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大野幸一君 先ほどこれは我々としても全部を承認をしないのではなく、
大蔵大臣に対しては今年の総
予算との
関係において、現在の
社会情勢における
折衝過程において、
心境の
変化を来たした。
従つて今のところとしてはこれが正しいと思うというようなお
考えを表明なさ
つているので、これは大いに各
委員のお
かたがたの今後の資料に、
法案の審議のよい参考になると思います。そこでたとえ一時的にしろ、この
目的を遂行させる上において、
一つ又引用すべきものを私読み上げまして、御
答弁というよりも、
大蔵大臣の所感を承わりたいと思うのであります。いろいろ
社会情勢によ
つてこれは
変化はありましようが、何とい
つてもこの
簡易保險というものは、零細な金、いわゆる庶民階級からこれを集める、それが
国家目的という、
国家目的という
言葉は戰時中からもできた
言葉、ありましたことで、これは
国家主義
目的達成のために使われた場合が多いのであります。併しながら今は私はそうであ
つてはならない。どこまでも
国民の幸福のために使われなければならない。こう思うのでありまして、近頃新聞を見ましても、財閥、財界からはこの
法案の通過を望んでいるし、一般大衆は非常にこれに反対している。そうして又特に地方公共団体については強い反対がある。こういうように何か財閥と大衆との論争のように思われていて、甚だ遺憾でありますが、もともとこれを作
つたときの速記録をちよつとここに紹介しつつ御
答弁を求めたいと思います。大正五年二月七日
簡易生命保險法案を審議した第三十七回帝国議会における
積立金の
運用に関する
質疑応答、小山松壽、これは当時有名な人でありますが、この人の問として「斯業により蓄積せる
資金は
社会政策的に使用する由なるも、如何なる
方法か具体的に明示ありたい。」これは
社会政策的なものである。 それはそうであろうと思うのであります。これに対して箕浦逓信
大臣の
答弁として、「或いは産業組合に、或いは労働者に対し家屋等の供給に使用する等その方面は種々あるも、
財政上の急に応ずるため使用するがごときは絶対に避ける。」こういう
答弁がありました。吉植庄一郎氏は、次いで、「零細なる地方の
資金を集めてこれを中央の金庫に集中するは一層地方金融を枯渇せしむる結果となる。
資金運転に関する
政府の
意見如何。」これに対して箕浦逓信
大臣は、「
資金は勿論一般
財政の
運用に供するがごときは絶対に避くべく、或いは産業組合その他に
貸付け、或いは細民のために貸長屋を建つる等專ら
社会政策の
事業に使用する。」当時から見ますれば、実に進歩的な
考えでありまして、若しこういう
大臣ばかりおるならば、
社会党も共産党の存在も要らないと、私はこう
考えておるのであります。然るに今の自由党は
社会党、共産党などができると、それに何でも反動的にやれば、これが
国家の
目的のように
考えて、そこにおいて世界もこういう
状態にな
つて二つの世界に分れなければならない、こう言うけれども、どつちかからでも悟りを開いて、いわゆる保守
大臣といえども、この金は貸長屋を建つる等專ら
社会政策の
事業に使用する、こういうような
考えに
一つな
つてもらいたい。先ほど
柏木委員から気の毒なる
言葉を引用されましたけれども、
言葉の意義はいろいろ誤解される点がありましよう、私は今後
大蔵大臣がやはり
国民多数の、この
社会政策にこれを使
つてもらいたい。こういうことを念願して置きます。それで、これに次いで吉植庄一郎氏は、「
資金を
財政の便利に供せざることは言明せられたるところなるも、」
資金は
財政の便利では駄目だと言うのだ。今から
考えると、この当時の精神からいうと今の
大蔵大臣の
答弁ももうな
つていないということになるのです。そこで、「永遠にその意思を貫徹するため、法律上に嚴重なる
資金運用の規定を設くることを必要と信ずる。
政府は議院においてこれを発案するとき同意するか。」何でも旧憲法であるから議会が修正案を出すときに
政府が同意しなければならなか
つたようでありますが、今はそうではありません。その権利は我々にあるのでありますが、こういう
答弁がなされておる。箕浦逓信
大臣は、「法文に規定するはただに法を複雑ならしむるのみならず、他日違反の行為あればいわゆる行政監督権を有する議会においてもこれを責むる力を有し、国論もこれを許さないのであるから、こうしたことは事実上必要なく、又これが提議あるも
政府は同意を表し得ない。」だから国論に
一つ任したらよかろう、こういうことにな
つておる。今やこの国論が湧いて来ておるのです。我々の欲しい金である。我々公共団体が欲しいのです。学校を作るために、或いは道路を作るために、耕地整理をやるために欲しいのであるからという、今やこの国論が湧いて来ておるのであ
つて、これを一般
財政の便利に供しないということは当時から弁明されておるのです。
国民は正直でありますから
国民を欺くようなことをしないように、その国論を我々が
国会においてすでに衆参両院においてこの国論を
決定したのであります。そこで国論もこれを許さないのであるから、こうしたことは事実上必要なく、又これが提議あるも
政府は同意をしない。丁度今の
郵政大臣みたいなんで、心の中では非常に反対であるけれども、どうも
政府の一員としてはこの
法案に同意せざるを得ないというような苦しい立場に箕浦さんが追い込まれておる。併しあとにな
つて考えてみると今柏木さんが言われた
簡易保險の六十九條、
郵便年金法四十二條というふうにな
つて成文化されてしま
つておる。こういうときに当りましてどこまでも総
予算との
関係ということになれば、先ず一年を以て今のところと解釈されて何ら
支障はないと思いますが、
大蔵大臣、その辺についてはどうお
考えになりますか。