめられるように、これによると拝見したのであります。併しそうは言うものの、やはり第二條の例えば第三項において「此等ノ書類ニ記載セラレタル事実が真実ト認ムルコト能ハザルトキ其ノ他此等ノ書類ニ依リ難キ事由アリト認メラルルトキ」というようなことが書いてございまするし、又第三項においては「課税価格ヲ決定スルコト著シク不適当ト認メラルルトキ」というような、やはり主観的な規定もまだ相当に残つておるので、これらは事柄の性質上止むを得ないことだと思うのでありますが、この「著シク不適当ト認メラルルトキ」とか、或いは「此等ノ書類ニ依り難キ事由アリト認メラルルトキ」というような、こういうような主観的な規定については、何らかこの法案を更に客観的に拠るべき基準を設けるというようなことを、行政的に、例えば通牒その他において詳細な規定を更に作られるような御意図がありますかどうか。それを第一に伺いたい。
  71. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 御尤もなお尋ねでございまして、私どもこの規定の立案につきましては、実は相当苦心をしてまあ作つたのでございます。第一には、最近の国際的な大体動向、殊にガツトで定めておりますところの基本方針、それに即応することを第一義といたしまして、お話のようにできる限り判断の基準を法律で制定するという趣旨でこの法文を作り変えてみたわけでございます。そういたしまして、お話のようになるべく輸入申告書に記載された額によつて決定するというのを基本的な一つの基準にいたしておりまするが、それによりがたい場合、或いは真実でないと認められる場合におきましては、他の基準による、他の方法による。但しその他の方法によります場合におきましては、ここに書いてありますように「同種又ハ類似ノ物品ノ前項ニ依ル課税価格ニ基キ」決定するというきめかたにいたしましても、やはりその輸入申告書に書いたそのままにとるわけにいかんという場合には、それと前後いたしました場合における同種物品の課税価格によるということにいたしておりまするので、先ずそういう点につきましても、或る程度客観的な基準が與えられるように、できる限り配意いたしたのでございます。但しどうにもいかない。そういうことによりましても如何ともきめ得ないような特別の事情あるときは、これは最後に国内における価格を基準にするということにいたしておるわけでありまして、やはり御心配のごとき点は御尤もでございますが、同時にできる限り例外的の場合におきましても、客観的なものによることにいたしておるのでございます。それで勿論今お尋ねのどういう場合にそういうことによるかということになりますと、お話の通り相当判断の余地がございますので、こういう点につきましては更に極力国際的な取扱いの細目をもよく検討いたしまして、できる限り通牒等で拠るべき基準を明かにいたしまして、御心配のような点をできる限り少くするように努めたいと考えておる次第でございます。
  72. 愛知揆一

    愛知揆一君 それで了承いたしましたが、更に納税者の側から異議がありますような場合に、その異議の取扱いについては、例えば税関長に対する訴願でありますとか、或いは関税訴願委員会というようなものもあるようでありますが、その異議のあります場合の処理の方法については、この関税定率法の一部改正だけでははつきりしないわけでありますが、これは恐らく別途提案を予想されるところの関税法その他において規定されることと思いますが、従来の取扱いと違う取扱い方法を何かお考えになつておりますか。その点をお伺いいたしたい。
  73. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) お話の通り異議があります場合の処理につきましては、関税法規定いたしておりまして、御指摘の通り不服があります場合におきましては、一カ月以内に理由を附して税関長に審査の請求をなすことができることにいたしております。これらの規定につきましても若干最近の事情に応じまして合理化すべく、目下立案いたしまして、先般別に関税法改正案としてたしか提出済みだと思いますが、処理の迅速化を図る方法といたしまして、必要な規定を設けることにいたしておるのでございます。
  74. 愛知揆一

    愛知揆一君 関税法の一部改正案はいつ頃提案になるお見込でございましようか。
  75. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 関税に関しましては関税定率法のほかに関税法の一部を改正する法案と、保税倉庫法と、保税工場法の一部改正法律案、この三つを用意いたしておるのでございますが、私先ほどちよつと申しましたのは間違つておりまして、関税法の一部を改正する法案につきましては、まだ関係方面のアグリメントがございませんので、できるだけ早く提案する運びに参りたいと考えております。近く提出することができるものと考えております。保税倉庫法と保税工場法の一部改正法律案につきましては先般提出いたしましたが、関税法の一部改正法律案だけは少し遅れております。
  76. 愛知揆一

    愛知揆一君 定率法の改正、関税法改正に関連して、いま一つ伺いたいと思いますのは、税関行政の一元化の問題であります。これは前回の委員会の際の油井君からも極く簡單に発言があつて大蔵大臣から極めて簡單な抽象的な御答弁があつたわけでありますが、現在の制度を見ますと、税関のほかに海運局、海上保安部、港湾建設部、それから通商産業局、海港検疫所、動植物検疫所というような殆んど十指に余るような中央官庁の出先機関があるわけであります。更にそのほかに問題によりますと、地方自治体の諸機関が更にこれに参加しておつて、極めて分裂し、且つ割拠状態にあることは前々から非常な問題になつている点でありますが、今日いよいよ関税法改正され、関税行政もその内容において定率法の改正等、現在の事態に合うような改正になるわけでありますが、これを扱う行政機関のほうが現在のように全くばらばらになつておりますと、民間の業者その他の関係から申しましても、非常に複雑であり、手続も多く、又申すまでもありませんが、一つの事柄についてたくさんの書類を提出しなければならんというようなこともあるわけでありますが、この際私といたしましては、是非税関行政、或いは海運行政の一元化を図ることが絶対に必要なことだと思うのでありますが、これは或いは当委員会の問題外かも知れませんけれども、一応これらの問題に対していろいろの経緯もあるようでありますが、大蔵省の当局としてのお考えを承わりたいと思います。
  77. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 最初に先ほどの説明に補足しまして関税法改正見込でございますが、附加えて申上げたいと思いますのは、この異議がありました場合におきましては、今申上げましたように一月以内に税関長に審査の請求ができるとなつておりますから、今度は審査の決定は必ず一月以内に税関長がして、これを不服申立者に通知しなければならない、こういう規定を挿入する見込でございます。  それからなお話願審査委員会制度がございますが、これも最近の情勢に応じまして定員等を若干増加いたしまして、活発に動けるようにいたしたいというふうに考えております。そのことを附加えて置きたいと思います。  それからなお今御指摘の問題でございますが、この問題は実は多年に亘るいろいろな錯綜しておる事情等もございまして、現在も私どもの立場といたしまするとなかなか完全に解決されていないと遺憾ながら考えておるのでございます、御指摘のように港にいろいろな類似の行政機関が併立しておりまして、そのために手続を受ける側といたしまして、国民の側といたしまして相当煩瑣である。あちこちの役所に駈けめぐらなければ手続きがスムースに行かない。こういう非難が大分一方においてはございますし、又行政の適正な運営という面から申しましても、これを或る程度総合的な官庁に統合するというのがいいんじやないか、こういう議論が実は相当あるのでございます。それで昔の我が国の税関の組織は、そういう点から申しますと相当総合官庁としての役割を果していたのでございますが、戰時中或いは戰後、いろいろな事情からそれぞれ分立することになりまして、現在は御指摘の通り全く多数の機関が港に分立しておる状態でございます。でこれをどういうふうに今後したほうがいいか。これはいろいろ意見の分れるところだろうと思います。一つは、非常に何と申しますか縦の行政系統を重んずる考え方から申しますと、やはり例えば植物の検査でございますと、農林省が中央官庁としてございまして、その出先をそれぞれ持つて行く。それで検疫等についても同様な考え方が出て来るというので、この縦の行政系統を重んずる考え方をとりますと、現在のような分立するというようなことになる。併しそれよりも現場における横の連絡、横の調整がむしろ重要である。そのほうがより行政的に能率がいいという考え方をとりますと、むしろやはり総合官庁にしたほうがいいという考え方が強いのでございまして、率直に申上げまして私どもこの税関を所管しておるものといたしましては、どうもやはり或る程度総合というふうに行くほうが我が国の実情には即するんじやあるまいか。業者の利便から申しましても、或いは行政官庁の経費をできるだけ少くする、人員も節約するというような点から申しましても、港における行政機関は統合という方向に行くのがどうもいいんじやないかと考えておりますが、併しなかなかこの問題は多年の沿革、或いはいろいろな事情等ございまして、現在のところは遺憾ながらまだ私どもといたしましては満足な解決を得られておりません。こういう問題につきましては行政の能率化、行政整理といつたような問題と関連いたしまして、今後内閣等において真剣に取上げて検討してもらいますことを私どもとしましては希望いたしておるのでございます。ただ今すぐどうこうというほどのことではないと思いますが、将来の方向としてはかような方向に行つたほうがいいんじやないかと考えておりますが、今の段階におきまする一応の見解だけ申上げまして御参考にいたしたような次第であります。
  78. 愛知揆一

    愛知揆一君 それからいま一つそれに関連して伺いたいのは、前回ですか、前々国会かに税関の官吏の一部の者に武器を持たせるということが法律で制定されたわけでありますが、その後の密輸の取締りの状況、それから海上保安庁と税関の官吏との業務の分担関係について伺いたいと思います。
  79. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 武器の携帯に関しましては先般の国会法律案が通りましたので、早速実行することにいたしておりまして、目下実行に移らんとしておるところでございます。先般関係のものを中央にも集めまして携帯する場合の注意等も相当細かく與えまして実行する段階に入つておるわけでございます。で密輸につきましてはなかなか最近の密輸が大分事情が悪化しておりまして困難な点が多いのでございまするが、今回更に税関の官吏につきまして主としてこの監視部の充実という点も考えまして、予算の上におきましても税関だけは特例を認めてもらいまして、約千五百人ほど増員しまして取締りに当らせることにいたしております。勿論取締り以外の点、例えば今御指摘の従価関税の正しい査定等のために監査官等の増員もございますが、主として密輸取締りのための手不足の補充という意味からいたしまして増員を考えているのでございます。  それから密輸の取締りの実績でございますが、簡單にそれを申上げますと、一九四九年におきましては、つまり昭和二十四年中におきましては密輸出が三百四件、密輸入が千四百七十件、合せまして千七百七十四件を検挙いたしております。二十五年におきましても大体余り異同ございませんが、密輸出が二百四十二件、密輸入が千五百三十件、合せまして千七百七十二件、大体まあ金額におきましても、密輸物件の価額におきましても二十四年が三億四千万円に対しまして二十五年も大体同額の三億四千万円程度の物件のものを検挙いたしております。で何しろ手不足等の関係もございまするので、今後は大いに増員いたしまして一層検挙の適性化を図るように努めたいと考えておる次第でございます。  それから海上保安庁との関係でございますが、これは一応法律で税関の担当する分野と海上保安庁が担当する分野と一応のラインは引いてあるのでありますが、海上保安庁といたしましても領海、或いは少し港から離れた地域におきましては、相当密輸等につきましも取締りに当つてもらつておるのでございまするが、ただその密輸の取締りが必ずしも主たる任務ではないといつたような点もありまして、連絡等の点につきましてはなお今後相当改善すべき点も残つておるようでありますが、かような点につきましては極力連絡をよくいたしまして効果が上るようにして参りたい。で一部では、アメリカ等では海上保安庁の組織は税関の組織と非常に緊密な関係にありますので、同じ財務省の所管になつておりまして、関係方面の内部にもそのほうがいいという意見も大分ありますが、併し海上保安庁の任務はそれだけに限られていない状態でございまするので、我が国といたしましてはすぐそこまで行きますのは如何であろうかというふうに考えております。できる限り連絡をよくいたしまして密輸の取締りの実効が上るように今後努めて参りたい、このように考えております。
  80. 愛知揆一

    愛知揆一君 それから次に具体的なこの定率法の改正案について一、二伺いたいと思いますが、その一つは石油コークスの問題であります。改正案によりますると従価五%ということが石油コークスについては考えられておるようでありますが、石油コークスは今日までのところでは主として石灰窒素製品の原料として使われておつたようでございます。これは国内のコークスだけでは十分の窒素分を確保し得ないので、大体四割ぐらいの石油コークスか或いは輸入の優秀炭を混入して参つておるようでありますが、現在のところでは輸入計画等の関係からもつぱら石油コークスを混入することになつておるようであります。これは国内に生産設備もありませんし、国産も皆無でありまするので、ちよつと考えますとこれは無税にして然るべきではなかろうかというような考えもあるかと思うのでありますが、更に最近の状態を調べて見ますと、製鉄関係におきましても石油コークスは相当利用されておるように聞いておるのであります。最近までのところでは僅か数千トンが製鉄用の原料炭に代るものとして使われておるに過ぎないようでありますが、すでに相当の成績も上つておるようでありまするので、軍に今申しました石灰窒素の関係のみならず製鉄用原料という関係からいつても、石油コークスは他の原料と同じように無税にしてはどうかという考え方が妥当ではなかろうかと思うのでありますが、この五%とされました根拠、理由を伺いたいと思います。
  81. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 石油コークスに対しまして五%の関税率を設けましたゆえんは、御指摘の通り石油コークス自体の生産はございませんで、それを保護するというような趣旨ではなくて、むしろそれと競争の関係にありますところの石炭のタール、ピツチ・コークス、これとの競合する関係にありますので、そういうものの保護ということを、つまり石炭の関連工業の保護ということを考えまして、まあ若干関税率を設けたのでございます。ただ御指摘の通り、これは相当石灰窒素等にも用いられますし、又近くはお話の通り製鉄業等にも相当使うというような事情もございますので、税率としては五%という最低税率を設けることにいたしたのでございます。私ども製鉄のほうにつきましては、極く最近のことでございますので、詳しいコストに及ぶ調査はまだできていないのでございますが、石灰窒素のほうはそういう問題がございましたので調べて見たのでありますが、石油コークスに五%程度関税がかかりますと、石灰窒素の小売価格ではなくて、生産者の販売価格ですが、それに対しまして大体一%未満と申しますか、一%未満程度の影響があるに過ぎない。一%未満と申しましても大量物資でございますから、相当額としてはまとまるかも知れませんが、まあその程度でございますれば、單に肥料の値段が直ぐに上らないで、企業の合理化等で吸収ができる部分もあるでありましようし、この際としてはまあ妥当じやないかというふうに考えてこの案を提案いたしておる次第でございます。  それから製鉄業等につきましても若干の影響はあろうかと思うのでございますが、まあ最近の製鉄業の状況から申しますと、特にこれを減免するというほどの強い理由があるかどうか。私どもはそれほどの理由は先ずなかろうと考えておるのでございますが、一つの問題点ではあろうと考えておるのであります。
  82. 愛知揆一

    愛知揆一君 今ピツチ・コークスのお話がございましたが、大体この石油コークスの問題はピツチ・コークスの生産を国内において確保するということと、それから主として肥料、食糧等の関係に及ぼす石灰窒素の関係と、それからいま一つ新らしく起つて来ておる製鉄用原料としての問題、三つの点をどれに一番重きを置くかということが問題だと思うのであります。で製鉄の関係においては最近製鉄業者からも陳情が出ておるようでありますが、それなどを見ますると、現在アメリカ、インドから輸入しております石炭については主として運賃の高騰によつて、例えばGIFの価格が昨年の十月から約十二ドル騰貴しておる。ところがそれに対して石油コークスも相当値段が上つておるけれども、遙かに輸入石炭の価格には及ばない。入手先も極めて容易に入手ができるというようなことで、二十六年度の鉄鋼四百万トン計画というものがあるわけでございますが、その四百万トン計画の遂行のためには輸入原料の確保が絶対必要である。且つ先ほど申しましたように石油コークスの使用ということは試験的のみならず完全に成功しておるのでありまするので、この点はなお十分研究をお願いいたしたいと考えております。  それからその次の問題は船舶の問題でありますが、これも申すまでもなく、現在船腹の増強ということについては各方面でいろいろの対案を強力に推進いたしておるわけであります。ところがこれは新造だけでは問題は急速に解決できないので、買船計画も相当御承知のように進んでおるわけでありまするが、金融上、その他の点においても政府でもいろいろの手を打つておられるわけでありますが、今回の案によりますると、船舶建造用の材料については殆んど全部免税しておる。ところが船舶自体の買入れについては免税が行われないということになつておりまするので、ちよつとこの八ランスがとれないような感じがするのでありますが、この点の御見解は如何でございましようか。
  83. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 今お述べになりましたこの船舶の原材料、部品等に対しましては免税する場合が多い。製品に対して課税するのはどういうわけかという問題でございまするが、これはやはり船舶の製造というものは、大体今までの状況から申しますと、国内で相当できるので、なるべく国内の造船業で船舶を造るようにしたいという意味におきましてこの船舶に関税率を盛つておるのでございます。ただこの点につきましては最近非常に船舶の逼迫が顯著でございまして、一種の緊急事態を生じているような点もあるようでございます。従いましてこういう緊急事態に対処するため日本の船舶工業でどうしても消化のできないようなもの、或いは臨時に特別の船を輸入する場合、こういうような場合につきましては定率法のほかに別途に特別の措置を講ずる必要があるかどうか。そういう問題に対しては別に考えてみたい。基本的にはやはり日本の造船業の状況から申しましてこの程度の関税率を盛つて置くということは私どもとしましては必要なことではないかと考えておる次第でございます。
  84. 愛知揆一

    愛知揆一君 この問題は船腹の増強問題として取上げられる場合には、大蔵大臣初め、新造だけではなく、例えば沈船の引上げなり、買船なり、それらの方途も合せ大いに行わなければならない。そのために金融上その他いろいろの手を考えておる、こういうことでありまするので、イン・ザ・ロング・ランで考えれば勿論新造に重点を置くべきでありますが、当面の対策としてはどうしてもやはり用船なり、買船に相当の重点がかかると思うのでありますが、そういうふうな船腹増強としての考え方から言いますと、今の御説明とその点とは多少こう懸隔があるように思われるのでありますが、今の御説明でありますると、何だか緊急事態ということであれば、この定率法は定率法として、何か臨時的な措置でもお考えになるという意味なんでしようか。重ねて伺いたいと思います。
  85. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 御指摘の通り非常に今船舶不足のために緊急に輸入をしなければならんといつたような事情がありますので、この事態がどれだけ続くかわかりませんが、今は非常に異常事態の一つと私考えられるのりございます。そういうものに対処しまして、二の関税定率法の基本税率を別途に臨時的の措置を講ずるか講じないかという問題について考えますと比較的考え易いので、そういう問題として別に考えてみたいというふうに考える次第でございます。
  86. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今の問題に関連しまして、軍に船舶だけでなく石田税関部長のお話にもあつたのですが、自動車部分品のほうは税率は非常に安い、完成品のほうが高い。これはヨーロッパでもこのような問題は非常に起つたと思うのでありますが、外国資本が日本に来て原材料をどんどん輸入して外国資本が国内で製品を作るというような場合、これは日本の産業の競争上非常に国内の産業が苦境に立つのじやないかと思うのですが、そういう点についてはどういう考慮を拂われましたのか、恐らく造船それから自動車その他にもそういうケースがあるのじやないかと思います。そういうケースについて、これは非常に重要な問題になると思うのです。今後講和條約ができた場合、又今作つた関税定率法がすぐ変えられるか変えられないかというような問題もあるでしようが、この点非常に重要な問題でございますので、どういうお考えか。それから造船、自動車以外に、又そういうようなケースがありましたら指摘して頂きたいと思う。
  87. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 御指摘の点は、実は関税定率法を作ります際に相当審議し議論した点でございまして、自動車の場合、殊にその点大分議論いたしたのであります。結局提出いたしておりまする案は、完成品は大体四〇%、トラック、バスは三〇%、部分品は三〇%、乗用車の場合には一〇%の差をつけておるのでありますが、全部一率にするのはやはり行過ぎではあるまいかと思うので、やはり運賃その他の関係で幾分部分品でありますとコストが安くつきます。完成車で持つて来るよりもやはり部分品で持つて来て組立てて作つたほうがまだいいのじやあるまいかという点も若干考慮に入れまして、併し余り大幅に考慮に入れますと今度日本の自動車工業自体に影響して参りまするので、そこまでは考慮できないと思うのでありますが、若干そういうふうな点も考慮いたしまして一〇%の差をつけることにいたしたのでございます。部分品その他につきましても、同様に配慮を加えておりますものが相当ございますことは御指摘の通りでございます。こういう程度の差でございますれば、非常に又部分品が入つて来て、日本の自動車工業自体に重大な影響を受けることは先ずないだろう。そういうことから完成品で輸入するよりも、場合によりましては部分品で輸入して日本で組立てるというふうにもつていつたほうがいいものもございますので、そういう点を考慮いたしまして、若干の差をつけておる次第でございます。
  88. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 聞くところによりますと、イタリーなど随分アメリカの自動車が入つて来て、イタリーの自動車産業が非常に苦境に立つているということを言つておりますが、一応実施して見ましてそういう弊害がなければいいのですが、若しそういう弊害があつたような場合、この占領下で作られる関税定率法でございますから、いろいろ制約もあろうと思うのですが、この関税率をそういう弊害が起つた場合に、これは又それに対処してすぐ改正できるような性質のものなんですか。
  89. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 只今お話のような点は大部分私ども審議いたしまして、例えば今の自動車の部分品の税率三〇%完成品四〇%、これでいいときめますまでには相当の時間を実は要しまして、勿論これは主として通産省の自動車関係意見で結局きめたのでございますが、部分品に三〇%程度かけて置きますれば、先ず非常に外国の自動車がいろいろ入つて来ても、日本の自動車工業に脅威を與えるというようなことはないと思います。どうせ日本でできないものはやはり或る程度輸入しなければならん。そういうものにつきましては、部分品を持つて来て内地で組立てるということにいたしましても、むしろそのほうがいいんじやないかという点を考えまして、この程度の差を設けたわけであります。なお先ほどお尋ねの将来の変更の問題でございますが、関税率の問題は国際的の影響がございますので、余り頻々と変えますのはどうかと思いますが、併し事情の変化或いは実施いたしました上で、どうも妥当でないといたします問題につきましては、或る程度の補正ということは私は無論これはやるべきだと思います。又可能性があると思います。それから一遍に更に引上げるという傾向に全面的に持つて行きますのはどうかと思います。従いまして、この案を作ります上におきましては、御指摘のように海外方面の日本におられるかたがたの抵抗が強かつたのであります。我々としましては、成るべく将来のことを考えまして、余り頻々と変えないでもいいようなものを一応作つて置こうというので、御意見は十分尊重して原案を作成した事情でございます。そのことを併せて附加えて置きます。
  90. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今お話のように一遍きめてしまいますと、なかなかこれは実際問題として変えにくいのでありますから、この関税率のきめかたについては、相当慎重を要し、又非常な重要な意味を持つて来ると思いますので御質問申上げておるわけなんですが、この関税定率法の税率をきめて国会に出されるまでに固まつたのはいつ頃でございましようか。
  91. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 最後に最後案の固りましたのは昨年の暮関係方面に出しまして、それから更に最終的にこつちの案を出しましたのが一月中旬でございます。そしてそれぞれの事情はできるだけ取入れて、たださつき申しましたように関税率は非常に短期の、今の事情だけで判断するわけにもいかず、それかといつて将来のことばかりでもいけないので、私はその中間ぐらいのところをやはり考えて妥当性を持つのが正しいのではないかと考えております。従いましてできる限り若干長期の見通しもつけまして、外国の関税率を参考にし、或いは我が国の過去の関税率を十分に参考にし、産業界、官庁の意見を聞き、お互いに議論、討議をしこの案を作成しましたことを申上げて御参考に供したいと思います。
  92. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今お話を伺いますと、大体昨年末に固つたというお話ですが、実際この国際的の経済情勢は昨年の十二月にトルーマンのあの非常事態宣言からアメリカの物価は騰貴し、国際的な経済情勢が非常に変つて来ておるのです。ですから十二年以前と十二月後では、非常に情勢が変つておる。殊に最近は又非常に変つておることは御承知の通りであります。そういう変化、その後の変化が一応これに織り込まれていないのじやないですか。十二月以前より十二月以後が私は非常に重大であると思うのです。これはひとり関税ばかりでなく、予算なんかについてもそうですし、全体について言えるのですが、その点は、これを作つてしまつてから相当又情勢が変つて不適当であるというようなことが起つてやしないのですか。ものによつては……。
  93. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 基本的な事情は朝鮮動乱を前後にいたしまして非常に変つたことは御承知の通りであります。海外の物価等は十二月以後相当顯著な値上りを示しておるのであります。日本の卸売物価等も相当値上りしてその後も日を追つてつておるというような状況を辿つております。基本的にはお話の通りにアメリカの非常事態宣言があつてから経済政策と申しますか、統制と申しますか、そういうことにつきましては大分顯著な変化が認められておるようでございますが、すべての経済の基本的な流れはその前から大分動きつつあつたわけでございまして、私どもそういう点をできる限り見ておるのでございますが、ただ今申しましたように、関税率はやや長期の目で見なければならないので、全くそのときどきの現象だけを見て参るというわけにはいかないと考えております。従いまして過去の関税率の問題、産業の状況、それから海外の関税率等がどうなつておるかというような点を十分考慮いたしまして、現在として或る程度長期に亘る妥当な関税率を定める方針で立案したのであります。お話の通り顯著な事例といたしましては、無論若干、先ほど愛知委員からも御指摘がありましたような事情がその当時から若干起つていたのでありますが、更に顯著になりつつあるというものもございます。そういうものにつきましては、基本的な関税率のほかに、別途に臨時措置といたしまして一年かそこらの期限を切りまして、特別の措置考えようというような方向のほうがむしろ解決しやすいのではないか。そういうような解決を必要とするものが若干出て来ておりますことは、確かに御指摘のような感を私どもも抱いておるわけでございます。ただ基本的な関税といたしましては、先ず原案で参りましてもそう変えなければならんというような事情は私は比較的少いのではないか、このように考えておるわけであります。
  94. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 先ほど愛知委員から言われましたように、造船などにもそういう顯著な事例が出て来ておるのですが、今非常に長期的に考えなければいけないという御答弁ですが、最近の情勢の変化をどう見るかという問題ですが、これは政府はいつでも朝鮮動乱が起つてから後余り時日が経たないから、短期間で経済変化考えてはこれは早計だというようにお考えですけれども、最近の経済の変り方というものは質的な変化が来ておるのですが、その意味で時間的なものとしてのみ考えないで、相当やはり根本的な変化が来ておりますので、日本で今緊急物資の輸入の問題も起つて来ておる。これはそんな短期の問題ではないのです。そういうような意味もありますし、更にこれも関税の問題と為替の問題と、或いは政府の貿易政策と、そういう通商上の問題、あらゆる観点と関連させて関税の問題は考えなければならないと思うのです。そういう相互的な観点からこの関税の問題を検討されたかどうかこの点について伺います。
  95. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) これは勿論大蔵省が主としてやつたというよりもむしろ各省集まりまして作り上げたといつたほうがむしろ正しいかと思います。この立案にはそれぞれ生産担当官庁から提案してもらいまして、どのくらいの税率をかけて欲しいという先ず資料を出してもらいまして、それを名関係官庁が集まりまして、実は大分議論をしてきめたのでありますが、その際におきまして、勿論安本等にも参加をしてもらいまして、将来の産業政策並びに最近の状況等もできる限り考慮に入れまして、妥当な関税率を定めるということにいたしたのでございます。従いまして非常に短期の事情が十分入つておるかということになりますと、これはなお若干問題になる点はあるかと思います。或る程度の見通しと申しますか、長期に亘る関税の定率といたしましては、先ずかような点をいろいろな角度から個別的に各品目ごとに議論し、十分そういう点を配慮に入れつつきめたということを申上げて置きます。今基本的事情の変化の一例として申上げますと、鉄鉱でありますが、鉄鉱は大分変つております。鉄鋼は昨年の夏頃までは相当高い関税率をかけなければ成立たない、そういう業者の意見でありました。併しその当時におきましてもいろいろ議論しまして、鉄鋼は何しろ基礎資材でありますし、それからいろいろ輸入原材料の価格或いは輸出製品の価格にも影響をし、又鉄製品の輸出もあるということで、税率としましてはできるだけ低くしたほうがいい。そこで結局一〇%、一五%ということに落ちついたわけでございます。その後、鉄鋼事情は急激に変りましたが、基本税率としましては先ずやはりそれでよろしかろう。併し当分の問は差当り免税して置こう。そういう措置を附加えまして事情の変化に対応した処置を講じた点もございます。従いまして基本的な問題と極く最近の情勢の変化の問題といろいろ私どもできるだけマツチするように工夫をいたしておるのでございます。なお先ほど愛知委員の御提案になりましたような問題につきましては、更に最近問題が出て参りまして、更に情勢が緊迫化しまして、場合によりましては特別の臨時措置をいたしまして若干の補足を施すような事態が生じますることも率直に私認めておる次第でございます。
  96. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 先ず基本的にこれできめまして、今御答弁になりましたような鉄鋼、その他には臨時的措置で、食糧なんかも一応臨時的になつておりますが、そういう措置を講ずるだけの弾力性というものは割合にあるのですか。今後実施して見て、そういう臨時措置として対処し得る弾力性は相当あるのですか。
  97. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) その点は、例えば非常に短期に限りまして、非常に事情が顯著に変つた場合は関税率を或る程度変えて行くというようなことは比較的私ども国際的にもやりやすいのではないかというふうに見受けられます。併しその場合におきましても引上の方向に行きますのは、どちらかと申しますとなかなか国際的にもやりにくい。むしろ引下の方向に行きますのは、これは非常にやり易い、むしろ場合によりましては、そういう措置をとることによりまして、通商協定上有利な地位を日本として占め得るという場合も出て来ると思います。それ故に特に高くしておるわけではないのでありまして、それは誤解のないようにお願いしたいと思います。そういう点を考慮して特別に高くしたわけではございませんが、その妥当性を見てやりましたわけなのであります。併しながら事情に変化が起つたというような場合には、引下の臨時の措置を講ずるというようなことは、これは相当可能性が多いのではないか、かように私は考えております。ただいいとか悪いとかということは事情をよく考慮してきめなければならんと思います。
  98. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 関税収入は二十六年度予算は五十億出ておりますが、今度の関税改正による收入を見込んでおると思うのですが、もつとこれは最近物価も上つておるようですから、もつと増收になる、こういうように見込まれてないのですか。
  99. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) この点は若干高めに見積つておると申しますか、大体貿易の輸入額を基にしまして一応出て来たものの八割を最低限に見る。いろいろな事情の変化等がございますので、必ずしもそういうことは適当でなかろうかということで実は八割を見込んでおりますが、原案が全部通過いたしまして、そうして輸入も相当計画通りに十分促進できるということになりますれば、或いは若干出て来る可能性はあると思います。併し今の状況といたしましては、先ず関税は国際的に随分変りますので、見積りに関してはこの程度の見積りでいいのじやないかという意味で、大体一応計算したものの八割ということで見積つております。一応御参考に申上げます。
  100. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 予算説明書ですと、旧法による收入見込みとなつていますが、この旧法という意味所得税についてだけのことなんですか、この説明書です。
  101. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) この旧法と申しますのは、余りむずかしくそう考えたわけでもございませんで、関税はもともと従としまして、財政目的にありますことはこれは勿論私ども考えておるのでございますが、主として保護関税として考えておりますので、当然改正になるものという前提で実は両方を見ておるようなわけでございまして、内国税の一般の場合とちよつと違えて物ごとを処理しておりますので、ただそれだけの理由改正が施行された場合の見積りをそれぞれ計上しております。それだけのことを一応申上げて置きます。
  102. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうですか、この関税改訂の差当りはこの程度の收入なら大したことはないのですが、物価への影響ですね、これは次ぎ次ぎと第二段階、第三段階とだんだん影響しますから、物価への影響というものはどういうふうにお考えですか。
  103. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) これは大体今の日本の輸入品は原材料が大部分であつたと思いますが、これは殆んど無税になつております。繊維原料、それから鉱産物の原料、これも全部無税でございまして、殆んど有税なものはございません。で食糧も臨時的に殆んど無税にしておる。若干課税しておるのもございますが、従いましてこれによりまして、差当り物価に及ぼす影響というものは一般的には私は殆んど問題にするに足らんものと思います。個別的なものにつきまして多少の問題が出て来る。ガソリン、重油、原油に関税をかけますと、ガソリンの価格にこれはいろいろな計算方法があるのでございます。三%乃至六%その程度響くのじやないかと見ておりますが、その結果一部のトラックなり、バス運賃が二割、三割上るという声があるようですが、これはそんなことはございませんで、一般に影響するかどうかというくらいの問題じやないかとまあ考えております。比較的影響の大きいのは重油、油に対する関税になつておりますが、その他にも勿論若干ございます。砂糖なんかも若干関税をかけることによりまして、変つて来ると考えておりますが、全体としては物価に及ぼす影響は殆んどさつき申しましたような、輸入構成の状況からいたしまして、大した問題じやないとかように考えております。
  104. 松永義雄

    ○松永義雄君 ちよつと関連しまして、了解を得ましたから……。ちよつと砂糖のことでお聞きしたいと思いますが、只今お話がありましたので……、附則ですね、附則によりますと四月一日からこの法律は施行になる。食糧の輸入税を免除する法律廃止する、率直に聞きますが、砂糖の配給価格には影響しないのですか。
  105. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 砂糖につきましては四月から関税を粗糖に一〇%、それから精製糖には二〇%課税することになつておりますが、この結果若干四月一日以後砂糖の値段が上つて来る、これはもう止むを得ないことだと考えております。でございますが、現在砂糖はやはり公定価格がございまして、闇価格と公定価格に相当な開きがあるようでございまして、従いましてこの程度かけましても別に輸入を阻害するということもないし、又配給される価格が若干上りましてもまあ影響はたしかあることはございますが、それほど実際上にこの家計等に重要な影響を及ぼすことは先ずあるまいという考えでございます。併し確かに関税がかかりますだけ値上りしますことはこれはどうもいたしかたないことと考えております。
  106. 松永義雄

    ○松永義雄君 これはまあ味噌のことについてもお話があつたと思うのですが、どれくらいの率で上つて行くことになるでしようか。この法律によつて関税が新たにかせられて来るというと……。
  107. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 砂糖につきましては、大体入つて来ておりますのが粗糖が多い状況でございますが、これに対して一〇%かかりますので、精製糖の而も到着輸入価格に対する税率でございます。小売価格に及ぼす影響は精製しまして配給される場合におきましては、先ず五%前後くらいの影響ではないかと考えております。
  108. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そのほか食糧につきましては大豆、玉蜀黍、高梁、これにつきましても今まで無税であつたようですが、かかるということになりますと、そういうふうに価格騰貴も現われて来るのじやないかと思うのですが、これはどの程度の価格騰貴が見込まれるのですか。
  109. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 大豆に対しましては一割課税することにいたしておるのでありますが、これが結局大豆を原料として油を作る、その油に対して幾ら影響するかという調べでございますが、恐らく一〇%よりも大分下廻つておりますが、今ちよつとその調べを手許に持つておりませんので、あとで調べましてお答え申上げたいと思います。
  110. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 あとでよろしいですが、この関税率改正によつてそういうガソリン、石油、砂糖、それから今の大豆とか、そういう食糧類がありますが、消費物資、日本の我々の生活物資に対してどの程度の影響があるか、何か資料みたいのを作れましたら、うんと細かくなくてもいいですが、大体の重要な生活物資についてできましたら資料を御提出願えませんでしようか。
  111. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) できるだけ取調べまして御提出いたします。
  112. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 最後にもう一つお伺いしたいのですが、これは輸入関税のほうじやないのですが、輸出関税の問題ですね。これはスエーデンあたりでも問題になつて言われているのですが、この問題については大蔵省として最近の事態に鑑みて何か研究されておるかどうか。
  113. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 輸出税を課税するか、しないか昔から多年問題になるのでありますが、やはり輸出の振興を図るといつたような時代におきまして、関税をかけるのはどうかというのでいつも立消えになりますが、話には出て実行には見ないというのが今までの例でございます。最近も若干そういう議論が出ておりますが、まだ忍どもといたしましては果して実行していいというような、真剣に考える程度の段階にまでまだ来ておりません。従いまして今すぐ申上げるのは差控えたいと思います。大体輸出税を課税しております実際の状況を調べて見ますと、比較的原材料の特産物を産出している意味におきまして、そういう而も比較的産業の発展が低い国におきまして輸出税を取つている例が相当あるようでございます。アジアにおきましても、タイとか仏印とか或いは印度、パキスタンといつたようなところは特産物について或る程度の輸出税を課税しまして、これは価格調整費というよりは、むしろ財政收入の目的としておるかと思いますが、そういう例があるようでございます。ヨーロッパにおきましても若干そういうものを取つているのがあるようでございますが、まあ、余り産業の進んだ国におきましては、こういう例が比較的少いような状況でございます。まあ為替レート等の関係もありまして、将来或いは問題が出て来ないとは私も申上げかねるかと思いますが、今の段階におきましては、まだあまり立入つてこの際申上げるまで研究の進んでいない、或いは必要に迫られていないと申しますが、そういう状態でございます。御了承願います。
  114. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これはまあ大蔵省のほうでは研究していないようでありますけれども、通産省あたりで一つ問題になるのですが、殊にビレットなんか、国内価格が余りに国際価格より安いのでどんどん出て行つおりてしまうれから紙なんかもそうだと思う。化学薬品、非鉄金属、そういうものについて内需が非常に圧迫される、どんどん海外に出て行つてしまうので、それはまあ通商産業政策、貿易政策との関連ですけれども、大蔵省一つのこれは問題だと思うのですが、通産省のほうとしてはこれはあなたにお聞きするのは筋違いかも知れませんが、大蔵省としては考えていなくてもそういう内需を保護する、こういう意味で何か研究をされていないでしようか。
  115. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) そういう個人的意見をぼつぼつ述べれいるような人も中にはあるようでございますし、又雑誌等にもそういう意見を主張せられているかたもありまして、私ども若干の関心を実は持つているわけであります。併しまだいざ具体的にやるべきだというところまでには通産省の意見も参つていないのじやないか。私どものほうでも、まだまとまつた話といたしましては別段話がないくらいでありまして、或いは将来問題になるかも知れませんが、今の状況では大体そういう程度のことでございます。これはよほど前は御承知の通り調整料といたしまして類似な措置をとつていた例もあるのでございます。殊に中華におきましては大分そういう措置がとられていたようでございますが、非常に国内物価と国際物価との関連の問題が深刻になつてつて、それをどうしても遮断するような或る程度の方法を講ずる必要性が緊急に起つて参りますと、私どももそういう問題も一つの有力な議題としてもいいのではないかと見ておりますが、今のところまだ具体的に話を進める段階に参つておりません。
  116. 大矢半次郎

    理事大矢半次郎君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後三時十五分散会  出席者は左の通り。    理事            大矢半次郎君            杉山 昌作君            木内 四郎君    委員            愛知 揆一君            岡崎 真一君            黒田 英雄君            九鬼紋十郎君            松永 義雄君            小宮山常吉君            小林 政夫君            山崎  恒君            森 八三一君            木村禧八郎君   政府委員    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省主計局法    規課長     佐藤 一郎君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省銀行局長 舟山 正吉君    郵政省貯金局長 白根 玉喜君    郵政省簡易保險    局長      金丸 徳重君   事務局側    常任委員会專門    員       木村常次郎君    常任委員会專門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省銀行局預    金部資金課長  高橋 俊英君