○
政府委員(
菅野義丸君) お答申上げます。
戦傷病者或いは
遺家族の
かたがたに対しまして、何らかの救済と言いますか、
補償と言いますかをしなけりやならんということは、
政府も、つとに
考えておるのでありまして、目下いろいろの
方面におきまして
研究努力をいたしておるのでございますが、この点につきまして、
国会が特にこういう
立法をせられるまでに非常な御
関心を持
つて御
努力をなさ
つていることについては
敬意を表する
ところであります。併しながらこの
法案に対する
政府の率直の
意見を述べさせて頂きますならば、勿論これに対して賛否を申上げるわけではございませんが、ただ所感を申上げますと、一、二の点について多少
政府が消極的とならざるを得ないのでございます。先ず第一はスキヤツビンの問題でございますが、
戦傷病者或いは
遺家族の
人たちに対しては、ほかの
人たちと同様の
取扱いをしなけりやいけない、特にこういう
人たちに対しては特別な
取扱いをしてはいけないという
指令が出ております。それから現在それは守らなければならない
指令の
一つにな
つておる次第でありまして、勿論これは
先ほど委員長からも
お話がございましたように、これに対して
研究審議をするということについては何ら差支えのないことでございまするが、この案を拝見いたしますると、その結果を実現するように
内閣総理大臣及び
関係大臣に勧告する任務と権限を有するというふうなことにもな
つておりまするし、仮にこのスキヤツヒンがなくならない以上は、ここで如何に
研究審議し、その
成果を実現するように
内閣総理大臣に勧告せられましても、
政府といたしましては、これは如何ともいたしかたないような次第でございます。併しながらそういう点は暫らくおきまして、この
本案が、このもの自体がその
指令に反するかどうかという問題については、これは
司令部の解釈によるわけでございまして、この
法案が出されるということにつきましては、勿論その
指令に牴触しておらないという
見解でございまするので、そういう点につきましては、これ以上申上げる必要はないと思います。
その次は
社会問題でございますが、殊に再
軍備と関連いたしまして、
講和条約後再
軍備をする場合におきましては、或いはそれを計画する場合におきましては、過去の
戦争において非常な
犠牲をこうむつた者を先ず救済しなければ、再
軍備が円滑に行かないというような
考えが一部にございまして、これと非常な
人道主義に出たこの問題とをくつけまして、あらぬ疑いを
国際間の諸国に与えまして、いろいろ不必要な疑惑を受ける可能性がなきにしもあらずでございまして、こういう点から見まして、
政府は率直に
意見を述べることを許して頂けますならば、成るべくならば
講和会議後にいたしたい。こういうような本格的な
審議会を開いて、形式的にも実質的にも本格的に調査
研究審議すること自体を
講和会議後にしたほうがいいじやないかという
見解を持
つております。併しながら又一方リツジウエイ最高司令官の声明によりまして、この
指令そのものも或いは
講和会議前に変更される可能性がなきにしもあらずでございまして、そういう場合におきましては、勿論これは当然本格的に調査
審議し、むしろ
実施をするように心がけなければならないのでございまして、この点につきましては、
政府も決して異存はない
ところでございます。その他実行上に当りましては、いろいろな疑問がございますが、この
審議会は、飽くまで調査
審議して勧告するということが権限及び使命でございますので、それ以上は或いは杞憂になるかと思いますので申上げませんが、いずれにいたしましても、
政府の率直な
意見から申上げますと、以上申述べましたような
考えから、成るべくならば、この
法案によ
つて形式的にも実質的にも本格的な
審議調査をするのは、
指令の改ま
つたのち、或いは
講和会議後といたしまして、差当りは現在
政府及び
国会といろいろ連絡して
研究いたしておりまする実質的な
調査研究準備ということで以て御満足願えないだろうかと、こういうような
意見を持
つていることを申上げます。