○
委員長(
徳川宗敬君) それではこの際先般行いました視察の報告を申上げます。
旧臘十二月九日
各省庁長官に対して参議院
図書館運営
委員長から、行政司法各部門
支部図書館の運営について要望書を送付いたしましたが、今般その実情を
調査するため
委員会において視察を実施いたしました。視察は二月二十七日法務府、厚生省、農林省、労働省の四館について行われましたが、本
委員会においては、
委員長並びに岡田議員が参加し、
国会図書館側から
金森館長、酉水部長ほか係の者が参加して予定通り終了いたしました。ここにその視察の概要を報告いたします。
(一) 法務
図書館は明治四年司法省設置以来の沿革を有し、法制資料の収集について特色を有する
支部図書難中の白眉ともいうべき
図書館でありますが、法制資料の増大に伴
つて書庫閲覧室はようやく狭隘を告げ、その拡充が当面の一課題とな
つております。蒐書は内外の
法律資料に亘
つて相当広範囲に收集されておりますが、松山
館長の言によれば、外国
図書資料については未だ不足の点があるのでこれに力を注ぐと共に特に外国判例集の整備に
努力いたしたい旨
説明しておりました。
予算、
人員の不足については、各
支部図書館共通の悩みを持
つておるのでありますが、法務
図書館のごとき比較的大きな
支部図書館においては特に
予算措置は十分でないことを感じます。
人員については
図書館専任
職員六名兼任十名計十六名の
職員を有するのでありますが、利用者数が多いため
人員が不足して、多忙のために病気欠勤、退職等が多いとのことでありました。
一 利用者については本
図書館は熱心な利用者が多く去る二月十五日の降雪の際にも六名の
閲覧者があつたとのことであります。
(二)厚生省
図書館は大正十一年十一月内務省外局社会局設置と共に設けられた
図書室から始まつたのでありますが、火災による焼失等に会い
図書の収集等必ずしも満足すべき過程にあつたとは言いがたいものがあります。戦後においても社会情勢の影響から一時いわゆる教養
図書を多数購入して専門
図書館としての
機能を無視したかのごとき感がないでもなかつたとのことでありました。この事実から厚生省
図書館においては専門資料の整備が一課題とな
つているのであります。厚生省においては視察後大臣、
事務次官、総務課長等と懇談いたしたのでありますが、各局課における受贈
図書については各局課において保管をして、
支部図書館において把握し得ないものがあることが問題とされました。又国立第一病院の
図書室、芝の公衆衛生院の
図書館に優れたもののあることなどが話題と
なつたのであります。
(三) 午後は岡田議員公用のため
委員長一名で農林省並びに労働省
図書館を視察いたしました。農林省
図書館は昭和二十二年米国農務省
図書館長シヨー氏の農林省
図書館設置に関する勧告に基いて昭和一十二年六月先ず統計
調査部内に
図書課が設置され、昭和二十三年八月
支部図書館と
なつたものであります。農林省
図書館はシヨー氏勧告に副
つて発足いたしました。
設備その他は極めて貧弱であるが、その
施設の弱体、
職員の不足等の悪
條件を克服して農林省蔵書目録の刊行、
図書月報の発刊等、実際的活動においては
支部図書館中の出色ある存在とな
つております。本
図書館の当面の課題としては地下二階に放置されている不完全な
書庫の
改善の問題、全然欠けている
閲覧施設設置の問題があります。
六階にある
事務室と地下二階にある
書庫の間において連絡その他に不便のあることは当然でありまして農林省首脳部の理解の不足を痛切に感ぜしめるものがあります。
なお根本的な
施設の
改善は着工し始めた
総合庁舎の中に最初から
図書館施設を取入れることだと思います。この点については
委員各位のお許しを得て後ほど、
関係当局の
説明を聴取いたしたいと存じます。
農林省
図書館は他の各
支部図書館と同額の五十万円
予算の配賦を受けているのでありますが、このほかに統計
調査部より三百万円の補助を受けており各種刊行物の発刊はこれらの補助に負うところが多いのであります。
人員は現在課長以下専任兼任併せまして十五名でありますが、リフアレンス業務を充実させるためには更に多くの
人員を要するとの言でありました。
視察終了後安田
館長から、農地改革の際、農林省刊行の資料を昭和八年頃から大小洩らさず網羅的に收集していた
事務官の個人の所蔵
図書が、大いに役立つた例を挙げ、公的に
官庁資料を収集しなければならない
重要性を強調して感銘を与えました。
又ガリオア資金による寄贈
図書が本
図書館においては
相当に多いのでありますが、講和後これらが中止されないかどうかについて心配している旨の話がありました。
(四) 労働省
図書館は労働省の竹橋
庁舎内にあり、
書庫、
事務室、
閲覧室が小
規模ながら整
つておりまして、新しい
官庁図書館としては
図書館らしい形態を有する点に特色があります。労働
関係専門
図書の中には米国労働省発行資料四千艇を有し、一般公開をも行な
つているとのことでありました。
視察終了後ここでも
事務次官、統計
調査部長等と懇談を行いましたが、
図書館の利用価値が省内全般に必ずしも徹底していないことが話題に上りました。
予算について大蔵省
当局が理解のないこともさることながら、必要
図書の購入については未だ
努力の余地がありますので、
国立国会図書館長の格別の御
研究と御配慮をお願いいたしたいと存じます。
(五) 以上四
支部図書館は、それぞれ特色を有し又それぞれ種々の問題を含んでおり他の
支部図書館の有する運営上の諸問題も相似たものがあるのではないかと考えられるのであります。先般当
委員会の行いました
各省庁長官宛の要望書と関連して考察いたしますならば、第一の
図書館専管部課設置の問題については、
図書館専管部課を有する法務府、農林省が専管部課のない厚生省等に比較して運営上種々便宜のある点は明白であり、第二の
図書館施設の確保と
改善の問題は、いずれの
図書館においても共通の課題でありますが、法務府等のすでに独立の
施設を有する
図書館におきましても、
書庫等狭隘を告げているのであります。第三の
図書館職員の
地位については、
地位の向上もさることながら
人員の不足も考慮しなければならないと思われます。又
図書館資料の整備充実については、未だ専門
図書館として
調査機能に十分な寄与をなし得ない
図書館もあると思われます。更に考査奉仕業務の強化については、
人員の充実と密接な
関係があると思われるのであります。第四の
予算措置については、各
支部図書館とも現在は若干の館を除いて五十万円の均一配分を受けているのでありますが、今回の視察においても各館その実情を異にするのでありますから、その経費は各館の実情も
重要性を考量して、それぞれ別に査定することを要望すべきは当然であり、その点大蔵
当局の理解ある援助を望むこと切なるものがあります。これら要望書に述べられた事項は、各館においては実現の緒についたところもあり、未だ具体化しない館もあるわけでありますが
委員会としても更に各
支部図書館がこの要望事項の
趣旨を具体化して頂きたいことを重ねて
希望したいと思うのであります。
以上簡単でありますが、先般の視察の報告を終ります。
これで御報告を終りまして、懇談会に移りたいと存じます。
それではこれで
委員会は散会いたします。
午後二時十六分散会
出席者は左の通り。
委員長 徳川 宗敬君
理事
平沼彌太郎君
羽仁 五郎君
委員
岡田 信次君
徳川 頼貞君
有馬 英二君
国立国会図書館側
国立国会図書館
長
金森徳次郎君
説明員
建設省
管理局営
繕部長
大村巳代治君