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1951-03-17 第10回国会 参議院 大蔵・郵政連合委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十七日(土曜日)    午前十一時六分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○資金運用部資金法案内閣送付)   ―――――――――――――
  2. 小串清一

    委員長(小串清一君) これより前日に引続きまして大蔵郵政連合委員会を開会いたします。  資金運用部資金法案について質疑を続行します。質疑通告者の順によつて発言を許します。柏木庫治君。
  3. 柏木庫治

    柏木庫治君 生命保険事業は、運用利率死亡率経費率、これが経営の三要素であると思います。従つて生命保険会社から資産運用を切離したらその企業が成立たないと同様に、国営の簡易保険においても、積立金運用事業と離さないほうがよいと思いますが、大蔵大臣はどう考えられるか。  それからこの法案を出された経緯につきまして、ちよつと了解に苦しむのでありますが、院議閣議を何度か通過し、予算措置まで講ずるという段階になつていた積立金運用郵政省への移管が、突如としてこれに反する法案を出されるに至つたいきさを承わりたい。  それから簡易保険積立金運用は、これを郵政省に行わしめても、その実行方針については郵政大蔵両省が緊密に連絡を保つて一般財政金融政策に順応せしめて行けば、大蔵省としては何ら支障がないように思われます。半面郵政省契約募集及び保金に公共団体等の協力を得られ、従事員士気は揚るのであります。この見やすい道理を無規して保険従事員士気を萎靡せしめ、資金の吸収にも悪影響のあるような案を強行するのはおろかではないか。それは單に運用権統合という、形式理念に満足して半面作用を忘れておるのでははいかと思います。それから契約者が六千万口、殆んど日本人の八割でありますが、これはどうしてもこの簡易保険契約者利益を中心にして考えなければならない。簡易保険局で直接に運用すれば、地方債だけでも六分五厘以上の利廻りが得られるにかかわらず、資金運用部に預託すれば三分五厘乃至五分五厘と承わつておりますが、これは六千万の契約者利益と相反するのではないか。従つてこの契約者利益を守つてやるということが私は民主主義政治のあり方だと思うのであります。この法案は非常な無理を内蔵しておると思いますが、大蔵大臣はこれが国会を通過するという自信があられるかどうかという点について承わりたい
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 保険本質についてお尋ねがございましたが、お話通り保険料金を受取りましてこれを運用しなければ保険は成立つて行かんことは、お説の通りであります。そうして今回の法案も、その意味におきまして簡易保險積立金運用を確実な方法としまして資金運用部預金として運用すると、こういう建前で行つておるのであります。これは資金運用部預金として運用するか、或いは直接に簡易保険特別会計のほうで或いは貸付金にするとかいうような方法がありましようが、私といたしましては、零細な国民大衆資金でございまするから、確実性を強く見まして、そうして又片一方では国家目的のために運用する必要があるという考えの下に資金運用部への預金として積立金運用することが結構であるという結論に到達いたした次第であります。  次にこの法案を出すに至つた経緯お話しろということでございます。御承知通り戰争以前は各特別会計で独立で運用いたしておつたわけでありまするが、戰争中はこれを合同して大蔵省運用することになつた終戰後、即ち昭和二十一年の一月でございまするか、マーカツト指令によりましてこれは合同して運用しなければならない。簡易保険の金はこうこう、郵便貯金の金はこうこうということではいかん、一緒にして運用しろという指令が出たのであります。その場合におきまして、合同で運用するのみならず、運用先国債地方債に限る。こういう指令も出ておるのであります。従来その指令に基きまして我々は運用いたしておつたのでありまするが、預金部資金相当殖えて参りました。而して又民間では金詰りの声が熾烈でありますので、一昨年の十二月にはこういう指令を例外的に解いてもらつて、一昨年末百億円の指定預金認めてもらつたようなわけでありますが、その後においても金詰りの声並びに相当集まつて来た金をできるだけ運用したいという念願で、参議院衆議院では預金部資金運用につきまして格段の努力をしろという御意見が非常に強かつた。そういうふうな場合におきまして参議院衆議院におきましてはこの運用大蔵省でやらずに、郵政省でやるべきではないかという決議案が出ました。我々もそれに対しまして保険性質からいつてそういう考え方も立派な考え方であるというので、決議に基きまして閣議決定をし、又昭和二十六年度の予算におきましては決議の趣旨に副つて行こうということで行つたのであります。予算編成直後におきまして関係方面との折衝を続けて参りますと、片一方では預金部に集まつた金預金部だけで運用しろ、即ち一昨年末の指定預金もこれは異例だから引揚げろ国債地方債に限らずに、若し政府のほうで他のほうに使おうとすれば立派な機構をこしらえなければ許されないという話になりまして、私が国会決議もあり、政府閣議決定もありますというので盛んに議論をいたしましたが、よく聞いて見ますと向うの言うのにも理があります。そうして又片一方では、国債地方債に限らず金融債引受けて、その集まつた金は適当に流せという切実なる要望もありますので、話合いの結果、私も決議があり、閣議の内定がありましたにかかわらず、今御審議を願つているような案で進もう、こういう決心をいたしたのであります。議論のあることは勿論よく知つております。自分もそれはよく知つておりますので、なかなかこの問題は政治的にむずかしい問題です。そこで私はドツジ氏の気持もわかつた自分もそれではそれで行こう、こういうことにいたしましたが、あなたの本当の考え方文書にして書いてくれ、こういうことをドツジ氏に申込みましたら、自分考え方を君にそれでは文書で知らそうというので、お配りしてあるかどうかと思いますが、ドツジ氏は私に対しまして覚書をくれたというわけであります。これは私が何もそういうものはたくても関係方面で強くこういう意思だと、こう言えばそれでいいのでございますが、私は自分が今まで国会決議を知り、閣議決定にも参加して賛成した関係上、心境変化を来たしました。無論あとでこういう案がいいという決心になつたのでありますが、この経過を皆さんに知つてもらうほうが便利がいいと思うので、ドツジ氏から覚書をもらつたのであります。そういうことに相成つております。私は成るべく今までの状態を激変さすことはよくないというので、関係方面のほうでは六十九條の問題或いは今郵政省でおやりになつておりまする三十数億円の貸付の事務、これはやはり今まで通りに置いておいたらどうかということを再三言つたのでありますが、なかなか議がまとまりません。最後に私はとにかく郵政省機構を縮小するということも如何かと思う。この分だけは置いておいてくれというので、今までの貸付金の継続の分は一応置くことにして、できるだけ皆さまがたの意のあるところを尊重し、そうして今までのやり方に激変を起さなくしてこの郵便貯金並びに簡易保険郵便年金の金を早く有効に使おうということにいたしたのが今回の経緯であるのであります。何も私はよその仕事大蔵省が集めようとか何とかいうような気持は持つておりません。これが国のために今の場合必要である、結構であるという結論に出たからであるのであります。  而してその次の御質問の、大蔵省に集めたならば簡易保険募集成績が悪くなつて非常に困るのじやないかというお話でございますが、これは過去数年集まつた金大蔵省運用いたしておるのでございます。マーカツト指令が出たからといつて簡易保険が非常に募集が少くなつたという事例はございません。昭和二十三年頃から大蔵省で全部運用いたしますようにしても、簡易保険成績は年と共によくなつておるのであります。今は民間保険事業を私は十分凌いでおると思つておるのでございます。今後こういうようにいたしましたからといつて、私は逆作用になるとは考えていないのであります。  次に地方債引受は六分五厘である。それを三分五厘乃至五分五厘で扱つて簡易保険のほうが利潤が少くて、契約者に対して不利なことになりはせんかというお話でございまするが、今私は長期のものを五分五厘にすれば大体賄つて行けるのじやないか、御承知通り簡易保険の分は三分五厘くらいのあれでなかつたかと思います。それをだんだん上げまして今まででは四分か四分五厘にしておつた。五分五厘にすれば今までよりもよほどよくなるとこう考えておるのであります。簡易保険集まつたものが全部六分五厘の地方債に廻るわけでもございません。今までも国債を持つたり何かしまして、全部が全部五分五厘に廻るというわけのものではない。最近非常によくなりまして相当金利が出るようになりました。御承知通り昭和二十三年度でございましたか、預金部赤字は四十数億、二十四年度でも二十数億、二十五年度は三億円の赤字の予定であつたのですが、漸くとんとんに行きました。それで地方債等引受九分一厘乃至九分三厘のものを昨年の一月から六分五厘にしたような次第でございまして、私は長い目で見て行けばこの簡易保険の、資金運用部預金の五分五厘というのはまあ今のところでは今までよりもよほどよくなつた考えておるのであります。  而して最後に、こういう法案を出して通過する自信があるかという御質問でございます。これは私としては是非通過さして頂かなければならん、自信とか自信がないという問題でなしに、政府といたしましては是非皆さまがたの御承認を得たいという気持で進んでおるのでございます。
  5. 柏木庫治

    柏木庫治君 マーカツト指令が出たけれども、数字は増して行つたというお話でありましたが、そうであつたろうと思いますが、それは国家経済的非常時でありましたので、全簡易保險郵便局の連中がそれこそ草鞋ばきで身を擦り減らしてやつた結果でありまして、これは指令とは別に、先生らの国を思い、民族を思い、仕事を思う心持があの時期がそうさせたのでありますと私は考える。そうしてその底には、やつぱりいつかは帰つて来る、これは一時的の処置なんだ、いつかは帰つて来るという、そのいつかはの希望にかけたということと、今申上げました国の経済非常時であつたからでありまして、今のように全然大蔵省の所管になるとなりましたならば、お前たち草鞋ばきで金を集めて来い、使うのはおれが使うてやるということでは、人の心持が私は承知をせないと思うのであります。私はこのことについて京阪地方を廻つて調査して来、又たくさんの書状も参つておりますが、その局に当つておる者に親しく膝を交えて聞いて見ますと、若しこれが通過いたしますならば、従事員士気は間違いなく衰える、そういたしますと、今蔵相は長い目で見てというお話でありますが、その長い目で見て、私は大蔵省がこの金を大蔵省だけで、郵政省に何ら関係をさせず、お前たちつて来るだけは持つて来い、草鞋ばきで集めて持つて来い、使うのはおれが使うてやるという態度では、今の金だけは間違いありますまいが、やがて募集する士気が衰えまして、だんだんと減つて参る、しまいには大蔵省は折角預金通帳を預つたけれども、預つた金は年数がたつと共に細つてからつぽになつたという結果になると私は考えますので、今蔵相の言われた長い目で見てそのほうがいいというのでなくて、長い目で見たら預つた預金通帳がいつかからつぽになるのだ、その結果は、その頃は池田さんも大蔵大臣でないかもわかりませんが、少くともこれはそういう結果を来たすであろうと思われますのは、私が私の全力を挙げて調査した限り士気の衰えることは明らかな事実であります。こういうことは質問事項と別なようでありますが、池田さんは少くとも東西の政治家として立派であり、財政通としては一流中の一流であると思いますが、鹿を逐う猟師が山を見ずに疵つくことがありますが、余りに金に汲々として、人の心をときどき見失うんじやないか、集まつた金、その底には集めて来る心があるのでありますが、それを見失つた結果が、古い記憶でいやなことでありますが、中小企業の問題で、三十人二十人は倒産しても、死んでもというような言葉をお使いになつたが、少くともあれは日本の為政者として今まで曾つてない言葉の疵と私は思うておる。こう考えて参りますと、今度のこれを実際に実行に移しましたら、言葉の疵ではなくて、事実の上において現われて参つて、今申しました保険金郵便貯金も集まらずに、そこに国の財政の運営に非常に支障を来たす、こう私は考えておるのであります。でありますから、この法案に対しましてはやつぱり今やつておる一時的の処置といたして参りますならば、大蔵省が何ら金の面において少しも違わない、そうして郵政当局は更に迫力をかけてこの仕事をやりますならばその目的を本当に達しられるゆえんだと考えますので、こういつたことがこの法案の中に大きな無理があると考えますので、私は国会議員の賢明さで、無理のない、而も大蔵省も少しも支障を来たさない、郵政省も勇んで従業員仕事をし、そうして被保険者気持よく進んで行くという方法を見出さなければならない、必ずや参議院の良識においてこれを見出すであろう、こう思いますので、私はこの法案このままでは一つ大蔵省において反省をして頂きたい、こういうふうに考えるのであります。これを以て私の質問を終ります。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 誤解があるといけませんので、一応私の意見を申上げて置きます。何も集まつた金大蔵省独断でとやこうするのではございません。法案にもありますように、今までよりもよほど改善いたしまして、この運用に当りましては総理大臣会長とし、郵政大蔵大臣が副会長になりまして運用に当ろうとしておるのであります。今までよりもよほど改善せられたと思います。而うして実際問題といたしまして集まつた金を、今国債はございませんので、地方債に主として充てる。今度金融債も来年度から四百億円廻るのであります。而うして地方債へ廻りますときは自治庁が一応割振りするのであります。大蔵省はそれに乗つかつて行くのであります。又金融債発行にいたしましても、四百億円のうち、ここで相当の部分募集願うことになつておるのであります。大蔵省に金が集まりますからといつて大蔵省独断でどんどんやるというわけのものではございません。従つて郵政関係職員かたがたも、大蔵省職員のものも、国のためにできるだけよくうまい工合に使おう、こういうことであれば、何も我々が草鞋ばきで集めたものをとつちまうのだというような気持を起して頂かないでも、これが人情だと言えば仕方ございませんが、我我大蔵省独断でやつておるのではない、地方債引受地方自治庁がやる、金融債発行につきましてはここで相当程度御無心を願つておるのであります。何もひとことに働くという意味のものじやない、これが日本財政経済建直しに役立つものだ、こうお考え下されば、郵政省関係職員かたがたもそう意気が沮喪するわけのものでもないと思います。例えば税金を集めたものを各省が使うのだ、こういうことになれば税務官吏は働かんようになるだろう、こういうのと、少しくは違うかもわかりませんが、そういうようなものです。やはりその職場左心で国のためになるようにお働き願うことが私は必要だし、そうなることと信じておるのであります。
  7. 柏木庫治

    柏木庫治君 例を税金におとりになつたのですが、税は国民義務であります。保險をかけるほうは、決して国民義務ではありません。それと同時に働く者の熱意如何でありますが、今までの通りに一時的処置ということについて何ら私は……。それで大蔵省においても少しも差支えはないと言つているじやないか。事実において末端に行つて見ますと、今池田さんが直接集める一人々々ならば、池田さんぐらいの人になりますと少しもそういう感情は起りますまいが、実際の仕事に携わつております者の募集する気持は非常に衰えまして、それは驚くべきほど衰えて、そして池田さんたちの狙つておる目的を長い目で見たときに達しられらない、こういうふうに私は考えますので、強く主張するわけであります。折角集まつた金だけならともかくでありますが、集めようとする金が池田さんの思うように集まらずに、預金通帳が長い目で見たときにからつぽになる、こういうふうに考えます。
  8. 大野幸一

    大野幸一君 柏木委員質問に関連して少々お尋ねしたいと思いますが、さすがは池田大蔵大臣簡易生命保險事業本質については、すなおに私は御答弁なさつたことを感謝いたします。そこで運用一定利率にきめて運用しても、同じく運用のためであるし、国家目的にこれを使うのは非常にいいというお話でありまするが、我々はこの運用利率死亡率経費率、これは不可分一体のものであるということは、例えば死亡率社会の変遷によつてつて行き、或いは経費社会のデフレ、インフレによつてつて来れば運用率も又自然に変つて来なければならない。こういうように考え不可分一体考えておるのであります。ところがそういう考えに基かずして、すなおに認めて頂いてもこれは何にもならないことであります。そこで私が一つ引用してこの関係を論ぜられた有力なる学者を一つ紹介しつ御答弁を求めるものでありまするが、松本烝治先生が、これは当時簡易生命保險が作られた当時、法制局おいでになりまして、立法参画者であります。当初から簡易生命保險積立金運用委員会委員を頼まれておいでになりましたところ、丁度これがこの積立金が当時の社会情勢から国家資金の統一に向うような方向にあつた昭和十八年の一月に、この委員会において、いわゆる積立金運用委員会において発言をされた、そのうちの一節を御紹介し、我々の智識の足りないところをこれで以て補いつつお尋ねしたいと思います。  松本先生はここにこういうことを言つておられる。「つまり簡易生命保險仕事一つ社会仕事である。契約募集維持等の現況から資金運用等の管理まで、すべて一体をなして一つ保險事業ができている。これを分けて他省に持つて行くようなことはとんでもない間違いである。」こう言つておられる。「そういうような考えはどういうイデオロギーから来ておるか知りませんが、どういうイデオロギーから出ておるかわかりませんが、」日本人には解せられないというのでしよう。「少くとも実際から言つても話にならん間違いである。」こういうことを述べておられます。語を次いで、自分はという意味でしよう。「又簡易保險ができたときの考えもそうであつた。これは立法当時に私も関係しておりまして、よく承知しております。必要があればそういう講義をいつでもいたしたいと思つておるくらいであります。」私はあなたがた関係される吉田さんが信頼しつ今なお松本烝治先生、老体といえども重要な地位に置いておられるのでありまして、お暇さえ許せばここで証言してもらいたいと思つておるくらいであります。こういうふうに述べておられる。もう当時すでに戰争を見越されたか、「併しながらこれから資金運用につきましても臨時の御処置は必ずあるべきと思うが、ただそういうことは、これは簡易生命保險という仕事から申せば変則である。」、戰時中大蔵省がとつたということは、これは簡易生命保險という仕事から申せば変則である。従つてこれは一時の危急存亡の時期における変態的のやり方であるということだけは明らかにして頂かなければならない。戰争の、太平洋戰争を御想像下さい。日本危急存亡のときだから止むを得ない。こういうことをお認めになつただけであります。「若しそうでなしに、そういうようなことが恒常的な制度一――今大蔵大臣は何も経済事情が変れば又違うということを述べられまして、私は非常に満足したのであります。衆議院あたり大蔵当局の御発言だと、なにそうでもない、これは我々は一時的なものと考えていない、こういうような御答弁もあつたように聞いております。そこで松本さんは「若しうでなしに、そういうようなことが恒常的な制度であるというふうに変つて行くようなことがあつては大変な問題であろうと思います。」こういうふうに述べておられます。簡易保險本質から言えば、これは、飽くまでも募集するもの、それから維持するもの、そうしてそれは即ち死亡率経費率の結果から運用率が出て来なければならない。経費が余計かかるのに運用はいつも同じ利率でやつておるというようなことは、これは許されないものであり、もともとは郵政省がやつた、この本来の性質に基いて簡易保險法が根本的にその制度上改められない限りは、これは郵政省がやるのであるが、何と言つても一時的の、経済的の関係であることだけはお認めになるかどうか、これを先ず当初にはつきりして置いて頂きたい。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 保險の理論といたしましては、先輩の松本さんのおつしやることは筋が通つております。我々もそういう気持があるのであります。従いまして閣議決定決議に基きましていたしたのは一にお話のような点を私は考慮したからであります。併し御承知通りに昔とは違いまして、国の資金経済的の資金は非常に足りない。預金も少い。然るに政府資金が非常に大きい、ウエイトが大きいのであります。そこでこの金をどういうふうに使おうか、ほかは金利が高くても、政府預金部には相当つて来る、こうなつて来ますと、これを日本経済再建のために一元的に有効に使うという経済目的も出て来ておるのであります。そこで私が迷つた。その議論のあげく今の場合におきましては、経済目的のほうを主にしなければならんという考えでこの決議至つたのであります。この決議に行きます前は、勿論保險本質をも考えましてやつたのであります。だからこの各国がやつております簡易保險、いわゆる政府簡易保險にもいろいろやり方がありますが、アメリカなんか御承知通り郵便貯金運用郵政省でやつておる。これはその資金が他の資金に比べますと非常に少くて、そうウエイトを持つていないという場合にはそういうことは考えられます。だからこれはやはりそのときそのときの状態によつて考えなければならん、而してこれを今の死亡率がどうだから、片一方運用のほうもこうだと私は直接には言えない。死亡率が多くても運用には限度がある、利益ばかりではいかんので、とにかく今の状態といたしましては、私はこれで進んで行くがいいという態勢になつたのであります。勿論保險本質は知らないわけではないのであります。
  10. 大野幸一

    大野幸一君 そうすると保險本質閣議決定までして努力したが、自分が途中において心境変化を来たしたというお話で先ほどありましたが、まあ我々の一に、柏木委員が今述べられたように、これからは我々の責任であつて、一に政府を昔の議会のように攻撃することばかりを能としておりません、我々の責任である、我々が法案をどう修正し、どういう法案を通過せしめるかということは我々の責任でありますから、率直にお答え願いたいのであります。ドツジさんが来まして、ドツジさんとの間の折衝の過程において、閣議決定もあり、院議もあるけれども、心境変化によつてそう、これが正しいと思わざるを得なくなつたというそのお立場を私は了解いたしますが、そうするとあなたが大蔵大臣として、具体的に言えば今年度の総予算との振合においてこうしなければならないように考えられて心境変化が来たと私はそう善意に解釈しますが、そうでしようか。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体その通りでございます。でこの預金部資金貸付の場合、できるだけ確実にしなきやいかん、そして実は御承知通りに、国債地方債に限られておる、これでは余りに狭過ぎるから資金運用部運用特別会計を設けて、そうして簡易保險特別会計借用証文を出す、政府が。そういうふうな方法をとつたならば、国債地方債に限らず金融債のほうにも運用認めよう、これが條件になるわけであります。そこで私は今の情勢から申しまして、国債地方債だけでは止めておきません、とにかく政府特別会計で預つてそれに借用証文を出そう、こういうふうにやつたほうが、その場合いいという結論に至つたわけであります。
  12. 大野幸一

    大野幸一君 そこで国会の情勢から、又内閣、郵政大臣考えからしても、これは自分のというのは失札でありますが、大蔵大臣のお考えだけでは、若しこれをどうしてもやるには明らかにこれを文字にしてはどうだ、こういう意味に相・成つて、このメモというものが発せられたのですか。これは衆議院の速記録を見ますと、そういうふうに解釈できるのであります。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは両院の議決もございますし、閣議では内定した大きな政治問題でありますので、私が意見を述べ、向うの意見を聞き、そうして最後結論に至つた場合において、このことを明らかにする意味において、ドツジ氏のほうの考え一つレビユーしてもらいたいということを言つたら、自分意見文書にして君に渡そう、こういうことになつたわけであります。
  14. 大野幸一

    大野幸一君 そうすると、これは内閣の意見として、あなたがやりいいように出されたものであつて、勿論これは国会を拘束するというようなことは全然あり得ないものだと思いますが、そう考えてよろしうございますか。
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そうお考えになつてよろしうございますが、国会を拘束するものでは、ドツジ氏の覚書はないものと感じております。
  16. 大野幸一

    大野幸一君 このメモと、先ほど昭和二十一年一月一日に出されたマーカツト指令との関係は、どういうように考えられますか。マーカツト指令を変更する効力を持つておるものと考えられておるのでしようか、考えられておらないのでしようか。
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昭和二十一年のマーカツト指令もこれは指令でございまして、法律に代わるべきものと考えております。而してその後におきまして、こちらで作りました法案を向うがOKすれば、その意味におきまして指令が或る程度変つたものと心得て差支えないものと考えております。
  18. 大野幸一

    大野幸一君 そこでこれは衆議院であるならば、大いに大蔵大臣の首でも取つたように喜ぶところかも知れませんが、まあその事情をすなおに我々は今聞きました。そこでやはりこれは従来のように、従来のようにというか、大臣答弁はあれして来ますが、大蔵当局では長年の間この積立金運用大蔵省でやりたいという希望があつて、十分大蔵省としては常にそういうことを考えて来た、こういう答弁大臣以外の人からあつたようでありますが、今大蔵大臣の説明では、これはやはり一時的なものでよろしい、こういうふうに考えられて然るべきであるか、どうでありましようか。従来の経緯に拘泥することなく一つお答え願いたい。
  19. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この一時的なもの、永久的なものと断定することは、これ如何なものかと思います。やはりそのときの経済財政の状況から考えてやらなければいけないと思います。而して保險性質を非常に強く考える場合と、そして金融的の操作を非常に強く考えて行く場合について、おのずからそこに意見の食い違いがあると思いますが、私は今の状態といたしましては、保險性質もいろんな点もさることながら、これが、この法案が適当であるという結論に到達いたしておるのであります。事務当局がどう申しましようと私は大蔵大臣責任において答えておりますから、私の言葉一つ対象としてお考え願いたいと思います。
  20. 大野幸一

    大野幸一君 今ちよつと聞き漏らしましたが、今のところというお言葉でしたか……。
  21. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) さようでございます。これは永久不変なものではございません。
  22. 柏木庫治

    柏木庫治君 それではお尋ねいたしますが、六十九條と四十二條があのまま存在しておるということが、今のところという大蔵大臣の、あれは、私は削らなくても何ら差支えない、私今の説明を聞けば聞くほどそう思われるのですが、あれを削られなければならない理由はどういうところにあるのでしよう。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これはプリンシプルの問題だと思います。今の六十九條も四十二條もありましても今は動いていないのでございます。動いていないものならば置いておいてもいいじやないかという考え方と、動いていないものならば削つてもいいじやないか、要るようになつたら入れたらいいじやないかという考え方の問題じやないかと思います。
  24. 柏木庫治

    柏木庫治君 私は今言うた置いておいてもいいじやないか、削つてもいいじやないかという考え方で、あなたは削るというほうをおとりになつたのですが、その削るということから生れて来る郵政省従事員士気が沮喪するのが私の最も力説するところであります。あなたはマーカツト指令が出ても減らなかつたのじやないかと、こう申しますけれども、それはその時代の経済事情従事員がよく理解いたしまして先生らのこの仕事を思い、国を思う熱意で却つて殖えて行つたのでありまして、あれがなくなるならば、私が日時を費して調査した結果では確かに減るのであります。でありますから私はどうでもいいという考え方ならば、何を求めて従事員士気沮喪するようなことを大蔵省が求められるか。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はプリンシプルの問題といたしましては、只今ああいうような死文を置かずに、すつきりしたほうがいいという結論になつたのであります。それは従事員かたがたがもう熱意が全然なくなるということを前提にすれば、お説のような御意見もありましよう。私はそういうことを考えておらず、ますます保險の勧誘に努力なさることを期待しておりますので、死文を置いておかなくても、又必要があつたらできると思います。一応すつきりしたほうがいいのじやないか、こういう途を選ぶのであります。
  26. 大野幸一

    大野幸一君 先ほどこれは我々としても全部を承認をしないのではなく、大蔵大臣に対しては今年の総予算との関係において、現在の社会情勢における折衝過程において、心境変化を来たした。従つて今のところとしてはこれが正しいと思うというようなお考えを表明なさつているので、これは大いに各委員のおかたがたの今後の資料に、法案の審議のよい参考になると思います。そこでたとえ一時的にしろ、この目的を遂行させる上において、一つ又引用すべきものを私読み上げまして、御答弁というよりも、大蔵大臣の所感を承わりたいと思うのであります。いろいろ社会情勢によつてこれは変化はありましようが、何といつてもこの簡易保險というものは、零細な金、いわゆる庶民階級からこれを集める、それが国家目的という、国家目的という言葉は戰時中からもできた言葉、ありましたことで、これは国家主義目的達成のために使われた場合が多いのであります。併しながら今は私はそうであつてはならない。どこまでも国民の幸福のために使われなければならない。こう思うのでありまして、近頃新聞を見ましても、財閥、財界からはこの法案の通過を望んでいるし、一般大衆は非常にこれに反対している。そうして又特に地方公共団体については強い反対がある。こういうように何か財閥と大衆との論争のように思われていて、甚だ遺憾でありますが、もともとこれを作つたときの速記録をちよつとここに紹介しつつ御答弁を求めたいと思います。大正五年二月七日簡易生命保險法案を審議した第三十七回帝国議会における積立金運用に関する質疑応答、小山松壽、これは当時有名な人でありますが、この人の問として「斯業により蓄積せる資金社会政策的に使用する由なるも、如何なる方法か具体的に明示ありたい。」これは社会政策的なものである。 それはそうであろうと思うのであります。これに対して箕浦逓信大臣答弁として、「或いは産業組合に、或いは労働者に対し家屋等の供給に使用する等その方面は種々あるも、財政上の急に応ずるため使用するがごときは絶対に避ける。」こういう答弁がありました。吉植庄一郎氏は、次いで、「零細なる地方の資金を集めてこれを中央の金庫に集中するは一層地方金融を枯渇せしむる結果となる。資金運転に関する政府意見如何。」これに対して箕浦逓信大臣は、「資金は勿論一般財政運用に供するがごときは絶対に避くべく、或いは産業組合その他に貸付け、或いは細民のために貸長屋を建つる等專ら社会政策の事業に使用する。」当時から見ますれば、実に進歩的な考えでありまして、若しこういう大臣ばかりおるならば、社会党も共産党の存在も要らないと、私はこう考えておるのであります。然るに今の自由党は社会党、共産党などができると、それに何でも反動的にやれば、これが国家目的のように考えて、そこにおいて世界もこういう状態になつて二つの世界に分れなければならない、こう言うけれども、どつちかからでも悟りを開いて、いわゆる保守大臣といえども、この金は貸長屋を建つる等專ら社会政策の事業に使用する、こういうような考え一つつてもらいたい。先ほど柏木委員から気の毒なる言葉を引用されましたけれども、言葉の意義はいろいろ誤解される点がありましよう、私は今後大蔵大臣がやはり国民多数の、この社会政策にこれを使つてもらいたい。こういうことを念願して置きます。それで、これに次いで吉植庄一郎氏は、「資金財政の便利に供せざることは言明せられたるところなるも、」資金財政の便利では駄目だと言うのだ。今から考えると、この当時の精神からいうと今の大蔵大臣答弁ももうなつていないということになるのです。そこで、「永遠にその意思を貫徹するため、法律上に嚴重なる資金運用の規定を設くることを必要と信ずる。政府は議院においてこれを発案するとき同意するか。」何でも旧憲法であるから議会が修正案を出すときに政府が同意しなければならなかつたようでありますが、今はそうではありません。その権利は我々にあるのでありますが、こういう答弁がなされておる。箕浦逓信大臣は、「法文に規定するはただに法を複雑ならしむるのみならず、他日違反の行為あればいわゆる行政監督権を有する議会においてもこれを責むる力を有し、国論もこれを許さないのであるから、こうしたことは事実上必要なく、又これが提議あるも政府は同意を表し得ない。」だから国論に一つ任したらよかろう、こういうことになつておる。今やこの国論が湧いて来ておるのです。我々の欲しい金である。我々公共団体が欲しいのです。学校を作るために、或いは道路を作るために、耕地整理をやるために欲しいのであるからという、今やこの国論が湧いて来ておるのであつて、これを一般財政の便利に供しないということは当時から弁明されておるのです。国民は正直でありますから国民を欺くようなことをしないように、その国論を我々が国会においてすでに衆参両院においてこの国論を決定したのであります。そこで国論もこれを許さないのであるから、こうしたことは事実上必要なく、又これが提議あるも政府は同意をしない。丁度今の郵政大臣みたいなんで、心の中では非常に反対であるけれども、どうも政府の一員としてはこの法案に同意せざるを得ないというような苦しい立場に箕浦さんが追い込まれておる。併しあとになつて考えてみると今柏木さんが言われた簡易保險の六十九條、郵便年金法四十二條というふうになつて成文化されてしまつておる。こういうときに当りましてどこまでも総予算との関係ということになれば、先ず一年を以て今のところと解釈されて何ら支障はないと思いますが、大蔵大臣、その辺についてはどうお考えになりますか。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この預金部資金運用につきましては、昔時代のその議論のことも承知いたしております。我々はできるだけこれを社会政策的に使いたいというふうに考えてるのであります。ただ社会政策的に使いたいという一つの希望と、もう一つは確実という一つの制約がありますので、そこで問題が起きるのであります。今までの運用におきましてもそういう気持を以てやつておりますので、地方債引受けも、これはやはり一般大衆と言うと語弊がありまするが、預金部運用としては適切な方法ではないか。今長屋資金というようなことを言われましたが、これは来年度におきましては五十億円を住宅のほうへ出すようにいたしております。又地方債引受けにいたしましても、やはりこれが建築のほうにも使われて行く場合もあるのであります。而して又金融債引受けにいたしましても、商工中金とか農林中金とかいうようなものの金融債を努めて引受けて行くようにしようという考えを持つておるのであります。できれば今後におきましても国民金融公庫のほうの貸付もいたしたいという考えを持つておりますが、まだこれは実現に至つておりません。そういう気持運用いたしておるのであります。  次に、総予算との関係で聞いたのだから、昭和二十七年度においてはやめるかという御質問でありますが、これはお約束はできない。その当時の状態によつてきめなければならん問題だと思います。
  28. 小串清一

    委員長(小串清一君) 再三予算委員会から大蔵大臣の出席を要求されておりますが、私もう少しこちらへ出席していてもらいたいということを言つて置きましたから、そのおつもりで簡潔に一つ……。
  29. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 私は角度を変えて大臣にこの法案についての質疑をいたしたいと思います。殊に大蔵郵政委員会の合同審査でありますから、大蔵方面だけの問題ではなしに、郵政と関連したことについてお尋ねいたしたいと思います。  先ず第一に、先ほど大臣お話になりましたが、この預金部資金国家財政に及ぼすウエイトというものは実に重大であるということは、我々もよく承知しております。而もそのうち簡易生命保險の占める歩合というものも、これは相当大きいのであります。従つて大臣がお思いになると同様に、国民もこの簡易生命保險のいわゆる使用というようなものについての関心は非常に高いのであります。そこで簡易生命保險募集の拡大強化を図るということは、結局日本経済のためになるということになつて参ると思うのでありますが、大臣はこの保險が強化されることは口日本経済界にとつてどの程度のウエイトを持つものであるかという観念ですね。どうしてもこれは殖やさなくてはならないのだというふうにお思いになつておられるか、その点を先ず第一番に大臣の見解を承わりたいと思います。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この保險事業というものは、官民を問わずどんどん殖えて行くことが、いわゆる長期資金の調達から申しましても結構なことであるのであります。最近では、民間保險事業よりも簡易保險の行き方がよいのであります。今年度やはり簡易保險は、百数十億円集まると思います。二、三年前に比べますと、格段の違いでございます。累積額が三百数十億円と思いますが、今後も非常に伸びて行くのではないかと、私はそれを期待いたしておるのであります。
  31. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そこで大臣は、現内閣の大蔵大臣といたしまして、最近の財政方針としては、資本の蓄積ということを第一に取上げておられるのであります。従つて、この簡易保險の強化拡大ということは、資本の蓄積との関連はどのように考えておられますか。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 資本蓄積の基をなすものでございまして、大いにやりたいと思つております。
  33. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そこで資本蓄積のためになるような法案国会で以て作るのが我々の義務ではなかろうかと思うのでありますところが、先ほど来各委員からお話がありましたように、今度の政府の提案というものは、いささか国民にとつては資本蓄積の阻害になりはしないかと考えられる点があるのであつて、これについて国民の代表として我々は懸念しておるのであります。この点大臣はどうお考えになるか。併せて、郵政当局の政務次官も見えておりますが、郵政当局としてもこの点を明確にして頂きたいと思います。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、今度の改正によりまして資本蓄積を助長すると考えております。それは従来よりも運用いたしまする利子も殖えて行くと、又三年以上五分ということになりますると、相当よくなつて行くと考えておるのであります。而してこの運用が、資金運用部に預けられて、そうして確定証券でもらえるということが信用を高めると考えております。
  35. 山本猛夫

    政府委員(山本猛夫君) 只今の御質問は、この法案が若し通つた場合には従事員の意気沮喪等によつて資本蓄積に影響を與えはしないか、こういう御質問のように承わりましたが、この法律か若し通つた場合におきましては、現段階の郵政従事員二十六万の考え方を基底として想像いたしますと、確かに資本蓄積に重大なる悪影響を及ぼすだろうと考えます。併し私どもは、先刻大蔵大臣の御答弁の中にもありましたように、ドツジ書簡なるものは、戰争は終つたけれどもまだ非常事態は続いている、よつて過渡的現象下における占領当局の施策として日本政府に示唆したものであつて大蔵大臣が御答弁に相成りましたように、これは暫定的なものであるということで、一時的なものであつて、これが近い将来において常道に復するのであるということでありまするならば、我々は二十六万の従事員を納得せしめ得る考えはございます。併し若しこれが恒久的なものであつて、永遠に大蔵省から郵政省にこの運用権が帰つて参らないものであるというようなことでありますれば、我々は二十六万人の考え方を是正せしめて、これを緩和せしめる方途に自信を只今持つておりません。なぜならば、澎湃として起つた二十六万の従事員がこの法案の行末を見守つておる現在の段階から考えまして、さように思うのでございます。併し私どもは、両院によつて国民の声として澎湃として起つた結果がこの運用権の問題をきめられまする観点から立つて、如何なる者も院議を尊重しなければならないというような観点に立つて、私どもは先刻大蔵大臣の御答弁に相成りました暫定的なものであるといつたようなことが、これが二十六万の従事員に納得してもらえるものと考えておるのでありまして、私どもは今の御質問から考えまするというと、暫定的なものであるというような場合におきましては、二十六万を納得せしめることができる。若しこれが恒久的なものであり、そうして永遠にこの運用権が郵政省に帰らないというようなことに相成りました場合においては、資本蓄積に二十六万の従事員の意気沮喪の結果重大なる影響を及ぼすものと考えております。
  36. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 政府当局の二つの考え方は、対立しておるということは我我にとつては甚だ遺憾であります。然るに今の政務次官の話のような工合に、従事員士気沮喪という点については大蔵大臣はどういうふうにお考えになつておるか。士気は沮喪させないというふうにあなたは確信を持たれておるか、更に明確に伺いたい。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が今まで実際やつていた通りでありますので、大した問題ではないと考えております。
  38. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 これは我々は審議上重大なポイントだと思つておるのでありますが、更に立場を変えまして、あなたは衆議院予算委員会で、二月二十五日でしたが、中曽根委員から例の金融債について何か脱税を誘発するというようなことから当然禁止すべきじやないかというような質問をしています。それに対してあなたのお答えとしては、物事というものは余り固く囚われて考えてはいけない。こういうことを言われているのです。そうすると、余り固く囚われて考えてはいけないということなら、この預金部資金の今度の改正案についてもみんなが要望しておるというようなことを、法律は今必要ないのだから削るというようなことでなしに、余り固く囚われないで、いわゆる常識的にやつて行くというのもこれは一つ方法じやないかと思うのです。殊にこの法律の改正によつて従事員士気を奮い起させるか、又沮喪させるかという立場になつております。とういう点については大臣のお考え方をお変えになつては如何かと思いますが、如何でしようか。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 余り物事を固く考えないというのが私の趣意であります。従いましてそう油井さんも固くお考えにならずに、従事員の意気が沮喪するということを前提にして固くお考えにならないほうがいいと思います。今プリンシプルの問題だと申上げましたが、私はこの問題につきましてはそう固く考えていない。従いまして情勢によつたら変えることもあります。これはまああなたがたのお考え一つ任すよりほかない。私はそういう考えでやつておるのであります。適当に御了解願いたいと思います。
  40. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 只今の大臣の大変含みのある御答弁を聞いて我々も同感だと思います。結局この審議というものはこの委員会において任せるというようなお話でして、いわゆるドツジの書簡というものと我々国会の審議というものの観点というものが、ドツジ書簡より我々のほうにウエイトを、重きを置かれるというふうに了解してよろしいですか。
  41. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来の答弁でおわかりのように、私はドツジ氏が私に出されました文があなたがたの判断を拘束するものとは考えておりません、従いましてどちらがいいということは私から申上げませんが、私はこの案がいい、こういう考えでおるのであります。
  42. 小串清一

    委員長(小串清一君) 中川さん、何か御質問ありますか。
  43. 中川幸平

    ○中川幸平君 今日は時間がないからやめます
  44. 小串清一

    委員長(小串清一君) それでは本日の連合委員会はこれを以て終結といたします。なお御質問のおありになるかたは、大蔵委員会でこの案を審議するときに適当に御発言願いたいと思います。本日はこれを以て散会いたします。    午後零時十四分散会  出席者は左の通り。   大蔵委員    委員長     小串 清一君    理事            大矢半次郎君            杉山 昌作君            木内 四郎君    委員            愛知 揆一君            岡崎 真一君            黒田 英雄君            九鬼紋十郎君            清澤 俊英君            松永 義雄君            高橋龍太郎君            油井賢太郎君            森 八三一君   郵政委員    委員長     大野 幸一君    理事            中川 幸平君            柏木 庫治君    委員            石坂 豊一君            三木 治朗君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君   政府委員    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省銀行局長 舟山 正吉君    大蔵省銀行局預    金部資金課長  高橋 俊英君    郵政政務次官  山本 猛夫君    郵政省簡易保險    局長      金丸 徳重君   事務局側    常任委員会專門    員       木村常次郎君    常任委員会專門    員       小田 正義君    常任委員会專門    員       生田 武夫君    常任委員会專門    員       勝矢 和三君