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1951-03-06 第10回国会 参議院 水産・外務連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月六日(火曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————  委員氏名   水産委員    委員長     木下 辰雄君    理事      青山 正一君    理事      千田  正君            秋山俊一郎君            入交 太藏君           大野木秀次郎君            松浦 清一君            佐藤 尚武君            櫻内 義雄君            細川 嘉六君   外務委員    委員長     櫻内 辰郎君    理事      徳川 頼貞君    理事      曾祢  益君            杉原 荒太君            團  伊能君            加藤シヅエ君            金子 洋文君            伊達源一郎君            野田 俊作君            西園寺公一君   —————————————   本日の会議に付した事件水産物増産対策に関する調査の件  (漁船拿捕事件に関する件)  (右事件に関し証人証言あり)   —————————————    〔木下辰雄委員長席に着く〕
  2. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今から水産外務連合委員会を開会いたします。本日この連合委員会を開会いたしましたのは、最近東支那海方面におきまして、我が漁船がしばしば不法拿捕されるという不祥事が頻発いたしておりまして、而もその様相が誠に容易ならんものが見受けられますので、その真相を究明して、これが万全の対策を講ずる必要があると考えたからであります。終戦以来今日までに拿捕されましたものは、韓国に七十一隻中国に五十三隻、ソ連に百十隻で、合計二百三十四隻に達しております。このうち帰還したものは、中国から八隻、韓国から三十九隻、ソ連から七十九隻でありまして、未だ帰還していないものが合計百二隻あります。これら未帰還船の消息は全く不明であります。かような状態でありまするが、特に注目すべきは最近に至りまして、この種の不法拿捕事件が頻発していることであります、昨年十二月の七日に、第十雲仙丸、伺二十九日に第三大壽丸、第五壽大丸、第三日邦丸、第五日邦丸の五隻が東支那海において拿捕せられました。又本年二月十三日には、第六十八明石丸、同二月十七日には第十八雲仙丸、第二十八大漁丸、第二十九大漁丸、第五十六大漁丸、第五十七大漁丸、同十八日には和美丸、第七十五報国丸、又同二十一日には第三雲仙丸の九隻が同じく東支那海において拿捕されたのであります。而も我々が最も懸念いたしまする点は、この間における中国側官憲言動でありまして、帰還者の報告として伝えられるところによりますると、マツカーサー・ライン存在は認めない、従つてライン内外を問わず支那東海一帯中国領海として、日本漁船を見つけ次第拿捕する、たとえ監視船であつても容赦はしないと放言しているということであります。若しかようなことが事実であつたといたしますれば、マッカーサーライン存在は全く無意義となるのであります。マッカーサーライン支那大陸から距岸百マイル以上もありまして、中国領海ではないのであります。この公海、而も漁業を許されておる海洋においてさえ安全に漁業ができないといたしまするならば、実に由々しき問題であります。支那東海における我が以西底曳漁業及びトロール漁業という重要漁業は全く潰滅するのほかはないのであります。而うして我が水産業にとつては誠に看過できない重大問題であります。かような事情にありまするから、本連合委員会は、この間の真相国民の前に明らかにするために、昨年暮上海拿捕連行されて最近に帰還いたされました五十四名の乗組員の中から、第三大壽丸漁撈長谷澤馨君、第三日邦丸漁撈長山本徳男君、第五日邦丸船長藤目幸春君、第十雲仙丸甲板長田作義一君の四名を証人としまして、それから全日本海員組合漁業常任委員長高橋熊次郎君と、日本遠洋底曳網漁業協会專務理事田中道知君を参考人として今日出頭を求めたのであります。これらの諸君から実情を十分に聴取して、これが対策について愼重に検討されんことを希望いたします。  それでは宣誓に入りまする前に証人に御注意申上げます。
  3. 千田正

    千田正君 只今委員長の御説明の中に、拿捕された船舶に対しての言い分というお言葉の中に、中国ではという言葉がありましたが、中国人民共和政府言い分でありまするか、それとも台湾に現在亡命しておるところの中国側言い分でありまするか、その点を明瞭に御返事願いたい。
  4. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) これは中華民国というわけでありまして、どちらも合同したと解しております。  それでは宣誓に入る前に証人に御注意申上げます。これから宣誓を行なつて証言して頂くのでありますが、若し虚偽の証言陳述されたときは、議院に於ける証人宣誓及び証言等に関する法律第六條によりまして、三カ月以上十年以下の懲役に処する罰則があります。又正当の理由もなく宣誓若しくは証言を拒んだときは、同法第七條によりまして、一年以下の禁錮又は一万円以下の罰金に処せられることになつておりますから、この点御注意申上げて置きます。但し民事訴訟法第二百八十條(第三号の場合を除く。)及び第二百八十一條(第一項第一号及び第三号の場合を除く。)の規定に該当する場合に限り、宣誓又は証言若しくは書類の提出を拒むことができます。念のために先ず民事訴訟法第二百八十條の該当部分を朗読いたします。  第二百八十條 証言カ証人ハ左掲クル者ノ刑事上の訴追又ハ処罰招ク虞アル事項ニ関スルトキハ証人ハ証言拒ムコトヲ得証言カ此等ハ者恥辱ニ帰スヘキ事項ニ関スルトキ亦同シ  一 証人配偶者、四親等内ノ血族若ハ三親等内ノ姻族又ハ証人ト此等 ノ親族関係アリタル者  二 証人ノ後見人又ハ証人ノ後見ヲ受クル者  次に、民事訴訟法次第二百八十一條該当分を朗読いたします。  第二百八十一條左ノ場合ニ於テハ証人ハ証言拒ムコトヲ得  二、医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教又ハ祷祀ノ職ニル者ハ此等職ニリタル者カ職務知リタル事実ニシテ祷祀スヘキモノニ付訊問受クルトキ  三、技術又ハ職業祕密ニ関スル事項ニ付訊問受クルトキ前項規定ハ証人カ默祕ノ義務ヲ免セラレタル場合ニハ之ヲ適用セス  以上であります。  それでは証人宣誓を求めますから、全員起立願います。山本証人から順次宣誓を願います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 山木 徳男    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 谷澤  馨    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。          証人 田作 義一     宣誓書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないとを誓います。          証人 藤目 幸春
  5. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 御着席願います。  それではこれから証人及び参考人に順次発言を許すことにいたしますが、委員各位におかれましては、一通り評人及び参考人陳述が済みましてから、証人参考人に対する質問をして頂きまして、そのあと政府当局に対する質疑をお願いいたしたいと存じます。本日は政府側から運輸大臣海上保安庁長官農林大臣水産庁長官法務総裁大蔵大臣外務次官その他関係各庁の係官の出席を求めてあります。  これから順次証人発言許可いたしますが、証言内容はかねて御通知いたし置きました通り、次の諸点について述べられるよう希望いたします。第一が、漁船拿捕された位置マツカーサー・ラインの内側であつたか、或いは外側であつたか。第二は、拿捕されたときの現場の模様、襲撃された状況。第三は、上海その他へ連行された状況。第四は、抑留生活実情。第五は、その間の中共官民言動その他丙地帰還に至るまでの一切の経過について証言を願います。  それから参考人拿捕事件の総合的な模様及び以西底曳漁業の現状について述べて頂きます。証人山本徳男君。
  6. 山本徳男

    証人山本徳男君) 第三日邦丸は、第五日邦丸と共に昨年十二月九日福岡港を出帆いたしまして、途中天候が惡かつたので大島港に仮泊いたしました。十一日午前八時大島港を出帆漁場に向いました。途中本船の機関故障しため約十時間停止し、約十時間僚船第五日邦丸に曳行されました。十二月十五日午前五時農林漁区四百七十一区に到着、それより操業開始、その後四一八十二区、五百三区、四百七十二区、二百七十九区、三百八区と魚群を追うて操業続行、同月二十九日三百八区操業中、午後一時頃西方から五、六隻川船が本船に向つて進航して来るのを発見しました。最初のうちは同業の手繰船団だと思つておりましたが、相手船はいずれも相当の高速力で見る見るうちに接近し、船型も見なれない巾着船であり、怪しいと感じたので、すぐ網揚げにとりかかりました。突然機関銃及び砲を以て砲撃を始めましたので危険を感じ、網を切り捨てて東方に逃げましたが、ますます激しく射撃され人命の危険を甚しく感じたので、やむなく約五分間で本船は停止しました。それで直ちに無線以つてこのことを長崎無線に連絡をとりました。片船はなおも逃げておりましたが、約二十分乃至三十分後拿捕されたと思います。間もなく相手の一隻が本船横付し、直ちに武装着劍せる兵隊が十五、六人乗込んで、全員甲板に集め身体検査を行い、責任者として私をその船に連行、一室に監禁されました。その船は直ちに西方に走つておりましたが、窓から本船を見ますと、全員甲板に集まつたまま、機関長一人機関室に入れられ、兵隊監視の下に続航しておりました。翌三十日午前五時頃馬鞍島に着き本船に戻されました。拿捕されてから十五、六時間航走して島に着いたものと私は思います。附近に大壽丸が連行されているのをそのときに見ました。同日午前十一時頃同島出帆、午後三時頃四礁山に到着、翌三十一日午前十一時頃向島出発、同日十時頃上海到着、その間は武装中共兵五、六名が嚴重に監視し、船の操縦は中国船員二名が交代で舵をとり、エンジン本船機関部員兵隊監視の下で運転しておりました。呉淞棧橋横付後、直ちに全員各自の私物を持つて、船の備品はそのままにして上陸を命ぜられ、人員点検上大壽丸乗組員と共に海軍兵舎収容せられました。翌昭和二十六年一月一日、全員トラツクに乗せられ、監視兵付上海海軍司令部から水産局に連行されましたが、別に取調べもなく、そのまま元の兵舎に通れ戻されました。一月四日私物点検をされ、船から持つて上つた重要書類国籍証書漁船検査証書漁業許可書スカジヤツプ許可書航海日誌海員名簿船員手帖海技免状及び各自が持つていた雑誌以外の船舶関係専門書籍は全部没收されました。検査全員呉淞棧橋に連行され、第五日邦丸漁獲物を第三、五大壽丸積移しを命ぜられ、第五日邦丸全員乗せられ、国営上海水産公司棧橋に連れ行かれました。そこで更に私物点検され、水産公司子弟小学校講堂収容され、與えられた「わら」を敷いて帰還まで過しました。収容後二、三日経て、各船の漁撈長船長機関長水産公司社長の官舎に呼び出され、社長通訳によつて夫のような取調べを受けました。各自の本籍、氏名年齢等身許調査などを受け、東支那海支那領海である。誰の命令でこの領海を侵したか。黄海、支那海は昔から支那領海である。日本には日本開という領域があるではないか。それで東支那海支那領海であり、君たち支那領海を侵したことになる。よつて中共国法によつて裁く。それで支那領海の範囲について私が反間したが、言を左右にして答えてくれなかつたのであります。併し労働者は帰してやる。船は日本資本家のものであるから、中共国法によつて没收する。船を没收されては我々が帰つても職がなく、失業せねばならないから返してくれと要請したが返してくれません。マ・ライン内外を問わず、中国領海を侵した船は、漁船であろうと監視船であろうと拿捕するから、帰つた日本の業者並びに官庁に今後中国領海を侵すことなきよう伝えよと私に言いました。その後二、三日して、各般漁撈長のみ水産監理局長取調べを受けましたが、前に水産公司社長より受けた取調べ内容と殆んど変らず、その再確認のようなものでありました。それから局長は我々五十四名全員のいる小学校講堂べ来て、マ・ライン否定、東海は中国領海である。よつてこの領海を侵した罪により船は没収する。今後中国領海を侵すな、中国の船は日本領海を侵さない。君たち船員は罪人であるが、労働者であるから、労働者は共産党の味方であるから日本へ帰してやると公表しました。その後二、三日して海軍司令部将校に各漁撈長が呼び出され、水産公司内の警備隊取調べを受けました。そこでも前と同様のマ・ライン否定東支那海中国領海であると言われました。更に帰還前に陸軍将校より海軍将校同様のことを聞かれました。一月十九日、通訳より十九日帰還の、ことを伝、えられましたが、十八日の会食の席上、上海海軍処長より帰国を命ぜられました。二十日全員五十四名に日本帰還してからの生活の一助にせよと、水産公司所有華魴一号という五十七トン百馬力の老朽手繰船を、お手許に差上げました証明書と共にもらい、この船に乗つて揚子江河口まで中共の船に曳航され、二十四日日本帰つたのであります。終了。
  7. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次は谷澤馨君。
  8. 谷澤馨

    証人谷澤馨君) 第三、第五大壽丸は、昨年の十二月二十四日午前十時荒川港を出帆いたしまして、漁場に向いました。二十六日午前五時頃、農林漁区三○九区、天測位置東経百二十四度四十五分、北緯三十度四十五分に参りましたので、操業を開始いたしました。二十七日、二十八日も同じく三○九区において操業を続けておりました。漁獲高は平均百函乃至百二十函を揚げておりました。昭和二十五年十二月二十九日、第三○九区において操業中、午前七時頃と思います。西方から来た米式巾着船によく似た中共船、いずれも百トン余りと思いますが、近付いて来るのを約三千メートル附近に二艘見えましたが、私はマ・ライン操業しておることだし、別に気にもかけず網を曳いておりました。急に銃撃をして参りましたのは、約千メートル附近で、私はびつくりして綱を切つて東のほうに向つて約二十分ぐらい全速力で逃げましたが、その船は速力は早くて、銃撃もますます烈しくなりました。砲彈さえ射つて来る有様で、人命の危険甚だしく感じられましたので、やむなく私たち両船は停船いたしました。停船いたしますると、直ちにその中国船本船横付して、着劍せる中共の兵が五、六名と、それから中共船員らしきもの五、六名が乗り込んで参りまして、私たち一同甲板に並べて身体検査を行い、機関士一名を残して、直ちに船員室全員を監禁いたしました。又無線アンテナも直ちに切断いたしました。それからその乗込んで参りました中国船員が運転いたしまして、二艘の監視船付き全速力で航走、約二時間ぐらいいたしまして、船長、一名出て来いと言われましたので、私が出てブリッジに入りますと、舵を交代で持つて行けと言われました。そのとき針路は西に走つておりました。で、時間ははつきりわかりませんが、暗くなつておよそ十時頃と思います。東馬鞍島の島かげに着きまして、その夜はその島かげで碇泊いたしました。三十日午前八時頃出航いたしまして、又西に向つて航走、その日の午後四時頃、又名も知らぬ或る島に着きまして、やはりその島かげて碇泊いたしました。明三十一日午前九時頃ここを出航いたしまして、その日暗くなつて九時か十時頃と思います。呉淞海運棧橋に着き、海軍兵舎収容されました。昭和二十六年一月四日、国営上海水産公司に移され、保護されました。この際取調べに当りまして、本船は三百九区で操業しており、拿捕されたのは二十九日の午前七時過ぎであつた、それから大体コースを西にとつて連行され、バーレン島に着いたのは二十九日午後十時過ぎだつたから、中国領海は絶対侵しておらないと自分たちは主張したのでありまするが、中国側マ・ラインは蒋介石とマッカーサーとの間で定めたものであつて東支那海は全部自分たち領海であるから、新らしい中国は全然これを認めないと言つて、我々の主張を容れてくれませんでした。又その船体に関しても、我々が帰つても船がなければ明日から又働けないのだから、こういうことを言つて、船だけは返してくれと切に向うに願つたのでありまするが、船は君たちのものではない、資本家のものであるから、船は返すわけにはいかんと言つて拒否されました。収容中は労働に従事することもなく、三食の給與を受け、日を過しておりまするうちに、昭和二十六年一月十八日、帰国許可が出まして、雲仙丸日邦丸、計五十四名が華中水産の船一ぱい頂きまして、二十六年の一月二十四日博多へ入港いたしました。以上であります。
  9. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次に藤目幸春君。
  10. 藤目幸春

    証人藤目幸春君) 第五日邦丸は第三日邦丸と一組をなしておりますので、拿捕当日までは山本漁撈長証言通り同一行動をとつたのであります。第三日邦丸拿捕されてより二、三十分逃亡しましたが、再度砲撃を受け、人命の危険を感じ、エンジンを停止したのであります。その中国監視船は約百トン乃至百五十トンぐらいの米式巾着船によつた船であります。速力は十二、三マイルぐらいであると思います。第五日邦丸横付けしますと、直ちに服装点検し、全員乗れと言つて機関士一名を残して甲板員九名全員警備船魚船の中に入れられました。それから約十五、六時間だと思います。航行して或る島に着きました。そこで警備船に繋留されたまま碇泊しました。そこは聞きましたところによりますと、馬鞍島だということでありました。それから以後の行動は第三日邦丸山本漁撈長同一行動をとりましたから、私の証言はこれで終らして頂きます。
  11. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次に田作義一君。
  12. 田作義一

    証人田作義一君) 私の乗つておりました第十雲仙丸は、昭和二十五年十二月二日十二時、長崎港外香焼島を出港し、十二月四日二時農林漁区第二百九十六区に到着操業を開始しましてから、三日目の十二月七日十二時三十分、中共監視船拿捕されたのでありますが、拿捕された当時の模様、又拿捕されてから帰るまでの状況を申上げますと、本船は十二月七日十時五十分頃から、潮上りのため北の方向に航走しておりましたところ、十一時頃本船の西の方向日本漁船に見られない船を一隻発見したので、これは怪しいと思つて本船は直ちに東の方向に変針し、十分なる警戒と注意を拂いつつ速力を上げて逃走体型をとりました。が、怪しき船は本船より速力が早いようで、だんだん本船に接近して参りました。本船との距離が約三百メートルまで来たとき、四方より射撃を受け、又包囲されていることを知つたので、危険であり、又逃走することが不可能となつたので、船長はやむなく停船しました。そのときに見たのでありますが、その船には網も積んでおり、魚もとるようでありました。船の型は米式巾着船型で、八十トンから百トンぐらいの大きさの船でありました。停船すると同時に、その船が本船横付けして、二名の支那船員が乗組んで参りました。その船員服装は今まで見たことのある普通の綿入支那服を着ておりました。その二名のほかに別の支那船員二名が乗組んで来て、船長米式巾着船に連行して行きました。先に乗組んで来た二名の支那船員によつて直ちに無線アンテナは切断されました。乗組んで来たこの船員から上海に連れて行かれることがわかりました。乗組んで来た二名の支那船員が操舵するので、我々は船員室に入りました。エンジンのほうはやはり第十雲仙丸乗組員が廻しました。船がどちらの方向に走つているかについてははつきりわからなかつた拿捕されてから、第一雲仙丸の周囲には四隻の中共船監視して走つていることがわかりました。翌八日十二時頃、或る島に到着いたしましたので、乗組んでおる支那船員に聞きましたところ、その島は花鳥山島であることがわかりました。その島に到着してから、監視船から、すぐ上海国営水産公司の船が迎えに来るが、来るまでこの島で待つ、船が来たらその船が連行して行くからと言いました。水産公司の船は、十日午後一時頃来ましたが、君たちは明日上海に連行すると言い、十一日の早朝六時頃錨を揚げて上海に向い、午後二時頃上海国営水産公司の桟橋に到着し、直ちに上陸水産公司の建物に收容され、ここで宿泊することになりました。宿舎に入つてからは、常に二名の武装した中共兵監視付でありました。初めのうちは宿舎から一歩も出しませんでしたが、二、三日してからは宿舎附近の散歩は許してくれました。食事水産公司内の支那工員食事と同様なものであり、煙草も一日に六本ずつ支給されました。收容されてから三日目だつたと思います。船長水産局長に呼び出されましたが、船長帰つて来ての話では、私たち支那領海を侵したのだから拿捕したのだ。船は中国の法により返さないが、船員労働者であるから、是非近いうちに帰すから安心せよと言つたそうであります。二月十日だつたと思います。水産公司の白という人がいい話を聞かせるから小学校に集まれといわれたので、行きましたところ、水産局長の話を支那娘の、通訳で、マッカーサーラインは認めない、東支那海は全部支那領海である。君たち支那領海を侵した罪として船は返さない、東支那海に来た船は、日本漁船であろうが、監視船であろうが、拿捕する。こんなことは国際的問題となるであろうことは我々の予期しておるということを話しました。二十六日に送還することが伝達されて十八日の晩に会食がありました。そのとき海軍処長から、君たちは今後東支那海に来るな、中国マツカーサー・ラインは認めないから、日本漁船はどこにいても拿捕してしまうと言いました。十九日送還に際しては、元華中水産の船であつた魴船を貸與し、この船は君たち五十四名で自由にしていい、帰つてから生活の足しにせよと言い、食糧や燃料を積み込み、各船員所持品検査してから乗組み、二十日九時半、上海水産公司棧橋を離れましたが、やはり中共監視船監視を受けて上海河口到着、ここで監視が解かれ、日本に向つて航海し、二十四日八時頃博多に入港しました。抑留中は全然作業などさせられませんでした。私たち拿捕されてから二十二日に、福岡の第三、第五日邦丸、第三、第五大壽丸拿捕されて参りました。この船の乗組員は別の宿舎におりましたが、やはり私どもと同様な抑留生活をしておりました。以上が私が拿捕されてから帰るまでの状況であります。
  13. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) これで証人陳述は終りました。次に、参考人として高橋熊次郎君。
  14. 高橋熊次郎

    参考人高橋熊次郎君) 船員を代表して本委員会に陳情する機会を得ましたことを感謝申上げます。  漁船拿捕問題は終戦以来しばしば起つておるのでありまして、現在までに約二百隻の漁船中国国民政府中共政府韓国政府ソヴイエト政府などによつて拿捕されているのでありますが、韓…政府による拿捕本件は、総司令部の努力によじまして、大体問題が解決されているのであります。韓国政府による拿捕事件そのものがその後あとを絶つておる状態でございます。中国国民政府の手による日本漁船拿捕は、中国国民政府が対中共戦争によつて船舶を必要とする戦況と重大な関連を持つもののように想像されるのであります。と言いますのは、昭和二十三年の終り頃から二十四年にかけて著しく増加しておるのであります。即ち二十二年には絶無であつたものが、二十三年には七隻となり、二十四年に至ると一挙に三十隻という拿捕がなされておるということを以て、このことが大体想像されるのであります。而もその後これらの拿捕された漁船国民政府の手で武装され、そうしてそれが又日本漁船拿捕を行なつたことが明白にされておるのであります。国民政府拿捕の目的というものは船舶が必要だから拿捕をする、船が欲しから捕まえたという一点に盡きていると思うのであります。  更にこの中国国民政府拿捕問題について御参考までに申上げて置きたいことは、昨年の六月ゼネバーで開催されました国連労働機構の第三十一面の総会に、中国労働代表として出席した中国労工同盟の国際部長梁永章氏との文書による連絡によりますと、梁永章氏は、日本海員組合並びに日本労働組合総評議会の要請で、日本漁船を返還することについて目角政府と折衝したのであります。拿捕した日本漁船は講和会議後でなければ返還が実現せぬであろうというようなことが、二回に亘り梁国際部長の名前におきまして、全日本海員組合日と総評議会に連絡が来ておるのであります。こうした経緯から考えましても、我々漁船船員は総司令部の圧倒的な実力がなぜ被占領国民の上に保護する力となつて現われないのであるか。それは日本政府の総司令部に対する連絡が不十分であるためではないかというような素朴な疑問を持つておるのであります。国民政府船舶を必要とするために日本漁船拿捕するということ及びその拿捕した漁船についての処理が講和会議のあとで行うというのでは、四民政府日本に対して賠償権を行使しておるものと言い得ると思うのであります。若しそうだとするならば、当然の権利として拿捕された漁船に対する補償は国家がなすべきである、国家の補償を要求する根拠がここにあると、我々漁船船員はさように考えておるのであります。  次に、中共政府による拿捕事件でありますが、昨年十二月の七日に始まつた中共日本漁船拿捕は、最初の拿捕漁船五隻の乗組員日本へ送還するに際しまして、マツカーサーは蒋介石とマツカーサーが勝手にきめたもので中共政府はそんなものを認めないということを放言しておるのであります。特にここに強調申上げたいことは、総司令部という表現を用いないし、国民政府という表現も用いないで、特にマツカーサー或いは蒋介石と、かような言葉を用いておることによつても、これらの拿捕というものは、その目的というものが奈辺にあるかということを、私たちはひどく今後の問題に関連いたしまして不安に思うておるものであります。東支那海中共領海であるという見地から、今後とも東支那海に出漁する船はどしどし拿捕するのだなどと言明しておるのでありますが、そうした言葉を裏書きするように、漁船拿捕がその後も続々と続けられておるのであります。東支那海に出漁する船員はもとより、船員の家族らは中共拿捕に対しては特に不安な気持を抱いておるのでありまして、最近においては、出漁をやめたいという気持もつのつておるようであります。何十年という長い間、この東支那海を職場として働き続けて来たものに、どうして簡單に職場を他に移すことができましよう。依然としてその出漁を続けておるのであります。漁船船員が海に対する愛着は、農民の土地に対する執着と同様に非常に根強いものがありまして、業者が出漁しろと言つたから出る。やめろと言つたから出ないという、さような簡單なものではないのであります。かような重大な段階に当面しておる漁船船員は、二月十五日に博多船員大会を開きました。そしてそこで決議した文章の中で次のように言つておるのであります。即ち、中共がみずから我々に放言したごとく、今後も拿捕を続行するならば、以西底曳漁業は壊滅のほかなく、我々船員及びその家族の生活も又破滅せざるを得ない云々と言つておるのであります。更に二月二十日長崎の船員大会では、総司令部に許された海域において、合法的且つ平和的な我々の操業が、武力による威赫拿捕によつて重大な脅威にさらされておる。乗組員には危害を加えないとしても、明日からの職場を剥奪されるに等しい云々と決議文中で述べているのであります。  以上述べましたことから、中共拿捕の目的は、漁船を欲しいという以上に占領政策を撹乱しようとしておるものと結論し得るのではないかと、我々漁船船員は心の中に考えておるのであります。占領政策に協力する被占領国民としての我々は、総司令部に具体的な保護を要請してもよいのだし、総司令部はそれだけの実力を持つておるものと考えておるのであります。この点被占領国たる立場では政治の上に種々な制約があることは勿論でありましようが、拿捕事件についての急速な対策の樹立と、国と国との摩擦によつて個人の利益が犠牲に供されておる、こうした事態に対しましては、国家の補償が考慮されていいのではないかと、かように信じておるのであります。以上、東支那海漁場が一日も早く安定した職場になるよう念願する我々漁船船員の切実なる希望を本委員会に申述べまして、今後の対策を陳情する次第であります
  15. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 参考人田中道知君。
  16. 田中道知

    参考人(田中道知君) 私は以西底曳網漁業者を以て組織します、日本遠洋底曳網漁業協会の専務理事の田中であります。本日は以西底曳網漁船拿捕問題に関しまして、陳述の機会を與えて下さいましたことを深く感謝いたしますと共に、漁船拿捕という悲しむべき事件を報告申上げ、これが措置について一段の御盡力を煩わすことは誠に恐縮に存ずる次第であります。  以西底曳網漁船韓国及び中共による拿捕事件は、昭和二十二年二月以来、今日まで総計七十七艘に上つておりまするが、そのうち昭和二十四年までのものは、田代政府に三十一艘、うち二艘は撃沈され、二十九艘は未帰還であります。韓国には三十二艘中返還十八艘、脱出三農、十一艘は未帰還となつております。而して昨年十二月以降拿捕されたものは十四艘でありまして、その内訳は中共によるもの五艘、中共と推定せられるものが五艘、品民政府側が四艘となつております。これは全部未帰還でありまして、而もその九艘の乗組員百六名も未だ送還されておらないのでございます。昨年十二月中共拿捕されました五艘につきましては、帰還船員諸君の只今の公述で詳細が御承知できたと思いますので、その後の九艘につきまして、以下私から簡單に状況を御報告を申上げて、参考に供したいと思うのでございます。  第六十八明石丸は、危うく難を免がれた僚船船長の報告によりますと、昭和二十六年二月一日に下関港を発し、二月十三日午後四時三十分頃、推測位置北緯三十一度五十四分、東経百二十四度、漁区で言いますと、三百七区北隅において米式トロール船から発砲され拿捕されたもので、中共側によるものと推定されます。第二十八大漁丸、第二十九大漁丸、第五十六大漁丸、第五十七大漁丸の四艘は、二月十七日三百二十区附近において操業拿捕された模様と認められ、未だ消息が判明しないのでありますが、恐らく中共であろうと想像されております。次が第十八雲仙丸状況でありますが、これ又難を免がれた僚船船長の報告によるものでありますが、二月七日長崎市外香焼島を出港しまして、十日十六時頃曳網中に接近して来たジャンク船が左舷に突当ると同時に、十名ばかりの武装兵が船に乗移りまして、拿捕されたものであります。次が和美丸、第七十五報告丸の場合は、二月二日戸畑港を出港し、五百三十五区で操業中、十九日以来消息を絶つたのでありますが、二十一日に至り他船の傍受した無電により、十八日二十二時武装ジャンク船に拿捕され、大陳島に抑留されたことが判明したのであります。第三雲仙丸も同じく脱出して帰つた僚船船長の報告によりますと、第三雲仙丸は二月十五日長崎を出港、二十一日まで操業を継続し、同日二十一時三十分、推測位置北緯二十九度二十三分、東経百二十四度二十七分の地点に仮泊中、怪船が南西より接近いたしましたので、急遽抜錨、航走を開始せんとしたところ、突然発砲を受けて拿捕されたのであります。その後、第三雲仙丸の無電連絡により、拿捕に来たのは、先に捕われました第十八雲仙丸であることと、及び発砲により甲板長川崎稔は即死いたしました。船長は左足に軽傷を負つたことが判明いたしたのであります。和美丸及び第三雲仙丸よりはその後無電連絡がありますが、これを総合いたしますると、第十八雲仙丸、第三雲仙丸和美丸及び第七十五報国丸の四艘は、いずれも浙江省下大陳島の国民政府海軍警備隊抑留されており、台湾国府当局の指令を待つておる様子であります。併し他の中共によると推定せられる五艘につきましては、何らの消息もなく、船員及び船と共にその安否が気ずかわれておる次第であります。  以上拿捕状況を御報告申上げましたが、これら船員はいずれも戦後食糧増産の要請に応えてなけな上の自己資金を投じ、復金の融資を受けて再建したものでありまして、一たび拿捕されますや、船主は多額の投資を一挙に失い、負債を残すのみとなり、乗組員抑留され、仮に監禁のうき目を見た上いたしましても、乗るべき船もなく、失業という悲しむべき運命に置かれるのであります。又幸い拿捕を免がれた漁船も、今やライン内外を問わず、1四六時中拿捕の危険にさらされて、怪しい船影を認めますと、慌てて操業中の漁具を切断して逃げまどい、そして一日も安き心で操業できないというありさまであります。従つてかかる不安の除去されない限り、船主船員共に生産意欲を失い、漁獲高の減少を来たしまして、さなきだに不振の漁業経営は、ますます深刻な危険に見舞われて来るのでございます。私ども皆さまのお力にすがると共に、できる限り自分たちも渾身の努力を拂つておるのでありますが、如何せん微力、未だ適当なる方法を見出し得ないのであります。その後皆さまのお力によりまして、適切なる施策をなされんことを満腔の信頼を以てお願いするものでございます。  併しここにおきまして、以西底曳網漁業の現状といたしましては、破滅のほかはないのでありまするので、左記の諸点は是非御考慮願いたいと思うのであります。それは何といたしましても、一日も早く船員と船とを返還してもらうよう御斡旋を願いたいのであります。抑留されておるであろう船員の苦心もさることながら、これを気にかけておる家族や関係者の心労も察するに余りあるものがあるのであります。帰還者の話によりますると、中共の人たち船員に対しては比較的好意的であつたと聞いております。まさか一介の労働者である船員抑留することによりまして、彼らの遺家族が如何なる悲境に立つかは何人といえども察し得られるところであろう。中共の人にせよ、国府の人たちにせよ、一片の血と涙があるならば、速かに帰還させてくれることを信ずるのであります。又中共の人たちは、船は資本家のものであるから返さないと称しておるとのことでありますが、以西底曳の船主中二、三を除いては真の資本家とは称し得な……。いと思うのであります。戰後何人も多くの自己資金は持たず、多くは市中銀行から金を借り、又復金の融資をお願いして辛うじて船を造り、その経営に当つておるのが業者の大部分でありまして、その後打続く経営の不振によりまして、今は銀行に責め立てられておるというのが現実の姿であります。そうして船をとられるなら、営業の破滅を来たすのみか、多大の負債を背負い込んで一生路頭に迷わなければならないというのが現在のありさまであります、かかる業者を資本家と見るのは誤まりであり、かかる実相が先方に知られたならば、船も当然返して下さるだろうと想像されるのであります。ともあれ一日も早く人と船の返還を希つてやまないものであります。  第二は、拿捕防止に対する応急対策といたしまして、海上哨戒船を配置いたしまして、拿捕せんとする船を早期に見付けて、これを日本漁船に知らしめて遁走せしめるという方法をとつて頂きたいと思うのであります。これは飽くまでも当座の応急策でありまして、これを長期に亘つてやらしめてはなりません。いつまでも逃げ惑つてつては円満なる漁業の運営はできないのであります。  最後の問題でありますが、これは双方理解の下に安心して操業のでき得る恒久的な対策を作つてもらうことをお骨折り願いたいのであります。東支那海漁場とする日本漁業者は、あの資源を壟断しようとするものは一人もありません。関係各国と共にこれを利用し、資源の維持保護のために相携えて協力したいとは現下の日本漁業者の常識であります。かかる観念より関係各国と話合つて平和に解決することができないとは思わないのであります。又特に中共の人たち領海と公海の観念につきまして我々とは異なつた考えを持つておると言われております公海自由の原則よりいたしまして、無制限の領海をひとり主張されるはずはないと私は思うのであります。一九三○年へーグの国際法典編纂会議に領海問題が取上げられまして以来、多少の変遷はあれ、現にソヴイエト・ロシヤでさえ、十二マイルが主張されておると聞いております。それを中共がひとり無制限の領海を主張することは何ら根拠がないものであつて、むしろマッカーサーラインというものにいやがらせをやつておるのではないかとさえ想像されるのであります。この点においても何らかの一致点が見出されると存ずるのであります。要は関係各日が双方話合う機会を如何にして得られるか、又妥協点を如何にして見出すかにかかつておると思うのであります。もとよりこれは至難なる口とであろうとは思いまするが、これまでに至らなければ平和産業の円滑なる発展は期し得られないと思うのであります。  以上貴重なる時間を頂戴してお願いいたしたのでありますが、是非皆さんがたの十分なる御賢察を賜わり、とり得る適切なる御施策によつて、一日も早く安全なる操業のでき得られますよう、特段の御配慮をお願いいたしたい次第であります。
  17. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) これで参考人の御発言が終りました。これから委員1各位の人並びに参考人に対する質疑に移りますが、質疑の順序といたしまして、先ず証人山本徳男君に対する質疑から始めたいと思います。
  18. 千田正

    千田正君 山本証人にお伺いしますが、あなたが拿捕された当日、農林省の監視船若しくは海上保安庁の監視船或いは哨戒船ですか、そういう船に漕遇しましたかどうか、その点をお願いいたします。
  19. 山本徳男

    証人山本徳男君) そのときは来ておりません。
  20. 千田正

    千田正君 続いてお尋ねいたしますが、過去一カ年の間、あなたは何回この東支那海において、あなたがたの船が操業いたしましたか。
  21. 山本徳男

    証人山本徳男君) 自分は小学校を卒業して約十五、六年間、この支那の海で操業しております。
  22. 千田正

    千田正君 この一カ年の間何回操業しておりますか。
  23. 山本徳男

    証人山本徳男君) 一年の間に六航海であります。
  24. 千田正

    千田正君 過去六航海の間に農林省の監視船若しくは海上保安庁の哨戒船に護られ、或いは監視の下に操業したことがありますか。
  25. 山本徳男

    証人山本徳男君) ありません。
  26. 千田正

    千田正君 同一の質問を各証人に承わりたいのでありますが、只今山本証人だけということでありますので、あとから又ほかの証人に伺います。
  27. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 山本証人にお尋ねいたしますが、拿捕せられまして、上海において取調べを受けたということでありますが、その取調べに当つたものは先ほどのお話によりますと、海軍将校、陸軍の将校及び水産局長、並びに水産公司社長、こういうふうなお話でありましたが、その海軍将校或いは陸軍の階級はどの階級の人でありましたか。
  28. 山本徳男

    証人山本徳男君) 階級ははつきり自分はわかりませんが、大体海軍、陸軍は将校のようだつたと思います。中共に自分が聞いた範囲内では、中共のほうでは班長とか、中隊長、大隊長、連隊長のような階級であつて、ずつと差が余り多くて細かい階級がないようであります。そうして将校のように言つております。
  29. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 その官憲及び社長などの調べにつきまして、先ほどの証言では殆んど調べらしい調べがなかつたということでありますが、全くなかつたのであるか、或いはその内容について証人に対してどういうふうなことを聞いたか、なおその拿捕された位置について特に調べをせられたことがないか聞きたいのであります。
  30. 山本徳男

    証人山本徳男君) 拿捕された位置自分たちはつきりしておりましたので、それは中共の各取調べのときに全部話しましたが、その時分には自分たちは三百八区であつたことは、多年の経験によつて支那漁場は魚種又は水深、低質によつて或る程度のあれはわかると思うのであります。それに第五日邦丸漁撈長は、海軍に長年おつた結果、航海士であつて、その天測をよく知つておるものでありますから、今のところ天測を以て明らかになつておるので、自分たち位置マツカーサー・ライン内であるということはわかると思います。
  31. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 拿捕された船が自分の位置がよくわかつてつて、それを表明したことは当然であると思いますが、取調べに当つた中共の人たちがその位置についてそうではなかつた、お前のおつた位置はこの辺であつたというような話があつたでありましようか。
  32. 山本徳男

    証人山本徳男君) それは中共上海水産公司社長なんかは言つたことは言つたのでありますが、自分たちは飽くまでもそれを否定したのであります。そうしたところがマツカーサー・ラインは蒋介石とマツカーサーとによつて、取りきめたものであつて、現在の中共は何らそれに関係がないというような大きなことを言つてつたものですから、自分たちは余りにそれが大きいものでありますから、ライン内外においても、それを拿捕するというのでありますから、やむを得ないことで、私はそれによつて向うによつてきめられたと思うのであります。
  33. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 もう一、二点伺いたいのでありますが、あなたがたの操業しておる際、この間の拿捕の場合もでありますが、その以前においても中国の舶らしいものが附近において操業しておつたのをお認めになつたことがありますか、又今度捕まつて曳航されておる途中において、中国船操業しておるのに出会つたことがありますかどうか、その点を伺いたいと思います。
  34. 山本徳男

    証人山本徳男君) それは自分たち操業しておる範囲内では、自分たちの船以外には見受けなかつたのでありますが、又曳航せられておるときも見受けなかつたのです。
  35. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 最後にかような状態が曾つて九州の新聞にも出ておりまして、多数の中国の船が東支那海に出て来て日本操業船を脅かす、或いは追跡するとかいうようなことが見えておりましたが、その後かような大量の拿捕になつて悲しむべき事態が生じたのであります。これにつきまして、経営者は勿論でありますが、本当にその先端で仕事をしておる船員のかた、殊に船長は今後この操業を続けて行くために、如何なることを如何なる考えで行かなければならんか、どうしなければならんか、やめてしまえば問題はない、やめるわけには行かない。これを続ける上において、この危険な区域において仕事をして行く上においては、どうしなければならんとお考えになりますか。その点を伺いたい。
  36. 山本徳男

    証人山本徳男君) 自分の思うところでは、今までの多年の経験上、この東支那海漁場は、日本のほうにおいては水深が深いために余り魚がとれないのであります。そうして戦前当時から、この支那沿岸、朝鮮沿岸のほうに大部分の漁場があるのであります。それで魚をとるためにおいては、我々は魚をとらなければ生活はできないのでありますから、どうしてもそのラインぎりぎりのところまで接近して行かないと、思うような魚はとれないものですから、この漁場において自分たち操業する上においては相当安全なる処置をとつて頂きたいのであります。
  37. 松浦清一

    ○松浦清一君 山本証人にお伺いをいたします。只今いろいろと詳しい御証書があつたのですが、上海取調べを受けました際に、一番最初は上海水産公司社長に調べられて、その次は水産管理局長に調べられて、第三番目には海軍司令部将校に調べられた、こう御証言なさつたのですが、この上海水産公司それから水産局、それから海軍司令部、これらの関係についてお知りの点があればお答え願いたい。
  38. 山本徳男

    証人山本徳男君) 現在自分が考えて見て、中共に行つてから一室に監禁せられておつたもので、その何は連繋をとつておるのかどうか余りよくわかりませんが、上海水産公司国営水産公司になつておりますから、現在のところ海軍、陸軍、国営のようなものは全部連繋をとつているのではないかと思いますが、一様に自分たち拿捕せられた当時でも、陸軍のような服装をしておつたような者が警備兵として付いておる。次に呉淞に出た時分には海軍のほうにすぐ廻り、海軍からすぐに水産局、又水産公司と次々に移つて行くところを見ると、自分が思うには一様のものでないかと思うのであります。
  39. 松浦清一

    ○松浦清一君 具体的にこの三つの関係がおわかりにならないかと思いますが、取調べを受けておりまするその際の感じの上から言つて、この三つのうちのどれが中共政府の代表機関であるというようなふうにお感じになつたかお知りになりませんか。
  40. 山本徳男

    証人山本徳男君) 上海水産公司水産管理局も海軍も同じような質問であつたように思うのでありますが、そしてどれが果して一番船を與えたとか、或いは待遇したとかいうようなことはわからないわけです。
  41. 松浦清一

    ○松浦清一君 大体調べられましたそのたび、ことに、東支那海中国領海である、だからマッカーサーラインの外におろうが内におろうが、そのラインというものは国民政府、つまり蒋介石と国連との間にきめられたラインであるから、中央はこれに関知しない。内におろうが外におろうが、日本船であろうが或いは漁船であろうが全部拿捕すると、こう言つたということでありますが、国際法上における領海と言えば、沿岸三マイル、そのほかは公海と、こういうことになるのですが、調べられる際に当つて、この調べた人たちがそういうことを知つていたらしいか、知つていなかつたらしいかという感じをお聞きしたい。
  42. 山本徳男

    証人山本徳男君) 自分が感じたところでは、知るものは知るのではないかと思うのですが、又知らないものは全然知らないと思います。(笑声)水産局長は、これは自分たちが全部接収せられ拿捕せられたその当時、海図を広げて赤線を引いてあつたから、この線は何かと言つて尋ねるものもあれば、これはライン線であると言つたものもある。そうして自分たちは飽くまでもこのラインを侵さないということを言つたわけです。そう言つたら、ライン内外は現在の中共では中共の規格というものがある。そういうようなことを育つてから、大きな黄海とか、支那海とかは、我々のものであるというようなことが出たわけです。
  43. 松浦清一

    ○松浦清一君 そのほかで取調べを受けました際に、何か思想的な問題について、……。若し日本に帰つたならば、会社だとか或いは日本の官庁に対して、こういうふうに言えと、そういうふうに言われたことがあつたかなかつたか、若しあれば、それを具体的に詳述を願いたい。
  44. 山本徳男

    証人山本徳男君) それは自分たち四名が、大壽丸日邦丸、各副漁撈長を入れて四名が水産公司社長の会社で取調べられたときに、このラインを認めていないということを言つたわけです。それで自分は認めていないということを何かに現わして書いて下さいと言つたのです。日本に帰れば証拠になるようなものを書いて下さいと言つたのです。それ宅現在の中共の規格まで突つ込んだのでありますが、それは嚴として言わなかつたわけです。それで次の問題に移つたものですから、そのままになつたわけです。又海図もそのことを自分たちが帰れば、このことについていろいろ聞かれるからということを言つたのでありますが、それも口だけであつて書類とかそういうものは全然くれなかつたのです。但し帰れば各業者とか、官庁にはそのことを伝えてくれというようなことを言われたわけです。
  45. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 委員の質問が大分各証人に対して共通な点があるようでありますから、山本証人一人と言いましたけれども、あと三人の証人に対して同時に御質問願いたいと思います。
  46. 松浦清一

    ○松浦清君 私がお伺いしたのは、マツカーサー・ラインの問題でなしに、つまり思想的にどなたの証言であつたか、証言の中に、中共労働者の味方であるから、労働者のほうは大事にしてやる、船は資本家のものだから返さない、こういう話があつたという証言があつたのですが、その際に日本に帰れば官庁とか或いは会社に対してこういうふうに言え、こういうふうに言われたことがあるかないかをお伺いしたのです。これは山本君に限らないで、ほかのかたでもお聞きになつたかたがありましたら、御証言願いたいと思います。
  47. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 発言する場合には名前をおつしやつて下さい。今松浦委員の質問に対してどなたかお答えを。
  48. 谷澤馨

    証人谷澤馨君) それの具体的な、こうしろといつた具体的な行動については別に、言われませんでしたが、船は返してくれ、そうでないと自分たち帰つてから困るのだからと言つたのですが、船は資本家のものであるから、帰つた資本家と闘争せよというようなことも言われました。思想面に関しては、君たちが戸の支那海に来て荒浪を乗り越えてやつて行く、そういうまあ服装なんかみじめな服装をしているが、それもやはり政府が悪いのだから、君たち労働者中共労働者と比べてずつとレベルが落ちる、それもやはり政府の政策が悪いのだというようなことも言われました、よく思い出しませんが。
  49. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) よろしい。秋山君。
  50. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 田作さんにお尋ねいたしますが、先ほどの御陳述の中に東支那海というものは全然支那領海であるということを主張して、更に併しこれはいずれ国際問題にもなるだろうがというようなことを附加えて言われたように御陳述になりましたが、それは水産局長がそう言つたのでありますか。
  51. 田作義一

    証人田作義一君) はあ、そうであります。上海水産局長が申しておりました。又海軍処長も言いました。
  52. 千田正

    千田正君 先ほど私は山本証人に対しまして質問した要領であります。ほかの証人にお伺いいたしますが、あなたがたは過去一カ年この東支那海において出漁中、日本の海上保安庁の哨戒船、若しくは農林省の監視船に遭遇したことがあるかどうか。それから拿捕された当時において日本の官庁の船が現場近くにおつたかどうかという点であります。それが若しなかつたならばお答えしなくてもよろしいですが。もう一つ山本証人並びにほかの証人に伺いますが、あなたがたは恐らく無電を装置してあると思う。拿捕直前において、この直感した関係から無電を以てこれを発信したかどうか、その状況、この点を証言して頂きたい。
  53. 山本徳男

    証人山本徳男君) 自分たちラインの中で操作しておつた関係上、怪船が現われたものを漁場を変更しよるものと思つたわけです。それが余り速力が早いものですから怪しいと思つたわけです。それで船を寄せて網揚げにかかつたわけです。それで網を揚げかかつたのを五六隻の船が寄つて来て追つて来たものですから、切捨てて逃げたわけです。それで駄目だと思つたものですから本船局長が無電を打つた。そのとき現在においての位置は三百八区にある。その当時時間が一時頃であつたものですから長崎に無電を打つたようなことを記憶しております。そのときに自分が局長に命じたわけです。
  54. 千田正

    千田正君 ほかの証人は今の私の質問ですね。いわゆる過去一カ年の出漁中、日本政府の海上保安庁の監視船、若しくは農林省の監視船によつて保護され、若しくは監視されて出漁されたことがあるかどうか。あつたら手を挙げて下さい。
  55. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) どの証人でもよろしい。
  56. 千田正

    千田正君 誰もないものと認めます。よろしうございます。
  57. 團伊能

    ○團伊能君 これも各個の場合でございますが、四人の証人のかたに伺います。この拿捕に来た船のどこかにその国の旗が揚げてありましたか、或いは何らか船の舷側その他に国、或いはそれに類するものを現わす記号をお認めになりましたか、その点をお伺いいたします。
  58. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) どの証人でもよろしい。
  59. 山本徳男

    証人山本徳男君) その拿捕した中国の船には、自分たちに来たときには六隻が来たわけです。その六隻が四隻が縦隊になつて、そのあと二隻が左右三千メートルか、二千メートルくらい空いたところにこういう隊形を以て来たわけです。その一番先頭の船が接近せなかつたらわからないわけですが小さい旗を立てておつたわけです。それには赤に、大きな星に小さな星があつて、それに円形に、半径に四つ星がついておつたわけです。それも或る程度接近せないとわからないような旗であります。それから拿捕せられた時分には何ら信号なしに……、それはもうずつと立つておるものであると思います。
  60. 團伊能

    ○團伊能君 ほかの三君の場合をお伺いいたします。
  61. 谷澤馨

    証人谷澤馨君) 自分が拿捕されました船は、やはり山本証人が言いました真赤な布地に、右隅に大きな星、下に小さな星の四つある中共の旗を立てておりました。
  62. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ほかにありませんか、お答えは、田作証人はどうです。
  63. 田作義一

    証人田作義一君) 私たち拿捕された船はマストの下に赤い旗を吊つておりました。それから煙突にも中共の旗を立てておりました。
  64. 曾禰益

    ○曾祢益君 各証人に伺いたいのですが、中共側の取調の際にマツカーサー・ラインの内だ、外たということは余り大きな論争点でなくて、二つの主張がされているのじやないか。一つは公海であつてもやはり東支那海中国領海だという一つの主張、今一つの主張はマツカーサー・ラインは全然認めない、即ちこれは蒋介石政権と連合軍司令部との話合だから、中共はこれに拘束されない、この二つの主張は  必ずしも同じ主張じやないと思うのですが、いずれの主張を強く述べたか、人によつてつたのか、或いは両方の主張を述べておつたのか。この点が一つと、第一は先ほど山本証人証言の中にそれがあつたと思いますが、これはほかの、人から伺いますが、そういうものは、そういつたような主張をはつきり書面でくれ、後の証拠のために、こういうことをいずれの方も主張されて、而もそれを口頭では伝えろと言われたけれども、証拠の残るような正書面ではそういつたような主張は向うは書いてくれなかつた、かような事実であるか、その点をお伺いします。
  65. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) どの証人からでもよろしい。お答え願います。
  66. 谷澤馨

    証人谷澤馨君) お答えいたします。マ・ラインのことにつきましては、今お尋ねがありました。両方とも同じことをやはり同じように…かれました。又その証拠物件になるものを自分たち帰つても困るのだから是非くれと言つたときにも、そういうものはくれずに、口頭で向うが、行つてそういうことを、同業者並びに各官庁に伝えてくれということを言われました。
  67. 曾禰益

    ○曾祢益君 田作証人はどうですか。
  68. 田作義一

    証人田作義一君) 私の考えといたしましては、本船マツカーサー・ラインの中におつて拿捕せられたのでありますが、支那監視船はマツカーサーラインは絶対に認めないから拿捕したと言いましたけれども、中共といたしましては、その船さえおつたならばマツカーサー・ライン内におつても捕まえるから、その意味でマツカーサー・ラインは認めないといつたのじやないかとも想像されます。
  69. 曾禰益

    ○曾祢益君 私の質問は少しややこしいものがあつたのですが、つまり東支那海領海だからということですね。だから百の領海に来たのだから捕まえるというのか、公海に引いておるマツカーサー・ラインというものは、あれは自分を拘束する力がないのだ、蒋介石政権がやつたのだ、だから公海における漁業だけれども、マツカーサー・ラインにかかわらず捕まえるのだ、つまり日本中共との間はまだ戦争関係なんだから、公海でも捕まえるのだ、マツカーサー・ラインなんか認めない、公海でも捕まえる、そういう点に力点を置いて言つていたか、この点何か東支那海は全部領海だから、俺の領海に入つて来たから怪しからんというのか、公海においても全部捕まえるというのか、その点に関する手がかりを伺いたいわけなんです。
  70. 谷澤馨

    証人谷澤馨君) 向うが言いました領海について、中共領海ということについて自分たちもわからずに、その領海は五マイル、或いは十二マイルじやないかということで反撥したのであります。それについて向うは東支那海は全部新中国の領土である、だからそこに引いてあるあのマ・ラインというものは全然認めない、マ・ラインの中にあつても外にあつて自分たち監視船が見つけた以上はそれは不当であるから拿捕する、そういうことをはつきりいわれました。
  71. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると結局領海だからという、その中に引いたマツカーサー・ラインは認めない、こういうわけですか。
  72. 谷澤馨

    証人谷澤馨君) はい。
  73. 曾禰益

    ○曾祢益君 結構です。
  74. 團伊能

    ○團伊能君 先ほどのちよつと質問の連続でありますが、その船の記号の、或いは旗のことはわかりましたが、この、船は何に属していた船であるか、会社に属腐していた船と思われますか、或いは政府に属していたと思いますか。要するに私船であるか、公船であるか、その点を伺いたいと思います。
  75. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 誰か、山本証人
  76. 山本徳男

    証人山本徳男君) この監視船は、やはり国営上海水産公司が使用しておるものであつて、やはり軍のほうの命令があればそれに従うものではないかと思うのであります。或る程度その辺として持つておると思います。
  77. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ほかの証人どうです。
  78. 谷澤馨

    証人谷澤馨君) 自分を拿捕しに来たその米式巾着船船員は十名余り来つておりました。又中国の陸軍の服装をしておりました兵が二十名余りと、海軍服装をしていたものが二十名余り乗つておりまして漁具は全然持つておりません。だからまあ計画的に軍のほうから来たのではないかと思われます。
  79. 松浦清一

    ○松浦清一君 ちよつとくどいようですが、今の曾祢委員の領海、公海、それからマツカーサー・ラインの問題は非常に重要なポイントと思いますので、この点を一遍確認をしたいと思いますが、支那領海であるから日本船は全部拿捕するという向うの考え方とそれからマツカーサー・ラインというものは蒋政権と、国民政府と総司令部との間に契約をされたラインであるから、これは中共政府は認めない、とこういうところに重点があるのか。ちよつと判断つきかねるかも知れないが、調べられております間に受取つた感じはどのどの点にあつたか、お答え願いたい、そこが非常に大事なポイントなのです。
  80. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 先に谷澤証人は、領海であるから拿捕するということが非常に主たるものであるということを言われましたが、ほかの証人はどうですか。田作証人はどうですか。どうお感じになりましたか。領海であるから拿捕するというのが主だつたかということについての質問です。
  81. 田作義一

    証人田作義一君) 水産局長も、海軍処長も、東支那海に来た船は、日本漁船であろうと、監視船であろうと、支那領海であるから全部拿捕すると言われました。
  82. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 藤目証人はどうですか。
  83. 藤目幸春

    証人藤目幸春君) 向うは領海ということをはつきりわかつていないと思います。
  84. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 山本証人どうですか。
  85. 山本徳男

    証人山本徳男君) 谷澤証人言つたように、やはり領海を余り大きく見て、領土のように思つておるのではないかと思うのですが、黄海、東支那海は我々の領海であるということをはつきり言うたわけです。但しマッカーサーラインというものはマツカサーと蒋介石政府とがきめたものであつて、連合国ということは言わなかつたわけです。
  86. 松浦清一

    ○松浦清一君 それではこのように了解すればよろしいのでございますか。とにかく東支那海というものは支那の領土だという、領海つまり言い換えれば領土である、その領土に侵入して来たものは、監視船であろうと、漁船であろうと拿捕するのだということを言つて、そうして附加えて、マツカーサー・ラインというものは中共の関知しないラインであるから問題じやない、こう言つたと了解してよろしうございますか。何かそれに疑点がある証人がございましたらお答え願いたいのです。
  87. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) それでよろしうございますか証人のかたは。
  88. 山本徳男

    証人山本徳男君) はい。
  89. 松浦清一

    ○松浦清一君 それからもう一つの重要なポイントは、過去一年間に日本のどの監視船にも監視をされなかつた、護られなかつたと、こう証人は先の千田委員の質問に答えておられたのですが、これは間違いないと確認をしてよろしいのでございますか。
  90. 谷澤馨

    証人谷澤馨君) 自分は十二月の二十四日に初めて支那海に行つたのでありますが、東支那海においては日本監視船には全然いませんでした。その間済州島の下手においては監視船日の出丸だとか初鷹丸、そういう船に遭つております。
  91. 松浦清一

    ○松浦清一君 ほかの証人も結局護られなかつたということですね。
  92. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ほかの証人は。
  93. 山本徳男

    証人山本徳男君) 自分は昨年の六月から操業しておつたのでありますが、監視船とか、保安庁の警備船なんかは一向に見受けなくて操業しておつたわけです。
  94. 松浦清一

    ○松浦清一君 ほかのかたもそうなのでしようかね。
  95. 藤目幸春

    証人藤目幸春君) 私も山本証人と同一であります。
  96. 松浦清一

    ○松浦清一君 もう一つあります。それから帰るときに華魴第一号という五十トンばかりの木船に乗せられて帰つた、これはお前たちにやるのだ、帰つて会社にもどこにもやることはいらんとこう言つたというのですが、その船が今どうなつておるか参考のために承わつておきたい。
  97. 山本徳男

    証人山本徳男君) 第二華魴丸については、自分たちが帰れば忽ち失業になるのだからということを述べたわけです、中共において。なぜかというと船をたびたび返してくれといつたのですが返してくれなかつたわけですが、五十四名を日本のほうに帰らすには、中共としても船が欲しかつたのか、青島とか天津とか香港のほうに連絡をとつたこともあつたらしいのですが、その連絡がないから五隻のうちの一隻を持つてたちに早いとこ帰らす、船は資本家の船だからそれは接収するが、君たち労働者であるから日本のほうに帰す、但し帰すについては君たちの船をとつたのであるから、忽ち日本に帰れば失業するであろう、それで或る職に就くまで五十四名にこの船を與えるから、それによつて一助にせよということでもらつて来たわけです。それでこの船を五十四名にやるというわけですが、実際のところその五十四名が、国籍がない船でありますからどうしていいかわからない。それでいろいろ海上保安部のほうの世話になつたのですが、結局各自々々それぞれ職業に早く就かないと、その船にいつまでもついておつてもきりがないからそのまま責任者に委託したわけです。そうして責任者といつてもやはり失業者でありますから早いとこ職に就かなければならない。それで一応海員組合に任したわけでありますが、その後政府のほうでどうなさつた自分たちはつきりわからないのですが、それも自分たち早いところ措置をとつて頂きたいと思つております。(笑声)
  98. 千田正

    千田正君 只今国営上海水産公司から山本証人以下五十四名送つた写しが来ておりますが、この内容を読んで見るというと、この船は山本徳男等五十四人の所有にかかる、加藤軍政委員会水産管理局長はこの旨を附随して、この船を日本に帰るまで給水その他の方法を以て、この日本の漁民五十四人を帰す、そうして今後の生活の一助としてこれを贈るということを書いてありますが、この国営水産公司というものは、日本で例えていえばどういうような立場になつておるのかという点を聞きたいのであります。元来中華民国におけるところの、あの中国における水産公司という名前のついたものはいわゆる一つの会社である、株式会社を公司と称するのでありますが、この上に国営上海水産公司という名前がついておれば、我々の立場から考えて見た場合に、国営の水産株式会社であるというふうに私は考えておりますが、この点をどうあなたがたのほうで考えておるか、いわゆる会社であるのか、それともいわゆる政府の一つの行政を掌つておるところの、日本でいえば水産庁のようなものとあなたがたは考えておられるであろうか、そうしてあなたがお帰りになるときに、この一通の、船を贈るという証拠一つで帰つて来たのか、そのほかにいわゆる中共の海員局長若しくはその他の出国許可証を添付して帰されて来たのかどうか、その点を御証言願いたいと思います。
  99. 山本徳男

    証人山本徳男君) その国営上海水産公司は、自分が思つたところではやはり政府が、中共というものは働労者を單位にしておるものでありまして、その働労者に働かすために国がそれを支持して、これで働労者に働かしてくれるのではないかと思つております。一つの会社でなくしてその何によつて水産管理局のほうも海員のほうも部が入つておると感じたわけであります。
  100. 千田正

    千田正君 今の後から聞きました点、あれ一通だけを持つて帰つて来たのか、それともやはり中共政府のほかの出国証明というものが同時に添付されたものを同時に携行してあなた方が中国から帰つて来たのかという点であります。
  101. 山本徳男

    証人山本徳男君) それは十八日の夕食、送別会の会食のようなものを開いてくれたわけです。その席上その第一華魴丸に乗る責任者がなければ日本に帰れないというので、その席上で自分が推薦されてあの船をもらつて来たわけです、代表として、そのときに、華魴丸はあの一通の書類と、この船と五十四名の船員を無事日本まで帰す、その何によつて無事に日本まで帰れという指令だけで帰つて来たわけですが、途中で取調を受けると思つたし、又日本に帰ればいろいろ何かあると思つてその書類も要求したのですが、ただあの一通だけをもらつてつたわけです。何もそれ以外に要求してもくれなかつたわけです。
  102. 千田正

    千田正君 そうしますとあの一通はいわゆる国営水産公司が発行したところの書類でありますね。あれを拝見いたしますと、代経理王雲祥という人のサインがあつて、あなたがたにこの船を贈る、この船はあなたがたの所有であるというだけの証明書である。そうすればあなたがたを捕えた後においてこれを送還するという何らの出目証明その他の事由を付したところの中共政府の証明が何もなかつた、かように証言されるわけでありますね。
  103. 山本徳男

    証人山本徳男君) はい。
  104. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 大体証人に対する御質問は終りましたと思いますが、時間も過ぎましたので休憩いたします。午後は一時に再開いたしたいと思います。    午後零時十八分休憩    —————・—————    午後一時二十四分開会
  105. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 休憩前に引続き会議を開きます。只今政府委員といたしましては、外務政務次官、水産庁長官、十川生産部長、法務府から高辻法制意見第一局長、海上保安庁から渡辺警備課長が見えておりますが、今間も、なく農林大臣、保安庁長官あたりもお見えになりますので、先ず参考人に対して御質問がありましたらお願いいたします。
  106. 青山正一

    ○青山正一君 田中参考人と高橋参考人の御両人に政府委員に対する質問の前に御質問申上げたいと思います。  先ず第一点といたしまして、田中参考人に御質問申上げたいと思います。第一点は漁業者側のほうでは漁船保護のため、快速の哨戒船を配置してもらいたいと言つているようでありますが、海上保安庁の警備船の増強を希望するのか、それとも水産庁の監視船を増強せよという意味であるか、その点について承わりたいと思います。
  107. 田中道知

    参考人(田中道知君) 漁業者が哨戒艇をお願いいたしたいと序ずるのはいずれでも差支えないのであります。併しながら餅屋は餅屋で水産に理解があり、又今までやつておられたところの水産庁がこれを拡充強化してやつて頂くことが適当ではないかと考えます。
  108. 青山正一

    ○青山正一君 同じく田中さんにお願いします。それならばですね、水産庁の監視船拿捕防止に果して役立つておるか、その点について承わりたいと思います。
  109. 田中道知

    参考人(田中道知君) 朝鮮の近海において拿捕された事件のありました時には相当S・O・Sに答えて活動して頂いた事例があるやに伺つておりまするが、今回の中共万両の拿捕国民政府方面の拿捕につきましては、余りその方面の情報を得ておらないのであります。併し水産庁の現在の任務は取締が主なる任務であるようでありまして、保護というような面には職務外の範囲を以てやつて頂いておらないのでありますから、新たに哨戒という任務、或いは漁船保護という任務を授けて頂いてこれに当つて頂いたならば効果的であろうと考えます。
  110. 青山正一

    ○青山正一君 第三点といたしまして、マツカーサー・ラインを撤廃せば却つて拿捕の危険が増大する虞れはないか、又将来の見通しについて承わりたいと思います。
  111. 田中道知

    参考人(田中道知君) 我々はマッカーサーラインの撤廃を以前からお願いしておつたのでありまするが、現在マツカーサー・ライン内に操業いたしまする我々の区域は非常に狹くなつております。殆んどその面積におきましては三分の一強でありまするが、実稼動面積は殆んど五分の一ではないかと思うのであります。そこへ漁船が集中いたしまして操業いたし、又漁期によりましては特にその一小部分へ集中いたす関係から拿捕は極めて容易となるのであります。従いましてこれを撤廃いたしまするならば、広い区域に分散操業ができるという一つの利点があると思うのであります。  もう一つはいろいろ論議されておりまするマッカーサーラインの設定に対しての中共側の考えでありまするが、今までのあのラインを設定したために、あのラインの向う側は自分の領海であるがごとき錯覚を起しておるのではなかろうかと思うのであります。これを撤廃いたしまするならば、そういう方面も解決いたされて、拿捕の問題に対しては非常に緩和になるのではなかろうかと思つて我々はこの撤廃をお願いいたしておる次第でございます。
  112. 青山正一

    ○青山正一君 第四点、これは高橋さんと田中さんにお願いしたいと思いますが、拿捕された業者及び船員の救済について何か考えておるか、或いに送還された船員はどうしておるか、この点について承わりたいと思います。
  113. 高橋熊次郎

    参考人高橋熊次郎君) 拿捕の対象になりました船員は一部失業しております。これらの人は現在他に職を求めようと努めておりまするけれども、それを得られないでおるという現状でありまして、職業安定所、或いは船員保険法等の失業手当をもらつておる状態でありまして、中共政府労働者の味方であるというけれども、日本帰つて来ておつて失業の状態に突き落されておるという現実でございます。
  114. 田中道知

    参考人(田中道知君) 先ほども申上げましたが、我々もいろいろ如何にしてこれを救済するかを数回に亘つて論議いたしたのでありまするが、いろいろ今までの不況に喘いでおる弱い我々であるが故に、未だ業者を如何にして救うかといういわゆる救済の方法が見出せずに苦しんでおる実情であります。なお船員に対しましては、即死された人或いは胸部に貫通銃創を得て現に今病院で療養しておる人たちに対しては、何らかこれに慰安の途を講じたいと念願はしておりまするが、具体的なまだ案は持つておりません。
  115. 青山正一

    ○青山正一君 それならば、例えば業者側として政府に対する補償を要望しているようでありますが、その根拠というものはどういうものか、それを一つ御説明願いたいことと、もう一点は漁船保險はどうなつているか、現行制度の漁船保險では支障はないかどうか、この点について業者側として意見を田中さんからお願いしたいと思います。
  116. 田中道知

    参考人(田中道知君) 政府の補償を我々はお願いいたしたいと思つておるのでありまするが、政府の補償に対しましては、三つの根拠を考えておつたのであります。一つはすでに他の部分におきましては、マッカーサーラインは相当撤廃されるか、或いは拡大されたのでありまするが、我々以西底曳の漁場は未だ曾つてこれが拡張をされないのであります。これは先年拡張の気運にあつたのでありまするが、いろいろ中共との国際関係、いろいろな方面があるやに伺つて、それがために拡張にならず、漁業が不振の状態であるが故に、これを災害と心得まして、何とか災害的な取計らいによつて補償でもして頂きたい、こう考えるのが一点であります。次は最近頻発いたしまする拿捕問題につきましてかくのごとく拿捕が続出いたしますることは、むしろ台風に加うるに洪水が押寄せたごとくに感じますので、これ又災害として補償をお願いいたしたいと考えるのであります。  最後に我々は、船はいつかは国家と国家との関係において帰るか、或いはこれが賠償としてとられるか、いずれは解決がつくとは思いまするが、その間において我々業者は皆倒れてしまいますので、そういう方面のことも考慮して補償の途を講じて頂きたいと我々は念願しておる者でございます。
  117. 青山正一

    ○青山正一君 今後拿捕の防止が困難なる場合、如何なる影響があるか、これに対して業者側としての意見を申述べて頂きたい。  それからもう一つは漁場の安全を確保するために将来如何なる方法を希望するか、この問題についても申述べて頂きたいと思います。
  118. 田中道知

    参考人(田中道知君) その前に漁船保險はどうなつておるかということを先ほど申落しましたが、現在の漁船保險制度におきましては、拿捕の問題は適用されておらないのであります。若しこれが適用されまするならば、金融方面或いはこれが補償方面にも相当に役立つと思うのであります。現在におきましては最高五百万円を限度といたしまして、普通の災害のみが行われておる現状であります。これでは今の拿捕船については何らの効果がないと思うのでございます。  次に今後拿捕が防止できない場合には如何にするか、これは我々が会合のときに常に申上げておるのでありまするが、もうこれが連続いたしまする場合には繋船より止むなしと我々は覚悟しておる状態であります。併しこの繋船を行いまするときには、京阪神の魚介市場に半分以上も魚を送つておりますので相当の混乱が起るのではないか、これはよほど愼重に考えなければならないというので只今は実施しておりません。それだけでございますか。
  119. 青山正一

    ○青山正一君 それから漁場の安全を確保するためには将来如何なる方法を希望するか。
  120. 田中道知

    参考人(田中道知君) 将来安全を確保するためには私が先ほど申上げました恒久的な平和的措置、要するに相手国、関係国との話合が成立しない以上なかなか困難ではなかろうか、こう考えております。
  121. 青山正一

    ○青山正一君 高橋参考人に承わりたいと思いますが、海員組合の声明を見ますると、国際機関に報告したとありますが、その点を簡單にお聞きいたしたいと思います。
  122. 高橋熊次郎

    参考人高橋熊次郎君) 海員組合が参加しておりまするロンドンに本部を有する国際運輸労働組合連合、I・T・Fと一般には称されておりまするが、これに対しましてI・T・Fの漁船部会の専門委員を勤めておりまする私の名前を以て詳細なる報告を発送いたしました。更に私たちは全日本海員組合として考えておりますることは、世界労連と強く対立しておりまする国際自由労連に対しまして、その日本における加盟協議会にこの問題を諮りましてそこを通してこの問題を報告したいとかように考えておる次第であります。
  123. 青山正一

    ○青山正一君 最後に高橋さんに承わりたいと思いますが、拿捕事件の頻発のため、船員諸君が非常に動揺しておるということを聞いておるのでありますが、その点についてお話願いたいと思います。
  124. 高橋熊次郎

    参考人高橋熊次郎君) 正に動揺いたしております。併し動揺しておりまするが、他に職を求め得ないということと、この東支那海漁場は年間六千万貫の漁獲を得ておりまして、この漁獲物は六大都市に送られてそこの消費量の四割強を占めておるような重大なことがありますので、動揺しておりながらも依然として今日のところ出漁をあえてしておるような次第であります。それで本委員会に非常に船員が期待して、各地の船員大会、今日もたくさん来ておりまするが、どうか本委員会を契機として、徹底的なこの不法拿捕に対する保護が政府によつて樹立されることを希望しておるようなわけであります。
  125. 青山正一

    ○青山正一君 もう一点、本日この証人として喚問されていない、つまり中共側にとられたあとに、更に中国側に四隻なり五隻なりとられた、そういつた或いは証人として喚問されていない拿捕漁船について簡單な説明を同参考人から求めたいと思います。例えば大陳島に抑留されておるというこの四隻についてはこれは本日喚問されておりませんが、本日喚問された以後に起きた現象でありますが、そういつた問題についてその後の経過或いは模様をお聞かせ願いたいと思います。
  126. 田中道知

    参考人(田中道知君) 大陳島に抑留されました和美丸、第七十五報国丸、そうして第三雲仙丸・第十八雲仙丸のその後の御報告を申上げます。これはいずれも先方から許されて無電で連絡ができております。「銃撃されたるも全員無事、」或いは「二十四日大陳島の海軍派遣像に転錨、目下碇泊中、海軍参謀と連絡の上、食糧飲料水積込みてあり、今日台湾海軍司令部に打電中、その指令を待つて行動する予定、」その他意訳いたしますると、大体において台湾の国民政府指令の指図を待つておるような状態であります。特に三日の電報によりますると、我々は極力返還方を交渉しておるが相当長引く見込である、どうか日本政府においても返還方を極力山交渉して頂きたいとこういうような電報が参つております。死亡いたしました者、怪我人以外は皆無事で、船も無事であるとこれで窺われるのでありまして、相当返還して頂くような予感がいたしまするので何とか御酌構を願いたいと思います。
  127. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) これから政府委員に説明をしてもらいますが、その前に團委員から過日下関に出張されましてこの事件調査をされた報告をいたしたいとの発言がありましたからこの際許します。
  128. 團伊能

    ○團伊能君 外務委員会といたしまして下関にこの拿捕事件につきまして調査に私が参つて参りました。二月二十八日にたちまして三月一日、一日を費しまして各方面とこの事件につきまして問合せをいたしました。殊に午後二時から漁業関係、山口県知事、下関市一長その他漁業組合、海員組合、底曳協会等の代表者五十名と懇談をいたしました。そのときに得ました報告を総合いたしましてここに御報告いたします。但しこの大部分におきまして只今四人の証人、及びお二人の参考人から伺つたことと重複いたしますのでその点は略さして頂きます。  私は、送還されましたかたで今日御出席の山木証人ともお日にかかりましたが、それ以外に会いましたのは第六十九明石丸甲板長小山君であります。これは拿捕されないで追跡せられましたが途中から脱走して帰つた甲板長であります。これは同じ拿捕された第六十八明石九と二艘で操業いたして、おりまするうちに、両側から国籍のわからない船にはさまれまして、その船の形は米式巾着船でありました。何だか少しもわけがわからないうちに両方から追られてその行動が非常にあやしいので遁走しました。丁度三百七農林省の海区あの辺で操業したのであります。時間が四時五十分頃でありました。大方夕方か近くなつて来てこれならば逃げられるというので全速力で逃走しておりました。そのうちに両船がだんだん遠くなりまして、遂にこの拿捕されました六十八明石丸を見失つてしまつた。一艘で逃げておりますうちに一艘の船に追跡せられて或るときは二百メートル近い距離になりましたけれども、丁度夕刻暗くなりましたので闇に隠れて遂に脱走し得たのであります。そのときの模様を聞きました、これは拿捕せられたのでございませんから、ただ船に追跡されてその方向を変えながら逃げた状態を詳しく詳細に聞きました。それによりましても襲撃いたされいろんな非常な不安の中にこの危地を脱したことが、ございましたが、その調書は後に報告に附加えたいと存じます。  なお只今まで御説明を頂きました中で一つ御報告いたしたいことは、今日の以西底曳漁場でありますが、これは大体漁場支那海における海域の約三分の一くらいに当りますけれども、琉球近海は非常に深海でありまして、底曳漁業は非常に不可能でありまして、むしろ西によるほど優良な漁場に触れますので、その操業マツカーサー・ラインの一番西の端、農林省海区の三百七、八の辺から五百十一辺の線で今日集団的に操業いたしております。これは皆この線に沿いますことはこの辺が一番優秀な漁場に近いためであります。そこで集団的に船はそこに来れば必ず日本の船が集つているということが一つのこの海域、この漁業状態でございますことは先ほど田中さんも御説明になつたようなわけであります。  次にこのマッカーサーラインのことでございますが、今日本漁船操業者はこのラインは一つこの中で操業していれば保護せられるものであり、又許可されている所でございますが、同時に安全であるという非常な安心感を持つてこの辺に操業いたしておりまして、従来拿捕されたものの中にこのたびの中共関係でなく韓国或いは台湾に関しまして、いささか漁場を出たというような測定をいたしたものもありますので、そのマッカーサーラインの外に出ては非常に危険でありますけれども、内ならば絶対に安全であるという考えをもつて操業いたしておりまし、た。先ほど証人からもお話もありましたように、怪船が現われましたときにこれが拿捕の目的とは考えなかつたようなことがございます。  次にこのマツカーサー・ラインにつきましては、更に西の方、マツカーサー・ラインより遥かに西に出まして日本監視船が行ける地域が設定されております。  この海域はマツカーサー・ラインよりも外におりました。ずつと広く西に拡がつておりますが、この西に監視船のある水域その内にマツカーサー・ラインがありますのでますます安全だと思つていたのでありますが、図らずもこういう事件が頻発して今日は非常な恐怖に置かれておる次第でございます。  次にこの先ほど海員のことでございますが、海員は殆んど皆失業いたしております。その上に最も悲惨なのはこの家族でありまして、拿捕された家族が将来帰つて来るか、その拿捕されました船員の将来の処置が全く不明でございますために、家族は非常に不安と焦慮に打たれておりました。今日併しながらこれに対する補償の方法もございませんので、要するに近隣からの補助を受けておるというような状態でございましてこれが下関その他漁場におきまして相当大きな不安を一般的に投げかけておる問題の一つと考えられます。  次にこれに対する拿捕状態は先ほど証人からおのおの説明がありましたような状態でございますが、この防衛に対する考えを各種関係者から聞きましたところでは、この業者の考えは極めて平和的でございますが、同時にまあ今日このことが非常に荒立ちますときに一般的操業がなかなか困難になる傾向があるので、成るべく穏便にというような考えが業者といたし、又船員といたし、その主流となつております。併し勿論これの永久的な解決があることも切望いたしておりますが、先ず永久的な解決は相当時がたつものと考えて、一応今日の保護の、今日の対策を我々に説明せられたところを申しますと、このマツカーサー・ラインよりも西にある、監視船の行ける水域に監帆船をなるべくたくさん出して頂いて、この監視船にできるならば電波探知機、発火信号その他の適当なる通報設備を置いて頂いて、怪しい船が来たという時は漁船に向つて一斉に一つの信号をして頂く、その信号を聞いて漁船は一散に束のほうに引揚げるというような、極めて消極的なお考えでありまして、今日監視船は九艘でございますか、七艘でございましたか、それに最近四月までに更に四艘附加わるということに非常な希望を持つていられましたが、この監視船それ自身も決して大きな船ではなく、速力も制限いたされておりますので、これがどれだけの効力を発揮するか疑問でございます、か、一、応監視船も殖える、又監視船に一つの施設をして通報して頂くということを以て止むを得ざる一つの対策と考えられているようでございます。  なおこの問題につきまして共通的に我々が聞きましたところは、このたびの中共による拿捕は特に重大視し、特に恐れておりますのは、従来の拿捕した相手国が韓国或いは中央政府であり、ましたために、何らかそこに話が付くという希望的な観測もあり、又事実マッカーサー司令官の注意によりまして、韓国から拿捕された船も帰つて参りましたが、このたびの相手国に関してはその方法が立ちませんために、これは一層大きな衝撃を與えておりますわけであります。又これらの各方面から聞きましたところでは、殆んど一様にマツカーサー・ラインというものを認めない、マツカーサーマツカーサー・ラインを出たか出ないかという、マツカーサー・ライン侵犯の問題ではなく、根本的にマツカーサー・ラインというものを認めない行為である、それならばマツカーサー・ラインのうちのどこにあつてもこの被害を逃れることができないというところに非常な大きな不安が存在いたしておりました。  なお先ほど申しました船員拿捕と同時に、漁船に関する保険のことも先ほど寸話がちよつとありましたが、これにつきましては漁船保険組合の特殊保險というものがございまして、さつきのお話の最高五百万円を限りまして百円につき一月八銭五厘の保険金を支拂つておりますが、特に拿捕については除外するとなつておりまして、一切拿捕に付ける保険は保証されておりませんために、拿捕された船には何らの今日賠償の途がないということになつております。そのためにここで最後の結論といたしまして陳情されましたものは、第一に拿捕されている船員を帰してもらいたい、これは理窟を抜きにいたしまして、又今日国際法上の地位はどうあろうとも、とにかくも拿捕されている我が同胞を一日も早く帰して参もらいたいという要求が最も強い第一の要求でございました。  その次はこの拿捕されました船に対する賠償の問題でありまして、船を失つた場合百にこれも方法は政府その他におかれてお考えになつて頂くとして、一事実上これでは船を操作することはできない状態になりますので、何らかの、形におきまして賠償をして頂きたい。この底曳漁業は決して大会社ばかりでは、ございませんで、極めて自己資本の小さい漁業会社その他によつてできておりますので、拿捕されましたときに、もはやその企業は全く中止しなければならないというのが非常に多いように見受けました。  次にこれにつきまして若しも拿捕した中共政府なりその他からの賠償が取れればよいけれども、若しもそうでないときは国内的に何かこの拿捕に対する特別な補償の道を講じて頂きたいということでございます。  なお最後には従来の農林省の監視船は、甲に日本漁船マツカーサー・ラインを越境したり或いは産物を擾乱、したりする特別の行為に付ける監視でございましたが、これをやはり国籍不明の外国船に対する保護の意味を監視船にも持たして頂いて、そうして何らかの通報機関等によりましてこの危険の発生を未然に防止するという方法を講じて頂きたいということが大体陳情の主眼でございました。  簡単でございますが御報告をいたします。
  129. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今大久保海上保安庁長官、家坂水産庁長官、草葉外務政務次官、外務省の出入国管理庁の鈴木長官、法務府の高辻法制意見第一局長がお見えになつております。御質問がありましたらお願いいたします。
  130. 千田正

    千田正君 午前中の証人証言によりますというと、過去一カ年間相当の拿捕船舶があつたのでありますが、過去一カ年の出漁中において農林省の監視船にも遭遇しておらなかつた、海上保安庁の哨戒船にも遭遇しておらなかつた。こういう証言がありましたが、恐らくこの拿捕問題が前から起きておりますので、このマツカサー・ラインという問題は相当漁業の問題のみならず日本の立場から言えば、非常に大きな問題として考えなければならないのにもかかわらず、政府の行政機関がこの点に注意を怠つてつたのではないかというふうに考えられる節があるのであります。  そこであえて私はこの点を質問したいのは、海上保安庁の責務というものはどこに重点を置いておられるのかという点と、勿論日本の現在においては海上保安庁の哨戒の立場にある船舶その他が不足だろうということも想像できるのですが、頻発するこういう問題に対して海上保安庁は如何なる防衛の或いはその保護の立場に置かれてあるか、どうしなければならないかという点についてあえて海上保安庁長官にお伺いいたします。それで過去においてしばしばこういう問題が起きておるから、恐らくその報告はすでに海上保安庁の本部には届いておると思いますが、この点につきまして如何なる善処をなされておられますか、この点。将来起るであろうといういろいろな問題を私は想像することができるのであります。なぜかなれば、先ほど証人証言によりまするというと、中共上海において連行された後において、中共の代表者から、このマツカーサー・ラインなるものは曾つての蒋介石とマツカーサー元帥との間に結ばれたところのいわゆるラインであつて中共の現在の政権は何ら関知するところではない。東支那海は当然中共、いわゆる中国領海とみなすから、お前たちが来たならば直ちに拿捕するのだと、こういうことを言明しておる、この国際情勢の微妙なる今日において、被占領国国民としての我々としては重大なる関心を持つのであります。而も海上保安庁としましては、この問題は将来のいろいろな問題に微妙なる影響を及ぼす問題と思うのでありますので、今後こうした問題が起きた場合には如何なる処置をとられる御所存であるか、この点を伺つておきたいのであります。  家坂水産庁長官にお伺いしたいのは、しばしばこういう問題が起きておる。勿論漁業の安全を期するために、水産庁としましては農林省の監視船を現場に派遣して、注意の足らざるところに十分注意を喚起して、そうして安全なる漁業をさすのは当然の責務と思うのでありまするが、にもかかわらず過去一カ年において、これだけの水域に一隻も見たことがない。相当これは重点的に考えても、こういう方面においてはこうした紛糾する状態が起きるものと予想される今日において、水産庁としては何らの手を打つておらなかつた。どういう理由の下においてこの、手を打つておらなかつたか、こういう点についてお伺いするのであります。更に附加えまして、今後はどういう処置をおとりになるつもりであるか、この点をお伺いしたいと思います。以上。
  131. 大久保武雄

    政府委員(大久保武雄君) 千田委員にお答えいたします。御質問の第一点は、漁船に対しまして海上保安庁が如何なる保護を現在とつておるかといろ御質問で測ると思います。この点に関しましては、海上保安庁の現在の巡視船の行動区域というものが関係方面から指示いたされておりまして、これは海上保安庁の根拠地を去ること百浬を越ゆべからずということに示達いたされておるわけであります。実はこの海上保安庁巡視船の哨戒区域は従来五十浬でありましたものを、我々の拡張申請によつて百浬まで現在拡まつているのであります。かような関係で、現在海上保安庁の巡視船はこの哨戒線内に原則としてとどまつていけなければならないことに相成つております。私どもかような関係からいたしまして、マツカーサー・ラインが接近しておりますところの対馬近海を除きましては、遺憾ながらマッカーサーラインまで哨戒する権限を付與されていないということを極めて残念に存ずる次第でございます。  次に第二の御質問は、事件が起りました際に如何なる善処をしているかという御質問だと存じておりますが、私どもは仮に哨戒権限が現地までないといたしましても、日本漁船が不法に拿捕せられるということにつきましては、これは黙視できないのでありまして、許される限り、あらゆる措置を講じて日本漁民並びに漁船の保護を図ることは当然の責任であると、かように考えておる次第であります。海上保安庁はこれには深い関心を持つております。私どもの出先機関も嚴重に示達をいたしまして、十分通信機関を持つておりますところは可能なる限り漁船の通信を傍受をいたしまして、通信を傍受いたしましたならば、直ちに日本政府関係機関に通知をいたしますことはもとより、関係方面の総司令部並びに米極東海軍司令部に通報いたしまして、その実力によつて保護して頂く、或いはその返還の交渉に当つて頂くということを従来とつてつた次第でありまして、私どもといたしましても、今後におきましても、あらゆる処置をとりまして、善良なる漁民や、漁船の保護を図りたいと考えておる次第であります。  最後に第三の御質問は、将来の対策如何という御質問でございましたが、海上保安庁といたしましては、許されるならば私どもの哨戒区域を可能なる限り拡張せられまして、私どもの十分なる責任が盡し得るということに相成りますれば、これは極めて私どもといたしましては、幸いであると存ずる次第でありまして、今後におきましてもこの点につきましては、関係方面と十分御折衝をいたしたいと考えておる次第でございます。又現在海上保安庁の巡視船の装備は極めて貧弱でございますが、こういう点につきましても保護の必要なる限度には将来強化せられるということにつきましても、適当なる懇請の方法をとらなくてはならんと考えておる次第であります。又海上保安庁の巡視船が極めて少数でございまして、日本の広い一万浬の沿岸線に僅か六十隻の巡視船が配置されている現状でございまして、これらの巡視船は昨年のマツカーサー書簡に記されました海上保安庁増強の書簡の趣旨もあり、できるだけ予算の許す限度におきまして拡張いたしまして、一日も早く十分なる船艇を擁しまして、漁船の保護に遺憾なきを期したいと、かように考えておる次第であります。
  132. 家坂孝平

    政府委員(家坂孝平君) 百取締船と一年の間会わなかつたというお話があつたのでありますが、実は取締船は大体漁船操業位置を確認することがこれまで政令によつて定められておるのでありまして、主として取締船の行動マツカーサー・ラインから外に、いわゆる監視船のみが航海できまする監視船の特別なる区域があるのでありまして、そこを始終航海しているのが事実の状態であるわけであります。或いはマツカーサー・ライン内に操業しておりまする船がしばしばこの監視船と会わなかつたというのは、或いは事実であるかも知らんと思いまするし、それが最も善良なる操業をやつておられる漁船の考え方、見方であると、私は考えるのであります。実はこの監視船は先ほど申上げましたマッカーサーライン以外の監視区域を始終航行しておりまして、ライン外の漁船を取締つておるというような姿で監視の計画を立てて、それを実施しておるのであります。  それから次に今後の処置につきましてお尋ねであつたのでありまするが、監視船といたしましては、現在主としてトロール船をこれに充てているのであります。それで去年の十月頃までは五隻で以西の底曳の監視に当つてつたのでありまするが、それ以後事業会社の非常な協力を得まして、予算面にはなかつたのでありまするが、三隻のトロール船を傭船いたしまして、これによつて合計八艘にいたしまして、取締をやつてつたのであります。又今後なお一艘を増強いたしまして、合計九隻にしましてやつて参りたいかように考えておるのであります。それで而も速力が非常に優秀でないために、この拿捕事件などにも非常な監視の目的、その他警戒の作業を満足にできなかつたというきらいがありまするので、将来できるだけこの九はいの監視船内容を高速のものに切替えて参りたい、かような計画を持つておるのであります。それからなお現在任務として政令で定められてありまするものは、取締、監視という仕事を主としておるのでありまするが、今後はたとえ力が十分でないにいたしましても、哨戒的な任務もでき得るようにそれぞれの手続を履んで見たい、かように考えておるのであります。これをやりまする場合には、勿論関係方面の了解を得まして、政令を新らたに出してこの哨戒の任務をつとめなければならない措置となるのではないかと、かように考えておるのであります。
  133. 千田正

    千田正君 只今両長官からの御答弁を承わりまするというと、実際現在のこのマツカーサー・ラインの中において操業しておる人たちはやや失望した感があると思うのです。何故かならば大久保海上保安庁長官の答えによりますというと、現在の哨戒区域は百浬以内である、ところが大体にしてこの問題の起きるのは遙かにその外である。現在においてはどうにも手の付けようがない、将来これをどうかして守りたいという御希望はよくわかりまするが、現実においてはどうにもならないということにしか到達しないようであります。それから水産庁長官のお答えによりまするというと、監視船は隻数を殖して何とかやつて行きたいという程度のことのようでありまするが、これでは現在先ほどから証人並びに参考人が切々として訴えておるところの安んじていわゆる漁業をやつて行けない、一日も早くこの手を打たなくてはならないという点でありまするが、この点につきまして、この百浬という海上保安庁の哨戒区域を拡大するという点につきまして、外務政務次官にお尋ねします。現在の立場において、現在の状況下において、只今海上保安庁の長官がおつしやられたように、このマツカーサー・ラインまで、海上保安庁の哨戒区域を拡大するだけの御自信があるかどうか、又外務当局として関係国と将来折衝交るところの御意思があるかどうか、この点を明確に御答弁をお願いしたいと思います。
  134. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは只今長官からも御答弁申げましたように、哨戒区域がだんだんと要請によつて拡張して参つたような現状であります。従つて今後におきましても、十分総司令部等に対しまして拡張等につきましての懇請をして行くことには決してやぶさかではないし、又当然そういう方法をとつて参らねばならないと存じております。
  135. 千田正

    千田正君 重ねてお尋ねします。  さてそこで問題の、更に私どもは将来に憂慮すべき点は、仮にマツカーサー・ラインまで日本の海上保安庁の哨戒船が、哨戒区域を拡張することが、関係諸国の了解の下に成立した場合において、海上保安庁としては万全を期してこの哨戒をなし得るかどうか。仮にここに不幸にして相手方がマツカーサー・ラインを認めない、中共側は厳然として言つているわけでありますが、こういうような向う側の一方的な言葉をかりて、向う側がどんどん勝手に行動を起した場合においてそこにいわゆる紛糾が将来起る虞れがある。それに対処する十分なる外交措置、或いは関係当局との間のはつきりした取結びができるかどうか、この点も重ねてお伺いします。これは海上保安庁長官と外務政務次官と両方にお尋ねいたします。
  136. 大久保武雄

    政府委員(大久保武雄君) 海上保安庁といたしましては、現在の状況でお答え申しますれば、先ほど申上げました百浬の欄内に制約いたされております。現在における万般の措置は連合軍の実力にお願いをいたすということより方法はないと、かように存じます。
  137. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはいろいろ証人からのお話もありましたように、現在必ずマッカーサーラインを忠実に守つておりましても、それによつてつて来た拿捕事件というふうに考えられる節も多いのでありまするから、従つてこのマッカーサーラインというものに対して、或いは証人の御答弁、御陳情のように全然認めないというようなことに、只今証言のように考えられますると、なかなか問題が複雑であると思います。従いまして、はつきりと将来この協議によつて近いうちにでき上るというようなことが或いは困難かとも存じまするが、併しこれは全力を盡して十分相談をしながら円満な方法を打立てて来るという外交的方策をとつて来なければならないと考えております。
  138. 千田正

    千田正君 そこで外務政務次官に重ねてお伺いしますが、現在我々の関知する限りにおきましては、幸いにとにかく日本と或いはアメリカ合衆国との間に早期講和が結ばれるかも知れない。そういう場合と、更に相手国であるところのこの不法拿捕に対するところの関係諸国に対しても、将来何かの方策がとられるかも知れない。併しながら今度の取りあえず行われるであろうところの講和に対しまして、條約の内容にこの問題を織込むという御意思があるかどうか。外務大臣がおられませんので、或いは政務次官は果して、この点まで御答弁願えるかどうかわかりませんが、今問題はかかつて非常な微妙な点にありますので、若しここにおいて外務当局としての考えておられる点を率直に御答弁願えれば、結構だと思います。
  139. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) お尋ねの講和の内容に盛るかどうかという問題でございますが、これは実は今回の、昨今いわゆる問題になつております拿捕事件は、講和の問題以前に十分話を進むべき性質のものであつて、講和の内容とはおのずから必ずしも、一致しないのではないかと考えるのであります。従いまして、私どもの希望といたしましては、成るべくそれ以前におきましてもかような不祥事件の頻繁に起ることを防止する方法をとつて行かねばならないと考えております。
  140. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今大蔵省の主計局長がおいでになりました。
  141. 青山正一

    ○青山正一君 千田委員と質問が或いは重複するかも知れませんが、一つ項目ごとにお答えを願いたいと思いますが、近来頻々として発生しておりますところの不法拿捕事件は、講和問題に対するいわゆる計画的な牽制策と見られないかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  142. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 中国側の考えておりますることは、現在まで調査を私どもいたしましたり、或いはその他陳情等を伺いましても、どういう考えであるかということは捕捉しがたいと思います。ただ先ほど来証人等のお話をよく承わつておりますと、船が欲しいから拿捕しておるというように強く受取れる面もありますので、御質問のような必ずしも趣旨じやないと存ぜられる点も多いと思います。
  143. 青山正一

    ○青山正一君 現在問題になつているところの以西底曳網漁業は、その対象国は中共であるからして、全面講和がない限り本件のごとき事態は一層深刻になりはしないかと思いまするが、それについての御意見を承わりたいと思います。
  144. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 現在のところ、アメリカ政府といたしましても再三宣言をいたしておりまする通り、全面講和を目標として努力をいたしておりまする次第でありまするから、私どもといたしましても、その全面講和の成立を望む次第でありまするが、併し全面講和ができない場合に一層このような事件が深刻になつて来るのではないか、全面講和ができないということを現在からはつきりと仮定することは困難ではないかというので、折角努力をしてもらつておるような状態であります。従つて又全面講和ができない場合におきましても、それが一解深刻になるということも、ここで私ども考えることは少し早計ではないかと衣ずるのであります。
  145. 青山正一

    ○青山正一君 講和問題の如何にかかわらず、本件に関する何らかの保障を確立する途がないものかどうか、その点について承わりたいと思います。
  146. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは只今千田委員の御質問にもありましたように、むしろ講和前におきましても、最近の頻々と起つております問題を何とか早く解決いたしたいという意味におきまして、只今外務省といたしましても、外務省の立場からその関係しておりまする方面に強く要請をしながら、殊に各省間とも連絡をして進んでおります次第でありまして、できるだけそういう方法で解決をいたしたいと努力をいたしております。
  147. 青山正一

    ○青山正一君 不法拿捕に対しまして、国家の自衛権発動によつて強力な措置がとられないものかどうか。それから第五点として、国家の自衛措置如何にかかわらず、個人として正当防衛が許されないかどうかという漁業者の荘見が非常に多いわけです。これについての見解を一つ。
  148. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 御承知のように、現在我が国の置かれております立場から考えまして、国の自衛権を発動して強力な措置をとるということは困難でもありまするし、又許されない点ではないかと存じております。且つ又個人の正当防衛としての立場からこれをなし得るかどうかという問題でございまするが、これはいずれにいたしましても、実際上の問題として実効的なる方法を考えますると、個人が正当防衛の方法をとりましてもなかなか問題の解決にはならないのではないか、もつと本質的な問題ではないかとこう考えられるのであります。
  149. 青山正一

    ○青山正一君 更に外務当局に承わりたいと思いますが、不法拿捕によりまして生ずる生命財産の損害に対する責任の所在、それから救済方法の法理的見解というものはどういうものか。第二点として、中共政府の参加なくして制定せられたマツカーサー・ラインを無視すると言明しているらしいが、この点に関する法理的見解というものはどういうものか、その二点について承わりたいと思います。
  150. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 第一点の御質問は一般的に考えまして、国際法上から、正当な理由がなくして公海におきまして外国船に不法行為をし、或いは臨検、拿捕等のことをなすということは、これは許されないことだと存じます。ただ戦争の場合等はこれは勿論別でございますが、日本はすでにそういう状態は終了いたしていると存じます。  第二点におきましては、中共マツカーサー・ラインを認めないというがどうかという御質問であつたと存じますが、これも国際法上の原則から申しまして、政権が、政府が変つたから前の政府が結んでおつた国際間の権利なり義務なりを新らしい政府が故なくこれを放棄するということはないことである。当然新らしい政府はこれを承認すべきものでするというのが国際的な原則だと考えます。
  151. 青山正一

    ○青山正一君 水産庁長官に承りますが、第一点は不法拿捕事件による損害の推定額並びにこれが賠償要求に関する措置を明示されたいのであります。  第二点は、現実に漁業者の負担に帰すべき厖大な金額は、これは国家的救済がなくては到底再起し得ないであろうと思われるのでありますが、これに対して何らかの対策が講じられているか。その二点についで承わりたい。
  152. 家坂孝平

    政府委員(家坂孝平君) 拿捕船の損害額のお尋ねでありまするが、大体拿捕せられておりまする機船底曳網一組の現在の新造価格といたしましては、大体トン二十五万円から三十万円くらいの現況でありまするので、一組といたしますると漁具その他も入れまして四千万円或いは五千万円くらいに上るのではないかと考えておるのであります。  それから損害に対しましての国家的補償でありまするが、これはなかなか現在の法令によりまして、直ぐこれを補償するということはむずかしいのじやないかと考えておりまするが、私どもといたしましてはこれを漁船保険の形におきまして、幾らかでも経済的の援助ができ得れば幸せだと考えまするので、いわゆる今までの保険の内容には拿捕という項目はないのでありまするが、この拿捕にも保険のできるように、いわゆる戦保の対象として取入れられるように法的の手続を履んで参るべく、目下いろいろ手続の内容を検討しておるような次第であります。
  153. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) もう一遍申上げますが、草葉政務次官のほかに法務府の高辻法制意見第一局長、出入国管理庁鈴木長官、大蔵省の河野主計局長もお見えになつております。
  154. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 只今水産庁長官の御答弁によりまして我々も意を強うするのでありますが、本来マツカーサー・ラインの制定は我が敗戦の結果といたしまして課せられた大きな柳でございます。併しながらこの支那東海公海は我が日本漁船が数十年来我々の生活の主となる糧を供給するために、幾多の犠牲と努力を拂いまして開拓した漁場でございまして、勿論日本領海でもなければ中国領海でもなく、いわゆる公海であるのでありまするが、敗戦の結果として我々はここに制約を受けまして、この限られた海域において敗戰後常々として事業を継続して参りました。然るにこの海域が近来頻々として侵されまして、極めて不安な状態に陷れられ、更に幾多の拿捕船を出しまして、今日なお五十四隻の未帰還の船があるのであります。そうしてこれに対して漁民は如何にして安全なる操業ができるか、非常な苦心を拂つております。我々国会に対しましてもしばしば善処の陳情がございます。今日朝来事情を承わりまして、皆様もその如何に無理な状態にあるかということも御承知と存じますが、この不法な行為に対してこれを守るということについて、海上保安庁並びに水産庁の監帆船、警邏船が只今御説明のように殆んど無力である、何らの施すべき途がないようでありまして、たとえ一隻、二隻の船を増したといたしまして、今日お聞きの、ごとく中共の連中が我々の領海であるあのマツカーサー・ラインを認めないといつたような気構えで今後も跳梁するにおきましては、たとえ監視船といえども日本の丸百腰の監視船は恐らく漁船と同じように逃げ廻るのではないか、さような状態において決して漁船はこの監視船或いは取締船を頼つて安心感はできないと思うのであります。かような状態に置かれておるということは漁民の罪ではないのでありまして、実に国家が何らかこれに保障を與えてやるという方法をとるよりほかに途はないのであります。この漁船操業を停止するということは単に漁業者の犠牲のみでなく、八千万同胞の食糧面に大きな欠陷を生ずることはすでに皆さん御承知の通りであります。さような意味におきまして、今後この以西海面における漁船の安全、或いは操業の不安を除きますために、只今水産庁長官は保險の方法を以て何とか補償をしたいという御意見でありまして、我々は誠に満腔の賛意を表するのであります。この拿捕に対する補償、保険の方法は余り例を見ないかと存じますが、又かくの、ごとき事例も曾つて例を見ないことであります。この異例の場合においてこの方法は是非とも断行して頂きたいと思うのであります。それで事態はすでに急迫しておりまして、又今日にも明日にもとの事態が発生せんとも限らないのでありますが、水産庁におきましては、只今お話の保險の方法というようなものがいつ頃これが具体化するお見込であるか、承わりたいのであります。
  155. 家坂孝平

    政府委員(家坂孝平君) 実はこの戦時的な保險につきましては、漁船災害補償法といたしまして、この中の一部に織り込んでいろいろ案を練つてつたのでありまするが、それでは次かなか時期が間に合わん虞れがあるという懸念もありまするので、取りあえずこの拿捕戰保の対象とするために、一つの單行法を出しまして、これで進んで参りたい、さように考えて今立案中でございまするが、これは御承知のように、関係方面の了解も勿論得なければなりませんし、そういう手続を履みまして、国会のほうに提出する段取りを考えておるのであります。時期といたしましては今のところ明言できませんが、とにかくできるだけ早い時期にやりたい、少くともこの国会の開会中に是非間に合せるようにとり運びたいと、目下鋭意努力をしておるような状態であります。
  156. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 本国会中に御提出になるといたしましても、会期も余り残すところはございませんので成るべく速かにおとり運びを願いたいと存じます。  大蔵省の主計局長にお尋ねを申上げます。只今水産庁長官よりこのたびの問題に関する保險制度の立案を承わつたのでありまするが、大蔵省当局といたしましての御見解を承わりたいと思います。
  157. 河野一之

    政府委員(河野一之君) たしか去年の暮から現在の漁船再保險制度に対しまして、特別保險の制度を開いておつたかと思うのであります。つまり一般のほうの船舶につきましては、たしか戰時保險の制度が開かれておりました。従つて漁船につきましても同様な制度を開く予定で現在の補正予算にも載つておりますし、明年度の予算にも一応そのような措置がとられておるわけであります。ただ保險料その他についていろいろ御議論がございましようし、そういう点につきましても十分実情を研究調査いたしまして、できるだけ御趣旨に副いたいと考えておる次第であります。
  158. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 只今御答弁になりました問題は私ども承知しております。今日問題になつております拿捕船に対する保險の問題、それも同じように承わつてよろしうございましようか。
  159. 河野一之

    政府委員(河野一之君) この制度をどういうふうにいたしまするか、現在の漁船再保險につきましては、確か百円当り月十銭乃至十二、三銭だと思いますが、これを抑留等の場合を入れますと相当高くなるということが考えられます。併しこれもおのおの地域によつて遣うことでありまして、現在の漁船船舶が全部加入せられるということになりますと、これは二十銭以下の保險料として済みましようし、又そうも行かないということになりますと、相当高くなることが考えられます。併しこの問題は戰時保険、つまり一般の船舶の戰時保險の保險料等の変更も取上げまして、できるだけ御趣旨に副う方向においてこの問題を研究して参りたいとこう考えておるのであります。
  160. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 外務次官にお尋ねをいたしたいと思います。今日まで拿捕された未帰還の船が五十四隻中共政府及び韓国政府支那東海公海の関係といたしましては残つておりますが、これらの拿捕船の返還方について、外務御当局としては如何なる手段をとつておられますか。又今後如何なる方法をおとりになるつもりであるか、その方法と過去におけるお取扱について承わりたい。
  161. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 不法拿捕によりまする未帰還の船乃至今後の問題、又現状等につきましては、外務省といたしましては総司令部関係方面に十分事情を訴えまして、好意ある助力を懇請いたして参つて来たのであります。その結果いろいろと現実に先ほどお話になりましたような結果を見たような次第でございます。今後におきましても十分関係方面の強い理解と援助を頂きまして、この問題の解決のために十分力を注いで参りたいと考えております。
  162. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 極めて抽象的なお答えでちよつと頭に入りかねるのでありますが、韓国におきましてはすでに十八隻の返還を受けておりまするが、中国関係におきましても最近の中共関係と、それから国民政府の、関係関係はおのずから違うのじやないかと存じます。これらの両面につきまして一様の状態ではないと考えますが、そのおのおのについてお見通しを承わりたい。
  163. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは現在最近外務省もいろいろ折衝の問題につきまして、従来より幾分広い範囲の話いができることになりましたのは御承知の通りでございまするが、併しこれは一定限られた範囲でございます。どうしても総司令部の助力を得て進んで参らねばならないと思つております。又韓国ミツシヨンなり、或いは国府等に対しましても、十分日本の立場を理解してくれられることと存じまして、外務省はこれらの関係司令部等を通じまして、将来一層懇請をいたして参りたいと存じます。
  164. 團伊能

    ○團伊能君 外務次官にお尋ねいたしたいと思います。マツカーサー・ラインが拡張せられましたのは、もともと領海三里に限られておりました日本の漁区におきましては、日本人を養う食糧が不十分なるが故に止むを得ざる必要なる食糧を確保するためにこのラインが拡げられたものと私承わつておりますが、そういたしますと、これは占領事務の中における日本国民の食糧を確保する一つの仕事に連関いたすと思います。そこで占領法規といたしまして、日本国民の治安というものは維持されるものと存じますが、その占領法規とはこの拡張せられましたマツカーサー・ラインの中の漁区における治安を保持するということは、その事務以外でありましようか。事務の中に入りますか。伺いたいと思います。
  165. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 只今の御質問のように、日本州民の食糧の充足なり、或いは正しい生活の活動のために不安を来たしまするような状態におきまするこの治安という点につきましては、当然関係方面も十分なる考えを以て進んでおられることであると深く確信いたします。
  166. 團伊能

    ○團伊能君 次に承わりますが、先ほど各證人のお話にあるように、このたび中共によつて拿捕されたる船は、もともと蒋介石とマツカーサー司令部と、の間におけるマツカーサー・ラインなるものを認めないといたしますと、当然これはマツカーサー・ラインの観念なしに公海において拿捕されたものと考えます。そうすると、公海におけるこういう不法拿捕の問題に関して、只今我々は占領治下にはございますが、併しながらこの明瞭なる不法行為につきまして、当然国際的に訴うべき筋のものと存じますが、或いは占領軍司令部を通すことが妥当とは存じますが、それを通しまして安保理事会なり或いは国際裁判なりに訴えるという方法があるもので、ございましようか。
  167. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはむしろ今の御質問のように、そういう状態においての不法拿捕と思われるのでありまするが、併し両国間におきまして、総司令部等を通じまして十分話合のできる方法をとつて頂くことが最も適当である、かように考えて今進んでおる次第でございます。
  168. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 中共による拿捕の場合の対外的折衝の相手方と、その方法の問題でありますが、マツカーサー・ラインを認めるという前提に立つても、又立たなくても国民政府相手にして折衝し得る法理的の理由は私は十分あると思います。つまりマツカーサー・ラインを認めるという前提のあることは勿論のこと、そうでない場合でも、中共側で言つておるような理由であれば勿論、アメリカ政府の立場からしますというと、中共の行為というものは明らかに中国国民の不法行為で、国民政府としてはこれを制止する国際法上の義務がある。従つて筋合としましては国民政府に対してこれを取締るということを要求する法理上の理由が十分にあると思うがこの辺についてどういうふうな御見解でありますか、お伺いいたします。
  169. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 御質問のように私どもも同様に考えております。マツカーサー・ラインを仮に認める認めんは第三の問題といたしましても、公海上におきまして、戰時中は別といたしまして、普通の場合において正当な理由がなしに、或いは臨検、拿捕するという行為は正しくない行為である。従つて内容が十分わからない点もありましようが、若しや私人がさような行為をいたしておりまする場合には、いわゆる海賊的な行為と考えられまするが、そういう場合、又その他の場合におきましても、当該政府は当然これを取締るべきものであるし、又その被害を受けました国は当然当該政府に対して強く要求すべき立場にあると思います。
  170. 青山正一

    ○青山正一君 吉田首相よりダレス特使宛に書簡を出した、その書簡の中に、日本政府は、日本への主権の回復ののちできる限り速やかに他の国々と日本とは、このような他の国々の国民が接近できる漁場の発展と保存のため公正な取り決めを作成する目的を以て、交渉も行う用意があります。こういうふうな文章があるわけであります。でこの字句はダレス氏宛、つまりアメリカのみを対象としている言葉か、それともアメリカ以外の他の諸国をも含むかどうか、この点を一つ時に研究して頂きたいと思うのです。文章にはこうはつきり出ているが、これについての政府当局の見解を求めたいのであります。アメリカ以外の諸国に安心のできる方法、つまり朝鮮或いは中共に誠意を以て、例えば日本政府中共なり韓国に対してできる限り誠意を以て結ぶ用意がある、そのために試案をも考えておる、こういうふうな声明をダレス氏に発するよりも、中共なり或いは韓国日本政府として出したほうがいいじやないかと思いますが、その点に対する見解を御説明願いたいと思います。
  171. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは書簡の中にも大体こまごまと謳われておるのでありまするが、御承知のように東部太平洋、或いはべーリング海等におきまする水域の鮭なり、或いはハリバツトなり、その他の従来からかれこれ心配されておりまするような問題に対しましてのことが中心になつておるのでありまするが、その他の問題につきましては、まあ国際漁業といたしましては、現在国会に提案いたしておりまする漁区等の問題は別といたしまして、さほど問題に相成つたこともないと承知をいたしております。従つて只今お話のありましたような地域というようなことは、別に特別に従来からかれこれと国際的漁業としての問題はなかつたのではないかと思います。
  172. 青山正一

    ○青山正一君 総司令部漁業課長が先般帰国の際におきましても、送別会の席しまして、ヘリントン氏がそこに集つておる人に対して、できるならばこの以西底曵に関する限りアメリカに対するような、今の書簡のような行き方で声明を発するならば、非常にうまく行くのじやないかというようなお言葉もあつたように漏れ聞いておるわけであります。私はこの解釈の考え方は、ただカナダとか、アメリカとかいうような意味合で総理大臣が出したのですかどうですが、若しそういうふうな意味合で出したダレス書簡ならば、これは返上したほうがいいのです。日本にプラスにはなつてません。この点をよく御研究願つて、これは返事はなかなかこれは重大問題でありますからして、十分に御研究願つて局長なり或いは次官あたりと、その他の事務次官あたりとよく御相談願つて、これは御返事願つたほうがいいじやないかと思います。
  173. 千田正

    千田正君 現実の問題としまして、今日の証人も、証言しておる通り、第一困つたのは帰つて来てから漁業ができない、こういう問題、この点につきましては、さつき海上保安庁の大久保長官からお話がありましたが、関係国と折衝してこの哨戒距離を拡大したいと、こういう御希望を述べられておりますが、これは是非速かにやつて頂きたいということと、ここに重ねて別の点からお伺いしたいのでありますが、これは海上保安庁でありません。法務庁関係も見えております。が、これは船舶のことでありますが先般この山本徳男君以下五十四名が拿捕されて帰つて来るとき、いわゆる上海水産公司の船一艘を提供された、これは中共政府側から提供されて、お前たち帰つてつても職がないだろうから、この船を処分して当分の生活の繋ぎにせよと言うて、証明書付でこの船をもらつて帰つて来たが、さてその処分ができないとすると、一体どこの所属になるのか。現実においては生活が困窮しておる、就業もできない、何とかその船が処分でもできれば或いは幾ばくかの金額のものが手に入つて、そうした不幸な人たちに潤うと思いますが、この船舶は一体どこでもらつて来たものか、山本徳男君以下五十四名の所有として如何なる方法によつてこれは処分できるものであるか、この点につきまして船舶関係におけるところのはつきりした所属帰趨の問題を解決できる、声明できる方がありましたならば、お答え願いたいと思います。
  174. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申上げます。只今のお話は実はここの席上初めて伺いましたものでございますので、余り研究の時間もないわけなのでございますが、今までの船舶の措置につきましては、どちらかの関係で御研究になつたこともあろうと思いますので、その方面と連絡をとりまして、法律的な結論を得るように努めたいと思つております。
  175. 千田正

    千田正君 外国から贈與を受けた船舶というものに対して、その所有権はやはり贈與を受けた者の所有権だと思いますが、そういう点において、その観点は如何でございますか。
  176. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) その贈與の国内法上の問題であるわけでございますが、要するにその贈與が国内法上の贈與でありますならば、勿論受けたかたがたの共有になろうことは確かであろうと思います。結局中共からもらつたという事実がどういう事実であるかということにかかるだろうと思います。この点についての何と言いますか、実際上の事実を少し確かめて、十分事実をはつきりさせました上で結論を出すことになるだろうと思います。
  177. 千田正

    千田正君 どうもその点甚だ不明瞭の感が深いのでありまするが、外国の例もあると思います。  それからもう一つは、中国側言い分は、お前たちの乗つて来た船は、操業しておる船は資本家の船であるから没収する。併し帰つて生活に困るだろうからというので一艘これを贈與した。一方的に考えると、もらつたように考えられるが、これが若しも没収された船舶に対するところの賠償というふうにも或る一面考えられる、その点の見解はどう考えられますか。
  178. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 結局今までのお話が出ました範囲内でお答えをするより仕方がないわけでございます。中共の係の人が言つておるところの意思上からは今まで伺つたところによりますと、その五十四名のかたがたにやるということのように伺つております。が、今お尋ねのようにそれを賠償であつたというふうに今直ちに結論付けるのはちよつと困難ではないかと思うのであります。何せ現在までのところでどちらかにその船舶があることであろうと思いますが、そういう方面のことをなお調べさせて頂いての上で、結論ということにして頂きたいと思います。
  179. 千田正

    千田正君 そこで現実に困つておるのは、そういうような操業して拿捕されて還つて来た人もさることながら、現在海域において仕事をしておるところのいわゆる漁民或いは漁業家が一番困つておるのであります。その現実の問題としましては、水産庁長官は先般漁業保險に対して何か方法を考えておるというようなふうに言うておられますが、大蔵省の主計局長にお伺いしたいのですが、おられますか。
  180. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 今帰られました。
  181. 千田正

    千田正君 私は伺いたいのは、これは飽くまでもいわゆる武器を持たない漁民が不法に拿捕された、そうして、実際においては生活に毎日脅やかされて操業ができない、こういう問題は非常に大きな問題でありまして、これをいわゆる戰時災害補償の意味において特別法を適用して、国家がそれの補償或いはそれに対するところの生活の保護を與えるという点について、私は大蔵当局に伺いたかつたのであります。おらんとすれば水産庁長官にお伺いをいたしますが、どういう一体このような問題をあなたがたが考えて法案の中に織込むか、最高の補償いわゆるウアウ・クレーム・アクト、戰時災害の補償というものを適用してこの保險の中の最高の保險を支拂うという意味の單行法を出される御意図であるかどうか、その点もう一回はつきりあなたの持つておられるところの点を御明示願いたいと思います。
  182. 家坂孝平

    政府委員(家坂孝平君) 漁船保險課長から大体の考え方を御説明いたすことにいたします。
  183. 伊藤茂

    ○説明員(伊藤茂君) 漁船の特殊保險、即ち戰争保險におきまして、現在先ほど長官からお話がありました通り拿捕が対象になつておりません。これを対象に入れられるように法令を改正いたしまして、料率を幾分上げるという線で今大蔵当局と交渉いたしました結果、大体こういうことになつております。今日特殊保險は百円に付き一カ月七銭の保險料でございますが、これを大略十五銭程度に引上げまして、到底それでは賄い得ないわけでありますが、今日これからの危險率はどの程度になるかわかりませんが、二十三年度及び二十四年度の状況で類推いたしますれば、百円について一カ月四十銭乃至五十銭というのが損害率であります。これを十五銭程度で食い止めまして、残りを国家補償でやつて行くという程度でございます。
  184. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 草葉政務次官にお伺いしたいのですが、先ほどからこの拿捕事件について領海区域を拡げろとか、その他いろいろなことが述べられておるが、そういうことをやつて行くと、これは結局問題は常に繰返され更に大きくなつて行くと見るよりほかはありません。不法拿捕と言うが、不法というのはマツカーサー・ラインをきめた側から言つて不法であつても、中華人民共和国の政府の側から言えば反対である。それだから拿捕しておるということになるわけですが、一番の不法は国際慣例からみても、五億の人民を、この政府を作つて以来二年立派に治めて来ておる。御存じあるかどうか、この二年間に中国の復興、建設というものはどんどん進んで来ている。これが国連に認められないとか何とかいうことで、問題は非常に困難になつて来ておる。今拿捕事件につきましても、先ほど青山君が申されたように、これは全面講和、四カ国の合意及び決定による講和が中心になれば、これはこの問題なんかは話合で幾らもきまることである。事は容易であります。政府がそういうところを一体努めているかというと、草葉君は全面講和については政府は努めている、それは口では駄目なんで、やつていることが軍事基地を作つたり、工場の軍事化をやつたり、更に再軍備の策をめぐらしておるようでは、これは努めているとは言えない。篤と草葉政府次官に、まあ総理大臣がいないから、あなた番頭でちよつと困るかも知れないけれども、親身になつて全面講和をやらんからこういうごたごた事件中国沿岸、朝鮮、ソ連領の間に起きて来るわけです。それで先ほども私午前中いなかつたけれども、拿捕された船長さんあたりの話によると、向うから日本の働いておる人たち生活を考えて心配して手当もして送り帰しておるというようなことで、事柄はもう片付くのは容易であります。そういう容易なことをせずに、今いろいろの領海を延ばすとか、監視船の武器化、抵抗力を増すとか、これはもう事柄は問題の限りでなしに紛争を更に激化させて行くという途であります。はつきりしております。そこで草葉政務次官に申上げたいのは、こういう紛争の責任は現政府にあるということ、挙げて現政府の責任である。それをあなたはどうお考えになる。総理大臣でなくてお困りかも知れないけれども、代理しておられるのだからお答え下さい。もう一つ伺いますが、先ずそれをお答え願いたい。
  185. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 只今細川君の御質問では、全面講和をやらんからこういう問題が起る、それは現政府の責任であるというような意味の御質問、それをどう思うかという意味の御質問であつたと拝承いたしたのでありますが、全面講和というのはまだこれからの問題でございます。私ども先にも申上げましたように、又先般ダレスさんが来ての話も同様でありまするが、全面講和ができることをこれは挙げて望んでおるのであります。従つて今の拿捕事件と講和の準備行動とは全然私は、先に青山委員からも御質問がありましたが、別なものである。全面講和ができるできんはこれからの問題、拿捕事件はすでに現実に行われておる問題と存じております。従いまして、この問題が起つたのも日本政府に責任があるということは、これは全然見当の違つた御所見じやないかと存じます。
  186. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 更にそれは全面講和の締結ということは、これから努力しなくちやならん問題で、而も当面の問題でありますが、そのことについてあなたとこれ以上議論しますまいが、青山君がさつき言われたように、單にアメリカとかカナダを相手にしているような態度で漁区の問題を考えておられるような様子だが、国民も困つておることである。中華人民共和国、とにかく五億の人民の政府なんだから、そこにも訴えるというようなところまで講和以前においてやつておけば、全面講和にも努力しておるということになります。これがないとことはますます問題を困難にさせておる。その点については青山君に十分お答えになつておられましたが、私は繰返してやはり現政府の責任だと申します。  それはそれとしておいて、今拿捕されたかたがたの誰かにお聞きしたいのですが、さつき團君のお話にも拿捕された船の持主というものはこまい持主だ、それから働いている人たちが向うへ行つてどうしておるか、関係者が心配しておるということでありまするが、向うで拿捕されたかたがたはどういうふうにして生活しておるか、そういうことを色眼鏡をかけずにありのままにお答え下さるというと、それを心配するもののためにはいいことだと思いますから、お答えを願いたいと思うのです。
  187. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 重ねての御質問で、漁場に関する吉田、ダレス書簡のことについてのお話でございましたが、これはこの書簡の中にもよくはりきりと申しておりますように、日本政府は、日本への完全な主権の回復の後、できる限り速かに他の国々と日本とは、このような他の国々の国民が接近できる漁場の発展と保存のため、公正な取決めを作成する目的を以て交渉を行う用意があります。従つてこの他の国々と将来十分そういうふうに進んで参るそれまでの間、日本政府は濫獲から保護するために国際的又国内的処置によつて、措置がすでにできておるすべての水域における現保存漁場で、且つ日本国民日本船が一九四○年に操業していなかつた漁場では自発的措置として日本の居住国民及び船舶漁業操業を禁止します。というのでありまして、十分日本漁業が国際的な條約を十分善処しながら参つて行くということはこの書簡でも御了解願えると思つております。
  188. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 私は草葉君からそういう説明を聞こうとは思わなかつた。もう片付いたと思つていましたが、そういう書簡のことを問題にしておるんじやないのです。中国沿岸でマツカーサー・ラインというものがある。そのことについて率直に中華人民共和国に日本の国の立場、それを理解させるために公にものを言つて欲しいということなんです。そういうことについて真剣に取組んで行くところに問題の解決がだんだんできる緒にもなるわけであります。これ以上私は草葉君を煩わしません。  委員長さつき拿捕された船員のかたがおいでになつておるんですから現状はどうか、見たところどうかということを御説明願いたいのであります。
  189. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 細川君の質問に対してお答えできますか。どなたでもよろしい。山本君。
  190. 山本徳男

    証人山本徳男君) 自分たち拿捕されて上海上陸してからの待遇は、一般労働者としては余り悪い感じはなかつたと思いますが、そのときの食事は、自分たちが受けたところでは海軍兵舎においては二食の食事でありました。それは量においては制限なかつた、幾らでも食べさせてくれたのですが、水産公司のほうへ移つてからは三回の食事を頂いたのでありますが、それも量においては制限なかつた。又労働のほうにおいても或る程度強制されなかつたわけです。だが現在の同胞が中共に行つているのはどうなつておるか、自分たちはこれは判断ができないと思います。
  191. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 いやあなたがた船員のことなんです。
  192. 山本徳男

    証人山本徳男君) 船員は皆同様な待遇を受けたわけです。又十雲仙丸自分たちより早く拿捕せられたものですから、丁度その当時寒かつたものですから、元日に中共の被服を與えられた。自分たちも或る程度期間が長くなれば被服を與えられるようなことになつたんですけれども、帰る期間が早かつたので、そのために被服は間に合わなかつたものと思います。
  193. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 山本君にお聞きしたいんですが、只今のお話で食べ物は與えられている、着るものについても與えられてもらつた。それから労働ということをおつしやいましたが、どういう労働か、又生活しているものにどれほど自由が與えられておつたのか、或いは與えられなかつたのか。
  194. 山本徳男

    証人山本徳男君) その労働というものは、働く上においては何ら要求しなかつたわけです。ただ一室に監禁されて、食事の時分には監視付きで食堂に連れて行かれたわけなんです。食事を終れば又一室に二名の兵隊監視せられて監禁されておつた。それから帰る四、五日前から学校だもんですから、ボール投げとか、そういうようなものを、或る程度運動せないと体に惡いからというので自分たちが要求しておつたら、それも受容れてくれた。働く上においては何ら働かさず、又教育というようなこともせずに私たちは帰つたわけです。
  195. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 それじや何ですね、拿捕された人の状態はそう心配するほどのものではない。拿捕されることの関係での束縛はあつても、こちらで心配するほどのことはないということは認めていいわけです。
  196. 山本徳男

    証人山本徳男君) それは自分たちが帰るときには、今後こういうようなことのないように各業者又各官庁に届出てくれというようなことがあつたものですから、自分たち以外に同胞のものが抑留生活をしているものがどういうふうな現状になつているか、想像が付かないと思います。そのために今後そういうようなことのないようにしてくれと懇々と我々に言われたものですから……。
  197. 松浦清一

    ○松浦清一君 只今までの各委員の質問並びに要請に対しまして、大久保海上保安庁長官は、東支那海における漁船の保護については根拠地から百海里と制限されている、それから巡視範囲を拡大されるように米極東海軍のほうに懇請をして遺憾のないような方法をとりたい。なお六十隻の巡視船を更に整備してできるだけのことをやりたい、こうおつしやつたわけであります。それから拿捕された船並びに船員の損害補償につきましては、水産庁の長官等から特殊な保險の方法によつてこれが補償のできるように努力中である、こういうふうにお答えになり、又草葉政務次官は、現在拿捕されておる船を返還、又船員を送還してもらうためにできるだけの努力をしておる。こういうふうなお話で、ございましたが、事態は非常に急迫をしておりますので、速かにおつしやつたことを実現をして頂きまするために、本委員会の総意に基いて政府にこれが促進方の要請をいたしたい。こう思うのですが、この動議を御採択願いたいと存じます。
  198. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今松浦君からお手許に配付いたしましたような動議が提出されました。
  199. 青山正一

    ○青山正一君 何とぞこの動議に委員各位も賛成して頂くように、私も満腔の賛意を表する次第であります。
  200. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 松浦君の動議に青山委員から賛成いたされました。先ず私が一応これを朗読いたします。   漁船拿捕事件に関する件  東支那海方面において最近我漁船が頻々と不法拿捕される事件が発生し、その様相が誠に憂慮にたへないものがあるのに鑑み、水産委員会並に外務委員会においては三月六日連合委員会を開会、中国拿捕連行された乗組員其他関係者の出頭を求めその真相調査した結果事態容易ならぬものが感ぜられるので政府に対し此際速やかに次の措置を講ずるよう要求する。  一、政府は連合軍総司令部に懇請し現在までに拿捕抑留されている漁船並びに乗組員を至急返還されるよう関係国に連絡交渉してもらうと共に将来再びかかる不祥事件の発生しない様万全の手配を求めること  二、政府は海上警備船を拡充強化し、充分なる保護手段を講ずること  三、政府に不法拿捕された漁船に対し財政負担によつて損害保障の途を講ずるよう措置すること  右通告する。  尚以上の措置に関し政府は速かに態度を決定し、その結果を出来るだけ早い機会に両委員会に報告することを要求する。      外務委員長 櫻内 辰郎      水産委員長 木下 辰雄   外務大臣   農林大臣   大蔵大臣   運輸大臣
  201. 細川嘉六

    ○細川嘉六君 只今この決議に対しては、私先ほど一言述べましたが、相手国だけは惡いことにして、こつち側のことが皆いいことにしてやることであつて、これは常識にも正義にもかなつておらないのである。私はこれに賛成するわけにいきません。これは困つておる人たちを何とか救済措置をやらなければならん、これは当り前のことです。それは十分盡さなければならん、併しながらこういう決議を我々はひとりよがりにやるということはこれは我我の権威をそこなうものであつて、問題の解決にならないと思うので、私はこれに反対します。
  202. 青山正一

    ○青山正一君 証人証言を求めた結果、その証人の言分がまともなりと解釈いたしまして、この案に賛成するものであります。
  203. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) この松浦君の動議のこの案を議題に供します。この決定事項を四大臣に提出することに賛成の諸君の挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  204. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 多数と認めます。この決定事項は両委員長の名を以て大臣に直ちに送付することに決定いたしました。  本日の連合委員会はこれを以て閉会いたします。    午後三時二十四分散会  出席者は左の通り。   水産委員    委員長     木下 辰雄君    理事            青山 正一君            千田  正君    委員            秋山俊一郎君            松浦 清一君            細川 嘉六君   外務委員    委員長     櫻内 辰郎君    理事            徳川 頼貞君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            伊達源一郎君            野田 俊作君   政府委員    (人事院事務総    局法制局事務代    理)    法務府法制意見    第一局長兼人事    院事務官    高辻 正巳君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省政務局長 島津 久大君    外務省條約局長 西村 熊雄君    出入団管理庁長    官       鈴木  一君    出入国管理庁第    一部長     田中 三男君    大蔵省主計局長 河野 一之君    水産庁長官   家坂 孝平君    海上保安庁長官 大久保武雄君    海上保安庁警備    救難部長    松野 清秀君   事務局側    常任委員会專門    員       岡  尊信君    常任委員会專門    員       林  達磨君    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   説明員    水産庁漁政部漁    船保險課長   伊藤  茂君   証人    第三日邦丸漁撈    長       山本 徳男君    第三大壽丸漁撈    長       谷澤  馨君    第五日邦丸船長 藤目 幸春君    第十雲仙丸甲板    長       田作 義一君   参考人    全日本海員組合   漁業常任委員長  高橋熊次郎君    日本遠洋底曳網    次業協会專務理    事       田中 道知君