運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-06-02 第10回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年六月二日(土曜日)    午前十一時十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○戦傷病者等対策審議会設置法案(千  田正君外三十一名発議)   —————————————
  2. 千田正

    委員長千田正君) 只今より委員会を開会いたします。  先般来、皆様の絶大なる御協力の下に御審議をお願いしておりましたところ戦傷病者等対策審議会設置法案が、昨日関係筋よりOKが参りましたので、厚生委員会各位と協議の上、皆様の御賛成を得まして、直ちに本日の本会議に提出することになつておりますので、すでに法案内容につきましては、皆様のお手許に差上げてありますので、十分御質疑なり、御検討願いたいと思います。
  3. 石川榮一

    石川榮一君 本案は終戦後国民こぞつてこの戦傷病者並びに遺家族に対する対策に対しまして、重大な関心を持つておりましたそのものをとつて、この審議会設置法案を御作成になりました委員長初め委員各位の御労苦に対しまして、私どもは深く敬意を表するものであります。  私は実は本特別委員会に、他の委員会との差障りがありましたので、出席をしようといたしましても遂にその機会を得ませんで、懈怠の罪非常に深きを恥ずるものであります。ただ一応申上げたいことは、OKが参つておりまするから、勿論心配はありませんが、今講和を前に控えております国際情勢はいろいろと微妙な関係もあるように推察されるのであります。そこでこの戦傷病者並びに遺家族に対する対策に関する審議は、一向それらの点には顧慮を要しないとは存じまするが、微妙な関係下にありました従来の関係等もありまするので、一応これを政府当局等意見を徴するとか、或いは委員長みずから政府首脳と御会談を願いまして、いやしくも本法案国際情勢下に立ちまして、何らか摩擦或いは影響等があるかないかも一応確めて頂く必要があるのではないか、もとより一日も早くこういう審議会ができ、立法的な措置が講ぜられることを私どもは期待するのには何人にも劣らないのでありますが、従来占領軍当局が、いろいろと戦傷病者並びに遺家族等に対する国家的な施策に対しまして、或る種の指示もあつたようでありますので、そういう点等も万全を期したいと考えまするが、従来委員長は、政府とこの問題に対して、この法案作成に対しまして御交渉或いは政府のこれに対する所見等を求めたことがありますかどうかを伺い、若しないといたしますれば、その必要をお感じになるかどうかを伺つて置きたいのであります。これは事国際関係の重大な岐路に立つております講和の問題も控えておりますので、ややもいたしますると刺戟を与えるということになりましても如何かと思いますので、そういう点が何ら政府のほうで差支えないということであれば、急いでこれは実現させたいと、かように考えておりまして、大変遅ればせで、この法案に対して審議を少しでも遅らせるきらいがある私の意見でありまするけれども、一応念を入れて御意見を伺いたいと、かように思いましてお尋ねする次第であります。
  4. 千田正

    委員長千田正君) 石川委員の御質問の点は御尤ものことと思います。本委員会としましても、この問題を重大視しまして、しばしば委員会を開会いたしまして、特に吉田総理に御質問申上げたのでありますけれども総理大臣は御承知の通り誠にお忙しいので、代りまして岡崎官房長官の御出席を願いまして、一応政府所信を質したわけであります。そのときの官房長官の御説は、国会において衆参両院とも戦争犠牲者に対するところ対策を速かに政府は行うべきであるという、あの決議につきましては、十分その趣旨を尊重する、併しながら講和の近きを前にして、これを特に取上げてやるということについては相当我々も考えなければならないということは、只今石川委員のおつしやる通り、各国に対する影響が、若しも不利なような工合になつてはいけないという危惧もあるので慎重に考えたいというお答えでありました。一方遺族或いは傷痍軍人のほうからは、一日も速かにこれを立法化してもらいたいと、こういうのでありましたが、当委員会としては、あらゆる観点からこれを検討した結果、法律を立案して、そうして直ちにその国家補償をやるというようなことは、未だに準備が整つておらない、直ちにそれを実施するには予算も伴わなければならない、それよりも先ず一応政府内閣で特にこの問題を重視しまして、研究調査機関を設け、且つ又政府立法するにしても、国会立法しますにしても、直ちに対処し得るような機関を設置するほろが、只今情勢下においては妥当であるという結論を委員会が得ましたので、一応この戦傷病者対策審議会設置法案なるものが委員の御要望によつて一応できたわけでございます。更にこの案を携えまして、岡崎官房長官折衝したのでありますが、そのときの官房長官気持から言えば、議院関係かたがたがこの点を真剣に考えておられるということは結構であります。ただ政府としてはまだこのメモランダム或いはスキヤツピンと、こういう点に対しては或いは抵触するんではないかという危惧の念がある、政府といたしましても、これは十分研究したい、又委員会として関係筋を質されて妥当と認められた場合においては、これは止むを得ませんが、政府としては慎重に考えたいという意向を申されておつたのであります。そこで然らば政府としては、これはメモランダム或いはスキヤツピンに抵触するという観点から立たれておりますかとこういう私のほうから質問をいたしましたところが、そういう観点に今のところ考えておるんだ、併しながらこれは意見長官その他法制の面から一応の研究をして見たいが、委員会のほうではそういう点を研究しておられるかと言いますので、私のほらは十分研究した結果、抵触しないものと考えておる、一応この点で関係筋折衝いたしますから御了承を願いたい、官房長官のほうでは、それはもう喜んで折衝して下さい、私のほうは私のほうで研究いたしましようということになつて、三日ばかり前にお別れしたわけです。私のほうでは、従来外交部或いはその他の関係方面折衝いたしまして、一昨日は特にGHQ関係かたがた折衝いたしました結果、こういう向うのほうの、政府のほうの考え方も尤もであろう、併しながら君らの考えも尤もだ、我々は考える。そこで内容においてこれはどういうことをやるのかという質問であつたのであります。それで我々は飽くまで再軍備とか或いは再防衛とかいう観点に立つてお願いしておるのではない。戦争によつて犠牲を受けた遺族とか、傷痍軍人人たちに対する施策は十分でないと同時に、その人数さえも戦没者の場合ははつきりしていない。政府、或いは国民は将来こうした問題に対して補償をしなければならないというような場合においても、その資料、或いは統計等に対するところの甚だ不備な点がある。それで講和会議を前にして、我々は文化国家として少くとも道義に立脚した国民としてのはつきりした態度で講和会議に臨みたいというので、戦争の再軍備をやるとか、或いは防衛ということを目標にこの問題を掲げて我々はお願いしているのではない。飽くまで平和な国民として、文化国家日本として、ほかの国と比較して劣らないような道義日本文化日本立場においてこの調査研究を進めて行きたいのであつて、そのための審議会であることを力説いたしましたところが、非常に向うは感動されまして、そういう意味であれば、我々はこれはメモランダムにも或いはスキヤツピンにも抵触しないものと思う。併しながら一応はその他の関係かたがたの了解を得る必要があるから、GHQ立場から、そのかたがたにはこの法案について検討してもらつて御返事を上げましようということで分れた。昨日研究した結果は妥当と認めたというのでOK参つたのでありまして、そこで皆さんの御協力を得て、本日この法案を提案したわけでございます。
  5. 石川榮一

    石川榮一君 千田委員長の熱誠なお気持から、本法案作成に格段の御努力をなさいましたことに対しましては、心から感謝いたします。又この法案作成までに種々な面から十分な措置を講じ、折衝を遂げ、万全を期していらつしやつた今の御経過を伺いまして、私ども了承はできる次第であります。これは私ども心配いたしますのは、先ほど申上げましたように、これが少しでも講和の問題に、或いは再軍備を、或いは先ほどお話がありましたように国家防衛立場からやるのではないかというような、ややもしますると、戦勝国の或る一部の国々に誤解、曲解を与えるようなことがありますと甚だ遺憾でありますので、所信をお尋ねしたわけでありますが、官房長官最後の言に、この審議会設置に関する内容等について十分賛意を表されたということでありまするから、これは間偉いないと思いますが、ただ私がこちらに参ります前に、他の同僚議員の諸君から、実はこの問題の影響するところがあるかも知れんから、継続審査の形でやつて頂くことができ得ればというような伝言を受けたのであります。私は私自体といたしますると、事かような当然過ぎるほど当然な、いわゆる捨てられた大きな而も国家のためには犠牲に立つた人たちでありますから、処遇の具体化を急いで救うというものでありまするからして、少しも異論はないのでありますが、要するに政府立場から、これによつて影響しないということでありますれば結構なんでありますが、幸いにここにいらつしやるのでありますが、外務次官としての立場から、草葉委員から、これらに対する御見解を率直に一つお話を願いたいと思いますが。
  6. 千田正

    委員長千田正君) 只今石川委員から、草葉委員外務次官立場としての御見解を承わりたいということでございます。
  7. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 その前に、これはもう審議が始まつているのでしようか………。
  8. 千田正

    委員長千田正君) 今質疑応答に入つている……。
  9. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 それでは只今途中から入りまして甚だ恐縮でございますが、この条文をお作りになりますまでの当委員会或いは厚生委員会その他におい(の御苦心を、只今同僚石川委員から縷々申述べられましたように、私ども大変感謝をいたします。殊に千田委員長はその折衝の衝に当つて誠にこれまでに作られたことに対しましての御苦労に対しまして、衷心より感謝をいたす次第であります。ただ二、三の問題について、先に委員としての一つ意見を申上げ、又御質問をいたしたいのは、先ほどもありましたこの戦傷病者等対策審議会というのは、再軍備なり或いは防衛なりというような問題とは全然触れないという意味において、過去の戦争に対する戦傷病者等対策を早く立てなければ、いわゆる憲法の平等の精神に反するからという意味において強く取上げられたという意味に解釈してよろしうございますか。
  10. 千田正

    委員長千田正君) その通りでございます。
  11. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 従つてその内容におきましても、これは国家補償というようなこの言葉を使つてあるように思いまするが、私はここでこの法案をもう到底修正をする暇がないと思いますから、補償というのはいわゆる従来の扶助という言葉では不十分であるという意味において補償という言葉を使われたので、補償というのは当然国家義務として、この一種の最近言うところ補償というほどの強い意味じやないけれども、従来の遺族扶助料というような、ああいう意味における扶助意味を含んだ補償と、こう解釈してよろしうございますか。
  12. 千田正

    委員長千田正君) さようでございます。
  13. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 そうしますと、納得行くと思います。余り補償というのが強く出て参りますると、如何にも妙な感がいたすのではないか、そういう意味において一つ私は解釈して参りたいと存じます。又この委員会は誠に大きい組織になつておりまするから、実際上においては、最後内閣総理大臣が会長になつて各省関係大臣でやることになりましようけれども、やはり実際の事務はここにありまする幹事等というところで、十分資料なりすべてをやつて行かなければならないと存じます。従つてこの審議会というものは、従来の審議会違つて政府議員とその他の人々が会員になつてつて行くことは、事が大きい問題であるから、国家の総力を挙げて一応解決するという態勢で、具体的には実際は幹事人たち十分力を注いでやつて行かなければならないという意味に解釈してよろしうございますか。
  14. 千田正

    委員長千田正君) さようでございます。特にこの点に重点を置いたのは、今までの審議会違つておる点は、総理大臣並びに関係大臣ということを入れておるということは、今草葉委員の御質疑のあつた通り、従来の審議会と異なつて非常に重要性を帯びておる。同時にこれはこの委員会では総理大臣並びに政府に対して勧告することができるという一つの大きな面が盛つてあるのであります。そういう点で今までの審議会とは異なつておるという点と、それからこのような法案政府においてできる場合においては、一応対策審議会に諮るべきであるという点が盛られてあります。今御質疑のあつた通り、主としてこの問題を研究されるのはむしろ幹事会のほうが主として当られるものという意味に解釈して、一応幹事会のほうは次官或いは局長級かたがたが当つて頂いて真剣に取組んで頂きたい。先ほど補償或いは扶助という字句の使い方がどうかという問題につきましては、趣旨只今草葉委員のおつしやる通りでありますが、実施に当りましては、なお十分に検討されまして、或いはこの案も必すしも完璧を期した案ではありませんが、一応こういう案を以て審議会を作られまして、十分に検討されて、法案実施或いはその他に対して、又修正する個所がある場合においては、次期国会においてその補足点或いは不備な点を補つて頂きたい、こういう意味でございますから、何とぞ御賛成を得たいと思います。
  15. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 今石川委員からの点について、外務次官としての立場からというお話でございましたが、これは議院として法案をすでに関係方面OKをおとりになりましたら、それに対して、かれこれ私は外務省の立場から申上げることも却つて妥当じやないと思いますから……。
  16. 紅露みつ

    紅露みつ君 本案千田委員長の格別な御努力によつてここまで運びましたことにつきましては、私どもひとしく誠に感謝申上げるところでございます。先刻来石川委員からも大変深い御考慮の下に御発言がありまして、誠にそのお心遣いを有難く伺つておる次第でございます。委員でもあられまするが、本日は草葉外務政務次官も御出席になられまして、大変心強く感ずる次第でございます。今後政務次官にも、又与党石川委員にも格別な、これはお力添え頂かなければ、本案が見事に実を結ぶということは困難だと存じますので、是非その点も委員としてお願い申上げて置きたいと存じます。幸い官房長官もお見えでございますが、政府におかれましても、これは今後よほどの決意をお示し下さらないことには、到底立派な成果を挙げ得ないと思いますので、援護局長もお見えであり、どうぞこの問題はもう捨て置けない問題であるということは周知のことなんでございますから、関係者一同が力を合せてこの実施に当りましても、更にその後に発展いたしますであろうところの結果につきましても、格別の御努力をお願い申上げたいと存じます。案の内容につきましては、国会期末のことでもございまして、御出席がそうお揃いになつたというわけではございませんので、まだ御質疑なんかもあるかも知れませんが、ずつと続けて出ておりました私どもといたしましては、この内容は十分に検討いたしたつもりでございますので、もう時間の問題に差迫つておりまするから、質疑、討論を省略いたしまして、採決に入つて頂きたいと存じます。動議を提出いたします。
  17. 石川榮一

    石川榮一君 老婆心のようですが、もう一つお伺いしたいのですが、只今草葉委員から御指摘になりました補償という文字、この補償という文字には、勿論新憲法建前で言いますれば、こういうかたがたに対しては国家が堂々と補償をすべきであるという立場で差支えないと思いますが、若しこの法案補償考え方におきまして、仮に補償する場合、法律によつて規定されたところのもので行くのでありまするから、勿論疑義は起らんと思いますが、この補償という文字の裏を返しますると、この戦傷病者並びに遺家族かたがたのこうむりました経済的な損害、勿論疾病その他の関係でありまするから、限度はありまするが、見解相違がありまして、この法律に浴し得るかたがたから、政府がきめたところのその補償に不服がありました場合に、堂々とこの補償立場から損害賠償のような形で法廷で争うようなことがありますと、非常に遺憾だと思うのであります。で、そういう点は誤解のないように、この補償に関する、委員長のこの法案を作りますにつきましての補償に関する意味合いをよく速記にとどめて置きたい。さもありませんと、ややもいたしますると、この補償言葉に藉りまして民事訴訟が起り得る、こういうことも私ども考えられます。余りにも国家が薄くやりますれば起ります。厚くやりましても、時には起らないということは何人も言い切れないということもありますので、これは国家的な義務であつて国民の権利であるという建前に立つて行く補償でありますと、この補償の問題が金額の査定におきまして、紛議が起るということにも相成ろうと思いますので、これらに関する、この法案作成に当られました千田委員長考え方速記に残して頂くように願いたいと思いまして、御質問いたします。
  18. 千田正

    委員長千田正君) お答えいたします。非常に政府並びに与党のかたが御心配になつておられる点はよくわかりますが、これはOKをとる際にも申上げました通り、飽くまで審議会でありまして、実施法をどういうふうに査定して行くか、補償にするか、扶助にするか、或いは遺児にはどうするか、未亡人にはどうするか、或いは幼老者にはどうするか、傷病兵には、どうするか、その対象人数或いは対象の強弱というようなものを研究する調査機関でありまするので、これは立法機関というわけでありません。そこで補償にするか、扶助にするかという点につきましては、勿論今後の実施法法案として出る場合において十分に御検討を願うのでありまして、ここに掲げました補償というものは、補償或いは扶助というものにするかどうかという点においても、十分に研究機関のための審議会等でありますので、この点を誤解のないように一つ御認識願いたいと思うのであります。これは飽くまで、いわゆるこれによつて直ちにこの字句かあるから、すぐ補償法案なるものができるというわけではありません。或いは自由党或いは民主党からおのおのの法案がやはり出て来るでしよう。その場合においてこの審議会は相当研究をされます。或いは政府の提案があつた場合にもこの委員会に諮ります。その場合にこの委員会は十分にそれを検討して、的確なるいわゆる国民気持を盛り、政府意向を採用して、こうすべきであるという勧告をやるところ委員会でありますので、実施機関ではないのでありますから、その点を十分に御認識を願つて賛成を願いたいと思います。
  19. 高良とみ

    高良とみ君 只今石川委員からの御質問を私も一応確めて置きたいのでありますが、それは社会保障に関する審議会ができておる場合のように、戦傷病者及び遺家族戦争犠牲者に対する補償を、或いは扶助を如何にやるべきかということを審議する審議会を設置する案と了承いたしてよろしいわけでありましようか。
  20. 千田正

    委員長千田正君) その通りであります。
  21. 高良とみ

    高良とみ君 更にお伺いいたしますが、私ども報告委員長の御熱心なる御努力の結果伺つておりまするところによりますると、関係方面におきましては、過去の戦争における犠牲者処置に関する覚書がございまするけれども、すでに戦敗後、占領下に四、五年以上もたちました今日、日本国際的地位も変り、又この国内の状態もだんだんに整備して参りましたので、一方的にこういう犠牲者を放置することの不適当であるという点を縷々お述べ頂いたことだと思うのであります。それに関して関係方面におきましては、これは日本政府として決心をすることにかかわつておるので、日本政府意向がそうである場合には、委員会意向、つまり国会意向としてもこれは日本政府へ推進を図るようにしたらよかろうというような御意見であつたように承わつたのであります。つきましては、私どもこういう国際情勢下にありまして、アメリカその他の連合諸国におきましても、やはりこの人道主義に立つて、ヒユーマニテイの立場から、悲惨なる状態に置くということは、徒らにこの赤化の温床を作るということも十分に社会考えられるところであります。そういう点から、如何に人道的な処置をしようとしましても、日本政府におきまして、徒らなる危惧を持たれて、これが講和条約に差支えるのではないかというようなことを心配されるということは、いささか私としては遺憾に思うところなんでございます。即ち新憲法下におきまして、こういう悲惨な状態にある人を看過しないということが、新憲法そのもの、或いは更生した日本そのもの及び世界に約束しました、再びかかる種類の人を出さないという意図の強化でありまして、これに対して世界のどの国においても、これを疑うであろうということを思うことが、大衆が戦において傷つき、片輪になり、或いは老いたる人、未亡人、幼児のようなものでありまするから、そういうように考えるよりも、考える余地があるとお考えになる点をいささか遺憾に思うのであります。併しこれは見解相違と言えばそれまででありまするが、政府決意を私は伺つて置きたいのでありまして、この前岡崎官房長官は実際の処置講和後に待たなければならないという御意見があつたように伺いまするが、決意があるなしということは、関係方面においてもその自由は与えておられると思うのであります。で、アメリカその他の連合国におきましても、日本はその決意を持つことを機会を与えてもらつても、それは遠慮しておるというようなことでは、どうも連合国意見をも尊重しないことになりますので、私は官房長官がおられますので、一応政府においてもこの審議会を設置するということに対して努力するという御意思があるかどうかを伺いたい。
  22. 菅野義丸

    政府委員菅野義丸君) お答申上げます。戦傷病者或いは遺家族かたがたに対しまして、何らかの救済と言いますか、補償と言いますかをしなけりやならんということは、政府も、つとに考えておるのでありまして、目下いろいろの方面におきまして研究努力をいたしておるのでございますが、この点につきまして、国会が特にこういう立法をせられるまでに非常な御関心を持つて努力をなさつていることについては敬意を表するところであります。併しながらこの法案に対する政府の率直の意見を述べさせて頂きますならば、勿論これに対して賛否を申上げるわけではございませんが、ただ所感を申上げますと、一、二の点について多少政府が消極的とならざるを得ないのでございます。先ず第一はスキヤツビンの問題でございますが、戦傷病者或いは遺家族人たちに対しては、ほかの人たちと同様の取扱いをしなけりやいけない、特にこういう人たちに対しては特別な取扱いをしてはいけないという指令が出ております。それから現在それは守らなければならない指令一つになつておる次第でありまして、勿論これは先ほど委員長からもお話がございましたように、これに対して研究審議をするということについては何ら差支えのないことでございまするが、この案を拝見いたしますると、その結果を実現するように内閣総理大臣及び関係大臣に勧告する任務と権限を有するというふうなことにもなつておりまするし、仮にこのスキヤツヒンがなくならない以上は、ここで如何に研究審議し、その成果を実現するように内閣総理大臣に勧告せられましても、政府といたしましては、これは如何ともいたしかたないような次第でございます。併しながらそういう点は暫らくおきまして、この本案が、このもの自体がその指令に反するかどうかという問題については、これは司令部の解釈によるわけでございまして、この法案が出されるということにつきましては、勿論その指令に牴触しておらないという見解でございまするので、そういう点につきましては、これ以上申上げる必要はないと思います。  その次は社会問題でございますが、殊に再軍備と関連いたしまして、講和条約後再軍備をする場合におきましては、或いはそれを計画する場合におきましては、過去の戦争において非常な犠牲をこうむつた者を先ず救済しなければ、再軍備が円滑に行かないというような考えが一部にございまして、これと非常な人道主義に出たこの問題とをくつけまして、あらぬ疑いを国際間の諸国に与えまして、いろいろ不必要な疑惑を受ける可能性がなきにしもあらずでございまして、こういう点から見まして、政府は率直に意見を述べることを許して頂けますならば、成るべくならば講和会議後にいたしたい。こういうような本格的な審議会を開いて、形式的にも実質的にも本格的に調査研究審議すること自体を講和会議後にしたほうがいいじやないかという見解を持つております。併しながら又一方リツジウエイ最高司令官の声明によりまして、この指令そのものも或いは講和会議前に変更される可能性がなきにしもあらずでございまして、そういう場合におきましては、勿論これは当然本格的に調査審議し、むしろ実施をするように心がけなければならないのでございまして、この点につきましては、政府も決して異存はないところでございます。その他実行上に当りましては、いろいろな疑問がございますが、この審議会は、飽くまで調査審議して勧告するということが権限及び使命でございますので、それ以上は或いは杞憂になるかと思いますので申上げませんが、いずれにいたしましても、政府の率直な意見から申上げますと、以上申述べましたような考えから、成るべくならば、この法案によつて形式的にも実質的にも本格的な審議調査をするのは、指令の改まつたのち、或いは講和会議後といたしまして、差当りは現在政府及び国会といろいろ連絡して研究いたしておりまする実質的な調査研究準備ということで以て御満足願えないだろうかと、こういうような意見を持つていることを申上げます。
  23. 千田正

    委員長千田正君) 只今官房長官のお考えになつていることは、政府気持を代表しておると思いますが、実際におけるところ遺族或いは傷痍軍人人たちは、もう待つことができないほど切迫した事情の立場におるのであります。而もそのいわゆる本当の道義心の立場から言えば、我々はたびたび調査をしました通り、御承知の通り只今刑務所に繋がれておるような罪人には、国の費用は一人当り一カ年四万一千八十円というような、罪を犯し社会に迷惑をかけたような罪人に対してさえも、国の費用は四万幾らかかつておる。にもかかわらず、戦争犠牲なつ人たちに対しては、傷痍軍人などに対しては最高でさえ五月一日以前には三千二百円しか一カ月に差上げていなかつた。これは誠に政治の貧困と言わざるを得ないのであります。政府はどう考えておるかも知れないけれども国民の代表として我々は国会に選ばれていて、今日においてこの政治のまずさということをつくづく我々は国民道義の上から考えたときに、このまま放置することはできないという立場から、この法案が要請されたのでありまして、政府といたしましても、この国民の要請に対するこの法案であるということを十分御理解願つて、できるだけ御協力を願いたいと思う次第であります。
  24. 紅露みつ

    紅露みつ君 官房長官の今のお話を伺つたのでございますが、それは責任の立場として、一応一番問題の少い道を行こうというお気持はわかりますが、併しそれには政治でございますから、含みもあろうと存じます。必ずやこの問題については、今後これが設置されました以上は、熱意を以て御協力頂けることと私ども了承いたしております。そこで委員長、動議が提出されておりますからお取上げを願います。
  25. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 動議の前にちよつと……。ここにもありまするが、実はまあ戦傷者が中心でありますけれども、なお最近街頭、車中において、まあその解決の根幹はこれにもかかりましようが、誠にこれは国家として、又国民として見るに忍びない状態である。殊に外国人が会いました場合には、なお更のことであります。身体傷害者福祉法というのもありまするから、もう少し何とかできそうなものである。この法案と直接関係があると同時に、又関係がないかも知れませんが、今の状態においても、これは一つこの委員会等で今後御心配になるのでございますから、現状の状態においても、あの状態を何とか早く解決するように特に一つ委員長初め委員の皆さんにお願いいたします。
  26. 千田正

    委員長千田正君) その点も実際非常に心配して法案の用意がしてあるのでありますが、先ほど政府心配しておるように、メモランダム或いは指令に牴触するのではないか、実施する点においては、そういういろいろな点を考究した結果生まれたのが調査研究審議会法案であります。そのように御理解を願いたいと思います。
  27. 石川榮一

    石川榮一君 官房長官にお伺いしたいのでありますが、御所信を伺いまして大体わかりました。私ども政府がお考えなすつておりますことも了承することでありますが、この連合軍、いわゆる占領軍側の例の指示がまだ解けないから、その指令が解けるのを待つて、この法律の効果を上げてもらいたいという御意見御尤もであります。私どもはむしろ国会でかようなものが取上げられまして、恐らく両院ともこれは何人も異論なく通るものだと考える。要するに国民の総意でありますから、この機会政府はその指令を、この事情を訴えましたあの指令をどうせ解くのでありましようから、急いで解いて頂くような私は御折衝が願いたい、このくらいの熱意はあつて然るべきだと思います。(「同感」と呼ぶ者あり)でありますから、この法案作成することによつて、その指令が長くなるか短くなるかわかりませんが、私どもはこのOKが出ましたところによりますれば、政府からその懇請をいたしますれば、これはおのずから指令は私は解けるものである、かように考えるのでありますが、こういう点に対して官房長官はどうお考えになつていらつしやいますか、お伺いいたしたいと思います。
  28. 菅野義丸

    政府委員菅野義丸君) 御承知の通り、先般リツジウエイ司令官から声明が出まして、従来の指令等に基きます法制についての再検討の権限を日本政府に与えられたのでございまして、それによりまして、目下いろいろの方面に亘りまして検討を続けておるのでありますが、只今石川委員のお尋ねになりましたこのメモランダム指令につきましても、やはりそれに例外をなすものではないのでありまして、政府もできるだけ速かにこういう指令の改変をお願いしたいと、こういうふうに考えておりまして、今検討中でございます。なお先ほど私或いは言葉が足りなかつたかと思いますが、政府はこの法案国会を通過いたしました場合におきましては、勿論この法案趣旨を十分忠実に実行することにつきましては、やぶさかではないのでございまして、先ほど申上げましたのは、ただ参考にと思いまして、一応所信を述べただけでございまして、了承願います。
  29. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 先ほどの紅露委員の動議、これを一つ……。
  30. 千田正

    委員長千田正君) 先ほど紅露委員から動議が出されました。この際すでに皆さん御研究済みのことであるから、質疑を一応打切つて、討論を省略して採決に入りたいという動議ですが……。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 千田正

    委員長千田正君) 皆さん賛成見えますので、直ちにお諮りいたします。  戦傷病者等対策審議会設置法案を議題に供しますが、これに御賛成のかたは御挙手をお願いいたします。    〔総員挙手〕
  32. 千田正

    委員長千田正君) 全会一致と認めまして、この法案委員会において妥当と認めまして、可決することに決定いたしました。  それでは例により御賛成のかたは順次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     森崎  隆  高良 とみ     紅露 みつ  石川 榮一     草葉 隆圓  内村 清次     小酒井義男  成瀬 幡治     飯島連次郎  鈴木 直人     杉山 昌作  木内キヤウ
  33. 千田正

    委員長千田正君) 続いてはこの法案内容になりますが、参議院側からは五人以内の委員を選出することになつておりますので、これは各党、自由党、民主党、緑風会、社会党、一名ずつと、それから第一クラブ、労農党、共産党から一名というふうにお願いできれば、そういうふうにして如何でありましようか、お諮りいたします。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  34. 千田正

    委員長千田正君) 皆さん賛成ということでありまするから、今日の本会議にこれをかけなければ成立いたしませんので、どうぞ各会派へお帰りになりまして、至急御決定を願つて委員長の手許までお知らせを願いたいと思います。  それでは本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後で時八分散会  出席者は左の通り。    委員長     千田  正君    理事            森崎  隆君            高良 とみ君            紅露 みつ君    委員            石川 榮一君            草葉 隆圓君            内村 清次君            小酒井義男君            成瀬 幡治君            飯島連次郎君            杉山 昌作君            鈴木 直人君            木内キヤウ君   政府委員    内閣官房長官 菅野 義丸君    外務政務次官  草葉 隆圓君    引揚援護庁援護    局長      田邊 繁雄君