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重盛壽治君 私もこの
法案に対しては反対をいたします。総括的に反対をいたしますけれ
ども、特に二、三の例をと
つて見ますならば、
只今千葉
委員からも明らかにせられたごとく、これが
労働基準法との権衡をとることを主眼としておるようでありますけれ
ども、
労働基準法は先ほど申上げましたように、これは
最低を打出して、
最低この
程度をやらなければならんという義務付けをされておるのでありまして、
従つて民間労務者はこれ以上の待遇を受けておるということが明確に言えるのであります。で、
基準法とは
法律の
建前が違
つておるということは、そういう意味から見ましても、ただこれを横睨みしておるというだけであ
つて、実際
基準法を上廻るものを作らなければ
基準法に定められた
最低額ということは言われないのでありまして、そういう意味合いから行きましても、この案が本当に
基準法と釣合いがとれておるものであるということは言い得ないと、私は
考えておるのであります。ところが、先ほど千葉
委員が申されました
通りに、
地方においては
団体交渉とか
労働協約というもので、この
最低は当然の
権利として獲得し、おおむね、これ以上の
権利を獲得しております。本来
官吏は卒先垂範するという
建前からい
つても、ただ任務だけが卒先垂範するのでなくして、給與の面においても、特に
災害補償のような面で国家自体がその基本を作り上げて、非常に劣悪なる
基準法の
最低額を十分上廻
つたものに打出すのが本来の使命ではないか。こういう見地に立
つて、先ず私はこの点を反対しなければならん。それからこの
法案が新
恩給制度の
制定を控えて、それまでの暫定
的措置であるということが、政府或いは
人事院のほうからも言われておりますけれ
ども、そうであるとするならば、実質的に余り
條件のよくなるものでもないこういう
制度を拙速に作り上げる必要はないのではないか。
制定がなくても結構に今の
制度で処理ができるのでありますし、特に重要な問題は、一旦こういう
法律を作
つてしまうと、まだ国会にかか
つて十分に審議し、十分に改正する余地があるにもかかわらず、わざわざ参考人まで呼んで、これらの参考人の
意見にも多分に……、殊更
予算と睨み合せをせずにも改正できる点は多々あるにもかかわらず、これらを殆んど抹殺しておるというやり方に対して、私は断乎反対をしなければならん。先ほ
ども申上げましたように、参考人の
意見の中には、警察官というようなものは、これは労働組合もなく、
団体交渉権もなくして、而も場合によ
つては兇賊逮捕に臨むに当
つて身を挺して向わなければならんという場合にもかかわらず、こういう問題が
災害補償に打ち出されていないということになれば、私は甚だ残念に
考えるものであります。
それから
公務災害補償については負傷、疾病が
公務上のものか否かという
認定の問題が一番重要なポイントであるにもかかわらず、これについての公正な権威あるところの
認定機関が、この
法律の中には明確に打ち出されておらん。これには当然労働組合のあるところは労働組合の
代表、例えば健康保険の労働側の理事を立ち会わせておるとかいうような、民主的な幅のある、本当に正しい
認定のできるような
法律をこしらえることが正しいのではないかという意味合いからも、私はこれは反対しなければならん。更に
公務上の疾病としての取扱のうち、最も大きな問題であるところの結核に関しましては、何度も私は申上げておりまするけれ
ども、これはこういう機会に日本の結核の撲滅を図るという高度な見地に立
つて、
法律の
制定を行わなければならんのではないか、従来結核は不治の病とされて、そうしてこれに対しては国民全体も恥辱を感じ、世界の中でも日本は結核病の最大保有者である、世界一を誇るものは結核病であるという情けない姿を、先ずこの日本から打破して行かなければならんのじやないか、そういうことのためにはこれはただ
人事院で、私は
人事院の人に聞いたのでありまするが、厚生省にも労働省にも相談なく、
人事院が作り上げたようでありまするけれ
ども、特に政府の
関係者に来て聞いて頂きたいというのはこの点でありまして、こういう問題は
人事院が
基準法の問題、或いは
地方労働者との問題の睨み合せだけで作り上げたということでなくして、この際結核病を如何にして撲滅するかという高度な見地に立
つて、厚生省、労働省とも十分連絡をとり、而もこのための
予算を必要とするならば、国家の
予算の埓内で、労働省のこの方面に使う
予算を削減するも結構である。厚生省は厖大な費用を多く持
つておられるはずである。こういう方面からの削減ということも結構である。殊更にGHQの許可を得なくても日本の政府の力の埓内において処置ができる。而も結核撲滅の方途が講ぜられるとするならば、そういう高度な見地からこの問題を進めて行かなければならない。そういう意味合いから言うならば、先ず若干は無理な点があ
つたと仮定しても、結核は当然これは公症である。公災に振向けられる性質のものであるということをはつきり打ち出すのが現在最も賢明な方法ではないか。そうしてこの
法案を充実せしめるゆえんではないかというように私は
考えております。蛇足になりまするけれ
ども、今日まで冬官庁で採用をする場合には学力試験をやりまするが、より重大なことはこの結核の試験が一番嚴重であります。そうして結核のある者は当然これを採用いたしておりません。
従つて若し採用して半年とか、或いは一年とかいうような短期間のうちに結核が発生したというような場合には若干考慮の余地はあるといたしましても、長年その省に、その局に五年、十年勤務して、家族も三人、五人に殖えたときに、過労から来るところの結核というものは、当然これは免れない現実でありまして、そうして、これこそ勿論
災害補償法の上で取上げて、国家
補償によ
つて処理して行くということが正しいのでありますが、この打出し方の埓内ではこういうことの、先ほどの
人事院の御
説明の埓内において若干進歩的な
説明がなされたというに過ぎない。この法文の中に結核に対してはかくあるべきだということを打出していない限りにおいては、これは断じて了承できないというのが、
一つの反対理由であります。それから最後に平均給與の計算の場合、ベース改訂等があ
つた場合には、その処置を講ずるということが言われておりまするけれ
ども、こういうものに対しましては、実際二年も三年もの間寢てお
つて、例えば今日のように非常に物価の変動の激しい時には二回、三回に
亘つて船脚べースの改訂が行われるということがある。ところがたまたまこういう場合には、多くは恩給が停止されておるのであります。その二年も三年も恩給が停止されたときの給與を、そのままにただべース改訂をいたしたということだけでは、非常に気の毒な
状態に相成るので、それらの期間におけるところの恩給が全部考慮せられなくてはならな、少くともそういうものを考慮して行くというところの精神が織込まれていないということが、非常に遺憾であると
考えておるのであります。特にこういう
人事院側で定めたことにな
つておるが、
補償金の金額を
決定する平均給與額というものは、先ほ
ども申しましたけれ
ども、重要な要素であるにもかかわらず、これを
法律の上でどういう方法によ
つて明らかに定めるかということが明確にされておらん。例えば何級にするとか、或いはどれだけの日数をやろうとかいうことは、極端な
考え方をするならば、
人事院の一方的な裁定、或いは恩惠的な
決定に待たざるを得ないような
状態が、この中に含まれておるのではないか。かような点が賛成しがたいのであります。
従つてかような重要な権限は、ただ
事務的に
公務員の
災害補償だけを
決定するということでなくして、国家将来の問題として極めて重要な問題であるにもかかわらず、官房長官初め本件に対しては
出席する必要がないというような、若し本当にそういう暴言を吐かれたといたしましたならば、私はこの問題に対して飽くまで
責任を追及しなければならんと
考えておるのであります。かような見地に立
つて、私は本案に対しては断固反対をいたすものであります。