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政府委員(舟山正吉君) 最近銀行の
金融債発行の問題、これは正確に申しますれば短期の
金融債の
発行の問題をめぐりまして、
東京銀行が
東銀債貿易債なるものを
発行しようとする具体的な問題に至りして、世上いろいろ批判があるが、この中には私
どもの
予想もしない雑音も入
つておりますので、意外としておるところでございますが、この問題は昨年銀行等の
債券発行等に関する法律の制定以来、純粋に事務的にいろいろ
検討もし、
計画も取り運ばれて参
つたのでございまして、ここに若干その経緯につきまして御
説明申上げて御了解、御明察を頂きたいと思うのであります。この昨年の
債券発行法の制定におきまして、銀行も、あらゆる銀行が基盤においては平等な
立場に債券を
発行し得るということに相成
つたのでございます。
先ず第一に問題に
なつておりますことは、
東銀債の
発行が同法の趣旨に反するのではないかという点でございますが、そういうような法律的見解について、問題のないことは、若し御質問がありますれば詳細申上げたいと思いますけれ
ども、端的に同法に基いて現に割引興業債券、割引商工債券が
発行されておるという事実だけ捉えましても、別に問題として取上げる点はないわけでございます。同法におきましては、同法施行と関連いたしまして、興業銀行、勧業銀行その他の旧特殊銀行を普通銀行といたしまして、他の銀行と同列に置くという精神を持
つておるわけでございます。
それから次に、同法に基きまして短期の
金融債券を
発行する意図が当初からあ
つたのかどうかという問題につきましては、当時同法案の提案理由にも謳
つてございますし、又質疑の際に私
どもの見解も御説申上げた次第であります。例えば預金証券とも言うべき短期の
金融債も同法に基いて
発行し得るのであるということをはつきり申上げておる次第であります。そこで昨年の夏頃から、
東京銀行におきましては早速
東銀債券を
発行いたしたいという希望も持ち、
計画も立てたのであります。そうしまして私
ども事務当局のほうにその可否について御相談もあ
つたのであります。御
承知の通り
金融債の
発行は、従来の許可事項から外しまして、あらかじめ当局に届出ればよろしいということに
なつたのであります。
東銀もそういう建前になりましたにもかかわらず、短期
金融債の
発行については愼重な態度を以て事務当局に相談があ
つたわけでございます。私
どもも慎重に研究しますために、暫らく実行を待つようにという趣旨を以ちまして、到頭昨年中にはその
発行を見るに至らなか
つたのでございます。
東銀ではその希望を捨てませず、昨年の暮になりまして、更に新春を期して
東銀債の
発行をいたしたいという申出がございました。別途この資本蓄積の問題が非常に緊要である時期になりまして、かたがた金融も特需
関係とか、輸出
関係とかのために
相当引きゆるみまして、市中に余裕資金のあることも御
承知の通りであります。この資本蓄積の
一つの
方法といたしまして、当局といたしましては、別途税制のほうの改正をも考えまして、御
承知の通りこの預金利子に対する源泉選択
課税の復活ということも、昨年暮頃の情勢におきまして、ほぼ復活の
見込がついて来たという時期に相成
つたのでございます。金融界からは今度の
債券発行をめぐりましても、こういう
金融債の
発行よりも、又昔のごとく無記名定期預金の復活のほうがより効果的であるという御要望もあ
つたわけでありますが、この無記名定期預金の問題につきましては、再三私
どものほうでも研究いたしたのでありますけれ
ども、どうしてもこれは実現される
見込はないという結論を見るに至
つてお
つたのであります。そこでこの資本蓄積にはいろいろ手を用いる必要がある。ついては預金証券とも申すべき短期
金融債の
発行もこの際これを認めまして、あらゆる手段を盡して資金吸收に努めるということが必要であろう、又その時期であるという見解に達しましたので、この
東銀債の
発行もよろしいであろうということを大蔵省の見解として
東銀に申し渡したわけであります。ただこの際短期の銀行債の
発行につきまして、私
どもは何も手放しで全然自由に各銀行をしてその
発行を認めるという趣旨ではなか
つたのでございます。このことは最近この問題が世間の問題になります前に、見解もすでに表明しておる次第でございます。即ちこれが濫発を見まするならば、現在問題と
なつておりますように、預金の横流れその他の弊害を伴う慮れなしといたしません。そこで各銀行の各月の
発行額、延いてはその月における銀行短期債の
発行総額、更にその條件、更に進みましては売出しの
方法、こういうものについて、或る
程度の調整をしなければならないということを考えてお
つたのでございます。そうしてこのことは各銀行から
金融債発行の希望がありましたときには、適当に内面指導をいたしたいと考えてお
つた次第でございます。こういたしますことによ
つて、單に定期預金が銀行債に振替わるとい
つたような弊害も十分に除き得る、そうしてこの資金吸收に十分貢献し得るというような考えを持
つてお
つたのでございます。今後におきましても各銀行に
債券発行について自由競争さすということではございません。そこは適宜調整をと
つて行くつもりであることは変らないのでございます。こういたしますれば短期銀行債の
発行によりまして、弊害の面より利益の面が非常に大きい。そして現在の金融情勢上裨益するところが少くないと、こう考えておる次第でございます。その他派生的な問題がいろいろございますが、なお御質問によりましてお答え申上げたいと思います。